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特表2023-532155線維症の診断および/またはモニタリングに使用するための化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】線維症の診断および/またはモニタリングに使用するための化合物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20230719BHJP
   A61K 49/14 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20230719BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20230719BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K49/14
A61K51/08 200
A61B5/055 383
G01T1/161 A
G01T1/161 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523671
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2021067653
(87)【国際公開番号】W WO2022002834
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】2050786-9
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523001005
【氏名又は名称】アンタロス・トレイサー・アクチエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】オロフ・エリクソン
(72)【発明者】
【氏名】オロフ・コシュグレン
(72)【発明者】
【氏名】クリステル・ヴェステルンド
(72)【発明者】
【氏名】ミーケル・ワーグナー
【テーマコード(参考)】
4C085
4C096
4C188
4H045
【Fターム(参考)】
4C085GG01
4C085HH03
4C085HH07
4C085KA09
4C085KA29
4C085KB82
4C085LL20
4C096AA11
4C096AD19
4C096FC14
4C188EE02
4C188EE25
4C188FF04
4C188FF07
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA50
4H045BA51
4H045BA71
4H045EA20
4H045EA50
4H045EA61
4H045FA10
4H045FA33
4H045GA25
(57)【要約】
(i)式Iの化合物:(I)、もしくはその薬学的に許容される塩、および(ii)核種M、または式Iの化合物および/もしくは核種Mの薬学的に許容される塩を含む組成物であって、Cは、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、デスフェリオキサミンB(DFO)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-グルタル酸-4,7-酢酸(NOTAGA)、2-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザ-1-シクロドデシル]グルタル酸(DOTAGA)からなる群から選択されるキレート剤、および前記キレート剤のいずれか1つの誘導体であり;L(式L)は、リンカー(L);(式中、mは、1~20の範囲内の整数であり、XはNHまたはC(O)であり、キレート剤のC(O)またはNH部分とアミド結合、すなわちC(O)NHを形成する)であり、pは0または1であり、Qは配列番号1のペプチド、配列番号1に対して少なくとも88.8%の同一性を有する配列番号1のペプチドアナログ、および/またはC末端のCOOHがCONHで置き換えられた配列番号1のペプチド、配列番号1に対して少なくとも88.8%の同一性を有する配列番号1のペプチドアナログであり、C末端のCOOHがCONHで置き換えられており、Mは、68Ga、18F、64Cu、44Sc、89Zr、111In、67Ga、99mTc、Mn、Gd、177Luおよび86/90Yからなる群から選択される、組成物が提供される。該組成物は、線維症の診断および/またはモニタリングにおいて使用してもよい。
【化1】
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)式Iの化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩、
および
(ii)核種M、またはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、
Cは:
【化2-1】
【化2-2】
からなる群から選択されるキレート剤、
および前記キレート剤のいずれか1つの誘導体であり、
Lはリンカー:
【化3】
(式中、
mは、1~20の範囲内の整数であり、
XはNHまたはC(O)であり、キレート剤のC(O)またはNH部分とアミド結合、すなわちC(O)NHを形成する)
であり、
pは0または1であり、
Qは配列番号1のペプチド、配列番号1に対して少なくとも88.8%の同一性を有する配列番号1のペプチドアナログ、および/または
C末端のCOOHがCONHで置き換えられた配列番号1のペプチド、配列番号1に対して少なくとも88.8%の同一性を有する配列番号1のペプチドアナログであり、
Mは、68Ga、18F、64Cu、44Sc、89Zr、111In、67Ga、99mTc、177Lu、86/90Y、MnおよびGdからなる群から選択される、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、式IIの化合物:
【化4】
またはその薬学的に許容される塩を含み、
前記式IIの化合物は、
(i)請求項1に定義される式Iの化合物、および
(ii)請求項1に定義される核種Mの組み合わせであり、
ここで、(i)および(ii)は、1に等しい(i)/(ii)比で提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式Iの化合物は、式Ia、式Ib、式Ic、式Id、式Ie、式Ifまたは式Ig
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
の化合物からなる群、
もしくは前述の化合物のいずれか1つの誘導体、
または前述の化合物のいずれか1つもしくは前述の化合物のいずれか1つの誘導体の薬学的に許容される塩から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
式Iの化合物は、
化合物1:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH、
化合物2:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-A-N-OH、
化合物3:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-NH
化合物4:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-n-OH、
化合物5:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-A-N-NH
化合物6:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-V-N-N-N-OH、
化合物7:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-I-H-L-N-N-N-OH、
化合物8:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-OH、
化合物9:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-H-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH、
化合物10:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-K-OH、
化合物11:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH、
化合物12:DOTA-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH、
化合物13:HN-L-R-E-L-H-L-N-N-N-K(DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O))-NH
化合物14:HN-L-R-E-K(DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O))-H-L-N-N-N-OH、
化合物15:HN-L-R-E-L-H-K(DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O))-N-N-N-OH、および
化合物16:NOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH
からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
式Iの化合物は、
化合物1:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH、
化合物3:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-NH
化合物4:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-n-OH、
化合物5:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-A-N-NH
化合物6:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-V-N-N-N-OH、
化合物11:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH、
化合物12:DOTA-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH、
化合物13:HN-L-R-E-L-H-L-N-N-N-K(DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O))-NH、および
化合物16:NOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH
からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
式Iの化合物は、
化合物1:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH、
化合物2:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-A-N-OH、
化合物3:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-NH
化合物5:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-A-N-NH、および
化合物16:NOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH
からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
式Iの化合物は、
化合物1:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OHである、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
Mは、
(i)68Ga、18F、64Cu、111In、99mTc、Gd、177Luおよび86/90
(ii)68Ga、または
(iii)18
である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤をさらに含む医薬組成物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
線維症の診断および/またはモニタリングに使用するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
線維症に罹患している、罹患していると疑われる、および/または線維症の治療を受けている患者における線維症の程度の診断および/またはモニタリングに使用するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
線維症は、以下:肝線維症、腎線維症、心臓線維症、膵線維症、脳線維症、特発性肺線維症のような肺線維症のうちの1つまたはそれ以上である、請求項10または11に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
線維症の診断および/またはモニタリングは、線維症の程度の診断および/またはモニタリングを伴う、請求項10~12のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
診断および/またはモニタリングは、
- ex vivo、および/または
- 患者体内などのin vivo
で行われる陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)または磁気共鳴画像(MRI)のようなイメージングを伴う、請求項10~13のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
線維症に罹患している、罹患していると疑われる、および/または線維症の治療を受けている患者における線維症の程度の診断および/またはモニタリングのような、線維症の診断および/またはモニタリングのための、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
線維症は、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、膵線維症、脳線維症、特発性肺線維症のような肺線維症のうちの1つまたはそれ以上である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
診断および/またはモニタリングは、
- ex vivo、および/または
- 患者体内などのin vivo
で行われる陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)または磁気共鳴画像(MRI)のようなイメージングを伴う、請求項15または16に記載の使用。
【請求項18】
請求項1、および3~7に定義される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
請求項2~8に定義される式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項20】
イメージング剤として使用するための、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
線維症の診断および/またはモニタリングに使用するための、請求項19または20に記載の化合物。
【請求項22】
線維症に罹患している、罹患していると疑われる、および/または線維症の治療を受けている患者における線維症の程度の診断および/またはモニタリングに使用するための、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
線維症は、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、膵線維症、脳線維症、特発性肺線維症のような肺線維症のうちの1つまたはそれ以上である、請求項22に記載の使用のための化合物。
【請求項24】
診断および/またはモニタリングは、
- ex vivo、および/または
- 患者体内などのin vivo
で行われる陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)または磁気共鳴画像(MRI)のようなイメージングを伴う、請求項21~23のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項25】
線維症の診断および/またはモニタリングのための方法であって:
a)以下:請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物、または
請求項19に記載の化合物、
のうちの1つまたはそれ以上から選択されるイメージング剤を、線維症に罹患している、罹患していると疑われる、および/または線維症の治療を受けている患者に投与する工程;
b)陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)または磁気共鳴画像(MRI)イメージングのような医用イメージング技術を患者に施し、工程a)において投与されたイメージング剤からの信号を記録する工程;
c)患者が線維症に罹患しているかどうかを判断および/またはモニタリングする工程、ならびに
d)場合により、線維症の程度を判断する工程
を含む、方法。
【請求項26】
線維症は、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、膵線維症、脳線維症および/または特発性肺線維症のような肺線維症などの固形臓器の線維症である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
患者は、以下:コルチコステロイド、抗ウイルス薬、糖尿病治療薬、血圧調節薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、ベータ遮断薬、アルドステロン拮抗薬、血管内皮細胞増殖因子阻害薬のうちの1つまたはそれ以上を伴う治療のような線維症の治療を受ける、請求項25または26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非環状ペプチド、リンカー、キレート剤、および放射性核種のような核種を含む新規化合物に関する。該化合物は、患者の肝臓、腎臓、心臓、脳、膵臓、および肺に生じる線維症のような線維症の診断および/またはモニタリングに使用するための放射性トレーサーのようなトレーサーとして使用することができる。本開示はさらに、該化合物を製造する方法、前述の方法における中間体として使用することができる化合物、ならびに患者における線維症の診断および/またはモニタリングのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線維化は、傷害に対する反応として正常な生理機能で起こり得る結合組織の形成であり、これは瘢痕化として知られている。しかし、病理学的な線維化形成を構成する結合組織の過剰な形成および沈着は、疾患にある多くの異なる組織、例えば、肝臓、腎臓、心臓、脳、膵臓、肺において重要な特徴である。病理学的な線維化形成は、コラーゲン、特にI型コラーゲンの産生および沈着の増加によるもので、その結果、組織の弾性が失われ、臓器の機能が徐々に失われる。肝臓、腎臓、心臓、脳、膵臓、肺のような臓器に関わる、多くの蔓延する重症疾患に線維化が関与していることが見出されている。
【0003】
線維化疾患、すなわち線維症に対する現在の治療は、主に炎症カスケードを標的としているが、新規治療の開発努力は非常に困難であることが判明している。治療の目的は、線維化過程を遅らせることである。現在までのところ、残念ながら線維症を回復に向かわせることができる利用可能な薬物は存在しない。炎症系を標的とした薬物の開発という課題に加え、線維化疾患には信頼できるバイオマーカーがないことが多い。いくつかの前臨床疾患モデルが開発されているが、多くの場合、マウスからヒトへの「トランスレータビリティ」に問題がある。線維化疾患の診断は、採取可能な場合、生検サンプルから判断することができる。しかし、薬物開発に求められるように、線維化過程の変化を正確に、かつ繰り返し測定する方法はほとんどない。肝線維化疾患では、磁気共鳴エラストグラフィー(MRE)が肝硬度の非侵襲的バイオマーカーとして使用されているが、ほとんどの線維化疾患ではそのような非侵襲的方法はまだ利用可能ではない。当然ながら、非侵襲的な方法は、生検のような侵襲的な方法よりも便利で、繰り返し実施することができ、患者を傷つけるリスクが低いので、より望ましい方法である。したがって、線維症を検出するためのさらなる非侵襲的診断方法が提案されている。
【0004】
非特許文献1は、陽電子放出断層撮影(PET)による線維症のイメージングおよび定量化のための68Ga標識コラゲリンアナログの合成および前臨床評価を開示している。コラーゲンは、線維化組織の直接的な特定をもたらす線維症の分子イメージングにおいて標的とすることができるバイオマーカーであるため、該アナログは、線維化組織において過剰発現したコラーゲンに結合することを目的として製造された。トレーサーは、腎臓および膀胱を除くほとんどの臓器から顕著なウォッシュアウトパターンを示したことが開示されている。
【0005】
非特許文献2は、前臨床モデルにおける肺線維症の検出および病期分類のためのI型コラーゲン標的PETプローブを開示している。使用されたプローブは、I型コラーゲンに特異性を有することが見出された68Ga-CBP8である。68Ga-CBP8は、線維症マウスの肺で対照マウスと比較して著しく増強されたPET信号をもたらしたこと、周辺組織での非特異的集積は線維症マウス、対照マウスとも同様で低いが、腎臓で高いオフターゲット蓄積を示したことが記載されている。
【0006】
特許文献1は、軟組織の状態に苦しむ対象の治療において有用性を有するポリマーコンジュゲートを開示している。ポリマーコンジュゲートは、配列LRELHLNNN(IUPAC-IUB命名法)を有するペプチドのようなコラーゲン結合剤で置換された硫酸化グリコサミノグリカン鎖を含む。
【0007】
このように、コラーゲン、特にI型コラーゲンは、線維症のバイオマーカーとして公知である。さらに、腎臓を除く全ての臓器において、上記の放射性トレーサーの環状ペプチドは、低いバックグラウンド結合を示しながら、コラーゲンに親和性を有することが見出されている。
【0008】
重要なことには、線維症の正確なイメージングを可能にするため、放射性トレーサーのようなトレーサーは、正常組織への非特異的結合が少なく、血液クリアランス、および健常な臓器からのウォッシュアウトが速いべきである。したがって、I型コラーゲンのようなコラーゲンの沈着物を欠く組織への結合は少ないか、全くないべきである。言い換えれば、放射性トレーサーの生体内分布は、主に線維化組織を伴う臓器に結合が起こるように選択的であるべきである。
【0009】
放射性トレーサーは、多くの異なる理由で組織内での滞留を示すことがある。コラーゲン標的放射性トレーサーは、例えば、細胞成分への非特異的結合、または受容体のような分子実体の意図的でない特異的標的化によって組織内で滞留することがある。放射性標識ペプチドは、さらに、尿中排泄の際に腎尿細管で再吸収を示し、その後、腎皮質で放射性核種が細胞内にトラップされることがある。このような組織での滞留は、その原因に関わらず、該組織における線維化病変の存在および/または進行の測定および診断の妨げとなる。
【0010】
さらに、線維症の存在を検出するためには、臓器全体の線維化を確実に調査するために、放射性トレーサーが臓器に十分に浸透可能であることが重要である。肝臓、腎臓、心臓、脳、膵臓、肺のような固形臓器では、非固形臓器と比較して、十分な浸透がより困難な場合がある。
【0011】
腎臓に対する好適な生体内分布のように、全ての臓器またはほとんどの臓器に好適な生体内分布を有する線維症用放射性トレーサーのようなトレーサーが必要である。さらに、線維症を調査している臓器全体に浸透可能な線維症用トレーサーが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2018/053276
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Nuclear Medicine and Biology,41(2014)728~736頁
【非特許文献2】Sci.Trans.Med.9,2017,1~11頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本開示の目的は、上述した問題のうちの少なくとも1つまたはそれ以上を緩和することである。さらに、本開示の目的は、これまで知られている技術によって提供されない利点および/または態様を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的は、請求項1もしくは2に記載の組成物、または請求項19に記載の化合物により、および請求項25に記載の方法を使用することにより達成することができる。さらなる実施形態は、従属請求項、明細書および図面に記載されている。
【0016】
本開示は:
(i)式Iの化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩、
および
【0017】
(ii)核種M、またはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、
Cは:
【化2-1】
【化2-2】
からなる群から選択されるキレート剤、
および前記キレート剤のいずれか1つの誘導体であり、
【0018】
Lはリンカー:
【化3】
(式中、
mは、1~20の範囲内の整数であり、
XはNHまたはC(O)であり、キレート剤のC(O)またはNH部分とアミド結合、すなわちC(O)NHを形成する)
であり、
pは0または1であり、
Qは、
配列番号1のペプチド、配列番号1に対して少なくとも88.8%の同一性を有する配列番号1のペプチドアナログ、および/または
C末端のCOOHがCONHで置き換えられた配列番号1のペプチド、配列番号1に対して少なくとも88.8%の同一性を有する配列番号1のペプチドアナログであり、
Mは、68Ga、18F、64Cu、44Sc、89Zr、111In、67Ga、99mTc、Mn、Gd、177Luおよび86/90Yからなる群から選択される、組成物を提供する。
【0019】
本開示はまた、本明細書に記載される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0020】
さらに、本開示は、式IIの化合物:
【化4】
またはその薬学的に許容される塩であって、
前記式IIの化合物は、
(i)請求項1に定義される式Iの化合物、および
(ii)請求項1に定義される核種Mの組み合わせ
であり、
ここで、(i)および(ii)は、1に等しい(i)/(ii)比で提供される、化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0021】
また、
線維症の診断および/またはモニタリングに使用するための、
本明細書に記載される組成物、
または、
本明細書に記載される式IIの化合物、もしくはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0022】
また、
線維症の診断および/またはモニタリング用製剤を製造するための、
本明細書に記載される組成物、
または、
本明細書に記載される式IIの化合物、もしくはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0023】
また、
線維症に罹患している、罹患していると疑われる、および/または線維症の治療を受けている患者における線維症の診断および/またはモニタリングのような、線維症の診断および/またはモニタリングのための、
本明細書に記載される組成物、
または、
本明細書に記載される式IIの化合物、もしくはその薬学的に許容される塩の使用も提供される。
【0024】
さらに、線維症の診断および/またはモニタリングのための方法であって:
a)以下:
本明細書に記載される組成物、
本明細書に記載される式IIの化合物、
本明細書に記載される式IIの化合物の薬学的に許容される塩、のうちの1つまたはそれ以上から選択されるイメージング剤を、
線維症に罹患している、罹患していると疑われる、および/または線維症の治療を受けている患者に投与する工程;
b)陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)または磁気共鳴画像(MRI)イメージングのような医用イメージング技術を患者に施し、工程a)において投与されたイメージング剤からの信号を記録する工程;
c)患者が線維症に罹患しているかどうかを判断および/またはモニタリングする工程、ならびに
d)場合により、線維症の程度を判断する工程を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】DOTA、すなわち1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸の化学構造を示す図である。
図2】NOTA、すなわち1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸の化学構造を示す図である。
図3】TETA、すなわち1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸の化学構造を示す図である。
図4】DTPA、すなわち、ジエチレントリアミン五酢酸の化学構造を示す図である。
図5】DFO、すなわち、デスフェリオキサミンBの化学構造を示す図である。
図6】NOTAGAの化学構造を示す図である。
図7】DOTAGAの化学構造を示す図である。
図8】化合物1の化学構造を示す図である。
図9】化合物14の化学構造を示す図である。
図10図10aは、線維化誘発肝組織に対する[68Ga]Ga-DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OHの結合全体および非特異的結合を、非線維化肝臓と比較して示す図である。図10bは、[68Ga]Ga-DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OHの肝組織への結合強度、および結合強度と線維症の程度との相関を示す図である。
図11】ラットにおける[68Ga]Ga-DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OHの生体内分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は:
(i)式Iの化合物:
【化5】
もしくはその薬学的に許容される塩、
および
【0027】
(ii)核種M、もしくはその薬学的に許容される塩を含む組成物、または(i)および(ii)からなる組成物であって、
Cは:
【化6-1】
【化6-2】
からなる群から選択されるキレート剤、
および前記キレート剤のいずれか1つの誘導体であり、
【0028】
Lはリンカー:
【化7】
(式中、
mは、1~20の範囲内の整数であり、
XはNHまたはC(O)であり、キレート剤のC(O)またはNH部分とアミド結合、すなわちC(O)NHを形成する)
であり、
pは0または1であり、
Qは配列番号1のペプチド、配列番号1に対して少なくとも88.8%の同一性を有する配列番号1のペプチドアナログ、および/または
C末端のCOOHがCONHで置き換えられた配列番号1のペプチド、配列番号1に対して少なくとも88.8%の同一性を有する配列番号1のペプチドアナログであり、
Mは、68Ga、18F、64Cu、44Sc、89Zr、111In、67Ga、99mTc、Mn、Gd、177Luおよび86/90Yからなる群から選択される、組成物を提供する。
【0029】
本明細書に記載の組成物は、式IIの化合物:
【化8】
またはその薬学的に許容される塩であって、
前記化合物は、
(i)本明細書に記載される式Iの化合物、および
(ii)本明細書に記載される核種Mの組み合わせ
である、化合物またはその薬学的に許容される塩を含んでもよい。
【0030】
式Iの化合物と、式IIの化合物における核種Mとの比、すなわち(i)/(ii)は、1に等しくてもよい。したがって、式Iの化合物と、式IIの化合物における核種Mとの比、すなわち(i)/(ii)が1に等しい、本明細書に記載される組成物が提供される。しかしながら、化学量論比を制御することが常に可能であるとは限らず、したがって、式Iの化合物と核種Mとは、不等モル量のような不等量で組み合わせ、その結果、追加量の式Iの化合物および/または核種Mと合わせて、式Iの化合物と核種との比が1である前述の式IIの化合物を含む組成物を得てもよい。
【0031】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、式Iの化合物または式IIの化合物のような本明細書に記載される化合物は、コラーゲンIに結合することにより作用すると考えられる。その結果、前述の化合物または前述の化合物を含む組成物は、本明細書に記載される線維症のような線維症のイメージング剤として使用することができる。
【0032】
本明細書に記載される化合物は:1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、デスフェリオキサミンB(DFO)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-グルタル酸-4,7-酢酸(NOTAGA)、2-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザ-1-シクロドデシル]グルタル酸(DOTAGA)、およびこれらの誘導体からなる群から選択されるキレート剤を含んでもよく、該キレート剤からなってもよい。誘導体は、1種またはそれ以上のカルボン酸の、アミドまたはエステルへの交換を含んでもよい。さらなる例では、DOTAGAをDOTAの代わりに使用してもよい。本明細書に記載される化合物のキレート剤がDOTA、NOTA、TETA、DTPA、NOTAGAまたはDOTAGAをベースとする場合、カルボン酸の1つのヒドロキシル基がNHと交換され、NHを介してリンカーへの結合が行われる。本明細書に記載される化合物のキレート剤がDFOである場合、DFOはその末端アミノ基を介してリンカーのカルボニル基に結合する。本明細書で使用される場合、カルボニル基はCOまたはC(O)と表すことがある。
【0033】
本明細書に開示される化合物の整数mの値は、上記の範囲内、すなわち1~20の整数であり得ることが理解されよう。一例では、mは1、2または3である。
【0034】
本明細書に記載されるように、リンカーLは、キレート剤のC(O)またはNH部分とアミド結合、すなわちC(O)NHを形成するNHまたはC(O)であり得るXを含む。したがって、XがNHである場合、Xはキレート剤のC(O)部分、すなわち、カルボニル基に結合する。さらに、XがC(O)である場合、Xはキレート剤のNH部分に結合する。
【0035】
さらに、本明細書に記載されるように、リンカーLは:
【化9】
である。
【0036】
したがって、リンカーLは、-X-(CHCHO)-CH-C(O)-として設計してもよい。このことから、式Iの化合物は、キレート剤-[X-(CHCHO)-CH-C(O)]-Qとして設計してもよい。例えば、キレート剤CがDOTA、XがNH、mが2、pが1、QがLRELHLNNNの場合、式Iの化合物はDOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OHと設計してもよい。
【0037】
本明細書に記載される化合物のペプチドQは、C末端のCOOHがCONHに置き換えられた配列番号1(LRELHLNNN)または配列番号1のアナログによるペプチド(すなわちアミノ酸配列)を含んでもよく、またはそれからなってもよい。C末端のCOOHがCONHで置き換えられている場合、配列は例えば-LRELHLNNN-NHと書かれる。あるいは、本明細書に記載される化合物のペプチドQは、C末端のCOOHがCONHで置き換えられた、配列番号1に対して少なくとも88.8%の同一性を有するペプチド、もしくは配列番号1のアナログに対して少なくとも88.8%の同一性を有する配列を有するペプチドを含んでもよく、またはそれからなってもよい。本明細書の文脈において、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも88.8%の同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチドによって、配列番号1のアミノ酸配列が1つのアミノ酸変化を含み得ることを除き、配列番号1と同一であるペプチドが意図される。この1つのアミノ酸変化は、天然アミノ酸、すなわちLアミノ酸、またはDアミノ酸を伴ってもよい。言い換えれば、配列番号1に対して少なくとも88.8%の同一であるアミノ酸配列を有するペプチドを得るために、配列番号1中の1つのアミノ酸を欠失、伸長、もしくは他のアミノ酸で置換してもよく、または1つのアミノ酸を配列番号1に挿入してもよい。置換、伸長または挿入に使用されるアミノ酸は、天然アミノ酸であってもよく、Dアミノ酸であってもよい。配列番号1のこれらのアミノ酸変化は、アミノまたはカルボキシ末端位置のいずれか、または配列番号1のアミノ酸の間に個別に散在するそれらの末端位置の間のどこでも起こり得る。
【0038】
ペプチドLRELHLNNN中の文字は、各アミノ酸の立体配置がL、すなわち天然アミノ酸である通常のアミノ酸の文字である。したがって、LRELHLNNNは、全てのアミノ酸が天然アミノ酸であるLeu-Arg-Glu-Leu-His-Leu-Asn-Asn-Asnの配列を意図している。本明細書では、Leuはロイシン、Argはアルギニン、Gluはグルタミン酸、Hisはヒスチジン、Asnはアスパラギンを表している。ペプチドQは非環状ペプチドである。
【0039】
2つのアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、一致した数を、同定された配列に示される長さで割った後、得られた値に100を乗じることによって決定される。本明細書の全体にわたって使用される「同一性%」、「同一%」のような用語は、例えば、以下のように算出することができる:クエリ配列は、CLUSTAL Wアルゴリズム(Thompsonら、(1994)Nucleic Acids Research、22:4673~4680頁)を使用して標的配列にアライメントされる。比較は、アライメントされた配列のうち最も短い配列に対応するウィンドウで行われる。アライメントされた配列のうち最も短い配列が標的配列である場合もある。その他の場合、クエリ配列がアライメントされた配列のうち最も短い配列を構成することもある。各位置のアミノ酸残基を比較し、クエリ配列の中で標的配列と同一である対応位置の割合を、同一性%として報告する。
【0040】
ペプチドQのアミノ酸は、立体配置がL、すなわち、天然アミノ酸(大文字で表記)、または立体配置がDのいずれかであり得る。立体配置がDのアミノ酸は、小文字で表記される。本明細書に記載される式Iの化合物におけるペプチドQのさらなる例は、以下の表Iに列挙されている。
【0041】
Qのアミノ酸は、QをLRELHLNNNとして記載してもよいように、当該技術分野において公知の1文字コードで記載してもよい。本明細書に記載される化合物には、N末端が左側にあり、C末端が右側にあるように設計された直鎖(すなわち、非環状)ペプチドがあることが理解されよう。
【0042】
リンカーLは、Qのアミノ酸のうちの1つにおける任意のアミノ基と結合することができる。N末端アミノ基の水素のいずれか1つがリンカーLへの結合で置き換えられてもよく、あるいは、リンカーLは、側鎖アミノ基、例えば、Qの任意の位置にあるリジンにおける水素のうちの1つを置き換えることによって結合を形成してもよい。
【0043】
また、式Iの化合物が、式Ia、式Ib、式Ic、式Id、式Ie、式Ifまたは式Ig
【化10-1】
【化10-2】
【化10-3】
の化合物からなる群、
もしくは前述の化合物のいずれか1つの誘導体、
または前述の化合物のいずれか1つもしくは前述の化合物のいずれか1つの誘導体の薬学的に許容される塩から選択される、本明細書に記載される組成物も提供される。
【0044】
本開示はまた、本明細書に記載される式Iの化合物を提供する。したがって、式Iの化合物:
【化11】
(式中、C、L、p、およびQは、本明細書に記載される通りである)
またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0045】
例えば、pが0である場合、式Iの化合物の構造はC-Qであり、すなわち、リンカーは存在しない。pが1である場合、式Iの化合物の構造はC-L-Qである。
【0046】
式Iの化合物は、以下の構造:
化合物1
DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH(図8参照)
【0047】
化合物2
DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-A-N-OH
【0048】
化合物3
DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-NH
【0049】
化合物4
DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-n-OH
【0050】
化合物5
DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-A-N-NH
【0051】
化合物6
DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-V-N-N-N-OH
【0052】
化合物7
DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-I-H-L-N-N-N-OH
【0053】
化合物8
DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-OH
【0054】
化合物9
DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-H-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH
【0055】
化合物10
DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-K-OH
【0056】
化合物11
DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH
【0057】
化合物12
DOTA-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH
【0058】
化合物13
N-L-R-E-L-H-L-N-N-N-K(DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O))-NH
【0059】
化合物14
N-L-R-E-K(DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O))-H-L-N-N-N-OH(図9参照)
【0060】
化合物15
N-L-R-E-L-H-K(DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O))-N-N-N-OH
【0061】
化合物16
NOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH
を有してもよい。
【0062】
化合物1~16のキレート剤、リンカー、ペプチドおよびペプチドC末端は、以下の表Iにまとめられている:
【0063】
【表1】
【0064】
化合物13、14および15において、リンカーはペプチドのN末端ではなく、代わりにペプチド中の異なる位置にあるリジンのアミノ側鎖に結合している。結合部分には、互いに結合しているリンカーおよびリジンの両方に*を表記している。太字で表記した部分は、表I中の化合物番号1と比較した、式Iの化合物の変化(すなわち、配列番号におけるキレート剤(C)、リンカー(L)またはペプチド配列(Q)の変化)を表す。
【0065】
また、本明細書に記載される式IIの化合物が提供される。したがって、式IIの化合物:
【化12】
(式中、C、L、p、QおよびMは、本明細書に記載される通りである)
またはその薬学的に許容される塩であって、
前記式IIの化合物は、
(i)本明細書に記載される式Iの化合物、および
(ii)本明細書に記載される核種Mの組み合わせ
である、化合物またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0066】
式IIの化合物において、式Iの化合物および核種Mは、1に等しい比、すなわち1/1で提供してもよい。さらに、式IIの化合物は、追加量の式Iの化合物および核種Mと混和して提供してもよい。
【0067】
式IIの化合物の核種Mは、キレート剤における1つもしくはそれ以上の窒素原子、および/またはキレート剤におけるカルボン酸基の1つもしくはそれ以上の酸素に配位すると考えられる。例えば、キレート剤がDOTA、NOTA、TETA、DTPA、NOTAGAまたはDOTAGAをベースとする場合、核種Mは環状構造の1つもしくはそれ以上の窒素原子、および/または1つもしくはそれ以上のカルボン酸基に配位することがある。
【0068】
核種Mは、本明細書に記載される通りであり得る。Mが放射性核種である場合、以下:68Ga、18F、64Cu、44Sc、89Zr、111In、67Ga、99mTc、177Lu、86/90Yのうちのいずれか1つであり得る。さらに、核種Mは、以下の群:
(i)68Ga、18F、64Cu、111In、99mTc、Gd、177Luおよび86/90
(ii)68Ga、または
(iii)18
から選択してもよい。
【0069】
本明細書に記載される核種Mは、誘導体および/または錯体として提供してもよいことが理解されよう。例えば、18Fは、フッ化アルミニウム-18(Al18F)として提供してもよい。
【0070】
核種Mの選択は、式Iの化合物中のキレート剤Cに依存し得る。例えば、本明細書に記載される化合物であって:
キレート剤CがDOTA、核種Mが68Ga、64Cu、111In、MnもしくはGd、または177Luである、
キレート剤CがNOTA、核種Mが68Ga、18F、64Cuまたは111Inである、
キレート剤CがTETA、核種Mが64Cuである、
キレート剤CがDFO、核種Mが89Zrである、
キレート剤CがDTPA、核種Mが111Inまたは99mTcである、
キレート剤CがNOTAGA、核種Mが68Ga、64Cuまたは111Inである、および
キレート剤CがDOTAGA、核種Mが111In、177Lu、86/90Yである、
化合物が提供される。
【0071】
本明細書に記載される式IIの化合物における核種Mの存在により、線維症の診断および/またはモニタリングが可能になる。したがって、式IIの化合物はトレーサーと考えることができる。核種が放射性核種である場合、すなわち電離放射線の形態などで過剰なエネルギーを放出し得る不安定な原子である場合、式IIの化合物は、放射性トレーサーと考えることができる。放射性核種のような核種により、式IIの化合物がコラーゲンIを含む線維化組織に結合した際に追跡することが可能になる。トレーサーが放射性トレーサーである場合、その放射性崩壊を追跡に使用することができる。
【0072】
本明細書に記載されるトレーサーは、イメージング剤と考えることができる。したがって、式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩は、イメージング剤であり得る。さらに、本明細書に記載される組成物は、イメージング剤であり得る。
【0073】
本明細書に記載される組成物は、場合により、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤をさらに含む医薬組成物であり得る。
【0074】
また、
線維症の診断および/またはモニタリングに使用するための、
本明細書に記載される組成物、
または
本明細書に記載される式IIの化合物もしくはその薬学的に許容される塩も提供される。診断および/またはモニタリングは、線維症に罹患している、罹患していると疑われる、および/または線維症の治療を受けている患者において行ってもよい。
【0075】
また、
線維症の診断および/またはモニタリング用製剤を製造するための、
本明細書に記載される組成物、
または、
本明細書に記載される式IIの化合物もしくはその薬学的に許容される塩も提供される。
【0076】
また、
線維症に罹患している、罹患していると疑われる、および/または線維症の治療を受けている患者における線維症の診断および/またはモニタリングのような、線維症の診断および/またはモニタリングのための、
本明細書に記載される組成物、
または、
本明細書に記載される式IIの化合物もしくはその薬学的に許容される塩の使用も提供される。
【0077】
予想外に、本明細書に記載される組成物および化合物により、線維症の診断および/またはモニタリングが可能になることが見出されている。診断および/またはモニタリングは、イメージングを伴ってもよい。例えば、イメージング方法は、以下:
陽電子放出断層撮影(PET)
単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、または
磁気共鳴画像(MRI)、のうちの1つまたはそれ以上であり得る。
イメージングは、ex vivoで行ってもよく、患者体内などのin vivoで行ってもよい。
【0078】
さらに、驚くべきことに、本明細書に記載される組成物および化合物は、線維症の影響を受けた臓器に対して良好な生体内分布をもたらすことが見出されている。良好な生体内分布は、特に、腎線維症について見出されている。
【0079】
イメージング方法の選択は、本明細書に記載される式IIの化合物においてどの核種Mが使用されるかに影響を与えるであろう。例えば、イメージング方法としてPETを使用する場合、核種は68Ga、18F、64Cu、44Sc、89Zrおよび86Yであり得る。さらなる例では、イメージング方法としてSPECTを使用する場合、核種Mは111In、67Ga、99mTc、90Yおよび177Luであり得る。さらなる例では、イメージング方法としてMRIを使用する場合、核種MはMnまたはGdであり得る。
【0080】
本明細書に記載される線維症は、以下:肝線維症、腎線維症、心臓線維症、膵線維症、脳線維症、肺線維症のうちの1つまたはそれ以上であり得る。例えば、線維症は、以下:肝線維症、腎線維症、心臓線維症、膵線維症、脳線維症、特発性肺線維症のような肺線維症のうちの1つまたはそれ以上であり得る。一例において、線維症は、腎線維症であり得る。特に、本明細書に記載される線維症は、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺および膵臓のような固形臓器で生じている線維症であり得る。本明細書で使用される場合、固形臓器は、安定した組織の硬さを有し、中空でも液体でもない臓器である。また、本明細書で言及される線維症は、眼における線維症、すなわち眼線維症であり得ることも理解される。
【0081】
さらに、線維症の診断および/またはモニタリングは、線維症の程度の診断および/またはモニタリングを伴ってもよい。例えば、線維症の診断および/またはモニタリングは、患者における線維症の治療とともに行ってもよい。このようにして、治療方法の有用性および/または線維症の程度を評価することができる。
【0082】
さらに、線維症の診断および/またはモニタリングのための方法であって:
a)以下:
本明細書に記載される組成物、
本明細書に記載される式IIの化合物、
本明細書に記載される式IIの化合物の薬学的に許容される塩
のうちの1つまたはそれ以上から選択されるイメージング剤を、
線維症に罹患している、罹患していると疑われる、および/または線維症の治療を受けている患者に投与する工程;
b)陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)または磁気共鳴画像(MRI)イメージングのような医用イメージング技術を患者に施し、工程a)において投与されたイメージング剤からの信号を記録する工程;
c)患者が線維症に罹患しているかどうかを判断および/またはモニタリングする工程、ならびに
d)場合により、線維症の程度を判断する工程を含む
方法が提供される。
【0083】
本明細書に記載されるモニタリングは、線維化がどの程度生じているかのモニタリングを伴ってもよいことが理解されよう。このようにして、線維症の進行をモニタリングしてもよく、および/または、異なる患者において生じている線維症の程度をモニタリングしてもよい。
【0084】
追加としてまたは代替として、線維症の診断および/またはモニタリングのための方法であって:
a)線維症に罹患している、罹患していると疑われる、および/または線維症の治療を受けている患者であって、化合物IIのような本明細書に記載される化合物を含む患者に、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)または磁気共鳴画像(MRI)イメージングのような医用イメージング技術を施し、放射性核種からの信号を記録する工程;
ならびに
b)患者が線維症に罹患しているかどうかを判断および/またはモニタリングする工程
を含む、方法が提供される。
【0085】
本明細書に記載される線維症の診断および/またはモニタリングのための方法において言及される線維症は、本明細書に記載されるような線維症であり得る。
【0086】
線維症の治療方法
本明細書に記載される線維症の診断および/またはモニタリングは、本明細書に記載される治療のような線維症の治療方法とともに使用することができる。次いで、線維症の治療を受けている患者における線維症の程度は、本明細書に記載される組成物および/または化合物を使用してモニタリングすることができる。
【0087】
以下は、線維症によって影響を受ける主要な臓器の一部と、現在利用可能な治療選択肢のリストである。
【0088】
間質性肺疾患(ILD)-肺の炎症および線維化が病理の最終的な共通経路である、広範囲の異なる障害を含む。特発性肺線維症は、ILDの最も一般的なタイプである。ILDは通常、最初はコルチコステロイド(例:プレドニゾン)で、時には免疫系を抑制する薬剤と組み合わせて治療される。
【0089】
肝硬変-ウイルス性肝炎、住血吸虫症、慢性アルコール中毒が世界的に主な原因であるが、脂肪肝(NAFLD(非アルコール性脂肪肝)およびNASH(非アルコール性脂肪性肝炎))の状態から肝硬変を発症することもある。治療は、主に肝硬変の原因を抑制すること(抗ウイルス剤、食事、運動、糖尿病のコントロール改善)に重点を置いている。重症の場合は、肝移植が必要となることもある。
【0090】
慢性腎臓病(CKD)-よく見られる糖尿病の合併症であり、腎機能低下の進行につながる。また、未治療の高血圧性疾患も原因となることがある。該疾患は、GFRおよびアルブミン尿の測定によってモニタリングされることがほとんどである。臨床管理は、血圧管理、ARB(アンジオテンシン受容体遮断薬)またはACE-I(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)、ナトリウム摂取量の低減、良好な糖尿病コントロール、禁煙などを伴う。
【0091】
心疾患-心筋の線維化は拡張機能障害や不全の主要な決定要因である。生検で診断できる場合もあるが、不可能であることがほとんどである。現在の非侵襲的な検出方法は、心臓の磁気共鳴画像および血清マーカーに依存している。承認された治療薬としては、ベータ遮断薬、ACE阻害薬、アルドステロン拮抗薬が挙げられる。コラーゲン合成および架橋を標的とした新しい治療薬の開発努力も続けられている。
【0092】
眼の疾患-黄斑変性症および網膜・硝子体網膜症。新しい治療選択肢としては、眼の新生血管を阻害するVEGF阻害薬(すなわち、血管内皮細胞増殖因子の阻害薬)が挙げられる。
【0093】
本開示は、主に線維化疾患の診断および/または程度の決定を改善することを目的としているが、治療用アイソトープによる放射性標識は、現在利用可能な治療よりも臨床的な利益をもたらす可能性がある。
【0094】
本開示はまた、本明細書に記載される線維症の診断および/またはモニタリングのための方法であって、患者が、以下:コルチコステロイド、抗ウイルス薬、糖尿病治療薬、血圧調節薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、ベータ遮断薬、アルドステロン拮抗薬、血管内皮細胞増殖因子阻害薬のうちの1つまたはそれ以上を伴う治療のような線維症の治療を受ける、方法も提供する。
【0095】
薬学的に許容される塩
本開示の化合物は、意図された投与に好適な任意の形態で提供してもよい。好適な形態としては、本明細書に開示される化合物の薬学的に(すなわち、生理学的に)許容される塩が挙げられる。本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」としては、そのような塩が使用可能である場合、薬学的に許容される非毒性酸から製造される塩、すなわち薬学的に許容される酸付加塩、または塩基から製造される塩、すなわち薬学的に許容される塩基付加塩が挙げられる。
【0096】
薬学的に許容される塩の例としては、非毒性の無機および有機酸付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコニット酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、フタル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、などが挙げられるが、これらに限定されない。また、酸のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩を形成してもよい。このような塩は、当該技術分野でよく知られ、記載されている手順によって形成してもよい。
【0097】
シュウ酸およびトリフルオロ酢酸のような、薬学的に許容されないと考えられる他の酸は、本開示の化合物およびその薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の製造に有用であり得る。式Iのペプチドのほとんどは、トリフルオロ酢酸塩として入手可能である。式Iの前駆体は、核種とともに加熱され、その後、HCl溶液によりカラムから溶出される。トレーサーの線量は、対象に投与される場合、かなり低いため、トレーサー組成物中に残存するトリフルオロ酢酸塩は有害ではなく、許容される。
【0098】
さらに、薬学的に許容される塩は、塩基付加塩であり得る。塩基付加塩は、式Iの化合物、およびアルカリ金属またはアルカリ土類金属のような金属から形成してもよい。金属は、Na、K、Mg2+、またはCa2+のような金属イオンであり得る。あるいは、塩は、式Iの化合物、および有機アミンのようなアミンから形成してもよい。アミンは、アンモニア、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチル-D-グルカミンまたはプロカインであり得る。
【0099】
異性体
本明細書に開示される化合物は、エナンチオマーまたはジアステレオ異性体の形態のような立体異性体の形態で存在し得ることが当業者には理解されよう。本開示の化合物は、全てのそのようなエナンチオマー、そのラセミ混合物、および別々のエナンチオマーの異なる割合における混合物を含む。例えば、(-)-エナンチオマーの形態または(+)-エナンチオマーの形態で、本明細書に開示される化合物が提供される。
【0100】
誘導体
本開示はまた、本明細書に開示される化合物の誘導体を提供する。誘導体は、キレート剤が変性されている、本明細書に開示される化合物であり得る。例えば、キレート剤の1つまたはそれ以上のカルボン酸基を、例えば、エステル基またはアミド基に変換してもよい。
【0101】
製造方法
本明細書に記載される式Iの化合物は、以下のように製造することができる。
標準的なペプチド固相合成法(SPPS)を使用して、ペプチドQを製造してもよい。得られたペプチドQは、Fmoc、Trt、Pbfのような1つまたはそれ以上の保護基を含有してもよい。これらの保護基は適宜除去してもよい。例えば、ペプチドQのN末端アミノ基を、例えば、Fmoc基で保護してもよく、後述のキレート剤CまたはリンカーLと反応させる前に除去してもよい。
【0102】
ペプチドQのN末端アミノ基を、PyBOP、HBTU、Oxymaのようなカップリング試薬を使用してキレート剤Cにカップリングさせ、化合物C-Qを得てもよい。
【0103】
あるいは、ペプチドQのN末端基を介してリンカーLにカップリングさせて化合物L-Qとし、続いて、さらにL-Qをキレート剤Cに結合させて化合物C-L-Qを提供してもよい。カップリング反応は、PyBOP、HBTU、Oxymaのようなカップリング試薬の使用を伴ってもよい。
【0104】
化合物C-QまたはC-L-Qは、その後、ペプチドQ中の1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合した保護基のような、存在する任意の保護基を除去可能な条件にさらしてもよい。
【0105】
式IIの化合物は、式Iの化合物を本明細書に記載される核種Mまたはその塩と組み合わせることによって得ることができる。その場合、式Iの化合物は、式IIの化合物の形成における中間体として機能することがある。
【0106】
したがって、本明細書に記載される式IIの化合物を製造する方法であって:
a)本明細書に記載される式Iの化合物を製造する工程、および
b)式Iの化合物を本明細書に記載される核種Mと組み合わせ、それによって式IIの化合物を提供する工程を含む
方法が提供される。
【0107】
式Iの化合物と核種Mとを等モル量で組み合わせて、式Iの化合物と核種Mとの比が1に等しい、すなわち1/1である式IIの化合物を提供することができる。しかしながら、化学量論比を制御することが常に可能であるとは限らず、したがって、式Iの化合物と核種Mとは、不等モル量のような不等量で組み合わせ、その結果、追加量の式Iの化合物および/または核種Mと合わせて、式Iの化合物と核種との比が1である前述の式IIの化合物を含む組成物を得てもよい。
【0108】
核種Mは、当該技術分野で公知であるように、放射性核種ジェネレータまたはサイクロトロンを使用して生成された放射性核種であり得ることが理解されよう。
【0109】
略語
ACE-I アンジオテンシン変換酵素阻害薬
ARB アンジオテンシン受容体遮断薬
BALB/c BALB/cは、ハツカネズミのアルビノ、実験室飼育系統である
BSA ウシ血清アルブミン
Bq ベクレル
CBP8 コラーゲン結合ペプチド8
cc 立法センチメートル
CKD 慢性腎臓病
DCM ジクロロメタン
DFO デスフェリオキサミンB
DMF ジメチルホルムアミド
DIEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DOTA 1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸
DOTAGA 2-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザ-1-シクロドデシル]グルタル酸
DTPA ジエチレントリアミン五酢酸
E グルタミン酸(Glu)
ESI エレクトロスプレーイオン化
Fmoc フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基
g グラム
GFR 糸球体濾過量
H ヒスチジン(His)
HBTU (2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
ILD 間質性肺疾患
ivDde 4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキス-1-イリデン)イソバレリル
L ロイシン(Leu)
MBq メガベクレル
min. 分
MRE 磁気共鳴エラストグラフィー
MRI 磁気共鳴画像
MS 質量分析
N アスパラギン(Asn)
NAFLD 非アルコール性脂肪性肝疾患
NASH 非アルコール性脂肪性肝炎
NNM N-メチルモルフォリン
NOTAGA 1,4,7-トリアザシクロノナン-1-グルタル酸-4,7-酢酸
NOTA 1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸
nM ナノモーラー
Pbf 2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PET 陽電子放出断層撮影
p.i. 注射後
PyBOP ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
R アルギニン(Arg)
ROI 関心領域
RP-HPLC 逆相高速液体クロマトグラフィー
SPECT 単一光子放射型コンピュータ断層撮影
SPPS ペプチド固相合成法
SPR 表面プラズモン共鳴
SUV 標準摂取率
t-Bu tert-ブチル
TES トリエチルシラン
TETA 1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸
TFA トリフルオロ酢酸
Trt トリチル
UV 紫外線
VEGF 血管内皮細胞増殖因子
【0110】
材料および方法
材料
購入した化学物質は、さらに精製することなく使用した:アミノ酸(Novabiochem、スイス;Sigma-Aldrich、スウェーデン;Iris Biotech GmbH、ドイツ)、PyBOP(Novabiochem、スイス)、2CTC樹脂(Iris Biotech GmbH、ドイツ)、Fmoc-O2Oc-OH(Iris Biotech GmbH、ドイツ)、DOTA(tBu)-OHおよびNOTA(tBu)-OH(CheMatech、フランス)、ピペリジン(Sigma-Aldrich、スウェーデン)、DMF(Fisher Scientific、英国)、酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.6、31048、Sigma-Aldrich、スウェーデン ストックホルム)、30%HCl(超高純度、1.00318.0250、Merck、Sigma-Aldrich)およびトリフルオロ酢酸(TFA、Merck、ドイツ ダルムシュタット)。一部の化合物は、外部ラボ(Vivitide/NEP)で製造した。
【0111】
ペプチド合成およびリンカー・キレート剤のカップリング(方法A)
ここでは、本方法を、以下の化合物1および16の合成について例示する。標準的なペプチド固相合成法(SPPS)を使用して、2-(4,7,10-トリス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸(DOTA(tBu))または、2-(4,7,10-トリス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA(tBu))を、リンカー(-X-(CHCHO)-CH-C(O)-)を介してペプチド配列LRELHLNNNに接合させることによって前駆体ペプチドを合成した。反応は特に断りのない限り、全て室温で実施した。
【0112】
Fmoc-Asn(Trt)-OH(238.7mg、0.40mmol)および乾燥ジクロロメタン(DCM)6.0mL中ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を、2-クロロトリチル樹脂(375mg、ローディング量1.6mmol/g)に添加した。2時間後、MeOH 0.30mLを添加し、15分間反応させた。樹脂をDMF(2×5mL)およびDCM(2×5mL)で洗浄し、真空中で乾燥させて、Fmoc-Asn(Trt)結合樹脂584.5mgを得た。新規ローディング量は0.64mmol/gと算出され、側鎖保護ペプチドLRELHLNNNは、多孔質ポリエチレンフィルタを装着した4mL使い捨て注射器で、SPPSおよびFmoc/tert-ブチル(tBu)保護を使用して374μmolスケールで合成された。Fmoc保護アミノ酸の場合、側鎖の保護は以下の通り:Asn(Trt)、Arg(Pbf)、Glu(Ot-Bu)、His(Trt)であった。DMF中20%ピペリジン(4×2mL)を使用して各カップリング工程後にFmoc基を除去し、DIEA(800μmol)存在下、DMF(2mL)中PyBOP(540μmol)を使用してアミノ酸を一晩カップリングさせた。カップリング工程の完了後、樹脂上の部分的に保護されたペプチドをDMF、DCMおよびMeOHで数回洗浄し、真空中で乾燥させた。
【0113】
樹脂上のペプチド部分(約30μmol)を、多孔質ポリエチレンフィルタを装着した2mL使い捨て注射器に移し、Fmoc基の脱保護後、DMF 0.5mL中PyBOP(2当量)およびDIEA(3当量)を使用して、Fmoc-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-OH、2当量)と21時間カップリングを行った。Fmoc基は、DMF中20%ピペリジン(2mL 1分+3×2mL 10分)での処理によって除去された。樹脂の洗浄後、DOTA(tBu)-OH(2当量)またはNOTA(tBu)-OH(2当量)をPyBOP、およびDIEA DMFを使用して20時間カップリングさせた。次いで、樹脂をDMFおよびDCMで広範囲に洗浄し、真空中で乾燥させた。
【0114】
樹脂を遠心管に移し、トリエチルシラン(TES)および95%TFA溶液で処理し、混合物を2時間回転させた。樹脂を濾過により除去し、TFAで洗浄した。濾液を窒素流下で一部蒸発させ、粗生成物をジエチルエーテルの添加により沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって集め、ジエチルエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させた。
【0115】
粗製脱保護生成物を水中10%アセトニトリルに溶解させ、分取逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)で精製した。使用した分取カラムはNucleodur C18 HTec(21×125mm、粒子径5μm)、溶離液は0.1%TFAを含むCHCN/HOグラジエントを10mL/分の流量であり、220nmのUV検出を使用した。純粋なフラクションを凍結乾燥し、HPLC分析における214nmトレースにより決定された98%超の純度で2種の生成物を得た。
【0116】
分析用RP-HPLCは、Penomenex Kinetex C18カラム(50×3.0mm、粒子径2.6μm、細孔径100Å)を使用してDionex UltiMate 3000 HPLCシステムで実施した。溶離液としてHO/CHCN/0.05%HCOOHのグラジエントを流量1.5mL/分で使用した。検出には、UVおよびエレクトロスプレーイオン化(ESI)MSでのBruker amazon SLイオントラップ質量分析計をポジティブモードスキャンで使用した。質量分析の結果、化合物1のDOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OHについて、[M+2H]2+でm/z=827.5、[M+3H]3+で551.8、[M+4H]4+でm/z=414.4を検出し、再構成分子量は1652.85となった。また、化合物16のNOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OHについて、[M+2H]2+でm/z=776.8、[M+3H]3+で518.3を検出し、再構成分子量は1551.8となった。
【0117】
ペプチド合成およびリンカー・キレート剤のカップリングのための代替手順(方法B):
本発明のペプチドは、樹脂上のFMOC保護アミノ酸を用いた標準的な固相ペプチド化学を使用し、自動合成装置(例えばAMS 422 Multiple Peptide SynthesizerまたはCEM Liberty Blue)を使用して合成することができる。Fmoc保護アミノ酸は、上に示した供給元から市販されている。C末端アミドには、RINK樹脂、例えばNovabiochem Rink Amide AM樹脂(200~400mesh)、ローディング量0.64mml/gを使用した。一方、C末端酸には、プレロードWang樹脂(100~200mesh)、ローディング量0.50mmol/gを使用した。アミノ酸の活性化およびカップリングは、HBTU(通常6当量)およびNMM(N-メチルモルホリン、通常12当量)を用いて行う。FMOC基は、DMF中20%ピペリジンを使用して除去される。リンカー-キレート剤がN末端に結合している場合、リンカーFmoc-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-OH(2当量)は、ペプチド配列の最後のアミノ酸(例えば、ロイシン)のFmoc基を除去した後に、40℃で3時間、標準的な活性化手順(活性化剤/塩基としてHBTU/2M DIEA)を使用して手動でカップリングさせる。完全なカップリングを確実にするため、この工程を繰り返す。完全なカップリングは、カイザーテストを適用することによってモニタリングすることができる。リンカーのFmoc基は、DMF中20%ピペリジンを使用して除去する。最後に、2-(4,7,10-トリス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸(DOTA(tBu))を、標準的なアミノ酸活性化手順(ダブルカップリング、2当量の(DOTA(tBu)、活性化剤および塩基としてHBTU/2M DIEA、40℃、3時間)で遊離N末端アミノ基にカップリングさせる。その後、TFA/水/チオアニソール/エチルメチルスルフィド/エタンジチオールのカクテル(20ml:1ml:1ml:1ml:1m)を使用して樹脂結合配列を切断する。
【0118】
ペプチドをエーテル/ヘキサン中で沈殿させ、次いで遠心分離により単離する。乾燥させたペプチドペレットを水・アセトニトリル混合物中で再構成し、凍結乾燥させる。凍結乾燥させた粗生成物を、0.1%TFA含有アセトニトリル-水緩衝液を溶離液として用いて分取逆相HPLC(10μm C18カラム、25×250mm)で精製する。ペプチド含有フラクションを分析し、純粋なフラクションをプールし、凍結乾燥する。分析用HPLCデータは、2.6μm C18分析用カラムで、溶離液として0.1%TFAを含有する水-アセトニトリルグラジエントを用いて得られる。分子量は、Bruker amaZon SL装置を使用したMS分析により確認する。下記実施例2の化合物2~6、11、12は、方法Bに従って合成した。
【0119】
アミノ酸側鎖中のアミノ官能基にリンカーおよびキレート剤がカップリングしている場合に使用される、ペプチド合成のための代替手順(方法C):
この場合、本発明のペプチドは、方法Bに非常に類似しているが、アミノ酸側鎖のアミノ官能基への選択的カップリングが可能な、特別な保護アミノ酸を使用するプロトコルを使用して合成することができる。ペプチド構築は、樹脂上のFMOC保護アミノ酸を用いた標準的な固相ペプチド化学により、自動合成装置(例えばAMS 422 Multiple Peptide SynthesizerまたはCEM Liberty Blue)を使用して行われる。Fmoc保護アミノ酸は、上に示した供給元から市販されている。側鎖修飾のために、Fmoc保護アミノ酸が使用され、この場合、側鎖、例えばリジンは、Fmoc-Lys(ivDde)-OHのような直交切断可能な保護基により保護される。C末端アミドには、RINK樹脂、例えばNovabiochem Rink Amide AM樹脂(200~400mesh)が使用された。アミノ酸の活性化およびカップリングは、HBTU(通常6当量)およびNMM(N-メチルモルホリン、通常12当量)を用いて行う。FMOC基は、DMF中20%ピペリジンを使用して除去される。ペプチドを固相にて構築後、N末端のFmoc基を、DMF中20%ピペリジンを使用して除去し、Boc-無水物を使用してN末端を保護する。その後、DMF中2%ヒドラジン(2×30分)を使用して、官能化するアミノ酸におけるivDde保護基を除去することができる。テスト切断により、ivDdeの除去が確認される。リンカー、例えばFmoc-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-OH(2当量)は、標準的な活性化手順(活性化剤/塩基としてHBTU/2M DIEA、40℃、3時間)を使用して手動でカップリングさせる。完全なカップリングを確実にするために、この工程を繰り返す。完全なカップリングは、カイザーテストを適用することによってモニタリングすることができる。リンカーのFmoc基は、DMF中20%ピペリジンを使用して除去する。最後に、2-(4,7,10-トリス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸(DOTA(tBu))を、標準的なアミノ酸活性化手順(ダブルカップリング、2当量の(DOTA(tBu)、活性化剤および塩基としてHBTU/2M DIEA、40℃、3時間)で遊離アミノ基にカップリングさせる。その後、TFA/水/チオアニソール/エチルメチルスルフィド/エタンジチオールのカクテル(20ml:1ml:1ml:1ml:1ml)を使用して樹脂結合配列を切断する。ペプチドをエーテル/ヘキサンで沈殿させ、次いで遠心分離により単離する。乾燥させたペプチドペレットを水・アセトニトリル混合物中で再構成し、凍結乾燥する。凍結乾燥させた粗生成物を、0.1%TFA含有アセトニトリル-水緩衝液を溶離液として用いる分取逆相HPLC(10μm C18カラム、25×250mm)で精製する。ペプチド含有フラクションを分析し、純粋なフラクションをプールし、凍結乾燥する。分析用HPLCデータは、2.6μm C18分析用カラムで、溶離液として0.1%TFAを含有する水-アセトニトリルグラジエントを用いて得られる。分子量は、Bruker amaZon SL装置を使用したMS分析により確認する。例えば、下記実施例2の化合物13は、方法Cに従って合成した。
【0120】
放射化学
ガリウム-68放射化学
68Ga(t1/2=68分、β+=89%、EC=11%)を得るために、二酸化チタンを充填したカラムに68Geを付着させた68Ge/68Gaジェネレータシステム(1850MBq、Eckert & Ziegler,Eurotope GmbH)を0.1M HClによって溶出した。ジェネレータ放射能の70~80%を含有する1mlの第2のフラクションを酢酸ナトリウム緩衝液(pH7)100μlで緩衝し、pH4.2~4.6を確保した。pHを制御した後、脱イオン水に溶解した20ナノモル(1mM)の化合物1または化合物5を添加し、混合物を75℃の加熱ブロック中で15分間インキュベートした。インキュベートに続いて、粗生成物を2分間放置して冷却し、固相抽出カートリッジ(HLB、Oasis)で精製し、50%エタノール中の純生成物を得た。さらに、生成物をHPLC-UV-ラジオシステム(VWR Hitachi Chromasterポンプ5110、リモートUVフローセルを備えたKnauer UV検出器40D、Eckert & Ziegler拡張レンジモジュールModel 106およびBioscan B-FC-3300放射性プローブを備えたBioscanフローカウント、ならびにVWR Hitachi Chromaster A/D Interface box)により分析した。分析用カラム(Hichrom Vydac 214MS、5μm C4、50×4.6mm)を使用して分析種の分離を行った。条件は以下の通りであった:A=HO中0.1%TFA;B=70%CHCN中0.1%TFA、220nmでのUV検出;15分にわたるリニアグラジエント、15分にわたる5~70%の溶媒Bリニアグラジエント、流量1.0mL/分。データ取得および処理は、Agilent OpenLAB Chromaster EZChrome Edition version A.04.05を使用して実施した。
【0121】
フッ化アルミニウム-18放射化学
18Fは、Scanditronix MC-17サイクロトロンで18O濃縮水(>97%)への陽子線照射により生成された。典型的には、3~5GBqの放射能が生成された。放射性物質をホットセルに移し、フッ素18を保持するためにQMA SPEカートリッジに通した。カートリッジを水(1mL)で洗浄し、次いで放射性物質をNaCl溶液(0.9%)200μLで洗浄した。1.5mLバイアルに、化合物16(40nmol、pH4.6 NaOAc中2mM溶液)20μL、AlCl(pH4.6 NaOAc中2mM)10μL、NaOAc(pH4.6)50μLおよびEtOH(99%)100μLを添加した。18F含有生理食塩水50μLをバイアルに添加した後、100℃まで15分間加熱した。反応混合物を水(3mL)で希釈し、HLB SPEカートリッジに添加し、次いで水(3×1mL)で洗浄した。生成物をEtOH(99%)400μLで溶出し、さらにPBS 3.6mLで希釈した。品質管理は、Phenomenex LUNA C18を使用し、50mMギ酸アンモニウム(AMF、pH3.5)中10~90%CHCNグラジエントを使用して8分にわたって行い、68Gaと同じ方法で実施した。活性収量は0.3~0.8GBq(10~20%、非減衰補正)であった。
【0122】
本開示は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【0123】
実施例1
化合物1および16は、上記の方法Aに従って合成した。
【0124】
化合物1:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OH
純度:95%;検出質量 [M+2H]2+でm/z=827.5、[M+3H]3+で551.8、[M+4H]4+でm/z=414.4、DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OHの再構成分子量1652.85。
【0125】
化合物16:NOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OH
純度:95%;検出質量 [M+2H]2+でm/z=776.8、[M+3H]3+で518.3、NOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OHの再構成分子量1551.8。
【0126】
実施例2
化合物2~6、11および12は、方法Bまたはその変形に従って合成した。化合物13は方法Cに従って合成した。
【0127】
化合物2:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-A-N-OH
純度:98.1%;検出質量 m/z=1610.83(M+2で705.92)、(M+3で537.62)理論分子量:1610.8
【0128】
化合物3:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-NH
純度:99.1%;検出質量 m/z=1653.01(M+2で827.02)、(M+3で551.96)理論分子量:1652.80
【0129】
化合物4:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-n-OH
純度:89.3%;検出質量 m/z=1654.58(M+2で827.34)、(M+3で551.90)、理論分子量:1654.8
【0130】
化合物5:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-A-N-NH
純度:100%;検出質量 m/z=1609.8(M+2で805.45)、(M+3で537.25)、理論分子量:1609.8
【0131】
化合物6:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-V-N-N-N-OH
純度:98.7%;検出質量 m/z=1640.76(M+2で820.41)、(M+3で547.28)理論分子量:1641.00
【0132】
化合物11:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH
純度:98.7%;検出質量 m/z=1698.77(M+2で849.43)、(M+3で566.61)理論分子量:1699.0
【0133】
化合物12:DOTA-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH:
Fmoc Asn(Trt)-Wang樹脂(100~200mesh)で開始し、ローディング量0.50mmol/g。
純度:99.3%;検出質量 m/z=1508.7(M+2で754.88)、(M+3で503.58)理論分子量:1508.4
【0134】
化合物13:HN-L-R-E-L-H-L-N-N-N-K(DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O))-NHは、Fmoc-Lys(ivdDe)-OHおよびNovabiochem Rink amide AM樹脂LL(100~200mesh)(ローディング量0.29mmol/g)を使用し、方法Cに従って合成した。標準的なアミノ酸カップリングは、この場合、5当量のDIC/Oxymaで実施した。
純度:95.1%;検出質量 m/z=1781.9(M+2で890.97)、(M+3で594.35)
理論分子量:1782.2
【0135】
同様に、方法Bまたは方法Cを使用して、以下のペプチドを製造することができる:
化合物7:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-I-H-L-N-N-N-OH
化合物8:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-OH
化合物9:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-H-L-R-E-L-H-L-N-N-N-OH
化合物10:DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-L-R-E-L-H-L-N-N-N-K-OH
化合物14:HN-L-R-E-K(DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O))-H-L-N-N-N-OH
化合物15:HN-L-R-E-L-H-K(DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O))-N-N-N-OH
【0136】
実施例3
ペプチドの安定性試験
分析用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、Bruker amazon SLイオントラップ質量分析計およびUV(ダイオードアレイ検出器、214、254、280nm)およびエレクトロスプレーイオン化(ESI)MSによる検出を備えたDionex UltiMate 3000 HPLCシステムで、Penomenex Kinetex C18カラム(50×3.0mm、粒子径2.6μm、細孔径100Å)、およびPenomenex Kinetex Biphenylカラム(50×4.6mm、粒子径2.6μm、細孔径100Å)を使用して実施した。HO/CHCN/0.05%HCOOHのグラジエントを流量1.5mL/分で使用した。
【0137】
方法A:214nmでの検出
カラム:Penomenex Kinetex C18(50×3.0mm、粒子径2.6μm、細孔径100Å)
溶媒:HO+0.05%HCOOH:CHCN+0.05%HCOOH(流量1.5ml/分)
グラジエント:0~100% CHCN+0.05%HCOOH(5分)
容量:1μl
質量分析器:Bruker amaZon SLイオントラップ質量分析計、エレクトロスプレーポジティブイオンモード
【0138】
方法B:214nmでの検出
カラム:Penomenex Kinetex Biphenylカラム(50×4.6mm、粒子径2.6μm、細孔径100Å)
溶媒:HO+0.05%HCOOH:CHCN+0.05%HCOOH(流量1.5ml/分)
グラジエント:0~100% CHCN+0.05%HCOOH(5分)
容量:1μl
質量分析器:Bruker amaZon SLイオントラップ質量分析計、エレクトロスプレーポジティブイオンモード
【0139】
安定性試験のため、純粋な化合物500μmolをPBS緩衝液(pH7.4)1mL、または酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5、100mM)1mLに溶解させた。PBS中で保存したペプチドについては、溶液を4℃および23℃で14日間保存した。0時間、1日、7日、14日目に、溶液をHPLCで分析した(分析用HPLC方法Aおよび方法B)。
酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5、100mM)中で保存したペプチドについては、4℃および23℃で0時間および1日インキュベート後の溶液をHPLCで分析した(分析用HPLC方法B)。
【0140】
各時点における「純度%」は、t時点の相対純度%に対する、時点「n」(n=pH7.4 PBSで1日、7日、14日、pH4.5 NaAcで1日)での相対純度%で定義され、次式に従って算出した:
での純度%=[(相対純度t%)×100)]/相対純度t
【0141】
における相対純度は、tにおけるペプチドのピーク面積をtにおける全ピーク面積の合計で割ることにより、次式に従って算出した:
相対純度t%=[(ピーク面積t)×100]/全ピーク面積tの合計
【0142】
同様に、相対純度tは、tにおけるペプチドのピーク面積をtにおける全ピーク面積の合計で割ることにより、次式に従って算出した:
相対純度t%=[(ピーク面積t)×100]/全ピーク面積tの合計
【0143】
本発明の化合物の安定性試験結果を、以下の表II、表IIIおよび表IVに示す。
【0144】
表IIは、pH7.4でインキュベートした後のペプチドの化学的安定性を示す。サンプルは23℃および4℃において最大で14日間インキュベートし、HPLC方法Aを使用して分析した。
【0145】
【表2】
【0146】
表IIIは、pH7.4でインキュベートした後のペプチドの化学的安定性を示す。サンプルは23℃および4℃において最大で14日間インキュベートし、HPLC方法Bを使用して分析した。
【0147】
【表3】
【0148】
表IVは、pH4.5でインキュベートした後のペプチドの化学的安定性を示す。サンプルは23℃および4℃において1日間インキュベートし、HPLC方法Bを使用して分析した。
【0149】
【表4】
【0150】
実施例4
放射性標識
化合物1を68Ga(n=7)で標識し、固相抽出カートリッジを使用して精製した結果、放射化学的純度は97%超であった。
化合物16をAl18F(n=5)で標識し、固相抽出カートリッジを使用して精製した結果、放射化学的純度は99%超であった。
化合物5を68Ga(n=3)で標識し、固相抽出カートリッジを使用して精製した結果、放射化学的純度は99%超であった。
【0151】
実施例5
組織切片におけるin vitroオートラジオグラフィー結合アッセイ
さまざまなグレードの線維症を有するマウス(雌、Balb/c、Taconic)の凍結肝臓(CCl 0.5mg/体重1g i.p.3回/週にて3週間処理)、および対照肝臓(雌、Balb/c、Taconic)を、クライオスタットミクロトーム(Micron HM560、ドイツ)で20μmの切片に切出し、Menzel Super Frost plusスライドガラスに取り付け、室温(RT)で乾燥させて研究に使用するまで-20℃で保存した。切片は、1%BSA含有PBS緩衝液中で、室温で10分間プレインキュベートした(ガラス表面へのトレーサーの結合を低減させるため)。さらに、トレーサーの全結合を決定するために、200nM(予想Kd約170nM)の[68Ga]Ga-DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OH([68Ga]Ga-1)濃度で室温において切片を40分間インキュベートした。トレーサーの非特異的結合を決定するために、切片の複製を非接合ペプチド(LRELHLNNN)60μMの存在下でインキュベートした。トレーサーとのインキュベート後、切片を1%BSA含有氷冷PBSで1分間、および氷冷PBSで2回、1分間ずつ洗浄した。さらに、切片を温風(37℃)で10分間乾燥させた。参照として、インキュベーション溶液20μlを濾紙に塗布した。この切片および参照をともに蛍光体イメージングプレートに2.5時間露光し、Phosphorimager system(Cyclone Plus、Perkin Elmer)でスキャンした。切片はソフトウェアImageJ(ImageJ 1.45S、NIH、米国ベセスダ)を使用して可視化および分析された。画像中の肝組織に関心領域(ROI)を描き、組織ROIの平均値をバックグラウンド集積について補正した。特異的結合は全結合と受容体結合との差として定義され、特異的結合の割合は、特異的結合と全結合との比に100を掛けたものとして定義された。同じ生検からの別の切片をシリウスレッドで染色し、線維症のグレードを評価した。
【0152】
68Ga]Ga-1の線維化マウス肝臓凍結切片への集積は、非接合LRELHLNNNペプチド60μMにより阻害された(図10a)。線維症を伴わない健常な対照では、予想通り検出可能な阻害効果は認められなかった。[68Ga]Ga-1は、グレード0-3の線維化肝組織(n=10)に対する結合(1~80fmol/mmの範囲)において、相関係数0.4で有意な相関(p<0.05)を示した(図10b)。健常な肝組織の対照(n=2)に対する結合は、2~22fmol/mmの範囲であった。
【0153】
実施例6
表面プラズモン共鳴アッセイを使用して、1型コラーゲンとの相互作用を測定した。
【0154】
表面プラズモン共鳴(SPR)結合分析は、Biacore 3000装置(Cytiva)を用いて実施した。pH4.2 10mM酢酸ナトリウム中0.3g/L Purecol bovine I型コラーゲンをNHS/EDC活性化CM5センサー表面(Cytiva)に注入し、ほぼ10000RUの応答を得た。並行して、NHS/EDCで活性化することでブランク表面を製造した。両表面は、pH8.5 1Mエタノールアミンを使用して不動態化された。
【0155】
1X HBS-EP(Cytiva)で希釈した100μM~12.5μMのQ-ペプチドの段階希釈液を、各サンプルについて1分間の結合および解離時間を置いて、異なるペプチドごとに緩衝液の空注入を行い、表面に順次注入した。
【0156】
実施例7
リガンド-トレーサー技術を使用して、1型コラーゲンとの相互作用を測定した
トレーサーの1型コラーゲンへの結合、および1型コラーゲンからの解離の動態は、Ligand-Tracer Yellow装置(Ridgeview Instruments AB)を使用して、室温にてリアルタイムに測定することも可能である。CorningのCellBIND細胞培養ディッシュ(100mm)にコラーゲン(0.02M酢酸中500μg/mL)を部分的にコーティングしておく。ディッシュを37℃で一晩インキュベートした後、過剰なコラーゲンを除去し、表面を1%BSA/PBS溶液10mLで洗浄する。68Ga標識ペプチドの濃度を上げながら集積曲線を測定し、次いで、解離を追跡するために培地を新しい培地に交換する。結合率、解離率、平衡解離定数は、TraceDrawerソフトウェア(Ridgeview Instruments AB)を使用して算出する。
【0157】
実施例8
健常ラットにおけるEx vivo臓器分布
Sprague Dawleyラット(Taconicより入手、n=22、雄、健常、体重287±25g)を使用して、生体内分布および線量測定のex vivo臓器分布評価を実施した。
【0158】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)中5MBq(5~10μgに相当)[68Ga]Ga-1(n=10)をボーラス投与として意識あるラットに静脈内注射した。動物は、注射後10、20、40、60、120分後にCO-O混合ガスで安楽死させた。摘出した臓器の放射能をガンマカウンターで測定した。血液、心臓、肺、肝臓、脾臓、副腎、腎臓、(含有物がある、またはない)腸、筋肉、精巣、骨、脳、膵臓、尿のう、および骨髄からサンプルを採取した。また、放射能の排出および回収をモニタリングするために、残りの死骸も測定した。放射能測定値は注入時間に対し減衰補正され、その結果は標準摂取率(SUV)として表された。
【0159】
実験9:
PET/MRIイメージングによる健常ラットのin vivo生体内分布
小動物用PET-MRIシステム(nanoPET/MRI、3T magnet、Mediso、ハンガリー)を使用して、追加ラットのPET/MRIイメージングにより生体内分布を測定した。麻酔下の動物に尾静脈から[68Ga]Ga-1(n=5)または[68Ga]Ga-5(n=3) 5MBqを投与した。複数回の全身掃引(1通過3ベッド;2×5分、2×10分、4×30分)により最大で150分のダイナミック全身PETスキャンを実施した。解剖学的アキシャルおよびコロナルMR画像を、T1強調(T1W)スピンエコーシーケンスで測定した。PET画像を、Maximum Likelihood Estimation Maximized(MLEM)アルゴリズムを使用して再構成した(10回繰り返し)。最大値投影法(MIP)画像を、Carimas 2.9(Turku PET Center、フィンランド トゥルク)で作成し、全身の放射性トレーサー集積分布を定量的に可視化することができるようにした。
【0160】
実施例10
ラットの生体内分布データによるヒトの線量推定値の外挿
健常ラットのダイナミック生体内分布データを使用して、ヒトの線量推定値を算出した。滞留時間は、臓器集積値(非減衰補正)を台形モデルで近似し、ヒト組織重量のモデルに外挿することにより算出した。線量評価には、OLINDA/EXM1.1ソフトウェアを使用し、男性ファントムのさまざまな臓器におけるヒトの吸収線量を計算した。
【0161】
実施例11
生体内分布および線量算出の結果
19臓器のex vivo臓器分布データを、減衰補正したSUV値として提示した。[68Ga]Ga-1は、ほとんどの臓器から、SUV値が1以下の速い血液クリアランスおよびウォッシュアウトを示した(図11)。腎臓のSUVは注射10分後時点で4のレベルとなり、120分後にはSUV≒1まで減少しており、腎排泄が速く、腎臓へのトラップが少ないことが示された。生体内分布のパターンは、ダイナミックPETで評価したものと同じであった(n=3)。赤色骨髄が0.033mSv/MBqと最も高い臓器吸収線量を示し、したがって決定臓器であった。[68Ga]Ga-1の総実効線量は13μSv/MBqであった。この実効線量では、ヒトに年間最大で770MBq投与できる。これは、200MBqのPETスキャンを少なくとも3回行うことに相当する。
【0162】
実施例12
ラットにおけるブレオマイシン投与による肺線維症の誘発
ブレオマイシンを、軽く鎮静させたラットに気管内投与した(生理食塩水200μ中1500単位)。動物の健康状態を最大で2週間追跡し、その際にPET検査を実施した。
【0163】
実施例13
ブレオマイシン誘発肺線維症モデルでのin vivo結合
ガリウム-68で標識した化合物1または化合物5を、ブレオマイシンにより肺線維症を誘発したラットまたは線維症を誘発していない対照ラットに投与した。動物は、in vivo PETスキャンおよび/またはex vivo臓器分布とガンマカウンターでの測定により、肺および他の組織での結合について検査した。ガンマカウンター測定後、肺組織は直ちに凍結され、OCT培地に包埋された。包埋した組織を凍結切片化し、切片を蛍光体イメージングプレートに露光し、組織結合分布を可視化した。
【0164】
これとは別に、同じ動物から死後ホルマリン組織生検を採取し、パラフィンに包埋した。パラフィン組織ブロックを切片化し、形態およびコラーゲン沈着の存在のために染色した。
【0165】
実施例14
公知のトレーサー化合物との比較
68Ga]Ga-1([68Ga]Ga-DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OH)について、文献に報告されている以下のトレーサー化合物との比較を行った:[68Ga]Ga-CBP8(非特許文献2)、[68Ga]Ga-NOTA-コラゲリン(非特許文献1)、[68Ga]Ga-NODAGA-コラゲリン(非特許文献1)。
【0166】
68Ga]Ga-1([68Ga]Ga-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OH)は、上の実施例4に通り製造した。
【0167】
推定I型コラーゲン結合ペプチド[68Ga]Ga-DOTA-CBP8、[68Ga]Ga-NOTA-コラゲリン、[68Ga]Ga-NODAGA-コラゲリンの生体内分布は、公開文献(文献1~2)から入手したものである。
【0168】
68Ga]Ga-1([68Ga]Ga-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OH)の生体内分布は上記と同様に実施した。
【0169】
腎臓および肝臓のそれぞれにおける注射60分後の試験化合物について得られたSUV値を以下の表Vに示す。
【0170】
【表5】
【0171】
図11に見られるように、[68Ga]Ga-DOTA-NH-(CHCHO)-CH-C(O)-LRELHLNNN-OH([68Ga]Ga-1)はほとんどの組織から速やかなクリアランス(60分後のSUV<1)を示した。[68Ga]Ga-1は腎排泄を示したが、腎皮質への再吸収も非常に少なかったことが重要である。ほぼ全ての放射性標識ペプチドが循環から尿中に排出された。したがって、腎臓のバックグラウンド信号は投与2時間後において低かった(SUV≒1)。表V中の[68Ga]Ga-1と比較用トレーサー2との比較は、環状ペプチドCBP8を直鎖状ペプチドLRELHLNNNに置き換えることにより、腎臓でのSUV値が10から1.7と低くなったことを示し、これは非特異的腎滞留が少なくなったことを示している。さらに、比較用トレーサー3、4のコラゲリントレーサーは、腎臓でのSUV値が[68Ga]Ga-1トレーサーよりも大幅に高い値であった。肝臓については、[68Ga]Ga-1トレーサー1は、SUV値が比較用トレーサー1~3と実質的に等しい値または幾分高い値であった。上記の表Vの[68Ga]Ga-1トレーサーの化合物のような本開示の化合物は、一般に線維症を追跡するのに有用であると結論付けられた。特に、本開示の化合物は、腎臓の線維症を追跡するために有用であることが見出された。
【0172】
References
1. Nuclear Medicine and Biology, 41 (2014) 728-736.
2. Sci. Trans. Med. 9, 2017, 1-11
3. WO 2018/053276
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】