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特表2023-540029固体カーボンブラック材料およびその調製ならびにそれを含有する組成物および物品
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  • 特表-固体カーボンブラック材料およびその調製ならびにそれを含有する組成物および物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】固体カーボンブラック材料およびその調製ならびにそれを含有する組成物および物品
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/48 20060101AFI20230913BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230913BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20230913BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20230913BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20230913BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20230913BHJP
   C09C 1/50 20060101ALI20230913BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20230913BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230913BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230913BHJP
   C09C 1/58 20060101ALI20230913BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230913BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20230913BHJP
【FI】
C09C1/48
C08L101/00
C08L7/00
C08L9/00
C08L21/00
C01B32/05
C09C1/50
C09D17/00
C09D7/61
C09D201/00
C09C1/58
C09D5/02
C09D11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513284
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2021071273
(87)【国際公開番号】W WO2022042994
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】20193023.7
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521399892
【氏名又は名称】オリオン エンジニアード カーボンズ アイピー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディト ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェシュテンベルク ハウケ
(72)【発明者】
【氏名】フォーグラー コニー
(72)【発明者】
【氏名】ニーダーマイアー ヴェルナー
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
4J037
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA15
4G146AB01
4G146AB03
4G146AC02B
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AC28A
4G146AC28B
4G146AC30A
4G146AC30B
4G146AD37
4G146BA03
4G146CB12
4G146CB38
4J002AA001
4J002AC001
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AC121
4J002BB151
4J002BB181
4J002BD121
4J002CP031
4J002DA046
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD146
4J002FD156
4J002GC00
4J002GH00
4J002GJ02
4J002GM00
4J002GN01
4J002GQ01
4J002HA06
4J037AA02
4J037CA07
4J037DD07
4J037DD27
4J037EE08
4J037FF17
4J038HA026
4J038NA11
4J038PB07
4J038PC07
4J039BA02
4J039BE01
4J039CA06
4J039EA19
(57)【要約】
本開示は、7超のpHを有する酸化カーボンブラックを含む固体カーボンブラック材料、そのような固体カーボンブラック材料およびポリマー成分を含む組成物、ならびにそれらから作製された物品を提供する。本開示はまた、上記固体カーボンブラック材料を製造する方法に関する。固体カーボンブラック材料は例えば、従来の酸化カーボンブラックの使用と比較して増強された硬化速度を有する省エネタイヤの製造のために、低いヒステリシスを有するゴム化合物を得るために特に有用である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D1512-15b試験方法B-ソニックスラリーに従って測定して7超のpHを有する酸化カーボンブラックを含む、固体カーボンブラック材料。
【請求項2】
酸化カーボンブラックが、ASTM D1512-15b試験方法B-ソニックスラリーに従って測定して、少なくとも8、8~12の範囲などのpHを有する、請求項1に記載の固体カーボンブラック材料。
【請求項3】
酸化カーボンブラックが、950℃での熱重量分析によって測定して、酸化カーボンブラックの総重量に基づき、1.0重量%超、少なくとも2.0重量%または少なくとも3.0重量%などの量の揮発分を有し、および/または、元素分析によって測定して、酸化カーボンブラックの総重量に基づき、少なくとも0.5重量%、少なくとも1.0重量%または少なくとも2.0重量%などの量の酸素含有量を有する、請求項1または2に記載の固体カーボンブラック材料。
【請求項4】
酸化カーボンブラックが、オゾン酸化カーボンブラックおよび/または酸化ファーネスブラックである、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体カーボンブラック材料。
【請求項5】
酸化カーボンブラックが、カルボキシレート基、好ましくはアルカリ金属カルボキシレートを、好ましくは少なくとも100μmol/g、100~300μmol/gなどの範囲の量で含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体カーボンブラック材料。
【請求項6】
7超のpHを有する酸化カーボンブラックが、例えば実質的にカルボン酸基を含まないなど、20μmol/g未満のカルボン酸基を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の固体カーボンブラック材料。
【請求項7】
固体カーボンブラック材料が粉末またはビーズの形態である、請求項1~6のいずれか1項に記載の固体カーボンブラック材料。
【請求項8】
酸化カーボンブラックが以下の1つ以上または全てを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の固体カーボンブラック材料:
(a) 30~500m2/g、好ましくは50~200m2/gの範囲の、ASTM D6556-17に従って測定される統計的厚さ表面積;
(b) 50~500m2/g、好ましくは70~300m2/gの範囲の、ASTM D6556-17に従って測定されるBET表面積;
(c) 50~150mL/100g、好ましくは70~130mL/100gの範囲の、ASTM D2414-18に従って測定される吸油量(OAN);
(d) 50~150mL/100g、好ましくは80~120mL/100gの範囲の、ASTM D3493-18に従って測定される圧縮試料の吸油量(COAN);
(e) 20~300mg/g、好ましくは40~100mg/gの範囲の、ASTM D1510-19に従って測定されるヨウ素吸着量。
【請求項9】
固体カーボンブラック材料が、ASTM D1512-15b試験方法B-ソニックスラリーに従って測定して7超のpHを有する酸化カーボンブラックからなる、請求項1~8のいずれか1項に記載の固体カーボンブラック材料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の固体カーボンブラック材料の製造方法であって、下記のことを含む製造方法:
(i) 酸化カーボンブラックを提供すること、
(ii) 酸化カーボンブラックを塩基で、好ましくはアルカリ金属水酸化物水溶液で処理すること、
(iii) 任意に、酸化カーボンブラックを湿式ビーズ化すること。
【請求項11】
前記塩基が、酸化カーボンブラック中の酸性基に対して少なくとも等モル量で使用される、請求項10に記載の固体カーボンブラック材料の製造方法。
【請求項12】
(i) ポリマー成分、および
(ii) 請求項1~9のいずれか1項に記載の固体カーボンブラック材料、
を含む組成物。
【請求項13】
ポリマー成分が、天然ゴム、エマルジョン-スチレン-ブタジエンゴム、溶液-スチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン-プロピレン-ジエンゴムEPDM、エチレン-プロピレンゴムEPM、ハロゲン化ブチルゴム、ブチルゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、アクリレートゴム、エチレン-ビニルアセテートゴム、エチレン-アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フルオロカーボンゴム、またはこれらのいずれかの組み合わせの混合物を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
加硫剤、促進剤、活性化剤、処理添加剤(油、樹脂、軟化剤、顔料、ワックス、解膠剤および抗酸化剤など)から選択される1種以上の添加剤をさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
グアニジン型促進剤を実質的に含まない、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
水および/または1種以上の有機溶媒をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、液体組成物、好ましくは水性分散体、有機分散体、インク製剤、コーティング組成物または印刷組成物である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、ポリマー成分100重量部当たり、1~100重量部、好ましくは10~100または30~80重量部の量で固体カーボンブラック材料を含む、請求項12~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項12~18のいずれか1項に記載の組成物から調製される物品。
【請求項20】
タイヤ、タイヤ部品(タイヤトレッドなど)、ケーブルシース、チューブ、駆動ベルト、コンベヤベルト、ロールカバー、靴底、シール部材、プロファイル、ダンピング素子、コーティング、または着色もしくは印刷された物品である、請求項19に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化カーボンブラック、より具体的には塩基性酸化カーボンブラックを含む固体カーボンブラック材料、関連ポリマー組成物、特に加硫性ゴム組成物、およびそれらから製造された物品、ならびにそれぞれの調製方法に関する。固体カーボンブラック材料は、従来の酸化カーボンブラックの使用と比較して、硬化速度が向上しかつヒステリシスが低減された、タイヤ用途などのゴム製品を得るのに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物のようなポリマー組成物は、トランスミッションおよびコンベヤベルト、タイヤまたは履物のような多数の工業製品を製造するために広く適用されている。カーボンブラックは、例えば、それらの色、機械的、電気的、および/または加工特性を改変するために、多くのポリマー組成物中に含まれる。カーボンブラックは例えば、一般に、タイヤまたはその構成要素を製造するために使用されるゴム組成物に添加されて、絶縁マトリックスに電気的散逸性を付与する。同時に、カーボンブラック添加剤は、剛性、耐摩耗性およびヒステリシスのような機械的および弾性特性に影響を及ぼし、これらは、例えば、その転がり抵抗および耐久性に関して、得られるタイヤの性能に大いに影響を及ぼす。ここで、カーボンブラックは、ゴム成分中の主な熱蓄積源である強力な充填剤-充填剤相互作用を介してマトリックス中に網状組織を形成する傾向がある。規制規定および環境負荷の増加のために、低転がり抵抗の省エネタイヤの需要が増加している。同時に、グリップ、トラクションおよび耐久性のような他の性能パラメータは、悪影響を受けてはならない。これは、しばしば競合する要件を表す。
【0003】
より低い値のヒステリシスによって反映される、ゴム材料の変形中に熱の形で失われるエネルギーを低減するための1つの選択肢は、カーボンブラック充填剤とゴムマトリックスとの相互作用を増加させることによって充填剤-充填剤相互作用を低減することにある。ヒステリシスはまた、カーボンブラックの積載量を減少させること、および/またはカーボンブラックの粒径を増加させることによっても減少させることができる。しかしながら、これは、例えば、電気的散逸性および/または耐摩耗性、耐破壊性または耐欠損性などの機械的特性を同時に劣化させ得る。
【0004】
あるいは、充填剤-ゴム相互作用を強化するために、ゴム材料および/またはカーボンブラック充填剤を化学的に改質する開発がなされている。
【0005】
例えば、米国特許第5,248,722号は、酸官能性酸化カーボンブラックと組み合わせて末端官能化ポリマーを利用することによって、タイヤトレッド用途における転がり抵抗が低減されたエラストマー組成物を記載している。しかしながら、末端官能化ポリマーは、容易には入手できず、少なくとも1つのジエンモノマーおよび任意に1つ以上のビニル置換芳香族モノマーの重合によって調製されたポリマーと、スズまたは窒素含有の化合物とを反応させることによって、専用の工程で調製する必要がある。
【0006】
国際公開第2011/028337号によれば、鎖に沿ってカルボン酸またはヒドロキシル基などの酸素含有基で官能化された官能化SBRポリマーと組み合わせて表面処理カーボンブラックを使用することにより、カーボンブラック-エラストマー相互作用を増強し、従来のカーボンブラック含有化合物の使用と比較して、ヒステリシスの減少および湿潤トラクションにおける利益が得られる。カーボンブラックの表面処理は、カーボンブラックの酸化と、それに続くアミンのような塩基での処理を含むことができる。表面処理されたカーボンブラックは、依然としてpH<7を示す酸性である。
【0007】
酸官能性酸化カーボンブラックの使用は、ポリマー組成物の一定の物理化学的特性を改善しながら、非酸化カーボンブラックと比較して硬化を著しく阻害し、遅くするため、適切な機械的性質を達成するために実質的により長い硬化時間を必要とするか、または妥当な硬化時間および適切な機械的性質を達成するために比較的多量の硬化促進剤を使用するかのいずれかを必要とすることが見出された。どちらの選択肢もコストを増加させる。さらに、多くの硬化促進剤には環境的および/または毒性的な懸念がある。例えば、硬化性ゴム組成物において硬化促進剤として一般に使用されるN,N-ジフェニルグアニジン(DPG)は、現在、欧州REACH規制に従って、生殖に対して毒性がある可能性があると分類されている。そのため、そのような物質の使用を最小限にするか、または可能であれば回避する必要がある。
【0008】
したがって、ポリマー組成物の硬化特性に悪影響を及ぼすことなく、または高価で潜在的に有害な補助物質の必要性を必要とすることなく、例えば低い転がり抵抗を有するタイヤの製造用に改善されたヒステリシスを示すゴム組成物などのポリマー組成物の関連特性を改善するカーボンブラック系添加剤を提供することが望ましい。カーボンブラック系添加剤はさらに、処理および取り扱いに便利な形態で提供されるべきである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を軽減または回避しながら、ゴム化合物などのポリマー組成物に上述の特性を付与することができる、カーボンブラック系材料を提供することである。カーボンブラック系材料の提供は、容易に入手可能な要素および処理技術を利用して、効率的かつ経済的な方法で達成可能であるべきである。本発明は特に、従来の酸化カーボンブラック添加剤に見られる硬化特性の低下または潜在的に有害な硬化促進剤の必要性なしに、タイヤの製造に適した改善されたヒステリシスをもたらす加硫性ゴム組成物を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0010】
そして現在、驚くべきことに、上記の目的は、添付の独立請求項1に明記されているような7超のpHを有する酸化カーボンブラックを含む固体カーボンブラック材料によって達成できることが見出された。本発明の固体カーボンブラック材料の特定のまたは好ましい変形例は、従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明の固体カーボンブラック材料は、下記のことを含む方法によって得ることができる:
(i) 酸化カーボンブラックを提供すること、
(ii) 酸化カーボンブラックを塩基で、好ましくはアルカリ金属水酸化物水溶液で処理すること、
(iii) 任意に、酸化カーボンブラックを湿式ビーズ化すること。
【0012】
本発明はまた、ポリマー成分および本発明による固体カーボンブラック材料を含む組成物、ならびにそのような組成物から調製された物品に関する。組成物は特に、加硫性ゴム組成物であり得る。
【0013】
本発明による固体カーボンブラック材料は、一般的な処理技術を用いて、低コストで効率的な方法で、市販の成分から得ることができる。例えば分散液などの液体系とは異なり、担体媒体を潜在的に撹乱または希釈することを伴わずに、処理および取り扱うことが好都合である。本発明による固体カーボンブラック材料は、ポリマー組成物に好ましい物理的特性を付与し、特にゴム組成物に著しく低減されたヒステリシスをもたらし、硬化特性に影響を及ぼすことなく、特に省エネタイヤの製造に興味深いものにすることが見出された。実際に、本発明による固体カーボンブラック材料を含む硬化性ポリマー組成物は、追加の硬化促進剤を必要とせずに、非酸化カーボンブラックを含む対応する組成物と同程度に迅速に硬化できることが見出された。したがって、その固体カーボンブラック材料は、DPGなどの潜在的に有害な硬化促進剤の使用を最小限に抑えるか、または回避することを可能にする。
【0014】
本発明のこれらおよび他の任意の特徴および利点は、以下の説明においてより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、時間に対する測定トルクのプロットにより硬化を示し、非酸化カーボンブラック(実施例1)および従来の酸性酸化カーボンブラック(実施例2)を有する対応するゴム組成物と、本発明による固体カーボンブラック材料(実施例3)を含有するゴム組成物とを対比したものである(それぞれ異なる濃度の硬化促進剤を有する)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「含む」は、無制限(open-ended)であり、追加の記載されていないまたは列挙されていない要素、材料、成分または方法ステップの存在を排除しないものと理解される。用語「包含する」、「含有する」および同様の用語は、「含む」と同義であると理解される。本明細書中で使用される場合、用語「からなる」は、任意の特定されていない要素、成分または方法ステップの存在を除外するものと理解される。
【0017】
本明細書で使用されるように、「a」、「an」および「the」の単数形は、文脈が明らかにそわないことを示さない限り、複数の指示対象を包含する。
【0018】
特に断りのない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータおよび範囲は概算値である。本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは概算値であるが、具体的な実施例で示された数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの測定における標準偏差から必然的に生じる誤差を含む。
【0019】
また、本明細書に列挙される任意の数値範囲は、その中に属するすべてのサブ範囲を包含することが意図されていることを理解されたい。例えば、「1~10」の範囲は、列挙された最小値1と列挙された最大値10との間およびそれらを包含する任意のすべてのサブ範囲、すなわち、1以上の最小値で始まり10以下の最大値で終わるすべてのサブ範囲、例えば、1~6.3または5.5~10または2.7~6.1の間のすべてのサブ範囲を包含することが意図される。
【0020】
上述のように、本発明は、7超のpHを有する酸化カーボンブラックを含む固体カーボンブラック材料に関する。
【0021】
本明細書で使用するとき、「カーボンブラック材料」は、1種以上のカーボンブラックをベースとする材料を指す。したがって、カーボンブラック材料は、通常、材料の全固形分重量に基づいて、少なくとも50重量%、例えば少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、典型的には少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、または少なくとも99.9重量%の1種以上のカーボンブラックを含む。したがって、カーボンブラック材料は、実質的にカーボンブラックからなることができる。「実質的に~からなる」という語は、本明細書で使用される場合、材料が、記載されたもの以外の物質を含有するとしても、それらは、一般に材料の特性に有意に影響を及ぼさないほど少ない量で、意図的に添加されない不純物として存在するだけであることを意味する。例えば、材料中のカーボンブラック以外のこのような非列挙物質の量は、0.1重量%以下であり得る。カーボンブラック材料は例えば、カーボンブラックからなってもよく、すなわち、100重量%の1種以上のカーボンブラックからなってもよい。
【0022】
本明細書で言及される「カーボンブラック」は、1種以上の炭化水素前駆体から制御された部分熱分解によって生成された炭素を、その総重量に基づいて、実質的に、例えば80重量%超、90重量%超、または95重量%超まで含む材料を意味する。ファーネスプロセス、ガスブラックプロセス、アセチレンブラックプロセス、サーマルブラックプロセス、またはランプブラックプロセスのようなカーボンブラックを製造するための種々の工業的方法が知られている。カーボンブラックの製造はそれ自体当技術分野で周知であり、例えばJ.-B.ドネット他、「カーボンブラック:サイエンス・アンド・テクノロジー」、第2版に概説されているため、ここではこれ以上詳細には説明しない。本発明の実施において使用されるカーボンブラック材料は、単一のタイプのカーボンブラック、または2種以上の異なるカーボンブラックグレードの混合物を含むことができる。
【0023】
上述のように、本発明による固体カーボンブラック材料は、酸化カーボンブラックを含む。用語「酸化カーボンブラック」は、本明細書中で使用される場合、酸化処理に供され、したがって酸素含有官能基を含むカーボンブラックを指す。したがって、酸化カーボンブラックは、非酸化カーボンブラックとは異なり、一般に、顕著な酸素含有量を有し、かつ、限定されないが、キノン基、カルボキシル基、フェノール基、ラクトール基、ラクトン基、無水物基およびケトン基を例示することができる酸素含有官能基を有する。
【0024】
酸化カーボンブラックは例えば、米国特許第6,120,594号明細書および米国特許第6,471,933号明細書に開示されているような、当技術分野で公知の様々な方法によって製造することができる。適切な方法は、例えば、過酸化水素のような過酸化物、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウムのような過硫酸塩、次亜塩素酸ナトリウムのような次亜ハロゲン酸塩、オゾンガスもしくは酸素ガス、過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、硝酸アンモニウムセリウムのような遷移金属含有酸化剤、もしくは硝酸および過塩素酸のような酸化酸ならびにそれらの混合物もしくは組合せの酸化剤を用いたカーボンブラック材料の酸化を包含する。従来の酸化カーボンブラックは、酸官能性を有し、典型的には2~6の範囲のpHを示す。
【0025】
本発明の固体カーボンブラック材料に使用される酸化カーボンブラックは反対に、酸官能性ではなく塩基官能性を有する。言い換えると、本発明による酸化カーボンブラックは、7超のpHを有する。例えば、本発明による酸化カーボンブラックは、7.1以上、例えば7.2以上、7.5以上、7.8以上、8.0以上、8.5以上、9.0以上、9.5以上、または10.0以上のpHを有することができる。例えば、本発明による酸化カーボンブラックは、12.0以下、例えば11.5以下、11.0以下、10.5以下、10.0以下、9.5以下、9.0以下、または8.5以下のpHを有することができる。この酸化カーボンブラックは、上記下限値および上限値のいずれかの間の範囲のpHを有することができる。例えば、本発明による酸化カーボンブラックは、7.1~12.0の範囲、例えば7.2~10.5の範囲、7.5~9.5の範囲、または8.0~9.0の範囲のpHを有することができる。酸化カーボンブラックのpHは、ASTM D1512-15b試験方法B-ソニックスラリーに従って測定される。
【0026】
本発明の実施において使用される酸化カーボンブラックの酸化の程度は変化し得る。例えば、酸化カーボンブラックは、酸化カーボンブラックの総重量に基づいて、0.5重量%以上、例えば1.0重量%以上、2.0重量%以上、3.0重量%以上、4.0重量%以上、5.0重量%以上、7.5重量%以上、または10.0重量%以上の酸素含有量を有することができる。典型的には、酸化カーボンブラックの酸素含有量は、酸化カーボンブラック材料の総重量に基づいて20重量%を超えない。例えば、酸化カーボンブラックは、酸化カーボンブラックの総重量に基づいて、20重量%以下、例えば15重量%以下、10重量%以下、8.0重量%以下、7.0重量%以下、6.0重量%以下、5.0重量%以下、または4.0重量%以下の酸素含有量を有することができる。本発明に係る酸化カーボンブラックは、上記下限値および上限値のいずれかの間の範囲の酸素含有量を有することができる。例えば、酸化カーボンブラックは、酸化カーボンブラック材料の総重量に基づいて、0.5重量%~20.0重量%、1.0重量%~15.0重量%、2.0重量%~10.0重量%、または2.0重量%~5.0重量%の範囲の酸素含有量を有することができる。酸素含有量は、実施例により詳細に記載されるように元素分析によって測定することができる。
【0027】
本発明による酸化カーボンブラックは、揮発性物質の含有量によってさらに特徴付けることができる。本明細書に記載される揮発分はそれぞれ、実施例に詳細に記載されるように、950℃の温度での熱重量測定によって測定される。例えば、酸化カーボンブラックは、酸化カーボンブラックの総重量に基づいて、1.0重量%以上、例えば1.5重量%以上、2.0重量%以上、2.5重量%以上、3.0重量%以上、3.5重量%以上、4.0重量%以上、5.0重量%以上、7.5重量%以上、または10.0重量%以上の揮発分を有することができる。例えば、酸化カーボンブラックは、酸化カーボンブラックの総重量に基づいて、20.0重量%以下、例えば15.0重量%以下、10.0重量%以下、8.0重量%以下、7.0重量%以下、6.0重量%以下、または5.0重量%以下の揮発分を有することができる。本発明に係る酸化カーボンブラックは、上記下限値および上限値のいずれかの間の範囲の揮発分を有することができる。例えば、酸化カーボンブラックは、酸化カーボンブラック材料の総重量に基づいて、1.0重量%~20重量%、1.0重量%~15.0重量%、2.0重量%~10.0重量%、または3.0重量%~5.0重量%の範囲の揮発分を有することができる。
【0028】
本発明で使用される酸化カーボンブラックは、BET表面積、統計的厚さ表面積(STSA)、吸油量(OAN)、圧縮試料の吸油量(COAN)もしくはヨウ素吸着量(より具体的には以下に記載される)またはそれらの任意の組合せによってさらに特徴付けることができる。
【0029】
本発明による酸化カーボンブラックは例えば、50m2/g以上、例えば60m2/g以上、70m2/g以上、75m2/g以上、80m2/g以上、85m2/g以上、90m2/g以上、または95m2/g以上のBET表面積を有することができる。酸化カーボンブラックは例えば、500m2/g以下、例えば400m2/g以下、300m2/g以下、250m2/g以下、200m2/g以下、150m2/g以下、130m2/g以下、120m2/g以下、110m2/g以下、または100m2/g以下のBET表面積を有することができる。本発明に係る酸化カーボンブラックは、上記下限値および上限値のいずれかの間の範囲のBET表面積を有することができる。例えば、本発明の酸化カーボンブラックのBET表面積は、50~500m2/g、例えば70~300m2/g、典型的には75~250m2/g、例えば80~200m2/g、または90~150m2/gの範囲であることができる。BET表面積は、ASTM D6556-17に従って測定することができる。
【0030】
本発明によって使用される酸化カーボンブラックは、30m2/g以上、例えば40m2/g以上、50m2/g以上、60m2/g以上、70m2/g以上、75m2/g以上、80m2/g以上、または85m2/g以上の統計的厚さ表面積(STSA)を有することができる。酸化カーボンブラックは例えば、500m2/g以下、例えば400m2/g以下、300m2/g以下、250m2/g以下、200m2/g以下、150m2/g以下、130m2/g以下、120m2/g以下、110m2/g以下、または100m2/g以下のSTSAを有することができる。本発明に係る酸化カーボンブラックは、上記下限値および上限値のいずれかの間の範囲のSTSAを有することができる。例えば、本発明の酸化カーボンブラックは、30~500m2/g、例えば50~400m2/g、60~300m2/g、70~200m2/g、80~150m2/g、または85~120m2/gの範囲のSTSAを有することができる。統計的厚さ表面積(STSA)は、ASTM D6556-17に従って測定することができる。
【0031】
本発明で使用される酸化カーボンブラックは、50mL/100g以上、例えば60mL/100g以上、70mL/100g以上、80mL/100g以上、90mL/100g以上、または100mL/100g以上の、ASTM D2414-18に従って測定された吸油量(OAN)を有することができる。例えば酸化カーボンブラックは、150mL/100g以下、例えば140mL/100g以下、130mL/100g以下、120mL/100g以下、または110mL/100g以下の、ASTM D2414-18に従って測定された吸油量(OAN)を有することができる。本発明に係る酸化カーボンブラックは、上記下限値および上限値のいずれかの間の範囲の、ASTM D2414-18に従って測定された吸油量(OAN)を有することができる。例えば、本発明の酸化カーボンブラックは、50~150mL/100g、例えば60~140mL/100g、70~130mL/100g、80~120mL/100g、または90~110mL/100gの範囲の、ASTM D2414-18に従って測定された吸油量(OAN)を有することができる。
【0032】
本発明による酸化カーボンブラックは、50mL/100g以上、例えば60mL/100g以上、70mL/100g以上、80mL/100g以上、90mL/100g以上、または95mL/100g以上の圧縮吸油量(COAN)をさらに有することができる。本発明による酸化カーボンブラックは、150mL/100g以下、例えば140mL/100g以下、130mL/100g以下、120mL/100g以下、110mL/100g以下、または100mL/100g以下の圧縮吸油量(COAN)を有することができる。本発明に係る酸化カーボンブラックは、上記下限値および上限値のいずれかの間の範囲の圧縮吸油量(COAN)を有することができる。例えば、本発明の酸化カーボンブラックは、50~150mL/100g、例えば60~140mL/100g、70~130mL/100g、80~120mL/100g、または90~100mL/100gの範囲の圧縮吸油量(COAN)を有することができる。COANは、ASTM D3493-18に従って測定することができる。
【0033】
本発明に係る酸化カーボンブラックは、20mg/g以上、例えば30mg/g以上、40mg/g以上、50mg/g以上、55mg/g以上、または60mg/g以上の、ASTM D1510-19に従って測定されたヨウ素吸着量をさらに有することができる。本発明に係る酸化カーボンブラックは例えば、300mg/g以下、例えば250mg/g以下、200mg/g以下、150mg/g以下、120mg/g以下、100mg/g以下、90mg/g以下、80mg/g以下、または70mg/g以下の、ASTM D1510-19に従って測定されたヨウ素吸着量を有することができる。本発明に係る酸化カーボンブラックは、上記下限値および上限値のいずれかの間の範囲のASTM D1510-19に従って測定されたヨウ素吸着量を有することができる。例えば、本発明の酸化カーボンブラックは、20~300mg/g、例えば30~200mg/g、40~120mg/g、または50~80mg/gの範囲の、ASTM D1510-19に従って測定されたヨウ素吸着量を有することができる。
【0034】
本発明の方法による酸化カーボンブラックは、初期酸化カーボンブラックを塩基で処理することによって得ることができる。
【0035】
初期酸化カーボンブラックは、酸化カーボンブラックを調製するための当技術分野で公知の方法、例えば、上に示した方法のいずれかによって製造することができる。前駆体カーボンブラックは例えば、酸化剤を用いて酸化することができ、酸化剤としては、例えば、過酸化水素のような過酸化物、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウムのような過硫酸塩、次亜塩素酸ナトリウムのような次亜ハロゲン酸塩、オゾンガスもしくは酸素ガス、過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、硝酸アンモニウムセリウムのような遷移金属含有酸化剤、もしくは硝酸および過塩素酸のような酸化酸ならびにそれらの混合物もしくは組合せが挙げられる。例えば、酸化カーボンブラックは、オゾン酸化カーボンブラックであり得る。酸化に供される前駆体カーボンブラックは、これに限定されるものではないが、ファーネスブラック、ランプブラック、ガスブラックまたはこれらの組み合わせなどの任意の種類のカーボンブラックであり得る。このようなカーボンブラックは、オリオン・エンジニアド・カーボンズ社などの様々な製造業者から市販されている。したがって、酸化カーボンブラックは、それに限定されないが、酸化ファーネスブラック、酸化ランプブラック、酸化ガスブラック、またはそれらの組み合わせを含むことができる。好ましくは、酸化カーボンブラックは酸化ファーネスブラックを含む。
【0036】
このようにして提供された初期酸化カーボンブラックは、一般に酸性であり、典型的には2~6の範囲のpHを示す。例えば、塩基で処理されるべき初期酸化カーボンブラックは、カーボンブラック1g当たり、20μmol以上のカルボン酸基、例えば50μmol以上、100μmol以上、150μmol以上、200μmol以上、または300μmol以上のカルボン酸基を含むことができる。例えば、塩基で処理されるべき初期酸化カーボンブラックは、カーボンブラック1g当たり、500μmol以下のカルボン酸基、例えば400μmol以下、350μmol以下、300μmol以下、250μmol以下、または200μmol以下のカルボン酸基を含むことができる。塩基で処理されるべき初期酸化カーボンブラックは、上記下限値および上限値のいずれかの間の範囲のカルボン酸基を含むことができる。例えば、本発明の酸化カーボンブラックは、カーボンブラック1g当たり、50~500μmolのカルボン酸基を含むことができ、または100~300μmolのカルボン酸基を含むことができる。カルボン酸基の量は、J.アッカーマン、A.クルーガー、「カーボンナノ材料上の酸素含有表面基の感度および再現性の高い定量化(Highly sensitive and reproducible quantification of oxygenated surface group on carbon nanomaterials)」、Carbon 163(2020)、56-62に記載された滴定法により、高精度に測定することができる。
【0037】
次いで、酸官能性酸化カーボンブラックを塩基で処理して、7超のpHを有する本発明による酸化カーボンブラックを形成する。この処理には、原則として任意の種類の既知の塩基を使用することができる。適切な塩基としては例えば、これらに限定されないが、典型的には水溶液として使用される、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、ならびに他の塩基性金属塩、アンモニアおよびアミンが挙げられる。本発明に従って好ましく使用され得る塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウムの水溶液が挙げられる。単一の塩基または2種以上の異なる塩基の混合物を使用することができる。塩基は、典型的には酸化カーボンブラック中の酸性基に対して、約等モル量または中程度の過剰量で使用される。例えば、使用される塩基の量は、処理されるべき初期酸化カーボンブラック中の塩基対酸性基の当量の比が0.8:1以上、例えば0.9:1以上、1:1以上、1.1:1以上、1.2:1以上、または1.5:1以上であるようなものであり得る。使用される塩基の量は、処理されるべき最初の酸化カーボンブラック中の塩基対酸性基の当量の比が2:1以下、例えば1.8:1以下、または1.5:1以下、または1.3:1以下、または1.2:1以下、または1.1:1以下であるようなものであり得る。この当量比は、上記下限値および上限値のいずれか1つの間の範囲内であり得る。例えば、処理されるべき初期酸化カーボンブラック中の塩基対酸性基の当量の比は、0.8:1~2:1の範囲、例えば0.9:1~1.5:1、または0.9:1~1.2:1の範囲、または1:1~1.1:1の範囲であり得る。塩基による処理は、塩基と酸化カーボンブラックとを完全に混合することを含むことができる。混合は、通常の混合装置を用いて、典型的には最大10分の期間にわたって行うことができる。しかしながら、噴霧による酸化カーボンブラックへの塩基の適用などの他の形態の処理も同様に使用することができる。
【0038】
塩基での処理は、初期酸化カーボンブラックの酸官能基の少なくとも一部を、それらの中和形態に変換することができる。したがって、本発明による酸化カーボンブラックは、塩の基を含むことができる。例えば、本発明による酸化カーボンブラックは、アルカリ金属カルボキシレートまたはアンモニウムカルボキシレートなどのカルボキシレート基を含むことができる。本発明による酸化カーボンブラックは例えば、カーボンブラック1g当たり、20μmol以上、50μmol以上、100μmol以上、150μmol以上、200μmol以上、または300μmol以上の量のカルボキシレート基を含むことができる。本発明による酸化カーボンブラックは例えば、カーボンブラック1g当たり、500μmol以下、例えば400μmol以下、350μmol以下、300μmol以下、250μmol以下、または200μmol以下の量のカルボキシレート基を含むことができる。本発明の酸化カーボンブラックは、上記下限値および上限値のいずれかの間の量のカルボキシレート基を含むことができる。例えば、本発明の酸化カーボンブラックは、カーボンブラック1g当たり、50~500μmolのカルボキシレート基を含むことができ、または100~300μmolのカルボキシレート基を含むことができる。カルボキシレート基の量は、塩基処理前に測定されたカルボン酸基の量と、塩基処理後に測定されたカルボン酸基の量との差として決定することができる。
【0039】
初期酸化カーボンブラックの酸官能基は、塩基処理によってほとんどまたは完全に中和されていてもよい。例えば、酸官能基は、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、または100%の程度まで中和され得る。7超のpHを有する酸化カーボンブラックは例えば、20μmol/g未満、10μmol/g未満、または5μmol/g未満のカルボン酸基を含むことができ、例えばカルボン酸基を実質的に含まなくてもよい。「カルボン酸基を実質的に含まない」とは、カルボン酸基の量が、測定可能でないか、または酸化カーボンブラックの特性に測定可能な影響を及ぼさないことを意味する。
【0040】
本発明による酸化カーボンブラックは、その凝集体粒度分布(ASD)によってさらに特徴付けることができる。凝集体粒度分布は、米国特許出願公開第2019/0062522A1号明細書に記載されているように、ブルックヘブンBI-DCPディスク遠心機を用いた光散乱によって測定することができる。本発明による酸化カーボンブラックは例えば、少なくとも10nm、例えば少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも40nm、少なくとも50nm、少なくとも60nm、または少なくとも70nmの、ASDにおいて最頻の直径であるモード直径Dmode(「モード」とも呼ばれる)を有することができる。例えばそれは、500nm以下、例えば300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、または100nm以下のモードを有することができる。本発明に係る酸化カーボンブラックは、上記下限値および上限値のいずれかの間の範囲のモードを有することができる。例えばそれは、10nm~500nm、30nm~200nm、または50nm~100nmの範囲のモードを有することができる。粒度分布の幅は、ΔD50とも呼ばれるその半値全幅(FWHM)によって表すことができる。DIN ISO15825によれば、ΔD50は、モードの半最大点で測定された分布の幅を表す。本発明による酸化カーボンブラックの凝集体粒度分布は例えば、少なくとも10nm、例えば少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも40nm、少なくとも50nm、または少なくとも60nmのΔD50を有することができる。例えば、それは、300nm以下、例えば250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、または80nm以下のΔD50を有することができる。本発明に係る酸化カーボンブラックは、上記下限値および上限値のいずれかの間の範囲のΔD50を有することができる。例えば、それは、10nm~300nm、例えば30nm~150nm、または50nm~80nmの範囲のΔD50を有することができる。本発明による酸化カーボンブラックの凝集体粒度分布は、大部分において、酸化カーボンブラックの調製源である選択された前駆体カーボンブラックの1つに対応し、それに応じて所望または必要に応じて調整することができる。
【0041】
本発明による酸化カーボンブラックを含むカーボンブラック材料は固体形態である。例えば、固体カーボンブラック材料は、粉末の形態であり得る。あるいは、固体カーボンブラック材料は、ビーズまたはペレットの形態であってもよい。したがって、当業者に理解されるように、固体カーボンブラック材料は、液体分散体などの他の(非固体)形態で提供されるカーボンブラック材料とは区別される。ビーズまたはペレットは、それぞれの粉末状出発材料を湿式または乾式ペレット化することによって形成することができる。このような場合、固体カーボンブラック材料を形成することは一般に、酸化カーボンブラックをペレット化することをさらに含み、これは上述の塩基処理と同時にまたはその後に行うことができる。本発明によれば、好ましくは、湿式ペレット化を使用することができ、ここで、塩基は、湿潤ビーズ媒体として使用することができ、湿潤ビーズ媒体は任意に、補助成分として有機バインダーおよび/または1種以上のペレット化剤を含有することができる。粉末状酸化カーボンブラックのペレット化は、例えばEP2913368A1に類似のワンステップ湿式ペレット化プロセスにおいて、リング層ミキサー造粒機のような撹拌造粒システムなどの一般的な共通ペレット化装置を用いて実施することができる。得られたペレットは、ペレット化ステップ後に、例えば回転ドラム乾燥機中でさらに乾燥させることができる。乾燥は、100℃~250℃の範囲の温度、例えば110℃~180℃または120℃~160℃の範囲の温度で行うことができる。乾燥時間は、所望の乾燥度、例えば1%未満の残留水分含量を達成するように適宜選択することができる。ペレットの特性は、ペレット化プロセスのパラメータを調整することによって制御することができる。例えば、湿潤ビーズ媒体対粉末の重量比が一定であれば、造粒機の増加した回転速度は一般により小さいペレットをもたらすが、湿潤ビーズ媒体対粉末の重量比の増加はより大きいペレットの形成に有利に働く。本発明による調製されたままのペレット化カーボンブラック材料は、ASTM D1511-10に従って測定することができるペレットサイズ分布によって特徴付けることができる。本発明によるペレット化されたカーボンブラック材料において特に、望ましくない微粉の割合は低い場合がある。したがって、それは、ペレット化されたカーボンブラック材料の総重量に基づいて、1重量%未満、0.5重量%未満、または0.3重量%未満の、0.125mm未満のサイズを有するペレットを含み得る。0.5mm未満のペレットサイズを有するペレットの割合は、ペレット化されたカーボンブラック材料の総重量に基づいて、15重量%以下、例えば10重量%以下、5重量%以下、または2重量%以下であり得る。処理特性の点で望ましいと考えられる1.0mm~2.0mmの中間範囲のサイズを有するペレットの量は、ペレット化されたカーボンブラック材料の総重量に基づいて、30重量%以上、例えば40重量%以上、または50重量%以上であり得る。調製されたペレット化されたカーボンブラック材料は、必要に応じて、ふるい分級のような標準的な方法を用いてさらにサイズ分別されて、適切なペレットサイズの材料を得ることができる。
【0042】
固体カーボンブラック材料は、任意の量で7超のpHを有する酸化カーボンブラックを含むことができる。固体カーボンブラック材料は、固体カーボンブラック材料の総重量に基づいて、7超のpHを有する酸化カーボンブラックを、例えば、少なくとも10重量%、少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%の量で含むことができる。固体カーボンブラック材料は、7超のpHを有する酸化カーボンブラックを、100重量%以下、例えば99.5重量%以下、99.0重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、または50重量%以下の量で含むことができる。固体カーボンブラック材料は、7超のpHを有する酸化カーボンブラックを、上記下限値および上限値のいずれかの間の量、例えば10~100重量%、50重量%~99重量%の範囲の量で含むことができる。好ましくは、固体カーボンブラック材料は、7超のpHを有する酸化カーボンブラックからなる。
【0043】
固体カーボンブラック材料は、必要に応じて、上述の7超のpHを有する酸化カーボンブラックに加えて、1種以上の他のカーボンブラックを含んでもよい。そのような任意の他のカーボンブラックは特に限定されず、任意の従来の非酸化または酸化カーボンブラック、例えば、従来の酸官能性酸化カーボンブラックおよび/またはASTM D1765に従った分類のN100~N900シリーズから選択されたASTMグレードカーボンブラックを含むことができる。そのような任意の他のカーボンブラックが使用される場合、固体カーボンブラック材料は、固体カーボンブラック材料の総重量に基づいて、典型的には50重量%未満、例えば30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下、または0.5重量%以下の量で含む。好ましくは、固体カーボンブラック材料は、7超のpHを有する酸化カーボンブラック以外のカーボンブラックを含有しない。
【0044】
固体カーボンブラック材料は、カーボンブラック以外の成分を任意に含んでもよい。したがって、固体カーボンブラック材料は、これを配合する技術分野において従来使用され得る1種以上の補助物質または処理助剤、例えば流動添加剤、レオロジー調整剤、ペレタイザーまたは充填剤を含んでもよい。そのような任意の補助物質は、使用される場合、それぞれの意図される官能性を達成するために、当技術分野で一般に使用される有効量で使用される。典型的には、本発明による固体カーボンブラック材料は、カーボンブラック以外の任意成分が使用される場合、固体カーボンブラック材料の総重量に基づいて、合計で20重量%以下、例えば10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下、または0.5重量%以下の量で含有することができる。好ましくは、固体カーボンブラック材料は、カーボンブラック以外のそのような任意成分を含有しない。
【0045】
上述のように、本発明は、本発明の固体カーボンブラック材料およびポリマー成分を含む組成物にも関する。言い換えれば、本発明は、ポリマー組成物における固体カーボンブラック材料の使用にも関する。
【0046】
用語「組成物」は、本明細書中で使用される場合、複数の構成化学種または成分から構成される材料を指す。用語「ポリマー組成物」は、少なくとも1種のポリマー成分を含む組成物を指す。したがって、「ポリマー組成物」は、ポリマー成分として、単一のタイプのポリマー材料、または2種以上のタイプの異なるポリマー材料を含むことができる。「ポリマー材料」は、本質的にポリマーからなる材料として理解される。用語「ポリマー」は本明細書において、当技術分野におけるその一般的な意味で使用され、高分子化合物、すなわち、比較的高い分子量(例えば、500da以上)を有する化合物を指し、その構造は実際にまたは概念的に、比較的低い分子量の化学種に由来する複数の繰り返し単位(「マー(mers)」とも呼ばれる)を含む。
【0047】
本発明による組成物は特に、硬化性組成物、例えば加硫性ゴム組成物であり得る。用語「加硫性ゴム組成物」は、加硫物の形成下で加硫によって硬化することができる、ゴム配合の技術分野で従来使用されている種々のさらなる成分を任意に含むゴム成分の組成物を指す。用語「硬化性」および「加硫可能である」は特に明記しない限り、本明細書全体を通して互換的に使用され、架橋剤または加硫剤によってポリマー鎖を互いに連結する化学反応を指す。硬化反応は、光、湿気、熱および/または架橋剤の付加など、当技術分野で公知の任意の手段によって誘導することができる。
【0048】
しかしながら、本発明による組成物のポリマー成分に使用することができるポリマー材料は、限定されず、任意の種類の有機または無機ポリマー材料を含むことができる。本発明に従って使用することができるポリマー材料としては、熱可塑性ポリマー、デュロプラスチックまたは熱硬化性ポリマー、ならびにそれらの混合物または組み合わせが挙げられる。例えば、本発明の組成物に使用することができるポリマー材料としては、エポキシ、アクリル、ウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルスルホンなどのポリエーテル、および低密度、中密度および高密度ポリエチレンなどのポリオレフィン、エチレン-プロピレンコポリマー(ランダム配置またはブロック配置のいずれでもよい)、ポリプロピレン-マレイン酸無水物、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、エチレン酢酸ビニル、エチレン-アクリル酸コポリマー、塩化ビニル-ポリプロピレンコポリマー、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、および架橋ポリエチレン(化学的、熱的、UVまたはEビーム(EB)架橋)、およびポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリールスルホンおよびポリプロピレンオキシド変性ポリエーテルスルホン、またはこれらのいずれかの混合物または組合せが挙げられる。
【0049】
本発明の実施のためのポリマー材料として特に有用なものは、エラストマーおよびゴム材料である。したがって、本発明による組成物のポリマー成分は、1種または2種以上のゴムまたはエラストマーを含むことができる。本発明に従って使用することができるゴムおよびエラストマーとしては、オレフィン系不飽和を含有するもの、すなわちジエン系ゴムまたはエラストマー、ならびに非ジエン系ゴム材料またはエラストマーが挙げられる。用語「ゴム」、「ゴム材料」および「エラストマー」は特に明記しない限り、本明細書全体を通して互換的に使用され得る。用語「ジエン系ゴム」は、天然ゴムおよび合成ゴムの両方、またはそれらの混合物を含むことが意図される。天然ゴムは、その未加工形態で、およびゴム処理の技術分野で従来から知られている様々な処理形態で使用することができる。これに限定されるものではないが、合成ジエン系ゴムは、単独でまたは他のモノマーと共にゴムを構成する少なくとも1つのジエン系モノマーを含有する任意のゴムであってよい。本発明の実施において好適な例示的なジエン系ゴム材料としては、天然ゴム、エマルジョン-スチレン-ブタジエンゴム、溶液-スチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴムおよびハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施において好適な例示的な非ジエン系ゴム材料としては、エチレンプロピレンゴム(EPM)、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリレートゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、エチレン-アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フルオロカーボンゴム、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適なゴムには、官能化ゴム、およびケイ素またはスズに結合したゴムも包含される。例えば、ゴムは、アミン、アルコキシ、シリル、チオール、チオエステル、チオエーテル、スルファニル、メルカプト、スルフィド、またはそれらの組み合わせのような官能基で官能化され得る。1つ以上の官能基は一次、二次または三次であり得、そして1つまたは両方の鎖末端(例えば、α、ω官能化)に位置することができ、ポリマー主鎖から吊り下がることができ、および/またはポリマー主鎖の鎖内に提供されることができる。本発明によるゴムは、部分的に架橋することもできる。したがって、本発明の組成物に使用する前に、ゴム材料のポリマー鎖の一部は、カップリング剤によって、またはカップリング剤なしで架橋され得る。ポリマー成分は、単一のゴムもしくはエラストマー、または1種を超えるゴムもしくはエラストマーの混合物もしくは組合せを、任意に上述のものなどの1種以上の他のポリマー材料と組み合わせて、含むことができる。本発明の実施に使用できる限定的意味のない特定ゴム材料としては、例えば、ウェーバ&シェアー社から市販されているSMR10ゴム、デュポン社から市販されているバマック(Vamac)(登録商標)ウルトラHT、ユニマテック社から市販されているノックスタイト(Noxtite)RE461(登録商標)、ヴェルサリス社から市販されているユーロプレン(Europrene)(登録商標)1500およびユーロプレンSOL R C2525、またはアランセオ社から市販されているケルタン(Keltan)(登録商標)4455ゴムが挙げられる。
【0050】
ポリマー成分は、典型的には本発明による組成物の主成分を表す。それは、例えば、組成物の全固形分重量に基づいて、30重量%以上を含んでもよい。例えば、ポリマー成分は、組成物の全固形分重量に基づいて、組成物の40重量%以上、例えば50重量%以上、または60重量%以上を構成することができる。ポリマー成分は例えば、組成物の全固形分重量に基づいて、組成物の99重量%以下、例えば95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、または70重量%以下を構成することができる。本発明による組成物は、上記下限値および上限値のいずれかの間の量でポリマー成分を含むことができる。例えば、ポリマー成分は、組成物の全固形分重量に基づいて、30重量%~90重量%、例えば50重量%~80重量%の範囲の量で含まれ得る。
【0051】
組成物は、ポリマー成分に加えて、上で詳細に記載された本発明による固体カーボンブラック材料をさらに特徴的な成分として含有する。本発明の組成物は例えば、固体カーボンブラック材料を、1phr以上、例えば2phr以上、5phr以上、10phr以上、20phr以上、30phr以上、40phr以上、50phr以上、または60phr以上の量で含むことができる。本発明の組成物は例えば、固体カーボンブラック材料を、150phr以下、例えば100phr以下、90phr以下、80phr以下、または70phr以下の量で含むことができる。本発明による組成物は、上記下限値および上限値のいずれかの間の量の固体カーボンブラック材料を含むことができる。例えば、固体カーボンブラック材料は、1~100phr、例えば10~100phr、または30~80phrの範囲の量で組成物中に含まれ得る。本明細書で使用するとき、用語「phr」は、ポリマー成分100重量部当たりの、列挙されたそれぞれの材料(ここでは固体カーボンブラック材料)の重量部を指す。
【0052】
本発明による組成物は任意に、本発明の固体カーボンブラック材料に加えて、1種以上のさらなる充填剤を含んでもよい。このような任意の充填剤材料としては例えば、これらに限定されるものではないが、従来のカーボンブラック材料、カーボンナノチューブ、カーボンファイバ、グラファイトおよび金属繊維、ならびにシリカ、有機シリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、粘土、ケイ酸カルシウム、硫化亜鉛、含水アルミナ、焼成マグネシアなどの金属化合物が挙げられる。そのような充填剤は、使用される場合、典型的には最大で30phr、例えば0.1~20phrまたは1~10phrの量で使用される。
【0053】
本発明による組成物はまた、少なくとも1種の加硫剤を含んでもよい。可能な加硫剤には、硫黄および硫黄供与体のような当技術分野で知られている任意の加硫剤が包含される。本発明の実施に適した硫黄供与体には、例えば、ジチオアルカン、ジカプロラクタムスルフィド、ポリスルフィドポリマー、硫黄オレフィン付加体、チウラム、および硫黄架橋に少なくとも2個の硫黄原子を有するスルホンアミドが包含される。好ましくは、元素状硫黄を使用することができる。加硫剤は、典型的には本発明による組成物において、0.5~10phr、例えば1~5phrの範囲の量で使用され得る。
【0054】
本発明による組成物は、製剤の技術分野で一般的に使用される1つ以上の他の添加剤をさらに含んでもよい。このような添加剤には、例えば、一次および二次加硫促進剤、活性化剤および予備加硫阻害剤などの硬化助剤、ならびに、油、ワックス、樹脂、可塑剤、軟化剤またはテオロジー改質剤、顔料、解膠剤、カップリング剤、界面活性剤、殺生物剤および抗分解剤(熱または光安定剤、抗酸化剤および抗オゾン剤など)などの処理添加剤が含まれる。当業者は、ポリマー組成物の所望の特性および/または用途に従って、そのような任意の添加剤およびそれらのそれぞれの量を選択するであろう。一次および二次加硫促進剤として有用なものは、例えば、グアニジン、ジカルバメート、ジチオカルバメート、チウラム、チオウレア、2-メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールスルホンアミド、アルデヒドアミン、アミン、ジスルフィド、チアゾール、キサンテート、およびスルフェンアミドである。具体例として、例えば、ライン・ケミー・アディティブス社からレノグラン(Rhenogran)TBBS-80の商品名で市販されているN-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドを挙げることができる。本発明の1つの利点として、本発明による加硫可能なポリマー組成物は、比較的少量の加硫促進剤を用いてまたはそれを用いずに、妥当な時間内に硬化させることができる。したがって、加硫促進剤は、使用される場合、3phr未満、2phr未満、またはさらに1phr未満、例えば0.05~3phrの範囲または0.5~2phrの範囲の量で使用され得る。これにより、環境的および/または毒性的な懸念の下でのDPGのような促進物質の使用を回避または最小限にすることができる。本発明による組成物は例えば、DPG、o-トリルビグアニジン(OTBG)または1,3-ジ-o-トリルグアニジン(DOTG)などのグアニジン型促進剤を実質的に含まなくてもよい。「グアニジン型促進剤を実質的に含まない」とは、本明細書において、グアニジン型促進剤が意図的に使用されないことを意味する。従って、それらは、存在する場合、組成物の全固形分重量に基づいて0.1重量%未満の量など、組成物の特性に有意に影響しない低量の不純物として本発明による組成物中に存在する。本発明による組成物は例えば、完全にグアニジン型促進剤フリー、つまりグアニジン型促進剤を含まなくてもよい。本発明による組成物において使用することができる好適な加硫活性化剤としては、例えば、酸化亜鉛などと、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸またはナフテン酸などの脂肪酸との組み合わせが挙げられる。使用される場合、そのような活性化剤は、典型的には1~10phr、例えば2~5phrの量で使用される。
【0055】
本発明による組成物は場合により、水および/または1種以上の有機溶媒を更に含んでもよい。例えば、水および/または有機溶媒は、ポリマー成分および固体カーボンブラック材料のための溶解または分散媒体としての役割を果たすことができる。本発明による組成物は例えば、水性分散液または有機分散液などの液体組成物であってもよい。本発明による組成物は例えば、インク配合物またはコーティングもしくは印刷組成物であってもよい。
【0056】
本発明の組成物は、典型的にはバルク材料として提供される。材料は、一般的なプラスチックまたはエラストマー処理技術によって処理することができる。本発明による組成物は例えば、本発明の固体カーボンブラック材料および任意成分(使用される場合)をポリマー成分と組み合わせ、それを混合して、例えば固体カーボンブラック材料および任意成分(使用される場合)をポリマー成分中に分散させることによって得ることができる。分散は、混合、撹拌、粉砕、混練、超音波、溶解機、シェーカーミキサー、ロータ撹拌分散アセンブリ、または高圧ホモジナイザー、またはそれらの組み合わせによるような、当技術分野で公知の任意の手段によって達成することができる。例えば、かみ合いロータ形状を有するラボミキサーを使用することができる。分散は、例えば、カーボンブラック材料がポリマー成分中に均質に分散し、ASTM D2663-88試験方法Bによる分類で95%以上、好ましくは97%以上、または99%以上の分散指数となるまで行うことができる。
【0057】
本発明による組成物の調製は例えば、多段階プロセスで行うことができる。最初に、固体カーボンブラック材料および任意の非硬化性添加剤を、使用する場合、ポリマー成分に同時にまたは連続的に添加することができる。ポリマー成分、固体カーボンブラック材料および添加剤は、使用される場合、次いで、典型的には40℃~160℃の範囲の温度で、10分未満の総混合時間、例えば2~8分の範囲で混合され得る。続いて、得られた混合物を、115℃未満の温度で、5分未満、典型的には3分未満、好ましくは約2.5分の間、1種以上の硬化添加剤とブレンドすることができる。
【0058】
この方法は、製品を押出成形しまたは室温に冷却し、それをさらなる処理のために貯蔵するなどのさらなるステップを含むことができる。この方法は、例えば組成物を熱硬化条件、例えば120~200℃の温度に5分~3時間かけることによって行うことができる硬化工程をさらに含むことができる。硬化は例えば、硬化プレスにおいて、例えば140~180℃の温度で5~60分間、100~150バールの圧力で実施することができる。
【0059】
理解されるように、本発明による組成物は例えば、帯電防止性または導電性特性、色、機械的補強性および/または低いヒステリシス特性を付与するために、カーボンブラック充填剤を有するポリマー系材料を必要とする様々な技術的用途に利用することができる。したがって、本発明はまた、上記の帯電防止性または導電性ポリマー組成物から製造されるか、またはそれを含む物品に関する。そのような物品の非限定的な例は例えば、タイヤ、タイヤ部品(タイヤトレッドなど)、ケーブルシース、チューブ、駆動ベルト、コンベヤベルト、ロールカバー、靴底、シール部材、プロファイル、ダンピング素子、コーティング、または着色もしくは印刷された物品などである。大量の促進剤を必要とせずに高速硬化によって達成可能な適切な機械的特性と、改善されたヒステリシス特性との異例の組み合わせにより、特に本発明による加硫性ゴム組成物は例えば、低減された転がり抵抗および熱蓄積を有する省エネタイヤまたはタイヤ部品の製造のために興味深いものである。このようなタイヤとしては例えば、トラックタイヤ、乗用車タイヤ、オフロードタイヤ、航空機タイヤ、農業用タイヤ、およびアースムーバータイヤが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明を下記の実施例によりさらに説明する。実施例は例示のために含まれており、本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことが理解されるべきである。特に、求められる保護範囲は、以下に開示される特定の実施例によって限定されるものではなく、むしろ、その任意の等価物を包含する添付の特許請求の範囲の全範囲が与えられるべきである。
【実施例
【0061】
本明細書中で言及される全ての部および割合は、別段の指示がない限り、重量に基づく。
【0062】
カーボンブラック材料
リファレンスとして、Printex(登録商標)60、オリオン・エンジニアド・カーボンズ社から市販されている非酸化ファーネスブラック(以下、カーボンブラックAという)を用いた。
【0063】
さらに、オリオン・エンジニアド・カーボンズ社から市販されているPrintex(登録商標)60カーボンブラックの酸化によって得られた、リファレンスブラックと同様の表面積および構造を有する従来の酸性酸化カーボンブラック(以下、カーボンブラックBと呼ぶ)を使用した。
【0064】
約5kgのカーボンブラックAまたはBの粉末をそれぞれ湿式ビーズ化した。この目的のために、粉末を固定バッチミキサー(いわゆる「パッペンマイヤー(Papenmeier)」タイプのGRP625/1.0、Geppert Ruehrtechnik社製)に導入した。次いで、カーボンブラックが顆粒化し始めるまで、典型的には約1:1の重量比となるまで、脱イオン水を撹拌下(300rpm)でゆっくりと添加し、続いて撹拌速度を600~800rpmに増加させた。次いで、このようにして得られた混合物を、長さ600mm、直径350mmのプラスチックドラムを有するローラーブロック上で、28rpmで10分間均質化した。その後、そのビーズ材料を120℃のオーブン中で、残留含水率が1%未満になるまで乾燥させた。このようにして得られたペレットの粒度分布を、以下に示すように測定した。
【0065】
本発明によるカーボンブラック材料(以下、カーボンブラックCと呼ぶ)は、カーボンブラックBを水酸化ナトリウム水溶液で処理することによってさらに調製された。この目的のために、約5kgのカーボンブラックB粉末を、上記の手順に従って、しかし脱イオン水の代わりに0.4M水酸化ナトリウム水溶液を使用して、湿式ビーズ化した。
【0066】
採用した異なるビーズ状カーボンブラックの特性を表1にまとめる。
【0067】
【表1】
【0068】
カーボンブラックの特徴付けのための適用された方法
BET表面積は、ASTM D6556-17に従って窒素吸着によって測定した。
【0069】
統計的厚さ表面積(STSA)は、ASTM D6556-17に従って測定した。
【0070】
ヨウ素吸着量(IAN)は、ASTM D1510-19に従って測定した。
【0071】
吸油量(OAN)は、ASTM D2414-18に従って測定した。
【0072】
圧縮試料の吸油量(COAN)は、ASTM D3493-18に従って測定した。
【0073】
pHは、WTW社製のinoLab Multi9420IDSを使用して、D1512-15b、試験方法B-ソニックスラリーに従って測定した。
【0074】
着色力は、ASTM D3265-17に従って測定した。
【0075】
黒色度MYは、DIN55979-1989に従って測定した。
【0076】
950℃での揮発性物質を、Fa.LECO Instrumente社製(TGA-701)の熱重量測定装置を用いて、以下の手順に従って測定した。計量皿を650℃で30分間乾燥させた。カーボンブラック材料を測定前に、乾燥剤を備えたデシケータ中に保存した。ベークアウトされた計量皿を装置に装填し、皿の重量を測定し、0.5g~10gのカーボンブラック材料を充填した。次いで、試料の充填された皿を装填したTGA装置のオーブンを、自動ソフトウェア制御によって105℃まで徐々に加熱し、一定の質量が達成されるまで試料を乾燥させた。続いて、皿を蓋で閉じ、オーブンを窒素(99.9体積%グレード)でパージし、950℃まで加熱した。オーブン温度を950℃で7分間維持した。950℃における揮発性の含有量は、以下の式を用いて計算した。
【0077】
【数1】
【0078】
単位質量当たりのカルボン酸基を、以下の手順に従って測定した。カーボンブラックを、125℃の温度に設定されたコンパートメント乾燥機中で一晩乾燥させた。熱いカーボンブラック材料を乾燥機から取り出し、乾燥剤を含むデシケータ中で冷却させた。3つの完全に清浄化され、乾燥された三角フラスコ中で、それぞれmCB=1.5±0.1gのカーボンブラック材料を秤量し、それぞれに25mLの0.05モルの重炭酸ナトリウム水溶液(二重蒸留水(bi-distilled water)で希釈したチトリゾル(Titrisol)グレード)を添加した。フラスコ内の空気を窒素ガスで置き換え、フラスコをプラグで密封し、さらにパラフィルムでテープ止めすることによって固定した。フラスコを100rpmで一晩振とう機に入れた。その後、得られた懸濁液を、窒素ガスを用いて5バールの圧力で加圧濾過した。各濾液10mLをビーカーに移した。20mLの0.025モーラー硫酸(二重蒸留水で希釈したチトリゾルグレード)を各ビーカーに添加し、短時間沸騰させることによって炭酸塩を除去した。続いて、試料を、0.05モーラーの水酸化ナトリウム溶液(二重蒸留水で希釈したチトリゾルグレード)を用いてpH6.5に滴定して戻した。必要量の水酸化ナトリウム溶液VNaOHを、小数点以下3桁の精度でmL単位で測定した。2つのブランクを測定し、必要量の水酸化ナトリウム溶液を平均した(Vフ゛ランク,平均)。以下の化学式を用いて、3つ全ての試料について、μmol/gでのカルボキシル基の濃度を計算し、得られた値を平均した。
【0079】
【数2】
【0080】
酸素含有量は、DIN51732-2014-07に従って、自動元素分析装置(Elementar Analysensysteme社製のvario EL cube元素分析装置)を使用して、定量的元素分析によって測定した。分析される乾燥カーボンブラック4mg±1mgを、1μgの精度でスケール上のスズカプセルに秤量した。次いで、充填されたカプセルを、ヘリウム雰囲気下のカプセルプレス内で密封した。次に、このように調製された試料を、較正されたvario EL cube元素分析装置に導入し、その酸素含有量を分析した。
【0081】
ペレット粒度分布は、ASTM D1511-10に従って測定した。
【0082】
凝集体粒度分布は、ISO15825:2015-06に従って、ブルックヘブンBI-DCPディスク遠心機を使用して光散乱によって測定した。
【0083】
実施例1~3の加硫性ゴム組成物の調製
表2に示す配合の加硫性ゴム組成物を、異なるビーズ状カーボンブラックA~Cを用いて以下の手順に従って調製した。
【0084】
調製は、多段階混合手順を用いて行った。各混合ステップは、かみ合い型ロータ形状(GK1.5E)を有する内部ミキサーで実施した。
【0085】
最初に、ゴム成分を、45rpmおよび40℃のチャンバー温度で操作される内部ミキサーの混合室に添加し、30秒間可塑化した。その後、TDAE、ZnO、ステアリン酸およびそれぞれのカーボンブラックの量の半分を加え、75秒間混合した。ラムを持ち上げて洗浄し、その後、残りのカーボンブラック成分を添加し、次いで、さらに135秒間混合した。このステップの間、最高温度が160℃を超えないことを確保した。内部ミキサーの充填率は0.68であった。
【0086】
少なくとも12時間貯蔵した後、第2の混合工程において、内部ミキサー中、48rpmおよび60℃のチャンバー温度で、混合物を150秒間撹拌した。このステップの間、最高温度が155℃を超えないことを確保した。
【0087】
続いて、硫黄およびTBBS-80を混合物に添加し、内部ミキサー中、33rpmおよび40℃のチャンバー温度で、2分間撹拌した。このステップの間、最高温度が110℃を超えないことを確保した。次いで、得られた混合物を冷却して、それぞれの加硫性ゴム組成物を得た。
【0088】
【表2】
【0089】
実施例1~3の加硫性ゴム組成物の硬化
実施例1~3の加硫性ゴム組成物を、硬化プレス中、150℃で20分間硬化させた。印加圧力は120~150バールであった。
【0090】
このようにして得られた硬化ゴム組成物について、以下のようにしてその特性を試験した。
【0091】
ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)は、ISO289-1:2015に従って測定した。
【0092】
硬度は、DIN53 505に従って測定した。
【0093】
結合ゴムを以下の手順に従って測定した。約0.2gのゴム試料を小片に切断し、分析天秤を用いて秤量し、試料がワイヤバスケットと接触しないように、ガラスウールを充填したワイヤバスケット(320メッシュ、ステンレス、直径22mm、高さ40mm)に入れた。試料含有バスケットをスクリューキャップ付き100mLフラスコに入れ、50~60mLのトルエン(分析グレード)を加えて、フラスコ底部の上に20mmの最小充填レベルを得た。フラスコを23±2℃の温度で7日間放置し、それによってフラスコを毎朝および毎晩旋回させた。1~3日後にトルエンを交換した。7日後、結合したゴムゲルを中に有するバスケットをフラスコから取り出し、ヒュームフード中で一晩溶媒を放出させた。続いて、試料を、質量が一定になるまで、箱型乾燥機中で一晩乾燥させた。デシケータ中で室温まで冷却した後、試料を秤量した(m(乾燥ゲル))。元の試料の質量に対する結合ゴムの重量%での割合を、下記式を用いて計算した。
【0094】
【数3】
【0095】
ゲル中のカーボンブラック充填剤の質量は、元の試料中のカーボンブラック充填剤の質量(m(充填剤,元の試料))と同じであると仮定した。
【0096】
引張強度、破断伸び、弾性率100%、弾性率200%、弾性率300%および弾性率500%をDIN53 504に従って測定した。
【0097】
引裂き抵抗は、DIN ISO34-1:2016-09、方法B、変形(b)に従って、切欠きを有する角付き試験片を用いて測定し、予め形成された切欠きの拡大に必要な力を測定した。
【0098】
得られた結果を表3にまとめる。
【0099】
【表3】
【0100】
表3の結果は、ゴム組成物中に酸化カーボンブラックを使用することにより、酸化処理されていない対応するリファレンスカーボンブラックと比較して、結合ゴムの増加によって証明されるような有意に改善されたヒステリシス特性を有するゴム物品を得ることができることを示している(実施例1と比較した実施例2および3参照)。しかしながら、従来の酸官能性酸化カーボンブラックの使用は、実施例1に対して実施例2の弾性率および引張強度が著しく低下したことによって証明されたように、硬化ゴム組成物の機械的性質を著しく低下させる。本発明による酸化カーボンブラックの使用(実施例3)は、結合ゴムに悪影響を及ぼすことなく、従来の酸官能性酸化カーボンブラックと比較して、これらの機械的性質を著しく改善する。
【0101】
したがって、本発明による酸化カーボンブラックを組み込んだ硬化ゴム組成物(実施例3)は、酸化処理されていない対応するリファレンスカーボンブラック(実施例1)で達成されたものをより厳密に反映する機械的性質を示し、一方、結合ゴムの増加によって示唆されるように著しく改善されたヒステリシス特性を示す。また、本発明の酸化カーボンブラックを配合した硬化ゴム組成物(実施例3)は、比較例1、2よりも優れた引裂き抵抗を示す。
【0102】
促進剤の含有量を変更させた加硫性ゴム組成物の調製(実施例4~6)
さらに、表4に示す配合の加硫性ゴム組成物を、ビーズ状カーボンブラックA~Cを用いて調製し、N,N-ジフェニルグアニジン(DPG)加硫促進剤の量を系統的に変えた。
【0103】
TDAEを使用せず、DPG促進剤(もしあれば)をそれぞれ硫黄およびTBBS-80成分と共にゴム混合物に添加したことを除いて、実施例1~3に関して上述したように調製を行った。実施例4~6の各々は、DPG促進剤の量が異なる一連の4つの硬化性ゴム組成物の調製を含み、それは、表4に記載されるように、0phr(変量a)~0.5phr(変量b)、1.0phr(変量c)および2.0phr(変量d)と変化させた。
【0104】
【表4】
【0105】
加硫性ゴム組成物の硬化
実施例4~6(a)~(d)に係る加硫性ゴム組成物をそれぞれ、硬化プレス中、160℃で60分間硬化させた。印加圧力は120~150バールであった。
【0106】
ゴム組成物の硬化に続いて、ISO6502-3:2018に従って、ムービングダイレオメーター(MDR2000E)を用いて、硬化時間に対するトルクの変化を測定した。測定データを図1にプロットして、ゴム組成物の異なる硬化特性を示す。
【0107】
トルク対時間プロットにおける最高トルクまでの時間は、「硬化までの時間」、t100と考えられる。下記表5の硬化性の指標として報告されている時間t95は、それぞれ、トルク対時間プロットにおけるトルクの上昇勾配において、対応するt100で達成されたトルク値の95%に達した時間に対応する。
【0108】
それぞれの時間t95(分単位で次の整数に切り上げ、下記表5を参照)の間に硬化されたゴム組成物を、以下のようにそれらの特性について試験した。
【0109】
ムーニー粘度、硬度、弾性率、破断伸びおよび引裂き抵抗を、実施例1~3に関して上述したように測定した。
【0110】
さらに、損失係数tanδおよび複素弾性率E*は、DIN53 513に従って、歪み制御モード(1±0.5mm)で、円筒状試験片(高さ10mmおよび直径10mm)について、60℃、周波数16Hzで測定した。
【0111】
ボールリバウンドを、ASTM3574に基づく試験方法に従ってさらに測定し、DIN ISO8307を以下のように行った。直径35mm、高さ19mmの円筒形試験試料を60±0.2℃まで加熱した。試験試料の円形領域は滑らかであり、互いに平行であることが保証された。直径19mmの鋼球を、試験試料の円形領域の1つに落下チューブを通して落下高さ500mmから落下させた。高さは、鋼球の最下点と試験試料への衝撃点との距離に相当する。試験試料への鋼球の第一と第二の衝撃の間の時間的間隔を、試験試料への衝撃点の上近くに位置するライトバリアによって測定した。ライトバリアの時間分解能は10-4sであった。試験試料当たり5回の実験で測定した時間的間隔を平均し、リバウンド高さを計算するために適用した。次いで、リバウンド高さを再び利用して、落下高さに対するリバウンド高さのパーセンテージ比に対応するボールリバウンドを計算した。
【0112】
得られた結果を表5にまとめる。
【0113】
【表5】
【0114】
図1および表5のt95は、本発明による酸化カーボンブラックを含有するゴム組成物(実施例6a~d)が同量のDPG促進剤を含有する従来の酸化カーボンブラックを含有するゴム組成物(実施例6a~d)よりも著しく速く加硫することを証明している。本発明による酸化カーボンブラックを含有するゴム組成物(実施例6a~d)は、酸化処理されていないリファレンスカーボンブラックを含有する対応するゴム組成物(実施例4a~d)と実際に同等の硬化速度(例えば、t95)をもたらす。したがって、本発明による酸化カーボンブラックを使用すると、従来の酸化カーボンブラックと比較して、比較的少量のDPG促進剤でまたはDPG促進剤なしでさえ、商業的に合理的な時間内に加硫が可能であり、したがって、潜在的に有害かつ高価な促進剤物質、例えばDPGの使用を最小限にするかまたは回避することが可能になる。さらに、表5のデータによって示されるように、本発明による酸化カーボンブラックは、従来の酸化カーボンブラックと同様に、表5において酸化処理されていない対応するリファレンスカーボンブラックに対して減少した損失係数tanδおよび増加したボールリバウンド力によって証明されるように、ゴム組成物に改善されたヒステリシス特性を付与するにもかかわらず、従来の酸化カーボンブラックの使用に関連する著しく遅い硬化の欠点はない。表5のデータによって証明されるように、本発明による酸化カーボンブラックを組み込んだゴム組成物は、許容できる機械的性質をさらに示し、引裂き抵抗は、リファレンスブラックを組み込んだ対応するゴム組成物と比較してさらに改善される。
図1
【国際調査報告】