(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-04
(54)【発明の名称】クライメイトアイランド
(51)【国際特許分類】
F24F 13/068 20060101AFI20230828BHJP
【FI】
F24F13/068
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022581718
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 FR2021051215
(87)【国際公開番号】W WO2022003301
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523002460
【氏名又は名称】シェラー ジャン-マルク
(71)【出願人】
【識別番号】519060531
【氏名又は名称】ラング, ダミアン
【氏名又は名称原語表記】LANG, Damien
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】シェラー ジャン-マルク
(72)【発明者】
【氏名】ラング ダミアン
(57)【要約】
本発明は、熱放射及び対流による建物の加熱、冷却及び換気、ならびに部屋の音響処理のためのモジュラーアイランドシステムに関する。本発明によって、冷房でも暖房でも優れた熱的快適性(ドラフトがなく、占有容積内で温度が均一)を確保しながら、部屋(住居、アパート、建物、工場、スポーツホール、学校、病院など)の暖房、冷房、及び換気が可能になる。アイランドのモジュラーシステムを提案することによって、これらの欠点を克服することを提案する。このアイランドのモジュラーシステムは、垂直の壁に対して配置する必要がないため、天井の表面の一部にのみ固定することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の天井ディフューザの自動システムであって、前記システムは、熱放射及び対流によって前記部屋を加熱、冷却及び換気するのに適しており、前記システムは、前記部屋の天井から吊るされる少なくとも1つのモジュラーアイランドを備え、前記モジュラーアイランドは、
天井に対向するその下部に位置する延伸布(8)のような拡散要素の少なくとも1つ吊り線が設けられた周辺フレーム(1)であって、その面の1つ以上に、前記周辺フレーム(1)は前記部屋へ向けての空気排出スリット(2)を備える、周辺フレーム(1)と、
前記周辺フレームの前記吊り線に掛けられ、前記部屋から見え、前記モジュラーアイランドの水平下面を形成する、延伸布(8)のような拡散要素と、
天井に面する前記モジュラーアイランドの上面を形成するカバー(19)と、
前記モジュラーアイランドの前記カバー(18)に固定され、前記モジュラーアイランドの内部容積の中に処理済み空気を注入できるようにする空気排出接続出口(4)と、
上部多関節デフレクタ(11)と下部多関節デフレクタ(10)によって形成された、前記空気排出スリット(2)の高さで前記周辺フレーム(1)に固定され、冷気を前記アイランドに排出するときは0°、すなわち天井と平行な状態から、暖気を前記モジュラーアイランドに排出するときは最大70°まで変化する天井に対して所定の角度で排出された空気を向けることができる、多関節デフレクタ(10、11)のチャネルと、
作動ロッド(14)のようなデフレクタ作動手段によって前記多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルを作動させ、前記モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に応じた排出角度を前記チャネルに与えるためのサーモスタット作動手段(13)であって、前記サーモスタット作動手段(13)はピストンを備え、その出力ストロークは前記サーモスタット作動手段(13)が浸漬される空気温度に依存する、サーモスタット作動手段(13)と、
前記サーモスタット作動手段(13)の前記ピストンのストロークと反対の力を及ぼし、したがって、冷気を前記モジュラーアイランドに排出するときにその最小ストロークに戻すための戻しバネ(15)と、
を備え、
多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルは、前記チャネルに配置され、前記上部及び下部多関節デフレクタ(11及び10)を多関節点B及びCでそれぞれ連結する多関節平行度維持手段(12)を備え、多関節点A及びDの高さで前記周辺フレーム(1)に固定された前記上部及び下部多関節デフレクタ(11及び10)は、前記多関節平行度維持手段(12)の多関節点B及びCとともに、その対辺に平行性を課す平行四辺形A-B-C-Dを描くことを特徴とする、自動システム。
【請求項2】
前記自動システムは、
暖気を前記モジュラーアイランドに排出するときに、前記下部多関節デフレクタ(10)と前記上部多関節デフレクタ(11)との間に形成された多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルの断面は、前記多関節デフレクタの傾斜が水平面に対して増加すると減少し、暖房モードを助長するより高速の排出空気を生成するように、
冷気を前記モジュラーアイランドに排出するときに、前記下部多関節デフレクタ(10)と前記上部多関節デフレクタ(11)との間に形成された多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルの断面は、両方の前記多関節デフレクタ(10、11)が水平位置にあるとき最大チャネル断面まで増加し、冷房モードを助長する低速の空気を生成するように、構成されることを特徴とする、請求項1に記載の自動システム。
【請求項3】
前記モジュラーアイランドには、音響絶縁体(16)と、任意にマイクロ穿孔された延伸布(8)のような前記拡散要素とがさらに設けられ、前記部屋の音響処理が可能になることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動システム。
【請求項4】
前記モジュラーアイランドの上部カバー(19)に固定され、前記モジュラーアイランドの上部カバー(19)から前記部屋の周囲空気を吸引するフィルタ(6)を備える吸引ボックス(18)と連絡する空気吸引接続出口(3)をさらに備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の天井ディフューザ及び音響処理自動システム。
【請求項5】
前記空気吸引接続出口(3)は、前記部屋の周囲空気をファンコイルユニット又は空気注入ユニットなどの外気調整ユニットに搬送するように、空気吸引ダクトに接続されていることを特徴とする、請求項4に記載の自動システム。
【請求項6】
前記空気排出接続出口(4)を介して前記モジュラーアイランドの内部容積に注入される処理済み空気は、加熱又は冷却された周囲空気に相当し、任意に新鮮な換気空気と混合されることを特徴とする、請求項5に記載の自動システム。
【請求項7】
前記サーモスタット作動手段(13)は、前記モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に比例して、そのピストンのストロークを展開することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項8】
前記サーモスタット作動手段(13)を多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルに接続する前記デフレクタ作動手段(14)が、前記上部多関節デフレクタ(11)に固定され、それによって、前記多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルに、前記モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に応じた角度が与えられることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項9】
前記モジュラーアイランドには、前記モジュラーアイランド内に固定され、前記部屋の照明を可能にする少なくとも1つの光源(17)がさらに設けられ、前記光源(17)によって発生した光は、前記部屋から見える延伸布(8)などの前記拡散要素上に分配されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項10】
前記モジュラーアイランドには、延伸布(9)のような光拡散要素と、前記光源(17)の下方に位置する前記光拡散要素(9)を掛けることのできる前記周辺フレーム(1)の上部吊り線とがさらに設けられることを特徴とする、請求項9に記載の自動システム。
【請求項11】
前記下部多関節デフレクタ(10)は、前記光源(17)を見えなくするように、及び/又は排出スリット(2)を通って光が出るのを禁止するように、光バリアとして機能することを特徴とする、請求項9又は10に記載の自動システム。
【請求項12】
前記モジュラーアイランドは、前記部屋の天井に固定することができる吊りハンガー(7)又は他の固定手段を備えることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項13】
前記サーモスタット作動手段(13)は、シリンダであることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項14】
複数のモジュラーアイランドが互いに連結されているので、各モジュラーアイランドの前記周辺フレーム(1)の短辺(23及び24)に配置されたモジュール間接続スリット(5)を介して、処理済み空気が1つのモジュラーアイランドから他のモジュラーアイランドに循環することを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項15】
熱放射及び対流によって部屋を加熱、冷却及び換気するためのモジュラーアイランドであって、前記モジュラーアイランドは部屋の天井から吊り下げ可能であり、前記モジュラーアイランドは、
天井に対向するその下部に位置する延伸布(8)のような拡散要素の少なくとも1つ吊り線が設けられた周辺フレーム(1)であって、その面の1つ以上に、前記周辺フレーム(1)は前記部屋へ向けての空気排出スリット(2)を備える、周辺フレーム(1)と、
前記周辺フレームの前記吊り線に掛けられ、前記部屋から見え、前記モジュラーアイランドの水平下面を形成する、延伸布(8)のような拡散要素と、
天井に面する前記モジュラーアイランドの上面を形成するカバー(19)と、
前記モジュラーアイランドの前記カバー(18)に固定され、前記モジュラーアイランドの内部容積の中に処理済み空気を注入できるようにする空気排出接続出口(4)と、
上部多関節デフレクタ(11)と下部多関節デフレクタ(10)によって形成され、前記空気排出スリット(2)の高さで前記周辺フレーム(1)に固定され、冷気を前記アイランドに排出するときは0°、すなわち天井と平行な状態から、暖気を前記モジュラーアイランドに排出するときは最大70°まで変化する天井に対して所定の角度で排出される空気を向けることができる、多関節デフレクタ(10、11)のチャネルと、
作動ロッド(14)のようなデフレクタ作動手段によって多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルを作動させ、前記モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に応じた排出角度を前記チャネルに与えるためのサーモスタット作動手段(13)であって、前記サーモスタット作動手段(13)はピストンを備え、その出力ストロークは前記サーモスタット作動手段(13)が浸漬される空気温度に依存する、サーモスタット作動手段(13)と、
前記サーモスタット作動手段(13)の前記ピストンのストロークと反対の力を及ぼし、したがって、冷気を前記モジュラーアイランドに排出するときにその最小ストロークに戻すための戻しバネ(15)と、
を備え、
多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルは、前記チャネルに配置され、前記上部及び下部多関節デフレクタ(11及び10)を多関節点B及びCでそれぞれ連結する多関節平行度維持手段(12)を備え、多関節点A及びDの高さで前記周辺フレーム(1)に固定された前記上部及び下部多関節デフレクタ(11及び10)は、前記多関節平行度維持手段(12)の多関節点B及びCとともに、その対辺に平行性を課す平行四辺形A-B-C-Dを描くことを特徴とする、モジュラーアイランド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱放射と熱対流によって建物の加熱、冷却、換気と、部屋の音響処理とを行うためのモジュラーアイランドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
処理済み空気(加熱又は冷却された空気と換気空気)を所定の角度で部屋に向かって排出するグリル形の天井ディフューザが知られている。
【0003】
中には、天井に向けて水平に排出するものもあり、冷房には適しているが(周囲の空気より密度の高い冷気が自然に部屋に向かって降りてくる)、暖房ではあまり効率が良くない(周囲の空気より密度の低い暖気が部屋の上部に停滞し、成層現象を発生させる)。
【0004】
中には、天井に垂直に空気を排出するものもあり、これは暖房には適しているが(周囲の空気より密度の低い暖気が部屋の上部に滞留して成層化するのを避けるために下向きに排出する必要がある)、冷房では非常に不快である(周囲の空気より密度の高い冷気が部屋の方へ高速で落下してドラフト現象を発生させる)。
【0005】
中には、暖房にも冷房にも適するように、天井に対して所定の角度(例えば45°)で部屋の方向に排出するものもあるが、2つのモードのいずれにおいても拡散の効率は最適ではなく、したがって一般的な快適さは非常に近似している。
【0006】
穿孔された天井又はモジュールも知られており、穿孔を使用して、処理済み空気を非常に低速で部屋に向かって垂直に排出する。この技術は冷房モードには適しているが、暖房モードでは非常に非効率的である。実際、周囲の空気より密度が低い暖気は、部屋の床に到達するのに十分な運動エネルギーを利用して、成層現象を回避するために、一定の速度で排出する必要がある。
【0007】
オフィス又は店舗に多く設置されている天井カセットも知られており、外周に電動式の拡散フィンが設けられ、室内への空気排出角度を調整できるようになっている。その欠点は、排出される空気の温度に応じて毎日ユーザが拡散角度を調整する必要があることで、実際には、これを達成するのは非常に困難である。
【0008】
上記のプロセスは、いずれも空気排出、つまり対流を利用して熱電力を100%伝達していることに留意すべきである。そのため、高い風量(すなわち、風速)を必要とし、排出される空気の温度も部屋内の環境温度からかなり離れているため、部屋の中で熱的不快感が生じる。
【0009】
輻射式パネルのように知られている他のプロセスは、熱放射を利用して有用な熱電力を100%拡散させる。これは、モジュールの形で提供することができ、モジュールの下部にある熱放射を透過する多孔板とモジュール内部に置かれた防音材によって、部屋の音響を処理する可能性を有するものもある。熱放射のみを拡散ベクトルとするこのプロセスは、パネル表面で露点に達するため結露が発生する危険性があり、冷却能力は非常に限られている。
【0010】
チルドビームも知られており、このプロセスでは、熱交換器を使用して、周囲の空気と接触させて、誘導気流、つまり、対流が発生する。誘導気流の速度が遅いため、このプロセスは満足のいく性能を得ることができるが、冷房モードでのみ有効である。
【0011】
最後に、特許文献1(Jean- Marc SCHERRER[仏国]、Damien LANG[仏国])に記載されているBarrisol Clim(商標)デバイスが知られている。このデバイスは、先に述べたプロセスとは逆に、対流と輻射の両方を用いて熱パワーを拡散させるものである。(部屋の壁に沿った)頭頂部で空気が拡散するので、冷房モードと同様に暖房モードでも非常に快適で、ドラフトの現象を回避し、部屋の容積占有内で温度の非常に優れた均一性というメリットを得ることができる。それでも、サービス対象の部屋の天井の部屋の全体表面に設置する必要があるため、オフィスなどの間仕切りの変更によって部屋を頻繁に再区画する必要がある建物では、柔軟性が低下する。
【0012】
特許文献2(SURMINSKI DAVID MARK[カナダ]、他)には、エアプレナムを支持するためのフレームと下部ハウジングとを有する統合照明を備えた層流ディフューザが記載されている。エアプレナムは、空調源から空調された空気を受け取る。下部ハウジングは、プレナムの底面に取り付けられている。上部プレナムの下に設置された絞り板ダンパーは、プレナムから層流ディフューザを通過する気流を調整する。透明又は半透明の穿孔されたディフューザ面は、下部ハウジングから下の部屋への出口を形成する。LEDストリップは、下部ハウジングの内周に配置されている。穿孔された反射パネルは、絞り板ダンパーの下方でLEDストリップの上方に配置され、穿孔されたディフューザ面を通してLEDストリップからの光を拡散させる。
【0013】
一方、特許文献3(ヂーゼル機器株式会社)は、水素吸蔵合金により感熱部を形成し、水素圧によりアクチュエータを動作させるプロセスにより、駆動電源の廃止、部品点数の削減、モータの駆動音防止を可能とすることを目的としている。空気排出ダクト内に排出される空気の温度を上げると、水素が水素吸蔵合金から放出され、パイプ及びアクチュエータ内の水素圧が上昇する。この水素圧の上昇によりベローズからなるアクチュエータが伸び、ロッドが上方に移動し、各フラップが下方に向くように調整される。一方、ダクト内に排出される空気の温度を下げると、水素が水素吸蔵合金に吸蔵されるため、パイプ及びアクチュエータ内の油圧が低下し、アクチュエータが収縮してロッドが下方に移動する。各フラップは、上向きに配置されている。高温と低温との中間温度では、水素吸蔵合金の水素吸蔵放出特性に対応して、各フラップの角度をリニアに制御する。
【0014】
特許文献4(BERTIN MANNIE、他)は、閉じた底部を支持する側壁を確立する複数の相互接続されたモジュールを有し、それによって出口が取り付けフレームに接続される空調用の出口を記載している。各モジュールは、上下の側面要素と端部要素とからなる支持フレームを有し、それぞれ外壁と内側に配置された壁を提供する押出材の長さである。フレーム同士を同一平面内又は直角に縦方向又は横方向に連結する手段を設け、気密性の高いジョイントを実現する。
【0015】
一般に、高い冷却能力と快適性(ドラフトがなく、部屋内の温度が均一)を両立させるためには、放射と対流(室内に空気を送り込む)の両方で熱拡散させるデバイスが必要である。
【0016】
熱対流で拡散させる能力については、ドラフトを避けるために、冷気を天井に平行に、低速の拡散させることが重要である。
【0017】
暖房用空気はと言えば、成層現象を避けるのに十分な範囲を確保するために、部屋の床に向かって、より高速で拡散させる必要がある。
【0018】
最後に、部屋の天井の表面全体に設置しなければならないという欠点を持つ上記のBarrisol Clim(商標)デバイスを除き、拡散システムは、部屋の冷暖房に必要な熱力の拡散ベクトルとして熱対流又は熱放射を使用しており、強力な冷却能力と満足できる熱快適性を調和させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2018/037184号
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/003450号明細書
【特許文献3】特開平02-068445公報
【特許文献4】米国特許第3937133号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明によって、冷房でも暖房でも優れた熱快適性(ドラフトがなく、占有容積内で温度が均一)を確保しながら、部屋(住居、アパート、建物、工場、スポーツホール、学校、病院など)の暖房、冷房、及び換気が可能になる。アイランドのモジュラーシステムを提案することによって、これらの欠点を克服することを提案する。このアイランドのモジュラーシステムは、垂直の壁に対して配置する必要がないため、天井の表面の一部にのみ固定することができる。
【0021】
本発明の目的の1つは、非常に高い効率、高い許容熱出力、及び温度の均一性があり、通風がないことから生じる優れた熱快適性で、部屋を加熱又は冷却することを可能にする放射及び対流システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
特に、本発明は、部屋の天井ディフューザの自動システムに関し、前記システムは、熱放射及び対流によって前記部屋を加熱、冷却及び換気するのに適しており、前記システムは、部屋の天井から吊るされる少なくとも1つのモジュラーアイランドを備え、前記モジュラーアイランドは、
天井に対向するその下部に位置する延伸布のような拡散要素の少なくとも1つの吊り線が設けられた周辺フレームであって、その面の1つ以上に、前記周辺フレームは部屋へ向けての空気排出スリットを備える、周辺フレームと、
周辺フレームの吊り線に掛けられ、部屋から見え、前記モジュラーアイランドの水平下面を形成する、延伸布のような拡散要素と、
天井に面するモジュラーアイランドの上面を形成するカバーと、
モジュラーアイランドのカバーに固定され、モジュラーアイランドの内部容積の中に処理済み空気を注入できるようにする空気排出接続出口と、
上部多関節デフレクタと下部多関節デフレクタによって形成され、空気排出スリットの高さで周辺フレームに固定され、冷気をアイランドに排出するときは0°、すなわち天井と平行な状態から、暖気をモジュラーアイランドに排出するときは最大70°まで変化する天井に対して所定の角度で排出された空気を向けることができる、多関節デフレクタのチャネルと、
作動ロッドのようなデフレクタ作動手段によって多関節デフレクタの前記チャネルを作動させることができ、モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に応じた排出角度をチャネルに与えるためのサーモスタット作動手段であって、前記サーモスタット作動手段はピストンを備え、その出力ストロークは前記サーモスタット作動手段が浸漬される空気温度に依存する、サーモスタット作動手段と、
前記サーモスタット作動手段のピストンのストロークと反対の力を及ぼし、したがって、冷気をモジュラーアイランドに排出するときにその最小ストロークに戻すための戻しバネと、
を備え、
多関節デフレクタの前記チャネルは、前記チャネルに配置され、前記上部及び下部多関節デフレクタを多関節点B及びCでそれぞれ連結する多関節平行度維持手段を備え、多関節点A及びDの高さで周辺フレームに固定された前記上部及び下部多関節デフレクタは、多関節平行度維持手段の多関節点B及びCとともに、その対辺に平行性を課す平行四辺形A-B-C-Dを描くことを特徴とする。
【0023】
本発明は、また、熱放射及び対流によって部屋を加熱、冷却、及び換気するためのモジュラーアイランドを提案し、前記モジュラーアイランドは、部屋の天井から吊り下げ可能であり、このモジュラーアイランドは、
天井に対向するその下部に位置する延伸布のような拡散要素の少なくとも1つの吊り線が設けられた周辺フレームであって、その面の1つ以上に、前記周辺フレームは部屋へ向けた空気排出スリットを備える、周辺フレームと、
周辺フレームの吊り線に掛けられ、部屋から見え、前記モジュラーアイランドの水平下面を形成する、延伸布のような拡散要素と、
天井に面するモジュラーアイランドの上面を形成するカバーと、
モジュラーアイランドのカバーに固定され、モジュラーアイランドの内部容積の中に処理済み空気を注入できるようにする空気排出接続出口と、
上部多関節デフレクタと下部多関節デフレクタによって形成され、空気排出スリットの高さで周辺フレームに固定され、冷気をアイランドに排出するときは0°、すなわち天井と平行な状態から、暖気をモジュラーアイランドに排出するときは最大70°まで変化する天井に対して所定の角度で排出された空気を向けることができる、多関節デフレクタのチャネルと、
作動ロッドのようなデフレクタ作動手段によって多関節デフレクタの前記チャネルを作動させることができ、モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に応じた排出角度をチャネルに与えるためのサーモスタット作動手段であって、前記サーモスタット作動手段はピストンを備え、その出力ストロークは前記サーモスタット作動手段が浸漬される空気温度に依存する、サーモスタット作動手段と、
前記サーモスタット作動手段のピストンのストロークと反対の力を及ぼし、したがって、冷気をモジュラーアイランドに排出するときにその最小ストロークに戻すための戻しバネと、
を備え、
多関節デフレクタの前記チャネルは、前記チャネルに配置され、前記上部及び下部多関節デフレクタを多関節点B及びCでそれぞれ連結する多関節平行度維持手段を備え、多関節点A及びDの高さで周辺フレームに固定された前記上部及び下部多関節デフレクタは、多関節平行度維持手段の多関節点B及びCとともに、その対辺に平行性を課す平行四辺形A-B-C-Dを描くことを特徴とする。
【0024】
本発明による構成要素のその他の予想外の利点は、本発明の詳細な説明及び実施例を読むことで、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の実施例は、添付の図によって示される説明に示される。
【0026】
【
図1】本発明に係るモジュラーアイランドの一例を示す。
【
図2】公称冷却条件下で動作させる際のモジュラーアイランドの断面詳細図を示す。
【
図3】公称加熱条件で動作するモジュラーアイランドの断面詳細図を示す。
【
図4】加熱又は冷却の中間条件で動作するモジュラーアイランドの断面詳細図を示す。
【
図6】互いに連結された2つのモジュラーアイランドの透視図を示す。
【
図7】互いに連結された2つのモジュラーアイランドの上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上述したように、部屋の暖房及び冷房に必要な熱力を輻射と熱対流の組み合わせで拡散させることができれば、部屋の中で最高の熱快適性を得ることができる。
【0028】
一方、拡散した対流力は、排出された空気がその温度に応じて方向性を決めないと、不快感(ドラフト)や非効率(成層化)の原因となることがある。さらに、暖気は、十分な運動エネルギーの恩恵を受けて部屋の床に到達するために、高速で排出する必要がある。これは、冷気が、周囲の空気よりも密度が高く、部屋の床に向かって自然に落ちるため、ドラフト現象を避けるために低速で排出する必要があるのとは異なる。
【0029】
また、オフィスの空間などの多くの建物や部屋では、パーティションの変更によって空間の配置を変える対象となることが多くスペースのモジュール性を可能にする柔軟性が必要である。
【0030】
このように説明された発明は、熱放射と対流で動作し、部屋に排出される空気の流れの向きと速度を自動的に適応させることができる(したがって、ユーザの側で何もしなくても)モジュラーアイランドによって、これらの制約すべてを満たすことを提案し、モジュラーアイランド又はモジュラーアイランドのセットは、垂直壁に連結される必要なしに天井面の一部のみを占める。
【0031】
実際には、ここに記載したものと同様又は同等の方法及び材料を用いることができるが、適切な方法及び材料について、以下で説明する。本明細書に記載されたすべての刊行物、特許出願、特許及びその他の参考文献は、参照することによりその全体が組み込まれるものとする。さらに、記載された材料、方法及び実施形態は例示に過ぎず、限定することを意図していない。
【0032】
矛盾が生じる場合は、定義を含む本説明が優先されるものとする。本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、他に定義されない限り、本主題が属する分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書では、本発明の理解を容易にするために、以下のような定義をしている。
【0033】
「備える」又は「備えている」という用語は、一般的に、含むという意味で、すなわち、1つ以上の特徴又は構成要素の存在を許容するという意味で使用される。
【0034】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの」及び「その」は、文脈から他に示されない限り、複数の参照を含む。
【0035】
「処理済み空気」とは、(部屋の冷却又は加熱の要求を満たすように)冷却又は加熱される空気を意味し、部屋の衛生的な換気を確保するために新鮮な外気の供給がもたらされる。
【0036】
原則として、「冷気」は20℃までの温度を、「暖気」は20℃を超える温度を意味する。
【0037】
本発明は、部屋の天井ディフューザの自動システムを提供することを提案し、前記システムは、熱放射及び対流によって前記部屋を加熱、冷却及び換気するのに適しており、前記システムは、前記部屋の天井から吊るされる少なくとも1つのモジュラーアイランドを備え、前記モジュラーアイランドは、
天井に対向するその下部に位置する延伸布(8)のような拡散要素の少なくとも1つ吊り線が設けられた周辺フレーム(1)であって、その面の1つ以上に、前記周辺フレーム(1)は部屋へ向けての空気排出スリット(2)を備える、周辺フレーム(1)と、
周辺フレームの吊り線に掛けられ、部屋から見え、前記モジュラーアイランドの水平下面を形成する、延伸布(8)のような拡散要素と、
天井に面するモジュラーアイランドの上面を形成するカバー(19)と、
モジュラーアイランドのカバー(18)に固定され、モジュラーアイランドの内部容積の中に処理済み空気を注入できるようにする空気排出接続出口(4)と、
上部多関節デフレクタ(11)と下部多関節デフレクタ(10)によって形成され、空気排出スリット(2)の高さで周辺フレーム(1)に固定され、冷気をアイランドに排出するときは0°、すなわち天井と平行な状態から、暖気をモジュラーアイランドに排出するときは最大70°まで変化する天井に対して所定の角度で排出された空気を向けることができる、多関節デフレクタ(10、11)のチャネルと、
作動ロッド(14)のようなデフレクタ作動手段によって多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルを作動させることができ、モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に応じた排出角度をチャネルに与えるためのサーモスタット作動手段(13)であって、前記サーモスタット作動手段(13)はピストンを備え、その出力ストロークは前記サーモスタット作動手段(13)が浸漬される空気温度に依存する、サーモスタット作動手段(13)と、
前記サーモスタット作動手段(13)のピストンのストロークと反対の力を及ぼし、したがって、冷気をモジュラーアイランドに排出するときにその最小ストロークに戻すための戻しバネ(15)と、
を備え、
多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルは、前記チャネルに配置され、前記上部及び下部多関節デフレクタ(11、10)を多関節点B及びCでそれぞれ連結する多関節平行度維持手段(12)を備え、多関節点A及びDの高さで周辺フレーム(1)に固定された前記上部及び下部多関節デフレクタ(11、10)は、多関節平行度維持手段(12)の多関節点B及びCとともに、その対辺に平行性を課す平行四辺形A-B-C-Dを描く。
【0038】
本発明の実施形態によれば、前記自動システムは、
暖気をモジュラーアイランドに排出するとき、下部多関節デフレクタ(10)と上部多関節デフレクタ(11)との間に形成された多関節デフレクタ(10、11)のチャネルの断面は、多関節デフレクタの傾斜が水平面に対して増加すると減少し、暖房モードを助長するより高速の排出空気を生成するように、
冷気を前記モジュラーアイランドに排出するときに、下部多関節デフレクタ(10)と上部多関節デフレクタ(11)との間に形成された多関節デフレクタ(10、11)のチャネルの断面は、両方の多関節デフレクタ(10、11)が水平位置にあるとき最大チャネル断面まで増加し、冷房モードを助長する低速の空気を生成するように、構成される。
【0039】
好ましくは、前記モジュラーアイランドには、音響絶縁体(16)と、任意にマイクロ穿孔された延伸布(8)のような前記拡散要素とがさらに設けられ、部屋の音響処理が可能になる。
【0040】
有利なことに、前記天井ディフューザ及び音響処理自動システムは、モジュラーアイランドの上部カバー(19)に固定され、前記モジュラーアイランドの上部カバー(19)から部屋の周囲空気を吸引するフィルタ(6)を備える吸引ボックス(18)と連絡する空気吸引接続出口(3)をさらに備える。
【0041】
好ましくは、前記空気吸引接続出口(3)は、部屋の周囲空気をファンコイルユニット又は空気注入ユニットなどの外気調整ユニットに搬送するように、空気吸引ダクトに接続されている。
【0042】
有利なことに、空気排出接続出口(4)を介してモジュラーアイランドの内部容積に注入される処理済み空気は、加熱又は冷却された周囲空気に相当し、任意に新鮮な換気空気と混合される。
【0043】
一実施形態によれば、前記サーモスタット作動手段(13)は、モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に比例して、そのピストンのストロークを展開する。
【0044】
別の実施形態によれば、サーモスタット作動手段(13)を多関節デフレクタ(10、11)のチャネルに接続する前記デフレクタ作動手段(14)が、前記上部多関節デフレクタ(11)に取り付けられ、それによって多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルに、モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に応じた角度が与えられる。
【0045】
有利なことに、モジュラーアイランドには、モジュラーアイランド内に固定され、部屋の照明を可能にする少なくとも1つの光源(17)がさらに設けられ、光源(17)によって発生した光は、部屋から見える延伸布(8)などの前記拡散要素上に分配される。
【0046】
好ましい実施形態によれば、モジュラーアイランドには、延伸布(9)のような光拡散要素と、光源(17)の下方に位置する光拡散要素(9)を掛けることのできる周辺フレーム(1)の上部吊り線とがさらに設けられる。
【0047】
有利なことに、前記下部多関節デフレクタ(10)は、光源(17)を見えなくするように、及び/又は排出スリット(2)を通って光が出るのを禁止するように、光バリアとして機能する。
【0048】
別の実施形態によれば、前記モジュラーアイランドは、部屋の天井に固定することができる吊りハンガー(7)又は他の固定手段を備える。
【0049】
好ましい実施形態によれば、前記サーモスタット作動手段(13)は、シリンダである。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、複数のモジュラーアイランドが互いに連結されているので、各モジュラーアイランドの周辺フレーム(1)の短辺(23及び24)に配置されたモジュール間接続スリット(5)を介して、処理済み空気が1つのモジュラーアイランドから他のモジュラーアイランドに循環することができるようになっている。
【0051】
本発明のさらなる目的は、熱放射及び対流によって部屋を加熱、冷却及び換気するためのモジュラーアイランドを提供することであり、前記モジュラーアイランドは部屋の天井から吊り下げ可能であり、前記モジュラーアイランドは、
天井に対向するその下部に位置する延伸布(8)のような拡散要素の少なくとも1つ吊り線が設けられた周辺フレーム(1)であって、その面の1つ以上に、前記周辺フレーム(1)は部屋へ向けての空気排出スリット(2)を備える、周辺フレーム(1)と、
周辺フレームの吊り線に掛けられ、部屋から見え、前記モジュラーアイランドの水平下面を形成する、延伸布(8)のような拡散要素と、
天井に面するモジュラーアイランドの上面を形成するカバー(19)と、
モジュラーアイランドのカバー(18)に固定され、モジュラーアイランドの内部容積の中に処理済み空気を注入できるようにする空気排出接続出口(4)と、
上部多関節デフレクタ(11)と下部多関節デフレクタ(10)によって形成され、空気排出スリット(2)の高さで周辺フレーム(1)に固定され、冷気をアイランドに排出するときは0°、すなわち天井と平行な状態から、暖気をモジュラーアイランドに排出するときは最大70°まで変化する天井に対して所定の角度で排出された空気を向けることができる、多関節デフレクタ(10、11)のチャネルと、
作動ロッド(14)のようなデフレクタ作動手段によって多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルを作動させ、モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に応じた排出角度をチャネルに与えるためのサーモスタット作動手段(13)であって、前記サーモスタット作動手段(13)はピストンを備え、その出力ストロークは前記サーモスタット作動手段(13)が浸漬される空気温度に依存する、サーモスタット作動手段(13)と、
前記サーモスタット作動手段(13)のピストンのストロークと反対の力を及ぼし、したがって、冷気をモジュラーアイランドに排出するときにその最小ストロークに戻すための戻しバネ(15)と、
を備え、
多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルは、前記チャネルに配置され、前記上部及び下部多関節デフレクタ(11、10)を多関節点B及びCでそれぞれ連結する多関節平行度維持手段(12)を備え、多関節点A及びDの高さで周辺フレーム(1)に固定された前記上部及び下部多関節デフレクタ(11、10)は、多関節平行度維持手段(12)の多関節点B及びCとともに、その対辺に平行性を課す平行四辺形A-B-C-Dを描く。
【0052】
説明された本発明は、放射及び対流の両方によって提供される部屋に向かっての熱拡散を可能にするという特別な利点を有する。実際、モジュラーアイランドに注入された処理空気(高温又は低温)の流れの影響を受けて、拡散面(8)(理想的には延伸布)が加熱又は冷却され、部屋に向かって熱放射を発生させるようになる。また、パイロットモジュール内に注入された処理済み空気は、熱エネルギーの一部を拡散面に与えた後、排出スリット(2)より室内に向けて熱対流により拡散する。
【0053】
さらに、デフレクタ(10、11)の多関節チャネルにあるサーモスタット作動手段(13)(たとえば恒温シリンダ)のおかげで、このソリューションでは、処理済み空気流の温度に応じてスリット(2)により排出される空気流(対流力)の方向付けが可能である。したがって、冷気をモジュラーアイランドに注入するとき(冷房モード)、天井に平行に、理想的には0°(サーモスタット作動手段(13)の最小ストローク)で排出し、逆に、暖気をモジュラーアイランドに注入するとき(暖房モード)、成層現象をなくすために、部屋の方向(理想的には45°)に排出することになる。
【0054】
最後に、関節部(理想的にはデフレクタの高さで平行四辺形を形成)に基づいて使用される形状は、排出スリット(2)の断面を変化させることができ、したがって、冷房モードでは、水平位置にあるデフレクタ(又はフィン)は、スリット(2)の最大断面を生成するので、低速の空気を生成し、逆に、暖房モードでは、スリット(2)の断面は、最大に縮小されるので、排出される空気の速度、したがって、空気流の範囲を増加させることができる。本発明によるシステムによって、空気排出スリット(2)に、したがってデフレクタ(10、11)の多関節チャネルに、その流れを方向づけ、その断面を変化させるように作用させることが可能になる。
【0055】
特に、
図1において、建物の部屋を加熱及び/又は冷却、及び換気するためのモジュラーアイランド要素が提案されており、このモジュラーアイランド要素は、ハンガー(7)を介して前記天井から吊り下げられると、
部屋の周囲空気を空調装置、例えば、ファンコイル又は空気処理ユニットに搬送するように、空気吸引ダクトに接続できる接続出口(3)を備え、
部屋から吸引された空気は、モジュラーアイランドの上部カバー(19)に固定された密閉型フィルタ保持吸引ボックス(18)を介して、フィルタ(6)を理想的には通過し(
図5を参照)、
加熱又は冷却され、オプションで新鮮な換気空気と混合された(モジュラーアイランドが部屋の換気システムにも接続されている場合)処理空気は、排出ダクトの接続出口(4)からアイランドの容積内に注入され、
アイランドに注入される処理済み空気の温度に応じて、サーモスタットシリンダ(13)(又は同じ目的を果たす他の機器)は、注入された空気の温度に比例して、そのピストンのストロークを展開する(
図2、3、4参照)。
【0056】
したがって、空気が高温になるほど、ストロークは大きくなり、その逆も同様であり、
戻しバネ(15)によって、サーモスタットシリンダ(13)のストロークに対抗する力が可能になり、冷気をアイランド内に排出するときに、サーモスタットシリンダを最小ストロークに戻し、
サーモスタットシリンダ(13)は、多関節デフレクタ(10、11)のチャネルに接続された作動ロッド(又はリンク)のような排出デフレクタ(14)の作動手段を作動させ、デフレクタ(10、11)にモジュラーアイランドに注入される処理空気の温度に応じた角度を与え、どのような角度であっても、周辺フレーム(1)に固定された多関節デフレクタ、理想的には上部と下部の2つのデフレクタ(10と11)は、例えば、デフレクタの平行を維持する多関節手段、例えば、デフレクタを多義に連結する多関節ロッド(12)により平行を維持し、実際、デフレクタ(理想的には2つのデフレクタ10と11)、周辺フレーム(1)、デフレクタの平行性を維持するための連結手段(12)間の多関節点は、理想的には平行四辺形A-B-C-Dを描き(
図2、3、4参照)、
モジュラーアイランドに注入された処理済み空気は、排出スリット(2)を介して、サーモスタットシリンダ(13)によって作動するデフレクタ自体の角度と同じ角度で部屋に向かって排出され、したがって、最高の熱快適性を達成するために傾斜を考慮して自動的に適応され、
デフレクタの形状(理想的には平行四辺形A-B-C-D)の特性により、デフレクタ(理想的には下部デフレクタ(10)と上部デフレクタ(11)と)の間の空気通路の断面は、水平面に対する傾斜が増加すると減少し、そのため、非常に冷たい空気が注入されると(
図2)、スリットの断面が最大となり(デフレクタは理想的な水平位置)、冷房モードでの快適性に寄与する低速の空気を発生させることができる。逆に、高温の空気をアイランドに排出するとき(
図3)、スリットの断面が小さくなり、排出速度が速くなり、暖房モードとなる。
【0057】
このように、本発明は、モジュラーアイランドに注入する空気の温度に応じて、処理済み空気を部屋に向けて排出する角度と速度とを自動的に変化させることを可能にする。
【0058】
有利なことに、モジュラーアイランドには、音響絶縁体(16)だけでなく、マイクロ穿孔された拡散要素(8)(例えば、延伸布)が設けられ、こうして、部屋の音響処理が可能になる。
【0059】
好ましくは、アイランドには、光拡散要素(理想的には延伸布)(9)と、例えば、その周辺部又はカバー(19)の下面又は絶縁体(16)に固定された光源(17)とが設けられ、部屋から見える拡散要素(8)(理想的には延伸布)上に分布する光を介して部屋を照明することができるようにされる。
【0060】
有利なことに、下部多関節デフレクタ(11)は、排出スリット(2)を通って光が出るのを禁止するように、光バリアとして機能する。
【0061】
特定の実施態様によれば、上述したモジュラーアイランドは、部屋への空気の供給のみを生成するように、空気吸引出口、ボックス及び濾過装置を含まない。この場合、本発明とは独立した装置を介して空気を吸引する。
【0062】
本発明の特定の実施態様によれば、より大きな発光面を生成するために、いくつかのモジュラーアイランドを連結させて配置することができる。この場合、例えば、各モジュラーアイランドの短辺に配置された接続スリット(5)により、アイランド内に排出された処理済み空気を一方のモジュラーアイランドから他方のモジュラーアイランドに循環させることができる。これらの接続スリット(5)は、当然、モジュラーアイランドの長辺に配置することもでき、その場合、部屋(2)への排出スリットは短辺に配置されることになる。
【0063】
このため、各モジュラーアイランドの接続スリットは、理想的にはモジュール間接続スリット(5)を含む側でアイランド同士を連結することによって、互いに接続される。
【0064】
複数のモジュラーアイランドが連結されている場合(
図6と
図7参照)、例えば、2つのモジュラーアイランド(20と21)が連結されている場合、それらの隣接する短辺(23と24)には、一方のモジュラーアイランドから他方への処理済み空気の通過を可能にする接続スリット(5)が設けられる。得られた構造体(22と25)の端に位置する短辺は、こうして、接続スリット(5)がないか、その接続スリット(5)がこの目的に適した任意の手段で閉鎖される。
【0065】
当然、本発明の別の実施形態によれば、2つを超えるモジュラーアイランドを連結することも可能であり、例えば、3つ又は4つ以上を連結することも可能である。この場合、得られる構造体の両端の短辺(22、25)にも、接続スリット(5)が設けられる。
【0066】
一方、単独で使用されるモジュラーアイランドは、すなわち、他のモジュラーアイランドと連結されていないモジュラーアイランドは、その短辺に接続スリット(5)を有さないか、又はその短辺の接続スリットがこの用途を満たすことができる何らかの手段によって閉じられている。
【符号の説明】
【0067】
1:モジュラーアイランドの外周フレーム
2:部屋への排出スリット
3:空気吸引ダクト接続出口
4:空気排出ダクト接続出口
5:モジュール間接続スリット
6:フィルタ
7:モジュラーアイランドの吊りハンガー
8:拡散要素、例えば、部屋から見える延伸布
9:光拡散要素、例えば、LED内蔵の場合、光の均質な拡散のための延伸布
10:空気排出の下部多関節デフレクタ
11:空気排出の上部多関節デフレクタ
12:デフレクタの平行度維持多関節手段、例えば、多関節ロッド
13:サーモスタット作動手段、例えば、サーモスタットシリンダ
14:空気排出デフレクタ作動手段、例えば、作動ロッド
15:戻しバネ
16:音響絶縁体
17:LED光源
18:フィルタ保持スライド付き吸引ボックス
19:モジュラーアイランドのトップカバー
20:連結されたモジュラーアイランド構成のモジュラーアイランド1
21:連結されたモジュラーアイランド構成のモジュラーアイランド2
22:モジュラーアイランド1の右側短辺
23:モジュラーアイランド1の左側短辺
24:モジュラーアイランド2の右側短辺
25:モジュラーアイランド2の左側短辺
【手続補正書】
【提出日】2022-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の天井ディフューザの自動システムであって、前記システムは、熱放射及び対流によって前記部屋を加熱、冷却及び換気するのに適しており、前記システムは、前記部屋の天井から吊るされる少なくとも1つのモジュラーアイランドを備え、前記モジュラーアイランドは、
天井に対向するその下部に位置する延伸布(8)のような拡散要素の少なくとも1つ吊り線が設けられた周辺フレーム(1)であって、その面の1つ以上に、前記周辺フレーム(1)は前記部屋へ向けての空気排出スリット(2)を備える、周辺フレーム(1)と、
前記周辺フレームの前記吊り線に掛けられ、前記部屋から見え、前記モジュラーアイランドの水平下面を形成する、延伸布(8)のような拡散要素と、
天井に面する前記モジュラーアイランドの上面を形成するカバー(19)と、
前記モジュラーアイランドの前記カバー(18)に固定され、前記モジュラーアイランドの内部容積の中に処理済み空気を注入できるようにする空気排出接続出口(4)と、
上部多関節デフレクタ(11)と下部多関節デフレクタ(10)によって形成された、前記空気排出スリット(2)の高さで前記周辺フレーム(1)に固定され、冷気を前記アイランドに排出するときは0°、すなわち天井と平行な状態から、暖気を前記モジュラーアイランドに排出するときは最大70°まで変化する天井に対して所定の角度で排出された空気を向けることができる、多関節デフレクタ(10、11)のチャネルと、
作動ロッド(14)のようなデフレクタ作動手段によって前記多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルを作動させ、前記モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に応じた排出角度を前記チャネルに与えるためのサーモスタット作動手段(13)であって、前記サーモスタット作動手段(13)はピストンを備え、その出力ストロークは前記サーモスタット作動手段(13)が浸漬される空気温度に依存する、サーモスタット作動手段(13)と、
前記サーモスタット作動手段(13)の前記ピストンのストロークと反対の力を及ぼし、したがって、冷気を前記モジュラーアイランドに排出するときにその最小ストロークに戻すための戻しバネ(15)
であって、多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルは、前記チャネルに配置され、前記上部及び下部多関節デフレクタ(11及び10)を多関節点B及びCでそれぞれ連結する多関節平行度維持手段(12)を備え、多関節点A及びDの高さで前記周辺フレーム(1)に固定された前記上部及び下部多関節デフレクタ(11及び10)は、前記多関節平行度維持手段(12)の多関節点B及びCとともに、その対辺に平行性を課す平行四辺形A-B-C-Dを描く
、戻しバネ(15)と、
を備え、
前記モジュラーアイランドは、前記モジュラーアイランドの上部カバー(19)に固定され、前記モジュラーアイランドの上部カバー(19)から前記部屋の周囲空気を吸引するフィルタ(6)を備える吸引ボックス(18)と連絡する空気吸引接続出口(3)をさらに備えることを特徴とする、自動システム。
【請求項2】
前記自動システムは、
暖気を前記モジュラーアイランドに排出するときに、前記下部多関節デフレクタ(10)と前記上部多関節デフレクタ(11)との間に形成された多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルの断面は、前記多関節デフレクタの傾斜が水平面に対して増加すると減少し、暖房モードを助長するより高速の排出空気を生成するように、
冷気を前記モジュラーアイランドに排出するときに、前記下部多関節デフレクタ(10)と前記上部多関節デフレクタ(11)との間に形成された多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルの断面は、両方の前記多関節デフレクタ(10、11)が水平位置にあるとき最大チャネル断面まで増加し、冷房モードを助長する低速の空気を生成するように、構成されることを特徴とする、請求項1に記載の自動システム。
【請求項3】
前記モジュラーアイランドには、音響絶縁体(16)と、任意にマイクロ穿孔された延伸布(8)のような前記拡散要素とがさらに設けられ、前記部屋の音響処理が可能になることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動システム。
【請求項4】
前記空気吸引接続出口(3)は、前記部屋の周囲空気をファンコイルユニット又は空気注入ユニットなどの外気調整ユニットに搬送するように、空気吸引ダクトに接続されていることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項5】
前記空気排出接続出口(4)を介して前記モジュラーアイランドの内部容積に注入される処理済み空気は、加熱又は冷却された周囲空気に相当し、任意に新鮮な換気空気と混合されることを特徴とする、請求項
4に記載の自動システム。
【請求項6】
前記サーモスタット作動手段(13)は、前記モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に比例して、そのピストンのストロークを展開することを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項7】
前記サーモスタット作動手段(13)を多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルに接続する前記デフレクタ作動手段(14)が、前記上部多関節デフレクタ(11)に固定され、それによって、前記多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルに、前記モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に応じた角度が与えられることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項8】
前記モジュラーアイランドには、前記モジュラーアイランド内に固定され、前記部屋の照明を可能にする少なくとも1つの光源(17)がさらに設けられ、前記光源(17)によって発生した光は、前記部屋から見える延伸布(8)などの前記拡散要素上に分配されることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項9】
前記モジュラーアイランドには、延伸布(9)のような光拡散要素と、前記光源(17)の下方に位置する前記光拡散要素(9)を掛けることのできる前記周辺フレーム(1)の上部吊り線とがさらに設けられることを特徴とする、請求項
8に記載の自動システム。
【請求項10】
前記下部多関節デフレクタ(10)は、前記光源(17)を見えなくするように、及び/又は排出スリット(2)を通って光が出るのを禁止するように、光バリアとして機能することを特徴とする、請求項
8又は
9に記載の自動システム。
【請求項11】
前記モジュラーアイランドは、前記部屋の天井に固定することができる吊りハンガー(7)又は他の固定手段を備えることを特徴とする、請求項1~
10のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項12】
前記サーモスタット作動手段(13)は、シリンダであることを特徴とする、請求項1~
11のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項13】
複数のモジュラーアイランドが互いに連結されているので、各モジュラーアイランドの前記周辺フレーム(1)の短辺(23及び24)に配置されたモジュール間接続スリット(5)を介して、処理済み空気が1つのモジュラーアイランドから他のモジュラーアイランドに循環することを特徴とする、請求項1~
12のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項14】
熱放射及び対流によって部屋を加熱、冷却及び換気するためのモジュラーアイランドであって、前記モジュラーアイランドは部屋の天井から吊り下げ可能であり、前記モジュラーアイランドは、
天井に対向するその下部に位置する延伸布(8)のような拡散要素の少なくとも1つ吊り線が設けられた周辺フレーム(1)であって、その面の1つ以上に、前記周辺フレーム(1)は前記部屋へ向けての空気排出スリット(2)を備える、周辺フレーム(1)と、
前記周辺フレームの前記吊り線に掛けられ、前記部屋から見え、前記モジュラーアイランドの水平下面を形成する、延伸布(8)のような拡散要素と、
天井に面する前記モジュラーアイランドの上面を形成するカバー(19)と、
前記モジュラーアイランドの前記カバー(18)に固定され、前記モジュラーアイランドの内部容積の中に処理済み空気を注入できるようにする空気排出接続出口(4)と、
上部多関節デフレクタ(11)と下部多関節デフレクタ(10)によって形成され、前記空気排出スリット(2)の高さで前記周辺フレーム(1)に固定され、冷気を前記アイランドに排出するときは0°、すなわち天井と平行な状態から、暖気を前記モジュラーアイランドに排出するときは最大70°まで変化する天井に対して所定の角度で排出される空気を向けることができる、多関節デフレクタ(10、11)のチャネルと、
作動ロッド(14)のようなデフレクタ作動手段によって多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルを作動させ、前記モジュラーアイランドに注入される処理済み空気の温度に応じた排出角度を前記チャネルに与えるためのサーモスタット作動手段(13)であって、前記サーモスタット作動手段(13)はピストンを備え、その出力ストロークは前記サーモスタット作動手段(13)が浸漬される空気温度に依存する、サーモスタット作動手段(13)と、
前記サーモスタット作動手段(13)の前記ピストンのストロークと反対の力を及ぼし、したがって、冷気を前記モジュラーアイランドに排出するときにその最小ストロークに戻すための戻しバネ(15)
であって、多関節デフレクタ(10、11)の前記チャネルは、前記チャネルに配置され、前記上部及び下部多関節デフレクタ(11及び10)を多関節点B及びCでそれぞれ連結する多関節平行度維持手段(12)を備え、多関節点A及びDの高さで前記周辺フレーム(1)に固定された前記上部及び下部多関節デフレクタ(11及び10)は、前記多関節平行度維持手段(12)の多関節点B及びCとともに、その対辺に平行性を課す平行四辺形A-B-C-Dを描く
、戻しバネ(15)と、
を備え、
前記モジュラーアイランドは、前記モジュラーアイランドの上部カバー(19)に固定され、前記モジュラーアイランドの上部カバー(19)から前記部屋の周囲空気を吸引するフィルタ(6)を備える吸引ボックス(18)と連絡する空気吸引接続出口(3)をさらに備えることを特徴とする、モジュラーアイランド。
【国際調査報告】