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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】光導波路及び光導波路の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20230605BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20230605BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20230605BHJP
   G02B 6/13 20060101ALI20230605BHJP
   A61F 2/18 20060101ALI20230605BHJP
   G01L 9/00 20060101ALI20230605BHJP
   A61B 18/22 20060101ALN20230605BHJP
【FI】
G02B6/02 391
G02B6/02 366
G02B6/42
G02B6/122
G02B6/122 311
G02B6/13
A61F2/18
G01L9/00 B
A61B18/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565723
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2021060099
(87)【国際公開番号】W WO2021228497
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/063320
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】318013307
【氏名又は名称】オート・エコール・アルク
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーラ、ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】フラオー、フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ベルゲラ、シルヴァン
【テーマコード(参考)】
2F055
2H137
2H147
2H250
4C026
4C097
【Fターム(参考)】
2F055CC02
2F055EE31
2H137AA08
2H137AA14
2H137AB06
2H137BA03
2H137BA04
2H137BA34
2H137BA35
2H137BB02
2H137BC51
2H137EA09
2H147AA00
2H147AA02
2H147BB01
2H147BG04
2H147CA11
2H147EA16A
2H147EA18A
2H147FD07
2H147FD08
2H250AA22
2H250AA33
2H250AA53
2H250AB32
2H250AB36
2H250AC04
2H250AC31
2H250AC63
2H250AC65
2H250AC67
2H250AC93
2H250AC94
2H250AC95
2H250AC96
2H250AC98
2H250AG00
2H250CA31
2H250CC23
4C026FF16
4C097AA29
4C097BB01
4C097DD02
4C097DD05
4C097EE09
4C097MM04
(57)【要約】
本発明は、180nmより大きい波長を有する、誘導される光学的光ビーム100を透過する、光導波路1に関する。導波路1は、第1の屈折率n1を有する第1の材料でできた、光100を誘導するための少なくとも1つのコア10と、少なくとも部分的に熱可塑性エラストマーTPEでできたクラッド20とを備え、クラッド20の最内層は、コア10の最外層の屈折率n1より小さい屈折率n2を有する。本発明はまた、医療デバイス、及び本発明の光導波路1を備える導波路センサにも関する。本発明はさらに、光導波路1の製造方法にも関する。該方法は、詰まった熱可塑性エラストマーのプリフォーム200、又は中央開口部202’を有するプリフォーム204の実現に基づく。本発明の光導波路1を実現するために、プリフォーム200、204を所定の長さ及び所定の横方向寸法まで伸長する前又は後に、プリフォームのコアを充填し、硬化させる。本発明は、プリフォーム200、204を実現するための、3D印刷方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸Zを画定する少なくとも1つのコア(10)と、前記コア(10)を囲繞するクラッド(20)とを備え、前記コア(10)及び前記クラッド(20)が、前記長手方向軸Zに沿って、180nmより長い波長を有する光ビーム(100)を透過するよう構成され、前記少なくとも1つのコア(10)が、少なくとも最外層を備え、前記クラッド(20)が、前記コアの(10)の前記最外層と接触する、少なくとも最内層を備え、
- 前記コア(10)の前記最外層が、第1の屈折率(n1)を有する材料でできており、
- 前記クラッド(20)の前記最内層が、少なくとも部分的に、前記第1の屈折率(n1)より小さい第2の屈折率(n2)を有する、熱可塑性エラストマー(TPE)でできている、
光導波路(1)。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマー(TPE)が、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v若しくはTPV)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)の中から選択される、請求項1に記載の光導波路(1)。
【請求項3】
前記クラッド(20)が、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v若しくはTPV)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)の中から選択される熱可塑性エラストマー(TPE)でできている、少なくとも1つの追加の層を備える、請求項1又は2に記載の光導波路(1)。
【請求項4】
前記コア(10)が、少なくとも部分的に、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v若しくはTPV)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)の中から選択される熱可塑性エラストマー(TPE)でできている、請求項1から3までのいずれか一項に記載の光導波路(1)。
【請求項5】
前記コア(10)が、少なくとも部分的にシリコーンでできている、請求項1から3までのいずれか一項に記載の光導波路(1)。
【請求項6】
前記コア(10)が、1.5未満、1.3未満、又は1.2未満の屈折率を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の光導波路(1)。
【請求項7】
前記クラッド(20)の内面が、前記コア(10)に入力結合される光を反射するよう配置された、金属層及び/又は誘電体層を備える、請求項1から6までのいずれか一項に記載の光導波路(1)。
【請求項8】
前記光導波路(1)が光ファイバ(1)である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の光導波路(1)。
【請求項9】
第1の幅(W1)を有する第1の横側面(1c)と、前記第1の幅(W1)よりも大きい第2の幅(W2)を有する第2の側面(1b)とを有し、前記幅(W1、W2)が、前記長手方向軸Zに直交する平面(X-Y)で画定される、任意の横断面で画定されている、請求項1から8までのいずれか一項に記載の光導波路(1)。
【請求項10】
10μm未満、5μm未満、又は2μm未満の、前記コア(10)の最小寸法を有する、請求項1から9までのいずれか一項に記載の光導波路(1)。
【請求項11】
前記光導波路(1)がモノモード光導波路(1)である、請求項10に記載の光導波路(1)。
【請求項12】
前記光導波路(1)が、少なくとも2つの相異なる断面(42、44)を有する、先細の光導波路である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の光導波路(1)。
【請求項13】
出力結合光(120)の強度(I2)と、入力結合光(110)の強度(I1)との比として定義される光透過率(T0)が、180nmから25μmの間の波長を有する入力結合光に対して50%を超え、前記光導波路(1)が、1m未満又は50cm未満の長さを有する、請求項1から12までのいずれか一項に記載の光導波路(1)。
【請求項14】
前記光透過率(T0)が、300nmから5μmの間、好ましくは350nmから2μmの間、さらにより好ましくは400nmから700nmの間の波長を有する入力結合光に対して80%を超え、好ましくは90%を超える、請求項13に記載の光導波路(1)。
【請求項15】
前記光導波路(1)の長さ(L)の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%まで、弾性的に伸縮可能であるよう構成され、これにより、光透過率(T2)が、伸張された後、伸張される前の前記光導波路(1)の前記透過率(T0)の少なくとも90%で保持される、請求項1から14までのいずれか一項に記載の光導波路(1)。
【請求項16】
少なくとも2つのコア(10)を備える、請求項1から15までのいずれか一項に記載の光導波路(1)。
【請求項17】
少なくとも6つのコア(10)を備える、請求項16に記載の光導波路(1)。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか一項に記載の少なくとも3つの光導波路(1a、1b、1c)を備える、光導波路束(300)。
【請求項19】
請求項1から17までのいずれか一項に記載の少なくとも1つの光導波路(1)を備える、医療デバイス。
【請求項20】
前記デバイスが、蝸牛インプラント・デバイス(600)である、請求項19に記載の医療デバイス。
【請求項21】
請求項1から17までのいずれか一項に記載の少なくとも1つの光導波路(1)と、前記光導波路に配置された光空洞センサ・ヘッド(500)とを備え、前記センサ・ヘッド(500)が、可撓性の膜(530)によって閉じられた光空洞(502)を備える、光センサ。
【請求項22】
請求項1から17までのいずれか一項に記載の少なくとも1つの光導波路(1)を備える、圧力センサ。
【請求項23】
請求項1から17までのいずれか一項に記載の少なくとも1つの光導波路(1)を備える、機械的伸長センサ。
【請求項24】
請求項1から17までのいずれか一項に記載の光導波路(1)の製造方法であって、
A.前記光導波路(1)の前記クラッド(20)を形成する中空形状のプリフォーム(204)を実現するステップであって、前記中空形状のプリフォーム(204)が、少なくとも部分的に、第2の屈折率(n2)を有する熱可塑性エラストマー(TPE)でできた最内層及び中央開口部(202’)を備える、実現するステップと、
B.前記光導波路(1)の前記コアを形成するプリフォーム(200)のコア部分を作り出すために、前記中空形状のプリフォーム(204)の前記中央開口部(202’)を充填するステップであって、前記コア部分が、前記第2の屈折率(n2)よりも大きい第1の屈折率(n1)を有する最外層を備え、前記最内層が前記最外層と接触して形成され、充填されたプリフォーム(200)を実現する、充填するステップと、
C.所定の長さL及び所定の断面(40、41)を有する光導波路(1)を得るために、前記充填されたプリフォーム(200)の直径を小さくして、前記充填されたプリフォーム(200)を伸長するステップと
を含む、光導波路(1)の製造方法。
【請求項25】
前記熱可塑性エラストマー(TPE)が熱可塑性ポリウレタン(TPU)である、請求項24に記載の光導波路(1)の製造方法。
【請求項26】
前記中空形状のプリフォーム(204)の前記中央開口部(202’)が、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v、TPV)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)の中から選択される熱可塑性エラストマー(TPE)で充填される、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
ステップB及びCが、
B’)所定の長さ(L)及び所定の断面(40、41)を有する細管(2000)が形成されるまで、前記中空形状のプリフォーム(204)の直径を小さくし、前記中空形状のプリフォーム(204)を伸長するステップであって、前記細管(2000)が、所定の断面(30)を有する中央開口部(2002)を有する、伸長するステップと、
C’)前記中空形状のプリフォーム(204)の前記中央開口部(202’)内に、液体シリコーン(11)を導入するステップと、
D’)前記液体シリコーン(11)を重合して、重合された液体シリコーン(11)でできたコア(10)を有する、光導波路(1)を形成するステップと
によって置き換えられる、請求項24に記載の製造方法。
【請求項28】
ステップC’及びD’が、
E’)前記中空形状のプリフォーム(204)の直径を小さくする前記ステップB’の間に、液体シリコーン(11)を導入するステップと、
F’)前記中空形状のプリフォーム(204)の直径を小さくするステップの間、前の形の光導波路が、所定の長さ(L)及び所定の断面(40、41)を得るまで、前記液体シリコーンを液体の状態に保持するステップと、
G’)光導波路(1)を形成するために、前記液体シリコーン(11)及び前記細管(2000)を熱重合するステップと
によって置き換えられる、請求項27に記載の製造方法。
【請求項29】
ステップB’、C’、及びD’が、
H’)前記ステップAの後、充填されたプリフォーム(200)を実現するために、液体ポリマー(11)を前記中空形状のプリフォーム(204)の中央開口部(202)内に導入するステップと、
I’)液体ポリマー(11)で充填された、前記充填されたプリフォーム(200)の直径を小さくし、液体ポリマー(11)で充填された細管(2000)が形成されるまで、前記充填されたプリフォーム(200)を伸長するステップであって、前記細管が、所定の長さ(L)及び所定の断面(40、41)を有する、伸長するステップと、
J’)UV光を当てて、前記液体ポリマーを重合するステップと
によって置き換えられる、請求項27に記載の製造方法。
【請求項30】
前記液体ポリマーが液体シリコーンである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記中空形状のプリフォーム(204)に、少なくとも1つの追加の層が配置され、前記追加の層が、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v、TPV)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)の中から選択される、熱可塑性エラストマー(TPE)でできており、前記熱可塑性エラストマーが、ISO規格18064に従って規定されている、請求項24から30までのいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項32】
前記プリフォーム(200)が、3D印刷技法によってTPUで作られる、請求項24から31までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記プリフォーム(200)が、少なくとも6つの開口部を備え、少なくとも6つのコアを有するマルチコア光導波路(1)を実現するように作られる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記プリフォーム(200)及び前記光導波路(1)が、所定の長さにわたって均一でない断面を有するように作られ、前記断面が、前記プリフォーム、前記光導波路(1)それぞれの前記長さに直交するよう画定される、請求項24から33までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
請求項1から17までのいずれか一項に記載の光導波路(1)の製造方法であって、
A’’.完全に3D印刷技法によって作られるプリフォーム(200)を実現するステップであって、前記プリフォーム(200)が、前記光導波路(1)の前記コア(10)を形成するコア部分(202)、及び前記光導波路(1)の前記クラッド(20)を形成する外側部分(204’)を備える、実現するステップと、
B’’.所定の長さL及び所定の断面(40、41)を有する光導波路(1)を得るために、前記プリフォーム(200)を伸長するステップと
を含む、製造方法。
【請求項36】
前記プリフォーム(200)の前記コア部分(202)及び前記外側部分(204’)が、連続する層(200a~200c)の3D印刷によって実現され、前記連続する層(200a~200c)のそれぞれが、中央部分(202a~202c)と外側部分(204’a~204’c)とを備え、前記中央部分(202a~202c)が、少なくとも前記外側部分の側面に、第1の屈折率(n1)を有し、前記外側部分(204’a~204’c)が、前記内側部分(202a~202c)の少なくとも側面まで、少なくとも部分的に、前記第1の屈折率(n1)よりも小さい第2の屈折率(n2)を有する、熱可塑性エラストマー(TPE)でできている、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記連続する層(200a~200c)の前記中央部分(202a~202c)及び前記外側部分(204’a~204’c)が、少なくとも部分的に、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v、TPV)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)の中から選択される熱可塑性エラストマー(TPE)でできている、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記連続する層のうちの少なくとも2つが、相異なる形状の層又は相異なる材料組成を有する層である、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記プリフォーム(200)に、少なくとも1つの追加の層が配置され、前記追加の層が、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v、TPV)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)の中から選択される、熱可塑性エラストマー(TPE)でできており、前記熱可塑性エラストマーが、ISO規格18064に従って規定されている、請求項35から38までのいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項40】
外科手術中の手術用器具と関連する、請求項1から17までのいずれか一項に記載の光導波路(1)の使用法。
【請求項41】
前記手術用器具の位置を特定する追跡、及び/又は前記手術用器具の先端付近の組織の光学特性の追跡に関する、請求項40に記載の光導波路(1)の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の分野に関する。本発明は、より詳細には、遠方のターゲットに光を供給することが困難であり、光路が小さく、短い湾曲及び/又は複雑な形状であることがある用途及びデバイスで有利に使用され得る、光ファイバ又は平面導波路などの可撓性の光導波路に関する。本発明は、生体適合性及び伸縮性を有し、エラストマーの使用に基づく、可撓性の光導波路に関する。本発明は、光導波路の破損が劇的な結果をもたらすことになる用途への、解決策を提案する。
【背景技術】
【0002】
光導波路は、遠方のターゲットに光を供給する手段を構成し、長い距離にわたり、狭い空間及び場合によっては過酷な環境を通って展開されることがある。ファイバ・オプティックス、ファイバ束、又は平面導波路の形態の光導波路は、テレコム、工業、及び医療用途などの、広範囲の用途向けに開発されている。テレコム用途の場合、主に赤外線で、非常に長い距離にわたり、極めて低い吸収度を実現可能にするプロセスに、焦点が当てられている。工業機械又は医療用途などの他の用途では、通常、この要件はないが、光導波路の機械的特性、又はさらに化学、生化学、若しくは医療環境で必須である適合性要件などの、他の要件がある。たとえば、医療用インプラントの場合、生体適合性が主な要件である。この生体適合性は、ほとんどの場合、機械的セキュリティ要件など、他の要件にもつながっている。
【0003】
たとえば、人体へのインプラント用のガラス光ファイバは、かかる用途では劇的である可能性のある生体適合性又は破断性のような、多くの困難に直面している。さらに、インプラントの製造ステップは複雑なので、インプラントの製造には、高い可撓性の光導波路が必要になることが多い。
【0004】
既存のほとんどの光導波路は、ガラス又はプラスチック・ファイバをベースとしており、インプラントなどの一部の医療用途には適していない。
【0005】
向上した機械的特性及び/又は医学的若しくは生化学的適合性を有する光ファイバを実現するために、過去にいくつかの試みがなされてきた。たとえば、ポリウレタン(PU)は、光ファイバ分野において、ケーブル生産のためのコーティング設計及びファイバ光学チューブに広く使用されている。
【0006】
屈曲したファイバの機械的特性を向上させるために、いくつかの解決策が提案されている。たとえば、文献、特開昭59-111952及び国際公開第2003091178A2号は、ポリウレタンを使用してガラス・ファイバ上のコーティングの接着性を高め、ファイバを微小な屈曲による影響から保護することを提案している。PUはまた、中国公開特許第107589507号で説明されているように、空中光ケーブルの耐食性及び耐候性を高めるために、光ファイバを補強するのにも使用されている。また、たとえば中国公開特許第206431340号では、医療用途の光ファイバの耐性をより高めるための、PUの使用について説明されている。また、米国特許出願公開第2013243948号では、1次コーティングの欠点を補正するために、複雑なコーティング構造体にPUを使用することが提案されている。
【0007】
光ケーブルの製造で扱うファイバ光学保護チューブ用途の分野において、中国公開特許第203275734号では、ただ単にケーブルの可撓性を高めるための追加成分として、PUなどのポリマーが提案されている。
【0008】
光ファイバの分野における他の文献は、クラッドのない光ファイバとしてPUを使用することを提案している。たとえば、米国特許第4915473A号は、光の透過率が、ファイバに加えられる圧力に反比例するPUファイバを使用することによる、圧力センサについて開示している。また、米国特許出願公開第20080089088A1号は、ライティング及び装飾用途で、側面散乱を生じさせる、クラッドのないPUファイバの使用について説明している。
【0009】
米国特許第4893897号には、生きている哺乳動物の組織での、生体内使用のための可撓性光ファイバについて説明されている。文献、米国特許第4893897号は、ポリスチレン及び脂肪族PUなどの2種の材料を使用してファイバのコア及びクラッドを生産する、製造プロセスについて説明している。このプロセスは、最後に、必要となる最終的な光ファイバの寸法まで延伸される、ファイバ状プリフォームを生産するための、2種の材料の溶融及び共押出しに基づく。米国特許第4893897号の製造での主な制約は、クラッド材料が、コアの溶融粘度よりも低い溶融粘度を有していなければならないことである。
【0010】
別の文献である特開昭62-269905は、液体PU樹脂を中空の可撓性ファイバに射出し、次いでこの液体樹脂を、UV光を使って重合することにより、可撓性光ファイバを製造する方法について説明している。光硬化性液体樹脂は、たとえばポリウレタンポリ(メタ)アクリレート単独であるが、アルキル(メタ)アクリレート又は他の材料などのモノビニル化合物であってもよい。中空ファイバの生産で使用される材料は、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル樹脂、及び他の種類の材料であった。中空ファイバは、同心の環状のダイを使用して押出成形する必要がある。次いで、液体樹脂を片側から押し出し、中空ファイバの反対側から真空ポンプを使って吸引する。液体コアの重合は、UV光を使って実行される。この中空ファイバの生産では、吸収の影響が大きいため、許容できない光透過率となる、非常に低品質の表面が生成される。
【0011】
シリコーンのクラッド層で覆われたガラス・コアについて説明している文献、特開昭54-47667では、光ファイバを生産するための光学シリコーンの初期使用について説明されていた。シリコーンの、ガラス光ファイバのコーティングとしての使用については、特開昭62-30152及び特開平01-286939、中国公開特許第108977069号などの、いくつかの文献で説明されている。こうしたファイバは、シリコーンのクラッドを使っても、医療用インプラントなどのいくつかの用途では、依然として受け入れられるものではない。
【0012】
シリコーン・ファイバなどのポリマー・ファイバは、たとえば米国特許第5237638A号で説明されている。かかるポリマー・ファイバの製造は、押出成形されたコアをクラッド用溶液に浸し、次いでクラッドを硬化させることによって実現される。米国特許第5692088A号で説明されているように、液体シリコーンを使用して流体導光体を生産することができる。かかる液体シリコーン導波路は、クラッドの役割を果たすように内面に固定された特定のフィルムを備え、一方でコアが流体シリコーンである液体ポリマーの、可撓性チューブを使用する。この技法は、米国特許第9700655B2号で説明されているように、レーザ切除用の、流体コアの可撓性カテーテルを生産するために使用することができる。シリコーン導光体は、非硬化性の流体シリコーンを使用し、クラッドは、チューブ内面の特定の処理によって実現され、誘導サイズは桁違いの大きさで(on another order of magnitude)ある。かかる光ファイバは、横断面が大きいコアに限定されており、必要な光学特性に対応した生産プロセスを再現することは困難である。また、こうした種類の光ファイバは、コア径があまり重要ではない、光配信システムにしか使用されない。センシング用途には、シングルモード動作がより適している。
【0013】
米国特許出願公開第2012244143号及び中国公開特許第107907484号では、伸縮性の高い光ファイバについて説明されている。文献、米国特許出願公開第2012244143号は、シルクの使用を提案し、一方、文献、中国公開特許第107907484号及び米国特許出願公開第2016177002号は、ヒドロゲルの使用について説明している。シルク又はヒドロゲルをベースとする手法は、導波路の端部に配置されたファブリペロー空洞などの、光学的に共振する空洞から情報を取得するためにこの手法を使用するなど、別の用途又は構成に関しては役に立たない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭59-111952
【特許文献2】国際公開第2003091178A2号
【特許文献3】中国公開特許第107589507号
【特許文献4】中国公開特許第206431340号
【特許文献5】米国特許出願公開第2013243948号
【特許文献6】中国公開特許第203275734号
【特許文献7】米国特許第4915473A号
【特許文献8】米国特許出願公開第20080089088A1号
【特許文献9】米国特許第4893897号
【特許文献10】特開昭62-269905
【特許文献11】特開昭54-47667
【特許文献12】特開昭62-30152
【特許文献13】特開平01-286939
【特許文献14】中国公開特許第108977069号
【特許文献15】米国特許第5237638A号
【特許文献16】米国特許第5692088A号
【特許文献17】米国特許第9700655B2号
【特許文献18】米国特許出願公開第2012244143号
【特許文献19】中国公開特許第107907484号
【特許文献20】米国特許出願公開第2016177002号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】A.Sharon等、「Resonating grating-waveguide structures for visible and near-infrared radiation」、J.Opt.Soc.Am、第14巻、第11号、2985~2993頁,1997年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、ガラス又はプラスチック・ファイバをベースとする既存の導波路は、インプラント又は他の医療用途などの幅広い用途に適していないので、光ファイバなどの改善された導波路が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の発明者等は、ポリウレタンなどの熱可塑性エラストマー(TPE)でできたクラッドを有する、光ファイバなどの光導波路を実現することによって、上記で論じた問題に対する解決策を見出した。本発明のファイバ及び導波路の製造プロセスは、インプラント製造業者が少なくとも部分的に、製造業者自体の光導波路を生産できるレベルにまで、光導波路の生産特有の複雑さを低減するなど、幅広い利点を実現する。
【0018】
本発明は、より正確には、長手方向軸Zを画定するコア層と、コア層を囲繞するクラッド層とを備える、光導波路によって実現される。コア層及びクラッド層は、180nmを超える波長を有する光ビームを、長手方向軸Zに沿って透過するよう構成される。最外層、及びコアの最外層と接触する少なくとも最内層を備える、クラッド(20)。コアの最外層は、第1の屈折率を有する材料でできている。クラッドの最内層は、少なくとも部分的に、第1の屈折率(n1)より小さい第2の屈折率(n2)を有する、熱可塑性エラストマー(TPE)でできている。
【0019】
一実施例では、熱可塑性プラスチック(TPE)の少なくとも1つの層は、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v若しくはTPV)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)のうちの1つである。一実施例では、コアlは、ポリマー、場合によってはシリコーンでできている。
【0020】
熱可塑性プラスチックは、ISO規格18064に従って規定されている熱可塑性プラスチックであることが好ましい。
【0021】
一実施例では、クラッド層は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v若しくはTPV)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)でできた熱可塑性プラスチック(TPE)の、少なくとも1つの追加の層を備える。
【0022】
実施例では、導波路は、光ファイバ、場合によってはモノモード光ファイバである。変形例では、光導波路は、第1の幅W1を有する第1の横側面と、第1の幅W1よりも大きい第2の幅W2を有する第2の側面とを有し、幅W1、W2は、長手方向軸Zに直交する平面X-Yで画定される、任意の横断面で画定される。
【0023】
一実施例では、コア層は、少なくとも部分的に、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v若しくはTPV)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)でできている。特定の実現において、コア層は、1.3未満、1.2未満、又は1.1未満の屈折率を有していてもよい。有利な実施例では、クラッド層の内面は、コア層に入力結合される光を反射するよう配置された、金属層及び/又は誘電体層を備えることができる。かかる反射層は、コア層が、油の層などの、固体ではない光導波路に使用することができる。
【0024】
実施例では、光導波路は、少なくとも1つの長手方向平面(X-Z、Y-Z)で画定される、100未満のモード、好ましくは20未満のモード、より好ましくは5つ未満のモードを誘導するよう構成される。これは、光導波路のコア内に誘導される光の波長でよく知られているように、モードの数に応じて、10μm未満、5μm未満、又は2μm未満の最小直径を有するコア層を備えることによって実現する。変形例では、光導波路は、少なくとも2つの相異なる断面を有する、先細の光導波路である。先細になった光導波路は、たとえば、光導波路の端部までの直径が非常に小さい、光導波路の先端を備えなければならない医療器具において、利点を有する。
【0025】
実施例では、導波路の光透過率(T0)は、180nmから25μmの間の波長を有する入力結合光に対して50%を超え、光導波路は、1m未満、好ましくは0.5m未満、より好ましくは0.25m未満の長さを有する。変形例では、光透過率(T0)は、300nmから5μmの間、好ましくは350nmから2μmの間、さらにより好ましくは400nmから700nmの間の波長を有する入力結合光に対して、80%を超える、好ましくは90%を超える。透過率は、使用される材料及び場合によってはあり得る材料のドーピング、誘導される光の波長、並びに長さの関数である。これらのパラメータは、用途に応じて、たとえばIR、可視光、又はUV光が使用されることになる手術用デバイスで利用可能な、たとえば必要とされる寸法に応じて、選択される。
【0026】
有利な実施例では、光導波路が、光導波路の長さ(L)の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%まで、弾性的に伸縮可能であるよう構成され、これにより、光透過率(T2)は、伸張された後、伸張される前の光導波路の透過率(T0)の少なくとも90%で保持される。伸縮可能な導波路は、使用できる空間があまりなく、光導波路を曲げ且つ/又は伸張する必要があり得る、器具又は場所で特に有用である。
【0027】
本発明は、少なくとも3つの光導波路を備える、光導波路束にも関する。
【0028】
本発明はまた、本発明の少なくとも1つの光導波路を備える医療デバイスにも関する。医療デバイスは、蝸牛インプラントであってもよい。別の態様では、本発明は、本発明の少なくとも1つの光導波路と、光導波路に配置された光空洞センサ・ヘッドとを備える、光センサにも関し、センサ・ヘッドは、可撓性の膜によって閉じられた光空洞を備える。
【0029】
本発明はまた、説明されている光導波路の製造方法によって実現し、以下のステップ(A~D)を含む。
A)熱可塑性エラストマー、好ましくは熱可塑性ポリウレタン(TPU)でできている、中空プリフォームを実現するステップ。
B)プリフォームのコア部分を生産し、充填されたプリフォームを実現するために、中空プリフォームの穴を充填するステップ。
C)所定の長さL及び所定の断面を有する光導波路を得るために、プリフォームの直径を小さくして、プリフォームを伸長するステップ。
【0030】
一実施例では、コア部分の材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v、TPV)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)のうちの1つが選択される、熱可塑性プラスチック(TPE)であり、熱可塑性プラスチックは、ISO規格18064に従って規定されている。
【0031】
一実施例において、ステップB及びCは、ステップB’からD’によって置き換えられる。
B’)所定の長さ(L)及び所定の断面を有する細管(capillary)が形成されるまでプリフォームの直径を小さくし、プリフォームを伸長するステップであって、細管が、所定の断面を有する中央開口を有する、伸長するステップ。
C’)プリフォームの中央開口内に、液体シリコーンを導入するステップ。
D’)液体シリコーンを重合して、重合された液体シリコーンでできたコアを有する、光導波路を形成するステップ。
【0032】
一実施例において、ステップC’及びD’は、ステップE’からG’によって置き換えられる。
E’)プリフォームの直径を小さくするステップB’の間に、液体シリコーンを導入するステップ。
F’)プリフォームの直径を小さくするステップの間、前の形の光導波路が、所定の長さ(L)及び所定の断面を得るまで、液体シリコーンを液体の状態に保持するステップ。
G’)光導波路を形成するために、液体シリコーンと細管とを熱重合するステップ。
【0033】
一実施例において、ステップB’、C’及びD’は、ステップH’からJ’によって置き換えられる。
H’)ステップAの後、液体ポリマーを、中空プリフォームの中央開口部内に導入するステップ。
I’)液体ポリマーで充填されたプリフォームの直径を小さくし、液体ポリマーで充填された細管が形成されるまで、充填されたプリフォームを伸長するステップであって、細管が、所定の長さ(L)及び所定の断面を有する、伸長するステップ。
J’)UV光を当てて、液体ポリマーを重合するステップ。一変形例では、液体ポリマーは液体シリコーン又は液体シロキサンである。
【0034】
本発明はまた、以下のステップ(A’’~B’’)を含む3D技法を使って、完全なプリフォームを最初に実現することによる、光導波路の製造方法によっても実現される。
A’’.完全に3D印刷技法によって作られるプリフォームを実現するステップであって、プリフォームが、光導波路のコアを形成するコア部分、及び光導波路のクラッドを形成する外側部分を備える、実現するステップ。
B’’.所定の長さL及び所定の断面を有する光導波路を得るために、プリフォームを伸長するステップ。
【0035】
一実施例では、プリフォームのコア部分及び外側部分が、連続する層の3D印刷によって実現され、連続する層のそれぞれが、中央部分と外側部分とを備え、中央部分は、少なくとも外側部分の側面で、第1の屈折率n1を有し、外側部分は、少なくとも内側部分の側面が、少なくとも部分的に、第1の屈折率n1よりも小さい第2の屈折率n2を有する、熱可塑性エラストマー(TPE)でできている。
【0036】
有利な実施例では、3Dシステムは、10μm未満、場合によっては5μm未満の位置精度を有する、可能であれば2μm未満の精度を有する、1本又は複数のノズルのX、Y、及びZ方向変位機構を備えることができる。有利な変形例では、TPEフィラメント、好ましくはTPUフィラメントのボリューム堆積速度は、10mm/秒よりも速く、場合によっては24mm/秒よりも速いことがある。
【0037】
一実施例では、連続する層の中央部分及び外側部分は、少なくとも部分的に、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v若しくはTPV)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)の中から選択される、熱可塑性エラストマー(TPE)でできている。
【0038】
変形例では、連続する層のうちの少なくとも2つは、相異なる形状の層又は相異なる材料組成を有する層である。
【0039】
実施例では、少なくとも1つの追加の層がプリフォームに配置され、追加の層は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v、TPV)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)の中から選択される、熱可塑性エラストマー(TPE)層でできており、熱可塑性エラストマーは、ISO規格18064に従って規定されている。
【0040】
本発明はまた、外科手術の際の手術用器具と関連する、本発明の光導波路の使用法によっても実現される。変形例では、該使用法は、手術用器具の位置を特定する追跡、及び/又は手術用器具の先端付近の組織の光学特性の追跡に関して行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の光導波路の図である。
図2】導波路の受光角度及び出力結合光ビームの角度を示している、本発明の導波路の長手方向断面図である。
図3】本発明による平面光導波路の図である。
図4】本発明の先細の光ファイバの図である。
図5】本発明による光ファイバを備える、ファイバ束の横断面図である。
図6】本発明による、ポリマーのクラッドに埋め込まれた少なくとも2つの光誘導コアを有する、様々なタイプの光ファイバの例示的な断面図である。
図7】本発明による、ポリマーのクラッドに埋め込まれた少なくとも2つの光誘導コアを有する、様々なタイプの光ファイバの例示的な断面図である。
図8】本発明による、ポリマーのクラッドに埋め込まれた少なくとも2つの光誘導コアを有する、様々なタイプの光ファイバの例示的な断面図である。
図9】本発明による、ポリマーのクラッドに埋め込まれた少なくとも2つの光誘導コアを有する、様々なタイプの光ファイバの例示的な断面図である。
図10】本発明の光導波路の製造の、いくつかのステップを示す図である。
図11】本発明によるファンイン/ファンアウト光学部品を実現するために使用できる、複合型プリフォームを示す図である。
図12】空洞が、本発明の光ファイバに接する外側チューブを使って配置される、外側の膜を備える光空洞を具備するセンサ・ヘッドを示す図である。
図13】側面のインカプラ格子及び側面のアウトカプラ格子を備える、本発明の光ファイバを示す図である。
図14】本発明の光ファイバを備える、蝸牛インプラントを示す図である。
図15】ファンイン/ファンアウト光学部品を作るための、2つのホルダを備えるプリフォームの一部の実例を示す図である。
図16】2つのホルダが、TPEポリマーの射出後に取り外されるべき複数のワイヤを備える、ファンイン/ファンアウト光学部品を作るための、2つのホルダを備えるプリフォームの一部を示す図である。
図17図16の装置の2つのホルダ間にあるワイヤを、TPEポリマーでオーバーモールドした後の、プリフォームを示す図である。
図18】クラッド層としてTPU層を射出した後の、複合型マルチコア・ファイバ及びファイバ束のプリフォームの脱型を示す図である。
図19】TPUでできた中空形状のプリフォームを示す図である。
図20】2つのタイプのTPUでできており、本発明の方法によって実現されたコア及びクラッドを有する、光ファイバの端面を示す図である。
図21図16及び図17の型を使用して実現される、マルチファイバのファンイン/ファンアウト・プラットフォームを示す図である。
図22】本発明による光ファイバによって得られた実験結果を示す図である。
図23】本発明による光ファイバによって得られた実験結果を示す図である。
図24】様々な割合で伸長された本発明の導波路の、導波モードの遠視野での分布を示す図である。
図25】3D印刷技法によって実現された、本発明のプリフォームの複雑な形状の断面を示す図である。
図26】3D印刷技法によって実現された、本発明のプリフォームの複雑な形状の断面を示す図である。
図27】3D印刷技法によって実現された、本発明のプリフォームの複雑な形状の断面を示す図である。
図28】3D印刷プロセスの最後に完全なプリフォームを形成するために、コア部分及び外側部分を備える連続層を堆積させることによる、3D印刷を用いた完全なプリフォームの実現を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明について、実施例に関連して、また添付図面を参照しながら説明することにするが、本発明はこれらに限定されるものではない。説明される図面は、概略的なものに過ぎず、限定的ではない。図面において、一部の要素のサイズは誇張されており、説明する目的で、一定の縮尺で描かれていないことがある。寸法及び相対寸法は、本発明の実践に対する実際の縮約とは一致していない。
【0043】
本明細書で使用されるとき、本明細書で使用される「光導波路」という用語(導波路とも定義される)は、モノモード・ファイバ及びマルチモード・ファイバなどの、すべてのタイプの均質若しくは不均質な、且つ/又は先細の光導波路を包含するが、さらにモノモード及びマルチモード平面光導波路、並びに複数の光ファイバ、平面光導波路、又はこれらの混合物を備える導波路束も、包含する。導波路1は、導波路1内の光学的光ビーム100の誘導方向に画定される、導波路1の中心仮想軸として画定される長手方向軸を有する。光の誘導は、全内部反射(TIR:total internal reflection)によって、又は反射若しくは回折層若しくは構造体を使用することによって、実行することができる。モノモード導波路の場合、1つのモードだけが導波路のコアを通って誘導される。仮想軸は、Z軸及び2本の直交軸X、Y、又はZ軸への方向を画定する。本明細書では、横断面は、X-Y平面で画定される断面である。長手方向の断面は、Z軸を含む平面で画定される。
【0044】
「クラッド」及び「コア」という用語は、クラッド層及びコア層としても定義され、円形断面を有していない層であってもよい。これは、前述のプリフォームのコア及びクラッドにも当てはまり、コア及びクラッドで実現された光導波路についても同様である。
【0045】
本発明の光導波路1のタイプは、用途のタイプ、又は幾何形状の制約、並びに光導波路1が実装されるデバイスの幾何形状及び動作温度の要件に従って選択され、典型的であるが、排他的ではない、以下の選択肢がある。
- シングル・ファイバ:強度、偏光、及びスペクトル情報送信用
- ファイバ束:画像送信及び光ビーム照射用
- マルチコア光ファイバなどのマルチコア光導波路
- 平面導波路:強度、偏光、及びスペクトル情報送信、並びに画像送信及び照明光ビーム用
- ファンイン/ファンアウト光デバイス
【0046】
本明細書では、光ファイバ1及び光ファイバ束300などの導波路としても定義される、光導波路1の使用法及び光学的機能は、誘導光学分野の当業者にはよく知られており、ここではこれ以上説明しない。物体を照射し、かかる物体によって反射又は透過した光を収集するのに適した、光ファイバ装置を構成する方法も知られている。本発明は、光ファイバなどの光導波路、及びこうしたファイバの製造手順について提案している。さらに詳細に説明されるように、好ましい製造方法のうちの1つは、熱延伸処理して、極めて可撓なTPUの細管2000を得ることができる、熱可塑性ポリウレタン(TPU)のプリフォームなどの、熱可塑性エラストマー(TPE)の中空形状のプリフォーム204を実現することを含む。本発明の導波路1は、中空形状のプリフォーム204にポリマーを充填し、プリフォームを引っ張って細い導波路1を得るか、又は最初に固体の細管を実現し、細管に液体ポリマーを充填することによって実現される。コア10の液体ポリマーを硬化する、様々な手法についてさらに説明する。導波路1のコア10を形成するために使用される液体は、シリコーン又はシロキサンであることが好ましい。
【0047】
本発明は、第1の態様において、低コストで生体適合性があり光学的に透過性の材料を使用することにより、マルチモードの作用がより大幅に低減された、新しい生体適合性の伸縮性が高い光導波路1を提案する。本発明は、光導波路1のクラッドへの熱可塑性エラストマー(TPE)の使用、及びクラッドを作るためのプリフォームに関する。本発明の導波路1のクラッド20は、少なくとも部分的に熱可塑性エラストマー(TPE)、好ましくはTPUエラストマーからなる。クラッドは、少なくとも部分的に又は全体的に、熱可塑性ポリウレタンからなる中空プリフォーム204から作られる。光導波路のコア10は、さらに説明されるように、クラッドに使用されるものとは別のタイプのTPEであってもよく、又は実現される細管形状のクラッド内で重合される液体シリコーンであってもよい。本発明は、中実のコアを有する導波路に限定されるものではない。光導波路1はまた、少なくとも部分的に熱可塑性ポリウレタン(TPU)からなるエラストマーでできており、且つ細管の内面に、本明細書でさらに説明される反射金属コーティング又は誘電体コーティングなどのコーティングを有する、細管だけからなる中空の導波路であってもよい。
【0048】
本発明の光導波路10は、多種多様な形態及び幾何形状で配置されてもよく、又は医療デバイス2内で、任意の構成で配置されてもよいことを理解されたい。本発明は、第1の態様において、長手方向軸Zを画定するコア層10と、コア層10を囲繞するクラッド層20とを備える光導波路1に関し、光導波路1は、光ビーム110をコア層10に入力結合する入力結合面31と、光120をコア層10の外へ出力結合する出力結合面51とを有し、コア層10及びクラッド層20は、誘導光ビーム100を、長手方向軸Zに沿ってコア層10を通って、入力結合面31から出力結合面51まで透過させるよう構成され、誘導光ビーム100は、180nmより長い波長を有する。本発明のすべての実施例において、光導波路1のクラッド層は、少なくとも部分的に、熱可塑性ゴムである熱可塑性エラストマー(TPE)からなる。TPEは熱可塑性エラストマーであり、通常は、熱可塑性と弾性との両方の特性を有する材料からなる、プラスチックとゴムとのコポリマーのクラスの一部又はポリマーの物理的混合物である。熱可塑性プラスチック部品は、たとえば射出成形によって、製造が比較的容易である。熱可塑性エラストマーは、ゴム材料とプラスチック材料との両方の利点をもたらす。本発明の光導波路1の少なくともクラッドの材料として、TPUなどの熱可塑性エラストマーを使用することの利点は、適度な伸び量まで伸張して、ほぼ元の形状まで戻り、他の材料よりも長寿命及び良好な物理的範囲を生み出す、驚くべき能力である。熱硬化性エラストマーとTPUなどの熱可塑性エラストマーとの主な違いは、これらの構造における架橋結合のタイプである。実際、架橋特性は、本発明の光導波路に高い弾性特性を与える、重要な構造的要因である。TPEはよく知られており、ここではこれ以上説明しない。
【0049】
商業ベースのTPEには、一般的な6つのクラスがある(ISO規格18064による指定)。
- スチレンブロックコポリマー、TPS(TPE-s)
- 熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、TPO(TPE-o)
- 熱可塑性加硫物、TPV(TPE-v又はTPV)
- 熱可塑性ポリウレタン、TPU(TPU)
- 熱可塑性コポリエステル、TPC(TPE-E)
- 熱可塑性ポリアミド、TPA(TPE-A)
- 分類されていない熱可塑性エラストマー、TPZ
【0050】
クラッドは、本明細書では、少なくとも部分的にTPEからなるが、クラッド層を実現するために、他の様々なTPE材料を組み合わせてもよい。好ましい実施例では、クラッド層全体がTPEでできており、好ましくは全体的に、とりわけ医療デバイスなどの特定の用途にかなり適したTPUでできている。
【0051】
前述のすべてのTPEを使用して、本発明のプリフォーム200及び光導波路1を実現することができる。TPUは、これらのTPE材料の中で、好ましい選択肢である。その理由は、さらに詳細に説明されるように、TPUが、本発明の光導波路1の所望の特性のために、熱可塑性プラスチックとゴム(熱硬化性物質)との最良の組合せを有しているからである。クラッド層20は均質な層であってもよいが、様々な層の組成を有する、少なくとも2つの部分でできていてもよい。クラッドは、均質なTPE層でできた少なくとも1つの層によって作られていてもよいが、不均質なTPE層によって作られていてもよい。変形例では、TPE層が、TPE層の側面のうちの少なくとも1つに、TPEでできた少なくとも別の層を備えていてもよい。これを使用して、たとえば、相異なる屈折率を有する複数のTPE層を備える、屈折率分布型光導波路1を実現することができる。該別のTPE層は、クラッド層の長さに沿って変化する直径を有することができる、不均質な層であってもよい。かかる不均質な層は、さらに説明されるように、機械的機能を有し、導波路のクラッドに組み込まれ、デバイスへの機械的接着、挟持、把持、又は摺動を改善するために使用できる、外側の層であってもよい。
【0052】
コア層10は、第1の屈折率n1を有する第1の材料でできており、クラッド層20は、少なくとも部分的にTPE、たとえばTPUからなり、第1の屈折率n1よりも小さい第2の屈折率n2を有する、少なくとも1つの層でできている。
【0053】
特定の場合において、光導波路1は、内部反射層を備える、少なくとも1つのクラッド層でできた細管であり、コア層10は、空気若しくは真空であってもよく、又は油などの液体であってもよい。かかる場合、導波路は、細管構造の両端にクロージャを備える。
【0054】
コア及び/又はクラッド層10l、20の屈折率の値は、両方の材料に関して広い範囲にわたることができ、たとえば、n2は1.49から1.57の間であってもよく、n1は1.52から1.60の間であってもよい。好ましい実施例では、光導波路のコア10及びクラッド20は、それぞれ均一な屈折率n1、n2を有する、均一な層であってもよいことを理解されたい。クラッドは、コアと接触している。コア10と同様にクラッド20は、接触している別の層を備えていてもよい。クラッド20の内層は、確実に全反射させるために、コア10の外層と接触している。コア10及びクラッド20は、相異なる個別の屈折率を有する一連の層からなってもよい。コア及び/又はクラッドは、コア10及び/又はクラッド20の直径にわたって、連続的に変化する屈折率分布を有していてもよく、これは、コア及び/又はクラッドを製造する際に堆積したポリマーをドープすることによって、実現することができる。とにかく、コア10の最外層の屈折率は、クラッド20の最内層の屈折率よりも大きい屈折率を有し、最内層と最外層とが接触している。
【0055】
提案した光導波路1の有効長の限界は、方法の段落でさらに説明されるように、TPEの細管内に導入されるべきコア材料として、液体シリコーン又は別のTPU組成物を使用する場合などでは、コア材料の貫通長さであり得る。TPUは、ゴムのような弾力性、高い耐引裂き性及び耐摩耗性、高い破断伸び、並びに優れた熱安定性を備えているので、TPEの中で好ましい選択肢である。TPUは、これに加えて、油、グリース、及び様々な溶剤にも耐性がある。TPUはまた、TPEの中で最も硬く、さらに説明されるように3D技法で印刷することもできる。TPUを使用すると、光導波路1の複雑な内部及び外部構造を製造することができる。TPUは、さらに、広い範囲の色で準備することができ、収縮が少なく、振動減衰及び耐衝撃性が重要な用途に関して優れている。TPU製の導波路1は、これらの特性により、医療用途に特に適している。かかる厳しい要件が必須ではない用途では、導波路1のコーリング及び場合によってはコアも、別のタイプのTPEで作られてもよい。さらに説明される様々な製造方法が可能であり、他の様々な方法のそれぞれによって、用途に応じた、また必要な強度のスループット又は必要な強度の多様性に応じた、様々な幾何形状及び様々な長さを実現させることができる。それでも、典型的な光導波路1は、たとえば医療用インプラントの場合、約10cmのファイバ長を有する光ファイバであるが、より長くてもよい。たとえば、人間の場合10cmにわたる臓器のスケールの距離に対して、長さは10cmで十分であろう(参考文献5)。
【0056】
好ましい実施例では、光導波路1の線損失(lineal loss)は0.5~1dB/cmを超えず、これにより、長さ10cmの導波路の往復で、最大10~20dBの全体的な損失が保証される。曲げ損失は、導波路1を、蝸牛の内側で見ることができる狭い半径(遠端で1~2mm)に配置する必要がある、蝸牛インプラントとしての用途で、非常に重要である(参考文献3)。しかし、こうした半径は漸増的であり、導波路1は、数ミリメートルにわたるにすぎない、非常に短い曲げ半径を有するところを通して配置されることがある。たとえば、ファイバの先端にある共振空洞からもたらされる、最終的に取得する信号にいくらかのマージンを設けるために、導波路1は、約5mmの曲げ半径に対して、損失が、平均的な蝸牛の長さに相当する30mmのファイバ長にわたり、往復ベースで5dB未満であることが不可欠である。この制約は、明らかに、導波路の減衰自体によって引き起こされる。ファイバの減衰が、上記で定めた、0.5~1dB/cmよりもはるかに低い場合、曲げ損失に使用できるマージンは、より大きくなるであろう。
【0057】
標準的な減衰値は、1550nmで0.79dB/cm、1300nmで0.46dB/cmである。減衰値は、633nmでは、1550nmでの0.79dB/cm、及び1300nmでの0.46dB/cmより低くなる。そのため、2mを超える光導波路長を使用することができる。実験データは、本発明の光導波路1が、スペクトルの赤外部分よりもスペクトルの可視部分で、減衰がより小さいことを示している。
【0058】
好ましい実施例では、光導波路1は、図1に示されているように、モノモード又はマルチモード・ファイバである。コア10の横断面30及びクラッド20の断面40は、導波路1の長さにわたって均一であってもよいが、図4に示されているように変化してもよい。
【0059】
図3に示されている一実施例では、光導波路1は、第1の幅W1を有する第1の横側面1cと、第1の幅W1よりも大きい第2の幅W2を有する第2の側面1bとを有し、幅W1、W2は、長手方向軸Zに直交する平面X-Yで画定される、任意の横断面で画定されている。図3は、長方形の断面を有する平面光導波路1を示しているが、楕円形の断面又は台形の断面など、他の断面も可能であり得る。
【0060】
図4に示されている実施例では、光導波路1は、長手方向軸Zを含む少なくとも1つの平面において先細の形状を有する、先細の導波路1である。図4は、横断面42、44の変化する形状及び/又は寸法を示している。
【0061】
一実施例では、コア層10はポリマーでできている。このポリマーは、シリコーンであってもよい。
【0062】
変形例では、コア層は、液体であってもよい。これは、液体が光導波路1の内部に閉じ込められた状態で保持されるように、非常に小さいコア直径を有する細管を準備することによって、実現することができる。一変形例では、液体コアを有する導波路の入力及び出力エリアは、液体が導波路1の内部に留まるように、液体コアを閉じ込めるための窓を有していてもよい。
【0063】
一実施例では、反射層が、コア層10とクラッド層20との間に配置されてもよく、反射層は、コア層10の内側で、全反射及びコア層20へ入力結合される誘導光の誘導を可能にするよう配置されている。反射層は、金属層若しくは誘電体層、又はこれらの組合せであってもよい。
【0064】
一実施例では、光導波路1は光ファイバであり、コア層10及びクラッド層20は、100未満、好ましくは20未満、より好ましくは5つ未満の複数のモードを誘導するよう構成される。一実施例では、光導波路1は、モノモード・ファイバである。
【0065】
一実施例では、光導波路1は、少なくとも1つの長手方向平面X-Z、Y-Zで規定される、100未満のモード、好ましくは20未満のモード、より好ましくは5つ未満のモードを誘導するよう構成される。
【0066】
一実施例では、光導波路1は、少なくとも2つの相異なる断面42、44を有する、先細の光導波路である。
【0067】
光導波路1は、強度I1に対する出力結合光120の強度I2の比、I2/I1として定義される光透過率T0を有する。一実施例では、光導波路1は、2m未満、好ましくは0.5m未満、より好ましくは0.25m未満の実用的な長さを有し、出力結合光120の強度I2は、180nmから25μmの間の波長を有する入力結合光に対して、入力結合光110の強度T0の10%より大きく、好ましくは30%より大きくなり得る。
【0068】
一実施例では、光導波路1の有効長では、300nmから5μmの間、好ましくは350nmから2μmの間、さらにより好ましくは400nmから700nmの間の波長を有する入力結合光に対して、80%を超える、好ましくは90%を超える光透過率を有する。たとえば医療用インプラントの場合、有効長は、典型的には10~20cmである。
【0069】
一実施例では、光導波路1は、光導波路の長さLの少なくとも10%まで弾性的に伸張することができ、これにより、伸張された後の光透過率T2は、伸張される前の光導波路1の透過率T0の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも90%で保持される。
【0070】
光導波路1の本質的な特徴のうちの1つは、光導波路の光誘導特性を実質的に維持しながら、伸張できることである。TPUでできた中空コアの導波路1の場合、コア10は、空気又は真空であり、導波路1が破損する前に600%の伸び率が可能である。シリコーンでできたコア10を有する光導波路1の場合、コア層10のクラッド層20との接着特性に応じて、断裂前の可能な伸び率は類似し得る。選択したコア材料層によっては、クラッド層が損傷する前にコア層が損傷又は断裂することがあるので、断裂の限界は、コア層の伸長特性にも依存する場合がある。典型的なシリコーン・コア層は、断裂前に、最大50%の伸び率を有することができる。
【0071】
一実施例では、液体コア材料を導入する前に、細管2000の内面に接着層又は減摩層を設けてもよい。これは、たとえば曲率半径が小さい、且つ/又は牽引力が大きい状況における、導波路1の破損限界又は機械的損傷の可能性を改善する手法を提供する。
【0072】
有利な実施例では、光導波路1は、少なくとも部分的に導電性にすることができ、これは、導電性TPU材料をプリフォームに、また光導波路のコア及び/又はクラッドに用いることによって可能である。さらに説明されるように、3D印刷技法はまた、詰まった又は中空のプリフォーム200、204に、したがって光導波路1に、一部の医療デバイスにおいて非常に有用であり得る、少なくとも1本の電気的且つ伝導性のワイヤを埋め込むことも可能にし得る。変形例では、プリフォーム200、204は、ドープされたプリフォーム、又は導電性粉末若しくは物質などの、粉末を含むプリフォームであってもよい。これは、部分的に導電性又は熱伝導性であり得る、光導波路1を実現するのに役立つことがある。変形例では、光導波路1のクラッド20だけを、導電性又は熱伝導性にすることができる。
【0073】
本発明はまた、図5に示されている光導波路束300によっても実現され、光導波路束は、示されているように、少なくとも3つの光導波路1a、1b、1cを備える。一変形例7では、光ファイバ1は、外部マントル302及び内部充填材料304を備える、かかるファイバ束300内に配置されてもよい。
【0074】
図6図9に示されている実施例では、光導波路1’、1’’、1’’’、1’’’’は、複数のコア層10’、10’’、10’’’、10’’’’を備えることができる。
【0075】
実施例では、クラッド層は、少なくとも2つの層を備えることができ、そのうちの少なくとも1つの層は、TPUポリマーを含むか、又は全体的にTPUポリマーでできている。実施例では、クラッド層は、たとえば屈折率分布型導波路を実現することを可能にする、少なくとも5つの層を備えていてもよい。変形例では、コア10はまた、少なくとも2つの相異なる層でできていてもよく、両方が、TPU層又は別のタイプのTPE層であってもよい。
【0076】
実施例では、光導波路(1)は、偏波保持導波路(1)であってもよい。これは、プリフォームに偏光物質を組み込むことによって実現でき、本明細書で説明されているように、3D印刷によって追加される可能性がある。
【0077】
本発明の光導波路1は、コア層10及びクラッド層20を備える導波路1だけに限定されるものではないことを理解されたい。さらに、コア層10及び/又はクラッド層20は、光学機能を有する構造化部分を備えていてもよい。典型的な光学構造体は、図13に示されているように、局所的な回折格子又は分散された格子であり得る、回折格子である。また、ホログラムタイプの構造体又は層を、光導波路1の中又は上に配置することができる。
【0078】
有利な実施例では、導波路1の少なくとも一部は、共鳴導波路回折格子(RWG:resonant waveguide grating)に従って配置される。RWGは、たとえば以下で説明されている。
- A.Sharon等、「Resonating grating-waveguide structures for visible and near-infrared radiation」、J.Opt.Soc.Am、第14巻、第11号、2985~2993頁,1997年
【0079】
RWGは、多層構成を使用して作られ、サブ波長格子及び薄い導波路を組み合わせている。入射光が格子によって回折され、導波路のモードに整合すると、共鳴が生じる。入力結合光のスペクトルのほとんどが導波路に結合されないので、反射及び/又は透過において、強いスペクトル効果が実現される。これは、RWGがコルゲート導波路であり、導波路格子として作用するという事実である。証印にRWGを使用すると、識別及び複製が非常に困難な独特の光学効果を実現することができる。RWGは概して、動作する波長よりも短い空間周期性を有するよう設計されているため、「サブ波長」構造体又はサブ波長デバイスと呼ばれる。RWGは、最終的に、動作している波長に近い、動作している波長より僅かに大きい、周期性を有する。多くの場合、周期は、使用している自由空間波長よりもかなり短く、たとえば自由空間波長の3分の1である。RWGの周期性が小さいので、様々な回折次数が不可能となり、これによりRWGは、はるかに単純な回折光学素子(DOE:diffractive optical element)と区別される。
【0080】
RWGを使用すると、たとえば、高い入力結合及び/若しくは出力結合効率を可能にすることにより、独特な入力結合及び出力結合光学効果を実現するか、又は偏光ビームをより効率的に、若しくはバイナリ型回折格子などの通常の回折格子の使用では不可能な所定の角度で、入力結合及び出力結合することができる。RWGは、設計によってはとりわけ特定の所定の波長に依存することがある、非常に効率的な光結合効率を有する安価な導波路を実現できる、エンボス技法を用いて実現されてもよい。図に示されていない変形例では、導波路1の側面のうちの少なくとも1つが、導波路の全長の少なくとも50%にわたって連続的又は非連続的に、入力結合面及び/又は出力結合面として配置されている。入力結合面及び/又は出力結合面は、RWGとして構成することができる。
【0081】
本発明はまた、本明細書で説明されている少なくとも1つの光導波路1を備える、光学システム又はセンサによっても実現する。一実例では、共振空洞は、本発明の光導波路1の先端部として配置される。低コストのテレコムグレードのLEDを光源として使用し、共振空洞から情報を取得することができる。かかるデバイスでは、約200~300μmの空洞長さで、有用な干渉縞が目に見える必要がある。
【0082】
本発明はまた、変形可能ダイアフラム530が光導波路の出力端に固定された、先端部に配置された共振空洞520を備える光導波路センサによっても実現される。空洞520は、共振効果以外の別の機能を有することができ、たとえば、空洞は、膜の変形によって、ファイバ1に送り返される光ビームの光強度に、変化を与えることができる。実施例では、空洞520は、空気又は油などの液体で充填されていてもよい。
【0083】
本発明はまた、本発明の光導波路を備える、圧力センサによっても実現される。圧力センサは、実験の段落でさらに説明されるように、光導波路の透過する強度に対する、曲げ又は伸びの影響に依存することがある。
【0084】
実施例では、医療デバイスは、蝸牛内で使用されるべきインプラントである。図14は、人間の耳に挿入されるべき中央部分606を備える、蝸牛インプラント600を示している。機械的誘導構造体606は、中央部分に配置され、本発明による少なくとも1つの光導波路1を備える。
【0085】
有利な実施例では、医療デバイスは、UV光ビームを所定の場所に供給して、たとえば生体内の場所を消毒するために、本発明の少なくとも1つの光導波路1を備えることができる。光導波路1の少なくとも一方の末端は、入力結合又は出力結合光ビームの偏向、集束、又は発散などの光学機能に使用され得るような形状を有することができることを、概ね理解されたい。該形状は、導波路1の製造プロセス中に、たとえば末端を加熱して導波路の端部に丸みを帯びた形状を設けることによって、実現することができる。
【0086】
本発明の導波路1は、参考文献18で説明されている光遺伝学に使用することができる。本発明はまた、本発明による少なくとも1つの導波路1を備える、光遺伝学で使用されるべきデバイスにも関する。
【0087】
本発明の導波路1はまた、外科用器具をリアルタイムで追跡するために、たとえば、器具の先端の位置特定情報を生じさせるか、又は外科的介入場所での、光導波路の先端の光情報を監視するために、使用することもできる。したがって、本発明はまた、本発明の光導波路を備える外科用器具にも関する。
【0088】
本発明は、第2の態様において、前述の光導波路1の製造に関し、(A、B、C)のステップを含む。
A.少なくとも部分的に熱可塑性エラストマー(TPE)、好ましくはTPUでできた、中央開口部202’を有する中空形状のプリフォーム204を実現するステップ。中空形状のプリフォーム204は、実質的に、本発明の方法で形成されるべき光導波路1のクラッドの屈折率の10%の誤差内である、第2の屈折率n2を有するTPEエラストマーである、最内層を有する。変形例では、中空プリフォーム204全体が、第2の屈折率n2を有するTPEエラストマーでできていてもよい。
B.充填されたプリフォーム200のコア部分202を作り出すために、中空形状のプリフォーム204の中央開口部202’を充填するステップ。コア部分202は、第2の屈折率よりも大きい第1の屈折率n1を有する材料でできている、最外層を有する。変形例では、コア部分202全体が、第2の屈折率n2を有する材料でできていてもよい。
C.光導波路1、典型的には、所定の長さL及び所定の断面40、41を有する光導波路が形成されるまで、プリフォーム200の直径を小さくして、プリフォームを伸長するステップ。
【0089】
光導波路1のコア10及びクラッド20の屈折率は、小さくするステップCの後、10%の誤差内で、それぞれ中空形状のプリフォーム204のコア部分及び壁の屈折率と、実質的に同じ屈折率であることを理解されたい。
【0090】
一実施例では、ステップAのプリフォーム200は、型、典型的には円筒形の型への最初の射出によって作られる。この型は、金属又はセラミックの型であることが好ましい。円筒状インサートの役割は、中央開口部としても画定される中央穴202を有するプリフォームを実現することである。図19は、プリフォームの壁としても画定される外側部分204、及びプリフォーム200から延伸されるときに、光導波路のコア10を構成する材料で充填されるべき中央開口202を備える、実現されたTPUプリフォーム200の実例を示している。外側部分204’は、延伸されると、光導波路のクラッド20を形成し、内側部分202は、延伸されると、光導波路1のコア10を形成する。一変形例では、中空プリフォームはまた、最初に特定の長さまで延伸し、コア材料を充填して重合すべきTPEの細管を実現してもよい。
【0091】
有利な実施例では、ステップAの円筒状プリフォーム204は、ステップAで、3D印刷技法で作られる。
【0092】
一実施例では、充填するステップBは、ステップAが実行された後に、たとえば射出技法を用いて行われる。
【0093】
有利な実施例では、ステップA及びBは、3D印刷技法を用いて同時に実行される。プリフォームのコア及びクラッド層は、かかる3D印刷技法を使用し、連続する層を追加することによって構築される。かかる層のそれぞれにおいて、別のPMEエラストマーが、TPUの層、好ましくは環状の層の内側に印刷される。TPUは、他のTPEよりも強力で耐久性のある印刷ができる、層間の接着を可能にするので、TPEのうちの好ましい選択肢である。本発明の光導波路1の用途は、医療デバイスに必要とされるような、特殊な導波路に焦点を当てている。したがって、非常に複雑な形状を有することがあるプリフォームを実現するために、遅い印刷速度を許容することができる。本発明の用途に必要な長さは短いので、プリフォーム200を加工する時間は、通常テレコム用プリフォームに必要となる時間より、はるかに長い場合があるが、許容できる。1つのプリフォームから、何千もの短い光導波路を提供することができる。
【0094】
図28は、3D機械500を用いた、完全に充填されるプリフォーム200の形成方法を示している。図28の実行の実例では、単一のノズル502が、ポリマーの流れ504を供給している。図28の実例では、プリフォーム200のコア部分202及び外側部分204’は、連続する層200a~200cの3D印刷によって実現される。図28は、3D印刷動作中に形成された最初の3つの層200a~200cだけを示している。連続する層200a~200cのそれぞれは、中央部分202a~202cと外側部分204’a~204’cとを備え、中央部分202a~202cは、少なくとも外側部分の側面に、第1の屈折率nを有し、外側部分204’a~204’cは、内側部分202a~202cの少なくとも側面まで、少なくとも部分的に、第1の屈折率n1よりも小さい第2の屈折率n2を有する、熱可塑性エラストマー(TPE)でできている。実施例では、3D印刷プロセスに対するいくつかの変形例が考えられ得る。たとえば、各層のステップ中に、複数の中央部分を堆積させることができる。ここで説明されているように、3D印刷を使用する利点は、図25図27の実例に示されているような、プリフォーム200の複雑な形状のコア部分及び/又は外側部分を実現できることである。
【0095】
実施例では、プリフォーム200のコア部分202の材料は、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-o)、熱可塑性加硫物(TPE-v、TPV)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPE-A)、又は分類されていない熱可塑性エラストマー(TPZ)のうちの1つが選択される、熱可塑性エラストマー(TPE)であってもよく、熱可塑性プラスチックは、ISO規格18064に従って規定されている。
【0096】
本発明のプリフォーム及び光導波路1のためのTPE、好ましくはTPUの使用に関する利点及びさらなる詳細を、ここでより詳細に説明する。
【0097】
エラストマーは、高度な可動性及び可撓性を有する、比較的長いポリマー鎖をベースとする。この鎖は、ネットワーク構造体にリンクされており、外部ストレスが加えられたときに、鎖が互いから流れるのを防ぐ。その構造は、一方の相が硬い固体で、他方の相がエラストマーである、2相材料にある。エラストマー相は、材料の弾力性を提供し、固相は、材料の強度を維持する物理的な架橋をもたらすことになる。かかる材料を加工する場合、2つの相異なるガラス転移温度が関係し、一方は弾性ポリマーのガラス転移温度Te、もう一方は硬質相のガラス転移温度Thで、Th>Teである。材料は、温度T<Teの場合、両方の相が硬くて脆く、T>Thの場合、材料は粘性流体になり始めるので、基本的に、これら2つの温度間で使用する必要があろう。これは、弱く誘導するファイバでは、基本構成としてステップインデックス型屈折率が必要になり、ひいては、2種の相異なるTPUなど、2種の相異なるポリマーが必要になるという事実により、光ファイバなどの光導波路の生産では重要である。ステップインデックス型プロファイルを作り出すのに必要な2種のTPU材料の選択には、注意を払う必要である。温度は、通常、温度0℃よりも十分に低く、選択の際にはあまり問題にならない。しかし、2種のポリマー、たとえば2種の相異なるTPUのうちの一方は、もう一方のTPUよりも低い温度で溶融し始めるので、Thは、ファイバの延伸に直接的な影響を与えるであろう。さらに、加熱システムは、正しく設計されていない場合、プリフォームに均質でない径方向の熱分布を生み出し、Teとの差の影響を増大させるであろう。
【0098】
例示的な実施例では、光ファイバを生産するために、2種のTPU、すなわち、それぞれ1.505及び1.553の屈折率ndを有する、BASF社のElastollan1185A及びElastollan1185A10Wを使用している。両方のTPUの加工温度は、比較的似ているため、適切な延伸温度を容易に選択できる。
【0099】
典型的な実行では、プリフォーム200、204は、たとえば、Arburg社のAllrounder170S射出機を使用して、2ステップの射出成形プロセスで実現することができる。第1の射出は、直径15mm、長さ100mmの寸法を有する円筒状の型内で、円筒軸に沿って中央に円筒状インサートを用いて実行される。好ましい実施例では、第1ステップのプリフォームは、Elastollan1185A TPUを使用することにより、ファイバのクラッド部分を生成する。第2の射出は、穴を充填してプリフォームのコア部分を作り出すために、Elastollan1185A10Wを使用して実現することができる。
【0100】
実施例では、3Dプリンタの押出機は、印刷プロセス中にフィラメントが座屈するのを防ぐために、完全に密閉された、PTFEでライニングされたフィラメント・ガイドを有する。
【0101】
変形例では、ノズルの内径は0.25mmで、場合によっては0.1mmの小ささのものもある。滑らかなPTEフィラメント、好ましくはPTUフィラメントを供給するために、内圧システムを備えることができる。
【0102】
3Dシステムは、モデルの精密な構造体を実現するために、10μm未満、場合によっては5μm未満の精度を有する、可能であれば2μm未満の精度を有する、1本又は複数のノズルのX、Y、及びZ方向変位機構を備えることができる。有利な変形例では、ボリューム堆積速度は、10mm/秒よりも速く、場合によっては24mm/秒よりも速いことがある。定格ノズル温度でのTPUの粘度は、剛性の熱可塑性プラスチックと比較して、はるかに低い。これにより、FDMプロセス中の高い分子間拡散又は修復(healing)が可能となる。そのため、TPUは、光導波路プリフォームを実現するのに、他のポリマーよりも適切な選択である。
【0103】
実施例では、充填された又は中空形状のプリフォーム200、204は、少なくとももう1つの層が配置される、TPE、好ましくはTPUの少なくとも1つの層で作られてもよい。かかる追加の層は、TPEの層の円筒状開口部の内壁又はTPEの層の外面に、実現することができる。
【0104】
少なくとも部分的にTPE、好ましくはTPUでできたプリフォーム200、204は、屈折率の所定の順序を有する、複数の層を備えることができ、これによりたとえば、屈折率分布型の層が、プリフォーム200を延伸することによって実現されるときに、光ファイバ1のコア層10に設けられる。光導波路のコア10の周囲に屈折率分布プロファイルを有する、光導波路を実現させることは、誘導光ビームの伝搬特性に関して、いくつかの利点を有する。屈折率分布プロファイルは、光導波路1内の導波モードのタイプ及び数を制御するよう適合され得る。
【0105】
有利な実施例では、実験の段落でさらに詳細にコメントされるように、TPEベースのプリフォーム200、204、好ましくはTPU製のプリフォームの内面は、生産される光ファイバのコアとクラッドとの境界面に起因する光損失を低減するために、プリフォームの面の滑らかさを高めるよう研磨される。
【0106】
少なくとも部分的にTPE、好ましくはTPUでできている、詰まった又は中空のプリフォーム200、204の3D印刷により、従来のステップインデックス光ファイバ、及び光導波路プリフォームを製造する標準的な射出技法を用いて実現させることが、不可能ではないにしても困難な、ドーパントの分布を実現することができる。この理由は、3D印刷プロセスを用いて作成される各層の幾何形状を、適合させることができるためである。第1の態様では、光ファイバなどの、マイクロ構造及びナノ構造の光導波路1を実現する利点がある。こうしたファイバの製造は、多くの場合、特定の材料だけに好適な方法に限定されている。第2の態様では、外側断面及び内側断面は、所定の形状を有することができる。断面は、たとえば、プリフォームの全長にわたって正方形又は6角形であってもよい。
【0107】
さらに、断面の形状は、プリフォームの所定の長さにわたって変化してもよい。プリフォームは、たとえば、プリフォームの長さの80%にわたって、6角形の断面を有していてもよく、両端の部分は、別の断面形状、たとえば円形を有していてもよい。変形例では、プリフォームは、第1の長さにわたって、TPUエラストマーなどの第1のタイプのTPEでできており、第2の長さにわたって、別のタイプのポリマー、たとえば別のタイプのTPE又はTPUでできていてもよい。これは、3D印刷技術によって、容易に実現可能である。
【0108】
実施例では、プリフォーム200、204及びその光導波路1は、N個の入力結合分岐及びM個の出力結合分岐を有することができる光導波路1を実現するために、Y形状又は3つ以上の分岐をもたらす他の任意の形状を有してもよく、MはNに等しいか又はNより多い。TPUベースの光導波路は、たとえば、2つの入力結合部及び4つの出力結合部を有していてもよい。これを、射出技法を用いて実現することは、本発明で提案された3D印刷技法とは違って、不可能ではないにしても非常に困難であろう。
【0109】
他の実施例では、クラッド20は、固体軸などの、少なくとも1つの固体要素の周囲に形成されてもよく、その結果、導波路は、固体要素に接着又は固定する必要なく、固体要素にしっかりと付着される。これにより、導波路1を、医療デバイスの構成要素であり得る、かかる要素に巻き付けるか又は固定する必要がなくなり、コストを削減することができる。
【0110】
3D印刷技法を用いてプリフォームを実現することは、本発明の枠組みにおいて、光導波路1が、導波路を手術用デバイス内又は手術用デバイス上に容易に適合させることができる、特定の外形及び/又は内形を有することができるので、特に興味深い。たとえば、充填されたプリフォーム、すなわちクラッド及び充填されたコアを有するプリフォームは、たとえばクラッドに少なくとも1つの長手方向の開口部が存在するように実現することができ、これにより光導波路1を、非常に細い誘導ワイヤに取り付けることができる。変形例では、プリフォーム、及びこれによる最終的な光導波路は、プリフォーム及び光導波路の長さ及び/又は幅方向に、起伏のある表面を有してもよい。
【0111】
別の態様では、3D印刷技法を用いてプリフォームを実現することにより、ドーナツ形状の断面、又は2つのコアを含むホールタ形状を有する導波路を、容易に作ることができる。変形例では、6角形に収められたプリフォーム及びファイバが、3Dプロセスで実現されてもよい。他の変形例では、プリフォーム及びプリフォームから製造された光導波路も、少なくとも部分的にフォトニック結晶でできている。
【0112】
さらに別の態様では、TPEのクラッド、好ましくはTPUのクラッド、及び/又は全体的にTPUエラストマーで実現される、充填されたプリフォームの3D印刷により、細い手術用器具への装着及び固定が重要となる、形成された光導波路の外側への、機械的な形及び機能の追加が可能である。たとえば3D印刷中に、プリフォームに側面の構造体を追加し、この後に光導波路を実現することができ、側面の構造体は、たとえばより硬質なポリマーで実現することができる。3D印刷技法を使用することにより、少なくとも2つの堆積層が、相異なる組成を有することができる。TPUベースのプリフォームを、射出技法を用いて実現することにより、上記で説明された形状を実現するのは特に困難であろう。これは主に、3D印刷と比較して、射出成形によって引き起こされる設計の複雑さによる制限に起因している。TPUベースのプリフォームの既知の穴あけ、押出及び射出成形、又は機械的調整は困難であり、時間がかかるであろう。TPUベースのプリフォームの3D印刷には、場合によってはTPUベースのコアを備えた、TPUベースのクラッドを有する導波路を実現するための、大きな競争上の利点がある。
【0113】
図25図27は、TPUプリフォーム200、204を3D印刷することによって実現できる、複雑な形状のプリフォームの断面を示している。かかるプリフォーム200、204はまた、TPEポリマー製であってもよい。
【0114】
一変形例では、中空形状のプリフォーム204が最初に形成され、次いで、シリコーンなどのTPEエラストマーとは異なり得るポリマーで充填された、細長い細管が実現される。かかる方法の変形例は、図10に概略的に示されているステップ(A~D’)を含む。
A)上記で説明されたように、少なくとも部分的にTPEエラストマーでできている、中空プリフォーム204を実現するステップ。
B’)所定の長さL及び所定の断面40、41を有する細管2000が形成されるまで、中空形状のプリフォーム204の直径を小さくし、プリフォームを伸長するステップであって、細管2000が、所定の断面30を有する中央開口2002を有する、伸長するステップ。
C’)プリフォームの中央開口220内に、液体シリコーン11を導入するステップ。
D’)液体シリコーンを重合して、重合された液体シリコーン11でできたコア10を有し、所定の長さL及び外径D2を有する、光導波路1を形成するステップ。コアの直径は、プリフォームの外径D1とプリフォームの開口部の直径との比に直接関連する。というのは、この比は、直径を小さくするステップB’の間に変化しないからである。
【0115】
一実施例において、ステップC’及びD’は、ステップE’、F’、G’によって置き換えられる。
E’)プリフォームの直径を小さくするステップBの間に、液体シリコーン11を導入するステップ。
F’)プリフォーム200の直径を小さくするステップの間、前の形の光導波路が、所定の長さ(L)及び所定の断面40、41を得るまで、液体シリコーンを液体の状態に保持するステップ。
G’)光導波路1を形成するために、液体シリコーン11と細管2000とを熱重合するステップ。変形例では、細管2000は、液体シリコーンの重合前に重合されてもよい。
【0116】
一実施例において、ステップB’、C’及びD’は、ステップH、I、Jによって置き換えられる。
H’)ステップAの後、液体ポリマー11を、中空プリフォーム204の中央開口部202’内に導入するステップ。
I’)液体ポリマー11で充填されたプリフォーム204の直径を小さくし、液体ポリマー11で充填された細管2000が形成されるまで、充填されたプリフォーム200を伸長するステップであって、細管は、所定の長さL及び所定の断面40、41を有する、伸長するステップ。
J)UV光を当てて、液体ポリマーを重合するステップ。
【0117】
一実施例のステップでは、液体ポリマーは液体シリコーンであり、場合によっては液体シロキサンである。
【0118】
該方法の一実施例では、得られた光導波路1は、マルチモード光ファイバである。一変形例では、得られた導波路は、モノモード光ファイバである。
【0119】
一実施例では、得られた導波路は、任意の横方向の平面X-Yで画定される、円形でない断面を有する光導波路である。実施例では、導波路のコア10は、1μm未満であり得る、非常に小さい断面を有する。ここで、これを実現するためのプロセスについて説明する。
【0120】
延伸する間にファイバ径を小さくするためには、ファイバ径を小さくする巻取り速度である、延伸パラメータを調整する必要があろう。そのためには、TPUとシリコーンとの両方の材料が、かかる小さな幾何形状で加工できなければならない。シリコーンに関しては、液体のまま保持され、TPUの変形に追従するので、これは非常に簡単であろう。最終的なファイバ径が十分に小さくはない場合、シリコーンがまだ重合されていなければ、ファイバのサイズを小さくするために、新しい延伸プロセスを開始することができるであろう。このプロセスは、参考文献16で提案されているものと同様であり、回転ロッドがマイクロファイバを巻いている間に、導入されたファイバが溶融される。発明者等の場合、溶融は、プリフォームからファイバを延伸するために使用されるものと同じヒータを使って実行することになる。入ってくるファイバのサイズが100μm以下と小さいため、溶融を迅速に実現する必要があり、そうすれば、シリコーンの重合が再び起こる時間はないであろう。通常のスプールの周りではなく、ロッドの周りに巻き付けることが必須である。この理由は、熱くなったTPUのファイバが、十分に冷やされていない場合、ファイバ同士がくっついてしまうからである。通常の光ファイバの延伸では、この冷却は、ファーネス及び巻取りスプールを取り外して実行される。
【0121】
一実施例では、有用な光導波路1の長さは、許容可能な光透過率が得られるまで光導波路を切断することにより決定される。したがって、短い光導波路の光透過率の比T1/T0を判定する、透過率測定ステップを実行でき、その後に、第1の短い光導波路の長さよりも長さが短い、第2の短い光導波路を生成するために、光導波路1を別の所定の長さに切断することからなる、新しいステップFが続き、第2の短い光導波路は、第1の短い光導波路の透過率の比T1/T0よりも大きい透過率の比T2/T1を有する。
【0122】
変形例では、マイクロ又はナノサイズの光ファイバを実現することができる。これらの直径は通常1μmで、場合によっては1μm未満であってもよい。TPUなどのTPEでできたプリフォームが、UV重合性接着剤又はシリコーンで充填される場合、中央開口部に導入される液体は、プリフォームの直径を小さくする際にTPUの円筒の変形に追従し、その結果、中央開口部2002は、細管の引っ張り動作の間、マイクロサイズの直径に達した場合でも、閉じられない。所定の長さ及び外径に達すると、内部の液体が、TPE又はTPUを通過するUV光によって重合される。
【0123】
本発明はまた、ファンイン/アウト光システム(参考文献17)を実現するために使用でき、マルチコア・ファイバの出力及び入力の接続を可能にする(参考文献17)システムの製造方法にも関する。この方法は、好ましくは以下のステップを含む。
- 硬化されていない液体コアを有し、典型的には40μmの直径を有する、複数の光ファイバを準備するステップ。
- 束を形成するために、複数のファイバを、複数の穴及びマルチコア・ファイバと同じファイバの幾何形状の分散配置を有する、機械的ホルダ内に整列させるステップ。機械的ホルダは、接続すべきマルチコア・ファイバと等しいか、又はマルチコア・ファイバより大きい、円筒の外径を有することが好ましい。
- 一実施例では、ホルダ内に導入されるファイバの数は7本であり、様々なタイプのファイバであってもよい。
- すべての構成要素を一体に固定するために、好ましくはUV接着剤を使って、機械的ホルダの組立体を接着するステップ。
【0124】
一実施例では、該複数の光ファイバは、少なくとも部分的にTPEでできたコアを有する。図17に示されている一変形例では、プリフォームは、複合型プリフォームである。たとえば、ブロック4000は、(図16に示されているように)ワイヤが配置されている2つのホルダを備えることができ、この構造体は、図17に示されているように、TPUなどのTPEのクラッド層によってオーバーモールディングすることができる。プリフォーム200は、射出成形によって生産することができ、プリフォームの最初の半分は、マルチコア・プリフォームを構成する。別の半分は、2つのホルダを備えるプリフォームの第1の部分に直接整列及び接続される、複数の、好ましくは7本の別々のチューブである。
【0125】
図15は、好ましくはファンイン/ファンアウト光学部品を実現するよう配置された、2つのホルダ4004、4004を備える、プリフォームの一部を具備する、装置4000の実例を示している。
【0126】
図16は、ファンイン/ファンアウト光学部品を作るための、図15の2つのホルダを備えるプリフォームの一部を示しており、2つのホルダは、TPEポリマーの射出後に取り外されることになる複数のワイヤ4001を備える。図16は、クラッドを射出する前の、7つの型コアを備える2つのインサートを示している。2つのホルダ4002と4004との間のボリュームをオーバーモールディングした後、TPE層4003によるそのボリューム内に、ワイヤが存在している(図16)。次いで、TPEを冷却し、ワイヤ4001を引き抜くと、シリコーンなどの別のポリマーを導入できる、複数の軸方向の穴が残る。このように形成されたプリフォームは、マルチコア・ファイバを作るために延伸されてもよく、又はファンイン/ファンアウト光デバイスで使用され得る、直径が小さくなった中央部分を有するマルチコア構造体を形成するために、プリフォームの中央部分にわたって、延伸又は加熱されてもよい。
【0127】
図18は、図17に示されたクラッド層である、TPU層4003を射出した後の、かかるマルチコア・ファイバの脱型プロセスを示している。図19は、図16及び図17の型を用いて実現されたマルチコアのファンイン/ファンアウト・プラットフォームを示しており、最終的な所望の直径に達するように溶融及び延伸した後のものである。図19に示されているファンイン/ファンアウト部品4100は、離間されたコアを有する2つの端部4104、4106と、コアが、2つの端部4104及び4106における状態よりも接近している、中間部4102とを備える。
【0128】
マルチコア・プリフォーム部分のサイズを通常のファイバのサイズまで縮小し、移行エリアから出るチューブを通常サイズまで小さくするために、複合型プリフォームの移行エリアで溶融及び延伸プロセスが実現される。一実施例では、ファイバは、マルチコア・ファイバ構造体同様のものを形成する、環又はチューブ内に配置されてもよい。この構造体を、熱フラッシュによって固定し、次いで接続されるべきマルチコア・ファイバと等しい最終径に達するように、熱によって延伸する。
【0129】
本発明はまた、ファイバのコアの直径を変化させる使用法に基づく、照明デバイス及び照明方法にも関する。かかる照明方法は、以下のステップを含む。
- 本明細書に説明されている光導波路1を準備するステップ。
- 光導波路1のコア10に、光を導入するステップ。
- 光を、コア10から光導波路の側面に、クラッド20を通して結合するために、光導波路1の一部を伸張するステップ。
【0130】
一変形例では、伸張は、自動機構によって周期的に伸張されてもよい。一実施例では、クラッド層による光拡散効果を実現するために、ドーパントをTPEクラッド層に組み込むことができる。ドーパントを組み込むことにより、光導波路の伸張された部分を、より目に見えるようにすることが可能になるので、たとえば光装飾に有用な、ライティング効果を実現する。
【0131】
実験結果
a.TPUコア及びTPUクラッドを備えたファイバの実現
本発明による例示的なプロセスで、表1に列挙された寸法を有する3つのタイプのステップインデックス光ファイバを実現した。ファイバごとのV値は、3つの相異なる波長(633nm、830nm、及び1300nm)で、実現される最小直径を考慮して決定した。対応するモード数の推定値は、式1及び開口数(NA)0.38を使用して決定した。NAは、波長に対して安定したままである、たとえば、材料分散がないものと想定した。F3ファイバは、波長>800nmでは、数モードファイバ(FMF:few mode fiber)の作用に近づいていることに、気づくことができる。モード数Mは、式(1)で与えられ、ステップインデックス・ファイバの範疇では使用されることが多い、無次元パラメータであるV値に依存する。V値は、以下のように定義される。
【数1】

ここで、λは真空波長、aはファイバのコア半径、NAは開口数である。
【数2】

【表1】
【0132】
本発明のプロセスに従って実現したファイバ1は、最初に顕微鏡の下で視覚的に評価し、白色光を入力結合して、40cmのファイバ長内で誘導した。その後、カットバック法を使用して、ファイバの減衰量を測定した。得られた減衰値を表2に列挙しているが、波長1300nmを除いて、TPUポリマーの平面シートで測定した値と非常に類似している。3番目の光学窓(たとえば1550nm)では、この波長帯域で強い減衰が観察されたため、減衰量は測定しなかった。
【表2】
【0133】
サンプル・ファイバF3のセットを使用して曲げ損失を測定した。結果を、図23に示す。ファイバF3は、金属ロッドで2周曲げて、電力信号が安定している間、手動で維持した。TPUのファイバは非常に柔らかいので、どんな接触でもコアとクラッドとの境界面に直接ストレスがかかり、それによりファイバが曲がると光透過率が変化する。さらに、ロッドの周囲でファイバを曲げるために、無視できないほどのファイバの伸びが必然的に生じ、さらなる損失を引き起こす。しかし、ファイバは、小さな曲げ半径が必要な用途では、短い長さでよく使用されることがある。
【0134】
光導波路1の透過強度の変化を使用して、加えられた圧力又は曲げに応じて透過強度が変化する、圧力センサ又はシステムを実現することができる。図22は、TPUコア及びTPUクラッドでできた長さ8cmのファイバを使用して、膨張式バルーンの外面にファイバを接着することによる、強度bの変化の実験結果を示している。図22は、バルーンを膨らませることによる、検出した強度の変化を示している。ファイバの長さは、最大30%変化した。コアの寸法は、当初の10μmから6.6μmへ、30%変化した。使用した波長は、633nmであった。図24は、ファイバが受けた伸長度の関数である、モード数の変化を示しており、%で表されている。当初の長さは0%で示されており、128%は、長さが2.28倍に増加したことを意味している。
【0135】
b.TPUクラッド及びシリコーン・コアを備えたファイバの実現
本発明による実験プロセスでは、TPUベースの細管にシリコーンを充填して、光ファイバを実現する。TPUの細管2000のかかるプロセスでは、第1のステップは、好ましくは射出成形によって、クラッドのプリフォーム200を生産することである。クラッドの寸法は、所定の数の導波モードを有するマルチモード・ファイバを得るために、又は標準のシングル・モード・ファイバに近いか若しくは等しくてもよい、ファイバ及びコアのサイズを確保するために、最終的なクラッドの直径とコア・ファイバの直径との比を考慮する必要がある。クラッドの直径は、成形する寸法の制約に従う必要があるが、型の内部でインサートを使用するために必要な、初期の中央穴の直径にも依存する。このインサートは、成形プロセス中に、高温のポリマーの流れによって曲がる可能性があるので、クラッド生産の重要な構成要素である。こうした制約及び典型的な射出成形機器に基づいて、典型的なクラッドの直径は、長さ約100mmに対して最大20mmである。プリフォーム200の中央穴径は通常、成形中のポリマー流動ストレスのため、1mm以上である。0.5mm程度の小ささの、プリフォームの穴径を得ることができる。インサートの別の制約は、インサート表面の品質及びTPUへの接着である。表面の品質は、TPUとシリコーンとの間の光学的境界面、及び何にもまして、最終的なファイバ内部の光誘導損失に、直接影響するであろう。したがって、表面処理は原則として、粗さ及びTPUの接着力を減らすために必要である。クラッドのプリフォームが得られると、標準的な熱ファイバ延伸プロセスにより、毛髪のように細いTPUファイバの細管が実現される。ここで対象となるほとんどの用途に必要なファイバの長さは非常に短い(10~15cm)ので、円錐度及び直径の変動による収縮がより少なく、ひいてはプロセスの制約が緩和される。
【0136】
小径の細管内へのシリコーンの侵入を実現するための試験を行い、15μmの中央穴2002及び125μmの外径を有する、ガラス製細管2000を使用した。シリンジによる技法を使用して、長さ約100mmのシリコーンを射出することが可能である。真空ポンプによる技法をシリンジと共に使用して、100mm以上の侵入深さを実現させることが可能である。細管の内壁の湿潤性を修正することにより、ひいては細管の充填する力の助けを借りて、初期の侵入長さが改善される。加えて、より高性能な真空ポンプを使用し、ファイバの反対側でシリンジの効率を高めることにより、最大20~40cmのファイバ長にわたる侵入深さを実現することができる。
【0137】
典型的なシリコーンベースの光ファイバでは、コア材料は、一般にLED液体封入材として使用されるシリコーンでできている。このシリコーンは、Caplinq Corporation(カナダ)によって商品化されている、OPTOLINQの商標の、OLS-5291タイプのシリコーンである。
【0138】
クラッド材料は、BASF社の1185A TPUなどの、非常に柔軟なグレードに見ることができるTPUポリマーであった。実現するクラッドの寸法は200μmであってもよく、コアの直径は50μmで、ファイバ1の長さは少なくとも250mmであってもよい。ファイバは、典型的な、高い開口数0.32を有している。実現した典型的なファイバは、著しい光損失なしに、約50%伸張する、すなわち光ファイバを最大375mmまで伸ばすことができる。ファイバ1の開口数が大きいため、曲げ損失は20~30%未満であった。これは、PMMAファイバなどの従来技術の、他のポリマーベースのファイバでは、実現することはできない。試験は、本発明の光ファイバ1を圧潰しても、光ファイバの機械的又は光学的特性が変化しないことを示した。たとえば、20N~30Nの横方向の力を加えても、光ファイバは、機械的又は光学的特性のいかなる変化もなく、元の形状に戻る。
【0139】
光学ベンチを用いて測定した、光導波路1の典型的な光透過率は、以下の通りであった。
- 633nmでの減衰量は、0.2~0.3dB/cmであった。
- 1300nmでの減衰量は、0.3~0.5dB/cmであった。
- 1550nmでの典型的な減衰量は、0.6~0.9dB/cmであった。
【0140】
本発明の光導波路1は、長さが典型的に100mmより短い場合、一部のUV用途に使用することができる。UVでは、長さ50mmで、300nmでの透過率の推定値が、約30~60%であったが、透過率の値は、使用されるポリマーのタイプ、及びもちろんUV波長によって大きく異なり得る。300nm未満の透過率は、典型的には、ファイバの長さが約50mmの場合、20~10%未満である。
【0141】
本発明の導波路1の用途
本発明の光導波路1の重要な用途のうちの1つは、インプラント、より詳細には蝸牛インプラントに関する。かかる用途では、本明細書で説明されたTPUベースのプリフォームの3D印刷が、特にかなり適合する。光導波路1は、蝸牛インプラントの先端に配置される、圧力センサの先端に実装されている。光導波路1は、偶発的な蝸牛内の構造上の損傷を最小限に抑えるよう意図されている。最近の研究では、埋込み中に、蝸牛の密閉された空間に電極アレイを挿入することで生じる、深刻なインパルス外傷を引き起こす音声レベルに相当する、圧力パルスについて実証されている。本発明の光導波路1を実装する解決策は、手術の信頼性及び柔軟性を高め、埋込みの重要なプロセスの際のどんな失敗も回避することによって、インプラントの品質も高めるであろう。手術を含む蝸牛インプラントのコストは、30,000~50,000米ドルの間で変動する可能性がある。まれではあるが、手術の失敗は、患者の回復時間の後に2回目の手術をさせることになり、一方で、インプラントの機能不全(構造上の損傷による)も同様に、場合によっては起こり得る。さらに、蝸牛内の残存する構造体及び神経組織は、患者が体験する音質に大きく関係する。挿入プロセスは、外科医の操作及び重要な膜を貫通させることによって引き起こされる圧力パルスのせいで、この構造体に非常に外傷を与える可能性がある。新規の光ファイバ技法は、外科手技に革命をもたらし、線維化する組織の成長を抑え、また将来の再生医療を成功させ、治療効果を高めるために、蝸牛の状態を維持することができる。さらに、埋込型光学技術は、生理学的パラメータを継続的に監視することにより、術後のリハビリを改善することもできる。本発明の光導波路により、重要な生理学的パラメータ又は環境パラメータのフィードバック測定を可能にすることで、インプラントの失敗ばかりでなく手術の失敗も劇的に減らすことができる。本発明の光導波路はさらに、生理学的パラメータの長期的且つ高度に局所化した監視への扉を開く。これは、医学的問題を早期に発見することを可能にし、このようにして可能性のある埋込み後の外傷及びその結果として生じる手術を最小限に抑えることを可能にするので、非常に興味深いものである。また、インプラント及び手術に必要な消耗品の信頼性を高めることにより、廃棄物を削減するための解決策も提供する。廃棄物の可能性のある減少は、引き続き、埋込みの失敗及び失敗により起こり得る外傷を減らすことによって、またさらに、長期的な観点から重要な手術が起こらないようにすることによって、埋込み作業のエネルギー効率を明らかに高める。
【0142】
本発明の光導波路1から利益を得る可能性のある他の重要な用途は、排他的ではないが、以下の通りである。
- 眼科。光導波路1を使用した感圧デバイスは、白内障手術に有用である。
- 脊椎外傷学。手術後の圧力監視(椎骨又は椎間板置換)。
- 心臓外傷学。心臓発作後の血流及び血圧監視、局所的な顕微鏡手術。
- 心臓外科、整形外科、泌尿器科、及び神経科。
- セキュリティ及び偽造用途。
- 工業用センサ用途
【0143】
本発明の導波路の様々な用途が、まったく新しいクラスの光導波路として、新しい市場を生み出す可能性がある。一実例として、TPUベースの導波路1上に、どんな追加のセンサも必要とせずに導波路の感度を向上させる、ブラッグ格子が設けられてもよい。本発明の光導波路1は、説明されたように、インプラント製造業者が、感知用に使用できるが、ガラス光ファイバを使用すると危険な遠隔の場所に光を導くために、使用することもできる。本発明の光導波路1は、たとえば参考文献15で説明されているようなファン/イン-ファン/アウト・システムにも、使用することができる。
【0144】
さらに他の用途は、装飾照明デバイスを対象とする。TPUクラッドなどのTPEは、拡散粒子をドープされてもよい。一実例では、光導波路の一部分を引っ張ることにより、コアのサイズが小さくなった部分で、光を多少目に見えるようにすることができる。他の用途では、本発明の光導波路1上にブラッグ格子が配置されてもよく、これは、たとえばSiO2ベースの光導波路又はファイバを置き換えることを可能にする。かかる導波路1は、SiO2の熱膨張が実質的に存在しない、極低温用途で使用することができる。
【0145】
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図1
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【国際調査報告】