(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】オーディオ信号アンプ利得制御
(51)【国際特許分類】
H03G 3/02 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
H03G3/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576161
(86)(22)【出願日】2021-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 US2021037135
(87)【国際公開番号】W WO2021252987
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・セネット
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジョン・カリー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジェイ・パーキンズ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エス・ダリー
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・スモール
【テーマコード(参考)】
5J100
【Fターム(参考)】
5J100AA08
5J100AA09
5J100BA01
5J100BB00
5J100CA00
5J100EA02
5J100EA04
5J100FA00
(57)【要約】
オーディオ信号アンプにおける入力信号の利得を制御するためのシステム。システムは、ユーザ操作可能利得性と、ユーザ操作可能利得制御部に応答して入力信号の利得を修正するように共に構成される、アナログ回路要素及びデジタル回路要素と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号アンプにおける入力信号の利得を制御するためのシステムであって、
ユーザ操作可能利得制御部と、
少なくとも1つのアナログ回路要素及び少なくとも1つのデジタル回路要素であって、前記アナログ回路要素及び前記デジタル回路要素は共に、前記ユーザ操作可能利得制御部に応答して前記入力信号の前記利得を修正するように構成される、少なくとも1つのアナログ回路要素及び少なくとも1つのデジタル回路要素と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアナログ回路要素は、各々がオーディオ信号に対して異なる利得を達成する複数の第1の利得ステップを規定するアナログプリアンプを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのデジタル回路要素は、前記プリアンプの利得を補償するために、前記オーディオ信号に対して異なる利得を達成する複数の第2の補償利得ステップを規定するように構成された、前記プリアンプの下流のデジタル信号プロセッサ(DSP)を備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記DSPは、前記補償利得に加えてシステム利得を適用するように更に構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の利得ステップ及び前記第2の補償利得ステップは各々、利得の個別の変化である、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2の補償利得ステップは、前記第1の利得ステップの反対である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の利得ステップ及び前記第2の補償利得ステップを合わせて達成される全体的な利得が一定である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ユーザ操作可能利得制御部は、連続制御である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ユーザ操作可能利得制御部は、物理制御部材及び仮想制御部材を含み、前記物理制御部材及び前記仮想制御部材は、一致する外観を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記物理制御部材は制御ノブを含み、前記仮想制御部材はノブアイコンを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのアナログ回路要素は、高入力信号レベルの検出時に前記入力信号の前記利得を低減するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのデジタル回路要素は、前記高入力信号レベルを検出し、前記少なくとも1つのアナログ回路要素によって達成される前記利得低減を選択するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つのデジタル回路要素は、利得変更要求とオーディオデータの振幅の実際の変化との間の時間遅延を補償するように更に構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つのデジタル回路要素は、出力信号内の信号不連続性を除去及び置換するように更に構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのデジタル回路要素は、前記不連続性を含むデジタルデータをゼロにすることによって、信号不連続性を除去及び置換するように構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのデジタル回路要素は、前記ゼロにされたデジタルデータを周囲のデータから再構成することによって信号不連続性を除去及び置換するように更に構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つのデジタル回路要素は、信号不連続性におけるデジタルデータを周囲のデータから再構成することによって前記信号不連続性を除去及び置換するように構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記入力信号の前記利得の前記修正は、前記少なくとも1つのデジタル回路要素の制御下にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つのアナログ回路要素及び前記少なくとも1つのデジタル回路要素の両方によって一緒に適用される全体的な利得が、前記ユーザ操作可能利得制御部からのターゲット利得と一致する、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
オーディオ信号アンプにおける入力信号の利得を制御するためのシステムであって、
ユーザ操作可能利得制御部と、
各々がオーディオ信号に対して異なる利得を達成する複数の第1の個別利得ステップを規定するアナログプリアンプと、
前記プリアンプの利得を補償するために、前記第1の利得ステップの反対である複数の第2の個別補償利得ステップを規定するように構成される、前記プリアンプの下流のデジタル信号プロセッサ(DSP)であって、前記DSPは、前記補償利得に加えてシステム利得を適用するように更に構成される、デジタル信号プロセッサと、を備え、
前記第1の利得ステップ及び前記第2の補償利得ステップを合わせて達成される全体的な利得は一定であり、
前記アナログ回路要素及び前記デジタル回路要素は共に、前記ユーザ操作可能利得制御部に応答して前記入力信号の前記利得を修正するように構成される、システム。
【請求項21】
前記少なくとも1つのアナログプリアンプは、高入力信号レベルの検出時に前記入力信号の前記利得を低減するように更に構成され、前記DSPは、前記高入力信号レベルを検出し、前記プリアンプによって達成される前記利得低減を選択するように更に構成され、前記DSPは、周囲データからの信号不連続性におけるデジタルデータを再構成することによって、出力信号における信号不連続性を除去及び置換するように更に構成される、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オーディオ信号における利得を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
消費者及び専門家の両方によって使用されるように設計されたオーディオアンプは、非常に広い範囲の入力レベルを扱う必要がある入力チャンネルを有することができる。入力レベル範囲は、製品内のデジタル信号プロセッサ(DSP)に先行するアナログ-デジタル変換器(ADC)の入力範囲を超え得る。この入力レベル不整合は、チャンネルのレベル又は音量制御に先行して、別個の利得制御部又はMic/Lineレベルスイッチを含めることによって対処されることが多い。これらは、ユーザが電子利得を制御し、ADCの入力レベル範囲をより小さいセグメントに分割することを可能にする。次いで、通常のレベル又は音量制御が、DSPにおけるデジタル利得を制御する。しかしながら、このアプローチは、入力レベル範囲が高すぎる可能性があることをユーザが認識し、次いで追加の制御を動作させることを必要とする。これらの動作は、混乱を招き、直感的でない場合がある。また、制御が不適切に使用された場合、結果として得られる信号品質が悪くなる可能性がある。この問題に対する別のアプローチは、複数のアナログ利得段を一緒に動作させる単一のアナログ制御を提供することである。しかしながら、このタイプの制御は、モバイルアプリケーションによってリモートで駆動されるように構成されておらず、したがって、その有用性は限定されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
下記で言及される全ての例及び特徴は、任意の技術的に可能な方式で組み合わせることができる。
【0004】
一態様において、オーディオ信号アンプにおける入力信号の利得を制御するためのシステムは、ユーザ操作可能利得制御部と、少なくとも1つのアナログ回路要素と、少なくとも1つのデジタル回路要素とを含む。アナログ回路要素及びデジタル回路要素は共に、ユーザ操作可能利得制御部に応答して入力信号の利得を修正するように構成される。
【0005】
いくつかの実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの例では、少なくとも1つのアナログ回路要素は、各々がオーディオ信号に対して異なる利得を達成する複数の第1の利得ステップを規定するアナログプリアンプを備える。いくつかの例では、少なくとも1つのデジタル回路要素は、プリアンプの利得を補償するために、オーディオ信号に対して異なる利得を達成する複数の第2の補償利得ステップを規定するように構成された、プリアンプの下流のデジタル信号プロセッサ(DSP)を備える。DSPの例では、補償利得に加えてシステム利得を適用するように更に構成される。一例では、第1の利得ステップ及び第2の補償利得ステップは各々、利得の個別の変化である。一例では、第2の補償利得ステップは、第1の利得ステップの反対である。一例では、第1の利得ステップ及び第2の補償利得ステップを合わせて達成される全体的な利得は一定である。
【0006】
いくつかの実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一例では、ユーザ操作可能利得制御部は連続制御である。いくつかの例では、ユーザ操作可能利得制御部は、物理制御部材及び仮想制御部材を含み、物理制御部材及び仮想制御部材は、一致する外観を有する。一例では、物理制御部材は制御ノブを含み、仮想制御部材はノブアイコンを含む。一例では、少なくとも1つのアナログ回路要素は、高入力信号レベルの検出時に入力信号の利得を低減するように構成される。一例では、少なくとも1つのデジタル回路要素は、高入力信号レベルを検出し、少なくとも1つのアナログ回路要素によって達成される利得低減を選択するように構成される。
【0007】
いくつかの実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一例では、少なくとも1つのデジタル回路要素は、利得変更要求とオーディオデータの振幅の実際の変化との間の時間遅延を補償するように更に構成される。いくつかの例では、少なくとも1つのデジタル回路要素は、出力信号内の信号不連続性を除去及び置換するように更に構成される。一例では、少なくとも1つのデジタル回路要素は、不連続性を含むデジタルデータをゼロにすることによって、信号不連続性を除去及び置換するように構成される。一例では、少なくとも1つのデジタル回路要素は、ゼロにされたデジタルデータを周囲のデータから再構成することによって信号不連続性を除去及び置換するように更に構成される。一例では、少なくとも1つのデジタル回路要素は、周囲のデータから信号不連続性におけるデジタルデータを再構成することによって、信号不連続性を除去及び置換するように構成される。一例では、入力信号の利得の修正は、少なくとも1つのデジタル回路要素の制御下にある。一例では、少なくとも1つのアナログ回路要素及び少なくとも1つのデジタル回路要素の両方によって一緒に適用される全体的な利得が、ユーザ操作可能利得制御部からのターゲット利得と一致する。
【0008】
別の態様では、オーディオ信号アンプにおける入力信号の利得を制御するためのシステムであって、ユーザ操作可能利得制御部と、各々がオーディオ信号に対して異なる利得を達成する複数の第1の個別利得ステップを規定するアナログプリアンプと、プリアンプの利得を補償するために、第1の利得ステップの反対である複数の第2の個別補償利得ステップを規定するように構成される、プリアンプの下流のデジタル信号プロセッサ(DSP)とを含む。DSPは、補償利得に加えてシステム利得を適用するように更に構成される。アナログ回路要素及びデジタル回路要素は共に、ユーザ操作可能利得制御部に応答して入力信号の利得を修正するように構成される。第1の利得ステップ及び第2の補償利得ステップを合わせて達成される全体的な利得は一定である。
【0009】
いくつかの実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一例では、少なくとも1つのアナログプリアンプは、高入力信号レベルの検出時に入力信号の利得を低減するように更に構成され、DSPは、高入力信号レベルを検出し、プリアンプによって達成される利得低減を選択するように更に構成され、前記DSPは、周囲データからの信号不連続性におけるデジタルデータを再構成することによって、出力信号における信号不連続性を除去及び置換するように更に構成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2A】オーディオ信号アンプの物理制御パネルを示す。
【
図2B】オーディオ信号アンプ制御アプリケーションのユーザインタフェース(UI)の仮想制御セットを示す。
【
図3】オーディオ信号アンプの機能的態様のブロック図である。
【
図4】
図3のオーディオ信号アンプのためのハードウェア及びソフトウェアにおいて適用される利得を示す。
【
図5A】
図3のオーディオ信号アンプを使用してオーディオ信号中のノイズを除去及び置換するステップを示す。
【
図5B】
図3のオーディオ信号アンプを使用してオーディオ信号中のノイズを除去及び置換するステップを示す。
【
図5C】
図3のオーディオ信号アンプを使用してオーディオ信号中のノイズを除去及び置換するステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
オーディオ信号アンプ利得制御部は、チャンネルごとに単一の物理又は仮想ユーザ操作制御部のみを用いて、広範囲の入力レベルにわたって、良好な信号対ノイズ比(SNR)で信号レベルを制御するように構成される。
【0012】
図1は、主題の利得制御部を達成するように構成されたオーディオ信号アンプ10を示す。例示的な入力14は、mic/line入力コネクタ12に結合される。アンプ信号はスピーカに出力される。いくつかの例では、入力14は、演奏されている楽器(例えば、エレキギター)から来ており、アンプ10は、入力を増幅し、コンサートホールなどの会場で音楽を放送するために使用されるスピーカにそれを提供するように構成される。
【0013】
アンプのための例示的な制御インタフェースが
図2A及び
図2Bに示されている。いくつかの例では、アンプのユーザ操作可能制御インタフェースは、1つ以上の物理ノブ、典型的には入力チャンネルごとに1つの物理ノブを備える。いくつかの例では、レベル制御部は、追加的又は代替的に、1つ以上の仮想ノブ、典型的には入力チャンネルごとに1つの仮想ノブを用いて達成され、仮想ノブは、アンプとインタフェースし、アンプを制御するために使用されるモバイルアプリケーションのUIの一部であり得る。各場合において、ノブは、好ましくは、物理又は仮想ノブの周囲に沿って配置され、0と100との間のノブ位置のインジケーションとして選択的に点灯されるインジケータライト(例えば、LED)等を用いて、選択されたレベルのインジケーションを含む。例えば、ノブが40%に設定される場合、0から始まり100に向かって移動するライトの最初の40%が点灯される。いくつかの例では、スライダなど、ノブ以外の制御タイプが使用される。
【0014】
一例では、物理コントロールと仮想コントロールは外観が類似しており、同様に動作する。いくつかの実施例では、物理ノブが移動される(例えば、回転又は押される)場合、制御システムは、物理及び仮想制御部が一致して動作及び示すように、仮想ノブの適切な機能、オン/オフ、及びレベルインジケータを同一様式で動作/移動させる。例えば、いくつかの実施例では、仮想ノブが上又は下に回転される場合、物理ノブに関連付けられたレベルインジケータは、同様に変更される。
【0015】
図2Aは、3つの入力チャンネルを選択及び制御するために使用されるノブを有する例示的な物理制御パネル20を示す。いくつかの例では、3つの入力チャンネルのうちの2つは、非常に広い範囲の入力レベルを処理し、その範囲は、アンプのデジタル信号プロセッサに先行するアナログデジタル変換器の入力範囲を超える。ノブ21、22、及び23のうちの1つ、2つ、又は3つ全てを使用して、音量、高音、低音、及び反響機能などの2つ以上の機能から選択することができる。非限定的な図示された例では、ノブ21及び22は各々、(それぞれノブに関連付けられた機能セット24及び25を介して)音量、高音、低音、及び反響機能のうちの1つを選択するために使用することができ、ノブ23は、(ノブに関連付けられた機能セット26を介して)音量、高音、低音機能のうちの1つを選択するために使用することができる。一例では、選択された機能が点灯するまでノブを回転させ、次にノブを押して機能を有効にする(オンにする)ことによって選択が行われる。次に、ノブを回すことによってレベルが選択され、一連の放射状LED(ノブ21のセット28など)が選択されたレベルを示すために使用される。ノブ21及び23で示されるように、ノブが現在使用中である(すなわち、オンにするために押された)かどうかを示すために、別個のライト27が使用されてもよい。
【0016】
図2Bは、
図2Aの制御セットと同一の制御セット30を示すが、デジタルディスプレイ(スマートフォンのディスプレイなど)内にある。仮想ノブ31~33は、物理ノブ21~23と同じ方法で操作することができるが、タッチ感知ディスプレイの機能を使用するか、又は他の方法で(例えば、ノブプッシュ又はノブの回転の代わりにタッチを使用して)操作することができる。
【0017】
本開示を理解するのに有用なアンプ40の機能的態様が
図3に示されている。オーディオ入力50は、任意の標準的なコネクタを介する。アンプが音楽演奏に使用される状況では、アンプは一般に1つ以上の入力ジャックを含む。いくつかの例では、入力50はXLR/TRS入力ジャックである。いくつかの例では、入力信号は、プリアンプ52に提供されるアナログオーディオ信号である。プリアンプ52の機能は、物理制御ノブ42又はモバイル制御アプリの一部である仮想制御部43を介してユーザによって選択された音量に応答して信号の利得を調整するように構成された第1の利得段を達成することである。一例において、利得調整は、いくつかの個別利得ステップにおいて達成される。結果として生じる利得の変化は累積的である。図示された非限定的な例では、プリアンプ52は4つのCMOS利得スイッチを含み、その各々は、
図4の曲線72によって示されるように、約10dBだけ利得を増加させるように構成される。図示の例では、0~40dBの5つの全体的な利得状態が存在する。プリアンプ52によって有効にされる利得は、ユーザ制御の位置に基づいて選択される。一例では、物理又は仮想制御ノブ(
図2A及び
図2Bに示されるものなど)は、0から100まで回転させることができ、ノブの各20%の増分は、曲線72によって示されるように、異なる利得状態をもたらす。次いで、バッファリングされたアナログ信号は、アナログ-デジタル変換器(ADC)54に提供され、ADC54は、信号をデジタル領域に変換し、それをデジタル信号プロセッサ(DSP)56に提供する。
【0018】
DSP56は、2つの方法のうちの1つによって、システムのマイクロコントローラ44から意図されたチャンネル音量に関する情報を受信する。ユーザが製品の音量ノブを回すと、取り付けられた回転エンコーダが、マイクロコントローラに記憶されている音量設定を増減する。ユーザがモバイルアプリケーションにおいて音量制御を調整するとき、音量設定を増加又は減少させるために、コマンドがBluetoothを介して(Bluetoothインタフェースを介して)マイクロコントローラに送信される。いずれの方法でも、現在の音量レベルは、
図2Aに示すように、製品上のノブの周りのLEDの円形リングによって、及び
図2Bに示すように、モバイルアプリケーションUI内の同様のインジケーションによって、ユーザに示される。
【0019】
音量制御設定は、ハードウェア(ADC54の前のアナログフロントエンドプリアンプ52内)及びソフトウェア(DSP56内)で行われる。いくつかの例では、ハードウェア利得制御部は、オペアンプ利得回路内のフィードバック抵抗を選択するためにデジタル制御アナログ(CMOS)スイッチを使用して、粗い調整として(例えば、4ステップで)行われる。これらの粗いステップの各々において、より細かい調整がDSPにおいて行われて、適切な全体的な利得を選択する。DSPにおいて利得の一部のみを適用することによって、低レベル信号をアナログ領域において増幅して、ADCのノイズフロアを増幅することを回避し、したがって、所望の信号対ノイズ比を維持することができる。
【0020】
いくつかの例では、DSP56は、本明細書で説明するDSP機能を達成するように構成されたコンピュータプログラム論理が符号化された非一時的コンピュータ可読媒体を含む。DSP内で、いくつかの例では、全体的な音量制御(すなわち、システム利得)は、ユーザによって要求された音量にマッピングされた連続曲線として表される。その曲線の適用の前に、アナログ利得の反対である補償利得が挿入される。
図4の曲線72によって示される4ステップのアナログ利得の例では、DSP56によって達成される第2のアンプ段に適用される反対の補償利得が曲線74によって示され、これも4つの個別利得ステップにわたって達成される40~0dBまでの5つの全体的な利得状態を有する。いくつかの例では、アナログ利得+補償利得は、一定の非0値に等しい。DSPにおいて反対の利得を適用することによって、(システム利得を含む、組み合わされたアナログ及びデジタル領域における)総利得は、ユーザによって要求されるものに一致する。デジタル出力信号は、D/A変換器58によってアナログに変換される。次に、信号はアナログ電力アンプ60によって増幅され、スピーカに供給される。
【0021】
DSPは、アナログスイッチを動作させる汎用デジタル出力を介してプリアンプ52によって適用されるハードウェア(CMOS)利得を制御し、したがって、全体的な利得は、DSPの制御下にある。全体的な利得は、音量回転エンコーダの位置に依存する。しかしながら、この利得スケジュールは、より大きな信号がアナログ入力に存在するときに自動的に調整され得る。これは、ADCが飽和するのを防ぐことができる。DSPは、DSPへの入力における信号レベルの測定を介して、入力信号のラウドネスの知識を有する。入力信号が大きすぎてADCが飽和する可能性がある場合、非ゼロハードウェア利得は、DSPによるプリアンプの制御下で一度に1ステップ下げられ(低減され)、したがって、ADCへの入力に存在する信号の振幅を下げることができる。この方式は、最大サンプリングビット分解能を可能にすると共に、回転エンコーダがより高い音量範囲に設定されたときにクリッピングを回避する。加えて、自動ダウンステップ調整がアクティブであり、オーディオ信号振幅が減少する場合、ハードウェア/DSP利得は、ユーザインタフェースに基づいて、DSPを介して、間隔を空けて一度に1ステップずつスケジュールに戻される。一例では、間隔は4秒である。これは、突然の大きな振幅変化を回避するために行われる。
【0022】
いくつかの例では、ハードウェア利得ステップと後続のDSP補償利得との間の遷移は、ノイズをもたらし得る過渡アーチファクト(すなわち、利得調整の時間的不整合)を低減するために同期される。同時の利得ステップ及びその補償が生じる時間は、「シーム」と呼ばれる。不整合アーチファクトを軽減するために単独で又は一緒に使用することができる複数の技法がある。
【0023】
待ち時間補償は、不整合アーチファクトを軽減するための1つのそのような技法である。待ち時間補償は、利得ステップ変更要求と、DSPに渡されるオーディオデータの振幅の実際の変化との間に(ADC待ち時間に起因して)生じる固定時間遅延を考慮する。この遅延を補償する際に、シームにおける時間的不整合を1サンプルに低減することができる。待ち時間補償の例では、DSPがアナログハードウェアに利得のステップ変化を開始するように命令するとき、新しい値がDSPによって処理されたオーディオ信号に現れるのにいくらか時間がかかる。これは、アナログ/デジタル変換ハードウェアにおけるデータのバッファリングによるものである。その結果、処理を必要とするオーディオ信号の部分は、コマンド開始後短時間(例えば、約0.5ms)に発生する。この時間は、他のハードウェアが使用される場合に変化し得る。DSP補償/修復論理における単純な遅延ブロック(例えば、約0.5ms)は、任意の要求される信号処理が、オーディオ信号における後続の変化と適切に整合することを確実にする。これらの例では、補償/修復論理における遅延ブロック時間は、データバッファリングに起因してアナログ/デジタル変換によって導入される任意の待ち時間に整合される。
【0024】
ADC待ち時間が補償された後であっても、DSPハードウェア前段に起因して、わずかな信号依存位相シフトが存在することが多い。これらの位相シフトは、ノイズとして聞こえる不連続をもたらす可能性がある。例示的な不連続84が、
図5Aのオーディオ信号曲線82aに示されている。位相シフトのために、聞き取れないシームを生成することは困難であり得る。そのような不整合アーチファクトは、以下の手法を使用して軽減することができる。
図5B~5Cを参照されたい。
【0025】
一例では、データのいくつかのサンプル(例えば、約0.25ms)が、シームを中心として(すなわち、シームの前後に)、オーディオデータ内で無音化(ゼロ化)される。ゼロにされたデータは、
図5Bの曲線82bにおいてギャップ86として示されている。ゼロにされたサンプルは、ギャップ86を補間し、それを
図5Cの曲線82cのデータ88で置き換えるために、周囲のデータから再構成される。一例では、この再構成は、6次のwindowed-sync FIRフィルタのネットワークを使用して達成される。シームの前後の両方からのデータが使用されるので、先読みが必要である。これは、処理全体に対してわずかな事実上感知できない量の待ち時間を追加する。図示された例では、使用されるデータは、曲線82c上の6つのドットによって表され、3つは再構成されたデータ88の前であり、3つはその後である。
【0026】
図面の要素は、ブロック図の個別要素として図示及び説明される。これらの要素は、アナログ回路又はデジタル回路の1つ以上として実現されるようにしてもよい。代替的に、又は追加的に、これらの要素は、1つ以上のマイクロプロセッサがソフトウェア命令を遂行して実現されるようにしてもよい。ソフトウェア命令は、デジタル信号処理命令を含むことができる。演算は、アナログ回路により、又はマイクロプロセッサが、アナログ演算と同等の演算を実行するソフトウェアを遂行することにより実行することができる。信号ラインは、個別のアナログ信号ライン又はデジタル信号ラインとして、別個の信号を処理することができる適切な信号処理を行う個別のデジタル信号ラインとして、及び/又は無線通信システムの要素として実装されてもよい。
【0027】
ブロック図でプロセスが表現又は示唆されるときに、ステップは、1つの要素又は複数の要素によって実行され得る。これらのステップは、一括して実行される、又は異なる時点で行われるようにしてもよい。活動を実行する要素は、物理的に同じであっても互いに近接していてもよく、又は物理的に離れていてもよい。1つの要素は、1つのブロックよりも多くの活動を実行することができる。オーディオ信号は、符号化することができる、又は符号化されなくてもよく、デジタル形式又はアナログ形式のいずれかで伝送することができる。従来のオーディオ信号処理装置及びオーディオ信号演算処理は、図面から省略されている場合がある。
【0028】
本明細書に記載のシステム及び方法の例は、当業者には明白であろうコンピュータコンポーネント及びコンピュータ実装ステップを含む。例えば、コンピュータ実装ステップが、例えば、フロッピーディスク、ハードディスク、光ディスク、フラッシュROM、不揮発性ROM、及びRAMのコンピュータ可読媒体上にコンピュータ実行可能命令として記憶され得ることが当業者によって理解されるべきである。更に、コンピュータ実行可能命令が、例えば、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、ゲートアレイなどの様々なプロセッサ上で実行され得ることが当業者によって理解されるべきである。説明を容易にするために、上記のシステム及び方法の全てのステップ又は要素が、コンピュータシステムの一部として本明細書で説明されるわけではないが、各ステップ又は要素が、対応するコンピュータシステム又はソフトウェアの構成要素を有し得ることを、当業者は認識するであろう。したがって、このようなコンピュータシステム及び/又はソフトウェアの構成要素は、それらの対応する工程又は要素(即ち、それらの機能性)を記載することによって有効化されるものであり、また本開示の範囲内にある。
【0029】
複数の実装形態を説明してきた。それにもかかわらず、本明細書に記載される本発明の概念の範囲から逸脱することなく、追加の改変を行うことができ、したがって、他の例も、以下の特許請求の範囲内にあることが理解される。
【符号の説明】
【0030】
10 オーディオ信号アンプ
12 mic/line入力コネクタ
14 入力
20 物理制御パネル
21 物理ノブ
22 物理ノブ
23 物理ノブ
24 機能セット
25 機能セット
26 機能セット
27 ライト
28 ノブ21のセット
30 制御セット
31 仮想ノブ
32 仮想ノブ
33 仮想ノブ
40 アンプ
42 物理制御ノブ
43 仮想制御部
44 マイクロコントローラ
50 入力
50 オーディオ入力
52 アナログフロントエンドプリアンプ
54 アナログ-デジタル変換器(ADC)
56 デジタル信号プロセッサ(DSP)
58 D/A変換器
60 アナログ電力アンプ
【国際調査報告】