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特表2023-523209スピネル複合固溶体酸化物を含む正極活物質、その製造方法、およびそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】スピネル複合固溶体酸化物を含む正極活物質、その製造方法、およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20230526BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230526BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/525
C01G53/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563482
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 KR2021003263
(87)【国際公開番号】W WO2021215670
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0048013
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515034194
【氏名又は名称】トップ マテリアル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TOP MATERIAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】554-30,Deokpyeong-ro,Hobeop-myeon,Icheon-si,Kyungggi-do,Korea,zipcode 467-821
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノ ファン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ノ ヨン ベ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ビョン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンミン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ウギュ
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD04
4G048AD06
4G048AE05
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、スピネル複合固溶体酸化物を含む正極活物質、その製造方法、およびそれを含むリチウム二次電池に関する。スピネル複合固溶体酸化物は、結晶内に正立方体(P432)と面心立方体(Fd-3m)が最適化された固溶比率で占有され、リチウムニッケル酸化物(LiNi1-zO)が低い含有量で複合化されたものであって、それを含む正極活物質は、遷移金属に置換されるドーピング元素の種類および含有量と合成される温度、発生する不純物の量によって安定した寿命特性を有し、かつ優れた出力特性を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるスピネル複合固溶体酸化物を含み、
前記スピネル複合固溶体酸化物は、XRDスペクトルでリートベルト(Rietveld)解析時、前記スピネル複合固溶体酸化物全体重量に対してリチウムニッケル酸化物(LiNi1-zO,0<z≦0.2)の重量が0重量%~2重量%である、
正極活物質。
[化学式1]
Li1+aNi1/2-x/2Mn3/2-x/2
(前記化学式1において、
Mは、Co、Mg、Ti、Al、Ba、Cr、Fe、Mo、W、Zr、Y、Nbおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つのドーピング元素であり、
0≦a≦0.1であり、0<x≦0.1である)
【請求項2】
前記スピネル複合固溶体酸化物全体重量に対して、前記リチウムニッケル酸化物の重量が0.01重量%~2重量%である、
請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
下記化学式2で表されるスピネル複合固溶体酸化物を含む、
請求項1に記載の正極活物質。
[化学式2]
Li1+aNi1/2-x/2Mn3/2-x/2Ti
(前記化学式2において、0≦a≦0.1であり、0<x≦0.1である)
【請求項4】
前記化学式1において、0.025≦x≦0.05である、
請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記スピネル複合固溶体酸化物のタップ密度は1.2g/cc~2.2g/ccであり、比表面積は0.5m/g~2.5m/gである、
請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記スピネル複合固溶体酸化物は、XRDスペクトルでリートベルト(Rietveld)解析時、下記数式1で計算される結晶内の正立方体(P432)の占有率が0~0.1であり、下記数式2で計算される結晶内の面心立方体(Fd-3m)の占有率が0.9~1であり、下記数式3で計算される結晶内の不純物(リチウムニッケル酸化物、LiNi1-zO)の占有率が0~0.02である、
請求項1に記載の正極活物質。
[数式1]
正立方体(P432)の占有率=AP4332/(AP4332+AFd-3m+LiNi1-zO)
[数式2]
面心立方体(Fd-3m)の占有率=AFd-3m/(AP4332+AFd-3m+LiNi1-zO)
[数式3]
不純物(LiNi1-zO)の占有率=LiNi1-zO/(AP4332+AFd-3m+LiNi1-zO)
(前記数式1~数式3において、AP4332は正立方体(P432)の重量%であり、AFd-3mは面心立方体(Fd-3m)の重量%であり、LiNi1-zOは不純物(LiNi1-zO)の重量%である)
【請求項7】
前記スピネル複合固溶体酸化物は、XRDスペクトルでリートベルト(Rietveld)解析時、スピネル構造の格子定数a(Å)値が、8.1640超過~8.1900未満である、
請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記スピネル複合固溶体酸化物は、XRDスペクトルでリートベルト(Rietveld)解析時、半値全幅(full width at half maximum;FWHM)が下記数式4を満たす、
請求項1に記載の正極活物質。
[数式4]
0.01≦FWHM(deg)≦0.20((hkl)=(111),2θ=18~20)であり、
0.01≦FWHM(deg)≦0.25((hkl)=(222),2θ=43~45)である。
【請求項9】
マンガン塩、ニッケル塩およびリチウム塩を乾式混合して混合塩を製造する工程、
前記混合塩とドーピング元素を含む化合物を溶媒と混合してスラリーを製造して、前記スラリーを湿式粉砕して前記スラリー内の固相混合物粒子のD50が100nm~300nmになるまで粉砕して粉末を製造する工程、
前記粉末を摂氏400度~600度で4時間~12時間の間か焼して反応に不必要な有機物を除去するか焼工程、そして
前記か焼工程で形成された粒子を摂氏700度~950度で6時間~24時間の間焼成する工程を含む、
下記化学式1で表されるスピネル複合固溶体酸化物を含む正極活物質の製造方法。
[化学式1]
Li1+aNi1/2-x/2Mn3/2-x/2
(前記化学式1において、
MはCo、Mg、Ti、Al、Ba、Cr、Fe、Mo、W、Zr、Y、Nbおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つのドーピング元素であり、
0≦a≦0.1であり、0<x≦0.1である)
【請求項10】
前記リチウム塩は、リチウムを含む酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり、
前記マンガン塩は、マンガンを含む酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり、
前記ニッケル塩は、ニッケルを含む酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物である、
請求項9に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記ドーピング元素を含む化合物は、Co、Mg、Ti、Al、Ba、Cr、Fe、Mo、W、Zr、Y、Nbおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つのドーピング元素を含む酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物である、
請求項9に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記正極活物質は、平均粒径が100nm~500nmである1次粒子が集まってなる、平均粒径が5マイクロメーター~30マイクロメーターである2次粒子を含む、
請求項9に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極;
負極活物質を含む負極;そして
前記正極と前記負極の間に位置する電解質を含む、
リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4.5V以上の放電電圧を有する高電圧スピネル複合固溶体酸化物を含む正極活物質、その製造方法、およびそれを含むリチウム二次電池を提供する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、1991年ソニーが初めて自社のカムコーダーカメラの電源として採用した以来、数多くの民生用機器の電源として使用されてきており、今では電気自動車、電力貯蔵装置など新たな電源需要の拡大とともにより高エネルギ密度の正極活物質の開発が必要になった。
【0003】
現在、電池業界で進められている高エネルギ密度の正極活物質の開発方向としては、ニッケルがより多く含有されたニッケルリッチ(Ni-rich)系の高容量正極活物質(NCM622,NCM811)の開発方向と4.5V以上の高い放電電圧を示す高電圧スピネル正極活物質の開発方向に分けられる。
【0004】
これまで知られている正極材料のうち4.5V以上の放電特性を示す高電圧正極素材は、スピネル構造化合物(LiMMn2-x)、逆スピネル構造(LiNiVO)およびポリアニオン素材であるLiCoNiPOなどがある。これら高電圧正極素材は、既存の4Vを有するニッケルリッチ系の高容量正極素材より容量は小さいが、電圧が高いので高エネルギ密度を実現させることができるだけでなく、電気自動車および電力貯蔵装置など高い電圧を必要とする電源装置を構成する際には、直列で構成する電池の個数を減らすことができるため、電池パックの生産コストを画期的に減らすことができる。
【0005】
このような高電圧正極素材の中で、4V級での平坦電位を最小化し、5V級で大きな容量を示す素材として、高電圧スピネル正極活物質に対する研究が集中している。高電圧スピネル正極活物質は、主成分としてマンガン(Mn)を使用し、コスト的な側面と需給的な側面で敏感なコバルト(Co)を使用せず、ニッケル(Ni)を制限的に使用するため、生産コストが安価で、かつ環環境に優しい正極素材として認識されている。一方で、この正極素材を商業化するためには、4.5V以上の高電圧でMnおよびNiの溶出問題による寿命劣化を解決する必要があり、この正極素材の電気伝導度がニッケルリッチ正極素材より相対的に低いので、異種金属のドープや結晶構造の最適化により素材の構造安定性および電気伝導度を高めることが必要である。
【0006】
高電圧スピネル正極活物質には、結晶構造でMnイオンがすべて+4価で存在し、八面体サイト(octahedral site)に位置する遷移金属ニッケルとマンガンが1:3の規則的な配列をしているオーダリング(ordering)された正立方体(primitive cubic close pack)(P432)の結晶構造と、Mnイオンが+4価と+3価が混在されており、Liは8aサイトを、NiとMnは16dサイトに無秩序に存在し、酸素(O)は32eサイトを占有しているディスオーダリング(disordering)された面心立方体(Fd-3m)の結晶構造とが存在する。この二つの結晶構造は、スピネル正極活物質の製造工程の差異または異種元素のドープ過程により互いに異なる占有率を有して現れ、このような過程で生成される不純物(リチウムニッケル酸化物、LiNi1-zO)の濃度が変わり得、半値全幅および格子定数、格子の体積が変わり得る。このような差異は、電池の寿命および出力特性に多くの変化を与え得る。
【0007】
一般に、高電圧スピネル正極活物質の酸化還元反応電位は、Ni+2/N+4に起因する4.7V放電領域と、M+3/M+4に起因する4V放電領域とを有していると知られている。Niのモル数が0.5である時は、理論的に4.7Vの放電領域だけが現れるが、実際は、この正極素材を高温焼成する過程で酸素欠乏が発生すると、素材の電位中性を合わせるために、一部Mnの電位が+4価から+3価に変わり、この過程で不規則な反応としてリチウムニッケル酸化物(LiNi1-zO)が生成され、結晶内に複合化される(反応式1)。また、高電圧スピネル正極活物質でのニッケルの固溶限界は0.5モルまでと知られており、それ以上のニッケルが追加されると、固溶限界値を超えるニッケルは、リチウムニッケル酸化物の形態で結晶内に複合化されることが知られている(反応式2)。
【0008】
[反応式1]
LiNi0.5Mn1.5O4⇔qLizNi1-zO+rLiNi0.5-wMn1.5+wO4+sO2(at high T)
【0009】
[反応式2]
[Li+][Ni2+]x[Mn3+]1-2x[Mn4+]1+x[O2]4⇒[Li+]2x[Ni2+]x[Mn4+]2-x[O2]4+(1-2x)Li++(1-2x)e(at 4.1 V plateau)
[Li+]2x[Ni2+]x[Mn4+]2-x[O2]4⇒[Ni4+]x[Mn4+]2-x[O2]4+2xLi++2xe(at 4.7 V plateau)
【0010】
ニッケルとマンガンが規則的に配列された正立方体構造は、相対的に無秩序に配置された面心立方体構造よりもリチウムイオンの拡散速度が遅く、物質の電気伝導度も低く、電池化学的性能が劣る。また、リチウムニッケル酸化物は自体が不導体であり、電池化学的反応に参加しないため、電池容量および寿命特性に影響を及ぼす。したがって、高電圧スピネル正極活物質は、製造工程および構造制御により、より電気化学性能を改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
スピネル正極活物質は、結晶性を向上させるために合成温度を増加させる場合、酸素欠乏問題が増加して、不純物であるリチウムニッケル酸化物の濃度が増加し、そのため、寿命問題と出力低下が発生し得る。
【0012】
本発明の目的は、スピネル複合固溶体酸化物の合成温度を高めて結晶性を向上させながらも、不純物の占有率を低くした正極活物質を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、正極活物質の製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の目的は、安定した寿命と優れた高出力特性を有するリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表されるスピネル複合固溶体酸化物を含み、スピネル複合固溶体酸化物はXRDスペクトルでリートベルト(Rietveld)解析時、スピネル複合固溶体酸化物全体重量に対してリチウムニッケル酸化物(LiNi1-zO,0<z≦0.2)の重量が0重量%~2重量%である正極活物質を提供する。
[化学式1]
Li1+aNi1/2-x/2Mn3/2-x/2
(化学式1において、MはCo、Mg、Ti、Al、Ba、Cr、Fe、Mo、W、Zr、Y、Nbおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つのドーピング元素であり、0≦a≦0.1であり、0<x≦0.1である)
【0016】
スピネル複合固溶体酸化物全体重量に対してリチウムニッケル酸化物の重量が0.01重量%~2重量%であり得る。
【0017】
下記化学式2で表されるスピネル複合固溶体酸化物を含み得る。
[化学式2]
Li1+aNi1/2-x/2Mn3/2-x/2Ti
(化学式2において、0≦a≦0.1であり、0<x≦0.1である)
【0018】
化学式1において、0.025≦x≦0.05であり得る。
【0019】
スピネル複合固溶体酸化物のタップ密度は1.2g/cc~2.2g/ccであり、比表面積は0.5m/g~2.5m/gであり得る。
【0020】
スピネル複合固溶体酸化物はXRDスペクトルでリートベルト(Rietveld)解析時、下記数式1で計算される結晶内の正立方体(P432)の占有率が0~0.1であり、下記数式2で計算される結晶内の面心立方体(Fd-3m)の占有率が0.9~1であり、下記数式3で計算される結晶内の不純物(リチウムニッケル酸化物、LiNi1-zO)の占有率が0~0.02であり得る。
【0021】
[数式1]
正立方体(P432)の占有率=AP4332/(AP4332+AFd-3m+LiNi1-zO)
【0022】
[数式2]
面心立方体(Fd-3m)の占有率=AFd-3m/(AP4332+AFd-3m+LiNi1-zO)
【0023】
[数式3]
不純物(LiNi1-zO)の占有率=LiNi1-zO/(AP4332+AFd-3m+LiNi1-zO)
【0024】
(数式1~数式3において、AP4332は正立方体(P432)の重量%であり、AFd-3mは面心立方体(Fd-3m)の重量%であり、LiNi1-zOは不純物(LiNi1-zO)の重量%である)
【0025】
スピネル複合固溶体酸化物はXRDスペクトルでリートベルト(Rietveld)解析時、スピネル構造の格子定数a(Å)値が8.1640超過~8.1900未満であり得る。
【0026】
スピネル複合固溶体酸化物はXRDスペクトルでリートベルト(Rietveld)解析時、半値全幅(full width at half maximum;FWHM)が下記数式4を満たし得る。
【0027】
[数式4]
0.01≦FWHM(deg)≦0.20((hkl)=(111),2θ=18~20)であり、
0.01≦FWHM(deg)≦0.25((hkl)=(222),2θ=43~45)である。
【0028】
本発明の他の一実施形態によれば、マンガン塩、ニッケル塩およびリチウム塩を乾式混合して混合塩を製造する工程、混合塩とドーピング元素を含む化合物を溶媒と混合してスラリーを製造して、スラリーを湿式粉砕してスラリー内の固相混合物粒子のD50が100nm~300nmになるまで粉砕して粉末を製造する工程、粉末を摂氏400度~600度で4時間~12時間の間か焼して反応に不必要な有機物を除去するか焼工程、そしてか焼工程で形成された粒子を摂氏700度~950度で6時間~24時間の間焼成する工程を含む、下記化学式1で表されるスピネル複合固溶体酸化物を含む正極活物質の製造方法を提供する。
【0029】
[化学式1]
Li1+aNi1/2-x/2Mn3/2-x/2
(化学式1において、
Mは、Co、Mg、Ti、Al、Ba、Cr、Fe、Mo、W、Zr、Y、Nbおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つのドーピング元素であり、
0≦a≦0.1であり、0<x≦0.1である)
【0030】
リチウム塩は、リチウムを含む酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり得る。
【0031】
マンガン塩は、マンガンを含む酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり得る。
【0032】
ニッケル塩は、ニッケルを含む酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり得る。
【0033】
ドーピング元素を含む化合物は、Co、Mg、Ti、Al、Ba、Cr、Fe、Mo、W、Zr、Y、Nbおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つのドーピング元素を含む酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり得る。
【0034】
正極活物質は、平均粒径が100nm~500nmである1次粒子が集まってなる、平均粒径が5マイクロメーター~30マイクロメーターである2次粒子を含み得る。
【0035】
本発明のまた他の一実施形態によれば、前記正極活物質を含む正極;負極活物質を含む負極;そして正極と負極の間に位置する電解質;を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明のスピネル複合固溶体酸化物を含む正極活物質は、合成温度を高めて結晶性が向上しながらも、不純物の占有率を低くすることによって、安定した寿命と優れた高出力特性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】実施例および比較例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物の焼成温度による不純物(リチウムニッケル酸化物)の含有量を示すグラフである。
図2】比較例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物の焼成温度による半値全幅を示すグラフである。
図3】実施例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物の焼成温度による半値全幅を示すグラフである。
図4】実施例および比較例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物の焼成温度による格子定数を示すグラフである。
図5】実施例および比較例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物の焼成温度による格子体積を示すグラフである。
図6】比較例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物を含む電池の0.1Cでの充電と放電曲線を示すグラフである。
図7】比較例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物を含む電池の寿命特性を示すグラフである。
図8】比較例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物を含む電池のレート特性を示すグラフである。
図9】実施例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物を含む電池の0.1Cでの充電と放電曲線を示すグラフである。
図10】実施例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物を含む電池の寿命特性を示すグラフである。
図11】実施例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物を含む電池のレート特性を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、本発明はこれによって制限されず、本発明は後述する請求項の範疇によってのみ定義される。
【0039】
本発明の一実施形態による正極活物質は化学式1で表されるスピネル複合固溶体酸化物を含む。
[化学式1]
Li1+aNi1/2-x/2Mn3/2-x/2
【0040】
化学式1において、aは、リチウム(Li)のモル比であり、aの範囲によってLiの含有量が変わり得る。aは、0≦a≦0.1であり得、具体的には0≦a≦0.05であり得る。Li含有量が不足すると、結晶性が落ちて容量低下を招き、Liの含有量が過量の場合、未反応水溶性塩基が正極活物質表面に多量残留して、スラリー製造時の粘度調節が難しく、過量の炭酸ガスが発生して電池性能が落ち得る。
【0041】
化学式1で表されるスピネル複合固溶体酸化物は、合成温度を高めて結晶性が向上しながらも、ドーピング元素の種類および含有量選択とドープ過程の変化により、不純物の占有率が低くなったものである。
【0042】
このために、スピネル複合固溶体酸化物は、Co、Mg、Ti、Al、Ba、Cr、Fe、Mo、W、Zr、Y、Nbおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つのドーピング元素によってドープされることができ、具体的にはCo、Al、Fe、Tiおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つでドープされることができ、より具体的にはTiでドープされることができる。
【0043】
特に、ドーピング元素としてTiが選ばれる場合、スピネル複合固溶体酸化物は、化学式2で表される。
[化学式2]
Li1+aNi1/2-x/2Mn3/2-x/2Ti
【0044】
化学式2のように、ドーピング元素としてTiが選ばれる場合、不純物であるリチウムニッケル酸化物(LiNi1-zO,0<z≦0.2)の重量をより低くすることができる。
【0045】
xは、ドーピング元素のモル比である。xは、0<x≦0.1であり得、具体的には0.025≦x≦0.05であり得る。ドーピング元素のモル比が0である場合、不純物であるリチウムニッケル酸化物の重量を減少させる効果を得ることができず、0.1を超える場合、NiおよびMnの減少に応じて容量および電圧が低下し、不純物が発生し得る。
【0046】
また、ドーピング元素は、ニッケルとマンガン位置で同一量(x/2)を除去した後、ニッケルとマンガンで除去された量(x)だけ置換され得る。この場合、正極活物質は、高いタップ密度および比表面積を有することができ、これを用いてリチウム二次電池を製造する場合は、向上した電池の寿命特性と高率特性を得ることができる。
【0047】
具体的には、スピネル複合固溶体酸化物のタップ密度は、1.2g/cc~2.5g/ccであり、比表面積は、0.5m/g~2.5m/gであり得る。スピネル複合固溶体酸化物のタップ密度が1.2g/cc未満の場合、電極厚さが厚くなり、抵抗が増加して電池(cell)容量が減少し得る。当該タップ密度が2.5g/ccを超える場合、酸化物内リチウムの拡散距離が遠くなり、高出力電極を形成することが難しくなる。スピネル複合固溶体酸化物の比表面積が0.5m/g未満である場合、Liが出入りする部位が少なく、高速充電特性および出力特性が落ちる。当該比表面積が2.5m/gを超える場合、活物質の電解液に対する活性が過剰になり、初期不可逆容量が大きくなるため、高容量電池を製造することが難しい。
【0048】
スピネル複合固溶体酸化物の不純物占有率が低くなるにつれ、スピネル複合固溶体酸化物はXRDスペクトルでリートベルト(Rietveld)解析時、スピネル複合固溶体酸化物全体重量に対して不純物であるリチウムニッケル酸化物(LiNi1-zO,0<z≦0.2)の重量が0重量%~2重量%であり、具体的には0.01重量%~2.0重量%であり得、具体的には0.01重量%~1.2重量%であり得、具体的には0.01重量%~1.0重量%であり得る。不純物であるリチウムニッケル酸化物の重量が2重量%を超える場合、寿命問題と出力低下が発生し得る。
【0049】
XRDスペクトルでリートベルト(Rietveld)解析方法は、具体的には、化学式1で表されるスピネル複合固溶体酸化物のXRD測定データを、JADE Software ICDD(Internaional Centre for Diffraction Data)カードにレファレンス(Reference)物質を適用して解析した格子定数の値であるXRD cell parameterを用いて、リートベルト解析することにより、各結晶構造とリチウムニッケル酸化物の占有率を解析することができる。
【0050】
また、スピネル複合固溶体酸化物は、XRDスペクトルでリートベルト(Rietveld)解析時、下記数式1で計算される結晶内の正立方体(P432)の占有率が0~0.1であり、下記数式2で計算される結晶内の面心立方体(Fd-3m)の占有率が0.9~1であり、下記数式3で計算される結晶内の不純物(リチウムニッケル酸化物、LiNi1-zO)の占有率は0~0.02である。
[数式1]
正立方体(P432)の占有率=AP4332/(AP4332+AFd-3m+LiNi1-zO)
[数式2]
面心立方体(Fd-3m)の占有率=AFd-3m/(AP4332+AFd-3m+LiNi1-zO)
[数式3]
不純物(LiNi1-zO)の占有率=LiNi1-zO/(AP4332+AFd-3m+LiNi1-zO)
【0051】
数式1~数式3において、AP4332は正立方体(P432)の重量%であり、AFd-3mは面心立方体(Fd-3m)の重量%であり、LiNi1-zOは不純物(LiNi1-zO)の重量%である。AP4332とAFd-3mはそれぞれ化学式1で表されるスピネル複合固溶体酸化物のXRD測定データを、JADE Software ICDD(Internaional Centre for Diffraction Data)カードにレファレンス(Reference)物質を適用して解析した格子定数の値であるXRD cell parameterを用いて、リートベルト解析することにより、各結晶構造を解析して得ることができる。
【0052】
スピネル複合固溶体酸化物結晶内の正立方体(P432)の占有率が0.1を超えるか、結晶内の面心立方体(Fd-3m)の占有率が0.9未満であるか、不純物(LiNi1-zO)の占有率が0.02を超える場合、レート特性が低下して、寿命が短くなる。
【0053】
また、スピネル複合固溶体酸化物は、スピネル構造の格子定数a(Å)値が8.1640超過~8.1900未満であり得る。具体的には、スピネル構造の格子定数a(Å)値が8.1810~8.1900であり得る。スピネル構造の格子定数a(Å)値が8.1640未満の場合、Liイオン移動が難しく、8.1900を超える場合は、構造的安定性が欠如して寿命特性が低下し得る。
【0054】
また、スピネル複合固溶体酸化物は、半値全幅(full width at half maximum;FWHM)が下記数式4を満たす。
[数式4]
0.01≦FWHM(deg)≦0.20((hkl)=(111),2θ=18~20)であり、
0.01≦FWHM(deg)≦0.25((hkl)=(222),2θ=43~45)である。
【0055】
スピネル複合固溶体酸化物は、半値全幅が((hkl)=(111),2θ=18~20)で0.01未満であるか、((hkl)=(222),2θ=43~45)で0.01未満の場合、結晶性が過度に良くなり、Liイオン移動が制限されて性能が低下し得る。半値全幅が((hkl)=(111),2θ=18~20)で0.20超過であるか((hkl)=(222),2θ=43~45)で0.25超である場合、構造に対する結晶性が落ちて、寿命およびレート特性が低下し得る。
【0056】
このように、スピネル複合固溶体酸化物は、結晶内に正立方体(P432)と面心立方体(Fd-3m)が最適化された固溶比率で占有され、リチウムニッケル酸化物(LiNi1-zO)が低い含有量で複合化されたものであって、それを含む正極活物質は遷移金属に置換されるドーピング元素の種類および含有量と合成される温度、発生する不純物の量によって安定した寿命特性を有し、かつ優れた出力特性を提供する。
【0057】
本発明の他の一実施形態による正極活物質の製造方法は、このようなスピネル複合固溶体酸化物を含む正極活物質を製造する方法を提供する。
【0058】
具体的には、正極活物質の製造方法は、マンガン塩、ニッケル塩およびリチウム塩を乾式混合して混合塩を製造する工程、混合塩とドーピング元素を含む化合物を溶媒と混合してスラリーを製造して、スラリーを湿式粉砕してスラリー内の固相混合物粒子のD50が100nm~300nmになるまで粉砕して粉末を製造する工程、粉末を摂氏400度~600度で4時間~12時間の間か焼して反応に不必要な有機物を除去するか焼工程、そしてか焼工程で形成された粒子を摂氏700度~950度で6時間~24時間の間焼成する工程を含む。
【0059】
混合塩を製造する工程で、マンガン塩、ニッケル塩およびリチウム塩とドーピング元素を含む化合物はそれぞれ当量比で混合され得る。
【0060】
リチウム塩は、リチウムを含む酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり、マンガン塩は、マンガンを含む酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり、ニッケル塩は、ニッケルを含む酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【0061】
一例として、リチウム塩は、Li(OH)、LiO、LiCO、LiNO、LiSO、LiNO、CHCOOLIおよびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり得、マンガン塩は、Mn(OH)、Mn、Mn、MnO、MnOOH、MnCO、Mn(NO、MnSO、Mn(NOおよびMn(COCHおよびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり得、ニッケル塩は、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO、Ni(NO、NiSO、NiC、Ni(NO、Ni(COCHおよびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり得る。
【0062】
ドーピング元素を含む化合物は、Co、Mg、Ti、Al、Ba、Cr、Fe、Mo、W、Zr、Y、Nbおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つのドーピング元素を含む酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【0063】
一例として、ドーピング元素を含む化合物は、Al、TiO、Co、BaO、ZrOおよびこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物であり得る。
【0064】
粉末を製造する工程で、混合塩とドーピング元素を含む化合物を溶媒に分散させた後、ビーズミルのような媒体粉砕機を用いてエネルギを印加しながら機械的に湿式粉砕する。
【0065】
湿式粉砕は、粒子をナノサイズの大きさに均一に粉砕できるので、乾式粉砕時に発生し得る異物混入を防止できるだけでなく、焼成時の反応が均一に進行されて物質全体的に未反応区間を抑制することができる。
【0066】
湿式粉砕は、ビーズミル(Bead mill)を用いて混合でき、ビーズミルは、垂直型、水平型またはバスケットを用いることができる。
【0067】
湿式粉砕に用いられる溶媒としては、各種有機溶媒と水性溶媒を使用することができ、一例として水を使用することができる。スラリー全体の重量に対して、各種金属塩の総重量は50重量%~60重量%であり得る。
【0068】
湿式粉砕は、スラリー内の固相混合物粒子のD50が100nm~500nmになるまで行われ、具体的にはD50が300nm~400nmになるまで行われる。湿式粉砕時の固相混合物粒子のD50が100nm未満の場合、合成された物質の粒子が過度に小さくなり、寿命特性が低下し得る。上記D50が500nmを超える場合、不均一反応が発生しやすいため、均一な相を得ることが難しく、合成時に結晶性が落ち得る。
【0069】
湿式粉砕により製造された液状の混合物は、加熱乾燥法、熱風乾燥法、噴霧乾燥または凍結乾燥によって粉末化されることができる。
【0070】
製造された粉末の焼成は、電気炉に金属粉末を入れて、大気雰囲気、窒素(N)ガスの雰囲気または酸素(O)ガスの雰囲気で熱処理して行われる。具体的には、先に摂氏400度~600度で4時間~12時間の間行うか焼過程で、反応に不必要な有機物をなくし、摂氏700度~950度で6時間~24時間の間本焼成を行うことができる。
【0071】
この時、焼成は、摂氏700度~950度で行われ、具体的には摂氏800度~950度で行われ、より具体的には摂氏900度~950度で行われる。焼成温度が摂氏700度未満の場合、反応に必要な熱エネルギが不足して結晶成長が充分でないため結晶大きさが小さく、比表面積が過度に大きくなる。焼成温度が摂氏950度を超える場合、1次粒子が過度に成長して過度な酸素欠乏によって不規則な反応が起こり、部分的または全体的な非晶質化現象が発生し得、そのため電気化学的性能低下が発生し得る。
【0072】
焼成後には、摂氏400度~700度でアニーリングする工程をさらに含むことができる。アニーリングを実施する場合、高温焼成時に発生する酸素欠乏を減らすことができ、結晶が安定化されて電気化学的特性が向上することができる。
【0073】
焼成した粉末は、分類および分級過程を経るが、分級過程で用いられるフィルタの大きさは250mesh~350meshであり得る。また、製造された粉末は平均粒径が100nm~500nmである1次粒子が集まってなる2次粒子を含む。
【0074】
2次粒子の平均粒径は1マイクロメーター~30マイクロメーター、具体的には5マイクロメーター~20マイクロメーター、より具体的には5マイクロメーター~15マイクロメーター、さらに具体的には5マイクロメーター~10マイクロメーターに調節することができる。正極活物質の2次粒子平均粒径が1マイクロメーター~30マイクロメーターの場合、電極塗布時の安定性が増加して、微粒子の発生を最小限に抑制できるので、電池の安全性および出力特性が向上する効果がある。
【0075】
このように、本発明の一実施形態による正極活物質の製造方法は、高電圧スピネル複合固溶体酸化物を製造するためのものであり、各種金属塩を当量比で乾式固相混合後に湿式粉砕し、乾燥および焼成過程により結晶構造の固溶比率とリチウムニッケル酸化物の混合比率を比較的容易に制御することができる。
【0076】
本発明のまた他の一実施形態は、このような正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、そして正極と負極の間に位置する電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0077】
リチウム二次電池は、正極活物質として本発明の一実施形態による正極活物質を含むことを除いては従来の一般的なリチウム二次電池の構成をすべて採択できるので、これに係る具体的な説明は省略する。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。しかし、実施例は本発明の一実施例であるだけであり、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0079】
[製造例1:スピネル複合固溶体酸化物の製造]
(実施例1~6)
マンガン塩としてMn、ニッケル塩としてNi(OH)およびリチウム塩としてLiCOを当量比で混合して、この混合物にドーピング元素を当量比で混合して得たそれぞれの乾式混合物を、水溶液でD50が100nm~300nmになるまでビーズミルを用いて湿式粉砕を実施した。熱風で乾燥した後得られた粉末を、電気炉に挿入し、各種温度で焼成を行い、表1のように表示されるスピネル複合固溶体酸化物を製造した。
【0080】
【表1】
【0081】
(比較例1~6)
実施例と比較するための例として、既に知られているスピネル複合固溶体酸化物当量比を選定して、比較例として製作した。
【0082】
マンガン塩としてMn、ニッケル塩としてNi(OH)およびリチウム塩としてLiCOを当量比で混合した。この時、Ni、Mnを除いていずれもドープしなかった。D50が100nm~300nmになるまでビーズミルを用いて湿式粉砕を実施した。熱風で乾燥した後得られた粉末を電気炉に挿入し、多様な温度で焼成を行い、表2のように表示されるスピネル複合固溶体酸化物を製造した。
【0083】
【表2】
【0084】
[実験例1:XRD測定]
実施例および比較例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物のX線回折パターンを、X線回折分析装置(商標名:Rint-2000,会社名:Rigaku.Japan)を用いて測定し、分析結果強度(intensity)の最大値を示すピーク(peak)の2θ値と該当強度(intensity)値を算出した後、これをJADE Software ICDD(Internaional Centre for Diffraction Data)カードに適用してXRD上の格子定数とリートベルト(Rietveld)分析によりリチウムニッケル酸化物の含有濃度、半値全幅、格子定数を測定し、その結果を表3、表4、図1図5に示した。
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
表3は比較例に対して温度別に焼成を行った実験に対するXRD結果値を数値化したものであり、図1図2図4および図5はこれを図式化したものである。
【0088】
表3、図1図2図4および図5を参照すると、焼成温度が高くなるにつれて半値全幅が減って結晶性向上に寄与することを確認できる。また、酸素欠乏問題が増加して不純物であるリチウムニッケル酸化物が増加することを確認することができる。
【0089】
表4はNiとMnの位置にTiをドープした実施例に対して温度別に焼成を行った実験に対するXRD結果値を数値化したものであり、図1図3図4および図5はこれを図式化したものである。
【0090】
表4、図1図3図4および図5を参照すると、実施例の場合、比較例とは異なり、温度が増加するにつれて結晶性向上はもちろん、不純物であるリチウムニッケル酸化物が減少することを確認することができる。
【0091】
[製造例2:リチウム二次電池の製造]
実施例と比較例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物10.68g(前提組成の89重量%)、スーパー-P0.84g(全体組成の7重量%)、バインダとしてHSV900 6重量%8g(全体組成の4重量%)を添加して均一に混合し、溶媒としてNMP15gを添加して均一に混合してアルミニウム箔板(Al Foil)に塗布した後、乾燥させて、正極を製作した。
【0092】
製造された正極と、リチウムメタルを対向電極とし、多孔性ポリエチレン膜をセパレータとして、EC(ethylene carbonate)およびDEC(diethyl carbonate)混合溶媒に1.2モルLiPF溶質を投入した液体電解液を使用して、リチウム二次電池の通常の製造工程により、2016規格のコイン型電池(coin cell)を製造した。
【0093】
[実験例2:電池特性評価]
製造例2で製造されたリチウム二次電池の特性を評価するために、電気化学分析装置(ウリエンジニアリング製作、WBCS3999K 32)を用いて、常温で、電池の容量確認は電圧帯3.0V~4.9Vで0.1Cでの充電と放電を3サイクル(Cycle)にわたって行い、電池の寿命確認は電圧帯3.0V~4.9Vで1Cでの充電と放電を250サイクルにわたって行い、電池の出力特性(レート)確認は電圧帯3.0V~4.9Vで0.1Cから10Cまで放電容量を確認し、その結果を表5、表6、図6図11に示した。
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
表5は比較例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物を用いて製造されたコイン型電池の電気化学的分析結果を数値化したものであり、図6図8はこれを図式化したものである。
【0097】
表5および図6~8を参照すると、焼成温度が高くなるにつれて1C サイクルの効率(1C Retention Cycle)が増加することが分かる。これは表3および図2に基づいて結晶性が増加するにつれて構造安定化により寿命が向上したことがわかる。
【0098】
高出力レート特性も向上することを確認できるが、10Cでは0.1Cに対して70%以上の性能を示すことができないことを確認することができる。
【0099】
また、0.1C放電容量で焼成温度が摂氏900度から容量が急激に減少することを確認することができる。これは焼成温度が高くなるにつれて不純物(リチウムニッケル酸化物)が増加して出力の限界を超えることができなかったからであると推定される。
【0100】
表6は、実施例で製造されたスピネル複合固溶体酸化物を用いて製造されたコイン型電池の電気化学的分析結果を数値化したものであり、図9図11はこれを図式化したものである。
【0101】
表6および図9図11を参照すると、焼成温度が高くなるにつれて比較例と同様に、1C サイクルの効率(1C Retention Cycle)が増加することが分かる。これは表3および図3に基づいて結晶性が増加するにつれて、構造安定化により寿命が向上したことがわかる。
【0102】
高レート出力特性も向上することを確認でき、比較例より10%~15%より優れた高率での出力特性を示すことを確認することができる。実施例では比較例とは異なり、Tiをドープすることによって摂氏900度以上の焼成温度でも表4および図2から分かるように高い結晶性(半値全幅)を維持しており、寿命が劣化せず、かつ格子定数およびセル(Cell)体積が大きくなってリチウム(Li)の拡散速度が増加するので、優れた高率特性と良好な寿命特性を維持できると考えられる。
【0103】
実施例では、焼成温度が摂氏900度以上でも0.1C放電容量もまた、約5%高く具現されることを確認できるが、これは焼成温度が高くなるにつれて比較例とは異なり、不純物(リチウムニッケル酸化物)が減少したからであると考えられる。
【0104】
したがって、リチウムニッケル酸化物、格子定数、半値全幅を本発明の範囲内に制御した正極活物質で、最高の容量および出力特性を示し、良好な寿命特性を示すことを確認することができる。
【0105】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、4.5V以上の放電電圧を有する高電圧スピネル複合固溶体酸化物を含む正極活物質、その製造方法、およびそれを含むリチウム二次電池に関するものである。スピネル複合固溶体酸化物を含む正極活物質は、合成温度を高めて結晶性が向上しながらも不純物の占有率を低くすることによって、安定した寿命と優れた高出力特性を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】