(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(54)【発明の名称】レベリング剤、及び該レベリング剤を含む、回路パターン形成用の電気めっき組成物
(51)【国際特許分類】
C25D 3/38 20060101AFI20230818BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20230818BHJP
C25D 5/02 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
C25D3/38 101
C25D7/00 J
C25D5/02 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573614
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 KR2022009067
(87)【国際公開番号】W WO2023282513
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0088379
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514122502
【氏名又は名称】ワイエムティー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ソン ウク
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ポ ムク
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ クン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ナク ウン
(72)【発明者】
【氏名】シム、チュ ヨン
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
【Fターム(参考)】
4K023AA19
4K023BA06
4K023CB11
4K023CB28
4K023DA02
4K024AA09
4K024AB01
4K024BA09
4K024BB11
4K024CA02
4K024CA03
4K024CA04
4K024DA04
4K024DA09
4K024DA10
4K024DB06
4K024FA08
4K024GA01
4K024GA02
4K024GA12
(57)【要約】
回路パターンを形成するためのめっきプロセスを制御するレベリング剤が提供される。前記レベリング剤は、回路パターンが様々なライン幅を有していても回路パターンが均一な高さ及び矩形(square)形状を有することを可能とする。前記レベリング剤を含む電気めっき組成物も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表されるか、あるいは式2~式5で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を含む、レベリング剤:
【化1】
式中、X
1及びY
1はそれぞれ独立に、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、A
1は単結合であるか、又は酸素(O)、硫黄(S)、カルボニル(C=O)、NR
1、C1~C10アルキレン基、C6~C20アリーレン基、及びC2~C20ヘテロアリーレン基からなる群から選択され、R
1は、水素(H)、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、そして、n及びmはそれぞれ独立に0~10の整数であり、ただしn及びmのうちの少なくとも一方は1以上(1 or more)であり、
【化2】
式中、A
2~A
5はそれぞれ独立に単結合であるか又は酸素(O)、硫黄(S)、NR
2、カルボニル(C=O)、C1~C10アルキレン基、C6~C20アリーレン基、及びC2~C20ヘテロアリーレン基からなる群から選択され、R
2は、水素(H)、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、L
1及びL
2はそれぞれ独立にC1~C10アルキレン基、C6~C20アリーレン基、及びC2~C20ヘテロアリーレン基からなる群から選択され、各R
3は独立に、水素(H)、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、n及びmはそれぞれ独立に0~10の整数であり、ただしn及びmのうちの少なくとも一方は1以上(1 or more)であり、そして、各zは独立に1~10の整数であり、ただし、X
1及びY
1のそれぞれとしての前記アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基、A
1としての前記アルキレン基、アリーレン基、又はヘテロアリーレン基、A
2~A
5のそれぞれとしての前記アルキレン基、アリーレン基、又はヘテロアリーレン基、前記L
1及びL
2のそれぞれとしての前記アルキレン基、アリーレン基、又はヘテロアリーレン基、並びにR
1~R
3のそれぞれとしての前記アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基は、それぞれ独立に、ハロゲン基、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意に(optionally)置換されている。
【請求項2】
式1におけるA
1はイミダゾール基、ベンゾイミダゾール基、及びピリジン基からなる群から選択される、請求項1に記載のレベリング剤。
【請求項3】
式2におけるA
2はS-1又はS-2で表される、請求項1に記載のレベリング剤:
【化3】
式中、A
2’はC6~C20アリーレン基及びC2~C20ヘテロアリーレン基からなる群から選択され、L
3及びL
4はそれぞれ独立にC1~C10アルキレン基である。
【請求項4】
式3中のA
3はNR
2であり、ここでR
2はC2~C20ヘテロアリール基である、請求項1に記載のレベリング剤。
【請求項5】
式4中のA
4はNR
2であり、ここでR
2はC2~C20ヘテロアリール基であり、式4中のL
1及びL
2はそれぞれ独立にC1~C10アルキレン基である、請求項1に記載のレベリング剤。
【請求項6】
式5中のA
5はカルボニル(C=O)であり、式5中のL
1及びL
2はそれぞれ独立にC1~C10アルキレン基である、請求項1に記載のレベリング剤。
【請求項7】
金属イオン源及び請求項1~6のうちのいずれか1項に記載のレベリング剤を含む、電気めっき組成物。
【請求項8】
強酸、ハロゲンイオン源、光沢剤(brightener)、及びキャリアからなる群から選択される少なくとも1種の成分をさらに含む、請求項7に記載の電気めっき組成物。
【請求項9】
回路パターンを形成するためのSAPプロセス又はMSAPプロセスにおいて用いられる、請求項7に記載の電気めっき組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セミアディティブプロセス(SAP)又はモディファイドセミアディティブプロセス(MSAP)といったパターン形成プロセスによって形成された回路パターンの丸み率(flat ratio)(つまり、回路パターンの高さ偏差比)を低下させ、また前記回路パターンのめっき厚さの差を最小化するのに用いることができるレベリング剤、並びに該レベリング剤を含む電気めっき組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子製品の小型化及び集積化に向かう流れと共に、プリント回路板も小型化及び集積化してきた。プリント回路板上の回路パターンを形成するための種々のプロセスが知られており、例えば、サブトラクティブプロセス、セミアディティブプロセス(SAP)、及びモディファイドセミアディティブプロセス(MSAP)がある。
【0003】
サブトラクティブプロセスによれば、銅クラッドラミネート(CCL)中の既にある銅箔上へのパネルめっきのために電解銅が用いられ、その結果、銅箔の総厚が増加する。微細回路パターンを形成するための、厚い銅箔のエッチングはエッチング因子のために制限される。
【0004】
したがって、SAPプロセス又はMSAPプロセスが、現在、微細回路パターンを形成するために用いられている。SAPプロセス又はMSAPプロセスによれば、無電解めっきによってシード層が形成され、フォトレジスト(PR)回路パターンがその上に形成され、続いて電気めっきが行われて回路パターンを形成する。
【0005】
上記プロセスによって形成される回路パターンは、
図3に示されるように、W
1、W
2、及びW
3という様々なライン幅を有しうる。狭い幅W
1を有するラインは、電流密度の強度によって大きく影響を受けること無しに所望の高さを有するようにめっきされる。対照的に、幅W
2を有するライン及びW
3を有するラインは、電流密度の強度における差のために、所望の高さにめっきされず、その結果、回路パターン中のラインの高さは一定ではなく、回路パターンの高さ偏差を生じる。回路パターンの高さ偏差が増加すると、回路パターンの均一性は損なわれる。これは、プリント回路板の性能及び信頼性を損なう因子として働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第2012-0095888号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、回路パターンを形成するためのめっきの際における回路パターンの高さ偏差を制御することができるレベリング剤を提供することを意図する。
本発明は、前記レベリング剤を含む電気めっき組成物を提供することも意図する。
【0008】
本発明の1つの態様は、式1で表されるか、あるいは式2~式5で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を含む、レベリング剤を提供する。
【化1】
式中、X
1及びY
1はそれぞれ独立に、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、A
1は単結合であるか、又は酸素(O)、硫黄(S)、カルボニル(C=O)、NR
1、C1~C10アルキレン基、C6~C20アリーレン基、及びC2~C20ヘテロアリーレン基からなる群から選択され、R
1は、水素(H)、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、そして、n及びmはそれぞれ独立に0~10の整数であり、ただしn及びmのうちの少なくとも一方は1以上(1 or more)である。
【化2】
式中、A
2~A
5はそれぞれ独立に単結合であるか又は酸素(O)、硫黄(S)、NR
2、カルボニル(C=O)、C1~C10アルキレン基、C6~C20アリーレン基、及びC2~C20ヘテロアリーレン基からなる群から選択され、R
2は、水素(H)、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、L
1及びL
2はそれぞれ独立にC1~C10アルキレン基、C6~C20アリーレン基、及びC2~C20ヘテロアリーレン基からなる群から選択され、各R
3は独立に、水素(H)、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、n及びmはそれぞれ独立に0~10の整数であり、ただしn及びmのうちの少なくとも一方は1以上(1 or more)であり、そして、各zは独立に1~10の整数であり、ただし、X
1及びY
1のそれぞれとしての前記アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基、A
1としての前記アルキレン基、アリーレン基、又はヘテロアリーレン基、A
2~A
5のそれぞれとしての前記アルキレン基、アリーレン基、又はヘテロアリーレン基、前記L
1及びL
2のそれぞれとしての前記アルキレン基、アリーレン基、又はヘテロアリーレン基、並びにR
1~R
3のそれぞれとしての前記アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基は、それぞれ独立に、ハロゲン基、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意に(optionally)置換されている。
【0009】
式1中のA
1は、イミダゾール基、ベンゾイミダゾール基、及びピリジン基からなる群から選択されてもよい。
式2中のA
2は、S-1又はS-2によって表されてもよい。
【化3】
式中、A
2’はC6~C20アリーレン基及びC2~C20ヘテロアリーレン基からなる群から選択され、L
3及びL
4はそれぞれ独立にC1~C10アルキレン基である。
【0010】
式3中のA3はNR2であってもよく、ここでR2はC2~C20ヘテロアリール基であってもよい。
式4中のA4はNR2であってもよく、ここでR2はC2~C20ヘテロアリール基であってもよく、式4中のL1及びL2はそれぞれ独立にC1~C10アルキレン基であってもよい。
式5中のA5はカルボニル(C=O)であってもよく、式5中のL1及びL2はそれぞれ独立にC1~C10アルキレン基であってもよい。
【0011】
本発明のある別の態様は、金属イオン源及び前記レベリング剤を含む電気めっき組成物を提供する。
前記アルキル基は、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基を包含することが意図されている。前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基が挙げられるがこれらに限定されない。
前記アリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセン基、及びフェナントレン基であってもよいが、これらに限定されない。
前記ヘテロアリール基は、N、O、S,又はF等、少なくとも1つのヘテロ原子が間に入った(interrupted)一価芳香族環状基であってもよい。
【0012】
前記アルキレン基は、直鎖アルキレン基及び分岐アルキレン基を包含することが意図されている。前記アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、及びペンチレン基が挙げられるがこれらに限定されない。
前記アリーレン基は、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、及びビフェニレン基であってもよいがこれらに限定されない。
前記へテロアリーレン基は、N、O、S,又はF等、少なくとも1つのヘテロ原子が間に入った(interrupted)二価芳香族環状基であってもよい。
前記ハロゲン原子は、例えば、フルオロ基、ブロモ基、クロロ基、及びヨード基であってもよい。
本発明のレベリング剤は、分子構造内にアルキル構造及び窒素原子が存在するために、標的基板上への金属イオンの吸着の程度を均一に制御することができる。したがって、回路パターンのライン幅によって異なる電流密度がかかった場合でも、本発明に係るレベリング剤を含む電気めっき組成物を用いて形成された回路パターン中に金属イオンは均一に吸着でき、その結果、該回路パターンは最小の高さ偏差(一定の高さ)を有する。結論として、前記電気めっき組成物を使用すれば、向上した性能及び信頼性を有するプリント回路板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のこれら及び/又はその他の態様及び利点は、付属の図面と併せた、実施形態についての以下の説明から明らか且つより容易に理解されるものとなろう。ここで、
図1及び
図2は、実験例1を説明する画像である。
【
図3】
図3は先行技術を説明するための参照図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる用語及び単語は、一般的かつ辞書的な意味を有すると解釈すべきではなく、発明者は自らの発明を最良の方法で記載するために用語及び単語の概念を適切に定義できるという原則に照らし合わせて、本発明の技術精神に対応する意味及び概念を有するものと解釈されるべきであることを理解されたい。
【0015】
本発明は、回路パターンを形成するためのめっき処理の間の金属イオンの吸着の程度を制御可能であって、回路パターンが様々なライン幅を有していても回路パターンが均一な(一定の)高さ及び矩形(square)形状を有することを可能とする、レベリング剤、並びに該レベリング剤を含む電気めっき組成物を対象とする。
【0016】
以降で本発明を詳細に説明する。
具体的には、本発明は、式1で表されるか、あるいは式2~式5で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を含む、レベリング剤を提供する。
【化4】
式中、X
1及びY
1はそれぞれ独立に、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、A
1は単結合であるか、又は酸素(O)、硫黄(S)、カルボニル(C=O)、NR
1、C1~C10アルキレン基、C6~C20アリーレン基、及びC2~C20ヘテロアリーレン基からなる群から選択され、R
1は、水素(H)、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、そして、n及びmはそれぞれ独立に0~10の整数であり、ただしn及びmのうちの少なくとも一方は1以上(1 or more)である。
【化5】
式中、A
2~A
5はそれぞれ独立に単結合であるか又は酸素(O)、硫黄(S)、NR
2、カルボニル(C=O)、C1~C10アルキレン基、C6~C20アリーレン基、及びC2~C20ヘテロアリーレン基からなる群から選択され、R
2は、水素(H)、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、L
1及びL
2はそれぞれ独立にC1~C10アルキレン基、C6~C20アリーレン基、及びC2~C20ヘテロアリーレン基からなる群から選択され、各R
3は独立に、水素(H)、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、n及びmはそれぞれ独立に0~10の整数であり、ただしn及びmのうちの少なくとも一方は1以上(1 or more)であり、そして、各zは独立に1~10の整数であり、ただし、X
1及びY
1のそれぞれとしての前記アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基、A
1としての前記アルキレン基、アリーレン基、又はヘテロアリーレン基、A
2~A
5のそれぞれとしての前記アルキレン基、アリーレン基、又はヘテロアリーレン基、前記L
1及びL
2のそれぞれとしての前記アルキレン基、アリーレン基、又はヘテロアリーレン基、並びにR
1~R
3のそれぞれとしての前記アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基は、それぞれ独立に、ハロゲン基、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意に(optionally)置換されている。
【0017】
具体的には、式1中のA
1は、イミダゾール基、ベンゾイミダゾール基、及びピリジン基からなる群から選択されてもよい。
式2中のA
2は、S-1又はS-2によって表されてもよい。
【化6】
式中、A
2’はC6~C20アリーレン基及びC2~C20ヘテロアリーレン基からなる群から選択され、L
3及びL
4はそれぞれ独立にC1~C10アルキレン基である。具体的には、A
2’はフェニレン基であってもよく、L
3及びL
4はそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であってもよい。
S-1又はS-2で表される構造中、アステリスク(*)は結合位置を表すが、ここでは省略する。
【0018】
式3中のA3はNR2であってもよく、ここでR2はC2~C20ヘテロアリール基であってもよい。具体的には、R2はピリジン基であってもよい。
式4中のA4はNR2であってもよく、ここでR2はC2~C20ヘテロアリール基であってもよい。具体的には、R2はピリジン基であってもよい。式4中のL1及びL2はそれぞれ独立にC1~C10アルキレン基であってもよい。具体的には、L1及びL2はそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であってもよい。
式5中のA5はカルボニル(C=O)であってもよく、式5中のL1及びL2はそれぞれ独立にC1~C10アルキレン基であってもよい。具体的には、L1及びL2はそれぞれ独立にエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はペンチレン基であってもよい。
【0019】
水素原子(H)が式2~5で表される構造単位それぞれの両末端に結合していてもよい。
ある具体的な実施形態では、本発明のレベリング剤は、C-1~C-6で表される構造単位から選択される少なくとも1つの構造単位を含む化合物であってもよいが、これに限定されない。
【0020】
【化7】
式中、各zは独立に1~10の整数である。
【0021】
本発明のレベリング剤を合成する方法に特に制限は無い。本発明のレベリング剤は、溶媒の存在下でアルキル化剤をアミン化合物と反応させることによって高い効率で合成することができる。具体的には、本発明のレベリング剤は、溶媒中にアルキル化剤を溶解させ、アミン化合物を当該溶液に添加し、反応を進ませることによって合成することができる。ここで、アルキル化剤とは、アミン化合物との間での置換反応によりアミン化合物の分子にアルキル基又はアルキレン基を付加する化合物として定義することができる。
【0022】
前記アルキル化剤はとくに限定されず、1,2-ビス(2-クロロエトキシ)エタン、ジクロロ-m-キシレン、1,3-ジクロロ-2-プロパノール、1,4-ブタンジオール、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0023】
前記アミン化合物は特に限定されず、ベンゾイミダゾール、アミノピリジン、2,6-ジアミノピリジン、尿素、チオウレア、アニリン、1,3-ジフェニル尿素、及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0024】
溶媒中への前記アルキル化剤の溶解温度には特に制限は無い。前記溶解温度は45℃~110℃であってもよく、特には50℃~100℃であってもよい。
前記アルキル化剤は前記アミン化合物と4:1~3:2の重量比で反応してもよい。とはいえ、互いに反応する前記アルキル化剤と前記アミン化合物との間の比率には特に制限は無い。
前記アルキル化剤は前記アミン化合物と9~12時間反応してもよいが、反応時間は特に制限されない。
【0025】
前記アルキル化剤を溶解するのに用いられる溶媒は特に制限されず、当技術分野で一般に知られた溶媒のいずれであってもよい。前記溶媒は、例えば前記アルキル化剤の溶解度及び前記レベリング剤の合成効率を考慮して、水性溶媒(例えば、水、精製水、及び脱イオン水)、アルコール性溶媒(例えば、エタノール及びメタノール)、グリコール系溶媒(例えば、エチレングリコール及びプロピレングリコール)、並びにこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0026】
本発明のレベリング剤は、上記の合成方法により得られたモノマーであっても、該モノマーの重合によって得られたポリマーであってもよい。
【0027】
本発明は、前記レベリング剤を含む電気めっき組成物をも提供する。具体的には、本発明の電気めっき組成物は、前記レベリング剤及び金属イオン源を含む。
本発明の電気めっき組成物に含まれるレベリング剤は、上記に記載されたとおりのものであり、したがって説明は省略する。前記レベリング剤の濃度(含有量)は特に限定されず、例えば回路パターンの均一性及びめっき効率を考慮して、5~20ml/Lであってもよく、特には8~12ml/Lであってもよい。
【0028】
本発明の電気めっき組成物に含まれる金属イオン源は、該組成物中の金属イオンのための供給源として働き、当技術分野で一般に知られた金属イオン源のいずれであってもよい。具体的には、金属イオン源は銅イオン源であってもよい。前記金属イオン源の濃度(含有量)は特に限定されず、例えば回路パターンの均一性及び密度を考慮して50~250g/Lであってもよく、特には100~150g/Lであってもよい。
【0029】
本発明の電気めっき組成物は、強酸、ハロゲンイオン源、光沢剤(brightener)、及びキャリアからなる群から選択される少なくとも1種の成分をさらに含んでいてもよく、これらは、電気めっき組成物の物性を向上するのに用いることができる。
【0030】
本発明の電気めっき組成物は、電解質及びpH調整剤として機能する強酸を含んでいてもよい。この強酸は、当技術分野で一般に知られた強酸のいずれであってもよい。具体的には、前記強酸は、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スルホン酸、臭化水素酸、ホウフッ化水素酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。前記強酸の濃度(含有量)は特に限定されず、例えば電気めっき組成物のpHを考慮して、50~250g/Lであってもよく、特には100~150g/Lであってもよい。
【0031】
本発明の電気めっき組成物は、組成物中のハロゲンイオンのための供給源として働くハロゲンイオン源をさらに含んでいてもよい。前記ハロゲンイオン源は、当技術分野で一般に知られたハロゲンイオン源のいずれであってもよく、特には塩素イオン源であってもよい。ハロゲンイオン源の濃度(含有量)は特に限定されず、例えば回路パターンの均一性及び密度を考慮して30~60mg/Lであってもよく、特には40~50mg/Lであってもよい。
【0032】
本発明の電気めっき組成物は、迅速なめっきのために金属イオンの還元速度を増加させる光沢剤(brightener)をさらに含んでいてもよい。光沢剤は、当技術分野で一般に知られた光沢剤のいずれであってもよい。具体的には、光沢剤は、ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド(ナトリウム塩)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸(ナトリウム塩)、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸、O-エチル-S-(3-スルホプロピル)ジチオカーボナート(ナトリウム塩)、3-(2-ベンゾチアゾリル-1-チオ)-1-プロパンスルホン酸(ナトリウム塩)、N,N-ジメチルジチオカルバミン酸-(3-スルホプロピル)エステル(ナトリウム塩)、及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。光沢剤の濃度(含有量)は特に限定されず、例えば組成物のめっき速度を考慮して、0.5~5ml/Lであってもよく、特には1~3.5ml/Lであってもよい。
【0033】
本発明のめっき組成物は、回路パターンの表面平坦性を増加させるのに働くキャリアをさらに含んでいてもよい。キャリアは、当技術分野で一般に知られたキャリアのいずれであってもよい。キャリアの濃度(含有量)は特に限定されず、例えば回路パターンの均一性及びめっき効率を考慮して、5~15ml/Lであってもよく、特には8~12ml/Lであってもよい。
【0034】
本発明の電気めっき組成物は、回路パターンを形成するための様々なプロセスにおいて用いることができる。具体的には、本発明の電気めっき組成物は、回路パターンを形成するためのSAPプロセス又はMSAPプロセスにおいて用いることができる。とはいえ、本発明の電気めっき組成物は、均一な厚さを有するめっき膜を形成するためのめっきプロセス、及び回路パターンを形成するためのめっきプロセスにおいても用いることができる。
【0035】
[実施例1]
1,2-ビス(2-クロロエトキシ)エタン(A)を約90~100℃の温度のエチレングリコールに添加し、完全に溶解した。次に、ベンゾイミダゾール(B)を1,2-ビス(2-クロロエトキシ)エタンに対して4:1(A:B)の重量比で添加した。約9~12時間反応を進ませて、レベリング剤を合成した。
【0036】
[実施例2]
1,2-ビス(2-クロロエトキシ)エタン及びベンゾイミダゾールの代わりにジクロロ-m-キシレン及びアミノピリジンをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にしてレベリング剤を合成した。
【0037】
[実施例3]
1,2-ビス(2-クロロエトキシ)エタン及びベンゾイミダゾールの代わりに1,3-ジクロロ-2-プロパノール及び2,6-ジアミノピリジンをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にしてレベリング剤を合成した。
【0038】
[実施例4]
1,3-ジクロロ-2-プロパノール(A)を水に添加し、約100℃で還流して完全に溶解させた。次に、2,6-ジアミノピリジン(B)を1,3-ジクロロ-2-プロパノールに対して4:1(A:B)の重量比で添加した。反応を約9~12時間進行させ、レベリング剤を合成した。
【0039】
[実施例5]
1,3-ジクロロ-2-プロパノール及び2,6-ジアミノピリジンの代わりに1,4-ブタンジオール及び尿素をそれぞれ用いた以外は、実施例4と同様にしてレベリング剤を合成した。
【0040】
[実施例6]
1,3-ジクロロ-2-プロパノール及び2,6-ジアミノピリジンの代わりにポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(分子量:380g/モル)及びチオウレアをそれぞれ用いた以外は、実施例4と同様にしてレベリング剤を合成した。
【0041】
[実施例7]
1,3-ジクロロ-2-プロパノール及び2,6-ジアミノピリジンの代わりに1,4-ブタンジオール及びアニリンをそれぞれ用いた以外は、実施例4と同様にしてレベリング剤を合成した。
【0042】
[実施例8]
1,3-ジクロロ-2-プロパノール(A)を約50~70℃の温度のメタノールに添加し、完全に溶解した。次に、アニリン(B)を1,3-ジクロロ-2-プロパノールに対して4:1(A:B)の重量比で添加した。約9~12時間反応を進ませて、レベリング剤を合成した。
【0043】
[実施例9]
1,3-ジクロロ-2-プロパノール及びアニリンの代わりに1,4-ブタンジオール及び1,3-ジフェニル尿素をそれぞれ用いた以外は、実施例8と同様にしてレベリング剤を合成した。
【0044】
[実施例10]
1,3-ジクロロ-2-プロパノール及びアニリンの代わりに1,6-ヘキサンジオール及び1,3-ジフェニル尿素をそれぞれ用いた以外は、実施例8と同様にしてレベリング剤を合成した。
【0045】
[調製例1]
以下の成分を含む電気めっき組成物を調製した:100~150g/Lの硫酸銅5水和物、100~150g/Lの硫酸、40~50mg/Lの塩酸、1~3.5ml/Lのビス(ナトリウムスルホプロピル)ジスルフィド、10ml/Lのキャリア、及び10ml/Lの実施例1で合成したレベリング剤
【0046】
[調製例2]
実施例1のレベリング剤の代わりに実施例2のレベリング剤を用いた以外は調製例1と同様にして電気めっき組成物を調製した。
【0047】
[比較調製例1]
実施例1のレベリング剤の代わりに1,1’-ジベンジル-4,4’-ビピリジニウムジクロリド水和物を用いた以外は調製例1と同様にして電気めっき組成物を調製した。
【0048】
[比較調製例2]
実施例1のレベリング剤の代わりに色素レベリング剤としてのエバンスブルーを用いた以外は調製例1と同様にして電気めっき組成物を調製した。
【0049】
[比較調製例3]
実施例1のレベリング剤の代わりに2-メルカプトピリジンを用いた以外は調製例1と同様にして電気めっき組成物を調製した。
【0050】
[比較調製例4]
実施例1のレベリング剤の代わりにKDY2(Dicolloy(登録商標))を用いた以外は調製例1と同様にして電気めっき組成物を調製した。
【0051】
[実験例1]
無電解銅シード層を基板上に形成し、続いて硬化/露光/現像/エッチングという一連のプロセスを経てフォトレジスト回路パターンを形成した。それから、このフォトレジスト回路パターンを、調製例1~2及び比較調製例1~4で調製した電気めっき組成物のそれぞれでめっきした。その後、フォトレジストを除去して、銅回路パターンを形成した。電気めっき条件は以下のとおりであった。
・電気めっき組成物の温度:21~24℃
・撹拌:0.5~1.5LPM/con.
・印加電流:1~5ASD
・電極:不溶性電極
銅回路パターンの断面を光学顕微鏡で観察した。結果を
図1及び
図2に示す。
【0052】
図1は、どちらも本発明に係るレベリング剤を含む調製例1及び2の電気めっき組成物を用いて形成された回路パターンを示す。
図1に示すように、回路パターンの厚さは、そのライン幅が狭いか広いかにかかわらず、一定であった。
図2は、本発明に係るレベリング剤を含まない比較調製例1~4の電気めっき組成物を用いて形成された回路パターンを示す。幅が広いラインにおいて、中央部はエッジ部に比べて高さが小さかった。
【0053】
[実験例2]
実験例1で形成した銅回路パターンの厚さ偏差、狭い幅を有するラインにおける回路パターンの平坦性、及び広い幅を有するラインにおける回路パターンの平坦性を以下の式に従って計算した。
厚さ偏差(μm)=A-B (1)
狭い幅を有するラインにおける回路パターンの平坦性(%)
=(A-B)/A×100 (2)
広い幅を有するラインにおける回路パターンの平坦性(%)
=(C-D)/C×100 (3)
ここで、
A:狭い幅を有するラインの中央部における高さ
B:狭い幅を有するラインのエッジ部における高さ
C:広い幅を有するラインの中央部の高さ
D:広い幅を有するラインのエッジ部の高さ
結果を表1に示す。
【0054】
【0055】
表1の結果から分かるように、どちらも本発明に係るレベリング剤を含む調製例1及び2の電気めっき組成物を用いて形成された回路パターンの厚さ偏差はより小さなものであり、回路パターンの平坦性はずっと低いものであった。これらの結果は、本発明に係るレベリング剤の使用は、一定の厚さを有する均一な回路パターンの形成を可能にすることを支持するものである。
【国際調査報告】