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特表2023-535541ホットスタンピング用鋼板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】ホットスタンピング用鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20230810BHJP
   C22C 38/54 20060101ALI20230810BHJP
   C21D 9/46 20060101ALN20230810BHJP
   C21D 1/18 20060101ALN20230810BHJP
   C21D 9/00 20060101ALN20230810BHJP
【FI】
C22C38/00 301S
C22C38/00 301Z
C22C38/54
C21D9/46 G
C21D9/46 J
C21D1/18 C
C21D9/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575416
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 KR2022001481
(87)【国際公開番号】W WO2022255587
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0072973
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ビョンギル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョウス
(72)【発明者】
【氏名】ド、ヒョンヒョプ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ソンキョン
【テーマコード(参考)】
4K037
4K042
【Fターム(参考)】
4K037EA01
4K037EA02
4K037EA06
4K037EA11
4K037EA15
4K037EA17
4K037EA19
4K037EA20
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA31
4K037EB05
4K037EB09
4K037EB11
4K037FA03
4K037FB00
4K037FC04
4K037FD00
4K037FE02
4K037FE03
4K037FG01
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA05
4K042BA11
4K042CA02
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA11
4K042CA12
4K042DA01
4K042DC02
4K042DE05
4K042DE06
(57)【要約】
本発明の一側面によれば、炭素(C):0.17~0.25wt%、シリコン(Si):0.3~1.0wt%、マンガン(Mn):0.6~1.0wt%、リン(P):0.02wt%以下、硫黄(S):0.01wt%以下、アルミニウム(Al):0.1~1.0wt%、ホウ素(B):0.001~0.005wt%、チタン(Ti):0.01~0.1wt%、ニオブ(Nb):0.02~0.06wt%、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)のうち、1種以上の総量:0.3~1.0wt%及び残りの鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含み、微細組織は、面積分率としてフェライト:60~99%及びパーライト:1~30%を含み、炭素(C):0.19~0.55wt%及びマンガン(Mn):0.8~6.0wt%を含むパーライトが局所的に集積された第1領域を含む、ホットスタンピング用鋼板を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素(C):0.17~0.25wt%、シリコン(Si):0.3~1.0wt%、マンガン(Mn):0.6~1.0wt%、リン(P):0.02wt%以下、硫黄(S):0.01wt%以下、アルミニウム(Al):0.1~1.0wt%、ホウ素(B):0.001~0.005wt%、チタン(Ti):0.01~0.1wt%、ニオブ(Nb):0.02~0.06wt%、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)のうち、1種以上の総量:0.3~1.0wt%及び残りの鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含み、
微細組織は、面積分率としてフェライト:60~99%及びパーライト:1~30%を含み、炭素(C):0.19~0.55wt%及びマンガン(Mn):0.8~6.0wt%を含むパーライトが局所的に集積された第1領域を含む、ホットスタンピング用鋼板。
【請求項2】
前記第1領域の長辺を前記第1領域の長さと定義するとき、
前記第1領域の平均長さは、0.01μm以上300μm以下である、請求項1に記載のホットスタンピング用鋼板。
【請求項3】
前記第1領域の短辺を前記第1領域の厚さと定義するとき、
前記第1領域の平均厚さは、0.01μm以上5μm以下である、請求項1に記載のホットスタンピング用鋼板。
【請求項4】
前記第1領域の短辺方向の線密度は、0.001/μm以上0.1/μm以下である、請求項1に記載のホットスタンピング用鋼板。
【請求項5】
前記第1領域の面積分率は、0.01%以上15%以下である、請求項1に記載のホットスタンピング用鋼板。
【請求項6】
前記微細組織は、0.55wt%を超過する炭素(C)を含むパーライトまたは6.0wt%を超過するマンガン(Mn)を含むパーライトが局所的に集積された第2領域をさらに含み、
前記第2領域の面積分率は、5%以下である、請求項5に記載のホットスタンピング用鋼板。
【請求項7】
ホットスタンピング後の成形部品が1,350MPa以上の引張強度を有し、61~80°の曲げ角を満足する、請求項1に記載のホットスタンピング用鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンピング用鋼板及びその製造方法に係り、さらに詳細には、ホットスタンピング後の成形部品が高強度、高靭性の優秀な機械的特性を有するホットスタンピング用鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用部品には、軽量化及び安定性のために高強度鋼が適用される。一方、高強度鋼は、重量対比で高強度特性を確保することができるが、強度が増加することにより、プレス成形性が低下し、加工中、素材の破断が発生するか、スプリングバック現象が発生して複雑で精密な形状の製品の成形に困難がある。
【0003】
このような問題点を改善するための方案としてホットスタンピング工法があり、それについての関心が高まりつつ、ホットスタンピング用素材に対する研究も活発になされている。例えば、韓国公開特許公報第10-2017-0076009号発明に開示されたように、ホットスタンピング工法は、ホットスタンピング用鋼板を高温で加熱した後、プレス金型内で成形と同時に急速冷却して高強度部品を製造する成形技術である。
【0004】
また、韓国公開特許公報第10-2019-0095858号発明に開示されたように、ホットスタンピング用鋼板の代表例において、炭素(C)と熱処理性能向上のための元素として、マンガン(Mn)、ホウ素(B)などを含む、いわゆるボロン鋼(22MnB5)が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような従来のホットスタンピング用鋼板及びその製造方法には、ホットスタンピング用鋼板が含む成分及び微細組織によって発生する領域別強度差によってホットスタンピング後の成形部品の引張強度、曲げ特性などの機械的特性が低下する問題点が存在した。
【0006】
本発明の実施例は、前記のような問題点を含めて多くの問題点を解決するためのものであって、ホットスタンピング後の成形部品が高強度、高靭性の優秀な機械的特性を有するホットスタンピング用鋼板及びその製造方法を提供することである。しかし、そのような課題は、例示的なものであって、それにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、炭素(C):0.17~0.25wt%、シリコン(Si):0.3~1.0wt%、マンガン(Mn):0.6~1.0wt%、リン(P):0.02wt%以下、硫黄(S):0.01wt%以下、アルミニウム(Al):0.1~1.0wt%、ホウ素(B):0.001~0.005wt%、チタン(Ti):0.01~0.1wt%、ニオブ(Nb):0.02~0.06wt%、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)のうち、1種以上の総量:0.3~1.0wt%及び残りの鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含み、微細組織は、面積分率としてフェライト:60~99%及びパーライト:1~30%を含み、炭素(C):0.19~0.55wt%及びマンガン(Mn):0.8~6.0wt%を含むパーライトが局所的に集積された第1領域を含む、ホットスタンピング用鋼板が提供される。
【0008】
本実施例によれば、前記第1領域の長辺を前記第1領域の長さと定義するとき、前記第1領域の平均長さは、0.01μm以上300μm以下でもある。
【0009】
本実施例によれば、前記第1領域の短辺を前記第1領域の厚さと定義するとき、前記第1領域の平均厚さは、0.01μm以上5μm以下でもある。
【0010】
本実施例によれば、前記第1領域の短辺方向の線密度は、0.001/μm以上0.1/μm以下でもある。
【0011】
本実施例によれば、前記第1領域の面積分率は、0.01%以上15%以下でもある。
【0012】
本実施例によれば、前記微細組織は、0.55wt%を超過する炭素(C)を含むパーライトまたは6.0wt%を超過するマンガン(Mn)を含むパーライトが局所的に集積された第2領域をさらに含み、前記第2領域の面積分率は、5%以下でもある。
【0013】
本実施例によれば、ホットスタンピング後の成形部品が1,350MPa以上の引張強度を有し、61~80゜の曲げ角を満足する。
【0014】
本発明の他の観点によれば、炭素(C):0.17~0.25wt%、シリコン(Si):0.3~1.0wt%、マンガン(Mn):0.6~1.0wt%、リン(P):0.02wt%以下、硫黄(S):0.01wt%以下、アルミニウム(Al):0.1~1.0wt%、ホウ素(B):0.001~0.005wt%、チタン(Ti):0.01~0.1wt%、ニオブ(Nb):0.02~0.06wt%、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)のうち、1種以上の総量:0.3~1.0wt%及び残りの鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含むスラブを1,200~1,250゜Cの温度で再加熱する段階、再加熱されたスラブを860~950℃の温度で95%以上の圧下率に熱間圧延して鋼板を製造する段階、及び前記鋼板を550~680℃の温度で巻き取る段階を含み、巻き取られた鋼板の微細組織は、面積分率としてフェライト:60~99%及びパーライト:1~30%を含み、炭素(C):0.19~0.55wt%及びマンガン(Mn):0.8~6.0wt%を含むパーライトが局所的に集積された第1領域を含む、ホットスタンピング用鋼板の製造方法が提供される。
【0015】
本実施例によれば、前記鋼板をマルテンサイト変態開始温度(Ms)ないしパーライト変態開始温度(Ps)+40℃の温度まで30秒以下の時間の間、冷却する段階をさらに含み、前記巻き取る段階は、冷却された鋼板を巻き取る段階でもある。
【0016】
本実施例によれば、前記第1領域の長辺を前記第1領域の長さと定義するとき、前記第1領域の平均長さは、0.01μm以上300μm以下でもある。
【0017】
本実施例によれば、前記第1領域の短辺を前記第1領域の厚さと定義するとき、前記第1領域の平均厚さは、0.01μm以上5μm以下でもある。
【0018】
本実施例によれば、前記第1領域の短辺方向の線密度は、0.001/μm以上0.1/μm以下でもある。
【0019】
本実施例によれば、前記第1領域の面積分率は、0.01%以上15%以下でもある。
【0020】
本実施例によれば、前記微細組織は、0.55wt%を超過する炭素(C)を含むパーライトまたは6.0wt%を超過するマンガン(Mn)を含むパーライトが局所的に集積された第2領域をさらに含み、前記第2領域の面積分率は、5%以下でもある。
【0021】
本実施例によれば、前記鋼板は、ホットスタンピング後の成形部品が1,350MPa以上の引張強度を有し、61~80°の曲げ角を満足する。
【0022】
前記以外の他の側面、特徴、利点は、以下の発明を実施するための具体的な内容、請求範囲及び図面から明確になるであろう。
【発明の効果】
【0023】
前述したようになされた本発明の一実施例によれば、ホットスタンピング後の成形部品が高強度、高靭性の優秀な機械的特性を有するホットスタンピング用鋼板及びその製造方法を具現することができる。具体的には、ホットスタンピング用鋼板が含む成分及び微細組織の特性制御を通じてホットスタンピング用鋼板の領域別強度差を調節し、ホットスタンピング後の成形部品の引張強度、曲げ特性などの機械的特性に優れたホットスタンピング用鋼板及びその製造方法を具現することができる。本発明の一実施例によれば、このような効果によって本発明の範囲が限定されないということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来のホットスタンピング用鋼板の微細組織の一部を示すイメージである。
図2】本発明の一実施例によるホットスタンピング用鋼板の微細組織の一部を示すイメージである。
図3】本発明の一実施例によるホットスタンピング用鋼板の製造方法の一部を概略的に示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施例によるホットスタンピング後の成形部品の微細組織の一部を概略的に示すイメージである。
図5】本発明の一実施例によるホットスタンピング後の成形部品の微細組織が有する結晶粒の一部を概略的に示すイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、多様な変換が可能であり、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明で詳細に説明する。本発明の効果及び特徴、及びそれらを達成する方法は、図面と共に、詳細に後述する実施例を参照すれば、明確になるであろう。しかし、本発明は、以下に開示される実施例に限定されるものではなく、多様な形態にも具現される。
【0026】
以下の実施例において、第1、第2などの用語は、限定的な意味ではなく、1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的で使用された。
【0027】
以下の実施例において、単数表現は、文脈上、明白に異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【0028】
以下の実施例において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、または構成要素が存在することを意味し、1つ以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を予め排除するものではない。
【0029】
図面では、説明の便宜上、構成要素がその大きさが誇張または縮小されうる。例えば、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜上、任意に示したので、本発明が必ずしも図示されたところに限定されない。
【0030】
ある実施例が異なる順序で具現可能な場合の、特定の工程順序は、説明される順序とは異なる順序で遂行されうる。例えば、連続して説明される2つの工程が実質的に同時に遂行され、説明される順序とは逆順に進められうる。
【0031】
本明細書において「A及び/またはB」は、Aであるか、Bであるか、AとBである場合を示す。そして、「A及びBのうち、少なくとも1つ」は、Aであるか、Bであるか、AとBである場合を示す。
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明し、図面を参照して説明するとき、同一であるか、対応する構成要素は、同じ図面符号を付し、これに係わる重複説明は省略する。
【0033】
図1は、従来のホットスタンピング用鋼板の微細組織の一部を示すイメージである。具体的には、図1は、従来においてホットスタンピング用鋼板に用いられる22MnB5成分の鋼板を示すイメージである。
【0034】
22MnB5成分の鋼板の微細組織は、フェライト及びパーライトを含む。一方、パーライトには、炭素(C)及び/またはマンガン(Mn)が偏析されうる。すなわち、ホットスタンピング用鋼板の微細組織は、炭素(C)の含量及び/またはマンガン(Mn)の含量が相対的に高いパーライトを含む。また、炭素(C)の含量及び/またはマンガン(Mn)の含量が相対的に高いパーライトは、ホットスタンピング用鋼板内で局所的に集積されうる。すなわち、ホットスタンピング用鋼板の微細組織は、炭素(C)の含量及び/またはマンガン(Mn)の含量が相対的に高いパーライトが局所的に集積された領域(以下、「パーライト領域」と称する)を含む。
【0035】
一実施例において、図1に図示されたように、パーライト領域は、ホットスタンピング用鋼板内で帯状(またはバンド状)に形成されうる。
【0036】
ホットスタンピング用鋼板のパーライト領域での強度とパーライト領域以外の領域での強度は、互いに異なっている。具体的には、パーライト領域は、相対的に高い強度を有し、パーライト領域以外の領域は、相対的に低い強度を有する。すなわち、パーライト領域の強度は、パーライト領域以外の領域の強度より相対的に高い。これにより、ホットスタンピング用鋼板は、領域別強度差を有することになる。このような領域別強度差は、ホットスタンピング後の成形部品の引張強度、降伏強度、曲げ特性、延伸率などの機械的特性を低下させる要因として作用する。したがって、ホットスタンピング用鋼板が含むパーライト領域の大きさ、密度、面積分率などを制御する必要がある。
【0037】
本発明の実施例によれば、ホットスタンピング用鋼板を構成する物質の含量、ホットスタンピング用鋼板の微細組織の構成、及びホットスタンピング用鋼板を製造する工程条件を制御することで、ホットスタンピング用鋼板が含むパーライト領域の大きさ、密度及び面積分率を制御する。これにより、ホットスタンピング後の成形部品に要求される機械的特性を満足させるホットスタンピング用鋼板を具現することができる。
【0038】
図2は、本発明の一実施例によるホットスタンピング用鋼板の微細組織の一部を示すイメージである。
【0039】
具体的には、図2は、ホットスタンピング用鋼板を構成する物質の含量、ホットスタンピング用鋼板の微細組織の構成及びホットスタンピング用鋼板を製造する工程条件が既設定の条件を満足するように制御して製造したホットスタンピング用鋼板を示すイメージである。
【0040】
図2を参照すれば、図1の鋼板と対比して、炭素(C)の含量及び/またはマンガン(Mn)の含量が相対的に高いパーライトが局所的に集積された領域が顕著に減少したことを確認しうる。具体的には、図2の鋼板においては、図1の鋼板が含む帯状(またはバンド状)の領域が顕著に減少したことが確認できる。これは、ホットスタンピング用鋼板を構成する物質の含量、ホットスタンピング用鋼板の微細組織の構成、及びホットスタンピング用鋼板を製造する工程条件が既設定の条件を満足するように制御することによるものと理解され、これについての詳細な説明は、後述する。
【0041】
ホットスタンピング用鋼板は、所定の合金元素を所定含量含むように鋳造されたスラブに対して熱延工程及び/または冷延工程を進めて製造された鋼板でもある。
【0042】
ホットスタンピング用鋼板は、炭素(C)、シリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)及び残りの鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含む。一実施例において、ホットスタンピング用鋼板は、炭素(C):0.17~0.25wt%、シリコン(Si):0.3~1.0wt%、マンガン(Mn):0.6~1.0wt%、リン(P):0.02wt%以下、硫黄(S):0.01wt%以下、アルミニウム(Al):0.1~1.0wt%、ホウ素(B):0.001~0.005wt%、チタン(Ti):0.01~0.1wt%、ニオブ(Nb):0.02~0.06wt%、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)のうち、1種以上の総量:0.3~1.0wt%及び残りの鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含む。
【0043】
このようにクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)のうち、1種以上の総量を既設定の範囲を満足するように制御することで、焼入性を向上させうる。選択的実施例において、ホットスタンピング用鋼板が含むクロム(Cr)の含量は、0.1~0.6wt%を満足する。また、ホットスタンピング用鋼板が含むニッケル(Ni)の含量は、0.001~0.3wt%を満足する。また、ホットスタンピング用鋼板が含むモリブデン(Mo)の含量は、0.1~0.4wt%を満足する。
【0044】
一方、一実施例において、ホットスタンピング用鋼板が含む炭素(C)、シリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)及び硫黄(S)それぞれの含有量を重量%で[C]、[Si]、[Mn]、[P]及び[S]で示したとき、下記数式1を満足する。
【数1】
【0045】
これにより、脆性増加を防止し、ホットスタンピング後の成形部品の溶接強度を向上させうる。例えば、溶接部の十字引張強度(cross-tension strength, CTS)は、10kN/spot以上を満足する。
【0046】
炭素(C)は、鋼板内のオーステナイト安定化元素として作用する。炭素は、鋼板の強度及び硬度を決定する主要元素であり、熱処理時、焼入性及び強度増加を目的に添加される。このような炭素は、鋼板の全体重量に対して0.17wt%~0.25wt%含まれる。炭素の含量が0.17wt%未満である場合、硬質相(例えば、マルテンサイトなど)確保が困難であり、ホットスタンピング後の成形部品の機械的強度を満足させ難い。逆に、炭素の含量が0.25wt%を超過する場合、鋼板の加工性低下またはホットスタンピング後の成形部品の曲げ性能低下を誘発しうる。
【0047】
シリコン(Si)は、鋼板内のフェライト安定化元素として作用する。シリコンは、固溶強化元素として鋼板の強度を向上させ、低温域炭化物の形成を抑制することで、オーステナイト内の炭素濃化度を向上させる。また、シリコンは、熱延、冷延、熱間プレス組織均質化及びフェライト微細分散の核心元素である。シリコンは、マルテンサイト強度不均質制御元素として作用して衝突性能を向上させる役割を行う。このようなシリコンは、鋼板の全体重量に対して0.3wt%~1.0wt%含まれる。シリコンの含量が0.3wt%未満である場合、上述した効果を得難く、ホットスタンピング後の成形部品のマルテンサイト組織でセメンタイト形成及び粗大化が発生する。逆に、シリコンの含量が1.0wt%を超過する場合、熱延、冷延負荷が増加し、鋼板のメッキ特性が低下しうる。
【0048】
マンガン(Mn)は、鋼板内のオーステナイト安定化元素として作用する。マンガンは、熱処理時焼入性及び強度増加の目的で添加される。このようなマンガンは、鋼板の全体重量に対して0.6wt%~1.0wt%含まれる。マンガンの含量が0.6wt%未満である場合、硬化能効果が十分ではなく、焼入性不足によってホットスタンピング後の成形部品内の硬質相分率が不十分にもなる。一方、マンガンの含量が1.0wt%を超過する場合、マンガンが偏析されたパーライトの集中された領域が発生して延性及び靭性が低下し、ホットスタンピング後の成形部品の曲げ性能低下の原因になり、不均質微細組織が発生してしまう。
【0049】
リン(P)は、強度向上に寄与する元素である。このようなリンは、鋼板の靭性低下を防止するために、鋼板の全体重量に対して0超過0.02wt%以下含まれる。リンの含量が0.02wt%を超過する場合、リン化鉄化合物が形成されて靭性及び溶接性が低下し、製造工程中に、鋼板にクラックが誘発されうる。
【0050】
硫黄(S)は、加工性向上に寄与する元素である。このような硫黄は、鋼板の全体重量に対して0超過0.01wt%以下含まれる。硫黄の含量が0.01wt%を超過すれば、熱間加工性、溶接性及び衝撃特性が低下し、巨大介在物生成によってクラックなど表面欠陥が発生する。アルミニウム(Al)は、鋼板内のフェライト安定化元素として作用する。アルミニウムは、固溶強化元素として鋼板の強度を向上させ、低温域炭化物の形成を抑制することで、オーステナイト内の炭素濃化度を向上させる。アルミニウムは、マルテンサイト強度不均質制御元素として作用して衝突性能を向上させる役割を行う。このようなアルミニウムは、鋼板の全体重量に対して0.1wt%~1.0wt%含まれる。アルミニウムの含量が0.1wt%未満である場合、上述した効果を得難く、ホットスタンピング後の成形部品のマルテンサイト組織でセメンタイト形成及び粗大化が発生する。逆に、アルミニウムの含量が1.0wt%を超過する場合、熱延、冷延負荷が増加し、鋼板のメッキ特性が低下しうる。
【0051】
一方、一実施例において、メッキ性向上のために、ホットスタンピング用鋼板が含むシリコン(Si)及びアルミニウム(Al)それぞれの含量の和は、既設定の範囲を満足するように制御されうる。例えば、ホットスタンピング用鋼板が含むシリコン(Si)、アルミニウム(Al)それぞれの含量の和は、0.4~1.5wt%を満足する。
【0052】
クロム(Cr)は、熱処理時、焼入性及び強度を向上させる目的で添加される。クロムは、析出硬化を通じた結晶粒微細化及び強度確保を可能にする。このようなクロムは、鋼板の全体重量に対して0.1wt%~0.6wt%含まれる。クロムの含量が0.1wt%未満である場合、析出硬化効果が不十分であり、逆に、クロムの含量が0.6wt%を超過する場合、Cr系析出物及びマトリックス固溶量が増加して靭性が低下し、コスト高によって生産費が増加する。
【0053】
ホウ素(B)は、フェライト、パーライト及びベイナイト変態を抑制してマルテンサイト組織を確保することで、熱処理時、焼入性及び強度を確保する目的で添加される。また、ホウ素は、結晶粒界に偏析されて粒界エネルギーを低めて焼入性を増加させ、オーステナイト結晶粒成長温度増加で結晶粒微細化効果を有する。このようなホウ素は、鋼板の全体重量に対して0.001wt%~0.005wt%含まれる。ホウ素が前記範囲で含まれるとき、硬質相粒界脆性発生を防止し、高靭性と曲げ性を確保することができる。ホウ素の含量が0.001wt%未満である場合、焼入性効果が不足し、逆に、ホウ素の含量が0.005wt%を超過する場合、固溶度が低く、熱処理条件によって結晶粒界で容易に析出されて焼入性が劣化されるか、高温脆化の原因になり、硬質相粒界脆性発生によって靭性及び曲げ性が低下しうる。
【0054】
チタン(Ti)は、高温で析出物を形成して結晶粒微細化に効果的に寄与することができる。このようなチタンは、鋼板の全体重量に対して0.01wt%~0.1wt%、望ましくは、0.02wt%~0.06wt%含まれる。チタンが前記含量範囲で含まれれば、連鋳不良及び析出物の粗大化を防止し、鋼材の物性を容易に確保し、鋼材表面でのクラック発生などの欠陥を防止する。チタンの含量が前記下限に達していない場合、前記効果を十分に発揮することができない。一方、チタンの含量が前記上限を超過する場合、析出物が粗大化されて延伸率及び曲げ性の低下が発生する。
【0055】
モリブデン(Mo)は、置換型元素であり、固溶強化効果で鋼の強度を向上させる。モリブデンは、析出物の粗大化抑制及び焼入性向上を目的に添加される。また、モリブデン(Mo)は、鋼の硬化能を向上させる役割が可能である。このようなモリブデンは、鋼板の全体重量に対して0.1wt%~0.4wt%含まれる。モリブデンの含量が0.1wt%未満である場合、前記の効果を十分に発揮することができない。一方、モリブデンの含量が0.4wt%を超過する場合、圧延生産性及び延伸率低下の恐れがあり、追加的な効果なしに製造費用のみ上昇させる問題がある。
【0056】
ニオブ(Nb)は、マルテンサイトパケットサイズ(Packet size)減少による強度及び靭性を増加させうる。このようなニオブは、鋼板の全体重量に対して0.02wt%~0.06wt%含まれる。ニオブが前記範囲で含まれるとき、熱間圧延及び冷間圧延工程で鋼板の結晶粒微細化効果に優れ、製鋼/連鋳時、スラブのクラック発生と、製品の脆性破断発生を防止し、製鋼性粗大析出物の生成を最小化しうる。ニオブの含量が0.02wt%未満である場合、前記効果を十分に発揮することができない。一方、ニオブの含量が0.06wt%を超過する場合、ニオブ含量増加による強度及び靭性は、それ以上向上せず、フェライト内に固溶された状態で存在し、むしろ衝撃靭性を低下させる恐れがある。
【0057】
ニッケル(Ni)は、焼入性を向上させながら、靭性改善に有効な元素である。このようなニッケルは、鋼板の全体重量に対して0.001wt%~0.3wt%含まれる。ニッケルの含量が0.001wt%未満である場合、その添加効果が僅かである。一方、ニッケルの含量が0.3wt%を超過する場合、鋼板の加工性を低下させ、製造費用を上昇させる問題がある。
【0058】
ホットスタンピング用鋼板の微細組織は、フェライト及びパーライトを含む。一実施例において、ホットスタンピング用鋼板は、面積分率としてフェライト:60~99%及びパーライト:1~30%を含む。また、ホットスタンピング用鋼板は、その他不可避な組織を含む。例えば、ホットスタンピング用鋼板は、その他不可避な組織を0%以上5%未満含む。一方、一実施例において、ホットスタンピング用鋼板が含むフェライトの平均結晶粒サイズは、2μm以上10μm以下を満足するように制御されうる。
【0059】
パーライトには、炭素(C)及び/またはマンガン(Mn)が偏析されうるところ、ホットスタンピング用鋼板の微細組織は、炭素の含量及び/またはマンガンの含量が相対的に高いパーライトを含む。また、炭素の含量及び/またはマンガンの含量が相対的に高いパーライトは、鋼板内で局所的に集積されてパーライト領域を形成することができる。ここで「パーライト領域」は、炭素の含量及び/またはマンガンの含量が相対的に高いパーライトが局所的に集積された領域を意味する。
【0060】
このようなホットスタンピング用鋼板が有するパーライト領域を最小化する方法として、炭素(C)の含量及びマンガン(Mn)の含量を低める方法があるが、これは、ホットスタンピング用鋼板の焼入性及びホットスタンピング後の成形部品の機械的特性を低下させる問題を引き起こす。したがって、本発明の一実施例によるホットスタンピング用鋼板は、炭素及びマンガンを、上述した最適化された含量ほど含むが、ホットスタンピング用鋼板が有するパーライト領域の大きさ、密度及び面積分率が既設定の条件を満足するように制御されうる。これにより、ホットスタンピング後の成形部品の引張強度、降伏強度、曲げ特性、延伸率などの機械的特性を制御する。例えば、ホットスタンピング後の成形部品の引張強度は、1,350MPa以上を満足し、望ましくは、1,350MPa以上1,650MPa以下を満足する。また、ホットスタンピング後の成形部品の降伏強度は、950MPa以上を満足し、望ましくは、950MPa以上1,200MPa以下を満足する。また、ホットスタンピング後の成形部品は、61~80°の曲げ角を満足し、6%以上の延伸率を有する。ここで「曲げ角」は、圧延方向(rolling direction, RD)のV曲げ角を意味する。
【0061】
一実施例において、ホットスタンピング後の成形部品の引張強度は、炭素(C)の含有量との相関関係に基づいて既設定の範囲を満足するように制御されうる。具体的には、ホットスタンピング後の成形部品の引張強度をX1(単位:MPa)と示し、炭素の含有量を重量%で[C]と示したとき、ホットスタンピング後の成形部品の引張強度X1は、下記数式2Aを満足するように制御されうる。
【数2】
【0062】
一実施例において、ホットスタンピング後の成形部品の曲げ角は、炭素(C)の含有量との相関関係に基づいて既設定の範囲を満足するように制御されうる。具体的には、ホットスタンピング後の成形部品の曲げ角をX2(単位:°)と示し、炭素の含有量を重量%で[C]と示したとき、ホットスタンピング後の成形部品の曲げ角X2は、下記数式2Bを満足するように制御されうる。
【数3】
【0063】
一実施例において、ホットスタンピング後の成形部品の曲げ角は、マンガン(Mn)の含有量との相関関係に基づいて既設定の範囲を満足するように制御されうる。具体的には、ホットスタンピング後の成形部品の曲げ角をX2(単位:°)と示し、マンガンの含有量を重量%で[Mn]と示したとき、ホットスタンピング後の成形部品の曲げ角X2は、下記数式2Cを満足するように制御されうる。
【数4】
【0064】
一方、ホットスタンピング用鋼板の微細組織の構成、すなわち、パーライト領域の大きさ、密度及び面積分率条件は、ホットスタンピング用鋼板の工程条件を調節することで制御する。これについての詳細な説明は、図3を参照して後述する。
【0065】
パーライト領域は、パーライト領域に集積されたパーライトが含む炭素(C)の含量及びマンガン(Mn)の含量によってホットスタンピング後の成形部品の機械的特性に影響を与える程度が異なってもいる。具体的には、ホットスタンピング後の成形部品の機械的特性に影響を与えるのは、0.19wt%以上の炭素と0.8wt%以上のマンガンを含むパーライトが局所的に集中された領域である。一方、炭素の含量が0.19wt%未満であるか、マンガンの含量が0.8wt%未満のパーライトが局所的に集中された領域は、ホットスタンピング後の成形部品の機械的特性に与える影響が僅かである。したがって、本発明の一実施例によるホットスタンピング用鋼板は、0.19wt%以上の炭素と0.8wt%以上のマンガンとを含むパーライトが局所的に集中された領域の大きさ、密度及び面積分率が既設定の条件を満足するように制御される。
【0066】
本発明の一実施例によるホットスタンピング用鋼板は、0.19~0.55wt%の炭素(C)を含むパーライト及び/または0.8~6.0wt%のマンガン(Mn)を含むパーライトが局所的に集積された第1領域を含む。このような第1領域の大きさ、密度及び面積分率は、既設定の条件を満足するように制御されうる。
【0067】
一実施例において、第1領域の長辺を前記第1領域の長さと定義するとき、第1領域の平均長さは、0.01μm以上300μm以下を満足するように制御されうる。また、第1領域の短辺を前記第1領域の厚さと定義するとき、第1領域の平均厚さは、0.01μm以上5μm以下を満足するように制御されうる。
【0068】
一実施例において、第1領域の短辺方向の線密度は、0.001/μm以上0.1/μm以下を満足するように制御されうる。
【0069】
一実施例において、第1領域の面積分率は、0.01%以上15%以下を満足するように制御されうる。
【0070】
ホットスタンピング用鋼板は、0.55wt%を超過する炭素(C)を含むパーライト及び/または6.0wt%を超過するマンガン(Mn)を含むパーライトが局所的に集積された第2領域をさらに含む。このような第2領域は、ホットスタンピング後の成形部品の引張強度及び曲げ特性を低下させるところ、既設定の面積分率以下に制御されうる。一実施例において、第2領域の面積分率は、0%以上5%以下を満足するように制御されうる。
【0071】
すなわち、ホットスタンピング用鋼板の含むパーライトは、面積分率で0.01%以上15%以下の第1領域及び0%以上5%以下の第2領域を含む。ここで、第1領域は、0.19~0.55wt%の炭素(C)を含むパーライト及び/または0.8~6.0wt%のマンガン(Mn)を含むパーライトが局所的に集積された領域である。また、第2領域は、0.55wt%を超過する炭素(C)を含むパーライト及び/または6.0wt%を超過するマンガン(Mn)を含むパーライトが局所的に集積された領域である。一方、ホットスタンピング用鋼板が含むパーライトのうち、前記第1領域及び前記第2領域を除いた領域は、0.19wt%未満の炭素(C)と0.8wt%未満のマンガン(Mn)とを含むパーライトとも理解される。
【0072】
図3は、本発明の一実施例によるホットスタンピング用鋼板の製造方法の一部を概略的に示すフローチャートである。
【0073】
図3に図示されたように、本発明の一実施例によるホットスタンピング用素材製造方法は、再加熱段階(S100)、熱間圧延段階(S200)、冷却/巻取段階(S300)、冷間圧延段階(S400)、燒鈍熱処理段階(S500)及びメッキ段階(S600)を含む。
【0074】
参照のために、図3には、S100~S600段階が独立した段階によって図示されているが、S100~S600段階のうち、一部は、1つの工程で遂行され、必要によって、S100~S600段階のうち、一部が省略されてもよい。
【0075】
まず、ホットスタンピング用鋼板を形成する工程の対象になる半製品状態のスラブを準備する。前記スラブは、炭素(C):0.17~0.25wt%、シリコン(Si):0.3~1.0wt%、マンガン(Mn):0.6~1.0wt%、リン(P):0.02wt%以下、硫黄(S):0.01wt%以下、アルミニウム(Al):0.1~1.0wt%、ホウ素(B):0.001~0.005wt%、チタン(Ti):0.01~0.1wt%、ニオブ(Nb):0.02~0.06wt%、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)のうち、1種以上の総量:0.3~1.0wt%及び残りの鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含む。また、選択的な実施例において、前記スラブが含むクロム(Cr)の含量は、0.1~0.6wt%を満足する。また、前記スラブが含むニッケル(Ni)の含量は、0.001~0.3wt%を満足する。また、前記スラブが含むモリブデン(Mo)の含量は、0.1~0.4wt%を満足する。
【0076】
再加熱段階(S100)は、熱間圧延のために前記組成を有するスラブを所定のスラブ再加熱温度(Slab Reheating Temperature: SRT)範囲で再加熱する段階である。再加熱段階(S100)では、連続鋳造工程を通じて確保したスラブを所定の温度範囲で再加熱することで、鋳造時、偏析された成分を再固溶することになる。スラブ再加熱温度(SRT)は、オーステナイト微細化及び析出硬化効果の極大化のために、既設定の温度範囲内に制御されうる。
【0077】
一実施例において、スラブ再加熱温度(SRT)は、1,200℃~1,250℃に制御されうる。スラブ再加熱温度(SRT)が1,200℃未満である場合には、鋳造時、偏析された成分(例えば、Ti、Nb、Moなど)が十分に再固溶されず、合金元素の均質化効果が十分ではないという問題点がある。一方、スラブ再加熱温度(SRT)は、高温であるほど、均質化に有利であるが、1,250℃を超過する場合には、オーステナイト結晶粒度が増加して強度確保が困難であるだけではなく、過度な加熱工程によって鋼板の製造費用のみ上昇してしまう。
【0078】
熱間圧延段階(S200)は、再加熱段階(S100)で再加熱されたスラブを所定の仕上げ圧延温度(Finishing Delivery Temperature: FDT)範囲で熱間圧延して鋼板を製造する段階である。
【0079】
一実施例において、仕上げ圧延温度(FDT)範囲は、860℃~950℃に制御されうる。仕上げ圧延温度(FDT)が860℃未満である場合、異常領域圧延による混粒組織の発生によって鋼板の加工性確保が困難であり、微細組織不均一によって加工性が低下する問題があるだけではなく、急激な相変化によって熱間圧延中、通板性の問題が発生しうる。逆に、仕上げ圧延温度(FDT)が950℃を超過する場合には、オーステナイト結晶粒が粗大化されて強度確保が困難にもなる。
【0080】
一実施例において、熱間圧延時の圧下率は、95%以上を満足するように制御されうる。これにより、炭素(C)の含量及び/またはマンガン(Mn)の含量が相対的に高いパーライトが局所的に集積された領域(パーライト領域)の大きさ、密度及び面積分率が前述した条件を満足するように制御されうる。
【0081】
一方、再加熱段階(S100)及び熱間圧延段階(S200)では、エネルギーが安定していない粒界で微細析出物の一部が析出されうる。この際、粒界に析出された微細析出物は、オーステナイトの結晶粒成長を妨害する要素として作用し、オーステナイト微細化を通じた強度向上の効果を提供する。
【0082】
冷却/巻取段階(S300)は、熱間圧延段階(S200)で熱間圧延された鋼板を冷却する段階、及び冷却された鋼板を巻き取る段階を含む。
【0083】
前記熱間圧延された鋼板を冷却する段階は、熱間圧延された鋼板を所定の冷却終了温度範囲まで既設定の冷却時間の間、ROT(Run out table)冷却する段階でもある。
【0084】
一実施例において、前記冷却終了温度範囲は、マルテンサイト変態開始温度(Ms)ないしパーライト変態開始温度(Ps)+40℃であり、前記既設定の時間は、30秒以下でもある。このような熱間圧延された鋼板を冷却する段階での冷却終了温度範囲及び冷却時間は、炭素(C)の含量及び/またはマンガン(Mn)の含量が相対的に高いパーライトが局所的に集積された領域(パーライト領域)の大きさ、密度及び面積分率に影響を与える。具体的に、前記冷却終了温度範囲及び前記冷却時間を満足する場合、前記パーライト領域の大きさ、密度及び面積分率が前述した条件を満足するように制御され、フェライト基地の均一な熱延組織が形成されうる。一方、前記冷却終了温度範囲を超過する温度範囲で冷却が終了するか、前記冷却時間を超過する場合、前記パーライト領域の大きさ、密度及び/または面積分率が前述した条件を満足しておらず、強度及び曲げ特性などが低下しうる。
【0085】
前記冷却された鋼板を巻き取る段階は、冷却された鋼板を所定の巻取温度(Coiling Temperature: CT)範囲で巻き取る段階でもある。
【0086】
一実施例において、巻取温度(CT)は、550℃~680℃に制御されうる。巻取温度(CT)は、炭素(C)の含量及び/またはマンガン(Mn)の含量が相対的に高いパーライトが局所的に集積された領域(パーライト領域)の大きさ、密度及び面積分率に影響を与える。具体的には、巻取温度(CT)が550℃~680℃を満足する場合、前記パーライト領域の大きさ、密度及び面積分率が前述した条件を満足するように制御されうる。一方、巻取温度(CT)が550℃未満である場合には、過冷による低温相分率が高くなり、強度増加及び冷間圧延時の圧延負荷が深化されなる恐れがあり、延性が急に低下する問題点がある。逆に、巻取温度が680℃を超過する場合には、前記パーライト領域の大きさ、密度及び/または面積分率が前述した条件を満足しておらず、強度及び曲げ特性などが低下し、異常結晶粒子成長や過度な結晶粒子成長で成形性及び強度劣化が発生する問題がある。
【0087】
冷間圧延段階(S400)は、冷却/巻取段階(S300)で巻き取られた鋼板をアンコイリング(uncoiling)して酸洗処理した後、冷間圧延する段階である。この際、酸洗は、巻き取られた鋼板、すなわち、前記熱延過程を通じて製造された熱延コイルのスケールを除去するための目的で実施する。
【0088】
一実施例において、冷間圧延時の圧下率は、30%~70%に制御されうる。これにより、炭素(C)の含量及び/またはマンガン(Mn)の含量が相対的に高いパーライトが局所的に集積された領域(パーライト領域)の大きさ、密度及び面積分率が前述した条件を満足するように制御されうる。例えば、圧下率が30%未満である場合、パーライト間の間隔が狭くなり、パーライトが局所的に集中された領域が増加し、それにより、強度及び曲げ特性が低下しうる。
【0089】
燒鈍熱処理段階(S500)は、冷間圧延段階(S400)で冷間圧延された鋼板を700℃以上の温度で燒鈍熱処理する段階である。一実施例において、燒鈍熱処理段階(S500)は、冷間圧延された鋼板を760℃~850℃の温度範囲で燒鈍熱処理する段階でもある。一方、燒鈍熱処理は、冷延板材を加熱し、加熱された冷延板材を所定の冷却速度で冷却する段階を含む。
【0090】
メッキ段階(S600)は、燒鈍熱処理された鋼板に対してメッキ層を形成する段階である。一実施例において、メッキ段階(S600)は、燒鈍熱処理段階(S500)で燒鈍熱処理された鋼板上にAl-Siメッキ層を形成する段階を含む。
【0091】
具体的には、メッキ段階(S600)は、鋼板を610℃~710℃の温度を有するメッキ浴に浸漬させて鋼板の表面に溶融メッキ層を形成する段階、及び前記溶融メッキ層が形成された鋼板を冷却させてメッキ層を形成する冷却段階を含む。この際、メッキ浴は、添加元素としてSi、Fe、Al、Mn、Cr、Mg、Ti、Zn、Sb、Sn、Cu、Ni、Co、In及び/またはBiを含むが、それらに限定されるものではない。例えば、メッキ浴は、5~12%のSi、1~4%のFe、及びその他Alを含む。また、前面及び背面に対するメッキ量は、30~200g/mを満足するように制御されうる。
【0092】
このようにS100~S600段階を経て製造したホットスタンピング用鋼板に対してホットスタンピング工程を遂行することで、要求される機械的特性(例えば、引張強度、降伏強度、曲げ特性、延伸率など)を満足するホットスタンピング後の成形部品を製造することができる。
【0093】
前記ホットスタンピング工程は、ホットスタンピング用鋼板を用いて製造したブランクを加熱する段階、前記ブランクをホットスタンピングして成形体を形成する段階、及び前記成形体を冷却してホットスタンピング部品を形成する段階を含む。一実施例において、前記ブランクを加熱する段階は、前記ブランクをAc3以上の温度で加熱する段階を含む。また、前記成形体を冷却してホットスタンピング部品を形成する段階は、前記成形体を300℃以下まで平均25℃/s以上の冷却速度で冷却する段階を含む。但し、前記ホットスタンピング工程に適用される温度範囲、冷却速度などの工程条件は、上述した例示に制限されず、多様にも変形される。
【0094】
一実施例において、前述した含量条件及び工程条件を満足するように製造したホットスタンピング用鋼板は、前述した微細組織の構成(例えば、パーライト領域の大きさ、密度、面積分率など)に対する条件を満足する。これにより、ホットスタンピング後の成形部品の引張強度は、1,350MPa以上を満足し、望ましくは、1,350MPa以上1,650MPa以下を満足する。また、ホットスタンピング後の成形部品の降伏強度は、950MPa以上を満足し、望ましくは、950MPa以上1,200MPa以下を満足する。また、ホットスタンピング後の成形部品は、61~80°の曲げ角を満足し、6%以上の延伸率を有し、10~15kN/spotの溶接強度と0.3以下の炭素当量(Carbon equivalent; Ceq)を有する。
【0095】
図4は、本発明の一実施例によるホットスタンピング後の成形部品の微細組織の一部を概略的に示すイメージであり、図5は、本発明の一実施例によるホットスタンピング後の成形部品の微細組織が有する結晶粒の一部を概略的に示すイメージである。具体的には、図4及び図5は、前述した含量条件及び工程条件を満足するように製造したホットスタンピング用鋼板に対してホットスタンピング工程を遂行した後の成形部品の一部を示すイメージである。
【0096】
ホットスタンピング後の成形部品は、マルテンサイト、ベイナイト、フェライト及び/またはオーステナイトを含む。ホットスタンピング後の成形部品の微細組織の比率と微細組織の平均結晶粒サイズは、既設定の条件を満足するように制御されうる。これにより、ホットスタンピング後の成形部品の引張強度、降伏強度、曲げ特性、延伸率などの機械的特性を制御することができる。例えば、ホットスタンピング後の成形部品の引張強度は、1,350MPa以上を満足し、望ましくは、1,350MPa以上1,650MPa以下を満足する。また、ホットスタンピング後の成形部品の降伏強度は、950MPa以上を満足し、望ましくは、950MPa以上1,200MPa以下を満足する。また、ホットスタンピング後の成形部品は、61~80°の曲げ角を満足し、6%以上の延伸率を有する。
【0097】
一実施例において、ホットスタンピング後の成形部品の微細組織は、70%以上のマルテンサイト、30%以下のベイナイトとフェライト及び5%以下の残量炭化物と残留オーステナイトを含む。
【0098】
一実施例において、ホットスタンピング後の成形部品が含む微細組織は、微細化されうる。具体的には、ホットスタンピング後の成形部品が含む微細組織の平均結晶粒サイズは、2μm以上15μm以下を満足するように制御されうる。
【0099】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、下記実施例及び比較例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲が下記実施例及び比較例によって限定されるものではない。下記実施例及び比較例は、本発明の範囲内で当業者によって適切に修正、変更されうる。
【表1】

【表2】
【0100】
表1は、ホットスタンピング用鋼板製造に用いられるスラブの組成を示し、表2は、表1のような組成を有するスラブに対して前述したS100~S600段階を遂行して製造したホットスタンピング用鋼板に該当する試片に対する測定値を示す。参照のために、測定値はASTM規格によって160mm以上の単位面積に基づいて測定された値である。
【0101】
一方、「第1領域」は、0.19~0.55wt%の炭素(C)及び0.8~6.0wt%のマンガン(Mn)を含むパーライトが局所的に集積された領域を意味し、「第2領域」は、0.55wt%を超過する炭素(C)を含むパーライトまたは6.0wt%を超過するマンガン(Mn)を含むパーライトが局所的に集積された領域を意味する。
【0102】
また、「第1領域平均長さ」は、前記第1領域の長辺の平均長さを意味し、「第1領域平均厚さ」は、前記第1領域の短辺の平均長さを意味し、「第1領域線密度」は、前記第1領域の短辺方向の線密度を意味する。
【0103】
また、曲げ角は、ドイツ自動車産業協会(VDA: Verband Der Automobilindustrie)の規格によってV曲げ角を測定したものであって、圧延方向(rolling direction, RD)の値を意味する。
【0104】
表2の試片のうち、試片AないしIは、実施例であり、試片JないしNは、比較例に該当する。実施例と比較例は、同じ含量条件(表1参照)及び前述した工程条件を適用するが、巻取温度(CT)のみを変数として差別適用して製造された試片である。具体的には、実施例である試片AないしIは、550~680℃の巻取温度(CT)を適用した試片であり、比較例である試片JないしNは、550℃未満の巻取温度(CT)または680℃超過の巻取温度(CT)を適用した試片である。
【0105】
表2を参照すれば、試片AないしIは、第1領域の平均長さが0.01μm以上300μm以下を満足し、第1領域の平均厚さが0.01μm以上5μm以下を満足し、第1領域の線密度が0.001/μm以上0.1/μm以下を満足し、第1領域の面積分率が0.01%以上15%以下を満足し、第2領域の面積分率が5%以下を満足することを確認しうる。その結果、試片AないしIは、ホットスタンピング後の成形部品の引張強度が1,350MPa以上を満足し、曲げ角が61~80°を満足することを確認しうる。これは、550~680℃の巻取温度(CT)を適用することで、パーライト領域の大きさ、密度、面積分率が既設定の範囲内に制御されたと理解されうる。
【0106】
一方、試片JないしNは、ホットスタンピング用鋼板の微細組織の構成条件のうち、少なくとも一部を満足させ得ない試片であって、ホットスタンピング後の成形部品の曲げ角が試片AないしIと対比して劣ることを確認しうる。これは、550℃未満の巻取温度(CT)または680℃超過の巻取温度(CT)を適用することで、パーライト領域の大きさ、密度、面積分率が既設定の範囲内に制御されていないものと理解されうる。
【0107】
試片Jの場合、第1領域の平均長さが300μmを超過する318.19μmであり、第1領域の平均厚さが5μmを超過する5.22μmであり、第1領域の線密度が0.1/μmを超過する0.109/μmであり、第1領域の面積分率が15%を超過する15.13%であり、第2領域の面積分率が5%を超過する5.3%である。これにより、試片Jの曲げ角は、49°に過ぎないということを確認しうる。
【0108】
具体的には、試片Kの場合、第1領域の平均長さが300μmを超過する372.02μmであり、第1領域の平均厚さが5μmを超過する5.45μmであり、第1領域の線密度が0.1/μmを超過する0.134/μmであり、第1領域の面積分率が15%を超過する16.99%であり、第2領域の面積分率が5%を超過する5.8%である。これにより、試片Kの曲げ角は、47°に過ぎないということを確認しうる。
【0109】
試片Lの場合、第1領域の平均長さが300μmを超過する435.44μmであり、第1領域の平均厚さが5μmを超過する6.77μmであり、第1領域の線密度が0.1/μmを超過する0.245/μmであり、第1領域の面積分率が15%を超過する18.86%であり、第2領域の面積分率が5%を超過する6.98%である。これにより、試片Lの曲げ角は、45°に過ぎないということを確認しうる。
【0110】
試片Mの場合、第1領域の平均長さが300μmを超過する558.03μmであり、第1領域の平均厚さが5μmを超過する7.33μmであり、第1領域の線密度が0.1/μmを超過する0.265/μmであり、第1領域の面積分率が15%を超過する20.11%であり、第2領域の面積分率が5%を超過する7.86%である。これにより、試片Mの曲げ角は、44°に過ぎないということを確認しうる。
【0111】
試片Nの場合、第1領域の平均長さが300μmを超過する605.01μmであり、第1領域の平均厚さが5μmを超過する7.43μmであり、第1領域の線密度が0.1/μmを超過する0.277/μmであり、第1領域の面積分率が15%を超過する23.45%であり、第2領域の面積分率が5%を超過する9.26%である。これにより、試片Nの曲げ角は、43°に過ぎないということを確認しうる。
【0112】
本発明は、図面に図示された実施例を参照して説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、それにより、多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】