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特表2023-526051発作性夜間ヘモグロビン尿症の処置のための補体D因子阻害剤の単独又は抗C5抗体との組み合わせでの使用
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  • 特表-発作性夜間ヘモグロビン尿症の処置のための補体D因子阻害剤の単独又は抗C5抗体との組み合わせでの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(54)【発明の名称】発作性夜間ヘモグロビン尿症の処置のための補体D因子阻害剤の単独又は抗C5抗体との組み合わせでの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230613BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230613BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230613BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P13/02
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A61K31/7088
A61K38/02
A61K48/00
A61K31/7105
A61K31/713
A61K31/506
A61P7/00
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568813
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2021031832
(87)【国際公開番号】W WO2021231470
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/023,415
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/044,431
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ミンジュン
(72)【発明者】
【氏名】フイ, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ポドス, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】パテル, ダラベン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフナー, マイケル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA17
4C084BA44
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA51
4C084ZA81
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086EA16
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA51
4C086ZA81
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書において、抗C5抗体療法に対して不適切な応答を事前に示した対象に治療有効量の補体の副経路の阻害剤(例えば、補体第5成分(C5)の上流の標的、例えば、D因子又は補体第3成分(C3)を阻害するもの)を投与することにより、その対象における発作性夜間ヘモグロビン尿症を処置する方法が提供される。本明細書において、ヒト対象におけるPNHを処置する方法であって、対象に補体D因子阻害剤を単独で又は抗C5抗体、若しくはその抗原結合断片との組み合わせで投与することを含む方法も提供される。一部の実施形態において、患者は、抗C5抗体療法に対して不適切な応答を事前に示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C5阻害剤、例えば、抗C5抗体療法に対して不適切な応答を事前に示した対象における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を処置する方法であって、前記対象に治療有効量の、補体の副経路(AP)の副成分の阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項2】
前記APの前記副成分の前記阻害剤は、補体第5成分(C5)の上流の標的、例えば、D因子又は補体第3成分(C3)の阻害を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記APの前記阻害剤での処置後、前記対象において以下のもの:(a)持続性血管外溶血(EVH);(b)貧血;及び/若しくは(c)輸血依存性の1つ以上の低減;並びに/又は前記対象においてFACIT疲労スケールスコアの改善が観察される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記APの前記阻害剤での処置後、不適切に応答するPNH対象におけるMAC媒介血管内溶血のコントロールが維持又は改善される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
抗C5抗体療法に対する前記不適切な応答は、(I)薬物動態学的(PK)観点、例えば、(a)前記対象におけるC5開裂の阻害の無効;(b)低用量及び/若しくは低対象血漿レベルの前記抗C5抗体;(c)前記対象における前記抗C5抗体のクリアランスの向上;若しくは(d)抗C5抗体投薬の低下をもたらす前記対象における抗C5抗体不耐であって、好ましくは、疲労及び注入後疼痛を含む抗C5抗体不耐に関連し;又は(II)薬力学的(PD)観点、例えば、(a)CR1多型;(b)血管外溶血(EVH)、例えば、血管内溶血(IVH)を生存する血球のオプソニン化を介するもの;及び(c)C3断片による抗C5抗体活性の効果の損害に関連する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
抗C5抗体療法に対して不適切な応答を事前に示した対象における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を処置する方法であって、
前記対象に治療有効量の補体D因子(CFD)阻害剤を投与すること
を含み、
前記対象による前記不適切な応答は、輸血依存性及び/又は貧血であり;
前記対象は、前記CFD阻害剤での処置の24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)前記対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性;及び/又は
(c)前記対象のベースラインFunctional Assessment of Chronic Illness Therapy(FACIT)疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法。
【請求項7】
抗C5抗体療法に対して不適切な応答を事前に示した対象における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を処置する方法であって、
前記対象に治療有効量の補体D因子(CFD)阻害剤を、治療有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片との組み合わせで投与すること
を含み、
前記対象による前記不適切な応答は、輸血依存性及び/又は貧血であり;
前記対象は、前記CFD阻害剤での処置の24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)前記対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性;及び/又は
(c)前記対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法。
【請求項8】
対象における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を処置する方法であって、
前記対象に治療有効量の補体D因子(CFD)阻害剤を、治療有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片との組み合わせで投与すること
を含み、
前記対象は、前記CFD阻害剤での処置の24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)前記対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性;及び/又は
(c)前記対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法。
【請求項9】
前記対象は、エクリズマブに対して不適切な応答を事前に示した、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項10】
前記対象は、≧24週間の承認用量以上における、≦8週間のレジメンの変更なしのエクリズマブで事前に処置された、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象に投与される前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、C5を阻害するヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異的抗体、キメラ抗体、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、AFFIBODY(登録商標)、ナノボディ、又はドメイン抗体である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項12】
前記対象に投与される前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号1、2、及び3にそれぞれ示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列、並びに配列番号4、5、及び6にそれぞれ示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列を含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項13】
前記対象に投与される前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号7を含む重鎖可変領域及び配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む、請求項7~8又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記対象に投与される前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号10を含む重鎖及び配列番号11を含む軽鎖を含む、請求項7~8又は12~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象に投与される前記抗C5抗体は、SOLIRIS(登録商標)である、請求項7~8又は12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象に投与される前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号19、18、及び3にそれぞれ示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列、並びに配列番号4、5、及び6にそれぞれ示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列を含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項17】
前記対象に投与される前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域をさらに含み、前記バリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EUナンバリングの天然ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基におけるMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む、請求項7~8又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象に投与される前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号12を含む重鎖可変領域及び配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む、請求項7~8又は16~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象に投与される前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号13に示される重鎖定常領域をさらに含む、請求項7~8又は16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象に投与される前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む、請求項7~8又は16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象に投与される前記抗C5抗体は、ラブリズマブである、請求項7~8又は16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記CFD阻害剤は、D因子に結合する小分子阻害剤、ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣体、アプタマー、又は任意の他の分子である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記CFD阻害剤は、DNA、RNA、shRNA、miRNA、siRNA、アンチセンスDNAからなる群から選択されるヌクレオチドである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記CFD阻害剤は、D因子に結合する抗体、又はその抗原結合断片である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記CFD阻害剤は、
【化1】
、又はその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項6~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記CFD阻害剤は、ダニコパンである、請求項6~22及び25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記CFD阻害剤を、前記対象に経口投与する、請求項6~22及び25~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記CFD阻害剤を、前記対象に1日3回(TID)経口投与する、請求項6~22及び25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記CFD阻害剤を、100mg、150mg、又は200mg TIDにおいて前記対象に経口投与する、請求項6~22及び25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記CFDを、24週間投与する、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記CDRを、9か月、12か月、15か月、20か月、24か月以上投与する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象に投与される前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、静脈内投与する、請求項7~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、前記対象に4回の用量で毎週600mgの用量において、次いで5週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において投与する、請求項7~15及び22~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象は、18歳未満である、請求項7~15及び22~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を18歳未満の前記対象に:
(a)40kg以上の体重の対象に4回の用量で毎週900mgの用量において、次いで5週目に1200mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに1200mgの用量において;
(b)30kg~40kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において;
(c)20kg~30kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に600mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに600mgの用量において;
(d)10kg~20kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に300mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに300mgの用量において;又は
(e)5kg~10kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週300mgの用量において、次いで2週目に300mgの用量において、次いでそれ以降3週間ごとに300mgの用量において
投与する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を:
(a)投与サイクルの1日目に1回;≧40~<60kgの体重の患者に2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に2700mg、又は≧100kgの体重の患者に3000mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに≧40~<60kgの体重の患者に3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に3300mg、又は≧100kgの体重の患者に3600mgの用量において
投与する、請求項7~11及び16~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象は、18歳未満である、請求項7~11及び16~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を:
(a)1日目に1回、≧5~<10kgの体重の患者に600mg、≧10~<20kgの体重の患者に600mg、≧20~<30kgの体重の患者に900mg、≧30~<40kgの体重の患者に1200mg、≧40~60kgの体重の患者に2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に2700mg、又は≧100kgの体重の患者に3000mgの用量において;
(b)15日目及びそれ以降4週間ごとに≧5~<10kgの体重の患者に300mg若しくは≧10~<20kgの体重の患者に600mgの用量において;又は15日目及びそれ以降8週間ごとに≧20~<30kgの体重の患者に2100mg、≧30~<40kgの体重の患者に2700mg、≧40~<60kgの体重の患者に3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に3300mg、若しくは≧100kgの体重の患者に3600mgの用量において
投与する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、前記対象に12又は24週間投与する、請求項7~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、前記対象に9か月、12か月、15か月、20か月、24か月以上投与する、請求項7~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記処置は、ビリルビンの正常レベルに向かうシフトをもたらす、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記処置は、ベースラインと比較して網状赤血球の低減をもたらす、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記処置は、ベースラインと比較してPNH特異的赤血球クローンサイズの増加をもたらす、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記処置は、ベースラインと比較してC3断片でオプソニン化されたPNH赤血球の減少をもたらす、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記処置は、ベースラインと比較して乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルによりアセスメントされる溶血の低減をもたらす、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記処置は、ベースラインと比較して輸血の必要性の低減を生じさせる、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記処置は、終末補体阻害をもたらす、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記処置は、ベースラインと比較して腹痛、呼吸困難、嚥下障害、胸痛及び勃起不全の低減又は停止からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果を生じさせる、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記処置は、遊離ヘモグロビン、ハプトグロビン、網状赤血球数、PNH赤血球(RBC)クローン及び/又はD-ダイマーからなる群から選択される少なくとも1つ以上の溶血関連血液バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトを生じさせる、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記処置は、主要血管性有害事象(MAVE)の低減を生じさせる、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記処置は、推算糸球体濾過量(eGFR)又はスポット尿:アルブミン:クレアチニン及び血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)からなる群から選択される慢性疾患関連バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトを生じさせる、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
処置は、ベースラインと比較してバージョン4及びEuropean Organisation for Research and Treatment of Cancer,Quality of Life Questionnaire-Core 30スケールを介してアセスメントされる生活の質におけるベースラインからの変化を生じさせる、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
ベースライン並びに処置の12又は24週間後における前記対象のヘモグロビンレベル、輸血状態、及び/又はFACIT疲労スケールスコアを決定することをさらに含み、
(a)前記対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性;及び/又は
(c)前記対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
が処置の指標である、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
エクリズマブでの事前の処置に対して不適切な応答を有した対象における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を処置する方法であって、
前記対象に治療有効量のダニコパンを治療有効量のエクリズマブとの組み合わせで投与すること
を含み、
前記対象による前記不適切な応答は、輸血依存性及び/又は貧血であり;
ダニコパンを前記対象に100mg、150mg、又は200mg TIDの用量において前記対象に経口投与し;
エクリズマブを前記対象に4回の用量で毎週600mgの用量において、次いで5週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において静脈内投与し;
前記対象は、前記CFD阻害剤での処置の12又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)前記対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性;及び/又は
(c)前記対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法。
【請求項55】
エクリズマブでの事前の処置に対して不適切な応答を有した対象における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を処置する方法であって、前記対象に治療有効量のダニコパンを治療有効量のエクリズマブとの組み合わせで投与することを含み、
前記対象による前記不適切な応答は、輸血依存性及び/又は貧血であり;
ダニコパンを前記対象に100mg、150mg、又は200mg TIDの用量において前記対象に経口投与し;
エクリズマブを18歳未満の対象に:
(a)40kg以上の体重の対象に4回の用量で毎週900mgの用量において、次いで5週目に1200mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに1200mgの用量において;
(b)30kg~40kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において;
(c)20kg~30kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に600mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに600mgの用量において;
(d)10kg~20kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に300mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに300mgの用量において;又は
(e)5kg~10kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週300mgの用量において、次いで2週目に300mgの用量において、次いでそれ以降3週間ごとに300mgの用量において
静脈内投与し;
前記対象は、前記CFD阻害剤での処置の12又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
i.前記対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
ii.輸血非依存性;及び/又は
iii.前記対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法。
【請求項56】
対象における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を処置する方法であって、
前記対象に治療有効量のダニコパンを治療有効量のエクリズマブとの組み合わせで投与すること
を含み、
ダニコパンを前記対象に100mg、150mg、又は200mg TIDの用量において前記対象に経口投与し;
エクリズマブを前記対象に4回の用量で毎週600mgの用量において、次いで5週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において静脈内投与し;
前記対象は、前記CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)前記対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性;及び/又は
(c)前記対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法。
【請求項57】
18歳未満の対象における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を処置する方法であって、前記対象に治療有効量のダニコパンを治療有効量のエクリズマブとの組み合わせで投与することを含み、
ダニコパンを前記対象に100mg、150mg、又は200mg TIDの用量において前記対象に経口投与し;
エクリズマブを:
(a)40kg以上の体重の対象に4回の用量で毎週900mgの用量において、次いで5週目に1200mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに1200mgの用量において;
(b)30kg~40kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において;
(c)20kg~30kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に600mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに600mgの用量において;
(d)10kg~20kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に300mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに300mgの用量において;又は
(e)5kg~10kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週300mgの用量において、次いで2週目に300mgの用量において、次いでそれ以降3週間ごとに300mgの用量において
静脈内投与し;
前記対象は、前記CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
i.前記対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
ii.輸血非依存性;及び/又は
iii.前記対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法。
【請求項58】
補体の前記副経路(AP)の副成分の前記阻害剤は、
a)MASP-3阻害剤(例えば、α-MASP-3モノクローナル抗体(Mab)、例えば、OMS906);
b)D因子(FD)阻害剤(例えば、抗FD Mab、例えば、ランパリズマブ;又は小分子FD阻害剤、例えば、ダニコパン(ACH-4471)若しくはBCX9930);
c)B因子阻害剤(例えば、LNP023);
d)コンプスタチン分子又はその誘導体(例えば、APL2、APL9、AMY-101);
e)ミニH因子(例えば、ミニFH AMY-201);及び
f)H因子融合タンパク質(例えば、TT30)
からなる群から選択される、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記C5阻害剤は、
a)エクリズマブバイオシミラー(例えば、ABP959;Elizaria;SB12);
b)ノマコパン(コバーシン;rVA576);
c)ラブリズマブ;
d)テシドルマブ(LFG316);
e)ポゼリマブ;及び
f)クロバリマブ(SKY059)
からなる群から選択される、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
補体の前記副経路(AP)は、ダニコパンを含む医薬組成物を含む、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
約100~約200mgのダニコパンを含む医薬組成物をヒト対象に8時間ごとに投与することを含む、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記対象は、処置前に血管外溶血(EVH)を示す、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
対象における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を処置するためのキットであって、
(a)ある用量の補体D因子(CFD)阻害剤;及び
(b)請求項1~62のいずれか一項に記載の方法における前記CFDの使用のための指示書
を含むキット。
【請求項64】
対象における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を処置するためのキットであって、
(a)ある用量の補体D因子(CFD)阻害剤;
(b)ある用量の抗C5抗体;並びに
(c)請求項1~62のいずれか一項に記載の方法における前記CFD及び抗C5抗体の使用のための指示書
を含むキット。
【請求項65】
前記CFDは、ダニコパンである、請求項63又は64に記載のキット。
【請求項66】
前記抗C5抗体は、エクリズマブである、請求項64又は65に記載のキット。
【請求項67】
前記抗C5抗体は、ラブリズマブである、請求項64又は65に記載のキット。
【請求項68】
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を罹患する患者における臨床的に明らかな血管外溶血(EVH)を処置する方法であって、前記PNH患者は、C5阻害剤、例えば、抗C5抗体療法で事前に処置されており、前記対象に治療有効量の補体の前記副経路(AP)の副成分の阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項69】
前記APの前記副成分の前記阻害剤は、補体第5成分(C5)の上流の標的、例えば、D因子又は補体第3成分(C3)の阻害を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記D因子阻害剤の前記阻害剤は、ダニコパンを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記臨床的に明らかなEVHは、(a)網状赤血球絶対数≧120×10個/Lを伴う貧血(例えば、Hgb≦9.5g/dL);及び/又は(b)補体の前記APの前記副成分の前記阻害剤での治療法前6か月以内の少なくとも1回の濃厚RBC若しくは白血球輸血を含む、請求項68~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記処置は、臨床的に明らかなEVHを有する前記PNH患者において輸血回避(TA)をもたらす、請求項68~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
臨床的に明らかなEVHを有する前記処置PNH患者は、pRBC輸血要求、例えば、前記PNH患者が(1)PNHの臨床的徴候若しくは症状の存在にかかわらず6g/dL未満のヘモグロビン値;又は(2)輸血を必要とするのに十分な重症度のPNH徴候若しくは症状を伴うヘモグロビン値<9g/dLを有する場合に、前記患者がpRBC輸血を受ける要求を有さない、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記治療有効量の前記AP補体の副成分の前記阻害剤は、1日当たり600mgにおいて投与されるダニコパンを含む、請求項68~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記患者を、抗C5抗体で、治療有効量の前記AP補体の副成分の前記阻害剤と一緒に処置する、請求項68~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記抗C5抗体療法は、PNH療法における各抗体についての標準的投与量及び/又は投薬スケジュールに従うエクリズマブ(例えば、エクリズマブを含む医薬組成物)又はラブリズマブ(例えば、ラブリズマブを含む医薬組成物)での治療法を含む、請求項75に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第63/023,415号(2020年5月12日出願)及び米国仮特許出願第63/044,431号(2020年6月26日出願)の優先権、及び利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照により全体として本明細書に組み込まれる配列表を含有する。前記ASCIIコピーは、2021年5月11日に作成され、0618_WO_SL.txtと命名され、62,966バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
補体系は、身体の他の免疫系と連携して作用して細胞及びウイルス病原体の侵入を防御する。血漿タンパク質及び膜補因子の複合集合体として見出される少なくとも25種の補体タンパク質が存在する。血漿タンパク質は、脊椎動物血清中のグロブリンの約10%を構成する。補体成分は、一連の複雑であるが正確な酵素的開裂及び膜結合事象を相互作用させることによりそれらの免疫防御機能を達成する。得られる補体カスケードは、オプソニン、免疫調節、及び溶解機能を有する生成物の産生をもたらす。補体活性化と関連する生物学的活動の要約が、例えば、The Merck Manual,16th Editionに提供されている。
【0004】
適正に機能する補体系は感染微生物に対する強固な防御を提供する一方、補体経路の不適切な調節又は活性化は、種々の障害、例として、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の発病に関与している。PNHは、コントロールされない補体活性が、主に血管内溶血及び血小板活性化を介して全身性合併症をもたらす病態である(Socie G,et al.,French Society of Haematology.Lancet.1996;348(9027):573-577及びBrodsky,R.,Blood.2014;124(18):2804-2811参照)。持続的な血管内溶血は、種々のストレス因子、例えば、感染症又は身体運動により誘発され得、これは平滑筋収縮(遊離ヘモグロビン)、慢性貧血、及び重篤な血栓塞栓症のリスク増加をもたらす。血栓塞栓症は、PNHを有する患者における最も一般的な死因であり、肺高血圧症並びに重要な臓器、例えば、肝臓、腎臓、脳及び腸の末端臓器損傷はそのような事象の後遺症である(Hillmen,P.,et al,Am.J.Hematol.2010;85(8):553-559)。これらの有害病原性プロセスに起因して、PNHを有する患者は減少した生活の質(QoL)を有し、それとしては消耗性疲労、慢性疼痛、不十分な身体機能、息切れ、腹痛、勃起不全、抗凝固療法、輸血の必要性及び一部の場合、透析の必要性を挙げることができる(Weitz,IC.,et al.,Thromb Res.2012;130(3):361-368)。
PNHを有する患者は、高い罹患率及び死亡率のリスクがある。したがって、本開示の目的は、PNHを有する患者を処置するための改善された方法を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Socie G,et al.,French Society of Haematology.Lancet.1996;348(9027):573-577
【非特許文献2】Brodsky,R.,Blood.2014;124(18):2804-2811
【非特許文献3】Hillmen,P.,et al,Am.J.Hematol.2010;85(8):553-559
【非特許文献4】Weitz,IC.,et al.,Thromb Res.2012;130(3):361-368
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、部分的に、抗C5抗体療法に不適切に応答し、又はその応答に失敗するPNH患者が、補体の副阻害剤、例えば、D因子(FD)阻害剤又はC3阻害剤での処置から利益を得るという発見に関する。具体的には、エクリズマブの通常レジメンに加えて経口FD阻害剤(ダニコパン)を受容するエクリズマブを継続中の輸血依存性PNH患者は、ヘモグロビン(Hgb)レベルの増加、改善されたFunctional Assessment of Chronic Illness Therapy(FACIT)-疲労スコア、輸血必要性の低減、及び他のPNHパラメータの改善により証明されるとおり改善された臨床アウトカムを示した。データは、FD阻害剤、例えば、ダニコパンでのFDの遮断が、C5阻害剤での中心的治療法、例えば、エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標))での抗C5抗体療法を継続中のPNH患者における追加の利益を提供することを示す。この付加される利益は、血管内溶血(IVH)のコントロールに加えてC3媒介細胞外溶血(EVH)の防止に起因する可能性が高い。
【0007】
本明細書において、C5阻害剤、例えば、抗C5抗体療法に対して不適切な応答を事前に示した対象に治療有効量の副経路(AP)の副成分の阻害剤を投与することにより、その対象における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を処置する方法が提供される。一部の実施形態において、APの副成分の阻害剤は、補体第5成分(C5)の上流の標的、例えば、D因子又は補体第3成分(C3)を阻害するものである。一部の実施形態において、PNH対象は、血管外溶血(EVH)を有する。
【0008】
一部の実施形態において、処置は、対象における以下のもの:(a)持続性血管外溶血(EVH);(b)貧血;及び/又は(c)輸血依存性の1つ以上の低減をもたらす。一部の実施形態において、処置は、FACIT疲労スケールスコアの改善をもたらす。一部の実施形態において、不適切に応答するPNH対象におけるMAC媒介血管内溶血のコントロールが、処置後に維持又は改善される。
【0009】
一部の実施形態において、抗C5抗体療法に対する不適切な応答は、薬物動態学的(PK)観点、例えば、(a)対象におけるC5開裂の阻害の無効;(b)低用量及び/若しくは低対象血漿レベルの抗C5抗体;(c)対象における抗C5抗体のクリアランスの向上;並びに/又は(d)抗C5抗体投薬の低下をもたらす対象における抗C5抗体不耐であって、好ましくは、疲労及び注入後疼痛を含む抗C5抗体不耐に関連する。一部の実施形態において、抗C5抗体療法に対する不適切な応答は、薬力学的(PD)観点、例えば、(a)CR1多型;(b)血管外溶血(EVH)、例えば、血管内溶血(IVH)を生存する血球のオプソニン化を介するもの;及び/又は(c)C3断片による抗C5抗体活性の効果の損害に関連する。一部の実施形態において、抗C5抗体療法に対する不適切な応答は、1つ以上のPK及びPD観点に関連する。
【0010】
本明細書において、ヒト患者におけるPNHを処置する方法であって、患者に補体D因子(CFD)阻害剤を単独で又は抗C5抗体、若しくはその抗原結合断片との組み合わせで投与することを含む方法も提供される。一部の実施形態において、CFD阻害剤及び/又は抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、特定の臨床投与量レジメンに従って(例えば、特定の用量において、規定の投薬スケジュールに従って)投与する(又はそれに従う投与のためのものである)。一部の実施形態において、PNH対象は、血管外溶血(EVH)を有する。一部の実施形態において、本開示は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を罹患する患者(例えば、ヒト患者)における臨床的に明らかな血管外溶血(EVH)を処置する方法に関する。特に、本開示の実施形態は、C5阻害剤、例えば、抗C5抗体(例えば、エクリズマブ又はラブリズマブでの治療法)で事前に処置されたPNH患者におけるEVHの処置であって、患者に治療有効量の補体の副経路(AP)の副成分のモジュレーター(例えば、阻害剤)を投与することを含む処置に関する。一部の実施形態において、補体のAPの副成分のモジュレーターは、補体第5成分(C5)の上流の標的の阻害剤、例えば、D因子(FD)又は補体第3成分(C3)の阻害剤;特に、D因子の阻害剤を含む。
【0011】
上記又は以下の治療方法の一部の実施形態において、本開示は、C5阻害剤、例えば、抗C5抗体療法で事前に処置されたPNH患者におけるEVHを治療する方法であって、対象に治療有効量のD因子阻害剤、例えば、ダニコパンを投与することを含む方法に関する。一部の実施形態において、治療有効量のダニコパンは、1日当たり600mgにおいて投与する。
【0012】
上記又は以下の治療方法の一部の実施形態において、臨床的に明らかなEVHは、(a)網状赤血球絶対数≧120×10個/Lを伴う貧血(例えば、Hgb≦9.5g/dL);及び/又は(b)補体のAPの副成分の阻害剤での治療法前、例えば、FD阻害剤、例えば、ダニコパンでの治療法前の6か月以内の少なくとも1回の濃厚RBC若しくは白血球輸血を含む。
【0013】
上記又は以下の治療方法の一部の実施形態において、補体のAPの副成分、例えば、D因子阻害剤、例えば、ダニコパンの投与は、臨床的に明らかなEVHを有するPNH患者における輸血回避(TA)をもたらす。
【0014】
上記又は以下の治療方法の一部の実施形態において、AP補体経路の副成分、例えば、D因子阻害剤、例えば、ダニコパンの投与により、臨床的に明らかなEVHを有するPNH患者は、pRBC輸血要求、例えば、そのPNH患者が(1)PNHの臨床的徴候若しくは症状の存在にかかわらず6g/dL未満のヘモグロビン値;又は(2)輸血を必要とするのに十分な重症度のPNH徴候若しくは症状を伴う9g/dL未満のヘモグロビン値を有する場合にその患者がpRBC輸血を受ける要求を有さなくなる。
【0015】
上記又は以下の治療方法の一部の実施形態において、臨床的に明らかなEVHを有するPNH患者は、抗C5抗体で、治療有効量のAP補体の副成分の阻害剤と一緒に、例えば、エクリズマブ又はラブリズマブ(抗C5抗体として)で、FD阻害剤、例えば、ダニコパンと一緒に処置する。一部の実施形態において、患者は、FD阻害剤単独で、例えば、ダニコパン単独で処置する。
【0016】
上記又は以下の治療方法の一部の実施形態において、臨床的に明らかなEVHを有するPNH患者は、抗C5抗体、例えば、エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標))又はラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標))で、PNH療法における抗C5抗体についての標準的な投与量及び/又は投薬スケジュールに従って、補体のAPの副成分の阻害剤での処置、例えば、D因子阻害剤、例えば、ダニコパンでの処置前に処置し、続いてその後に同じ抗C5抗体で処置する。
【0017】
一部の実施形態において、本開示は、PNHを罹患する患者、例えば、ヒト患者における臨床的に明らかなEVHを処置するための、有効量の補体の副経路(AP)の副成分のモジュレーター(例えば、阻害剤)の使用に関する。特に、本開示の実施形態は、C5阻害剤、例えば、抗C5抗体(例えば、エクリズマブ又はラブリズマブでの治療法)で事前に処置されたPNH患者におけるEVHの処置における、有効量のC5の上流の標的の阻害剤(例えば、FD又はC3の阻害剤;特にFDの阻害剤)の使用に関する。特定の実施形態において、本開示は、エクリズマブ又はラブリズマブで事前に処置された臨床的に明らかなEVHを有するヒトPNH患者の処置における、有効量のダニコパンの、例えば、1日600mgの経口用量の使用に関する。
【0018】
一実施形態において、対象におけるPNHを処置する方法であって、対象に治療有効量の補体D因子(CFD)阻害剤を、治療有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片との組み合わせで投与することを含み、
対象は、CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性;及び/又は
(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上(例えば、10、11、12)のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0019】
別の実施形態において、抗C5抗体療法に対して不適切な応答を事前に示した対象におけるPNHを処置する方法であって、
対象に治療有効量の補体D因子(CFD)阻害剤を投与すること
を含み、
対象による不適切な応答は、輸血依存性及び/又は貧血であり;
対象は、CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性;及び/又は
(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上(例えば、10、11、12)のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0020】
別の実施形態において、抗C5抗体療法に対して不適切な応答を事前に示した対象におけるPNHを処置する方法であって、
対象に治療有効量の補体D因子(CFD)阻害剤を、治療有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片との組み合わせで投与すること
を含み、
対象による不適切な応答は、輸血依存性及び/又は貧血であり;
対象は、CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性;及び/又は
(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上(例えば、10、11、12)のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0021】
一部の実施形態において、方法は、ベースライン並びに処置の12及び/又は24週間後における対象のヘモグロビンレベル、輸血状態、及び/又はFACIT疲労スケールスコアを決定することをさらに含み、(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;(b)輸血非依存性;及び/又は(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上(例えば、10、11、12)のFACIT疲労スケールスコア増加が処置の指標である。
【0022】
一部の実施形態において、方法は、抗C5抗体療法(例えば、SOLIRIS(登録商標)、ULTOMIRIS(登録商標)、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体、又はREGN3918抗体)に対して不適切な応答を事前に示したPNHを有する対象を処置することを含む。一部の実施形態において、PNHを有する対象は、SOLIRIS(登録商標)に対して不適切な応答を事前に示した。一部の実施形態において、PNHを有する対象は、≧24週間(例えば、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40週間以上)の承認用量以上における、≦8週間のレジメンの変更なしのSOLIRIS(登録商標)に対して不適切な応答を事前に示した。一部の実施形態において、PNHを有する対象は、ULTOMIRIS(登録商標)に対して不適切な応答を事前に示した。
【0023】
一部の実施形態において、対象による不適切な応答は、輸血依存性(例えば、スクリーニングの≦12週間前の≧1回の赤血球(RBC)輸血)であった。一部の実施形態において、対象による不適切な応答は、貧血(例えば、ヘモグロビン<10g/dl)であった。一部の実施形態において、対象による不適切な応答は、輸血依存性及び貧血であった。
【0024】
一部の実施形態において、対象は、本明細書に記載の方法に従って処置された後に1つ以上の臨床的改善を示す。例えば、一実施形態において、対象は、処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加を示す。他の実施形態において、対象は、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加を示す。他の実施形態において、対象は、24週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加を示す。他の実施形態において、対象は、処置後に輸血非依存性を示す。他の実施形態において、対象は、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後に輸血非依存性を示す。他の実施形態において、対象は、24週間の処置後に輸血非依存性を示す。他の実施形態において、対象は、処置後に輸血回避を示す。他の実施形態において、対象は、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後に輸血回避を示す。他の実施形態において、対象は、12週間の処置後に輸血回避を示す。他の実施形態において、対象は、処置後に対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上(例えば、10、11、12)のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、処置後に対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して11ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後に10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後に11ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、12週間の処置後に10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、12週間の処置後に11ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、24週間の処置後に10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、24週間の処置後に11ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。
【0025】
他の実施形態において、対象は、12週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較してヘモグロビン増加及び輸血非依存性又は輸血回避を示す。他の実施形態において、対象は、処置後(例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後)に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加及び輸血非依存性を示す。他の実施形態において、対象は、12週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加及び輸血非依存性又は輸血回避を示す。他の実施形態において、対象は、24週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加及び輸血非依存性又は輸血回避を示す。
【0026】
他の実施形態において、対象は、12週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較してヘモグロビン増加及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、処置後(例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後)に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、処置後(例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後)に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加及び11ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、12週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、24週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、24週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加及び11ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。
【0027】
他の実施形態において、対象は、12週間の処置後に輸血非依存性又は輸血回避及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、処置後(例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後)に輸血非依存性又は輸血回避及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、処置後(例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後)に輸血非依存性及び11ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、24週間の処置後に輸血非依存性及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、24週間の処置後に輸血非依存性及び11ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。
【0028】
他の実施形態において、対象は、処置後(例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後)に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加、輸血非依存性又は輸血回避、及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、処置後(例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後)に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加、輸血非依存性又は輸血回避、及び11ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、24週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加、輸血非依存性又は輸血回避、及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。他の実施形態において、対象は、24週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加、輸血非依存性又は輸血回避、及び11ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。
【0029】
一部の実施形態において、方法は、ベースライン並びに処置の12及び/又は24週間後における対象のヘモグロビンレベル、輸血状態、及び/又はFACIT疲労スケールスコアを決定することをさらに含み、(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;(b)輸血非依存性及び/又は(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加が、処置の指標である。
【0030】
任意の好適なCFD阻害剤を本明細書に記載の方法において使用することができる。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、D因子に結合する小分子阻害剤、ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣体、アプタマー、又は任意の他の分子である。他の実施形態において、CFD阻害剤は、DNA、RNA、shRNA、miRNA、siRNA、及びアンチセンスDNAからなる群から選択されるヌクレオチドである。他の実施形態において、CFD阻害剤は、D因子に結合する抗体、又はその抗原結合断片である。他の実施形態において、CFD阻害剤は、
【化1】
、又はその薬学的に許容可能な塩を含む。
【0031】
例示的なCFD阻害剤は、ダニコパンである。
【0032】
他の例示的なCFD阻害剤としては、Maibaum,J.,et al.(Nature Chemical Biology,volume 12,pages 1105-1110(2016))に示される化合物1~7が挙げられる。したがって、一実施形態において、CFD阻害剤は、
【化2】
【化3】
を含む。
【0033】
別の例示的なCFD阻害剤は、国際公開第2015168468号パンフレット及び米国特許第10,407,510号明細書に記載のランパリズマブ(「FCFD4 14S」及び「aFD」とも称される)である。追加の例示的なCFD阻害剤としては、米国特許出願公開第20190359699号明細書に記載の抗D因子抗体、例として、mAbの11-8A1、mAbの1F10-5、及びそれらのバリアントが挙げられ、それらの教示及びそれらに開示される特定のCFD阻害剤は参照により明示的に全て本明細書に組み込まれる。
【0034】
さらなる例示的なCFD阻害剤としては、米国特許第6,653,340号明細書に記載の縮合二環式環状化合物(例として、CFD阻害剤BCX1470及び実施例1~20に開示される化合物)、並びに米国特許出願公開第20080269318号明細書、例として、BCX-1470、国際公開第2012/093101号パンフレット(例えば、米国特許第9,085,555号明細書参照)、国際公開第2014/002057号パンフレット、国際公開第2014/009833号パンフレット(例えば、米国特許第9,550,755号明細書参照)、国際公開第2014/002051号パンフレット(例えば、米国特許第9,815,819号明細書参照)、国際公開第2014/002052号パンフレット、国際公開第2014/002053号パンフレット、国際公開第2014/002054号パンフレット、国際公開第2014/002058号パンフレット(例えば、米国特許第9,487,483号明細書)、国際公開第2014/002059号パンフレット、及び国際公開第2014/005150号パンフレットに記載の特定のCFD阻害剤が挙げられ、それらの教示及びそれらに開示されるCFD阻害剤は参照により明示的に全て本明細書に組み込まれる。
【0035】
任意の好適な抗C5抗体、又はその抗原結合断片を本明細書に記載の方法において使用することができる。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異的抗体、キメラ抗体、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、Affibody(登録商標)、ナノボディ、又はドメイン抗体である。
【0036】
例示的な抗C5抗体は、SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブとしても公知)である。SOLIRIS(登録商標)は、配列番号10及び11にそれぞれ示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片及びバリアントである。一部の実施形態において、抗C5抗体は、配列番号7に示される配列を有するSOLIRIS(登録商標)のVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びに配列番号8に示される配列を有するSOLIRIS(登録商標)のVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。他の実施形態において、抗体は、配列番号1、2、及び3にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号4、5、及び6にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。他の実施形態において、抗体は、配列番号7及び配列番号8にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0037】
別の例示的な抗C5抗体は、配列番号14及び11にそれぞれ示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含むULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)、又はその抗原結合断片及びバリアントである。他の実施形態において、抗体は、ULTOMIRIS(登録商標)の重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)又は可変領域(VR)を含む。したがって、一実施形態において、抗体は、配列番号12に示される配列を有するULTOMIRIS(登録商標)の重鎖可変(VH)領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びに配列番号8に示される配列を有するULTOMIRIS(登録商標)の軽鎖(VL)領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。他の実施形態において、抗体は、配列番号19、18、及び3にそれぞれ示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列、並びに配列番号4、5、及び6にそれぞれ示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列を含む。他の実施形態において、抗体は、配列番号12及び配列番号8にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。他の実施形態において、抗体は、配列番号13に示される重鎖定常領域を含む。
【0038】
他の実施形態において、抗体は、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、バリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EUナンバリング慣例に従う天然ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基におけるMet429Leu及びAsn435Ser置換を含む。
【0039】
他の実施形態において、抗体は、配列番号19、18、及び3にそれぞれ示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列、並びに配列番号4、5、及び6にそれぞれ示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列並びにヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、バリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EUナンバリング慣例に従う天然ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基におけるMet429Leu及びAsn435Ser置換を含む。
【0040】
他の実施形態において、抗C5抗体は、BNJ421抗体(PCT/US2015/019225号明細書及び米国特許第9,079,949号明細書に記載)の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。他の実施形態において、抗C5抗体は、7086抗体(米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書参照)の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号21、22、及び23にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号24、25、及び26にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号27に示される配列を有する重鎖可変領域及び配列番号28に示される配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0041】
一部の実施形態において、抗C5抗体は、8110抗体(米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書参照)の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号29、30、及び31にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号32、33、及び34にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号35に示される配列を有する重鎖可変領域及び配列番号36に示される配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0042】
一部の実施形態において、抗C5抗体は、305LO5抗体(米国特許出願公開第2016/0176954A1号明細書参照)の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号37、38、及び39にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号40、41、及び42にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号43に示される配列を有する重鎖可変領域及び配列番号44に示される配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0043】
一部の実施形態において、抗C5抗体は、SKY59抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号45に示される配列を含む重鎖及び配列番号46に示される配列を含む軽鎖を含む。
【0044】
一部の実施形態において、抗C5抗体は、REGN3918抗体(米国特許出願公開第20170355757号明細書参照)の重鎖及び軽鎖可変領域又は重鎖及び軽鎖を含む。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号47に示される重鎖可変領域配列及び配列番号48に示される配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号49に示される重鎖配列及び配列番号50に示される軽鎖配列を含む。
【0045】
他の実施形態において、抗体は、上記抗体のいずれかと同じC5上のエピトープとの結合について競合し、及び/又はそれに結合する。他の実施形態において、抗体は、上記抗体のいずれかと少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性を有する(例えば、配列番号12又は配列番号8と少なくとも約90%、95%又は99%の可変領域同一性)。
【0046】
他の実施形態において、抗体は、0.1nM≦K≦1nMの範囲の親和性解離定数(K)でpH7.4及び25℃においてヒトC5に結合する。他の実施形態において、抗体は、pH6.0及び25℃においてK≧10nMでヒトC5に結合する。さらに別の実施形態において、抗体の[(pH6.0及び25CにおけるヒトC5に対する抗体又はその抗原結合断片のK)/(pH7.4及び25CにおけるヒトC5に対する抗体又はその抗原結合断片のK)]は、25超である。
【0047】
一部の実施形態において、CFD阻害剤(例えば、ダニコパン)は、特定の臨床投与量レジメンに従って(例えば、特定の用量において、規定の投薬スケジュールに従って)投与する(又はそれに従う投与のためのものである)。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、対象に経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、対象に1日3回(TID)経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、対象に約50mg~300mgの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、又は300mgの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約100mgの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約100mg TIDの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約150mgの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約150mg TIDの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約200mgの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約200mg TIDの用量において経口投与する。
【0048】
一部の実施形態において、CFD阻害剤は、4週間以上(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60週間以上)投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、24週間投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、9か月、12か月、15か月、20か月、24か月以上投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、1、2、3、4、5、6年以上投与する。
【0049】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、SOLIRIS(登録商標)又はULTOMIRIS(登録商標))は、特定の臨床投与量レジメンに従って(例えば、特定の用量において、規定の投薬スケジュールに従って)投与する(又はそれに従う投与のためのものである)。抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、患者に任意の好適な手段により投与することができる。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、対象に静脈内投与する。
【0050】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の用量は、固定用量である。例えば、一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、対象に毎週600mgの用量において投与する。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、対象に2週間ごとに900mgの用量において投与する。
【0051】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、対象に4回の用量で毎週600mgの用量において、次いで5週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において投与する。一部の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)は、対象(例えば、成人対象)に4回の用量で毎週600mgの用量において、次いで5週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において投与する。
【0052】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、18歳未満の対象に40kg以上の体重の対象に4回の用量で毎週900mgの用量において、次いで5週目に1200mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに1200mgの用量において投与する。一部の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)は、18歳未満の対象に40kg以上の体重の対象に4回の用量で毎週900mgの用量において、次いで5週目に1200mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに1200mgの用量において投与する。
【0053】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、18歳未満の対象に30kg~40kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において投与する。一部の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)は、18歳未満の対象に30kg~40kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において投与する。
【0054】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、18歳未満の対象に20kg~30kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に600mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに600mgの用量において投与する。一部の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)は、18歳未満の対象に20kg~30kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に600mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに600mgの用量において投与する。
【0055】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、18歳未満の対象に10kg~20kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に300mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに300mgの用量において投与する。一部の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)は、18歳未満の対象に10kg~20kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週600mgの用量において、3週目に300mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに300mgの用量において投与する。
【0056】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、18歳未満の対象に5kg~10kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週300mgの用量において、次いで2週目に300mgの用量において、次いでそれ以降3週間ごとに300mgの用量において投与する。一部の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)は、18歳未満の対象に5kg~10kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週300mgの用量において、次いで2週目に300mgの用量において、次いでそれ以降3週間ごとに300mgの用量において投与する。
【0057】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の用量は、患者の体重に基づく。一部の実施形態において、例えば、300mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧5~<10kgの体重の患者に投与する。一部の実施形態において、600mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧10~<20kgの体重の患者に投与する。一部の実施形態において、900mg又は2100mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧20~<30kgの体重の患者に投与する。一部の実施形態において、1200mg又は2700mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧30~<40kgの体重の患者に投与する。一部の実施形態において、2400mg又は3000mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧40~<60kgの体重の患者に投与する。一部の実施形態において、2700mg又は3300mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧60~<100kgの体重の患者に投与する。一部の実施形態において、3000mg又は3600mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧100kgの体重の患者に投与する。ある実施形態において、投与量レジメンは、最適所望応答(例えば、有効応答)を提供するように調整する。
【0058】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、
(a)投与サイクルの1日目に1回;≧40~<60kgの体重の患者に2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に2700mg、又は≧100kgの体重の患者に3000mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに≧40~<60kgの体重の患者に3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に3300mg、又は≧100kgの体重の患者に3600mgの用量において
投与する。
【0059】
一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、
(a)投与サイクルの1日目に1回:≧40~<60kgの体重の患者に2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に2700mg、又は≧100kgの体重の患者に3000mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに≧40~<60kgの体重の患者に3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に3300mg、又は≧100kgの体重の患者に3600mgの用量において
投与する。
【0060】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧40~<60kgの体重の患者に:
(a)投与サイクルの1日目に1回2400mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに3000mgの用量において
投与する。
【0061】
一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧40~<60kgの体重の患者に:
(a)投与サイクルの1日目に1回2400mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに3000mgの用量において
投与する。
【0062】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧60~<100kgの体重の患者に:
(a)投与サイクルの1日目に1回2700mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに3300mgの用量において
投与する。
【0063】
一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧60~<100kgの体重の患者に:
(a)投与サイクルの1日目に1回2700mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに3300mgの用量において
投与する。
【0064】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧100kgの体重の患者に:
(a)投与サイクルの1日目に1回3000mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに3600mgの用量において
投与する。
【0065】
一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧100kgの体重の患者に:
(a)投与サイクルの1日目に1回3000mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに3600mgの用量において
投与する。
【0066】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、18歳未満の対象に:
(a)1日目に1回、≧5~<10kgの体重の患者に600mg、≧10~<20kgの体重の患者に600mg、≧20~<30kgの体重の患者に900mg、≧30~<40kgの体重の患者に1200mg、≧40~<60kgの体重の患者に2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に2700mg、又は≧100kgの体重の患者に3000mgの用量において;
(b)15日目及びそれ以降4週間ごとに≧5~<10kgの体重の患者に300mg若しくは≧10~<20kgの体重の患者に600mgの用量において;又は15日目及びそれ以降8週間ごとに≧20~<30kgの体重の患者に2100mg、≧30~<40kgの体重の患者に2700mg、≧40~<60kgの体重の患者に3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に3300mg、若しくは≧100kgの体重の患者に3600mgの用量において
投与する。
【0067】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧5~<10kgの体重の患者に:(a)1日目に1回600mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降4週間ごとに300mgの用量において投与する。一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧5~<10kgの体重の患者に:(a)1日目に1回600mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降4週間ごとに300mgの用量において投与する。
【0068】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧10~<20kgの体重の患者に:(a)1日目に1回600mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降4週間ごとに600mgの用量において投与する。一部の実施形態において、抗C5抗体は、≧10~<20kgの体重の患者に:(a)1日目に1回600mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降4週間ごとに600mgの用量において投与する。
【0069】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧20~<30kgの体重の患者に:(a)1日目に1回900mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに2100mgの用量において投与する。一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧20~<30kgの体重の患者に:(a)1日目に1回900mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに2100mgの用量において投与する。
【0070】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧30~<40kgの体重の患者に:(a)1日目に1回1200mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに2700mgの用量において投与する。一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧30~<40kgの体重の患者に:(a)1日目に1回1200mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに2700mgの用量において投与する。
【0071】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧40~<60kgの体重の患者に:(a)1日目に1回2400mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに3000mgの用量において投与する。一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧40~<60kgの体重の患者に:(a)1日目に1回2400mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに3000mgの用量において投与する。
【0072】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧60~<100kgの体重の患者に:(a)1日目に1回2700mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに3300mgの用量において投与する。一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧60~<100kgの体重の患者に:(a)1日目に1回2700mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに3300mg用量において投与する。
【0073】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧100kgの体重の患者に:(a)1日目に1回3000mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに3600mgの用量において投与する。一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧100kgの体重の患者に:(a)1日目に1回3000mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに3600mgの用量において投与する。
【0074】
別の態様において、記載される処置レジメンは、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の特定の血清トラフ濃度を維持するために十分なものである。一実施形態において、例えば、処置レジメンは、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、200、205、210、215、220、225、230、240、245、250、255、260、265、270、280、290、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395又は400μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。一部の実施形態において、処置レジメンは、100μg/mL以上、150μg/mL以上、200μg/mL以上、250μg/mL以上、又は300μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。一部の実施形態において、処置は、100μg/mL~200μg/mLの抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。一部の実施形態において、処置は、約175μg/mLの抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。
【0075】
一部の実施形態において、有効な応答を得るため、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、患者の血液1ミリリットル当たり少なくとも50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg又は260μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。一部の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり50μg~250μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。一部の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり100μg~200μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。一部の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり約175μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。
【0076】
本明細書に提供される処置方法の有効性は、任意の好適な手段を使用してアセスメントすることができる。一部の実施形態において、処置は、ビリルビンの正常レベル(例えば、約0.2~1.2mg/dL)へのシフトをもたらす。一部の実施形態において、処置は、ベースラインと比較して網状赤血球の低減(例えば、2、3、4又は5倍の低減)をもたらす。一部の実施形態において、処置は、ベースラインと比較してPNH特異的赤血球クローンサイズの増加(例えば、2、3、4、又は5倍の増加)をもたらす。一部の実施形態において、処置は、ベースラインと比較してC3断片でオプソニン化されたPNH赤血球の減少(例えば、2、3、4、又は5倍の低減)をもたらす。一部の実施形態において、処置は、ベースラインと比較して輸血の必要性の低減を生じさせる。一部の実施形態において、処置は、終末補体阻害をもたらす。一部の実施形態において、処置は、ベースラインと比較して腹痛、呼吸困難、嚥下障害、胸痛及び勃起不全の低減又は停止からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果を生じさせる。一部の実施形態において、処置は、遊離ヘモグロビン、ハプトグロビン、網状赤血球数、PNH赤血球(RBC)クローン及びD-ダイマーからなる群から選択される少なくとも1つ以上の溶血関連血液バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトを生じさせる。一部の実施形態において、処置は、主要血管性有害事象(MAVE)の低減を生じさせる。一部の実施形態において、処置は、推算糸球体濾過量(eGFR)又はスポット尿:アルブミン:クレアチニン並びに血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の正常レベルに向かうシフトを生じさせる。一部の実施形態において、処置は、ベースラインと比較してバージョン4及びEuropean Organisation for Research and Treatment of Cancer,Quality of Life Questionnaire-Core 30スケールを介してアセスメントされる生活の質のベースラインからの変化を生じさせる。
【0077】
一部の実施形態において、LDHレベルを使用して治療法に対する応答性を評価する(例えば、LDHレベルによりアセスメントされる溶血の低減は、PNHの少なくとも1つの徴候の改善の指標である)。一部の実施形態において、開示される方法に従って処置される患者は、ほぼ正常レベルへの、又は正常レベルとみなされるものの10%、20%、30%、40%内若しくは50%未満内(例えば、105~333IU/L(1リットル当たりの国際単位)内)へのLDHレベルの低減を経験する。一部の実施形態において、患者のLDHレベルは、処置の維持期間全体にわたり正常化される。一部の実施形態において、処置された患者のLDHレベルは、処置の維持期間中の時間の少なくとも少なくとも95%正常化される。一部の実施形態において、処置された患者のLDHレベルは、処置の維持期間中の時間の少なくとも少なくとも90%、85%又は80%正常化される。一部の実施形態において、患者のLDHレベルは、処置開始前に正常値上限の≧1.5倍超(LDH≧1.5×ULN)である。
【0078】
一実施形態において、SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)での事前の処置に対して不適切な応答を有した対象におけるPNHのための方法であって、
対象に治療有効量のダニコパンを治療有効量のSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)との組み合わせで投与すること
を含み、
対象による不適切な応答は、輸血依存性及び/又は貧血であり;
ダニコパンを対象に100mg、150mg、又は200mg TIDの用量において対象に経口投与し;
SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)を対象に4回の用量で毎週600mgの用量において、次いで5週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において静脈内投与し;
対象は、CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性;及び/又は
(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0079】
別の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)での事前の処置に対して不適切な応答を有した対象におけるPNHを処置する方法であって、対象に治療有効量のダニコパンを治療有効量のSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)との組み合わせで投与することを含み、
対象による不適切な応答は、輸血依存性及び/又は貧血であり;
ダニコパンを対象に100mg、150mg、又は200mg TIDの用量において対象に経口投与し;
SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)を18歳未満の対象に:
(a)40kg以上の体重の対象に4回の用量で毎週900mgの用量において、次いで5週目に1200mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに1200mgの用量において;
(b)30kg~40kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において;
(c)20kg~30kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に600mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに600mgの用量において;
(d)10kg~20kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に300mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに300mgの用量において;又は
(e)5kg~10kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週300mgの用量において、次いで2週目に300mgの用量において、次いでそれ以降3週間ごとに300mgの用量において
静脈内投与し;
対象は、CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
i.対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
ii.輸血非依存性;及び/又は
iii.対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0080】
別の実施形態において、対象におけるPNHを処置する方法であって、
対象に治療有効量のダニコパンを治療有効量のSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)との組み合わせで投与すること
を含み、
ダニコパンを対象に100mg、150mg、又は200mg TIDの用量において対象に経口投与し;
SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)を対象に4回の用量で毎週600mgの用量において、次いで5週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において静脈内投与し;
対象は、CFD阻害剤での処置の12又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性;及び/又は
(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0081】
別の実施形態において、18歳未満の対象におけるPNHを処置する方法であって、対象に治療有効量のダニコパンを治療有効量のSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)との組み合わせで投与することを含み、
ダニコパンを対象に100mg、150mg、又は200mg TIDの用量において対象に経口投与し;
SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)を:
(a)40kg以上の体重の対象に4回の用量で毎週900mgの用量において、次いで5週目に1200mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに1200mgの用量において;
(b)30kg~40kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において;
(c)20kg~30kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に600mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに600mgの用量において;
(d)10kg~20kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に300mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに300mgの用量において;又は
(e)5kg~10kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週300mgの用量において、次いで2週目に300mgの用量において、次いでそれ以降3週間ごとに300mgの用量において
静脈内投与し;
対象は、CFD阻害剤での処置の24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
i.対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
ii.輸血非依存性;及び/又は
iii.対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0082】
一部の実施形態において、本明細書に記載の方法は、ベースライン並びに処置の12及び/又は24週間後における対象のヘモグロビンレベル、輸血状態、及び/又はFACIT疲労スケールスコアを決定することをさらに含み、
(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性;及び/又は
(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
が処置の指標である。
【0083】
一部の実施形態において、本開示は、C5阻害剤、例えば、抗C5抗体療法に対して不適切な応答を事前に示した対象におけるPNHを処置する方法であって、対象に
a)MASP-3阻害剤(例えば、α-MASP-3モノクローナル抗体(Mab)、例えば、OMS906);
b)D因子(FD)阻害剤(例えば、抗FD Mab、例えば、ランパリズマブ又は小分子FD阻害剤、例えば、ダニコパン(ACH-4471)、若しくはBCX9930);
c)B因子阻害剤(例えば、LNP023);
d)コンプスタチン分子又はその誘導体(例えば、APL2、APL9、AMY-101);
e)ミニH因子(mini Factor H)(例えば、ミニFH AMY-201);及び
f)H因子融合タンパク質(例えば、TT30)
からなる群から選択される治療有効量の補体の副経路(AP)の阻害剤を投与することを含む方法に関する。
【0084】
一部の実施形態において、本開示は、C5阻害剤、例えば、抗C5抗体療法に対して不適切な応答を事前に示した対象におけるPNHを処置する方法であって、対象に治療有効量のダニコパンを投与することを含み;特に約100~約200mgのダニコパンを含む医薬組成物をヒト対象に8時間ごとに投与する方法に関する。
【0085】
一部の実施形態において、本開示は、
a)エクリズマブバイオシミラー(例えば、ABP959;Elizaria;又はSB12);
b)ノマコパン(コバーシン;rVA576);
c)ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ);
d)テシドルマブ(LFG316);
e)ポゼリマブ;及び
f)クロバリマブ(SKY059)
からなる群から選択されるC5阻害剤に対して不適切な応答を事前に示した対象におけるPNHを処置する方法に関する。
【0086】
本明細書において、PNHを処置するためのキットがさらに提供される。一部の実施形態において、キットは、(a)ある用量の補体D因子(CFD)阻害剤及び(b)本明細書に記載の方法のいずれかにおけるCFDの使用のための指示書を含む。一部の実施形態において、キットは、(a)ある用量の補体D因子(CFD)阻害剤、(b)ある用量の抗C5抗体;並びに(c)本明細書に記載の方法のいずれかにおけるCFD及び抗C5抗体の使用のための指示書を含む。一部の実施形態において、CFDは、ダニコパンである。一部の実施形態において、抗C5抗体は、SOLIRIS(登録商標)又はULTOMIRIS(登録商標)である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1】臨床試験のための投薬レジメンを示す概略図である。
図2】臨床試験における個々の患者についての輸血歴及び「処置中」輸血データを示す。具体的には、図2は、ダニコパンの開始前52週間及びダニコパンでの処置の間の患者ごとの輸血事例及び単位を示す。
図3】年換算の割合及び単位を介する輸血頻度及び単位量を示すグラフである。
図4図4A~4Dは、補体バイオマーカー及びPNHクローンサイズに対する効果を示すグラフである。具体的には、血清、血漿及び全血サンプルをダニコパン投薬前1日目(ベースライン)及び示されるとおりの試験経過の間の選択時点において回収し、CP活性(図4A)、AP溶血アッセイでのAP活性(図4B)、血漿Bb濃度(図4C)並びにPNH顆粒球、PNH赤血球及びC3dPNH赤血球(図4D)のクローンサイズの測定に供した。幾何平均を使用したC3dPNH赤血球のクローンサイズを除き全てについての算術平均及び標準偏差(SD)を示し、その範囲を各時点において示す。NHS、正常ヒト血清;BL、ベースライン;LLN、正常値下限;ULN、正常値上限。
【発明を実施するための形態】
【0088】
I.定義
本明細書において使用される場合、用語「対象」又は「患者」は、ヒト患者(例えば、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を有する患者)である。
【0089】
本明細書において使用される場合、用語「小児」患者は、18歳未満(<18歳)のヒト患者である。
【0090】
PNHは、成人において最も高頻度で生じる後天性溶血性障害である(Brodsky,R.,Blood,126:2459-65,2015)。この疾患は、PIGA遺伝子における体細胞突然変異を獲得した造血幹細胞のクローン性増殖から開始する(Brodsky,R.,Blood,124:2804-11,2014)。結果として、PNH血球はグリコホスファチジルイノシトール(GPI)アンカータンパク質を欠き、膜結合補体阻害タンパク質CD55及びCD59を欠損している。CD55の不存在下で、血球膜表面上の補体タンパク質C3開裂産物の沈着が増加し、後にC5のC5a及びC5bへの開裂をもたらす。PNHを有する患者における病変及び臨床所見は、コントロールされない終末補体活性化により引き起こされる。
【0091】
C5aは、複数の炎症促進及び血栓形成促進活性を媒介する強力なアナフィラトキシン、化学走化性因子、及び細胞活性化分子である(Matis,L & Rollins,S.,Nat.Med.,1:839-42,1995;Prodinger et al.,Complement.In:Paul WE、editor.Fundamental immunology(4th ed).Philadelphia:Lippincott-Raven Publishers;1999.p.967-95)。C5bは、終末補体成分C6、C7、C8及びC9を動員して炎症促進性で血栓形成促進性の細胞溶解細孔分子C5b-9を形成し、これは通常の状況下では赤血球(RBC)膜上でCD59により遮断されるプロセスである。しかしながら、PNHを有する患者において、これらの最終ステップは、チェックされずに進行し、溶血及び遊離ヘモグロビンの放出、並びに血小板活性化に至る(Hill,A.et al.,Blood,121:4985-96,2013)。PNHの徴候及び症状は、慢性のコントロールされない補体C5開裂、並びにRBC溶血をもたらすC5a及びC5b-9の放出に起因し得、それらが一緒になって、
・溶血の直接的結果としての細胞内遊離ヘモグロビン及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の循環中への放出;
・ヘモグロビンによる一酸化窒素(NO)への不可逆的結合及びその不活性化、並びにNO合成の阻害;
・血管拡張性NOの不存在に起因する血管収縮及び組織層虚血、並びに腹痛、嚥下困難、及び勃起不全として現れる可能性のある微小血栓;
・血小板活性化;並びに
・炎症促進性及び血栓形成促進性状態
をもたらす。
【0092】
PNHを有する患者のかなりの割合が、腎機能障害及び肺高血圧を経験する(Hillmen,P.et al.,Am.J.Hematol.,85:553-9,2010[erratum in Am.J.Hematol.,85:911,2010];Hill,A.et al.,Br.J.Haematol.,158:409-14,2012)。患者は、多様な部位、例として、腹部又は中枢神経系において静脈又は動脈血栓症も経験する。
【0093】
対照的に、PNHを有する幼児は、通常、基礎骨髄障害に関連する非特異的症状、例えば、蒼白、疲労又は黄疸を呈し、ヘモグロビン尿症は一般にそれほど現れない(Ware,R.et al.,N.Engl.J.Med.,325:991-6,1991)。小児患者における臨床的評価は、骨髄不全症候群、例えば、再生不良性貧血及び難治性血球減少症なども明らかにする(van den Heuvel-Eibrink,M.,Paediatr.Drugs,9:11-6,2007)。骨髄障害が幼児において消散し、又はPNHクローンが増殖したら(その原因は依然として不明である)、疾患は最終的に成人に診察時に典型的に見られる1つ以上のものに進行する。
【0094】
本明細書において使用される場合、「貧血」又は「貧血性」は、少数の赤血球、すなわち、ヘモグロビン<10g/dlを指す。
【0095】
本明細書において使用される場合、「溶血」は、赤血球(RBC)の破裂又は破壊を指す。「血管内溶血」は、循環中のRBCの溶解、それによる血漿中へのヘモグロビンの放出を指す。生じる断片化RBCは「破砕赤血球」と呼ばれる。「血管外溶血」は、脾臓及び肝臓中のマクロファージによるRBCの溶解及び食作用を指す。血管外溶血は、球状赤血球を特徴とする。
【0096】
本明細書において使用される場合、「輸血」は、血液、血液産物、又は他の流体を対象の循環系中に移す行為を指す。「輸血依存的」な対象は、スクリーニング及び/又は処置の≦12週間前に≧1回の輸血(例えば、赤血球輸血)を有した対象である。「輸血非依存的」な対象は、輸血(例えば、赤血球輸血)なしで>12週間経過した対象である。
【0097】
本明細書において使用される場合、「輸血回避」は、無輸血を保持し、処置の12週目まで輸血を要求しない本明細書に記載の方法に従って処置された対象を指す。輸血(例えば、濃厚赤血球(pRBC)の)は、対象が(1)臨床的徴候若しくは症状の存在にかかわらず6g/dL未満のヘモグロビン値、又は(2)9g/dL未満のヘモグロビン値と輸血を必要とするのに十分な重症度の徴候若しくは症状を有する場合に要求される。本明細書において使用される場合、「有効な処置」は、有益な効果、例えば、疾患又は障害の少なくとも1つの症状の好転を生じさせる処置を指す。有益な効果は、ベースラインに対する改善、例えば、本方法による治療法の開始前になされた測定又は観察に対する改善の形態を取り得る。有効な処置は、PNHの少なくとも1つの症状(例えば、蒼白、疲労、黄疸、貧血、血球減少症、腹痛、呼吸困難、嚥下障害、胸痛又は勃起不全)の軽減を指し得る。
【0098】
用語「有効量」は、所望の生物学的、治療的、及び/又は予防的結果を提供する薬剤の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状若しくは原因の1つ以上の低減、好転、緩和、低下、遅延、及び/又は軽減、又は生物系の任意の他の所望の変更であり得る。一例では、「有効量」は、PNHの少なくとも1つの症状(例えば、蒼白、疲労、黄疸、貧血、血球減少症、腹痛、呼吸困難、嚥下障害、又は胸痛)を軽減することが臨床的に証明された抗C5抗体、又はその抗原結合断片の量である。有効量は、1回以上の投与で投与することができる。
【0099】
本明細書において使用される場合、用語「維持」及び「維持期」は、互換的に使用され、第2期の処置を指す。ある実施形態において、処置は、臨床的利益が観察される限り、又は管理不能な毒性若しくは疾患進行が生じるまで継続する。
【0100】
本明細書において使用される場合、用語「補体の副成分」は、列記される成分以外の成分、例えば、C5以外の成分、例えば、MASP3、D因子、B因子、C3/C5コンベルターゼなどを指す。
【0101】
本明細書において使用される場合、用語「C5阻害剤」は、最も広い意味で、C5を阻害し、又はアンタゴナイズする任意の分子、例えば、(a)エクリズマブ若しくはそのバイオシミラー、例えば、ABP959;Elizaria;若しくはSB12;(b)ラブリズマブ;(c)テシドルマブ(LFG316);(d)ポゼリマブ;及び(e)クロバリマブ(SKY059)から選択される抗体;又はC5のタンパク質/ペプチド阻害剤、例えば、ノマコパン(コバーシン;rVA576)を指す。
【0102】
本明細書において使用される場合、用語「血清トラフレベル」は、薬剤(例えば、抗C5抗体、又はその抗原結合断片)又は医薬が血清中に存在する最低レベルを指す。対照的に、「ピーク血清レベル」は、血清中の薬剤の最高レベルを指す。「平均血清レベル」は、経時的な血清中の薬剤の平均レベルを指す。
【0103】
II.副経路阻害剤
補体系は、共通点であるC3成分の活性化に向かう3つの経路(すなわち、古典的経路(CP)、レクチン経路(LP)、及び副経路(AP))を介して活性化される(例えば、Ricklin D.,et al.,2010.,Nat.Immunol.11:785-797参照)。補体活性化のAPは、低レベルの活性化の定常状態(「空転」と称されることが多い)にある。C3は血漿中でC3iに加水分解され、それはC3bの特性の多くを有する。次いで、C3iは血漿タンパク質B因子に結合する。結合したB因子はD因子により開裂されてBa及びBbを産生する。Baは放出され、C3iBbを含む残りの複合体は副経路C3コンベルターゼを形成する。コンベルターゼにより生成されたC3bのほとんどが加水分解される。しかしながら、C3bが侵入微生物と接触する場合、それは結合し、C3bのB因子への結合により副経路の増幅が促進される。血漿タンパク質プロペルジンはC3コンベルターゼを安定化させて活性を延長させる。この経路において産生されたC3bは、C5インベルターゼC3bBb3bも生じさせ、それはC5a及びC5bの産生をもたらす。着目すべきことに、CPにおいて生成されたC3bはAP中に流れて補体の活性化を増幅させる。
【0104】
補体のAPの任意の好適な阻害剤を本明細書に記載の方法において使用することができる。一部の実施形態において、阻害剤は、補体第5成分(C5)の上流の標的を阻害するものである。一部の実施形態において、阻害剤は、C3阻害剤である。例示的なC3阻害剤は、APL-2(ペグセタコプラン)、C3及びC3bに特異的に結合する、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーにコンジュゲートしている合成環状ペプチドである。補体経路の代表的な阻害剤は表1に提供される。
【0105】
【表1】
【0106】
一部の実施形態において、阻害剤は、補体D因子(CFD)阻害剤である。補体D因子は、単一の公知の天然基質:C3bに結合しているB因子のみを有するセリンプロテイナーゼである(Volanakis,J.E.,et al,1993,Methods in Enzymol.,223:82-97参照)。D因子の血清濃度、2μg/mlは、あらゆる補体タンパク質の中の最低である(例えば、Liszewski,M.K.and J.P.Atkinson,1993,In Fundamental Immunology,Third Edition.Edited by W.E.Paul.Raven Press,Ltd.New York参照)。D因子は、B因子(FB)の開裂によるC3コンベルターゼ生成に、APカスケードの2つのステップ:流体相における自発的AP活性化(空転)後の初期C3コンベルターゼ(C3(H2O)Bb)の生成;並びに初期活性化の大幅な増幅(増幅ループ)を媒介する表面結合C3コンベルターゼ(C3bBb)の産生及び終末経路の活性化に関与し、C3bによる標的表面のオプソニン化、アナフィラトキシンC3a及びC5aの放出並びに膜侵襲複合体(MAC)の形成をもたらす(例えば、Yuan et al.,Haematologica.2017 Mar;102(3):466-475参照)。追加の調節タンパク質は、AP活性を促進し(プロペルジン)、又は減衰させ得る(H因子、I因子、複数の膜結合タンパク質、例として、CD55及びCD59)。
【0107】
本明細書において使用される場合、「D因子阻害剤」又は「CFD阻害剤」は、D因子の活性を予防し、低減し、又は遮断する分子又は物質である。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、抗体、又はその抗原結合断片、例えば、D因子に結合する抗体、又はその抗原結合断片である。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、小分子阻害剤である。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、ヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、shRNA、miRNA、siRNA、又はアンチセンスDNA)である。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、D因子に結合するペプチド、タンパク質、ペプチド模倣体、アプタマー、又は任意の他の分子である。
【0108】
例示的なCFD阻害剤は、ダニコパン(「ALXN2040」、「ACH-4471」及び「ACH-0144471」とも称される)である。ダニコパンは、0.54nMのKd値でヒトD因子に対して高い結合親和性を示す選択的及び経口活性小分子D因子阻害剤である。ダニコパンは、補体のAP(APC)活性を阻害する。一実施形態において、CFD阻害剤は、
【化4】
又はその薬学的に許容可能な塩を含む。
【0109】
追加の例示的CFD阻害剤としては、Maibaum,J.,et al.(Nature Chemical Biology,volume 12,pages 1105-1110(2016))により教示される小分子CFD阻害剤、すなわち、化合物1~7又はそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。したがって、一実施形態において、CFD阻害剤は、
【化5】
【化6】
を含む。
【0110】
別の例示的なCFD阻害剤は、ランパリズマブ(「FCFD4 14S」及び「aFD」とも称される)、補体D因子に結合するヒトモノクローナル抗体の抗原結合断片である。具体的には、ランパリズマブは、214残基軽鎖(配列番号51)及び223残基重鎖(配列番号52)を含む抗体Fab断片である。ランパリズマブは、国際公開第2015168468号パンフレット及び米国特許第10,407,510号明細書に記載されており、それらの教示は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。追加の例示的なCFD阻害剤としては、米国特許出願公開第20190359699号明細書に記載の抗D因子抗体、例として、mAbの11-8A1、mAbの1F10-5、及びそれらのバリアント(例えば、段落[007]~[0021]参照)が挙げられ、その教示は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0111】
他の例示的なCFD阻害剤としては、米国特許第6,653,340号明細書(例えば、第6列(第15行)から第56列(第48行)参照)に記載の縮合二環式環状化合物、(例として、CFD阻害剤BCX1470)及び実施例1~20に開示される化合物)、並びに米国特許出願公開第20080269318号明細書、例として、BCX-1470(例えば、段落[0023]及び[0032]参照)、国際公開第2012/093101号パンフレット(例えば、5~67頁参照)、国際公開第2014/002057号パンフレット(例えば、3~13頁参照)、国際公開第2014/009833号パンフレット(例えば、4~11頁参照)、国際公開第2014/002051号パンフレット(例えば、5~16頁参照)、国際公開第2014/002052号パンフレット(例えば、4~11頁参照)、国際公開第2014/002053号パンフレット(例えば、4~11頁参照)、国際公開第2014/002054号パンフレット(例えば、5~19頁参照)、国際公開第2014/002058号パンフレット(例えば、5~20頁参照)、国際公開第2014/002059号パンフレット(例えば、6~8頁及び13~20頁参照)、及び国際公開第2014/005150号パンフレット(例えば、3~4頁及び7~30頁参照)に記載の特定のCFD阻害剤が挙げられ、それらの教示及びそれらに開示される特定のCFD阻害剤は参照により明示的に全て本明細書に組み込まれる。
【0112】
本明細書に記載のCFD阻害剤は、例えば、全身又は局所のいずれかで投与することができる。全身投与としては、例えば、経口、経皮、真皮下、腹腔内、皮下、経鼻腔、舌下、又は直腸投与が挙げられる。局所投与としては、例えば、外用投与が挙げられる。一実施形態において、CFD阻害剤は、経口投与されるダニコパンである。
【0113】
一部の実施形態において、至適でないC5遮断の効果、例えば、持続性貧血の低減に有用な副補体成分の阻害剤は、補体第3成分(C3)阻害剤である。多くのPNH患者における抗C5抗体により付与される血液学的利益の減衰は、C3断片での生存PNH赤血球のオプソニン化、それによる赤血球のインビボ半減期の低減に起因し得ることが仮定される。したがって、ある実施形態において、本開示の方法は、C5阻害剤、例えば、エクリズマブでの抗C5抗体療法に対して不適切に応答するPNH患者の治療法におけるC3阻害剤(単独で、又はFD阻害剤と一緒のいずれか)の使用に関する。
【0114】
一部の実施形態において、C3阻害剤は、コンプスタチン又はそのアナログである。コンプスタチンは、C3に結合し、補体活性化を阻害する環状ペプチドである(米国特許第6,319,897号明細書参照)。コンプスタチンよりも高い補体阻害活性を有するコンプスタチンアナログが開発されており、例えば、国際公開第2004/026328号パンフレット(例えば、米国特許第7,989,589号明細書参照)である。本明細書において使用される場合、用語「コンプスタチンアナログ」には、コンプスタチンの補体阻害アナログが含まれる。国際公開第2017/062879号パンフレット;国際公開第2014/152391号パンフレット及び国際公開第2012/178083号パンフレット参照、それらの刊行物及びそれらの米国対応物(例えば、米国特許出願公開第2019-0381129号明細書;米国特許第10,308,687号明細書;及び米国特許第10,039,802号明細書参照)における開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。好ましいコンプスタチンアナログとしては、ペグセタコプラン(APL-2)及び関連分子(例えば、APL-9)が挙げられる。コンプスタチンアナログは、例えば、N末端及び/又はC末端においてアセチル化又はアミド化し、具体的には、N末端においてアセチル化し、C末端においてアミド化することができる。
【0115】
一部の実施形態において、C3阻害剤は、コンプスタチン模倣体である。代表的なコンプスタチン模倣体は、国際公開第2004/026328号パンフレット;国際公開第2007/062249号パンフレット;国際公開第2008/140637号パンフレット;国際公開第2015/142701号パンフレットに提供され、それらの刊行物及びそれらの米国対応物(例えば、米国特許第7,989,589号明細書;米国特許第7,888,323号明細書;米国特許出願公開第2011-0046075号明細書;及び米国特許第10,213,476号明細書参照)における開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。好ましいコンプスタチン模倣体としては、AMY-101(CAS:1427001-89-5)が挙げられる。
【0116】
一部の実施形態において、副補体成分は、H因子をモジュレートする。H因子は、I因子媒介C3b開裂に対する補因子活性、及び副経路C3-コンベルターゼC3bBbに対する分解促進活性の両方を有することにより細胞及び表面上の補体活性化を調節する。H因子はその保護作用を細胞及び自己表面に付与するが、細菌の表面にもウイルスの表面にも付与しない。これは、C3開裂に対する補因子としてのより低い若しくは高い活性又は分解促進活性を有する立体構造を採用する能力を有するH因子の結果と考えられている。好ましい実施形態において、補体成分は、ミニH因子(ミニFH/AMY-201)である。
【0117】
III.抗C5抗体
本明細書に記載の抗C5抗体は、補体成分C5(例えば、ヒトC5)に結合し、C5の断片C5a及びC5bへの開裂を阻害する。本開示における使用に好適な抗C5抗体(又はそれから誘導されるVH/VLドメイン)は、当技術分野で周知の方法を使用して生成することができる。或いは、当技術分野で認識されている抗C5抗体を使用することができる。C5への結合についてこれらの当技術分野で認識されている抗体のいずれかと競合する抗体又は任意の他の薬剤を使用することもできる。
【0118】
用語「抗体」は、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位(例えば、VH/VL領域若しくはFv、又はCDR)を含むポリペプチドを記載する。抗体としては、公知の形態の抗体が挙げられる。例えば、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異的抗体、又はキメラ抗体であり得る。抗体は、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、Affibody(登録商標)、ナノボディ、又はドメイン抗体でもあり得る。抗体は、以下のアイソタイプ:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、及びIgEのいずれかのものでもあり得る。抗体は、天然に存在する抗体であり得、又はタンパク質工学操作技術により(例えば、突然変異、欠失、置換、非抗体部分へのコンジュゲーションにより)変更された抗体であり得る。例えば、抗体は、抗体の特性(例えば、機能的特性)を変化させる1つ以上のバリアントアミノ酸(天然に存在する抗体と比較して)を含み得る。例えば、多数のそのような変更は当技術分野で公知であり、それらは、例えば、患者における抗体の半減期、エフェクター機能、及び/又はそれに対する免疫応答に影響を及ぼす。抗体という用語には、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位を含む人工又は工学操作ポリペプチド構築物も含まれる。
【0119】
エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標)としても公知)は、配列番号10及び11にそれぞれ示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片及びバリアントである。SOLIRIS(登録商標)の可変領域は、PCT/US1995/005688及び米国特許第6,355,245号に記載されており、それらの教示は参照により本明細書に組み込まれる。SOLIRIS(登録商標)の完全重鎖及び軽鎖は、PCT/US2007/006606号明細書(例えば、米国特許第9,718,880号明細書参照)に記載されており、それらの教示は参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態において、抗C5抗体は、配列番号7に示される配列を有するSOLIRIS(登録商標)のVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びに配列番号8に示される配列を有するSOLIRIS(登録商標)のVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号1、2、及び3にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号4、5、及び6にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号7及び配列番号8にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0120】
別の例示的な抗C5抗体は、配列番号14及び11にそれぞれ示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含むULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)、又はその抗原結合断片及びバリアントである。ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)(BNJ441及びALXN1210としても公知)は、PCT/US2015/019225号明細書及び米国特許第9,079,949号明細書に記載されており、それらの教示は、参照により本明細書に組み込まれる。ラブリズマブ、BNJ441、及びALXN1210という用語は、本文書全体を通して互換的に使用され得るが、全て同じ抗体を指す。ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)は、ヒト補体タンパク質C5に選択的に結合し、補体活性化の間のそのC5a及びC5bへの開裂を阻害する。この阻害は、微生物のオプソニン化及び免疫複合体のクリアランスに不可欠な補体活性化の近位又は早期成分(例えば、C3及び3b)を保存しつつ、炎症促進性メディエーターC5aの放出及び細胞溶解細孔形成膜侵襲複合体(MAC)C5b-9の形成を防止する。
【0121】
他の実施形態において、抗体は、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。例えば、一実施形態において、抗体は、配列番号12に示される配列を有するULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)のVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びに配列番号8に示される配列を有するULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)のVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号19、18、及び3にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号4、5、及び6にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号12及び配列番号8にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0122】
別の例示的な抗C5抗体は、配列番号20及び11にそれぞれ示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含む抗体BNJ421、又はその抗原結合断片及びバリアントである。BNJ421(ALXN1211としても公知)は、PCT/US2015/019225号明細書及び米国特許第9,079,949号明細書に記載されており、それらの教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
他の実施形態において、抗体は、BNJ421の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。したがって、一実施形態において、抗体は、配列番号12に示される配列を有するBNJ421のVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びに配列番号8に示される配列を有するBNJ421のVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号19、18、及び3にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号4、5、及び6にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号12及び配列番号8にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0124】
CDRの正確な境界は、様々な方法に従って様々に定義されてきた。一部の実施形態において、軽鎖又は重鎖可変ドメイン内のCDR又はフレームワーク領域の位置は、Kabat et al.[(1991)“Sequences of Proteins of Immunological Interest.”NIH Publication No.91-3242,U.S.Department of Health and Human Services,Bethesda,MD]により定義され得る。このような場合、CDRは、「Kabat CDR」(例えば、「Kabat LCDR2」又は「Kabat HCDR1」)と称することができる。一部の実施形態において、軽鎖又は重鎖可変領域のCDRの位置は、Chothia et al.(1989)Nature 342:877-883により定義されるとおりであり得る。したがって、これらの領域は、「Chothia CDR」(例えば、「Chothia LCDR2」又は「Chothia HCDR3」)と称することができる。一部の実施形態において、軽鎖及び重鎖可変領域のCDRの位置は、Kabat-Chothia組み合わせ定義により定義されるとおりであり得る。このような実施形態において、これらの領域は、「組み合わせKabat-Chothia CDR」と称することができる。Thomas et al.[(1996)Mol Immunol 33(17/18):1389-1401]は、Kabat及びChothiaの定義に従うCDR境界の同定を例示している。
【0125】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:GHIFSNYWIQ(配列番号19)を含み、又はそれからなる重鎖CDR1を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:EILPGSGHTEYTENFKD(配列番号18)を含み、又はそれからなる重鎖CDR2を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:
【化7】
を含む重鎖可変領域を含む。
【0126】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCGASENIYGALNWYQQKPGKAPKLLIYGATNLADGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQNVLNTPLTFGQGTKVEIK(配列番号8)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0127】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書に記載の7086抗体である。一実施形態において、抗体は、7086抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む(米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書参照)。別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号21、22、及び23にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号24、25、及び26にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号27に示される配列を有する7086抗体のVH領域、及び配列番号28に示される配列を有する7086抗体のVL領域を含む。
【0128】
別の例示的な抗C5抗体は、同様に米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書に記載の8110抗体である。一実施形態において、抗体は、8110抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号29、30、及び31にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号32、33、及び34にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号35に示される配列を有する8110抗体のVH領域、及び配列番号36に示される配列を有する8110抗体のVL領域を含む。
【0129】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許出願公開第2016/0176954A1号明細書に記載の305LO5抗体である。一実施形態において、抗体は、305LO5抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号37、38、及び39にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号40、41、及び42にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号43に示される配列を有する305LO5抗体のVH領域、及び配列番号44に示される配列を有する305LO5抗体のVL領域を含む。
【0130】
別の例示的な抗C5抗体は、Fukuzawa T.,et al.,Rep.2017 Apr 24;7(1):1080)に記載のSKY59抗体である。一実施形態において、抗体は、SKY59抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号45を含む重鎖及び配列番号46を含む軽鎖を含む。
【0131】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許出願公開第20170355757号明細書(米国特許第10,633,434号明細書参照)に記載のREGN3918抗体(H4H12166PPとしても公知)である。一実施形態において、抗体は、配列番号47を含む重鎖可変領域及び配列番号48を含む軽鎖可変領域を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号49を含む重鎖及び配列番号50を含む軽鎖を含む。
【0132】
本明細書に記載の抗C5抗体は、一部の実施形態において、バリアントヒトFc定常領域が由来した天然ヒトFc定常領域の親和性よりも高い親和性でヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含む。例えば、Fc定常領域は、バリアントヒトFc定常領域が由来した天然ヒトFc定常領域と比べて1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、又は8つ以上の)アミノ酸置換を含み得る。置換は、相互作用のpH依存性を維持しつつ、pH6.0におけるバリアントFc定常領域を含有するIgG抗体のFcRnに対する結合親和性を増加させ得る。抗体のFc定常領域中の1つ以上の置換がpH6.0においてFcRnに対するFc定常領域の親和性を(相互作用のpH依存性を維持しつつ)増加させるか否かを検査する方法は、当技術分野において公知である。
【0133】
抗体のFc定常領域のFcRnに対する結合親和性を向上させる置換は当技術分野で公知であり、それとしては、例えば、(1)Dall’Acqua et al.(2006)J Biol Chem 281:23514-23524により記載されているM252Y/S254T/T256E三重置換;(2)Hinton et al.(2004)J Biol Chem 279:6213-6216及びHinton et al.(2006)J Immunol 176:346-356に記載のM428L又はT250Q/M428L置換;並びに(3)Petkova et al.(2006)Int Immunol 18(12):1759-69に記載のN434A又はT307/E380A/N434A置換が挙げられる。追加の置換ペア:P257I/Q311I、P257I/N434H、及びD376V/N434Hが、例えば、Datta-Mannan et al.(2007)J Biol Chem 282(3):1709-1717に記載されており、その開示は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0134】
一部の実施形態において、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基255におけるバリンについての置換を有する。一部の実施形態において、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基309におけるアスパラギンについての置換を有する。一部の実施形態において、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基312におけるイソロイシンについての置換を有する。一部の実施形態において、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基386における置換を有する。
【0135】
一部の実施形態において、バリアントFc定常領域は、それが由来した天然定常領域に対して30個以下(例えば、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2つ以下)のアミノ酸置換、挿入、又は欠失を含む。一部の実施形態において、バリアントFc定常領域は、M252Y、S254T、T256E、N434S、M428L、V259I、T250I、及びV308Fからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントヒトFc定常領域は、EUナンバリングで各々天然ヒトIgGのFc定常領域の428位におけるメチオニン及び434位におけるアスパラギンを含む。一部の実施形態において、バリアントFc定常領域は、例えば、米国特許第8,088,376号明細書に記載のとおり428L/434S二重置換を含む。
【0136】
一部の実施形態において、これらの突然変異の正確な位置は、抗体工学操作に起因して天然ヒトFc定常領域位置からシフトされ得る。例えば、428L/434S二重置換は、IgG2/4キメラFcにおいて使用される場合、BNJ441(ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ))に見出され、米国特許第9,079,949号明細書に記載のM429L及びN435Sバリアントのように429L及び435Sに対応し得、その開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0137】
一部の実施形態において、バリアント定常領域は、天然ヒトFc定常領域に対してアミノ酸237、238、239、248、250、252、254、255、256、257、258、265、270、286、289、297、298、303、305、307、308、309、311、312、314、315、317、325、332、334、360、376、380、382、384、385、386、387、389、424、428、433、434、又は436位(EUナンバリング)における置換を含む。一部の実施形態において、置換は、全てEUナンバリングで、237位におけるグリシンに代えてメチオニン;238位におけるプロリンに代えてアラニン;239位におけるセリンに代えてリジン;248位におけるリジンに代えてイソロイシン;250位におけるトレオニンに代えてアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、メチオニン、グルタミン、セリン、バリン、トリプトファン、又はチロシン;252位におけるメチオニンに代えてフェニルアラニン、トリプトファン、又はチロシン;254位におけるセリンに代えてトレオニン;255位におけるアルギニンに代えてグルタミン酸;256位におけるトレオニンに代えてアスパラギン酸、グルタミン酸、又はグルタミン;257位におけるプロリンに代えてアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、セリン、トレオニン、又はバリン;258位におけるグルタミン酸に代えてヒスチジン;265位におけるアスパラギン酸に代えてアラニン;270位におけるアスパラギン酸に代えてフェニルアラニン;286位におけるアスパラギンに代えてアラニン、又はグルタミン酸;289位におけるトレオニンに代えてヒスチジン;297位におけるアスパラギンに代えてアラニン;298位におけるセリンに代えてグリシン;303位におけるバリンに代えてアラニン;305位におけるバリンに代えてアラニン;307位におけるトレオニンに代えてアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリン、トリプトファン、又はチロシン;308位におけるバリンに代えてアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、プロリン、グルタミン、又はトレオニン;309位におけるロイシン又はバリンに代えてアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、又はアルギニン;311位におけるグルタミンに代えてアラニン、ヒスチジン、又はイソロイシン;312位におけるアスパラギン酸に代えてアラニン又はヒスチジン;314位におけるロイシンに代えてリジン又はアルギニン;315位におけるアスパラギンに代えてアラニン又はヒスチジン;317位におけるリジンに代えてアラニン;325位におけるアスパラギンに代えてグリシン;332位におけるイソロイシンに代えてバリン;334位におけるリジンに代えてロイシン;360位におけるリジンに代えてヒスチジン;376位におけるアスパラギン酸に代えてアラニン;380位におけるグルタミン酸に代えてアラニン;382位におけるグルタミン酸に代えてアラニン;384位におけるアスパラギン又はセリンに代えてアラニン;385位におけるグリシンに代えてアスパラギン酸又はヒスチジン;386位におけるグルタミンに代えてプロリン;387位におけるプロリンに代えてグルタミン酸;389位におけるアスパラギンに代えてアラニン又はセリン;424位におけるセリンに代えてアラニン;428位におけるメチオニンに代えてアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、又はチロシン;433位におけるヒスチジンに代えてリジン;434位におけるアスパラギンに代えてアラニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、セリン、トリプトファン、又はチロシン;及び436位におけるチロシン又はフェニルアラニンに代えてヒスチジンからなる群から選択される。
【0138】
本明細書に記載の方法における使用のための好適な抗C5抗体は、一部の実施形態において、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び/又は配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。或いは、本明細書に記載の方法における使用のための抗C5抗体は、一部の実施形態において、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び/又は配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。
【0139】
一実施形態において、抗体は、pH7.4及び25℃において(そうでなければ生理学的条件下で)少なくとも0.1(例えば、少なくとも0.15、0.175、0.2、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875、0.9、0.925、0.95、又は0.975)nMの親和性解離定数(K)でC5に結合する。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片のKは、1nM以下(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、又は0.2nM以下)である。
【0140】
他の実施形態において、[(pH6.0、CにおけるC5に対する抗体のK)/(pH7.4、25℃におけるC5に対する抗体のK)]は、21超(例えば、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、又は8000超)である。
【0141】
抗体がタンパク質抗原に結合するか否か及び/又はタンパク質抗原に対する抗体についての親和性を決定する方法は、当技術分野で公知である。例えば、抗体のタンパク質抗原への結合は、種々の技術、例えば、限定されるものではないが、ウェスタンブロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴(SPR)法(例えば、BIAcoreシステム;Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,N.J.)、又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して検出及び/又は定量化することができる。例えば、Benny K.C.Lo(2004)“Antibody Engineering:Methods and Protocols,”Humana Press(ISBN:1588290921);Johne et al.(1993)J Immunol Meth 160:191-198;Jonsson et al.(1993)Ann Biol Clin 51:19-26;及びJonsson et al.(1991)Biotechniques 11:620-627参照。さらに、親和性(例えば、解離及び会合定数)を測定する方法は実施例に示される。
【0142】
本明細書において使用される場合、用語「k」は、抗原への抗体の会合についての速度定数を指す。用語「k」は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についての速度定数を指す。そして、用語「K」は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。平衡解離定数は、速度論的速度定数の比K=k/kから推定される。このような決定は好ましくは、25℃又は37℃において測定される(実施例参照)。例えば、ヒトC5への抗体結合のキネティクスは、抗体を固定化するための抗Fc捕捉方法を使用してBIAcore3000機器での表面プラズモン共鳴(SPR)を介してpH8.0、7.4、7.0、6.5及び6.0において決定することができる。
【0143】
一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、C5タンパク質(例えば、ヒトC5タンパク質)のC5a及び/又はC5b活性断片の生成又は活性を遮断する。この遮断効果を介して、抗体は、例えば、C5aの炎症促進効果及び細胞の表面におけるC5b-9膜侵襲複合体(MAC)の生成を阻害する。
【0144】
本明細書に記載の特定の抗体又は治療剤がC5開裂を阻害するか否かを決定する方法は、当技術分野で公知である。ヒト補体成分C5の阻害は、対象の体液中の補体の細胞溶解能を低減し得る。体液中に存在する補体の細胞溶解能のそのような低減は、当技術分野で周知の方法により、例えば、慣用の溶血アッセイなど、例えば、Kabat and Mayer(eds.),“Experimental Immunochemistry,2ndEdition,”135-240,Springfield,IL,CC Thomas(1961),pages 135-139により記載されている溶血アッセイ、又はそのアッセイの慣用の変法、例えば、Hillmen et al.(2004)N Engl J Med 350(6):552に記載のニワトリ赤血球溶血法により測定することができる。候補化合物がヒトC5の形態C5a及びC5bへの開裂を阻害するか否かを決定する方法は、当技術分野で公知であり、Evans et al.(1995)Mol Immunol 32(16):1183-95に記載されている。例えば、体液中のC5a及びC5bの濃度及び/又は生理学的活性は、当技術分野で周知の方法により測定することができる。C5bについては、本明細書に考察される溶血アッセイ又は可溶性C5b-9についてのアッセイを使用することができる。当技術分野で知られている他のアッセイを使用することもできる。これらの又は他の好適なタイプのアッセイを使用して、ヒト補体成分C5を阻害し得る候補剤をスクリーニングすることができる。
【0145】
免疫学的技術、例えば、限定されるものではないが、ELISAを使用してC5及び/又はその分割産物のタンパク質濃度を測定して抗C5抗体、又はその抗原結合断片がC5の生物学的に活性な生成物への変換を阻害する能力を決定することができる。一部の実施形態において、C5aの生成を測定する。一部の実施形態において、C5b-9ネオエピトープ特異的抗体を使用して終末補体の形成を検出する。
【0146】
溶血アッセイを使用して補体活性化に対する抗C5抗体、又はその抗原結合断片の阻害活性を決定することができる。インビトロで血清検査溶液において古典的補体経路媒介溶血に対する抗C5抗体、又はその抗原結合断片の効果を決定するため、例えば、溶血素で被覆されたヒツジ赤血球又は抗ニワトリ赤血球抗体で感作されたニワトリ赤血球を標的細胞として使用する。溶解の割合は、阻害剤の不存在下で生じる溶解に等しい100%の溶解を考慮することにより正規化する。一部の実施形態において、古典的補体経路は、例えば、Wieslab(登録商標)Classical Pathway Complement Kit(Wieslab(登録商標)COMPL CP310,Euro-Diagnostica,Sweden)において利用されるように、ヒトIgM抗体により活性化される。簡潔に述べると、検査血清をヒトIgM抗体の存在下で抗C5抗体、又はその抗原結合断片とインキュベートする。生成されるC5b-9の量は、混合物を酵素コンジュゲート抗C5b-9抗体及び蛍光性基質と接触させ、適切な波長において吸光度を測定することにより測定する。対照として、検査血清を抗C5抗体、又はその抗原結合断片の不存在下でインキュベートする。一部の実施形態において、検査血清は、C5ポリペプチドで再構成されたC5欠損血清である。
【0147】
副経路媒介溶血に対する抗C5抗体、又はその抗原結合断片の効果を決定するため、未感作ウサギ又はモルモット赤血球を標的細胞として使用することができる。一部の実施形態において、血清検査溶液は、C5ポリペプチドで再構成されたC5欠損血清である。溶解の割合は、阻害剤の不存在下で生じる溶解に等しい100%の溶解を考慮することにより正規化する。一部の実施形態において、代替補体経路は、例えば、Wieslab(登録商標)Alternative Pathway Complement Kit(Wieslab(登録商標)COMPL AP330,Euro-Diagnostica,Sweden)において利用されるように、リポ多糖分子により活性化される。簡潔に述べると、検査血清をリポ多糖の存在下で抗C5抗体、又はその抗原結合断片とインキュベートする。生成されるC5b-9の量は、混合物を酵素コンジュゲート抗C5b-9抗体及び蛍光性基質と接触させ、適切な波長において蛍光度を測定することにより測定する。対照として、検査血清を抗C5抗体、又はその抗原結合断片の不存在下でインキュベートする。
【0148】
一部の実施形態において、C5活性、又はその阻害は、CH50eqアッセイを使用して定量化する。CH50eqアッセイは、血清における総古典的補体活性を測定する方法である。この検査は、古典的補体経路の活性化因子としての抗体感作赤血球及び検査血清の種々の希釈物を使用して50%溶解を得るために要求される量(CH50)を決定する溶解アッセイである。溶血率は、例えば、分光光度計を使用して決定することができる。CH50eqアッセイは、終末補体複合体(TCC)形成の間接的尺度を提供するが、それはTCC自体が、測定される溶血を直接担うためである。
【0149】
このアッセイは周知であり、当業者により一般的に実施される。簡潔に述べると、古典的補体経路を活性化させるため、非希釈血清サンプル(例えば、再構成されたヒト血清サンプル)を、抗体感作赤血球を含有するマイクロアッセイウェルに添加し、それによりTCCを生成する。次に、活性化された血清を、捕捉試薬(例えば、TCCの1つ以上の成分に結合する抗体)で被覆されたマイクロアッセイウェル中で希釈する。活性化されたサンプル中に存在するTCCは、マイクロアッセイウェルの表面を被覆するモノクローナル抗体に結合する。ウェルを洗浄し、各ウェルに、検出可能に標識され、結合したTCCを認識する検出試薬を添加する。検出可能な標識は、例えば、蛍光標識又は酵素標識であり得る。アッセイ結果は、1ミリリットル当たりのCH50単位当量(CH50U Eq/mL)で表現する。
【0150】
阻害としては、例えば、終末補体活性に関する場合、同様の条件下で等モル濃度において対照抗体(又はその抗原結合断片)の効果と比較して、例えば、溶血アッセイ又はCH50eqアッセイにおいて終末補体の活性の少なくとも5(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60)%の減少が挙げられる。有意な阻害は、本明細書において使用される場合、少なくとも40(例えば、少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、若しくは95又はそれを超える)%の所与の活性(例えば、終末補体活性)の阻害を指す。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、SOLIRIS(登録商標)のCDR(すなわち、配列番号1~6)に対して1つ以上のアミノ酸置換を含有し、溶血アッセイ又はCH50eqアッセイにおいてSOLIRIS(登録商標)の補体阻害活性の少なくとも30(例えば、少なくとも31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95)%を依然として保持する。
【0151】
一実施形態において、抗体は、本明細書に記載の抗体と同じC5上のエピトープとの結合について競合し、及び/又はそれに結合する。2つ以上の抗体に関する用語「同じエピトープに結合する」は、抗体が、所与の方法により決定してアミノ酸残基の同じセグメントに結合することを意味する。抗体が本明細書に記載の抗体と「同じC5上のエピトープ」に結合するか否かを決定するための技術としては、例えば、エピトープマッピング法、例えば、エピトープの原子分解能を提供する抗原:抗体複合体の結晶のX線分析及び水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)が挙げられる。他の方法は、抗原のペプチド抗原断片又は突然変異バリエーションへの抗体の結合をモニタリングし、その場合、抗原配列内のアミノ酸残基の改変に起因する結合の損失がエピトープ成分の指標とみなされることが多い。さらに、エピトープマッピングのためのコンビナトリアル計算法を使用することもできる。これらの方法は、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから特異的な短いペプチドを親和性単離する目的抗体の能力に依存する。同じVH及びVL又は同じCDR1、2及び3配列を有する抗体は、同じエピトープに結合することが予測される。
【0152】
「標的への結合について別の抗体と競合する」抗体は、標的への他の抗体の結合を(部分的又は完全に)阻害する抗体を指す。2つの抗体が標的への結合について互いに競合するか否か、すなわち、一方の抗体が他方の抗体の標的への結合を阻害するか否か及びその程度は、公知の競合実験を使用して決定することができる。ある実施形態において、抗体は、別の抗体と競合し、標的への別の抗体の結合を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%だけ阻害する。阻害又は競合のレベルは、どの抗体が「遮断抗体」(すなわち、標的と最初にインキュベートされるコールド抗体)であるかに応じて異なり得る。競合する抗体は、同じエピトープ、重複エピトープ、又は隣接エピトープに結合する(例えば、立体障害により証明される)。
【0153】
本明細書に記載の方法において使用される本明細書に記載の抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、種々の当技術分野で認識されている技術を使用して生成することができる。モノクローナル抗体は、当業者が精通する種々の技術により得ることができる。簡潔に述べると、所望の抗原で免疫された動物からの脾細胞を、一般に骨髄腫細胞との融合により不死化させる(Kohler & Milstein,Eur.J.Immunol.6:511-519(1976)参照)。不死化の代替的方法としては、エプスタインバールウイルス、癌遺伝子、若しくはレトロウイルスを用いる形質転換、又は当技術分野で周知の他の方法が挙げられる。単一不死化細胞から生じたコロニーを、抗原に対する所望の特異性及び親和性の抗体の産生についてスクリーニングし、そのような細胞により産生されたモノクローナル抗体の収率は、種々の技術、例として、脊椎動物宿主の腹腔中への注射により向上させることができる。或いは、Huse,et al.,Science 246:1275-1281(1989)により概説されている一般的なプロトコルに従ってヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることによりモノクローナル抗体、又はその結合断片をコードするDNA配列を単離することができる。
【0154】
IV.組成物
組成物は、例えば、補体関連障害の処置又は予防のための対象への投与のための医薬溶液として配合することができる。医薬組成物は一般に、薬学的に許容可能な担体を含む。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」は、生理学的に適合性の任意の及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張化及び吸収遅延剤などを指し、それらを含む。組成物は、薬学的に許容可能な塩、例えば、酸付加塩若しくは塩基付加塩、糖、炭水化物、ポリオール及び/又は張力改変剤を含み得る。
【0155】
組成物は、標準的方法に従って配合することができる。医薬配合は、確立された技術である(例えば、Gennaro(2000)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”20thEdition,Lippincott,Williams & Wilkins(ISBN:0683306472);Ansel et al.(1999)“Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,”7thEdition,Lippincott Williams & Wilkins Publishers(ISBN:0683305727);及びKibbe(2000)“Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association,”3rdEdition(ISBN:091733096X)参照)。一部の実施形態において、組成物は、例えば、好適な濃度の2~8C(例えば、4C)における貯蔵に好適な緩衝溶液として配合することができる。一部の実施形態において、組成物は、0C未満の温度(例えば、-20C又は-80C)における貯蔵のために配合することができる。一部の実施形態において、組成物は、2~8C(例えば、4C)における最大で2年(例えば、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、1年半又は2年)間の貯蔵のために配合することができる。したがって、一部の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、2~8C(例えば、4C)における少なくとも1年間の貯蔵において安定である。
【0156】
医薬組成物は、種々の形態であり得る。これらの形態としては、例えば、液体、半固体及び固体剤形、例えば、液剤(例えば、注射及び注入液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム及び坐剤が挙げられる。好ましい形態は、部分的に、意図される投与方式及び治療用途に依存する。例えば、全身又は局所送達が意図された組成物を含有する組成物は、注射又は注入液の形態であり得る。したがって、組成物は、非経口方式(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内注射)による投与のために配合することができる。「非経口投与」、「非経口投与する」、及び他の文法的に同等の語句は、本明細書において使用される場合、通常は注射による、腸内及び外用投与以外の投与方式を指し、それとしては、限定されるものではないが、静脈内、鼻腔内、眼内、肺、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、肺内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内及び胸骨内注射及び注入が挙げられる。
【0157】
V.方法
本明細書において、抗C5抗体療法に対して不適切な応答を事前に示した対象に治療有効量のAPの阻害剤を投与することにより、その対象におけるPNHを処置する方法が提供される。一部の実施形態において、APの阻害剤は、C5の上流の標的、例えば、D因子又は補体第3成分(C3)を阻害するものである。
【0158】
一部の実施形態において、処置は、対象における以下のもの:(a)持続性血管外溶血(EVH);(b)貧血;及び/若しくは(c)輸血依存性の1つ以上の低減;並びに/又はFACIT疲労スケールスコアの改善をもたらす。一部の実施形態において、不適切に応答するPNH対象におけるMAC媒介血管内溶血のコントロールは、処置後に維持又は改善される。
【0159】
一部の実施形態において、抗C5抗体療法に対する不適切な応答は、薬物動態学的(PK)観点、例えば、(a)対象におけるC5開裂の阻害の無効;(b)低用量及び/若しくは低対象血漿レベルの抗C5抗体;(c)対象における抗C5抗体のクリアランスの向上;並びに/又は(d)抗C5抗体投薬の低下をもたらす対象における抗C5抗体不耐であって、好ましくは、疲労及び注入後疼痛を含む抗C5抗体不耐に関連する。一部の実施形態において、抗C5抗体療法に対する不適切な応答は、薬力学的(PD)観点、例えば、(a)CR1多型;(b)血管外溶血(EVH)、例えば、血管内溶血(IVH)を生存する血球のオプソニン化を介するもの;及び/又は(c)C3断片による抗C5抗体活性の効果の損害に関連する。一部の実施形態において、一部の実施形態において、抗C5抗体療法に対する不適切な応答は、1つ以上のPK及びPD観点に関連する。
【0160】
本明細書において、ヒト患者におけるPNHを処置する方法であって、患者にCFD阻害剤を単独で又は抗C5抗体、若しくはその抗原結合断片との組み合わせで投与することを含む方法も提供される。一部の実施形態において、CFD阻害剤及び/又は抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、特定の臨床投与量レジメンに従って(例えば、特定の用量において、規定の投薬スケジュールに従って)投与する(又はそれに従う投与のためのものである)。
【0161】
一実施形態において、対象におけるPNHを処置する方法であって、対象に治療有効量の補体D因子(CFD)阻害剤を治療有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片との組み合わせで投与することを含み、
対象は、CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性;及び/又は
(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0162】
別の実施形態において、抗C5抗体療法に対して不適切な応答を事前に示した対象におけるPNHを処置する方法であって、
対象に治療有効量の補体D因子(CFD)阻害剤を投与すること
を含み、
対象による不適切な応答は、輸血依存性及び/又は貧血であり;
対象は、CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(d)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(e)輸血非依存性若しくは輸血回避;及び/又は
(f)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0163】
別の実施形態において、抗C5抗体療法に対して不適切な応答を事前に示した対象におけるPNHを処置する方法であって、
対象に治療有効量の補体D因子(CFD)阻害剤を、治療有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片との組み合わせで投与すること
を含み、
対象による不適切な応答は、輸血依存性及び/又は貧血であり;
対象は、CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性若しくは輸血回避;及び/又は
(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0164】
一部の実施形態において、方法は、ベースライン並びに処置の12及び/又は24週間後における対象のヘモグロビンレベル、輸血状態、及び/又はFACIT疲労スケールスコアを決定することをさらに含み、(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;(b)輸血非依存性若しくは輸血回避;及び/又は(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加が処置の指標である。一部の実施形態において、方法は、抗C5抗体療法(例えば、SOLIRIS(登録商標)、ULTOMIRIS(登録商標)、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体、又はREGN3918抗体)に対して不適切な応答を事前に示したPNHを有する対象を処置することを含む。一部の実施形態において、PNHを有する対象は、SOLIRIS(登録商標)に対して不適切な応答を事前に示した。一部の実施形態において、PNHを有する対象は、≧24週間(例えば、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40週間以上)の承認用量以上における、≦8週間のレジメンの変更なしのSOLIRIS(登録商標)に対して不適切な応答を事前に示した。一部の実施形態において、PNHを有する対象は、ULTOMIRIS(登録商標)に対して不適切な応答を事前に示した。
【0165】
一部の実施形態において、対象による不適切な応答は、輸血依存性(例えば、スクリーニングの≦12週間前の≧1回の赤血球(RBC)輸血)であった。一部の実施形態において、対象による不適切な応答は、貧血(例えば、ヘモグロビン<10g/dl)であった。一部の実施形態において、対象による不適切な応答は、輸血依存性及び貧血であった。
【0166】
一部の実施形態において、方法は、ベースライン並びに処置の12及び/又は24週間後における対象のヘモグロビンレベル、輸血状態、及び/又はFACIT疲労スケールスコアを決定することをさらに含み、
(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性若しくは輸血回避及び/又は
(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加が、処置の指標である。
【0167】
一部の実施形態において、CFD阻害剤(例えば、ダニコパン)は、特定の臨床投与量レジメンに従って(例えば、特定の用量において、規定の投薬スケジュールに従って)投与する(又はそれに従う投与のためのものである)。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、対象に経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、対象に1日3回(TID)経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、対象に約50mg~300mgの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、又は300mgの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約100mgの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約100mg TIDの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約150mgの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約150mg TIDの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約200mgの用量において経口投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、約200mg TIDの用量において経口投与する。
【0168】
一部の実施形態において、CFD阻害剤は、4週間以上(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60週間以上)投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、24週間投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、9か月、12か月、15か月、20か月、24か月以上投与する。一部の実施形態において、CFD阻害剤は、1、2、3、4、5、6年以上投与する。
【0169】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、SOLIRIS(登録商標)又はULTOMIRIS(登録商標))は、特定の臨床投与量レジメンに従って(例えば、特定の用量において、規定の投薬スケジュールに従って)投与する(又はそれに従う投与のためのものである)。抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、患者に任意の好適な手段により投与することができる。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、対象に静脈内投与する。
【0170】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の用量は、固定用量である。例えば、一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、対象に毎週600mgの用量において投与する。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、対象に2週間ごとに900mgの用量において投与する。
【0171】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、対象に4回の用量で毎週600mgの用量において、次いで5週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において投与する。一部の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)は、対象(例えば、成人対象)に4回の用量で毎週600mgの用量において、次いで5週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において投与する。
【0172】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、18歳未満の対象に40kg以上の体重の対象に4回の用量で毎週900mgの用量において、次いで5週目に1200mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに1200mgの用量において投与する。一部の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)は、18歳未満の対象に40kg以上の体重の対象に4回の用量で毎週900mgの用量において、次いで5週目に1200mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに1200mgの用量において投与する。
【0173】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、18歳未満の対象に30kg~40kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において投与する。一部の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)は、18歳未満の対象に30kg~40kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において投与する。
【0174】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、18歳未満の対象に20kg~30kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に600mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに600mgの用量において投与する。一部の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)は、18歳未満の対象に20kg~30kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に600mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに600mgの用量において投与する。
【0175】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、18歳未満の対象に10kg~20kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に300mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに300mgの用量において投与する。一部の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)は、18歳未満の対象に10kg~20kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に300mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに300mgの用量において投与する。
【0176】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、18歳未満の対象に5kg~10kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週300mgの用量において、次いで2週目に300mgの用量において、次いでそれ以降3週間ごとに300mgの用量において投与する。一部の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)は、18歳未満の対象に5kg~10kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週300mgの用量において、次いで2週目に300mgの用量において、次いでそれ以降3週間ごとに300mgの用量において投与する。
【0177】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の用量は、患者の体重に基づく。一部の実施形態において、例えば、300mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧5~<10kgの体重の患者に投与する。一部の実施形態において、600mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧10~<20kgの体重の患者に投与する。一部の実施形態において、900mg又は2100mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧20~<30kgの体重の患者に投与する。一部の実施形態において、1200mg又は2700mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧30~<40kgの体重の患者に投与する。一部の実施形態において、2400mg又は3000mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧40~<60kgの体重の患者に投与する。一部の実施形態において、2700mg又は3300mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧60~<100kgの体重の患者に投与する。一部の実施形態において、3000mg又は3600mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧100kgの体重の患者に投与する。ある実施形態において、投与量レジメンは、最適所望応答(例えば、有効応答)を提供するように調整する。
【0178】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、
(a)投与サイクルの1日目に1回;≧40~<60kgの体重の患者に2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に2700mg、又は≧100kgの体重の患者に3000mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに≧40~<60kgの体重の患者に3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に3300mg、又は≧100kgの体重の患者に3600mgの用量において
投与する。
【0179】
一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、
(a)投与サイクルの1日目に1回:≧40~<60kgの体重の患者に2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に2700mg、又は≧100kgの体重の患者に3000mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに≧40~<60kgの体重の患者に3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に3300mg、又は≧100kgの体重の患者に3600mgの用量において
投与する。
【0180】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧40~<60kgの体重の患者に:
(a)投与サイクルの1日目に1回2400mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに3000mgの用量において
投与する。
【0181】
一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧40~<60kgの体重の患者に:
(a)投与サイクルの1日目に1回2400mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに3000mgの用量において
投与する。
【0182】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧60~<100kgの体重の患者に:
(a)投与サイクルの1日目に1回2700mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに3300mgの用量において
投与する。
【0183】
一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧60~<100kgの体重の患者に:
(a)投与サイクルの1日目に1回2700mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに3300mgの用量において
投与する。
【0184】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧100kgの体重の患者に:
(a)投与サイクルの1日目に1回3000mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに3600mgの用量において
投与する。
【0185】
一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧100kgの体重の患者に:
(a)投与サイクルの1日目に1回3000mgの用量において;
(b)投与サイクルの15日目及びそれ以降8週間ごとに3600mgの用量において
投与する。
【0186】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、18歳未満の対象に:
(a)1日目に1回、≧5~<10kgの体重の患者に600mg、≧10~<20kgの体重の患者に600mg、≧20~<30kgの体重の患者に900mg、≧30~<40kgの体重の患者に1200mg、≧40~<60kgの体重の患者に2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に2700mg、又は≧100kgの体重の患者に3000mgの用量において;
(b)15日目及びそれ以降4週間ごとに≧5~<10kgの体重の患者に300mg若しくは≧10~<20kgの体重の患者に600mgの用量において;又は15日目及びそれ以降8週間ごとに≧20~<30kgの体重の患者に2100mg、≧30~<40kgの体重の患者に2700mg、≧40~<60kgの体重の患者に3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に3300mg、若しくは≧100kgの体重の患者に3600mgの用量において
投与する。
【0187】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧5~<10kgの体重の患者に:(a)1日目に1回600mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降4週間ごとに300mgの用量において投与する。一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧5~<10kgの体重の患者に:(a)1日目に1回600mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降4週間ごとに300mgの用量において投与する。
【0188】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧10~<20kgの体重の患者に:(a)1日目に1回600mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降4週間ごとに600mgの用量において投与する。一部の実施形態において、抗C5抗体は、≧10~<20kgの体重の患者に:(a)1日目に1回600mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降4週間ごとに600mgの用量において投与する。
【0189】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧20~<30kgの体重の患者に:(a)1日目に1回900mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに2100mgの用量において投与する。一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧20~<30kgの体重の患者に:(a)1日目に1回900mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに2100mgの用量において投与する。
【0190】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧30~<40kgの体重の患者に:(a)1日目に1回1200mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに2700mgの用量において投与する。一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧30~<40kgの体重の患者に:(a)1日目に1回1200mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに2700mgの用量において投与する。
【0191】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧40~<60kgの体重の患者に:(a)1日目に1回2400mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに3000mgの用量において投与する。一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧40~<60kgの体重の患者に:(a)1日目に1回2400mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに3000mgの用量において投与する。
【0192】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧60~<100kgの体重の患者に:(a)1日目に1回2700mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに3300mgの用量において投与する。一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧60~<100kgの体重の患者に:(a)1日目に1回2700mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに3300mg用量において投与する。
【0193】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、≧100kgの体重の患者に:(a)1日目に1回3000mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに3600mgの用量において投与する。一部の実施形態において、ULTOMIRIS(登録商標)は、≧100kgの体重の患者に:(a)1日目に1回3000mgの用量において;(b)15日目及びそれ以降8週間ごとに3600mgの用量において投与する。
【0194】
別の態様において、記載される処置レジメンは、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の特定の血清トラフ濃度を維持するために十分なものである。一実施形態において、例えば、処置レジメンは、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、200、205、210、215、220、225、230、240、245、250、255、260、265、270、280、290、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395又は400μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。一部の実施形態において、処置レジメンは、100μg/mL以上、150μg/mL以上、200μg/mL以上、250μg/mL以上、又は300μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。一部の実施形態において、処置は、100μg/mL~200μg/mLの抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。一部の実施形態において、処置は、約175μg/mLの抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。
【0195】
一部の実施形態において、有効な応答を得るため、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、患者の血液1ミリリットル当たり少なくとも50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg又は260μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。一部の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり50μg~250μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。一部の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり100μg~200μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。一部の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり約175μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。
【0196】
一実施形態において、SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)での事前の処置に対して不適切な応答を有した対象におけるPNHのための方法であって、
対象に治療有効量のダニコパンを治療有効量のSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)との組み合わせで投与すること
を含み、
対象による不適切な応答は、輸血依存性及び/又は貧血であり;
ダニコパンを対象に100mg、150mg、又は200mg TIDの用量において対象に経口投与し;
SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)を対象に4回の用量で毎週600mgの用量において、次いで5週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において静脈内投与し;
対象は、CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性若しくは輸血回避;及び/又は
(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0197】
別の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)での事前の処置に対して不適切な応答を有した対象におけるPNHを処置する方法であって、対象に治療有効量のダニコパンを治療有効量のSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)との組み合わせで投与することを含み、
対象による不適切な応答は、輸血依存性及び/又は貧血であり;
ダニコパンを対象に100mg、150mg、又は200mg TIDの用量において対象に経口投与し;
SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)を18歳未満の対象に:
(a)40kg以上の体重の対象に4回の用量で毎週900mgの用量において、次いで5週目に1200mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに1200mgの用量において;
(b)30kg~40kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において;
(c)20kg~30kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に600mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに600mgの用量において;
(d)10kg~20kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に300mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに300mgの用量において;又は
(e)5kg~10kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週300mgの用量において、次いで2週目に300mgの用量において、次いでそれ以降3週間ごとに300mgの用量において
静脈内投与し;
対象は、CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
iv.対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
v.輸血非依存性若しくは輸血回避;及び/又は
vi.対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0198】
別の実施形態において、対象におけるPNHを処置する方法であって、
対象に治療有効量のダニコパンを治療有効量のSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)との組み合わせで投与すること
を含み、
ダニコパンを対象に100mg、150mg、又は200mg TIDの用量において対象に経口投与し;
SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)を対象に4回の用量で毎週600mgの用量において、次いで5週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において静脈内投与し;
対象は、CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
(b)輸血非依存性若しくは輸血回避;及び/又は
(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0199】
別の実施形態において、18歳未満の対象におけるPNHを処置する方法であって、対象に治療有効量のダニコパンを治療有効量のSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)との組み合わせで投与することを含み、
ダニコパンを対象に100mg、150mg、又は200mg TIDの用量において対象に経口投与し;
SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)を:
(a)40kg以上の体重の対象に4回の用量で毎週900mgの用量において、次いで5週目に1200mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに1200mgの用量において;
(b)30kg~40kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において;
(c)20kg~30kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に600mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに600mgの用量において;
(d)10kg~20kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に300mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに300mgの用量において;又は
(e)5kg~10kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週300mgの用量において、次いで2週目に300mgの用量において、次いでそれ以降3週間ごとに300mgの用量において
静脈内投与し;
対象は、CFD阻害剤での処置の12及び/又は24週間後に以下の臨床的改善の1つ以上:
i.対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;
ii.輸血非依存性若しくは輸血回避;及び/又は
iii.対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加
を示す方法が提供される。
【0200】
一部の実施形態において、本明細書に記載の方法は、ベースライン並びに処置の12及び/又は24週間後における対象のヘモグロビンレベル、輸血状態、及び/又はFACIT疲労スケールスコアを決定することをさらに含み、(a)対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加;(b)輸血非依存性若しくは輸血回避;及び/又は(c)対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加が処置の指標である。
【0201】
VI.アウトカム
本明細書において、患者におけるPNHを処置する方法が提供される。PNHの症状としては、限定されるものではないが、蒼白、疲労(例えば、疲労感、日常活動の実行困難、集中力散漫、眩暈、衰弱)、疼痛(例えば、胃痛、下肢の疼痛又は腫れ、胸痛、背部痛)、暗色尿、息切れ、嚥下困難、皮膚及び/又は眼の黄変、貧血、血球減少症、勃起不全、凝血塊、腎疾患、臓器損傷、卒中又は心臓発作が挙げられる。
【0202】
本明細書に開示される方法に従って処置される患者は、PNHの少なくとも1つの徴候の改善を経験する。処置は、例えば、蒼白、疲労、黄疸、貧血、血球減少症、腹痛、呼吸困難、嚥下障害、胸痛又は勃起不全の低減又は停止からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果を生じさせ得る。
【0203】
一部の実施形態において、対象は、本明細書に記載の方法に従って処置された後に1つ以上の他の臨床的改善を示す。例えば、一実施形態において、対象は、処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加を示す。一部の実施形態において、対象は、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加を示す。一部の実施形態において、対象は、24週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dL以上のヘモグロビン増加を示す。
【0204】
一部の実施形態において、対象は、処置後に輸血非依存性を示す。一部の実施形態において、対象は、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後に輸血非依存性を示す。一部の実施形態において、対象は、24週間の処置後に輸血非依存性を示す。一部の実施形態において、対象は、処置後に輸血回避を示す。一部の実施形態において、対象は、12週間の処置後に輸血回避を示す。
【0205】
一部の実施形態において、対象は、処置後に対象のベースラインFACIT疲労スケールスコアと比較して10ポイント以上、例えば、10、11、12のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。一部の実施形態において、対象は、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後に10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。一部の実施形態において、対象は、12及び/又は24週間の処置後に10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。
【0206】
一部の実施形態において、対象は、処置後(例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後)に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加及び輸血非依存性を示す。一部の実施形態において、対象は、12及び/又は24週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加及び輸血非依存性を示す。
【0207】
一部の実施形態において、対象は、処置後(例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後)に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。一部の実施形態において、対象は、12及び/又は24週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。
【0208】
一部の実施形態において、対象は、処置後(例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後)に輸血非依存性又は輸血回避及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。一部の実施形態において、対象は、12又は24週間の処置後に輸血非依存性又は輸血回避及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。
【0209】
一部の実施形態において、対象は、処置後(例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30週間の処置後)に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加、輸血非依存性又は輸血回避、及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。一部の実施形態において、対象は、12又は24週間の処置後に対象のベースラインヘモグロビンレベルと比較して2.0g/dLのヘモグロビン増加、輸血非依存性又は輸血回避、及び10ポイント以上のFACIT疲労スケールスコア増加を示す。
【0210】
一部の実施形態において、処置は、ビリルビンの正常レベル(例えば、約0.2~1.2mg/dL)に向かうシフトをもたらす。
【0211】
一部の実施形態において、処置は、ベースラインと比較して網状赤血球の低減(例えば、2、3、4又は5倍の低減)をもたらす。
【0212】
一部の実施形態において、処置は、ベースラインと比較してPNH特異的赤血球クローンサイズの増加(例えば、2、3、4、又は5倍の増加)をもたらす。
【0213】
一部の実施形態において、処置は、ベースラインと比較してC3断片でオプソニン化されたPNH赤血球の減少(例えば、2、3、4、又は5倍の低減)をもたらす。
【0214】
一部の実施形態において、処置は、ベースラインと比較して輸血の必要性の低減を生じさせる。
【0215】
一部の実施形態において、処置は、輸血回避を生じさせる。
【0216】
一部の実施形態において、処置は、終末補体阻害をもたらす。
【0217】
一部の実施形態において、処置は、遊離ヘモグロビン、ハプトグロビン、網状赤血球数、PNH赤血球(RBC)クローン及びD-ダイマーからなる群から選択される少なくとも1つ以上の溶血関連血液バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトを生じさせる。
【0218】
一部の実施形態において、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルを使用して治療法に対する応答性を評価することができる(例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルによりアセスメントされる溶血の低減は、PNHの少なくとも1つの徴候の改善の指標である)。LDHは、血管内溶血のマーカーである(Hill,A.et al.,Br.J.Haematol.,149:414-25,2010;Hillmen,P.et al.,N.Engl.J.Med.,350:552-9,2004;Parker,C.et al.,Blood,106:3699-709,2005)。赤血球は大量のLDHを含有し、無細胞ヘモグロビンとLDH濃度との相関がインビトロ(Van Lente,F.et al.,Clin.Chem.,27:1453-5,1981)及びインビボ(Kato,G.et al.,Blood,107:2279-85,2006)で報告されている。溶血の結果は貧血と無関係である(Hill,A.et al.,Haematologica,93(s1):359 Abs.0903,2008;Kanakura,Y.et al.,Int.J.Hematol.,93:36-46,2011)。ベースライン時及び次いで処置期間全体にわたり連続的に得られるLDH濃度は、溶血の重要な尺度である。無細胞血漿ヘモグロビンのベースラインレベルは、正常値上限の≧1.5倍超のLDH(LDH≧1.5×ULN)のPNHを有する患者において非常に上昇し、LDHと無細胞血漿ヘモグロビンとの間に有意な相関がある(Hillmen,P.et al.,N.Engl.J.Med.,355:1233-43,2006)。正常LDH値範囲は、105~333IU/L(1リットル当たりの国際単位)である。
【0219】
LDHレベルは、任意の好適な検査又はアッセイ、例えば、Ferri FF,ed.Ferri’s Clinical Advisor 2014.Philadelphia:Pa:Elsevier Mosby;2014:Section IV-Laboratory tests and interpretation of resultsにより記載されているものを使用して測定することができる。LDH濃度は、患者から得られた種々のサンプル、特に血清サンプル中で測定することができる。本明細書において使用される場合、用語「サンプル」は、対象からの生物学的材料を指す。血清LDH濃度を対象とするが、サンプルは、他の資源、例として、例えば、単一細胞、複数の細胞、組織、腫瘍、体液、生物学的分子又は上記のもののいずれかの上清若しくは抽出物に由来し得る。例としては、生検のために取り出された組織、切除の間に取り出された組織、血液、尿、リンパ組織、リンパ液、脳脊髄液、粘膜及び糞便サンプルが挙げられる。使用されるサンプルは、アッセイフォーマット、検出方法及びアッセイすべき腫瘍、組織、細胞又は抽出物の性質に基づき変動し得る。サンプルを調製する方法は当技術分野において公知であり、利用される方法と適合性のサンプルを得るように容易に適合させることができる。
【0220】
一部の実施形態において、開示される方法に従って処置される患者は、ほぼ正常レベルへの、又は正常レベルとみなされるものの10%、20%、30%、40%内若しくは50%未満内(例えば、105~333IU/L(1リットル当たりの国際単位)内)へのLDHレベルの低減を経験する。一部の実施形態において、患者のLDHレベルは、処置の維持期間全体にわたり正常化される。一部の実施形態において、処置された患者のLDHレベルは、処置の維持期間中の時間の少なくとも少なくとも95%正常化される。一部の実施形態において、処置された患者のLDHレベルは、処置の維持期間中の時間の少なくとも少なくとも90%、85%又は80%正常化される。一部の実施形態において、患者のLDHレベルは、処置開始前に正常値上限の≧1.5倍超(LDH≧1.5×ULN)である。
【0221】
一部の実施形態において、処置は、主要血管性有害事象(MAVE;例えば、血栓性静脈炎/深部静脈血栓症、肺動脈塞栓、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、不安定狭心症、腎静脈血栓症/腎動脈血栓症/糸球体血栓症、腎梗塞、急性末梢血管閉塞、腸間膜/内臓静脈/動脈血栓症若しくは梗塞、肝臓/門脈血栓症、脳動脈閉塞/脳血管発作、脳静脈閉塞、腎動脈血栓症、又は多発梗塞性認知症)の低減を生じさせる。
【0222】
一部の実施形態において、処置は、推算糸球体濾過量(eGFR)及びスポット尿:アルブミン:クレアチニン並びに血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)からなる群から選択される慢性疾患関連バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトを生じさせる。
【0223】
一部の実施形態において、処置は、ベースラインと比較してバージョン4及びEuropean Organisation for Research and Treatment of Cancer,Quality of Life Questionnaire-Core 30スケールを介してアセスメントされる生活の質のベースラインからの変化を生じさせる。
【0224】
VII.キット
本明細書において、PNHを処置するためのキットも提供される。キットは、任意選択で、実施者(例えば、医師、看護師、又は患者)がそれに含有される組成物を投与してPNHを有する患者に組成物を投与することを可能とするための、例えば、投与スケジュールを含む指示書も含み得る。キットは、シリンジも含み得る。
【0225】
任意選択で、キットは、上記に提供される方法に従う投与のための有効量のCFD阻害剤及び/又は抗C5抗体を各々含有する単一用量医薬組成物の複数のパッケージを含む。医薬組成物の投与に必要な指示書又はデバイスをキット中に含めることもできる。例えば、キットは、有効量のCFD阻害剤及び/又は抗C5抗体を含有する1つ以上のプレフィルドシリンジを提供し得る。
【0226】
一部の実施形態において、キットは、(a)ある用量の補体D因子(CFD)阻害剤及び(b)本明細書に記載の方法のいずれかにおけるCFDの使用のための指示書を含む。一部の実施形態において、キットは、(a)ある用量の補体D因子(CFD)阻害剤、(b)ある用量の抗C5抗体;並びに(c)本明細書に記載の方法のいずれかにおけるCFD及び抗C5抗体の使用のための指示書を含む。一部の実施形態において、CFDは、ダニコパンである。一部の実施形態において、抗C5抗体は、エクリズマブ(例えば、SOLIRIS(登録商標))又はラブリズマブ(例えば、ULTOMIRIS(登録商標))である。
【0227】
以下の実施例は単なる例示であり、多くの変法及び均等物が本開示の精読時に当業者に明らかになるため、本開示の範囲をいかなる形でも限定するものと解釈すべきでない。本出願全体にわたり引用される全ての刊行物、Genbankエントリ、特許及び公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例
【0228】
実施例1:SOLIRIS(登録商標)単剤療法に対して不適切な応答を有する発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を有する患者におけるダニコパン(ACH4471)の第2相非盲検試験
第2相臨床試験を、SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)単剤療法に対して不適切な応答を有したPNH患者において2018年6月から2019年9月まで実施した。具体的には、試験の目的は、SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)に対して至適でない応答を有するPNH患者における輸血要求に対するD因子阻害剤ダニコパンの追加を評価することであった。
【0229】
A.方法
1.患者
SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)に対して至適でない応答(すなわち、ヘモグロビン[Hgb]<10g/dL及び輸血依存的[≦12週間のスクリーニングに≧1回のRBC輸血])を示した65歳までの12人の成人PNH患者は、図1に示されるとおり、それらの進行中のSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)レジメンの継続に加えて経口ダニコパン(ACH-4471;ACH-0144471)100~150mg、1日3回(TID)を受容し、応答に基づき200mg TIDに用量漸増した。主たる選択及び除外基準を表2に示す。
【0230】
【表2】
【0231】
具体的には、患者は、経口ダニコパンを100mg又は150mg1日3回の開始用量において受容し、毎日ほぼ同じ時間に及び可能な限り8時間空けて用量を服用するように指示された。全ての用量は、食事又は軽食完了のおよそ15~30分後に服用された。用量漸増は、最大で200mg1日3回までで安全性及びヘモグロビン値に基づき、12週目まで50mgの増分で4週間の間隔で許容された。患者が12週目までに200mg1日3回の最大用量に既に達していない場合、漸増は臨床的に必要である場合に許容された。患者は、それらの既存のSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)のレジメンを試験全体にわたり継続した。SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)から別のC5阻害剤への切り替えは、24週間の処置期間の間で許容されなかった。処置を完了し、臨床的利益を示した患者は長期継続投与期に参入した。
【0232】
2.評価項目
試験の主要目的は、処置24週目(TW)におけるベースラインに対するHgbの増加に基づきそれらの標準治療SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)に加えたダニコパンの有効性を評価することであった。副次目的は、ダニコパン処置前24週間と比較した24週間のダニコパンの間に輸血されるRBC単位の低減、並びに24週間のダニコパン処置の間のRBC輸血非依存性の患者の割合及びTW24における乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)のベースラインからの変化を含んだ。追加の評価項目は、補体バイオマーカーに対するダニコパンの効果及びFACIT疲労計測手段を用いてアセスメントされる疲労のアセスメントを含み、この計測手段上の総スコアは0~52の範囲であり、より高いスコアは改善を示す(例えば、Cella D,et al.,Cancer.2002;94(2):528-538参照)。ダニコパンの一般的安全性、忍容性、薬物動態及び薬力学を測定した。24週間の処置の完了後、患者は長期継続投与に参入した。
【0233】
3.薬物動態学的及び薬力学的方法
血漿ダニコパン濃度は、75μLの血漿アリコート(抗凝固剤としてK2EDTA)へのアセトニトリル中0.15%のギ酸の添加によるタンパク質沈殿とそれに続く定量のための重水素内部標準を使用するポジティブイオン化モードの液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析を用いて決定した。ダニコパン及び内部標準についてそれぞれ580.2から360.2amuへの及び587.2から362.2amuへのイオン転移がモニタリングされた。
【0234】
薬力学は、血清AP活性をAP溶血アッセイで測定することにより決定した。血清CP活性、血漿Bb濃度、血清FD、及びC3濃度もモニタリングした。補体検査は中央検査機関により市販のキットを使用して実施し、但しAP溶血アッセイは探索目的のために内部で実施した。各AP溶血ランにおいて、患者血清サンプルに加えて単一正常ヒト血清サンプルを含め、それで個々の患者の血清サンプルの溶血値を正常ヒト血清サンプルの溶血値に標準化することができた。最後に、PNHクローンサイズ及び赤血球上のC3断片沈着を、FITCコンジュゲート抗ヒトC3d抗体を用いるフローサイトメトリーを使用して測定した。
【0235】
4.統計的方法
生化学的検査値、生活の質の測定値、及び輸血データについて記述的統計を提供する。連続変数は、平均値、中央値、最小及び最大値でまとめる。カテゴリー変数、例えば、輸血非依存的変数は、カウント及び割合でまとめる。欠測値は補完しなかった。
【0236】
輸血頻度及び量は、年換算率及び単位を介してそれぞれ評価した。処置前の輸血頻度の平均集約率は、10人の患者からのスクリーニング前52週間とスクリーニングから投薬の1日目までの日の輸血事象の数を合計し、この和を患者の総曝露時間により割ることにより計算した。処置の24週間後の平均集約率は同じ方法で計算した。これら2つの集約率(後対前)の比を使用して処置効果を定量した。2つの集約率(処置後対処置前)を比較するための標準的な統計的分析を実施した。輸血される量の低減は、同じ手順を使用して輸血される年換算単位を介して評価した。
【0237】
B.結果
1.患者の特徴
12人の患者を登録し、患者らは少なくとも1回の用量のダニコパンを受容した。1人は、ダニコパンに関連する可能性は低いとみなされる基礎病態(肺高血圧/浮腫)の悪化の重篤な有害事象に起因して2回の投与後に中止した。この患者は既存の肺高血圧(両方の弁及びそれらのPNHの結果として)を有し、それらの心臓薬を試験薬物の開始の数日前に変更した。重篤な有害事象は試験薬物に関連する可能性は低いとみなし、患者のデータをこの分析から除外した。
【0238】
11人の患者は処置を完了した。処置レジメンを表3に提示する。結果を表4に提示する。年齢の中央値は42.5歳であり、投薬前の平均C5処置継続期間は36か月であった。全ての患者はSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)の安定レジメンを継続中であり、8人の患者は900mgの承認用量を14日ごとに静脈内で受容した。2人の患者は1200mgのSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)を継続中であり、1人の患者は14日ごとに1500mgを継続した。
【0239】
患者は、安定的なSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)療法にもかかわらず、参加時にわずかに上昇したLDHレベルを有した。患者は7.9mg/dL(SD±1.5g/dL)の平均Hgbで貧血であり、1人の患者以外は全てスクリーニング前24週間において平均3.4回の輸血(平均5.8単位)でRBC輸血歴を有した。輸血歴を有さない患者は宗教上の異議申立に起因して輸血を受けず;その女性患者は5.0g/dLのHgbのベースライン(患者A、表4)及び遺伝子的に確認された遺伝性楕円赤血球症の診断で開始した。
【0240】
【表3】
【0241】
【表4-1】
【0242】
【表4-2】
【0243】
【表4-3】
【0244】
2.試験の内訳
9人の患者はダニコパンを8時間ごとの100mgにおいて開始し、2人の患者は8時間ごとの150mgにおいて開始した。試験終了まで、100mgで開始した患者のうち、1人の患者は8時間ごとの200mgに増量し、6人の患者は8時間ごとの150mgに増量し、150mg患者の2人は8時間ごとの200mgに増量した。全ての患者は、それらのSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)レジメンを試験全体にわたり維持し、但しHgb改善に起因して16週目前に保険会社により(1200mgから900mgに)減少されたSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)用量を有した米国の1人の患者を除く。1人の患者は、上記のとおりダニコパンに関連する可能性は低い重篤な有害事象に起因して2回のダニコパン投与後に中止し、残りの11人の患者は処置時に主要評価項目に達し、最終分析に含めた。
【0245】
3.薬物動態
7週目の11人の患者についての集中的薬物動態サンプリング日の間、Cmax、Tmax及びAUC(0-8hr)についての定常状態におけるダニコパンの平均(%CV)値は、それぞれ432(37)ng/mL、2.14(33)hr及び1806(37)ng・hr/mLであった。平均(%CV)Ctrough値は、それらの集中的サンプリング日の間、105(57)ng/mLであった。それほどコントロールされない条件下での残りの試験継続期間にわたるトラフ時間におけるサンプリングは、150(59)ng/mLの平均(%CV)のCtrough値を生じさせた。これらの結果は、健常被験者試験において観察されたダニコパンの薬物動態値と一致する。
【0246】
4.臨床的有効性
表4に示されるPNHの複数の検査マーカーにおいて利益が観察された。24週間の処置において2.4g/dLのHgbの平均増加が存在した。ヘモグロビンに対するこの処置効果はほとんどの患者において2週目までに現れ、試験の継続期間維持された。
【0247】
ダニコパンを受容した患者において観察されたヘモグロビンの上昇に加えて、24週間の処置期間にわたるRBC輸血必要性の臨床的に有意義な低減が、図2に示されるとおり実証された。スクリーニング時までの52週間及びスクリーニングと投薬日(1日目)との間の輸血歴を有する10人の患者の間で57回の輸血、履歴データに基づき合計で101単位の濃厚赤血球(PRBC)が投与された。1人の患者(患者A)は宗教上の異議申立に起因していかなる輸血も拒絶したため、分析から除外したことに留意されたい。ダニコパンでの処置の開始以降、1人の患者のみが24週目まで合計で2単位の単一の輸血を受容し、それは試験責任者によりダニコパンに関連する可能性は低いとみなされた肺炎の入院中に投与された。輸血事象の年換算率の平均値は、ダニコパン前について5.234、ダニコパン後について0.217であり、比(ダニコパン後対ダニコパン前)は0.042(95%CI=0、0.176;p=0.0001)であり、ダニコパンによる輸血頻度の高度に統計的に有意な95.8%の低減を実証した(図3参照)。年換算輸血単位の平均値は、ダニコパン前について9.27、ダニコパン後について0.43であり、比(ダニコパン後対ダニコパン前)は0.047(95%CI=0、0.224、p=0.0019)であり、同様に、ダニコパンの追加に起因する輸血単位の量の高度に有意な低減を反映した(図3参照)。
【0248】
ヘモグロビン及び輸血必要性の改善に加えて、臨床的に関連するパラメータの改善が観察された(表4)。試験においてダニコパンを受容した患者は、正常値上限に対するLDHのさらなる改善及び網状赤血球絶対数の有意な改善を経験し続けた。ベースライン時の上昇を有する患者における総及び直接ビリルビン尺度の両方の低減も試験において観察された。
【0249】
本試験は、有効な生活の質計測手段のFACIT疲労スケール(バージョン4)を利用した。この自己報告計測手段尺度は、経験されている疲労の重症度を0~52のスケールで測定し、30未満のスコアは重篤な疲労を表し、それよりも高いスコアは疲労の改善を示す。3ポイント変化がこのスケールで臨床的に有意義である。10ポイント以上の変化は、このスケールで高度に有意である。FACIT-疲労スコアは、SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)のベースラインに対して24週間において11ポイントの平均増加で報告された(表4)。最大の改善は、ベースラインから24週目まで43ポイント(すなわち、ベースライン時の9ポイントを24週目の52ポイントと比較)の改善を経験した患者F(女性44歳の被験者)において観察された。これは本開示の上限を構成する。
【0250】
補体バイオマーカーを試験経過の間モニタリングした。血清FD及びC3濃度はベースライン時に正常であり、ダニコパン処置の間、変化をほとんど有さなかった(データ示さず)。CP活性の阻害はベースライン時にほぼ完全であり、遊離血清C5がほとんど存在しないことを示した(図4A)。これは試験全体にわたり持続した。対照的に、残留AP活性がAP溶血アッセイでベースライン時に検出され、ダニコパン投薬後に低減された(図4B)。並行して、血漿Bbレベルも同様にダニコパンの投薬後に低減された(図4C)。
【0251】
SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)で処置されたPNH患者におけるC3オプソニン化をアセスメントしたHill et al.からの事前の報告と一致して、C3断片でオプソニン化されたPNH RBCの割合(すなわち、%C3dPNH RBC)は、ベースライン時、C5阻害剤の存在下で血管内溶血から生存したPNH RBC上のC3断片蓄積の結果として高かった(幾何平均22%;範囲6.3~80%)(例えば、Hill et al.,Haematologica.2010;95:567-573参照)。ダニコパンの追加は、C3断片でオプソニン化されたPNH RBCの割合を有意に減少させた(24週目において幾何平均6.7%;範囲0.1~57%)(図4D)。同時に、PNH RBCのクローンサイズはベースライン時の54±24.9%から24週目の週における84±22.1%(平均±SD)に増加し、ベースライン時に高いPNH顆粒球のクローンサイズに接近し(平均±SD:92±9.2%)、試験経過の間、高いままであった(24週目における平均±SD:95±7.2%)(図4D)。
【0252】
5.安全性
ダニコパンは一般に忍容性が良好であった。少なくとも2人の患者により報告された処置下で発現した有害事象(TEAE)を表5に列記し、処置TEAEの96%が軽度から中等度の重症度であった。TEAEに起因する中止はなかった。
【0253】
全ての事象は、以下の2人の患者を除き軽度から中等度の重症度とみなされた。1人の患者は、グレード3の直接ビリルビン上昇を経験し、それは70日目におけるグレード1のALT上昇に伴って生じた。この患者は、ベースライン時及びスクリーニングの間、それらのパラメータの同様の上昇を有した。両方の有害事象は77日目までに消散した。ダニコパン用量を一時的に低減し、次いで事象消散後に再漸増した。この患者は試験を完了した。試験責任者は、付随するおよそのLDH倍化及び0.8mg/dLのHgbの減少のため、それらの事象がブレイクスルー溶血により引き起こされたとみなした。
【0254】
第2の患者は、145日目において肺炎の重篤な有害事象を経験し、入院が要求され、152日目に回復した。この事象はウイルス性気管支炎から進行した。この患者は、好中球減少症の病歴も有した。この患者は、試験中央機関とは別の施設における入院中に2単位のPRBCの輸血を受容した。試験薬物との関係は可能性が低いとみなされた。ダニコパン用量は変えず、患者は試験を完了した。
【0255】
【表5】
【0256】
C.まとめ
SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)又はULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)でのC5阻害は現在の標準治療であり、PNHを有する患者のための有効な処置アプローチである。この処置アプローチが血管内溶血をコントロールし、全生存率の大幅な改善を提供する一方、多くの患者が貧血のままであり、一部は持続性血管外溶血に起因して輸血依存的であり続け得る。
【0257】
上記臨床試験において、ダニコパンをそれらの重度の貧血患者(主に血管外溶血(EVH)に起因する)において基礎SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)療法に追加した場合、これは、Hgbの2.4グラムの平均増加並びにRBC輸血必要性の臨床的及び統計的に有意な低減をもたらした。FACIT-疲労スケールの11ポイントの平均増加は顕著で高度に有意であった。それというのも、患者が基礎SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)療法を継続してこの試験に参加したためである。国際PNHレジストリは、非処置患者において疲労が最も一般に患者により報告される症状の1つであり、およそ80%の患者が過去6か月で疲労を報告したことを示している(例えば、Schrezenmeier H.,et al.,Haematologica.2014;99(5):922-929参照)。疲労は、貧血を経験する患者、例えば、癌及びPNHを有する者においてFACIT-疲労スケールを使用してアセスメントされることが多い。SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)単剤療法での処置は、ランドマーク試験SHEPHERD及びTRIUMPHに示されるとおりFACIT-疲労により測定してPNHを有する患者における疲労のレベルを改善しており、そこではスコアがベースラインに対してそれぞれ12.2ポイント及び6.4ポイントだけ有意に増加した(例えば、Brodsky RA,et al.,Blood.2008;111(4):1840-1847及びHillmen P,et al.,N.Engl.J.Med.2006;355:1233-1243参照)。目下の本試験において、貧血が続く患者におけるSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)へのダニコパンの追加は、ヘモグロビンを2g/dL超だけ上昇させただけでなく、患者の生活の質に対する、ダニコパンの追加が有し得る潜在的影響も実証する。
【0258】
SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)へのダニコパンの追加は、本試験において患者のほとんどで輸血の必要性をほぼ解消した。宗教上の異議申立に起因して輸血歴を有さなかった試験に登録された1人の患者が存在した。その女性患者は、SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)継続中で5g/dLのベースラインのヘモグロビンで試験に参入した。その女性患者のSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)療法へのダニコパンの追加は、その女性患者のヘモグロビンを24週間において3g/dL超上昇させ、その女性患者の疲労を有意に改善した。その女性患者は遺伝性楕円赤血球症の診断も受け、それについての別の溶血性貧血にダニコパンは影響を有さない。
【0259】
ビリルビン及び網状赤血球の有意義な改善も存在した。総ビリルビンは、ベースラインに対して24週目に正常範囲中に移され、網状赤血球数は24週目にほぼ正常値に低減された。さらに、PNH赤血球クローンサイズはPNH顆粒球のものに接近し、PNH RBCがダニコパンの追加により溶血からさらに保護されていたことを実証した。C3断片でオプソニン化されたPNH RBCの割合はベースラインから24週目まで減少し、それはダニコパンのAP上流作用機序を支持する。まとめるとこれらは、MAC媒介血管内溶血のコントロールを保持しつつ、C3媒介血管外溶血がダニコパンにより予防されていることを実証する。
【0260】
総じて、標準治療SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)に加えたPNHの処置におけるダニコパンについてのコンセプトの証明が確立された。ダニコパンは一般に忍容性が良好であり、Hgb、輸血必要性、FACIT-疲労、及び他の目的パラメータの有意義な改善が達成されたことを実証した。これは、ダニコパンでD因子においてAPを遮断することによりSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)での標準治療を受容する患者においてさらなる利益を達成することができることを実証する。この利益は、血管内溶血をコントロールしつつ、C3媒介血管外溶血の予防に起因する可能性が高い。ダニコパンは、PNHにおいて満たされていない必要性を標的とする。
【0261】
実施例2:臨床的に明らかな血管外溶血(EVH)を有する発作性夜間ヘモグロビン尿症を有する患者におけるC5阻害剤へのアドオン療法としてのダニコパンの第3相試験
第3相臨床試験を、臨床的に明らかな血管外溶血(EVH)を有する成人PNH患者(18+歳)において、示される実施計画書に実質的に従って実施し、その開示の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0262】
A.目的
試験の主目的は、12週間におけるC5阻害剤(すなわち、SOLIRIS(登録商標)又はULTOMIRIS(登録商標))へのアドオン療法としての、経口(錠剤)プラセボと比較したダニコパン(「ALXN2040」及びACH4471としても公知)の有効性を評価することである。主な評価項目は、プラセボと比較したダニコパンでの12週間の処置後のベースラインに対するヘモグロビン(Hgb)の変化である。
【0263】
主たる副次目的としては、輸血回避を示す患者の比率、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy(FACIT)疲労スコアのベースラインからの変化、及び網状赤血球絶対数のベースラインからの変化のアセスメントが挙げられる。
【0264】
(1)12週間における輸血回避に対するC5阻害剤へのアドオン療法としてのプラセボと比較したダニコパンの有効性(すなわち、無輸血のままであり、12週目まで実施計画書に規定されるガイドラインに従って輸血を要求しない患者と定義される輸血回避(TA)を示す患者の比率)、(2)12週間の処置におけるFACIT疲労スコアに対するC5阻害剤へのアドオン療法としてのプラセボと比較したダニコパンの効果(すなわち、12週目におけるFACIT疲労スコアのベースラインからの変化)、及び(3)網状赤血球絶対数に対するC5阻害剤へのアドオン療法としてのプラセボと比較したダニコパンの効果(すなわち、12週目における網状赤血球絶対数のベースラインからの変化)を評価すること。
【0265】
追加の目的としては、(1)24週間のダニコパンを受容する患者についての24週間における輸血要求に対するC5阻害剤へのアドオン療法としてのダニコパンの有効性(すなわち、ダニコパンでの処置開始前24週間と比較したダニコパンでの24週間の処置の間の輸血される赤血球(RBC)単位及び輸血実施例の数の変化並びに24週間の処置にわたり輸血回避を示す患者の割合)、(2)12週間における輸血要求に対するC5阻害剤へのアドオン療法としてのプラセボと比較したダニコパンの有効性(すなわち、プラセボを受容する12週間と比較したダニコパンでの12週間の処置の間の輸血されるRBC単位及び輸血実施例の数の変化)、(3)24週間の処置についてのFACIT疲労スコアに対するC5阻害剤へのアドオン療法としてのダニコパンの効果(すなわち、全ての患者における24週目におけるFACIT疲労スコアのベースラインからの変化)を評価することが挙げられる。さらなる目的としては、(1)ヘモグロビン安定化に対するC5阻害剤へのアドオン療法としてのダニコパンの有効性(すなわち、24週間のダニコパンを受容する患者における最後の12週間の処置の間のヘモグロビン安定化を示す患者の割合)及び(2)PNH患者において関連する追加の検査マーカー(すなわち、12週間における総及び直接ビリルビンのプラセボと比較したダニコパン処置患者のベースラインからの変化、プラセボと比較したダニコパンでの12週間の処置におけるPNH RBCクローンサイズ、PNH RBC上のC3断片沈着、及び副経路活性の尺度の変化、12週間における乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)及び古典的経路活性の変化、並びに12週間及び24週間におけるヘモグロビン正常化を示す患者の割合)をアセスメントすることが挙げられる。
【0266】
探索目的としては、24週間の処置の間の患者報告アウトカム(PRO)及び他の健康関連生活の質(QoL)尺度(すなわち、12週目におけるThree-level EuroQoL 5 dimensions(EQ-5D-3L)スコアのプラセボに対するベースラインからの変化、24週目におけるEQ-5D-3Lスコアのベースラインからの変化、12週目におけるEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)Quality of Life Questionnaire-Core 30スケール(QLQ-C30)のプラセボに対するベースラインからの変化、24週目におけるEORTC-QLQ-C30スケールのベースラインからの変化、12週目におけるWork Productivity and Activity Impairment Questionnaire:General health(WPAI:SHP、V2.0)のプラセボに対するベースラインからの変化、24週目におけるWPAI:SHPスコアのベースラインからの変化、12週目における医療資源の利用(HRU)のプラセボに対するベースラインからの変化、及び24週目におけるHRUスコアのベースラインからの変化)をアセスメントすることが挙げられる。
【0267】
安全性目的としては、(1)C5阻害剤へのアドオン療法としてのダニコパンでの24週間の処置の安全性及び忍容性(すなわち、12週間の盲検及び後続の12週間の非盲検処置期間の間の処置下で発現した有害事象(TEAE)、重篤な有害事象(SAE)、検査値異常、及び試験薬物の中止をもたらす事象の発生率)、並びに(2)LTE期間の間のC5阻害剤へのアドオン療法としてのダニコパンの安全性及び忍容性(すなわち、処置下で発現した有害事象(TEAE)、重篤な有害事象(SAE)、検査値異常、及び試験薬物の中止をもたらす事象の発生率)を評価することが挙げられる。
【0268】
B.全体的なデザイン
これは、C5阻害剤(エクリズマブ又はラブリズマブ)を継続中の臨床的に明らかなEVHを有するPNHを有する患者における多地域共同無作為化二重盲検プラセボ対照反復投与第3相試験である。本試験は、C5阻害剤療法を通常の用量及びスケジュールに従って受容しているおよそ84人の患者を含む。これらの患者を登録し、ダニコパン又はプラセボ(2:1の比)で処置する。
【0269】
無作為化は、スクリーニング時の輸血歴(すなわち、スクリーニングの6か月以内の>2回又は≦2回の輸血)及びHgb(すなわち、<8.5g/dL及び≧8.5g/dL)、並びに日本人患者(日本から登録された患者と定義される)/非日本人患者により層別化する。患者を、12週間(処置期間1)、それらのC5阻害剤療法(エクリズマブ又はラブリズマブ)に加えてダニコパン1日3回(tid)又はプラセボ1日3回に2:1の比で無作為化する。12週目、プラセボを受容するように無作為化された患者を追加の12週間(処置期間2)、ダニコパンに切り替え、ダニコパンに無作為化された患者は追加の12週間、ダニコパンを継続する一方、継続中のC5阻害剤療法を続ける。処置期間の終了時(24週目)、患者は長期継続投与(LTE)期間に参加し、ダニコパンとそれらのC5阻害剤療法の受容を継続することができる。
【0270】
本試験において、患者はC5阻害剤療法をその治療法の十分な利益を受容するのに十分な期間受けていたが、依然として貧血のままである。C5阻害剤単独での治療法の延長は、それらの臨床的応答に対して追加の影響を有すると予測されない。輸血必要性の履歴及び輸血前ヘモグロビンレベルをスクリーニング来院前52週間記録する。これらの病歴データを使用して本試験における組み合わせ療法の有効性を及び安全性をアセスメントする。
【0271】
スクリーニング来院を輸血の4週間後以降に行ってスクリーニングHgbレベルに対する輸血の効果を最小化し、それを層別化目的に使用する。患者をワクチン接種の病歴について評価する。全ての患者は、試験薬物の開始前3年以内、又は開始時に髄膜炎菌感染に対してワクチン接種される。髄膜炎菌ワクチンの受容後2週間未満で試験薬物処置を開始する患者は、適切な予防抗生物質での処置をワクチン接種の2週間後まで受容しなければならない。
【0272】
ダニコパン又はプラセボの開始用量は、150mg1日3回である。>1.5×正常値上限(ULN)のアラニンアミノトランスフェラーゼ又は直接ビリルビンスクリーニング値を有する任意の患者は、100mg1日3回において投薬を開始する。確認されたギルバート症候群を有する患者は、150mg1日3回の推奨開始用量において始める。次の用量レベルへの任意の後続の漸増前に最低4週間の処置が各用量レベルにおいて要求される。用量は、実施計画書に規定される時点(4、8、及び12週目)において、安全性及び臨床的効果に基づき50mgの増分で最大200mg1日3回に漸増することができる。12週目の来院後に得られる全ての用量漸増は、患者ベースでなされる。処置期間2における最大用量は、200mg1日3回である。患者は、試験の最初の24週間の間、その1日目のC5阻害剤を任意の他のC5阻害剤に切り替えることができないが、LTE期間の間に切り替えることができる。
【0273】
C5阻害剤+プラセボ群は、試験の間、C5阻害剤+ダニコパン群と同様に用量漸増して盲検を維持する。12週目の後、C5阻害剤+プラセボ群は、処置期間2の間、プラセボをダニコパンの受容に切り替える。
【0274】
全ての患者は、実施例3の表6~8に示されるとおり処置期間の間及びLTE期間の間、安全性及び他のアセスメントのために診療機関に再来院する。処置期間2の完了時(24週目)、患者はLTE期間に1年間、それらが24週目に受容していたものと同じダニコパン用量とそれらのC5阻害剤療法において参加することができる。LTE期間の間、患者は、最大200mg1日3回に用量漸増することができる。
【0275】
患者が試験を中止する場合、ダニコパン又はプラセボの投薬を6日間にわたり漸減し(漸減来院1及び2)、試験薬物の最終投与のおよそ14日及び28日後に2回のフォローアップ来院を実施する。患者は、それらのC5阻害剤療法の受容を、それらが漸減及びフォローアップ来院の間に受容していたものと同じ用量及び間隔において継続する。
【0276】
患者を12週間(処置期間1)、それらのC5阻害剤療法に加えてダニコパン又はプラセボに2:1の比で無作為化する。12週目、プラセボを受容するように無作為化された患者を追加の12週間(処置期間2)、ダニコパンに切り替え、ダニコパンに無作為化された患者は追加の12週間継続する。処置期間(24週間)の終了時、患者は同じ用量とそれらのC5阻害剤療法においてLTE期間に参加することができる。任意の時点において試験を中止する任意の患者は、6日間の漸減及び追加の28日間のフォローアップを受けるべきである。
【0277】
本試験において使用されるC5阻害剤(エクリズマブ又はラブリズマブ)は、基礎療法とみなされる。患者が24週間の処置の完了後にエクリズマブからラブリズマブに切り替える場合、このように使用される新たな医薬も基礎療法とみなされる。それというのも、患者が試験参加前の延長期間、それらのC5阻害剤の安定用量及び間隔の継続を要求されるためである。
【0278】
以下の基準が試験における選択に要求される:
1.PNHの診断
2.以下により定義される臨床的に明らかな血管外溶血(EVH):
・網状赤血球絶対数≧120×10個/Lを伴う貧血(Hgb≦9.5g/dL)。
・試験開始前6か月以内の少なくとも1回の濃厚RBC又は全血の輸血
3.本試験の1日目前少なくとも6か月間、C5阻害剤を承認用量(又はそれ以上)において受容しており、本試験の1日目の前の224週間、用量も間隔も変更していない。エクリズマブからラブリズマブに直近で切り替えた患者については、それらの患者は1日目の前に少なくとも負荷用量及び3回の維持用量(最低24週間)のラブリズマブを受容していなければならない。
4.血小板数≧30,000個/μLで、血小板輸血を必要としない。
5.好中球絶対数≧750個/μL。
6.髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)に対するワクチン接種の証拠資料:全ての患者は、試験薬物開始前3年以内、又は開始時に髄膜炎菌感染に対してワクチン接種しなければならない。髄膜炎菌ワクチン受容後2週間未満で試験薬物処置を開始する患者は、適切な予防抗生物質での処置をワクチン接種の2週間後まで受容しなければならない。
7.18歳以上(又は各地域の法的要件に従う成人の最低年齢以上)
8.妊娠可能性がある女性患者は、同意説明文書の署名日から試験薬物のその最終投与の30日後までの高度に有効な又は許容可能な避妊方法の使用に同意しなければならない。妊娠可能性がある女性患者は、スクリーニングの間の血清妊娠検査の陰性及び1日目の尿妊娠検査の陰性も有しなければならない。
9.非妊娠可能性の確認されたエビデンスを有する女性患者は、避妊方法を用いる必要はない。
10.生殖可能な男性患者は、試験薬物の投薬初日からその最終投与の90日後までの妊娠可能性があるパートナーとの高度に有効な又は許容可能な避妊方法の使用に同意しなければならない。外科的に不妊である男性は、追加の避妊を用いる必要はない。男性は、本試験登録中及び試験薬物のその最終投与後の90日間は精子を提供しないことに同意しなければならない。
11.同意説明文書及び本実施計画書に列記された要求及び制限を遵守し、同意説明文書に署名することができる。
12.救急医療の利用手段を有しなければならない。
【0279】
患者は、以下の基準に基づき試験から除外される:
1.大規模な臓器移植歴(例えば、心臓、肺、腎臓、肝臓)又は造血幹細胞移植(HSCT)歴。
2.既知の再生不良性貧血又は他の骨髄不全を有し、HSCT又は他の治療法、例として、抗胸腺細胞グロブリン及び/又は免疫抑制薬を要求する患者
3.試験参加前の試験対象薬剤の30日又は5半減期以内のいずれか長い方でC5阻害剤(エクリズマブ又はラブリズマブ)以外の別の試験対象薬剤を受容している。
1.補体欠損症であることが確認されている又はその疑いがある。
2.活動性細菌又はウイルス感染、2日連続で測定して体温>38℃、他の感染のエビデンス、又は初回試験薬物投与前14日以内の任意の発熱疾病の病歴。
3.患者を試験に不適格にする任意の臨床的に関連する(例えば、患者の病態の悪化をもたらし、試験の間の患者の安全性に影響し、又は試験の結果を撹乱する可能性が高い)併存疾患の病歴又は存在。
4.スクリーニング時の以下の検査値異常:
・ALP>2×ULN
・ALT>2×ULN
・直接ビリルビン>2×ULN(試験責任者の見解において血管外溶血に起因しない限り)、ギルバート症候群を有する患者は本試験への参加を許可され;しかしながら、ギルバート症候群の証拠資料が要求される。ビリルビンの増加がギルバート症候群を示唆するが、患者が証拠資料を提供することができない場合;患者はこの病態について検査される(詳細については以下参照)。
8.首席試験責任者の見解において、患者を試験に不適格にし、又は患者を過度のリスクに置くことが試験責任者により判断される任意の他の臨床的に有意な検査値異常。
9.試験の間又は試験薬物投与の90日以内に妊娠中、看護中、又は妊娠計画中の女性。
10.胆汁鬱滞の最新のエビデンス。
11.スクリーニング時のヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎、又は活動性C型肝炎感染のエビデンス。
12.推算糸球体濾過量(eGFR)<30mL/分/1.73m及び/又は透析中。
13.試験対象薬物(ダニコパン)又はその賦形剤のいずれかに対する過敏症。
【0280】
実施例3:多地域共同無作為化二重盲検プラセボ対照反復投与第3相試験を、C5阻害剤療法(エクリズマブ又はラブリズマブ継続中の臨床的に明らかなEVHを有するPNHを有する患者において開始した。本試験は、C5阻害剤療法を通常の用量及びスケジュールに従って受容しているおよそ84人の患者を含む。無作為化は、スクリーニング時の輸血歴(例えば、スクリーニングの6か月以内の>2回又は≦2回の輸血)及びHgb(例えば、<8.5g/dL及び≧8.5g/dL)、並びに日本人患者(日本から登録された患者と定義される)/非日本人患者により層別化する。
【0281】
患者を12週間(処置期間1)、それらのC5阻害剤療法(エクリズマブ又はラブリズマブ)に加えてダニコパンtid又はプラセボtidに2:1の比で無作為化する。12週目、プラセボを受容するように無作為化された患者を追加の12週間(処置期間2)、ダニコパンに切り替え、ダニコパンに無作為化された患者は追加の12週間、ダニコパンを継続する一方、継続中のC5阻害剤療法を続ける。処置期間の終了時(24週目)、患者は長期継続投与(LTE)期間に参加し、ダニコパン+それらのC5阻害剤療法の受容を継続することができる。
【0282】
本試験において、PNH患者はC5阻害剤療法をその治療法の十分な利益を受容するのに十分な期間受けていたが、依然として貧血のままである。C5阻害剤単独での治療法の延長は、それらの臨床的応答に対して追加の影響を有すると予測されない。輸血必要性の履歴及び輸血前ヘモグロビンレベルをスクリーニング来院前52週間記録することができる。これらの病歴データを使用して本試験における組み合わせ療法の有効性を及び安全性をアセスメントすることができる。
【0283】
スクリーニング来院を輸血の4週間後以降に行ってスクリーニングHgbレベルに対する輸血の効果を最小化し、それを層別化目的に使用する。
【0284】
患者をワクチン接種の病歴について評価する。全ての患者は、試験薬物の開始前3年以内、又は開始時に髄膜炎菌感染に対してワクチン接種しなければならない。髄膜炎菌ワクチンの受容後2週間未満で試験薬物処置を開始する患者は、適切な予防抗生物質での処置をワクチン接種の2週間後まで受容しなければならない。
【0285】
ダニコパン又はプラセボの開始用量は、150mg tidである。>1.5×正常値上限(ULN)アラニンアミノトランスフェラーゼ又は直接ビリルビンスクリーニング値を有する任意の患者は、100mg tidにおいて投薬を開始する。確認されたギルバート症候群を有する患者は、150mg tidの推奨開始用量において始める。次の用量レベルへの任意の後続の漸増前に最低4週間の処置が各用量レベルにおいて要求される。用量は、実施計画書に規定される時点(4、8、及び12週目)において、安全性及び臨床的効果に基づき50mgの増分で最大200mg tidに漸増することができる。12週目の来院後に得られる全ての用量漸増は、首席試験責任者の裁量において試験依頼者と協議して患者ベースでなされる。処置期間2における最大用量は、200mg tidである。患者は、試験の最初の24週間の間、その1日目のC5阻害剤を任意の他のC5阻害剤に切り替えることができないが、LTE期間の間に切り替えることができる。
【0286】
C5阻害剤+プラセボ群は、試験の間、C5阻害剤+ダニコパン群と同様に用量漸増して盲検を維持する。12週目の後、C5阻害剤+プラセボ群は、処置期間2の間、プラセボをダニコパンの受容に切り替える。
【0287】
全ての患者は、表6~表8に示されるとおり処置期間の間及びLTE期間の間、安全性及び他のアセスメントのために診療機関に再来院する。
【0288】
アセスメントのスケジュール
【0289】
【表6-1】
【0290】
【表6-2】
【0291】
【表7】
【0292】
【表8】
【0293】
処置期間2の完了時(24週目)、患者はLTE期間に1年間、それらが24週目に受容していたものと同じダニコパン用量とそれらのC5阻害剤療法において参加することができる。LTE期間の間、患者は、首席試験責任者の裁量において試験依頼者と協議して最大200mg tidに用量漸増することができる。
【0294】
患者が試験を中止する場合、ダニコパン又はプラセボの投薬を6日間にわたり漸減すべきであり(漸減来院1及び2)、試験薬物の最終投与のおよそ14日及び28日後に2回のフォローアップ来院を実施する。患者は、それらのC5阻害剤療法の受容を、それらが漸減及びフォローアップ来院の間に受容していたものと同じ用量及び間隔において継続する。
【0295】
介入群及び継続期間:患者を12週間(処置期間1)、それらのC5阻害剤療法に加えてダニコパン又はプラセボに2:1の比で無作為化する。12週目、プラセボを受容するように無作為化された患者を追加の12週間(処置期間2)、ダニコパンに切り替え、ダニコパンに無作為化された患者は追加の12週間継続する。処置期間(24週間)の終了時、患者は同じ用量とそれらのC5阻害剤療法においてLTE期間に参加することができる。任意の時点において試験を中止する任意の患者は、6日間の漸減及び追加の28日間のフォローアップを受ける。
【0296】
本試験において使用されるC5阻害剤(エクリズマブ又はラブリズマブ)は、基礎療法とみなされる。
【0297】
選択基準:
1.PNHの診断
2.以下により定義される臨床的に明らかな血管外溶血(EVH):
・網状赤血球絶対数≧120×10個/Lを伴う貧血(Hgb≦9.5g/dL)。
・試験開始前6か月以内の少なくとも1回の濃厚RBC又は全血の輸血
3.本試験の1日目前少なくとも6か月間、C5阻害剤を承認用量(又はそれ以上)において受容しており、本試験の1日目の前の224週間、用量も間隔も変更していない。エクリズマブからラブリズマブに直近で切り替えた患者については、それらの患者は1日目の前に少なくとも負荷用量及び3回の維持用量(最低24週間)のラブリズマブを受容していなければならない。
4.血小板数≧30,000個/μLで、血小板輸血を必要としない。
5.好中球絶対数≧750個/μL。
6.髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)に対するワクチン接種の証拠資料:全ての患者は、試験薬物開始前3年以内、又は開始時に髄膜炎菌感染に対してワクチン接種しなければならない。髄膜炎菌ワクチン受容後2週間未満で試験薬物処置を開始する患者は、適切な予防抗生物質での処置をワクチン接種の2週間後まで受容しなければならない。
7.18歳以上(又は各地域の法的要件に従う成人の最低年齢以上)
8.妊娠可能性がある女性患者は、同意説明文書の署名日から試験薬物のその最終投与の30日後までの高度に有効な又は許容可能な避妊方法の使用に同意しなければならない。妊娠可能性がある女性患者は、スクリーニングの間の血清妊娠検査の陰性及び1日目の尿妊娠検査の陰性も有しなければならない。
9.非妊娠可能性の確認されたエビデンスを有する女性患者は、避妊方法を用いる必要はない。
10.生殖可能な男性患者は、試験薬物の投薬初日からその最終投与の90日後までの妊娠可能性があるそのパートナーとの高度に有効な又は許容可能な避妊方法の使用に同意しなければならない。
・外科的に不妊である男性は、追加の避妊を用いる必要はない。
・男性は、本試験登録中及び試験薬物のその最終用量後の90日間は精子を提供しないことに同意しなければならない。
11.同意説明文書及び本実施計画書に列記された要求及び制限を遵守し、同意説明文書に署名することができる。
12.救急医療の利用手段を有しなければならない。
【0298】
除外基準:
1.大規模な臓器移植歴(例えば、心臓、肺、腎臓、肝臓)又は造血幹細胞移植(HSCT)歴。
2.既知の再生不良性貧血又は他の骨髄不全を有し、HSCT又は他の治療法、例として、抗胸腺細胞グロブリン及び/又は免疫抑制薬を要求する患者
3.試験参加前の試験対象薬剤の30日又は5半減期以内のいずれか長い方でC5阻害剤(エクリズマブ又はラブリズマブ)以外の別の試験対象薬剤を受容している。
4.補体欠損症であることが確認されている又はその疑いがある。
5.活動性細菌又はウイルス感染、2日連続で測定して体温>38℃、他の感染のエビデンス、又は初回試験薬物投与前14日以内の任意の発熱疾病の病歴
6.患者を試験に不適格にする任意の臨床的に関連する(例えば、患者の病態の悪化をもたらし、試験の間の患者の安全性に影響し、又は試験の結果を撹乱する可能性が高い)併存疾患の病歴又は存在。
7.スクリーニング時の以下の検査値異常:
・アルカリホスファターゼ>2×正常値上限(ULN)
・アラニンアミノトランスフェラーゼ>2×ULN
・直接ビリルビン>2×ULN(試験責任者の見解において血管外溶血に起因しない限り、ギルバート症候群を有する患者は本試験への参加を許可され;しかしながら、ギルバート症候群の証拠資料が要求される。ビリルビンの増加がギルバート症候群を示唆するが、患者が証拠資料を提供することができない場合;患者はこの病態について検査される。
8.首席試験責任者の見解において、患者を試験に不適格にし、又は患者を過度のリスクに置くことが試験責任者により判断される任意の他の臨床的に有意な検査値異常。
9.試験の間又は試験薬物投与の90日以内に妊娠中、看護中、又は妊娠計画中の女性。
10.胆汁鬱滞の最新のエビデンス。
11.スクリーニング時のヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎、又は活動性C型肝炎感染のエビデンス。
12.推算糸球体濾過量<30mL/分/1.73m及び/又は透析中。
13.試験対象薬物(ダニコパン)又はその賦形剤のいずれかに対する過敏症
【0299】
統計的方法:
ダニコパン処置についての12週目におけるベースラインからのヘモグロビンレベルの改善をプラセボ処置についての改善と統計的に比較し;すなわち、12週目におけるダニコパンとプラセボとの間のベースラインからの平均変化の差である。
【0300】
有効性分析:ベースライン及びベースライン後の測定値、ベースラインからの変化についての要約統計量を、分析すべき全ての連続有効性変数について来院ごとに提示する。有効性目的及び評価項目を以下の表9にまとめる。
【0301】
【表9-1】
【0302】
【表9-2】
【0303】
【表9-3】
【0304】
主要有効性評価項目は、ダニコパンとプラセボとの間のベースライン(スクリーニング~1日目の最低Hgb値と定義される)に対する12週目におけるヘモグロビンの変化である。ヘモグロビンのベースラインからの縦断変化は、処置、試験来院、及び処置群による試験来院の相互作用の固定カテゴリー効果並びにベースラインヘモグロビン値の連続固定共変量及びモデルにおける輸血歴の層別化無作為化指標を含む反復測定混合効果モデル(MMRM)を使用して分析する。Kenward-Roger近似値を使用して分母の自由度を推定する。主要有効性分析は、12週目におけるダニコパンアームとプラセボアームとの差であり、検定を実施する。
【0305】
ダニコパン又はプラセボとC5阻害剤での12週間の処置全体にわたりヘモグロビンプロファイルを試験するために縦断グラフ表示も提供する。
【0306】
主要有効性分析はITT集団に基づく。主要有効性評価項目、ヘモグロビン測定値の変化について、実施計画書に従う集団に基づき支持分析を実施して主な実施計画書からの逸脱に起因する影響を試験する。
【0307】
副次有効性分析はITT集団に基づき実施する。主たる副次有効性評価項目は、階層固定逐次検定手順を使用して分析して統計的有意性を決定する。
【0308】
安全性分析:全ての安全性分析は、安全性集団に対して12週間の盲検及び後続の12週間の非盲検の処置期間の両方で実施する。安全性分析は、主に有害事象の頻度、臨床検査アセスメント、バイタルサイン、及び12誘導ECGに基づく。他の安全性データは適宜まとめる。
【0309】
中間分析:中間分析は、患者のおよそ50%が試験処置に無作為に割り付けられ、12週間の処置期間1を完了する機会を有した場合(情報分数=0.5)、試験依頼者(実行可能性に基づく)の裁量において実施することができる。中間分析の目的は、有効性についての早期中止について試験を評価することである。実施される場合、12週目におけるHgbレベルの変化の主要評価項目、並びに主たる副次評価項目は、以下に規定されるアルファ消費法を使用して評価してファミリーワイズエラー率をコントロールする。
【0310】
導入
ダニコパン(ALXN2040、旧ACH-0144471)は、小分子であり、経口投与され、D因子(FD)阻害剤であり、補体媒介疾患、例えば、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)及びC3糸球体症(C3G)の処置のために開発されている。D因子は、補体の副経路(AP)における律速段階であるB因子(FB)の開裂を触媒するセリンプロテアーゼである。FDを阻害することにより、ダニコパンはAP活性を強力に且つ特異的に阻害する。この極めて重要な試験は、C5阻害剤(エクリズマブ又はラブリズマブ)を継続中の臨床的に明らかな血管外溶血(EVH)を有する患者におけるダニコパンの有効性及び安全性をアセスメントする。
【0311】
利益
PNHは重度の生命を脅かす疾患であり、有効な経口FD阻害剤により潜在的に対処され得る承認C5阻害剤により対処されないこの集団における必要性は満たされていない。PNHが適切にコントロールされない患者の3つの群が同定された:
・大部分がC3オプソニン化により媒介される血管外溶血に起因すると仮定される、エクリズマブ又はラブリズマブに対して至適でない応答(およそ30%)を有する患者。エクリズマブ又はラブリズマブ処置は、膜侵襲複合体(補体経路の最終段階)によるPNH赤血球の溶血性破壊を倹約し;しかしながら、それはPNH赤血球膜上でのC3断片の沈着を妨害せず、それが患者の血管外溶血を指向し得る。ダニコパンは、それがC3開裂の上流で作用し、C3断片沈着を遮断することが示されているため、潜在的な機序的利点を有する。
・C3オプソニン化RBCの比率の増加をもたらすことが仮定されている、CR1の遺伝子多型(例えば、HindIII H/L及びL/L遺伝子型)に起因してエクリズマブ又はラブリズマブに対して部分的にのみ応答する患者は、ダニコパンでの改善された処置応答を有し得る。
・C5の突然変異(例えば、Arg885His)に起因してエクリズマブにもラブリズマブにも対して応答しない希少患者(約1%)も、ダニコパンから利益を受け得る。それというのも、それは補体カスケード中の異なる標的において作用し、C5の突然変異により影響を受けないはずであるためである。
【0312】
試験デザイン
全体的なデザイン
これは、C5阻害剤(エクリズマブ又はラブリズマブ)を継続中の臨床的に明らかなEVHを有するPNHを有する患者における多地域共同無作為化二重盲検プラセボ対照反復投与第3相試験である。
【0313】
スクリーニング不適格
スクリーニング不適格は、臨床試験への参加に同意するが、続いてその試験に参入しない患者と定義する。
【0314】
試験薬物
本実施計画書における「試験薬物」は、ダニコパン又はマッチングプラセボを指す。表10参照。
【0315】
【表10】
【0316】
基礎及び併用療法
C5阻害剤以外の規定の併用薬の使用は症例ごとに考慮し、決定は、ダニコパンの利用可能な情報及び潜在的な併用薬の特徴に基づき首席試験責任者と試験依頼者とで共同で行う。
【0317】
基礎C5阻害剤療法:エクリズマブ及びラブリズマブ
全ての患者を、データ収集及び分析の目的のために試験薬物でC5阻害剤療法(すなわち、エクリズマブ又はラブリズマブ)との組み合わせで処置する。この様式で使用されるC5阻害剤は、基礎療法とみなす。患者が24週目における試験の完了後に異なる承認C5阻害剤に切り替える場合、この様式で使用される新たな医薬も基礎療法とみなす。それというのも、患者がそれらのC5阻害剤の安定用量及び間隔を試験参加前に長期継続することを要求されるためである。
【0318】
本試験の間、承認C5阻害剤用量は増加させるべきでなく、間隔を短縮すべきでもない(体重変化に基づくラブリズマブの体重に基づく投薬を除く)。C5阻害剤の用量は、示される場合、減少させることができ、用量低減が忍容されなかった場合、用量を以前の用量に再漸増する。
【0319】
C5阻害剤療法は、各地域規制及び承認に従って提供する。
【0320】
一部の実施形態において、SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)は、成人PNH患者に4回の用量で毎週600mgの用量において、次いで5週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において静脈内投与する。小児(<18歳)PNH患者において、SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)は、(a)40kg以上の体重の対象に4回の用量で毎週900mgの用量において、次いで5週目に1200mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに1200mgの用量において;(b)30kg~40kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に900mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに900mgの用量において;(c)20kg~30kg未満の体重の対象に2回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に600mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに600mgの用量において;(d)10kg~20kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週600mgの用量において、次いで3週目に300mgの用量において、次いでそれ以降2週間ごとに300mgの用量において;又は(e)5kg~10kg未満の体重の対象に1回の用量で毎週300mgの用量において、次いで2週目に300mgの用量において、次いでそれ以降3週間ごとに300mgの用量において静脈内投与する。
【0321】
髄膜炎菌感染のリスクを低減するため、全ての患者に試験薬物の開始前3年以内に、又は開始時に髄膜炎菌感染に対してワクチン接種する。
【0322】
試験薬物用量調整
試験薬物の用量は、以下の基準を使用して初回処置期間の間及びLTE期間の間の規定時点において、安全性及び臨床的効果に基づき50mgの増分で最大200mg tidに漸増することができる。得られた検査結果を使用する全ての用量漸増は、首席試験責任者の裁量において試験依頼者と協議して行う。これは、処置期間1及び2の両方に当てはまる。C5阻害剤+プラセボ処置群は、試験の間、C5阻害剤+ダニコパン処置群と同じ様式で漸増して盲検を維持する。
・第1の用量漸増点:開始用量の忍容性が良好であり、利用可能な安全性データが十分である場合、4週目若しくは16週目における患者のHgbレベルがそれらのベースライン値(1日目)から?2g/dLだけ増加しておらず、又は患者が直近4週間の間に輸血を受容した場合、患者は次の最高用量に(200mg tidの最大用量に)漸増することができる。
・第2の用量漸増点:8週目若しくは20週目における患者のHgbレベルが?3g/dLだけ増加しておらず、若しくはそれらのベースライン値(1日目)から性別についての正常範囲の少なくとも中間点に正常化しておらず、又は患者が直近4週間の間に輸血を受容した場合、患者は次の最高用量に、最大200mg tidに漸増することができる。
・第3の用量漸増点:12週目若しくは24週目における患者のHgbレベルが性別についての正常範囲の少なくとも中間点に正常化していない場合、又は患者が直近4週間の間に輸血を受容した場合、患者は次の最高用量に、200mg tidの最大用量に漸増することができる。
【0323】
診療機関において又は訪問医療業務により用量漸増の72~96時間後にALT、AST、GGT、及びALPの測定のために採血すべきである。
【0324】
200mgの試験薬物までまだ用量漸増されていない任意の患者は、それらがそれらの事前用量を少なくとも4週間継続中であり、追加の有効性が達成され得ると試験責任者が判断する場合、最大200mgのダニコパンtidまで漸増することができる。24週目の来院後の用量漸増は、試験依頼者と協議してから実行する。患者が用量漸増されている場合、用量は、試験責任者とメディカルモニターとの協議後に安全性又は忍容性の理由のためにより低い用量に用量低減することができる。用量は、同じプロセス後に再漸増することもできる。
【0325】
用量漸増後の任意の時点において、患者の安全性及び忍容性が事前用量への用量低減を必要とする場合、これを試験依頼者と協議して行うことができる。この用量低減は、患者がそのより低い用量から利益を得ることに首席試験責任者及び試験依頼者の両方が同意する場合にのみ行う。
【0326】
試験前及び試験中の輸血ガイドライン
1.臨床的徴候若しくは症状の存在にかかわらず6g/dL未満のヘモグロビン値、又は
2.輸血を必要とするのに十分な重症度の徴候若しくは症状を伴う9g/dL未満のヘモグロビン値
を対象が有する場合、pRBC輸血を投与することが推奨される。
【0327】
生命を脅かす貧血の事象において、ABO及びRhD適合血液の輸血が適切である。ケル及びJK抗原についてのさらなる適合を、緊急輸血に利用可能な血液の作製の遅延なしで実施することができる場合、この追加の検査が推奨される。
【0328】
試験アセスメント及び手順
要求される試験アセスメント手順を本セクションに記載する。全ての手順についてのタイムラインは以下に見出すことができる。
【0329】
有効性アセスメント
アセスメントのスケジュールに従って血液を回収してヘモグロビン、網状赤血球数、ビリルビン、及び乳酸デヒドロゲナーゼの変化の有効性評価項目をアセスメントする。PNH RBCクローンサイズ、PNH RBC上のC3断片沈着、AP及びCP活性、並びにBb、C3、及びFDレベルもアセスメントする。採血手順を以下に記載する。
【0330】
スクリーニングの時点からフォローアップまでの輸血データ、例として、輸血されるRBC単位の数及び関連する輸血前ヘモグロビン値(利用可能であれば網状赤血球数とともに)を回収し(試験施設記録及び患者が任意の輸血を受容する任意の他の場所から)、各患者のCRFに記録する。
【0331】
患者報告アウトカム
試験に登録された全ての患者は、FACIT-疲労(バージョン4)、European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)Quality of Life Questionnaire-Core 30スケール(QLQ-C30)、及びEQ-5D-3Lスケール及びWork Productivity and Activity Impairment Questionnaire:Specific Health Problem V2.0(WPAI:SHP、V2.0)(以下参照)についての質問票を自己記入する。ツールの各々の地域言語バージョンを個別に提供する。
【0332】
医療資源の利用データは、以下に示されるスケジュールに従って回収する。HRUのため、試験責任者又は試験設計者は各参加者について診療機関来院、利用される緊急業務、入院、欠勤の数を記録し、患者が暗色尿を有した回数も記録する。
【0333】
全てのPRO及びQoLアセスメント(手書き又は電子記入)は、処置投与前、予定来院中に記入する。
【0334】
有効性分析
ベースライン及びベースライン後測定値、ベースラインからの変化についての要約統計量を、分析すべき全ての連続有効性変数について事前に規定された来院ごとに提示する。
【0335】
主要有効性分析
主要有効性評価項目は、ダニコパンとプラセボとの間のベースライン(スクリーニング~1日目の最低Hgb値と定義される)に対する12週目におけるヘモグロビンの変化である。ヘモグロビンのベースラインからの縦断変化は、処置、試験来院、及び処置群による試験来院の相互作用の固定カテゴリー効果並びにベースラインヘモグロビン値の連続固定共変量及びモデルにおける輸血歴の層別化無作為化指標を含む反復測定混合効果モデル(MMRM)を使用して分析する。Kenward-Roger近似値を使用して分母の自由度を推定する。主要有効性分析は、12週目におけるダニコパンアームとプラセボアームとの対比であり、検定を両側0.05有意性レベルにおいて実施する。
【0336】
主要目的は、12週間の処置後のヘモグロビンの変化に対するプラセボと比較したダニコパンの有効性を評価することである。ヘモグロビン値に対する輸血の影響に対処するため、8週目以降に輸血される患者については、12週目に回収されたヘモグロビン値を主要有効性分析に含めない。このルールは、より早期の来院時に回収された縦断観察にも当てはまり、すなわち、輸血後4週間以内に回収されたヘモグロビン値を主要有効性分析に含めない。
【0337】
相対的に小さいサンプルサイズ及び短い継続期間の盲検処置(12週間)では、12週目の測定値の欠測を最小化するための全ての労力がなされる。ダニコパン又はプラセボと承認C5阻害剤での12週間の処置全体にわたりヘモグロビンプロファイルを試験するために縦断グラフ表示も提供する。
【0338】
主要有効性分析はITT集団に基づく。主要有効性評価項目、ヘモグロビン測定値の変化について、実施計画書に従う集団に基づき支持分析を実施して主な実施計画書からの逸脱に起因する影響を試験する。追加の感度分析を実施して代替的な欠測データメカニズムの仮定のもと処置効果をアセスメントする。このような分析の詳細は、統計分析計画に規定する。
【0339】
副次有効性分析
副次有効性評価項目を以下に列記する。副次有効性分析はITT集団に対して実施する。
【0340】
主たる副次有効性評価項目を重要な順に以下に記載する。階層固定逐次検定手順を利用して各評価項目について0.05の両側レベルにおける統計的有意性を順次決定する。
1.12週間の処置の間のダニコパン群とプラセボ群との間のRBC輸血回避を示す患者の比率の差
2.12週目におけるダニコパン群とプラセボ群との間のFACIT-疲労スコアのベースラインからの変化の差。
3.12週目におけるダニコパン群とプラセボ群との間の網状赤血球絶対数のベースラインからの変化の差。
【0341】
比率のパラメータ、例えば、12週目に輸血回避及びヘモグロビン正常化を達成した患者について、フィッシャーの正確確率検定を使用してダニコパンアームとプラセボアームとを比較する。
【0342】
処置の開始の12週間前から12週間の処置期間1までのRBC輸血単位/実施例の変化について、処置アーム及び処置開始の12週間前からの輸血単位/実施例を含む共分散分析(ANCOVA)モデルを使用してダニコパンアームとプラセボアームとを比較する。
【0343】
12週目における数値評価項目、例えば、FACIT-疲労スコア、EQ-5D-3Lスコア、EORTC QLQ-C30スコア、網状赤血球絶対数、総及び直接ビリルビン、又は他のPNH関連バイオマーカーのベースラインからの変化について、主要有効性分析に規定されるMMRMモデルを用いてダニコパンとプラセボとの平均差を比較する。
【0344】
階層固定逐次検定手順は、拒絶すべき現在の仮説を求め;すなわち、検定統計量についてのp値が<0.05である場合、実行して臨床的重要性ごとに上記に列記される主たる副次評価項目からの次の仮説の有意性を検定する。逐次検定プロセスは、仮説が拒絶され得ない場合、停止する。
【0345】
残りの副次有効性及び探索的評価項目についてデータを分析するために使用される種々の統計的手順に基づく結果は、以下のとおり記述的である:
・24週間のダニコパン処置を受容する患者について、最後の12週間の処置の間にヘモグロビン安定化を示す患者の数及び比率。ヘモグロビン安定化は、12週目からの24週目におけるHgbレベルの0.5g/dL以下の減少の回避と定義する。
・24週間のダニコパン処置を受容する患者について、処置開始の24週間前から24週間の処置期間までのRBC輸血単位/実施例の変化。
・24週間の処置期間にわたり輸血回避を示す患者の比率及び24週目にヘモグロビン正常化を示す患者の比率。
・24週間のダニコパン処置を受容する患者について、ベースライン(1日目)に対するFACIT-疲労、網状赤血球絶対数、総及び直接ビリルビン、LDH並びに他のPNH関連バイオマーカーの変化。
・PNH RBCクローンサイズ、PNH RBC上のC3断片沈着、副経路及び古典的経路活性の尺度、Bb、C3、及びFDレベル。
・PRO及びQoL評価項目。
【0346】
【表11-1】
【0347】
【表11-2】
【0348】
【表11-3】
【0349】
【表11-4】
【0350】
【表11-5】
【0351】
【表11-6】
【0352】
【表11-7】
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2023526051000001.app
【国際調査報告】