(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】血管作動性腸ペプチドを発現する微生物、及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20230526BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230526BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230526BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230526BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230526BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20230526BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20230526BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20230526BHJP
C12N 15/16 20060101ALN20230526BHJP
A61K 38/22 20060101ALN20230526BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P1/04
A61K48/00
A61K35/744
A61K35/747
C12N15/63 Z
C12N15/16
A61K38/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563907
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 KR2021004479
(87)【国際公開番号】W WO2021215717
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0047660
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521415859
【氏名又は名称】株式会社 リビオム
【氏名又は名称原語表記】LIVEOME Inc.
【住所又は居所原語表記】7F,114,Central town-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ソン, ジユン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ヒョジョン
(72)【発明者】
【氏名】ノ, ヒョンジン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ヨンハ
(72)【発明者】
【氏名】チョン, イレ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA30X
4B065AA87Y
4B065AA90Y
4B065AA91Y
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084CA18
4C084DB37
4C084NA14
4C084ZA681
4C084ZA682
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZC031
4C084ZC032
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087CA09
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA68
4C087ZB11
4C087ZC03
(57)【要約】
VIP遺伝子を発現する組み換え微生物、及びその微生物を含む胃腸管の損傷を引き起こす疾患を予防または治療するための組成物を提供する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロモーター、及び前記プロモーターと作動可能に連結された血管作動性腸ペプチド(VIP)をコーディングする外来遺伝子が導入され、プロテアーゼが不活性化されている組み換え微生物であり、ラクトバシラス(Lactobacillus)属である、組み換え微生物。
【請求項2】
ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)またはラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)である、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
構成的プロモーター(constitutive promoter)、及び前記プロモーターと作動可能に連結された血管作動性腸ペプチド(VIP)をコーディングする外来遺伝子が導入されプロテアーゼが不活性化されている組み換え微生物であり、乳酸菌である、組み換え微生物。
【請求項4】
前記乳酸菌は、ラクトバシラス(Lactobacillus)属、またはラクトコッカス(Lactococcus)属である、請求項3に記載の微生物。
【請求項5】
前記乳酸菌は、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)またはラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)である、請求項4に記載の微生物。
【請求項6】
前記プロモーターと前記外来遺伝子との間に作動可能に連結されている信号配列を さらに含む、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の微生物。
【請求項7】
プロテアーゼをコーディングする遺伝子が欠失されている、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の微生物。
【請求項8】
プロテアーゼをコーディングする遺伝子が、プロモーターと作動可能に連結された血管作動性腸ペプチド(VIP)をコーディングする外来遺伝子で代替された、請求項7に記載の微生物。
【請求項9】
プロテアーゼが、HtrA、PepN、ClpP及びLon から構成された群から選択される1以上である、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の微生物。
【請求項10】
栄養要求株(auxotroph)である、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の微生物。
【請求項11】
ribB、thyA及びglmSなる 構成された群から選択される1以上の遺伝子が欠失された、請求項10に記載の微生物。
【請求項12】
プロモーター、及び前記プロモーターと作動可能に連結された血管作動性腸ペプチド(VIP)をコーディングする外来遺伝子が導入され、プロテアーゼが不活性化されている組み換え微生物であり、乳酸菌である組み換え微生物を含む、ヒトにおいて胃腸管の損傷を引き起こす疾患を予防または治療するための、組成物。
【請求項13】
前記疾患は、胃腸管炎症を引き起こすものである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記疾患は、炎症性腸疾患(IBD)及び大腸炎(colitis)からなる群から選択された1以上であるものである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)またはクローン病(Crohn’s disease)であるものである、請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管作動性腸ペプチド(VIP:vasoactiveintestinal peptide)を発現する微生物、及びそれを含む胃腸管(gastrointestinal tract)の損傷を引き起こす疾患を予防または治療するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
VIPは、腸において血管作動性であるペプチドホルモンである。該VIPは、グルカゴン/セクレチンスーパーファミリ、クラスII Gタンパク質結合受容体のリガンドに属する28アミノ酸残基を有するペプチドである。
【0003】
韓国公開特許第2014-0000620号は、腸神経系(enteric nervous system)においてVIPレベルを上昇させるラクトバシラス、及びその過敏性大腸症侯群(IBD)治療用途を開示している。それは、自然においてスクリーニングされた菌株であり、組み換え微生物ではない。
【0004】
中国公開特許第108753670号は、VIPを発現し、セレンナノ粒子(SeNP)が細胞内に豊富である組み換え微生物Lactococcus lactis NZ9000を開示する。該組み換え微生物は、セレンがナノ粒子の形態で細胞内に存在するので、セレン添加剤として使用される場合、セレンの強い毒性、低い生体利用率、高い環境汚染誘発性、及び高い生産コストの問題を解決すると共に、抗菌ペプチドであるVIPを分泌するので、抗生物質残留問題を解決することができると記載されている。また、VIP分泌発現のために、NICE(登録商標) Lactococcus lactis発現システムのpNZ8148プラスミドを利用した。
【0005】
外来VIPを発現するラクトバシラス(Lactobacillus)属組み換え微生物、構成的プロモーター(constitutive promoter)の下で、外来VIPを発現する組み換え乳酸菌、及びそのような微生物を、ヒトにおいて、IBDのような胃腸管の損傷を引き起こす疾患を予防または治療するために使用することは、知られていないのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、外来VIPを発現する組み換えラクトバシラス(Lactobacillus)属微生物を提供することである。
【0007】
他の目的は、構成的プロモーター下において、外来VIPを発現する組み換え乳酸菌を提供することである。
【0008】
さらに他の目的は、前記微生物を含む、ヒトにおいて、胃腸管の損傷を引き起こす疾患を予防または治療するための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、プロモーター、及び前記プロモーターと作動可能に連結された血管作動性腸ペプチド(VIP)をコーディングする外来遺伝子が導入され(introduced)、プロテアーゼ(protease)が不活性化されている(inactivated)組み換え微生物であり、ラクトバシラス(Lactobacillus)属である組み換え微生物を提供する。
【0010】
本開示の他の態様は、構成的プロモーター(constitutive promoter)、及び前記プロモーターと作動可能に連結された血管作動性腸ペプチド(VIP)をコーディングする外来遺伝子が導入され、プロテアーゼが不活性化されている組み換え微生物であり、乳酸菌でもある組み換え微生物を提供する。
【0011】
本開示のさらに他の態様は、プロモーター、及び前記プロモーターと作動可能に連結された血管作動性腸ペプチド(VIP)をコーディングする外来遺伝子が導入され、プロテアーゼが不活性化されている組み換え微生物であり、乳酸菌でもある組み換え微生物を含む、ヒトにおいて胃腸管(gastrointestinal tract)の損傷を引き起こす疾患を予防または治療するための組成物を提供する。
【0012】
以下、詳細に説明する。
【0013】
本明細書において、用語「VIP」、「VIPタンパク質」または「VIPポリペプチド」は、本願に記述されているような生物学的活性のうち1以上を有する生物学的活性ポリペプチドを称する。
【0014】
ヒトにおいて、ヒトゲノム上の染色体6のq25領域は、長さが170アミノ酸であるセクレチンファミリーメンバーをコーディングする。長さ170アミノ酸の該メンバーは、翻訳後に切断され、血管作動性腸ペプチド(VIP)を形成する。VIPポリペプチドの活性形態は、血圧を低くすること、血管壁の拡張(vasodilation)を増大させること、呼吸器系統及び胃腸管組織において、平滑筋を弛緩させる(relax)こと、Th1反応の低減だけではなく、Th2の促進を介し、免疫反応を低減させること、先天的及び獲得の免疫反応を調節すること、または内臓において、電解質の分泌を促進することのような機能を行う。また、該VIPは、神経伝達物質であり、中枢神経系、及びリンパ球との疎通において、活性的であるということが明らかにされた。該VIPの生物活性は、知られた3種受容体を介して伝達される:VIP1R、VIP2R及びPAC1R。それら受容体は、細胞内カルシウムの生産だけではなく、cAMP濃縮を引き起こすと知られている。該VIPのように、セクレチンに係わるそれらの親和度は、サブタイプと、リガンドのアミノ酸配列によって異なる。ヒト天然VIPは、血流において、約2分の半減期を有しており、短い半減期を有している。
【0015】
本明細書に言及されたVIPは、天然VIPの機能を模する変異体を含む。前記変異体は、天然VIPより増大された半減期を有し、天然VIPに比べ、同等以上の生物活性を有するものを含む。
【0016】
本明細書において、VIPは、ヒトVIP、組み換えヒトVIP、鼠VIP及び/または組み換えマウスVIPを含むが、それらに限定されるものではない。前記VIPは、配列番号1のアミノ酸配列と、50%以上、60%以上、70%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上または100%の配列同一性を有するものでもある。前記VIPは、配列番号1,2,3,4,5,6,7,8及び9のアミノ酸配列をそれぞれ有するものでもある。配列番号1のVIPは、ヒト由来天然VIPである。配列番号2,3,4,5,6,7,8及び9のアミノ酸配列を有するVIPは、ヒト由来天然VIP変異体VIP1,VIP2,VIP3,VIP4,VIP5,VIP6,VIP7及びVIP8である。
【0017】
本願で使用された前記VIPポリペプチドは、ヒト組織、または他の供給源のような多様な供給源から単離されるか、あるいは組み換え方法または合成方法によっても製造される。
【0018】
用語「VIPポリペプチド」は、またVIPポリペプチドの変異体を含む。本願において、VIPは、他の異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合されたVIPを含むキメラ分子を形成する方式によっても変形される。
【0019】
本明細書において、「プロテアーゼ」は、タンパク質を分解する酵素を総称するものであり、当業界に知られているいかなる種類も、特別な制限なしに含むものでもある。
【0020】
本明細書において、「栄養要求株(auxotroph)」は、無機塩類及び炭素源だけによってなる合成培地においては、増殖することができず、1種またはそれ以上の栄養素を補充してこそ生育する菌株を称するものであり、当業界に知られているいかなる種類も、特別な制限なしに含むものでもある。
【0021】
本開示の一態様による微生物は、プロモーター、及び前記プロモーターと作動可能に連結された血管作動性腸ペプチド(VIP)をコーディングする外来遺伝子が導入され、プロテアーゼが不活性化されている組み換え微生物であり、ラクトバシラス属である。
【0022】
本開示の他の態様による微生物は、構成的プロモーター、及び前記プロモーターと作動可能に連結された血管作動性腸ペプチド(VIP)をコーディングする外来遺伝子が導入され、プロテアーゼが不活性化されている組み換え微生物であり、乳酸菌でもある組み換え微生物である。
【0023】
前記乳酸菌は、ラクトバシラス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ビフィドバクテリア(Bifidobacteria)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ワイセラ(Weissella)属、ペディオコッカス(Pediococcus)またはエンテロコッカス(Enterococcus)属、特に、ラクトバシラス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属に属するものもあり、例えば、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバシラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)またはラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)でもある。
【0024】
前記ラクトバシラス属微生物は、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus brevisまたはLactobacillus plantarumでもある。例えば、Lactobacillus plantarum LMT1-9(KCTC 13421BP)、Lactobacillus paracasei LMT1-21(KCTC 13422BP)またはLactobacillus brevis LMT1-46(KCTC 13423BP)でもある。
【0025】
前記プロモーターは、構成的プロモーターでもある。前記プロモーターは、乳酸菌において、転写開始効率が、従来のプロモーター、例えば、P11プロモーターと同じであるか、あるいはそれより高いものでもある。前記プロモーターは、また誘導性プロモーター(inducible promoter)でもある。前記誘導性プロモーターは、例えば、ニシン誘導性プロモーター(nisin inducible promoter)でもある。前記プロモーターは、配列番号10のポリヌクレオチドを含むLactobacillus paracasei由来のPR4でもある。該PR4は、配列番号11のヌクレオチド配列によっても構成される。
【0026】
本開示による微生物は、VIPをコーディングする外来遺伝子が導入されいることを特徴とする。前記導入は、形質転換、形質導入、形質感染または電気穿孔によるものでもある。導入された前記外来遺伝子は、宿主細胞のゲノムに統合されるか(integrated)、あるいは統合されずに存在するものでもある。例えば、前記外来遺伝子は、宿主細胞のゲノムに統合されたものでもある。
【0027】
また、本開示による微生物は、プロテアーゼが不活性化されていることを特徴とする。一具現例において、該プロテアーゼをコーディングする遺伝子が欠失されている(deleted)ものでもある。「欠失」は、遺伝子の少なくとも一部、例えば、全体または一部が欠失されたものを含む。
【0028】
一具現例によれば、該プロテアーゼをコーディングする遺伝子が、プロモーターと作動可能に連結された血管作動性腸ペプチド(VIP)をコーディングする外来遺伝子で代替される(replaced)ことにより、外来VIP遺伝子導入及びプロテアーゼ遺伝子欠失を同時に具現することができる。「代替」は、遺伝子の少なくとも一部、例えば、全体または一部が代替されたものを含む。
【0029】
本明細書において、「プロテアーゼ」は、当業界に知られているいかなる種類も、特別な制限なしに含むものでもある。例えば、HtrA(high temperature requirement A)、PepN(Aminopeptidase N)、ClpP(Caseinolytic protease P)及びLon(Lon protease)から構成された 群から選択される1以上、例えば、HtrA及び/またはPepN、例えば、HtrAでもある。htrA遺伝子は、L.brevis htrA遺伝子、特に、配列番号14のものでもある。pepN遺伝子は、L.brevis pepN遺伝子、特に、配列番号15のものでもある。clpP遺伝子は、L.brevis clpP遺伝子、特に、配列番号16のものでもある。lon遺伝子は、L.brevis lon遺伝子、特に、配列番号17のものでもある。そのような微生物においては、プロテアーゼが発現されず、外来VIPタンパク質が分解されることを防止することにより、VIPタンパク質の収率または生産性を上昇させることができる。一具現例によれば、HtrAが発現されていない場合、VIPタンパク質の生産性を大きく上昇させることができる。
【0030】
前記組み換え微生物は、前記プロモーターと前記外来遺伝子との間に、作動可能に連結されている信号配列を追加して含むものでもある。前記信号配列は、外来タンパク質遺伝子とインフレームで連結される場合、細胞外に分泌させる能力が、従来の信号配列、例えば、USP45信号配列よりも高いものでもある。前記信号配列は、Lactobacillus paracasei由来のSP4(配列番号12)をコーディングするものでもある。例えば、SP4は、配列番号13のヌクレオチド配列を有しうる。前記微生物は、VIPを細胞外に分泌させるものでもある。
【0031】
一具現例において、前記組み換え微生物は、栄養要求株(auxotroph)でもある。該栄養株は、例えば、ribB(Riboflavin biosynthesis protein gene)、thyA(Thymidylate synthase gene)及びglmS(Glutamine-fructose-6-phosphate aminotransferase gene)からなる群から選択される1以上の遺伝子、例えば、ribB及び/またはthyA、例えば、ribBが欠失されたものでもあるが、特別な制限があるものではない。ribBは、L.brevis ribB、特に、配列番号18のものでもある。thyAは、L.brevis thyA、特に、配列番号19のものでもある。glmSは、L.brevis glmS、特に、配列番号20のものでもある。その場合、組み換え微生物の成長及び生存を制御することにより、環境安全性を増進させることができる。「欠失」は、遺伝子の少なくとも一部、例えば、全体または一部が欠失されたものを含む。
【0032】
本開示のさらに他の態様は、前述の微生物を含む胃腸管の損傷を引き起こす疾患を予防または治療するのに使用するための組成物を提供する。
【0033】
前記疾患は、胃腸管炎症を引き起こすものでもある。前記疾患は、炎症性腸疾患(IBD)及び大腸炎(colitis)からなる群から選択された1以上のものでもある。前記炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)またはクローン病(Crohn’s disease)でもある。
【0034】
前記組成物は、薬剤学的または食品的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含むものでもある。前述の薬剤学的または食品的に許容可能な担体は、リン酸緩衝塩水溶液(phosphate buffered saline solution)、デキストロースの5%水溶液、及びエマルジョン(例えば、オイル/水または水/オイルのエマルジョン)のような任意の標準的な薬剤学的または食品的な担体を意味する。賦形剤の非制限的な例は、補助剤、結合剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、湿潤剤、潤滑剤、滑沢剤、甘味剤、香料及び着色剤を含む。望ましい薬学的または食品的な担体は、活性剤の意図された投与方式に依存する。典型的な投与方式は、腸内(例えば、経口)投与を含む。前記組成物は、単一投与剤形(unit dosage form)でもある。前記組成物は、経口投与剤形を有しうる。前記組成物は、食品または医薬の組成物でもある。前記組成物は、前記微生物の乾燥物を含むものでもある。前記組成物は、前記微生物の培地を含むものでもある。
【0035】
本明細書において、「薬学的または食品的に許容可能な(pharmaceutically acceptable or acceptablefor food)」は、個体に投与されたとき、副作用(adverse reactions)を実質的に起こさないものを示す。前記副作用は、毒性、アレルギーまたは免疫反応でもある。
【0036】
他の態様は、前述の組み換え微生物、及び他の胃腸管の損傷疾患を治療する薬物を含む、胃腸管の損傷を引き起こす疾患を予防または治療するのに使用するためのキットを提供する。前記組み換え微生物については、前述の通りである。前記組み換え微生物は、前述の組成物の形態でもある。前記キットは、組み換え微生物、及び他の胃腸管の損傷疾患を治療する薬物を、胃腸管の損傷を引き起こす疾患を予防または治療するのに使用するように指示する指針書を含むものでもある。
【0037】
前述の他の胃腸管の損傷疾患を治療する薬物は、胃腸管の損傷疾患、例えば、炎症性腸疾患を治療する薬物であるならば、いずれも含まれる。胃腸管の損傷疾患を治療する薬物は、下記薬物を含むものでもある:
(i)ステロイド性抗炎症剤
dexamethasone, hexestrol, methimazole, betamethasone, triamcinolone, triamcinolone acetonide, fluocinonide, fluocinolone acetonide, predonisolone, methylpredonisolone, cortisone acetate, hydrocortisone, fluorometholone, beclomethasone dipropionate, estriol, paramethasone acetate, fludrocortisone acetate, clobetasol propionate, diflorasone acetate, dexamethasone propionate, difluprednate, betamethasone dipropionate, budesonide, diflucortolone valerate, amcinonide, halcinonide, mometasone furoate, hydrocortisone butyrate propionate, flumetasone pivalate, clobetasone butyrate, dexametasone acetateなど
(ii)5-アミノサリチル酸
sulfasalazine, mesalazine, olsalazine, balsalazideなど
(iii)免疫調節剤(immunomodulator)または免疫抑制剤(immunosuppressant)
methotrexate, cyclophosphamide, MX-68, atiprimod dihydrochloride, BMS-188667, CKD-461, rimexolone, cyclosporine, tacrolimus, gusperimus, azathiopurine, antilymphocyte serum, freeze-dried sulfonated normal immunoglobulin, erythropoietin, colony stimulating factor, interleukin, interferonなど
(iv)JAK阻害剤
tofacitinib, ruxolitinibなど
(v)TNF阻害剤
組み換えTNF-アルファ-受容体IgG-Fc融合タンパク質(etanercept)、infliximab, adalimumab, certolizumab pegol, golimumab, PASSTNF-α, soluble TNF-α receptor, TNF-α binding protein, anti-TNF-α antibody, CDP571など
(vi)インテグリン阻害剤
natalizumab, vedolizumab, AJM300, TRK-170, E-6007など
(vii)インターロイキン-12/23阻害剤
ustekinumab, briakinumab (anti-interleukin-12/23 antibody)など
(viii)非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)
(a)古典的NSAID
alcofenac, aceclofenac, sulindac, tolmetin, etodolac, fenoprofen, thiaprofenic acid, meclofenamic acid, meloxicam, tenoxicam, lornoxicam, nabumeton, acetaminophen, phenacetin, ethenzamide, sulpyrine, antipyrine, migrenin, aspirin, mefenamic acid, flufenamic acid, diclofenac sodium, ketophenylbutazone, loxoprofen sodium, phenylbutazone, indomethacin, ibuprofen, ketoprofen, naproxen, oxaprozin, flurbiprofen, fenbufen, pranoprofen, floctafenine, piroxicam, tenoxicam, epirizole, tiaramide hydrochloride, zaltoprofen, gabexate mesylate, camostat mesylate, ulinastatin, colchicine, probenecid, sulfinpyrazone, bucolome, benzbromarone, allopurinol, sodium aurothiomalate, hyaluronate sodium, sodium salicylate, salicylic acid, atropine, scopolamine, levorphanol, oxymorphone、またはその塩など
(b)シクロオキシゲナーゼ阻害剤(COX-1選択的阻害剤、COX-2選択的阻害剤など)
サリチル酸誘導体(例:celecoxib, aspirin), etoricoxib, valdecoxib, diclofenac sodium, indomethacin, loxoprofenなど
(c)ニトリックオサイド放出NSAID(nitric oxide-releasing NSAID)。
前記微生物に係わる記載事項は、前記組成物についても、適用可能である。
【0038】
他の態様は、胃腸管の損傷を引き起こす疾患を予防学的または治療学的に有効な量の前記微生物を個体に投与する段階を含む、胃腸管の損傷を引き起こす疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0039】
前記方法は、胃腸管の損傷を引き起こす疾患を予防または治療するのに有効な量のTNF-アルファ遮断剤を個体に投与する段階をさらに含むものでもある。前記TNF-アルファ遮断剤を個体に投与する段階は、前記微生物を個体に投与する段階と同時または前後に遂行するものでもある。前記TNF-アルファ遮断剤は、前記微生物が投与される経路と、同一であるか、あるいは異なる経路によっても投与される。例えば、前記TNF-アルファ遮断剤は、経口または非経口によっても投与される。前記非経口は、血管注射、腹腔注射または皮下注射のような注射でもある。例えば、前記TNF-アルファ遮断剤は、腹腔内に投与され、前記微生物は、経口にも投与される。前記TNF-アルファ遮断剤は、前記微生物が経口に投与された後、腹腔内に投与されるものでもある。前記TNF-アルファ遮断剤は、1回投与当たり5mgないし100mg、5mgないし50mg、5mgないし40mg、10mgないし50mg、または20mgないし50mgの量で投与されるものでもある。
【0040】
前記方法において、前記疾患は、胃腸管炎症を引き起こすものでもある。前記疾患は、炎症性内臓疾患(inflammatory intestinal disease)、自己免疫疾患(autoimmune disease)、放射線(radiation)による胃腸管の損傷または移植片対宿主疾患(GVHD:graft versus host disease)、炎症性腸疾患(IBD:inflammatory bowel disease)、及び慢性大腸炎を含む大腸炎(colitis)からなる群から選択された1以上のものでもある。前記炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)またはクローン病(Crohn’s disease)でもある。
【0041】
本明細書において、前記「投与(administeringまたはadministration)」は、前記微生物を、生理的システム(個体またはインビボ、インビトロ、あるいはエクスビボ細胞,組織及び器官)に、前記微生物、それを含む組成物、または治療的処置(therapeutic treatment)を与える行為を示す。従って、前記方法において、前記微生物は、前述の組成物の形態でもある。人体に投与する受容可能な経路(route)は、口または粘膜(例:腸内粘膜、経口粘膜またはバッカル(buccal))でもある。前記投与は、さらなる治療的作用剤(therapeutic agent)と組み合わされても投与される。前記組み合わせ投与は、同時及び連続のうちいずれのか順序も含まれる。
【0042】
本明細書において、用語「治療(treatment)」は、予防的治療(prophylactic treatment)または治療的治療(therapeutic treatment)を示す。特定実施例において、「治療」は、治療目的または予防目的のために、微生物または組成物を個体に投与することを示す。
【0043】
「治療的(therapeutic)」治療は、徴候(signs)または症状(symptoms)を低減させるか、あるいは除去するための病理学的な徴候または症状を示す個体に投与する治療である。当該の徴候または症状は、生化学的、細胞性、組織学的、機能的、あるいは物理的、主観的または客観的なものでもある。
【0044】
「予防的(prophylactic)」治療は、病理(pathology)発生危険を低減させるために、疾病の徴候を示さないか、あるいは疾病の初期徴候のみを示す個体に投与する治療である。本明細書に記載された微生物または組成物は、病理発生の可能性(likelihood)を低下させるか、あるいは発生したとするならば、前記病理の深刻性を最小化させるために、予防的治療としても提供される。
【0045】
本明細書において、「治療的有効な量(therapeutically effective amount)」は、言及された目的を遂行するに十分な量を示す。有効な量は、実験的にも決定される。有効な量は、例えば、前記微生物がVIPを細胞外に分泌する程度によっても決定される。例えば、60kg体重を有するヒトにつき、1日に0.01ないし300mg、または0.5ないし100mgのVIPを分泌することができる前記微生物の数でもある。例えば、個体につき、個体当たり1回投与当たり、1x105ないし1x1013cfu、1x106ないし1x1013cfu、1x107ないし1x1013cfu、1x107ないし1x1012cfu、1x107ないし1x1011cfu、1x107ないし1x1010cfu、1x108ないし1x1011cfu、1x108ないし1x1010cfu、2.5x108ないし7.5x109cfu、5.0x108ないし5.0x109cfu、7.5x108ないし2.5x109cfu、または約1x109cfuでもって投与されるものでもある。
【0046】
前記方法において、前記個体は、哺乳動物でもある。前記哺乳動物は、ヒト、馬、豚、牛、犬、猫、猿、チンパンジー、羊または山羊でもある。
【0047】
前記微生物及び/または組成物に係わる記載事項は、前記方法についても、適用可能である。
【発明の効果】
【0048】
本開示による組み換え微生物は、VIPをさらに高い生産性で、生産し、かつ分泌させるだけではなく、高い環境安全性を示し、胃腸管の損傷を引き起こす疾患をさらに効果的に予防または治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1A】一具現例による組み換え微生物の遺伝子操作部位を示す模式図である。
【
図1B】一具現例による組み換え微生物の遺伝子操作部位を示す模式図である。
【
図2A】一具現例による、VIP生産性が向上された組み換え微生物の生成を確認した図である。
【
図2B】一具現例による、VIP生産性が向上された組み換え微生物の生成を確認した図である。
【
図3A】一具現例による組み換え微生物のVIP生産性が向上されたところを示す図面である。
【
図3B】一具現例による組み換え微生物のVIP生産性が向上されたところを示す図面である。
【
図4A】一具現例による環境安全性が増進された組み換え微生物の生成を確認した図である。
【
図4B】一具現例による環境安全性が増進された組み換え微生物の生成を確認した図である。
【
図5A】一具現例による組み換え微生物の環境安全性が増進されたところを示す図面である。
【
図5B】一具現例による組み換え微生物の環境安全性が増進されたところを示す図面である。
【
図6】一具現例による組み換え微生物が、動物モデルにおいて、IBD治療効果を示すところを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例により、いかようにも制限されるものではない。
【0051】
実施例1:組み換え微生物の作製
Lactobacillus brevis LMT1-46(KCTC 13423BP)を利用し、乳酸菌で一般的に使用される相同組み換え遺伝子操作方法(Zhang et al., D-Ala-D-Ala ligase as a broad host-range counterselection marker in vancomycin resistant lactic acid bacteria, J. Bacteriol., 2018)により、外来VIPを発現する組み換え微生物を作製した。
【0052】
図1A及び
図1Bに、本実施例による微生物の遺伝子操作部位が模式的に示されている。
図1Aは、VIP生産性向上のために、プロテアーゼ遺伝子(htrAまたはpepN)をVIP遺伝子で代替する過程を示す。VIP先後に、分泌の一助とする信号ペプチドと、検出のためのタグとを、1つのカセットとして含めた。プロテアーゼ遺伝子は、L.brevis htrA(配列番号14)または、L.brevis pepN(配列番号15)である。
図1Bは、環境安全性増進のために、栄養要求株を形成する過程を示すものであり、目標遺伝子の一部地域を除去する方式である。目標遺伝子は、L.brevis ribBである(配列番号18)。
図1A及び
図1Bにおいて、それぞれの略語は、次の意味を有する:P:プロモーター(promoter)、SP:信号ペプチド(signal peptide)、UTR:非翻訳部位(untranslated region)、VIP:血管作動性ペプチド(vasoactive intestinal peptide)、A:L.brevis ribB、B:L.brevis htrAまたはL.brevis pepN。
【0053】
実施例2:組み換え微生物の生成確認
組み換え微生物が意図されているように生成されたか否かということを確認するために、PCRを進めた。MRSプレートにおいて37℃、16時間静置培養された乳酸菌コロニーを使用した。蒸溜水100μlが込められたチューブに、シングルコロニーをピーキングして懸濁させた。それをビードビーティング(bead-beating)した後、98℃で10分間加熱し、DNAテンプレートとして使用した。DNAテンプレート1μl、正方向プライマー1μl、逆方向プライマー1μl、DNA重合酵素ミックス25μlを混ぜ、PCR用混合液を作った。PCR条件は1、サイクル当たり(a)変性段階、98℃で10秒、(b)アニーリング段階、55℃で15秒、及び(c)延長段階、72℃で10秒で構成された40サイクルの増幅段階、並びに72℃で2分で構成された最終延長段階で実施した。使用プライマーは、操作する遺伝子部位のORF外領域にデザインされ、配列は、下記表1に記述されている。
【表1】
【0054】
その結果を、
図2A及び
図2Bにそれぞれ示した。さらに具体的には、
図2A及び
図2Bは、プロテアーゼ遺伝子htrA(
図2A)及びpepN(
図2B)が、それぞれVIP発現カセットで代替されるところを示す模式図(左側)と、そこから組み換え微生物が生成され、バンドの大きさが、意図された通り変化したところを示すゲルイメージ(右側)とである。
図2A及び
図2Bに示されているように、プロテアーゼ遺伝子htrA及びプロテアーゼ遺伝子pepNが、それぞれVIP発現カセットで代替された組み換え微生物が生成されたことを確認した。htrAの場合、野生型は、PCR生成物のバンドサイズが1.5kbと示され、htrA地域がVIP発現カセットで代替されれば、バンドサイズが920bpと示された。pepNの場合、野生型は、PCR生成物のバンドサイズが2kbと示され、pepN地域がVIP発現カセットで代替されれば、バンドサイズが1.3kbと示された。
図2A及び
図2Bの模式図において、それぞれの略語は、実施例1に定義されている通りであり、ゲルイメージのWTは、野生型(wild type)を意味する。
【0055】
実施例3:組み換え微生物のVIP生産性評価
組み換え微生物のVIP生産性が向上されたか否かということを確認するために、実施例1で作製された菌株のVIP発現量確認のための評価を進めた。作製された菌株のスタックをMRSプレートにストリーキングし、37℃で3日間静置培養した。そこから、シングルコロニーを選び、MRS液体培地において、37℃、24時間振盪培養した。それを、25ml MRSに、OD600が0.1になるように接種した後、37℃で16時間振盪培養した。菌株培養液10mlを抽出し、4,000rpm、10分間遠心分離し、上澄み液のみを抽出し、TCA(tricholoacetic acid)を1ml添加し、4℃で30分以上処理した。それを、10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を除去した後、4℃に保管されたアセトン1mlを利用し、ペレットを懸濁させた。13,000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を除去した後、アセトン0.5mlを添加し、ペレットを懸濁させた。それを、再び13,000rpmで10分間遠心分離し、60℃で5分間乾燥させる過程を経た。サンプルバッファ(還元バッファ)を添加し、ペレットを十分に混ぜ、98℃で10分間処理した。それを利用し、ウェスタンブロッティングを進めた。該ウェスタンブロッティングの結果を基に、ImageJというプログラムを利用し、同一サイズの領域によって測定されるバンドの強度を定量化した。
【0056】
その結果を、
図3A及び
図3Bにそれぞれ示した。さらに具体的には、
図3Aは、htrA及び/またはribBが欠失された組み換え菌株を生成し、そこから発現されたVIPを示すゲルイメージ(左側)と、VIPの発現量を定量化して示すグラフ(右側)とである。
図3Bは、pepNが欠失された組み換え菌株から発現されたVIPの発現量を示すグラフである。
図3A及び
図3Bから確認することができるように、L.brevisのプロテアーゼ遺伝子を欠失させた場合、効能物質であるVIPの発現量が増大した。特に、htrAを欠失させた場合、他の遺伝子を欠失させたところに比べ、ターゲット物質であるVIPの発現量が3倍以上増大した。
【0057】
実施例4:栄養要求株の生成確認
栄養要求株が、意図されているように生成されたか否かということを確認するために、PCRを進めた。MRSプレートにおいて37℃、16時間静置培養された乳酸菌コロニーを使用した。蒸溜水100μlが込められたチューブに、シングルコロニーをピッキングして懸濁させた。それをビードビティングした後、98℃で10分間加熱し、DNAテンプレートとして使用した。DNAテンプレート1μl、正方向プライマー1μl、逆方向プライマー1μl、DNA重合酵素ミックス25μlを混ぜ、PCR用混合液を作った。PCR条件は、1サイクル当たり(a)変性段階、98℃で10秒、(b)アニーリング段階、55℃で15秒、及び(c)延長段階、72℃で10秒で構成された40サイクルの増幅段階、並びに72℃で2分で構成された最終延長段階で実施した。使用プライマーは、操作する遺伝子部位のORF内側及びORF外側領域にデザインされ、配列は、下記下表2に記述されている。
【表2】
【0058】
その結果を、
図4A及び
図4Bにそれぞれ示した。さらに具体的には、
図4A及び
図4Bは、それぞれrib及びthyAが欠失された組み換え微生物の作製模式図(左側)、及びそこから組み換え微生物が生成され、バンドサイズが意図された通り変化したところを示すゲルイメージ(右側)である。
図4A及び
図4Bにおいて、それぞれの略語は、実施例1に定義されている通りであり、ゲルイメージのWTは、野生型(wild type)を意味する。
図4A及び
図4Bに示されているように、それぞれribB及びthyAが欠失された組み換え微生物が生成されたところを確認した。ribBの場合、野生型は、PCR生成物のバンドサイズが1.0kbと示され、ribB地域が欠失されれば、バンドサイズが500bpと示された。ribB地域内部に結合するプライマーを利用し、PCRを遂行した場合、野生型が250bpと示され、ribBが欠失された菌株においては、バンドが観察されていない。thyAの場合、野生型は、PCR生成物のバンドサイズが700bpと示され、thyA地域一部が欠失されれば、バンドサイズが500bpと示された。
【0059】
実施例5:栄養要求株の環境安全性評価
実施例1で作製された菌株の生長パターンを知るために、生長試験を進めた。作製された菌株のスタックをMRSプレートにストリーキングし、37℃で3日間静置培養した。そこから、シングルコロニーを選び、MRS液体培地において、37℃、24時間振盪培養した(230rpm)。培養液1mlを抽出し、13,000rpmで1分間遠心分離した。1x PBS溶液1mlで細胞ペレットを懸濁させた後、OD600を測定し、生長が阻害されうる環境であるSDM(semi-defined media)という乳酸菌用最小培地25mlに、OD600が0.0025になるように接種した。37℃における振盪培養(230rpm)条件で40時間培養し、接種後、15,17,20,22,24,40時間の時点において、OD600を測定した値をグラフに示した。
【0060】
その結果を、
図5A及び
図5Bにそれぞれ示した。さらに具体的には、
図5A及び
図5Bは、ribBが欠失された組み換え乳酸菌(
図5A)、及びthyAが欠失された組み換え乳酸菌(
図5B)の生長パターンを示すグラフである。
図5A及び
図5Bで、WTは、野生型(wild type)を意味する。
図5A及び
図5Bにおいて、栄養要求性乳酸菌が栄養素不足培地条件で生長阻害を起こしているところを確認した。
【0061】
実施例6:Invivo効能:IBD動物モデル実験
形質転換菌株由来VIPタンパク質治療効能を評価するために、形質転換菌株をDSS(dextransulfate sodium)で誘導されたマウス腸炎症モデルに経口投与した後、生存率またはDAI(disease activity index)点数を確認した。5mlのMRS培地において一日一次培養した後、培養した菌株を、50mlのMRS培地に、OD600が0.1になるように接種した。16~18時間後、培養液のOD600が4~5になれば、総投与マウス個体数と給与回数とに合わせて菌株を回収した。4,000rpmで10分間遠心分離し、培養上澄み液を除去して回収された菌株は、匹当たり1回1x109cfuで投与するように、1x PBSに浮遊させた。菌株投与は、1日1回、総16日間施された。
【0062】
最初菌株投与日をDay9日に設定し、治療効能実験が始まり、Day0からDay5において、2% DSSが、PBS群を除いた全ての群に飲水でもって処理され、Day8に安楽死させた。DSS処理後、2日間隔で体重減少、毛立ち、動物の動き程度、下痢いかんをチェックし、DAI点数を算定した。
【0063】
その結果を、
図6に示した。
図6に示されているように、生産性向上及び環境安全性増進を行った菌株が、IBD動物モデル実験において、対照群に比べ、すぐれた効能を示すということを確認した。
[受託番号]
寄託機関:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC 13421BP
受託日:20171212
寄託機関:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC 13422BP
受託日:20171212
寄託機関:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC 13423BP
受託日:20171212
【0064】
特許出願のための微生物寄託の
国際的承認に係わるブダペスト条約
国際的様式
To.メディトックス株式会社
メディトックス株式会社
大韓民国京畿道水原市霊通区セントラルタウン路114
16506
下記国際寄託機関により、規則7.1に依拠して発行された寄託証原本
様式BP/4(KCTC form17)
【0065】
特許出願のための微生物寄託の
国際的承認に係わるブダペスト条約
国際的様式
To.メディトックス株式会社
メディトックス株式会社
大韓民国京畿道水原市霊通区セントラルタウン路114
16506
下記国際寄託機関により、規則7.1に依拠して発行された寄託証原本
様式BP/4(KCTCform17)
【0066】
特許出願のための微生物寄託の
国際的承認に係わるブダペスト条約
国際的様式
To.メディトックス株式会社
メディトックス株式会社
大韓民国京畿道水原市霊通区セントラルタウン路114
16506
下記国際寄託機関により、規則7.1に依拠して発行された寄託証原本
様式BP/4(KCTC form17)
【配列表】
【国際調査報告】