(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】直鎖アルファオレフィンの製造プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 1/04 20060101AFI20230926BHJP
B01J 27/043 20060101ALI20230926BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20230926BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20230926BHJP
C07C 11/10 20060101ALI20230926BHJP
C07C 11/107 20060101ALI20230926BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20230926BHJP
C07C 9/15 20060101ALI20230926BHJP
C07C 9/10 20060101ALI20230926BHJP
C10G 2/00 20060101ALI20230926BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230926BHJP
【FI】
C07C1/04
B01J27/043 M
B01J23/89 M
C07C11/08
C07C11/10
C07C11/107
C07C11/02
C07C9/15
C07C9/10
C10G2/00
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517675
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 US2021045322
(87)【国際公開番号】W WO2022060491
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ブンクイン ジェフリー シー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス ジョシュア ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ナンディ パーサ
(72)【発明者】
【氏名】グズマン ハビエル
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB09A
4G169BB09B
4G169BC01A
4G169BC15A
4G169BC17B
4G169BC20A
4G169BC24A
4G169BC31A
4G169BC32A
4G169BC35A
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC40B
4G169BC41A
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC44B
4G169BC59A
4G169BC60A
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BD02A
4G169BD07A
4G169BD08A
4G169BD08B
4G169CC23
4G169DA06
4G169DA08
4G169EB18X
4G169EC25
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA16
4H006BA20
4H006BA30
4H006BA55
4H006BA85
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC31
4H006BC32
4H006BC40
4H006BE20
4H006BE40
4H039CA19
4H039CA29
4H039CL35
4H129BA12
4H129BB07
4H129BC44
4H129KA15
4H129KB01
4H129KB05
4H129KD02X
4H129KD04Y
4H129KD08Y
4H129KD09Y
4H129KD15X
4H129KD16X
4H129KD17X
4H129KD17Y
4H129KD19X
4H129KD19Y
4H129KD22X
4H129KD22Y
4H129KD24X
4H129KD27X
4H129KD28Y
4H129KD30X
4H129KD31X
4H129KD32X
4H129KD32Y
4H129NA26
4H129NA37
(57)【要約】
シンガスを変換するためのフィッシャー・トロプシュプロセスは、担持ナノ粒子触媒組成物及び/又は金属炭化物/窒化物含有触媒組成物の存在下で高い収率及び選択性で直鎖アルファオレフィンを生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖アルファオレフィン生成物の製造プロセスであって、
(I)シンガスを含むフィードを、変換反応器内で、変換条件下、触媒組成物と接触させて、直鎖アルファオレフィンを含む変換生成物混合物を生成するステップであって、
前記触媒組成物が、
担体と、
前記担体上の複数のナノ粒子と
を含み、ここで、
各ナノ粒子は中心部を含み、前記中心部は、4~100nmの平均粒子サイズ及び20%以下の粒子サイズ分布を有し、前記中心部は、酸素、金属元素M1、場合により硫黄、場合によりリン、任意的金属元素M2、及び場合により第3の金属元素M3を含み、ここで、
M1は、Mn、Fe、Co、及びこれらの2種以上の組み合わせから選択され、
M2は、Ni、Zn、Cu、Mo、W、Ag、及びこれらの組み合わせから選択され、
M3は、Y、Sc、アルカリ金属、ランタニド、第13、14、又は15族元素、及びこれらの組み合わせから選択され、かつ
もしあれば、M2、M3、S、及びPのM1に対するモル比は、それぞれ、r1、r2、r3、及びr4であり、0≦r1≦2、0≦r2≦2、0≦r3≦5、かつ0≦r4≦5である、
ステップと、
(II)前記変換生成物混合物から前記直鎖アルファオレフィン生成物を得るステップと
を含むプロセス。
【請求項2】
0.05≦r1≦0.5、かつ0.005≦r2≦0.5である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記中心部が、M1、M2、及びM3から選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物を含む、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ナノ粒子が、4~20nmの平均粒子サイズを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、5~15%の粒子サイズ分布を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記中心部が、少なくとも2種の金属元素を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、前記中心部の表面に付着した長鎖基を実質的に含まない、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記中心部が、本質的に酸素、M1、場合によりM2、場合によりM3、場合により硫黄、及び場合によりリンから成る、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記中心部が実質的に球状である、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記中心部が棒状である、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
下記事項:
(i)前記フィードが、0.3~3.0、好ましくは0.5~2.5の範囲のH2対COモル比を有する;
(ii)ステップ(I)において、前記変換条件が、
175~350℃、好ましくは180~300℃の範囲の温度と、
100~3,000キロパスカル(絶対)、好ましくは100~2,000キロパスカル(絶対)の範囲の圧力と、
500~10,000時間
-1、好ましくは1,000~5,000時間
-1の範囲のGHSVと
の少なくとも1つを含む;
の少なくとも1つが満たされる、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記プロセスが、ステップ(I)の前に、
(I0)前記触媒組成物をH2含有雰囲気下で活性化するステップ
をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
ステップ(I)において、前記変換生成物混合物が、反応生成物混合物の総モルに基づいて、概して、40~95モル%の直鎖アルファオレフィンを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
ステップ(I)において、下記事項:
(i)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ブテンを含む;
(ii)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ペンテンを含む;
(iii)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ヘキセンを含む;
(iv)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ヘプテンを含む;
(v)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-オクテンを含む;
(vi)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ブタンを含む;
(vii)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ペンタンを含む;
(viii)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ヘキサンを含む;
(ix)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ヘプタンを含む;
(x)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-オクタンを含む;
(xi)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、0~20モル%の2-ブテンを含む;
(xii)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC5内部オレフィンを含む;
(xiii)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC6内部オレフィンを含む;
(xiv)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC7内部オレフィンを含む;及び
(xv)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC8内部オレフィンを含む;
の少なくとも1つが満たされる、請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記変換生成混合物が、実質的に直鎖1-アルコールを含まない、請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記触媒組成物が、
(A)液体媒体と、その中に分布する複数のナノ粒子とを含むナノ粒子分散系であって、各ナノ粒子が中心部を含み、前記中心部は、4~100nmの平均粒子サイズ及び20%以下の粒子サイズ分布を有し、前記中心部は、酸素、金属元素M1、場合により硫黄、場合によりリン、場合により第2の金属元素M2、及び場合により第3の金属元素M3を含み、
ここで、
M1は、Mn、Fe、Co、又はこれらの2種以上の組み合わせから選択され、
M2は、Ni、Zn、Cu、Mo、W、Ag、及びこれらの組み合わせから選択され、
M3は、Y、Sc、アルカリ金属、ランタニド、第13、14、及び15族元素、並びにこれらの組み合わせから選択され、かつ
もしあれば、M2、M3、S、及びPのM1に対するモル比は、それぞれ、r1、r2、r3、及びr4であり、0≦r1≦2、0≦r2≦2、0≦r3≦5、かつ0≦r4≦5である、前記ナノ粒子分散系を準備するステップと、
(B)ある量の前記ナノ粒子分散系を担体上に配置して担持ナノ粒子組成物を得るステップと
を含む触媒製造プロセスによって作られる、請求項1~15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記触媒製造プロセスが、
(C)前記担持ナノ粒子組成物をか焼して触媒組成物を得るステップ
をさらに含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記触媒製造プロセスが、
(D)前記担体、前記担持ナノ粒子組成物、又は前記触媒組成物をプロモーターの前駆体に含浸させて触媒前駆体を得るステップと、
(E)前記触媒前駆体を乾燥させ及び/又はか焼して、プロモーターを含む触媒組成物を得るステップと
をさらに含む、請求項16又は請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
ステップ(A)が、
(A1)第1の分散系を第1の温度で準備するステップであって、前記第1の分散系は、長鎖有機酸とM1の塩、場合により長鎖有機酸とM2の塩、場合により長鎖有機酸とM3の塩、長鎖炭化水素溶媒、場合により第2の有機酸とM1の塩、場合により第3の有機酸とM2の塩、場合により第4の有機酸とM3の塩、場合により前記長鎖炭化水素溶媒に可溶な硫黄又は有機硫黄化合物、及び場合により前記長鎖炭化水素溶媒に可溶な有機リン化合物を含む、ステップと、
(A2)前記第1の分散系を、前記第1の温度より高いが、前記長鎖炭化水素溶媒の沸点以下の第2の温度まで加熱するステップであって、前記長鎖有機酸の塩の少なくとも一部及び存在する場合、前記第2の有機酸の塩の少なくとも一部が、前記長鎖炭化水素溶媒に分散したナノ粒子を含む第2の分散系を形成し、前記ナノ粒子は中心部を含み、前記中心部は、M1、場合によりM2、場合によりM3、酸素、場合により硫黄、及び場合によりリンを含む、ステップと、
(A3)前記ナノ粒子を前記第2の分散系から分離するステップと、
(A4)(A3)で分離された前記ナノ粒子を前記液体媒体に分散させて前記ナノ粒子分散系を形成するステップと
を含む、請求項16~18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記ナノ粒子が、4~20nmの範囲の平均粒子サイズ、及び20%以下の粒子サイズ分布を有する、請求項16~19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
ステップ(A1)、(A2)、(A3)、及び(A4)が同一容器内で行われる、請求項19又は請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記第2の有機酸が、前記第1の温度未満の沸点を有する、請求項16~21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記第1の分散系が、前記長鎖有機酸の塩以外の界面活性剤を実質的に含まない、請求項16~21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記第2の温度が、210℃~450℃の範囲内である、請求項16~23のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記長鎖有機酸及び前記長鎖炭化水素溶媒の1分子当たりの平均炭素原子数が、4を超えて異ならない、請求項16~24のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照することによりその開示全体を本明細書に援用する出願日2020年9月17日を有する米国仮出願第63/079,652号に対する優先権及びその利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は、直鎖アルファオレフィンの製造プロセスに関する。特に、本開示は、触媒組成物の存在下でシンガスから直鎖アルファオレフィンを製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
直鎖アルファオレフィン(「LAO」)は、末端の炭素-炭素二重結合を含む直鎖オレフィンである。LAOは、BF3、AlCl3、及びメタロセン触媒系のようなオリゴマー化触媒の存在下での様々な程度までのそのオリゴマー化による種々の粘度グレードを有する合成潤滑油ベースストック、掘削流体ベースストック等の製造に利用されている。このような合成ベースストックは、ポリアルファオレフィン(「PAO」)と呼ばれることもある。LAOはアルキル化芳香族炭化水素の製造に使用されることもあり、界面活性剤の製造に有用である。さらに、1-ブテン等のLAOは、例えば高密度ポリエチレン、及び直鎖低密度ポリエチレン等のような、種々のグレードのポリエチレンを製造する際にエチレンと共にコモノマーとして使用されている。C4-C8のLAOの重要な用途は、例えば、ヒドロホルミル化を介して直鎖アルデヒドを生成することにあり、これは引き続きアルデヒドの水素化によって可塑剤適用のための短鎖脂肪酸、又は直鎖アルコールに変換され得る。
【0004】
LAOを生成するための1つの手法は、エチレンのオリゴマー化後の分離である。別の手法は、フィッシャー・トロプシュ触媒の存在下でシンガスが液体炭化水素及び/又は酸素化物に変換されるフィッシャー・トロプシュプロセスである。伝統的なフィッシャー・トロプシュ触媒は、Co、Fe、及びReを含む。
合成ガス(シンガス)は、天然ガス及び石炭等の化学原料のアップグレーディングから生成される水素と一酸化炭素の混合物である。シンガスは、化学中間体、例えばオレフィン、アルコール、及び燃料等を含めた付加価値化学製品の生産のために工業的に使用されている。フィッシャー・トロプシュ触媒反応は、付加価値製品へのシンガスの変換のための1つの経路である。一般的に、フィッシャー・トロプシュ触媒反応は、輸送燃料用のガソリン範囲の生成物、ディーゼル燃料に用いられる蒸留物を含む重質有機生成物、及び食糧生産を含めた一連の用途のための高純度ワックスの生産のために鉄及びコバルトの触媒の使用を必要とする。類似触媒は、例えば、ポリマー及び燃料の生産用に使用できるオレフィ及びアルコールを含めた付加価値化学中間体の生産に使用することができる。付加価値化学製品の生産は、パラフィン等の飽和炭化水素の生産を含むことが多い。付加価値化学中間体の生産を目指したフィッシャー・トロプシュ触媒の選択は、第1族及び第2族のカチオン並びに遷移金属を含むプロモーターの添加によって調整してよい。フィッシャー・トロプシュ触媒は、鉄及びコバルトの金属酸化物又は硫化物として調製されている。鉄及びコバルトの触媒は、酸化物、例えばアルミナ、シリカ、若しくは種々の粘土を含む固形担体又は炭素質材料に担持されることが多い。フィッシャー・トロプシュ触媒は、ガソリン範囲の炭化水素及びより軽質の炭化水素を生成するために使用されている。
改善されたフィッシャー・トロプシュ触媒組成物及びLAOの製造プロセスが依然として必要とされている。本開示は、これ及び他の要求を満足させる。
【発明の概要】
【0005】
要約
我々は、サイズ、形状、及び/又は組成が制御されたナノ粒子を作製し、続いて担体材料上に分散させて、LAOの製造に有用なフィッシャー・トロプシュ触媒組成物を製造できることを見出した。我々は、触媒前駆体を分解することによって作られる金属炭化物含有及び/又は金属窒化物含有触媒組成物は、フィッシャー・トロプシュプロセスでLAOを製造するために使用できることをも見出した。
【0006】
本開示の第1の態様は、直鎖アルファオレフィンの製造プロセスであって、
(I)シンガスを含むフィードを、変換反応器内で、変換条件下、触媒組成物と接触させて、直鎖アルファオレフィンを含む変換生成物混合物を生成するステップであって、
この触媒組成物が、
鉄、コバルト、マンガン、及びこれらの2種以上の任意の比率の組み合わせから選択される金属元素M1と、
アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、クロム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド系列、アクチニド系列、及びこれらの2種以上の任意の比率の組み合わせから選択される金属元素M2と、
M1及びM2と異なる任意的金属M3と、
炭素と、
窒素と、
場合により硫黄とを、M2:M3:C:N:S:M1=r1:r2:r3:r4:r5:1で示される、M2、M3、炭素、窒素、及び硫黄のM1に対するそれぞれr1、r2、r3、r4、及びr5のモル比で含み、
ここで、
0.1≦r1≦1.5、
0≦r2≦0.5、
0<r3≦1、
0<r4≦1、かつ
0≦r5≦1である、
ステップと、
(II)変換生成物混合物から直鎖アルファオレフィン生成物を得るステップと
を含むプロセス
に関する。
【0007】
本開示の第2の態様は、直鎖アルファオレフィンの製造プロセスであって、
(I)シンガスを含むフィードを、変換反応器内で、変換条件下、触媒組成物と接触させて、直鎖アルファオレフィンを含む変換生成物混合物を生成するステップであって、
この触媒組成物が、
担体と、
この担体上の複数のナノ粒子と
を含み、ここで、
各ナノ粒子は中心部(kernel)を含み、該中心部は、4~100nmの平均粒子サイズ及び20%以下の粒子サイズ分布を有し、中心部は、酸素、金属元素M1、場合により硫黄、場合によりリン、任意的金属元素M2、及び場合により第3の金属元素M3を含み、ここで、
M1は、Mn、Fe、Co、及びこれらの2種以上の組み合わせから選択され、
M2は、Ni、Zn、Cu、Mo、W、Ag、及びこれらの組み合わせから選択され、
M3は、Y、Sc、アルカリ金属、ランタニド、第13、14、又は15族元素、及びこれらの組み合わせから選択され、かつ
もしあれば、M2、M3、S、及びPのM1に対するモル比は、それぞれ、r1、r2、r3、及びr4であり、0≦r1≦2、0≦r2≦2、0≦r3≦5、かつ0≦r4≦5である、
ステップと、
(II)変換生成物混合物から直鎖アルファオレフィン生成物を得るステップと
を含むプロセスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の7つの二金属鉄含有触媒前駆体のX線回折(「XRD」)パターンを示すグラフである。
【
図2】本開示の3つの三金属コバルト含有触媒前駆体のXRDパターンを示すグラフである。
【
図3】本開示の6つの使用触媒成分のXRDパターンを示すグラフである。
【
図4】本開示の鉄含有触媒前駆体の熱重量分析結果を示すグラフである。
【
図5】本開示のコバルト含有触媒前駆体の熱重量分析結果を示すグラフである。
【
図6】本開示のコバルト含有触媒成分のXRDパターン、及び3つの異なる相に対応する、XRDパターンで特定された3つのピーク群を示すグラフである。
【
図7】
図7に示す触媒成分のXRDパターン、及び7つの追加相に対応する、XRDパターンで特定された7つの追加ピーク群を示すグラフである。
【
図8】
図6及び
図7に示す触媒成分のXRDパターン、並びに3つの追加相に対応する、XRDパターンで特定された3つの追加ピーク群を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本開示では、少なくとも1つの「ステップ」を含むようにプロセスを記述する。各ステップは、プロセスにおいて1回又は連続若しくは不連続様式で複数回行われ得る動作又は操作であることを理解すべきである。特段の記載がないか又は文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、プロセスの複数のステップは、場合によっては、1つ以上の他のステップとの重なりの有無にかかわらず、又はいずれの他の順序でも、記載どおりの順序で連続して行なってよい。さらに、1つ以上又は全てのステップさえ、材料の同一又は異なるバッチに関して同時に行ってよい。例えば、連続プロセスにおいて、プロセスの最初に供給されたばかりの原材料に関してプロセスの第1のステップを行いながら、第1のステップのより早い時点でプロセスに供給された原材料の処理の結果生じた中間材料に関して同時に第2のステップを行ってよい。好ましくは、ステップは、記載した順序で行われる。
【0010】
別段の指示がない限り、本開示において量を指示する全ての数は、全ての場合に用語「約」によって修飾されていると理解すべきである。また、本明細書及び特許請求の範囲で使用する正確な数値は特定の実施形態を構成するものと理解すべきである。実施例のデータの正確さを保証するよう努力した。しかしながら、いずれの測定データも、測定を行うために利用する技術及び機器の限界のため、ある一定レベルの誤差を本質的に含有することを理解すべきである。
本明細書で使用する場合、不定冠詞「a」又は「an」は、特段の記載がないか又は文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、「少なくとも1つ」を意味するものとする。従って「a metal」を含む実施形態には、特段の記載がないか又は文脈が明白に1つのみの金属を指示していない限り、1、2、又は3つ以上の金属を含む実施形態が含まれる。
【0011】
本開示の目的では、元素の命名法は、Chemical and Engineering News, 63(5), pg. 27 (1985)に記載の元素周期表のバージョンに準拠する。原子の略語は、周期表に記載どおりである(例えば、Li=リチウム)。
本明細書では、簡単にするために下記略語を使用することがある。RTは室温であり(かつ別段の指示がない限り、23℃である)、kPagは、キロパスカル(ゲージ)であり、psigは、重量ポンド毎平方インチ(ゲージ)(pound-force per square inch gauge)であり、psiaは、重量ポンド毎平方インチ(絶対)(pound-force per square inch absolute)であり、WHSVは、質量毎時空間速度(weight hourly space velocity)であり、GHSVは、ガス毎時空間速度(gas hourly space velocity)である。原子の略語は、周期表に記載どおりである(例えば、Co=コバルト)。
【0012】
特別の定めのない限り、「から本質的に成る」及び「から本質的に成ること」という表現は、本明細書に具体的に記載されているか否かにかかわらず、他のステップ、元素、又は材料の存在を、該ステップ、元素、又は材料が本開示の基本的かつ新規な特徴に影響を与えない限り、排除しない。さらに、それらは、使用元素及び材料に一般的に付随する不純物及び変動を排除しない。本開示の成分「から本質的に成る」とは、例えば、該成分を含む組成物の総質量に基づいて、質量で、少なくとも80wt%の所与の材料を含むことを意味し得る。
本開示及びそれに対する請求の目的では、用語「置換された」は、問題になっている化合物又は基の水素原子が、水素以外の基又は原子で置き換えられたことを意味する。置き換わる基又は原子は置換基と呼ばれる。置換基は、例えば、置換若しくは非置換ヒドロカルビル基、ヘテロ原子、ヘテロ原子含有基等であり得る。例えば、「置換ヒドロカルビル」は、ヒドロカルビル基の少なくとも1個の水素を非水素原子又は基で置換することによって炭素と水素でできたヒドロカルビル基に由来する基である。ヘテロ原子は、窒素、硫黄、酸素、ハロゲン等であり得る。
用語「ヒドロカルビル」、「ヒドロカルビル基(group)」、又は「ヒドロカルビル基(radical)は、互換的に炭素原子と水素原子から成る基を意味する。本開示の目的では、「ヒドロカルビル基(radical)」は、直鎖、分岐、又は環状であってよく、環状のときは芳香族又は非芳香族であってよいC1-C100基であると定義される。
【0013】
用語「融点」(mp)は、物質の固体形態と液体形態が760mmHgにて平衡状態で存在できる温度を指す。
用語「沸点」(bp)は、物質の液体形態と気体形態が760mmHgにて平衡状態で存在できる温度を指す。
所与の温度で所与の溶媒中の所与の溶質に関して「可溶性」は、1気圧の圧力下で1質量部の溶質を溶解させるのに最大で100質量部の溶媒が必要とされることを意味する。所与の温度で所与の溶媒中の所与の溶質に関して「不溶性」とは、1気圧の圧力下で1質量部の溶質を溶解させるのに100質量部超の溶媒が必要とされることを意味する。
用語「分岐炭化水素」は、少なくとも4個の炭素原子と、3個の炭素原子に結合している少なくとも1個の炭素原子とを含む炭化水素を意味する。
用語「オレフィン性(olefinicity)」は、検出されたパラフィンの合計に対するオレフィンの合計のモル比を指す。オレフィン性は、オレフィン/パラフィンモル比が増加すると上昇する。オレフィン性は、オレフィン/パラフィンモル比が減少すると低下する。
【0014】
用語「アルキル」、「アルキル基(group)」、及び「アルキル基(radical)は、互換的に飽和一価ヒドロカルビル基を意味する。「環状アルキル」は、少なくとも1つの環状炭素鎖を含むアルキルである。「非環状アルキル」は、その中にいずれの環状炭素鎖もないアルキルである。「直鎖アルキル」は、単一の非置換直線炭素鎖を有する非環状アルキルである。「分岐アルキル」は、少なくとも2つの炭素鎖と、3個の炭素原子に結合している少なくとも1個の炭素原子とを含む非環状アルキルである。アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル等をそれらの置換類似体を含めて含み得る。
用語「Cn」(nは正の整数である)化合物又は基は、その中に数nで炭素原子を含む化合物又は基を意味する。「Cm-Cn」アルキルは、その中にm~nの範囲の数で炭素原子を含むアルキル基、又は該アルキル基の混合物を意味する。従って、C1-C3アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、又は1-メチルエチルを意味する。用語「Cn+」化合物又は基(nは正の整数である)は、その中にn以上の数で炭素原子を含む化合物又は基を意味する。用語「Cn-」化合物又は基(nは正の整数である)は、その中にn以下の数で炭素原子を含む化合物又は基を意味する。
【0015】
用語「転化率」は、ある特定の反応(例えば、脱水素、水素化等)における所与の反応物が生成物に変換される程度を指す。従って一酸化炭素の転化率100%は、一酸化炭素の完全な消費を意味し、一酸化炭素の転化率0%は、一酸化炭素の反応が測定不能であることを意味する。
用語「選択性」は、ある特定の反応が、別の生成物ではなく、特定の生成物を形成する程度を意味する。例えば、シンガスの変換について、C1-C4アルコールに対する50%の選択性は、形成された生成物の50%がC1-C4アルコールであり、C1-C4アルコールに対する100%の選択性は、形成された生成物の100%がC1-C4アルコールであることを意味する。選択性は、特定反応の転化率に関係なく、形成された生成物に基づく。
用語「ナノ粒子」は、0.1~500ナノメートルの範囲の最大寸法を有する粒子を意味する。
【0016】
用語「長鎖」は、直線炭素鎖に結合される可能性のあるいずれの分枝の如何なる炭素原子をも除いて少なくとも8個の炭素原子を有する直線炭素鎖を含むことを意味する。従って、n-オクタン及び2-オクタンは長鎖アルカンであるが、2-メチルヘプタンは長鎖アルカンでない。長鎖有機酸は、直線炭素鎖に結合される可能性のあるいずれの分枝の如何なる炭素原子をも除いて少なくとも8個の炭素原子を有する直線炭素鎖を含む有機酸を意味する。従って、オクタン酸は長鎖有機酸であるが、6-メチルヘプタン酸は長鎖有機酸でない。
用語「有機酸」は、プロトンを供与する能力がある有機ブレンステッド酸を意味する。有機酸としては、任意の適切な鎖長のカルボン酸;炭素含有スルフィン酸、スルホン酸、ホスフィン酸、及びホスホン酸;ヒドロキサム酸、並びに一部の実施形態では、アミジン、アミド、イミド、アルコール、及びチオールが挙げられる。
【0017】
用語「界面活性剤」は、それが溶解している液体の表面張力を減じる能力がある物質を意味する。界面活性剤は、例えば、洗浄剤、乳化剤、消泡剤、及び分散剤に用途を見出し得る。
用語「直鎖アルファオレフィン」又は「LAO」は、互換的に末端C=C結合を含む直鎖オレフィンを意味する。用語「直鎖内部オレフィン」又は「LIO」は、互換的に末端C=C結合のない直鎖オレフィンを意味する。LAO生成物は、1種以上のLAOを含み、本質的に1種以上のLAOから成り、又は1種以上のLAOから成り得る。例えば、LAO生成物は、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、若しくはこれらの混合物を含み、本質的にこれらから成り、又はこれらから成り得る。
本開示の第1の態様のナノ粒子を含む組成物、第2の態様のナノ粒子の製造プロセス、及び第3の態様の触媒組成物を含め、本開示のナノ粒子及び触媒組成物の詳細な説明を以下に提供する。
【0018】
I. 本開示の第1の態様
本開示の第1の態様は、一般的にシンガスからLAOを製造するプロセスであって、
(I)シンガスを含むフィードを、変換反応器内で、変換条件下、触媒組成物と接触させて、直鎖アルファオレフィンを含む変換生成物混合物を生成するステップであって、
この触媒組成物が、
鉄、コバルト、マンガン、及びこれらの2種以上の任意の比率の組み合わせから選択される金属元素M1と、
アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、クロム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド系列、アクチニド系列、及びこれらの2種以上の任意の比率の組み合わせから選択される金属元素M2と、
M1及びM2と異なる任意的金属M3と、
炭素と、
窒素と、
場合により硫黄とを、M2:M3:C:N:S:M1=r1:r2:r3:r4:r5:1で示される、M2、M3、炭素、窒素、及び硫黄のM1に対するそれぞれr1、r2、r3、r4、及びr5のモル比で含み、
0.1≦r1≦1.5、
0≦r2≦0.5、
0<r3≦1、
0<r4≦1、かつ
0≦r5≦1である、
ステップと、
(II)変換生成物混合物から直鎖アルファオレフィン生成物を得るステップと
をの1つ以上を含むプロセスに関する。
本開示の第1の態様のプロセスのさらなる詳細を以下に記載する。
【0019】
I.1 触媒組成物
本開示の触媒組成物では、好ましくはM1は、鉄、コバルト、鉄とコバルトの任意の比率の組み合わせ、鉄とマンガンの任意の比率の組み合わせ、コバルトとマンガンの任意の比率の組み合わせ、及び鉄と、コバルトと、マンガンとの任意の比率の組み合わせから選択される。特定実施形態では、M1は、コバルト又は鉄の単一金属である。M1がコバルトとマンガンの二元混合物/組み合わせを含む場合、好ましくはコバルトはマンガンより高いモル比率で存在する。M1が鉄とマンガンの二元混合物/組み合わせを含む場合、好ましくは鉄はマンガンより高いモル比率で存在する。特定の理論によって束縛されるつもりはないが、M1の存在が、本開示の第1の態様の触媒組成物の触媒成分の触媒効果の少なくとも一部をもたらすと考えられる。
【0020】
好ましくはM2は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、クロム、スカンジウム、イットリウム、及びランタニド系列から選択される。さらに好ましくはM2は、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、及びランタニド系列から選択される。本開示の第1の態様の触媒組成物に特に望ましいランタニド系列としては、限定するものではないが、La、Ce、Pr、Nd、Gb、Dy、Ho、及びErが挙げられる。特定の理論によって束縛されるつもりはないが、M2の存在が、本開示の触媒組成物におけるM1の触媒効果を増進させると考えられる。
本開示の触媒組成物におけるM3の存在は任意的である。存在する場合、M3は、好ましくはアルカリ金属、銅、銀、並びにこれらの2種以上の任意の比率の任意の組み合わせ及び混合物から選択される。特定の実施形態では、M3は、銅、銀、及びその混合物/組み合わせから選択される。特定の理論によって束縛されるつもりはないが、金属M3の存在が、本開示の触媒組成物の触媒効果を増進させ得ると考えられる。
【0021】
金属炭化物、例えば炭化鉄及び炭化コバルトは、シンガスを変換して種々の有機化合物を製造するための触媒として報告されている。本開示の触媒組成物は、炭素を含む触媒成分を含む。本開示の触媒組成物の触媒成分に、炭素が金属の炭化物として少なくとも部分的に存在してよいと考えられる。金属炭化物の存在は、触媒組成物のXRDグラフによって示され得る。「金属炭化物」によって、単一金属、又は2種以上の金属M1、M2、及び/若しくはM3の組み合わせの炭化物を含めることを意味する。望ましくは触媒成分は、単一金属、又はM1、及び/若しくはM2の2種以上の金属の組み合わせの炭化物を含む。望ましくは触媒成分は、単一金属、又はM1の2種以上の金属の組み合わせの炭化物を含む。望ましくは触媒成分は、炭化鉄、炭化コバルト、炭化マンガン、(混合鉄コバルト)炭化物、(混合鉄マンガン)炭化物、混合(コバルトマンガン)炭化物、及び混合(コバルト、鉄、及びマンガン)炭化物の1つ以上を含む。望ましくは、触媒成分は、単一金属、又M2(例えば、イットリウム及びランタニド)の2種以上の組み合わせの炭化物を含む。触媒成分は、M1及びM2を含む金属混合物の炭化物を含んでよい。触媒組成物物中の炭化物相の存在の確認は、触媒組成物のXRDデータを既知炭化物のXRDピークデータベース、例えばInternational Center for Diffraction Data(「ICDD」)から入手可能なものと比較することによって行うことができる。
【0022】
本開示の第1の態様のシンガスを変換するための触媒組成物の新規特徴は、触媒組成物の触媒成分中に、炭素に加えて、窒素が存在することにある。本開示の触媒組成物の触媒成分に、窒素が金属の窒化物として部分的に存在してよいと考えられる。金属窒化物の存在は、触媒組成物のXRDグラフによって示され得る。「金属窒化物」によって、単一金属、又はM1、M2、及びM3の2種以上の金属の組み合わせの窒化物を含めることを意味する。望ましくは触媒成分は、単一金属、又はM1、及び/若しくはM2の2種以上の金属の組み合わせの窒化物を含む。望ましくは触媒成分は、単一金属、又はM1の2種以上の金属の組み合わせの窒化物を含む。望ましくは触媒は、窒化鉄、窒化コバルト、窒化マンガン、(混合鉄コバルト)窒化物、(混合鉄マンガン)窒化物、混合(コバルトマンガン)窒化物、及び混合(コバルト、鉄、及びマンガン)窒化物の1つ以上を含む。望ましくは、触媒成分は、単一金属、又はM2(例えば、イットリウム及びランタニド)の2種以上の金属の組み合わせの窒化物を含む。触媒成分は、M1及びM2を含む金属混合物の窒化物を含んでよい。触媒組成物中の窒化物相の存在の確認は、触媒組成物のXRDデータを既知窒化物のXRDピークデータベースと比較することによって行うことができる。
【0023】
本開示の触媒組成物は、場合によりその触媒成分に硫黄を含んでよい。特定の理論によって束縛されるつもりはないが、特定実施形態では、硫黄の存在が、触媒組成物の触媒効果を増進させる可能性がある。硫黄は、M1、M2、及び/又はM3の1種以上の金属の硫化物として存在してよい。
特定の実施形態では、本開示の触媒組成物の触媒成分は、本質的にM1、M2、M3、炭素、窒素、及び場合により硫黄から成り、例えば、触媒成分の総質量に基づいて、≧85、又は≧90、又は≧95、又は≧98wt%、又は≧99wt%さえのM1、M2、M3、炭素、窒素、及び場合により硫黄を含む。
本開示の触媒組成物の触媒成分中のM1に対するM2、M3、炭素、窒素、及び硫黄のモル比、それぞれr1、r2、r3、r4、及びr5は、問題になっている元素の総モル量から計算される。従って、M1が2種以上の金属の組み合わせ/混合物である場合、全ての金属M1の総モル量が比の計算に用いられる。M2が2種以上の金属の組み合わせ/混合物である場合、全ての金属M2の総モル量が比r1の計算に用いられる。M3が2種以上の金属の組み合わせ/混合物である場合、全ての金属M3の総モル量が比r2の計算に用いられる。
【0024】
好ましくは、本開示の触媒組成物の触媒成分中のM1に対するM2のモル比r1は、r1a~r1bの範囲であり得、r1a及びr1bは、r1a<r1bである限り、独立に、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4又は1.5であり得る。さらに好ましくはr1a=0.8、r1b=1.2であり、もっとさらに好ましくはr1a=0.9、r1b=1.1である。1つの特に有利な実施形態では、r1は1.0に近く(例えば、0.95~1.05)、M1及びM2が、実質的に等モル量で存在することを意味する。
好ましくは、本開示の触媒組成物の触媒成分中のM1に対するM3のモル比r2は、r2a~r2bの範囲であり得、r2a及びr2bは、r2a<r2bである限り、独立に、例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5であり得る。従って存在する場合、M3は、M1より実質的に低モル量で存在する。
好ましくは、本開示の触媒組成物の触媒成分中のM1に対する炭素のモル比r3はr3a~r3bであり得、r3a及びr3bは、r3a<r3bである限り、独立に、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1.0であり得る。
好ましくは、本開示の触媒組成物の触媒成分中のM1に対する窒素のモル比r4はr4a~r4bであり得、r4a及びr4bは、r4a<r4bである限り、独立に、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1.0であり得る。
好ましくは、本開示の触媒組成物の触媒成分中のM1に対する硫黄のモル比r5はr5a~r5bであり得、r5a及びr5bは、r5a<r5bである限り、独立に、例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0であり得る。好ましくはr5a=0かつr5b=0.5である。もっとさらに好ましくはr5a=0かつr5b=0.3である。
【0025】
特定の実施形態では、金属M1は、触媒成分に実質的に均一に分布され得る。さらに及び/又は代わりに、金属M2は、触媒成分に実質的に均一に分布され得る。さらに及び/又は代わりに炭素は、触媒成分に実質的に均一に分布され得る。もっとさらに及び/又は代わりに、窒素は、触媒成分に実質的に均一に分布され得る。
金属炭化物及び/又は金属窒化物が触媒成分に高度に分散されることが非常に有利である。金属炭化物及び/又は金属窒化物は、触媒成分に実質的に均一に分布され、結果として高度に分散された分布をもたらし、触媒成分の高い触媒活性に寄与することができる。
【0026】
特定の理論によって束縛されるつもりはないが、触媒成分中の金属炭化物、金属窒化物、及びおそらくM1の元素相が、シンガス変換プロセスのような化学変換プロセスに望ましい触媒活性をもたらすと考えられる。M2及び/又はM3の1種以上も同様に直接的触媒機能を与えることができる。さらに、M2及び/又はM3の1種以上が、触媒成分中の「プロモーター」の機能を果たすことができる。さらに、硫黄は、存在する場合、同様に触媒成分中の「プロモーター」の機能を果たすことができる。プロモーターは、典型的に触媒の1つ以上の性能特性を改善する。触媒にプロモーターを含めることによって、プロモーターのない触媒組成物に比べて増強される触媒性能の特性例としては、選択性、活性、安定性、寿命、再生性、削減可能性(reducibility)、並びに硫黄、窒素、及び酸素等の不純物による潜在被毒に対する耐性が挙げられる。
本開示の触媒組成物は、本質的に本開示の触媒成分から成り得る。例えば、触媒組成物の総質量に基づいて、≧85、又は≧90、又は≧95、又は≧98、又は≧99wt%さえの該触媒成分を含む。該触媒組成物は、それが、その組成にたとえあったとしても少量のキャリア又は担体材料を含むという点で「バルク触媒」とみなしてよい。バルク触媒は、後述するように、触媒前駆体から熱分解によって便利に製造可能である。
【0027】
本開示の触媒組成物は、触媒担体材料(キャリア又はバインダーと呼ばれることもある)を、任意の適切な量、例えば、触媒組成物の総質量に基づいて、≧20、≧30、≧40、≧50、≧60、≧70、≧80、≧90wt%、又は≧95wt%さえの量で含み得る。担持触媒組成物においては、触媒成分は、望ましくは触媒担体材料の内面又は外面に配置され得る。触媒担体材料は、機械的強度及び高表面積を与える多孔性材料を含んでよい。適切な担体の非限定例としては、酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、及びこれらの混合物)、処理酸化物(例えば硫酸化)、結晶性微孔質材料(例えばゼオライト)、非結晶性微孔質材料、カチオン性粘土又はアニオン性粘土(例えばサポナイト、ベントナイト、カオリン、海泡石、ハイドロタルサイト)、炭素質材料、又はこれらの組み合わせ及び混合物を挙げることができる。担体上の触媒成分の沈着は、例えば、初期含浸によって達成することができる。担体材料は、触媒組成物のバインダーと呼ばれることもある。
【0028】
I.2 触媒前駆体
本開示の触媒組成物の触媒成分又は触媒組成物自体は、触媒前駆体から生成され得る。本開示の別の態様である触媒前駆体は、下記式(F-PM-1)を有する第1の前駆体成分、下記式(F-PM-2)を有する第2の前駆体成分、又は第1の前駆体成分と第2の前駆体成分の両方の混合物若しくは組み合わせを含む。
Md
q-p(MaLq)k (F-I-1)
MeLx (F-I-2)
式中、Maは、マンガン、鉄、コバルト、並びにこれらの2種以上の任意の比率の組み合わせ及び混合物から選択される、+p原子価の金属元素であり、Lは、各存在で同一又は異なり、(F-PM-1)では、CN-、OCN-、及びSCN-から選択される配位子であり、Maは、平均してq単位のLと錯化してp-q平均原子価の錯アニオンを形成し、Mbは、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、鉄、コバルト、クロム、マンガン、スカンジウム、イットリウム、ランタニド系列、アクチニド系列、及びこれらの2種以上の任意の比率の任意の組み合わせ又は混合物から選択される金属元素であり、+m原子価のカチオンを与え、jは整数又は非整数であり、m-1≦j≦mであり、mは2、3、4、5、又は6であり、pは2、3、4、又は5であり、qは整数又は非整数であり、かつ2≦q≦6である。
【0029】
特定の実施形態では、式(F-PM-1)を有する第1の前駆体成分は、室温で脱イオン水に不溶性の固体であり、及び/又は式(F-PM-2)を有する第2の前駆体成分は、室温で脱イオン水に不溶性の固体である。第1の前駆体成分及び/又は第2の前駆体成分の固体は、該固体と溶媒を含むゲル中の固体粒子又は固体の形態で存在してよい。本開示の目的では、ゲルは不溶性固体を含む分散系とみなされる。
特定の実施形態では、第1の前駆体成分は、m=q-pである式(F-PM-1)を有し、この場合式(F-PM-1)をMb(MaLq)と簡略化することができる。該実施形態の一例では、m=q-p=3、q=6、及びp=3であり、この場合式(F-PM-1)をMb(MaL6)と簡略化することができる。第1の前駆体成分の具体的な非限定例としては、ME(III)[Fe(III)(CN)6]、ME(III)[Fe(III)(OCN)6]、ME(III)[Fe(III)(SCN)6]、ME(III)[Fe(II)(CN)5]、ME(III)[Fe(II)(OCN)5]、ME(III)[Fe(II)(SCN)5]、ME(III)[Co(III)(CN)6]、ME(III)[Co(III)(OCN)6]、ME(III)[Co(III)(SCN)6]、ME(III)[Co(II)(CN)5]、ME(III)[Co(II)(OCN)5]、及びME(III)[Co(II)(SCN)5]が挙げられ、式中、MEは、スカンジウム、イットリウム、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ランタニド、及びアクチニドから選択される金属元素である。
【0030】
式(F-PM-1)を有する第1の前駆体成分及び/又は式(F-PM-2)を有する第2の前駆体成分を含む触媒前駆体は、各Mb金属原子がq単位の配位子Lと結合し、これらの配位子はいずれの他の金属原子とも結合していない、式(F-PM-1)を有するイオン化合物及び/又は各Ma及びMb金属原子がm単位の配位子Lと結合し、これらの配位子はいずれの他の金属原子とも結合していない、式(F-PM-2)を有するイオン化合物となり得る。
式(F-PM-1)を有する第1の前駆体成分は、1個のMa金属原子が、平均して、q単位の配位子と結合し、これらの配位子の少なくともいくつかが別の金属原子と結合する可能性があるイオンネットワークとなり得る。このような1個だけの金属原子と結合する能力がある配位子は単座配位子と呼ばれ、2個の金属原子と結合する能力がある配位子は二座配位子と呼ばれ、3個の金属原子と結合する能力がある配位子は三座配位子と呼ばれる。イオンネットワークとなる式(F-PM-1)中の数qは、整数又は非整数であり得る。イオンネットワークは、望ましくは室温及び1気圧で水に不溶性である。CN-、OCN-及びSCN-配位子が二座であると仮定すると、このようなCN-、OCN-及び/又はSCN-配位子を含む第1の前駆体成分は、数qが整数ではなく非整数であり得る式(F-PM-1)を有するネットワーク固体を形成し得る。該ネットワーク固体は、水等の溶媒に分散されてゲルを形成することができる。望ましくはネットワーク内の配位子の負電荷がMaカチオンの正電荷によって平衡が保たれ、電気的に中性のネットワークを形成し、これが水等の溶媒に分散されたゲルの形態となり得る。
【0031】
同様の、式(F-PM-2)を有する第2の前駆体成分は、1個のMb金属原子が、平均して、j単位の配位子と結合しているイオンネットワークとなる可能性があり、jは、m-1からm未満までの任意の数であり得る。二座配位子の少なくともいくつかは別の金属原子と結合することができる。望ましくはネットワーク内の配位子の負電荷がMaカチオンの正電荷によって平衡が保たれ、電気的に中性のネットワークを形成し、これが水等の溶媒に分散されたゲルの形態となり得る。
式(F-PM-1)を有する第1の前駆体成分と式(F-PM-2)を有する第2の前駆体成分との混合物は、Ma及びMbが、平均してそれぞれq単位の配位子及びj単位の配位子と結合している、相互接続されたイオンネットワークを形成することができる。望ましくはネットワーク内の配位子の負電荷は、Ma及びMbカチオンの正電荷によって平衡が保たれ、電気的に中性のネットワークを形成し、これが水等の溶媒に分散されたゲルの形態となり得る。
触媒前駆体に存在する上記イオンネットワークは、ネットワーク内の特定の場所でMa及びMbカチオンと結合している配位子と完全には電気的に平衡が保たれていないMa及びMbカチオンを含む可能性がある。このような場合、追加のカチオン、例えばアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、プロトン等をネットワークに取り込ませてネットワークを電気的に平衡させてよい。
【0032】
I.3 触媒前駆体の製造プロセス
本開示の別の態様は、本開示の態様として上述した触媒前駆体のような触媒前駆体の製造プロセスに関する。このプロセスは、
(i)下記式(F-I-1)を有する第1の化合物、及び/又は下記式(F-1-2)を有する第2の化合物、又は第1の化合物と第2の化合物の混合物を含む第1の材料を準備するステップであって、
Md
q-p(MaLq)k (F-I-1)
MeLx (F-I-2)
式中、Maは、マンガン、鉄、コバルト、並びにこれらの2種以上の任意の比率の組み合わせ及び混合物から選択される+p原子価の金属元素であり、各存在で同一又は異なるLは、CN-、OCN-、及びSCN-から選択される配位子であり、Maは、平均してq単位のLと錯化してp-q平均原子価の錯アニオンを形成し、Mdは、+k原子価のカチオンを与える金属元素又は基であり、Meは、+x原子価のカチオンを与える金属元素又は基であり、ここで、pは2、3、4、又は5であり、2≦q≦6であり、kは1、2、3、4、5、又は6であり、かつxは1、2、3、4、5、又は6である、
ステップと、
(ii)下記式(F-II):
Mb
nAm (F-II)
を有する第2の材料を準備するステップであって、
式中、Mbは、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、鉄、コバルト、クロム、マンガン、スカンジウム、イットリウム、ランタニド系列、アクチニド系列、及びこれらの2種以上の任意の比率の任意の組み合わせ又は混合物から選択される+m原子価の金属元素であり、Aは、-n原子価のアニオンであり、ここで、Aは、(F-I-1)中の錯アニオンとは異なり、mは2、3、4、5、又は6であり、かつnは1、2、3、4、5、又は6である、
ステップと、
(iii)第1の材料と第2の材料を反応させて、下記式(F-PM-1)を有する第1の前駆体成分、又は下記式(F-PM-2)を有する第2の前駆体成分、又は第1の前駆体成分と第2の前駆体成分の両方の混合物若しくは組み合わせを含む第1の固体前駆体を得るステップであって、
Md
q-p(MaLq)k (F-I-1)
MeLx (F-I-2)
式中、jは整数又は非整数であり、かつm-1≦j≦mである、
ステップとを含む。
【0033】
特に有利な実施形態では、第1の化合物及び第2の化合物は、20~80℃の範囲の温度で水溶性、好ましくは室温で水溶性である。これらの実施形態では、望ましくはMd及びMeは、独立に、それぞれ(F-I-1)及び(F-I-2)中のアルカリ金属イオン、プロトン、又はアンモニウム基を形成する。第1の材料及び/又は第2の材料を固体形態で混合して、溶媒の使用を必要としない第1の固体前駆体を生成することができる。望ましくは、第1の化合物及び/又は第2の化合物を水等の溶媒に分散(例えば、溶解)されて化合物(F-I-1)及び/又は(F-I-2)の分散系(例えば、溶液、懸濁液、及び/又はコロイド系)を形成し、これが次に式(F-II)を有する第2の材料と接触及び反応させられる。水は、その環境適合性及び低い安定性リスクのため他の溶媒に比べて好ましい溶媒である。第1の化合物及び/又は第2の化合物の該分散系は、溶媒に分布されたゲルの形態を取り得る。
【0034】
式(F-II)を有する第2の材料では、Aは、アニオン、例えばNO3
-、ハロゲンアニオン、CH3COO-、クエン酸アニオン等であり得る。望ましくは、式(F-II)を有する第2の材料は、水溶性化合物、例えば金属Mbの塩、例えば、硝酸塩、亜硝酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、酢酸塩、クエン酸塩等である。望ましくは、第1の材料の液体分散系(例えば水溶液、水性懸濁液、又は水性コロイド系)を第2の材料の液体分散系(例えば水溶液、水性懸濁液、又は水性コロイド系)と組み合わせて、液相から沈殿し、液相から分離可能な第1の固体前駆体を生成する。或いは、第1の材料の液体分散系を第2の材料の固体と組み合わせ、混合し、反応させて第1の固体前駆体を形成することができ、逆もまた同様である。
第1の前駆体は、式(F-PM-1)によって表される化合物の固体、及び/又は式(F-PM-2)によって表される化合物の固体、及び/又は式(F-PM-1)によって表される材料と式(F-PM-2)によって表される材料の混合物の固体を含み得る。
第1の前駆体は、本開示の態様として前駆体材料に関連して上述したものと実質的に同一又は類似する、式(F-PM-1)を有するイオンネットワーク、及び/又は式(F-PM-2)を有するイオンネットワークを含み得る。該イオンネットワークは、それ自体、水等の溶媒に分散したゲルとして現れることがある。
第1の前駆体は、本開示の態様として前駆体材料に関連して上述したものと実質的に同一又は類似する、式(F-PM-1)と式(F-PM-2)によって一緒にまとめて表すことができる部分の混合物及び/又は組み合わせを有する相互接続イオンネットワークを含み得る。
【0035】
触媒前駆体の製造プロセスは、金属元素Mcを含む第3の材料を第1の固体前駆体に添加して第2の固体前駆体を得るステップ(iv)をさらに含むことができる。第3の材料が、Mcの水溶性化合物であることが非常の望ましい。例えば、第3の材料は、金属Mcの硝酸塩、亜硝酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、酢酸塩、クエン酸塩等、又はこれらの混合物若しくは組み合わせであり得る。
ステップ(iv)は、少なくとも部分的にステップ(iii)と同時に達成することができ、ここで、第1の材料、第2の材料及び第3の材料が組み合わされ、ステップ(iii)の後に、第1の固体前駆体が液体分散系の液相から分離され、第1の固体前駆体が、ある量の第3の材料を運ぶ。さらに又は代わりに、ステップ(iv)は、少なくとも部分的にステップ(iii)の後に達成可能であり、プロセスは、ステップ(iii)の後に、(iiia)第1の固体前駆体を液体分散系の液相から分離するステップと、(iiib)場合により、分離された第1の固体前駆体を溶媒を用いて洗浄するステップと、その後に、(iiic)分離された第1の固体前駆体を液体中の第3の材料の分散系に含浸させるステップとをさらに含む。さらに特定の実施形態では、プロセスは、ステップ(iiic)の後に、含浸された第1の固体前駆体を乾燥させ及び/又はか焼して第2の固体前駆体を得るステップをさらに含むことができる。好ましい液体分散系は、溶媒として、さらに好ましくは唯一の溶媒として水を含む水性分散系である。
【0036】
触媒前駆体のユニークな製造プロセスのため、金属Ma、及び/又はMb及び/又はMcは、触媒前駆体に実質的に均一に分布され得る。従って炭素及び窒素原子が分布され得る(So can the carbon and nitrogen atoms)。金属Ma及び/又はMbの原子は配位子CN-、SCN-、及びOCN-中の炭素及び/又は窒素原子に直接結合され得る。触媒前駆体における金属原子の均一分布は、後述するように、それらから熱分解を経て作られる触媒成分におけるそれらの均一分布を可能にする。
金属炭化物及び/又は金属窒化物が触媒成分に高度に分散されることが非常に有利である。金属炭化物及び/又は金属窒化物は、触媒成分に実質的均一に分布され、高度に分散された分布をもたらし、これが触媒成分の高い触媒活性に寄与することができる。
【0037】
I.4 触媒成分及び触媒組成物の生成
触媒成分を得るため、上記説明に準拠して作られた触媒前駆体にさらにステップ(v):
(v)第1の固体前駆体及び/又は第2の固体前駆体を200℃以上、好ましくは200~800℃の範囲の温度で、不活性雰囲気の存在下で少なくとも1分にわたって加熱して触媒成分を得るステップ
を施すことができる。
第1の固体前駆体及び/若しくは第2の固体前駆体を保護する不活性雰囲気及び熱分解完了後の触媒成分には、第1の固体前駆体及び/又は第2の固体前駆体を酸化できるガス、例えば酸素は存在しない。不活性雰囲気には、第1の固体前駆体及び/又は第2の固体前駆体を還元できるガス、例えば水素が存在しないことが望ましい可能性がある。不活性雰囲気が低い水分圧を有するガスの流れるストリームであることが望ましい可能性がある。従って、不活性雰囲気は、窒素ガス、アルゴン、ヘリウム、ネオン、これらの2つ以上の混合物等を含んでよい。
【0038】
次に第1の前駆体及び/又は第2の前駆体材料がT1~T2℃の高温に加熱される。ここで、T1及びT2は、T1<T2である限り、独立に、例えば、200、250、300、350、400、450、500、550、600、700、750、800、850、900、950、又は1000であり得る。好ましくはT1=200、かつT2=800である。さらに好ましくはT1=200、かつT2=600である。もっとさらに好ましくはT1=300、かつT2=500である。このような高温で、第1の前駆体及び/又は第2の前駆体が少なくとも1分にわたって不活性雰囲気の保護下で加熱される。好ましくは、加熱時間は、t1~t2時間の範囲であり得る。ここで、t1及びt2は、t1<t2である限り、独立に、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、4、5、6、8、10、12、14、15、16、18、20、22、24、25、26、28、30、32、34、35、36、38、40、42、44、45、46、又は48であり得る。
第1の前駆体及び/又は第2前駆体の高熱分解温度への加熱時間にわたる曝露は、触媒成分を得るためのそれらの熱分解をもたらす。加熱時間が完了したら、触媒成分をそのまま触媒組成物として変換反応器内で使用するか、又は不活性雰囲気の保護下で冷却した後に、それを触媒組成物の他の成分、例えばバインダー、担体、共触媒等と組み合わせて触媒組成物を作ることができる。
【0039】
ステップ(v)でこのようにして調製された触媒成分は、望ましくはMa、Mb、場合によりMc、炭素、窒素、及び場合により硫黄を、Mb:Mc:C:N:S:Ma=r1:r2:r3:r4:r5:1に示される、それぞれMaに対するMb、Mc、炭素、窒素、及び硫黄のr1、r2、r3、r4、及びr5のモル比で含むことができ、ここで、
0.1≦r1≦1.5、
0≦r2≦0.5、
0<r3≦1、
0<r4≦1、かつ
0≦r5≦1であり、
式中、Maは、マンガン、鉄、コバルト、並びにこれらの2種以上の任意の比率の組み合わせ及び混合物から選択され、Mbは、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、クロム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド系列、アクチニド系列、及びこれらの2種以上の任意の比率の任意の組み合わせ又は混合物から選択され、Mcは、アルカリ金属、銅、銀、及びこれらの2種以上の任意の比率の任意の組み合わせ又は混合物から選択される。
【0040】
触媒成分のXRDによって決定されるように、触媒成分中の炭素の少なくとも一部がMa、Mb、及びMcの1種以上の金属炭化物として存在し、及び/又は触媒成分中の窒素の少なくとも一部がMa、Mb、及びMcの1種以上の金属窒化物として存在することが望ましい可能性がある。さらに望ましくは、触媒成分のXRDによって決定されるように、触媒成分中の炭素の少なくとも一部がMa及びMbの1種以上の金属炭化物として存在し、及び/又は触媒成分中の窒素の少なくとも一部がMa及びMbの1種以上の金属窒化物として存在する。特定の理論によって束縛されるつもりはないが、金属炭化物及び金属窒化物の存在が、本開示の触媒組成物中の触媒成分の触媒効果に少なくとも部分的に利益をもたらすと考えられる。
触媒前駆体の製造プロセス及び触媒組成物の製造プロセスを利用することによって、驚いたことに金属炭化物、金属窒化物、又は両方の組み合わせを含む触媒組成物を、800℃以下の低温で、CN-、OCN-、及び/又はSCN-の形態で炭素と窒素を両方含む第1の固体前駆体及び/又は第2の固体前駆体の熱分解によって作ることができる。特定の理論によって束縛されるつもりはないが、このような低処理温度は、第1の固体前駆体及び第2の固体前駆体の構造における互いに極めて接近した金属、炭素、及び窒素原子の存在によって可能になる。
【0041】
触媒前駆体における金属原子Ma及びMbの実質的に均一な分布のため、金属原子と触媒前駆体の配位子の炭素及び/又は窒素原子との間の直接結合、並びに触媒前駆体の炭素及び窒素原子、Ma及び/又はMbの金属炭化物及び/又は金属窒化物相の実質的に均一な分布が、触媒成分を作るための熱分解プロセスで形成され、金属Ma及び/又はMb、並びにこれらの炭化物/窒化物相は、このようにして作られた触媒成分に実質的に均一に分布され得る。金属の均一分布は、それらの高度に分散された分布、触媒成分に多数の触媒効果サイト、及び触媒成分の高い触媒効果をもたらす。
このように作られた触媒成分は、そのままその意図した用途(例えば、変換シンガス)のための触媒組成物として、すなわち、バルク触媒として使用することができる。熱分解されたばかりの触媒成分は、周囲空気と接触すると、酸化、水吸収等を含めた化学的及び/又は物理的変化を受ける可能性がある。従って、該触媒組成物向きの反応器、例えばシンガス変換反応器内で熱分解ステップ(v)を行うことが非常に望ましい。熱分解後に、フィード(例えば、シンガスを含むフィード)が、ステップ(v)で用いた不活性雰囲気を置き換えることができ、するとすぐに触媒組成物の存在下、望ましい変換条件下で化学プロセス(例えば、シンガス変換プロセス)を開始することができる。
【0042】
これとは別に、ステップ(v)後に、触媒成分を触媒担体材料、共触媒、又は固体希釈材料と組み合わせて、触媒組成物を形成することができる。触媒成分との組み合わせに適した触媒担体材料については、本開示で触媒組成物に関連して前述した。担体材料と触媒成分の組み合わせは、限定するものではないが、粉砕、製粉、選別、洗浄、乾燥、か焼等を含めたいずれの既知の触媒形成プロセスでも処理して触媒組成物を得ることができる。次に触媒組成物をその意図した機能を果たすために意図した反応器、例えばシンガス変換プロセスにおけるシンガス変換反応器内に配置することができる。
ステップ(v)の前に、第1の固体前駆体及び/又は第2の固体前駆体が触媒担体材料と組み合わわされてその混合物を得ることが企図され、その後にステップ(v)を受ける。該プロセスでは、第1の固体前駆体及び/又は第2の固体前駆体は、望ましくは担体材料の内面及び/又は外面に配置される。次のステップ(v)において、触媒前駆体が熱分解して担体材料の表面に触媒成分を残して触媒組成物を形成する。同様に、次のステップ(v)は、望ましくは触媒組成物が一般的に用いられる反応器、例えばシンガス変換反応器内で行われ得る。或いは、該触媒組成物が対象とされている反応器以外の反応器内でステップ(v)が行われて、担体材料及び触媒成分を含む触媒組成物を得ることができ、これは、貯蔵され、輸送されてからそれが対象とされている反応器内に配置され得る。
【0043】
ステップ(v)の前に、第1の固体前駆体及び/又は第2の固体前駆体が、担体材料の前駆体と組み合わされるか又は成形されて担体/触媒成分前駆体混合物を得ることも企図される。種々の担体材料の適切な前駆体としては、例えば、アルカリ金属アルミン酸塩、水ガラス、アルカリ金属アルミン酸塩と水ガラスの混合物、二価、三価、及び/若しくは四価金属源の混合物、例えばマグネシウム、アルミニウム、及び/若しくはケイ素の水溶性塩の混合物、クロロヒドロール(chlorohydrol)、硫酸アルミニウム、又はこれらの混合物を挙げることができる。担体/触媒成分前駆体混合物は、その後一緒にステップ(v)を受け、実質的に同一ステップで触媒成分及び担体材料の形成をもたらす。同様に、次のステップ(v)は、望ましくは該触媒組成物が通常用いられる反応器、例えばシンガス変換反応器内で行われ得る。或いは、該触媒組成物が対象とされている反応器以外の反応器内でステップ(v)が行われて、担体材料及び触媒成分とを含む触媒組成物を得ることができ、貯蔵され、輸送されてからそれを反応器内に配置され得ることが対象とされている、これは、貯蔵され、輸送されてからそれが対象とされている反応器内に配置され得る。
【0044】
I.5 第1の態様の触媒組成物を用いてシンガスからLAOを製造するためのプロセス
本開示の第1の態様の触媒組成物は、シンガスを含むフィードからLAOを製造するためのプロセスでフィッシャー・トロプシュ触媒として有利に使用することができる。
本明細書で使用する用語「シンガス」は、本質的に水素(H2)及び一酸化炭素(CO)から成るガス混合物である。フィードストリームとして用いられるシンガスは、原料及び意図した変換プロセスに応じて、10モル%までの他成分、例えばCO2及び低級炭化水素(低級HC)を含んでよい。前記他成分は、シンガス生成に用いたプロセスで得られた副生物又は未変換生成物であってよい。シンガスは、このような少量の分子酸素(O2)を含有してよく、その結果、存在するO2の量は、フィッシャー・トロプシュ合成反応及び/又は他の変換反応を妨害しない。例えば、シンガスは、1モル%以下のO2、0.5モル%以下のO2、又は0.4モル%以下のO2を含んでよい。シンガスは、r1~r2の水素(H2)対一酸化炭素(CO)モル比を有してよく、r1及びr2は、r1<r2である限り、独立に、例えば、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.2、1.4、1.5、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.5、2.6、2.8、3.0であり得る。H2及びCOの分圧は、不活性ガスの反応混合物への導入によって調整され得る。
シンガスは、水蒸気及び/又は酸素を炭素質材料、例えば、天然ガス、石炭、バイオマス、又はシンガス改質装置における改質プロセスを経た炭化水素フィードストックと反応させることによって形成され得る。改質プロセスは、任意の適切な改質プロセス、例えば水蒸気メタン改質(Steam Methane Reforming)、自己熱改質(Auto Thermal Reforming)、若しくは部分酸化(Partial Oxidation)、断熱予備改質(Adiabatic Pre Reforming)、若しくはガス加熱改質(Gas Heated Reforming)、又はこれらの組み合わせに基づくことができる。水蒸気及び酸素改質プロセスの例は、米国特許第7,485,767号に詳述されている。
【0045】
水蒸気又は酸素改質から形成されたシンガスは、水素及び1種以上の炭素酸化物(CO及びCO2)を含む。生成されたシンガスの水素と炭素酸化物の比は、使用改質条件に応じて異なる。シンガス改質生成物は、H2、CO及びCO2を、その後のメタノール/ジメチルエーテルを含む酸素化物への処理又はフィッシャー・トロプシュ合成に適したシンガスブレンドを結果として与える量及び比で含有すべきである。
シンガス内の成分の比及びシンガスのCO2絶対含量は、1つ以上の改質プロセスで生成されたシンガスからCO2の一部を除去し、場合により再循環させることによって変えることができる。改質プロセスで生成されたシンガスからCO2を回収し、再循環させるためにいくつかの商業技術(例えば酸性ガス除去塔)が利用可能である。少なくとも1つの実施形態では、水蒸気改質ユニットからのシンガス流出物からCO2を回収し、回収したCO2をシンガス改質装置に再循環させることができる。
適切なフィッシャー・トロプシュ触媒反応手順は、参照することによりそれらの内容の関連部分を援用する米国特許第7,485,767号;第6,211,255号;及び第6,476,085号で見つけられる。触媒組成物は、固定床反応器、流動床反応器、又は任意の他の適切な反応器に収容され得る。
【0046】
変換条件には種々多様の温度を含めてよい。少なくとも1つの実施形態では、変換条件はT1~T2℃の範囲の温度を含み、T1及びT2は、T1<T2である限り、例えば、175、180、190、200、220、240、250、260、280、290、300、320、340、350であり得る。
変換条件には種々多様の圧力を含めてよい。少なくとも1つの実施形態では、絶対反応圧力は、p1~p2キロパスカル(「kPa」)の範囲であり、p1及びp2は、p1<p2である限り、独立に、例えば、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000であり得る。
変換条件は、v1~v2時間-1のガス毎時空間速度を含んでよく、v1及びv2は、v1<v2である限り、独立に、例えば、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000であり得る。
特定実施形態では、触媒組成物はステップ(I)の前にH2含有雰囲気の存在下で活性化され得る。該活性化は、変換反応器に投入される前に変換反応器の実験施設内(ex-situ)外部で又は代わりに若しくはさらに、変換反応器のその場(in-situ)内部で行われ得る。該H2含有雰囲気は、例えば、シンガス、高純度水素、H2/不活性ガス混合物、及びこれらの混合物であり得る。不活性ガスは、例えば、N2、He、Ne、Ar、及びKrであり得る。活性化は、例えば、T1~T2℃の温度で行われ、T1及びT2は、T1<T2である限り、独立に、例えば、150、160、170、180、190、200、220、240、250、260、280、300、320、340、350、360、380、400、420、440、450、460、480、500であり得る。
【0047】
本開示の第1の態様のプロセスの特定実施形態では、ステップ(I)において、変換生成物混合物は、LAOを、変換生成物混合物の総モルに基づいて、概して、c1~c2モル%含み、c1及びc2は、c1<c2である限り、独立に、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95であり得る。該LAOは、有利には1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、及び1-オクテンを含み得る。
本開示の第1の態様のプロセスの特定実施形態では、ステップ(I)において、下記事項の少なくとも1つが満たされる:
(i)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、c41~c42モル%の1-ブテンを含み、c41及びc42は、c41<c42である限り、独立に、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95であり得る。好ましくはc41=60。好ましくはc41=80;
(ii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、c51~c52モル%の1ペンテンを含み、c51及びc52は、c51<c52である限り、独立に、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95であり得る。好ましくはc51=50。好ましくはc51=70;
(iii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、c61~C62モル%の1-ヘキセンを含み、c61及びc62は、c61<c62である限り、独立に、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95であり得る。好ましくはc61=50。好ましくはc61=70;
(iv)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、c71~c72モル%の1-ヘプテンを含み、c71及びc72は、c71<c72である限り、独立に、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95であり得る。好ましくはc71=50。好ましくはc51=60;及び
(v)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、c81~c82モル%の1-オクテンを含み、c81及びc82は、c81<c82である限り、独立に、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95であり得る。好ましくはc81=50。好ましくはc81=60。
【0048】
本開示の第1の態様のプロセスの特定実施形態では、ステップ(I)において、下記事項の少なくとも1つが満たされる:
(i)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、c4-1~c4-2モル%のn-ブタンを含み、c4-1及びc4-2は、c4-1<c4-2である限り、独立に、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり得る。好ましくはc4-2=40。好ましくはc4-2=30;
(ii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、c5-1~c5-2モル%のn-ペンタンを含み、c5-1及びc5-2は、c5-1<c5-2である限り、独立に、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり得る。好ましくはc5-2=40。好ましくはc5-2=30;
(iii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、c6-1~C6-2モル%のn-ヘキセンを含み、c6-1及びc6-2は、c6-1<c6-2である限り、独立に、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり得る。好ましくはc6-2=40。好ましくはc6-2=30;
(iv)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、c7-1~c7-2モル%のn-ヘプタンを含み、c7-1及びc7-2は、c7-1<c7-2である限り、独立に、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり得る。好ましくはc7-2=40。好ましくはc7-2=30;及び
(v)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、c8-1~c8-2モル%のn-オクタンを含み、c8-1及びc8-2は、c8-1<c8-2である限り、独立に、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり得る。好ましくはc8-2=40。好ましくはc8-2=30。
【0049】
本開示の第1の態様のプロセスの特定実施形態では、ステップ(I)において、下記事項の少なくとも1つが満たされ、結果として変換生成物混合物中低濃度の内部オレフィンの生成となる:
(i)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、c4-a~c4-bモル%の2-ブテンを含み、c4-a及びc4-2は、c4-a<c4-bである限り、独立に、例えば、0、2、4、5、6、8、10、12、14、15、16、18、20であり得る。好ましくはc4-b=15。好ましくはc4-5=10;
(ii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、c5-a~c5-bモル%のC5内部オレフィンを含み、c5-a及びc5-2は、c5-a<c5-bである限り、独立に、例えば、0、2、4、5、6、8、10、12、14、15、16、18、20であり得る。好ましくはc5-b=15。好ましくはc5-b=10;
(iii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、c6-a~C6-bモル%のC6内部オレフィンを含み、c6-a及びc6-2は、c6-a<c6-bである限り、独立に、例えば、0、2、4、5、6、8、10、12、14、15、16、18、20であり得る。好ましくはc6-b=15。好ましくはc6-b=10;
(iv)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、c7-a~c7-bモル%のC7内部オレフィンを含み、c7-a及びc7-2は、c7-a<c7-bである限り、独立に、例えば、0、2、4、5、6、8、10、12、14、15、16、18、20であり得る。好ましくはc7-b=15。好ましくはc5-b=10;及び
(v)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、c8-a~c8-bモル%のC8内部オレフィンを含み、c8-a及びc8-2は、c8-a<c8-bである限り、独立に、例えば、0、2、4、5、6、8、10、12、14、15、16、18、20であり得る。好ましくはc8-b=15。好ましくはc8-b=10。
【0050】
本開示の第1の態様のプロセスの特定実施形態では、ステップ(I)において、下記事項の少なくとも1つが満たされ、結果として変換生成物混合物中低濃度の直鎖1-アルコールの生成となる:
(i)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、c4-m~c4-nモル%の1-ブタノールを含み、c4-m及びc4-2は、c4-m<c4-nである限り、独立に、例えば、0、0.1、0.2、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり得る;
(ii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、c5-m~c5-nモル%の1-ペンタノールを含み、c5-m及びc5-2は、c5-m<c5-nである限り、独立に、例えば、0、0.1、0.2、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり得る;
(iii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、c6-m~C6-nモル%の1-ヘキサノールを含み、c6-m及びc6-2は、c6-m<c6-nである限り、独立に、例えば、0、0.1、0.2、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり得る;
(iv)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、c7-m~c7-nモル%の1-ヘプタノールを含み、c7-m及びc7-2は、c7-m<c7-nである限り、独立に、例えば、0、0.1、0.2、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり得る;及び
(v)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、c8-m~c8-nモル%の1-オクタノールを含み、c8-m及びc8-2は、c8-m<c8-nである限り、独立に、例えば、0、0.1、0.2、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり得る。
変換生成物混合物を分離することによって1種以上のLAO生成物が生成され得る。いずれの適切な分離プロセス及び機器を使用してもよく、限定するものではないが、フラッシング(flashing)、蒸留、膜分離、吸収、吸着、深冷分離、結晶化等が挙げられる。
【実施例】
【0051】
I.6 実施例
パートI-A. 触媒合成及びXRD特徴づけ
実施例I-A1:La(III)[Co(III)(CN)6]及び同様の二金属触媒前駆体の調製
200ccの水を含有する500ccのフラスコ内で、ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム(100mmol、33.4g)を溶かした。この溶液に、三価金属硝酸塩(例えば、100mmol、43.3gのLa(NO3)3.6H2O)を加えた。25~50℃で2~10時間撹拌すると、最初の清澄溶液は粘性スラリーになった。反応生成物を濾過し、脱イオン水を用いて洗浄して約35gの固体を得た。固体を乾燥させ、触媒前駆体として用いた。反応を下に図示することができる。
【0052】
【0053】
次に300℃と500℃の間の温度で窒素のストリームを流しながら固体触媒前駆体を熱分解させて触媒成分を得た。このように調製された触媒成分は、XRDによって分析してそれぞれの相を同定することができる。
同様に、シアノ鉄酸ランタニドを調製することができる。
【0054】
【0055】
この実施例A1に従って、2種の金属元素、すなわち鉄及びランタニドを含む複数の触媒成分を調製した。乾燥後の触媒前駆体のXRD分析結果を
図1に示含め、それらの固体前駆体組成を下表1にリストアップする。
【0056】
【0057】
実施例I-A2:Co-La-Mn及び同様の三金属触媒前駆体の調製
200ccの水を含有する500ccのフラスコ内で、ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム(100mmol、33.4g)を溶かした。この溶液に、8.5g(56mmol)の硫酸マンガンを加えた後、三価金属硝酸塩(例えば、100mmol、43.3gのLa(NO
3)
3.6H
2O)及び3.8g(50mmol)のNH
4SCNを添加した。25~50℃で2~10時間撹拌すると、最初の清澄溶液は粘性スラリーになった。反応生成物を濾過して約45gの固体を得た。固体を水洗し、乾燥させてから触媒前駆体として使用した。この固体は下記:La[CoL
x];La[MnL
x];Mn[CoL
x];Co[MnL
x];La(SCN)
3;Mn(SCN)
2;及びLa(SCN)
3を含む混合物であると考えられ、式中、各存在で同一又は異なるLは、CN
-又はSCN
-であり、xは、独立に、2~6の範囲の任意の整数又は非整数であり得る。
固体触媒前駆体は、CN
-二座及びSCN
-二座配位子のいくつかが2個の金属イオンと錯化しているイオンネットワークであってよい。ネットワークに欠損がある場合、いくつかのNH
4
+又はK
+イオンが存在してよい。
上記反応の水溶性生成物には、K
2SO
4、(NH
4)
2SO
4、KNH
4SO
4、KCN、KSCN、NH
4CN、及びNH
4SCNが含まれる可能性があり、水洗によって固体触媒前駆体からこれらを除去した。
この乾燥固体触媒前駆体を典型的シンガス変換プロセスにおいて下記実施例B1に使用し、その触媒効果を調べた。
La(NO
3)
3を別の硝酸ランタニドと取り換えることによってこの実施例A2と同一手順を利用して本開示の複数の三金属触媒成分を調製した。このようにして調製したいくつかの触媒前駆体のXRDダイアグラムを
図2に含め、それぞれの固体触媒前駆体に存在すると考えらえる元素を下表IIにリストアップする。
【0058】
【0059】
次に乾燥固体触媒前駆体を約450℃の温度で熱分解させて触媒成分を得た。触媒成分のXRDは、触媒成分の総質量に基づいて、17.08wt%のコバルト、9.193wt%のマンガン、33.89wt%のランタン、及び4.928wt%の硫黄を示した。
このコバルト、マンガン、及びイットリウムを含む実施例A2の手順で調製した別の触媒成分は、XRDダイアグラムによれば、触媒成分の総質量に基づいて、28.5wt%のイットリウム、23.7wt%のコバルト、13wt%のマンガン、及び2.2wt%の硫黄を含むことが分かった。この触媒成分に固体触媒前駆体を典型的シンガス変換プロセスで下記実施例B2に使用し、その触媒効果についてそれを調べた。
実施例A1又はA2の手順を用いて本開示の一連の二金属又は三金属触媒成分を調製し、シンガス変換プロセスで試験した。試験したら、次に使用触媒成分のいくつかをXRDによって評価した。それらの6つのXRDパターンを
図3に示す。これらの触媒成分に含まれた金属を下表IIIにリストアップする。
【0060】
【0061】
ヘキサシアノ鉄酸ホルミウム(Ho(III)[Fe(III)(CN)
6])を含む本開示の実施形態の触媒前駆体の熱重量分析を10℃/分の昇温速度にて空気パージ下で2回行った。分析結果を重量-温度曲線として
図4に示す。点線曲線401は触媒前駆体から得られた第1のサンプルの分析結果を示す。実線曲線403は、同触媒前駆体から得られた第2のサンプルの分析結果を示すが、第1のサンプルを分析した日に分析した。
図4から分かるように、2曲線は互いに非常に近接して整列し、前駆体材料が一晩で有意な変化を受けなかったことを示唆している。これらの曲線は、明白に約305℃で顕著な変化を前駆体材料に引き起こして、32.06%の総重量損失をもたらすことを示し、前駆体の熱分解を示唆している。
同様に、
図5は、ヘキサシアノコバルト酸ガドリニウム(Gd(III)(Co(III)(CN)
6)を含む本開示の別の実施形態の触媒前駆体501の10℃/分の昇温速度にて空気パージ下での熱重量分析結果を示す。約338℃で、触媒前駆体に顕著な変化が起こり、37.80%の総重量損失をもたらし、触媒前駆体の熱分解を示唆している。
【0062】
この実施例A2の手順に準拠して調製したコバルト、マンガン、及びイットリウムを含む触媒成分のサンプルを粉末XRDによって特徴づけた。XRDダイアグラム及び参照番号で特定した種々のピーク群を
図6、7、及び8に提示する。これらのピーク群は、下表IVにリストアップした国際回折データセンター(International Center for Diffraction Data)(「ICDD」)XRDピークライブラリーに準拠する種々の相の既知ピークと一致する。XRDグラフから同定可能な炭素のピーク群(01-079-1473)、窒化炭素のピーク群(01-078-1747、C
3N
4)、イットリウムのピーク群(01-089-9233)、及びイットリウムマンガンのピーク群(Mn
2Y、03-066-0003)は、
図6、7、及び8には提示していない。
XRDダイアグラムによって証明されるように、明らかに触媒成分にはいくつかの金属の炭化物の複数相及びいくつかの金属の窒化物の複数相が存在する。特定の理論によって束縛されるつもりはないが、これらの炭化物及び/又は窒化物相の存在が、特にシンガスを変換するという目的に適した触媒成分の触媒活性を助長すると考えられる。
触媒成分には、金属相及び金属合金相も存在する。これらの相も同様に触媒活性を果たし得る。
【0063】
【0064】
利用したこのような低熱分解温度で触媒組成物に炭化物相及び窒素物相が形成されたことは全く意外である。金属源と炭素源の反応を伴う金属炭化物の典型的な製造プロセスでは、金属炭化物の形成を引き起こすために800℃超で反応を行わなければならないだろう。金属源とアンモニアの反応を伴う金属窒化物の典型的製造プロセスでは、必要とされる温度は650℃より高い。にもかかわらず、化合物及び/又はイオンネットワーク中に金属、炭素、及び窒素を含む触媒前駆体の形成を伴う本開示のプロセスを利用することによって、800℃より著しく低い、例えば600℃未満、500℃未満さえの温度で金属炭化物相と金属窒化物を両方とも含む触媒成分を得ることができる。このような低熱分解温度は、該触媒成分が対象とされる変換反応器内で触媒成分を生成するための触媒前駆体のその場熱分解を可能にし、このことは、変換プロセスがこの熱分解温度あたり又はそれ未満で典型的に行われる場合に特に有利である。さらに、金属炭化物相及び金属窒化物相は、触媒成分中の他の相、例えば個々の金属相、混合金属相、炭素相、及び窒化炭素相等と密接かつ実質的に均一に分布していると考えられ、触媒成分中のこれらの高度に分散された分布をもたらし、下記シンガス変換プロセス例によって実証されるように高い触媒活性につながる。このことは、典型的に表面上だけでより優先的であるそれらの不均一な分布をもたらす傾向があり、結果としておそらく低い分散及び低い触媒活性となる、金属炭化物及び金属窒化物の従来の製造プロセスとは対照的である。
【0065】
比較例I-A3:三金属酸化物触媒の調製
内容物がLa、Co、及びMnであるという点で上記実施例B1の触媒成分に組成的に類似するLa-Co-Mn酸化物系を、La(NO3)3、Co(NO3)2及びMn(NO3)2のNa2CO3を用いた水相共沈により合成してから空気中450~550℃でか焼した。このように調製した比較触媒組成物は、La、Co、及びMnの酸化物並びに混合酸化物を含み、金属炭化物相及び金属窒化物相はないと考えられる。
【0066】
パートI-B:第1の開示の触媒組成物を用いてシンガスからLAOを調製するプロセス
実施例I-B1:LAOを製造するための本開示のCo-Y-Mn三金属触媒成分201を用いたシンガスの変換プロセス
上記実施例I-A2で調製した触媒成分201と炭化ケイ素(両成分のサイズは40~60メッシュ)の1:3混合物を固定床反応器システムに投入した。この触媒を110℃でN2パージ下で15バール圧力及びGHSV=2000時間-1で2時間乾燥させた。N2パージ、反応器圧力、及びGHSVを維持しながら、反応器温度を400℃まで1℃/分の傾斜率で上昇させた。反応器を400℃で2時間保ち、反応器をフィッシャー・トロプシュ合成温度(例えば250℃)まで冷ました。温度が安定化したら、反応器フィードをH2とCOの混合物に切り替えた。調査した条件範囲は以下のとおりだった:(1)温度、150~350℃;(2)圧力、1~50バール;(3)H2:CO比、1:3~3:1、及び(4)GHSV、1000-10,000時間-1。下表Vに生成物選択性を報告する。
【0067】
【0068】
表Vから分かるように、C4、C5、及びC6のLAOの選択性は、それぞれ、C4、C5、及びC6のn-パラフィン並びにC4、C6、及びC6の一級アルコーの選択性より一貫して高く、シンガスのLAOへの変換に対する触媒成分201の適合性を実証している。
【0069】
実施例I-B2:LAOを製造するための本開示のCo-La-Mn三金属触媒成分205を用いたシンガスの変換プロセス
触媒成分201の代わりに上記実施例I-A2で調製した触媒成分205を使用したことを除き、上記実施例I-B1と同じ実験を行った。下表VIに生成物選択性を報告する。
表VIから分かるように、C4、C5、及びC6のLAOの選択性は、それぞれ、C4、C5、及びC6のn-パラフィン並びにC4、C6、及びC6の一級アルコールの選択性より一貫して高く、シンガスのLAOへの変換に対する触媒成分205の適合性を実証している。
【0070】
【0071】
II. 本開示の第2の態様
本開示の第2の態様は、一般的にLAOを製造するためのシンガスの変換プロセスであって、
(I)シンガスを含むフィードを、変換反応器内で、変換条件下、触媒組成物と接触させて、直鎖アルファオレフィンを含む変換生成物混合物を生成するステップであって、
この触媒組成物が、
担体と、
この担体上の複数のナノ粒子と
を含み、ここで、
各ナノ粒子は中心部を含み、該中心部は、4~100nmの平均粒子サイズ及び20%以下の粒子サイズ分布を有し、中心部は、酸素、金属元素M1、場合により硫黄、場合によりリン、任意的金属元素M2、及び場合により第3の金属元素M3を含み、ここで、
M1は、Mn、Fe、Co、及びこれらの2種以上の組み合わせから選択され、
M2は、Ni、Zn、Cu、Mo、W、Ag、及びこれらの組み合わせから選択され、
M3は、Y、Sc、アルカリ金属、ランタニド、第13、14、又は15族元素、及びこれらの組み合わせから選択され、かつ
もしあれば、M2、M3、S、及びPのM1に対するモル比は、それぞれ、r1、r2、r3、及びr4であり、0≦r1≦2、0≦r2≦2、0≦r3≦5、かつ0≦r4≦5である、
ステップと、
(II)変換生成物混合物から直鎖アルファオレフィン生成物を得るステップと
を含むプロセスに関する。
このプロセスのさらなる詳細は以下のとおりである。
【0072】
II.1 中心部の特徴づけ
特定実施形態では、媒体、例えば溶媒、例えばトルエン等の疎水性溶媒に分散された個別粒子としてナノ粒子が存在し得る。或いは、本開示の組成物中の複数の他のナノ粒子に隣接してナノ粒子が積み重ねらることがある。本開示のナノ粒子組成物中のナノ粒子は、透過型電子顕微鏡下で観察可能な中心部を含む。ナノ粒子は、特定実施形態では、その表面に付着した1つ以上の長鎖基をさらに含む。或いは、ナノ粒子は、本質的に中心部のみから成るか、又は完全に中心部のみから成り得る。
ナノ粒子中の中心部は、4ナノメートル~100ナノメートルの範囲の最大寸法を有し得る。中心部は、ほぼ球状又は細長い形状(例えば棒状)を有してよい。細長い中心部は、1~50、例えば1.5~30、2~20、2~10、又は3~8のアスペクト比を有してよい。アスペクト比は、中心部の長側の長さを中心部の短側の長さで割る。例えば、直径4nm及び長さ44ナノメートルの棒状中心部は、11のアスペクト比を有する。
【0073】
本開示のナノ粒子組成物中のナノ粒子の中心部は、20%以下の粒子サイズ分布を有してよい。粒子サイズ分布は、平均粒子サイズに対する粒子サイズの標準偏差の百分率として表される。例えば、10ナノメートルの平均サイズ及び1.5ナノメートルの標準偏差を有する複数の中心部は、15%の粒子サイズ分布を有する。本開示のナノ粒子組成物中のナノ粒子の中心部は、4~100nm、例えば4~35nm、又は4~20nmの平均粒子サイズを有してよい。
粒子サイズ分布は、平らな固体表面に沈着したナノ粒子の透過型電子顕微鏡(「TEM」)測定によって決定される。
本開示のナノ粒子組成物中のナノ粒子の中心部は、結晶性、半結晶性、又は非晶質性であってよい。
【0074】
中心部は、少なくとも1種の金属元素で構成される。この少なくとも1種の金属元素は、群Mn、Fe、Co、Zn、Cu、Mo、W、Ag、Y、Sc、アルカリ金属、ランタニド系列、第13族、第14族、及び第15族、並びにこれらの組み合わせから選択され得る。少なくとも1種の金属元素が2種以上の金属である場合、金属元素のナンバーに応じて金属をM1、M2、及びM3と名付けてよい。M1は、マンガン、鉄、コバルト、鉄とコバルトの任意の比率の組み合わせ、鉄とマンガンの任意の比率の組み合わせ、コバルトとマンガンの任意の比率の組み合わせ、及び鉄と、コバルトと、マンガンとの任意の比率の組み合わせから選択され得る。特定の実施形態では、M1は、マンガン、コバルト、又は鉄の単一金属である。M1がコバルトとマンガンの二元混合物/組み合わせを含む場合、コバルトは、マンガンより高いモル比で存在してよい。M1が鉄とマンガンの二元混合物/組み合わせを含む場合、鉄は、マンガンより高いモル比で存在してよい。特定の理論によって束縛されるつもりはないが、M1の存在が、本開示の第3の態様の触媒組成物の触媒効果の少なくとも一部をもたらすと考えられる。
【0075】
M2は、ニッケル、亜鉛、銅、モリブデン、タングステン、銀、及びこれらの組み合わせから選択され得る。特定の理論によって束縛されるつもりはないが、M2の存在が、本開示の第1の態様の担持ナノ粒子組成物中のM1の触媒効果を増進すると考えられる。
本開示の組成物中のM3の存在は、任意的である。存在する場合、M3は、Y、Sc、ランタニド、及び第1、13、14、又は15族の金属元素、並びにこれらの2種以上の任意の比率の任意の組み合わせ及び混合物から選択され得る。特定実施形態では、M3は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スカンジウム、イットリウム、及びランタニド系列、並びにこれらの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、M3は、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、及びランタニド、並びにこれらの組み合わせから選択される。好ましいランタニドは、La、Ce、Pr、Nd、Gb、Dy、Ho、Er、及びこれらの組み合わせである。特定の理論によって束縛されるつもりはないが、金属M3の存在は、本開示の第3の態様の触媒組成物の触媒効果を増進する可能性があると考えられる。
【0076】
中心部は、例えば、金属酸化物の形態で酸素をさらに含むことができる。金属酸化物の存在は、触媒組成物のXRDグラフによって示され得る。「金属酸化物」によって、単一金属の酸化物、又は2種以上の金属M1、M2、及び/又はM3の組み合わせの酸化物が含まれることを意味する。好適には中心部は、単一金属の酸化物、又はM1、及び/若しくはM2の2種以上の金属の組み合わせの酸化物を含んでよい。好適には中心部は、単一金属の酸化物、又はM1の2種以上の金属の組み合わせの酸化物を含んでよい。少なくとも1つの実施形態では、触媒成分は、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、(混合鉄コバルト)酸化物、(混合鉄マンガン)酸化物、混合(コバルトマンガン)酸化物、及び混合(コバルト、鉄、及びマンガン)酸化物の1つ以上を含んでよい。少なくとも1つの実施形態では、中心部は、単一金属の酸化物、又はM2の2種以上の金属の組み合わせ(例えば、イットリウムとランタニド)の酸化物を含んでよい。中心部は、M1金属とM2金属を含む金属混合物の酸化物を含んでよい。ナノ粒子中の酸化物相の存在の確認は、ナノ粒子のXRDデータを酸化物のXRDピークデータベース、例えば国際回折データセンター(「ICDD」)から入手可能なものと比較することによって行うことができる。
【0077】
本開示の中心部の組成は、場合により硫黄を含んでよい。特定の理論によって束縛されるつもりはないが、特定実施形態では、硫黄の存在が、中心部を含むナノ粒子組成物から作製された触媒組成物の触媒効果を増進する可能性がある。硫黄はM1、M2、及び/又はM3の1種以上の金属の硫化物、硫酸塩、又は他の硫黄含有化合物として存在してよい。
本発明の中心部の組成は、場合によりリンを含んでよい。特定の理論によって束縛されるつもりはないが、特定実施形態では、リンの存在が、中心部を含むナノ粒子組成物から作製された触媒組成物の触媒効果を増進する可能性がある。リンは、M1、M2、及び/又はM3の1種以上の金属のリン化物として存在してよい。
特定実施形態では、本開示のナノ粒子組成物の中心部は、本質的にM1、M2、M3、酸素、場合により硫黄、及び場合によりリンから成り、例えば、中心部の総質量に基づいて、≧85、又は≧90、又は≧95、又は≧98wt%、又は≧99wt%さえのM1、M2、M3、酸素、場合により硫黄、及び場合によりリンを含む。
【0078】
本開示のナノ粒子組成物の中心部のM2対M1のモル比(「r1」)、M3対M1のモル比(「r2」)、酸素対M1のモル比(「r3」)、硫黄対M1のモル比(「r4」)、及びリン対M1のモル比(「r5」)は、問題になっている元素の総モル量から計算される。従って、M1が2種以上の金属の組み合わせ/混合物である場合、比を計算するためにM1の全ての金属の総モル量が使用される。M2が2種以上の金属の組み合わせ/混合物である場合、比r1を計算するために全ての金属M2の総モル量が使用される。M3が2種以上の金属の組み合わせ/混合物である場合、比r2を計算するために全ての金属M3の総モル量が使用される。
本開示のナノ粒子組成物の中心部のM2対M1のモル比r1はr1a~r1bであってよく、r1a及びr1bは、r1a<r1bである限り、独立に、例えば、0、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4又は1.5であり得る。一部の実施形態では、r1a=0、r1b=2;例えばr1a=0、r1b=0.5;又はr1a=0.05、r1b=0.5。少なくとも1つの実施形態では、r1は0.5に近く(例えば、0.45~0.55)、M1がM2のモル量の実質的に2倍で中心部に存在することを意味する。
【0079】
本開示のナノ粒子組成物の中心部のM3対M1のモル比r2は、r2a~r2bであってよく、r2a及びr2bは、r2a<r2bである限り、独立に、例えば、0、0.005、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5であり得る。一部の実施形態では、r2a=0、r2b=5;例えばr2a=0.005、r2b=0.5。従ってM3は、存在する場合、M1より実質的に少ないモル量である。
本開示のナノ粒子組成物の中心部の酸素対M1のモル比r3は、r3a~r3bであってよく、r3a及びr3bは、r3a<r3bである限り、独立に、例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、又は5であり得る。一部の実施形態では、r3a=0.05、r3b=5;例えばr3a=0.5、r3b=4;又はr3a=1、r3b=3。
本開示のナノ粒子組成物の中心部の硫黄対M1のモル比r4は、r4a~r4bであってよく、r4a及びr4bは、4a<r4bである限り、独立に、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、又は5であり得る。一部の実施形態では、r4a=0、r4b=5;例えばr4a=0、r4b=2。
本開示のナノ粒子組成物の中心部のリン対M1のモル比r5は、r5a~r5bであってよく、r5a及びr5bは、r5a<r5bである限り、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、又は5であり得る。一部の実施形態では、r5a=0、及びr5b=5;例えばr5a=0及びr5b=2。
【0080】
特定の実施形態では、金属M1が中心部に実質的に均一に分布され得る。さらに及び/又は代わりに、金属M2が中心部に実質的に均一に分布され得る。さらに及び/又は代わりに、金属M3が中心部に実質的に均一に分布され得る。さらに及び/又は代わりに、酸素が中心部に実質的に均一に分布され得る。もっとさらに及び/又は代わりに、硫黄が中心部に実質的に均一に分布され得る。さらに及び/又は代わりに、リンが中心部に実質的に均一に分布され得る。
金属酸化物が中心部に高度に分散されることが非常に有利である。金属酸化物が中心部に実質的に均一に分布され、高度に分散された分布をもたらし、これが中心部を含むナノ粒子組成物を含む触媒組成物の高い触媒活性に寄与し得る。
本開示のナノ粒子組成物は、本開示の中心部を含むか又は本質的にそれから成り、例えば、ナノ粒子組成物の総質量に基づいて、≧85、又は≧90、又は≧95、又は≧98wt%、又は≧99wt%さえの中心部を含む。本開示のナノ粒子組成物は、中心部に沈着(例えば付着)した長鎖ヒドロカルビル基を含んでよい。
【0081】
ナノ粒子組成物の形成
本開示のナノ粒子組成物は、第1の分散系から第1の温度(T1)で生成され得る。第1の分散系は、長鎖炭化水素溶媒、少なくとも1種の長鎖有機酸と少なくとも1種の金属元素との塩、場合により硫黄又は有機硫黄化合物(長鎖炭化水素溶媒に溶け得る)、及び場合により有機リン化合物(長鎖炭化水素溶媒に溶け得る)を含む。少なくとも1種の長鎖有機酸と少なくとも1種の金属元素との塩は、第2の有機酸と少なくとも1種の金属元素との塩、及び長鎖有機酸と共にその場で形成されることがある。
T1は、T1a~T1bの温度を含んでよく、T1a及びT1bは、T1a<T1bである限り、独立に、例えば、0、RT、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、又は300℃、例えばT1a=RT、T1b=250℃;又はT1a=35℃、T1b=150℃であり得る。第1の温度は、10分~100時間、例えば10分~10時間、10分~5時間、10分~3時間、又は10分~2時間にわたって維持され得る。第1の分散系は、不活性雰囲気下又は大気圧未満に低下した圧力下で保持され得る。例えば、第1の分散系は、窒素流又はアルゴン流下で維持してよく、或いは、圧力を760mmHg未満、例えば400mmHg未満、100mmHg未満、50mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、又は5mmHg未満まで下げるバキュームに取り付けてよい。第1の分散系を不活性ガス流下で維持するか減圧下で維持するかの選択は、生成されるナノ粒子のサイズに影響を及ぼす可能性がある。理論によって制限されないが、減圧下の第1の分散系は、それが不活性ガス流下で維持された場合より少ない混入物及び副生物を有し、混入物が少ないほどより小さいナノ粒子の形成を可能にし得る。一部の実施形態では、第1の分散系を減圧下で維持すると、第1の分散系を不活性ガス流下で維持するのに比べて、粒子サイズ分布に影響を与えることなくナノ粒子サイズを小さくすることができる。他の実施形態では、第1の分散系を不活性ガス流下で維持すると、第1の分散系を減圧下で維持するのに比べて、粒子サイズ分布に影響を与えることなくナノ粒子サイズを大きくすることができる。
【0082】
長鎖炭化水素溶媒は、飽和及び不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、及び炭化水素混合物を含んでよい。
長鎖炭化水素溶媒として用いるのに適したいくつかの飽和炭化水素例は、C12+炭化水素、例えばC12-C24、C14-C24、C16-C22、C16-C20、C16-C18炭化水素、例えばn-ドデカン(mp -10℃、bp 214℃~218℃)、n-トリデカン(mp -6℃、bp 232℃~236℃)、n-テトラデカン(mp 4℃~6℃、bp 253℃~257℃)、n-ペンタデカン(mp 10℃~17℃、bp 270℃)、n-ヘキサデカン(mp 18℃、bp 287℃)、n-ヘプタデカン(mp 21℃~23℃、bp 302℃)、n-オクタデカン(mp 28℃~30℃、bp 317℃)、n-ノナデカン(mp 32℃、bp 330℃)、n-イコサン(mp 36℃~38℃、bp 343℃)、n-ヘンイコサン(mp 41℃、bp 357℃)、n-ドコサン(mp 42℃、bp 370℃)、n-トリコサン(mp 48℃~50℃、bp 380℃)、n-テトラコサン(mp 52℃、bp 391℃)、又はこれらの混合物である。
【0083】
長鎖炭化水素溶媒として用いるのに適したいくつかの不飽和炭化水素例として、C12+不飽和非分岐炭化水素、例えばC12-C24、C14-C24、C16-C22、C16-C20、C16-C18不飽和非分岐炭化水素(二重結合はcis又はtransであってよく、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12位のいずれに位置してもよい)、例えば1-ドデセン(mp -35℃、bp 214℃)、1-トリデセン(mp -23℃、bp 232℃~233℃)、1-テトラデセン(mp -12℃、bp 252℃)、1-ペンタデセン(mp -4℃、bp 268℃~239℃)、1-ヘキサデセン(mp 3℃~5℃、bp 274℃)、1-ヘプタデセン(mp 10℃~11℃、bp 297℃~300℃)、1-オクタデセン(mp 14℃~16℃、bp 315℃)、1-ノナデセン(mp 236℃、bp 329℃)、1-イコセン(mp 26℃~30℃、bp 341℃)、1-ヘンイコセン(mp 33℃、bp 353℃~354℃)、1-ドコセン(mp 36℃~39℃、bp 367℃)、1-トリコセン(bp 375℃~376℃)、1-テトラコセン(bp 380℃~389℃)、trans-2-ドデセン(mp -22℃、bp 211℃~217℃)、trans-6-トリデセン(mp -11℃、bp 230℃~233℃)、cis-5-トリデセン(mp -11℃~-10℃、bp 230℃~233℃)、trans-2-テトラデセン(mp 1℃~3℃、bp 250℃~253℃)、trans-9-オクタデセン(mp 23℃~25℃、bp 311℃~318℃)、cis-12-テトラコセン(mp 96℃~97℃、bp 385℃~410℃)、又はこれらの混合物が挙げられる。一部の実施形態では、長鎖炭化水素溶媒は1-オクタデセンである。
【0084】
長鎖炭化水素として用いるのに適した芳香族炭化水素は、水素原子がフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピロリル、ピリジル、ピラジル、ピリミジル、イミダゾリル、フラニル、又はチオフェニル置換基で置換された上記アルカン及びアルケンのいずれかを含んでよい。
長鎖炭化水素として用いるのに適した炭化水素混合物は、混合物の沸点以下で加熱すると金属塩の少なくとも一部の分解が起こるような十分に高い沸点を有する混合物を含んでよい。適切な混合物としては、ケロシン、灯油、軽油、ディーゼル、ジェット燃料、又は船舶用燃料が挙げられる。
長鎖有機酸は、長鎖を有する任意の適切な有機酸、例えば飽和カルボン酸、単不飽和カルボン酸、多不飽和カルボン酸、飽和又は不飽和スルホン酸、飽和又は不飽和スルフィン酸、飽和又は不飽和ホスホン酸、飽和又は不飽和ホスフィン酸を含んでよい。
長鎖有機酸は、C12+有機酸、例えばC12-C24、C14-C24、C16-C22、C16-C20、又はC16-C18有機酸から選択され得る。一部の実施形態では、有機酸は脂肪酸、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ペトロセレン酸、リノール酸、リノエライジン酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ステアリドン酸、ゴンド酸、パウリン酸、ゴンド酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、ブラッシジン酸、エルカ酸、アドレン酸、オスボンド酸、クルパノドン酸、ドコサヘキサエン酸、ネルボン酸、コルネール酸、コルネレン酸、エーテロレイン酸、又はエーテロレン酸から選択され得る。
【0085】
長鎖有機酸は、C12+不飽和酸、例えばC12-C24、C14-C24、C16-C22、C16-C20、C16-C18不飽和酸、例えばミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、バクセン酸、ペトロセレン酸、オレイン酸、エライジン酸、パウリン酸、ゴンド酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ブラッシジン酸、エルカ酸、ネルボン酸から選択され得る。
長鎖有機酸は、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、cis-バクセン酸、パウリン酸、オレイン酸、ゴンド酸、又はガドレイン酸から選択され得る。一部の実施形態では、長鎖有機酸はオレイン酸である。
金属塩を調製するために使用される長鎖有機酸は、例えば長鎖有機酸と長鎖炭化水素の炭素原子数が4を超えて異ならず、例えば3以下、又は2以下しか異ならない場合のように、長鎖炭化水素溶媒と鎖長が類似していてよい。例えば、金属オレイン酸塩が使用される場合、適切な長鎖炭化水素溶媒としては、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、trans-2-オクタデセン、cis-9-オクタデセン又はこれらの混合物が挙げられる。
【0086】
長鎖有機酸の金属塩は、(i)第1、2、3、4、5、6、11、12、13、14、及び15族、Mn、Fe、Co、Ni、又はW、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の金属と(ii)長鎖有機酸とを含む。塩として、金属は、長鎖有機酸と金属(II)、金属(III)、金属(IV)、及び金属l(V)錯体を形成する2+、3+、4+、又は5+酸化状態であってよい。酸化状態が特定されない場合、金属塩は金属(II)、金属(III)、金属(IV)、及び金属(V)錯体を含んでよい。
長鎖有機酸の金属塩は、M1金属と長鎖有機酸を含むM1金属塩であってよい。長鎖有機酸の金属塩は、M2金属と長鎖有機酸を含むM2金属塩であってよい。長鎖有機酸の金属塩は、M3金属と長鎖有機酸を含むM3金属塩であってよい。M1金属塩、M2金属塩、及びM3金属塩は、同一の長鎖有機酸を含有する必要はない。さらに、M1金属塩、M2金属塩、及びM3金属塩は、第2の有機酸とM1、M2、又はM3金属元素との塩、及び長鎖有機酸を用いてその場で形成されることがある。
少なくとも1つの実施形態では、M1金属塩は、ミリストレイン酸コバルト、パルミトレイン酸コバルト、cis-バクセン酸コバルト、パウリン酸コバルト、オレイン酸コバルト、ゴンド酸コバルト、ガドレイン酸コバルト、ミリストレイン酸鉄、パルミトレイン酸鉄、cis-バクセン酸鉄、パウリン酸鉄、オレイン酸鉄、ゴンド酸鉄、ガドレイン酸鉄、ミリストレイン酸マンガン、パルミトレイン酸マンガン、cis-バクセン酸マンガン、パウリン酸マンガン、オレイン酸マンガン、ゴンド酸マンガン、又はガドレイン酸マンガンから選択される。
【0087】
少なくとも1つの実施形態では、M2金属塩は、ミリストレイン酸ニッケル、パルミトレイン酸ニッケル、cis-バクセン酸ニッケル、パウリン酸ニッケル、オレイン酸ニッケル、ゴンド酸ニッケル、ガドレイン酸ニッケル、ミリストレイン酸亜鉛、パルミトレイン酸亜鉛、cis-バクセン酸亜鉛、パウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ゴンド酸亜鉛、ガドレイン酸亜鉛、ミリストレイン酸銅、パルミトレイン酸銅、cis-バクセン酸銅、パウリン酸銅、オレイン酸銅、ゴンド酸銅、ガドレイン酸銅、ミリストレイン酸モリブデン、パルミトレイン酸モリブデン、cis-バクセン酸モリブデン、パウリン酸モリブデン、オレイン酸モリブデン、ゴンド酸モリブデン、ガドレイン酸モリブデン、ミリストレイン酸タングステン、パルミトレイン酸タングステン、cis-バクセン酸タングステン、パウリン酸タングステン、オレイン酸タングステン、ゴンド酸タングステン、ガドレイン酸タングステン、ミリストレイン酸銀、パルミトレイン酸銀、cis-バクセン酸銀、パウリン酸銀、オレイン酸銀、ゴンド酸銀、又はガドレイン酸銀から選択される。
【0088】
少なくとも1つの実施形態では、M3金属塩は、ミリストレイン酸ガリウム、パルミトレイン酸ガリウム、cis-バクセン酸ガリウム、パウリン酸ガリウム、オレイン酸ガリウム、ゴンド酸ガリウム、ガドレイン酸ガリウム、ミリストレイン酸インジウム、パルミトレイン酸インジウム、cis-バクセン酸インジウム、パウリン酸インジウム、オレイン酸インジウム、ゴンド酸インジウム、ガドレイン酸インジウム、ミリストレイン酸スカンジウム、パルミトレイン酸スカンジウム、cis-バクセン酸スカンジウム、パウリン酸スカンジウム、オレイン酸スカンジウム、ゴンド酸スカンジウム、ガドレイン酸スカンジウム、ミリストレイン酸イットリウム、パルミトレイン酸イットリウム、cis-バクセン酸イットリウム、パウリン酸イットリウム、オレイン酸イットリウム、ゴンド酸イットリウム、ガドレイン酸イットリウム、ミリストレイン酸ランタン、パルミトレイン酸ランタン、cis-バクセン酸ランタン、パウリン酸ランタン、オレイン酸ランタン、ゴンド酸ランタン、ガドレイン酸ランタン、ミリストレイン酸セシウム、パルミトレイン酸セシウム、cis-バクセン酸セシウム、パウリン酸セシウム、オレイン酸セシウム、ゴンド酸セシウム、ガドレイン酸セシウム、ミリストレイン酸プラセオジム、パルミトレイン酸プラセオジム、cis-バクセン酸プラセオジム、パウリン酸プラセオジム、オレイン酸プラセオジム、ゴンド酸プラセオジム、ガドレイン酸プラセオジム、ミリストレイン酸ネオジム、パルミトレイン酸ネオジム、cis-バクセン酸ネオジム、パウリン酸ネオジム、オレイン酸ネオジム、ゴンド酸ネオジム、ガドレイン酸ネオジム、ミリストレイン酸ガドリニウム、パルミトレイン酸ガドリニウム、cis-バクセン酸ガドリニウム、パウリン酸ガドリニウム、オレイン酸ガドリニウム、ゴンド酸ガドリニウム、ガドレイン酸ガドリニウム、ミリストレイン酸ジスプロシウム、パルミトレイン酸ジスプロシウム、cis-バクセン酸ジスプロシウム、パウリン酸ジスプロシウム、オレイン酸ジスプロシウム、ゴンド酸ジスプロシウム、ガドレイン酸ジスプロシウム、ミリストレイン酸ホルミウム、パルミトレイン酸ホルミウム、cis-バクセン酸ホルミウム、パウリン酸ホルミウム、オレイン酸ホルミウム、ゴンド酸ホルミウム、ガドレイン酸ホルミウム、ミリストレイン酸エルビウム、パルミトレイン酸エルビウム、cis-バクセン酸エルビウム、パウリン酸エルビウム、オレイン酸エルビウム、ゴンド酸エルビウム、又はガドレイン酸エルビウムから選択される。
【0089】
第1の分散系は、長鎖有機酸、炭化水素溶媒、及び1種以上の第2の有機酸の1種以上の金属塩の混合物を加熱すること;及びその混合物をT1まで加熱することによっても形成され得る。T1は、第2の有機酸の沸点又は(ii)第2の有機酸の分解温度の低い方の温度以上の温度であり得る。一部の実施形態では、第2の有機酸の沸点はT1より低い。T1は、50℃~350℃、例えば70℃~200℃、又は70℃~150℃の温度を含んでよい。T1での加熱は、10分~100時間、例えば10分~10時間、10分~5時間、10分~3時間、又は10分~2時間持続してよい。
第2の有機酸は、C8有機酸等の長鎖有機酸の分子量より小さい分子量を有する有機酸、例えばC1-C7、C1-C5、又はC2-C4有機酸を含んでよい。さらに、第2の有機酸は、長鎖有機酸より揮発性が高くてよい。適切な第2の酸のいくつかの例は、ギ酸(bp 101℃)、酢酸(bp 118℃)、プロピオン酸(bp 141℃)、酪酸(bp 164℃)、乳酸(bp 122℃)、クエン酸(310℃)、アスコルビン酸(分解190℃)、安息香酸(249℃)、フェノール(182℃)、アセチルアセトン(bp 140℃)、及びアセト酢酸(分解80℃~90℃)である。第2の有機酸金属塩は、例えば、金属酢酸塩、金属プロイオン酸塩、金属酪酸塩、金属乳酸塩、金属アセチルアセトネート、又は金属アセチル酢酸塩を含んでよい。理論によって制限されないが、金属上に配置された第2の有機酸は、長鎖有機酸との交換によって金属から放出され、第2の有機酸は、減圧下又は不活性ガス流下で除去され得る。第2の有機酸の揮発性が高いほど第2の有機酸が溶液から除去されるので効率的な交換を可能にし得る。第2の有機酸の除去は、単一反応容器内での第1の分散系の形成をも可能にし、さらに同反応容器内でナノ粒子形成に直接使用することを可能にし得る。
【0090】
一部の実施形態では、金属、硫黄、有機硫黄、又は有機リンの添加前に長鎖有機溶媒と長鎖有機酸が混合されて液体プレミックスを形成する。この液体プレミックスに、1種以上の第2の有機酸の1種以上の金属塩、及び場合により元素状硫黄、有機硫黄、有機リン、又はこれらの組み合わせが添加され得る。
任意的な硫黄又は有機硫黄化合物は、元素状硫黄、アルキルチオール、芳香族チオール、ジアルキルチオエーテル、ジアリールチオエーテル、アルキルジスルフィド、アリールジスルフィド、又はこれらの混合物、例えば1-ドデカンチオール(bp 266℃~283℃)、1-トリデカンチオール(bp 291℃)、1-テトラデカンチオール(bp 310℃)、1-ペンタデカンチオール(bp 325℃)、1-ヘキサデカンチオール(bp 343℃~352℃)、1-ヘプタデカンチオール(bp 348℃)、1-オクタデカンチオール(bp 355℃~362℃)、1-イコサンチオール(mp bp 383℃)、1-ドコサンチオール(bp 404℃)、1-テトラコサンチオール(bp 423℃)、デシルスルフィド(bp 217℃~218℃)、ドデシルスルフィド(bp 260℃~263℃)、チオフェノール(bp 169℃)、ジフェニルスルフィド(bp 296℃)、ジフェニルジスルフィド(bp 310℃)、又はこれらの混合物を含んでよい。硫黄又は有機硫黄化合物は、長鎖有機溶媒に可溶性であってよい。第1の分散系に含められる硫黄又は有機硫黄の量は、第1の分散系中の金属に対するモル比によって設定される。
【0091】
任意的な有機リン化合物は、アルキルホスフィン、ジアルキル ホスフィン、トリアルキルホスフィン、アルキルホスフィンオキシド、ジアルキルホスフィンオキシド、トリアルキルホスフィンオキシド、テトラアルキルホスホニウム塩、及びこれらの混合物を含んでよい。例えば、適切な有機リン化合物としては、トリブチルホスフィン(bp 240℃)、トリペンチルホスフィン(bp 310℃)、トリヘキシルホスフィン(bp 352℃)、ジフェニルホスフィン(bp 280℃)、トリオクチルホスフィン(bp 284℃~291℃)、トリフェニルホスフィン(bp 377℃)、又はこれらの混合物が挙げられる。有機リン化合物は、長鎖有機溶媒に可溶性であってよい。第1の分散系に含められる有機リンの量は、第1の分散系中の金属に対するモル比によって設定される。
第1の分散系は、長鎖有機酸の塩以外の界面活性剤を実質的に含まなくてよい。
【0092】
本開示のナノ粒子組成物の生成プロセスは、第1の分散系を第2の温度(T2)まで加熱するステップを含んでよく、T2は、T1より高く、長鎖炭化水素溶媒の沸点以下である。T2は、第1の分散系の少なくとも一部の分解を促進し、長鎖炭化水素溶媒に分散された本開示に記載のナノ粒子を含む第2の分散系を形成することができる。
第2の温度は、T2a~T2bの温度を含んでよく、T2a及びT2bは、T2a<T2bである限り、独立に、例えば、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450℃であり得る。一部の実施形態では、T2aは210℃以上、例えばT2a=210及びT1b=450;又はT1a=250及びT1b=350。
M1金属塩、M2金属塩(もしあれば)、及びM3金属塩(もしあれば)は、第2の温度で分解して中心部を形成し得る。中心部は、金属と酸素原子を含む固体粒子であってよい。長鎖有機酸又はその一部は、部分的に中心部の表面に付着したままであってよい。理論によ制限されないが、長鎖有機酸からの酸素原子が、表面酸素原子の一部として中心部に含まれる可能性がある。このような部分的付着は、ナノ粒子の洗浄、遠心分離、及び処理に耐えるのに十分であり得る。従って、ナノ粒子組成物は、中心部の表面に付着した長鎖ヒドロカルビルを有する中心部を含んでよい。理論によって制限されないが、中心部に付着した長鎖ヒドロカルビルは、第2の分散系における均一分散及び疎水性溶媒における完全なコロイド溶解を可能にする。
【0093】
さらに、長鎖有機酸塩のある部分が分解して不飽和化合物(例えば長鎖オレフィン)を形成し、第2の分散系の一部になり得る。不飽和化合物は、選択溶媒が長鎖有機酸より1炭素長短いアルファオレフィンである場合、長鎖炭化水素溶媒と同一であり得る。
金属塩の分解は、2又は3つの寸法が4nm~100nmの長さ、例えば4nm~20nmの長さである中心部を形成する。中心部は、30%以下、20%以下、10%以下、又は5%以下、例えば1%~30%、5%~20%、又は5%~10%のサイズ分布を有し得る。サイズ及びサイズ分布はTEM及びSAXSによって決定される。
プロセスは、1つ以上の反応容器内で不活性雰囲気下にて行われる。プロセスは、ナノ粒子組成物を長鎖炭化水素溶媒から分離することを含んでよい。ナノ粒子の長鎖炭化水素溶媒からの適切な分離方法は、ナノ粒子の沈殿を引き起こす逆溶媒の添加を含んでよい。適切な逆溶媒としては、C1-C8アルコール、例えばC1-C6、C2-C4アルコール、又は1-ブタノールが挙げられる。理論によって制限されないが、溶液の極性増加は、逆溶媒が長鎖炭化水素溶媒と長鎖有機酸の混合物に溶解している溶液からナノ粒子を沈殿させ得る。未反応金属塩、有機酸及び対応塩を含む汚染物質が長鎖炭化水素溶媒と逆溶媒の混合物に残存することがあり、本プロセスで除去され得る。溶媒と汚染物質の混合物は、遠心分離及びデカンテーション又は濾過によって除去され得る。
本プロセスは、洗浄プロセスによるナノ粒子のさらなる精製を含んでもよい。洗浄は、(i)ナノ粒子を疎水性溶媒、例えばベンゼン、ペンタン、トルエン、ヘキサン、又はキシレンに分散させるステップと、(ii)逆溶媒を添加してナノ粒子を沈殿させるステップと、(iii)遠心分離又は濾過によって沈殿物を収集するステップとを含んでよい。ステップ(i)~(iii)を含む洗浄を繰り返してナノ粒子をさらに精製してよい。
【0094】
ナノ粒子の担持
精製及び/又は未精製ナノ粒子が液体媒体に分散されてナノ粒子分散系を形成し得る。ナノ粒子分散系の形成に適した液体媒体としては、ベンゼン、ペンタン、トルエン、ヘキサン、又はキシレンが挙げられる。ナノ粒子は、ナノ粒子分散系を担体と接触させることによって固体担体に分散させてもよい。ナノ粒子分散系を固体担体と接触させるのに適した方法としては、固体担体の湿式沈着、湿式含浸、又は初期湿潤含浸が挙げられる。担体が大きい(100nm超)平坦な面である場合、ナノ粒子は自己組織化して担体上の単層になるとがある。
本開示の担持ナノ粒子組成物は、担体材料(キャリア又はバインダーと呼ばれることもある)を含む。担体材料は、任意の適切な量、例えば、担持ナノ粒子組成物の総質量に基づいて、≧20、≧30、≧40、≧50、≧60、≧70、≧80、≧90wt%、又は≧95wt%さえの量で含まれ得る。担持ナノ粒子組成物において、ナノ粒子成分は、担体材料の内面又は外面に適宜配置され得る。担体材料は、機械的強度及び高表面積をもたらす多孔性材料を含んでよい。適切な担体材料の非限定例としては、酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はこれらの混合物)、処理酸化物(例えば硫酸化)、結晶性微孔質材料(例えばゼオライト)、非結晶性微孔質材料、カチオン性粘土又はアニオン性粘土(例えばサポナイト、ベントナイト、カオリン、海泡石、又はハイドロタルサイト)、炭素質材料、又はこれらの組み合わせ及び混合物が挙げられる。担体材料は、担持ナノ粒子組成物のバインダーと呼ばれることもある。
【0095】
本開示の担持ナノ粒子組成物は、場合により固体希釈材料を含んでよい。固体希釈材料は、ナノ粒子対固体比を減じるために用いる固体材料であり、通常の担体材料から選択される材料であってよい。例えば、固体希釈材料は酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はこれらの混合物)、処理酸化物(例えば硫酸化)、結晶性微孔質材料(例えばゼオライト)、非結晶性微孔質材料、カチオン性粘土又はアニオン性粘土(例えばサポナイト、ベントナイト、カオリン、海泡石、又はハイドロタルサイト)、炭素質材料、又はこれらの組み合わせ及び混合物であってよい。
ナノ粒子は、担体材料、任意的プロモーター、又は任意的固体希釈材料と組み合わされて担持ナノ粒子組成物を形成することができる。担体材料とナノ粒子の組み合わせは、限定するものではないが、粉砕、製粉、選別、洗浄、乾燥、か焼等を含めたいずれの適切な形成プロセスでも処理され得る。担体上で、ナノ粒子、任意的プロモーター、及び任意的固体希釈材料を乾燥させるか又はか焼して触媒組成物を生成する。乾燥及びか焼は、第3の温度(T3)で行われる。第3の温度は、T3a~T3bの温度を含んでよく、T3a及びT3bは、T2a<T2bである限り、独立に、例えば、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650℃であり得る。一部の実施形態では、T2aは500℃以上、例えばT2a=500℃及びT1b=650℃、又はT1a=550℃及びT1b=600℃などである。次に触媒組成物は、その意図した機能を果たすための変換反応器、例えばシンガス変換プロセスにおけるシンガス変換反応器内に配置され得る。
【0096】
ナノ粒子が担体材料の前駆体と組み合わされるか又は成形されて触媒組成物前駆体混合物を得ることも企図される。種々の担体材料の適切な前駆体としては、例えば、アルカリ金属アルミン酸塩、水ガラス、アルカリ金属アルミン酸塩と水ガラスの混合物、二価、三価、及び/若しくは四価金属源の混合物、例えばマグネシウム、アルミニウム、及び/若しくはケイ素の水溶性塩の混合物、クロロヒドロール、硫酸アルミニウム、又はこれらの混合物を挙げることができる。担体とナノ粒子とを含む触媒組成物前駆体混合物は、その後乾燥及びか焼を受けて、実質的に同一ステップで触媒組成物及び担体材料が形成されることになる。
プロモーターが担持ナノ粒子組成物又は触媒組成物に添加されて触媒前駆体組成物を形成することができる。触媒前駆体は乾燥され及び/又はか焼されて、プロモーターを含む触媒組成物を形成することができる。プロモーターは、硫黄、リン、又は周期表の第1、7、11、若しくは12族から選択される元素、例えばLi、Na、K、Rb、Cs、Re、Cu、Zn、Ag等、及びこれらの混合物の塩を含んでよい。典型的に、硫化物及び硫酸塩が使用される。例えば、プロモーターが担持ナノ粒子組成物又は触媒組成物に溶液の一部として添加され、溶媒はその後蒸発によって除去され得る(例えば水が後で除去される水溶液)。
【0097】
特定の理論によって束縛されるものではないが、中心部の金属酸化物、及びおそらくM1の元素相が、フィッシャー・トロプシュ合成等の化学変換プロセスのための触媒活性をもたらすと考えられる。同様にM2及び/又はM3の1種以上が直接的触媒機能を与えることができる。さらに、M2及び/又はM3の1種以上が、担持ナノ粒子組成物において「プロモーター」の機能を果たすことができる。さらに、存在する場合、硫黄及び又はリンが、同様に触媒組成物においてプロモーターの機能を果たすことができる。プロモーターは、典型的に触媒の1つ以上の性能特性を改善する。プロモーターを触媒に含めることによって、プロモーターのない触媒組成物に比べて増強される触媒性能特性の例としては、選択性、活性、安定性、寿命、再生性、削減可能性、並びに硫黄、窒素、及び酸素等の不純物による潜在被毒に対する耐性が挙げられる。
ナノ粒子が担体上に均一に分散されるのが有利であり得る。ナノ粒子は、担持ナノ粒子組成物に実質的に均一に分布し、高度に分散した分布をもたらし、触媒組成物の高い触媒活性に寄与することができる。
開示した合成方法は、均一な形状及びサイズを有する結晶性中心部を生成することができる。中心部は、中心部全体に均一に分布され得る金属酸化物を含み、この中心部が触媒組成物に含められると触媒作用を改善することができる。中心部は、中心部に配置される長鎖炭化水素を含み得るナノ粒子の一部であってよい。ナノ粒子は、容易に入手可能な前駆体から単一反応容器内で形成され得る。ナノ粒子は、液体媒体に分散され、それによって固体担体上に分散されることもある。固体担体上に分散されたナノ粒子は、一緒に乾燥され又はか焼されて触媒組成物を形成することができる。
【0098】
II.2 LAOを製造するためのシンガスの変換プロセス
本開示の第2の態様の触媒組成物は、シンガスを含むフィードからLAOを製造するプロセスにおいてフィッシャー・トロプシュ触媒として有利に使用することができる。
本明細書で使用する用語「シンガス」は、本質的に水素(H2)及び一酸化炭素(CO)から成るガス混合物である。フィードストリームとして用いられるシンガスは、原料及び意図した変換プロセスに応じて、10モル%までの他成分、例えばCO2及び低級炭化水素(低級HC)を含んでよい。前記他成分は、シンガス生成に用いたプロセスで得られた副生物又は未変換生成物であり得る。シンガスは、このような少量の分子酸素(O2)を含有してよく、その結果、存在するO2の量はフィッシャー・トロプシュ合成反応及び/又は他の変換反応を妨害しない。例えば、シンガスは、1モル%以下のO2、0.5モル%以下のO2、又は0.4モル%以下のO2を含んでよい。シンガスは、r1~r2の水素(H2)対一酸化炭素(CO)モル比を有してよく、r1及びr2は、r1<r2である限り、独立に、例えば、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.2、1.4、1.5、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.5、2.6、2.8、3.0であり得る。H2及びCOの分圧は、不活性ガスの反応混合物への導入によって調整され得る。
シンガスは、水蒸気及び/又は酸素を炭素質材料、例えば、天然ガス、石炭、バイオマス、又はシンガス改質装置における改質プロセスを経た炭化水素フィードストックと反応させることによって形成され得る。改質プロセスは、任意の適切な改質プロセス、例えば水蒸気メタン改質、自己熱改質、若しくは部分酸化、断熱予備改質、若しくはガス加熱改質、又はこれらの組み合わせに基づいてよい。水蒸気及び酸素改質プロセスの例は、米国特許第7,485,767号に詳述されている。
【0099】
水蒸気又は酸素改質から形成されたシンガスは、水素及び1種以上の炭素酸化物(CO及びCO2)を含む。生成されたシンガスの水素と炭素酸化物の比は、使用改質条件に応じて異なる。シンガス改質生成物は、H2、CO及びCO2を、その後のメタノール/ジメチルエーテルを含む酸素化物への処理又はフィッシャー・トロプシュ合成に適したシンガスブレンドを結果として与える量及び比で含有すべきである。
シンガス内の成分の比及びシンガスのCO2絶対含量は、1つ以上の改質プロセスで生成されたシンガスからCO2の一部を除去し、場合により再循環させることによって変えることができる。改質プロセスで生成されたシンガスからCO2を回収し、再循環させるためにいくつかの商業技術(例えば酸性ガス除去塔)が利用可能である。少なくとも1つの実施形態では、水蒸気改質ユニットからのシンガス流出物からCO2を回収し、回収したCO2をシンガス改質装置に再循環させることができる。
適切なフィッシャー・トロプシュ触媒反応手順は、参照することによりそれらの内容の関連部分を援用する米国特許第7,485,767号;第6,211,255号;及び第6,476,085号で見つけられる。触媒組成物は、固定床反応器、流動床反応器、又は任意の他の適切な反応器に収容され得る。
【0100】
変換条件には種々多様の温度を含めてよい。少なくとも1つの実施形態では、変換条件はT1~T2℃の範囲の温度を含み、T1及びT2は、T1<T2である限り、例えば、175、180、190、200、220、240、250、260、280、290、300、320、340、350であり得る。
変換条件には種々多様の圧力を含めてよい。少なくとも1つの実施形態では、絶対反応圧力は、p1~p2キロパスカル(「kPa」)の範囲であり、p1及びp2は、p1<p2である限り、独立に、例えば、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000であり得る。
変換条件は、v1~v2時間-1のガス毎時空間速度を含んでよく、v1及びv2は、v1<v2である限り、独立に、例えば、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000であり得る。
特定実施形態では、触媒組成物は、ステップ(I)の前にH2含有雰囲気の存在下で活性化され得る。該活性化は、変換反応器に投入される前に変換反応器の実験施設内外部で、又は代わりに若しくはさらに、変換反応器内でその場で行われ得る。該H2含有雰囲気は、例えば、シンガス、高純度水素、H2/不活性ガス混合物、及びこれらの混合物であり得る。不活性ガスは、例えば、N2、He、Ne、Ar、及びKrであり得る。活性化は、例えば、T1~T2℃の温度で行われ、T1及びT2は、T1<T2である限り、独立に、例えば、150、160、170、180、190、200、220、240、250、260、280、300、320、340、350、360、380、400、420、440、450、460、480、500であり得る。
【0101】
本開示の第2の態様のプロセスの特定実施形態では、ステップ(I)において、変換生成物混合物は、LAOを、変換生成物混合物の総モルに基づいて、概して、c1~c2モル%含み、c1及びc2は、c1<c2である限り、独立に、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95であり得る。該LAOは、有利には1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、及び1-オクテンを含む。
本開示の第2の態様のプロセスの特定実施形態では、ステップ(I)において、下記事項の少なくとも1つが満たされる:
(i)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、c41~c42モル%の1-ブテンを含み、c41及びc42は、c41<c42である限り、独立に、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95であり得る。好ましくはc41=60。好ましくはc41=80;
(ii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、c51~c52モル%の1ペンテンを含み、c51及びc52は、c51<c52である限り、独立に、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95であり得る。好ましくはc51=50。好ましくはc51=70;
(iii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、c61~C62モル%の1-ヘキセンを含み、c61及びc62は、c61<c62である限り、独立に、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95であり得る。好ましくはc61=50。好ましくはc61=70;
(iv)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、c71~c72モル%の1-ヘプテンを含み、c71及びc72は、c71<c72である限り、独立に、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95であり得る。好ましくはc71=50。好ましくはc51=60;及び
(v)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、c81~c82モル%の1-オクテンを含み、c81及びc82は、c81<c82である限り、独立に、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95であり得る。好ましくはc81=50。好ましくはc81=60。
【0102】
本開示の第2の態様のプロセスの特定実施形態では、ステップ(I)において、下記事項の少なくとも1つが満たされる:
(i)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、c4-1~c4-2モル%のn-ブタンを含み、c4-1及びc4-2は、c4-1<c4-2である限り、独立に、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり得る。好ましくはc4-2=40。好ましくはc4-2=30;
(ii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、c5-1~c5-2モル%のn-ペンタンを含み、c5-1及びc5-2は、c5-1<c5-2である限り、独立に、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり得る。好ましくはc5-2=40。好ましくはc5-2=30;
(iii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、c6-1~C6-2モル%のn-ヘキセンを含み、c6-1及びc6-2は、c6-1<c6-2である限り、独立に、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり得る。好ましくはc6-2=40。好ましくはc6-2=30;
(iv)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、c7-1~c7-2モル%のn-ヘプタンを含み、c7-1及びc7-2は、c7-1<c7-2である限り、独立に、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり得る。好ましくはc7-2=40。好ましくはc7-2=30;及び
(v)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、c8-1~c8-2モル%のn-オクタンを含み、c8-1及びc8-2は、c8-1<c8-2である限り、独立に、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり得る。好ましくはc8-2=40。好ましくはc8-2=30。
【0103】
本開示の第2の態様のプロセスの特定実施形態では、ステップ(I)において、下記事項の少なくとも1つが満たされ、結果として変換生成物混合物中低濃度の内部オレフィンの生成となる:
(i)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、c4-a~c4-bモル%の2-ブテンを含み、c4-a及びc4-2は、c4-a<c4-bである限り、独立に、例えば、0、2、4、5、6、8、10、12、14、15、16、18、20であり得る。好ましくはc4-b=15。好ましくはc4-5=10;
(ii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、c5-a~c5-bモル%のC5内部オレフィンを含み、c5-a及びc5-2は、c5-a<c5-bである限り、独立に、例えば、0、2、4、5、6、8、10、12、14、15、16、18、20であり得る。好ましくはc5-b=15。好ましくはc5-b=10;
(iii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、c6-a~C6-bモル%のC6内部オレフィンを含み、c6-a及びc6-2は、c6-a<c6-bである限り、独立に、例えば、0、2、4、5、6、8、10、12、14、15、16、18、20であり得る。好ましくはc6-b=15。好ましくはc6-b=10;
(iv)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、c7-a~c7-bモル%のC7内部オレフィンを含み、c7-a及びc7-2は、c7-a<c7-bである限り、独立に、例えば、0、2、4、5、6、8、10、12、14、15、16、18、20であり得る。好ましくはc7-b=15。好ましくはc5-b=10;及び
(v)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、c8-a~c8-bモル%のC8内部オレフィンを含み、c8-a及びc8-2は、c8-a<c8-bである限り、独立に、例えば、0、2、4、5、6、8、10、12、14、15、16、18、20であり得る。好ましくはc8-b=15。好ましくはc8-b=10。
【0104】
本開示の第2の態様のプロセスの特定実施形態では、ステップ(I)において、下記事項の少なくとも1つが満たされ、結果として変換生成物混合物中低濃度の直鎖1-アルコールの生成となる:
(i)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、c4-m~c4-nモル%の1-ブタノールを含み、c4-m及びc4-2は、c4-m<c4-nである限り、独立に、例えば、0、0.1、0.2、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり得る。好ましくはc4-n=2。好ましくはc4-2=1;さらに好ましくはc4-n=0;
(ii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、c5-m~c5-nモル%の1-ペンタノールを含み、c5-m及びc5-2は、c5-m<c5-nである限り、独立に、例えば、0、0.1、0.2、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり得る。好ましくはc5-n=2。好ましくはc5-2=1;さらに好ましくはc5-n=0;
(iii)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、c6-m~C6-nモル%の1-ヘキサノールを含み、c6-m及びc6-2は、c6-m<c6-nである限り、独立に、例えば、0、0.1、0.2、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり得る。好ましくはc6-n=2。好ましくはc6-2=1;さらに好ましくはc6-n=0;
(iv)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、c7-m~c7-nモル%の1-ヘプタノールを含み、c7-m及びc7-2は、c7-m<c7-nである限り、独立に、例えば、0、0.1、0.2、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり得る。好ましくはc7-n=2。好ましくはc7-2=1;さらに好ましくはc7-n=0;及び
(v)変換生成物混合物は、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、c8-m~c8-nモル%の1-オクタノールを含み、c8-m及びc8-2は、c8-m<c8-nである限り、独立に、例えば、0、0.1、0.2、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり得る。好ましくはc8-n=2。好ましくはc8-2=1;さらに好ましくはc8-n=0。
特定実施形態では、変換生成物混合物は、実質的にアルコールを含まない。
変換生成物混合物を分離することによって1種以上のLAO生成物が生成され得る。いずれの適切な分離プロセス及び機器を使用してもよく、限定するものではないが、フラッシング、蒸留、膜分離、吸収、吸着、深冷分離、結晶化等が挙げられる。
【0105】
II-3. 実施例
実施例II-3-1. MnCoOx球状ナノ粒子の調製
オレイン酸(OLAC)と1-オクタデセンとの混合物にマンガン(II)アセチルアセトネート(Mn(CH3COCHCOCH2)2)及び酢酸コバルト(II)四水和物(Co(CH3COO)2・4H2O)を溶かすことによって反応溶液を調製した。反応溶液は、4.5モルのOLAC:1モルの金属のモル比及び0.164mmolのMn/1mLの1-オクタデセンの混合(combined)金属濃度を有した。反応溶液を窒素流下で130℃の温度まで加熱し、130℃で90分間保持した。次に窒素の不活性雰囲気下で10℃/分の速度にて混合物を加熱して還流させた(320℃)。反応混合物を320℃で30分間保持した。反応容器の外部を冷却するためにRT空気流を用いる不活性雰囲気下で反応混合物を冷却した。ナノ粒子を収集し、疎水性溶媒としてヘキサン、及び逆溶媒としてイソプロパノールを用いる反復洗浄及びデカンティング/遠心分離ステップにより精製した。精製ナノ粒子をトルエンに分散させた。TEM画像は、ナノ粒子がほぼ球形状であり、6.3ナノメートルの平均直径及び13%のサイズ分布を有することを示す。
【0106】
実施例II-3-1a. MnCoOx球状ナノ粒子をシリカで担持
8グラムのSiO2をヘキサンに分散させた。激しく撹拌しながら、実施例II-3-1に従って調製したナノ粒子溶液を担体分散液に添加し、混合物を25℃で180分間撹拌した。触媒粉末を遠心分離により回収した。超音波処理及び遠心分離によってヘキサンで3回粉末を洗浄した。担持ナノ粒子組成物を60℃で12時間減圧(100mmHg)下で乾燥させた。次に乾燥担持ナノ粒子粉末を静大気内325℃で180分間3℃/分の加熱及び冷却傾斜率を用いてか焼した。
【0107】
実施例II-3-1b. MnCoOx球状ナノ粒子をアルミナで担持
8グラムのAl2O3をヘキサンに分散させた。激しく撹拌しながら、実施例1に従って調製したナノ粒子溶液を担体分散液に添加し、混合物を25℃で180分間撹拌した。触媒粉末を遠心分離により回収した。超音波処理及び遠心分離によってヘキサンで3回粉末を洗浄した。担持ナノ粒子組成物を60℃で12時間減圧(100mmHg)下で乾燥させた。次に乾燥担持ナノ粒子粉末を静大気内325℃で180分間3℃/分の加熱及び冷却傾斜率を用いてか焼した。
【0108】
実施例II-3-2. 担持MnCoOx棒状ナノ粒子の調製
オレイン酸(OLAC)と1-オクタデセンとの混合物にマンガン(II)アセチルアセトネートアセテート(Mn(CH3COCHCOCH2)2)及び酢酸コバルト(II)四水和物(Co(CH3COO)2・4H2O)を溶かすことによって反応溶液を調製した。反応溶液は、4.5モルのOLAC:1モルの金属(Mn+Co)のモル比及び0.9mmolのMn/1mLの1-オクタデセンの混合金属濃度を有した。反応溶液を窒素流下で130℃の温度まで加熱し、130℃で60分間保持した。次に窒素の不活性雰囲気下で10℃/分の速度にて混合物を加熱して還流させた(320℃)。反応混合物を320℃で120分間保持した。反応容器の外部を冷却するためにRT空気流を用いる不活性雰囲気下で反応混合物を冷却した。ナノ粒子を収集し、疎水性溶媒としてヘキサン、及び逆溶媒としてイソプロパノールを用いる反復洗浄及びデカンティング/遠心分離ステップにより精製した。精製ナノ粒子をトルエンに分散させた。TEM画像は、ナノ粒子が棒状であり、15%の長さ分布で64.1の平均長さを有し、13%の幅分布で11.7ナノメートルの平均幅を有することを示す。
【0109】
比較例II-3-3. バルクCo2MnO4
125mlの水に48.9gのCo(NO3)2-6H2O及び24.1gのMn(NO3)-2.6H2Oを含有する水溶液を調製した。これを25mlの水中48.4gのクエン酸と14.1mlのエチレングリコールの水溶液に70℃~90℃で撹拌しながら添加した。混合物が1~2時間後に濃厚になった後、それを空気中350℃で30分間か焼した。
【0110】
実施例II-3-4. LAOを製造するためのアルミナに担持されたMnCoOx球状ナノ粒子を用いるシンガスの変換プロセス
実施例II-3-1bのMnCoOx(球状)/Al2O3の1:3混合物及び炭化ケイ素(両成分のサイズは40~60メッシュ)を固定床反応器システムに投入した。混合物を110℃でN2パージ下15バールの圧力及びGHSV=2000時間-1で2時間乾燥させた。供給ガスを2:1のCO:H2混合物に繰り替え、15バールの反応圧力、及びGHSV=2000時間-1で、反応器温度を1℃/分の傾斜率で270℃まで上昇させた。反応器を270℃で2時間維持し、反応器をフィッシャー・トロプシュ合成温度(例えば、250℃)まで冷却した。温度が安定化したら、反応器フィードをH2とCOの混合物に切り替えた。調査した条件範囲は以下のとおりだった:(1)温度、150~350℃;(2)圧力、1~50バール;(3)H2:CO比、1:3~3:1、及び(4)GHSV、1000~10,000時間-1。反応器から得た生成物混合物を組成について分析した。生成物混合物の選択性を下表VIIで報告する。
【0111】
【0112】
上表VIIから明らかに分かるように、MnCoOx(球状)/Al2O3含有触媒は、生成物混合物におけるC4、C5、C6、C7、及びC8のLAOについて非常に高い選択性を示した。それぞれ、(i)C4、C5、C6、C7、及びC8のn-パラフィンに対する選択性;並びに(ii)C4、C5、C6、C7、及びC8のLIOに対する選択性より全てずっと高い。驚いたことに、C4、C5、C6、C7、及びC8の一級アルコールほとんど又は全く生成されなかった。MnCoOxナノ粒子/Al2O3触媒は、シンガスのLAOへの変換のために驚くべき有利な触媒であることが証明された。
【0113】
本開示は、さらに下記態様/実施形態の1つ以上を含むことができる。
A1. 直鎖アルファオレフィン生成物の製造プロセスであって、
(I)シンガスを含むフィードを、変換反応器内で、変換条件下、触媒組成物と接触させて、直鎖アルファオレフィンを含む変換生成物混合物を生成するステップであって、
この触媒組成物が、
担体と、
この担体上の複数のナノ粒子と
を含み、ここで、
各ナノ粒子は中心部を含み、該中心部は、4~100nmの平均粒子サイズ及び20%以下の粒子サイズ分布を有し、中心部は、酸素、金属元素M1、場合により硫黄、場合によりリン、任意的金属元素M2、及び場合により第3の金属元素M3を含み、ここで、
M1は、Mn、Fe、Co、及びこれらの2種以上の組み合わせから選択され、
M2は、Ni、Zn、Cu、Mo、W、Ag、及びこれらの組み合わせから選択され、
M3は、Y、Sc、アルカリ金属、ランタニド、第13、14、又は15族元素、及びこれらの組み合わせから選択され、かつ
もしあれば、M2、M3、S、及びPのM1に対するモル比は、それぞれ、r1、r2、r3、及びr4であり、0≦r1≦2、0≦r2≦2、0≦r3≦5、かつ0≦r4≦5である、
ステップと、
(II)変換生成物混合物から直鎖アルファオレフィン生成物を得るステップと
を含むプロセス。
【0114】
A2. 0.05≦r1≦0.5、かつ0.005≦r2≦0.5である、A1に記載のプロセス。
A3. 中心部が、M1、M2、及びM3から選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物を含む、A1又はA2に記載のプロセス。
A4. ナノ粒子が、4~20nmの平均粒子サイズを有する、A1~A3のいずれか1つに記載のプロセス。
A5. ナノ粒子が、5~15%の粒子サイズ分布を有する、A1~A4のいずれか1つに記載のプロセス。
A6. 中心部が、少なくとも2種の金属元素を含む、A1~A5のいずれか1つに記載のプロセス。
A7. ナノ粒子が、中心部の表面に付着した長鎖基を実質的に含まない、A1~A6のいずれか1つに記載のプロセス。
A8. 中心部が、本質的に酸素、M1、場合によりM2、場合によりM3、場合により硫黄、及び場合によりリンから成る、A1~A7のいずれか1つに記載のプロセス。
A9. 中心部が実質的に球状である、A1~A8のいずれか1つに記載のプロセス。
A10. 中心部が棒状である、A1~A8のいずれか1つに記載のプロセス。
【0115】
A11. 下記事項:
(i)フィードが、0.3~3.0、好ましくは0.5~2.5の範囲のH2対COモル比を有する;
(ii)ステップ(I)において、変換条件が、
175~350℃、好ましくは180~300℃の範囲の温度と、
100~3,000キロパスカル(絶対)、好ましくは100~2,000キロパスカル(絶対)の範囲の圧力と、
500~10,000時間-1、好ましくは1,000~5,000時間-1の範囲のGHSVと
の少なくとも1つを含む;
の少なくとも1つが満たされる、A1~A10のいずれか1つに記載のプロセス。
A12. プロセスが、ステップ(I)の前に、
(I0)触媒組成物をH2含有雰囲気下で活性化するステップ
をさらに含む、A1~A11のいずれか1つに記載のプロセス。
A13. H2含有雰囲気が、シンガス、水素、H2と不活性ガスの混合物、及びこれらの混合物から選択される、A12に記載のプロセス。
A14. ステップ(I0)が、150~500℃の範囲の温度で行われる、A12又はA13に記載のプロセス。
A15. ステップ(I)において、変換生成物混合物が、反応生成物混合物の総モルに基づいて、概して、40~95モル%の直鎖アルファオレフィンを含む、A1~A14のいずれか1つに記載のプロセス。
【0116】
A16. ステップ(I)において、下記事項:
(i)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ブテンを含む;
(ii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ペンテンを含む;
(iii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ヘキセンを含む;
(iv)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ヘプテンを含む;
及び
(v)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-オクテンを含む;
の少なくとも1つが満たされる、A1~A15のいずれか1つに記載のプロセス。
【0117】
A17. ステップ(I)において、下記事項:
(i)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ブタンを含む;
(ii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ペンタンを含む;
(iii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ヘキサンを含む;
(iv)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ヘプタンを含む;
及び
(v)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-オクタンを含む;
の少なくとも1つが満たされる、A1~A16のいずれか1つに記載のプロセス。
【0118】
A18. ステップ(I)において、下記事項:
(i)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、0~20モル%の2-ブテンを含む;
(ii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC5内部オレフィンを含む;
(iii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC6内部オレフィンを含む;
(iv)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC7内部オレフィンを含む;
及び
(v)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC8内部オレフィンを含む;
の少なくとも1つが満たされる、A1~A17のいずれか1つに記載のプロセス。
【0119】
A19. 変換生成混合物が、実質的に直鎖1-アルコールを含まない、A1~A18のいずれか1つに記載のプロセス。
A20. 変換生成物混合物が、実質的にアルコールを含まない、A19に記載のプロセス。
A21. 触媒組成物が、
(A)液体媒体と、その中に分布する複数のナノ粒子とを含むナノ粒子分散系であって、各ナノ粒子が中心部を含み、該中心部は、4~100nmの平均粒子サイズ及び20%以下の粒子サイズ分布を有し、中心部は、酸素、金属元素M1、場合により硫黄、場合によりリン、場合により第2の金属元素M2、及び場合により第3の金属元素M3を含み、ここで、
M1は、Mn、Fe、Co、又はこれらの2種以上の組み合わせから選択され、
M2は、Ni、Zn、Cu、Mo、W、Ag、及びこれらの組み合わせから選択され、
M3は、Y、Sc、アルカリ金属、ランタニド、第13、14、及び15族元素、並びにこれらの組み合わせから選択され、
もしあれば、それぞれ、M2、M3、S、及びPのM1に対するモル比は、r1、r2、r3、及びr4であり、0≦r1≦2、0≦r2≦2、0≦r3≦5、かつ0≦r4≦5である、ナノ粒子分散系を準備するステップと、
(B)ある量のナノ粒子分散系を担体上に配置して担持ナノ粒子組成物を得るステップと
を含む触媒製造プロセスによって作られる、A1~A20のいずれか1つに記載のプロセス。
【0120】
A22. 触媒製造プロセスが、
(C)担持ナノ粒子組成物をか焼して触媒組成物を得るステップ
をさらに含む、A21に記載のプロセス。
A23. 触媒製造プロセスが、
(D)担体、担持ナノ粒子組成物、又は触媒組成物をプロモーターの前駆体に含浸させて触媒前駆体を得るステップと、
(E)この触媒前駆体を乾燥させ及び/又はか焼して、プロモーターを含む触媒組成物を得るステップと
をさらに含む、A21又はA22に記載のプロセス。
【0121】
A24. ステップ(A)が、
(A1)第1の分散系を第1の温度で準備するステップであって、第1の分散系は、長鎖有機酸とM1の塩、場合により長鎖有機酸とM2の塩、場合により長鎖有機酸とM3の塩、長鎖炭化水素溶媒、場合により第2の有機酸とM1の塩、場合により第3の有機酸とM2の塩、場合により第4の有機酸とM3の塩、場合により長鎖炭化水素溶媒に可溶な硫黄又は有機硫黄化合物、及び場合により長鎖炭化水素溶媒に可溶な有機リン化合物を含む、ステップと、
(A2)第1の分散系を、第1の温度より高いが、長鎖炭化水素溶媒の沸点以下の第2の温度まで加熱するステップであって、長鎖有機酸の塩の少なくとも一部及び存在する場合、第2の有機酸の塩の少なくとも一部が、長鎖炭化水素溶媒に分散したナノ粒子を含む第2の分散系を形成し、ナノ粒子は中心部を含み、中心部は、M1、場合によりM2、場合によりM3、酸素、場合により硫黄、及び場合によりリンを含む、ステップと、
(A3)ナノ粒子を前記第2の分散系から分離するステップと、
(A4)(A3)で分離されたナノ粒子を液体媒体に分散させてナノ粒子分散系を形成するステップと
を含む、A21~A23のいずれか1つに記載のプロセス。
【0122】
A25. ナノ粒子が、4~20nmの範囲の平均粒子サイズ、及び20%以下の粒子サイズ分布を有する、A21~A24のいずれか1つに記載のプロセス。
A26. ステップ(A1)、(A2)、(A3)、及び(A4)が同一容器内で行われる、A24又はA25に記載のプロセス。
A27. 第2の有機酸が、第1の温度未満の沸点を有する、A21~A26のいずれか1つに記載のプロセス。
A28. 第1の分散系が、長鎖有機酸の塩以外の界面活性剤を実質的に含まない、A21~A22のいずれか1つに記載のプロセス。
A29. 第2の温度が、210℃~450℃の範囲内である、A21~A28のいずれか1つに記載のプロセス。
A30. 長鎖有機酸及び長鎖炭化水素溶媒の1分子当たりの平均炭素原子数が、4を超えて異ならない、A21~A29のいずれか1つに記載のプロセス。
【0123】
B1. 直鎖アルファオレフィン生成物の製造プロセスであって、
(I)シンガスを含むフィードを、変換反応器内で、変換条件下、触媒組成物と接触させて、直鎖アルファオレフィンを含む変換生成物混合物を生成するステップであって、
この触媒組成物が、
鉄、コバルト、マンガン、及びこれらの2種以上の任意の比率の組み合わせから選択される金属元素M1と、
アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、クロム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド系列、アクチニド系列、及びこれらの2種以上の任意の比率の組み合わせから選択される金属元素M2と、
M1及びM2と異なる任意的金属M3と、
炭素と、
窒素と、
場合により硫黄とを、M2:M3:C:N:S:M1=r1:r2:r3:r4:r5:1で示される、M2、M3、炭素、窒素、及び硫黄のM1に対するそれぞれr1、r2、r3、r4、及びr5のモル比で含み、
ここで、
0.1≦r1≦1.5、
0≦r2≦0.5、
0<r3≦1、
0<r4≦1、かつ
0≦r5≦1である、
ステップと、
(II)変換生成物混合物から直鎖アルファオレフィン生成物を得るステップと
を含むプロセス。
【0124】
B2. X線回折ダイアグラムによって決定されるように、触媒成分中の炭素の少なくとも一部が、M1、M2、及びM3の1種以上の金属炭化物として存在し、かつ触媒成分中の窒素の少なくとも一部が、M1、M2、及びM3の1種以上の金属窒化物として存在する、B1に記載のプロセス。
B3. 金属炭化物及び/又は金属窒化物が、触媒成分に均一に分布される、B1又はB2に記載のプロセス。
B4. M1が、鉄、コバルト、鉄とコバルトの任意の比率の組み合わせ、鉄とマンガンの任意の比率の組み合わせ、コバルトとマンガンの任意の比率の組み合わせ、及び鉄と、コバルトと、マンガンとの任意の比率の組み合わせから選択される、B1~B3のいずれか1つに記載のプロセス。
B5. M2が、イットリウム及びランタニド系列から選択される、B1~B4のいずれか1つに記載のプロセス。
B6. M3が、アルカリ金属、銅、銀、並びにこれらの2種以上の任意の比率の任意の組み合わせ及び混合物から選択される、B1~B5のいずれか1つに記載のプロセス。
B7. 触媒成分が、本質的にM1、M2、M3、炭素、窒素、及び場合により硫黄から成る、B1~B6のいずれか1つに記載のプロセス。
B8. r1が、0.9~1.1の範囲の数である、B1~B7のいずれか1つに記載のプロセス。
B9. 下記事項:
(i)フィードが、0.3~3.0、好ましくは0.5~2.5の範囲のH2対COモル比を有する;
(ii)ステップ(I)において、変換条件が、
175~350℃、好ましくは180~300℃の範囲の温度と、
100~3,000キロパスカル(絶対)、好ましくは100~2,000キロパスカル(絶対)の範囲の圧力と、
500~10,000時間-1、好ましくは1,000~5,000時間-1の範囲のGHSVと
の少なくとも1つを含む;
の少なくとも1つが満たされる、B1~B8のいずれか1つに記載のプロセス。
【0125】
B9. プロセスが、ステップ(I)の前に、
(I0)触媒組成物をH2含有雰囲気下又は不活性雰囲気下で活性化するステップ
をさらに含む、B1~B8のいずれか1つに記載のプロセス。
B10. ステップ(I0)が、シンガス、水素、H2と不活性ガスの混合物、及びこれらの混合物から選択されるH2含有雰囲気下で行われる、B9に記載のプロセス。
B11. ステップ(I0)が、150~500℃の範囲の温度で行われる、B9又はB10に記載のプロセス。
B12. ステップ(I0)が、N2、He、Ne、Ar、Kr、及びこれらの混合物から選択される不活性雰囲気下で行われる、B9に記載のプロセス。
B13. ステップ(I0)が、200~600℃の範囲の温度で行われる、B12に記載のプロセス。
B14. ステップ(I)において、変換生成物混合物が、反応生成物混合物の総モルに基づいて、概して、40~95モル%の直鎖アルファオレフィンを含む、B1~B13のいずれか1つに記載のプロセス。
【0126】
B15. ステップ(I)において、下記事項:
(i)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ブテンを含む;
(ii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ペンテンを含む;
(iii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ヘキセンを含む;
(iv)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ヘプテンを含む;及び
(v)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-オクテンを含む;
の少なくとも1つが満たされる、B1~B14のいずれか1つに記載のプロセス。
【0127】
B16. ステップ(I)において、下記事項:
(i)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ブタンを含む;
(ii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn--ペンタンを含む;
(iii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ヘキサンを含む;
(iv)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ヘプタンを含む;
及び
(v)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-オクタンを含む;
の少なくとも1つが満たされる、B1~B15のいずれか1つに記載のプロセス。
【0128】
B17. ステップ(I)において、下記事項:
(i)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、0~20モル%の2-ブテンを含む;
(ii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC5内部オレフィンを含む;
(iii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC6内部オレフィンを含む;
(iv)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC7内部オレフィンを含む;
及び
(v)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC8内部オレフィンを含む;
の少なくとも1つが満たされる、B1~B16のいずれか1つに記載のプロセス。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖アルファオレフィン生成物の製造プロセスであって、
(I)シンガスを含むフィードを、変換反応器内で、変換条件下、触媒組成物と接触させて、直鎖アルファオレフィンを含む変換生成物混合物を生成するステップであって、
前記触媒組成物が、
担体と、
前記担体上の複数のナノ粒子と
を含み、ここで、
各ナノ粒子は中心部を含み、前記中心部は、4~100nmの平均粒子サイズ及び20%以下の粒子サイズ分布を有し、前記中心部は、酸素、金属元素M1、場合により硫黄、場合によりリン、任意的金属元素M2、及び場合により第3の金属元素M3を含み、ここで、
M1は、Mn、Fe、Co、及びこれらの2種以上の組み合わせから選択され、
M2は、Ni、Zn、Cu、Mo、W、Ag、及びこれらの組み合わせから選択され、
M3は、Y、Sc、アルカリ金属、ランタニド、第13、14、又は15族元素、及びこれらの組み合わせから選択され、かつ
もしあれば、M2、M3、S、及びPのM1に対するモル比は、それぞれ、r1、r2、r3、及びr4であり、0≦r1≦2、0≦r2≦2、0≦r3≦5、かつ0≦r4≦5である、
ステップと、
(II)前記変換生成物混合物から前記直鎖アルファオレフィン生成物を得るステップと
を含むプロセス。
【請求項2】
0.05≦r1≦0.5、かつ0.005≦r2≦0.5である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記中心部が、M1、M2、及びM3から選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物を含む、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ナノ粒子が、4~20nmの平均粒子サイズを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、5~15%の粒子サイズ分布を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記中心部が、少なくとも2種の金属元素を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、前記中心部の表面に付着した長鎖基を実質的に含まない、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記中心部が、本質的に酸素、M1、場合によりM2、場合によりM3、場合により硫黄、及び場合によりリンから成る、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
下記事項:
(i)前記フィードが、0.3~3.0
の範囲のH
2対COモル比を有する;
(ii)ステップ(I)において、前記変換条件が、
175~350℃
の範囲の温度と、
100~3,000キロパスカル(絶対)
の範囲の圧力と、
500~10,000時間
-1
の範囲のGHSVと
の少なくとも1つを含む;
の少なくとも1つが満たされる、請求項1~
8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップ(I)において、前記変換生成物混合物が、反応生成物混合物の総モルに基づいて、概して、40~95モル%の直鎖アルファオレフィンを含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記変換生成混合物が、実質的に直鎖1-アルコールを含まない、請求項1~
10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記触媒組成物が、
(A)液体媒体と、その中に分布する複数のナノ粒子とを含むナノ粒子分散系であって、各ナノ粒子が中心部を含み、前記中心部は、4~100nmの平均粒子サイズ及び20%以下の粒子サイズ分布を有し、前記中心部は、酸素、金属元素M1、場合により硫黄、場合によりリン、場合により第2の金属元素M2、及び場合により第3の金属元素M3を含み、
ここで、
M1は、Mn、Fe、Co、又はこれらの2種以上の組み合わせから選択され、
M2は、Ni、Zn、Cu、Mo、W、Ag、及びこれらの組み合わせから選択され、
M3は、Y、Sc、アルカリ金属、ランタニド、第13、14、及び15族元素、並びにこれらの組み合わせから選択され、かつ
もしあれば、M2、M3、S、及びPのM1に対するモル比は、それぞれ、r1、r2、r3、及びr4であり、0≦r1≦2、0≦r2≦2、0≦r3≦5、かつ0≦r4≦5である、前記ナノ粒子分散系を準備するステップと、
(B)ある量の前記ナノ粒子分散系を担体上に配置して担持ナノ粒子組成物を得るステップと
を含む触媒製造プロセスによって作られる、請求項1~
11のいずれか1項に記載のプロセス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0128
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0128】
B17. ステップ(I)において、下記事項:
(i)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、0~20モル%の2-ブテンを含む;
(ii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC5内部オレフィンを含む;
(iii)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC6内部オレフィンを含む;
(iv)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC7内部オレフィンを含む;
及び
(v)変換生成物混合物が、変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC8内部オレフィンを含む;
の少なくとも1つが満たされる、B1~B16のいずれか1つに記載のプロセス。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕直鎖アルファオレフィン生成物の製造プロセスであって、
(I)シンガスを含むフィードを、変換反応器内で、変換条件下、触媒組成物と接触させて、直鎖アルファオレフィンを含む変換生成物混合物を生成するステップであって、
前記触媒組成物が、
担体と、
前記担体上の複数のナノ粒子と
を含み、ここで、
各ナノ粒子は中心部を含み、前記中心部は、4~100nmの平均粒子サイズ及び20%以下の粒子サイズ分布を有し、前記中心部は、酸素、金属元素M1、場合により硫黄、場合によりリン、任意的金属元素M2、及び場合により第3の金属元素M3を含み、ここで、
M1は、Mn、Fe、Co、及びこれらの2種以上の組み合わせから選択され、
M2は、Ni、Zn、Cu、Mo、W、Ag、及びこれらの組み合わせから選択され、
M3は、Y、Sc、アルカリ金属、ランタニド、第13、14、又は15族元素、及びこれらの組み合わせから選択され、かつ
もしあれば、M2、M3、S、及びPのM1に対するモル比は、それぞれ、r1、r2、r3、及びr4であり、0≦r1≦2、0≦r2≦2、0≦r3≦5、かつ0≦r4≦5である、
ステップと、
(II)前記変換生成物混合物から前記直鎖アルファオレフィン生成物を得るステップと
を含むプロセス。
〔2〕0.05≦r1≦0.5、かつ0.005≦r2≦0.5である、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔3〕前記中心部が、M1、M2、及びM3から選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物を含む、前記〔1〕又は前記〔2〕に記載のプロセス。
〔4〕前記ナノ粒子が、4~20nmの平均粒子サイズを有する、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔5〕前記ナノ粒子が、5~15%の粒子サイズ分布を有する、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔6〕前記中心部が、少なくとも2種の金属元素を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔7〕前記ナノ粒子が、前記中心部の表面に付着した長鎖基を実質的に含まない、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔8〕前記中心部が、本質的に酸素、M1、場合によりM2、場合によりM3、場合により硫黄、及び場合によりリンから成る、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔9〕前記中心部が実質的に球状である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔10〕前記中心部が棒状である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔11〕下記事項:
(i)前記フィードが、0.3~3.0、好ましくは0.5~2.5の範囲のH2対COモル比を有する;
(ii)ステップ(I)において、前記変換条件が、
175~350℃、好ましくは180~300℃の範囲の温度と、
100~3,000キロパスカル(絶対)、好ましくは100~2,000キロパスカル(絶対)の範囲の圧力と、
500~10,000時間
-1
、好ましくは1,000~5,000時間
-1
の範囲のGHSVと
の少なくとも1つを含む;
の少なくとも1つが満たされる、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔12〕前記プロセスが、ステップ(I)の前に、
(I0)前記触媒組成物をH2含有雰囲気下で活性化するステップ
をさらに含む、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔13〕ステップ(I)において、前記変換生成物混合物が、反応生成物混合物の総モルに基づいて、概して、40~95モル%の直鎖アルファオレフィンを含む、前記〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔14〕ステップ(I)において、下記事項:
(i)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ブテンを含む;
(ii)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ペンテンを含む;
(iii)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ヘキセンを含む;
(iv)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-ヘプテンを含む;
(v)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、40~95モル%の1-オクテンを含む;
(vi)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ブタンを含む;
(vii)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ペンタンを含む;
(viii)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ヘキサンを含む;
(ix)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-ヘプタンを含む;
(x)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、5~50モル%のn-オクタンを含む;
(xi)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC4化合物の総モルに基づいて、0~20モル%の2-ブテンを含む;
(xii)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC5化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC5内部オレフィンを含む;
(xiii)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC6化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC6内部オレフィンを含む;
(xiv)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC7化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC7内部オレフィンを含む;及び
(xv)前記変換生成物混合物が、前記変換生成物混合物中のC8化合物の総モルに基づいて、0~20モル%のC8内部オレフィンを含む;
の少なくとも1つが満たされる、前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔15〕前記変換生成混合物が、実質的に直鎖1-アルコールを含まない、前記〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔16〕前記触媒組成物が、
(A)液体媒体と、その中に分布する複数のナノ粒子とを含むナノ粒子分散系であって、各ナノ粒子が中心部を含み、前記中心部は、4~100nmの平均粒子サイズ及び20%以下の粒子サイズ分布を有し、前記中心部は、酸素、金属元素M1、場合により硫黄、場合によりリン、場合により第2の金属元素M2、及び場合により第3の金属元素M3を含み、
ここで、
M1は、Mn、Fe、Co、又はこれらの2種以上の組み合わせから選択され、
M2は、Ni、Zn、Cu、Mo、W、Ag、及びこれらの組み合わせから選択され、
M3は、Y、Sc、アルカリ金属、ランタニド、第13、14、及び15族元素、並びにこれらの組み合わせから選択され、かつ
もしあれば、M2、M3、S、及びPのM1に対するモル比は、それぞれ、r1、r2、r3、及びr4であり、0≦r1≦2、0≦r2≦2、0≦r3≦5、かつ0≦r4≦5である、前記ナノ粒子分散系を準備するステップと、
(B)ある量の前記ナノ粒子分散系を担体上に配置して担持ナノ粒子組成物を得るステップと
を含む触媒製造プロセスによって作られる、前記〔1〕~〔15〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔17〕前記触媒製造プロセスが、
(C)前記担持ナノ粒子組成物をか焼して触媒組成物を得るステップ
をさらに含む、前記〔16〕に記載のプロセス。
〔18〕前記触媒製造プロセスが、
(D)前記担体、前記担持ナノ粒子組成物、又は前記触媒組成物をプロモーターの前駆体に含浸させて触媒前駆体を得るステップと、
(E)前記触媒前駆体を乾燥させ及び/又はか焼して、プロモーターを含む触媒組成物を得るステップと
をさらに含む、前記〔16〕又は前記〔17〕に記載のプロセス。
〔19〕ステップ(A)が、
(A1)第1の分散系を第1の温度で準備するステップであって、前記第1の分散系は、長鎖有機酸とM1の塩、場合により長鎖有機酸とM2の塩、場合により長鎖有機酸とM3の塩、長鎖炭化水素溶媒、場合により第2の有機酸とM1の塩、場合により第3の有機酸とM2の塩、場合により第4の有機酸とM3の塩、場合により前記長鎖炭化水素溶媒に可溶な硫黄又は有機硫黄化合物、及び場合により前記長鎖炭化水素溶媒に可溶な有機リン化合物を含む、ステップと、
(A2)前記第1の分散系を、前記第1の温度より高いが、前記長鎖炭化水素溶媒の沸点以下の第2の温度まで加熱するステップであって、前記長鎖有機酸の塩の少なくとも一部及び存在する場合、前記第2の有機酸の塩の少なくとも一部が、前記長鎖炭化水素溶媒に分散したナノ粒子を含む第2の分散系を形成し、前記ナノ粒子は中心部を含み、前記中心部は、M1、場合によりM2、場合によりM3、酸素、場合により硫黄、及び場合によりリンを含む、ステップと、
(A3)前記ナノ粒子を前記第2の分散系から分離するステップと、
(A4)(A3)で分離された前記ナノ粒子を前記液体媒体に分散させて前記ナノ粒子分散系を形成するステップと
を含む、前記〔16〕~〔18〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔20〕前記ナノ粒子が、4~20nmの範囲の平均粒子サイズ、及び20%以下の粒子サイズ分布を有する、前記〔16〕~〔19〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔21〕ステップ(A1)、(A2)、(A3)、及び(A4)が同一容器内で行われる、前記〔19〕又は前記〔20〕に記載のプロセス。
〔22〕前記第2の有機酸が、前記第1の温度未満の沸点を有する、前記〔16〕~〔21〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔23〕前記第1の分散系が、前記長鎖有機酸の塩以外の界面活性剤を実質的に含まない、前記〔16〕~〔21〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔24〕前記第2の温度が、210℃~450℃の範囲内である、前記〔16〕~〔23〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔25〕前記長鎖有機酸及び前記長鎖炭化水素溶媒の1分子当たりの平均炭素原子数が、4を超えて異ならない、前記〔16〕~〔24〕のいずれか1項に記載のプロセス。
【国際調査報告】