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  • 特表-スズを含む口腔ケア組成物 図1
  • 特表-スズを含む口腔ケア組成物 図2A
  • 特表-スズを含む口腔ケア組成物 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】スズを含む口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20230526BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20230526BHJP
   A61K 33/16 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230526BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230526BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q11/00
A61K33/24
A61K33/16
A61K9/06
A61K47/04
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/22
A61P1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564834
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 US2021030758
(87)【国際公開番号】W WO2021226159
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/020,036
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/020,037
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】アリフ、アリ、ベーグ
(72)【発明者】
【氏名】アーロン、リード、ビースブロック
(72)【発明者】
【氏名】エヒノメン、クリスティーン、エネカボル
(72)【発明者】
【氏名】ジュディー、リン、ホイング
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー、ティー.ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル、ジェームズ、セント、ジョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076BB22
4C076BB23
4C076CC16
4C076DD21
4C076DD22
4C076DD29
4C076DD41
4C076DD42
4C076DD43
4C076DD51
4C076DD55
4C076DD56
4C076DD60
4C083AB011
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB242
4C083AB331
4C083AB471
4C083AB472
4C083AC121
4C083AC131
4C083AC241
4C083AC251
4C083AC291
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC311
4C083AC581
4C083AC712
4C083AC862
4C083AD222
4C083AD352
4C083BB55
4C083CC41
4C083DD22
4C083EE07
4C083EE32
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA06
4C086HA24
4C086HA28
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA57
4C086NA14
4C086ZA67
(57)【要約】
スズを含む口腔ケア組成物の使用方法が開示される。歯の密度を増加させ、歯を稠密化させ、及び/又は歯の材料の喪失率を減少させる方法が開示される。スズ、シリカ、キレート剤を含み、約6以上のpHを有するが、亜鉛を含まない、再石灰化口腔ケア組成物が開示される。スズ、シリカ、単座配位子、多座配位子を含み、約6以上のpHを有するが、亜鉛を含まない、再石灰化口腔ケア組成物が開示される。スズ、シリカ、及びキレート剤系を含むが、亜鉛を含まない、再石灰化歯磨剤組成物が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯の密度を増加させ、歯を稠密化させ、及び/又は歯の喪失率を減少させる方法であって、
(a)歯磨剤組成物を歯ブラシに適用するようにユーザに指示することと、
(b)前記歯磨剤組成物を前記ユーザの口腔に適用するように前記ユーザに指示することと、を含み、
前記歯磨剤組成物が、
(i)スズと、
(ii)研磨剤と、
(iii)単座配位子、多座配位子、又はこれらの組み合わせと、を含み、
好ましくは、前記歯磨剤組成物が、少なくとも約6のpHを含む、方法。
【請求項2】
前記歯磨剤組成物が、前記歯磨剤組成物の0.01重量%未満の亜鉛を含み、亜鉛を本質的に含まず、又は亜鉛を実質的に含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、
(c)前記歯磨剤組成物を飲み込まないように前記ユーザに指示することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記スズが、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記研磨剤が、シリカ研磨剤、カルシウム研磨剤、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記歯磨剤組成物が、単座配位子及び多座配位子を含み、前記歯磨剤組成物が、約1:0.5:0.5~約1:5:5のスズ対単座配位子対多座のモル比を有し、好ましくは、スズ対単座配位子対多座配位子の前記モル比が、約1:1:0.5~約1:2.5:2.5であり、又はより好ましくは、スズ対単座配位子対多座配位子の前記モル比が、約1:1:1~約1:2.5:2.5である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記歯磨剤組成物がフッ化物を含み、好ましくは、前記フッ化物が、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化アミン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記歯磨剤組成物が、追加の水を含まないか、水を含むか、又は前記組成物の最大45重量%の水を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記単座配位子が、スズをキレート化することが可能な単一の官能基を含む化合物を含み、好ましくは、前記単座配位子が、カルボン酸又はこの塩を含み、より好ましくは、前記カルボン酸が、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、糖酸、これらの塩、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記糖酸が、アルドン酸、ウルソン酸、ウロン酸、アルダル酸、これらの塩、若しくはこれらの組み合わせを含み、好ましくは、前記糖酸が、グルコン酸を含み、及び/又は前記脂肪族カルボン酸が、直鎖飽和カルボン酸、直鎖不飽和カルボン酸、α-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸、γ-ヒドロキシ酸、アミノ酸、これらの塩、若しくはこれらの組み合わせを含み、又はより好ましくは、前記アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、ロイシン、セリン、スレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、シトルリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、若しくはこれらの組み合わせを含み、及び/又は前記α-ヒドロキシ酸が、乳酸を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記多座配位子が、スズをキレート化することが可能な少なくとも2つの官能基を含む化合物を含み、好ましくは、前記多座配位子が、カルボン酸、ポリホスフェート、これらの塩、又はこれらの組み合わせを含み、より好ましくは、前記カルボン酸が、ジカルボン酸、トリカルボン酸、これらの塩、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ジカルボン酸が、式HOC-R-COHを有する化合物を含み、好ましくは、Rが、脂肪族、芳香族、又はこれらの組み合わせであり、より好ましくは、前記ジカルボン酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、タプシン酸、日本酸、フェロゲン酸、エキセトール酸、これらの塩、又はこれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記トリカルボン酸が、クエン酸、イソシクトリック酸、アコニット酸、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、トリメシン酸、これらの塩、又はこれらの組み合わせを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリホスフェートが、ピロホスフェート、トリポリホスフェート、テトラポリホスフェート、ヘキサメタホスフェート、又はこれらの組み合わせを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スズを含む口腔ケア組成物に関する。本発明はまた、エナメル質及び/又は象牙質の再石灰化に寄与し得る、多量の可溶性フッ化物イオンを有する口腔ケア組成物に関する。本発明はまた、歯、エナメル質、及び/又は象牙質の密度を増加させる方法に関する。本発明はまた、歯、エナメル質、及び/又は象牙質を稠密化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔ケア組成物は、スズイオンなどの抗菌剤を含んでおり、口腔内の細菌に対抗し、歯垢及び歯石の形成などの、口腔内細菌によって引き起こされる状態を予防及び治療する。歯垢及び歯石の形成並びにそれらの増殖を止められないことは、齲蝕、歯肉炎、歯周病、及び歯の喪失の原因である。また、スズイオンは、口腔内の表面上に堆積して、抗酸蝕、抗菌、及び/又は抗知覚過敏の利益などの、保護機能を提供することができる。
【0003】
しかしながら、スズと口腔ケア組成物内他の成分との間には反応性があるため、スズは、口腔ケア組成物中に適切に配合することが困難であり得る。スズの安定化が不足していたり、又は過剰であったりすると、所望の利益を提供するためのスズイオンの利用可能性が低くなるおそれがある。例えば、スズの安定化が不足している場合、スズは、シリカ、水などの口腔ケア組成物の他の成分と反応する可能性があり、その結果、利用可能なスズイオンがより少なくなるおそれがある。更に、安定化の不足した残りのスズが、口腔に送達されると、異なる口腔表面と非常によく反応する可能性があり、そのため、弱体化したエナメル質の密度を回復するために重要であるフッ化物などの、他の成分の作用を妨げてしまう。対照的に、スズが過剰に安定化されているか、又はキレート剤-スズ相互作用が強すぎる場合、スズイオンが口腔に送達されると固定化されることとなり、それによっても、所望の口腔ケア上の利益を生成するために生体内で利用可能なスズイオンの量がより少なくなるおそれがある。したがって、スズ-キレート剤比とその結合親和性とのバランスを注意深くとってSnの反応性を調節し、フッ化物などの組成物中の他の活性剤が、それら活性剤のコアの利益を提供することを妨げることなく、Snがそのコア利益を消費者に提供することができる。したがって、所望の製品の利益に対して最適に生物学的に利用可能な、大量の利用可能なスズイオンを含む口腔ケア組成物が必要とされている。
【0004】
特に、スズ及びシリカを含む歯磨剤組成物は、約7以上のpHで配合することが困難であり得る。フッ化第一スズなどのスズ化合物は、シリカ研磨剤と一緒に単一相に配合された場合に、そのシリカ研磨剤と反応する可能性があり、これは可溶性フッ化物イオンの濃度が低くなるという結果を招き得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、エナメル質及び/又は象牙質の再石灰化に寄与するために、pH約7以上で十分なレベルの可溶性フッ化物イオンを有する、スズ及びシリカを含む歯磨剤組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
歯の密度を増加させ、歯を稠密化させ、及び/又は歯の喪失率を減少させる方法であって、(a)歯磨剤組成物を歯ブラシに適用するようにユーザに指示することと、(b)歯磨剤組成物をユーザの口腔に適用するようにユーザに指示することと、を含み、歯磨剤組成物が、(i)スズと、(ii)研磨剤と、(iii)単座配位子と、(iv)多座配位子と、を含む方法が、本明細書において開示される。
【0007】
また、歯磨剤組成物であって、(a)スズと、(b)研磨剤と、(c)キレート剤と、(d)少なくとも約6のpHと、を含み、歯磨剤組成物が、歯磨剤組成物の0.01重量%未満の亜鉛を含む、歯磨剤組成物が、本明細書において開示される。
【0008】
また、歯磨剤組成物であって、(a)スズと、(b)研磨剤と、(c)単座配位子と、(d)多座配位子と、(e)少なくとも約6のpHと、を含み、歯磨剤組成物が、歯磨剤組成物の0.01重量%未満の亜鉛を含む、歯磨剤組成物が、本明細書において開示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一生の過程にわたる、歯の密度の喪失及び/又は歯の材料の喪失を示す、個体を示す図である。
図2A】開示された組成物を使用しなかった場合の、一生の過程にわたる歯の密度の損失及び/又は歯の材料の損失を示す、個体を示す図である。
図2B】開示された組成物を使用しなかった場合の、一生の過程にわたる歯の密度の損失及び/又は歯の材料の損失を示す、個体を示す図である。
図3A】一生の過程にわたる、歯の密度の喪失及び/又は歯の材料の喪失の軽減に対して、本開示の組成物の使用が与える影響を示す図である。
図3B】一生の過程にわたる、歯の密度の喪失及び/又は歯の材料の喪失の軽減に対して、本開示の組成物の使用が与える影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、可溶性フッ化物の生物学的利用能を反映する、希釈された組成物中の高フッ化物活性を確実にするために配合成分の残部を最適化しながら、生物学的に利用可能な多量のSnをエナメル表面に送達するために、最適に安定化されたSn含有口内ケア組成物に関する。可溶性フッ化物の、高い生物学的利用能は、抗齲蝕有効性にとって重要である。得られた本発明はまた、追加的Znを含まない組成物を提供するため、それによって、Zn-キレート-F複合体の形成を制限する。クエン酸Znは、従来、抗歯石剤として使用されており、フッ化物活性へのその影響は、本発明者らの知り得る限り、文献においてこれまでに報告されたものはなかった。したがって、組成物に追加的Znを与えずにおくことは、Zn含有組成物に対して、組成物のフッ化物活性を予想外に増加させることとなった。
【0011】
本発明は、生物学的に利用可能な多量のSnを最適に送達し、十分なフッ化物活性を有する、開示された口腔ケア組成物の適用を通して、歯、エナメル質、及び/又は象牙質の密度を増加させる方法に関する。一人の人間の一生の過程にわたって、エナメル質及び象牙質などの歯の材料は、化学的及び/又は物理的な損傷によって失われる。結果として、図1に示すように、人が年をとるにつれて、歯は、40マイクロメートル/年の速度で小さくなっていく。本発明は、図2図3との比較に示されるように、歯の密度を増加させ、及び/又は歯の材料喪失の速度を低下させるための方法に関する。本開示の組成物を1日に2回使用すれば、歯の材料の喪失量を低減し、かつ、歯、エナメル質、及び/又は象牙質の密度を増加させることができる。
【0012】
エナメル質及び象牙質は、ヒドロキシアパタイト鉱物から構成されている。この鉱物は、化学酸的及び物理的劣化のプロセスを通して、経時的にその密度及び/又は歯の材料を失うおそれがある。上記の酸の供給源が、細菌による発酵性炭水化物の生物学的代謝である場合、最終的な結果は、密度の喪失を通じた空洞の形成である。組成物中のフッ化物は、エナメル質又は象牙質への鉱物密度喪失の回復に関与する。それらの酸の供給源が食事由来の酸である場合、最終的な結果は、密度喪失を通じたエナメル質又は象牙質の侵食である。歯表面を損傷する酸は、摩耗、アブフラクション、又は咬耗によるエナメル質又は象牙質の物理的喪失を増幅させ得る。したがって、エナメル質及び/又は象牙質の密度の喪失は、全ての供給源の酸に起因する損傷を軽減することによって、予防及び/又は回復することができる。
【0013】
多くの薬剤を使用して、エナメル質又は象牙質を酸から保護することができる。しかしながら、エナメル質又は象牙質にこれらの薬剤を適用する方法は、それらの有効性に大いに影響を与える可能性がある。最近、Snを最適に安定化させてチューブ又はボトルと口腔との両方において最適なSn反応性をもたらすように使用することができる特定の安定剤が、フッ化物、1つ以上の安定剤、及び/又は亜鉛などの他の金属イオンを含む複合体の形成を通じて、フッ化物の有効性を低減する可能性もあることが発見された。したがって、予想外にも、Sn反応性及びフッ化物反応性の両方を最適化することによって、高いレベルでの密度の回復と密度の保持とを同時に提供することができる組成物が発見された。したがって今では、この長きにわたって感じられてきたにもかかわらず市場では満たされていなかったニーズを消費者に届け、新しい口腔衛生に関わる利益を提供することができようになった。
【0014】
理論に束縛されるものではないが、チューブ内の第一スズイオンの効果的なキレート化などを通じてエナメル質表面保護と、フッ化物イオンの利用能の改善を介して再石灰化とを均衡させることによって、本開示の組成物は、歯密度の増加、歯の稠密化、及び/又は歯喪失速度の低減をもたらす可能性があると考えられる。
【0015】
定義
本明細書で使用される用語をより明確に定義するために、以下の定義が提供される。別途記載のない限り、以下の定義は、本開示に適用可能である。ある用語が本開示で使用されているが本明細書で具体的に定義されていない場合、その定義が、本明細書に適用される任意の他の開示又は定義と矛盾しない限り、又はその定義が適用される任意の請求項を不明確に又は不可能にしない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminology,2nd Ed(1997)からの定義を適用することができる。
【0016】
用語「口腔ケア組成物」は、本明細書で使用する場合、通常の使用過程において、特定の治療剤を全身投与する目的で意図的に嚥下されるものではなく、むしろ、歯の表面又は口腔組織と接触させるのに十分な時間にわたって口腔内に保持される製品を包含する。口腔ケア組成物の例としては、歯磨剤、歯磨ゲル、歯肉縁下用ゲル、マウスリンス、ムース、フォーム、マウススプレー、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭予防用溶解ストリップ、又は義歯用ケア若しくは付着性製品が挙げられる。口腔ケア組成物はまた、口腔表面に直接塗布又は装着するためにストリップ又はフィルム上に組み込まれてもよい。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「歯磨剤組成物」は、特に指示がない限り、歯用又は歯肉縁下用ペースト、ゲル、又は液体製剤を包含する。歯磨剤組成物は、単相組成物であってもよい、又は2つ以上の別個の歯磨剤組成物の組み合わせであってもよい。歯磨剤組成物は、深い縞状、表面的な縞状、多層状、ペーストをゲルで包囲した状態、又はそれらのいずれかの組み合わせなど、任意の所望の形態であってもよい。2つ以上の別個の歯磨剤組成物を含む歯磨剤中の各歯磨剤組成物は、ディスペンサの物理的に分離された区画内に収容され、同時に分注されてもよい。
【0018】
本明細書で有用な「有効物質及び他の成分」は、美容的及び/若しくは治療的効果、又はそれらが要求される作用形態若しくは機能により、本明細書において分類又は記載されてよい。しかしながら、本明細書において有用な有効物質及び他の成分は、場合によっては、2つ以上の美容的及び/又は治療的効果をもたらす、あるいは2つ以上の作用形態で機能又は作用してもよいと理解すべきである。したがって、本明細書における分類は便宜上実施されるものであり、成分を、列挙される具体的に規定した機能又は作用に制限しようとするものではない。
【0019】
用語「経口的に許容し得る担体」とは、局所口腔投与に好適な1種以上の相溶性のある固体若しくは液体賦形剤、又は希釈剤を含む。用語「相溶性」は、本明細書で使用する場合、組成物の構成成分が、組成物の安定性及び/又は有効性を実質的に低下させるような方式で相互作用することなく、混合され得ることを意味する。本発明のキャリア又は賦形剤は、以下により完全に記載されるように、マウスウォッシュ又はマウスリンスの通常の及び従来の構成成分を含むことができる。マウスウォッシュ又はマウスリンスのキャリア材料は、典型的には、これらに限定されるものではないが、水、アルコール、保湿剤、界面活性剤、及び、着香剤、甘味剤、着色剤及び/又は冷感剤などの許容改善剤のうちの1つ以上を含む。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「~を実質的に含まない」は、組成物中に、かかる組成物の総重量の0.05%以下、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.001%以下の指示物質が存在することを指す。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「~を本質的に含まない」は、指示物質が組成物に意図的に添加されたものでないこと、又は好ましくは分析によって検出可能な濃度では存在しないことを意味する。すなわち、指示物質が、意図的に添加されたその他の物質のうちのいずれかの不純物としてのみ存在する、組成物を包含することを意味する。
【0022】
用語「口腔衛生レジメン」又は「レジメン」とは、口腔健康のための2つ以上に分かれた異なる処置工程、例えば、練り歯磨き、マウスリンス、フロス、爪楊枝、スプレー、口腔洗浄器、マッサージ器を使用するための用語であり得る。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「総含水量」とは、遊離水、及び口腔ケア組成物中の他の成分によって結合される水、の両方を意味する。
【0024】
本発明の目的のために、使用されるべき妥当な分子量(MW)は、組成物を調製する際に添加される材料の分子量であり、例えば、キレート剤がクエン酸、クエン酸ナトリウム又は実際に他の塩形態として供給され得るクエン酸化学種である場合、使用されるMWは、組成物に添加される特定の塩又は酸の分子量であるが、存在しうるいかなる結晶水をも無視した分子量である。
【0025】
組成物及び方法は、本明細書において、様々な構成要素又は工程を「含む」という観点で記載されているが、組成物及び方法はまた、別途記載のない限り、様々な構成要素又は工程「から本質的になる」又は「からなる」こともできる。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「又は」は、2つ以上の要素の接続詞として使用される場合に、要素を個々に、及び組み合わせで含むことを意味し、例えば、X又はYは、X若しくはY又はこれら両方を意味する。
【0027】
本明細書で使用する場合、冠詞「a」及び「an」は、特許請求される又は記載される材料、例えば、「口腔ケア組成物」又は「漂白剤」の1つ以上を意味するものと理解される。
【0028】
特に明記しない限り、本明細書で言及される測定は全て約23℃(すなわち、室温)で行われる。
【0029】
一般に、元素の族は、Chemical and Engineering News,63(5),27,1985に掲載されている元素周期表のバージョンで示される番号付けスキームを使用して示される。いくつかの例では、族に割り当てられた共通の名称を使用して、元素の族を示すことができ、例えば、第1族元素のアルカリ金属、第2族元素のアルカリ土類金属などが挙げられる。
【0030】
いくつかの種類の範囲が本発明に開示される。任意の種類の範囲が開示又は特許請求される場合、範囲の端点並びにその中に包含される任意の部分範囲及び任意の部分範囲の組み合わせを含む、そのような範囲が合理的に包含し得る可能な各数を個々に開示又は特許請求することを意図している。
【0031】
用語「約」は、量、サイズ、配合、パラメータ、並びにその他の数量及び特性が正確ではなく、正確である必要はないが、所望に応じて、許容誤差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、並びに当業者に既知のその他の要因を反映して、近似的及び/又はより大きいか若しくはより小さい場合があることを意味する。一般に、量、サイズ、配合、パラメータ、又は他の数量若しくは特性は、そのようであると明示的に記載されているか否かに関わらず、「約」又は「近似的」である。「約」という用語はまた、特定の初期混合物から生じる組成物の異なる平衡状態に起因して異なる量も包含する。「約」という用語によって修飾されているか否かに関わらず、特許請求の範囲は、その量に対する均等物を含む。「約」という用語は、報告された数値の10%以内、好ましくは報告された数値の5%以内を意味し得る。
【0032】
口腔ケア組成物は、固体、液体、粉末、ペースト、又はこれらの組み合わせなどの任意の適切な形態であり得る。口腔ケア組成物は、歯磨剤、歯磨ゲル、歯肉縁下用ゲル、マウスリンス、ムース、泡、マウススプレー、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭予防用溶解ストリップ、又は義歯用ケア若しくは付着性製品であり得る。口腔ケア組成物の構成成分は、フィルム、ストリップ、泡、又は繊維ベースの歯磨剤組成物に組み込まれることができる。
【0033】
口腔ケア組成物は、本明細書に記載されるように、スズ、単座配位子、及び多座配位子を含む。更に、口腔ケア組成物は、以下に記載されるように、他の任意の成分を含み得る。以下のセクションヘッダーは、あくまでも便宜上提供されるものである。場合によっては、1つの化合物が、1つ以上のセクション内に含まれ得る。例えば、フッ化第一スズは、スズ化合物及び/又はフッ化物化合物であり得る。更に、例えば、シュウ酸又はこの塩は、ジカルボン酸、多座配位子、及び/又はホワイトニング剤であり得る。
【0034】
スズ
本発明の口腔ケア組成物は、スズイオン源によって提供され得るスズを含む。スズイオン源は、口腔ケア組成物中にスズイオンを提供することができ、及び/又は口腔ケア組成物が口腔に適用されるときに、口腔にスズイオンを供給することができる任意の好適な化合物であり得る。スズイオン源は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、酸化第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、硫化第一スズ、フッ化第二スズ、塩化第二スズ、臭化第二スズ、ヨウ化第二スズ、硫化第二スズ、及び/又はこれらの混合物などの1つ以上のスズ含有化合物を含み得る。スズイオン源は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、及び/又はこれらの混合物を含み得る。スズイオン源はまた、塩化第一スズなどのフッ化物フリーのスズイオン源であってもよい。
【0035】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%、約0.01重量%~約10重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.4重量%~約1重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%のスズ及び/又はスズイオン源を含み得る。
【0036】
単座配位子
口腔ケア組成物は、1000g/mol未満の分子量(molecular weight、MW)を有する単座配位子を含み得る。単座配位子は、スズイオンなどの中心原子と相互作用することができる単一の官能基を有する。単座配位子は、口腔ケア組成物における使用に適している必要があり、これは、一般に、米国食品医薬品局による一般に安全と認められている(Generally Regarded as Safe、GRAS)リスト、又は他の対象となる管轄区域における適切なリストに挙げられているものが含まれ得る。
【0037】
本明細書に記載の単座配位子は、スズにキレート化、会合、及び/又は結合することができる単一の官能基を含み得る。スズにキレート化、会合、及び/又は結合することができる好適な官能基は、カルボニル、アミン、当業者に知られている他の官能基などを含む。好適なカルボニル官能基は、カルボン酸、エステル、アミド、又はケトンを含み得る。
【0038】
単座配位子は、単一のカルボン酸官能基を含むことができる。カルボン酸を含む好適な単座配位子は、式R-COOH[式中、Rは任意の有機構造である]を有する化合物を含み得る。カルボン酸を含む好適な単座配位子はまた、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、糖酸、これらの塩、及び/又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0039】
脂肪族カルボン酸は、直鎖炭化水素鎖、分枝炭化水素鎖、及び/又は環状炭化水素分子に結合した、カルボン酸官能基を含み得る。脂肪族カルボン酸は、完全飽和又は不飽和であってもよい、1つ以上のアルケン官能基及び/又はアルキン官能基を有してもよい。他の官能基が、存在し、炭化水素鎖に結合してもよい、例えば、炭化水素鎖のハロゲン化バリアントが挙げられる。脂肪族カルボン酸としてはまた、カルボン酸官能基に対してα位、β位、又はγ位にアルコール官能基を有する、有機化合物であるヒドロキシル酸をも挙げることができる。好適なα-ヒドロキシ酸としては、乳酸及び/又はこの塩が挙げられる。
【0040】
芳香族カルボン酸は、少なくとも1つの芳香族官能基に結合したカルボン酸官能基を含み得る。好適な芳香族カルボン酸基は、安息香酸、サリチル酸、及び/又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0041】
カルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、アスコルビン酸、安息香酸、カプリル酸、コール酸、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、リノール酸、ナイアシン、オレイン酸、プロパン酸、ソルビン酸、ステアリン酸、グルコン酸、乳酸、炭酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、これらの塩、及び/又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0042】
口腔ケア組成物は、組成物の約0.01重量%~約10重量%、約0.1重量%~約15重量%、約1重量%~約5重量%、又は約0.0001~約25重量%の単座配位子を含み得る。
【0043】
多座配位子
口腔ケア組成物は、1000g/mol未満又は2500g/mol未満の分子量(MW)を有する多座配位子を含み得る。多座配位子は、スズイオンなどの中心原子と相互作用することができる、少なくとも2つの官能基を有する。更に、多座配位子は、口腔ケア組成物における使用に好適でなければならず、これは、一般に、米国食品医薬品局による一般に安全と認められている(GRAS)リスト、又は他の対象となる管轄区域における適切なリストに挙げられているものが含まれ得る。
【0044】
本明細書に記載の多座配位子は、スズにキレート化、会合、及び/又は結合することができる少なくとも2つの官能基を含み得る。多座配位子は、二座配位子(すなわち、2つの官能基を有するもの)、三座配位子(すなわち、3つの官能基を有するもの)、四座配位子(すなわち、4つの官能基を有するもの)などを含み得る。
【0045】
スズにキレート化、会合、及び/又は結合することができる好適な官能基は、カルボニル、ホスフェート、ニトレート、アミン、当業者に知られている他の官能基などを含む。好適なカルボニル官能基は、カルボン酸、エステル、アミド、又はケトンを含み得る。
【0046】
多座配位子は、2つ以上のカルボン酸官能基を含むことができる。カルボン酸を含む好適な多座配位子は、式HOOC-R-COOH[式中、Rは任意の有機構造である]を有する化合物を含み得る。2つ以上のカルボン酸を含む好適な多座配位子としてはまた、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸などが挙げられ得る。
【0047】
他の好適な多座配位子には、少なくとも2つのホスフェート官能基を含む化合物が挙げられる。したがって、多座配位子は、本明細書に記載されるような、ポリホスフェートを含み得る。
【0048】
他の好適な多座配位子としては、ルプロン、コルプロン、アドルプロン、及び/又はこれらの組み合わせなどの、ホップベータ酸が挙げられる。ホップベータ酸は、天然の源から、合成的に誘導及び/又は抽出され得る。
【0049】
多座配位子はまた、スズと相互作用する官能基としてホスフェートを含み得る。好適なホスフェート化合物としては、リン酸塩、有機ホスフェート、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適なリン酸塩としては、オルトホスフェート、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、アルキル化ホスフェート、及びこれらの組み合わせの塩が挙げられる。多座配位子は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、タプシン酸、日本酸、フェロゲン酸、エキセトール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フィチン酸、リンゴ酸、酒石酸、ピロホスフェート、トリポリホスフェート、テトラポリホスフェート、ヘキサメタホスフェート、これらの塩、及び/又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0050】
口腔ケア組成物は、組成物の約0.01重量%~約10重量%、約0.1重量%~約15重量%、約1重量%~約5重量%、又は約0.0001~約25重量%の多座配位子を含み得る。
【0051】
スズ対単座配位子対多座配位子の比
本明細書に記載の口腔ケア組成物は、予想外に高い量の可溶性スズ及び/又は優れたフッ化物取り込みを提供する、スズ対単座配位子対多座配位子の比を含み得る。スズ対単座配位子対多座配位子の好適な比は、約1:0.5:0.5~約1:5:5、約1:0.5:0.75~約1:5:5、約1:1:1~約1:5:5、約1:1:0.5~約1:2.5:2.5、約1:1:1~約1:2:2、約1:0.5:0.5~約1:3:1、又は約1:0.5:0.5~約1:1:3であり得る。
【0052】
本明細書では、少なくとも約1000ppm、2000ppm、4000ppm、少なくとも約4500ppm、少なくとも約5000ppm、少なくとも約6000ppm、及び/又は少なくとも約8000ppmの可溶性Snを有する口腔ケア組成物が望ましい。本明細書では、少なくとも約9日間、30日間、65日間、75日間、100日間、200日間、365日間、及び/又は400日間後に、少なくとも約6.5μg/cm、少なくとも約7.0μg/cm、少なくとも約8.0μg/cm、又は少なくとも約9.0μg/cmのフッ化物取り込み量を有する口腔ケア組成物もまた望ましい。
【0053】
理論に束縛されるものではないが、可溶性Sn量は、生物学的に利用可能なSnと相関すると考えられているのは、それは口腔衛生に関わる利益を提供するために自由に利用可能であるからである。完全に結合したSn(すなわち、過キレート化されたSn)又は析出Sn(すなわち、Sn(OH)2及び/又はSn系染色剤などの不溶性スズ塩は、Snのキレート化が不十分である場合に形成され得る)は、可溶性Snの測定値には含まれない。更に、理論に束縛されるものではないが、単座配位子及び多座配位子に対して、Snの割合を注意深くバランスさせることにより、表面染色剤などのカチオン性抗菌剤の使用に対する否定的側面の一部を発生させることなしに、大量の、生物学的に利用可能なフッ化物イオン及びSnイオンを提供することができると考えられる。したがって、単座配位子及び多座配位子の範囲を定量化し、かつ種類を識別するために、追加のスクリーニング実験を行った。
【0054】
ジカルボン酸
多座配位子は、ジカルボン酸を含むことができる。ジカルボン酸は、2つのカルボン酸官能基を有する化合物を含む。ジカルボン酸は、式Iによって定義される化合物又はこの塩を含み得る。
【0055】
【化1】
【0056】
Rは、存在しないか、アルキル、アルケニル、アリル、フェニル、ベンジル、脂肪族、芳香族、ポリエチレングリコール、ポリマー、O、N、P、及び/又はこれらの組み合わせであり得る。
【0057】
ジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、タプシン酸、日本酸、フェロゲン酸、エキセトール酸、リンゴ酸、酒石酸、これらの塩、又はこれらの組み合わせを含み得る。ジカルボン酸は、モノアルカリ金属シュウ酸塩、ジアルカリ金属シュウ酸塩、シュウ酸一水素一カリウム、シュウ酸二カリウム、シュウ酸一水素一ナトリウム、シュウ酸二ナトリウム、シュウ酸チタン、及び/又はシュウ酸塩の他の金属塩などの、ジカルボン酸の好適な塩を含み得る。ジカルボン酸はまた、ジカルボン酸の水和物及び/又はジカルボン酸の塩の水和物も含み得る。
【0058】
口腔ケア組成物は、組成物の約0.01重量%~約10重量%、約0.1重量%~約15重量%、約1重量%~約5重量%、又は約0.0001~約25重量%のジカルボン酸を含み得る。
【0059】
トリカルボン酸
多座配位子は、トリカルボン酸を含むことができる。トリカルボン酸は、3つのカルボン酸官能基を有する化合物を含む。トリカルボン酸は、式IIによって定義される化合物又はこの塩を含み得る。
【0060】
【化2】
【0061】
Rは、アルキル、アルケニル、アリル、フェニル、ベンジル、脂肪族、芳香族、ポリエチレングリコール、ポリマー、O、N、P、及び/又はこれらの組み合わせであり得る。
【0062】
トリカルボン酸は、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、トリメシン酸、クエン酸回路又はクレブス回路中の任意のトリカルボン酸、これらの塩、又はこれらの組み合わせを含み得る。トリカルボン酸は、例えば、クエン酸ナトリウムなどの、トリカルボン酸の好適な塩を含み得る。
【0063】
口腔ケア組成物は、組成物の約0.01重量%~約10重量%、約0.1重量%~約15重量%、約1重量%~約5重量%、又は約0.0001~約25重量%のトリカルボン酸を含み得る。
【0064】
ポリホスフェート
多座配位子は、ポリホスフェートを含むことができ、そのポリホスフェートは、ポリホスフェート源によって提供することができる。ポリホスフェート源は、1つ以上のポリホスフェート分子を含み得る。ポリホスフェートは、オルトホスフェートの脱水及び縮合によって様々な鎖長の直鎖ポリホスフェート及びフィチン酸などの環状ポリホスフェートをもたらすことにより得られる物質の部類である。したがって、ポリホスフェート分子は、一般に、以下に記載されるように、ポリホスフェート分子の平均数(n)で同定される。ポリホスフェートは一般に、主に直鎖構造に配置された2つ以上のホスフェート分子からなると理解されているが、いくつかの環状誘導体が存在する場合もある。
【0065】
好ましいポリホスフェートは、有効濃度での表面吸着により十分な非結合のホスフェート官能基を生成し、これがアニオン性表面電荷並びに表面の親水性特徴を強化するように、平均して2つ以上のホスフェート基を有するものである。本発明において好ましいものは、式:XO(XPOX[式中、Xは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、又は任意の他のアルカリ金属カチオンであり、nは、平均約2~約21、約2~約14、又は約2~約7である]を有する直鎖状ポリホスフェートである。カルシウムなどのアルカリ土類金属カチオンは、フッ化物イオン及びアルカリ土類金属カチオンを含む水溶液から不溶性フッ化物塩を形成する傾向があるため、好ましくない。したがって、本明細書に開示される口腔ケア組成物は、ピロリン酸カルシウムを含まなくてもよい、又は実質的に含まなくてもよい。
【0066】
好適なポリホスフェート分子のいくつかの例としては、例えば、ピロホスフェート(n=2)、トリポリホスフェート(n=3)、テトラポリホスフェート(n=4)、ソーダフォスポリホスフェート(n=6)、ヘキサフォスポリホスフェート(n=13)、ベネフォスポリホスフェート(n=14)、Glass Hとしても知られるヘキサメタホスフェート(n=21)を挙げることができる。ポリホスフェートとしては、FMC Corporation、ICL Performance Products、及び/又はAstarisによって製造されるポリホスフェート化合物を挙げることができる。
【0067】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.01重量%~約15重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.5重量%~約5重量%、約1~約20重量%、又は約10重量%以下のポリホスフェート源を含み得る。あるいは、口腔ケア組成物は、ポリホスフェートを本質的に含まなくてもよい、実質的に含まなくてもよい、又は含まなくてもよい。口腔ケア組成物は、環状ポリホスフェートを本質的に含まなくてもよい、実質的に含まなくてもよい、又は含まなくてもよい。あるいは、口腔ケア組成物は、フィチン酸を本質的に含まなくてもよい、実質的に含まなくてもよい、又は含まなくてもよい。
【0068】
フッ化物
口腔ケア組成物は、フッ化物を含み得、そのフッ化物は、フッ化物イオン源によって提供され得る。フッ化物イオン源は、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化亜鉛、及び/又はこれらの混合物などの1つ以上のフッ化物イオン含有化合物を含むことができる。
【0069】
フッ化物イオン源及びスズイオン源は、スズイオン及びフッ化物イオンを生成することができる、例えば、フッ化第一スズなどの同じ化合物であり得る。加えて、フッ化物イオン源及びスズイオン源は、スズイオン源が塩化第一スズであり、フッ化物イオン源がモノフルオロリン酸ナトリウム又はフッ化ナトリウムである場合など、別個の化合物であり得る。
【0070】
フッ化物イオン源及び亜鉛イオン源は、亜鉛イオン及びフッ化物イオンを生成することができる、例えば、フッ化亜鉛などの同じ化合物であり得る。加えて、フッ化物イオン源及び亜鉛イオン源は、亜鉛イオン源がリン酸亜鉛であり、フッ化物イオン源がフッ化第一スズである場合など、別個の化合物であり得る。
【0071】
フッ化物イオン源は、フッ化第一スズを本質的に含まなくてもよい、又は含まなくてもよい。したがって、口腔ケア組成物は、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化亜鉛、及び/又はこれらの混合物を含み得る。
【0072】
口腔ケア組成物は、約50ppm~約5000ppm、好ましくは約500ppm~約3000ppmの遊離フッ化物イオンを提供することができるフッ化物イオン源を含み得る。所望の量のフッ化物イオンを送達するために、フッ化物イオン源は、口腔ケア組成物中に、口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%、約0.01重量%~約10重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%の量で存在し得る。あるいは、口腔ケア組成物は、フッ化物イオン源を0.1%未満、0.01%未満含んでもよい、本質的に含まなくてもよい、実質的に含まなくてもよい、又は含まなくてもよい。
【0073】
金属
本明細書に記載される口腔ケア組成物は、1つ以上の金属イオンを含む金属イオン源によって提供され得る金属を含み得る。金属イオン源は、本明細書に記載されているように、スズイオン源及び/又は亜鉛イオン源を含んでもよい、又はそれに加えてもよい。好適な金属イオン源としては、Sn、Zn、Cu、Mn、Mg、Sr、Ti、Fe、Mo、B、Ba、Ce、Al、In及び/又はこれらの混合物などであるがこれらに限定されない金属イオンを有する化合物が挙げられる。金属イオン源は、好適な金属並びに任意の付随する配位子及び/又はアニオンを含む任意の化合物であり得る。
【0074】
金属イオン源と対をなすことができる好適な配位子及び/又はアニオンとしては、酢酸イオン、硫酸アンモニウムイオン、安息香酸イオン、臭化物イオン、ホウ酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、クエン酸イオン、グルコン酸イオン、グリセロリン酸イオン、水酸化物イオン、ヨウ化物イオン、シュウ酸イオン、酸化物イオン、プロピオン酸イオン、D-乳酸イオン、DL-乳酸イオン、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酒石酸イオン、及び/又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
口腔ケア組成物は、約0.01重量%~約10重量%、約1重量%~約5重量%、又は約0.5重量%~約15重量%の金属及び/又は金属イオン源を含み得る。
【0076】
亜鉛
本発明の口腔ケア組成物は、亜鉛を含み得、その亜鉛は、亜鉛イオン源によって提供され得る。亜鉛イオン源は、フッ化亜鉛、乳酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、ヘキサフルオロジルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、酒石酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、亜鉛グリシネート、ピロリン酸亜鉛、メタリン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、及び/又は炭酸亜鉛などの1つ以上の亜鉛含有化合物を含み得る。亜鉛イオン源は、リン酸亜鉛、酸化亜鉛、及び/又はクエン酸亜鉛などのフッ化物フリーの亜鉛イオン源であり得る。
【0077】
亜鉛及び/又は亜鉛イオン源は、全口腔ケア組成物中に、歯磨剤組成物の約0.01重量%~約10重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%の量で存在し得る。特に、亜鉛は、再石灰化プロセスにとっては有害であり得る、及び/又は、フッ化物と、特定の配位子との錯体をもたらし得、その錯体は、フッ化物の有効性を制限する可能性がある。したがって、口腔ケア組成物は、亜鉛を本質的に含まなくてもよい、実質的に含まなくてもよい、又は含まなくてもよい。
【0078】
pH
本明細書に記載の口腔ケア組成物のpHは、約4~約7.5、約4.5~約6.5、又は約4.5~約5.5であり得る。本明細書に記載の口腔ケア組成物のpHはまた、少なくとも約6、少なくとも約6.5、又は少なくとも約7であり得る。マウスリンス溶液のpHは、未希釈溶液のpHとして決定することができる。歯磨剤組成物のpHは、スラリーpHとして決定することができ、このスラリーpHは、歯磨剤組成物及び水の1:4、1:3、又は1:2混合物などの、歯磨剤組成物と水との混合物のpHである。本明細書に記載の口腔ケア組成物のpHは、約4~約10、約5~約9、約6~8、又は約7の好ましいpHを有する。
【0079】
口腔ケア組成物は、1つ以上の緩衝剤を含み得る。本明細書で使用するとき、緩衝剤とは、口腔ケア組成物のスラリーpHを調整するために使用することができる剤を指す。緩衝剤としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。具体的な緩衝剤としては、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロリン酸塩、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。口腔ケア組成物は、1つ以上の緩衝剤をそれぞれ本組成物の約0.1重量%~約30重量%、約1重量%~約10重量%、又は約1.5重量%~約3重量%の濃度で含み得る。
【0080】
界面活性剤
口腔ケア組成物は、1つ以上の界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、組成物をより美容的に許容可能にするために使用することができる。界面活性剤は、好ましくは、組成物に洗浄性及び起泡性を付与する洗浄性材料である。好適な界面活性剤は、安全かつ有効な量のアニオン性、カチオン性、非イオン性、双性イオン性、両性及びベタイン界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルメチルイセチオン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸、ミリストイルサルコシン酸、パルミトイルサルコシン酸、ステアロイルサルコシン酸及びオレオイルサルコシン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン及びラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン、N-ラウロイルサルコシン、N-ミリストイルサルコシン、又はN-パルミトイルサルコシンのナトリウム塩、カリウム塩、及びエタノールアミン塩、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、ココアミドプロピルベタイン、ラウロアミドプロピルベタイン、パルミチルベタイン、ココイルグルタミン酸ナトリウムなどである。ラウリル硫酸ナトリウムが、好ましい界面活性剤である。口腔ケア組成物は、1つ以上の界面活性剤をそれぞれ口腔ケア組成物の約0.01重量%~約15重量%、約0.3重量%~約10重量%、又は約0.3重量%~約2.5重量%の濃度で含み得る。
【0081】
増粘剤
口腔ケア組成物は、1つ以上の増粘剤を含み得る。増粘剤は、口腔ケア組成物において、練り歯磨きを相分離に対して安定化させるゼラチン構造を提供するのに有用である。好適な増粘剤としては、多糖類、ポリマー、及び/又はシリカ増粘剤が挙げられる。多糖類のいくつかの非限定例としては、デンプン;デンプンのグリセライト;ガム、例えば、カラヤガム(ステルクリアガム)、トラガカントガム、アラビアガム、ガティガム、アカシアガム、キサンタンガム、グアーガム、及びセルロースガム;ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum);カラギーナン;アルギン酸ナトリウム;寒天;ペクチン;ゼラチン、セルロース化合物、例えば、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルカルボキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、及び硫酸化セルロース;天然及び合成粘土、例えば、ヘクトライト粘土;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0082】
増粘剤は、多糖類を含み得る。本明細書での使用に好適な多糖類としては、カラギーナン、ジェランガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カルボマー、ポロキサマー、変性セルロース、及びこれらの混合物が挙げられる。カラギーナンは、海藻由来の多糖類である。その海藻源によって区別され得る、及び/又は硫酸化の程度及び位置によって区別され得る複数種類のカラギーナンが存在する。増粘剤としては、κ-カラギーナン、変性κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、修飾ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、及びこれらの混合物を挙げることができる。本明細書での使用に好適なカラギーナンとしては、FMC Companyからシリーズ名「Viscarin」で市販されているものが挙げられ、限定するものではないが、Viscarin TP 329、Viscarin TP 388、及びViscarin TP 389が挙げられる。
【0083】
増粘剤は、1つ以上のポリマーを含み得る。ポリマーは、口腔ケア組成物の様々な重量パーセントの、及び様々な範囲の平均分子範囲の、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸、少なくとも1つのアクリル酸モノマーから誘導されたポリマー、無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、架橋ポリアクリル酸ポリマーであり得る。ポリマーは、ポリアクリレートクロスポリマー-6などのポリアクリレートクロスポリマーを含み得る。好適なポリアクリレートクロスポリマー-6源としては、Seppicから市販されている、Sepimax Zen(商標)を挙げることができる。
【0084】
増粘剤は、無機増粘剤を含み得る。好適な無機増粘剤のいくつかの非限定的な例としては、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ増粘剤が挙げられる。有用なシリカ増粘剤としては、例えば、非限定的な例として、ZEODENT(登録商標)165シリカなどの非晶質沈降シリカが挙げられる。他の非限定的なシリカ増粘剤としては、全てEvonik Corporationから入手可能なZEODENT(登録商標)153、163、及び167、並びにZEOFREE(登録商標)177及び265シリカ製品、並びにAEROSIL(登録商標)ヒュームドシリカが挙げられる。
【0085】
口腔ケア組成物は、0.01%~約15%、0.1%~約10%、約0.2%~約5%、又は約0.5%~約2%の1つ以上の増粘剤を含むことができる。
【0086】
研磨剤
本発明の口腔ケア組成物は、研磨剤を含み得る。研磨剤は、歯から表面の着色汚れを除去するのを助けるために口腔ケア製剤に添加され得る。好ましくは、研磨剤は、カルシウム研磨剤又はシリカ研磨剤である。
【0087】
カルシウム研磨剤は、口腔ケア組成物中にカルシウムイオンを提供することができる、及び/又は、口腔ケア組成物が口腔に適用されるときに、口腔にカルシウムイオンを供給することができる、任意の好適な研磨剤化合物であり得る。口腔ケア組成物は、約5重量%~約70重量%、約10重量%~約60重量%、約20重量%~約50重量%、約25重量%~約40重量%、又は約1重量%~約50重量%のカルシウム研磨剤を含み得る。カルシウム研磨剤は、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム(precipitated calcium carbonate、PCC)、粉砕炭酸カルシウム(ground calcium carbonate、GCC)、チョーク、リン酸二カルシウム、ピロリン酸カルシウム、及び/又はこれらの混合物などの1つ以上のカルシウム研磨剤化合物を含み得る。
【0088】
口腔ケア組成物はまた、シリカゲル(それ自体、及び任意の構造のもの)、沈降シリカ、非晶質沈殿シリカ(それ自体、及び任意の構造のもの)、水和シリカ、及び/又はこれらの組み合わせなどのシリカ研磨剤を含み得る。口腔ケア組成物は、約5重量%~約70重量%、約10重量%~約60重量%、約10重量%~約50重量%、約20重量%~約50重量%、約25重量%~約40重量%、又は約1重量%~約50重量%のシリカ研磨剤を含み得る。
【0089】
口腔ケア組成物はまた、例えば、ベントナイト、パーライト、二酸化チタン、アルミナ、水和アルミナ、焼成アルミナ、ケイ酸アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、不溶性炭酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、粒子状熱硬化性樹脂、及び他の好適な研磨剤材料などの別の研磨剤を含み得る。口腔ケア組成物は、約5重量%~約70重量%、約10重量%~約60重量%、約10重量%~約50重量%、約20重量%~約50重量%、約25重量%~約40重量%、又は約1重量%~約50重量%の別の研磨剤を含み得る。
【0090】
アミノ酸
口腔ケア組成物は、アミノ酸を含み得る。単座配位子及び/又は多座配位子は、アミノ酸を含むことができる。アミノ酸が単座配位子又は多座配位子であるかどうかは、スズにキレート化する、会合する、及び/又は結合することができる官能基がいくつあるか、及び/又は口腔ケア組成物のpHがいくつであるかに基づいてもよい。アミノ酸は、本明細書に記載されるように、1つ以上のアミノ酸、ペプチド、及び/又はポリペプチドを含み得る。
【0091】
アミノ酸は、式IIにあるように、アミン官能基、カルボキシル官能基、及びそれぞれのアミノ酸に特異的な側鎖(式IIではR)を含有する有機化合物である。好適なアミノ酸としては、例えば、正又は負の側鎖を有するアミノ酸、酸性又は塩基性の側鎖を有するアミノ酸、極性非荷電側鎖を有するアミノ酸、疎水性側鎖を有するアミノ酸、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適なアミノ酸としては、例えば、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、シトルリン、オルニチン、クレアチン、ジアミノブタン酸、ジアミノプロピオン酸、これらの塩、及び/又はこれらの組み合わせも挙げられる。
【0092】
好適なアミノ酸としては、天然起源の又は合成的に誘導される、式IIIに記載の化合物が挙げられる。アミノ酸は、R基及び環境に基づいて、双性イオン性であるか、中性であるか、正に帯電するか、又は負に帯電し得る。アミノ酸の電荷、及び特定の官能基が、ある特定のpH条件下でスズと相互作用することができるかどうかは、当業者には周知であろう。
【0093】
【化3】
【0094】
好適なアミノ酸としては、1つ以上の塩基性アミノ酸、1つ以上の酸性アミノ酸、1つ以上の中性アミノ酸、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0095】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.01重量%~約20重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.5重量%~約6重量%、又は約1重量%~約10重量%のアミノ酸を含み得る。
【0096】
本明細書で使用するとき、用語「中性アミノ酸」には、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンなどの天然由来の中性アミノ酸だけではなく、pH5.0~7.0の範囲の等電点を有する生物学的に許容可能なアミノ酸が挙げられる。生物学的に好ましい許容可能な中性アミノ酸は、分子中に単一のアミノ基及びカルボキシル基を有するか、又は、物理化学的特性は類似若しくは実質的に類似しているが変更された側鎖を有する官能性誘導体などの、これらの官能性誘導体を有する。更なる実施形態では、アミノ酸は、少なくとも部分的に水溶性であり、25℃で1g/1000mLの水溶液中で7未満のpHを提供する。
【0097】
したがって、本発明での使用に好適な中性アミノ酸としては、アラニン、アミノ酪酸、アスパラギン、システイン、シスチン、グルタミン、グリシン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、これらの塩、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の組成物において使用される中性アミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、グリシン、これらの塩、又はこれらの混合物を挙げることができる。中性アミノ酸は、25℃の水溶液中で、5.0、又は5.1、又は5.2、又は5.3、又は5.4、又は5.5、又は5.6、又は5.7、又は5.8、又は5.9、又は6.0、又は6.1、又は6.2、又は6.3、又は6.4、又は6.5、又は6.6、又は6.7、又は6.8、又は6.9、又は7.0の等電点を有し得る。好ましくは、中性アミノ酸は、プロリン、グルタミン、又はグリシンから選択され、より好ましくはその遊離形態(すなわち、非錯体型)である。中性アミノ酸がその塩形態である場合、好適な塩としては、提供される量及び濃度において生理学的に許容可能であると考えられる、医薬的に許容される塩であることが当該技術分野において既知である塩が挙げられる。
【0098】
ホワイトニング剤
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.1重量%~約10重量%、約0.2重量%~約5重量%、約1重量%~約5重量%、又は約1重量%~約15重量%のホワイトニング剤を含み得る。ホワイトニング剤は、口腔内の少なくとも1本の歯をホワイトニングするのに好適な化合物であり得る。ホワイトニング剤としては、過酸化物、金属亜塩素酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過酸、過硫酸塩、ジカルボン酸及びこれらの組み合わせを挙げることができる。好適な過酸化物としては、固体過酸化物、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過酸化ベンゾイル、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、無機過酸化物、ヒドロペルオキシド、有機過酸化物、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な金属亜塩素酸塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、及び亜塩素酸カリウムが挙げられる。その他の好適なホワイトニング剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、peroxydone、6-フタルイミドペルオキシヘキサン酸、フタルアミドペルオキシカプロン酸、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0099】
保湿剤
口腔ケア組成物は、1つ以上の保湿剤を含んでもよい、低濃度の保湿剤を含んでもよい、又は保湿剤を含まなくてもよい。保湿剤は、口腔ケア組成物又は歯磨剤に粘性(body)又は「口当たり」を加えるだけでなく、歯磨剤が乾燥するのを防止する役割を果たす。好適な保湿剤としては、ポリエチレングリコール(様々な異なる分子量で)、プロピレングリコール、グリセリン(グリセロール)、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ブチレングリコール、ラクチトール、加水分解水添デンプン、及び/又はこれらの混合物が挙げられる。口腔ケア組成物は、それぞれ口腔ケア組成物の0~約70重量%、約5重量%~約50重量%、約10重量%~約60重量%、又は約20重量%~約80重量%の濃度で1つ以上の保湿剤を含み得る。
【0100】

本発明の口腔ケア組成物は、無水、低含水製剤、又は高含水製剤である歯磨剤組成物であり得る。合計で、口腔ケア組成物は、組成物の0重量%~約99重量%、約20重量%以上、約30重量%以上、約50重量%以上、最大約45重量%、又は最大約75重量%の水を含むことができる。好ましくは、水は、USP水である。
【0101】
高含水歯磨剤製剤では、歯磨剤組成物は、組成物の約45重量%~約75重量%の水を含む。高含水歯磨剤組成物は、組成物の約45重量%~約65重量%、約45重量%~約55重量%、又は約46重量%~約54重量%の水を含んでもよい。水は、高含水歯磨剤製剤に直接添加されてもよい、及び/又は他の成分を含めることによって組成物に含まれてもよい。
【0102】
低含水歯磨剤製剤では、歯磨剤組成物は、組成物の約10重量%~約45重量%の水を含む。低含水歯磨剤組成物は、組成物の約10重量%~約35重量%、約15重量%~約25重量%、又は約20重量%~約25重量%の水を含んでもよい。水は、低含水歯磨剤製剤に直接添加されてもよい、及び/又は他の成分を含めることによって組成物に含まれてもよい。
【0103】
無水歯磨剤製剤において、歯磨剤組成物は、組成物の約10重量%未満の水を含む。無水歯磨剤組成物は、組成物の約5重量%未満、約1重量%未満、又は0重量%の水を含む。水は、無水製剤に直接添加されてもよい、及び/又は他の成分を含めることによって歯磨剤組成物に含まれてもよい。
【0104】
歯磨剤組成物はまた、アルコール、保湿剤、ポリマー、界面活性剤、並びに許容改善剤、例えば、着香剤、甘味剤、着色剤及び/又は冷感剤などの、他の口腔に許容可能なキャリア材料を含むことができる。
【0105】
口腔ケア組成物はまた、マウスリンス製剤であってもよい。マウスリンス製剤は、約75%~約99%、約75%~約95%、又は約80%~約95%の水を含み得る。
【0106】
他の成分
口腔ケア組成物は、以下に記載されるように、着香剤、甘味料、着色剤、防腐剤、緩衝剤、又は口腔ケア組成物での使用に好適な他の成分などの様々な他の成分を含み得る。
【0107】
着香剤を口腔ケア組成物に添加してもよい。好適な着香剤としては、冬緑油、ペパーミント油、スペアミント油、クローブバッド油、メントール、アネトール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、カッシア、酢酸1-メンチル、セージ、オイゲノール、パセリ油、オキサノン、α-イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、桂皮、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、4-cis-ヘプテナール、ジアセチル、パラ-tert-ブチルフェニル酢酸メチル、及びこれらの混合物が挙げられる。清涼剤も風味剤系の一部であってもよい。本組成物に好ましい清涼剤は、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキシアミド(商業的に「WS-3」として知られている)のようなパラメンタンカルボキシアミド剤、又はN-(エトキシカルボニルメチル)-3-p-メンタンカルボキシアミド(商業的に「WS-5」として知られている)、及びこれらの混合物である。風味剤系は、一般に組成物中で、口腔ケア組成物の約0.001重量%~約5重量%の濃度で用いられる。これらの着香剤は、一般に、アルデヒド、ケトン、エステル、フェノール、酸、並びに脂肪族アルコール、芳香族アルコール、及び他のアルコールの混合物を含む。
【0108】
製品に快い味を付与するために、甘味料を口腔ケア組成物に添加してもよい。好適な甘味料としては、サッカリン(サッカリンナトリウム、サッカリンカリウム又はサッカリンカルシウムとして)、チクロ(ナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩として)、アセスルファムK、タウマチン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、アンモニア化グリチルリチン、デキストロース、レブロース、スクロース、マンノース、スクラロース、ステビア、及びグルコースが挙げられる。
【0109】
製品の審美的外観を改善するために、着色剤を添加してもよい。好適な着色剤としては、限定するものではないが、FDAなどの適切な規制機関によって承認された着色剤、及び欧州食品医薬品指令に列挙されている着色剤が挙げられ、TiOなどの顔料、並びにFD&C及びD&C染料などの色素を含む。
【0110】
細菌増殖を防止するために、防腐剤もまた、口腔ケア組成物に添加されてもよい。メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、及び安息香酸ナトリウムなどの、口腔用組成物中での使用が承認された適切な防腐剤を、安全かつ有効な量で添加することができる。
【0111】
二酸化チタンもまた本発明の組成物に加えられてもよい。二酸化チタンは、組成物に不透明度を加える白色粉末である。二酸化チタンは、一般に、口腔ケア組成物の約0.25重量%~約5重量%を含む。
【0112】
減感剤、治癒剤、他の齲蝕予防剤、キレート剤/金属イオン封鎖剤、ビタミン、アミノ酸、タンパク質、他の抗歯垢/抗歯石剤、乳白剤、抗生物質、抗酵素類、酵素類、pH調整剤、酸化剤、酸化防止剤などの他の成分を、口腔ケア組成物中で使用することができる。
【0113】
口腔ケア組成物の形態
スズ、単座配位子、及び/又は多座配位子の送達に好適な組成物としては、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2018/0133121号の乳化組成物、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2019/0343732号の単位用量組成物などの単位用量組成物、リーブオン型口腔ケア組成物、詰まった乳化剤、歯磨組成物、マウスリンス組成物、マウスウォッシュ組成物、歯磨ゲル、歯肉縁下用ゲル、マウスリンス、ムース、フォーム、マウススプレー、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭予防用溶解ストリップ、義歯ケア製品、義歯用接着剤製品、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0114】
方法
口腔ケア組成物は、本明細書に記載されるように、口腔に適用される場合、歯の再石灰化などの口腔衛生に関わる利益をもたらし得る。例えば、ユーザは、本明細書に記載の好適な口腔ケア組成物の少なくとも1インチのストリップを、歯ブラシ、アプリケータ、及び/又はトレイなどの口腔ケア器具上に分配し、口腔及び/又は歯に適用することができる。
【0115】
ユーザは、少なくとも30秒間、少なくとも1分間、少なくとも90秒間、又は少なくとも2分間、1日につき少なくとも1回、少なくとも2回、又は少なくとも3回、歯を徹底的にブラッシングするように指示され得る。ユーザはまた、口腔ケア組成物をブラッシング手順の完了後に吐き出すように、指示され得る。ユーザはまた、ブラッシング手順の完了後に、治療量のフッ化物を含むマウスウォッシュ組成物及び/又は治療量のフッ化物を含むマウスリンス組成物ですすぐように指示され得る。ユーザはまた、治療量のフッ化物を含む組成物以外の、水道水又はボトル入り水を含むいかなる液体でも、すすがないように指示され得る。口腔ケア組成物の適用により、歯の再石灰化などの口腔衛生に関わる利益がもたらされる可能性があるため、口腔ケア組成物の適用及び吐き出し後に口腔をすすいでしまうと、歯の表面から残留フッ化物を除去してしまい、それによって口腔衛生に関わる利益を少なくとも部分的に損ねてしまうおそれがある。
【0116】
口腔ケア組成物の歯への適用などの、口腔内での口腔ケア組成物の使用の結果生じる可能性のある他の口腔衛生に関わる利益としては、歯の密度を増加させること、歯からのカルシウムの喪失を防止すること、エナメル質における構造的脆弱性を修復すること、ユーザの歯の寿命を延ばすこと、エナメル質の構造密度を増加させること、再構築される鉱物でエナメル質をコーティングすること、及び/又は歯を再石灰化することが挙げられる。
【0117】
本明細書には、歯の密度を増加させること、歯からのカルシウムの喪失を防止すること、エナメル質の構造的脆弱性を修復すること、ユーザの歯の寿命を延ばすこと、エナメル質の構造密度を増加させること、再構築される鉱物でエナメル質をコーティングすること、及び/又は歯を再石灰化することを行うための方法であって、本明細書に記載の口腔ケア組成物を少なくとも1分間、1日につき2回、本明細書において説明されるように、適用することをユーザに指示することを含む方法が開示される。本方法はまた、口腔ケア組成物を吐き出すことと、口腔をすすがないこと又は口腔を治療量のフッ化物を含む組成物でのみすすぐこととを、ユーザに指示することを含み得る。
【0118】
また、歯を稠密化する方法も本明細書に開示される。本明細書に記載されるように、「稠密化」は、本開示の組成物が、(i)製造後であるが使用前の、第一スズイオンの効果的なキレート化を通じた表面保護を提供することができ、かつ(ii)亜鉛又は他の競合金属イオンの除去を通じてなど、フッ化物イオンの利用可能性を改善することによる再石灰化を提供することができるということを意味する。
【0119】
理論に束縛されるものではないが、1ヶ月、6ヶ月、1年、5年、10年、15年、20年、25年、30年、及び/又は一生涯にわたって本開示の組成物を使用することにより、図1の左側などの、通常の日常使用中に典型的に起こる、歯の稠密度の増加及び/又は歯の材料の喪失の低減をもたらし得ると考えられる。また、図2は、一生の過程にわたる歯の材料の喪失の影響を示す。図2Aは、使用前の画像であり、図2Bは、使用後の画像であり、本開示の組成物を使用しない場合の、一生の過程にわたる歯の材料の喪失を表示している。図3は、本開示の組成物が、一生の過程にわたる歯の材料の喪失を低減するのに及ぼし得る、潜在的な影響力を示す。図3Aは、使用前の画像であり、図3Bは、使用後の画像であり、本開示の組成物を使用した場合の、一生の過程にわたる歯の材料の喪失を表示している。
【実施例
【0120】
本発明は、以下の実施例によって更に例示され、これは、いかなる方法であっても本発明の範囲に制限を課すものとして解釈されるべきではない。本明細書の説明を読んだ後に、本発明の趣旨又は添付の特許請求の範囲の範疇から逸脱することなく、それらの様々な他の態様、修正、及び均等物が、当業者に想到され得る。
【0121】
組成物
【0122】
【表1】
【0123】
表1は、本明細書に記載の組成物を提供する。実施例1は、フッ化第一スズ、シリカ研磨剤、及びクエン酸亜鉛を含む。実施例2は、フッ化第一スズ、シリカ研磨剤を含むが、いかなる亜鉛塩も含まない。作製後、実施例の組成物は、室温で約6ヶ月にわたって経時劣化させた。Crest(登録商標)Cavity Protection(Procter&Gamble(Cincinnati,OH,USA))の、その本来のpH(約pH7)での活性に対する、各組成物中の可溶性フッ化物の活性を、様々なpH条件下で決定し、表8に示した。
【0124】
スラリーのフッ化物含有量の決定
約15gの練り歯磨きを、シリンジからいかなる空気も排除するように、注意深く60mLのシリンジに入れた。第2のシリンジには、シリンジからいかなる空気も除外するように、45gの超純水18MΩ(DI)水を注意深く分配した。2つのシリンジを、ルアーロックコネクタを介して一体にロックし、組成物が完全に混合されるまで、約2分間の間にピストンを交互に少なくとも20回、前後に往復させた。得られたスラリーをシリンジから十字形の撹拌棒を含むビーカーに排出した。
【0125】
得られたスラリーを磁気撹拌プレートミキサー上に置き、pH及びフッ化物イオン選択性電極(Thermo Scientific(Waltham,MA)、Orion、96-09-00)をスラリーに入れた。両方の電極は、製造業者の指示に従って事前に較正された。TISAB II溶液(Sigma Aldrich、Merck KGaA(Darmstadt,Germany))で1:1に希釈されたフッ化物標準を使用して、フッ化物イオン選択性電極の検量線を作成した。撹拌プレートをオンにし、激しく混合するように速度を選択した。pH及びフッ化物の測定値が同時に、それらの値を記録する前に両方の電極が安定化しているのを保証しながら、1NのHCl又は1NのNaOHを滴下してpHを操作している間に得られた。酸又は塩基を添加してから、撹拌プレートをオフにして、電極を安定化させた。測定値を記録し、手順を繰り返して、各練り歯磨きのフッ化物活性曲線を作成した。
【0126】
人工齲蝕病変再石灰化方法
この病変再石灰化法(Lesion Remineralization Method、LRM)を使用して、口腔内硬質組織の密度の増加を定量化した。
【0127】
齲蝕のないヒトの歯(生え出ている第3大臼歯、大臼歯、及び前大臼歯)を、亀裂を含まない好適な開口部(約4×4mm)を求めて、頬側表面及び舌側表面について立体顕微鏡(Leica Microsystems Inc.(Buffalo Grove,IL)のLeica M80)下で検査した。好適な開口部に鉛筆で印を付し、これらの試料をコアリングのためにとっておいた。ダイヤモンドコアドリルを使用して、収集された歯の好適な、亀裂を含まない開口部内に、エナメル質のコアを切断することによって、試験片を調製した。各試験片を、直径1/4インチのLuciteロッドに取り付け、歯科用アクリル(Reliance Manufacturing Company(Worth,IL,USA)のDuraters)を使用して、自然な表面を除く全ての側面を覆った。試験片を、600グリットの炭化ケイ素-水スラリーで研磨して、約50μmの外部エナメル質を除去した。次いで、試験片をガンマアルミナ(Buehler Limited(Lake Bluff,IL,USA)のLinde No.3、ABガンマ研磨アルミナ)で更に90分間研磨した。表面に視認できる欠陥があることがわかった試料を除去した。次いで、試料を以下のように調製した:
1)新たに研磨された表面をコンディショニングするためのフッ化物前処理、
2)人工齲蝕病変の作製、
3)多孔質拡散制御フィルムの取り付け、
4)人工齲蝕病変の再石灰化、及び最後に、
5)再石灰化された人工齲蝕病変の分析。
【0128】
要約すると、調製されたヒトエナメル質ロッド試験片を、24時間にわたりフッ化物で予浸することで前処理し、次いで、鉱質除去溶液に36時間曝露して病変を作成した。次いで、各1日が、第1の歯磨剤処理と、続く第2の歯磨剤処理としての再石灰化溶液中への浸漬からなる、30日間のサイクルレジメンに試験片を供した。試料は、再石灰化溶液中に一晩放置した。サイクルの終わりに、病変は、矢状に断面をとられて、樹脂に埋め込まれ、研磨され、鉱物含有量について分析された。有効性は、非フッ化物/シリカ練り歯磨き又はNaF/シリカ練り歯磨きとしての1100ppmのフッ化物に対する、エナメル質再石灰化の量を比較することによって決定した。各処置群におよそ24個の試験片を使用した。
【0129】
以下の処理及び試薬を研究に使用した。
【0130】
実験処理
歯磨剤製品を1:3(ペースト:水)スラリーとして処理した。スラリーは、均一性を確保するのに適切なミキサー内で、超純水を用いてペーストを1分間均質化することによって形成した。
【0131】
【表2】
【0132】
表2のフッ化ナトリウムストック溶液は、まず必要な最終容量の10%を残してビーカーに水を添加し、表2に示されるようにフッ化ナトリウムを添加して、完全に混合されるまで撹拌し、次いで、メスフラスコに移して、1000mLに達するように残りの水を加えることによって作製した。
【0133】
【表3】
【0134】
表3のリン酸ナトリウムストック溶液は、まず必要な最終容量の10%を残してビーカーに水を添加し、表3に示されるようにリン酸ナトリウムを添加して、完全に混合されるまで撹拌し、次いで、メスフラスコに移して、1000mLに達するように残りの水を加えることによって作製した。
【0135】
【表4】
【0136】
表4の塩化カルシウムストック溶液は、まず必要な最終容量の10%を残してビーカーに水を添加し、表4に示されるように塩化カルシウムを添加して、完全に混合されるまで撹拌し、次いで、メスフラスコに移して、1000mLに達するように残りの水を加えることによって作製した。
【0137】
【表5】
【0138】
試料を、病変の作製の開始前にフッ化物ストック溶液中で一晩インキュベートして、試験片の表面の過剰な侵食を防止した。表5のフッ化物予浸ストック溶液は、まず必要とされる最終体積の20%を残してビーカーに水を添加し、表5に示されるようにリン酸ナトリウムストック溶液を添加し、完全に混合されるまで撹拌し、次いで表5に示されるように塩化カルシウムストック溶液を添加し、次いで表5に示されるようにフッ化ナトリウムを添加し、完全に混合されるまで撹拌し、次いで表5に示されるように塩化ナトリウムを添加し、完全に混合されるまで撹拌することによって作製した。表5に示すように水酸化ナトリウムを使用してpHを5.1に調整し、次いで溶液をメスフラスコに移し、残りの水を添加して1000mLにした。各使用前に、pHを再測定し、必要に応じてpH5.1に調整した。
【0139】
【表6】
【0140】
鉱質除去溶液は、プラークの酸によって生成されたものと同様の酸負荷として機能した。Carbopolの添加により、病変形成中に、すり砕かれ、研磨される試験片コアを侵食から保護するのに役立った。
【0141】
表6の病変形成のための鉱質除去溶液は、まず必要とされる最終体積の20%を残してビーカーに水を添加し、表6に示されるように酢酸を添加し、完全に混合されるまで撹拌し、次いで表6に示されるようにリン酸ナトリウム溶液を添加し、次いで表6に示されるようにステップ4の水酸化ナトリウムストック溶液を添加し、次いで塩化カルシウムストック溶液を、完全に混合されるまで撹拌しながら非常にゆっくりと(滴下して)添加し、次いでpHを4.3に調整することによって作製した。次に、Carbopolを秤量し、撹拌しながら溶液に添加した。溶液をプラスチック製ラップで覆い、Carbopolが溶液に完全に取り込まれるまで一晩撹拌した。翌日、表6に示されるようなステップ9の水酸化ナトリウム溶液を滴下して添加し、pHを4.3に調整した。最後に、溶液をメスフラスコに移し、水を添加して溶液の体積を1000mLにした。使用前にpHを毎回確認し、pH4.3に調整する。
【0142】
【表7】
【0143】
表7の再石灰化溶液は、まず必要とされる最終体積の10%を残してビーカーに水を添加し、次いで表7に示されるように硝酸カルシウムを添加し、完全に混合されるまで撹拌し、次いで表7に示されるようにリン酸カリウムを添加し、完全に混合されるまで撹拌し、次いで表7に示されるように塩化カリウムを添加し、完全に混合されるまで撹拌し、次いで表7に示されるようにBisTrisを添加し、完全に混合されるまで撹拌することによって作製した。次いで、塩酸を滴下して添加してpHを7.0(6.95~7.05)に調整した。次いで、溶液を、メスフラスコに移し、水を添加して、表7に示すように、体積を4000mLにした。各使用前に、pHを確認し、必要に応じてpH7.0に調整した。
【0144】
処理手順
試験片を最初にフッ化物予浸溶液に曝露して、すり砕かれ、研磨されたエナメルの表面をコンディショニングした。1試験片当たりフッ化物予浸溶液10mLを、ディープウェルリザーバに添加した。試験片ホルダーをリザーバの上に置き、各試験片の端を確実に溶液に浸漬した。次いで、試験片を37℃で、穏やかに振盪しながら24時間インキュベートした。インキュベーション後、試験片をフッ化物予浸溶液から除去し、超純水ですすいだ。予浸は、その週の十分に早い時期に完了しなければならず、それにより、病変形成の完了、次いでバイオフィルムの平衡化、及び週末の前に少なくとも1回の処理サイクルを完了することが可能になる。
【0145】
次いで、試験片を病変形成のために鉱質除去溶液に曝露して、人工齲蝕病変を作製した。1試験片当たり鉱質除去溶液10mLを、ディープウェルリザーバに添加した。試験片ホルダーをリザーバの上に置き、各試験片の端を確実に溶液に浸漬した。次いで、試験片を37℃で、撹拌せずに36時間インキュベートした。鉱質除去期間の終了時に、試験片を水で十分にすすいだ。
【0146】
次いで、試験片を多孔質拡散制御フィルム内に入れた。この多孔質拡散制御フィルムは、試験片表面と処理スラリー又は再石灰化溶液との間の密接な接触を可能にする窓を有する、材料の3つの層及びプラスチックシュラウドから調製された。層は、0.25インチの穴パンチを使用して、まず厚いクロマトグラフィー用セルロースペーパー(グレード238、Ahlstrom、7×8cm、VWR(USA))にパンチで穴を開けて、得られた円形の紙を回収することによって調製した。各試験片は、約700μmの厚さの多孔質拡散制御フィルムを作成するために、2つのセルロース層を必要とした。綿ガーゼ(ポリエステルレーヨン不織ガーゼ、VWR(USA))製の第3の層を、0.25インチの穴パンチを使用して穴開けし、得られた円形のガーゼを回収した。各試験片には、綿ガーゼ製の1つの層が必要であった。プラスチックシュラウドは、小さな穴が平坦な表面上で下方に向くように配置された、カップスリーブワッシャキャップ(電気絶縁カップスリーブワッシャ、穴径は直径4mmにドリルで開口、McMaster-Carr(USA))から作製された。次いで、1つのガーゼ層、続いて2層のセルロースを、カップスリーブワッシャの底部内に穏やかに押し込んだ。各試験片について、キャップ/拡散制御媒体を準備した。キャップ組み立ててから、エナメル質の端部を覆うように、各試験片ロッドの端部に1つを置いた。キャップが上向きになった状態で、各ロッドを超純水で予め湿らせ、キャップ側を再石灰化溶液中に配置する前に抱水させて、キャップ下に気泡がトラップされるのを回避した。キャップがしっかりと固定されない場合、そのキャップを機械的にきつく嵌合するキャップと交換した。シュラウドの下の処理スラリーの漏れを防止し、その後、エナメル質の表面に直接接触するように、キャップが試験片の周りに均一に嵌合することが重要である。次いで、処理サイクルが翌朝に始まるまで、キャップされた試験片を200mLの再石灰化溶液に一晩入れた。
【0147】
処理サイクルは、以下に示されるように24時間ごとに行われ、合計30日間繰り返された。試料は、週末/非処理期間にわたって、37℃のインキュベーター内の静止した再石灰化溶液中に放置された。
1)準備:各処理群について、処理リザーバ、すすぎリザーバ、及び2つの再石灰化リザーバにラベルをつけた。開始前に全ての必要なリザーバにラベルをつけた。すすぎリザーバには、100mLの超純水を充填した。再石灰化リザーバには、200mLの再石灰化溶液を充填した。
2)スラリー作製:非エアレーション技術を使用して、完全に均質化するまで、1部の歯磨剤(15g)を3部の超純水(45g)で1分間混合することによって、歯磨剤スラリー(水中の25%ペースト)を調製した。スラリーの総体積は、処理ごとに約60mLに相当した(この体積は、処理リザーバを適切なレベルに充填するための最小限の量であった)。処理する際、試験片表面が処理スラリー内に確実に沈められるようにした。
3)朝の処理:試験片をスラリーに浸漬し、タイタープレートシェーカー(ThermoFisher,USA)で2分間、速度2で撹拌した。スラリーは、処理の直前に混合し、使用後には廃棄した。
4)すすぎ:2分間の処理後、試験片を処理リザーバからすすぎリザーバに移した。すすぎ用超純水内で試験片を20秒間、タイタープレートシェーカーで撹拌してすすいだ。各処理群を、異なるすすぎリザーバですすいで、処理物間でのキャリーオーバーを回避した。すすぎ水は、使用後に廃棄した。
5)昼間の再石灰化期間:朝の処理及びすすぎ後、試験片を新しい再石灰化溶液に入れ、使用済みの再石灰化溶液を廃棄した。試験片を、撹拌せずに、37℃で6時間インキュベートした。
6)午後の処理、すすぎ:ステップ3及び4のように試験片を処理し、すすいだ。
7)夜間再石灰化期間:午後の処理及びすすぎ後、試験片をそれぞれの昼間の再石灰化溶液に戻し、撹拌せずに、37℃でインキュベーターに一晩入れた。
8)繰り返し:翌朝、全てのステップ1~7を、前と同様に繰り返した。試料は、週末にわたって再石灰化溶液内に放置された。
【0148】
サイクル後、試験片をそれらのキャップから注意深く分離させて、完全にすすいだ。試験片表面に触れないように注意した。次いで、高精度ダイヤモンド鋸を使用して、各試験片を、病変窓を通して垂直に(処理された表面から病変を通して)半分に切断した。試験片を、直径40ミリメートルの丸形ブロックに、一緒に(ブロック当たり最大12個)群としてマウントして、VersoCit 2低温固化アクリル樹脂(Struers(Cleveland,OH,USA))で、切断面を除く全ての表面を覆った。固化してから、断面マイクロ硬度インデント用の表面の視覚化を可能にするために、各ブロックを、水で濡らした600グリットのサンドペーパーを使用したStruers製Tegramin-30ポリッシャを使用してサンディング及び研磨し、次いで9、3、及び1μmのDiaProダイヤモンド研削材で製造業者(Struers(Cleveland,OH,USA))の指示に従って一連の液体研磨を行った。研磨後、ブロックは分析する準備が整う。
【0149】
断面の損傷は、以下の方法を用いて凹設された。研磨後、病変を横切り、その下にある健常なエナメル質の中に、規則的な間隔で、ダイヤモンドの長軸を、外側エナメル質表面に平行にして窪みを作った。Knoopダイヤモンド(Wilson Hardness Tukon 1202、Buehler(Illinois Tool Worksの一部門(Lake Bluff,IL))を10又は50グラムの負荷の下で使用した。10グラムの負荷を使用して、歯の表面から13マイクロメートルの第1の窪みを作製した。追加の窪みを、13マイクロメートル刻みで病変の本体を通して作製し、合計7個の10グラムの負荷の窪みを直線状に得た。50グラムの負荷を使用して、健常なエナメル質に、最後の10グラムの負荷の窪みから25マイクロメートルの窪みを作成し、また合計8個の50グラムの負荷の窪みのために25マイクロメートルの間隔の窪みを作成した。このプロセスを繰り返し、各試料が、病変部本体にわたっての平均硬度を評価するための2本の窪みの線を有するようにした。Knoop硬度番号(Knoop hardness number、KHN)を、式1を用いて体積百分率鉱物(体積%鉱物)に変換した。
【0150】
【数1】
【0151】
鉱物喪失の体積%(鉱物喪失)は、総積分面積と、測定点からの正規化された体積百分率鉱物値から得る積分領域との間の面積として計算した。総積分面積は、健常なエナメル質領域について判定された平均体積百分率鉱物値のマイクロメートル単位での測定点の範囲に対応する。面積の計算は、台形公式を使用した。処理群の平均ミネラル喪失は、処理群内の各試料の鉱物喪失を平均化することによって得た。
【0152】
また、デジタル画像を記録するために、Moticam 2300(Motic America(Motic America,Richmond,British Columbia,Canada))を装備したNikon Optiphot-2顕微鏡(Nikon(日本))を使用して、5倍の倍率で、反射した明視野照明下で、顕微鏡画像を得た。画像をグレースケールに変更し、画素の明度範囲が0~255となるように調整した。病変本体の代表的な部分にわたる画像(100×250ピクセル)の領域を、明度の値を補間することによって、体積%鉱物に変換した(0体積%鉱物=画素の明度0、87体積%鉱物=画素の明度255)。硬度測定中に得られた窪みの長さを使用して画素の長さを較正した。病変プロファイルを統合して鉱物喪失を得て、各処理条件について比較した。
【0153】
【数2】
【0154】
侵食サイクル法
表2による侵食サイクル中に観察されたエナメル質喪失は、侵食酸負荷の開始及び進行の両方に対して歯の表面を保護するための口腔ケア組成物の相対的能力を評価した、インビトロモデルによって決定された。このモデルは、インサイチュモデルでの臨床的結果を予想するために相関された。簡潔に言えば、試験ごとに5群の歯の試験片を、5日間にわたって20回(1日4回)の処理サイクルを通してサイクルさせた。各処理は、以下に従って繰り返して進行した:
1)練り歯磨きスラリーへの2分間の曝露、
2)多量の脱イオン水でのすすぎ、
3)新たに回収されたヒト唾液の全体への60分間の曝露、
4)1%(w/q)のクエン酸の溶液中での10分間の侵食負荷、
5)多量の脱イオン水でのすすぎ、
6)新たに回収されたヒト唾液の全体への60分間の曝露。
試料を、ヒト唾液中で、一晩、冷蔵庫内で保存した。
【0155】
本明細書で使用される侵食サイクル法は、Eversole et al.,Erosion Prevention Potential of an Over-the-Counter Stabilized SnF Dentifrice Compared to 5000 ppm F Prescription-Strength Products.J.Clin.Dent.26(2015)44-49に詳細に説明されており、この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0156】
上記の方法に対し唯一変更したのは、エナメル質試料の数を増加させたことと、光学的プロフィロメーター(Contour GT 3D光学顕微鏡(Bruker USA(Tucson,AZ,USA))を使用して、侵食された試料の三次元表面トポグラフィを測定したこととである。無侵食のマスクされた基準表面に対して、酸侵食によって引き起こされる空隙の体積を積分し、それを酸に露出されたエナメル質の領域で除算することによって、平均侵食深度を決定した。3次元測定値の分析は、TalyMap 3D(Taylor Hobson USA(West Chicago,IL,USA))で行った。
【0157】
Crest Cavity Protection(1100ppmのFをNaFとして含有、Procter&Gamble(Cincinnati,OH,USA))及びCrest ProHealth Advanced Deep Clean Mint(1100ppmのFをSnFとして含有(Procter&Gamble(Cincinnati,OH,USA)))を、それぞれ陰性対照及び陽性対照として使用した。陰性対照及び陽性対照のエナメル質喪失の差が、式IIIによる陰性対照のエナメル質喪失の値の25%超である場合にのみ、試験の結果は有効である。この条件が満たされていない場合、試験を繰り返す必要がある。
【0158】
【数3】
【0159】
【表8】
【0160】
表8は、Crest Cavity Protectionスラリーのその本来のpHでの可溶性フッ化物活性(約pH7で100%)に対する、種々のpH条件下での可溶性フッ化物活性を示す。また、全てのpH範囲にわたって、実施例2(Znを含まない)は、実施例1(クエン酸亜鉛を含む)よりも、練り歯磨きスラリーにおいてより高いフッ化物活性を示した。
【0161】
【表9】
【0162】
表9の%再石灰化の結果は、フッ化物又は歯石形成を妨害する薬剤の非存在下で、NaF含有生成物中のフッ化物含有量が増加すると、エナメル質に回復する鉱物の量が増加することを示している。これは、エナメル質基材の鉱物含有量及び/又は鉱物密度を増加させた直接的結果であると考えられている。抗歯石剤の不在下では、%再石灰化密度増加に関する、SnFの性能は、NaFに対して違いはない(Crest Cavity Protection、1100ppmのFと比較した実施例2)。理論に束縛されるものではないが、フッ化物の作用機序を妨害することなく、Snの反応性が最適化されて、週末のエナメル質の密度が増大し、同時にクエン酸Znを除去してフッ化物の利用可能性を高めていることが考えられる。(i)クエン酸Zn(フッ化物と錯体を形成することができる化合物)又は(ii)ピロリン酸Na(カルシウムの飽和度を調節することができる化合物)の存在下では、再石灰化効果は低減され、エナメル質の密度の回復がより少なくなる。
【0163】
表9の%侵食低減の結果は、フッ化物を妨害又は歯石形成を妨害する薬剤の非存在下では、フッ化物含有量を増加させると、侵食低減の量が増加するが、その増加量はわずかのみであるということを示している。フッ化物それ自体は、侵食酸(食事由来の酸)に対する鉱物の密度喪失を防止するためには、不十分な薬剤である。更にクエン酸Zn及びピロリン酸Naのような抗歯石剤は、侵食を低減するのに役立つことが知られている。したがって、抗歯石剤を除去することによって、%再石灰化を増加させると同時に、%侵食低減を全く犠牲にしないことが予想外であった。表9の結果が示すように、実施例2の組成物は、Crest Cavity Protection、1100ppm Fに匹敵する%再石灰化値でエナメル質密度を増加させる一方で、エナメル質の密度を保護し、大きな量の%侵食低減を提供することができる。理論に束縛されるものではないが、実施例2における適切なSn安定化を通して、キレート化不足となってエナメル質表面に結合して再石灰化を妨げることがなく、同時に、過剰にキレート化して、エナメルとの反応を防止して侵食を防止することを妨げることのない、Sn種を実現したと考えられる。これは、実施例1の場合には不可能であり、Snの安定化が最適ではなく、クエン酸Znが存在する実施例1では、%再石灰化及び%侵食減少の両方とも、高いレベルで実現することができなかった。抗齲蝕剤であるSnF中のSnの反応性を最適に調節することにより、再石灰化を通して歯の密度を増加させることができるとともに、侵食に対する保護により密度喪失を防止することができる口腔ケア組成物が提供される。本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0164】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいかなる発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0165】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
【国際調査報告】