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特表2023-526633超音波で位置決め可能な外科用ガイドワイヤシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】超音波で位置決め可能な外科用ガイドワイヤシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20230615BHJP
   A61M 25/09 20060101ALI20230615BHJP
   A61M 25/095 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A61B8/14
A61M25/09
A61M25/095
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570494
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2021032891
(87)【国際公開番号】W WO2021236588
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/026,537
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514239372
【氏名又は名称】ベイラー ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】511095805
【氏名又は名称】スコット アンド ホワイト ヘルスケア
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100224616
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 志聡
(72)【発明者】
【氏名】オラフセン,リンダ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト,キース イー
(72)【発明者】
【氏名】オラフセン,ジェファリー エス
(72)【発明者】
【氏名】ダヤワンサ,サマンサ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,ジェイソン エイチ
【テーマコード(参考)】
4C267
4C601
【Fターム(参考)】
4C267AA29
4C267BB45
4C267CC08
4C601DE01
4C601EE04
4C601EE09
4C601FF11
4C601GA20
4C601GA26
4C601GA28
(57)【要約】
本開示は、広く利用可能な超音波イメージングを利用して、超音波の波長に対してサイズがサブ波長であり得るガイドワイヤ及び他の小さな物体のイメージングの限界を克服するためのシステム及び方法を提供する。本システム及び方法は、X線の使用及び放射線の危険な影響に晒されることを軽減し、MRI技術の高価な費用を回避できる。ガイドワイヤなどのサブ波長物体は、本明細書に記載のいくつかの方法及びその関連システムを使用して検出できる。本システム及び方法は、物体が所定の周波数で位置を変え、当該物体が超音波検出器の走査領域を横切って進むにつれて、物体のより明るい超音波画像を生成することを含む。実施形態では、小さな物体の動きにより、動きのない物体自体に対して生成されたものとは異なるスペックルシグネチャが生成される。物体の漸進的な動きによるスペックルパターンの変化を分析することで、検出可能な物体が生み出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波装置から、対応する超音波波長の周波数を有する超音波を発生させて画像化する超音波画像技術で物体を検出するシステムであって、
超音波の波面に晒されるように構成された第1の状態位置における第1の状態と、前記第1の状態位置とは異なる第2の状態位置への物体の移動による第2の状態とを有する物体を有し、
前記超音波は、前記第1の状態位置及び前記第2の状態位置から反射し、前記第1の状態における前記物体の超音波画像よりも明るい第2の状態における前記物体の超音波画像を生成する、
システム。
【請求項2】
前記物体の移動は、前記第1の状態位置と前記第2の状態位置との間で所定の周波数の繰り返される動きを生成するように、前記第2の状態位置から前記第1の状態位置へ戻る移動を更に含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記物体の前記周波数の前記動きは、前記超音波の周波数と同期して、前記物体が前記第1の状態位置及び前記第2の状態位置における超音波画像を生成する、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記物体は、前記物体が検出される物質内の超音波の波長よりも小さい少なくとも1つの断面寸法を有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
物体活性化サブシステムを更に備え、
前記物体活性化サブシステムは、少なくとも前記物体が超音波に晒されたときに、前記物体の振動を引き起こすように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記物体は形状記憶材料を含み、
前記形状記憶材料は、1つ又は複数の活性化エネルギーレベルの第1温度で変形するように構成されている、
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記物体は形状記憶材料を含み、
前記形状記憶材料は、第1の活性化エネルギーレベルの第1の温度及び第2の活性化エネルギーレベルの第2の温度で変形するように構成されている、
請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記物体は、前記第1の活性化エネルギーレベルで第1の方向において変形し、且つ、前記第1の方向とは異なる第2の方向において変形するように構成されている、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の状態は、複数の第2の状態位置を含む、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記物体は、前記物体活性化サブシステムに結合された複数のワイヤを含み、
前記複数のワイヤは、前記物体活性化サブシステムによって活性化されるように構成されている、
請求項5に記載のシステム。
【請求項11】
前記物体の少なくとも第1のワイヤは、第1の方向において変形するように構成され、
前記物体の少なくとも第2のワイヤは、前記第1の方向とは異なる第2の方向において変形するように構成されている、
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記物体は、前記物体活性化サブシステムにより活性化されたときにらせんコイルに変形するように構成されている、
請求項5に記載のシステム。
【請求項13】
前記物体は、物体超音波サブシステムを備え、
前記物体超音波サブシステムは、超音波を放出するように構成され、
前記第1の状態にある前記物体は、超音波システムから離れた前記第1の状態位置にあり、
前記第2の状態位置における前記第2の状態への前記物体の移動は、前記超音波システムに近接し、前記超音波システムが前記物体超音波サブシステムからの超音波を感知し、前記物体の前記第1の状態位置での超音波画像よりも明るい超音波画像を生成することを可能にする、
請求項5に記載のシステム。
【請求項14】
前記物体は、前記第1の状態位置における第1の状態にあり、前記物体が縦方向に移動することで前記第2の状態位置における前記第2の状態を確立する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
超音波システムから、対応する超音波波長の周波数を有する超音波を発生させて画像化する超音波画像技術を利用して物体を検出する方法であって、
超音波を少なくとも部分的に伝導する物質内に、超音波を少なくとも部分的に反射することができる物体を配置するステップであって、前記物体は第1の状態位置における第1の状態を有する、前記物体を配置するステップと、
前記物体が、前記第1の状態位置とは異なる第2の状態位置における第2の状態にあるように、前記物体を前記第2の状態位置へ移動させるステップと、
前記超音波システムからの超音波が前記第1の状態位置及び前記第2の状態位置における物体から反射されることを可能にするステップと、
前記第の1状態にある前記物体の超音波画像よりも明るい前記第2の状態にある前記物体の超音波画像を生成するステップと、
を含む、
方法。
【請求項16】
前記物体を移動させることは、前記物体にパルスエネルギーを適用することを含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記パルスエネルギーは、前記超音波の周波数と同期した周波数で適用される、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記物体は形状記憶合金を含み、前記パルスエネルギーで前記物体を変形させるステップを更に含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記物体は形状記憶合金を含み、前記パルスエネルギーで前記物体を複数の方向において変形させるステップを更に含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記物体を移動させることは、前記第1の状態位置と前記第2の状態位置との間で前記物体を縦方向に移動させることを含む、
請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年5月18日に出願され、「超音波で位置決め可能な外科用ガイドワイヤシステム及び方法」を題とした米国仮特許出願第63/026,537号に基づいて優先権を主張し、当該米国仮出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、全体的に、物体の位置を特定するための超音波技術を用いるシステム及び方法に関する。より具体的には、本開示は、特にサブ波長サイズの物体の位置を特定するための超音波技術を用いるシステム及び方法に関する。
【0003】
(関連技術の説明)
毎年何千万人もの人々が何らかの形態の神経外科手術を受けている。これらの手術の大部分には、外傷性脳損傷、脳卒中、水頭症、てんかん、動脈瘤、アテローム性動脈硬化症の治療が含まれる。これらの外科的治療では、脳内の疾患領域に到達するために、身体の複雑な血管網を通過するガイドワイヤ及びカテーテルの使用が必要となることがよくある。ガイドワイヤが目的の位置に到達したら、損傷した組織の修復は、クリッピング、アブレーション、プラークの除去によって行われる。ガイドワイヤを体内に通すには、病変へナビゲートし、体全体のデリケートな組織の多くを損傷しないようにするために、継続的なイメージングが必要である。
【0004】
神経外科治療中にガイドワイヤを可視化する現在の方法は、X線ベースのイメージング、蛍光透視法があるが、これらは、患者を過剰なレベルの放射線に晒す可能性があり、放射線被ばくは、反復又は長時間の治療において特に懸念される。過度の放射線被ばくは、組織に急性及び長期的な副作用を引き起こす可能性があり、同時にいくつかの種類のがんのリスクを高める可能性がある。また、生命を脅かす副作用を引き起こす可能性のある造影剤の使用も必要である。リアルタイムMRIイメージングは、神経血管治療におけるガイドワイヤのイメージングの新たな代替手段であり、患者を放射線や造影剤に晒すことはない。しかしながら、リアルタイムMRIの使用が普及しつつであるが、高価であり、全体的な治療時間が長くなるため、複雑な神経血管治療には使用されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波は、約40年間、手術において針及びカテーテルをガイドするために使用されてきた。超音波は、安全(非電離)であり、経済的、ポータブル、且つ広く利用可能なイメージング診断法である。超音波の弱点は、軟組織のコントラストが低いことと、ガスや金属又は骨による超音波のインピーダンスにある。超音波は、通常1から10MHzの範囲の高周波音波を使用し、低周波数超音波(1から3MHz)は肝臓や心臓などのより深い構造に使用され、低周波数超音波(5から10MHz)は皮膚付近のイメージングに使用される。
【0006】
超音波画像は、トランスデューサを用いて物体に超音波パルスを送信し、生じた戻り波を同じトランスデューサで測定することによって生成される。戻り波は、遭遇した材料や界面によって反射、減衰、散乱、及び遅延され、その結果、戻り波は、大きさ、遅延、位相シフト、及び周波数シフトの情報を持っている。例えば、各戻りパルスの時間遅延により、戻り波の伝搬時間が照射パルスの反射面までの伝搬時間の2倍となる。減衰は、パルスが通過する材料を示し、これにより、音波の伝搬速度が得られ、距離を算出することができる。通常、パルスは1秒間に30回送信され、次の送信までに戻り波が測定される。
【0007】
単一のトランスデューサが、最初のほぼ縦列の画像を生成し、当該画像は、その後、物体内に深く入るにつれて拡大される(Aモード)。複数のトランスデューサを隣り合わせに配置して2D画像を生成するときは、Bモードと呼ばれる。
【0008】
超音波の分解能はその波長によって制限され、超音波の波長は、超音波プローブの周波数及び超音波プローブが通過する組織に依存する。分解能の限界は、500マイクロメートル(μm)から150ミクロンマイクロメートルの間で変化する。生検針、注射針、及びカテーテルは、分解能限界をはるかに超えているため、簡単に見ることができる。しかしながら、動脈瘤などの脳神経外科用の血管ガイドワイヤは、通常、直径が100マイクロメートル未満である。分解能の限界を下回ると、ターゲットが音波を散乱させ、スペックルアーティファクト(speckle artifacts)が生じる。超音波画像がスペックル(speckle)だらけでは、コントラストの低いターゲットや小さなサイズのターゲットを検出する能力が低下する。人体の組織は、超音波の波長よりも小さい無数の構造体で構成されており、これが超音波画像にけるスペックルとして現れるノイズのほとんどの原因である。物体の材料の薄い(サブ波長)セクションは、少なくとも数ピクセルの有意なスペックルパターン強度を生成することができるが、周囲の組織、特に骨付近の背景のスペックルと区別できない場合がある。動かないトランスデューサ及び動かない物体の場合、スペックルパターンは変わらないため、小さなサブ波長物体の存在を、スペックルノイズから区別するのは非常に困難である。
【0009】
組織における変化から小さな構造のスペックルを分離することは課題である。したがって、超音波は、サブ波長の物体のイメージングに利用されなかった。同様のサイズのガイドワイヤを使用する他のタイプの血管内手術においても、同様の問題が発生する可能性がある。
【0010】
したがって、X線に比べて健康上のリスクが低減され、磁気共鳴画像法(MRI)技術よりも安価な超音波技術を用いて、ガイドワイヤなどの小さな物体を識別できるようにする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、広く利用可能な超音波イメージングを使用するためのシステム及び方法を提供し、関連する媒質における超音波波長と比較して、サイズがサブ波長であり得るガイドワイヤやその他の小さな物体のイメージングの制限を克服する。本システム及び方法は、X線の使用及び放射線の危険な影響に晒されることを軽減し、MRI技術の高価な費用を回避することができる。ガイドワイヤなどのサブ波長の物体は、本明細書に記載の方法及び関連システムを使用して検出することができる。本開示は、所定の周波数で位置を変える物体を含み、これによって、物体の第1の状態での超音波画像と比較して、反射超音波から物体のより明るい超音波画像を作成する。いくつかの実施形態では、小さな物体の動きにより、動きのない物体自体に対して生成されたものとは異なるスペックルシグネチャ(speckle signature)が生成される。他の実施形態では、物体の固定形状の漸進的な動きによるスペックルパターンの変化の分析は、検出可能な物体を生み出すことができる。したがって、移動物体からの動的スペックルを識別することができ、これを利用して周囲の組織又は他の媒質内の物体の位置を特定することができる。
【0012】
本開示は、超音波システムから超音波を生成して撮像する超音波画像技術を用いて物体を検出するためのシステムを提供し、超音波は、対応する超音波波長の周波数を有する。当該システムは、超音波の波面に晒されるように構成された第1の状態位置における第1の状態と、第1の状態位置とは異なる第2の状態位置への物体の移動による第2の状態とを有する物体を含み、超音波は、第1の状態の位置及び第2の状態の位置から反射され、物体の第1の状態での超音波画像よりも明るい物体の第2の状態での超音波画像を生成する。
【0013】
本開示はまた、超音波システムから対応する超音波波長の周波数を有する超音波を生成して撮像する超音波画像技術を用いて物体を検出する方法を提供する。当該方法は、超音波を少なくとも部分的に伝導する物質内に、超音波を少なくとも部分的に反射することができる物体を配置するステップであって、物体は第1の状態位置における第1の状態を有する、前記物体を配置するステップと、物体が、第1の状態位置とは異なる第2の状態位置における第2の状態にあるように、物体を第2の状態位置へ移動させるステップと、超音波システムからの超音波が第1の状態位置及び第2の状態位置における物体から反射されることを可能にするステップと、第1状態にある物体の超音波画像よりも明るい第2状態にある物体の超音波画像を生成するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】超音波システムの実施形態を示す概略図であって、第1の状態にある検出される適切な物体の例、例えば、ワイヤを有する図である。
図1B図1Aの実施形態の概略図であって、第2の状態にある物体を有する図である。
図1C図1Bの物体にエネルギーを加えるための例示的なパルス形態を示す図である。
図2A】超音波システムの別の実施形態の概略図であって、第1の状態にある検出されるべき例示的な物体を有する図である。
図2B図2Aの実施形態の概略図であって、第2の状態にある物体を有する図である。
図2C図2Bの物体にエネルギーを加えるための例示的なパルス形態を示す図である。
図3A】超音波システムの別の実施形態の概略図であって、第1の状態にある検出されるべき例示的な物体を有する図である。
図3B図3Aの実施形態の概略図であって、第2の状態にある物体を有する図である。
図3C図3Bの物体にエネルギーを加えるための例示的なパルス形態を示す図である。
図4A】超音波システムの別の実施形態の概略図であって、第1の状態にある検出されるべき例示的な物体を有する図である。
図4B図4Aの実施形態の概略図であって、第2の状態にある物体を有する図である。
図4C図4Bの物体にエネルギーを加えるための例示的なパルス形態を示す図である。
図5A】超音波システムの別の実施形態の概略図であって、第1の状態にある検出されるべき例示的な物体を有する図である。
図5B図5Aの実施形態の概略図であって、第2の状態にある物体を有する図である。
図6A】超音波システムの別の実施形態の概略図であって、第1の状態にある検出されるべき例示的な物体を有する図である。
図6B図6Aの実施形態の概略図であって、第2の状態にある物体を有する図である。
図7A】超音波システムの別の実施形態の概略図であって、第1の状態にある検出されるべき例示的な物体を有する図である。
図7B図7Aの実施形態の概略図であって、第2の状態にある物体を有する図である。
図8A】超音波システムの別の実施形態の概略図であって、第1の状態にある検出されるべき例示的な物体を有する図である。
図8B図8Aの実施形態の概略図であって、第2の状態にある物体を有する図である。
図9A】端面から見た超音波画像であって、身体組織内に超音波応答を接近する物体がない物質内の通路を示す図である。
図9B】別の時間での図9Aの超音波画像であって、超音波システムの範囲に入った物体を示す更なるスペックルを有する図である。
図9C】別の異なる時間での図9Aの超音波画像であって、図9Bと比較して、通路の別の場所にある物体を示すスペックルを有する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記説明した図、並びに以下の特定の構造及び機能についいての記述は、出願人が発明したものの範囲又は添付の特許請求の範囲を限定するために提示するものではない。むしろ、図面及び記述は、当業者に特許の保護を求める発明の利用を開示するために提供されている。本発明の商業的実施形態の全ての特徴が、明確化及び理解のために説明又は示されているわけではないことは、当業者に理解されるであろう。当業者はまた、本開示の態様を組み込んだ実際の商業的実施形態の開発には、開発者の最終的な目標を達成するために、商業的実施形態に対する多数の実施的具体的な決定が必要となることを理解するであろう。このような実施的具体的な決定には、システム関連、ビジネス関連、政府関連、及び具体的な実施又は場所によって、又は時間とともに変化する可能性のあるその他の制約への準拠が含まれる場合があり、これらに限定されない。開発者の努力は、絶対的な意味で複雑で時間がかかるが、それでもなお、そのような努力は、この開示の恩恵を受ける当業者にとって日常的な仕事である。本明細書に開示され、開示される発明は、数多くの様々な修正及び代替的な形態が可能であることを理解されたい。「a」などの単数形の用語の使用は、項目の数を限定することを意図したものではない。更に、システムの様々な方法及び実施形態を互いに組み合わせたものを含めて、開示された方法及び実施形態の変形を生成することができる。単数要素の議論には複数要素が含まれる場合があり、その逆も同様である。少なくとも1つの項目への参照には、1つ又は複数の項目が含まれる場合がある。また、本開示の理解された目標を達成するために、実施形態の様々な態様を互いに結合して使用することができる。文脈上別段の要求がない限り、用語「comprise」又は「comprises」又は「comprising」などの変形は、少なくとも記載された要素又はステップ又は要素のグループ又はステップ又はそれらの同等物を含むことを意味すると理解されるべきであり、より大きな数値、その他の要素、ステップ、要素のグループ、ステップ、又はそれらの同等物を排除するものではない。「coupled」、「coupling」、「coupler」などの用語は、本明細書では広く使用されており、固定、結合、接合、締結、取り付け、接合、挿入、その上又はその中で形成、伝達、又はその他の関連付けのための任意の方法又は装置を含むことができる。例えば、機械的、磁気的、電気的、化学的、動作可能に、中間要素と直接的又は間接的に、1つ又は複数の部材ピースを組み合わせて、1つの機能部材を別の機能部材と単一の方法で一体的に形成することを更に含み得るが、これらに限定されない。結合は、回転方向を含む任意の方向で生じる可能性がある。デバイス又はシステムは、多くの方向及び配向で使用することができる。ステップの順序は、特に限定されない限り、様々な順序で行う場合がある。本明細書に記載された様々なステップは、他のステップと組み合わせることができ、記載されたステップと相互に関連し、及び/又は複数のステップに分割することができる。一部の要素は、簡単にするためにデバイス名で指定されているが、システム又はセクションを含むと理解される。例えば、コントローラは、当業者には知られており、具体的に説明していない可能性がある関連コンポーネントのプロセッサ及びシステムを含む場合がある。説明及び図には、様々な機能を実行する様々な例が提供されており、これらの例は、様々な機能を実行し、形状、大きさ、説明には限定されず、変更可能な例示的な構造として、本明細書に含まれる開示によって、当業者に知られるであろう。そのような例は、非限定的な例として、「例示的な」という用語を用いて示されることがある。「サブ波長」という用語は、超音波パルスの波面の法線方向の断面の長さを示すために本明細書で使用される寸法を意味し、そのような長さは、検出される物体が配置される媒体内の超音波の波長よりも小さい。例えば、これに限定されないが、円形のサブ波長ガイドワイヤは、断面寸法(ガイドワイヤの長手方向の長さではない)として、検出される物体が配置される媒体内の超音波の波長よりも小さい直径を有する。平坦なサブ波長ガイドワイヤは、超音波パルスの波面に晒される法線方向の断面寸法の幅を有し、当該断面寸法の幅は、ガイドワイヤが検出のために配置される媒体内の超音波波長よりも小さい。
【0016】
本開示は、広く利用可能な超音波イメージングを使用するためのシステム及び方法を提供し、関連する媒体内の超音波波長と比較して、サイズがサブ波長であり得るガイドワイヤやその他の小さな物体のイメージングの制限を克服する。このシステム及び方法は、X線の使用及び放射線の危険な影響に晒されることを軽減し、MRI技術の高価な費用を回避することができる。サブ波長物体、例えば、ガイドワイヤは、本明細書に記載のいくつかの方法及び関連システムを使用して検出することができ、所定の周波数で位置を変える物体を含み、これによって、反射超音波から、物体の第1状態での超音波画像と比較して、物体の第2状態でのより明るい超音波画像を生成する。いくつかの実施形態では、小さな物体の動きにより、動きのない物体自体に対して生成されたものとは異なるスペックルシグネチャが生成される。他の実施形態では、物体の固定形状の漸進的な動きによるスペックルパターンの変化の分析は、検出可能な物体を生み出すことができる。したがって、移動物体からの動的スペックルを識別することができ、これを利用して周囲の組織又は他の媒質内の物体の位置を特定することができる。
【0017】
少なくとも1つの態様では、システム及び方法は、(横方向及び/又は縦方向で意図された移動経路へ)移動する物体からスペックル変動を特徴付けることができ、また、周囲の背景のスペックルと比較して、動きによって誘発されたスペックルパターンを分離し、物体の位置を特定するように設計された又はトレーニングされたフィルターを適用する。更に、周囲の媒体とは明らかに異なる音速を有するサブ波長物体の前方への移動は、強いスペックル散乱を引き起こし、物体の反対側のソースからの及び検出器の信号強度が低下させる場合がある。物体の並進運動によるスペックルは、物体の横方向の動きによるスペックルとは異なる。物体の並進運動のスペックルを特徴付けることにより、何らかの認識が生じ、更に物体の横方向の動きのスペックルと併せて、物体のより正確な分析を行うことができる。更に、所与の物体の、例えば、平坦又は円形などの様々な形状からのスペックルパターン化により、様々なスペックルパターンが生じる。物体の様々な組み合わせ、例えば、ツイストワイヤ(twisted wires)と比較した平行ワイヤなどによって、様々なスペックルパターンが生じることができ、それらを認識するために検出し、そして特徴付けすることができる。
【0018】
超音波検出のための物体の一例は、物体が存在し得る媒体を通過する超音波の波長に対して、サブ波長の少なくとも1つの断面を有する物体である。物体は、超音波の波長以上の長さを有することができる。物体は、外科手術及び他の医療治療で使用できるガイドワイヤなどのワイヤであり得る。ワイヤは例示であり、物体として図示され、説明されているが、物体はワイヤに限定されず、本明細書の開示は他の物体に適用できることを理解されたい。したがって、説明及び図は、原理が他の物体に適用されることを理解した上で、ワイヤを用いて、示している。更に、本明細書の原理は、サブ波長よりも大きい断面を有する物体に適用することができる。そのようなより大きな物体は典型的な超音波システム及び方法で検出できるので、本発明はサブ波長物体の検出に特に有用であるが、より大きな物体も本明細書に記載の原理による利点を得ることができる。
【0019】
ガイドワイヤの位置、並びにツール及び/又はペイロードの超音波検出は、手動の手段によって挿入されたカテーテルなどの物体を誘導するための現在の技術である連続X線蛍光透視法から放射線被ばくを低減する。本システム及び方法は、治療を進めるために鋭角又は難しい方向転換が必要な状況を対処する場合に非常に有用である。サブ波長物体を検出する機能を備える超音波システムの利点は、
治療部位へのナビゲーションの改善と、
治療部位に到達するまでの時間が短縮されるため、治療の成功率及び患者の生存率を向上させることと、
ガイドワイヤの超音波画像を採用することにより、患者及び医師の両方のX線/電離放射線被ばくを軽減させることと、
より安価で携帯性が高く、地方/遠隔地でのテクノロジーへすぐにアクセスできることと、
戦場や農村地域などの遠隔地での治療のために動脈ナビゲーションを自動化及び/又は遠隔制御する機能を有することと、
を含む。
【0020】
サブ波長物体は、超音波イメージングによる対象物の検出可能性を高めるために、軟組織と比較して高い値の断熱圧縮率及び密度を有する材料で作製することができる。例えば、弾性を有するだけでなく、形状記憶合金(SMA)として形状記憶能力を備えるニッケルチタン(ニチノール)合金(nickel-titanium(nitinol)alloy)は、ある温度で変形し、別の温度で元の形状に回復することができる。一般に、電流の形でエネルギーを与えて、形状の変形を活性化する温度を生成することができる。本開示の目的のために、SMA材料は、ニチノール、形状記憶ポリマー、及び強磁性SMAに加えて、他のSMAを含む。本明細書では実施形態の様々な説明においてニチノール材料が使用されるが、その原理は他のSMAにも適用され、本発明の範囲内である。例えば、物体は、ニチノール製のサブ波長断面を有する細いガイドワイヤであってもよく、例えば、これらに限定されないが、寸法が20μm、50μm、75μm、100μm、125μm、150μm、250μmなどであってもよい。断熱圧縮率は、材料の体積弾性率に反比例し、軟組織と金属との両方において、標準表値であって、軟組織に対するニチノールの場合、大凡κs≒0.1κである。密度に関しては、ニチノールは軟組織の約6.5倍の密度である。これらの値を使用すると、小さなニチノールワイヤは、幅が7波長の物体とほぼ同じ有効サイズとなる。
【0021】
(横方向の動き)
ワイヤの横方向の動きは、ニチノールワイヤのスペックルを変化させるが、背景を変化させず、それによって、非常に限定された領域内に潜在的に目立つ「フリカリング(flickering)」ピクセルが生じる。少なくともいくつかの実施形態では、SMA遷移温度(SMA transition temperature)を利用することによって、ニチノールワイヤの動きを誘発することができる。ニチノールの形状を変化させる1つ又は複数の遷移温度は、体温のすぐ上で選択できる。小さな電気パルスをワイヤに沿って送信することで、十分な熱上昇を引き起こして、ワイヤの形状を変遷及び変更させることができる。少なくともいくつかの実施形態では、ワイヤは、電気パルスの後に血流中で冷却されて、活性化温度よりも低い温度で元の形状又は構成に戻ることができる。パルスにより、ワイヤが振動モードで前後に移動することができる。それによって生じた振動は、より広い領域で超音波反射を生成する所望の動きを実現でき、よって、物体がより容易に検出可能となる。
【0022】
動きの2つの側面は、超音波画像ピクセル変動のサイズ及び視認性を高めることができる。まず、ワイヤの動きの速度を変えることができる。例えば、超音波が1秒間に30回測定される場合、ワイヤは1/30秒の整数倍で加熱及び冷却され、結果として生じるフリカリングピクセルが画像と同期し、より見やすくなる。超音波の他の周波数及び同期も可能である。最も顕著なフリカ(flicker)を特徴付けるには、様々な整数倍数を使用することができる。次に、ワイヤが変遷した形状は、散乱に大きな影響を与えることがある。例えば、SMAコイルは特に良好な画像を得ることができる。
【0023】
(例示的な横方向システムの実施形態)
横方向の動きを誘発するための本明細書の原理の少なくともいくつかを使用して、物体は、超音波イメージングにおいて、戻り波の強度を最大化するように設計することができる。そのような物体には、ワイヤに限定されない。例えば、ガイドワイヤ、ガイドワイヤ先端、器具、及び他のエンドエフェクタ、及びサイズ設計され、超音波に対して透明でない特定の用途に適された他の物体が含まれる。
【0024】
図1Aは、検出される適切な物体の例、例えば、ワイヤが第1の状態にある超音波システムの実施形態の概略図である。例示的なシステム2は、超音波システム6と、物質4を通過して物体20の画像を得ることができる物体活性化サブシステム30とを含む。限定するものではないが、対象物20は、医療治療で使用できるガイドワイヤなどのワイヤであってもよい。媒体としての物質4は、身体組織又は超音波が通過できる他の物質であり得る。物質4は、多くの場合、物体が通過できる通路を有する。周囲の壁を有する通路が図に示され、物質4の本明細書の例として説明される。物質が通路に限定されないことを理解した上で、本明細書では「通路4」と呼ぶこともある。そして、本発明は、通路のない用途において機能することもできる。
【0025】
システム2は一般に、トランスデューサ8を含む一般に受け入れられる構成要素を含むことができる。システム2は一般に、トランスデューサ8を含む一般に受け入れられている構成要素を含むことができる。トランスデューサ8は、超音波の周波数(したがって波長)に応じて異なる深さまで超音波を物質内4に送信する。波に垂直な断面幅は、一般に反射面である。オブジェクトの実際の幅が波面に対して垂直でない場合、波面に対する角度のミスアライメントを考慮した投影幅を決定することができる。(図において、幅「W」は、回転平面の視点から、トランスデューサが波を生成する方向に示し、2D図における様々な幅を示している。概念的には、入ってくる波の方向、つまり波に対して垂直な方向を向くように図に回転させることができる)。この実施形態では、第1の幅W1は、超音波波面に対して法線方向から見た、意図される活性化のない物体の幅を意味する。コントローラ10は、電源12からの電力の適用を制御する。電源12からの電力は、一般に、エネルギーパルスとして送信機/受信機スイッチに供給される。送信機/受信機スイッチは、エネルギーパルスをトランスデューサ8に送信し、トランスデューサから反射波及び/又は透過波を受信するために用いられる。コントローラ10はまた、生成された波を処理し、一般に視覚画像を表示するディスプレイである結果出力14に情報を提供するためのプロセッサを含むことができる。
【0026】
物体活性化サブシステム30は、コントローラ32を含むことができ、コントローラ32は、電源34から物体20へのエネルギーの印加を制御して、以下に説明するように物体を活性化する。図1Aでは、物体20は、ヌル(null)エネルギーレベル36にあって、すなわち、エネルギーが印加されていない、又は物体の設計された動きを引き起こさないレベルのエネルギーが印加されているエネルギーレベルにある。ヌルエネルギーレベルでは、物体は、第1の状態位置44を有する第1の状態にあることができる。物体20を、手動、ロボット、遠隔、及び他の方法によって、物質4内に前進させることができる。
【0027】
図1Bは、物体が第2の状態にある図1Aの実施形態の概略図である。図1Cは、物体にエネルギーを印加するための例示的なパルス形態である。物体は、第1の状態位置でヌルエネルギーレベルにあり、当該状態では、物体が設計されたSMAモーションにアクティブ化されていない。物体20のヌルエネルギーレベル36から、物体活性化サブシステム30は、活性化エネルギーレベル38を物体20に適用して、第2の状態位置46を有する第2の状態へ物体の変形を引き起こすことができる。エネルギーパルスは、活性化エネルギーレベルで変形を引き起こすことができる。エネルギーを停止又は少なくとも減少させることにより、物体がヌルエネルギーレベルの第1の状態に戻ることができ、物体は第1の状態位置44に戻ることが可能である。物体の動きは、ヌルエネルギーレベルにあるときに物体が占める幅W1よりも大きい幅W2を有する領域にわたって発生する。エネルギーパルスが繰り返されると、物体の動きは、第1の状態の位置44と第2の状態の位置46との間で複数のサイクルで発生する。超音波は、物体の動きと超音波の周波数とによって、第1の状態位置44と第2の状態位置46とで物体に遭遇することができる。物体の動きによる第1状態位置および第2状態位置からの超音波反射を用いて、第1状態での物体の超音波画像よりも明るい第2状態での物体の超音波画像を生成することができる。このような実施形態では、第1の状態位置と第2の状態位置との間の動きを包含するより大きい幅W2は、超音波によって画像化される物体の見かけの幅となることができる。したがって、第1の状態位置と第2の状態位置との間の物体の移動によって、より明るい画像を生成することができる。
【0028】
前述したように、特定の周波数でエネルギーパルスを発生させることで、物体の動きの効果を得るのに有利であり得る。超音波の周波数に合わせてタイミングを合わせると、物体のより大きな動きを画像化することができる。画像を繰り返すことで、物体をより明確に検出する機能を向上させることができる。
【0029】
図2Aは、検出される例示的な物体が第1の状態にある超音波システムの別の実施形態の概略図である。この実施形態では、機能及びシステムは上述した説明と同様である。ただし、物体20及び物体活性化システム30は、ワイヤが2ウェイSMA材料(2-way SMA material)から作製され得る点において、図1A及び図1Bの実施形態とは異なる。2ウェイSMA材料は、異なるエネルギーレベルで、異なる温度の、ワイヤとして示されている同一の物体20の2つの活性化形状を有する。ワイヤは、異なる温度で異なる方向に移動することができる。図示していないが、ワイヤは、異なる部分を異なる温度で変形させるように作製することができる。したがって、物体活性化システム30は、2つの活性化エネルギーレベルを提供及び制御することができる。示されているように、第1の状態において、物体20は、第1の状態位置44において第1の状態のヌルエネルギーレベルにあり得る。したがって、幅W1は、トランスデューサによって生成された超音波に面する物体の断面の幅(すなわち、波に対して垂直な方向)である。また、幅W1は、超音波システム6からの波によって決定するのが難しい場合がある。
【0030】
図2Bは、物体が第2の状態にある図2Aの実施形態の概略図である。図2Cは、図2Bの物体にエネルギーを印加するための例示的なパルス形態である。物体は、第1の状態のヌルエネルギーレベル36から、物体活性化サブシステム30によって第1の活性化エネルギーレベル38又はより低い第2の活性化エネルギーレベル40までエネルギーを与えられて、第2の状態に変化することができる。活性化エネルギーレベルに応じて、物体の形状は、図2Aの第1の状態から、図2Bに示す第2の状態の位置46A又は第2の状態の位置46Bのいずれかになるように第2の状態に変化することができる。少なくとも1つの実施形態では、第1の活性化エネルギーレベル38と第2の活性化エネルギーレベル40との間で交互するパルスは、ワイヤを横方向において反対方向に移動させて、第1の状態でのW1よりも大きい見かけの幅W2を作り出すことができる。これによって、物体は、より広い範囲から超音波を反射することができる。第2の状態で反射された超音波から生成された超音波画像は、第1の状態での物体の超音波画像よりも明るく見える。適用されるエネルギーレベルは、具体的なSMA材料によって異なる。
【0031】
図3Aは、検出される例示的な物体が第1の状態にある超音波システムの別の実施形態の概略図である。この実施形態では、機能及びシステムは上述した説明と同様である。ただし、物体20及び物体活性化システム30は、物体20が2本のワイヤ20A及び20Bとして示された複数のワイヤから形成され得る点において、前述した実施形態とは異なる。各ワイヤは、同じ又は異なる活性化エネルギーレベルでの記憶形状を有することができる。したがって、物体活性化システム30は、単独で、又は他のワイヤと組み合わせて、各ワイヤの活性化エネルギーレベルを提供及び制御することができる。示されているように、第1の状態において、物体20は、第1の状態位置44においてヌルエネルギーレベル36にある。したがって、第1の幅W1は、複数のワイヤ20A及びワイヤ20Bの断面を合わせた、超音波に対して垂直な方向における物体の幅であり、第1の幅W1を有する物体は、超音波システム6からの超音波によって決定するのが難しい場合がある。
【0032】
図3Bは、物体が第2の状態にある図3Aの実施形態の概略図である。図3Cは、図3Bの物体にエネルギーを印加するための例示的なパルス形態である。物体活性化サブシステム30は、ワイヤ20Aとワイヤ20Bとの少なくとも1つ、例えば、ワイヤ20Aに対してエネルギーを与えることによって、ヌルエネルギーレベル36から活性化エネルギーレベル38まで物体20にエネルギーを与えることができる。活性化により、ワイヤ20Aの形状は、図3Aの第1の状態から、図3Bに示す第2の状態位置46Aを有する第2の状態に変化することができる。物体活性化サブシステム30は、ワイヤ20Aへのエネルギーを停止し、ヌルエネルギーレベル36から活性化エネルギーレベル38までワイヤ20Bにエネルギーを与えることができる。活性化により、ワイヤ20Bの形状は、図3Aの第1の状態から、図3Bに示す第2の状態位置46Bを有する第2の状態に変化することができる。ワイヤ20Aとワイヤ20Bとは、横方向において反対方向に移動して、物体の見かけの幅W2を増大させて超音波応答を大きくし、第1の状態と第2の状態との間の物体超音波画像の差異を増大させることができる。あるいは、物体活性化サブシステム30は、同時移動するようにワイヤ20Aとワイヤ20Bとの両方を同時に活性化することができ、このとき、図3Cのパルス形態は同期的である。
【0033】
図4Aは、検出される例示的な物体が第1の状態にある超音波システムの別の実施形態の概略図である。この実施形態では、図1A及び図1Bで説明した実施形態と類似である。ただし、この実施形態では、物体20は、活性化されるとねじれてらせんコイルになるように形成することができる。物体20は、第1の状態位置44を有するヌルエネルギーレベルでの第1の状態にあり得る。物体20が通路4内で長手方向に進むとき、超音波システムは、超音波に対して垂直方向においてワイヤの断面の第1の幅W1を有する物体20に対して、位置決め及び表示をすることが難しい場合がある。
【0034】
図4Bは、物体が第2の状態にある図4Aの実施形態の概略図である。図4Cは、図4Bの物体にエネルギーを印加するための例示的なパルス形態である。物体活性化サブシステム30は、物体を第2の状態に活性化させるように、エネルギーを物体に印加することができる。物体20は、第2の状態位置46を有するらせんコイルにねじれることができるため、コイル形状の物体の見かけの幅W2は、超音波システム6によって、より明るく識別され、より容易に検出することができる。
【0035】
また、図4Aから図4Cに示す実施形態は、物体の長さに沿った1つ又は複数の部分において第2の状態が生じ得ることを示し、また、第2の状態が生じる部分は、物体の先頭部分又は先頭先端には限定されない。
【0036】
図5Aは、検出される例示的な物体が第1の状態にある超音波システムの別の実施形態の概略図である。この実施形態は、物体超音波サブシステム16を含み、当該物体超音波サブシステム16は、トランスデューサ8を備える超音波システム6について説明したのと同様の方法で、トランスデューサ22を有する物体20を制御及び操作する。トランスデューサを有する物体20は、第1の状態位置44における第1の状態にある。当該物体20は、トランスデューサ8から遠位にあって、したがって、超音波システム6により感知される十分なエネルギーを有さず、物体を決定するのが難しい場合がある。
【0037】
図5Bは、物体が第2の状態にある図5Aの実施形態の概略図である。物体トランスデューサ22が超音波システム6に近接するように通路内で長手方向に移動すると、物体トランスデューサ22からの超音波は、第2の状態位置46における第2の状態において、超音波システム6によって感知されるのに十分なエネルギーを有する。トランスデューサ22の音波は、着信ビーコン信号として超音波システム6によってより容易に受信される。第1の状態位置から第2の状態位置への移動、及びそれに伴う第2の状態における物体トランスデューサ22からの超音波の放出により、超音波システム6により、第1の状態での物体の超音波画像と比較して、物体のより明るい超音波画像を得ることができる。
【0038】
(縦方向の動き)
ガイドワイヤの縦方向の動きは、横方向の動きと同様の方法で動的スペックルの変動を引き起こすことができる。物体の検出は、物体に適用される活性化エネルギーとは独立して行うことができる。超音波システムは、周囲の組織や骨などの構造を検出できるが、小さな物体は散乱したスペックルとして表示され、明確でないスペックルとなる。ただし、物体の第1の状態と第2の状態との間の移動により、異なる時間でのスペックル出力を比較することにより、動的スペックルを利用して小さな物体を検出することができる。このとき、物体が超音波システムの視野に入る前は、スペックルパターンが均一である。
【0039】
(例示的な縦方向システムの実施形態)
図6Aは、検出される例示的な物体が第1の状態にある超音波システムの別の実施形態の概略図である。この実施形態では、物体20の検出は、物体に印加される活性化エネルギーとは無関係である。物体20は、物体の長さに沿って変化する断面形状を含むことができる。ワイヤは、ワイヤの長さに沿って設定された周期でねじることができる。物体の縦方向の動き(前進又は後退)によって、超音波イメージングにおいて断面が変化するように見え、反射も変化する。図6Aに示すように、第1の状態位置44にある第1の状態の物体は、超音波システム6下に検出のための狭い断面幅W1を示すが、そのサイズでは検出が難しい場合がある。
【0040】
図6Bは、物体が第2の状態にある図6Aの実施形態の概略図である。物体20が長手方向に移動し、通路4内の第2の状態位置46を有する第2の状態にあるとき、物体の断面が増加する。第2の状態位置46では、第1の状態位置44での第1の幅W1とは異なり、第2の状態では超音波画像においてより容易に検出されるより大きな幅W2が超音波システム6に提示される。
【0041】
図7Aは、検出される例示的な物体が第1の状態にある超音波システムの別の実施形態の概略図である。この実施形態では、物体20の検出は、物体に印加される活性化エネルギーとは無関係である。物体20は、同じ幅のままである。物体20が縦方向に移動してトランスデューサの視野に入る前に、第1の状態位置44における第1の状態にあり、スペックルは均一である。また、物体が視野内にあるが、第1状態位置での第1状態で静止している場合に、スペックルは一定である。第1ポテンシャル状態と第1状態位置とのいずれの場合でも、スペックルは物体を検出する又は特徴付けるのに十分な情報を提供しない可能性がある。
【0042】
図7Bは、物体が第2の状態にある図7Aの実施形態の概略図である。物体20が第2の状態位置46の第2の状態で超音波システム6の視界に入ると、進行性画像間の比較は、移動しなければ明確でないスペックルに対し、スペックルの変化を示すことができる。物体の先端部分、例えば、ワイヤの先端などが縦方向に移動し、超音波トランスデューサに近づくと、二次ローブのスペックル散乱によるフリカ(flicker)が、超音波出力に潜在的な顕著な影響を与えることができる。最終的に、先端が視野に入ると、異なるスペックルパターンが生成される。この動的スペックルパターンを検出して特徴付けることができるため、物体の位置を特定するために利用することができる。物体が縦方向に進み続けると、進行性画像の連続的な分析により、物体、位置、及びその他の特徴付けの側面によって引き起こされるスペックルを検出することができる。
【0043】
物体20の前後方向の往復運動は、反射超音波の差異を増大させ、それによって、作成される超音波画像の明るさを増加させる。
【0044】
図8Aは、検出される例示的な物体が第1の状態にある超音波システムの別の実施形態の概略図である。この実施形態では、物体20は、超音波システム6のドップラー超音波を利用することによって検出することができる。ドップラー超音波は、超音波を使用して、一般に動脈や静脈などの通路を通過する血液又は他の流体の流れ42の量を測定する検査である。この実施形態では、物体は、第1の状態位置44での第1の状態では、超音波システム6のトランスデューサ領域から離れている場合がある。通路4を通る流体の流れ42は、流れに影響を与える超音波システム6の視野に物体が近接することなく、第1の状態で検出することができる。流体の流れ42に識別可能な影響がないため、第1の状態での超音波画像は物体を明らかにしない場合がある。
【0045】
図8Bは、物体が第2の状態にある図8Aの実施形態の概略図である。第2の状態では、物体20は、超音波システム6の視野内に進み、第2の位置46にある。このとき、流体の流れ42Aは、物体20の周りで分割される。流路内に物体の断面積が存在することによって流れ面積が減少し、流速の増加が生じる。流れが先端を通過した後、流れ面積が物体によって制限されなくなるため、流れが急速に収束する。このとき、フール流れ面積となり、流れが減速した流速で流れる。第1の状態位置44と第2の状態位置46との間の物体の動きによる差異は、ドップラー超音波によって、先端(又は場合によっては物体20の他の前縁)の存在を決定できることに繋がる。
【0046】
通路などの物質4は一般にコンスタントな位置を有するため、物体20が個別の画像上で決定されなくても、スペックルの変化によって、物体20の位置及び動きを示すことができる。このような決定は、人間の目による目視検査では容易に達成できない場合がある。本発明は、複数のデジタル画像のデジタルマップをスキャンするスキャナ又は他の入力装置想定し、マップの様々な部分、例えば、進行性画像間で同じマップ座標内のピクセル又はピクセルのグループごとによる部分等の値をデジタル的に比較することができる。変化するスペックルの経路を示す差異、特に漸進的な差異は、物体20の検出及び特徴付けのより大きな可能性を提供することができる。この態様は、例として本明細書に記載された実施形態のいずれにも適用でき、より一般的に本発明に適用することができる。
【0047】
少なくとも1つの実施形態では、システムは、脳卒中及び癌などの神経血管状態の治療のためのロボット制御の外科用ガイドワイヤを含むことができる。システムはまた、ガイドワイヤに結合された先端内に、圧力、音響、電気、化学、及び光学センサなどの複数のセンサを含むことができる。例えば、圧力センサは血餅や腫瘍を検出するために使用でき、電気センサは電気的に誘導された化学反応を引き起こし、血餅を溶解し、腫瘍を破壊することができる。
【0048】
図9Aは、身体組織内に超音波応答を接近する物体がない物質内の通路を示す、端面から見た超音波画像である。図9Bは、別の時間における図9Aの超音波画像であって、超音波システムの範囲内に入った物体を示すスペックルが追加されている。図9Cは、別の異なる時間における図9Aの超音波画像であり、スペックルは、図9Bと比較して通路の異なる位置にある物体を示している。コンセプトテストは、身体組織物質4をシミュレートするために、内部に通路が形成された主にゼラチン/水混合物で行われた。物体20、特にこれらのテストでは、ガイドワイヤを物質内に挿入し、前述した超音波システムを配置して、物体20が超音波システムの視野に入ったときに物体20を記録した。これらのテストに使用された例示的な実施形態は、一般に、図7A及び図7Bで論じたシステム及び方法に対応する。通路は端面図として示されている。図9Aの画像は、物体から独立した物質からの反射18のスペックルを示している。物体は、第1の状態では遠すぎるため超音波検知されない、又は第1の状態では小さすぎて検出できない。スペックルとしての内部反射18は、図の向きにおいては、通路の上部及び下部(すなわち、12時及び6時の位置)に示されている。図9A図9B、及び図9Cでは、12時及び6時の位置における内部反射が均一のままであるため、物体が視野範囲内に進められたときの画像の違いを分析することで、物体の検出が可能になり、当該違いは、物体を特徴付けるために使用することができる。図9Bでは、図9Aとのスペックルの違いは、通路の内壁に隣接する3時の位置に集中したスペックルのグループである。図9Cでは、図9A及び図9Bとのスペックルの違いは、通路の壁に隣接する11時の位置に集中したスペックルのグループである。
【0049】
驚くべきことに、これらの画像は全て、周波数が7.5MHzで、1/4インチ(0.6cm)の通路内の100μmのワイヤである小さなサブ波長物体を使用して生成されたものである。7.5MHzの超音波の波長は、ワイヤを取り囲む物質内では約200μm である。ワイヤの100μmの断面は、超音波波長の約半分であるが、それでも本超音波システムは当該ワイヤを検出することができた。このテストは、断面積が125μm、150μm、及び250μmのより大きなワイヤに対して実行され、予想通り、断面積が小さな100μmのワイヤと少なくとも同様に成功した。
【0050】
要約すると、本システムは、スペックルパターンの使用を含み、他の方法では識別できない物体からの超音波反射を検出するように設計することができ、又は、ドップラーフローを使用して、サブ波長物体の位置を特定することができる。
【0051】
更に、本明細書に記載の原理は、通路としての血管内ナビゲーション、並びに他の通路及び体の他の部分、並びに他の撮像モダリティの解像度に適用することができる。この原理は、超音波検出を助長する他の物質、更には非有機物質にも適用することができる。様々な利点の中でも、精度の向上により、他の組織の損傷を最小限に抑えるか又は回避しながら、ナビゲーション速度を向上させることができる。
【0052】
上述した本発明の1つ又は複数の態様を利用する他の、及び更なる実施形態は、特許請求の範囲で規定される開示された発明から逸脱することなく考え出すことができる。例えば、他の実施形態は、他のサブ波長物体、不均一な断面、先端とガイドワイヤとの間の材料のバリエーション、横方向及び縦方向の動きを引き起こす方法のバリエーション、並びに特許請求の範囲内で上記具体的に開示されたもの以外のバリエーションを含むことができる。
【0053】
本発明は、好ましい実施形態及び他の実施形態の文脈で説明されてきたが、本発明の全ての実施形態が説明されているわけではない。説明された実施形態に対する明らかな修正及び変更は、当業者に利用可能である。開示及び非開示の実施形態は、出願人が思いついた発明の範囲又は適用可能性を限定若しくは制限することを意図するものではなく、特許法に従って、出願人は、以下の特許請求の範囲内に含まれる全てのそのような修正及び改良を完全に保護することを意図している。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
【国際調査報告】