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  • 特表-抗ウイルス組成物及びその使用法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】抗ウイルス組成物及びその使用法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/14 20060101AFI20230915BHJP
   A61K 31/221 20060101ALI20230915BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20230915BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
A61K31/14
A61K31/221
A61K33/34
A61K9/08
A61P31/14
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513254
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 US2020055772
(87)【国際公開番号】W WO2022046137
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/103,881
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523063058
【氏名又は名称】サルバシオン ユーエスエー インコーポレイテツド
【氏名又は名称原語表記】SALVACION USA INC.
【住所又は居所原語表記】210 Sylvan Avenue, #24, Englewood Cliffs, New Jersey 07632 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】ガファール,アブドゥル
(72)【発明者】
【氏名】チョー,ヨン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,セイ ヤング
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA13
4C076AA25
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC15
4C076CC35
4C076DD09F
4C076DD30Z
4C076DD37R
4C076DD38
4C076DD43Z
4C076DD67
4C076EE16G
4C076EE23F
4C076EE58T
4C076FF16
4C076FF17
4C076FF39
4C076FF52
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA01
4C086HA20
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA56
4C086MA59
4C086NA05
4C086ZB33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA41
4C206HA32
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA76
4C206MA79
4C206NA05
4C206ZB33
4C206ZC75
(57)【要約】
提供されるのは、カチオン性抗ウイルス剤(カチオン剤)及び銅塩を含有する抗ウイルス組成物であって、哺乳動物、特にヒト及び動物の鼻咽頭及び咽喉領域におけるウイルス感染を予防、制御又は治療するための、ならびに哺乳動物におけるウイルス感染を予防、制御又は治療する方法である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン剤、銅塩及び溶媒を含む抗ウイルス組成物。
【請求項2】
前記カチオン剤の量が2ppm~20,000ppmであり、前記銅塩の量が1ppm~10,000ppmである、請求項1に記載の抗ウイルス組成物。
【請求項3】
前記溶媒が、水、アルコール、プロピレングリコール、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の抗ウイルス組成物。
【請求項4】
グリコール、グリセリン、キシリトール、エタノール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される0.01%~20%の可塑剤をさらに含む、請求項1に記載の抗ウイルス組成物。
【請求項5】
前記カチオン剤が、ラウロイルアルギン酸エチル(LAE)、四級アンモニウム化合物、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セタルコニウム、塩化セチルピリジニウム、セトリモニウム、グアニジン、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の抗ウイルス組成物。
【請求項6】
前記銅塩がグルコン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、アミノ酸又はペプチドを含む、請求項1に記載の抗ウイルス組成物。
【請求項7】
FICA=[CA]sy/[CA]al及びFCB=[CS]sy/[CS]al、 [CA]alは前記カチオン剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、[CS]alは前記銅塩の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
[CA]syは前記カチオン剤と前記銅剤を同時に使用する前記カチオン剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、[CS]syは前記カチオン剤と前記銅塩を同時に使用する前記銅塩の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
前記組成物の部分阻害指数。(FICI)が0.5未満として、
前記カチオン剤と前記銅塩が式1を満たす、請求項1に記載の抗ウイルス組成物。
[式1]FICI=FICA+FICB
【請求項8】
前記組成物がpH4とpH8の間のpHを有する、請求項1に記載の抗ウイルス組成物。
【請求項9】
前記組成物が、鼻腔スプレー、鼻腔用ゲル、エアロゾル剤、咽喉トローチ剤、ガーグル、直腸坐剤、口腔ストリップ剤、経皮製剤、局所製剤又は表面処置のための外用製剤を含む医薬製剤である、請求項1に記載の抗ウイルス組成物。
【請求項10】
組成物が、カプセル、マイクロカプセル、錠剤、腸溶コーティング剤、顆粒、粉末、ピル、軟膏、坐剤、経口ストリップ、懸濁液、シロップ、エマルジョン、液体、スプレー吸入剤、点眼剤又は点鼻剤からなる群より選択される医薬製剤である、請求項1に記載の抗ウイルス組成物。
【請求項11】
前記組成物が0.01~100mg/dmの量で表面に適用する、請求項1に記載の抗ウイルス組成物。
【請求項12】
それを必要とする被験体におけるウイルス感染を予防又は治療する方法であって、請求項1に記載の前記組成物を前記被験体に投与することを含む、該方法。
【請求項13】
前記感染がヒト及び動物の鼻咽頭又は咽喉である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、鼻噴霧剤、鼻用ゲル剤、エアロゾル剤、咽喉トローチ剤、うがい薬、直腸坐剤、口腔ストリップ剤、経皮製剤、局所製剤又は外用製剤を含む医薬製剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
組成物を0.01~100mg/dmの量で表面に適用する、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2020年8月31日出願の米国仮特許出願第63/103,881号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、ヒト及び動物の鼻咽頭及び咽喉領域におけるウイルス感染を制御するためのカチオン性抗ウイルス剤(カチオン性薬剤)及び銅塩を含有する抗ウイルス組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスとコビッド(COVID)ウイルスは、中国で初めて発見され、アジア、ヨーロッパ、北米等に急速に広がっている。このような病気に罹った患者の唾液や痰の飛来する粒子の中で、呼吸を介してウイルスに感染していると一般的に考えられている。
【0004】
Covidウイルス感染症の世界的大流行は、効果的な治療の複雑さを示している。最近、Covid及びSAR感染症の世界的大流行により、疾患の蔓延を制限するための最適なツールの緊急の探索がもたらされた。
【0005】
コロナウイルスファミリーには、αコロナウイルス229E、NL63、βOC43、HKU1及びヒトコロナウイルスがあり、MER 6-COV C中東呼吸器症候群である。呼吸器症候群SARSを引き起こすSAR-COV βコロナウイルス、及びコロナウイルス2019、Covid-19を引き起こすSAR-COV-2及び新規コロナウイルス。
【0006】
世界中の人々がヒトコロナウイルス229E、NL63、OC43、HKU1に感染していることが多い。Covid-19は、Covidウイルスに対する相乗的試験組合せ(synergistic test combination)の生物学的活性の決定のための優れた実験モデルであると当技術分野では信じられている。
【0007】
カチオン性界面活性剤の抗細菌機能は、米国特許第8877208号に開示されているようなナノ粒子中の水/油エマルジョンのような抗菌(又は、抗胚芽/anti-germ)剤としての種々の用途のために当技術分野で周知である。
【0008】
銅塩は感染症と闘うのに用いられている(Gadi, Borkov Current Chemical Biology 2012, 6; Borkov, G et al 2007, Antimicrobial Agents Chemotherapy Vol 51 p 2605参照)。
【0009】
ラウリン酸及びアルギニンに由来するカチオン(又は、陽イオン)界面活性剤、特に、以下LAEと命名したアルギニン一水和物のラウラミドのエステルは、ウイルスに対する防御のために使用され得る。LAE及びその誘導体はWO2008/014824に記載されており、参考文献はその全体として参照により本明細書に組み込まれている。
【0010】
最も一般的なカチオン性抗細菌薬又は抗ウイルス薬は、米国特許第第2,984,639、3,325,402、3,431,208号及び英国特許第1,319,396号に開示されている第四級アンモニウム化合物であり、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0011】
ウイルス感染症の治療のための安全で効果的な抗ウイルス製品が、特に現在の世界的なCovid‐19のブレークを考慮して、緊急に必要とされている。ウイルス感染のための安全で効果的な新しい治療のために、当技術分野で緊急に必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、カチオン性抗ウイルス剤、銅塩及び水を含有する組成物が、驚くべき、著しく強い相乗的抗ウイルス活性を示すことを見出した。特に、カチオン性界面活性剤LAE又は塩化ベンザルコニウム(BAC)を銅塩と組み合わせて含有する組成物は、相乗的に改善された抗ウイルス活性を示し、これは、それらを単独で使用した場合の各成分からは予想外であった。従って、本発明は、ウイルス疾患の予防的又は治療的処置のために、処方のカチオン性界面活性剤を銅塩とともに動物又はヒトに直接投与することである。
【0013】
本発明の一態様は、カチオン性抗ウイルス剤、銅塩及び水を含む抗ウイルス組成物に関する。
【0014】
組成物中のカチオン性薬剤は2ppmから20,000ppmの量でよく、銅塩は1ppmから10,000ppmの量でよい。組成物中の溶媒は、水、アルコール、プロピレングリコール、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、及びこれらの組合せの1つ又は複数から選択することができる。カチオン剤は、エチルアウロイルアルギナート(LAE)、四級アンモニウム化合物、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セタルコニウム、塩化セチルピリジニウム、セトリモニウム、グアニジン、及びそれらの組合せからなる群から選択される。銅塩はグルコン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、アミノ酸又はペプチドを含む。
【0015】
抗ウイルス組成物は、グリコール、グリセリン、キシリトール、エタノール、及びこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の可塑剤の0.01%~20%をさらに含むことができる。
【0016】
抗ウイルス組成においては、カチオン剤と銅を同時に使用することができ、各々は式1を満たす。式では、FICIはFractional inhibitory Concentration(FIC)インデックスを意味し、FICAはA剤のFICを意味し、FICBはB剤のFICを意味する。ここで、A剤はカチオン剤、B剤は銅剤である。
【0017】
[式1]:FICI=FICA+FICB
【0018】
式では、FICA=[CA]sy/[CA]alとFCB=[CS]sy/[CS]alである。[CA]alはカチオン剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、[CS]alは銅塩の最小発育阻止濃度(MIC)であり、[CA]syはカチオン剤と銅剤を同時に使用するカチオン剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、[CS]syはカチオンと銅塩を同時に使用する場合の銅塩の最小発育阻止濃度(MIC)である。
【0019】
本発明による抗ウイルス組成物では、組成物の部分阻害指数(FICI)は0.5未満である。FICI<0.5は相乗作用、FICI>1は相加作用、FICI>2は無関心である(Hollander et al: Antimicrobial agents Chemotherapy 1998, Vol. 42, pages 744-748)。
【0020】
抗ウイルス組成物は、pH4とpH8の間のpHを有する。
【0021】
抗ウイルス組成物は、例えば、鼻噴霧剤、鼻用ゲル剤、エアロゾル剤、咽喉トローチ剤、うがい剤、直腸坐剤、口腔ストリップ剤、経皮製剤、局所製剤、又は外用製剤の形で配合され得るか、又はその形であり得る。ただし、製剤に限らない。
【0022】
適用に使用される抗ウイルス組成物の製剤の非限定的な例には、カプセル、マイクロカプセル、錠剤、腸溶コーティング剤、顆粒、粉末、ピル、軟膏、坐剤、懸濁液、シロップ、エマルジョン、液体、スプレー吸入剤、経口ストリップ、点眼剤又は点鼻剤が含まれる。表面に適用する場合は、0.01~100mg/dm、好ましくは0.5~50mg/dm、より好ましくは1~19mg/dmで使用してもよい。
【0023】
本発明の別の態様は、カチオン性抗ウイルス剤、銅塩を含有する組成物を、前述のように、特にヒト及び動物の鼻咽頭又は咽喉において投与又は適用することを含む、それを必要とする被験体における細菌又はウイルス感染を予防、抑制、制御又は治療する方法に関する。
【0024】
発明の前述の要約及び図面の以下の簡単な説明及び発明の詳細な説明は、いずれも例示的かつ説明的であり、請求項に記載された発明のさらなる詳細を提供することを意図している。他の目的、利点及び新規な特徴は、本発明の以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるであろう。本発明について、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1は、1日目のベロ細胞におけるrVSG-dG 2019-CoV-2-18AA Sに対する溶液1の抗ウイルス効果を示す。
【0026】
図2は、1日目のベロ細胞におけるrVSG-dG 2019-CoV-2-18AA Sに対する溶液2の抗ウイルス効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書で提供される抗ウイルス組成物は、抗ウイルス活性を有するカチオン剤、銅塩及び水を含む。カチオン剤は、ラウロイルアルギン酸エチル(LAE)、第四アンモニウム化合物及びグアニジン化合物から選択される任意の1又は複数のものであってもよい。
【0028】
カチオン性抗ウイルスは、ラウリン酸及びアルギニンに由来するカチオン性界面活性剤であってもよく、特に、アルギニン一水和物のラウラミドのエステル(以下、LAEと命名する)が、ウイルスに対する保護のために使用され得る。LAE及びその誘導体の詳細はWO2008/014824に記載されており、その内容は全体として本明細書に組み込まれている。
【0029】
カチオン性抗ウイルス剤は、米国特許第2,984,639、3,325,402、3,431,208及び英国特許第1,319,396号に開示されている第四級アンモニウム化合物であってもよく、各々が本明細書に組み込まれている。カチオン性抗ウイルス性の第四級アンモニウム化合物は、第四級窒素の1つ又は2つの置換基が、典型的には炭素鎖長8~20、典型的には10~18のアルキル基を有し、一方、残りの置換基は、低級炭素原子、典型的にはアルキル基又はベンジル基、例えば1~7原子、典型的にはメチル基又はエチル基を有するものを含み得る。これらには、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムが含まれる。
【0030】
カチオン性抗ウイルス薬は、ドイツ特許出願第2,233,383号に開示されているグアニジン化合物であってよく、本明細書に組み込まれる。
【0031】
用いられる銅塩は銅塩であり、銅イオンを水中に放出する。銅塩は、グルコン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、アミノ酸、ペプチド及び銅/ポリマーの複合体を含む。
【0032】
銅(II)塩の非限定の例は、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、水酸化銅(II)、過塩素酸銅(II)、セレン酸銅(II)、硫化銅(II)、チオシアン酸銅(II)、トリフル酸銅(II)、テトラフルオロホウ酸銅(II)、酢酸トリ亜ヒ酸銅(II)(パリズ・グリーン(又は、パリ・グリーン))、安息香酸銅(II)、C(シェーレグリーン)、銅(II)クロマイト、グルコン酸銅(II)、過酸化銅(II)、ウスニン酸(usnate)銅(II)を含む。
【0033】
アミノ酸及びペプチドの銅塩は、P.A.Kober及びK.Surguira(J.Bio.chem. ,vol X111 no 1 pages 1-11)により開示されており、その内容は、グリシン、アラニン、アミノ酪酸、バリン、ロイシン、イソロイシン及びアミノ酸のジペプチド及びポリペプチドの塩を含むことができる。
【0034】
アクリル酸、ポリマー、オリゴマー、マレイン酸及び/又は無水物の共重合体及び1分子当たり1個以上の炭素原子を有するオレフィンの共重合体(1分子当たり1個以上の炭素原子を有するオレフィン及びマレイン酸及び/又は無水物のポリマー、オリゴマー、共重合体、アクリル酸)のような銅重合体複合体を用いることができる。好ましいものは、米国特許第4,217,343号に開示されている高分子ポリマレイン酸塩、ポリメタクリル酸メチル、ビニルメチルエーテルコポリマー及び他のカルボン酸ポリマーであり、その内容は本明細書に引用により組み込まれている。
【0035】
成分の最も好ましい組み合わせは、LAE又は塩化ベンザルコニウムと銅塩との併用で、相乗的な抗ウイルス作用を達成する。
【0036】
該組成物は、さらに、0.01%~20%の可塑剤を含み、ここで、可塑剤は、グリコール、グリセリン、エタノール及び/又はグリコールから選択される1又は複数のものである。
【0037】
食品グレードの水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール及びグリコールと水との混合物の好ましい溶媒の1つに、使用前に化合物を直接溶解することが好ましい。特定のpH値(pH値の4~8)で処置(又は、処理)を行う場合は、対応する緩衝液の使用が推奨される。一方、相乗的組合せは固体として容易に使用できる。マスクの表面、家具の固体表面、保護衣等の表面が保護される。
【0038】
本発明は、ウイルス感染に対する相乗的な抗ウイルス効果を達成するために、カチオン性界面活性剤LAE又はBACと銅塩との組合せの使用に関する。
【0039】
本発明は、さらに、ウイルス疾患の予防的又は治療的処置のために、銅塩を有する処方の陽イオン性界面活性剤を、それを必要とする被験体、特に動物又はヒトに直接投与することに関する。「必要な被験体」とは、ウイルス感染のリスクがある、又はウイルス感染を発症したヒト又は動物を意味する。
【0040】
国際公開第2008/0014824号パンフレットに開示された処方のカチオン性界面活性剤に銅塩を加えたものを、溶液として表面に適用することができる。これは、地面、車、動物、人の表面を扱うのに容易で適切な方法である。他の用途には、カチオン性界面活性剤に銅塩を加えて固体として適用する方がより適しており、これは同等に有効であると考えられる。
【0041】
任意の種類のウイルス感染を回避するための製品の処置には、ある濃度の銅塩を有するカチオン性界面活性剤LAE又はBACの処方の存在が関与し得、より詳細には、実施形態によれば、2~20,000ppm付近のLAE又はBACと保護される銅塩1~10,000ppm、好ましくは100~10,000ppm、より好ましくは200~2000ppmの銅塩が含まれる。これは殺菌作用を達成するために記述されているのと同様の濃度である。上記の濃度範囲のカチオン性界面活性剤+銅塩で処理される製品は、例えば食品又は化粧品である。
【0042】
ウイルスに感染した表面、例えば、食品調製物の表面、化粧品の表面、地表面、任意の種類の車両の表面、及びウイルスに感染した動物の取扱いに使用される任意の装置の表面の処置には、カチオン性界面活性剤LAE又はBAC+銅塩の存在が必要であり、より具体的には、LAE又はBAC+銅塩の好ましい実施形態によれば、そのような表面で所望の抗ウイルス活性を達成するのに十分なレベルの銅塩が必要である。そのような濃度レベルは、LAE、BAC及び銅塩を含有する好ましいものによる請求項に記載の界面活性剤+銅塩を含む2~20,000ppm、より好ましくは100~10,000ppm、さらにより好ましくは100~10000ppm、及びさらにより好ましくは200~2000ppmであると考えられる。これらの濃度は、処置される表面に適用される、カチオン性界面活性剤+銅塩の濃度の観点から与えられる。この処方のカチオン界面活性剤の固体調製物で表面を処置する場合には、適用する量は、LAE又はBACの陽イオン界面活性剤の量に銅塩を加えた量が0.01~100mg/dmの範囲、好ましくは0.5~50mg/dmの量、より好ましくは1~19mg/dmの量でなければならない。
【0043】
飲料流体又は湖もしくは池のような天然の水源のような液体調製物の処理は、より具体的には、LAE又はBAC+銅塩の好ましい実施形態によれば、飲料流体又は水中の所望の抗ウイルスを達成するのに十分なレベルの濃度でカチオン性界面活性剤の存在を必要とする。LAE又はBAC+銅塩を含有する好ましい実施形態によれば、そのような濃度レベルは、銅塩を含有するカチオン性界面活性剤LAE又はBACを含有する0.2~20,000ppm、より好ましくは2~15,000ppm、さらに好ましくは100~10,000ppm、最も好ましくは200~2000ppmの範囲であると考えられる。これらの濃度は、液体中又は処置される水中のカチオン性界面活性剤の濃度の観点から提供される。
【0044】
動物又はヒトの治療は、本発明の一態様に従って使用される化合物の吸収に適した方法でカチオン性界面活性剤を投与することを意味する。化合物は、経口的、非経口的(腹腔内、皮下及び筋肉内注射を含む)又は外部的(局所的、例えば直腸、経皮的、点滴又は経鼻的)に投与することができる。投与される調製物は、カプセル、マイクロカプセル、錠剤、腸溶コーティング剤、顆粒、粉末、ピル、軟膏、坐剤、経口ストリップ剤、懸濁液、シロップ、エマルジョン、液体、スプレー吸入剤、点眼剤及び点鼻剤等の従来の医薬調製物の形態を有してもよい。
【0045】
上記の医薬製剤は、賦形剤(スクロース、デンプン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等)、結合剤(セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、PVP、ゼラチン、アラビアガム、ポリエチレングリコール、スクロース、デンプン、デンプン等)、崩壊剤(デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、エーロゾル、タルク、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等)、腐食剤(クエン酸、メントール、グリシン、オレンジ粉末等)、保存剤(安息香酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン)、安定剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等)、懸濁剤(メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等)、分散剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、希釈剤(水等)、ベースワックス(カカオバター、白色ワセリン、ポリエチレングリコール等)及び他の適切なもの等の医薬製剤に慣用的に使用される種々の有機又は無機担体を用いて常法に従って製造することができる。
【0046】
本発明の一態様に従うカチオン性界面活性剤+銅塩の用量は、所望の予防又は治療効果を達成するために必要な用量によって決定されなければならない。通常、1回0.1mg/kg~10mg/kgを経口又は非経口投与する。ヒトにおける通常の用量は、個体当たり0.1~1000mg、より好ましくは個体当たり0.5~500mgの単位用量であり得る。なお、症状の程度により1日1~4回投与することができる。動物における通常の用量は、0.1~100mg/回、好ましくは0.5~50mg/回である。
【0047】
実施例
以下の実施例は、本発明を説明するために提供される。しかしながら、本発明は、これらの実施例に記載された特定の条件又は詳細に限定されるものではないことが理解されるべきである。明細書全体を通じて、米国特許を含む公的に入手可能な文書へのあらゆる引用は、特に引用文献によって組み込まれる。
実施例1
【0048】
SARS-CoV2のVSV擬似型中和アッセイ
【0049】
IBT(Integrated Biologic Testing)は、システムIBTに類似した確立されたVSV中和アッセイを用いて研究を実施し、他者がフィロウイルス及びSARS-CoV2について既に報告した。簡単に述べると、Gを欠損したVSVはSARS-CoV2スパイク蛋白質で疑似的に分類され(又は、疑似的に型が検査され)、HEK293T細胞で産生されている。この系は、アッセイの読み取りに使用されるルシフェラーゼレポーター遺伝子を含む。
【0050】
具体的には、LAE又はBACとグルコン酸銅の試験混合物の4つの希釈物、200、100、50及び25μg/ml及びコントロールを調製し、室温で1:1の比率で1時間VSVウイルスと混合し、続いて37℃でベロ細胞上でインキュベートした。翌日に細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を測定して、ベロ細胞におけるウイルス侵入を遮断する試験化合物の抗ウイルス効果を評価した。検体はすべて3回実施した。XLFit及びGraphed pad Prismを用いてデータ解析を行った。
【0051】
カチオン剤(例、LAE又はBAC)と銅との相乗効果を部分阻害指数(FICI)を用いて推定
【0052】
本発明者らは、銅塩とカチオン性抗菌剤とを併用した場合の抗ウイルス(Covid19)効果が、銅塩とカチオン性抗菌剤とを別々に使用した場合の加算よりも高いことを見出した。本発明による抗ウイルス組成物は、次の式1を満たすカチオン剤及び銅塩を同時に使用することができる。
【0053】
[式1]FICI=FICA+FICB
ここで、FICA=[CA]sy/[CA]al、FiCB=[CS]sy/[CS]al、[CA]alはそれぞれカチオン剤(例、LAE又はBAC)単独の最小発育阻止濃度(MIC)であり、[CS]alはそれぞれ銅塩単独の最小発育阻止濃度(MIC)であり、[CA]syはカチオン剤と銅剤を同時に使用した場合のカチオン剤(例、LAE又はBAC)の最小発育阻止濃度(MIC)であり、[CS]syはカチオン剤と銅剤を同時に使用した場合の銅剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。
【0054】
組成物の部分阻害指数(FICI)は0.5未満であり、これは、組成物が相乗的な抗ウイルス効果を有することを実証する。2つの活性薬剤間の相乗作用の確立された原理に従い、もし2つの薬剤の部分阻害濃度が、加えた場合、0.5未満であれば、相乗作用が示される。すなわち、FICI<0.5は相乗的であり、FICI>1は相加的であり、FICI>2は不感性(indifferent)である(Hollander et al: Antimicrobial agents Chemotherapy 1998, Vol 42 p 744-748)。
【0055】
例2
抗ウイルス効果の評価に使用されるスプレー溶液
本発明による組成物の抗ウイルス効果の評価を行うために、従来の噴霧液調製法に従い、活性LAC及び他の成分を下表に示すように溶液1を調製した。
【0056】
溶液1
【0057】
溶液2
【0058】
結果 抗ウイルス試験
【0059】
LAE/グルコン酸銅配合剤(溶液1)によるSV Covid-19のウイルス阻害の結果を、25、50,100及び200μg/mlのカンバセーション(又は、測定点/conversation)で図1に示す。ウイルス阻害に対するLAE単独の報告された効果は、300μg/ml(WO2008/014824)であり、銅単独では300μg/ml(Sagripanti, JC et al Applied environ. microbiol: 1993: vol 59: 4374-4376)である。従って、LAE/銅の組み合わせに対するFICIはLAE 30/Cu30/300=0.10+0.10=0.20(発育阻止濃度=30ppm)で、0.5未満であり、したがって、SAR-Covidに対するLAEと銅の間の予想外の相乗作用が示される。
【0060】
BAC+銅塩(溶液2)によるSV Covid-19のウイルス阻害の結果を図2に示す。図は、BAC+グルコン酸銅が、20μg/mlでSV CoVid 2に対して100%の阻害を有したことを示す。しかし、BAC単独では100μg/mlで抗ウイルス作用を示すことが報告されている(Eric G Romanoswki et al. J.occul. Phamacol therapy. 2019: vol 35: pp311-314)。従って、組合せ:BAC20/100+銅20/300=0.2+0.07=0.27は0.5より低く、SAR-CoVid2に対するBACと銅塩の間の予想外の相乗作用を示した。
【0061】
例3
本実施例は、本発明による組成物を調製した製剤を提供することである。以下の表に記載した成分を用いて、本発明による組成物の従来の投与方法により種々の製剤を調製した。
【0062】
鼻腔スプレー
【0063】
鼻腔用ゲル(又は、ジェル)
【0064】
トローチ剤
【0065】
マウス・ガーグル
【0066】
表面処置
【0067】
本発明の方法及び組成物において、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な改変及び改変を行うことができることは、当業者に明らかであろう。従って、本発明は、添付のクレーム及びそれらの同等物の範囲内に収まることを条件として、本発明の改変及び変形をカバーすることが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】