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特表2023-537311風力タービンタワーを輸送するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】風力タービンタワーを輸送するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/40 20160101AFI20230824BHJP
   B63B 77/10 20200101ALI20230824BHJP
【FI】
F03D13/40
B63B77/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506292
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(85)【翻訳文提出日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2021071656
(87)【国際公開番号】W WO2022029116
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】20189247.8
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518399243
【氏名又は名称】オルステッド・ウィンド・パワー・エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Orsted Wind Power A/S
【住所又は居所原語表記】Kraftvaerksvej 53,7000 Fredericia,Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】デラモア, デビッド
(72)【発明者】
【氏名】フレンデセン, エルンスト
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA20
3H178AA24
3H178AA43
3H178BB77
3H178CC23
3H178DD67X
(57)【要約】
風力タービンタワー(1)を輸送するためのシステム及び方法である。船(6)は、1つ以上のタワー(1)を設置場所に輸送するために使用される。輸送中に1本以上のタワー(1)を水平配向に固定するためのクレードル(4)が設けられている。アップエンディングデバイス(5、10)は、設置場所における基礎への後続の接続のために、1本以上のタワー(1)を水平配向から垂直配向に移行するために使用される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンタワーを輸送するためのシステムであって、
1本以上の前記風力タービンタワーを設置場所へ輸送するための船と、
輸送中に前記1本以上の風力タービンタワーを前記船上で水平配向に固定するためのクレードルと、
前記設置場所の基礎への後続の設置のために、前記1本以上の風力タービンタワーを前記水平配向から垂直配向に移行させるためのアップエンディングデバイスと、を備える、システム。
【請求項2】
前記アップエンディングデバイスは、前記風力タービンタワーの下端に接続するための旋回ツールと、前記旋回ツールに接続されたときに前記風力タービンタワーをアップエンディングして持ち上げるための、前記風力タービンタワーの上端に取り付け可能なリフティングツールと、を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記リフティングツールは、前記風力タービンタワーの前記上端を持ち上げるために、クレーンに接続可能である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記1本以上の風力タービンタワーのうちの1本を水平配向に支持し、前記支持された風力タービンタワーを前記船上に搭載するための1つ以上の輸送機(SPMT)を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
第1の船が、前記1本以上の風力タービンタワーを設置場所へ輸送するために使用され、前記アップエンディングデバイスが、第2の船上に設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記アップエンディングデバイスは、前記風力タービンタワーが垂直配向に移行されているときに、前記船の移動を補償するための動き補償デバイスを更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記クレードルは、陸上保管中、積み込み中、及び輸送中の前記船上で、前記1本以上の風力タービンタワーを支持するための多目的フレームである、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
風力タービンタワーを輸送するための方法であって、
1本以上の前記風力タービンタワーを船上のクレードルに固定する工程であって、前記クレードルが前記1本以上の風力タービンタワーを水平配向に支持するように構成されている、固定する工程と、
前記船を使用して前記1本以上の風力タービンタワーを設置場所へ輸送する工程と、
アップエンディングデバイスを使用して、前記設置場所の基礎への後続の設置のために、前記1本以上の風力タービンタワーを前記水平配向から垂直配向に移行させる工程と、を含む、方法。
【請求項9】
前記アップエンディングデバイスを使用して移行させる前記工程は、
前記風力タービンタワーの下端を旋回ツールに接続する工程と、
前記風力タービンタワーの上端をリフティングデバイスに取り付ける工程と、
前記下端のあたりに前記上端を持ち上げることによって、前記風力タービンタワーをアップエンディングする工程と、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記風力タービンタワーの前記上端を持ち上げるために、前記リフティングデバイスをクレーンに接続する工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記クレーンは、ジャッキアップ船上又は浮遊重量物運搬船上に設けられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1本以上の風力タービンタワーのうちの1本を、1つ以上の輸送機を使用して水平配向に支持する工程と、
前記支持された風力タービンタワーを前記船上に移動及び搭載する工程と、を更に含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1の船が、前記1本以上の風力タービンタワーを前記設置場所へ輸送するために使用され、前記風力タービンタワーをアップエンディングするためのクレーンが、第2の船上に設けられる、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1本以上の風力タービンタワーを垂直配向に移行させるために使用される前記アップエンディングデバイスは、前記1本以上の風力タービンタワーを前記設置場所に輸送させるために使用される同じ船上に設けられる、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記風力タービンタワーの前記上端をリフティングデバイスに取り付ける工程であって、前記リフティングデバイスの一部分を前記風力タービンタワー上の前記フランジと係合させる工程を含む、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンタワー、特に風力タービン発電機用の洋上風力タービンタワーを輸送するためのシステム及び方法に関する。本発明は特に、洋上設置場所における洋上風力タービンタワーの製造、輸送、及び設置のための統合物流システム及び方法に関する。
【0002】
本出願において、用語「風力タービンタワー」は、ナセル(nacelle)、発電機、及び基礎の上のブレードを支持する垂直タワーを称する。用語「風力タービン発電機」は、タワー、ブレード、ナセル、及び発電機を含む、風力タービン組み立て体全体を称するために使用される。用語「基礎」は、モノパイル又はジャケット又は浮遊基礎など、海底内に延在する本体を含む風力タービンタワーを支持する構造、並びに存在する場合には、タワーを接続するために使用される任意の中間移行部品を称するために使用される。
【0003】
洋上風力発電業界は、陸上風力発電技術の初期開発に端を発している。そのため、サプライチェーン内の多くの既存メーカーは当初、陸上市場に焦点を当てていたが、現在は洋上用途の部品も供給している。特に、風力タービンタワーの製造業者は、内陸に拠点を置き、陸上及び洋上用途の両方のためにタワーを製造することが一般的である。
【0004】
風力タービンのタワーは、高さのある位置でナセルを支持する構造的な役割を果たすだけでなく、はしご、戸口、内部エレベータなどの二次構造物、電気部品、配線などの他の構成要素を収容し、支持するという点で、比較的複雑である。例えば、風力タービンタワーは、保守目的のために発電機の分離を可能にするために、発電機のスイッチギヤを収容し得る。同時に、風力タービンタワーは通常、単一の完全な組み立て体としてではなく、複数のセクションで製造される。タワーをセクションに分割するこの要件は、タワー製造施設の形状的な制約、並びに道路でタワーを輸送するための形状的及び重量的な制約に起因して生じる。
【0005】
次いで、港では、通常、設置場所のより近くに位置する事前組み立て又はステージング港への輸送のために、各タワーセクションを輸送船のデッキ上に持ち上げるために、クレーンが使用される。事前組み立ての港では、大型のクレーンを使用して、タワーセクションを一時的な基礎上に垂直に積み重ねられた組み立て体に積み重ね、その後セクションを一緒にボルト留めすることができる。ここから、組み立てられたタワーは、ジャッキアップ船のクレーンによってジャッキアップ船のデッキ上に持ち上げられて降ろされる。搭載されると、次に、ジャッキアップ船を使用して、組み立てられたタワーを設置場所まで輸送し、そこで、ジャッキアップ船のクレーンが、タワーを事前設置された基礎の移行部品上に持ち上げる。
【0006】
しかし、大型の風力タービンが開発されると、上述の輸送プロセスが新たな問題を提起した。先ず、道路でタワーセクションを輸送すると、最大タワー直径が約6.5mに制限され、タワーの最大サイズも制限される。そのため、より大きなタワーを有する風力タービン発電機を製造するには、岸壁にアクセス可能なタワー製造業者が必要となる可能性が高い。更に、洋上風力発電業界が新市場へと拡大していく中、タワー製造施設が新たに建設される可能性もある。タワーのサプライチェーンにおけるこれらの今後の変化は、タワーの製造と物流プロセスを見直す機会となる。例えば、上述の従来的なアプローチでは、いくつかの港の位置は、橋の後ろに置かれ、橋から離れて輸送できる組み立てられたタワーの垂直高さを制限するため、従来は事前組み立ての港として不適切であった。
【0007】
更に、タワーセクションの事前組み立てに港を使用する従来的な要件は、大きな費用を意味する。第1に、事前組み立ての港のリースコストは高く、特に、高さ100mを超える大きな荷重を持ち上げることのできるクレーンが必要であり、組み立てられたタワーは、予想重量600トン超かつ高さ100m超をすぐに得る必要があるためである。更に、岸壁には、こうした荷重を支えるのに十分な耐荷重能力がなければならず、これにより、ステージング場所として作用できるハーバーが制限される。
【0008】
したがって、上記の問題に対処する、より大きな次世代タワーの製造、輸送、設置のための統合物流コンセプトが求められている。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、風力タービンタワーを輸送するためのシステムが提供されており、システムが、タワーのうちの1本以上を設置場所へ輸送するための船と、輸送中に1本以上のタワーを船上で水平に固定するためのクレードルと、設置場所の基礎への後続の設置のために、1本以上のタワーを水平配向から垂直配向に移行させるアップエンディングデバイス(upending device:立設させるためのデバイス)と、を備える。
【0010】
このようにして、タワーを水平に輸送することができるため、タワーを製造し、より長いセクションで輸送することができる。同時に、タワーを輸送船に転動することができ、この段階では大型のクレーンの必要性を回避し、また岸壁荷での重要件を低減することができる。タワーはSPMT(Self-Propelled Modular Transporter)を介して輸送できるため、製造施設又は保管エリアは岸壁から離れてもよい。これらの要因により、港のリースコストが低減され、事前組み立ての港の必要性が完全になくなる可能性がある。更に、より低いコスト及びより速い輸送船を使用して、タワーを設置現場に輸送することができるため、設置又はジャッキアップ船のコストも最小化され得る。
【0011】
更に、上述したように、風力タービンタワーは従来、損傷を避けるために垂直に輸送する必要がある可能性のあるスイッチギヤなどの電気機器も備えている。しかしながら、より新しい風力タービンモデル及び一部の基礎設計は、多くの場合、ナセル又は基礎のいずれかに電気機器を収容する。そのため、タワーにはあまり高性能の電気機器がないため、水平輸送中の損傷のリスクが軽減される。
【0012】
更に、本発明は、単一の水平セクションにおけるタワーの製造及び輸送を可能にする。これにより、事前組み立てのコストを大幅に節約できる。更に、単一の完全溶接シリンダなどの単一のセクションに対する製作コストも低いものとなり得る。例えば、タワーセクションを接続するために使用されるフランジ及びボルトは、著しい資本費用を要すだけでなく、これらの接続の後の検査及び保守の必要性から、運用費用も追加される。
【0013】
実施形態では、アップエンディングデバイスが、タワーのうちの1本の下端に接続するための旋回ツールと、旋回ツールに接続されたときに下端のあたりに上端をアップエンドして持ち上げるための、タワーの上端に取り付け可能なリフティングツールと、を備える。
【0014】
実施形態では、リフティングツールは、タワーの上端を持ち上げるために、クレーンに接続可能である。
【0015】
実施形態では、クレーンは、ジャッキアップ船又はDP重量物運搬船のうちの1つに提供されている。
【0016】
実施形態では、システムは、1本以上のタワーのうちの1本を水平配向に支持し、支持されたタワーを船上に搭載及び移動するための、1つ以上の輸送機(SPMT)を更に備える。
【0017】
実施形態では、システムは、「フィーダ構成」で機能する2つの船を必要とし得る。この構成では、一方の船、例えば、はしけ又は自己推進式輸送船などは、輸送に使用され得、他方の船、例えば、ジャッキアップ又はDP重量物リフト船などは、アップエンド及び設置に使用され得る。代替的な実施形態では、システムは、「直接ピックアップ構成」で機能する単一の船を必要とし得る。そのような場合、ジャッキアップ又はDP重量物運搬船は、タワーの輸送と、後続のアップエンド及び設置との両方に使用することができる。
【0018】
実施形態では、リフティングデバイスは、タワーの上端上のフランジと係合するための係合部分を含む。
【0019】
実施形態では、アップエンディングデバイスが、タワーが垂直配向に移行されているときに、船の移動を補償するための動き補償デバイスを更に備えてもよい。
【0020】
実施形態では、クレードルが、陸上保管中、積み込み中、及び輸送中の船上で、1本以上のタワーを支持するための多目的フレームである。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、風力タービンタワーを輸送するための方法が提供され、方法が、1本以上の風力タービンタワーを、船上のクレードルに固定することであって、クレードルがタワーを水平配向に支持するように構成される、固定することと、船を使用して1本以上のタワーを設置場所に輸送することと、アップエンディングデバイスを使用して、設置場所の基礎への後続の設置のために、1本以上のタワーを水平配向から垂直配向に移行させることと、を含む。このように、風力タービンの積み込み、洋上輸送及び設置のための方法論が提供されてもよい。例えば、実施形態では、1本以上の風力タービンタワーは、SPMTを介して搭載されてもよい。
【0022】
実施形態では、本方法は、タワーのうちの1本を、1つ以上の輸送機(SPMT)を使用して水平配向に支持することと、支持されたタワーを船上に移動及び搭載することと、を更に含む。
【0023】
実施形態では、アップエンディングデバイスを使用して移行するステップが、タワーの下端を旋回ツールに接続することと、タワーの上端をリフティングデバイスに取り付けることと、下端のあたりに上端を持ち上げることによってタワーをアップエンドすることと、を含む。
【0024】
実施形態では、方法は、タワーをその上端からアップエンドして持ち上げるために、リフティングデバイスをクレーンに接続すること、を更に含む。
【0025】
実施形態では、クレーンは、ジャッキアップ船又はDP重量物運搬船のうちの1つに提供されている。
【0026】
実施形態では、システムは、「フィーダ構成」で機能する2つの船を必要とし得る。この構成では、一方の船は、例えば、はしけ又は自己推進式輸送船などの輸送に使用されてもよく、他方の船は、ジャッキアップ又はDP重量物運搬船などの、アップエンディング及び設置に使用され得る。
【0027】
代替的な方法では、「直接ピックアップ構成」で機能する単一の船を使用してもよい。この構成では、設置船を使用して、積み込み港から水平タワーを積み込んでもよい。これには2つのシナリオが含まれる。
1.次に、タワーをアップエンディングして設置する前に、船はタワーを水平に設置場所まで輸送し、及び
2.船は、積み込み港でタワーをアップエンドし、デッキ上で垂直にして設置現場まで輸送し、設置する。
実施形態では、上述のいずれかのシナリオにおける設置船は、ジャッキアップ船又はDP重量物運搬船のいずれかであってもよい。
【0028】
実施形態では、タワーの上端をリフティングデバイスに取り付けるステップは、リフティングデバイス部分を、タワー上のフランジと係合することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
ここで、本発明の例示的実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。
図1】本発明の第1の実施形態による、輸送船に搭載されている風力タービンタワーを示す。
図2】第1の実施形態による、設置船によって風力タービンタワーがアップエンドされていることを示す。
図3】第2の実施形態で使用するアップエンディングバケットを示している。
図4】第2の実施形態で使用するためのリフティングツールを示す。
図5図4のリフティングツールを、リフティングシーケンスを通して示す。
【0030】
本発明の実施形態は、風力タービンタワーの背の高い部分の輸送を可能にし、結果として、風力タービンタワー製造業者が、基礎上に直接設置するための単一の溶接アイテムとして風力タービンタワーを製造することを可能にし得る。それだけではなく、本発明はまた、その後組み立てられるいくつかのセクションでタワーを製造する従来的な慣行と共に使用され得る。タワーを単一セクションとして製造する利点には、中間フランジとボルトの必要性を回避し、海への固定コストを削減し、橋の後方に新しい港を開き、フィーダ船の安定性を向上させることで物流を改善することを含む。しかしながら、単一のセクションタワーの作製には、はるかに長い製造及び保管スペースが必要となり、したがって、一部の状況では、岸壁組み立て用の複数のセクションでの製造が必要となる場合がある。この場合、タワーセクションは、水平に組み立てられ(従来の垂直組み立て方法とは対照的に)、各セクションは、ボルトを使用して隣接するセクションへの接続を容易にするためにフランジが提供され得る。代替的に、ボルト穴のないフランジは、隣接するセクションへの溶接のために提供されてもよい。いずれの例においても、フランジは、輸送及びアップエンディングの間のタワーセクションの断面剛性を改善するのに役立ち得る。フランジが構造的に必要とされず、従来の溶接接続で十分であり得ることも可能である。
【0031】
風力タービンタワーは、内陸部又はポートの近くに位置する製造施設で製造されてもよい。ウォータサイドの施設での製造は、道路輸送の必要性を回避し、それゆえにより大きなタワーの製作を可能にするため、望ましい。一旦製造されると、風力タービンタワーは、垂直配向ではなく水平に輸送船に搭載される。これは、各風力タービンタワーセクションをその垂直軸に沿って支持するための水平支持クレードルを船のデッキに提供することによって達成され、それによって荷重を拡散する。輸送船は、輸送はしけ又は船舶であってもよいが、ジャッキアップ船又はDP重量物運搬船も使用され得る。実施形態では、2つ以上の異なるタイプの輸送船を使用してもよい。
【0032】
図1は、第1の実施形態による輸送船6上に搭載された風力タービンタワー1を示す。この実施例では、2本のタワー1のみが示されているが、実際には輸送船6当たり3本以上のタワーの搭載が可能である。代替的に、単一のタワー1が、ナセル及び3枚のブレードのセットと共に搭載し得る。本実施形態において、各風力タービンタワー1には、設置されたときに、全体のうちのタワーを形成する単一の予め溶接された本体が設けられている。輸送船6は、はしけ(barge:荷船)6である。
【0033】
はしけ6は、岸に対して45度に設定されている、ランプ(ramp:傾斜台)13に隣接している岸壁2に着岸されている。しかし、港に依存して、例えば、ランプが90度に設定されているような、異なるランプ構成が使用される可能性があることが理解され得る。本実施形態では、2本の係船杭(mooring dolphins)11がはしけ6の係船を容易にするように示している。各風力タービン1は、図1(b)に示すように、複数の自己推進型モジュール式輸送機(SPMT)7を使用している、はしけ搭載ベッド又はデッキ3上に搭載されている。この実施例においては、風力タービンタワーの垂直軸に沿って、6個のSPMT7が、分布されて設けられている。他の実施形態においては、異なる数のSPMT7が使用可能である。図1(b)に示すように、SPMT7は、一斉に操作され、水平に搭載されたタワー1を岸壁2の端まで移動し、次にランプ13を介して、隣接するデッキ3の船尾に移動する。そのように、タワー1は、はしけ6上で効果的に転動することができる。代替の実施形態においては、クレーンが使用されて、タワーをはしけ6又は他の輸送船上に持ち上げて降ろす。
【0034】
図1(a)に示すように、船のデッキ3上に搭載されると、タワー1は、水平配向にあるときに、長手方向軸に沿ってタワーを支持するためのクレードル4の中に降ろすことができる。本実施形態において、タワー1の端は、設置されるとタワーの底部を形成し、アップエンディングヒンジ5に嵌合されるが、これについては、後で更に詳細に説明する。タワー1は、次に、設置場所への輸送のために、(必要に応じて)海上締結具を使用して更に固定することができる。有利なことには、タワー1の水平輸送は、垂直輸送に比較して改善された船の安定性を提供する。
【0035】
図2は、設置場所に到着したはしけ6を示す。設置船8は、準備のために設置場所に配置され、その後、はしけ6によってタワー1が供給されてもよい。同じはしけは、ナセルとブレードを設置船8に「供給」するためにも使用される。設置船8は、典型的にはジャッキアップ船であるが、簡素化のために船の一部のみが図2に示されている。
【0036】
はしけ6は、設置船8に隣接して位置決めされるので、設置船のクレーン9によるアクセスを可能にする。タワー1が、設置のために選択され、クレーン9が、リフティングツール10を使用して、タワーの上端へ、取り付けられる。上述したように、タワー1の下端は、タワー1が設けられ得る箇所周りの旋回(pivot)を提供するアップエンディングヒンジ5の中に嵌合する。本実施形態において、アップエンディングヒンジ5は、ジンバル(gimbal)の形態で設けられるが、他の設計コンセプトが同じ機能を実現するために可能である。
【0037】
本実施形態において、動き補償デバイス12は、クレーンフックとタワーリフティングツール10との間に嵌合され、クレーン9と、タワー1がはしけ6上にあるときのタワー1との間の相対運動を補償する。例えば、クレーン9に衝撃荷重が加えられるか、又ははしけ6が水中に移動するときにクレーンのワイヤーが垂直から離れすぎて引っ張られる危険性がある。実施形態において、動き補償デバイスは、能動的又は受動的なうねり補償器として提供されてもよい。
【0038】
リフティングツール10が取り付けられると、クレーン9は取り付けられたタワーの端を持ち上げ、タワー1が旋回部の上方で垂直になるまで横方向に回転(slew)し、それによってタワー1を水平配向から垂直配向にアップエンドする。代替的な実施形態において、クレーンブームを静止させたままにし、輸送船6を横方向に移動させることができる。この移行が完了すると、タワー1はクレーン9によって垂直に保持され、そこから輸送船6を避けて、予め設置された基礎の上に持ち上げることができる。
【0039】
図3は、第2の実施形態で使用する別のアップエンディング5を示している。この場合、バケット配置は、図1及び2に示すジンバルの代替として使用される。タワー1は、垂直配向への移行中に、タワー1が旋回されることができる、フレーム(図示せず)に接続された旋回軸受11を有する、バケット装置の中に、受容される。この配置を用いる実施形態では、例えば、アップエンディングヒンジ5は、タワーを船のエッジの上で旋回させ、それによって輸送デッキ3に対するクレーンの持ち上げ高さを最小化することができる。また当然のことながら、支持クレードル4に格納された各タワー1に対して、アップエンディングデバイスを提供するのではなく、単一のアップエンディングデバイス5を船に提供してもよく、タワー1は、各アップエンディング操作の前に、個別にデバイスの中に搭載される。
【0040】
図4は、第2の実施形態で使用するためのリフティングツール10の例を示す。示されるように、リフティングツール10は、タワー1の上端に嵌合し、タワー1の端に設けられた内部突出フランジの中に鍵挿入するように動作可能である。
【0041】
図5は、リフティングシーケンスを通した図4のリフティングツール10を示す。図5(a)に示すように、リフティングツール10は、その水平構成にあるときにタワー1の端に嵌合され、鍵挿入機構の動作によって定位置にロックされる。次に、図5(b)に示すように、クレーン9はリフティングツール10を垂直に持ち上げて、アップエンディングバケット5の周りでタワー1を旋回させ得る。このプロセスは、タワー1が図5(c)に示される垂直配向に到達するまで継続する。
【0042】
したがって、本発明の実施形態では、タワーは水平に輸送されるので、より長いセクションで製造されてもよい。同時に、タワーを輸送船に転動することができ、この段階では大型のクレーンの必要性を回避し、また岸壁での荷重要件を低減することができる。タワーはSPMTを介して輸送できるため、製造施設又は保管エリアは岸壁から離れてもよい。これらの要因により、港のリースコストが低減される。加えて、より低いコスト及びより速い輸送船を使用して、タワーセクションを設置現場に輸送することができるため、設置又はジャッキアップ船のコストも最小化され得る。
【0043】
更に、本発明の実施形態は、事前組み立ての港を完全に必要としない可能性がある。例えば、製造されたタワーは、製造現場から直接設置現場に出荷されてもよく、これは、港のリースコストを低減することによって、大幅なコスト削減を提供し得る。
【0044】
更に、従来のフィーダ構成を使用して従来のタワーを輸送することは、非常に遅いプロセスであることに留意されたい。具体的には、通常、タワーを3つの別々のタワーセクションで設置船に輸送する必要がある。これは、組み立てられた垂直タワーを輸送することが輸送はしけの安定性を過度に損なうためであり、また、水中のはしけの動きにより、組み立てられたタワーの上部を、設置船のクレーンを使用して持ち上げることも困難となるためである。設置現場では、設置用ジャッキアップ船は、各セクションを独立してジャッキアップデッキ上に持ち上げなければならず、その後、基礎を横切ってタワーセクションを持ち上げるために、船はジャッキアップ脚を使用して高く持ち上げなければならない。対照的に、本発明の実施形態は、完全に溶接された水平タワーを、単一の段階でジャッキアップ船によって上昇させ、基礎上に持ち上げることを可能にし得る。これにより、設置速度が大幅に改善され、その結果、船及び港のリースコストが低減される。
【0045】
上述の実施形態は、例示の目的のためにのみ本発明の適用を示すことが理解されよう。実際には、本発明は、多くの異なる構成に適用されてもよく、詳細な実施形態は、当業者にとって実施することが簡単である。
【0046】
例えば、上記の実施例では、タワーは単一の溶接された円筒として作製されるが、タワーはまた、複数のセクションから組み立てられてもよい。例えば、これは、タワー製作ホールが一体成形の溶接されたタワーを製造するのに十分長くない場合に、要求される場合がある。このシナリオでは、本発明の実施形態では、タワーセクションは、組み立てがマーシャリング港又は設置場所への輸送のために(ボルト締め、又は溶接、又は何らかの他の手段によってタワーセクションを水平に固定して)船に搭載される前に、水平組み立て治具上にセクションを整列させることによって水平に組み立てられ得る。
【0047】
更に、上記の実施例では、タワーは、はしけ又は輸送船を使用して設置場所へ輸送されるが、設置船自体(ジャッキアップ船又はDP重量物運搬船のいずれかであり得る)を使用して輸送されてもよい。こうしたシナリオでは、例えば、設置船の自身のクレーンを使用して、積み出し港のデッキ上にタワーを持ち上げることによって、タワーを設置船に積み出すことができる。この場合、複数のタワーを水平に設置船に積み込み、設置場所に輸送し、各設置位置で順番にアップエンドしてもよい。代替的に、設置船は、積み込み港でタワーをアップエンドし、デッキ上で垂直に設置場所に輸送し、通常通り設置することができる。
【0048】
更に、上述の実施例では、タワーは、長手方向構成で船上に運ばれる。しかしながら、タワーはまた、横方向に船のデッキ上に搭載されてもよいことが理解されよう。このシナリオでは、タワーの端は、船の側部を超えて延び、これは、任意の時点で輸送できるタワーの数を増加させることができる。輸送中にタワー1を積み重ねることによって、能力も増加させ得る。例えば、支持クレードル4の設計は、一度に2つ以上のタワー1を担持することができる多層輸送クレードルに発展され得る。そのような場合、単一のアップエンディングデバイスが船上に提供されてもよく、格納された個々のタワー1は、クレードル4から水平の方向に持ち上げられ、各アップエンディングデバイス動作のためにアップエンディングデバイスに搭載され得る。
【0049】
更に、上の例では、タワーはジャッキアップ船によってアップエンドされる。しかし、タワーを動的に位置付けられた重量物運搬船(DP HLV)によって、原則的にはアップエンドして、設置することも可能であり得る。ジャッキアップと同様に、この船は、「フィーダ構成」(はしけ又は輸送船が、設置場所に位置する設置船にタワーを運ぶ場合)、又は「直接ピックアップ構成」(DP重量物運搬船自体が積み込み港からタワーをピックアップし、設置場所に輸送させて設置する)のいずれかで機能する。これには、積み込み港でタワーをアップエンドし、デッキ上で垂直に輸送するか、又は水平に積み込み、輸送し、各設置位置でそれをアップエンドさせるかのいずれかが含まれ得る。
【0050】
更に、上述の例示的実施例では、動き補償デバイスは、クレーンフックとタワーリフティングツールとの間に提供されたが、動き補償デバイスは、例えば、動き補償プラットフォームの形態で、タワーのアップエンディング旋回部と輸送船との間に更に提供され得ることも理解され得る。
【0051】
上記に関連して、輸送船の移動により、完全に持ち上げられる前にタワーが衝突するリスクも存在する。これは、クイックリフト機能を提供する、すなわち、船からの最初のリフトの速度を増加させるための、クレーンフックとタワーリフティングツールとの間の動き補償デバイスによって対処され得る。
【0052】
更に、SPMTを使用して、タワーを輸送船に移動させるための輸送クレードルが提供され得ることも想定されている。実施形態では、このクレードルは、陸上保管中にタワーを支持するための多目的フレーム、SPMTへの荷重、及び洋上輸送として提供され得る。代替的に、異なるクレードルを異なる段階に使用してもよいが、タワーは各段階の開始時に異なるクレードル間で移動される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】