(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】高性能スポーツカーおよび対応する制御方法
(51)【国際特許分類】
B60S 9/02 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
B60S9/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570168
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 IB2021054384
(87)【国際公開番号】W WO2021234630
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】102020000011707
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファヴァレット ファブリツィオ
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026EA02
3D026EA15
3D026EA54
(57)【要約】
高性能スポーツカー(1)であって、シャーシ(2)と、スポーツカー(1)が移動する地面(16)に面する底部(15)と、シャーシ(2)によって支持される4つの車輪(3)と、4つのサスペンション(13)であって、各々が対応する車輪(3)をシャーシ(2)に接続し、可変形状を有し、少なくとも第1のアクチュエータ装置(14)を有し、アクチュエータ装置は、サスペンション(13)の形状を変更するように適合されている、4つのサスペンション(13)と、シャーシ(2)をカバーし、4つのホイールアーチ(8)を有するボディ(4)であって、各アーチは上部において対応する車輪(3)を囲んでいる、ボディ(4)と、を備える高性能スポーツカー(1)。シャーシ(2)は、スポーツカー(1)の重量を支持するために地面(16)に載るように適合された複数の支持脚(17)が下側に設けられている。アクチュエータ装置(14)は、スポーツカー(1)が駐車されている場合にのみ、支持脚(17)が地面(16)に載るまで、すなわち、車輪(3)が地面(16)から離れるまで、車輪(3)をシャーシ(2)に対して上方に持ち上げ、サスペンション(13)の形状を変化させるように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高性能スポーツカー(1)であって、
シャーシ(2)と、
前記スポーツカー(1)が移動する地面(16)に面する底部(15)と、
前記シャーシ(2)によって支持され、前部位置に配置された2つの前部ステアリング車輪(3)と、
前記シャーシ(2)によって支持され、前記前輪(3)から一定の距離をおいて後部位置に配置された2つの後輪(3)と、
運動を駆動輪(3)に伝達するエンジンと、
前記前輪(3)と前記後輪(3)の間に存在する客室(5)と、
前記客室(5)内に配置され、前記2つの前部ステアリング車輪(3)のステアリング角を調整するハンドルと、
4つのサスペンション(13)であって、各々が対応する車輪(3)を前記シャーシ(2)に接続し、可変形状を有し、少なくとも第1のアクチュエータ装置(14)を有し、前記アクチュエータ装置は、前記サスペンション(13)の形状を変更するように適合されている、4つのサスペンション(13)と、
前記シャーシ(2)をカバーし、4つのホイールアーチ(8)を有するボディ(4)であって、各アーチは上部において対応する車輪(3)を囲んでいる、ボディ(4)と、
を備え、前記スポーツカー(1)は、
前記シャーシ(2)が、前記スポーツカー(1)の重量を支持するために前記地面(16)に載るように適合された複数の支持脚(17)を下側に設けられており、
前記第1のアクチュエータ装置(14)が、前記スポーツカー(1)が駐車しているときにのみ、前記支持脚(17)が前記地面(16)に載るまで、すなわち前記車輪(3)が前記地面(16)から離れるまで、前記車輪(3)を前記シャーシ(2)に対して上向きに持ち上げ、サスペンション(13)の形状を変更するように構成されており、
前記底部(15)の下の前記地面(16)の構成を検出して、前記地面(16)内の隆起部分の存在をチェックするように適合されたセンサ(21)が提供され、
前記スポーツカー(1)が駐車している場合にのみ、前記底部(15)の下の前記地面(16)に隆起部分がないときにのみ、前記車輪(3)を前記シャーシ(2)に対して上向きに持ち上げるように構成された制御ユニット(22)が提供されることを特徴とする、高性能スポーツカー(1)。
【請求項2】
前記支持脚(17)が、前記支持脚(17)が前記底部(15)と同一平面にある運転位置と、前記支持脚(17)が前記底部(15)から下向きに突出している駐車位置との間で可動である、請求項1に記載のスポーツカー(1)。
【請求項3】
前記スポーツカー(1)が駐車されている場合にのみ、各々が、対応する支持脚(17)を前記運転位置と前記駐車位置との間で動かすことが可能である、複数の第2のアクチュエータ装置(18)を備える、請求項2に記載のスポーツカー(1)。
【請求項4】
前記センサ(21)が光学型であり、前記底部(15)に存在する凹部(19)内に配置され、好ましくは進行方向(V)と反対の方向に向けられているビデオカメラを含む、請求項1、2または3に記載のスポーツカー(1)。
【請求項5】
前記凹部(19)は、前記スポーツカー(1)が駐車されたときにのみ開く、通常は閉じているフラップ(20)によって保護されている、請求項4に記載のスポーツカー(1)。
【請求項6】
構造的ではなく、したがって前記シャーシ(2)の一部ではなく、単一の車輪(3)のみに対応して配置され、運転中に常にとられる下降位置と、前記スポーツカー(1)が駐車している場合にのみとられる上昇位置との間で、前記シャーシ2に対して垂直に可動である、少なくとも1つの第1の可動パネル(23;26)と、
前記第1のアクチュエータ装置(14)から完全に分離され、独立しており、前記シャーシ(2)に対する前記車輪(3)の動きから完全に自律的な動きによって、前記第1の可動パネル(23;26)を、前記シャーシ(2)に対して、前記下降位置と前記上昇位置との間で動かすように適合されている、少なくとも1つの第3のアクチュエータ装置(24;27)とを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のスポーツカー(1)。
【請求項7】
前記第1の可動パネル(23)は、前記ボディ(4)の一部である、請求項6に記載のスポーツカー(1)。
【請求項8】
前記第1の可動パネル(23)を前記ボディ(4)の残りの部分に接続し、弾性変形して、前記第1の可動パネル(23)が前記下降位置と前記上昇位置との間で可動であるようにする少なくとも1つの弾性変形可能部分(25)を備える、請求項7に記載のスポーツカー(1)。
【請求項9】
前記第1の可動パネル(26)がホイールアーチ(8)の一部である、請求項6に記載のスポーツカー(1)。
【請求項10】
前記第1の可動パネル(23)は前記ボディ(4)の一部であり、
ホイールアーチ(8)の一部であり、前記第1の可動パネル(23)の下に配置され、運転中に常にとられる下降位置と、前記スポーツカー(1)が駐車しているときにのみとられる上昇位置との間で垂直方向に可動であり、前記第1の可動パネル(23)と同期される少なくとも1つの第2の可動パネル(26)が提供される、請求項6、7または8に記載のスポーツカー(1)。
【請求項11】
高性能スポーツカー(1)であって、
シャーシ(2)と、
前記スポーツカー(1)が移動する地面(16)に面する底部(15)と、
前記シャーシ(2)によって支持され、前部位置に配置された2つの前部ステアリング車輪(3)と、
前記シャーシ(2)によって支持され、前記前輪(3)から一定の距離をおいて後部位置に配置された2つの後輪(3)と、
運動を駆動輪(3)に伝達するエンジンと、
前記前輪(3)と前記後輪(3)の間に存在する客室(5)と、
前記客室(5)内に配置され、前記2つの前部ステアリング車輪(3)のステアリング角を調整するハンドルと、
4つのサスペンション(13)であって、各々が対応する車輪(3)を前記シャーシ(2)に接続し、可変形状を有し、少なくとも第1のアクチュエータ装置(14)を有し、前記アクチュエータ装置は、前記サスペンション(13)の形状を変更するように適合されている、4つのサスペンション(13)と、
前記シャーシ(2)をカバーし、4つのホイールアーチ(8)を有するボディ(4)であって、各アーチは上部において対応する車輪(3)を囲んでいる、ボディ(4)と、
を備え、前記スポーツカー(1)は、
前記シャーシ(2)が、前記スポーツカー(1)の重量を支持するために前記地面(16)に載るように適合された複数の支持脚(17)を下側に設けられており、
前記第1のアクチュエータ装置(14)が、前記スポーツカー(1)が駐車しているときにのみ、前記支持脚(17)が前記地面(16)に載るまで、すなわち前記車輪(3)が前記地面(16)から離れるまで、前記車輪(3)を前記シャーシ(2)に対して上向きに持ち上げ、サスペンション(13)の形状を変更するように構成されており、
構造的ではなく、したがって前記シャーシ(2)の一部ではなく、単一の車輪3のみに対応して配置され、運転中に常にとられる下降位置と、前記スポーツカー(1)が駐車している場合にのみとられる上昇位置との間で、前記シャーシ(2)に対して垂直に可動である少なくとも1つの第1の可動パネル(23;26)が提供され、
前記第1のアクチュエータ装置(14)から完全に分離され、独立しており、前記シャーシ(2)に対する前記車輪(3)の動きから完全に自律的な動きによって、前記第1の可動パネル(23;26)を、前記シャーシ(2)に対して、前記下降位置と前記上昇位置との間で動かすように適合されている、少なくとも1つの第2のアクチュエータ装置(24;27)が提供されることを特徴とする、高性能スポーツカー(1)。
【請求項12】
前記第1の可動パネル(23)は、前記ボディ(4)の一部である、請求項11に記載のスポーツカー(1)。
【請求項13】
前記第1の可動パネル(23)を前記ボディ4の残りの部分に接続し、弾性変形して、前記第1の可動パネル(23)が前記下降位置と前記上昇位置との間で可動であるようにする少なくとも1つの弾性変形可能部分(25)を備える、請求項12に記載のスポーツカー(1)。
【請求項14】
前記第1の可動パネル(26)がホイールアーチ(8)の一部である、請求項11に記載のスポーツカー(1)。
【請求項15】
前記第1の可動パネル(23)は前記ボディ(4)の一部であり、
ホイールアーチ(8)の一部であり、
前記第1の可動パネル(23)の下に配置され、運転中に常にとられる下降位置と、前記スポーツカー(1)が駐車しているときにのみとられる上昇位置との間で垂直方向に可動であり、前記第1の可動パネル(23)と同期される少なくとも1つの第2の可動パネル(26)が提供される、請求項11、12または13に記載のスポーツカー(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、2020年5月20日に出願されたイタリア特許出願第102020000011707号からの優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、高性能スポーツカーおよび対応する制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高性能スポーツカーは、1対の前輪および1対の後輪をサポートするシャーシを有し、前輪と後輪との間には、少なくとも1対のドアによってアクセスされる客室が存在し、各ドアは、客室の開位置と閉位置との間で回転軸を中心に回転するためのヒンジによってシャーシにヒンジ付けされている。
【0004】
大多数の自動車では、前部ドアのヒンジの回転軸は垂直であり、前部ドアのヒンジは、前輪に対して後方位置(すなわち、前輪のホイールアーチから一定の距離)に配置されたシャーシの2つのそれぞれの垂直材に固定されている。
【0005】
前部ドアのヒンジのこのような構成は、市場に存在する広く使用されている自動車の客室への優れたアクセス性を保証する。
【0006】
しかしながら、前部ドアのヒンジのそのような構成は、特にエンジンが中央位置に配置されている場合、高性能スポーツカーの客室への良好なアクセス性を得ることができない。
【0007】
高性能スポーツカーでは、水平回転軸が長手方向に配置されたヒンジを前部ドア(実際には自動車の唯一のドア)に使用することが提案されている。この場合、ヒンジは、いわゆる「ガルウィング」開口部を形成するために上側位置に配置される(このようなソリューションは、例えば1954年~1957年に製造されたMercedes 300 SLによって使用された)。高性能スポーツカーでは、水平回転軸が横方向に配置されたヒンジを前部ドア(実際には自動車の唯一のドア)に使用することも提案されている。この場合、ヒンジは、前部位置に配置される(このようなソリューションは、例えば1973年~1990年に製造されたLamborghini Countachによって使用された)。
【0008】
しかし、これまでに提案された解決策はいずれも、特にエンジンが中央位置に配置されている場合に、高性能スポーツカーの客室への良好なアクセス性を可能にするものではない。
【0009】
米国特許出願公開第2017120712号は、車両の重量が車輪から一連の支持脚に伝達され、車輪をシャーシに接続する流体ばねが短くなることによって車輪の地面からの高さが漸進的に低減する、トレーラ運搬可能な道路車両(例えば、トレーラ)の安定化システムを記載している。
【0010】
英国特許出願公開第964964号は、車両の重量が車輪からシャーシの下側部分に伝達され、車輪をシャーシに接続するサスペンションに作用する車輪の地面からの高さが漸進的に低減する、トレーラ運搬可能な道路車両(典型的には、結合によってトラクタトレーラを形成する前部トラクタによって牽引されるように設計されているセミトレーラ)を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高性能スポーツカーおよび対応する制御方法を提供することであり、上記スポーツカーは、上記の欠点がなく、同時に、容易かつコスト効率的に製造することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載されているような、高性能スポーツカーおよび対応する制御方法が提供される。
【0013】
請求項は、本明細書の不可欠の部分を形成する本発明の好ましい実施形態を記述している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に従って製造された運転構成の自動車の斜視図である。
【
図3】運転構成における
図1の自動車の側面図である。
【
図4】駐車構成における
図1の自動車の斜視図である。
【
図5】駐車構成における
図1の自動車の側面図である。
【
図6】運転構成における
図1の自動車の底部の詳細を示す概略図である。
【
図7】駐車構成における
図1の自動車の底部の詳細を示す概略図である。
【
図8】運転構成における
図1の自動車のホイールアーチおよびボディの詳細を示す概略図である。
【
図9】駐車構成における
図1の自動車のホイールアーチおよびボディの詳細を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、本発明を、その非限定的な実施形態例を示す添付の図面を参照して説明する。
【0016】
図1において、参照符号1は、全体として、後部(または中央)エンジンを有する自動車を示し、上記自動車は、前部位置に配置されている1対の前部ステアリング車輪3および前輪3から一定の距離(ホイールベースまたは軸距と呼ばれる)をおいて後部位置に配置された1対の後輪3を支持するシャーシ2(
図2に概略的に示す)を備え、軸距とも呼ばれるホイールベースは、同じ側に配置された前輪3の軸と後輪3の軸との間の距離を示し、自動車1の全長の重要な(主要な)部分である。エンジン(後部または中央の位置に配置され、
図2に概略的に示されている)は、この実施形態ではステアリングしている後輪3に運動を伝達する。
【0017】
シャーシ2は、自動車1の外部ケースを構成し、前輪3と後輪3との間に存在する客室5を中央で区切るボディ4によってカバーされている。特に、ボディ4は、客室5へのアクセスを可能にする1対のドア6を備え、客室5を正面で区切るフロントガラス7を備える。客室5の内部には、とりわけ、2つの前輪3のステアリング角を変えることを可能にするハンドル(
図2に概略的に示されている)が装備された運転席が存在する。
【0018】
さらに、ボディ4は4つのホイールアーチ8を備えており、各ホイールアーチ8は、上部で対応する車輪3を取り囲んでいる。
【0019】
客室5の前には、ヒンジ付き前部フード10(ボディ4の一部である)によって上部が閉じられている前部区画9が存在する(例えば、限定ではないが、荷物用)。客室5の後ろには、後部エンジン区画11があり(
図2に示されている)、これはヒンジ付き後部フード12(ボディ4の一部であり、
図3に示されている)によって上部が閉じられている。
【0020】
図2に示されるものによれば、各前輪3は、「マルチリンク」タイプの前部サスペンション13によってシャーシ2に機械的に接続され(異なる実施形態によれば、前部サスペンション13は「関節式四辺形」タイプである)、同様に、各後輪3は、「マルチリンク」タイプの後部サスペンション13によってシャーシ2に機械的に接続されている。各サスペンション13は、サスペンション13の形状を変化させるために、特に自動車1の地面からの高さを修正するために、すなわち、シャーシ2に対する車輪3の垂直方向の高さを修正するために制御可能な少なくとも1つのアクチュエータ装置14を備える。
【0021】
図3および
図5に示されるものによれば、自動車1は、自動車1を下方に区切る底部15を有し、自動車1が移動する地面16に面し、通常、空気力学的効果を得るための形状である(例えば、平坦であり、後部にはベンチュリ効果を利用したエクストラクタが装備されている)。
【0022】
図3および
図5に示されるものによれば、シャーシ2は、下方に複数の支持脚17(特に、車輪3の間および車輪3の近くに配置された4つの支持脚17)を備えており、これらは、自動車1の重量を支持するために地面16に載る。支持脚17は、支持脚17が底部15と同一平面にある(すなわち、各支持脚17の下面が、底部15の下面にシームレスに接続される)運転位置(
図3に示される)と、支持脚17が底部15から下向きに突出する駐車位置(
図5に示される)との間で可動である。特に、4つのアクチュエータ装置18が提供され、各アクチュエータ装置は、自動車1が駐車されたときにのみ、対応する支持脚17を運転位置(
図3に示される)と駐車位置(
図5に示される)との間で動かすように適合される。
【0023】
図6および
図7に示される可能な実施形態によれば、底部15を通して、可動フラップ20によって閉じられ、地面16の隆起した部分(駐車位置において底部15を損傷する可能性がある)の存在をチェックするために底部15の下の地面16の構造を検出するように適合されたセンサ21を収容する凹部19が存在する。好ましくは、センサ21は光学型であり、底部15の下の地面16をフレーミングし、進行方向Vと反対の方向に向けられるビデオカメラを備える。すなわち、センサ21は、底部15の下の地面16を前部からフレーミングするために、底部15の前部位置に配置され、後方(すなわち、自動車1の尾部に向かって)を向いている。可動フラップ20の機能は、運転中に発生する粉塵と水の両方(センサ21が正しい視界を有することを妨げる光学系を汚す可能性がある)、および、運転中に発生する可能性のある破片(センサ21を損傷する可能性がある)からセンサ21を保護することである。
【0024】
アクチュエータ装置14は、スポーツカー1が駐車されている場合にのみ、支持脚17が地面16に載るまで、すなわち、(
図5に示すように)車輪3が地面16から離れるまで、車輪3をシャーシ2に対して上方に持ち上げ、サスペンション13の形状を変化させるように構成されている。換言すれば、サスペンション13およびアクチュエータ装置14は、車輪3を地面16から離し、(
図5に示されているように)自動車1が支持脚17を地面16に載せる(明白であるが、自動車1が駐車しているときのみ)のに十分な長さの垂直運動を車輪3に加えるように設計されている。
【0025】
自動車1は、自動車1が駐車されている場合にのみ、支持脚17が地面16に載るまで、すなわち、車輪3が地面16から離れるまで車輪3をシャーシ2に対して上方に持ち上げるように、アクチュエータ装置14を制御するように構成されている制御ユニット22(
図2に概略的に示す)を備える。明白であるが、シャーシ2に対して車輪3を持ち上げ始める前に、制御ユニット22は、支持脚17を運転位置(
図3に示されている)から駐車位置(
図5に示されている)に出す。
【0026】
特に、制御ユニット22は、底部15の下の地面16に隆起部分がない場合にのみ(その存在はセンサ21によってチェックされる)、車輪3をシャーシ2に対して上方に持ち上げることを可能にする。明白であるが、自動車1を発進させる前に、制御ユニット22は、車輪3を再び地面16上に載せるように、車輪3をシャーシ2に対して下げ、したがって、支持脚17を駐車位置(
図5に示す)から運転位置(
図3に示す)に引き込む。
【0027】
好ましい実施形態によれば、制御ユニット22は、ドア6が閉じている場合にのみ、車輪3をシャーシ2に対して上方に持ち上げることを可能にし、ドア6が開いている場合、シャーシ2に対する車輪3の一切の昇降を即座にロックする。
【0028】
支持脚17(例えば、1~2センチメートルで定量化可能な適度な厚さを有する)によって自動車1を地面に載せることにより、客室5を(底部15を地面16に近づけるまで)著しく下げることができ(無論、自動車1が駐車している場合のみ)、自動車1が駐車されているときに非常に低い客室5を利用し、その結果、ドア6の構成およびヒンジ付けを適切に設計することにより、乗車および降車の両方において客室5への優れたアクセス性を得ることが可能である。
【0029】
図8および
図9に示される可能な実施形態によれば、ボディ4は、車輪3に対応して、または車輪3の少なくとも一部に対応して(例えば、前輪3のみまたは後輪3のみ)、可動パネル23を備える(そのうちの1つのみが
図8および
図9に示されている)。各可動パネル23(構造的ではなく、したがってシャーシ2の一部ではない)は、単一の車輪3のみに対応して配置され(すなわち、1つの車輪3のみに関与する)、単一の車輪3のみの上にあり、運転中に常にとられる下降位置(
図8に示す)と、車輪3をシャーシ2に対して持ち上げるために(すなわち、車輪3の上方にあり、車輪3がその持ち上げ中に占有する自由空間を作成するために)自動車1が駐車している場合にのみとられる上昇位置(
図9に示す)との間で、シャーシ2に対して垂直に可動である。
【0030】
各可動パネル23について、可動パネル23を下降位置(
図8に示されている)と上昇位置(
図9に示されている)との間で動かすように適合されたアクチュエータ装置24が提供される。
【0031】
好ましくは、ボディ4は、各可動パネル23をボディ4の残りの部分に接続し、弾性変形して、可動パネル23が下降位置(
図8に示される)と上昇位置(
図9に示されている)との間で可動であるようにする少なくとも1つの弾性変形可能部分25を備える。例えば、変形可能部分25は、防水生地から構成され、外部部分(上昇位置で完全に露出している)に適切な表面仕上げを有することができる。可能な実施形態によれば、各可動パネル23は、部分的または完全に弾性変形可能材料から作成されてもよい(すなわち、剛性部品を欠いてもよい)。
【0032】
図8および
図9に示される可能な実施形態によれば、ホイールアーチ8またはホイールアーチ8の少なくとも一部分(例えば、前輪アーチ8のみまたは後輪アーチ8のみ)が、それぞれの可動パネル26を備える(そのうちの1つのみが
図8および
図9に示されている)。各可動パネル26(構造的ではなく、したがってシャーシ2の一部ではない)は、ホイールアーチ8の一部であり、対応する可動パネル23(存在する場合)の下に配置され、運転中に常にとられる下降位置(
図8に示す)と、自動車1が駐車している場合にのみとられる上昇位置(
図8に示す)との間で、シャーシ2に対して垂直に可動であり、対応する可動パネル23(存在する場合)と同期される。すなわち、各可動パネル26(各可動パネル23と同様に)は、単一の車輪3のみに対応して配置され(すなわち、1つの車輪3のみに関与する)、単一の車輪3のみの上にある。
【0033】
各可動パネル26について、可動パネル26を下降位置(
図8に示されている)と上昇位置(
図9に示されている)との間で動かすように適合されたアクチュエータ装置27が提供される。同じ車輪3において、アクチュエータ装置27は、アクチュエータ装置24と共通の部品を有することができ、例えば、2つのアクチュエータ装置24および27は、対応する機械伝動装置によって2つの可動パネル23および26に伝達される運動を生成する共通の運動源を共有することができる。
【0034】
アクチュエータ装置24および27(可動パネル23および26に作用する)は、アクチュエータ装置14(サスペンション13に作用する)から完全に分離され、独立しており、シャーシ2に対する車輪3の動きから(すなわち、サスペンション13の内部運動から)完全に自律的な動きによって、それぞれの可動パネル23および26を、シャーシ2に対して、下降位置と上昇位置との間で動かすように適合されている。
【0035】
好ましくは、各可動パネル26をホイールアーチ8の残りの部分に接続し、弾性変形して、可動パネル26を下降位置(
図8に示される)と上昇位置(
図9に示されている)との間で可動であるようにする少なくとも1つの弾性変形可能部分28が提供される。例えば、変形可能部分28は、防水生地から構成され得る。可能な実施形態によれば、各可動パネル26は、部分的または完全に弾性変形可能材料から作成されてもよい(すなわち、剛性部品を欠いてもよい)。
【0036】
前述のように、4つの可動パネル23および4つの可動パネル26、または2つの可動パネル23(前部位置または後部位置)および2つの可動パネル26(前部位置または後部位置)、2つもしくは4つの可動パネル23のみ(すなわち、可動パネル26はない)、2つまたは4つの可動パネル26のみ(すなわち、可動パネル23はない)、2つの可動パネル23(前部位置または後部位置)および4つの可動パネル26、または2つの可動パネル26(前部位置または後部位置)および4つの可動パネル23が提供されてもよい。あるいは、可動パネル23および26は完全に存在しなくてもよい。
【0037】
可動パネル23および26の存在、数および位置は、ボディ4およびホイールアーチ8の構成、ならびにシャーシ2に対する車輪3の全体的な垂直運動に依存する、すなわち、可動パネル23および26がない場合、シャーシ2に対して垂直に持ち上がる車輪3は、ホイールアーチ8またはボディ4にぶつかるかまたはぶつからないという事実に依存する。
【0038】
本明細書に記載の実施形態は、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、互いに組み合わせることができる。
【0039】
上記の自動車1には多くの利点がある。
【0040】
第一に、前述のように、自動車1が駐車するときに非常に低い客室5を利用し、その結果、ドア6の構成およびヒンジ付けを適切に設計することにより、乗車および降車の両方において客室5への優れたアクセス性を得ることが可能である。
【0041】
さらに、自動車1が駐車されると、車輪3は地面16から持ち上げられ、したがって、自動車1の重量によって変形せず、長時間停止した場合に楕円形になる危険がない(実際、高性能スポーツカーは相対的にそれほど使用されず、したがって同じ位置に長時間駐車したままになることが多い)。
【0042】
自動車1が駐車されると、車輪3は地面16から持ち上げられ、したがって、容易に取り外しおよび再取り付けすることができる。したがって、トラックでの使用中のタイヤの交換(高性能スポーツカーでは稀ではない)が、外部リフトによって自動車1を持ち上げる必要がないため、非常に容易になる。
【0043】
最後に、上記の自動車1は、可変形状を有するサスペンション13および対応するアクチュエータ装置14が高性能スポーツカー内にすでに存在し、したがって支持脚17のみを追加すればよい(車輪8とホイールアーチ8との間に適切な空間がある場合)ため、比較的容易かつコスト効率的に製造することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 自動車
2 シャーシ
3 車輪
4 ボディ
5 客室
6 ドア
7 フロントガラス
8 ホイールアーチ
9 前部区画
10 前部フード
11 後部エンジン区画
12 後部フード
13 サスペンション
14 アクチュエータ装置
15 底部
16 地面
17 支持脚
18 アクチュエータ装置
19 凹部
20 フラップ
21 センサ
22 制御ユニット
23 可動パネル
24 アクチュエータ装置
25 変形可能部分
26 可動パネル
27 アクチュエータ装置
28 変形可能部分
V 進行方向
【国際調査報告】