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特表2023-53045520未満のDEを有するがDE30~45のコーンシロップのような特性を有するマルトデキストリンシロップ
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  • 特表-20未満のDEを有するがDE30~45のコーンシロップのような特性を有するマルトデキストリンシロップ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】20未満のDEを有するがDE30~45のコーンシロップのような特性を有するマルトデキストリンシロップ
(51)【国際特許分類】
   C08B 30/12 20060101AFI20230710BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20230710BHJP
【FI】
C08B30/12
A23L29/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577575
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 US2021037961
(87)【国際公開番号】W WO2021257921
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】63/041,086
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507303309
【氏名又は名称】アーチャー-ダニエルズ-ミッドランド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】デステクスヒ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】キャピテン,ヴォルカー
(72)【発明者】
【氏名】アケログル,セナ
【テーマコード(参考)】
4B041
4C090
【Fターム(参考)】
4B041LC10
4B041LD08
4B041LH02
4B041LH04
4B041LK11
4B041LK45
4B041LP01
4B041LP25
4C090AA01
4C090AA10
4C090BA13
4C090BB27
4C090BB29
4C090BB52
4C090BC10
4C090BD08
4C090CA19
4C090CA43
4C090DA27
(57)【要約】
35~45の間のDEを有するコーンシロップの機能的特性を有するが、20未満のDE値を有する新しいタイプのマルトデキストリンシロップが記載される。最も一般的な実施形態において、シロップは、10未満のDPを有する、70%以下の糖類の総量を含有すると同時に、糖類の少なくとも50%は、10未満のDPを有する。残りの糖類は、10以上のDPを有する。10未満のDPを有する糖類についての構成は、5~9のDPを有する糖類が1~4のDPを有する糖類よりも多く、より高いほうに重みをかける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンに由来する糖類シロップであって、前記シロップは20未満のDE値を有し、30~50%の糖類が10以上の重合度を有し、50~70%が10未満の重合度を有する糖類構成を有する、糖類シロップ。
【請求項2】
前記糖類構成が、
5%~12%の単糖及び二糖の総量;
3の重合度を有する8%~15%の糖類;
4~9の重合度を有する38~48%の糖類;並びに
10以上の重合度を有する30~48%の糖類
を有する、請求項1に記載の糖類シロップ。
【請求項3】
前記糖類構成が、5%~12%の単糖及び二糖の総量;
3又は4の重合度を有する14%~25%の糖類;並びに
10以上の重合度を有する30~48%の糖類
を有する、請求項1に記載の糖類シロップ。
【請求項4】
前記糖類構成が、8%~15%の単糖及び二糖の総量;
3~6の重合度を有する27%~55%の糖類;並びに
7~9のDPを有する15%~25%
を有する、請求項1に記載の糖類シロップ。
【請求項5】
任意の条件下で測定される粘度が、同じ条件下で測定されるDE40コーンシロップの粘度の10%以内にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の糖類シロップ。
【請求項6】
5~9のDPを有する糖類が、前記シロップ中の前記糖類の30~40%であり、1~4のDPを有する糖類が、前記シロップ中の糖類の25%未満である、請求項1に記載の糖類シロップ。
【請求項7】
前記シロップが、15%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは8%以下、最も好ましくは5%以下の単糖及び二糖の総量を有する、請求項1に記載の糖類シロップ。
【請求項8】
5~7のDPを有する糖類が、3又は4のDPを有する糖類よりも多い、請求項1に記載の糖類シロップ。
【請求項9】
前記糖類の25%~35%が、5~7のDPを有し、前記糖類の12%~24%が、3又は4のDPを有する、請求項1に記載の糖類シロップ。
【請求項10】
8又は9のDPを有する前記糖類が、前記シロップ中の前記糖類の総量の7%以下である、請求項1に記載の糖類シロップ。
【請求項11】
25%~35%の前記糖類が、5~7のDPを有し、12%~24%の前記糖類が、3又は4のDPを有する、請求項1に記載の糖類シロップ。
【請求項12】
26~30%の前記糖類が、6又は7のDPを有する、請求項1に記載の糖類シロップ。
【請求項13】
前記シロップが、少なくとも70%wt/wtの溶解固形物含量を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の糖類シロップ。
【請求項14】
前記シロップが、溶解固形物含量及び温度について同じ条件下でDE40コーンシロップについて測定された粘度値のプラスマイナス50%の粘度であるセンチポアズの粘度値を有する、請求項13に記載の糖類シロップ。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のシロップを乾燥状態まで蒸発させることによって得られる乾燥糖類製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、低分子量の糖類を含有するデンプンに由来するデキストリンシロップの分野、より詳細には、低いデキストロース当量(DE)値を有するが、より高いDE値を有するコーンシロップの機能的特性を有するマルトデキストリンシロップの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
世界の政府食品規制当局は、デンプンに由来する炭水化物を含有する食品成分を何らかのカテゴリーに特定し分類するのに必要とされる、特定の規格を定めた。可溶性の単糖及び二糖並びに3残基以上のオリゴ糖を含有するデンプンに由来する液体炭水化物食品原材料は、一般にシロップ、又はより詳しくはグルコースシロップと呼ばれている。欧州のほとんどの規制機関において、20を超える測定デキストロース当量値(DE)を有するトウモロコシ又はコムギからのデンプンに由来するシロップは、グルコースシロップ、又は詳細にはコーンシロップ若しくはコムギシロップと称される。シロップが20未満のDEを有しデンプン加水分解に由来するより高分子量のデキストリンを含有する場合、それは、マルトデキストリンシロップと呼ばれる。違いはあるが同様に、米国では、食品医薬品局はコーンシロップをデンプン加水分解に由来するグルコース含有シロップとして定めており、存在する「糖」の量を報告する時にはシロップ中の単糖及び二糖の量のみを考慮するよう食品製造業者に要求する規定を有している。
【0003】
健康に対する意識が高い消費者らは、消費する食品についての成分分類表示を細かく見て、典型的には、高い「糖」含量を含有する又は「コーンシロップ」若しくは「コムギシロップ」を含有すると分類される食品を避けようとする場合がある。それに応じて、シロップ製造業者らは、健康に対する意識が高い消費者らの要求を満たすであろうシロップを生産しようと努める。DE値30~45を有するコーンシロップのような従来のシロップが、コーンシロップから作られる食品材料の機能的な品質に影響を及ぼす粘度、乾物含量、ガラス転移、吸湿性、及び安定性などのような機能的特性を有するので、これは、食品材料中にシロップを含む食品製造業者らにいくつかの問題をもたらす。低DE値、すなわち20未満のDE値を有するデンプン由来のシロップは、より粘性で、溶解固形物に関してより低い乾物含量を有し、より高いガラス転移温度を有し、濁るようになることによって、又は30~45のDE値を有する典型的なコーンシロップ中に含有されるよりも低い乾物含量のために微生物によって分解されることによって安定性を失う傾向がある。粘度に関して、74~83%の溶解固形物含量を有する30~45のDEを有するシロップは、50℃で測定された場合、約3000~10,000センチポアズ(cP)の粘度を有する。
【0004】
シロップ製造業者らは、従来のグルコースシロップよりも低い単糖及び二糖含量を有し、米国の規定の下で計算されなければならない「糖」の量を低下させ、且つ従来の40DEコーンシロップのように、粘度、乾物含量、ガラス転移、吸湿性、又は劣化安定性といった、すべてではないがいくつかの機能的特性を呈する、シロップを生産することに成功した。例えば、商品名MALTOSWEET又はMULTIVANTAGEの下でTate & Lyleによって、商品名MALDEXEL及びMYLOSE 351の下でTereos Starch & Sweetenersによって、並びに商品名VERSASWEETの下でIngredionによって販売されているシロップは、これらの特性のいくつかを有する。シロップタイプのこれらの製品は、微生物感染に対して安定性が低い(低い乾物含量のために)か、又は劣化の傾向が高い(難溶性沈殿物を形成する10を超える重合度を有する高レベルのデキストリンのために)かのいずれかであり、且つ、すべて、20を超えるDE値を有する。劣化又は微生物汚染産物による問題を有するそれらの製品は、ほとんどの場合、シロップとして売られておらず、代わりに噴霧乾燥され、溶解しなければならない固形物として売られている。
【0005】
いくつかの「低糖」シロップ(糖含量は米国の規制法の下で定められている)は、さまざまな特許文献において記載されている。米国特許第8,361,235号及びその兄弟(sibling)は、乾燥重量を基準として、約25%未満の単糖及び二糖の総量;乾燥重量を基準として、12%~55%の、3の重合度(DP)を有するオリゴ糖;乾燥重量を基準として、50%~約80%の、約3~約4のDPを有するオリゴ糖;乾燥重量を基準として、約4.5%未満の、5のDPを有するオリゴ糖;並びに少なくとも4.2のDP2/DP5の比を有する、アルファアミラーゼ及びプルナーゼ(pullunase)の組み合わせを使用して作られるシロップを記載する。これらのシロップは、主に、DP3及びDP4糖類の比較的高い含量並びにDP11よりも大きなマルトデキストリン及びデキストリンの比較的低い含量(10%未満)を有することによって特徴づけられる。同様に、特開平3-251173号公報及び特開昭61-205495号公報は、DP3及びDP4含量に関して米国特許第8,361,235号において記載されているシロップと同様のオリゴ糖構成並びにDP10又は11よりも高い分子量のデキストリンを低レベルで有する、マルトトリオーストランスフェラーゼ(maltotriose transferase)を使用して作られるシロップを記載する。これらのシロップは、従来のDE30~45コーンシロップと同様の粘度及び溶解固形物含量を有するが、これらのシロップはすべて、DE20よりもDE40にずっと近い高DE値を有し、従って、欧州の規制法の下ではコーンシロップとして分類される必要があるであろう。
【0006】
当技術分野において、DE30~45コーンシロップと同様の機能的特徴を有するが、DE値が20を超える原因になる多量の低分子量オリゴ糖を欠くマルトデキストリンシロップを開発する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、20未満のデキストロース当量値(DE)を有するが、30~45のDEを有する従来の酵素変換グルコシロップ(enzyme converted gluco syrup)において典型的に見出される粘度、乾物含量、ガラス転移、吸湿性、及びミクロ安定性(microstability)といった同様の特性を有するマルトデキストリンシロップを生産するための問題を解決する。
【0008】
この解決策は、シロップ中糖類の総量の70%以下が10未満のDPを有すると同時に、糖類の少なくとも50%が10未満のDPを有することを確実にするように、10未満の重合度(DP)を有する糖類の総量の構成を制限することである。残りの糖類は10以上のDPを有する、すなわち、10以上のDPを有する糖類は、シロップ中の糖類の30%~50%である。10未満のDPを有する糖類については、5~9のDPを有する糖類が1~4のDPを有する糖類よりも多くなるように、構成のバランスをとることが好ましい。典型的な実施形態において、5~9のDPを有する糖類は、シロップ中の糖類の30~40%であるが、1~4のDPを有する糖類は、シロップ中の糖類の25%未満である。好ましい実施形態において、シロップは、15%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは8%以下、最も好ましくは5%以下の単糖及び二糖の総量を有する。シロップが、3又は4のDPを有する糖類よりも、多くの、5~7のDPを有する糖類を有するように、10未満のDPを有する糖類の構成のバランスをとることもまた好ましい。好ましい実施形態において、5~7のDPを有する糖類、及び3又は4のDPを有する糖類の含量は、より高い。ほとんどの実施形態において、25%~35%の糖類は、5~7のDPを有するが、12%~24%の糖類は、3又は4のDPを有する。より特定の実施形態において、26~30%の糖類は、6又は7のDPを有する。典型的に、8又は9のDPを有する糖類は、シロップ中の糖類の総量の7%以下を占める。
【0009】
他に特徴づけるとすれば、デンプンに由来するマルトデキストリンシロップが、本明細書において記載され、シロップは、20未満のDE値を有し、30~50%の糖類が10以上の重合度を有し、50~70%が10未満の重合度を有する糖類構成を有する。
【0010】
1つの特徴づけにおいて、シロップの糖類構成は、5%~12%の単糖及び二糖の総量;3の重合度を有する8%~15%の糖類;4~9の重合度を有する38~48%の糖類;及び10以上の重合度を有する30~48%の糖類を有する。
【0011】
別の特徴づけにおいて、シロップの糖類構成は、5%~12%の単糖及び二糖の総量;3又は4の重合度を有する14%~25%の糖類;及び10以上の重合度を有する30~48%の糖類を有する。
【0012】
他の特徴づけにおいて、シロップの糖類構成は、8%~15%の単糖及び二糖の総量;3~6の重合度を有する27%~55%の糖類;及び7~9のDPを有する15%~25%を有する。
【0013】
他の特徴づけにおいて、5~9のDPを有する糖類は、シロップ中の糖類の30~40%であり、1~4のDPを有する糖類は、シロップ中の糖類の25%未満である。
【0014】
他の特徴づけにおいて、シロップは、15%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは8%以下、最も好ましくは5%以下の単糖及び二糖の総量を有する。
【0015】
他の特徴づけにおいて、5~7のDPを有するシロップ中の糖類は、3又は4のDPを有する糖類よりも多い。
【0016】
他の特徴づけにおいて、シロップ中の糖類の25%~35%は、5~7のDPを有し、糖類の12%~24%は、3又は4のDPを有する。
【0017】
他の特徴づけにおいて、8又は9のDPを有するシロップ中の糖類は、シロップ中の糖類の総量の7%以下である。
【0018】
他の特徴づけにおいて、シロップ中の糖類の25%~35%は、5~7のDPを有するが、糖類の12%~24%は、3又は4のDPを有する。
【0019】
他の特徴づけにおいて、シロップ中の糖類の26~30%は、6又は7のDPを有する。
【0020】
好ましい実施形態において、以上のシロップのいずれも、少なくとも70%wt/wtの溶解固形物含量(dissolved solids content)を有する。
【0021】
ほとんどの実施形態において、シロップは、任意の条件下で測定される粘度を有し、粘度は、同じ条件下で測定されるDE40コーンシロップの粘度のプラスマイナス50%である。
【0022】
以上のシロップを蒸発させる又は噴霧乾燥させることによって得られる乾燥糖類製品もまた、提供される。
【0023】
食品材料、とりわけ糖菓子(confectionary)及びクリーム食品材料を形成するために、本発明のシロップのいずれかを他の食品成分とブレンドすることによって作られる食料品もまた、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、コーンデンプンからの本発明のシロップの一例の生産についての経時的な糖類プロファイルの変化を示す表を示す図である。時間は、24時間の時刻を表す。
図2図2は、コムギデンプンからの本発明のシロップの一例の生産についての経時的な糖類プロファイルの変化を示す表を示す図である。時間は、経過時間を表す。
図3図3は、最初の液化酵素が他の酵素による処理の前に不活性化されない条件を含め、酵素及び条件の異なる組み合わせを使用して得られる糖類プロファイルを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本開示は、20未満のDE値を有するので、さまざまな欧州食品規制当局によってマルトデキストリンシロップとして認可を受け、且つ低い単糖及び二糖の含量のため、米国規制分類要件下で低糖シロップとして認可を受けるが、40のDEを有する従来の酵素変換グルコースシロップにおいて典型的に見出される粘度、乾物含量、ガラス転移、及び吸湿性に関してグルコースシロップと非常に類似する特性を有する、デンプンに由来する新しいタイプのシロップを提供する。
【0026】
本明細書において記載される解決策が有する利点は、糖菓子(例えば、固ゆでグミ及びゼラチングミ)の加工が容易であるが、安定性を維持していることである。さらに、本発明の低DEシロップは、同じ糖類構成を含有する乾燥組成物を形成するために蒸発によって容易に乾燥され得る又は単独で若しくは脂肪化合物などのような他の成分と組み合わせて噴霧乾燥され得る、典型的には、乾燥クリーム製品とブレンドされ得る。
【0027】
例示的な実施形態において、本発明のシロップは、糖化酵素としてアルファアミラーゼ及びプルナーゼの組み合わせを使用して、9~15のDEを有する従来のデンプン液化物(liquifact)を消化することによって調製され、ここで鍵となる要素は、20を超過することなくできるだけ20に近い測定DE値を得るために、上記に記載される糖類構成を有するシロップを生産するように選択された反応時間、温度、及びpHを注意深く制御することである。この点については、測定における最も大きな考えられる変動を考慮に入れながら、シロップの最終的なDEが20未満となるように、糖化酵素による消化の間にDEをモニターすること並びにDEを測定する方法及び方法の精度について検討することが重要である。例えば、DE測定に使用される方法によって、+/-0.2DE単位の正確な値が得られる場合、反応は、シロップのDEが19.7に達するまでに停止させなければならない。最終的な糖化プロセスの間、DEは、Lane-Eynon-10201法(ISO5377を参照)を使用する凝固点降下などのような、規制官庁によって認められている、信頼性のある、一般に認められている方法を使用してモニターされなければならない。
【0028】
市販で入手可能であり、本発明に適している適したアルファアミラーゼ酵素及びプルラナーゼ酵素は、それらのそれぞれの商品名、酵素のタイプ、及び酵素の遺伝的起源を下記の表に挙げる製造品で販売されるものを含む。
【0029】
【表1】
【0030】
本発明のシロップの生産のための出発物質は、好ましくは、デンプン液化物である。本明細書において使用されるように、「液化物」は、デンプンに含有される高分子量多糖のすべてが水溶液に溶解するようにデンプンを液化するのに十分な時間、アルファ-アミラーゼ及び/又は酸によりデンプンを処理することによって得られる従来のタイプの液体製品である。コーンデンプン又はコムギデンプンからの典型的な液化物は、25%~40%の溶解固形物含量及び9~12.5のDE値を有する。使用される最初のアルファ-アミラーゼが熱処理によって不活性化されている液化物を出発物質として使用することは、DE値及びデキストリン構成成分が安定しているので、好ましい。不活性化液化物を出発物質として使用することは好ましいが、出発物質としてデンプンを使用し、一旦、最初の液化反応物のDE値が所望の出発点に(好ましくは9~11のDEに)達したら、追加のデンプン加水分解酵素を反応に投入することによって最初の液化反応に補足することによって、本発明のマルトデキストリンシロップを得ることができる。いずれにしても、シロップのDEは、完全な酵素不活性化にかける前に、20を超過しないことを確かなものとするために、最終的な加水分解の間、モニターされなければならない。不活性化されていない最初の液化物に投入される補足的な酵素の使用は、以下の実施例7において記載される図3の1~3行目に例示される。
【0031】
続く実施例において例示される実施形態において、アルファアミラーゼは、BAN 48L0とし、プルナーゼは、Promozyme D6とした。アルファアミラーゼとして使用する酵素がBAN 480Lである場合、pHを4.7~4.8の狭い範囲に維持することが不可欠である。反応は、50~100ppmのCaClなどのようなカルシウム塩を含有しなければならない。20を超過するDEを有するシロップの生産をもたらす過剰な糖化を防止するために消化の時間を制限することもまた、不可欠である。デンプンの原料は、酵素量のように、反応時間に影響を及ぼし得る。9.8の出発DE値を有するコーンデンプン液化物を使用し、それぞれ0.05及び0.15kg/Tdsの用量のBAN 480 L及びPromozyme D6の組み合わせによりそれをさらに消化する場合、反応は、DEが18.6に上昇するまで24時間かかった(図1を参照されたい)。一方、10の出発DE値を有するコムギデンプン液化物を使用し、それぞれ0.1及び0.15kg/Tdsの用量のBAN 480 L及びPromozyme D6の組み合わせによりそれをさらに消化する場合、反応は、18.8のDE値に達するのに、わずか9時間しかかからず、12時間までにDEは19.6に上昇した(図2を参照されたい)。
【0032】
糖化酵素の用量は、再現可能な製品を作り、生産コストを下げるために、反応を制御するのに必要なものを最適化するように選択されなければならない。酵素添加量が多いほど、糖化は速くなるが、酵素の費用がより高くなるため、再現するのがより困難となり、よりコストがかかる。他方、酵素添加量が少ないほど、再現するのが容易になり、コストはそれほどかからないが、所望の結果を達成するのに、より多くの時間がかかる。さまざまな反応において、BAN 480Lは、0.05~5kg ds/Tの間の用量で使用され、好ましくは、用量は、0.1~0.3kg ds/Tであった。Prmozyme D2は、0.1~1kg ds/Tの間で使用され、好ましくは、用量は、0.2~0.6kg ds/Tであった。好ましい反応温度は、62℃~68℃の間であり、最も好ましくは64℃~65℃である。
【0033】
糖化酵素による反応は、シロップが所望のDE値に達したら、止めなければならない。糖化酵素の不活性化は、pHを4未満に下げ、0.2~0.5時間の間、反応の温度を90℃以上に上昇させることによって、効果的に達成される。
【0034】
本発明のために行った研究のほとんどは、アルファ-アミラーゼ及びプルナーゼの組み合わせの使用に注目し、ほとんどは、アルファアミラーゼとしてのBAN 480L及びプルナーゼとしてのPromozyme D2の使用に注目したが、酵素の他の組み合わせもまた、本発明の低DEマルトデキストリンシロップを生産するのに適していることが示された。テストした他の酵素には、Branchzyme(Novozymes)、Termamyl SC(Novozymes)、Optimax L1000(Dupont)、Spezyme LT(Dupont)、LpHera(Novozymes)、Sumizyme(Takabio)m Spezyme SL(Dupont)、AMT 1.2L(Amano)m Toruzymeが含まれる。これらの酵素のいくつかは、追加される酵素による次の処理加水分解のための最初の液化物を形成するために使用した最初のアルファアミラーゼ酵素(Liquozyme Supra酵素、(Novozymes))と組み合わせてテストしたが、最初のアルファ酵素は初めに不活性化しなかった。図3において示される結果は、本発明のマルトデキストリンシロップが、さまざまな反応条件下で使用される酵素のいくつかの組み合わせによって作ることができることを実証する。
【0035】
実施例1
実験室での試験
DE値9.8及び34.85%の溶解固形物含量を有するデンプン液化物を、4.8のpHで、約100ppm Ca+2を含有する水性混合物中65.9℃でPromozyme D2及びBAN 480Lとともにインキューベートした。酵素用量は、液化物中0.45kg/乾燥固形物1トン(ton of dry solids)(「kg/Tds」)のPromozyme D2及び0.15kg/TdsのBAN 480Lとした。ここ、及びすべての例におけるトンは、メートルトンとする。
【0036】
3時間後、pHが4.5まで落ち、DEが16まで上昇したので、pHを、もう一度4.8に調整し、混合物に、始めと同じ酵素の第2の用量を再投入した。3時間のさらなるインキュベーションの後に、DEは、19.7に達し、その後、pHを4まで減少させ、15分間90℃で加熱することによって、酵素を不活性化した。シロップは、回転式真空濾過及び強酸性陽イオン/弱塩基性陰イオン樹脂に2回通過させることによって精製し、75%の溶解固形物含量まで濃縮した。結果として生じるシロップの糖類構成は、BIO-RAD、Aminex HPX-42カラムでのHPLCによって分析し、屈折率検出器を使用して測定した。得られたさまざまな重合度を有する糖類のパーセントを、下記に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
同じプロセスを、時間及び酵素用量を変動させながら7回繰り返し、DEが18.5~19.8の間に達したら、不活性化によって反応を停止させた。下記の表は、得られた糖類の値の範囲を示す。
【0039】
【表3】
【0040】
実施例2
工場での試験1-トウモロコシ
35%デンプン固形物含量を有するコーンデンプンスラリーを、商品名LIQUOZYME SUPRA 2.2X(Novozymes、Bagvaerd、Denmark)の下で販売されているB.リケニホルミス(B.Licheniformis)由来の熱安定性アルファアミラーゼを使用して液化した。用量は、pH5.4で0.24~0.30kg/Tdsとした。酵素処理したスラリー(300立方メートルを、8.5分間にわたって106℃の温度でジェットクッカー(jet cooker)を通して瞬時に加熱した(flash cook)。瞬時に加熱した後、第2の液化を、3~3.5時間、99℃で同じ酵素下で実行した。得られた最終的な液化体(liquefact)は、10.3のDEを有し、4.2~4.3のpHで110℃まで加熱することによって不活性化した。
【0041】
その後、液化体を64℃まで冷却し、糖化タンクに移し、pHを4.8に調整した。液化物は、それぞれ0.05及び0.15kg/Tdsの用量で追加したBAN 480L(低温アルファアミラーゼ)及びPromozyme D2(プルラナーゼ)の組み合わせにより処理することによってさらに消化した。反応を、64~65℃の範囲内に保った温度で24時間にわたって進め、pHを常にモニターし、調整して、4.7~4.8の範囲内にとどめた。
【0042】
図1は、時間的経過にわたる糖類の生成及びDE値を示す。18.6のDE(凝固点降下によって計算した)は、24時間後に達し、この時点で酵素反応を停止させるためにpHを3,4まで落とした。製品は、パーライトプリコートを有する回転式真空濾過機を通過した。流量は、300l/m2/hとする。その後、生産物は、CSEPを通過した(初めに強酸、次いで弱塩基陰イオン交換樹脂に2回通過させる)。弱酸性陽イオン及び弱塩基性陰イオン樹脂を有する混床樹脂に通過させることによって、さらに仕上げをした(polishing)。製品は、78.6%dsまで蒸発させた。24時間後に得られた最終的な糖類構成を、下記に示す:
【0043】
【表4】
【0044】
最終的なシロップの粘度は、さまざまな温度でHoepler法を使用して測定し、結果は以下の通りであった
20℃ 160690 mPas
40℃ 13750 mPas
60℃ 2480 mPas
【0045】
劣化に対する安定性を決定するために、濁度を、720nmで光散乱分光法(spectroscopic light scatter)によって測定し(0.45umフィルターによるフィルター処理あり-フィルター処理なし、50°Bx)、67.9の値を示し、色は、420の吸光度で測定し、この色は、29.4のICUMSA色価を有した。
【0046】
実施例3
工場での試験2-トウモロコシ
実施例2において記載されるマルトデキストリンを生産するための、液化体を作製するためのプロセス及びさらなる消化を、実施例2に詳しく記載されるように再び繰り返したが、結果は、わずかな変化しかなかった。出発液化物は、9.8のDEを有し、最終的なサンプルは、74,7%の溶解固形物含量になるまで蒸発させた。最終的な結果として生じる糖類構成を、下記に示す。
【0047】
【表5】
【0048】
50℃での粘度は、Brookfield法を使用して測定されると3660mPasであった。420nmでの色の吸光度(Icumsa)は、30であり、720nmでの濁度(10ミクロンでのフィルター処理なし-フィルター処理あり)(Icumsa)は、67.8であった。30日後、濁度は12.01となり、色は21となり、シロップは、劣化に対して安定していることを示した。
【0049】
実施例4
工場での試験3-トウモロコシ
実施例2において記載されるマルトデキストリンを生産するための、液化体を作製するためのプロセス及びさらなる消化を、実施例2に詳しく記載されるように再び繰り返したが、結果は、わずかな変化しかなかった。出発液化物は、10.5のDEを有し、最終的なサンプルは、76.1%の溶解固形物含量になるまで蒸発させた。最終的な結果として生じる糖類構成を、下記に示す。
【0050】
【表6】
【0051】
50℃でBrookfieldによって測定される粘度は、4960mPasであった。
【0052】
実施例5
工場での試験4-コムギ
35%デンプン固形物含量を有するコムギデンプンスラリーを、商品名LPHERA SUPRA 2.2X(Novozymes)の下で販売されているB.リケニホルミス由来の熱安定性アルファアミラーゼを使用して液化した。用量は、pH4.7で0.08~0.1kg/Tdsとした。酵素処理したスラリー350立方メートル)を、6分間にわたって105℃の温度でジェットクッカーを通して瞬時に加熱した。瞬時に加熱した後、第2の液化を、160分間、99℃で同じ酵素下で実行した。得られた最終的な液化体は、10.8のDEを有し、3のpHで99℃まで加熱することによって不活性化した。
【0053】
その後、液化体を63℃まで冷却し、糖化タンクに移し、pHを4.9+/-1に調整した。液化体は、それぞれ0.1及び0.15kg/Tdsの用量で追加したBAN 480L(低温アルファアミラーゼ)及びPromozyme D2(プルラナーゼ)の組み合わせにより処理することによってさらに消化した。反応を、63~60℃の範囲内に保った温度で24時間にわたって進め、pHを継続してモニターし、調整して、4.7~4.8の範囲内にとどめた。反応は、pHを3.5に下げ、30分間9999℃まで加熱することによって停止させた。
【0054】
図2は、時間的経過にわたる糖類の生成及びDE値を示す。20未満のDE値を有する、本発明における使用に適したシロップは、早くも少なくとも9時間で得られたが、14時間までに20のDEを超過し始める。
【0055】
実施例6
工場での試験5-コムギ
シロップは、酵素を不活性化するためにpHを4.3に落とし、加熱することによって反応を7時間後に停止させたことを除いて、実施例5において記載されるように、コムギ液化体から調製した。19.4のDEを有するシロップが、得られた。DP1からDP3の糖の量のみを測定する部分的な糖類プロファイルは、以下の結果を示した:
デキストロース 1.05%
マルトース 5.7%
マルトトリオース 10.3%
より高度な糖 83.0%
【0056】
シロップは、従って、DP1からDP3の糖類に関して、コーンデンプンから得られたものに非常に類似しているので、全糖類プロファイルは、より高度な糖もまた、コーンデンプンから得られたシロップと同様の構成を有することを明らかにするはずである。
【0057】
実施例7
代替的な酵素の組み合わせ
いくつかの市販で入手可能な酵素を、20未満のDE及びDE値30~45を有する従来のコーンシロップの特性をマルトデキストリンシロップに与えるであろうオリゴ糖プロファイルを有するマルトデキストリンシロップを形成する能力についてテストした。図3は、実施例2において記載されるように調製した液化物から出発して、さまざまな酵素について実験室でのテストから得られた結果を示す。テストした酵素の商品名及びそれらの投薬量を、出発DE値、pH、追加したカルシウムの量、温度、反応の時間、結果として生じるDE値、及び糖類構成とともに表に示す。テスト番号1~3について、出発液化物を形成するために使用したNovozymesのLiquozyme Supraアルファアミラーゼは、不活性化せず、DEが示される値に達した後に追加でテストした酵素を単に補足しただけであった。
図1
図2
図3
【国際調査報告】