(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】抗腫瘍細菌株、並びにそれを利用した組成物及びその方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20230908BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20230908BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20230908BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230908BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230908BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230908BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230908BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230908BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230908BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A61K35/74 A
A61K35/744
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 G
A61K39/395 N
A61K39/395 U
C12N1/20 E
A23L33/135
C07K16/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513753
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 KR2021010525
(87)【国際公開番号】W WO2022045637
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0109411
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0123330
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521415859
【氏名又は名称】株式会社 リビオム
【氏名又は名称原語表記】LIVEOME Inc.
【住所又は居所原語表記】7F,114,Central town-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】クォン, ドヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク, グァンソ
(72)【発明者】
【氏名】ドン, ヘジン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ヘジョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン, ジユン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B018MD85
4B018ME08
4B018MF13
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4B065AC14
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4C085EE03
4C087AA01
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4C087AA10
4C087BC31
4C087CA09
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4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA22
4H045EA28
(57)【要約】
抗癌活性を有するエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)微生物またはエンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)微生物、またはそれを含む組成物、及びそれを利用した、癌予防または癌治療の方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)種に属し、
ii)48時間培養時、微生物成長対比におけるラクテート生成能(lactate/OD
600)が3g/L以上であり、
iii)抗腫瘍活性を示す、細菌株。
【請求項2】
24時間培養時、微生物成長対比におけるラクテート生成能(lactate/OD
600)が2.5g/L超過である、請求項1に記載の細菌株。
【請求項3】
10%以上の腫瘍成長抑制率を示す、請求項1または2に記載の細菌株。
【請求項4】
20%以上の腫瘍成長抑制率を示す、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の細菌株。
【請求項5】
iv)β-ガラクトシダーゼ活性を有する、請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の細菌株。
【請求項6】
v)D-ソルビトール分解能を有する、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の細菌株。
【請求項7】
vi)D-タガトース分解能を有する、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の細菌株。
【請求項8】
vii)メチル-aD-マンノピラノシド分解能を有する、請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載の細菌株。
【請求項9】
下記グループのうちから選択される1以上のものである、請求項1または2に記載の細菌株:
受託番号KCTC 14284BPに寄託されているLMT17-62;
受託番号KCTC 14285BPに寄託されているLMT17-74;
受託番号KCTC 14289BPに寄託されているLMT15-24;
受託番号KCTC 14288BPに寄託されているLMT17-25;及び
受託番号KCTC 14290BPに寄託されているLMT15-4。
【請求項10】
有効成分として、請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の細菌株を含む、腫瘍を予防したり治療したりするための組成物。
【請求項11】
経口で投与するためのものである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
該細菌株は、生菌または死菌である、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
該腫瘍は、固形癌である、請求項10ないし12のうちいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
該細菌株を1×10
6CFU以上に含む、請求項10ないし13のうちいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
1以上の他の治療剤と併用するためのものである、請求項10ないし14のうちいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
該治療剤は、免疫抗癌剤である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
該免疫抗癌剤は、免疫チェックポイント抑制剤である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
該免疫チェックポイント抑制剤は、PD-1拮抗剤、PD-L1拮抗剤、CTLA-4拮抗剤、またはそれらの組み合わせである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
該免疫チェックポイント抑制剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体、またはその抗原結合断片から選択される1以上のものである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
他の治療剤と同時または順次に投与するためのものである、請求項14ないし19のうちいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の細菌株、または請求項10ないし20のうちいずれか1項に記載の組成物を、腫瘍の予防または治療を必要とする対象に投与する段階を含む、対象において、腫瘍を予防したり治療したりするためのものである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍細菌株、並びにそれを利用した組成物及びその方法に係り、さらに詳細には、抗腫瘍活性を示すエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)種の細菌株、及びそれを利用し、腫瘍を予防したり治療したりするための組成物及びその方法に関する。
【0002】
また、本発明は、抗腫瘍細菌株、並びにそれを利用した組成物及びその方法に係り、さらに詳細には、抗癌活性を有するエンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)微生物、それを含む組成物、及びそれを利用した癌予防または癌治療に関する。
【背景技術】
【0003】
腸内細菌(gut bacteria)を、多様な疾病や障害を予防したり治療したりするのに使用することができるということが知られている。
【0004】
国際公開第WO2016/196605号は、対象として、1以上の共生微生物(commensal microbes)のレベルを調節し、対象による免疫反応を向上させ、かつ/あるいは癌の成長または拡散を抑制し、かつ/あるいは癌による免疫回避を抑制し、かつ/あるいは治療剤の効能を向上させることにより、該対象において、癌を治療したり予防したりする方法を開示している。該文献は、共生微生物として、アドレクルーツィア属(Adlercreutzia)、オシロスピラ属(Oscillospira)、モリクテス属(Mollicutes)、ブチリビブリオ属(Butyrivibrio)、バクテロイデス属(Bacteroides)、クロストリジウム属(Clostridium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、ルミノコッカス属(Ruminococcus)、ペプトコッカス属(Peptococcus)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、ビフィズス菌属(Bifidobacterium)、リケネラ属(Rikenella)、アリスティペス属(Alistipes)、マリニラビリア属(Marinilabilia)、アナエロスティペス属(Anaerostipes)、エスケリキア属(Escherichia)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)を例として有しており、特に、ビフィズス菌属(Bifidobacterium)細菌と免疫チェックポイント抑制剤(immune checkpoint inhibitor)とを併用し、癌を治療する方法を開示している。
【0005】
国際公開第WO2017/085520号は、エンテロコッカス・ガリナラム(Enterococcus gallinarum)種の細菌株を含む、癌の治療方法または予防方法に使用するための組成物を開示している。
【0006】
国際公開第WO2017/085518号は、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)種の細菌株を含む、IL-17経路またはTh17経路によって媒介される疾患や異常を治療したり予防したりする方法に使用するための組成物を開示している。
【0007】
これまで、エンテロコッカス・フェシウム種において、抗腫瘍活性と、微生物成長対比での特定代謝体(metabolite)生成能との関連性に対しては知られるところがなかった。
【0008】
また、エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)は、ヒト、及び他の哺乳動物の胃腸管で発見される。該エンテロコッカス・ファエカリスは、グラム陽性の球菌バクテリアである。該エンテロコッカス・ファエカリスは、10℃ないし45℃の温度で成長しうる。
【0009】
韓国特許公開10-2020-0054589は、乳糖含量を低くすることができる効果を有するエンテロコッカス・ファエカリスKACC92220Pを開示する。また、韓国特許10-2053730は、抗酸化、抗塩または抗菌活性を有するエンテロコッカス・ファエカリスAMI-1001菌株を開示する。
【0010】
しかし、前述の先行技術によっても、抗癌活性を有するエンテロコッカス・ファエカリスを求める要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の第1目的は、微生物成長対比におけるラクテート(lactate)生成能に特徴がある抗腫瘍活性を有する、エンテロコッカス・フェシウム種の細菌株を提供することである。
【0012】
本開示の第2目的は、有効成分として、前記エンテロコッカス・フェシウム種の細菌株を含む、腫瘍を予防したり治療したりするための組成物を提供することである。
【0013】
本開示の第3目的は、前記エンテロコッカス・フェシウム種の細菌株または前記組成物を、対象に投与する段階を含む、該対象において、腫瘍を予防したり治療したりするための方法を提供することである。
【0014】
本開示の第4目的は、抗腫瘍活性を有するエンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)LMT19-32(受託番号KCTC 14306BP)微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を提供することである。
【0015】
本開示の第5目的は、有効成分として、前記エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を含む、癌を予防するか、あるいは治療するための薬剤学的組成物を提供することである。
【0016】
本開示の第6目的は、有効成分として、前記エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を含む、癌を予防するか、あるいは改善させるための食品組成物を提供することである。
【0017】
本開示の第7目的は、癌を治療するのに有効な量の前記エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を個体に投与する段階を含む、個体の癌を予防するか、あるいは治療する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示の第1態様は、
i)エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)種に属し、
ii)48時間培養時、微生物成長対比におけるラクテート生成能(lactate/OD600)が3g/L以上であり、
iii)抗腫瘍活性を示す細菌株に係わるものである。
【0019】
本開示の第2態様は、有効成分として、前記エンテロコッカス・フェシウム種の細菌株を含む、腫瘍を予防したり治療したりするための組成物に係わるものである。
【0020】
本開示の第3態様は、前記エンテロコッカス・フェシウム種の細菌株、または前記組成物を腫瘍の予防または治療を必要とする対象に投与する段階を含む、該対象において、腫瘍を予防したり治療したりするための方法に係わるものである。
【0021】
本開示の第4態様は、抗腫瘍活性を有するエンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)LMT19-32(受託番号KCTC 14306BP)微生物、あるいはその培養物またはその抽出物に係わるものである。
【0022】
本開示の第5態様は、有効成分として、前記エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を含む癌を予防するか、あるいは治療するための薬剤学的組成物に係わるものである。
【0023】
本開示の第6態様は、有効成分として、前記エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を含む癌を予防するか、あるいは改善させるための食品組成物に係わるものである。
【0024】
本開示の第7態様は、癌を治療するのに有効な量の前記エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を個体に投与する段階を含む、個体の癌を予防するか、あるいは治療する方法に係わるものである。
【発明の効果】
【0025】
本開示による細菌株は、腫瘍浸潤T細胞、腫瘍浸潤CD8 T細胞及び腫瘍浸潤IFNγ+CD8 T細胞の数を増加させ、それにより、すぐれた腫瘍抑制活性を示すが、腫瘍を予防したり治療したりするのに効果的に使用されうる。
【0026】
他の態様において、本開示による抗腫瘍活性を有するエンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)LMT19-32(受託番号KCTC 14306BP)微生物、あるいはその培養物またはその抽出物によれば、癌を予防するか、あるいは治療するのにも使用される。
【0027】
さらに他の態様において、本開示による癌を予防するか、あるいは治療するための薬剤学的組成物によれば、癌を予防するか、あるいは治療するのにも使用される。
【0028】
さらに他の態様において、本開示による癌を予防するか、あるいは改善させるための食品組成物によれば、癌を予防するか、あるいは改善させることができる。
【0029】
さらに他の態様において、本開示による個体の癌を予防するか、あるいは治療する方法によれば、癌を効率的に予防するか、あるいは治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の一態様によるエンテロコッカス・フェシウムLMT17-62菌株と、標準菌株(type strain)であるKCTC 13225菌株との光学顕微鏡写真である。
【
図2A】マウス腫瘍誘導モデルから選抜されたエンテロコッカス・フェシウム菌株の腫瘍成長抑制率(%)を示したグラフである。
【
図2B】エンテロコッカス・フェシウムLMT17-62菌株投与群における経時的腫瘍サイズ変化を示したグラフである。
【
図2C】エンテロコッカス・フェシウムLMT17-62菌株投与群における、腫瘍浸潤全体T細胞数、CD8 T細胞数及びインターフェロンガンマ陽性CD8 T細胞数の変化を示したグラフである。
【
図3A】選抜されたエンテロコッカス・フェシウム菌株の成長(OD
600)曲線である。
【
図3B】選抜されたエンテロコッカス・フェシウム菌株の培養時間によるラクテート生成量を示したグラフである。
【
図3C】24時間培養後及び48時間培養後、選抜されたエンテロコッカス・フェシウム菌株の成長(OD
600)対比におけるラクテート生成量(g/L)を示したグラフである。
【
図4】pH2.5における培養時、選抜されたエンテロコッカス・フェシウム菌株の生菌数を示したグラフである。
【
図5】胆汁塩含有培地における培養時、選抜されたエンテロコッカス・フェシウム菌株の生菌数を示したグラフである。
【
図6】腸内上皮細胞に付着した、選抜された抗腫瘍陽性エンテロコッカス・フェシウム菌株の生菌数を示したグラフである。
【
図7】選抜されたエンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株と、標準菌株であるKCTC3206菌株との代表的光学顕微鏡写真を示したイメージである。
【
図8A】エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株を、腫瘍を有するマウスに投与した後、腫瘍サイズを測定した結果を示した図である。
【
図8B】エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株を、腫瘍を有するマウスに投与した後、腫瘍サイズを測定した結果を示した図である。
【
図9A】エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株を、腫瘍を有するマウスに投与した後腫瘍に浸潤されたT細胞を分析した結果を示したグラフである。
【
図9B】エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株を、腫瘍を有するマウスに投与した後腫瘍に浸潤されたCD8 T細胞を分析した結果を示したグラフである。
【
図9C】エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株を、腫瘍を有するマウスに投与した後腫瘍に浸潤されたIFNγ
+CD8 T細胞を分析した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
I.エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)
本開示は、微生物成長対比におけるラクテート(lactate)生成能に特徴があるエンテロコッカス・フェシウム種の細菌株が、すぐれた抗腫瘍活性を示す事実を発見したところに基くものである。
【0032】
用語「腫瘍」及び用語「癌」は、互換可能に使用され、例えば、固形及び液状、例えば、 瀰漫性または循環性の腫瘍を包括する。それは、前癌性だけではなく、悪性の癌及び腫瘍を含む。それは、また原発性悪性の細胞または腫瘍、及び続発性悪性の細胞または腫瘍(例えば、転移腫瘍)を含む。
【0033】
用語「抗腫瘍」及び「抗癌」は、例えば、腫瘍サイズの低減、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の低減、または腫瘍細胞生存の低減を含むが、それらに制限されるものではなく、多様な手段によって示されうる生物学的効果を称する。
【0034】
本開示の一態様は、
i)エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)種に属し、
ii)48時間培養時、微生物成長対比におけるラクテート生成能(lactate/OD600)が3g/L以上であり、
iii)抗腫瘍活性を示す細菌株に係わるものである。
【0035】
一態様において、該細菌株は、24時間培養時、微生物成長対比におけるラクテート生成能(lactate/OD600)が2.5g/L超過でもある。
【0036】
一態様において、該細菌株は、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上の腫瘍成長抑制率(tumor growth inhibition rate)を示すものでもある。特定例において、該細菌株は、10%ないし40%、15%ないし40%、20%ないし40%、25%ないし40%、30%ないし40%、35%ないし40%の腫瘍成長抑制率を示すものでもある。
【0037】
一態様において、該細菌株は、iv)β-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase)活性を有するものでもある。
【0038】
一態様において、該細菌株は、v)D-ソルビトール(D-sorbitol)分解能を有するものでもある。
【0039】
一態様において、該細菌株は、vi)D-タガトース(D-tagatose)分解能を有するものでもある。
【0040】
一態様において、該細菌株は、vii)メチル-aD-マンノピラノシド(methyl-aD-mannopyranoside)分解能を有するものでもある。
【0041】
一態様において、該細菌株は、前述のi)ないしiii)の三種特性、i)ないしiv)の四種特性、i)ないしv)、i)ないしiv)、i)ないしvi)、またはi)ないしvii)の五種特性、i)ないしvi)、またはi)ないしvii)の六種特性、あるいはi)ないしvii)の七種特性を満足させるものでもある。
【0042】
具体例において、該細菌株は、下記表1に示されているもののうち1以上のものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0043】
【0044】
本開示の第2態様は、有効成分として、前記細菌株を含む、腫瘍を予防したり治療したりするための組成物に係わるものである。用語「治療する」、「治療すること」または「治療」は、例えば、傷ついたり損傷されたりする組織の治癒、または既存のものであったり、認知されたりする疾患、障害または異常に、変更、変化、強化、改善、改良及び/または美化を施すことにより、所望する治療上の結果を達成させる、疾患、障害または異常の軽減または低減(一部低減、相当な低減、ほとんど完全な低減、及び完全な低減を含む)、解決または予防(一時的であったり永久なものであったりする)を意味する。
【0045】
用語「予防」は、疾病、障害または疾患の発病遅延を意味する。当該の疾病、障害または疾患の発病が、予定された期間の間、遅延された場合、該予防は、完全なものと見なされうる。
【0046】
一態様において、前記組成物に含まれる細菌株は、生菌体または死菌体として存在することができ、乾燥または凍結乾燥された形態で存在することもできる。
【0047】
一態様において、該細菌株は、培養物や、分離された菌株(strain)などを含め、抗腫瘍活性を維持する限り、いかなる形態でも使用され、それらは、いずれも本発明の範囲内に属するものである。用語「培養物」は、本開示の細菌株が、試験管内において、成長及び生存することができるように、栄養分を供給することができる培地に、前記菌株を、一定期間培養して得られる、培養された菌株、その代謝物、残余栄養分などを含む組成物を意味する。
【0048】
一態様において、前記組成物は、経口または非経口で投与するためのものでもある。該非経口投与は、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与、腫瘍内投与などを含むが、それらに制限されるものではない。特定例において、前記組成物は、経口で投与するためのものでもある。
【0049】
前記組成物は、薬剤学的組成物でもあり、その場合、有効成分以外に、薬剤学的に許容される担体または添加剤をさらに含んで製剤化されうる。前記担体または前記添加剤は、賦形剤、崩壊剤、甘味剤、結合剤、コーティング剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤香味剤、発色剤、希釈剤、分散剤、界面活性剤、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などを含むものでもある。前記組成物は、水溶液、懸濁液、乳濁液のような注射用剤形、丸剤、散剤、カプセル、顆粒または錠剤にも製剤化される。
【0050】
前記組成物は、食品または食品添加剤組成物でもあり、その場合、食品学的に許容可能な希釈剤または担体を含むものでもある。前記希釈剤は、水、培地またはPBSのような緩衝液でもある。前記担体は、一般的な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、増粘剤または充填剤でもある。前記食品は、健康機能性食品でもある。前記食品は、飲料類、菓子類、ダイエットバー、チョコレート、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類などでもある。
【0051】
前記組成物が経口投与用である場合、細菌株の耐酸性、耐熱性、耐胆汁性、生存率、腸内定着性などを高めるために、コーティング剤によってコーティングすることができるが、使用可能なコーティング剤は、腸用コーティング剤;ゼラチン、多糖類、ガム類など;水溶性ポリマー、ヒアルロン酸、多孔性粒子及びタンパク質;カゼイン、コーティング剤、食用油脂、ラクトバチルス・プランタラムの細胞外高分子物質(extracellular polymeric substance)、及びアルギン酸;シルクフィブロインなどを含むが、それらに特別に制限されるものではなく、単一コーティングまたは多重コーティング、例えば、二重コーティング、三重コーティングまたは四重コーティングされうる。
【0052】
一態様において、腫瘍は、固形癌(solid tumor)でもある。該固形癌の非制限的な例は、乳癌、肺癌、頭部癌または頸部癌、大腸癌、食道癌、喉頭癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、骨癌、皮膚癌、皮膚または眼球内の黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直膓癌、肛門付近癌、直腸癌、乳癌、喇叭管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頸部癌腫、膣癌腫、陰門癌腫、ホジキン病、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状線癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、リンパ球リンパ種、膀胱癌、腎臓癌または輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫、CNS腫瘍、一次CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、及び脳下垂体腺腫を含むものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0053】
一態様において、投与量は、患者の体重・年齢・性別・健康状態、食餌、投与時間、投与方法、投与期間または投与間隔、排泄率、体質特異性、製剤の性質、疾患の重症度などにより、その範囲が多様な物でもあるが、当業者によって適切に選択されうる。例えば、有効成分である細菌株を、1×106CFU以上、1×107CFU以上、1×108CFU以上、1×109CFU以上で投与しうる。例えば、細菌株を、1×1015CFU以下、1×1014CFU以下、1×1013CFU以下、1×1012CFU以下で投与しうる。例えば、細菌株を、1×106~1×1015CFU、1×107~1×1014CFU、1×108~1×1013CFU、1×109~1×1012CFU、1×1010~1×1012CFU、1×1011~1×1012CFUで投与しうる。例えば、有効成分である細菌株を、1日に一回ないし数回に分けて投与しうる。
【0054】
一態様において、前記組成物は、1以上の他の治療剤、例えば、抗癌剤、抗ウイルス剤、サイトカインまたは免疫作用剤と併用するためのものでもある。
【0055】
用語「併用」は、事前に投与された治療剤が、体内で依然として有効である間、第2治療剤が投与されるようにする2種以上の異なる治療剤の任意形態を示す。例えば、該2種治療剤は、対象において同時に有効であり、それは、2種治療剤の相乗効果を含むものでもある。該異なる治療剤は、単一の製剤または別個の製剤でもって、同時または順次に投与されうる。
【0056】
具体例において、抗癌剤は、化学治療剤でもある。化学治療剤の非制限的な例は、アルキル化剤、ニトロソウレアーゼ、抗代謝物質、抗癌抗生物質、植物起源アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン薬物、ホルモン拮抗剤、白血球減少症(好中球減少症)治療薬物、血小板減少症治療薬物、抗嘔吐剤、アロマターゼ阻害剤、P糖蛋白質阻害剤、白金錯体誘導体、他の免疫治療薬物、及び他の抗癌薬物を含む。併用投与されうる例示的な細胞毒性剤は、抗微細小管作用剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗代謝物質、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、インターカレーティング剤、信号伝達経路を妨害することができる作用剤、アポトーシスを促進させる作用剤、プロテアソーム阻害剤、及び放射線(局所または全身の照射)を含む。さらなる治療剤の非制限的な例は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、小分子、模倣作用剤、合成薬物、無機分子及び有機分子を含むが、それらに制限されるものではない。
【0057】
具体例において、抗癌剤は、免疫抗癌剤でもある。用語「免疫抗癌剤」は、癌細胞に対する身体の免疫反応を、間接的または直接的に、増強、刺激または増加させ、かつ/あるいは他の抗癌療法の副作用を低減させる化合物、組成物または治療を意味する。該免疫抗癌剤の非制限的な例は、サイトカイン、癌ワクチン、単一クローン抗体、非サイトカイン補助剤、免疫細胞(T細胞、NK細胞、樹枝状細胞、B細胞など)、免疫チェックポイント抑制剤(immune checkpoint inhibitor)などを含む。具体例において、該免疫抗癌剤は、免疫チェックポイント抑制剤である。該免疫チェックポイント抑制剤は、ペプチド、抗体、核酸分子及び小型分子を含む。例えば、該免疫チェックポイント抑制剤は、対象において、CD8+ T細胞の増殖性、移動性、持続性及び/または細胞毒性活性、及び特に、対象のCD8+ T細胞の腫瘍浸潤性を増強させるためにも投与される。典型的には、該免疫チェックポイント抑制剤は、活性化されたTリンパ球、例えば、細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、及びプログラムされた細胞死滅1(PD-1)、または殺害細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)ファミリーの多様な構成員のような、NK細胞によって発現される免疫抑制性受容体を遮断する拮抗剤であるか、あるいはそれら受容体の主要リガンド、例えば、PD-1リガンドCD274(PD-L1またはB7-H1として最も知られている)を遮断する拮抗剤である。例えば、該免疫チェックポイント抑制剤は、抗体またはその抗原結合断片である。具体的には、該免疫チェックポイント抑制剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗CTLA-4抗体、抗TIM-3抗体、抗LAG3抗体、抗IDO1抗体、抗TIGIT抗体、抗B7H3抗体、抗B7H4抗体、抗BTLA抗体及び抗B7H6抗体、並びにその抗原結合断片によってなる群のうちから選択される1以上でもある。さらに具体的には、該免疫チェックポイント抑制剤は、イピリムマブ(Ipilimumab)(ヤーボイ(登録商標)(BMS/ONO))、トレメリムマブ(tremelimumab)(アストラゼネカ)、アテゾリズマブ(atezolizumab)(テセントリク(登録商標)(ロシュ))、ニボルマブ(nivolumab)(オプジーボ(登録商標)(BMS/ONO))、ペムブロリズマブ(pembrolizumab)(キイトルーダ(登録商標)(MSD))、アベルマブ(avelumab)(バベンチオ(登録商標)(ファイアー/メルク(ドイツ))、デュルバルマブ(durvalumab)(イミフィンジ(登録商標)(アストラゼネカ/メディミューン)、及びその抗原結合断片のうちから選択される1以上でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0058】
一態様において、免疫抗癌剤は、それぞれの使用目的に合うように、通常の方法により、液剤、懸濁液剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、エキス剤、エマルジョン、シロップ剤、エアロゾルのような経口剤形;滅菌注射溶液の注射剤のような非経口剤形のように、多様な形態に剤形化されても使用される。該免疫抗癌剤は、経口投与されるか、あるいは静脈内、腹腔内、皮下、皮内、筋肉内、脊椎、脊椎腔または直腸内への局所投与または注入などを含む多様な経路を介しても非経口投与される。投与量は、患者の体重・年齢・性別・健康状態、食餌、投与時間、投与方法、投与期間または投与間隔、排泄率、体質特異性、製剤の性質、疾患の重症度などにより、その範囲が多様なものでもあるが、当業者により、適切に選択されうる。例えば、約0.1ないし約10,000mg/kgの範囲でもあるが、それに制限されるものではなく、1日に一回ないし数回に分けても投与される。
【0059】
本開示の第3態様は、前記細菌株、または前記組成物を、腫瘍の予防または治療を必要とする対象に投与する段階を含む、対象において、腫瘍を予防したり治療したりするための方法に係わるものである。
【0060】
用語「投与」または「投与すること」は、有効成分、またはそれを含む組成物を対象に提供する段階を意味する。該有効成分、またはそれを含む組成物は、多様な適切な経路を介しても投与される。
【0061】
投与される対象は、ヒトや動物、例えば、ヒト、豚、犬、猫、牛、馬、鼠などを制限なしに含むものでもある。
【0062】
II.エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)LMT19-32
第1態様は、抗腫瘍活性を有するエンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)LMT19-32(受託番号KCTC 14306BP)微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を提供する。
【0063】
前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物は、腫瘍成長を抑制しうる。前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物は、腫瘍内免疫細胞のレベルを上昇させることができる。前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物は、腫瘍内のCD8 T細胞、例えば、IFNγを発現するCD8 T細胞のレベルを上昇させることができる。前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物は、免疫細胞の腫瘍内への浸潤を増大させることができる。前記免疫細胞は、CD8 T細胞、CD4 T細胞、NK細胞、B細胞、樹枝状細胞、大食細胞及び好中球でもある。前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物は、免疫細胞を活性化させることができる。前記活性化は、前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物が、抗腫瘍活性を有するサイトカインまたは酵素の生産、分泌、または生産及び分泌を促進させるものでもある。前記サイトカインまたは酵素は、インターフェロンガンマ及びグレンザイムBのうち1以上でもある。前記微生物は、耐胆汁性及び腸内定着性にすぐれるのである。前記微生物は、ヒト糞便から分離された。
【0064】
前記耐胆汁酸性は、0.3%胆汁酸含有MRS培地において、37℃で2時間培養した場合、生存率が、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、93%以上、95%以上、75ないし90%、75ないし95%、80ないし90%、80%ないし95%、85%ないし90%、または90ないし95%でもある。
【0065】
前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物は、CD8 T細胞の腫瘍への浸潤を促進させることができる。前記促進は、前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物が存在しない場合に比べ、腫瘍内のT細胞数に対するCD8 T細胞数の百分率を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、45%以上、50%以上、55%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、100%以上、5%ないし100%、10%ないし100%、20%ないし100%、30%ないし100%、40%ないし100%、50%ないし100%、60%ないし100%、70%ないし100%、80%ないし100%、または90%ないし100%ほど上昇させるものでもある。
【0066】
前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物は、腫瘍浸潤CD8 T細胞のインターフェロンガンマ及びグレンザイムBのうち1以上の生産、分泌、または生産及び分泌を促進させることができる。前記促進は、前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物が存在しない場合に比べ、CD8 T細胞において、インターフェロンガンマを生産する細胞の百分率を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、45%以上、50%以上、55%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、100%以上、5%ないし100%、10%ないし100%、20%ないし100%、30%ないし100%、40%ないし100%、50%ないし100%、60%ないし100%、70%ないし100%、80%ないし100%、または90%ないし100%上昇させるものでもある。また、前記促進は、前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物が存在しない場合に比べ、CD8 T細胞において、グレンザイムBを生産する細胞の百分率を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、45%以上、50%以上、55%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、100%以上、5%ないし100%、10%ないし100%、20%ないし100%、30%ないし100%、40%ないし100%、50%ないし100%、60%ないし100%、70%ないし100%、80%ないし100%、または90%ないし100%上昇させるものでもある。
【0067】
前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物は、CD8 T細胞による腫瘍の成長を抑制しうる。前記抑制は、前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物が存在しない場合に比べ、腫瘍の大きさを、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、45%以上、50%以上、55%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、100%以上、5%ないし100%、10%ないし100%、20%ないし100%、30%ないし100%、40%ないし100%、50%ないし100%、60%ないし100%、70%ないし100%、80%ないし100%、または90%ないし100%ほど低減させるものでもある。
【0068】
第2態様は、有効成分として、前述の微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を含む癌を予防するか、あるいは治療するための薬剤学的組成物を提供する。
【0069】
前記薬剤学的組成物において、前記癌は、固形癌でもある。前記癌は、前記微生物が経口投与されたとき、直接接触する組織ではなく、他の組織に存在する固形癌でもある。前記直接接触する組織は、口腔、食道、胃、十二指膓、小腸、大腸及び直腸を含む。また、前記直接接触する組織ではなく、他の組織は乳房、肺、頭部、頸部、肝臓、膵臓、骨、喇叭管、内臓弓、膣、陰門、甲状腺、副甲状線、副腎、軟組織、尿道、陰茎、前立腺、膀胱、腎臓、輸尿管またはCNS(central nervous system)でもある。前記癌は、転移癌でもある。前記癌は、例えば、「I.エンテロコッカス・フェシウム」に列挙された癌でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0070】
前記薬剤学的組成物において、前記組成物は、癌の成長を抑制するためのものでもある。
【0071】
前記薬剤学的組成物において、前記組成物は、免疫チェックポイント抑制剤と共に投与されるためのものでもある。前記免疫チェックポイント抑制剤は、前述の微生物、あるいはその培養物またはその抽出物の投与前、投与と同時、または投与後に投与されるためのものでもある。
【0072】
前記免疫チェックポイント抑制剤は、例えば、「I.エンテロコッカス・フェシウム」に列挙されたものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0073】
前記薬剤学的組成物において、前記組成物は、化学治療剤と共に投与されるためのものでもある。前記化学治療剤は、前述の微生物、あるいはその培養物またはその抽出物の投与前、投与と同時、または投与後に投与されるためのものでもある。
【0074】
前記化学治療剤は、例えば、「I.エンテロコッカス・フェシウム」に列挙されたものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0075】
前記薬剤学的組成物において、前記組成物は、薬剤学的に許容可能な担体を含むものでもある。前記担体は、安定化剤、賦形剤、希釈剤または補助剤でもある。前記担体は、例えば、薬剤学的投与に適し、特に、経口投与に適する任意及び全ての水性及び非水性の溶液、滅菌溶液、溶媒、緩衝剤(例:リン酸塩緩衝食塩水(PBS)溶液)、水、懸濁液、エマルジョン(例:オイル/水エマルジョン)、多様な類型の湿潤剤、リポソーム、分散媒及びコーティング剤でもある。薬剤学的組成物において、そのような媒質及び作用剤の用途は、当該分野に周知されており、そのような担体を含む組成物は、周知された一般的な方法によっても剤形化される。
【0076】
前記組成物は、前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を、「治療学的有効量」で含むものでもある。前記組成物において、該「治療学的有効量」は、1回または2回以上の投与時、治療を必要とする個体に投与される場合、治療効果を示すに十分な量を意味する。用語「治療」は、個体、例えば、ヒトを含む哺乳類において、癌疾患、または癌の医学的症状を治療することを意味し、それは、以下のところを含む:癌疾患、または癌の医学的症状の緩和;癌疾患、または癌の医学的症状の抑剤、すなわち、個体において、疾患、または癌の医学的症状の進行を遅延せたり停止させたりすること;あるいは個体において、癌疾患、または癌の医学的症状を軽減させること。前記「有効量」は、当業者が適切に選択することができる。前記「有効量」は、組成物重量につき、0.01ないし50重量%、または0.1ないし20重量%でもある。また、前記組成物は、組成物重量基準で、1x106CFU/g以上、1x107CFU/g以上、1x108CFU/g以上、1x109CFU/g以上で投与しうる。例えば、細菌株を、1x1015CFU/g以下、1x1014CFU/g以下1x1013CFU/g以下、1x1012CFU/g以下で投与しうる。例えば、1x106CFU/gないし1x1015CFU/g、1x107CFU/gないし1x1014CFU/g、1x108CFU/gないし1x1013CFU/g、1x109CFU/gないし1x1012CFU/g、1x1010CFU/gないし1x1012CFU/gの細菌株を含むものでもある。
【0077】
前記組成物は、経口投与されうる。従って、前記組成物は、錠剤、カプセル剤、液体製剤(例:水性液剤、乾燥シロップ剤または懸濁液剤)のような多様な形態にも製剤化される。経口用錠剤の場合、ラクトース、とうもろこし澱粉のような賦形剤、及びステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤が通常加えられうる。経口投与用カプセル剤の場合、ラクトース及び/または乾燥とうもろこし澱粉が希釈剤としても使用される。経口用水性懸濁液剤が必要である場合、活性成分を、乳化剤及び/または懸濁化剤と結合させることができる。必要な場合、特定甘味剤及び/または香味剤を加えることができる。一具体例において、前記組成物は、前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物が、胃液のような酸性において安定化させうる剤形でもある。例えば、前記組成物は、前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物が、内部に含まれているカプセル剤、または前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物が被膜によってコーティングされた錠剤でもある。
【0078】
第3態様は、有効成分として、前述の微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を含む癌を予防するか、あるいは改善させるための食品組成物を提供する。
【0079】
前記組成物は、食品学的に許容可能な担体を含むものでもある。前記担体は、安定化剤、賦形剤、希釈剤または補助剤でもある。前記担体は、例えば、薬剤学的投与に適し、特に、経口投与に適する任意及び全ての水性及び非水性の溶液、滅菌溶液、溶媒、緩衝剤(例:リン酸塩緩衝食塩水(PBS)溶液)、水、懸濁液、エマルジョン(例:オイル/水エマルジョン)、多様な類型の湿潤剤、リポソーム、分散媒及びコーティング剤でもある。薬剤学的組成物において、そのような媒質及び作用剤の用途は、当該分野に周知されており、そのような担体を含む組成物は、周知された一般的な方法によっても剤形化される。
【0080】
前記食品は、乳製品、豆製品、野菜製品及び果実製品、または食品添加剤でもある。前記乳製品は、発酵乳、バター、チーズまたは粉ミルクでもある。前記食品は、健康機能食品でもある。前記健康機能食品は、癌の予防用または改善用の健康機能食品でもある。前記食品は、また飲料類、菓子類、ダイエットバー、チョコレート、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類でもある。
【0081】
前記食品は、食品製造時、一般的に添加される成分を含むものでもあり、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。
【0082】
食品製造に使用される炭水化物は、モノサッカライド(例:ブドウ糖、果糖など);ジサッカライド(例:マルトース、スクロース、オリゴ糖など);及びポリサッカライド(例:デキストリン、シクロデキストリンのような一般的な糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールのような糖アルコールでもある。また、香味剤として、天然香味剤、並びにサッカリン及びアスパルテームのような合成香味剤を使用することができる。該天然香味剤は、ソーマチン、レバウディオシドA、及びグリシルヒジンのようなステビア抽出物でもある。該健康機能食品は、摂取する場合、健康上、特定の効果をもたらすものを意味する。
【0083】
前記組成物において、前記微生物は、組成物重量につき、0.01ないし50重量%、または0.1ないし20重量%でもある。また、前記組成物は、組成物重量基準で、1x106CFU/g以上、1x107CFU/g以上、1x108CFU/g以上、1x109CFU/g以上で投与しうる。例えば、細菌株を、1x1015CFU/g以下、1x1014CFU/g以下1x1013CFU/g以下、1x1012CFU/g以下で投与しうる。例えば、1x106CFU/gないし1x1015CFU/g、1x107CFU/gないし1x1014CFU/g、1x108CFU/gないし1x1013CFU/g、1x109CFU/gないし1x1012CFU/g、1x1010CFU/gないし1x1012CFU/gの細菌株を含むものでもある。
【0084】
第4態様は、癌を治療するのに有効な量の前述の微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を個体に投与する段階を含む、個体の癌を予防するか、あるいは治療する方法を提供する。
【0085】
前記個体は、哺乳動物でもある。前記哺乳動物は、ヒト、またはヒトを除いた哺乳動物でもある。前記投与は、経口投与することでもある。
【0086】
前記「癌を治療するのに有効な量」は、癌を予防するか、あるいは治療するのに有効な量を示す。前記「癌を治療するのに有効な量」は、体重kg当たり、0.01mgないし200mgの前述の微生物、あるいはその培養物またはその抽出物、または体重kg当たり、0.1mgないし400mgの微生物、あるいはその培養物またはその抽出物でもある。また、前記「癌を治療するのに有効な量」は、個体当たり、1x106CFU以上、1x107CFU以上、1x108CFU以上、1x109CFU以上で投与しうる。例えば、細菌株を、1x1015CFU以下、1x1014CFU以下1x1013CFU以下、1x1012CFU以下で投与しうる。例えば、細菌株を、1x106CFUないし1x1015CFU、1x107CFUないし1x1014CFU、1x108CFUないし1x1013CFU、1x109CFUないし1x1012CFU、1x1010CFUないし1x1012CFUで投与しうる。例えば、有効成分である細菌株を、1日に2回ないし数回に分けて投与しうる。
【0087】
前記方法は、免疫チェックポイント抑制剤と共に投与する段階を含むものでもある。前記免疫チェックポイント抑制剤は、前述の微生物、あるいはその培養物またはその抽出物の投与前、投与と同時、または投与後に投与するものでもある。
【0088】
前記免疫チェックポイント抑制剤は、例えば、「I.エンテロコッカス・フェシウム」に列挙されたものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0089】
前記方法は、また化学治療剤と共に投与する段階を含むものでもある。前記化学治療剤は、前述の微生物、あるいはその培養物またはその抽出物の投与前、投与と同時、または投与後に投与するものでもある。
【0090】
前記化学治療剤は、例えば、「I.エンテロコッカス・フェシウム」に列挙されたものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0091】
以下のところは、抗腫瘍活性を有するエンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)LMT19-32微生物の一部の望ましい態様を示すが、それらに制限されるものではない:
1.抗腫瘍活性を有するエンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)LMT19-32(受託番号KCTC 14306BP)微生物;
2.有効成分として、項目1の微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を含む癌を予防するか、あるいは治療するための薬剤学的組成物;
3.項目2において、前記癌は、固形癌である組成物;
4.項目2において、免疫チェックポイント抑制剤と共に投与するためのものある組成物;
5.項目4において、前記免疫チェックポイント抑制剤は、CTLA4抑制剤、PD-1抑制剤またはPD-L1抑制剤である組成物;
6.有効成分として、項目1の微生物、あるいはその培養物またはその抽出物を含む癌を予防するか、あるいは改善させるための食品組成物。
【0092】
以下、本開示について、実施例を挙げて具体的に説明するが、それらは、本開示の理解の一助とするためのものであるのみ、本開示の範囲をいかようにでも制限するものではない。
【0093】
実施例
I.エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)
実施例1:菌株の分離及び同定
1.菌株の分離
エンテロコッカス・フェシウム菌株の分離のために、幼児糞便、成人糞便及び食品サンプルなどを使用した。このサンプルから、エンテロコッカス・フェシウム菌株分離のために、MRS培地(DeMan,Rogosa and Sharpe broth((Difco Co.(米国)))に塗抹し、30℃で嫌気培養した。無菌的にサンプルを取り、0.85% NaCl溶液180mlで希釈し、ストマッカ(stomacher)で5分間均質化させた後、0.85% NaCl溶液9mlが入っているチューブを滅菌させて準備し、準備されたチューブに段階的に希釈させてサンプルを準備した。その後、MRS平板培地に塗抹し、30℃で2~3日間培養し、現れたコロニーを、形態別及び色別に区別し、また純粋分離し、総8種の菌株を選抜した。選抜された菌株を、それぞれLMT17-62、LMT17-74、LMT15-24、LMT17-25、LMT15-4、LMT17-43、LMT17-40及びLMT2-17と命名した。
【0094】
2.選抜された菌株の同定
1)形態学的特性分析
選抜された8種の菌株を、MRS平板培地(Difco Co.(米国))で培養し、コロニーの形態を観察した。選抜された菌株のコロニー形態は、下記表2に示した。
【0095】
【0096】
図1は、選抜された8種の菌株において、エンテロコッカス・フェシウムLMT17-62菌株と、標準菌株(type strain)であるKCTC 13225菌株との光学顕微鏡写真である。
図1に示されているように、エンテロコッカス・フェシウムLMT17-62菌株は、球形の典型的なエンテロコッカス属の外観を有するものと確認された。
【0097】
2)16S rDNA分析
分離された菌株の16S rDNAを分析するために、universal bacterial primer 27F(配列番号1)とuniversal bacterial primer 1492R(配列番号2)とを利用し、16S rRNA遺伝子を増幅して配列分析した((株)マクロジェン)。分離された菌株の16S rDNA配列は、配列番号3ないし10に示されている(配列番号3:LMT17-62の16S rDNA配列;配列番号4:LMT17-74の16S rDNA配列;配列番号5:LMT15-24の16S rDNA配列;配列番号6:LMT17-25の16S rDNA配列;配列番号7:LMT15-4の16S rDNA配列;配列番号8:LMT17-40の16S rDNA配列;配列番号9:LMT2-17の16S rDNA配列;及び配列番号10:LMT17-43の16S rDNA配列)。その結果は、NCBI blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を使用して解析し、それにより、分離された菌株は、エンテロコッカス・フェシウム種に属するものと判明された。
【0098】
分離された菌株は、韓国生命工学研究院所在韓国細胞株銀行(KCTC:Korean Collection for Type Cultures)に、2020年8月26日付けで寄託し、それぞれエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)LMT17-62(受託番号:KCTC 14284BP)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)LMT17-74(受託番号:KCTC 14285BP)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)LMT15-24(受託番号:KCTC 14289BP)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)LMT17-25(受託番号:KCTC 14288BP)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)LMT15-4(受託番号:KCTC 14290BP)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)LMT17-43(受託番号:KCTC 14286BP)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)LMT17-40(受託番号:KCTC 14287BP)及びエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)LMT2-17(受託番号:KCTC 14291BP)と最終命名された。
【0099】
実施例2:選抜されたエンテロコッカス・フェシウム菌株の抗腫瘍効能評価
1.マウスの腫瘍モデル誘導、及びエンテロコッカス・フェシウム菌株の投与
マウス腫瘍誘導モデルに使用されたC57BL/6マウス(雄(20~22g))は、(株)オリエントバイオから購入し、実験開始前の1週間、環境に適応させた。マウスの背皮下組織に、C57BL/6マウスの大腸癌に由来するMC38細胞2.5×105個を注入し、腫瘍注入1週間後、腫瘍サイズ(50~70mm3)を基に、群分離を行った。該群分離以後、2週間、エンテロコッカス・フェシウム菌株を、2日に1回ゾンデを利用し、マウス当たり1.0×109CFUを経口投与した。陽性対照群としては、抗PD1抗体(クローン番号:RMP1-14)を、週2回マウス重さ1kg当たり10mgを腹腔投与した。陰性対照群としては、PBS(phosphate buffered saline)を経口投与した。
【0100】
マウスへのMC38腫瘍細胞株投入後の21日目まで、腫瘍サイズを測定し、その後、二酸化炭素を利用してマウスを犠牲にし、腫瘍及び免疫臓器を摘出し、腫瘍浸潤免疫細胞分析を行った。
【0101】
2.エンテロコッカス・フェシウム菌株投与による抗腫瘍効能評価
エンテロコッカス・フェシウム菌株による腫瘍抑制効能を調べるために、選抜された微生物菌株8種につき、腫瘍抑制実験を実施した。
【0102】
腫瘍の大きさは、腫瘍細胞株注入7日目後から、週2回ずつ測定した。正確な腫瘍の大きさを測定するために、バーニアノギスを利用し、腫瘍の長軸と短軸とを測定し、下記数式により、腫瘍サイズを計算した。
【0103】
腫瘍サイズ=(長軸×(短軸)2)/2
以下の数式により、腫瘍成長抑制率(tumor growth inhibition rate(%))を計算した。
腫瘍成長抑制率(%)=(1-Vt/Vc)×100
Vc:腫瘍サイズ評価時、陰性対照群における平均腫瘍サイズ
Vt:腫瘍サイズ評価時、実験群における平均腫瘍サイズ。
【0104】
その結果を
図2Aに示した。
図2Aに示されているように、エンテロコッカス・フェシウムLMT17-62菌株,LMT17-74菌株,LMT15-24菌株,LMT17-25菌株及びLMT15-4菌株が、それぞれ39%、31%、25%、22%及び15%の腫瘍成長抑制率を示した。一方、エンテロコッカス・フェシウムLMT17-40菌株,LMT2-17菌株及びLMT17-43菌株は、腫瘍成長抑制率が、それぞれ1%、-3%及び-5%以下と、抗腫瘍効能を示さなかった。従って、同一種(species)であるとしても、菌株によって抗腫瘍効能に違いがあることを確認した。
【0105】
図2Bに、エンテロコッカス・フェシウムLMT17-62菌株投与群において、腫瘍細胞株注入後、実験を終了する21日目までの腫瘍サイズが示されている。
図2Bに示されているように、エンテロコッカス・フェシウムLMT17-62投与群と、陽性対照群抗PD1抗体投与群とにおいて、陰性対照群対比で、統計学的に有意に、腫瘍成長が抑制されることを確認した。
【0106】
3.腫瘍浸潤免疫細胞分析、及び免疫細胞の機能性評価
腫瘍浸潤免疫細胞であるCD8 T細胞は、重要な抗腫瘍反応の指標であり、CD8 T細胞が分泌するインターフェロンガンマは、免疫細胞の活性を示す機能性サイトカインである。エンテロコッカス・フェシウムの抗腫瘍効能が、前記要素の増加によるか否かということを確認するために、動物実験終了後、腫瘍を摘出して分析した。摘出された腫瘍は、50μg/mlリベラーゼ(Liberase)と40μg/mlDNaseIとが含まれたRPMI1640培地とセルストレーナ(cell strainer)とを利用し、単一細胞に分離した。 分離された細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS:fetal bovine serum)が含まれたRPMI1640培地において、50ng/ml PMA(phorbol12-myristate13-acetate)と500ng/mlイオノマイシンとでもって、4時間刺激した。刺激後、免疫細胞分析及びインターフェロンガンマ生成確認のために、表3の抗体で細胞を染色し、CANTOII流細胞分析装備を利用して分析した。
【0107】
【0108】
図2Cは、腫瘍浸潤全体T細胞の数、CD8 T細胞の数、及びインターフェロンガンマ生成CD8 T細胞を示したものである。PBS処理群対比で、LMT17-62菌株処理群において、有意味に、腫瘍浸潤T細胞及びCD8 T細胞が増加した。また、CD8 T細胞活性因子であるインターフェロンガンマ生成も、PBS対照群対比で、LMT17-62菌株処理群において、有意味に増加したことを確認した。
【0109】
実施例3:抗腫瘍陽性エンテロコッカス・フェシウム菌株の生理活性特性分析
1.抗腫瘍陽性エンテロコッカス・フェシウム菌株の成長曲線及び代謝体生産能の評価
選抜されたエンテロコッカス・フェシウム菌株の成長パターンを調べるために、抗腫瘍陽性菌株と抗腫瘍陰性菌株とのコロニーを、MRS液体培地で24時間培養した後、菌株ごとに、初期OD
600(optical density)値が一致するように、50mlまたは250ml三角フラスコ(Erlenmeyer flask)に接種した。その後、菌株の成長曲線測定のために、毎時間ごとに、菌株のOD
600値を、分光光度計Ultrospec 7000(Biochrom(イギリス))を利用して測定した。その結果を
図3Aに示した。
図3Aに示されているように、抗腫瘍効能を有するLMT17-62菌株は、培養後8時間以後から成長が止まったが、抗腫瘍陰性LMT2-17菌株は、続けて成長を持続させた。培養液に存在する菌株の代謝物質であるラクテートの量は、バイオケミストリ分析機YSI2900(Xylem(米国))を利用して確認した。
【0110】
その結果を
図3Bに示した。
図3Bに示されているように、抗腫瘍効能を有するLMT17-62菌株と抗腫瘍陰性LMT2-17菌株とのいずれにおいても、培養を持続させるほど、代謝物質ラクテート生成が増大された。
図3Cに、OD
600当たり代謝物質ラクテート生産能が示されている。
図3Cに示されているように、抗腫瘍効能を有するエンテロコッカス・フェシウム菌株グループ(LMT17-62、LMT17-74、LMT15-24、LMT15-4、LMT17-25)が、抗腫瘍陰性エンテロコッカス・フェシウム菌株グループ(LMT17-43、LMT17-40、LMT2-17)対比で、高いOD
600当たりラクテート生産能を示している。それは、菌株培養を、24時間から48時間に持続させるほどさらに目立つもので合った。すなわち、48時間培養時、抗腫瘍陰性菌株は、3g/Lに及びえないOD
600当たりラクテート生成を示した一方、抗腫瘍陽性菌株は、一貫して、3g/L以上のOD
600当たりラクテート生成を示し、OD
600当たりラクテート生成能が高いほど、高い抗腫瘍活性を有する傾向を示している。
【0111】
2.抗腫瘍陽性エンテロコッカス・フェシウム菌株の酵素活性評価
選抜されたエンテロコッカス・フェシウム菌株の生化学的特性を調査するために、Rapid ID 32A kit(BioMetrieux(フランス))を使用して酵素活性を評価し、その結果を下記表4に示した。抗腫瘍陰性菌株グループ(LMT17-43、LMT17-40、LMT2-17)と異なる抗腫瘍効能を有するエンテロコッカス・フェシウム菌株グループ(LMT17-62、LMT17-74、LMT15-24、LMT17-25)は、β-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase)酵素活性を有していた。
【0112】
【0113】
表4において、抗腫瘍菌株No.1,No.2,No.3,No.4及びNo.5は、順に、LMT17-62、LMT17-74、LMT15-24、LMT17-25及びLMT15-4をそれぞれ示し、対照菌株No.1,No.2及びNo.3は、順に、LMT17-43、LMT17-40及びLMT2-17をそれぞれ示す。
【0114】
3.抗腫瘍陽性エンテロコッカス・フェシウム菌株の糖発酵特性
選抜されたエンテロコッカス・フェシウム菌株の糖代謝特性を分析するために、API 50 CHL kit(BioMetrieux(France))を利用し、供給会社の実験方法により、評価を行った。表5にその結果を示した。抗腫瘍効能を有するエンテロコッカス・フェシウム菌株グループ(LMT17-62、LMT17-74、LMT15-24)は、D-ソルビトール(D-sorbitol)とD-タガトース(D-tagatose)との糖発酵特性を有していた。また、抗腫瘍効能を有するエンテロコッカス・フェシウム菌株(LMT17-62、LMT17-74)の場合、メチル-aD-マンノピラノシド(methyl-aD-mannopyranoside)糖発酵特性を有していた。
【0115】
【0116】
表5において、抗腫瘍菌株No.1,No.2,No.3,No.4及びNo.5は、順に、LMT17-62、LMT17-74、LMT15-24、LMT17-25及びLMT15-4をそれぞれ示し、対照菌株No.1,No.2及びNo.3は、順に、LMT17-43、LMT17-40及びLMT2-17をそれぞれ示す。
【0117】
4.抗腫瘍陽性エンテロコッカス・フェシウム菌株の安定性評価
(1)耐酸性の調査
エンテロコッカス・フェシウム菌株の耐酸性を評価するために、以下の方法でもって実験を実施した。選抜された菌株を、滅菌されたMRS液体培地に接種した後、37℃で16時間培養した。次に、HClでpH2.5に調整し、滅菌されたMRS液体培地に接種した後、2時間37℃で培養した後、生菌数を確認した。接種前の生菌数ほどと、接種後2時間目の生菌数ほどとをMRS平板培地に塗抹した後で培養し、コロニー数を比較して係数し、その結果を
図4に示した。
【0118】
図4に示されているように、抗腫瘍陽性エンテロコッカス・フェシウム菌株は、若干低い耐酸性を有すると示されたが、剤形化時、カプセル剤やコーティング剤などを使用することが望ましいものでもある。
【0119】
(2)耐胆汁性の調査
エンテロコッカス・フェシウム菌株の耐胆汁性を調査するために、以下の方法でもって実験を実施した。選抜された菌株を、滅菌されたMRS液体培地に接種した後、37℃で16時間培養した。腸管内の胆汁塩濃度が0.1%前後であることを勘案し、0.3%の胆汁塩(bile salts)(Sigma(米国))が含有されたMRS液体培地に、菌体だけを10
8~10
9CFU/mlになるように接種した後、2時間37℃で培養した後、生菌数を確認した。菌株接種前の生菌数ほどと、接種後2時間目の生菌数ほどとをMRS平板培地に塗抹した後で培養し、コロニー数を測定した。その結果を
図5に示した。
【0120】
図5に示されているように、抗腫瘍陽性エンテロコッカス・フェシウム菌株は、腸内実際濃度と類似した0.1%よりさらに高い0.3%においても、適正菌数を維持しているために、選抜された抗腫瘍陽性エンテロコッカス・フェシウム菌株は、人体や動物の腸内においても、十分に生存しうるということを確認することができる根拠にもなる。
【0121】
(3)腸内定着性の調査
抗腫瘍陽性エンテロコッカス・フェシウム菌株の腸内細胞定着力を評価するために、韓国細胞株銀行から購入したヒト直腸上皮細胞である腺癌腫細胞(human epithelial colorectal adenocarcinoma cell)Caco-2細胞株(KCLB 30037.1)を使用した。Caco-2細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco(米国))が含まれたDMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)(Gibco(米国))培養液において、5% CO2、37℃の条件において、7×104細胞/100μlになるように分注し、96ウェルプレート(Corning(米国))に細胞単一層が形成されるように培養した。
【0122】
一方、MRS液体培地で培養された選抜抗腫瘍陽性エンテロコッカス・フェシウム菌株を、リン酸緩衝塩水(PBS:phosphate buffered saline)で洗浄した後、抗生物質が添加されていないDMEM培地に懸濁し、細胞単一層を構成したCaco-2細胞に、エンテロコッカス・フェシウム菌株の量が、1×107CFUになるように添加し、5% CO2、37℃の条件で、2時間培養した。Caco-2細胞に付着されていない細胞を除去するために、PBSで5回洗浄し、100μlの0.1%トリトンx-100でもって、付着された細胞を引き離した後、それらをMRS固体培地に塗抹した。37℃で24時間培養した後、平板培地上のコロニー数を係数し、エンテロコッカス・フェシウム菌株の腸内定着性を調査した。
【0123】
図6に、腸内上皮細胞に付着された選抜された抗腫瘍陽性エンテロコッカス・フェシウム菌株の数が示されている。
図6に示されているように、腸上皮細胞(Caco-2)につき、LMT17-62は、0.31%、LMT17-74は1.55%、LMT15-24は、0.46%、かつLMT17-25は、0.48%の腸内定着力を有することを確認した。
【0124】
II.エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)LMT19-32
実施例1:エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株の分離及び同定
1.エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)菌株の分離
成人糞便試料から、エンテロコッカス・ファエカリス菌株を分離した。まず、試料をMRS培地(Difco Co.((米国))に塗抹し、30℃で嫌気培養した。試料の前処理方法は、無菌状態で取り、0.85% NaCl溶液180mlで希釈し、ストマッカ(stomacher)で、5分間糞便原液を均質化させた。均質化された試料を、滅菌された0.85% NaCl溶液9mlが入っているチューブに段階的に希釈し、糞便試料を準備した。該試料を、MRS平板培地(Difco Co.(米国))に塗抹し、37℃で2日間ないし3日間培養し、現れたコロニーを、形態別及び色別に区別し、さらに純粋分離した。
【0125】
2.エンテロコッカス・ファエカリス菌株の同定
(1)形態学的特性の分析
選抜されたエンテロコッカス・ファエカリス菌株を、MRS平板培地(Difco Co.(米国))で培養し、コロニー形態を観察した。選抜されたエンテロコッカス・ファエカリス菌株、及びエンテロコッカス・ファエカリス標準菌株であるKCTC3206のMRS平板培地にけるコロニー形態は、下記表6に示した。
【0126】
【0127】
図7は、選抜されたエンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株と、標準菌株であるKCTC3206菌株との代表的光学顕微鏡写真を示したものである。
図7に示されているように、LMT19-32菌株は、球菌であり、典型的なエンテロコッカス属の外観と類似していた。
【0128】
(2)16S rDNA分析
分離されたLMT19-32菌株の16S rRNA遺伝子を増幅し、増幅された16S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列を分析した。前記増幅は、LMT19-32菌株ゲノムDNAをテンプレートにし、配列番号11のオリゴヌクレオチド((株)マクロジェン)と、配列番号12のオリゴヌクレオチド((株)マクロジェン)とをプライマーセットにしたPCRを行ってなされた。分離されたLMT19-32菌株の16S rDNAのヌクレオチド配列は、配列番号13に示されている。確認された16S rDNAのヌクレオチド配列を、NCBI blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を使用し、公知された16S rDNAのヌクレオチド配列と比較した。その結果、LMT19-32の16S rDNAは、エンテロコッカス・ファエカリス種と、配列同一性が100%であった。また、系統樹分析結果、LMT19-32は、エンテロコッカス・ファエカリス種と同じであった。その結果、LMT19-32菌株は、新たなエンテロコッカス・ファエカリス種に属する新たな菌株であると確認された。
【0129】
本発明者らは、LMT19-32乳酸菌を、「エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)LMT19-32」(寄託番号:KCTC 14306BP)で命名し、それを韓国生命工学研究院所在韓国細胞株銀行(KCTC:Korean Collection for Type Cultures)に、2020年9月9日付けで寄託した。
【0130】
実施例2:エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株の生理活性特性分析
1.エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株の糖発酵特性
選抜されたLMT19-32菌株の糖代謝特性を、API 50 CHL kit(BioMetrieux(フランス))を、供給会社の実験方法によって使用して確認した。表7は、確認されたLMT19-32菌株の糖発酵特性を示したものである。
【0131】
【0132】
2.エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株の安定性評価
エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株の耐酸性を評価するために、以下の方法でもって実験を実施した。LMT19-32菌株を、滅菌されたMRS液体培地に接種した後、37℃で16時間培養した。次に、HClでpH2.5に調整し、滅菌されたMRS液体培地に、前記菌株1%を接種し、37℃で2時間培養した。菌株接種直後と、2時間培養後との試料を回収し、MRS液体培地に希釈し、MRS平板培地に塗抹した後、37℃で24時間培養した後、平板培地上のコロニー数を係数し、菌数を測定した。
【0133】
表8に示されているように、エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株は、若干低い耐酸性を有するものと示されているが、剤形化時、カプセル剤やコーティング剤などを使用することが望ましいものでもある。
【0134】
【0135】
(2)耐胆汁性の調査
胆汁酸が、エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株成長に及ぼす影響を確認するために、以下の方法でもって実験を実施した。選抜された菌株を、滅菌されたMRS液体培地に接種した後、37℃で24時間培養した。腸管内の胆汁酸炎濃度が0.1%前後であることを勘案し、0.3%の胆汁酸塩(bile salts)(Sigma(米国))が含有されたMRS液体培地に、前記菌株を1%を接種し、37℃で2時間培養した。菌株接種直後と、2時間培養後との試料を回収し、MRS液体培地に希釈し、MRS平板培地に塗抹した後、37℃で24時間培養した後、平板培地上のコロニー数を係数し、生存菌株細胞数を測定した。対照群として、0.3%の胆汁塩酸が含有されていないMRS液体培地において、同一に培養を進芽、生存菌株細胞数を測定した。表9は、耐胆汁酸塩を測定した結果である。表9に示されているように、LMT19-32菌株は、腸内実際濃度と類似した0.1%よりさらに高い0.3%から93%の生存率を維持したために、LMT19-32菌株は、人体や動物の腸内においても、十分に生存しうるという根拠にもなる。
【0136】
【0137】
(3)腸内定着性の調査
エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株の腸内細胞定着力程度を評価するために、韓国細胞株銀行から購入したヒト直腸上皮細胞である腺癌腫細胞(human epithelial colorectal adenocarcinoma cell)Caco-2細胞株(KCLB 30037.1)を使用した。Caco-2細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco(米国))が含まれたDMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium(Gibco)(米国)))において、5% CO2、37℃の条件で、7x104細胞/100μlになるように分注し、96ウェルプレート(Corning(米国))に、細胞単一層が形成されるように培養した。
【0138】
一方、MRS液体培地で培養されたLMT19-32菌株をPBSで洗浄した後、抗生物質が添加されていないDMEM培地に懸濁し、細胞単一層を構成したCaco-2細胞に、LMT19-32菌株の量が1x107CFUになるように添加し、5% CO2、37℃条件で2時間培養した。Caco-2細胞に付着されていない細胞を除去するために、PBSで5回洗浄し、100μlの0.1%トリトンX-100でもって、付着された細胞を引き離した後、それをMRS固体培地に塗抹した。37℃で24時間培養した後、平板培地上のコロニー数を係数し、LMT19-32菌株の腸内定着性を調査した。
【0139】
表10は、エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株の腸内上皮細胞に付着された数を示した図面である。表10に示されているように、本発明の新規のエンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株と、比較菌株エンテロコッカス・ファエカリスKCTC3206とのいずれも、約1%の腸上皮細胞であるCaco-2に定着力があることを確認した。
【0140】
【0141】
実施例3:エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株の抗腫瘍効能評価
1.マウスの腫瘍モデル誘導、及びエンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株の投与
マウス腫瘍誘導モデルに使用されたC57BL/6マウス(雄(20~22g))は、(株)オリエントバイオから購入し、実験開始前1週間、環境に適応させた。マウスの背皮下組織に、C57BL/6マウスの大腸癌に由来するMC38細胞2.5x105個を注入し、腫瘍注入1週間後、腫瘍サイズ(50~70mm3)を基に、群を分離した。群分離以後2週間、エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株を、2日に1回ゾンデを利用し、マウス当たり1x109CFU菌株含有PBSを経口投与し、陽性対照群としては、抗PD1抗体(クローン番号:RMP1-14(製造社:Bioxcell(製品名:Invivo MAbanti-mouse PD-1))を、週2回マウス重さ1kg当たり10mgを腹腔投与した。陰性対照群としては、PBSを経口投与した。実験群構成は、各群当たり10匹ずつ、総3群であり、表11のように構成した。
【0142】
【0143】
マウスへのMC38腫瘍細胞株投入後、21日目まで腫瘍サイズを測定し、その後、二酸化炭素を利用し、マウスを犠牲にし、腫瘍を摘出し、腫瘍浸潤免疫細胞分析を行った。分析結果は、
図9A、
図9B及び
図9Cに記載されている。
図9A、
図9B及び
図9Cは、エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株を、腫瘍を有するマウスに投与した後、腫瘍に浸潤されたT細胞、CD8 T細胞、及びIFNγを発現するCD8 T細胞、すなわち、IFNγ
+CD8 T細胞を分析した結果を示したものである。MC38腫瘍細胞株は、C57BL/6マウスに、ジメチルヒドラジンを皮下注射して誘導されたマウス結腸アデノカシノーマ細胞(mouse colon adenocarcinoma cell)である。本実施例に使用されたマウス腫瘍誘導モデルは、MC38腫瘍細胞が、皮下組織に移植されたものであるので、経口投与された菌株の効果が、該菌株が直接接触する組織ではない他の組織、例えば、皮下組織の癌成長抑制を示すことができるということを示すものであり、菌の影響が、該菌株が直接接触する組織である、胃腸管または腸と関連する癌だけではなく、多様な固形癌腫にも作用しうるということを示す。
【0144】
2.エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株投与による抗腫瘍効能評価
図8A及び
図8Bは、エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株を、腫瘍を有するマウスに投与した後、腫瘍サイズを測定した結果を示した図面である。前記投与は、セクション1によって遂行された。具体的には、腫瘍サイズは、腫瘍細胞株注入7日目後から21日目まで、週2回ずつ測定した。正確な腫瘍サイズを測定するために、バーニアノギスを利用し、腫瘍の長軸と短軸とを測定し、「長軸x(短軸)
2/2」の公式でもって腫瘍サイズを計算した。
図8A及び
図8Bにおいて、対照群は、陰性対照群として、PBSを投与したものであり、aPD1は、陽性対照群として、抗PD1抗体を投与したものであり、LMT19-32は、実験群として、LMT19-32を投与したものである。
図8Aグラフは、細胞注入後の経過日数による腫瘍サイズを示したものであり、
図8Bは、細胞注入後21日目の腫瘍サイズを示したものである。
図8Aにおいて、横軸は、腫瘍サイズを測定したものであり、腫瘍細胞投与後の経過日を示す。
図8Bにおいて、棒は、細胞注入後21日目の各個体別腫瘍サイズをいずれも表記したものである。
図8A及び
図8Bに示されているように、LMT19-32菌株単独投与群において、統計学的に有意な腫瘍成長阻害(tumor growth inhibition)が観察されている。
【0145】
3.腫瘍浸潤免疫細胞分析、及び免疫細胞の機能性評価
腫瘍浸潤免疫細胞であるCD8 T細胞は、重要な抗癌反応の指標であり、CD8 T細胞が分泌するインターフェロンガンマ(interferon gamma)とグレンザイムB(granzyme B)は、免疫細胞の活性能を示す機能性サイトカインである。
図9A、
図9B及び
図9Cは、エンテロコッカス・ファエカリスLMT19-32菌株を、腫瘍を有するマウスに投与した後、腫瘍に浸潤されたCD8 T細胞、及びそれによるサイトカイン分泌を分析した結果を示したものである。該投与は、セクション1によって行われた。投与21日目後、腫瘍を摘出した。摘出された腫瘍は、50μg/mlリベラーゼ(Liberase)と40μg/ml DNaseIとが含まれたRPMI1640培地と、細胞ストレーナ(セルストレーナ(cell strainer))とを利用し、単一細胞に分離した。T細胞のインターフェロンガンマ生成様相を観察するために、分離された細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)が含まれたRPMI1640培地において、50ng/ml PMA(phorbol 12-myristate 13-acetate)と500ng/mlイオノマイシンとでもって4時間刺激した。PMA及びイオノマイシンの物質は、T細胞が活性化されるように、信号的刺激を与える物質であり、実際の抗原によるT細胞の活性メカニズムのような役目を行い、免疫反応が起こるような環境を作る。イオノマイシンは、Ca
2+イオノフォアとして、PKC(protein kinase C)を増加させ、PMAの場合は、PKCをリン酸化(phosphorylation)させることにより、CD4 T細胞とCD8 T細胞とをターゲットすることができるように、相乗作用を行う(synergize)役割を行う。刺激後、免疫細胞分析及びインターフェロンガンマ生成確認のために、表12の抗体で細胞を染色し、CANTO II流細胞分析装備を利用して分析した。
【0146】
【0147】
図9A、
図9B及び
図9Cは、それぞれ腫瘍浸潤された全体T細胞の数、腫瘍浸潤T細胞におけるCD8 T細胞の数、及びCD8 T細胞におけるIFNγ発現細胞の数を示したものである。
図9に示されているように、PBS処理群対比で、LMT19-32投与群において、有意味に腫瘍浸潤T細胞の数と、CD8 T細胞の数とが増加した。また、活性因子であるインターフェロンガンマを生成するCD8 T細胞の数においても、PBS対照群対比で、LMT19-32処理群において、有意味に増加した。
【0148】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)種に属し、
ii)48時間培養時、微生物成長対比におけるラクテート生存能(lactate/OD
600)が3g/L以上であり、
iii)抗腫瘍活性を示す、細菌株。
【請求項2】
24時間培養時、微生物成長対比におけるラクテート生存能(lactate/OD
600)が2.5g/L超過である、請求項1に記載の細菌株。
【請求項3】
10%以上の腫瘍成長抑制率を示す、請求項1に記載の細菌株。
【請求項4】
20%以上の腫瘍成長抑制率を示す、請求項1に記載の細菌株。
【請求項5】
iv)β-ガラクトシダーゼ活性を有する、請求項1に記載の細菌株。
【請求項6】
v)D-ソルビトール分解能を有する、請求項1に記載の細菌株。
【請求項7】
vi)D-タガトース分解能を有する、請求項1に記載の細菌株。
【請求項8】
vii)メチル-aD-マンノピラノシド分解能を有する、請求項1に記載の細菌株。
【請求項9】
下記グループのうちから選択される1以上のものである、請求項1に記載の細菌株:
受託番号KCTC 14284BPに寄託されているLMT17-62;
受託番号KCTC 14285BPに寄託されているLMT17-74;
受託番号KCTC 14289BPに寄託されているLMT15-24;
受託番号KCTC 14288BPに寄託されているLMT17-25;及び
受託番号KCTC 14290BPに寄託されているLMT15-4。
【請求項10】
有効成分として、請求項1に記載の細菌株を含む、腫瘍を予防したり治療したりするための組成物として、該腫瘍は、固形癌である、組成物 。
【請求項11】
該細菌株を1×10
6CFU以上に含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
1以上の他の治療剤と併用するためのものであり、該治療剤は、免疫抗癌剤である、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
該免疫抗癌剤は、免疫チェックポイント抑制剤である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
該免疫チェックポイント抑制剤は、PD-1拮抗剤、PD-L1拮抗剤、CTLA-4拮抗剤、またはそれらの組み合わせである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
該免疫チェックポイント抑制剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体、またはその抗原結合断片から選択される1以上のものである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の細菌株を、腫瘍の予防または治療を必要とする対象に投与する段階を含む、対象において、腫瘍を予防したり治療したりするためのものである、方法。
【請求項17】
請求項10に記載の組成物を、腫瘍の予防または治療を必要とする対象に投与する段階を含む、対象において、腫瘍を予防したり治療したりするためのものである、方法。
【国際調査報告】