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特表2023-537600がんを処置するための複製ストレス経路剤組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-04
(54)【発明の名称】がんを処置するための複製ストレス経路剤組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20230828BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230828BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/7068
A61K31/17
A61K31/4545
A61K31/497
A61K31/522
A61K31/5377
A61K31/506
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K31/517
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023510340
(86)(22)【出願日】2021-08-11
(85)【翻訳文提出日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 US2021045556
(87)【国際公開番号】W WO2022035970
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】63/064,555
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/168,120
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523048158
【氏名又は名称】バウンドレス バイオ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハッシグ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,リャン
(72)【発明者】
【氏名】ミルティノヴィッチ,スネジャナ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアンセン,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ホーンビー,ザカリー
(72)【発明者】
【氏名】チョードリー,スディール
(72)【発明者】
【氏名】セレステ,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,クリステン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン,ディープティ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC46
4C086BC48
4C086BC73
4C086CB05
4C086CB06
4C086EA17
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA26
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
【解決手段】
本明細書に提供されるのは、対象の、染色体外DNA陽性(ecDNA陽性)であるかまたは治療耐性があるがんを処置する方法であり、この方法は、治療上有効な量の複製ストレス(RS)経路剤を単独または標的治療剤と組み合わせて対象に投与することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の腫瘍または腫瘍細胞を処置する方法であって、前記方法は、
前記腫瘍または前記腫瘍細胞における複製ストレスを誘導するのに十分な量の複製ストレス経路薬剤(RSPA)を投与すること、および、
がん標的治療剤を投与すること、
を含み、
前記腫瘍または前記腫瘍細胞にecDNAシグネチャを有しており、
前記腫瘍の成長またはサイズ、あるいは、前記腫瘍細胞の成長または数が減少する、方法。
【請求項2】
前記ecDNAシグネチャは、遺伝子増幅、p53の機能喪失型変異、微小サテライト不安定性(MSI-H)が存在しないこと、低レベルのPD-L1発現、低レベルの腫瘍燃焼シグネチャ(TIS)、低レベルの腫瘍遺伝子変異量(TMB)、アレルの置換、挿入、もしくは欠失(インデル)の頻度の増加、または、これらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遺伝子増幅は、がん遺伝子の増幅、薬剤耐性遺伝子の増幅、治療の標的遺伝子の増幅、またはチェックポイント阻害遺伝子の増幅を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記がん標的治療剤は、標的遺伝子のタンパク質産物の活性を対象としており、ならびに、前記がん標的治療剤および前記RSPAによる処置は、前記腫瘍または前記腫瘍細胞における標的遺伝子の増幅または発現を減少させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記がん標的治療剤および前記RSPAによる処置は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約1ヵ月、少なくとも約6週間、少なくとも約2ヵ月、少なくとも約4ヵ月、または少なくとも約6か月間、前記腫瘍または前記腫瘍細胞における前記標的遺伝子の増幅または発現を減少させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記がん標的治療剤は、前記RSPAの前に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍または前記腫瘍細胞は、前記がん標的治療剤の投与後に前記ecDNAシグネチャを発現させる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記がん標的治療剤は、前記RSPAと同時に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記腫瘍または前記腫瘍細胞は、治療前に前記ecDNAシグネチャを発現させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記腫瘍または前記腫瘍細胞におけるecDNAの増加を防止する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記がん標的治療剤は、前記がん遺伝子のタンパク質産物を標的とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記がん遺伝子は、点突然変異、挿入、欠失、融合、または、それらの組み合わせを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記がん標的治療剤は、ABCB1、AKT、ALK、AR、BCL-2、BCR-ABL、BRAF、CDK4、CDK6、c-MET、EGFR、ER、ERBB3、ERRB2、FAK、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT3、GR、HRAS、IGF1R、KIT、KRAS、MCL-1、MDM2、MDM4、MTOR、MYC、MYCL、MYCN、NRAS、NRG1、NTRK1、NTRK2、NTRK3、PDGFR、PIK3CA/B、PIK3Cδ、RET、およびROS1からなる群から選択される遺伝子を標的とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記腫瘍または前記腫瘍細胞は、第1の遺伝子またはその一部の増幅を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の遺伝子は、がん遺伝子または薬剤耐性遺伝子である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記増幅がecDNA上に存在する、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の遺伝子は、ABCB1、AKT、ALK、AR、BCL-2、BCR-ABL、BRAF、CDK4、CDK6、c-MET、EGFR、ER、ERBB3、ERRB2、AK、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT3、GR、HRAS、IGF1R、KIT、KRAS、MCL-1、MDM2、MDM4、MTOR、MYC、MYCL、MYCNNRAS、NRG1、NTRK1、NTRK2、NTRK3、PDGFR、PIK3CA/B、 PIK3Cδ、RET、およびROS1からなる群から選択される、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記がん標的治療剤は、前記第1の遺伝子を対象とする、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象は、以前に前記がん標的治療剤による処置を受けたことがない、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記腫瘍または前記腫瘍細胞は、以前に前記がん標的治療剤による処置を受けていない、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記腫瘍または前記腫瘍細胞における前記ecDNAの増加を防止する、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記腫瘍または前記腫瘍細胞は、前記がん標的治療剤および前記RSPAによる処置の前に、従来の治療剤に対し耐性を有しているか、または、有していない、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍または前記腫瘍細胞は、以前に前記従来の治療剤による処置を受けていない、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記対象は、以前に前記従来の治療剤による処置を受けていない、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記がん標的治療剤は、前記標的遺伝子のタンパク質産物の活性を対象とし、前記がん標的治療剤、および前記RSPAによる処置は、前記腫瘍または前記腫瘍細胞における前記標的遺伝子の増幅または発現を減少させる、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記標的遺伝子は、がん遺伝子、薬剤耐性遺伝子、治療標的遺伝子、またはチェックポイント阻害遺伝子である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記標的遺伝子は、ABCB1、 AKT、 ALK、 AR、 BCL-2、 BCR-ABL、 BRAF、 CDK4、 CDK6、 c-MET、 EGFR、 ER、 ERBB3、 ERRB2、 AK、 FGFR1、 FGFR2、 FGFR3、 FGFR4、 FLT3、 GR、 HRAS、 IGF1R、 KIT、 KRAS、 MCL-1、 MDM2、 MDM4、 MTOR、 MYC、 MYCL、 MYCN、 NRAS、 NRG1、 NTRK1、 NTRK2、 NTRK3、 PDGFR、 PIK3CA/B、 PIK3Cδ、 RET、およびROS1からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ecDNAシグネチャは、前記腫瘍または前記腫瘍細胞の処置の開始前に把握される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ecDNAシグネチャは、腫瘍または腫瘍細胞の処置の開始後に把握される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記RSPAが欠如した状態での前記がん標的治療剤による処置と比較して、他覚的奏効率を改善し、および/または、処置応答の期間を延ばす、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記RSPAが欠如した状態での前記がん標的治療剤による処置と比較して、無増悪生存期間の期間を延ばす、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
ecDNAに関連する腫瘍または腫瘍細胞を処置する方法であって、
ecDNAを有する腫瘍または腫瘍細胞を有していると特定された対象にRSPAおよびがん標的治療剤を投与すること
を含み、
腫瘍の成長またはサイズ、あるいは腫瘍細胞の成長または数が減少する、方法。
【請求項33】
前記対象の腫瘍または前記腫瘍細胞は、ecDNAシグネチャを有していると特定される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ecDNAシグネチャは、遺伝子増幅、P53の機能喪失変異型、マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の欠如、低レベルのPD-L1発現、 低レベルの腫瘍炎症シグネチャ(TIS)、 低レベルの腫瘍遺伝子変異量(TMB)、アレルの置換、挿入、もしくは欠失(インデル)の頻度の増加、およびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記遺伝子増幅は、がん遺伝子、薬剤耐性遺伝子、治療標的遺伝子、またはチェックポイント阻害遺伝子の増幅を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記腫瘍または前記腫瘍細胞には、細胞中のecDNAを画像化(imaging)すること、がん遺伝子結合剤によるecDNAを検出すること、またはDNAシーケンシングによって、前記ecDNAを有していると特定される、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記ecDNAは、循環腫瘍DNAにおいて特定される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記腫瘍または前記腫瘍細胞は、固形腫瘍によって構成される、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記固形腫瘍中のecDNAの存在は、処置の結果、減少するか、または消失する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ecDNAのレベルは、処置前のecDNAレベルと比較して、処置後に前記固形腫瘍中で低下する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記固形腫瘍中のがん遺伝子増幅のレベルおよび/またはコピー数多型(CNV)のレベルは、処置前の前記固形腫瘍中の前記がん遺伝子増幅のレベルおよび/またはコピー数多型(CNV)のレベルと比較して、処置後に低下する、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記腫瘍または前記腫瘍細胞は、循環腫瘍細胞を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記循環腫瘍細胞中のecDNAの存在は、処置の結果、減少するか、または消失する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記循環腫瘍細胞における前記ecDNAレベルは、処置前のecDNAのレベルと比較して、処置後に低下させられる、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記固形腫瘍におけるがん遺伝子増幅のレベル、および/またはコピー数多型(CNV)のレベルは、処置前の前記固形腫瘍中のがん遺伝子増幅のレベルおよび/またはコピー数多型(CNV)のレベルと比較して、処置後に低下する、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記ecDNAの存在またはレベルは、前記循環腫瘍DNA中で特定される、請求項39~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記RSPAは、RNR阻害剤、ATR阻害剤、CHK1阻害剤、WEE1阻害剤、およびPARG阻害剤からなる群から選択される、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記RNR阻害剤は、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、トリアピン、5-クロロ-2-(n-((1S、2R)-2-(6-フルオロ-2、3-ジメチルフェニル)-1-(5-オキソ-4、5-ジヒドロ-1、3、4-オキサジアゾール-2-イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド、クロファラビン、フルダラビン、フルオラビン、モテキサフィンガドリニウム、クラドリビン、テザシタビン、およびCOH29(N-[4-(3、4-ジヒドロキシフェニル)-5-フェニル-1、3-チアゾール-2-イル]-3、4-ジヒドロキシベンズアミドからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記CHK1阻害剤は、GDC-0575、プレキサセルチブ、LY-2880070、SRA737、XCCS-605B、ラブセルチブ(LY-2603618)、SCH-900776、RG-7602、AZD-7762、PF-477736、およびBEBT-260からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記WEE1阻害剤は、AZD1775(MK1775)、ZN-c3、Debio 0123、IMP7068、SDR-7995、SDR-7778、NUV-569、PD0166285、PD0407824、SC-0191、DC-859/A、ボスチニブ、およびBos-Iからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記ATR阻害剤は、RP-3500、M-6620、berzosertib(M-6620、VX-970; VE-822)、AZZ-6738、AZ-20、M-4344(VX-803)、BAY-1895344、M-1774、IMP-9064、nLs-BG-129、SC-0245、BKT-300、ART-0380、ATRN-119、ATRN-212、NU-6027からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記がん標的治療剤は、アベマシクリブ、アドトラスツズマブエムタンシン、アファチニブ、アレクチニブ、ALRN-6924、AMG232、AMG-510、アパチニブ、ARS-3248、AXL1717、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ブリガチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、セリチニブ、セツキシマブ、CGM097、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダコミチニブ、ダサチニブ、ドキソルビシン、DS-3032b、エンコラフェニブ、エントレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ファムトラスツズマブデルクステカン、フィギツムマブ、ゲフィチニブ、ゴシポール、HDM201、イダサヌトリン、イマチニブ、インフィグラチニブ、イニパリブ、ラパチニブ、ラロトレクチニブ、LEE011、レンバチニブ、LGX818、ロルラチニブ、MEK162、MK-8242、SCH-900242、MRTX849、ナビトクラックス、ネシツムマブ、ニロチニブ、オバトクラックス、オラパリブ、OSI-906、オシメルチニブ、パルボシクリブ、パニツムマブ、PD-0332991、ペリソフィネ、ペルツズマブ、PL225B、レポトレクチニブ、リボシクリブ、RO5045337、サリノマイシン、サリラシブ、SAR405838 MI-77301、ソラフェニブ、ソトラシブ、スニチニブ、タモキシフェン、テムシロリムス、チピファルニブ、チバニタブ、トファシチニブ、トラメチニブ、トラスツズマブ、ツカチニブ、UPR1376、VAL-083、ベムラフェニブ、ビンタフォリデ、およびゾプタレリンドキソルビシンからなる群から選択される、請求項1~51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記RSPAは、RNA阻害剤であり、前記RSPAは、その単剤としての推奨使用量を下回る治療用量で投与される、前記1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記RNR阻害剤はゲムシタビンである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記RNR阻害剤はゲムシタビンでもヒドロキシウレアでもない、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記RSPAはゲムシタビンではない、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記がん標的治療剤がEGFR阻害剤である場合、前記ゲムシタビンではない、請求項56に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本出願は、2020年8月12日に出願された米国仮特許出願第63/064、555号、および、2021年3月30日に出願された米国仮特許出願第63/168、120号の利益を主張し、それぞれ全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
がんは、がん患者の無増悪生存期間を延ばすための苛烈な苦労を伴う、がん治療に用いられる治療法に耐性を示すことが多い。ある場合には、治療耐性化したがんが、増幅されたがん遺伝子を時折含有している染色体外DNAに陽性であり、治療耐性に寄与することが観察される。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、対象の腫瘍または腫瘍細胞を処置するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍または腫瘍細胞内の複製ストレスを誘導するのに十分な量の複製ストレス経路剤(a replication stress pathway agent)(RSPA)を投与すること、および、がん標的治療剤を投与することを含み、腫瘍または腫瘍細胞は、ecDNAシグネチャを有しており、腫瘍の成長またはサイズ、あるいは、腫瘍細胞の成長または数が減少する。いくつかの実施形態では、ecDNAシグネチャは、遺伝子増幅、p53の機能喪失変異型(p53 loss of function mutation)、マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の欠如、低レベルのPD-L1発現、低レベルの腫瘍炎症シグネチャ(TIS)、低レベルの腫瘍遺伝子変異量(TMB)、アレルの置換、挿入もしくは欠失(インデル)の頻度の増加、および、これらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、遺伝子増幅は、がん遺伝子、薬剤耐性遺伝子、治療標的遺伝子、またはチェックポイント阻害遺伝子の増幅を含む。いくつかの実施形態では、がん標的治療剤は、標的遺伝子のタンパク質産物の活性を対象としており、がん標的治療剤、およびRSPAを用いる治療は、腫瘍または腫瘍細胞内の標的遺伝子の増幅または発現を減少させる。いくつかの実施形態では、がん標的治療剤は、RSPAの前に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍または腫瘍細胞は、がん標的治療剤が投与された後にecDNAシグネチャを生じさせる(develop)。いくつかの実施形態では、がん標的治療剤は、RSPAと同時に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍または腫瘍細胞は、治療前に、ecDNAシグネチャを発現させる。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍または腫瘍細胞内のecDNAの増加を防ぐ。いくつかの実施形態では、がん標的治療剤は、がん遺伝子のタンパク質産物を標的とする。いくつかの実施形態では、がん遺伝子は、点突然変異、挿入、欠失、融合、または、これらのあらゆる組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、がん標的治療剤は、ABCB1、AKT、ALK、AR、BCL-2、BCR-ABL、BRAF、CDK4、CDK6、c-MET、EGFR、ER、ERBB3、ERRB2、AK、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT3、GR、HRAS、IGF1R、KIT、KRAS、MCL-1、MDM2、MDM4、MTOR、MYC、MYCL、MYCN、NRAS、NRG1、NTRK1、NTRK2、NTRK3、PDGFR、PIK3Cδ、PIK3CA/B、RET、およびROS1からなる群から選択される遺伝子を標的とする。いくつかの実施形態では、腫瘍または腫瘍細胞は、第1の遺伝子、またはその一部の増幅を含む。いくつかの実施形態では、第1の遺伝子は、がん遺伝子または薬剤耐性遺伝子である。いくつかの実施形態では、増幅は、ecDNA上で見られる。いくつかの実施形態では、第1の遺伝子は、ABCB1、AKT、ALK、AR、BCL-2、BCR-ABL、BRAF、CDK4、CDK6、c-MET、EGFR、ER、ERBB3、ERRB2、AK、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT3、GR、HRAS、IGF1R、KIT、KRAS、MCL-1、MDM2、MDM4、MTOR、MYC、MYCL、MYCN、NRAS、NRG1、NTRK1、NTRK2、NTRK3、PDGFR、PIK3Cδ、PIK3CA/B、RET、およびROS1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、がん標的治療剤は、第1の遺伝子を対象としている。いくつかの実施形態では、対象は、以前にがん標的治療剤のよる処置を受けたことがない。いくつかの実施形態では、腫瘍または腫瘍細胞は、以前にがん標的治療剤による処置を受けていない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍または腫瘍細胞内のecDNAの増加を防止する。いくつかの実施形態では、腫瘍または腫瘍細胞は、がん標的治療剤およびRSPAを用いた治療の前の、従来の治療剤に耐性を有しているか、または有していない。いくつかの実施形態では、腫瘍または腫瘍細胞は、以前に、従来の治療剤による処置を受けている。いくつかの実施形態では、対象は、以前に従来の治療剤による処置を受けている。いくつかの実施形態では、がん標的治療剤は、標的遺伝子のタンパク質産物の活性を対象としており、がん標的治療剤、およびRSPAを用いた治療は、腫瘍または腫瘍細胞内の標的遺伝子の増幅または発現を減少させる。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、がん遺伝子、薬剤耐性遺伝子、治療標的遺伝子、またはチェックポイント阻害遺伝子である。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、ABCB1、AKT、ALK、AR、BCL-2、BCR-ABL、BRAF、CDK4、CDK6、c-MET、EGFR、ER、ERBB3、ERRB2、AK、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT3、GR、HRAS、IGF1R、KIT、KRAS、MCL-1、MDM2、MDM4、MTOR、MYC、MYCL、MYCN、NRAS、NRG1、NTRK1、NTRK2、NTRK3、PDGFR、PIK3Cδ、PIK3CA/B、RET、およびROS1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ecDNAシグネチャは、腫瘍または腫瘍細胞の治療を開始する前に、把握される。いくつかの実施形態では、ecDNAシグネチャは、腫瘍または腫瘍細胞の治療を始めた後に分かる。いくつかの実施形態では、方法は、RSPAが欠如した状態での、がん標的治療剤を用いる治療と比較して、奏効率を改善し、および/または、処置応答の期間を延ばす。いくつかの実施形態では、方法は、RSPAが欠如した状態での、がん標的治療剤を用いる治療と比較して、無増悪生存期間の期間を増やす。
【0004】
別の態様では、ecDNAが存在する腫瘍または腫瘍細胞を有すると特定される対象に、RSPAおよびがん標的治療剤を投与することを含む、ecDNAを伴う腫瘍または腫瘍細胞を処置するための方法が提供され、治療の結果、腫瘍の成長またはサイズ、あるいは、腫瘍細胞の成長または数が減少する。いくつかの実施形態では、対象の腫瘍または腫瘍細胞は、ecDNAシグネチャを有していると特定される。いくつかの実施形態では、ecDNAシグネチャは、遺伝子増幅、P53の機能喪失変異型、マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の欠如、低レベルのPD-L1発現、低レベルの腫瘍炎症シグネチャ(TIS)、低レベルの腫瘍遺伝子変異量(TMB)、アレルの置換、挿入、もしくは欠失(インデル)の頻度の増加、および、これらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、遺伝子増幅は、がん遺伝子、薬剤耐性遺伝子、治療標的遺伝子あるいはチェックポイント阻害遺伝子の増幅を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍または腫瘍細胞は、細胞内のecDNAを画像化(imaging)すること、がん遺伝子結合剤を用いてecDNAを検出すること、またはDNAシーケンシングによって、ecDNAを有していると特定される。いくつかの実施形態では、ecDNAは、循環腫瘍DNAにおいて特定される。
【0005】
本明細書に記載の方法の様々な様態において、いくつかの実施形態では、腫瘍または腫瘍細胞は、固形腫瘍によって構成される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍に存在するecDNAは、処置の結果、減少されるか、または消失させられる。いくつかの実施形態では、ecDNAレベルは、処置前のecDNAレベルと比較して、処置後に固形腫瘍において低下させられる。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるがん遺伝子増幅のレベルおよび/またはコピー数多型(CNV)のレベルは、処置の前に固形腫瘍におけるがん遺伝子増幅のレベルおよび/またはコピー数多型(CNV)のレベルと比較して、処置後に減少させられる。いくつかの実施形態では、腫瘍または腫瘍細胞は、循環腫瘍細胞を含む。いくつかの実施形態では、循環腫瘍細胞内に存在するecDNAは、処置の結果、減少されるか、または消失させられる。いくつかの実施形態では、ecDNAレベルは、処置前のecDNAレベルと比較して、処置後に循環腫瘍細胞において低下させられる。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるがん遺伝子増幅のレベルおよび/またはコピー数多型(CNV)のレベルは、処置の前に固形腫瘍におけるがん遺伝子増幅のレベルおよび/またはコピー数多型(CNV)のレベルと比較して、処置後に低下させられる。いくつかの実施形態では、ecDNAの存在、あるいはレベルは、循環腫瘍DNAにおいて特定される。いくつかの実施形態では、RSPAは、RNR阻害剤、ATR阻害剤、CHK1阻害剤、WEE1阻害剤、およびPARG阻害剤からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、RNR阻害剤は、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、トリアピン、5-クロロ-2-(n-((1S、2R)-2-(6-フルオロ-2、3-ジメチルフェニル)-1-(5-オキソ-4、5-ジヒドロ-1、3、4-オキサジアゾール-2-イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド、クロファラビン、フルオラビン、モテキサフィンガドリニウム、クラドリビン、テザシタビン、およびCOH29(N-[4-(3、4-ジヒドロキシフェニル)-5-フェニル-1、3-チアゾール-2-イル]-3、4-ジヒドロキシベンズアミドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CHK1阻害剤は、GDC-0575、プレキサセルチブ、LY-2880070、SRA737、XCCS-605B、ラブセルチブ(LY-2603618)、SCH-900776、RG-7602、AZD-7762、PF-477736、およびBEBT-260からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、WEE1阻害剤は、AZD1775(MK1775)、ZN-c3、Debio 0123、IMP7068、SDR-7995、SDR-7778、NUV-569、PD0166285、PD0407824、SC-0191、DC-859/A、ボスチニブおよびBos-Iからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ATR阻害剤は、RP-3500、M-6620、ベルゾセルチブ(berzosertib)(M-6620、VX-970;VE-822)、AZZ-6738、AZ-20、M-4344(VX-803)、BAY-1895344、M-1774、IMP-9064、nLs-BG-129、SC-0245、BKT-300、ART-0380、ATRN-119、ATRN-212、NU-6027からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、がん標的治療剤は、アベマシクリブ、ado-トラスツズマブエムタンシン、アファチニブ、アレクチニブ、ALRN-6924、AMG232、AMG-510、アパチニブ、ARS-3248、AXL1717、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ブリガチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、セリチニブ、セツキシマブ、CGM097、クリゾチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダコミチニブ、ダサチニブ、ドキソルビシン、DS-3032b、エンコラフェニブ、エントレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ファム-トラスツズマブデルクステカン、フィギツムマブ、ゲフィチニブ、ゴシポール、HDM201、イダサヌトリン、イマチニブ、インフィグラチニブ、イニパリブ、ラパチニブ、ラロトレクチニブ、LEE011、レンバチニブ、LGX818、ロルラチニブ、MEK162、MK-8242(SCH-900242)、MRTX849、ナビトクラックス、ネシツムマブ、ニロチニブ、オバトクラックス、オラパリブ、OSI-906、オシメルチニブ、パルボシクリブ、パニツムマブ、PD-0332991、ペリソフィネ、ペルツズマブ、PL225B、レポトレクチニブ、リボシクリブ、RO5045337、サリノマイシン、サリラシブ、SAR405838(MI-77301)、ソラフェニブ、ソトラシブ、スニチニブ、タモキシフェン、テムシロリムス、チピファルニブ、チバニタブ(tivanitab)、トファシチニブ、トラメチニブ、トラスツズマブ、ツカチニブ、UPR1376、VAL-083、ベムラフェニブ、ベムラフェニブ、ヴィンタフォリデ、およびゾプタレリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、RSPAは、RNA阻害剤であり、ならびに、RSPAは、単剤として推奨される使用量を下回る治療量で投与される。いくつかの実施形態では、RNR阻害剤は、ゲムシタビンである。いくつかの実施形態では、RNR阻害剤は、ゲムシタビンでもヒドロキシウレアでもない。いくつかの実施形態では、RNR阻害剤は、ゲムシタビンではない。いくつかの実施形態では、RSPAは、がん標的治療剤がEGFR阻害剤である場合、ゲムシタビンではない。
【0006】
一態様では、治療を必要とする対象のがんを処置するための方法が提供される。ある場合には、方法は、治療上有効な量の複製ストレス(RS)経路阻害剤(さらに、本明細書では、複製ストレス経路剤、あるいはRSPAと呼ばれる)を対象に投与することを含み、がんは、染色体外DNA陽性(ecDNA陽性)であると把握されている。ある場合には、RS経路阻害剤は、RNR阻害剤、ATR阻害剤、CHK1阻害剤、E2F阻害剤、WEE1阻害剤、PARG阻害剤、またはRRM2阻害剤を含む。ある場合には、RNR阻害剤は、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、トリアピン、または、5-クロロ-2-(n-((1S、2R)-2-(6-フルオロ-2、3-ジメチルフェニル)-1-(5-オキソ-4、5-ジヒドロ-1、3、4-オキサジアゾール-2-イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドを含む。ある場合には、CHK1阻害剤は、GDC-0575、プレキサセルチブ、またはSRA737を含む。ある場合には、ecDNA陽性のがんは、ecDNA上の増幅されたがん遺伝子を含む。ある場合には、がん遺伝子は、BRAF、CCND1、CDK4、CDK6、c-Myc、EGFR、ERB2、FGFR、HRAS、IGF1R、KRAS、MDM2、MDM4、MET、MYCL、MYCN、および、NRASの1つ以上を含む。ある場合には、方法は、増幅されたがん遺伝子のタンパク質産物を阻害する標的治療剤を、治療上有効な量で対象に投与することをさらに含む。ある場合には、標的治療剤は、アベマシクリブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、アファチニブ、アレクチニブ、ALRN-6924、AMG232、AMG-510、アパチニブ、ARS-3248、AXL1717、AZD-3759、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ブリガチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、セリチニブ、セツキシマブ、CGM097、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダコミチニブ、ダサチニブ、DS-3032b、エンコラフェニブ、エントレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ファム-トラスツズマブデルクステカン、フィギツムマブ、ゲフィチニブ、ゴシポール、HDM201、イダサヌトリン、イマチニブ、インフィグラチニブ(infigratinib)、イニパリブ、ラパチニブ、ラロトレクチニブ、LEE011、レンバチニブ、LGX818、ロルラチニブ、MEK162、MK-8242 SCH 900242、MRTX849、ナビトクラックス、ネシツムマブ、ニロチニブ、オバトクラックス、オラパリブ、OSI-906、オシメルチニブ、パルボシクリブ、パニツムマブ、PD-0332991、ペリソフィネ、ペルツズマブ、PL225B、レポトレクチニブ、リボシクリブ、RO5045337、サリノマイシン、サリラシブ、SAR405838 MI-77301、ソラフェニブ、ソトラシブ、スニチニブ、タモキシフェン、テムシロリムス、チピファルニブ、チバニタブ、トファシチニブ、トラメチニブ、トラスツズマブ、ツカチニブ、UPR1376、VAL-083、ベムラフェニブ、ベムラフェニブ、ヴィンタフォリデ、またはゾプタレリンドキソルビシン。ある場合には、RS経路阻害剤および、標的治療剤は、併用して投与される。ある場合には、RS経路阻害剤および、標的治療剤は、別々に投与される。
【0007】
一態様では、対象の治療耐性がんを処置するための方法が提供される。ある場合には、方法は、治療上有効な量の(a)複製ストレス(RS)経路阻害剤および(b)標的治療剤を対象に投与することを含む。ある場合には、RS経路阻害剤はRNR阻害剤、ATR阻害剤、CHK1阻害剤、WEE1阻害剤、E2F阻害剤、またはRRM2阻害剤を含む。ある場合には、RNR阻害剤はゲムシタビン、ヒドロキシウレア、トリアピン、または5-クロロ-2-(n-((1S、2R)-2-(6-フルオロ-2、3-ジメチルフェニル)-1-(5-オキソ-4、5-ジヒドロ-1、3、4-オキサジアゾール-2-イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドを含む。ある場合には、CHK1阻害剤は、GDC-0575、プレキサセルチブ、またはSRA737を含む。ある場合には、治療耐性がんは、ecDNA陽性である。ある場合にはecDNA陽性のがんは、ecDNA上の増幅されたがん遺伝子を含む。ある場合には、増幅されたがん遺伝子は、BRAF、CCND1、CDK4、CDK6、c-Myc、EGFR、ERB2、FGFR、HRAS、IGF1R、KRAS、MDM2、MDM4、MET、MYCL、MYCN、およびNRASの1つ以上を含む。ある場合には、方法は、増幅されたがん遺伝子のタンパク質産物を阻害する標的治療剤を、治療上有効な量で対象に投与することをさらに含む。ある場合には、標的治療剤は、アベマシクリブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、アファチニブ、アレクチニブ、ALRN-6924、AMG232、AMG-510、アパチニブ、ARS-3248、AXL1717、AZD-3759、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ブリガチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、セリチニブ、セツキシマブ、CGM097、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダコミチニブ、ダサチニブ、DS-3032b、エンコラフェニブ、エントレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ファム-トラスツズマブデルクステカン、フィギツムマブ、ゲフィチニブ、ゴシポール、HDM201、イダサヌトリン、イマチニブ、インフィグラチニブ、イニパリブ、ラパチニブ、ラロトレクチニブ、LEE011、レンバチニブ、LGX818、ロルラチニブ、MEK162、MK-8242 SCH 900242、MRTX849、ナビトクラックス、ネシツムマブ、ニロチニブ、オバトクラックス、オラパリブ、OSI-906、オシメルチニブ、パルボシクリブ、パニツムマブ、PD-0332991、ペリソフィネ、ペルツズマブ、PL225B、レポトレクチニブ、リボシクリブ、RO5045337、サリノマイシン、サリラシブ、SAR405838 MI-77301、ソラフェニブ、ソトラシブ、スニチニブ、タモキシフェン、テムシロリムス、チピファルニブ、チバニタブ、トファシチニブ、トラメチニブ、トラスツズマブ、ツカチニブ、UPR1376、VAL-083、ベムラフェニブ、ベムラフェニブ、ヴィンタフォリデ、またはゾプタレリンドキソルビシンを含む。ある場合には、RS経路阻害剤および、標的治療剤は、併用して投与される。ある場合には、RS経路阻害剤および、標的治療剤は、別々に投与される。
【0008】
一態様では、複製ストレス(RS)経路阻害剤および標的治療剤を含む組成物が提供される。ある場合には、RS経路阻害剤はRNR阻害剤、ATR阻害剤、CHK1阻害剤、WEE1阻害剤、E2F阻害剤またはRRM2阻害剤を含む。ある場合には、RNR阻害剤は、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、トリアピン、または5-クロロ-2-(n-((1S、2R)-2-(6-フルオロ-2、3-ジメチルフェニル)-1-(5-オキソ-4、5-ジヒドロ-1、3、4-オキサジアゾール-2-イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドを含む。ある場合には、CHK1阻害剤は、GDC-0575、プレキサセルチブ、またはSRA737を含む。ある場合には、標的治療剤は、がん遺伝子のタンパク質産物を標的とする。ある場合には、がん遺伝子はBRAF、CCND1、CDK4、CDK6、c-Myc EGFR、ERB2、FGFR、HRAS、IGF1R、KRAS、MDM2、MDM4、MYCL、MYCN、MET、またはNRASを含む。ある場合には、標的治療剤はアベマシクリブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、アファチニブ、アレクチニブ、ALRN-6924、AMG232、AMG-510、アパチニブ、ARS-3248、AXL1717、AZD-3759、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ブリガチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、セリチニブ、セツキシマブ、CGM097、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダコミチニブ、ダサチニブ、DS-3032b、エンコラフェニブ、エントレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ファム-トラスツズマブデルクステカン、フィギツムマブ、ゲフィチニブ、ゴシポール、HDM201、イダサヌトリン、イマチニブ、インフィグラチニブ、イニパリブ、ラパチニブ、ラロトレクチニブ、LEE011、レンバチニブ、LGX818、ロルラチニブ、MEK162、MK-8242 SCH 90024、MRTX849、ナビトクラックス、ネシツムマブ、ニロチニブ、オバトクラックス、オラパリブ、OSI-906、オシメルチニブ、パルボシクリブ、パニツムマブ、PD-0332991、ペリソフィネ、ペルツズマブ、PL225B、レポトレクチニブ、リボシクリブ、RO5045337、サリノマイシン、サリラシブ、SAR405838 MI-77301、ソラフェニブ、ソトラシブ、スニチニブ、タモキシフェン、テムシロリムス、チピファルニブ、チバニタブ、トファシチニブ、トラメチニブ、トラスツズマブ、ツカチニブ、UPR1376、VAL-083、ベムラフェニブ、ベムラフェニブ、ヴィンタフォリデ、またはゾプタレリンドキソルビシンを含む。ある場合には、RS経路阻害剤はCHK1阻害剤であり、ならびに、標的治療剤はEGFR阻害剤である。ある場合には、組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0009】
一態様では、対象のがんを処置するための方法が提供される。ある場合には、方法は、対象のがんが第1の標的治療剤に対する耐性を獲得するまで、第1の標的治療剤を治療上有効な量で対象に投与すること、続いて、対象に治療上有効な量の複製ストレス(RS)経路阻害剤を投与することで、がんを治療することを含む。ある場合には、第1の標的治療剤は、アベマシクリブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、アファチニブ、アレクチニブ、ALRN-6924、AMG232、AMG-510、アパチニブ、ARS-3248、AXL1717、AZD-3759、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ブリガチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、セリチニブ、セツキシマブ、CGM097、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダコミチニブ、ダサチニブ、DS-3032b、エンコラフェニブ、エントレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ファム-トラスツズマブデルクステカン、フィギツムマブ、ゲフィチニブ、ゴシポール、HDM201、イダサヌトリン、イマチニブ、インフィグラチニブ、イニパリブ、ラパチニブ、ラロトレクチニブ、LEE011、レンバチニブ、LGX818、ロルラチニブ、MEK162、MK-8242 SCH 900242、MRTX849、ナビトクラックス、ネシツムマブ、ニロチニブ、オバトクラックス、オラパリブ、OSI-906、オシメルチニブ、パルボシクリブ、パニツムマブ、PD-0332991、ペリソフィネ、ペルツズマブ、PL225B、レポトレクチニブ、リボシクリブ、RO5045337、サリノマイシン、サリラシブ、SAR405838 MI-77301、ソラフェニブ、ソトラシブ、スニチニブ、タモキシフェン、テムシロリムス、チピファルニブ、チバニタブ、トファシチニブ、トラメチニブ、トラスツズマブ、ツカチニブ、UPR1376、VAL-083、ベムラフェニブ、ベムラフェニブ、ヴィンタフォリデ、またはゾプタレリンドキソルビシンを含む。ある場合には、RS経路阻害剤はRNR阻害剤、ATR阻害剤、CHK1阻害剤、WEE1阻害剤、E2F阻害剤、RRM1阻害剤、またはRRM2阻害剤を含む。ある場合には、RNR阻害剤はゲムシタビン、ヒドロキシウレア、トリアピン、または5-クロロ-2-(n-((1S、2R)-2-(6-フルオロ-2、3-ジメチルフェニル)-1-(5-オキソ-4、5-ジヒドロ-1、3、4-オキサジアゾール-2-イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドを含む。ある場合には、CHK1阻害剤は、GDC-0575、プレキサセルチブ、またはSRA737を含む。ある場合には、がんは、RS経路阻害剤を投与する前に、ecDNA陽性であると判定される。ある場合には、ecDNAは、増幅されたがん遺伝子を含む。ある場合には、増幅されたがん遺伝子は、BRAF、CCND1、CDK4、CDK6、c-Myc、EGFR、ERB2、FGFR、HRAS、IGF1R、KRAS、MDM2、MDM4、MET、MYCL、MYCN、およびNRASの1つ以上を含む。ある場合には、方法は、増幅されたがん遺伝子のタンパク質産物を阻害する第2の標的治療剤を投与することをさらに含む。ある場合には、第2の標的治療剤は、アベマシクリブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、アファチニブ、アレクチニブ、ALRN-6924、AMG232、AMG-510、アパチニブ、ARS-3248、AXL1717、AZD-3759、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ブリガチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、セリチニブ、セツキシマブ、CGM097、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダコミチニブ、ダサチニブ、DS-3032b、エンコラフェニブ、エントレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ファム-トラスツズマブデルクステカン、フィギツムマブ、ゲフィチニブ、ゴシポール、HDM201、イダサヌトリン、イマチニブ、インフィグラチニブ、イニパリブ、ラパチニブ、ラロトレクチニブ、LEE011、レンバチニブ、LGX818、ロルラチニブ、MEK162、MK-8242 SCH 900242、MRTX849、ナビトクラックス、ネシツムマブ、ニロチニブ、オバトクラックス、オラパリブ、OSI-906、オシメルチニブ、パルボシクリブ、パニツムマブ、PD-0332991、ペリソフィネ、ペルツズマブ、PL225B、レポトレクチニブ、リボシクリブ、RO5045337、サリノマイシン、サリラシブ、SAR405838 MI-77301、ソラフェニブ、ソトラシブ、スニチニブ、タモキシフェン、テムシロリムス、チピファルニブ、チバニタブ、トファシチニブ、トラメチニブ、トラスツズマブ、ツカチニブ、UPR1376、VAL-083、ベムラフェニブ、ベムラフェニブ、ヴィンタフォリデ、またはゾプタレリンドキソルビシンを含む。ある場合には、第1の標的治療剤は、RS阻害剤、第2の標的治療剤、またはこれら両方と組み合わせて投与される。
【0010】
参照による援用
本明細書で言及される公報、特許、および特許出願のすべては、個々の公報、特許、または特許出願のそれぞれが参照によって援用されていると具体的かつ個別に表示されるのと同じ程度まで、参照によって本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本特許ファイル、または本出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面付きの本特許または本特許出願公開のコピーは、請求および必要料金の支払いに応じて、米国特許商標庁によって提供されるであろう。
【0012】
本発明の特徴および利点についての理解は、本発明の原理が活用されている例示的実施形態を記載している以下の詳細な説明、および以下の添付図面を参照することにより得られるであろう。
図1】ecDNAは、がん細胞が、がん遺伝子依存を変更することにより治療圧力(therapeutic pressure)に対する耐性を獲得することを可能にし、ならびに、このことは、ゲムシタビンおよび別の治療を用いたRNR阻害との併用処置によって克服できることを示す。
図2】大腸がん(CRC)モデルにおいて、選択的KRASG12C阻害であるアダグラシブによる処置に対する前臨床耐性(preclinical resistance)(インビトロおよびインビボ)を早急に獲得することが、ecDNAと強く関係していることを示す。
図3】複製ストレス応答における、リボヌクレオチドリダクターゼ(RNR)の機能、およびCHK1の機能を示す。
図4】ecDNA駆動の腫瘍細胞が、RNRまたはCHK1の阻害に、より感受性が強いことを示す。
図5】3Dコロニー形成アッセイにおけるecDNA陽性(ecDNA(+))とecDNA陰性(ecDNA(-))のコホートの、ゲムシタビンを用いるRNR阻害への異なる感受性を示す。
図6】モデルアッセイにおける、ヒーラメトトレキサート耐性(MTX-R)ecDNAを示す。
図7】ヒーラMTX-Rモデルにおける、CHK1標的検証を示す。
図8】ecDNAが、標的治療剤に対する耐性の重要かつ臨床的に異なるメカニズムに介在することを示す。
図9】親ヒーラ細胞(左パネル)とMTX-Rヒーラ細胞(右パネル)の蛍光インサイツハイブリダイゼーション(fluorescence in situ hybridization)(FISH)画像を示す。
図10】既存に対して、新たなecDNAを媒介とした耐性メカニズムの解明のために、バーコーディングおよび単細胞RNAseqを用いた研究を例示する。
図11】既存に対して、新たなecDNAを媒介とした耐性の解明をするために、メトトレキサート耐性を獲得する個体群(population)を複製するとともに、バーコーディングを用いた研究を例示する。
図12】構造的に異なるRNR阻害剤が、ecDNAおよび相対感受性に相関して、Colo320システムにおける複製ストレスマーカーを誘導することを示す。
図13】ecDNA+細胞が、CHK1阻害剤(CHK1i)に対する感受性がecDNA-細胞よりも高いことを示す。
図14】ecDNAに依存する、CHK1阻害剤に対する感受性のアッセイおよび腫瘍細胞モデルを示す。
図15】様々な薬剤を用いて処置されたマウスにおける、KRAS阻害剤(KRASi)耐性腫瘍の成長を示す。
図16】様々な薬剤を用いて処置されたマウスの腫瘍におけるecDNAを示す。
図17】様々な薬剤を用いて処置されたマウスにおける腫瘍の成長を示す。
図18】様々な薬剤を用いて処置されたマウスにおける無イベント生存率を示す。
図19】様々な薬剤を用いて処置されたマウスの腫瘍から得た細胞におけるecDNA数を示す。
図20】耐性腫瘍細胞をエクスビボで増殖させることを提供するKRAS ecDNAを示す。
図21】KRASiであるアダグラシブによって、および、アダグラシブと、RNRiであるゲムシタビンの組み合わせによって、マウスの腫瘍の成長が阻害されることを示す。
図22】RNRiであるゲムシタビン、およびKRASiであるアダグラシブによって、マウスの腫瘍の成長が阻害されることを示す。
図23】RNRiであるゲムシタビン、KRASiであるアダグラシブ、およびCHK1iであるプレキサセルチブによって、マウスの腫瘍の成長が阻害されることを示す。
図24】インフィグラチニブに耐性があるSNU16細胞の成長およびSNU16細胞内のecDNA量を示す。
図25】様々な薬剤の存在下で、FGFR2 ecDNA-駆動のSNU16細胞の成長を示す。
図26】様々な薬剤の存在下で、EGFR ecDNA-駆動のSNU16細胞の成長を示す。
図27】ecDNA+細胞株およびecDNA-細胞株のWEE1阻害に対する感受性を示す。
図28】ecDNA+細胞において、アダボセルチブがメトトレキサート耐性を失うことを示す。
図29】ecDNA+細胞において、PD0166285がメトトレキサート耐性を失うことを示す
図30】アダボセルチブが、SNU16細胞のインフィグラチニブ処置耐性を妨げることを示す。
図31】ecDNA+細胞のWEE1阻害に対する感受性を示す。
図32】WEE1阻害は、メトトレキサート耐性を妨げることを示す。
図33】ヒーラecDNA+細胞およびヒーラecDNA細胞のWEE1ノックアウトに対する感受性の比較を示す。
図34】PARG阻害が、SNU16細胞のインフィグラチニブ処置に対する耐性の形成を遅らせることを示す。
図35】PARG阻害が、メトトレキサート耐性を妨げる。
図36】ecDNA+細胞株およびecDNA-細胞株のATR阻害剤に対する感受性を示す。
図37】ATR阻害剤が、メトトレキサート耐性を妨げることを示す。
図38】ecDNA+細胞の複製ストレスを示す。
図39A】ecDNA+細胞およびecDNA-細胞の複製フォーク速度を示す。
図39B】ecDNA+細胞およびecDNA-細胞の複製フォーク速度を示す。
図40A】RNR阻害が、ecDNA-腫瘍細胞と比較して、ecDNA+腫瘍細胞において、ヌクレオチド合成を阻止し、複製ストレスを増強し、および、細胞形質転換を抑制したことを示す。RNR阻害が、細胞増殖/細胞形質転換を変更することを示す。
図40B】RNR阻害が、ecDNA-腫瘍細胞と比較して、ecDNA+腫瘍細胞において、ヌクレオチド合成を阻止し、複製ストレスを増強し、および、細胞形質転換を抑制したことを示す。ecDNAが運ぶ、増幅したがん遺伝子数における変化を定量化したFISH画像を示す。
図40C】RNR阻害が、ecDNA-腫瘍細胞と比較して、ecDNA+腫瘍細胞において、ヌクレオチド合成を阻止し、複製ストレスを増強し、および、細胞形質転換を抑制したことを示す。RNR阻害が、ヌクレオチド合成の阻止および複製ストレスの増強をもたらすことを示す。
図41A】ecDNA+細胞が、CHK1iに応じて複製ストレスを増加させたことを示す。ecDNA-細胞と比較して、ecDNA+細胞が、CHK1阻害に対する感受性を増加させたことを示す。
図41B】ecDNA+細胞が、CHK1iに応じて複製ストレスを増加させたことを示す。CHK1経路阻害剤によって、ssDNA損傷が、複製ストレスを誘導することを示す。
図42A】RNR経路阻害によって、ecDNA-細胞と比較して、ecDNA+がん細胞における複製フォーク機能不全が増加したことを示す。RNR阻害剤を用いて処置された、ecDNA+細胞およびecDNA-細胞のDNAファイバー分析を示す。
図42B】RNR経路阻害によって、ecDNA-細胞と比較して、ecDNA+がん細胞における複製フォーク機能不全が増加したことを示す。RNR阻害剤を用いて処置された、ecDNA+細胞およびecDNA-細胞の複製フォーク速度を示す。
図43A】CHK1経路阻害によって、ecDNA-細胞と比較して、ecDNA+細胞における複製フォーク機能不全が増加したことを示す。図42Bは、CHK1阻害剤を用いて処置された、ecDNA+細胞およびecDNA-細胞の複製フォーク速度を示す。
図43B】CHK1経路阻害によって、ecDNA-細胞と比較して、ecDNA+細胞における複製フォーク機能不全が増加したことを示す。CHK1阻害剤を用いて処置された、ecDNA+細胞およびecDNA-細胞のDNAファイバー分析を示す。
図44】腫瘍性タンパク質阻害剤を用いて処置された細胞における、RRM2タンパク質レベルの低下を示す。
図45】WEE1iであるアダボセルチブかPD0166285、KRASiであるアダグラシブ、およびその組み合わせによる、マウスの腫瘍の成長の阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
多数のがん遺伝子指向治療は、変異融合がん遺伝子標的あるいは活性化融合がん遺伝子標的に対する臨床的有効性を実証しているが、しかしながら、これらの同じ治療は、特に同じがん遺伝子が増幅される場合、必ずしも腫瘍に対する良好な奏効率(ORR)あるいは無増悪生存期間(PFS)をもたらすわけではない。相当な苦労にもかかわらず、腫瘍学分野は、この満たされていない重要なニーズである、増幅されたがん遺伝子によって特徴付けられるがん母集団の対処に失敗している。データによると、これらの増幅のかなりの割合は、染色体外DNA(ecDNA)上で起こる場合がある局所的な増幅であり、および、このecDNAの現象は、処置不成功の原因になり得ることが、明らかになった。
【0014】
図1に示されるSNU16胃がんモデルは、FGFR2増幅がんの場合における、標的FGFR阻害剤治療に対する「非反応性」の臨床的観察を要約する。腫瘍細胞は、主に、MYCおよびFGFR2が増幅されたecDNAを有する。ここに示されていないが、腫瘍細胞は、処置開始後最初の2週間で大幅な細胞減少することに加え、FGFR阻害剤治療に対する初期の感受性を示す。しかしながら、細胞株は5週目までに、再び通常通りに成長しており、かつ、FGFR阻害に対して完全に耐性ができている。この迅速に耐性ができることは、ecDNA上のFGFR2の減少、および、ecDNA上のEGFRの著しい増加と相関関係がある。基本的なecDNA機構は、標的治療圧力に応じて、がん遺伝子のレパートリーが迅速に変化することを可能にする。インビトロのこの進化の動態は、元の腫瘍母集団の大部分がFGFR阻害に対して感受性があるにもかかわらず、臨床的「ノンレスポンダー」発現型と一致している。これらの発見は、これらのがん遺伝子が増幅によって活性化される際に、がん遺伝子を対象とする治療(例えば、FGFR、EGFR、MET)について実証された臨床的有効性が欠落していることが観察された理由を説明するのに役立つ。基本的なecDNA機構を治療的に標的とすることは、がん遺伝子増幅腫瘍に関係する治療耐性を克服するための、先例のない直交的戦略を構成する。したがって、図25は、インフィグラチニブを用いたFGFR2の阻害と、RNR阻害剤であるゲムシタビンを用いたecDNAの阻害を同時に行うことが、細胞成長を完全に阻害し、かつ耐性の出現を防止することを示す。同様に、図26は、インフィグラチニブに耐性が出来た細胞が、主に、ecDNA上のEGFR増幅によって稼働されるようになり、および、EGFR阻害剤であるエルロチニブに対して初期に感受性があるが、3週間以内に第2の耐性が出現することを示す。しかしながら、エルロチニブによるEGFRの阻害と、ゲムシタビンによるRNRの阻害を同時に行うことは、細胞成長を完全に阻害し、かつ第2の耐性の出現を防止する。重要なことに、インフィグラチニブおよびエルロチニブによってそれぞれ、FGFR2の阻害と、EGFRの阻害を同時に行うことは、単に、耐性の出現を遅らせる。
【0015】
図2に示された第2のインビボモデルは、ecDNAと関係している別の耐性メカニズムを例示するものであって、活性化突然変異体KRASG12Cに対する標的治療剤は、選択的KRASG12C阻害剤であるMRTX849を用いることで、初期腫瘍の減少をもたらし、次に、迅速な耐性かつ再成長をもたらす。初期腫瘍は、多大なecDNAを有していないが、耐性腫瘍は、ecDNAが増幅されたKRASG12Cを抱えているという明確な証拠を示す。公表前のデータは、BRAF突然変異体大腸がんのEGFR阻害剤およびBRAF阻害剤に対する耐性を駆動させる、ecDNAが介在する似たようながん遺伝子増幅現象と一致する。これらの結果は、突然変異体活性化MAPK経路阻害と関係している主要な耐性メカニズムに対処するためのecDNA指向治療のユニークな効用を示す。
【0016】
腫瘍学分野では、ATR、CHK1およびWEE1を含む複製ストレス(RS)標的治療剤を上手く展開するために、適切な遺伝的背景/感受性シグネチャを発見することに苦労してきた。ATR阻害剤は、ATM突然変異体前立腺がんにいくつかの可能性を示すが、研究は進行中である。がん遺伝子増幅に関係する合成致死性は、他の遺伝的改変および/またはHPV+に関係する合成致死性とともに、提示されてきた(特に、MYC、MYCN、MYCL、CNE1などであり、それらはRSの増加に関係しているからである)。これらの依存性を裏付けるデータは、決定的と言うには程遠く、かつあまりにも異質なものであった。本明細書では、ecDNA指向性阻害(複製ストレス経路成分の阻害)が、がん標的治療剤による合成致死性を示す方法が提供される。ある場合には、RSを標的とした薬剤による合成致死性は、がん標的治療剤の、複製ストレス経路成分の阻害による合成致死性、例えば、リボヌクレオチドリダクターゼ(RNR)、またはCHK1阻害剤による合成致死性などを含む。ある場合には、腫瘍バックグラウンドは、複製ストレス経路阻害剤に対して過度の感受性があることが識別され、耐量を有効にするのに十分な治療指数を可能にする。ある場合には、複製ストレス経路成分の阻害は、ecDNAコピー数の減少、およびecDNA陽性細胞の細胞毒性の増強をもたらす。ある場合には、細胞毒性の増強は、複製ストレス経路成分の阻害と、がん遺伝子などのがん標的とした阻害との組み合わせに起因する。
【0017】
処置法
一態様では、対象のがんを処置するための方法、例えば、対象の腫瘍または腫瘍細胞を処置するための方法が本明細書に提供される。ある場合には、本明細書の方法は、腫瘍または腫瘍細胞における複製ストレスを誘導するのに十分な量の複製ストレス経路剤(RSPA)を投与することを含む。ある場合には、方法は、がん標的治療剤を投与することをさらに含む。ある場合には、腫瘍または腫瘍細胞は、染色体外のデオキシリボ核酸(ecDNA)シグネチャを有する。ある場合には、腫瘍の成長または腫瘍のサイズ、腫瘍細胞の成長またはサイズが減少する。
【0018】
本明細書の方法の一態様では、腫瘍または腫瘍細胞は、ecDNAシグネチャを有すると判定される。ある場合には、腫瘍または腫瘍細胞は、ecDNA+腫瘍またはecDNA+腫瘍細胞に関係している特性を1つ以上持つ場合に、ecDNAシグネチャを有すると判定される。例えば、ある場合には、ecDNAシグネチャは、遺伝子増幅、p53の機能喪失変異、マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の欠如、低レベルのPD-L1発現、低レベルの腫瘍炎症シグネチャ(TIS)、低レベルの腫瘍遺伝子変異量(TMB)、アレルの置換、挿入、もしくは欠失(インデル)の頻度の増加、および、これらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。
【0019】
本明細書の方法の一態様では、方法は、標的遺伝子のタンパク質産物の活性を対象とする、がん標的治療剤を投与することをさらに含む。ある場合には、がん標的治療剤およびRSPAによる処置は、腫瘍または腫瘍細胞における標的遺伝子の増幅または発現を減少させる。ある場合には、がん標的治療剤はRSPAの前に投与される。ある場合には、がん標的治療剤はRSPAと同時に投与される。ある場合には、がん標的治療剤はRSPAの前に投与される。
【0020】
本明細書の方法の一態様では、腫瘍または腫瘍細胞は、ecDNAシグネチャを有する。ある場合には、腫瘍または腫瘍細胞は、がん標的治療剤の投与の後にecDNAシグネチャを発現させる。ある場合には、腫瘍または腫瘍細胞は、処置前にecDNAシグネチャを発現させる。ある場合には、方法は、腫瘍または腫瘍細胞におけるecDNAの増加を防止する。
【0021】
本明細書で提供される方法の一態様では、がん標的治療剤は、がん遺伝子のタンパク質産物を標的とする。ある場合には、がん遺伝子は、点突然変異、挿入、欠失、融合、またはそれらの組み合わせを含む。ある場合には、がん標的治療剤は、AKT、ALK、AR、BCL-2、BCR-ABL、BRAF、CDK4、CDK6、c-MET、EGFR、ER、ERBB3、ERRB2、FAK、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT3、GR、HRAS、IGF1R、KIT、KRAS、MCL-1、MDM2、MDM4、MTOR、MYC、MYCL、MYCN、NRAS、NRG1、NTRK1、NTRK2、NTRK3、PDGFR、PIK3CA/B、PIK3Cδ、RETおよびROS1からなる群から選択される遺伝子を標的とする。ある場合には、がん標的治療剤は、表1に提供される1つ以上の遺伝子を標的とする。
【0022】
本明細書で提供される方法の一態様では、腫瘍または腫瘍細胞は、第1の遺伝子またはその一部の増幅を含む。ある場合には、第1の遺伝子は、がん遺伝子である。ある場合には、第1の遺伝子は、薬剤耐性遺伝子である。ある場合には、増幅は、ecDNA上に存在する。ある場合には、第1の遺伝子は、AKT、ALK、AR、BCL-2、BCR-ABL、BRAF、CDK4、CDK6、c-MET、EGFR、ER、ERRB2、ERBB3、FAK、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT3、GR、HRAS、IGF1R、KRAS、KIT、MCL-1、MDM2、MDM4MTOR、NRAS、PDGFR、RETおよびROS1からなる群から選択される。ある場合には、第1の遺伝子は、表1に提供される1つ以上の遺伝子を含む。ある場合には、がん標的治療剤は、第1の遺伝子を対象とする。ある場合には、対象は、以前にがん標的治療剤による処置を受けたことがない。ある場合には、腫瘍または腫瘍細胞は、以前にがん標的治療剤による処置を受けていない。ある場合には、方法は、腫瘍または腫瘍細胞におけるecDNAの増加を防止する。ある場合には、方法は、第1の遺伝子の増幅のさらなる増加を防ぐ。ある場合には、そのようなさらなる増幅は、がん標的治療剤のみが投与される場合は、発現するが、しかし、処置ががん標的治療剤およびRSPAの両方を含んでいる場合、さらなる増幅の増加は、阻害または防止される。
【0023】
本明細書に提供される方法の一態様では、腫瘍または腫瘍細胞は、がん標的治療剤およびRSPAによる処置に、従来の治療剤に対し耐性を有しているか、または、有していない。ある場合には、腫瘍または腫瘍細胞は、以前に従来の治療剤による処置を受けている。ある場合には、対象は、以前に従来の治療剤による処置を受けている。ある場合には、腫瘍あるいは腫瘍細胞は、従来の治療剤による処置の期間の後に、そのような従来の薬剤に対して耐性または非耐性ができ、ならびに、本明細書の方法によって、そのような腫瘍または腫瘍細胞が、がん標的治療剤(つまり、場合によっては、従来の治療剤とは異なる薬剤)、およびRSPAによる処置を受ける場合、腫瘍細胞の成長は、阻害される。ある場合には、処置は、処置される腫瘍あるいは腫瘍細胞におけるecDNAの量またはレベルを減少させるか、あるいは、ecDNAの量またはレベルがさらに増加することを防止する。
【0024】
本明細書に提供される方法の一態様では、がん標的治療剤は、標的遺伝子のタンパク質産物の活性を対象とする。ある場合には、がん標的治療剤およびRSPAによる処置は、腫瘍または腫瘍細胞内の標的遺伝子の増幅または発現を抑制する。ある場合には、標的遺伝子は、がん遺伝子、薬剤耐性遺伝子、治療標的遺伝子、またはチェックポイント阻害遺伝子である。ある場合には、標的遺伝子は、KRAS、HRAS、NRAS、BRAF、EGFR、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、ALK、ROS1、RET、PDGFR、c-MET、IGF1R、FAK、BCR-ABL、MCL-1、CDK4、CDK6、ERRB2、ERBB3、MDM2、MTOR、FLT3、KIT、AKT、BCL-2、AR、ER、GR、およびMDM4からなる群から選択される。ある場合には、標的遺伝子は、表1に提供される1つ以上の遺伝子を含む。ある場合には、標的遺伝子は、ecDNA上で発見されるか、ecDNA上で増幅されていることが発見され、ならびに、がん標的治療剤およびRSPAによる処置は、標的遺伝子のコピーを含んでいるecDNAを含むecDNAを減少させる。
【0025】
本明細書に提供される方法の様々な態様では、腫瘍または腫瘍細胞のecDNAシグネチャは、ある場合には、腫瘍または腫瘍細胞の処置開始前に把握される。例えば、腫瘍または腫瘍細胞は、生検が実施されるか、そうでなければ、収集され、かつ1つ以上のecDNAシグネチャについてアッセイが実施される。ある場合には、どのように腫瘍または腫瘍細胞を処置するかの判定は、ecDNAシグネチャが全体的あるいは部分的に存在するか、または欠如しているかに基づいている。ある場合には、ecDNAシグネチャは、腫瘍または腫瘍細胞の処置開始後に把握される。
【0026】
本明細書に提供される方法の一態様では、がん標的治療剤およびRSPAによる処置方法は、RSPAが欠如した状態でのがん標的治療剤による処置と比較して、奏効率を改善し、および/または、処置反応の期間を延ばす。ある場合には、方法は、RSPAが欠如している、がん標的治療剤による処置と比べて、無増悪生存期間の期間を増加させる。
【0027】
一態様では、ecDNAに関係する腫瘍または腫瘍細胞を処置するための方法が提供される。
ある場合には、方法は、ecDNAを包含する腫瘍または腫瘍細胞を有すると特定される対象に、RSPAおよびがん標的治療剤を投与することを含む。ある場合には、処置の結果、腫瘍の成長またはサイズ、あるいは、腫瘍細胞の成長または数が減少する。
【0028】
本明細書に提供される方法の一態様では、対象の腫瘍または腫瘍細胞は、ecDNAシグネチャを有すると特定される。ある場合には、ecDNAシグネチャは、遺伝子増幅、P53の機能喪失変異型、マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の欠如、低レベルのPD-L1発現、低レベルの腫瘍炎症シグネチャ(TIS)、低レベルの腫瘍遺伝子変異量(TMB)、アレルの置換、挿入もしくは欠失(インデル)の頻度の増加、および、これらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
本明細書に提供される方法の一態様では、腫瘍または腫瘍細胞は、細胞内のecDNAのイメージング、がん遺伝子結合剤によるecDNAの検出、またはDNAシーケンシングによってecDNAを有するものとして特定される。いくつかの場合において、ecDNAは循環腫瘍DNAにおいて特定される。
【0030】
本明細書に記載の方法の様々な様態では、腫瘍または腫瘍細胞は、固形腫瘍によって構成される。ある場合には、固形腫瘍中に存在するecDNAは、がん標的治療剤およびRSPAによる処置の結果、減少させられるか、または消失させられる。ある場合には、固形腫瘍中のecDNAレベルは、処置前のecDNAレベルと比べて、処置後に低下させられる。いくつかの場合では、固形腫瘍におけるがん遺伝子増幅のレベルおよび/またはコピー数多型(CNV)のレベルは、がん標的治療剤およびRSPAによる処置前の固形腫瘍におけるがん遺伝子増幅のレベルおよび/またはコピー数多型(CNV)のレベルと比べて処置後に低下させられる。
【0031】
本明細書に提供される方法のいくつかの態様では、腫瘍または腫瘍細胞は、循環腫瘍細胞を含む。ある場合には、循環腫瘍細胞内に存在するecDNAは、がん標的治療剤およびRSPAによる処置の結果、減少させられるか、または消失させられる。ある場合には、循環腫瘍細胞中のecDNAレベルは、処置前のecDNAレベルと比べて、処置後に低下させられる。ある場合には、循環腫瘍細胞におけるがん遺伝子増幅のレベルおよび/またはコピー数多型(CNV)のレベルは、処置前の循環腫瘍細胞におけるがん遺伝子増幅のレベルおよび/またはコピー数多型(CNV)のレベルと比べて、処置後に低下させられる。ある場合には、ecDNAの存在、あるいはレベルは、循環腫瘍DNAにおいて特定される。
【0032】
RSPAおよびがん標的治療剤による処置を採用する、本明細書に提供される方法の様々な態様では、RSPAは、RNR阻害剤、ATR阻害剤、CHK1阻害剤、WEE1阻害剤、およびPARG阻害剤からなる群から選択される。ある場合には、RNR阻害剤は、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、トリアピン、5-クロロ-2-(n-((1S、2R)-2-(6-フルオロ-2、3-ジメチルフェニル)-1-(5-オキソ-4、5-ジヒドロ-1、3、4-オキサジアゾール-2-イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド、クロファラビン、フルダラビン、モテキサフィンガドリニウム、クラドリビン、テザシタビン、およびCOH29(N-[4-(3、4-ジヒドロキシフェニル)-5-フェニル-1、3-チアゾール-2-イル]-3、4-ジヒドロキシベンズアミド)からなる群から選択される。ある場合には、CHK1阻害剤は、GDC-0575、プレキサセルチブ、LY-2880070、SRA737、XCCS-605B、ラブセルチブ(LY-2603618)、SCH-900776、RG-7602、AZD-7762、PF-477736およびBEBT-260からなる群から選択される。ある場合には、WEE1阻害剤は、AZD1775(MK1775)、ZN-c3、Debio 0123、IMP7068、SDR-7995、SDR-7778、NUV-569、PD0166285、PD0407824、SC-0191、DC-859/A、ボスチニブ、およびBos-Iからなる群から選択される。ある場合には、ATR阻害剤は、RP-3500、M-6620、ベルゾセルチブ(M-6620、VX-970;VE-822)、AZZ-6738、AZ-20、M-4344(VX-803)、BAY-1895344、M-1774、IMP-9064、nLs-BG-129、SC-0245、BKT-300、ART-0380、ATRN-119、ATRN-212、およびNU-6027からなる群から選択される。
【0033】
がん標的治療剤およびRSPAのよる処置を採用する、本明細書に提供される方法の様々な様態では、がん標的治療剤は、アベマシクリブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、アファチニブ、アレクチニブ、ALRN-6924、AMG232、AMG-510、アパチニブ、ARS-3248、AXL1717、AZD-3759、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ブリガチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、セリチニブ、セツキシマブ、CGM097、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダコミチニブ、ダスチニブ、DS-3032b、エンコラフェニブ、エントレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ファム-トラスツズマブデルクステカン、フィギツムマブ、ゲフィチニブ、ゴシポール、HDM201、イダサヌトリン、イマチニブ、インフィグラチニブ、イニパリブ、ラパチニブ、ラロトレクチニブ、LEE011、レンバチニブ、LGX818、ロルラチニブ、MEK162、MK-8242 SCH 900242、MRTX849、ナビトクラックス、ネシツムマブ、ニロチニブ、オバトクラックス、オラパリブ、OSI-906、オシメルチニブ、パルボシクリブ、パニツムマブ、PD-0332991、ペリソフィネ、ペルツズマブ、PL225B、レポトレクチニブ、リボシクリブ、RO5045337、サリノマイシン、サリラシブ、SAR405838 MI-77301、ソラフェニブ、ソトラシブ、スニチニブ、タモキシフェン、テムシロリムス、チピファルニブ、チバニタブ、トファシチニブ、トラメチニブ、トラスツズマブ、ツカチニブ、UPR1376、VAL-083、ベムラフェニブ、ベムラフェニブ、ヴィンタフォリデ、およびゾプタレリンドキソルビシンからなる群から選択される。ある場合には、がん標的治療剤は、表1に提供される遺伝子のうちの1つ以上によってコード化されたタンパク質を標的とする。
【0034】
【表1-1】
【0035】
【表1-2】
【0036】
本明細書に提供される方法の一態様では、RSPAはRNR阻害剤であり、ならびに、RSPAは、単剤として推奨される使用量を下回る治療量が投与される。ある場合には、RNR阻害剤は、ゲムシタビンである。代替的に、RNR阻害剤は、ゲムシタビンでもヒドロキシウレアでもない。
【0037】
本明細書に提供される方法の一態様では、RSPAは、ゲムシタビンではない。ある場合には、RSPAは、がん標的治療剤がEGFR阻害剤である場合、ゲムシタビンではない。
【0038】
本発明の様々な実施形態が本明細書に示され、および記載される一方、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは当業者にとって明白であろう。多数の変異、変化、および置換は、本発明から逸脱することなく、当業者が想到し得るものである。本明細書に記載される本発明の様々な代替実施形態が、本明細書に採用され得ると解すべきである。
【0039】
特定の定義
本明細書に用いられる際には、用語「約」または「おおよそ」は、当業者によって判定される、特定の値に対する許容可能な誤差範囲内であることを意味し、このことは、その値がどのように測定または判定されるか、つまり、測定システムの制約次第であり得る。例えば、「約」とは、各技術分野の慣例により、1以内の標準偏差、または1を超える標準偏差を意味することができる。別の例として、「約」は、所定の値の20%まで、10%まで、5%まで、1%までの範囲を意味することができる。生物学的システムまたは生物学的プロセスに関して、用語「約」は、値の5倍以内または値の2倍以内などのように1桁以内であることを意味することができる。特定値が本出願と本願特許請求の範囲に記載され、他に述べられていない場合、用語「約」は、特定値に対する許容可能な誤差以内であることを意味する。
【0040】
用語「対象」は、本明細書で用いられる際には、一般に哺乳動物(例えば人間)のような脊椎動物を指す。哺乳動物は、ネズミ、サル、ヒト、家畜、スポーツ動物、およびペット(例えば、犬または猫)を含むが、これらに限定されない。組織、細胞、およびインビボで得られたまたはインビトロで培養された生物学的実体の子孫も網羅される。いくつかの実施形態では、対象は患者である。いくつかの実施形態では、対象は、疾病(例えば、がん)に関する症状を示す。ある場合には、代わりに、対象は、疾病に関する症状を示さない。ある場合には、対象は罹患していない。
【0041】
用語「生物学的サンプル」は、本明細書で用いられる際に、一般に、哺乳動物(例えば、人間)のような対象に由来する、またはその対象から採取されたサンプルを指す。生物学的サンプルは、毛、指の爪、皮膚、汗、涙、眼液、鼻腔用ぬぐい液または鼻咽頭洗浄液、唾液、咽頭ぬぐい液、唾液、粘液、血液、血清、血漿、プラセンタ液、羊水、臍帯血、気泡液体(emphatic fluids)、キャビティー流体(cavity fluids)、耳垢、油、腺分泌物、胆汁、リンパ、膿、微生物叢、胎便、母乳、骨髄、骨、CNSの組織、脳脊髄液、脂肪組織、滑液、便、胃液、尿、精液、膣分泌物、胃、小腸、大腸、直腸、膵臓、肝臓、腎臓、膀胱、肺、および対象に由来したか、対象から採取された他の組織や流体を含むが、これらに限定されない。
【0042】
用語「処置する」は、本明細書に使用される際、一般に、薬剤を投与すること、または、効果を得るための手段を実行することを指す。ある場合には、効果は、完全にまたは部分的に疾病や症状を防止するという点では予防的であり、ならびに/あるいは、効果は、疾病、および/または疾病の1つ以上の症状を部分的または完全に治癒するという点で処置的である。「処置」は、本明細書に使用される際、哺乳動物、特にヒトにおける腫瘍の処置を含み得、および、「処置」は、(a)疾病または疾病の症状が、罹患する傾向があり得るがまだ罹患していると診断されていない対象に現れることを防止すること (例えば、原疾病と関係があり得、または、原疾病によって引き起こされ得る疾病を含む) (b)疾病を抑制する、つまり、その発現を捕捉すること、および、(c)疾病を和らげる、つまり、疾病の退行を引き起こすこと、を含む。処置は、減退、寛解、症状を軽減すること、または、患者が疾病を我慢できるような状態にすること、変性率または減少率を示すこと、あるいは、最終変性点(the final point of degeneration)がより下がること、などを含むがんの処置、改善、または防止の成功に関するあらゆる指標を指し得る。処置または症状の改善は、医師による検診の結果を含む、1つ以上の客観的または主観的なパラメーターに基づいている。したがって、用語「処置」は、がんまたは他の疾病に関係する症状または状態の発現を防止する、遅らせる、緩和する、捕捉、または抑制するために、本発明の化合物あるいは薬剤を投与することを含む。用語「治療効果」は、疾病の低減、除去、または予防、疾病の症状、あるいは対象の疾病の副作用を指す。
【0043】
用語「腫瘍」または「腫瘍細胞」は、本明細書に使用される際、一般に、必要以上に成長および分裂する、あるいは死ぬべき時に死なない細胞を指す。ある場合には、腫瘍細胞は、固形腫瘍のような固体塊に存在し、または、ある場合には、腫瘍細胞は、白血病においてなど、非固体で見つかる。腫瘍または腫瘍細胞は、転移または転移性細胞も含むことができる、がん細胞が原発(初発)腫瘍から分離し、身体の他の器官または組織において新しい腫瘍を形成し得る。
【0044】
用語「がん遺伝子」は、本明細書で使用される際、一般に、不適切に活性化された場合にがんを引き起こす可能性がある遺伝子を指す。腫瘍または腫瘍細胞では、これらの遺伝子は頻繁に。負の調節ドメインを除去するよう変異されるか、または高いレベルで表現される。
【0045】
用語「ecDNAシグネチャ」は、本明細書で使用される際、一般に、ecDNA+である腫瘍または腫瘍細胞に共通する1つ以上の特徴を指す。ある場合には、ecDNAシグネチャは、遺伝子増幅、p53の機能喪失変異型、マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の欠如、低レベルのPD-L1発現、低レベルの腫瘍炎症シグネチャ(TIS)、低レベルの腫瘍遺伝子変異量(TMB)、アレルの置換、または、挿入や欠失(インデル)の頻度の増加、および、これらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。ある場合には、ecDNAシグネチャは、画像化技術を用いたecDNAの検出または識別を含む。ある場合には、ecDNAシグネチャは、ecDNAを画像化することと直接検出することのいずれも含まない。
【0046】
用語「複製ストレス経路剤」、「RSPA」、「複製ストレス経路阻害剤」、および「RS経路阻害剤」は、本明細書で使用される際、一般に、腫瘍細胞などの細胞において複製ストレスを引き起こす薬剤を指す。いくつかの場合では、RSPAは、複製ストレス経路成分の阻害剤であり、ここで、阻害は複製ストレスを増大させる。複製ストレスは、本明細書で使用される際、DNA複製およびまたはDNA合成に影響を与えるストレスを指し、複製フォークの進行および/またはDNA合成の妨害の減速または失速を含むがこれらに限定されない。例示的な複製ストレス経路剤は、RNR(リボヌクレオチドレダクターゼ)、CHK1(チェックポイントキナーゼ1)、ATR(Rad3関連タンパク質)、WEE1、E2F、PARG(ポリ(ADPリボース)グリコヒドロラーゼ)、またはRRM2(リボヌクレオチドレダクターゼ調節サブユニット2)を阻害する薬剤が含むがこれらに限定されない。
【0047】
用語「少なくとも」、「よりも大きい」、または「以上」が、一連の2つ以上の数値における最初の数値の前に来るときはいつでも、「少なくとも」、「よりも大きい」、または「以上」という用語は、その一連の数値のそれぞれに適用される。例えば、1、2、または3以上であることは、1以上、2以上、または3以上であることと同等である。
【0048】
「わずかに」、「未満である」、または「以下である」という用語が、一連の2つ以上の数値における最初の数値の前に来るときはいつでも、「わずかに」、「未満である」、または「以下である」という用語は、その一連の数値のそれぞれに適用される。例えば、3、2、または1以下であることは、3以下、2以下、1以下であることと同等である。
【実施例
【0049】
以下の実施例は、本開示の様々な実施形態を例証する目的で提供され、本明細書の本開示をいかなる様式においても制限する意図しないものである。本実施例は、本明細書に記載される方法とともに、現時点では、好ましい実施形態の代表的なものであり、例示的であり、かつ本明細書の本開示の範囲を制限する意図はない。特許請求の範囲によって画定される本開示の主旨の範囲内に含まれる変更および他の使用は、当業者が想到するであろう。
【0050】
実施例1:ecDNA陽性がんにおけるRS経路の阻害
図3は、HPV7(E7)、dNTP枯渇、および他の例などのがん遺伝子による症例において活性化させられる複製ストレス経路を例示する。
【0051】
CHK1およびRNRは、DNA損傷応答ネットワークにおける複製ストレス(RS)応答経路において機能する。腫瘍細胞の一連の要因は、複製ストレスの間に増殖および生存を維持するためにRS経路を活性化させ得る。この経路における標的の阻害は、RSのレベルを毒性レベルまで上昇させることによって、これらの腫瘍細胞において合成致死性をもたらし得る。RNRおよびCHK1の両方は不可欠であり、したがって、RNR阻害剤およびCHK1阻害剤の臨床開発における2つの関連する課題は、患者選択と治療指数である。
【0052】
図12は、ecDNA駆動の腫瘍細胞がRNRまたはCHK1の阻害に対してより感受性が高いことを例示する。RNRおよびCHK1の複数の構造的に異なる阻害剤は、ecDNA駆動の腫瘍細胞における毒性を、対応するecDNA非保有細胞と比較して、5~10倍高めることを実証する。RNR阻害剤を用いる処置は、MYCをコードするecDNAのコピーを減少させることをもたらす。
【0053】
Colo320 ecDNA+(細胞株COLO320 DM)およびColo320ecDNA-(染色体が増幅された、細胞株COLO320 HSR)細胞(大腸腺がん細胞株、ATCC)は、3つの構造的に異なるRNR阻害剤、ゲムシタビン、ヒドロキシウレ(HU)、または化合物1(comp-1(5-クロロ-2-(n-((1S、2R)-2-(6-フルオロ-2、3-ジメチルフェニル)-1-(5-オキソ-4、5-ジヒドロ-1、3、4-オキサジアゾール-2-イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド)を用いて処置された。図12に示すように、ecDNA陽性細胞(Colo320 DM)は、ecDNA陰性細胞株(Colo320 HSR)と比較して、RNR阻害剤に対する感受性が5~10倍高い。全てのRNR阻害剤は、複製ストレスマーカーである、CHK1のセリン位置317および345でのリン酸化を誘発し、および、ecDNA陽性細胞は、一般に、この複製ストレスマーカーの誘発を、ecDNA陰性細胞と比較して増加させた。RNR阻害剤ヒドロキシウレ(HU)により処置されたecDNA+(Colo320 DM)細胞、および対照細胞(処置されたビヒクル)は、ecDNAについて評価された。ビヒクルにより処置された細胞株は、予想通り、高いレベルのecDNAを有した一方、RNR阻害剤であるヒドロキシウレによる処置の後、ecDNAコピー数は、著しく減少した。
【0054】
ecDNA+細胞株(Colo320 DM)のecDNA-細胞株(Colo320 HSR)と比較して、4つの構造的に異なるCHK1阻害剤に対する感受性が判定された。2つの細胞株は、GDC0575、プレキサセルチブ、ラブセルチブ、またはSRA737を用いて7日間、処置された。図13に示すように、Colo320 HSR ecDNA-細胞と比較して、Colo320 DM ecDNA+細胞のCHK1阻害剤への感受性が約5~10倍高まったことが示された。対照的に、CCT241533によるCHK2の阻害、AZD0156によるDDR標的であるATMの阻害との間には、感受性に差異がないことを明らかにした。
【0055】
図5は、軟寒天で実施される3次元のコロニー形成アッセイにおけるecDNA陽性がん細胞とecDNA陰性がん細胞の、ゲムシタビンを用いたRNRの阻害に対する異なる感受性を例示する。ecDNA+およびecDNA-細胞株のパネルは、二週間の軟寒天薬剤感受性アッセイ(a two-week soft-agar drug sensitivity assay)において照合された(interogated)。すべての株は、五段階の用量範囲( five-point dose range)のゲムシタビンを用いて2週間処置され、および、ImageJ解析により個々のコロニー数を定量化するために(図5の底部パネルにプロットされる)クリスタルバイオレットで染色された(図5の上部パネル)。すべてのecDNA+細胞株(SNU16、Colo320 DM、H716、およびH2170)は、ecDNA-細胞株(DLD1、Colo320 HSR、Lovo、およびSW48)と比較して、ゲムシタビンに対する感受性が5~10倍高まったことが表された。
【0056】
図31は、軟寒天で実施される三次元のコロニー形成アッセイにおける、アダボセルチブを用いたWEE1の阻害に対するecDNA+細胞の感受性を示す。ecDNA+細胞株のパネルは、二週間の軟寒天薬物感受性アッセイにおいて照合された。すべての細胞株は、五段階の用量範囲のアダボセルチブを用いて2週間処置され、および、個々のコロニー数を定量化するためにクリスタルバイオレットで染色された。すべての細胞株は、アダボセルチブに対する感受性を示した。
【0057】
図32は、コロニー形成アッセイを介したヒーラ細胞において、アダボセルチブ(MK-1775)を介したWEE1阻害によって、メトトレキサートに対する耐性形成の抑止を示す。図32の左パネルにおいて、100個の細胞は、メトトレキサートなしで10日間播種され、その後、DMSO、プレキサセルチブ(IC50、1/3IC50、または1/9IC50)、あるいはadavosertib(MK-1775)(IC50、1/3IC50、または1/9IC50)を用いて処置される。図32、右パネルにおいて、10000個の細胞をメトトレキサートで21日間播種し、同時にDMSO、プレキサセルチブ(IC50、1/3 IC50、または1/9 IC50)、またはアダボセルチブ (MK-1775) (IC50、1/3 IC50、または1/9 IC50)を用いて処置される。
【0058】
ecDNA+(Colo320 DM)細胞株モデルおよびecDNA-(Colo320 HSR)細胞株モデルの感受性は、濃度が増加したプレキサセルチブ(CHK1i)を用いて、それぞれの上記細胞株を7日間にわたり処置することにより把握した。細胞増殖がMTSアッセイ(図14、左上パネル)を用いて判明される一方、細胞毒性はCytoTox-Gloアッセイ(図14、右上パネル)を用いて死細胞プロテアーゼ活性を測定することにより判明される。Colo320 DMを保有するecDNAは、増殖と細胞毒性の変化を分析した場合、Colo320 HSR ecDNA-細胞と比較して、CHK1iによる処置に対する感受性が200倍および13.71倍高まったことを示した。
【0059】
1μMのアダグラシブが存在する場合と存在しない場合における、親CT26WT E3細胞(ecDNA-細胞株)およびアダグラシブ耐性CT26WT E3細胞(ecDNA+)の、濃度が増加したプレキサセルチブ(CHK1i)に対する 5日間にわたる感受性は、Cell Titer-gloアッセイを用いて判明した。図14の底部パネルに示すように、アダグラシブ耐性CT26WT E3 ecDNA+細胞は、ecDNA非保有の親CT26WT E3細胞と比較して、CHK1阻害に対する感受性が約10倍高まったことを示した。
【0060】
ヒーラ細胞は、CHK1阻害剤である10nMのGDC-0575を単独、100nMのメトトレキサートを単独、または、10nMのGDC-0575と100nMのメトトレキサートとの組み合わせで3週間にわたって処置された。細胞コンフルエンスは、時間経過とともにハイコンテンツ顕微鏡(high-content microscopy)によって測定された。GDC-0575は、細胞の成長に影響を与えなかった。メトトレキサートは当初、細胞の成長をもたらさなかったが、2週間の培養後、細胞は耐性を発現し始め、および細胞成長が再開された。対照的に、CHK1阻害剤と組み合わせることは、メトトレキサート耐性の発現を防止した。この効果は、8週目の研究終了まで持続した。図6は、ecDNA陽性メトトレキサート耐性ヒーラがん細胞に関連するデータを示す。RNR阻害剤は、メトトレキサート処置に対する迅速なecDNA媒介耐性を抑止し、これは、観察された合成致死性をもたらす。図9は、親ヒーラ細胞(左パネル)およびメトトレキサート耐性ヒーラ細胞(右パネル)のFISH画像を示す。このデータは、未処置のヒーラ細胞は、ecDNA陽性細胞が非常に少ないことを示す。対照的に、メトトレキサート耐性ヒーラ細胞は、ecDNAのレベルを増加させている。メトトレキサート耐性ヒーラ細胞における、予備的なCHK1標的検証が、図7に示されている。このデータは、ライブセル顕微鏡(live cell microspy)が、ヒーラ細胞におけるecDNA上のDHFR増幅によるメトトレキサート耐性の形成において、CHK1阻害による合成致死性の可能性を示唆していることを示す。
【0061】
ecDNA+(Colo320 DM)細胞株モデルおよびecDNA-(Colo320 HSR)細胞株モデルの感受性は、濃度が増加したアダボセルチブまたはPD0166285を用いて、それぞれの細胞株を7日間にわたり処置することにより判明した。細胞増殖は、MTSアッセイ(図27、上部パネル)を用いて判明された一方、生存率は、CellTiter-gloアッセイ(図27、下部パネル)を用いて判明された。Colo320 ecDNA+細胞は、Colo320 ecDNA-細胞と比較して、増殖および生存率の変化を分析する際に、アダボセルチブおよびPD0166285による処置に対する感受性が高まっていることを示した。
【0062】
ecDNA+(Colo320 DM)細胞株モデルおよびecDNA-(Colo320 HSR)細胞株モデルのATR阻害に対する感受性は、濃度が増加したAZD6738またはBAY1895344を用いて、それぞれの細胞株を7日間にわたり処置することにより判明した。細胞増殖はMTSアッセイを用いて判明した(図36、上部パネル)一方、生存率はCellTiter-gloアッセイを用いて判明した(図36、下部パネル)。Colo320 ecDNA+細胞は、Colo320 ecDNA-細胞と比較して、増殖および生存率の変化を分析する際に、AZD6738およびBAY1895344による処置に対する感受性が高まっていることを示した。
【0063】
ヒーラ細胞を、WEE1阻害剤である0.01~0.3μMのアダボセルチブ単独、1nM~100nMのPD0166285、100nMのメトトレキサート単独、0.01~0.3μMのアダボセルチブと100nMのメトトレキサートの組み合わせ、または1nM~100nMのPD0166285と100nMのメトトレキサートの組み合わせを用いて、3週間にわたって処置した。細胞コンフルエンスは、時間経過とともにハイコンテンツ顕微鏡で測定された。メトトレキサートは当初、細胞成長をもたらさなかったが、2週間の培養後、細胞は耐性を発現し、および細胞成長が再開された。対照的に、アダボセルチブと組み合わせることは、メトトレキサート耐性の発現を防止した。図28は、NucRedによって測定される、ecDNA陽性メトトレキサート耐性ヒーラがん細胞において、アダボセルチブ(MK1775)がメトトレキサート耐性を抑止することに関連するデータを示す。図28は、ecDNA陽性メトトレキサート耐性ヒーラがん細胞において、PD0166285がメトトレキサート耐性を抑止することに関連するデータを示す。
【0064】
ヒーラ細胞は、PARG阻害剤である3~100μMのPD00017273を100nMのメトトレキサートと併用(図35、上部パネル)、または併用せず(図35、下部パネル)に用いて、3週間にわたって処置された。細胞コンフルエンスは、時間経過とともにハイコンテンツ顕微鏡で測定された。トトレキサートは当初、細胞成長をもたらさなかったが、2週間の培養後、細胞は耐性を発現し、および細胞の成長が再開された。対照的に、アダボセルチブと組み合わせることは、メトトレキサート耐性の発現を防止した。
【0065】
ヒーラ細胞は、ATRは阻害剤である3~100μMのAZD6738、または10~300nMのBAY1895344を、100nMのメトトレキサートと併用(図35、上部パネル)、または併用せず(図35、下部パネル)に用いて、3週間にわたって処置された。細胞コンフルエンスは、時間経過とともにハイコンテンツ顕微鏡で測定された。AZD6738は、100nMのメトトレキサートと併用することで、合成致死性を示したが、AZD6738それ自身ではヒーラ細胞の成長に影響を与えなかった。しかしながら、BAY1895344は、10nMを超えると、毒性を示した。
【0066】
ecDNAが、標的治療剤に対する耐性の重要かつ臨床的に異なるメカニズムに介在することを示す。これためのモデルは図8に示される。このデータは、1つ以上のRS経路標的薬剤の使用など、ecDNAを対象とする処置の効用がすぐに得られることを示唆し、これらの薬剤は、単剤として、または他の処置との組み合わせにより、RNR、ATR、CHK1、およびWEE1を標的とするものを含むが、これらに限定されない。第1に、承認された標的治療剤が存在しない突然変異でない増幅されたがん遺伝子を有する腫瘍(例えばFGFR、EGFR、MET、KRAS、MDM2の増幅)。第2に、標的遺伝子自体のecDNAに基づいた増幅などの局地増幅の結果として、特定のがん遺伝子の突然変異体が活性化することを直接阻害する場合に、がんの獲得耐性が発現する、1つ以上の標的薬剤を用いて処置された腫瘍(例えば、KRAS、BRAF、EGFR)。
【0067】
実施例2
ecDNA陽性がんにおける耐性への道筋
処置に対する耐性の発現のメカニズムを理解するために、ecDNAによって介在された、ecDNAを保有する耐性クローンが事前に存在していたものかどうか、または、治療圧力下で新たに形成されるかどうかが判明した。バーコーディング実験はヒーラ細胞において実施され、このヒーラ細胞は、DHFRを保有するecDNAの生成を通じ、DHFR阻害剤であるメトトレキサート(MTX)による長期間の処置に対して耐性ができ、それゆえMTX圧力を克服した。
【0068】
単細胞RNAseq解析と組み合わせてバーコーディングすること。
初期のナイーブ細胞個体群は、安定したレンチウイルスを媒介して、バーコード配列が各細胞のゲノムに組み込まれることによって、バーコーディングされた。このバーコードは、各細胞のRNAにも発現されるであろう。細胞の単細胞RNAseq解析は、ecDNA上に余分なDHFRのコピーが存在していることを表している高いDHFR発現を有する細胞(バーコードによって)を特定する。数週間のMTX圧力と耐性細胞の生成後、単細胞RNAseq(解析)は、処置前に高いDHFR発現を示したバーコードを有しており、耐性ができて、MTX圧力下を生き残った細胞を特定するために再び実施された。このことは、高いDHFRを発現する耐性細胞の個体群が事前に存在していたことを示す。あるいは、処置前に高いDHFR発現を示さなかったが、処置後は高い発現を示す細胞の特定は、新しいecDNAの生成を示す。
【0069】
パラレル耐性複製(parallel resistance replication)を用いてバーコーディングすること。
【0070】
ヒーラ細胞の初期のナイーブ個体群は、安定したレンチウイルスを媒介してユニークなバーコード配列が各細胞のゲノムに組み込まれることによって、バーコーディングされ、そしてユニークにバーコーディングされた約200、000個のヒーラ細胞。このバーコーディングされた細胞個体群は、パラレルで行われた8つの耐性実験に広げられ、分けられた。これらのパラレル複製における細胞は、耐性細胞の個体群を産出するために、数週間、100nMのMTXを用いて処置された。その後、耐性細胞個体群のそれぞれは、どのバーコードが耐性を有したかを判定するためにシーケンシングされる。共通のバーコードは、複製の間で耐性細胞において特定され、その結果、これらの細胞は、事前に存在するecDNAに起因して、耐性細胞を抱えていたことが示された。さらに、バーコードの一部は個々の複製に対してユニークであり、耐性が新たに形成された。(図11)。
【0071】
実施例3:マウスのKRAS突然変異腫瘍の処置
マウスは、CT26WT E3 G12C KRAS突然変異体腫瘍細胞が注入された。一旦腫物が平均体積350mmになると、マウスは、KRAS阻害剤(アダグラシブ)および/またはRNR阻害剤(ゲムシタビン)を用いて、(1)ビヒクルのみ、(2)KRASi(アダグラシブ)50mg/kg、1日1回経口投与、(3)RNR(ゲムシタビン)10mg/kg、1日おきに腹腔内、(4)RNRi(ゲムシタビン)120mg/kg 1週間に1回腹腔内(5)RNRi(ゲムシタビン)10mg/kg 1日おきに腹腔内、および、KRASi(アダグラシブ)50mg/kg、1日1回経口投与、または(6)RNRi(ゲムシタビン)120mg/kg 1週間1回、腹腔内、および、KRASi(アダグラシブ)50mg/kg、1日1回経口投与、の治療レジュメのうちの一つから開始した。
【0072】
単剤として、KRASi(アダグラシブ)のみが、腫瘍の成長を著しく遅らせることをもたらせた。しかしながら、14日目までに、腫瘍は、KRASi(アダグラシブ)に対する耐性を表し始め、腫瘍の成長が再開された。KRASi(アダグラシブ)がRNR阻害剤(ゲムシタビン)と結合する場合、腫瘍の成長は研究30日目まで継続して阻害された。組み合わせの効果をさらに評価するために、KRASi(アダグラシブ)処置において耐性を発現した4匹のマウスは、処置5に切り替えられた。これらのマウスの腫瘍の成長は、単剤処置に残ったマウスと比較して、阻害された。これらの実験の結果を例証するデータは、図15に提供される。
【0073】
ecDNAは、犠牲になったマウスから得られた腫瘍からもたらされたエクスビボ培養物から調製された中期スプレッドにおいて測定された。ecDNA数は、マウスのKRASのFISHを用いて判定された。図16に示すように、KRASに増幅されたecDNAは、処置1または3において見られなかった。対照的に、KRASi耐性をもたらした処置は、処置群終了(D21)またはD16において、高いレベルのKRAS ecDNAを蓄積した。D16において単離された腫瘍からのKRAS阻害剤およびRNR阻害剤の組み合わせを用いて処置されたマウスのKRAS ecDNAレベルは、著しく低かった。
【0074】
実施例4:マウスのKRAS突然変異腫瘍の処置
マウスにCT26WT E3 G12C KRAS突然変異体腫瘍細胞が注入された。
一旦腫瘍が平均体積350mmになると、マウスは、KRAS阻害剤(アダグラシブ)および/またはRNR阻害剤(ゲムシタビン)を用いて、(1)ビヒクルのみ、(2)KRASi(アダグラシブ)50mg/kg、1日1回経口投与、(3)RNRi(ゲムシタビン)20mg/kg、2日に1回腹腔内、(4)RNRi(ゲムシタビン)10mg/kg、2日に1回、および、KRASi(アダグラシブ)50mg/kg、1日1回経口投与、または、(5)RNRi(ゲムシタビン)20mg/kg、2日に1回腹腔内、および、KRASi(アダグラシブ)50mg/kg、1日1回経口投与、の治療レジュメのうちの1つを開始した。
【0075】
図17に示すように、かなりの腫瘍の成長が処置1~3において見られ、単剤のKRASi(アダグラシブ)は、腫瘍が耐性を獲得し、および腫瘍の成長が加速する前に、腫瘍の成長を約2週間遅らせた。KRASiとRNRiの組み合わせは、腫瘍の成長を著しく阻害し、腫瘍の体積を0に近づけた。RNRi(処置4)のより低い用量では、8匹のマウスのうちの7匹は完全寛解に達し、および、7匹のマウスのうちの7匹はRNRi(処置5)のより高い用量で完全寛解に達した。この研究における処置の生存プロットは、図18に示される。
【0076】
処置群のマウスから採取した腫瘍から樹立した中期停止・固定されたエクスビボ株から中期スプレッドを調製し、および、ecDNAを、マウスKRASについてFISHにより可視化した。KRASにより増幅されたecDNAは、手作業および/または認証されたコンピューターアルゴリズムであるecSEG(ソフトウェアパッケージであり、Rajkumar et al.、 Semantic Segmentation of Metaphase Images Containing Extrachromosomal DNA、 iScience、 Volume 21、 22 November 2019、 p 428-435の方法に基づいて開発された)によって定量化された。
【0077】
図19に示すように、ビヒクルにより処置されたマウスおよびRNRiにより処置されたマウス(処置1および3)から採取された腫瘍では、ecDNAはほとんど観測されなかった(92/100ビヒクル、78/95RNRi)。ecDNAが存在する場合、コピー数は低く、中期スプレッドあたり1~3である。対照的に、KRASiで処置されたマウス(処置グループ2)では、急速に成長する腫瘍から採取されたサンプルは、ecDNAの広い普及を示し(117/161の中期スプレッド、KRASecDNAまたはecDNA、およびKRAS染色体の増幅)、著しく高いecDNA数(中期スプレッドを含むcDNAにおける、平均16個のKRASecDNA)を伴った。ecDNAは、処置群4および5のいくつかのマウスに対して評価され、それらのマウスは40日後に処置から取り除かれた。予期されるように、これらの腫瘍においては、非常に低いecDNAが存在し、および、ecDNAが存在する場合、コピー数は中期スプレッド当たり1~7つのecDNAだった。このデータは、RNRiが抗ecDNA治療として作用するメカニズムについて認識を強化する。
【0078】
実施例5:耐性腫瘍細胞のエクスビボの増殖は、インビトロ耐性を提供するKRAS ecDNAを維持する。
KRASiに耐性ができたCT26WT E3 G12C KRAS突然変異体腫瘍由来の細胞を、インビトロで1μMのKRASi(アダグラシブ)の存在下で、成長された。細胞は、薬物の存在下で成長し続け、薬物耐性を確認した。親CT26 WT E3株は、培養内で薬物に感受性があるままであった。ecDNAは、FISH画像化によって観察され、および、手作業集計とecSEGによって測定された。図20に示すように、薬剤耐性細胞は、高いレベルのecDNAを有する一方、親株は測定可能なecDNAを示さなかった。
【0079】
実施例6:インビボにおける、KRASiおよびRNRiによる腫瘍の成長の阻害
実施例5のエクスビボで培養されたKRASi耐性腫瘍細胞を、NOD-SCIDマウスへ注入された。群BおよびCのマウスはすべて、KRASi(アダグラシブ)を用いて処置され、この処置は注入の日から始まった。腫瘍が平均200mmに到達したとき、群Cのマウスは、組み合わせ処置にうつされる。処置群は、(A)ビヒクルのみ、(B)KRASi(アダグラシブ)50mg/kg、経口投与、1日1回、または(C)RNRi(ゲタシタビン)20mg/kg、腹腔、1日おき、およびKRASi(アダグラシブ)50mg/kg、経口投与、1日1回、である。図21に示すように、KRASiおよびRNRiの組み合わせは動物の腫瘍の成長を阻害した。
【0080】
RNRi単独、およびKRASiとの組み合わせによる処置の有効性を検証するために、注入は同様の条件で繰り返された。上記のように、マウスは、KRAS耐性の腫瘍細胞を注入された。腫瘍が290mmに到達した際、マウスは、翌日から、(A)KRASi(アダグラシブ)50mg/kg、経口投与、1日1回、(B)RNRi(ゲタシタビン)10mg/kg、腹腔、1日おき、あるいは(C)RNRi(ゲタシタビン)10mg/kg、腹腔、1日おき、およびKRASi(アダグラシブ)50mg/kg、経口投与、1日1回、というかたちで処置された。RNRi単独とKRASiとの組み合わせを共に用いることは、図22に示すように、マウスの腫瘍の成長を阻害した。
【0081】
KRASiと組み合わせてCHK1iを用いる処置の有効性を検証するために、実験は同様の条件で繰り返された。マウスは、KRAS耐性の腫瘍細胞を、上記のように注入された。腫瘍が約180mmに到達したとき、マウスは、(A)KRASi(アダグラシブ)50mg/kg、経口投与、1日1回、(B)CHK1i(プレキサセルチブ)20mg/kg、皮下、7日ごとに3日間、1日2回、あるいは(C)RNRi(ゲムシタビン)10mg/kg、腹腔、1日おき、およびKRASi(アダグラシブ)50mg/kg、経口投与、1日1回、処置された。CHKiおよびRNRiとのKRASiとの組み合わせは、どちらも、マウスの腫瘍の成長を阻害した(図23)。
【0082】
KRASiと組み合わせてWEE1iを用いる処置の有効性を検証するために、実験はで繰り返された。マウスは、KRAS耐性の腫瘍細胞を、上記のように注入された。腫瘍が180mmに到達したとき、マウスは、(A)KRASi(アダグラシブ)50mg/kg、経口投与、1日1回、(B)WEE1i(アダボセルチブ)60mg/kg、経口投与、1日1回、(C)WEE1i(アダボセルチブ)60mg/kg、経口投与、1日おき、およびKRASi(アダグラシブ)50mg/kg、経口投与、1日1回、あるいは(D)WEE1i(PD0166285)0.3mg/kg、腹腔1日1回、の処置を受けた。WEE1iとKRASiとの組み合わせを併用することは、WEE1iであるアダボセルチブを単独で用いるのと同様、どちらもマウスの腫瘍の成長を阻害したが、最大の阻害はアダグラシブとアダボセルチブで観察された(図45を参照せよ)。
【0083】
実施例7:インビトロでのSNU16細胞の処置
中期のSNU16細胞(ヒト胃未分化がん細胞株(ATCC))は、MYCおよびFGFR2の存在について、FISHによって分析された。ecDNAも定量化された。図24に示すように、MYCおよびFGFR2を含んでいる高いレベルのecDNAが細胞に存在し、1つのサブセットがMYCおよびFGFR2の両方を含有している。
【0084】
SNU16細胞を、1μMのFGFR阻害剤(インフィグラチニブ)で9週間処置した。DNAは、3日目、14日目、28日目、42日目、56日目、および63日目に採取され、qPCRが、各時点におけるMYC、FGFR2、およびEGFRのコピー数を評価するために実行された。インフィグラチニブによる処置の8週間後の細胞は、および未処置のSUN16対照細胞もまた、EGFRについてFISHによりアッセイされた。図24に示すように、細胞がFGFR阻害剤に対する耐性ができるにつれて(したがって、インフィグラチニブで生存し続ける)、EGFRのコピー数は増加したが、一方で初期のSNU16細胞においてすでに増幅されているMYCおよびFGFR2のコピー数は比較的一定であった。図24のFISHによって示されるように、EGFR増幅は、これらの処置された細胞におけるecDNAに局在した。
【0085】
インフィグラチニブ耐性の発現全体を通してのecDNAコピー数の動態を評価するために、DQIAamp DNA Mini Kit(Qiagen)を用いて、DNAは抽出され、Taqmanコピー数アッセイ(ThermoFisher)を用いて定量PCR(qPCR)によって、DNAは増幅された。EGFR TaqmanアッセイIDは、Hs00997424_cnであり、GFGR2アッセイIDは、Hs05182482_cnであり、および、MYCアッセイIDはHs03660964_cnであった。サイクルの閾値は、RNase P Taqmanアッセイの内部に対して正規化され、ならびに、遺伝子コピー数は、ΔΔCt法を用いて算出され、および二倍体対照細胞株由来のDNAはDLD1であるDNAである。
【0086】
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)のための中期細胞を収集するために、Turneret al、 2019に記載されたとおりの基本プロトコルに従った。簡単に言えば、細胞をコルセミドで少なくとも3時間インキュベートし、次に塩化カリウム低張液で処置し、Carnoyの溶液(3:1メタノール:氷酢酸v/v)を用いて固定した。固定された中期細胞は、加湿されたスライドに滴下され、その後、昇順のエタノールシリーズで脱水された。EGFR、FGFR2、およびMYCにハイブリダイズするFISHプローブは、Empire Genomics社から購入した。プローブのハイブリダイゼーション後、スライドを0.4X SSC/0.3% IGEPAL緩衝溶液で洗浄し、次に2X SSC/0.1% IGEPALで最終洗浄をした。DAPIを含むマウンティング培地をスライドに塗布し、カバースリップを加え、メタフェーズの細胞を、Keyence BZ-X800顕微鏡を用いて630倍の総倍率で画像化した。
【0087】
FISHアッセイからの画像を用いて、EGFR、FGFR2、またはMYCを含むecDNAの数を定量した。画像は、Boundless Bio、 Inc.が開発したecSEGソフトウェアにアップロードした。
【0088】
実施例8:RNRiは、SNU16細胞における一次耐性および二次耐性の発現を防止する。
図25は、インフィグラチニブによるFGFR2の阻害とRNR阻害剤ゲムシタビンによるecDNAの阻害の同時阻害が、インフィグラチニブに対する一次耐性の発現を完全に阻害することを示す。2x10個のSNU16細胞を6群に分け、1uMのインフィグラチニブ、1uMのエロチニブ、10nMのゲムシタビン、1uMのインフィグラチニブと1uMのエロチニブ、1uMのインフィグラチニブと10nMのゲムシタビンで処置し、12週間にわたって細胞の成長を記録した。各処置群は、細胞数が5x10に達した時点で終了とした。エルロチニブ処置は、それ自体では細胞の成長に影響を与えなかった。ゲムシタビンは最初の2週間は細胞の成長を遅らせたが、その後、細胞は急速に増殖した。インフィグラチニブは5週間、細胞の成長を強く抑制したが、その後、細胞は耐性を発現し、急速に成長した。エルロチニブとインフィグラチニブの併用処置は、最初の5週間は強い成長抑制効果を示したが、その後、細胞は耐性を獲得し始め、試験期間中は成長速度が上昇した。しかし、インフィグラチニブとゲムシタビンの併用処置は、試験期間中、細胞の成長を完全に抑制し、耐性を発現できた細胞は存在しなかった。
【0089】
図26は、RNR阻害剤がSNU16細胞におけるエルロチニブに対する二次耐性の発現を防止することを示す。インフィグラチニブ耐性SNU16細胞(図25に示すように生成される)を6群に細分化し、1×10細胞の各群を1uMのインフィグラチニブ、1uMのエルロチニブ、10nMゲムシタビン、あるいは1uMのエルロチニブと10nMのゲムシタビンによる処置に供し、細胞の成長を5週間にわたり記録した。各処置群は、細胞数が5x10に達した時点で終了した。インフィグラチニブ処置は、それ自体では細胞増殖に影響を与えなかった。ゲムシタビンは、エルロチニブと同様に、最初の2週間は細胞の成長を遅らせたが、その後、細胞は急速に成長した。エルロチニブとインフィグラチニブの併用処置は、最初の3週間は中程度の成長抑制効果を示したが、その後、細胞は耐性を発現し始め、試験の残りの期間は成長速度が増加した。しかし、エルロチニブとゲムシタビンの併用処置は、試験の全期間において細胞成長を完全に阻害し、耐性を発現することができる細胞は存在しなかった。
【0090】
図30は、WEE1阻害剤であるアダボセルチブが、SNU16細胞におけるインフィグラチニブ処置における耐性形成を防止することを示す。SNU16細胞を5群に細分化し、1×10細胞の各群を、1μMのインフィグラチニブ、1μMのエルロチニブ、1μMのインフィグラチニブと1μMのエルロチニブ、0.1μMのアダボセルチブで処置し、9週間にわたって細胞の成長を記録した。インフィグラチニブは一過性の成長抑制をもたらし、エルロチニブ処置は単独では細胞の成長に影響を与えなかった。インフィグラチニブとエルロチニブの併用処置は、約6週間細胞の成長を遅らせたが、その後、細胞は急速に成長した。しかし、インフィグラチニブとアダボセルテルティブの併用処置では、試験期間中、細胞成長が完全に阻害され、耐性を発現することができる細胞は存在しなかった。
【0091】
図34は、PARG阻害剤であるPD00017273が、SNU16細胞におけるインフィグラチニブ処置時の耐性形成を著しく遅らせることを示す。SNU16細胞を5群に細分化し、1×10細胞の各群を、インフィグラチニブ、エルロチニブ、PD00017273、インフィグラチニブとエルロチニブ、又はインフィグラチニブとPD00017273で処置し、9週間にわたって細胞の成長を記録した。PD00017273とエルロチニブは、単独では細胞の成長にほとんど、あるいはまったく影響を与えなかったが、インフィグラチニブでは約3週間にわたり一過性の成長抑制が認められた。インフィグラチニブとエルロチニブの併用処置では、約6週間、細胞の成長が遅延したが、その後、細胞は急速に成長しつづけた。しかし、インフィグラチニブとPD00017273の併用処置では、細胞成長が抑制され、試験期間中、低レベルに維持された。
【0092】
方法
SNU16対照細胞は、37℃、5%CO2の標準組織培養条件下で、10%FBSを含むRPMI-1640培地で培養した。低継代コントロール細胞を、9週間にわたって1μMのインフィグラチニブで処置した。細胞は必要に応じて継代し、培地とインフィグラチニブは少なくとも1週間に1回交換された。DNAは3日目、ならびに2、4、6、8、および9週目に採取した。中期細胞は、コントロールとインフィグラチニブ耐性細胞の両方から8週目に収集された。
【0093】
SNU16(CRL-5974)細胞株は、ATCCから購入した。SNU16細胞は、10%FBSおよび100U/mlペニシリン/ストレプトマイシン(Fisher Scientific)を含むRPMI1640培地(Fisher Scientific)で成長した。耐性実験のために、SNU16細胞をT75フラスコあたり200万でプレーティングし、1μMのインフィグラチニブ(Selleck Chemicals)、1μMのエロチニブ(Selleck Chemicals)、10nMのゲムシタビン(Sigma Aldrich)、または組み合わせのいずれかで処置した。培地は少なくとも1週間に1回交換し、新鮮な薬剤を添加した。数週間のスパンで細胞をカウントし、細胞成長を測定した。
【0094】
実施例9:ヒーラecDNA+対ヒーラecDNA-キノームCRISPRスクリーンにおけるWEE1ガイドの脱落。
図33は、プールされたCRISPRスクリーンにおけるWEE1ノックアウトに対するヒーラecDNA+細胞のヒーラecDNA-細胞を上回る感受性の増加を示す。WEE1を標的とする異なる10種類のガイドについての正規化sgRNAガイドドロップスコアのレベルを、ヒーラecDNA-細胞(WT)、およびecDNA上で増幅したDHFRを保有するヒーラecDNA+細胞について示す。ヒーラecDNA+は、CRISPRスクリーニングの期間中、1uMのメトトレキサートの非存在下(-MTX)または存在下(+MTX)のいずれかで成長した。プールされたガイドライブラリーの内の元のレベルに対するガイド脱落スコアが、7日目、14日目および21日目のNGSシーケンシングによって3つのアームすべてについて判明した。破線の横線は、ecDNA+株とecDNA-株の最も効果的なWEE1ガイドの示差ドロップスコアを示し、WEE1ノックアウトに対するecDNA+株の感受性がより高いことを示し、これらの細胞の複製ストレス誘導因子に対する感受性が高いことをさらに裏付けている。
【0095】
実施例10:ecDNA+細胞において、塩基複製ストレスマーカーが上昇され、RS誘導物質に対する感受性が高まった。
図38は、ecDNA+細胞が塩基複製ストレスのレベルを高めていることを示している。内在性一本鎖DNA(ssDNA)損傷誘発複製ストレスを判明するために、複製タンパク質A(RPA)32の過リン酸化形態Ser4/Ser8が、未処置および固定したecDNA+(Colo320 DM)およびecDNA-(Colo320 HSR)細胞株モデルの免疫蛍光によって検出された。ecDNA+細胞およびecDNA-細胞において免疫蛍光法により検出された全p-RPA32 S4/S8フォーシスの細胞定量化(最小閾値>3点/細胞)を示す代表的な箱ひげ図である。>3点/細胞である5000個のecDNA-細胞と6000個のecDNA+細胞の合計を処置し、分析した。統計的有意性は、ノンパラメトリックt検定を用いて計算した。ecDNA+細胞は、高められた基礎的な複製ストレスを有することが見出される。
【0096】
図39A~39Bは、ecDNA+細胞が、染色体上の同等のMYC遺伝子増幅を有するecDNA-細胞に対して、DNA複製フォーク速度が本質的に低下していることを示す。図39Aにおいて、フォーク速度の測定を含む複製路の分析を可能にするために、未処置のecDNA+(Colo320 DM)およびecDNA-(Colo320 HSR)細胞株モデルにおいてDNAファイバー分析が実施された。2つの細胞モデルを、チミジンアナログであるクロロデオキシウリジン(CldU)およびヨードデオキシウリジン(IdU)でそれぞれ30分間パルス標識した。細胞を溶解し、DNAファイバーを散らばらせ、CldUおよびIdUに対する特異的な抗体を用いて免疫染色した。図39Bに示すように、Colo320 DMを有するecDNAは、Colo320 HSR ecDNA-細胞と比較して、平均的に低下したフォーク速度を示した。ecDNA+細胞とecDNA-細胞の間の複製フォーク速度において-0.18kb/minの差が観察された。統計的有意性は、ノンパラメトリックのコルモゴロフスミルノフ検定を用いて算出した。
【0097】
図40A~40Cは、RNRの阻害がヌクレオチド合成をブロックし、ecDNA-腫瘍細胞と比較してecDNA+腫瘍細胞において複製ストレスの悪化および細胞形質転換の減少を引き起こすことを示す。実証されたように、RNRの阻害によりecDNA+COLO320-DM細胞で観察された複製ストレスの悪化は、図40Aにおいて細胞増殖/形質転換の変化をもたらす。図40Bに示すデータは、代表的なFISH画像と、増幅されたがん遺伝子を持つecDNAの数の変化の定量化である。図40Cに示すデータは、RNRiによる複製ストレスへの影響が、ヌクレオチド枯渇の結果であることを示すものである。図40Aにおいて、細胞形質転換を評価するために、インビトロ軟寒天コロニー形成アッセイが行われ、ecDNAを有するCOLO320-DMおよびSNU16細胞モデルが、この3D-フォーマットアッセイにおいてecDNA-細胞モデル、COLO320-HDRおよびDLD1と共に21日間成長させられた。細胞は、増加させたRNRiである(5-クロロ-2-[[rac-(1S、2R)-2-(6-フルオロ-2、3-ジメチルフェニル)-1-(2-オキソ-3H-1、3、4-オキサジアゾール-5-イル)プロピル]スルファモイル]ベンズアミド)の容量で、細胞播種の日に1度だけ個別に処置された。図40Bにおいて、ecDNAを保有するMYC増幅されたがん遺伝子数における変化を決定するために、ecDNA+(COLO320-DM)細胞を、IC-90用量(10uM)のRNRiで21日間処置した。対数成長期(log-growth phase)の細胞は中期で停止した。MYCがん遺伝子のFISH(蛍光インシトゥハイブリデーション法)を、固定された中期スプレッド対して行い、核をDAPIで対比染色した。図40Cにおいて、RNRの阻害時にecDNA+COLO320-DM細胞で観察された複製ストレスの悪化が、枯渇した細胞ヌクレオチドプールに起因するかどうかを決定するために、ecDNA+COLO320-DM細胞を、RNRiの単一のIC-70用量(7uM)、および外因性ヌクレオシドの増加用量(ATGUC)で16時間同時に処置した。細胞を溶解し、ssDNA損傷による複製ストレスのマーカーとしてpRPA32-S33抗体で免疫ブロットした。RNRを阻害すると、ヌクレオチド合成が阻害され、ecDNA+腫瘍細胞ではecDNA(-)と比較して複製ストレスが増強され、細胞形質転換が抑制されることが判明した。
【0098】
図41A~41Bは、ecDNA+細胞が、複数のモデルにわたって、CHK1iに応答して複製ストレスの強化を示すことを示す。図41Aに示すように、ヒーラecDNA+細胞は、GDC0575によるChk1阻害に対してヒーラecDNA-細胞よりも増加した感受性を示す。DHFR ecDNAを保有し、抵抗性を維持するために1uMのメトトレキサート(MTX)の存在下で増殖させた(MTX-R)ヒーラecDNA+細胞において、DHFRタンパク質レベルが顕著に向上した(upregulate)。200nMのGDC0575を用いて24時間処置すると、ヒーラecDNA+細胞はecDNA-細胞よりもはるかに強いRSとDNA損傷のマーカー誘導を示した。S345におけるChk1リン酸化の増加は、RS活性化ATRキナーゼの高い活性化を示し、gH2AXの増加は、複製ストレスによって引き起こされるDNA二本鎖切断に起因する損傷の増加を示す。図41Bは、CHK1経路の阻害時に、一本鎖DNA(ssDNA)損傷で誘発される複製ストレスを把握する実験を示す。複製タンパク質A(RPA)32 Ser4/Ser8の過リン酸化形態は、CHK1i GDC-0575で16時間前処置した固定ecDNA+(Colo320 DM)およびecDNA-(Colo320 HSR)細胞株モデルにおいて免疫蛍光により検出した。代表的な棒グラフは、ecDNA+細胞およびecDNA-細胞において免疫蛍光法で検出されたP-RPA32 S4/S8フォーシ(3点/核以上の最小閾値)に対して陽性な全核の%を表す。CHK1阻害は、ecDNA+(DM)細胞において、マッチしたecDNA-(HSR)細胞に対してpRPAレベルを増加させることが判明した。
【0099】
42A~42Bは、ecDNA(+)がん細胞における内在性複製フォーク機能不全が、ecDNA(-)細胞と比較してRNR阻害によってさらに損なわれることを示す。フォーク速度の測定を含む、RNR経路の阻害に伴う複製路の分析を可能にするために、RNRiゲムシタビンで16時間処置したecDNA+(Colo320 DM)およびecDNA-(Colo320 HSR)細胞株モデルにおいてDNAファイバー分析を実施した。次に、2つの細胞モデルを、チミジンアナログのクロロデオキシウリジン(CldU)およびヨードデオキシウリジン(IdU)でそれぞれ30分間パルス標識した(図42A)。細胞を溶解し、DNA繊維を広げ、CldUおよびIdUに対する特異抗体を用いて免疫染色した。図42Bに示すように、ecDNA+がん細胞における内在性複製フォーク機能不全は、ecDNA-細胞と比較してRNR阻害によりさらに低下するが、複製フォーク速度の低下は、RNRiでの処置によりColo320 HSR ecDNA-細胞でも観察された。RNRiで処置したecDNA+細胞とecDNA-細胞の間で、複製フォーク速度に-0.13kb/minの差が観察された。統計的有意性はノンパラメトリックのコルモゴロフスミルノフ検定を用いて算出した。
【0100】
図43A~43Bは、ecDNA+がん細胞における内在性複製フォーク機能不全が、ecDNA-細胞と比較してCHK1阻害によってさらに損なわれることを示している。フォーク速度の測定を含むCHK1経路の阻害時の複製路の分析を可能にするために、CHK1i プレキサセルチブで16時間処置したecDNA+(Colo320 DM)およびecDNA-(Colo320 HSR)細胞株モデルにおいてDNAファイバー分析を実施した。次に、2つの細胞モデルを、チミジンアナログのクロロデオキシウリジン(CldU)およびヨードオキシウリジン(IdU)でそれぞれ30分間パルス標識した(図43A)。細胞を溶解し、DNAファイバーを広げ、CldUおよびIdUに対する特異抗体を用いて免疫染色した。図43Bに示すように内在性複製フォーク機能不全は、CHK1阻害によりecDNA(-)細胞と比較して、さらに損なわれるが、複製フォーク速度の低下は、CHK1iでの処置によりColo320 HSR ecDNA-細胞でも観察された。CHK1iで処置したecDNA+細胞とecDNA-細胞の間では、複製フォーク速度に-0.1kb/分の差が観察された。統計的有意性は、ノンパラメトリックのコルモゴロフ-スミノフテストを用いて計算した。
【0101】
図44は、がん細胞における主要ながん原性ドライバーの薬理学的阻害を用いる標的療法が、RNRのRRM2サブユニットのタンパク質レベルの減少をもたらすことを示す。ecDNAまたはHSRのいずれかで増幅されたがん遺伝子を保有するか、または増幅を欠くことが以前に決定されている4つの細胞株が示されている(CT26)。腫瘍性タンパク質を阻害すると、24~48時間以内にRRM2タンパク質レベルが急速に低下したことから、これらの阻害剤は間接的にdNTPsレベルの低下と複製ストレスの誘発をもたらす可能性が示唆された。この仮説と一致して、H2170細胞とSNU16細胞でそれぞれecDNA増幅HER2とFGFR2を阻害すると、複製フォークの崩壊とDNA損傷のマーカーとして知られているgH2AXが同時に増加した。興味深いことに、HSRとしてFGFR2増幅を保有するKATOIII細胞や、がん遺伝子増幅を保有しないCT26細胞では、RRM2量が減少したにもかかわらずgH2AXの増加が見られなかったことから、ecDNA保有細胞はRRM2量の減少や複製ストレスに対して特に感受性があるということがさらに証明された。さらに、SNU16細胞におけるこのRRM2レベルの減少は、5~6週間という長期間にわたって維持されることが示され、RNR活性を維持するための代償機構がないことが示唆された。これらの知見は、ecDNAを持つがんにおいて、標的治療剤とRS誘導物質の組み合わせの合理性を強調するものである。
【0102】
実施例11:ecDNA+細胞とecDNA-細胞における標的治療剤に対する耐性
表2(下記)は、ecDNA+細胞対ecDNA-細胞における耐性発現の時系列を示す。経時的な成長動態を測定するために、各細胞株は、増幅されたがん遺伝子に対する標的阻害剤で週に1回又は2回処置した。SKBR3およびCalu-3の場合、イルビニチニブは、相対EC50の2倍から始めて、相対EC50の4倍に増加させ、合計6週間にわたり、経時的に増加させた。H2170の場合、イルビニチニブをEC90(500nM)で先行使用し、細胞の成長を3週間モニターしたところ、その時点でDMSO対照細胞と同程度の速度で増殖していた。SNU16およびKATOIIIの場合、インフィグラチニブをEC90(1uM)で添加し、細胞成長をそれぞれ6週間および11週間モニターした。
【0103】
これらの長期成長曲線について、標的療法のEC50は、まず短期5日間生存率アッセイで決定された。イルビニチニブのEC50を決定するために、H2170細胞を96ウェルプレートに3000細胞/ウェルでプレーティングした。SKBR3およびCalu-3細胞は、96ウェルプレートに3500細胞/ウェルでプレーティングされた。すべての細胞にDMSOコントロールとともにイルビニチニブを5日間連続投与した(12nMから1uMまでの範囲の連続希釈)。EC50曲線は、CellTiter-Glo 2.0試薬(Promega)を用いて細胞生存率に基づき決定した。インフィグラチニブのEC50を決定するために、SNU16およびKATOIII細胞を96ウェルプレートに1000細胞/ウェルでプレーティングし、DMSOコントロールとともにインフィグラチニブで5日間連続処理した(4nMから1uMまでの連続希釈)。EC50曲線は、CellTiter-Glo 2.0試薬(Promega)を用いて、細胞生存率に基づいて決定された。ドライバーがん遺伝子に対する標的療法は、がん遺伝子の増幅のタイプによって効果に差が見られた。H2170やSNU16のようにecDNA上でがん遺伝子が増幅している細胞株は、SKBR3、Calu-3、KATOIIIのように染色体上でがん遺伝子が増幅している細胞株に比べて、標的治療剤の存在下で抵抗性を獲得し、成長を続ける能力が著しく優れていた(表2)。
【0104】
【表2】
【0105】
本発明の好ましい実施形態が本明細書で示され、および記載されてきたが、そのような実施形態が例示としてのみ提供されることは、当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、および置換が当業者に生じるであろう。本明細書に記載された実施形態に対する様々な代替案が採用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が実施形態の範囲を定義し、これらの請求項の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの同等物がそれによってカバーされることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37-1】
図37-2】
図38
図39A
図39B
図40A
図40B
図40C
図41A
図41B
図42A
図42B
図43A
図43B
図44
図45
【国際調査報告】