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特表2023-535866ホットスタンピング部品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-22
(54)【発明の名称】ホットスタンピング部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20230815BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20230815BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B21D22/20 H
C21D1/18 C
C21D9/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575414
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 KR2021018671
(87)【国際公開番号】W WO2022124828
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0171622
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(72)【発明者】
【氏名】ユン、スンチェ
(72)【発明者】
【氏名】コン、ジョヨル
(72)【発明者】
【氏名】キム、スンミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョウス
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョジン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェミョン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ビョンギル
(72)【発明者】
【氏名】ユク、ワン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ギハク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、スンピル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヒョンヨン
【テーマコード(参考)】
4E137
4K042
【Fターム(参考)】
4E137AA02
4E137AA05
4E137AA08
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC02
4E137BC06
4E137BC07
4E137CA09
4E137DA03
4E137EA01
4E137EA26
4E137EA36
4E137FA02
4E137FA10
4E137FA25
4E137FA26
4E137FA27
4E137GB03
4K042AA24
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA02
4K042BA05
4K042BA08
4K042BA11
4K042CA02
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA12
4K042DA01
4K042DB07
4K042DC01
4K042DC02
4K042DC03
4K042DD01
4K042DE05
4K042DE07
4K042DF01
(57)【要約】
互いに異なる昇温速度範囲を有する複数の区間を具備した加熱炉内に、母材の少なくとも一面に、メッキ層が形成されたブランクを投入する段階と、複数の区間を通過し、ブランクを段階的に加熱する多段加熱段階と、を含み、複数の区間は、第1平均昇温速度変化率を有する第1加熱区間と、第1加熱区間以後、第1平均昇温速度変化率と異なる第2平均昇温速度変化率を有する第2加熱区間と、第2加熱区間以後、第1平均昇温速度変化率及び第2平均昇温速度変化率と異なる第3平均昇温速度変化率を有する第3加熱区間を含み、第3平均昇温速度変化率は、正の値から負の値に変化する区間を含むホットスタンピング部品の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる昇温速度範囲を有する複数の区間を具備した加熱炉内に、母材の少なくとも一面に、メッキ層が形成されたブランクを投入する段階と、
前記複数の区間を通過し、前記ブランクを段階的に加熱する多段加熱段階と、を含み、
前記複数の区間は、
第1平均昇温速度変化率を有する第1加熱区間と、
前記第1加熱区間以後、前記第1平均昇温速度変化率と異なる第2平均昇温速度変化率を有する第2加熱区間と、
前記第2加熱区間以後、前記第1平均昇温速度変化率及び前記第2平均昇温速度変化率と異なる第3平均昇温速度変化率を有する第3加熱区間と、を含み、
前記第3平均昇温速度変化率は、正の値から負の値に変化する区間を含む、ホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項2】
前記第1加熱区間と前記第2加熱区間との間で、前記第1平均昇温速度変化率から前記第2平均昇温速度変化率への変化は、不連続である、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項3】
前記第3加熱区間は、第3-1平均昇温速度変化率を有する第3-1加熱区間、及び第3-2平均昇温速度変化率を有する第3-2加熱区間を含むが、
前記第3-1平均昇温速度変化率は、正の値を有し、前記第3-2平均昇温速度変化率は、負の値を有し、
前記第3-1平均昇温速度変化率の絶対値は、前記第3-2平均昇温速度変化率の絶対値より小さい、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項4】
前記第1平均昇温速度変化率及び前記第2平均昇温速度変化率は、それぞれ負の値を有し、
前記第1平均昇温速度変化率の絶対値は、前記第2平均昇温速度変化率の絶対値より大きい、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項5】
前記複数の区間は、第3加熱区間以後、
前記第1平均昇温速度変化率、前記第2平均昇温速度変化率及び前記第3平均昇温速度変化率と異なる第4平均昇温速度変化率を有する第4加熱区間をさらに含み、
前記第4平均昇温速度変化率の絶対値は、前記第1平均昇温速度変化率、前記第2平均昇温速度変化率及び前記第3平均昇温速度変化率それぞれの絶対値より小さい、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項6】
前記第3-1平均昇温速度変化率は、0以上0.25℃/s以下の値を有し、前記第3-2平均昇温速度変化率は、-0.3℃/s以上0以下の値を有する、請求項3に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項7】
前記第1平均昇温速度変化率は、-0.5℃/s以上0以下の値を有し、前記第2平均昇温速度変化率は、-0.25℃/s以上0以下の値を有する、請求項4または6に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項8】
前記第2加熱区間において、前記メッキ層が合金化され、
前記第3加熱区間において、前記母材が相変態する、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載の方法によって製造されたホットスタンピング部品であり、
混入水素量が0以上0.21ppm未満であり、動抵抗値は、0超過0.8mΩ以下である、ホットスタンピング部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンピング部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業において、環境規制と安全基準の強化により、高強度を有しながらも、軽量化された車素材を求める必要性が増大している。そのような高強度及び軽量性の車両素材を製造する工法として、ホットスタンピング技術が注目されており、ホットスタンピング素材に係わる研究開発が活発になされている。
【0003】
ホットスタンピング工程は、一般的に、加熱/成形/冷却/トリミングによってなり、工程中、素材の相変態、及びメッキの合金化のような微細組織の変化を利用することができる。このとき、前記ホットスタンピング工程において、加熱中または熱処理中、水素混入量が増加し、メッキ層構造による溶接性が落ちるというように、部品性能低下が生じる問題点が生じうる。特に、前述の加熱または熱処理の温度により、ホットスタンピング素材の微細組織特性が異なることになり、それにより、水素脆性、溶接性能が異なりうる。
【0004】
従って、ホットスタンピング素材の部品性能につき、ホットスタンピング熱処理温度条件を利用した精密な制御が要求される。それと係わる技術として、大韓民国特許公開公報第10-2013-0136565号(発明の名称:ホットスタンプ部材用鋼板及びその製造方法)などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ホットスタンピング加熱温度を制御することにより、強度特性、混入水素量による水素脆性、及びメッキ層構造による溶接性のようなホットスタンピング素材の部品性能が改善されたホットスタンピング部品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法は、互いに異なる昇温速度範囲を有する複数の区間を具備した加熱炉内に、母材の少なくとも一面に、メッキ層が形成されたブランクを投入する段階と、前記複数の区間を通過し、前記ブランクを段階的に加熱する多段加熱段階と、を含み、前記複数の区間は、第1平均昇温速度変化率を有する第1加熱区間と、前記第1加熱区間以後、前記第1平均昇温速度変化率と異なる第2平均昇温速度変化率を有する第2加熱区間と、前記第2加熱区間以後、前記第1平均昇温速度変化率及び前記第2平均昇温速度変化率と異なる第3平均昇温速度変化率を有する第3加熱区間と、を含み、前記第3平均昇温速度変化率は、正の値から負の値に変化する区間を含む。
【0007】
前記第1加熱区間と前記第2加熱区間との間で、前記第1平均昇温速度変化率から前記第2平均昇温速度変化率への変化は、不連続でもある。
【0008】
前記第3加熱区間は、第3-1平均昇温速度変化率を有する第3-1加熱区間、及び第3-2平均昇温速度変化率を有する第3-2加熱区間を含むものの、前記第3-1平均昇温速度変化率は、正の値を有し、前記第3-2平均昇温速度変化率は、負の値を有し、前記第3-1平均昇温速度変化率の絶対値は、前記第3-2平均昇温速度変化率の絶対値よりも小さい。
【0009】
前記第1平均昇温速度変化率及び前記第2平均昇温速度変化率は、それぞれ負の値を有し、前記第1平均昇温速度変化率の絶対値は、前記第2平均昇温速度変化率の絶対値よりも大きくなる。
【0010】
前記複数の区間は、第3加熱区間以後、前記第1平均昇温速度変化率、前記第2平均昇温速度変化率及び前記第3平均昇温速度変化率と異なる第4平均昇温速度変化率を有する第4加熱区間をさらに含み、前記第4平均昇温速度変化率の絶対値は、前記第1平均昇温速度変化率、前記第2平均昇温速度変化率及び前記第3平均昇温速度変化率それぞれの絶対値よりも小さい。
【0011】
前記第3-1平均昇温速度変化率は、0以上0.25℃/s以下の値を有し、前記第3-2平均昇温速度変化率は、-0.3℃/s以上0以下の値を有しうる。
【0012】
前記第1平均昇温速度変化率は、-0.5℃/s以上0以下の値を有し、前記第2平均昇温速度変化率は、-0.25℃/s以上0以下の値を有しうる。
【0013】
前記第2加熱区間において、前記メッキ層が合金化され、前記第3加熱区間において、前記母材が相変態しうる。
【0014】
前述の本発明の一実施形態による方法によって製造されたホットスタンピング部品であり、混入水素量が0以上0.21ppm未満で、動抵抗値は、0超過0.8mΩ以下でもある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、ホットスタンピング加熱工程において、昇温速度を区間別に制御することにより、ホットスタンピング鋼につき、強度特性、混入水素量による水素脆性、及びメッキ層構造による溶接性のようなホットスタンピング素材の部品性能を改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法を概略的に図示したフローチャートである。
図2】従来方法によってブランクが単一加熱される場合、ブランクの温度変化を示すグラフである。
図3】本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法において、ブランクが、多段加熱及び均熱加熱される場合の温度変化を示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法において、加熱時間による複数の区間の昇温速度変化率を示すグラフである。
図5】本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の断面を示す走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。
図6】本発明の比較実施形態によるホットスタンピング部品の断面を示す走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。
図7】本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法に利用されるブランクを概略的に図示した平面図である。
図8】本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法において、加熱炉内に投入されたブランクを概略的に図示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施形態を有しうるが、特定実施形態を図面に例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。本発明の効果、特徴、及びそれらを達成する方法は、図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すれば、明確になるであろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、多様な形態にも具現される。
【0018】
以下の実施形態において、第1、第2のような用語は、限定的な意味ではなく、1つの構成要素を、他の構成要素と区別する目的に使用されている。
【0019】
以下の実施形態において、単数の表現は、文脈上、明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0020】
以下の実施形態において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴または構成要素が存在するということを意味するものであり、1以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を事前に排除するものではない。
【0021】
以下の実施形態において、膜、領域、構成要素のような部分が、他の部分の「上」または「上部」にあるとするとき、他の部分の真上にある場合だけではなく、その中間に、さらに他の膜、領域、構成要素などが介在されている場合も含む。
【0022】
図面においては、説明の便宜のために、構成要素が、その大きさが誇張されてもあり、縮小されてもいる。例えば、図面に示された各構成の大きさ及び厚みは、説明の便宜のために任意に示されているが、本発明は、必ずしも図示されたところに限定されるものではない。
【0023】
ある実施形態が異なって具現可能である場合、特定の工程順序は、説明される順序と異なるようにも遂行される。例えば、連続して説明される2つの工程が、実質的に同時に遂行されもし、説明される順序と反対の順序にも進められる。
【0024】
以下、添付された図面を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明するが、図面を参照して説明するとき、同一であるか、あるいは対応する構成要素は、同一図面符号を付することにする。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法を概略的に図示したフローチャートである。以下においては、図1を参照し、ホットスタンピング部品の製造方法について説明する。
【0026】
本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法は、ブランク投入段階(S100)及び多段加熱段階(S200)を含むものでもあり、多段加熱段階(S200)以後、移送段階(S300)、形成段階(S400)及び冷却段階(S500)をさらに含むものでもある。
【0027】
まず、ブランク投入段階(S100)は、互いに異なる昇温速度範囲を有する複数の区間を具備した加熱炉内に、ブランクを投入する段階でもある。前記ブランクは、母材の少なくとも一面に、メッキ層が形成された形態にも具備される。
【0028】
加熱炉内に投入されるブランクは、ホットスタンピング部品形成のための板材(または、母材)を裁断して形成されたものでもある。前記板材は、鋼スラブに、熱間圧延または冷間圧延を行った後、焼きなまし熱処理する過程を介しても製造される。また、前記焼きなまし熱処理以後、前記焼きなまし熱処理された板材の少なくとも一面に、Al-Si系メッキ層またはZnメッキ層を形成することができるが、母材の一面に形成されるメッキ層の種類は、それに限定されるものではない。
【0029】
ブランク投入段階(S100)以後、多段加熱段階(S200)が遂行されうる。多段加熱段階(S200)は、ブランクが加熱炉内に具備された複数の区間を通過し、段階的に加熱される段階でもある。多段加熱段階(S200)については、後述する図2ないし図4のグラフを利用し、さらに詳細に説明する。
【0030】
多段加熱段階(S200)以後、移送段階(S300)、形成段階(S400)及び冷却段階(S500)がさらに遂行されうる。
【0031】
移送段階(S300)は、多段加熱において均熱加熱されたブランクを、加熱炉からプレス金型に移送する段階でもある。均熱加熱されたブランクを、加熱炉からプレス金型に移送する段階において、均熱加熱されたブランクは、7秒間ないし15秒間空冷されるが、望ましくは、10秒ないし15秒間空冷されうる。
【0032】
形成段階(S400)は、移送されたブランクをホットスタンピングし、成形体を形成する段階でもある。冷却段階(S500)は、形成された成形体を冷却する段階でもある。
【0033】
プレス金型において、最終部品形状に成形された後、成形体を冷却し、最終製品が形成されうる。該プレス金型には、内部に冷媒が循環する冷却チャネルが具備されうる。該プレス金型に具備された冷却チャネルを介して供給される冷媒に、循環によって加熱されたブランクを、成形と同時に急冷させることが可能になる。このとき、板材のスプリングバック(spring back)現象を防止すると共に、所望する形状を維持するためには、プレス金型を閉じた状態で加圧しながら、急冷を実施することができる。加熱されたブランクを成形及び冷却する操作を行うにおいて、マルテンサイト終了温度まで、平均冷却速度を最小10℃/s以上に冷却することができる。該ブランクは、プレス金型内において、3~20秒間維持されうる。プレス金型内の維持時間が3秒未満である場合、十分な量のマルテンサイトが生成されず、機械的物性が確保されえない。また、プレス金型内の維持時間が20秒を超える場合、プレス金型内の維持時間が長くなり、生産性が低下されてしまう。
【0034】
図2は、従来方法によってブランクが単一加熱される場合、ブランクの温度変化を示すグラフである。具体的には、図2は、加熱炉の内部温度が、ブランクの目標温度Tと同一に維持されるように、加熱炉の温度を設定した後、1.2mmの厚みを有したブランクと、1.6mmの厚みを有したブランクとを同時に単一加熱した(310,320)場合、経時的なそれらブランクの温度変化を示すグラフである。
【0035】
このとき、ブランクの目標温度Tは、Ac3(フェライトからオステナイトへの変態が完了する温度)以上でもある。望ましくは、ブランクの目標温度Tは、約930℃でもある。さらに望ましくは、ブランクの目標温度Tは、約950℃でもある。ただし、本発明は、それに限定されるものではない。また、前記単一加熱は、加熱炉内に、1.2mmの厚みを有したブランクと、1.6mmの厚みを有したブランクとをそれぞれ投入して加熱するものではなく、加熱炉の温度を単一温度に設定した後、加熱炉内に、1.2mmの厚みを有したブランクと、1.6mmの厚みを有したブランクとを同時に投入して加熱した場合を意味する。
【0036】
図2を参照すれば、加熱炉内部の温度を、ブランクの目標温度Tと同一温度にセッティングした後、1.2mmの厚みを有したブランクと、1.6mmの厚みを有したブランクとを同時に単一加熱する場合、1.2mmの厚みを有したブランクが、1.6mmの厚みを有したブランクに比べ、目標温度Tにまず逹することが分かる。
【0037】
すなわち、1.2mmの厚みを有したブランクが、まず目標温度Tに逹し、1.2mmの厚みを有したブランクは、第1時間Sの間、均熱加熱され(310)、1.6mmの厚みを有したブランクは、前記第1時間Sより短い第2時間Sの間、均熱加熱されうる(320)。目標温度に遅く逹するブランクを基準に、均熱加熱時間が調節されるので、目標温度にまず逹した1.2mmの厚みを有したブランクが過加熱され、1.2mmの厚みを有したブランクの水素遅延破断が増大し、溶接性が低下されてしまう。
【0038】
また、ホットスタンピング工程の目標温度T及び時間のみを基準に、制御範囲を設定する場合、部品性能を効果的に制御することができないという問題点がある。一例として、Al-Siメッキ層を含む部品は、ホットスタンピング工程中、メッキ層の合金化と、母材の相変態動作とを伴いうる。このとき、部品に加えられる温度履歴、ホットスタンピング工程制御により、メッキ層の構造や、相互拡散層の厚み、メッキ層剥離、成形性、水素脆性及び溶接性のような部品性能が異なって決定される。既存のホットスタンピング工程は、前述の最終目標温度Tや、全体的な昇温速度を基準にも制御されるが、単に、目標温度、時間のみを利用した工程制御をもってしては、部品性能を精密に制御することに限界があるために、以下、本発明の実施形態においては、ブランクに係わる昇温速度変化率を制御することにより、部品性能を容易であって精密に制御するものである。
【0039】
以下、図3及び図4を参照し、多段加熱段階において、ブランクが通過し、段階的に加熱される複数の区間について説明する。
【0040】
図3は、本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法において、ブランクが、多段加熱及び均熱加熱される場合の温度変化を示すグラフである。さらに具体的には、図3は、本発明の一実施形態において、1.2mmの厚みを有したブランクを、多段加熱(510)、及び1.6mmの厚みを有したブランクを、多段加熱(520)する場合の経時的な温度変化を示すグラフであり、経時的な温度変化を示す。
【0041】
図3を参照すれば、一実施形態による加熱炉は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間P1,P2,P3,P4を具備することができる。さらに具体的には、該加熱炉は、第1温度範囲T1を有する第1加熱区間P1、第2温度範囲T2を有する第2加熱区間P2、第3温度範囲T3を有する第3加熱区間P3、及び第4温度範囲T4を有する第4加熱区間P4を具備することができる。このとき、第3加熱区間T3は、互いに異なる温度範囲を有する2つの区間を具備することができる。第3加熱区間T3は、第3-1温度範囲T3-1を有する第3-1加熱区間P3-1、及び第3-2温度範囲T3-2を有する第3-2加熱区間P3-2を含むものでもある。一実施形態により、第2加熱区間T2は、互いに異なる温度範囲を有する複数個の区間を具備しうる。第2加熱区間T2は、第2-1温度範囲T2-1を有する第2-1加熱区間P2-1ないし第2-n温度範囲T2-nを有する第2-n加熱区間P2-nを含むものでもある。また、第1加熱区間T1も、互いに異なる温度範囲を有する複数個の区間を具備しうる。第1加熱区間T1は、第1-1温度範囲T1-1を有する第1-1加熱区間P1-1ないし第1-n温度範囲T1-nを有する第1-n加熱区間P1-nを含むものでもある。
【0042】
第1加熱区間P1ないし第4加熱区間P4は、順番通り加熱炉内にも配される。第1加熱区間P1は、ブランクが投入される加熱炉の入口と隣接し、第4加熱区間P4は、ブランクが排出される加熱炉の出口と隣接しうる。従って、第1温度範囲T1を有する第1加熱区間P1が、加熱炉の最初区間でもあり、第4温度範囲T4を有する第4加熱区間P4が、加熱炉の最後区間でもある。後述するように、加熱炉の複数区間において最後区間である第4加熱区間P4は、多段加熱が行われる区間ではなく、均熱加熱が行われる区間でもある。
【0043】
加熱炉内に具備された複数の区間の温度、例えば、第1加熱区間P1ないし第4加熱区間P4の温度は、ブランクが投入される加熱炉の入口から、ブランクが取り出される加熱炉の出口方向に上昇しうる。また、加熱炉内に具備された複数の区間のうち、互いに隣接した2つの区間間の温度差は、0℃より大きく、100℃以下でもある。例えば、第1加熱区間P1と第2加熱区間P2との温度差は、0℃より大きく、100℃以下でもある。
【0044】
一実施形態として、第1加熱区間P1の第1温度範囲T1は、840℃ないし860℃でもあり、835℃ないし865℃でもある。第2加熱区間P2の第2温度範囲T2は、870℃ないし920℃でもあり、865℃ないし925℃でもある。第3-1区間P3-1の第3-1温度範囲T3-1は、920℃ないし940℃でもあり、915℃ないし945℃でもある。第3-2区間P3-2の第3-2温度範囲T3-2は、940℃ないし960℃でもあり、935℃ないし965℃でもある。第4加熱区間P4の第4温度範囲T4は、Ac3ないし1,000℃でもある。望ましくは、第4加熱区間P4の第4温度範囲T4は、930℃以上1,000℃以下でもある。さらに望ましくは、第4加熱区間P4の第4温度範囲T4は、950℃以上1,000℃以下でもある。
【0045】
一実施形態により、第2加熱区間P2が、前述の互いに異なる温度範囲を有する第2-1加熱区間P2-1及び第2-2加熱区間P2-2を含む場合、第2-1温度範囲T2-1は、870℃ないし890℃でもあり、865℃ないし895℃でもあり、第2-2加熱区間P2-2の第2-2温度範囲T2-2は、900℃ないし920℃でもあり、895℃ないし925℃でもある。
【0046】
前述の複数区間を定義する境界値について説明する。前記境界値は、グラフの横軸として、加熱時間範囲(秒)を示す。まず、第1加熱区間P1と第2加熱区間P2との間に位置する第1境界値e1は、約30ないし約50でもあり、約40(秒)でもある。第2加熱区間P2と第3加熱区間P3との間に位置する第2境界値e2は、約80ないし約130でもあり、約85(秒)でもある。第3-1加熱区間P3-1と第3-2加熱区間P3-2との間に位置する第3境界値e3は、約110ないし約180でもあり、約120(秒)でもある。第3-2加熱区間P3-2と第4加熱区間P4との間に位置する第4境界値e4は、約140ないし約230でもあり、約150(秒)でもある。
【0047】
一実施形態により、第2加熱区間P2が、前述の互いに異なる温度範囲を有する第2-1加熱区間P2-1及び第2-2加熱区間P2-2を含む場合、第2-1加熱区間P2-1と第2-2加熱区間P2-2との間に位置する第2-1境界値e2’は、約50ないし約110でもあり、約60(秒)でもある。
【0048】
図3においては、本発明の一実施形態による加熱炉が、代表的なものとして、互いに異なる温度範囲を有する5つの区間P1,P2,P3-1,P3-2,P4を具備しているように図示されているが、本発明は、それに限定されるものではない。該加熱炉内には、互いに異なる温度範囲を有する5個、6個または8個というような区間が具備されうる。
【0049】
図4は、本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法において、加熱時間による複数の区間の昇温速度変化率を示すグラフであり、加熱時間(s)によるブランクの昇温速度(℃/s)グラフを示す。図4に図示された複数の区間及び境界値は、図3で説明した内容と同一内容であり、説明を簡略するか、あるいは省略する。
【0050】
図4を参照すれば、ブランクの多段加熱が行われる複数の区間の昇温速度(℃/s)または昇温速度変化率(℃/s)の分布は、後述する通りである。以下、「昇温速度変化率」というのは、図4に図示されたグラフの各区間の平均傾きであり、以下においては、「平均昇温速度変化率]として説明することができる。以下においては、一区間における「平均昇温速度変化率」は、一例として、当該区間における、最初昇温速度と最終昇温速度との差を、当該区間の時間で除した値とも定義される。図4には、本発明の一実施形態による昇温速度第1制御曲線610、及び比較実施形態による昇温速度第2制御曲線620が図示されている。
【0051】
まず、本発明の一実施形態による昇温速度第1制御曲線610について説明する。
【0052】
第1加熱区間P1は、第1平均昇温速度変化率r1を有しうる。第1加熱区間P1以後に位置する第2加熱区間P2は、第1平均昇温速度変化率r1と異なる第2平均昇温速度変化率r2を有しうる。前記第2加熱区間P2以後に位置する第3加熱区間P3は、第1平均昇温速度変化率r1及び第2平均昇温速度変化率r2と異なる第3平均昇温速度変化率r3を有しうる。このとき、第3平均昇温速度変化率r3は、正の値から負の値に変化する区間を含むものでもある。第3加熱区間P3以後に位置する第4加熱区間P4は、前述の第1平均昇温速度変化率r1、第2平均昇温速度変化率r2及び第3平均昇温速度変化率r3と異なる第4平均昇温速度変化率r4を有しうる。
【0053】
第1加熱区間P1は、一般昇温区間でもあり、第2加熱区間P2においては、昇温速度が、第1加熱区間P1対比で緩慢に低下し(|r1|>|r2|)、メッキ層の合金化が遂行されうる。第3加熱区間P3は、ブランクの母材が相変態する相変態区間であり、第3-1加熱区間P3-1は、正(+)の昇温速度変化率を有し、第3-2加熱区間P3-2は、負(-)の昇温速度変化率を有しうる。第4加熱区間P4は、ブランクが、均一で均熱加熱される安定化区間でもある。
【0054】
第1制御曲線610を参照すれば、第1平均昇温速度変化率r1及び第2平均昇温速度変化率r2は、それぞれ負の値を有し、第1平均昇温速度変化率r1の絶対値は、第2平均昇温速度変化率r2の絶対値よりも大きくなる(|r1|>|r2|)。第1平均昇温速度変化率r1は、約-0.5℃/s以上0以下でもあり、一例として、約-0.3℃/sでもある。第2平均昇温速度変化率r2は、約-0.25℃/s以上0以下でもあり、一例として、約-0.07℃/sでもある。
【0055】
第1加熱区間P1と第2加熱区間P2との間において、すなわち、第1境界値e1近辺において、第1平均昇温速度変化率r1から第2平均昇温速度変化率r2への変化は、不連続である。さらに具体的には、第1加熱区間P1において、 第1平均昇温速度変化率r1を定義する前記第1境界値e1における昇温速度v1と、第2加熱区間P2において、第2平均昇温速度変化率r2を定義する前記第1境界値e1における昇温速度v2は、異なる値を有しうる。言い換えれば、第1平均昇温速度変化率r1の最終昇温速度v1と、第2平均昇温速度変化率r2の最初昇温速度v2は、異なる値でもある。第1境界値e1近辺において、昇温速度変化率が不連続に変化するとき(r1→r2)(610)、連続的に変化する場合(620)と比較するとき、ホットスタンピング部品の溶接性を向上させることができる。
【0056】
前述の第1加熱区間P1と第2加熱区間P2との間において、平均昇温速度変化率の不連続である変化は、メッキ層変化に多くのエネルギーが要求されるためである。母材のFeが、Alメッキ層に拡散がなされ、メッキ層内に、Al-Fe相が初期生成されて成長するためには、必要なエネルギーが供給されなければならない。また、母材に拡散されたFeは、経時的にAl-Fe-Si合金層を生成するが、前記第1境界値e1近辺において、昇温速度変化率の変化が不連続であればあるほど、表面までの拡散が均一になされ、それにより、良好な溶接性を得ることができる。一方、前述の変化が連続的である場合には、Al-Fe-Siの拡散が表面まで迅速であって不均一になされるために、表面に溶接抵抗が高い相上が存在し、溶接性が落ちる現象が生じる。
【0057】
第3加熱区間P3は、第3-1昇温速度変化率r3-1を有する第3-1加熱区間P3-1、及び第3-2昇温速度変化率r3-2を有する第3-2加熱区間P3-2を含む。第3-1平均昇温速度変化率r3-1は、正の値を有し、第3-2平均昇温速度変化率r3-2は、負の値を有し、第3平均昇温速度変化率r3は、正の値から負の値に変化する区間を有しうる。このとき、第3-1平均昇温速度変化率r3-1の絶対値は、第3-2平均昇温速度変化率r3-2の絶対値よりも小さい(|r3-1|<|r3-2|)。第3-1平均昇温速度変化率r3-1は、0以上約0.25℃/s以下でもあり、一例として、第3-1平均昇温速度変化率r3-1は、約0.07℃/sでもある。第3-2平均昇温速度変化率r3-2は、約-0.3℃/s以上0以下でもあり、一例として、約-0.08℃/sでもある。
【0058】
第3-1加熱区間P3-1において、第3平均昇温速度変化率r3が小さく、第1制御曲線610の傾きが緩慢になるほど、混入水素量は、減少し、それにより、水素脆性が改善される。それと対比され、第2制御曲線620は、第3-1加熱区間P3-1において、昇温速度変化率が急激に上昇するか、あるいは不連続に上昇する形態を有するが、そのような場合、混入水素量が増加し、それにより、水素脆性が劣るものとなりうる。そのように、第3加熱区間P3においては、第1加熱区間P1と第2加熱区間P2との間とは異なり、母材の相変態が行われる区間であり、急激な温度変化がある場合、それによる水素脆性、遅延破断のような問題があることになるので、昇温速度変化率が低いほど有利である。
【0059】
第2加熱区間P2と第3-1加熱区間P3-1との間において、すなわち、第2境界値e2近辺において、第2平均昇温速度変化率r2から第3-1平均昇温速度変化率r3-1への変化は、負の値から正の値に変化する。すなわち、昇温速度が低減していて増大しながら、母材の相変態が起こるのである。例えば、前記母材の相変態のうち、当該区間におけるオステナイトへの変態時、吸熱反応が起こり、そのために、エネルギー供給が必要であるので、昇温速度は、第3-1加熱区間P3-1において、さらに増大してこそ、オステナイトへの合理的なレベルの相変態を誘導することができる。
【0060】
第3-1加熱区間P3-1と第3-2加熱区間P3-2との間において、すなわち、第3境界値e3近辺において、第3-1平均昇温速度変化率r3-1から第3-2平均昇温速度変化率r3-2への変化は、正の値から負の値に変化する。すなわち、昇温速度が増大していて、さらに低減しながら、母材の相変態が起こりうる。相変態が進むほど、吸熱反応に多量の熱エネルギー供給が必要であり、昇温速度が増大するが、相変態が進むことにより、オステナイト量が増加され、第3-2加熱区間P3-2においては、前記吸熱反応に必要な熱エネルギーがだんだんと低減し、昇温速度が低減してしまう。
【0061】
第4平均昇温速度変化率r4の絶対値は、第1平均昇温速度変化率r1、第2平均昇温速度変化率r2及び第3平均昇温速度変化率r3それぞれの絶対値よりも小さい。一例として、第4平均昇温速度変化率r4は、0に近い値であり、第4加熱区間P4は、均一な温度で均熱加熱される区間でもある。第4加熱区間P4において、ブランクが加熱される時間t4は、全体加熱時間tの約50%以下でもある。それは、該ブランクが第1加熱区間P1、第2加熱区間P2及び第3加熱区間P3で多段加熱される時間t1対比で、第4加熱区間P4で均熱加熱される時間t4が長くなるほど、溶接性、水素脆性及び曲げ性能のような部品特性が劣るものとなってしまうからである。一例として、多段加熱する区間P1,P2,P3の長さと、均熱加熱する区間P4の長さとの比(t1:t4)は、1:1ないし4:1を満足することができる。
【0062】
以下、前述の第1制御曲線610対比で、第2制御曲線620の特性について説明するが、第1制御曲線610と異なる点を主として説明する。第2制御曲線620を参照すれば、第1加熱区間P1と第2加熱区間P2との間において、第1’平均昇温速度変化率r1’は、連続的に変化する。さらに具体的には、第1加熱区間P1において、第1’平均昇温速度変化率r1を定義する前記第1境界値e1における昇温速度と、第2加熱区間P2において、第1’平均昇温速度変化率r1’を定義する前記第1境界値e1における昇温速度v1’は、同じ値を有しうる。
【0063】
第1’平均昇温速度変化率r1’は、約-0.26℃/s以上0以下でもあり、一例として、約-0.2℃/sでもある。第2制御曲線620の第3加熱区間P3における昇温速度変化率r3’,r3-1’,r3-2’の変化特性は、第1制御曲線610で説明したところと同一特性を有しうる。ただし、第3-1’昇温速度変化率r3-1’は、第1制御曲線610の第3-1平均昇温速度変化率r3-1対比で、不連続、不安定な値を有しうる。このとき、第3-1’昇温速度変化率r3-1’は、第3-1加熱区間P3-1において、昇温速度が増大趨勢を示す前端部における変化率を意味しうる。第3-1’昇温速度変化率r3-1’は、約0.04℃/s以上約0.16℃/s以下でもあり、一例として、約0.1℃/sでもある。第3-2’昇温速度変化率r3-2’は、約-0.16℃/s以上約-0.04℃/s以下でもあり、一例として、約-0.1℃/sでもある。第2制御曲線620の第4加熱区間P4は、第1制御曲線610と同様に、第4平均昇温速度変化率r4が、0に近似した値を有する均熱加熱区間でもある。
【0064】
そのように、本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法において、前述のような複数の区間特性による区間別に昇温速度変化率を制御することにより、ホットスタンピング部品の超強度特性、溶接性、水素脆性、曲げ性能のような部品特性を精密に制御して改善することができる。一実施形態によるホットスタンピング部品の部品特性については、後述する図5及び図6でさらに詳細に説明する。
【0065】
図4の横軸に図示された加熱時間(s)と境界値との関係は、図4に図示されたところに限定されるものではなく、本開示のホットスタンピング用部品の部品性能を改善させる範囲において、多様に変更適用されうる。以上においては、複数の区間が、5個の区間を具備するとして説明されたが、昇温速度変化率の分布により、複数の区間は、異なるようにも区分される。
【0066】
図5は、本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の断面を示す走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。図5によるホットスタンピング部品は、前述の本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品製造方法(例:図4の610曲線)によって製造された部品でもある。
【0067】
図5を参照すれば、ホットスタンピング部品1は、母材10、及び前記母材10上に位置する複数の層21,22,23,24を含むメッキ層20を含むものでもある。前記母材10は、素地鋼板であり、所定の合金元素を所定含量含むように鋳造された鋼スラブに対し、熱延工程及び/または冷延工程を進めて製造された鋼板でもある。一例として、素地鋼板100は、炭素(C)、シリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、チタン(Ti)、ボロン(B)、残部の鉄(Fe)、及びその他不可避な不純物を含むものでもある。また、素地鋼板10は、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)及びアルミニウム(Al)のうち1以上の成分をさらに含むものでもある。
【0068】
メッキ層20は、合金化層であり、母材10の少なくとも一面に形成され、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)などを含むものでもある。メッキ層20は、母材10上に順次に積層された複数の層21,22,23,24を含むものでもある。本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品は、図5に図示されたように、メッキ層20が4層(4 layer)に明確に区分されうる。一例として、複数の層21,22,23,24は、順次に、α-Fe相、FeAl相、AlFe相及びFeAl相を有しうるが、複数層の組成は、それに限定されるものではない。図5に図示されたホットスタンピング部品1は、混入水素量が、0以上0.21ppm未満であり、動抵抗値は、0超過0.8mΩ以下でもある。
【0069】
図6は、本発明の比較実施形態によるホットスタンピング部品の断面を示す走査電子顕微鏡(SEM)イメージであり、図5の断面と違いになる部分を主として説明する。図6によるホットスタンピング部品1’は、前述のホットスタンピング部品製造方法(例:図4の620曲線)によって製造された部品でもある。
【0070】
図6に図示されたホットスタンピング部品1’は、母材10、及び母材10上に位置するメッキ層30を含むものでもある。メッキ層30は、図5のメッキ層20と異なり、複数の層ではない単一層でもあり、メッキ層20よりその厚みが薄いのである。一実施形態により、メッキ層30は、複数の層を含んでも、その境界が不明な状態でもある。メッキ層30は、Al、Fe及びSiのうち、少なくともいずれか1つの元素を含むものでもある。図6に図示されたホットスタンピング部品1’は、混入水素量が、0以上0.35ppm未満であり、動抵抗値は、0.5mΩ以上1.5mΩ以下でもある。
【0071】
以下、[表1]を共に使用し、前述の図5及び図6によるホットスタンピング部品の特性
【0072】
を比較して説明する。下記[表1]に記載された評価内容は、相対的な比較結果でもある。
【表1】

図5のメッキ層20は、図6のメッキ層30に比べ、複数層で構成され、このとき、該複数層間の境界も明確であり、それにより、メッキ層20の厚みが、メッキ層30の厚みよりも厚い。ここで、図4を共に参照すれば、そのようなメッキ層の厚み特性と、第1制御曲線610の制御特性は、相互影響結果によって導き出されたものでもある。例えば、メッキ層が厚い場合、第1加熱区間P1及び第2加熱区間P2の間で加熱するとき、2つの区間P1,P2の間において、昇温速度変化率が不連続に変わり、第3加熱区間P3においては、第1制御曲線610の傾きが緩慢であり、すなわち、昇温速度変化率が小さいのである。
【0073】
一方、メッキ層の厚みが厚いほど、混入水素量が少なくなり、ブランクの水素脆性が優秀になる。図5のメッキ層20の厚みが厚いので、前述のように、混入水素量が図5の部品1(約0.21ppm未満)が、図6の部品1’(約0.35ppm未満)に比べて小さく、それにより、水素脆性がさらに優位にあり、水素遅延破断の危険性が低減されうる。
【0074】
また、前述のメッキ層の厚み特性により、表面抵抗は、図5の部品1が、図6の部品1’よりも小さい。また、動抵抗が小さいほど、溶接性が優秀になるが、前述のように、動抵抗値が、図5の部品1(約0.8mΩ以下)が、図6の部品1’(約0.8mΩ以下)に比べて小さいので、溶接性も、図5の部品1がさらに優位にあるということを確認することができる。
【0075】
そのように本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法によれば、複数の区間別に昇温速度変化率を制御することにより、部品に対する精密制御が可能であり、それによるホットスタンピング部品の溶接性、水素脆性、超強度特性のような部品性能を改善させることができるという利点がある。
【0076】
図7は、本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法に利用されるブランクを概略的に図示した平面図である。
図7を参照すれば、一実施形態によるブランク200は、単一厚を有するブランク210、厚みが互いに異なる異種の板材を必要な形態に裁断して溶接したテーラー溶接ブランク(TWB:Taylor welded blank)220、単一厚の板材を圧延し、互いに異なる厚みを有するテーラーロールドブランク(TRB:Tailor rolled blank)230、及び大きいブランクに小さいパッチブランクを溶接して製造されたパッチワーク(patch work)240のうち少なくとも一つを含むものでもある。
【0077】
テーラー溶接ブランク220は、互いに異なる厚みを有する、第1板材221及び第2板材223を溶接して製造することができる。車両の衝突部材用重要部品であるBピラ(pillar)は、上部の衝突支持部と、下部の衝撃吸収部とに、互いに異なる強度の板材が結合された形態であり、2枚の板材を溶接した後、成形して作製する。このとき、主に使用されるテーラー溶接ブランク工法は、厚み、強度及び材質が互いに異なる異種の板材を、必要な形態に裁断して溶接した後、プレス成形して部品を製造する一連の過程を意味するが、異種の厚みを有した板材を溶接し、互いに異なる厚みを有したブランクを製造することにより、ブランクの部分別に異なる特性を有するようにすることができる。例えば、Bピラの上部の衝突支持部には、120~150Kクラスの超強度板材を使用し、応力が集中されるBピラの下端部には、衝撃吸収性能が良好である板材を連結し、車両衝突時、衝撃吸収能を向上させることができる。
【0078】
テーラーロールドブランク230は、冷延状態の鋼材を、特定厚プロファイルを有するように圧延して製造することができ、前記テーラーロールドブランク230を利用し、ホットスタンピング部品を製造するとき、軽量化効果にすぐれる。一例として、前述の厚みプロファイルは、一般的な方法でもって実施することができる。例えば、前記冷延状態の鋼材を冷間圧延するとき、圧下率を調節し、第1厚を有する第1領域231、第2厚を有する第2領域232、第3厚を有する第3領域233、及び第4厚を有する第4領域234を含むテーラーロールドブランク230を形成することができる。このとき、第1厚、第2厚、第3厚み及び第4厚は、それぞれ異なり、第1領域231と第2領域232との間、第2領域232と第3領域233との間、及び第3領域233と第4領域234との間には、遷移区間235が存在しうる。ただし、図2においては、テーラーロールドブランク230が、第1領域231ないし第4領域234を含むように図示されているが、本発明は、それに限定されるものではない。テーラーロールドブランク230は、第1領域231、第2領域232、…、第n領域を含んでも形成される。
【0079】
パッチワーク240は、少なくとも2枚以上の板材を使用し、部分的に母材を補強する工法であり、成形工程以前、パッチが母材に接合され、母材とパッチとが同時に形成されうる。一例として、第1サイズを有する母材241に、前記第1サイズより小さい第2サイズを有するパッチ243が溶接された後、同時に成形されうる。
【0080】
図8は、本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の製造方法において、加熱炉内に投入されたブランクを、概略的に図示した平面図である。以下、図1を共に参照して説明する。
【0081】
ブランク投入段階(S100)において、厚み及び大きさのうち、少なくともいずれか一つが互いに異なる少なくとも2つのブランク200は、加熱炉内に、同時に投入されうる。
【0082】
一例として、図8は、加熱炉内に、同時に投入される2つの第1ブランク250と、2つの第2ブランク260と、を図示する。このとき、第1ブランク250と第2ブランク260は、互いに異なる大きさ、及び異なる厚みを有しうる。例えば、第1ブランク250は、約1.2mmの厚みを有し、第2ブランク260は、約1.6mmの厚みを有しうる。ただし、本発明は、それに限定されるものではなく、1つの第1ブランク250、及び1つの第2ブランク260が加熱炉内に、同時に投入されうる。また、第1ブランク250と第2ブランク260は、大きさは、同一であるが、厚みが異なるように形成されると、あるいは同一厚であり、異なる大きさを有するように形成されるというように、多様な変形が可能である。
【0083】
他の実施形態として、ブランク投入段階(S100)において、加熱炉内に、単一厚を有する少なくとも2つのブランク200が同時に投入されうる。例えば、1.2mmの厚みを有したブランク240が少なくとも2以上同時に投入され、1.6mmの厚みを有したブランク250が少なくとも2以上同時に投入されうる。また、ブランク投入段階(S100)において、加熱炉内に、前述のテーラー溶接ブランク220(図7)、またはテーラーロールドブランク230(図7)が投入されうる。
【0084】
加熱炉内に投入されたブランクは、ローラに実装された後、移送方向に沿って移送されうる(S300)。
【0085】
ブランク投入段階(S100)以後、多段加熱段階(S200)がなされうる。多段加熱段階(S200)は、ブランクが、加熱炉内に具備された複数の区間を通過し、段階的に加熱される段階でもあり、均熱加熱が行われる区間を、少なくとも1以上含むものでもある。
【0086】
以上のように、本発明は図面に図示された一実施形態を参照にして説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該分野で通常の知識を有した者であるならば、それらから、多様な変形、及び実施形態の変形が可能であるという点を理解するであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって定められるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】