(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】セルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする長繊維、その製造方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
D01F 2/00 20060101AFI20230823BHJP
D01F 9/16 20060101ALI20230823BHJP
D02G 3/48 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
D01F2/00 Z
D01F9/16
D02G3/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569239
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2021063669
(87)【国際公開番号】W WO2021234152
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】102020113807.5
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522442696
【氏名又は名称】テクニクム ラウブホルツ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】クラウス,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマヌッツ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ファウト,ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ヴォクト,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ブッフマイザー,マイケル
【テーマコード(参考)】
4L035
4L036
4L037
【Fターム(参考)】
4L035AA02
4L035BB03
4L035BB15
4L035EE01
4L035EE14
4L036MA04
4L036MA33
4L036PA17
4L036PA26
4L037CS02
4L037CS03
4L037FA01
4L037PC02
4L037PC05
4L037PC09
4L037PS02
4L037PS04
4L037UA06
4L037UA09
4L037UA20
(57)【要約】
本発明は、特に難燃性布又は炭素繊維を製造するためのセルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする長繊維に関する。これらのセルロース及び/又はセルロース誘導体は、長繊維中に脱水形態で存在する。酸素含有量は29~39重量%であり、限界酸素指数LOIは25~40であり(DIN EN ISO 6941;2004-05に準拠)、密度は1.3~1.45g/cm3である(DIN 65569-1;1992-10に準拠)。特に熱的条件下で脱水性酸を放出し、それによって後の熱的段階中にセルロース及び/又はセルロース誘導体の脱水が行われる特殊な塩の水溶液を出発繊維に含浸させる点において、これらの長繊維を有利に製造することができる。特に、有利な炭素繊維は、本発明による長繊維を用いて製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に難燃性布又は炭素繊維を製造するための、セルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする長繊維であって、前記セルロース及び/又は前記セルロース誘導体が脱水形態で存在し、
酸素含有量が29~39重量%であり、
限界酸素指数LOIが25~40であり(DIN EN ISO 6941;2004-05に準拠)、
密度が1.3~1.45g/cm
3である(DIN 65569-1;1992-10に準拠)
ことを特徴とする長繊維。
【請求項2】
前記セルロース及び/又は前記セルロース誘導体の脱水度が、少なくとも1.0、好ましくは少なくとも1.5、及び特に好ましくは少なくとも2.0であることを特徴とする請求項1に記載の長繊維。
【請求項3】
前記脱水度が少なくとも2.5、特に3であることを特徴とする請求項2に記載の長繊維。
【請求項4】
前記酸素含有量が29~32重量%であり、前記限界酸素指数LOIが28~37であり、及び/又は前記密度が1.35~1.45であることを特徴とする請求項1又は2に記載の長繊維。
【請求項5】
5~30cN/tex、特に8~16cN/texの繊維強度(DIN EN ISO 5079;1996-02に準拠)、12~25%、特に10~16%の破断時伸び(DIN EN ISO 5079;1996-02に準拠)、及び/又は0.5~18dtex、特に1~8dtexの線密度(DIN EN ISO 1973;1995-12に準拠)を有することを特徴とする請求項1に記載の長繊維。
【請求項6】
脱水セルロースを含む前記長繊維が、再生セルロース繊維、特にビスコース繊維若しくはエアギャップ紡糸法によって製造される再生セルロース繊維、及びタイヤコードヤーンからも得られ、脱水セルロース誘導体を含む前記長繊維が、セルロースのエステル又はエーテル、特に酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、及び/又はそれらの混合エステルの長繊維から得られることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の長繊維。
【請求項7】
特に難燃性布及び炭素繊維の製造の使用するためのセルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする長繊維の製造方法、特に請求項1~6のいずれか一項に記載の長繊維の製造方法であって、
(1)セルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする長繊維を、引き続く熱的条件下でセルロース及び/又はセルロース誘導体を脱水するための脱水性酸を放出する塩、特にスルホン酸のアンモニウム塩の形態の塩の溶液、特に水溶液に接触させ、
(2)このように供給された前記長繊維を180℃~300℃、特に180℃~240℃の温度に加熱し、この温度を少なくとも5分間、特に少なくとも10分間、特に好ましくは少なくとも20分間維持し、前記それぞれの加熱中及び前記加熱ステップの間に、前記供給された長繊維を、不活性ガス雰囲気中、特に窒素雰囲気中、5mbar~500mbar、特に50mbar~200mbarの減圧下に置き、これによって、形成された前記脱水性酸によって、前記セルロース及び/又はセルロース誘導体の前記脱水が行われることを特徴とする方法。
【請求項8】
段階(2)において、段階(1)により供給された前記長繊維を第1の温度、特に180~240℃に加熱し、この温度を少なくとも5分間維持し、続いて、前記供給された長繊維を、第1の温度よりも高い、特に240~300℃の少なくとも1つの第2の温度に加熱し、前記第1の温度及び前記第2の温度を少なくとも5分間維持し、前記供給された長繊維を、前記それぞれの加熱中及び前記加熱ステップの間に、不活性ガス雰囲気中、特に窒素雰囲気中、5mbar~500mbar、特に50mbar~200mbarの減圧下に置き、これによって、形成された前記脱水性酸によって、前記セルロース及び/又は前記セルロース誘導体が脱水されることを特徴とする請求項7に記載のセルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする長繊維の製造方法。
【請求項9】
段階(1)及び(2)の間に、特に60℃~140℃の温度の加熱ゴデット上の接触熱によって、又は特に60℃~140℃の間の熱風トンネル中で加熱が行われ、段階(2)に供給される前記長繊維の含水率が約1~4重量%に調整されることを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記スルホン酸塩が式(I)
【化1】
を有し、ここで、R
1は炭化水素基であり、K
+は、式(II)
【化2】
のカチオンであり、R
2~R
5は互いに独立して、H原子、又は1~20個のC原子を有する有機基であり、前記カチオンは置換又は非置換のアンモニウムイオンを表すことを特徴とする請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記供給された長繊維が、前記供給された長繊維の乾燥重量を基準として0.1~5重量%、特に0.3~2重量%の硫黄を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
水中の前記式(I)の前記スルホン酸塩が、少なくとも10重量部~100重量部の水の溶解度(20℃及び1barの標準条件下)を有し、特にアンモニウムトシレートを表すことを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
段階(2)における前記供給された長繊維が、前記第1の温度から少なくとも1つのさらなる温度、次に前記第2の温度まで段階的に加熱され、時間的に連続する加熱ステップ間の温度差が少なくとも5℃、特に少なくとも10℃であり、前記供給された長繊維が、前記少なくとも1つ温度で少なくとも3分間維持されることを特徴とする請求項7~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
段階(2)における前記第2の温度が、前記第1の温度よりも少なくとも30℃、特に少なくとも40℃高くなるように設定されることを特徴とする請求項7~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
段階(2)における前記供給された長繊維が、前記第1の温度、前記第2の温度、及び少なくとも1つの任意選択の中間温度において少なくとも10分間、特に少なくとも20分間維持されることを特徴とする請求項7~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
耐火性職業用衣服、耐火性レジャー用衣服における使用のため、特に自動車分野、及び濾過又は断熱における技術的利用のための耐火性布材料として、並びに建設分野における耐火性布材料としての難燃性布を製造するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の長繊維の使用。
【請求項17】
炭化、場合により引き続く黒鉛化によって炭素繊維を製造するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の長繊維の使用。
【請求項18】
炭素繊維、特に請求項1~6のいずれか一項に記載の長繊維から製造される炭素繊維であって、
1.55~1.75g/cm
3、特に1.6~1.7[g/cm
3]の密度(DIN 65569-1;1992-10に準拠)、
2.0~5GPa、特に2.5~4の繊維強度(DIN EN ISO 5079;1996-02に準拠)、及び2~5%、特に2.5~3.5%の破断時伸び(DIN EN ISO 5079;1996-02に準拠)
を特徴とする炭素繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、特に難燃性布又は炭素繊維を製造するためのセルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする長繊維、それらの製造方法、及びそれらの有利な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアクリロニトリル/アクリルアミジンコポリマーの形態の変性ポリアクリロニトリルを含み、場合によっては難燃性布の製造にも利用される炭素繊維の前駆体繊維である、ポリマーをベースとする長繊維は多数存在する。現在まで周知のほとんどの方法では、押出成形された炭素繊維の前駆体繊維は、不融状態に変換する必要がある。これは、費用がかかり複雑な作業ステップである酸化的熱安定化を必要とする。このステップは、酸素下又は保護ガス雰囲気下で行われ;関与する雰囲気は、種々の酸素含有量を有するガス混合物を含むことができる。酸化的熱安定化に用いられるガス圧力は例えば0.5~1barである。熱安定化は、180~300℃の間の最終温度に基づいている。この最終温度は、直線的又は段階的に温度をゆっくり上昇させることによって設定される。
【0003】
これは、一般に、前述の周知の前駆体繊維のための手順である。しかし、セルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする繊維が炭素繊維の製造に使用される場合、考慮すべき重要な問題が存在し:セルロース材料の従来の酸化的熱安定化における事象の1つは、250℃で開始する水の脱離であり、これによって望ましくない二次反応が誘発され、これによって品質が低下し、炭化中の液体炭素含有熱分解生成物のために炭素収率が低下する。用いられる対応策は、特に遅い方法又はさらなる化学反応であり、これによって、上記方法は非経済的になり、環境に有害となる。さらに、さらなる問題が前述のセルロースの安定化において生じ、セルロース誘導体にも影響が生じる。このようなものとしては、これらの安定化繊維における過剰なタール含有量が上げられる。問題となる製品は、熱安定化が、最適な管理で工業的に実施できる場合にのみ競争力が得られる。さらに、従来の安定化セルロース繊維は、難燃性布としてのそれらの使用に関しては、LOI(限界酸素指数)(燃焼挙動を表すために用いられ、それぞれの試験条件下で燃焼が持続する酸素-窒素混合物の最小酸素濃度を示すパラメーターである)が低すぎ、強度が不十分であり、そのため実現される炭化収率が不十分であることが知られている。さらに、得られる安定化セルロース繊維は、最適な元素組成を有さず、初期の熱分解によって欠陥が示されるので、特に、良好な使用特性難燃性布又は炭素繊維の製造が不可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明によって対処される目的は、有利な難燃性布及び改善された品質の炭素繊維の製造に特に使用できるセルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする長繊維を提案することであった。ここでの目的は、酸素含有量、LOI、及び密度を最適化することである。これによる目的は、有害な酸化的熱安定化を行うことなく、特に、望ましい密度、繊維強度、及び破断時伸びが顕著な有利な炭素繊維を開発することである。
【0005】
本発明が、長繊維を製造できる有利な方法を提案することも意図される。この目的は、油をベースとするポリアクリロニトリルに基づく従来の炭素繊維に劣らない品質を有する競争力のあるセルロースをベースとする炭素繊維を製造することである。本発明の方法によると、さらに、CO2バランス及びエネルギーコストが、改善/低下され、持続可能性が高められるべきである。さらに、製造において、シアン化水素酸及び窒素酸化物などの毒性排ガスは生成されるべきではない。目的は、さらに、改善された難燃性の実現である。空気下又は大気下で行われる別の可能性のある操作は、進行が遅くなりすぎ、添加剤が必要であり、例えばセルロース繊維に必要な品質が得られない。本発明によって対処される特定の問題の1つは、長繊維中の酸素含有量が高すぎると、酸化の結果得られる長繊維が脆く多孔質となり、その結果例えば難燃性布への標準的な加工による加工に使用できなくなり、これらの長繊維から高品質の炭素繊維を製造できなくなるという欠点を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が基礎とする上記目的は、特に難燃性布又は炭素繊維を製造するための、セルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする長繊維によって実現され、これらは、セルロース及び/又はセルロース誘導体が脱水形態で存在し、酸素含有量が29~39重量%であり、限界酸素指数LOIが25~40(DIN EN ISO 6941;2004-05に準拠)であり、密度が1.3~1.45g/cm3(DIN 65569-1;1992-10に準拠)であることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の長繊維中に存在する脱水セルロース又は脱水セルロース誘導体の脱水度は、明らかに顕著な部分となる。この状況では、脱水度は好ましくは少なくとも1.0、好ましくは少なくとも1.5、及び特に好ましくは少なくとも2.0の脱水度である。本発明の長繊維は、脱水度が少なくとも2.5、特に3.0の場合に特に有利となる。上記脱水度に関連する特有の利点は、使用特性を維持しながら繊維の熱安定化が実現されることである。
【0008】
上記の本発明は、酸素含有量が29~32重量%であり、限界酸素指数LOIが28~37であり、及び/又は密度が1.35~1.45である場合に特に有利な方法で開発される。
【0009】
本発明は、以下のさらなる有利な性質によって特徴づけられる:8~30cN/tex、特に10~16cN/texの繊維強度(DIN EN ISO 5079;1996-02に準拠)、12~25%、特に10~16%の破断時伸び(DIN EN ISO 5079;1996-02に準拠)、及び/又は0.5~18dtex、特に1~8dtexの線密度(DIN EN ISO 1973;1995-12に準拠)。
【0010】
本発明の実現における出発物質は、セルロース及び/又はセルロース誘導体であり、本発明によるとこれらは、請求される長繊維中に脱水形態で存在する。最初に、セルロース、特に再生セルロース、及び/又はセルロース誘導体の脱水されていない繊維が、以下に記載の本発明の方法によって有利な長繊維に加工される。
【0011】
出発物質として用いられるセルロース繊維及び/又は再生セルロース繊維に関して、以下のことに留意すべきである:セルロース繊維は、大部分がセルロース、特に80重量%、好ましくは90重量%、特に98重量%を超えるセルロースからなる繊維を含み、これらは全体がセルロースからなることが特に好ましい。問題の繊維は、特に、セルロース系出発物質から現代技術によって製造される繊維であってよく、これらは変性又は合成セルロース繊維と呼ばれる場合もある。顕著で可能性のある例は、ビスコース法によって製造されるビスコース繊維である。この方法では、NMMO(N-メチルモルホリンN-オキシド)を溶媒として含む紡糸液が使用される。特に有利なセルロース繊維は、その紡糸液がイオン液体を溶媒として用いて得られるセルロース繊維である(これに関しては国際公開第2007/076979号を参照されたい)。特に有利な再生セルロース繊維は、エアギャップ紡糸法によって製造されるセルロース繊維である。個々で特に有用なものはタイヤコードヤーンである。
【0012】
本発明のさらなる特に有利な一実施形態は、この場合セルロース誘導体を同様に脱水形態で含む、本発明の長繊維を製造するためのセルロース誘導体の使用である。ここで特に候補となるのは、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、及びそれらの混合エステルである。これは、それぞれの場合で、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、及びそれらのエステルの繊維が、個別の繊維中に使用されてよいが、ヤーン中に混合された形態でも存在できることを意味する。さらなる有利なセルロース誘導体としては、ギ酸セルロース、セルロースカルバメート、及び/又はセルロースアロファネートを挙げることができる。
【0013】
前述の本発明の長繊維は、有利には難燃性布の製造に用いることができる。この状況において、「布」という用語は、広く解釈すべきである。したがって、これは、織物、編物、及び不織布などを含む。布の形態の本発明の長繊維の特定の性質によって、有利な使用機会が得られ、例えば、耐火性職業用衣服、耐火性レジャー用衣服における使用のため、特に自動車分野、及び濾過又は断熱における技術的利用のための耐火性布材料として、並びに建設分野における耐火性布材料としての使用機会が得られる。
【0014】
本発明の長繊維は、炭化、場合により引き続く黒鉛化によって炭素繊維を製造するために同等に有利に使用することができる。この状況において、特に前述の本発明の長繊維から製造される本発明の炭素繊維は、以下の有利な物理量を有することが注目される:1.55~1.75g/cm3、特に1.6~1.7[g/cm3]の密度(DIN 65569-1;1992-10に準拠)、2.0~5GPa、特に2.5~4の繊維強度(DIN EN ISO 5079;1996-02に準拠)、及び2~5%、特に2.5~3.5%の破断時伸び(DIN EN ISO 5079;1996-02に準拠)。
【0015】
したがって、本発明の長繊維は、有利には炭化することができる。これは、好ましくは600℃~2400℃、特に1000℃~2400℃の温度範囲内で保護ガス下の長繊維を加熱することによって行われ、1200℃~1600℃の範囲が好ましい。加熱は、特に好ましくは1600℃以下で行われる。この結果得られる炭素繊維は、場合により黒鉛化され、有用には98重量%を超える炭素含有量を有する。場合による後の黒鉛化は、好ましくは、保護ガス下、特に窒素下で1700~3000℃、特に2000℃~2500℃の熱処理によって行われる。黒鉛化炭素繊維は、単なる従来の炭化繊維よりも高い弾性率を有する。
【0016】
本発明のさらなる主題の1つは、特に難燃性布及び炭素繊維の製造に使用するためのセルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする長繊維の有利な製造方法、特に本発明の長繊維の製造方法であって、(1)セルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする長繊維を、引き続く熱的条件下でセルロース及び/又はセルロース誘導体を脱水するための脱水性酸を放出する塩、特にスルホン酸のアンモニウム塩の形態の塩の溶液、特に水溶液に接触させ、(2)このように供給された長繊維を160℃~300℃、特に180℃~240℃の温度に加熱し、この温度を少なくとも5分間、特に少なくとも10分間、特に好ましくは少なくとも20分間維持し、それぞれの加熱中及び加熱ステップの間に、供給された長繊維を、不活性ガス雰囲気中、特に窒素雰囲気中、5mbar~500mbar、特に50mbar~200mbarの減圧下に置き、これによって、形成された脱水性酸によって、セルロース及び/又はセルロース誘導体が脱水されることを特徴とする方法である。
【0017】
本発明による段階(1)では、次の熱的段階(2)の前に、長繊維に、いわば適切な塩を含浸させ、アンモニアの脱離によって脱水性酸が形成され、生成した状態のこの酸によって、本発明に関連するセルロース及び/又はセルロース誘導体の脱水が行われる。
【0018】
この方法は、有利には段階(2)において、段階(1)における供給された長繊維を第1の温度、特に180~240℃に加熱し、この第1の温度を少なくとも5分間維持し、続いて、供給された長繊維を、第1の温度よりも高い、特に240~300℃の少なくとも1つの第2の温度に加熱し、この第2の温度も少なくとも5分間維持し、供給された長繊維を、それぞれの加熱中及び加熱ステップの間に、不活性ガス雰囲気中、特に窒素雰囲気中、5mbar~500mbar、特に50mbar~200mbarの減圧下に置き、これによって、形成された脱水性酸によって、セルロース及び/又はセルロース誘導体が脱水されるという点で展開される。
【0019】
前述のように対処される上記熱的段階(2)は、有利には以下のように展開することができる:供給された長繊維が、段階(2)において、第1の温度から少なくとも1つのさらなる温度、次に第2の温度まで段階的に加熱され、時間的に連続する加熱ステップ間の温度差が少なくとも5℃、特に少なくとも10℃であり、供給された長繊維が、少なくとも1つ温度で少なくとも3分間維持される場合が好ましい。さらに、第2の温度が、段階(2)において、第1の温度よりも少なくとも30℃、特に少なくとも40℃高くなるように設定される場合が有用である。供給された長繊維が、段階(2)において、第1の温度、第2の温度、及び少なくとも1つの任意選択の中間温度で少なくとも10分間、特に少なくとも20分間維持される場合も有利であると考えられる。
【0020】
本発明の方法計画の段階(1)及び段階(2)の間に、特に、好ましくは60℃~140℃の間、特に80℃~139℃の間の加熱ゴデット上の接触熱によって、又は好ましくは60℃~140℃の間、特に好ましくは80℃~120℃の間の熱風トンネル中で、中間乾燥を行うことが有用である。この中間乾燥は、好ましくは連続的に行われる。ここで長繊維ヤーンは、段階(2)の後に巻き上げられる。この結果得られるスプールは、保管可能及び輸送可能であり、特定の時間において段階(2)に送られ、これは好ましくは連続的に行われる。
【0021】
明らかなように、本発明の方法は、好ましくは、前述の段階(1)及び(2)を含む連続2段階方法である。第1の段階では、セルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする長繊維は、次の段階(2)において記載される熱的条件下で、記載の熱的条件下でセルロース及び/又はセルロース誘導体を脱水するための脱水性酸を放出する塩の溶液、特に水溶液で処理される。対象となる物質は、特にスルホン酸のアンモニウム塩である。ここで原理上は、本発明の条件下で脱水性酸を放出する別の塩を使用することもできる。ここで特定の可能性としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、ホスホン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、及び/又は炭酸水素アンモニウムが挙げられる。
【0022】
以下に記載の熱的条件下でセルロース及び/又はセルロース誘導体を脱水するための脱水性酸を放出する関連の塩は、好ましくはスルホン酸のアンモニウム塩の形態をとる。
【0023】
したがって、本発明により用いられるスルホニウム塩は、式(I)
【化1】
を有することが好ましく、ここで、R
1は炭化水素基であり、K
+は、式(II)
【化2】
のカチオンであり、R
2~R
5は互いに独立して、H原子、又は1~20個のC原子を有する有機基であり、したがって、このカチオンは非置換のアンモニウムイオン(NH
4)
+又は置換アンモニウムである。
【0024】
示されるように、R1が1~20個の炭素原子を有する炭化水素基である場合が好ましく、上記炭化水素基が2~15個の炭素原子、特に2~10個、非常に好ましくは2~5個の炭素原子を含む場合が特に好ましい。別の好ましい一実施形態では、R1は、芳香族基である、又はそのような基を含む。したがって、R1は、場合により、置換アリール基、特に場合により置換されたフェニル基、ビフェニル基、若しくはナフチル基、又はアルカリール基、特に、アルキレン基を介して硫黄原子に結合する場合により置換されたフェニル基、ビフェニル基、若しくはナフチル基であってよい。
【0025】
式(I)のカチオンは、任意の有機又は無機のカチオンではない。その代わりに、これは、前述の有利な構造を有することが好ましい。この構造において、既に確認されるように、R2~R5は、互いに独立して、H原子、及び/又は1~20個のC原子、好ましくは2~15個のC原子、非常に好ましくは5~10個の炭素原子である。を有する有機基である。これは特に1~4個のC原子を有するアルキル基であってもよい。これらの好ましい詳細を含む有利な置換基は、メチル置換基及びエチル置換基である。
【0026】
以下に概要が示される熱処理段階(2)に供給される場合に、供給された長繊維が、それらの乾燥重量を基準として0.1~5重量%、特に0.3~2重量%の硫黄を含むという点において、最初に長繊維中に存在するスルホニウム塩の定量が有利に規定されうる。記載の式(I)のスルホニウム塩は、少なくとも10重量部の水から100重量部の水に対して溶解性である(20℃及び1barの標準条件下)場合に特に有利である。特に有利には、スルホニウム塩はアンモニウムトシレートである。
【0027】
スルホン酸塩が使用される場合、親水性溶媒、特に水又は親水性有機溶媒、例えばアルコール中の溶媒が好ましい。親水性溶媒は、より好ましくは水、又は水と水に対して無制限の混和性の別の親水性有機溶媒との混合物であり;溶媒混合物中の水の場合、この混合物は好ましくは少なくとも50重量%含む。全体的に水をベースとし、溶解した形態の式(I)のスルホン酸塩を含む溶液が特に好ましい。
【0028】
溶液中、特に水溶液中のスルホン酸塩の濃度、及び長繊維と溶液との接触時間は、乾燥長繊維が前述の有利なスルホン酸塩含有量を含むように、有用に選択される。このために、長繊維は、十分な時間の間溶液を通過することができ、及び/又は連続操作において、十分長い溶液浴を通過することができる。
【0029】
好ましい一実施形態では、長繊維は、スルホン酸塩の溶液を連続的に通過する。この溶液のスルホン酸塩含有量は、好ましくは0.05~5mol/lの溶液、特に0.1mol/l~2mol/lの溶液である。長繊維とスルホン酸塩溶液との接触時間は、好ましくは少なくとも0.5秒、特に少なくとも2秒、非常に好ましくは少なくとも10秒である。これは一般に100秒以下、好ましくは30秒以下である。
【0030】
セルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする本発明の長繊維には、さらなる補助剤をさらに供給することができる。このため、特に、記載のスルホン酸塩の与液は、このようなさらなる添加剤を含むことができる。これらは、特に、スレッドの移送を安定化させるための助剤、好ましくは脂肪酸、例えば長鎖脂肪族モノカルボン酸であってよい。例えばパルミチン酸又はオレイン酸などの飽和脂肪酸が特に適している。
【0031】
これらの追加の添加剤は、好ましくは、標準条件(20℃、1bar)下で、水に対して少なくとも10重量部、好ましくは少なくとも20重量部、特に少なくとも30重量部~100重量部の水の溶解度を有するべきである。添加剤は、好ましくは1000g/mol以下、特に300g/mol以下の分子量を有する低分子量の化合物である。考慮される特定の添加剤は、セッケン又は酸であり、例は無機塩、無機酸、有機塩、又は有機酸、例えばカルボン酸若しくはホスホン酸である。塩の場合、カチオンは、例えば金属カチオン、好ましくはアルカリ金属カチオン、例えばNH+及びK+、又は特に、アンモニア(NH4)+であってよい。さらに、好ましい一実施形態では、本発明による長繊維は、以上に広範に説明した式(I)のスルホン酸塩とは別の適切な量のさらなる添加剤は含まない。
【0032】
本発明の方法に関して、さらなる説明のために以下に総論を示ことができる:本発明の長繊維と関連して扱われる有利な性質は、扱われる熱的段階(2)において、炭素繊維の製造の状況においては「炭化助剤」と呼ぶこともできる脱水性酸の発生によって、目標とする信頼性のある方法で実現される。使用可能な低圧安定化オーブンは、最近になって知られるようになってきている。これは本発明の実現に関して特に重要である。熱的段階(2)の状況において明記される値が好ましい。ここでまず第1に、互いに平行に延在しセルロース及び/又はセルロース誘導体をベースとする多数の本発明の長繊維は、供給ユニットからエアロックユニットを介して操作ユニットまで通される。操作ユニットから、長繊維はエアロックユニットを介して、次に巻き取りユニットまで通され、そこでこれらは再び巻き取られる。操作ユニット5mbar~500mbar、特に50mbar~300mbarの減圧下に置かれる。50~200mbarの圧力範囲がこの場合特に有利であることが分かっている。ガスの供給によって、操作ユニットは、プロセスガス、好ましくは不活性ガス、好ましくは窒素に曝露され、これはポンプによって再び抜き取られる。抜き取られるガスは、アンモニアだけでなく、セルロース及び/又はセルロース誘導体の脱水の結果として脱離した水も含む。抜き取られたガスは、対応する後処理ステップで精製される。
【0033】
さらに、発熱体は操作ユニットを対象とし、そのためそのそれぞれのゾーン中で、それらによって望ましい、特に一定の温度が得られる。第1のゾーン中、例えば、多段階実施形態の場合、180℃~240℃の温度に定められる。引き続くゾーン中では、例えば、200℃、220℃、240℃、及び250℃の温度に定められる。次に長繊維は、操作ユニットにあらかじめ決定された速度で通過し、この速度は有用には、長繊維が加熱された操作ユニット全体を通過するのに約20~40分を要するように定められる。
【0034】
制御された減圧雰囲気中では、長繊維が燃焼し熱的に損傷し始めることなく、空気中の大気圧の場合よりも高い温度を使用できることが確認できている。その結果、炭素繊維の場合、均一に安定化した、脱水形態のセルロース及び/又はセルロース誘導体を含む高密度の前駆体繊維を再現可能に製造することができる。
【0035】
要約すると、本発明に関連する利点から見て、本発明に関して以下のように記載することができる:
脱水形態のセルロース及び/又はセルロース誘導体を含む本発明の長繊維は、難燃特性LOI、強度、純度、炭素収率(炭素繊維の製造における高炭素収率)、密度、伸び、良好な環境バランス及び低価格の結果としての炭素繊維の前駆体として、好ましくは有利な炭素繊維として、有利な用途を有する難燃性繊維としての最高の性質と関連して、顕著な利点を示す。本発明の方法では、酸化的熱安定化の不都合な段階が回避される。これは、低圧プロセスを使用し、好ましくは不活性ガス、特に窒素を使用する。上記方法のさらなる特徴は、連続的でスケーラブルに行うことができ、短い滞留時間を必要とし、低い範囲のみの温度が用いられ、制御された及び早期の脱水、並びに低レベルの副生成物の形成を可能として、毒性排ガスを全く生成せず、非常に良好なCO2バランスを示すことである。最後に、これによって、セルロース及び誘導体、並びにタイヤコードの有利な使用が可能となる。
【0036】
以下の実施例の目的は、本発明をさらに説明することである。これらは以下の説明によって進行される:
標準的なセルロース繊維の限界酸素指数(LOI)は20である。LOIは、燃焼挙動を示すために用いられるパラメーターである。この数値的指標は、試験条件下で燃焼が維持される酸素-窒素混合物の最小酸素濃度を示す。本発明の方法によって、25~40の間の高いLOIを有する難燃性セルロース繊維が製造される。この難燃性セルロース繊維は、1.3~1.45g/cm3の間の高密度によって、さらに細孔のない構造及び滑らかな表面によって、区別される。個別の繊維は、互いに固着せず、0.90~1.45dtexの間の線密度を有する。上記難燃性セルロース繊維の炭素含有量は55~60重量%の間であり、酸素含有量は29~39重量%である。
【0037】
使用されるセルロース繊維:
使用される例は、2種類のセルロース繊維である。どちらも、それぞれ再生セルロース又は凝固セルロースから形成された人造繊維である。自動車のタイヤに用いられるセルロース繊維は、タイヤコード繊維である。凝固セルロース繊維は、イオン液体(1-エチル-2-メチルイミダゾリウムオクタノエート[EMIM][Oct])中に溶解させたセルロースから製造された。これらを以下ではIL繊維と呼ぶ。両方の種類の繊維は、特に高い引張強度が注目される。
【0038】
得られた炭素繊維:
本発明によると、難燃性セルロース繊維は、炭素繊維(CF)にさらに加工することができる。その場合、難燃性セルロース繊維は、熱分解によってCFに変換される。この熱分解は、一般に500~1400℃の温度で行われる。これは、保護ガス、例えば窒素又はヘリウム下で行うことができる。得られる炭素繊維は、非常に良好な機械的性質、特に、良好な強度及び弾性を有する。本発明の方法によって、高い炭素収率が可能となる。炭素収率は70~90%であり、これは、炭素繊維が、セルロース繊維中に存在する炭素の70~90重量%の間を含むことを意味する。
【実施例】
【0039】
実施例1
本発明の難燃性セルロース繊維の製造が記載される。添加剤を供給するために、タイヤコード繊維として用いられる工業用再生セルロース繊維ヤーンが提供され、これは2.2dtexの単一フィラメント密度を有し、1000のフィラメントを含む。
【0040】
この繊維に対して、ゴデット上の連続操作で供給及び乾燥が行われる。すべてのゴデットは10m/分の速度を有する。第1のゴデットは、繊維の巻出しユニットとして機能する。供給を行う前に、繊維は、洗浄浴中の水(95℃)、及び水が噴霧されるゴデットによって洗浄される。次に繊維は、アンモニウムトシレート水溶液(アンモニウムトシレート濃度:0.35mol/kg)に通される。これに続いて、加熱ゴデット(80℃)上で乾燥される。乾燥した繊維は、0.3cN/texの初期張力下で張力が制御されたワインダーを用いて巻き上げられる(段階1)。
【0041】
脱水用添加剤が供給された再生セルロースは、次に、保護ガス(窒素)下及び減圧(200mbar)下でさらに加工される。この加工は、24の加熱ゾーンを有する低圧オーブンを用いて行われる。繊維は、トリプルゴデット上に巻き出され、3つの圧力ロックを介してオーブンのプロセストンネル中に入れられる。圧力ロックは、それぞれのロールの組によって互いに封鎖される。ロック中及びプロセストンネル中の圧力は、真空ポンプ及び窒素の供給によって調節される。供給されたセルロース繊維は、0.2m/分の速度でオーブンに通され、これは60分の滞留時間に対応する。温度は195~240℃の間に設定される。続いて、繊維は、3つの圧力ロックを介して再びオーブンから取り出され、4cN/texの初期張力で巻き上げられる(段階2)。
【0042】
繊維の残留質量は86重量%であり、繊維の密度は1.42g/cm3であり、強度は16cN/texであり、破断時伸びは25%であり、LOIは30.5であり、酸素含有量は30重量%である。
【0043】
実施例2
繊維は実施例1のように製造される。低圧オーブン中の滞留時間は30分に短縮される。
【0044】
繊維の残留質量は86重量%であり、繊維の密度は1.40g/cm3であり、強度は16cN/texであり、破断時伸びは21%であり、LOIは29であり、酸素含有量は32重量%である。
【0045】
実施例3
繊維は実施例1にように製造される。低圧オーブン中の滞留時間は15分に短縮される。
【0046】
繊維の残留質量は86重量%であり、繊維の密度は1.39g/cm3であり、強度は13cN/texであり、破断時伸びは21%であり、LOIは26であり、酸素含有量は38重量%である。
【0047】
実施例4
本発明の難燃性セルロース繊維からの炭素繊維の製造が記載される。難燃性セルロース繊維は、低圧プロセスを用いて処理されるいわゆるタイヤコード繊維である添加剤含有再生セルロース繊維によって、実施例1に記載のように製造される。こうして製造された難燃性セルロース繊維に対して、次に、保護ガス下で2段階の処理を行うことによって、炭素繊維が得られる。第1の段階では、繊維は750℃の最高温度で処理される。その後、繊維は1400℃において第2段階のさらなる処理が行われる。
【0048】
炭素収率は72重量%であり、炭素繊維の強度は2.5GPaであり、弾性率は96GPaであり、破断時伸びは2.5%であり、密度は1.42g/cm3である。
【0049】
実施例5
本発明の難燃性セルロース繊維からの炭素繊維の製造が記載される。難燃性セルロース繊維は、低圧プロセスを用いて処理されるいわゆる添加剤含有タイヤコード繊維によって、実施例2に記載のように製造される。これらの難燃性繊維に対して、次に、実施例4に記載されるように保護ガス下で2段階の処理を行うことによって、炭素繊維が得られる。
【0050】
炭素収率は72重量%であり、炭素繊維の強度は23.2GPaであり、弾性率は110GPaであり、破断時伸びは2.8%であり、密度は1.7g/cm3である。
【0051】
実施例6
本発明の難燃性セルロース繊維からの炭素繊維の製造が記載される。難燃性セルロース繊維は、低圧プロセスを用いて処理されるいわゆる添加剤含有タイヤコード繊維によって、実施例3に記載のように製造される。これらの難燃性繊維に対して、次に、実施例4に記載されるように保護ガス下で2段階の処理を行うことによって、炭素繊維が得られる。
【0052】
炭素収率は82重量%であり、炭素繊維の強度は2.6GPaであり、弾性率は82GPaであり、破断時伸びは2.5%であり、密度は1.68g/cm3である。
【0053】
実施例7
本発明の難燃性セルロース繊維の製造が記載される。使用される出発物質は、2.2dtexの単一フィラメント密度を有し1000のフィラメントを含む、エチル-,メチル-イミダゾリウムオクタノエートから直接紡糸されるエアギャップ紡糸法で得られる再生セルロース繊維(IL繊維)である。難燃性セルロース繊維は、低圧プロセスによって添加剤(アンモニウムトシレート)を供給した後、実施例1のように製造される。
【0054】
繊維の残留質量は78重量%であり、繊維の密度は1.38~1.42g/cm3であり、強度は12cN/texであり、破断時伸びは13%であり、LOIは31である。
【0055】
実施例8
本発明の難燃性IL繊維からの炭素繊維の製造が記載される。難燃性セルロース繊維は実施例7のように製造される。これらの難燃性繊維に対して、次に、実施例4に記載されるように保護ガス下で2段階の処理を行うことによって、炭素繊維が得られる。
【0056】
炭素収率は80重量%であり、炭素繊維の強度は2.5GPaであり、弾性率は90GPaであり、破断時伸びは2.5%であり、密度は1.69g/cm3である。
【国際調査報告】