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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】修飾された機能性核酸分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20231002BHJP
   C12N 15/67 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/67 Z
A61K48/00
A61K31/7088
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518788
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 GB2021052502
(87)【国際公開番号】W WO2022064221
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】20425038.5
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520097342
【氏名又は名称】フォンダジオネ イスティツト イタリアノ ディ テクノロジア
(71)【出願人】
【識別番号】520097353
【氏名又は名称】スクオラ インターナジオナレ スペリオレ ディ ステュディ アバンザティ
(71)【出願人】
【識別番号】520292291
【氏名又は名称】トランシネ セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ピエロ カルニンチ
(72)【発明者】
【氏名】高橋 葉月
(72)【発明者】
【氏名】土岐 直子
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ グスティンシチ
(72)【発明者】
【氏名】ビアンカ ピエラッティーニ
(72)【発明者】
【氏名】パオラ バレンティーニ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB21
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB21
(57)【要約】
本発明は、特に標的タンパク質合成効率を高める方法で使用するための標的決定配列及び調節配列を含む機能性核酸分子であって、1以上の化学修飾を含む機能性核酸分子に関する。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性核酸分子であって、
(a)タンパク質翻訳が増強されるべきである標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む少なくとも1つの標的決定配列;及び
(b)SINE B2エレメント又はSINE B2エレメントの機能的に活性のある断片を含む少なくとも1つの調節配列
を含み、
1以上の化学修飾を含む、前記機能性核酸分子。
【請求項2】
前記化学修飾が、アデニン、シトシン及び/又はウラシル塩基の修飾から選択される化学塩基修飾である、請求項1記載の機能性核酸分子。
【請求項3】
前記化学塩基修飾が、メチル化及び/又は異性化から選択される、請求項2記載の機能性核酸分子。
【請求項4】
前記化学塩基修飾が、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、5-メチルシチジン及びN6-メチルアデノシンからなる群から選択される、請求項2又は請求項3記載の機能性核酸分子。
【請求項5】
前記化学修飾が化学糖修飾である、請求項1記載の機能性核酸分子。
【請求項6】
前記化学糖修飾が、2'-O-メチルアデノシンなどのメチル化である、請求項5記載の機能性核酸分子。
【請求項7】
前記標的決定配列が1以上の化学修飾を含む、請求項1~6のいずれか一項記載の機能性核酸分子。
【請求項8】
前記調節配列が1以上の化学修飾を含む、請求項1~6のいずれか一項記載の機能性核酸分子。
【請求項9】
前記標的決定配列と調節配列の両方が1以上の化学修飾を含む、請求項1~8のいずれか一項記載の機能性核酸分子。
【請求項10】
前記標的決定配列が少なくとも10ヌクレオチド長であり、3'から5'に
-5'非翻訳領域(5'UTR)の0~50ヌクレオチド及び前記標的mRNA配列のコード配列(CDS)の0~40ヌクレオチドと逆相補的な配列;又は
-該標的mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の0~80ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流の標的mRNA配列のCDSの0~40ヌクレオチドと逆相補的な配列
を含む、請求項1~9のいずれか一項記載の機能性核酸分子。
【請求項11】
前記標的決定配列が少なくとも14ヌクレオチド長であり、3'から5'に
-5'UTRの0~40ヌクレオチド及び前記標的mRNA配列のCDSの0~32ヌクレオチドと逆相補的な配列;又は
-該標的mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の0~70ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流の該標的mRNA配列のCDSの0~4ヌクレオチドと逆相補的な配列
を含む、請求項10記載の機能性核酸分子。
【請求項12】
前記標的決定配列と前記調節配列との間に少なくとも1つのリンカー配列をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項記載の機能性核酸分子。
【請求項13】
前記機能性RNA分子が、3'-ポリアデニル化(ポリA)テール及び/又は5'-キャップを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の機能性核酸分子。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項記載の機能性核酸分子を含む組成物。
【請求項15】
細胞における標的のタンパク質合成効率を高める方法であって、請求項1~13のいずれか一項記載の機能性核酸分子又は請求項14記載の組成物を前記細胞に投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、標的mRNA発現の上方制御に使用するための機能性核酸分子、特に機能性RNA分子に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ゲノミクス技術の発展により、転写物のほとんどの種類を構成し、タンパク質をコードしない新たなクラスの長鎖非コードRNA(lncRNA)が、正常細胞の生理機能において、並びに癌及び神経変性疾患を含む疾患の発症において重要な調節の役割を担うことが広く認識されるようになった。
【0003】
ますます増えている機能性lncRNAの発見により、ヒト遺伝病の治療を含む新規治療適用が促進されてきた。SINEUPとして知られている新しいクラスの長鎖非コードRNA(lncRNA)が、それらの標的の翻訳を選択的に増強できることが以前に説明された。SINEUP活性は、2つのドメイン:特異性を付与する重複領域、又は結合ドメイン(BD)と、標的mRNA翻訳を増強する埋め込み型逆位SINE B2エレメント、又はエフェクタードメイン(ED)の組み合わせに依存する。WO 2012/133947及びWO 2019/150346は、SINEUPを含む機能性核酸分子を開示している。トランスで作用する機能性核酸分子を提供するための内部リボソーム進入部位(IRES)配列を含むエフェクタードメインを使用する別のクラスのlncRNAがWO 2019/058304で説明されている。
【0004】
以前の研究では、プラスミドトランスフェクションがSINEUP技術を送達するために使用されていたが、これは、細胞質内で標的mRNAと共局在化するために、核内で転写されたRNAのエクスポートを必要とする。したがって、細胞質へのダイレクトトランスフェクションに適する機能性lncRNAを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
(発明の概要)
本発明の第1の態様によれば、機能性核酸分子であって、
(a)タンパク質翻訳が増強されるべきである標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む少なくとも1つの標的決定配列;及び
(b)SINE B2エレメント又はSINE B2エレメントの機能的に活性のある断片を含む少なくとも1つの調節配列
を含み、
1以上の化学修飾を含む、前記機能性核酸分子が提供される。
【0006】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に記載の機能性核酸分子を含む組成物が提供される。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、細胞内で標的のタンパク質合成効率を高める方法であって、本明細書に記載の機能性核酸分子又は組成物を該細胞に投与することを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
(図面の簡単な説明)
図1図1:HEK293T/17細胞におけるインビトロ転写SINEUP RNAのトランスフェクション。(A) SINEUPコンストラクトの模式図。SINEUP-GFPは、結合ドメイン(BD)としてのEGFP mRNAとの重複領域及びエフェクタードメイン(ED)としての逆位SINEB2エレメントを含有する。SINEUP-SCRは、SINEUP-GFPのBDと置換されたスクランブル配列を含有する。(B)EGFPプラスミドとIVT SINEUPの共トランスフェクションによるEGFPの翻訳上方制御。ウェスタンブロットの画像は、抗GFPウサギポリクローナル抗体を用いて検出されたEGFPレベルに対するIVT SINEUPの効果の代表的な画像を示す。データを少なくとも3回の独立した実験からの平均±S.D.として示す。ns:有意ではない(両側スチューデントのt検定)。(C)EGFPプラスミドとIVT SINEUPで共トランスフェクトした後のEGFP mRNA及びIVT SINEUP RNAのレベルの定量化。ns:有意ではない(両側スチューデントのt検定)。データを少なくとも3回の独立した実験からの平均±S.D.として示す。
図2図2:HEK 293T/17細胞における化学修飾ヌクレオチドでインビトロ転写されたSINEUP-GFP RNAのトランスフェクション。(A)ヌクレオチド修飾したSINEUPの模式図。ヌクレオチドdCTP、dUTPを、それぞれ5-メチルシチジン-5'-三リン酸(m5C)、及びシュードウリジン-5'-三リン酸(Ψ)又はN1-メチルシュードウリジン-5'-三リン酸(N1mΨ)と置換した。(B)EGFPプラスミドとmIVT SINEUPの共トランスフェクションによるEGFPの翻訳上方制御。ウェスタンブロット画像は、抗GFPウサギポリクローナル抗体を用いて検出したEGFPレベルに対するmIVT SINEUPの効果の代表的な画像を示す。EGFPレベルの上方制御を、少なくとも3回の独立した実験から測定した。データを平均±S.D.として示す。**p<0.01、*p<0.05、ns:有意ではない(両側スチューデントのt検定)。(C) EGFPプラスミドとmIVT SINEUPで共トランスフェクトした後のEGFP mRNA及びmIVT SINEUP RNAレベルの定量化。ns:有意ではない(両側スチューデントのt検定)。データを少なくとも3回の独立した実験からの平均±SDとして示す。
図3図3: pEGFP-C2プラスミドと各転写されたSINEUPで共トランスフェクトした後のEGFP mRNAレベルの定量化。ns:有意ではない(両側スチューデントのt検定)。データを少なくとも3回の独立した実験からの平均±S.D.として示す。(B) EGFPベクターと各転写されたSINEUPで共トランスフェクトした後のSINEUP RNAレベルの定量化。**p<0.01;*p<0.05;ns:有意ではない(両側スチューデントのt検定)。データを少なくとも3回の独立した実験からの平均±S.D.として示す。
図4図4: HepG2及びHepa1-6細胞内にトランスフェクトされる内因性標的のためのミニSINEUP-SOX9。(A)ミニSINEUP-SOX9コンストラクトの模式図。ミニSINEUP-SOX9は、結合ドメイン(BD)としてのSOX9 mRNAとの重複領域及びエフェクタードメイン(ED)としてのAS-Uchl1 RNAからの逆位SINE B2を含有する。(B)ミニSINEUP-SOX9のトランスフェクション又はミニSINEUP-SOX9 BDの代わりにランダムな配列を含有するミニSINEUP-ランダム(Rd)のトランスフェクションによるSOX9タンパク質の翻訳上方制御。ウェスタンブロット画像は、SOX9タンパク質レベルに対するSINEUPの効果の代表的な画像を示す。少なくとも3回の独立した実験の平均±SDとして示す、非トランスフェクト細胞(Cont.)と比較したSOX9レベルの定量化。**p<0.01;*p<0.05;ns:有意ではない(両側スチューデントのt検定)。(C) SINEUPプラスミドでトランスフェクトした後のSOX9 mRNA及びミニSINEUP RNAレベルの定量化。ns:有意ではない(両側スチューデントのt検定)。データを少なくとも3回の独立した実験からの平均±S.D.として示す。
図5図5: HepG2細胞における修飾IVT ミニSINEUP-SOX9のトランスフェクション。(A) ミニSINEUP-SOX9コンストラクト内の5-メチルシチジン-5'-三リン酸(m5C)、シュードウリジン-5'-三リン酸(Ψ)又はN1-メチルシュードウリジン-5'-三リン酸(N1mΨ)でのヌクレオチド修飾の図。ミニSINEUP-SOX9は、結合ドメイン(BD)としてのSOX9 mRNAとの重複領域及びエフェクタードメイン(ED)としてのSINEB2エレメントを含有する。(B~C)修飾インビトロ転写(mIVT) SINEUP RNAのトランスフェクションによるSOX9の翻訳上方制御。ウェスタンブロット画像は、SOX9タンパク質レベルに対するmIVT SINEUPの効果の代表的な画像を示す。少なくとも3回の独立した実験の平均±S.D.として示す、非トランスフェクト細胞(Cont.)と比較したSOX9レベルの定量化。**p<0.01;*p<0.05;ns:有意ではない(両側スチューデントのt検定)。(D~E) mIVT SINEUPでのトランスフェクション後のSOX9 mRNA及びミニSINEUP RNAレベルの定量化。ns:有意ではない(両側スチューデントのt検定)。データを少なくとも3回の独立した実験からの平均±S.D.として示す。
図6図6:(A) pCS2+におけるマルチクローニング領域の模式図。(B)ミニSINEUP-SOX9コンストラクト。マウスSOX9を標的とするSINEUPは、SOX9 mRNA配列と重複する結合ドメイン(BD)及びマウスAS-Uchl1 RNAからの逆位SINEB2配列を含有するエフェクタードメイン(ED)からなる。SINEUPをpCS2+のXhoI及びXbaI部位にクローニングした(A)。下線はSOX9 mRNAのBDを強調し、EDは斜体であり、制限部位は配列の各末端にある(XhoI、CTCGAG; XbaI、TCTAGA)。
図7図7: SINEUP効果は修飾IVT RNAで回復する。修飾の異なる組み合わせは、ミニSINEUP DJ1の機能を維持するのに適している。(A)少なくとも3回の異なる実験のウェスタンブロット定量からのDJ1の倍数変化。(B)異なる修飾を保有するミニSINEUP RNA又は対照ミニSINEUPプラスミドでトランスフェクトした細胞の代表的なウェスタンブロット画像。
図8図8: トランスフェクション後の修飾していない及び修飾したRNAの安定性。(A) 6時間の時点と比較した、トランスフェクション後48時間にわたる修飾していない及び修飾したIVT RNAの量を示すタイムコース実験。(B)非修飾RNAと比較した修飾IVT RNAの安定化の割合。RT効率の割合(データ示さず)に対して正規化した遺伝子発現の比として計算したデータ。
図9図9: 修飾IVT SINEUPの二次構造及び構造-活性関係。(A) Am+m6A混合物で修飾した異なるIVT ミニSINEUPにおけるアデノシン修飾の相対含有量の定量的質量分析、及びそれらのSINEUP活性との相関。(B)可能性のある活性の構造決定基を示す様々な修飾を有するIVT ミニSINEUPの円二色性(CD)スペクトル;活性のある修飾IVT SINEUP RNAのスペクトルは重複するが(Am又はm6A+Ψを含有するもの)、不活性な修飾IVT SINEUPは不活性な非修飾IVT SINEUPのスペクトルと重複する。(C)修飾していない及び修飾したIVT SINEUP RNAについての個々のCDスペクトルプロット。点線の印は、機能性ミニSINEUP(Am単独又はm6A +Ψ修飾)。(D)異なる割合のアデノシン修飾を含有するIVT ミニSINEUPのCDスペクトルの比較。(E)修飾していない及び修飾したIVT ミニSINEUPの熱安定性。
図10図10: 非修飾及び修飾IVT SINEUP-GFPの分析からのmICT SINEUP-GFP RNAの修飾プロファイル。転写物の長さ全域のNanocompore GMM-ロジットp値(y軸、-log10)を示すSINEUP-GFPのRNA修飾プロファイル。GMM-ロジットp値を、(A) 0%修飾IVT SINEUP-GFPとmICT SINEUP-GFP RNA又は(B) 20%シュードウリジン-5'-三リン酸(Ψ) mIVT SINEUP-GFP RNAとmICT SINEUP-GFP RNAのいずれかを比較することによって生成した。濃縮されたkmerピークは、アスタリスク及び対応する5-mer配列が記載されている図に示されている。
図11図11: mICT ミニSINEUP RNAの修飾プロファイル及びSINEUP活性に対するメチル化部位の変異の効果。(A) BstI逆転写酵素を用いるRT-qPCRにより特定された候補m6A部位の相対位置を示す模式図。(B)m6A部位の逆転写アッセイの結果。グラフは、METTL3ノックダウン(右パネル)又は対照細胞(左パネル)におけるBstIと標準逆転写酵素との間の逆転写効率の比を示す。(C)対照、未変異(WT) ミニ-SINEUP-DJ1又は示される候補m6A部位をウラシルに変異させてメチル化を防止するミニSINEUP-DJ1のいずれかのトランスフェクション後のDJ1タンパク質発現の倍数変化。(D)(B)のように未変異(WT)ミニSINEUP-DJ1に対するSINEUP活性の割合。(E)対照、未変異(WT)ミニSINEUP-GFP又は示される候補m6A部位をウラシルに変異させてメチル化を防止するミニSINEUP-GFPのいずれかのトランスフェクション後のGFPタンパク質発現の倍数変化。(F)(D)のように未変異(WT)ミニSINEUP-GFPに対するSINEUP活性の割合。(G)対照細胞又はMETLL3ノックダウン細胞における示されるSINEUP RNA変異体のメチル化ミニSINEUP-GFP RNAのMeRIP。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本発明の目的は、直接投与、特に治療薬として(すなわち、核酸治療薬として)使用するのに適する機能性核酸分子を提供することである。現在DNAベースの遺伝子治療法に加えて、新薬の開発につながるようなRNAベースのシステムは、予期しない副作用につながる可能性のある宿主ゲノムへの外来遺伝子組み込み及び挿入変異のリスクの回避などのいくつかの利点を有する。インビトロ転写(IVT) SINEUP RNAは、内因性mRNA自体を変えることなく、特異的な標的mRNA翻訳のみを刺激し、IVT SINEUPにヌクレオチド修飾を導入することによって予期しない免疫応答の発生を低減するRNAベースの薬物ツールとして使用することができる。さらに、IVT SINEUP RNAは、宿主への侵襲的影響を最小限に抑えながら、標的器官に輸送することができる機能性SINEUP RNAの最小サイズまで容易に低下させることができる。RNAベースの薬物ツールの別の生成例は、例えば、自動合成装置を使用して、RNAベースのオリゴヌクレオチド(オリゴリボヌクレオチドとも呼ばれる)を生成する直接化学合成によるものである。しかし、直接化学合成法におけるRNAの結合効率が低いため、長いRNA-オリゴヌクレオチドを生成する場合、IVTは直接化学合成より好ましいことが理解されよう。本明細書に提供される証拠は、化学修飾した合成IVT (mIVT) SINEUPが、核酸ベースの治療における効率的なタンパク質生成ツールとしての可能性を有し、DNAベースの遺伝子治療を含む従来の治療薬を使用して治療することが現在困難である疾患を有するものを助けることを示す。
【0010】
(定義)
本明細書で言及される「機能性核酸分子」は、本発明によって説明される合成分子である。特に、「機能性核酸分子」は、目的の標的mRNAの翻訳を増強することができる核酸分子(例えば、DNA又はRNA)を説明する。用語「機能性RNA分子」は、機能性核酸分子がRNAで形成され、このRNA分子が目的の標的mRNAの翻訳を増強することができることを指す。本明細書に記載の機能性分子は、トランス作用分子と呼ばれることがある。
【0011】
用語「SINE」(短鎖散在反復配列)は、非LTR(長鎖末端反復配列)レトロトランスポゾンと呼ばれることがあり、完全又は不完全なコピー配列が生物のゲノム中に豊富に存在する散在反復配列である。
【0012】
用語「SINE B2エレメント」は、具体的な例も提供されているWO 2012/133947で定義されている(PCT公報の69ページから始まる表を参照されたい)。この用語は、機能性核酸分子の5'-3'方向に対して順方向と逆方向の両方にSINE B2エレメントを包含することを意図する。SINE B2エレメントは、例えば、公開されているRepeatMaskのようなプログラムを使用して識別され得る(Bedellらの文献、Bioinformatics. 2000 Nov; 16(11):1040-1. MaskerAid:RepeatMaskerに対する性能向上(a performance enhancement to RepeatMasker))。配列は、RepeatMaskerプログラムにおけるデフォルトのカットオフである、225超のSmith-Waterman (SW)スコアで、SINE B2のコンセンサス配列に対してRepbaseデータベースのヒットを戻すことによってSINE B2エレメントとして認識され得る。一般に、SINE B2エレメントは、20bp以上で400bp以下である。好ましくは、SINE B2はtRNAに由来する。
【0013】
用語「SINE B2エレメントの機能的に活性のある断片」とは、タンパク質翻訳増強能を保持するSINE B2エレメントの配列の一部を意図する。この用語はまた、野生型配列に対して1以上のヌクレオチドが変異しているが、タンパク質翻訳増強能を保持している配列も含む。この用語は、機能性核酸分子の5'-3'方向に対して順方向と逆方向の両方にSINE B2エレメントを包含することを意図する。
【0014】
用語「内部リボソーム進入部位(IRES)配列」及び「内部リボソーム進入部位(IRES)由来配列」はWO 2019/058304で定義されている。IRES配列は、40Sリボソームサブユニットを導き、タンパク質をコードするmRNAのサブセットのキャップ非依存的翻訳を促進する。IRES配列は、一般に、ストレス応答遺伝子をコードする細胞mRNAの5'非翻訳領域に見出されるため、シスでそれらの翻訳を刺激する。用語「IRES由来配列」とは、その機能活性、すなわち翻訳増強活性を保持するために、IRES配列と相同性を有する核酸の配列を意図することが理解されよう。特に、IRES由来配列は、遺伝子工学又は化学修飾によって、例えば、機能を保持するIRES配列の特異的配列を単離するか、又はIRES配列内の1以上のヌクレオチドを変異/欠失/導入するか、又はIRES配列内の1以上のヌクレオチドを構造的に修飾されたヌクレオチド若しくは類似体と置換することによって天然のIRES配列から取得することができる。より詳細には、当業者なら、IRES由来配列が、2シストロン性コンストラクト内の第2のシストロンの翻訳を促進することができるヌクレオチド配列であることを知っている。典型的には、二重ルシフェラーゼ(ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ)をコードするプラスミドが実験的試験に使用される。主要データベース、すなわち、二重レポーター又は2シストロン性アッセイを用いて、実験で検証されたヌクレオチド配列のIRESとしての注釈のためのIRESiteが存在する(http://iresite.org/IRESite_web.php)。IRESite内では、目的のクエリ配列と実験で検証された注釈付きIRES配列の全体との間の配列ベース及び構造ベースの類似性についてデータベース内を検索するためにウェブベースツールが利用可能である。プログラムの出力は、2シストロン性コンストラクトを用いる検証実験においてIRESとして機能することができるヌクレオチド配列の確率スコアである。さらなる配列ベース及び構造ベースのウェブベース閲覧ツールが、任意の所与のヌクレオチド配列のIRES活性の可能性を数値予測値で示唆するために利用可能である(http://rna.informatik.uni-freiburg.de/; http://regrna.mbc.nctu.edu. tw/index1.php)。
【0015】
用語「ミニSINEUP」とは、結合ドメイン(すなわち、標的mRNAに相補的な配列)、任意にスペーサー配列、及びエフェクタードメインとしての任意のSINE若しくはSINE由来配列又はIRES若しくはIRES由来配列を含む(又はからなる)核酸分子を意図する(Zucchelliらの文献, Front Cell Neurosci., 9: 174, 2015)。
【0016】
用語「マイクロSINEUP」とは、結合ドメイン(すなわち、標的mRNAに相補的な配列)、任意にスペーサー配列、及びSINE若しくはSINE由来配列の機能的に活性のある断片又はIRES由来配列を含む(又はからなる)核酸分子を意図する。例えば、機能的に活性のある断片は、AS Uchl1のSINE B2エレメントのヌクレオチド44~120に対応する77bpの配列であり得る。
【0017】
用語「ナノSINEUP」とは、結合ドメイン(すなわち、標的mRNAに相補的な配列)、任意にスペーサー配列、及びSINE又はSINE由来配列の機能的に活性のある断片を含む(又はからなる)核酸分子を意図する。例えば、機能的に活性のある断片は、(WO2019/150346で定義されるように)AS Uchl1の逆位SINE B2エレメントのヌクレオチド64~92に対応する29bpの配列であり得る。
【0018】
ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は、その全長にわたって100%の配列同一性を共有する場合、他のポリペプチド又はポリヌクレオチド配列と同じ又は「同一」であると言われる。配列中の残基は、左から右、すなわちポリペプチドのN末端からC末端;ポリヌクレオチドの5'から3'末端に番号付けされる。
【0019】
2つの密接に関連するポリヌクレオチド配列を比較する目的で、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間の「%配列同一性」は、ヌクレオチド配列の標準設定を使用するNCBI BLAST(BLASTN)を使用して計算され得る。2つの密接に関連するポリペプチド配列を比較する目的で、第1のポリペプチド配列と第2のポリペプチド配列との間の「%配列同一性」は、ポリペプチド配列の標準設定を使用するNCBI BLAST(BLASTP)を使用して計算され得る。配列間の「差異」は、第1の配列と比較して、第2の配列の位置における1つのヌクレオチドの挿入、欠失又は置換を指す。2つの配列は、このような差異を1つ、2つ又はそれ以上含有することができる。それがなければ第1の配列と同一(100%配列同一性)である第2の配列における挿入、欠失又は置換は、%配列同一性を低下させる。
【0020】
機能性分子
本発明の第1の態様によれば、機能性核酸分子(例えば、機能性RNA分子)であって、
(a)タンパク質翻訳が増強されるべきである標的mRNA配列と逆相補的な配列を含む少なくとも1つの標的決定配列;及び
(b) SINE B2エレメント又はSINE B2エレメントの機能的に活性のある断片を含む少なくとも1つの調節配列
を含み、1以上の化学修飾を含む、前記機能性核酸分子(例えば、機能性RNA分子)が提供される。
【0021】
本明細書に提供される機能性核酸分子は、細胞への投与前に化学修飾される。これは、安定性、特にインビトロ転写(IVT)機能性RNA分子の開発のために本明細書に提供される実施例によって示されている。したがって、一実施態様では、機能性RNA分子は、インビトロ転写されたRNA分子である。細胞内転写(ICT)機能性RNA分子がこのような修飾を含むことも本明細書に提供される実施例によって示されている。そのため、別の実施態様では、機能性核酸分子は、例えば、機能性RNA分子をコードする配列を含むオリゴヌクレオチドから細胞内転写される。
【0022】
本明細書に提供される証拠は、化学修飾SINEUP RNAが、合成RNAのダイレクトトランスフェクションによって標的タンパク質レベルを増強するための効率的な手法であることを示す。用語「修飾」又は「化学修飾」は、最も一般的な天然リボヌクレオチド:アデノシン、グアノシン、シチジン、若しくはウリジンリボヌクレオチド内又はそれら上での構造変化を指す。特に、本明細書に記載の化学修飾は、核酸塩基内若しくはそれ上での変化(すなわち、化学的塩基修飾)、又は糖内若しくはそれ上での変化(すなわち、化学的糖修飾)であり得る。化学修飾は、共転写で(例えば、合成中に1以上のヌクレオチドを修飾ヌクレオチドで置換することによって)、又は転写後に(例えば、酵素の作用によって)導入され得る。
【0023】
化学修飾は、例えば、The RNA Instituteによって提供されるRNA修飾データベース(The RNA Modification Database) (https://mods.rna.albany.edu/mods/)に記載されているように、当技術分野で知られている。天然のトランスファーRNA (tRNA)への化学修飾などの多くの修飾が自然に起こり、それらには、例えば、2'-O-メチル(2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン及び2'-O-メチルシュードウリジンなど)、1-メチルアデノシン、2-メチルアデノシン、1-メチルグアノシン、7-メチルグアノシン、2-チオシチジン、5-メチルシチジン、5-ホルミルシチジン、シュードウリジン、ジヒドロウリジンなどが含まれる。
【0024】
いくつかの実施態様では、機能性核酸分子は、特定の修飾のために均一に修飾(例えば、完全に修飾、配列全体にわたって修飾)される。例えば、該分子は、シュードウリジン(Ψ)で均一に修飾することができ、RNA配列内の全てのウリジン残基がシュードウリジンで置換されることを意味する。同様に、修飾残基と置換することによって、配列内に存在する任意の種類のヌクレオシド残基に対して、核酸を均一に修飾することができる。機能性分子は、分子の全長に沿って部分的又は完全に修飾され得る。例えば、1以上又は全て又は所与の種類のヌクレオチド(例えば、プリン若しくはピリミジン、又はA、G、U、Cのうちの任意の1以上若しくは全て)は、RNA分子内、又はその所定の配列領域(例えば、リンカー若しくはポリAテールなどの存在し得る他の配列を含むか又は除く標的決定配列及び/又は調節配列)において均一に修飾され得る。
【0025】
機能性核酸分子は、化学修飾された塩基及び/又は糖を約1%~約100%(全ヌクレオチド含有量に関して、又は1種以上のヌクレオチド、すなわち、A、U、C若しくはGの任意の1以上に関して)又は介在するそれらの任意の割合(例えば、1%~20%、1%~30%、1%~40%、1%~50%、1%~60%、1%~70%、1%~80%、1%~90%、1%~95%、10%~20%、10%~30%、10%~40%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、10%~95%、10%~100%、20%~30%、20%~40%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~95%、20%~100%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、50%~95%、50%~100%、70%~80%、70%~90%、70%~95%、70%~100%、80%~90%、80%~95%、80%~100%、90%~95%、90%~100%、及び95%~100%)含有し得る。非修飾A、U、C又はGの存在によって任意の残りの割合が考慮されることが理解されよう。
【0026】
一実施態様では、機能性核酸分子の少なくとも20%、例えば、機能性RNA分子の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%が化学塩基修飾を含有する。一実施態様では、機能性RNA分子の少なくとも20%、例えば、機能性分子の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%が、化学糖修飾を含有する。
【0027】
一実施態様では、化学修飾は化学塩基修飾である。化学塩基修飾は、アデニン、シトシン、グアニン及び/又はウラシル塩基の修飾から選択され得る。
【0028】
一実施態様では、機能性核酸分子のウラシル塩基の少なくとも20%、例えば、ウラシル塩基の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%が化学修飾される。さらなる実施態様では、機能性核酸分子のウラシル塩基の20%が化学修飾される。別の実施態様では、機能性核酸分子のウラシル塩基の50%が化学修飾される。さらに別の実施態様では、機能性核酸分子のウラシル塩基の100%が化学修飾される。一実施態様では、機能性分子のアデニン塩基の少なくとも20%、例えば、アデニン塩基の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%が化学修飾される。特定の実施態様では、機能性核酸分子のアデニン塩基の20%以上が化学修飾される。そのため、さらなる実施態様では、機能性核酸分子のアデニン塩基の20%が化学修飾される。さらなる実施態様では、機能性核酸分子のアデニン塩基の50%が化学修飾される。なおさらなる実施態様では、機能性核酸分子のアデニン塩基の100%が化学修飾される。一実施態様では、機能性分子のシトシン塩基の少なくとも20%、例えば、シトシン塩基の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%が化学修飾される。一実施態様では、機能性分子のグアニン塩基の少なくとも20%、例えば、グアニン塩基の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%が化学修飾される。
【0029】
一実施態様では、化学塩基修飾は、メチル化及び/又は異性化から選択される。さらなる実施態様では、化学塩基修飾は、シュードウリジン(Ψ)、N1-メチルシュードウリジン(N1mΨ)、5-メチルシチジン(m5C)及びN6-メチルアデノシン(m6A)からなる群から選択される。さらなる実施態様では、化学塩基修飾は、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン及びN6-メチルアデノシンからなる群から選択される。
【0030】
一実施態様では、化学修飾は化学糖修飾である。一実施態様では、化学糖修飾はメチル化である。一実施態様では、化学糖修飾は、2'-O-メチル修飾などの2'修飾である。さらなる実施態様では、化学糖修飾は、2'-O-メチルアデノシン(Am)であり、例えば、機能性核酸分子のアデニン塩基の100%が2'-O-メチルアデノシンである。
【0031】
機能性核酸分子は、1種以上の化学塩基修飾と1種以上の化学糖修飾などの化学修飾の組み合わせを含み得ることが理解されよう。例えば、一実施態様では、機能性核酸分子は、N6-メチルアデノシンと2'-O-メチルアデノシンの修飾を含む。さらなる実施態様では、N6-メチルアデノシンと比較した2'-O-メチルアデノシンの量(Am:m6A)は、3:97より大きい、例えば4:96より大きく、5:95より大きく、6:94より大きく、7:93より大きく、8:92より大きく、9:91より大きく、10:90より大きく、11:89より大きく、12:88より大きく、13:87より大きく、14:86より大きく、15:85より大きく、16:84より大きく、17:83より大きく、18:82より大きく又は19:81より大きい。さらなる実施態様では、機能性核酸分子は、20:80のAm:m6A比で、2'-O-メチルアデノシンとN6-メチルアデノシンの修飾を含む。そのため、一実施態様では、機能性核酸分子は、2'-O-メチルアデノシン(Am)に修飾されるアデノシン塩基を20%以上、例えば、20%含む。さらなる実施態様では、機能性核酸分子は、N6-メチルアデノシン(m6A)に修飾されるアデノシン塩基を80%以下、例えば、80%含む。そのため、さらなる実施態様では、機能性核酸分子のアデニン塩基の100%が化学修飾されており、20%以上が2'-O-メチルアデノシンであり、80%以下がN6-メチルアデノシンである。なおさらなる実施態様では、化学修飾されるアデノシン塩基の20%は2'-O-メチルアデノシンであり、80%はN6-メチルアデノシンである。他の実施態様では、機能性核酸分子は、N6-メチルアデノシンとシュードウリジンの修飾を含む。例えば、機能性核酸分子のアデニン塩基の100%がN6-メチルアデノシンであり、ウラシル塩基の100%がシュードウリジンである。
【0032】
一実施態様では、標的決定配列は、1以上の化学塩基修飾及び/又は化学糖修飾を含む。代替実施態様では、標的決定配列は、化学塩基修飾及び/又は化学糖修飾を含まない。
【0033】
一実施態様では、調節配列は、1以上の化学塩基修飾及び/又は化学糖修飾を含む。
【0034】
一実施態様では、標的決定配列と調節配列の両方は、1以上の化学塩基修飾及び/又は化学糖修飾を含む。
【0035】
一実施態様では、1以上の化学塩基修飾又は化学糖修飾は、前記機能性核酸分子の5'末端、3'末端、又はその両端にある。一実施態様では、1以上の化学塩基修飾又は化学糖修飾は、機能性核酸分子全体に位置する。
【0036】
一実施態様では、機能性核酸分子は、標的決定配列と調節配列との間に少なくとも1つのリンカー配列をさらに含む。配列番号50は、スペーサー/リンカー配列の非限定的な例である。さらなる実施態様では、リンカー配列は、1以上の化学塩基修飾及び/又は化学糖修飾を含む。
【0037】
本明細書に記載の化学塩基修飾及び/又は化学糖修飾などの化学修飾は、細胞内での転写中に、核酸に自然に導入されることが知られている。したがって、このような細胞内転写(ICT)核酸は、修飾された細胞内転写(mICT)核酸と呼ばれることがある。そのため、いくつかの実施態様では、機能性核酸分子は、細胞内転写によって引き起こされる1以上の化学塩基修飾及び/又は化学糖修飾を含む。他の実施態様では、機能性核酸分子は、mICT機能性核酸分子などのICT機能性核酸分子内に見出される1以上の化学塩基修飾及び/又は化学糖修飾を含む。例えば、機能性核酸分子はインビトロ転写(IVT)又は直接合成SINEUP RNAであり、mICT SINEUP RNAなどのICT SINEUP RNA内に見出される化学修飾を模倣するために、1以上の化学修飾がIVT/直接合成SINEUP RNAに導入され得る。mICT核酸に見出される修飾を模倣する修飾を含むIVT SINEUP RNAなどのIVT及び直接合成された機能性核酸分子は、細胞にトランスフェクトされると、mICT核酸と類似した安定性を有する可能性があることが認識されよう。そのため、mICT機能性核酸分子に見出される修飾をIVT又は直接合成された機能性核酸分子に導入すると、安定した機能性核酸分子が生成され得る。一実施態様では、mICT SINEUP RNAなどのmICT機能性核酸分子内の修飾は、配列決定を使用して特定される。適切な配列決定技術の例としてはOxfordナノポア(Nanopore)法が挙げられ、修飾した又は修飾していないIVT機能性核酸分子とmICT機能性核酸の比較は、Nanocomporeによってなされ得る。別の実施態様では、修飾は、RT-qPCRを使用して特定される。修飾を特定するのに適するRT-qPCR技術の例としては、メチル化の候補位置及びm6A残基を特定するためにm6A残基を逆転写するBstI酵素の能力の低下を使用するCastellanos-Rubioらの文献、(2019) Sci. Rep., 9(4220) (doi: https://doi.org/10.1038/s41598-019-40018-6)に記載の方法が挙げられる。
【0038】
そのため、いくつかの実施態様では、化学修飾及び/又は化学修飾の組み合わせは、機能性核酸分子、例えば、SINEUP RNAの配列に特異的である。このような機能性核酸分子特異的化学修飾及び/又は組み合わせは、mICT機能性核酸の配列決定によって、又は本明細書に記載のRT-qPCRを実行することによって特定され得る。次いで、mICT機能性核酸分子内で特定されたものを模倣するために、化学修飾及び/又は組み合わせが、配列決定されたmICT機能性核酸と同じ配列を有するIVT又は直接合成された機能性核酸分子に導入され得る。
【0039】
一実施態様では、機能性核酸分子は環状である。この立体構造は、細胞内での分解がより困難で(エキソヌクレアーゼは環状分子を分解することができない)、したがって、より長時間活性が維持されるはるかに安定した分子をもたらす。
【0040】
一実施態様では、機能性核酸分子は、3'-ポリアデニル化(ポリA)テールを含む。「3'-ポリAテール」は、転写物の3'末端に付加されるアデニンヌクレオチドの長鎖を指し、これはRNA分子に安定性を与え、翻訳を促進することができる。
【0041】
一実施態様では、機能性核酸分子は5'-キャップを含む。「5'-キャップ」は、転写物の5'末端にある改変ヌクレオチドを指し、これは特にエキソヌクレアーゼによる分解から分子に安定性を提供し、翻訳を促進することができる。最も一般的には、5'-キャップは、7-メチルグアニル酸キャップ(m7G)、すなわち、5'-5'三リン酸結合を介してRNAに連結され、7位でメチル化されたグアニンヌクレオチドである。
【0042】
(調節配列)
調節配列は、タンパク質翻訳を増強する能力を有する。タンパク質翻訳能の向上は、本発明による機能性核酸分子がシステム内に存在しない場合に比べて効率が向上することを示す。一実施態様では、標的mRNAによってコードされるタンパク質の発現は、少なくとも1.2倍、少なくとも1.5倍など、特に少なくとも2倍増加する。さらなる実施態様では、標的mRNAによってコードされるタンパク質の発現は、1.2~3倍、例えば、1.2~1.7倍増加する。
【0043】
一実施態様では、調節配列は、標的結合配列の3'に位置する。調節配列は、機能性核酸分子の5'-3'方向に対して、順方向又は逆方向で存在し得る。「順」への言及は、調節配列が機能性核酸分子と同じ5'-3’方向で埋め込まれる(挿入される)状況を指す。代わりに、「逆」とは、調節配列が機能性核酸分子に対して3'-5'方向である状況を指す。
【0044】
一実施態様では、調節配列は、SINE B2エレメント又はSINE B2エレメントの機能的に活性のある断片を含む。SINE B2エレメントは、好ましくは、機能性核酸分子の5'-3'方向に対して逆方向にある、すなわち逆位SINE B2エレメントである。定義の節で述べたように、逆位SINE B2エレメントは、WO 2012/133947に開示及び例示されている。
【0045】
調節配列の短い断片(SINE B2エレメントなど)は、核酸治療薬として使用するための機能性RNA分子を提供する際に特に有用である。RNA分子は、生物において非常に不安定であるため、本明細書に記載の化学修飾によって提供される安定性は、より短いRNA分子にとってより効果的である。したがって、一実施態様では、調節配列は、250未満のヌクレオチド、100未満のヌクレオチドなどである機能的に活性のある断片を含む。
【0046】
好ましくは、少なくとも1つの調節配列は、配列番号1~49からなる群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性、より好ましくは100%の配列同一性を有する配列を含む。一実施態様では、少なくとも1つの調節配列は、配列番号1~49からなる群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性、より好ましくは100%の配列同一性を有する配列からなる。
【0047】
配列番号1は、AS Uchl1由来の全長逆位SINE B2転位性エレメントを提供する。配列番号2(AS Uchl1内の167ヌクレオチド逆位SINE B2エレメント)、配列番号3(ヌクレオチド44~120を含むAS Uchl1内の逆位SINE B2エレメントの77ヌクレオチド変異体)、配列番号4(ヌクレオチド59~96を含むAS Uchl1内の逆位SINE B2エレメントの38ヌクレオチド変異体)又は配列番号5(ヌクレオチド64~92を含むAS Uchl1内の逆位SINE B2エレメントの29ヌクレオチド変異体)などの逆位SINE B2エレメント由来の機能性断片が特に好ましい。
【0048】
他の例示的なSINE B2エレメントが提供される。配列番号6~21は、上記のものに対するAS Uchl1由来の逆位SINE B2転位性エレメントのさらに機能的に活性のある断片である。配列番号22~33は、AS Uchl1由来の逆位SINE B2転位性エレメントの機能的に活性のある変異断片である。配列番号34~49は、異なるSINE B2転位性エレメントである。
【0049】
あるいは、調節配列は、IRES配列又はIRES由来配列を含む。したがって、一実施態様では、調節配列は、IRES配列又はIRES由来配列を含む。前記配列は、標的mRNA配列の翻訳を増強する。
【0050】
48~576ヌクレオチド範囲の配列を有するいくつかのIRES、例えば、ヒトC型肝炎ウイルス(HCV) IRES、ヒトポリオウイルスIRES、ヒト脳心筋炎(EMCV)ウイルス、ヒトコオロギ麻痺(CrPV)ウイルス、ヒトApaf-1、ヒトELG-1、ヒトc-MYC、ヒトジストロフィン(DMD)は、試験が成功してきた。このような配列は、WO 2019/058304で開示、定義及び例示されている。
【0051】
さらなる実施態様では、調節配列は、ヒトプロテインホスファターゼ1調節サブユニット12A (PPP1R12A; Scheinらの文献、(2016) Scientific Reports, 6(33605), doi: https://doi.org/10.1038/srep33605)のR12A-AS1天然アンチセンス転写物に見出されるものなどの、短いフリー右Aluモノマー反復エレメント(FRAM)配列を含む。
【0052】
標的決定配列
標的決定配列(標的結合配列とも呼ばれる)は、標的mRNAに結合する機能性RNA分子の一部である。
【0053】
WO 2012/133947では、標的結合配列は、標的mRNAと逆相補的な配列と約60%の類似性を有するだけでよいことが既に示されている。実際、標的結合配列は、実に多数のミスマッチを示し、活性を保持することができる。
【0054】
標的結合配列は、標的mRNA転写物に結合するのに十分な長さの配列を含む。したがって、標的結合配列は、少なくとも10ヌクレオチド長、少なくとも14ヌクレオチド長など、少なくとも18ヌクレオチド長などであり得る。さらに、標的結合配列は、250未満のヌクレオチド長、好ましくは200未満のヌクレオチド長、150未満のヌクレオチド長、100未満のヌクレオチド長、80未満のヌクレオチド長、60未満のヌクレオチド長又は50未満のヌクレオチド長であり得る。一実施態様では、標的結合配列は、4~50ヌクレオチド長、18~44ヌクレオチド長などである。
【0055】
標的結合配列は、標的mRNA配列の5'非翻訳領域(5'UTR)にハイブリダイズするように設計され得る。一実施態様では、該配列は、5'UTRの0~50ヌクレオチド、例えば、0~40、0~30、0~21又は0~14ヌクレオチドと逆相補的である。あるいは、又は組み合わせて、標的結合配列は、標的mRNA配列のコード配列(CDS)にハイブリダイズするように設計され得る。一実施態様では、該配列は、CDSの0~40ヌクレオチド、例えば、0~32、0~18又は0~4ヌクレオチドと逆相補的である。
【0056】
標的結合配列は、標的mRNA配列のCDS内の開始コドンなどのAUG部位(開始コドン)の上流の領域にハイブリダイズするように設計され得る。一実施態様では、該配列は、AUG部位の0~80ヌクレオチド、例えば、0~70又は0~40ヌクレオチドと逆相補的である。あるいは、又は組み合わせて、標的結合配列は、前記AUG部位の下流の標的mRNA配列にハイブリダイズするように設計され得る。一実施態様では、該配列は、前記AUG部位の下流の標的mRNA配列の0~40ヌクレオチド、例えば、0~4ヌクレオチドと逆相補的である。
【0057】
一実施態様では、該標的決定配列は、少なくとも10ヌクレオチド長であり、3'から5'に
-5'非翻訳領域(5'UTR)の0~50ヌクレオチド及び標的mRNA配列のコード配列(CDS)の0~40ヌクレオチドと逆相補的な配列;又は
-標的mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の0~80ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流の標的mRNA配列のCDSの0~40ヌクレオチドと逆相補的な配列
を含む。
【0058】
一実施態様では、該標的決定配列は、少なくとも14ヌクレオチド長であり、3'から5'に
-5'UTRの0~40ヌクレオチド及び標的mRNA配列のCDSの0~32ヌクレオチドと逆相補的な配列;又は
-標的mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の0~70ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流の標的mRNA配列のCDSの0~4ヌクレオチドと逆相補的な配列
を含む。
【0059】
(組成物及び方法)
本発明の機能性核酸分子は、ネイキッド、すなわちパッケージングされていないRNAとして投与され得る。あるいは、該機能性核酸分子は、組成物、例えば適切な担体を含む組成物の一部として投与され得る。特定の実施態様では、担体は、1以上の機能性核酸分子での標的細胞のトランスフェクションを容易にする能力に基づいて選択される。
【0060】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、本明細書に記載の機能性核酸分子を含む組成物が提供される。
【0061】
適切な担体は、当技術分野で知られている標準的な医薬担体、ビヒクル、希釈剤又は賦形剤のいずれかを含んでよく、RNAなどの核酸の送達を容易にするのに使用することが一般に意図されている。リポソーム、エクソソーム、脂質粒子又はナノ粒子は、RNAの送達に使用され得る適切な担体の例である。好ましい実施態様では、担体又はビヒクルは、該機能性核酸分子が細胞質などの適切な細胞内コンパートメントに送達されるように、その内容物を標的細胞に送達する。
【0062】
本明細書に記載の機能性核酸分子はまた、修飾された機能性核酸分子を含むRNAベースのオリゴヌクレオチド(オリゴリボヌクレオチドとも呼ばれる)を投与することによって投与され得る。そのため、本発明のさらなる態様によれば、本明細書に記載の修飾された機能性核酸を含むRNAベースのオリゴヌクレオチドが提供される。前述したように、このようなRNAベースのオリゴヌクレオチドは、直接化学合成によって生成され得る。修飾RNAベースオリゴヌクレオチドの直接化学合成は、2つの戦略:i)修飾ホスホロアミダイト構築ブロックの提供及びその後のRNA鎖/オリゴヌクレオチドへの組み込み;並びに/又はii)オリゴヌクレオチド配列への修飾の部位特異的かつ制御された組み込みを可能にする全長オリゴヌクレオチド内の塩基の選択的反応に基づく合成後のRNA修飾を伴い得る(Bartosikらの文献(2020) Molecules, 25:3344, doi: 10.3390/molecules25153344参照)。合成後の修飾はまた、RNAオリゴヌクレオチド内の1つの構築ブロックが多種多様な試薬と反応する可能性を可能にし、同じ開始配列からのいくつかの異なる修飾オリゴヌクレオチドを提供する。一実施態様では、機能性核酸分子を含むRNAベースのオリゴヌクレオチドが修飾され、すなわち、それは本明細書に記載の化学修飾を含む。さらなる実施態様では、RNAベースのオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載の機能性核酸配列に部位特異的修飾を含む。さらなる実施態様では、部位特異的修飾は、mICT SINEUP RNAなどのICT SINEUP RNAに見出されるものを模倣する。そのため、いくつかの実施態様では、直接合成されたRNAベースのオリゴヌクレオチドは、mICT機能性核酸分子などのICT機能性核酸分子中に見出される、合成後に導入される修飾などの部位特異的化学塩基修飾及び/又は化学糖修飾を含む。他の実施態様では、部位特異的修飾は、非天然の化学修飾である。そのため、一実施態様では、直接合成されたRNAベースのオリゴヌクレオチドは、非天然の化学修飾及び/又は天然の化学修飾を含む。
【0063】
機能性核酸分子の別の投与方法は、機能性核酸をコードするオリゴヌクレオチドによる、例えば、機能性核酸をコードする配列を含むプラスミドを細胞に投与することによるものである。この文脈では、用語「投与」及び「送達」は交換可能である。そのため、本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の化学修飾された機能性RNA分子など、本明細書に記載の機能性核酸分子をコードする配列を含むオリゴヌクレオチドが提供される。
【0064】
前述したように、化学修飾は、細胞内の転写中に核酸に自然に導入される。そのため、いくつかの実施態様では、該オリゴヌクレオチドは、細胞内で転写する場合の、本明細書に記載の化学修飾された機能性核酸分子をコードする配列を含む。さらなる実施態様では、該配列は、本明細書に記載の1以上の化学修飾を含む修飾された機能性核酸分子をコードする。いくつかの実施態様では、部位特異的修飾は、非天然化学修飾である。そのため、一実施態様では、該オリゴヌクレオチドは、非天然化学修飾及び/又は天然化学修飾を含む。化学修飾を含む機能性核酸分子の組み合わせ、量、割合、比率又は領域を含む本明細書に記載の化学修飾は、機能性核酸分子コード配列を含むオリゴヌクレオチド及び直接合成されたRNAベースのオリゴヌクレオチドに関する本発明のこれらの態様及び実施態様に適用され得ることが理解されよう。
【0065】
本発明の機能性核酸分子は、標的遺伝子のmRNA量に影響を与えることなく、目的の標的遺伝子の翻訳を増強することができる。したがって、それらは、細胞内の遺伝子機能を検証するため、及び組換えタンパク質生成のパイプラインを実装するための分子ツールとして良好に使用することができる。
【0066】
本発明のさらなる態様によれば、細胞における標的のタンパク質合成効率を高める方法であって、本明細書に記載の機能性核酸分子又は組成物を該細胞に投与することを含む方法が提供される。好ましくは、細胞は、ヒト又はマウス細胞などの哺乳動物細胞である。
【0067】
本発明の方法は、細胞内の標的タンパク質のレベルを増加させ、したがって、例えば、遺伝子欠損(すなわち、コード遺伝子のタンパク質レベルの低下及び/又は機能喪失変異)と関連付けられる疾患の治療法で使用される。本発明の方法は、所定の正常タンパク質レベルの定量的な減少によって引き起こされる疾患に特に使用される。本発明の方法は、インビトロ、エクスビボ又はインビボで実施することができる。
【0068】
本明細書に記載の実施態様は、本発明の全ての態様に適用されてもよく、すなわち、機能性核酸分子について記載される実施態様は、請求される方法などに等しく適用され得ることが理解されよう。
【0069】
これから、本発明を以下の非限定的な例を参照して説明する。
【実施例
【0070】
(実施例)
(実施例1-材料及び方法)
(細胞培養)
ヒト胚性腎臓(HEK) 293T/17細胞、ヒト肝細胞癌の細胞(HepG2)及びマウス肝細胞癌の細胞(Hepa1-6)をATCCから取得し、10%ウシ胎児血清(Sigma)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Wako)を補充したダルベッコ改変イーグル(DMEM)(1x)+GlutaMAX-1(Gibco)中で37℃、5%CO2で培養した。
【0071】
(プラスミド及びコンストラクト)
pEGFP-C2プラスミドをClontech Laboratories (Takara Bio USA)から購入した。pCS2+_SINEUP-GFPプラスミドについては以前の研究で説明された(例えば、Carrieriらの文献(2012) Nature 491(7424): 454-457及びTokiらの文献(2019) bioRxiv, 664029参照)。GFPを標的とするSINEUPの結合ドメイン(BD)のΔ5'-32ntは、元の60ヌクレオチド(nt)SINEUP-GFPの5'末端の28塩基が欠失しており、mRNA位置-28から+4に相当する(Takahashiらの文献(2018) PLoS One 13, e0183229の図1B参照)。pcDNA3.1_EGFPプラスミドは、プラスミドpEGFP-C2からの全長EGFP(-40bpから停止コドンまで)をコードする断片をpcDNA3.1(-)(Thermo Fisher Scientific)にクローニングすることによって構築した。マウスSOX9を標的とするSINEUP(ミニSINEUP-SOX9と命名)は、pCS2+ベクターにクローニングした、アンチセンスでマウスSOX9 mRNAと重複するBD、又はBDを含まず、SOX9結合ドメインの代わりにランダム配列を含有する対照(ミニSINEUP-ランダム;Rdと命名)と、マウスAS-Uchl1 RNA (167nt)からの逆位SINE B2配列を含有するエフェクタードメイン(ED)とからなる(図6)。
【0072】
実施例6のために、ミニSINEUP-DJ1 (Zucchelliらの文献 (2015) Front. Cell Neurosci. 9: 174)を、XhoI及びSnaBIを用いてpCS2足場から切り出し、SalI及びPmeI制限部位を用いてpCMV6中のT7プロモーターの下流にクローニングし、pCMV6-ミニSINEUP-DJ1を得た。pCS2にクローニングしたミニSINEUP-DJ1 (pCS2-ミニSINEUP-DJ1)及び対応するpCS2-空ベクターを、RNAトランスフェクション実験で対照DNAとして使用した。
【0073】
(インビトロ転写(IVT)RNA)
SINEUP RNAを、mMESSAGE mMACHINE SP6転写キット(Thermo Fisher Scientific)を用い、以下のヌクレオチド修飾を用いることによってMandal & Rossiの文献 ((2013) Nature Protocols 8: 568-82)に記載のプロトコルを改変して合成した: CTPを5-メチルシチジン-5'-三リン酸(m5C)と置き換え、UTPをシュードウリジン-5'-三リン酸(Ψ)又はN1-メチルシュードウリジン-5'-三リン酸(N1mΨ)と置き換えた。修飾ヌクレオチドは全てTriLink社製であった(最終濃度、7.5mM)。試薬を40ng/μL(最終濃度)の線状SINEUPプラスミドと混合した。ポリAテールを、大腸菌ポリAポリメラーゼ(5000U/mL;カタログ番号M0276, New England Biolabs)を用いてインビトロ転写(IVT)RNAに37℃で30分間付加した。得られた修飾インビトロ転写(mIVT)RNAを、RNeasy ミニキット(Qiagen)を用いて抽出した。
【0074】
実施例6のために、非修飾RNA分子及び修飾RNA分子を、Megascript T7キット(ThermoFisher Scientific)を用いてインビトロで転写した。修飾ヌクレオチド三リン酸(2'-O-メチル-ATP、N6-メチル-ATP、シュードウリジン)をTriLink Biotechnologiesから購入した。インビトロ転写反応を、キット製造業者の推奨に従ってアセンブルし、37℃で一晩(16時間)インキュベートした。全ての転写物をDNAse Iで、37℃で15分間処理し、RNeasyミニキット(Qiagen)を用いて直ちに精製した。全ての転写物を、UV-vis分光光度法及び変性ポリ-アクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって純度及び完全性について調べた。
【0075】
(プラスミド及びRNAトランスフェクション条件)
HEK293T/17細胞を12ウェルプレート(1×105細胞/ウェル)に播種し、24時間後にプラスミド又はRNA (IVT、又はmIVT)をトランスフェクトした。EGFPを検出するために、OptiMEM(1x)還元血清培地(Gibco)とLipofectamine 2000 (Invitrogen)を用いて、各ウェルで1380ngのSINEUP-GFPプラスミド又は720ng(m)IVT SINEUP-GFP RNAを300ngのpEGFP-C2で共トランスフェクトした。トランスフェクション後24時間の時点で細胞を収集した。内因性SOX9を検出するために、HEK293T/17細胞を12ウェルプレート(1×105細胞)に播種し、24時間後に1ウェルあたり2μgのミニSINEUP-SOX9プラスミド又は100ngのmIVT ミニSINEUP-SOX9 RNAでトランスフェクトした。プラスミドトランスフェクション後24及び48時間並びにmIVTトランスフェクション後24時間の時点で細胞を収集した。
【0076】
実施例6のために、GIBCO社のL-グルタミンを有し、10%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質混合物及び1%HEPES緩衝液で完全にしたDMEM高グルコース(4.5g/LのD-グルコース)中で、ATCCから購入したHEK293T/17細胞を培養した。HEK293T/17細胞を1:5~1:10で継代し、細胞株を継代数10以内に使用した。以下のプロトコルに従って、ポリエチレンイミン(PEI) (MW 25000、分枝、Sigma、カタログ番号408727)を使用してRNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間前に、6ウェルプレート内の完全DMEM中250,000/ウェルの密度で細胞を播種した。翌日、トランスフェクションの直前に、培地を1ウェルあたり1mlのOpti-MEM (ThermoFisher Scientific)と交換した。血清及び抗生物質を含まないDMEM160μl中400ngのRNAを含有するトランスフェクション混合物を室温で調製した。40μMのPEIを反応物に2.5μl加え、チューブを1秒間、軽くボルテックスし、室温で10分間インキュベートした。チューブを再び1秒間ボルテックスし、細胞に添加した。ウェスタンブロット及びRT-qPCR分析のために、48時間の時点で細胞を収集した。最後に、DNA対照のトランスフェクションを、200μlのOpti-MEM中1μgのプラスミドDNA(pCS2-ミニSINEUP-DJ1又はpCS2空ベクター)及び3μlのリポフェクタミン2000(ThermoFisher Scientific)を用いて並行して行った。この場合、トランスフェクションの6時間後にトランスフェクション培地を変え、1ウェルあたり2mlの完全DMEMと交換した。細胞を48時間の時点で収集した。
【0077】
(ウェスタンブロッティング(WB))
トランスフェクト細胞を細胞溶解緩衝液(Cell Signaling Technology)で溶解し、4℃で1時間インキュベートした。細胞溶解液を10%プレキャストポリアクリルアミドゲル(BioRad)にアプライし、SDS-PAGEにより分離し、ニトロセルロース膜(Amersham)に移した。全ての一次抗体及び二次抗体を1:1000希釈で使用した。EGFPを検出するために、RRL無細胞系用の抗GFPウサギポリクローナル(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号A-6455)及び抗GFPマウスモノクローナル(クローンJL-8, Clontech、#632380)抗体を使用した。内因性SOX9検出のために、ウサギモノクローナル抗SOX9抗体(クローンEPR14335、カタログ番号ab185230, Abcam)を使用した。DJ1を検出するために、抗DJ1マウスモノクローナル抗体(Enzo Lifesciences、カタログ番号ADI-KAM-SA100-E)を使用した。膜を一次抗体と4℃で一晩インキュベートし、続いて、HRP共役二次抗ウサギIgG(Dako)と室温で45分間インキュベートした。バンドをECL検出試薬(Amersham)によって可視化した。対照として、一次抗βアクチンマウスモノクローナル抗体(Sigma Aldrich)を一次抗体として用い、HRP共役抗マウスIgG (Dako)を二次抗体として用いた。バンドを、Fusion Solo S System (Viber-Lourmat)の定量分析モジュール及び化学発光アプリケーションプロトコルを使用して検出した。
【0078】
実施例6のために、細胞ペレットを、cOmpleteプロテアーゼ阻害剤(Roche)を有する溶解緩衝液(PBS+1%トリトンX100)に氷上で溶解し、氷上で短時間超音波処理し、最大速度で、4℃で20分間遠心分離した。全溶解液を含む上清を氷上で収集し、全タンパク質含有量についてBCAアッセイキット(ThermoFisher Scientific)を使用して定量化した。10μgの全溶解液を、NuPAGE(商標)10% Bis-Tris、1.5mm、タンパク質ゲル、10ウェル(ThermoFisher Scientific)にロードし、SDS-PAGEのために120Vで約90分間泳動した。ゲルを、250mAで90分間、0.2μmのニトロセルロース膜(Amersham)に移した。DJ1をマウス抗DJ1一次抗体で検出し、アクチンをウサギ抗β-アクチン一次抗体(Sigma Aldrich)で検出し、どちらもトリス緩衝生理食塩水-Tween-20(TBST)中5% BSAで1:8000希釈し、4℃で一晩インキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ共役二次抗マウス及び抗ウサギ抗体を1:10000希釈し、室温で1時間インキュベートした。シグナルを、Pierce ECLプラス検出試薬(ThermoFisher Scientific)で検出し、ChemiDoc (Biorad)で読み取った。バンド強度を、ImageJ (NIH)及びImage Lab (Biorad)のソフトウェアを用いて計算した。
【0079】
(RNA抽出及び定量)
RNeasyミニキット(Qiagen)を用いて全RNAを抽出した後、DNase I処理(TURBO DNAフリーキット, Invitrogen)を行った。PrimeScript 1stストランドcDNA合成キット(Takara)を用いてcDNAを合成し、モデル7900HT Fast Real-Time PCR System (Applied Biosystems)においてSYBR Premix Ex Taq II (Takara)で定量リアルタイムPCR (qPCR)分析を行った。熱条件は、最初に95℃で30秒、95℃で5秒間と60℃で30秒間の40サイクルからなり、その後に融解曲線の作成工程が続いた。
【0080】
実施例6のために、RNeasyミニキットを使用して全RNAを抽出し、次いで、試料をUV-vis分光光度法により定量化した。次いで、10μl反応中800ngのRNAに1μlのTurbo DNAseI (Sigma Aldrich)及び1μlの10X DNAseI緩衝液を加えて、室温で15分間インキュベートすることによってDNAse消化を行った。1μlのDNAseI停止溶液を加え、70℃で10分間インキュベートすることによってDNAseを不活化した。Iscript cDNA合成キット(Biorad)を用いて、製造業者の指示に従って、20μlの反応中5μlのDNAse処理済みRNA(約400ng)を逆転写した。次いで、10μlの全量中2μlのcDNA、5μlのiTaqユニバーサルSYBRグリーンスーパーミックス(Biorad)、0.4μlのフォワードプライマー及び0.4μlのリバースプライマーを含むRT-qPCR反応物を設定した。RT-qPCRをCFX96 TouchリアルタイムPCR検出システム(Biorad)で行った。結果を正規化するために、内部基準としてグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子を使用した。
【0081】
(RNA FISH(RNA蛍光インサイチュハイブリダイゼーション))
RNA FISHを、以前にTokiらの文献 (2019) bioRxiv, 664029に記載されたように行った。簡単に説明すると、細胞を4%パラホルムアルデヒド(Wako)で固定した後、室温で5分間、0.5% トリトンX-100(Sigma)で透過処理した。Stellaris RNA FISH Designer (Biosearch Technologies)を用いて設計した蛍光標識(SINEUP RNAについてはQuasar 570及びEGFP mRNAについてはQuasar 670)RNA FISHプローブとRNAをハイブリダイズさせ、37℃で一晩インキュベートした。細胞を洗浄し、model SP8 (Leica)共焦点顕微鏡を用いて撮像した。
【0082】
(無細胞翻訳システム)
ウサギ網状赤血球溶解液(RRL)をPromega (TNT Coupled Reticulocyte Lysate System, #L4610)から購入し、HeLa細胞のヒト細胞溶解液(1-Step Human Coupled IVTキット- DNA, #8881)をThermo Fisher Scientificから購入した。インビトロ翻訳を製造業者のプロトコルに従って行った。簡単に説明すると、各反応について、400ngのSINEUPプラスミド又は200ngの(m)IVT SINEUP RNAを120ngのpcDNA3.1_EGFPと混合した。混合物を30℃で90分間インキュベートした。タンパク質発現を前述のようにウェスタンブロッティングアッセイにより測定した。
【0083】
(化学修飾し、細胞内転写した(mICT) SINEUP-GFPのRNA抽出)
HEK293T/17細胞を10cmディッシュに播種し、24時間後にSINEUP-GFPプラスミドをトランスフェクトし、2x107細胞をトリゾール/クロロホルム抽出によって収集した。水相にSINEUP-GFP RNAを含有する全RNAをRNeasyミニキット(Qiagen)によって抽出した。
【0084】
(細胞内転写SINEUP-GFP RNAのプルダウン)
mICT SINEUP-GFP RNAを含有する全RNAの溶離液を溶解緩衝液で100μLに調整し、2容量のハイブリダイゼーション緩衝液と混合した。2x107細胞について、100pmolのSINEUP-GFPプローブを添加し、37℃で一晩撹拌しながらインキュベートした。SINEUP-GFP RNAへのプローブハイブリダイゼーション後、100μLのタマビジンを試料に添加し、37℃で30分間インキュベート、洗浄緩衝液で4回洗浄した。全ての過剰な上清を除去した後、プロテイナーゼKを含まない100μLのプロテイナーゼK緩衝液でビーズを再懸濁し、65℃で5分間撹拌しながらインキュベートした。SINEUP-GFP RNAをトリゾール/クロロホルムで抽出し、製造業者の指示に従ってRNeasyミニキット(Qiagen)によって精製した。プルダウン抽出を2回繰り返し、SINEUP-GFP RNAを水に溶解させた。
【0085】
(OxfordナノポアダイレクトRNA配列決定のライブラリー調製)
IVT(修飾及び非修飾)とmICTの両方のdirect SINEUP-GFP RNA-seqライブラリーを、SQK-RNA002 (Oxford Nanopore Technology)キットを用いて製造業者のプロトコルに従って調製した。Legerらの文献, 2019, bioRxiv (doi: https://doi.org/10.1101/843136)に記載されている、オリジナル逆転写アダプター(RTA)及び4つのバーコード化RTAをそれぞれ、(m)IVT及びmICT SINEUP-GFP RNAに使用した。ライブラリーをMk1Cシーケンサーにアプライし、72時間配列決定をした。
【0086】
(OxfordナノポアダイレクトRNA配列決定の分析)
配列決定データを、Leger らの文献,2019, bioRxiv (doi: https://doi.org/10.1101/843136)に公開された方法によって処理した。簡単に説明すると、ダイレクトRNA seqからの生のfast5読み取りデータをGuppyで塩基配列読み出しを行った。非修飾IVT SINEUP-GFP、20% ΨmIVT SINEUP-GFP及びmICT SINEUP-GFPの各々についてNanocomporeを使用した。最初に結果をフィルタリングし、p値が0.01を超え、1未満(すなわち、-1から+1の間の任意の値)の絶対対数オッズ比(absLOR)の位置を除去した。1未満のabsLORは、問題の位置が修飾されているか又は修飾されていないかのいずれかの可能性が類似していることを示す。次いで、残りの位置でピークコーリングスクリプトを呼び出して、発見された多数の修飾位置をさらにフィルタリングした。
【0087】
(m6A RNA免疫沈降)
HEK293T、A549 Sh対照又はA549 ShMETTL3/2細胞を、上記のミニSINEUP-DJ1でトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、細胞をPBSで2回洗浄し、トリプシン処理して、剥がした。細胞ペレットをPBSでもう一度洗浄し、全RNAを製造業者のプロトコルに従ってRNeasyミニキット(QIAGEN、カタログ番号74106)で抽出した。全ての試料を抽出中にDNAse I処理に供した。
【0088】
25μgの全RNAを、2.5μgの抗m6A抗体(SySy カタログ番号202111)を含有するIPP緩衝液(10mM Tris-HCl pH7.4, 150mM NaCl, 0,1% Igepal)で最終容量200μLまで希釈し、回転ホイール上で、4℃で2時間インキュベートした。次いで、混合物を免疫沈降し、15μLのGカップリングDynabeads (Invitrogen、カタログ番号10003D)でさらに2時間インキュベートした。次いで、ビーズをIPP緩衝液で5回洗浄し、500μLのQiazolに再懸濁した。
【0089】
Qiazolプロトコルに従ってRNAを抽出し、qRT-PCRによって分析した。IgG結合ビーズ(正常マウスIgG抗体、Santa Cruz、カタログ番号Sc-2025)及びビーズのみの試料を陰性対照として使用した。
【0090】
(m6A RT-qPCR)
全RNAを、QIAGEN RNAミニキットを使用してトランスフェクションの48時間後に細胞から抽出した。全ての試料を抽出中にDNAse I処理に供した。
【0091】
m6A-逆転写反応の場合、プロトコルはCastellanos-Rubioらの文献から適合させた。簡単に説明すると、100ngのRNA、100nMの各プライマー、50μMのdNTP及び0.1UのBstI(NEB、カタログ番号M0275S)又は0.8UのMVL-MRTを使用した。サーマルサイクラーを50℃で15分間、85℃で3分間、4℃無限大に設定した。1μLの逆転写反応液を、100nMの各プライマー及び2X iTaq SYBRグリーン(BioRad)と共に使用した。反応をCFX96リアルタイムPCRシステム(Bio-Rad)で実行し、融解曲線を分析して、単一産物の増幅を保証した。
【0092】
(実施例2)
この実施例は、ネイキッドインビトロ転写(IVT) SINEUP RNAのトランスフェクションが、無視できる程度のタンパク質合成刺激を示したことを示す。以前に、細胞質中の標的mRNA及びSINEUP RNAの共局在が、標的mRNA翻訳の上方制御に重要な要件のうちの1つであることが見出された(Tokiらの文献 (2019) bioRxiv, 664029)。本発明者らは、IVT SINEUP RNAの細胞質へのダイレクトトランスフェクションが、核内で転写されたRNAのエクスポートを必要とするSINEUPプラスミドのトランスフェクションよりも効率的にタンパク質生成を増強すると仮定した。IVT SINEUPを用いる翻訳上方制御の効率を調べるために、IVT RNAを標的センス転写物としてのEGFPプラスミドと共にHEK 293T/17細胞にトランスフェクトした。IVT SINEUP-GFP RNAは、EGFP mRNAを標的とするように設計した結合ドメイン(BD)を含有する(図1A)が、IVT SINEUP-SCR RNAは、陰性対照として設計され、スクランブルされたEGFP BDを含有する。仮説とは逆に、IVT SINEUP-GFPはEGFPの翻訳を刺激しなかった(図1B)が、以前の研究と一貫して、EGFP mRNAとSINEUPのRNAレベルは細胞間で変化しなかった(図1C)。これらの知見はまた、PARK-DJ1(家族性パーキンソン病で見出された変異遺伝子)のmRNAを標的とするように設計されたBDを含有するIVT ミニSINEUP-DJ1を293T/17細胞にトランスフェクトすることによって確認された。ミニSINEUP-DJ1は、SINEUP RNAのキャッピング又はポリアデニル化状態にかかわらず、DJ-1タンパク質の内因性レベルに有意な変化を引き起こさなかった(図示せず)。
【0093】
IVT SINEUP RNAの細胞内分布を明らかにするために、RNA FISH(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)を行い、IVT SINEUP RNAのほとんどが細胞内で強いスポットとして凝集したか、又はそもそもIVT SINEUP RNAを検出することが困難であることが明らかになった。これから、IVT SINEUP RNAがトランスフェクションの直後に部分的に分解され、断片化されたRNAとして検出されるか、又はEGFP mRNAと適切に共局在するのに十分な量では存在しないことが示唆された。その結果、EGFP翻訳は上方制御されなかった。
【0094】
(実施例3)
この実施例は、インビトロ転写された(IVT) SINEUP RNAが細胞内でヌクレオチド修飾により安定化される必要があることを示す。RNA FISH実験から、非修飾IVT SINEUPが細胞へのトランスフェクション後に凝集しやすいことが示された。m5C、Ψ及びN1mΨ修飾を含有する化学修飾IVT (mIVT) SINEUP RNAを調製し、EGFPプラスミドと共にHEK293T/17細胞に直接トランスフェクトした(図2A)。EGFP上方制御及びmIVT SINEUP RNAの細胞内分布を調べた。全てのmIVT SINEUPは、EGFP mRNAレベルに影響を与えることなく、対照(EGFPのみ;図2B)と比較してEGFPの特徴的な上方制御を示した(図2C図3A)。以前にEGFP及びSINEUP-GFPプラスミドを共トランスフェクトしたときに、DNAプラスミドから転写されたSINEUP-GFP RNAが核と細胞質の両方に局在することが見出された。しかし、このデータは、EGFPプラスミドのトランスフェクションに関係なく、mIVT SINEUP-GFPが細胞質内に局在することを示す(RNA FISH画像によって示される、データ示さず)。これと一貫して、EGFP mRNA翻訳の上方制御は、細胞間のEGFP mRNAレベルに著しい影響を与えなかった(図2C図3A)。特に、mIVT SINEUPのRNAレベルは、非修飾IVT SINEUP RNAよりも1.5倍超高く(図3B)、これらの修飾ヌクレオチドは、細胞内のEGFP上方制御だけでなく、SINEUPの安定化にも寄与することが示唆された。
【0095】
(実施例4)
無細胞翻訳システムを用いて、RNA安定化とは別にSINEUP上方制御活性を観察した。RRLにおいて試験したSINEUP RNAのいずれもEGFPを上方制御しなかったが、Ψ及びN1mΨとmIVT SINEUPはHeLa細胞溶解液中でEGFPを上方制御した(データ示さず)。この結果から、修飾ヌクレオチドが無細胞系においてEGFPの上方制御に寄与するため、単にRNA安定化から必要とされるわけではないことが示唆される。これはまた、細胞構成成分の発現がSINEUP活性に重要であることを示唆する。
【0096】
(実施例5)
この実施例は、mIVT SINEUPが内因性標的タンパク質の生成を増強するために使用することができることを示す。SINEUPが内因性標的タンパク質の生成を増加させることができるかどうかを試験するために、SOX9を対象とするSINEUPを開発した。SOX9、性決定領域Y(SRY)-box9(SOX9))は、脊椎動物のいくつかの組織及び器官において細胞分化、発達及び遺伝子発現を調節する転写因子である。加えて、成人肝臓におけるSOX9-陽性細胞は、傷害後の肝細胞として再生することが示されている。SINEUPの最終的な目標は、それらを治療用途に使用することであり、このために、より小さいサイズの機能性SINEUPが望ましい。マウスSOX9 mRNAと重複するBD(-31/+4)とAS-Uchl1 RNAからの逆位SINE B2 EDを含有するミニSINEUP-SOX9プラスミド又はSox9結合ドメインの代わりに非結合ドメインのランダム配列とAS-Uchl1 RNAからの逆位SINE B2 EDを含有するミニSINEUP-Rdプラスミド(図4A)を設計し、ヒト及びマウス肝細胞癌の細胞株(HepG2及びHepa1-6)にトランスフェクトし、SOX9タンパク質生成の増強を調べた。ミニSINEUP-SOX9プラスミドでトランスフェクトした細胞は、HepG2細胞においてトランスフェクション後24時間と48時間の両方で、及びHepa1-6細胞においてトランスフェクション後24時間の時点で対照(SINEUPなし)と比較して、SOX9タンパク質の約1.5倍の上方制御を示した(図4B)。EGFP mRNAを標的とする以前の研究と一致して、内因性標的SOX9 mRNAレベルは、SINEUPトランスフェクト細胞において変化しなかった(図4C)。これから、ミニSINEUP-SOX9がSOX9などの内因性標的のタンパク質レベルを効果的に増強することができることが示される。
【0097】
m5C、Ψ及びN1mΨを含有するmIVT ミニSINEUP-SOX9を用いた場合の翻訳上方制御の効率(図5A)もHepG2細胞において試験した。Ψ及びN1mΨを有するmIVT ミニSINEUP-SOX9も、mIVT ミニSINEUPをトランスフェクトしていない対照と比較してSOX9タンパク質の約1.5倍の上方制御を示した (図5B)。該プラスミドのトランスフェクションと一致して、mIVT ミニSINEUP RNAでトランスフェクトした細胞間で内因性SOX9 mRNAレベルは変化しなかった(図5C)。これから、ヌクレオチド修飾がミニSINEUP-SOX9の安定化に寄与し、培養細胞内でSOX9タンパク質レベルを増強する可能性が示唆される。
【0098】
(実施例6)
この実施例は、修飾の異なる組み合わせがミニSINEUP-DJ1の機能を維持するのに適することを示す。修飾した及び修飾していないインビトロ転写SINEUPの機能をさらに研究するために、PARK7-DJ1 (家族性パーキンソン病(PD)で見出された変異遺伝子)を標的とするミニSINEUP-DJ1と命名したモデルSINEUPを使用した。ミニSINEUP-DJ1を修飾した又は修飾していないヌクレオチドを使用してインビトロで転写し、異なる転写物を等モル量で293T/17細胞にトランスフェクトした。
【0099】
非修飾インビトロ転写物を、数個の天然修飾、すなわち、2’-O-メチルアデノシン(Am)、N6-メチルアデノシン(m6A)、シュードウリジン(Ψ)及びそれらの様々な組み合わせを含む転写物と比較した。なお、異なる修飾を保有するヌクレオチドの組み込みの異なる動態の結果として、IVT混合物の組成は、必ずしも最終分子に見出される修飾の割合を反映しなくてもよいことに留意されたい。Am及びm6Aの場合、後者は、T7 RNAポリメラーゼによって前者よりも数倍より効率的に取り込まれた。便宜上、反応混合物の組成を報告する。
【0100】
図7は、異なる修飾を保有するミニSINEUP RNA又は対照ミニSINEUPプラスミドでトランスフェクトした細胞について、少なくとも3回の異なる実験のウェスタンブロット定量からDJ1の倍数変化を示す。図7に示すように、非修飾転写物はSINEUP活性を示さなかったが、SINEUP活性を維持し最適化するための修飾の最良の組み合わせは3つ、すなわち:i)Am 100%;ii)Am 99%+m6A 1%;iii)m6A 100%+Ψ 100%であった。RNAトランスフェクションに対する陽性対照として、同じミニSINEUPをコードするプラスミドDNAも並行してトランスフェクトし、SINEUP活性をウェスタンブロットによって評価した(図7B)。
【0101】
実験のエンドポイント(48時間)でのトランスフェクトRNAの安定性を調べるために、修飾していない及び修飾した転写物でトランスフェクトした細胞からの全RNA抽出物で逆転写定量PCR(RT-qPCR)を行った。初期実験から、この研究で使用した修飾の存在によって、逆転写が著しく減速されることが明らかになった。しかし、なお、非修飾RNAと修飾RNAとの差異は後者でより顕著であることが示された。この不一致は、トランスフェクション後48時間の時点で、非修飾RNA及び修飾RNAの異なる安定性に当然起因し得る。これをさらに調べるために、修飾していない及び修飾したIVT ミニSINEUP RNAを等モル量でトランスフェクトし、細胞を異なる時点(トランスフェクション後6、18及び48時間)で収集するタイムコースを行った。全RNA抽出物をRT-qPCRにより分析すると、トランスフェクション後48時間の時点で非修飾転写物の安定性が50%未満に低下することが示された(図8A)。対照的に、特定の修飾の組み合わせの存在下で、安定性がわずかに向上する。これは、m6AとΨの組み合わせの存在下で特に明らかである。トランスフェクト細胞からのRNA抽出物でのRT-qPCRとIVT RNAでスパイクした非トランスフェクト細胞からのRNA抽出物でのRT-qPCRとの間の比から計算した「安定化の割合」が得られ、図8Bに示すように、修飾の混合に依存して2~20倍変化する。これは、非修飾IVT SINEUPの活性の低下が、細胞内ヌクレアーゼの作用に対する感受性によって安定性が減少することに少なくとも部分的に起因することを示す。
【0102】
(実施例7)
この実施例は、IVT SINEUP RNAにおける修飾の含有量が、修飾IVT SINEUP RNAの機能及び構造-活性関係に影響を及ぼし得ることを示す。上述したように、異なる修飾を保有するヌクレオチドの組み込みの異なる動態により、IVT混合物の組成は、必ずしも最終分子内に見出される修飾の割合を反映しない。したがって、同じ部位について競合するAm及びm6Aを含有するIVT ミニSINEUP RNAにおける修飾の含有量を特徴付けるほうがよく、これらの転写物の質量分析解析を行った。IVT反応混合物に99:1のAm対m6Aの比を使用した場合、最終分子における2つの修飾の相対存在量はわずか20:80であることが分かった(図9A、左の棒)。なお、Am対m6Aの比がより低いIVT SINEUP-DJ1 RNAは機能的ではなく、このSINEUPの活性にAmの閾値レベルが必要であることを示す(図示せず)。
【0103】
調査中のSINEUP RNA分子の溶液中での立体構造を比較し、SINEUP活性に対する構造が担う可能性のある役割を評価するツールとして、円二色性(CD)分光法を採用した(図9B及び9C)。RNAが採用可能な複合体及び様々な3D立体構造は、各二次構造の特定を高度に困難にする一方で、200nm~320nmの範囲のCDスペクトルは、核酸フォールディングの全体的な理解を提供する上で非常に精度が高い(核酸の円二色性分光法(Circular Dichroism Spectroscopy of Nucleic Acids) (2021) 包括的なキロプティカル分光法(In Comprehensive Chiroptical Spectroscopy), pp 575-586; Sosnick, T. R.の文献, (2001) Curr Protoc Nucleic Acid Chem, 11章, ユニット11 5)。
【0104】
非修飾SINEUP配列は、A型RNAの典型的なCDプロファイルを示した(Kypr, J.らの文献 (2009) Nucleic acids research, 37(6): 1713-25); 約265nmでの最大は右巻ヘリックスの存在を示し、210nmでの最小は二本鎖領域の8平行方向を示す。m6A塩基のみを含むRNA配列について比較可能なスペクトルを記録した。しかし、m6Aがリボース上のAm修飾と組み合わせて存在する場合、非修飾ミニSINEUPと比較して最大と最小の両方の強度の減衰が明らかであり、他の立体構造配置の可能性のある寄与が示唆された(図9B)。著しく、Am対m6Aの比を大きくすると、この減衰がより顕著になる。20:80の「活性」Am対m6A比を含有する転写物のスペクトルは、m6Aのみを含有する転写物のスペクトルと比較して、265nmピークで41%の減少を示す一方で、3:97の不活性比を含有する転写物のスペクトルは、同じピークでわずか9.7%の減少を示した。そのため、質量分析法により測定した場合、Amの3%~20%の増加率(図9B)は、m6A(不活性)で完全修飾したIVT RNAのCDスペクトルとより顕著に異なるCDスペクトルに反映され、Am(活性;図9D参照)で完全修飾したRNAのCDスペクトルと類似していた。驚くほど、完全Am修飾配列及びΨと組み合わせたm6Aを含有する配列はほぼ同一のCDスペクトルを示し、非修飾RNAのそれとは顕著に異なっていた(図9B)。このような修飾分子は、異なる修飾を保有しているにもかかわらず、類似の機能を共有する。それらのスペクトルは、270nm~280nmの領域でより広く、強度の低い最大値及び245nmで同等の強度の最小値によって特徴づけられ、RNAの典型的なA型(Werner, D.らの文献(1998) Pharmaceutica Acta Helvetiae, 73(1), 3-10; Szabat, M.らの文献(2015) PloS one, 10(11), e0143354)よりむしろ、B型DNAのスペクトル(Sekine, M.らの文献(2011) Org Biomol Chem, 9(1): 210-8)と類似のスペクトル特徴を示した。
【0105】
著しく、m6A及びΨ(機能的)を含有するIVT RNAのスペクトルは、m6Aのみを含有するスペクトルとΨのみを含有するスペクトルの両方(両方とも機能的でない)と非常に異なった。実際に、m6Aを含有するミニSINEUPのスペクトルは、非修飾RNAのスペクトルと非常に類似していた。逆に、Ψで完全修飾したRNAのスペクトルは、この特定のヌクレオチドに起因するヘリックスの歪みを反映し(Kierzek, E.らの文献(2013) Nucleic acids research, 42(5), 3492-3501; Sumita, M.らの文献(2005) RNA (New York, N.Y.), 11(9), 1420-9)、210nmで顕著な負バンド、235nm付近で0、及び240nm~237nmに及ぶ領域をカバーする弱い最大値を有した。このスペクトルは、特異な立体構造に関連付けることができず、むしろ、最も一般的な立体構造上のΨ関連の変更によって誘導されるいくつかのシグナルの重なりである。したがって、このデータは、IVT SINEUP RNAにおける修飾の含有量がRNA構造に影響を及ぼすことができ、不活性であることが示される修飾、又は不活性な修飾の含有量は、非修飾IVT SINEUP RNAの構造特性を共有することを示す。
【0106】
潜在的な治療適用のためのRNAを設計する際に構造的安定性が重要なパラメータであるため、修飾していない及び修飾したミニSINEUPの熱安定性についての研究もCDによって行った(図9E)。見掛けの融解温度(Tm)を、温度の関数として270nmにおけるCD強度の変動に従って決定した(Ranjbar, B.らの文献(2009) Chem Biol Drug Des, 74(2): 101-20)。文献によれば、DNAのB型立体構造と類似のスペクトルを示す2つのミニSINEUPは、非修飾RNA配列と比較して安定性の改善を示し、Tmを約15℃増加させることが判明した(Nowakowski, J.らの文献(1997) Seminars in Virology, 8(3): 153-165)。残りのSINEUPバージョンのうち、Am+m6A RNA配列は、修飾していないものに匹敵する見掛けのTmを有する一方で、m6Aを有するRNAは5℃のTm増分を示した。
【0107】
(実施例8)
この実施例は、修飾していない又は修飾したIVT SINEUP-GFP RNAの修飾と細胞内転写(mICT) SINEUP-GFP RNAに見られる修飾の比較を示す。これにより、細胞内転写された場合に、SINEUP RNAに自然に導入され、自然に存在するmICT SINEUP RNAを模倣するためにIVT SINEUP RNAに人工的に導入され得る修飾の特定が可能になる。
【0108】
修飾IVT SINEUP-GFPを、シュードウリジン-5'-三リン酸(Ψ)を20%含有する反応混合物で作製した。32 kmerの修飾領域を、IVT SINEUP-GFPを用いてNanocomporeからmICT SINEUP-GFP内で特定した(表1)。64位のΨ(BDと逆位SINEB2の間)、103(逆位SINEB2)、199(逆位SINEB2)、399(Aluの下流)及び426(Aluの下流)を、20%ΨmIVT SINEUP-GFPを用いてNanocomporeからmICT SINEUP-GFPで特定した(表2)。
【0109】
表1: 非修飾IVT SINEUP-GFPと比較したmICT SINEUP-GFPについてのNanocompore kmerピーク
【表1】
【0110】
表2: 20%Ψ修飾IVT SINEUP-GFPと比較したmICT SINEUP-GFPについてのNanocompore kmerピーク
【表2】
【0111】
Castellanos-Rubioらの文献(2019) Sci. Rep., 9(4220)(doi: https://doi.org/10.1038/s41598-019-40018-6)に記載の方法を使用して、mICT ミニSINEUP-DJ1をRT-qPCRによって分析し、候補m6A領域を定量化した。この方法は、m6A残基を逆転写するBstI酵素の能力の低下を利用し、m6Aに誘導されるBstI逆転写効率の低下を定量的PCR(qPCR)によって評価することができる。4つのm6A推定部位m6A 46、m6A 63、m6A 81及びm6A 111を特定した(図11A)。これらのうち、m6A 46及びm6A 111は、BstI逆転写効率の統計的に有意な変化を示し、その部位におけるm6A修飾の存在が示された(図11B、左パネル)。次いで、m6A 46及び/又はm6A 111の周囲の領域(塩基109~111)をウラシル残基に変異させ、ミニSINEUP-DJ1とミニSINEUP-GFPの両方においてこれらの部位におけるメチル化を防止し、DJ1及びGFPの翻訳を上方制御する能力をそれぞれ試験した。図11C及び図11Dは、対照又は未変異のミニSINEUP-DJ1(すなわち、46位及び109~111位にA残基が存在し、図11全体を通して「WT」と呼ばれる)に対する変異ミニSINEUP-DJ1のDJ1タンパク質発現の倍数変化及びSINEUP活性量をそれぞれ示す。図11E及び図11Fは、対照又は未変異のミニSINEUP-GFPに対する変異ミニSINEUP-GFPのGFPタンパク質発現の倍数変化及びSINEUP活性量をそれぞれ示す。ミニSINEUP-DJ1とミニSINEUP-GFPの両方の46位又は111位でメチル化を防止すると、DJ1及びGFP翻訳の上方制御が低下し、未変異分子(すなわち、46位及び111位にメチル化を有する)に対してSINEUP活性が低下した。ミニSINEUP-DJ1の46位と111位の両方の変異は、いずれかの位置単独よりもSINEUP活性に及ぼす影響が大きい(図11C及び11D)。しかし、ミニSINEUP-GFPの111位は、この位置だけのメチル化の防止がSINEUP活性に最も大きく影響を及ぼしたので、46位よりもSINEUP活性に及ぼす影響がより大きいように考えられた(図11E及び図11F)。
【0112】
図11Gは、対照細胞又はN6-アデノシンメチルトランスフェラーゼ70 kDaサブユニットMETTL3がshRNAによってノックダウンされた細胞(shMETTL3)又は対照細胞のいずれかにおいて、MeRIPによって免疫沈降されたメチル化未変異ミニSINEUP-GFP又はメチル化変異ミニSINEUP-GFPの量を示す。46位又は109~111位を、メチル化を防止するように変異させた場合には、MeRIPによって免疫沈降したメチル化ミニSINEUP-GFPの量は低下し、m6Aの46位と109~111位の両方が変異している場合は、ミニSINEUP-GFPのメチル化は完全に消失する。
【0113】
したがって、このデータは、mICT SINEUP RNAにおける複数の修飾を特定し、これらが特に制御配列(「エフェクタードメイン」及び「ED」とも呼ばれる)内でSINEUP RNA分子全体に見出され得ることを示す。それらは、SINEUP RNA分子の活性に寄与し、したがって、IVT SINEUP分子を模倣するのに有用であり得る。
図1A-B】
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5A-B】
図5C-E】
図6
図7
図8
図9A-B】
図9C-1】
図9C-2】
図9C-3】
図9D-E】
図10
図11A
図11B-C】
図11D-E】
図11F-G】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023542529000001.app
【国際調査報告】