(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(54)【発明の名称】SARS-CoV-2を標的とする抗原結合分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230807BHJP
C07K 16/10 20060101ALI20230807BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230807BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230807BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230807BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230807BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230807BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230807BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230807BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230807BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230807BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20230807BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20230807BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20230807BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20230807BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230807BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230807BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230807BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230807BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230807BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230807BHJP
A61K 31/215 20060101ALI20230807BHJP
A61K 31/13 20060101ALI20230807BHJP
A61K 31/7052 20060101ALI20230807BHJP
A61K 31/4706 20060101ALI20230807BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/10 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 Y
A61K47/68
A61K51/10 200
A61K47/60
A61K47/54
A61K47/59
A61P31/14
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K31/713
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/215
A61K31/13
A61K31/7052
A61K31/4706
A61K39/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500328
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 US2021040533
(87)【国際公開番号】W WO2022010912
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520445473
【氏名又は名称】フラッグシップ パイオニアリング イノベーションズ シックス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グリゴリアン, ゲボルグ
(72)【発明者】
【氏名】イングラハム, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】レオン, チュク ルン
(72)【発明者】
【氏名】フェダーマン, ロス スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】グリーン, ロビン ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】シュエ, ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】マッケンジー, クレイグ オーウェン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA09
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC35
4C076CC41
4C076DD41
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA13
4C084AA19
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB33
4C084ZC75
4C085AA03
4C085AA25
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4C085HH03
4C085KA03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086EA12
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA29
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB33
4C206ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、様々な実施形態において、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2スパイク)のスパイク糖タンパク質に特異的に結合するポリペプチドを提供する。本発明はまた、様々な実施形態において、1つ以上のポリペプチドを含む融合タンパク質、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドを発現するのに適したベクター及び宿主細胞、並びにウイルス感染(例えば、COVID-19)を処置するための方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4及び配列番号13を含む抗体;
配列番号5及び配列番号13を含む抗体;
配列番号6及び配列番号13を含む抗体;
配列番号7及び配列番号14を含む抗体;
配列番号8及び配列番号15を含む抗体;
配列番号9及び配列番号13を含む抗体;
配列番号10及び配列番号13を含む抗体;
配列番号41及び配列番号13を含む抗体;
配列番号42及び配列番号13を含む抗体;
配列番号43及び配列番号47を含む抗体;
配列番号44及び配列番号48を含む抗体;又は
配列番号45及び配列番号49を含む抗体
から選択される抗体のパラトープと同一であるパラトープを含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2スパイク糖タンパク質(SARS-CoV-2スパイク)に特異的に結合するポリペプチド。
【請求項2】
免疫グロブリン重鎖可変領域(V
H)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(V
L)を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
a)配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44又は配列番号45の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び重鎖相補性決定領域3(HCDR3)と同一であるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域(V
H);並びに
b)配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号47、配列番号48又は配列番号49の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)と同一であるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(V
L)
を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2スパイク糖タンパク質(SARS-CoV-2スパイク)に特異的に結合するポリペプチド。
【請求項4】
配列番号4及び配列番号13を含む抗体;
配列番号5及び配列番号13を含む抗体;
配列番号6及び配列番号13を含む抗体;
配列番号7及び配列番号14を含む抗体;
配列番号8及び配列番号15を含む抗体;
配列番号9及び配列番号13を含む抗体;
配列番号10及び配列番号13を含む抗体;
配列番号41及び配列番号13を含む抗体;
配列番号42及び配列番号13を含む抗体;
配列番号43及び配列番号47を含む抗体;
配列番号44及び配列番号48を含む抗体;又は
配列番号45及び配列番号49を含む抗体
から選択される抗体のHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号4及び配列番号13;
配列番号5及び配列番号13;
配列番号6及び配列番号13;
配列番号7及び配列番号14;
配列番号8及び配列番号15;
配列番号9及び配列番号13;
配列番号10及び配列番号13;
配列番号41及び配列番号13;
配列番号42及び配列番号13;
配列番号43及び配列番号47;
配列番号44及び配列番号48;又は
配列番号45及び配列番号49;
を含む抗体のパラトープと同一であるパラトープをさらに含む、請求項3又は4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
配列番号2を含む免疫グロブリン重鎖可変領域(V
H)を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2スパイク糖タンパク質(SARS-CoV-2スパイク)に特異的に結合するポリペプチドであって、
X
1は、Tでないか;
X
2は、Rでないか;
X
3は、Sでないか;
X
4は、Tでないか;
X
5は、Tでないか;
X
6は、Lでないか;
X
7は、Lでないか;
X
8は、Rでないか;
X
9は、Tでないか;
X
10は、Lでないか;又は
X
11は、Yでないか、
又は前述の任意の組み合わせである、ポリペプチド。
【請求項7】
配列番号11を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(V
L)をさらに含む、請求項6に記載のポリペプチドであって、
X
12は、Sでないか;
X
13は、Lでないか;又は
X
14は、Vでないか;
又は前述の任意の組み合わせである、ポリペプチド。
【請求項8】
配列番号2を含む免疫グロブリン重鎖可変領域(V
H)を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2スパイク糖タンパク質(SARS-CoV-2スパイク)に特異的に結合するポリペプチドであって、
X
1は、T又はSであるか;
X
2は、R又はWであるか;
X
3は、S又はGであるか;
X
4は、T、Q又はNであるか;
X
5は、T又はKであるか;
X
6は、L又はKであるか;
X
7は、L又はTであるか;
X
8は、R又はNであるか;
X
9は、T又はSであるか;
X
10は、L又はFであるか;又は
X
11は、Y又はVであるか、
又は前述の任意の組み合わせである、ポリペプチド。
【請求項9】
X
1は、Sであるか;
X
2は、Wであるか;
X
3は、Gであるか;
X
4は、Q又はNであるか;
X
5は、Kであるか;
X
6は、Kであるか;
X
7は、Tであるか;
X
8は、Nであるか;
X
9は、Sであるか;
X
10は、Fであるか;又は
X
11は、Vであるか、
又は前述の任意の組み合わせである、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
配列番号11を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(V
L)をさらに含む、請求項6に記載のポリペプチドであって、
X
12は、S又はGであるか;
X
13は、L又はQであるか;又は
X
14は、V又はLであるか、
又は前述の任意の組み合わせである、ポリペプチド。
【請求項11】
X
12は、Gであるか;
X
13は、Qであるか;又は
X
14は、Lであるか、
又は前述の任意の組み合わせである、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記V
Hが、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号41又は配列番号42の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び重鎖相補性決定領域3(HCDR3)と同一であるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む、請求項6~11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記V
Lが、配列番号13、配列番号14又は配列番号15の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)と同一であるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、請求項6~12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
配列番号46を含む免疫グロブリン重鎖可変領域(V
H)を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2スパイク糖タンパク質(SARS-CoV-2スパイク)に特異的に結合するポリペプチドであって、
X
1は、E又はQであるか;
X
2は、P又はSであるか;
X
3は、A又はEであるか;
X
4は、L又はVであるか;
X
5は、I又はVであるか;
X
6は、S又はTであるか;
X
7は、A又はMであるか;
X
8は、K又はQであるか;
X
9は、G又はSであるか;
X
10は、N、Q又はRであるか;
X
11は、A又はSであるか;
X
12は、P又はQであるか;
X
13は、K又はSであるか;
X
14は、Q又はRであるか;
X
15は、L又はMであるか;
X
16は、S又はTであるか;
X
17は、A又はVであるか;
X
18は、K又はTであるか;
X
19は、S又はTであるか;
X
20は、L又はMであるか;
X
21は、E又はQであるか;
X
22は、L又はWであるか;
X
23は、N又はSであるか;
X
24は、R又はSであるか;
X
25は、K又はRであるか;
X
26は、A又はSであるか;
X
27は、D又はSであるか;
X
28は、M又はVであるか;
X
29は、F又はYであるか;
X
30は、N又はRであるか;又は
X
31は、V又はYであるか、
又は前述の任意の組み合わせである、ポリペプチド。
【請求項15】
配列番号50を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(V
L)をさらに含む、請求項14に記載のポリペプチドであって、
X
32は、D又はEであるか;
X
33は、Q又はVであるか;
X
34は、L又はMであるか;
X
35は、G又はSであるか;
X
36は、S又はTであるか;
X
37は、A又はLであるか;
X
38は、P又はVであるか;
X
39は、D又はEであるか;
X
40は、A又はVであるか;
X
41は、I又はLであるか;
X
42は、S又はTであるか;
X
43は、E又はGであるか;
X
44は、A、N、又はSであるか;
X
45は、L又はYであるか;
X
46は、E又はGであるか;
X
47は、K又はQであるか;
X
48は、K又はRであるか;
X
49は、S又はTであるか;
X
50は、A又はQであるか;
X
51は、S又はTであるか;
X
52は、I又はVであるか;
X
53は、D又はSであるか;
X
54は、R又はSであるか;
X
55は、E又はQであるか;
X
56は、T又はVであるか;
X
57は、L又はQであるか;又は
X
58は、L又はVであるか、
又は前述の任意の組み合わせである、ポリペプチド。
【請求項16】
前記ポリペプチドが、配列番号4/配列番号13、配列番号5/配列番号13、配列番号6/配列番号13、配列番号7/配列番号14、配列番号8/配列番号15、配列番号9/配列番号13、配列番号10/配列番号13、配列番号41/配列番号13、配列番号42/配列番号13、配列番号43/配列番号47、配列番号44/配列番号48又は配列番号45/配列番号49から選択されるV
H/V
Lの組み合わせのパラトープと同一であるパラトープを含む、請求項6~15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記V
Hが、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44若しくは配列番号45、又は前述の組み合わせと少なくとも約85%同一である、請求項2~16のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記V
Hが、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44若しくは配列番号45、又は前述の組み合わせに対して約1~10個のアミノ酸置換を含む、請求項2~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記V
Lが、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号47、配列番号48若しくは配列番号49、又は前述の組み合わせと少なくとも85%同一である、請求項2~18のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
前記V
Lが、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号47、配列番号48若しくは配列番号49、又は前述の組み合わせに対して約1~10個のアミノ酸置換を含む、請求項2~19のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記アミノ酸置換が、保存的置換である、請求項18又は20に記載のポリペプチド。
【請求項22】
前記アミノ酸置換が、高度に保存的な置換である、請求項21に記載のポリペプチド。
【請求項23】
a)前記V
Hが、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号41又は配列番号42を含み;
b)前記V
Lが、配列番号13を含む、
請求項2~22のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
a)前記V
Hが、配列番号7を含み;
b)前記V
Lが、配列番号14を含む、
請求項2~22のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
a)前記V
Hが、配列番号8を含み;
b)前記V
Lが、配列番号15を含む、
請求項2~22のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
前記V
H及びV
Lが、ヒト化された、ヒトフレームワーク領域を含有する、又はそれらの組み合わせである、請求項2~25のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項27】
a)前記V
Hが、配列番号43を含み;
b)前記V
Lが、配列番号47を含む、
請求項2~22のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項28】
a)前記V
Hが、配列番号44を含み;
b)前記V
Lが、配列番号48を含む、
請求項2~22のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項29】
a)前記V
Hが、配列番号45を含み;
b)前記V
Lが、配列番号49を含む、
請求項2~22のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項30】
前記ポリペプチドが、抗体又はその抗原結合断片である、請求項1~29のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項31】
前記抗原結合断片が、Fab、F(ab’)
2、Fab’、scFv、又はFvから選択される、請求項30に記載のポリペプチド。
【請求項32】
抗体重鎖定常領域配列、抗体軽鎖定常領域配列、又は抗体重鎖定常領域配列及び抗体軽鎖定常領域配列の両方をさらに含む、請求項30に記載のポリペプチド。
【請求項33】
前記抗体重鎖定常領域が、IgA定常領域、IgD定常領域、IgE定常領域、IgG定常領域及びIgM定常領域からなる群から選択される、請求項30に記載のポリペプチド。
【請求項34】
前記抗体重鎖定常領域が、IgG1重鎖定常領域である、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項35】
κ定常領域又はλ定常領域からなる群から選択される抗体軽鎖定常領域をさらに含む、請求項32~34のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項36】
前記抗体軽鎖定常領域が、κ軽鎖定常領域である、請求項35に記載のポリペプチド。
【請求項37】
前記ポリペプチドが、異種部分にコンジュゲートされている、請求項1~36のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項38】
前記異種部分が、治療剤、診断薬、又はそれらの組み合わせである、請求項37に記載のポリペプチド。
【請求項39】
前記異種部分が、ポリエチレングリコール(PEG)、ヘキサデカン酸、ヒドロゲル、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、及び異種ポリペプチド配列、或いはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項37に記載のポリペプチド。
【請求項40】
前記ポリマーナノ粒子が、ポリ(乳酸-コ-グリコール)酸(PLGA)を含む、請求項39に記載のポリペプチド。
【請求項41】
前記異種ポリペプチド配列が、担体ポリペプチドを含む、請求項37に記載のポリペプチド。
【請求項42】
前記担体ポリペプチドが、アルブミン又はFcポリペプチドである、請求項41に記載のポリペプチド。
【請求項43】
前記ポリペプチドが、
a)10μM以下のK
DでSARS-CoV-2に結合するか;
b)SARS-CoV-2のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)への結合を低減するか;又は
c)ヒト細胞におけるSARS-CoV-2の感染性を低下させるか、
又は前述の任意の組み合わせである、請求項1~42のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項44】
前記SARS-CoV-2が、T19R、156del、157del、R158G、L452R、T478K、D614G、P681R、及びD950Nを含み、任意選択により、G142Dをさらに含むバリアントである、請求項43に記載のポリペプチド。
【請求項45】
前記ポリペプチドが、100nM以下のK
DでSARS-CoV-2に結合する、請求項43又は44に記載のポリペプチド。
【請求項46】
前記ポリペプチドが、SARS-CoV-2のACE2への結合を少なくとも約30%低減する、請求項43~45のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項47】
前記ACE2が、霊長類ACE2である、請求項43~46のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項48】
前記霊長類ACE2が、ヒトACE2(GeneID59272;例示的なタンパク質配列NP_001358344.1)である、請求項47に記載のポリペプチド。
【請求項49】
前記霊長類ACE2が、チンパンジーACE2、マカクACE2、カニクイザルACE2及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非ヒト霊長類ACE2である、請求項47に記載のポリペプチド。
【請求項50】
前記ポリペプチドが、ヒト細胞におけるSARS-CoV-2の感染性を、少なくとも約30%低減する、請求項43に記載のポリペプチド。
【請求項51】
請求項1~50のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む、融合タンパク質。
【請求項52】
請求項1~44のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項51に記載の融合タンパク質をコードする配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項53】
請求項52に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項54】
請求項47に記載のポリヌクレオチド又は請求項53に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項55】
請求項1~50のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項54に記載の融合タンパク質を含む、組成物。
【請求項56】
1つ以上の医薬賦形剤、希釈剤、又は担体をさらに含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
有効量の請求項55又は56に記載の組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする前記対象を処置する方法。
【請求項58】
細胞を、有効量の請求項55又は56に記載の組成物と接触させることを含む、SARS-CoV-2スパイクと対象の前記細胞との間の融合を阻害する方法。
【請求項59】
前記対象が、COVID-19を有する、請求項57又58に記載の方法。
【請求項60】
前記対象は、COVID-19を発症するリスクがある、請求項57又58に記載の方法。
【請求項61】
前記対象がヒトである、請求項57~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記対象が心疾患を有する、請求項57~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記心疾患が、うっ血性心疾患、冠動脈疾患、高血圧性心疾患、炎症性心疾患、肺性心疾患、リウマチ性心疾患、心臓弁膜症、心筋症、心不全、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記心不全が、うっ血性心不全である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記炎症性心疾患が、心内膜炎、心肥大、心筋炎、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記対象が、糖尿病を有する、請求項57~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記対象が肺疾患を有する、請求項57~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記肺疾患が、急性呼吸窮迫症候群、喘息、気管支炎、COPD、肺気腫、肺腫瘍、胸膜腔疾患、肺血管疾患、気道感染症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
a)前記気道感染症が、上気道感染症、下気道感染症、又は肺炎であるか;
b)前記胸膜腔疾患が、胸膜中皮腫又は緊張性気胸であるか;
c)前記肺血管疾患が、塞栓症、浮腫、動脈性高血圧症又は出血であるか;又は
d)それらの組み合わせである、
請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記対象が、タバコの喫煙者である、請求項57~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記対象が、免疫無防備状態である、請求項57~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記対象が、免疫抑制療法を受けている、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記対象が、40歳以上である、請求項57~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
治療有効量の追加の治療剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項57~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記追加の治療剤が、抗ウイルス剤、ACE2阻害剤、追加のSARS-CoV-2スパイク結合抗体、抗生物質、抗マラリア剤、ワクチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
a)前記追加のSARS-CoV-2スパイク結合抗体が、バムラニビマブ、エテセビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるか;
b)前記抗ウイルス剤が、オセルタミビル(タミフル)、ファビピラビル、アマンタジン、レムデシビル、リマンタジン、プレコナリル、SARS-CoV-2に対するアンチセンスRNA、SARS-CoV-2に対するsiRNA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるか;
c)前記ACE2阻害剤が、ACE2に対するRNAi、ACE2に対するsiRNA、ACE2のCRISPRベースの阻害剤、可溶性ACE2、可溶性ACE2バリアント、抗ACE2抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるか;
d)前記抗生物質が、アジスロマイシンを含むか;
e)前記抗マラリア剤が、クロロキンを含むか;
f)前記ワクチンが、核酸ワクチン又は不活化ウイルスワクチンであるか;又は
g)それらの組み合わせである、
請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記ワクチンが、mrna-1273、BNT162、INO-4800、AZD1222、Ad5-nCoV、PiCoVacc、NVX-CoV2373、又はそれらの組み合わせである、請求項76に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年7月6日に出願された米国仮特許出願第63/048,588号、及び2020年8月25日に出願された米国仮特許出願第63/070,038号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルの資料の参照による組み込み
本出願には、本明細書と同時に提出される次のASCIIテキストファイルに含まれる配列表が参照により組み込まれる。
a)ファイル名:57081009002_Sequence_Listing.txt;2021年7月2日作成、サイズ55KB。
【背景技術】
【0003】
新規コロナウイルスであるSARS-コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)は、最初に中国の武漢で肺炎症例(COVID-19)のクラスターを引き起こした。2020年3月1日の時点で、中国では79,968人の患者がCOVID-19の陽性反応を示し、2,873人が死亡しており、これは死亡率3.6%(95%CI 3.5-3.7)に相当する(Baud D.et al.,Lancet Infect Dis.(2020))。ただし、この数字は、症候性の患者におけるCOVID-19の潜在的脅威を過小評価している可能性がある(同上)。
【0004】
COVID-19は世界中で急速に広がり、パンデミックを引き起こしている。2020年4月21日に世界保健機関から発表されたコロナウイルス疾患(COVID-2019)の状況報告では、2,397,216人の感染確認及び162,956人の死亡が報告された。このうち、過去24時間以内に83,006人の新規感染者及び5,109人の死亡者が追加された。検疫、隔離、及び感染制御対策は、疾患の蔓延を予防すること、及び病気になった人に対する支持療法に依存している(Baden and Rubin,N Engl J Med.,(2020))。
COVID-19の伝染を予防し、COVID-19患者を処置するための特定の抗ウイルス治療剤を開発することが緊急に必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Baud D.et al.,Lancet Infect Dis.(2020)
【非特許文献2】Baden and Rubin,N Engl J Med.,(2020)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される発明は、部分的に、本発明のポリペプチドが重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2スパイク)のスパイク糖タンパク質に特異的に結合するという発見に基づいている。したがって、本発明は、一般に、スパイク(例えば、SARS-CoV-2スパイク)を介したウイルスの細胞への侵入を低減するために有用な組成物(例えば、ポリペプチド、医薬組成物)及び方法に関する。
【0007】
SARS-CoV-2スパイクに特異的に結合するポリペプチドが本明細書で提供される。一態様において、本発明は、SARS-CoV-2スパイクに特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、
a)配列番号4及び配列番号13を含む抗体;
b)配列番号5及び配列番号13を含む抗体;
c)配列番号6及び配列番号13を含む抗体;
d)配列番号7及び配列番号14を含む抗体;
e)配列番号8及び配列番号15を含む抗体;
f)配列番号9及び配列番号13を含む抗体;
g)配列番号10及び配列番号13を含む抗体;
h)配列番号41及び配列番号13を含む抗体;
i)配列番号42及び配列番号13を含む抗体
j)配列番号43及び配列番号47を含む抗体;
k)配列番号44及び配列番号48を含む抗体;又は
l)配列番号45及び配列番号49を含む抗体
から選択される抗体のパラトープと同一のパラトープを含む。
【0008】
別の態様において、本発明は、SARS-CoV-2スパイクに特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、
a)配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44又は配列番号45の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び重鎖相補性決定領域3(HCDR3)とそれぞれ同一であるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域(VH);並びに
b)配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号47、配列番号48又は配列番号49の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)とそれぞれ同一であるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、
a)配列番号4及び配列番号13を含む抗体;
b)配列番号5及び配列番号13を含む抗体;
c)配列番号6及び配列番号13を含む抗体;
d)配列番号7及び配列番号14を含む抗体;
e)配列番号8及び配列番号15を含む抗体;
f)配列番号9及び配列番号13を含む抗体;
g)配列番号10及び配列番号13を含む抗体;
h)配列番号41及び配列番号13を含む抗体;
i)配列番号42及び配列番号13を含む抗体;
j)配列番号43及び配列番号47を含む抗体;
k)配列番号44及び配列番号48を含む抗体;又は
l)配列番号45及び配列番号49を含む抗体
から選択される抗体のHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、
a)配列番号4及び配列番号13;
b)配列番号5及び配列番号13;
c)配列番号6及び配列番号13;
d)配列番号7及び配列番号14;
e)配列番号8及び配列番号15;
f)配列番号9及び配列番号13;
g)配列番号10及び配列番号13;
h)配列番号41及び配列番号13;
i)配列番号42及び配列番号13;
j)配列番号43及び配列番号47を含む抗体;
k)配列番号44及び配列番号48を含む抗体;又は
l)配列番号45及び配列番号49を含む抗体
を含む抗体のパラトープと同一であるパラトープをさらに含む。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は、配列番号2を含むVHを含むポリペプチドを提供し、ここで、
a)X1は、Tでないか;
b)X2は、Rでないか;
c)X3は、Sでないか;
d)X4は、Tでないか;
e)X5は、Tでないか;
f)X6は、Lでないか;
g)X7は、Lでないか;
h)X8は、Rでないか;
i)X9は、Tでないか;
j)X10は、Lでないか;又は
k)X11は、Yでないか、
又は前述の任意の組み合わせである。
【0012】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号11を含むVLをさらに含み、ここで、
a)X12は、Sでないか;
b)X13は、Lでないか;又は
c)X14は、Vでないか;
又は前述の任意の組み合わせである。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、配列番号46を含むVHを含む、SARS-CoV-2スパイクに特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、
X1は、E又はQであるか;
X2は、P又はSであるか;
X3は、A又はEであるか;
X4は、L又はVであるか;
X5は、I又はVであるか;
X6は、S又はTであるか;
X7は、A又はMであるか;
X8は、K又はQであるか;
X9は、G又はSであるか;
X10は、N、Q又はRであるか;
X11は、A又はSであるか;
X12は、P又はQであるか;
X13は、K又はSであるか;
X14は、Q又はRであるか;
X15は、L又はMであるか;
X16は、S又はTであるか;
X17は、A又はVであるか;
X18は、K又はTであるか;
X19は、S又はTであるか;
X20は、L又はMであるか;
X21は、E又はQであるか;
X22は、L又はWであるか;
X23は、N又はSであるか;
X24は、R又はSであるか;
X25は、K又はRであるか;
X26は、A又はSであるか;
X27は、D又はSであるか;
X28は、M又はVであるか;
X29は、F又はYであるか;
X30は、N又はRであるか;又は
X31は、V又はYであるか、
又は前述の任意の組み合わせである。
【0014】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号50を含むVLをさらに含み、ここで、
X32は、D又はEであるか;
X33は、Q又はVであるか;
X34は、L又はMであるか;
X35は、G又はSであるか;
X36は、S又はTであるか;
X37は、A又はLであるか;
X38は、P又はVであるか;
X39は、D又はEであるか;
X40は、A又はVであるか;
X41は、I又はLであるか;
X42は、S又はTであるか;
X43は、E又はGであるか;
X44は、A、N、又はSであるか;
X45は、L又はYであるか;
X46は、E又はGであるか;
X47は、K又はQであるか;
X48は、K又はRであるか;
X49は、S又はTであるか;
X50は、A又はQであるか;
X51は、S又はTであるか;
X52は、I又はVであるか;
X53は、D又はSであるか;
X54は、R又はSであるか;
X55は、E又はQであるか;
X56は、T又はVであるか;
X57は、L又はQであるか;又は
X58は、L又はVであるか、
又は前述の任意の組み合わせである。
【0015】
別の態様において、本発明は、
a)配列番号3と少なくとも70%同一であるVH配列;
b)配列番号12と少なくとも70%同一であるVL配列;又は
c)それらの組み合わせ
を含む、SARS-CoV-2スパイクに特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、VH配列は配列番号3を含まないか、VL配列は配列番号12を含まないか、又はその両方である。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、融合タンパク質である。
【0017】
他の態様において、本発明は、本明細書に開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドを含むベクター、及びそのようなポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、有効量の本明細書に開示されるポリペプチド又は本明細書に開示されるポリペプチドを含む組成物(例えば、医薬組成物)を対象に投与することを含む、それを必要とする対象(例えば、COVID-19などのSARS-CoV感染を有する対象)を処置する方法を提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は、細胞を、有効量の本明細書に開示されるポリペプチドを含む組成物と接触させることを含む、SARS-CoV-2スパイクと細胞(例えば、対象の細胞)との間の融合を阻害する方法、又は本明細書に開示されるポリペプチドを含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。
【0020】
特許又は出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれる。カラー図面を含むこの特許又は特許出願公開のコピーは、申請及び必要な手数料の支払いに応じて、特許庁によって提供される。
【0021】
前述の内容は、添付の図面に示されているように、例示的な実施形態の以下のより具体的な説明から明らかであり、同様の参照文字は、異なる表示の全体にわたって同じ部分を参照している。図面は必ずしも原寸に比例しておらず、代わりに実施形態を説明することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】SARS-Cov-2スパイク(RBD)の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を示す。本明細書に開示される参照抗体によって結合されるエピトープ残基は、アスタリスクで示される。
【
図2A】本発明のポリペプチドにおいて有用な重鎖可変(V
H)配列の非限定的な例のアライメントを示す。重鎖相補性決定領域(HCDR)配列は、太字及び下線を使用して示される。「*」は、パラトープ残基を示す。X
n(nは1~11の数字)の位置は、アライメントの下部に対応する数字で示される。表1のV
HコンセンサスA(配列番号2)も参照されたい。
【
図2B】本発明のポリペプチドにおいて有用な軽鎖可変(V
L)配列の非限定的な例のアライメントを示す。軽鎖相補性決定領域(LCDR)配列は、太字及び下線を使用して示される。「*」は、パラトープ残基を示す。X
n(nは12~14の数字)の位置は、アライメントの下部に対応する数字で示される。表1のV
LコンセンサスA(配列番号11)も参照されたい。
【
図3A】本発明のポリペプチドにおいて有用な重鎖可変(V
H)配列の非限定的な例のアライメントを示す。重鎖相補性決定領域(HCDR)配列は、太字及び下線を使用して示される。「*」は、パラトープ残基を示す。X
n(nは1~31の数字)の位置は、アライメントの下部に対応する数字で示される。表1のV
HコンセンサスB(配列番号46)も参照されたい。
【
図3B】本発明のポリペプチドにおいて有用な軽鎖可変(V
L)配列の非限定的な例のアライメントを示す。軽鎖相補性決定領域(LCDR)配列は、太字及び下線を使用して示される。「*」は、パラトープ残基を示す。X
n(nは32~58の数字)の位置は、アライメントの下部に対応する数字で示される。表1のV
LコンセンサスB(配列番号50)も参照されたい。
【
図4A】本発明のポリペプチドにおいて有用な重鎖可変(V
H)配列の非限定的な例のアライメントを示す。重鎖相補性決定領域(HCDR)配列は、太字及び下線を使用して示される。「*」は、パラトープ残基を示す。X
n(nは1~55の数字)の位置は、アライメントの下部に対応する数字で示される。
【
図4B】本発明のポリペプチドにおいて有用な軽鎖可変(V
L)配列の非限定的な例のアライメントを示す。軽鎖相補性決定領域(LCDR)配列は、太字及び下線を使用して示される。「*」は、パラトープ残基を示す。X
n(nは56~94の数字)の位置は、アライメントの下部に対応する数字で示される。
【
図5】本発明のポリペプチド(AB-8、IgG)が変異SARS-COV-2シュードタイプウイルスを中和する能力を示す。バーは、親D614G-親ウイルスに対する、新たな変異又は欠失を有するシュードタイプウイルスの抗体中和についてのIC
50値の倍率差(WT-Mutant)/(WT)を表す。-2.5から2.5の間の値は、このアッセイでは有意でないと見なされる。
【
図6】バイオレイヤー干渉法で測定されたCOV-2 RBDに対するヒト化IgG1抗体(灰色のバー)及びシード抗体(黒色のバー)の親和性を示す。
【
図7】バイオレイヤー干渉法で測定されたCOV-2 RBDに対するヒト化IgG1抗体(灰色のトレース)及びシード抗体(黒色のトレース)の会合及び解離を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
例示的な実施形態の説明は以下の通りである。
【0024】
本発明のいくつかの態様を、例示のみを目的として実施例を参照して以下に説明する。本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細、関係、及び方法が記載されていることを理解されたい。しかし、関連技術の当業者は、本発明が1つ以上の具体的な詳細なしに実施できるか、又は他の方法、プロトコル、試薬、細胞株及び動物で実施できることを容易に認識するであろう。本発明は、示される行為又は事象の順序によって限定されない。いくつかの行為は、異なる順序で、及び/又は他の行為又は事象と同時に発生し得るからである。さらに、本発明による方法論を実行するために、示される行為、ステップ、又は事象の全てを要するわけではない。本明細書に記載又は参照される技術及び手順の多くは、当業者によってよく理解され、従来の方法論を用いて一般的に使用される。
【0025】
SARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合するポリペプチド
SARS-CoV-2は、COVID-19の病原体である。SARS-CoV-2スパイク、又はSARS-CoV-2のSタンパク質は、ヒト宿主細胞などの宿主細胞へのSARS-CoV-2ウイルスの侵入を促進するタンパク質である。理論に拘束されるものではないが、SARS-CoV-2スパイクは、宿主細胞の表面にある侵入受容体(例えば、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)又は膜貫通型プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2))に結合することによって感染を促進すると考えられる。野生型SARS-CoV-2スパイク配列の非限定的な例は、NCBI RefSeq YP_009724390(配列番号1)である。
【化1】
【0026】
本明細書で使用される場合、SARS-CoV-2スパイクには、野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質(例えば、配列番号1)、野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質のバリアント、並びに野生型及びバリアントSARS-CoV-2スパイクタンパク質の修飾型が含まれる。
【0027】
一態様において、本発明は、配列番号1を含むSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合するポリペプチドを提供する。
【0028】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2スパイクのバリアントに結合する。いくつかの実施形態において、バリアントは、SARS-CoV-2スパイク配列(例えば、配列番号1)と少なくとも約90%の配列同一性を有する、例えば、野生型SARS-CoV-2スパイク配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、配列同一性は、約90~99.9%、90~99.8%、92~99.8%、92~99.6%、94~99.6%、94~99.5%、95~99.5%、95~99.4%、96~99.4%、96~99.2%、97~99.2%又は97~99%である。
【0029】
いくつかの実施形態において、バリアントSARS-CoV-2スパイクは、配列番号1に対して、L5F、S13I、T19R、A67V、69del、70del、D80G、T95I、G142D、144del、W152C、E154K、F157S、A222V、D253G、G261D、V367F、K417N、N439K、L452R、Y453F、S477N、E484K、F486L、S494P、E484Q、N501T、N501Y、F565L、A570D、D614G、Q677H、P681H、P681R、A701V、T716I、T859N、F888L、S982A、D950N、Q957R、Q1071H、V1176F、D1118H、K1191N、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44個、又は45個全ての変異を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、バリアントSARS-CoV-2スパイクは、配列番号1に対して、69del、70del、144del、E484K、S494P、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H若しくはK1191N、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態において、バリアントSARS-CoV-2スパイクは、69del、70del、144del、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、及びD1118Hを含む。いくつかの実施形態において、バリアントSARS-CoV-2スパイクは、E484K、S494P若しくはK1191N、又はそれらの組み合わせをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、バリアントSARS-CoV-2スパイクは、配列番号1に対して、D80A、D215G、241del、242del、243del、K417N、E484K、N501Y、D614G若しくはA701V、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態において、バリアントSARS-CoV-2スパイクは、D80A、D215G、241del、242del、243del、K417N、E484K、N501Y、D614G、及びA701Vを含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、バリアントSARS-CoV-2スパイクは、配列番号1に対して、T19R、G142D、156del、157del、R158G、L452R、T478K、D614G、P681R若しくはD950N、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態において、バリアントSARS-CoV-2スパイクは、T19R、156del、157del、R158G、L452R、T478K、D614G、P681R、及びD950Nを含む。いくつかの実施形態において、バリアントSARS-CoV-2スパイクは、G142Dをさらに含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、バリアントSARS-CoV-2スパイクは、配列番号1に対して、69del、70del、144del、A222V、G261D、V367F、K417N、N439K、Y453F、S477N、E484K、F486L、N501T、N501Y、A570D若しくはD614G、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の変異を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、バリアントSARS-CoV-2スパイクは、配列番号1に対して、E484K、N501Y若しくはD614G、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の変異を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、修飾されたSARS-CoV-2スパイクタンパク質は、配列番号1に対して、F817P、A892P、A899P、A942P、K986P、V987Pから選択される1つ以上の変異を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)(配列番号52)又はRBD内のエピトープ(例えば、RBD5(
図1))に結合する。
【化2】
【0037】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、RBDのバリアント又はRBD内のエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、バリアントは、野生型RBD(例えば、配列番号52)又は野生型RBD5(
図1)と少なくとも約90%の配列同一性を有する、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、配列同一性は、約90~99.9%、90~99.8%、92~99.8%、92~99.6%、94~99.6%、94~99.5%、95~99.5%、95~99.4%、96~99.4%、96~99.2%、97~99.2%又は97~99%である。
【0038】
いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(例えば、配列番号1又は配列番号52)に結合し、免疫グロブリン軽鎖可変領域、免疫グロブリン重鎖可変領域、又は免疫グロブリン軽鎖可変領域及び免疫グロブリン重鎖可変領域を含むポリペプチドであって、ここで、ポリペプチドは、配列番号17、配列番号21、配列番号24、配列番号31及び配列番号35の5つ全てを含むわけではない。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号17、配列番号21、配列番号24、配列番号31及び配列番号35から選択される1、2、3又は4個のCDRを含む。
【0039】
別の態様において、本発明は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、
a)配列番号4と少なくとも55%(例えば、少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、98、又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域(VH);
b)配列番号55と少なくとも55%(例えば、少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、98、又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL);又は
c)a)及びb)の両方
を含み、ここで、ポリペプチドは、配列番号17、配列番号21、配列番号24、配列番号31及び配列番号35の5つ全てを含むわけではない。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号17、配列番号21、配列番号24、配列番号31及び配列番号35から選択される1、2、3又は4個のCDRを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質(例えば、配列番号1)に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質の1つ以上のエピトープ残基(例えば、1つ以上のエピトープ残基)に結合する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「参照」又は「参照ポリペプチド」という用語は、SARS-CoV-1に特異的に結合するポリペプチド(例えば、免疫グロブリン分子)を指し、これは本発明のポリペプチドではない。参照ポリペプチドと本発明のポリペプチドの配列を比較して、それらの間の構造的な差異(例えば、アミノ酸置換などの1つ以上のアミノ酸位置における差異)を示し得る。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、一般に、本発明のポリペプチドが、制御された条件下で、参照ポリペプチドと比較して:異なる結果を達成するために、異なる方法で、異なる機能、の1つ以上(すなわち、1つ、2つ、又は3つ全て)を示すように、参照ポリペプチドと比較して、非実質的な差異以上の差異(例えば、1つ以上の実質的な差異)を有する。参照ポリペプチドは、本発明のポリペプチドから、1つ以上のアミノ酸、例えば、いくつかの実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、又はそれを超える数のアミノ酸が異なる。特定の実施形態において、参照ポリペプチドは、本発明で提供されるポリペプチドから、少なくとも約0.4、0.8、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55%又はそれを超えるアミノ酸同一性が相違する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」という用語は、配列がアラインされて最大レベルのパーセンテージで表される同一性を達成するときに、2つのヌクレオチド配列又は2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を有する程度を指す。配列アライメント及び比較のために、典型的には、1つの配列が参照配列として指定され、これと試験配列が比較される。参照配列と試験配列の間の配列同一性は、参照配列と試験配列のアライメント時に参照配列と試験配列が同じヌクレオチド又はアミノ酸を共有して最大レベルの同一性を達成する、参照配列の全長にわたる位置のパーセンテージとして表される。一例として、最大レベルの同一性を達成するためのアライメント時に、試験配列が、参照配列の全長にわたって同じ位置の70%に同じヌクレオチド又はアミノ酸残基を有する場合、2つの配列は70%の配列同一性を有すると見なされる。
【0043】
最大レベルの同一性を達成するための比較用の配列のアライメントは、適切なアライメント方法又はアルゴリズムを使用して、当業者によって容易に実施され得る。場合によっては、アライメントは、最大レベルの同一性を提供するために導入されたギャップを含み得る。例には、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所ホモロジーアルゴリズム、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性の検索方法、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実装(GAP、BESTFIT、FASTA,及びTFASTA,Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.)、及び外観検査(一般的に、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biologyを参照されたい)が含まれる。
【0044】
配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列がコンピューターに入力され、その後必要に応じて座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。次に、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。パーセント配列同一性を決定するために一般的に使用されるツールは、米国国立衛生研究所の国立医学図書館の国立バイオテクノロジー情報センターから入手可能なProtein Basic Local Alignment Search Tool(BLASTP)である。(Altschul et al.,1990)。
【0045】
「ポリペプチド」「ペプチド」又は「タンパク質」という用語は、長さ又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化又はリン酸化)にかかわらず、アミド結合によって共有結合された少なくとも2つのアミノ酸のポリマーを意味する。タンパク質、ペプチド又はポリペプチドは、任意の適切なL-及び/又はD-アミノ酸、例えば、一般的なα-アミノ酸(例えば、アラニン、グリシン、バリン)、非α-アミノ酸(例えば、β-アラニン)、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、サルコシン、スタチン)、及び異常アミノ酸(例えば、シトルリン、ホモシトルリン、ホモセリン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン)を含み得る。ペプチド上のアミノ、カルボキシル及び/又は他の官能基は、遊離していても(例えば、修飾されていなくても)よく、適切な保護基で保護されていてもよい。アミノ基及びカルボキシル基の適切な保護基、並びに保護基を付加又は除去する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Green and Wuts,“Protecting Groups in Organic Synthesis,” John Wiley and Sons,1991に開示されている。タンパク質、ペプチド、又はポリペプチドの官能基は、当技術分野で公知の方法を使用して、誘導体化(例えば、アルキル化)又は標識化(例えば、発蛍光団又はハプテンなどの検出可能な標識による)することもできる。タンパク質、ペプチド又はポリペプチドは、必要に応じて、1つ以上の修飾(例えば、アミノ酸リンカー、アシル化、アセチル化、アミド化、メチル化、末端修飾因子(例えば、環化修飾)、N-メチル-α-アミノ基置換)を含み得る。さらに、タンパク質、ペプチド又はポリペプチドは、公知及び/又は天然のペプチドの類似体、例えば、保存的アミノ酸残基置換を有するペプチド類似体であり得る。
【0046】
一態様において、本発明は、SARS-CoV-2スパイクに特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、
a)配列番号4及び配列番号13を含む抗体;
b)配列番号5及び配列番号13を含む抗体;
c)配列番号6及び配列番号13を含む抗体;
d)配列番号7及び配列番号14を含む抗体;
e)配列番号8及び配列番号15を含む抗体;
f)配列番号9及び配列番号13を含む抗体;
g)配列番号10及び配列番号13を含む抗体;
h)配列番号41及び配列番号13を含む抗体;
i)配列番号42及び配列番号13を含む抗体;
j)配列番号43及び配列番号47を含む抗体;
k)配列番号44及び配列番号48を含む抗体;又は
l)配列番号45及び配列番号49を含む抗体
から選択される抗体のパラトープと同一のパラトープを含む。
【0047】
配列番号4~10、13~15、41~45、及び47~49については表1を、配列番号4~10、13~15、41~45、及び47~49を含む抗体のパラトープ残基については、
図2A~4Bを参照されたい。
【0048】
「パラトープ」という用語は、標的タンパク質のエピトープとの結合相互作用に寄与する、抗体又はその抗原結合断片中のアミノ酸残基の組を指す。結合相互作用は、水素結合、塩橋、ファンデルワールス相互作用、イオン結合、又はそれらの組み合わせであり得る。結合相互作用は、直接的、又は間接的、例えば、イオン又は水などの配位中間分子を介したものであり得る。いくつかの実施形態において、パラトープの残基は、定義されたCDRの一部である残基のみを含む。他の実施形態において、パラトープの残基は、定義されたCDRの一部ではない1つ以上の残基をさらに含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、パラトープは、ポリペプチドが標的抗原に結合する場合、標的抗原上のエピトープから約5.0オングストローム未満、例えば、エピトープから約4.5、4.0、3.5、3.0、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0又は0.9オングストローム、又は約0.9~5.0、0.9~4.8.1.0~5、1.0~4.5、1.0~4.0、1.0~3.5、1.1~3.5、1.1~3.0、1.2~3.0、1.2~2.5、1.3~2.5、1.3~2.4、1.4~2.4、1.4~2.3、1.5~2.3、1.5~2.2、1.6~2.2、1.6~2.1、1.7~2.1、1.7~2.0又は1.8~2.0オングストローム未満に指向される。いくつかの実施形態において、パラトープを構成するアミノ酸残基の全ては、ポリペプチドが標的抗原に結合する場合、標的抗原上のエピトープから約5.0オングストローム未満に指向される。他の実施形態において、パラトープ中のパラトープを構成するアミノ酸残基の全部未満(例えば、アミノ酸残基の40%、50%、60%、70%、80%、90%)は、ポリペプチドが標的抗原に結合する場合、標的抗原上のエピトープから約5.0オングストローム未満に指向される。
【0050】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるパラトープを含むポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む。特定の実施形態において、パラトープ残基は、ポリペプチドのVH及びVL内に含有される。
【0051】
別の態様において、本発明は、SARS-CoV-2スパイクに特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、
a)配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44又は配列番号45のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3とそれぞれ同一であるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むVH;並びに
b)配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号47、配列番号48又は配列番号49のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とそれぞれ同一であるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むVL
を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、
a)配列番号4及び配列番号13を含む抗体;
b)配列番号5及び配列番号13を含む抗体;
c)配列番号6及び配列番号13を含む抗体;
d)配列番号7及び配列番号14を含む抗体;
e)配列番号8及び配列番号15を含む抗体;
f)配列番号9及び配列番号13を含む抗体;
g)配列番号10及び配列番号13を含む抗体;
h)配列番号41及び配列番号13を含む抗体;
i)配列番号42及び配列番号13を含む抗体;
j)配列番号43及び配列番号47を含む抗体;
k)配列番号44及び配列番号48を含む抗体;又は
l)配列番号45及び配列番号49を含む抗体
から選択される抗体のHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0053】
CDR(例えば、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及び/又はLCDR3)は、本明細書にさらに記載されるように、抗体のCDR残基を同定するための任意の本技術分野で認識される方法によって定義されるCDR(例えば、Kabatによって定義されるCDR、Chothiaによって定義されるCDR)であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、
a)配列番号4及び配列番号13;
b)配列番号5及び配列番号13;
c)配列番号6及び配列番号13;
d)配列番号7及び配列番号14;
e)配列番号8及び配列番号15;
f)配列番号9及び配列番号13;
g)配列番号10及び配列番号13;
h)配列番号41及び配列番号13;
i)配列番号42及び配列番号13;
j)配列番号43及び配列番号47;
k)配列番号44及び配列番号48;又は
l)配列番号45及び配列番号49;
を含む抗体のパラトープと同一であるパラトープをさらに含む。
【0055】
別の態様において、本発明は、配列番号2を含むVHを含む、SARS-CoV-2スパイクに特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、
a)X1は、Tでないか;
b)X2は、Rでないか;
c)X3は、Sでないか;
d)X4は、Tでないか;
e)X5は、Tでないか;
f)X6は、Lでないか;
g)X7は、Lでないか;
h)X8は、Rでないか;
i)X9は、Tでないか;
j)X10は、Lでないか;又は
k)X11は、Yでないか、
又は前述の任意の組み合わせである。
【0056】
本明細書の配列番号3~10のコンセンサスV
H配列である、配列番号2として特定される配列を以下に示す:
【化3】
【0057】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、VLをさらに含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号11を含むVLを含み、ここで、
a)X12は、Sでないか;
b)X13は、Lでないか;又は
c)X14は、Vでないか;
又は前述の任意の組み合わせである。
【0058】
本明細書の配列番号12~15のコンセンサスVL配列である、配列番号11として特定される配列を以下に示す:
DILMTQSPSSLSASLGERVSLTCRASQEIX12GYLSWLQEKPDGTIKRLIYAASTLDSGVPKRFSGSRSGSDYSLTISSLESEDFADYYCX13QYX14SYPWTFGGGTKLEIK(配列番号11)
【0059】
いくつかの実施形態において、
a)X1は、T又はSであるか;
b)X2は、R又はWであるか;
c)X3は、S又はGであるか;
d)X4は、T、Q又はNであるか;
e)X5は、T又はKであるか;
f)X6は、L又はKであるか;
g)X7は、L又はTであるか;
h)X8は、R又はNであるか;
i)X9は、T又はSであるか;
j)X10は、L又はFであるか;又は
k)X11は、Y又はVであるか、
又は前述の任意の組み合わせである。
【0060】
いくつかの実施形態において、
a)X1は、Sであるか;
b)X2は、Wであるか;
c)X3は、Gであるか;
d)X4は、Q又はNであるか;
e)X5は、Kであるか;
f)X6は、Kであるか;
g)X7は、Tであるか;
h)X8は、Nであるか;
i)X9は、Sであるか;
j)X10は、Fであるか;又は
k)X11は、Vであるか、
又は前述の任意の組み合わせである。
【0061】
いくつかの実施形態において、X1は、Tでない。いくつかの実施形態において、X1は、T又はSである。いくつかの実施形態において、X1は、Tである。いくつかの実施形態において、X1は、Sである。いくつかの実施形態において、X2は、Rでない。いくつかの実施形態において、X2は、R又はWである。いくつかの実施形態において、X2は、Rである。いくつかの実施形態において、X2は、Wである。いくつかの実施形態において、X3は、Sでない。いくつかの実施形態において、X3は、S又はGである。いくつかの実施形態において、X3は、Sである。いくつかの実施形態において、X3は、Gである。いくつかの実施形態において、X4は、Tでない。いくつかの実施形態において、X4は、T、Q又はNである。いくつかの実施形態において、X4は、Tである。いくつかの実施形態において、X4は、Qである。いくつかの実施形態において、X4は、Nである。いくつかの実施形態において、X5は、Tでない。いくつかの実施形態において、X5は、T又はKである。いくつかの実施形態において、X5は、Tである。いくつかの実施形態において、X5は、Kである。いくつかの実施形態において、X6は、Lでない。いくつかの実施形態において、X6は、L又はKである。いくつかの実施形態において、X6は、Lである。いくつかの実施形態において、X6は、Kである。いくつかの実施形態において、X7は、Lでない。いくつかの実施形態において、X7は、L又はTである。いくつかの実施形態において、X7は、Lである。いくつかの実施形態において、X7は、Tである。いくつかの実施形態において、X8は、Rでない。いくつかの実施形態において、X8は、R又はNである。いくつかの実施形態において、X8は、Rである。いくつかの実施形態において、X8は、Nである。いくつかの実施形態において、X9は、Tでない。いくつかの実施形態において、X9は、T又はSである。いくつかの実施形態において、X9は、Tである。いくつかの実施形態において、X9は、Sである。いくつかの実施形態において、X10は、Lでない。いくつかの実施形態において、X10は、L又はFである。いくつかの実施形態において、X10は、Lである。いくつかの実施形態において、X10は、Fである。いくつかの実施形態において、X11は、Yでない。いくつかの実施形態において、X11は、Y又はVである。いくつかの実施形態において、X11は、Yである。いくつかの実施形態において、X11は、Vである。
【0062】
いくつかの実施形態において、
a)X12は、S又はGであるか;
b)X13は、L又はQであるか;又は
c)X14は、V又はLであるか、
又は前述の任意の組み合わせである。
【0063】
いくつかの実施形態において、
a)X12は、Gであるか;
b)X13は、Qであるか;又は
c)X14は、Lであるか、
又は前述の任意の組み合わせである。
【0064】
いくつかの実施形態において、X12は、Sでない。いくつかの実施形態において、X12は、S又はGである。いくつかの実施形態において、X12は、Sである。いくつかの実施形態において、X12は、Gである。いくつかの実施形態において、X13は、Lでない。いくつかの実施形態において、X13は、L又はQである。いくつかの実施形態において、X13は、Lである。いくつかの実施形態において、X13は、Qである。いくつかの実施形態において、X14は、Vでない。いくつかの実施形態において、X14は、V又はLである。いくつかの実施形態において、X14は、Vである。いくつかの実施形態において、X14は、Lである。
【0065】
別の態様において、本発明は、配列番号46を含むVHを含む、SARS-CoV-2スパイクに特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、
X1は、E又はQであるか;
X2は、P又はSであるか;
X3は、A又はEであるか;
X4は、L又はVであるか;
X5は、I又はVであるか;
X6は、S又はTであるか;
X7は、A又はMであるか;
X8は、K又はQであるか;
X9は、G又はSであるか;
X10は、N、Q又はRであるか;
X11は、A又はSであるか;
X12は、P又はQであるか;
X13は、K又はSであるか;
X14は、Q又はRであるか;
X15は、L又はMであるか;
X16は、S又はTであるか;
X17は、A又はVであるか;
X18は、K又はTであるか;
X19は、S又はTであるか;
X20は、L又はMであるか;
X21は、E又はQであるか;
X22は、L又はWであるか;
X23は、N又はSであるか;
X24は、R又はSであるか;
X25は、K又はRであるか;
X26は、A又はSであるか;
X27は、D又はSであるか;
X28は、M又はVであるか;
X29は、F又はYであるか;
X30は、N又はRであるか;又は
X31は、V又はYであるか、
又は前述の任意の組み合わせである。
【0066】
本明細書の配列番号43~45のコンセンサスV
H配列である、配列番号46として特定される配列を以下に示す:
【化4】
【0067】
いくつかの実施形態において、X1は、E又はQである。いくつかの実施形態において、X1は、Eである。いくつかの実施形態において、X1は、Qである。いくつかの実施形態において、X2は、P又はSである。いくつかの実施形態において、X2は、Pである。いくつかの実施形態において、X2は、Sである。いくつかの実施形態において、X3は、A又はEである。いくつかの実施形態において、X3は、Aである。いくつかの実施形態において、X3は、Eである。いくつかの実施形態において、X4は、L又はVである。いくつかの実施形態において、X4は、Lである。いくつかの実施形態において、X4は、Vである。いくつかの実施形態において、X5は、I又はVである。いくつかの実施形態において、X5は、Iである。いくつかの実施形態において、X5は、Vである。いくつかの実施形態において、X6は、S又はTである。いくつかの実施形態において、X6は、Sである。いくつかの実施形態において、X6は、Tである。いくつかの実施形態において、X7は、A又はMである。いくつかの実施形態において、X7は、Aである。いくつかの実施形態において、X7は、Mである。いくつかの実施形態において、X8は、K又はQである。いくつかの実施形態において、X8は、Kである。いくつかの実施形態において、X8は、Qである。いくつかの実施形態において、X9は、G又はSである。いくつかの実施形態において、X9は、Gである。いくつかの実施形態において、X9は、Sである。いくつかの実施形態において、X10は、N、Q又はRである。いくつかの実施形態において、X10は、Nである。いくつかの実施形態において、X10は、Qである。いくつかの実施形態において、X10は、Rである。いくつかの実施形態において、X11は、A又はSである。いくつかの実施形態において、X11は、Aである。いくつかの実施形態において、X11は、Sである。いくつかの実施形態において、X12は、P又はQである。いくつかの実施形態において、X12は、Pである。いくつかの実施形態において、X12は、Qである。いくつかの実施形態において、X13は、K又はSである。いくつかの実施形態において、X13は、Kである。いくつかの実施形態において、X13は、Sである。いくつかの実施形態において、X14は、Q又はRである。いくつかの実施形態において、X14は、Qである。いくつかの実施形態において、X14は、Rである。いくつかの実施形態において、X15は、L又はMである。いくつかの実施形態において、X15は、Lである。いくつかの実施形態において、X15は、Mである。いくつかの実施形態において、X16は、S又はTである。いくつかの実施形態において、X16は、Sである。いくつかの実施形態において、X16は、Tである。いくつかの実施形態において、X17は、A又はVである。いくつかの実施形態において、X17は、Aである。いくつかの実施形態において、X17は、Vである。いくつかの実施形態において、X18は、K又はTである。いくつかの実施形態において、X18は、Kである。いくつかの実施形態において、X18は、Tである。いくつかの実施形態において、X19は、S又はTである。いくつかの実施形態において、X19は、Sである。いくつかの実施形態において、X19は、Tである。いくつかの実施形態において、X20は、L又はMである。いくつかの実施形態において、X20は、Lである。いくつかの実施形態において、X20は、Mである。いくつかの実施形態において、X21は、E又はQである。いくつかの実施形態において、X21は、Eである。いくつかの実施形態において、X21は、Qである。いくつかの実施形態において、X22は、L又はWである。いくつかの実施形態において、X22は、Lである。いくつかの実施形態において、X22は、Wである。いくつかの実施形態において、X23は、N又はSである。いくつかの実施形態において、X23は、Nである。いくつかの実施形態において、X23は、Sである。いくつかの実施形態において、X24は、R又はSである。いくつかの実施形態において、X24は、Rである。いくつかの実施形態において、X24は、Sである。いくつかの実施形態において、X25は、K又はRである。いくつかの実施形態において、X25は、Kである。いくつかの実施形態において、X25は、Rである。いくつかの実施形態において、X26は、A又はSである。いくつかの実施形態において、X26は、Aである。いくつかの実施形態において、X26は、Sである。いくつかの実施形態において、X27は、D又はSである。いくつかの実施形態において、X27は、Dである。いくつかの実施形態において、X27は、Sである。いくつかの実施形態において、X28は、M又はVである。いくつかの実施形態において、X28は、Mである。いくつかの実施形態において、X28は、Vである。いくつかの実施形態において、X29は、F又はYである。いくつかの実施形態において、X29は、Fである。いくつかの実施形態において、X29は、Yである。いくつかの実施形態において、X30は、N又はRである。いくつかの実施形態において、X30は、Nである。いくつかの実施形態において、X30は、Rである。いくつかの実施形態において、X31は、V又はYである。いくつかの実施形態において、X31は、Vである。いくつかの実施形態において、X31は、Yである。
【0068】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、VLをさらに含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号50を含むVLを含み、ここで、
X32は、D又はEであるか;
X33は、Q又はVであるか;
X34は、L又はMであるか;
X35は、G又はSであるか;
X36は、S又はTであるか;
X37は、A又はLであるか;
X38は、P又はVであるか;
X39は、D又はEであるか;
X40は、A又はVであるか;
X41は、I又はLであるか;
X42は、S又はTであるか;
X43は、E又はGであるか;
X44は、A、N、又はSであるか;
X45は、L又はYであるか;
X46は、E又はGであるか;
X47は、K又はQであるか;
X48は、K又はRであるか;
X49は、S又はTであるか;
X50は、A又はQであるか;
X51は、S又はTであるか;
X52は、I又はVであるか;
X53は、D又はSであるか;
X54は、R又はSであるか;
X55は、E又はQであるか;
X56は、T又はVであるか;
X57は、L又はQであるか;又は
X58は、L又はVであるか、
又は前述の任意の組み合わせである。
【0069】
本明細書の配列番号47~49のコンセンサスV
L配列である、配列番号50として特定される配列を以下に示す:
【化5】
いくつかの実施形態において、X
32は、D又はEである。いくつかの実施形態において、X
32は、Dである。いくつかの実施形態において、X
32は、Eである。いくつかの実施形態において、X
33は、Q又はVである。いくつかの実施形態において、X
33は、Qである。いくつかの実施形態において、X
33は、Vである。いくつかの実施形態において、X
34は、L又はMである。いくつかの実施形態において、X
34は、Lである。いくつかの実施形態において、X
34は、Mである。いくつかの実施形態において、X
35は、G又はSである。いくつかの実施形態において、X
35は、Gである。いくつかの実施形態において、X
35は、Sである。いくつかの実施形態において、X
36は、S又はTである。いくつかの実施形態において、X
36は、Sである。いくつかの実施形態において、X
36は、Tである。いくつかの実施形態において、X
37は、A又はLである。いくつかの実施形態において、X
37は、Aである。いくつかの実施形態において、X
37は、Lである。いくつかの実施形態において、X
38は、P又はVである。いくつかの実施形態において、X
38は、Pである。いくつかの実施形態において、X
38は、Vである。いくつかの実施形態において、X
39は、D又はEである。いくつかの実施形態において、X
39は、Dである。いくつかの実施形態において、X
39は、Eである。いくつかの実施形態において、X
40は、A又はVである。いくつかの実施形態において、X
40は、Aである。いくつかの実施形態において、X
40は、Vである。いくつかの実施形態において、X
41は、I又はLである。いくつかの実施形態において、X
41は、Iである。いくつかの実施形態において、X
41は、Lである。いくつかの実施形態において、X
42は、S又はTである。いくつかの実施形態において、X
42は、Sである。いくつかの実施形態において、X
42は、Tである。いくつかの実施形態において、X
43は、E又はGである。いくつかの実施形態において、X
43は、Eである。いくつかの実施形態において、X
43は、Gである。いくつかの実施形態において、X
44は、A、N又はSである。いくつかの実施形態において、X
44は、Aである。いくつかの実施形態において、X
44は、Nである。いくつかの実施形態において、X
44は、Sである。いくつかの実施形態において、X
45は、L又はYである。いくつかの実施形態において、X
45は、Lである。いくつかの実施形態において、X
45は、Yである。いくつかの実施形態において、X
46は、E又はGである。いくつかの実施形態において、X
46は、Eである。いくつかの実施形態において、X
46は、Gである。いくつかの実施形態において、X
47は、K又はQである。いくつかの実施形態において、X
47は、Kである。いくつかの実施形態において、X
47は、Qである。いくつかの実施形態において、X
48は、K又はRである。いくつかの実施形態において、X
48は、Kである。いくつかの実施形態において、X
48は、Rである。いくつかの実施形態において、X
49は、S又はTである。いくつかの実施形態において、X
49は、Sである。いくつかの実施形態において、X
49は、Tである。いくつかの実施形態において、X
50は、A又はQである。いくつかの実施形態において、X
50は、Aである。いくつかの実施形態において、X
50は、Qである。いくつかの実施形態において、X
51は、S又はTである。いくつかの実施形態において、X
51は、Sである。いくつかの実施形態において、X
51は、Tである。いくつかの実施形態において、X
52は、I又はVである。いくつかの実施形態において、X
52は、Iである。いくつかの実施形態において、X
52は、Vである。いくつかの実施形態において、X
53は、D又はSである。いくつかの実施形態において、X
53は、Dである。いくつかの実施形態において、X
53は、Sである。いくつかの実施形態において、X
54は、R又はSである。いくつかの実施形態において、X
54は、Rである。いくつかの実施形態において、X
54は、Sである。いくつかの実施形態において、X
55は、E又はQである。いくつかの実施形態において、X
55は、Eである。いくつかの実施形態において、X
55は、Qである。いくつかの実施形態において、X
56は、T又はVである。いくつかの実施形態において、X
56は、Tである。いくつかの実施形態において、X
56は、Vである。いくつかの実施形態において、X
57は、L又はQである。いくつかの実施形態において、X
57は、Lである。いくつかの実施形態において、X
57は、Qである。いくつかの実施形態において、X
58は、L又はVである。いくつかの実施形態において、X
58は、Lである。いくつかの実施形態において、X
58は、Vである。
【0070】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号41又は配列番号42、配列番号43、配列番号44又は配列番号45のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と同一であるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むV
Hを含む(配列番号4~10及び41~45については表1を、対応するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列については
図2A、3A及び4Aを参照)。
【0071】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号47、配列番号48又は配列番号49のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3と同一であるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むV
Lを含む(配列番号13~15及び47~49については表1を、対応するLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列については
図2B、3B及び4Bを参照)。
【0072】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号4/配列番号13、配列番号5/配列番号13、配列番号6/配列番号13、配列番号7/配列番号14、配列番号8/配列番号15、配列番号9/配列番号13、配列番号10/配列番号13、配列番号41/配列番号13、配列番号42/配列番号13、配列番号43/配列番号47、配列番号44/配列番号48又は配列番号45/配列番号49から選択されるVH/VLの組み合わせのパラトープと同一であるパラトープを含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号4/配列番号13、配列番号5/配列番号13、配列番号6/配列番号13、配列番号7/配列番号14、配列番号8/配列番号15、配列番号9/配列番号13、配列番号10/配列番号13、配列番号41/配列番号13、配列番号42/配列番号13、配列番号43/配列番号47、配列番号44/配列番号48又は配列番号45/配列番号49から選択されるVH/VLの組み合わせのパラトープとは、1~3(例えば、1、2又は3)残基の置換が異なるパラトープを含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号3/配列番号12から選択されるVH/VLの組み合わせのパラトープと同一であるパラトープを含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、配列番号3と少なくとも約70%同一であるV
Hを含む。例えば、V
Hは、配列番号3と少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり得る。いくつかの実施形態において、V
Hは、配列番号3と少なくとも約85%又は少なくとも約90%同一である。マウスV
Hドメインに対応する、配列番号3として特定される配列を以下に示す:
【化6】
【0074】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44若しくは配列番号45、又は前述の組み合わせと少なくとも約70%同一であるVHを含む。例えば、VHは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号41若しくは配列番号42、又は前述の組み合わせと少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり得る。いくつかの実施形態において、VHは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44若しくは配列番号45、又は前述の組み合わせと少なくとも約85%又は少なくとも約90%同一である。
【0075】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、配列番号12と少なくとも約70%同一であるVLを含む。例えば、VLは、配列番号12と少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり得る。いくつかの実施形態において、VLは、配列番号12と少なくとも約85%又は少なくとも約90%同一である。マウスVLドメインに対応する、配列番号12として特定される配列を以下に示す:
DILMTQSPSSLSASLGERVSLTCRASQEISGYLSWLQEKPDGTIKRLIYAASTLDSGVPKRFSGSRSGSDYSLTISSLESEDFADYYCLQYVSYPWTFGGGTKLEIK(配列番号12)
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号47、配列番号48若しくは配列番号49、又は前述の組み合わせと少なくとも約70%同一であるVLを含む。例えば、VLは、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号47、配列番号48若しくは配列番号49、又は前述の組み合わせと少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり得る。いくつかの実施形態において、VLは、配列番号13、配列番号14若しくは配列番号15、又は前述の組み合わせと少なくとも85%同一である。いくつかの実施形態において、VLは、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号47、配列番号48若しくは配列番号49、又は前述の組み合わせと少なくとも約85%又は少なくとも約90%同一である。
【0077】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、配列番号3に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むVHを含む。例えば、アミノ酸置換の数は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個、又は約1~20、1~19、2~19、2~18、2~17、3~17、3~16、4~16、4~15、5~15、5~14、6~14、6~13、7~13、7~12、8~12、8~11若しくは9~11個であり得る。いくつかの実施形態において、VHは、配列番号3に対する約1~10個のアミノ酸置換を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44若しくは配列番号45、又は前述の組み合わせに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むVHを含む。例えば、アミノ酸置換の数は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個、又は約1~20、1~19、2~19、2~18、2~17、3~17、3~16、4~16、4~15、5~15、5~14、6~14、6~13、7~13、7~12、8~12、8~11若しくは9~11個であり得る。いくつかの実施形態において、VHは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44若しくは配列番号45、又は前述の組み合わせに対して約1~10個のアミノ酸置換を含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、配列番号12に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むVLを含む。例えば、アミノ酸置換の数は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個、又は約1~20、1~19、2~19、2~18、2~17、3~17、3~16、4~16、4~15、5~15、5~14、6~14、6~13、7~13、7~12、8~12、8~11若しくは9~11個であり得る。いくつかの実施形態において、VLは、配列番号12に対する約1~10個のアミノ酸置換を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、配列番号13、配列番号14若しくは配列番号15、又は前述の組み合わせに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むVLを含む。例えば、アミノ酸置換の数は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個、又は約1~20、1~19、2~19、2~18、2~17、3~17、3~16、4~16、4~15、5~15、5~14、6~14、6~13、7~13、7~12、8~12、8~11若しくは9~11個であり得る。いくつかの実施形態において、VLは、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号47、配列番号48若しくは配列番号49、又は前述の組み合わせに対して約1~10個のアミノ酸置換を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、保存的置換である。「保存的アミノ酸置換」又は「保存的置換」という用語は、BLOSUM62において0以上の値を有するアミノ酸置換を指す。
【0082】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、高度に保存的な置換である。「高度に保存的なアミノ酸置換」又は「高度に保存的な置換」という用語は、BLOSUM62において少なくとも1(例えば、少なくとも2)の値を有するアミノ酸置換を指す。
【0083】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、配列番号3を含むVHを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44又は配列番号45を含むVHを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、配列番号12を含むVLを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号47、配列番号48又は配列番号49を含むVLを含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、
a)配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号41又は配列番号42を含むVH;及び
b)配列番号13を含むVL
を含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、
a)配列番号7を含むVH;及び
b)配列番号14を含むVL
を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、
a)配列番号8を含むVH;及び
b)配列番号15を含むVL
を含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、ヒト化された、ヒトフレームワーク領域を含有する、又はそれらの組み合わせであるVH及びVLを含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、
a)配列番号43を含むVH;及び
b)配列番号47を含むVL
を含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、
a)配列番号44を含むVH;及び
b)配列番号48を含むVL
を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、
a)配列番号45を含むVH;及び
b)配列番号49を含むVL
を含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、抗体(例えば、全抗体、インタクトな抗体)又は抗体の抗原結合断片などの、免疫グロブリン分子である。
【0093】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、抗体である。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を指す。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合又はその多量体(例えば、IgM)によって相互接続された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む全長抗体を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(ドメインCH1、ヒンジCH2及びCH3を含む)を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)内に散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得る。VH及びVLはそれぞれ、3つのCDR及び4つのFRセグメントを含み、アミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4。抗体は、マウス抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体などの任意の種のものであり得る。
【0094】
抗体のフレームワーク領域及びCDRの範囲は、例えば、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義、及び/又は接触定義によって、当技術分野で周知のいくつかの適切な方法論のうちの1つを使用して特定することができる。フレームワーク及び/又はCDR領域を特定するための公に及び/又は市販で入手可能なツールには、IgBlast(www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/からアクセス可能)、Scaligner(www.scaligner.com/のdrugdesigntechから入手可能)、IMGTルール及び/又はツール(例えば、www.imgt.org/IMGTScientificChart/Nomenclature/IMGT-FRCDRdefinition.htmlを参照、www.imgt.org/からもアクセス可能)、Chothia Canonical Assignment(www.bioinf.org.uk/abs/chothia.htmlからアクセス可能)、Antigen receptor Numbering And Receptor CalssificatiIon(ANARCI、opig.stats.ox.ac.uk/webapps/newsabdab/sabpred/anarci/からアクセス可能)又はParatomeウェブサーバー(www.ofranlab.org/paratome/からアクセス可能、Vered Kunik,et al,Nucleic Acids Research,Volume 40,Issue W1,2012年7月1日,W521-W524ページを参照)が含まれる。
【0095】
本明細書で使用される場合、「CDR」は、抗体上のCDR残基を同定するための当技術分野で認められた方法によって定義される任意のCDRを包含する。例えば、Kabat,E.A.,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242、Chothia et al.,(1989)Nature 342:877;Chothia,C.et al.,(1987)J.Mol.Biol.196:901-917;Al-lazikani et al.,(1997)J.Molec.Biol.273:927-948;及びAlmagro,J.Mol.Recognit.17:132-143(2004)を参照されたい。hgmp.mrc.ac.uk及びbioinf.org.uk/absも参照されたい。2つの抗体は、そのCDRの同一性が同じ方法を使用して両方の抗体について決定される場合、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及び/又はLCDR3に関して互いに同じCDRを有すると決定される。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、抗原結合断片である。「抗原結合断片」という用語は、親の全長抗体の抗原結合特性を保持する免疫グロブリン分子(例えば、抗体)の一部を指す。抗原結合断片の非限定的な例には、VH領域、VL領域、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、及び1つのVHドメイン又は1つのVLドメインからなるドメイン抗体(dAb)などが含まれる。VH及びVLドメインは、合成リンカーを介して互いに連結されて、VH/VLドメインが分子内で、又はVH及びVLドメインが別個の鎖によって発現される場合は分子間で対合する、様々なタイプの単鎖抗体設計を形成し、単鎖Fv(scFv)又はダイアボディなどの一価抗原結合部位を形成し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv、又はFvから選択される抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、scFvである。
【0097】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチド(例えば、抗体又は抗原結合断片)は、細胞ベースの療法に組み込まれる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、操作されたT細胞受容体である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)(例えば、T(CAR-T)細胞、ナチュラルキラー(CAR-NK)細胞、又はマクロファージ(CAR-M)細胞で発現される)である。いくつかの実施形態において、CARは、膜貫通ドメイン及び抗原認識部分を含み、ここで、抗原認識部分は、SARS-CoV-2(例えば、RBD11)に結合する。
【0098】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、抗体ミメティックである。「抗体ミメティック」という用語は、抗原に結合する抗体の能力を模倣することができるが、天然の抗体構造とは構造的に異なるポリペプチドを指す。抗体ミメティックの非限定的な例には、アドネクチン、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、DARPin、フィノマー、Kunitzドメインペプチド、モノボディ、ナノボディ、ナノCLAMP、及びバーサボディ(Versabody)が含まれる。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、野生型SARS-CoV-1スパイク、SARS-CoV-1スパイクバリアント、又はそれらの組み合わせへの結合について参照抗体と競合し、ここで、参照抗体は、野生型SARS-CoV-1スパイクに特異的に結合する。「特異的に結合している」又は「特異的に結合する」という用語は、他の抗原又はアミノ酸配列と比較して、抗体又はその抗原結合断片とそのエピトープとの間の優先的相互作用、すなわち有意に高い結合親和性を指す。いくつかの実施形態において、参照抗体は、配列番号3のVH配列及び配列番号12のVL配列を含む。いくつかの実施形態において、参照抗体は、それぞれ配列番号17、配列番号21及び配列番号24のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列を含む。いくつかの実施形態において、参照抗体は、それぞれ配列番号32、配列番号33及び配列番号35のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列を含む。いくつかの実施形態において、参照抗体は、それぞれ配列番号17、配列番号21及び配列番号24のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列;並びにそれぞれ配列番号32、配列番号33及び配列番号35のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列を含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、
a)抗体重鎖定常領域配列;
b)抗体軽鎖定常領域配列;又は
c)抗体重鎖定常領域配列及び抗体軽鎖定常領域配列の両方
をさらに含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域は、IgA定常領域、IgD定常領域、IgE定常領域、IgG定常領域及びIgM定常領域からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、IgG定常領域は、IgG1定常領域、IgG2定常領域、IgG3定常領域又はIgG4定常領域である。いくつかの実施形態において、IgG2定常領域は、IgG2a、IgG2b定常領域又はIgG2c定常領域である。いくつかの実施形態において、IgA定常領域は、IgA1定常領域又はIgA2定常領域である。いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域は、IgG1定常領域(例えば、IGHV1~5)である。
【0102】
いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域は、κ定常領域及びλ定常領域からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域は、κ定常領域である。
【0103】
いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域はIgG1定常領域であり、抗体軽鎖定常領域はκ定常領域である。
【0104】
いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域配列は、配列番号38と少なくとも約60%同一である。例えば、抗体重鎖定常領域配列は、配列番号38と少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり得る。いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域配列は、配列番号38と少なくとも約70%又は少なくとも約80%同一である。配列番号38として特定される配列を以下に示す:
【化7】
【0105】
いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号39又は配列番号40と少なくとも約60%同一である。例えば、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号39又は配列番号40と少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり得る。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号39又は配列番号40と少なくとも約70%又は少なくとも約80%同一である。配列番号39及び配列番号40として特定される配列を以下に示す:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号39)
GQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号40)
【0106】
いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域配列は、配列番号38に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。例えば、アミノ酸置換の数は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個、又は約1~20、1~19、2~19、2~18、2~17、3~17、3~16、4~16、4~15、5~15、5~14、6~14、6~13、7~13、7~12、8~12、8~11若しくは9~11個であり得る。いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域配列は、配列番号38に対して少なくとも1~10個のアミノ酸置換を含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号39又は配列番号40に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。例えば、アミノ酸置換の数は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個、又は約1~20、1~19、2~19、2~18、2~17、3~17、3~16、4~16、4~15、5~15、5~14、6~14、6~13、7~13、7~12、8~12、8~11若しくは9~11個であり得る。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号39又は配列番号40に対して少なくとも1~10個のアミノ酸置換を含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、保存的置換である。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、高度に保存的な置換である。
【0109】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、単離されたポリペプチドである。いくつかの実施形態において、単離されたポリペプチドは、組換えにより産生される。いくつかの実施形態において、単離されたポリペプチドは、合成により産生される。
【0110】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、異種部分にコンジュゲートされている。「コンジュゲート」という用語は、共有又は非共有相互作用を介して結合することを指す。コンジュゲーションは、適切な連結剤のいずれかを使用することができる。非限定的な例には、ペプチドリンカー、化合物リンカー、及び化学的架橋剤が含まれる。
【0111】
いくつかの実施形態において、異種部分は、治療剤、診断薬、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、異種部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヘキサデカン酸、ヒドロゲル、ナノ粒子、多量体化ドメイン、及び担体ペプチドである。
【0112】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は脂質ナノ粒子である。いくつかの実施形態において、ナノ粒子はポリマーナノ粒子である。いくつかの実施形態において、ポリマーは両親媒性ポリマーである。他の実施形態において、ポリマーは、疎水性又は親水性ポリマーである。ポリマーの非限定的な例には、ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(乳酸-コ-グリコール)酸(PLGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)-d-α-トコフェリルポリエチレングリコールコハク酸塩、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)-エチレンオキシドフマル酸塩、ポリ(グリコール酸)-ポリ(エチレングリコール)、ポリカプロラクトン-ポリ(エチレングリコール)、又はそれらの塩が含まれる。いくつかの実施形態において、ポリマーナノ粒子は、ポリ(乳酸-コ-グリコール)酸(PLGA)を含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、担体ポリペプチドは、アルブミン又はFcポリペプチドである。
【0114】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、
a)SARS-CoV-2スパイクの受容体結合ドメインのエピトープに結合できるか;
b)10μM以下の親和性でSARS-CoV-2に結合するか;
c)SARS-CoV-2のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)への結合を低減するか;又は
d)ヒト細胞におけるSARS-CoV-2の感染性を低減するか、
又は前述の任意の組み合わせ
である。
【0115】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2スパイクの受容体結合ドメインのエピトープに結合することができる。
【0116】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、約10μM以下の結合定数(KD)でSARS-CoV-2スパイクに結合する。本明細書で使用される場合、「結合定数」、「平衡解離定数」又は「親和定数」とも呼ばれる「KD」という用語は、2つの分子種(例えば、抗体及び標的タンパク質)間の可逆的会合の程度の尺度であり、実際の結合親和性及び見かけの結合親和性の両方を含む。結合親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴の測定、例えば、Biolayerバイオレイヤー干渉法(Octet,ForteBio)又は表面プラズモン共鳴(Biacore)システム及びアッセイを含む、当技術分野で公知の方法を使用して決定することができる。結合親和性及び動態を測定するための様々な表面技術を比較する参考文献は、Yang,D.,Singh,A.,Wu,H.,&Kroe-Barrett,R.,Comparison of biosensor platforms in the evaluation of high affinity antibody-antigen binding kinetics,Analytical Biochemistry 508:78-96(2016)であり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0117】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、約5μM、2μM、1μM、500nM、200nM、100nM、50nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、0.5nM、0.2nM又は0.1nM以下のKDでSARS-CoV-2スパイクに結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、100nM以下のKDでSARS-CoV-2に結合する。
【0118】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、約10-10~10-5M、10-10~5×10-6M、2×10-10~5×10-6M、2×10-10~2×10-6M、5×10-10~2×10-6M、5×10-10~10-7M、10-9~10-7M、10-9~5×10-8M、2×10-9~5×10-8M、2×10-9~2×10-8M、5×10-9~2×10-8M又は5×10-9~10-8MのKDでSARS-CoV-2スパイクに結合する。
【0119】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、全長IgG1抗体)は、約10-6M以下、例えば、約500nM、200nM、100nM、50nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、0.5nM、0.2nM若しくは0.1nM以下;又は約10-10~10-6M、10-10~5×10-7M、2×10-10~5×10-7M、2×10-10~2×10-7M、5×10-10~2×10-7M、5×10-10~10-7M、10-9~10-7M、10-9~5×10-8M、2×10-9~5×10-8M、2×10-9~2×10-8M、5×10-9~2×10-8M若しくは5×10-9~10-8MのKDでSARS-CoV-2スパイク又はその断片(例えば、RBD5エピトープ)又はそのバリアントに結合する。
【0120】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、約10μM以下のKDでSARS-CoV-1スパイクに結合する。いくつかの実施形態において、KDは、約5μM、2μM、1μM、500nM、200nM、100nM、50nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、0.5nM、0.2nM又は0.1nM以下である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、約10-10~10-5M、10-10~5×10-6M、2×10-10~5×10-6M、2×10-10~2×10-6M、5×10-10~2×10-6M、5×10-10~10-7M、10-9~10-7M、10-9~5×10-8M、2×10-9~5×10-8M、2×10-9~2×10-8M、5×10-9~2×10-8M又は5×10-9~10-8MのKDでSARS-CoV-1スパイクに結合する。
【0121】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、全長IgG1抗体)は、約106/Ms以下、例えば、約5×105/Ms、2×105/Ms、105/Ms、5×104/Ms、2×104/Ms、104/Ms以下、又は約104~106/Ms、104~5×105/Ms、2×104~5×105/Ms、2×104~2×105/Ms、5×104~2×105/Ms若しくは5×104~105/Msの結合定数でSARS-CoV-2スパイク又はその断片(例えば、RBD5エピトープ)又はそのバリアントに結合する。
【0122】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、全長IgG1抗体)は、約10-2/s以下、例えば、約8×10-3/s、6×10-3/s、4×10-3/s、2×10-3/s、10-3/s、8×10-4/s、6×10-4/s、4×10-4/s、2×10-4/s、10-4/s、8×10-5/s、6×10-5/s、4×10-5/s、2×10-5/s、10-5/s、8×10-6/s、6×10-6/s、4×10-6/s、2×10-6/s若しくは10-6/s以下;又は約10-6~10-2/s、2×10-6~10-2/s、2×10-6~5×10-3/s、5×10-6~5×10-3/s、5×10-6~2×10-3/s、10-5~2×10-3/s、10-5~10-3/s、2×10-5~10-3/s、2×10-5~5×10-4/s、5×10-5~5×10-4/s、5×10-5~2×10-4/s若しくは10-4~2×10-4/sの解離定数でSARS-CoV-2スパイク又はその断片(例えば、RBD5エピトープ)又はそのバリアントに結合する。
【0123】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、全長IgG1抗体)は、約0.05以上、例えば、約0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75若しくは0.8以上;又は約0.1~0.8、0.15~0.8、0.15~0.75、0.2~0.75、0.2~0.7、0.25~0.7、0.25~0.65、0.3~0.65、0.3~0.6、0.35~0.6、0.35~0.55、0.4~0.55若しくは0.4~0.5のRmaxでSARS-CoV-2スパイク又はその断片(例えば、RBD5エピトープ)又はそのバリアントに結合する。
【0124】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2スパイクの侵入受容体(例えば、ACE2)への結合を低減する。
【0125】
いくつかの実施形態において、侵入受容体は、ACE2である。いくつかの実施形態において、ACE2は、哺乳動物ACE2である。いくつかの実施形態において、ACE2は、霊長類ACE2である。いくつかの実施形態において、霊長類ACE2は、ヒトACE2(GeneID59272;例示的なタンパク質配列NP_001358344.1)である。いくつかの実施形態において、霊長類ACE2は、チンパンジーACE2(例えば、A0A2J8KU96、XP_016798468.1、XP_016798469.1、PNI38578.1)、マカクACE2(例えば、B6DUF2、NP_001129168.1、XP_024647450.1)、カニクイザルACE2(例えば、A0A2K5X283、XP_005593094.1)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非ヒト霊長類ACE2である。
【0126】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2スパイクのその細胞標的受容体(例えば、ACE2)への結合を少なくとも約10%低減する。例えば、少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%減少させる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2スパイクのACE2への結合を少なくとも約30%低減する。
【0127】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドの存在下でのSARS-CoV-2スパイクとその細胞標的受容体(例えば、ACE2)との間の結合のレベルは、ポリペプチドの非存在下での結合のレベルに対して約90%未満、例えば、約85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満である。
【0128】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドの存在下でのSARS-CoV-2スパイクとその細胞標的受容体(例えば、ACE2)との間の結合のレベルは、ポリペプチドの非存在下での結合のレベルに対して約1~90%、例えば、ポリペプチドの非存在下での結合のレベルに対して約2~90%、2~85%、3~85%、3~80%、4~80%、4~75%、5~75%、5~70%、6~70%、6~65%、7~65%、7~60%、8~60%、8~55%、9~55%、9~50%、10~50%、10~45%、15~45%、15~40%、20~40%、20~35%、25~35%又は25~30%である。
【0129】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-1スパイクのその細胞標的受容体への結合を少なくとも約10%低減する。例えば、少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%減少させる。
【0130】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、全長IgG1抗体)は、ヒト宿主細胞のSARS-CoV-2感染性を約25,000ng/mL以下、例えば、約20,000ng/mL、15,000ng/mL、10,000ng/mL、5,000ng/mL、2,500ng/mL、1,000ng/mL、750ng/mL、500ng/mL、250ng/mL、100ng/mL、75ng/mL、50ng/mL、25ng/mL又は10ng/mL以下;例えば、10~25,000ng/mL、10~20,000ng/mL、25~20,000ng/mL、25~15,000ng/mL、50~15,000ng/mL、50~10,000ng/mL、75~10,000ng/mL、75~5,000ng/mL、100~5,000ng/mL、100~2,500ng/mL、250~2,500ng/mL、250~1,000ng/mL、500~1,000ng/mL又は500~750ng/mLのIC50で中和する。
【0131】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、全長IgG1抗体)は、ヒト宿主細胞のSARS-CoV-2感染性を約50,000ng/mL以下、例えば、約25,000ng/mL、15,000ng/mL、10,000ng/mL、5,000ng/mL、2,500ng/mL、1,000ng/mL、750ng/mL、500ng/mL、250ng/mL、100ng/mL、75ng/mL、50ng/mL、25ng/mL又は10ng/mL以下;例えば、10~50,000ng/mL、10~25,000ng/mL、25~25,000ng/mL、25~15,000ng/mL、50~15,000ng/mL、50~10,000ng/mL、75~10,000ng/mL、75~5,000ng/mL、100~5,000ng/mL、100~2,500ng/mL、250~2,500ng/mL、250~1,000ng/mL、500~1,000ng/mL又は500~750ng/mLのIC80で中和する。
【0132】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2の宿主プロテアーゼ(例えば、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2))への結合を低減する。理論に拘束されるものではないが、主要標的細胞でのSARS-CoV-2スパイクの活性化及び最初のウイルス侵入を媒介する主な宿主プロテアーゼは、TMPRSS2である。
【0133】
いくつかの実施形態において、宿主プロテアーゼは、TMPRSS2である。いくつかの実施形態において、TMPRSS2は、哺乳動物TMPRSS2である。いくつかの実施形態において、TMPRSS2は、霊長類TMPRSS2、例えば、ヒトTMPRSS2又は非ヒト霊長類TMPRSS2(例えば、チンパンジーTMPRSS2、マカクTMPRSS2又はカニクイザルTMPRSS2)である。
【0134】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2の宿主プロテアーゼ(例えば、TMPRSS2)への結合を、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%低減する。
【0135】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドの存在下でのSARS-CoV-2と宿主プロテアーゼ(例えば、TMPRSS2)との間の結合のレベルは、ポリペプチドの非存在下での結合のレベルに対して約90%未満、例えば、約85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満である。
【0136】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドの存在下でのSARS-CoV-2と宿主プロテアーゼ(例えば、TMPRSS2)との間の結合のレベルは、ポリペプチドの非存在下での結合のレベルに対して約1~90%、例えば、ポリペプチドの非存在下での結合のレベルに対して約2~90%、2~85%、3~85%、3~80%、4~80%、4~75%、5~75%、5~70%、6~70%、6~65%、7~65%、7~60%、8~60%、8~55%、9~55%、9~50%、10~50%、10~45%、15~45%、15~40%、20~40%、20~35%、25~35%又は25~30%である。
【0137】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、宿主細胞(例えば、ヒト宿主細胞)へのSARS-CoV-2の侵入を低減する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%低減する。
【0138】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、宿主細胞(例えば、ヒト宿主細胞)におけるSARS-CoV-2の感染性を低減する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、宿主細胞(例えば、ヒト宿主細胞)におけるSARS-CoV-2の感染性を、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%低減する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ヒト細胞におけるSARS-CoV-2の感染性を、少なくとも約30%低減する。
【0139】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、宿主細胞(例えば、ヒト宿主細胞)におけるSARS-CoV-2の再感染を低減する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、宿主細胞(例えば、ヒト宿主細胞)におけるSARS-CoV-2の再感染を、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%低減する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ヒト細胞におけるSARS-CoV-2の再感染を、少なくとも約30%低減する。
【0140】
感染性又は再感染は、シュードタイプウイルス中和アッセイ又は生ウイルス中和アッセイなどの技術を使用して測定できる(例えば、Pinto et al.,Cross-neutralization of SARS-CoV-2 by a human monoclonal SARS-CoV antibody,Nature 583:290-95(2020)を参照、この内容は参照により本明細書に組み込まれる)。キット、例えば、GenScript cPass(商標)SARS-CoV-2中和抗体検出キットは、製造元のプロトコルに従って使用できる。
【0141】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、肺II型肺細胞、回腸吸収腸細胞、鼻杯分泌細胞、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0142】
融合タンパク質
別の態様において、本発明は、本明細書に記載される1つ以上のポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。
【0143】
「融合タンパク質」という用語は、合成、半合成、又は組換えの単一タンパク質分子を指す。融合タンパク質は、共有結合(例えば、ペプチド結合)によって結合される2つ以上の異なるタンパク質及び/又はポリペプチドの全部又は一部を含み得る。
【0144】
本発明の融合タンパク質は、当技術分野で周知の通常の方法及び試薬を使用して、組換え又は合成により産生することができる。例えば、本発明の融合タンパク質は、当技術分野で公知の方法に従って、適切な宿主細胞(例えば、細菌)において組換えにより産生することができる。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Second Edition,Ausubel et al.eds.,John Wiley&Sons,1992;及びMolecular Cloning:a Laboratory Manual,2nd edition,Sambrook et al.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子は、適切な宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli))において導入及び発現することができ、発現された融合タンパク質は、通常の方法及び容易に入手可能な試薬を使用して、宿主細胞(例えば、封入体中)から単離/精製することができる。例えば、異なるタンパク質配列(例えば、光応答性ドメイン、異種ペプチド成分)をコードするDNA断片は、従来の技術に従って、インフレームで一緒に連結することができる。別の実施形態において、融合遺伝子は、自動化されたDNAシンセサイザーを含む従来技術によって合成することができる。或いは、核酸断片のPCR増幅は、2つの連続する核酸断片間に相補的なオーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して実行でき、その後、アニーリング及び再増幅してキメラ核酸配列を生成できる(Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,1992を参照されたい)。
【0145】
核酸、発現ベクター、発現宿主細胞
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチド又は融合タンパク質は、単一のポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチド又は融合タンパク質は、複数のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0146】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、選択された宿主細胞に対してコドン最適化されたヌクレオチド配列を含む。
【0147】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれか1つ以上を含む発現ベクターを提供する。
【0148】
「発現ベクター」という用語は、発現ベクターが適切な発現宿主細胞に形質転換されるときに1つ以上のタンパク質を発現させることができる複製可能な核酸を指す。
【0149】
いくつかの実施形態において、発現ベクターは、ポリヌクレオチドに作動可能に連結された発現制御ポリヌクレオチド配列、選択マーカーをコードするポリヌクレオチド配列、又はその両方をさらに含む。いくつかの実施形態において、発現制御ポリヌクレオチド配列は、プロモーター配列、エンハンサー配列、又はその両方を含む。いくつかの実施形態において、発現制御ポリヌクレオチド配列は、誘導性プロモーター配列を含む。「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合して遺伝子の転写を開始するDNAの領域を指す。「作動可能に連結された」という用語は、核酸が、それが連結されたエレメント(例えば、プロモーター)の制御下で核酸の発現を可能にするような方法で、組換えポリヌクレオチド、例えば、ベクターに配置されることを意味する。「選択マーカーエレメント」という用語は、人為選択に適した形質を与えるエレメントである。選択可能なマーカーエレメントは、ネガティブ又はポジティブ選択マーカーであり得る。
【0150】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチド又は発現ベクターのいずれか1つ以上を含む発現宿主細胞を提供する。
【0151】
「発現宿主細胞」という用語は、ベクターを受け取り、維持し、複製し、及び/又は増幅するのに有用な細胞を指す。
【0152】
発現宿主細胞の非限定的な例には、ハイブリドーマ細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞、COS細胞、ヒト胚性腎臓(HEK)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞などの酵母細胞、又はDH5αなどの細菌細胞などが含まれる。
【0153】
組成物
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は医薬組成物である。
【0154】
いくつかの実施形態において、組成物(例えば、医薬組成物)は、薬学的に許容される担体、賦形剤、安定剤、希釈剤又は強壮剤をさらに含む(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))。適切な薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒である。薬学的に許容される担体、賦形剤、安定剤、希釈剤又は強壮剤の非限定的な例には、緩衝剤(例えば、リン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸又はメチオニン)、防腐剤、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン);親水性ポリマー、アミノ酸、炭水化物(例えば、単糖、二糖、グルコース、マンノース又はデキストリン);キレート剤(例えば、EDTA)、糖(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール)、塩形成対イオン(例えば、ナトリウム)、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);非イオン性界面活性剤(例えば、Tween)、PLURONICS(商標)及びポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。
【0155】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、医薬組成物)は、適切な投与スケジュール及び経路のために製剤化される。投与経路の非限定的な例には、経口、直腸、粘膜、静脈内、筋肉内、皮下及び局所などが含まれる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、医薬組成物)は、水溶液又は乾燥製剤(例えば、凍結乾燥)の形態で保存される。
【0156】
いくつかの実施形態において、組成物は、注入(例えば、静脈内注入)によって投与されるように製剤化される。
【0157】
いくつかの実施形態において、組成物は、組み合わせ治療として第2の治療剤とともに投与されるように製剤化される。
【0158】
使用方法
別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、及び有効成分としては本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つを含む、有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象におけるSARS-CoV-2感染の可能性を低減する方法を提供する。
【0159】
いくつかの実施形態において、対象におけるSARS-CoV-2感染の可能性は、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%低減される。
【0160】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドの存在下での対象におけるSARS-CoV-2感染の可能性は、ポリペプチドの非存在下での可能性に対して約1~90%であり、例えば、約2~90%、2~85%、3~85%、3~80%、4~80%、4~75%、5~75%、5~70%、6~70%、6~65%、7~65%、7~60%、8~60%、8~55%、9~55%、9~50%、10~50%、10~45%、15~45%、15~40%、20~40%、20~35%、25~35%又は25~30%である。
【0161】
「対象」又は「患者」という用語は、動物(例えば、哺乳動物)を指す。本明細書に記載される方法に従って処置される対象は、特定の状態(例えば、COVID-19)と診断された人、又はそのような状態を発症するリスクのある人であり得る。診断は、当技術分野で公知の任意の方法又は技術によって実施され得る。当業者は、本開示に従って処置される対象が、標準的な試験を受けた可能性があるか、又は検査なしで、疾患又は状態と関連する1つ以上の危険因子の存在に起因する危険性があると特定された可能性があることを理解するであろう。
【0162】
いくつかの実施形態において、対象は、COVID-19を有する。いくつかの実施形態において、対象は、COVID-19と診断されている。他の実施形態において、対象は、COVID-19を発症するリスクがある。
【0163】
いくつかの実施形態において、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象は、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウマ、ブタ、ヒツジ、ウシ、チンパンジー、マカク、カニクイザル、及びヒトからなる群から選択される哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象は、霊長類である。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0164】
いくつかの実施形態において、対象は、心疾患を有する。いくつかの実施形態において、対象は、先天性心疾患、冠動脈疾患、高血圧性心疾患、炎症性心疾患、肺性心疾患、リウマチ性心疾患、心臓弁膜症、心筋症、心不全、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される心疾患を有する。いくつかの実施形態において、対象は、うっ血性心不全を有する。いくつかの実施形態において、対象は、心内膜炎、心肥大、心筋炎、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される炎症性心疾患を有する。
【0165】
いくつかの実施形態において、対象は、糖尿病を有する。
【0166】
いくつかの実施形態において、対象は、肺疾患を有する。肺疾患の非限定的な例には、急性呼吸窮迫症候群、喘息、気管支炎、COPD、肺気腫、肺腫瘍、胸膜腔疾患(例えば、胸膜中皮腫又は緊張性気胸)、肺血管疾患(例えば、塞栓症、浮腫、動脈性高血圧症又は出血)、気道感染症(例えば、肺炎又はその他の上気道又は下気道感染症)が含まれる。
【0167】
いくつかの実施形態において、対象は、タバコの喫煙者である。
【0168】
いくつかの実施形態において、対象は、免疫無防備状態である(例えば、基礎疾患を有するか、又は免疫抑制療法を受けている)。
【0169】
いくつかの実施形態において、対象は40歳以上であり、例えば、少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90歳である。
【0170】
「治療有効量」、「有効量」又は「有効投与量」は、所望の治療結果(例えば、生理反応又は状態などの処置、治癒、阻害又は改善)を達成するために、必要な投与量及び期間で、有効な量である。完全な治療効果は、必ずしも1用量の投与で生じるとは限らず、一連の用量の投与後にのみ生じ得る。したがって、治療有効量は、1回以上の投与で投与され得る。治療有効量は、哺乳動物の疾患状態、年齢、性別、及び体重、投与様式、並びに個体において所望の応答を誘発するための治療剤又は治療剤の組み合わせの能力などの要因に従って変化し得る。
【0171】
投与される薬剤の有効量は、本明細書で提供されるガイダンス及び当技術分野で公知の他の方法を使用して、当業者の臨床医によって決定され得る。関連する要因には、所与の薬剤、医薬製剤、投与経路、疾患又は障害のタイプ、対象のアイデンティティ(例えば、年齢、性別、体重)又は処置される宿主が含まれる。例えば、適切な投与量は、処置あたり、約0.001mg/kgから約100mg/kg、約0.01mg/kgから約100mg/kg、約0.01mg/kgから約10mg/kg、約0.01mgから約1mg/kg体重であり得る。特定の薬剤、対象及び疾患に対する投与量を決定することは、十分に当業者の能力の範囲内である。好ましくは、投与量は、有害な副作用を引き起こさないか、又はそれを最小限に抑える。
【0172】
所望の応答又は所望の結果は、細胞レベル、組織レベル、又は臨床結果での効果を含む。したがって、「治療有効量」又はその同義語は、それが適用される文脈に依存する。例えば、いくつかの実施形態において、これは、組成物の投与なしで得られる応答と比較して、処置応答を達成するのに十分な量の組成物である。他の実施形態において、これは、対象において対照と比較して有益な又は望ましい結果を生じる量である。本明細書で定義されるように、本開示の組成物の治療有効量は、当技術分野で公知の通常の方法により、当業者によって容易に決定され得る。投与レジメン及び投与経路は、最適な治療反応を提供するように調整され得る。
【0173】
いくつかの実施形態において、方法は、予防療法に使用される。いくつかの実施形態において、有効投与量は、対象のSARS-CoV-2による感染を予防するのに十分である。
【0174】
いくつかの実施形態において、方法は、SARS-CoV-2感染を処置するために使用される。「処置」又は「処置すること」という用語は、疾患、病状、又は障害(本明細書に例示される特定の適応症など)を改善、緩和、安定化し(すなわち、悪化させず)、予防又は治癒することを目的とした対象の医学的管理を指す。この用語には、積極的処置(疾患、病状、又は障害を改善することに向けられた処置)、原因処置(関連する疾患、病状、又は障害の原因に向けられた処置)、緩和処置(症状を緩和するために設計された処置)、予防的処置(関連する疾患、病状、又は障害の発症を最小限に抑えるか、又は部分的若しくは完全に阻害することに向けられた処置);及び補助的処置(別の療法を補うために利用される処置)が含まれる。処置には、検出可能又は検出不可能な、疾患又は状態の程度の減少;疾患又は状態の拡大の予防;疾患又は状態の進行の遅延又は減速;疾患又は状態の改善又は緩和;及び寛解(部分又は完全)も含まれる。疾患又は状態を「改善すること」又は「緩和すること」とは、処置の非存在下での程度又は時間経過と比較して、疾患、障害、又は状態の程度及び/又は望ましくない臨床症状が軽減され、及び/又は進行の時間経過が減速するか又は長くなることを意味する。「処置」はまた、処置を受けていない場合に期待される生存と比較して生存を延長することを意味し得る。処置が必要な人には、すでにその状態若しくは障害を有する人、及びその状態若しくは障害を生じやすい人、又はその状態若しくは障害を予防すべき人が含まれる。
【0175】
いくつかの実施形態において、有効投与量は、対象におけるウイルス量を低減するのに十分である。いくつかの実施形態において、ウイルス量の低減は、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%である。いくつかの実施形態において、ウイルス量の低減は、約10~99%、例えば、約10~98%、15~98%、15~97%、20~97%、20~96%、25~96%、25~95%、30~95%、30~94%、35~94%、35~93%、40~93%、40~92%、45~92%、45~91%、50~91%、50~90%、55~90%、55~85%、60~85%、60~80%、65~80%、65~75%、又は70~75%である。
【0176】
いくつかの実施形態において、有効投与量は、ウイルスのその標的タンパク質、標的細胞、又はその両方への結合を阻害するのに十分である。いくつかの実施形態において、結合の低減は、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%である。いくつかの実施形態において、結合の低減は、約10~99%、例えば、約10~98%、15~98%、15~97%、20~97%、20~96%、25~96%、25~95%、30~95%、30~94%、35~94%、35~93%、40~93%、40~92%、45~92%、45~91%、50~91%、50~90%、55~90%、55~85%、60~85%、60~80%、65~80%、65~75%、又は70~75%である。
【0177】
いくつかの実施形態において、有効投与量は、標的細胞とのウイルス媒介性融合を阻害するのに十分である。いくつかの実施形態において、融合の低減は、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%である。いくつかの実施形態において、融合の低減は、約10~99%、例えば、約10~98%、15~98%、15~97%、20~97%、20~96%、25~96%、25~95%、30~95%、30~94%、35~94%、35~93%、40~93%、40~92%、45~92%、45~91%、50~91%、50~90%、55~90%、55~85%、60~85%、60~80%、65~80%、65~75%、又は70~75%である。
【0178】
いくつかの実施形態において、有効投与量は、細胞感染性に必要なウイルスエンベロープタンパク質の立体構造変化に干渉するのに十分である。
【0179】
本明細書に記載の治療剤は、化合物及び処置される特定の疾患によって、例えば、経口、食事、局所、経皮、直腸、非経口(例えば、動脈内、静脈内、筋肉内、皮下注射、皮内注射)、静脈内注入及び吸入(例えば、気管支内、鼻腔内又は経口吸入、鼻腔内点鼻)投与経路を含む、様々な投与経路を介して投与することができる。投与は、示されているように、局所又は全身であり得る。好ましい投与様式は、選択された特定の化合物に応じて変化し得る。
【0180】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチド、組成物、又は医薬組成物は、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて(例えば、1つ以上の追加の治療剤と同時に又は連続して)対象に投与される。いくつかの実施形態において、対象は、本明細書に開示されるポリペプチド、組成物、又は医薬組成物を投与される前に、1つ以上の治療剤で以前に処置されている。いくつかの実施形態において、方法は、本明細書に開示されるポリペプチド、組成物、又は医薬組成物の投与と同時に、又はその後に、治療有効量の1つ以上の追加の治療剤を対象に投与することをさらに含む。
【0181】
追加の治療剤の非限定的な例には、抗生物質(例えば、アジスロマイシン)、抗体又はその抗原結合断片(例えば、他のSARS-CoV-2スパイク結合ペプチド)、抗マラリア剤(例えば、クロロキン又はヒドロキシクロロキン)、抗ウイルス剤(例えば、ファビピラビル、ロピナビル及び/又はリトナビル)、サイトカイン(例えば、インターフェロンベータ-1aなどの1型インターフェロン)、ヌクレオチド類似体(例えば、レムデシビル)、プロテアーゼ阻害剤(例えば、ダノプレビル)、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害剤(例えば、ACE2阻害剤又はアンジオテンシン受容体遮断剤(ARB))が含まれる。
【0182】
いくつかの実施形態において、抗ウイルス剤は、アマンタジン、ファビピラビル、ロピナビル、オセルタミビル(タミフル)、プレコナリル、リマンタジン、リトナビル、SARS-CoV-2に対するアンチセンスRNA、SARS-CoV-2に対するsiRNA、追加の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0183】
いくつかの実施形態において、追加の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体は、SARS-CoV-2のSタンパク質のRBDを標的とする。いくつかの実施形態において、追加の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体は、中和モノクローナル抗体である。抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体の非限定的な例には、バムラニビマブ(LY-CoV555又はLY3819253)、エテセビマブ(LY-CoV016又はLY3832479)、カシリビマブ(REGN10933)、及びイムデビマブ(REGN10987)が含まれる。例えば、www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/therapies/anti-sars-cov-2-antibody-products/anti-sars-cov-2-monoclonal-antibodiesを参照されたい。
【0184】
いくつかの実施形態において、ACE2阻害剤は、ACE2に対するRNAi、ACE2に対するsiRNA、ACE2のCRISPRベースの阻害剤、可溶性ACE2、可溶性ACE2バリアント、抗ACE2抗体、ワクチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗生物質は、アジスロマイシンである。いくつかの実施形態において、抗マラリア剤は、クロロキン又はヒドロキシクロロキンを含む。いくつかの実施形態において、ワクチンは、核酸ワクチン又は不活化ウイルスワクチンである。いくつかの実施形態において、ワクチンは、mrna-1273、BNT162、INO-4800、AZD1222、Ad5-nCoV、PiCoVacc、NVX-CoV2373、又はそれらの組み合わせである。
【0185】
2つ以上の治療剤の投与は、組み合わせ医薬などで、実質的に同時に治療剤を共投与することを包含する。或いは、そのような投与は、各治療剤について、複数の容器又は別個の容器(例えば、カプセル、粉末、及び液体)での共投与を包含する。このような投与は、ほぼ同時に、又は異なる時点での、逐次的な様式での各タイプの治療剤の使用も包含する。本明細書に記載の組成物及び第2の治療剤は、同じ投与経路又は異なる投与経路を介して投与することができる。
【0186】
別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、及び有効成分としては本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つを含む、有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象におけるSARS-CoV-2感染を予防する方法を提供する。
【0187】
別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、及び有効成分としては本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つを含む、有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象におけるSARS-CoV-2感染を処置する方法を提供する。
【0188】
別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、及び有効成分としては本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つを含む、有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象におけるSARS-CoV-2のウイルス量を低減する方法を提供する。
【0189】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つの有効量を標的細胞に接触させることを含む、SARS-CoV-2の標的細胞への結合を阻害する方法を提供する。
【0190】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つの有効量を標的細胞に接触させることを含む、SARS-CoV-2の標的細胞上の標的タンパク質への結合を阻害する方法を提供する。
【0191】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つの有効量を標的細胞に接触させることを含む、標的細胞とのウイルス媒介性融合を阻害する方法を提供する。
【0192】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法、及びその他の科学用語又は専門用語は、本発明に関連する当業者によって一般的に理解される意味を有することを意図している。場合によっては、一般的に理解されている意味を有する用語が、明確性のため及び/又は参照しやすいように本明細書で定義されており、本明細書におけるそのような定義の包含は、必ずしも当技術分野で一般的に理解されているものとの実質的な違いを表すと解釈されるべきではない。一般的に使用される辞書で定義されているものなどの用語は、関連技術の文脈における意味と一致する意味を有するものとして、及び/又は本明細書で別段に定義されるように解釈されるべきであることがさらに理解されよう。
【0193】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。
【0194】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、複数の参照を含むと理解されるべきである。
【0195】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通じて、文脈による別段の要求がない限り、「含む(comprise)」という単語、及び「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形は、例えば、記載された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を包含することを意味するが、他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を除外するものではないことが理解されよう。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含有する(containing)」又は「含む(including)」という用語に置き換えることができる。
【0196】
本明細書で使用される場合、「からなる」は、特許請求の範囲の要素で指定されていない任意の要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、特許請求の範囲の基本的及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップを除外するものではない。本発明の態様又は実施形態の文脈において本明細書で使用される場合は常に、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語はいずれも、いくつかの実施形態において、開示の範囲を変更するために、「からなる」又は「から本質的になる」に置き換えることができる。
【0197】
本明細書で使用される場合、複数の列挙された要素の間の接続用語「及び/又は」は、個々の選択肢及び組み合わされた選択肢の両方を包含すると理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」で接続されている場合、第1の選択肢は、第2の要素なしで第1の要素を適用できることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしで第2の要素の適用できることを指す。第3の選択肢は、第1の要素及び第2の要素を一緒に適用できることを指す。これらの選択肢のいずれか1つが意味の範囲内に入り、したがって、本明細書で使用される「及び/又は」という用語の要件を満たすと理解される。複数の選択肢を同時に適用できることも意味の範囲内に入り、したがって、「及び/又は」という用語の要件を満たすと理解される。
【0198】
リストが提示される場合、別段の記載がない限り、そのリストの各個々の要素、及びそのリストの全ての組み合わせが別個の実施形態であることを理解されたい。例えば、「A、B、又はC」として提示された実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」又は「A、B、又はC」を含むものとして解釈されるべきである。
【実施例】
【0199】
実施例1.抗原結合分子とSARS-Cov-2スパイク(RBD)のS1サブユニット受容体結合ドメインとの間の直接結合
目的の分子は、組換えによって発現、精製、及び定量化される。ELISAプレートは、PBS中1μg/mLの市販のSARS-Cov-2 RBDで一晩コーティングされる。次に、自動プレート洗浄機でプレートを200μLのPBS-Tで3回洗浄し、37℃で1時間、PBS中5%BSAで遮断して、非特異的結合を遮断する。次に、自動プレート洗浄機でプレートを200μLのPBS-Tで3回洗浄し、目的の分子をELISAプレートの希釈系列で滴定し、37℃で1時間インキュベートする。次に、自動プレート洗浄機でプレートを200μLのPBS-Tで3回洗浄し、標的分子に特異的な二次抗体(HRPと結合)を固定希釈でプレートに加える。プレートを37℃で1時間インキュベートする。次に、自動プレート洗浄機でプレートを200μLのPBS-Tで3回洗浄し、目的のウェルにTMB基質を加えて結合を調べる。5~10分後、酸性停止液で反応を停止させ、プレートリーダーで450nmの吸光度を測定することによってシグナルを定量化する。正のシグナルは、陰性対照(典型的には抗体同位体対照)のバックグラウンドに関する吸光度の読み取り値に対応する。結合の半定量的な理解は、標的分子のより大きな希釈での結合の強度を評価することによって推測できる。理論的には、SARS-Cov-2 RBDに対する親和性がより高い候補分子は、より弱い結合剤と比較して、より高い希釈度でより大きいシグナルを示すはずである。
【0200】
実施例2.抗原結合分子は、インビトロでのRBDへの結合についてヒトACE2(hACE2)と競合する。
目的の分子は、組換えによって発現、精製、及び定量化される。ELISAプレートは、PBS中1μg/mLの市販のSARS-Cov-2 RBDで一晩コーティングされる。次に、自動プレート洗浄機でプレートを200μLのPBS-Tで3回洗浄し、37℃で1時間、PBS中5%BSAで遮断して、非特異的結合を遮断する。次に、自動プレート洗浄機でプレートを200μLのPBS-Tで3回洗浄し、目的の分子をELISAプレートの希釈系列で滴定する。同時に、固定濃度の市販のhACE2(ビオチン化)を候補分子と共インキュベートする。hACE2の固定濃度は、SARS-Cov-2 RBDへの最大結合の50%がこのアッセイ形式で経験的に決定される濃度に対応する。プレートを37℃で1時間インキュベートする。次に、自動プレート洗浄機でプレートを200μLのPBS-Tで3回洗浄し、ビオチン化hACE2に特異的な二次抗体(HRPと結合したストレプトアビジン)を固定希釈でプレートに加える。プレートを37℃で1時間インキュベートする。次に、自動プレート洗浄機でプレートを200μLのPBS-Tで3回洗浄し、目的のウェルにTMB基質を加えて結合を調べる。5~10分後、酸性停止液で反応を停止させ、プレートリーダーで450nmの吸光度を測定することによってシグナルを定量化する。正のシグナルは、陰性対照(典型的には抗体同位体対照)のバックグラウンドを超える候補分子を含まないウェルと比較した、候補分子を含むウェルの吸光度の減少に対応する。標的分子のhACE2と競合する能力の半定量的な理解は、標的分子のより大きな希釈でのhACE2結合の総減少を評価することによって推測できる。理論的には、SARS-Cov-2 RBDについてhACE2と競合する能力がより高い候補分子は、能力がより低い分子と比較して、より高い希釈度でより大きいシグナルを示すはずである。
【0201】
実施例3.抗原結合分子は、細胞表面上のRBDへの結合についてhACE2と競合する。
目的の分子は、組換えによって発現、精製、及び定量化される。野生型レベルでhACE2を発現する細胞株を培養し、(表面タンパク質の破壊を防ぐため)トリプシン処理せずに回収し、計数する。一定数の細胞を96ウェルプレートに加え、希釈系列で滴定した目的の分子とインキュベートする。同時に、固定濃度の市販のSARS-Cov-2(ビオチン化)を候補分子と共インキュベートする。SARS-Cov-2の固定濃度は、細胞上のhACE2への最大結合の50%がこのアッセイ形式で経験的に決定される濃度に対応する。細胞のプレートを暗所で1時間、4℃でインキュベートする。プレートを400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、細胞をPBS中0.2%BSAで洗浄する。このプロセスをさらに2回繰り返し、合計3回洗浄する。ビオチン化SARS-Cov-2に特異的な二次抗体(Alexa Fluor 488と結合したストレプトアビジン)を固定希釈でプレートに加える。細胞のプレートを暗所で1時間、4℃でインキュベートする。プレートを400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、細胞をPBS中0.2%BSAで洗浄する。次いで、細胞をPBS中0.2%BSAの一定量に再懸濁し、フローサイトメトリーに供する。SARS-Cov-2 RBDの総結合は、FIT-Cチャネルの蛍光強度中央値(MFI)によって分析される。正のシグナルは、陰性対照(典型的には抗体同位体対照)のバックグラウンドを超える候補分子を含まないウェルと比較した、候補分子を含むウェルのMFIの減少に対応する。SARS-Cov-2 RBDと競合する能力の半定量的な理解は、標的分子のより大きな希釈でのSARS-Cov-2 RBD MFIの総減少を評価することによって推測できる。理論的には、hACE2についてSARS-Cov-2 RBDと競合する能力(これはSARS-Cov-2 RBDに対する親和性とも考えられる)がより高い候補分子は、能力がより低い分子の希釈度が高いほどより大きいシグナルを示すはずである。
【0202】
実施例4.抗体設計の酵母ディスプレイ特性
抗体は単鎖可変断片(scFv)としてフォーマットされ、酵母ディスプレイを使用して結合について試験された。c-mycエピトープタグに融合されたscFvコンストラクトは、酵母ディスプレイベクターへのクローニングのためのオーバーハングを有するDNA断片(TWIST Biosciences)として合成された。DNA挿入断片及び消化されたベクターを酵母に形質転換し、完全なプラスミドを相同組換えによってインビボで生成した。細胞は、scFv発現及び酵母細胞表面上でのディスプレイのために誘導された。誘導された細胞は、ビオチン化されたSARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)抗原(Acro Biosystems)又はSARS-CoV RBD(Genscript)への結合について染色され、scFv発現について抗c-myc(Exalpha)が染色された。結合を示したクローンについて、様々な濃度のSARS-CoV-2 RBD又はSARS-CoV抗原で滴定曲線を実施することにより、平衡解離定数(KD)を評価した。SAR-CoV-2 RBDに結合した全てのクローンは、SARS-CoV RBDへの交差反応性結合も示した。結合特異性及びKD値を表2にまとめる。
【0203】
実施例5.全長IgGの産生
従来の方法を使用して、対応する定常領域を含有する哺乳動物発現ベクターに可変重(VH)鎖及び可変軽(VL)鎖をサブクローニングすることにより、ScFvコンストラクトを全長ヒト免疫グロブリン1(IgG1)に再フォーマットした。抗体は、発現を駆動するCMVプロモーターと、完全に折り畳まれたIgGの上清への分泌を促進するシグナルペプチドとを含有する、鎖あたり1つの発現プラスミドを使用して生成された。哺乳動物発現宿主系(チャイニーズハムスター卵巣-CHO S細胞株など)を、流加産生手順によるカチオン性脂質ベースの一過性トランスフェクション方法論を使用したタンパク質発現に使用した。発現された可溶性全長IgGは、プロテインA親和性樹脂(MabSelect Sure樹脂,GE Healthcareなど)及び水性バッファーを使用した親和性捕捉に基づく精製法を使用して精製された。溶出は低pH(pH3.5など)の酸性条件下で実施し、次いで2M Tris塩基を使用してpH7.5に中和した。精製された抗体は、長期保存/凍結のために、水性バッファー(NaClを含有するヒスチジンベースのバッファーなど)でさらに安定化された。
【0204】
実施例6.全長IgGの結合速度及び親和性
ForteBio Octet Red96e装置を使用して、バイオレイヤー干渉法(BLI)で結合速度及び親和性を測定した。抗体は、抗ヒトFc(AHC)バイオセンサー上で捕捉された。次に、バイオセンサーを、会合及び解離のためにSARS-CoV-2 RBD(Acro Biosystems)の連続希釈物とともにインキュベートした。代表的なデータを表3に示す。
【0205】
実施例7.材料及び方法
全長IgGの発現
設計された抗体のVH及びVL配列をコードする逆翻訳DNAを合成し(Twist)、Golden Gate Assembly(New England Biolabs,Ipswich,MA)を使用して、CMVプロモーター配列、シグナルペプチド、及び対応する定常領域を含有する、ヒトG1+K contaアイソタイプベクターにクローニングした。製造元の方法(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)に従ってIgGタンパク質をExpiCHO細胞で発現させ、製造元の方法によりMabSelect SureプロテインA親和性樹脂(Cytiva,Marlborough,MA)を使用した親和性クロマトグラフィーで精製した。プロテインA親和性精製の後、製造元の推奨する方法に従って、Superdex200樹脂(Cytiva,Marlborough,MA)を使用したサイズ排除クロマトグラフィーによって、抗体をさらに精製した。
【0206】
中和アッセイ
事前滴定量のrVSV-SARS-CoV-2を連続希釈したモノクローナル抗体と37℃で1時間インキュベートした後、96ウェルプレートのコンフルエントなVero(ATCCCCL-81)単層に加えた。感染を5%CO2中37℃で16~18時間進行させた後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、10μg/mLのHoechstで染色した。CellInsight CX5イメージャーを使用して細胞を画像化し、全細胞及び緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する細胞の自動計数によって感染を定量化した。感染は、ヒトIgGアイソタイプ対照とインキュベートしたrVSV-SARS-CoV-2に感染した細胞の平均数に対して正規化された。
【0207】
WT及び変異SARS-CoV-2スパイクタンパク質の生成
スパイクタンパク質は、HexaProバックグラウンドを使用して、エピトープビニング研究及び構造生物学のために生成された(細胞外ドメインの残基14~1208(Genbank:MN908947)、6つのプロリン置換(F817P、A892P、A899P、A942P、K986P、V987P)、並びに北欧のスピルオーバー/スピルバックに関連する全て/大半のバリアントで確立されたD614G変異、及び切断部位残基682~685の置換(「RRAR」(配列番号53)から「GSAS」(配列番号54))を含有する。得られたスパイクバリアントを、N末端ガウシアルシフェラーゼシグナル配列(MGVKVLFALICIAVAEA(配列番号55))及びC末端フォルドン三量体化ドメイン、続いてHRV-3C切断部位及びTwin-Strep-Tagを含有するphCMV哺乳動物発現ベクターにクローニングした。プラスミドをStellarコンピテント細胞に形質転換し、Plasmid Plus Midiキット(Qiagen,Hilden,Germany)を使用して単離した。
【0208】
SARS-CoV-2 HexaProスパイクは、Freestyle 293-F又はExpiCHO-S細胞(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)に一過性トランスフェクションした。両方の細胞株は、製造元のプロトコルに従って維持及びトランスフェクトされた。簡潔には、293-F細胞を2.0×106細胞/mLの密度まで増殖させ、トランスフェクション当日(0日目)に1.0×106細胞/mLまで希釈した。プラスミドDNAとポリエチレンイミンをOpti-MEM(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)で混合し、25分間インキュベートし、次いで細胞に加えた。細胞培養物を37℃、8%CO2、120RPMでインキュベートし、5日目に回収した。ExpiCHO培養では、製造元の「高力価(High Titer)」プロトコルを使用した。簡潔には、細胞を1×107細胞/mLの密度まで増殖させ、トランスフェクション当日(0日目)に6×106細胞/mLまで希釈した。製造元の指示に従って、プラスミドDNAとExpifectamineをOpti-PRO SFM(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)で混合し、細胞に加えた。1日目に、提案されたプロトコルに従って製造元提供のフィード及びエンハンサーを細胞に供給し、次いで、培養物を32℃、5%CO2、115RPMでインキュベートした。7日目にExpiCHO培養物を回収した。全ての培養物を遠心分離によって清澄化し、続いてBioLock(IBA Lifesciences,Goettingen,Germany)を添加し、上清を0.22μM滅菌フィルターに流し、TBSバッファー(25mM Tris pH7.6、200mM NaCl、0.02% NaN3)で平衡化した5mL StrepTrap-HPカラムを使用してAe KTA GO(Cytiva,Marlborough,MA)で精製し、5mM d-デスチオビオチン(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を添加したTBSバッファーで溶出した。HRV-3Cプロテアーゼを使用してstrepタグを切断し、TBS中のSuperdex 6 increase 10/300カラム(GE Healthcare,Chicago,IL)でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってタンパク質をさらに精製した。
【0209】
ハイスループット表面プラズモン共鳴(HT-SPR)エピトープビニング
エピトープビニングは、CMDPセンサーチップを備えたCarterra LSA SPR装置で、HBSTE-BSAランニングバッファー(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05% Tween-20、0.5mg/ml BSAを添加)中、25℃で、サンドイッチアッセイ形式により実施された。2つのマイクロ流体モジュール、96チャネルプリントヘッド(96PH)及び単一フローセル(SFC)を使用して、センサーチップ上にサンプルを送達した。表面処理は、ランニングバッファーとして0.05%のTween-20を含む25mMのMES(pH5.5)で実施した。チップは、新しく調製した130mM 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)+33mM N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(Sulfo-NHS)の0.1M MES(pH5.5)溶液で、SFCを使用して活性化された。抗体は、10mM酢酸ナトリウム(pH4.25)中に希釈して10μg/mLで10分間、96PHを使用して固定化した。非反応性エステルは、SFCを使用して、1Mエタノールアミン-HCl(pH8.5)を7分間注入してクエンチした。ランニングバッファー及びサンプル希釈液としてHBSTE-BSAバッファーを使用して、このアレイに対してビニング分析を実施した。各サイクルでRBD抗原を50nM(1.3μg/mL)で4分間注入し、その後直ちに被検抗体を30μg/mL(IgGコンストラクトについて200nM)で4分間注入した。表面は、10mMグリシン(pH2.0)のダブルパルス(1パルスあたり17秒)でサイクルごとに再生された。データは、Epitope Toolソフトウェア(Carterra,Salt Lake City,UT)で処理及び分析された。
【0210】
Octet親和性測定
ForteBio Octet Red96e装置を使用して、バイオレイヤー干渉法(BLI)で結合速度及び親和性を測定した。抗体は、1x Kinetics Buffersで100nMに正規化され、抗ヒトFc(AHC)バイオセンサー上で捕捉された。次に、バイオセンサーを、会合及び解離速度を決定するために、SARS-CoV-2 RBD(ACROBiosystems,Newark,DE)の連続希釈物とともにインキュベートした。
【0211】
参照抗体由来配列のヒト化
参照抗体由来の抗体は、抗CoV1マウス抗体に基づいて生成されたため、得られた配列にはマウスフレームワークが含まれていた。所望の結合特性を有する選択された抗体をヒト化手順に供し、それにより、それらのCDR断片をヒトフレームワークに導入した。
【0212】
より具体的には、計算的アプローチを使用して、所望のCDR配列と、治療的に有効性が認められたヒトフレームワークのデータベースとの間の適合性を評価した。これらの最適なフレームワークが特定されると、アルゴリズムは次にフレームワークの調整を提案し、必要に応じて、適合性をさらに改善するためにいくつかのCDR位置を提案した。対応するヒト化抗体が産生され、例えばそれらの結合親和性及び速度論的特性について、特徴付けられた。
【0213】
実施例8.IgG1分子はインビトロでSARS-COV-2を中和する
9つのIgG1抗体が、中和研究のためにコロナウイルス免疫療法コンソーシアム(Coronavirus Immunotherapy Consortium)に提出された。9つ全てのIgG1分子は、疑似WTウイルスと真正WTウイルスの両方のVero単層の感染を遮断する能力を示す。(表4)。
【0214】
COV-2 RBDにおける新たな変異の感受性を決定するためのさらなる研究のために、1つの抗体、AB-8が選択された。シュードタイプウイルス中和研究は、複数のヒト及びミンクバリアントに見られる点変異を有するシュードタイプウイルスを用いて実施した。
図5に示すように、AB-8は、-2.5から2.5の間のIC
50倍率変化によって示されるように、大半の変異に対して耐性であった。
【0215】
実施例9.エピトープ及び親和性
可溶性G614 HexaProスパイク細胞外ドメイン及び単量体RBDに対するモノクローナル抗体の親和性を調べた。ハイスループット表面プラズモン共鳴分析を使用して、RBDと反応する抗体を11個の異なる「コミュニティ」に分類した。RBDコミュニティは、同じコミュニティの2つのメンバー間でSPRサンドイッチペアを作ることができないこととして定義され、結合の共有エピトープを示す。AB-1からAB-9は、別個の「RBDコミュニティ」エピトープ配列群である「RBDコミュニティ5」にクラスター化されることがわかった(データは示さず)。表4に示すように、これらの抗体は、標的抗原、G614 HexaProスパイク細胞外ドメイン又は単量体RBDに対してnMの親和性を示す。
【0216】
実施例10.IgG1ポリペプチドのヒト化
選択されたクローンは、材料及び方法で概説される計算的アプローチを使用してさらにヒト化された。ヒト化がCOV-2 RBDへの親和性又は結合傾向を消失させなかったことを確認するために、バイオレイヤー干渉法を使用して、親の「シード」に対する新たにヒト化された配列の親和性を評価した。
図6及び
図7に概説されるように、クローンのヒト化は、COV-2 RBDに結合する元のシード配列の能力を除去しなかった。Octet動的データを表5にまとめる。
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
参考文献
1. Baud D,et al.(2020)Real estimates of mortality following COVID-19 infection.Lancet Infect Dis.:S1473-3099(20)30195-X.doi:10.1016/S1473-3099(20)30195-X.[Epub ahead of print].
2. Lindsey R.Baden and Eric J.Rubin(2020)Covid-19 - The Search for Effective Therapy,N Engl J Med.,doi:10.1056/NEJMe2005477.
3. Ziegler et al.(2020)SARS-CoV-2 receptor ACE2 is an interferon-stimulated gene in human airway epithelial cells and is detected in specific cell subsets across tissues,Cell,DOI:10.1016/j.cell.2020.04.035[Journal pre-proof].
【0225】
本明細書で引用された全ての特許、公開された出願及び参考文献の教示は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0226】
例示的な実施形態が特に示され、説明されているが、当業者には、添付の特許請求の範囲に包含される実施形態の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更を行うことができることが理解される。
【配列表】
【国際調査報告】