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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】鉛蓄電池用部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/20 20060101AFI20230913BHJP
   H01M 4/56 20060101ALI20230913BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230913BHJP
   H01M 4/14 20060101ALI20230913BHJP
   H01M 10/06 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
H01M4/20
H01M4/56
H01M4/62 B
H01M4/14 Q
H01M10/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513389
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-04-18
(86)【国際出願番号】 US2021047724
(87)【国際公開番号】W WO2022047012
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/071,735
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523064114
【氏名又は名称】ハモンド グループ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100179578
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ホー,マービン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォジンスキ―,トーマス デヴィッド
【テーマコード(参考)】
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028AA06
5H028BB06
5H028EE04
5H050AA07
5H050BA09
5H050CA06
5H050CB15
5H050FA16
5H050GA10
5H050HA01
(57)【要約】
本明細書に記載の1つ以上の実施形態において、鉛蓄電池の電極の活物質の前駆体は、活物質ペーストを形成することと、活物質ペーストを硬化させて鉛蓄電池の電極の活物質の前駆体を形成すること、を含む工程によって製造することができる。活物質ペーストは、少なくとも水、酸、少なくとも25質量%の単一金属酸化物を有するガラス組成物、及び酸化鉛を組み合わせて作製されてもよい。金属酸化物は、酸化バリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、または酸化アンチモンから選択されてもよい。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池の電極の活物質の前駆体を形成する方法であって、
少なくとも、水と、酸と、少なくとも25質量%の単一金属酸化物を含むガラス組成物と、酸化鉛と、を混合する工程を含む、活物質ペーストを形成する工程と、
前記鉛蓄電池の前記電極の前記活物質の前記前駆体を形成するために前記活物質ペーストを硬化させる工程と、を含み、
前記ガラス組成物は粒状であり、前記酸化鉛は粒状であり、
前記金属酸化物は、酸化バリウムと、酸化鉛と、酸化亜鉛と、酸化スズと、酸化アンチモンとからなる群から選択される方法。
【請求項2】
前記ガラス組成物は、40質量%から99質量%のPbOと、1.0質量%から60質量%のSiOとを含む組成物を有する金属ケイ酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガラス組成物は、40質量%から99質量%のPbOと、1.0質量%から60質量%のSiOと、0.1質量%から10質量%のAlとを含む、任意の先行する請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記酸は硫酸を含む、任意の先行する請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記活物質ペーストにおける硫酸と酸化鉛との質量比は、1:100から1:10の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記活物質ペーストにおけるガラス組成物と酸化鉛との質量比は、1:200から1:3.33の範囲である、任意の先行する請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記活物質ペーストを形成する工程は、繊維と、水と、酸と、ガラス組成物と、酸化鉛とを混合する工程をさらに含む、任意の先行する請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記活物質ペーストを硬化させる工程の前に、前記活物質ペーストを電極格子に接触させる工程をさらに含む、任意の先行する請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ガラス組成物は、少なくとも25質量%の酸化バリウムを含む、任意の先行する請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ガラス組成物は、少なくとも25質量%の酸化鉛を含む、任意の先行する請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ガラス組成物は、少なくとも25質量%の酸化亜鉛を含む、任意の先行する請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記ガラス組成物は、少なくとも25質量%の酸化アンチモンを含む、任意の先行する請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記ガラス組成物は、少なくとも25質量%の酸化スズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
鉛蓄電池の活物質の前駆体であって、前記前駆体が、任意の先行する請求項の方法によって形成される、鉛蓄電池の活物質の前駆体。
【請求項15】
鉛蓄電池であって、
電解質溶液と、
少なくとも1つの負極板と、
少なくとも1つの正極板と、を備え、
少なくとも1つの前記負極板と少なくとも1つの前記正極板との一方または両方が、活物質の前駆体から形成された活物質を含み、
前記活物質の前記前駆体が、任意の先行する請求項の方法によって形成される、鉛蓄電池。

【発明の詳細な説明】
【関連するアプリケーションへの相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許仮出願第63/071,735号に対する優先権を主張するものであり、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電池に関し、より具体的には、鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0003】
鉛蓄電池は、最も古いタイプの充電式電池の一つであり、少なくとも1859年にまで遡ることができる。高いサージ内容を供給する鉛蓄電池の能力は、セルが比較的大きな質量出力比を有することを実証している。鉛蓄電池はエネルギー対体積比が小さく、エネルギー対質量比が非常に小さいが、顕著な質量出力比によって、鉛蓄電池は今日でも有力な選択肢であり続けている。
【発明の概要】
【0004】
従来の鉛蓄電池では、酸の成層化及び/又は活物質の劣化が継続的な問題となっている。したがって、酸の成層化及び/又は活物質の劣化を減少させた電池に対する継続的なニーズが存在する。現在開示されている1つ以上の実施形態によれば、特定の方法及び材料によって形成される鉛蓄電池中の活物質が、改善された性能を有し得ることが見出されている。特に、1つ以上の実施形態において、活物質の前駆体は、酸化バリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモンなどの単一金属酸化物を少なくとも25質量%含むガラス組成物を利用して形成されてもよい。
【0005】
本開示の少なくとも一態様によれば、鉛蓄電池の電極の活物質の前駆体を形成する方法は、少なくとも水、酸、少なくとも25質量%の単一金属酸化物を含むガラス組成物、及び酸化鉛を組み合わせることを含む方法によって、活物質ペーストを形成することを含む。ガラス組成物は粒状であってもよく、酸化鉛は粒状であってもよい。金属酸化物は、酸化バリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモンからなる群から選択されてもよい。本方法は、さらに、鉛蓄電池の電極の活物質の前駆体を形成するために活物質ペーストを硬化させることを含んでもよい。
【0006】
本開示の少なくとも別の態様によれば、鉛蓄電池の活物質の前駆体は、少なくとも水と、酸と、少なくとも25質量%の単一金属酸化物を含むガラス組成物と、酸化鉛とを組み合わせることを含む方法によって、活物質ペーストを形成することによって形成されてもよい。ガラス組成物は、粒状であってもよい。酸化鉛は、粒状であってもよい。金属酸化物は、酸化バリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化スズ、又は酸化アンチモンからなる群から選択されてもよい。また、鉛蓄電池の電極の活物質の前駆体を形成するために活物質ペーストを硬化させることにより、鉛蓄電池の活物質の前駆体を形成してもよい。
【0007】
本開示の少なくとも別の態様によれば、鉛蓄電池は、電解質溶液と、少なくとも1つの負極板と、少なくとも1つの正極板とを含んでもよい。少なくとも1つの負極板と少なくとも1つの正極板との一方又は両方は、活物質の前駆体から形成された活物質を含んでもよい。活物質の前駆体は、少なくとも水と、酸と、少なくとも25質量%の単一金属酸化物を含むガラス組成物と、酸化鉛とを組み合わせることを含む方法によって活物質ペーストを形成することによって形成されてもよい。ガラス組成物は粒状であってもよく、酸化鉛は粒状であってもよい。金属酸化物は、酸化バリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化スズ、又は酸化アンチモンからなる群から選択されてもよい。この方法は、さらに、鉛蓄電池の電極の活物質の前駆体を形成するために活物質ペーストを硬化させることを含んでもよい。
【0008】
本開示に記載された技術のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部は、説明から当業者に容易に明らかになるか、または以下に続く詳細な説明、請求項、および添付の図面を含む本開示に記載された技術を実践することによって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の具体的な実施形態の以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むと、最もよく理解され得、同様の構造は同様の参照番号で示されている。
【0010】
図1図1は、本開示に示され説明される1つ以上の実施形態による、鉛蓄電池の断面図を概略的に示す。
【0011】
図2図2は、本開示に示され説明される1つ以上の実施形態による、鉛蓄電池を3時間放電させながら、容量とサイクル数との関係をグラフにしたものである。
【0012】
図3図3は、本開示に示され説明される1つ以上の実施形態による、鉛蓄電池を完全放電させながら、容量とサイクル数との間の関係をグラフにしたものである。
【0013】
次に、様々な実施形態をより詳細に参照し、そのいくつかの実施形態は添付の図面に図示されている。可能な限り、同一または類似の部分を指すために、図面全体にわたって同じ参照番号が使用される。
【詳細な説明】
【0014】
本開示は、1つ以上の実施形態によれば、鉛蓄電池の電極の活物質の前駆体に関する。本明細書に記載の追加の実施形態は、鉛蓄電池の電極の活物質の前駆体を形成するための工程を含む。電極の活物質の前駆体は、電極の活物質へと形成されてもよい。
【0015】
図1を参照すると、鉛蓄電池100は、正極端子ポスト124、負極端子ポスト126、1枚以上の正極板111、1枚以上の負極板113、1枚以上のセパレータ116、電解質溶液122、および電池ケース114との構成要素を備えていてもよい。
【0016】
正負の電池端子ポスト124、126は、負荷又は充電器を電池に接続するために使用される電気接点を示すことがある。正負電池端子ポスト124、126は、正負ストラップ118、120にそれぞれ接続されてもよい。
【0017】
1枚以上の正極板111は、正極活物質で被覆され得る正極格子110を含んでもよい。同様に、1枚以上の負極板113は、負極活物質で被覆され得る負極格子112を含んでもよい。活物質は、一般に、鉛蓄電池100の電極を含む。活物質とは、電極の化学的に活性な成分を指し得る。すなわち、活物質は、鉛蓄電池100の充放電を可能にする電極の構成要素である。負極板113は、回路が開放されているときに低電位となる電極である。正極板111は、回路が開放されているときに高電位となる電極である。本開示全体にわたって用いられるように、「電極」は、例えば板状の、鉛蓄電池100に電気が出入りする導電体を指し得る。鉛蓄電池100は、正極及び負極の両方(すなわち、正極板111及び負極板113)を含んでもよい。放電中、Hは、1枚以上の負極板113で生成されてもよく、電解質溶液122に移動してもよく、その後、1枚以上の正極板111で消費されてもよく、一方、SO 2-イオンは、両方の板で消費されてもよい。充電時には、その逆が起こってもよい。1つ以上の正極および負極は、主に、鉛、鉛合金、スポンジ鉛、二酸化鉛、硫酸鉛から構成されてもよい。
【0018】
1枚以上のセパレータ116は、効率的な電流の流れを提供するために、1枚以上の正極板111を1枚以上の負極板113から分離してもよい。いくつかの実施形態では、セパレータ116は、ポリエチレン材料などの微多孔性層を形成する高分子膜であってもよい。セパレータ116は、電池のエネルギー密度及び電力密度、サイクル寿命、及び安全性を含む、鉛蓄電池100の性能を一定に維持することができる。もし、1枚以上の正極板111と1枚以上の負極板113とが分離されていない場合には、鉛蓄電池100が短絡したり故障したりするかもしれない。
【0019】
電解質溶液122は、典型的には、酸溶液を含んでよく、酸溶液は、最も一般的には硫酸を含んでいる。本開示全体にわたって使用されるように、「電解質溶液」は、イオンを含み、電気分解によって分解され得る液体またはゲルを指す。電解質溶液122は、溶液中でイオンに解離し、電気伝導力を得る物質であってもよい。溶液中のイオンの移動によって電流が流れることがある。1つ以上の実施形態によれば、電解質溶液122は、水及び硫酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、電解質溶液122は、10質量%を超える硫酸を含んでもよい。例えば、電解質溶液122は、15質量%を超える硫酸を含んでもよく、20質量%を超える硫酸を含んでもよく、25質量%を超える硫酸を含んでもよく、30質量%を超える硫酸を含んでもよく、35質量%を超える硫酸を含んでもよく、40質量%を超える硫酸を含んでもよく、45質量%を超える硫酸を含んでもよく、または50質量%を超える硫酸を含んでもよい。いくつかの実施形態において、他の酸が、硫酸の代替として電解質溶液122中に存在してもよいことが企図される。電解質溶液122は、電解質溶液122が溶媒又は媒体として水を含むような水性電解質であってもよく、又は電解質溶液122が柔らかく弱いものから固く靭性のあるものまでの特性を有し得る半固体であるようなゲル化した電解質であってもよい。さらに、電解質溶液122は、吸収ガラスマット(AGM)型電池のようなガラスマット内に収容されてもよい。
【0020】
電池ケース114は、1枚以上の正極板111、1枚以上の負極板113、1枚以上のセパレータ116、及び電解質溶液122を収容してもよい。電池ケース114は、例えば、ポリプロピレン樹脂などのプラスチック樹脂で構成されてもよい。
【0021】
鉛蓄電池100の構成要素を組み立てるために、1枚以上の正極板111及び1枚以上の負極板113は、正負ストラップ118、120を介して正負電池端子ポスト124、126に接続されてもよい。正極板111及び負極板113は、電池ケース114内に交互に配置されてもよく、正極板111及び負極板113の各々の間に複数のセパレータ116が配置されてもよい。複数のセパレータ116は、各プレートを隣接するプレートから分離し、短絡を防止するのに役立つことができる。正極ストラップ118は、複数の正極板を接続してもよく、負極ストラップ120は、複数の負極板を接続してもよい。電解質溶液122は、電池ケース114または正極板111、負極板113の間の空間、または正極板111、負極板113の細孔に充填されてもよい。正負電池端子ポスト124、126は、電池ケース114から延びて、鉛蓄電池100を充電及び放電するために用いられる外部電気接点を提供してもよい。さらに、鉛蓄電池100は、充電サイクル中に発生する過剰なガス(例えば、水素、酸素など)を大気中に排出できるようにするために、ベント128を含んでもよい。ベントキャップ130は、電解質溶液122が電池ケース114からこぼれることを防止する。
【0022】
鉛蓄電池100の構成要素が組み立てられると、正極板111の酸化鉛を二酸化鉛(PbO又は酸化鉛(IV))に、負極板113の酸化鉛を鉛に変換するために、鉛蓄電池100に充電する形成工程を経てもよい。本明細書では、一般に、活物質となる充電前の材料を「活物質の前駆体」と称する。
【0023】
形成工程の後、鉛蓄電池100は、放電及び充電を繰り返してもよい。電池の放電時には、正極活物質および負極活物質が電解質溶液122の硫酸と反応して硫酸鉛(II)(PbSO)を形成することがある。正極活物質及び負極活物質と硫酸とが反応することにより、電解質溶液122の硫酸の一部が消費されることがある。しかし、充電工程において、硫酸が電解質溶液122に戻されてもよい。放電時における正極活物質及び負極活物質と電解質溶液122の硫酸との反応は、以下の式で表すことができる。
負極における反応:Pb(s) + SO4 2- (aq) <-> PbSO4(s) + 2e-
正極における反応:PbO2(s) + SO4 2- (aq) + 4H+ + 2e- <-> PbSO4(s) + 2(H2O)(l)
【0024】
上記式で示されるように、放電時には電気エネルギーが発生する。鉛蓄電池100を充電するには、充電源から電圧を印加して放電反応を反転させる。充電時には、硫酸鉛が電解質溶液122中の電離水の酸素分子と反応して、鉛および二酸化鉛が生成されることがある。生成された二酸化鉛は正極に析出してもよく、生成された鉛は負極に析出してもよい。
【0025】
1つ以上の実施形態において、活物質の前駆体は、活物質ペーストから形成される。本開示全体にわたって使用されるように、「活物質ペースト」は、硬化して活物質の前駆体を形成するペーストを示すことがある。正負の活物質ペーストは、一般に、少なくとも酸化鉛(PbO又は酸化鉛(II))及び水などの液体を含んでいてもよい。各正極格子110は、本明細書に規定される正極活物質ペーストで被覆されてもよく、各負極格子112は、本明細書に規定される負極活物質ペーストで被覆されてもよい。被覆の後、活物質ペーストは硬化されてもよい。硬化された正または負の活物質ペーストでそれぞれ被覆された正または負の電極格子110、112は、正極板前駆体または負極板前駆体(すなわち、活物質前駆体)を形成する。本開示全体にわたって使用されるように、「正活物質ペースト」および「負活物質ペースト」は、一般に「活物質ペースト」を示すことがある。
【0026】
1つ以上の実施形態において、活物質ペーストは、少なくとも水、酸、少なくとも25質量%の単一金属酸化物を含むガラス組成物、及び酸化鉛を組み合わせることによって形成されてもよい。1つ以上の実施形態によれば、金属酸化物は、酸化鉛、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモンから選択されてもよい。
【0027】
次に、活物質ペーストを形成する方法についてより詳細に説明する。1つ以上の実施形態によれば、活物質ペーストを形成することは、ガラス組成物及び酸化鉛のような乾燥成分を最初に組み合わせること、次いで乾燥成分を水及び酸のような湿潤成分と組み合わせることを含んでいてもよい。
【0028】
上記のように、活物質ペーストは、少なくとも25質量%の単一金属酸化物を含むガラス組成物を含んでいてもよい。ガラスがまず形成されてもよいし、得られてもよく、ガラスは一般にSiO及び追加の金属酸化物から構成されてもよい。いくつかの実施形態によれば、一般にSiOを含むガラスは、粒状材料にされてもよく、金属酸化物と組み合わされてもよい。次いで、粒状材料を金属酸化物と組み合わせ、加熱され、金属酸化物を含むガラスの形態に戻されてもよい。次いで、金属酸化物を含むガラスは、他の乾燥成分と混合する前に、再び粒状材料に戻されてもよい。他の実施形態によれば、ガラスを微粉砕、粉砕、破砕、又は他の方法で処理し、その後、金属酸化物と組み合わせてガラス組成物を製造してもよい。本明細書に記載されるように、1つ以上の実施形態によれば、ガラス組成物は粒状であってもよい。
【0029】
ガラス組成物は、少なくとも25質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよい。例えば、ガラス組成物は、少なくとも27.5質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも30質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも32.5質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも35質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも37.5質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも40質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも42.5質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも45質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも47.5質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも50質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも52.5質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも55質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも57.5質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも60質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも62.5質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも65質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、少なくとも67.5質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよく、または少なくとも70質量%の単一金属酸化物を含んでいてもよい。1つ以上の実施形態によれば、金属酸化物は、酸化鉛、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、または酸化アンチモンであってもよい。他の実施形態では、酸化鉛、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、または酸化アンチモンの代わりに代替の金属酸化物が使用されてもよいことが企図される。実施形態では、複数の金属酸化物が組み合わされることが企図される。一般に、金属酸化物でないガラスの残りは、シリカであってもよい。
【0030】
1つ以上の実施形態によれば、ガラス組成物の金属酸化物は、金属ケイ酸塩であってもよい。一般に、ケイ酸塩は、一般式[SiO(4-x)、(0≦x<2)で表されるケイ素と酸素からなるアニオンのファミリーの任意の構成要素である。金属ケイ酸塩は、ケイ酸と単一金属酸化物のみを含むガラスを指す。このような金属ケイ酸塩としては、ケイ酸鉛、ケイ酸ビスマス、ケイ酸スズ、ケイ酸リチウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ストロンチウム、ケイ酸カルシウム、またはそれらの組み合わせなどを含んでいてもよい。
【0031】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、SiO及び1つ以上の金属酸化物から形成されていてもよい。1つ以上の実施形態によれば、ガラス組成物は、熱を加えて成分を溶融させ、液体組成物を形成することによって形成されてもよい。例えば、酸化鉛(PbO)及び二酸化ケイ素(SiO)は、液体組成物を形成するために溶融され、混合されてもよい。1つ以上の実施形態によれば、加熱された液体混合物が周囲の条件に戻されると、ガラスが生成され得る。このように、本明細書に記載されるように、SiO及び金属酸化物を「含む」金属ケイ酸塩は、例えば溶融によって、ここでは一般に当業者によって理解されるような混合した「マトリックス状」構造を形成している、SiO及び金属酸化物から形成される材料を指す。
【0032】
上述したように、ガラス組成物は、その後、ガラス組成物の粒状物を形成するために粉砕されてもよい。本開示全体にわたって使用されるように、「粒状」は、離散的な固体、巨視的粒子(又は、顆粒)の集合体を含む物質を指すことがある。実施形態において、ガラス組成物の粒状形態における顆粒の少なくとも60.0質量%は、サイズ10メッシュのふるいを通過してよい。実施形態において、ガラス組成物の粒状形態における顆粒の少なくとも90.0質量%は、サイズ325メッシュのふるいを通過してもよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物の粒状形態における顆粒の少なくとも90.0質量%は、325メッシュ(又は約45μm)未満の直径を有していてもよい。
【0033】
ガラスの金属酸化物は、酸のような湿潤成分の添加後まで不活性なままであってもよい。酸のような湿潤成分の添加後、金属酸化物は酸と反応して、硫酸鉛、ケイ酸、及びシリカゲルの様々な中間体を形成することができる。これらの中間体(硬化および充電後に活物質中に一旦存在する)は、電解質溶液122の一部を吸収し、活物質内に保持することができる。電解質溶液122の一部のこの吸収は、充電及び放電操作の間に使用するための活性材料内の酸の予備を提供し、混合充電の必要性を減少させることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、金属酸化物は酸化鉛であってもよい。1つ以上の実施形態において、酸化鉛は正活物質ペースト又は負活物質ペーストに添加されていてもよい。酸化鉛を含むガラス組成物は、上述したように、PbOとSiOとを含んでいてもよい。実施形態において、ガラス組成物は、一ケイ酸鉛、二ケイ酸鉛、又は三ケイ酸鉛などのケイ酸鉛であってもよい。ガラス組成物は、硫酸と反応して、電極の活物質構造内にSi-O-Hゲル形成を形成してもよい。Si-O-Hゲル形成は、電極の活物質構造内に酸を保持することができる。Si-O-Hゲルが電解質に添加され、活物質外で固体ゲルを形成する他の用途とは異なり、ガラス組成物を有するSi-O-Hゲル形成は、活物質内にあってもよい。この活物質内でのゲル形成により、活物質内の酸の保持力が高まることがあり、酸の成層化が抑制されることがある。
【0035】
いくつかの実施形態では、酸化鉛を用いた場合のSi-O-Hゲルの形成は、シリカ粉末を電解質に直接添加した場合のSi-O-Hゲルの形成よりも遅い。Si-O-Hゲルの形成が遅くても活物質ペーストのレオロジーは変化しないが、シリカ粉末を活物質ペーストの前駆体に直接添加すると、活物質ペーストのレオロジーが好ましくないほど変化することがある。さらに、硫酸鉛の生成を許容し得る酸化鉛の添加は、硫酸鉛が充放電時に典型的な生成物の1つであるため、鉛蓄電池100において無害である。
【0036】
酸化鉛は、鉛と酸素を含む式を有する無機化合物のグループを指すことがある。いくつかの一般的な酸化鉛は、酸化鉛(II)(PbO)、酸化鉛(II,IV)(Pb)、及び二酸化鉛(PbO)を含んでもよい。あまり一般的でない酸化鉛として、酸化鉛(II,IV)(Pb)およびPb1219を含んでもよい。さらに、酸化鉛は、黒色酸化鉛(PbOと微粉末の金属Pbの混合物)を含んでもよい。1つ以上の実施形態によれば、酸化鉛は粒状であってもよい。
【0037】
1つ以上の実施形態によれば、ガラス組成物は、40質量%から99質量%のPbOと1.0質量%から60質量%のSiOとを含む組成を有する金属ケイ酸塩であってもよい。例えば、ガラス組成物は、40質量%から45質量%、40質量%から50質量%、40質量%から55質量%、40質量%から60質量%、40質量%から65質量%、40質量%から70質量%、40質量%から75質量%、40質量%から80質量%、40質量%から85質量%、40質量%から90質量%、40質量%から95質量%、45質量%から50質量%、45質量%から55質量%、45質量%から60質量%、45質量%から65質量%、45質量%から70質量%、45質量%から75質量%、45質量%から80質量%、45質量%から85質量%、45質量%から90質量%、45質量%から95質量%、45質量%から99質量%、50質量%から55質量%、50質量%から60質量%、50質量%から65質量%、50質量%から70質量%、50質量%から75質量%、50質量%から80質量%、50質量%から85質量%、50質量%から90質量%、50質量%から95質量%、50質量%から99質量%、55質量%から60質量%、55質量%から65質量%、55質量%から70質量%、55質量%から75質量%、55質量%から80質量%、55質量%から85質量%、55質量%から90質量%、55質量%から95質量%、60質量%から99質量%、60質量%から65質量%、60質量%から70質量%、60質量%から75質量%、60質量%から80質量%、60質量%から85質量%、60質量%から90質量%、60質量%から95質量%、60質量%から99質量%、70質量%から70質量%、70質量%から75質量%、70質量%から80質量%、70質量%から85質量%、70質量%から90質量%、70質量%か95質量%、70質量%から99質量%、75質量%から80質量%、75質量%から85質量%、75質量%から90質量%、75質量%から95質量%、75質量%から99質量%、80質量%から85質量%、80質量%から90質量%、80質量%から95質量%、80質量%から99質量%、85質量%から90質量%、85質量%から95質量%、85質量%から99質量%、90質量%から95質量%、90質量%から99質量%、または95質量%から99質量%のPbOを含む組成を有してもよい。
【0038】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、1質量%から60質量%のSiOを含む組成の金属ケイ酸塩であってもよく、1質量%から5質量%、1質量%から10質量%、1質量%から15質量%、1質量%から20質量%、1質量%から25質量%、1質量%から30質量%、1質量%から35質量%、1質量%から40質量%、1質量%から45質量%、1質量%から50質量%、1質量%から55質量%、5質量%から10質量%、5質量%から15質量%、5質量%から20質量%、5質量%から25質量%、5質量%から30質量%、5質量%から35質量%、5質量%から40質量%、5質量%から45質量%。5質量%から50質量%、5質量%から55質量%、5質量%から60質量%、10質量%から15質量%、10質量%から20質量%、10質量%から25質量%、10質量%から30質量%、10質量%から35質量%、10質量%から40質量%、10質量%から45質量%、10質量%から50質量%、10質量%から55質量%、10質量%から60質量%、15質量%から20質量%、15質量%から25質量%、15質量%から30質量%、15質量%から35質量%。15質量%から40質量%、15質量%から45質量%、15質量%から50質量%、15質量%から55質量%、15質量%から60質量%、20質量%から25質量%、20質量%から30質量%、20質量%から35質量%、20質量%から40質量%、20質量%から45質量%、20質量%から50質量%、20質量%から55質量%、20質量%から60質量%、25質量%から30質量%、25質量%から35質量%、25質量%から40質量%、25質量%から45質量%、25質量%から50質量%、25質量%から55質量%、25質量%から60質量%、30質量%から35質量%、30質量%から40質量%、30質量%から45質量%、30質量%から50質量%、30質量%から55質量%、30質量%から60質量%、35質量%から40質量%、35質量%から45質量%、35質量%から50質量%、35質量%から55質量%、35質量%から60質量%、40質量%から45質量%、40質量%から50質量%、40質量%から55質量%、40質量%から60質量%、45質量%から50質量%、45質量%から55質量%、45質量%から60質量%、50質量%から55質量%、50質量%から60質量%、または55質量%から60質量%のSiO含む組成の金属ケイ酸塩であってもよい。
【0039】
酸化鉛は、SiOのシリカ四面体の酸素による直接的な相互接続の部分的な破壊を引き起こすことがある。この部分的な破損により、鉛イオンを介してシリカ四面体が間接的に接続され、ガラス組成物の化学的耐久性が劣化するおそれがある。このように、PbOを添加することで、シリケートの酸との反応性が向上することがある。活物質ペーストの乾燥成分に酸を添加すると、酸のHイオンがSiOと反応する前にPbOと反応することがある。活物質ペースト中の酸がSiOと理想的に反応することを可能にし得るので、1つ以上の実施形態において、PbOのそのような範囲が有益であり得ることが企図される。SiOに対するPbOの割合が大きいほど、このSi-O結合との反応はより速くなることがある。したがって、ガラス組成物中のPbOの量は、修飾されたSiOが酸との反応に対してどの様に反応するかを決定し得る。
【0040】
SiOを含まない純粋なPbOは、酸と非常に速く反応して硫酸鉛を形成するだろう。逆に、PbOを含まない純粋なSiOは、酸とは反応しないであろう。しかし、先に述べたようなPbOとSiOの組み合わせから生じるSiO は、酸と反応し、速やかにシリカゾルゲル(SiOH)を形成することがある。硫酸鉛は、鉛蓄電池100の充放電時に生じる化学反応の自然生成物であるが、シリカゾルゲルは、電池寿命中に酸の成層化を防止し、酸保持率を高めるために用いられるてもよい。
【0041】
PbOの量が40質量%以下、またはSiOの量が60質量%以上であると、ガラス組成物と酸との反応性が低下することがある。したがって、PbOの量が少ないと酸が反応しにくくなり、シリカゾルゲルの量が減少することがある。逆に、PbOの量が99質量%より大きいと、同様に、酸を保持するシリカゾルゲルの相当量を生成するのに十分な量のSiOが化合物中に存在しないことがあり、生成物の大部分は硫酸鉛となる。
【0042】
いくつかの実施形態では、金属酸化物は酸化バリウムであってもよい。1つ以上の実施形態において、バリウムは正極活物質を被毒する可能性があるため、酸化バリウムは負極活物質ペーストに有用であることがある。このような実施形態では、ガラス組成物は、上述のように、BaO及びSiOを含んでいてもよい。ガラス組成物は、硫酸バリウム及びSi-O-Hゲルを形成するために反応してもよい。酸化バリウムは、したがって、上述したような、酸化鉛と同様の利点を備えてもよい。
【0043】
さらに他の実施形態では、金属酸化物は酸化亜鉛であってもよい。1つ以上の実施形態において、酸化亜鉛は、正活性材料ペースト又は負活性材料ペーストに添加されてもよい。このような実施形態では、ガラス組成物は、上述したように、ZnO及びSiOを含んでいてもよい。ガラス組成物は、硫酸亜鉛とSi-O-Hゲルを形成するために反応してもよい。したがって、酸化亜鉛は、上述したような、酸化鉛と同様の利点を備えてもよい。
【0044】
さらに他の実施形態では、金属酸化物は酸化アンチモンであってもよい。1つ以上の実施形態において、アンチモンは負極活物質を毒する可能性があるため、酸化アンチモンは正極活物質ペーストに有用であることがある。このような実施形態では、ガラス組成物は、上述のような、Sb3及びSiOを含んでいてもよい。
【0045】
さらに他の実施形態では、金属酸化物は酸化スズであってもよい。1つ以上の実施形態において、スズは負極活物質を毒する可能性があるため、酸化スズは正極活物質ペーストに有用である場合がある。このような実施形態では、ガラス組成物は、上述のような、Sn及びSiOを含んでいてもよい。
【0046】
先に述べた金属酸化物と同様に、活物質ペーストの乾燥材料に酸を添加する場合、酸化アンチモン及び酸化スズは、酸とSiOとの反応を遅らせることがある。すなわち、酸は、SiOの構造を改変するように作用しているであろう酸化アンチモンまたは酸化スズと先に反応することがあるため、酸とSiOとの反応が遅くなることがある。この反応により、硫酸アンチモンまたは硫酸スズとシリカゾルゲルが生成される。
【0047】
金属酸化物が酸化アンチモンである実施形態では、酸化アンチモンが電池の再充電性及びサイクル寿命を向上させ得ることが観察されている。酸化アンチモンを使用する場合、先に説明した利点に加えて、アンチモンのドーパントが活物質中に存在することがあり、これがサイクル寿命の増大をもたらすことがある。しかしながら、アンチモン酸化物を使用する場合、アンチモンは、時間の経過とともに負極板113に移行し、負極板113の被毒を引き起こすことがある。これは、密閉型及びVRLA型電池にとって破壊的となり得る、より高い水損失をもたらすことがある。したがって、酸化アンチモンは、浸水型設計の電池にのみ使用することが推奨されることがある。
【0048】
1つ以上の実施形態によれば、ガラス組成物は、25質量%から99質量%の金属酸化物を含む組成を有していてもよい。ここでの質量%は酸化鉛に向けられるが、他のガラス組成物はこの範囲外の質量%を有していてもよいことが企図される。
【0049】
1つ又は複数の実施形態において、ガラス組成物は、酸化ナトリウムを十分に含まない。酸化ナトリウムは、乾燥成分を酸と混合する際に、酸とSiOとの反応を十分に遅らせない可能性があるため、望ましくないことがある。酸とSiOとの反応が十分に遅らせられない場合、前駆体は、従来の手段を用いて処理できないことがある。さらに、NaとSiOのモル比は、例えば酸化鉛の2倍であるため、加水分解におけるHイオンとSi-O結合の反応がより速く進行することがある。酸化ナトリウムと酸との反応が速いため、前駆体電極ペーストが不安定になり、従来の方法では処理できなくなる可能性がある。
【0050】
活物質ペーストの形成に用いられる酸は、反応においてプロトンを供与したり、電子対を受容したりする能力を有する化学物質であってもよい。また、酸は、アルカリを中和したり、金属を溶解したりすることができるものであってもよい。活物質ペーストを形成する際に使用される酸は、酸化鉛の一部を塩基性硫酸鉛(すなわち、一塩基性硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、及び四塩基性硫酸鉛)及び/又は硫酸鉛に変換してもよく、硬化及び乾燥中に追加の硫酸鉛化合物を形成してもよい。1つ以上の実施形態によれば、酸は、硫酸を含んでいてもよい。実施形態において、硫酸の代替物として他の酸が使用されてもよいことが企図される。
【0051】
1つ以上の実施形態によれば、ガラス組成物は、10質量%未満のAlを含んでいてもよい。例えば、ガラス組成物は、9.5質量%未満、9.0質量%未満、8.0質量%未満、7.5質量%未満、7.0質量%未満、6.5質量%未満、6.0質量%未満、5.5質量%未満、5.0質量%未満、4.5質量%未満、4.0質量%未満、3.5%未満、3.0質量%未満、2.5質量%未満、2.0質量%未満、1.5質量%未満、1.0質量%未満、または0.5質量%未満のAlを含んでいてもよい。さらに、ガラス組成物は、0.1質量%未満のAlを含んでいてもよい。例えば、ガラス組成物は、0.2質量%を超える、0.3質量%を超える、0.4質量%を超える、0.5質量%を超える、または1.0質量%を超えるAlを含んでいてもよい。このような範囲は、1つ以上の実施形態において有益であり得ることが企図されており、その理由は、先に説明したような、ガラス組成物を作製する際に、Alが安定剤として機能することがあるからである。Alは、加熱中のガラス組成物における相分離を防止することがある。Alに加えて、他の安定化添加剤を使用してもよいことが企図される。他の安定化添加剤は、MgO、CaO、SrO、BaO、LiO、NaO、KO、Fe、TiO、CeO、ZrO、ZnO、As、またはSbを含んでいてもよい。
【0052】
1つ以上の実施形態によれば、活物質ペースト中のガラス組成物と酸化鉛の質量比は、1:200から1:3.33の範囲であってもよい。例えば、活物質ペースト中のガラス組成物と酸化鉛の質量比は、1:200~1:175、1:200~1:150、1:200~1:125、1:200~1:100、1:200~1:75、1:200~1:50、1:200~1:25、1:200~1:10、1:200~1:5、1:175~1:150、1:175~1:125、1:175~1:100、1:175~1:75、1:175~1:50、1:175~1:25、1:175~1:10、1:175~1:5、1:175~1:3.33、1:150~1:125、1:150~1:100、1:150~1:75、1:150~1:50、1:150~1:25、1:150~1:10、1:150~1:5、1:150~1:3.33、1:125~1:100、1:125~1:75、1:125~1:50、1:125~1:25、1:125~1:10、1:125~1:5、1:125~1:3.33、1:100~1:75、1:100~1:50、1:100~1:25、1:100~1:10、1:100~1:5、1:100~3.33、1:75~1:50、1:75~1:25、1:75~1:10、1:75~1:5、1:75~1:3.33、1:50~1:25、1:50~1:10、1:50~1:5、1:50~1:3.33、1:25~1:10、1:25~1:5、1:25~1:3.33、1:10~1:5、1:10~1:3.33、または1:5~1:3.33の範囲であってもよい。
【0053】
1つ以上の実施形態によれば、活物質ペースト中の硫酸と酸化鉛の質量比は、1:100~1:10の範囲であってもよい。例えば、活物質ペースト中の硫酸と酸化鉛の質量比は、1:100~1:40、1:100~1:30、1:100~1:20、1:100~1:15、1:40~1:30、1:40~1:20、1:40~1:15、1:40~1:10、1:30~1:20、1:30~1:15、1:30~1:10、1:20~1:15、または1:20~1:10の範囲であってもよい。
【0054】
1つ以上の実施形態によれば、活物質ペーストを形成した後、電極の活物質の前駆体を形成するために、活物質ペーストを次に硬化させてもよい。硬化は、化学反応及び/又は物理的作用が起こる間のプロセスであり、その結果、より硬い、より丈夫な又はより安定した連結体又は物質が得られる。硬化プロセスによっては、一定の温度および/または湿度を維持する必要がある。また、ある種の硬化プロセスでは、ある種の圧力の維持が必要となることもある。しかし、一部の硬化プロセスは、単に周囲条件にさらすだけで実行できることもある。
【0055】
実施形態では、活物質ペーストの硬化中に、鉛が酸化し、酸化鉛が塩基性硫酸鉛及び/又は硫酸鉛に変換し、硫酸鉛及び酸化鉛が再結晶化することがある。硬化中、正極活物質ペーストおよび負極活物質ペーストが乾燥する間に、正極格子110および負極格子111の接触が改善されることがある。硬化により、細孔容積および表面積が増加するとともに、より均一な板状構造が得られることがある。さらに、本明細書に開示されるようなガラス組成物は、硬化プロセス中に硫酸鉛の結晶の生成を増加させることがある。特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、ガラス組成物は、硬化プロセス中に活物質ペースト中にシリカゲル構造体を生成することもある。これらのシリカゲル構造は、プレートの細孔内における電解質溶液122中の可動ヒドロニウムイオンの保持を増加させる可能性がある。これにより、電解質溶液122中の可動ヒドロニウムイオンが減少し、酸の成層化に対抗することが助長され得る。再び、特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、活物質ペースト中のガラス組成物は、活物質ペーストの酸及び水を吸収する全体的な溶解度及び能力を増加させ、これにより、硬化した活物質ペーストを、電解質溶液122中の可動ヒドロニウムイオンをより保持することができるように変化させてもよい。ガラス組成物は、シリカゲルと同様の特性を含んでいてもよく、これにより、電極が鉛蓄電池100の全体に均一に酸を吸収することができ、酸の成層化の影響を低減することに効果的に役立ち得る。
【0056】
1つ以上の実施形態によれば、活物質ペーストを形成することは、繊維を、水、酸、ガラス組成物、及び酸化鉛と組み合わせることをさらに含んでいてもよい。繊維は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、又はモダクリル繊維を含んで構成されていてもよい。繊維は、活物質ペーストの機械的強度を向上させ、ひいては活物質ペースト付きプレートの機械的強度を向上させ得る。より具体的には、繊維は、貼り付けを補強し、硬化した活物質ペーストのクラックを防止し得る。
【0057】
1つ以上の実施形態によれば、本方法は、活物質ペーストの硬化の前に、活物質ペーストを電極格子に接触させることをさらに含んでいてもよい。電極格子は、形成された活物質ペーストが接触される構造体であってもよく、それによって活物質ペーストの支持を提供し、電極の導電性および電極の形成を補助することができる。
【0058】
本明細書で既に説明したように、鉛蓄電池100では、活物質内に電解質溶液122を保持することで、活物質の利用率をより高めることができる場合がある。しかしながら、繰り返されるサイクルによって、電解質溶液122は、活物質内から拡散して、活物質内ではない電解質溶液122のバルクに戻る可能性がある。このような、活物質内から電解質溶液122のバルクに戻る拡散は、酸の成層化または活物質の劣化をもたらすことがある。
【0059】
鉛蓄電池100における酸の成層化に対抗する現在の方法は、再充電プロファイルに混合充電ステップを導入することを含んでいてもよい。そのような混合充電ステップは、鉛蓄電池100のセル内で電気分解を生じさせるための高電流充電ステップを含んでいてもよい。電気分解は、電解質溶液122中に気泡を生じさせ、その気泡が表面へ移動する際に電解質溶液122を混合させる可能性がある。代替的に又は追加的に、ヒュームドシリカを電解質溶液122に添加して、ゲル型電解質溶液122を形成してもよく、これにより、酸の成層化に対抗してもよい。追加の実施形態において、ヒュームドシリカまたはAGMセパレータは、Hイオンを固定化し、酸の成層化を低減または防止するために使用されるかもしれない。
【0060】
本明細書に開示されるように、鉛蓄電池100の電極の活物質の前駆体は、酸の成層化及び/又は活物質の劣化を低減させ得る。本明細書に記載されるように、添加剤として少なくとも25質量%の単一金属酸化物を含むガラス組成物を含む活物質ペーストは、一旦硬化して電池内に配置されると、電解質溶液122の酸性イオンの移動度を低下させることがある。添加剤として単一金属酸化物を25質量%以上含むガラス組成物を備える、活物質ペーストから形成された鉛蓄電池100の電極の活物質は、電解質溶液122の一部を吸収して活物質内に保持し得る。このように電解質溶液122の一部を吸収することにより、充放電動作中に使用するための酸を活物質内に備蓄することができ、混合充電の必要性を低減させることができる。さらに、添加剤を含む活物質ペースト由来の鉛蓄電池100の電極の活物質は、活物質ペーストミックスへの酸の添加後に種結晶を提供して、硬化中に硫酸鉛の成長を促し、活物質の劣化を低減させることができることがある。
【実施例
【0061】
鉛蓄電池の電極の活物質の前駆体の様々な実施形態は、以下の実施例によってさらに明らかにされるであろう。実施例は、本質的に例示であり、本開示の主題を限定するものと理解されるべきではない。
【0062】
実施例1.ケイ酸鉛
【0063】
以下の実施例で使用するように、活物質ペーストを形成するために、ケイ酸鉛のガラス組成物を他の原料(水、酸、および酸化鉛)と混合した。ケイ酸鉛は、1立方センチメートル当たり6.50グラムから6.65グラムの密度と、700℃から784℃の融点とを有していた。ケイ酸鉛の化学組成は、85 +/- 0.8質量% PbO(一酸化鉛)および15 +/- 0.8質量% SiOであった。ケイ酸鉛は、さらに他の元素や組成物、例えば、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化銅、酸化ビスマス、金などを微量に含んでいてもよい。
【0064】
実施例2:標準電極を用いた電池の製造
【0065】
正極および負極の活物質は、硫酸、脱イオン水、酸化鉛(PbOおよび遊離Pb金属)、および有機高分子繊維フロック(ポリエステル)を混合して調製した。また、負極の活物質には膨張剤(カーボン、硫酸バリウム、有機リグニンの混合物)を用いた。
【0066】
活物質ペーストを形成するために、原料を、プラネタリーミキサー(Custom Milling & Consulting 1.5 Planetary)で特定の比率で混合した。正活物質ペーストは、1000グラムの酸化鉛、2グラムの繊維フロック、100グラムの脱イオン水、および100グラムの1.4比重の硫酸を組み合わせることによって形成された。負活物質ペーストは、1000グラムの酸化鉛、2グラムの繊維フロック、100グラムの脱イオン水、80グラムの比重1.4の硫酸、および10グラムの膨張剤を組み合わせることによって形成された。
【0067】
活物質ペーストを製造するために、乾燥成分(酸化鉛、繊維フロック及び膨張剤)をプラネタリーミキサーで2分間混合した。次いで、脱イオン水を加え、得られた混合物をさらに2分間混合した。最後に、硫酸を毎分10グラムの速度で滴下して加え、さらに3分間混合した。
【0068】
次に、活物質ペーストを電極格子に塗布した。電極格子は、Pb、Pb-Ca、またはPb-Sb合金のいずれかの格子であった。活物質ペーストは、硬化前に電極格子上に広げられた。
【0069】
硬化プロセスでは、電極格子上に広げられた活物質を硬化チャンバー(TPC Lunaire CEO-908-4-B-WFR Chamber)内に置いた。硬化プロセスは、2時間の期間にわたって周囲条件から55℃および95%の相対湿度までランプすることによって開始された。その後、硬化させるために、硬化チャンバーを55℃、相対湿度95%に48時間維持した。その後、硬化チャンバーを6時間かけて60℃、相対湿度30%に調整し、乾燥を開始した。その後、硬化チャンバーを60℃、30%の相対湿度で20時間保持し、乾燥させた。
【0070】
最後に、硬化した活物質の正極板と負極板を交互に連結ストラップに溶接してセルを形成し、鉛蓄電池を組み立てた。なお、正極活物質と負極活物質が直接接触しないように、板と板の間にポリエチレンを挟み込んだ。実施例2の鉛蓄電池は、正極板1枚、負極板2枚のみの試験用セル電池とした。この試験セルをアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂製のケースに入れ、電極を比重1.28の硫酸(電解質溶液)で覆った。
【0071】
実施例3及び4:ケイ酸鉛を添加した電池の作製
【0072】
本実施例では、実施例1の添加物としてのケイ酸鉛を用いた電池の作製は実施例2と同じであるが、ケイ酸鉛のガラス組成物と、正極を形成する乾燥成分(すなわち、酸化鉛と繊維フロック)とを混合した。実施例3および4では、ケイ酸鉛を、酸化鉛の質量を基準として、それぞれ1質量%および2質量%の量で添加した。すなわち、実施例3は、実施例2と同様にして作製したが、正極を形成する乾燥成分混合物に、実施例1のケイ酸鉛を10グラム添加したものである。同様に、実施例4は、実施例2と同様にして作製したが、正極を形成する乾燥成分混合物に実施例1のケイ酸鉛を20グラム添加したものである。
【0073】
実施例5:実施例2~4との比較
【0074】
実施例2~4の電池を、Maccor Series 4000 JO1370 Battery Testing Unitを使用して試験した。最初の20時間の動作中に収集したデータを、表2に示す。データは、実施例2(ケイ酸鉛なし)が100%と同等であるように正規化された。
【表2】
【0075】
実施例2の生の収集データ値は正規化され、次に実施例3及び4の生の収集データ値は、性能の絶対的改善又は不利益を示すために、コントロールの値に対するパーセントとして正規化されている。提示されたデータは、調整後、ガラス組成物を含む変数がコントロールに対して改善していることを示す。データは正規化されているが、表2の実施例2~4は、アンペア時間で測定されている。
【0076】
したがって、表2から分かるように、実施例3及び4(ケイ酸鉛をそれぞれ1質量%及び2質量%添加)は、寿命の初期における鉛蓄電池の容量を増加させる結果となる。
【0077】
さらに、図2および図3は、少なくとも25質量%の単一金属酸化物を含むガラス組成物の添加が、寿命初期における鉛蓄電池の容量の増加を提供するという追加の証拠を提供する。図2は、電池200の3時間の放電速度をグラフで示し、図3は、電池300の完全放電をグラフで示す。図2から分かるように、1質量%のケイ酸鉛202(実施例3)及び2質量%のケイ酸鉛203(実施例4)を用いた電池は、ケイ酸鉛21を用いない鉛蓄電池(実施例2)よりも、放電深度(DOD)が約80%で、3時間の放電速度において、寿命初期時の容量が増加したことを示している。同様に図3において、1質量%のケイ酸鉛302(実施例3)および2質量%のケイ酸鉛303(実施例4)を用いた電池は、ケイ酸鉛301を用いない鉛蓄電池(実施例2)よりも、放電深度(DOD)が約80%でフル放電時の寿命初期の鉛蓄電池の容量が増加したことを示している。両方の図において、1質量%のケイ酸鉛202、302(実施例3)及び2質量%のケイ酸鉛203、303(実施例4)を有する電池は、最初の20~40サイクルの充放電など、少なくとも25質量%の単一金属酸化物201、301を含むガラス組成物を含まない鉛蓄電池(実施例2)より、寿命初期の間に鉛蓄電池の容量増加をもたらすことが分かる。
【0078】
実施例6-さらなる電池の調製
【0079】
4つの試験グループの電池を製造し、試験した。各電池は、カルシウムグリッド合金と埋め込みガラスマット構造を有するBCI、タイプ27Mであった。試験群はA、B、C、Dとした。試験群A、B、Cのペーストにケイ酸鉛を添加し、D群の電池は対照としてケイ酸鉛を添加せずに製造された。A群のケイ酸鉛の添加量は、正極ペースト中、酸化鉛に対して1質量%であった。B群は負ペーストに1質量%添加した。C群は、正ペースト、負ペーストともに1質量%の添加であった。表1にA~Dのグループの概要を示す。
【表3】
【0080】
正ペーストの残りは、酸化鉛、四塩基性硫酸鉛種結晶、硫酸、水、およびポリエステル繊維の混合物であった。負ペーストの残りは、酸化鉛、硫酸、水、ポリエステル繊維、および、炭素、リグニン、硫酸バリウムのブレンドである膨張剤を混合したものであった。
【0081】
このペーストを、膨張した鉛-カルシウム合金グリッドに塗布した。ペーストの密度は立方センチメートル当たり約4.47グラムであり、約11%の水分を有し、浸透は2.9ミリメートルであった。これは製造標準仕様の範囲内であり、以前のレオロジー実験と一致しており、これにより、この装填率ではペーストの特性はケイ酸鉛の影響を受けないことが示された。グリッドが貼り付けられた後、埋め込みガラスマット紙がプレートの各側面にローラーで貼り付けられた。その後、硬化前に、オーブンを通してフラッシュ乾燥され、水分を約10%に減らした。プレートを相対湿度95%以上、温度85℃で9時間硬化させた後、さらに3時間保持し、製造時の仕様で乾燥させた。正極の硬化板は50gのグリッドと100gの硬化物とを含む約150gの重さであり、負極の硬化板は25gのグリッドと95gの硬化物とを含む120gの重さだった。
【0082】
硬化後、このプレートを27M型電池に組み立てた。ポリエチレン製のセパレータスリーブを負極板に配置し、電池素子を1セルあたり正極8個、負極7個の割合で積み重ねた。その後、製造元の標準的な手順で、電池の残りの組み立てを行った。その後、完全に組み立てられた電池に1ミリリットルあたり1.4グラムの硫酸を入れ、製造元の仕様に従って電池を容量まで充電して形成した。
【0083】
実施例7-実施例6電池の評価
【0084】
電気的試験に先立ち、各電池について以下の測定を行った:平均質量23kgの質量;平均12.75ボルトの開放電圧;および各電池の比重を記録し、平均比重は電解液1ミリリットル当たり約1.28グラムの硫酸であった。4つのグループ間で電池の質量に明らかな差はなかった。
【0085】
形成された電池のうち、各グループから2個ずつ、計8個を試験用に選択した。セル間の相対的な比重差が最も小さい電池を選択した。正極から1番目と3番目のセルに穴を開け、電解液の表面直下で、できるだけ底に近い位置で比重を測定した(約5.5インチ)。これは、測定に使用したデジタル比重計のサンプリングチューブのおおよその長さであった。図2において言及された結果に先立って、予備容量およびコールドクランク試験が行われた。予備容量のプロファイルは、25アンペアで10.5ボルト以下まで放電し、次に20アンペアで15.3ボルト以上まで充電し、その後、5アンペアで7時間または18ボルトまで充電を行うものであった。コールドクランキングプロファイルは、0℃で6ボルトまで800アンペアの放電を実施した。その後、115パーセントまで充電し、15アンペアアワーでブーストした。C5、C10、C20、C100のアンペアアワー試験では、各バッテリの予備容量データで決められた電流で放電させたが、それぞれ約17A、9.7A、5.25A、1Aという層別結果であった。
【0086】
表4は、セルの上部と下部の比重差の測定値である。測定は、充電後、次の放電の前に行った。なお、セルの上下間の比重差が0.015(15点)以上であれば、電池に成層が発生したと判断した。
【表4】
【0087】
放電時にはあまり成層化しないが、充電時には電池の上部と下部との間の比重の差が最も大きくなる。過充電は電解液の混合の一手法である。表4は、放電前の比重を測定したデータである。Dグループのコントロール電池は、C20とC100の放電後に酸の成層化が見られた。115%充電復帰+15Ahブーストチャージの充電プロファイルでは、この2つのケースで酸を十分に混合することができない。これらの結果から、酸の成層化の低減は以下のようになる。正極活物質(PAM)と負極活物質(NAM)の両方で添加>NAMのみ>PAMのみ>コントロール。
【0088】
本開示の1つ以上の態様を本明細書に記載する。本開示の第1の態様は、鉛蓄電池の電極の活物質の前駆体を形成するための方法を含んでもよく、少なくとも水、酸、少なくとも25質量%の単一金属酸化物を含むガラス組成物、および酸化鉛を組み合わせることを含む方法によって活物質ペーストを形成することと、ここで、ガラス組成物は顆粒状であり、酸化鉛は顆粒状であり、金属酸化物は、酸化バリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化スズ、または酸化アンチモンからなる群から選ばれ、および鉛蓄電池の電極活物質の前駆体を形成するために活物質ペーストを硬化させることとを含む方法である。
【0089】
本開示の第2の態様は、ガラス組成物が、40質量%から99質量%のPbO及び1.0質量%から60質量%のSiOを含む組成を有する金属ケイ酸塩であり、第1の態様を含んでもよい。
【0090】
本開示の第3の態様は、ガラス組成物が、40質量%から99質量%のPbO、1.0質量%から60質量%のSiO、0.1質量%から10質量%のAlを含み、第1の態様を含んでもよい。
【0091】
本開示の第4の態様は、酸が硫酸を含み、第1~第3の態様のいずれか1つを含んでもよい。
【0092】
本開示の第5の態様は、活物質ペースト中のガラス組成物と酸化鉛の質量比が1:200から1:3.33の範囲であり、第1~第4の態様のいずれか1つを含んでもよい。
【0093】
本開示の第6の態様は、活物質ペースト中の硫酸と酸化鉛の質量比が1:100から1:10の範囲であり、第4の態様を含んでもよい。
【0094】
本開示の第7の態様は、活物質ペーストを形成することが、繊維と、水と、酸と、ガラス組成物と、酸化鉛とを組み合わせることをさらに含み、第1~第6の態様のいずれか1つを含んでもよい。
【0095】
本開示の第8の態様は、活物質ペーストの硬化の前に、活物質ペーストを電極格子に接触させることをさらに含み、第1~第7の態様のいずれか1つを含んでもよい。
【0096】
本開示の第9の側面は、ガラス組成物が少なくとも25質量%の酸化バリウムを含み、第1~第8の態様のいずれか1つを含んでもよい。
【0097】
本開示の第10の側面は、ガラス組成物が少なくとも25質量%の酸化鉛を含み、第1~第9の態様のいずれか1つを含んでもよい。
【0098】
本開示の第11の態様は、ガラス組成物が少なくとも25質量%の酸化亜鉛を含み、第1~第10の態様のいずれか1つを含んでもよい。
【0099】
本開示の第12の態様は、ガラス組成物が少なくとも25質量%の酸化アンチモンを含み、第1~第11の態様のいずれか1つを含んでもよい。
【0100】
本開示の第13の態様は、ガラス組成物が少なくとも25質量%の酸化スズを含み、第1~第12の態様のいずれか1つを含んでもよい。
【0101】
本開示の第14の態様は、鉛蓄電池の活物質の前駆体を含んでいてもよく、該前駆体は、少なくとも水と、酸と、少なくとも25質量%の単一金属酸化物を含むガラス組成物と、酸化鉛とを組み合わせることを含む方法によって活物質ペーストを形成する工程と、活物質ペーストを硬化させて鉛蓄電池の電極の活物質前駆体を形成する工程と、を含む工程によって形成されており、ここで、ガラス組成物は粒状であり、酸化鉛は粒状であり、金属酸化物は、酸化バリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化スズ、または酸化アンチモンからなる群から選択される。
【0102】
本開示の第15の態様は、ガラス組成物が、40質量%から99質量%のPbOと、1.0質量%から60質量%のSiOと、10質量%未満のAlとを含む金属ケイ酸塩であり、第14の態様を含んでもよい。
【0103】
本開示の第16の態様は、酸が硫酸を含み、第14または第15の態様のいずれかを含んでもよい。
【0104】
本開示の第17の態様は、活物質ペースト中のガラス組成物と酸化鉛の質量比が1:200から1:3.33の範囲であり、第14から16の態様のいずれか1つを含んでもよい。
【0105】
本開示の第18の態様は、活物質ペースト中の硫酸と酸化鉛の質量比が1:100から1:10の範囲であり、第17の態様を含んでもよい。
【0106】
本開示の第19の態様は、鉛蓄電池を含んでいてもよく、前記鉛蓄電池は、電解液と、少なくとも1枚の負極板と、少なくとも1枚の正極板と、を備え、少なくとも1枚の前記負極板と少なくとも1枚の前記正極板との一方または両方が、活物質の前駆体から形成された活物質を含み、前記活物質の前駆体は、少なくとも水と、酸と、少なくとも25質量%の単一金属酸化物を含むガラス組成物と、酸化鉛とを組み合わせることを含む方法によって活物質ペーストを形成することと、前記鉛蓄電池の電極の活物質の前駆体を形成するために前記活物質ペーストを硬化させることとを含む工程によって形成されており、前記ガラス組成物が粒状であり、前記酸化鉛が粒状であり、前記金属酸化物が、酸化バリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化スズ、又は酸化アンチモンからなる群から選択される。
【0107】
本開示の第20の態様は、電解質溶液が水と硫酸とを含み、第19の態様を含んでもよい。
【0108】
本開示の第21の態様は、ガラス組成物が、40質量%から99質量%のPbOと1.0質量%から60質量%のSiOとを含む金属ケイ酸塩であり、第19または第20の態様のいずれかを含んでもよい。
【0109】
以下の請求項の1つ以上は、経過的なフレーズとして「wherein」という用語を利用していることに留意されたい。本技術を定義する目的のために、この用語は、構造の一連の特性の説明を導入するために使用されるオープンエンドの経過的フレーズとして請求項に導入され、より一般的に使用されるオープンエンドのプレアンブル用語「comprising」と同様の方法で解釈されるべきことに留意されたい。
【0110】
ある特性に割り当てられた任意の2つの定量的な値は、その特性の範囲を構成することがあり、与えられた特性のすべての述べられた定量的な値から形成される範囲のすべての組み合わせが、本開示において企図されることを理解されたい。
【0111】
本開示の主題を詳細に、かつ特定の実施形態を参照して説明してきたが、本開示に記載された様々な詳細は、特定の要素が本説明に添付された図面の各々に図示されている場合でさえ、これらの詳細が本開示に記載された様々な実施形態の必須の構成要素に関することを示唆するものと取るべきではないことに留意されたい。むしろ、本明細書に添付された特許請求の範囲は、本開示の広さ及び本開示に記載された様々な実施形態の対応する範囲を唯一表すものとみなされるべきである。さらに、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、修正および変形が可能であることは明らかであろう。

図1
図2
図3
【国際調査報告】