(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(54)【発明の名称】電気光学変換器デバイスを製造するための間隔保持体ウェハ、間隔保持体、このような間隔保持体ウェハを製造する方法、ならびにこのような間隔保持体を備えた電気光学変換器デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20230613BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20230613BHJP
B23K 26/0622 20140101ALI20230613BHJP
C03B 33/09 20060101ALI20230613BHJP
H01L 33/52 20100101ALI20230613BHJP
H01S 5/02208 20210101ALI20230613BHJP
H01S 5/02257 20210101ALI20230613BHJP
H01L 31/02 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H01L23/30 F
B23K26/53
B23K26/0622
C03B33/09
H01L33/52
H01S5/02208
H01S5/02257
H01L31/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565943
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2021061256
(87)【国際公開番号】W WO2021219782
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】102020111728.0
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ポイヒャート
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ブレツィンガー
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン ヘーリング
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ヴァーグナー
(72)【発明者】
【氏名】マークス ハイス-シュケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネッサ グレーサー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス オアトナー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ドリシュ
(72)【発明者】
【氏名】アニカ ヘルベルク
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ヘットラー
(72)【発明者】
【氏名】ラース ミュラー
【テーマコード(参考)】
4E168
4G015
4M109
5F142
5F149
5F173
【Fターム(参考)】
4E168AD18
4E168AE01
4E168CB03
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA23
4E168DA24
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4E168EA11
4E168JA14
4G015FA06
4G015FB01
4G015FC14
4M109AA01
4M109BA03
4M109CA10
4M109DA07
4M109GA01
5F142AA44
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA03
5F142CD44
5F142CE03
5F142CE06
5F142CE18
5F142CG06
5F142DB03
5F142FA50
5F149BB07
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5F149JA05
5F149JA09
5F149JA11
5F173ME22
5F173MF28
(57)【要約】
本発明は、間隔保持体ウェハ(1)から複数の区分(4)を切り離すことにより電気光学変換器(3)のハウジング用の間隔保持体(2)を製造するための間隔保持体ウェハ(1)を想定している。間隔保持体ウェハ(1)は透明なガラス板(10)を含み、ガラス板(10)は、格子分割されて配置された、互いに分離された複数の開口(5)を有しており、これにより、前記開口(5)間の分離線(7)に沿ってガラス板(10)の区分(4)を切り離すことで、個別化された間隔保持体(2)が得られるようになっており、開口(5)は、所定の粗さを有する微細構造化部(9)を備えた側壁(50)を有しており、粗さの平均粗さ値Raは、500μmの測定区間において0.5μm未満である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔保持体ウェハ(1)において、
前記間隔保持体ウェハ(1)から複数の区分(4)を切り離すことにより電気光学変換器(3)のハウジング用のフレーム状の間隔保持体(2)を製造するための間隔保持体ウェハ(1)であって、
前記間隔保持体ウェハ(1)は、透明なガラス板(10)を含み、前記ガラス板(10)は、格子分割されて配置された、互いに分離された複数の開口(5)を有しており、これにより、前記開口(5)間の分離線(7)に沿って前記ガラス板(10)の区分(4)を切り離すことで、個別化された間隔保持体(2)が得られるようになっており、前記開口(5)は、所定の粗さを有する微細構造化部(9)を備えた側壁(50)を有しており、前記粗さの平均粗さ値R
aは、500μmの測定区間において0.5μm未満である、
間隔保持体ウェハ(1)。
【請求項2】
前記開口(5)の前記側壁(50)は、それぞれ少なくとも1つの平坦部分(52)を有している、
請求項1記載の間隔保持体ウェハ(1)。
【請求項3】
前記開口(5)の前記側壁(50)は、それぞれ少なくとも1つの傾斜した縁面(520)を有しており、前記傾斜した縁面(520)は、前記間隔保持体ウェハ(1)の下面と共に角度α≠90°を形成している、
請求項1または2記載の間隔保持体ウェハ(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの斜めの縁面(520)は、少なくとも1つの部分領域にコーティングまたは光学構造を有している、
請求項3記載の間隔保持体ウェハ(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの側壁(50)部分は、少なくとも1つの部分領域に、500μmの測定区間において50nm未満、好適には最大で40nm、特に好適には40nm未満の平均粗さ値R
aを有しているか、または、50μmの測定区間において好適には20nm未満、好適には10nm未満の平均粗さ値R
aを有している、
請求項1から4までのいずれか1項記載の間隔保持体ウェハ(1)。
【請求項6】
前記微細構造化部(9)は、500μmの測定区間において少なくとも50nm、好適には少なくとも100nmの平均粗さ値R
aを有している、
請求項1から5までのいずれか1項記載の間隔保持体ウェハ(1)。
【請求項7】
前記微細構造化部(9)は、複数の球欠状の凹部を有している、
請求項1から6までのいずれか1項記載の間隔保持体ウェハ(1)。
【請求項8】
前記間隔保持体ウェハ(1)は、以下の特徴、すなわち、
-前記開口(5)の前記側壁(50)の前記微細構造化部(9)の平均粗さ値R
aは、350μmの測定区間において0.4μm未満である、
-前記開口(5)の側壁(50)の前記微細構造化部(9)の平均粗さ値R
aは、170μmの測定区間において0.25μm未満である、
-前記微細構造化部は、不規則であり、したがって特に厳密に規則的なパターンで配置された構造要素を有していない、
-前記開口(5)の前記側壁(50)は、4つの平坦部分(52)を有しており、特に各2つの平坦部分(52)が対向して位置している、
-前記開口(5)の前記側壁(50)は、少なくとも1つの平坦部分(52)、好適には3つの平坦部分(52)と、傾斜した縁部(520)を備えた部分と、を有している、
-微細構造化部(9)の、凸状に湾曲した表面を含む面積分率:凹状に湾曲した表面を含む面積分率の比は、最大で0.25である、
-前記開口の前記側壁(50)は、コーティングされている、
のうちの少なくとも1つを有している、
請求項1から7までのいずれか1項記載の間隔保持体ウェハ(1)。
【請求項9】
間隔保持体ウェハ(1)は、以下の特徴、すなわち、
-前記透明なガラス板(10)は、100μm~3.5mmの範囲、好適には200μm~3.0mmの範囲の厚さを有している、
-前記透明なガラス板(10)の厚さの差は、5μm未満、好適には2μm未満、特に好適には1μm未満である、
のうちの少なくとも1つを有している、
請求項1から8までのいずれか1項記載の間隔保持体ウェハ(1)。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の間隔保持体ウェハ(1)から区分(4)を切り離すことにより製造可能な間隔保持体(2)であって、
前記間隔保持体(2)は、開口(5)を備えたフレーム状の素子を成しており、前記間隔保持体(2)の側壁(50)には微細構造化部(9)が設けられており、前記微細構造化部(9)は、所定の粗さを有しており、前記粗さの平均粗さ値R
aは、500μmの測定区間において0.5μm未満である、
間隔保持体(2)。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の間隔保持体ウェハ(1)または間隔保持体(2)を製造する方法であって、前記方法では、
-超短パルスレーザ(30)のレーザビーム(27)を、透明なガラス板(10)の側面(102,103)のうちの1つに向け、集束レンズ(23)により、前記透明なガラス板(10)内の延長された焦点に集束させ、前記レーザビーム(27)の入射エネルギにより、前記透明なガラス板(10)の体積に、長手方向が前記側面(102,103)に対して横方向に、特に前記側面(102,103)に対して垂直方向に延びるフィラメント状の損傷部(32)を生じさせ、前記フィラメント状の損傷部を生じさせるために、超短パルスレーザ(30)が1つのパルスまたは少なくとも2つの連続するレーザパルスを含むパルス群を照射し、
-前記レーザビーム(27)の入射点(73)を、前記透明なガラス板(10)上で、予め設定された閉じた経路に沿って案内し、これにより、
-前記経路上に相並んで位置する複数のフィラメント状の損傷部(32)を導入し、
-前記フィラメント状の損傷部(32)の導入後に、
-前記透明なガラス板(10)をエッチング媒体(33)に晒し、これにより、
-前記フィラメント状の損傷部(32)が拡張されて複数の通路(105)を形成し、
エッチングにより前記通路(105)の直径を、前記通路(105)間のガラスが除去されかつ各前記通路(105)が一体化して開口(5)を形成するまで拡大し、エッチングにより、500μmの測定区間において平均粗さ値R
aが0.5μm未満の粗さを有する微細構造化部(9)を形成する、
方法。
【請求項12】
前記方法は、以下の特徴、すなわち、
-前記透明なガラス板(10)のガラスを、1時間あたり5μm未満の除去速度で除去する、
-エッチング継続時間は、少なくとも12時間である、
-前記透明なガラス板(10)上の前記レーザビーム(27)の2つの入射点(73)の空間的な間隔は、最大でも6μm、好適には最大でも4.5μmである、
-1つのフィラメント状の損傷部(32)を導入する1回のバーストのパルスの数は、最大で2または少なくとも7である、
-前記透明なガラス板(10)上の前記レーザビーム(27)の2つの入射点(73)の空間的な間隔が1μm~15μmの場合、レーザのパルス継続時間は、0.5ps~2psの範囲内である、
-エッチングプロセスに続いて、前記開口(5)の少なくとも1つの部分領域のレーザ研磨を行う、
のうちの少なくとも1つを有する、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項7記載の間隔保持体(2)を備える電気光学変換器デバイス(3)であって、
前記電気光学変換器デバイス(3)は、1つまたは複数の電気光学変換器素子(13)が配置された支持体(11)を有しており、前記支持体(11)において前記電気光学変換器素子(13)を備えた側に前記間隔保持体(2)が取り付けられており、これにより、前記電気光学変換器素子(13)は、開口(5)内に配置されており、前記間隔保持体(2)上にはカバー部材(16)が配置されており、これにより、側方を前記間隔保持体(2)の前記開口(5)の側壁(50)により閉じられた中空室(18)は、前記支持体(11)と前記カバー部材(16)との間に形成されていて、前記電気光学変換器素子(13)を包囲しており、これにより特に、前記電気光学変換器素子(13)が発するまたは受け取る光は、前記中空室(18)を横断することになる、
電気光学変換器デバイス(3)。
【請求項14】
前記間隔保持体(2)は、透明であり、前記電気光学変換器素子(13)は、光を側方において前記カバー部材(16)と前記支持体(11)との間で前記間隔保持体(2)の前記開口(5)の内面(50)を通して送出するかまたは受け取るように形成されている、
請求項13記載の電気光学変換器デバイス(3)。
【請求項15】
前記間隔保持体は、変向部材を有しており、前記電気光学変換器素子(13)は、前記カバー部材(16)を通して光を送出するかまたは受け取るように形成されている、
請求項14記載の電気光学変換器デバイス(3)。
【請求項16】
前記電気光学変換器素子(13)は、以下の素子、すなわち、
-発光ダイオード、
-レーザダイオード、特に
-VCSELまたは
-EEL、
-カメラセンサまたはエミッタチップ
のうちの1つである、
請求項13から15までのいずれか1項記載の電気光学変換器デバイス(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して光学システム、特に電気光学システムに関する。特に本発明は、このような電気光学システムにおける、光学コンポーネントによる光線案内に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置は、典型的には支持体と、支持体に配置された、電気光学変換器の形態の電気光学素子と、変換器を包囲するハウジングと、を含んでいる。
【0003】
一般に、変換されるべきまたは変換される光は、ハウジングを通って供給される。したがって、ハウジングは、典型的には少なくとも部分的に透明である。
【0004】
本開示の意味での電気光学変換器は、特に光学的な結像装置および/または光源であってよい。これには、光センサ、特にカメラセンサ、発光ダイオードおよびレーザダイオードが含まれる。要求に応じて、これらの電気光学変換器用に、複雑なハウジングが必要とされる。この場合に重要な構成部材は、寸法設定された間隔保持体である。寸法設定された間隔保持体は、異なるアクティブデバイスとパッシブデバイスとの間の所定の間隔の調整を可能にするか、または特に感知デバイスを保護する目的で、電磁トランスデューサ/エミッタ/レシーバ等の囲い込みと保護とに寄与する。
【0005】
間隔保持体は、一般に複数の材料から製造され得る。選択は、コスト、構造化性、材料特性を含む複数の判断基準に基づき決定される。接続を生じさせる間隔保持体もしくはスペーサの領域、つまり大抵は平行平面のスペーサのウェハ/デバイス表面には、表面特性も適用される。
【0006】
したがって、基本的にプラスチック、セラミック、金属、複合材料を含む、あらゆる材料が利用され得る。ガラスは、とりわけ耐薬品性等に関連して廉価であることが重要な場合に好適な選択である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レーザダイオード、特にVCSELの領域では目下、とりわけ構造化されたセラミックが使用される。この場合、発光は、典型的には間隔保持体に載置されたハウジング部材を介して行われる。本発明の根底を成す課題は、光入射部および光出射部を拡張すると同時に、電気光学変換器の気密なハウジングを可能にすることにある。この課題は、各独立請求項の対象により解決される。有利な構成は、各従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
よって第1の態様では、間隔保持体ウェハから複数の区分を切り離すことにより電気光学変換器のハウジング用のフレーム状の間隔保持体を製造するための間隔保持体ウェハが想定されており、間隔保持体ウェハはガラス板を含み、ガラス板は、格子分割されて配置された、互いに分離された複数の開口を有しており、これにより、開口間の分離線に沿ってガラス板の区分を切り離すことで、個別化された間隔保持体が得られるようになっており、開口は、所定の粗さを有する微細構造化部を備えた側壁を有しており、粗さの平均粗さ値Raは、500μm(±50μm)の測定区間において0.5μm未満である。
【0009】
場合により、正確に500μmの測定区間が遵守または調整されない場合がある。しかし測定区間が最大50μmだけ短縮された場合または特に最大50μmだけ延長された場合でも、0.5μm未満の平均粗さ値Raは達成される。したがって結果的に、上述のデータから±50μmの差が生じる可能性がある。
【0010】
ガラス板は、特に透明であるため、電気光学変換器により検出または放出される光が微細構造化された内壁を透過することができるようになっており、ひいては側方からの入射または出射を可能にする。つまり本発明により、間隔保持体に載置された素子を介した光の透過だけでなく、択一的または追加的に、側方から間隔保持体を通る光の透過も可能になる。
【0011】
さらに間隔保持体は、光学素子としても機能することができ、例えば光の方向転換もしくは変向を生じさせることができる。例えば1つの実施形態では、間隔保持体は、デバイスに組み込まれた少なくとも1つの変向部材を有している。この場合、変向部材は、好適には間隔保持体と同じ材料から成っている。特に変向部材は、間隔保持体と変向部材とが1つのモノリシックデバイスを形成するように間隔保持体に組み込まれている。特に変向部材は、間隔保持体の傾斜または湾曲した縁面により形成される。同時にガラスは、気密な封入を可能にする。
【0012】
この場合、間隔保持体ウェハを用いて、光の制御されたガイド/出射/入射/透過が可能になる光学システム、好適にはカメライメージングシステム、発光ダイオードまたはレーザダイオードを製造することができる。
【0013】
この場合、開口の製造は、好適には光学的な構造化法により行われる。具体的には、レーザによるアブレーションまたはパーフォレーションにより貫通構造化を行うことができる。相並んで位置するパーフォレーションの閉じた線により取り囲まれた内側部分の除去は、熱応力の導入により行うことができる。ただし特に好適なのは、ウェブ除去もしくは拡張により孔同士をつなげるエッチング法が後続するレーザ誘起パーフォレーションである。特にレーザに基づく方法により、自由形状が廉価に製造され得る。その他に、特にこれらの方法は、高い精度でもって構造要素の極小さな寸法誤差を達成するために適している。レーザに基づくフィラメント状の損傷部の導入と後続のエッチング法との組合せは、原則として独国特許出願公開第102018100299号明細書から公知である。本明細書に記載の方法では、フィラメント状の損傷部の導入および後続のエッチングのパラメータを、0.5μm未満の平均粗さ値が達成されるように調整する。
【0014】
さらなるコスト削減のために、ウェハレベルまたはシートレベルでの間隔保持体の製造が行われる。このことは、カメライメージングシステムやレーザダイオードもウェハ/シートレベルで製造されることが多いため、有利である。レーザ法を、特に後続のエッチングと共に使用することにより、孔対孔および孔対基準点(縁部、マーカ)の高精度の位置誤差が実現可能であり、高精度の位置誤差により、このようなウェハレベルでの製造も可能になる。
【0015】
意外にも、光学特性に関して、開口の側壁の微細構造化部は不都合ではない、ということが判っている。反対に、微細構造化部が有利な光形成特性を有している場合すらある。例えばレーザダイオードにおけるスペックルの影響または他の干渉の影響を抑制するためには、特に微細構造化部が不規則であり、かつ/または厳密に規則的なパターンで配置された構造要素を有していない、ということが想定されている。したがって1つの実施形態では、微細構造化部は、500μmの測定区間において、少なくとも50nm、好適には少なくとも100nmの平均粗さ値Raを有している、ということが想定されている。
【0016】
以下に、本発明を添付の図面に基づきより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】間隔保持体ウェハから切り離された間隔保持体を示す図である。
【
図4】それぞれ異なる縁面を備えた、切り離された間隔保持体の様々な実施形態を示す図である。
【
図5】それぞれ異なる縁面を備えた、切り離された間隔保持体の様々な実施形態を示す図である。
【
図6】それぞれ異なる縁面を備えた、切り離された間隔保持体の様々な実施形態を示す図である。
【
図7】それぞれ異なる縁面を備えた、切り離された間隔保持体の様々な実施形態を示す図である。
【
図10】開口の内壁における微細構造の色分けされた2次元の高さプロファイルを示す図である。
【
図11】レーザパルスの入射点間のそれぞれ異なる間隔に関する平均粗さ値の測定値をレーザパルスの数の関数として示す図である。
【
図12】間隔保持体を備えた電気光学変換器デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1および
図2には、間隔保持体ウェハ1の2つの例が平面図で示されている。両実施例は、実質的にその外形が異なっている。
図1に示す実施形態では、矩形または正方形の間隔保持体ウェハ1が想定されているのに対して、
図2に示す実施形態では、円形の間隔保持体ウェハ1が想定されている。
図2に示す実施例が示すような間隔保持体ウェハ1の円形状は、例えば間隔保持体ウェハ1が分割前に機能ウェハに結合されるウェハレベルパッケージングプロセスにとって有利な場合がある。
【0019】
間隔保持体ウェハ1は、間隔保持体ウェハ1から複数の区分4を切り離すことにより電気光学変換器のハウジング用の間隔保持体2を製造するために用いられる。間隔保持体ウェハ1は、透明なガラス板10を含む、または透明なガラス板10から成る。ガラス板10は、格子分割されて配置された、互いに分離された複数の開口5を有している。ガラス板10の区分4を、開口5の間に延在する分離線7に沿って切り離すと、環状の閉じた縁部を備えた各1つの開口5を有する個別化された間隔保持体2が得られる。開口5は、所定の粗さを有する微細構造化部を備えた側壁50を有している。この粗さは、500μmの測定区間において、0.5μm未満の平均粗さ値Raを有している。
【0020】
図示の例に限定されること無しに、光学システム用の間隔保持体の製造には、100μm~3.5mmの範囲内、好適には200μm~3.0mmの範囲内の透明なガラス板10の厚さが有利である。
【0021】
もう1つの実施形態では、ガラス板は、極小さな厚さの差(TTV=Total Thickness Variation)を有している。この実施形態では、透明なガラス板の厚さの差は、10μm未満、好適には5μm未満、好適には2μm未満、特に好適には1μm未満である。この小さなTTV値はとりわけ、ハウジングを備えた電気光学変換器をウェハ面上に組み立てる際に、異なるウェハを全面的に互いに結合することができるようにするために有利である。小さなTTV値は、間隔保持体に被着される、もしくは間隔保持体に結合される光学コンポーネントを極めて正確に位置決めすることができるようにするためにも有利である。厚さの差を求めるためには、ウェハにわたり分布する複数の厚さ測定値を求め、次いで絶対的な最大厚さ測定値と絶対的な最小厚さ測定値との差をTTVとして形成する。小さなTTVは同様に、特に光学システムにおいて可能な限り同一の間隔保持を達成するためにも重要である。これらがウェハ面上で変動すると、ウェハから製造される間隔保持体の厚さはそれぞれ異なることになり、個々のカメラモジュールはそれぞれ、レンズ部材またはフィルタ部材間の距離長さに関して制御もしくは補償されねばならない。
【0022】
TTVの他に、厚さの製造誤差、すなわちウェハとウェハとの厚さ均一性も必要とされている。厚さの製造誤差は、例えば10μm未満、好適には5μm以下であることが望ましい。
【0023】
図1および
図2に示す2つの実施例でも実現されている1つの特に好適な実施形態では、開口5の側壁50は、それぞれ少なくとも1つの平坦部分52を有している。この平坦部分を通って光が透過可能であり、側壁50がレンズもしくは円柱レンズとして作用するか、またはその他の方法で光の空間的な強度プロファイルを変形することはない。
【0024】
一般に、特別に示した例に限定されること無しに、開口5の側壁50は、4つの平坦部分52を有していてよい。この場合、特に各2つの平坦部分52が対向して位置していてよい。この特徴は、特に開口5が矩形または正方形の基本形状を有している場合に満たされている。しかしまたこの特徴はさらに、矩形または正方形の開口5の角隅部が丸み付けられている場合にも満たされている。
【0025】
択一的に、開口5の側壁50は、少なくとも1つの非平坦部分520を有していてもよい。このことは、
図4に示してある。この場合、関連する部分もしくは縁面520は、特に傾斜形状、湾曲形状または螺旋形状を有していてよい。傾斜部分もしくは傾斜した縁面520は、例えば変向部材を成していてよく、これにより、光線の的確な垂直方向入射または出射を行うことができるようになっている。つまり、相応する間隔保持体を使用することにより、水平縁部発光光源の使用時にも、光の垂直方向出射を行うことができ、このために間隔保持体の他に、例えばミラー等の別の光学素子を必要とすることはない。
【0026】
択一的または追加的に、これらの傾斜部分には別のデバイス、例えば光線制御部材も配置され得る。この場合、傾斜部分を備えた相応する間隔保持体の使用は、追加的なデバイスの正確な角度での位置決めを保証し、このために大きな組立手間を必要とすることはない。さらに、例えば高い反射率を有する表面を形成するために傾斜した縁面をコーティングすることによっても、相応するデバイスを得ることができる。この場合、傾斜した縁面は完全にまたは部分的にのみコーティングされてよい。好適には、傾斜した縁面は、光が入射する部分領域にコーティングを有している。
【0027】
図3には、1つの区分を切り離したことにより得られた個別化された間隔保持体2が斜視図で示されている。この間隔保持体2は、間隔保持体ウェハ1から1つの区分4を切り離すことにより製造可能であり、この場合、間隔保持体2は、開口5を備えたフレーム状の部材を成しており、その側壁50は微細構造化部9を備えており、微細構造化部9は、500μmの測定区間における平均粗さ値R
aが0.5μm未満である粗さを有している。特に不規則な微細構造化部9は、図中、不規則に配置された異なる大きさの円と楕円とにより象徴化されている。
【0028】
間隔保持体2の外壁20も同様に、このような微細構造化部9を有していてよい。しかしまた、分割方法および任意の後処理に応じて別の表面構造、研磨された表面も同様に可能である。特に、ウェハ複合体内で電気光学変換器デバイスの組立を実施することが考えられる。この場合、外壁は、好適には機能ウェハ、もしくは変換器素子を支持するウェハを含む間隔保持体ウェハ1のウェハ複合体の分割時に形成される。この場合、これに応じて同時に、間隔保持体ウェハ1に結合された機能ウェハまたは支持体ウェハも、
図1および
図2に示した分離線に沿って切り離される。一般に、間隔保持体ウェハ1には8・10
-6K
-1未満の膨張係数を有するガラスが好適であり、これにより、特にウェハ複合体用の慣用の材料を有するウェハ複合体において、熱機械的応力を小さく抑えることができる。
【0029】
さらに、使用されるガラスの選択により、間隔保持体の熱膨張係数を、間隔保持体と共に取り付けられる他のデバイスの熱膨張係数に適合させることが可能である。
【0030】
以下に、製造方法の1つの特に好適な実施形態に基づく間隔保持体ウェハ1の製造を説明する。
【0031】
間隔保持体ウェハ1または間隔保持体2を製造する方法では、
-超短パルスレーザ30のレーザビーム27を、透明なガラス板10の側面102,103のうちの1つに向け、集束レンズ23により、透明なガラス板10内の延長された焦点に集束させ(ガラス板の厚さ:焦点長さの比の限定無し、すなわち、焦点は完全に基板内に位置しているか、あるいは一方または両方の基板表面と交差していてよい)、レーザビーム27の入射エネルギにより、透明なガラス板10の体積に、長手方向が側面102,103に対して横方向に、特に側面102,103に対して垂直方向に延びるフィラメント状の損傷部32を生じさせ、フィラメント状の損傷部を生じさせるために、超短パルスレーザ30が1つのパルスまたは少なくとも2つの連続するレーザパルスを含むパルス群を照射し、
-レーザビーム27の入射点73を、透明なガラス板1上で、予め設定された閉じた経路に沿って案内し、これにより、
-相並んで経路上に位置する複数のフィラメント状の損傷部32を導入し、
-フィラメント状の損傷部32の導入後に、
-透明なガラス板10をエッチング媒体33に晒し、これにより、
-フィラメント状の損傷部32が拡張されて複数の通路を形成し、エッチングにより通路の直径を、通路間のガラスが除去されかつ各通路が一体化して開口5を形成するまで拡大し、エッチングにより、500μmの測定区間において平均粗さ値Raが0.5μm未満の粗さを有する微細構造化部9を形成する。
【0032】
したがって、閉じた経路の形状(この経路に沿ってレーザビームの入射点が案内される)が、開口の輪郭を決定する。
【0033】
1つの改良では、次いで間隔保持体ウェハ1または間隔保持体2の少なくとも部分領域を研磨またはアブレーションする、ということが想定されている。このことは、特にパルスレーザ、例えば超短パルスレーザにより行われてよい。好適には、レーザのパルス継続時間は最長10ps、好適には最長4ps、極めて特に好適には最長1psである。レーザ研磨のためには、特にCO2レーザを使用することが有利である、ということが判った。
【0034】
1つの実施形態では、間隔保持体ウェハ1または間隔保持体2の部分領域は、エッチングプロセス後に超短パルスレーザを用いた処理によりアブレーションされる。相応する領域での材料除去により、例えば光学素子として作用する追加的な構造が形成され得る。つまり、例えば間隔保持体ウェハ1または間隔保持体2の内部にマイクロレンズまたは拡散素子を得ることができる。択一的または追加的に、レーザアブレーションにより、間隔保持体ウェハ1または間隔保持体2の部分領域を斜めにすることもできる。1つの好適な実施形態では、少なくとも間隔保持体ウェハ1または間隔保持体2のアブレーションされた部分領域に、次いでレーザ研磨が施される、ということが想定されている。ただしレーザ研磨は、先行のレーザアブレーションとは関係なく行われてもよい。例えば本発明による製造方法の1つの実施形態では、エッチングプロセス後に間隔保持体ウェハ1または間隔保持体2の少なくとも1つの部分領域のレーザ研磨が想定されている。
【0035】
好適には、間隔保持体ウェハ1または間隔保持体2は、500μm(±50μm)の測定区間にわたる平均粗さ値Raが0.05μm未満またはそれどころか最大で0.04μmの少なくとも1つの部分領域を有している。1つの別の実施形態では、少なくとも1つの部分領域における50μmの測定区間において、平均粗さ値Raは20nm未満、好適には10nm未満である、ということが想定されている。
【0036】
1つの実施形態では、間隔保持体ウェハ1または間隔保持体2は、少なくとも1つの部分領域に、5nm未満、2nm未満、またはそれどころか最大で1nmの算術平均高さSaを有している。好適には、算術平均高さSaは、500μm2の面積にわたり測定される。算術平均高さSaは、線粗さパラメータRaの面への拡張である。パラメータSaは、表面の算術平均と比較した、各点の高さの差の値の平均値を表す。
【0037】
この場合、レーザ研磨により、相応する部分領域の光学品質を向上させることができる。
【0038】
1つの別の実施形態では、レーザアブレーションが施されない間隔保持体2または間隔保持体2の部分領域も、レーザ研磨された表面を有している、ということが想定されている。これにより一方では、表面粗さをさらに低下させることができる。
【0039】
1つの実施形態では、間隔保持体ウェハ1または間隔保持体2の側壁は、それぞれ異なる平均粗さ値Ra1およびRa2を有する少なくとも2つの領域を有している。この場合、平均粗さ値Ra1は、平均粗さ値Ra2より小さい。好適には、平均粗さ値Ra1を有する部分領域内の側壁は、(平均粗さ値Ra2を有する部分領域内の微細構造と比較して)微細構造を有していないか、または少なくとも1つのより貧弱に構造化された微細構造を有している。好適には、平均粗さ値ΔRa=Ra2-Ra1の差は、少なくとも10nm、好適には少なくとも60nm、特に好適には少なくとも80nmである。より小さな平均粗さ値Ra1は、特に間隔保持体ウェハ1または間隔保持体2の相応する部分領域のレーザ研磨により達成され得る。この場合、レーザ研磨により、間隔保持体ウェハ1または間隔保持体2の相応する部分領域の微細構造化部の減少がもたらされる。1つの実施形態では、少なくとも、デバイスにおける間隔保持体2の使用時に光線が入射する間隔保持体ウェハ1または間隔保持体2の領域に、レーザ研磨が施される。よって1つの実施形態では、動作中に光線が入射するデバイスの部分領域は、50nm未満、好適には最大で40nmの平均粗さ値Raを有している。それどころか1つの構成では、デバイスの関連する部分領域における平均粗さ値Raは40nm未満である。
【0040】
図4には、既に個別化された間隔保持体200の1つの別の実施例による横断面の概略側面図が示されている。間隔保持体200は、平坦な縁面(521、523、欠けている側壁は図示せず)を備えた3つの側壁の他に、傾斜した縁面520を備えた側壁を有している。この場合、縁面520は、間隔保持体200の底面(図示せず)に対して角度αを有している。この場合、本発明による製造方法の1つの改良では、角度αを任意に調整することができる。つまり縁面520は、例えば45°の角度αを有していてよい。この場合、角度αに関する高いフレキシビリティは、間隔保持体に使用される材料によっても、間隔保持体の製造方法によっても可能になる。例えば、間隔保持体用の材料としてガラスを使用することにより、例えばシリコン単結晶のエッチングの場合と同様に、エッチング角度が所定の結晶構造により制限されることはない。さらに角度αは、フィラメント化の際のレーザの傾斜位置によっても調整され得る。択一的または追加的に、個々の領域は、エッチング過程の後に続くレーザアブレーションプロセスによって面取りされてもよい。
【0041】
1つの改良では、間隔保持体ウェハ1もしくは間隔保持体2の個々の部分領域、例えば縁面のうちの1つだけが、レーザアブレーションにより加工される。これにより、間隔保持体200の個々の縁面をそれぞれ異なるように形成する可能性が生じる。
【0042】
図5は、傾斜した縁面525を備えた間隔保持体201の1つの別の実施例の横断面を概略的に示しており、この場合、縁面525の部分領域61においてレーザアブレーションにより材料が除去された。部分領域61は、その表面構造に基づき光学素子として機能し得る。
【0043】
図6には、1つの実施例の概略平面図が示されている。この場合、図示の間隔保持体202は、縁面521、522、523および527を有している。この場合、縁面527は、凹状に湾曲している。縁面527の湾曲は、
図6に示す実施例202では、レーザアブレーションによる材料除去により生じた。追加的に、縁面527の表面はレーザ研磨されている。この場合、縁面527は、間隔保持体の底面526に対して追加的に角度α≠90°を有していてよい、すなわち縁面527は、傾斜した縁部であってよい。
【0044】
図4~
図6に概略的に示した実施例200、201、202は、それぞれ他の3つの縁面とは異なる幾何学形状を有する縁面520、525および527を有している。製造方法の高いフレキシビリティに基づき、間隔保持体の個々の縁面の幾何学形状は自由に調整され得る。したがって、間隔保持体が角度α≠90°を有する複数の縁面を有しており、個々の縁面の角度αは互いに異なっていてよい実施形態も可能である。それぞれ異なる幾何学形状または構造を有する個々の縁面が形成されてもよい。これにより、複雑な構造もしくは幾何学形状を有する間隔保持体にも、少数のプロセスステップのみでアプローチ可能である。1つの好適な実施形態では、間隔保持体は、3つの垂直な、すなわち角度α=90°を有する縁面と、角度α≠90°を有する傾斜または湾曲した縁面と、を有している。1つの実施形態では、間隔保持体は、角度α<56°を有する少なくとも1つの縁面を有している。
【0045】
1つの改良では、間隔保持体が、角度α≠90°を有する少なくとも1つの傾斜した縁面を有しており、縁面は、平坦な表面を有しており、例えばミラーの形態の光線制御素子が縁面に取り付けられる、ということが想定されている。1つの別の実施形態では、連続的な内側の縁面を備えた円形の間隔保持体が想定されており、この場合、間隔保持体内のデバイスの底部に対する縁面もしくは内壁穴の角度αは連続的に変化している。つまり、間隔保持体は角度αの範囲を有しており、この場合、角度αは場所に依存する。間隔保持体の内側の縁面が、デバイスにおいて光線の入射領域として機能する場合には、間隔保持体の回動により出射角度が調整され得る。
【0046】
さらに、縁面のうちの少なくとも1つに的確な構造が導入されてもよい。このことは、
図7に示す別の実施例に基づき表される。この実施例では、縁面528は、局所的に湾曲した構造60を有している。構造60は、特にエッチングプロセス後に、超短パルスレーザによる相応する部分領域のアブレーションと、後続の、縁面528の相応する部分領域のレーザ研磨と、により生じさせられてよい。この場合、構造60は、間隔保持体内に光学素子を形成するように形成されていてよい。つまり例えば、レーザアブレーションを用いて、凹面鏡、ビーム散乱素子、マイクロレンズまたはユーザが設定した自由形状を間隔保持体に組み込むことができる。
【0047】
図8には、レーザ加工装置12の1つの実施例が示されており、このレーザ加工装置12により、透明なガラス板10にフィラメント状の損傷部32が導入され得、これにより、次いでエッチングプロセスにおいてフィラメント状の損傷部32の箇所に通路が導入される。装置12は、前置された集束レンズ23を備える超短パルスレーザ30と、位置決め装置17と、を有している。位置決め装置17により、超短パルスレーザ30のレーザビーム27の入射点73は、加工されるべき透明なガラス板10の側面102において横方向に位置決めされ得る。図示の例では、位置決めユニット17は、透明なガラス板10の側面103が載置されたx-yテーブルを有している。しかしまた択一的または追加的には、レーザビーム27を移動させるためにレンズを可動に形成することも可能であり、したがって、透明なガラス板10が固定されている場合には、レーザビーム27の入射点32が可動である。
【0048】
集束レンズ23は、レーザビーム27を、所定のビーム方向に、つまりこれに相応して照射すべき側面102に対して横方向に、特に垂直に延長された焦点に集束させる。このような焦点は、例えば円錐形レンズ(いわゆるアキシコン)または大きな球面収差を有するレンズにより形成され得る。位置決め装置17および超短パルスレーザ30の制御は、好適にはプログラム技術的に調整された計算装置15により実施される。このようにして、側面102に沿って横方向に分布するフィラメント状の損傷部32の所定のパターンが形成され得、このことは特に、好適にはファイルからまたはネットワークを介して位置データを読み込むことにより行われる。開口5を形成するために、位置データは、閉じられたもしくは環状の経路を生じさせる。
【0049】
1つの実施例では、レーザビームに関して以下のパラメータが使用され得る。すなわち:レーザビームの波長は、YAGレーザにとって典型的な1064nmである。12mmの生ビーム径を有するレーザビームを生じさせ、このレーザビームは、次いで16mmの焦点距離を有する両凸レンズの形態のレンズにより集束させられる。超短パルスレーザのパルス継続時間は、20ps未満であり、好適にはほぼ10psである。パルスは、バースト時に2以上、好適には4以上のパルスでもって放出される。バースト周波数は12~48ns、好適には約20nsであり、パルスエネルギは少なくとも200マイクロジュールであり、バーストエネルギは、相応して少なくとも400マイクロジュールである。
【0050】
次いで、1つまたは特に複数のフィラメント状の損傷部32の導入後に、透明なガラス板10が取り出され、エッチング槽内に置かれ、そこで低速のエッチングプロセスにおいて、ガラスはフィラメント状の損傷部32に沿って除去されるため、このような損傷部32の箇所ではそれぞれ通路が、透明なガラス板10に導入される。
【0051】
1つの実施形態では、ph値>12を有する塩基性のエッチング槽、例えば>4mol/l、好適には>5mol/l、特に好適には>6mol/l、ただし<30mol/lのKOH溶液が使用される。エッチングは、本発明の1つの実施形態では、使用されるエッチング媒体とは関係無しに、>70℃、好適には>80℃、特に好適には>90℃のエッチング槽の温度で実施される。
【0052】
図9には、複数のフィラメント状の損傷部32を有するガラス素子10の側面102が平面図で示されており、フィラメント状の損傷部32は、上述した位置決め装置17および超短パルスレーザ30のコンピュータ制御された制御に基づきガラス素子10に書き込むことができるような所定のパターンで配置されている。特にフィラメント状の損傷部32は、ここでは例示的に、閉じられた矩形の線の形態の、予め設定された閉じられた経路53に沿って透明なガラス板に導入されている。経路53のうちの1つは、破線で表されている。この方法により矩形の経路53だけでなく、任意に形成された経路53をたどることができる、ということが当業者には明らかである。
【0053】
後続のエッチング時に、フィラメント状の損傷部のところにそれぞれ通路が形成されて統合されると、閉じられた経路53により画定された内側部分54が生じさせられ、開口5が残される。
【0054】
一般に、適切なエッチングプロセスの選択により、複数の球欠状の凹部という点において優れた微細構造化部9を得ることができる。特にこれらの凹部は、比較的鋭利なバリにより隔離されていてよい。凸状の曲率半径が生じるバリは細いだけなので、1つの実施形態による微細構造化部は、凸状に湾曲した表面を含む面積分率:(例えば球欠状の凹部内に存在するような)凹状に湾曲した表面を含む面積分率の比が最大で0.25、好適には最大で0.1であるように特徴付けられてもよい。
【0055】
この微細構造化部は、透過光に極僅かにしか影響を及ぼさないようにするためには特に有利である、ということが判った。
【0056】
さらに、凹部の大きさ、形状および深さひいては平均粗さ値の値にも、エッチングプロセスおよびレーザ加工のパラメータにより影響を及ぼすことができる。
【0057】
低いエッチング速度が好適になる。当該方法の改良ではさらに、透明なガラス板10のガラスを、1時間あたり5μm未満の除去速度で除去する、ということが想定されている。特に所望の平均粗さ値は、全エッチング継続時間によっても達成され得る。このためには、エッチング継続時間が少なくとも12時間であると有利である。この場合、好適には、フィラメント状の損傷部の間隔(「ピッチ」)が、エッチング継続時間およびエッチング速度に適合され、これにより、既に剥離された内側部分54における過剰なエッチングが回避される。
【0058】
図10には3つの部分図(a)、(b)、(c)で、開口の内壁もしくは側壁50の微細構造の2次元の高さプロファイルが示されている。この場合、ここではグレースケール値としてだけ示されている様々な明度値は、高さ座標に対応する。この場合、高さプロファイルは、サンプルの側壁50のそれぞれ異なる大きさの切抜き部を示している。測定領域の大きさおよび切抜き部に基づいて求められた平均粗さ値を以下の表にまとめる:
【表1】
【0059】
部分図(a)では、図の中央にさらに、左側から右側に延びる測定区間が示されている。これによれば、測定区間は、521μmの長さ、つまり約500μmの長さを有している。表から看取され得るように、521μmの測定区間における平均粗さ値は、0.41μmであって、0.5μm未満である。部分図(b)に示す測定に基づく1つの別の実施形態では、側壁50の微細構造化部9の平均粗さ値Raは、350μmの測定区間の場合、0.4μm未満であり得る。部分図(c)に示す測定に基づく1つのさらに別の実施形態では、開口5の側壁50の微細構造化部9の平均粗さ値Raは、170μmの測定区間の場合、0.25μm未満であり得る。測定区間は、これらの実施形態ではそれぞれ10%だけ延長または短縮されていてもよい、つまり350μm±35μmもしくは170μm±17μmの長さを有していてもよい。
【0060】
特に部分図(c)を見ると、微細構造化部9は主に、比較的単調なグレースケール値、つまり比較的小さな高さ変化を有する丸い面から構成されている、ということが明らかになる。これらの丸い面は、球欠状の凹部56の、より深部に位置する部分である。したがって凹部56は、比較的平坦で大きな底部領域を有している。このことは、微細構造化部が光の入力結合または出射に極僅かにしか影響を及ぼさない原因でもあり得る。
【0061】
微細構造化部9の平均粗さ値の影響は、特に
図11にも基づき明らかになる。
【0062】
図11は、超短パルスレーザによるフィラメント状の損傷部の導入と、引き続く損傷部のエッチングと、の上述の組合せにより生じさせられた、側壁50における平均粗さ値の測定値を示している。測定値は、レーザパルスの入射点間の異なる間隔に関して、1回のバーストにおけるレーザパルスの数の関数として示されている。レーザパルスの数は、超短パルスレーザのバースト動作時に1パルス~8パルスまで変化している。内側部分54を剥離させるためには、継続時間が48時間の低速のエッチングプロセスが選択された。グラフに認められるように、低い平均粗さ値を達成するためには、特に小さな間隔が有利である。特に、4マイクロメートルまでの間隔が有利である。最も上側の2つのグラフ(「間隔:3μm」および「間隔:4μm」)が示すように、これらの小さい間隔では、入射点の空間的な間隔が小さい場合には関連性がそれほど強くないにもかかわらず、特にバーストのパルスが少ない場合と極めて多い場合とにおいて低い平均粗さ値が達成される。より高い粗さは、エッチング継続時間が短縮された場合にも示される(図示せず)。この試験は、エッチングに関する以下のパラメータを用いて実施された。すなわち、100℃で6mol/LのKOHを含む溶液が使用された。側面における除去は、エッチング継続時間が16時間の場合は34μmであり、30時間の場合は63μmであり、48時間の場合は97μmであった。
【0063】
一般に、以下の傾向を読み取ることができる:
(i)大きな間隔は、より粗い表面につながる、
(ii)より長いエッチング時間は、より平滑な側面につながる。
【0064】
露出した構造面におけるエッチング時間は、表面の粗さに関する影響因子のうちの1つである。内側部分56がより早期に除去されるほど、構造はより平滑になる(小さな間隔)。導入される損傷構造が小さいほど、構造はより平滑になる(少数のバーストまたは多数のパルスに基づく個々のレーザパルス中の小さなエネルギ)。パルス幅も、意外にも側壁の粗さに影響を及ぼす。別の実験では、低い粗さに関する最良パラメータを、10psのパルス継続時間と1psのパルス継続時間とについて比較した。以下の結果が得られた。:
(i)10psの場合の最良パラメータ:
・1バースト/3μm間隔
→Ra=0.42μm~0.50μm
1psの場合の最良パラメータ:
・1バースト/3μm~10μm間隔
→Ra=0.38μm~0.52μm
エッチングはそれぞれ100℃で6mol/LのKOH溶液を用いて行われ、この場合、10μmのガラスが除去された。一般に、パルス継続時間が非常に短い場合には、間隔との関連性はより小さくなることが判っている。したがって、上述の結果を含む有利なパラメータ領域は、0.5ps~2ps(好適には0.75ps~1.5ps)のパルス継続時間と、1μm~15μm(好適には2μm~12μm)の間隔と、で得られる。
【0065】
したがって当該方法の改良では、内側部分56を除去するために、当該方法において以下のパラメータのうちの少なくとも1つが実現される。すなわち:
-透明なガラス板10上のレーザビーム27の2つの入射点73の空間的な間隔は、最大でも6μm、好適には最大でも4.5μmである、
-エッチングの継続時間は、少なくとも12時間、好適には少なくとも20時間である、
-1つのフィラメント状の損傷部32を導入する1回のバーストのパルスの数は、最大で2または少なくとも7である、
-透明なガラス板10上のレーザビーム27の2つの入射点73の空間的な間隔が1μm~15μm(好適には2μm~12μm)の場合、レーザのパルス継続時間は0.5ps~2ps(好適には0.75ps~1.5ps)の範囲内である。
【0066】
この場合、例示的に
図1および
図2に示したような間隔保持体ウェハ1により、または切り離された間隔保持体2により、電気光学変換器構成素子が実現され得る。上述したように、電気光学変換器構成素子を製造するための別の加工が、ウェハ複合体でも行われてよいため、間隔保持体の切離しは、ウェハ複合体からの構成素子の切離しと共に行われる。この場合、切離しは、切断ディスクによる機械的なダイシングもしくはソーイングにより行われてよい。これに関して、フレーム状の間隔保持体2を備えた電気光学変換器デバイス3が
図12に示されている。図示の実施例は、本明細書に記載したような間隔保持体2を備える電気光学変換器デバイス3の1つの実施形態の可能な実現形態であり、この実施形態は、電気光学変換器素子13が配置された支持体11を有しており、支持体11において電気光学変換器素子13を備えた側に間隔保持体2が取り付けられており、これにより、電気光学変換器素子13は開口内5に配置されており、間隔保持体2上にはカバー部材16が配置されており、これにより、側方を間隔保持体2の開口5の側壁50により閉じられた中空室18が、支持体11とカバー部材16との間に形成されていて、電気光学変換器素子13を包囲している。この場合、特に電気光学変換器素子13が発するまたは受け取る光は、中空室18を横断することができる。多くの用途に関して良好に熱を伝達する材料が使用される一方で、例えば高い熱出力がカバー部材に伝達されることが回避されるべき場合、ここではガラスが間隔保持体用の材料として適している。このことは、例えばカバーの有機コーティングまたはカバー上の熱に敏感な光学精密素子において望ましくない場合がある。
【0067】
特に1つの改良では、間隔保持体2は透明である、ということが想定されている。この場合、変換器素子13は、光を側方においてカバー部材16と支持体11との間で間隔保持体2の開口5の内面50を通して送出するかまたは受け取るように形成されている。可能な光路は、
図12に光線19として書き込まれている。場合により、他の電磁波も間隔保持体2を通して送信または受信され得る。ここでは、特にRF信号が考えられている。
【0068】
電気光学変換器素子13は一般に、発光ダイオード、レーザダイオードまたはカメラチップであってよい。レーザダイオードの場合には、VCSEL(VCSEL=“Vertical Cavity Surface Emitting Laser”)と端面発光型のレーザダイオード(EEL=“Edge Emitting Laser”)の両方が使用され得る。これにより特に、EELの場合には、間隔保持体を通るレーザ光の出射が考えられる。ただし、変向部材に関連して少なくとも1つの傾斜縁部を有する間隔保持体を使用することにより、レーザ光の変向も行うことができるため、この場合はレーザ光の垂直方向の出射も可能である。この場合、変向部材は、例えば光学構造または反射コーティングの形態で間隔保持体に組み込まれていてよい。
【0069】
VCSELの場合には、例えばレーザ光はカバー部材16を通って放出され得、この場合、透明な間隔保持体2は、外部のモニタダイオード用の散乱光を透過させるために利用可能である。
【0070】
電気光学変換器素子13として収容されたカメラチップにおいて、中空室18内で液体レンズが使用された場合には、小さな粗さを有する側壁50の微細構造化部が有利であり得る。液体レンズの場合、粗い壁には気泡が形成される恐れがある。さらに、粗い構造はレンズ表面に影響を及ぼす場合がある。
【0071】
電気光学変換器素子13は、例えば支持体11内の1つまたは複数の電気的なフィードスルー36を介して給電され得る。図示の例では、電気光学変換器素子13は、ボンディングワイヤ35でもってフィードスルーに接続されている。電気光学変換器デバイス3はさらに、SMDモジュールとして形成されていてよい。この場合、フィードスルー36にはんだボール37が被着されていてよい。ここではもちろん、複数の別の構成形式が存在する。1つの別の可能な構成形式において、例えば支持体11が、内部に電気光学変換器素子13が形成される半導体基板である場合には、例えば支持体11自体が電気光学変換器素子13の構成部材であってよい。
【0072】
図示の例では、単一の電気光学変換器素子13だけが中空室18内に含まれている。しかしまた、複数の電気光学変換器素子13が共通の中空室18内に配置されていてもよい。例えば、複数のVCSELのユニットが、中空室18内で支持体11に取り付けられていてよい。一般に、VCSEL、EEL、LD等の様々な変換器が、開口5内で互いに組み合わせられてよい。さらに、1つまたは複数のセンサおよびエミッタが一緒に取り付けられていてもよい。
【0073】
1つの実施形態では、電気光学変換器デバイス3は、2次元画像記録用、または3次元顔認識に使用され得るような3D検出(3Dカメライメージング)用のカメラモジュールも形成している。
【0074】
さらに1つの別の実施形態では、フレーム状の間隔保持体2の開口5の側壁50は、コーティングされていてよい。
図8に示した例では、右側に示した側壁50の部分にコーティング6が施されている。コーティング6は、側壁50を部分的に覆っていてよいが、完全に覆っていてもよい。このようなコーティング6は、特に反射防止コーティング、反射コーティング、半透明コーティング、着色コーティングまたは金属コーティングであってよい。複数のコーティングを組み合わせて、多層コーティングを得ることもできる。コーティング6は、間隔保持体2を個別化する前に、既に間隔保持体ウェハ1に被着され得る。
【符号の説明】
【0075】
1 間隔保持体ウェハ
2,200,201,202,203 間隔保持体
3 電気光学変換器デバイス
4 1の区分
5 開口
6 コーティング
7 分離線
9 微細構造化部
10 ガラス板
11 支持体
12 レーザ加工装置
13 電気光学変換器素子
15 計算装置
16 カバー部材
17 位置決め装置
18 中空室
19 光線
20 2の外壁
23 集束レンズ
27 レーザビーム
30 超短パルスレーザ
32 フィラメント状の損傷部
35 ボンディングワイヤ
36 フィードスルー
37 はんだボール
50 5の側壁
52,521,522,523 5の平坦部分
520,525 5の傾斜部分
526 底面
524,527 構造を備えた5の部分
60,61 5の構造化された領域
53 閉じた経路
54 内側部分
56 凹部
73 レーザビーム27の入射点
102,103 10の側面
105 通路
【国際調査報告】