(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ビアホールを埋め込むためのレベリング剤及び電解質組成物
(51)【国際特許分類】
C25D 3/38 20060101AFI20230906BHJP
C25D 5/18 20060101ALI20230906BHJP
H05K 3/10 20060101ALI20230906BHJP
C07C 217/28 20060101ALI20230906BHJP
C07C 215/18 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C25D3/38 101
C25D5/18
H05K3/10 E
C07C217/28 CSP
C07C215/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573610
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 KR2022011217
(87)【国際公開番号】W WO2023008958
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0100646
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514122502
【氏名又は名称】ワイエムティー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ソン ウク
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ポ ムク
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ クン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ナク ウン
(72)【発明者】
【氏名】シム、チュ ヨン
【テーマコード(参考)】
4H006
4K023
4K024
5E343
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB68
4K023AA04
4K023AA19
4K023BA06
4K023CB08
4K023CB13
4K023CB21
4K024AA09
4K024AB01
4K024AB17
4K024BA12
4K024BB11
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4K024CB05
4K024GA02
5E343AA02
5E343BB24
5E343CC20
5E343CC24
5E343CC34
5E343CC38
5E343DD33
5E343DD43
5E343GG06
(57)【要約】
本発明はレベリング剤、及びそれを含む電解質組成物に関する。基板中のビアホールが本発明に係る電解質組成物によって埋め込まれると、ディンプル又はボイドの形成を最小化しつつ比較的短時間内にビアホールを埋め込むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式1又は式2で表される構造単位を含む化合物であるレベリング剤:
【化1】
【化2】
式中、R
8~R
9は、それぞれ独立に、水素、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、この場合において、複数のR
8は互いに同じであるか又は異なり、
L
1は、C1~C10アルキレン基及びC6~C20アリーレン基からなる群から選択され、
nは1~10の整数である。
【請求項2】
R
8及びR
9は、それぞれ独立に、水素及びC6~C10アリール基からなる群から選択される、請求項1に記載のレベリング剤。
【請求項3】
L
1はC6~C10アリーレン基である、請求項1に記載のレベリング剤。
【請求項4】
金属イオン源、及び請求項1~3のうちのいずれか1項に記載のレベリング剤、を含む電解質組成物。
【請求項5】
基板中にビアホールを形成するステップ;
前記ビアホールが形成された基板上に無電解めっきを行うことで無電解めっき層を形成するステップ;及び
前記無電解めっき層が形成された基板上に電解めっきを行うことにより前記ビアホールを埋め込むステップ、
を含み、前記電解めっきは請求項4に記載の電解質組成物により行われる、
基板中のビアホールを埋め込む方法。
【請求項6】
前記電解めっきに階段状パルス反転めっき波形電流密度が適用される、請求項5に記載の基板中のビアホールを埋め込む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路板の製造プロセス中に形成されるビアホールの内部を効率的に銅電気めっきにより埋め込むことが可能なレベリング剤、及び該レベリング剤を含む電解質組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
●関連出願への相互参照
本願は米国特許法第119条(a)により2021年7月30日に出願された韓国特許出願10-2021-0100646の利益を主張し、前記韓国特許出願はその全内容が参照により本開示に取り込まれる。
【0003】
一般に、プリント回路板は種々の合成樹脂からなる基板の一表面上又は両表面上に金属配線を形成し、それから半導体チップ、集積回路(IC)、又は電子コンポーネントを配置及び固定し、そしてそれらの間に電気配線を実装することにより製造される。これらのプリント回路板は、電子機器が高密度、高性能、及び薄膜であることを必要とする流れに合うように、多層化され、小型化され、あるいは高度に集積された回路へと形成されているところである。
【0004】
プリント回路板の多層化は、ビルドアップ法、スタックビア法、又はこれに類する方法を通して行われる。これらの方法を実施するために、プリント回路板の製造プロセスの最中に形成されるビアホールの埋め込みが必要である。前記ビアホールを埋め込む方法は、絶縁性インク若しくは導電性ペーストを用いる埋め込み方法、又はめっき法を用いる埋め込み方法を含みうる。
【0005】
前記ビアホールがめっき法で埋め込まれるなら、絶縁性インク又は導電性ペーストにより埋め込まれる場合に比べて内部埋め込み欠け(internal non-filling)によるボイド又はディンプルの発生を減少させることができるが、めっきプロセスは長時間かかり、生産性が低下するという問題がある。ここで、めっき法の生産性を向上させるために、高電流をかけることによってめっきプロセスで消費される時間を減少させる方法が提案されたが、高電流をかけるためめっきプロセスの最中に過剰な水素ガスが生成し、添加剤の分解速度が加速し、濃度が不均一になり、めっきは不均一となり、したがって、プリント回路板の信頼性及び安定性が損なわれるという問題がある。
【0006】
したがって、めっき法の生産性を向上させつつ、プリント回路板の信頼性及び安定性を確保できる技術を開発することが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第2012-0077058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、基板中に形成されたビアホールの内部を効率的かつ均一に埋め込むことができるレベリング剤を提供することが意図されている。
加えて、本発明は前記レベリング剤を含む銅電解質組成物を提供することが意図されている。
さらに、本発明は、基板中のビアホールを前記電解質組成物で埋め込む方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、以下の式1又は式2で表される構造単位を含む化合物であるレベリング剤を提供する。
【化1】
【化2】
【0010】
式中、R8~R9は、それぞれ独立に、水素、C1~C10アルキル基、C6~C20アリール基、及びC2~C20ヘテロアリール基からなる群から選択され、この場合において、複数のR8は互いに同じであるか又は異なり、
L1は、C1~C10アルキレン基及びC6~C20アリーレン基からなる群から選択され、
nは1~10の整数である。
【0011】
また、本発明は、金属イオン源及び前記レベリング剤を含む電解質組成物を提供する。
加えて、本発明は、基板中にビアホールを形成するステップ;前記ビアホールが形成された基板上に無電解めっきを行うことで無電解めっき層を形成するステップ;前記無電解めっき層が形成された基板上に電解めっきを行うことにより前記ビアホールを埋め込むステップ、を含み、前記電解めっきは前記電解質組成物により行われる、基板のビアホールを埋め込む方法を提供する。
【0012】
本発明に係るレベリング剤は、めっきプロセス中における前記電解質組成物に含まれる添加剤(例えば、光沢剤(brightener)、キャリア、アクセラレータ)の分解速度、濃度、及び等々を一定に保つことができる。したがって、本発明に係るレベリング剤を含む電解質組成物を用いてビアホールの埋め込みが行われたならば、高電流がかけられても水素ガスの過剰生成及び不均一なめっきを解消することができ、それによってプリント回路板の生産性、信頼性、安定性、及び等々を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明のある実施形態に係る、基板中のビアホールを埋め込むプロセスを模式的に示す。
【
図2】
図2は、本発明のある実施形態に係る、基板中のビアホールを埋め込むプロセスにおける電解めっき中にかけられる電流密度の波形を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実験例1に係る実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる用語及び単語は、通常の又は辞書的な用語に限定されると解釈すべきではなく、発明者は自らの発明を可能な最良のやり方で記載するために用語の概念を適切に定義できるという原則に基づいて、本発明の技術精神と整合する意味及び概念に解釈されるべきである。
【0015】
本発明は、基板中に形成されたビアホールの内部を効率的に銅電気めっきにより埋め込むことが可能なレベリング剤、及び該レベリング剤を含む電解質組成物に関し、これらは以下で詳細に説明される。
【0016】
本発明に係るレベリング剤は、以下の式1又は式2で表される構造単位を含む化合物であってもよい。
【化3】
【化4】
【0017】
式中、R8~R9は、それぞれ独立に、水素、C1~C10アルキル基(特には、C1~C5アルキル基)、C6~C20アリール基(特には、C6~C10アリール基)、及びC2~C20ヘテロアリール基(特には、C3~C10ヘテロアリール基)からなる群から選択され、この場合において、複数のR8は互いに同じであるか又は異なり、
L1は、C1~C10アルキレン基(特には、C1~C5アルキレン基)及びC6~C20アリーレン基(特には、C6~C10アリーレン基)からなる群から選択され、
nは1~10の整数(特には、nは1~5の整数)である。
【0018】
特に、前記レベリング剤と、電解質組成物に加えられる添加剤(例えば、光沢剤(brightener)、キャリア、アクセラレータ、等々)との相互作用を考慮して、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素及びC6~C10アリール基(特には、フェニル基又はナフチル基)からなる群から選択されてもよい。
【0019】
加えて、L1はC6~C10アリーレン基であってもよく、特にはフェニレン基であってもよい。
ここで、(nが1でモノマーの場合)式1及び式2で表される構造単位を含む化合物の両端、又は(nが2~10でポリマーの場合)複数の構造単位が結合した化合物の両端、に結合した官能基は、特に定義されない限り、水素であってもよい。
【0020】
特には、本発明に係るレベリング剤は、以下のC-3~C-5で表される構造単位からなる群から選択される構造単位(nは1~10の整数)を含む化合物として具現化されてもよいが、これらに限定されない。
【0021】
【0022】
本発明におけるヘテロアリール基は、N、O、S、F、等々などの1つ又は複数のヘテロ原子を含む一価の芳香族環基を意味しうる。
本発明におけるハロゲン基は、フルオロ基、ブロモ基、クロロ基、ヨード基、等々を意味しうる。
【0023】
ここで、本発明に係るレベリング剤を合成する方法は特に限定されないが、合成効率を上げるために、溶媒の存在下でアルキル化剤化合物をアミン系化合物と反応させる方法を適用してもよい。具体的には、本発明に係るレベリング剤は、アルキル化剤化合物を溶媒中に溶解し、それからアミン系化合物を添加して反応させることにより合成することができる。ここで、アルキル化剤化合物は、アミン系化合物と置換反応を行いつつ、分子中のアルキル基又はアルキレン基を付与する化合物として定義しうる。
【0024】
前記アルキル化剤化合物は特に限定されないが、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサン-ジオール、ポリエーテルアミン(分子量400~500g/mol)、及び1,3-ジクロロ-2-プロパノールからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0025】
前記アミン系化合物は特に限定されないが、1,3-アミノベンゼン、2,6-ジアミノピリジン、アニリン、4-アミノフェノール、1-ナフチルアミン、ベンジルクロリド、2-アミノピリジン、及び1,3-ジフェニル尿素からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0026】
前記溶媒中に前記アルキル化剤化合物に溶解させる温度は特に限定されないが、50~180℃であってもよい。加えて、前記アルキル化剤化合物(a)と前記アミン系化合物との反応比(a:b)は特に限定されないが、重量比2:1~6:1であってもよい。
【0027】
前記アルキル化剤化合物を溶解するのに用いられる前記溶媒は、一般に知られた溶媒である限り特に限定されないが、溶解度及び合成効率を考慮して、前記溶媒は水性溶媒(水、精製水、脱イオン水、等々)、アルコール系溶媒(エタノール、メタノール、等々)、及び有機溶媒(アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、等々)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0028】
本発明に係るレベリング剤は、上記の合成方法により得られるモノマーそれ自体であってもよいし、または、得られたモノマーを用いて従来からの重合反応を行うことにより得られるポリマーであってもよい。
【0029】
本発明は、前記レベリング剤を含む電解質組成物を提供する。特には、本発明に係る電解質組成物は、レベリング剤及び金属イオン源を含む。
本発明に係る電解質組成物中に含まれるレベリング剤の説明は、上記と同じであり、このため当該説明はここでは省略する。このレベリング剤の濃度(含有量)は特に限定されないが、回路パターンの均一性及びめっき効率を考慮した場合には、レベリング剤の濃度(含有量)は3~50ml/l、特には5~20ml/l、であってもよい。
【0030】
本開示に係る電解質組成物中に含まれる金属イオン源は、前記組成物中における金属イオンを供給するものであり、一般に知られた材料であってもよい。特には、前記金属イオン源は銅イオン源であってもよい。前記金属イオン源の濃度(含有量)は特に限定されないが、回路パターンの均一性及び密度を考慮して、前記金属イオン源の濃度(含有量)は100~300g/L、特には200~250g/L、であってもよい。
【0031】
本発明に係る電解質組成物は、その物性を向上させるために、強酸、ハロゲンイオン源、光沢剤(brightener)、及びキャリア(阻害剤)からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含んでもよい。
本開示に係る電解質組成物中に含まれる前記強酸は、pH調整に加えて電解質としても機能し、一般に知られた材料であってもよい。具体的には、前記強酸は、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スルホン酸、臭化水素酸、及びフルオロホウ酸からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。前記強酸の濃度(含有量)は特に限定されないが、電解質組成物のpHを考慮した場合、前記強酸の濃度(含有量)は50~150g/Lであってもよく、特には90~110g/Lであってもよい。
【0032】
本発明に係る電解質組成物中に含まれる前記ハロゲンイオン源は、組成物中にハロゲンイオンを供給するためのものであり、一般に知られた材料であってよい。具体的には、前記ハロゲンイオン源は塩素イオン源であってもよい。前記ハロゲンイオン源の濃度(含有量)は特に限定されないが、回路パターンの均一性及び密度を考慮した場合、前記ハロゲンイオン源の濃度(含有量)は30~60mg/Lであってもよく、特には40~50mg/Lであってもよい。
【0033】
本発明に係る電解質組成物中に含まれる前記光沢剤は、金属イオンの還元速度を増加させることによってめっきを促進するためのものであり、前記光沢剤は一般に知られた材料であってもよい。具体的には、前記光沢剤は、ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド(ナトリウム塩)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸(ナトリウム塩)、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸、O-エチル-S-(3-スルホプロピル)ジチオカーボナート(ナトリウム塩)、3-(2-ベンゾチアゾリル-1-チオ)-1-プロパンスルホン酸(ナトリウム塩)、及びN,N-ジメチルジチオカルバミン酸-(3-スルホプロピル)エステル(ナトリウム塩)からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。前記光沢剤の濃度(含有量)は特に限定されないが、めっき速度等を考慮して、0.5~5ml/Lであってもよく、特には1~3.5ml/Lであってもよい。
【0034】
本発明に係る電解質組成物中に含まれる前記キャリアは、回路パターンの表面平坦性を増加させるためのものであり、一般に知られた材料であってもよい。前記キャリアの濃度(含有量)は特に限定されないが、例えば回路パターンの均一性及びめっき効率を考慮した場合、前記キャリアの濃度(含有量)は5~15ml/Lであってもよく、特には8~12ml/Lであってもよい。
【0035】
本発明は、前記電解質組成物によって基板中のビアホールを埋め込む方法を提供する。具体的には、本発明に係る基板中のビアホールを埋め込む方法は、ビアホールが形成された基板上に無電解めっきを行うことで無電解めっき層を形成するステップ;及び前記無電解めっき層が形成された基板上に電解めっきを行うことにより前記ビアホールを埋め込むステップ、を含み、これらは
図1を参照して以下のとおり詳細に説明される。
【0036】
まず、基板201中にビアホールHが形成される。基板201は、従来から知られた絶縁樹脂からなる基板201であってよい。ビアホールHは、レーザープロセシング又はCNCプロセシングによって形成してもよい。ここで、ビアホールHは、基板201を貫かない溝の形に形成されても、または
図1に示すように基板201を貫く穴の形に形成されてもよい。
【0037】
次に、ビアホールHが形成された基板201上に無電解めっきを行い、ビアホールHの内側及び基板201の表面上に無電解めっき層202を形成する。無電解めっきを行うためのめっき溶液組成物としては、一般に知られた組成物を用いてもよい。一例として、銅イオン、銅イオン錯化剤、銅イオン還元剤、pH調整剤、及び添加剤を含むめっき溶液組成物を用いてもよい。加えて、無電解めっきの条件は特に限定されないが、20℃~60℃の温度範囲及びpH11~14において10μm/時の速度とされてもよい。
【0038】
それから、無電解めっき層202が形成された基板201上に電解めっきが行われ、これによりビアホールHを埋め込む。つまり、電解めっき層203が形成される。電解めっきを行うためのめっき溶液組成物としては、上記の電解質組成物を用いうる。
ここで、電解質組成物による電解めっきの最中にかけられる電流密度は、特定の波形として適用されてもよい。つまり、
図2を参照して、「t
1+t
2+t
3+t
4+t
5+t
6」のサイクルを有する階段状パルス(プラス電流がかけられる)-リパルス(マイナス電流がかけられる)波形の電流密度を適用してもよい。特には、時間t
1の間、正の電流I
1を維持し、それから、時間t
2の間、正の電流I
2を維持し、それから時間t
3の間、負の電流I
3を維持し、それから、時間t
4の間、負の電流I
4を維持し、それから時間t
5の間、負の電流I
3を維持し、それから、時間t
6の間、正の電流I
2を維持する波形を、所定の期間にわたり周期的に適用して電解めっきが行われる。
【0039】
ここで、ビアホールHの埋め込みめっきの最中におけるディンプル及びボイドの形成を最小化するために、I1は2~5アンペア/平方デシメーター(ASD)であってもよく、I2は1~2ASDであってもよく、I3は-1~-2ASDであってもよく、そしてI4は-3~-10ASDであってもよい。また、t1、t2、及びt6は、それぞれ10~80ms(特には、30~50ms)であってもよく、そしてt3、t4、及びt5はそれぞれ1~5ms(特には、2~4ms)であってもよい。
【0040】
このようにして、電解めっきの間、「t1+t2+t3+t4+t5+t6」のサイクルを表すステップ-バイ-ステップのパルス反転めっき波形として電流が適用されるため、ディンプル及びボイドの形成を最小化しつつ、電解めっきを比較的短時間(特には20~40分)で行うことができる。
以降で、実施例によって本発明をより詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を例示することを意図しており、本発明の範囲及び精神の範疇で様々な変更及び改変を行うことが可能であることは当業者に明らかであり、本発明の範囲はそれら実施例に限定されない。
【0041】
<実施例1>
1,4-ブタンジオールをエタノールに加え、約50℃の温度で完全に溶解させた。次に、4-アミノフェノールを加え、反応を3~8時間行ってレベリング剤化合物を合成した。このとき、1,4-ブタンジオールと、4-アミノフェノールとの反応比は4:1の重量比であった。
【0042】
<実施例2>
1,6-ヘキサンジオールをエタノールに加え、約50℃の温度で完全に溶解させた。次に、1-ナフチルアミンを加えて、3~8時間反応を行ってレベリング剤化合物を合成した。このとき、1,6-ヘキサンジオールと、1-ナフチルアミンとの反応比は2:1の重量比であった。
【0043】
<実施例3>
1,4-ブタンジオールを水に加え、約90℃の温度で完全に溶解させた。次に、1,3-アミノベンゼンを加えて、9~12時間反応を行ってレベリング剤化合物を合成した。このとき、1,4-ブタンジオールと、1,3-アミノベンゼンとの反応比は3:1の重量比であった。
【0044】
<実施例4>
1,4-ブタンジオールをアセトニトリルに加え、約140℃の温度で完全に溶解させた。次に、4-アミノフェノールを加えて、2~6時間反応を行ってレベリング剤化合物を合成した。このとき、1,4-ブタンジオールと、4-アミノフェノールとの反応比は4:1の重量比であった。
【0045】
<実施例5>
1,6-ヘキサンジオールをジメチルホルムアミドに加え、約150℃の温度で完全に溶解させた。次に、1-ナフチルアミンを加えて、2~6時間反応を行ってレベリング剤化合物を合成した。このとき、1,6-ヘキサンジオールと、1-ナフチルアミンとの反応比は5:1の重量比であった。
【0046】
<調製例1>
硫酸銅5水和物を230g/L、硫酸を100g/L、塩酸を40~50mg/L、ビス(ナトリウムスルホプロピル)ジスルフィドを1~3.5ml/L、キャリアを10ml/L、及び実施例1のレベリング剤を10ml/L含む電解質組成物を調製した。
【0047】
<比較調製例1>
実施例1のレベリング剤の代わりに既知のレベリング剤(Dicolloy社製造のKBPA)を用いたこと以外は調製例1と同様にして、電解質組成物を調製した。
【0048】
<実験例1>
直径90μm及び深さ100μmのビアホールを、200μmの厚さを有するエポキシ樹脂の基板上にレーザープロセシングによって形成した。次に、ビアホールを有するエポキシ樹脂の基板を、硫酸銅、EDTA、ホルマリン、苛性ソーダ、及び表面安定化用の添加剤を含む無電解めっき溶液中に配置し、65℃で無電解めっきを行って銅シード層を形成した。それから、調製例1及び比較調製例1のそれぞれで調製した電解質組成物を用いて電解めっきを行い、ビアホールを埋め込んだ。電解質組成物によるめっきの際には、めっき条件は以下に記載のとおりとした。
●電解質組成物の温度:21~24℃
●撹拌:0.5~1.5LPM/con.
●電極:不溶性電極
●電流密度:以下の表1の条件で、階段状パルス反転めっき波形を適用
【0049】
【0050】
ビアホール埋め込みめっきが完了した後に、基板の断面を光学顕微鏡で確認した。その結果を
図3に示す。
図3を参照すると、本発明に係る電解質組成物を用いて電気めっきを行った調製例1の場合には、ボイド及びディンプルが生じることなくビアホール埋め込みは良好に行われていたのに対し、比較調製例1の場合は、ボイド及びディンプルが生じ、このためビアホール埋め込みは良好に行われなかったことが確認された。
【0051】
<実験例2>
実験例1において電解質組成物を用いてめっきするときに、電流密度を適用する条件を以下の表2に示すように調整し、ビアホール埋め込みめっきを行った。埋め込みめっきが完了した後に、ディンプル及びボイドが基板の断面に形成されたかを評価した。その結果を以下の表3に示す。この場合に、比較用の条件としては、階段状パルス反転めっき波形ではなく直流(DC)波形を適用した。
【0052】
【0053】
【0054】
上の表3を参照すると、本発明に係る電解質組成物を用いてビアホールを埋め込んだ際に、階段状パルス反転めっき波形を適用すると、ビアホール埋め込みのためのめっき時間が比較的短かったとしても、めっきは良好に行われ、これによりディンプル及びボイドの発生を最小化することが確認できる。一方、DC波形を適用する場合には、ディンプル及びボイドが生じるのを防ぐために60分以上の時間が必要とされ、めっきが30分以内行われた場合には、ディンプルが重度に生じることが確認出来る。
【符号の説明】
【0055】
201 基板
202 無電解めっき層
203 銅電解めっき層
【国際調査報告】