(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ユーザの心理が安定するように、ユーザに緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを提供するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 21/02 20060101AFI20230824BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20230824BHJP
G16H 20/70 20180101ALI20230824BHJP
【FI】
A61M21/02 J
A61B5/16 110
G16H20/70
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504435
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 KR2021008801
(87)【国際公開番号】W WO2022019545
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0091292
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523086600
【氏名又は名称】メディトリックス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ジン・ジョン
【テーマコード(参考)】
4C038
5L099
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PR01
4C038PR04
4C038PS00
5L099AA04
(57)【要約】
本発明は、ユーザの心理を安定させるための仮想現実コンテンツ提供システム及びこれを用いる仮想現実コンテンツ提供方法に関する。本発明は、ユーザの情報に基づいてユーザの心理状態に合う仮想現実コンテンツをモデリングし、モデリングされた仮想現実コンテンツをユーザに提供し、提供された仮想現実コンテンツによるユーザの心理状態変化を分析して、仮想現実コンテンツに、出力速度の低減、客体の変化率の低減、コンテンツの変更などの変化を加え、前記変化によりリモデリングされた仮想現実コンテンツをユーザに提供することで、ユーザにさらに好適な仮想現実コンテンツを提供するためのシステム及び方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの心理が安定するように、ユーザに緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを提供するシステムにおいて、
ユーザが仮想現実を体験するように仮想現実コンテンツをユーザに提供するコンテンツ提供部と、
ユーザから情報を入力され、入力されたユーザ情報に基づいてユーザの心理を安定させるための前記仮想現実コンテンツをモデリングし、前記モデリングされた仮想現実コンテンツを前記コンテンツ提供部に提供する仮想現実モデリング部と、
ユーザの生体信号を測定する生体信号測定部と、
前記測定されたユーザ生体信号の変化に基づいて仮想現実コンテンツの体験によるユーザの心理状態を分析する生体信号分析部と、を備え、
前記仮想現実モデリング部は、前記生体信号分析部で分析された前記ユーザの心理状態によって、仮想現実コンテンツをリモデリングする、緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供システム。
【請求項2】
前記仮想現実モデリング部は、一連のイメージ及び音響で構成される複数の仮想現実コンテンツを備え、
前記ユーザから入力されたユーザ情報に基づいて、前記複数の仮想現実コンテンツからユーザの心理状態に好適な仮想現実コンテンツを抽出して、前記コンテンツ提供部に提供する、請求項1に記載の緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供システム。
【請求項3】
前記仮想現実コンテンツは、客体が変化する動画からなり、
前記仮想現実モデリング部は、前記生体信号分析部で分析された前記ユーザの心理状態に基づいて、前記動画で客体の変化速度を変えて前記コンテンツ提供部に提供する、請求項1に記載の緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供システム。
【請求項4】
前記仮想現実モデリング部は、前記ユーザが体験する前記仮想現実コンテンツと、前記生体信号分析部で分析された前記ユーザの心理状態安定度との相関関係を分析して、前記複数の仮想現実コンテンツから前記ユーザの心理状態安定度の最も高い仮想現実コンテンツを抽出して、前記入力されたユーザの情報と共にデータベースに保存する、請求項2または3に記載の緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供システム。
【請求項5】
前記生体信号測定部は、前記ユーザの生体信号の測定のための第1センサーモジュールと、前記ユーザのHRV信号を測定するための第2センサーモジュールと、を備える、請求項4に記載の緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供システム。
【請求項6】
前記生体信号分析部は、前記第1センサーモジュールで測定される前記ユーザの生体信号の変化率が20%以上である場合、前記ユーザの心理状態安定度が低いと判断する、請求項5に記載の緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供システム。
【請求項7】
前記生体信号分析部は、前記仮想現実コンテンツによる第2センサーモジュールで測定される前記ユーザのHRV信号のLF/HF ratio mean値が最も低い場合、前記ユーザの心理状態安定度が高いと判断する、請求項5に記載の緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供システム。
【請求項8】
ユーザの心理を安定させるように、仮想現実装置を用いてユーザに緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを提供する方法において、
複数の仮想現実コンテンツを設けるステップと、
ユーザ情報を入力される情報入力ステップと、
入力された前記ユーザの情報に合わせてユーザの心理を安定させる仮想現実コンテンツを選定して、ユーザが仮想現実を体験するように、選定された仮想現実コンテンツをユーザに提供しつつユーザの生体信号を測定する第1コンテンツ提供ステップと、
前記第1コンテンツ提供ステップで測定された前記ユーザの生体信号に基づいて、前記ユーザの生体信号変化を算出し、前記算出された生体信号変化によって前記ユーザの心理状態を分析する分析ステップと、
前記分析ステップでの分析によってユーザの心理的安定度が向上するように、前記第1コンテンツ提供ステップで提供される仮想現実コンテンツを変更し、前記ユーザの生体信号を測定する第2コンテンツ提供ステップと、を含む緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供方法。
【請求項9】
前記第1コンテンツ提供ステップ及び前記第2コンテンツ提供ステップで算出された前記ユーザの生体信号変化と、前記ユーザに提供された仮想現実コンテンツとの相関関係を分析し、ユーザの心理安定度の最も高い仮想現実コンテンツを抽出して、前記入力されたユーザの情報と共にデータベースに保存する保存ステップをさらに含む、請求項8に記載の緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供方法。
【請求項10】
前記分析ステップは、前記ユーザの生体信号の変化率が20%以上である場合、前記ユーザの心理状態安定度が低いと判断し、
前記第2コンテンツ提供ステップで選定される仮想現実コンテンツは、前記ユーザの心理状態安定度が低いと判断される第1コンテンツ提供ステップで提供された仮想現実コンテンツとは異なる仮想現実コンテンツである、請求項8に記載の緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供方法。
【請求項11】
前記ユーザの生体信号はHRV信号を含み、
前記ユーザの心理安定度の最も高い仮想現実コンテンツは、前記HRV信号のLF/HF ratio mean値の最も低い仮想現実コンテンツである、請求項9に記載の緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供方法。
【請求項12】
請求項8ないし11のうちいずれか一項に記載の方法を具現するためのプログラムが記録された、コンピュータで読取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊張緩和訓練を通じてユーザの心理を安定させるための仮想現実コンテンツ提供システム、及びこれを用いる仮想現実コンテンツ提供方法に係り、さらに詳細には、ユーザの心理状態に合う緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツをモデリングして、ユーザが仮想現実を体験するように提供し、提供された仮想現実コンテンツによるユーザの心理状態変化を分析して、ユーザにさらに好適な仮想現実コンテンツを提供するための仮想現実コンテンツ提供システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鬱病は一般的な精神疾患であり、円滑でない対人関係や業務の中断など様々な問題を引き起こす可能性があり、ひどい場合には、自殺という深刻な結果につながる脳疾患である。特に、現代を生きて行く人々に、鬱病は、風邪のような病気である。
【0003】
鬱病などの色々な精神疾患は、生物学的な要因だけではなく心理的あるいは社会的な要因が複合的に作用して発生する場合が多く、これらの複合的に発生する精神疾患を治療するために、運動、冥想治療、薬物治療、心理相談治療などの多様な方法が提示されつつある。
【0004】
しかし、運動や冥想治療を通じて心理障害要素を乗り越えるために患者自ら努力することは容易ではなく、薬物治療に寄り掛かるには治療の効率が落ちる。また、心理相談治療は、最も効果的な方法ではあるが、周辺人の視線のため精神科で相談することを嫌がる場合が多い。
【0005】
このような点に鑑みて、精神疾患のうち高所恐怖症や密室恐怖症などの恐怖症を経験している人を治療するために、仮想現実(Virtual-Reality、VR)を用いる治療が現在使われている。すなわち、経験している恐怖感を造成する状況あるいは物などに人を露出させ、その状況から自ら抜け出そうと努力する訓練をさせることである。
【0006】
しかし、精神疾患治療のために仮想現実を用いるに際して、前記露出訓練は、却ってユーザの恐怖感を極大化して精神疾患を悪化させる恐れがあるという問題点があった。
【0007】
これを解決するための精神疾患治療用途の仮想現実制御技術の一つとして、大韓民国特許出願第10-2018-0094892号(特許文献1)では、「ストレス緩和システム及びこれを用いるストレス緩和方法」という名称の発明を開示している。特許文献1の発明によるシステム及び方法は、ユーザのストレスを緩和するために、ユーザに呼吸方式を案内して訓練させるための呼吸訓練コンテンツが共に提供されるVRコンテンツを提供し、VRコンテンツと同期化してモーション椅子が駆動されることで、ユーザの心理安定が効果的になされるようにした。
【0008】
しかし、このようなシステムは、ユーザの心理不安の程度に合わせてVRコンテンツの内容を再構成することができなくて治療の経過を判断しにくく、今後の治療計画を修正するかまたは治療方法を変えるなどの好適な対応ができず、また副作用を見つけにくいという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許出願第10-2018-0094892号(韓国特許出願公開第10-2020-0019403号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑みて、ユーザの生体信号の様態をリアルタイムで測定して、生体信号によるユーザの心理状態を分析し、分析結果に基づいてユーザの心理安定度を効果的に向上させるVRコンテンツを提供しようとする。
【0011】
具体的に、本発明は、鬱病、不安感を経験するユーザに複数の緊張緩和訓練VRコンテンツを提供し、提供されるVRコンテンツとユーザの心理状態との相関関係を分析して、ユーザの心理安定度の高いVRコンテンツのみを抽出して、新たなVRコンテンツを再構成し、ユーザに好適なコンテンツを提供するVRコンテンツ提供システム及び方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ユーザの心理が安定するように、ユーザに緊張緩和訓練(Relaxation Training)のための仮想現実コンテンツを提供するシステムを提供する。
【0013】
本発明の一態様による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供システムは、ユーザが仮想現実を体験するように仮想現実コンテンツをユーザに提供するコンテンツ提供部と、ユーザから情報を入力され、入力されたユーザ情報に基づいてユーザの心理を安定させるための前記仮想現実コンテンツをモデリングし、前記モデリングされた仮想現実コンテンツを前記コンテンツ提供部に提供する仮想現実モデリング部と、ユーザの生体信号を測定する生体信号測定部と、前記測定されたユーザ生体信号の変化に基づいて仮想現実コンテンツの体験によるユーザの心理状態を分析する生体信号分析部と、を備え、前記仮想現実モデリング部は、前記生体信号分析部で分析された前記ユーザの心理状態によって、仮想現実コンテンツをリモデリングする。
【0014】
また、本発明の前記一態様についてのさらなる特徴として、前記仮想現実モデリング部は、イメージ及び音響で構成される複数の仮想現実コンテンツを備え、前記ユーザから入力されたユーザ情報に基づいて、前記複数の仮想現実コンテンツからユーザの心理状態に好適な仮想現実コンテンツを抽出して、前記コンテンツ提供部に提供する方式で動作する。
【0015】
また、本発明の前記一態様についてのさらなる特徴として、前記仮想現実コンテンツは、客体が変化する動画からなり、前記仮想現実モデリング部は、前記生体信号分析部で分析された前記ユーザの心理状態に基づいて、前記動画で客体の変化速度を変えて前記コンテンツ提供部に提供する。
【0016】
また、本発明の前記一態様についてのさらなる特徴として、前記仮想現実モデリング部は、前記ユーザが体験する前記仮想現実コンテンツと、前記生体信号分析部で分析された前記ユーザの心理状態安定度との相関関係を分析して、前記複数の仮想現実コンテンツから前記ユーザの心理状態安定度の最も高い仮想現実コンテンツを抽出して、前記入力されたユーザの情報と共にデータベースに保存する。
【0017】
したがって、本発明の一態様による仮想現実コンテンツ提供システム及び方法は、ユーザの生体信号の様態をリアルタイムで測定して、生体信号によるユーザの心理状態を分析し、分析結果に基づいてユーザの心理安定度を効果的に向上させるVRコンテンツを提供することができる。
【0018】
また、本発明の前記一態様についてのさらなる特徴として、前記生体信号測定部は、前記ユーザの生体信号の測定のための第1センサーモジュールと、前記ユーザのHRV信号を測定するための第2センサーモジュールと、を備える。
【0019】
また、本発明の前記一態様についてのさらなる特徴として、前記生体信号分析部は、前記第1センサーモジュールで測定される前記ユーザの生体信号の変化率が20%以上である場合、前記ユーザの心理状態安定度が低いと判断し、前記仮想現実コンテンツによる第2センサーモジュールで測定される前記ユーザのHRV信号のLF/HF ratio mean値が最も低い場合、前記ユーザの心理状態安定度が高いと判断する。
【0020】
したがって、本発明の一態様による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供システム及び方法は、ユーザの心拍数または呼吸信号のみを測定する時より、ユーザの心理安定度についてさらに正確な測定値を得ることができる。
【0021】
このような本発明の一態様による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供方法は、複数の仮想現実コンテンツを設けるステップと、ユーザ情報を入力される情報入力ステップと、入力された前記ユーザの情報に合わせてユーザの心理を安定させる仮想現実コンテンツを選定して、ユーザが仮想現実を体験するように、選定された仮想現実コンテンツをユーザに提供しつつユーザの生体信号を測定する第1コンテンツ提供ステップと、前記第1コンテンツ提供ステップで測定された前記ユーザの生体信号に基づいて、前記ユーザの生体信号変化を算出し、前記算出された生体信号変化によって前記ユーザの心理状態を分析する分析ステップと、前記分析ステップでの分析によってユーザの心理的安定度が向上するように、前記第1コンテンツ提供ステップで提供される仮想現実コンテンツを変更し、前記ユーザの生体信号を測定する第2コンテンツ提供ステップと、を含む。
【0022】
また、本発明の前記一態様についてのさらなる特徴として、前記第1コンテンツ提供ステップ及び前記第2コンテンツ提供ステップで算出された前記ユーザの生体信号変化と、前記ユーザに提供された仮想現実コンテンツとの相関関係を分析し、ユーザの心理安定度の最も高い仮想現実コンテンツを抽出して、前記入力されたユーザの情報と共にデータベースに保存する保存ステップをさらに含む。
【0023】
また、本発明の前記一態様についてのさらなる特徴として、前記分析ステップは、前記ユーザの生体信号の変化率が20%以上である場合、前記ユーザの心理状態安定度が低いと判断することであり、前記第2コンテンツ提供ステップで選定される仮想現実コンテンツは、前記ユーザの心理状態安定度が低いと判断される、第1コンテンツ提供ステップで提供された仮想現実コンテンツとは異なる仮想現実コンテンツである。
【0024】
また、本発明の前記一態様についてのさらなる特徴として、前記ユーザの生体信号はHRV信号を含み、前記ユーザの心理安定度の最も高い仮想現実コンテンツは、前記HRV信号のLF/HF ratio mean値の最も低い仮想現実コンテンツである。
【0025】
また、本発明のさらなる態様として、前述した仮想現実コンテンツを提供する方法を具現するためのプログラムが記録されている、コンピュータで読取り可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様による仮想現実コンテンツ提供システム及び方法は、ユーザの生体信号の様態をリアルタイムで測定して、生体信号によるユーザの心理状態を分析し、分析結果に基づいてユーザの心理安定度を効果的に向上させるVRコンテンツを提供することができる。
【0027】
さらに、本発明の一態様による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供システム及び方法は、ユーザの心拍数または呼吸信号のみを測定する時より、ユーザの心理安定度についてさらに正確な測定値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを提供するシステムの一実施形態を示す図面である。
【
図2】本発明による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを提供するシステムのブロック図である。
【
図3】本発明による生体信号測定部のブロック図である。
【
図4】本発明による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを構成することができる仮想現実コンテンツについての例示図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを提供する方法のフローチャートである。
【
図6】本発明の第2実施形態による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを提供する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明を実施するための具体的な内容として、本発明による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを提供するシステム及び方法の実施形態、及び緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを提供するシステム及び方法の作動に関与する要素について説明する。
【0030】
先ず、
図1は、本発明による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを提供するシステムの一実施形態を示す図面であり、
図2は、本発明による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを提供するシステムの構成を概略的に示すブロック図である。
【0031】
図1及び
図2を参照すれば、本発明による仮想現実コンテンツを提供するシステム100は、仮想現実モデリング部110、コンテンツ提供部120、生体信号分析部130、生体信号測定部140を備え、データベース150をさらに備えてもよい。
【0032】
図1を参照すれば、本発明による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを提供するシステムは、ユーザに提供される仮想現実の実際感及びリアリティをさらに高めるためのモーション椅子1をさらに備える。
【0033】
前記緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツ提供システムは、次のように動作する。仮想現実モデリング部110は、コンテンツ提供部120及びデータベース150と連動して、ユーザから入力された情報をデータベース150に保存されている情報により分析して、ユーザに好適な緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを選別して、コンテンツ提供部120を通じて提供し、生体信号測定部140は、生体信号分析部130と連動して、仮想現実コンテンツによるユーザの生体信号変化を測定し、生体信号分析部130は、これによるユーザの心理安定度を分析し、その結果値を仮想現実モデリング部110に伝送する。
【0034】
コンテンツ提供部120は、画像及び音響を形成してユーザが視聴するように構成される。例えば、コンテンツ提供部120は、ユーザに視覚データ、聴覚データ、触覚データなどを提供する装置で具現され、一実施形態によれば、スピーカ及びディスプレイが設けられて、ユーザの着用するヘッドマウントディスプレイ(HMD)またはモニタとして具現されてもよく、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)とモニタをいずれも備えるように構成されてもよい。
【0035】
図3は、本発明による生体信号測定部140のブロック図である。
【0036】
図3を参照すれば、本発明による生体信号測定部140は、第1センサーモジュール141及び第2センサーモジュール142を備えて構成される。
【0037】
本発明によれば、第1センサーモジュール141は、ユーザの心電図、呼吸量、呼吸頻度などの生体信号を測定する少なくとも一つの感知装置を備え、第2センサーモジュール142は、ユーザのHRV信号(Heart Rate Variability)を測定する少なくとも一つの測定装置を備える。第1センサーモジュール141及び第2センサーモジュール142は、ユーザの生体信号を測定することができる位置に配置される。例えば、第1センサーモジュール141は、モーション椅子1において、ユーザの腕と足が触れる部分またはベルトに配置され、第2センサーモジュール142は、モーション椅子1に設けられているベストに配置される。しかし、第1及び第2センサーモジュールが配置される位置は、前述した例示に限定されず、ユーザの生体信号を測定することができる所であれば、どこにも配置可能である。
【0038】
図4は、本発明による緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツについての例示図である。
【0039】
本発明で提供される緊張緩和訓練とは、患者に筋肉の緊張を緩和させる方法を熟達させ、心理的な問題状況に直面した時に筋肉を弛緩させることで、心理的な安定感を取り戻すようにする訓練である。すなわち、緊張緩和訓練のためのコンテンツとは、主要身体部位の筋肉を意図的にそして漸進的に収縮させてから徐々に弛緩させる動作を繰り返して、ユーザが筋肉を弛緩させる方法を習得するように案内する内容を含む。
【0040】
また、本発明で提供される仮想現実コンテンツは、ユーザの心理安定に役に立つ青及び緑の背景を主として構成される画像であって、ユーザが特定方向に移動しているようなイメージを含む。ユーザが歩いて行くような視覚的効果を与えるか、またはユーザの身体が自ら浮び上がるような視覚的な効果を含むことができ、移動によって新たな場所や風景の変化が発生するように形成される。前記仮想現実コンテンツのイメージ変化は、ユーザの視野が正面または垂直方向に移動するようにし、イメージを左右に移動させて変化させる方法は最小化する。
【0041】
図4を参照すれば、本発明の一実施形態による緊張緩和訓練用コンテンツは、Stage 1ないし4で構成される。
【0042】
Stage 1では、医者が出て緊張緩和療法について説明し、これを被験者に行わせる案内音声と共に、
図4の(a)のような画像がコンテンツ提供部120に提供される。
【0043】
Stage 2では、ユーザの身体が浮び上がる視覚的効果と共に、
図4の(b)のように、高い木や草原、空が見える道の上または波のある浜、谷、滝の上をあまりにも高くなくゆっくりと空を飛ぶ画像が出力され、それによるユーザの生体信号が測定される。
【0044】
Stage 3では、前記Stage 2で測定されたユーザの生体信号による分析結果に合わせて、空を飛ぶ速度が減少するか、草原の草が揺れる速度が減少するか、または波の高さが低くなることに変わる。それと共に、それぞれの画像が提供される時間も調節される。
【0045】
Stage 4では、ユーザがゆっくり地上に着陸する視覚的な効果が提供されると同時に、各コンテンツとユーザ心理との相関関係がデータベース150に保存される。
【0046】
前記Stage 1ないし4では、各画像に合わせて自然の音が一緒に小さく提供され、画像が変化する度に鐘の音が出る。
【0047】
図5は、本発明の第1実施形態による仮想現実コンテンツを提供する方法のフローチャートである。
【0048】
図5を参照すれば、第1実施形態の仮想現実コンテンツを提供する方法は、データベース150が、緊張緩和訓練のために設けられる複数の仮想現実コンテンツを保存し、ユーザ情報を入力される第1ステップ(S100)と、仮想現実モデリング部110が、データベース150に入力された前記ユーザの情報に合わせて、ユーザの心理を安定させる緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツを選定し、ユーザが仮想現実を体験するように、選定された仮想現実コンテンツを組み合わせてユーザに提供し、生体信号測定部140は、ユーザの生体信号を測定する第2ステップ(S200)と、生体信号分析部130が、前記第2ステップで測定されたユーザの生体信号に基づいて前記ユーザの生体信号変化を算出し、前記算出された生体信号変化によって前記ユーザの心理状態を分析する第3ステップ(S300)と、仮想現実モデリング部110が、前記第3ステップで分析されたユーザの心理状態によって前記ユーザの心理的な安定度を向上させるように、前記第2ステップでユーザに提供される仮想現実コンテンツに変更を加え、生体信号測定部140は、ユーザの生体信号を測定する第4ステップ(S400)と、で構成される。
【0049】
前記第1ステップで設けられる複数の仮想現実コンテンツは、
図4でのような複数の緊張緩和訓練のための仮想現実コンテンツで構成される。また、データベース150に入力されるユーザ情報は、ユーザの年齢、精神疾患の程度、めまいの尺度などを含み、状況によっては、医者の問診結果データであってもよい。
【0050】
前記第2ステップで、仮想現実モデリング部110によって組み合わせられる複数の仮想現実コンテンツは、相異なるイメージで構成されるか、または互いに連続性のあるイメージで形成される。前記仮想現実モデリング部110は、入力されたユーザ情報に基づいて複数の視覚及び聴覚データを組み合わせて、コンテンツ提供部120を通じて出力する。例えば、医者の問診結果データに基づいて、特定視覚情報及び聴覚情報によってユーザの心理的不安症状が発現する場合、これを削除するか、または該イメージまたは聴覚データを前記仮想現実コンテンツから除いて出力するように制御する。また仮想現実モデリング部110は、入力されたユーザ情報の追加または変更に基づいて前記仮想現実コンテンツを変更する。例えば、めまいの症状が緩和したことを示す情報が入力された場合、前記仮想現実コンテンツの種類、出力効果、出力時間などが変わって出力される。
【0051】
また、仮想現実モデリング部によって選定される仮想現実コンテンツは、ユーザの年齢が高いほど、鬱病の程度が大きいほど、めまいをよく感じるほど緑または青色の背景が多く含まれるか、または画像の出力速度が遅い。これは、緑または青色が多く含まれた画像であればあるほどユーザの心理がさらに安定し、鬱病の程度が大きくてめまいをよく感じる人の場合、露出訓練のような強い刺激よりは、出力速度の遅い画像がユーザの緊張感をさらに緩和させるという研究結果によるものである。
【0052】
また、前記第2ステップで、生体信号測定部140は、コンテンツ提供部120を通じてユーザに提供される仮想現実コンテンツによるユーザの生体信号を測定し、測定したデータを生体信号分析部130に伝送する。
【0053】
前記第3ステップで、生体信号の変化は、呼吸周期、呼吸量または心拍数で構成され、呼吸周期、呼吸量または心拍数の変化率が20%以上である場合に、ユーザの心理安定度が低くなったと判断する。
【0054】
前記第4ステップでは、仮想現実モデリング部110が前記第3ステップで分析した結果によって、ユーザの心理安定度が低くなったと判断される場合、ユーザの心理安定度を向上させるように、前記第2ステップで提供される仮想現実コンテンツに変更を加える。
【0055】
例えば、仮想現実モデリング部110は、仮想現実コンテンツの画像を、青色と緑色がさらに多く含まれている画像に変更するか、または前記仮想現実コンテンツの彩度及び照度などを変化させる。または、データベース150に保存されている記録データに基づいて、ユーザの安定度向上が最も高いと評価された仮想現実コンテンツを、既存の回数そのまま繰り返して出力するか、または、現在仮想現実コンテンツの出力途中で心理安定度の変化が現われない場合(好転しない場合)、前記記録データに基づいて、ユーザの安定度向上が高かった仮想現実コンテンツに変更するように制御する。
【0056】
また、提供されている仮想現実コンテンツの出力速度を低減させるか、または、仮想現実コンテンツ内に含まれている客体の変化率を低減させるなどの方法を行う。例えば、瀧を示す画像では瀧の落下速度を遅くするか、または浜辺の画像では波の波高を低めることが、仮想現実コンテンツで客体の変化率を低める方法などになる。
【0057】
図6は、第2実施形態による仮想現実コンテンツを提供する方法のフローチャートを示す。
【0058】
図6を参照すれば、第2実施形態の仮想現実コンテンツを提供する方法は、第1実施形態による方法において、前記第1ステップ(S100)及び前記第4ステップ(S400)で算出されたユーザの生体信号変化と、ユーザに提供された仮想現実コンテンツとの相関関係を分析し、ユーザの心理安定度の最も高い仮想現実コンテンツを抽出して、前記入力されたユーザの情報と共にデータベースに保存する第5ステップ(S500)をさらに含む。
【0059】
前記第5ステップで、ユーザの心理安定度の最も高い仮想現実コンテンツを抽出する方法は、前記第1ステップ及び前記第4ステップで測定されたユーザのHRV信号のLF/HF ratio mean値が最も低い仮想現実コンテンツを抽出することである。
【0060】
また、前記第5ステップで、ユーザの情報と共にデータベースに保存されている仮想現実コンテンツに関する情報は、同じユーザに仮想現実コンテンツを再び提供する時、ユーザに好適な仮想現実コンテンツを提供するためのデータとして再び使われる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態の仮想現実コンテンツ提供システムの構成に限定されず、特許請求の範囲に記載の範囲で多様な修正及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 モーション椅子
100 仮想現実コンテンツを提供するシステム
110 仮想現実モデリング部
120 コンテンツ提供部
130 生体信号分析部
140 生体信号測定部
141 第1センサーモジュール
142 第2センサーモジュール
150 データベース
【国際調査報告】