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特表2023-541765病原性感染症治療のための細胞エネルギー阻害剤製剤及び関連方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】病原性感染症治療のための細胞エネルギー阻害剤製剤及び関連方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/19 20060101AFI20230927BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230927BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230927BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20230927BHJP
   C12N 9/12 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
A61K31/19
A61P31/00
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/04
A61K45/00
A61P43/00 111
C12N15/54 ZNA
C12N9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581720
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 US2021039722
(87)【国際公開番号】W WO2022006184
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】62/705,475
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523002493
【氏名又は名称】コディスカバリー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】コ・ヤング・ヒ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076CC31
4C076DD26
4C076DD38
4C076DD43
4C076DD67
4C084AA22
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB31
4C084ZC202
4C084ZC751
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206NA14
4C206ZB31
4C206ZC75
(57)【要約】
病原性感染症から被験体を保護する、又は病原性感染症に罹患している被験体を治療するための組成物及び方法が提供されている。前記方法は、化学式Iによる構造を有する細胞エネルギー阻害剤であって:
[化学式I]
【化1】
前記化学式Iで、Xは、ニトロ、イミダゾール、ハロゲン化物、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、及びアミンオキシドからなる群より選ばれ;Rは、OR’、N(R’’)、C(O)R’’’、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C6ヘテロアルキル、C6-C12ヘテロアリール、H、及びアルカリ金属からなる群より選ばれるが、ここでR’は、H、アルカリ金属、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、又はC(O)R’’’を示し、R’’は、H、C1-C6アルキル、又はC6-C12アリールを示し、R’’’は、H、C1-C20アルキル、又はC6-C12アリールを示す、細胞エネルギー阻害剤;
細胞エネルギー阻害剤を安定化させるための少なくとも1種の糖;及び
細胞エネルギー阻害剤を少なくとも部分的に脱酸し、細胞エネルギー阻害剤の代謝副産物を中和するのに十分な量で存在する生物学的緩衝液;を含む組成物を投与することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原性感染症(pathogenic infection)から被験体(subject)を保護する、又は病原性感染症に罹患している被験体を治療する方法であって、前記方法は、
化学式Iによる構造を有する細胞エネルギー阻害剤(cellular energy inhibitor)であって:
[化学式I]
【化1】
前記化学式Iで、Xは、ニトロ、イミダゾール、ハロゲン化物、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、及びアミンオキシドからなる群より選ばれ;Rは、OR’、N(R’’)、C(O)R’’’、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C6ヘテロアルキル、C6-C12ヘテロアリール、H、及びアルカリ金属からなる群より選ばれるが、ここでR’は、H、アルカリ金属、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、又はC(O)R’’’を示し、R’’は、H、C1-C6アルキル、又はC6-C12アリールを示し、R’’’は、H、C1-C20アルキル、又はC6-C12アリールを示す、細胞エネルギー阻害剤;
前記細胞エネルギー阻害剤が加水分解されることを実質的に防止することによって前記細胞エネルギー阻害剤を安定化させる少なくとも1種の糖(sugar);及び
前記細胞エネルギー阻害剤を少なくとも部分的に脱酸(deacidify)し、前記細胞エネルギー阻害剤の代謝副産物を中和するのに十分な量で存在する生物学的緩衝液(biological buffer);を含む組成物の治療的有効量を被験体に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記細胞エネルギー阻害剤は、3-ブロモピルビン酸(3-bromopyruvate)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の糖は、グルコン酸(gluconic acid)、グルクロン酸(glucuronic acid)、マンニトール(mannitol)、エリスリトール(erythritol)、イソマルト(isomalt)、ラクチトール(lactitol)、マルチトール(maltitol)、ソルビトール(sorbitol)、キシリトール(xylitol)、ズルシトール(dulcitol)、リビトール(ribitol)、イノシトール(inositol)、グリセロール(glycerol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、トレイトール(threitol)、アラビトール(arabitol)、ガラクチトール(galactitol)、フシトール(fucitol)、イジトール(iditol)、ボレミトール(volemitol)、マルトトリイトール(maltotriitol)、マルトテトライトール(maltotetraitol)、ポリグリシトール(polyglycitol)、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物は、マンニトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ズルシトール、リビトール、イノシトール、ソルビトール、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる第2の糖をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物は、マンニトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ズルシトール、リビトール、イノシトール、ソルビトール、又はこれらの組み合わせから独立して選ばれる第2の糖及び第3の糖を含むことができる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物は、グリセロール、イノシトール、及びソルビトールより選ばれる少なくとも1種の糖をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物は、d-乳酸及びエピネフリン(epinephrine)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物は、解糖阻害剤(glycolysis inhibitor)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記解糖阻害剤は、2-デオキシグルコース(2-deoxglucose)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記2-デオキシグルコースは、約1mM~約5mMの濃度で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的緩衝液は、クエン酸緩衝液、リン酸塩緩衝液、及び酢酸緩衝液より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的緩衝液は、クエン酸緩衝液である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物は、リン脂質(phospholipid);リポソーム(liposome);ナノ粒子(nanoparticle);玄米抽出物、類似体を含むムラミルジペプチド(muramyl dipeptide)、キノコ抽出物、バイオフラボノイド(bioflavonoid)、ビタミンD3結合タンパク質来由マクロファージ活性化因子(Vitamin D3-Binding Protein-Derived Macrophage Activating Factor)(GcMAF)、ナガラーゼ(nagalase)阻害剤、N-アセチルガラクトサミンに付着するスレオニン、及びナガラーゼに対する抗体を含む免疫系モジュレーター(immune system modulator)及び/又は免疫系ブースター(immune system booster);L-乳酸脱水素酵素(L-lactate dehydrogenase);D-乳酸脱水素酵素;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide);DNA複製の阻害剤;DNA結合の阻害剤;DNA転写の阻害剤;細胞周期、成長及び/又は増殖に対する阻害剤;シグナル伝達経路に対する阻害剤;血管新生(angiogensis)の阻害剤;アンチセンスRNA(antisense RNA)、マイクロRNA(micro RNA)、スモールヘアピンRNA(small hairpin RNA)、ショートヘアピンRNA(short hairpin RNA)、スモール干渉RNA(small interfering RNA)を含む正常な遺伝子制御を妨害するスモールRNA;ビタミンC;ビタミン、CoQ10、フラボノイド、遊離脂肪酸、アルファリポ酸(alpha lipoic acid)、アサイー(acai)、ゴギ(gogi)、マンゴー、ボムグラナト(pomergrante)、L-カルニチン(L-carnitine)、セレニウムを含む栄養補助剤(nutritional supplement);異性体に比べて生物学的活性がさらに低いアミノ酸;及びこれらの混合物より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物は、ヘキソキナーゼ阻害剤(hexokinase inhibitor)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ヘキソキナーゼ阻害剤は、VDACに対するヘキソキナーゼ1及び/又はヘキソキナーゼ2の結合を阻害する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ヘキソキナーゼ阻害剤は、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群より選ばれるアミノ酸配列である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
伝染病は、細菌、ウイルス、菌類、又は寄生虫などの病原体によって発生する疾患である。一部の病原体は人体の内外に生息し、宿主被験体(subject)の免疫系が損なわれると感染性になる。しかし、他の病原体は偶然に被験体に接して、目、口、鼻などから直接侵入して感染する。場合によっては、偶然の接触(chance encounter)は、病原体がある被験体から別の被験体に移る機会になる可能性がある。その他の場合、動物や昆虫の伝染、病原体に曝された汚染された食品や水の摂取などが偶然の接触になる可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0002】
以下の詳細な説明は、例示のための多くの詳細を含むが、当業者は、以下の詳細に対して多くの変形及び変更が可能であり、本願に含まれるとみなし得ることを理解するであろう。したがって、以下の実施形態は、記載された任意の特許請求の範囲に対する一般性を失うことなく、かつ、制限を加えることなく記載されている。また、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、制限する意図はないことも理解すべきである。別段の定義がない限り、本明細書に使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示内容が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。また、異なる図面における同一の符号は同一の要素を表す。フローチャート及びプロセスに示されている数字は、ステップ及び作業を明確に説明するために提供されるものであって、必ずしも特定の順序又はシーケンスを示すものではない。
【0003】
さらに、説明された特徴(feature)、構造(structure)、又は特性(characteristic)は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方式で組み合わせることができる。以下の説明では、様々な実施形態を完全に理解するためにレイアウト(layout)、距離(distance)、及びネットワーク(network)の例など、多くの具体的な詳細が提供されている。しかし、関連技術分野における当業者は、このような詳細な実施形態が本明細書に記述されている概念全体を制限するものではなく、単にこれを代表するものであることを認識するであろう。関連技術分野における当業者は、1つ以上の具体的な詳細がなくても、又は他の方法、構成要素(component)、化合物、成分(ingredient)などによって、技術(technology)を実施できることも認識するであろう。その他の場合、周知の材料(material)又は操作(operation)は、本開始内容の態様を不明瞭にすることを避けるために、詳細に表示又は説明されないことがある。
【0004】
本願において、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」及び「有する(having)」などは、米国特許法において付与された意味を有することができ、「含む(include)」、「含む(including)」などを意味することができ、一般的にオープンエンドの用語(open ended term)と解釈される。「からなる(consisting of)」又は「からなる(consists of)」という用語は、クローズドの用語(closed term)であり、前記用語と共に具体的に列挙された構成要素、構造、ステップなど、及び米国特許法によるもののみを含む。「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「から本質的になる(consists essentially of)」は、米国特許法によって一般的に付与された意味を有する。特に、前記用語は、一般的にクローズドの用語であるが、但し、このような用語と共に列挙された項目の基本的で新しい特性や機能に重大な影響を及ぼさない追加の項目、材料、構成要素、ステップ、又は要素を含むことができるということは例外である。例えば、組成物に存在するが、組成物の性質又は特性に影響を及ぼさない微量元素は、「から本質的になる」という用語が存在する場合、このような用語と共に列挙された項目のリストに明示的に言及されていなくても許容され得る。このような書面による説明(written description)で「含む(comprising)」又は「含む(including)」のようなオープンエンドの用語を使用する場合、明示的に言及されたように「からなる」という用語だけでなく、「から本質的になる」という用語にも直接的な裏付けが与えられるべきであり、その逆もまた同様であると理解される。
【0005】
本明細書で使用される用語「実質的に(substantially)」は、作用、特性、属性、状態、構造、項目、又は結果の完全又はほぼ完全な範囲(extent)又は程度(degree)を意味する。例えば、「実質的に」囲まれているオブジェクト(object)は、オブジェクトが完全に囲まれているか、ほぼ完全に囲まれていることを意味する。絶対的な完全性から許容される正確な偏差程度は、場合によっては特定の状況によって変わり得る。しかし、一般的に、完成(completion)に近いということは、あたかも絶対的かつ完全な完成が得られたかのように、全体的な結果が同じになることであろう。「実質的に」の使用は、作用、特性、属性、状態、構造、項目、又は結果の完全又はほぼ完全な欠如を示す否定的な意味で使用される場合にも同様に適用され得る。例えば、粒子を「実質的に含まない」組成物は、粒子が完全に欠如しているか、あるいは粒子がほぼ欠如しているため、粒子が完全に欠如している場合と同一の効果を示す。言い換えれば、成分又は要素を「実質的に含まない」組成物は、測定可能な効果がない限り、実際に前記項目を含み得る。
【0006】
本明細書で使用される用語「約」は、所与の用語、メトリック(metric)、値、範囲エンドポイントなどに柔軟性(flexibility)を提供するために使用される。特定の変数に対する柔軟性の程度は、当業者によって容易に決定され得る。しかし、特に明記されない限り、「約」という用語は一般的に0.01%未満の柔軟性を提供する。本明細書において「約」という用語が特定の数値と共に使用されている場合でも、「約」という用語とは別に言及された正確な数値に対する裏付けも提供されることを理解されたい。
【0007】
本明細書で使用されるように、複数の項目、構造要素、構成要素、及び/又は材料は、便宜上共通のリストに提供され得る。しかし、このようなリストは、リストの各メンバー(member)が個別に一意のメンバーとして個別に識別されるように解釈される必要がある。したがって、このようなリストの個別メンバーは、他に示されなければ、共通のグループに表示されているということだけで同じリストの任意の他のメンバーと事実上同等であると解釈されるべきではない。
【0008】
濃度、量、及びその他の数値データは、本明細書において範囲形式で表現又は提供され得る。このような範囲形式は、単に便宜と簡略化のために使用されるため、範囲の限界として明示的に言及された数値を含むだけでなく、前記範囲内に含まれた全ての個別数値又は下位範囲を、各数値と下位範囲(sub-range)が明示的に言及されたように含むよう、柔軟に解釈されるべきであることを理解しなければならない。一例として、「約1~約5」の数値範囲は、明示的に言及された約1~約5の値を含むだけでなく、示された範囲内の個別の値及び下位範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、2、3、及び4などの個別の値と、1~3、2~4、及び3~5などの下位範囲だけでなく、1、1.5、2、2.3、3、3.8、4、4.6、5、及び5.1が個別に含まれる。最小値又は最大値として1つの数値のみを言及する範囲にもこのような同一の原則が適用される。また、このような解釈は、範囲の幅や記述される特性に関係なく適用されなければならない。
【0009】
本明細書全体にわたって「例示(an example)」への言及は、例示に関連して説明された特定特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたって様々な箇所に現れる「例示」又は「実施形態」を含む語句は、必ずしも全てが同一の例示又は実施形態を指すものとは限らない。
【0010】
本発明の組成物は、特定の投与製剤の特定の要求によって薬学的に許容される担体及びその他の成分を含み得る。このような成分は当業者によく知られている。例えば、全文が参照により組み込まれる、文献[Gennaro,A.Remington:The Science and Practice of Pharmacy 19th ed.(1995)]を参照する。
【0011】
本明細書で使用されるように、「投与」及び「投与する」は、組成物が被験体に提供される方式を意味する。投与は経腸、非経口、経皮などの公知の様々な経路(場合によっては、これらの組み合わせが含まれる)によって達成することができる。したがって、経腸投与は、活性剤又は伝達される他の化合物を含む経口剤形(dosage form)を飲む、飲み込む、噛む、吸うことによって達成することができる。非経口投与は、薬物組成物を静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内、皮下などに注射することによって達成することができる。経皮投与は、経皮製剤を皮膚表面に塗る、貼る(pasting)、転がす(rolling)、貼り付ける(attaching)、注ぐ(pouring)、押圧する(pressing)、擦るなどによって達成することができる。これら及び追加的な投与方法は、当技術分野において周知である。
【0012】
本明細書で使用されるように、「被験体」は、本発明の薬物組成物の投与又は方法から利益を得ることができる哺乳動物を指す。被験体の例としては、ヒト、及び他の動物、例えば、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ(ネコ科)、ネコ(イヌ科)、ウサギ、げっ歯類、霊長類、及び水生哺乳動物(aquatic mammal)が含まれる。一実施形態において、被験体はヒトを意味することができる。
【0013】
本明細書で使用されるように、「有効量」、「治療的有効量」、又は類似の用語は無毒性であるが、本明細書に開示されているように、薬物が有効であることが知られているか、有効であることが判明された状態を治療するための治療結果を達成するのに十分な薬物の量を意味する。様々な生物学的要因は、伝達された物質が意図した作業を行うことができる能力又は薬物が治療結果を提供するのに必要な量に影響を及ぼし得る。したがって、「有効量」又は「治療的有効量」は、このような生物学的要因によって変わり得る。有効量又は治療的有効量を決定することは、本開示内容だけでなく、当技術分野で公知の技術に基づく薬学及び医学分野における通常の技術の範囲内にある。例えば、文献[Curtis L.Meinert & Susan Tonascia,Clinical Trials:Design,Conduct,and Analysis,Monographs in Epidemiology and Biostatistics,vol.8(1986)]を参照する。
【0014】
本明細書で使用されるように、「薬物(drug)」、「活性剤(active agent)」、「生理活性剤(bioactive agent)」、「薬学的活性剤(pharmaceutically active agent)」、「治療的活性剤(therapeutically active agent)」及び「医薬品(pharmaceutical)」は、相当量又は有効量で被験体に投与するときに測定可能な特定又は選択された生理活性を有する製剤(agent)又は物質を指すために交換可能に使用され得る。用語「薬物」は、多くの薬物及びプロドラッグが特定の生理活性を有すると知られているため、本定義に明示的に含まれることを理解されたい。これらの専門用語は、薬学及び医療分野において周知である。さらに、これらの用語が使用されるか、特定の活性剤が名称又はカテゴリーとして具体的に識別される場合、このような言及は活性剤自体だけでなく、薬学的に許容される塩、又はプロドラッグ、活性代謝物、異性体などを含むが、これらに制限されない、これに有意に関連する化合物を含むことを意図することが理解される。「細胞エネルギー阻害剤(cellular energy inhibitor)」、「解糖阻害剤(glycolysis inhibitor)」、「ミトコンドリア阻害剤(mitochondrial inhibitor)」などの用語は、活性剤であるとみなされる。
【0015】
本明細書で使用される用語「阻害する(inhibit)」、「阻害する(inhibiting)」、又はこれらの他の任意の派生語は、作用又は機能を遮断、防止、制限、又はこの速度を低減させるために抑止(holding back)、抑制(suppressing)、又は拘束(restraining)する過程を意味する。前記用語の使用は、絶対的な防止のみを意味するものと誤って解釈されるべきではなく、機能の完全かつ絶対的な防止を通じて機能を制限又は縮小する全ての微々たる漸進的な措置を指すことができる。
【0016】
本明細書で使用される「細胞エネルギー阻害剤」は、細胞におけるATP生産を阻害する化合物を意味する。いくつかの例において、細胞エネルギー阻害剤は、細胞における解糖、酸化的リン酸化、又は解糖と酸化的リン酸化の両方を阻害することができる。
【0017】
本明細書で使用される「解糖阻害剤」は、細胞における解糖を阻害、減少、又は停止させる化合物を意味する。
【0018】
本明細書で使用される「ミトコンドリア阻害剤」は、細胞におけるATPのミトコンドリア生産を阻害、減少、又は停止させる化合物を意味する。
【0019】
本明細書で使用される用語「剤形」、「製剤」及び「組成物」は、交換可能に使用され、2種以上の化合物、要素、又は分子の混合物を意味する。いくつかの例において、用語「剤形」、「製剤」及び「組成物」は、担体及び/又は他の賦形剤と1種以上の活性剤の混合物を指すために使用され得る。
【0020】
本明細書で使用される「担体」又は「薬学的に許容される担体」は、被験体に伝達するための特定の投与製剤を達成するために薬物と配合され得る物質を意味する。いくつかの例において、担体は薬物伝達を向上させることもでき、向上させないこともできる。一般的に、担体は、薬物を実質的に分解又はその他の薬物に悪影響を及ぼすような方式で薬物と反応しないが、但し、一部担体は、薬物が担体から放出されるまで、治療効果を発揮することができないように薬物と反応し得る。また、担体、又はこの少なくとも一部は、薬物と共に被験体への投与に生理学的に適していなければならない。
【0021】
本明細書で使用される「混合される(admixed)」とは、組成物の少なくとも2つの構成要素が互いに部分的又は完全に混合、分散、懸濁、溶解又は乳化できることを意味する。場合によっては、薬物の少なくとも一部が少なくとも1種の担体物質に混合され得る。
【0022】
明細書及び特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」、及び「第4」などの用語は、存在する場合、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも特定の順序又は時系列を説明するために使用されるものではない。このように使用される用語は、本明細書に記載の実施形態が、例えば、本明細書に図示又は記載されたものとは異なる順序で作動できるように適切な状況下で交換可能であることを理解されたい。同様に、方法が一連のステップを含むものとして本明細書に記載されている場合、本明細書に提示されているそのようなステップの順序は、必ずしもそのようなステップが実行され得る唯一の順序ではなく、記載された特定のステップは省略されることもでき、及び/又は本明細書に記載されていない特定の他のステップが方法に追加されることもできる。
【0023】
本明細書で使用される「増加した(increased)」、「減少した(decreased)」、「より良い(better)」、「より悪い(worse)」、「より高い(higher)」、「より低い(lower)」、及び「向上した(enhanced)」などの比較用語は、装置(device)、構成要素、又は活性(activity)が周辺又は隣接する領域、単一の装置又は複数の比較装置、グループ又はクラス、複数のグループ又はクラスの他の装置、構成要素、又は活性と測定できるほどに異なる属性を示す、又は周知の最新技術と比較して示したものである。例えば、破損のリスクが「増加した」データ領域は、同じメモリ装置の他の領域よりも書き込みエラーが発生する可能性がさらに高いメモリ装置の領域を意味することができる。位置、製造プロセス、前記領域に適用されるプログラムパルスの数などを含む多くの要因によってこのようなリスクの増加を引き起こす可能性がある。
【0024】
本明細書で使用される「細胞エネルギー阻害剤」は、細胞におけるATP生成を阻害、減少、又は停止させる薬物を意味する。いくつかの例において、細胞エネルギー阻害剤は、細胞における解糖、酸化的リン酸化、又は解糖と酸化的リン酸化の両方を阻害することができる。
【0025】
本明細書で使用される「解糖阻害剤」は、細胞における解糖を阻害、減少、又は停止させる薬物を意味する。いくつかの例において、前記細胞は、感染細胞であってもよい。
【0026】
本明細書で使用される「ミトコンドリア阻害剤」は、細胞におけるミトコンドリア機能を阻害、減少、又は停止させる薬物を意味する。いくつかの例において、前記細胞は、感染細胞であってもよい。
【0027】
本明細書で使用される用語「阻害する(inhibit)」、「阻害する(inhibiting)」、又はこれらの他の任意の派生語は、作用又は機能を遮断、防止、制限、又はこの速度を低減させるために抑止(holding back)、抑制(suppressing)、又は拘束(restraining)する過程を意味する。前記用語の使用は、絶対的な防止のみを意味するものと誤って解釈されるべきではなく、機能の完全かつ絶対的な防止を通じて機能を制限又は縮小する全ての微々たる漸進的な措置を指すことができる。
【0028】
実施形態に対する初期概要(initial overview)を以下に提供し、以後、特定の実施形態をさらに詳しく説明する。このような初期要約は、読者が開示内容をより迅速に理解するのを助けるためのものであり、核心又は必須の技術的特徴を識別することを意図したものではなく、請求された主題の範囲を制限することを意図したものでもない。
【0029】
以下の技術は、様々な病原体及び/又は感染状態を緩和又は治療、又はこのことから保護する方法を含み、様々な病原体及び/又は感染状態を緩和又は治療、又はこのことから保護することができる様々な化合物、組成物、及び製剤などを提供する。このような病原体の非制限的な例としては、ウイルス、細菌、寄生虫、及び菌類が含まれ得る。本発明の目的上、プリオン(prion)は病原体とみなすことができる。さらに、本発明の技術は、病原性及び/又は感染性状態に関連する宿主免疫反応の少なくとも一部を減少又は除去することができる。本明細書で使用される用語「感染細胞」は、病原体に感染した任意の細胞を指すために使用され得る。場合によっては、「感染細胞」という用語は、病原体感染症によって、被験体より好ましくない効果を引き起こす程度まで活性化された被験体の免疫細胞を指すことができる。これらの「過剰活性化された」免疫細胞は、過剰で制御不能な免疫反応を生成する可能性があり、多くの場合、病原体感染症によるものを超えた生理学的損傷を引き起こす。
【0030】
様々なエネルギー阻害剤が病原体感染症を治療するか、病原体感染症による生理学的症状を緩和するか、病原体感染症から被験体を保護するためのアジュバントとして機能するために使用され得る。一例において、本技術は、感染細胞のエネルギー生産を標的とすることができる。任意の特定の理論に縛られることなく、特定の細胞エネルギー阻害剤がこのようなエネルギー生産標的化によって前述した機能を達成するのに使用され得る。真核細胞のエネルギー代謝反応は非常に複雑であるが、主要細胞エネルギー生産位置は2か所があり;1つ目はサイトゾル(cytosol)(解糖)にあり、2つ目はミトコンドリア(酸化的リン酸化)にある。サイトゾルで、糖(sugar)は好気的条件下ではピルビン酸に、嫌気的条件下では乳酸(lactate)に分解される。好気的条件下では、解糖はブドウ糖1分子をピルビン酸(pyruvic acid)2分子に変換させ、細胞にエネルギーを提供する分子であるアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate)(ATP)の形でエネルギーを生成する。感染していない正常細胞では、総ATP生産の少ない部分だけが解糖に由来し、相当量のATPがミトコンドリアでの酸化的リン酸化によって生産される。一方、感染細胞では、解糖によるサイトゾル内のエネルギー生産が大幅に増加することができ、これは、乳酸生産(lactic acid production)を大幅に増加させることができる。多くの病原体は、細胞のエネルギー代謝を変更して酸素がある場合にも解糖を大幅に増加させ、したがって、乳酸生産も大幅に増加する。このような細胞は、モノカルボン酸輸送体を介して乳酸を排出し始めるが、これは、感染していない細胞に比べて感染細胞において大幅に増加する。
【0031】
[エネルギー阻害剤]
本発明によって使用され得るエネルギー阻害剤の1つのグループには、ハロピルビン酸(halopyruvate)分子が含まれる。このような分子は、感染細胞における細胞エネルギー生産を阻害するように機能することができるので、このような感染細胞がATPを生成する能力を制限する。有用な細胞エネルギー阻害剤であるハロピルビン酸の非制限的な一例は、3-ブロモピルビン酸(3-bromopyruvate:3-BP)である。本明細書では3-BPが例示分子として使用されるが、他のハロピルビン酸分子を制限するものとみなすべきではないことに留意されたい。3-BPは、アップレギュレートされた乳酸輸送システムによって感染細胞に入ることができる、乳酸と十分に類似した化学構造を有する小分子である。場合によっては、3BPは感染していない状態で正常細胞が乳酸輸送体をほとんど含まないため、正常細胞にほとんど影響を与えないことがある。一度感染した細胞において、3-BPは高い反応性によって解糖と酸化的リン酸化に損傷を与え、ATP生産を大幅に減少させる。このようなATP生産の減少は、その後、感染細胞の死につながる。また、ハロピルビン酸として分類されないが、乳酸輸送体を介して感染細胞に入るのに十分に類似した化学構造を有する他の細胞エネルギー阻害剤も考えられることに留意する。
【0032】
さらに、上述の3-BP損傷によって感染した細胞の解糖及び酸化的リン酸化システムに加えられた損傷は、同一又は類似のメカニズムを介して敗血症を引き起こす可能性がある過剰活性免疫系細胞をさらに制限又は除去する。例えば、このような感染の間、白血球は一般的に活性化され、感染細胞と同様にATP生産を大幅に増加させる。白血球が過剰活性化され(すなわち、被験体の感染していない組職に損傷を与え始める)、正常な組職/細胞の損傷が発生する場合、このことから生じる敗血症は、病原体感染症自体よりも被験体にさらに大きな被害を与えることができる。このような過剰活性化免疫細胞を死滅させることで、3-BPはこのような感染の結果として引き起こされる有害な全身効果をさらに減らすことができる。
【0033】
上述のように、多い病原体の病原性感染症(pathogenic infection)は、一般的に、1)細胞への病原体の進入、2)細胞内での病原体の複製、3)被験体(すなわち、宿主)を介した病原体の拡散、及び4)他の被験体が感染する可能性のある環境への病原体の放出を含むいくつかのステージによって進行する。様々な例において、3-BP化合物は、被験体を感染から保護することを含むことができ、被験体の病原性感染症のステージに適切な方式で投与することができる。したがって、「病原性感染症」という用語は、また現在感染していない被験体を保護するためのアジュバント(adjuvant)の予防的使用を含むことができることを理解すべきである。一例において、3-BPは、病原性感染症のステージを治療することができる投与経路に適した剤形に製剤化することができる。
【0034】
一例において、3-BPは、病原性感染症から被験体を保護するためのアジュバントとして投与することができる。このような保護は、病原体が細胞に進入する前、病原体が細胞に進入した後、又はその両方に発生する可能性がある。病原体が進入する前に被験体を病原体感染症から保護する場合、3-BPは病原体が細胞に入るために利用する受容体結合タンパク質を乱すか、破壊する可能性がある。このような場合、3-BPは受容体結合タンパク質を破壊するために細胞表面に伝達されることができる。細胞表面に伝達され得る全ての剤形が考えられ、この非制限的な例としては、スプレー、エアロゾル、粉末、液体、軟膏、クリーム、ワイプ(wipe)など、及びこれらの組み合わせを含むことができる。3-BPを予防的に使用する一例において、喉、口、肺、及び/又は鼻などをコーティングしてこのような感染から保護することができる。例えば、エアロゾル、スプレー、粉末などを口、鼻、肺、喉などに伝達することによって被験体を感染から保護することができる。また、液体製剤でうがい(gargling)をすることによって、口、喉、及びうがい行為によって接触されるその他の全ての細胞表面に対する感染から保護することができる。場合によっては、ネブライザー(nebulizer)を使用して液体/蒸気3-BP製剤を肺に投与することができる。その他の場合、液滴(liquid drop)を使用して、3-BPを被験体の目に伝達することができる。したがって、病原体が入るのに使用される細胞表面タンパク質を破壊することで、細胞が感染から保護される。
【0035】
いくつかの例において、予防的保護は、病原体が細胞に侵入した後でも、依然として達成することができる。上述のように、ほとんどのウイルス病原体は遺伝物質を細胞のサイトゾルに挿入し、ここで遺伝物質を複製/活性化して病原体が細胞の遺伝機構(genetic machinery)を制御できるようにする。3-BPは、サイトゾルに存在するRNA及びDNAのような遺伝物質を破壊して病原体ゲノム構造を不活性化し、細胞の病原性の乗っ取り(pathogenic takeover)を防止することができる。上記のように、3-BP製剤の剤形は感染位置に適している可能性があり、これは当業者の知識範囲内において十分に理解することができる。
【0036】
さらに、上述のように、いったん細胞が感染すると、細胞は解糖と酸化的リン酸化によってATP生産を大幅に増加する。この場合、3-BPはモノカルボン酸輸送過程を介して細胞に入り、両方のATP生産過程を妨害することができる。上記のように、3-BP製剤の剤形は、感染位置に適している可能性があり、これは当業者の知識範囲内において十分に理解することができる。
【0037】
多くの病原性感染症の場合、これによって生じる細胞死が、いわゆる「サイトカインストーム(cytokine storm)」を引き起こして被験体にさらなる損傷を与える可能性がある。したがって、予防的保護、感染細胞におけるATP生産増加制限、感染細胞と活性化された免疫細胞の漸進的死滅などによって、3-BP製剤はウイルス負荷を減らし、サイトカインストームを制限するように機能することができる。
【0038】
ATPが生産される速度よりも早い速度で消費されるとき、細胞の死が発生する可能性があるということに注目する。被験体の死は、十分な数の主要細胞が十分なATP生産の不足により死滅する場合に発生する可能性がある。例えば、肺組職を攻撃するウイルス又はウイルスの敗血症効果など、患者に酸素を制限する感染は、感染した組職だけでなく、システム全体でATP生産を大幅に減少させる可能性がある。したがって、一例では、本発明の組成物は、被験体がそのような感染症のそのようなATP制限効果を克服することを可能にするATPをさらに含むことができる。
【0039】
本発明は、病原性感染症を治療するために、又は病原性感染症から保護するためのアジュバントとして与えられる3-BP組成物を提供し、これは、以降、解糖/グリオキシレート阻害剤(Glycolytic/Glyoxylate Inhibitor:「GGI」)と呼ぶ。GGIは、病原性感染症を治療又はこの影響を減少させるだけでなく、このような感染から保護するためのアジュバントとしても機能することができる。任意の科学的な理論に縛られることなく、GGIは病原性感染症と闘うために様々な方式で機能することができる。例えば、GGIは、2つの細胞エネルギー生産経路、すなわち、解糖と酸化的リン酸化からのATPを枯渇又は減少させることができる。ATP生産を減少又は枯渇させることによって、病原体が直接的に不活性化されるか、ウイルス感染の場合、例えば、ウイルスが繁殖する感染細胞が除去される。別の例において、GGIは、植物、細菌、原生生物、及び菌類から発生する同化経路(anabolic pathway)であるグリオキシル酸回路(glyoxylate cycle)を妨害することができる。GGIは、栄養不足の微生物環境で成長する場合、病原体の生存に必須な微生物酵素であるイソシトレートリアーゼ(isocitrate lyase)及びリンゴ酸シンターゼ(malate synthase)を不活性化させることができる。GGIは、この経路を妨害することで、病原体がグリオキシル酸回路に切り替わる能力を除去する。
【0040】
[一次感染]
場合によっては、病原体感染症は一次感染である可能性があり、このように、エネルギー阻害剤組成物は、このような感染の治療に使用され得る。一例において、一次感染は、被験体の現在感染に根本原因になる病原体による被験体の初期感染である可能性がある。別の例において、一次感染は被験体の免疫系の状態によって分類できる。例えば、一次感染は、正常で健康な被験体内の病原体の活動によって引き起こされる感染として説明することができる。病原体がこのような健康な被験体によって感染及び拡散する能力は、病原体の固有毒性(intrinsic virulence)及び被験体の免疫系によって提供される保護の程度によって変わる。
【0041】
一次感染の一般的な例として、ウイルス感染を再生産して確立するために、ウイルスは最初に細胞に入る必要がある。ウイルスは、ウイルスが細胞の細胞膜に付着するようにする細胞表面タンパク質との相互作用によって細胞に入る。付着後、ウイルスの遺伝物質が入る細胞膜に穴(hole)が形成される。ウイルスの種類によって、遺伝物質はRNA又はDNAになり得る。いったん細胞内に入ると、ウイルス遺伝物質が細胞の遺伝機構を抑制し、細胞は一般的にウイルスを複製し始めるが、これは、ATPを生産する細胞過程(cellular process)の増加によって促進される。新たに生成されたウイルスは、細胞膜の出芽(budding)又は細胞破裂による漸進的な放出を含めて様々なメカニズムを介して細胞から出ることができる。したがって、メカニズムに関係なく、このような放出によってウイルスはさらに拡散して被験体のさらに多くの組職を感染させるだけでなく、被験体から出て他の被験体に感染を拡散させることができる。ウイルス複製がATPに依存していることを考えると、ウイルス感染(又は他の病原性感染症)は、感染細胞におけるATP生産メカニズムを攻撃することによって治療することができる。
【0042】
[二次感染]
場合によっては、病原体感染症は二次感染である可能性があり、このような場合、エネルギー阻害剤組成物はこのような感染の治療にしばしば使用され得る。一例において、二次感染は合併症又は一次感染に続くさらなる病原性感染症であることができる。言い換えれば、二次感染は一次感染に続く、又は一次感染と共感染(coinfecting)する全ての病原性感染症を含むことができる。二次感染は、重感染(superinfection)、共感染(coinfection)、及び日和見病原体感染症(opportunistic pathogen infection)などを含むことができる。
【0043】
例えば、重感染は、以前にウイルスによって感染した被験体の細胞が、後でウイルスの異なる株(strain)、又は異なるウイルスなどによって共感染する過程である。場合によっては、ウイルス重感染は、元のウイルス感染を治療するのに使用された抗ウイルス剤(antiviral drug)に耐性があり得る。ウイルスの重感染は、また初期重感染に比べて被験体の免疫反応の影響を受けにくい場合もある。
【0044】
別の例において、日和見病原体は、免疫系が低下又は他に損傷した被験体又は被験体の身体への異常な開口部(opening)で二次感染を引き起こす可能性がある。場合によっては、日和見感染は、一般的に被験体と接触しているが、被験体の免疫系によって感染を引き起こすことができない病原体によって発生する可能性がある。いったん免疫系が損なわれると、このような病原体が被験体に感染する可能性がある。いくつかの例では、日和見細菌感染症は、被験体の免疫系を低下させるウイルス感染後に被験体を日和見的に感染させる可能性がある。他の例では、被験体の免疫系は、遺伝的状態(genetic condition)、がん治療剤(cancer therapy drug)などの免疫抑制薬、又は免疫系に負の影響を及ぼす任意の状態によって低下する可能性がある。
【0045】
様々な共感染及び重感染は、一次病原性感染症単独に比べて死亡率を大幅に増加させる可能性がある。そのような場合、そのような二次感染と闘うため、一次感染に関連する死亡率を効果的に低下させるために、被験体にエネルギー阻害剤を投与することができる。さらに、エネルギー阻害剤は、一次感染に対するアジュバントとして投与することができ、それにより被験体に保護を提供する。また、エネルギー阻害剤は、二次感染に対するアジュバントとして投与することができる。言い換えれば、エネルギー阻害剤を使用するアジュバント療法(adjuvant therapy)によって、一次病原体感染症に感染した被験体を二次感染から保護することができる。
【0046】
ウイルス及びその他の病原性感染症の条件下では、免疫系の反応は過度に攻撃的になることがある。例えば、好中球、マクロファージ、及び樹状細胞は、病原体感染症と闘う際に過剰活性化され、これらの免疫系細胞における解糖を増加させる可能性がある。過剰活性化された細胞による結果の1つは、サイトカイン生産が大幅に増加である。SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされる多くのCOVID-19感染の場合と同様に、一部の病原体感染症でインターロイキン-6(IL-6)が大幅に増加することが観察された。IL-6は、COVID-19感染において優勢なサイトカインであり、IL-6数値はCOVID-19疾患の重症度と相関関係があるように見える。IL-6は、少なくとも好中球、マクロファージ、及び樹状細胞の過剰活性化の結果による高解糖(hyperglycoloysis)によって過剰発現するように見える。これら及びその他の過剰活性化免疫細胞は、サイトカイン生産をさらに増やし、最終的には高サイトカイン血症(hypercytokinemia)又は「サイトカインストーム」として知られている炎症性サイトカイン増幅ループ(inflammatory cytokine amplification loop)を生成する。
【0047】
本発明のGGI(3-BP組成物)は、高サイトカイン血症を誘発するIL-6過剰発現を経験している、発生する危険がある、又はそれらから保護する必要のある病原体感染症に罹患している個体に治療的に投与することができる。GGIは、解糖及び酸化的リン酸化に及ぼすGGIの影響によってサイトカイン生産を減少させ、サイトカイン増幅ループを停止させ、サイトカインストームから保護することを含めてサイトカインストームを減少又は除去する効果を有する。GGI投与によるこのような解糖の正常化は、さらに、血栓形成促進状態(pro-thrombotic condition)を減少させ、血管の完全性(vascular integrity)を改善する。
【0048】
さらに、GGI投与は、血管機能障害(vascular dysfunction)に関連し得る内皮(endothelial)及び周皮(pericyte)細胞のSARS-CoV-2過剰活性化を減少又は除去することができる。例えば、糖尿病、高血圧、心臓病、及び肥満などの任意の既存の併存疾患(comorbidity)だけでなく、内皮細胞ECに対する過剰活性化された炎症性攻撃は内皮細胞の透過性を高め、毛細血管と静脈の正常な循環をサポートするために内皮細胞を囲む支持細胞である周皮細胞と近い接合部(juncture)を弱める。これらの細胞は、感染時(例えば、SARS-CoV-2による感染時)、アンジオテンシン変換酵素-2(ACE2)受容体を高発現させる。この状態は、通過されたウイルスが周皮細胞に到達して付着するようにし、微小血管の機能障害を悪化させ、肺線維症(pulmonary fibrosis)、血液脳関門の浸透(Blood Brain Barrier penetration)(感染した周皮細胞を介する)、及びその他の血栓反応(thrombotic response)の可能性を高める。本発明のGGI(3-BP組成物)は、病原体感染症に罹患している個体に治療的に投与して解糖を「正常化」して血栓形成促進状態を減少させ、血管の完全性を改善することができる。
【0049】
IL-6は、COVID-19の疾患の進行及び重症度に対して問題があることが知られている細胞因子を誘導する。IL-6は、血管内皮増殖因子(VEGF)を誘導してCOVID-19感染を経験した被験体の肺に異常な血管新生(angiogenesis)を引き起こし、これは、非感染体の肺よりも約28倍高くなる可能性がある。
【0050】
このような血管新生(neovascularization)の初期過程で、線維性滲出液(fibrous exudate)が新生毛細血管から生成され、局所的なフィブリン沈着及び関連するDダイマーレベルを増加させる。IL-6はまた、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビタ-1(PAI-1:Plasminogen Activator Inhibitor-1)を誘導して繊維素溶解(fibrinolysis)に対抗することによって血管の微小血栓(micro-clot)を溶解する過程を妨げ、いわゆる「繊維素溶解遮断(fibrinolysis shutdown)」を促進する。これは、致命的な血栓症イベントの可能性を実質的に増加させる。別の効果として、IL-6は、血小板の多動性(hyperactivity)を刺激し、血栓形成に影響を与える凝固促進(procoagulatory)因子の過剰な放出を引き起こす。さらに、活性化された血小板は、凝固機能障害(coagulatory dysfunction)及び潜在的に死亡率の増加をもたらす肺繊維素溶解を抑制することが示された。
【0051】
繊維素溶解(血栓溶解)を遮断する重要な薬剤の1つは、COVID-19で大きく増加されるPAI-1がある。活性化された血小板、増加されたIL-6、及び増加されたVEGF生産(いずれも重度のCOVID-19感染の典型的な現象である)は、PAI-1発現増加の主要な原動力(key driver)である。GGI投与は、例えば、COVID-10のような病原体感染症に対する反応によって上昇されるPAI-1のIL-6数値を大幅に減少させて繊維素溶解に及ぼすPAI-1の否定的な影響(別名、「繊維素溶解遮断」)を緩和させ、これは、感染した個体の死亡率の減少につながる。
【0052】
別の例において、内皮に炎症が生じ、内皮下マトリックス組織(sub-endothelial matrix tissue)が露出することによって、接着分子が発現する。このような発現は、血小板を誘発し、損傷した組職を治癒する。しかし、過剰な炎症性サイトカイン、コラーゲン相互作用、及び抗体放出は、血小板を過剰活性化状態に追い込み、「解糖表現型(glycolytic phenotype)」を高める。その結果、血小板及びその他の凝固分子は、微小血栓(microthrombus)、静脈血栓塞栓症(thromboembolism)、及び心筋イベントに関与するようになり、死亡率を増加させ得る。感染した被験体に投与したGGIは、高解糖(hyperglycolysis)、及び例えば、チロシンホスファターゼ(tyrosine phosphatase)及びピルビン酸脱水素酵素(pyruvate dehydrogenase)複合体などの確認された他の阻害標的を調節する機能をすることができる。このような調節の影響により、血小板活性化マーカーの発現が実質的に減少し、血小板反応性が減少し、血小板凝集を抑止することができる。
【0053】
これによって、本発明は、病原性感染症を緩和、治療、又はこのことから保護する方法を含む、様々な病原体及び/又は感染状態を緩和、治療、又はこのことから保護するための様々な細胞エネルギー阻害剤を提供する。このような細胞エネルギー阻害剤の非制限的な一例は、化学式Iによって表される。
【0054】
[化学式I]
【化1】
例えば、Xは、制限されることなく、ニトロ、イミダゾール、ハロゲン化物、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、又はアミンオキシドなどであり得る様々な分子が考えられる。さらに、Rは、制限されることなく、OR’、N(R’’)、C(O)R’’’、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C6ヘテロアルキル、C6-C12ヘテロアリール、H、又はアルカリ金属などであってもよく、このとき、R’は、H、アルカリ金属、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、又はC(O)R’’’を示し、R’’は、H、C1-C6アルキル、又はC6-C12アリールを示し、R’’’は、H、C1-C20アルキル、又はC6-C12アリールを示す。
【0055】
さらに、細胞エネルギー阻害剤組成物は、様々な賦形剤、活性剤、プロドラッグ、代謝産物、緩衝剤など、例えば、1種以上の糖、ポリアルコールなど、解糖阻害剤、及び生物学的緩衝液(biological buffer)などを含むことができる。いくつかの例において、細胞エネルギー阻害剤分子は、細胞エネルギー阻害剤が加水分解されることを実質的に防止することによって細胞エネルギー阻害剤を安定化させることができる少なくとも1種の糖が含まれた組成物に製剤化することができる。
【0056】
一例において、化学式IのRは、OHであってもよく、化学式IのXは、ニトロ、イミダゾール、ハロゲン化物、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、又はアミンオキシドなどであってもよい。さらに、Xは、例えば、フッ化物、臭化物、塩化物、又はヨウ化物などのハロゲン化物であってもよい。一例において、Xは、スルホネート、例えば、トリフレート、メシレート、又はトシレートなどであってもよい。別の例において、Xは、アミンオキシドであってもよい。さらに別の例において、アミンオキシドはジメチルアミンオキシドであってもよい。
【0057】
一例において、細胞エネルギー阻害剤は、3-ハロピルビン酸、例えば、3-フルオロピルビン酸、3-クロロピルビン酸、3-ブロモピルビン酸、3-ヨードピルビン酸、又はこれらの組み合わせであってもよい。3位でハロゲン化物を示す一般的な構造は化学式IIで表される。
【0058】
[化学式II]
【化2】
さらなる非制限的な例において、細胞エネルギー阻害剤は、化学式IIIで表されたように、3位に臭素を有してもよい。
【0059】
[化学式III]
【化3】
さらなる非制限的な一例において、細胞エネルギー阻害剤は、化学式IVで表されたように、3-ブロモピルビン酸(3-BP)であってもよい。
【0060】
[化学式IV]
【化4】
このように、一例において、細胞エネルギー阻害剤組成物中の細胞エネルギー阻害剤は、3-BP(すなわち、3-BP組成物)であってもよい。本明細書では、細胞エネルギー阻害剤及び細胞エネルギー阻害剤組成物を説明するのにあたって例示分子として3-BPを使用したが、これらは制限的ではないことに留意されたい。
【0061】
いくつかの例において、組成物は、3-BP、少なくとも1種の糖、少なくとも2種の糖、及び少なくとも3種の糖などを含むことができる。一例において、糖は、単糖、二糖、オリゴ糖、又はこれらの組み合わせを含むことができる。単糖の非制限的な例としては、グルコース、フルクトース、及びガラクトースなどが含まれ得る。二糖の非制限的な例としては、スクロース、ラクトース、及びマルトースなどがあり得る。本発明の目的のために、用語「糖」は、またオリゴ糖、多糖、ポリオール、及び3-BPを安定化させる機能をする類似の分子を含むことができる点に留意されたい。
【0062】
糖は、三炭糖、四炭糖、五炭糖、六炭糖、七炭糖など、及びこれらの組み合わせを含むことができる。一態様において、糖は、三炭糖、四炭糖、五炭糖、六炭糖、七炭糖など、及びこれらの組み合わせであってもよいが、ただ、前記糖は、エネルギーを生成する程度までエネルギー代謝に関与しない(すなわち、代謝不可能な糖)。
【0063】
さらに、いくつかの例において、細胞エネルギー阻害剤分子は、細胞エネルギー阻害剤が加水分解されることを実質的に防止することによって細胞エネルギー阻害剤を安定化させることができる少なくとも1種の糖が含まれた組成物に製剤化することができる。
【0064】
一例において、糖はグルコン酸(gluconic acid)であってもよい。また、別の実施形態において、糖はグルクロン酸(glucuronic acid)であってもよい。糖の少なくとも1種は、五炭糖であってもよい。一実施形態において、糖の少なくとも2種は、五炭糖であってもよい。五炭糖は、マンニトール(mannitol)、エリスリトール(erythritol)、イソマルト(isomalt)、ラクチトール(lactitol)、マルチトール(maltitol)、ソルビトール(sorbitol)、キシリトール(xylitol)、ズルシトール(dulcitol)、リビトール(ribitol)、イノシトール(inositol)など、及びこれらの組み合わせから独立して選択することができる。一例において、糖の少なくとも1種は、グリセロール(glycerol)であってもよい。さらに別の例において、糖はグリセロール、イノシトール、及びソルビトールであってもよい。糖の他の非制限的な例としては、エチレングリコール(ethylene glycol)、トレイトール(threitol)、アラビトール(arabitol)、ガラクチトール(galactitol)、フシトール(fucitol)、イジトール(iditol)、ボレミトール(volemitol)、マルトトリイトール(maltotriitol)、マルトテトライトール(maltotetraitol)、ポリグリシトール(polyglycitol)、及びこれらの組み合わせが含まれ得る。一例において、糖は、グリセロール、イノシトール、ソルビトール、マンニトール、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。さらに別の例において、糖はグリセロール、イノシトール、ソルビトール又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。別の例において、糖はポリアルコールであってもよい。
【0065】
いくつかの例において、前記組成物は、約0.1重量%~約5.0重量%又は約0.1重量%~約3.0重量%範囲のグリセロールを含むことができる。他の例では、前記組成物は、約0.1重量%~約10重量%、約0.1重量%~約5重量%、又は約0.5重量%~約1重量%範囲のイノシトールを含むことができる。さらなる例において、前記組成物は、約0.1重量%~約30重量%又は約0.1重量%~約20重量%範囲のソルビトールを含むことができる。さらに別の例において、前記組成物は、約0.1重量%~約30重量%又は約0.1重量%~約10重量%範囲のマンニトールを含むことができる。さらに、それぞれの糖は、糖の最大溶解度に達する体積で製剤又は組成物に添加され得る。
【0066】
本明細書に記載の糖は、任意の異性体形態であってもよい。一実施形態において、本明細書に記載の組成物は、糖の異性体に比べて生物学的活性がさらに低い形態の糖を含むことができる。一態様において、生物学的活性がさらに低い糖は、L-エナンチオマー(enantiomer)糖であってもよい。しかし、D-エナンチオマー糖がこのL型に比べて生物学的活性がさらに低いことが明らかになると、D型を使用することができる。一実施形態において、このような糖は、解糖阻害剤として機能することができる。
【0067】
本明細書で議論されるように、細胞エネルギー阻害剤は、感染細胞によって吸収され、代謝され、特定の代謝副産物を生成する。一実施形態において、前記副産物はハロゲン化水素であってもよい。さらに、ハロゲン化水素は、臭化水素又はヨウ化水素であってもよい。一実施形態において、ハロゲン化水素は臭化水素であってもよい。
【0068】
一般的に、3-BPは、被験体に伝達できる任意の類型の剤形に製剤化することができる。このような剤形は、経腸、非経口、又は経皮剤形などであってもよい。経腸剤形は、徐放性(sustained release)又は即時放出性(immediate release)であってもよく、錠剤(tablet)、ロゼンジ(lozenge)、カプセル(capsule)、カプレット(caplet)、カプセル化されたペレット(encapsulated pellet)、カプセル化された顆粒(encapsulated granule)、カプセル化された粉末(encapsulated powder)、ゼラチンカプセル(gelatin capsule)、液体(liquid)、シロップ(syrup)、エリキシル(elixir)、懸濁液(suspension)、スプレー(spray)、エアロゾル(aerosol)、粉末など、及びこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに制限されない。経皮剤形の非制限的な例では、ローション、ゲル、クリーム、ペースト、軟膏、液体スプレー、液滴、粉末スプレー、ワイプ、エマルジョン、エアロゾル、経粘膜錠剤、接着装置(adhesive device)、接着式マトリックス型経皮パッチ(adhesive matrix-type transdermal patch)、液体リザーバー経皮パッチ(liquid reservoir transdermal patch)、マイクロニードル装置(microneedle device)、及び磁気装置(magnetic device)などが含まれ得る。非経口剤形の非制限的な例は、静脈内、及び皮下などを含むことができる。
【0069】
細胞エネルギー阻害剤組成物は、さらに解糖阻害剤を含むことができる。多くの適した解糖阻害剤が考えられるが、非制限的なリストには、2-デオキシグルコース(2-deoxyglucose:2-DG)、ロニダミン(lonidamine)、イマチニブ(imatinib)、オキシチアミン(oxythiamine)、6-アミノニコチンアミド(6-aminonicotinamide)、ゲニステイン(genistein)、5-チオグルコース(5-thioglucose:5-TG)、マンノヘプツロース(mannoheptulose)、α-クロロヒドリン(α-chlorohydrin)、オルニダゾール(ornidazole)、シュウ酸塩(oxalate)、グルフォスファミド(glufosfamide)など、及びこれらの組み合わせが含まれ得る。細胞エネルギー阻害剤組成物は、ヘキソキナーゼ阻害剤(hexokinase inhibitor)をさらに含むことができる。
【0070】
いくつかの例において、3-BP組成物は、細胞エネルギー阻害剤を少なくとも部分的に脱酸(deacidify)し、細胞エネルギー阻害剤の代謝副産物を中和するのに十分な量で存在する生物学的緩衝液を含むことができる。生物学的緩衝液の非制限的な例としては、クエン酸緩衝液、リン酸塩緩衝液、酢酸緩衝液など、及びこれらの組み合わせが含まれ得る。1つの具体的な例において、生物学的緩衝液は、クエン酸緩衝液であってもよい。さらに別の具体的な例において、生物学的緩衝液は、クエン酸ナトリウムであってもよい。
【0071】
いくつかの例において、前記組成物は、生物学的緩衝液を約0.1mM~約200mMの濃度で含むことができる。一実施形態において、前記組成物は、生物学的緩衝液を約1mM~約20mMの濃度で含むことができる。また、生物学的緩衝液は、4.0~8.5の生理学的pHを維持することができる。一実施形態において、生物学的緩衝液は、5.5~8.0の生理学的pHを維持することができる。さらに別の実施形態において、生物学的緩衝液は、6.8~7.8の生理学的pHを維持することができる。さらに別の実施形態において、生物学的緩衝液は、7.3~7.6の生理学的pHを維持することができる。
【0072】
前記成分に加えて、本明細書に記載の3-BP組成物は、細胞エネルギー阻害剤とは別のハロモノカルボン酸(halo monocarboxylate)化合物をさらに含むことができる。ハロモノカルボン酸化合物が解糖及び/又はミトコンドリア機能を阻害するように機能することができる場合、ハロモノカルボン酸は第2の細胞エネルギー阻害剤とみなすことができる。一実施形態において、ハロモノカルボン酸化合物は、ハロ二炭素モノカルボン酸化合物であってもよい。ハロ二炭素モノカルボン酸化合物は、2-フルオロアセテート、2-クロロアセテート、2-ブロモアセテート、2-ヨードアセテートなど、及びこれらの組み合わせから選択することができるが、これらに制限されない。一実施形態において、ハロ二炭素モノカルボン酸化合物は、2-ブロモアセテートであってもよい。一例において、前記組成物は、ハロ二炭素モノカルボン酸化合物を約0.01mM~約5.0mMの濃度で含むことができる。別の例において、前記組成物は、ハロ二炭素モノカルボン酸化合物を約0.1mM~約0.5mMの濃度で含むことができる。
【0073】
さらに、ハロモノカルボン酸化合物は、ハロ三炭素モノカルボン酸化合物であってもよい。一実施形態において、ハロ三炭素モノカルボン酸化合物は、3-フルオロ乳酸、3-クロロ乳酸、3-ブロモ乳酸、3-ヨード乳酸など、及びこれらの組み合わせから選択することができるが、これらに制限されない。さらに別の例において、前記組成物は、ハロ三炭素モノカルボン酸化合物を約0.5mM~約250mMの濃度で含むことができる。一実施形態において、前記組成物は、ハロ三炭素モノカルボン酸化合物を約10mM~約50mMの濃度で含むことができる。
【0074】
いくつかの例において、本明細書に記載された本発明の3-BP組成物は、抗真菌剤(antifungal agent)及び/又は抗菌剤(antibacterial agent)をさらに含むことができる。一実施形態において、前記組成物は、約0.01mM~約5.0mMの濃度で抗真菌剤及び/又は抗菌剤を個別に含むことができる。さらに別の実施形態において、前記組成物は、約0.05mM~約0.5mMの濃度で抗真菌剤及び/又は抗菌剤を個別に含むことができる。
【0075】
いくつかの例において、本明細書に記載の3-BP組成物は、細胞エネルギー阻害剤に加えて、ミトコンドリア阻害剤をさらに含むことができる。ミトコンドリア阻害剤は、オリゴマイシン(oligomycin)、エフラペプチン(efrapeptin)、オーロベルチン(aurovertin)など、及びこれらの組み合わせから選択できるが、これらに制限されない。さらに別の例において、前記組成物は、ミトコンドリア阻害剤を約0.001mM~約5.0mMの濃度で含むことができる。一例において、前記組成物は、ミトコンドリア阻害剤を約0.01mM~約0.5mMの濃度で含むことができる。
【0076】
前記濃度に加えて、本発明の組成物は、本明細書に記載の成分を様々な割合で含むことができる。一実施形態において、細胞エネルギー阻害剤及び生物学的緩衝液は、mM基準で1:1~1:5の範囲の割合で存在してもよい。さらに別の実施形態において、細胞エネルギー阻害剤及び解糖阻害剤は、mM基準で5:1~1:1の範囲の割合で存在してもよい。さらに別の実施形態において、細胞エネルギー阻害剤及び少なくとも1種の糖は、mM基準で1:1~1:5の範囲の割合で存在する。さらに別の実施形態において、細胞エネルギー阻害剤及びハロ二炭素モノカルボン酸化合物は、mM基準で20:1~4:1の範囲の割合で存在してもよい。さらに別の実施形態において、細胞エネルギー阻害剤に対するミトコンドリア阻害剤は、mM基準で20:1~40:1の範囲の割合で存在してもよい。
【0077】
上述のように、本発明の3-BP組成物は、抗真菌剤、抗生剤、解糖阻害剤、ミトコンドリア阻害剤、糖、及び生物学的緩衝液を含むことができるが、これらに制限されない。このような薬剤の例としては、アンホテリシンB(amphotericin B)、エフラペプチン(efrapeptin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、2-デオキシグルコース(2-deoxyglucose:2DOG)、d-乳酸、2DOGの類似体、ジクロロ酢酸(dicholoracetic acid)(又はジクロロ酢酸塩の形態)、オリゴマイシン(oligomycin)、オリゴマイシンの類似体、グリセロール、イノシトール、ソルビトール、グリコール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ズルシトール、イジトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、ポリグリシトール、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、オキサロ酢酸、イソクエン酸、アコニット酸(aconitate)、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、様々な濃度のNaCl及び水を含む希釈された食塩水(diluted saline solution)が含まれるが、これらに制限されない。これらの生物学的緩衝液に付随するナトリウムイオンに加えて、カルシウム及びカリウム陽イオンも生物学的緩衝液に付随することができる。前記組成物中の様々な活性剤は、細胞エネルギー阻害剤、解糖阻害剤、ミトコンドリア阻害剤、ハロモノカルボン酸化合物、抗真菌剤、及び抗生剤などを含むことができる。
【0078】
本明細書で使用される「ヘキソキナーゼ1」又は「ヘキソキナーゼ1アイソザイム(isozyme)」は、以下のような配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4に提供されることを含む、ヘキソキナーゼ1の任意のアイソフォーム(isoform)及びこの自然的に知られた変異体(naturally known variant)を指す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
本明細書で使用される「ヘキソキナーゼ2」又は「ヘキソキナーゼ2アイソザイム」は、以下のような配列番号5で提供されるものを含む、ヘキソキナーゼ2の任意のアイソフォーム及びこの自然的に知られた変異体を指す。
【表5】
いくつかの例において、本明細書に記載の3-BP組成物は、ヘキソキナーゼ阻害剤をさらに含むことができる。ヘキソキナーゼ阻害剤は、ヘキソキナーゼ1(HK1)、ヘキソキナーゼ2(HK2)、及び/又はこれらの任意のアイソザイム(本明細書では「ヘキソキナーゼ」と総称する)を阻害する任意の分子であってもよい。
【0079】
説明されたように、ATP生産の主要な供給源は、正常細胞のミトコンドリアで発生する。しかし、がん細胞では、解糖からのATP生産が大幅にアップレギュレートされている。このようにアップレギュレートされる理由の1つは、ヘキソキナーゼ分子がATPシンターゼ(synthasome)でミトコンドリア電圧依存性陰イオンチャネル(voltage dependent anion channel:VDAC)に結合してこれと複合体を形成し、いわゆる「ATPシンターゼメガ複合体(ATP synthasome mega complex)」を形成するためである。このようなATPシンターゼメガ複合体が形成されると、がん細胞が不死化(immortalize)し、がんの増殖のための細胞のエネルギー生産過程を継続的に使用することができる。したがって、ヘキソキナーゼ阻害剤は、ヘキソキナーゼがVADCに結合することをブロックするか、すでに形成されたATPシンターゼメガ複合体のVADCからヘキソキナーゼ分子を置換することができる。
【0080】
一例において、ヘキソキナーゼ阻害剤は、HK1又はHK2のN末端領域から最大25個のアミノ酸単位以内であってもよい。さらに別の例において、ヘキソキナーゼ阻害剤は、5~20個のアミノ酸を有するアミノ酸配列であってもよく、このとき、5~20個のアミノ酸配列は、HK1又はHK2のN末端の最初の25個のアミノ酸単位領域に存在する。一例において、5~20個のアミノ酸配列は、HK1又はHK2のN末端の最初の25個のアミノ酸単位領域に存在する任意の5~20個のアミノ酸配列であってもよい。
【0081】
このようなアミノ酸配列は、細胞に結合されたヘキソキナーゼを置換するか、電圧依存性陰イオンチャネル(VDAC)に競合的に結合して、最初のヘキソキナーゼ結合を防止することができる。説明されたように、ATP生産の主要な供給源は、感染していない細胞のミトコンドリアで発生する。しかし、感染細胞では解糖からのATP生産が大幅に増加する。正常細胞とは異なり、感染細胞内のかなりの数のHK1及び/又はHK2分子は、VDAC及びATPシンターゼと複合体を形成して、いわゆる「ATPシンターゼメガ複合体」を形成する。このようなATPシンターゼメガ複合体が形成されると、感染細胞が不死化し、病原体の複製のための細胞のエネルギー生産過程を病原体が継続して使用することができる。このように、ヘキソキナーゼ阻害剤は、ATPシンターゼメガ複合体の形成を防止、又は発生率を低減させ、病原体の複製能力を減少させることができる。また、ヘキソキナーゼ阻害剤は、すでに形成されたATPシンターゼメガ複合体を破壊し、多くの場合、細胞のアポトーシス死(apoptotic death)をもたらすことができる。
【0082】
他の例では、ヘキソキナーゼ阻害剤は、HK1又はHK2の一部、例えば、HK1又はHK2分子のN末端領域に対する抗体を含むことができる。1つの具体的な例において、ヘキソキナーゼ阻害剤は、以下のような配列を有するヘキソキナーゼ1(アイソフォーム1)のN末端から最初の25個のアミノ酸に対応する配列番号6のようなアミノ酸配列であってもよい。
【表6】
別の例において、ヘキソキナーゼ阻害剤は、以下のような配列を有するヘキソキナーゼ1(アイソフォーム2)のN末端から最初の25個のアミノ酸に対応する配列番号7のようなアミノ酸配列であってもよい。
【表7】
さらに別の例において、ヘキソキナーゼ阻害剤は、以下のような配列を有するヘキソキナーゼ1(アイソフォーム3)のN末端から最初の25個のアミノ酸に対応する配列番号8のようなアミノ酸配列であってもよい。
【表8】
さらに別の例において、ヘキソキナーゼ阻害剤は、以下のような配列を有するヘキソキナーゼ1(アイソフォーム4)のN末端から最初の25個のアミノ酸に対応する配列番号9のようなアミノ酸配列であってもよい。
【表9】
さらに別の例において、ヘキソキナーゼ阻害剤は、以下のような配列を有するヘキソキナーゼ2のN末端から最初の25個のアミノ酸に対応する配列番号10のようなアミノ酸配列であってもよい。
【表10】
追加のヘキソキナーゼ阻害剤は、米国特許第5,854,067号(Newgardら、1998年12月29日発行)及び/又は米国特許第5,891,717号(Newgardら、1999年4月6日発行)に開示されているヘキソキナーゼ阻害剤であってもよく、前記文献は、両方これらの全文が参照により組み込まれる。本製剤で使用され得る追加のヘキソキナーゼ阻害剤は、米国特許第6,670,330号;米国特許第6,218,435号;第5,824,665号;第5,652,273号;及び第5,643,883号;及び米国特許出願公開第20030072814号;第20020077300号;及び第20020035071号に開示されているヘキソキナーゼ阻害剤を含み;前述の特許公報及び特許出願のそれぞれは、これらの全文が本願に参照により組み込まれる。
【0083】
いくつかの例において、本発明の3-BP組成物は、様々な添加剤をさらに含むことができる。一例において、組成物は、免疫系モジュレーター(immune system modulator)及び/又は免疫系ブースター(immune system booster)を含むことができる。このような免疫系モジュレーター及び/又は免疫系ブースターは、d-乳酸、エピネフリン(epinephrine)、玄米抽出物、類似体を含むムラミルジペプチド(muramyl dipeptide)、キノコ抽出物、バイオフラボノイド(bioflavonoid)、ビタミンD3結合タンパク質来由マクロファージ活性化因子(Vitamin D3-Binding Protein-Derived Macrophage Activating Factor)(GcMAF)、ナガラーゼ(nagalase)阻害剤、N-アセチルガラクトサミンに付着したスレオニン、ナガラーゼに対する抗体などを含むことができるが、これらに制限されない。任意の特定の理論に縛られることなく、フラボノイドは間接的な免疫調節効果を示すことができる。具体的には、フラボノイドが豊富な食品を摂取した後に示される血液の抗酸化能力の増加は、フラボノイド自体による直接的な原因ではなく、フラボノイドの代謝による尿酸レベルの増加による可能性がある。身体はそれらを外来化合物とみなし、除去しようとする。不要な化合物を除去するこのような過程には、変異原(mutagen)と発がん物質(carcinogen)を除去するのにまた役立つフェーズII酵素(Phase II enzyme)が含まれているため、価値があり得る。一実施形態において、本発明の組成物は、d-乳酸を含むことができる。別の実施形態において、本発明の組成物は、エピネフリンを含むことができる。
【0084】
いくつかの例において、本発明の3-BP組成物は、抗真菌剤、抗生剤、解糖阻害剤、ミトコンドリア阻害剤、糖、及び生物学的緩衝液を含むことができるが、これらに制限されない。このような薬剤の例としては、アンホテリシンB、エフラペプチン、ドキソルビシン、2-デオキシグルコース(2DOG)、d-乳酸、2DOGの類似体、ジクロロ酢酸(又はジクロロ酢酸塩の形態)、オリゴマイシン、オリゴマイシンの類似体、グリセロール、イノシトール、ソルビトール、グリコール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ズルシトール、イジトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、ポリグリシトール、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、オキサロ酢酸、イソクエン酸、アコニット酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、様々な濃度のNaCl及び水を含む希釈された食塩水が含まれるが、これらに制限されない。このような生物学的緩衝液に付随するナトリウムイオンに加えて、カルシウム及びカリウム陽イオンも生物学的緩衝液に付随することができる。前記組成物中の様々な活性剤は、細胞エネルギー阻害剤、解糖阻害剤、ミトコンドリア阻害剤、ハロモノカルボン酸化合物、抗真菌剤、及び抗生剤などを含むことができる。
【0085】
一実施形態において、本発明の組成物は、リポソーム(liposome)及びナノ粒子(nanoparticle)を含むリン脂質(phospholipid)を含むことができる。リポソーム又はナノ粒子は、アネキシン(annexin)-A5分子又はホスファチジルセリンに対する抗体を含むことができる。このような方式で、3BPの放出速度を制御することができ、伝達対象が指定され得る。他の例では、本発明の組成物は、L-乳酸脱水素酵素(L-lactate dehydrogenase)、D-乳酸脱水素酵素、又は両方を含むことができる。他の例では、本発明の組成物は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide:NAD)を含むことができ、これは感染細胞付近の乳酸濃度だけでなく、血中乳酸濃度を低下させるために本製剤に含まれ得る。感染体の血中乳酸濃度を低下させることによって、解糖能力の高い先天性免疫系(highly glycolytic innate immune system)が適切に作動できる。
【0086】
一実施形態において、本発明の組成物は、感染細胞枯渇(starvation)を促進するために、異性体に比べて生物学的の活性がさらに低いアミノ酸を含むことができる。一態様において、生物学的の活性がさらに低いアミノ酸はD-アミノ酸であってもよい。しかし、L-アミノ酸がD-型よりも生物学的の活性がさらに低い場合には、L-アミノ酸を使用することができる。
【0087】
一実施形態において、本発明の組成物は、DNA複製の阻害剤;DNA結合の阻害剤;及び/又はDNA転写の阻害剤を含むことができる。別の実施形態において、本発明の組成物は、細胞周期、成長及び/又は増殖に対する阻害剤を含むことができる。さらに別の実施形態において、本発明の組成物は、シグナル伝達経路に対する阻害剤を含むことができる。さらに別の実施形態において、本発明の組成物は、血管新生の阻害剤を含むことができる。さらに別の実施形態において、本発明の組成物は、アンチセンスRNA(antisense RNA)、マイクロRNA(micro RNA)、スモールヘアピンRNA(small hairpin RNA)、ショートヘアピンRNA(short hairpin RNA)、及びスモール干渉RNA(small interfering RNA)などを含む正常な遺伝子制御を妨害するスモールRNAを含むことができる。さらに別の実施形態において、本発明の組成物は、ビタミンC;ビタミン、CoQ10、フラボノイド、遊離脂肪酸、アルファリポ酸(alpha lipoic acid)、アサイー(acai)、ゴギ(gogi)、マンゴー、ボムグラナト(pomergrante)、L-カルニチン(L-carnitine)、セレニウムを含む栄養補助剤(nutritional supplement);などを含むことができる。
【0088】
活性剤に加えて、前記組成物はまた薬学的に許容される担体を含むことができる。担体は、単一の組成物、又は組成物の混合物であってもよい。さらに、担体は、カプセル化コート(encapsulation coat)、吸収剤、コーティング物質、制御放出装置(controlled release device)、放出調節剤(release modifying agent)、界面活性剤、又はこれらの組み合わせの形態を取ることができる。いくつかの態様において、担体は、全組成物の約1重量%~約99重量%を構成することができる。一実施形態において、担体は、全製剤の約5重量%~約95重量%を構成することができる。別の実施形態において、担体は、約20重量%~約80重量%を構成することができる。さらに別の実施形態において、担体は、約30重量%~約60重量%を構成することができる。一実施形態において、担体は、活性剤と混合することができる。さらに別の実施形態において、担体は、活性剤の少なくとも一部を吸着、捕獲、又はカプセル化することができる。
【0089】
担体の少なくとも一部として使用され得る化合物の非制限的な例には、セチルアルコール及びこのエステル;ステアリン酸及びこのグリセロールエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリエチレングリコール;多糖分解グリセリド(polyglycolyzed glyceride);ポリオキシエチレンアルキルペノル;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ポリグリセロール脂肪酸エステル;タンパク質;ポリオキシエチレングリセリド;ポリオキシエチレンステロール、この誘導体(derivative)及び類似体(analogue);ポリオキシエチレン硬化した植物油(polyoxyethylene hydrogenated vegetable oil);ポリオールと、脂肪酸、グリセリド、植物油、硬化した植物油、及びステロールからなる群の少なくとも1種のメンバーとの反応混合物;トコフェロール誘導体、糖エステル;糖エーテル;スクログリセリド;ワックス、セラック(shellac)、これらの薬学的に許容される塩、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに制限されない。
【0090】
放出調節剤の非制限的な例としては、重量平均分子量が約1000以上のポリエチレングリコール、カルボマー(carbomer)、メチルメタクリレートコポリマー、メタクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース及びこれらの誘導体;イオン交換樹脂(ion-exchange resin);脂肪酸とグリセロールのモノ-、ジ-、トリエステル;トコフェロール及びこのエステル;脂肪酸が含まれたスクロースエステル;ポリビニルピロリドン;キサンタンガム(xanthan gum);セチルアルコール;ワックス;脂肪及びオイル、タンパク質、アルギン酸塩、ポリビニルポリマー、ゼラチン、有機酸、及びこれらの誘導体及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに制限されない。
【0091】
一実施形態において、担体は、セルロース;カルボマー;メタクリレート;デキストリン;ガム;無機炭酸塩又はカルシウム又はマグネシウム又は両方の塩;脂肪酸エステル;ゼラチン;ラクトース;マルトース;モノ-、ジ-又はトリグリセリド;オイル;ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシドコポリマー;タンパク質;樹脂;セラック;ケイ酸塩;デンプン;糖ステアレート;部分的又は完全に硬化した植物油;ワックス;及びこれらの組み合わせの少なくとも1種を含むことができる。
【0092】
さらに別の実施形態において、担体は、セルロース;カルボマー;メタクリレート;無機炭酸塩又はカルシウム塩;無機炭酸塩又はマグネシウム塩;脂肪酸;脂肪酸エステル;ゼラチン;ラクトース;ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシドコポリマー;ケイ酸塩;部分的又は完全に硬化した植物油、及びこれらの組み合わせの少なくとも1種を含むことができる。
【0093】
さらに別の実施形態において、担体は、微結晶セルロース(microcrystalline cellulose);ヒドロキシプロピルメチルセルロース;エチルセルロース;二酸化ケイ素;マグネシウムアルミノシリケート(magnesium aluminosilicate);ラクトース;キサンタンガム;ステアリン酸;ジステアリン酸グリセリル;硬化した植物油;及びこれらの組み合わせの少なくとも1種を含むことができる。
【0094】
任意の剤形を含む製剤は、他の成分又は添加剤を含むことができる。このような追加成分及び添加剤は選択事項である。一態様において、添加剤は室温で固体であることができ、約40℃を超える融点(melting point)又は溶融範囲を有することができる。本発明のシステムに含まれ得る添加剤の非制限的な例には、ラクトース、デンプン、糖、セルロース、カルシウム塩、酸化ケイ素、及びメタロシリケート(metallosilicate)などの充填剤(filler);デンプン;グリコール酸、ラウリル硫酸、α化デンプン(pregaltinized starch)、クロスカルメロース(croscarmellose)、及びクロスポビドン(crospovidone)などの崩壊剤(disintegrant);ピロリドン、メタクリレート、酢酸ビニル、ガム、アカシア(acacia);トラガント(tragacanth);カオリン(kaolin);カラギナンアルギン酸塩(carrageenan alginate)、及びゼラチンなどの結合剤(binder);アルコール、平均分子量が1000未満のポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールなどの共溶媒(cosolvent);新水性又は両親媒性(amphiphlic)界面活性剤などの表面張力調整剤(surface tension modifier);味覚調節剤(taste-masking agent);甘味料(sweetener);マイクロカプセル化剤(microencapsulating agent);潤滑剤(lubricant)、滑剤(glidant)、タルク(talc)、ステアレート、及びレシチン(lecithin)などの加工助剤(process aid);ポリマーコーティング剤(polymeric coating agent);可塑剤(plasticizer);緩衝剤;有機酸;抗酸化剤;フレーバー(flavor);着色剤(color);アルカリ化剤(alkalizer);湿潤剤(humectant);ソルビトール;マンニトール;浸透圧塩(osmotic salt);タンパク質;樹脂;防湿剤(moisture repelling agent);吸湿剤(hygroscopic agent);乾燥剤(desiccant);及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに制限されない。
【0095】
本発明の製剤は、ツーピース硬質ゼラチンカプセル(two piece hard gelatin capsule)、軟質ゼラチンカプセル(soft gelatin capsule)、ビーズ(bead)、ビードレット(beadlet)、顆粒、小球体(spherule)、ペレット、マイクロカプセル、ミクロスフェア(microsphere)、ナノスフェア(nanosphere)、ナノカプセル、錠剤、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに制限されない様々な経口剤形に製剤化することができる。当業者に公知の別の形態も使用され得る。一態様において、経口剤形は、カプセル又は錠剤であってもよい。さらに別の実施形態において、経口剤形は、多成分剤形(multi-component dosage form)、例えば、カプセル内のビーズ、カプセル又はカプセル内のカプセル、錠剤又はカプセル内の錠剤、又は多層錠剤(multilayer tablet)を含むことができる。注目すべき点は、製剤が複数の剤形を含む場合、このような剤形が同一である必要はないということである。さらに、このような剤形は物理的に一緒に存在しなくてもよい。
【0096】
剤形、例えば錠剤は、当技術分野で公知の新水性又は疎水性のコート材料でコーティング又は覆われることができる。一実施形態において、前記コートは、フィルムコート(film coat)、シュガーコート(sugar coat)、腸溶コート(enteric coat)、半透性コート(semipermeable coat)、徐放性コート(sustained release coat)、遅延放出コート(delayed release coat)、及び滲透性コート(osmotic coat)などであってもよい。さらなる実施形態において、コーティング材料には、セルロース、ゼラチン、メタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポビドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド(polyetyhylne oxide)、ポロキサマー(poloxamer)、カルボマー、セラック、及びフタレートなど、及びこれらの誘導体、及びこれらの組み合わせであってもよい。別の実施形態において、前記コートは、ドライパウダーコート(dry powder coat)である。一実施形態において、錠剤はマトリックス錠剤(matrix tablet)であってもよい。注目すべき点は、コートが存在する場合、製剤の担体成分のうち、一部又は全部とみなすことができることである。
【0097】
本願に記載の組成物に加えて、病原性感染症を治療する方法は、治療的有効量の本明細書に記載の3-BP組成物を被験体に投与することを含むことができる。一例において、被験体の血中インスリン/グルカゴンの割合が約1~約10の範囲であると前記組成物を被験体に投与することができる。別の例において、前記組成物は、少なくとも4時間絶食した後、被験体に投与することができる。さらに別の例において、前記組成物は、6時間絶食した後、さらに別の実施形態において8時間絶食した後に被験体に投与することができる。さらに別の例において、前記組成物は、2時間絶食した後、被験体に投与することができる。このような時間は制限する意図はなく、一実施形態において、絶食する時間の量は、被験体の血中インスリン/グルカゴンの割合が約2~約5の範囲になるようにする量であってもよい点に留意する。
【0098】
[例示]
一例において、病原性感染症から被験体を保護する、又は病原性感染症に罹患している被験体を治療するための組成物は、化学式Iによる構造を有する細胞エネルギー阻害剤であって:
[化学式I]
【化5】
前記化学式Iで、Xは、ニトロ、イミダゾール、ハロゲン化物、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、及びアミンオキシドからなる群より選ばれ;Rは、OR’、N(R’’)、C(O)R’’’、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C6ヘテロアルキル、C6-C12ヘテロアリール、H、及びアルカリ金属からなる群より選ばれるが、ここでR’は、H、アルカリ金属、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、又はC(O)R’’’を示し、R’’は、H、C1-C6アルキル、又はC6-C12アリールを示し、R’’’は、H、C1-C20アルキル又はC6-C12アリールを示す、細胞エネルギー阻害剤;
前記細胞エネルギー阻害剤が加水分解されることを実質的に防止することによって前記細胞エネルギー阻害剤を安定化させる少なくとも1種の糖;及び
前記細胞エネルギー阻害剤を少なくとも部分的に脱酸し、前記細胞エネルギー阻害剤の代謝副産物を中和するのに十分な量で存在する生物学的緩衝液;を含むことができる。
【0099】
一例において、細胞エネルギー阻害剤は、3-フルオロピルビン酸、3-クロロピルビン酸、3-ブロモピルビン酸、3-ヨードピルビン酸、及びこれらの組み合わせより選ばれる3-ハロピルビン酸である。
【0100】
一例において、細胞エネルギー阻害剤は、3-ブロモピルビン酸である。
【0101】
一例において、少なくとも1種の糖は、グルコン酸、グルクロン酸、マンニトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ズルシトール、リビトール、イノシトール、グリセロール、エチレングリコール、トレイトール、アラビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、ボレミトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、又はこれらの組み合わせから選択することができる。
【0102】
一例において、少なくとも1種の糖は、五炭糖であってもよい。
【0103】
一例において、少なくとも1種の糖は、少なくとも2種の五炭糖であってもよい。
【0104】
一例において、前記組成物は、マンニトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ズルシトール、リビトール、イノシトール、ソルビトール、及びこれらの組み合わせより選ばれる第2の糖を含むことができる。
【0105】
一例において、前記組成物は、マンニトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ズルシトール、リビトール、イノシトール、ソルビトール、及びこれらの組み合わせから独立して選ばれる第2の糖及び第3の糖を含むことができる。
【0106】
一例において、少なくとも1種の糖は、グリセロール、イノシトール、及びソルビトールを含むことができる。
【0107】
一例において、前記組成物は、約0.1重量%~約3重量%範囲のグリセロール、約1重量%~約5重量%範囲のイノシトール、及び約30重量%~約50重量%範囲のソルビトールを含む。
【0108】
一例において、前記組成物は、d-乳酸及びエピネフリンを含むことができる。
【0109】
一例において、前記組成物は、解糖阻害剤を含むことができ、このとき、前記解糖阻害剤は、約1mM~約5mM濃度の2-デオキシグルコースである。
【0110】
一例において、前記組成物は、解糖阻害剤2-デオキシグルコースを含むことができる。
【0111】
一例において、前記組成物は、2-デオキシグルコースを約1mM~約5mMの濃度で含むことができる。
【0112】
一例において、生物学的緩衝液は、クエン酸緩衝液、リン酸塩緩衝液、及び酢酸緩衝液より選ばれる。
【0113】
一例において、生物学的緩衝液は、クエン酸緩衝液である。
【0114】
一例において、前記組成物は、リン脂質;リポソーム;ナノ粒子;玄米抽出物、類似体を含むムラミルジペプチド、キノコ抽出物、バイオフラボノイド、ビタミンD3結合タンパク質来由マクロファージ活性化因子(GcMAF)、ナガラーゼ阻害剤、N-アセチルガラクトサミンに付随するスレオニン、及びナガラーゼに対する抗体を含む免疫系モジュレーター及び/又は免疫系ブースター;L-乳酸脱水素酵素;D-乳酸脱水素酵素;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド;DNA複製の阻害剤;DNA結合の阻害剤;DNA転写の阻害剤;細胞周期、成長及び/又は増殖に対する阻害剤;シグナル伝達経路に対する阻害剤;血管新生の阻害剤;アンチセンスRNA、マイクロRNA、スモールヘアピンRNA、ショートヘアピンRNA、スモール干渉RNAを含む正常な遺伝子制御を妨害するスモールRNA;ビタミンC;ビタミン、CoQ10、フラボノイド、遊離脂肪酸、アルファリポ酸、アサイー、ゴギ、マンゴー、ボムグラナト、L-カルニチン、セレニウムを含む栄養補助剤;異性体に比べて生物学的活性がさらに低いアミノ酸;及びこれらの混合物より選ばれる少なくとも1種の添加剤を含むことができる。
【0115】
一例において、前記組成物は、ヘキソキナーゼ阻害剤を含むことができる。
【0116】
一例において、ヘキソキナーゼ阻害剤は、VDACに対するヘキソキナーゼ1及び/又はヘキソキナーゼ2の結合を阻害する。
【0117】
一例において、ヘキソキナーゼ阻害剤は、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群より選ばれるアミノ酸配列である。
【0118】
一例において、前記組成物は、抗真菌剤及び/又は抗菌剤を含むことができる。
【0119】
一例において、前記組成物は、約0.05mM~約0.5mMの濃度で抗真菌剤及び/又は抗菌剤を含むことができる。
【0120】
一例において、前記組成物は、ミトコンドリア阻害剤を含むことができる。
【0121】
一例において、ミトコンドリア阻害剤は、オリゴマイシン、エフラペプチン、オーロベルチン、及びこれらの混合物より選ばれ、約0.01mM~約0.5mMの濃度で存在する。
【0122】
一例において、ミトコンドリア阻害剤は、約0.01mM~約0.5mMの濃度で存在する。
【0123】
別の例において、病原性感染症から被験体を保護する、又は病原性感染症に罹患している被験体を治療する方法は、治療的有効量の請求項1に記載の組成物を被験体に投与することを含むことができる。
【0124】
さらに別の例において、前記組成物は経腸、非経口、経皮、又はこれらの組み合わせによって被験体に投与する。
【0125】
さらに別の例において、一次病原性感染症に罹患している被験体における二次感染を治療又は予防するための組成物は、化学式Iによる構造を有する細胞エネルギー阻害剤を含むことができる。
[化学式I]
【化6】
前記化学式Iで、Xは、ニトロ、イミダゾール、ハロゲン化物、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、及びアミンオキシドからなる群より選ばれ;Rは、OR’、N(R’’)、C(O)R’’’、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C6ヘテロアルキル、C6-C12ヘテロアリール、H、及びアルカリ金属からなる群より選ばれるが、ここでR’は、H、アルカリ金属、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、又はC(O)R’’’を示し、R’’は、H、C1-C6アルキル、又はC6-C12アリールを示し、R’’’は、H、C1-C20アルキル又はC6-C12アリールを示す。前記組成物はまた、細胞エネルギー阻害剤が加水分解されることを実質的に防止することによって細胞エネルギー阻害剤を安定化させる少なくとも1種の糖、及び細胞エネルギー阻害剤を少なくとも部分的に脱酸し、細胞エネルギー阻害剤の代謝副産物を中和するのに十分な量で存在する生物学的緩衝液を含むことができる。
【0126】
一例において、二次感染は、共感染、重感染、日和見感染、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0127】
別の例において、一次病原性感染症に罹患している、又は最近罹患していた被験体における二次感染を治療又は予防する方法は、ハロピルビン酸組成物を被験体に投与することを含むことができ、前記ハロピルビン酸組成物は、化学式Iの構造を有する細胞エネルギー阻害剤を含む。
【0128】
[化学式I]
【化7】
前記化学式Iで、Xは、ニトロ、イミダゾール、ハロゲン化物、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、及びアミンオキシドからなる群より選ばれ;Rは、OR’、N(R’’)、C(O)R’’’、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C6ヘテロアルキル、C6-C12ヘテロアリール、H、及びアルカリ金属からなる群より選ばれるが、ここでR’は、H、アルカリ金属、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、又はC(O)R’’’を示し、R’’は、H、C1-C6アルキル、又はC6-C12アリールを示し、R’’’は、H、C1-C20アルキル又はC6-C12アリールを示す。ハロピルビン酸組成物はまた、細胞エネルギー阻害剤が加水分解されることを実質的に防止することによって細胞エネルギー阻害剤を安定化させる少なくとも1種の糖、及び細胞エネルギー阻害剤を少なくとも部分的に脱酸し、細胞エネルギー阻害剤の代謝副産物を中和するのに十分な量で存在する生物学的緩衝液を含む。
【0129】
一例において、前記ハロピルビン酸組成物は、活性剤と同時に投与する。
【0130】
別の例において、一次病原性感染症に罹患している被験体の白血球における高解糖を低減又は予防するための組成物は、化学式Iによる構造を有する細胞エネルギー阻害剤を含むことができる。
[化学式I]
【化8】
前記化学式Iで、Xは、ニトロ、イミダゾール、ハロゲン化物、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、及びアミンオキシドからなる群より選ばれ;Rは、OR’、N(R’’)、C(O)R’’’、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C6ヘテロアルキル、C6-C12ヘテロアリール、H、及びアルカリ金属からなる群より選ばれるが、ここでR’は、H、アルカリ金属、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、又はC(O)R’’’を示し、R’’は、H、C1-C6アルキル、又はC6-C12アリールを示し、R’’’は、H、C1-C20アルキル又はC6-C12アリールを示す。前記例示は、さらに、細胞エネルギー阻害剤が加水分解されることを実質的に防止することによって細胞エネルギー阻害剤を安定化させる少なくとも1種の糖、及び細胞エネルギー阻害剤を少なくとも部分的に脱酸し、細胞エネルギー阻害剤の代謝副産物を中和するのに十分な量で存在する生物学的緩衝液を含む。
【0131】
別の例において、一次病原性感染症に罹患している被験体における高サイトカイン血症を低減又は予防する方法は、ハロピルビン酸組成物を被験体に投与することを含むことができ、前記ハロピルビン酸組成物は、化学式Iによる構造を有する細胞エネルギー阻害剤を含む。
【0132】
[化学式I]
【化9】
前記化学式Iで、Xは、ニトロ、イミダゾール、ハロゲン化物、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、及びアミンオキシドからなる群より選ばれ;Rは、OR’、N(R’’)、C(O)R’’’、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C6ヘテロアルキル、C6-C12ヘテロアリール、H、及びアルカリ金属からなる群より選ばれるが、ここでR’は、H、アルカリ金属、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、又はC(O)R’’’を示し、R’’は、H、C1-C6アルキル、又はC6-C12アリールを示し、R’’’は、H、C1-C20アルキル又はC6-C12アリールを示す。前記組成物は、細胞エネルギー阻害剤が加水分解されることを実質的に防止することによって細胞エネルギー阻害剤を安定化させる少なくとも1種の糖、及び細胞エネルギー阻害剤を少なくとも部分的に脱酸し、細胞エネルギー阻害剤の代謝副産物を中和するのに十分な量で存在する生物学的緩衝液をさらに含むことができる。
【0133】
別の例において、病原性感染症に罹患している被験体の過剰活性化非白血球細胞における過剰解糖を減少させるための組成物は、化学式Iによる構造を有する細胞エネルギー阻害剤を含むことができる。
[化学式I]
【化10】
前記化学式Iで、Xは、ニトロ、イミダゾール、ハロゲン化物、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、及びアミンオキシドからなる群より選ばれ;Rは、OR’、N(R’’)、C(O)R’’’、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C6ヘテロアルキル、C6-C12ヘテロアリール、H、及びアルカリ金属からなる群より選ばれるが、ここでR’は、H、アルカリ金属、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、又はC(O)R’’’を示し、R’’は、H、C1-C6アルキル、又はC6-C12アリールを示し、R’’’は、H、C1-C20アルキル又はC6-C12アリールを示す。前記組成物は、細胞エネルギー阻害剤が加水分解されることを実質的に防止することによって細胞エネルギー阻害剤を安定化させる少なくとも1種の糖、及び細胞エネルギー阻害剤を少なくとも部分的に脱酸し、細胞エネルギー阻害剤の代謝副産物を中和するのに十分な量で存在する生物学的緩衝液をさらに含むことができる。
【0134】
〔実施の態様〕
(1) 病原性感染症(pathogenic infection)から被験体(subject)を保護する、又は病原性感染症に罹患している被験体を治療する方法であって、前記方法は、
化学式Iによる構造を有する細胞エネルギー阻害剤(cellular energy inhibitor)であって:
[化学式I]
【化11】
前記化学式Iで、Xは、ニトロ、イミダゾール、ハロゲン化物、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、及びアミンオキシドからなる群より選ばれ;Rは、OR’、N(R’’)、C(O)R’’’、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C6ヘテロアルキル、C6-C12ヘテロアリール、H、及びアルカリ金属からなる群より選ばれるが、ここでR’は、H、アルカリ金属、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、又はC(O)R’’’を示し、R’’は、H、C1-C6アルキル、又はC6-C12アリールを示し、R’’’は、H、C1-C20アルキル、又はC6-C12アリールを示す、細胞エネルギー阻害剤;
前記細胞エネルギー阻害剤が加水分解されることを実質的に防止することによって前記細胞エネルギー阻害剤を安定化させる少なくとも1種の糖(sugar);及び
前記細胞エネルギー阻害剤を少なくとも部分的に脱酸(deacidify)し、前記細胞エネルギー阻害剤の代謝副産物を中和するのに十分な量で存在する生物学的緩衝液(biological buffer);を含む組成物の治療的有効量を被験体に投与することを含む、方法。
(2) 前記細胞エネルギー阻害剤は、3-ブロモピルビン酸(3-bromopyruvate)である、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記少なくとも1種の糖は、グルコン酸(gluconic acid)、グルクロン酸(glucuronic acid)、マンニトール(mannitol)、エリスリトール(erythritol)、イソマルト(isomalt)、ラクチトール(lactitol)、マルチトール(maltitol)、ソルビトール(sorbitol)、キシリトール(xylitol)、ズルシトール(dulcitol)、リビトール(ribitol)、イノシトール(inositol)、グリセロール(glycerol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、トレイトール(threitol)、アラビトール(arabitol)、ガラクチトール(galactitol)、フシトール(fucitol)、イジトール(iditol)、ボレミトール(volemitol)、マルトトリイトール(maltotriitol)、マルトテトライトール(maltotetraitol)、ポリグリシトール(polyglycitol)、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるメンバーである、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記組成物は、マンニトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ズルシトール、リビトール、イノシトール、ソルビトール、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる第2の糖をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記組成物は、マンニトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ズルシトール、リビトール、イノシトール、ソルビトール、又はこれらの組み合わせから独立して選ばれる第2の糖及び第3の糖を含むことができる、実施態様1に記載の方法。
【0135】
(6) 前記組成物は、グリセロール、イノシトール、及びソルビトールより選ばれる少なくとも1種の糖をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記組成物は、d-乳酸及びエピネフリン(epinephrine)をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記組成物は、解糖阻害剤(glycolysis inhibitor)をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記解糖阻害剤は、2-デオキシグルコース(2-deoxglucose)である、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記2-デオキシグルコースは、約1mM~約5mMの濃度で存在する、実施態様9に記載の方法。
【0136】
(11) 前記生物学的緩衝液は、クエン酸緩衝液、リン酸塩緩衝液、及び酢酸緩衝液より選ばれる、実施態様1に記載の方法。
(12) 前記生物学的緩衝液は、クエン酸緩衝液である、実施態様1に記載の方法。
(13) 前記組成物は、リン脂質(phospholipid);リポソーム(liposome);ナノ粒子(nanoparticle);玄米抽出物、類似体を含むムラミルジペプチド(muramyl dipeptide)、キノコ抽出物、バイオフラボノイド(bioflavonoid)、ビタミンD3結合タンパク質来由マクロファージ活性化因子(Vitamin D3-Binding Protein-Derived Macrophage Activating Factor)(GcMAF)、ナガラーゼ(nagalase)阻害剤、N-アセチルガラクトサミンに付着するスレオニン、及びナガラーゼに対する抗体を含む免疫系モジュレーター(immune system modulator)及び/又は免疫系ブースター(immune system booster);L-乳酸脱水素酵素(L-lactate dehydrogenase);D-乳酸脱水素酵素;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide);DNA複製の阻害剤;DNA結合の阻害剤;DNA転写の阻害剤;細胞周期、成長及び/又は増殖に対する阻害剤;シグナル伝達経路に対する阻害剤;血管新生(angiogensis)の阻害剤;アンチセンスRNA(antisense RNA)、マイクロRNA(micro RNA)、スモールヘアピンRNA(small hairpin RNA)、ショートヘアピンRNA(short hairpin RNA)、スモール干渉RNA(small interfering RNA)を含む正常な遺伝子制御を妨害するスモールRNA;ビタミンC;ビタミン、CoQ10、フラボノイド、遊離脂肪酸、アルファリポ酸(alpha lipoic acid)、アサイー(acai)、ゴギ(gogi)、マンゴー、ボムグラナト(pomergrante)、L-カルニチン(L-carnitine)、セレニウムを含む栄養補助剤(nutritional supplement);異性体に比べて生物学的活性がさらに低いアミノ酸;及びこれらの混合物より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
(14) 前記組成物は、ヘキソキナーゼ阻害剤(hexokinase inhibitor)をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
(15) 前記ヘキソキナーゼ阻害剤は、VDACに対するヘキソキナーゼ1及び/又はヘキソキナーゼ2の結合を阻害する、実施態様14に記載の方法。
【0137】
(16) 前記ヘキソキナーゼ阻害剤は、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群より選ばれるアミノ酸配列である、実施態様1に記載の方法。
【配列表】
2023541765000001.app
【国際調査報告】