(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】複合のルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末の調製及びその応用
(51)【国際特許分類】
A23K 50/10 20160101AFI20230712BHJP
A23K 20/158 20160101ALI20230712BHJP
A23K 40/35 20160101ALI20230712BHJP
A23K 20/174 20160101ALI20230712BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20230712BHJP
A23K 20/28 20160101ALI20230712BHJP
A23K 20/20 20160101ALI20230712BHJP
A23K 10/37 20160101ALI20230712BHJP
A23K 20/189 20160101ALI20230712BHJP
A23K 20/163 20160101ALI20230712BHJP
【FI】
A23K50/10
A23K20/158
A23K40/35
A23K20/174
A23K10/30
A23K20/28
A23K20/20
A23K10/37
A23K20/189
A23K20/163
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521815
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 CN2021113654
(87)【国際公開番号】W WO2022068459
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】202011048108.X
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522495588
【氏名又は名称】シャメン フゥイソン バイオテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XIAMEN HUISON BIOTECH CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.1337, Tongji Middle Road, Tongji Industrial District, Tong’an District Xiamen, Fujian 361000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】チェン リーイー
(72)【発明者】
【氏名】ヂョン フゥイチャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シュイロン
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005BA07
2B150AE33
2B150AE35
2B150AE36
2B150AE37
2B150AE39
2B150AE40
2B150AE41
2B150AE43
2B150AE45
2B150CA02
2B150CA03
2B150CA04
2B150CE02
2B150CE03
2B150CE05
2B150CE06
2B150CE07
2B150CE14
2B150CE20
2B150DA37
2B150DA54
2B150DE15
2B150DF10
2B150DF12
2B150DF14
2B150DH20
2B150DH21
2B150DH22
2B150DH24
2B150DJ03
2B150DJ14
(57)【要約】
複合の高転化率のルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末の調製及びその応用であって、真空条件下で、吸着剤によって多価不飽和脂肪酸の油脂を吸着させ、且つ水溶性酸化防止剤と消化吸収を促進する酵素を複合して混合粉末を形成する。コロイド又は小麦粉を利用して混合粉末に対して混練造粒し、且つ多糖類を利用して一層の固定コーティングを行う。一層のコーティングを有する顆粒はコーティング機を用いて脂肪粉末またはモノグリセリド、ジグリセリドを用いてルーメンバイパスコーティングを行う。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合のルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末の製造方法であって、
DHA油脂、ARA油脂と油溶性抗酸化体系とを均一に溶解し、混合油脂を得る工程1と、
真空条件下で、混合油脂を吸着剤に噴霧して吸着させる工程2と、
完全に吸着した後、水溶性抗酸化剤と不飽和脂肪酸の消化吸収を促進する酵素を加え、均一に混合し、混合粉末を形成する工程3と、
得られた混合粉末をコアペレットに製造する工程4と、
コアペレットを包材溶液でコーティングし、顆粒表面に第一層のルーメンバイパスコーティングを形成する工程5と、
コーティングされたコアペレットを溶解された外層コーティング壁材と均一に混合し、コールドスプレーし、乾燥し、固定顆粒に定型し、完成品の複合されたルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末を得る工程6と、を含むことを、
特徴とする複合のルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末の製造方法。
【請求項2】
工程1において、重量比で、DHA:ARA=3:1~1:3であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程1において、前記油溶性抗酸化体系は天然混合トコフェロール、レシチン、ローズマリー、パルミチン酸アスコルビルのうちの一種又は多種の混合であり、前記油溶性抗酸化体系は、DHA油脂及びARA油脂の総重量の0.1~0.2%を占めており、前記溶解混練は室温で行っており、工程2において、前記真空度は-0.06MPa~-0.1MPaであり、前記吸着剤はゼオライト粉末、アタパルジャイト、セピオライト、珪藻土、活性炭、ホワイトカーボン、バーミキュライト、モンモリロナイト粉末、ベントナイト、トウモロコシ穂軸粉末、トウモロコシ澱粉、大豆微粉、小麦胚芽粉末、ふすま、籾殻糠、脱脂米糠及びアルファルファ粉末のうちの一種又は多種の混合を含み、吸着剤の重量と油脂の総重量の割合は0.6:1~1:1であり、前記吸着時間は0.5~3.0時間であることを、
特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程3において、前記水溶性抗酸化剤は、D-イソアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、水溶性混合トコフェロール粉末、ローズマリー粉末、レシチン粉末の一種又は多種の混合であり、前記不飽和脂肪酸の消化吸収を促進する酵素は、セルラーゼ、キシラナーゼ、β-グルカナーゼ、β-マンナナーゼ、中性プロテアーゼ、ペクチナーゼのうちの一種又は多種の混合であり、前記水溶性抗酸化剤は、混合油脂の総重量に対して、0.5~1.0%を占めており、前記不飽和脂肪酸の消化吸収を促進する酵素は、混合油脂の総重量の1~3%を占めており、前記不飽和脂肪酸の消化吸収を促進する酵素の酵素活性は、2000U/g~100000U/gであることを、
特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
工程4において、混合粉末に結合剤を添加して結合し、造粒した後に乾燥し、コアペレットを得て、前記結合剤はアラビアガム、キサンタンガム、ゼラチン、アルギン、ペクチン、デキストリン、小麦粉、α化デンプン、グルテンのうちの一種又は多種の混合を含み、前記結合剤は、溶液として添加され、前記結合剤溶液の質量濃度は1.0~10%であり、前記結合剤溶液は混合粉末の総重量の1.0~10%を占めることを、
特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
工程5において、前記包材溶液における溶質はカラギーナン、ローカストビーンガム、プルラン、アルギン酸ナトリウム、キトサン、海藻多糖類、ヒアルロン酸のうちの一種又は複数種の混合物であり、前記包材溶液における溶質の質量濃度は1~5%であり、コーティング重量はコアペレット重量の10~20%であり、前記コーティングの条件は、加熱乾燥温度が40~90°Cであることを、
特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
工程6において、前記外層コーティング壁材は水素化パーム脂肪酸、脂肪アルコール、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビトールパルミチン酸エステル、水素化ステアリン酸、ステアリン脂肪粉末、パーム脂肪粉末のうちの一種又は多種の混合であり、前記コールドスプレーの温度は0~50°Cであり、前記外層コーティング壁材の使用量は第一層のルーメンバイパスのコーティング後のコアペレット重量の30~50%であることを、
特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法で調製された複合のルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末。
【請求項9】
請求項8に記載の複合のルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末を反芻動物の1日当たりの飼料に添加して反芻動物に給与すればよいことを、
特徴とする反芻動物乳における多価不飽和脂肪酸の含有量を高める方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記方法における1日当たりの添加量は、牛1頭あたり200~500gであり、添加方法は、複合の多価不飽和脂肪酸粉末を1日当たりの飼料に添加して1日当たりのTMR飼料を調製し、朝、昼、晩に給餌することを、
特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価不飽和脂肪酸油脂のコーティング及び食品、飼料分野に関し、具体的には一定の割合でn-3及びn-6多価不飽和脂肪酸を複合し、二次ルーメンバイパスのコーティングによって多価不飽和脂肪酸が反芻動物乳における転化率を向上させることができるルーメンバイパス多価不飽和脂肪粉末の調製及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
多価不飽和脂肪酸は必須脂肪酸に属し、脂質媒体の前駆体であり、細胞膜の構造と機能において重要な役割を果たし、それは脳の発達、視力の発達、神経の発達、及び心脳血管の健康に重要な役割を果たす。一般的には、omega-3とomega-6に分けられ、n-6多価不飽和脂肪酸が主にリノール酸、エイコサテトラエン酸(ARA)などを含み、n-3多価不飽和脂肪酸が主にリノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)などを含む。DHAは神経系の発達を促進し、脳を健やかにさせ、視覚神経系の発達を促進し、視力を保護し、細胞膜機能を改善する栄養作用を有し、機体の免疫消炎方面にも積極的な作用を有し、体質の強化に役立つ。ARAは人体における含有量が最も高く、分布が最も広い多価不飽和脂肪酸であり、特に脳及び神経組織において、ARAの含有量は一般的にPUFAsの40%~50%を占め、神経終末においてさらに70%に達し、正常人の血漿における含有量も400mg/Lに達する。人体必須脂肪酸として、それは他の物質が備えない生体必須の生物活性を有し、心臓病の罹患率、死亡率、癌の防除、統合失調症の緩和、抗炎症に優れ、特に乳幼児の知的発育と網膜に優れた作用を有する。DHA及びARAは、母乳中の天然成分として、それぞれ、0.06%~1.4%、0.19%~1.56%の量で存在する。朱敏らは、DHA及びARAが母乳中にトリグリセリド及びリン脂質の形態で存在することを報告しており、ここで、トリグリセリドは98%を占める主要な形態であり、リン脂質は1%を占め、また1%は不鹸化脂質であり、乳児が吸収したDHA及びARAは主にトリグリセリド中にある。従来市販されている子供にDHA及びARAを補充する方式は、主にDHA油及びARA油又は油マイクロカプセル粉末を外添することにより製品にDHA及びARAを含有することを実現し、特に乳幼児・小児用乳製品である。近年、シゾキトリウム又はその製品を用いて乳牛を養殖し、原生のDHAミルク又は原生のARAミルクを得ることが始まった。例えば、特許ZL201010281458.0はDHA含有量が10%のコーティングされたシゾキトリウム粉末を用いて乳牛を21日間飼育した後の牛乳のDHA含有量は、197.16mg/Lである。特許CN109082381Aはシゾキトリウムの発酵処方の調整により、一段階で発酵させて高タンパクのルーメンバイパスのDHA含有量が20%のシゾキトリウム粉末を生産し、75日間飼育した後、放養群の牛乳DHAの含有量は25.5mg/100gであり、飼育群は28.5mg/100gである。特許CN110800871Aはシゾキトリウムの発酵により直接給与し、給与30日後に牛乳におけるDHA含有量は、227mg/L(すなわち、22.7mg/100g)である。特許CN110074256Aはホモジナイザー又はサンドミルによってモルティエレラ(mortierella)、シゾキトリウムなどの真菌湿菌体を破壁させ、カゼイン酸ナトリウム、グルコースシロップなどを壁材として菌体を一次コーティングし、同時にセラック、アクリル樹脂II(acrylic acid resinII)などをルーメンバイパス保護剤として二次流動層コーティングを行う。得られた菌粉末は乳牛に給餌し、牛乳中のDHA含有量は最大22.3mg/100mlであり、又はARA含有量は最大28.9mg/100mlであり、ただし特許に菌粉末中のDHA又はARAの含有量が明確ではない。特許CN1110111621Aは酵素を用いてシゾキトリウムに破壁処理を行った後、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、乳清タンパク質及びカゼイン酸ナトリウム等を主壁材として一次コーティング・乾燥を行って、エタノールで溶解されたポリアクリル酸樹脂及びエチルセルロース溶液を用いて二次コーティングを行う。得られた菌粉末(DHA含有量は13~17%である)を用いて乳牛に給餌し、牛乳中のDHA含有量は最大34.23mg/100mlである。特許CN110100959Aはカゼイン酸ナトリウム、乳清粉末及び変性デンプンなどを膜形成剤とし、マルトデキストリン及びグルコースなどを充填剤として、40%のDHA油又はARA油に均質噴霧を行った後、さらにセラック、アクリル樹脂II等を用いてルーメンバイパス保護剤として二次流動層コーティングを行って不飽和脂肪酸粉末を得る。乳牛に給餌した後に牛乳における不飽和脂肪酸の最大含有量は19.1mg/100mlであるが、特許に不飽和脂肪酸粉末のDHA又はARAの含有量は明確ではない。上記特許は菌体、破壁菌体の二次コーティング、油脂への均質噴霧の二次コーティングなどの調製プロセスを採用して乳牛に栄養を与えるDHA及びARAのような多価不飽和脂肪酸を濃化する製品を得る。一次コーティングは主にオクテニルコハク酸デンプンナトリウム、乳清タンパク質及びカゼイン酸ナトリウムなどを主壁材とする。二次コーティングは主にセラック、アクリル樹脂IIなどを用いてルーメンバイパス保護剤とし、又はエタノールで溶解したポリアクリル酸樹脂とエチルセルロース溶液を用いてルーメンバイパスコーティング液とする。樹脂を使用する場合、エタノールなどの有機溶媒による樹脂の溶解が必要であり、有機溶媒が残留し得る。また食品級乳清粉末、カゼイン酸ナトリウムなどのコーティング壁材は高価であり、生産コストが高くなる。
【0003】
王永康らの研究はn-3及びn-6多価不飽和脂肪酸が雌牛の健康に重要な意味を有することを示す。n-6脂肪酸は、2系プロスタグランジンの前駆体であり、雌牛のより速い発情及び再交配に有利である。n-3脂肪酸は、雌牛の妊娠初期において、2系プロスタグランジンの合成を減少させ、胚の損失を減少させ、妊娠率を高めることができる。反芻動物の母体の健康を高めるために、反芻動物体内の多価不飽和脂肪酸の含有量を高めることが重要である。同時に、n-3及びn-6多価不飽和脂肪酸の乳中への豊富な含有を促進し、反芻動物の乳中の多価不飽和脂肪酸の転化率を向上させることができる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、反芻動物に、反芻動物の乳脂肪及び乳中のDHA及びARAなどの多価不飽和脂肪酸の含有量を向上させる、複合のルーメンバイパス高転化率の多価不飽和脂肪酸粉末及びその調製と応用を提供することである。
【0005】
本発明の提供する複合の高転化率のルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末は以下の工程を含む方法によって製造される:
1)DHA油脂、ARA油脂と油溶性抗酸化体系とを均一に溶解し、混合油脂を得る。
2)真空条件下で、混合油脂を吸着剤に噴霧して吸着させる。
3)完全に吸着した後、水溶性抗酸化剤と不飽和脂肪酸の消化吸収を促進する酵素を加え、均一に混合し、混合粉末を形成する。
4)混合粉末に結合剤を添加して結合させ、造粒した後に乾燥させ、コアペレットを得る。
5)コアペレットを包材溶液でコーティングし、顆粒表面に第一層のルーメンバイパスコーティングを形成する。
6)コーティングされたコアペレットを溶解された外層コーティング壁材と均一に混合し、コールドスプレーし、乾燥させ、固定顆粒に定型し、完成品の複合されたルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末を得る。
上記方法の工程1)において、重量比で、DHA:ARA=3:1~1:3である。
【0006】
上記DHA油脂源は魚油、ナンノクロロプシス(nannochloropsis)、シゾキトリウム藻類油(schizochytrium algae oil)、クリプテコディニウムコニー藻類油(crypthecodinium cohnii algae oil)、ウルケニアアメーバ藻類油(ulkenia amoeboida algae oil)などの動植物由来の油脂である。
【0007】
上記ARA油脂源はモルティエレラ属、ポルフィリディウム、クロレラなどの動植物由来油脂である。
【0008】
上記油溶性抗酸化体系は主に不飽和脂肪酸の加工過程に保護作用を果たし、具体的には天然混合トコフェロール、レシチン、ローズマリー、パルミチン酸アスコルビル(ascorbyl palmitate)のうちの一種又は多種の混合であってもよい。
【0009】
上記油溶性抗酸化体系は、DHA油脂及びARA油脂の総重量の0.1~0.2%、特に、0.125%、又は、0.188%を占める。
【0010】
上記溶解混練は室温で行う。
【0011】
工程2)において、上記真空度は具体的には-0.06MPa~-0.1MPaであってもよい。
【0012】
上記吸着剤はゼオライト粉末、アタパルジャイト、セピオライト、珪藻土、活性炭、ホワイトカーボン、バーミキュライト、モンモリロナイト粉末、ベントナイト、トウモロコシ穂軸粉末、トウモロコシ澱粉、大豆微粉、小麦胚芽粉末、ふすま、籾殻糠、脱脂米糠及びアルファルファ粉末のうちの一種又は多種の混合を含む。
【0013】
吸着剤の重量と油脂の総重量の割合は、0.6:1~1:1であってもよく、特に、0.8:1又は0.7:1又は0.9:1であってもよい。
【0014】
上記吸着時間は、0.5~3.0時間であり得る。
【0015】
工程3)において、上記水溶性抗酸化剤は、主に反芻動物の体内で不飽和脂肪酸を酸化から保護すると同時に、反芻動物の体内でのその変換を促進するものである。具体的にはD-イソアスコルビン酸ナトリウム(D-Isoascorbic acid sodium)、アスコルビン酸、水溶性混合トコフェロール粉末、ローズマリー粉末、レシチン粉末の一種又は多種の混合である。
【0016】
上記不飽和脂肪酸が反芻動物体内でよりよく消化吸収することを促進する酵素は、具体的にはセルラーゼ、キシラナーゼ、β-グルカナーゼ、β-マンナナーゼ、中性プロテアーゼ、ペクチナーゼのうちの一種又は多種の混合であってもよい。
【0017】
水溶性抗酸化剤は、混合油脂の全重量に対して、0.5~1.0%、具体的に、0.5%、又は0.75%、又は0.91%を占めることができる。
【0018】
上記不飽和脂肪酸の消化吸収を促進する酵素は、混合油脂の総重量の1~3%、具体的には、2.3%、又は1.23%、又は2.5%を占めることができる。
【0019】
上記不飽和脂肪酸の消化吸収を促進する酵素の酵素活性は、2000U/g~100000U/gである。
【0020】
工程4)において、上記結合剤はアラビアガム、キサンタンガム、ゼラチン、アルギン、ペクチン、デキストリン、小麦粉、α化デンプン、グルテンのうちの一種又は多種の混合を含む。
【0021】
結合剤は、溶液として添加され、上記結合剤溶液の質量濃度は、1.0~10%であってもよい。
【0022】
上記結合剤溶液は混合粉末の総重量の1.0~10%を占める。
【0023】
上記造粒は振動造粒機によって実現する。
【0024】
上記乾燥は丸め機、流動床、加熱付きのスクリューコンベア(screw conveyer)、加熱回転機器等のうちの一種又は多種の混合によって実現することができる。
【0025】
工程5)において、上記包材溶液における溶質はカラギーナン、ローカストビーンガム、プルラン、アルギン酸ナトリウム、キトサン、海藻多糖類、ヒアルロン酸のうちの一種又は複数種の混合物であってもよく、溶媒は水である。
【0026】
上記包材溶液における溶質の質量濃度は1~5%であってもよい。コーティング重量はコアペレット重量の10~20%であってもよい。
【0027】
上記コーティングは、コーティング機内で成形される。
【0028】
上記コーティング機のコーティングプロセス条件は、加熱乾燥温度が40~90°Cであること。
【0029】
工程6)において、上記外層コーティング壁材は水素化パーム脂肪酸、脂肪アルコール、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビトールパルミチン酸エステル、水素化ステアリン酸、ステアリン脂肪粉末、パーム脂肪粉末のうちの一種又は多種の混合であってもよい。
【0030】
上記コールドスプレーの温度は0~50°Cであってもよい。外層コーティング壁材の使用量は第一層のルーメンバイパスのコーティング後のコアペレット重量の30~50%である。
【0031】
上記方法で調製された複合ルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末も本発明の保護範囲に属する。
【0032】
本発明はまた、反芻動物の乳汁中の多価不飽和脂肪酸の含有量を高める方法を提供する。
【0033】
本発明の提供する反芻動物乳汁における多価不飽和脂肪酸の含有量を向上させる方法は、以下のとおりである。上記複合ルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末を反芻動物の1日当たりの飼料に添加して反芻動物に給与すればよい。
【0034】
上記方法において、毎日の添加量は、200~500g/頭牛である。具体的には毎日、250g/頭牛である。
【0035】
添加方法は主に複合の多価不飽和脂肪酸粉末を1日当たりの飼料に添加して1日当たりのTMR飼料を調製し、毎日、牧場の具体的な状況に応じて朝、晩に給餌する。
【0036】
上記複合ルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末を添加した1日当たりの飼料を乳牛に給与し、多価不飽和脂肪酸に富む牛乳を生成し、上記牛乳は異なる乳製品に加工することができる。
【0037】
上記乳製品は純牛乳、ヨーグルト、ラクトースを含まない栄養補給乳(lactose-free nutritious milk)、粉乳などを含む。
【0038】
異なる割合でルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末を調製し、そのDHAとARAはそれぞれ以下のとおりである:
【表1】
【0039】
毎日、250g/頭牛の量で1日当たりの飼料に添加して1日当たりのTMR飼料を調製し、毎日、牧場の具体的な状況に応じて朝、晩に給餌する。
【0040】
上記飼育後に産出された牛乳に多価不飽和脂肪酸を含み、具体的な含有量は以下のとおりである(単位mg/100ml):
乳中のDHAとARAの含有量(単位mg/100ml)
【表2】
【0041】
【0042】
本発明は真空条件下で、吸着剤によって多価不飽和脂肪酸の油脂を吸着させ、且つ水溶性酸化防止剤と消化吸収を促進する酵素を複合して混合粉末を形成する。コロイド又は小麦粉を利用して混合粉末に対して混練造粒し、且つ多糖類を利用して一層の固定コーティングを行う。一層のコーティングを有する顆粒はコーティング機を用いて脂肪粉末またはモノグリセリド、ジグリセリドを用いてルーメンバイパスコーティングを行う。当該方法により形成された多価不飽和脂肪酸顆粒は多価不飽和脂肪酸を効果的に保護でき、多価不飽和脂肪酸油脂の酸化を回避する。同時にARAとDHAの一定割合の複合は、n-3脂肪酸及びn-6脂肪酸が反芻動物体内での変換及び蓄積を効果的に促進することができる。反芻動物乳中の多価不飽和脂肪酸の含有量の向上を実現し、乳中の乳脂肪含有量及び産乳量が低下しないことを確保し、原生多価不飽和脂肪酸乳に産業化基礎を提供する。
【0043】
本発明は反芻動物乳における多価不飽和脂肪酸の含有量を高めることができ、n-3及びn-6多価不飽和脂肪酸が一定の割合範囲内で効果的に相互に促進作用して多価不飽和脂肪酸の転化率を高めることができる。本発明は吸着剤を利用して高含有量のDHA及びARAを同時に吸着させ、吸着が終了した後に適量の適切な酵素を添加して均一に混合し、結合剤を用いて結合・造粒を行い、多糖類で一層のコーティング固定を行い、最後に脂肪粉末を利用してルーメンバイパスコーティングを行い、反芻動物の乳脂肪及び乳中のDHA、ARA等の多価不飽和脂肪酸の含有量を向上させるルーメンバイパス高転化率多不飽和脂肪酸粉末を得る。当該発明は食品グレード乳清粉末、カゼインナトリウムなどの高価なコーティング壁材の使用を効果的に回避し、樹脂の溶解にエタノールなどの有機溶媒を使用することを回避する。生産コストを効果的に低減して生産プロセスを短縮し、多価不飽和脂肪酸の転化率を向上させ、工業的生産に基礎を定める。
【発明を実施するための形態】
【0044】
なお、以下の実施例における実験方法は、特に説明がない限り、従来の方法である。
以下では、実施例に関連して本発明をさらに説明するが、本発明をいかなる態様でも限定することはなく、本発明の教示に基づいて行われた変更または改良は、本発明の保護の範囲に属する。
【0045】
本発明の目的は、反芻動物にn-3及びn-6を複合したルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末を提供することを目的とする。一定のn-3及びn-6の割合で、両者は互いに反芻動物乳における転化を促進することができ、多価不飽和脂肪酸の転化率を向上させ、多価不飽和脂肪酸の含有量が高い生乳の産業化方法を提供する。
【0046】
具体的な内容は以下のとおりである:
1)DHAとARAの含有量に基づいて、DHAの含有量:ARA含有量=3:1~1:3の割合でDHA油脂、ARA油脂及び油溶性抗酸化体系を常温で完全に溶解して均一に混合する。油溶性抗酸化系が油重量の0.1~0.2%を占める。
2)真空条件下で、混合油脂を吸着剤(吸着剤:油重量=0.6:1~1:1)に噴霧し、0.5~3.0時間吸着させる。
3)完全に吸着した後、水溶性酸化防止剤と消化吸収を促進する酵素を加えて均一に混合し、混合粉末を形成する。水溶性酸化防止剤が油重量の0.5~1.0%であり、酵素混合物が油重量の1~3%である。
4)混合粉体に1.0~10%の粉末重量の結合剤溶液を添加して結合し、結合剤の溶質濃度は1%~10%であり、振動造粒機で造粒した後に乾燥させる。
5)作製したコアペレットをコーティング機で包材溶液を用いて低温コーティングし、第一層のルーメンバイパスコーティングとした。
6)コーティング後のコアペレットは溶解した外層コーティング壁材と均一に混合し、コールドスプレー乾燥装置に入れて固定顆粒に定型し、完成品の多価不飽和脂肪酸粉末を形成する。
7)他の1日当たりの飼料を一定に保持する条件下で、多価不飽和脂肪酸粉末を適量に1日当たりの飼料に添加して反芻動物を飼育して乳中の多価不飽和脂肪酸を富化する。
8)多価不飽和脂肪酸を豊富に含む牛乳は、様々な乳製品に加工するために使用できる。
【0047】
実施例1
1、DHA油脂とARA油脂を重量比DHA:ARA=3:1の割合で混合し、100kgの混合油を得て、油溶性酸化防止剤天然混合トコフェロール50g、ローズマリー40g、レシチン5g、パルミチン酸アスコルビル30gを添加し、すなわち総油重量の0.125%である。乳化混合が均一である。
2、真空度-0.08MPaの真空条件下で、油脂を吸引して80kgのふすまに噴霧し、30分間真空吸着させる。
3、吸着が完了した後に、190gのD-イソアスコルビン酸ナトリウム、190gの水溶性混合トコフェロール粉末、120gのレシチン粉末と900gのセルラーゼ、180gのβ-グルカナーゼ、360gのβ-マンナナーゼ、900gの中性プロテアーゼを加えて均一に撹拌混合する(酵素活性28461U/g)。
4、混合粉末に36kgの濃度が5%のアラビアガム溶液を加えて均一に撹拌混合し、振動造粒機に入れて造粒し、顆粒は丸め機に入れて円形化・乾燥を行う。
5、乾燥後、顆粒を70°Cの温度を有するコーティング機に入れ、濃度5%の360kgのキトサン溶液を用いてコーティング・乾燥を行う。
6、一層のコーティングが終わった後、コーティング機の温度を30℃に下げ、80kgの水素化パーム脂肪酸を使用して二層のコーティングを行う。
7、二次コーティング後の複合したルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末260kgを得て、その中のDHAとARAの含有量はそれぞれ17%、5%であり、製品I類である。
8、製品I類250g/頭牛を1日当たりの飼料に添加して1日当たりのTMR飼料を調製し、毎日、牧場の具体的な状況に応じて朝、晩に給餌する。
9、飼育した乳牛は飼育後7、14、21及び28日にサンプリングして牛乳におけるDHA、乳脂肪などの指標を検出する。
10、得られた多価不飽和脂肪酸DHA及びARAを豊富に含む牛乳はプロセス加工を経て純牛乳、粉乳、ヨーグルト、ラクトースを含まない栄養補給乳などの乳製品を生産することに用いることができる。
【0048】
実施例2
1、DHA油脂とARA油脂を重量比DHA:ARA=1:3の割合で混合し、100kgの混合油を得て、油溶性酸化防止剤天然混合トコフェロール50g、ローズマリー40g、レシチン5g、パルミチン酸アスコルビル30gを添加し、すなわち総油重量の0.125%である。乳化混合が均一である。
2、真空度-0.08MPaの真空条件下で、油脂を吸引して70kgのトウモロコシ穂軸粉末に噴霧し、90分間真空吸着させる。
3、吸着が完了した後に、200gのD-イソアスコルビン酸ナトリウム、400gの水溶性混合トコフェロール粉末、150gのレシチン粉末と480gのセルラーゼ、100gのβ-グルカナーゼ、150gのβ-マンナナーゼ、500gの中性プロテアーゼを加えて均一に撹拌混合する(酵素活性29735U/g)。
4、混合粉末に15kgの濃度が5%のアラビアガム溶液を加えて均一に撹拌混合し、振動造粒機に入れて造粒し、顆粒は丸め機に入れて円形化・乾燥を行う。
5、乾燥後、顆粒を80°Cの温度を有するコーティング機に入れ、濃度4%の450kgのキトサン溶液を用いてコーティング・乾燥を行う。
6、一層のコーティングが終わった後、コーティング機の温度を35℃に下げ、80kgの水素化パーム脂肪酸を使用して二層のコーティングを行う。
7、二次コーティング後の複合したルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末260kgを得て、その中のDHAとARAの含有量はそれぞれ5%、17%であり、製品V類である。
8、製品V類250g/頭牛を1日当たりの飼料に添加して1日当たりのTMR飼料を調製し、毎日、牧場の具体的な状況に応じて朝、晩に給餌する。
9、飼育した乳牛は飼育後7、14、21及び28日にサンプリングして牛乳におけるDHA、乳脂肪などの指標を検出する。
10、得られた多価不飽和脂肪酸DHA及びARAを豊富に含む牛乳はプロセス加工を経て純牛乳、粉乳、ヨーグルト、ラクトースを含まない栄養補給乳などの乳製品を生産することに用いることができる。
【0049】
実施例3
1、DHA油脂とARA油脂を重量比DHA:ARA=1:1の割合で混合し、100kgの混合油を得て、油溶性酸化防止剤天然混合トコフェロール75g、ローズマリー60g、レシチン8g、パルミチン酸アスコルビル45gを添加し、すなわち総油重量の0.188%である。乳化混合が均一である。
2、真空度-0.1MPaの真空条件下で、油脂を吸引して90kgの小麦胚芽粉末に噴霧し、160分間真空吸着させる。
3、吸着が完了した後に、250gのD-イソアスコルビン酸ナトリウム、500gの水溶性混合トコフェロール粉末、160gのレシチン粉末と1000gのセルラーゼ、200gのβ-グルカナーゼ、300gのβ-マンナナーゼ、1000gの中性プロテアーゼを加えて均一に撹拌混合する(酵素活性40600U/g)。
4、混合粉末に10gの濃度が5%のアラビアガム溶液を加えて均一に撹拌混合し、振動造粒機に入れて造粒し、顆粒は丸め機に入れて円形化・乾燥を行う。
5、乾燥後、顆粒を90°Cの温度を有するコーティング機に入れ、濃度5%の400kgのキトサン溶液を用いてコーティング・乾燥を行う。
6、一層のコーティングが終わった後、コーティング機の温度を20℃に下げ、70kgの水素化パーム脂肪酸を使用して二層のコーティングを行う。
7、二次コーティング後の複合したルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末250kgを得て、その中のDHAとARAの含有量はそれぞれ11%、11%であり、製品III類である。
8、製品III類250g/頭牛を1日当たりの飼料に添加して1日当たりのTMR飼料を調製し、毎日、牧場の具体的な状況に応じて朝、晩に給餌する。
9、飼育した乳牛は飼育後7、14、21及び28日にサンプリングして牛乳におけるDHA、乳脂肪などの指標を検出する。
10、得られた多価不飽和脂肪酸DHA及びARAを豊富に含む牛乳はプロセス加工を経て純牛乳、粉乳、ヨーグルト、ラクトースを含まない栄養補給乳などの乳製品を生産することに用いることができる。
【0050】
比較例1
1、DHA油脂100kgに、油溶性酸化防止剤天然混合トコフェロール50g、ローズマリー40g、レシチン5g、パルミチン酸アスコルビル30gを添加し、すなわち総油重量の0.125%である。乳化混合が均一である。
2、真空度-0.08MPaの真空条件下で、油脂を吸引して80kgのふすまに噴霧し、30分間真空吸着させる。
3、吸着が完了した後に、190gのD-イソアスコルビン酸ナトリウム、190gの水溶性混合トコフェロール粉末、120gのレシチン粉末と900gのセルラーゼ、180gのβ-グルカナーゼ、360gのβ-マンナナーゼ、900gの中性プロテアーゼを加えて均一に撹拌混合する(酵素活性28461U/g)。
4、混合粉末に36kgの濃度が5%のアラビアガム溶液を加えて均一に撹拌混合し、振動造粒機に入れて造粒し、顆粒は丸め機に入れて円形化・乾燥を行う。
5、乾燥後、顆粒を70°Cの温度を有するコーティング機に入れ、濃度5%の360kgのキトサン溶液を用いてコーティング乾燥を行う。
6、一層のコーティングが終わった後、コーティング機の温度を30℃に下げ、80kgの水素化パーム脂肪酸を使用して二層のコーティングを行う。
7、二次コーティング後の複合したルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末260kgを得て、その中のDHAの含有量は17%であり、製品VI類である。
8、製品VI類250g/頭牛を1日当たりの飼料に添加して1日当たりのTMR飼料を調製し、毎日、牧場の具体的な状況に応じて朝、晩に給餌する。
9、飼育した乳牛は飼育後7、14、21及び28日にサンプリングして牛乳におけるDHA、乳脂肪などの指標を検出する。
10、得られた多価不飽和脂肪酸DHAを豊富に含む牛乳はプロセス加工を経て純牛乳、粉乳、ヨーグルト、ラクトースを含まない栄養補給乳などの乳製品を生産することに用いることができる。
【0051】
比較例2
1、ARA油脂100kgに、油溶性酸化防止剤天然混合トコフェロール50g、ローズマリー40g、レシチン5g、パルミチン酸アスコルビル30gを添加し、すなわち総油重量の0.125%である。乳化混合が均一である。
2、真空度-0.08MPaの真空条件下で、油脂を吸引して70kgのトウモロコシ穂軸粉末に噴霧し、90分間真空吸着させる。
3、吸着が完了した後に、200gのD-イソアスコルビン酸ナトリウム、400gの水溶性混合トコフェロール粉末、150gのレシチン粉末と480gのセルラーゼ、100gのβ-グルカナーゼ、150gのβ-マンナナーゼ、500gの中性プロテアーゼを加えて均一に撹拌混合する(酵素活性29735U/g)。
4、混合粉末に15kgの濃度が5%のアラビアガム溶液を加えて均一に撹拌混合し、振動造粒機に入れて造粒し、顆粒は丸め機に入れて円形化・乾燥を行う。
5、乾燥後、顆粒を80°Cの温度を有するコーティング機に入れ、濃度4%の450kgのキトサン溶液を用いてコーティング・乾燥を行う。
6、一層のコーティングが終わった後、コーティング機の温度を35℃に下げ、80kgの水素化パーム脂肪酸を使用して二層のコーティングを行う。
7、二次コーティング後の複合したルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末260kgを得て、その中のARAの含有量は17%であり、製品VII類である。
8、製品VII類250g/頭牛を1日当たりの飼料に添加して1日当たりのTMR飼料を調製し、毎日、牧場の具体的な状況に応じて朝、晩に給餌する。
9、飼育した乳牛は飼育後7、14、21及び28日にサンプリングして牛乳におけるDHA、乳脂肪などの指標を検出する。
10、得られた多価不飽和脂肪酸ARAを豊富に含む牛乳はプロセス加工を経て純牛乳、粉乳、ヨーグルト、ラクトースを含まない栄養補給乳などの乳製品を生産することに用いることができる。
【0052】
比較例3
1、DHA油脂とARA油脂を重量比DHA:ARA=4:1の割合で混合し、100kgの混合油を得て、油溶性酸化防止剤天然混合トコフェロール50g、ローズマリー40g、レシチン5g、パルミチン酸アスコルビル30gを添加し、すなわち総油重量の0.125%である。乳化混合が均一である。
2、真空度-0.08MPaの真空条件下で、油脂を吸引して80kgのふすまに噴霧し、30分間真空吸着させる。
3、吸着が完了した後に、190gのD-イソアスコルビン酸ナトリウム、190gの水溶性混合トコフェロール粉末、120gのレシチン粉末と900gのセルラーゼ、180gのβ-グルカナーゼ、360gのβ-マンナナーゼ、900gの中性プロテアーゼを加えて均一に撹拌混合する(酵素活性28461U/g)。
4、混合粉末に36kgの濃度が5%のアラビアガム溶液を加えて均一に撹拌混合し、振動造粒機に入れて造粒し、顆粒は丸め機に入れて円形化・乾燥を行う。
5、乾燥後、顆粒を70°Cの温度を有するコーティング機に入れ、濃度5%の360kgのキトサン溶液を用いてコーティング・乾燥を行う。
6、一層のコーティングが終わった後、コーティング機の温度を30℃に下げ、80kgの水素化パーム脂肪酸を使用して二層のコーティングを行う。
7、二次コーティング後の複合したルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末260kgを得て、その中のDHAとARAの含有量はそれぞれ18%、4%であり、製品VIII類である。
8、製品VIII類250g/頭牛を1日当たりの飼料に添加して1日当たりのTMR飼料を調製し、毎日、牧場の具体的な状況に応じて朝、晩に給餌する。
9、飼育した乳牛は飼育後7、14、21及び28日にサンプリングして牛乳におけるDHA、乳脂肪などの指標を検出する。
10、得られた多価不飽和脂肪酸DHA及びARAを豊富に含む牛乳はプロセス加工を経て純牛乳、粉乳、ヨーグルト、ラクトースを含まない栄養補給乳などの乳製品を生産することに用いることができる。
【0053】
比較例4
1、DHA油脂とARA油脂を重量比DHA:ARA=1:4の割合で混合し、100kgの混合油を得て、油溶性酸化防止剤天然混合トコフェロール50g、ローズマリー40g、レシチン5g、パルミチン酸アスコルビル30gを添加し、すなわち総油重量の0.125%である。乳化混合が均一である。
2、真空度-0.08MPaの真空条件下で、油脂を吸引して70kgのトウモロコシ穂軸粉末に噴霧し、90分間真空吸着させる。
3、吸着が完了した後に、200gのD-イソアスコルビン酸ナトリウム、400gの水溶性混合トコフェロール粉末、150gのレシチン粉末と480gのセルラーゼ、100gのβ-グルカナーゼ、150gのβ-マンナナーゼ、500gの中性プロテアーゼを加えて均一に撹拌混合する(酵素活性29735U/g)。
4、混合粉末に15kgの濃度が5%のアラビアガム溶液を加えて均一に撹拌混合し、振動造粒機に入れて造粒し、顆粒は丸め機に入れて円形化・乾燥を行う。
5、乾燥後、顆粒を80°Cの温度を有するコーティング機に入れ、濃度4%の450kgのキトサン溶液を用いてコーティング・乾燥を行う。
6、一層のコーティングが終わった後、コーティング機の温度を35℃に下げ、80kgの水素化パーム脂肪酸を使用して二層のコーティングを行う。
7、二次コーティング後の複合したルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末260kgを得て、その中のDHAとARAの含有量はそれぞれ4%、18%であり、製品IX類である。
8、製品IX類250g/頭牛を1日当たりの飼料に添加して1日当たりのTMR飼料を調製し、毎日、牧場の具体的な状況に応じて朝、晩に給餌する。
9、飼育した乳牛は飼育後7、14、21及び28日にサンプリングして牛乳におけるDHA、乳脂肪などの指標を検出する。
10、得られた多価不飽和脂肪酸DHA及びARAを豊富に含む牛乳はプロセス加工を経て純牛乳、粉乳、ヨーグルト、ラクトースを含まない栄養補給乳などの乳製品を生産することに用いることができる。
【0054】
実施例1を参照して、DHA:ARAの質量比が2:1、1:2であるルーメンバイパス多価不飽和脂肪酸粉末をそれぞれ調製し、1日当たり250g/頭の量を1日当たりの飼料に添加して1日当たりのTMR飼料を調製する。具体的な方法は次のとおりである:
1、基礎とする1日当たりの飼料:濃厚飼料+粗飼料(毎日牛場の元の飼育状况を維持する:濃厚飼料は10kgであり、粗飼料30kgはアルファルファ、オーツ麦、サイレージトウモロコシなどの通常飼料原料である)。
2、乳牛選び
体重が650kg前後で、体況が近く、平均泌乳日が100日前後の健康な乳牛を選ぶ。
3、給餌期
全給餌期間中、牧場は毎日朝、昼、晩に給餌し、本発明の飼料250gを基礎とする1日当たりの飼料に添加して1日当たりのTMR飼料を調製する。
4、乳サンプル採集
乳サンプルの採集基準:飼育開始から7日おきに朝、昼、夜4:3:3の割合で各頭牛の乳サンプルを採集し、乳成分と多価不飽和脂肪酸の検査を行う。
【0055】
上記飼育後に産出する牛乳に多価不飽和脂肪酸を含み、具体的な含有量は以下のとおりである(単位mg/100ml):
乳中のDHAとARAの含有量(単位mg/100ml)
【表4】
【0056】
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は反芻動物乳における多価不飽和脂肪酸の含有量を高めることができ、n-3及びn-6多価不飽和脂肪酸が一定の割合範囲内で効果的に相互に促進作用して多価不飽和脂肪酸の転化率を高めることができる。本発明は吸着剤を利用して高含有量DHA及びARAを同時に吸着させ、吸着が終了した後に適量の適切な酵素を添加して均一に混合し、結合剤を用いて結合造粒を行い、多糖類で一層のコーティング固定を行い、最後に脂肪粉末を利用してルーメンバイパスコーティングを行い、反芻動物の乳脂肪及び乳中のDHA、ARA等の多価不飽和脂肪酸の含有量を向上させるルーメンバイパス高転化率多不飽和脂肪酸粉末を得る。当該発明は食品グレード乳清粉末、カゼインナトリウム等の高価なコーティング壁材の使用を効果的に回避し、樹脂の溶解にエタノール等の有機溶媒を使用することを回避する。生産コストを効果的に低減して生産プロセスを短縮し、多価不飽和脂肪酸の転化率を向上させ、工業的生産に基礎を定める。
【国際調査報告】