(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】発光コンポーネント、発光デバイス及びシート状材料
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20230627BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230627BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20230627BHJP
C09K 11/61 20060101ALI20230627BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20230627BHJP
C09K 11/66 20060101ALI20230627BHJP
C09K 11/70 20060101ALI20230627BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
H01L33/50
G02B5/20
G02F1/13357
C09K11/61
C09K11/88
C09K11/66
C09K11/70
G02B5/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570162
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2021063671
(87)【国際公開番号】W WO2021234154
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514211884
【氏名又は名称】アファンタマ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ノルマン アルベルト リューヒンガー
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
2H391
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA12
2H042BA20
2H148AA07
2H148AA19
2H391AA03
2H391AA15
2H391AB04
2H391AB06
2H391AB34
2H391AC13
2H391AC26
4H001CC14
4H001XA03
4H001XA09
4H001XA11
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA15
4H001XA19
4H001XA21
4H001XA22
4H001XA31
4H001XA32
4H001XA34
4H001XA35
4H001XA37
4H001XA39
4H001XA40
4H001XA41
4H001XA48
4H001XA49
4H001XA50
4H001XA55
4H001XA57
4H001XA64
4H001XA82
4H001XB11
4H001XB72
4H001YA25
5F142AA22
5F142DA13
5F142DA22
5F142DA46
5F142DA48
5F142DA64
5F142DA73
5F142GA12
5F142GA14
(57)【要約】
青色光(aa)を放出するための光源(10)と、赤色蛍光体を含む第1の層(1)と、ルミネッセント結晶(20)を含む第2の層(2)とを含む発光コンポーネント。光源(10)により放出された光を吸収すると、ルミネッセント結晶(20)は、緑色光スペクトル内の波長の光(cc)を放出する。第1の層(1)は、光源(10)に隣接して配置されている。第2の層(2)は、第1の層(1)から離間して配置されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む発光コンポーネント:
- 青色光(aa)を放出するための光源(10);
- 赤色蛍光体を含む第1の層(1)、
ここで、
○ 前記青色光(aa)を吸収すると、前記赤色蛍光体は、赤色光スペクトル内の光(bb)を放出し、
○ 前記第1の層(1)は、前記光源(10)に隣接して配置されている;及び
- 第2の層(2)、
ここで、前記第2の層(2)は、ルミネッセント結晶(20)、固体ポリマー及び散乱粒子を含み、
○ 前記ルミネッセント結晶(20)はペロブスカイト構造を有するものであり、
○ 前記光源(10)により放出された光を吸収すると、前記ルミネッセント結晶(20)は、緑色光スペクトル内の波長の光(cc)を放出し、
○ 前記ルミネッセント結晶(20)及び前記散乱粒子は、前記固体ポリマー中に埋め込まれており、
○ 前記第2の層(2)は、20≦h
2≦70%のヘイズh
2を有し、
前記第2の層(2)は、前記第1の層(1)から離間して配置されている。
【請求項2】
前記ルミネッセント結晶は、架橋された固体ポリマー中に埋め込まれている、請求項1に記載の発光コンポーネント。
【請求項3】
以下を含む発光コンポーネント:
- 青色光(aa)を放出するための光源(10);
- 赤色蛍光体を含む第1の層(1)、
ここで、
○ 前記青色光(aa)を吸収すると、前記赤色蛍光体は、赤色光スペクトル内の光(bb)を放出し、
○ 前記第1の層(1)は、前記光源(10)に隣接して配置されている;及び
- 第2の層(2)、
ここで、前記第2の層(2)は、ルミネッセント結晶(20)及び架橋された固体ポリマーを含み、
○ 前記ルミネッセント結晶(20)はペロブスカイト構造を有するものであり、
○ 前記光源(10)により放出された光を吸収すると、前記ルミネッセント結晶(20)は、緑色光スペクトル内の波長の光(cc)を放出し、
○ 前記ルミネッセント結晶(20)は、前記架橋された固体ポリマー中に埋め込まれており、
○ 前記第2の層(2)は、20≦h
2≦70%のヘイズh
2を有し、
前記第2の層(2)は、前記第1の層(1)から離間して配置されている。
【請求項4】
前記ルミネッセント結晶(20)は、下記式(II)の化合物から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の発光コンポーネント:
[M
1A
1]
aM
2
bX
c (II)
ここで、
A
1は、1又は2種以上の有機カチオン、好ましくはホルムアミジニウムを表し、
M
1は、1又は2種以上のアルカリ金属を表し、
M
2は、M
1以外の1又は2種以上の金属、特にPbを表し、
Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物及び硫化物からなる群から選択された1又は2種以上のアニオン、特にBrを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
M
1又はA
1のいずれか、あるいは、M
1及びA
1が存在する。
【請求項5】
請求項4に記載の発光コンポーネントであって、
○ M
2がPbを表し、
○ Pbの濃度が、5~200mg/m
2、特に10~100mg/m
2、非常に特に20~80mg/m
2である、
請求項4に記載の発光コンポーネント。
【請求項6】
前記赤色蛍光体が、In又はCdに基づくコア-シェル量子ドット、特に、それぞれInP(III)又はCdSe(IV)に基づくコア-シェル量子ドットの1種以上から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項7】
前記赤色蛍光体が、下記式(I)、好ましくは下記式(I``)の、Mn
4+がドープされた蛍光体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の発光コンポーネント:
[A]
x[MF
y]:Mn
4+ (I)
(式中、
Aは、Li、Na、K、Rb、Cs又はそれらの組み合わせを表し、
Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd又はそれらの組み合わせを表し、
xは、[MF
y]イオンの電荷の絶対値を表し、
yは、5、6又は7を表す。)
K
2SiF
6:Mn
4+ (I``)。
【請求項8】
前記固体ポリマーはアクリレートを含み、特に、環状脂肪族アクリレートからなる群から選択された反復単位を含むか、もしくは環状脂肪族アクリレートからなる群から選択された反復単位からなり、特に、及び/又は、
前記アクリレートは、単官能性アクリレートモノマー及び多官能性アクリレートモノマーから選択された反復単位を含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項9】
前記固体ポリマーは、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比が、<0.9、好ましくは<0.4、好ましくは<0.3、最も好ましくは<0.25であることにより特徴付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項10】
前記固体ポリマーは、T
g≦120℃、特にT
g≦100℃、特にT
g≦80℃、特にT
g≦70°のガラス転移温度T
gを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項11】
前記固体ポリマーは、シート状ポリマーとして構成されており、及び/又は前記固体ポリマーは2つのバリア層の間に挟まれている、請求項1~10のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の発光コンポーネントを含む発光デバイス、特に液晶ディスプレイ(LCD)。
【請求項13】
前記発光コンポーネントが、
- 2つ以上の光源のアレイであって、各光源が各自の隣接する第1の層(1)を有する複数の光源のアレイ、
- 前記アレイに対して離間して配置された1つの第2の層(2)、及び
- 前記第1の層(1)と前記第2の層(2)の間に配置された拡散板(3)、
を含み、
特に、前記アレイは、実質的に全液晶ディスプレイ領域をカバーする、
請求項12に記載の発光デバイス。
【請求項14】
前記アレイの前記光源の1つ以上が、それぞれ、f≧150Hz、特にf≧300Hz、非常に特にf≧600Hzの周波数fでオンとオフを切り替えられるように適合されている、請求項12又は13に記載の発光デバイス。
【請求項15】
ポリマー中に埋め込まれたルミネッセント結晶(20)を含む自立フィルムであって、
前記ルミネッセント結晶(20)は、ペロブスカイト構造を有するものであり、放出光よりも短い波長の光による励起に応答して緑色光(cc)及び/又は赤色光(bb)を放出し、
前記自立フィルムは、20≦h
2≦70%、特にh
2<80%、特に<70%、非常に特に<60%のヘイズh
2を有する、
自立フィルム。
【請求項16】
前記ポリマーは、散乱粒子を含む、請求項15に記載の自立フィルム。
【請求項17】
前記ルミネッセント結晶(20)は、架橋された固体ポリマー中に埋め込まれている、請求項15又は16に記載の自立フィルム。
【請求項18】
前記ルミネッセント結晶(20)は、下記式(II)の化合物から選択される、請求項15~17のいずれか一項に記載の自立フィルム:
[M
1A
1]
aM
2
bX
c (II)
ここで、
A
1は、1又は2種以上の有機カチオン、好ましくはホルムアミジニウムを表し、
M
1は、1又は2種以上のアルカリ金属を表し、
M
2は、M
1以外の1又は2種以上の金属、特にPbを表し、
Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物及び硫化物からなる群から選択された1又は2種以上のアニオン、特にBrを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
M
1又はA
1のいずれか、あるいは、M
1及びA
1が存在する。
【請求項19】
請求項18に記載の自立フィルムであって、
○ M
2がPbを表し、
○ Pbの濃度が、5~200mg/m
2、特に10~100mg/m
2、非常に特に20~80mg/m
2である、
請求項18に記載の自立フィルム。
【請求項20】
前記固体ポリマーはアクリレートを含み、特に、環状脂肪族アクリレートからなる群から選択された反復単位を含むか、もしくは環状脂肪族アクリレートからなる群から選択された反復単位からなり、特に、及び/又は、
前記アクリレートは、単官能性アクリレートモノマー及び多官能性アクリレートモノマーから選択された反復単位を含む、
請求項16~19のいずれか一項に記載の自立フィルム。
【請求項21】
前記固体ポリマーは、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比が、<0.9、好ましくは<0.4、好ましくは<0.3、最も好ましくは<0.25であることにより特徴付けられる、請求項16~20のいずれか一項に記載の自立フィルム。
【請求項22】
前記固体ポリマーは、T
g≦120℃、特にT
g≦100℃、特にT
g≦80℃、特にT
g≦70°のガラス転移温度T
gを有する、請求項16~21のいずれか一項に記載の自立フィルム。
【請求項23】
前記固体ポリマーは、シート状ポリマーとして構成されており、及び/又は前記固体ポリマーは2つのバリア層の間に挟まれている、請求項16~22のいずれか一項に記載の自立フィルム。
【請求項24】
請求項15~23のいずれか一項に記載の自立フィルムを含む発光デバイス、特に液晶ディスプレイ(LCD)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の態様において、発光コンポーネントに関し、第2の態様において、発光コンポーネントを含む発光デバイスに関し、第3の態様において、シート状材料に関する。
【背景技術】
【0002】
最新の液晶ディスプレイ(LCD)又はディスプレイコンポーネントは、量子ドットに基づくコンポーネントを含む。特に、かかるLCDのバックライトコンポーネントは、赤色、青色及び緑色の光からなるRGBバックライトを含むことがある。今日、かかるバックライトコンポーネントのバックライト色を生成させるために、典型的には、量子ドット粒子が使用されている。
【0003】
かかるコンポーネントの製造は様々な課題に直面している。1つの課題は、コンポーネント中へのナノ結晶の埋め込みである。複数の量子ドットの異なる化学的性質のために、複数の量子ドットを構成する様々な埋め込まれた材料間で、あるいは同一材料中に埋め込まれた複数の量子ドット間でさえも、不適合性(incompatibilities)が生じるおそれがある。かかる不適合性は、ディスプレイコンポーネント中の材料の劣化を招き、そのため、かかるディスプレイの寿命が影響を受けるおそれがある。
【0004】
ルミネッセント結晶に基づくコンポーネントは、安定性及び輝度に関する課題にしばしば直面し、これらのコンポーネントの良好な安定性及び高い表示輝度を達成することは困難である。
【0005】
この文脈での光変換係数(light conversion factor)は、自立フィルムから垂直方向に放出された緑色光強度と、自立フィルムの垂直方向で減衰(例えば、吸収、反射又は散乱により)した青色光強度との間の比を指す。
【0006】
ディスプレイの輝度に関連する重要な値は透過ヘイズ(transmission haze)であり、透明又は部分的に透明な材料(本発明における自立フィルム)を通過する際に、法線入射方向から2.5°を超える角度で広角散乱(ASTM D1003により測定;例えば、BYK Gardnerヘイズメーターを用いて)を受けた光の量を指す。
【0007】
低ヘイズの技術的効果は、ヘイズがより低いほど、自立フィルムの「光変換係数」(LCF)として測定されるディスプレイ輝度がより高くなるという事実である。
【0008】
欧州特許出願公開第3 296 378号明細書(A1)には、コンポジットルミネッセント材料が開示されている。このコンポジットルミネッセント材料は、マトリックスと、ペロブスカイトナノ粒子を含む。ペロブスカイトナノ粒子は、マトリックス中に分散されており、ペロブスカイトナノ粒子に対するペロブスカイトナノ粒子マトリックスの質量比は1:(1~50)である。有機溶媒系の蒸発条件を制御することで、使用したポリマーマトリックスの結晶化、添加剤の配置、ペロブスカイトナノ粒子の核生成及び成長を制御することができる。この材料のヘイズは、主に、使用されたポリマーの部分的結晶化によるものである。ここでのヘイズは、使用されたポリマーの固有の特性である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、発光コンポーネント、特にLCDディスプレイの発光コンポーネントにおける量子ドット材料の不適合性を防止する方法で製造される発光コンポーネントを提供することである。さらに、本発明は、安定性及び輝度の点で、先行技術の欠点を克服するものである。
【0010】
本発明を以下で詳細に説明する。本明細書に提示/開示する様々な実施形態、選好性及び範囲は、自在に組み合わされてもよいことが理解されるべきである。さらに、具体的な実施形態に応じて、選択した定義、実施形態又は範囲が適用されないことがある。
【0011】
特に断らない限り、以下の定義が本明細書で適用される:
【0012】
本発明の文脈で使用される語句「a」、「an」、「the」及び類似の語句は、本開示において特に断らない限り、又は、文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると理解されるべきである。さらに、用語「含む」又は「含有する」(containing)は、「含む」(comprising)と「実質的に・・・からなる」(essentially consisting of)及び「からなる」(consisting of)の全てを包含する。百分率は、本開示で特に断らない限り、又は分脈と明らかに矛盾しない限り、質量%として示されている。「独立に」は、1つの置換基/イオンが、名称を挙げた置換基/イオンのうちの1つから選択できること、又は上記のものの1つより多くのものの組み合わせであることができる。
【0013】
用語「蛍光体(phosphor)」(LC)は、当該技術分野で知られており、ルミネッセンス(luminescence)の現象を示す材料、特に蛍光性材料(fluorescent materials)に関する。したがって、赤色蛍光体は、610~650nmの範囲内、例えば、およそ630nmを中心とした範囲内でルミネッセンスを示す材料である。したがって、緑色蛍光体は、500~550nmの範囲内、例えば、およそ530nmを中心とした範囲内でルミネッセンスを示す材料である。典型的には、蛍光体は無機粒子である。
【0014】
用語「ルミネッセント結晶」(LC)は、当該技術分野で知られており、半導体材料製の3~100nmの結晶に関する。この用語は、量子ドット、典型的には2~15nmの範囲内の量子ドットと、ナノ結晶、典型的には15nmよりも大きく、最大で100nmまで(好ましくは最大で50nmまで)の範囲内のナノ結晶とを包含する。好ましくは、ルミネッセント結晶は、おおよそ等軸晶系(isometric)(例えば球晶又は立方晶系)である。3つの直交軸の寸法すべてのアスペクト比(最長:最短方向)が1~2である場合は、粒子はおおよそ等方的であると見なされる。したがって、LCの集合は、好ましくは50~100%(n/n)、好ましくは66~100%(n/n)、より好ましくは75~100%(n/n)の等軸晶系結晶を含む。
【0015】
LCは、その用語が示すように、ルミネッセンスを示す。本発明の文脈において、ルミネッセント結晶なる用語は、単結晶性粒子と多結晶性粒子の両方を包含する。後者の場合、1つの粒子は、結晶性又はアモルファスの相境界により接続された幾つかの結晶ドメイン(グレイン(grains))から構成されていてもよい。ルミネッセント結晶は、直接バンドギャップ(典型的には1.1~3.8eV、より典型的には1.4~3.5eV、よりいっそう典型的には1.7~3.2eVの範囲内)を示す半導体材料である。このバンドギャップ以上の電磁放射線を照射することによって、価電子帯の電子が伝導帯に励起されて、電子正孔(electron hole)が価電子帯に残る。形成された励起子(電子-電子正孔対)は、次に、LCバンドギャップ値を中心とした最大強度で、フォトルミネッセンスの形で放射再結合し、少なくとも1%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。外部の電子及び電子正孔源と接触すると、LCはエレクトロルミネッセンスを示すことができる。
【0016】
用語「量子ドット」(QD)は知られており、特に、半導体ナノ結晶に関連し、半導体ナノ結晶は典型的には2~15nmの直径を有する。この範囲では、QDの物理的半径は、バルク励起ボーア半径(bulk excitation Bohr radius)よりも小さく、量子閉じ込め効果が優勢になる。その結果、QDの電子状態は、QDの組成及び物理的サイズの関数であり、それゆえ、バンドギャップは、QDの組成及び物理的サイズの関数であり、すなわち吸収/発光の色はQDのサイズと関連している。QDのサンプルの光学的品質は、それらの均質性と直接関連する(より単分散性のQDであるほど、発光のFWHM(半値全幅)はより小さい)。QDがボーア半径よりも大きなサイズに達すると、量子閉じ込め効果が妨げられ、励起子再結合のための無輻射経路が支配的になるので、サンプルはもはやルミネッセントでないことがある。したがって、QDはナノ結晶の特定のサブグループであり、特にそのサイズ及びサイズ分布によって定義される。
【0017】
用語「ペロブスカイト結晶」は知られており、特に、ペロブスカイト構造の結晶性化合物を包含する。かかるペロブスカイト構造はそれ自体知られており、一般式M1M2X3(式中、M1は配位数12(cuboctaeder)のカチオンであり、M2は配位数6(octaeder)のカチオンであり、Xは、格子の立方晶、擬立方晶、正方晶又は斜方晶位置にあるアニオンである。)の立方晶、擬立方晶、正方晶又は斜方晶の結晶として記述される。これらの構造において、選択されたカチオン又はアニオンは他のイオン(確率的に又は正規に最大30原子数%まで)により置き換えられてもよく、それによって、まだその元の結晶構造を維持しているドープされたペロブスカイト又は非化学量論的ペロブスカイトがもたらされる。かかるルミネッセント結晶の製造は、例えば国際公開第2018/028869号から知られている。
【0018】
用語「ポリマー」は知られており、反復単位(「モノマー」)を含む有機及び無機の合成物質を包含する。ポリマーなる用語は、ホモポリマーコポリマーを包含する。さらに、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーも包含される。文脈に応じて、ポリマーなる用語は、そのモノマー及びオリゴマーを包含するものとする。ポリマーとしては、例として、アクリレートポリマー、カーボネートポリマー、スルホンポリマー、エポキシポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、イミドポリマー、エステルポリマー、フランポリマー、メラミンポリマー、スチレンポリマー、ノルボルネンポリマー、シリコーンポリマー及び環状オレフィンコポリマーが挙げられる。ポリマーは、当該技術分野における従前のとおり、重合開始剤、安定剤、充填剤、溶媒などの他の材料を含んでもよい。
【0019】
ポリマーは、物理的パラメーター、例えば極性、ガラス転移温度Tg、ヤング率及び光透過率などによってさらに特徴付けることができる。
【0020】
透過率:典型的には、本発明の文脈において使用されるポリマーは、可視光に対して光透過性である。すなわち、本発明の文脈において使用されるポリマーは、ルミネッセント結晶により光が放出されることが可能であり、また、ルミネッセント結晶を励起させるために使用される光源の想定される光が透過するように不透明でない。光透過率は、白色光干渉分析法又は紫外-可視(UV-Vis)分光分析法により決定することができる。
【0021】
ガラス転移温度:(Tg)は、ポリマーの分野で確立したパラメーターであり、ガラス転移温度は、アモルファス又は半結晶質ポリマーがガラス(硬い)状態から、より柔軟な、コンプライアントな又はゴム状の状態に変化する温度を指す。高いTgを有するポリマーは、「硬質(hard)」と見なされるのに対し、低いTgを有するポリマーは「軟質(soft)」と見なされる。分子レベルでは、Tgは不連続な熱力学的転移でなく、その前後にわたってポリマー鎖の可動性が著しく増加する温度範囲である。しかしながら、慣例では、DSC測定の熱流曲線の2つのフラットな領域に対する接線で囲まれた温度範囲の中点として定義される単一の温度として報告される。Tgは、DSCを使用して、DIN EN ISO 11357-2又はASTM E1356に従って決定することができる。ポリマーがバルク材料の形態で存在する場合、この方法は特に適する。あるいは、ISO 14577-1又はASTM E2546-15に従って、ミクロ又はナノインデンテーションにより温度依存ミクロ又はナノ硬度を測定することによって、Tgを決定することもできる。この方法は、ここに開示されるとおりのルミネッセントコンポーネント及び照明デバイスに適する。好適な分析装置は、MHT(Anton Paar)、Hysitron TI Premier(Bruker)又はNano Indenter G200(Keysight Technologies)として入手可能である。温度制御ミクロ及びナノインデンテーションにより得られたデータをTgに変換することができる。典型的には、塑性変形仕事もしくはヤング率又は硬さは温度の関数として測定され、Tgはこれらのパラメーターが著しく変化する温度である。
【0022】
ヤング率(Young’s modulusもしくはYoung modulus)又は弾性率は、固体材料の剛性を評価する機械的特性である。ヤング率又は弾性率は、一軸変形の線形弾性領域における材料の応力(単位面積当たりの力)と歪(比例変形)との間の関係を規定する。
【0023】
用語「散乱粒子」は知られており、散乱粒子が組み込まれるマトリックスと異なる屈折率を有する有機又は無機粒子を包含する。この屈折率の差に起因して、マトリックスを通過中の光は、各散乱粒子の位置で散乱又は回折されることになる。散乱粒子の典型的なサイズは、20~20,000nm、好ましくは50~10,000nm、より好ましくは100~5,000nmの範囲内である。粒子という用語が示すように、ネットワークは除外される。典型的には、散乱粒子-固体ポリマーの屈折率差ΔRIは、少なくとも0.02、好ましくは0.1、かなり好ましくは0.2である。典型的には、かかる散乱粒子の量は広範囲にわたる様々な値をとることができ、好適な最小濃度は、例えば、0.01質量%超、好ましくは0.1質量%超、最も好ましくは1質量%である。好適な最大濃度は、30質量%未満、好ましくは15質量%未満、かなり好ましくは8質量%未満である。自立フィルムの場合、50~5000mg/m2、好ましくは100~1000mg/m2、例えば500mg/m2である。
【0024】
本発明によれば、上述した課題は、本発明の第1の態様である、光源と、赤色蛍光体を含む第1の層と、ルミネッセント結晶を含む第2の層とを含む発光コンポーネントによって解決される。
【0025】
第1の層は、光源に隣接して配置される。用語「層」は、赤色蛍光体が光源に対してどのように適用され得るかについてのあらゆる可能なタイプを指す。特に、赤色蛍光体がフィルムとして、又は液滴もしくは個々の粒子として適用される場合、赤色蛍光体のこのタイプの適用は、用語「層」によってカバーされる。特に、層は連続的な層である必要はなく、均一である必要もない。
【0026】
特に、第1の層は、さらに、光源に隣接して分散された量子ドットの集合体であることができる。
【0027】
光源に対する第1の層の隣接配置は、第1の層が光源の表面に密接に接触していることを意味する。光源の青色光を吸収すると、第1の層の赤色蛍光体は赤色光スペクトル内の光を放出する。特に、第1の層の赤色蛍光体は、光源の励起波長よりも長波長の光を放出する。
【0028】
第2の層は、ペロブスカイト構造のルミネッセント結晶を含む。光源により放出された光を吸収すると、ルミネッセント結晶は緑色光スペクトル内の波長の光を放出する。特に、第2層のルミネッセント結晶は、光源の励起波長よりも長波長の光を放出する。
【0029】
第2の層は、20≦h2≦70%のヘイズh2を有する。
【0030】
有利には、第2の層は、10%<h2≦100%のヘイズh2を有する。
【0031】
本発明の文脈におけるヘイズとは、透過ヘイズを意味する。透過ヘイズは、通常、透明な材料(本発明における第2の層)を通過する際に、法線入射方向から2.5°を超える角度で広角散乱(ASTM D1003により測定;例えば、BYK Gardnerヘイズメーターを用いて)を受けた光の量である。
【0032】
第2の層は、第1の層から離間して配置される。この文脈で「離間して(remotely)」とは、特に、第2の層が、第1の層と接触しないように、又は第2の層が第1の層と実質的に接触しないように、第2の層が配置されていることを意味する。「離間して」とは、さらに、第2の層が、第1の層と距離を置いて、第1の層と平行に配置されていることを意味することがある。
【0033】
本発明の有利な一実施形態では、第2の層は、ルミネッセント結晶、ポリマー及び散乱粒子を含むことができる。
【0034】
この場合、第2の層におけるヘイズは、ポリマー中に分散された散乱粒子によって生成される。
【0035】
有利には、ルミネッセント結晶は、架橋ポリマー、特に固体の架橋ポリマー中に埋め込まれる。典型的には、かかる架橋ポリマーは透明であり、<10%の低いヘイズを有する。
【0036】
架橋ポリマーのヘイズは、かかるポリマーに散乱部分を組み込むことによって増加させることができる。
【0037】
有利には、発光コンポーネントはルミネッセント結晶を含み、当該ルミネッセント結晶は、下記式(II)の化合物から選択される:
[M1A1]aM2
bXc (II)
式中、
A1は、1又は2種以上の有機カチオン、好ましくは、ホルムアミジニウムを表し;
M1は、1又は2種以上のアルカリ金属を表し;
M2は、M1以外の1又は2種以上の金属、特にPbを表し;
Xは、ハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン及び硫化物イオンからなる群から選択された1又は2種以上のアニオンを表し、特にBrであり;
aは1~4を表し;
bは1~2を表し;
cは3~9を表し;
M1又はA1のいずれか、あるいは、M1及びA1が存在する。
【0038】
さらに有利には、Pbの濃度は、5~200mg/m2、特に10~100mg/m2、非常に特に20~80mg/m2である。
【0039】
特に、第1の層は、光源と第2の層との間に配置される。
【0040】
特に、第2の層と第1の層又は赤色蛍光体との間にそれぞれエアギャップが存在する。このギャップは、真空ギャップ又は他のガスで満たされたギャップであってもよい。
【0041】
特に、第2の層は第1の層と平行に配置される。
【0042】
特に、第1の層と第2の層との間にエアギャップが存在するが、第2の層を第1の層に対して特定の距離に保つために第1の層と第2の層との間に支持点が存在するように、第2の層が配置される
【0043】
特に、第1の層と第2の層との間に実質的にエアギャップが存在するように第2の層が配置されるが、第1の層と第2の層との間に接点が存在していてもよい。
【0044】
1つ以上の光源、第1の層及び第2の層の特定の配置は、その個々の材料間、特に第1の層と第2の層の材料間の不適合性を妨げる。
【0045】
有利な一実施形態では、光源、第1の層及び第2の層は、この順序で、垂直方向に整列して配置される。
【0046】
特に、第2の層は、2つ以上の光源及び/又は2以上の第1の層に対して離間して配置されてもよい。
【0047】
特に、第2の層は、2つ以上の光源に対して離間して配置されてもよく、各光源は、それぞれの光源に隣接する各自の第1の層を備える。
【0048】
本発明の有利な一実施形態において、第2の層は、h2≦80%、好ましくは≦70%、最も好ましくは≦60%のヘイズh2を有する。
【0049】
本発明の別の有利な一実施形態において、第2の層は、10≦h2≦80%、好ましくは20≦h2≦70%、最も好ましくは30≦h2≦60%のヘイズh2を有する。
【0050】
第2の層の低いヘイズは、第2の層中のルミネッセントペロブスカイト結晶が、より安定であるという技術的効果、特に、青色光源に曝された場合により安定であるという技術的効果を有する。この安定性は、第2の層において、低いヘイズのために青色光の多重散乱が低減される結果である。
【0051】
さらに、低いヘイズのさらなる技術的効果は、低いヘイズは、第2の層の「光変換係数」(LCF)として求められる、より高いディスプレイ輝度をもたらすという事実である。第2の層の光変換係数は、第2の層から垂直方向に放出された緑色光強度と、第2の層から垂直方向に減衰(例えば、吸収、反射又は散乱により)した青色光強度との間の比を指す。
【0052】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、赤色蛍光体は、コア-シェル量子ドットの1種以上から選択され、及び/又はInもしくはCd、好ましくはInPもしくはCdSeにそれぞれ基づく。シェルは、典型的には、ZnS又はZnSeSを含む。
【0053】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、コア-シェル量子ドットは、プレートレット構造を有する。好ましくは、かかるプレートレット構造のドットは、CdSeに基づくものである。
【0054】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、コア-シェル量子ドットは、ZnがドープされたCdSeコアを含む。かかるドーピングは、時には合金化とも呼ばれ、量子ドットあたりのCdの量を減少させる。
【0055】
有利には、赤色蛍光体粒子は、下記式(I)の、Mn4+がドープされた蛍光体である:
[A]x[MFy]:Mn4+ (I)
ここで、
Aは、Li、Na、K、Rb、Cs又はそれらの組み合わせを表し、
Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd又はそれらの組み合わせを表し、
xは、[MFy]イオンの電荷の絶対値を表し、
yは、5、6又は7を表す。
特に、赤色蛍光体は、式(I)のうち、K2SiF6:Mn4+により表されるものである。
【0056】
発光コンポーネントのさらなる有利な一実施形態において、ペロブスカイトルミネッセント結晶は、下記式(II)の化合物から選択される:
[M1A1]aM2
bXc (II)
ここで、
A1は、1又は2種以上の有機カチオン、好ましくは、ホルムアミジニウムを表し、
M1は、1又は2種以上のアルカリ金属を表し、
M2は、M1以外の1又は2種以上の金属、特にPbを表し、
Xは、ハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン及び硫化物イオンからなる群から選択された1又は2種以上のアニオン、特にBrを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
M1又はA1のいずれか、あるいは、M1及びA1が存在する。
【0057】
特に、式(II)は、光源により放出された光の吸収によって、500nm~550nmの緑色光スペクトル内の波長の光、特に527nmを中心とした波長の光を放出するペロブスカイトルミネッセント結晶を表す。
【0058】
特に、式(II)は、Xがハロゲン化物又は擬ハロゲン化物、例えばBr、Cl、CN、特にBrを表す、ルミネッセント結晶を表す。
【0059】
特に、式(II)は、M2がPbを表すルミネッセント結晶を表す。
【0060】
特に、式(II)は、A1がFA(ホルムアミジニウム)を表し、M1が存在しない、ルミネッセント結晶を表す。
【0061】
有利には、ルミネッセント結晶は、さらに、固体ポリマー中に埋め込まれる。好適な固体ポリマーは、当該ポリマーの反復単位が、[O原子+N原子]/[C原子]<0.9に従うものである。好ましくは、この値は、<0.4、より好ましくは<0.3、最も好ましくは<0.25である。
【0062】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、かかる固体ポリマーはアクリレートを含む。非常に好ましくは、ポリマーは、環状脂肪族アクリレート(単官能性アクリレート)からなる群から選択された反復単位を含むか、又は環状脂肪族アクリレート(単官能性アクリレート)からなる群から選択された反復単位からなる。
【0063】
別の有利な一実施形態において、固体ポリマーは架橋されており、単官能性アクリレートに加えて多官能性アクリレートを含む。
【0064】
さらなる有利な一実施形態において、固体ポリマー組成物は、Tg≦120℃(好ましくはTg≦100℃、非常に好ましくはTg≦80℃、非常に好ましくはTg≦70℃)のガラス転移温度Tgを有する。各Tgは、2回目の加熱サイクルの間に、-90℃から開始して最高250℃まで、20K/分の加熱速度を適用し、DIN EN ISO 11357-2:2014-07に従って測定される。
【0065】
さらなる有利な一実施形態において、かかる固体ポリマーは、シート状ポリマーとして構成される。このシート状ポリマーは、典型的には0.001~10mm、最も典型的には0.01~0.5mmのフィルム厚を有するポリマーフィルムの形状を有することができる。このシート状ポリマーは、連続的かつ平坦なものであるか、又は、不連続的なもの、例えば微細構造(例えばプリズム形状)を有する不連続的なもののいずれかであることができる。
【0066】
さらなる有利な一実施形態において、固体ポリマーは、2つのバリア層の間に挟まれる。特に、かかるサンドイッチ配置は、水平方向にバリア層と、ポリマーと、もう1つのバリア層とを有する配置を指す。このサンドイッチ構造の2つのバリア層は、同じバリア層材料で製造されたものであることができ、又は、異なるバリア層材料で製造されたものであることができる。
【0067】
バリア層の技術的効果は、ルミネッセントペロブスカイト結晶の安定性、特に酸素又は湿気に対する安定性を向上させることである。
【0068】
特に、かかるバリア層は当該技術分野で知られており、典型的には、低い水蒸気透過率(WVTR)及び/又は低い酸素透過率(OTR)を有する1種の材料/複数の材料の組み合わせを含む。かかる材料を選択することによって、水蒸気及び/又は酸素に曝されたことに応じたコンポーネント中のLCの劣化が、低減されるか、あるいは回避される。バリア層又はフィルムは、好ましくは、温度40℃/相対湿度(r.h.)90%及び大気圧におけるWVTRが、<10(g)/(m2・day)、より好ましくは1(g)/(m2・day)未満、最も好ましくは0.1(g)/(m2・day)未満である。
【0069】
一実施形態において、バリアフィルムは、酸素に対して透過性であることができる。一代替実施形態において、バリアフィルムは、酸素に対して不透過性であり、温度23℃/相対湿度90%及び大気圧におけるOTR(酸素透過率)が、<10(mL)/(m2・day)、より好ましくは<1(mL)/(m2・day)、最も好ましくは<0.1(mL)/(m2・day)である。
【0070】
一実施形態において、バリアフィルムは、光に対して透過性であり、すなわち、可視光に対する透過率は、>80%、好ましくは>85%、最も好ましくは>90%である。
【0071】
好適なバリアフィルムは、単一層の形態で存在することができる。かかるバリアフィルムは、当該技術分野で知られており、ガラス、セラミック、金属酸化物、及びポリマーを含む。バリアフィルム用の好適なポリマーは、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、環状オレフィンコポリマー(COC)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びポリプロピレン(PP)からなる群から選択することができ、好適な無機材料は、金属酸化物、SiOx、SixNy、及びAlOxからなる群から選択することができる。最も好ましくは、ポリマー湿気バリア材料は、PVdC及びCOCからなる群から選択された材料を含む。
【0072】
最も有利には、ポリマー酸素バリア材料は、EVOHポリマーから選択された材料を含む。
【0073】
好適なバリアフィルムは、多層の形態で存在することができる。かかるバリアフィルムは、当該技術分野で知られており、一般的に、基材、例えば10~200μmの範囲内の厚さを有するPETなどと、SiOx及びAlOxからなる群からの材料を含む薄い無機層、もしくはポリマーマトリックス中に埋め込まれた液晶に基づく有機層、又は所望のバリア特性を有するポリマーを有する有機層を含む。かかる有機層用の可能なポリマーは、例えばPVdC、COC、EVOHから構成される。
【0074】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、拡散フィルム又は拡散板が第1の層と第2の層の間に配置される。
【0075】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、導光板及び拡散フィルムが、本発明の第1の層と第2の層との間に配置される。有利には、光源及び第1の層から放出された光は、導光板によって拡散フィルムに放出される光に対して90°の角度で導光板に入射し、最終的に、第2の層中のルミネッセント結晶を励起する。
【0076】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、拡散シートが、本発明の第1の層と第2の層との間に配置される。有利には、光源及び第1の層から放出された光は、導光板によって拡散シートに放出される光に対して0°の角度で拡散板に入射し、最終的に、第2の層中のルミネッセント結晶を励起する。
【0077】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る発光コンポーネントを含む発光デバイスに関する。特に、かかる発光デバイスは、液晶ディスプレイ(LCD)である。
【0078】
本発明の有利な一実施形態において、発光デバイスの発光コンポーネントは、2つ以上の光源のアレイを含み、各光源は、個々の光源に隣接して配置された、各自の隣接する第1の層を有し、その結果、複数の光源のアレイであって、各光源が各自の第1の層を有する複数の光源のアレイが形成される。第2の層は、アレイに対して離間して配置される。第2の層は、アレイの第1の層と第2の層との間にエアギャップが形成されるように配置される。アレイは、実質的に全液晶ディスプレイ領域をカバーする。
【0079】
有利な一実施形態において、上記の1つ以上の光源のアレイの各光源は、各自の隣接する第1の層で覆われているため、個々の光源とそれらの各自の隣接する第1の層とを有するアレイが構築される。
【0080】
有利には、第2の層は、上記の1つ以上の光源とそれらの各自の隣接する第1の層とのアレイの個々の光源のアレイの少なくとも一部又はフルアレイを覆うように一体に形成されていてもよく、第2の層は、個々の光源とそれらの各自の第1の層とのアレイから離間して配置される。
【0081】
別の有利な実施形態において、第2の層は、複数の光源とそれらの各自の第1の層とのアレイの少なくとも一部又はフルアレイを覆う複数の層片(layer pieces)によって形成されていてもよく、第2の層のすべての複数の層片が、複数の光源とそれらの各自の第1の層とのアレイから離間して配置される。
【0082】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、上記アレイの複数の光源の1つ以上は、それぞれ、f≧150Hz、好ましくはf≧300Hz、非常に好ましくはf≧600Hzの周波数fでオンとオフを切り替えられるように適合されている。
【0083】
本発明の第3の態様は、ルミネッセント結晶を含む自立フィルムに関する。ルミネッセント結晶は、ペロブスカイト構造を有し、放出光よりも短い波長の光による励起に応答して緑色及び/又は赤色の光を放出する。自立フィルムは、20≦h2≦70%、好ましくはh2<80%、好ましくは<70%、最も好ましくは<60%のヘイズh2を有する。
【0084】
本発明の別の有利な実施形態において、自立フィルムは、10≦h2≦80%、最も好ましくは30≦h2≦60%のヘイズ(BYKガードナー・ヘイズメーターにより測定)h2を有する。
【0085】
本発明の別の有利な実施形態において、自立フィルムは、>75%、好ましくは>85%、最も好ましくは>90%の透過率(BYKガードナー・ヘイズメーターにより測定)を有する。
【0086】
本発明の有利な一実施態様において、ルミネッセント結晶は、架橋ポリマー、特に固体架橋ポリマー中に埋め込まれていることを特徴とする。
【0087】
本発明のさらなる有利な実施態様において、ルミネッセント結晶(20)は、式(II)の化合物から選択される:
[M1A1]aM2
bXc (I)
ここで、
A1は、1又は2種以上の有機カチオン、特にホルムアミジニウム(FA)を表し、
M1は、1又は2種以上のアルカリ金属を表し、
M2は、M1以外の1又は2種以上の金属、特にPbを表し、
Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物及び硫化物からなる群から選択された1又は2種以上のアニオン、特にBrを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
M1又はA1のいずれか、あるいは、M1及びA1が存在する。
【0088】
さらに有利には、M2はPbを表し、Pbの濃度は5~200mg/m2、特に10~100mg/m2、非常に特に20~80mg/m2である。
【0089】
本発明の別の有利な実施形態において、自立フィルムは、好ましくはポリマー組成物から、最も好ましくはオルガノポリシロキサンから選択された散乱粒子を含む。
【0090】
散乱粒子の典型的なサイズは、20~20,000nm、好ましくは50~10,000nm、かなり好ましくは100~5,000nmの範囲内である。典型的には、かかる散乱粒子の量は広い範囲にわたる様々な値をとることができ、好適な最小濃度は、例えば、0.01質量%超、好ましくは0.1質量%超、最も好ましくは1質量%である。好適な最大濃度は、30質量%未満、好ましくは15質量%未満、かなり好ましくは8質量%未満である。自立フィルムの場合、50~5000mg/m2、好ましくは100~1000mg/m2、例えば500mg/m2である。
【0091】
自立フィルムのさらなる有利な実施態様では、固体ポリマーは、本発明の第1の態様で言及したとおりのポリマーである。
【0092】
有利には、かかるポリマーは、アクリレートを含み、特に、環状脂肪族アクリレートからなる群から選択された反復単位を含むか、もしくは環状脂肪族アクリレートからなる群から選択された反復単位からなり、又は/及び、ここで、アクリレートは、単官能性アクリレートモノマー及び多官能性アクリレートモノマーから選択された反復単位を含む。
【0093】
さらなる有利な一実施形態において、固体ポリマーは、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比が、<0.9、好ましくは<0.4、好ましくは<0.3、最も好ましくは<0.25であることにより特徴付けられる。
【0094】
さらなる有利な一実施形態において、固体ポリマーは、Tg≦120℃(好ましくはTg≦100℃、非常に好ましくはTg≦80℃、非常に好ましくはTg≦70℃)のガラス転移Tgを有する。ここで、各Tgは、2回目の加熱サイクルの間に、-90℃から開始して最高250℃まで、20K/分の加熱速度を適用し、DIN EN ISO 11357-2:2014-07に従って測定される。
【0095】
さらに、有利な一実施形態において、ポリマーはシート状ポリマーであってもよい。
【0096】
さらに有利な一実施形態において、ポリマーは2つのバリア層の間に挟まれている。
【0097】
有利には、自立フィルムは、放出光よりも短い波長の光による励起に応答して赤色光を放出するルミネッセント結晶を含む。
【0098】
本発明の第4の態様は、第3の態様による自立フィルムを含む、発光デバイス、特に液晶ディスプレイ(LCD)に関する。
【0099】
他の有利な実施形態は、従属請求項及び以下の説明に記載されている。
【0100】
本発明は、以下の詳細な説明により、より良く理解され、上記以外の目的も明らかとなるであろう。かかる説明は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1a-1c】
図1aは、赤色蛍光体を含む第1の層を有する、青色光を放出するための光源の概略図である。
図1bは、本発明の有利な一実施形態による発光コンポーネントの概略図である。
図1cは、本発明の一実施形態による自立フィルムの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明のさらなる有利な一実施形態による発光コンポーネントの概略図である。
【
図3】
図3は、本発明のさらなる有利な一実施形態による発光コンポーネントの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明のさらなる有利な一実施形態による発光コンポーネントの概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の有利な一実施形態による発光デバイスを示す。
【
図6a-6b】
図6aは、
図6bに概略的に示したデバイスの発光スペクトルを示す。
【
図7a-7b】
図7aは、
図7bに概略的に示したデバイスの発光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0102】
本発明の実施形態や、実施例や、本発明の実施形態、態様及び利点を示す又は導く実験は、以下の詳細な説明からより良く理解されるであろう。かかる説明は、添付の図面を参照する。
【0103】
図1aは、青色光aaを放出するための光源10と、赤色光bbを放出する赤色蛍光体を含む第1の層1とをコンポーネントの概略図である。有利には、赤色層1の赤色蛍光体粒子は、コア-シェルCdSe QDs、コア-シェルInP QDs、及びKSF蛍光体(K
2SiF
6:Mn
4+)から選択される。青色光aaを吸収すると、赤色蛍光体は赤色光スペクトル内の光bbを放出する。
【0104】
特に、
図1bに示すコンポーネントは、光源10と、光源10に隣接する第1の層1との配置を示す。この概略図において、第1の層1は、光源10に隣接して分散された赤色蛍光体粒子を含む。
【0105】
図1bは、本発明の有利な一実施形態による発光コンポーネントの概略図である。発光コンポーネントは、青色光を放出するための光源10と、赤色蛍光体を含む第1の層1と、ルミネッセント結晶20を含む第2の層2とを含む。第1の層1の赤色蛍光体は、青色光aaを吸収すると、赤色光スペクトル内の光bbを放出する。第1の層1は、光源10に隣接して配置されている。第2の層2のルミネッセント結晶20は、ペロブスカイト構造を有するものである。光源10により放出された光を吸収すると、ルミネッセント結晶20は、緑色光スペクトル内の波長の光ccを放出する。第2の層2は、10%≦h
2≦100%のヘイズh
2を有する。第2の層2は、第1の層1から離間して配置されている。特に、第2の層2と第1の層1との間には、エアギャップが存在する。
【0106】
さらなる有利な一実施形態において、
図1bの発光コンポーネントは、20≦h
2≦70%、好ましくはh
2≦80%、好ましくはh
2≦70%、非常に好ましくはh
2≦60%のヘイズh
2を有することがある。
【0107】
この実施形態の場合に有利には、赤色蛍光体は、In又はCdに基づくコア-シェル量子ドット、特に、それぞれInP(III)又はCdSe(IV)に基づくコア-シェル量子ドットの1種以上から選択される。
【0108】
さらに有利には、赤色蛍光体は、上記のとおりの式(I)のMn4+がドープされた蛍光体である。かかる実施形態の一例は、実験セクション(実験1)に開示されている。
【0109】
図2のさらなる有利な一実施形態において、ルミネッセント結晶20は、上に開示したとおりの式(II)の化合物から選択される。かかる実施形態の一例は、実験セクション(実験2)に開示されている。
【0110】
さらなる有利な一実施形態において、ルミネッセント結晶20は、式(II)の化合物から選択され、ここで、M2はPbであり、Pbの濃度は5~200mg/m2、特に10~100mg/m2、非常に特に20~80mg/m2である。
【0111】
有利には、ルミネッセント結晶20は固体ポリマー中に埋め込まれており、特に、ポリマーはアクリレートを含み、非常に特に、ポリマーは環状脂肪族アクリレート(単官能性アクリレート)を含む。
【0112】
別の有利な実施形態において、固体ポリマーは架橋されており、単官能アクリレートに加えて多官能性アクリレートを含む。
【0113】
かかるポリマーは、さらに、シート状ポリマーとして構成されてもよい。
【0114】
さらなる有利な一実施形態において、ポリマーはバリア層21の間に挟まれてもよい。かかるバリア層21の一例は
図1cに示されている。
【0115】
さらなる有利な一実施形態において、固体ポリマーは、Tg≦120℃(好ましくはTg≦100℃、非常に好ましくはTg≦80℃、非常に好ましくはTg≦70℃)のガラス転移温度Tgを有する。
【0116】
さらなる有利な一実施形態において、第2の層は、特に、上記ヘイズを生成させるために、固体ポリマー中に散乱粒子が埋め込まれたものであることができる(散乱粒子は図に示されていない)。
【0117】
図1cは、自立フィルム200の一実施形態の概略図である。この自立フィルムは、ポリマー中にルミネッセント結晶20が埋め込まれており、ルミネッセント結晶20はペロブスカイト構造を有するものであり、放出光よりも短い波長の光による励起に応答して緑色光cc及び/又は赤色光bbを放出し、自立フィルムは20≦h
2≦70%、好ましくはh
2<80%、特にh
2<70%、非常に特にh
2<60%のヘイズh
2を有する。
【0118】
有利には、自立フィルム200は、ポリマー中に埋め込まれた散乱粒子を含む(散乱粒子は図に示されていない)。
【0119】
さらなる一実施形態において、自立フィルム200のルミネッセント結晶20は、架橋された固体ポリマー中に埋め込まれている。
【0120】
さらなる有利な一実施形態において、ルミネッセント結晶20は、式(II)の化合物から選択される。
【0121】
さらなる有利な一実施形態において、ルミネッセント結晶20は、式(II)の化合物から選択され、ここで、M2はPbであり、Pbの濃度は5~200mg/m2、特に10~100mg/m2、非常に特に20~80mg/m2である。
【0122】
さらなる有利な一実施形態において、固体ポリマーはアクリレートを含み、特に、環状脂肪族アクリレートからなる群から選択された反復単位を含むか、もしくは環状脂肪族アクリレートからなる群から選択された反復単位からなり、特に、及び/又は、アクリレートは、単官能性アクリレートモノマー及び多官能性アクリレートモノマーから選択された反復単位を含む。
【0123】
自立フィルム200のさらなる有利な一実施形態において、固体ポリマーは、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比が、<0.9、好ましくは<0.4、好ましくは<0.3、最も好ましくは<0.25であることにより特徴付けられる。
【0124】
さらなる有利な一実施形態において、固体ポリマーは、Tg≦120℃、特にTg≦100℃、特にTg≦80℃、特にTg≦70°のガラス転移温度Tgを有する。
【0125】
さらなる有利な一実施形態において、固体ポリマーは、シート状ポリマーとして構成されており、及び/又は固体ポリマーは2つのバリア層21の間に挟まれている。
【0126】
図2は、発光コンポーネントのさらなる一実施形態の概略図である。発光コンポーネントは、青色光を放出するための光源10と、赤色蛍光体を含む第1の層1と、ルミネッセント結晶20を含む第2の層2とを含む。第1の層1の赤色蛍光体は、青色光aaを吸収すると、赤色光スペクトル内の光bbを放出する。第1の層1は、光源10に隣接して配置されている。第2の層2のルミネッセント結晶20は、ペロブスカイト構造を有するものである。光源10により放出された光を吸収すると、ルミネッセント結晶20は、緑色光スペクトル内の波長の光ccを放出する。第2の層2は、40%≦h
2≦90%のヘイズh
2を有する。第2の層2は、第1の層1から離間して配置されている。特に、第2の層2と第1の層1との間には、エアギャップが存在する。
【0127】
この実施形態において、1つだけでなく複数の光源10とそれらの各自の第1の層1がアレイ状に配置されており、全ての光源10とそれらの各自の第1の層1に対して第2の層2として機能する第2の層2は一体的に形成されている。
【0128】
図1bに開示されているような全ての有利な特徴は、
図1cの実施形態と組み合わされてもよい。
【0129】
図3は、特定のバックライト構造体用の、特にLCDディスプレイ用の発光コンポーネントの概略図である。
図2の概要に加えて、第1の層1と第2の層2との間に配置された拡散板3が存在する。
【0130】
図4は、特定のバックライト構造体用の、特にLCDディスプレイ用のさらなる発光デバイスの概略図である。このデバイスは、青色光aaを放出するための光源10と、赤色蛍光体を含む第1の層1と、ルミネッセント結晶20を含む第2の層2とを有する発光コンポーネントを含む。第1の層1は、光源10に隣接して配置されている。第2の層2は、第1の層1から離間して配置されている。第1の層1と第2の層2との間には、拡散フィルム3及び導光板(LGP)4が配置されている。特に、光源10及び第1の層1は、第2の層2のルミネッセント結晶20を励起する、導光板4により放出される光に対して90°の角度で、青色aaと赤色bbとが導光板4に入射するように配置されている。ともあれ、光源20は、別の有利な実施形態において、光が0°の角度で導光板に入射するように配置されてもよい。
【0131】
図5は、本発明の一実施形態による有利な発光デバイスの概略図を開示する。この発光デバイス、特に液晶ディスプレイは、例えば
図1~
図4の実施形態のうちの1つで示したような発光コンポーネントを含む。
【0132】
有利な発光デバイスは、1つ以上の、特に2つ以上の、光源10のアレイを含む発光コンポーネントを含む。各光源10は、光源10に隣接して配置されたその各自の第1の層1を含む。さらに、かかる実施形態は、アレイに対して離間して配置された1つの第2の層2を含む。特に、アレイは、実質的に全液晶ディスプレイ領域5をカバーする。
【0133】
さらなる有利な発光デバイスは、アレイの1つ以上の光源10を含み、各光源10は、f≧150Hz、特にf≧300Hz、非常に特にf≧600Hzの周波数fでオンとオフを切り替えられるように適合されている。
【0134】
図6aは、
図6bに模式的に示したような本発明による発光コンポーネントの一実施形態の発光スペクトルを示す。発光コンポーネントは、青色光aaを放出するための複数の光源10を含み、各光源は、赤色蛍光体を含む各自の第1の層1を含み、青色光aaの吸収によって、赤色蛍光体は赤色光スペクトル内の光bbを放出する。赤色蛍光体は、各光源10に隣接して配置されている。
【0135】
図7bに示すように、ルミネッセント結晶20を含む第2の層2が、複数の光源10とそれらの各自の第1の層1に対して離間して配置されている。光源10により放出された光を吸収すると、ルミネッセント結晶20は、緑色光スペクトル内の波長の光ccを放出する。第2の層2は、10%<h
2<100%のヘイズを有する。
【0136】
したがって、上記発光デバイスの
図7aに示した発光スペクトルは、青色、緑色及び赤色の可視光の範囲内にピークを示す。
【実施例】
【0137】
実験セクション
実施例1:本開示に記載のコンポーネントを使用することによるLCDディスプレイ用のバックライトユニットの作製
図6bは、アレイのコンポーネントの概略図を示し、このコンポーネントについての発光スペクトルは、
図6aに示されているように測定された。
図6bのコンポーネントは、青色光aaを放出するための光源10と、赤色光bbを放出する赤色蛍光体を含む第1の層1とを含む。有利には、赤色層1の赤色蛍光体粒子は、コア-シェルCdSe QDs、コア-シェルInP QDs、及びKSF蛍光体(K
2SiF
6:Mn
4+)から選択される。青色光aaを吸収すると、赤色蛍光体は、赤色光スペクトル内の光bbを放出する。
【0138】
このコンポーネントの発光スペクトルは、スペクトルの可視青色及び赤色範囲内にピークを示す。
【0139】
特に、
図1bに示すコンポーネントは、光源10と、光源10に隣接する第1の層1との配置を示す。この概略図において、第1の層1は、光源10に隣接して分散された赤色蛍光体粒子を含む。
【0140】
データを測定するために、200個のLEDからなる2Dアレイを使用した。これらのLEDは、青色発光窒化ガリウムチップと、当該青色LEDチップ上に直接付着(オンチップ)させた赤色発光コア-シェルセレン化カドミウム量子ドットとで構成された。このLEDアレイの発光スペクトルを
図6aに示す。
【0141】
実施例2:実施例1からのアレイを利用し、さらに、各光源の各自の第1の層が各光源に隣接している複数の光源のアレイの上に拡散板3を配置した。拡散板は、
図3に示すように、発光コンポーネントと同様に、LEDの生成光を均一に分配する役割を果たす。
【0142】
さらに、緑色リモートペロブスカイトQDフィルム(実施例3による自立フィルム)を拡散板の上に配置した(固定せずに置いただけ;接着などは無し)。次に、この緑色ペロブスカイトフィルムの上に、2枚の交差させたプリズムフィルム(交差BEF)と1枚の輝度向上フィルム(DBEF)を配置した(図示せず)。完成したバックライト構造体の発光スペクトルを分光計(Konica Minolta CS-2000)により測定したところ、
図7aに示すように、青色、赤色及び緑色の発光ピークを示した。
【0143】
実施例3:本発明の第3の態様による、低ヘイズh2及び低Tgを有する自立フィルムとしての緑色リモートペロブスカイトQDフィルムの作製:
組成にホルムアミジニウム鉛三臭化物(FAPbBr3)を有する緑色ペロブスカイトQDをトルエン中で以下のように合成した:PbBr2及びFABrをミリングすることによって、ホルムアミジニウム鉛三臭化物(FAPbBr3)を合成した。すなわち、16mmolのPbBr2(5.87g,98% ABCR,カールスルーエ(ドイツ))及び16mmolのFABr(2.00g,Greatcell Solar Materials,クイーンビーアン(オーストラリア))をイットリウム安定化ジルコニアビーズ(直径5mm)を使用して6時間ミリングして、純粋な立方晶FAPbBr3を得た(XRDにより確認)。このオレンジ色のFAPbBr3粉末をオレイルアミン(80-90,Acros Organics,ヘール(ベルギー))及びトルエン(>99.5%,puriss,Sigma Aldrich)に加えた(FAPbBr3:オレイルアミン質量比=100:15)。FAPbBr3の最終濃度は1質量%であった。次に、周囲条件(特に定義しない場合、周囲条件は全ての実験について35℃、1atm、空気中である)で直径200μmのイットリウム安定化ジルコニアビーズを使用するボールミリングによって、混合物を1時間分散させ、緑色発光性のインクを得た。
【0144】
フィルム形成:0.1gの上記緑色インクを、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI Europe,オランダ)及び2質量%のポリマー散乱粒子(オルガノポリシロキサン,ShinEtsu,KMP-590)を含有するUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(0.7gのFA-513AS、Hitachi Chemical,日本/0.3gのMiramer M240,Miwon,韓国)と、スピードミキサーで混合し、トルエンを室温で真空(<0.01mbar)により蒸発させた。得られた混合物は、誘導結合発光分光法(ICP-OES)により測定した場合に500ppmのPbを含んでおり、次に、この混合物を、100ミクロンのバリアフィルム(供給元:I-components(韓国);製品:TBF-1007)上に50ミクロンの層厚でコートし、次に、同じタイプの第2のバリアフィルムを積層した。その後、積層構造体を60秒間紫外線硬化させた(水銀灯及び石英フィルターを備えたUVAcube100,Hoenle,ドイツ)。得られた緑色ペロブスカイトQDフィルムの初期性能は、青色LED光源(発光波長450nm)上に、QDフィルムの上に2枚の交差させたプリズムシート(X-BEF)と1枚の輝度向上フィルム(DBEF)を備えた状態で、526nmの発光波長、22nmのFWHM、及び、y=0.15のY方向の色座標(「y値」,CIE1931)を示した(Konica Minolta CS-2000により光学的特性を測定)。得られたQDフィルムのヘイズは50%であり、透過率は85%であった(Byk Gardnerヘイズメーターにより測定)。光変換係数(LCF;LCF=緑色発光強度(積分発光ピーク)÷青色発光強度(積分発光ピーク);コニカミノルタCS-2000を使用して、QDフィルムからの緑色及び青色の垂直発光で測定)。
【0145】
UV硬化した樹脂組成物のガラス転移温度Tgは、窒素雰囲気下(20ml/分)で、開始温度-90℃及び終了温度250℃、加熱速度20K/分で、DIN EN ISO 11357-2:2014-07に従って、DSCにより測定した。パージガスは、20ml/minで窒素(5.0)であった。DSCシステムDSC 204 F1 Phoenix(Netzsch)を使用した。2回目の加熱サイクルでTgを決定した(-90℃から250℃までの1回目の加熱で、ガラス転移以外に重畳効果が示された)。DSC測定では、バリアフィルムを剥離することで、UV硬化した樹脂組成物をQDフィルムから除去した。UV硬化した樹脂組成物の測定されたTgは75℃であった。
【0146】
QDフィルムの安定性は、50℃のQDフィルム温度で、高青色強度のライトボックス(供給元:Hoenle;モデル:LED CUBE 100 IC)にQDフィルムを入れ、QDフィルム上の青色光束を220mW/cm2として、青色LED光照射下で1,000時間かけて試験した。初期性能の測定(上述)と同じ手順で、1,000時間の光束試験後のQDフィルムの光学パラメーターの変化を測定した。光学パラメーターの変化は、以下のとおりである:
・y値の変化:0.15から0.119へ(-0.031)。
・LCFの変化:50%から40%へ(-10%)。
・緑色発光波長の変化:526nmから525nmへ(-1nm)。
・緑色FWHMの変化:0nm。
【0147】
FAPbBr3を[CsFA]PbBr3で置き換えた場合にも、同様の結果が得られる。このようなペロブスカイトは、国際公開第2018/028869号(A1)の例えば実施例10に記載されている。
【0148】
実施例3に対する比較例1:高ヘイズ及び低Tgを有する緑色リモートペロブスカイトQDフィルムの作製:
手順は、以下のパラメーターを変更した以外は、低ヘイズを有するQDフィルムについての上記の手順と同じであった:
・UV硬化性アクリレート混合物全体のPb量は200ppmである。
・最終的なQDフィルムのヘイズを増加させるために、12質量%の散乱粒子KMP-590をUV硬化性アクリレート混合物に混合した。
【0149】
得られた緑色ペロブスカイトQDフィルムは、525nmの発光波長、22nmのFWHM、及び0.149のy値(実験3における低ヘイズQDフィルムとほぼ同じ)を示した。このQDフィルムのLCFは43%であった。QDフィルムのヘイズは98%であり、透過率は81%であった。UV硬化した樹脂組成物の測定されたTgは77℃であった。実験3よりLCFが低いことがわかる。ヘイズがより高いほどLCFがより低くなり、ヘイズがより低いほどLCFはより高くなる。したがって、より低いヘイズのQDフィルムは、より高いLCF、ひいてはより高いディスプレイ効率(特定の同等の白色点色座標で)を得るのに有利である。
【0150】
1,000時間の光束試験後のQDフィルムの光学パラメーターの変化は、以下のとおりであった:
・y値の変化:0.149から0.058へ(-0.091)。
・LCFの変化:43%から14%へ(-29%)。
・緑色発光波長の変化:525nmから521nmへ(-4nm)。
・緑色FWHMの変化:0nm。
【0151】
これらの結果は、QDフィルムのヘイズがより高いほど、実施例3と比較して、高青色光束下でのQDフィルムの安定性がより低くなることを示している(具体的には、y値、LCF及び発光波長が全てより安定が低いこと)。したがって、ディスプレイ装置の動作寿命の間、安定した色座標及び安定した白色点が得られるように、高青色光束下で改善されたQDフィルム安定性をもたらす低ヘイズのQDフィルムを得ることが有利である。
【0152】
実施例3に対する比較例2:低ヘイズ及び高Tgを有する緑色リモートペロブスカイトQDフィルムの作製:
手順は、アクリレートモノマー混合物(0.7gのFA-513AS,Hitachi Chemical,日本/0.3gのMiramer M240,Miwon,韓国)を下記のアクリレートモノマー混合物に置き換えたことを除いて、実施例3の手順と同じであった。
・0.7gのFA-DCPA,Hitachi Chemical,日本/0.3gのFA-320M,Hitachi Chemical,日本。
【0153】
得られた緑色ペロブスカイトQDフィルムは、526nmの発光波長、22nmのFWHM、及び0.153のy値を示した(実験3の低ヘイズQDフィルムとほぼ同じ)。このQDフィルムのLCFは49%であった。このQDフィルムのヘイズは51%であり、透過率は85%であった。また、UV硬化した樹脂組成物の測定されたTgは144℃であった。
【0154】
1,000時間の光束試験後のQDフィルムの光学パラメーターの変化は、以下のとおりであった:
・y値の変化:0.153から0.068へ(-0.085)。
・LCFの変化:49%から21%へ(-28%)。
・緑色発光波長の変化:526nmから525nmへ(-1nm)。
・緑色FWHMの変化:0nm。
【0155】
これらの結果は、QDフィルム(自立フィルム)の固体ポリマーの高いTgは、高青色光束下で低いQDフィルム安定性をもたらすことを示している。したがって、ディスプレイ装置の動作寿命の間、安定した色座標及び安定した白色点が得られるように、高青色光束下で改善されたQDフィルム安定性をもたらす低TgのQDフィルムを得ることが有利である。
【0156】
【国際調査報告】