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▶ バイオサイトジェン ファーマシューティカルズ (ベイジン) カンパニー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】改変免疫グロブリン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230606BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230606BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230606BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20230606BHJP
   C07K 14/545 20060101ALI20230606BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20230606BHJP
   C07K 14/56 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230606BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230606BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230606BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20230606BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 37/02 20060101ALN20230606BHJP
   A61P 19/02 20060101ALN20230606BHJP
   A61P 1/04 20060101ALN20230606BHJP
   A61P 17/06 20060101ALN20230606BHJP
   A61P 11/06 20060101ALN20230606BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K16/46
C07K14/54
C07K14/545
C07K14/55
C07K14/56
C12N15/63 Z
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12P21/02 Z
C12P21/02 K
C12P21/02 F
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/19
A61K38/20
A61K47/68
A61K47/65
A61K45/06
A61P37/02
A61P19/02
A61P1/04
A61P17/06
A61P11/06
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565576
(86)(22)【出願日】2021-04-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 CN2021089649
(87)【国際公開番号】W WO2021218862
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/087036
(32)【優先日】2020-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/073085
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/085181
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521213200
【氏名又は名称】バイオサイトジェン ファーマシューティカルズ (ベイジン) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】グオ ヤナン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ バイホン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ユイ
(72)【発明者】
【氏名】シェン ユエレイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG03
4B064AG04
4B064AG05
4B064AG09
4B064AG20
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC18
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA24
4C084BA44
4C084DA01
4C084DA12
4C084DA13
4C084DA14
4C084DA15
4C084DA16
4C084DA17
4C084DA18
4C084DA22
4C084NA05
4C084ZA02
4C084ZA59
4C084ZA61
4C084ZA68
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB31
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA03
4H045DA04
4H045DA16
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、第1のCH3ドメインを含む第1のポリペプチド、第2のCH3ドメインを含む第2のポリペプチドを含むポリペプチド複合体であって、第3のポリペプチドは第1のCH3ドメインに融合している、ポリペプチド複合体を提供する。ポリペプチドを含む医薬組成物及びポリペプチド複合体を作製する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のCH3ドメインを含む第1のポリペプチド、
第2のCH3ドメインを含む第2のポリペプチド
を含むポリペプチド複合体であって、
第3のポリペプチドは、EU番号付けに従って前記第1のCH3ドメインの344位から382位までの領域において前記第1のCH3ドメインに融合しているポリペプチド複合体。
【請求項2】
前記第3のポリペプチドは、前記第1のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記第1のCH3ドメインの343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、及び383位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項3】
前記第3のポリペプチドは、EU番号付けに従って前記第1のCH3ドメインの351位から362位までの領域において前記第1のCH3ドメインに融合している、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項4】
前記第3のポリペプチドは、前記第1のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記第1のCH3ドメインの350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、及び363位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項3に記載のポリペプチド複合体。
【請求項5】
前記第3のポリペプチドは、EU番号付けに従って前記第1のCH3ドメインの358位から362位までの領域において前記第1のCH3ドメインに融合している、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項6】
前記第3のポリペプチドは、前記第1のCH3ドメインの第1及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1のアミノ酸残基及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記第1のCH3ドメインの357、358、359、360、361、362、及び363位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項5に記載のポリペプチド複合体。
【請求項7】
前記第1のCH3ドメイン中の前記第1及び前記第2のアミノ酸残基間の野生型CH3ドメイン中の1つ以上のアミノ酸残基は、欠失している、請求項2、4又は6に記載のポリペプチド複合体。
【請求項8】
前記第1のポリペプチドは、CH2ドメインをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項9】
前記第2のポリペプチドは、CH2ドメインをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項10】
前記第1のポリペプチドは、重鎖可変ドメイン及び/又は重鎖CH1ドメインをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項11】
前記第2のポリペプチドは、重鎖可変ドメイン及び/又は重鎖CH1ドメインをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項12】
2つの軽鎖ポリペプチドを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項13】
IgG様抗体である、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項14】
前記第3のポリペプチドは、リンカー配列を介して前記第1のポリペプチドに結合している、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項15】
前記リンカー配列は、5~20個のアミノ酸残基を含む、請求項14に記載のポリペプチド複合体。
【請求項16】
前記リンカー配列は、少なくとも4つのグリシン残基を含む、請求項14又は15に記載のポリペプチド複合体。
【請求項17】
前記リンカー配列は、GGGGSGGGGS(配列番号30)と少なくとも80%同一である配列を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項18】
前記第3のポリペプチドは、6つ超のアミノ酸残基を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項19】
前記第3のポリペプチドは、約6~500個のアミノ酸残基を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項20】
前記第3のポリペプチドは、可溶性ポリペプチドである、請求項1~19のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項21】
前記可溶性タンパク質は、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-35、又はIL-36)である、請求項20に記載のポリペプチド複合体。
【請求項22】
前記第3のポリペプチドは、IL3、IL4、IL5、IL6、IL-7、IL8、IL9、IL13、IL15、又はIL21である、請求項21に記載のポリペプチド複合体。
【請求項23】
前記第3のポリペプチドは、単鎖抗原結合ポリペプチド(例えば、単鎖可変断片(scFv)、又は単一ドメイン抗体(ナノボディ))を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項24】
前記単鎖抗原結合ポリペプチドは、細胞抗原(例えば、エフェクター細胞抗原)に特異的に結合する、請求項23に記載のポリペプチド複合体。
【請求項25】
前記第3のポリペプチドは、膜貫通タンパク質(例えば、トランスフォーミング成長因子ベータ受容体2(TGFbR2))の可溶性部分(例えば、細胞外領域)又は分泌タンパク質を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項26】
前記第3のポリペプチドは、リガンド(例えば、ATOR1015-CD86)である、請求項1~19のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項27】
前記第3のポリペプチドは、ナノボディ(例えば、KN035)又はVHHである、請求項1~19のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項28】
前記ポリペプチド複合体中の前記第3のポリペプチドは、単離された第3のポリペプチドと比較してほぼ同じ又は高いレベルの生物学的活性を有する、請求項1~27のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項29】
親ポリペプチド複合体と比較してほぼ同じ又は高いレベルの標的への結合親和性を有する、請求項1~28のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項30】
2つの抗原に特異的に結合し、その同じ2つの抗原に特異的に結合する二重特異性抗体の発現レベルと比較してほぼ同じ又は高い発現レベルを有する、請求項1~29のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項31】
精製形態で凝集物を形成しない、請求項1~30のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項32】
単離形態の前記ポリペプチド複合体は、Fc受容体に結合し得る、請求項1~31のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項33】
前記第3のポリペプチドは、scFvを含み、前記scFvは、単離されたscFvの結合親和性と比較してほぼ同じ又は高いレベルの結合親和性を有する、請求項1~32のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項34】
第4のポリペプチド
をさらに含み、前記第4のポリペプチドは、EU番号付けに従って前記第2のCH3ドメインの344位から382位までの領域において前記第2のCH3ドメインに融合している、請求項1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項35】
前記第4のポリペプチドは、前記第2のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記第2のCH3ドメインの343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、及び383位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項34に記載のポリペプチド複合体。
【請求項36】
前記第4のポリペプチドは、EU番号付けに従って前記第2のCH3ドメインの351位から362位までの領域において前記第2のCH3ドメインに融合している、請求項34に記載のポリペプチド複合体。
【請求項37】
前記第4のポリペプチドは、前記第2のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記第2のCH3ドメインの350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、及び363位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項36に記載のポリペプチド複合体。
【請求項38】
前記第4のポリペプチドは、EU番号付けに従って前記第2のCH3ドメインの358位から362位までの領域において前記第2のCH3ドメインに融合している、請求項34に記載のポリペプチド複合体。
【請求項39】
前記第4のポリペプチドは、前記第2のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記第2のCH3ドメインの357、358、359、360、361、362、及び363位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項38に記載のポリペプチド複合体。
【請求項40】
第5のポリペプチド
をさらに含み、前記第5のポリペプチドは、前記第1のポリペプチドのC末端に融合している、請求項1~39のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項41】
前記第5のポリペプチドは、リンカー配列を介して前記第1のポリペプチドのC末端に融合している、請求項40に記載のポリペプチド複合体。
【請求項42】
前記リンカー配列は、10~40個のアミノ酸残基を含む、請求項41に記載のポリペプチド複合体。
【請求項43】
前記リンカー配列は、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)と少なくとも80%同一である配列を含む、請求項42に記載のポリペプチド複合体。
【請求項44】
前記第5のポリペプチドは、10個超のアミノ酸残基を有する、請求項40~43のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項45】
前記第5のポリペプチドは、約10~500個のアミノ酸残基を有する、請求項40~44のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項46】
前記第5のポリペプチドは、サイトカインである、請求項40~45のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項47】
前記サイトカインは、IFNa4である、請求項46に記載のポリペプチド複合体。
【請求項48】
第6のポリペプチド
をさらに含み、前記第6のポリペプチドは、前記第2のポリペプチドのC末端に融合している、請求項1~47のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項49】
前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドは、ノブ・イン・ホール(KIH)技術を介してヘテロダイマーを形成する、請求項1~48のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項50】
前記第1のポリペプチドは、軽鎖ポリペプチドと相互作用し、抗原結合部位を形成し、前記第2のポリペプチドは、前記軽鎖ポリペプチドと相互作用しない、請求項1~49のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項51】
前記第1のポリペプチドは、第1の軽鎖ポリペプチドと相互作用し、第1の抗原結合部位を形成し、前記第2のポリペプチドは、第2の軽鎖ポリペプチドと相互作用し、第2の抗原結合部位を形成し、前記第1の抗原結合部位及び前記第2の抗原結合部位は、同じ抗原又は異なる抗原に特異的に結合する、請求項1~50のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項52】
前記ポリペプチド複合体中の前記第3のポリペプチドが前記第3のポリペプチドについての結合相手と相互作用しない場合、Fc受容体に結合し得る、請求項1~51のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項53】
バリアントFcを含むタンパク質であって、ポリペプチドは、EU番号付けに従って前記バリアントFcの344位から382位までの領域において前記バリアントFcに融合しているタンパク質。
【請求項54】
前記ポリペプチドは、前記バリアントFcの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記バリアントFcの343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、及び383位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項53に記載のタンパク質。
【請求項55】
前記ポリペプチドは、EU番号付けに従って前記バリアントFcの351位から362位までの領域において前記バリアントFcに融合している、請求項54に記載のタンパク質。
【請求項56】
前記ポリペプチドは、前記バリアントFcの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記バリアントFcの350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、及び363位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項55に記載のタンパク質。
【請求項57】
前記ポリペプチドは、EU番号付けに従って前記バリアントFcの358位から362位までの領域において前記バリアントFcに融合している、請求項53に記載のタンパク質。
【請求項58】
前記ポリペプチドは、前記バリアントFcの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記バリアントFcの357、358、359、360、361、362、及び363位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項57に記載のタンパク質。
【請求項59】
バリアントFcを含むタンパク質であって、ポリペプチドは、EU番号付けに従って前記バリアントFcの383位から391位までの領域において前記バリアントFcに融合しているタンパク質。
【請求項60】
前記ポリペプチドは、前記バリアントFcの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記バリアントFcの382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、及び392位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項59に記載のタンパク質。
【請求項61】
バリアントFcを含むタンパク質であって、ポリペプチドは、EU番号付けに従って前記バリアントFcの383位から385位までの領域において前記バリアントFcに融合しているタンパク質。
【請求項62】
前記ポリペプチドは、前記バリアントFcの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記バリアントFcの382、383、384、385、及び386位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項61に記載のタンパク質。
【請求項63】
バリアントFcを含むタンパク質であって、ポリペプチドは、EU番号付けに従って前記バリアントFcの413位から422位までの領域において前記バリアントFcに融合しているタンパク質。
【請求項64】
前記ポリペプチドは、前記バリアントFcの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記バリアントFcの412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、及び423位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項63に記載のタンパク質。
【請求項65】
前記Fcは、IgG Fcである、請求項53~64のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項66】
前記Fcは、IgG1、IgG2、又はIgG4 Fcである、請求項53~64のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項67】
IgG様抗体又は免疫グロブリン(例えば、IgM、IgD、IgE、IgA、又はIgG)である、請求項53~64のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項68】
多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である、請求項53~67のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項69】
第1のCH3ドメインを含む第1のポリペプチド、
第2のCH3ドメインを含む第2のポリペプチド
を含むポリペプチド複合体であって、
第3のポリペプチドは、EU番号付けに従って前記第1のCH3ドメインの383位から391位までの領域において前記第1のCH3ドメインに融合している、ポリペプチド複合体。
【請求項70】
前記第3のポリペプチドは、前記第1のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記第1のCH3ドメインの382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、及び392位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項69に記載のポリペプチド複合体。
【請求項71】
第1のCH3ドメインを含む第1のポリペプチド、
第2のCH3ドメインを含む第2のポリペプチド
を含むポリペプチド複合体であって、
第3のポリペプチドは、EU番号付けに従って前記第1のCH3ドメインの383位から385位までの領域において前記第1のCH3ドメインに融合している、ポリペプチド複合体。
【請求項72】
前記第3のポリペプチドは、前記第1のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記第1のCH3ドメインの382、383、384、385、及び386位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項71に記載のポリペプチド複合体。
【請求項73】
第1のCH3ドメインを含む第1のポリペプチド、
第2のCH3ドメインを含む第2のポリペプチド
を含むポリペプチド複合体であって、
第3のポリペプチドは、EU番号付けに従って前記第1のCH3ドメインの413位から422位までの領域において前記第1のCH3ドメインに融合している、ポリペプチド複合体。
【請求項74】
前記第3のポリペプチドは、前記第1のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合しており、前記第1及び前記第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って前記第1のCH3ドメインの412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、及び423位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項73に記載のポリペプチド複合体。
【請求項75】
第1の非ネイティブポリペプチド配列を含む第1の重鎖ポリペプチド;
第2の重鎖ポリペプチド;
第1の軽鎖ポリペプチド;及び
第2の軽鎖ポリペプチド
を含む改変抗体であって、前記第1の重鎖ポリペプチド及び前記第1の軽鎖ポリペプチドは、互いに会合し、第1の抗原結合領域を形成し、
前記第2の重鎖ポリペプチド及び前記第2の軽鎖ポリペプチドは、互いに会合し、第2の抗原結合領域を形成し、
前記第1の非ネイティブポリペプチド配列は、EU番号付けに従って前記第1の重鎖ポリペプチドの344位から382位までの領域において前記第1の重鎖ポリペプチドに融合している改変抗体。
【請求項76】
前記第2の重鎖ポリペプチドは、第2の非ネイティブポリペプチド配列を含み、前記第2の非ネイティブポリペプチド配列は、EU番号付けに従って前記第2の重鎖ポリペプチドの344位から382位までの領域において前記第2の重鎖ポリペプチドに融合している、請求項75に記載の改変抗体。
【請求項77】
前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域は、同じ抗原に特異的に結合する、請求項75又は76に記載の改変抗体。
【請求項78】
前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域は、異なる抗原に特異的に結合する、請求項75又は76に記載の改変抗体。
【請求項79】
前記第1の抗原結合領域及び/又は前記第2の抗原結合領域は、腫瘍関連抗原に特異的に結合する、請求項75又は76に記載の改変抗体。
【請求項80】
前記第1の非ネイティブポリペプチド配列及び/又は前記第2の非ネイティブポリペプチド配列(例えば、scFV又はナノボディ)は、細胞抗原(例えば、エフェクター細胞抗原)に特異的に結合する抗原結合部位を含む、請求項75又は76に記載の改変抗体。
【請求項81】
機能ポリペプチドは、前記第1の重鎖ポリペプチドのC末端に結合している、請求項75~80のいずれか一項に記載の改変抗体。
【請求項82】
機能ポリペプチドは、前記第2の重鎖ポリペプチドのC末端に結合している、請求項75~81のいずれか一項に記載の改変抗体。
【請求項83】
CH2、及びCH3の第1の部分を含む第1の領域;
非ネイティブポリペプチド配列を含む第2の領域;
CH3の第2の部分を含む第3の領域
を含む融合ポリペプチドであって、
CH3の前記第1の部分は、EU番号付けに従ってCH3ドメインのアミノ酸残基341~343を含み、CH3の前記第2の部分は、EU番号付けに従ってCH3ドメインのアミノ酸残基383~447を含む、融合ポリペプチド。
【請求項84】
CH3の前記第1の部分は、EU番号付けに従ってCH3ドメインのアミノ酸残基341~350を含み、CH3の前記第2の部分は、EU番号付けに従ってCH3ドメインのアミノ酸残基363~447を含む、請求項83に記載の融合ポリペプチド。
【請求項85】
CH3の前記第1の部分は、EU番号付けに従ってCH3ドメインのアミノ酸残基341~357を含み、CH3の前記第2の部分は、EU番号付けに従ってCH3ドメインのアミノ酸残基363~447を含む、請求項83に記載の融合ポリペプチド。
【請求項86】
前記第1の領域は、VH及び/又はCH1をさらに含む、請求項83~85のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項87】
2つの軽鎖ポリペプチド;及び
請求項83~86のいずれか一項に記載の融合重鎖ポリペプチドの2つ
を含む改変抗体。
【請求項88】
第1の抗原に特異的に結合する第1の抗原結合部位、
第2の抗原に特異的に結合する第2の抗原結合部位
を含む多重特異性抗体であって、
前記第2の抗原結合部位が前記第2の抗原に特異的に結合する場合、前記多重特異性抗体のエフェクター機能が阻害又は低減される、多重特異性抗体。
【請求項89】
重鎖CH3ドメインを含み、ポリペプチドは、EU番号付けに従って前記重鎖CH3ドメインの344位から382位までの領域において前記重鎖CH3ドメインに融合している、請求項88に記載の多重特異性抗体。
【請求項90】
重鎖CH3ドメインを含み、ポリペプチドは、EU番号付けに従って前記重鎖CH3ドメインの351位から362位までの領域において前記重鎖CH3ドメインに融合している、請求項88に記載の多重特異性抗体。
【請求項91】
重鎖CH3ドメインを含み、ポリペプチドは、EU番号付けに従って前記重鎖CH3ドメインの358位から362位までの領域において前記重鎖CH3ドメインに融合している、請求項88に記載の多重特異性抗体。
【請求項92】
前記第1の抗原は、腫瘍細胞からのものであり、前記第2の抗原は、エフェクター細胞からのものである、請求項88~91のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項93】
前記エフェクター細胞は、NK細胞、T細胞、B細胞、単球、ミクロファージ、樹状細胞、又は好中球である、請求項92に記載の多重特異性抗体。
【請求項94】
前記第1の抗原結合部位が第1の抗原に特異的に結合し、前記第2の抗原結合部位が前記第2の抗原に結合しない場合、前記エフェクター機能を誘導する、請求項88~93のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項95】
前記エフェクター機能は、ADCC又はADCPである、請求項88~94のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項96】
前記第2の抗原結合部位は、単鎖抗原結合ポリペプチド(例えば、scFv又はナノボディ)を含むポリペプチド内に局在する、請求項88~95のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項97】
前記第2の抗原結合部位は、前記多重特異性抗体のCH3ドメインにおいて融合しているscFv又はナノボディ内に局在する、請求項88~96のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項98】
前記第1の抗原結合部位は、CH1ドメイン又はCH2ドメインのN末端に結合しているscFv又はナノボディである、請求項88~97のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項99】
前記第1の抗原結合部位は、VH及びVLにより形成される、請求項88~98のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項100】
二重特異性抗体である、実施形態88~99のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項101】
抗原に特異的に結合する抗原結合部位、
結合相手と特異的に相互作用する結合ポリペプチド
を含む改変抗体であって、
前記抗原結合部位は、前記改変抗体に融合しているポリペプチド内に局在し、前記抗原結合部位が前記受容体に特異的に結合する場合、前記改変抗体のエフェクター機能が阻害又は低減される改変抗体。
【請求項102】
(1)前記結合ポリペプチドは、リガンドであり、前記結合相手は、前記リガンドについての受容体であるか、又は
(2)前記結合ポリペプチドは、受容体の可溶性部分であり、前記結合相手は、前記受容体と特異的に相互作用するリガンドである、
請求項101に記載の改変抗体。
【請求項103】
重鎖CH3ドメインを含み、前記ポリペプチドは、EU番号付けに従って前記重鎖CH3ドメインの344位から382位までの領域において前記重鎖CH3ドメインに融合している、請求項101又は102に記載の改変抗体。
【請求項104】
重鎖CH3ドメインを含み、前記ポリペプチドは、EU番号付けに従って前記重鎖CH3ドメインの351位から362位までの領域において前記重鎖CH3ドメインに融合している、請求項101又は102に記載の改変抗体。
【請求項105】
重鎖CH3ドメインを含み、前記ポリペプチドは、EU番号付けに従って前記重鎖CH3ドメインの358位から362位までの領域において前記重鎖CH3ドメインに融合している、請求項101又は102に記載の改変抗体。
【請求項106】
請求項1~105のいずれか一項に記載のポリペプチド、ポリペプチド複合体、又は抗体を含む医薬組成物。
【請求項107】
請求項1~105のいずれか一項に記載のポリペプチド、ポリペプチド複合体、又は抗体をコードする核酸。
【請求項108】
請求項107に記載の核酸を含むベクター。
【請求項109】
請求項107に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項110】
ポリペプチド、ポリペプチド複合体、又は抗体を産生する方法であって、前記ポリペプチド、前記ポリペプチド複合体、又は前記抗体を産生するために好適な条件下で請求項109に記載の宿主細胞を培養することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2020年4月26日に出願されたPCT出願第PCT/CN2020/087036号、2021年1月21日に出願されたPCT出願第PCT/CN2021/073085号、及び2021年4月2日に出願されたPCT出願第PCT/CN2021/085181号の利益を主張する。上記の全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、改変免疫グロブリンに関する。
【背景技術】
【0003】
抗体は、特異的抗原に結合する免疫学的タンパク質である。一般に、抗体は標的に特異的であり、免疫エフェクター機序を媒介する能力を有し、長い血清半減期を有する。このような特性により抗体は強力な治療薬になる。モノクローナル抗体は、種々の病態、例として、癌、感染性疾患、自己免疫性疾患、及び炎症性障害の処置のために治療的に使用される。
【0004】
多くの新たな抗体フォーマットが種々の処置目的のために提案されている。例えば、二重特異性抗体は、2つの異なる標的又は標的上の2つの異なるエピトープに結合し得、個々の抗体の効果を上回る相加的又は相乗的効果を作出する。イムノサイトカインは、抗体-サイトカイン融合タンパク質であり、腫瘍病変上に優先的に局在化し、疾患部位において抗癌免疫を活性化させる潜在性を有する。これらの概念的な利点にかかわらず、それらの抗体フォーマットは製造困難であり、それらを薬物として開発することが難しい。これらの抗体フォーマットのための多くの既存の製造アプローチは低い効率を抱え、複雑な精製プロセスにより制限される。多くの他のタンパク質操作及び分子生物学技術が提案されてきた。しかしながら、これらの公知の操作抗体フォーマットが採用されると、それらの分子は通常、それらの好ましい生化学的及び/又は生物物理学的特性、血清半減期、及び/又は安定性を損失し、不十分な有効性、不安定性及び高い免疫原性をもたらす。特に、多くの二重特異性抗体フォーマットが低い発現レベルを伴うことが広く公知である。安定的で、医薬的使用に好適であり、高い発現レベルにおいて安定的に発現させることができる改善された抗体フォーマットを提供することが必要とされ続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、改変免疫グロブリンを提供する。本開示は、部分的には、機能タンパク質全体を免疫グロブリンのCH3ドメイン中の特定の領域に融合させることができ、その改変免疫グロブリンは安定的であり、高いレベルにおいて安定的に発現させることができるという予期されない発見に基づく。
【0006】
一態様において、本明細書において、第1のCH3ドメインを含む第1のポリペプチド、第2のCH3ドメインを含む第2のポリペプチドを含むポリペプチド複合体が提供される。一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、EU番号付けに従って第1のCH3ドメインの344位から382位までの領域において第1のCH3ドメインに融合している。
【0007】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、第1のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合している。
【0008】
一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って第1のCH3ドメインの343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、及び383位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0009】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、EU番号付けに従って第1のCH3ドメインの351位から362位までの領域において第1のCH3ドメインに融合している。
【0010】
一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って第1のCH3ドメインの350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、及び363位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0011】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、EU番号付けに従って第1のCH3ドメインの358位から362位までの領域において第1のCH3ドメインに融合している。
【0012】
一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って第1のCH3ドメインの357、358、359、360、361、362、及び363位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0013】
一部の実施形態において、第1のCH3ドメイン中の第1及び第2のアミノ酸残基間の野生型CH3ドメイン中の1つ以上のアミノ酸残基は、欠失している。
【0014】
一部の実施形態において、第1のポリペプチドは、CH2ドメインをさらに含む。
【0015】
一部の実施形態において、第2のポリペプチドは、CH2ドメインをさらに含む。
【0016】
一部の実施形態において、第1のポリペプチドは、重鎖可変ドメイン及び/又は重鎖CH1ドメインをさらに含む。
【0017】
一部の実施形態において、第2のポリペプチドは、重鎖可変ドメイン及び/又は重鎖CH1ドメインをさらに含む。
【0018】
一部の実施形態において、ポリペプチド複合体は、2つの軽鎖ポリペプチドを含む。
【0019】
一部の実施形態において、ポリペプチド複合体は、IgG様抗体である。
【0020】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、リンカー配列を介して第1のポリペプチドに結合している。
【0021】
一部の実施形態において、リンカー配列は、5~20個のアミノ酸残基を含む。
【0022】
一部の実施形態において、リンカー配列は、少なくとも4つのグリシン残基を含む。
【0023】
一部の実施形態において、リンカー配列は、GGGGSGGGGS(配列番号30)と少なくとも80%同一である配列を含む。
【0024】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、約又は少なくとも6、7、8、9、10、20、30、40、又は50個のアミノ酸残基を有する。
【0025】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、約6~500個のアミノ酸残基(例えば、10~500、又は20~300個のアミノ酸残基)を有する。
【0026】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、可溶性ポリペプチドである。
【0027】
一部の実施形態において、可溶性タンパク質は、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-35、又はIL-36)である。
【0028】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、IL3、IL4、IL5、IL6、IL-7、IL8、IL9、IL13、IL15、又はIL-21である。
【0029】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、単鎖抗原結合ポリペプチド(例えば、単鎖可変断片(scFv)又は単一ドメイン抗体(ナノボディ))を含む。
【0030】
一部の実施形態において、単鎖抗原結合ポリペプチドは、細胞抗原(例えば、エフェクター細胞抗原)に特異的に結合する。
【0031】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、膜貫通タンパク質(例えば、トランスフォーミング成長因子ベータ受容体2(TGFbR2))の可溶性部分(例えば、細胞外領域)又は分泌タンパク質を含む。
【0032】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、リガンド(例えば、ATOR1015-CD86)である。一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、ナノボディ(例えば、KN035)又はVHHである。
【0033】
一部の実施形態において、ポリペプチド複合体中の第3のポリペプチドは、単離された第3のポリペプチドと比較してほぼ同じ又は高いレベルの生物学的活性を有する。
【0034】
一部の実施形態において、ポリペプチド複合体は、親ポリペプチド複合体と比較してほぼ同じ又は高いレベルの標的への結合親和性を有する。
【0035】
一部の実施形態において、ポリペプチド複合体は、2つの抗原に特異的に結合し、ポリペプチド複合体は、その同じ2つの抗原に特異的に結合する二重特異性抗体の発現レベルと比較してほぼ同じ又は高い発現レベルを有する。
【0036】
一部の実施形態において、ポリペプチド複合体は、(例えば、精製形態で)凝集物を形成しない。
【0037】
一部の実施形態において、ポリペプチド複合体は、ポリペプチド複合体中の第3のポリペプチドが標的タンパク質と相互作用しない場合、Fc受容体に結合し得る。一部の実施形態において、単離形態のポリペプチド複合体は、Fc受容体に結合し得る。
【0038】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、scFvを含む。一部の実施形態において、scFvは、単離されたscFvの結合親和性と比較してほぼ同じ又は高いレベルの結合親和性を有する。
【0039】
一部の実施形態において、本明細書において、第4のポリペプチドをさらに含むポリペプチド複合体が提供される。一部の実施形態において、第4のポリペプチドは、EU番号付けに従って第2のCH3ドメインの344位から382位までの領域において第2のCH3ドメインに融合している。
【0040】
一部の実施形態において、第4のポリペプチドは、第2のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合している。
【0041】
一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って第2のCH3ドメインの343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、及び383位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0042】
一部の実施形態において、第4のポリペプチドは、EU番号付けに従って第2のCH3ドメインの351位から362位までの領域において第2のCH3ドメインに融合している。
【0043】
一部の実施形態において、第4のポリペプチドは、第2のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合している。
【0044】
一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って第2のCH3ドメインの350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、及び363位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0045】
一部の実施形態において、第4のポリペプチドは、EU番号付けに従って第2のCH3ドメインの358位から362位までの領域において第2のCH3ドメインに融合している。
【0046】
一部の実施形態において、第4のポリペプチドは、第2のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合している。
【0047】
一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って第2のCH3ドメインの357、358、359、360、361、362、及び363位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0048】
一部の実施形態において、本明細書において、第5のポリペプチドをさらに含むポリペプチド複合体が提供される。一部の実施形態において、第5のポリペプチドは、第1のポリペプチドのC末端に融合している。
【0049】
一部の実施形態において、第5のポリペプチドは、リンカー配列を介して第1のポリペプチドのC末端に融合している。
【0050】
一部の実施形態において、リンカー配列は、10~40個のアミノ酸残基を含む。
【0051】
一部の実施形態において、リンカー配列は、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)と少なくとも80%同一である配列を含む。
【0052】
一部の実施形態において、第5のポリペプチドは、10個超のアミノ酸残基を有する。
【0053】
一部の実施形態において、第5のポリペプチドは、約10~500個のアミノ酸残基を有する。
【0054】
一部の実施形態において、第5のポリペプチドは、サイトカインである。
【0055】
一部の実施形態において、サイトカインは、IFNa4である。
【0056】
一部の実施形態において、本明細書において、第6のポリペプチドをさらに含むポリペプチド複合体が提供される。一部の実施形態において、第6のポリペプチドは、第2のポリペプチドのC末端に融合している。
【0057】
一部の実施形態において、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは、ノブ・イン・ホール(knobs-in-holes)(KIH)技術を介してヘテロダイマーを形成する。
【0058】
一部の実施形態において、第1のポリペプチドは、軽鎖ポリペプチドと相互作用し、抗原結合部位を形成する。一部の実施形態において、第2のポリペプチドは、軽鎖ポリペプチドと相互作用しない。
【0059】
一部の実施形態において、第1のポリペプチドは、第1の軽鎖ポリペプチドと相互作用し、第1の抗原結合部位を形成する。一部の実施形態において、第2のポリペプチドは、第2の軽鎖ポリペプチドと相互作用し、第2の抗原結合部位を形成する。一部の実施形態において、第1の抗原結合部位及び第2の抗原結合部位は、同じ又は異なる抗原に特異的に結合する。
【0060】
一部の実施形態において、ポリペプチド複合体は、ポリペプチド複合体中の第3のポリペプチドが第3のポリペプチドについての結合相手と相互作用しない場合、Fc受容体に結合し得る。
【0061】
一態様において、本明細書において、バリアントFcを含むタンパク質が提供される。一部の実施形態において、ポリペプチドは、ポリペプチドは、EU番号付けに従ってバリアントFcの344位から382位までの領域においてバリアントFcに融合している。
【0062】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、バリアントFcの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合している。一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従ってバリアントFcの343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、及び383位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0063】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、EU番号付けに従ってバリアントFcの351位から362位までの領域においてバリアントFcに融合している。
【0064】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、バリアントFcの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合している。一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従ってバリアントFcの350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、及び363位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0065】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、EU番号付けに従ってバリアントFcの358位から362位までの領域においてバリアントFcに融合している。
【0066】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、バリアントFcの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合している。一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従ってバリアントFcの357、358、359、360、361、362、及び363位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0067】
一態様において、本明細書において、バリアントFcを含むタンパク質が提供される。一部の実施形態において、ポリペプチドは、EU番号付けに従ってバリアントFcの383位から391位までの領域においてバリアントFcに融合している。
【0068】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、バリアントFcの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合している。一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従ってバリアントFcの382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、及び392位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0069】
一態様において、本明細書において、バリアントFcを含むタンパク質が提供される。一部の実施形態において、ポリペプチドは、EU番号付けに従ってバリアントFcの383位から385位までの領域においてバリアントFcに融合している。
【0070】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、バリアントFcの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合している。一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従ってバリアントFcの382、383、384、385、及び386位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0071】
一態様において、バリアントFcを含むタンパク質が提供される。一部の実施形態において、ポリペプチドは、EU番号付けに従ってバリアントFcの413位から422位までの領域においてバリアントFcに融合している。
【0072】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、バリアントFcの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合している。一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従ってバリアントFcの412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、及び423位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0073】
一部の実施形態において、Fcは、IgG Fcである。一部の実施形態において、Fcは、IgG1、IgG2、又はIgG4 Fcである。一部の実施形態において、タンパク質は、IgG様抗体又は免疫グロブリン(例えば、IgM、IgD、IgE、IgA、又はIgG)である。一部の実施形態において、タンパク質は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。
【0074】
一態様において、本明細書において、第1のCH3ドメインを含む第1のポリペプチド、第2のCH3ドメインを含む第2のポリペプチドを含むポリペプチド複合体が提供される。一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、EU番号付けに従って第1のCH3ドメインの383位から391位までの領域において第1のCH3ドメインに融合している。
【0075】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、第1のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合している。一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って第1のCH3ドメインの382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、及び392位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0076】
一態様において、本明細書において、第1のCH3ドメインを含む第1のポリペプチド、第2のCH3ドメインを含む第2のポリペプチドを含むポリペプチド複合体が提供される。一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、EU番号付けに従って第1のCH3ドメインの383位から385位までの領域において第1のCH3ドメインに融合している。
【0077】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、第1のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合している。一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って第1のCH3ドメインの382、383、384、385、及び386位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0078】
一態様において、本明細書において、第1のCH3ドメインを含む第1のポリペプチド、第2のCH3ドメインを含む第2のポリペプチドを含むポリペプチド複合体が提供される。一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、EU番号付けに従って第1のCH3ドメインの413位から422位までの領域において第1のCH3ドメインに融合している。
【0079】
一部の実施形態において、第3のポリペプチドは、第1のCH3ドメインの第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基に結合している。一部の実施形態において、第1及び第2のアミノ酸残基は、EU番号付けに従って第1のCH3ドメインの412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、及び423位におけるアミノ酸残基からなる群から選択される。
【0080】
一態様において、本明細書において、第1の非ネイティブポリペプチド配列を含む第1の重鎖ポリペプチド;第2の重鎖ポリペプチド;第1の軽鎖ポリペプチド;及び第2の軽鎖ポリペプチドを含む改変抗体が提供される。一部の実施形態において、第1の重鎖ポリペプチド及び第1の軽鎖ポリペプチドは、互いに会合し、第1の抗原結合領域を形成する。
【0081】
一部の実施形態において、第2の重鎖ポリペプチド及び第2の軽鎖ポリペプチドは、互いに会合し、第2の抗原結合領域を形成する。一部の実施形態において、第1の非ネイティブポリペプチド配列は、EU番号付けに従って第1の重鎖ポリペプチドの344位から382位までの領域において第1の重鎖ポリペプチドに融合している。
【0082】
一部の実施形態において、第2の重鎖ポリペプチドは、第2の非ネイティブポリペプチド配列を含む。一部の実施形態において、第2の非ネイティブポリペプチド配列は、EU番号付けに従って第2の重鎖ポリペプチドの344位から382位までの領域において第2の重鎖ポリペプチドに融合している。
【0083】
一部の実施形態において、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は、同じ抗原に特異的に結合する。
【0084】
一部の実施形態において、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は、異なる抗原に特異的に結合する。
【0085】
一部の実施形態において、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、腫瘍関連抗原に特異的に結合する。
【0086】
一部の実施形態において、第1の非ネイティブポリペプチド配列及び/又は第2の非ネイティブポリペプチド配列(例えば、scFV又はナノボディ)は、細胞抗原(例えば、エフェクター細胞抗原)に特異的に結合する抗原結合部位を含む。
【0087】
一部の実施形態において、機能ポリペプチドは、第1の重鎖ポリペプチドのC末端に結合している。
【0088】
一部の実施形態において、機能ポリペプチドは、第2の重鎖ポリペプチドのC末端に結合している。
【0089】
一態様において、本明細書において、CH2、及びCH3の第1の部分を含む第1の領域;非ネイティブポリペプチド配列を含む第2の領域;CH3の第2の部分を含む第3の領域を含む融合ポリペプチドが提供される。一部の実施形態において、CH3の第1の部分は、EU番号付けに従ってCH3ドメインのアミノ酸残基341~343を含み、CH3の第2の部分は、EU番号付けに従ってCH3ドメインのアミノ酸残基383~447を含む。
【0090】
一部の実施形態において、CH3の第1の部分は、EU番号付けに従ってCH3ドメインのアミノ酸残基341~350を含み、CH3の第2の部分は、EU番号付けに従ってCH3ドメインのアミノ酸残基363~447を含む。一部の実施形態において、CH3の第1の部分は、EU番号付けに従ってCH3ドメインのアミノ酸残基341~357を含み、CH3の第2の部分は、EU番号付けに従ってCH3ドメインのアミノ酸残基363~447を含む。
【0091】
一部の実施形態において、第1の領域は、VH及び/又はCH1をさらに含む。
【0092】
一態様において、本明細書において、2つの軽鎖ポリペプチド;及び本明細書に記載の融合重鎖ポリペプチドの2つを含む改変抗体が提供される。
【0093】
一態様において、本明細書において、第1の抗原に特異的に結合する第1の抗原結合部位、第2の抗原に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含む多重特異性抗体が提供される。一部の実施形態において、第2の抗原結合部位は、多重特異性抗体に融合しているポリペプチド内に局在する。一部の実施形態において、第2の抗原結合部位が第2の抗原に特異的に結合する場合、多重特異性抗体のエフェクター機能が阻害又は低減される。
【0094】
一部の実施形態において、多重特異性抗体は、CH3ドメインを含み、ポリペプチドは、EU番号付けに従ってCH3ドメインの344位から382位までの領域においてCH3ドメインに融合している。
【0095】
一部の実施形態において、多重特異性抗体は、CH3ドメインを含み、ポリペプチドは、EU番号付けに従ってCH3ドメインの351位から362位までの領域においてCH3ドメインに融合している。
【0096】
一部の実施形態において、多重特異性抗体は、CH3ドメインを含み、ポリペプチドは、EU番号付けに従ってCH3ドメインの358位から362位までの領域においてCH3ドメインに融合している。
【0097】
一部の実施形態において、第1の抗原は、腫瘍細胞からのものであり、第2の抗原は、エフェクター細胞からのものである。一部の実施形態において、エフェクター細胞は、NK細胞、T細胞、B細胞、単球、ミクロファージ、樹状細胞、又は好中球である。
【0098】
一部の実施形態において、第1の抗原結合部位が第1の抗原に特異的に結合し、第2の抗原結合部位が第2の抗原に結合しない場合、多重特異性抗体は、エフェクター機能を誘導する。
【0099】
一部の実施形態において、エフェクター機能は、ADCC又はADCPである。
【0100】
一部の実施形態において、第2の抗原結合部位は、単鎖抗原結合ポリペプチド(例えば、scFv又はナノボディ)を含むポリペプチド内に局在する。
【0101】
一部の実施形態において、第2の抗原結合部位は、多重特異性抗体のCH3ドメインにおいて融合しているscFv又はナノボディ内に局在する。
【0102】
一部の実施形態において、第1の抗原結合部位は、CH1ドメイン又はCH2ドメインのN末端に結合しているscFv又はナノボディである。
【0103】
一部の実施形態において、第1の抗原結合部位は、VH及びVLにより形成される。
【0104】
一部の実施形態において、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。
【0105】
一態様において、本明細書において、抗原に特異的に結合する抗原結合部位、及び受容体に特異的に結合する受容体(例えば、サイトカイン受容体)結合部位を含む改変抗体であって、受容体結合部位は、改変抗体に融合しているポリペプチド内に局在し、受容体結合部位が受容体に特異的に結合する場合、改変抗体のエフェクター機能が阻害又は低減される改変抗体が提供される。
【0106】
一態様において、本明細書において、抗原に特異的に結合する抗原結合部位、及びリガンドに特異的に結合するリガンド(例えば、サイトカインリガンド又は受容体リガンド)結合部位を含む改変抗体であって、リガンド結合部位は、改変抗体に融合しているポリペプチド内に局在し、リガンド結合部位がリガンド受容体に特異的に結合する場合、改変抗体のエフェクター機能が阻害される改変抗体が提供される。
【0107】
一態様において、本開示は、抗原に特異的に結合する抗原結合部位、結合相手と特異的に相互作用する結合ポリペプチドを含む改変抗体であって、受容体結合部位は、改変抗体に融合しているポリペプチド内に局在し、受容体結合部位が受容体に特異的に結合する場合、改変抗体のエフェクター機能が阻害される改変抗体を提供する。一部の実施形態において、結合ポリペプチドは、リガンドであり、結合相手は、リガンドについての受容体である。一部の実施形態において、結合ポリペプチドは、受容体の可溶性部分であり、結合相手は、受容体と特異的に相互作用するリガンドである。
【0108】
一部の実施形態において、改変抗体は、CH3ドメインを含み、ポリペプチドは、EU番号付けに従ってCH3ドメインの344位から382位までの領域においてCH3ドメインに融合している。
【0109】
一部の実施形態において、改変抗体は、CH3ドメインを含み、ポリペプチドは、EU番号付けに従ってCH3ドメインの351位から362位までの領域においてCH3ドメインに融合している。
【0110】
一部の実施形態において、改変抗体は、CH3ドメインを含み、ポリペプチドは、EU番号付けに従ってCH3ドメインの358位から362位までの領域においてCH3ドメインに融合している。
【0111】
一態様において、本明細書において、本明細書に記載のポリペプチド、ポリペプチド複合体、又は抗体を含む医薬組成物が提供される。
【0112】
一態様において、本明細書において、本明細書に記載のポリペプチド、ポリペプチド複合体、又は抗体をコードする核酸が提供される。
【0113】
一態様において、本明細書において、本明細書に記載の核酸を含むベクターが提供される。
【0114】
一態様において、本明細書において、本明細書に記載の核酸を含む宿主細胞が提供される。
【0115】
一態様において、本明細書において、ポリペプチド、ポリペプチド複合体、又は抗体を産生する方法であって、ポリペプチド、ポリペプチド複合体、又は抗体を産生するために好適な条件下で本明細書に記載の宿主細胞を培養することを含む方法が提供される。
【0116】
本明細書において使用されるとき、「抗体」又は「免疫グロブリン」という用語は、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、又は6つ)の相補性決定領域(CDR)(例えば、免疫グロブリン軽鎖からの3つのCDRのいずれか又は免疫グロブリン重鎖からの3つのCDRのいずれか)を含有し、エピトープに特異的に結合し得る任意の抗原結合分子を指す。抗体の非限定的な例としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、単鎖抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、及びヒト化抗体が挙げられる。一部の実施形態において、抗体は、ヒト抗体のFc領域を含有する。抗体という用語には、誘導体、例えば、抗原断片から形成される二重特異性抗体、単鎖抗体、ダイアボディ、線状抗体、及び多重特異性抗体も含まれる。
【0117】
本明細書において使用されるとき、「IgG様」という用語は、IgG抗体と大部分が類似する分子を指す。IgG様分子の非限定的な例としては、IgG抗体に付加された1つ以上の非ネイティブポリペプチドを有するIgG抗体が挙げられる。一部の実施形態において、ポリペプチド複合体は、IgG様分子を含み、又はそれからなる。
【0118】
本明細書において使用されるとき、「抗原結合断片」という用語は、全長抗体の一部を指し、抗体のその一部は、抗原に特異的に結合し得る。一部の実施形態において、抗原結合断片は、少なくとも1つの可変ドメイン(例えば、重鎖の可変ドメイン又は軽鎖の可変ドメイン)を含有する。抗体断片の非限定的な例としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片が挙げられる。
【0119】
本明細書において使用されるとき、「ヒト抗体」という用語は、ヒトに存在する内在性核酸(例えば、再構成されるヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子座)によりコードされる抗体を指す。一部の実施形態において、ヒト抗体は、ヒトから回収され、又はヒト細胞培養物(例えば、ヒトハイブリドーマ細胞)中で産生される。一部の実施形態において、ヒト抗体は、非ヒト細胞(例えば、マウス又はハムスター細胞系)中で産生される。
【0120】
本明細書において使用されるとき、「キメラ抗体」という用語は、少なくとも2つの異なる抗体(例えば、2つの異なる哺乳類種からの抗体、ヒト及びマウス抗体)中に存在する配列を含有する抗体を指す。キメラ抗体の非限定的な例は、非ヒト(例えば、マウス)抗体の可変ドメイン配列(例えば、軽鎖及び/又は重鎖可変ドメイン配列の全部又は一部)及びヒト抗体の定常領域を含有する抗体である。キメラ抗体の追加の例は、本明細書に記載され、当該技術分野において公知である。
【0121】
本明細書において使用されるとき、「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト(例えば、マウス)免疫グロブリンに由来する最小配列を含有し、ヒト免疫グロブリンに由来する配列を含有する非ヒト抗体を指す。非限定的な例において、ヒト化抗体は、所望の特異性、親和性、及び能力を有する、レシピエント抗体の超可変(例えば、CDR)領域残基が非ヒト抗体(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、又はウサギ抗体からの超可変(例えば、CDR)領域残基により置き換えられたヒト抗体(レシピエント抗体)である。一部の実施形態において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト(例えば、マウス)免疫グロブリン残基により置き換えられている。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にもドナー抗体中にも見出されない残基を含有し得る。これらの改変は、抗体性能をさらにリファインするために行うことができる。
【0122】
本明細書において使用されるとき、「単鎖抗体」という用語は、抗原に特異的に結合し得る少なくとも2つの免疫グロブリン可変ドメイン(例えば、哺乳類免疫グロブリン重鎖又は軽鎖の可変ドメイン)を含有する単一ポリペプチドを指す。単鎖抗体の非限定的な例は、本明細書に記載される。
【0123】
本明細書において使用されるとき、「多重特異性抗体」という用語は、2つ以上の異なる抗原又はエピトープに特異的に結合し得る抗体を指す。一部の実施形態において、多重特異性抗体は、1つの標的分子(例えば、PD-1)を、哺乳類細胞(例えば、ヒトT細胞)の表面上の少なくとも1つの第2の標的分子(例えば、CTLA-4)に架橋し得る。一部の実施形態において、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。
【0124】
抗体を指す場合、本明細書において使用されるとき、「特異的に結合すること」及び「特異的に結合する」という語句は、抗体が、好ましくは他の分子に対してその標的分子(例えば、PD-1)と相互作用することを意味し、それというのも、その相互作用は、標的分子上の特定の構造(すなわち、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存的であるためであり;換言すると、試薬は、一般に全ての分子ではなく特異的構造を含む分子を認識しており、それに結合している。標的分子に特異的に結合する抗体は、標的特異的抗体と称することができる。例えば、PD-1分子に特異的に結合する抗体は、PD-1特異的抗体又は抗PD-1抗体と称することができる。
【0125】
本明細書において使用されるとき、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書全体にわたり互換的に使用され、本発明の方法による処置が提供される動物、ヒト又は非ヒトを説明する。獣医学的及び非獣医学的用途が、本発明により企図される。ヒト患者は、成人ヒト又は若年ヒト(例えば、18歳の年齢未満のヒト)であり得る。ヒトに加え、患者としては、限定されるものではないが、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、フェレット、ネコ、イヌ、及び霊長類が挙げられる。例えば、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ゴリラなど)、齧歯類(例えば、ラット、マウス、アレチネズミ、ハムスター、フェレット、ウサギ)、ウサギ目、イノシシ科(例えば、ブタ、ミニブタ)、ウマ科、イヌ科、ネコ科、ウシ属、及び他の飼育動物、家畜、及び動物園動物が含まれる。
【0126】
本明細書において使用されるとき、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、少なくとも2つのアミノ酸の任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために互換的に使用される。
【0127】
本明細書において使用されるとき、「ポリペプチド複合体」という用語は、会合してある機能を発揮する1つ以上のポリペプチドを含む複合体を指す。ある実施形態において、ポリペプチドは、抗体重鎖及び/若しくは軽鎖であり、又は抗体に由来する。
【0128】
本明細書において使用されるとき、「ポリヌクレオチド」、「核酸分子」、及び「核酸配列」という用語は、少なくとも2つのヌクレオチドの任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指すために本明細書において互換的に使用され、それとしては、限定されるものではないが、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、及びそれらの改変物が挙げられる。
【0129】
本明細書において使用されるとき、「融合」又は「融合している」という用語は、アミノ酸配列(例えば、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質)に関して使用される場合、天然に存在しない単一アミノ酸配列への、例えば、化学結合又は組換え手段による2つ以上のアミノ酸配列の組合せを指す。融合アミノ酸配列は、2つのコードポリヌクレオチド配列の遺伝子組換えにより産生することができ、組換えポリヌクレオチドを含有する構築物を宿主細胞中に導入する方法により発現させることができる。
【0130】
本明細書において使用されるとき、「結合している」という用語は、アミノ酸配列(例えば、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質)に関して使用される場合、化学結合(例えば、ペプチド結合、ジスルフィド結合、ビス-スルホンリンカー)による2つ以上のアミノ酸配列の組合せを指す。
【0131】
本明細書において使用されるとき、「全長抗体」という用語は、野生型抗体と比較してインタクト構造を有する抗体を指す。一部の実施形態において、全長抗体は、2つの全長重鎖及び2つの全長軽鎖を有する抗体である。
【0132】
本明細書において使用されるとき、「約」又は「およそ」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量又は長さに対して30%、25%、20%、25%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%ほど変動する量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量又は長さを指す。一部の実施形態において、「約」又は「およそ」という用語は、数値又はレベルに先行する場合、その値プラスマイナス15%、10%、5%、又は1%の範囲を示す。「ほぼ同じレベル」という用語は、そのレベルプラスマイナス15%、10%、5%、又は1%の範囲を示す。
【0133】
本明細書において使用されるとき、「作動可能に結合する」又は「作動可能に結合している」という用語は、2つ以上の目的生物学的配列が、それらが意図される様式で機能することを可能とする関係にあるようにスペーサー又はリンカー配列あり又はなしで並列していることを指す。ポリペプチドに関して使用される場合、結合産物が意図される生物学的機能を有することを可能とするようにポリペプチド配列が結合していることを意味するものとする。例えば、抗体可変領域を定常領域に作動可能に結合させて抗原結合活性を有する安定的産物を提供することができる。この用語は、ポリヌクレオチドに関して使用することもできる。一例では、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー配列など)に作動可能に結合している場合、ポリヌクレオチドからのポリペプチドの調節発現を可能とするようにポリヌクレオチド配列が結合していることを意味するものとする。
【0134】
本明細書において使用されるとき、「結合相手」という用語は、別の分子の特異的構造特徴を認識し得る分子のペアのメンバーを指し、結合相手は、特異的、非共有結合的又は共有結合的相互作用により互いに相互作用する。このような結合相手及び対応する分子又は組成物の例としては、限定されるものではないが、免疫タイプ結合ペアのクラスのいずれか、例えば、抗原/抗体;及びさらには非免疫タイプ結合ペアのクラスのいずれか、例えば、リガンド/受容体、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン/抗ジゴキシゲニンF(ab’)2、葉酸/葉酸結合タンパク質、相補的核酸セグメント、プロテインA若しくはG/免疫グロブリン、レクチン/炭水化物、基質/酵素、阻害剤/酵素、又はウイルス/細胞受容体が挙げられる。
【0135】
特に定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明における使用のための方法及び材料が本明細書に記載され;当該技術分野において公知の他の好適な方法及び材料を使用することもできる。材料、方法、及び例は説明にすぎず、限定的なものではない。本明細書に挙げられる全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、及び他の参照文献は、参照により全体として組み込まれる。矛盾する場合、定義を含め、本明細書が優先される。
【0136】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0137】
図1】レーン6のPDL1-mIL7-HC及びレーン11のPDL1-mIL7-LCを示す電気泳動の画像である。
図2】レーン10のPDL1-hIL21-KIHを示す電気泳動の画像である。レーン11はタンパク質マーカーである。
図3】EU番号付けに従って、抗体の重鎖CH3ドメインを示す模式図である。4つの融合部位が、四角又は円によって強調表示される。
図4】ヒトIgG1重鎖定常領域(hIgG1-CH;配列番号1)、ヒトIgG2重鎖定常領域(hIgG2-CH;配列番号2)及びヒトIgG4重鎖定常領域(hIgG4-CH;配列番号3)の配列アラインメントである。CH2領域は点線によって示され、CH3領域は実線によって示される。
図5A】表5に示される精製タンパク質を示す電気泳動の画像である。
図5B】PDL1-mIL7-3AのSEC-HPLC(サイズ排除クロマトグラフィー)結果を示す画像である。
図5C】PDL1-mIL7-3A-mIFNa4のSEC-HPLC結果を示す画像である。
図6】PBS(ブランク)、mIL7タンパク質、PDL1-mIL7-3A-mIFNa4、又はPDL1-mIL7-3Aによって処置されたマウス脾臓細胞におけるフローサイトメトリーにより決定されたpSTAT5シグナルを示す。
図7】PBS(ブランク)、PDL1-mIL7-3A、又はPDL1-mIL7-3A-mIFNa4によって処置されたマウス脾臓細胞におけるフローサイトメトリーにより決定されたpSTAT1シグナルを示す。
図8A】種々のFc受容体に対するPDL1-アベルマブ、PDL1-mIL7-3A-mIFNa4、及びPDL1-mIL7-3Aの結合親和性の概要を示す。
図8B】種々のFc受容体に対するPD1-PL1-3F2-FV3A-IgG1、AB-IgG1、PDL1-C40-6A7-FV3A-IgG4、及びAB-IgG4の結合親和性の概要を示す。
図9A】精製タンパク質を示す電気泳動の画像である。
図9B図9Aの結果について、レーン番号、相当するタンパク質名(貯蔵温度)、理論分子量(MW)及び見掛け分子量を示す表である。
図9C図9Bに示すタンパク質のSEC-HPLC結果である。
図10A】いくつかの精製タンパク質を示す電気泳動の画像である。
図10B図10Aの結果について、レーン番号、及び相当するタンパク質名を示す表である。
図11A】レーン10の3F2-hIL7-3Aを示すゲル画像である。
図11B】レーン番号、相当するタンパク質名、及び理論分子量(MW)を示す表である。
図11C】3F2-hIL7-3AのSEC-HPLC結果である。
図12A】レーン8の3F2-hIL7-3A-mIFNa4を示すゲル画像である。
図12B】レーン番号、相当するタンパク質名、理論分子量(MW)及び見掛け分子量を示す表である。
図12C】3F2-hIL7-3A-mIFNa4のSEC-HPLC結果である。
図13】PBS(ブランク)、hIL7タンパク質、3F2-hIL7-3A、又は3F2-hIL7-3A-mIFNa4によって処置されたマウス脾臓細胞における、フローサイトメトリーによって決定されたpSTAT5レベルを示す。
図14A】レーン13のPDL1-hIL21-HCを示すゲル画像である。
図14B】レーン番号及び相当するタンパク質名を示す表である。
図15A】レーン1の3F2-hIL21-3Aを示すゲル画像である。
図15B】レーン番号及び相当するタンパク質名を示す表である。
図15C】3F2-hIL21-3AのSEC-HPLC結果である。
図16A】レーン14の3F2-hIL21-3A-mIFNa4を示すゲル画像である。
図16B】レーン番号及び相当するタンパク質名を示す表である。
図16C】3F2-hIL21-3A-mIFNa4のSEC-HPLC結果である。
図17】PBS(ブランク)、hIL21タンパク質、3F2-hIL21-3A、又は3F2-hIL21-3A-mIFNa4によって処置されたマウス脾臓細胞における、フローサイトメトリーによって決定されたpSTAT3レベルを示す。
図18A】レーン1のPDL1-TGFbR2-3Aを示すゲル画像である。
図18B】レーン番号、相当するタンパク質名、理論分子量(MW)及び見掛け分子量を示す表である。
図18C】PDL1-TGFbR2-3AのSEC-HPLC結果である。
図19】いくつかの修飾免疫グロブリンのADCC作用を示す。
図20A】異なる修飾免疫グロブリンフォーマットを示す。
図20B】異なる修飾免疫グロブリンフォーマットを示す。
図20C】異なる修飾免疫グロブリンフォーマットを示す。
図20D】異なる修飾免疫グロブリンフォーマットを示す。
図21】ヒトIgG(HuIgG)、ヒトIgA(HuIgA)、ヒトIgM(HuIgM)、ヒトIgE(HuIgE)、カリフォルニアネコザメ(HShrk;Heterodontus franscisci)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)(Xen)、ハツカネズミ(Mus)、イヌ(Canis familiaris)、及びアカゲザル(Maq;Macaca mulatta)のCH3ドメイン部分の配列アラインメント結果を示す。
図22】精製PDL1-TGFbR2-3A(レーン1)、PDL1-TGFbR2-3B(レーン2)、PDL1-TGFbR2-3C(レーン3)、及びPDL1-TGFbR2-3D(レーン4)を示すゲル画像である。Mはタンパク質マーカーである。
図23】精製PDL1-TGFbR2-3A(レーン1)、PDL1-TGFbR2-3A-IgG4(レーン2)、PDL1-TGFbR2-3AF1(レーン3)、PDL1-TGFbR2-3AF2(レーン4)、PDL1-TGFbR2-3AF3(レーン5)、PDL1-TGFbR2-3AR1(レーン6)、PDL1-TGFbR2-3AR2(レーン7)、PDL1-TGFbR2-3AR3(レーン8)、及びPDL1-TGFbR2-3AR4(レーン9)を示すゲル画像である。Mはタンパク質マーカーである。
図24】精製PDL1-hIL21-3A-IgG4(レーン1)、PDL1-hIL21-3AF1(レーン2)、PDL1-hIL21-3AF2(レーン3)、PDL1-hIL21-3AF3(レーン4)、PDL1-hIL21-3AR1(レーン5)、PDL1-hIL21-3AR2(レーン6)、PDL1-hIL21-3AR3(レーン7)、及びPDL1-hIL21-3AR4(レーン8)を示すゲル画像である。Mはタンパク質マーカーである。
図25A】精製PDL1-TGFbR2-3A(レーン1)、PDL1-TGFbR2-3A1(レーン2)、PDL1-TGFbR2-3A2(レーン3)、PDL1-TGFbR2-3A3(レーン4)、及びPDL1-TGFbR2-3A4(レーン5)を示すゲル画像である。Mはタンパク質マーカーである。
図25B】レーン1の精製PDL1-TGFbR2-3A1(新たなバッチ)を示すゲル画像である。Mはタンパク質マーカーである。
図26】精製PDL1-TGFbR2-3A(レーン1)、PDL1-TGFbR2-3A1(レーン2)、PDL1-TGFbR2-3A2(レーン3)、PDL1-TGFbR2-3A3(レーン4)、及びPDL1-TGFbR2-3A4(レーン5)を示すゲル画像である。Mはタンパク質マーカーである。
図27】精製PDL1-CD86-3A(レーン1)、PDL1-CD86-3A-IgG4(レーン2)、PD1-KN035-3A-IgG1(レーン3)、PD1-KN035-3A(レーン4)、PD1-PL1-3F2-FV3A-IgG1(レーン5)、PD1-PL1-3F2-FV3A(レーン6)、CT4-KN035-3A-knob(レーン7)、及びCT4-KN035-3A-hole(レーン8)を示すゲル画像である。Mはタンパク質マーカーである。
図28】精製PDL1-CD86-3A-IgG1(レーン1)、PDL1-CD86-3A-IgG4(レーン2)、及びPDL1-CD86-3A-TGFbR2(レーン3)を示すゲル画像である。Mはタンパク質マーカーである。
図29】いくつかの修飾免疫グロブリンのADCC作用を示す。
図30A】精製PDL1-3F2(レーン1)、3F2-hIL3-3A(レーン2)、3F2-hIL3-HC(レーン3)、3F2-hIL4-3A(レーン4)、3F2-hIL4-HC(レーン5)、3F2-hIL5-3A(レーン6)、3F2-hIL5-HC(レーン7)、3F2-hIL6-3A(レーン8)、及び3F2-hIL6-HC(レーン9)を示す天然ゲル画像である。Mはタンパク質マーカーである。
図30B】精製PDL1-3F2(レーン1)、3F2-hIL8-3A(レーン2)、3F2-hIL8-HC(レーン3)、3F2-hIL9-3A(レーン4)、3F2-hIL9-HC(レーン5)、3F2-hIL13-3A(レーン6)、3F2-hIL13-HC(レーン7)、3F2-hIL15-3A(レーン8)、及び3F2-hIL15-HC(レーン9)を示す天然ゲル画像である。Mはタンパク質マーカーである。
図31A】3F2-hIL5-3A及び3F2-hIL5-HCのSEC-HPLC結果を示す。
図31B】3F2-hIL9-3A及び3F2-hIL9-HCのSEC-HPLC結果を示す。
図31C】3F2-hIL13-3A及び3F2-hIL13-HCのSEC-HPLC結果を示す。
図31D】3F2-hIL15-3A及び3F2-hIL15-HCのSEC-HPLC結果を示す。
図32A】3F2-hIL5-HCの質量分析結果を示す。
図32B】3F2-hIL5-HCの抗体二次ペプチドカバー率マッピング結果を示す。括弧内の領域は、3F-hIL5-HCの重鎖C末端の欠失配列を示す。
図33】ヒトIgD、ヒトIgG4、ヒトIgG3、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgA、及びヒトIgM間の配列アラインメントの結果を示す。アスタリスクマーク(「*」)は、単一の、完全に保存された残基を有する位置を示す。ピリオドマーク(「.」)は、弱く類似する特性群の間での保存を示す - Gonnet PAM 250マトリックスにおける、スコアリング≦0.5及び>0におおむね等しい。コロンマーク(「:」)は、強く類似する特性群の間での保存を示す - Gonnet PAM 250マトリックスにおける、スコアリング>0.5におおむね等しい。
図34】ヒトIgG4、ヒトIgG3、ヒトIgG1、及びヒトIgG2間の配列アラインメントの結果を示す。
図35】ラットIgG2C、マウスIgG3、ヒトIgG1、ラットIgG1、ラットIgG2A、マウスIgG1、マウスIgG2B、ラットIgG2B、マウスIgG2A、及びマウスIgG2C間の配列アラインメントの結果を示す。
図36】ヒトIgG1、サルIgG3、サルIgG1、及びサルIgG2間の配列アラインメントの結果を示す。
図37】ヒトIgG1、イヌIgG2、イヌIgG3、イヌIgG1、及びイヌIgG4間の配列アラインメントの結果を示す。
図38A】3F2-mIL12-3Aの概略的構造を示す。
図38B】3F2-mIL12-3Aの修飾重鎖、軽鎖及びIL12bをコードするプラスミドの模式図を示す。
図39A】3F2-mIL12-3A-mIFNa4の概略的構造を示す。
図39B】3F2-mIL12-3A-mIFNa4の修飾重鎖、軽鎖及びIL12bをコードするプラスミドの模式図を示す。Lはリンカー配列を示す。
図40】3F2-mIL12-3A及び3F2-mIL12-3A-mIFNa4の非還元SDS-PAGE結果を示す。
図41A】3F2-mIL12-3AのSEC結果を示す。
図41B】3F2-mIL12-3A-mIFNa4のSEC結果を示す。
図42】マウス結腸癌細胞MC38が注入され、且つPDL1-3F2、3F2-mIL12-3A、又は3F2-mIL12-3A-mIFNa4で処置された二重ヒト化hPD-1/hPD-L1マウスの時間の経過による体重を示すグラフである。生理食塩水溶液がコントロールとして注入された。
図43】マウス結腸癌細胞MC38が注入され、且つPDL1-3F2、3F2-mIL12-3A、又は3F2-mIL12-3A-mIFNa4で処置された二重ヒト化hPD-1/hPD-L1マウスの時間の経過による体重を示すグラフである。生理食塩水溶液がコントロールとして注入された。
図44】マウス結腸癌細胞MC38が注入され、且つPDL1-3F2、3F2-mIL12-3A、又は3F2-mIL12-3A-mIFNa4で処置された二重ヒト化hPD-1/hPD-L1マウスの異なるグループにおける平均腫瘍容積を示すグラフである。生理食塩水溶液がコントロールとして注入された。
図45A】MC38-hPD-L1細胞が注入され、且つモノクローナル抗体(G2及びG3)、単一特異性抗体(G4)の組み合わせ、又は二重特異性抗体(G5及びG6)で処置された、B-hPD-1/hCD40マウスの時間の経過による体重を示すグラフである。PBS溶液がコントロールとして投与された(G1)。
図45B】MC38-hPD-L1細胞が注入され、且つモノクローナル抗体(G2及びG3)、単一特異性抗体(G4)の組み合わせ、又は二重特異性抗体(G5及びG6)で処置された、B-hPD-1/hCD40マウスの時間の経過による体重変化を示すグラフである。PBS溶液がコントロールとして注入された(G1)。
図45C】MC38-hPD-L1細胞が注入され、且つモノクローナル抗体(G2及びG3)、単一特異性抗体(G4)の組み合わせ、又は二重特異性抗体(G5及びG6)で処置された、B-hPD-1/hCD40マウスの時間の経過による腫瘍容積を示すグラフである。PBS溶液がコントロールとして注入された(G1)。
図46A】モノクローナル抗体(G2及びG3)、二重特異性抗体1A7-セリクレルマブ(selicrelumab)-FVHC-IgG4(G4)又は1A7-セリクレルマブ-FV3A-IgG4(G5)が注入された、B-hPD-1/hCD40マウスの時間の経過による体重を示すグラフである。PBS溶液がコントロールとして注入された(G1)。
図46B】モノクローナル抗体(G2及びG3)、二重特異性抗体1A7-セリクレルマブ-FVHC-IgG4(G4)又は1A7-セリクレルマブ-FV3A-IgG4(G5)が注入されたB-hPD-1/hCD40マウスの時間の経過による体重変化を示すグラフである。PBS溶液がコントロールとして注入された(G1)。
図47A】PBS(G1)、モノクローナル抗体(G2及びG3)、二重特異性抗体1A7-セリクレルマブ-FVHC-IgG4(G4)又は1A7-セリクレルマブ-FV3A-IgG4(G5)が注入された、B-hPD-1/hCD40マウスの異なるグループにおけるグループ化後7日目のマウス血中ALTレベルを示す。
図47B】PBS(G1)、モノクローナル抗体(G2及びG3)、二重特異性抗体1A7-セリクレルマブ-FVHC-IgG4(G4)又は1A7-セリクレルマブ-FV3A-IgG4(G5)が注入された、B-hPD-1/hCD40マウスの異なるグループにおけるグループ化後7日目のマウス血中ASTレベルを示す。
図48A】本開示で考察されるいくつかの配列を提供する。
図48B】本開示で考察されるいくつかの配列を提供する。
図48C】本開示で考察されるいくつかの配列を提供する。
図48D】本開示で考察されるいくつかの配列を提供する。
図48E】本開示で考察されるいくつかの配列を提供する。
図48F】本開示で考察されるいくつかの配列を提供する。
図48G】本開示で考察されるいくつかの配列を提供する。
図48H】本開示で考察されるいくつかの配列を提供する。
図48I】本開示で考察されるいくつかの配列を提供する。
図48J】本開示で考察されるいくつかの配列を提供する。
図49】Kabat番号付けに従って、抗CTLA4抗体4G12、抗OX40抗体9H3、抗PD-L1抗体3F2及び抗PD-1抗体1A7のCDR配列を提供する。
図50】Chothia番号付けに従って、抗CTLA4抗体4G12、抗OX40抗体9H3、抗PD-L1抗体3F2及び抗PD-1抗体1A7のCDR配列を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0138】
二重特異性抗体は、治療抗体の新たなカテゴリーとなるべく発展中である。それらは、異なる2つの標的又は標的上の2つの異なるエピトープに結合し、個々の抗体の作用よりも優れた相加作用又は相乗作用を生じ得る。免疫サイトカインは、抗体-サイトカイン融合タンパク質であり、腫瘍病変上に優先的に局在化し、且つ疾患部位での抗癌免疫を活性化する可能性を有する。二重特異性抗体及び免疫サイトカインの既存の多くの製造アプローチには、低い効率性、不安定性及び凝集の問題がある。
【0139】
本開示は、Fc領域における選択領域に融合される融合ポリペプチドを有する免疫グロブリンが、非常に安定であり、且つ高レベルで安定に発現され得ることを示す。さらに、免疫グロブリンへのポリペプチドの融合は、免疫グロブリンの結合親和性又は融合ポリペプチドの生物活性に影響を及ぼさない。さらに、修飾免疫グロブリンは、ノブ・イン・ホール(KIH)修飾と適合性であり、他の多くの抗体エンジニアリング技術によってさらに修飾され得る。この修飾によって、向上した抗体フォーマットが提供され、それを用いて、種々の二重特異性抗体、多重特異性抗体、及び免疫サイトカインを産生することができる。
【0140】
修飾免疫グロブリン
本開示は、免疫グロブリンのFc領域における選択領域にポリペプチドが融合される、修飾免疫グロブリンを提供する。一態様において、本開示は、Fc領域における選択領域に機能性タンパク質が融合される、修飾Fc領域を提供する。
【0141】
一般に、免疫グロブリン(抗体とも呼ばれる)は、ポリペプチド鎖、軽鎖及び重鎖の2つのクラスで構成される。本開示の抗体の非制限的な例は、2本の重鎖と2本の軽鎖を含む、インタクトな4つの免疫グロブリン鎖抗体であり得る。
【0142】
それぞれが1つの可変ドメイン(又は可変領域、VH)と複数の定常ドメイン(又は定常領域)を含有する重鎖が、その定常ドメイン内でジスルフィド結合を介して互いに結合し、抗体の「幹」を形成する。それぞれが1つの可変ドメイン(又は可変領域、VL)及び1つの定常ドメイン(又は定常領域)を含有する軽鎖はそれぞれ、スルフィド結合を介して1つの重鎖に結合する。各軽鎖の可変領域が、それが結合される重鎖の可変領域とアラインメントされる。軽鎖及び重鎖両方の可変領域が、より保存されるフレームワーク領域(FR)間に挟まれる3つの超可変領域を含有する。相補性決定領域(CDR)として公知のこれらの超可変領域は、抗体の抗原結合性表面を含むループを形成する。4つのフレームワーク領域は大部分が、βシートコンフォメーションの形をとり、CDRは、βシート構造を結合するループ、場合によっては、βシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖におけるCDRは、フレームワーク領域によって接近して維持され、他の鎖からのCDRと共に、抗原結合領域の形成に寄与する。
【0143】
重鎖は、アイソタイプに応じて、可変(VH)ドメインと、いくつかの定常(CH)ドメイン:IgG、IgA及びIgDにおける3つのCHドメイン(CH1、CH2、CH3)、及びIgM及びIgEにおける4つのCHドメイン(CH1、CH2、CH3、CH4)など、4~5個のドメインを有する。抗原結合性断片(Fab)は、軽鎖(VL及びCL)と、重鎖(VH及びCH1)の最初の2つのドメインによって形成され、抗原結合に特異的に関与する。Ig Fc(断片結晶性)部分は、CH2及びCH3定常ドメインによって、任意にCH4定常ドメインと共に、各重鎖から形成される。Fc領域は、各抗体が、Fc受容体の特異的クラスに結合することによって、所定の抗原に対する適切な免疫応答、並びに補体タンパク質などの他の免疫分子を産生することを確実にする。これが行われることによって、オプソニン化粒子(FcγRに結合する)の認識、細胞(補体に結合する)の溶解、及びマスト細胞、好塩基球、及び好酸球(FcεRに結合する)の脱顆粒など、様々な生理学的作用が仲介される。
【0144】
免疫グロブリンにおけるすべてのドメインは同様な構造を有し、2つのβシートから構成される。そのシートは、ジスルフィド架橋によって連結され、βバレルとして公知のおよそバレル形の構造を共に形成する。免疫グロブリンタンパク質ドメインの固有の折り畳み構造は免疫グロブリンフォールドとして公知である。定常ドメインは、4つのストランドが1つのβシートを形成し、3つのストランドが第2のシートを形成するように配置された、7つのβストランドから構成される。βストランドを連結するループは比較的短く、結果として、ドメインの残基の大部分が2つのβシートに含有される。これらのストランドとしては、A-ストランド、B-ストランド、C-ストランド、D-ストランド、E-ストランド、F-ストランド、及びG-ストランドが挙げられる。βストランドを連結する配列としては、AB-ターン、BC-ループ、CD-ストランド、DE-ターン、及びEF-ターンが挙げられる。定常ドメインの構造の詳細な説明は、例えばLefranc et al.,“IMGTR(登録商標)and 30 years of Immunoinformatics Insight in antibody V and C domain structure and function.”Antibodies 8.2(2019):29に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
本開示から、非天然ポリペプチドを、免疫グロブリンのFc領域における特定の領域に融合することができることが実証される。本明細書において使用される、「非天然」ポリペプチドとは、野生型免疫グロブリンのFc領域に見出すことができないポリペプチドを意味する。本開示のこの特定の領域は、「3A部位」と呼ばれる。3A部位は、CH3ドメインに位置し、344位から382位へと開始する(EU番号付け)。非天然ポリペプチドの融合によって、優れた結果が提供され得る。一部の他の修飾免疫グロブリンと比較すると、この修飾を有する免疫グロブリンは非常に安定であり、且つこの部位で融合された非天然ポリペプチドを有する免疫グロブリンは、高レベルで発現し得て、凝集塊を形成しない。CH3ドメインの機能及び安定性に重要であると思われる、3A部位がA-ストランド及びB-ストランドに位置するため、この融合部位の特性は予想外である。本開示の結果から、この免疫グロブリンが、CH3ドメインにおける一部の他の位置と比較して、3A部位にて非天然配列に対してかなり高い耐性を有することが実証された。
【0146】
CH3ドメインの配列アラインメントから、図21に示すように、3A部位が種間で、且つ異なる免疫グロブリン間で比較的保存されることが分かる。したがって、ヒト及び非ヒト動物などの異なる動物からの抗体に、同様な修飾を加えることができる。非ヒト動物としては、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、フェレット、ネコ、イヌ、及び霊長類が挙げられる。一部の実施形態において、抗体は、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ゴリラ等)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、スナネズミ、ハムスター、フェレット、ウサギ(rabbit))、ウサギ(lagomorphs)、ブタ(例えば、ブタ、ミニチュアピッグ)、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、及び他の家畜及び動物園動物由来である。一部の実施形態において、ヒト、げっ歯類(例えば、ラット、マウス)、ラクダ科の動物、イヌ、カリフォルニアネコザメ、アフリカツメガエル、サル(例えば、アカゲザル)、ネコ、又はウサギ由来の抗体に修飾が加えられる。一部の実施形態において、IgG、IgM、IgD、IgE、又はIgAに修飾が加えられる。したがって、一態様において、本開示は、第1のCH3ドメインを含む第1のポリペプチドと、第2のCH3ドメインを含む第2のポリペプチドとを含む、修飾Fc領域又はポリペプチド複合体を提供する。一部の実施形態において、CH3ドメインは重鎖CH3ドメインである。2つのポリペプチドは互いに相互作用し、ホモ二量体又はヘテロ二量体を形成し得る。1つ又は2つの非天然ポリペプチドを、3A部位にて1つ又は2つのポリペプチドの重鎖CH3ドメインに融合することができる。3A部位は、344位から382位(EU番号付け)へと開始する。一部の実施形態において、非天然ポリペプチドは、融合部位にて1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、又は39個のアミノ酸と置き換わり、或いはこの融合部位にて2つのアミノ酸のいずれかの間に挿入される。一部の実施形態において、非天然ポリペプチドが融合部位にて2つの非連続アミノ酸の間に挿入された場合、それは、2つの非連続アミノ酸の間のすべてのアミノ酸と置き換わる。一部の実施形態において、非天然ポリペプチドは、修飾免疫グロブリンの重鎖CH3ドメインの2つのアミノ酸残基に連結される。2つのアミノ酸残基は連続し得る、又は非連続であり得る。
【0147】
一部の実施形態において、ポリペプチド複合体は、第1の重鎖CH3ドメインを含む第1のポリペプチド、第2の重鎖CH3ドメインを含む第2のポリペプチドを含み、第3ポリペプチドが、EU番号付けに従って第1の重鎖CH3ドメインの344位から382位までの領域にて第1の重鎖CH3ドメインに融合される。一部の実施形態において、ポリペプチド複合体は、第1の重鎖CH3ドメインを含む第1の重鎖ポリペプチド、第2の重鎖CH3ドメインを含む第2の重鎖ポリペプチドを含み、第3ポリペプチドが、EU番号付けに従って第1の重鎖CH3ドメインの344位から382位までの領域にて第1の重鎖CH3ドメインに融合される。
【0148】
一部の実施形態において、非天然ポリペプチドが、修飾免疫グロブリンの重鎖CH3ドメインの2つのアミノ酸残基に連結される。一部の実施形態において、2つの残基は、EU番号付けに従った重鎖CH3ドメインの343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、及び383位のいずれか2つから選択される。非天然ポリペプチドは、重鎖CH3ドメインにおける開始アミノ酸及び末端アミノ酸に連結される。本開示は、3A部位での開始アミノ酸及び末端アミノ酸のすべての異なる組み合わせも提供する。例えば、非天然ポリペプチドが、343及び383位に位置するアミノ酸残基に連結される場合、3A部位全体(344~382位)が、非天然ポリペプチドによって置き換えられる。非天然ポリペプチドが、例えば357及び358位に位置する2つの連続するアミノ酸残基に連結される場合、非天然ポリペプチドは、2つの連続するアミノ酸残基の間に挿入される。重鎖CH3ドメインの343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、及び383位(EU番号付け)のいずれか2つのアミノ残基の特定の組み合わせが提供される。
【0149】
一部の実施形態において、開始アミノ酸が、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、又は356位から選択される。一部の実施形態において、開始アミノ酸は、357、358、359、360、361、又は362から選択される。一部の実施形態において、末端アミノ酸は、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、又は383位から選択される。一部の実施形態において、末端アミノ酸は、358、359、360、361、362、又は363位から選択される。
【0150】
一部の実施形態において、融合部位は、351から362位(EU番号付け)の領域に位置する。一部の実施形態において、非天然ポリペプチドは、融合部位にて1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個又はすべてのアミノ酸(例えば、351~362)と置き換わり、或いはこの融合部位での2つのアミノ酸のいずれかの間に挿入され、例えば351~352、352~353、353~354、354~355、355~356、356~357、357~358、358~359、359~360、360~361、又は361~362位に挿入される。
【0151】
一部の実施形態において、2つの残基は、EU番号付けによる重鎖CH3ドメインの350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、及び363位のいずれか2つから選択される。これらの開始アミノ酸と末端アミノ酸の組み合わせを以下の表に示す。例えば、非天然ポリペプチドが、350及び363位に位置するアミノ酸残基に連結される場合、この融合部位(351~362位)のアミノ酸は、非天然ポリペプチドによって置き換えられる。非天然ポリペプチドが、例えば350位及び351位に位置する、連続する2つのアミノ酸残基に連結される場合、非天然ポリペプチドは、連続する2つのアミノ酸残基間に挿入される。
【0152】
【表1】
【0153】
一部の実施形態において、融合部位は、358~362位(EU番号付け)の領域に位置する。一部の実施形態において、非天然ポリペプチドが、融合部位の1、2、3、4、5個若しくはすべてのアミノ酸と置き換わり、又はこの融合部位での2つのアミノ酸のいずれかの間に挿入され、例えば358~359、359~360、360~361、又は361~362位に挿入される。
【0154】
一部の実施形態において、2つの残基は、EU番号付けによる重鎖CH3ドメインの357、358、359、360、361、362、及び363位のいずれか2つから選択される。これらの開始アミノ酸と末端アミノ酸の組み合わせを以下の表に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
したがって、いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの357位及び358位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの357位及び359位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの357位及び360位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの357位及び361位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの357位及び362位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの357位及び363位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの358位及び359位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの358位及び360位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの358位及び361位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの358位及び362位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの358位及び363位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの359位及び360位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの359位及び361位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの359位及び362位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの359位及び363位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの360位及び361位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの360位及び362位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの360位及び363位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの361位及び362位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの361位及び363位である。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの362位及び363位である。
【0157】
3A部位での非天然ポリペプチドの融合は、免疫グロブリンの抗原結合部位に干渉しない。加えて、融合された非天然ポリペプチドは、その生物活性を維持することができる。さらに、3A部位での修飾は、FcγRIIA、FcγRIIIA、FcγRIIIB、又はFcRn受容体に対するFcの結合親和性に有意には影響を及ぼさない。いくつかの実施形態において、FcγRIIA、FcγRIIIA、FcγRIIIB、又はFcRn受容体に対する修飾されたFcの結合親和性は、あらゆる修飾前の同じ免疫グロブリンと比較して、ほぼ同じである。いくつかの実施形態において、FcγRIIA、FcγRIIIA、FcγRIIIB、又はFcRn受容体に対する修飾されたFcの結合親和性は、あらゆる修飾前の同じ免疫グロブリンと比較して、高い(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、又は50%)。いくつかの実施形態において、FcγRIIA、FcγRIIIA、FcγRIIIB、又はFcRn受容体に対する修飾されたFcの結合親和性は、あらゆる修飾前の同じ免疫グロブリンと比較して、低い(例えば、わずか10%、20%、30%、40%、又は50%低い)。
【0158】
いくつかの実施形態において、修飾免疫グロブリンは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(antibody-dependent cellular phagocytosis)(ADCP)、補体依存性細胞傷害作用(CDC)、又はアポトーシス活性の少なくとも1つを有する。いくつかの実施形態において、3A部位の融合ポリペプチドが標的タンパク質と相互作用する場合、Fcは、立体効果のために、FcγRIIA、FcγRIIIA、又はFcγRIIIB受容体に結合しない。したがって、3A部位の融合ポリペプチドが標的タンパク質と相互作用する場合、ADCC、ADCP、及びCDC効果は低下する。これは、いくつかの利点を提供することができる。例えば、二重特異性抗体について、二重特異性抗体は、腫瘍関連抗原及び免疫細胞抗原を標的とするようにデザインすることができる。二重特異性抗体が免疫細胞抗原にだけ結合する場合、ADCC、ADCP、及びCDC効果は、その効果により免疫細胞を死滅させてしまうので、望ましくないと思われる。しかしながら、この問題は、修飾免疫グロブリンの構成によって容易に解決することができる。いくつかの実施形態において、抗原結合部位は、腫瘍抗原に結合することができ、scFvは、免疫細胞抗原を標的とするように融合部位に導入することができる。一旦、修飾免疫グロブリンが腫瘍細胞に結合し、それと同時に、3A部位のscFvが、免疫細胞に結合しなければ、修飾免疫グロブリンは、ADCC、ADCP、及びCDC効果を引き起こすことができる。しかし、3A部位のscFvが免疫細胞に結合する場合、望ましくないADCC、ADCP、及びCDC効果を、低下させる又は排除することができる。
【0159】
さらに、3A部位での非天然ポリペプチドの融合は、非天然ポリペプチドの機能に干渉しない。特に、修飾免疫グロブリンにおける非天然ポリペプチドは、単離された非天然ポリペプチドと比較して、ほぼ同じ又はさらには高いレベルの生物学的活性を有することができる。いくつかの実施形態において、修飾免疫グロブリンにおける非天然ポリペプチドの生物学的活性は、単離された非天然ポリペプチドの少なくとも又は約85%、90%、95%、又は100%とすることができる。
【0160】
3A部位での非天然ポリペプチドの融合は、修飾免疫グロブリンの結合親和性に干渉しない。特に、修飾免疫グロブリンは、親免疫グロブリンと比較して、ほぼ同じ又はさらには高いレベルの結合親和性を有することができる。本明細書において使用されるように、用語「親」分子は、本明細書において記載される任意の非天然ポリペプチドが分子に融合される又は任意の他の修飾が分子に対してなされる前の分子を指す。いくつかの実施形態において、結合親和性は、親免疫グロブリンの少なくとも又は約85%、90%、95%、又は100%とすることができる。
【0161】
3A部位での非天然ポリペプチドの融合は、発現レベルに干渉せず、発現収量を低下させない。特に、修飾免疫グロブリンは、非常に高い発現レベルを有する。いくつかの実施形態において、発現レベルは、同様の二重特異性抗体(例えば、同じ標的に結合する抗体)又はイムノサイトカイン(immunocytokine)(例えば、FcのC末端にサイトカインが連結された抗体)の発現レベルよりも、少なくとも又は約50%、60%、70%、80%、90%、又は100%高いものとすることができる。いくつかの実施形態において、修飾免疫グロブリンは、容易には、凝集体を形成しない。いくつかの実施形態において、精製された形態における凝集体のパーセンテージ(例えば、プロテインAクロマトグラフィーによって精製された後)は、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満である。
【0162】
加えて、修飾免疫グロブリンには、二重特異性抗体の場合のように、誤対合の問題がない。したがって、典型的な二重特異性抗体よりも、修飾免疫グロブリンを作製し、精製することは、容易であり、収量は、かなり高くすることができる。
【0163】
さらに、修飾免疫グロブリンは、安定しており、容易には、凝集体を形成しない又は分解しない。いくつかの実施形態において、修飾免疫グロブリンは、室温で、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12週間又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12ヵ月間、安定している。
【0164】
本開示はまた、Fc領域のいくつかの他の部位の修飾をも提供する。これらの部位は、「3B」部位、「3C」部位、及び「3D」部位を含む。1つ又は2つの非天然ポリペプチドを、3B部位の1つ又は2つのポリペプチドの重鎖CH3ドメインに融合することができる。3B部位は、383位から開始し、391位までである(EUナンバリング)。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、融合部位で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸を置き換える。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、3B部位で、アミノ酸配列全体を置き換える。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、この融合部位で、任意の2つのアミノ酸の間に挿入される。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、修飾免疫グロブリンの重鎖CH3ドメインの2つのアミノ酸残基に連結される。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの382位、383位、384位、385位、386位、387位、388位、389位、390位、391位、及び392位から選択され、これらの2つのアミノ酸残基のすべての考え得る組み合わせもまた、提供される。
【0165】
いくつかの実施形態において、1つ又は2つの非天然ポリペプチドを、3C部位の1つ又は2つのポリペプチドの重鎖CH3ドメインに融合することができる。3C部位は、383位から開始し、385位までである(EUナンバリング)。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、融合部位で、1、2、3、又は4アミノ酸を置き換える。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、3C部位で、アミノ酸配列全体を置き換える。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、この融合部位で、任意の2つのアミノ酸の間に挿入される。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、修飾免疫グロブリンの重鎖CH3ドメインの2つのアミノ酸残基に連結される。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの382位、383位、384位、385位、及び386位から選択され、これらの2つのアミノ酸残基のすべての考え得る組み合わせもまた、提供される。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの384位及び385位である。
【0166】
いくつかの実施形態において、1つ又は2つの非天然ポリペプチドを、3D部位の1つ又は2つのポリペプチドの重鎖CH3ドメインに融合することができる。3D部位は、413位から開始し、422位までである(EUナンバリング)。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、融合部位で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸を置き換える。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、3D部位で、アミノ酸配列全体を置き換える。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、この融合部位で、任意の2つのアミノ酸の間に挿入される。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、修飾免疫グロブリンの重鎖CH3ドメインの2つのアミノ酸残基に連結される。いくつかの実施形態において、2つの残基は、EUナンバリングに従う重鎖CH3ドメインの412位、413位、414位、415位、416位、417位、418位、419位、420位、421位、422位、及び423位から選択され、これらの2つのアミノ酸残基のすべての考え得る組み合わせもまた、提供される。
【0167】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される免疫グロブリンは、1つ又は2つの重鎖(例えば、本明細書において記載されるインタクトな、一部分の、又は修飾された重鎖)を有し、1つ又は2つの非天然ポリペプチドは、1つ又は2つの重鎖のN末端又はC末端に融合することができる。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される免疫グロブリンは、Fc領域(例えば、本明細書において記載される任意の野生型又は修飾されたFc領域)を有し、1つ又は2つの非天然ポリペプチドは、Fc領域のN末端又はC末端に融合することができる。
【0168】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される免疫グロブリンは、1つ又は2つの軽鎖(例えば、本明細書において記載されるインタクトな、一部分の、又は修飾された軽鎖)を有し、1つ又は2つの非天然ポリペプチドは、1つ又は2つの軽鎖のN末端又はC末端に融合することができる。
【0169】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される免疫グロブリンは、ヒト免疫グロブリンである。いくつかの実施形態において、ヒト免疫グロブリンは、IgA、IgD、IgM、IgE、又はIgGである。いくつかの実施形態において、ヒトIgGは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4である。ヒトIgDのアミノ酸269~375(配列番号102)、ヒトIgG4のCH3~CHS領域(配列番号107)、ヒトIgG3のCH3~CHS領域(配列番号106)、ヒトIgG1のCH3~CHS領域(配列番号104)、ヒトIgG2のCH3~CHS領域(配列番号105)、ヒトIgAのアミノ酸224~333(配列番号101)、及びヒトIgMのアミノ酸324~433(配列番号103)の間の配列アラインメントを、図33に示す。ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の重鎖CH3ドメインの358位~362位(EUナンバリングに従う);及びヒトIgA、IgD、IgMにおける対応する残基を、囲み線で標識する。非天然ポリペプチドは、この部位に同様に融合することができる。詳細には、重鎖CH3ドメインの融合部位は、以下のアミノ酸配列を有する:LTKNQ(ヒトIgG1;配列番号130);MTKNQ(ヒトIgG2;配列番号131);MTKNQ(ヒトIgG3;配列番号132);及びMTKNQ(ヒトIgG4;配列番号133)。ヒトIgA、IgD、及びIgMにおける融合部位についてのアミノ残基は、それぞれ、LALNEL(配列番号134)、DPPEAA(配列番号135)、及びLNLRES(配列番号136)である。上記のアラインメントの結果は、重鎖CH3ドメインの358位~362位(EUナンバリングに従う)が、ヒト免疫グロブリン全体でそれほど保存されていないことを示す。そのため、本明細書において記載される領域内での本明細書において記載される修飾(例えば、非天然ポリペプチドの融合)は、タンパク質の発現、安定性、及び/又は機能に影響を及ぼすことなく、実行することができる。いくつかの実施形態において、CH3領域は、免疫グロブリン重鎖由来の、CHS領域(ある場合)のないCH3エキソンコード化領域に対応する定常ドメインである。いくつかの実施形態において、CHS領域は、CH3の端にある。CHS領域は、分泌された免疫グロブリン重鎖のC末端部のコード化領域である。詳細は、全体が参照によって本明細書において援用されるinternational ImMunoGeneTics information system(IMGT)において見つけることができる。同様に、ヒトIgG4のCH3~CHS領域(配列番号107)、ヒトIgG3のCH3~CHS領域(配列番号106)、ヒトIgG1のCH3~CHS領域(配列番号104)、及びヒトIgG2のCH3~CHS領域(配列番号105)の間の配列アラインメントを、図34に示す。ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の重鎖CH3ドメインの358位~362位(EUナンバリングに従う)に標識する。いくつかの実施形態において、1つ又は2つの非天然ポリペプチドは、融合部位で、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)、IgA、IgD、及びIgMの重鎖CH3ドメインに融合することができる。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、融合部位で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸を置き換える。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、融合部位で、アミノ酸配列全体を置き換える。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、この融合部位で、任意の2つのアミノ酸の間に挿入される。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、修飾免疫グロブリンの重鎖CH3ドメインの2つのアミノ酸残基に連結される。
【0170】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される免疫グロブリンは、げっ歯類免疫グロブリン(例えば、マウスIgG、ラットIgG)である。いくつかの実施形態において、ラット免疫グロブリンは、ラットIgG1、ラットIgG2A、ラットIgG2B、又はラットIgG2Cである。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される免疫グロブリンは、マウス免疫グロブリンである。いくつかの実施形態において、マウス免疫グロブリンは、マウスIgG1、マウスIgG2A、マウスIgG2B、マウスIgG2C、又はマウスIgG3である。ラットIgG2CのCH3~CHS領域(配列番号111)、マウスIgG3のCH3~CHS領域(配列番号116)、ヒトIgG1のCH3~CHS領域(配列番号104)、ラットIgG1のCH3~CHS領域(配列番号108)、ラットIgG2AのCH3~CHS領域(配列番号109)、マウスIgG1のCH3~CHS領域(配列番号112)、マウスIgG2BのCH3~CHS領域(配列番号114)、ラットIgG2BのCH3~CHS領域(配列番号110)、マウスIgG2AのCH3~CHS領域(配列番号113)、及びマウスIgG2CのCH3~CHS領域(配列番号115)の間の配列アラインメントを、図35に示す。ヒトIgG1の重鎖CH3ドメインの358位~362位(EUナンバリングに従う)並びにマウスIgG(例えば、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG2C、又はIgG3)及びラットIgG(例えば、IgG1、IgG2A、IgG2B、又はIgG2C)における対応する残基を、括弧によって標識する。詳細には、重鎖CH3ドメインの358位~362位(EUナンバリングに従う)に対応するアミノ酸残基は、MSKNK(ラットIgG2C;配列番号137)、MSKKK(マウスIgG3;配列番号138)、MTQNE(ラットIgG1;配列番号139)、MTQSQ(ラットIgG2A;配列番号140)、MAKDK(マウスIgG1;配列番号141)、LSRKD(マウスIgG2B;配列番号142)、LTEQT(ラットIgG2B;配列番号143)、MTKKQ(マウスIgG2A;配列番号144)、及びMTKKE(マウスIgG2C;配列番号145)である。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される免疫グロブリンは、サル免疫グロブリン(例えば、サルIgG)である。いくつかの実施形態において、サル免疫グロブリンは、サルIgG1、サルIgG2、又はサルIgG3である。ヒトIgG1のCH3~CHS領域(配列番号104)、サルIgG3のCH3領域(配列番号119)、サルIgG1のCH3~CHS領域(配列番号117)、及びサルIgG2のCH3~CHS領域(配列番号118)の間の配列アラインメントを、図36に示す。ヒトIgG1の重鎖CH3ドメインの358位~362位(EUナンバリングに従う)並びにサルIgGにおける対応する残基(例えば、IgG1、IgG2、又はIgG3)を、括弧によって標識する。詳細には、重鎖CH3ドメインの358位~362位(EUナンバリングに従う)に対応するアミノ酸残基は、LTKNQ(サルIgG3;配列番号146)、LTKNQ(サルIgG1;配列番号147)、及びLTKNQ(サルIgG2;配列番号148)である。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される免疫グロブリンは、イヌ属(Canis)(例えばイヌ)免疫グロブリン(例えばイヌIgG)である。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンは、イヌ科(Canine)IgG1、イヌ科IgG2、イヌ科IgG3、又はイヌ科IgG4である。ヒトIgG1のCH3~CHS領域(配列番号104)、イヌ科IgG2のCH3~CHS領域(配列番号121)、イヌ科IgG3のCH3~CHS領域(配列番号122)、イヌ科IgG1のCH3~CHS領域(配列番号120)、及びイヌ科IgG4のCH3~CHS領域(配列番号121)の間の配列アラインメントを、図37に示す。ヒトIgG1の重鎖CH3ドメインの358位~362位(EUナンバリングに従う)並びにイヌ科IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)における対応する残基を、括弧によって標識する。詳細には、重鎖CH3ドメインの358位~362位(EUナンバリングに従う)に対応するアミノ酸残基は、LSKNT(イヌ科IgG2;配列番号149)、MSKNT(イヌ科IgG3;配列番号150)、LSSSDT(イヌ科IgG1;配列番号151)、及びLSSSDT(イヌ科IgG4;配列番号152)である。ヒトIgG1の重鎖CH3ドメインの358位~362位(EUナンバリングに従う)に対応する部位は、非天然ペプチドに対する融合部位として使用することができる。いくつかの実施形態において、1つ又は2つの非天然ポリペプチドは、これらの融合部位に融合することができる。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、融合部位で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸を置き換える。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、融合部位で、アミノ酸配列全体を置き換える。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、この融合部位で、任意の2つのアミノ酸の間に挿入される。いくつかの実施形態において、非天然ポリペプチドは、修飾免疫グロブリンの重鎖CH3ドメインの2つのアミノ酸残基に連結される。
【0171】
抗体の構成
修飾免疫グロブリンは、種々の形態又は構成を有することができる。いくつかの実施形態において、あらゆる修飾の前の親抗体は、インタクトな免疫グロブリン分子(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgD、IgE、IgA)とすることができる。IgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)は、高度に保存されており、それらの定常領域において、特に、それらのヒンジ及び上部のCH2ドメインにおいて異なる。これらの免疫グロブリンのEUナンバリング、IgGサブクラスの配列及び違いは、当技術分野において知られており、例えば、Vidarsson,et al,“IgG subclasses and allotypes:from structure to effector functions.” Frontiers in immunology 5(2014);Irani,et al.“Molecular properties of human IgG subclasses and their implications for designing therapeutic monoclonal antibodies against infectious diseases.”Molecular immunology 67.2(2015):171-182;Shakib,Farouk,ed.The human IgG subclasses:molecular analysis of structure,function and regulation.Elsevier,2016;Lefranc et al.,“IMGT(登録商標) and 30 years of Immunoinformatics Insight in antibody V and C domain structure and function.”Antibodies 8.2(2019):29において記載されており、これらのそれぞれは、全体が参照によって本明細書において援用される。
【0172】
抗体はまた、任意の種(例えば、ヒト、げっ歯類、ラット、マウス、ラクダ科の動物、イヌ、ネコザメ、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)、アカゲザル、ネコ、ウサギ)に由来する免疫グロブリン分子とすることもできる。本明細書において開示される抗体はまた、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体、及び別のポリペプチドに融合された免疫グロブリン結合ドメインを含むキメラ抗体を含むが、これらに限定されない。用語「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合断片」は、インタクトな抗体の特異的な結合活性を保持する、抗体の一部分、すなわち、インタクトな抗体の標的分子上のエピトープに特異的に結合することが可能である抗体の任意の一部分である。これは、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びこれらの断片の変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、例えば、scFv、Fv、Fd、dAb、二重特異性抗体、二重特異性scFv、ダイアボディ、直線状の抗体、単鎖抗体分子、抗体断片から形成される多重特異性抗体、及び抗体結合ドメインである又はそれと相同である結合ドメインを含む任意のポリペプチドとすることができる。抗原結合ドメインの非限定的な例は、例えば、インタクトな抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖CDR、インタクトな抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域、インタクトな抗体の完全長重鎖若しくは軽鎖、又はインタクトな抗体の重鎖若しくは軽鎖由来の個々のCDRを含む。
【0173】
抗体の断片は、本明細書において記載される方法における使用に適しており、さらに提供される。Fab断片は、軽鎖の可変ドメイン及び定常ドメイン並びに重鎖の可変ドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。F(ab’)2抗体断片は、Fab断片の間でヒンジシステインによってFab断片のカルボキシ末端の近くで通常共有結合で連結している一対のFab断片を含む。抗体断片の他の化学的カップリングもまた、当技術分野において知られている。
【0174】
いくつかの実施形態において、抗体の重鎖は、IgM、IgG、IgE、IgA、若しくはIgDを含む任意のアイソタイプ又はIgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、IgE1、IgE2を含むサブアイソタイプ等とすることができる。軽鎖は、カッパ軽鎖又はラムダ軽鎖とすることができる。抗体は、軽鎖の2つの同一の複製物及び重鎖の2つの同一の複製物を含むことができる。
【0175】
修飾免疫グロブリンは、種々の抗原に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態において、抗原は、融合タンパク質、酵素、可溶性タンパク質、構造タンパク質、転写調節タンパク質、受容体、翻訳調節タンパク質、クロマチンタンパク質、ホルモン、細胞周期調節タンパク質、Gタンパク質、神経活性ペプチド、免疫調節タンパク質、血液成分のタンパク質、熱ショックタンパク質、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、抗生物質耐性タンパク質、タンパク質のいずれか1つの機能的断片、タンパク質のいずれか1つのエピトープ断片、及びその任意の組み合わせである。
【0176】
いくつかの実施形態において、修飾免疫グロブリンは、抗原に結合し、修飾免疫グロブリンは、同じ抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体と比較して、ほぼ同じ又は高い発現レベルを有する。いくつかの実施形態において、修飾免疫グロブリンは、2つの抗原に結合し、修飾免疫グロブリンは、同じ2つの抗原に特異的に結合する二重特異性抗体と比較して、ほぼ同じ又は高い発現レベルを有する。いくつかの実施形態において、修飾免疫グロブリンは、3つの抗原に結合し、修飾免疫グロブリンは、同じ3つの抗原に特異的に結合する三重特異性抗体と比較して、ほぼ同じ又は高い発現レベルを有する。いくつかの実施形態において、修飾免疫グロブリンは、4つの抗原に結合し、修飾免疫グロブリンは、同じ4つの抗原に特異的に結合する四重特異性抗体と比較して、ほぼ同じ又は高い発現レベルを有する。
【0177】
いくつかの実施形態において、抗原は、腫瘍関連抗原である。本明細書において使用されるように、用語「腫瘍関連抗原」は、腫瘍細胞表面にある又は提示され得る及び腫瘍細胞上に又は内に位置する抗原を指す。いくつかの他の実施形態において、腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞に限って発現され得る又は非腫瘍細胞と比較した腫瘍特異的突然変異のことを表してもよい。いくつかの他の実施形態において、腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞及び非腫瘍細胞の両方において見つけることができるが、非腫瘍細胞と比較した場合に、腫瘍細胞で過剰発現している又は非腫瘍組織と比較して腫瘍組織の構造がそれほどコンパクトではないために、腫瘍細胞において抗体が結合しやすい。いくつかの実施形態において、腫瘍関連抗原は、腫瘍の血管系に位置する。腫瘍関連表面抗原の例証となる例は、CD10、CD19、CD20、CD22、CD21、CD22、CD25、CD30、CD33、CD34、CD37、CD44v6、CD45、CD133、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT-3、CD135)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4、メラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、Her2neu、Her3、IGFR、IL3R、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、CDCP1、デルリン1(Derlin1)、テネイシン、frizzled1~10、血管抗原VEGFR2(KDR/FLK1)、VEGFR3(FLT4、CD309)、PDGFR-アルファ(CD140a)、PDGFR-ベータ(CD140b)エンドグリン、CLEC14、Tem1~8、及びTie2である。さらなる例は、A33、CAMPATH-1(CDw52)、癌胎児抗原(CEA)、炭酸脱水酵素IX(MN/CA IX)、de2-7 EGFR、EGFRvIII、EpCAM、Ep-CAM、葉酸結合タンパク質、G250、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT-3、CD135)、c-Kit(CD117)、CSF1R(CD115)、HLA-DR、IGFR、IL-2受容体、IL3R、MCSP(メラノーマ関連細胞表面コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)、Muc-1、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異抗原(PSA)、及びTAG-72を含んでいてもよい。
【0178】
いくつかの実施形態において、抗原は、エフェクター細胞についての抗原である。本明細書において使用されるように、用語「エフェクター細胞」は、刺激に対して能動的に応答し、なんらかの変化を生み出す細胞を指す。いくつかの実施形態において、エフェクター細胞は、免疫細胞、例えば、NK細胞、T細胞、B細胞、単球、ミクロファージ、樹状細胞、又は好中球である。したがって、抗原は、免疫細胞抗原とすることができる。本明細書において使用されるように、用語「免疫細胞抗原」は、免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)上に主に提示される抗原を指す。ある実施形態において、抗原は、CD3、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD16、CD47、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、CD123、CD133、CEA、cdH3、EpCAM、上皮増殖因子受容体(EGFR)、EGFRvIII(EGFRの突然変異形態)、HER2、HER3、dLL3、BCMA、シアリル-Lea、5T4、ROR1、メラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、メソテリン、葉酸受容体1、VEGF受容体、EpCAM、HER2/neu、HER3/neu、G250、CEA、MAGE、プロテオグリカン、VEGF、FGFR、アルファVベータ3-インテグリン、HLA、HLA-DR、ASC、CD1、CD2、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD11、CD13、CD14、CD21、CD23、CD24、CD28、CD30、CD37、CD40、CD41、CD44、CD52、CD64、c-erb-2、CALLA、MHCII、CD44v3、CD44v6、p97、ガングリオシドGM1、GM2、GM3、GD1a、GD1b、GD2、GD3、GT1b、GT3、GQ1、NY-ESO-1、NFX2、SSX2、SSX4 Trp2、gp100、チロシナーゼ、Muc-1、テロメラーゼ、サバイビン、G250、p53、CA125 MUC、Wue抗原、Lewis Y抗原、HSP-27、HSP-70、HSP-72、HSP-90、Pgp、MCSP、EpHA2、及び細胞表面標的GC182、GT468、又はGT512である。
【0179】
いくつかの実施形態において、抗原は、免疫チェックポイント分子である。免疫チェックポイントは、免疫系のレギュレーターである。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、B7-H3、TIM-3、LAG-3、VISTA、ICOS、4-1BB、OX40、GITR、又はCD40である。いくつかの実施形態において、抗原は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球タンパク質4(CTLA-4)、リンパ球活性化3(LAG-3)、B及びTリンパ球関連(BTLA)、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)、CD27、CD28、CD40、CD47、CD137、CD154、Igドメイン及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、グルココルチコイド誘発TNFR関連タンパク質(GITR)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、又はTNF受容体スーパーファミリーメンバー4(TNFRSF4若しくはOX40)である。
【0180】
修飾において使用することができる治療用抗体の例は、リツキシマブ(Rituxan、IDEC/Genentech/Roche)(例えば、米国特許第5,736,137号明細書を参照されたい)、非ホジキンリンパ腫を治療するために承認されたキメラ抗CD20抗体;HuMax-CD20、Genmabによって現在開発されている抗CD20、米国特許第5,500,362号明細書において記載される抗CD20抗体、AME-133(Applied Molecular Evolution)、hA20(Immunomedics,Inc.)、HumaLYM(Intracel)、及びPRO70769(PCT出願番号PCT/US2003/040426)、トラスツズマブ(Herceptin、Genentech)(例えば米国特許第5,677,171号明細書を参照されたい)、乳癌を治療するために承認されたヒト化抗Her2/neu抗体;Genentechによって現在開発されているペルツズマブ(rhuMab-2C4、Omnitarg);米国特許第4,753,894号明細書において記載される抗Her2抗体;セツキシマブ(Erbitux、Imclone)(米国特許第4,943,533号明細書;PCT公開番号WO96/40210)、いろいろな癌について治験中のキメラ抗EGFR抗体;Abgenix-Immunex-Amgenによって現在開発されているABX-EGF(米国特許第6,235,883号明細書);Genmabによって現在開発されているHuMax-EGFr(米国特許第7,247,301号明細書);425、EMD55900、EMD62000、及びEMD72000(Merck KGaA)(米国特許第5,558,864号明細書;Murthy et al.,(1987)Arch.Biochem.Biophys.252(2):549-60;Rodeck et al.,(1987)J.Cell.Biochem.35(4):315-20;Kettleborough et al.,(1991)Protein Eng.4(7):773-83);ICR62(Institute of Cancer Research)(PCT公開番号WO95/20045;Modjtahedi et al.,(1993)J.Cell Biophys.22(1-3):129-46;Modjtahedi et al.,(1993)Br.J.Cancer 67(2):247-53;Modjtahedi et al.,(1996)Br.J.Cancer 73(2):228-35;Modjtahedi et al.,(2003)Int.J.Cancer 105(2):273-80);TheraCIM hR3(YM Biosciences、Canada及びCentro de Immunologia Molecular、Cuba(米国特許第5,891,996号明細書;米国特許第6,506,883号明細書;Mateo et al.,(1997)Immunotechnol.3(1):71-81);mAb-806(Ludwig Institute for Cancer Research、Memorial Sloan-Kettering)(Jungbluth et al.,(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100(2):639-44);KSB-102(KS Biomedix);MR1-1(IVAX、National Cancer Institute)(PCT公開番号WO0162931);並びにSC100(Scancell)(PCT WO01/88138);アレムツズマブ(Campath、Millenium)、B細胞慢性リンパ球性白血病の治療のために現在承認されているヒト化mAb;ムロモナブ-CD3(Orthoclone OKT3)、Ortho Biotech/Johnson &Johnsonによって開発された抗CD3抗体、イブリツモマブチウキセタン(Zevalin)、IDEC/Schering AGによって開発された抗CD20抗体、ゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg)、Celltech/Wyethによって開発された抗CD33(p67タンパク質)抗体、アレファセプト(Amevive)、Biogenによって開発された抗LFA-3 Fc融合物)、Centocor/Lillyによって開発されたアブシキシマブ(ReoPro)、Novartisによって開発されたバシリキシマブ(Simulect)、Medimmuneによって開発されたパリビズマブ(Synagis)、インフリキシマブ(Remicade)、Centocorによって開発された抗TNFアルファ抗体、アダリムマブ(Humira)、Abbottによって開発された抗TNFアルファ抗体、Humicade、Celltechによって開発された抗TNFアルファ抗体、ゴリムマブ(CNTO-148)、Centocorによって開発された完全ヒトTNF抗体、エタネルセプト(Enbrel)、Immunex/Amgenによって開発されたp75 TNF受容体Fc融合物、レネルセプト、Rocheによって以前に開発されたp55TNF受容体Fc融合物、ABX-CBL、Abgenixによって開発されている抗CD147抗体、ABX-IL8、Abgenixによって開発されている抗IL8抗体、ABX-MA1、Abgenixによって開発されている抗MUC18抗体、ペムツモマブ(Pemtumomab)(R1549、90Y-muHMFG1)、Antisomaによって開発中の抗MUC1、Therex(R1550)、Antisomaによって開発されている抗MUC1抗体、Antisomaによって開発されているAngioMab(AS1405)、Antisomaによって開発されているHuBC-1、Antisomaによって開発されているチオプラチン(Thioplatin)(AS1407)、Antegren(ナタリズマブ)、Biogenによって開発されている抗-アルファ-4-ベータ-1(VLA-4)及びアルファ-4-ベータ-7抗体、VLA-1 mAb、Biogenによって開発されている抗VLA-1インテグリン抗体、LTBR mAb、Biogenによって開発されている抗リンホトキシンベータ受容体(LTBR)抗体、CAT-152、Cambridge Antibody Technologyによって開発されている抗TGF-.ベータ.2抗体、ABT 874(J695)、Abbottによって開発されている抗IL-12 p40抗体、CAT-192、Cambridge Antibody Technology及びGenzymeによって開発されている抗TGF.ベータ.1抗体、CAT-213、Cambridge Antibody Technologyによって開発されている抗エオタキシン1抗体、LymphoStat-B Cambridge Antibody Technology及びHuman Genome Sciences Inc.によって開発されている抗Blys抗体、TRAIL-RlmAb、Cambridge Antibody Technology及びHuman Genome Sciences,Inc.によって開発されている抗TRAIL-R1抗体、アバスチンベバシズマブ、rhuMAb-VEGF)、Genentechによって開発されている抗VEGF抗体、Genentechによって開発されている抗HER受容体ファミリー抗体、抗組織因子(ATF)、Genentechによって開発されている抗組織因子抗体、Xolair(オマリズマブ)、Genentechによって開発されている抗IgE抗体、Raptiva(エファリズマブ)、Genentech及びXomaによって開発されている抗CD11a抗体、Genentech及びMillenium Pharmaceuticalsによって開発されているMLN-02抗体(かつてはLDP-02)、HuMax CD4、Genmabによって開発されている抗CD4抗体、HuMax-IL15、Genmab及びAmgenによって開発されている抗IL15抗体、Genmab及びMedarexによって開発されているHuMax-Inflam、HuMax-Cancer、Genmab及びMedarex及びOxford GcoSciencesによって開発されている抗ヘパラナーゼI抗体、Genmab及びAmgenによって開発されているHuMax-Lymphoma、Genmabによって開発されているHuMax-TAC、IDEC-131、並びにIDEC Pharmaceuticalsによって開発されている抗CD40L抗体、IDEC-151(クレノリキシマブ)、IDEC Pharmaceuticalsによって開発されている抗CD4抗体、IDEC-114、IDEC Pharmaceuticalsによって開発されている抗CD80抗体、IDEC-152、IDEC Pharmaceuticalsによって開発されている抗CD23、IDEC Pharmaceuticalsによって開発されている抗マクロファージ遊走因子(MIF)抗体、BEC2、Imcloneによって開発されている抗イディオタイプ抗体、IMC-1C11、Imcloneによって開発されている抗KDR抗体、DC101、Imcloneによって開発されている抗flk-1抗体、Imcloneによって開発されている抗VEカドヘリン抗体、CEA-Cide(ラベツズマブ)、Immunomedicsによって開発されている抗癌胎児抗原(CEA)抗体、LymphoCide(エピラツズマブ)、Immunomedicsによって開発されている抗CD22抗体、Immunomedicsによって開発されているAFP-Cide、Immunomedicsによって開発されているMyelomaCide、Immunomedicsによって開発されているLkoCide、Immunomedicsによって開発されているProstaCide、MDX-010、Medarexによって開発されている抗CTLA4抗体、MDX-060、Medarexによって開発されている抗CD30抗体、Medarexによって開発されているMDX-070、Medarexによって開発されているMDX-018、Osidem(IDM-1)、並びにMedarex及びImmuno-Designed Moleculesによって開発されている抗Her2抗体、HuMax-CD4、Medarex及びGenmabによって開発されている抗CD4抗体、HuMax-IL15、Medarex及びGenmabによって開発されている抗IL15抗体、CNTO 148、Medarex及びCentocor/J&Jによって開発されている抗TNF.アルファ.抗体、CNTO 1275、Centocor/J&J、MOR101、及びMOR102によって開発されている抗サイトカイン抗体、MorphoSysによって開発されている抗細胞間接着分子-1(ICAM-1)(CD54)抗体、MOR201、MorphoSysによって開発されている抗線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR-3)抗体、Nuvion(ビジリズマブ)、Protein Design Labsによって開発されている抗CD3抗体、HuZAF、Protein Design Labsによって開発されている抗ガンマインターフェロン抗体、Protein Design Labsによって開発されている抗α5β1インテグリン、Protein Design Labsによって開発されている抗IL-12、ING-1、Xomaによって開発されている抗Ep-CAM抗体、Xolair(オマリズマブ) Genentech及びNovartisによって開発されたヒト化抗IgE抗体、並びにMLN01、Xomaによって開発されている抗ベータ2インテグリン抗体を含むが、これらに限定されない。別の実施形態において、治療薬は、KRN330
(Kirin);huA33抗体(A33、Ludwig Institute for Cancer Research);CNTO 95(アルファVインテグリン、Centocor);MEDI-522(アルファV.ベータ.3インテグリン、Medimmune);ボロシキシマブ(アルファV.ベータ.1インテグリン、Biogen/PDL);ヒトmAb 216(B細胞グリコシル化エピトープ、NCI);BiTE MT103(二重特異性CD19 CD3、Medimmune);4G7 H22(二重特異性B細胞×FcガンマR1、Medarex/Merck KGa);rM28(二重特異性CD28×MAPG、欧州特許番号EP1444268);MDX447(EMD 82633)(二重特異性CD64 EGFR、Medarex);カツマキソマブ(removab)(二重特異性EpCAM抗CD3、Trion/Fres);エルツマキソマブ(Ertumaxomab)(二重特異性HER2/CD3、Fresenius Biotech);オレゴボマブ(OvaRex)(CA-125、ViRexx);Rencarex(WX G250)(カルボニックアンヒドラーゼIX、Wilex);CNTO 888(CCL2、Centocor);TRC105(CD105(エンドグリン)、Tracon);BMS-663513(CD137アゴニスト、Brystol Myers Squibb);MDX-1342(CD19、Medarex);シプリズマブ(MEDI-507)(CD2、Medimmune);オファツムマブ(Humax-CD20)(CD20、Genmab);リツキシマブ(Rituxan)(CD20、Genentech);ベルツズマブ(hA20)(CD20、Immunomedics);エピラツズマブ(CD22、Amgen);ルミリキシマブ(IDEC 152)(CD23、Biogen);ムロモナブ-CD3(CD3、Ortho);HuM291(CD3 fc受容体、PDL Biopharma);HeFi-1、CD30、NCI);MDX-060(CD30、Medarex);MDX-1401(CD30、Medarex);SGN-30(CD30、Seattle Genentics);SGN-33(リンツズマブ)(CD33、Seattle Genentics);ザノリムマブ(HuMax-CD4)(CD4、Genmab);HCD122(CD40、Novartis);SGN-40(CD40、Seattle Genentics);Campathlh(アレムツズマブ)(CD52、Genzyme);MDX-1411(CD70、Medarex);hLL1(EPB-1)(CD74.38、Immunomedics);ガリキシマブ(IDEC-144)(CD80、Biogen);MT293(TRC093/D93)(切断コラーゲン、Tracon);HuLuc63(CS1、PDL Pharma);イピリムマブ(MDX-010)(CTLA4、Brystol Myers Squibb);トレメリムマブ(Ticilimumab、CP-675、2)(CTLA4、Pfizer);HGS-ETR1(マパツズマブ)(DR4 TRAIL-R1アゴニスト、Human Genome Science/Glaxo Smith Kline);AMG-655(DR5、Amgen);Apomab(DR5、Genentech);Cs-1008(DR5、Daiichi Sankyo);HGS-ETR2(レクサツムマブ)(DR5 TRAIL-R2アゴニスト、HGS);セツキシマブ(Erbitux)(EGFR、Imclone);IMC-11F8、(EGFR、Imclone);ニモツズマブ(EGFR、YM Bio);パニツムマブ(Vectabix)(EGFR、Amgen);ザルツムマブ(HuMaxEGFr)(EGFR、Genmab);CDX-110(EGFRvIII、AVANT Immunotherapeutics);アデカツムマブ(adecatumumab)(MT201)(Epcam、Merck);エドレコロマブ(Panorex、17-1A)(Epcam、Glaxo/Centocor);MORAb-003(葉酸受容体a、Morphotech);KW-2871(ガングリオシドGD3、Kyowa);MORAb-009(GP-9、Morphotech);CDX-1307(MDX-1307)(hCGb、Celldex);トラスツズマブ(Herceptin)(HER2、Celldex);ペルツズマブ(rhuMAb 2C4)(HER2(DI)、Genentech);アポリズマブ(HLA-DRベータ鎖、PDL Pharma);AMG-479(IGF-1R、Amgen);抗IGF-1R R1507(IGF1-R、Roche);CP 751871(IGF-R、Pfizer);IMC-A12(IGF1-R、Imclone);BIIB022(IGF-1R、Biogen);Mik-ベータ-1(IL-2Rb(CD122)、Hoffman LaRoche);CNTO 328(IL6、Centocor);抗KIR(1-7F9)(キラー細胞Ig様受容体(KIR)、Novo);Hu3S193(Lewis(y)、Wyeth、Ludwig Institute of Cancer Research);hCBE-11(LTBR、Biogen);HuHMFG1(MUC1、Antisoma/NCI);RAV12(N結合型炭水化物エピトープ、Raven);CAL(副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTH-rP)、University of California);CT-011(PD1、CureTech);MDX-1106(ono-4538)(PD1、Medarex/Ono);MAb CT-011(PD1、Curetech);IMC-3G3(PDGFRa、Imclone);バビツキシマブ(ホスファチジルセリン、Peregrine);huJ591(PSMA、Cornell Research Foundation);muJ591(PSMA、Cornell Research Foundation);GC1008(TGFb(pan)阻害剤(IgG4)、Genzyme);インフリキシマブ(Remicade)(TNF.アルファ.、Centocor);A27.15(トランスフェリン受容体、Salk Institute、INSERN 国際公開第2005/111082号パンフレット);E2.3(トランスフェリン受容体、Salk Institute);ベバシズマブ(Avastin)(VEGF、Genentech);HuMV833(VEGF、Tsukuba Research Lab)PCT公開番号WO/2000/034337、University of Texas);IMC-18F1(VEGFR1、Imclone);IMC-1121(VEGFR2、Imclone)を含む。これらの抗体の多くは、例えば、国際公開第2019057122A1号パンフレットにおいて記載される。これらの参考文献は、全体が参照によって本明細書において援用される。
【0181】
いくつかの実施形態において、親免疫グロブリン又は修飾免疫グロブリンは、下記の表3において示される構成を有することができる。これらの抗体の構成についての詳細な説明は、例えば、全体が参照によって本明細書において援用されるBrinkmann,et al.,“The making of bispecific antibodies.” MAbs.Vol.9.No.2.Taylor & Francis,2017において見つけることができる。いくつかの実施形態において、親免疫グロブリン又は修飾免疫グロブリンは、図20A~20Dにおいて示される構成を有することができる。
【0182】
【表3】
【0183】
抗原に対する抗体の結合親和性は、CDRによって決定される。CDRは、免疫グロブリン(抗体)及びT細胞受容体における可変鎖の一部である。抗体のアミノ酸配列を解析することによって抗体のCDR領域を同定する方法は、よく知られており、CDRについての多くの定義が、一般的に使用されている。Kabatの定義は、配列の可変性に基づき、Chothiaの定義は、構造のループ領域の位置に基づく。これらの方法及び定義は、例えば、Martin,“Protein sequence and structure analysis of antibody variable domains,” Antibody engineering,Springer Berlin Heidelberg,2001.422-439;Abhinandan,et al.“Analysis and improvements to Kabat and structurally correct numbering of antibody variable domains,” Molecular immunology 45.14(2008):3832-3839;Wu,T.T.and Kabat,E.A.(1970)J.Exp.Med.132:211-250;Martin et al.,Methods Enzymol.203:121-53(1991);Morea et al.,Biophys Chem.68(1-3):9-16(Oct.1997);Morea et al.,J Mol Biol.275(2):269-94(Jan .1998);Chothia et al.,Nature 342(6252):877-83(Dec.1989);Ponomarenko and Bourne,BMC Structural Biology 7:64(2007)において記載されており、これらのそれぞれは、全体が参照によって本明細書において援用される。
【0184】
CDRは、抗原のエピトープの認識にとって重要である。本明細書において使用されるように、「エピトープ」は、抗体の抗原結合ドメインが特異的に結合することが可能な標的分子の最も小さな部分である。エピトープの最小サイズは、約3、4、5、6、又は7アミノ酸であってもよいが、これらのアミノ酸は、抗原の一次構造の連続する直線状の配列中にある必要はなく、エピトープは、抗原の二次構造及び三次構造に基づく抗原の3次元立体配置に依存してもよい。
【0185】
非天然ポリペプチドは、種々の修飾免疫グロブリン、抗体、抗体様の分子、又はIgG様の分子に、これらの分子が重鎖CH3ドメインを有する限り、融合することができる。
【0186】
いくつかの実施形態において、抗体は、多重特異性抗体である。抗体の多量体化は、抗体の自然の凝集を通して又は当技術分野において知られている化学的技術若しくは組換え連結技術を通して実現されてもよい。例えば、精製された抗体調製物(例えば、精製されたIgG1分子)の若干のパーセンテージは、抗体ホモ二量体及び他のさらに高次の抗体多量体を含有するタンパク質凝集体を自発的に形成する。
【0187】
いくつかの実施形態において、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大にするために一対の抗体分子の間の境界面を操作することによって作製することができる。例えば、境界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含有することができる。この方法において、第1の抗体分子の境界面の1つ以上の小さなアミノ酸側鎖は、大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。この大きな側鎖と等しい又は同様のサイズの、埋め合わせとなる「くぼみ」が、大きなアミノ酸側鎖を小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)と置き換えることによって、第2の抗体分子の境界面に作られる。これは、ホモ二量体などの他の不用な最終産物に対して、ヘテロ二量体の収量を増加させるメカニズムを提供する。この方法は、例えば、全体が参照によって援用される国際公開第96/27011号パンフレットにおいて記載される。修飾はFc領域に対してなされるが、本開示はまた、修飾がノブ・イン・ホール(knobs-in-holes)と相容れるものがあることをも示す。「ノブ・イン・ホール」アプローチは、一方の重鎖における大きな側鎖を有するアミノ酸に対する突然変異及び他方の重鎖における小さな側鎖を有するアミノ酸に対する突然変異を導入する。したがって、同じ重鎖は、互いに結びつく可能性が低く、2つの異なる重鎖は、互いに結びつく見込みが高い。「ノブ・イン・ホール」アプローチは、例えば、Ridgway,John BB,Leonard G.Presta,and Paul Carter.“‘Knobs-into-holes’ engineering of antibody CH3 domains for heavy chain heterodimerization.” Protein Engineering,Design and Selection 9.7(1996)において記載され、これは、全体が参照によって本明細書において援用される。いくつかの実施形態において、IgGのCH3ドメインにおける1つ以上のアミノ酸残基は、置換される。いくつかの実施形態において、一方の重鎖は、以下の置換Y349C及びT366Wの1つ以上を有する。他方の重鎖は、以下の置換E356C、T366S、L368A、及びY407Vの1つ以上を有することができる。いくつかの実施形態において、一方の重鎖は、T366Y(ノブ)置換を有し、他方の重鎖は、Y407T(ホール)置換を有する。いくつかの実施形態において、一方の重鎖は、T366Y(ノブ)置換を有し、他方の重鎖は、これらの置換T366S、L368A、Y407V(ホール)のうちの1つ、2つ、又は3つを有する。
【0188】
いくつかの実施形態において、抗体は、例えば、DVD-Ig、CrossMab、BiTE等の構成を有する。これらの構成は、例えば、Spiess et al.,“Alternative molecular formats and therapeutic applications for bispecific antibodies.” Molecular immunology 67.2(2015):95-106において記載されており、これは、全体が参照によって本明細書において援用される。ある実施形態において、本明細書において提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、Triomab;ハイブリッドハイブリドーマ(クアドローマ);多重特異性anticalinプラットフォーム(Pieris);ダイアボディ;単鎖ダイアボディ;タンデム型単鎖Fv断片;TandAb、三重特異性Ab;Dart(デュアルアフィニティーリターゲティング(dual affinity retargeting);Macrogenics);二重特異性Xmab(Xencor);二重特異性T細胞エンゲージャー(engager)(Bite;Amgen;55kDa);トリプルボディ(Triplebody);Tribody(Fab-scFv)融合タンパク質(CreativeBiolabs)多機能組換え抗体誘導体;Duobodyプラットフォーム(Genmab);Dock and lockプラットフォーム;ヒト化二重特異性IgG抗体(REGN1979)(Regeneron);Mab2二重特異性抗体(F-Star);DVD-Ig(デュアル可変ドメイン免疫グロブリン)(Abbvie);カッパ-ラムダボディ;TBTI(四価二重特異性タンデム型Ig);及びCrossMabから選択される二重特異性の構成に基づく。ある実施形態において、本明細書において提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、全IgG又はIgG様の分子などの「全」抗体の構成並びにタンデム型単鎖可変断片分子(taFv)、ダイアボディ(Db)、単鎖ダイアボディ(scDb)、及びこれらの種々の他の誘導体並びにBiTE(二重特異性T細胞エンゲージャー)などの小さな組換えの構成に基づく。
【0189】
「MAb-Fv」又は「IgG-Fv」は、一方のFc鎖のC末端へのVHの融合及び別々に発現された又は他方のC末端に融合されたVLドメインによって形成され、二重特異性三価IgG-Fv(mAb-Fv)融合タンパク質をもたらし、Fvは、ドメイン間ジスルフィド結合によって安定化されている融合タンパク質を指す。
【0190】
「ScFab-Fc-scFv2」及び「ScFab-Fc-scFv」は、Fc及びジスルフィド安定化Fvドメインとの単鎖Fabの融合によって形成される融合タンパク質を指す。
【0191】
「付加型IgG」は、二重特異性(Fab)2-Fcの構成を形成するように、FabアームがIgGに融合された融合タンパク質を指す。これにより、Fabが、コネクターあり又はなしでIgG分子のC末端又はN末端に融合された「IgG-Fab」又は「Fab-IgG」を形成することができる。
【0192】
「DVD-Ig」は、IgG重鎖及び軽鎖への、第2の特異性を持つ追加のVHドメイン及びVLドメインの融合によって形成されるデュアル可変ドメイン抗体を指す。「CODV-Ig」は、2つのVH及び2つのVLドメインが、可変VH-VLドメインの対合の入れ換えを可能にする方法で連結され、VH A-VH B及びVL B-VL Aの順に又はHV B-HV A及びVL A-VL Bの順に並べられた(N末端からC末端に)、関連する構成を指す。
【0193】
「CrossMab」は、無修飾軽鎖の対応する無修飾重鎖との対合及び修飾軽鎖の対応する修飾重鎖との対合の技術を指し、したがって、軽鎖における誤対合が低下した抗体がもたらされる。
【0194】
「BiTE」は、VH-VLの配向をした第2の特異性を有する第2のscFvに連結されたVL-VLの配向をした第1の抗原特異性を有する第1のscFvを含む二重特異性T細胞エンゲージャー分子である。
【0195】
本開示の修飾免疫グロブリンはまた、所望のエフェクター機能又は血清半減期を提供するために、Fc領域において修飾することもできる。
【0196】
本明細書において記載される抗体又は抗原結合断片のいずれも、安定化分子(例えば、対象における又は溶液における修飾免疫グロブリンの半減期を増加させる分子)に抱合することができる。安定化分子の非限定的な例は、以下を含む:ポリマー(例えばポリエチレングリコール)又はタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン)。安定化分子の抱合は、インビトロにおいて(例えば、組織培養において若しくは医薬組成物として保存された場合に)又はインビボにおいて(例えば、ヒトにおいて)、抗体又は抗原結合断片の半減期を増加させることができる又は生物学的活性を延長することができる。
【0197】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される抗体又は抗原結合断片は、治療剤に抱合することができる。修飾免疫グロブリンを含む抗体-薬剤抱合体は、治療剤に共有結合で又は非共有結合で結合することができる。いくつかの実施形態において、治療剤は、細胞傷害性の又は細胞増殖抑制性の作用物質(例えば、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシン、DM-1及びDM-4などのマイタンシノイド、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、エピルビシン、並びにシクロホスファミド並びに類似体)である。
【0198】
いくつかの実施形態において、治療剤は、本明細書において記載されるように、非天然ポリペプチドに連結することができる。例えば、1つ以上の治療剤は、非天然ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸(例えば側鎖)に共有結合で連結することができる(例えば、本明細書において記載されるように、様々な融合部位に融合することができる)。
【0199】
一態様において、少なくとも1、2、3、4、5、又は6つのポリペプチドは、修飾免疫グロブリンに融合される。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸残基の修飾免疫グロブリンの重鎖CH3ドメインに融合される。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、重鎖CH3ドメインの1つのアミノ酸残基に融合される。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、重鎖CH3ドメインのC末端アミノ酸残基に融合される。
【0200】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、多重特異性抗原結合タンパク質に追加することができる。いくつかの実施形態において、多重特異性抗原結合タンパク質(MABP)は、以下を含み:(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第1の抗原結合部分、VH及びVLは、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する並びに(b)第2のエピトープに特異的に結合する単一ドメイン抗体(sdAb)を含む第2の抗原結合部分、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分は、互いに融合される。いくつかの実施形態において、MABPは、それぞれsdAbを含む1、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上の異なる抗原結合部分のいずれか1つを含む。いくつかの実施形態において、2つの同一のsdAbは、互いに融合され、sdAbは、第1の抗原結合部分にさらに融合される。いくつかの実施形態において、2つの異なるsdAbは、互いに融合され、sdAbは、第1の抗原結合部分にさらに融合される。いくつかの実施形態において、以下を含む多重特異性(二重特異性など)抗原結合タンパク質が、提供され:(a)それぞれ重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第1の抗原結合部分の2つの複製物、VH及びVLは、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する並びに(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む第2の抗原結合部分の単一の複製物、第2の抗原結合部分は、第1の抗原結合部分の2つの複製物のうちの1つに融合される。いくつかの実施形態において、以下を含む多重特異性(二重特異性など)抗原結合タンパク質が、提供され:(a)それぞれ重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第1の抗原結合部分の2つの複製物、VH及びVLは、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する並びに(b)第1のエピトープと異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する、複数の(2、3、又は4つなど)同一の又は異なるsdAb、sdAbは、互いに及び/又は第1の抗原結合部分に融合される。種々の多重特異性抗原結合タンパク質は、国際公開第2018014855A1号パンフレットにおいて記載され、これは、全体が参照によって本明細書において援用される。
【0201】
図20A~20Dは、いくつかの例証的な免疫グロブリンの構成をさらに提供する。図20Aにおいて示されるように、HCの構成において、非天然ポリペプチドは、抗体の重鎖のC末端に連結される。対照的に、LCの構成において、非天然ポリペプチドは、抗体の軽鎖のC末端に連結される。HCの構成を有する修飾免疫グロブリンの例は、実施例2におけるPDL1-mIL7-HC、実施例6におけるPDL1-hIL21-HC、実施例7及び9におけるM7824;並びに実施例23における1A7-セリクレルマブ-FVHC-IgG4を含む。LCの構成を有する修飾免疫グロブリンの例は、実施例2におけるPDL1-mIL7-LCを含む。
【0202】
3Aは、非天然ポリペプチドが抗体の3A部位に融合されることを示す。FV3Aは、融合された非天然ポリペプチドがscFvであることを示す。3A-HCの構成において、機能ポリペプチドは、3Aの構成の重鎖のC末端にさらに連結される。3Aの構成を有する修飾免疫グロブリンの例は、実施例3におけるPDL1-mIL7-3A;実施例5における3F2-hIL7-3A;実施例6における3F2-hIL21-3A;実施例7、9、及び11におけるPDL1-TGFbR2-3A;実施例9及び11におけるPDL1-TGFbR2-3A-IgG4;実施例9におけるPDL1-TGFbR2-3AF1;実施例12及び13におけるPDL1-CD86-3A;実施例12及び13におけるPDL1-CD86-3A-IgG4;実施例12におけるPD1-KN035-3A-IgG1;実施例12におけるPD1-KN035-3A;並びに実施例16における3F2-mIL12-3Aを含む。FV3Aの構成を有する修飾免疫グロブリンの例は、実施例8及び10におけるPDL1-C40-6A7-FV3A;実施例8及び10におけるPDL1-C40-6A7-FV3A-IgG4;実施例8及び12におけるPD1-PL1-3F2-FV3A-IgG1;並びに実施例23における1A7-セリクレルマブ-FV3A-IgG4を含む。3A-HCの構成を有する修飾免疫グロブリンの例は、実施例3におけるPDL1-mIL7-3A-mIFNa4;実施例5における3F2-hIL7-3A-mIFNa4;実施例6における3F2-hIL21-3A-mIFNa4;実施例13におけるPDL1-CD86-3A-TGFbR2;並びに実施例17における3F2-mIL12-3A-mIFNa4を含む。
【0203】
Fab-サイトカイン-KIHの構成において、重鎖のVHドメイン及びCH1ドメインは、サイトカインによって置き換えられる。KIHは、ノブ-イン-ホール修飾が2つの重鎖に追加されていることを示す。Fab-サイトカイン-KIHの構成を有する修飾免疫グロブリンの例は、実施例2におけるPDL1-hIL21-KIHを含む。
【0204】
同様に、Fab-half-3A-KIHの構成において、重鎖のVHドメイン及びCH1ドメインは、除去される。非天然ポリペプチドは、抗体の3A部位に融合される。Fab-half-3A-KIHの構成を有する修飾免疫グロブリンの例は、実施例4におけるPDL1-mIL7-Fab-half-3A-KIHを含む。
【0205】
3A-holeの構成において、非天然ポリペプチドは、ホール修飾を有する重鎖の3A部位に融合される。対照的に、3A-knobの構成において、非天然ポリペプチドは、ノブ修飾を有する重鎖の3A部位に融合される。3A-holeの構成を有する修飾免疫グロブリンの例は、実施例4におけるPDL1-mIL7-3A-hole;及び実施例12におけるCT4-KN035-3A-holeを含む。3A-knobの構成を有する修飾免疫グロブリンの例は、実施例4におけるPDL1-mIL7-3A-knob;及び実施例12におけるCT4-KN035-3A-knobを含む。これらの構成は、互いに及び本明細書において記載される種々の修飾と組み合わせることができる。
【0206】
3A-HCの構成は、1、2、3、4、5、又は6つの抗原結合部位(すなわち、第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の抗原結合部位)を有することができる。いくつかの実施形態において、抗原結合部位は、VH及びVLを含む。いくつかの実施形態において、抗原結合部位は、VHHを含む。いくつかの実施形態において、抗原結合部位は、本明細書において記載される抗体又はその抗原結合断片(例えばscFv)を含む。いくつかの実施形態において、第1及び第2の抗原結合部位は、同じ抗原を標的とする。いくつかの実施形態において、第1及び第2の抗原結合部位は、異なる抗原を標的とする。いくつかの実施形態において、第3及び第4の抗原結合部位は、同じ抗原を標的とする。いくつかの実施形態において、第3及び第4の抗原結合部位は、異なる抗原を標的とする。いくつかの実施形態において、第5及び第6の抗原結合部位は、同じ抗原を標的とする。いくつかの実施形態において、第5及び第6の抗原結合部位は、異なる抗原を標的とする。いくつかの実施形態において、構成は、図20Cにおいて示される。
【0207】
いくつかの実施形態において、3A-HCの構成は、2つの重鎖の3A部位に融合される2つの非天然ポリペプチド(例えば、それぞれ、E及びFを標的とする);並びに2つの重鎖のC末端に融合される2つの非天然ポリペプチド(例えば、それぞれ、G及びHを標的とする)を有することができる。3A-HCの構成はまた、Aを標的とする第1の抗原結合部位及びBを標的とする第2の抗原結合部位を有することもできる。加えて、3A-HCの構成は、2つの軽鎖のC末端に融合される2つの非天然ポリペプチド(例えば、それぞれ、C及びDを標的とする)を有することができる。Kを標的とするFabドメインもまた、3A-HCにおいて、抗原結合部位の1つに融合することができる。図20Bは、例証的な免疫グロブリンの構成を提供する。
【0208】
いくつかの実施形態において、1つ又は2つの非天然ポリペプチドは、変異体Fcの3A部位に融合することができる。図20Dは、本明細書において記載されるように変異体Fcを含むタンパク質の例証的な構成を提供する。
【0209】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される修飾免疫グロブリンは、二重特異性抗体、例えば、PD-1及びCD40を標的とする二重特異性抗体である。いくつかの実施形態において、3Aの構成を有する二重特異性抗体(例えば1A7-セリクレルマブ-FV3A-IgG4)の毒性は、HCの構成を有する対応する二重特異性抗体(例えば1A7-セリクレルマブ-FVHC-IgG4)と比較して、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、又は10%未満である。いくつかの実施形態において、毒性は、血液生化学的試験(例えば、ALT及び/若しくはASTレベルを測定することによって)又は肝臓の病理組織学的検査によって判定される。
【0210】
融合ポリペプチド
種々のポリペプチドは、修飾免疫グロブリンに融合することができる。ポリペプチドは、本明細書において記載される任意の部位(例えば、重鎖の3A部位及び/又はC末端)に融合することができる。本開示において示されるように、ポリペプチドがFc領域に融合された後に、融合ポリペプチドは、適した立体構造の形をとることができ、その生物活性を維持することができる。
【0211】
本明細書において使用されるように、本開示における用語「融合タンパク質」は、ペプチドのそれらのそれぞれの主鎖を介して共有結合によって連結される2つ以上のタンパク質又はその断片を含む分子を指し、より好ましくは、融合タンパク質は、これらのタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現によって生成される。いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、免疫グロブリンドメインを含む。いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、Fc融合タンパク質である。
【0212】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、融合タンパク質、酵素、可溶性タンパク質、構造タンパク質、転写調節タンパク質、受容体、翻訳調節タンパク質、クロマチンタンパク質、ホルモン、細胞周期調節タンパク質、Gタンパク質、神経活性ペプチド、免疫調節タンパク質、血液成分のタンパク質、熱ショックタンパク質、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、抗生物質耐性タンパク質、タンパク質のいずれか1つの機能的断片、タンパク質のいずれか1つのエピトープ断片、及びその任意の組み合わせである。
【0213】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、抗体又はその抗原結合断片(例えばscFv)である。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、単鎖可変断片(scFv)である。scFvは、通常、1つ重鎖可変ドメイン及び1つ軽鎖可変ドメインを有する。いくつかの実施形態において、scFvは、2つの重鎖可変ドメイン及び2つの軽鎖可変ドメインを有する。
【0214】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、単一ドメイン抗体である。ナノボディ(nanobody)としても知られている単一ドメイン抗体(sdAb)は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片である。全抗体の様に、単一ドメイン抗体は、特異抗原に選択的に結合することができる。いくつかの実施形態において、単一ドメイン抗体は、ラクダ科の動物において見つけられる重鎖抗体を操作したものであり、VHH断片と呼ばれる。本明細書において使用されるように、「VHH」は、重鎖のみの抗体の抗原結合断片を指す。
【0215】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、サイトカインである。本明細書において使用されるように、用語「サイトカイン」は、任意のタンパク質又はペプチド、その類似体又は機能的断片を指し、これは、哺乳類において、前もって選ばれた細胞型、例えば、癌細胞又はウイルス感染した細胞に対する細胞破壊性の免疫応答を刺激する又は誘発することが可能である。したがって、いろいろなサイトカインを、本明細書において記載される部位でFcに融合することができることが想定される。有用なサイトカインは、例えば、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン(IL)、リンホカイン(L)、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)を含み、そのような細胞破壊性の免疫応答を刺激する又は誘発することが可能であるその種変異体、切断型類似体を含む。有用な腫瘍壊死因子は、例えば、TNFを含む。有用なリンホカインは、例えば、LTを含む。有用なコロニー刺激因子は、例えば、GM-CSF及びM-CSFを含む。有用なインターロイキンは、例えば、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-15、及びIL-18を含む。有用なインターフェロンは、例えば、IFN-α、IFN-β、及びIFN-γを含む。いくつかの実施形態において、インターフェロンは、IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κ、IFN-τ、IFN-δ、IFN-Ν、IFN-ω、又はIFN-γである。いくつかの実施形態において、インターフェロンは、IFNa1、IFNa2、IFNa4、IFNa5、IFNa6、IFNa7、IFNa8、IFNa10、IFNa13、IFNa14、IFNa16、IFNa17、又はIFNa21である。いくつかの実施形態において、インターフェロンは、マウスIFNa4(mIFNa4)である。いくつかの実施形態において、mIFNa4は、配列番号10又はNCBI整理番号NP_034634.1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、インターフェロンは、ヒトIFNa4(hIFNa4)である。いくつかの実施形態において、hIFNa4は、配列番号129又はNCBI整理番号NP_066546.1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%同一である配列を含む。
【0216】
いくつかの実施形態において、サイトカインは、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-35、又はIL-36である。
【0217】
いくつかの実施形態において、サイトカインは、IL4、IL6、又はIL10である。いくつかの好ましいサイトカインは、下記の表に掲げられる。
【0218】
【表4】
【0219】
いくつかの実施形態において、サイトカインは、例えば、配列番号93において記載される配列を有するIL3(例えばヒトIL3)である。いくつかの実施形態において、サイトカインは、配列番号94において記載される配列を有するIL4(例えばヒトIL4)である。いくつかの実施形態において、サイトカインは、配列番号95において記載される配列を有するIL5(例えばヒトIL5)である。いくつかの実施形態において、サイトカインは、配列番号96において記載される配列を有するIL6(例えばヒトIL6)である。いくつかの実施形態において、サイトカインは、配列番号97において記載される配列を有するIL8(例えばヒトIL8)である。いくつかの実施形態において、サイトカインは、配列番号98において記載される配列を有するIL9(例えばヒトIL9)である。いくつかの実施形態において、サイトカインは、配列番号99において記載される配列を有するIL13(例えばヒトIL13)である。いくつかの実施形態において、サイトカインは、配列番号100において記載される配列を有するIL15(例えばヒトIL15)である。
【0220】
したがって、いくつかの実施形態において、修飾免疫グロブリンは、イムノサイトカインである。本明細書において使用されるように、用語「イムノサイトカイン」は、(i)前もって選ばれた抗原、例えば細胞型特有の抗原に対する結合特異性を有し、それに結合することが可能である抗体結合部位及び(ii)典型的に癌又はウイルス感染した細胞に対して細胞破壊性の免疫応答を誘発する又は刺激することが可能であるサイトカインの融合物を指す。前もって選ばれた抗原の例は、癌細胞又はウイルス感染した細胞上などの細胞表面抗原及び例えば、細胞膜に付着した状態を維持し得る、壊死細胞の不溶性細胞内抗原を含む。好ましい抗原は、腫瘍特異的抗原などの、腫瘍細胞に特徴的である標的抗原である。したがって、イムノサイトカインは、サイトカインが、標的細胞に対する局所的な免疫応答を媒介することができるように、インビボにおいて、標的(典型的に細胞である)にサイトカインを選択的に送達することが可能である。
【0221】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、IL7(NCBI Ref:NP_000871.1)、IL21(NCBI Ref:NP_068575.1)、IL4(NCBI Ref:NP_000580.1)、IL6(NCBI Ref:NP_000591.1)、又はIL10(NCBI Ref:NP_000563.1)の全体又は一部分(例えば可溶性部分)を含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、TGFbR2(NCBI Ref:NP_003233.4)の可溶性領域を含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、TGFB1(NCBI Ref:NP_000651.3、例えば、NP_000651.3のアミノ酸292~390)、APRIL(NCBI Ref:NP_003799.1、例えば、NP_003799.1のアミノ酸115~250)、CD161(NCBI Ref:NP_002249.1、例えば、NP_002249.1のアミノ酸68~225)、SOST(NCBI Ref:NP_079513.1、例えば、NP_079513.1の82~162)、B7H4(NCBI Ref:NP_078902.2、例えば、NP_078902.2のアミノ酸29~258)、SIGLEC15(NCBI Ref:NP_998767.1、例えば、NP_998767.1のアミノ酸20~263)、DLL3(NCBI Ref:NP_982353.1、例えば、NP_982353.1のアミノ酸27~492)、及び/又はMCSFR(CSF1R;NCBI Ref:NP_003799.1、例えば、NP_003799.1のアミノ酸20~512)の可溶性部分を含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、TGFB1(NCBI Ref:NP_000651.3)、APRIL(NCBI Ref:NP_003799.1)、CD161(NCBI Ref:NP_002249.1)、SOST(NCBI Ref:NP_079513.1)、B7H4(NCBI Ref:NP_078902.2)、SIGLEC15(NCBI Ref:NP_998767.1)、DLL3(NCBI Ref:NP_982353.1)、及び/又はMCSFR(CSF1R;NCBI Ref:NP_003799.1)の全体又は一部分を含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、これらの配列と少なくとも又は約70%、80%、90%、95%、又は100%同一である。
【0222】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、配列番号14の全体又は一部分を含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、配列番号15の全体又は一部分を含む。
【0223】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、アゴニストである。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、アンタゴニストである。
【0224】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、可変単鎖断片(scFv)である。いくつかの実施形態において、scFvは、本明細書において記載されるように、任意の抗原に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態において、scFvは、CD40に特異的に結合することができ、配列番号16の全体又は一部分を含む。いくつかの実施形態において、scFvは、CD40に特異的に結合することができ、配列番号132の全体又は一部分を含む。
【0225】
いくつかの実施形態において、scFvは、PD-L1に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態において、scFvは、CD40に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、配列番号17又は配列番号16の全体又は一部分を含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、配列番号132の全体又は一部分を含む。
【0226】
いくつかの実施形態において、scFvは、CD86に特異的に結合する。
【0227】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、対象において免疫応答を誘発するようにデザインされている抗原である。したがって、本開示はまた、対象において抗体を誘発するための方法をも提供する。方法は、対象に修飾免疫グロブリンを、任意選択でアジュバントと共に、投与することを含む。修飾免疫グロブリンは、抗原提示細胞を特異的に標的とし(例えば、抗原提示細胞上のマーカーを標的とすることによって)、抗原提示細胞に抗原を有効に送達し、それによって、この抗原に対する抗体を産生する効率を増加させることができる。
【0228】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、少なくとも又は約5kD、6kD、7kD、8kD、9kD、10kD、20kD、30kD、40kD、50kD、60kD、70kD、80kD、90kD、又は100kDの分子量を有する。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、5kD、6kD、7kD、8kD、9kD、10kD、20kD、30kD、40kD、50kD、60kD、70kD、80kD、90kD、又は100kD以下の分子量を有する。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、機能的タンパク質であり、50kD未満である。
【0229】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、少なくとも又は約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、又は1000アミノ酸残基を有する。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、又は1000以下のアミノ酸残基を有する。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、約50~400のアミノ酸残基、約50~300のアミノ酸残基、約50~200のアミノ酸残基、約100~300のアミノ酸残基、又は約100~200のアミノ酸残基を有する。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、機能的タンパク質であり、500未満のアミノ酸残基を有する。
【0230】
リンカー配列
ポリペプチドは、本明細書において記載される任意のポリペプチド(例えば、CH3ドメインを有する重鎖を有するポリペプチド)の本明細書において記載される任意の部位(例えば、3A部位及び/又はC末端)に、任意選択でリンカー配列を通して融合することができる。
【0231】
いくつかの実施形態において、リンカー配列は、少なくとも又は約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、又は50アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、少なくとも又は約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、20、25、30、又は40グリシン残基を含む。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、少なくとも又は約1、2、3、4、5、6、7、又は8セリン残基を含む。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、グリシン残基及びセリン残基を含む又はからなる。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、GGGGSGGGGS(配列番号30)又はGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号124)と少なくとも若しくは約70%、少なくとも若しくは約75%、少なくとも若しくは約80%、少なくとも若しくは約85%、少なくとも若しくは約90%、少なくとも若しくは約95%、少なくとも若しくは約99%、又は100%同一である配列を含む又はからなる。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)又はGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号90)と少なくとも若しくは約70%、少なくとも若しくは約75%、少なくとも若しくは約80%、少なくとも若しくは約85%、少なくとも若しくは約90%、少なくとも若しくは約95%、少なくとも若しくは約99%、又は100%同一である配列を含む又はからなる。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、GGGGS(配列番号31)の、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、又は8つのリピートを含む。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、又は50以下のアミノ酸残基を有する。
【0232】
一態様において、ポリペプチドは、修飾免疫グロブリンの重鎖CH3ドメインに融合される。いくつかの実施形態において、挿入ポリペプチドは、N末端リンカー配列及びC末端リンカー配列を含む。本明細書において使用されるように、用語「N末端リンカー配列」は、挿入又は融合ポリペプチドのN末端に位置するリンカー配列を指す。本明細書において使用されるように、用語「C末端リンカー配列」は、挿入又は融合ポリペプチドのC末端に位置するリンカー配列を指す。N末端リンカー配列及びC末端リンカー配列は、同一のもの又は異なるものとすることができ、本明細書において記載される任意のリンカー配列を含む又はからなることができる。
【0233】
抗体及び抗原結合断片
本開示は、本明細書において記載される種々の抗原に特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態において、抗原は、腫瘍関連抗原である。いくつかの実施形態において、抗原は、免疫細胞抗原である。いくつかの実施形態において、抗原は、免疫チェックポイント分子である。
【0234】
いくつかの実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、少なくともCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、免疫チェックポイント分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、アゴニストである。いくつかの実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、アンタゴニストである。
【0235】
本開示は、CTLA4に特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される抗体及び抗原結合断片は、CTLA4に結合することが可能であり、CTLA4阻害性経路を阻害し、したがって、免疫応答を増加させることができる。本開示は、マウス抗CTLA4抗体4G12及びそのヒト化抗体を提供する。
【0236】
4G12及び4G12由来抗体についてのCDR配列は、Kabatナンバリングによって定義されるように、重鎖可変ドメインのCDR、配列番号54~56及び軽鎖可変ドメインのCDR、配列番号57~59を含む(図49を参照されたい)。Chothiaナンバリングに基づくと、重鎖可変ドメインのCDR配列は、配列番号66~68において記載され、軽鎖可変ドメインのCDRは、配列番号69~71において記載される(図50を参照されたい)。
【0237】
4G12及び4G12由来抗体の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)についてのアミノ酸配列もまた、提供される。ヒト化4G12抗体(例えばCT4-4G12-IgG1)の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号44において記載される。ヒト化CT4-4G12抗体(例えばCT4-4G12-IgG1)の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号45において記載される。マウス4G12抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号50において記載される。マウス4G12抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号51において記載される。
【0238】
いくつかの実施形態において、CT4-4G12-IgG1の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号42及び配列番号43において記載される。いくつかの実施形態において、4G12又は4G12由来抗体(例えばヒト化抗体)は、IgG1サブタイプ又はIgG4サブタイプを有する。
【0239】
CTLA4抗体4G12の詳細は、例えば、PCT/CN2017/102816において見つけることができ、これは、全体が参照によって本明細書において援用される。
【0240】
本開示は、OX40に特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される抗体及び抗原結合断片は、OX40に結合することが可能であり、OX40シグナル伝達経路を促進し、したがって、免疫応答を増加させることができる。本開示は、マウス抗OX40抗体9H3及びそのヒト化抗体を提供する。
【0241】
9H3及び9H3由来抗体についてのCDR配列は、Kabatナンバリングによって定義されるように、重鎖可変ドメインのCDR、配列番号60~62及び軽鎖可変ドメインのCDR、配列番号63~65を含む(図49を参照されたい)。Chothiaナンバリングに基づくと、重鎖可変ドメインのCDR配列は、配列番号72~74において記載され、軽鎖可変ドメインのCDRは、配列番号75~77において記載される(図50を参照されたい)。
【0242】
9H3及び9H3由来抗体の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)についてのアミノ酸配列もまた、提供される。ヒト化9H3抗体(例えばO40-9H3-IgG1)の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号48において記載される。ヒト化9H3抗体(例えば9H3-IgG1)の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号49において記載される。マウス9H3抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号52において記載される。マウス9H3抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号53において記載される。
【0243】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されるscFvは、9H3及び9H3由来抗体に由来する。いくつかの実施形態において、9H3又は9H3由来抗体(例えばヒト化抗体)は、IgG1サブタイプを有する。
【0244】
抗OX40抗体9H3の詳細は、例えば、PCT/CN2017/112832で見つけることができ、これは、全体が参照によって本明細書において援用される。
【0245】
本開示は、PD-L1に特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される抗体及び抗原結合断片は、PD-L1に結合することが可能であり、PD1/PD-L1シグナル伝達経路を遮断し、したがって、免疫応答を増加させることができる。本開示は、マウス抗PD-L1抗体3F2及びそのヒト化抗体を提供する。
【0246】
3F2及び3F2由来抗体についてのCDR配列は、Kabatナンバリングによって定義されるように、重鎖可変ドメインのCDR、配列番号18~20及び軽鎖可変ドメインのCDR、配列番号21~23を含む(図49を参照されたい)。Chothiaナンバリングに基づくと、重鎖可変ドメインのCDR配列は、配列番号78~80において記載され、軽鎖可変ドメインのCDRは、配列番号81~83において記載される(図50を参照されたい)。
【0247】
いくつかの実施形態において、PDL1-3F2-IgG1の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号36及び配列番号37において記載される。
【0248】
いくつかの実施形態において、3F2又は3F2由来抗体(例えばヒト化抗体)は、IgG1サブタイプ又はIgG4サブタイプを有する。いくつかの実施形態において、本明細書において記載されるscFvは、3F2及び3F2由来抗体に由来する。いくつかの実施形態において、3F2に由来するscFvのアミノ酸配列は、配列番号17において記載される。
【0249】
抗PD-L1抗体3F2の詳細は、例えば、PCT/CN2020/075983で見つけることができ、これは、全体が参照によって本明細書において援用される。
【0250】
本開示は、PD-1に特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される抗体及び抗原結合断片は、PD-1に結合することが可能であり、PD1シグナル伝達経路を阻害し、したがって、免疫応答を増加させることができる。本開示は、マウス抗PD-1抗体1A7及びそのヒト化抗体を提供する。
【0251】
1A7及び1A7由来抗体についてのCDR配列は、Kabatナンバリングによって定義されるように、重鎖可変ドメインのCDR、配列番号24~26及び軽鎖可変ドメインのCDR、配列番号27~29を含む(図49を参照されたい)。Chothiaナンバリングに基づくと、重鎖可変ドメインのCDR配列は、配列番号84~86において記載され、軽鎖可変ドメインのCDRは、配列番号87~89において記載される(図50を参照されたい)。
【0252】
1A7及び1A7由来抗体の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)についてのアミノ酸配列もまた、提供される。ヒト化1A7抗体(例えばPD1-1A7-IgG4)の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号40において記載される。ヒト化1A7抗体(例えばPD1-1A7-IgG4)の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号41において記載される。
【0253】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されるscFvは、1A7及び1A7由来抗体に由来する。いくつかの実施形態において、1A7又は1A7由来抗体(例えばヒト化抗体)は、IgG1サブタイプ又はIgG4サブタイプを有する。
【0254】
抗PD-1抗体1A7の詳細は、例えば、PCT/CN2018/077016で見つけることができ、これは、全体が参照によって本明細書において援用される。
【0255】
本開示は、CD40に特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される抗体及び抗原結合断片は、CD40に結合することが可能であり、CD40シグナル伝達経路を促進し、したがって、免疫応答を増加させることができる。本開示は、マウス抗CD40抗体6A7及びそのヒト化抗体を提供する。
【0256】
6A7及び6A7由来抗体の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)についてのアミノ酸配列もまた、提供される。ヒト化6A7抗体(例えばC40-6A7-IgG2)の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号91において記載される。ヒト化6A7抗体(例えばC40-6A7-IgG2)の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号92において記載される。
【0257】
いくつかの実施形態において、6A7又は6A7由来抗体(例えばヒト化抗体)は、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、又はIgG4サブタイプを有する。いくつかの実施形態において、本明細書において記載されるscFvは、6A7及び6A7由来抗体に由来する。いくつかの実施形態において、6A7に由来するscFvのアミノ酸配列は、配列番号16において記載される。いくつかの実施形態において、6A7に由来するscFvは、scFvの安定性を増加させるために、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10の突然変異を含む。
【0258】
抗CD40抗体6A7の詳細は、例えば、PCT/CN2018/096494で見つけることができ、これは、全体が参照によって本明細書において援用される。
【0259】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体(例えばセリクレルマブ)の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号130において記載される。いくつかの実施形態において、抗CD40抗体(例えばセリクレルマブ)の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列は、配列番号131において記載される。
【0260】
IL12経路を標的とするタンパク質複合体
本開示は、IL12経路を標的とするタンパク質複合体を提供する。いくつかの実施形態において、タンパク質複合体は、修飾免疫グロブリンである。いくつかの実施形態において、修飾免疫グロブリンは、サイトカインを含む。いくつかの実施形態において、サイトカインは、IL12(例えばヒトIL12)である。いくつかの実施形態において、IL12は、IL12aである。いくつかの実施形態において、IL12aは、マウスIL12a(mIL12a)である。いくつかの実施形態において、mIL12aは、配列番号125と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、mIL12aは、NCBI整理番号NP_001152896.1又はNP_032377.1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、IL12aは、ヒトIL12a(hIL12a)である。いくつかの実施形態において、hIL12aは、配列番号127と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、hIL12aは、NCBI整理番号NP_000873.2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、インターロイキン12は、IL12bである。いくつかの実施形態において、IL12bは、マウスIL12b(mIL12b)である。いくつかの実施形態において、mIL12bは、配列番号126と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、mIL12bは、NCBI整理番号NP_001290173.1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、IL12bは、ヒトIL12b(hIL12b)である。いくつかの実施形態において、hIL12bは、配列番号128と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、hIL12bは、NCBI整理番号NP_002178.2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、インターロイキン12ポリペプチドは、任意選択で本明細書において記載されるリンカー配列と連結された、IL12a及びIL12bの融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、IL12a及びIL12bは、非共有結合性の相互作用によって互いに結びつき、機能的IL12ユニットを形成する。
【0261】
一態様において、本開示は、免疫調節成分と融合されたターゲティング成分を含むタンパク質複合体に関する。いくつかの実施形態において、(a)ターゲティング成分は、PD-1リガンドに特異的に結合する;及び(b)免疫調節成分は、インターロイキン-12受容体(IL12R)に特異的に結合する。本明細書において使用されるように、「ターゲティング成分」は、局在して、特異的な分子又は細胞成分に結合する能力を有する分子を指す。ターゲティング成分は、抗体、抗体断片、scFv、Fc含有ポリペプチド、融合抗体、ポリペプチド、ペプチド、アプタマー、リガンド、核酸、又はその任意の組み合わせとすることができる。いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、細胞又は組織中に存在する分子に結合することができる。いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、患部の細胞又は組織、例えば癌細胞又は腫瘍における分子に結合することができる。いくつかの実施形態において、ターゲティング分子は、正常な細胞又は組織、例えば、T細胞などの免疫細胞に結合することができる。いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、免疫応答を調整する細胞の又は細胞外の分子に結合することができる。いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、PD-1リガンド(例えばPD-L1)に結合する。本明細書において使用されるように、「免疫調節成分」は、免疫細胞(例えば、T細胞、調節性T細胞、骨髄サプレッサー細胞、又は樹状細胞)の特異的な構成成分に結合し且つ免疫細胞の数又は機能を調整するリガンド、ペプチド、ポリペプチド、又はFc含有ポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、「免疫調節成分」は、免疫系を調整するサイトカイン、サイトカイン受容体、共刺激分子、又は共阻害分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、IL-12Rに特異的に結合する。いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、結合した分子の機能を増加させるアゴニストである。
【0262】
いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、IL12Rに特異的に結合する抗体若しくは抗原結合断片、単鎖可変断片(scFv)、Fc含有ポリペプチド、又は融合タンパク質を含む。
【0263】
いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、IL12Rアゴニストである。
【0264】
いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、IL12を含む。いくつかの実施形態において、IL12は、IL12a(例えばヒトIL12a)、IL12b(例えばヒトIL12b)、及び/又はその変異体を含む。
【0265】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、PD-1リガンドに特異的に結合する抗体若しくは抗原結合断片、単鎖可変断片(scFv)、Fc含有ポリペプチド、又は融合タンパク質を含む。
【0266】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、完全長抗体を含む。
【0267】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、PD-1の細胞外ドメインを含む。
【0268】
いくつかの実施形態において、PD-1リガンドは、PD-L1又はPD-L2である。
【0269】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、PD-1とPD-1リガンドとの間の相互作用を遮断する。
【0270】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、PD-1リガンドと1×10-8M未満又は1×10-9M未満のKDを有する。
【0271】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、ポリペプチドのN末端又はC末端に融合される。
【0272】
いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、ポリペプチドのN末端又はC末端に融合される。
【0273】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、CH3ドメインを含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、CH3ドメインに融合される。
【0274】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分及び免疫調節成分は、足場タンパク質(例えばアルブミン)に融合される。
【0275】
いくつかの実施形態において、タンパク質複合体は、二重特異性抗体を含む。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、PD-1リガンド及びIL12Rに結合する。
【0276】
いくつかの実施形態において、タンパク質複合体は、IL12Rに特異的に結合する2つ以上の免疫調節成分を含む。
【0277】
いくつかの実施形態において、タンパク質複合体は、PD-1リガンドに特異的に結合する2つ以上のターゲティング成分を含む。
【0278】
いくつかの実施形態において、タンパク質複合体は、2つのCH3ドメインを含むFcを含む。
【0279】
いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、Fcにおける2つのCH3ドメインのうちの1つのCH3ドメインに連結される。
【0280】
いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、2つのCH3ドメインのうちの1つのCH3ドメインのC末端に連結される。
【0281】
いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、EUナンバリングに従うCH3ドメインの344位~382位の領域でFcにおける2つのCH3ドメインのうちの1つのCH3ドメインに融合される。
【0282】
いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、IL12a及びIL12bを含む。いくつかの実施形態において、IL12aは、Fcに連結される。
【0283】
いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、IL12a及びIL12bを含む。いくつかの実施形態において、IL12bは、Fcに連結される。
【0284】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、Fcにおける2つのCH3ドメインのうちの1つのCH3ドメインに連結される。
【0285】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、Fcにおける2つのCH3ドメインのうちの1つのCH3ドメインのC末端に連結される。
【0286】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、EUナンバリングに従うCH3ドメインの344位~382位の領域でFcにおける2つのCH3ドメインのうちの1つのCH3ドメインに融合される。
【0287】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、scFv(例えば、PD-1リガンドを標的とするscFv)を含む。
【0288】
いくつかの実施形態において、タンパク質複合体は、2つの軽鎖を含む。
【0289】
いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、2つの軽鎖のうちの1つに連結される。
【0290】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、2つの軽鎖のうちの1つに連結される。
【0291】
いくつかの実施形態において、タンパク質複合体は、インターフェロン(例えば、IFNa1、IFNa2、IFNa3、IFNa4、及び/又はIFNγ)をさらに含む。
【0292】
いくつかの実施形態において、タンパク質複合体は、サイトカイン(例えば、IL2、IL7、IL15、IL18、及び/又はIL21)をさらに含む。
【0293】
いくつかの実施形態において、インターフェロン又はサイトカインは、リンカー配列によってタンパク質複合体に連結される。
【0294】
いくつかの実施形態において、タンパク質複合体は、リンカー配列(GGGGS)nを含む。いくつかの実施形態において、nは、1、2、3、4、5、6、7、又は8とすることができる。
【0295】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0296】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、又はIgG4)である。
【0297】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、相補性決定領域(CDR)1、2、及び3を含む重鎖可変領域(VH)並びにCDR1、2、及び3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0298】
いくつかの実施形態において、VH CDR1領域は、選択されたVH CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VH CDR2領域は、選択されたVH CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VH CDR3領域は、選択されたVH CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、VL CDR1領域は、選択されたVL CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VL CDR2領域は、選択されたVL CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VL CDR3領域は、選択されたVL CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、選択されたVH CDR1、2、及び3アミノ酸配列及び選択されたVL CDR1、2、及び3アミノ酸配列は、以下のうちの1つである:
(1)選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1、2、3において記載される及び選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列は、それぞれ、配列番号4、5、6において記載される;並びに
(2)選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列は、それぞれ、配列番号7、8、9において記載される及び選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列は、それぞれ、配列番号10、11、12において記載される。
【0299】
いくつかの実施形態において、ターゲティング成分は、配列番号13、14、15、又は16と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号17、18、又は19と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0300】
いくつかの実施形態において、免疫調節成分は、配列番号28と少なくとも80%同一である配列及び配列番号29と少なくとも80%同一である配列を含む。
【0301】
一態様において、本開示は、癌を有する対象を治療するための方法であって、本明細書において記載されるタンパク質複合体を含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む方法に関する。
【0302】
いくつかの実施形態において、対象は、PD-L1を発現している癌を有する。
【0303】
いくつかの実施形態において、癌は、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体による治療に対して抵抗性である。
【0304】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される方法は、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0305】
一態様において、本開示は、対象における腫瘍微小環境において免疫応答を増加させるための方法であって、本明細書において記載されるタンパク質複合体を含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む方法に関する。
【0306】
一態様において、本開示は、対象の腫瘍微小環境においてT細胞を活性化させるための方法であって、本明細書において記載されるタンパク質複合体を含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む方法に関する。
【0307】
一態様において、本開示は、IL12を対象に送達する場合に、IL12の毒性を低下させるための方法であって、本明細書において記載されるタンパク質複合体を含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む方法に関する。
【0308】
一態様において、本開示は、治療剤に共有結合で結合された、本明細書において記載されるタンパク質複合体を含む、単離された分子に関する。
【0309】
いくつかの実施形態において、治療剤は、細胞傷害性の又は細胞増殖抑制性の作用物質である。
【0310】
一態様において、本開示は、本明細書において記載されるタンパク質複合体;及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に関する。
【0311】
一態様において、本開示は、本明細書において記載されるタンパク質複合体をコードする核酸に関する。
【0312】
一態様において、本開示は、本明細書において記載される核酸を含むベクターに関する。
【0313】
一態様において、本開示は、本明細書において記載される核酸を含む宿主細胞に関する。
【0314】
一態様において、本開示は、タンパク質複合体を産生するための方法であって、タンパク質複合体を産生するのに適した条件下で本明細書において記載される宿主細胞を培養することを含む方法に関する。
【0315】
いくつかの実施形態において、本開示は、融合ポリペプチドに関する。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、IL12a(NCBI Ref:NP_000873.2)の全体又は一部分を含む。
【0316】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されるサイトカインは、IL12である。いくつかの実施形態において、IL12は、IL12b(例えばヒトIL12b)を含む。いくつかの実施形態において、IL12は、IL12a及び/又はIL12bの変異体(例えば、融合タンパク質又はその切断型タンパク質)を含む。いくつかの実施形態において、IL12は、シグナルペプチド(例えば、IL12a又はIL12bのシグナルペプチド)を含まない。
【0317】
修飾免疫グロブリンを作製するための方法
本開示はまた、本明細書において開示される単離されたポリヌクレオチド(例えば、本明細書において開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)を含む組換えベクター(例えば発現ベクター)、組換えベクターが導入された宿主細胞(すなわち、宿主細胞は、ポリヌクレオチド及び/又はポリヌクレオチドを含むベクターを含有する)、並びに組換え技術による修飾免疫グロブリンの産生をも提供する。
【0318】
本明細書において使用されるように、「ベクター」は、ベクターが宿主細胞に導入された場合に、関心のある1つ以上のポリヌクレオチドを宿主細胞に送達することが可能な任意の構築物である。「発現ベクター」は、関心のある1つ以上のポリヌクレオチドを送達し、発現ベクターが導入された宿主細胞において、コードされたポリペプチドとして発現することが可能である。したがって、発現ベクターにおいて、関心のあるポリヌクレオチドは、ベクター内で又は関心のあるポリヌクレオチドの統合部位の若しくはその近くの若しくはその側面に位置する、宿主細胞のゲノムにおいて、プロモーター、エンハンサー、及び/又はポリAテールなどの調節エレメントと作動可能に連結することによって、関心のあるポリヌクレオチドが、発現ベクターが導入された宿主細胞において翻訳されるように、ベクターにおいて、発現のために配置される。
【0319】
ベクターは、当技術分野において知られている方法、例えば、エレクトロポレーション、化学的トランスフェクション(例えばDEAE-デキストラン)、形質転換、トランスフェクション、並びに感染及び/又は形質導入(例えば、組換えウイルスにより)によって、宿主細胞に導入することができる。したがって、ベクターの非限定的な例は、ウイルスベクター(組換えウイルスを生成するために使用することができる)、ネイキッドDNA又はRNA、プラスミド、コスミド、ファージベクター、及び陽イオン縮合剤と結びついたDNA又はRNA発現ベクターを含む。
【0320】
発現ベクターは、少なくとも1つの選択可能なマーカーを含むことができる。そのようなマーカーは、例えば、真核細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼ又はネオマイシン耐性並びに大腸菌(E.coli)及び他の細菌における培養についてはテトラサイクリン又はアンピシリン耐性遺伝子を含む。適切な宿主の代表的な例は、大腸菌(E.coli)細胞、ストレプトマイセス細胞、及びサルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)細胞などの細菌細胞;酵母細胞などの真菌細胞;ショウジョウバエS2細胞及びスポドプテラSf9細胞などの昆虫細胞;CHO細胞、COS細胞、Bowesメラノーマ細胞、及びHK293細胞などの動物細胞;並びに植物細胞を含むが、これらに限定されない。本明細書において記載される宿主細胞に適切な培養培地及び条件は、当技術分野において知られている。
【0321】
小胞体内腔への、細胞膜周辺腔への、又は細胞外環境への翻訳タンパク質の分泌のために、適切な分泌シグナルは、発現されたポリペプチドの中に組み込まれてもよい。シグナルは、ポリペプチドに対して内在性のものであってもよい又はシグナルは異種のシグナルであってもよい。
【0322】
抗体又は抗原結合断片の追加の改変を行うことができる。例えば、(1つ以上の)システイン残基をFc領域中に導入することができ、それによりこの領域中の鎖間ジスルフィド結合形成を可能とする。こうして生成されたホモダイマー抗体は、任意の増加したインビトロ及び/又はインビボ半減期を有し得る。増加したインビトロ及び/又はインビボ半減期を有するホモダイマー抗体は、例えば、Wolff et al.,“Monoclonal antibody homodimers:enhanced antitumor activity in nude mice.”Cancer research 53.11(1993):2560-2565に記載のヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製することもできる。或いは、二重Fc領域を有する抗体を操作することができる。
【0323】
一部の実施形態において、改変免疫グロブリンに対して共有結合的改変を行うことができる。これらの共有結合的改変は、化学的若しくは酵素的合成により、又は酵素的若しくは化学的開裂により行うことができる。抗体又は抗体断片の共有結合的改変の他のタイプは、抗体又は断片の標的化されたアミノ酸残基を、選択された側鎖又はN若しくはC末端残基と反応し得る有機誘導体化剤と反応させることにより分子中に導入される。
【0324】
一部の実施形態において、Fc領域に(直接的又は間接的に)付着しているフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体組成物中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%又は20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号パンフレットに記載のとおりMALDI-TOF質量分析により測定してAsn297に付着している全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)の総和に対するAsn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することにより決定される。Asn297は、Fc領域中の約297位(Fc領域残基のEU番号付け;又はKabat番号付けにおける314位)に局在するアスパラギン残基を指し;しかしながら、Asn297は、抗体中のマイナーな配列変異に起因して297位の約±3アミノ酸上流又は下流、すなわち、294~300位にも局在し得る。このようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。一部の実施形態において、グリカン不均一性を低減させるため、抗体のFc領域をさらに操作して297位におけるアスパラギンをアラニンに置き換えることができる(N297A)。
【0325】
一部の実施形態において、Fab-アーム交換を回避することにより産生効率を容易にするため、抗体のFc領域をさらに操作してIgG4の228位(EU番号付け)におけるセリンをプロリンに置き換えた(S228P)。S228突然変異に関する詳細な説明は、例えば、参照により全体として組み込まれるSilva et al.“The S228P mutation prevents in vivo and in vitro IgG4 Fab-arm exchange as demonstrated using a combination of novel quantitative immunoassays and physiological matrix preparation.”Journal of Biological Chemistry 290.9(2015):5462-5469に記載されている。
【0326】
本開示はまた、本明細書に記載の任意のヌクレオチド配列と少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である核酸配列、及び本明細書に記載の任意のアミノ酸配列と少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるアミノ酸配列を提供する。
【0327】
一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載の任意のペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は本明細書に記載の任意のヌクレオチド配列によりコードされる任意のアミノ酸配列に関する。一部の実施形態において、核酸配列は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、200、250、300、350、400、500、又は600個未満のヌクレオチドである。一部の実施形態において、アミノ酸配列は、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400又は500個未満のアミノ酸残基である。
【0328】
一部の実施形態において、アミノ酸配列は(i)アミノ酸配列を含み;又は(ii)アミノ酸配列からなり、アミノ酸配列は、本明細書に記載の配列のいずれか1つである。
【0329】
一部の実施形態において、核酸配列は、(i)核酸配列を含み;又は(ii)核酸配列からなり、核酸配列は、本明細書に記載の配列のいずれか1つである。
【0330】
2つのアミノ酸配列の、又は2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するため、配列を最適比較目的のためにアラインする(例えば、最適アラインメントのために第1及び第2のアミノ酸又は核酸配列の一方又は両方にギャップを導入することができ、比較目的のために非相同配列を無視することができる)。次いで、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドにより占有される場合、その分子はその位置において同一である(本明細書において使用されるとき、アミノ酸又は核酸「同一性」は、アミノ酸又は核酸「相同性」と同等である)。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適アラインメントのための導入が必要なギャップの数、及びそれぞれのギャップの長さを考慮する、それらの配列により共有される同一位置の数の関数である。例えば、配列の比較及び2つの配列間のパーセント同一性の決定は、Blossum 62スコア行列を12のギャップペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティ、及び5のフレームシフトギャップペナルティで使用して達成することができる。
【0331】
処置方法
本明細書に記載の改変免疫グロブリンは、種々の治療目的のために使用することができる。
【0332】
一態様において、本開示は、対象における癌を処置する方法、対象における腫瘍容積の増加の速度を経時的に低減させる方法、転移を発症するリスクを低減させる方法、又は対象における追加の転移を発症するリスクを低減させる方法を提供する。一部の実施形態において、処置は、癌の進行を休止させ、減速させ、遅滞させ、又は阻害し得る。一部の実施形態において、処置は、対象における癌の1つ以上の症状の数、重症度、及び/又は継続期間の低減をもたらし得る。
【0333】
一態様において、本開示は、治療有効量の本明細書に開示される改変免疫グロブリンをそれが必要とされる対象(例えば、癌、例えば、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、カルチノイド癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、神経膠腫、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、リンパ腫、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、結腸直腸癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、膀胱癌、尿道癌、又は血液学的悪性腫瘍を有し、又は有すると特定若しくは診断される対象に投与することを含む方法を特徴とする。一部の実施形態において、癌は、切除不能黒色腫又は転移性黒色腫、非小細胞肺癌、(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、膀胱癌、又は転移性ホルモン抵抗性前立腺癌である。一部の実施形態において、対象は、固形腫瘍を有する。一部の実施形態において、癌は、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)、腎細胞癌(RCC)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、又は結腸直腸癌である。一部の実施形態において、対象は、ホジキンリンパ腫を有する。一部の実施形態において、対象は、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、胃癌、尿路上皮癌、メルケル細胞癌、又は頭頸部癌を有する。一部の実施形態において、癌は、黒色腫、膵臓癌、中皮腫、血液学的悪性腫瘍、特に非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、又は進行固形腫瘍である。
【0334】
一部の実施形態において、本明細書に開示される組成物及び方法は、癌のリスクがある患者の処置に使用することができる。癌を有する患者は、当該技術分野において公知の種々の方法で特定することができる。
【0335】
一態様において、本開示は、異常又は不所望な免疫応答に伴う障害、例えば、自己免疫性障害を処置し、予防し、又はその発症リスクを低減させる方法を提供する。一部の実施形態において、本明細書に記載の方法を使用して炎症を処置することができる。一部の実施形態において、炎症性又は自己免疫性疾患は、関節炎、大腸炎、乾癬、喘息、クローン病、又は多発性硬化症である。
【0336】
本明細書において使用されるとき、「有効量」は、有益な又は所望の結果、例として、疾患、例えば、癌又は自己免疫性疾患の進行の休止、減速、遅滞、又は阻害を生じさせるために十分な量又は投与量を意味する。有効量は、例えば、治療剤を投与すべき対象の年齢及び体重、症状の重症度及び投与経路に応じて変動し、したがって、投与は個別に決定することができる。
【0337】
有効量は、1回以上の投与で投与することができる。例として、改変免疫グロブリンの有効量は、患者における自己免疫性疾患又は癌の進行を改善し、停止させ、安定化させ、好転させ、阻害し、減速させ、及び/若しくは遅延させるために十分な量であり、又は細胞(例えば、生検細胞、本明細書に記載の癌細胞のいずれか、細胞系(例えば、癌細胞系))のインビトロ増殖を改善し、停止させ、安定化させ、好転させ、減速させ、及び/又は遅延させるために十分な量である。当該技術分野において理解されるとおり、改変免疫グロブリンの有効量は、とりわけ、患者の病歴並びに他の要因、例えば、使用される治療剤のタイプ(及び/又は投与量)に応じて変動し得る。
【0338】
本明細書に記載の改変免疫グロブリン、及び/又は組成物の投与のための有効量及びスケジュールは、実験的に決定することができ、そのような決定は当業者の技能の範囲内である。当業者は、投与しなければならない投与量が、例えば、本明細書に開示される改変免疫グロブリン、及び/又は組成物を受ける哺乳類、投与経路、使用される本明細書に開示される改変免疫グロブリン、及び/又は組成物の特定のタイプ、並びに哺乳類に投与されている他の薬物に応じて変動することを理解する。
【0339】
改変免疫グロブリンの有効量の典型的な1日投与量は、0.01mg/kg~100mg/kg(患者の体重1kg当たりのmg)である。一部の実施形態において、投与量は、100mg/kg、10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg、又は0.1mg/kg未満であり得る。一部の実施形態において、投与量は、10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg、0.1mg/kg、0.05mg/kg、又は0.01mg/kg超であり得る。一部の実施形態において、投与量は、約10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.9mg/kg、0.8mg/kg、0.7mg/kg、0.6mg/kg、0.5mg/kg、0.4mg/kg、0.3mg/kg、0.2mg/kg、又は0.1mg/kgである。
【0340】
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、改変免疫グロブリン、又は医薬組成物(例えば、本明細書に記載の改変免疫グロブリン、又は医薬組成物のいずれか)、及び任意選択で、少なくとも1つの追加の治療剤を対象に少なくとも週1回(例えば、週1回、週2回、週3回、週4回、1日1回、1日2回、又は1日3回)投与することができる。一部の実施形態において、少なくとも1つの改変免疫グロブリン及び少なくとも1つの追加の治療剤を、同じ組成物(例えば、液体組成物)中で投与する。一部の実施形態において、少なくとも1つの改変免疫グロブリン及び少なくとも1つの追加の治療剤を、2つの異なる組成物(例えば、少なくとも1つの改変免疫グロブリンを含有する液体組成物及び少なくとも1つの追加の治療剤を含有する固体経口組成物)中で投与する。一部の実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤を、ピル剤、錠剤、又はカプセル剤として投与する。一部の実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤を、徐放経口配合物中で投与する。
【0341】
一部の実施形態において、1つ以上の追加の治療剤を、対象に改変免疫グロブリンの投与前、又はその後に投与することができる。一部の実施形態において、1つ以上の追加の治療剤及び少なくとも1つの改変免疫グロブリンを、対象に、対象における1つ以上の追加の治療剤及び少なくとも1つの改変免疫グロブリンの生物活性期間が重複するように投与する。
【0342】
一部の実施形態において、対象に、少なくとも1つの改変免疫グロブリンを長期間(例えば、少なくとも1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、1年、2年、3年、4年、又は5年の期間にわたり)にわたり投与することができる。医療従事者は、処置の有効性の診断又は追跡(例えば、癌の少なくとも1つの症状の観察)のために本明細書に記載の方法のいずれかを使用して処置期間の長さを決定することができる。
【0343】
一部の実施形態において、1つ以上の追加の治療剤を対象に投与することができる。追加の治療剤は、B-Rafの阻害剤、EGFR阻害剤、MEKの阻害剤、ERKの阻害剤、K-Rasの阻害剤、c-Metの阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害剤、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤、Aktの阻害剤、mTORの阻害剤、二重PI3K/mTOR阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤、並びにイソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)及び/又はイソクエン酸脱水素酵素2(IDH2)の阻害剤からなる群から選択される1つ以上の阻害剤を含み得る。一部の実施形態において、追加の治療剤は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ-1)(IDO1)の阻害剤(例えば、エパカドスタット)である。一部の実施形態において、追加の治療剤は、HER3の阻害剤、LSD1の阻害剤、MDM2の阻害剤、BCL2の阻害剤、CHK1の阻害剤、活性化ヘッジホッグシグナリング経路の阻害剤、及びエストロゲン受容体を選択的に分解する薬剤からなる群から選択される1つ以上の阻害剤を含み得る。
【0344】
一部の実施形態において、追加の治療剤は、トラベクテジン、nab-パクリタキセル、トレバナニブ、パゾパニブ、セジラニブ、パルボシクリブ、エベロリムス、フルオロピリミジン、IFL、レゴラフェニブ、Reolysin、Alimta、Zykadia、Sutent、テムシロリムス、アキシチニブ、エベロリムス、ソラフェニブ、Votrient、パゾパニブ、IMA-901、AGS-003、カボザンチニブ、ビンフルニン、Hsp90阻害剤、Ad-GM-CSF、テマゾロミド(Temazolomide)、IL-2、IFNa、ビンブラスチン、Thalomid、ダカルバジン、シクロホスファミド、レナリドミド、アザシチジン、レナリドミド、ボルテゾミド(bortezomid)、アムルビシン、カルフィルゾミブ、プララトレキサート、及びエンザスタウリンからなる群から選択される1つ以上の治療剤を含み得る。
【0345】
一部の実施形態において、追加の治療剤は、アジュバント、TLRアゴニスト、腫瘍壊死因子(TNF)アルファ、IL-1、HMGB1、IL-10アンタゴニスト、IL-4アンタゴニスト、IL-13アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、HVEMアンタゴニスト、ICOSアゴニスト、CX3CL1を標的化する処置、CXCL9を標的化する処置、CXCL10を標的化する処置、CCL5を標的化する処置、LFA-1アゴニスト、ICAM1アゴニスト、及びセレクチンアゴニストからなる群から選択される1つ以上の治療剤を含み得る。一部の実施形態において、カルボプラチン、nab-パクリタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、ペメトレキセド、ゲムシタビン、FOLFOX、又はFOLFIRIを対象に投与する。
【0346】
一部の実施形態において、追加の治療剤は、抗OX40抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗LAG-3抗体、抗TIGIT抗体、抗BTLA抗体、抗CTLA-4抗体、又は抗GITR抗体である。
【0347】
医薬組成物及び投与経路
本明細書において、本明細書に記載の改変免疫グロブリンの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、又は4つ)を含有する医薬組成物も提供される。本明細書に記載の改変免疫グロブリンのいずれかの2つ以上(例えば、2、3、又は4つ)が、任意の組合せで医薬組成物中に存在し得る。医薬組成物は、当該技術分野において公知の任意の様式で配合することができる。
【0348】
「薬学的に許容可能な担体」は、許容可能な生物活性及び対象に非毒性である、活性成分以外の医薬配合物中の成分を指す。本明細書に開示される医薬組成物中の使用のための薬学的に許容可能な担体としては、例えば、薬学的に許容可能な液体、ゲル、又は固体担体、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、酸化防止剤、麻酔剤、懸濁化/ディスペンディング剤(dispending agent)、封鎖又はキレート化剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は非毒性補助物質、当該技術分野において公知の他の構成成分、又はそれらの種々の組合せを挙げることができる。一部の好適な構成成分としては、例えば、酸化防止剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、保存剤、滑沢剤、香味剤、増粘剤、着色剤、乳化剤又は安定剤、例えば、糖及びシクロデキストリンを挙げることができる。好適な酸化防止剤としては、例えば、メチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、ブチルヒドロキサニソール(butylated hydroxanisol)、ブチルヒドロキシトルエン、及び/又は没食子酸プロピルを挙げることができる。本明細書に開示されるとおり、本明細書に提供される医薬組成物中の1つ以上の酸化防止剤、例えば、メチオニンの包含は、ポリペプチド複合体又は二重特異性ポリペプチド複合体の酸化を減少させる。酸化のこの低減は、結合親和性の損失を妨害し、又は低減させ、それによりタンパク質安定性を改善し、保存期間を最大化する。したがって、ある実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチド複合体又は二重特異性ポリペプチド複合体及び1つ以上の酸化防止剤、例えば、メチオニンを含む組成物が提供される。
【0349】
医薬組成物は、その意図される投与経路(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、又は腹腔内)と適合性になるようにも配合される。組成物の製剤を配合し、アンプル、ディスポーザブルシリンジ、又は複数回用量バイアル中に封入することができる。要求される場合(例えば、注射用配合物におけるように)、適切な流動性を、例えば、コーティング、例えば、レシチン、又は界面活性剤の使用により維持することができる。改変免疫グロブリンの吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)を含めることにより延長させることができる。或いは、生分解性、生物適合性ポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸)を含み得るインプラント及びマイクロカプセル化送達系により制御放出を達成することができる。
【0350】
本明細書に記載の改変免疫グロブリンのいずれかの1つ以上を含有する組成物は、非経口(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、又は腹腔内)投与のために、単位剤形(すなわち、投与の簡便性及び投与量の均一性のための、所定量の活性化合物を含有する物理的に区別された単位)で配合することができる。
【0351】
非経口投与のための医薬組成物は、好ましくは、無菌であり、実質的に等張性であり、適正製造規範(GMP)条件下で製造される。医薬組成物は、単位剤形(すなわち、単回投与のための投与量)で提供することができる。注射のため、改変免疫グロブリンを水溶液中で、好ましくは、生理学的に適合性の緩衝液中で配合して注射部位における不快感を低減させることができる。
【0352】
例示的な用量としては、対象の体重1キログラム当たりの本明細書に記載の改変免疫グロブリンのいずれかのミリグラム又はマイクログラム量(例えば、約1μg/kg~約500mg/kg;約100μg/kg~約500mg/kg;約100μg/kg~約50mg/kg;約10μg/kg~約5mg/kg;約10μg/kg~約0.5mg/kg;約1μg/kg~約50μg/kg;約1mg/kg~約10mg/kg;又は約1mg/kg~約5mg/kg)が挙げられる。これらの用量が広範囲をカバーする一方、当業者は、治療剤が、改変免疫グロブリンを含め、その効力について変動し、有効量を当該技術分野において公知の方法により決定することができることを理解する。典型的には、比較的低い用量を最初に投与し、担当ヘルスケア従事者又は獣医従事者(治療用途の場合)又は研究者(依然として開発段階において機能する場合)は続いて及び徐々に適切な応答が得られるまで用量を増加させることができる。さらに、任意の特定の対象についての規定の用量レベルは、種々の要因、例として、用いられる規定の化合物の活性、年齢、体重、全身健康状態、性別、及び対象の食事、投与時間、投与経路、排泄速度、及び改変免疫グロブリンのインビボ半減期に依存することが理解される。
【0353】
医薬組成物は、容器、パック、又は分注器中に、投与用指示書と一緒に含めることができる。本開示はまた、本明細書に記載の種々の使用のための改変免疫グロブリンを製造する方法を提供する。
【実施例
【0354】
本発明は、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を制限することのない、以下の実施例にさらに説明される。
【0355】
実施例1.抗体の作製及び精製の方法
ExpiCHO-S細胞(Thermo-Fisher,GIBCO,カタログ番号A29133)に、抗体重鎖及び軽鎖をコードするプラスミドをコトランスフェクトした(モル比1:1)。振盪インキュベータ内でトランスフェクト細胞を35℃及び8%CO2で培養した。12日後に、細胞培養液から上清を採取した。次いで、タンパク質Aビーズで充填され、AKTA(商標)AVANT150システムに接続された、クロマトグラフィーカラムによって抗体を精製した。
【0356】
実施例2.C末端又はFab領域でのPD-L1抗体修飾
多くの二重特異性抗体フォーマット及び免疫サイトカインフォーマットは、様々な治療目的に提唱される(例えば、図20A~20Dを参照されたい)。その概念上の利点にもかかわらず、これらの抗体を作製及び製造することは難しい。これらの抗体フォーマットに対する多くの既存の製造アプローチは、効率が低く、企図される精製プロセスによって制限される。ノブ・イン・ホール修飾を有する二重特異性抗体でさえ、誤対合及び低収率の問題をまだ抱えていた。
【0357】
これらの二重特異性抗体及び免疫サイトカインの発現効率及び安定性を評価するために、実験を行った。プラスミドは、抗PD-L1 IgG1抗体の重鎖C末端で連結される、マウスインターロイキン7(mIL7、分子量:17.5kDa)を含む融合タンパク質を発現するように作製された(PDL1-アベルマブ;重鎖配列番号35及び軽鎖配列番号4)。融合タンパク質はPDL1-mIL7-HCと呼ばれ、その構造はHCとして図20Aで図解される。サイトカイン(例えば、mIL7)が、重鎖のC末端に連結される。
【0358】
プラスミドはまた、抗PD-L1抗体軽鎖のC末端にmIL7を連結するように作製された(PDL1-mIL7-LC)。PDL1-mIL7-LC融合タンパク質の概略的構造は図20AにLCとして示される。サイトカイン(例えば、mIL7)は、軽鎖のC末端に結合される。
【0359】
2種類の融合タンパク質の発現レベルを評価した。具体的には、ExpiCHO-S細胞をプラスミドによってトランスフェクトし、発現された融合タンパク質を精製し、ゲル電気泳動によって分析した。図1に示すように、レーン6のPDL1-mIL7-HC融合タンパク質は、天然ゲルにおいて複数の非標的バンドを示した。レーン11のPDL1-mIL7-LC融合タンパク質は、天然ゲルにおいて可視バンドを持たず、発現レベルが低いことを意味する。
【0360】
非対称抗体も発現させて、PD-L1抗体のFabアーム1本を、配列番号12に記載の配列(NP_068575.1のアミノ酸25~162)を有するヒトインターロイキン21(hIL21)と置き換えた。ノブ・イン・ホール(KIH)修飾も、Fc領域に導入した。融合タンパク質PDL1-hIL21-KIH構造を図20AにFab-サイトカイン-KIHとして示し、円はhIL21を表す。それは、重鎖のヒンジ領域に連結され、精製され、ゲル電気泳動によって分析された。図2の結果から、レーン10のPDL1-hIL21-KIHが、天然ゲルにおいて複数の非標的バンドを示したことが分かった。
【0361】
要約すれば、対称構造を有する修飾抗体(例えば、PDL1-mIL7-HC、又はPDL1-mIL7-LC)の発現レベルは、様々なプロジェクト間で大きく異なった。発現レベルは低く、発現された試料は非標的タンパク質を有した。同様に、非対称構造を有する修飾抗体(例えば、PDL1-hIL21-KIH)は、試料中の非標的タンパク質の量が多いため、精製するのが難しかった。
【0362】
実施例3.3A部位で融合されたPD-L1抗体
図3に示すように、抗PD-L1 IgG1抗体(PDL1-アベルマブ)の3A部位に融合された、マウスインターロイキン7ドメインを含む融合タンパク質を発現するように、プラスミドを作製した。融合部位が、PD-L1抗体の重鎖CH3ドメインの3A部位内に位置するため、融合タンパク質をPDL1-mIL7-3Aと名付けた(3Aとして図20Aに示す構造、重鎖は配列番号5である)。
【0363】
抗体の重鎖CH3ドメインの他の融合部位も試験した(図3)。例えば、3B部位(配列番号6);3C部位(配列番号7);及び3D部位(配列番号8)でIL7が融合された。ヒトIgG1、IgG2及びIgG4(配列番号1~3)重鎖定常領域間の配列アラインメントを図4に示し、アミノ酸配列は以下の通りに示す(配列及びEU番号付けは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際免疫遺伝学情報システム(the international ImMunoGeneTics information system)(IMGT)に記載されている)。IgG1、IgG2及びIgG4のアイソフォーム(配列番号32~34)を図48に示す。
【化1】
【0364】
さらに、マウスインターフェロンα4(mIFNa4)(配列番号10)が、リンカー配列(配列番号9)を介してmIL7-融合抗PD-L1抗体重鎖のC末端に連結された(3A-HCとして図20Aに示す構造)。構築物を用いて、CHO細胞をトランスフェクトし、発現レベルを評価した。以下の表に示すように、3A融合部位は、3B、3C又は3D部位での融合を有する抗体と比較して、最も高い発現レベルを示した。
【0365】
【表5】
【0366】
タンパク質Aクロマトグラフィーによって、融合タンパク質を精製し、天然ゲルによって分析した。図5Aに示すように、PDL1-mIL7-3A(レーン1)、PDL1-mIL7-3A-mIFNa4(レーン5)及びPDL1-mIL7-3B-mIFNa4(レーン6)はそれぞれ、明確なバンドを示し、表に決定される発現レベルが確認された。PDL1-mIL7-3D(レーン4)が、PDL1-mIL7-3B-mIFNa4(レーン6)と同等の発現レベルを有すると決定されたが、図5Aにおいて1つの明確なバンドを示さず、PDL1-mIL7-3Dは凝集を有したことを意味する。PDL1-mIL7-3A、PDL1-mIL7-3B、PDL1-mIL7-3A-mIFNa4及びPDL1-mIL7-3B-mIFNa4はすべて、1つの明確なバンドを有し、これらの修飾抗体は比較的高い純度を有したことを意味する。
【0367】
PDL1-mIL7-3A及びPDL1-mIL7-3A-mIFNa4の結果はさらに、図5B~5Cにおけるサイズ排除クロマトグラフィーHPLC(SEC-HPLC)によって確認された。図5B~5Cに示すように、SEC-HPLCからの結果は、PDL1-mIL7-3A及びPDL1-mIL7-3A-mIFNa4に関して主要な1つのピークを有するのみであり、これらの修飾抗体は高純度と共に高い発現レベルを有し、発現産物は安定であり、凝集体を形成しなかったことを示す。
【0368】
PD-L1タンパク質への結合親和性の決定
予め固定化されたタンパク質Aセンサーチップを備えたBiacore(商標)(Biacore,INC、Piscataway N.J.)T200バイオセンサーを使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって、精製6Xヒスチジンタグ付きヒトPD-L1(hPDL1-His)及びPDL1-アベルマブ、PDL1-mIL7-3A、又はPDL1-mIL7-3A-mIFNa4の間の結合親和性を測定した。PDL1-mIL7-3Aにおいて、mIL7は3A部位に融合された。PDL1-mIL7-3A-mIFNa4において、mIFNa4は、抗体PDL1-mIL7-3AのC末端に連結された。
【0369】
融合タンパク質(1μg/mL)をBiacore(商標)T200バイオセンサーに10μL/分で20秒間注入して、目的のタンパク質密度を達成した。次いで、6Xヒスチジンタグ付きヒトPD-L1タンパク質(hPDL1-His)を30μL/分で180秒間注入した。解離を300秒間モニターした。各滴定の最後の注入後に、チップをグリシンで再生した(pH2.0、30μL/分で5秒間)。当業者であれば理解されるように、パラメーター(例えば、抗体濃度)の適切な調節を用いた同じ方法が、各試験抗体に関して行われた。試験抗体の結果を以下の表に示す。
【0370】
【表6】
【0371】
結合速度定数(kon)及び解離速度定数(koff)が、Biacore(商標)T200評価ソフトウェア3.0を使用して1:1 Langmuir結合モデルにデータを一括で適合することによって同時に得られた(Karlsson,R.Roos,H.Fagerstam,L.Petersson,B.,1994.Methods Enzymology 6.99-110)。親和性は、動態学的速度定数(KD=koff/kon)の商から計算された。この結果から、未修飾の親抗PD-L1抗体(PDL1-アベルマブ)と比較して、PDL1-mIL7-3A及びPDL1-mIL7-3A-mIFNa4は、ヒトPD-L1タンパク質に対する同様な結合親和性を有することが示された。
【0372】
サイトカイン活性の検証
以下の材料を使用した。
【0373】
Beyotime Biotechnologyから赤血球溶解バッファーを購入した(カタログ番号C3702)。
【0374】
抗CD16/32(aCD16/32)抗体をMiltenyi Biotecから購入した。
【0375】
ウシ胎児血清(FBS)をExCell Biotech Co,Ltdから購入した。
【0376】
ホスホ-STAT5(Tyr694)モノクローナル抗体(SRBCZX)APC、eBioscience(商標)をThermoFisher(カタログ番号17-9010-41)から購入した。
【0377】
ホスホ-STAT1(Ser727)組換えウサギモノクローナル抗体(Stat1S727-C6)、PEをThermoFisher(カタログ番号MA5-28056)から購入した。
【0378】
CD8aモノクローナル抗体(53-6.7)、FITC、eBioscience(商標)をThermoFisher(カタログ番号11-0081-82)から購入した。
【0379】
挿入されたmIL7及びmIFNa4の生物活性を測定した。マウス脾臓をBALB/cバックグラウンドマウスから採取した。脾臓を粉砕し、フィルターに通した。フィルターを3mlPBSで洗浄し、粉砕された脾臓細胞を400g/分で3分間遠心した。遠心後、上清を廃棄し、赤血球溶解バッファー1mlを添加して、4℃で15分間、赤血球を溶解した。残りの細胞をPBS5mlによって再懸濁し、次いで400g/分で3分間遠心し、続いて遠心後に上清を除去した。細胞の再懸濁、遠心、及び上清の除去を1回繰り返した。残りの細胞をPBS200μlによって再懸濁し、aCD16/32(抗マウスCD16/32)抗体を添加して、細胞を4℃で15分間ブロックした。ブロックされた細胞をさらに、PBS10mlに希釈し、細胞数をカウントした。次いで、細胞を400g/分にて3分間遠心し、続いて上清を除去した。適切な体積のRPMI 1640培地を添加して、細胞力価を調節した。
【0380】
特定のサイトカイン(例えば、マウスインターロイキン7又はmIL7)、又はサイトカインドメインを含む融合タンパク質によって、細胞を処理した。具体的には、各ウェルが105細胞を有するように、細胞浮遊液200μlを96ウェルプレートの各ウェルに添加した。次いで、PBS(5μl)、mIL7タンパク質(100ng)、PDL1-mIL7-3A(550ng)又はPDL1-mIL7-3A-mIFNa4(650ng)を添加して、ウェルをそれぞれ分離した。mIL7群、PDL1-mIL7-3A群、及びPDL1-mIL7-3A-mIFNa4群におけるmIL7はおよそ等しい。細胞を穏やかに混合し、37℃で30分間インキュベートした。
【0381】
4%ホルムアルデヒド(最終濃度)-PBS溶液によって、処理細胞を室温で15分間透過処理した。次いで、細胞をPBSで1回洗浄し、100%氷冷メタノールに再懸濁し、氷浴中で30分間インキュベートした。インキュベーション後に、PBS(0.5%BSAで補充された)で細胞を3回洗浄した。
【0382】
1つの実験において、mIL7活性を測定した。APC標識ホスホ-STAT5(Tyr694)モノクローナル抗体(SRBCZX,eBioscience(商標))及びFITC標識CD8aモノクローナル抗体(53-6.7;eBioscience(商標))を添加して、細胞を4℃で30分間染色した。染色工程後、染色細胞をPBSで洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。mIL7はTyr694にてマウス脾臓STAT5をリン酸化することができるため、mIL7の存在は、APC(アロフィコシアニン)の蛍光シグナルの増加によって示される。図6に示すように、PBS処理脾臓細胞(ブランク)と比べて、mIL7タンパク質、PDL1-mIL7-3A及びPDL1-mIL7-3A-mIFNa4はすべて、APCレベルの増加を示した。
【0383】
別個の実験において、同様な方法によってmIFNa4活性を測定した。ホスホ-STAT1(Ser727)組換えウサギモノクローナル抗体(Stat1S727-C6)及びFITC標識CD8aモノクローナル抗体(53-6.7;eBioscience(商標))を添加し、細胞を4℃で30分間染色した。染色工程後、染色細胞をPBSで洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。mIFNa4はSer727にてマウス脾臓STAT1をリン酸化することができるため、mIFNa4の存在は、蛍光シグナルの増加によって示される。図7に示すように、PDL1-mIL7-3A-mIFNa4のみがシグナルの増加を示したのに対して、PDL1-mIL7-3Aは、PBS処理脾臓細胞(ブランク)と比べてシグナルが変化しなかった。
【0384】
上記の実験から、修飾抗体における挿入mIL7及びmIFNa4はその生物活性を保持することが示された。
【0385】
Fc受容体に対する結合親和性の決定
予め固定化されたタンパク質Aセンサーチップを備えたBiacore(商標)(Biacore,INC,Piscataway N.J.)T200バイオセンサーを使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって、種々のFc受容体に対するPD-L1抗体(PDL1-アベルマブ)、PDL1-mIL7-3A-mIFNa4、及びPDL1-mIL7-3Aの結合親和性を測定した。Fc受容体は、FcγRIIB(FcγRIIB-Acro)、FcγRIIA(FcγRIIA-H167-Acro)、FcγRIIIA(FcγRIIIA-V176-Acro)、FcγRIIIB(FcγRIIIB-NA1-Acro)、FcγRI(FcγRI-Sino)、及びFcRn(FcRn-Acro)を含んだ。
【0386】
異なる実験において、種々のFc受容体に対するPD1-PL1-3F2-FV3A-IgG1、AB-IgG1(PD1-PL1-3F2-FV3A-IgG1と同じIgG1サブタイプを有する対照抗体)、PDL1-C40-6A7-FV3A-IgG4、及びAB-IgG4(PDL1-C40-6A7-FV3A-IgG4と同じIgG4サブタイプを有する対照抗体)の結合親和性が、上述のBiacore(商標)を用いて測定された。Fc受容体は、FcγRI(FcγRI-Sino)、FcγRIIA(FcγRIIA-H167-Acro及びFcγRIIA-R167)、FcγRIIB、FcγRIIIA(FcγRIIIA-F176及びFcγRIIIA-V176-Acro)、及びFcγRIIIB(FcγRIIIB-NA1-Acro)を含んだ。
【0387】
具体的には、PD1-PL1-3F2-FV3A-IgG1は、抗PD-L1抗体PDL1-3F2(PDL1-3F2-IgG1、又は3F2)のVH及びVL配列を有するscFv(配列番号17)を抗PD-1抗体PD1-1A7-IgG4の3A部位(VH配列番号40;VL配列番号41)に融合し、続いてIgG1サブタイプでIgG4を置き換えることによって生成された。PDL1-C40-6A7-FV3A-IgG4は、抗CD40抗体C40-6A7(6A7)のVH及びVL配列を有するscFv(配列番号16)をPDL1-アベルマブの3A部位に融合し、続いてIgG4サブタイプでIgG1を置き換えることによって生成された。図20Aに、2つの融合タンパク質構造をFV3Aとして示す。
【0388】
【表7】
【0389】
この結果を図8A~8Bに示し、抗PD-L1抗体でのmIL7及びmIFNa4の融合によって、親抗PD-L1抗体と比較して、FcγRIIA、FcγRIIIA、FcγRIIIB又はFcRnに対する抗体の結合親和性は実質的に変化しなかった。さらに、IgG1又はIgG4サブタイプを有する融合scFvによって、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIA、及びFcγRIIIBなどの種々のFc受容体に対する抗体の結合親和性は実質的に変化しなかった。
【0390】
タンパク質の安定性試験
融合タンパク質PDL1-mIL7-3Aを-20℃又は40℃で1か月間保管し、次いで天然ゲル及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析した。結果を図9A~9Cに示す。天然ゲルによって示される、各処理タンパク質の見掛け分子量(MW)は、理論値とも比較された(図9B)。
【0391】
-20℃で保管されたタンパク質は明確な1つのバンドを示した。40℃で1か月間保管した後、PDL1-mIL7-3Aは安定な状態を維持した。
【0392】
実施例4.3A挿入とノブ・イン・ホール(KIH)との組み合わせ
3A挿入とKIH修飾との適合性を試験した。4つの融合タンパク質がデザインされた(図10B)。
【0393】
発現された融合タンパク質を精製し、ゲル電気泳動によって分析した。図10Aに示すように、ノブ鎖(PDL1-mIL7-3A-knob、3A-knobとして図20Aに示す構造)で、ホール鎖(PDL1-mIL7-3A-hole、3A-holeとして図20Aに示す構造)で、又は両方の鎖(PDL1-mIL7-Fab-half-3A-KIH、Fab-half-3A-KIHとして図20Aに示す構造)で、融合されたmIL7を有する融合タンパク質は1つの明確な主要なバンドを示した。したがって、3A挿入は、KIH修飾と併せて使用することができる。
【0394】
実施例5.hIL7と融合されたPD-L1抗体
PD-L1 IgG1抗体PDL1-3F2(PDL1-3F2-IgG1、又は3F2;重鎖配列番号36;軽鎖配列番号37)が、3A部位(3F2-hIL7-3A)にてヒトインターロイキン7(hIL7)と、又は3A部位にてhIL7(配列番号11)及び重鎖C末端(3F2-hIL7-3A-mIFNa4)にてmIFNa4(配列番号10)とそれぞれ融合された。
【0395】
融合タンパク質、3F2-hIL7-3A及び3F2-hIL7-3A-mIFNa4を精製し、SEC及びゲル電気泳動によって分析した。その結果を図11A~11C、及び12A~12Cに示す。両方の融合タンパク質が、天然ゲルにおいて明確な主要なバンド、及びSEC結果で1つの明確な主要なピークを示した。
【0396】
精製ヒトPD-L1と、3F2、3F2-hIL7-3A又は3F2-hIL7-3A-mIFNa4との間の結合親和性が、予め固定化されたタンパク質Aセンサーチップを備えたBiacore(商標)(Biacore,INC,Piscataway N.J.)T200バイオセンサーを使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定された。実施例3に記載のように実験を行い、試験されたタンパク質免疫サイトカイン(ICK)についての結果を以下の表に示す。
【0397】
【表8】
【0398】
この結果から、修飾抗体が、未修飾親抗PD-L1抗体と比較して、ヒトPD-L1タンパク質に対して同様な結合親和性を有することが示された。
【0399】
マウス脾臓細胞を用いてhIL7活性を評価するための実験も行った。具体的には、収集された細胞を最初に、PBS、hIL7タンパク質、3F2-hIL7-3A又は3F2-hIL7-3A-mIFNa4で処理し、次いでホスホ-STAT5(Tyr694)モノクローナル抗体(SRBCZX)及びCD8aモノクローナル抗体(53-6.7)で染色した。染色工程後、細胞をPBSで洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。hIL7はTyr694にてマウス脾臓STAT5をリン酸化することができるため、hIL7活性は、APC(アロフィコシアニン)シグナルの増加によって示される。図13に示すように、hIL7タンパク質、3F2-hIL7-3A、及び3F2-hIL7-3A-mIFNa4はすべて、PBS処理脾臓細胞(ブランク)と比べてAPC(アロフィコシアニン)レベルの増加を示した。上記の実験から、抗体における挿入hIL7がその生物活性を保持することが示された。
【0400】
実施例6.hIL21と融合されたPD-L1抗体
図20A(HC構造参照)に示すように、PDL1-アベルマブ重鎖のC末端に連結されるヒトインターロイキン21(hIL21)(配列番号12)を有する融合タンパク質を発現するように、プラスミドをデザインした。融合タンパク質PDL1-hIL21-HCを精製し、ゲル電気泳動によって分析した。図14A~14Bに示すように、非標的バンドが天然ゲル上に検出された。
【0401】
ヒトインターロイキン21(hIL21)をPDL1-3F2抗体(3F2-hIL21-3A)の3A部位で融合した。3F2-hIL21-3Aの重鎖のC末端にmIFNa4を付加した(3F2-hIL21-3A-mIFNa4)。融合タンパク質、3F2-hIL21-3A及び3F2-hIL21-3A-mIFNa4を精製し、SEC-HPLC及びゲル電気泳動によって分析した。その結果を図15A~15C、及び16A~16Cに示す。どちらの融合タンパク質も、天然ゲルにおいて明確な主要なバンド、及びSEC-HPLCの結果において明確な主要なピークを示した。
【0402】
精製ヒトPD-L1と、親PD-L1抗体(3F2)、3F2-hIL21-3A又は3F2-hIL21-3A-mIFNa4との結合親和性をSPRによって測定した。上述の方法において記載のように実験を行い、その結果を以下の表にまとめる。
【0403】
【表9】
【0404】
この結果から、3F2-hIL21-3A及び3F2-hIL21-3A-mIFNa4が、親PD-L1抗体と比較して、ヒトPD-L1タンパク質に対して同様な結合親和性を有することが示された。
【0405】
マウス脾臓細胞を用いて、hIL21活性も測定した。具体的には、収集された細胞を最初に、PBS、hIL21タンパク質、3F2-hIL21-3A、又は3F2-hIL21-3A-mIFNa4で処理し、次いでAPC標識ホスホ-STAT3モノクローナル抗体及びFITC標識抗CD8aモノクローナル抗体(53-6.7)で染色した。染色工程後、細胞をPBSで洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。hIL21はマウス脾臓STAT3をリン酸化することができるため、hIL21の存在は、APCシグナルの増加によって示される。図17に示すように、hIL21タンパク質、3F2-hIL21-3A、及び3F2-hIL21-3A-mIFNa4はすべて、PBS処理脾臓細胞(ブランク)と比べてAPC(アロフィコシアニン)レベルの増加を示した。上記の実験から、挿入hIL21がその生物活性を保持することが示された。
【0406】
実施例7.TGFbR2と融合されたPD-L1抗体
PD-L1抗体(PDL1-アベルマブ)を、重鎖3A部位にてヒトTGFbR2(トランスフォーミング増殖因子、β受容体II)(配列番号13)の細胞外ドメインと融合した。融合タンパク質、PDL1-TGFbR2-3Aを精製し、SEC-HPLC及びゲル電気泳動によって分析した。図18A~18Cに示すように、融合タンパク質は、天然ゲルにおいて明確な主要なバンド及びSEC-HPLCの結果において明確な主要なピークを示した。
【0407】
TGFb1と精製M7824(重鎖:配列番号38;軽鎖:配列番号39)との結合親和性、及びTGFb1とPDL1-TGFbR2-3Aとの結合親和性をSPRによって測定した。M7824は、二機能性抗PD-L1/TGFβ Trap融合タンパク質である。TGFbR2の細胞外ドメインは、M7824において抗PDL1抗体のFcのC末端で連結される。その結果を以下の表に示す。
【0408】
【表10】
【0409】
この結果から、3A部位に融合されたTGFbR2の細胞外ドメインを有するPD-L1抗体は、M7824と比較して、TGFb1タンパク質に対して同様な結合親和性を有することが示された。その融合は、修飾タンパク質の結合親和性に影響しなかった。
【0410】
実施例8.抗CD40 scFvと融合されたPD-L1抗体
PD-L1 IgG1抗体(PDL1-アベルマブ)の重鎖3A部位で融合された抗CD40単鎖可変断片(scFv)(配列番号16)を有する融合タンパク質を発現するように、プラスミドをデザインした。その融合タンパク質をPDL1-C40-6A7-FV3Aと名付ける。
【0411】
ADCC作用を評価するために、実験を行った。この結果から、3A部位でのCD40へのscFvの結合によって、立体効果のために、IgG受容体とFc受容体の親和性が低減される、又は失われることが示された。
【0412】
実験において、PD-L1抗体PDL1-アベルマブ(G1)を親抗体として使用した。hIL7(PDL1-hIL7-3A;G2)及び抗CD40抗体C40-6A7(配列番号16)(PDL1-C40-6A7-FV3A;G3)のscFVを3A部位に組み込み、試験した。PDL1-C40-6A7-FV3AのIgG4サブタイプも作製した。IgG4は、エフェクター機能を引き起こす、限定された能力を有し、ネガティブコントロール(PDL1-C40-6A7-FV3A-IgG4;G5)として使用された。
【0413】
PD-1 IgG4抗体PD1-1A7(1A7、又はPD1-1A7-IgG4;VH配列番号40;VL配列番号41)もまた、親抗体として使用した。抗PD-L1抗体3F2のscFV(配列番号17)を、PD-1抗体(PD1-PL1-3F2-FV3A-IgG1;G4)のIgG1サブタイプの3A部位にて融合した。hCD16発現性ジャーカット細胞及びPD-L1発現性CHO細胞を実験において使用した。hCD16発現性ジャーカット細胞は、ルシフェラーゼを発現するLuc遺伝子も含んだ。
【0414】
実験を以下のとおりに行った。CHO細胞発現性PD-L1を37℃で回収し、96ウェルプレートに2×104細胞/ウェルで添加した。次いで、ジャーカット細胞浮遊液を96ウェルプレートに25μl/ウェル(又は8×104細胞/ウェル)にて添加した。次に、G1~G5を25μlアッセイバッファーに希釈比1:3で希釈し、次いで96ウェルプレートに最終濃度100nMで添加した。96ウェルプレートを37℃で6時間インキュベートした。インキュベーション後、色素生産性試薬を各ウェルに添加し、暗所で5分間インキュベートした。次いで、プレートを発光検出器に置き、各ウェルの生物発光シグナルを検出した。
【0415】
図19に示すように、その結果から、3A部位でのサイトカイン又はscFVの融合は、修飾抗体のADCC活性に影響しないことが分かった。しかしながら、3A部位で挿入されたscFVが標的タンパク質(CHO細胞上のPD-L1)に結合した場合、標的細胞に対するADCC作用は、低減されるか、又は失われた。すなわち、3A部位で挿入されたscFVが標的タンパク質に結合した場合、立体効果によって、FcがFc受容体に結合して、ADCCエフェクター機能の誘発が妨げられた。
【0416】
実施例9.3A部位内のアミノ酸置換又は挿入範囲の試験
3A、3B、3C、又は3D部位にて可溶性ドメインと融合された抗体
PD-L1抗体(PDL1-アベルマブ)が、ヒトTGFbR2(トランスフォーミング増殖因子、β受容体II)の細胞外ドメインと、重鎖3A部位にて(EU番号付けによる358位~362位のアミノ酸が、ヒトTGFbR2の細胞外ドメインと置換された)、3B部位にて(EU番号付けによる383~391位のアミノ酸が、ヒトTGFbR2の細胞外ドメインと置換された)、3C部位にて(EU番号付けによる384位から385位の間に、TGFbR2の細胞外ドメインが挿入された)、又は3D部位にて(413位~422位のアミノ酸が、ヒトTGFbR2の細胞外ドメインと置換された)融合された。
【0417】
相当する融合タンパク質、PDL1-TGFbR2-3A、PDL1-TGFbR2-3B、PDL1-TGFbR2-3C、及びPDL1-TGFbR2-3Dを精製し、ゲル電気泳動によって分析した。図22及び表11に示すように、PDL1-TGFbR2-3A、PDL1-TGFbR2-3C、及びPDL1-TGFbR2-3Dのみが、天然ゲルにおいて明確な主要なバンドを示した。各融合タンパク質の発現レベルも決定した。以下の表に示すように、PDL1-TGFbR2-3A、PDL1-TGFbR2-3C、及びPDL1-TGFbR2-3Dが発現されたが、PDL1-TGFbR2-3Bは発現されなかった。
【0418】
【表11】
【0419】
実施例3に示す結果と一致することから、融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3Aは安定に発現された。実施例3の結果と比較して、3A部位での融合は、安定な発現を常に提供する。
【0420】
種々の開始及び末端位置を有する3A部位で融合された抗体
PD-L1 IgG1抗体(PDL1-アベルマブ)は、種々の開始及び末端位置を有する3A部位でヒトTGFbR2の細胞外ドメインと融合された。具体的には、358~362位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトTGFbR2の細胞外ドメインで置き換えることによって、融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3Aが得られ、融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3A-IgG4は、IgG4サブタイプを有するPD-L1 IgG1抗体を用いて同様に得られた。
【0421】
PDL1-アベルマブは、種々の開始位置及び末端位置を有する3A部位にてヒトTGFbR2の細胞外ドメインと融合された。例えば、融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3AF1は、351~362位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトTGFbR2の細胞外ドメインと置き換えることによって得られた。融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3AF2は、347~362位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトTGFbR2の細胞外ドメインと置き換えることによって得られた。融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3AF3は、344~362位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトTGFbR2の細胞外ドメインと置き換えることによって得られた。例えば、融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3AR1は、358~372位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトTGFbR2の細胞外ドメインと置き換えることによって得られた。融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3AR2は、358~378位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトTGFbR2の細胞外ドメインと置き換えることによって得られた。融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3AR3は、358~381位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトTGFbR2の細胞外ドメインと置き換えることによって得られた。融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3AR4は、373~377位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトTGFbR2の細胞外ドメインと置き換えることによって得られた。
【0422】
融合タンパク質を精製し、ゲル電気泳動によって分析した。図23及び表12に示すように、融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3A(レーン1)及びPDL1-TGFbR2-3A-IgG4(レーン2)は、天然ゲルにおいて明確な主要なバンドを示した。各融合タンパク質の発現レベルも決定した。以下の表に示すように、試験された他の融合タンパク質の発現は検出されなかったが、融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3A、PDL1-TGFbR2-3A-IgG4、及びPDL1-TGFbR2-3AF1の発現を検出した。この結果から、IgGサブタイプは融合タンパク質の発現に対して影響を及ぼさないことが判明した。さらに351~362位(EU番号付けによる)のアミノ酸を融合部位として使用することができる。
【0423】
【表12】
【0424】
種々の開始及び末端位置を有する3A部位で融合された抗体
PD-L1 IgG1抗体(PDL1-アベルマブ)は、種々の開始及び末端位置を有する3A部位でヒトIL21(hIL21)と融合された。具体的には、融合タンパク質PDL1-hIL21-3A-IgG4は、IgG4サブタイプを有するPDL1-アベルマブを用いて、IgG4のCH3ドメイン内の358~362位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトIL21で置換することによって得られた。PDL1-アベルマブは、種々の開始位置及び末端位置を有する3A部位でヒトIL21と融合された。例えば、融合タンパク質PDL1-hIL21-3AF1は、351~362位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトIL21で置換することによって得られた。融合タンパク質PDL1-hIL21-3AF2は、347~362位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトIL21で置換することによって得られた。融合タンパク質PDL1-hIL21-3AF3は、344~362位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトIL21で置換することによって得られた。例えば、融合タンパク質PDL1-hIL21-3AR1は、358~372位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトIL21で置換することによって得られた。融合タンパク質PDL1-hIL21-3AR2は、358~378位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトIL21で置換することによって得られた。融合タンパク質PDL1-hIL21-3AR3は、358~381位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトIL21で置換することによって得られた。融合タンパク質PDL1-hIL21-3AR4は、373~377位(EU番号付けによる)のアミノ酸をヒトIL21で置換することによって得られた。
【0425】
融合タンパク質を精製し、ゲル電気泳動によって分析した。図24及び表13に示すように、融合タンパク質PDL1-hIL21-3A-IgG4(レーン1)及びPDL1-hIL21-3AF1(レーン2)は、天然ゲルにおいて明確な主要なバンドを示した。各融合タンパク質の発現レベルも決定した。以下の表に示すように、試験された他の融合タンパク質の発現は検出されなかったが、融合タンパク質PDL1-hIL21-3A-IgG4及びPDL1-hIL21-3AF1の発現を検出した。
【0426】
【表13】
【0427】
上記の結果によれば、タンパク質発現を妨げることなく、351位から362位のPD-L1抗体の3A部位に、非天然ポリペプチドを融合することができる。
【0428】
3A部位内でのヒトTGFbR2の挿入
ヒトTGFbR2の細胞外ドメインを抗体(PDL1-アベルマブ)の3A部位に挿入した。具体的には、融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3A1は、3A部位内の358位から359位(EU番号付けによる)の間にヒトTGFbR2の細胞外ドメインを挿入することによって得られた。融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3A2は、3A部位内の359位から360位(EU番号付けによる)の間にヒトTGFbR2の細胞外ドメインを挿入することによって得られた。融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3A3は、3A部位内の360位から361位(EU番号付けによる)の間にヒトTGFbR2の細胞外ドメインを挿入することによって得られた。融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3A4は、3A部位内の361位から362位(EU番号付けによる)の間にヒトTGFbR2の細胞外ドメインを挿入することによって得られた。
【0429】
融合タンパク質を精製し、ゲル電気泳動によって分析し、その発現レベルを決定した。図25A及び表14に示すように、すべての融合タンパク質が、天然ゲルにおいて明確な主要なバンドを示した。各融合タンパク質の発現レベルも決定した。以下の表に示すように、試験されたすべての融合タンパク質の発現が検出された。
【0430】
【表14】
【0431】
非標的バンドがPDL1-TGFbR2-3A1(レーン2)で確認され、それはタンパク質分解によって生じ得る。これを検証するために、細胞の新たなバッチからPDL1-TGFbR2-3A1を精製し、天然ゲルにおいてすぐに分析した。以下の図25B及び表15に示すように、非標的バンドは確認されず、PDL1-TGFbR2-3A1の貯蔵中にタンパク質分解が生じたことを意味する。
【0432】
【表15】
【0433】
新たに精製されたPDL1-TGFbR2-3A1を10日間維持し、次いで表14の精製PDL1-TGFbR1-3A、PDL1-TGFbR1-3A2、PDL1-TGFbR1-3A3、PDL1-TGFbR1-3A4と共に、同じ天然ゲルにローディングした。図26のゲル電気泳動の結果から、PDL1-TGFbR1-3A1(レーン2)における非標的バンドが示され、非標的バンドがタンパク質分解によって生じたことを意味する。
【0434】
上記の結果から、非天然ポリペプチドを用いて、351~362位(EU番号付けによる)のいずれかのアミノ酸、特に358~362位(EU番号付けによる)のいずれかのアミノ酸を置き換える、又はそのアミノ酸の間に挿入することができる。しかしながら、358位と359位(EU番号付けによる)の間のヒトTGFbR2の細胞外ドメインの挿入は、他の挿入部位ほど安定ではなかった。359~360、360~361、又は361~362位での挿入を有する抗体、及び3A部位での置換を有する抗体は非常に安定であった。
【0435】
融合タンパク質の熱安定性
得られた融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3A、PDL1-TGFbR2-3C、PDL1-TGFbR2-3D、PDL1-TGFbR2-3A1、PDL1-TGFbR2-3A2、PDL1-TGFbR2-3A3、及びPDL1-TGFbR2-3A4の熱安定性を、融解温度(Tm)の測定によって決定した。M7824をコントロールとして使用した。
【0436】
【表16】
【0437】
一般に、この結果から、3A又は3C部位内でのアミノ酸置換又は挿入によって、Tmが受ける影響は最小限であることが示された。PDL1-TGFbR2-3Dは、おそらく純度が低い、又は不安定な構造のために、M7824と比較して相対的に低いTmを示した。
【0438】
TGFβ1に対する結合親和性の決定
得られた融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3A、PDL1-TGFbR2-3C、PDL1-TGFbR2-3D、PDL1-TGFbR2-3A1、PDL1-TGFbR2-3A2、PDL1-TGFbR2-3A3、及びPDL1-TGFbR2-3A4のヒトTGFβ1に対する結合親和性を、予め固定化されたタンパク質Aセンサーチップを備えたBiacore(商標)T200バイオセンサーを使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定した。その結果を以下の表に示す。
【0439】
【表17】
【0440】
この結果から、試験されたすべての融合タンパク質が、高い親和性と共に、ヒトTGFβ1に対する特異的な結合を示した。したがって、この結果はさらに、3A部位に挿入されたポリペプチドは適切に折り畳むことができ、依然として機能性であることを意味した。
【0441】
実施例10.3A及び3C部位にてscFvと融合された抗体
発現レベル及び純度
抗体(PDL1-アベルマブ)が、抗CD40 scFvと重鎖3A部位にて融合され(EU番号付けによる358位から362位のアミノ酸が、抗CD40 scFvで置換された)、又は3C部位にて融合されて(EU番号付けによる384位から385位の間に抗CD40 scFvが挿入された)、融合タンパク質PDL1-C40-6A7-FV3A及びPDL1-C40-6A7-FV3Cがそれぞれ産生された。PDL1-C40-6A7-FV3A-IgG4もまた、IgG1をIgG4サブタイプで置き換えることによって得られた。
【0442】
さらに、3A部位内で358位と359位(EU番号付けによる)の間に抗CD40 scFvを挿入することによって、融合タンパク質PDL1-C40-6A7-FV3A1が得られた。3A部位内で359位と360位(EU番号付けによる)の間に抗CD40 scFvを挿入することによって、融合タンパク質PDL1-C40-6A7-FV3A2が得られた。3A部位内で360位と361位(EU番号付けによる)の間に抗CD40 scFvを挿入することによって、融合タンパク質PDL1-C40-6A7-FV3A3が得られた。融合タンパク質を精製し、ゲル電気泳動によって分析した。試験されたすべての融合タンパク質が天然ゲルにおいて明確な主要なバンドを示した。
【0443】
CD40に対する結合親和性の決定
得られた融合タンパク質PDL1-C40-6A7-FV3A(IgG1)、PDL1-C40-6A7-FV3A-IgG4、PDL1-C40-6A7-FV3C(IgG1)、PDL1-C40-6A7-FV3A1(IgG1)、PDL1-C40-6A7-FV3A2(IgG1)、及びPDL1-C40-6A7-FV3A3(IgG1)のヒトCD40に対する結合親和性を、予め固定化されたタンパク質Aセンサーチップを備えたBiacore(商標)T200バイオセンサーを使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定した。scFVがそれに由来する、元の抗CD40モノクローナル抗体C40-6A7IgG2(6A7、VH配列番号91、VL配列番号92)をコントロールとして使用した。その結果を以下の表に示す。
【0444】
【表18】
【0445】
この結果から、試験されたすべての融合タンパク質が、高い親和性と共に、ヒトCD40に対する特異的な結合を示すことが分かった。
【0446】
実施例11.Fc受容体に対する結合親和性の決定
ヒトFc受容体に対する融合タンパク質PDL1-TGFbR2-3A(IgG1)(又はPDL1-TGFbR2-3A-IgG1)及びPDL1-TGFbR2-3A-IgG4の結合親和性を、予め固定化されたタンパク質Aセンサーチップを備えたBiacore(商標)T200バイオセンサーを使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。Fc受容体は、FcγRI-Sino、FcγRIIA-R167-Sino、FcγRIIIA-F176-Sino、FcγRIIIB-Sino、及びFcγRnを含んだ。ヒト化CTLA4抗体CT4-4G12-IgG1(CT4-4G12、又は4G12;VH配列番号44、VL配列番号45)をコントロールとして使用して、FcγRnへの結合親和性を試験した。PDL1-アベルマブをコントロールとして使用して、FcγRI-Sino、FcγRIIA-R167-Sino、FcγRIIIA-F176-Sino、及びFcγRIIIB-Sinoへの結合親和性を試験した。その結果を以下の表に示す。
【0447】
【表19】
【0448】
この結果から、PD-L1抗体の3A部位での非天然ポリペプチドの挿入がある場合に、Fc受容体に対する結合親和性は著しく影響を受けないことが分かった。
【0449】
実施例12.3A部位内の様々なタイプの分子の置換
様々なタイプの分子、例えば、サイトカイン、受容体、scFv、リガンド、ナノボディ、又はその断片は、以下の表に示すように、抗体重鎖の3A部位(例えば、EU番号付けによる358位から362位のアミノ酸)にて融合され得る。抗体はIgG1又はIgG4サブタイプであり得る。
【0450】
【表20】
【0451】
上記の表に示す以下の配列を例として使用した。例えば、サイトカインは、配列番号12に記載の配列(NP_068575.1のアミノ酸25~162)を有し、ヒトIL21(hIL21)に由来し得る。受容体は、配列番号13に記載の配列(NP_003233.4のアミノ酸24~159)を有し、TGFbR2に由来し得る。scFvは、配列番号17に記載の配列を有し、ヒト化抗PD-L1抗体PDL1-3F2に由来し得る。リガンドは、配列番号14に記載の配列を有し、ATOR1015-CD86(ヒトCD86のIg様V型ドメインの最適化バージョン)であり得る。ATOR1015-CD86の詳細は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2018202649A1号パンフレットに記載されている。ATOR1015-CD86は、ATOR1015のCD86部分である。
【0452】
ナノボディは、配列番号15に記載の可変領域配列を有するKN035-PDL1(又はKN035)であり得る。KN035の詳細は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20180291103A1号明細書に記載されている。
【0453】
発現レベル及び純度
以下の融合タンパク質は、抗体重鎖の358~362位(EU番号付けによる)に相当するアミノ酸を種々の非天然分子で置換することによって得られた。ATOR1015-CD86をPD-L1抗体(PDL1-アベルマブ)に融合して、PDL1-CD86-3A(又はPDL1-CD86-3A-IgG1)が産生された。PDL1-CD86-3A-IgG4は、IgG1をIgG4サブタイプで置換することによって得られた。KN035をPD-1抗体PD1-1A7-IgG4に融合して、PD1-KN035-3A(又はPD1-KN035-3A-IgG4)が産生された。PD1-KN035-3A-IgG1は、IgG4をIgG1サブタイプで置換することによって得られた。抗PD-L1 scFvをPD1-1A7-IgG4に融合して、PD1-PL1-3F2-FV3A(又はPD1-PL1-3F2-FV3A-IgG4)が産生された。PD1-PL1-3F2-FV3A-IgG1は、IgG4をIgG1サブタイプで置換することによって得られた。KN035をCTLA4抗体CT4-4G12-IgG1(CT4)にノブ鎖にて融合して(3A-knobとして図20Aに示す構造)、CT4-KN035-3A-knob(又はCT4-KN035-3A-knob-IgG1)が産生された。KN035をCT4-4G12-IgG1にホール鎖にて融合して(3A-holeとして図20Aに示す構造)、CT4-KN035-3A-hole(又はCT4-KN035-3A-hole-IgG1)(図20A)が産生された。
【0454】
図27及び表21に示すように、各融合タンパク質は、6%天然ゲルにおいて4μg/レーンでローディングされた。明確な主要なバンドがすべての融合タンパク質で検出された。各融合タンパク質の発現レベルも決定した。以下の表に示すように、試験されたすべての融合タンパク質が安定に発現した。
【0455】
【表21】
【0456】
結合親和性の決定
ヒトCTLA4(hCTLA4-His)又はヒトPD-L1(hPDL1)に対する融合タンパク質の結合親和性を、予め固定化されたタンパク質Aセンサーチップを備えたBiacore(商標)T200バイオセンサーを使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。その結果を以下の表に示す。CTLA4抗体CT4-4G12-IgG1(CT4)をコントロールとして使用した。ATOR1015-CD86(CD86)及びKN035-IgG1(重鎖定常ドメインにおけるD265A変異を有する)もまた、コントロールとして使用した。
【0457】
【表22】
【0458】
この結果から、PD-L1抗体に融合された後、ATOR1015-CD86がヒトCTLA4に対するその結合親和性を維持することが分かった。さらに、この結果から、PD-1又はCTLA4抗体に融合された後、KN035がヒトPD-L1に対するその結合親和性を維持することが分かった。抗PD-L1 scFvは、PD-1抗体に融合された後、PD-L1に対する高い結合親和性も維持した。さらに、IgGのサブタイプ(例えば、IgG1又はIgG4)は、融合分子の結合親和性に影響しなかった。
【0459】
実施例13.3A-HC、又は3A構造を有する融合タンパク質の発現及び精製
TGFβR2の細胞外ドメインをPDL1-CD86-3A-IgG1重鎖のC末端(3A-HCとして図20Aに示す構造)に連結し、PDL1-CD86-3A-TGFbR2を産生した。
【0460】
融合タンパク質PDL1-CD86-3A-IgG1、PDL1-CD86-3A-IgG4及びPDL1-CD86-3A-TGFbR2を精製し、ゲル電気泳動によって分析した。図28及び表23に示すように、すべての融合タンパク質が天然ゲルにおいて明確な主要なバンドを示した。各融合タンパク質の発現レベルも決定した。以下の表に示すように、試験されたすべての融合タンパク質の発現が検出された。この結果から、3A-HC構造を有する融合タンパク質が発現され、精製され得ることが示される。
【0461】
【表23】
【0462】
実施例14.抗OX40 scFvと融合されたCTLA4抗体
CTLA4抗体CT4-4G12-IgG1の重鎖C末端にて連結される、又は3A部位にて融合される、抗OX40単鎖可変断片(scFv)を有する融合タンパク質を発現するように、プラスミドをデザインした。融合タンパク質をCT4-O40-SCFV-HC及びCT4-O40-FV3Aと名付け、配列番号46及び配列番号47それぞれに記載の相当する重鎖配列を有する。
【0463】
ADCC作用を評価するために実験を行った。その結果から、OX40に対する重鎖C末端又は3A部位でのscFvの結合は、IgGとFc受容体との親和性を維持することが示された。
【0464】
その実験において、CTLA4抗体CT4-4G12-IgG1(CT4)を親抗体として使用した。scFVは、ヒト化抗OX40抗体OX40-9H3(VH配列番号48;VL配列番号49)に由来した。OX40抗体OX40-9H3-IgG1(O40)もコントロールとして使用した。
【0465】
hCD16発現性ジャーカット細胞及びOX40発現性CHO細胞を使用して、実施例8に記載のように実験を行った。hCD16発現性ジャーカット細胞は、ルシフェラーゼを発現する、Luc遺伝子も含んだ。
【0466】
図29に示すように、この結果から、重鎖C末端に連結された、又は3A部位にて融合されたscFvは、標的タンパク質(CHO細胞上のOX40)に結合し、標的細胞に対するADCC作用が維持され得ることが判明した。親抗体と比べてのADCC作用の減少は、立体効果によって起こり得る。
【0467】
実施例15.異なるサイトカインと融合されたPD-L1抗体
本明細書に記述されるように、サイトカイン(例えば、IL7又はIL21)を3A部位に融合して、発現が容易であり、安定な、且つ機能性の多機能性融合タンパク質を産生することができる。融合されたサイトカインは、可溶性サイトカインと比較して同様な機能を示すことが判明した。さらに、サイトカイン融合は、特異的な抗原又はFc受容体(例えば、FCRn)に対する親抗体の結合親和性に影響しなかった。この実施例において、融合タンパク質を産生するために、より多くのサイトカインが選択され、タンパク質発現が検出された。
【0468】
以下の配列が使用された。例えば、サイトカインは、配列番号93に記載の配列を有するヒトIL3(hIL3);配列番号94に記載の配列を有するヒトIL4(hIL4);配列番号95に記載の配列を有するヒトIL5(hIL5);配列番号96に記載の配列を有するヒトIL6(hIL6);配列番号97に記載の配列を有するヒトIL8(hIL8);配列番号98に記載の配列を有するヒトIL9(hIL9);配列番号99に記載の配列を有するヒトIL13(hIL13);及び配列番号100に記載の配列を有するヒトIIL15(hIL15)に由来し得る。
【0469】
PDL1-3F2-IgG1が親抗体として選択された。以下の融合タンパク質は、PDL1-3F2-IgG1抗体重鎖の358~362位(EU番号付けによる)に相当するアミノ酸をサイトカイン分子:3F2-hIL3-3A;3F2-hIL4-3A;3F2-hIL5-3A;3F2-hIL6-3A;3F2-hIL8-3A;3F2-hIL9-3A;3F2-hIL13-3A;及び3F2-hIL15-3Aで置換することによって得られた。
【0470】
さらに、リンカー配列(配列番号9)を介して親抗体重鎖のC末端にサイトカインが連結された(HCとして図20Aに示す構造)。以下の融合タンパク質:3F2-hIL3-HC;3F2-hIL4-HC;3F2-hIL5-HC;3F2-hIL6-HC;3F2-hIL8-HC;3F2-hIL9-HC;3F2-hIL13-HC;及び3F2-hIL15-HCが得られた。
【0471】
融合タンパク質をタンパク質Aクロマトグラフィーによって精製し、次いでゲル電気泳動(天然ゲルを用いて)によって分析した。結果を30A~30Bに示す。図30Aに示すように、試験されたすべての融合タンパク質が比較的高い純度を示した。しかしながら、図30Bでは、HC構造を有する一部の融合タンパク質が、複数のバンド(例えば、レーン5、レーン7、及びレーン9)を示し、3A構造を有する相当する融合タンパク質は、単一バンド(例えば、レーン4、レーン6、及びレーン8)を示した。
【0472】
さらに、3A構造を有する抗体及びHC構造を有する抗体の理論分子量はほぼ同じである。しかしながら、3F2-hIL5-3Aを示すバンド(図30Aのレーン6)は、3F2-hIL5-HCを示すバンド(図30Aのレーン7)よりも高く、3F2-hIL5-3Aが3F2-hIL5-HCよりも高い分子量を有することが示された。
【0473】
上述の融合タンパク質を更なる分析にかけた。SEC-HPLCを用いて、タンパク質の純度を測定し、その結果を図31A~31Dに示す。具体的には、3F2-hIL5-3A(純度:89.05%)は、3F-hIL5-HC(純度:86.82%)と比較して、わずかに高い純度を有した。試験された他の融合タンパク質において、3A構造は、相当するHC構造よりも高い純度を示した。例えば、3F2-hIL9-3A(純度:98.90%)は、3F2-hIL9-HC(純度:81.83%)よりも高い純度を有し;3F2-hIL13-3A(純度:98.24%)は、3F2-hIL13-HC(純度:93.32%)よりも高い純度を有し;3F2-hIL15-3A(純度:83.79%)は、3F2-hIL15-HC(純度:48.61%)よりも高い純度を有した。
【0474】
SEC-HPLC上の3F2-hIL5-HCの保持時間(RT)が、3F2-hIL5-3Aよりも遅いため(図31A参照)、3F2-hIL5-HCの分子量は理論値よりも低いことが確認された。したがって、質量分析(MS)を用いて、3F2-hIL5-HCの分子量を測定し、この結果から、3F2-hIL5-HCの分子量が、理論値よりも低いことが確認された(図32A)。3F2-hIL5-HCの発現は不完全であった可能性がある。さらに、二次ペプチドカバー率マッピングの結果(図32B)から、重鎖のC末端での配列欠失が存在することが判明した。
【0475】
実施例16.PD-L1抗体の3A部位で融合されたIL12a
図38Aに示すように、ヒト化抗PD-L1抗体PDL1-3F2の2本の重鎖それぞれの3A部位(EU番号付けによる358位から362位)で融合された、マウスインターロイキン12αサブユニット(IL12a、又はP35)を含む融合タンパク質を発現するように、プラスミドを作製した。PDL1-3F2 IgG1抗体は、配列番号36に記載の配列を有する重鎖可変領域(VH)と、配列番号37に記載の配列を有する軽鎖可変領域(VL)と、を含む。具体的には、IL12aのN末端は、GGGGSGGGGS(配列番号30)を介してPDL1-3F2 IgG1重鎖の357位(EU番号付けによる)に連結され、IL12aのC末端は、GGGGSGGGGS(配列番号30)を介してPDL1-3F2 IgG1重鎖の363位(EU番号付けによる)に連結された。
【0476】
マウスインターロイキン12βサブユニット(IL12b、又はP40)及びPDL1-3F2 IgG1軽鎖が、別々のプラスミドによってコードされた。プラスミドの模式図を図38Bに示す。IL12(IL12a及びIL12bなど)と融合された修飾PDL1-3F2 IgG1抗体を、3F2-mIL12-3A(又は3F2-mIL12-3A-IgG1)と名付けた。
【0477】
実施例17.PD-L1抗体の重鎖C末端で連結されたIFNa4
リンカー配列(配列番号9)を介して3F2-mIL12-3Aの2本の重鎖C末端のそれぞれに連結された、マウスインターフェロンα4(IFNa4)(配列番号10)をさらに含む融合タンパク質を発現するように、プラスミドを作製した。図39Aに示すように、IL12(IL12a及びIL12bなど)及びIFNa4と融合された修飾PDL1-3F2 IgG1抗体を3F2-mIL12-3A-mIFNa4と名付けた。3F2-mIL12-3Aと同様に、IL12b及び軽鎖が、別個のプラスミドによってコードされた。プラスミドの模式図を図39Bに示す。
【0478】
実施例18.多様な構造を有する融合タンパク質
以下に記載の融合タンパク質を発現するためにも、プラスミドを作製した。
【0479】
1)3F2-mIL12-3A-knob
3F2-mIL12-3A-knobは、ノブ・イン・ホール(KIH)変異を有するPDL1-3F2 IgG1のノブ重鎖の3A部位(EU番号付けによる358位から362位)で融合されたIL12aを含む融合タンパク質である。具体的には、IL12aのN末端が、GGGGSGGGGS(配列番号30)を介してノブ重鎖の357位(EU番号付けによる)に連結され、IL12aのC末端が、GGGGSGGGGS(配列番号30)を介してノブ重鎖の363位(EU番号付けによる)に連結された。IL12b及び軽鎖が、別個のプラスミドによってコードされた。
【0480】
2)3F2-mIL12-3A-hole
3F2-mIL12-3A-holeは、ノブ・イン・ホール(KIH)変異を有するPDL1-3F2 IgG1のホール重鎖の3A部位(EU番号付けによる358位から362位)で融合されたIL12aを含む融合タンパク質である。具体的には、IL12aのN末端が、GGGGSGGGGS(配列番号30)を介してホール重鎖の357位(EU番号付けによる)に連結され、IL12aのC末端が、GGGGSGGGGS(配列番号30)を介してホール重鎖の363位(EU番号付けによる)に連結された。IL12b及び軽鎖が、別個のプラスミドによってコードされた。
【0481】
3)3F2-mIL12-3A-IgG4
IgG1定常領域がIgG4定常領域によって置き換えられていることを除いては、3F2-mIL12-3A-IgG4は、3F2-mIL12-3Aと同じ全体構造及び配列を含む融合タンパク質である。
【0482】
実施例19.3F2-mIL12-3A及び3F2-mIL12-3A-mIFNa4の精製
融合タンパク質3F2-mIL12-3A及び3F2-mIL12-3A-mIFNa4を精製し、硫酸ドデシルナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析した。具体的には、融合タンパク質を発現するプラスミドを作製し、使用して、CHO細胞を一過性にトランスフォームした。次いで、トランスフェクトされたCHO細胞を37℃で6~7日間培養した。その後、培養上清を遠心分離によって収集し、タンパク質Aアフィニティーカラムによって、融合タンパク質を最初に精製し、次いでSDS-PAGEによって分析した。タンパク質純度をSECによってさらに測定した。
【0483】
6%アクリルアミドゲルを使用して、非還元SDS-PAGEを行った。タンパク質試料を以下のように調製した。最初に、タンパク質試料を1mg/mlに希釈した。希釈タンパク質試料2.4μlを、トリス-グリシンSDS試料バッファー6μl(2×)及び蒸留水3.6μlと混合した。次いで、混合物を2分間沸騰させ、ローディング前にすぐに遠心した。図40に示すように、3F2-mIL12-3A及び3F2-mIL12-3A-mIFNa4の両方が、正確な分子量を有する単一のバンドを示した。
【0484】
Agilent 1260 series HPLCシステムに接続されたTSKgel(登録商標)G3000SWXL HPLCカラム(Tosoh Bioscience LLC)を使用してSECによって、タンパク質純度をさらに測定した。タンパク質A精製融合タンパク質試料をSEC-HPLCによって分析した。注入前に、試料を1mg/mlに希釈し、次いで0.22μmフィルターで濾過した。実験パラメーターは:流量:0.7mL/分;時間:30分;及び検出波長:280nmとして設定した。Agilent液体クロマトグラフィー分析ソフトウェアを用いて、データを分析した。試験された融合タンパク質のクロマトグラフ曲線が得られた。図41A~41Bに示すように、検出された全ピーク面積パーセンテージ及び保持時間(RT)が記録された。一般に、タンパク質A-精製融合タンパク質3F2-mIL12-3Aの純度が、3F2-mIL12-3A-mIFNa4よりもわずかに高かった(純度86.88%、少量の不純物を含む)。
【0485】
実施例20.PD-L1に対する結合親和性の決定
精製ヒスタグ付きヒトPD-L1(hPL1-His;ACRO Biosystems)と、PDL1-3F2 IgG1、3F2-mIL12-3A、3F2-mIL12-3A-mIFNa4との間の結合親和性が、予め固定化されたタンパク質Aセンサーチップを備えたBiacore(商標)(Biacore,INC,Piscataway N.J.)T200バイオセンサーを使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定された。
【0486】
融合タンパク質3F2-mIL12-3A及び3F2-mIL12-3A-mIFNa4(1μg/mL)を、Biacore(商標)T200バイオセンサーに10μL/分にて30秒間注入し、目的のタンパク質濃度(約67RU)を達成した。次いで、濃度200nM、100nM、50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、3.125nM、及び1.5625nMのヒスタグ付きヒトPD-L1(hPL1-His)を30μL/分にて100秒間注入した。解離を400秒間モニターした。グリシンでの各滴定の最後の注入後にチップを再生した(pH2.0,30μL/分で12秒間)。当業者であれば理解されるように、各試験融合タンパク質に関して、パラメーター(例えば、融合タンパク質濃度)の適切な調節を用いた同じ方法を行った。試験された融合タンパク質の結果を以下の表に示す。
【0487】
【表24】
【0488】
結合速度定数(kon)及び解離速度定数(koff)が、Biacore(商標)T200評価ソフトウェア3.0を用いて、1:1 Langmuir結合モデルにデータを一括で適合することによって同時に得られた(Karlsson,R.Roos,H.Fagerstam,L.Petersson,B.,1994.Methods Enzymology6.99-110)。親和性は、動態学的速度定数(KD=koff/kon)の商から計算された。この結果から、試験された3種のすべての融合タンパク質PDL1-3F2 IgG1、3F2-mIL12-3A、及び3F2-mIL12-3A-mIFNa4が、同等な結合親和性でhPL1-Hisに結合し得ることが分かった。非特異的な作用は確認されなかった。
【0489】
実施例21.IL12に対する結合親和性の決定
予め固定化されたタンパク質Aセンサーチップを備えたBiacore(商標)(Biacore,INC,Piscataway N.J.)T200バイオセンサーを使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって、精製ヒスタグ付き組換えマウスIL12RB2タンパク質(mIL12R-B2-His;Sino Biological Inc.,カタログ番号:50099-M08H)と、3F2-mIL12-3A、3F2-mIL12-3A-mIFNa4との結合親和性が決定された。実施例5に記載の同様な方法によって実験を行った。試験された融合タンパク質の結果を以下の表に示す。
【0490】
【表25】
【0491】
この結果から、試験された融合タンパク質3F2-mIL12-3A及び3F2-mIL12-3A-mIFNa4のどちらも、同等の結合親和性でmIL12R-B2-Hisに結合し得ることが分かった。非特異的な作用は確認されなかった。
【0492】
実施例22.生体内(In vivo)の薬理学的バリデーション
キメラPD-1タンパク質及びaキメラPD-L1タンパク質を発現するために、hPD-1/hPD-L1マウスモデル(Biocytogen Pharmaceuticals(Beijing)Co.,Ltd.から入手,カタログ番号120522)を遺伝子操作した。キメラPD-1タンパク質は、相当するヒトPD-1細胞外領域での、マウスPD-1タンパク質の細胞外領域の一部の置換を含む。キメラPD-L1タンパク質は、相当するヒトPD-1細胞外領域での、マウスPD-L1タンパク質の細胞外領域の一部の置換を含む。
【0493】
ヒト化マウスモデル(hPD-1/hPD-L1)は、ヒトにおける、且つマウスPD-1又はPD-L1を発現する通常のマウスにおいて、臨床結果の相違を著しく低減することによって、臨床設定において新たな治療的処置を試験する手段を提供する。ヒト化PD-1マウス、PD-L1マウス及びhPD-1/hPD-L1マウスモデルに関する詳細な説明は、その全体が参照により組み込まれる、PCT/CN2017/090320、PCT/CN2017/099574、中国出願番号201710505554.0及び中国出願番号201710757022.6に記載されている。
【0494】
PD-1/PD-L1二重ヒト化マウス(5~8週齢)に、マウス結腸癌細胞MC38(5×105/PBS100μl)を皮下注射し、腫瘍容積が約100~150mm3に成長した場合に、腫瘍サイズに基づいて、マウスを1つの対照群と6つの処置群に分けた(n=7/群)。ヒト化抗ヒトPD-L1抗体PDL1-3F2 IgG1処置(1mg/kg又は3mg/kg)、融合タンパク質3F2-mIL12-3A処置(1.82mg/kg又は5.46mg/kg)、又は融合タンパク質3F2-mIL12-3A-mIFNa4処置(2.11mg/kg又は6.34mg/kg)に対して処置群をランダムに選択した。3F2-mIL12-3A及び3F2-mIL12-3A-mIFNa4のモル投与量(例えば、モル/kg)は、PDL1-3F2 IgG1の投与量と等しかった。対照群マウスに、等しい体積の生理的食塩水(PS)を注入した。投与の頻度は、週に2回であった(合計で6回の投与)。腫瘍容積を週に2回測定し、マウスの体重も計量した。マウスの腫瘍容積が3000mm3に達したら、安楽死を実施した。
【0495】
【表26】
【0496】
全体として、各群のマウスは健康であった。すべての処置群及び対照群マウスの体重が増加し、体重は明らかに、互いに差がなかった(図42及び43)。図44に示すように、対照群における腫瘍は、実験期間中に成長し続けた。対照群マウスと比較した場合に、処置群における腫瘍容積は、対照群よりも小さかった。したがって、抗ヒトPD-L1抗体PDL1-3F2 IgG1及び2つの融合タンパク質3F2-mIL12-3A、3F2-mIL12-3A-mIFNa4は忍容性がよく、マウスにおける腫瘍成長を抑制した。
【0497】
以下の表に、グループ化当日(0日目)、グループ化から14日後(14日目)、及び実験の最終日(25日目)の腫瘍容積;腫瘍不含マウスの数;マウスの生存率;腫瘍成長阻害値(TGITV);及び処置群と対照群とのマウス腫瘍容積の統計学的差異(P値)を含む、この実験の結果をまとめる。
【0498】
【表27】
【0499】
実験の最終日(25日目)に、各群の体重が増加し、処置群(G5を除く)及び対照群マウスの間に有意な差はなかった。G5群マウスの体重はG1群マウスの体重よりも少なかったが、G5群マウスは、実験期間全体を通して体重を増加し続け、体重は、実験の最終日には約10%増加した。体重変化の明確な差は確認されなかった。G5群のマウスが実験最終日に低い腫瘍容積を有したことを考慮すると、G5群とG1群との体重の差は主に、腫瘍重量によって生じたものであった。この結果から、抗ヒトPD-L1抗体PDL1-3F2 IgG1及び2種類の融合タンパク質3F2-mIL12-3A、3F2-mIL12-3A-mIFNa4は、マウスに忍容性がよいことが示された。
【0500】
すべての処置群(G2~G7)の腫瘍容積は、対照群(G1)における腫瘍容積よりも小さかった。この結果から、抗ヒトPD-L1抗体PDL1-3F2 IgG1及び2種類の融合タンパク質3F2-mIL12-3A、3F2-mIL12-3A-mIFNa4は、用量依存性の異なる腫瘍抑制効果を有することも示された。同じ条件(例えば、投与量及び投与頻度)下にて、融合タンパク質(G4~G7)の抑制効果は、他の抗PD-L1抗体(G2及びG3)よりも優れていた。このことから、IL12-PD-L1抗体の融合は、抗体の生体内有効性を向上させ得ることを意味する。さらに、同一用量にて、3F2-mIL12-3Aの作用は、3F2-mIL12-3A-mIFNa4の作用よりもわずかに優れており、インターフェロンα(例えば、IFNa4)の融合は、3F2-mIL12-3Aの腫瘍抑制効果をさらに促進しないかもしれないことが示された。
【0501】
上記の結果から、2種類の融合タンパク質(3F2-mIL12-3A、3F2-mIL12-3A-mIFNa4)が、PD-1/PD-L1二重ヒト化マウスにおいてPDL1-3F2 IgG1と比較して有意に優れた腫瘍成長抑制効果を示すことが判明した。さらに、これらの融合タンパク質は、マウスにおいて明らかな毒性作用はなかった。
【0502】
実施例23.PD-1/CD40 BsABについての生体内での結果
CD40は、免疫システムにおいて抗原提示細胞(APC)の表面に存在し、固有且つ適応性免疫システムメカニズムの活性化において重要な役割を果たす、主要な免疫共刺激経路受容体である。現在開発されている抗CD40抗体としては、例えば、Apexigenによって開発されたAPX005M、Rocheによって開発されたRG7876(セリクレルマブ),Viela Bioによって開発されたVIB4920、及びAlligator Biosciencesによって開発されたADC-1013が挙げられる。この実験において、抗CD40モノクローナル抗体セリクレルマブ(VH配列番号130;VL配列番号131;scFV配列番号132)が、重鎖3A部位及び重鎖C末端にて抗PD-1モノクローナル抗体1A7-H2K3-IgG4と組み合わせて二重特異性抗体が産生されるように選択された。得られた抗体を1A7-セリクレルマブ-FV3A-IgG4(配列番号133に記載の重鎖配列及び配列番号134に記載の軽鎖配列を有する)及び1A7-セリクレルマブ-FVHC-IgG4(配列番号135に記載の重鎖配列及び配列番号136に記載の軽鎖配列を有する)と名付けた。
【0503】
hPD-1/hCD40マウスモデル(Biocytogen Pharmaceuticals(Beijing)Co.,Ltd.から入手,カタログ番号120526)を、キメラPD-1タンパク質及びキメラCD40タンパク質を発現させるために遺伝子操作した。キメラPD-1タンパク質は、相当するヒトPD-1細胞外領域での、マウスPD-1タンパク質の細胞外領域の一部の置換を含む。キメラCD40タンパク質は、相当するヒトCD40細胞外領域での、マウスCD40タンパク質の細胞外領域の一部の置換を含む。
【0504】
ヒト化マウスモデル(例えば、B-hCD40マウス、又は二重ヒト化CD40/PD-1マウス(B-hPD-1/hCD40マウス)は、ヒトにおける、且つマウスCD40又はPD-L1を発現する通常のマウスにおいて、臨床結果の相違を著しく低減することによって、臨床設定において新たな治療的処置を試験する新たな手段を提供する。ヒト化CD40、ヒト化PD-1及び二重ヒト化CD40/PD-1マウスモデルに関する詳細な説明は、その全体が参照により組み込まれる、PCT/CN2018/091845及びPCT/CN2017/090320に記載されている。
【0505】
前出の生体内薬効性実験と同様に、結腸癌腫のマウスモデルにおいて生体内での腫瘍成長に対するその作用について抗体を試験した。ヒトPD-L1(MC38-hPD-L1)を発現するMC-38癌の腫瘍細胞(結腸腺癌細胞)を、二重ヒト化CD40/PD-1マウス(B-hPD-1/hCD40マウス)に皮下注射した。マウスにおける腫瘍が容積約400mm3に達した場合に、腫瘍容積に基づいて、マウスを異なる群にランダムに配置した(マウス8匹/群)。
【0506】
各群において、リン酸緩衝生理食塩水(PBS,G1)、1mg/kg抗CD40モノクローナル抗体セリクレルマブ(セリクレルマブ-IgG2,G2)、1mg/kg抗PD-1モノクローナル抗体1A7-H2K3-IgG4(G3)、1mg/kgセリクレルマブを、1mg/kg 1A7-H2K3-IgG4(G4)、1.35mg/kg 1A7-セリクレルマブ-FV3A-IgG4(G5)、又は1.35mg/kg 1A7-セリクレルマブ-FVHC-IgG4(G6)と併せて、B-hPD-1/hCD40マウスに腹腔内(i.p.)投与によって注入した。投与頻度は週に2回であった(合計6回の投与)。以下の表に詳細を示す。
【0507】
【表28】
【0508】
マウスの体重を全処置期間中、モニターした。異なる群のマウスの平均体重は、様々な程度にすべて増加した(図45A、及び図45B)。処置期間の最後に、異なる群の中ですべてのマウスの体重が増えた。
【0509】
抗体で処置された群における腫瘍サイズを図45Cに示す。以下の表に示すように、17日目のTGITV%(グループ化から17日後)を計算した。以下の表におけるP値は、17日目のデータに基づいて計算された。
【0510】
【表29】
【0511】
この結果から、1A7-セリクレルマブ-FV3A-IgG4(G5)及び1A7-セリクレルマブ-FVHC-IgG4(G6)のどちらも、モノクローナル抗体(G2及びG3)及び抗体の組み合わせ(G4)よりも高いTGITV%を有し(例えば、17日目)、腫瘍成長を阻害したことが分かった。この結果から、PD-1/CD40二重特異性抗体1A7-セリクレルマブ-FV3A-IgG4及び1A7-セリクレルマブ-FVHC-IgG4の融合タンパク質が、優れた有効性と共に、腫瘍成長を有意に阻害し得ることが示されている。
【0512】
他の実験において、PD-1/CD40二重特異性抗体の毒性をマウスにおいて試験した。二重ヒト化CD40/PD-1マウス(約7週齢)を、その体重に従って、異なる群(マウス3匹/群)にランダムに配置した。以下の抗体:抗CD40モノクローナル抗体セリクレルマブ(G2)、抗PD-1モノクローナル抗体1A7-H2K3-IgG4(G3)、1A7-セリクレルマブ-FVHC-IgG4(G4)及び1A7-セリクレルマブ-FV3A-IgG4(G5)の1つがランダムに選択され、グループ化の当日及びその後3日ごとに投与された。対照群(G1)にPBSを注入した。
【0513】
【表30】
【0514】
図46A~46Bに示すように、実験結果から、G2群マウスのみが有意な体重減少を示し、他の処置群のマウスの体重は、対照群マウスと比較して有意な差は示さないことが分かった。
【0515】
グループ化後7日目に、末梢血を採取して、アスパラギンアミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の濃度を検出した。図47A~47Bに示すように、ALT及びAST検出結果から、G2群マウス(抗CD40モノクローナル抗体セリクレルマブが投与された)は、ALT及びASTアミノトランスフェラーゼ両方の最高濃度を有することが示された。二重特異性抗体群(G4~G5)におけるアミノトランスフェラーゼ濃度は、G2群よりも低かった。
【0516】
グループ化後10日目に、マウス肝臓を単離し、顕微鏡下にて調べた。その結果を以下の表に示し、そこから、二重特異性抗体1A7-セリクレルマブ-FV3A-IgG4(G5)の毒性が、モノクローナル抗体(G2-G3)及び1A7-セリクレルマブ-FVHC-IgG4(G4)の毒性よりも低いことが分かった。
【0517】
この結果は、PD-1/CD40二重特異性抗体の3A構造フォーマットが、抗CD40抗体の毒性を有意に低減し得ることを意味する。さらに、この結果は、PD-1/CD40二重特異性抗体の3A構造フォーマットが、PD-1/CD40二重特異性抗体のHC構造フォーマットよりも低い毒性を示したことを意味する。
【0518】
【表31】
【0519】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明と組み合わせて記載されているが、上述の説明は、例証することを意図し、本発明の範囲を制限するものではなく、それは、添付の特許請求の範囲によって定義されるものと理解されたい。他の態様、利点、及び変更は、以下の特許請求の範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図17
図18A
図18B
図18C
図19
図20A
図20B
図20C
図20D
図21
図22
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図24
図25A
図25B
図26
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図28
図29
図30A
図30B
図31A
図31B
図31C
図31D
図32A
図32B
図33
図34
図35
図36
図37
図38A
図38B
図39A
図39B
図40
図41A
図41B
図42
図43
図44
図45A
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図46A
図46B
図47A
図47B
図48A
図48B
図48C
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図48E
図48F
図48G
図48H
図48I
図48J
図49
図50
【配列表】
2023524669000001.app
【国際調査報告】