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特表2023-525830圧力容器の特性を非侵襲的に決定するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】圧力容器の特性を非侵襲的に決定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20230612BHJP
   G01N 29/46 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
G01N29/04
G01N29/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569074
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 IB2021053916
(87)【国際公開番号】W WO2021229393
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/023,017
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】522441518
【氏名又は名称】ケンウェーブ ソリューションズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルツ、ジー、ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルツ、エフ、ハリソン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェリマー、トゥーカ
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB01
2G047BC03
2G047BC04
2G047BC07
2G047BC18
2G047CA01
2G047CA03
2G047GF26
2G047GG12
2G047GJ21
(57)【要約】
圧力容器の目標特性を非侵襲的に決定するための例示的なシステムは、圧力容器内の流体に音響的に結合され、圧力容器の外部に配置され、流体中に音響信号を放出する信号発生器と、流体に音響的に結合され、圧力容器の外部に配置され、音響信号を検出する複数のセンサと、信号発生器および複数のセンサと相互接続された制御装置と、を備え、制御装置は、信号発生器を制御して音響信号を圧力容器に放出し、複数のセンサによって受信された音響信号を表すセンサデータを複数のセンサから取得し、取得したセンサデータに基づいて圧力容器の目標特性を算出し、目標特性の表示を出力する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器の目標特性を決定するためのシステムであって、
前記圧力容器内の流体に音響的に結合され、当該圧力容器の外部に配置され、当該流体中に音響信号を放出する信号発生器と、
前記流体に音響的に結合され、前記圧力容器の外部に配置され、前記音響信号を検出する複数のセンサと、
前記信号発生器および前記複数のセンサと相互接続された制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記信号発生器を制御して前記音響信号を前記流体に放出し、
前記複数のセンサによって受信された音響信号を表すセンサデータを当該複数のセンサから取得し、
前記センサデータに基づいて前記圧力容器の前記目標特性を算出し、
前記目標特性の表示を出力する、
システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記圧力容器およびその中に含まれる前記流体の予め定められたパラメータを取得し、
前記センサデータおよび前記予め定められたパラメータに基づいて前記目標特性を算出する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記信号発生器を制御して前記音響信号を放出する前に、当該信号発生器および前記複数のセンサを較正する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記信号発生器および前記複数のセンサを較正するために、前記制御装置は、
前記圧力容器およびその中に含まれる前記流体の予め定められたパラメータに基づいて初期スペクトルパルスパラメータを算出し、
前記初期スペクトルパルスパラメータに応じて前記信号発生器を制御してテスト信号を放出し、
前記複数のセンサにおけるテスト信号データを取得し、
前記テスト信号データに基づき、かつ目標受信信号強度に応じて、前記信号発生器が放出する前記テスト信号の強度を調整する、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記音響信号を放出するように前記信号発生器を制御し前記複数のセンサからセンサデータを取得する反復回数の閾値に達したかどうかを判定し、
前記判定が肯定的である場合のみ、前記目標特性を算出する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記目標特性は、前記圧力容器の壁の厚さおよび当該圧力容器内の欠陥の位置のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記圧力容器内に含まれる前記流体の溶存ガスパラメータを判定する熱膨張比重計をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記目標特性を算出する前に前記熱膨張比重計から前記溶存ガスパラメータを取得し、前記溶存ガスパラメータに基づいて前記目標特性を算出する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記信号発生器および前記センサのそれぞれの動作温度を維持するために、当該信号発生器および当該センサに結合された温度制御コンポーネントをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記信号発生器は、当該信号発生器が放出する前記音響信号を検出する統合基準センサをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
圧力容器の目標特性を決定するための方法であって、
前記圧力容器の外部から当該圧力容器内の流体中に音響信号を放出するよう信号発生器を制御することと、
前記流体を介して伝達される前記音響信号を表すセンサデータを前記圧力容器の外部で取得することと、
前記センサデータに基づいて前記圧力容器の前記目標特性を算出することと、
前記目標特性の表示を出力することと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記圧力容器およびその中に含まれる前記流体の予め定められたパラメータを取得することと、
前記センサデータおよび前記予め定められたパラメータに基づいて前記目標特性を算出することと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記信号発生器を制御して前記音響信号を放出する前に、当該信号発生器および、前記センサデータを取得するように構成された複数のセンサを較正することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記信号発生器および前記複数のセンサを較正することは、
前記圧力容器およびその中に含まれる前記流体の予め定められたパラメータに基づいて初期スペクトルパルスパラメータを算出することと、
前記初期スペクトルパルスパラメータに応じて前記信号発生器を制御してテスト信号を放出することと、
前記複数のセンサからテスト信号データを取得することと、
前記テスト信号データに基づき、かつ目標受信信号強度に応じて、前記信号発生器が放出する前記テスト信号の強度を調整することと
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記信号発生器を制御して前記音響信号を放出し、センサデータを取得する反復回数の閾値に達したかどうかを判定することと、
前記判定が肯定の場合のみ、前記目標特性を計算することと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記目標特性は、前記圧力容器の壁の厚さおよび当該圧力容器内の欠陥の位置のうちの1つまたは複数を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記目標特性の計算の前に、前記圧力容器内に含まれる前記流体の溶存ガスパラメータを取得することをさらに含み、当該目標特性の計算は当該溶存ガスパラメータに基づいて行われる、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年5月11日に出願された米国仮出願第63/023017号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は一般に圧力容器技術に関し、より詳細には、圧力容器の特性を非侵襲的に決定するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
配管のような圧力容器の寿命においては、壁の厚さ等の特性を決定して、漏れや破裂が発生する前に圧力容器の完全性を監視することが望ましい場合がある。このような特性を決定する現在の方法は、試験を行うために圧力容器の保全性に影響を与える可能性があり、また侵襲的で圧力容器の内部へのアクセスを必要とし、場合によっては試験のために圧力容器を使用停止にすることさえ必要になることがある。これは、例えば、圧力容器内の流体の温度または化学組成が、人間の健康、環境、周囲のインフラ、または他の近傍の機器にとって危険である場合、不便または危険である可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書の一態様によれば、圧力容器の目標特性を非侵襲的に決定するためのシステムが提供される。このシステムは、圧力容器内の流体に音響的に結合され、圧力容器の外部に配置され、流体中に音響信号を放出する信号発生器と、流体に音響的に結合され、圧力容器の外部に配置され、音響信号を検出する複数のセンサと、信号発生器および複数のセンサと相互接続された制御装置と、を備え、制御装置は、信号発生器を制御して音響信号を圧力容器に放出し、複数のセンサによって受信された音響信号を表すセンサデータを複数のセンサから取得し、取得したセンサデータに基づいて圧力容器の目標特性を算出し、目標特性の表示を出力する。
【0005】
本明細書の別の態様によれば、圧力容器の目標特性を決定するための非侵襲的方法が提供される。この方法は、圧力容器の外部から圧力容器内の流体中に音響信号を放出するよう信号発生器を制御することと、流体を介して伝達される音響信号を表すセンサデータを圧力容器の外部で取得することと、センサデータに基づいて圧力容器の目標特性を算出することと、目標特性の表示を出力することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】圧力容器の特性を非侵襲的に測定するシステムの一例を示すブロック図である。
図2図1のシステムにおける制御装置の特定の内部構成要素を示す図である。
図3図1のシステムにおいて、圧力容器の特性を非侵襲的に決定する方法を示す図である。
図4A図3の方法のブロック310および315において放出および受信される音響信号の例示的なプロットを示している。
図4B図3の方法のブロック310および315において放出および受信される音響信号の例示的なプロットを示している。
図5A図3の方法のブロック325における故障を検出する方法の一例の概略図を示す。
図5B図3の方法のブロック325における故障を検出する方法の一例の概略図を示す。
図6A】係数の振幅、音響信号の時間シーケンス、関連する音源強度のプロットの例を示す図である。
図6B】係数の振幅、音響信号の時間シーケンス、関連する音源強度のプロットの例を示す図である。
図6C】係数の振幅、音響信号の時間シーケンス、関連する音源強度のプロットの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
圧力容器は、その耐用年数にわたって監視・評価される必要がある。これには、温度や化学組成の理由で、人の健康や環境、周囲のインフラまたは他の周辺機器に害を及ぼす可能性がある流体が充填された圧力容器の内部キャリア/シェルのいくつかの物理属性の平均値を計算することが含まれることがある。
【0008】
現在の方法は侵襲的で、圧力容器の内部に機器を導入する必要があり、有害な内容物が圧力容器から漏れる可能性があり、または容器やその中の流体に対して有害な圧力過渡現象や歪みを与える可能性がある。このような方法では、試験前に流体を排出する必要がある場合もある。現在の非侵襲的な方法は、効果的な補修に必要な粒状分解能を欠いており、多くのシステムは、壁が多層構造になっている容器に適合していない。
【0009】
本明細書によれば、圧力容器の特性を非侵襲的に決定するためのシステムが提供される。このシステムは、制御された音響信号を導入するために信号発生器を用いる。本システムは、信号発生器から下流のセンサで受信したセンサデータに基づいて、リアルタイムで放出される信号を選択し、較正し、調整する。圧力容器の特性、例えば、壁の厚さや欠陥の位置は、信号発生器によって放出された音響信号と、下流のセンサで受信した対応する信号に基づいて決定してもよい。さらに、特性の決定は、その後比較される2つ以上の並列計算に基づいて検証されてもよい。本システムは、正確な故障検出を提供し、構成部品が圧力容器の外面に配置されているため、非侵襲的である。このため、圧力容器は試験中も使用することができる。
【0010】
図1は、圧力容器101の目標特性を非侵襲的に決定するための例示的なシステム100を示す。システム100は、制御装置104を含む。システム100はさらに、信号発生器108と、通信リンク116を介して制御装置104と相互接続される複数のセンサ112-1、112-2(本明細書ではセンサ112と総称し、一般的にはセンサ112と呼ぶ)とを含む。
【0011】
システム100は、圧力容器101の特性を決定するために配備される。例えば、圧力容器101は、流体を囲む壁102によって画定されたパイプであってもよい。システム100は、壁に沿った様々な点における壁の厚さや、壁102のあらゆる亀裂または欠陥の位置等の、壁102の特性を決定してもよい。より詳細には、システム100は、非侵襲的な方法を用いて圧力容器101の特性を決定するように構成される。したがって、信号発生器108およびセンサ112は、以下にさらに説明するように、特性決定操作のための信号を生成および検出するために壁102の外面103に配備されてもよい。このように、システム100は、圧力容器を破壊することなく、あるいは圧力容器の完全性に影響を与えることなく、使用中の圧力容器に採用することができる。
【0012】
制御装置104は、一般に、システム100を制御し、プロパティ決定操作を実行するように構成されている。このコンピューティング装置は、制御およびプロパティ決定操作のための特別な目的の演算装置であってよい。他の例では、制御装置104は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、サーバ、キオスク端末、または制御およびプロパティ決定操作のために構成された他の適切な装置等のコンピューティング装置であってよい。さらに他の例では、制御装置104は、制御およびプロパティ決定操作のために構成されたタブレット、スマートフォンなどのモバイルコンピューティング装置であってもよい。
【0013】
制御装置104は、サーバ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、モバイル装置、または他の適切な装置などの他のコンピューティング装置(図示せず)と通信していてもよい。特に、他のコンピューティング装置への通信リンクは、有線、無線、または、直接リンクまたは1つ以上のネットワークを横断するリンクを含む有線と無線の組み合わせであってもよい。例えば、通信リンクは、1つ以上のルータ、スイッチ、無線アクセスポイント等によって定義されるローカルエリアネットワーク(LAN)、セルラーネットワークおよびインターネットを含む任意の適切な広域ネットワーク(WAN)等のうちのいずれか、またはそれらの任意の組み合わせを含むネットワークを利用してもよい。
【0014】
信号発生器108は、圧力容器101内に収容された流体に音響的に結合される。信号発生器108は、壁102の外面103のような圧力容器101の外部に配置される。他の例では、信号発生器108は、例えばフランジまたはバルブにおいて、容器の継手に取り付けられる等により、他の外部位置に配置されてもよい。したがって、信号発生器108は、圧力容器101内からの有害物質の放出を防止するために、バルブまたはフランジ内の任意の流体と信号発生器108内の音源との間の物理的障壁として機能するように構成された1つ以上の追加の音響的に透明な膜を含んでもよい。信号発生器108は、圧力容器101内、より詳細には圧力容器101内に含まれる流体に音響信号を放出するように構成される。すなわち、信号発生器108は、ハイドロフォン、ソナートランスデューサ、電気力学的加振器、モードハンマー等の音源を含んでもよい。さらに、信号発生器108は、異なる周波数で音響信号を発するように制御可能(すなわち、制御装置104によって)である。
【0015】
センサ112は、流体に音響的に結合され、圧力容器101の外部に配置され、音響信号を検出する。例えば、センサ112は、加速度センサ、温度センサ、圧力センサ、変位センサ、これらの組み合わせ等を含んでもよい。センサ112は、例えば、外面103に配置されてもよい。他の例では、センサ112は、圧力容器101のバルブまたは他の所定の開口部に配置されたハイドロフォン等であってもよい。具体的には、センサ112は、信号発生器108が発した音響信号が圧力容器101を透過および反射したものを検出するように構成される。本実施例では、システム100は2つのセンサ112を含むが、他の実施例では、システム100は2つ以上のセンサ112を含んでもよい。
【0016】
いくつかの例では、センサ112の少なくとも1つは、信号発生器108での信号出力が所望通りであることをシステム100が検証できるように、基準センサとして信号発生器108と一体化されてもよい。すなわち、一体化された基準センサは、信号発生器によって放出される音響信号を検出するように構成される。
【0017】
信号発生器108およびセンサ112は、通信リンク116を介して制御装置104と通信している。通信リンク116は、有線、無線、または直接リンクを含む有線と無線の組み合わせであってもよい。例えば、通信リンク116は、ユニバーサルシリアルバス(USB)有線接続、Bluetoothなどの無線通信、他の適切な短距離無線通信プロトコル、またはwi-fiなどを含んでもよい。したがって、信号発生器108およびセンサ112は、信号発生器およびセンサ112が制御装置104と通信することを可能にするための適切なハードウェア(例えば、送信器、受信器など)を含む。具体的なコンポーネントは、信号発生器108およびセンサ112が通信する通信リンク116のタイプに基づいて選択される。
【0018】
いくつかの例では、システムは、圧力容器101内に含まれる流体の溶存ガスパラメータを決定するように構成された一体型サーモジラトハイドロメータ120をさらに含んでもよい。サーモジラトハイドロメータ120は、非均質な水性混合物または他の流体用であってもよい。本実施例では、サーモジラトハイドロメータは、信号発生器108に内蔵されている。他の実施例では、サーモジラトハイドロメータは、複数のセンサ112のうちの1つに内蔵されていてもよい。特に、サーモジラトハイドロメータ120から得た溶存ガスパラメータは、圧力容器101に含まれる流体中の溶存ガスおよび気泡の存在を補正するために制御装置104によって使用され得る。
【0019】
信号発生器108およびセンサ112の各々は、信号発生器108およびセンサ112のための適切な各動作温度を維持するために、それに結合された温度制御部品をさらに含んでもよい。これは、例えば、圧力容器101が高温の流体を含む場合に特に適用され得る。例えば、温度制御部品は、冷却剤リザーバ、再循環ポンプ、センサ/信号発生器ケーシングに接続されたチュービング、およびマイクロコントローラを含む冷却システムを含んでもよい。マイクロコントローラは、温度センサを介して温度を監視し、温度が第1の閾値温度以上である場合に、冷却剤を循環させるようにポンプを制御してもよい。さらに、温度が第2の閾値温度を超えて上昇し続ける場合、マイクロコントローラは操作者に警告し(例えば、モバイル装置または同等の機器への通知を介して)、センサ112または信号発生器108を停止させるように構成されてもよい。他の例では、温度制御部品は、加熱システム、ファン、ラジエータ、蒸発冷却システム、蒸気室、熱電ペルチェチップなどを含んでもよい。さらに、他の例では、温度制御部品は、温度が閾値温度より低くなった場合に、操作者に警告し、センサ112または信号発生器108をシャットダウンしてもよい。特に、信号発生器108またはセンサ112をシャットダウンすることにより、環境が過度に高温または低温になった場合、装置の内部部品および機能を保つことができる。
【0020】
図2を参照すると、特定の内部構成部品を含む制御装置104が、より詳細に示されている。制御装置104は、中央処理装置(CPU)、マイクロコントローラ、処理コア、または同等の機器等の、プロセッサ200を含む。プロセッサ200は、複数の協働プロセッサを含んでもよい。いくつかの例では、プロセッサ200によって実装される機能は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)等の、1つ以上の特別に設計されたハードウェアおよびファームウェアコンポーネントによって実装されてもよい。いくつかの例では、プロセッサ200は、本明細書で論じる特性決定操作の処理速度を高めるために、ASIC、FPGAなどの専用論理回路を介して実装されてもよい特別目的のプロセッサであってもよい。
【0021】
プロセッサ200は、メモリ204などの非一時的なコンピュータ可読記憶媒体と相互接続されている。メモリ204は、揮発性メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリまたはRAM)と不揮発性メモリ(例えば、読み取り専用メモリまたはROM、電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリまたはEEPROM、フラッシュメモリ)の組み合わせを含んでもよい。プロセッサ200およびメモリ204は、1つまたは複数の集積回路で構成されてもよい。メモリ204の一部または全部は、プロセッサ200と一体化されてもよい。メモリ204は、プロセッサ200が実行するためのコンピュータ読み取り可能な命令を格納する。特に、メモリ204は制御アプリケーション208を記憶しており、制御アプリケーション208はプロセッサ200によって実行されると、システム100の特性決定操作に関連する、詳細は後述する様々な機能を実行するようにプロセッサ200を構成する。アプリケーション208はまた、別個のアプリケーションの組として実装されてもよい。
【0022】
メモリ204は、例えば、特性決定操作で使用するためのルール(例えば、放出される音響信号に関するもの、計算の整合性を検証するためのものなど)、予め定義されたパラメータ(例えば、製造仕様を含む、圧力容器101および圧力容器に含まれる流体のパラメータなど)、ならびに以前に計算された目標特性を含むリポジトリ212を記憶してもよい。他の例では、メモリ204および/またはリポジトリ212は、システム100の特性決定操作に関連する他の規則およびデータも格納してもよい。
【0023】
装置104はまた、プロセッサ200と相互接続された通信インタフェース216を含む。通信インタフェース216は、制御装置104が他のコンピューティング装置、信号発生器108およびセンサ112と通信することを可能にする適切なハードウェア(例えば、送信器、受信器、ネットワークインタフェースコントローラ等)を含む。通信インタフェース216の特定のコンポーネントは、制御装置104が通信することになる通信リンク116を含むネットワークまたは他のリンクのタイプに基づいて選択される。
【0024】
いくつかの例では、装置104は、プロセッサ200と相互接続された、1つ以上の入力および/または出力装置(図示せず)を含むこともできる。入力装置は、例えば、プロパティ決定操作を開始するために、操作者から入力を受け取るための1つ以上のボタン、キーパッド、タッチセンシティブディスプレイスクリーンなどを含むことができる。出力装置は、例えば圧力容器101の決定された目標特性を出力するために、操作者に出力またはフィードバックを提供するための1つまたは複数のディスプレイスクリーン、音響発生器、振動器などを含むことができる。
【0025】
プロセッサ200によるアプリケーション208の実行を介して実施されるシステム100の操作は、図3を参照しながらより詳細に説明される。図3は、圧力容器の特性を決定する方法300を示し、これは、図1および図2に図示された構成要素を参照して、システム100における、特に装置104によるその実行と関連して説明されることになる。他の例では、方法300は、他の適切なコンピューティングデバイスによって、または他の適切なシステムで実行されてもよい。
【0026】
方法300は、例えば、装置104の入力装置における入力などの開始信号に応答して、ブロック305で開始する。例えば、操作者は、方法300を開始するためにボタンを作動させてもよい。他の例では、方法300は、予め定められた間隔(例えば、2時間ごと、6時間ごと、1日ごと、1週間ごと、または他の適切な間隔のスケジュールで)自動的に開始されてもよい。ブロック305において、装置104は、システム100を較正するように構成される。例えば、装置104は、圧力容器101および圧力容器101に含まれる流体の予め定義されたパラメータ、並びに信号発生器108およびセンサ112の定義された空間配置を取得してもよい。さらに、装置104は、センサ112からの読み取り値を較正してもよい。例えば、装置104は、信号発生器による誘導信号がない状態でセンサ112からセンサデータを取得し、センサ112によって検出されるバックグラウンドノイズのベースラインを取得してもよい。
【0027】
さらに、装置104は、センサ112のゲインを較正するように構成されてもよい。具体的には、装置104は、信号発生器108によって放出されたテスト信号およびセンサ112から得られたテスト信号データに基づいて、信号発生器108およびセンサ112を較正してもよい。例えば、装置104は、圧力容器101および圧力容器101に含まれる流体の予め定義されたパラメータに基づいて、初期スペクトルパルスパラメータを算出してもよい。予め定義されたパラメータは、圧力容器101の壁102の予想されるおおよその厚さ、流体中の理想的な音速、および圧力容器内の信号伝搬に影響を与える可能性のある他の関連パラメータを含んでもよい。したがって、初期スペクトルパルスパラメータは、予め定義されたパラメータおよびセンサ112における所望のゲインに従って、テスト信号の周波数、持続時間および振幅を定義してもよい。初期スペクトルパルスパラメータの計算は、センサ112における十分な信号ゲインを得るために必要な反復回数を減少させることができる。
【0028】
次に、制御装置104は、初期スペクトルパルスパラメータに従ってテスト信号を放出し、センサ112からテスト信号データを得るように信号発生器108を制御してもよい。装置104は、有意義なデータを得るために、センサ112の各々で十分に明確なセンサデータを得るためのテスト信号を調整するように構成されてもよい。したがって、制御装置104は、テスト信号データに基づいて、かつ、目標受信信号強度に従って、信号発生器によって放出されるテスト信号の強度を調整してもよい。例えば、装置104は、テスト信号データの平均振幅が、目標受信信号強度を表す閾値振幅を超えるか否かを判定してもよい。さらに、装置104は、センサ112によって検出されたベースラインデータに基づいて、テスト信号データの振幅を定義してもよい。判定が否定的である場合、装置104は、信号発生器108を制御して(例えば、増加した振幅で)テスト信号を反復して放出し、システム100を較正してもよい。
【0029】
いくつかの例では、ブロック305において、制御装置104は、さらに、信号発生器108の統合基準センサで検出された信号を入力信号と比較して、出力信号が概して所望の出力に一致していることを検証してもよい。制御装置104は、信号発生器108が出力する信号が所望の振幅および他の特性を有することを保証するために、比較に基づいて信号発生器108が出力する信号を調整してもよい。
【0030】
ブロック310において、装置104は、信号発生器108を制御して、圧力容器101に音響信号を放出させる。特に、制御装置104は、信号発生器108が音響信号を発する特定の周波数および持続時間を選択してもよい。音響信号の周波数および持続時間は、予め定義されたプログラム(例えば、メモリ204に格納されている)に従って選択されてもよいし、較正結果および以前に放出および検出された音響信号に基づいて動的に選択されてもよい。例えば、周波数および持続時間は、圧力容器101の材料、圧力容器101の直径、圧力容器101に含まれる流体の種類、流体温度、流体圧力、および圧力容器101の支持構造、のうちの1つ以上に基づいて選択されてもよい。例えば、装置104は、センサ112で受信される信号を最適化するために、放出される音響信号の周波数、持続時間、およびパワーを制御してもよい。音響信号は、1~20000Hzの範囲の周波数で放出されてもよい。いくつかの例では、音響信号は、より高い周波数で放出されてもよい。
【0031】
放出される音響信号は、例えば、パルス、トーン、他の形状、および異なる周波数で放出されてもよい。音響信号は、例えば、連続したまたは交互の非インパルススペクトルおよび整形されたパルスであってもよい。より一般的には、放出される音響信号は、検出された信号に基づいて目標特性を決定する際の一貫性を可能にするために、決定論的かつ反復的なものである。
【0032】
特に、音響信号は、パルスで、かつ、センサ112での検出および認識のために最適化された周波数で放出されてもよい。信号発生器108によって放出される音響信号は、圧力容器101に沿って所定の距離に位置する2つのセンサ112間の予想通過時間よりも大きな周期を有する、周期的なものであることが好ましい。さらに、信号発生器108によって放出される音響信号は、振幅の突然の著しい変化(例えば、少なくとも閾値振幅変化によって測定される)のような識別可能な開始を含んでもよい。
【0033】
さらに、周期的な音響信号は、好ましくは、少なくとも2つのタイムスケール、すなわち持続時間を持つ期間2Tおよび信号窓2τを含んでいてもよく、Tはτよりも大きい。そのような例では、s(t)で表される時間tでの信号は、次のように定義されてもよい。
【0034】
このように、周期的な音響信号には、あるパルスと次のパルスとを明確に区別するために、信号を送らない時間が含まれていることがある。関数f(t)は、例えば、振幅の急激かつ大幅な変化で始まる音響信号を定義することができる。
【0035】
このような信号は、いくつかの例では、フーリエ級数、すなわち、一緒に加算すると所望の信号と区別できない適切な振幅と位相を持つトーンのコレクションで記述することができる。例えば、フーリエ級数は、式(1)で定義することができる。
【0036】
式(1)において、s(t)は信号を表し、aおよびbはフーリエ級数のn番目の係数を表し、以下の式(2)、(3)で定義される。
【0037】
【0038】
したがって、式(4)で定義される関数m(t)は、波形s(t)を生成するために適用される変調を定義することができる。実際の応用では、その和が無限に広がるわけではなく、N項で切り捨てられることがある。N項後の和を切り捨てることで、ギブス現象による波形s(t)の見え方が変化する。ランチョススムージングなどの重み付け項を適用することで、これらの影響を軽減することができる。
【0039】
例えば、立ち上がり時間の短い圧力インパルスを発生させるには、発生源の機械的な部品が比較的小さな慣性を有していることが必要である。この制約は、検出方法が異なる音の伝搬速度の観察に基づく場合には、緩和することができる。フーリエ級数成分の周波数と振幅を選択することで、音の間隔と振幅を制御することができる。
【0040】
例えば、式(5)で定義される時系列は、Δt秒単位でサンプリングされた時系列に相当する。
【0041】
【0042】
【0043】
図6Cは、関連するソース強度(すなわち、式(4)で定義される)を示している。インパルスの時間スケールが大きくなっているが、インパルス間隔は変化していない。
【0044】
有利なことに、パルスの形状と振幅を選択することで、受信した信号をより適切に解析することができる。特に、流体で満たされた弾性壁を持つパイプの中で非定常圧力が伝播する速度は、周波数の関数である。いくつかの解決策は、数学的形式が低次モードの場合よりも困難である可能性がある高次モードに焦点を当てている。本システムでは、圧力容器101の断面にわたる空間パターンをマッピングするのに十分なセンサ112で観測される伝搬モードを特定することが可能である。より複雑なモードパターンは、モードパターンを決定するために、より多くのセンサ112を採用することができる。平均的な複雑さのモードパターンについては、約5つのセンサ112が使用されてもよい。さらに、壁102の特性を評価するために収集されたデータは、基本的な伝搬モード(すなわち、ウォーターハンマーモード)から得られてもよい。したがって、理解できるように、上記の例示的な音響信号は、圧力容器101の特性を決定する方法300において採用され、収集されたデータに関する分析の質を向上させることができる。
【0045】
図3に戻り、ブロック315において、装置104は、センサ112からセンサデータを取得する。具体的には、センサデータは、圧力容器101を透過した後、センサ112によって受信されたブロック310で放出された音響信号を表す。圧力容器101の透過は、センサ112に到達するまでの、壁の様々な層(例えば、壁102が複数の層からなる場合)や断熱材などを通る伝播、および壁102の内部からの反射を含んでもよい。
【0046】
例えば、図4Aおよび図4Bを参照すると、それぞれ、システム100において発せられた信号および検出された信号の例示的な包絡線、並びに相互相関を介した時間移動を示す例示的なプロット400および410が示されている。具体的には、包絡線402は、信号発生器108によって放出された信号を表し、包絡線404は、第1のセンサ112-1によって検出された信号を表し、包絡線406は、第2のセンサ112-2によって検出された信号を表している。また、線412は、第1のセンサ112-1の時間移動相互相関を表し、線414は、第2のセンサ112-2の時間移動相互相関を表している。
【0047】
見て分かるように、包絡線404および406は、ソース(すなわち、信号発生器108)からレシーバ(すなわち、センサ112)への移動時間により、信号発生器108によって発せられた信号から時間遅延されたものである。これは、各センサへの時間移動相互相関のピークを見れば、特に明らかである。さらに、包絡線404および406は、圧力容器101の様々な幾何学的構成要素、例えばパイプのエルボーでの反射によって生成されたビートを含む。
【0048】
図3に戻り、ブロック320において、制御装置104は、反復回数の閾値に達したかどうかを判定する。反復回数の閾値は固定されてもよく(例えば、36、42、または別の反復回数)、または、例えば、得られたセンサデータの品質に基づいて動的に計算されてもよい。例えば、制御装置104がセンサデータの閾値部分においてあまりにも多くのノイズ、干渉、低振幅を検出した場合、反復の数は動的に増加されてもよい。
【0049】
ブロック320において、反復回数の閾値に達していない場合、制御装置104は、ブロック310に戻り、新しい音響信号のセットを発する。信号は、(例えば、反復および一貫性のために)同じ信号であってもよく、または制御装置104は、(例えば、信号の形状または周波数を変更することによって)異なる信号を発するように信号発生器を制御してもよい。このように、制御装置104は、音響信号を発するためのブロック310と、音響信号に対応するセンサデータを取得するためのブロック315とを、反復回数の閾値に達するまで繰り返す。
【0050】
ブロック320において、反復回数の閾値に達している場合、制御装置104はブロック325に進む。ブロック325で、制御装置104は、圧力容器101の目標特性を算出する。目標特性は、壁102の欠陥または亀裂の位置を特定するだけでなく、壁厚のような壁102の特性であってもよい。特に、目標特性は、ブロック315で得られたセンサデータに基づいて算出される。
【0051】
例えば、壁の厚さは式(6)に従って算出することができる。
【0052】
特に、式(1)において、Cは圧力容器101内を伝搬する流体中の音速を表し、信号発生器108からセンサ112への伝搬に基づいて検出される。ρ、c、およびEは、それぞれ流体の密度、理想音速、壁102のヤング率を表す(すなわち、定数)。Dおよびhは、圧力容器101の壁102の初期直径および厚さ(すなわち、設置時の状態)を表し、δおよびθは、壁102の浸食の内部および外部の深さを表す。したがって、信号発生器108から発せられた音響信号、センサ112で受信された信号、および圧力容器101の既知のパラメータ(例えば、メモリ204に記憶され取り出されたもの)に基づいて、壁の総浸食が算出されてもよい。さらに、いくつかの例では、壁の外部浸食は、目視検査または他の方法に基づいて決定されてもよく、これを使用して、壁102の対応する内部浸食を算出してもよい。
【0053】
他の例では、壁の厚さに加えて、壁の内側にビルドアップがある場合、壁の厚さと材料のビルドアップを含む総厚さは、式(7)に従って算出されてもよい。
【0054】
特に、式(7)においてNは錆瘤による透過損失を表し、Dは経路の水力直径(物質の蓄積を考慮して流体が通過しうる領域の直径)を表し、Lは評価対象のセグメントの長さを表し、Bは実験的に得られた吸収係数を表し、Dは圧力容器の内周を表す。したがって、信号発生器108から発せられた音響信号、センサで受信された信号、および圧力容器101の既知のパラメータに基づいて、壁の内部への物質蓄積を算出することができる。
【0055】
さらに、壁の厚さは、2つ以上の並列計算によって算出される。例えば、制御装置104は、第1のセンサ112-1で受信されたデータを解析して、第1の推定壁厚を算出してもよい。制御装置104は、第2のセンサ112-2で受信したデータをさらに解析して、第2の推定壁厚を算出してもよい。第1および第2の推定壁厚は、整合性のために比較されてもよい。例えば、メモリ204は、目標特性の並列計算の間で許容される閾値パーセンテージ差を記憶してもよい。
【0056】
いくつかの例では、圧力容器101に含まれる流体は、気体を有していてもよい。気体は液体よりも圧縮性が高く、したがって、少量の気体であっても音の伝搬に大きく影響する可能性がある。したがって、いくつかの例では、壁の厚さを算出する前に、制御装置104は、最初にサーモジラトハイドロメータ120から溶存ガスパラメータを取得し、壁の厚さを算出する際に前記パラメータを考慮してもよい。したがって、ブロック325で算出される目標特性は、サーモジラトハイドロメータ120から得られた溶存ガスパラメータにさらに基づいてもよい。
【0057】
制御装置104は、センサデータを使用して、壁102の欠陥または亀裂を検出することもできる。具体的には、信号発生器108によって放出された音響信号は、壁の欠陥によって半径方向に偏向されるため、センサ112で受信した信号を相互相関させることによって検出することができる。
【0058】
例えば、図5Aおよび5Bを参照すると、故障検出計算の模式図が示されている。圧力容器の長さ502に沿って、欠陥500が描かれている。欠陥500は、センサ504-1と504-2との間に位置する。簡単にするために、欠陥500は、センサ504-1と504-2の間に直接あるように示されており、したがって、以下の例では、センサ504-1と504-2によって定義される軸に沿ってのみ距離が算出される。当業者には理解されるように、このような計算は、センサまでの距離の三角測量に基づく3次元距離に容易に変換可能である。
【0059】
図5Aに描かれているように、制御装置104はまず、周波数依存伝搬速度(C)を決定するために、2つのセンサ504の間の既知の距離(L)を信号が横断するのに要する時間(τ)を決定してもよい。したがって、図5Bに示すように、信号発生器によって放出された音響信号が欠陥500によって偏向される場合、第1のセンサ504-1まで距離(L)を横断するのに第1の時間(τ)がかかり、第2のセンサ504-2まで距離(L)を横断するのに第2の時間(τ)がかかる。L+L=Lなので、制御装置104は、偏向された信号の源(すなわち、故障500)は、L=0.5(C(τ-τ)+L)にあると判断する。ここで、Lは、第1のセンサ504-1の位置と相対的に計算される。
【0060】
ブロック330において、制御装置104は、ブロック325で算出された目標特性の表示を出力する。例えば、制御装置104は、結果を集計し、表示画面上に目標特性を表示してもよいし、電子メール通知を送信してもよいし、目標特性を含むレポートを生成してもよい。制御装置104は、さらに、将来の処理のために、例えば、メモリ204内のリポジトリ212に目標特性を格納してもよい。
【0061】
いくつかの例では、制御装置104は、算出された目標特性と閾値条件とをさらに比較してもよい。例えば、制御装置104は、メモリ204から壁の厚さの製造仕様を取得してもよい。ブロック325で算出された壁の厚さが、製造仕様に対して閾値の類似性(例えば、パーセント差、予め定義された閾値許容値などに基づく)の外にある場合、制御装置104は、エラー条件シーケンスを開始してもよい。例えば、制御装置104は、圧力容器の潜在的な弱点を操作者に通知するために、1つ以上の警告、通知などを生成してもよい。同様に、何らかの欠陥が検出された場合、制御装置104は、圧力容器101における潜在的な漏れを操作者に通知するために、1つ以上の警告、通知などを生成してもよい。
【0062】
さらに、制御装置104は、算出された目標特性を、以前に記憶された算出済み目標特性と比較してもよい。現在算出された目標特性が、以前に記憶された目標特性に対して閾値の類似性(例えば、パーセント差、予め定義された閾値許容値などに基づく)の外にある場合、制御装置104は、現在記憶された目標特性を潜在的異常値とし、それゆえ、さらなるデータが得られるまでエラー状態シーケンスの開始を遅延させてもよい。
【0063】
2019年10月から12月にかけて実施した現場実験では、稼働中の断熱給湯管において、上記のシステムの実用性と精度を実証した。センサおよび2種類の音源(ソナーと加振器)を、試験場の、ある長さのパイプに設置した。バックグラウンドノイズの較正とセンサのゲイン調整の後、ソナーを数回動作させ、異なる周波数と継続時間のパルスをパイプに導入した。続いて、加振器を使って同様の試験を行った。試験終了後、試験区間からパイプクーポンを切り出し、破壊試験を行い、試験結果を検証した。
【0064】
平均的な計算による寸法結果、製造仕様、パイプクーポンの結果の概要を表1に示す。
【0065】
全体として、このシステムは破壊試験と比較して、約±2%から±5%の精度を実証した。試験中に溶存ガスと温度パラメータを測定するために、互換性のあるサーモジラトハイドロメータを使用すると、精度を向上させることができる。
【0066】
また、漏水の代わりにモーダルハンマーを用いて漏水や欠陥をシミュレートした。具体的には、モーダルハンマーからのタップは、壁の漏水や欠陥によって引き起こされる半径方向のたわみをシミュレートした。モーダルハンマーはまた、伝搬速度を決定するための正確な時間基準も提供した。漏水は0.7パイプ径の範囲で正確に検出することができた。結果の概要は表2のとおりである。
【0067】
以上のように、圧力容器の特性を非侵襲的に決定するためのシステムが提供される。このシステムは、音響信号を生成する信号発生器と、圧力容器を介して伝達される音響信号応答を検出する複数のセンサと、制御装置とを含む。制御装置は、制御された決定論的な方法で、特定の周波数および持続時間で音響信号を導入するように信号発生器を制御する。制御装置は、さらにセンサからセンサデータを取得し、センサデータを使用して、壁の厚さや欠陥または漏れの位置などの目標特性を決定する。本システムは、様々な周波数を繰り返し、並列計算を行い、整合性を検証する。このようにして、本システムは、圧力容器の特性を正確かつ非侵襲的に決定することができる。
【0068】
特許請求の範囲は、上記実施例に示された実施形態によって限定されるべきではなく、全体として本明細書に合致する最も広い解釈が与えられるべきものである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
【国際調査報告】