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特表2023-528927FRS2-FGFR相互作用の小分子阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】FRS2-FGFR相互作用の小分子阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/47 20060101AFI20230629BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61K31/47
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575184
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2021065340
(87)【国際公開番号】W WO2021250029
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】20178685.2
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515098691
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート チューリッヒ
(71)【出願人】
【識別番号】516091949
【氏名又は名称】イーティーエッチ チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】シュナイザー,ジスベール
(72)【発明者】
【氏名】ブルンナー,シリル
(72)【発明者】
【氏名】バウムガートナー,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】クマール,カルタゴ サンターナ
(72)【発明者】
【氏名】ゼルベ,オリバー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC51
(57)【要約】
本発明は、FRS2-FGFR相互作用の小分子阻害剤に関するものである。本発明は、医薬としての使用のための、及びがんの治療又は予防における使用のための小分子阻害剤に関するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転移の治療又は予防における使用のための一般式(500)の化合物であって、
【化1】
式中、
- Xは、N、O、及びSから選択され、特にXは、Nであり、
- Rは、(直鎖状又は分岐状)C~C16アルキル、(直鎖状又は分岐状)C~C16アルケン、ヘテロアリール、アリール、C~Cシクロアルキル、及びC~C複素環から選択され、ここでRは、非置換であるか、又はOR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換され、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及び非置換若しくは置換C~Cアルキル又はC~Cアルケンから選択され、
特にRは、OR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORから選択される1つの部分で置換され、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- 各R及びRは、独立して、C~Cアルキル、OROH、NH、CN、COORCOO、及びハロゲンから選択され、ここでRCOO及びROHは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- nは、0、1、2、又は3であり、特にnは、1であり;
- mは、0、1、2、3、又は4であり、特にmは、1又は2である、
前記化合物。
【請求項2】
は、-CH-NH-CHRであり、式中、
- R及びRは、独立して、C~Cアルキル、C~Cアルケンから選択され、ここでR及びRは、非置換であるか、又はOR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換され、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択されるか;
又は
- RとRとは共に、非置換又はOH-、ハロゲン-及び/又はCN-置換のシクロペンタン又はシクロヘキサンを形成する、
請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
一般式(700)の請求項1又は2に記載の使用のための化合物であって、
【化2】
式中、
- 各R及びRは、独立して、C~Cアルキル、OROH、NH、CN、COORCOO、及びハロゲンから選択され、ここでRCOO及びROHは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- R及びRは、請求項2の記載と同じく定義され;
- Xは、N、O、及びSから選択され、特にXは、Nである、
前記化合物。
【請求項4】
は、非置換のC~Cアルキル及びC~Cアルケンから選択され、かつRは、OR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換されたC~Cアルキル及びC~Cアルケンから選択される電気陰性部分であり、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
特に、Rは、エチル、iso-プロピル、及びtert-ブチルから選択される、
請求項2又は3に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
は、OH-、ハロゲン-、及び/又はCN-置換のメチル、エチル、及びイソプロピルから選択される、請求項2~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
は、C~Cアルキル、OH、NH、及びハロゲンから選択され、特にF又はClから選択され、
特にRは、C~Cアルキル、及びOHから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
は、OH、NH、及びハロゲンから選択され、
特に、Rは、ハロゲンであり、より特にRは、Fである、
請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
は、Nである、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記転移が、膀胱がん、小児脳腫瘍、髄芽腫、多発性骨髄腫、大腸がん及び胃がんから選択されるがんから生じる、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
血管新生アンタゴニストとしての使用のための請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物であって、特にがんの治療又は予防における血管新生アンタゴニストとしての使用のための前記化合物であり、より特に前記がんは、膀胱がん、肝細胞癌及び前立腺がんから選択される、前記化合物。
【請求項11】
FGFR駆動型疾患の予防又は治療における使用のための請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
一般式(700)の化合物であって、
【化3】
式中、
- 各R及びRは、独立して、C~Cアルキル、OROH、NH、CN、COORCOO、及びハロゲンから選択され、ここでRCOO及びROHは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- R及びRは、独立して、C~Cアルキル、C~Cアルケンから選択され、ここでR及びRは、非置換であるか、又はOR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換され、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
又は
- RとRとは共に、非置換又はOH-、ハロゲン-、及び/又はCN-置換のシクロペンタン又はシクロヘキサンを形成し;
- Xは、N、O、及びSから選択され、特にXはNであり、
- 但し、前記化合物は、一般式(001)
【化4】
によって特徴付けられないことを条件とする、
前記化合物。
【請求項13】
は、非置換のC~Cアルキル及びC~Cアルケンから選択され、かつRは、OR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換されたC~Cアルキル及びC~Cアルケンから選択される電気陰性部分であり、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
特にRは、エチル、iso-プロピル、及びtert-ブチルから選択され、かつRは、OH-、ハロゲン-、及び/又はCN-置換のメチル、エチル、及びイソプロピルから選択される、
請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
は、C~Cアルキル、OH、NH、及びハロゲンから選択され、特にF又はClから選択され、
特にRは、C~Cアルキル、及びOHから選択される、請求項12又は13に記載の化合物。
【請求項15】
は、OH、NH、及びハロゲンから選択され、
特に、Rは、ハロゲンであり、より特にRは、Fである、
請求項12~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
は、Nである、請求項12~15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
医薬としての使用のための請求項12~16のいずれか一項に記載の化合物であって、但し、前記化合物は、一般式(001)
【化5】
によって特徴付けられる化合物を含むことを条件とする、
前記化合物。
【請求項18】
がんの治療又は予防における使用のための請求項12~16のいずれか一項に記載の化合物であって、特に前記がんは、上衣腫、前立腺がん、食道がん、甲状腺がん、肝細胞癌、精巣がん、小児脳腫瘍、髄芽腫、横紋筋肉腫、胃がん、肺多形癌、乳がん、非小細胞肺がん、脂肪肉腫、子宮頸がん、大腸がん、メラノーマ、多発性骨髄腫、子宮内膜がん、膀胱がん、グリア芽腫、肺扁平上皮癌、卵巣がん、頭頸部がん、膵臓がん、及び肉腫から選択され、より特に、前記がんは、膀胱がん、多発性骨髄腫、胃がん、小児脳腫瘍、髄芽腫、グリア芽腫、上衣腫、大腸がん、及び肉腫から選択され、最も特に、前記がんは、膀胱がん、小児脳腫瘍、髄芽腫、多発性骨髄腫、大腸がん、及び胃がんから選択され、但し、前記化合物は、一般式(001)によって特徴付けられる化合物を含むことを条件とする、前記化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRS2-FGFR相互作用の小分子阻害剤に関するものである。本発明は、医薬としての使用のための、及びがんの治療又は予防における使用のための小分子阻害剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転移は、腫瘍性細胞が発生した臓器から離れた臓器で播種(dissemination)及び増殖することであり、がん関連死亡の90%程度の原因である。効果的ながん治療は、転移を特異的に防ぐ能力に大きく依存しており、より毒性の低い標的化した抗転移療法が緊急に必要とされている。全ての固形腫瘍の大部分における転移の重要かつ根本的な原因は、がん細胞の運動性挙動の調節不全である。微小環境は細胞の挙動を形成し、腫瘍の転移のアウトカム(outcome)を決定する。Kumarら(Cell Reports,2018,vol.23,issue 13,P3798-3812)は、小児脳腫瘍、髄芽腫(MB:medulloblastoma)において微小環境の指示が腫瘍細胞の浸潤をどのように制御するかについて取り組んだ。彼らは、bFGFがin vitroでFGF受容体(FGFR)を介してMB腫瘍細胞の浸潤を促進すること、及びFGFRの遮断がin vivoで脳組織浸潤を抑制することを示す。TGF-βは背景依存的様式に遊走促進性(pro-migratory)bFGF機能を制御する。低bFGFでは、非標準的なTGF-β経路がROCKの活性化及びERK1/2の皮質移行を引き起こし、これはFGFR基質2(FRS2)を不活性化することでFGFRシグナル伝達に拮抗し、収縮性非運動性表現型を促進する。高bFGFでは、bFGF誘導型ERK1/2によるFRS2の負のフィードバック制御により、FGFR経路の抑制を引き起こす。これらの条件下では、TGF-βはFRS2の不活性化に対抗し、遊走促進シグナル伝達を回復する。これらの知見は、腫瘍細胞浸潤を制御するメカニズムとしてFRS2によるbFGF及びTGF-βシグナル伝達の同時検出を示している。したがって、FRS2を標的にすることは、異常なFGFRシグナル伝達を無効にする新たな戦略を示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Kumarら,Cell Reports,2018,vol.23,issue 13,P3798-3812
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の最新技術に基づいて、本発明の目的は、FRS2-FGFR相互作用の小分子阻害剤を提供するための手段及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本明細書の独立請求項の主題によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、化合物F3.14の有効性を示し、該化合物のがん細胞の浸潤を抑制する能力を決定する。グラフは、1μM、5μM、10μMの3種類の濃度におけるF3.14の有効性を表す。
図2図2はF3.14の10μMにおける有効性を示す。
図3図3は、F3.14の結合親和力及び解離定数(Kd)を示す。ナノ回折走査型蛍光測定法(nanoDSF)とマイクロスケール熱泳動法(MST)は、化合物と標的タンパク質との結合を評価するために用いられる生物物理学的アッセイである。1.5℃を超える温度変化は、有意な結合を示すとみなされる。
図4図4は、F3.14の有効阻害濃度-EC50(μM)を示す。
図5図5は、F3.14の生化学的特異性を示し、該化合物の他のシグナル伝達経路に影響を与えずにFGFシグナル伝達経路を阻害する能力を決定する。レーン1:対照- DAOY LA-EGFP細胞を刺激せず、一晩血清飢餓状態にし、その後溶解したもの。レーン2:bFGF(100ng/ml)- 一晩血清飢餓状態にしたDAOY LA-EGFP細胞をbFGFで10分間刺激し、その後溶解したもの。レーン3:F3.14(10μM)- 一晩血清飢餓状態にしたDAOY LA-EGFP細胞をF3.14で4時間治療し、細胞をbFGFで10分間刺激し、その後溶解したもの。
図6】A)結合部位1は、FGFRの結合に関与せず、FGFRのN末端とFRS2との相互作用部位の下に位置している。B)結合部位2は、FGFRのC末端と相互作用する広い表面領域である。
図7図7は、F3.14のEC50を決定するために、bFGF +/- BGJ398又はF3.14で刺激したDAOY細胞を用いたスフェロイド浸潤アッセイを示す。
図8図8は、BGJ398又はF3.14で治療したDAOY細胞で行った細胞力価gloアッセイを示す。
図9図9は、BGJ398又はF3.14で治療したAGS細胞で行った細胞力価gloアッセイを示す。
図10図10は、BGJ398又はF3.14で治療したM059K細胞で行った細胞力価gloアッセイを示す。
図11図11は、BGJ398又はF3.14で治療したRT112細胞で行った細胞力価gloアッセイを示す。
図12図12は、BGJ398又はF3.14で治療したDMS114細胞で行った細胞力価gloアッセイを示す。
図13図13は、BGJ398又はF3.14で治療したHCT116細胞で行った細胞力価gloアッセイを示す。
図14図14は、BGJ398又はF3.14で治療したSKOV3細胞で行った細胞力価gloアッセイを示す。
図15図15は、BGJ398又はF3.14で治療したSNU16細胞で行った細胞力価gloアッセイを示す。
図16図16は、F3.14のin vitroでの吸収、分布、代謝、排泄及び毒性(ADMET)特性を示す表である。流出比は、F3.14の浸透性を表し、半熱力学的溶解度は水溶液中のF3.14の溶解度を示す。固有クリアランス(intrinsic clearance)及びt1/2は、F3.14の代謝安定性を示し、MTTは、F3.14の毒性を示し、効力は、F3.14の有効性を示す。
図17図17は、in vivoでの薬物動態、3匹のマウス/治療、化合物の血清濃度(単位:μM)を示す。表は、F3.14のin vivoでの薬物動態(PK:pharmacokinetic)特性を示す。
図18図18は、BGJ398又はF3.14で治療した様々なFGFR駆動細胞株を用いたイムノブロットであり、FGFシグナル伝達の下流エフェクターに対する治療の効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の概要
本発明の第1の態様は、転移の治療又は予防における使用のための一般式(500)の化合物に関し、
【化1】
式中、
- Xは、N、O、及びSから選択され、特にXはNであり、
- Rは、(直鎖状又は分岐状)C~C16アルキル、(直鎖状又は分岐状)C~C16アルケン、ヘテロアリール、アリール、C~Cシクロアルキル、及びC~C複素環から選択され、ここでRは非置換であるか、又はOR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換され、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは独立して、H、及び非置換若しくは置換C~Cアルキル又はC~Cアルケンから選択され、
特にRは、OR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORから選択される1つの部分で置換され、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- 各R及びRは、独立して、C~Cアルキル、OROH、NH、CN、COORCOO、及びハロゲンから選択され、ここでRCOO及びROHは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- nは、0、1、2、又は3であり、特にnは、1であり;
- mは、0、1、2、3、又は4であり、特にmは、1又は2である。
【0008】
本発明の第2の態様は、血管新生アンタゴニストとしての使用のための第1の態様に記載の化合物に関するものである。特定の実施形態において、血管新生アンタゴニストは、がんの治療又は予防において提供される。特定の実施形態では、がんは、膀胱がん、肝細胞癌、及び前立腺がんから選択される。
【0009】
本発明の第3の態様は、一過性又は慢性の病的状態がFGFRシグナル伝達によって誘導される、FGFR駆動型疾患の予防又は治療における使用のための第1の態様に記載の化合物に関する。FGFRは、細胞増殖、細胞分化、細胞移動、及び細胞生存に関与する受容体チロシンキナーゼである。FGFRシグナル伝達経路における遺伝子増幅、活性化変異、及び染色体転座などの遺伝子変化は、様々な腫瘍の種類、発達疾患及び骨格疾患に関与している。
【0010】
本発明の第4の態様は、一般式(700)の化合物に関し、
【化2】
式中、
- 各R及びRは、独立して、C~Cアルキル、OROH、NH、CN、COORCOO、及びハロゲンから選択され、ここでRCOO及びROHは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- R及びRは、独立して、C~Cアルキル、C~Cアルケンから選択され、ここでR及びRは、非置換であるか、又はOR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換され、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
又は
- RとRとは共に、非置換又はOH-、ハロゲン-及び/又はCN-置換のシクロペンタン又はシクロヘキサンを形成し;
- Xは、N、O、及びSから選択され、特にXは、Nであり、
- 但し、該化合物は、一般式(001)
【化3】
によって特徴付けられないことを条件とする。
【0011】
本発明の第5の態様は、医薬としての使用のための第4の態様に従う化合物に関し、但し、該化合物は、式(001)
【化4】
によって特徴付けられる化合物を含むことを条件とする。
【0012】
本発明の第6の態様は、がんの治療又は予防における使用のための第4の態様に従う化合物に関し、但し、該化合物は、式(001)によって特徴付けられる化合物を含むことを条件とする。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、本発明の化合物の少なくとも1つ、若しくはその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤若しくは賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0014】
活性化した線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR:fibroblast growth factor receptor)チロシンキナーゼからのシグナル伝達は、腫瘍細胞の増殖、生存、並びに細胞の移動及び浸潤などの発がん機能を促進する。活性化したFGFRから下流のシグナル伝達カスケードへのシグナル伝達を、FGFRに対して設計されたキナーゼ阻害剤で遮断することが、これらの発がん機能を軽減する確立した手法である。多くの悪性腫瘍におけるFGFRの異常な活性に加えて、FGFR活性は、キナーゼ阻害剤による標的療法を受けた患者のがんにおいて回避メカニズムとしても作用し、その結果、腫瘍の再増殖及び進行をもたらすことが観察されている。本出願に記載の小分子化合物は、活性化したFGFRから下流のエフェクター分子、特に腫瘍形成の重要な駆動物質である分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK:mitogen activated protein kinase)へのシグナル伝達を防止するであろう。
【0015】
本化合物はFRS2に結合する。FGFR基質2(FRS2)は、FGFシグナル伝達経路に主に特異的である重要なアダプタータンパク質である。これは、FGFRの排他的な下流エフェクターである。FRS2は、c末端のリン酸化チロシン結合(PTB:phospho-tyrosine binding)ドメインを介してFGFRと相互作用し、正と負との両方のシグナル伝達タンパク質を組み立てることで分子ハブとして機能して、重要なFGF誘導細胞機能を媒介する。これは、FGFR(細胞外)からのシグナルを細胞内に伝達する。したがって、FGFシグナル伝達経路のかなり上流にあるFRS2を標的とすることで、下流のエフェクター、特にFGFRシグナル伝達のMAPKを効果的に遮断することができる。
【0016】
本化合物は、FRS2タンパク質のリン酸化チロシン結合(PTB)ドメインに特異的に結合する(図7)。化合物の結合によりPTBドメインの構造変化が誘導され、FRS2を介したFGFR誘導性シグナル伝達が阻害される。2つの可能な結合部位が最初に選択される:結合部位1は、FGFR結合には関与せず、FGFRのN末端とFRS2との相互作用部位の下に位置する。結合部位2は、FGFRのC末端と相互作用する広い表面領域である。
【0017】
化合物-標的の相互作用、標的ドメインの構造変化、及び伝達遮断のメカニズムは、固有であり、かつ受容体チロシンキナーゼ阻害に依存しない。さらに、FRS2はFGFRと異なり、他のアダプタータンパク質といずれの共通のタンパク質ドメインを持たない。したがって、既存のキナーゼ阻害剤と比較して、オフターゲット活性が非常に低くなることが期待される。また、既存のFGFR標的化戦略とは対照的に、本化合物はまた、腫瘍形成及び腫瘍の進行に特に関連するこれらのFGFRの機能を特異的に干渉する。
【0018】
また、既存のFGFR標的化戦略とは対照的に、本化合物はまた、増殖、移動及び浸潤、並びに血管新生など、腫瘍形成及び腫瘍の進行に特に関連するこれらのFGFRの機能を特異的に干渉する。例えば、以下の多くの種類のがんにおいてFRS2-FGFR相互作用が変更されるエビデンスがあり:前立腺がん(Yang,F.ら Cancer Res 73,3716-3724,2013,Liu Jら Oncogene.2016 Apr 7;35(14):1750-9)、食道がん(Nemoto,T.,Ohashi,K.,Akashi,T.,Johnson,J.D.及びHirokawa,K.Pathobiology 65,195-203,1997)、甲状腺がん(St Bernard,R.ら Endocrinology 146,1145-1153,2005)、肝細胞癌(Zheng,N.,Wei,W.Y.及びWang,Z.W.Transl Cancer Res 5,1-6,2016、Matsuki Mら Cancer Med.2018 Jun;7(6):2641-2653)、精巣がん(Jiang,X.ら J Diabetes Res,2013)、髄芽腫(Santhana Kumar,K.ら Cell Rep 23,3798-3812 e3798,2018)、横紋筋肉腫(Goldstein,M,Meller,I.及びOrr-Urtreger,A.Gene Chromosome Canc 46,1028-1038,2007)、胃がん(Kunii,K.ら Cancer Res 68,3549-3549,2008)、肺多形性癌(Lee,S.ら J Cancer Res Clin 137,1203-1211,2011)、乳がん(Penaultllorca,F.ら Int J Cancer 61,170-176,1995)、非小細胞肺がん(Dutt,A.ら Plos One 6,2011)、脂肪肉腫(Zhang,K.Q.ら Cancer Res 73,1298-1307,2013)、子宮頸部がん(Jang,J.H,Shin,K.H.及びPark,J.G.Cancer Res 61,3541-3543,2001)、大腸がん(Sato,T.ら Oncol Rep 21,211-216,2009)、メラノーマ(Becker,D.,Lee,P.L,Rodeck,U.及びHerlyn,M.Oncogene 7,2303-2313,1992)、多発性骨髄腫(Kalff,A.及びSpencer,A.Blood Cancer J,2,2012)、内膜がん(Konecny,G.E.ら Mol Cancer Ther 12,632-642,2013)、膀胱がん(Cappellen,D.ら Nat Genet 23,18-20,1999,Wu S.ら Nat Commun.2019 Feb 12;10(1):720)、グリア芽腫(Morrison,R.S.ら Cancer Res 54,2794-2799,1994)、肺扁平上皮癌(Weiss,J.ら Sci Transl Med 4,2012)、卵巣がん(Cole,C.ら Cancer Biol Ther 10,2010)、頭頸部がん(Koole,K.ら Virchows Arch 469,S31-S31,2016)、及び膵臓がん(Ishiwata,T.ら Am J Pathol 180,1928-1941,2012)などが挙げられる。
【0019】
発明の詳細な説明
用語と定義
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術及び生化学における)当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。分子、遺伝、生化学的手法(一般に、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2編(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.及びAusubelら,Short Protocols in Molecular Biology(1999)第4編,John Wiley & Sons,Inc.参照)及び科学的手法には標準的な技術が用いられる。
【0020】
本明細書の文脈における「C~Cアルキル」とは、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する飽和した直鎖状又は分岐状の炭化水素を指し、ここで1つの炭素-炭素結合は不飽和であってもよく、及び/又は1つのCH部分は酸素(エーテル橋)又は窒素(NH、又はRがメチル、エチル、又はプロピルのNR;アミノ橋)に置換されていてもよい。C~Cアルキルの非限定的な例としては、上記のC~Cアルキルについて示した例、及びさらに3-メチルブタ-2-エニル、2-メチルブタ-3-エニル、3-メチルブタ-3-エニル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ペンタ-4-イニル、3-メチル-2-ペンチル、及び4-メチル-2-ペンチルが挙げられる。特定の実施形態において、Cアルキルは、ペンチル部分又はシクロペンチル部分であり、Cアルキルは、ヘキシル部分又はシクロヘキシル部分である。
【0021】
本明細書の文脈における「C~Cシクロアルキル」という用語は、3、4、5、6又は7個の炭素原子を有する飽和炭化水素環に関し、特定の実施形態では、1つの炭素-炭素結合が不飽和であってもよい。C~Cシクロアルキル部分の非限定的な例としては、シクロプロパニル部分(-C)、シクロブタニル部分(-C)、シクロペンテニル部分(C)、及びシクロヘキセニル(C11)部分が挙げられる。特定の実施形態において、シクロアルキルは、1つのCからCの非置換アルキル部分によって置換されている。特定の実施形態において、シクロアルキルは、2つ以上のCからCの非置換アルキル部分によって置換されている。
【0022】
本明細書の文脈における「炭素環」という用語は、炭素原子及び水素原子のみから構成される環状部分に関する。芳香族炭素環は、アリールとも呼ばれる。非芳香族炭素環は、シクロアルキルとも呼ばれる。
【0023】
本明細書の文脈における「複素環(heterocycle)」という用語は、少なくとも1つの環原子、又は複数の環原子が、窒素、酸素及び/又は硫黄原子で置換されている環状部分に関する。芳香族複素環は、ヘテロアリールとも呼ばれる。非芳香族複素環は、少なくとも1つの環原子又は複数の環原子が窒素、酸素及び/又は硫黄原子で置換されているシクロアルキルである。
【0024】
本明細書の文脈における「複素二環(heterobicycle)」という用語は、少なくとも1つの環原子、又は複数の環原子が窒素、酸素及び/又は硫黄原子によって置換されている、2つの直接結合した環に関する。複素二環は、2つの複素環から、又は1つの複素環と1つの炭素環とから構成される。
【0025】
本明細書で最も狭い意味で使用される場合の「非置換Cアルキル」という用語は、分子の部分間の架橋として使用される際は、部分-C2n-に関し、又は末端部分の文脈で使用される際は-C2n+1に関する。
【0026】
「非置換Cアルキル」及び「置換Cアルキル」という用語は、直鎖アルキル置換を有する、注釈又は記載の状況に応じて非置換又は置換されている環式構造、例えば、シクロプロパン部分、シクロブタン部分、シクロペンタン部分又はシクロヘキサン部分を含むか、又はそれに結合している直鎖アルキルを含む。直鎖又は環状構造内の炭素、及び必要に応じて、N、O、又はその他のヘテロ原子の総数はnになる。
【0027】
化学式の文脈で使用される場合、以下の略語を使用することができる:Meは、メチル CHであり、Etは、エチル -CHCHであり、Propは、プロピル -(CHCH(n-プロピル、n-pr)、又は-CH(CH(iso-プロピル、i-pr)であり、butは、ブチル -C、-(CHCH、-CHCHCHCH、-CHCH(CH、又は-C(CH)である。
【0028】
広義の「置換アルキル」という用語は、炭素又は水素ではない原子、特にN、O、F、B、Si、P、S、Cl、Br及びIから選択される原子に共有結合している広義の上記定義のアルキルを指し、これらの原子自体は、場合により、この基の1つ又は複数の他の原子、又は水素、又は不飽和若しくは飽和の炭化水素(広義のアルキル又はアリール)に結合していてもよい。狭義には、「置換アルキル」は、アミン NH、アルキルアミン NHR、イミド NH、アルキルイミド NR、アミノ(カルボキシアルキル)NHCOR若しくはNRCOR、ヒドロキシル OH、オキシアルキル OR、オキシ(カルボキシアルキル)OCOR、カルボニル O及びそのケタール又はアセタール(OR)、ニトリル CN、イソニトリル NC、シアネート CNO、イソシアネート NCO、チオシアネート CNS、イソチオシアネート NCS、フッ化物 F、塩化物 Cl、臭化物 Br、ヨウ化物 I、ホスホネート PO、PO、ホスフェート OPO及びOPO、スルフヒドリル SH、スルフアルキル(suflalkyl)SR、スルホキシド SOR、スルホニル SOR、スルファニルアミド SONHR、サルフェート SOH、及び硫酸エステル SORから選択される基によって、1つ又は複数の炭素原子が置換されている広義の上記に定義されるようなアルキルに関し、現在の項で使用されているR置換基は、明細書の本文でRに割り当てられている他の用途とは異なり、それ自体は、最も広い意味では、非置換又は置換のC~C12アルキルであり、より狭い意味では特に明記しない限りRは、メチル、エチル又はプロピルである。
【0029】
「ヒドロキシル置換基」という用語は、1つ又は複数のヒドロキシル基 OHによって修飾されている基を指す。
【0030】
「アミノ置換基」という用語は、1つ又は複数のアミノ基 NHによって修飾されている基を指す。
【0031】
「カルボキシル置換基」という用語は、1つ又は複数のカルボキシル基 COOHによって修飾されている基を指す。
【0032】
アミノ置換アルキルの非限定的な例としては、末端部分については、-CHNH、-CHNHMe、-CHNHEt、-CHCHNH、-CHCHNHMe、-CHCHNHEt、-(CHNH、-(CHNHMe、-(CHNHEt、-CHCH(NH)CH、-CHCH(NHMe)CH、-CHCH(NHEt)CH、-(CHCHNH、-(CHCHNHMe、-(CHCHNHEt、-CH(CHNH)CHCH、-CH(CHNHMe)CHCH、-CH(CHNHEt)CHCH、-CHCH(CHNH)CH、-CHCH(CHNHMe)CH、-CHCH(CHNHEt)CH、-CH(NH)(CHNH、-CH(NHMe)(CHNHMe、-CH(NHEt)(CHNHEt、-CHCH(NH)CHNH、-CHCH(NHMe)CHNHMe、-CHCH(NHEt)CHNHEt、-CHCH(NH)(CHNH、-CHCH(NHMe)(CHNHMe、-CHCH(NHEt)(CHNHEt、-CHCH(CHNH、-CHCH(CHNHMe)、及び-CHCH(CHNHEt)が挙げられ、2つの他の部分を架橋するアミノ置換アルキル部分については、-CHCHNH-、-CHCHNHMe-、-CHCHNHEt-が挙げられる。
【0033】
ヒドロキシ置換アルキルの非限定的な例としては、末端部分については、-CHOH、-(CHOH、-(CHOH、-CHCH(OH)CH、-(CHOH、-CH(CHOH)CHCH、-CHCH(CHOH)CH、-CH(OH)(CHOH、-CHCH(OH)CHOH、-CHCH(OH)(CHOH、及び-CHCH(CHOH)が挙げられ、2つの他の部分を架橋するヒドロキシル置換アルキル部分については、-CHOH-、-CHCHOH-、-CHCH(OH)CH-、-(CHCHOHCH-、-CH(CHOH)CHCH-、-CHCH(CHOH)CH-、-CH(OH)CHCHOH-、-CHCH(OH)CHOH、-CHCH(OH)(CHOH、及び-CHCHCHOHCHOH-が挙げられる。
【0034】
「スルホキシル置換基」という用語は、1つ又は複数のスルホキシル基-SORによって修飾された基、又はその誘導体を指し、Rは前項で記載した意味を持ち、この明細書の本文でRに付与した他の意味と異なる。
【0035】
「アミン置換基」という用語は、1つ又は複数のアミン基 -NHR又は-NRによって修飾された基、又はその誘導体を指し、Rは前項で記載した意味を持ち、この明細書の本文でRに付与した他の意味とは異なる。
【0036】
「カルボニル置換基」という用語は、1つ又は複数のカルボニル基 -CORで修飾された基、又はその誘導体を指し、Rは前項で記載した意味を持ち、本明細書の本文でRに付与した他の意味とは異なる。
【0037】
「エステル」とは、1つ又は複数のエステル基 -CORによって修飾された基を指し、Rは本明細書においてさらに定義される。
【0038】
「アミド」とは、1つ又は複数のアミド基 -CONHRによって修飾された基を指し、Rは本明細書においてさらに定義される。
【0039】
「ハロゲン置換基」という用語は、(独立して)F、Cl、Br、Iから選択される1つ又は複数のハロゲン原子によって修飾された基を指す。
【0040】
「フルオロ置換アルキル」という用語は、1つ又は複数のフッ化物基 Fによって修飾されている、上記の定義によるアルキルを指す。フルオロ置換アルキルの非限定的な例としては、-CHF、-CHF、-CF、-(CHF、-(CHF)H、-(CHF)F、-C、-(CHF、-(CHF)H、-(CHF)F、-C、-(CHF、-(CHF)H、-(CHF)F、及び-Cが挙げられる。
【0041】
ヒドロキシル及びフルオロ置換アルキルの非限定的な例としては、-CHFCHOH、-CFCHOH、-(CHF)CHOH、-(CFCHOH、-(CHF)CHOH、-(CFCHOH、-(CHOH、-CFCH(OH)CH、-CFCH(OH)CF、-CF(CHOH)CHFCH、及び-CF(CHOH)CHFCFが挙げられる。
【0042】
本明細書の文脈における「アリール」という用語は、環状芳香族C~C10炭化水素を意味する。アリールの例としては、次に限定されないが、フェニル及びナフチルが挙げられる。
【0043】
「ヘテロアリール」とは、1つ又は複数の窒素、酸素及び/又は硫黄原子を含むアリールである。ヘテロアリールの例としては、次に限定されないが、ピロール、チオフェン、フラン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、ピリジン、ピリミジン、チアジン、キノリン、ベンゾフラン及びインドールなどが挙げられる。本明細書の文脈におけるアリール又はヘテロアリールは、さらに、1つ又は複数のアルキル基によって置換されていてもよい。
【0044】
本明細書で使用されるとおり、「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を伴う、本発明の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を指す。特定の実施形態では、本発明による医薬組成物は、局所投与、非経口投与、又は注射投与に適した形態で提供される。
【0045】
本明細書で使用されるとおり、「薬学的に許容される担体」という用語は、当業者に知られているように、任意の溶媒、分散媒質、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香料、色素等及びそれらの組み合わせが挙げられる(例えば、Remington:the Science and Practice of Pharmacy,ISBN 0857110624を参照)。
【0046】
本明細書で使用されるとおり、任意の疾患又は障害(例えば、がん)を「治療する」又はその「治療」という用語は、一実施形態において、疾患又は障害を改善すること(例えば、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発生を遅らせること、又は阻止すること、又は低減すること)を指す。別の実施形態では、「治療する」又は「治療」は、患者によって識別できない可能性があるものを含む少なくとも1つの身体的パラメータを緩和又は改善することを指す。さらに別の実施形態では、「治療する」又は「治療」は、物理的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、物理的パラメータの安定化)、又はその両方のいずれかで、疾患又は障害を調節することを指す。方法は、疾患の治療及び/又は予防を評価する方法である。
【0047】
本明細書の文脈における転移という用語は、腫瘍細胞が発生した同じ臓器又はそこから離れた臓器における、元の腫瘍床の外側での腫瘍細胞の播種及び増殖に関する。特定の実施形態において、開示される化合物による治療又は予防は、異常なFGFRシグナル伝達に関連する転移に対して採用される。本発明の化合物は、転移細胞の運動挙動を特異的に減少させ、播種を減少させる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、癌細胞の運動性及び播種の予防又は治療に対して採用される。
【0048】
FGFR駆動型腫瘍形成
全てのヒト腫瘍の約7%は、FGFR変異(66%の遺伝子増幅、26%の変異、8%の遺伝子再編成)を保有する(Helsten,T.ら,Clin Cancer Res.,259-268(2016)doi:10.1158/1078-0432.CCR-14-3212)。FGFR1は、扁平上皮非小細胞肺がんの20~25%(Weiss,J.ら,Science Translational Medicine(2010)doi:10.1126/scitranslmed.3001451)及び15%の乳がん(Andre,F.ら,Clin Cancer Res.,15,441-452(2009))で増幅されることが多く、正中神経膠腫(midline glioma)の18%で変異されることが多い(Di Stefano,A.L.ら,Journal of Clinical Oncology 36,2005(2018))。FGFR2は、肝内胆管癌(iCCA、15%)にて遺伝子融合によって主に活性化され、子宮内膜腫瘍の10%における変異も報告されている(Konecny,G.E.ら,The Lancet Oncology 16,686-694(2015);Verlingue,L.ら,European Journal of Cancer 87,122-130(2017))。FGFR3は、尿路上皮癌において変異により影響を受ける(転移性では最大20%);遺伝子融合(主にFGFR3-TACC3)は膠芽腫及び神経膠腫に存在し(3~6%(Di Stefano,A.L.ら,Journal of Clinical Oncology 36,2005(2018);Singh,D.ら,Science 337,1231-1235(2012);Di Stefano,A.L.ら,Clinical Cancer Research 21,3307-3317(2015)))、並びに膀胱がんに存在する(2~3%(Robertson,A.G.ら,Cell 171,540-556.e25(2017)))。FGFR1~4シグナルは、線維芽細胞増殖因子受容体基質2(FRS2:Fibroblast Growth Factor Receptor Substrate 2)依存(RAS/MAPK及びPI3K/AKT)経路及びFRS2非依存(PLC-γ、JAK-STAT)経路を介する(Turner,N.及びGrose,Nat Rev Cancer、1-14(2010)doi:10.1038/nrc2780)。FRS2は、そのホスホチロシン結合ドメイン(PTB)を介してFGFRと相互作用し(Gotoh,N.,Cancer Science 99,1319-1325(2008))、FRS2の発現又は活性化の増加は、複数の腫瘍実体の腫瘍形成に関与する(Zhang,K.ら,Cancer Research 73,1298-1307(2013);Li,J.-L.及びLuo,European review for medical and pharmacological sciences 24,97-108(2020);Wu,S.ら,Nature Communications 1-12(2019)doi:10.1038/s41467-019-08576-5;Liu,J.ら,Oncogene,35,1750-1759(2015);Chew,N.J.ら,Cell Communication and Signaling 18,1-17(2020))。FRS2指向のN-ミリストイルトランスフェラーゼを抑制することを介するFRS2機能の標的化は、いくつかのがんの種類でFGFRのシグナル伝達、細胞増殖及び移動を抑制した(Li,Q.ら,The Journal of biochemical 293,6434-6448(2018))。FGFRの薬理学的阻害は、髄芽腫の脳浸潤を減少させ、かつ肝細胞癌における転移(Huynh,H.ら,Hepatology 69,943-958(2019))及び肺がんにおける転移(Preusser,M.ら,Lung Cancer 83,83-89(2014))を低減する。FGFR駆動型の浸潤性はFRS2に依存する(Huynh,H.ら,Hepatology 69,943-958(2019))。FGFRのFGFリガンドは、以下で高発現し:骨格筋(Pedersen,B.K.及びFebbraio,M.A.,Nat並びにReviews Endocrinology vol.8 457-465(2012))、骨(Su,N.,Du,X.L.及びChen,Frontiers in Bioscience vol.13 2842-2865(2008))及び脳脊髄液分泌性脈絡叢(CSF-secreting choroid plexus)(Greenwood,S.ら,Cerebrospinal Fluid Research 5,13-20(2008))、局所浸潤及び遠位播種を引き起こすケモキネシス因子及びケモタクシス因子として機能できる。したがって、FGFR-FRS2シグナル伝達の抑制は、腫瘍細胞の増殖能を抑制するだけでなく、原発腫瘍と標的臓器とでそれぞれ分泌されたFGFのケモキネシス機能又はケモタクシス機能によって駆動される転移の広がりを止めることができる。
【0049】
選択的FGFR阻害剤(例えばAZD4547、NVP-BGJ398、及びJNJ-42756493)及び非選択的FGFR阻害剤(例えばドビチニブ又はポナチニブ)は、がん治療のために調査されてきた(Facchinetti,F.ら,Clin Cancer Res,(2020)doi:10.1158/1078-0432.CCR-19-2035;Yamaoka,T.ら,Int.J.Mol.Sci.19,1-35(2018))。FGFR阻害剤に対する耐性は、下流シグナル伝達活性化のバイパスメカニズムを可能にする代替RTKの活性化又は触媒ドメインでのゲートキーパー変異の形成のいずれかによって、他のRTK阻害剤と同様に、発達可能である(Yamaoka,T.,ら,Int.J.Mol.Sci.19,1-35(2018))。このようなFGFRの変異は、ATP結合クレフトで発生する可能性があり、薬物結合有効性を制限するように立体構造的な競合をもたらすことができる。例には、FGFR3_V555M、FGFR1_V561、及びFGFR2_V564が挙げられ、これらはin vitroでFGFR阻害剤に対する耐性を誘導する(Chell,V.ら,Oncogene 32,3059-3070(2013);Byron S.A.ら,Neoplasia 15,975-988(2013))。
【0050】
非酵素的に活性なFGFRアダプタータンパク質FRS2を標的とする本発明者らのアプローチは、RTKの下流のシグナル伝達をブロックすることによって、FGFRゲートキーパー変異の発達を防止することができ、又はゲートキーパーFGFR駆動型腫瘍の耐性を克服する一助となり得る。FRS2を標的とすることは、FRS2がリン酸化され、かつ発がん性MAPキナーゼ経路にシグナルを伝達するFGFR3-TACC3融合によって駆動される腫瘍に対しても有効である可能性が高い(Chew,N.J.ら,Cell Communication and Signaling 18,1-17(2020))。さらに、FGFR阻害剤治療に関連する毒性が報告されており、高リン血症(hyper-phosphoremia)、疲労、口内炎を伴う皮膚及び口内の乾燥、手足症候群、及び胃腸機能不全などが挙げられる(Facchinetti,F.ら,Clin Cancer Res,(2020)doi:10.1158/1078-0432.CCR-19-2035)。オフターゲット化合物活性を制限するFRS2を特異的に標的とするアプローチは、FGFR阻害に一般に関連する毒性の重症度を軽減することができる。
【0051】
本発明の第1の態様は、転移の治療又は予防における使用のための一般式(500)の化合物に関し、
【化5】
式中、
- Xは、N、O、及びSから選択され、特にXは、Nであり、
- Rは、(直鎖状又は分岐状)C~C16アルキル、(直鎖状又は分岐状)C~C16アルケン、ヘテロアリール、アリール、C~Cシクロアルキル、及びC~C複素環から選択され、ここでRは非置換であるか、又はOR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換され、ここでRN1,RN2,R,R、及びRは、独立して、H、及び非置換若しくは置換C~Cアルキル、又はC~Cアルケンから選択され、
特にRは、OR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORから選択される1つの部分で置換され、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- 各R及びRは、独立して、C~Cアルキル、OROH、NH、CN、COORCOO、及びハロゲンから選択され、ここでRCOO及びROHは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- nは、0、1、2、又は3であり、特にnは、1であり;
- mは、0、1、2、3、又は4であり、特にmは、1又は2である。
【0052】
特定の実施形態において、Rは、-CH-NH-CHRであり、式中、
- R及びRは、独立して、C~Cアルキル、C~Cアルケンから選択され、ここでR及びRは、非置換であるか、又はOR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換され、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
又は
- RとRとは共に、非置換又はOH-、ハロゲン-及び/又はCN-置換のシクロペンタン又はシクロヘキサンを形成する。
【0053】
特定の実施形態では、本化合物は、一般式(700)の化合物であり、
【化6】
式中、
- 各R及びRは、独立して、C~Cアルキル、OROH、NH、CN、COORCOO、及びハロゲンから選択され、ここでRCOO及びROHは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- R及びRは、請求項2の記載と同じく定義され;
- Xは、N、O、及びSから選択され、特にXは、Nである。
【0054】
特定の実施形態では、Rは、非置換のC~Cアルキル及びC~Cアルケンから選択され、Rは、OR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換されたC~Cアルキル及びC~Cアルケンから選択される電気陰性部分であり、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立してH、及びC~Cアルキルから選択される。
【0055】
特定の実施形態において、Rは、エチル、iso-プロピル、及びtert-ブチルから選択される。
【0056】
特定の実施形態では、Rは、OH-、ハロゲン-、及び/又はCN-置換のメチル、エチル、及びイソプロピルから選択される。
【0057】
特定の実施形態において、Rは、C~Cアルキル、OH、NH、及びハロゲンから選択され、特にF又はClから選択される。
【0058】
特定の実施形態において、Rは、C~Cアルキル、及びOHから選択される。
【0059】
特定の実施形態において、Rは、OH、NH、及びハロゲンから選択される。特定の実施形態において、Rはハロゲンであり、より特にRはFである。
【0060】
特定の実施形態では、XはNである。
【0061】
特定の実施形態では、転移は、膀胱がん、小児脳腫瘍、髄芽腫、多発性骨髄腫、大腸がん及び胃がんから選択されるがんから生じる。
【0062】
本発明の第2の態様は、血管新生アンタゴニストとしての使用のための第1の態様に記載の化合物に関するものである。特定の実施形態において、血管新生アンタゴニストは、がんの治療又は予防において提供される。特定の実施形態では、がんは、膀胱がん、肝細胞癌、及び前立腺がんから選択される。
【0063】
本発明の第3の態様は、FGFR駆動型疾患の予防又は治療における使用のための第1の態様に記載の化合物に関する。
【0064】
本発明の第4の態様は、一般式(700)の化合物に関し、
【化7】
式中、
- 各R及びRは、独立して、C~Cアルキル、OROH、NH、CN、COORCOO、及びハロゲンから選択され、ここでRCOO及びROHは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- R及びRは、独立して、C~Cアルキル、C~Cアルケンから選択され、ここでR及びRは、非置換であるか、又はOR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換され、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
又は
- RとRとは共に、非置換又はOH-、ハロゲン-及び/又はCN-置換のシクロペンタン又はシクロヘキサンを形成し;
- Xは、N、O、及びSから選択され、特にXはNであり、
- 但し、該化合物は、一般式(001)
【化8】
によって特徴付けられないことを条件とする。
【0065】
この二環構造は、標的タンパク質上のグリシン及びアルギニンに富んだ領域と相互作用する。この二環構造は、R152、R153、R137、G157、G159及びG151と特異的に相互作用する。
【0066】
特に、Xはヘテロ原子である。ヘテロ原子(N、O又はS)は、標的タンパク質との最初の相互作用を確立する。
【0067】
特定の実施形態では、Rは、非置換C~Cアルキル及びC~Cアルケンから選択され、かつRは、OR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換されたC~Cアルキル及びC~Cアルケンから選択される電気陰性部分であり、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択される。
【0068】
電気陰性部分Rは、標的タンパク質のリジンに富んだ領域と相互作用を確立する。Rは特にL121及びL141と相互作用する。
【0069】
特定の実施形態において、Rはエチル、iso-プロピル、及びtert-ブチルから選択され、RはOH-、ハロゲン-、及び/又はCN-置換のメチル、エチル、及びイソプロピルから選択される。
【0070】
特定の実施形態において、Rは、C~Cアルキル、OH、NH、及びハロゲンから選択され、特にF又はClから選択される。特定の実施形態において、Rは、C~Cアルキル、及びOHから選択される。
【0071】
特定の実施形態において、Rは、OH、NH、及びハロゲンから選択される。特定の実施形態において、Rはハロゲンであり、より特にRはFである。
【0072】
特定の実施形態では、XはNである。
【0073】
本発明の第5の態様は、医薬としての使用のための第4の態様による化合物に関し、但し、該化合物は、式(001)
【化9】
によって特徴付けられる化合物を含むことを条件とする。
【0074】
本発明の第6の態様は、がんの治療又は予防における使用のための第4の態様に従う化合物に関し、但し、該化合物は、式(001)によって特徴付けられる化合物を含むことを条件とする。特定の実施形態において、がんは、上衣腫、前立腺がん、食道がん、甲状腺がん、肝細胞癌、精巣がん、小児脳腫瘍、髄芽腫、横紋筋肉腫、胃がん、肺多形性癌、乳がん、非小細胞肺がん、脂肪肉腫、子宮頸がん、大腸がん、メラノーマ、多発性骨髄腫、子宮内膜がん、膀胱がん、グリア芽腫、肺扁平上皮癌、卵巣がん、頭頸部がん、及び膵臓がん、肉腫から選択される。特定の実施形態では、がんは、膀胱がん、多発性骨髄腫、胃がん、小児脳腫瘍、髄芽腫、グリア芽腫、上衣腫、大腸がん、及び肉腫から選択される。特定の実施形態では、がんは、膀胱がん、小児脳腫瘍、髄芽腫、多発性骨髄腫、大腸がん、及び胃がんから選択される。
【0075】
医療、剤形、及び塩
同様に、本発明の範囲内には、上記記載による化合物を患者に投与することを含む、それを必要とする患者のがん又は転移を治療すること、又はその方法が含まれる。
【0076】
同様に、本発明の上記の態様又は実施形態のいずれかによる非アゴニストリガンド又はアンチセンス分子を含む、がんの予防又は治療のための剤形が提供される。
【0077】
当業者は、任意に特に言及された薬物が当該薬物の薬学的に許容される塩として存在し得ることを理解している。薬学的に許容される塩には、イオン化された薬物及び逆帯電した対イオンを含む。薬学的に許容される陰イオン塩形態の非限定的な例には、酢酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、酒石酸水素塩(bitatrate)、臭化物、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エンボン酸塩、エストール酸塩、フマル酸塩、グルセプ酸塩、グルコン酸塩、臭化水素、塩酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル塩、硫酸メチル塩、ムチン酸塩(mucate)、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、サリチル酸塩、ジサリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド塩及び吉草酸塩が挙げられる。薬学的に許容されるカチオン塩形態の非限定的な例には、アルミニウム、ベンザチン、カルシウム、エチレンジアミン、リジン、マグネシウム、メグルミン、カリウム、プロカイン、ナトリウム、トロメタミン及び亜鉛が挙げられる。
【0078】
投与形態は、鼻腔、口腔、直腸、経皮、若しくは経口の投与などの腸内投与、又は吸入剤若しくは坐剤とすることができる。あるいは、皮下、静脈内、肝内、若しくは筋肉内注射の形態などの非経口投与が用いられてもよい。任意に、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤が存在してもよい。
【0079】
局所投与もまた、本発明の有利な使用の範囲内である。当業者は、以下の内容によって例示されるとおり、局所製剤を提供するための広い範囲の可能な処方について理解している:Benson及びWatkinson(編),Topical and Transdermal Drug Delivery:Principles and Practice(第1編,Wiley 2011,ISBN-13:978-0470450291);及びGuy及びHandcraft:Transdermal Drug Delivery Systems:Revised and Expanded(第2編,CRC Press 2002,ISBN-13:978-0824708610);Osborne及びAmann(編):Topical Drug Delivery Formulations(第1編 CRC Press 1989;ISBN-13:978-0824781835)。
【0080】
医薬組成物及び投与
本発明の別の態様は、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。さらなる実施形態では、該組成物は、本明細書に記載されるものなどの少なくとも2つの薬学的に許容される担体を含む。
【0081】
本発明の特定の実施形態において、本発明の化合物は、典型的に、容易に制御可能な薬物の投与量を提供し、かつ患者に明解でかつ容易に扱いやすい製品を付与するような医薬剤形に製剤化される。
【0082】
本発明の化合物の局所的使用に関する本発明の実施形態では、医薬組成物は、水溶液、懸濁液、軟膏、クリーム、ゲル又は噴霧可能な製剤、例えばエアゾール等による送達用のものなど、局所投与に適した方法で製剤化され、活性成分を当業者に知られている1つ又は複数の可溶化剤、安定剤、等張化増強剤、バッファー及び防腐剤と共に含んでいる。
【0083】
医薬組成物は、経口投与、非経口投与、又は直腸投与用に製剤化することができる。さらに、本発明の医薬組成物は、固体形態(限定されないが、カプセル、錠剤、丸薬、顆粒、粉末又は坐剤を含む)、又は液体形態(限定されないが、溶液、懸濁液又は乳液を含む)において構成することができる。
【0084】
本発明の化合物の投与レジメンは、特定の薬剤の薬力学的特性及びその投与の様式及び経路などの既知の要因:例えば、レシピエントの種、年齢、性別、健康状態、病状、及び体重;症状の性質と程度;同時治療の種類;治療の頻度;投与経路、患者の腎機能及び肝機能、並びに所望の効果などに応じて変化するであろう。特定の実施形態において、本発明の化合物は、1日1回の用量で投与されてもよいし、又は1日の総用量が、1日2回、3回、又は4回に分割した用量で投与されてもよい。
【0085】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物又は組み合わせは、約50~70kgの対象に対して約1~1000mgの活性成分(複数可)の単位用量であり得る。化合物、医薬組成物、又はそれらの組み合わせの治療上有効な投与量は、対象の種、体重、年齢及び個人の状態、治療される障害又は疾患又はその重篤度に依存する。通常の技術を有する医師、臨床医又は獣医師であれば、障害又は疾患の予防、治療又は進行抑制に必要な各有効成分の有効量を容易に決定することができる。
【0086】
本発明の医薬組成物は、滅菌などの従来の医薬操作にかけることができ、及び/又は従来の不活性希釈剤、潤滑剤、又は緩衝剤、並びに保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤及び緩衝剤などのアジュバントを含有することができる。これらは、標準的なプロセス、例えば、従来の混合、造粒、溶解又は凍結乾燥プロセスによって製造することができる。医薬組成物を調製するための多くのそのような手順及び方法は、当技術分野で知られており、例えば、L.Lachmanら、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy,第4編,2013(ISBN 8123922892)を参照されたい。
【0087】
本発明による製造方法及び治療方法
本発明は、さらなる態様として、がん又は転移の治療又は予防のための医薬の製造方法における使用のための、上記で詳細に規定したとおりの、本明細書で特定される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用をさらに包含する。
【0088】
同様に、本発明は、がん又は転移に関連する疾患と診断された患者の治療方法を包含する。この方法は、本明細書において詳細に規定されるとおり、本明細書において特定される化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を患者に投与することを伴う。
【0089】
本明細書において、例えばリガンドの種類又は医療適用などの単一の分離可能な特徴の代替が「実施形態」として示されている場合、そのような代替は自由に組み合わせて、本明細書に開示された本発明の個別の実施形態を形成することができると理解されるべきである。したがって、リガンドの種類についてのいずれの代替の実施形態は、本明細書に記載されたいずれの医療適用と組み合わせることができる。
【0090】
本発明は、さらに以下の項目を包含する。
【0091】
項目
項目1. 一般式(100)の化合物であって、
-L-BC (100)
式中、
- Lは、C~Cアルキル、C~Cアミン、又はC~Cアミドからなるリンカーであり、ここでLは、非置換であるか、又はC~Cアルキルで置換されており、特にLは、C~Cアミンであり;
- Rは、(直鎖状又は分岐状)C~C16アルキル、(直鎖状又は分岐状)C~C16アルケン、ヘテロアリール、アリール、C~Cシクロアルキル、及びC~C複素環から選択され、ここでRは、非置換であるか、又はOR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換され、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され、
特にRは、OR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORから選択される1つの部分で置換され、ここでRN1、RN2、R、R、Rは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- BCは、芳香族又は非芳香族の複素二環又は炭素二環であり、これは、非置換であるか、又はC~Cアルキル、OROH、NH、CN、COORCOO、及びハロゲンから独立して選択される1~7個の部分で置換され、ここでRCOO及びROHは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- 但し、前記化合物は、一般式(001)
【化10】
によって特徴付けられないことを条件とする、
前記化合物。
項目2. 一般式(201)、(202)、又は(203)の項目1に記載の化合物であって、
【化11】
式中、
- L及びRは、項目1で定義されたものと同じ意味を有し;
- nは、0、1、2、又は3であり、特にnは、1であり、
- mは、0、1、2、3、又は4であり、特にmは、1又は2であり;
- 各R及びRは、独立して、C~Cアルキル、OROH、NH、CN、COORCOO及びハロゲンから選択され、ここでRCOO及びROHは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
- 各X~Xは、独立して、CH、N、O、及びSから選択され、ここでX~Xの2~7原子は、CHであり、
特にXは、N、O、及びSから選択され、かつ他の全てのXは、CHであり、
より特に、XはNであり、かつ他の全てのXは、CHである、
前記化合物。
項目3. 一般式(300)の項目1又は2に記載の化合物であって、
【化12】
式中、
- X、L、R、R、R、n、及びmは、項目1又は2で定義されたものと同じ意味を有する、
前記化合物。
項目4. 一般式(400)の項目1~3のいずれか一項に記載の化合物であって、
【化13】
式中、
- X、L、R、R、及びRは、項目1又は2で定義されたものと同じ意味を有する、
前記化合物。
項目5. 一般式(500)の項目1~3のいずれか一項に記載の化合物であって、
【化14】
式中、
- X、R、R、R、n、及びmは、項目1又は2で定義されたものと同じ意味を有する、
前記化合物。
項目6. 一般式(600)の項目1~3のいずれか一項に記載の化合物であって、
【化15】
式中、
- X、L、R、R、R、n、及びmは、項目1又は2で定義されたものと同じ意味を有し;
- R及びRは、独立して、C~Cアルキル、C~Cアルケンから選択され、ここでR及びRは、非置換であるか、又はOR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換され、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され;
又は
- RとRとは共に、非置換又はOH-、ハロゲン-、及び/又はCN-置換のシクロペンタン又はシクロヘキサンを形成する、
前記化合物。
項目7. 一般式(700)の項目1~6のいずれか一項に記載の化合物であって、
【化16】
式中、
- X、R、R、R、及びRは、項目1、2又は6で定義されたものと同じ意味を有する、
前記化合物。
項目8. Lは、1~6原子長を有し、より特にLは、2~4原子長を有し、最も特にLは、2原子長を有する、項目1~4又は6のいずれか一項に記載の化合物。
項目9. 項目6又は7のいずれか一項に記載の化合物であって、Rは、非置換のC~Cアルキル及びC~Cアルケンから選択され、かつRは、OR、CN、ハロゲン、NRN1N2、SO、COORで置換されたC~Cアルキル及びC~Cアルケンから選択される電気陰性部分であり、ここでRN1、RN2、R、R、及びRは、独立して、H、及びC~Cアルキルから選択され、
特にRは、エチル、iso-プロピル、及びtert-ブチルから選択され、かつRは、OH-、ハロゲン-、及び/又はCN-置換のメチル、エチル、及びイソプロピルから選択される、前記化合物。
項目10. Rは、C~Cアルキル、OH、NH、及びハロゲンから選択され、特にF又はClであり、
特にRは、C~Cアルキル、及びOHから選択される、項目1~9のいずれか一項に記載の化合物。
項目11. Rは、OH、NH、及びハロゲンから選択され、
特にRは、ハロゲンである、項目1~10のいずれか一項に記載の化合物。
項目12. Xは、Nである、項目1~11のいずれか一項に記載の化合物。
項目13. 医薬としての使用のための、項目1~12のいずれか一項に記載の化合物であって、但し、一般式(001)
【化17】
によって特徴付けられる化合物を含むことを条件とする、前記化合物。
項目14. がんの治療又は予防における使用のための、項目1~13のいずれか一項に記載の化合物であって、特に前記がんは、上衣腫、前立腺がん、食道がん、甲状腺がん、肝細胞癌、精巣がん、小児脳腫瘍、髄芽腫、横紋筋肉腫、胃がん、肺多形癌、乳がん、非小細胞肺がん、脂肪肉腫、子宮頸がん、大腸がん、メラノーマ、多発性骨髄腫、子宮内膜がん、膀胱がん、グリア芽腫、肺扁平上皮癌、卵巣がん、頭頸部がん、及び膵臓がん、肉腫から選択され、より特に、前記がんは、膀胱がん、多発性骨髄腫、胃がん、小児脳腫瘍、髄芽腫、グリア芽腫、上衣腫、大腸がん、及び肉腫から選択され、最も特に、前記がんは、膀胱がん、小児脳腫瘍、髄芽腫、多発性骨髄腫、大腸がん、及び胃がんから選択され、但し、前記化合物は、一般式(001)によって特徴付けられる化合物を含むことを条件とする、前記化合物。
項目15. 転移の治療又は予防における使用のための、項目1~12のいずれか一項に記載の化合物であって、特に前記転移は、膀胱がん、小児脳腫瘍、髄芽腫、多発性骨髄腫、大腸がん、及び胃がんから選択されるがんから発生し、但し、一般式(001)によって特徴付けられる化合物を含むことを条件とする、前記化合物。
項目16. 血管新生アンタゴニストとしての使用のための、項目1~12のいずれか一項に記載の化合物であって、特にがんの治療又は予防における血管新生アンタゴニストとしての使用のための前記化合物であって、より特に、前記がんは、膀胱がん、肝細胞癌、及び前立腺がんから選択され、但し、一般式(001)によって特徴付けられる化合物を含むことを条件とする、前記化合物。
【0092】
本発明は、以下の実施例及び図によってさらに説明され、そこからさらなる実施形態及び利点を引き出すことができる。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、その範囲を限定するものではない。
【実施例
【0093】
本発明者らは、小分子断片の大きなライブラリーをスクリーニングすることにより、FRS2-FGFR相互作用の阻害剤を設計した。本発明者らは、F3.14をFRS2-FGFR相互作用の推定小分子阻害剤として同定した。発明者らは、F3.14のFRS2への結合を、生物物理学的アッセイであるnanoDSF、MST、及びNMR分析を使用して確認した。本発明者らは、FGFR駆動型がん細胞モデルを使用して、がん細胞の浸潤及び増殖の阻害におけるF3.14の有効性を評価した。スフェロイド浸潤アッセイ及び細胞力価gloアッセイの結果は、F3.14が、試験した全てのFGFR駆動型がん細胞株でがん細胞の浸潤及び増殖を効果的に阻害することを示している。FGFシグナル伝達経路に対するF3.14の効果を試験するために、本発明者らはイムノブロッティングを使用した。F3.14は、FGFシグナル伝達経路の下流エフェクターのリン酸化を阻害することによりFGFシグナル伝達を阻害する。本発明者らは、in vitro ADMET試験及びin vivo PK試験を用いて、F3.14の「薬物様」特性を決定した。これらのアッセイの結果から、F3.14は良好な浸透性、非常に良好な溶解性、中程度の固有クリアランス、非常に低い毒性、及び高い効力を持っていることが実証された。in vivo PK試験では、F3.14はマウスでの忍容性が高く、FGFR駆動型疾患の治療のために生体への静脈内経路による投与が安全に行えることが示された。
【0094】
方法及び機器
スフェロイド浸潤試験(SIA:spheroid invasion assay)及び自動細胞播種カウンター(aCDc:automated cell dissemination counter)
低接着細胞性(cell-repellent)96ウェルマイクロプレート(650790,Greiner Bio-one)に、1000細胞/100μl/ウェルで播種した。この細胞を37℃で一晩培養し、スフェロイドを形成した。70μlの培地を各ウェルから除去し、残りのスフェロイドを有する培地に2.5%のウシコラーゲン1を重ねて添加した。コラーゲンの重合の後に、新しい培地を細胞に添加し、増殖因子及び/又は阻害剤で治療した。細胞をコラーゲンマトリックスに24時間浸潤させた後、4%PFAで固定し、ヘキスト染色を行った。画像は、5倍の対物レンズを使用して、Axio Observer 2 mot plus蛍光顕微鏡(Zeiss、ミュンヘン、ドイツ)で取得した。細胞浸潤は、自動細胞播種カウンター(aCDc)と発明者らの細胞播種カウンターソフトウェアaSDIcsとを用いて決定されるとおりスフェロイドの中心からの細胞による浸潤距離の平均として決定した(Kumarら,Sci Rep 5,15338(2015))。
【0095】
ナノ示差走査蛍光測定法(nanoDSF)
グアニンヌクレオチド結合タンパク質サブユニット ベータ(GB1)及び6×ヒスチジン残基でタグ付けされた精製FRS2タンパク質を、タンパク質バッファー(100mM リン酸ナトリウム、50mM NaCl、0.5mM EDTA、50mM アルギニン、1mM TCEP、pH 7.0)中で終濃度30μMに希釈した。本化合物を、終濃度100%DMSOを用いて、50又は100mMで100%中に溶解し、1mMにさらに希釈した。化合物とタンパク質とを1:1の比率で混合し、本化合物について500μM及び15μMの終濃度を得た。測定前に混合物を室温で15分間インキュベートした。測定は、高感度キャピラリーにおいてPrometheusシステムで実行した。サンプルは、1℃/分間隔で20~95℃の温度勾配に供した。
【0096】
マイクロスケール熱泳動法(MST)
グアニンヌクレオチド結合タンパク質サブユニット ベータ(GB1)及び6×ヒスチジン残基でタグ付けした精製FRS2タンパク質を、第2世代BLUE-NHS色素で標識した。このタンパク質を60μMの色素を用いて終濃度20μMで標識した。この標識は、アルギニンを添加しないタンパク質バッファーで実施した。標識の後のタンパク質のバッファーに対してアルギニンを再緩衝化した。本化合物を、終濃度100%DMSOを用いて、50又は100mMで100%に溶解し、1mMにさらに希釈した。その後化合物を、10%DMSOを添加したタンパク質バッファーで1mM~61.04nMまでの1:1連続希釈において希釈した。10μlの50nM標識したタンパク質を各化合物希釈液10μlに加え、最終標識したタンパク質濃度を25nM、かつDMSO濃度を5%にした。該サンプルを室温で15分間インキュベートした。実験はプレミアムコーティングされたキャピラリーで実施した。励起パワーを20%、MSTパワーを40%(4ケルビン温度勾配)に設定し、レーザーオン時間を20秒、レーザーオフ時間を3秒とした。温度は25℃に設定した。各測定は2回繰り返した。相互作用は、独立して2重に測定した。
【0097】
イムノブロッティング(IB:immunoblotting)
がん細胞をbFGF(100ng/ml)及び/又は化合物で治療し、放射免疫沈降アッセイ(RIPA:Radioimmunoprecipitation assay)バッファーを使用して溶解した。RIPAバッファー溶解物をSDS-PAGEで分離し、製造元の説明書(Bio-Rad)に従って転写装置を使用してニトロセルロース膜に転写した。膜を、ホスホ-FRS2、FRS2、ERK1/2、ホスホ-ERK1/2、AKT、ホスホ-AKT、ホスホ-PKC、及びチューブリンに対する一次抗体でプローブした。HRP結合二次抗体(1:5000)を使用して一次抗体を検出した。化学発光検出は、ChemiDoc Touchゲル及びウエスタンブロットイメージングシステム(BioRad)を使用して実行した。
【0098】
細胞力価gloアッセイ
細胞の代謝活性及び増殖を、製造元の指示に従って、PromegaのCell Titer gloアッセイを使用して決定した。簡潔には、250細胞/100μl/ウェル(最大72時間のインキュベーション)をGreiner Bio-One μ-clear 384ウェルプレート(655090、Greiner Bio-One)に播種し、37℃で一晩インキュベートした。次いで、古い培地を新しい無血清培地と交換し、所望の時点まで細胞をBGJ398又はF3.14で治療した。各時点での適切なインキュベーションの後、10μlの細胞力価glo試薬を各ウェルに添加し(ウェルあたりの終濃度細胞力価glo試薬 1:10)、37°Cで30分間インキュベートした。その後、1ウェルあたり0.5~1秒の信号積分時間で発光を測定した。
【0099】
In vivo薬物動態
3匹の健康な非SCIDマウスをF3.14で静脈内治療した。治療後2、4、6、8及び24時間にて血液サンプルを採取した。採取した血液サンプルから血清を単離し、血清中のF3.14の濃度を測定して、F3.14の固有クリアランスを決定した。
【0100】
経路分析
RIPAバッファーのFGFR駆動型細胞溶解物をSDS-PAGEで分離し、製造元の指示(Bio-Rad)に従って転写装置を使用してニトロセルロース膜に転写した。膜を、ホスホ-FRS2、FRS2、ERK1/2、ホスホ-ERK1/2、AKT、ホスホ-AKT、ホスホ-PKC、及びチューブリンに対する一次抗体でプローブした。HRP結合二次抗体(1:5000)を使用して一次抗体を検出した。化学発光検出は、ChemiDoc Touchゲル及びウエスタンブロットイメージングシステム(BioRad)を使用して実行した。Adobe Photoshop CS5を使用して、免疫反応性バンドの積算密度を定量した。
【0101】
化合物の入手方法
化合物は、ChemBridge社にて以下のベンダーIDで購入した:
F3.14 24662310(ChemBridge)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図18
【国際調査報告】