(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(54)【発明の名称】低温軟窒化のための試薬コーティングを使用する自己不動態化金属の活性化
(51)【国際特許分類】
C23C 8/76 20060101AFI20230526BHJP
C23C 8/02 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
C23C8/76
C23C8/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565720
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 US2021029541
(87)【国際公開番号】W WO2021222343
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518337784
【氏名又は名称】スウェージロック カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】セムコウ,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】イリング,シプリアン,アデア ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,ピーター シー.
(72)【発明者】
【氏名】オストロスキー,ウェイン
(57)【要約】
ワークピースの表面に、試薬を含むコーティングを適用すること、コーティングを処理して試薬を熱的に変更させることを含み、試薬の熱的変更が、表面を活性化および/または硬化する、自己不動態化金属で製造され、ベイルビー層を有するワークピースを処理するための方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己不動態化金属から製造され、ベイルビー層を有するワークピースを処理するための方法であって:
ワークピースの表面の少なくとも一部に、試薬を含むコーティングを適用すること;および
前記コーティングを熱的に処理して前記試薬を変更させること
を含み、前記試薬の前記熱的変更が硬化のために前記表面を活性化させる、
方法。
【請求項2】
前記コーティングの前記処理が、前記試薬を分解する温度まで加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記表面を硬化させることを含む、請求項1および2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記硬化が、窒化、浸炭、軟窒化、および浸炭窒化のうち少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記試薬の前記熱的変更が、前記硬化のための窒素および炭素のうち少なくとも1つを供給する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記表面が、前記ワークピースの複数の表面のうちの1つである;および
前記コーティングの適用が、前記ワークピース上の前記複数の表面のうち1つまたは複数の他の表面ではなく、前記表面に選択的に前記コーティングを適用することを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングの適用が、前記表面の一部に選択的に前記コーティングを適用することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングが、粉体塗装、静電粉体塗装、流動床、および遠心力制御スピンコーティングのうち少なくとも1つである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングが、段階的で未反応のモノマーを有するポリマーを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーがメラミンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試薬が、粉末の場合HClと結合している、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティングが水系である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティングが、水、水系ポリエチレンオキシドコーティング、水系ポリ酢酸ビニルコーティング、および水系ポリプロピレンオキシドコーティングのうち少なくとも1つを含む媒質を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに、前記コーティングを乾燥することを含む、請求項12および13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記コーティングの乾燥が、前記コーティングから前記媒質を除去する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティングが油系である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記油が、鉱油、精直留油、食用油、パラフィン系油、炭化水素系加工油、およびエマルジョン系加工油のうち少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記油が、炉内で蒸発して前記試薬を残す、請求項16および17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記蒸発が:
真空を適用すること;および
前記試薬の活性化または硬化温度未満の温度で蒸発させること
のうち少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記油が、活性化または硬化プロセスに化学的に干渉しない、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
HClが前記試薬と錯体形成する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記コーティングが、液体または溶融物である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記コーティングが、堆積系である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記コーティングが溶媒系である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記試薬が、酸素を含まないハロゲン化窒素塩を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記試薬が、非ポリマーN/C/H化合物を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記表面が、不動態化層を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記試薬が、ジメチルビグアニドHCl、グアニジンHCl、ビグアニドHCl、ビス(ジアミノメチリデン)グアニジンHCl、カルバムイミドイルイミドジカルボンイミド酸ジアミドHCl、またはメラミンHClのうち少なくとも1つを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記コーティングが、石油蒸留物を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
さらに、前記石油蒸留物を蒸発させて前記試薬の乾燥混合物を残す、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項1に記載の方法にしたがって処理された、ベイルビー層を有するワークピース。
【請求項32】
コーティングの前記適用が、パラフィン系油の一部として前記試薬を提供することを含む、請求項31に記載のワークピース。
【請求項33】
前記パラフィン系油が、炭化水素系またはエマルジョン系である、請求項32に記載のワークピース。
【請求項34】
前記パラフィン系油が、炉内で蒸発して前記試薬を残し、前記部分を改変する、請求項32および33のいずれか一項に記載のワークピース。
【請求項35】
前記蒸発が、真空を適用することを含む、請求項34に記載のワークピース。
【請求項36】
前記蒸発が、前記試薬の活性化または硬化温度未満の温度で実行される、請求項34および35のいずれか一項に記載のワークピース。
【請求項37】
前記パラフィン系油が、活性化または硬化プロセスに化学的に干渉しない、請求項32~36のいずれか一項に記載のワークピース。
【請求項38】
自己不動態化金属から製造され、ベイルビー層を有するワークピースを処理するためのコーティング組成物であって:
試薬媒質;および
グアニジン[HNC(NH
2)
2]部分を含み、HClと結合して、低温格子間型表面硬化のためにベイルビー層を活性化する試薬
を含む、コーティング組成物。
【請求項39】
前記試薬が、酸素を含まないハロゲン化窒素塩および非ポリマーN/C/H化合物のうち少なくとも1つを含む、請求項38に記載のコーティング組成物。
【請求項40】
前記試薬媒質が、粉末、水系液体、油、および溶媒のうち少なくとも1つを含む、請求項38および39のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項41】
自己不動態化金属から製造され、ベイルビー層を有するワークピースを処理するための方法であって:
前記ワークピースの表面の少なくとも一部に、前記部分の浸炭、窒化、または軟窒化を実質的に防ぐコーティングを適用すること;および
前記ワークピースを硬化するために、前記ワークピースに浸炭、窒化、または軟窒化の1つまたは複数を実行すること
を含む、方法。
【請求項42】
前記コーティングが、銅または別の金属である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
さらに、前記ワークピースを硬化するために、前記ワークピースに浸炭、窒化、または軟窒化の1つまたは複数を実行するために、前記ワークピースの未コート部分を活性化する試薬を熱的に処理することを含む、請求項41および42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記試薬が、ジメチルビグアニドHCl、グアニジンHCl、ビグアニドHCl、ビス(ジアミノメチリデン)グアニジンHCl、カルバムイミドイルイミドジカルボンイミド酸ジアミドHCl、またはメラミンHClのうち少なくとも1つを含む、請求項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示に記載の多くの特徴は、開示全体が参照により本明細書に組み込まれている、表題がEnhanced Activation of Self-Passivating Metalsである米国特許第10,214,805号に関連する。多くの特徴はまた、開示全体が参照により本明細書に組み込まれている、2019年6月6日に出願された米国特許出願番号第16/433,083号に関連する。
【0002】
本出願は、それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれている、2020年4月29日に出願された米国仮特許出願第63/017,277号、「ACTIVATION OF SELF-PASSIVATING METALS USING REAGENT COATINGS FOR LOW TEMPERATURE NITROCARBURIZATION」、2020年9月10日に出願された米国仮特許出願第63/076,419号、「ACTIVATION OF SELF-PASSIVATING METALS USING REAGENT COATINGS FOR LOW TEMPERATURE NITROCARBURIZATION WITH MACHINING OIL」、2020年4月29日に出願された米国仮特許出願第63/017,262号、「FAST HARDENING OF SELF-PASSIVATING METALS VIA CARBON-ENHANCED LAYER EXCLUDING COARSE PRECIPITATE」;2020年4月29日に出願された米国仮特許出願第63/017,259号、「FAST HARDENING OF SELF-PASSIVATING METALS USING LOW TEMPERATURE NITROCARBURIZATION」、2020年9月10日に出願された米国仮特許出願第63/076,425号、「FAST HARDENING OF SELF-PASSIVATING METALS USING LOW TEMPERATURE NITROCARBURIZATION」;2020年4月29日に出願された米国仮特許出願第63/017,265号、「REMOTE FAST HARDENING OF SELF-PASSIVATING METALS USING LOW TEMPERATURE NITROCARBURIZATION」および2020年4月29日に出願された米国仮特許出願第63/017,271号、「TEMPERATURE PROTOCOLS FOR FAST HARDENING OF SELF-PASSIVATING METALS USING LOW TEMPERATURE NITROCARBURIZATION」の優先権および利益を主張する。
【0003】
本開示は、金属加工におけるコーティングに関する。金属の硬化を促進するためを含む、種々の目的のために使用されるコーティングに関する。また、金属表面に試薬を適用するためまたは適用を遮断するために使用されるコーティングに関する。試薬は、金属表面を活性化および/または硬化することができ、硬化は、浸炭、窒化、軟窒化、および浸炭窒化を介して生じる。
【背景技術】
【0004】
従来の浸炭
従来の(高温)浸炭は、成形済み金属品の表面硬度を強化するために広く使用されている工業プロセスである(「肌焼き」)。典型的な商業プロセスにおいて、ワークピースまたは物品(本明細書では、用語「ワークピース」および「物品」は交換可能に使用される)は、高温(例えば1,000℃以上)で炭素含有ガスと接触し、それによって、ガスの分解により解放された炭素原子は、ワークピース表面に拡散する。硬化は、これらの拡散した炭素原子の1つまたは複数の金属との反応を通じてワークピースで生じ、それによって別個の化学化合物、すなわちカーバイドを形成し、その後、ワークピースの表面を形成する金属マトリクスに、これらのカーバイドが別個の非常に硬い結晶粒子として沈殿する。Stickels,「Gas Carburizing」、312~324ページ、第4巻、ASMハンドブック、(コピーライト)1991、ASMインターナショナルを参照されたい。
【0005】
ステンレス鋼は、鋼が空気に曝露されるとすぐに形成される酸化クロム表面コーティングが、水蒸気、酸素および他の化学物質の透過に対して不浸透性であるため、腐食抵抗性である。ニッケル系、コバルト系、マンガン系および有意な量のクロム、典型的には10wt%またはそれ以上を含む他の合金はまた、これらの不浸透性酸化クロムコーティングを形成する。他の合金は、それらがまた、空気に曝露されるとすぐに水蒸気、酸素および他の化学物質の透過に対しても不浸透性である酸化コーティングを形成する、同様の現象を示す。
【0006】
これらの合金は、空気に曝露されるとすぐに酸化表面コーティングを形成するだけでなく、これらの酸化コーティングが水蒸気、酸素および他の化学物質の透過に対して不浸透性であるので、自己不動態化すると言われている。これらのコーティングは、基本的に、鉄および他の低合金鋼が空気に曝露すると形成される酸化鉄コーティング、例えば錆とは異なる。これは、これらの合金が適切に保護されない場合には錆により完全に消費される可能性がある事実により理解することができるように、これらの酸化鉄コーティングが水蒸気、酸素および他の化学物質の透過に対して不浸透性ではないためである。
【0007】
ステンレス鋼が慣例的に浸炭されている場合、鋼のクロム含量は表面硬化の原因となるカーバイド沈殿の形成を通じて局所的に枯渇する。結果として、クロムカーバイド沈殿を直ちに囲む表面付近の領域で、表面に保護酸化クロムを形成するにはクロムが不十分となる。鋼の腐食抵抗性が損なわれるので、ステンレス鋼は、従来の(高温)浸炭により肌焼きされることがほとんどない。
【0008】
低温浸炭
1980年代中期、ワークピースを炭素含有ガスと低温、典型的には約500℃未満で接触させるステンレス鋼を肌焼きするための技術が開発された。これらの温度で、浸炭があまり長く継続しない条件で、ガスの分解により解放された炭素原子は、カーバイド沈殿の形成なしで、ワークピース表面、典型的には20μm~50μmの深さまで拡散する。それにも関わらず、非常に硬いケース(表面層)が得られる。カーバイド沈殿が生じないので、鋼の腐食抵抗性は損なわれず、さらには改善する。「低温浸炭」と呼ばれるこの技術は、米国特許第5,556,483号、米国特許第5,593,510号、米国特許第5,792,282号、米国特許第6,165,597号、欧州特許明細書第0787817号、日本特許出願第9-14019号(特開平第9-268364号公報)および特開平第9-71853号(特開平第9-71853号公報)を含む多くの刊行物で説明されている。
【0009】
窒化および浸炭窒化
浸炭に加えて、窒化および浸炭窒化は、種々の金属の表面硬化に使用することができる。窒化は、表面硬化のために分解して炭素原子を生じる炭素含有ガスを使用するのではなく、窒化が表面硬化のために分解して窒素原子を生じる窒素含有ガスを使用することを除いて本質的に浸炭と同じ方法で機能する。
【0010】
しかし、浸炭と同じ方法において、窒化がより高い温度で、急冷なしで達成される場合、硬化は、拡散原子の別個の化合物、すなわち窒化物の形成および析出を通じて生じる。他方で、窒化が低温で、プラズマなしで達成される場合、硬化は、金属の結晶格子に拡散されている窒素原子により金属の結晶格子にかかる応力を通じて、これらの沈殿の形成なしで生じる。鋼中のクロムが拡散窒素原子と反応して窒化物が形成するのを引き起こす場合、鋼の固有の腐食抵抗性が失われるため、浸炭の場合と同様に、ステンレス鋼は、通常、従来の(高温)またはプラズマ窒化により窒化されない。
【0011】
浸炭窒化において、ワークピースは、窒素および炭素含有ガスの両方に曝露され、それによって、窒素原子および炭素原子の両方が、表面硬化のためにワークピース内に拡散する。浸炭および窒化と同じ方法で、浸炭窒化は、肌焼きが窒化物およびカーバイド沈殿の形成を通じて生じるより高い温度、または肌焼きが、金属の結晶格子に拡散している格子間に溶解した窒素原子および炭素原子により金属のこの結晶格子内に作成されるはっきりと局所化した応力場を通じて生じるより低い温度で達成することができる。便宜上、これらのプロセスの3つすべて、すなわち浸炭、窒化および浸炭窒化は、本開示において「低温表面硬化」または「低温表面硬化プロセス」と総称される。
【0012】
活性化
低温表面硬化に関連する温度が非常に低いので、炭素および/または窒素原子は、ステンレス鋼の酸化クロム保護コーティングを透過しない。そのため、これらの金属の低温表面硬化は、通常、HF、HCl、NF3、F2またはCl2などのハロゲン含有ガスとワークピースを、高温、例えば200℃から400℃で接触させて、鋼の保護酸化物コーティングを炭素および/または窒素原子の通過に対して透過的にする活性化(「脱不動態化」)ステップの前に行われる。
【0013】
その開示が参照により本明細書に組み込まれている、Somersらによる国際公開第2006/136166号(米国特許第8,784,576号)は、アセチレンが浸炭ガス中の有効成分として、すなわち浸炭プロセスのための炭素原子を供給するための供給源化合物として使用される、ステンレス鋼の低温浸炭のための改変プロセスを説明している。そこで示されるように、アセチレン供給源化合物が同様にステンレス鋼を脱不動態化するのに十分な反応性であるため、ハロゲン含有ガスを用いる別個の活性化ステップは不要である。したがって、本開示の浸炭技術は、自己活性化とみなすことができる。
【0014】
その開示がまた参照により本明細書に組み込まれている、Christiansenらによる国際公開第2011/009463号(米国特許第8,845,823号)は、尿素、ホルムアミドなどのような酸素含有「N/C化合物」の形状の試薬が、浸炭窒化プロセスに必要な窒素原子および炭素原子の供給源として使用される、ステンレス鋼を浸炭するための同様の改変プロセスを説明している。本開示の技術はまた、ハロゲン含有ガスを用いる別個の活性化ステップも不要であると言われているため、自己活性化であると考えることもできる。
【0015】
表面調製およびベイルビー層
低温表面硬化は、多くの場合、複雑な形状を有するワークピースで実行される。これらの形状を出現させるため、通常、切断ステップ(例えば鋸引き、切断、切削加工)および/または精錬加工ステップ(例えば鍛造、絞り、曲げなど)などの数種の金属成形操作を必要とする。これらのステップの結果、結晶構造における構造的欠陥は、多くの場合、潤滑剤、水分、酸素などのような汚染物質と同様に、金属表面付近の領域に導入される。結果として、複雑な形状のほとんどのワークピースにおいて、通常、塑性変形誘導の超微細粒子構造およびかなりのレベルの汚染物質を有する非常に欠陥が多い表面層が作成される。最大2.5μm厚であり得、ベイルビー層として既知であるこの層は、ステンレス鋼および他の自己不動態化金属の保護的干渉性酸化クロム層または他の不動態化層のすぐ下に形成される。
【0016】
上で示されるように、低温表面硬化のためにステンレス鋼を活性化するための従来の方法は、ハロゲン含有ガスと接触させることによるものである。これらの活性化技術は、本質的にこのベイルビー層による影響を受けない。
【0017】
しかし、ワークピースが、アセチレンまたは「N/C化合物」との接触により活性化されるというSomersらおよびChristiansenらにより上記の開示に記載された自己活性化技術については同じであると言えない。むしろ、経験から、複雑な形状のステンレス鋼ワークピースが、表面硬化が開始する前、そのベイルビー層を除去するために電界研磨、機械研磨、化学エッチングなどにより表面処理されていない場合、これらの開示の自己活性化表面硬化技術はいずれも、全く機能しないか、多少は機能するとしても、最良でもムラがあり、表面領域から表面領域への一貫性がない結果を生じることが示されている。
【0018】
Ge et al.,The Effect of Surface Finish on Low-Temperature Acetylene-Based Carburization of 316L Austenitic Stainless Steel,METALLURGICAL AND MATERIALS TRANSACTIONS B,Vol.458,Dec.2014,pp2338-2345、コピーライト2014年The Minerals,Metal&Materials SocietyおよびASMインターナショナルを参照されたい。ここで述べたように、「例えば機械加工により表面仕上げが不適切な[ステンレス]鋼試料は、アセチレン系プロセスではうまく浸炭することができない」。特に、エッチングにより意図的に導入された後、鋭利な刃物で引っ掻くと、エッチングされているが引っかかれていないワークピースの周囲部分が容易に活性化され浸炭される場合であっても、アセチレンでは活性化して浸炭することができない、「機械加工誘導分散層」(すなわちベイルビー層)を明らかにする
図10(a)ならびに2339ページおよび2343ページの関連する考察を参照されたい。そのため、実際に、これらの自己活性化表面硬化技術は、これらのワークピースがそれらのベイルビー層を最初に前処理して除去されない限り、複雑な形状のステンレス鋼ワークピースに使用することができない。
【0019】
この問題に対処するため、米国特許第10,214,805号は、自己不動態化金属から製造されたワークピースの低温窒化または浸炭窒化のための改変プロセスを開示し、ワークピースは、酸素を含まないハロゲン化窒素塩である試薬を加熱することにより生じる蒸気と接触する。ここで説明されるように、窒化および浸炭窒化に必要な窒素原子および任意選択で炭素原子を供給することに加えて、これらの蒸気はまた、これらの表面が前の金属成形操作のためにベイルビー層を保持する可能性がある場合であっても、これらの低温表面硬化プロセスについてワークピース表面を活性化することが可能である。結果として、以前の金属成形操作のために複雑な形状を定義する場合であっても、またそれらのベイルビー層を最初に除去するために前処理されていない場合であっても、この自己活性化表面硬化技術は、これらのワークピースに対して直接使用することができる。
【0020】
試薬を適用する方法
上記で議論したように、ほとんどの処理方法は、接触および/またはワークピースのすぐそばに試薬を配置することを介して処理の標的となるワークピース表面に試薬を適用する。そのような技術は、処理のためにワークピースの特定の表面、またはワークピース表面の特定の部分を標的化することができないという欠点を有する可能性がある。多くの方法は、表面が処理にとって等しい必要性を有していない場合であっても、すべての曝露されたワークピース表面を同じ方法で処理する。したがって、選択的処理のために標的化される特定の表面またはワークピース表面の特定の部分に試薬を選択的に適用する方法の必要性がある。また、種々の化学的プロセスのためのワークピースおよび物品をコーティングする際の柔軟性のより一般的な必要性もある。新規コーティングおよび方法は、材料の加工において使用される試薬および他の化学薬品の種類および有効性を高めるために開発する必要がある。
【発明の概要】
【0021】
本開示の態様は、ワークピースの表面の少なくとも一部に、試薬を含むコーティングを適用することを含む、自己不動態化金属で製造され、ベイルビー層を有するワークピースを処理するための方法を含む。その方法はまた、コーティングを処理して試薬を熱的に変更させることを含む。試薬の熱的変更は、硬化のために表面を活性化する。
【0022】
コーティングの処理は、試薬を分解する温度まで加熱することを含む可能性がある。方法は、表面を硬化することを含む可能性がある。硬化は、窒化、浸炭、軟窒化、および浸炭窒化の少なくとも1つを含む可能性がある。試薬の熱的変更は、硬化のために窒素および炭素の少なくとも1つを供給することができる。表面は、ワークピースの複数の表面の1つであり得る。コーティングの適用は、コーティングを選択的に表面に適用することを含む可能性があるが、ワークピース上の複数の表面のうち1つまたは複数の他の表面には適用しない可能性がある。コーティングの適用は、表面の一部に選択的にコーティングを適用することを含む可能性がある。コーティングは、粉体塗装、静電粉体塗装、流動床、および遠心力制御スピンコーティングの少なくとも1つであり得る。コーティングは、段階的で未反応のモノマーを有するポリマーを含む可能性がある。ポリマーは、メラミンであり得る。
【0023】
試薬は、粉末の場合HClと結合している可能性がある。コーティングは、水系であり得る。コーティングは、水、水系ポリエチレンオキシドコーティングまたはポリ酢酸ビニル、および水系ポリプロピレンオキシドコーティングの少なくとも1つを含む媒質を含む可能性がある。方法は、コーティングを乾燥することを含む可能性がある。コーティングの乾燥は、コーティングから媒質を除去する可能性がある。水は、炉内で蒸発して試薬を残す可能性がある。蒸発は、真空を適用することおよび試薬の活性化または硬化温度未満の温度で蒸発させることのうち少なくとも1つを含む可能性がある。水は、活性化または硬化プロセスに化学的に干渉しない可能性がある。HClは、試薬と錯体形成する可能性がある。
【0024】
コーティングは、油系であり得る。油は、鉱油、精直留油、食用油、パラフィン系油、炭化水素系加工油、およびエマルジョン系加工油のうち少なくとも1つを含む可能性がある。油は、炉内で蒸発して試薬を残す可能性がある。蒸発は、真空を適用することおよび試薬の活性化または硬化温度未満の温度で蒸発させることのうち少なくとも1つを含む可能性がある。油は、活性化または硬化プロセスに化学的に干渉しない可能性がある。HClは、試薬と錯体形成する可能性がある。
【0025】
コーティングは、液体または溶融物であり得る。コーティングは、堆積系であり得る。コーティングは、溶媒系であり得る。試薬は、酸素を含まないハロゲン化窒素塩を含む可能性がある。試薬は非ポリマーN/C/H化合物を含む可能性がある。
【0026】
表面は、不動態化層を含む可能性がある。試薬は、ジメチルビグアニドHCl、グアニジンHCl、ビグアニドHCl、ビス(ジアミノメチリデン)グアニジンHCl、カルバムイミドイルイミドジカルボンイミド酸ジアミドHCl、またはメラミンHClのうち少なくとも1つを含む可能性がある。コーティングは、石油蒸留物を含む可能性がある。方法は、石油蒸留物を蒸発させて試薬の乾燥混合物を残すことを含む可能性がある。
【0027】
本開示の態様はまた、その方法にしたがって処理されるベイルビー層を有するワークピースを含む。ワークピースへのコーティングの適用は、パラフィン系油の一部として試薬を提供することを含む可能性がある。パラフィン系油は、炭化水素またはエマルジョン系である可能性がある。パラフィン系油は、炉内で蒸発して試薬を残し、その部分を修飾する可能性がある。蒸発は、真空を適用することを含む可能性がある。蒸発は、試薬の活性化または硬化温度未満の温度で実行される可能性がある。パラフィン系油は、活性化または硬化プロセスに化学的に干渉しない可能性がある。
【0028】
態様は、自己不動態化金属で製造され、ベイルビー層を有するワークピースを処理するためのコーティング組成物をさらに含む。組成物は、試薬媒質およびグアニジン[HNC(NH2)2]部分を含み、HClと結合して、低温格子間型表面硬化のためにワークピースを活性化する試薬を含む。試薬は、酸素を含まないハロゲン化窒素塩および非ポリマーN/C/H化合物のうち少なくとも1つを含む可能性がある。試薬媒質は、粉末、水系液体、油、および溶媒のうち少なくとも1つを含む可能性がある。方法はまた、ワークピースを硬化するためにワークピースの浸炭、窒化、または軟窒化のうち1つまたは複数を含む可能性がある。
【0029】
本開示の態様はまた、ワークピースの表面の少なくとも一部にコーティングを適用することを含む、自己不動態化金属で製造され、ベイルビー層を有するワークピースを処理するための方法を含む。コーティングは実質的に、その部分の浸炭、窒化、または軟窒化を防止する。方法はまた、ワークピースを硬化するためにワークピースの浸炭、窒化、または軟窒化のうち1つまたは複数を含む可能性がある。コーティングは、銅または別の金属であり得る。方法は、ワークピースを硬化するためにワークピースの浸炭、窒化、または軟窒化のうち1つまたは複数のために、試薬を熱的に処理して、ワークピースの未コートの部分を活性化することを含む可能性がある。試薬は、ジメチルビグアニドHCl、グアニジンHCl、ビグアニドHCl、ビス(ジアミノメチリデン)グアニジンHCl、カルバムイミドイルイミドジカルボンイミド酸ジアミドHCl、またはメラミンHClのうち少なくとも1つを含む可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0030】
概要
【0031】
本開示の一態様によれば、コーティング(例えば活性化試薬を含むコーティング)は、ワークピース/物品に適用される。コーティングは、上記および本明細書に引用された参考文献で議論された硬化プロセスを促進する可能性がある。
【0032】
いくらかの場合、コーティングの試薬は、ワークピースの表面の部分への熱処理をさらにまたは代替的に促進する可能性がある。コーティングは、コーティングの適用、濡れ、および/またはワークピース表面への接着を促進するために、試薬、例えば「媒質」(すなわち、例えば、溶媒、粉末、ペースト、スプレー、浸液、およびコロイドなどの、試薬を支持するおよび/または運搬する任意の化学製品または物質)に加えて、種々のワークピースを含む可能性がある。
【0033】
コーティングは、ワークピースの表面を化学的に変更させる可能性がある。例えば、それらは、本明細書(例えば浸炭、窒化、軟窒化、および浸炭窒化)または参照により組み込まれているもので議論されている方法のいずれかを通じて硬化させるために表面を活性化する可能性がある。それらは、ワークピースの表面に他の化学反応を実行して、表面に化学物質を付与する、その表面から化学物質を除去する、および/またはいくらかの他の方法で表面の化学性を変化させる可能性がある。
【0034】
特に明記されない限り、実施例に含まれる本明細書で開示されているコーティングは、プラネタリーミキサ(真空ありまたはなし)、3ロールミル、グラインダ、ボールミル、または乳鉢および乳棒を用いる手動粉砕などの適切な分散混合装置を使用して均一な分散体に混合される。当業者は、得られるコーティングが、塊または不均一性がない外観で均一であるように、また有効成分(例えば試薬、媒質など)が実質的に均一に分散されるように、これらの手順を実行する方法を理解するであろう。
【0035】
本開示の使用
【0036】
硬化方法
【0037】
本開示は、本明細書、以下または背景技術のセクションに明示的に記載された、および/または参照により暗示もしくは組み込まれている硬化プロセスを促進する可能性がある。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2020年12月4日に出願された米国特許出願第17/112,076号、Cyprian Adair William Illingらによる「CHEMICAL ACTIVATION OF SELF-PASSIVATING METALS」に記載の任意の硬化プロセスを促進する可能性がある。そのような硬化方法は、窒素および/または炭素の拡散、特に格子間拡散を使用して鋼または合金を硬化させる任意の方法を含む。これらは、上記で議論されるように、従来の浸炭、低温浸炭、窒化、浸炭窒化、および軟窒化を含む。それらは、本明細書で記載されるように、試薬または他の化学物質の使用を含む硬化プロセスを含む。試薬は、例えば、不動態化層が窒素および/または炭素の拡散を可能にするようにすることにより、硬化のために金属を活性化する可能性がある。本明細書で開示されているコーティングはまた、炭素または窒素の拡散を含まない硬化プロセス(例えば機械加工技術)において使用することができる。本明細書に記載のコーティングは、プロセスが同時および/または一斉に実行される場合、これらの硬化プロセスの1つまたは複数に対応している可能性がある。それらは、ワークピースのある特定の部分での硬化、ならびにまたは他の物理的および化学的プロセスを防止するために使用することができる。
【0038】
本開示のコーティングを適用することができる製品
【0039】
本明細書に記載のコーティングは、ワークピースまたは金属製造品を形成するために使用することができる、開示された任意の材料に適用することができる。これらは典型的に、鋼、特にステンレス鋼を含む。代表的な鋼には、304SS、384SS、316SS、317SS、合金254、合金6HNなどが含まれる。コーティングは、ニッケル合金、ニッケル鋼合金、ハステロイ、ニッケル系合金に適用することができる。代表的なニッケル系合金には、合金904L、合金20、合金825、合金625、合金C276、合金C22などが含まれる。コーティングはまた、二相合金、コバルト系合金、マンガン系合金および有意な量のクロムを含む他の合金、チタン系合金に適用することができる。しかし、それらは、そのような材料に限定されず、任意の金属に適用することができる。いくらかの変形において、それらはまた、非金属にも適用することができる。
【0040】
本明細書においてコーティングが上述のように加工された材料とともに使用されることが意図されることが理解される。特に、コーティングは、ベイルビー層の存在下で硬化するためにワークピースの活性化を促進するように意図される。
【0041】
特性変更コーティング
【0042】
本明細書で開示されているコーティングは、特性を、ワークピース表面の機械的、熱力学的、生物活性、物理的、化学的、および/または電気的、磁気的に変更する可能性がある。例えば本明細書で開示されている試薬を含むコーティングは、例えば、本明細書で開示されており、背景のセクションで記載されているような任意の硬化プロセスのために表面を活性化する可能性がある。コーティングは、他のコーティングの適用および/または液体もしくは気体種への曝露から表面の一部を単に遮断する可能性がある。一例は、例えば、化学試薬(例えば本明細書で開示、説明、参照または暗示されている任意の化学試薬)の熱分解から発生するものなど、蒸気への曝露から一部を防ぐ銅コーティングである。ワークピース表面は、同じワークピースの異なる部分に異なる特性を適用するために、1つまたは複数のコーティングの種類/組成物を有する可能性がある。
【0043】
代表的なコーティングは、表面に腐食抵抗性を付与するために適用することができる。適切なコーティングは、鉄またはニッケル系の合金金属原子の不均質の上層アマルガムを作成する。いくらかのそのようなコーティングは、オーステナイト、マルテンサイト、およびフェライトのうち少なくとも1つまたは複数を含む、1つまたは複数の金属相を含む。いくらかのそのようなコーティングは、1つまたは複数の格子間型炭素原子、格子間型窒素原子、微細金属炭化物沈殿の分散体、微細金属炭化物沈殿の分散体、微細金属窒化物沈殿の分散体、粗金属炭化物沈殿、および粗金属窒化物沈殿を含む。
【0044】
コーティングが適用された後、処理は、コーティングを使用して下にあるワークピースの特性を変更させる可能性がある。例えば、熱処理は、上記および本明細書で引用される参考文献で議論された硬化プロセスにおける窒化、浸炭、および軟窒化などの硬化プロセスのために、コーティングがワークピース/ワークピースを活性化することができる原因となり得る。適用されたコーティングを加熱により処理することはまた、結果として、例えば処理中に放出された窒素および/または炭素がワークピースの表面に拡散し、それによってワークピース表面を硬化させる実際の硬化プロセスとなる可能性がある。
【0045】
本開示の環境内で最適化され得るコーティング特性
【0046】
本明細書で開示されているコーティング材料は、ある特定の用途に対して最適化することができる。一例は、本明細書で開示されている特定の試薬の分散および適用を促進することである。コーティングの化学的または物理的態様は、使用される特定の試薬、コーティングされる材料、およびコーティングにより促進される処理(例えば、硬化または加熱)などの因子に応じて変更することができる。本明細書で開示されているコーティングの化学的および物理的特性は、同様の理由で変更される可能性がある。これらの変更は、本明細書に明示的に記載されているかいないかに関わらず、本開示の一部とみなされる必要がある。
【0047】
コーティング材料はまた、ワークピースの表面の特定の部分をコートするために設計、処方、および/または適用することができる。例えば、コーティングには、ワークピースの表面の特定の領域をコートするための適切な化学量論的または体積量の試薬を含む溶媒混合物が含まれる可能性がある。コーティング特性を調整して、ワークピースの表面の一部(例えば、完成したバルブ製品媒体接触通路)を選択的にコートすることができる。
【0048】
本開示のコーティングに使用される代表的な試薬
【0049】
本開示によれば、コーティングは、グアニジン[HNC(NH2)2]部分またはHCl結合(例えば錯体形成)を伴う官能基を含む試薬として非ポリマーN/C/H化合物のクラスを含む可能性がある。これらの試薬は、硬化、腐食抵抗性、および/または摩耗抵抗性を改善することが示されている。
【0050】
特に、結果は、この系に属する少なくとも3つの試薬、1,1-ジメチルビグアニドHCl(この後、「DmbgHCl」):
【0051】
【0052】
およびグアニジンHCl(この後、「GuHCl」):
【0053】
【0054】
およびビグアニドHCl(BgHCl)は、低温条件下で非常に急速な表面硬化を誘導することに成功している。グアニジン[HNC(NH2)2]部分またはHCl錯体形成を伴う官能性は、DmbgHCl、GuHCl、およびBgHClの両方に共通の化学構造である。グアニジン部分がない試験された他の試薬は、同様の条件下、2時間以内で約20μmの浸炭硬化層深さを生成することを示していない。
【0055】
HClを有するグアニジンを含む他の化合物、例えばメラミンHCl(MeHCl)も適切であり、同様の結果を提供する可能性がある。この環境で同様の結果を達成する可能性がある他のグアニジン含有化合物には、トリグアニドが含まれる(トリグアニドの基本構造は:
【0056】
【0057】
)である。
【0058】
同様の結果を生じるグアニド、ビグアニド、ビグアニジンおよびトリグアニドの例には、クロルヘキシジンおよび酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジンおよび塩酸クロルヘキシジンなどのクロルヘキシジン塩、類縁体および誘導体、ピクロキシジン、アレキシジンおよびポリヘキサニドが含まれる。本発明にしたがって使用することができるグアニド、ビグアニド、ビグアニジンおよびトリグアニドの他の例は、塩酸クロルプログアニル、塩酸プログアニル(現在抗マラリア剤として使用されている)、塩酸メトホルミン、フェンホルミンおよび塩酸ブホルミン(現在糖尿病治療薬として使用されている)である。
【0059】
グアニジン部分の試薬は、HClと錯体形成する場合または錯体形成しない場合がある。任意のハロゲン化水素と錯体形成している試薬は、同様の結果を達成することができる。HCl錯体形成がないグアニジン部分の試薬はまた、米国特許第17/112,076号で議論されている、HCl錯体形成を有する他の試薬などの他の試薬と混合することができる。重要な基準は、低温軟窒化の温度範囲内(例えば450℃から500℃)で分解する間に、試薬または試薬のミクスが液相を有しているかどうかであり得る。その温度範囲に達する前に、試薬が分解せずに蒸発する程度は、重要事項である。
【0060】
コーティング製品
【0061】
本開示によれば、コーティング組成物を含む製品およびコーティング組成物でコートされた物品が企図されている。コーティング組成物は、本開示による試薬媒質を含む可能性がある。試薬は、例えば、グアニジン[HNC(NH2)2]部分を含む可能性があり、HClと結合して低温格子間型表面硬化のためにワークピースを活性化することができる。本明細書に開示または参照される任意の他の試薬を含む可能性がある。
【0062】
コーティング組成物は、気体、液体、ペースト、半液体、半固体、ゲル、または粉末を介して送達することができる。それは、金属または固体物品/ワークピースをコーティングするための任意の適切な手段により適用することができる。それらの手段には、噴霧、霧化スプレー、浸漬 (ディップ)、噴霧乾燥、スパッタ(または他の)堆積、吸着、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、印刷、蒸着、スピンコーティング、静電沈着、流動床、遠心力などを介するものが含まれる。これは、本明細書で開示されている任意のコーティング媒質を含む可能性がある。これは以下で議論される任意の種類のコーティングであり得る。
【0063】
コーティング適用性
【0064】
コーティングは、上記および本明細書で引用される参考文献で議論された材料に、上記の「コーティング製品」セクションに記載の任意の方法により適用することができる。例えば、コーティングは、種々の鋼(例えば316SSなどのステンレス鋼)およびニッケル鋼合金を含む、種々の金属に適用することができる。それらは、硬化および/または加熱プロセスの前またはその間に適用することができる。コーティングは、コーティング(例えば硬化)により促進される特定の処理に供される、ワークピース表面の特定の部分(例えばフランジ、フェルール形のエッジ、ニードルバルブステムチップ、ボールバルブオリフィスリムなど)に選択的に適用することができる。換言すると、コーティングは、ワークピースの表面のその部分の選択的処理のためにワークピースの表面の少なくとも一部に適用することができる。
【0065】
ある特定の態様において、コーティングは、試薬を含む可能性があり、表面のその部分を硬化させるように、または腐食抵抗性、摩耗抵抗性、磁気、電気、熱力学、生物活性、もしくは機械的特性における変化のために、その部分に格子間型浸炭硬化層を形成するように、ワークピースの表面の少なくとも一部に適用される。他の実施形態において、コーティングは、試薬を含まず、代わりに表面をマスクして、その部分の処理、例えば熱処理および/または表面硬化をブロックする。態様において、コーティングは、本明細書に記載の定容積処理硬化プロセスなどの定容積処理において適用される。態様において、それらは、閉鎖またはクランプされた開口を介して適用される。態様において、コーティングは、例えばコーティングを強化するため(例えば、加圧または真空環境)、および/または汚染を防止するために、改変された雰囲気において適用される。態様において、コーティングは、試薬を促進または保持するための他の化学物質、例えばHCl結合があるまたはそれがない尿素を含む。
【0066】
コーティングは、コーティング中の試薬がその化学的特徴の分解または変化を開始する温度未満の温度で適用することができる。コーティングは、それらの試薬が溶融様態である場合、代わりに適用することができる。それらは、噴霧、例えば霧化スプレーにより適用することができる。態様において、コーティングは、静電気的に適用することができる。コーティングは、流動床により代わりに適用することができる。それらは、追加でまたは代わりに、遠心力、および/またはスピンコーティングにより適用することができる。コーティングは、平坦面または非平坦面に、および/または表面の特定の側面または部分に適用することができる。それらは、ある特定の表面または表面のある特定の部分に選択的に適用することができる。
【0067】
適用されると、コーティングは乾燥する可能性がある。乾燥は、コーティングから媒質または他の成分を除去することができる。媒質除去プロセス(例えば加熱)は、試薬の分解温度未満の温度で実行することができる。乾燥および/または媒質除去プロセスに続いて、乾燥コーティングを有するワークピースは、加工のために加熱することができる。例えば、ワークピースは、コーティング中の試薬を分解するのに十分な温度まで加熱して、本明細書および参照により本明細書に組み込まれている任意の文書に記載されているような硬化プロセスのために炭素および/または窒素を提供することができる。乾燥は、真空、乾燥剤曝露を介して、または他の適切な手段により達成される可能性がある。
【0068】
代表的なコーティングの種類
【0069】
代表的なコーティングの種類を以下で議論する。これらのコーティングの種類が、相互に排他的ではないことが理解される必要がある。いくらかのコーティングは、2つまたはそれ以上の種類の態様を含む可能性がある。
【0070】
金属を含むコーティング
【0071】
いくらかのコーティングは、オーステナイト、マルテンサイト、およびフェライトのうち少なくとも1つまたは複数を含む1つまたは複数の金属相を含む可能性がある。これらのコーティングはまた、本明細書で開示されている試薬および媒質を含む可能性がある。いくらかのコーティングは、格子間炭素原子、格子間窒素原子、微小金属炭化物沈殿物の分散体、微小金属窒化物沈殿物の分散体、粗金属炭化物沈殿物、および粗金属窒化物沈殿物のうち1つまたは複数を予め注入することができる金属添加物を含む可能性がある。金属添加物は、表面硬化プロセスを支援することができる。金属添加物は、コーティングされた表面との試薬作用(表面反応、熱分解機構、ある特定の反応の触媒作用など)を制御または修飾する可能性がある。ある特定の添加物は、ワークピース内の格子間型浸炭硬化層形成において他のものを超えるある特定の反応を駆動する種結晶として機能する可能性がある。以下に列記された任意の種類のコーティングは、金属を含む可能性がある。
【0072】
液体-または溶融物-試薬の種類のコーティング
【0073】
試薬は、例えば、媒質、試薬、および添加物を含む可能性がある液化または溶融された試薬により合金表面に適用することができる。これらのコーティングは、その融点を超えて加熱された典型的な試薬を含む可能性がある。部品は、浸漬、噴霧されるか、または非固体試薬コーティングを用いてその他の方法で被覆することができる。添加物は、溶融温度、粘度、濡れ性、および分解経路を含む特性を改変するために添加することができる。
【0074】
粉末型コーティング
【0075】
コーティングは、試薬粉末が散在している他の物質(例えば媒質または湿潤剤)を含む実質的に粉末様であり得る。例えば、コーティングは、試薬と混合された金属結晶(例えば316SSまたは他の合金金属粉末)を含む可能性がある。いくらかの場合において、そのような金属触媒を試薬とともに含むことにより、触媒は、試薬の反応性を改善する。コーティング中の他の物質は、試薬と化学的に結合するか、試薬と錯体形成するか、しない(例えば試薬と物理的に混合される)可能性がある。代表的な粉末型コーティングは、ポリマーおよび試薬を含む。代表的なポリマーは、段階的で未反応のモノマー(例えばメラミン)を含む。代表的なコーティングは、追加の熱硬化性反応物との「b段階」の配合の前に「a段階」のモノマー(例えばメラミン)を含む。試薬粉末は、他の化合物(例えばHCl)と結合する可能性がある。粉体塗装はまた、試薬が不足している可能性がある。
【0076】
粉体塗装は、コーティングと処理(例えば硬化および/または加熱)との間の延長期間(例えば、分、時間、または日)にワークピース表面に接着および/またはそれを保護するために十分な機械的耐久性がある可能性がある。適切な粉末サイズ選択および分布は、粉砕およびその後の篩分け操作により得ることができ、所望の流動性ミクスを生成し、適切な粒子サイズの流動または固結防止添加物を含み、凝集を回避し、良好な流動性および加工性を確実にすることができる。
【0077】
上記に加えて、使用することができる粉末型コーティングの特定の非限定例には、とりわけポリオレフィンおよびポリプロピレンが含まれる。
【0078】
水系コーティング
【0079】
水系コーティングは、試薬および試薬媒質を含む可能性があり、懸濁液またはエマルジョン型の水系溶液であり得る。媒質の適切な例には、とりわけ界面活性剤およびポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、およびポリ酢酸ビニルが含まれる。適切な媒質の例には、これらに限定されないが、とりわけポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドを含む非イオン性界面活性剤が含まれる。媒質および試薬の化学的同一性、ならびに媒質の試薬(またはコーティングの他の成分)に対する化学量論比は、ワークピースの表面に試薬をコートするように、個々にまたは同時に調整することができる。これは、特定のワークピース表面化学または形態を調整することを含む可能性がある。例えば、届きにくい、および/または遮断されたワークピース表面(例えば内面および/または障害物に面している表面)をコートすることが望ましい場合がある。複雑なワークピース形状または表面を、それらの表面の選択された部分を含めて、コートすることが望ましい場合がある。液体形状の水系コーティングは、特にワークピースの内面をコートする場合は、加圧および/またはワークピースに通して流すことを介して適用することができる。例えば、加圧および/または流し込みプロセスは、完成したバルブ製品の媒体接触面をコーティングするために特に有用であり得る。いくらかの水系コーティングは、コーティング液中でワークピースを浸漬塗装することにより適用される可能性がある。
【0080】
適用すると、水系コーティングは、空気またはガス乾燥することができる。乾燥は、コーティング中の媒質を除去し、主に、本質的に、または排他的に試薬を残す可能性がある。代わりに、媒質および試薬がコーティング中に残り、主に、本質的に、または排他的に媒質および試薬を残す。乾燥は、従来の送風手段、例えば、ガス流を加熱するまたは加熱しない送風乾燥により達成することができる。ガス(複数を含む)は、空気、不活性ガス、または他の種類のガスを含む可能性がある。乾燥はまた、コーティングのある特定の部分、例えば媒質の放出(例えば蒸発、または脱溶媒和)を引き起こすように真空を介して達成することもできる。真空処理は、コーティングおよび/またはワークピースを、コーティング試薬の分解温度未満の温度、例えば180℃から200℃まで加熱することを含む可能性がある。特定の化学ワークピース用のトラップは、このプロセスを支援することができ、また、真空および/またはオーブンシステム(複数を含む)に含めることができる。殺真菌剤および細菌制御もまた、乾燥プロセスに含まれる可能性がある。ガス放出は、真空計または圧力計を介して特定の段階(例えばコーティングの媒質の完全なガス放出)まで監視することができる。
【0081】
使用することができる水系コーティングの特定の非限定例には、ポリエチレンオキシド、ポリ酢酸ビニル、およびポリプロピレンオキシドならびにそれらの混合物に基づくコーティングが含まれる。
【0082】
堆積系コーティング
【0083】
堆積系コーティングは、媒質、試薬、および添加物を含む可能性がある。試薬材料は、PVDおよびCVDプロセスが含まれるが、これらに限定されない堆積法によりワークピースの表面に適用することができる。試薬は、媒質化学種により運搬され、部品表面に堆積する可能性がある。媒質または試薬材料への添加物は、接着性、濡れ性、試薬揮発および分解挙動を含むコーティングおよびプロセスの特性を改変することができる。そのようなプロセスは、所望のコーティング厚み、位置特異性、コーティング形態、およびコーティング組成を達成するために、多種多様の温度および圧力で行うことができる。
【0084】
非水性溶媒系コーティング
【0085】
種々の溶媒、溶媒ブレンド、またはレオロジー特性を調整し、加工性を向上させる他の改質剤も、本明細書で開示されているコーティング(粉末、液体、ペースト、ゲルなど)に含まれる可能性がある。溶媒系コーティングは、媒質、試薬、および添加物を含む可能性がある。適切な媒質には、溶媒が含まれる。コーティングはまた、表面上に試薬のコーティングを堆積させる間、乾燥/蒸発を行う適切なプロセス条件を介して除去することができる溶媒ミクスを含む可能性がある。媒質は、コーティングの適用および表面への接着/濡れ、ならびにコーティング媒質中の試薬の懸濁を促進するための粘性剤および表面活性剤を含むことができる。
【0086】
溶媒系コーティングは、同様の方法で、適用およびガス排出/乾燥を行うことができる。適切な溶解性、粘度および蒸留点を有するアルコールおよびアルコール溶媒ミクスは、適切な溶媒ミクスの例である。同様の混合物は、プリント配線板および他の電子機器の製造プロセス中のフラックス操作に存在する。そのようなプロセスは、典型的に、窒素ブランケット下で乾燥される。そのようなコーティングは、化学反応物をカプセル化または懸濁する接着性ドライコーティングに向いている媒質を含んでいてもいなくてもよい。この媒質は、加熱時に、系を気相に移し、所望の試薬化学物質を後に残す可能性がある。媒質気化の温度は、溶媒乾燥温度より高い可能性があるが、試薬が金属表面と相互作用して活性化および/または表面硬化を引き起こす温度より低い可能性がある。乾燥はまた、コートされたワークピースを加熱することにより達成することができる。
【0087】
適切な化学量論的量または体積量の試薬を含む溶媒ミクスは、いくらかのワークピースをコートするために使用することができる。それらは、例えば、完成したバルブ製品媒体接触通路または硬化した工具を選択的にコートすることができる。このプロセスは、電子ワークピースのためのフラックス用途に対していくらかの類似性を有している可能性がある。
【0088】
溶媒の例には、有機溶媒が含まれるが、これらに限定されない。そのような有機溶媒の非限定の特定の例には、トルエン、アセトン、メチルアミン、クロロホルム、アセトニトリル、イソプロパノール、エタノール、ジオキサン、ジメチルスルホキソン(dimethylsulfoxone)、ヘキサン、アニリン、グリセロールが含まれる。
【0089】
油系コーティング
【0090】
例えば、鉱油、精直留油、および/または食用油を含む油は、試薬を用いてワークピース表面をコートするための媒質として使用することができる。油は、(例えば、水系コーティングの状況で上述したように)特定の用途のために調整された濃度または体積分率を有する試薬の分散体を含む可能性がある。油はまた、特定の用途のために調整された化学量論比または体積分率で試薬と結合または錯体形成したHClを含む可能性がある。油はまた、試薬および/またはHClを分散させるのに役立つ分散剤を含む可能性がある。前記試薬および/またはHCl混合物は、例えば室温コーティングを提供するために使用することができる。
【0091】
油系コーティングは適用されると、上述した水系コーティングと同様の方法で乾燥および/またはガス放出する可能性がある。例えば、化学ワークピースのための粗引きポンプおよび洗浄可能なトラップが装備された真空オーブンは、加熱して鉱油を除去することができる。加熱は、試薬の分解温度より実質的に低い温度までである可能性がある。加熱温度は、油の特性に基づいて選択することができる。例えば、油が鉱油である場合、加熱温度は、鉱油の蒸留物温度プロファイルに基づいて選択することができる。油は、コーティングから除去された後、リサイクルすることができる。リサイクルされた油の追加の蒸留または濾過はその純度を改善することができる。蒸留または濾過は、油の汚染のレベルに応じて、油の除去中または別の独立したプロセスとして適用することができる。
【0092】
代表的な構成において、機械加工センターでフェルールなどのワークピースをコーティングする加工油は試薬を含む。完成し、機械加工されたワークピースは、試薬を含む油で湿らせた機械加工センターを離れる。油で湿らせたワークピースはその後炉内に配置することができる。炉の高温は、油を蒸発させてフェルールに試薬コーティングを残す可能性がある。基油は、乾燥時間を短縮するために真空加熱の助けで除去することができる。真空システムが使用される場合、基油は、回収およびリサイクルすることができるので、より費用効果が高くなる。他方で、油が完全に蒸発されない場合、活性化および/または硬化反応に干渉しない油組成を選択することが好ましい。試薬コーティングは、残留油を含むか含まないに関わらず、上記で開示されているように、ワークピースの活性化および/または硬化を促進するために続いて使用することができる。
【0093】
炭化水素またはエマルジョン(水系)加工油は両方とも、本明細書で開示されている試薬などの添加物を収容することができる。実際、そのような油は、典型的に、工作機械の寿命を延長すること、細菌および真菌のブルームを低減すること、ならびに油の寿命を延長することを含む、種々の目的のために添加物がすでに含まれている。本明細書で開示されているような試薬も添加することができる。炭化水素系加工油は、完成した機械加工品/ワークピースが複雑であるものなど、より要求の厳しい用途で好ましい可能性がある。
【0094】
使用することができる油系コーティングの特定の非限定例には、上記に加えて、とりわけ精直留パラフィン系鉱油、他のパラフィン系油、他の鉱油、合成油、種々の石油製品、モーター油、植物系油、他の食用油、炭化水素系油、エマルジョン系油、およびワークピース用の加工油が含まれる。油系コーティングに関連して、コーティングは、石油蒸留物をさらにまたは代替的に含んでいる可能性がある。これらには、鉱油、ナフサ、重質燃料油、およびワックスが含まれる。蒸留物は、本明細書に記載の他の媒質と同様に処理する(例えば試薬を残すように蒸発させる)ことができる。
【0095】
実施例
特に指示のない限り、実施例における重量%は、コーティング組成物の総重量(すなわち、該当する場合には乾燥前)を指す。
【0096】
実施例1:
重量で84%のグアニジン塩酸塩および16%のグリセロールを含むグリセロール系重質ペーストコーティングを調製した。このコーティングは、室温での作業時間および290℃での乾燥が長かった。重質ペースト配合物は:84重量%のグアニジン塩酸塩および16%のグリセロールであった。分散混合装置を利用して構成成分を混合し、均質な分散体を達成した。得られるペーストは滑らかであり、塊がないか不均一性がない均一な外観であった。ペーストを、同時熱分析器(STA)炉内のアルミナるつぼパンに配置された1/16インチサイズのチューブフィッティング用の316Lブラックフェルールに適用した。炉、るつぼパン、およびフェルールを70ml/分の窒素ガスの一定の流れでパージした。フェルールおよびペーストを450℃で8時間、炉内で焼成し、室温まで冷却した。フェルールを除去し、切断してエッチングし、光学顕微鏡下で観察されたように、フェルールの周囲付近に約20μmの深さの均一な軟窒化浸炭硬化層を露呈させた。この例を3回繰り返した。4つの例すべてについて浸炭硬化層の深さの平均は、20.36μm±2.24μmであった。
【0097】
実施例2:
フェルールが合金6HNであったことを除いて実施例1と同様である。この例を1回繰り返した。両方の例について、浸炭硬化層の深さの平均は、11.0μm±1.0μmであった。
【0098】
実施例3:
室温で短い乾燥時間(1時間以内)での鋳造または噴霧のための低粘度コーティングを繰り返した。コーティングは、16重量%のグアニジン塩酸塩、83.9重量%のイソプロピルアルコール、および0.01重量%のグリセロールであった。分散混合装置を使用して、構成成分を以下の順:グアニジン塩酸塩、イソプロピルアルコール、およびグリセロールの順で混合した。得られる低粘度コーティングは、塊がないか不均一性がない均一な外観であった。
【0099】
実施例4:
物品の表面に適用するための無制限の作業時間で、重質ペーストコーティングの別の例を調製した。コーティングは、分散混合装置を利用して均質な分散体になるまで混合された85重量%のグアニジン塩酸塩および15重量%の鉱油であった。ペーストは滑らかであり、塊がないか不均一性がない均一な外観であった。
【0100】
実施例5:
未乾燥膜厚が25ミル超であり、乾燥膜厚が0.46mmである水系コーティングを調製した。作業時間は2時間以内であり、完全乾燥時間は、室温で24時間である。17重量%のグアニジン塩酸塩を66重量%のポリ酢酸ビニル系白のり(エルマーの製品E308)を分散混合装置で混合し、その後、17重量%の脱イオン水を添加することにより、コーティングを調製した。得られるペーストは滑らかであり、塊がないか不均一性がない均一な外観であった。乾燥コーティングは、均一で粘着性があり、物品の取り扱いおよび搬送後の乾燥に十分な耐久性があった。
【0101】
実施例6:
物品の表面への適用のための無制限の作業時間で、別の重質ペーストを調製した。ペーストは、分散混合装置中で均質な分散体になるまで混合することにより調製された85重量%のグアニジン塩酸塩および15重量%のパラフィン系油であった。得られるペーストは滑らかであり、塊がないか不均一性がない均一な外観であった。
【0102】
種々の本発明の態様、本発明の概念および特徴は、代表的な実施形態において組み合わせて具現化されるものとして本明細書で説明および例示され得るが、これらの種々の態様、概念および特徴は、個々にまたは種々の組み合わせおよびその下位の組み合わせのいずれかで、多くの代替の実施形態において使用することができる。本明細書において明確に排除されない限り、そのような組み合わせおよび下位の組み合わせはすべて、本発明の範囲内にあることが意図される。さらに、代替の材料、構造、構成、方法、回路、装置および構成成分、形状、適合性および機能に関する代替物などの本発明の種々の態様、概念および特徴に関する種々の代替の実施形態が、本明細書に記載されている可能性があるが、そのような説明は、現在既知であるか、後で開発されるかに関わらず、利用可能な代替の実施形態の完全または網羅的なリストであることを意図していない。当業者は、そのような実施形態が、本明細書で明確に開示されていない場合であっても、本発明の範囲内での追加の実施形態および使用に、本発明の態様、概念または特徴の1つまたは複数を容易に採用することができる。さらに、本発明の同じ特徴、概念または態様が、好ましい配置または方法であると本明細書で説明することができる場合であっても、そのような説明は、明示的に述べられていない限り、そのような特徴を要求されるか必要とされることを提案することを意図するものではない。さらに、本開示を理解するのを助けるために、典型的または代表的な値および範囲が含まれ得るが、そのような値および範囲は、限定的な意味で解釈されるものではなく、明確に述べられている場合にのみ、臨界値または範囲であることが意図される。さらに、本開示を理解するのを助けるために、典型的または代表的な値および範囲が含まれ得るが、そのような値および範囲は、限定的な意味で解釈されるものではなく、明確に述べられている場合にのみ、臨界値または範囲であることが意図される。特定の値の「おおよそ」または「約」として識別されるパラメータは、特に明示的に述べられていない限り、特定の値および特定の値の10%以内の値の両方を含むことが意図される。さらに、種々の態様、特徴および概念が、発明的であるか本発明の一部を形成するものとして本明細書において明示的に識別される可能性があるが、そのような識別は排他的であることを意図するものではなく、むしろ、本明細書に完全に記載されている本発明の態様、概念および特徴がある可能性があり、そのような特定の本発明としてまたはその一部としては明示的に識別されず、その代わりに本発明が添付の特許請求の範囲に記載されている。典型的な方法またはプロセスの説明は、すべての場合に必要であるとしてすべてのステップを含めることに限定されず、明示的にそのように述べられていない限り、そのステップが要求されるか必要とされると解釈されるように提示されている順序ではない。
【国際調査報告】