(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】ジカルボン酸を含む口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/21 20060101AFI20230526BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230526BHJP
A61K 8/362 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
A61K8/21
A61Q11/00
A61K8/362
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564838
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 US2021030752
(87)【国際公開番号】W WO2021226154
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】マイケル、デイビッド、カーティス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー、フレドリック、グロート
(72)【発明者】
【氏名】ポール、アルバート、セーゲル
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル、ジェームズ、セント、ジョン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB012
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB242
4C083AB281
4C083AB282
4C083AB291
4C083AB321
4C083AB331
4C083AB332
4C083AB432
4C083AB471
4C083AB472
4C083AC121
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC291
4C083AC292
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC581
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC862
4C083AD011
4C083AD041
4C083AD211
4C083AD222
4C083AD352
4C083CC41
4C083EE32
4C083EE35
(57)【要約】
口腔ケア組成物は、ジカルボン酸及びフッ化物を含む。口腔ケアキットは、フッ化物を含む第1の口腔ケア組成物と、ジカルボン酸を含む第2の口腔ケア組成物とを含む。フッ化物及びジカルボン酸を含む口腔ケア組成物は、向上した虫歯予防効果、汚れ防止効果、及び/又は汚れ除去効果をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔ケア組成物であって、
(a)ジカルボン酸であって、好ましくはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、タプシン酸、日本酸、フェロゲン酸、エキセトール酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、フタル酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、タルトロン酸、メソシュウ酸、ジヒドロキシマロン酸、フマル酸、テレフタル酸、これらの塩、又はこれらの組み合わせを含むジカルボン酸と、
(b)フッ化物であって、好ましくはフッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化アミン、又はこれらの組み合わせを含むフッ化物と、を含み、
前記口腔ケア組成物のpHが約4~約7であり、好ましくはpHが約4.5~約6である、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記口腔ケア組成物がスズを含み、好ましくは前記スズが、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記口腔ケア組成物がポリリン酸塩を含み、好ましくは前記ポリリン酸塩が、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
前記口腔ケア組成物が、ポリリン酸塩を含まない、本質的に含まない、又は実質的に含まない、請求項1又は2に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
前記口腔ケア組成物が亜鉛を含み、好ましくは前記亜鉛が、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
前記口腔ケア組成物が、亜鉛を含まない、本質的に含まない、又は実質的に含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
前記口腔ケア組成物が、単座配位子、多座配位子、又はこれらの組み合わせを含み、好ましくは、前記口腔ケア組成物が、約1:0.5:0.5~約1:5:5のスズ対単座配位子対多座配位子のモル比を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
前記口腔ケア組成物が増粘剤を含み、好ましくは前記増粘剤が多糖類、ポリマー、シリカ増粘剤、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項9】
前記口腔ケア組成物が研磨剤を含み、好ましくは前記研磨剤がシリカ研磨剤、カルシウム研磨剤、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項10】
前記シリカ研磨剤が沈降シリカを含む、請求項9に記載の口腔ケア組成物。
【請求項11】
前記カルシウム研磨剤が、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、又はこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の口腔ケア組成物。
【請求項12】
前記口腔ケア組成物がアミノ酸を含み、好ましくは前記アミノ酸が塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、中性アミノ酸、又はこれらの組み合わせを含み、より好ましくは前記アミノ酸がグリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、ロイシン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、シトルリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項13】
前記口腔ケア組成物が美白剤を含み、好ましくは前記美白剤が過酸化物、ポリリン酸塩、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項14】
前記口腔ケア組成物が保湿剤を含み、好ましくは前記保湿剤がグリセリン、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項15】
前記口腔ケア組成物が、追加の水を含まないか、水を含むか、又は前記組成物の最大45重量%の水を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のオーラルケア組成物。
【請求項16】
前記口腔ケア組成物が、約50ppm未満、約45ppm未満、約40ppm未満、約30ppm未満、又は約25ppm未満のカルシウム損失をもたらす、請求項1~15のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジカルボン酸及びフッ化物を含む口腔ケア組成物に関する。本発明はまた、虫歯予防活性及び/又はフッ化物摂取が予想外に改善された口腔ケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔ケア組成物は、虫歯予防薬としてフッ化物を含むことができる。具体的には、特にフッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、及び/又はモノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッ化物イオン源を歯磨剤組成物に添加して、虫歯予防効果をもたらすことができる。
【0003】
フッ化物イオンは、フッ化物イオンをエナメル質に取り込むことにより虫歯予防効果をもたらす。フッ化物と、歯のミネラル成分(ヒドロキシアパタイト又はHAPとして知られる)との相互作用により、HAP中のOH-がF-に置換されることによって、フルオロヒドロキシアパタイト(fluorohydroxyapatite、FAP)ミネラルが生成される。フッ化物がFAPとして歯エナメル質に取り込まれると、水素結合が増加し、結晶格子が密になり、歯エナメル質の溶解度が全体的に低下する。ヒドロキシアパタイト(HAP)格子へのフッ化物の取り込みは、歯が形成されている間、又は歯が萌出した後のイオン交換によって発生する可能性がある。したがって、歯エナメル質を強化するために、フッ化物は、常に歯磨剤及び口内洗浄液に添加されている。
【0004】
口腔ケア組成物にフッ化物を添加する能力は、規制によって制限されている。多くの国では、フッ化物は虫歯予防薬として規制されているため、口腔ケア組成物は規定された量及び/又は濃度のフッ化物イオンのみを有することができる。より高い濃度のフッ化物イオンを含む組成物は、より高い虫歯予防効果をもたらすことができるが、意図せずに飲み込んだ場合に安全上の懸念が生じる可能性がある。したがって、これらの組成物は、歯科専門家によって処方及び/又は適用されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、規制された量のフッ化物を含むが、フッ化物の活性又は有効性を増強又は補完するように設計された成分を含む、抗虫歯活性が増加した口腔ケア組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、(a)ジカルボン酸及び(b)フッ化物を含む口腔ケア組成物が開示されており、口腔ケア組成物のpHは約4~約7である。
【0007】
また、本明細書では、(a)フッ化物を含む第1の口腔ケア組成物と、(b)ジカルボン酸を含む第2の口腔ケア組成物とを含む口腔ケアキットが開示されている。
【0008】
また、本明細書では、(a)フッ化物を含む第1の口腔ケア組成物を使用者の口腔に適用することと、(b)ジカルボン酸を含む第2の組成物を使用者の口腔に適用することとを含む口腔ケアレジメンが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、フッ化物を有し、存在するフッ化物の量に対して予想外に高い虫歯予防効果をもたらす口腔ケア組成物に関する。齲蝕又は虫歯は、細菌によって作られた酸による歯の分解である。虫歯は、細菌が、エナメル質、象牙質、及び/又はセメント質などの歯の硬組織を溶解するによって産生される酸によって引き起こされる。この酸は、細菌が歯の表面の食べかす又は砂糖を分解するときに細菌によって産生される。
【0010】
フッ化物イオンは、細菌によって産生される酸「プラーク酸」に対して歯の表面を溶解しにくくすることによって虫歯予防効果をもたらす。歯のエナメル質はヒドロキシアパタイト(Ca5(PO4)3(OH))でできている。ヒドロキシアパタイトは、pH5.5未満でエナメル質から溶解することができる(脱灰)。ヒドロキシアパタイトがフッ化物イオンの存在下で脱灰されると、フルオロアパタイト(Ca5(PO4)3(F))が歯のエナメル質の表面に再石灰化する可能性がある。要するに、このプロセスは、ヒドロキシル(OH)イオンをフッ化物(F)イオンで置換することである。フルオロアパタイトは、酸性条件下でもヒドロキシアパタイトよりも本質的に溶解しにくい。したがって、フッ化物は虫歯予防薬として作用し、歯の表面をプラーク酸に対してより耐性にし、より溶解しにくくする。
【0011】
シュウ酸及びその塩は、米国特許第5,026,539号などの文献において、プラークバイオフィルムの酸産生性を低下させる能力により虫歯予防薬として開示されている。このメカニズムはよくわかっていない。更に、Poileらの欧州特許第0242977号は、pH範囲4~10のフッ化物を含む虫歯予防組成物を開示している。pH制限の理由は開示されていない。
【0012】
重要なことに、本明細書に開示されるように、4.5未満のpHで、フッ化物、及びシュウ酸塩などのジカルボン酸を含む歯磨剤組成物は、エナメル質表面の脱灰をもたらした。したがって、シュウ酸塩及びフッ化物の組み合わせは、Poileによって開示された全pH範囲にわたって作用しなかった。したがって、本発明は、シュウ酸及びその塩などのジカルボン酸をフッ化物と組み合わせて含む組成物をもたらし、この組成物は、虫歯予防効果を増加させたが、エナメル質への損傷にはつながらなかった。予想外に、エナメル質の脱灰を防ぐためにpH範囲を制限する必要があった(pH4.5未満)。
【0013】
理論に拘束されることを望まないが、開示された口腔ケア組成物は、エナメル質の溶解度を低下させ、プラーク酸攻撃中のエナメル質損失の減少に寄与するための追加のメカニズムを有すると考えられる。開示された口腔ケア組成物のシュウ酸アニオンは、その後の酸損傷に対して中程度のpH範囲で適用された場合、エナメル質表面を安定化させると考えられる。シュウ酸アニオンは、歯からのカルシウムと反応し、低pHで形成される、式1による酸不溶性の安定相を形成することができる。
【0014】
【0015】
モノ-、ジ-、及びトリ-カルボン酸の他の形態のカルシウム塩は、低pHではるかに溶けやすく、歯の表面に不溶性の沈殿物を形成しないため、低濃度での溶解防止効果は、シュウ酸アニオンに特有である。意外なことに、シュウ酸塩含有口腔ケア組成物によるプラーク攻撃に対する耐性の増強が、本明細書に記載されるように、実験室モデルで観察された。
【0016】
理論に拘束されることを望まないが、特定のpH条件で、シュウ酸アニオンは、エナメル質鉱物からカルシウムイオンを抽出して、この不溶性相を形成すると考えられる。不溶性相が形成されるまで、シュウ酸塩は、カルシウムに対するエナメル質の局所的な飽和度を低下させることにより、エナメル質表面の表面溶解度を高める。特定のpH条件及び低カルシウム含有量で(例えば、約4.5未満のpHを有する口腔ケア組成物への曝露中)、シュウ酸アニオンを適用すると、カルシウムが過剰に損失する可能性があり、エナメル質の表面が明らかに軟化する可能性がある。本発明者らは、低pHのシュウ酸塩含有口腔ケア組成物を適用して酸不溶性層を生成する過程で、当該技術分野でこれまで開示されていない測定可能な表面脱灰が生じることを予想外に発見した。したがって、シュウ酸塩及びフッ化物の虫歯予防効果は、エナメル質表面の脱灰と再石灰化のバランスがとれる約4.5~約7のpHでのみ生じる。約4.5未満のpHでは、シュウ酸塩による脱灰が過剰になり、これは、より多くの利用可能なフッ化物イオンによってもたらされる虫歯予防効果を制限する。
【0017】
定義
本明細書で使用される用語をより明確に定義するために、以下の定義が提供される。別途記載のない限り、以下の定義は、本開示に適用可能である。ある用語が本開示で使用されているが本明細書で具体的に定義されていない場合、その定義が、本明細書に適用される任意の他の開示又は定義と矛盾しない限り、又はその定義が適用される任意の請求項を不明確に又は不可能にしない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminology,2nd Ed(1997)からの定義を適用することができる。
【0018】
本発明で使用される場合、「口腔ケア組成物」という用語は、通常の使用過程において、特定の治療薬を全身投与する目的で意図的に嚥下されるものではなく、むしろ、歯の表面又は口腔組織と接触するのに十分な時間にわたって口腔内に保持される製品を含む。口腔ケア組成物の例としては、歯磨剤、歯用ゲル、歯肉縁下用ゲル、口内洗浄液、ムース、フォーム、口腔噴霧剤、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭消臭溶解性ストリップ、又は義歯ケア若しくは接着剤製品が挙げられる。口腔ケア組成物はまた、口腔表面に直接塗布又は付着するためにストリップ又はフィルム上に組み込まれてもよい。
【0019】
本明細書で使用される場合、「歯磨剤組成物」という用語は、特に指定がない限り、歯用又は歯肉縁下用ペースト、ゲル、又は液体配合物を含む。歯磨剤組成物は、単相組成物であってもよく、又は2つ以上の別個の歯磨剤組成物の組み合わせであってもよい。歯磨剤組成物は、深い縞模様、表面縞模様、多層状、ペーストをゲルで取り囲む形態、又はこれらの任意の組み合わせなど、任意の所望の形態であってもよい。2つ以上の別個の歯磨剤組成物を含む歯磨剤中の各歯磨剤組成物は、ディスペンサの物理的に分離された区画内に収容され、並んで分配されてもよい。
【0020】
本明細書で有用な「有効成分及び他の成分」は、美容的及び/又は治療的効果、又はそれらの想定される作用機序若しくは機能により、本明細書で分類又は記載することができる。しかしながら、本明細書において有用な有効成分及び他の成分は、場合によっては、2つ以上の美容的及び/又は治療的効果をもたらすか、あるいは2つ以上の作用機序を介して機能又は作用することができることを理解されたい。したがって、本明細書における分類は便宜上行われたものであり、ある成分を特に記載された機能又は列挙された活性に限定することを意図しない。
【0021】
「経口的に許容される担体」という用語は、局所口腔投与に適した1種以上の相溶性固体又は液体賦形剤又は希釈剤を含む。本明細書で使用される場合、「相溶性」という用語は、組成物の成分が、組成物の安定性及び/又は有効性を実質的に低下させるような方法で相互作用することなく、混合することができることを意味する。本発明の担体又は賦形剤は、以下により完全に記載されるように、洗口液又は口内洗浄液の通常及び従来の成分を含むことができる。洗口液又は口内洗浄液の担体物質は、典型的には、水、アルコール、保湿剤、界面活性剤、並びに香味剤、甘味料、着色剤及び/又は冷感剤などの受容性改善剤のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。
【0022】
本発明で使用される場合、「~を実質的に含まない(substantially free)」という用語は、組成物中に、示された物質が、そのような組成物の総重量に対して0.05%以下、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.001%以下しか存在しないことを指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「~を本質的に含まない(essentially free)」という用語は、示された物質が組成物に意図的に添加されたものではないこと、又は好ましくは分析的に検出可能なレベルで存在しないことを意味する。これは、示された物質が意図的に添加された他の物質のうちのいずれかの不純物としてのみ存在する組成物を含むことを意味する。
【0024】
「口腔衛生レジメン」又は「レジメン」という用語は、口腔健康のために2つ以上の別個の異なる処置ステップの使用を意味する場合がある。例えば、歯磨き粉、口内洗浄液、フロス、爪楊枝、スプレー、口腔洗浄器、マッサージ器を使用する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「総含水量」という用語は、遊離水、及び口腔ケア組成物中の他の成分によって結合される水の両方を意味する。
【0026】
本発明の目的のために、使用される関連分子量(molecular weight、MW)は、組成物を調製するときに添加される物質の分子量であり、例えば、キレート化剤がクエン酸、クエン酸ナトリウム、又は実際に他の塩形態として供給できるクエン酸塩種である場合、使用されるMWは、組成物に添加される特定の塩又は酸の分子量であるが、存在する可能性のある結晶水は無視される。
【0027】
組成物及び方法は、本明細書において、様々な成分又はステップを「含む」という観点で記載されているが、組成物及び方法はまた、別段の記載がない限り、様々な成分又はステップ「から本質的になる」又は「からなる」こともできる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、2つ以上の要素の接続詞として使用される場合に、要素を個別に、及び組み合わせて含むことを意味し、例えば、X又はYは、X又はY、又はこれら両方を意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、冠詞「a」及び「an」は、特許請求される又は記載される物質、例えば、「口腔ケア組成物」又は「漂白剤」の1つ以上を意味すると理解される。
【0030】
特に明記しない限り、本明細書で言及される測定はすべて約23℃(即ち、室温)で行われる。
【0031】
一般に、元素群は、Chemical and Engineering News,63(5),27,1985に掲載されている元素周期表のバージョンで示された番号付けスキームを使用して示される。場合によっては、族に割り当てられた共通の名前を使用して、要素の群を示すことができ、例えば、第1族元素のアルカリ金属、第2族元素のアルカリ土類金属などが挙げられる。
【0032】
いくつかの種類の範囲が本発明に開示されている。任意の種類の範囲が開示又は特許請求される場合、範囲の端点並びにその中に包含される任意の部分範囲及び任意の部分範囲の組み合わせを含めて、そのような範囲が合理的に包含し得る各可能な数を個別に開示又は特許請求することを意図している。
【0033】
用語「約」は、量、サイズ、配合、パラメータ、並びにその他の数量及び特性が正確ではなく、正確である必要はないが、所望に応じて、許容誤差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、並びに当業者に既知のその他の要因を反映して、近似的及び/又はより大きいかより小さい場合があることを意味する。一般に、量、サイズ、配合、パラメータ、又は他の数量若しくは特性は、そのようであると明示的に記載されているか否かに関わらず、「約」又は「近似的」である。「約」という用語はまた、特定の初期混合物から生じる組成物の異なる平衡状態に起因して異なる量も包含する。「約」という用語によって修飾されているか否かに関わらず、特許請求の範囲は、その量に対する均等物を含む。「約」という用語は、報告された数値の10%以内、好ましくは報告された数値の5%以内を意味し得る。
【0034】
歯磨剤組成物は、固体、液体、粉末、ペースト、又はこれらの組み合わせなどの任意の適切な形態であり得る。口腔ケア組成物は、歯磨剤、歯用ゲル、歯肉縁下用ゲル、口内洗浄液、ムース、フォーム、口腔噴霧剤、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭消臭溶解性ストリップ、又は義歯ケア若しくは接着剤製品であり得る。歯磨剤組成物の成分は、フィルム、ストリップ、フォーム、又は繊維ベースの歯磨剤組成物に組み込むことができる。
【0035】
本明細書に記載の口腔ケア組成物は、ジカルボン酸、スズ、及び/又はフッ化物を含む。更に、口腔ケア組成物は、以下に記載されるように、他の任意の成分を含むことができる。以下のセクションヘッダーは、あくまでも便宜上提供されるものである。場合によっては、化合物は、1つ以上のセクション内に含まれることがある。例えば、フッ化第一スズは、スズ化合物及び/又はフッ化物化合物であり得る。更に、シュウ酸又はその塩は、ジカルボン酸、多座配位子、及び/又は美白剤であり得る。
【0036】
ジカルボン酸
口腔ケア組成物は、ジカルボン酸を含む。ジカルボン酸は、2つのカルボン酸官能基を有する化合物を含む。ジカルボン酸は、式Iによって定義される化合物又はその塩を含むことができる。
【0037】
【0038】
Rは、ヌル、アルキル、アルケニル、アリル、フェニル、ベンジル、脂肪族、芳香族、ポリエチレングリコール、ポリマー、O、N、P、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0039】
ジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、タプシン酸、日本酸、フェロゲン酸、エキセトール酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、フタル酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、タルトロン酸、メソシュウ酸、ジヒドロキシマロン酸、フマル酸、テレフタル酸、グルタル酸、これらの塩、又はこれらの組み合わせを含むことができる。ジカルボン酸は、例えば、シュウ酸モノアルカリ金属、シュウ酸ジアルカリ金属、シュウ酸一水素一カリウム、シュウ酸二カリウム、シュウ酸一水素一ナトリウム、シュウ酸二ナトリウム、シュウ酸チタン、及び/又はシュウ酸の他の金属塩など、ジカルボン酸の適切な塩を含むことができる。ジカルボン酸はまた、ジカルボン酸の水和物及び/又はジカルボン酸の塩の水和物を含むことができる。
【0040】
口腔ケア組成物は、約0.01%~約10%、約0.1%~約15%、約1%~約5%、又は約0.0001~約25%のジカルボン酸を含むことができる。
【0041】
フッ化物
口腔ケア組成物は、フッ化物イオン源によってもたらすことができるフッ化物を含み得る。フッ化物イオン源は、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化亜鉛、及び/又はこれらの混合物などの1つ以上のフッ化物含有化合物を含むことができる。
【0042】
フッ化物イオン源及びスズイオン源は、スズイオン及びフッ化物イオンを生成することができる同じ化合物、例えばフッ化第一スズであってもよい。更に、スズイオン源が塩化第一スズであり、フッ化物イオン源がモノフルオロリン酸ナトリウム又はフッ化ナトリウムである場合のように、フッ化物イオン源及びスズイオン源は、別個の化合物であってもよい。
【0043】
フッ化物イオン源及び亜鉛イオン源は、亜鉛イオン及びフッ化物イオンを生成することができる同じ化合物、例えばフッ化亜鉛であってもよい。更に、亜鉛イオン源がリン酸亜鉛であり、フッ化物イオン源がフッ化第一スズである場合のように、フッ化物イオン源及び亜鉛イオン源は、別個の化合物であってもよい。
【0044】
フッ化物イオン源は、フッ化第一スズを本質的に含まなくてもよく、又は含まなくてもよい。したがって、口腔ケア組成物は、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化亜鉛、及び/又はこれらの混合物を含むことができる。
【0045】
口腔ケア組成物は、約50ppm~約5000ppm、好ましくは約500ppm~約3000ppmの遊離フッ化物イオンを提供することができるフッ化物イオン源を含むことができる。所望の量のフッ化物イオンを送達するために、フッ化物イオン源は、口腔ケア組成物中に、口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%、約0.01重量%~約10重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%の量で存在し得る。あるいは、口腔ケア組成物は、フッ化物イオン源を0.1%未満、0.01%未満含んでもよく、フッ化物イオン源を本質的に含まなくてもよく、実質的に含まなくてもよく、又は含まなくてもよい。
【0046】
金属
本明細書に記載の口腔ケア組成物は、金属を含むことができ、金属は、1つ以上の金属イオンを含む金属イオン源によってもたらすことができる。金属イオン源は、本明細書に記載されているように、スズイオン源及び/又は亜鉛イオン源を含み得るか、又はそれらに加えられてもよい。好適な金属イオン源としては、限定されないが、Sn、Zn、Cu、Mn、Mg、Sr、Ti、Fe、Mo、B、Ba、Ce、Al、In及び/又はこれらの混合物などの金属イオンを有する化合物が挙げられる。金属イオン源は、好適な金属並びに任意の付随する配位子及び/又はアニオンを有する任意の化合物であり得る。
【0047】
金属イオン源と組み合わせることができる好適な配位子及び/又はアニオンとしては、限定されないが、酢酸塩、硫酸アンモニウム、安息香酸塩、臭化物、ホウ酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、グルコン酸塩、グリセロリン酸塩、水酸化物、ヨウ化物、シュウ酸塩、酸化物、プロピオン酸塩、D-乳酸塩、DL-乳酸塩、オルトリン酸塩、ピロリン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酒石酸塩、及び/又はこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
口腔ケア組成物は、約0.01%~約10%、約1%~約5%、又は約0.5%~約15%の金属及び/又は金属イオン源を含むことができる。
【0049】
スズ
本発明の口腔ケア組成物は、スズイオン源によってもたらすことができるスズを含み得る。スズイオン源は、口腔ケア組成物中にスズイオンをもたらすことができる、及び/又は口腔ケア組成物が口腔に適用されるときにスズイオンを口腔に送達することができる任意の好適な化合物であり得る。スズイオン源は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、酸化第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、硫化第一スズ、フッ化第二スズ、塩化第二スズ、臭化第二スズ、ヨウ化第二スズ、硫化第二スズ、及び/又はこれらの混合物などの1種以上のスズ含有化合物を含むことができる。スズイオン源は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、及び/又はこれらの混合物を含むことができる。スズイオン源はまた、塩化第一スズなど、フッ化物を含まないスズイオン源であってもよい。
【0050】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%、約0.01重量%~約10重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.4重量%~約1重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%のスズ及び/又はスズイオン源を含むことができる。あるいは、口腔ケア組成物は、スズを本質的に含まなくてもよく、実質的に含まなくてもよく、又は含まなくてもよい。
【0051】
亜鉛
口腔ケア組成物は、亜鉛イオン源によってもたらすことができる亜鉛を含み得る。亜鉛イオン源は、フッ化亜鉛、乳酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、ヘキサフルオロジルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、酒石酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、グリシン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、メタリン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、及び/又は炭酸亜鉛などの1つ以上の亜鉛含有化合物を含むことができる。亜鉛イオン源は、リン酸亜鉛、酸化亜鉛、及び/又はクエン酸亜鉛など、フッ化物を含まない亜鉛イオン源であり得る。
【0052】
亜鉛及び/又は亜鉛イオン源は、歯磨剤組成物の約0.01重量%~約10重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.4重量%~約1重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%の量で全口腔ケア組成物に存在することができる。あるいは、口腔ケア組成物は、亜鉛を本質的に含まなくてもよく、実質的に含まなくてもよく、又は含まなくてもよい。
【0053】
pH
本明細書に記載の口腔ケア組成物のpHは、約4~約7、約4~約6、約4.5~約6.5、又は約4.5~約5.5であり得る。口内洗浄液のpHは、未希釈溶液のpHとして決定することができる。歯磨剤組成物のpHは、歯磨剤組成物と水との混合物、例えば歯磨剤組成物と水との1:4、1:3、又は1:2混合物などのpHであるスラリーpHとして決定することができる。
【0054】
本明細書に記載の口腔ケア組成物のpHは、ジカルボン酸のpKaのために、約7未満又は約6未満の好ましいpHを有する。理論に拘束されることを望まないが、ジカルボン酸は、pHが約7未満又は約6未満の場合に独特の挙動を示すと考えられるが、口腔内の表面は低pHに対してのみ敏感である可能性もある。更に、約pH7を超えるpH値では、金属イオン源は水及び/又は水酸化物イオンと反応して、不溶性の金属酸化物及び/又は金属水酸化物を形成することができる。これらの不溶性化合物の形成は、ジカルボン酸塩が口腔ケア組成物中の金属イオンを安定化する能力を制限する可能性があり、及び/又はジカルボン酸塩と口腔内の標的金属イオンとの相互作用を制限する可能性がある。
【0055】
更に、4未満のpH値では、酸溶解による歯の損傷の可能性が大幅に増加する。したがって、本明細書に記載のジカルボン酸を含む口腔ケア組成物は、金属水酸化物/金属酸化物の形成及び口腔の硬組織(エナメル質、象牙質及びセメント質)への損傷を最小限に抑えるために、好ましくは約4~約7、約4~約6、約4.5~約6.5又は約4.5~約5.5のpHを有する。
【0056】
口腔ケア組成物は、1つ以上の緩衝剤を含むことができる。本明細書で使用される緩衝剤は、口腔ケア組成物のスラリーpHを調整するために使用できる剤を指す。緩衝剤としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。具体的な緩衝剤としては、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロリン酸塩、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。口腔ケア組成物は、それぞれ本組成物の約0.1重量%~約30重量%、約1重量%~約10重量%、又は約1.5重量%~約3重量%のレベルで1つ以上の緩衝剤を含むことができる。
【0057】
ポリリン酸塩
口腔ケア組成物は、ポリリン酸塩源によってもたらすことができるポリリン酸塩を含み得る。ポリリン酸塩源は、1つ以上のポリリン酸分子を含むことができる。ポリリン酸塩は、オルトリン酸塩の脱水及び縮合によって様々な鎖長の直鎖及び環状ポリリン酸塩を生成することによって得られる物質のクラスである。したがって、ポリリン酸分子は、一般に、以下に記載されるように、ポリリン酸分子の平均数(n)で同定される。ポリリン酸塩は一般に、主に直鎖構成に配列された2つ以上のリン酸分子からなると理解されているが、いくつかの環状誘導体が存在する場合もある。
【0058】
好ましいポリリン酸塩は、平均2個以上のリン酸基を有するものであり、その結果、有効濃度での表面吸着により十分な非結合リン酸官能基が生成され、表面のアニオン性表面電荷及び親水性特性が強化される。本発明において好ましいものは、式:XO(XPO3)nX(式中、Xは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、又は任意の他のアルカリ金属カチオンであり、nは、平均約2~約21である)を有する直鎖状ポリリン酸塩である。カルシウムなどのアルカリ土類金属カチオンは、フッ化物イオン及びアルカリ土類金属カチオンを含む水溶液から不溶性フッ化物塩を形成する傾向があるため、好ましくない。したがって、本明細書に開示される口腔ケア組成物は、ピロリン酸カルシウムを含まなくてもよく、又は実質的に含まなくてもよい。
【0059】
好適なポリリン酸分子のいくつかの例としては、例えば、ピロリン酸(n=2)、トリポリリン酸(n=3)、テトラポリリン酸(n=4)、ソーダホスポリリン酸(n=6)、ヘキサホスポリリン酸(n=13)、ベネホスポリリン酸(n=14)、ヘキサメタリン酸塩(n=21)(Glass Hとしても知られている)を挙げることができる。ポリリン酸塩としては、FMC Corporation、ICL Performance Products、及び/又はAstarisによって製造されたポリリン酸塩化合物を挙げることができる。
【0060】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.01重量%~約15重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.5重量%~約5重量%、約1~約20重量%、又は約10重量%以下のポリリン酸塩源を含むことができる。あるいは、口腔ケア組成物は、ポリリン酸塩を本質的に含まなくてもよく、実質的に含まなくてもよく、又は含まなくてもよい。
【0061】
界面活性剤
口腔ケア組成物は、1つ以上の界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、組成物をより美容的に受け入れられるものにするために使用することができる。界面活性剤は、好ましくは、組成物に洗浄性及び起泡性を付与する洗浄性物質である。好適な界面活性剤は、安全かつ有効な量のアニオン性、カチオン性、非イオン性、双性イオン性、両性及びベタイン界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルメチルイセチオン酸ナトリウム、グルタミン酸ココイルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸、ミリストイルサルコシン酸、パルミトイルサルコシン酸、ステアロイルサルコシン酸及びオレオイルサルコシン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン及びラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン、N-ラウロイル、N-ミリストイル、又はN-パルミトイルサルコシンのナトリウム、カリウム、及びエタノールアミン塩、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、ココアミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、パルミチルベタイン、ココイルグルタミン酸ナトリウムなどである。ラウリル硫酸ナトリウムが、好ましい界面活性剤である。口腔ケア組成物は、それぞれ口腔ケア組成物の約0.01重量%~約15重量%、約0.3重量%~約10重量%、又は約0.3重量%~約2.5重量%のレベルで1つ以上の界面活性剤を含むことができる。
【0062】
単座配位子
口腔ケア組成物は、1000g/mol未満の分子量(MW)を有する単座配位子を含むことができる。単座配位子は、スズイオンなど、中心原子と相互作用できる単一の官能基を有する。単座配位子は、口腔ケア組成物での使用に適していなければならず、これは、米国食品医薬品局の一般に安全と認められる(Generally Regarded as Safe、GRAS)リスト又は対象管轄区域の他の適切なリストに記載されているものを含むことができる。
【0063】
本明細書に記載の単座配位子は、スズにキレート化し、スズと会合し、及び/又はスズと結合することができる単一の官能基を含むことができる。スズにキレート化し、スズと会合し、及び/又はスズと結合することができる好適な官能基としては、当業者に公知の他の官能基の中でも、カルボニル、アミンが挙げられる。好適なカルボニル官能基としては、カルボン酸、エステル、アミド、又はケトンを挙げることができる。
【0064】
単座配位子は、単一のカルボン酸官能基を含むことができる。カルボン酸を含む好適な単座配位子としては、式R-COOH(式中、Rは任意の有機構造である)を有する化合物を挙げることができる。カルボン酸を含む好適な単座配位子としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、糖酸、これらの塩、及び/又はこれらの組み合わせを挙げることもできる。
【0065】
脂肪族カルボン酸は、直鎖炭化水素鎖、分岐炭化水素鎖、及び/又は環状炭化水素分子に結合したカルボン酸官能基を含むことができる。脂肪族カルボン酸は、完全に飽和又は不飽和であってもよく、また1つ以上のアルケン及び/又はアルキン官能基を有する。他の官能基が存在し、炭化水素鎖のハロゲン化変種を含む、炭化水素鎖に結合することができる。脂肪族カルボン酸はまた、カルボン酸官能基に対してアルファ、ベータ、又はガンマ位置にアルコール官能基を有する有機化合物であるヒドロキシル酸を含むことができる。好適なアルファヒドロキシ酸としては、乳酸及び/又はその塩が挙げられる。
【0066】
芳香族カルボン酸は、少なくとも1つの芳香族官能基に結合したカルボン酸官能基を含むことができる。好適な芳香族カルボン酸基としては、安息香酸、サリチル酸、及び/又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0067】
カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、アスコルビン酸、安息香酸、カプリル酸、コール酸、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、リノール酸、ナイアシン、オレイン酸、プロパン酸、ソルビン酸、ステアリン酸、グルコン酸、乳酸、炭酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、これらの塩、及び/又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0068】
口腔ケア組成物は、組成物の約0.01重量%~約10重量%、約0.1重量%~約15重量%、約1重量%~約5重量%、又は約0.0001重量%~約25重量%の単座配位子を含むことができる。
【0069】
多座配位子
口腔ケア組成物は、1000g/mol未満又は2500g/mol未満の分子量(MW)を有する多座配位子を含むことができる。多座配位子は、スズイオンなど、中心原子と相互作用できる少なくとも2つの官能基を有する。更に、多座配位子は、口腔ケア組成物での使用に適していなければならず、これは、米国食品医薬品局の一般に安全と認められる(GRAS)リスト又は対象管轄区域の他の適切なリストに記載されているものを含むことができる。
【0070】
本明細書に記載の多座配位子は、スズにキレート化し、スズと会合し、及び/又はスズと結合することができる少なくとも2つの官能基を含むことができる。多座配位子は、二座配位子(即ち、2つの官能基を有する)、三座配位子(即ち、3つの官能基を有する)、四座配位子(即ち、4つの官能基を有する)などを含むことができる。
【0071】
スズにキレート化し、スズと会合し、及び/又はスズと結合することができる好適な官能基としては、当業者に公知の他の官能基の中でも、カルボニル、リン酸塩、硝酸塩、アミンが挙げられる。好適なカルボニル官能基としては、カルボン酸、エステル、アミド、又はケトンを挙げることができる。
【0072】
多座配位子は2つ以上のカルボン酸官能基を含むことができる。カルボン酸を含む好適な多座配位子としては、式HOOC-R-COOH(式中、Rは任意の有機構造である)を有する化合物を挙げることができる。2つ以上のカルボン酸を含む好適な多座配位子としては、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸などを挙げることもできる。
【0073】
他の好適な多座配位子としては、少なくとも2つのリン酸官能基を含む化合物が挙げられる。したがって、多座配位子は、本明細書に記載されるように、ポリリン酸塩を含むことができる。
【0074】
他の好適な多座配位子としては、ホップベータ酸、例えば、ルプロン、コルプロン、アドルプロン、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。ホップベータ酸は、合成的に誘導及び/又は天然源から抽出することができる。
【0075】
多座配位子はまた、スズと相互作用する官能基としてリン酸塩を含むことができる。好適なリン酸塩化合物としては、リン酸塩、有機リン酸塩、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適なリン酸塩としては、オルトリン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、アルキル化リン酸塩、及びこれらの組み合わせの塩が挙げられる。多座配位子は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、タプシン酸、日本酸、フェロゲン酸、エキセトール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フィチン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、これらの塩、及び/又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0076】
口腔ケア組成物は、組成物の約0.01重量%~約10重量%、約0.1重量%~約15重量%、約1重量%~約5重量%、又は約0.0001重量%~約25重量%の多座配位子を含むことができる。
【0077】
スズ対単座配位子対多座配位子の比率
本明細書に記載の口腔ケア組成物は、予想外に大量の可溶性スズ及び/又は優れたフッ化物取り込みをもたらすスズ対単座配位子対多座配位子の比率を含むことができる。スズ対単座配位子対多座配位子の好適な比率は、約1:0.5:0.5~約1:5:5、約1:0.5:0.75~約1:5:5、約1:1:1~約1:5:5、約1:1:0.5~約1:2.5:2.5、約1:1:1~約1:2:2、約1:0.5:0.5~約1:3:1、又は約1:0.5:0.5~約1:1:3であり得る。
【0078】
本明細書では、少なくとも約1000ppm、2000ppm、4000ppm、少なくとも約4500ppm、少なくとも約5000ppm、少なくとも約6000ppm、及び/又は少なくとも約8000ppmの可溶性Snを有する口腔ケア組成物が望ましい。また、本明細書では、少なくとも約9日、30日、65日、75日、100日、200日、365日及び/又は400日の期間後にフッ化物取り込みが少なくとも約6.5μg/cm2、少なくとも約7.0μg/cm2、少なくとも約8.0μg/cm2、又は少なくとも約9.0μg/cm2の口腔ケア組成物が望ましい。
【0079】
全体として、理論に拘束されることを望まないが、可溶性Snの量は、生物学的に利用可能なSnが口腔の健康効果をもたらすために自由に利用可能であるため、生物学的に利用可能なSnと相関していると考えられる。完全に結合したSn(即ち、過剰キレート化されたSn)又は沈殿したSn(即ち、Sn(OH)2などの不溶性スズ塩及び/又はSnベースの汚れが、Snがキレート化不足の場合に形成される)は、可溶性Snの測定には含まれない。更に、理論に拘束されることを望まないが、Sn対単座配位子対多座配位子の慎重にバランスのとれた比率は、表面染色のようなカチオン性抗菌剤の使用のいくつかの欠点なしに、大量の生物学的に利用可能なフッ化物及びSnイオンをもたらすことができると考えられる。したがって、追加のスクリーニング実験を行って、単座配位子及び多座配位子の範囲及びアイデンティティーを定量化及び限定した。
【0080】
増粘剤
口腔ケア組成物は、1つ以上の増粘剤を含むことができる。増粘剤は、口腔ケア組成物において、歯磨き粉を相分離に対して安定化させるゼラチン状構造をもたらすのに有用である。好適な増粘剤としては、多糖類、ポリマー、及び/又はシリカ増粘剤が挙げられる。多糖類のいくつかの非限定例としては、デンプン;デンプンのグリセライト;ガム、例えばカラヤガム(ステルクリアガム)、トラガカントガム、アラビアガム、ガティガム、アカシアガム、キサンタンガム、グアーガム及びセルロースガム;ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum);カラギーナン;アルギン酸ナトリウム;寒天;ペクチン;ゼラチン;セルロース化合物、例えばセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルカルボキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、及び硫酸化セルロース;天然及び合成粘土、例えばヘクトライト粘土;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0081】
増粘剤は多糖類を含むことができる。本明細書での使用に適した多糖類としては、カラギーナン、ジェランガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カルボマー、ポロキサマー、変性セルロース、及びこれらの混合物が挙げられる。カラギーナンは海藻由来の多糖類である。いくつかの種類のカラギーナンがあり、それらは海藻源によって、及び/又は硫酸化の程度と位置によって区別できる。増粘剤は、カッパカラギーナン、変性カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、変性イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、及びこれらの混合物を含むことができる。本明細書での使用に適したカラギーナンとしては、FMC Companyからシリーズ名「Viscarin」で市販されているものが挙げられ、Viscarin TP 329、Viscarin TP 388、及びViscarin TP 389が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
増粘剤は、1つ以上のポリマーを含むことができる。ポリマーは、口腔ケア組成物の様々な重量パーセント及び様々な範囲の平均分子範囲のポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸、少なくとも1つのアクリル酸モノマーから誘導されたポリマー、無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、架橋ポリアクリル酸ポリマーであり得る。ポリマーは、ポリアクリレートクロスポリマー、例えばポリアクリレートクロスポリマー-6を含むことができる。ポリアクリレートクロスポリマー-6の好適な供給源としては、Seppicから市販されているSepimax Zen(商標)を挙げることができる。
【0083】
増粘剤は、無機増粘剤を含むことができる。好適な無機増粘剤のいくつかの非限定的な例としては、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ増粘剤が挙げられる。有用なシリカ増粘剤としては、例えば、非限定的な例として、ZEODENT(登録商標)165シリカなどの非晶質沈降シリカが挙げられる。他の非限定的なシリカ増粘剤としては、ZEODENT(登録商標)153、163及び167、ZEOFREE(登録商標)177及び265シリカ製品(すべてEvonik Corporationから入手可能)、並びにAEROSIL(登録商標)ヒュームドシリカが挙げられる。
【0084】
口腔ケア組成物は、0.01%~約15%、0.1%~約10%、約0.2%~約5%、又は約0.5%~約2%の1つ以上の増粘剤を含むことができる。
【0085】
研磨剤
本発明の口腔ケア組成物は、研磨剤を含むことができる。研磨剤を口腔ケア配合物に添加して、歯の表面の汚れを除去するのに役立つことができる。好ましくは、研磨剤は、カルシウム研磨剤又はシリカ研磨剤である。
【0086】
カルシウム研磨剤は、口腔ケア組成物中にカルシウムイオンをもたらすことができる、及び/又は口腔ケア組成物が口腔に適用されるときに、口腔にカルシウムイオンを供給することができる任意の好適な研磨剤化合物であり得る。口腔ケア組成物は、約5重量%~約70重量%、約10重量%~約60重量%、約20重量%~約50重量%、約25重量%~約40重量%、又は約1重量%~約50重量%のカルシウム研磨剤を含むことができる。カルシウム研磨剤は、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム(precipitated calcium carbonate、PCC)、粉砕炭酸カルシウム(ground calcium carbonate、GCC)、チョーク、リン酸二カルシウム、ピロリン酸カルシウム、及び/又はこれらの混合物などの1つ以上のカルシウム研磨剤化合物を含むことができる。
【0087】
口腔ケア組成物はまた、シリカゲル(それ自体、及び任意の構造のもの)、沈降シリカ、非晶質沈降シリカ(それ自体、及び任意の構造のもの)、水和シリカ、及び/又はこれらの組み合わせなどのシリカ研磨剤を含むことができる。口腔ケア組成物は、約5重量%~約70重量%、約10重量%~約60重量%、約10重量%~約50重量%、約20重量%~約50重量%、約25重量%~約40重量%、又は約1重量%~約50重量%のシリカ研磨剤を含むことができる。
【0088】
口腔ケア組成物はまた、ベントナイト、パーライト、二酸化チタン、アルミナ、水和アルミナ、焼成アルミナ、ケイ酸アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、不溶性炭酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、粒子状熱硬化性樹脂、及び他の好適な研磨剤物質など、別の研磨剤を含むことができる。口腔ケア組成物は、約5重量%~約70重量%、約10重量%~約60重量%、約10重量%~約50重量%、約20重量%~約50重量%、約25重量%~約40重量%、又は約1重量%~約50重量%の別の研磨剤を含むことができる。
【0089】
アミノ酸
口腔ケア組成物は、アミノ酸を含むことができる。アミノ酸は、本明細書に記載されるように、1つ以上のアミノ酸、ペプチド、及び/又はポリペプチドを含むことができる。
【0090】
アミノ酸は、式IIのように、アミン官能基、カルボキシル官能基、及び各アミノ酸に固有の側鎖(式IIではR)を含む有機化合物である。好適なアミノ酸としては、例えば、正又は負の側鎖を有するアミノ酸、酸性又は塩基性の側鎖を有するアミノ酸、極性非荷電側鎖を有するアミノ酸、疎水性側鎖を有するアミノ酸、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適なアミノ酸としては、例えば、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、シトルリン、オルニチン、クレアチン、ジアミノブタン酸、ジアミノプロピオン酸、これらの塩、及び/又はこれらの組み合わせを挙げることもできる。
【0091】
好適なアミノ酸としては、天然に存在するか又は合成的に誘導される、式IIによって表される化合物を挙げることができる。アミノ酸は、R基及び環境に基づいて、双性イオン性、中性、正に帯電する、又は負に帯電する可能性がある。アミノ酸の電荷、及び特定の官能基が特定のpH条件でスズと相互作用できるか否かは、当業者には周知であろう。
【0092】
【0093】
好適なアミノ酸としては、1つ以上の塩基性アミノ酸、1つ以上の酸性アミノ酸、1つ以上の中性アミノ酸、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
口腔ケア組成物は、当該口腔ケア組成物の約0.01重量%~約20重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.5重量%~約6重量%、又は約1重量%~約10重量%のアミノ酸を含むことができる。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「中性アミノ酸」は、天然由来の中性アミノ酸、例えばアラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンだけではなく、pH5.0~7.0の範囲の等電点を有する生物学的に許容可能なアミノ酸も含む。生物学的に好ましい許容可能な中性アミノ酸は、分子中に単一のアミノ基及びカルボキシル基を有するか、又は類似又は実質的に類似の物理化学的特性を有するが変更された側鎖を有する官能性誘導体などのその官能性誘導体を有する。更なる実施形態では、アミノ酸は、少なくとも部分的に水溶性であり、25℃で1g/1000mLの水溶液中でpHが7未満である。
【0096】
したがって、本発明での使用に適した中性アミノ酸としては、アラニン、アミノ酪酸、アスパラギン、システイン、シスチン、グルタミン、グリシン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、これらの塩、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の組成物において使用される中性アミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、グリシン、これらの塩、又はこれらの混合物を挙げることができる。中性アミノ酸は、25℃の水溶液中で、5.0、又は5.1、又は5.2、又は5.3、又は5.4、又は5.5、又は5.6、又は5.7、又は5.8、又は5.9、又は6.0、又は6.1、又は6.2、又は6.3、又は6.4、又は6.5、又は6.6、又は6.7、又は6.8、又は6.9、又は7.0の等電点を有し得る。好ましくは、中性アミノ酸は、プロリン、グルタミン、又はグリシンから選択され、より好ましくはその遊離形態(即ち、非錯体型)である。中性アミノ酸がその塩形態である場合、好適な塩としては、提供される量及び濃度において生理学的に許容されると考えられる薬学的に許容される塩であることが当該技術分野において知られている塩が挙げられる。
【0097】
美白剤
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.1重量%~約10重量%、約0.2重量%~約5重量%、約1重量%~約5重量%、又は約1重量%~約15重量%の美白剤を含むことができる。美白剤は、口腔内の少なくとも1本の歯をホワイトニングするのに適した化合物であり得る。美白剤としては、過酸化物、金属亜塩素酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過酸、過硫酸塩、ジカルボン酸、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。好適な過酸化物としては、固体過酸化物、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過酸化ベンゾイル、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、無機過酸化物、ヒドロペルオキシド、有機過酸化物、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な金属亜塩素酸塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、及び亜塩素酸カリウムが挙げられる。その他の好適な美白剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、peroxydone、6-フタルイミドペルオキシヘキサン酸、フタルアミドペルオキシカプロン酸、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0098】
保湿剤
口腔ケア組成物は、1つ以上の保湿剤を含んでもよく、低レベルの保湿剤を含んでもよく、又は保湿剤を含まなくてもよい。保湿剤は、口腔ケア組成物又は歯磨剤にコク又は「口当たり」を加えるだけでなく、歯磨剤が乾燥するのを防止する役割も果たす。好適な保湿剤としては、ポリエチレングリコール(様々な異なる分子量)、プロピレングリコール、グリセリン(グリセロール)、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ブチレングリコール、ラクチトール、加水分解水添デンプン、及び/又はこれらの混合物が挙げられる。口腔ケア組成物は、それぞれ口腔ケア組成物の約0重量%~約70重量%、約5重量%~約50重量%、約10重量%~約60重量%、又は約20重量%~約80重量%のレベルで1つ以上の保湿剤を含むことができる。
【0099】
水
本発明の口腔ケア組成物は、無水歯磨剤組成物、低水分配合物、又は高水分配合物であり得る。全体として、口腔ケア組成物は、組成物の0重量%~約99重量%、約20重量%以上、約30重量%以上、約50重量%以上、最大約45重量%、又は最大約75重量%の水を含むことができる。好ましくは、水は、USP水である。
【0100】
高水分歯磨剤配合物では、歯磨剤組成物は、組成物の約45重量%~約75重量%の水を含む。高水分歯磨剤組成物は、組成物の約45重量%~約65重量%、約45重量%~約55重量%、又は約46重量%~約54重量%の水を含むことができる。水は、高水分歯磨剤配合物に直接添加することができ、及び/又は他の成分を含めることによって組成物に入れることができる。
【0101】
低水分歯磨剤配合物では、歯磨剤組成物は、組成物の約10重量%~約45重量%の水を含む。低水分歯磨剤組成物は、組成物の約10重量%~約35重量%、約15重量%~約25重量%、又は約20重量%~約25重量%の水を含むことができる。水は、低水分歯磨剤配合物に直接添加することができ、及び/又は他の成分を含めることによって組成物に入れることができる。
【0102】
無水歯磨剤配合物では、歯磨剤組成物は、組成物の約10重量%未満の水を含む。無水歯磨剤組成物は、組成物の約5重量%未満、約1重量%未満、又は0重量%の水を含む。水は、無水配合物に直接添加することができ、及び/又は他の成分を含めることによって歯磨剤組成物に入れることができる。
【0103】
歯磨剤組成物はまた、アルコール、保湿剤、ポリマー、界面活性剤、並びに香味剤、甘味料、着色剤及び/又は冷感剤などの受容性改善剤など、経口的に許容される担体物質を含むことができる。
【0104】
口腔ケア組成物はまた、口内洗浄液配合物であってもよい。口内洗浄液配合物は、約75%~約99%、約75%~約95%、又は約80%~約95%の水を含むことができる。
【0105】
他の成分
口腔ケア組成物は、以下に記載されるように、香味剤、甘味料、着色剤、防腐剤、緩衝剤、又は口腔ケア組成物での使用に適した他の成分など、様々な他の成分を含むことができる。
【0106】
香味剤も口腔ケア組成物に添加することができる。好適な香味剤としては、ウィンターグリーン油、ペパーミント油、スペアミント油、クローブ芽油、メントール、アネトール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、カッシア、酢酸1-メンチル、セージ、オイゲノール、パセリ油、オキサノン、α-イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグアエトール、シナモン、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、4-シス-ヘプテナール、ジアセチル、メチル-パラ-tert-ブチルフェニルアセテート、及びこれらの混合物が挙げられる。冷感剤もフレーバー系の一部であってもよい。本組成物に好ましい冷感剤は、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド(商業的に「WS-3」として知られている)又はN-(エトキシカルボニルメチル)-3-p-メンタンカルボキサミド(商業的に「WS-5」として知られている)、及びこれらの混合物などのパラメンタンカルボキシアミド剤である。フレーバー系は、一般に、口腔ケア組成物の約0.001重量%~約5重量%のレベルで組成物中に使用される。これらの香味剤は、一般に、アルデヒド、ケトン、エステル、フェノール、酸、脂肪族、芳香族、及び他のアルコールの混合物を含む。
【0107】
甘味料を口腔ケア組成物に添加して、製品に心地よい味を与えることができる。好適な甘味料としては、サッカリン(ナトリウム、カリウム又はカルシウムサッカリンとして)、シクラメート(ナトリウム、カリウム又はカルシウム塩として)、アセスルファムK、タウマチン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、アンモニア化グリチルリチン、デキストロース、レブロース、スクロース、マンノース、スクラロース、ステビア、及びグルコースが挙げられる。
【0108】
製品の美的外観を改善するために、着色剤を添加してもよい。好適な着色剤としては、限定されないが、FDAなどの適切な規制機関によって承認された着色剤、及び欧州食品医薬品指令(European Food and Pharmaceutical Directives)に列挙されている着色剤が挙げられ、TiO2などの顔料、並びにFD&C及びD&C染料などの色素が含まれる。
【0109】
細菌増殖を防止するために、防腐剤も口腔ケア組成物に添加することができる。メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、及び安息香酸ナトリウムなど、口腔用組成物中での使用が承認された好適な防腐剤を、安全かつ有効な量で添加することができる。
【0110】
二酸化チタンも本発明の組成物に添加することができる。二酸化チタンは、組成物に不透明性を加える白色粉末である。二酸化チタンは、一般に、口腔ケア組成物の約0.25重量%~約5重量%を構成する。
【0111】
減感剤、治癒剤、他の虫歯予防剤、キレート化剤/金属イオン封鎖剤、ビタミン、アミノ酸、タンパク質、他の抗歯垢/抗歯石剤、乳白剤、抗生物質、抗酵素、酵素、pH調整剤、酸化剤、酸化防止剤などの他の成分を、口腔ケア組成物中で使用することができる。
【0112】
口腔ケア組成物形態
ジカルボン酸の送達に適した組成物としては、米国特許出願公開第2018/0133121号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)のエマルション組成物などのエマルション組成物、米国特許出願公開第2019/0343732号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の単位用量組成物などの単位用量組成物、リーブオン口腔ケア組成物、ジャム化エマルション、歯磨剤組成物、口内洗浄液組成物、洗口液組成物、歯用ゲル、歯肉縁下用ゲル、口内洗浄液、ムース、フォーム、口腔噴霧剤、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭消臭溶解性ストリップ、義歯ケア製品、義歯接着剤製品、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0113】
口腔ケアレジメン
ジカルボン酸は、スズ及び/又はフッ化物と同じ組成物で送達することができ、又はジカルボン酸は別の組成物で送達することができる。例えば、第1の組成物はスズ及び/又はフッ化物を含むことができ、第2の組成物はジカルボン酸を含むことができる。第1及び第2の組成物は、二相組成物などで同時に送達することができ、又は別個の組成物から順次送達することができる。
【0114】
口腔ケアキットは、スズ及び/又はフッ化物を含む第1の組成物と、ジカルボン酸を含む第2の組成物とを含むことができる。口腔ケアキットはまた、第1の組成物を使用者の口腔に適用し、続いて第2の組成物を使用者の口腔に適用するように使用者に指示する説明書を含むことができる。第2の組成物を適用する前に第1の組成物を吐き出すことができ、又は口腔から第1の組成物を吐き出す前に第2の組成物を適用することができる。
【0115】
口腔ケアレジメン全体は、1分~約3分の持続時間を有することができ、各適用ステップは、約30秒~約2分又は約1分の持続時間を有する。
【0116】
成分は、口腔に同時に又は順次送達することができる。最も単純な場合は、単回の口腔ケアセッション中に2つの成分を等量又は一定の比率で同時に連続的に送達することである。2つの成分は、2つの別々の組成物中の二相組成物などで別々に供給され、次に口腔に同時に送達されてもよい。歯磨き時間は十分に短いため、成分が不活性化することはない。同時連続送達の別の応用は、比較的ゆっくりと反応し、歯磨き後に口腔内に留まって歯及び/又は歯茎に吸収される2つの成分を含むシステムである。
【0117】
順次送達の場合、両方の成分は、単回の口腔ケアセッション、例えば、単回の歯磨きセッション又は他の単回の処置セッション(特定の使用者による単回使用、開始から終了まで通常約0.1~5分)中に送達されてもよく、あるいは、成分は、複数回の口腔ケアセッションにわたって個別に送達されてもよい。多くの組み合わせが可能であり、例えば、1回目の口腔ケアセッション中に両方の成分を送達し、2回目の口腔ケアセッション中に1つの成分のみを送達する。
【0118】
単回の口腔ケアセッション中の順次送達は、様々な形をとることができる。1つの場合では、歯磨き中のいくつかの比較的長い期間のサイクル(A B A B)、又は多数の急速な交替(A B A B A B A B A B....A B)として、2つの成分が交互に送達される。
【0119】
別の場合では、2つ以上の成分が単回の口腔ケアセッション中に次々に送達され、その後、その口腔ケアセッションで交互に送達されることはない(Aに続いてB)。例えば、フッ化物及び/又はスズを含む第1の組成物を最初に送達して、歯磨きを開始して洗浄を行い、続いてジカルボン酸を含む第2の組成物を送達することができる。
【実施例】
【0120】
以下の実施例によって本発明を更に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲に制限を課すものとして決して解釈されるべきではない。本明細書の説明を読んだ後に、当業者であれば、本発明の精神又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、これらの様々な他の態様、修正、及び均等物を思いつくであろう。
【0121】
組成物
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
処理組成物は、表1A及び要約表2からのものを含んでいた。実施例1は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、及びシュウ酸カリウム(ジカルボン酸)を含んでいた。実施例2は実施例1と同様であったが、実施例2はフッ化第一スズ/塩化第一スズをフッ化ナトリウムで置換した。実施例3は実施例2からフッ化ナトリウムを除去する。実施例4は実施例1と同じであるが、シュウ酸カリウムが含まれていない。実施例1~4をCCP(1100ppm、理論上のF)と比較した。
【0126】
エナメル質軟化処理組成物は、表1B及び要約表2からのものを含んでいた。実施例1~5を水(陰性)及びクエン酸(陽性)軟化対照と比較した。
【0127】
pHサイクリング
このpHサイクリング法は、多数のフッ化物含有歯磨剤配合物の虫歯予防能力を実証するために成功裏に使用された。
【0128】
調製したヒトエナメル質ロッド試料(象牙質pHサイクリング用の象牙質ロッド試料)に、歯磨剤処理、脱灰期間及び再石灰化期間からなる5日間のpHサイクリングレジメンを行った。各脱灰期間の終わりに、脱灰溶液のカルシウム含有量をICPで分析した。5日間のサイクリングで各試料から脱灰溶液に失われたCaの累積量は、この処理の脱灰保護能力の尺度であった。
【0129】
この技術は、ピロリン酸、ポリリン酸、スズ、及び亜鉛などのヒドロキシアパタイト結晶成長阻害剤に敏感である。これらはすべて、脱灰に対する歯の耐性を改善し、その結果、歯磨剤の性能を改善する。この方法は、プラーク酸産生性又は酸性度を低下させる成分の虫歯予防能力を評価しない。
【0130】
pHサイクリングで使用される溶液
【0131】
【0132】
脱灰溶液は、プラーク酸によって生成されるものと同様の酸チャレンジとして機能した。カーボポールの添加は、病変部でミネラルが過剰に失われないように、粉砕及び研磨されたエナメル質のコアを保護するのに役立った。カルシウムとリンのレベルは、理論的にはCaが80ppm、Pが62ppmであった。
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
再石灰化溶液は人工唾液として機能した。カルシウムとリンのレベルは、理論的にはCaが32ppm、Pが74ppmであった。
【0137】
【0138】
試料の調製
この手順には、アクリルロッドに取り付けられた粉砕及び研磨されたヒトエナメル質コア(3~4mmの円形)を使用した。試料端を下にしてロッドを挿入し、非試料端をプレートの蓋の下側から押し上げた。この手順の間、ロッドの試料端に触れないように注意した。蓋をリザーバーに置いたときに、試料の端がリザーバーの底に触れず、底面から約5mm上になるように試料を配置した。試料をはるかに高く配置すると、処理中に溶液に十分に到達しないため、配置は重要であった。保管するために、装填した蓋を、湿潤環境を維持するために少量の脱イオン水を有する単一ウェルリザーバーの上に置いた。蓋付きリザーバーを保管のために冷蔵庫に入れた。
【0139】
F予浸
試料1つあたり10mLのフッ化物予浸溶液をディープウェルリザーバーに添加した(10個の試料を浸漬する場合は100mL)。各試料の端が溶液に沈むように、試料を入れた蓋をディープウェルリザーバーの上に置いた。試料を穏やかに振とうしながら37℃で18~24時間インキュベートした。インキュベーション後、試料をフッ化物予漬溶液から取り出し、脱イオン水を含む別のリザーバーで簡単に洗浄した。サイクリングが始まるまで、試料蓋を冷蔵庫内の湿潤環境で以前と同じように保管した。
【0140】
試薬調製、1日目
各処理群には、指定されラベル付き処理リザーバー、洗浄リザーバー、脱灰24ディープウェルプレート、及び再石灰化リザーバーがあった。洗浄リザーバーを約80mLの脱イオン水で満たした。再石灰化リザーバーを、試料1つあたり10mL(即ち、群内の10個の試料の場合は100mL)の再石灰化溶液で満たした。脱灰プレートを充填する前に、脱灰溶液を校正済みのpHメーターでチェックして、pH4.30(+/-0.01)であることを確認した。必要に応じて、この溶液のpHを使用前に再調整した。試料を入れたプレートの各ウェルに、pH調整した脱灰溶液5mLを加えた。使用まで蒸発を避けるために、すべての容器に蓋をした。
【0141】
1日目
脱灰サイクル1の前に歯磨き粉の処理は行わなかった。サイクル1を開始するために、試料蓋を保管場所から取り出し、脱イオン水ですすぎ、次に充填したラベル付き脱灰容器に直接置いた。脱灰プレートを撹拌せずに37℃で6時間インキュベートした。
【0142】
スラリー調製:1重量部の歯磨剤(15g)と3体積部の水(45mL)を、十字型テフロン被覆撹拌棒を有する100mLビーカーに混合することによって、歯磨剤スラリー(水中25%ペースト)を調製した。スラリーを非通気ミキサーで最低5分間、又は完全に混合するまで、過剰な泡を作らずペーストを完全に分散させるのに十分な速度で混合した。スラリーの総量は、処理群あたり約60mLであった。
【0143】
洗浄、PM処理、洗浄:6時間の脱灰期間の終わりに、試料蓋を脱灰容器から取り出し、脱イオン水を含むその群の洗浄リザーバーに置いた。処理前に試料を約20秒間タイタープレートシェーカーで振とうすることによって洗浄した。混合したスラリーを処理リザーバーに注ぎ、エナメル質端が確実にスラリーに浸るように注意しながら、試料を入れた蓋を上に置いた。処理プレートをタイタープレートシェーカーで1分間激しく振とうした。1分間の処理後、試料を入れた蓋をスラリーから取り外し、脱イオン水を含むその群のラベル付き洗浄リザーバーに戻した。試料を20秒間振とうして洗浄した。ペースト配合物間の汚染を避けるために、各処理群を異なる洗浄リザーバーで洗浄した。
【0144】
再石灰化期間:処理及び洗浄の後、試料を上に載せた各蓋を、再石灰化溶液を含む充填済みの再石灰化リザーバーに入れ、37℃で18時間インキュベートした。
【0145】
アリコート脱灰溶液:ICP分析のために各試料ウェルからの使用済み脱灰溶液1mLを15mLのチューブに等分した。充填したチューブを分析まで冷蔵庫に保管した。
【0146】
2日目、3日目、4日目、5日目のサイクリング
2日目、3日目、及び4日目にAM及びPM歯磨き粉処理を行った。5日目にはAM処理のみを行う。以下のサイクリングプロトコルを各サイクルに使用した。
【0147】
調製:再石灰化リザーバーを、試料1つあたり10mL(即ち、群内の10個の試料の場合は100mL)の再石灰化溶液で満たした。脱灰リザーバーをpH調整した脱灰溶液5mLで満たした。洗浄リザーバーを80mLの脱イオン水で満たした。使用まで蒸発を避けるために、すべての容器に蓋をした。
【0148】
スラリー調製:1重量部の歯磨剤(15g)と3体積部の水(45mL)を、十字型テフロン被覆撹拌棒を有する100mLビーカーに混合することによって、歯磨剤スラリー(水中25%ペースト)を調製した。スラリーを非通気ミキサーで最低5分間、又は完全に混合するまで、過剰な泡を作らずペーストを完全に分散させるのに十分な速度で混合した。スラリーの総量は、処理群あたり約60mLであった(この量は、処理リザーバーを適切なレベルまで満たすのに必要な最小量であった)。
【0149】
洗浄及びAM処理:試料は一晩後の再石灰化容器からのものであり(使用済みの再石灰化溶液は廃棄した)、試料を入れた蓋を、脱イオン水を含むその群のラベル付き洗浄リザーバーに置き、処理前にタイタープレートシェーカーで約20秒間振とうした。ラベル付き処理リザーバーにスラリーを注ぎ、試料を入れた蓋を上に置いた。エナメル質端が確実にスラリーに浸るように注意し、処理スラリーをタイタープレートシェーカーで速度3で1分間振とうした。スラリーは、サイクルプロセスを通して各処理の直前に新しくした。
【0150】
洗浄:1分間の処理後、試料を入れた蓋をスラリーから取り外し、脱イオン水を含むその群のラベル付き洗浄リザーバーに戻した。サンプルを、タイタープレートシェーカーで約20秒間振とうすることによって洗浄した。ペースト配合物間の汚染を避けるために、各処理群を異なる洗浄リザーバーで洗浄した。
【0151】
脱灰期間:洗浄後、試料を入れた各蓋を、ウェルあたり5mLの脱灰溶液を含む適切なラベル付き24ディープウェルプレートの上に置き、撹拌せずに37℃で6時間インキュベートした。
【0152】
洗浄、PM処理、洗浄:6時間の脱灰期間の終わり近くに、新鮮な処理スラリーを本明細書に記載のように調製した。洗浄容器に新鮮なMQ水を補充した。本明細書に記載されるように、試料を再び洗浄し、処理し、洗浄した。
【0153】
再石灰化期間:PM処理及び洗浄の後、試料を入れた各蓋を、再石灰化溶液を含む適切な充填したラベル付き再石灰化リザーバーの上に置き、37℃で一晩(18時間)インキュベートした。
【0154】
アリコート脱灰溶液:ICP分析のために、各試料ウェルからの使用済み脱灰溶液1mLを15mLのチューブに等分した。
【0155】
繰り返し:上記のステップを3日目及び4日目に繰り返した。5日目には、処理サイクルのAM部分のみを合計10サイクル繰り返した。
【0156】
各処理サイクルからのサイクルで使用した脱灰溶液をICP-MSによって分析して、各溶液中の総カルシウムを測定した。各溶液中の総カルシウムからブランク脱灰溶液の平均値を差し引いた。各サイクルからのカルシウム損失を合計して、サイクル手順全体の総カルシウム損失を得た。
【0157】
象牙質サンプルを利用したことを除いて、同じ手順を象牙質pHサイクリングに使用した。
【0158】
【0159】
表8は、pHサイクリングプロトコル全体で測定されたエナメル質及び象牙質のカルシウム損失を示す。予想外に、シュウ酸などのジカルボン酸をフッ化物含有口腔ケア組成物に添加すると、カルシウムの損失が少なくなり、これは虫歯予防効果が高まることを示唆している。例えば、実施例4(SnF2/SnCl2)では象牙質Ca損失が56.4ppmであったが、実施例1(SnF2/SnCl2+シュウ酸塩)では象牙質空洞損失が49.6ppmだけであった。NaFへのシュウ酸塩の添加はより劇的で、象牙質Ca損失が65.6ppm(CCP NaF 1100ppm)から53.7ppm(実施例2、NaF 1100ppm+シュウ酸塩)に改善され、エナメル質Ca損失が43.1ppm(CCP NaF 1100ppm)から25.9ppm(実施例2、NaF 1100ppm+シュウ酸塩)に改善された。
【0160】
更に、エナメル質/象牙質からのCa損失が少なくなることからもわかるように、シュウ酸などのジカルボン酸は、予想外にわずかな虫歯予防効果をもたらす。例えば、実施例3(シュウ酸のみ)では、エナメル質からのCa損失量が54.6ppmで、希釈CCPサンプル(100ppm F)の71.4ppmよりも少なく、象牙質からのCa損失量が68.2ppmで、希釈CCPサンプル(100ppm F)の76.3ppmよりも少なかった。5000ppmのようなより高いフッ化物レベルが虫歯予防効果を向上させることができることが知られているが、ジカルボン酸がそれ自体で虫歯予防効果をもたらしたり、組み合わせて使用した場合にフッ化物の虫歯予防効果を向上させたりすることができることは予想外である。
【0161】
望ましい組成物には、本明細書に記載のpHサイクリング法によって測定した場合に、象牙質及び/又はエナメル質におけるCa損失が約50ppm未満、約45ppm未満、約40ppm未満、約30ppm未満、又は約25ppm未満となる口腔ケア組成物が含まれる。
【0162】
エナメル質軟化
エナメル質軟化法を使用して、口腔ケア組成物が反復曝露により歯エナメル質を損傷する(又は損傷しない)可能性を測定する。微小硬度試験機を使用して、表1A及び表1B の口腔ケア組成物に周期的に曝露した後の歯エナメル質の硬さの変化を、対照組成物1)脱イオン水及び2)1%クエン酸溶液と比較して測定した。
【0163】
直径3~4mmの健全なヒトエナメル質のコアを、ヒト歯全体から抽出した。コアを歯科用アクリルに取り付け、表面を600グリットペーパーを用いて研磨した。次に、更に微細なラッピングペーパーを使用して、表面を1μmまで研磨した。サンプルを脱イオン水中で30分間超音波処理した。次に、エナメル質試料を脱イオン水ですすぎ、拭き取って残留研磨剤を除去した。各エナメル質試料を検査し、大きな亀裂又は不均一な石灰化のあるサンプルを廃棄した。各処理群に8つの試料をもたらすのに十分な試料を準備した。エナメル質試料を、標準的な実験室用冷蔵庫(約2~4℃)中の少量の脱イオン水(約1~5mL)の上の気密容器に保管した。
【0164】
表9の人工唾液溶液を実験前日に調製した。また、実験前日に、硬度圧子を使用して、各エナメル質試料のビッカース硬さを、エナメル質表面にわたる3つの別々の場所で測定した。50gの荷重を10秒間加え、結果としてできた窪みの対角線の長さを、倍率20倍の対物レンズを使用して測定した。3つの窪みの平均ビッカース硬さを使用して、サイクル前の平均エナメル質硬さを決定した。次に各処理群の平均硬さ及び平均硬さの標準偏差が類似するように、エナメル質試料を処理群に割り当てた。
【0165】
【0166】
サイクリング処理の日に、各処理群を保存容器から取り出し、すすいだ。サンプルを、次の手順により合計6ラウンド循環した。
1)試料を、静止条件下で歯磨き粉と水を1:3で十分に混合したスラリー中で群ごとに処理した。対照群の試料を、脱イオン水又は1%クエン酸溶液で処理した。
2)残留歯磨き粉が除去されるまで、試料を大量の水ですすいだ。
3)試料を静止唾液中で55分間処理した。
4)残留唾液が除去されるまで、試料を多量の水ですすいだ。
【0167】
この曝露プロトコールの第6ラウンドに続いて、試料を、少量の脱イオン水の上にあるが脱イオン水と接触しない気密容器に保管した。
【0168】
サイクリング実験の翌日、サイクル前の硬さ測定で説明した手順と同様の手順を使用して、各試料のサイクル後の硬さを得た。サイクル後の硬さ測定値からサイクル前の硬さを差し引くことによって、各試料の硬さの変化を計算した。次に、処理に関する試料硬さの平均変化及びその標準偏差を決定した。
【0169】
次に、スチューデントのt検定でα=0.05のJMPを使用して、統計的グループ分けを決定した。1%クエン酸陽性対照の試料硬さの平均変化が脱イオン水陰性対照と有意に異ならない場合、サイクリングを繰り返した。歯磨剤スラリーで処理した試料と、陰性対照、脱イオン水、処理群における試料との差について、統計的有意性を調べた。陰性対照とは有意に異なるこれらの処理は、エナメル質の表面を有害に軟化させると判断した。
【0170】
エナメル質軟化実験の結果を表10に示す。pH約4.5で、シュウ酸塩バージョンの低pH歯磨き粉は、水陰性対照と比較してエナメル質を損傷することがわかった。これらのデータにより、エナメル質表面の軟化を防ぐために、シュウ酸含有歯磨き粉のpH範囲を制限する必要があることがわかった。
【0171】
【0172】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0173】
相互参照又は関連するあらゆる特許又は出願、及び本出願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用されすべての文献は、除外又は他の方法で限定することを明言しない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書で開示若しくは特許請求される任意の発明に対する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他の任意の参考文献と組み合わせて、そのような発明を教示、示唆、又は開示することを認めるものではない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれる文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が優先するものとする。
【0174】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲では、本発明の範囲内にあるすべてのそのような変更及び修正をカバーすることを意図している。
【国際調査報告】