(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(54)【発明の名称】コロナウイルスに対する治療用干渉粒子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/50 20060101AFI20230706BHJP
C12N 7/04 20060101ALI20230706BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230706BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20230706BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230706BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230706BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230706BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230706BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230706BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230706BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
C12N15/50 ZNA
C12N7/04
C12N7/01
C12N15/113 100Z
A61K39/00 H
A61P31/14
A61P43/00 111
A61K31/7088
A61K48/00
A61K9/14
A61K9/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564795
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 US2021028809
(87)【国際公開番号】W WO2021216979
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517352418
【氏名又は名称】ザ ジェイ. デビッド グラッドストーン インスティテューツ、 ア テスタメンタリー トラスト エスタブリッシュド アンダー ザ ウィル オブ ジェイ. デビッド グラッドストーン
(71)【出願人】
【識別番号】522416228
【氏名又は名称】ロディック, ロバート
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(71)【出願人】
【識別番号】523127903
【氏名又は名称】ブイエックスバイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(72)【発明者】
【氏名】チャトゥルヴェディ, ソナリ
(72)【発明者】
【氏名】ロディック, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ワインバーガー, レオール エス.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA30
4C076AA93
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC35
4C076FF68
4C084AA13
4C084MA13
4C084MA43
4C084MA55
4C084MA59
4C084NA14
4C084ZB33
4C084ZC41
4C085AA03
4C085EE01
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA43
4C086MA55
4C086MA59
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC41
(57)【要約】
組成物 非感染細胞の感染に干渉または感染を阻止することができる欠陥SARS-CoV-2構築物および粒子、ならびにそのような欠陥SARS-CoV-2構築物および粒子を生成する方法が本明細書に記載されている。本明細書に記載の組成物および方法は、SARS-CoV-2感染の処置に有用である。非感染細胞の感染に干渉または感染を阻止することができる、欠陥SARS-CoV-2構築物および欠陥SARS-CoV-2構築物を生成する方法が提供される。方法および組成物は、SARS-CoV-2感染の処置に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも100ヌクレオチドのSARS-CoV-2 5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも100ヌクレオチドの3’非翻訳領域(3’UTR)、またはそれらの組合せを含むシス作用性エレメントを含む、組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項2】
SARS-CoV-2の複製に干渉する、請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項3】
細胞内で複製できない、請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項4】
感染性SARS-CoV-2の存在下で複製する、請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項5】
感染性SARS-CoV-2の存在下、細胞間で伝播され得る、請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項6】
SARS-CoV-2のためのパッケージングシグナルを含む、請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項7】
配列番号1~22のいずれかの部分をコードするSARS-CoV-2ゲノムの部分の欠失を含む、請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項8】
前記ゲノムから欠失された部分が、少なくとも10~少なくとも27,000ヌクレオチドを含む、請求項7に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項9】
請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物であって、野生型SARS-CoV-2の細胞侵入を阻止するか、ウイルス粒子アセンブリを媒介する構造タンパク質に対して競合するか、インビボで前記SARS-CoV-2構築物の再生低下を示すか、ウイルス粒子のアセンブリを阻害するタンパク質を産生するか、またはそれらの組合せである、組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項10】
請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物であって、野生型SARS-CoV-2に感染した宿主細胞中に存在する場合、構築物SARS-CoV-2のゲノムRNAの、野生型SARS-CoV-2のゲノムRNAに対する比が前記細胞において1を超えるように、前記SARS-CoV-2構築物のゲノムRNAが前記野生型SARS-CoV-2のゲノムRNAよりも高い速度で産生される、組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項11】
前記野生型SARS-CoV-2よりも高い伝播頻度を有する、請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項12】
基本再生産比(R0)>1を有する、請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項13】
野生型SARS-CoV-2に感染した宿主細胞中に存在する場合、野生型SARS-CoV-2と同じまたはより高い効率でパッケージングされる、請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項14】
配列番号28、30、32または33のいずれかを有する5’SARS-CoV-2短縮型配列を含む、請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項15】
配列番号31または32を有するもののいずれかなどの3’SARS-CoV-2短縮型配列を含む、請求項14に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項16】
伸長されたポリA配列を含む、請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項17】
前記伸長されたポリA配列が少なくとも100アデニンヌクレオチドを含む、請求項16に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項18】
検出可能なマーカーをコードするセグメントを含む、請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物。
【請求項19】
請求項1に記載の組換えSARS-CoV-2構築物、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項20】
TRS1-L:5’-cuaaac-3’(配列番号36)、TRS2-L:5’-acgaac-3’(配列番号37)、TRS3-L、5’-cuaaacgaac-3’(配列番号38)、またはそれらの組合せのうちの複数のうちの1つに結合し得る、1つまたはそれを超えるSARS-CoV-2転写調節配列(TRS)の阻害剤。
【請求項21】
以下を含むか、または以下から本質的になる配列:
TRS1-ACGAACCUAAACACGAACCUAAAC(配列番号25)、
TRS2-ACGAACACGAACACGAACACGAAC(配列番号26)、
TRS3-CUAAACCUAAACCUAAACCUAAAC(配列番号27)、または
それらの組合せ
を含む、請求項20に記載の阻害剤。
【請求項22】
請求項20に記載の阻害剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項23】
薬学的に許容され得る賦形剤、(a)TRS1-L:5’-cuaaac-3’(配列番号36)、TRS2-L:5’-acgaac-3’(配列番号37)、TRS3-L、5’-cuaaacgaac-3’(配列番号38)、またはそれらの組合せのうちの複数のうちの1つに結合し得るSARS-CoV-2転写調節配列(TRS)の阻害剤、および(b)少なくとも100ヌクレオチドのSARS-CoV-2 5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも100ヌクレオチドの3’非翻訳領域(3’UTR)、またはそれらの組合せを含むシス作用性エレメントを含む組換えSARS-CoV-2構築物を含む、医薬組成物。
【請求項24】
(a)配列特異的DNAエンドヌクレアーゼのための標的配列を、各々のSARS-CoV-2ウイルスDNAがSARS-CoV-2ウイルスゲノムまたはSARS-CoV-2ウイルスゲノムの一部分を含む環状SARS-CoV-2ウイルスDNAの集団に挿入して、配列挿入されたウイルスDNAの集団を生成すること、
(b)前記配列挿入されたウイルスDNAの集団を前記配列特異的DNAエンドヌクレアーゼと接触させて、切断された線状ウイルスDNAの集団を生成すること、
(c)前記切断された線状ウイルスDNAの集団をエキソヌクレアーゼと接触させて、欠失DNAの集団を生成すること、
(d)前記欠失DNAを環状化して、環状化欠失ウイルスDNAのライブラリを生成すること、および
(e)前記環状化欠失ウイルスDNAのライブラリのメンバーを配列決定して、欠陥干渉粒子(DIP)を同定すること
を含む、1種またはそれを超える欠陥干渉粒子(DIP)を生成するための方法。
【請求項25】
ステップ(a)の前に、線状DNA分子の集団を環状化して、前記環状SARS-CoV-2ウイルスDNAの集団を生成することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記挿入するステップ(a)が、トランスポゾンカセットを前記環状SARS-CoV-2ウイルスDNAの集団に挿入することを含み、前記トランスポゾンカセットが前記配列特異的DNAエンドヌクレアーゼのための前記標的配列を含み、前記配列挿入されたウイルスDNAの生成された集団がトランスポゾン挿入されたウイルスDNAの集団である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(d)の前にまたはステップ(d)と同時に、バーコード配列、マーカーをコードする発現カセット、またはそれらの組合せを挿入することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
環状化SARS-CoV-2欠失ウイルスDNAのライブラリのメンバーまたは1種もしくはそれを超える種類の欠陥干渉粒子(DIP)を培養した哺乳動物細胞に導入すること、およびSARS-CoV-2ウイルス感染性についてアッセイすることをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物細胞を、前記環状化欠失ウイルスDNAのライブラリのメンバーで、または1種もしくはそれを超える種類の欠陥干渉粒子(DIP)でトランスフェクトすること、
前記哺乳動物細胞をSARS-CoV-2に感染させて、アッセイ混合物を生成すること、
前記アッセイ混合物を培養すること、および
SARS-CoV-2ウイルス感染性について前記アッセイ混合物をアッセイし、前記環状化欠失ウイルスDNAもしくは前記欠陥干渉粒子(DIP)、またはそれらの組合せを定量すること
をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
哺乳動物細胞を、前記環状化欠失ウイルスDNAのライブラリのメンバーで、または1種もしくはそれを超える種類の欠陥干渉粒子(DIP)でトランスフェクトすること、
前記哺乳動物細胞をSARS-CoV-2に感染させて、アッセイ混合物を生成すること、
前記アッセイ混合物を培養すること、
前記培養した哺乳動物細胞から上清を取り出すこと、
前記上清をナイーブ細胞の培養物に添加すること、および
前記感染性SARS-CoV-2、前記環状化欠失ウイルスDNA、前記欠陥干渉粒子(DIP)、またはそれらの組合せを定量すること
をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
SARS-CoV-2ウイルスに感染した細胞を、請求項1に記載の構築物でトランスフェクトすること、および前記構築物を粒子にパッケージングするのに適した条件下で前記細胞をインキュベートすることを含む、粒子を生成する方法。
【請求項32】
薬学的に許容され得る賦形剤、および治療有効量の少なくとも1つの、SARS-CoV-2 5’非翻訳領域(5’UTR)、SARS-CoV-2 3’非翻訳領域(3’UTR)、もしくはそれらの組合せを含むシス作用性エレメントを含む干渉性組換えSARS-CoV-2構築物、または前記干渉性組換えSARS-CoV-2構築物を含む粒子を含む医薬組成物を、対象に投与することを含む方法。
【請求項33】
TRS1-L:5’-cuaaac-3’(配列番号36)、TRS2-L:5’-acgaac-3’(配列番号37)、TRS3-L、5’-cuaaacgaac-3’(配列番号38)、それらの組合せのうちの複数のうちの1つに結合し得るSARS-CoV-2転写調節配列(TRS)の阻害剤、またはその組成物を対象に投与することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
2~21日後にSARS-CoV-2ウイルス負荷を測定することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、SARS-CoV-2について陽性と試験された個体もしくは患者であるか、または前記対象がSARS-CoV-2に感染している疑いがある、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が、一般集団よりもSARS-CoV-2に感染する高いリスクがあると考えられるか、またはSARS-CoV-2感染と診断された、個体または患者である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
SARS-CoV-2感染の処置もしくは予防における、治療有効量の少なくとも1つの、SARS-CoV-2 5’非翻訳領域(5’UTR)、SARS-CoV-2 3’非翻訳領域(3’UTR)、もしくはそれらの組合せを含むシス作用性エレメントを含む干渉性組換えSARS-CoV-2構築物、もしくは前記干渉性組換えSARS-CoV-2構築物を含む粒子、および薬学的に許容され得る賦形剤、
治療有効量の少なくとも1つのSARS-CoV-2転写調節配列(TRS)の阻害剤であって、TRS1-L:5’-cuaaac-3’(配列番号36)、TRS2-L:5’-acgaac-3’(配列番号37)、TRS3-L、5’-cuaaacgaac-3’(配列番号38)のうちの複数のうちの1つに結合し得る、阻害剤、
またはそれらの組合せ
を含む医薬組成物の、SARS-CoV-2感染の処置または阻害における、使用。
【請求項38】
SARS-CoV-2ウイルスによる感染を処置するためのキットであって、
治療有効量の少なくとも1つの、SARS-CoV-2 5’非翻訳領域(5’UTR)、SARS-CoV-2 3’非翻訳領域(3’UTR)、それらの組合せを含むシス作用性エレメントを含む組換えSARS-CoV-2構築物、またはその医薬組成物を含む容器、
前記組換えSARS-CoV-2構築物を含む粒子を含む組成物を含む容器、
TRS1-L:5’-cuaaac-3’(配列番号36)、TRS2-L:5’-acgaac-3’(配列番号37)、TRS3-L、5’-cuaaacgaac-3’(配列番号38)、またはそれらの組合せのうちの複数のうちの1つに結合し得る、少なくとも1種のSARS-CoV-2転写調節配列(TRS)の阻害剤を含む容器、
前記少なくとも1種のSARS-CoV-2転写調節配列の阻害剤を含む組成物を含む容器、ならびに
前記組換えSARS-CoV-2構築物、前記少なくとも1種のSARS-CoV-2転写調節配列の阻害剤、およびその組成物を使用するための説明書
を含む、キット。
【請求項39】
前記容器が、肺または鼻腔への投与のためのシリンジまたはデバイスである、請求項38に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願
本出願は、2020年4月23日に出願された、米国仮出願第63/014,394号に基づく優先権の利益を主張しており、その内容は、参考としてその全体が本明細書に詳細に援用される。
【0002】
政府支援
本発明は、国立衛生研究所によって配賦された1-DP2-OD006677-01およびDOD/DARPAによって配賦されたD17AC00009の下、政府支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
テキストファイルとして提供される配列表の参照による援用
配列表は、2021年4月23日に作成された143,360バイトのサイズを有するテキストファイル「2135793.txt」として本明細書と共に提供される。テキストファイルの内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0004】
背景
世界保健機関は、COVID-19を世界的なパンデミックと宣言している。正式にはSARS-CoV-2と呼ばれる高い感染力のあるコロナウイルスは、Covid-19疾患を引き起こす。最も効果的な封じ込め戦略を用いても、Covid-19呼吸器疾患の拡散は減速しただけである。SARS-CoV-2の現在の株に対する有効なワクチンは存在するが、新しいバリアントおよび変異株が生じ続けている。したがって、感染にも干渉する処置、ならびに/または感染からの回復を促進し、SARS-CoV-2のパンデミックを止めることができる新しいワクチンが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
非感染細胞の感染に干渉または感染を阻止することができる、欠陥SARS-CoV-2構築物および欠陥SARS-CoV-2構築物を生成する方法が提供される。方法および組成物は、SARS-CoV-2感染の処置に有用である。
【0006】
本明細書に記載の欠陥SARS-CoV-2構築物は、SARS-CoV-2組換え欠失変異体である。そのような組換えSARS-CoV-2欠失変異体は、干渉性および/または条件付き複製性SARS-CoV-2欠失変異体であり得る。非SARS-CoV-2核酸がなくても、SARS-CoV-2構築物は、治療用干渉粒子または治療用干渉核酸であり得る。
【0007】
これらの構築物は、5’非翻訳領域(5’UTR)、3’非翻訳領域(3’UTR)、ポリAテール、またはそれらの組合せを含むシス作用性エレメント、およびSARS-CoV-2ゲノム核酸セグメントを含み得る。典型的には、SARS-CoV-2ゲノム核酸セグメントは、野生型SARS-CoV-2ゲノムと比較して、実質的な欠失を有する。したがって、治療用干渉SARS-CoV-2核酸および粒子は、それら自体ではウイルスの複製および産生が不可能であり得、例えば、ヘルパーウイルスとして作用するために複製能を有するSARS-CoV-2を必要とし得る。
【0008】
そのような治療用干渉粒子、欠陥SARS-CoV-2構築物、および治療用干渉核酸の例としては、5’SARS-CoV-2短縮型配列のいずれか、例えば配列番号28、30、32もしくは33を有するもののいずれか、および/または3’SARS-CoV-2短縮型配列のいずれか、例えば配列番号31もしくは32を有するもののいずれかが挙げられ得る。3’SARS-CoV-2配列は、伸長されたポリA配列を含み得る。例えば、伸長されたポリA配列は、少なくとも100アデニンヌクレオチド~250アデニンヌクレオチドを有し得る。そのような伸長されたポリA配列は、例えば、mRNAの半減期を延長できる。
【0009】
したがって、SARS-CoV-2治療用干渉粒子は、RNA転写シグナル、翻訳開始部位、伸長されたポリAテール、またはそれらの組合せを含み得る。さらに、欠失に対して、SARS-CoV-2ゲノム核酸セグメントは、野生型または天然型SARS-CoV-2ゲノムヌクレオチド配列と比較して、1つまたはそれを超えるヌクレオチド配列の変更を有し得る。
【0010】
また、転写調節配列(TRS)の1つまたはそれを超える阻害剤:TRS1-L:5’-cuaaac-3’(配列番号36)、TRS2-L:5’-acgaac-3’(配列番号37)、およびTRS3-L、5’-cuaaacgaac-3’(配列番号38)、ならびにそれらの組成物も本明細書に記載されている。TRS阻害剤は、単独で、または治療用干渉粒子SARS-CoV-2構築物と併せて使用して、SARS-CoV-2感染を阻害および/または感染に干渉することができる。
【0011】
治療用干渉SARS-CoV-2核酸および/またはTRS阻害剤は、例えば、野生型SARS-CoV-2の細胞侵入を阻止するか、ウイルス粒子のアセンブリを媒介する構造タンパク質に対して競合するか、野生型SARS-CoV-2の再生を低下させるか、ウイルス粒子のアセンブリを阻害するタンパク質を産生するか、SARS-CoV-2核酸の転写/複製を阻害するか、またはそれらの組合せであり得る。
【0012】
SARS-CoV-2欠失ライブラリの作製および使用を含む方法も本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、主題の方法は、(a)配列特異的DNAエンドヌクレアーゼの標的配列を含むトランスポゾンカセットを環状SARS-CoV-2 DNAの集団に挿入して、トランスポゾン挿入された環状SARS-CoV-2 DNAの集団を生成すること、(b)トランスポゾン挿入された環状SARS-CoV-2 DNAの集団を配列特異的DNAエンドヌクレアーゼと接触させて、切断された線状SARS-CoV-2 DNAの集団を生成すること、(c)切断された線状SARS-CoV-2 DNAの集団を1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼと接触させて、SARS-CoV-2欠失DNAの集団を生成すること、および(d)SARS-CoV-2欠失DNAを環状化して、環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリを生成することを含む。
【0013】
いくつかの場合、トランスポゾンカセットは、トランスポゾンカセットの一端またはその付近に配置された第1の認識配列、およびトランスポゾンカセットの他端またはその付近に配置された第2の認識配列を含む。
【0014】
いくつかのそのような場合、方法は、環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリのメンバーを哺乳動物細胞に導入すること、およびウイルス感染性についてアッセイすることをさらに含む。例えば、SARS-CoV-2欠失DNAは、上皮細胞または肺胞細胞(例えば、ヒト肺胞II型細胞)に導入され得る。いくつかの場合、方法は、環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリのメンバーを配列決定して、欠陥SARS-CoV-2干渉粒子(DIP)を同定することをさらに含む。
【0015】
いくつかの場合、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはTALENから選択される。いくつかの場合、1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼは、T4 DNAポリメラーゼを含む。いくつかの場合、1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼは、3’から5’へのエキソヌクレアーゼおよび5’から3’へのエキソヌクレアーゼを含む。いくつかの場合、1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼは、RecJを含む。いくつかの場合、主題の方法は、ステップ(d)の前またはステップ(d)と同時にバーコード配列を挿入することを含む。
【0016】
いくつかの場合、切断された線状SARS-CoV-2 DNAの集団を1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼと接触させるステップは、一本鎖結合タンパク質(SSB)の存在下で行われる。
【0017】
欠陥SARS-CoV-2干渉粒子(DIP)を生成および同定する方法も提供される。いくつかの場合、方法は、(a)配列特異的DNAエンドヌクレアーゼのための標的配列を、各々がウイルスゲノムを含む環状SARS-CoV-2ウイルスDNAの集団に挿入して、配列挿入されたSARS-CoV-2ウイルスDNAの集団を生成すること、(b)配列挿入されたSARS-CoV-2ウイルスDNAの集団を配列特異的DNAエンドヌクレアーゼと接触させて、切断された線状SARS-CoV-2ウイルスDNAの集団を生成すること、(c)切断された線状SARS-CoV-2ウイルスDNAの集団をエキソヌクレアーゼと接触させて、欠失DNAの集団を生成すること、(d)SARS-CoV-2欠失DNAを環状化して、環状化SARS-CoV-2欠失ウイルスDNAのライブラリを生成すること、および(e)環状化欠失SARS-CoV-2ウイルスDNAのライブラリのメンバーを配列決定して、SARS-CoV-2欠失干渉粒子(DIP)を同定することを含む。いくつかの場合、方法は、ステップ(d)の前またはステップ(d)と同時にバーコード配列を挿入することを含む。
【0018】
いくつかの場合、方法は、生成された環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリのメンバーを細胞、例えば、哺乳動物細胞に導入すること、およびウイルス感染性についてアッセイすることを含む。いくつかの場合、ステップ(a)の挿入することは、トランスポゾンカセットを環状SARS-CoV-2ウイルスDNAの集団に挿入することを含み、トランスポゾンカセットは配列特異的DNAエンドヌクレアーゼの標的配列を含み、配列挿入されたSARS-CoV-2ウイルスDNAの前記生成された集団はトランスポゾン挿入されたウイルスDNAの集団である。いくつかの場合、方法は、ステップ(d)の後に、細胞、例えば、培養中の哺乳動物細胞を環状化欠失SARS-CoV-2ウイルスDNAのライブラリのメンバーに高感染多重度(MOI)で感染させること、感染した細胞を12時間~2日間の範囲の期間培養すること、ナイーブ細胞を培養物に添加すること、および培養中の細胞からウイルスを回収することを含む。いくつかの場合、方法は、ステップ(d)の後に、細胞、例えば、培養中の哺乳動物細胞を環状化欠失ウイルスDNAのライブラリのメンバーに低感染多重度(MOI)で感染させること、感染した細胞をウイルス複製の阻害剤の存在下で1日~6日間の範囲の期間培養すること、培養した細胞を機能性ウイルスに高MOIで感染させること、感染した細胞を12時間~4日間の範囲の期間培養すること、および培養した細胞からウイルスを回収することを含む。
図の説明
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、SARS-CoV-2ゲノムおよびコードされたオープン・リーディング・フレーム(ORF)の概略図を示す。
【0020】
【
図2-1】
図2A~
図2Bは、野生型および欠陥SARS-CoV-2による細胞の感染を図示する。
図2Aは、野生型SARS-CoV-2ゲノムによる感染の概略図を示す。細胞ゲノム(左側のDNA)への組込み後、ウイルスカプシドを形成するパッケージングタンパク質を最終的に産生するSARS-CoV-2 RNAが生成される。感染性SARS-CoV-2は、それらの元の宿主細胞から逃れることができ、新しい細胞が必要な(機能的な野生型)表面認識タンパク質を有する場合、それらに感染することができる。
図2Bは、欠陥SARS-CoV-2粒子(治療用干渉粒子、TIPと称される)が生存可能なSARS-CoV-2と共に存在する場合の感染の概略を示す。欠陥SARS-CoV-2粒子は、パッケージングシグナルを運ぶように操作されたSARS-CoV-2ゲノムの切り詰められたバージョン、およびパッケージングに必要な他のウイルスのシスエレメントを有する。したがって、欠陥SARS-CoV-2 RNAは、SARS-CoV-2タンパク質も発現する細胞によってのみ作製され得る。欠陥SARS-CoV-2粒子は、二重に感染した細胞において野生型SARS-CoV-2よりも欠陥SARS-CoV-2のゲノムRNAコピーを実質的に多く産生するように操作される。野生型SARS-CoV-2のゲノムRNAよりも欠陥SARS-CoV-2のゲノムRNAが不釣り合いに多いと、SARS-CoV-2パッケージング材料は主に、欠陥SARS-CoV-2のゲノムRNAを封入して浪費される。欠陥SARS-CoV-2粒子は、野生型SARS-CoV-2のバーストサイズを低下させ、感染した細胞を野生型SARS-CoV-2の産生からほとんどを欠陥SARS-CoV-2粒子の産生に変換し、それによって野生型SARS-CoV-2ウイルス負荷を減少させる。
【0021】
【
図3】
図3は、欠陥SARS-CoV-2粒子を作製するためのランダム化されたバーコード化欠失ライブラリを構築するための方法を概略的に図示する。分子クローンからバーコード化TIP候補ライブラリを構築するための概略的なサイクル方法は、[1]環状SARS-CoV-2二本鎖DNAへのレトロトランスポゾンのインビトロ導入、[2]ランダムに挿入されたレトロトランスポゾンのエキソヌクレアーゼ媒介した切除、[3]環状SARS-CoV-2に欠失(Δ)を作成するように酵素的チュウバック(chew back)、および[4]バーコード化TIP候補ライブラリを生成するように、再ライゲーションの間に環状化およびバーコード化を含む(例えば、いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WeinbergerらによるWO201811225およびWeinbergerらによるWO/2014/151771を参照)。
【0022】
【
図4】
図4は、欠失ライブラリを生成する方法の一実施形態について、分子の詳細およびステップを図示する概略図である。ステップ(a)では、メガヌクレアーゼ(例えば、l-Scelまたはl-Ceul)は、SARS-CoV-2二本鎖DNAを切断する。ステップ(b)では、SARS-CoV-2 DNAの切断された末端をチュウバックする。ステップ(c)では、チュウバックされた末端を修復する。したがって、欠失したギャップ(Δ)が末端間に存在する。ステップ(d)では、5’リン酸がアルカリホスファターゼ(AP)によって除去され、dAテールがクレノウ(Klenow)で生成される。ステップ(e)では、末端をバーコードカセットにライゲーションし、それによって多数の環状バーコード化欠失SARS-CoV-2変異体を生成する。
【0023】
【
図5-1】
図5A~
図5Cは、SARS-CoV-2欠失変異体のランダム欠失ライブラリを生成および分析する方法を図示する。
図5Aは、30kbのSARS-CoV-2分子クローンに対するランダム欠失ライブラリ(RDL)の生成を概略的に図示する。RDLサブライブラリに使用された3つの10kb断片が示されており、3つの断片はSARS-CoV-2ゲノムの異なるセグメントであった。3つの断片の末端をチュウバックし(例えば、
図4で説明したように)、バーコード(網掛け円)を、欠失したSARS-CoV-2 DNA断片がライゲーションされる時に挿入した。したがって、バーコードは断片に従って異なる位置にあるだろう。バーコードはプライマー開始のための部位を含むので、配列決定により、様々なSARS-CoV-2欠失変異体のどこに欠失が存在するかを容易に特定した。
図5Bは、3つのランダム欠失サブライブラリにおけるバーコード位置のイルミナ・ディープ・シーケンシング・ランドスケープをグラフで図示する。このような配列決定は、サブライブラリが587,000を超えるユニークなSARS-CoV-2欠失変異体を含むことを示した。
図5Cは、約30kbのバンドおよびより低分子量のバンド(左側レーンにラダーがある;3つのさらなるレーンは三連である)が存在することを示す、ライゲーションしたRDLライブラリからの電気泳動的に分離したDNAのゲルを示す。
【0024】
【
図6-1】
図6A~
図6Dは、SARS-CoV-2治療用干渉粒子(TIP)を生成するために使用される「バイロリアクター(viroreactor)」戦略を図示する。
図6Aは、ビーズに固定化され、穏やかな撹拌下の懸濁液中で増殖され、SARS-CoV-2に指し示されたMOIで感染したVeroE6細胞を概略的に図示する。50%の細胞および培地を1日おきに回収し、置き換えた。
図6Bは、細胞死のマーカーであるヨウ化プロピジウムについて染色した、回収した細胞のフローサイトメトリーのプロットを示す。
図6Cは、0.5のMOIでのSARS-CoV-2感染後の細胞生存率のパーセンテージをグラフで図示する。
図6Dは、5.0のMOIでのSARS-CoV-2感染後の細胞生存率(%)をグラフで図示する。
図6C~
図6Dに示すように、生存可能な遊離細胞(円形記号)および生存可能な固定化細胞(三角形記号)のパーセンテージは、細胞生存率において初期低下を示すが、培養物は感染後14日目までに回復する。
【0025】
【
図7-1】
図7A~
図7Bは、SARS-CoV-2、TIP1およびTIP2の2つの治療用干渉粒子構築物の構造を概略的に図示する。
図7Aは、TIP1構築物の構造の一例を示す。
図7Bは、TIP2構築物の構造の一例を示す。概略は、TIP1およびTIP2がSARS-CoV-2の5’および3’非翻訳領域(UTR)の部分をコードすることを示す。TIP1は、450ntの5’UTRおよび330ntの3’UTRをコードする。TIP2は、5’UTR領域およびより大きな部分のSARS-CoV-2 ORF1a(すなわち、TIP2はORF1aの欠失をコードする)を含む。したがって、TIP1およびTIP2はパッケージングシグナルを含むが、ウイルスORF1a遺伝子の機能的コピーを発現することはできない。TIP2によってコードされる3’UTRは、上流413ntまでSARS-COV-2 N遺伝子内に伸長する一方、TIP2はN遺伝子の機能的形態をコードしない(すなわち、それはN遺伝子の一部の欠失をコードする)。分析を容易にするために、カセットはまた、フローサイトメトリー分析のためのIRES-mCherryレポーターも含む。
【0026】
【
図8】
図8A~
図8Cは、4つの異なる種類の治療用干渉粒子(TIP)がSARS-CoV-2の複製を50分の1未満に減少させることをグラフで図示する。
図8Aは、様々な治療用干渉粒子(TIP)が存在する場合でのSARS-CoV-2 RNAの倍数変化をグラフで図示する。細胞をTIP1(T1)、TIP1
*(T1
*)、TIP2(T2)またはTIP2
*(T2
*)のmRNAでトランスフェクトし、細胞をSARS-CoV-2(MOI=0.005)に感染させた。SARS-CoV-2複製の収量減少を、感染の48時間後にSARS-CoV-2 mRNA(E遺伝子)の減少倍数を測定することによって評価した。TIP中に存在しない、N遺伝子の5’末端およびE遺伝子に特異的なプライマーを用いたRT-qPCRによってmRNAを定量した。E遺伝子プライマーによって検出されたSARS-CoV-2 mRNAの減少倍数を示す。TIP2は、SARS-CoV-2に最大の干渉を示す。
図8Bは、TIP1およびTIP2治療用干渉粒子をSARS-CoV-2ゲノムと共に約24時間インキュベートした場合のSARS-CoV-2ゲノムの相対Log10量を、治療用干渉粒子を含まない対照と比較して、グラフで図示する。
図8Cは、TIP1およびTIP2治療用干渉粒子をSARS-CoV-2ゲノムと共に約48時間インキュベートした場合のSARS-CoV-2ゲノムの相対Log10量を、治療用干渉粒子を含まない対照と比較して、グラフで図示する。
【0027】
【
図9-1】
図9A~
図9Bは、TIP候補がSARS-CoV-2によって動員され、SARS-CoV-2と一緒に伝播することを示す。
図9Aは、TIP1およびTIP2粒子と共にインキュベートしたナイーブ非感染細胞からの上清を受けた対照細胞と比較して、TIP1およびTIP2治療用干渉粒子と共にインキュベートしたSARS-CoV-2感染細胞から移した上清を受けたVero細胞によるmCherry発現のフローサイトメトリー分析を示す。示されるように、TIP1またはTIP2粒子が存在した場合、mCherryを発現する細胞が検出されたが、対照細胞ではmCherryを発現する細胞は本質的に検出されなかった。
図9Bは、TIP1およびTIP2治療用干渉粒子を、SARS-CoV-2に感染した細胞と共に24時間インキュベートした場合のSARS-CoV-2ゲノムのlog10量を、SARS-CoV-2に感染していない対照と比較して、グラフで図示する。
図9Cは、TIP1およびTIP2治療用干渉粒子を、SARS-CoV-2に感染した細胞と共に48時間インキュベートした場合のSARS-CoV-2ゲノムのlog10量を、SARS-CoV-2に感染していない対照と比較して、グラフで図示する。
【0028】
【
図10】
図10は、アンチセンス転写調節配列(TRS)を用いたトランスフェクションによってSARS-CoV-2の転写を干渉するための方法を概略的に図示する。
【0029】
【
図11-1】
図11A~
図11Cは、アンチセンス転写調節配列(TRS)がSARS-CoV-2のプラーク形成単位(pfu)を減少させ得ることをグラフで図示する。
図11Aは、アンチセンスTRS1(ACGAACCUAAACACGAACCUAAAC(配列番号25))でトランスフェクション後のSARS-CoV-2 pfuをグラフで図示する。
図11Bは、アンチセンスTRS2(ACGAACACGAACACGAACACGAAC(配列番号26))でトランスフェクション後のSARS-CoV-2 pfuをグラフで図示する。
図11Cは、アンチセンスTRS3(CUAAACCUAAACCUAAACCUAAAC(配列番号27))でトランスフェクション後のSARS-CoV-2 pfuをグラフで図示する。
【0030】
【
図12】
図12は、TRSとTIP1またはTIP2のいずれかとの組合せが、TRS単独と比較して、SARS-CoV-2ゲノム数を有意に減少させたことをグラフで図示する。
【0031】
【
図13】
図13A~
図13Cは、TIP1およびTIP2治療用干渉粒子が、SARS-CoV-2の南アフリカおよびU.K.株を含む様々なSARS-CoV-2株の複製を有意に減少させることを図示する。
図13Aは、TIP1およびTIP2が、SARS-CoV-2の南アフリカ501Y.V2.HVデルタバリアントの複製を有意に減少させることを図示する。
図13Bは、TIP1およびTIP2が、SARS-CoV-2の南アフリカ501Y.V2.HVバリアントの複製を有意に減少させることを図示する。
図13Cは、TIP1およびTIP2が、SARS-CoV-2のU.K B.1.1.7バリアントの複製を有意に減少させることを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
SARS-CoV-2感染に干渉し得る欠陥SARS-CoV-2粒子(SARS-CoV-2治療用干渉粒子)を作製する方法、およびSARS-CoV-2感染を低減させるのに有用なそのような干渉性治療粒子の組成物が本明細書に記載されている。
【0033】
本明細書に示されるように、SARS-CoV-2治療用干渉粒子(TIP)は、SARS-CoV-2の複製を50分の1未満に減少させることができる。SARS-CoV-2 TIPは、SARS-CoV-2ゲノムの5’および3’末端のセグメントを含み得る。例えば、SARS-CoV-2 TIPは、SARS-CoV-2の5’-UTRおよび3’-UTRのセグメントを含み得る。いくつかの場合、検出可能なマーカーおよび/またはバーコードは、SARS-CoV-2ゲノムの5’セグメントと3’セグメントとの間に存在し得る。SARS-CoV-2治療用干渉粒子(TIP)の例としては、本明細書に記載のTIP1、TIP2、TIP1*、およびTIP2*構築物が挙げられる。
【0034】
TIP1における5’SARS-CoV-2配列は以下に示す通りである(配列番号28)。
【化1】
【0035】
TIP1における3’SARS-CoV-2配列を配列番号29として以下に示す。
【化2】
【0036】
TIP2における5’SARS-CoV-2配列は以下に示す通りである(配列番号30)。
【化3】
【0037】
TIP2における3’SARS-CoV-2配列は以下に示す通りである(配列番号31)。
【化4-1】
【化4-2】
【0038】
2つのさらなるTIPバリアントはクローニングされたTIP1*およびTIP2*であり、これらは5’UTR内に共通のC-241-T変異を含む。このC241T UTR変異は、スパイクタンパク質D614G変異と一緒に集団間で共伝播する。
【0039】
よって、TIP1
*における5’SARS-CoV-2配列は以下に示す通りである(配列番号32)。
【化5】
【0040】
同様に、TIP2
*における5’SARS-CoV-2配列は以下に示す通りである(配列番号33)。
【化6-1】
【化6-2】
【0041】
本明細書に記載の実験において使用されるTIP構築物は、5’SARS-CoV-2核酸と3’SARS-CoV-2核酸との間にコードされるマーカー(mCherry)を含んだ。そのようなマーカーの発現は、TIP構築物でトランスフェクトした細胞においてTIP構築物の複製を検出することを可能にした。そのようなマーカーを含めることは、TIPをモニタリングするのに有用であるが、マーカーは、SARS-CoV-2に感染した患者または対象の処置として投与される治療用干渉粒子には必要ないか、または含まれなくてもよい。
【0042】
一般に、SARS-CoV-2治療用干渉粒子を作製する方法は、環状SARS-CoV-2 DNAの集団をDNA環の異なる位置で切断して、切断された(線状化された)SARS-CoV-2 DNAのライブラリを生成することを含み、このライブラリのメンバーは異なる位置で切断されている。次いで、1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼを使用して切断部位の末端を「チュウバック」し、次いで「噛まれた末端(chewed ends)」をライゲーションして環状DNAを再形成する。これにより、欠失ライブラリを生成する。ステップ(例えば、ライブラリのメンバーに対する異なる位置での切断ステップ)の各々を達成するために多くの方法があり、環状化(例えば、ライゲーション)ステップの前に行い得る任意のステップが存在する。以下でより詳細に論じられるように、2ラウンド以上のライブラリ生成を行うことができ、したがって、主題の方法を使用して、ライブラリのメンバーが2回以上の欠失を含む複雑な欠失ライブラリを生成することができる。
【0043】
切断された(線状化された)SARS-CoV-2 DNAのライブラリの生成
本明細書に記載の方法は、環状SARS-CoV-2 DNAの集団から切断された(線状化された)SARS-CoV-2 DNAのライブラリを生成することを含む。いくつかの場合、SARS-CoV-2 DNA集団の切断の位置はランダムである。例えば、トランスポゾンカセットをランダムな位置でSARS-CoV-2 DNAの集団に挿入することができ、トランスポゾンカセットは、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼのための標的配列(認識配列)を含む。そのような場合、トランスポゾンカセットは、認識配列をSARS-CoV-2 DNAの集団に(ランダムな位置で)挿入するためのビヒクルとして使用されている。次いで、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ(認識配列を認識するもの)を使用してSARS-CoV-2 DNAを切断し、それによって切断された(線状化された)SARS-CoV-2 DNAのライブラリを生成することができ、ライブラリのメンバーは異なる位置で切断されている。
【0044】
「トランスポゾンカセット」という用語は、本明細書では、目的の配列をSARS-CoV-2 DNAに挿入するためにトランスポゾンによって使用され得る配列によって挟まれた「目的の配列」を含む核酸分子を意味するために使用される。したがって、いくつかの場合、「目的の配列」は、トランスポゾン適合性逆方向末端反復(ITR)、すなわち、トランスポゾンによって認識され、利用されるITRによって挟まれる。トランスポゾンカセットが1つまたはそれを超える標的配列(1種またはそれを超える配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ用)をSARS-CoV-2 DNAに挿入するためのビヒクルとして使用される場合、目的の配列は1つまたはそれを超える認識配列を含み得る。
【0045】
いくつかの場合、目的の配列は、選択可能なマーカー遺伝子、例えば、薬物耐性、例えば抗生物質耐性をもたらすタンパク質をコードする遺伝子などの選択可能なマーカーをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの場合、目的の配列は、第1の配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、第1のメガヌクレアーゼ)のための認識配列の第1のコピーおよび第2のコピーを含む。いくつかの場合、目的の配列は、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、メガヌクレアーゼ)のための第1および第2の認識配列によって挟まれる選択可能なマーカー遺伝子を含む。いくつかのそのような場合、第1の認識配列および第2の認識配列は同一であり、認識配列の第1のコピーおよび第2のコピーと見なすことができる。いくつかのそのような場合、第1の認識配列は第2の認識配列とは異なる。いくつかの場合、第1の認識配列および第2の認識配列(例えば、認識配列の第1および第2のコピー)は、選択可能なマーカー遺伝子、例えば抗生物質耐性タンパク質などの薬物耐性タンパク質をコードするものを挟む。いくつかの実施形態では、主題のトランスポゾンカセットは、第1のメガヌクレアーゼのための認識配列の第1のコピーおよび第2のコピー、ならびに第2のメガヌクレアーゼのための認識配列の第1のコピーおよび第2のコピーを含む。
【0046】
上記のシナリオのいずれにおいても、いくつかの場合、第1および/または第2の認識配列は、l-Scelメガヌクレアーゼ(例えば、aactataacggtcctaa^ggtagcgaa(配列番号34))のための部位である。いくつかの場合、第1および/または第2の認識配列は、l-Ceulメガヌクレアーゼ(例えば、aactataacggtcctaa^ggtagcgaa(配列番号35))のための部位である。
図4を参照されたい。いくつかの場合、第1の認識配列はl-Scelのための部位であり、第2の認識配列はl-Ceulのための部位である。いくつかの場合、第1および/または第2の認識配列は、例えば、LAGLIDADGメガヌクレアーゼ(LMN)、l-Scel、l-Ceul、l-Crel、l-Dmol、l-Chul、I-Dirl、l-Flmul、l-Flmull、l-Anil、l-ScelV、l-Csml、l-Panl、l-Panll、l-PanMI、l-Scell、l-Ppol、l-Scelll、I-Ltrl、l-Gpil、l-GZel、l-Onul、l-HjeMI、l-Msol、l-Tevl、l-Tevll、l-Tevlll、Pl-Mlel、Pl-Mtul、Pl-Pspl、Pl-Tli I、Pl-Tli II、およびPl-SceVから選択されるメガヌクレアーゼのための認識配列である。
【0047】
上記のように、主題のトランスポゾンカセットは、トランスポザーゼ適合性逆方向末端反復(ITR)によって挟まれる目的の配列を含む。ITRは、任意の所望のトランスポザーゼ、例えば、Tn3、Tn5、Tn7、Tn9、Tn10、Tn903、Tn1681などの細菌トランスポザーゼ、および例えば、Tc1/marinerスーパーファミリートランスポザーゼ、piggyBacスーパーファミリートランスポザーゼ、hATスーパーファミリートランスポザーゼ、Sleeping Beauty、Frog Prince、Minos、Himarlなどの真核生物トランスポザーゼと適合性であり得る。いくつかの場合、トランスポザーゼ適合性ITRは、Tn5トランスポザーゼと適合性である(すなわち、Tn5トランスポザーゼによって認識され、利用され得る)。本明細書で提供される方法のいくつかは、トランスポザーゼカセットをSARS-CoV-2 DNAに挿入するステップを含む。そのようなステップは、SARS-CoV-2 DNAおよびトランスポゾンカセットをトランスポザーゼと接触させることを含む。いくつかの場合、この接触は細菌細胞などの細胞の内部で起こり、いくつかの場合、この接触はインビトロで細胞の外部で起こる。上で列挙したトランスポザーゼ適合性ITRは、本明細書に開示される組成物および方法に適しているので、トランスポザーゼも同様である。したがって、適切なトランスポザーゼには、Tn3、Tn5、Tn7、Tn9、Tn10、Tn903、Tn1681などの細菌トランスポザーゼ、および例えばTc1/marinerスーパーファミリートランスポザーゼ、piggyBacスーパーファミリートランスポザーゼ、hATスーパーファミリートランスポザーゼ、Sleeping Beauty、Frog Prince、Minos、Himarlなどの真核生物トランスポザーゼが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの場合、トランスポザーゼはTn5トランスポザーゼである。
【0048】
いくつかの実施形態では、主題の方法は、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、1種またはそれを超える配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ)のための標的配列(例えば、1つまたはそれを超える標的配列)を環状SARS-CoV-2 DNAの集団に挿入し、それによって配列挿入された環状SARS-CoV-2 DNAの集団を生成するステップを含む。いくつかの場合、挿入するステップは、標的配列(例えば、1つまたはそれを超える標的配列)を含むトランスポゾンカセットを挿入することによって行われ、それによってトランスポゾン挿入された環状SARS-CoV-2 DNAの集団を生成する。いくつかの場合、トランスポゾンカセットは単一の認識配列(例えば、トランスポゾンカセットの中央または1つの末端付近にある)を含み、単一の認識配列をSARS-CoV-2 DNAの集団に導入するために使用され得る。いくつかの場合、トランスポゾンカセットは、2つ以上の認識配列(例えば、第1および第2の認識配列)を含む。いくつかのそのような場合、第1および第2の認識配列は、第1および第2の認識配列の切断がトランスポゾンカセット(またはトランスポゾンカセットの大部分)をSARS-CoV-2 DNAから効果的に除去しながら、同時に線状化SARS-CoV-2 DNAを生成し、よって、ライブラリのメンバーが異なる位置で切断されている、所望の切断された(線状化された)SARS-CoV-2 DNAのライブラリを生成するように、第1および第2の認識配列はトランスポゾンカセットの末端またはその近く(例えば、末端の20塩基、30塩基、50塩基、60塩基、75塩基、または100塩基以内)に配置される。
【0049】
トランスポゾンカセットが第1および第2の認識配列を含むいくつかの場合、第1および第2の認識配列は同じであり、したがって所与の認識配列の第1および第2のコピーである。いくつかのそのような場合、同じ配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、制限酵素、メガヌクレアーゼ、プログラム可能なゲノム編集ヌクレアーゼ)を使用して両方の部位で切断することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、トランスポゾンカセットは、同じでない第1および第2の認識配列を含む。いくつかのそのような場合、異なる配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、制限酵素、メガヌクレアーゼ、プログラム可能なゲノム編集ヌクレアーゼ)を使用して2つの部位を切断する(例えば、トランスポゾン挿入されたSARS-CoV-2 DNAのライブラリを、2種の配列特異的DNAエンドヌクレアーゼと接触させ得る)。しかしながら、いくつかの場合、1種の配列特異的DNAエンドヌクレアーゼを依然として使用することができる。例えば、いくつかの場合、2つの異なるガイドRNAを同じCRISPR/Casタンパク質と共に使用することができる。別の例として、いくつかの場合、所与の配列特異的DNAエンドヌクレアーゼは、両方の認識配列を認識することができる。
【0051】
いくつかの場合、環状SARS-CoV-2 DNA(例えば、プラスミド)の集団が宿主細胞(例えば、E.coli(大腸菌)などの細菌宿主細胞)の内部に存在し、トランスポゾンカセットを宿主細胞の内部に挿入するステップが行われる。例えば、方法は、トランスポザーゼおよび/もしくはトランスポザーゼをコードする核酸を選択された細胞に導入すること、または細胞内でのトランスポザーゼをコードする既存の発現カセットからのトランスポザーゼの発現などを含み得る。いくつかのそのような場合、主題の方法は、宿主細胞における選択/増殖ステップを含み得る。例えば、トランスポゾンカセットが薬物耐性マーカーを含む場合、宿主細胞を、トランスポゾン挿入された環状標的DNAを有する細胞を選択するために、薬物の存在下で増殖させることができる。
【0052】
トランスポゾン挿入された環状SARS-CoV-2 DNAの集団が生成されると(いくつかの場合、宿主細胞における選択/増殖ステップの後)、次のステップの前に(例えば、それらを配列特異的DNAエンドヌクレアーゼと接触させる前に)、集団を宿主細胞から単離/精製することができる。
【0053】
環状SARS-CoV-2 DNAは小さい環状DNA(例えば、50kb未満)であり得るので、いくつかの場合、インビトロでのローリングサークル増幅(RCA)の使用によって、細菌における選択および増殖ステップを回避することができる。例えば、転位後にニックの入った標的DNAの修復後、挿入されたトランスポゾンカセットに特異的なプライマーと共に、高度にプロセッシブで鎖置換性のポリメラーゼ(例えば、phi29 DNAポリメラーゼ)を使用して、環状プラスミドのプールから挿入変異体を選択的に増幅することができる。換言すれば、そのようなステップは、細菌形質転換を介したDNAの増幅を回避することができる。RCAの使用は、細菌の増殖/選択に必要な時間を短縮することができ、細菌の増殖を妨げないクローンに対してライブラリを偏らせることを回避することができる。
【0054】
非ランダム切断
上記のように、いくつかの場合、SARS-CoV-2 DNA集団の切断の位置はランダムであるが、いくつかの場合、切断の位置はランダムではない。例えば、SARS-CoV-2 DNAの集団を異なるベッセル(例えば、異なるチューブ、マルチウェルプレートの異なるウェルなど)に分配(例えば、アリコート)することができる。目的の特定の配列がSARS-CoV-2ゲノム配列内で選択される場合、その目的の配列は環状SARS-CoV-2 DNA内で切断され得る。環状SARS-CoV-2 DNAの別々のアリコートを異なるベッセル(例えば、マルチウェルプレートのウェル)内に置くことができ、環状SARS-CoV-2 DNAの異なるアリコートを、プログラム可能な配列特異的エンドヌクレアーゼを使用することによって異なる所定の位置で切断することができる。例えば、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9、Cpf1など)を使用する場合、ガイドRNAは、SARS-CoV-2ゲノム内の任意の所望の配列を標的とするように(例えば、いくつかの場合、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列要件を考慮に入れながら)容易に設計することができる。例えば、ガイドRNAは、環状SARS-CoV-2 DNAに沿って任意の所望の間隔(例えば、5ヌクレオチド(nt)ごと、10ntごと、20ntごと、50ntごと-重複、非重複など)でタイリングすることができる。各ベッセル(例えば、各ウェル)の環状SARS-CoV-2 DNAを、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼに加えてガイドRNAの1つと接触させることができる。このようにして、切断されたSARS-CoV-2 DNAのライブラリを生成することができ、ライブラリのメンバーは別々のベッセル内にあるため互いに分離されている。当業者によって理解され得るように、いくつかの場合、ガイドRNAを設計するときにPAM配列を考慮に入れることになり得、したがって、ガイドRNAの標的部位間の間隔はPAM配列の制約の関数であり得、所与の標的配列にわたる一貫した間隔は、いくつかの場合、必ずしも可能ではないだろう。しかしながら、異なるCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、異なる種から単離されたCas9などの同じタンパク質でさえも)は、異なるPAM要件を有し得、したがって、2種以上のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼの使用は、いくつかの場合、利用可能な標的部位に対するPAM要件によって課される少なくともいくつかの制約を緩和し得る。そして、方法のさらなるステップを別々に行うことができ(例えば、別々のベッセル内、マルチウェルプレートの別々のウェル内)、または任意のステップで、メンバーをプールし、1つのベッセルで一緒に処置することができる。
【0055】
例示的であるが非限定的な例として、96個の異なるガイドRNA(または384個の異なるガイドRNA)を使用して、96ウェルプレートの96個の異なるウェル(または384ウェルプレートの384個の異なるウェル)で環状SARS-CoV-2 DNAのアリコートを切断して、各メンバーが異なる部位で切断されている96個のメンバー(または384個のメンバー)のライブラリを生成することができる。切断部位は、方法を開始する前にユーザによって設計され得る。次いで、エキソヌクレアーゼステップ(チュウバック)を別個のウェル(例えば、エキソヌクレアーゼを各ウェルにアリコートすることによって)で行い得るか、またはさらに2つのウェルをプールした後、エキソヌクレアーゼをプールに添加し得る。
【0056】
環状SARS-CoV-2 DNA
環状SARS-CoV-2 DNAの集団の環状SARS-CoV-2 DNAは、任意の環状SARS-CoV-2 DNAであり得、SARS-CoV-2の任意の単離物から生成され得る。いくつかの場合、環状SARS-CoV-2 DNAはプラスミドDNAである。例えば、いくつかの場合、環状SARS-CoV-2 DNAは複製起点(ORI)を含む。いくつかの場合、環状SARS-CoV-2 DNAは、薬物耐性マーカー(例えば、薬物耐性をもたらすタンパク質をコードするヌクレオチド配列)を含む。いくつかの実施形態では、環状SARS-CoV-2 DNAの集団は、線状DNA分子の集団から(例えば、分子内ライゲーションを介して)生成される。例えば、主題の方法は、線状SARS-CoV-2 DNA分子の集団(例えば、PCR産物の集団、線状ウイルスSARS-CoV-2ゲノムの集団、制限消化物由来の産物の集団など)を環状化して、環状SARS-CoV-2 DNAの集団を生成するステップを含み得る。いくつかの場合、そのような集団のメンバーは同一である(例えば、PCR産物または制限消化物の多くのコピーを使用して、各環状DNAが同一であるSARS-CoV-2 DNAの集団を生成することができる)。いくつかの場合、そのような環状SARS-CoV-2 DNAの集団のメンバーは互いに異なり得る。例えば、環状SARS-CoV-2 DNAの集団は、2つまたはそれを超える異なるSARS-CoV-2分離株から生成され得るか、または異なるSARS-CoV-2 PCR産物から生成され得るか、またはSARS-CoV-2の異なる制限消化産物から生成され得る。
【0057】
いくつかの場合、環状SARS-CoV-2 DNAの集団自体が欠失ライブラリであり得る。例えば、環状SARS-CoV-2 DNAの集団は、公知の欠失変異体(例えば、公知のウイルス欠失変異体)のライブラリであり得る。別の例として、主題の方法を2ラウンド行う場合、第2ラウンドのためのSARS-CoV-2 DNAの開始集団は、ライブラリのメンバーがライブラリの他のメンバーと比較して異なるDNAセクションの欠失を含む欠失ライブラリ(例えば、第1ラウンドの欠失の間に生成される)であり得る。そのようなライブラリは、環状SARS-CoV-2 DNAの集団として機能することができ、例えば、トランスポゾンカセットを依然として集団に導入することができる。したがって、この様式で第2ラウンドの欠失を行うことにより、複数の異なるエントリーポイントで欠失を有する構築物を生成することができる。例示的な例として、長さが約29~30kb(キロベース)のSARS-CoV-2 DNAの場合、第1ラウンドの欠失は、(生成されたライブラリの)1つのメンバーについて欠失塩基2000から2650個を有し得、そのうち複数のコピーが存在する可能性があり得る。第2ラウンドの欠失は、2つの新しいメンバーを生成し得、それらは両方とも同じ欠失メンバーのコピーから生成される。このため、例えば、塩基3500から3650個が(塩基2000から2650個に加えて)欠失された状態で1つの新しいメンバーが生成され得る一方、塩基1500から1580個が(塩基2000から2650個に加えて)欠失された状態で第2の新しいメンバーが生成され得る。したがって、複数ラウンド(例えば、2、3、4、5など)の欠失により、複雑な欠失ライブラリを生産することができる。いくつかの場合、例えば上記のように、第2ラウンドがトランスポゾンカセットの挿入を含む、2ラウンド以上のライブラリ生成が行われる。
【0058】
例えば、いくつかの場合、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼを使用して第1ラウンドの欠失を行い、環状SARS-CoV-2 DNA)の集団内の予め選択された部位にCRISPR/Casエンドヌクレアーゼを標的化することによって(例えば、目的の1つまたはそれを超えるSARS-CoV-2配列を標的とするように、例えば予め選択された間隔でガイドRNAを設計することによって)、切断された線状SARS-CoV-2 DNAを生成する。環状化欠失DNAの第1のライブラリを生成するためのエキソヌクレアーゼ処置および環状化の後、環状化欠失DNAのライブラリは、第2ラウンドの欠失のために(環状SARS-CoV-2 DNAの集団としての)入力として使用される。したがって、1種またはそれを超える配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、1種またはそれを超えるメガヌクレアーゼ)のための1つまたはそれを超える標的配列を環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリに(例えば、トランスポゾンカセットを介してランダムな位置で)挿入して、トランスポゾン挿入された環状SARS-CoV-2 DNAの集団を生成し、方法を継続する。いくつかのそのような場合、第1ラウンドの欠失は、欠失のために少数の目的の位置(1つの位置、例えば、1種のガイドRNAのみを使用して特定の位置を標的化すること、または少数の位置、例えば、少数のガイドRNAを使用して少数の位置を標的化すること)のみを標的とし得るが、第2ラウンドは、第1の欠失+第2の欠失を含む欠失構築物を生成するために使用される。
【0059】
いくつかの場合、環状SARS-CoV-2 DNAはウイルスゲノム全体を含む。他の場合、環状SARS-CoV-2 DNAは部分的なSARS-CoV-2ウイルスゲノムを含む。したがって、いくつかの場合、主題の方法は、ウイルス欠失変異体のライブラリを生成するために使用される。いくつかのそのような場合、生成されたウイルス欠失変異体のライブラリは、潜在的な欠陥干渉粒子(DIP)のライブラリと見なすことができる。DIPは、同じ細胞内で複製する野生型ウイルスによって補完される場合を除いて複製することができないように、ゲノム欠失を含むSARS-CoV-2ウイルスの変異バージョンである。ウイルスゲノムはシス作用性およびトランス作用性エレメントの両方をコードするので、欠陥干渉粒子(DIP)は自然に生じ得る。トランス作用性エレメント(トランスエレメント)は、カプシドタンパク質または転写因子などの遺伝子産物をコードし、シス作用性エレメント(シスエレメント)は、ウイルスゲノム増幅、カプシド形成およびウイルス排出を含む生産的なウイルス複製を達成するためにトランスエレメント産物と相互作用するウイルスゲノムの領域である。換言すれば、欠損した(欠失した)トランスエレメントがトランスで提供される場合(例えば、ウイルスを共感染させることによって)、DIPのSARS-CoV-2ウイルスゲノムは依然としてコピーされ、ウイルス粒子にパッケージングされ得る。いくつかの場合、DIPは、例えば、利用可能なトランスエレメントに対して競合し、よって希釈することによって、共感染ウイルスのウイルス感染性を低下させるために治療的に使用することができる。SARS-CoV-2 DIPが治療薬として(例えば、Covid-19感染の処置として)使用され得るそのような場合、そのSARS-CoV-2 DIPは治療用干渉粒子(TIP)と称され得る。
【0060】
DIPは自然に発生し得るが、本開示の方法は、例えば、ウイルスSARS-CoV-2ゲノムの欠失ライブラリを生成することによって、有用なタイプのSARS-CoV-2 DIPを生成するために使用することができる。そして、ライブラリメンバーを配列決定してDIPであると予測されるものを同定することによって、そのような欠失ライブラリからDIPを同定することができる。あるいは、またはさらに、生成された欠失ライブラリをスクリーニングすることができる。例えば、SARS-CoV-2 DIPのライブラリを細胞に導入して、所望の機能を有するウイルスゲノムを有するメンバーを同定することができる。DIPおよびTIPならびにそれらの使用のさらなる説明は、米国特許出願公開第20160015759号に提供されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0061】
したがって、いくつかの場合、主題の方法は、生成されたSARS-CoV-2欠失構築物のライブラリのメンバーを標的細胞(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞などの真核細胞)に導入すること、および感染性についてアッセイすることを含む。いくつかのそのような場合、アッセイするステップはまた、共感染SARS-CoV-2ウイルスによるライブラリメンバーの補完を含む。
【0062】
そのような導入は、本明細書では、細胞への核酸の導入の任意の形態(例えば、エレクトロポレーション、トランスフェクション、リポフェクション、ナノ粒子送達、ウイルス送達など)を包含することを意味する。例えば、そのような「導入」は、培養中の哺乳動物細胞へ(例えば、環状化欠失ウイルスDNAの生成されたライブラリのメンバーによってコードされるウイルスゲノムを含むウイルス粒子としてカプセル化することができる環状化SARS-CoV-2欠失ウイルスDNAの生成されたライブラリのメンバーを用いて)感染させることを包含する。
【0063】
いくつかの場合、方法は、SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリから、線状二本鎖DNA(dsDNA)産物、線状一本鎖DNA(ssDNA)産物、線状一本鎖RNA(ssRNA)産物、および線状二本鎖RNA(dsRNA)産物のうちの少なくとも1つを生成することを含む。したがって、いくつかのそのような場合、主題の方法は、そのような線状dsDNA産物、線状ssDNA産物、線状ssRNA産物、および/または線状dsRNA産物を哺乳動物細胞に(例えば、エレクトロポレーション、トランスフェクション、リポフェクション、ナノ粒子送達、ウイルス送達などを含むがこれらに限定されない、細胞に核酸を導入するための任意の好都合な方法を介して)導入することを含む。
【0064】
そのような方法はまた、ウイルス感染性についてアッセイすることを含み得る。ウイルス感染性についてのアッセイは、任意の好都合な方法を使用して行うことができる。ウイルス感染性についてのアッセイは、環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリのメンバー(および/または環状化欠失DNAのライブラリから生成される、線状二本鎖DNA(dsDNA)産物、線状一本鎖DNA(ssDNA)産物、線状一本鎖RNA(ssRNA)産物、および線状二本鎖RNA(dsRNA)産物のうちの少なくとも1つ)が導入される細胞に対して行うことができる。例えば、いくつかの場合、メンバーおよび/または産物は、カプセル化粒子として導入される。いくつかの場合、環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリのメンバー(および/または環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリから生成される、線状dsDNA産物、線状ssDNA産物、線状ssRNA産物、および線状dsRNA産物のうちの少なくとも1つ)を、ウイルス粒子を生成させるために第1の細胞の集団(例えば、哺乳動物細胞)に導入し、次いで、ウイルス粒子を使用して第2の細胞の集団(例えば、哺乳動物細胞)と接触させる。したがって、本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「ウイルス感染性についてのアッセイ」という語句は、上記のシナリオの両方を包含する(例えば、メンバーおよび/または産物が導入された細胞における感染性についてアッセイすることを包含し、上記のような第2の細胞の集団をアッセイすることも包含する)。
【0065】
いくつかの実施形態では、主題の方法(例えば、DIPを生成および同定する方法)は、欠失ライブラリ(例えば、環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリ)を生成した後、高感染多重度(MOI)(例えば、>2のMOIを利用する)スクリーニングを含む。本明細書で使用される場合、「高MOI」は、2またはそれを超える(例えば、2.5またはそれを超える、3またはそれを超える、5またはそれを超えるなど)のMOIである。いくつかの場合、主題の方法は高MOIを使用する。したがって、いくつかの場合、主題の方法は、2もしくはそれを超える、3もしくはそれを超える、または5もしくはそれを超えるMOI(高MOI)を使用する。いくつかの場合、主題の方法は、2~150(例えば、2~100、2~80、2~50、2~30、3~150、3~100、3~80、3~50、3~30、5~150、5~100、5~80、5~50、または5~30)の範囲のMOI(高MOI)を使用する。いくつかの場合、主題の方法は、3~100(例えば、5~100)の範囲のMOI(高MOI)を使用する。高MOIでは、多くの(すべてではないにしても)細胞が2つ以上のウイルスにより感染し、これにより、野生型カウンターパートによる欠陥ウイルスの補完が可能になる。高MOIでの欠失変異体ライブラリの反復継代は、野生型SARS-CoV-2によって効果的に動員され得る変異体を選択することができる。例えば、いくつかの場合、方法は、培養中の哺乳動物細胞を環状化SARS-CoV-2欠失ウイルスDNAのライブラリのメンバーに高感染多重度(MOI)で感染させること、感染した細胞を12時間~2日間(例えば、12時間~36時間または12時間~24時間)の範囲の期間培養すること、ナイーブ細胞を培養物に添加すること、および培養中の細胞からウイルスを回収することを含む。しかしながら、このスクリーニングステップは、いくつかの場合、野生型ウイルスによって効果的に動員され得るが、野生型共感染の非存在下では細胞変性であるDIP/TIPを選択する可能性がある。
【0066】
したがって、いくつかの実施形態では、主題の方法(例えば、DIPを生成および同定する方法)は、よりストリンジェントなスクリーニング(本明細書では「低感染多重度(MOI)スクリーニング」と称される)を含む。本明細書で使用される場合、「低MOI」は、1未満(例えば、0.8未満、0.6未満など)のMOIの使用を含む。いくつかの場合、主題の方法は低MOIを使用する。したがって、いくつかの場合、主題の方法は、1未満(例えば、0.8未満、0.6未満)のMOI(低MOI)を使用する。いくつかの場合、主題の方法は、0.001~0.8(例えば、0.001~0.6、0.001~0.5、0.005~0.8、0.005~0.6、0.01~0.8、または0.01~0.5)の範囲のMOI(低MOI)を使用する。いくつかの場合、主題の方法は、0.01~0.5の範囲のMOI(低MOI)を使用する。例えば、欠失ライブラリによる標的細胞の低MOI感染(例えば、<1のMOIを利用する)を、形質導入された集団の野生型ウイルス(例えば、SARS-CoV-2)による高MOI感染と交互にして、DIPをナイーブ細胞に動員することができる。
【0067】
いくつかの場合、1つもしくはそれを超えるSARS-CoV-2または1つもしくはそれを超えるSARS-CoV-2欠失DNAを有する細胞を、薬物の存在下で増殖させて、さらなるラウンドの複製が起こるかどうかを試験することができる。回復期間中、野生型ウイルスに感染した細胞(例えば、SARS-CoV-2に感染した細胞)は死滅するだろうが、良好に挙動する変異体(細胞死滅トランス因子を産生しない)によって形質導入された細胞は維持されるだろう。この様式では、形質導入された宿主細胞を死滅させないが、野生型ウイルスの同時感染中に動員することができる変異体を選択することができる。したがって、いくつかの場合、主題の方法は、培養中の哺乳動物細胞を環状化欠失SARS-CoV-2ウイルスDNAのライブラリのメンバーに低感染多重度(MOI)で感染させること、感染した細胞をウイルス複製阻害剤の存在下で1日~6日間(例えば、1日~5日間、1日~4日間、1日~3日間、または1日~2日間)の範囲の期間培養すること、培養した細胞を機能性SARS-CoV-2ウイルスに高MOIで感染させること、感染した細胞を12時間~4日間(例えば、12時間~72時間、12時間~48時間、または12時間~24時間)の範囲の期間培養すること、および培養した細胞からウイルスを回収することを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、主題の方法は、(a)配列特異的DNAエンドヌクレアーゼのための標的配列を環状SARS-CoV-2ウイルスDNAの集団に挿入して、配列挿入されたSARS-CoV-2 DNAの集団を生成すること、(b)配列挿入されたSARS-CoV-2 DNAの集団を配列特異的DNAエンドヌクレアーゼと接触させて、切断された線状SARS-CoV-2 DNAの集団を生成すること、(c)切断された線状ウイルスDNAの集団をエキソヌクレアーゼと接触させて、SARS-CoV-2欠失DNAの集団を生成すること、(d)SARS-CoV-2欠失DNAを環状化して(例えば、ライゲーションを介して)、環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリを生成すること、および(e)環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリのメンバーを配列決定して、欠失干渉粒子(DIP)を同定することを含む。いくつかの場合、方法は、ステップ(d)の前またはステップ(d)と同時にバーコード配列を挿入することを含む。
【0069】
いくつかの場合、ステップ(a)の挿入することは、トランスポゾンカセットを環状SARS-CoV-2ウイルスDNAの集団に挿入することを含み、トランスポゾンカセットは配列特異的DNAエンドヌクレアーゼのための標的配列を含み、配列挿入されたSARS-CoV-2 DNAの生成された集団はトランスポゾン挿入されたウイルスDNAの集団である。いくつかの場合(例えば、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼを使用するいくつかの場合)、主題の方法はステップ(a)を含まず、代わりに、方法の第1のステップは、ライブラリのメンバーを互いに対して異なる位置で切断することであり、このステップの後にエキソヌクレアーゼステップが続き得る。
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【0070】
標的配列および配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ
いくつかの場合、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼのための標的配列は、例えば、トランスポゾンカセットを使用してSARS-CoV-2 DNAに挿入される。「標的配列」は、本明細書では認識配列または認識部位とも称される。配列特異的エンドヌクレアーゼという用語は、本明細書では、SARS-CoV-2 DNAの標的配列に結合および/またはそれを認識し、SARS-CoV-2 DNAを切断するDNAエンドヌクレアーゼを指すために使用される。換言すれば、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼは、SARS-CoV-2 DNA分子内の特定の配列(認識配列)を認識し、その認識に基づいて分子を切断する。いくつかの場合、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼは、認識配列内のSARS-CoV-2 DNAを切断し、いくつかの場合(例えば、IIS型制限エンドヌクレアーゼの場合)、認識配列の外側を切断する。
【0071】
配列特異的DNAエンドヌクレアーゼという用語は、例えば、制限酵素、メガヌクレアーゼ、およびプログラム可能なゲノム編集ヌクレアーゼを含み得る。配列特異的エンドヌクレアーゼの例としては、制限エンドヌクレアーゼ、例えば、EcoRI、EcoRV、BamHIなど;メガヌクレアーゼ、例えば、LAGLI DADGメガヌクレアーゼ(LMN)、l-Scel、l-Ceul、l-Crel、l-Dmol、l-Chul、l-Dirl、l-Flmul、l-Flmull、l-Anil、1-ScelV、l-Csml、l-Panl、I-Panll、1-PanMI、l-Scell、l-Ppol、l-Scelll、l-Ltrl、l-Gpil、l-GZel、l-Onul、1-HjeMI、l-Msol、l-Tevl、I-Tevll、l-Tevlll、Pl-Mlel、Pl-Mtul、Pl-Pspl、PI-TIi I、PI-TIi ll、Pl-SceVなど;ならびにプログラム可能な遺伝子編集エンドヌクレアーゼ、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、およびCRISPR/Casエンドヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合、主題の組成物および/または方法の配列特異的エンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼおよびプログラム可能な遺伝子編集エンドヌクレアーゼから選択される。いくつかの場合、主題の組成物および/または方法の配列特異的エンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、ZFN、TALEN、およびCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9、Cpf1など)から選択される。
【0072】
いくつかの場合、主題の組成物および/または方法の配列特異的エンドヌクレアーゼはメガヌクレアーゼである。いくつかの場合、メガヌクレアーゼは、LAGLIDADGメガヌクレアーゼ(LMN)、l-Scel、l-Ceul、l-Crel、l-Dmol、l-Chul、l-Dirl、l-Flmul、l-Flmull、l-Anil、I-ScelV、l-Csml、l-Panl、l-Panll、l-PanMI、l-Scell、l-Ppol、l-Scelll、l-Ltrl、l-Gpil、l-GZel、l-Onul、l-HjeMI、l-Msol、l-Tevl、l-Tevll、l-Tevlll、Pl-Mlel、Pl-Mtul、Pl-Pspl、PI-TIi I、PI-TIi II,、およびPl-SceVから選択される。いくつかの場合、メガヌクレアーゼl-Scelが使用される。いくつかの場合、メガヌクレアーゼl-Ceulが使用される。いくつかの場合、メガヌクレアーゼl-Scelおよびl-Ceulが使用される。
【0073】
いくつかの場合、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼは、プログラム可能なゲノム編集ヌクレアーゼである。「プログラム可能なゲノム編集ヌクレアーゼ」という用語は、本明細書では、SARS-CoV-2 DNA内の異なる部位(認識配列)を標的とされ得るエンドヌクレアーゼを指すために使用される。適切なプログラム可能なゲノム編集ヌクレアーゼの例には、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TAL-エフェクターDNA結合ドメイン-ヌクレアーゼ融合タンパク質(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN))、およびCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、クラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ、例えばII型、V型またはVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ)が含まれるが、これらに限定されない。したがって、いくつかの実施形態では、プログラム可能なゲノム編集ヌクレアーゼは、ZFN、TALEN、およびCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、クラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ、例えばII型、V型、またはVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ)から選択される。いくつかの場合、主題の組成物および/または方法の配列特異的エンドヌクレアーゼは、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9、Cpf1など)である。いくつかの場合、主題の組成物および/または方法の配列特異的エンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、ZFN、およびTALENから選択される。
【0074】
クラス2 II型CRISPR/CasエンドヌクレアーゼCas9タンパク質およびCas9ガイドRNA(ならびにそれらの送達方法)に関する情報(ならびにSARS-CoV-2核酸中に存在するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に関する要件についての情報)は、例えば、以下のJinekら、Science.2012年8月17日;337(6096):816-21;Chylinskiら、RNA Biol.2013年5月;10(5):726-37;Maら、Biomed Res Int.2013;2013:270805;Houら、Proc Natl Acad Sci U S A.2013年9月24日;1 10(39):15644-9;Jinekら、Elife.2013;2:e00471;Pattanayakら、Nat Biotechnol.2013年9月;31(9):839-43;Qiら、Cell.2013年2月28日;152(5):1173-83;Wangら、Cell.2013年5月9日;153(4):910-8;Auerら、Genome Res.2013年10月31日;Chenら、Nucleic Acids Res.2013年11月1日;41(20):e19;Chengら、Cell Res.2013年10月;23(10):1 163-71;Choら、Genetics.2013年11月;195(3):1 177-80;DiCarloら、Nucleic Acids Res.2013年4月;41(7):4336-43;Dickinsonら、Nat Methods.2013年10月;10(10):1028-34;Ebinaら、Sci Rep.2013;3:2510;Fujiiら、Nucleic Acids Res.2013年11月1日;41(20):e187;Huら、Cell Res.2013年11月;23(1 1):1322-5;Jiangら、Nucleic Acids Res.2013年11月1日;41(20):e188;Larsonら、Nat Protoc.2013年11月;8(1 1):2180-96;Maliら、Nat Methods.2013年10月;10(10):957-63;Nakayamaら、Genesis.2013年12月;51(12):835-43;Ranら、Nat Protoc.2013年11月;8(1 1):2281-308;Ranら、Cell.2013年9月12日;154(6):1380-9;Upadhyayら、G3(Bethesda).2013年12月9日;3(12):2233-8;Walshら、Proc Natl Acad Sci U S A.2013年9月24日;110(39):15514-5;Xieら、Mol Plant.2013年10月9日;Yangら、Cell.2013年9月12日;154(6):1370-9;Brinerら、Mol Cell.2014年10月23日;56(2):333-9;ならびに米国特許および特許出願:第8,906,616号;第8,895,308号;第8,889,418号;第8,889,356号;第8,871,445号;第8,865,406号;第8,795,965号;第8,771,945号;第8,697,359号;第20140068797号;第20140170753号;第20140179006号;第20140179770号;第20140186843号;第20140186919号;第20140186958号;第20140189896号;第20140227787号;第20140234972号;第20140242664号;第20140242699号;第20140242700号;第20140242702号;第20140248702号;第20140256046号;第20140273037号;第20140273226号;第20140273230号;第20140273231号;第20140273232号;第20140273233号;第20140273234号;第20140273235号;第20140287938号;第20140295556号;第20140295557号;第20140298547号;第20140304853号;第20140309487号;第20140310828号;第20140310830号;第20140315985号;第20140335063号;第20140335620号;第20140342456号;第20140342457号;第20140342458号;第20140349400号;第20140349405号;第20140356867号;第20140356956号;第20140356958号;第20140356959号;第20140357523号;第20140357530号;第20140364333号;および第20140377868号において見出すことができ;これらのすべては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0075】
V型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cpf1)またはVI型CRISPR/CasエンドヌクレアーゼおよびガイドRNAに関連する例および指針(ならびにSARS-CoV-2核酸中に存在するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に関連する要件についての情報)は、当技術分野で見出すことができ、例えば、Zetscheら、Cell.2015年10月22日;163(3):759-71;Makarovaら、Nat Rev Microbiol.2015年11月;13(11):722-36;およびShmakovら、Mol Cell.2015年11月5日;60(3):385-97を参照されたい。
【0076】
有用なデザイナージンクフィンガーモジュールには、様々なGNNおよびANNトリプレットを認識するもの(Dreierら、(2001)J Biol Chem 276:29466-78;Dreierら、(2000)J Mol Biol 303:489-502;Liuら、(2002)J Biol Chem 277:3850-6)、ならびに様々なCNNまたはTNNトリプレットを認識するもの(Dreierら、(2005)J Biol Chem 280:35588-97;Jamiesonら、(2003)Nature Rev Drug Discov 2:361-8)が含まれる。Duraiら、(2005)Nucleic Acids Res 33:5978-90;Segal、(2002)Methods 26:76-83;PorteusおよびCarroll、(2005)Nat Biotechnol、23:967-73;Paboら、(2001)Ann Rev Biochem 70:313-40;Wolfeら、(2000)Ann Rev Biophys Biomol Struct 29:183-212;SegalおよびBarbas、(2001)Curr Opin Biotechnol 12:632-7;Segalら、(2003)Biochemistry 42:2137-48;BeerliおよびBarbas、(2002)Nat Biotechnol
【0077】
20:135-41;Carrollら、(2006)Nature Protocols 1:1329;Ordizら、(2002)Proc Natl Acad Sci USA 99:13290-5;Guanら、(2002)Proc Natl Acad Sci USA 99:13296-301も参照されたい。
【0078】
ZFNおよびTALEN(およびそれらの送達方法)に関するさらなる情報については、Sanjanaら、Nat Protoc.2012年1月5日;7(1):171-92ならびに国際特許出願WO2002099084;WO00/42219;WO02/42459;WO2003062455;WO03/080809;WO05/014791;WO05/084190;WO08/021207;WO09/042186;WO09/054985;WO10/079430;およびW010/065123;米国特許第8,685,737号;第6,140,466号;第6,511,808号;および第6,453,242号;ならびに米国特許出願第2011/0145940号、第2003/0059767号、および第2003/0108880号を参照されたい;これらのすべては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0079】
いくつかの場合(例えば、制限酵素の場合)、認識配列は、所与のタンパク質に対して一定である(変化しない)(例えば、BamHI制限酵素のための認識配列はG^GATCCである)。いくつかの場合、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼは、所望の認識配列を認識するようにタンパク質(またはCRISPR/Casエンドヌクレアーゼの場合はその関連RNA)を改変/操作することができるという意味で「プログラム可能」である。いくつかの場合(例えば、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼがメガヌクレアーゼである場合および/または配列特異的DNAエンドヌクレアーゼがCRISPR/Casエンドヌクレアーゼである場合)、認識配列は、14またはそれを超えるヌクレオチド(nt)(例えば、15もしくはそれを超える、16もしくはそれを超える、17もしくはそれを超える、18もしくはそれを超える、19もしくはそれを超える、または20もしくはそれを超えるnt)の長さを有する。いくつかの場合、認識配列は、14~40nt(例えば、14~35、14~30、14~25、15~40、15~35、15~30、15~25、16~40、16~35、16~30、16~25、17~40、17~35、17~30、または17~25nt)の範囲の長さを有する。いくつかの場合、認識配列は、14またはそれを超える塩基対(bp)(例えば、15もしくはそれを超える、16もしくはそれを超える、17もしくはそれを超える、18もしくはそれを超える、19もしくはそれを超える、または20もしくはそれを超えるbp)の長さを有する。いくつかの場合、認識配列は、14~40bp(例えば、14~35、14~30、14~25、15~40、15~35、15~30、15~25、16~40、16~35、16~30、16~25、17~40、17~35、17~30、または17~25bp)の範囲の長さを有する。
【0080】
上記で認識配列の長さに言及する場合、二本鎖ヘリックスおよび認識配列は塩基対(bp)を単位として考えることができるが、いくつかの場合(例えば、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼの場合)、認識配列は一本鎖形態(例えば、CRISPR/CasエンドヌクレアーゼのガイドRNAは、SARS-CoV-2 DNAにハイブリダイズすることができる)で認識され、認識配列はヌクレオチド(nt)を単位として考えることができる。しかしながら、本明細書で認識配列に言及するときに「bp」または「nt」を使用する場合、この専門用語は限定を意図するものではない。一例として、本明細書に記載の特定の方法または組成物が両方のタイプの配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ(「bp」を認識するものおよび「nt」を認識するもの)を包含する場合、「nt」または「bp」のいずれかは、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼの範囲を限定することなく使用することができる。これは、当業者はどの用語(「nt」または「bp」)が適切に適用され、これはどのタンパク質が選択されるかに依存することを理解するであろうからである。認識配列の長さ制限の場合、当業者は、「nt」または「bp」という用語が使用されるかどうかにかかわらず、論じられている長さ制限が等しく適用されることを理解するであろう。
【0081】
チュウバック(エキソヌクレアーゼ消化)
環状SARS-CoV-2 DNAが切断され、切断された線状SARS-CoV-2 DNAの集団が生成された後、線状SARS-CoV-2 DNAの開口端はエキソヌクレアーゼによって消化(チュウバック)される。多くの様々なエキソヌクレアーゼが当業者に公知であり、任意の好都合なエキソヌクレアーゼを使用することができる。いくつかの場合、5’から3’へのエキソヌクレアーゼが使用される。いくつかの場合、3’から5’へのエキソヌクレアーゼが使用される。いくつかの場合、5’から3’へのおよび3’から5’への両方のエキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼが使用される。いくつかの場合、2種以上のエキソヌクレアーゼ(例えば、2種のエキソヌクレアーゼ)が使用される。いくつかの場合、切断された線状SARS-CoV-2 DNAの集団を、5’から3’へのエキソヌクレアーゼおよび3’から5’へのエキソヌクレアーゼと接触(例えば、同時に、または一方が他方の前に)させる。
【0082】
いくつかの場合、T4 DNAポリメラーゼが3’から5’へのエキソヌクレアーゼ(dNTPの非存在下、T4 DNAポリメラーゼは3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有する)として使用される。いくつかの場合、RecJが5’から3’へのエキソヌクレアーゼとして使用される。いくつかの場合、T4 DNAポリメラーゼ(dNTPの非存在下)およびRecJが使用される。エキソヌクレアーゼの例には、DNAポリメラーゼ(例えば、T4 DNAポリメラーゼ)(dNTPの非存在下)、ラムダエキソヌクレアーゼ(5’→3’)、T5エキソヌクレアーゼ(5’→3’)、エキソヌクレアーゼIII(3’→5’)、エキソヌクレアーゼV(5’→3’および3’→5’)、T7エキソヌクレアーゼ(5’→3’)、エキソヌクレアーゼT、エキソヌクレアーゼVII(短縮型)(5’→3’)、およびRecJエキソヌクレアーゼ(5’→3’)が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
DNA消化(チュウバック)の速度は温度に敏感であり、したがって、所望の欠失のサイズは、エキソヌクレアーゼ消化中の温度を調節することによって制御することができる。例えば、以下の実施例のセクションでは、エキソヌクレアーゼとしてT4 DNAポリメラーゼ(dNTPの非存在下)およびRecJを使用する場合、両末端消化速度(チュウバック速度)は、37℃で50bp/分の速度で、より低い温度(例えば、以下の実施例のセクションで論じられるように)では遅い速度で進行した。したがって、温度を低下または上昇させることができるか、および/または消化時間を短縮または延長させて、欠失のサイズ(すなわち、エキソヌクレアーゼ消化の量)を制御することができる。例えば、いくつかの場合、エキソヌクレアーゼ消化が所望のサイズ範囲の欠失を引き起こすように、温度および時間が調整される。例示的な例として、500~1000塩基対(bp)の範囲の欠失が望まれる場合、消化の時間および温度は、250~500ヌクレオチドが線状化(切られた)SARS-CoV-2 DNAの各末端から除去されるように調整され得る、すなわち、欠失のサイズは、線状化SARS-CoV-2 DNAの各末端から除去されたヌクレオチドの数の合計である。いくつかの場合、エキソヌクレアーゼ消化が20~1000bp(例えば、20~50、40~80、20~100、40~100、20~200、40~200、60~100、60~200、80~150、80~250、100~250、150~350、100~500、200~500、200~700、300~800、400~800、500~1000、700~1000、20~800、50~1000、100~1000、250~1000、50~1000、50~750、100~1000、または100~750bp)の範囲のサイズを有する欠失を引き起こすように、温度および時間が調整される。
【0084】
いくつかの場合、エキソヌクレアーゼ(1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼ)との接触は、室温(例えば、25℃)~40℃(例えば、25~37℃、30~37℃、32~40℃、または30~40℃)の範囲の温度で行われる。いくつかの場合、エキソヌクレアーゼとの接触は37℃で行われる。いくつかの場合、エキソヌクレアーゼとの接触は32℃で行われる。いくつかの場合、エキソヌクレアーゼとの接触は30℃で行われる。いくつかの場合、エキソヌクレアーゼとの接触は25℃で行われる。いくつかの場合、エキソヌクレアーゼとの接触は室温で行われる。
【0085】
いくつかの場合、SARS-CoV-2 DNAをエキソヌクレアーゼ(1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼ)と、10秒~40分(例えば、10秒~30分、10秒~20分、10秒~15分、10秒~10分、30秒~30分、30秒~20分、30秒~15分、30秒~12分、30秒~10分、1~40分、1~30分、1~20分、1~15分、1~10分、3~40分、3~30分、3~20分、3~15分、3~12分、または3~10分)の範囲の期間接触させる。いくつかの場合、接触は、20秒~15分の範囲の期間である。
【0086】
DNA消化(チュウバック)後、残りのオーバーハングしたDNA末端は修復され得る(例えば、T4 DNAポリメラーゼ+dNTPを使用する)か、またはいくつかの場合、一本鎖オーバーハングは除去され得る(例えば、一本鎖DNAを切断するが二本鎖DNAを切断しないマングビーンヌクレアーゼなどのヌクレアーゼを使用する)。例えば、5’から3’へのまたは3’から5’へのエキソヌクレアーゼのみを使用する場合、一本鎖DNAに特異的なヌクレアーゼ(すなわち、二本鎖DNAを切らない)(例えば、マングビーンヌクレアーゼ)を使用してオーバーハングを除去することができる。
【0087】
1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼと接触させるステップ(すなわち、チュウバック)は、一本鎖結合タンパク質(SSBタンパク質)の存在下または非存在下で行うことができる。SSBは、露出した一本鎖DNA末端に結合するタンパク質であり、(i)ヌクレアーゼがDNAにアクセスするのを防ぐことによってDNAを安定化するのを助けること、および(ii)一本鎖DNA内のヘアピン形成を防ぐことを含むがこれらに限定されないいくつかの結果を達成することができる。SSBタンパク質の例には、真核生物SSBタンパク質(例えば、複製タンパク質A(RPA))、細菌SSBタンパク質、およびウイルスSSBタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの場合、1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼと接触させるステップは、SSBの存在下で行われる。いくつかの場合、1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼと接触させるステップは、SSBの非存在下で行われる。
【0088】
バーコード
いくつかの実施形態では、ライブラリのメンバーは、エキソヌクレアーゼ消化後(および残りのオーバーハングしているDNA末端が修復/除去された後)に、SARS-CoV-2 DNAにバーコードを付加することによって「タグ付け」される。バーコードの付加は、再環状化(ライゲーション)の前またはそれと同時に行うことができる。本明細書で使用される場合、「バーコード」という用語は、将来の同定のためにライブラリのメンバーを一意にタグ付けする配列を有するヌクレオチドのストレッチを意味するために使用される。例えば、いくつかの場合、(ランダムバーコードカセットのプールからの)バーコードカセットが付加され得、ライブラリを配列決定して、どのバーコード配列がどの特定のメンバーに関連付けられるか、すなわちどの特定の欠失に関連付けられるかを知ることができる(例えば、欠失ライブラリの各メンバが固有のバーコードを有するようにルックアップテーブルを作成することができる)。このようにして、欠失ライブラリのメンバーは、バーコードの存在によって(欠失の位置を決定することによってメンバーを同定しなければならない代わりに)追跡および把握することができる。任意の好都合なアッセイを使用して短いストレッチのヌクレオチドの存在を同定することは、容易に達成することができる。そのようなバーコードの使用は、ライブラリが所与の実験に使用されるたびに(欠失の位置を決定するために)個々のメンバーを単離し配列決定するよりも容易である。例えば、どのライブラリメンバーが実験前(例えば、ウイルス感染性についてアッセイするためにライブラリメンバーを細胞に導入する前)に存在するかを容易に判定し、これを、例えば、ハイスループット配列決定、マイクロアレイ、PCR、qPCR、またはバーコード配列の存在/非存在を検出することができる任意の他の方法を使用して、実験前後のバーコードの存在について単純にアッセイすることによって、実験後にどのメンバーが存在するかと比較することができる。
【0089】
いくつかの場合、バーコードはカセットとして付加される。バーコードカセットは、少なくとも1つの定常領域(カセットを受け入れるすべてのメンバーによって共有される領域)およびバーコード領域(すなわち、バーコード配列-バーコードがライブラリのメンバーを一意にマークするように、バーコードを受け入れるメンバーに対して固有の領域)を有するヌクレオチドのストレッチである。例えば、バーコードカセットは、(i)使用されるバーコードカセット間で共通のプライマー部位である定常領域、および(ii)例えば、ランダム配列のストレッチであり得る固有のタグであるバーコード配列を含み得る。いくつかの場合、バーコードカセットは、2つの定常領域(例えば、2つの異なるプライマー部位)によって挟まれるバーコード領域を含む。例示的な例として、いくつかの場合、バーコードカセットは、20bpのプライマー結合部位によって挟まれる20bpのランダムバーコードを含む60bpのカセットである(例えば、
図4を参照)。
【0090】
バーコード配列は、任意の好都合な長さを有することができ、好ましくは、目的の所与のライブラリのメンバーを一意にマークするのに十分な長さである。いくつかの場合、バーコード配列は、15bp~40bp(例えば、15~35bp、15~30bp、15~25bp、17~40bp、17~35bp、17~30bp、または17~25bp)の長さを有する。いくつかの場合、バーコード配列は20bpの長さを有する。同様に、バーコードカセットは、任意の好都合な長さを有することができ、この長さは、バーコード配列の長さ+定常領域の長さに依存する。いくつかの場合、バーコードカセットは、40bp~100bp(例えば、40~80bp、45~100bp、45~80bp、45~70bp、50~100bp、50~80bp、または50~70bp)の長さを有する。いくつかの場合、バーコードカセットは60bpの長さを有する。
【0091】
バーコードまたはバーコードカセットは、任意の好都合な方法を使用して付加することができる。例えば、線状SARS-CoV-2 DNAは、ランダムバーコードカセットのプールから引き出された3’-dT-テール付きバーコードカセットへのライゲーションによって再環状化することができる。次いで、ニックが入った半ライゲーション産物を封じ、宿主細胞、例えば細菌細胞に形質転換することができる。
【0092】
産物の生成
いくつかの場合、主題の方法は、線状二本鎖DNA(dsDNA)産物(例えば、環状DNAの切断を介して、PCRを介してなど)、線状一本鎖DNA(ssDNA)産物(例えば、転写および逆転写を介して)、線状一本鎖RNA(ssRNA)産物(例えば、転写を介して)、および線状二本鎖RNA(dsRNA)産物のうちの少なくとも1つを(例えば、環状化SARS-CoV-2欠失DNAの生成されたライブラリから)生成するステップを含む。必要に応じて、線状SARS-CoV-2産物を、次いで細胞(例えば、哺乳動物細胞)に導入することができる。例えば、RNAウイルスに対する共通の技術は、dsDNA鋳型(環状または線状)からインビトロ転写を行ってRNAを作製し、次いでこのRNAを細胞に(例えば、エレクトロポレーション、化学的方法などを介して)導入してウイルスのストックを生成することである。
【0093】
また、キットも本開示の範囲内である。例えば、いくつかの場合、主題のキットは、(i)本明細書に記載の環状SARS-CoV-2 DNAの集団、(ii)本明細書に記載のトランスポゾンカセット、(iii)本明細書に記載の配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ、(iv)本明細書に記載のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼのための1つまたはそれを超えるガイドRNA、(v)本明細書に記載のバーコードおよび/またはバーコードカセットの集団、ならびに(vi)本明細書に記載の、例えばライブラリの増幅、ウイルス感染性についてのアッセイなどのための宿主細胞の集団のうちの1つまたは複数を(任意の組合せで)含み得る。いくつかの場合、主題のキットは使用説明書を含むことができる。キットは、典型的には、キットの内容物の使用目的を指し示すラベルを含む。ラベルという用語は、キット上もしくはキットと共に供給されるか、またはそうでなければキットに付随する、任意の書面または記録された材料を含む。
【0094】
SARS-CoV-2ウイルス
SARS-CoV-2ウイルスは、約9860アミノ酸をコードする約29891ヌクレオチドの一本鎖RNAゲノムを有する。SARS-CoV-2の選択されたRNAゲノムは、逆転写およびcDNAの形成によってコピーされ、DNAにすることができる。線状SARS-CoV-2 DNAを、SARS-CoV-2 DNA末端のライゲーションによって環状化できる。
【0095】
コード領域を有するSARS-CoV-2ゲノムのDNA配列は、NCBIウェブサイトからアクセッション番号NC_045512.2として入手可能である(本明細書では配列番号1として提供される)。
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【化7-4】
【化7-5】
【化7-6】
【化7-7】
【化7-8】
【化7-9】
【化7-10】
【化7-11】
【化7-12】
【化7-13】
【化7-14】
【化7-15】
【0096】
SARS-CoV-2は、配列番号1の配列の1~265位に5’非翻訳領域(5’UTR;リーダー配列またはリーダーRNAとしても公知)を有し得る。そのような5’UTRは、開始コドンのすぐ上流にあるmRNAの領域を含み得る。5’UTRおよび3’UTRはまた、SARS-CoV-2のパッケージングを容易にし得る。
【0097】
同様に、SARS-CoV-2は、29675~29903位に3’非翻訳領域(3’UTR)を有し得る。プラス鎖RNAウイルスでは、マイナス鎖RNA複製中間体の起点はゲノムの3’末端にあるので、3’-UTRはウイルスRNA複製において役割を果たし得る。
【0098】
SARS-CoV-2ゲノムは、4つの主要な構造タンパク質:スパイク(S)タンパク質、ヌクレオカプシド(N)タンパク質、膜(M)タンパク質、およびエンベロープ(E)タンパク質をコードする。これらのタンパク質のいくつかは、配列番号1の配列の266~21555位にある大きなポリプロテインの一部であり、このオープン・リーディング・フレームはORF1abポリプロテインと称され、以下に示す配列番号2を有する。
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【0099】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号2をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号2のタンパク質を不活性化し得る。
【0100】
RNA依存性RNAポリメラーゼは、SARS-CoV-2配列番号1の核酸の13442~13468位および13468~16236位にコードされている。このRNA依存性RNAポリメラーゼには、NCBIアクセッション番号YP_009725307が割り当てられており、以下の配列(配列番号3)を有する。
【化9-1】
【化9-2】
【0101】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号3をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号3のタンパク質を不活性化し得る。
【0102】
ヘリカーゼは、SARS-CoV-2配列番号1の核酸の16237~18039位にコードされている。このヘリカーゼには、NCBIアクセッション番号YP_009725308.1が割り当てられており、以下の配列(配列番号4)を有する。
【化10】
【0103】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号4をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号4のタンパク質を不活性化し得る。
【0104】
SARS-CoV-2は、GU280_gp02と称され得る、配列番号1の配列の21563~25384位にオープン・リーディング・フレーム(遺伝子S)を有し得、このオープン・リーディング・フレームは表面糖タンパク質またはスパイク糖タンパク質(以下に示す配列番号5)をコードする。
【化11】
【0105】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号5をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号5のタンパク質を不活性化し得る。
【0106】
Sまたはスパイクタンパク質は、細胞内へのSARS-CoV-2の進入を促進する役割を果たす。これは、短い細胞内尾部、膜貫通アンカー、ならびに受容体結合S1サブユニットおよび膜融合S2サブユニットからなる大きな外部ドメインから構成される。スパイク受容体結合ドメインは、配列番号5のスパイクタンパク質のアミノ酸330~583位(配列番号6として以下に示す)に存在し得る。
【化12-1】
【化12-2】
【0107】
スパイクタンパク質におけるこの受容体結合モチーフ(RBM)の分析は、受容体結合に必須のアミノ酸残基の大部分がSARS-CoVとSARS-CoV-2との間で保存されていたことを示し、このことは、2つのCoV株が細胞侵入のために同じ宿主受容体を使用することを示唆した。SARS-CoVによって利用される侵入の受容体は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE-2)である。
【0108】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号6をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号6のタンパク質を不活性化し得る。
【0109】
SARS-CoV-2スパイクタンパク質の膜融合S2ドメインは、配列番号5のスパイクタンパク質の662~1270位(配列番号7として以下に示す)にあり得る。
【化13】
【0110】
SARS-CoV-2は、nsp3と称され得る、配列番号1の配列の2720~8554位にオープン・リーディング・フレームを有し得、これは膜貫通ドメイン1(TM1)を含む。膜貫通ドメイン1を有するこのnsp3オープン・リーディング・フレームは、NCBIアクセッション番号YP_009725299.1を有し、配列番号8として以下に示される。
【化14】
【0111】
nsp3タンパク質は、N末端酸性(Ac)、予測ホスホエステラーゼ、パパイン様プロテイナーゼ、Yドメイン、膜貫通ドメイン1(TM1)、およびアデノシン二リン酸-リボース1’’-ホスファターゼ(ADRP)を含むさらなる保存ドメインを有する。
【0112】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号8をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号8のタンパク質を不活性化し得る。
【0113】
SARS-CoV-2は、nsp4B_TMと称され得る、配列番号1の配列の8555~10054位にオープン・リーディング・フレームを有し得、これは膜貫通ドメイン2(TM2)を含む。膜貫通ドメイン2を有するこのnsp4B_TMオープン・リーディング・フレームは、NCBIアクセッション番号YP_009725300を有し、配列番号9として以下に示される。
【化15】
【0114】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号9をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号9のタンパク質を不活性化し得る。
【0115】
SARS-CoV-2は、GU280_gp03と称され得る、配列番号1の配列の25393~26220位にオープン・リーディング・フレーム(ORF3a)を有し得る(以下に示す配列番号10)。
【化16】
【0116】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号10をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号10のタンパク質を不活性化し得る。
【0117】
SARS-CoV-2は、GU280_gp04と称され得る、配列番号1の配列の26245~26472位にオープン・リーディング・フレーム(遺伝子E)を有し得る(以下に示す配列番号11)。
【化17】
【0118】
配列番号11のタンパク質は、構造タンパク質、例えばエンベロープタンパク質である。いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号11をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号11のタンパク質を不活性化し得る。
【0119】
SARS-CoV-2は、GU280_gp05と称され得る、配列番号1の配列の27202~27191位にオープン・リーディング・フレーム(Mタンパク質遺伝子;ORF5)を有し得る(以下に示す配列番号12)。
【化18】
【0120】
配列番号12のタンパク質は、構造タンパク質、例えば膜糖タンパク質である。いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号12をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号12のタンパク質を不活性化し得る。
【0121】
SARS-CoV-2は、GU280_gp06と称され得る、配列番号1の配列の27202~27387位にオープン・リーディング・フレーム(ORF6)を有し得る(以下に示す配列番号13)。
【化19】
【0122】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号13をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号13のタンパク質を不活性化し得る。
【0123】
SARS-CoV-2は、GU280_gp07と称され得る、配列番号1の配列の27394~27759位にオープン・リーディング・フレーム(ORF7a)を有し得る(以下に示す配列番号14)。
【化20】
【0124】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号14をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号14のタンパク質を不活性化し得る。
【0125】
SARS-CoV-2は、GU280_gp08と称され得る、配列番号1の配列の27756~27887位にオープン・リーディング・フレーム(ORF7b)を有し得る(以下に示す配列番号15)。
【化21】
【0126】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号15をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号15のタンパク質を不活性化し得る。
【0127】
SARS-CoV-2は、GU280_gp09と称され得る、配列番号1の配列の27894~28259位にオープン・リーディング・フレーム(ORF8)を有し得る(以下に示す配列番号16)。
【化22】
【0128】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号16をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号16のタンパク質を不活性化し得る。
【0129】
SARS-CoV-2は、GU280_gp10と称され得る、配列番号1の配列の28274~29533位にオープン・リーディング・フレーム(遺伝子N;ORF9)を有し得る(以下に示す配列番号17)。
【化23-1】
【化23-2】
【0130】
配列番号17のタンパク質は、構造タンパク質、例えばヌクレオカプシドホスホプロテインである。いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号17をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号17のタンパク質を不活性化し得る。
【0131】
SARS-CoV-2は、GU280_gp11と称され得る、配列番号1の配列の29558~29674位にオープン・リーディング・フレーム(ORF10)を有し得る(以下に示す配列番号19)。
【化24】
【0132】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号19をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号19のタンパク質を不活性化し得る。
【0133】
SARS-CoV-2は、コードされたGU280_gp11内にある、29609~29644位および29629~29657位にステムループを有し得る。例えば、29609~29644位でのSARS-CoV-2のステムループを配列番号20として以下に示す。
【化25】
【0134】
例えば、29629~29657位でのSARS-CoV-2のステムループを配列番号21として以下に示す。
【化26】
【0135】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号20および/または21をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号20および/または21のタンパク質を不活性化し得る。
【0136】
SARS-CoV-2は、NCBIアクセッション番号YP_009725305.1のssRNA結合タンパク質をコードする配列番号1の配列の12686~13024位にオープン・リーディング・フレーム(nsp9)を有し得、以下の配列(配列番号22)を有する。
【化27】
【0137】
いくつかの場合、本明細書に記載の構築物および治療用干渉粒子は、配列番号22をコードするゲノムの部分を含むSARS-CoV-2ゲノムの欠失を有し得る。そのような欠失は、配列番号22のタンパク質を不活性化し得る。
【0138】
本明細書に記載の構築物および/または治療用干渉粒子は、SARS-CoV-2ゲノムの部分を有し得、ゲノムの欠失は、SARS-CoV-2ゲノムの少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも2500、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも6000、少なくとも7000、少なくとも8000、少なくとも9000、少なくとも10,000、少なくとも11,000、少なくとも12,000、少なくとも13,000、少なくとも14,000、少なくとも15,000、少なくとも16,000、少なくとも17,000、少なくとも18,000、少なくとも19,000、少なくとも20,000、少なくとも21,000、少なくとも22,000、少なくとも23,000、少なくとも24,000、少なくとも25,000、少なくとも26,000、少なくとも27,000、少なくとも27500、または少なくとも28000ヌクレオチドを含む。
【0139】
前述の配列はDNA配列である。本明細書に記載の組成物および方法で使用されるSARS-CoV-2核酸は、そのような配列のDNAまたはRNAバージョンであり得る。3’SARS-CoV-2核酸は、伸長されたポリA配列を含み得る。例えば、伸長されたポリA配列は、少なくとも100アデニンヌクレオチド~250アデニンヌクレオチドを有し得る。そのような伸長されたポリA配列は、例えば、mRNAの半減期を延長できる。
【0140】
さらに、SARS-CoV-2ゲノムは、配列バリエーションの反映である構造バリエーションを自然に有し得る。したがって、本明細書に記載の組成物および方法で使用されるSARS-CoV-2は、例えば、配列番号1~35として示されている配列と1つまたはそれを超えるヌクレオチドまたはアミノ酸の相違を有し得る。いくつかの場合、本明細書に記載の組成物および方法で使用されるSARS-CoV-2は、例えば、配列番号1~35として示されている配列と2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30個、またはそれを超えるヌクレオチドまたはアミノ酸の相違を有し得る。したがって、欠失の前に、本明細書に記載の方法および組成物で使用されるSARS-CoV-2核酸のいずれかは、配列番号1~35のいずれかに対して、少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%、または少なくとも99.5%の配列同一性を有する、DNAまたはRNAであり得る。
【0141】
SARS-CoV-2欠失変異体
本開示は、SARS-CoV-2欠失変異体、例えば干渉性、条件付き複製性、SARS-CoV-2欠失変異体、および関連構築物を提供する。例えば、本開示は、野生型SARS-CoV-2配列と比較して、1つまたはそれを超える欠失を有するSARS-CoV-2欠失変異体を提供する。
【0142】
したがって、本開示はまた、SARS-CoV-2欠失変異体も提供する。そのようなSARS-CoV-2欠失変異体は、例えば配列番号1の任意の位置に1つまたはそれを超える欠失を有し得る。そのような欠失は、コードされたポリペプチドのいずれかの配列を短縮または排除し得る。例えば、そのような欠失は、配列番号2~19または22によって特定されるアミノ酸配列を短縮または欠失させ得る。例えば、SARS-CoV-2核酸のそのような欠失は、SARS-CoV-2核酸によってコードされるポリペプチドのいずれかの発現を低減または排除し得る。しかしながら、いくつかの場合、SARS-CoV-2ゲノムのある特定の領域(例えば、5’UTRおよび/または3’UTRの部分)は保持されるべきであり、欠失されるべきではない。
【0143】
本開示は、干渉性、条件付き複製性SARS-CoV-2欠失変異体および関連構築物を提供するために、保持されるべきSARS-CoV-2ゲノムの特定の領域および欠失可能なSARS-CoV-2ゲノムの特定の領域を同定する。例えば、治療用干渉粒子(TIP)として機能するために、SARS-CoV-2欠失変異体は、例えば、5’UTRおよび3’UTRなどのシス作用性エレメントを保持し得る。シス作用性エレメントを保持することに加えて、干渉性SARS-CoV-2粒子は、いくつかの場合、Nタンパク質またはスパイク受容体結合S1サブユニット(例えば、配列番号6)などのいくつかのSARS-CoV-2タンパク質の一部分を保持し得る。
【0144】
野生型SARS-CoV-2との干渉を示す干渉性SARS-CoV-2粒子は、例えば、ウイルス粒子アセンブリを媒介する構造タンパク質に対して競合し得るか、またはウイルス粒子のアセンブリを阻害するタンパク質を産生し得る。例えば、干渉を示す干渉性SARS-CoV-2粒子は、スパイクタンパク質の膜融合S2サブユニット(例えば、配列番号7)に欠失を有し得る。いくつかの場合、干渉を示す干渉性SARS-CoV-2粒子は、RNA依存性RNAポリメラーゼ(例えば、配列番号3)に1つまたはそれを超える欠失を有し得る。いくつかの場合、干渉を示す干渉性SARS-CoV-2粒子は、Mタンパク質(膜糖タンパク質)(例えば、配列番号12)に1つまたはそれを超える欠失を有し得る。いくつかの場合、干渉を示す干渉性SARS-CoV-2粒子は、ssRNA結合タンパク質(例えば、配列番号22)に1つまたはそれを超える欠失を有し得る。
【0145】
バリアントである干渉性、条件付き複製性SARS-CoV-2構築物を生成する方法も本明細書に記載されている。方法は一般に、a)上記のような干渉構築物を第1の宿主細胞集団または第1の個体に導入すること、b)干渉構築物が第1の宿主細胞集団または第1の個体から(直接的に、または1つもしくはそれを超える介在細胞/個体を介して)伝播した第2の細胞集団または第2の個体から生物学的試料を得ること、ここで、第2の細胞集団または第2の個体中に存在する構築物は、第1の宿主細胞集団または第1の個体に導入された干渉構築物のバリアントである、およびc)バリアント構築物を第2の宿主細胞集団または第2の個体からクローニングすることを含む。
【0146】
SARS-CoV-2欠失変異体および干渉性、条件付き複製性SARS-CoV-2構築物の欠失サイズは変動し得る。例えば、SARS-CoV-2欠失変異体および干渉性、条件付き複製性SARS-CoV-2構築物は、1つまたはそれを超える欠失を有し得、各欠失は、少なくとも1bp、少なくとも2bp、少なくとも3bp、少なくとも4bp、少なくとも5bp、少なくとも6bp、少なくとも7bp、少なくとも8bp、少なくとも9bp、少なくとも10bp、少なくとも12bp、少なくとも15bp、少なくとも20bp、少なくとも25bp、少なくとも30bp、少なくとも40bpの欠失を有する。
【0147】
いくつかの場合、欠失サイズは、例えば、約10bp~約5000bp、約800bp~約2500bp、約900bp~約2400bp、約1000bp~約2300bp、約1100bp~約2200bp、約1200bp~約2100bp、約1300bp~約2000bp、約1400bp~約1900bp、約1500bp~約1800bp、または約1600bp~約1700bpの範囲であり得る。
【0148】
本開示は、干渉性、条件付き複製性SARS-CoV-2構築物を提供する。簡単にするために、干渉性、条件付き複製性SARS-CoV-2構築物をSARS-CoV-2「干渉構築物」または「TIP」と称する。主題の干渉構築物は、条件付き複製性であり得る。例えば、主題の干渉構築物は、哺乳動物宿主中に存在する場合、野生型SARS-CoV-2の非存在下では、それ自体のコピーを含む感染力のある粒子を形成することができない。主題の干渉構築物は、パッケージングに必要な適切なポリペプチドがもたらされる場合、実験室においてインビトロで(例えば、インビトロ細胞培養物中に)感染力のある粒子にパッケージングされ得る。感染力のある粒子は、干渉構築物を宿主細胞、例えばインビボ宿主細胞に送達することができる。インビボ宿主細胞(哺乳動物対象における宿主細胞)の内部に入ると、干渉構築物は宿主細胞のゲノムに組み込まれ得るか、または干渉構築物は細胞質性を維持し得る。干渉構築物は、いくつかの場合、野生型SARS-CoV-2の存在下でのみインビボ宿主細胞において複製することができる。干渉構築物を有するインビボ宿主細胞が野生型SARS-CoV-2によって感染すると、干渉構築物は複製することができる(例えば、転写され、パッケージングされる)。いくつかの場合、干渉構築物は、野生型SARS-CoV-2よりも実質的に効率的に複製をすることができ、それによって野生型SARS-CoV-2を打ち負かす。その結果、個体におけるSARS-CoV-2ウイルス負荷が実質的に減少する。
【0149】
干渉構築物は、RNA構築物またはDNA構築物(例えば、RNAのDNAコピー)であり得る。
【0150】
いくつかの場合、干渉構築物は、SARS-CoV-2に由来しないいかなる異種ヌクレオチド配列も含まない。「異種」とは、自然には野生型SARS-CoV-2中に通常存在しないヌクレオチド配列を指す。例えば、いくつかの場合、干渉構築物は、遺伝子産物をコードするいかなる異種ヌクレオチド配列も含み得ない。遺伝子産物には、ポリペプチドおよびRNAが含まれる。
【0151】
いくつかの場合、干渉構築物は、SARS-CoV-2に由来しない異種ヌクレオチド配列を含み得る。例えば、干渉構築物は、1つまたはそれを超えるバーコード配列、検出可能なマーカーをコードする1つまたはそれを超えるセグメント、1つまたはそれを超えるプロモーター、1つまたはそれを超えるRNA転写もしくは翻訳開始部位、1つまたはそれを超える終結シグナル、あるいはそれらの組合せを含み得る。構築物はまた、複製起点を含み得る。
【0152】
干渉構築物は、SARS-CoV-2シス作用性エレメントを含み得、変更により1つまたはそれを超えるコードされたSARS-CoV-2トランス作用性ポリペプチドが非機能性になるようなSARS-CoV-2ヌクレオチド配列の変更を含み得る。「非機能性」とは、例えば、コードされたポリペプチドの短縮もしくは内部欠失に起因して、またはポリペプチドが全く欠如していることに起因して、SARS-CoV-2トランス活性化ポリペプチドがその正常な機能を果たさないことを意味する。SARS-CoV-2ヌクレオチド配列の「変更」には、1つもしくはそれを超えるヌクレオチドの欠失および/または1つもしくはそれを超えるヌクレオチドの置換が含まれる。
【0153】
いくつかの場合、干渉構築物は、野生型SARS-CoV-2に感染している宿主細胞中(例えば、個体の宿主細胞中)に存在する場合、主題の干渉構築物を含まない同じタイプの宿主細胞における野生型SARS-CoV-2の複製の速度よりも、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または10倍超の高い速度で複製する。
【0154】
いくつかの場合、干渉構築物は、野生型SARS-CoV-2に感染している宿主細胞中(例えば、個体の宿主細胞中)に存在する場合、野生型SARS-CoV-2に感染しているが主題の干渉構築物を含まない宿主細胞における野生型SARS-CoV-2転写物の量と比較して、細胞における野生型SARS-CoV-2転写物の量を少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%減少させる。
【0155】
いくつかの場合、干渉構築物は、野生型SARS-CoV-2に感染している宿主細胞中(例えば、個体の宿主細胞中)に存在する場合、宿主細胞の細胞質における干渉構築物にコードされたRNAの野生型SARS-CoV-2にコードされたRNAに対する比(重量による、例えば、μg:μg)が1を超えるように、干渉構築物にコードされたRNAの産生をもたらす。いくつかの場合、干渉構築物は、野生型SARS-CoV-2に感染している宿主細胞中(例えば、個体の宿主細胞中)に存在する場合、宿主細胞の細胞質における干渉構築物にコードされたRNAの野生型SARS-CoV-2にコードされたRNAに対する比(重量による、例えば、μg:μg)が少なくとも約1.5:1~少なくとも約102:1または102:1超、例えば約1.5:1~約2:1、約2:1~約5:1、約5:1~約10:1、約10:1~約25:1、約25:1~約50:1、約50:1~約75:1、約75:1~約100:1、または100:1超であるように、干渉構築物にコードされたRNAの産生をもたらす。
【0156】
いくつかの場合、干渉構築物は、野生型SARS-CoV-2に感染している宿主細胞中(例えば、個体の宿主細胞中)に存在する場合、宿主細胞の細胞質における干渉構築物にコードされたRNAの野生型SARS-CoV-2にコードされたRNAに対する比(例えば、モル比)が1を超えるように、干渉構築物にコードされたRNAの産生をもたらす。いくつかの場合、干渉構築物は、野生型SARS-CoV-2に感染している宿主細胞中(例えば、個体の宿主細胞中)に存在する場合、宿主細胞の細胞質における干渉構築物にコードされたRNAの野生型SARS-CoV-2にコードされたRNAに対する比(例えば、モル比)が少なくとも約1.5:1~少なくとも約102:1または102:1超、例えば約1.5:1~約2:1、約2:1~約5:1、約5:1~約10:1、約10:1~約25:1、約25:1~約50:1、約50:1~約75:1、約75:1~約100:1、または100:1超であるように、干渉構築物にコードされたRNAの産生をもたらす。
【0157】
主題の干渉構築物は、1を超える基本再生産比(R0)(「基本再生産数」とも称される)を示し得る。R0は、1つの症例がその感染力のある期間にわたって平均して生じる症例の数である。R0が>1である場合、感染は(細胞または個体の)集団に広がることができるであろう。したがって、主題の干渉構築物は、集団のある細胞から別の細胞へ、またはある個体から別の個体へ広がる能力を有する。いくつかの場合、主題の干渉構築物(または主題の干渉粒子)は、約2~約5、約5~約7、約7~約10、約10~約15、または15超のR0を有する。
【0158】
宿主細胞の細胞質における干渉構築物にコードされたRNAの野生型SARS-CoV-2にコードされたRNAに対する比を測定するために、任意の好都合な方法を使用することができる。適切な方法は、例えば、干渉構築物にコードされたRNAおよび野生型SARS-CoV-2にコードされたRNAの両方のqRT-PCR(例えば、シングルセルqRT-PCR)によって転写物数を直接測定すること、干渉構築物にコードされたRNAおよび野生型SARS-CoV-2にコードされたRNAによってコードされるタンパク質のレベルを測定すること(例えば、ウエスタンブロット、ELISA、質量分析などによって)、ならびに干渉構築物にコードされたRNAおよび野生型SARS-CoV-2にコードされたRNAに関連する検出可能な標識(例えば、RNAによってコードされ、RNAから翻訳されるタンパク質に融合される蛍光タンパク質の蛍光)のレベルを測定することを含み得る。そのような測定は、例えば、共トランスフェクション後に、任意の好都合な細胞型を使用して行うことができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、干渉構築物にコードされたRNAはパッケージングされる。いくつかの実施形態では、干渉構築物にコードされたRNAはパッケージングされない。いくつかの場合、干渉構築物にコードされたRNAは、パッケージングされるRNAとパッケージングされないRNAの両方を含む。
【0160】
処置
本開示は、個体におけるSARS-CoV-2ウイルス負荷を減少させる方法を提供する。方法は一般に、有効量の主題の干渉核酸構築物、主題の干渉核酸構築物を含む医薬製剤、主題の干渉粒子、または主題の干渉粒子を含む医薬製剤を個体に投与することを含む。
【0161】
いくつかの場合、主題の方法は、有効量のSARS-CoV-2干渉粒子、または主題の干渉粒子を含む医薬製剤を、それを必要とする個体に投与することを含む。いくつかの場合、主題の干渉粒子の有効量は、単独療法または併用療法において、1つまたはそれを超える用量で個体に投与される場合、干渉粒子による処置を受けていない個体のSARS-CoV-2ウイルス負荷と比較して、個体におけるSARS-CoV-2ウイルス負荷を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または80%超減少させるのに有効な量である。
【0162】
いくつかの場合、主題の方法は、有効量の主題の干渉粒子を、それを必要とする個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、主題の干渉粒子の「有効量」は、単剤療法または併用療法において、1つまたはそれを超える用量で個体に投与される場合、干渉粒子による処置を受けていない個体と比較して、個体におけるSARS-CoV-2の症候を少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約2分の1、少なくとも約2.5分の1、少なくとも約3分の1、少なくとも約5分の1、少なくとも約10分の1、または10分の1未満に低下させるのに有効な量である。
【0163】
様々な方法のいずれかを使用して、処置方法が有効であるかどうかを判定することができる。例えば、方法が有効であるかどうかを判定することは、野生型SARS-CoV-2ウイルス負荷が減少しているかどうかを評価すること、感染した対象がSARS-CoV-2に対する抗体を産生しているかどうかを判定すること、感染した対象が助けを借りずに呼吸しているかどうかを判定すること、および/または感染した対象の体温が正常に戻っているかどうかを判定することを含み得る。ウイルス負荷を測定することは、例えば、プライマー特異的SARS-CoV-2ポリヌクレオチド配列を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、生物学的試料のSARS-CoV-2の量を測定すること、SARS-CoV-2によってコードされるポリペプチドを検出および/または測定すること、SARS-CoV-2ポリペプチドに特異的な抗体を用いた酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などの免疫学的測定法を使用すること、またはそれらの組合せによってであり得る。
【0164】
製剤、投与量、および投与の経路
宿主に導入する前に、干渉構築物または干渉粒子を、治療的および予防的処置方法での使用のために様々な組成物に製剤化することができる。特に、干渉構築物または干渉粒子は、適切な薬学的に許容され得る担体または希釈剤と組み合わせることにより医薬組成物にすることができ、ヒトまたは獣医学用途のいずれかに適切になるように製剤化することができる。簡単にするために、主題の干渉構築物および主題の干渉粒子は、以下では集合的に「活性剤」または「活性成分」と称される。
【0165】
したがって、主題の処置方法での使用のための組成物は、薬学的に許容され得る担体と組み合わせて、SARS-CoV-2干渉構築物またはSARS-CoV-2干渉粒子を含み得る。投与に適した様々な薬学的に許容され得る担体を使用することができる。担体の選択は、部分的には、特定のベクター、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定され得る。当業者はまた、組成物を投与する様々な経路が利用可能であり、2つ以上の経路を投与に使用することができるが、特定の経路が別の経路よりも迅速かつ効果的な反応をもたらすことができることを理解するであろう。したがって、主題の干渉構築物の組成物または主題の干渉粒子の組成物の多種多様な適切な製剤が存在する。
【0166】
単独で、または他の抗ウイルス化合物と組み合わせて、組成物 主題の干渉構築物または主題の干渉粒子は、非経口投与に適した製剤にすることができる。そのような製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、ならびに製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および保存剤を含み得る、水性および非水性の滅菌懸濁液を含み得る。製剤は、単位用量または複数用量で、アンプルおよびバイアルなどの密封容器にて提供することができ、使用直前に、注射用の滅菌液体担体、例えば水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。注射可能な溶液および懸濁液は、本明細書に記載されているように、滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。
【0167】
吸入による投与に適したエアロゾル製剤も作製することができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容され得る噴射剤に入れることができる。
【0168】
経口投与に適した製剤は、例えば水、生理食塩水またはフルーツジュースなどの希釈剤に溶解した有効量の表題の干渉構築物または表題の干渉粒子などの液体溶液、各々が所定量の活性剤(主題の干渉構築物または主題の干渉粒子)を固体または顆粒として含む、カプセル剤、サシェ剤または錠剤、水性液体中の溶液または懸濁液、および水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンであり得る。錠剤形態は、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、微結晶セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、および薬理学的に適合性のある担体のうちの1種または複数を含むことができる。
【0169】
同様に、経口投与に適した製剤は、香味、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカントに活性成分を含むことができるロゼンジ形態、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤に活性成分(主題の干渉構築物または主題の干渉粒子)を含むトローチ、ならびに適切な液体担体に活性剤を含むマウスウォッシュ、ならびに活性薬剤に加えて、当技術分野で入手可能な担体などを含有するクリーム、エマルジョン、ゲルなどを含み得る。
【0170】
直腸投与のための製剤は、例えば、ココアバターまたはサリチラートを含む適切な基剤と共に坐剤として提供され得る。膣投与に適した製剤は、活性成分に加えて、適切であることが当技術分野で公知な担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤として提供され得る。同様に、有効成分は、コンドーム上のコーティングとして潤滑剤と組み合わされ得る。
【0171】
本発明の文脈において、動物、特にヒトに投与される用量は、合理的な時間枠にわたり、感染した個体において治療応答をもたらすのに十分であるべきである。用量は、処置に用いられる特定の干渉構築物または干渉粒子の効力、疾患状態の重症度、ならびに感染した個体の体重および年齢によって決定されるだろう。用量のサイズはまた、用いられる特定の干渉構築物または干渉粒子の使用に付随する可能性がある有害な副作用の存在によって決定され得る。可能な限り、有害な副作用を最小限に抑えることが常に望ましい。
【0172】
投与量は、錠剤、カプセル、液体製剤の単位体積などの単位剤形であり得る。本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、ヒトおよび動物対象のための単位投与量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、単独で、または他の抗ウイルス剤と組み合わせて、薬学的に許容され得る希釈剤、担体、またはビヒクルと組み合わせて所望の効果を生じるのに十分な量で計算された所定量の干渉構築物または干渉粒子を含有する。本開示の単位剤形の仕様は、用いられる特定の構築物または粒子および達成される効果、ならびに宿主中の各構築物または粒子に関連する薬力学に依存する。投与される用量は、個々の患者において「抗ウイルス有効量」または「有効レベル」を達成するのに必要な量であり得る。
【0173】
一般に、1日あたり約50mg/kg体重~約300mg/kg体重の投与された構築物または粒子の組織濃度を達成するために十分な主題の干渉構築物または主題の干渉粒子の量、例えば、1日あたり約100mg/kg体重~約200mg/kg体重の量を投与することができる。ある特定の適用、例えば局所、眼または膣適用では、複数の1日用量を投与することができる。さらに、投与の数は、送達の手段および投与される特定の干渉構築物または干渉粒子に応じて変動し得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、主題の干渉構築物または干渉粒子(またはそれを含む組成物)は、1種またはそれを超えるさらなる治療剤との併用療法で投与される。適切なさらなる治療剤には、SARS-CoV-2ウイルスの1つまたはそれを超える機能を阻害する薬剤、SARS-CoV-2ウイルス感染の症候を処置または改善する薬剤、SARS-CoV-2ウイルス感染に続発して起こり得る感染を処置する薬剤などが含まれる。
【0175】
キット、容器、デバイス、送達システム
活性剤(SARS-CoV-2干渉粒子またはSARS-CoV-2欠失核酸)の単位用量を含むキットが本明細書に記載されている。単位用量は、経鼻、経口、経皮、または注射可能な(例えば、筋肉内、静脈内、または皮下注射用)投与のために製剤化することができる。そのようなキットでは、単位用量を収容する容器に加えて、SARS-CoV-2感染を処置する際の薬物の使用および付随する利益を記載する情報添付文書があり得る。適切な活性剤(主題の干渉構築物または主題の干渉粒子)および単位用量は、本明細書の上記で記載されているものである。
【0176】
多くの実施形態では、主題のキットは、主題の方法を実践するための説明書またはそれを得るための手段(例えば、説明書を提供するウェブページにユーザを導くウェブサイトURL)をさらに含み得、これらの説明書は、典型的には基材上に印刷され、基材は、添付文書、包装、製剤容器などのうちの1つまたは複数であり得る。
【0177】
いくつかの実施形態では、主題のキットは、患者のコンプライアンスを高める1つまたはそれを超える構成要素または特徴、例えば、患者が適切な時間または間隔で活性剤を摂取することを覚えておくのを助ける構成要素またはシステムを含む。そのような構成要素には、患者が適切な時間または間隔で活性剤を摂取することを覚えておくのを助けるためのカレンダーシステムが含まれるが、これに限定されない。
【0178】
本発明は、活性剤を含む送達システムを提供する。いくつかの実施形態では、送達システムは、活性剤を含む製剤の皮下、静脈内、または筋肉内注射を実現する送達システムである。他の実施形態では、送達システムは、膣または直腸送達システムである。
【0179】
いくつかの実施形態では、活性剤は、経口投与のために包装される。本発明は、活性剤の1日投与単位を含む包装単位を提供する。例えば、包装単位は、いくつかの実施形態では、従来のブリスターパック、または錠剤、丸剤などを含む任意の他の形態である。ブリスターパックは、適切な数の単位剤形を、厚紙、板紙、箔、またはプラスチックの裏打ち材を有する密封ブリスターパックに収容し、適切なカバーに封入する。各ブリスター容器は、例えば1日目から開始して、番号付けされてもよいし、他の方法でラベル付けされてもよい。
【0180】
いくつかの実施形態では、主題の送達システムは注射デバイスを含む。例示的で非限定的な薬物送達デバイスには、ペン型インジェクターなどの注射デバイス、およびニードル/シリンジデバイスが含まれる。いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の主題の活性剤を含む製剤が予め充填された注射送達デバイスを提供する。例えば、主題の送達デバイスは、単回用量の主題の活性剤が予め充填された注射デバイスを含む。主題の注射デバイスは、再使用可能または使い捨て可能であり得る。
【0181】
ペン型インジェクターが利用可能である。本方法での使用に適合させることができる例示的なデバイスは、Becton Dickinsonからの様々なペン型インジェクターのいずれか、例えば、BD(商標)Pen、BD(商標)Pen II、BD(商標)Auto-Injector;Innovject,Inc.からのペン型インジェクター;米国特許第5,728,074号、第6,096,010号、第6,146,361号、第6,248,095号、第6,277,099号、および第6,221,053号などに論じられている医薬品送達ペン型デバイスのいずれかである。医薬品送達ペンは、使い捨て可能であってもよく、または再利用可能で再充填可能であってもよい。
【0182】
いくつかの実施形態では、主題の送達システムは、鼻腔または肺に送達するためのデバイスを含む。例えば、本明細書に記載の組成物は、ネブライザー、吸入デバイスなどによる送達のために製剤化することができる。
【0183】
生体接着性微粒子は、本開示の文脈での使用に適したさらに別の薬物送達システムを構成する。このシステムは、好ましくは鼻腔から滲出しない、多相液体または半固体調製物である。物質は、鼻壁に付着し、ある期間にわたって薬物を放出することができる。これらのシステムの多くは、経鼻使用のために設計された(例えば、米国特許第4,756,907号)。システムは、活性剤を含むミクロスフェア、および薬物の取込みを増強するための界面活性剤を含み得る。微粒子は、10~100μmの直径を有し、デンプン、ゼラチン、アルブミン、コラーゲン、またはデキストランから調製することができる。
【0184】
別のシステムは、アプリケータと共に使用するように適合された主題の製剤を含む容器(例えば、チューブ)である。活性剤は、アプリケータを使用して膣または直腸に適用することができる液体、クリーム、ローション、フォーム、ペースト、軟膏、およびゲルに組み込まれる。クリーム、ローション、フォーム、ペースト、軟膏およびゲル形式の医薬品を調製するためのプロセスは、文献全体に見られ得る。適切なシステムの例は、グリセロール、セラミド、鉱油、ペトロラタム、パラベン、フレグランスおよび水を含有する標準的なフレグランス不含ローション製剤であり、例えば商標JERGENS(商標)(Andrew Jergens Co.、Cincinnati、Ohio)の下で販売されている製品である。本発明の組成物での使用に適した非毒性の薬学的に許容され得るシステムは、医薬製剤の当業者には明らかであり得、例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、A.R.Gennaro編、1995に記載されている。適切な担体の選択は、所望の特定の膣または直腸剤形の正確な性質、例えば活性成分がクリーム、ローション、フォーム、軟膏、ペースト、溶液、またはゲルに製剤化されるかどうか、ならびに活性成分の同一性に依存するだろう。他の適切な送達デバイスは、米国特許第6,476,079号に記載されているものである。
【0185】
処置対象
本開示の方法は、SARS-CoV-2感染を有すると疑われる個体、およびSARS-CoV-2感染を有する個体、例えばSARS-CoV-2感染を有すると診断された個体を処置するのに適している。本開示の方法はまた、SARS-CoV-2感染を有すると診断されておらず(例えば、SARS-CoV-2について試験され、SARS-CoV-2について陰性と試験された個体、および試験されていない個体)、かつ一般集団よりもSARS-CoV-2感染に罹患する大きなリスクがあると考えられる個体(例えば、「リスクのある」個体)での使用にも適している。
【0186】
本開示の方法は、SARS-CoV-2感染を有すると疑われる個体、SARS-CoV-2感染を有する個体(例えば、SARS-CoV-2感染を有すると診断された個体)、および一般集団よりもSARS-CoV-2感染に罹患する大きなリスクがあると考えられる個体を処置するのに適している。そのような個体には、健康でインタクトな免疫系を有するが、SARS-CoV-2に感染するリスクがある個体(「リスクのある」個体)が含まれるが、これらに限定されない。さらに、そのような個体には、SARS-CoV-2感染を有しているようには見えないが、低下した免疫応答、心疾患、低下した肺容量またはそれらの組合せを有し得る個体(「リスクのある」個体)が含まれるが、これらに限定されない。リスクのある個体には、一般集団よりもSARS-CoV-2感染に感染する可能性が高い個体が含まれるが、これに限定されない。SARS-CoV-2に感染するリスクがある個体には、医療従事者、救急医療従事者、法執行官、救急ドライバー、および公共サービスドライバーなどの必須なサービス従事者が含まれるが、これらに限定されない。SARS-CoV-2に感染するリスクがある個体には、高齢な個体(例えば、65歳を超える)、免疫無防備状態の個体、心疾患を有する個体、肥満の個体、および他のウイルスまたは細菌感染を有する個体が含まれるが、これらに限定されない。したがって、処置に適した個体には、SARS-CoV-2またはその任意のバリアントに感染しているか、または感染するリスクがある個体が含まれる。
【0187】
定義
「ウイルスの野生型株」は、本明細書に記載されているように、ヒトが作製した変異のいずれも含まない株であり、すなわち、野生型ウイルスは、自然から(例えば、ウイルスに感染したヒトから)単離され得る任意のウイルスである。野生型ウイルスは実験室で培養することができ、そしてなお、他のウイルスの非存在下で、自然から単離されたもののような子孫ゲノムまたはビリオンを産生することができる。
【0188】
本明細書で使用される場合、「処置」、「処置すること」などの用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患またはその症候を完全にまたは部分的に予防するという点で予防的であり得、および/または疾患および/または疾患に起因する有害作用の部分的または完全な治癒という点で治療的であり得る。「処置」とは、本明細書で使用される場合、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の処置をカバーし、(a)疾患の素因を有する可能性があるが、それを有するとまだ診断されていない対象において疾患が発生することを予防すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を停止させること、および(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすことを含む。
【0189】
本明細書で互換的に使用される「個体」、「対象」、「宿主」、および「患者」という用語は、ネズミ科(ラット、マウス)、非ヒト霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含む哺乳動物を指すが、これらに限定されない。
【0190】
「治療有効量」または「効果のある量」は、疾患を処置するために哺乳動物(例えば、ヒト)または他の対象に投与された場合、疾患のそのような処置の効果をもたらすのに十分な薬剤(例えば、本明細書に記載の構築物、粒子など)の量を指す。「治療有効量」は、化合物または細胞、疾患およびその重症度、ならびに処置される対象の年齢、体重などに応じて変動し得る。
【0191】
「共投与」および「と組み合わせて」という用語は、2種またはそれを超える治療剤を特定の時間制限なく、同時に、並行してまたは連続的にのいずれかでの投与を含む。一実施形態では、薬剤は、細胞中または対象の体内に同時に存在するか、またはそれらの生物学的または治療的効果を同時に発揮する。一実施形態では、治療剤は同じ組成物または単位剤形中にある。他の実施形態では、治療剤は別個の組成物または単位剤形中にある。ある特定の実施形態では、第1の薬剤は、第2の治療剤の投与の前に(例えば、分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、第2の治療剤の投与と併用して、または第2の治療剤の投与に続けて(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)投与することができる。
【0192】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、対象、例えば哺乳動物、例えばヒトへの投与に適した組成物を包含することを意味する。一般に、「医薬組成物」は無菌であり、対象内に望ましくない応答を誘発し得る汚染物質を含まない(例えば、医薬組成物中の化合物は、医薬品グレードである)。医薬組成物は、経口、口腔、直腸、非経口、腹腔内、皮内、気管内などを含むいくつかの異なる投与の経路を介して、それを必要とする対象または患者に投与するように設計することができる。
【0193】
範囲を含むすべての数値指定、例えば、温度、時間、濃度、ウイルス負荷、および分子量は、必要に応じて、0.1または1.0の増分で(+)または(-)に変動する近似値である。常に明示的に述べられているわけではないが、すべての数値指定の前に「約(about)」という用語が先行することを理解されたい。また、常に明示的に述べられているわけではないが、本明細書に記載の試薬は単なる例示であり、いくつかの場合、当技術分野で均等物が利用可能であり得ることも理解されたい。
【0194】
また、本明細書で使用される場合、「および/または」は、関連して列挙された項目の1つまたはそれを超えるありとあらゆる可能な組合せ、ならびに代替(「または」)で解釈される場合の組合せの欠如を指し、包含する。
【0195】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確にそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「干渉粒子(an interfering particle)」への言及は、複数のそのような粒子を含み、「シス作用性エレメント(the cis-acting element)」への言及は、当業者に公知な1つまたはそれを超えるシス作用性エレメントおよびその均等物への言及などを含む。特許請求の範囲は、任意の要素を除外するように起草され得ることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙または「否定的な」限定の使用に関連して、「単独で」、「のみ」などのような排他的な用語を使用するための先行基礎としての役割を果たすことを意図している。
【0196】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の、文脈が明確にそうでないことを指示しない限り、下限の単位の10分の1までの各介在値、およびその記載された範囲内の任意の他の記載値または介在値が、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してより小さい範囲に含まれてもよく、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界を条件として、本発明内にも包含される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方または両方を除外した範囲も本発明に含まれる。
【0197】
以下の例は、本発明の開発において行われた実験的作業のいくつかを示す。
【実施例】
【0198】
実施例1:SARS-CoV-2ランダム欠失ライブラリ(RDL)の生成
効率的な動員に必要なSARS-CoV-2の領域を系統的に同定するために、HIV NL4-3のランダム欠失ライブラリを作成しインデックス付けしたWeinbergerおよびNotton(2017)によって記載されたものと同様のランダム化欠失スクリーニングを利用した。
【0199】
簡潔には、プラスミドDNAをトランスポゾン媒介のランダム挿入に供し、続いてトランスポゾンの切除、露出した末端のエキソヌクレアーゼ媒介の消化により、ランダムな遺伝的位置を中心とする各々が可変サイズの欠失を作成した。次いで、プラスミドを、20ヌクレオチドのランダムDNAバーコードを含むカセットと一緒に再ライゲーションして、欠失を「インデックス付け」した。インデックス付けにより、欠失した領域を(ゲノム配列とバーコードとの連結によって)容易に同定し、ディープシーケンシングによって追跡/定量することが可能になる。このプロセスは、
図1~
図4に概略的に図示されている。
図5Aは、このプロセスをさらに図示する。
【0200】
ライブラリのメンバーの欠失部位を配列決定した。
図5Bに示される欠失深度プロットは、サブライブラリが587,000個を超える欠失を含んだことを示す。サブライブラリをライゲーションして全長ライブラリを形成し、SARS-CoV-2インサートをRNAにインビトロで転写し、RNAをVeroE6細胞にトランスフェクトした。次いで、トランスフェクトした細胞を野生型SARS-CoV-2ウイルスに感染させて、欠失変異体の動員を試験した。3回のウイルス継代の後、RNAを細胞から抽出し、欠失バーコードの存在を分析した。
【0201】
SARS-CoV-2 バイロリアクター
SARS-CoV-2欠失変異体に感染され得る、懸濁液中のシリコーンビーズ上で増殖するVeroE6細胞を使用して、SARS-CoV-2バイロリアクターを設定し、それによって感染および最終的にはSARS-CoV-2治療用干渉粒子(TIP)の進化を改善するための動的システムを創出した。SARS-CoV-2バイロリアクターに使用される条件は、HIV TIPを単離するために使用されるプロトコル(WeinbergerおよびNotton(2017)によって記載されている)から適合させた。
【0202】
図6Aに図示されるように、VeroE6細胞が定常状態の密度に達したとき、穏やかな撹拌下、0.5または5のMOIでSARS-CoV-2欠失変異体に感染させた。培養物の半分を毎日リアクターから取り出し、新鮮な細胞および培地で置き換えた。リアクターから取り出した試料を遠心分離し、後の分析のために上清を凍結し、ヨウ化プロピジウム染色プロトコルを使用したフローサイトメトリーによって細胞生存率を測定した(
図6B)。細胞生存率は、感染の2日後(dpi)では低かった(35~60%)(
図6C~
図6D)が、感染の4日後(dpi)すぐに回復し始め、12dpiまで安定したまま(60~805)であった。13日目に、培養物は90%超の細胞生存率まで回復した。
【0203】
実施例2:SARS-CoV-2治療用干渉粒子(TIP)
図7A~
図7Bに示される構造を有する最小TIP構築物、TIP1およびTIP2を設計し、クローニングした。TIP1およびTIP2構築物は、SARS-CoV-2の5’および3’UTRの様々な部分をコードし、IRESから駆動されるmCherryレポータータンパク質を発現する。プラスミド構築物を配列検証した。
【0204】
TIP1における5’SARS-CoV-2配列は以下に示す通りである(配列番号28)。
【化28】
【0205】
TIP1における3’SARS-CoV-2配列を配列番号29として以下に示す。
【化29-1】
【化29-2】
【0206】
TIP2における5’SARS-CoV-2配列は以下に示す通りである(配列番号30)。
【化30-1】
【化30-2】
【0207】
TIP2における3’SARS-CoV-2配列は以下に示す通りである(配列番号31)。
【化31】
【0208】
2つのさらなるTIPバリアントはクローニングされたTIP1*およびTIP2*であり、これらは5’UTR内に共通のC-241-T変異を含む。このC241T UTR変異は、スパイクタンパク質D614G変異と一緒に集団間で共伝播する。
【0209】
よって、TIP1
*における5’SARS-CoV-2配列は以下に示す通りである(配列番号32)。
【化32】
【0210】
同様に、TIP2
*におけるSARS-CoV-2配列は以下の通りである(配列番号33)。
【化33-1】
【化33-2】
【0211】
TIP構築物がSARS-CoV-2の複製を減少させることができるかどうかを試験するために、4つのTIP構築物からのmRNAを、各プラスミドにおいてTIPの上流に作動可能に連結されたT7プロモーターからのインビトロ転写によって生成した。インビトロで転写されたTIP mRNAの異なる調製物をVero E6細胞(TIP1、TIP1
*、TIP2、またはTIP2
*)にトランスフェクトし、細胞をMOI=0.005でSARS-CoV-2(WA株)に感染させた。感染後48時間で試料を回収し、収量減少アッセイを行った(
図8を参照)。SARS-CoV-2 E(エンベロープ)遺伝子がTIP配列に存在しないため、感染後48時間でSARS-CoV-2 mRNA(E遺伝子)の減少倍数によって収量減少アッセイを測定した。
【0212】
図8に示すように、TIP構築物はすべてSARS-CoV-2ウイルス複製を減少させた一方、TIP2構築物はSARS-CoV-2に対する最大の干渉を示した。
【0213】
実施例3:SARS-CoV-2 TIPはSARS-CoV-2によって動員され、SARS-CoV-2と一緒に伝播する
SARS-CoV-2によって動員され、SARS-CoV-2と一緒に伝播される候補TIPの能力を試験するために、上清移行実験を行った。
【0214】
SARS-CoV-2に感染したVero E6細胞を、
図7A~
図7Bに示される構造を有する様々なTIP候補でトランスフェクトした。したがって、mCherry発現の分析をTIP複製の尺度として使用することができる。感染の96時間後に、この第1の細胞集団から上清を収集し、上清を新鮮なVero細胞の第2の集団に移した。第1の対照として、上清をナイーブ非感染細胞からVero細胞に移し、第2の対照として、上清をTIPでトランスフェクトされていないSARS-CoV-2に感染した細胞から移した。フローサイトメトリーを実施して、上清移行の48時間後に第2の細胞集団のmCherry発現を分析した。
【0215】
図9に示すように、第1および第2の対照はmCherry発現を示さなかった(
図9A~
図9B)。しかしながら、TIP候補mRNAでトランスフェクトし、SARS-CoV-2に感染させた細胞からの上清はmCherry産生細胞を生成し、機能性ウイルス様粒子(VLP)がSARS-CoV-2ヘルパーウイルスによって生成されていることを示した(
図9C~
図9I)。概して、本発明者らは、mRNAトランスフェクション(
図9G~
図9H)がDNAトランスフェクション(
図9C~
図9F)よりも良好な動員をもたらすことを見出した。これは、mRNAトランスフェクションがまた、DNAトランスフェクションよりも良好なSARS-CoV-2干渉をもたらしたRT-qPCRによる収量減少アッセイの結果と一致していた(図示せず)。
【0216】
実施例4:SARS-CoV-2に対する抗ウイルス介入のための転写調節配列(TRS)
この実施例は、SARS-CoV-2感染に介入または干渉するためのアンチセンスRNAの使用を記載する。
【0217】
転写開始は、いくつかのタイプのコンセンサス転写調節配列(TRS):TRS1-L:5’-cuaaac-3’(配列番号36)、TRS2-L:5’-acgaac-3’(配列番号37)、およびTRS3-L、5’-cuaaacgaac-3’(配列番号38)によってコロナウイルスにおいて調節される。
【0218】
転写がこれらの転写開始部位から阻害され得るかどうかを評価するために、以下のアンチセンスTRS RNAを開発した:
TRS1-ACGAACCUAAACACGAACCUAAAC(配列番号25)、
TRS2-(ACGAACACGAACACGAACACGAAC(配列番号26)、および
TRS3-CUAAACCUAAACCUAAACCUAAAC(配列番号27)。
【0219】
Vero細胞をアンチセンスTRS RNAでトランスフェクトし、次いで、SARS-CoV-2(MOI 0.01または0.05)に感染させた。対照として、細胞をスクランブルRNA(TRS RNAの代わりに)でトランスフェクトし、次いで、SARS-CoV-2(MOI 0.01または0.05)に感染させた。SARS-CoV-2の力価を定量的PCRによって決定し、ウエスタンブロットを24、48および72時間で調製した。
【0220】
図11A~
図11Cに示すように、TRS2アンチセンスの使用は、SARS-CoV-2の力価を最大限に低下させた(
図11B)。
【0221】
次いで、Vero細胞をTRS2アンチセンスとTIP1またはTIP2のいずれかとの組合せと共にインキュベートし、次いで細胞をSARS-CoV-2に感染させた。次いで、SARS-CoV-2ゲノム数の倍数変化を決定した。
【0222】
図12に示すように、TRS2アンチセンスとTIP1またはTIP2のいずれかとの組合せは、TRS単独と比較して、SARS-CoV-2ゲノム数を有意に減少させた。
【0223】
実施例5:SARS-CoV-2 TIPは様々なSARS-CoV-2株の複製を減少させる
この実施例は、様々なSARS-CoV-2株に介入または干渉するための治療用干渉粒子(TIP1およびTIP2)の使用を記載する。
【0224】
Vero細胞を、治療用干渉粒子(0.3ng/μlまたは0.003ng/μlのTIP1またはTIP2)または対照RNAをカプセル化する脂質ナノ粒子で前処置した。処置の2時間後、細胞を以下のSARS-CoV-2株のうちの1つに感染させた(MOI 0.005):
・SARS-CoV-2の501Y.V2.HVバリアント、口語的に南アフリカバリアントとして公知;
・SARS-CoV-2の501Y.V2.HVデルタバリアント、口語的に南アフリカバリアントとして公知;および
・B.1.1.7バリアント、口語的にU.K.バリアントとして公知。
【0225】
感染後48時間に、上清を感染した培養物から回収し、SARS-CoV-2ウイルス力価を定量した。
【0226】
図13A~
図13Cは、TIP1およびTIP2が用量依存的にSARS-CoV-2の複製を有意に減少させることを示す。
【0227】
以下の記述は、本明細書に記載の本発明の核酸および方法のいくつかの態様の概要を提供する。
【0228】
記述:
1.少なくとも100ヌクレオチドのSARS-CoV-2 5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも100ヌクレオチドの3’非翻訳領域(3’UTR)、またはそれらの組合せを含むシス作用性エレメントを含む、組換えSARS-CoV-2構築物。
【0229】
2.SARS-CoV-2の複製に干渉する、記述1に記載の構築物。
【0230】
3.複製できない、記述1または2に記載の構築物。
【0231】
4.感染性SARS-CoV-2の存在下で複製する、記述1~3のいずれか1つに記載の構築物。
【0232】
5.ウイルスの複製および産生をそれ自体ではできず、ヘルパーウイルスとして作用するための複製能を有するSARS-CoV-2を必要とする、記述1~4のいずれか1つに記載の構築物。
【0233】
6.感染性SARS-CoV-2の存在下、細胞間で伝播され得る、記述1~5のいずれか1つに記載の構築物。
【0234】
7.SARS-CoV-2のためのパッケージングシグナルを含む、記述1~6のいずれか1つに記載の構築物。
【0235】
8.配列番号1~22のいずれかの部分をコードするSARS-CoV-2ゲノムの部分の欠失を含む、記述1~7のいずれか1つに記載の構築物。
【0236】
9.ゲノムから欠失された部分が、少なくとも10~少なくとも27,000ヌクレオチドを含む、記述8に記載の構築物。
【0237】
10.ゲノムから欠失された部分が、SARS-CoV-2ゲノムの少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも2500、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも6000、少なくとも7000、少なくとも8000、少なくとも9000、少なくとも10,000、少なくとも11,000、少なくとも12,000、少なくとも13,000、少なくとも14,000、少なくとも15,000、少なくとも16,000、少なくとも17,000、少なくとも18,000、少なくとも19,000、少なくとも20,000、少なくとも21,000、少なくとも22,000、少なくとも23,000、少なくとも24,000、少なくとも25,000、少なくとも26,000、少なくとも27,000、少なくとも27500、少なくとも28000ヌクレオチドを含む、記述8または9に記載の構築物。
【0238】
11.記述1~10のいずれか1つに記載の構築物であって、SARS-CoV-2構築物が野生型SARS-CoV-2の細胞侵入を阻止するか、ウイルス粒子アセンブリを媒介する構造タンパク質に対して競合するか、インビボでSARS-CoV-2構築物の再生低下を示すか、ウイルス粒子のアセンブリを阻害するタンパク質を産生するか、またはそれらの組合せである、構築物。
12.野生型または天然型SARS-CoV-2ゲノムヌクレオチド配列と比較して、1つまたはそれを超えるヌクレオチド配列の変更を有するSARS-CoV-2ゲノム核酸、記述11に記載の構築物。
13.SARS-CoV-2構築物ゲノム核酸の、スパイクタンパク質膜融合S2サブユニット、RNA依存性RNAポリメラーゼ、Mタンパク質(膜糖タンパク質)、ssRNA結合タンパク質、またはそれらの組合せにおいて1つまたはそれを超えるヌクレオチド配列の変更を含む、記述11または12に記載の構築物。
【0239】
14.記述1~13のいずれかに記載の構築物であって、野生型SARS-CoV-2に感染した宿主細胞中に存在する場合、構築物SARS-CoV-2のゲノムRNAの、野生型SARS-CoV-2のゲノムRNAに対する比が細胞において1を超えるように、SARS-CoV-2構築物のゲノムRNAが野生型SARS-CoV-2のゲノムRNAよりも高い速度で産生される、構築物。
【0240】
15.野生型SARS-CoV-2よりも高い伝播頻度を有する、記述1~14のいずれかに記載の構築物。
【0241】
16.基本再生産比(R0)>1を有する、記述1~15のいずれかに記載の構築物。
【0242】
17.野生型SARS-CoV-2に感染した宿主細胞中に存在する場合、野生型SARS-CoV-2と同じまたはより高い効率でパッケージングされる、記述1~16のいずれかに記載の構築物。
【0243】
18.1~265、266~805、806~2719、2720~8554、8555~10054、10055~10972、10973~11842、11843~12091、12092~12685、12686~13024、13025~13441、13442~13468、13468~16236、16237~18039、18040~19620、19621~20658、20659~21552、21563~25384、266~13483位、またはそれらの組合せ内に少なくとも1~20ヌクレオチドの欠失を含む(ここで、位置番号は配列番号1の参照SARS-CoV-2配列に対するものである)、記述1~17のいずれかに記載の構築物。
【0244】
19.スパイク糖タンパク質のコード領域の21563~25384位内、RNA依存性RNAポリメラーゼのコード領域の13442~16236の番号が付けられた位置内、Mタンパク質(膜糖タンパク質)のコード領域の26523~27191位、ssRNA結合タンパク質のコード領域の12686~13024位、またはそれらの組合せ内に少なくとも1~20ヌクレオチドの欠失を含む(ここで、位置番号は配列番号1の参照SARS-CoV-2配列に対するものである)、記述1~18のいずれかに記載の構築物。
【0245】
20.少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9.10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160 170、180、190、200、225、250、300、350、400、450または500ヌクレオチドの欠失を含む、記述1~19のいずれかに記載の構築物。
【0246】
21.配列番号28、30、32または33のいずれかを有する5’SARS-CoV-2短縮型配列を含む、記述1~20のいずれかに記載の構築物。
【0247】
22.3’SARS-CoV-2短縮型配列、例えば、配列番号31または32を有するもののいずれかを含む、記述1~21のいずれかに記載の構築物。
【0248】
23.伸長されたポリA配列を含む、記述1~22のいずれかに記載の構築物。
【0249】
24.伸長されたポリA配列がmRNAの半減期を延長する、記述23に記載の構築物。
【0250】
25.伸長されたポリA配列が、少なくとも100アデニンヌクレオチド、少なくとも120アデニンヌクレオチド、少なくとも140アデニンヌクレオチド、少なくとも150アデニンヌクレオチド、少なくとも170アデニンヌクレオチド、少なくとも180アデニンヌクレオチド、少なくとも200アデニンヌクレオチド、少なくとも225アデニンヌクレオチド、または少なくとも250アデニンヌクレオチドを含む、記述23または24のいずれかに記載の構築物。
【0251】
26.検出可能なマーカーをコードするセグメントを含む、記述1~25のいずれかに記載の構築物。
【0252】
27.記述1~26のいずれか1つに記載の構築物およびウイルスエンベロープタンパク質を含む粒子。
【0253】
28.記述1~26のいずれかに記載の構築物または記述27に記載の粒子、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【0254】
29.TRS1-L:5’-cuaaac-3’(配列番号36)、TRS2-L:5’-acgaac-3’(配列番号37)、TRS3-L、5’-cuaaacgaac-3’(配列番号38)、またはそれらの組合せのうちの複数のうちの1つに結合し得るSARS-CoV-2転写調節配列(TRS)の阻害剤。
【0255】
30.以下を含むか、または以下から本質的になる配列:
TRS1-ACGAACCUAAACACGAACCUAAAC(配列番号25)、
TRS2-ACGAACACGAACACGAACACGAAC(配列番号26)、
TRS3-CUAAACCUAAACCUAAACCUAAAC(配列番号27)、または
それらの組合せ
を含む、記述29に記載の阻害剤。
【0256】
31.記述29または30に記載の阻害剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【0257】
32.薬学的に許容され得る賦形剤、および記述29もしくは30に記載の阻害剤、記述1~26のいずれかに記載の構築物、記述27に記載の粒子、またはそれらの組合せを含む、医薬組成物。
【0258】
33.記述28、31、または32に記載の組成物を対象に投与することを含む方法。
【0259】
34.対象が、SARS-CoV-2に感染した実験動物である、記述33に記載の方法。
【0260】
35.対象がヒトである、記述33に記載の方法。
【0261】
36.対象が、SARS-CoV-2に感染している疑いがあるヒトであり、対象が、SARS-CoV-2について陽性と試験されたヒトである、記述33または35に記載の方法。
【0262】
37.対象が、医学的症状、既存の症状、または心臓、肺、脳もしくは免疫系の機能を低下させる症状を有する、記述33~36のいずれか1つに記載の方法。
【0263】
38.記述1~26のいずれかに記載の構築物または記述27の粒子を含む単離された細胞。
【0264】
39.(a)配列特異的DNAエンドヌクレアーゼのための標的配列を含むトランスポゾンカセットを環状SARS-CoV-2 DNAの集団に挿入して、トランスポゾン挿入された環状SARS-CoV-2 DNAの集団を生成すること、
(b)トランスポゾン挿入された環状SARS-CoV-2 DNAの集団を配列特異的DNAエンドヌクレアーゼと接触させて、切断された線状SARS-CoV-2 DNAの集団を生成すること、
(c)切断された線状SARS-CoV-2 DNAの集団を1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼと接触させて、欠失DNAの集団を生成すること、および
(d)欠失DNAを環状化して、環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリを生成すること
を含む、欠失ライブラリを生成する方法。
【0265】
40.環状SARS-CoV-2 DNAが、SARS-CoV-2ゲノムを含むプラスミドである、記述39に記載の方法。
【0266】
41.環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリのメンバーを哺乳動物細胞に導入すること、およびSARS-CoV-2ウイルス感染性についてアッセイすることをさらに含む、記述39または40に記載の方法。
【0267】
42.SARS-CoV-2欠陥干渉粒子(DIP)を同定するために、環状化欠失DNAのライブラリのメンバーを配列決定することをさらに含む、記述39~41のいずれか1つに記載の方法。
【0268】
43.配列特異的DNAエンドヌクレアーゼが、メガヌクレアーゼ、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはTALENから選択される、記述39~42のいずれか1つに記載の方法。
【0269】
44.ステップ(d)の前にまたはステップ(d)と同時にバーコード配列を挿入することを含む、記述39~43のいずれか1つに記載の方法。
【0270】
45.1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼがT4 DNAポリメラーゼを含む、記述39~44のいずれか1つに記載の方法。
【0271】
46.1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼが、3’から5’へのエキソヌクレアーゼおよび5’から3’へのエキソヌクレアーゼを含む、記述39~45のいずれか1つに記載の方法。
【0272】
47.切断された線状SARS-CoV-2 DNAの集団を1種またはそれを超えるエキソヌクレアーゼと接触させるステップが、一本鎖結合タンパク質(SSB)の存在下で行われる、記述39~46のいずれか1つに記載の方法。
【0273】
48.トランスポゾンカセットが、トランスポゾンカセットの一端またはその付近に配置された第1の認識配列、およびトランスポゾンカセットの他端またはその付近に配置された第2の認識配列を含む、記述39~47のいずれか1つに記載の方法。
【0274】
49.ステップ(a)の前に、SARS-CoV-2線状DNA分子の集団を環状化して前記環状SARS-CoV-2 DNAの集団を生成することをさらに含む、記述39~48のいずれか1つに記載の方法。
【0275】
50.線状SARS-CoV-2 DNA分子の集団が、1種もしくはそれを超えるPCR産物、1種もしくはそれを超える線状ウイルスゲノム、および/または1種もしくはそれを超える制限消化産物を含む、記述49に記載の方法。
【0276】
51.環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリのメンバーを哺乳動物細胞に導入することをさらに含む、記述39~50のいずれか1つに記載の方法。
【0277】
52.環状化SARS-CoV-2欠失DNAのライブラリから、線状二本鎖DNA(dsDNA)産物、線状一本鎖DNA(ssDNA)産物、線状一本鎖RNA(ssRNA)産物、および線状二本鎖RNA(dsRNA)産物のうちの少なくとも1つを生成することをさらに含む、記述39~51のいずれか1つに記載の方法。
【0278】
53.前記線状dsDNA産物、線状ssDNA産物、線状ssRNA産物、および/または線状dsRNA産物を哺乳動物細胞に導入することをさらに含む、記述52に記載の方法。
【0279】
54.(a)配列特異的DNAエンドヌクレアーゼのための標的配列を、各々のSARS-CoV-2ウイルスDNAがSARS-CoV-2ウイルスゲノムを含む環状SARS-CoV-2ウイルスDNAの集団に挿入して、配列挿入されたウイルスDNAの集団を生成すること、
(b)配列挿入されたウイルスDNAの集団を配列特異的DNAエンドヌクレアーゼと接触させて、切断された線状ウイルスDNAの集団を生成すること、
(c)切断された線状ウイルスDNAの集団をエキソヌクレアーゼと接触させて、欠失DNAの集団を生成すること、
(d)欠失DNAを環状化して、環状化欠失ウイルスDNAのライブラリを生成すること、および
(e)環状化欠失ウイルスDNAのライブラリのメンバーを配列決定して、欠失干渉粒子(DIP)を同定すること
を含む、欠陥干渉粒子(DIP)を生成および同定する方法。
【0280】
55.ステップ(a)の前に、線状DNA分子の集団を環状化して前記環状SARS-CoV-2ウイルスDNAの集団を生成することを含む、記述54に記載の方法。
【0281】
56.線状DNA分子の集団が、1種もしくはそれを超えるPCR産物、1種もしくはそれを超える線状ウイルスゲノム、および/または1種もしくはそれを超える制限消化産物を含む、記述54または55に記載の方法。
【0282】
57.ステップ(d)の前にまたはステップ(d)と同時にバーコード配列を挿入することを含む、記述54~56のいずれか1つに記載の方法。
【0283】
58.(i)環状化SARS-CoV-2欠失ウイルスDNAのライブラリのメンバーを哺乳動物細胞に導入すること、および(ii)ウイルス感染性についてアッセイすることをさらに含む、記述54~57のいずれか1つに記載の方法。
【0284】
59.環状化SARS-CoV-2欠失ウイルスDNAのライブラリから、線状二本鎖DNA(dsDNA)産物、線状一本鎖DNA(ssDNA)産物、線状一本鎖RNA(ssRNA)産物、および線状二本鎖RNA(dsRNA)産物のうちの少なくとも1つを生成すること
をさらに含む、記述54~58のいずれか1つに記載の方法。
【0285】
60.前記線状dsDNA産物、線状ssDNA産物、線状ssRNA産物、および/または線状dsRNA産物を哺乳動物細胞に導入すること、ならびに
ウイルス感染性についてアッセイすること
をさらに含む、記述59に記載の方法。
【0286】
61.ステップ(a)の挿入することが、トランスポゾンカセットを環状SARS-CoV-2ウイルスDNAの集団に挿入することを含み、トランスポゾンカセットが配列特異的DNAエンドヌクレアーゼのための標的配列を含み、前記配列挿入されたウイルスDNAの生成された集団がトランスポゾン挿入されたウイルスDNAの集団である、記述39~60のいずれかに記載の方法。
【0287】
62.ステップ(d)の後に、培養中の哺乳動物細胞を環状化欠失ウイルスDNAのライブラリのメンバーに高感染多重度(MOI)で感染させること、感染した細胞を12時間~2日間の範囲の期間培養すること、ナイーブ細胞を培養物に添加すること、および培養中の細胞からウイルスを回収することを含む、記述39~61のいずれか1つに記載の方法。
【0288】
63.ステップ(d)の後に、培養中の哺乳動物細胞を環状化欠失ウイルスDNAのライブラリのメンバーに低感染多重度(MOI)で感染させること、感染した細胞をウイルス複製の阻害剤の存在下で1日~6日間の範囲の期間培養すること、培養した細胞を機能性ウイルスに高MOIで感染させること、感染した細胞を12時間~4日間の範囲の期間培養すること、培養した細胞からウイルスを回収することを含む、記述39~62のいずれか1つに記載の方法。
【0289】
64.SARS-CoV-2ウイルスに感染している疑いがある個体を処置する方法であって、治療有効量の記述1~26のいずれかに記載の構築物、記述27に記載の粒子、または記述28に記載の医薬組成物を個体に投与することを含む、方法。
【0290】
65.治療有効量の記述31または32に記載の組成物を個体に投与することをさらに含む、記述64に記載の方法。
【0291】
66.個体におけるSARS-CoV-2ウイルス負荷を減少させる、記述64または65に記載の方法。
【0292】
67.個体が、SARS-CoV-2感染と診断されているか、または一般集団よりもSARS-CoV-2に感染する高いリスクがあると考えられる、記述64~66のいずれか1つに記載の方法。
【0293】
68.個体に対する、記述1~26のいずれかに記載の構築物、記述27に記載の粒子、記述28に記載の医薬組成物、または記述31もしくは32の組成物を含む容器を含む、SARS-CoV-2ウイルスによる感染を処置するためのキット。
【0294】
69.容器が、肺または鼻腔への投与のためのシリンジまたはデバイスである、記述68に記載のキット。
【0295】
70.記述1~26のうちの1つに記載の構築物を含む単離された生体液。
【0296】
71.生体液が血液または血漿である、記述65に記載の単離された生体液。
【0297】
72.SARS-CoV-2ウイルスに感染した細胞を、記述1~26のいずれかに記載の構築物でトランスフェクトすること、および構築物を粒子にパッケージングするのに適した条件下で細胞をインキュベートすることを含む、粒子を生成する方法。
【0298】
本発明を上記の実施形態と併せて説明してきたが、前述の説明および例は例示を意図しており、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点および修正は、本発明が関係する当業者には明らかであろう。
【0299】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料もまた、本発明の実践または試験で使用することができるが、ここでは好ましい方法および材料を説明する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、刊行物が引用される関連する方法および/または材料を開示および説明するために参照により本明細書に組み込まれる。
【0300】
本発明は、記載された特定の実施形態に限定されず、したがって当然のことながら変動し得ることを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。いかなる状況下においても、本特許は、いかなる審査官または特許商標庁の他の職員もしくは従業員によってなされた陳述によっても限定されると解釈されてはならない。ただし、そのような記述が具体的、かつ、出願人による応答の書面において明示的に採用された制限または留保がない場合を除く。
【0301】
さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群の観点から記載されている場合、当業者は、本発明がそれによってマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはサブグループメンバーに関しても記載されることを認識するであろう。
【配列表】
【国際調査報告】