(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】血管ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/90 20130101AFI20230802BHJP
【FI】
A61F2/90
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581439
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 CN2021112630
(87)【国際公開番号】W WO2022002281
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010615047.4
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516346171
【氏名又は名称】マイクロポート・ニューロテック(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザン,ハン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ペン
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イクン ブルース
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジャンミン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA44
4C267AA53
4C267AA54
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB06
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB38
4C267BB40
4C267CC08
4C267CC10
4C267CC12
4C267GG16
4C267GG22
4C267GG24
4C267GG32
4C267GG33
4C267GG34
4C267HH11
(57)【要約】
血管ステントが開示される。血管ステントは自己拡張式編組チューブ構造であり、互いに編み合わされた第1構成要素および第2構成要素から構築されるか、または、互いに編み合わされた第2構成要素から構築される。第1構成要素は、少なくとも1つの第1編組ワイヤ(11)を含み、各第1編組ワイヤ(11)は、第1ワイヤコア(111)と、第1ワイヤコア(111)を覆う被覆ジャケット(112)とを含む。第2構成要素は、少なくとも1つの第1編組ワイヤ(11)と、少なくとも1つの第2編組ワイヤ(12)とを含む。血管ステントは、全体がX線的に可視性であり、これによって、外科的処置中にその境界が識別可能であり、これによって、内科医は、血管ステントが血管壁に接着したか否かを明確に判定できる。さらに、血管ステントは強い支持を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管ステントであって、
前記血管ステントは自己拡張式編組チューブ構造であり、
前記自己拡張式編組チューブ構造は、少なくとも1つの第1編組ワイヤおよび複合編組ワイヤから構築され、
前記少なくとも1つの第1編組ワイヤおよび前記複合編組ワイヤは、互いに編み合わされており、
各第1編組ワイヤは、第1ワイヤコアと、前記第1ワイヤコアを覆う被覆ジャケットとを備え、
前記複合編組ワイヤは、前記少なくとも1つの第1編組ワイヤと、少なくとも1つの第2編組ワイヤとからなる、
血管ステント。
【請求項2】
前記血管ステントは自己拡張式編組チューブ構造であり、
前記自己拡張式編組チューブ構造は、前記少なくとも1つの第1編組ワイヤおよび前記複合編組ワイヤから構築され、
前記少なくとも1つの第1編組ワイヤおよび前記複合編組ワイヤは、螺旋状であり互いに編み合わされている、
請求項1に記載の血管ステント。
【請求項3】
前記血管ステントは自己拡張式編組チューブ構造であり、
前記自己拡張式編組チューブ構造は、前記少なくとも1つの第1編組ワイヤおよび前記複合編組ワイヤから構築され、
前記少なくとも1つの第1編組ワイヤおよび前記複合編組ワイヤは、前記血管ステントの両端からそれぞれ時計回りおよび反時計回りに螺旋状となるように、互いに編み合わされている、
請求項2に記載の血管ステント。
【請求項4】
前記被覆ジャケットは弾性生体材料から作製され、
前記第1ワイヤコアは、放射線不透過性材料から作成され、
前記第1ワイヤコアの前記材料は、前記被覆ジャケットの前記材料の線減衰係数より高い線減衰係数を有する、
請求項1に記載の血管ステント。
【請求項5】
前記放射線不透過性材料は、白金、イリジウム、金、銀およびタンタル、またはこれらの合金、のうち1つであり、
前記弾性生体材料は、ニッケル・チタン合金、ニチノール、ステンレス鋼、コバルト・クロム合金、およびニッケル・コバルト合金、のうち1以上である、
請求項4に記載の血管ステント。
【請求項6】
前記第1編組ワイヤは、円形、正方形、楕円形または台形の断面形状を有する、請求項1に記載の血管ステント。
【請求項7】
前記第1ワイヤコアの断面積は、前記第1編組ワイヤの全断面積の10~40%を占める、請求項6に記載の血管ステント。
【請求項8】
各第2編組ワイヤは、第2ワイヤコアと、前記第2ワイヤコアに巻き付けられる不透明フィラメントとを備える、請求項1に記載の血管ステント。
【請求項9】
前記第1編組ワイヤおよび前記第2編組ワイヤにおけるすべて前記材料のうち、
最も大きい線減衰係数は、最も低い線減衰係数の25倍以下である、請求項8に記載の血管ステント。
【請求項10】
前記不透明フィラメントの線減衰係数は、前記第1ワイヤコアの線減衰係数の25倍以下である、請求項9に記載の血管ステント。
【請求項11】
前記第2編組ワイヤは、円形、正方形、楕円形または台形の断面形状を有する、請求項8に記載の血管ステント。
【請求項12】
前記不透明フィラメントは、白金、イリジウム、金、銀およびタンタル、またはこれらの合金、のうち1つであり、
前記第2ワイヤコアは、ニッケル・チタン合金または1つの第1編組ワイヤである、
請求項8に記載の血管ステント。
【請求項13】
前記第2ワイヤコアに巻きつけられた前記不透明フィラメントの、任意の隣接する2つのコイルの間の軸方向距離は、前記不透明フィラメントの直径の1.0~1.5倍である、請求項8に記載の血管ステント。
【請求項14】
前記第1編組ワイヤの数は24~96であり、前記第2編組ワイヤの数は2~6である、請求項8に記載の血管ステント。
【請求項15】
前記第1編組ワイヤおよび/または前記第2編組ワイヤは、薬剤コーティング、抗血栓コーティング、および/または親水性コーティングで、スプレーまたは浸漬により表面コーティングされる、請求項8に記載の血管ステント。
【請求項16】
前記自己拡張式編組チューブ構造は、縮小構成において0.74mm未満の第1直径を有し、拡張構成において1.5mm~7mmの範囲内の第2直径を有する、請求項1に記載の血管ステント。
【請求項17】
前記自己拡張式編組チューブ構造は、0.01N~1Nの範囲内の力の作用下で前記第1直径から前記第2直径に拡張する、請求項16に記載の血管ステント。
【請求項18】
各第1編組ワイヤは50μm以下の断面径を有し、各第2編組ワイヤは90μm以下の断面径を有する、請求項16に記載の血管ステント。
【請求項19】
前記縮小構成における前記自己拡張式編組チューブ構造の前記第1直径は0.6858mm未満であり、
各第2編組ワイヤの前記断面径は80μm以下であり、
各第1編組ワイヤの前記断面径は45μm以下である、
請求項18に記載の血管ステント。
【請求項20】
前記縮小構成における前記自己拡張式編組チューブ構造の前記第1直径は0.5334mm未満であり、
各第2編組ワイヤの前記断面径は50μm以下であり、
各第1編組ワイヤの前記断面径は35μm以下である、
請求項18に記載の血管ステント。
【請求項21】
前記縮小構成における前記自己拡張式編組チューブ構造の前記第1直径は0.4826mm未満であり、
各第2編組ワイヤの前記断面径は30μm以下であり、
各第1編組ワイヤの前記断面径は30μm以下である、
請求項18に記載の血管ステント。
【請求項22】
前記拡張構成において、前記自己拡張式編組チューブ構造は、第1部分と、中間部分と、第2部分とを有し、これらは順に共に接合され、
前記自己拡張式編組チューブ構造の前記中間部分は、一定の外径を有し、
前記自己拡張式編組チューブ構造の前記第1部分および前記第2部分はそれぞれ、前記中間部分から前記自己拡張式編組チューブ構造の対応する端の開口に向かって徐々に増大する外径を有する、
請求項1に記載の血管ステント。
【請求項23】
前記中間部分は、2mm~60mmの軸方向長さを有し、
前記第1部分および前記第2部分のそれぞれは、0.5mm~3mmの軸方向長さを有し、
前記中間部分から前記自己拡張式編組チューブ構造の対応する端の開口に向かって徐々に増大する外径を有する前記第1部分または前記第2部分のワイヤセグメントは、前記自己拡張式編組チューブ構造の中心軸に対して10~60°の角度で延びる、
請求項22に記載の血管ステント。
【請求項24】
前記自己拡張式編組チューブ構造の前記第1部分および前記第2部分は、その形状が、切頭円錐またはテーパの形状に開いており、または、
前記第1部分および前記第2部分は星型形状の断面を有する、
請求項22に記載の血管ステント。
【請求項25】
前記自己拡張式編組チューブ構造は、2~70mmの軸方向長さを有し、
前記2組の編み合わされた編組ワイヤは、軸方向に100~140°の角度を形成し、周方向に40~80°の角度を形成する、
請求項1に記載の血管ステント。
【請求項26】
血管ステントであって、
前記血管ステントは自己拡張式編組チューブ構造であり、
前記自己拡張式編組チューブ構造は、少なくとも1つの第1編組ワイヤおよび少なくとも1つの第2編組ワイヤから構築され、
前記少なくとも1つの第1編組ワイヤおよび前記少なくとも1つの第2編組ワイヤは、互いに編み合わされており、
各第1編組ワイヤは、第1ワイヤコアと、前記第1ワイヤコアを覆う被覆ジャケットとを備える、
血管ステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療デバイスの分野に関し、とくに血管ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
頭蓋内動脈瘤のほとんどは、大脳動脈壁内の異常な風船様拡大として可視化され、クモ膜下出血の原因第1位である。頭蓋内動脈瘤は、脳血管発作のうち、脳血栓および高血圧性脳出血について第3位にランクされる。これは年齢によらず起きるが、とくに40~60歳の中年および高齢の女性に起きる。頭蓋内動脈瘤の病因は未知のままであるが、ほとんどの研究者は、これが頭蓋内動脈壁の先天性局所的欠陥および増大した腔内圧から発生し、その出現および悪化は高血圧、脳動脈硬化および血管炎に関連すると信じている。頭蓋内動脈瘤は、しばしば大脳動脈輪(ウィリスの輪)で発生し、その80%は大脳動脈輪の前部で発生する。
【0003】
現在、頭蓋内動脈瘤の処置は、主に外科的クリッピングおよびインターベンショナルな血管内動脈瘤塞栓形成に依存している。外科的手法は非常に侵襲的であり、多くの副作用を伴い、患者に大きな苦痛を起こす。研究によれば、ネックの細い動脈瘤の85%は完全に閉塞可能であるが、ネックの広い動脈瘤は15%しか完全に閉塞できない。複合巨大動脈瘤の血管内処置について、十分に濃密に充填できないことおよび動脈瘤の再発には、最も大きな懸念がある。内部血管ステントまたは同様の何かの適用による患者動脈の血管内再構成の概念は、1980年代末に提案され、15年前に臨床的使用に入った。既存の編組ステントのX線的可視化は、通常、ステント本体に付与された放射線不透過特徴、ステント本体に編み込まれた放射線不透過ワイヤ、等によって可能となる。しかしながら、そのようなステントは部分的にのみ可視性である。そのようなステントが湾曲した血管内に配置されると、その編組ピッチのため、いくつかのX線的に可視性のワイヤのみに基づいて血管壁にうまく接着したことを判定することは難しい。テーパ状の血管の場合には、血管の変化する直径に適合するようステントの編組ピッチが変化するので、内科医はステントが完全に拡張したか否かを自信をもって判定することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、血管ステントであって、各血管ステントは、全体がX線的に可視性であり、それによって、外科的処置中にその境界が視認できる、血管ステントを提供することであり、それによって、内科医は、それが血管壁に接着したか否かを明確に判定できる。さらに、それらは強い支持を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するために、本発明は、互いに編み合わされた少なくとも1つの第1編組ワイヤおよび複合編組ワイヤから構築される自己拡張式編組チューブ構造の形態の血管ステントを提供する。各第1編組ワイヤは、第1ワイヤコアと、第1ワイヤコアを覆う被覆ジャケットを含み、複合編組ワイヤは、少なくとも1つの第1編組ワイヤと、少なくとも1つの第2編組ワイヤとからなる。
【0006】
好適には、血管ステントは、螺旋状であり互いに編み合わされた少なくとも1つの第1編組ワイヤおよび複合編組ワイヤから構築される自己拡張式編組チューブ構造である。
【0007】
好適には、血管ステントは、血管ステントの両端からそれぞれ時計回りおよび反時計回りに螺旋状となるよう互いに編み合わされた少なくとも1つの第1編組ワイヤおよび複合編組ワイヤから構築される自己拡張式編組チューブ構造である。
【0008】
好適には、被覆ジャケットは弾性生体材料からなり、第1ワイヤコアは放射線不透過性材料からなる。さらに、第1ワイヤコアの材料は、被覆ジャケットの材料の線減衰係数より高い線減衰係数を有する。
【0009】
好適には、放射線不透過性材料は、白金、イリジウム、金、銀およびタンタル、またはこれらの合金、のうち1つであり、弾性生体材料は、ニッケル・チタン合金、ニチノール、ステンレス鋼、コバルト・クロム合金、ニッケル・コバルト合金のうち1以上である。
【0010】
好適には、第1編組ワイヤは、円形、正方形、楕円形または台形の断面形状を有する。
【0011】
好適には、第1ワイヤコアの断面積は、第1編組ワイヤの全断面積の10~40%を占める。
【0012】
好適には、各第2編組ワイヤは、第2ワイヤコアと、第2ワイヤコアに巻き付けられる不透明フィラメントと含む。
【0013】
好適には、第1編組ワイヤおよび第2編組ワイヤにおけるすべての材料のうち、最も大きい線減衰係数は、最も低い線減衰係数の25倍以下である。
【0014】
好適には、不透明フィラメントの線減衰係数は、第1ワイヤコアの線減衰係数の25倍以下である。
【0015】
好適には、第2編組ワイヤは、円形、正方形、楕円形または台形の断面形状を有する。
【0016】
好適には、不透明フィラメントは、白金、イリジウム、金、銀およびタンタル、またはこれらの合金、のうち1つであり、第2ワイヤコアは、ニッケル・チタン合金または1つの第1編組ワイヤである。
【0017】
好適には、第2ワイヤコアに巻きつけられた不透明フィラメントの、任意の隣接する2つのコイルの間の軸方向距離は、不透明フィラメントの直径の1.0~1.5倍である。
【0018】
好適には、第1編組ワイヤの数は24~96であり、第2編組ワイヤの数は2~6である。
【0019】
好適には、第1編組ワイヤおよび/または第2編組ワイヤは、薬剤コーティング、抗血栓コーティング、および/または親水性コーティングで、スプレーまたは浸漬により表面コーティングされる。
【0020】
好適には、自己拡張式編組チューブ構造は、縮小構成において0.74mm未満の第1直径を有し、拡張構成において1.5mm~7mmの範囲内の第2直径を有する。加えて、それは、0.01N~1N以上の力の作用下で第1直径から第2直径に拡張する。
【0021】
好適には、各第2編組ワイヤは90μm以下の断面径を有し、各第1編組ワイヤは50μm以下の断面径を有する。
【0022】
好適には、縮小構成における自己拡張式編組チューブ構造の第1直径は0.6858mm未満であり、各第2編組ワイヤの断面径は80μm以下であり、各第1編組ワイヤの断面径は45μm以下である。
【0023】
好適には、縮小構成における自己拡張式編組チューブ構造の第1直径は0.5334mm未満であり、各第2編組ワイヤの断面径は50μm以下であり、各第1編組ワイヤの断面径は35μm以下である。
【0024】
好適には、縮小構成における自己拡張式編組チューブ構造の第1直径は0.4826mm未満であり、各第2編組ワイヤの断面径は30μm以下であり、各第1編組ワイヤの断面径は30μm以下である。
【0025】
好適には、拡張構成において、自己拡張式編組チューブ構造は、第1部分と、中間部分と、第2部分とを含み、これらは順に共に接合される。さらに、自己拡張式編組チューブ構造の中間部分は、一定の外径を有し、自己拡張式編組チューブ構造の第1部分および第2部分はそれぞれ、中間部分から自己拡張式編組チューブ構造の対応する端の開口に向かって徐々に増大する外径を有する。
【0026】
好適には、中間部分は、2mm~60mmの範囲内の軸方向長さを有し、第1部分および第2部分のそれぞれは、0.5mm~3mmの範囲内の軸方向長さを有する。加えて、中間部分から自己拡張式編組チューブ構造の対応する端の開口に向かって徐々に増大する外径を有する第1部分または第2部分のワイヤセグメントは、自己拡張式編組チューブ構造の中心軸に対して10~60°の角度で延びる。
【0027】
好適には、自己拡張式編組チューブ構造の第1部分および第2部分は、その形状が、切頭円錐の形状に開いており、またはテーパ状であり、または、第1部分および前記第2部分は星型形状の断面を有する。
【0028】
好適には、自己拡張式編組チューブ構造は、2~70mmの軸方向長さを有し、2組の編み合わされた編組ワイヤは、軸方向に100~140°の角度を形成し、周方向に40~80°の角度を形成する。
【発明の効果】
【0029】
従来技術と比較すると、本発明は以下の利点を有する。本発明の血管ステントは、自己拡張式編組チューブ構造の形態で提供され、各第1編組ワイヤは、放射線不透過性材料および形状記憶合金の双方を含む。このため、ステント全体および各編組ワイヤは、X線的に可視性であり、形状記憶特性を有し、これによって、所定サイズに自己拡張できる。不透明コアはDSA上で可視性であり、血管ステントの境界が外科的処置中に明確に識別でき、内科医は、意図した血管の壁に血管ステントが接着したか否かを明確に判定できる。とくに、追加された第2編組ワイヤは、放射線不透過性がより強く、したがって、他の編組ワイヤに比べ、X線下でより可視性である。さらに、それらは周方向において互いに対向する位置に配置される。このようにすると、周方向位置間の距離(複数可)を測定することを介して単に前端の直径をチェックすることにより、拡張した血管ステントの前端で内側への歪みがあるか否かを判定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態による血管ステントの構造の概略図。
【
図2】本発明の一実施形態による第1編組ワイヤの概略断面図。
【
図3】本発明の一実施形態による第2編組ワイヤの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、添付図面および具体的な実施形態を参照して、以下にさらに説明される。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態による血管ステントの構造の概略を示す。
図2は、本発明の一実施形態による第1編組ワイヤの概略断面図を示す。
【0033】
図1および2を参照して、本発明の一実施形態において、血管ステントは、編み合わされた第1構成要素および第2構成要素から、または、編み合わされた第2構成要素から、構築される自己拡張式編組チューブ構造の形態で提供される。好適な実施形態では、血管ステントは、編み合わされた第1構成要素および第2構成要素から構築される自己拡張式編組チューブ構造である。より好適な実施形態では、血管ステントは、編み合わされた第1構成要素および第2構成要素(血管ステントの互いに反対側の端から、それぞれ時計方向および反時計方向に螺旋状である)から構築される自己拡張式編組チューブ構造である。第1構成要素は、少なくとも1つの第1編組ワイヤ11を含み、各第1編組ワイヤ11は、第1ワイヤコア111と、第1ワイヤコア111を覆う被覆ジャケット112とを含む。第1ワイヤコア111は、放射線不透過性材料(白金、イリジウム、金、銀、タンタル、それらの合金、等であってもよい)から作製される。被覆ジャケット112は、弾性の生体材料(ニッケル・チタン合金、ニチノール、ステンレス鋼、コバルト・クロム合金、およびニッケル・コバルト合金のうち1つ以上であってもよい)から作製される。第1ワイヤコア111の材料は、被覆ジャケット112の線減衰係数より高い線減衰係数を有する。したがって、第1ワイヤコア111はより放射線不透過性である。第1編組ワイヤ11は、円形、正方形、楕円形、台形または他の形状の断面を有してもよく、円形断面が比較的好適である。第1ワイヤコア111の断面積は、第1編組ワイヤ11の全断面積の10~40%を占める。好適には、第1ワイヤコア111の断面積は、第1編組ワイヤ11の全断面積の30%を占める。
【0034】
図3を参照して、第2構成要素は、少なくとも1つの第1編組ワイヤ11および少なくとも1つの第2編組ワイヤ12を含む。各第2編組ワイヤ12は、第2ワイヤコア121と、第2ワイヤコア121上に巻き付けられる不透明フィラメント122とを含む。不透明フィラメント122は、放射線不透過性材料(白金、イリジウム、金、銀、タンタルまたはこれらの合金等)から作製されてもよい。好適には、第2ワイヤコア121は、ニッケル・チタン合金から作製される。代替的に、第2ワイヤコア121は、1つの第1編組ワイヤ11として実装されてもよい。さらに、それぞれが1つの第2編組ワイヤ12と1つの第1編組ワイヤ11との組み合わせからなる複合編組ワイヤ1が、螺旋状になり第1構成要素と編み合わされてもよい。不透明フィラメント122は、第2ワイヤコア121の線減衰係数より高い線減衰係数を有する。各材料は、線減衰係数(または線吸収係数)μ
1を有し、μ
1はその材料の質量減衰係数μmと密度ρとの積である。高い線減衰係数は、より大きい放射線不透過性を意味する。好適には、第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12における各材料のうち、最も高い線減衰係数は、最も低い線減衰係数の25倍以下である。さらに、不透明フィラメント122の線減衰係数は、第1ワイヤコア111の線減衰係数の25倍を超えない。
【0035】
第2編組ワイヤ12は、円形、正方形、楕円形、台形または他の形状の断面を有してもよく、円形断面が比較的好適である。
図3を参照して、好適には、第2ワイヤコア121上に巻き付けられた不透明フィラメント122の、任意の2つの隣接するアクティブコイルの間の軸方向距離Lは、不透明フィラメント122の直径の1.0~1.5倍である。より好適には、不透明フィラメント122の、任意の2つの隣接するアクティブコイルの間の軸方向距離Lは、不透明フィラメント122の直径の1.0~1.2倍である。
【0036】
追加で、自己拡張式編組チューブ構造において、第2編組ワイヤ12の数は、第1編組ワイヤ11の数未満である。第1編組ワイヤ11の数は、好適には、24と96の間であり、第2編組ワイヤ12の数は、好適には、2と6の間である。より好適には、第1編組ワイヤ11の数は、44と62の間であり、第2編組ワイヤ12の数は、2と4の間である。好適には、自己拡張式編組チューブ構造の拡張構成において、第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12は周方向に均等に離間する。
【0037】
さらに、第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12は、必要に応じ、スプレーまたは浸漬により、薬剤コーティング、抗血栓コーティング、親水性コーティング、および/または同様のものにより、表面コーティングされてもよい。このようにすると、血管ステントにより良い使用を発見でき、性能が向上する。
【0038】
自己拡張式編組チューブ構造は、縮小構成にある場合に第1直径を有し、拡張構成にある場合に第2直径を有する。自己拡張式編組チューブ構造は、配送カテーテルにより標的病変部位に第1直径を有しつつ配送されてもよく、そこで第2直径を有するよう拡張してもよい。第1直径は、0.74mm未満であってもよく、したがって、配送カテーテルは、0.029インチ以下の内径を有してもよい。第2直径は、1.5mmから7mmまでにわたってもよい。第1編組ワイヤおよび第2編組ワイヤは、いずれも弾性の材料を含むので、第1直径から第2直径への自己拡張式編組チューブ構造の拡張は、0.01Nから1Nまでの範囲内の力の作用下で発生し得、拡張構成の血管ステントは、強い支持を提供できる。したがって、血管ステント内の各編組ワイヤは、放射線不透過性の材料および弾性の材料の双方を含むので、血管ステントおよび各編組ワイヤは、全体がX線的に可視性であり、所定サイズへの自己拡張を可能にする形状記憶特性を示す。放射線不透過性の第1ワイヤコア111は、デジタル減算血管造影(DSA)上で可視性であり、外科的処置中に血管ステントの境界が識別可能となるようにでき、これによって、血管ステントが意図した血管の壁に接着したか否かを、内科医が明確に判定できるようになる。
【0039】
自己拡張式編組チューブ構造において、螺旋第1編組ワイヤ11および複合編組ワイヤ1は、メッシュ開口3が好適には0.1mm~1mmの軸方向サイズを有して形成されるように編み合わされる。より好適には、軸方向サイズは、0.1mmから0.5mmまでの範囲にわたる。メッシュ開口のサイズは、編組ワイヤの数および編組角度に依存してもよい。好適には、自己拡張式編組チューブ構造は2~70mmの軸方向長さを有し、2組の編組ワイヤが、軸方向に100~140°の角度で、周方向に40~80°の角度で編み合わされる。いくつかの実施形態では、2組の編組ワイヤが、軸方向に110~130°の角度で、周方向に50~70°の角度で編み合わされる。
【0040】
自己拡張式編組チューブ構造は、20~40%の金属カバー率を有してもよく、25~35%がより好適である。ここで、「金属カバー率」とは、自己拡張式編組チューブ構造の全表面積に対する自己拡張式編組チューブ構造内の金属ワイヤの表面積の比率を参照する。
【0041】
拡張構成では、自己拡張式編組チューブ構造は、第1部分22と、中間部分21と、第2部分23とを含み、これらは順に共に接合される。自己拡張式編組チューブ構造において、中間部分21は一定の外径を維持し、第1部分22および第2部分23はそれぞれ、中間部分21から自己拡張式編組チューブ構造の対応する端の開口に向かって徐々に増大する外径を有する。このように、各端部開口における第1部分22および第2部分23の外径d2は、中間部分21の直径d1より大きい。第1部分22および第2部分23は、
図1に示すように双方の形状が開いていてもよい(ただしこれに限らない)。代替的に、本発明の範囲から逸脱することなく、これらの部分は、切頭円錐、テーパまたはその他の形状であってもよく、第1部分22および第2部分23は、星型形状の断面を有してもよい。好適には、第1部分22および第2部分23の双方が、0.5~3mmの軸方向長さを有し、第1部分22または第2部分23のワイヤセグメントは、自己拡張式編組チューブ構造の中心軸に対して10~60°の角度で螺旋状である。好適には、第1部分22および第2部分23におけるワイヤセグメントが自己拡張式編組チューブ構造の中心軸に対して螺旋状となる角度αは、30~60°の範囲内である。好適には、第1部分22および第2部分23におけるワイヤセグメントが自己拡張式編組チューブ構造の中心軸に対して螺旋状となる角度αは、30~45°の範囲内である。
【0042】
使用中、自己拡張式編組チューブ構造は第1直径に縮小可能である。一実施形態では、0.029インチカテーテルを用いてこれを動脈瘤の部位に配送することができ、第2編組ワイヤ12の断面径は90μm以下であり、第1編組ワイヤ11の断面径は50μm以下である。
【0043】
別の実施形態では、自己拡張式編組チューブ構造は、0.027インチカテーテルを用いて動脈瘤の部位に配送することができる。すなわち、縮小構成における自己拡張式編組チューブ構造の直径は0.027インチ未満である。この場合には、第2編組ワイヤ12の断面径は80μm以下であり、第1編組ワイヤ11の断面径は45μm以下である。
【0044】
別の実施形態では、自己拡張式編組チューブ構造は、0.021インチカテーテルを用いて動脈瘤の部位に配送することができる。すなわち、縮小構成における自己拡張式編組チューブ構造の直径は0.021インチ未満である。この場合には、第2編組ワイヤ12の断面径は50μm以下であり、第1編組ワイヤ11の断面径は35μm以下である。
【0045】
別の実施形態では、自己拡張式編組チューブ構造は、0.017インチカテーテルを用いて動脈瘤の部位に配送することができる。すなわち、縮小構成における自己拡張式編組チューブ構造の直径は0.017インチ未満である。この場合には、第2編組ワイヤ12の断面径は30μm以下であり、第1編組ワイヤ11の断面径は30μm以下である。
【0046】
[実施形態1]
図1、2および3を参照して、一実施形態による血管ステントは、編み合わされた第1構成要素および第2構成要素から構築される自己拡張式編組チューブ構造の形態で提供される。第1構成要素は第1編組ワイヤ11であり、第2構成要素は、第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12の組み合わせからなる複合編組ワイヤ1である。各第1編組ワイヤ11は、第1ワイヤコア111と、第1ワイヤコア111を覆う被覆ジャケット112とを含む。第1ワイヤコア111は白金から作製され、被覆ジャケット112はニッケル・チタン合金から作製される。各第2編組ワイヤ12は、第2ワイヤコア121と、第2ワイヤコア121に巻き付けられる不透明フィラメント122とを含む。不透明フィラメント122は白金フィラメントであり、第2ワイヤコア121はニッケル・チタン合金から作製される。第1編組ワイヤ11において、第1ワイヤコア111は5148cm
-1の線減衰係数を有し、被覆ジャケット112は258cm
-1の線減衰係数を有する。第2編組ワイヤ12において、不透明フィラメント122は5148cm
-1の線減衰係数を有し、第2ワイヤコア121は258cm
-1の線減衰係数を有する。自己拡張式編組チューブ構造が製造される4つの材料のうち、最も低い線減衰係数に対する最も高い線減衰係数の比率は、約20である。
【0047】
第2編組ワイヤ12は、円形断面を有する。
図3を参照して、各第2編組ワイヤ12において、不透明フィラメント122の、任意の隣接する2つのアクティブコイルの間の軸方向距離Lは、不透明フィラメント122の直径の1.2倍である。
【0048】
第1編組ワイヤ11は、45μmの直径を有し、第2編組ワイヤ12は、85μmの直径を有する。チューブ状構造は、配送のために0.029インチの第1直径を有するよう縮小可能である。第1編組ワイヤ11の数は44であり、第2編組ワイヤ12の数は4である。自己拡張式編組チューブ構造の拡張構成において、第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12は、周方向に均等に離間する。第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12は、薬剤コーティングで表面コーティングされる。
【0049】
拡張構成において、自己拡張式編組チューブ構造は、第1部分22と、中間部分21と、第2部分23とを含み、これらは順に共に接合される。自己拡張式編組チューブ構造において、中間部分21は一定の外径を維持するが、第1部分22および第2部分23はそれぞれ、中間部分21から自己拡張式編組チューブ構造の対応する端の開口に向かって徐々に増大する外径を有する。このように、各端部開口における第1部分22および第2部分23の外径d2は、中間部分21の直径d1より大きい。第1部分22および第2部分23は、
図1に示すように双方の形状が開いていてもよい。第1部分22および第2部分23の双方は、0.5mmの軸方向長さを有する。第1部分22および第2部分23の双方は、自己拡張式編組チューブ構造の中心軸に対して30°の角度αを形成する。
【0050】
[実施形態2]
図1、2および3を参照して、一実施形態による血管ステントは、編み合わされた螺旋状の第1構成要素および第2構成要素から構築される自己拡張式編組チューブ構造の形態で提供される。第1構成要素は第1編組ワイヤ11であり、第2構成要素は、第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12の組み合わせからなる複合編組ワイヤ1である。各第1編組ワイヤ11は、第1ワイヤコア111と、第1ワイヤコア111を覆う被覆ジャケット112とを含む。第1ワイヤコア111は白金から作製され、被覆ジャケット112はコバルト・クロム合金から作製される。各第2編組ワイヤ12は、第2ワイヤコア121と、第2ワイヤコア121に巻き付けられる不透明フィラメント122とを含む。不透明フィラメント122は白金フィラメントであり、第2ワイヤコア121は1つの第1編組ワイヤ11によって提供される。第1編組ワイヤ11において、第1ワイヤコア111は5148cm
-1の線減衰係数を有し、被覆ジャケット112は379cm
-1の線減衰係数を有する。第2編組ワイヤ12において、不透明フィラメント122は5148cm
-1の線減衰係数を有し、第2ワイヤコア121は952cm
-1の線減衰係数を有する。自己拡張式編組チューブ構造が製造される4つの材料のうち、最も低い線減衰係数に対する最も高い線減衰係数の比率は、約14である。
【0051】
第2編組ワイヤ12は、円形断面を有する。
図3を参照して、各第2編組ワイヤ12において、不透明フィラメント122の、任意の隣接する2つのアクティブコイルの間の軸方向距離Lは、不透明フィラメント122の直径の1.1倍である。
【0052】
第1編組ワイヤ11は、40μmの直径を有し、第2編組ワイヤ12は、75μmの直径を有する。チューブ状構造は、配送のために0.027インチの第1直径を有するよう縮小可能である。第1編組ワイヤ11の数は46であり、第2編組ワイヤ12の数は2である。自己拡張式編組チューブ構造の拡張構成において、第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12は、周方向に均等に離間する。
【0053】
第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12は、抗血栓コーティングで表面コーティングされ、これは血管ステントに改善された抗血栓特性を与える。
【0054】
拡張構成において、自己拡張式編組チューブ構造は、第1部分22と、中間部分21と、第2部分23とを含み、これらは順に共に接合される。自己拡張式編組チューブ構造において、中間部分21は一定の外径を維持するが、第1部分22および第2部分23はそれぞれ、中間部分21から自己拡張式編組チューブ構造の対応する端の開口に向かって徐々に増大する外径を有する。このように、各端部開口における第1部分22および第2部分23の外径d2は、中間部分21の直径d1より大きい。第1部分22および第2部分23は、
図1に示すように双方の形状が開いていてもよい。第1部分22および第2部分23の双方は、0.5mmの軸方向長さを有する。第1部分22および第2部分23の双方は、自己拡張式編組チューブ構造の中心軸に対して45°の角度αを形成する。
【0055】
[実施形態3]
図1、2および3を参照して、一実施形態による血管ステントは、編み合わされた螺旋状の第1構成要素および第2構成要素から構築される自己拡張式編組チューブ構造の形態で提供される。第1構成要素は第1編組ワイヤ11であり、第2構成要素は、第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12の組み合わせからなる複合編組ワイヤ1である。各第1編組ワイヤ11は、第1ワイヤコア111と、第1ワイヤコア111を覆う被覆ジャケット112とを含む。第1ワイヤコア111はタンタルから作製され、被覆ジャケット112はコバルト・クロム合金から作製される。各第2編組ワイヤ12は、第2ワイヤコア121と、第2ワイヤコア121に巻き付けられる不透明フィラメント122とを含む。不透明フィラメント122はタンタルフィラメントであり、第2ワイヤコア121は1つの第1編組ワイヤ11によって提供される。第1編組ワイヤにおいて、第1ワイヤコア111は1671cm
-1の線減衰係数を有し、被覆ジャケット112は379cm
-1の線減衰係数を有する。第2編組ワイヤ12において、不透明フィラメント122は1671cm
-1の線減衰係数を有し、第2ワイヤコア121は952cm
-1の線減衰係数を有する。自己拡張式編組チューブ構造が製造される4つの材料のうち、最も低い線減衰係数に対する最も高い線減衰係数の比率は、約4.4である。
【0056】
第2編組ワイヤ12は、円形断面を有する。
図3を参照して、各第2編組ワイヤ12において、不透明フィラメント122の、任意の隣接する2つのアクティブコイルの間の軸方向距離Lは、不透明フィラメント122の直径の1.0倍である。
【0057】
第1編組ワイヤ11は、35μmの直径を有し、第2編組ワイヤ12は、50μmの直径を有する。チューブ状構造は、配送のために0.021インチの第1直径を有するよう縮小可能である。
【0058】
第1編組ワイヤ11の数は60であり、第2編組ワイヤ12の数は4である。自己拡張式編組チューブ構造の拡張構成において、第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12は、周方向に均等に離間する。
【0059】
第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12は、親水性コーティングに浸漬することによって表面コーティングされる。
【0060】
拡張構成において、自己拡張式編組チューブ構造は、第1部分22と、中間部分21と、第2部分23とを含み、これらは順に共に接合される。自己拡張式編組チューブ構造において、中間部分21は一定の外径を維持するが、第1部分22および第2部分23はそれぞれ、中間部分21から自己拡張式編組チューブ構造の対応する端の開口に向かって徐々に増大する外径を有する。このように、各端部開口における第1部分22および第2部分23の外径d2は、中間部分21の直径d1より大きい。第1部分22および第2部分23は、
図1に示すように双方の形状が開いていてもよい。第1部分22および第2部分23の双方は、1.0mmの軸方向長さを有する。第1部分22および第2部分23の双方は、自己拡張式編組チューブ構造の中心軸に対して60°の角度αを形成する。
【0061】
[実施形態4]
図1、2および3を参照して、一実施形態による血管ステントは、編み合わされた螺旋状の第1構成要素および第2構成要素から構築される自己拡張式編組チューブ構造の形態で提供される。第1構成要素は第1編組ワイヤ11であり、第2構成要素は、第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12の組み合わせからなる複合編組ワイヤ1である。各第1編組ワイヤ11は、第1ワイヤコア111と、第1ワイヤコア111を覆う被覆ジャケット112とを含む。第1ワイヤコア111は金から作製され、被覆ジャケット112はコバルト・クロム合金から作製される。各第2編組ワイヤ12は、第2ワイヤコア121と、第2ワイヤコア121に巻き付けられる不透明フィラメント122とを含む。不透明フィラメント122はタンタルフィラメントであり、第2ワイヤコア121は1つの第1編組ワイヤ11によって提供される。第1編組ワイヤにおいて、第1ワイヤコア111は3864cm
-1の線減衰係数を有し、被覆ジャケット112は379cm
-1の線減衰係数を有する。第2編組ワイヤ12において、不透明フィラメント122は1671cm
-1の線減衰係数を有し、第2ワイヤコア121は952cm
-1の線減衰係数を有する。自己拡張式編組チューブ構造が製造される4つの材料のうち、最も低い線減衰係数に対する最も高い線減衰係数の比率は、約10.2である。
【0062】
第2編組ワイヤ12は、円形断面を有する。
図3を参照して、各第2編組ワイヤ12において、不透明フィラメント122の、任意の隣接する2つのアクティブコイルの間の軸方向距離Lは、不透明フィラメント122の直径の1.5倍である。
【0063】
加えて、第1編組ワイヤ11は、25μmの直径を有し、第2編組ワイヤ12は、25μmの直径を有する。チューブ状構造は、第1直径を有するよう縮小可能であり、動脈瘤の部位まで0.017インチカテーテルによって配送され得る。
【0064】
第1編組ワイヤ11の数は62であり、第2編組ワイヤ12の数は2である。自己拡張式編組チューブ構造の拡張構成において、第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12は、周方向に均等に離間する。
【0065】
さらに、第1編組ワイヤ11および第2編組ワイヤ12は、薬剤コーティングに浸漬することによって表面コーティングされる。
【0066】
拡張構成において、自己拡張式編組チューブ構造は、第1部分22と、中間部分21と、第2部分23とを含み、これらは順に共に接合される。自己拡張式編組チューブ構造において、中間部分21は一定の外径を維持するが、第1部分22および第2部分23はそれぞれ、中間部分21から自己拡張式編組チューブ構造の対応する端の開口に向かって徐々に増大する外径を有する。このように、各端部開口における第1部分22および第2部分23の外径d2は、中間部分21の直径d1より大きい。第1部分22および第2部分23は、
図1に示すように双方の形状が開いていてもよい。第1部分22および第2部分23の双方は、2mmの軸方向長さを有する。第1部分22および第2部分23の双方は、自己拡張式編組チューブ構造の中心軸に対して35°の角度αを形成する。
【0067】
[比較実施形態]
外国の医療デバイス製造者からの血管ステント製品Aは、36本のMP35N(ニッケル・コバルト・クロム・モリブデン合金)ワイヤと、12本の白金ワイヤと(すべて30μmの直径を有する)から編み合わされたステントである。MP35N材料は、8.41g/cm3の密度を有し、白金は21.45g/cm3の密度を有する。0.07107nmの波長において、MP35N材料は、約35~45cm2/gの質量吸収係数を示し、白金は、200~240cm2/gの質量吸収係数を示す。たとえば、実施形態2の血管ステントが、螺旋状の第1編組ワイヤ11(40μmの直径、13.6g/cm3の密度、60~70cm2/gの質量吸収係数を有する)のみから編み合わされていると想定する。強度減衰式:I=I0e-μt(ただしtは一様な材料の厚さを表し、本発明のコンテキストでは編組ワイヤの直径に対応する)によれば、強度I0のX線ビームが厚さtを有する材料に照射されると、材料を透過して強度はIに減衰する。より小さいIの値は、より大きい減衰を示し、材料のより良いX線的可視性を示す。血管ステント製品Aでは、MP35NについてI=I0e-1.01であり、白金についてI=I0e-14.2である。実施形態2の第1編組ワイヤ11について、I=I0e-3.5である。このように、実施形態2の第1編組ワイヤ11のX線的可視性は、MP35Nのそれより良いが、白金ワイヤのそれよりわずかに悪い。したがって、仮に実施形態2の血管ステントが第1編組ワイヤのみで編み合わされていたとすると、従来の製品と比較して、全体的なX線的可視性がよくなるが、その利益は大きい。実施形態2において追加で含まれる第2編組ワイヤでは、第2ワイヤコア121が、35μmの直径、6.45g/cm3の密度、および30~40cm2/gの質量吸収係数を有し、不透明フィラメント122が、21.45g/cm3の密度および200~240cm2/gの質量吸収係数を有する。したがって、第2編組ワイヤ12について、I=I0e-24.24である。明らかに、第2編組ワイヤ12のX線的可視性は、血管ステント製品Aの白金ワイヤのそれより優れている。結果として、実施形態2の血管ステントのX線的可視性は、血管ステント製品Aのそれより良い。さらに、第2編組ワイヤ12は、他方の編組ワイヤよりも、X線下でX線的に可視性であり、周方向において互いに対向する位置に配置される。したがって、周方向位置間の距離を測定することを介して、端部における直径を単にチェックすることにより、拡張した血管ステントの端部において内側への歪みがあるか否かを判定できる。
【0068】
したがって、本発明において提供される血管ステントは、少なくとも以下の利点を有する。
【0069】
1.各血管ステント内の各編組ワイヤは、放射線不透過性材料および弾性材料の双方を含み、血管ステント全体および各編組ワイヤの双方がX線的に可視性であって形状記憶特性を有するので、所定サイズへの自己拡張が可能となる。
【0070】
2.血管ステントにおいて、第1編組ワイヤ(それぞれが弾性の外側被覆ジャケットと内側の放射線不透過性第1ワイヤコアとからなる)が主部として編み合わされる。十分に大きい比率を占める弾性材料が、自己拡張の駆動力および強い支持を提供する。不透明なワイヤコアは、DSA上で可視性であり、このため、血管ステントの境界が、外科的処置中に明確に識別でき、内科医は、血管ステントが意図した血管の壁に接着したか否かを明確に判定できる。
【0071】
3.追加された第2編組ワイヤは、より大きい放射線不透過性を有する材料を含み、したがって、他方の編組ワイヤよりも、X線下でX線的に可視性である。さらに、それらは周方向において互いに対向する位置に配置される。このようにすると、周方向位置間の距離(複数可)を測定することを介して、端部における直径を単にチェックすることにより、拡張した血管ステントの前端における内側への歪みがあるか否かを判定できる。
【0072】
本発明は、上記において好適な実施形態の観点から説明されたが、本発明は本明細書に開示される実施形態に限定されない。当業者は、本発明の範囲または精神から逸脱せずに、変化および修正を加えることができる。したがって、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されることを意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 複合編組ワイヤ
11 第1編組ワイヤ
12 第2編組ワイヤ
111 第1ワイヤコア
112 被覆ジャケット
121 第2ワイヤコア
122 不透明フィラメント
21 中間部分
22 第1部分
23 第2部分
3 メッシュ開口
【国際調査報告】