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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】電池単体、電池および電力使用装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
H01M10/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562973
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 CN2021114641
(87)【国際公開番号】W WO2023024000
(87)【国際公開日】2023-03-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫▲ジン▼軒
(72)【発明者】
【氏名】何建福
(72)【発明者】
【氏名】叶永煌
(72)【発明者】
【氏名】劉倩
(72)【発明者】
【氏名】孫雪陽
(72)【発明者】
【氏名】徐暁富
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031BB02
5H031CC01
5H031CC07
5H031EE03
5H031EE04
5H031EE08
(57)【要約】
本出願の実施例は、電池単体を提供し、ケーシング(210)および電池セル(240)を含み、電池セル(240)は前記ケーシング(210)内に収容され、前記ケーシング(210)の内壁の前記電池セル(240)に対向する位置に膜構造(301)が設けられ、前記膜構造(301)は前記ケーシング(210)の内壁とともにカプセル状構造(30)を形成し、前記カプセル状構造(30)の内部に収容空洞(300)が形成され、カプセル状構造(30)の占有空間を低減し、電池単体の構造をよりコンパクトにすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングおよび電池セルを含み、
前記電池セルが前記ケーシング内に収容され、
前記ケーシングの内壁の前記電池セルに対向する位置に膜構造が設けられ、前記膜構造は前記ケーシングの内壁とともにカプセル状構造を形成し、前記カプセル状構造の内部に収容空洞が形成される、ことを特徴とする電池単体。
【請求項2】
前記カプセル状構造は、前記ケーシングの内壁の前記電池セルの側壁に対向する位置に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の電池単体。
【請求項3】
前記ケーシングに防爆弁が設けられ、前記カプセル状構造は前記ケーシングの内壁の前記防爆弁に対向する位置に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の電池単体。
【請求項4】
前記膜構造は、前記ケーシングの隣接する両側の内壁または隣接する三つの側の内壁とともにカプセル状構造を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の電池単体。
【請求項5】
前記カプセル状構造の表面に弱構造が設けられる、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電池単体。
【請求項6】
前記ケーシングに、複数のカプセル状構造が設けられ、各前記カプセル状構造の弱構造は、異なるパッケージの強度を有する、ことを特徴とする請求項5に記載の電池単体。
【請求項7】
前記弱構造は前記電池セルに対向して設けられる、ことを特徴とする請求項5に記載の電池単体。
【請求項8】
前記カプセル状構造内に、独立した複数の収容空洞が設けられ、当該収容空洞の各々に対応する膜構造にそれぞれ弱構造が設けられ、前記収容空洞の各々の弱構造は異なるパッケージの強度を有する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電池単体。
【請求項9】
前記カプセル状構造の内部に1つまたは複数の子カプセル状構造が設けられ、前記カプセル状構造と前記子カプセル状構造が互いに嵌合されて、独立した収容空洞を形成し、
前記収容空洞の各々の弱構造のパッケージの強度は外側から内側に向かって徐々に増加する、ことを特徴とする請求項8に記載の電池単体。
【請求項10】
前記カプセル状構造内にダイヤフラムが設けられ、前記ダイヤフラムは、前記カプセル状構造の内部を独立した複数の収容空洞に分割する、ことを特徴とする請求項8に記載の電池単体。
【請求項11】
前記弱構造は異なるパッケージ厚さを有する、ことを特徴とする請求項5~10のいずれか1項に記載の電池単体。
【請求項12】
前記弱構造は異なる深さのスクラッチを有する、ことを特徴とする請求項5~10のいずれか1項に記載の電池単体。
【請求項13】
前記弱構造のパッケージの強度は、勾配変化を有する、ことを特徴とする請求項11または12に記載の電池単体。
【請求項14】
前記収容空洞内にそれぞれ異なる物質が貯蔵される、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の電池単体。
【請求項15】
前記収容空洞内に、前記弱構造のパッケージの強度に準じた強度の順に、それぞれ難燃剤、ガス吸収剤、リチウム補給剤および電解液が貯蔵される、ことを特徴とする請求項14に記載の電池単体。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の電池単体を含む、ことを特徴とする電池。
【請求項17】
請求項16に記載の電池を含み、前記電池が電気エネルギーを提供するために使用される、ことを特徴とする電力使用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の実施例は、電池分野に関し、より具体的に、電池単体、電池および電力使用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業の持続可能な発展のためには、省エネルギーと排出ガス削減が重要であり、電気自動車はその省エネルギーと環境面での優位性から、自動車産業の持続可能な発展のために重要な役割を担っている。電気自動車では、電池技術も重要な開発要素の一つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願の発明者は、研究の結果、現在の電池が充放電の過程で、電池セルの経年劣化や充放電回数の増加に伴い、電解液不足という問題が発生することを発見した。
【0004】
本出願の実施例は、電池セルに充填物を容易に補充することができる電池単体、電池および電力使用装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1側面によれば、本出願の実施例は、ケーシングおよび電池セルを含む電池単体を提供し、
前記電池セルは前記ケーシング内に収容され、前記ケーシングの内壁の前記電池セルに対向する位置に膜構造が設けられ、前記膜構造は前記ケーシングの内壁とともにカプセル状構造を形成し、前記カプセル状構造の内部に収容空洞が形成される。
【0006】
本出願の実施例は、カプセル状構造の占有空間を大幅に減少し、電池セルとケーシングとの間の任意の小さな隙間をより十分に利用することができ、電池単体の群体マージンを改善する同時に、カプセル状構造が破裂した後、その膜構造はまだケーシングと固定され、電池単体の内部に落ちなく、そこに任意の残留物がなく、電池セルに何の影響を与えない。
【0007】
いくつかの実施例では、前記カプセル状構造は、前記ケーシングの内壁の前記電池セルの側壁に対向する位置に設けられる。
【0008】
本出願の実施例では、電池セルとケーシングとの間の側面、上面、下面およびコーナーなど、液体カプセルの配置に不便な位置にカプセル状構造を設けることができ、電池単体の内部の液体カプセル設置効率を大幅に向上させることができる。
【0009】
いくつかの実施例では、前記ケーシングに防爆弁が設けられ、前記カプセル状構造は、前記ケーシングの内壁の前記防爆弁に対向する位置に設けられる。
【0010】
本出願の実施例では、ケーシングの内壁の防爆弁に対向する位置に、カプセル状構造を前記防爆弁に対向して設けることで、カプセル状構造内に貯蔵された充填物をより十分に放出することができる。
【0011】
いくつかの実施例では、前記膜構造は、前記ケーシングの隣接する両側の内壁または隣接する三つの側の内壁とともにカプセル状構造を形成する。
【0012】
このようにすれば、ケーシングと電池セルとの間の小さな空間を十分に利用し、それらの小さな空間を最大限に利用して電池セルに必要な物質を補充することができる。
【0013】
いくつかの実施例では、前記カプセル状構造の表面に弱構造が設けられる。
【0014】
本出願の実施例は、カプセル状構造に弱構造を設けることで、前記カプセル状構造の内部に貯蔵された充填物を迅速に放出でき、電池セルに必要な物質を適時に補充することができる。
【0015】
いくつかの実施例では、前記ケーシングに複数のカプセル状構造が設けられ、各前記カプセル状構造の弱構造は異なるパッケージの強度を有する。
【0016】
本出願の実施例のカプセル状構造は、異なる外部圧力に応じて、前記異なるカプセル状構造内に貯蔵された異なる充填物質を段階的に放出することができ、電池単体の内部圧力に応じて、電池セルに異なる段階で異なる量の補充液を提供し、または異なる段階で電池セルに必要な異なる物質を補充することができ、電池セルに必要な物質の補充をより意図化することができる。
【0017】
いくつかの実施例では、前記弱構造は前記電池セルに対向して設けられる。
【0018】
本出願の実施例では、前記弱構造と電池セルの側壁に対応して設けることで、充填物を最初に電池セルの側壁に接触させ、より優れた浸透効果を達成することができる。
【0019】
いくつかの実施例では、前記カプセル状構造内に、独立した複数の収容空洞が設けられ、各収容空洞に対応する膜構造にそれぞれ弱構造が設けられ、各前記収容空洞の弱構造は異なるパッケージの強度を有する。
【0020】
本出願の実施例では、単一のカプセル状構造によって様々な異なる充填物質を貯蔵する機能を提供し、異なる外部圧力に応じて、前記カプセル状構造内の各収容空洞内に貯蔵された異なる充填物質を段階的に放出し、電池単体の内部圧力に応じて、電池セルに異なる段階で異なる量の補充液を提供し、または異なる段階で電池セルに必要な異なる物質を補充することができ、電池セルに必要な物質の補充をより意図化することができる。
【0021】
いくつかの実施例では、前記カプセル状構造の内部に1つまたは複数の子カプセル状構造が設けられ、前記カプセル状構造と前記子カプセル状構造は互いに嵌合されて、独立した収容空洞を形成し、各前記収容空洞の弱構造のパッケージの強度は外側から内側に向かって徐々に増加する。
【0022】
本出願の実施例では、単一の液体カプセルにより様々な異なる充填物質を貯蔵する機能を達成し、異なる外部圧力に応じて、前記液体カプセル内の各収容空洞内に貯蔵された異なる充填物質を段階的に放出し、電池セルに必要な物質の補充をより意図化することができる。
【0023】
いくつかの実施例では、前記カプセル状構造内にダイヤフラムが設けられ、前記ダイヤフラムは前記カプセル状構造の内部を複数の独立した収容空洞に分割する。
【0024】
本出願の実施例では、単一の液体カプセルにより様々な異なる充填物質を貯蔵する機能を達成し、異なる外部圧力に応じて、前記液体カプセル内の各収容空洞内に貯蔵された異なる充填物質を段階的に放出し、電池セルに必要な物質の補充をより意図化することができる。
【0025】
いくつかの実施例では、前記弱構造は異なるパッケージ厚さを有する。
【0026】
本出願の実施例では、各収容空洞に対応する弱構造は異なるパッケージの強度を有し、このように、各収容空洞に対応する弱構造は電池単体内部のガス圧力の作用下で、パッケージの強度が最も弱い弱構造に対応する収容空洞内の充填物が最初に放出され、パッケージの強度が強いのが電池単体内部のガス圧力の増加に従って段階的に放出する。
【0027】
いくつかの実施例では、前記弱構造は異なる深さのスクラッチを有する。
【0028】
本出願の実施例では、前記カプセル状構造の外壁のある部分にスクラッチが設けられ、弱領域を形成し、前記スクラッチの深さが前記弱領域のパッケージの強度を示し、深さが深いほど、パッケージの強度が小さくなり、深さが浅いほど、パッケージの強度が大きくなる。
【0029】
いくつかの実施例では、前記弱構造のパッケージの強度の勾配が変化している。
【0030】
本出願の実施例では、セルに必要な物質を徐々に放出するために、電池セルの内部圧力の特性および各圧力段階での電池セルに必要な物質に応じて、各収容空洞に対応する弱構造のパッケージの強度を勾配変化で設定する。
【0031】
いくつかの実施例では、各前記収容空洞内に異なる物質が貯蔵される。
【0032】
本出願の実施例では、異なる収容空洞に異なる物質を貯蔵し、電池セルに不足している異なる物質を補充することによって、電池セルの寿命向上および電池セルの安全性向上などの目的を達成する。
【0033】
いくつかの実施例では、各前記収容空洞内に、前記弱構造のパッケージの強度の強さに従って順次難燃剤、ガス吸収剤、リチウム補給剤および電解液がそれぞれ貯蔵される。
【0034】
本出願の実施例は、電池セルに各種の不足物質を提供し、電池セルの寿命向上および電池セル安全性向上などの目的を達成することをより目標とする。
【0035】
第2側面によれば、本出願の実施例は、上記実施例の電池単体を含む電池を提供する。
【0036】
第3側面によれば、本出願の実施例は、上記実施例の電池を含み、前記電池が電気エネルギーを提供するために使用される電力使用装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
ここで説明される図面は、本出願のさらなる理解を提供し、本出願の一部を構成し、本出願の例示的な実施例およびその説明は本出願を解釈するために使用され、本出願を不当に限定するものではない。
【0038】
図1】本出願の実施例によって提供される車両の構造概略図である。
図2】本出願の実施例によって提供される電池の分解構造概略図である。
図3】本出願の実施例によって提供される電池単体の構造概略図である。
図4】本出願の実施例によって提供されるカプセル状構造の構造概略図である。
図5】本出願の実施例によって提供される単体液体カプセルの構造概略図である。
図6】本出願の実施例によって提供される別の電池単体の構造概略図である。
図7a】本出願の実施例によって提供される子母型液体カプセルの構造概略図である。
図7b】本出願の実施例によって提供される子母型液体カプセルに異なる物質が充填される場合の概略図である。
図8】本出願の実施例によって提供される子母型液体カプセルを含む電池単体の構造概略図である。
図9a】本出願の実施例によって提供される双子型液体カプセルの構造概略図である。
図9b】本出願の実施例によって提供される双子型液体カプセルに異なる物質が充填される場合の概略図である。
図10】本出願の実施例によって提供される双子型液体カプセルを含む電池単体の構造概略図である。
図11】本出願の実施例によって提供される別の電池単体の構造概略図である。
図12】本出願の実施例によって提供される弱構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本出願の実施例の目的、技術的解決策および利点をより明確にするために、以下、本出願の実施例の図面と併せて、本出願の実施例の技術的解決策を明確に説明するが、説明される実施例は、本出願の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本出願の実施例に基づいて、当業者は創造的な労働をすることなく得られた他の実施例は、すべて本出願の保護範囲に含まれるべきである。
【0040】
特に明記しない限り、本出願で使用されるすべての技術的および科学的な用語は、本出願の技術分野に属する技術者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有し、本出願の明細書で使用される用語は、具体的な実施例を説明する目的でのみ使用され、本出願を限定する意図がなく、本出願の明細書および特許請求の範囲ならびに上記の図面の説明の用語「含む」、「有する」、およびそれらの変形は、非排他的な包含を意図している。本出願の明細書および特許請求の範囲または上記図面の用語「第1」、「第2」などは異なる対象を区別するために使用され、特定の順序または優先関係を説明するものではない。
【0041】
本出願における「実施例」とは、実施例に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が本出願の少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを意味する。明細書中の各位置での該用語は必ずしも同一実施例を意味するものではなく、また他の実施例と相互に排他的である別個または代替実施例を意味するものではない。当業者は、本出願で説明される実施例は他の実施例と組み合わせることができるのを、明示的にも暗黙的にも理解されたい。
【0042】
本出願の説明において、明確に規定および限定しない限り、「取付」、「連結」、「接続」、「付加」の用語は広義に理解されるべきであり、例えば、固定的に接続されてもよく、着脱可能に接続されてもよく、または一体に接続されてもよく、直接に連結してもよく、中間媒体を介して間接に連結してもよく、2つのデバイスの内部連通であってもよい。当業者は、具体的な状況に応じて本出願中の上記用語の具体的な意味を理解すればよい。
【0043】
本出願において、「および/または」の用語は、単に関連する対象の関連関係を示すものであり、例えば、Aおよび/またはBとは、Aが単独存在する、AおよびBが同時存在する、Bが単独存在するという3つの関係が存在し得る。また、本出願の「/」とは、一般に前後の関連対象は「または」の関係であるのを示す。
【0044】
本出願の「複数」とは、2つ以上(2つを含む)を意味し、同様に、「複数組」とは、2組以上(2組を含む)を意味し、「複数枚」とは2枚以上(2枚を含む)を意味する。
【0045】
本出願では、電池単体は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン一次電池、リチウム硫黄電池、ナトリウム‐リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池またはマグネシウムイオン電池などを挙げ、本出願の実施例では特に限定されない。電池単体は、円筒形、タブレット形、直方体または他の形状などであり、本出願の実施例では特に限定されない。電池単体は一般に、パッケージの仕方によって円柱形電池単体、角形電池単体およびソフトパック電池単体の3つの種類に大別されるが、本出願の実施例では特に限定されない。
【0046】
現在、技術の発展に伴い、電力用電池の用途はますます広がっている。電力用電池は、水力、火力、風力、太陽光発電所などのエネルギー貯蔵パワーシステムだけでなく、電動自転車、電動バイク、電気自動車などの電気自動車や、軍事機器、航空宇宙など多くの分野で幅広く使用されている。電力用電池の応用分野が拡大するにつれ、その市場需要も拡大している。
【0047】
本願発明者らは、電池が充放電サイクル中に正極活物質および負極活物質からイオンを包含または流出させてセル内部が膨張すると、セル内部の電解液が徐々に減少し、セル内部の電解液が不足するとともに、リチウム活物質が不足することに着目した。電池セルが古くなり、電池セル内部で発生するガスの量が多くなると、徐々に金属の溶出が起こることがある。さらに深刻な場合は、熱暴走を起こし、その結果、電池の発火や爆発の危険性があり、安全上無視できない問題である。
【0048】
以上のことから、通常、電池セルには補充機構が設けられ、前記補充機構は、内部に電解質を含有し、電池セルが内部膨張して内圧が上昇すると、前記補充機構が破裂して予め蓄えておいた電解液を放出し、充放電回数の増加や経年変化により不足する電解液を補充して前記セルに供給する。
【0049】
しかし、本願発明者らは研究の結果、既存の補充機構は、通常、補充液体カプセルを採用し、電池セル内に補充液体カプセルを設置し、電池セル内の圧力が上昇すると補充液体カプセルを押しつぶし、内部に収納されている充填物質を放出するのが一般的であることを発見した。しかし、現在の方法では、補充液体カプセルが大きな空間を占め、カプセルが破裂した後、カプセル外壁を構成する物質は電池セルの電解液に溶解せず、電池セルに影響を与える。同時に、電池セルの使用時間の違いにより、電解液の不足量も異なり、例えば、使用時間が経過すると、不足した電解質を少量ずつ補充することになるが、使用時間が長くなると、徐々に不足する電解質が増え、段階的に異なる量の電解質を電池セルに補充することが必要になる。同時に、電池セル内部の電解液の不足が電池セルに異なる段階で異なるリスクをもたらし、電解液の補充だけでは電池セルの長期使用中の問題を解決することができない。現状では、電池単体の不足物質の補充や異なる段階のリスク解消を狙う方法がまだなく、洗練された解決方法がない。
【0050】
以上の考察に基づき、本願発明者は、電池セルの使用中に電池セルの不足物質を容易に補充できないという問題を解決するために、綿密な検討を行った上で、電池単体及び電力使用装置を設計した。電池単体のケーシングの内壁の前記電池セルに対向する位置に膜構造を設けることで、前記膜構造は前記ケーシングの内壁とともにカプセル状構造を形成し、前記カプセル状構造の内部に収容空洞が形成され、前記収容空洞内にセルに必要な充填物が貯蔵され、該補充物質の構造が電池単体のケーシングに一体に設置され、構造がコンパクトで、占用空間が小さく、電池セルにより多くの空間を提供し、電池セルの群体マージンを向上させることができる。同時に、カプセル状構造がケーシングに一体に設置されるため、カプセル状構造が破裂した後、その膜構造が電池単体の内部に落下せず、依然としてケーシングに固定され、何らかの残留物がなく、電池セルに影響を与えない。
【0051】
本出願の実施例で開示される電池単体は、車両、船舶または航空機などの電力使用装置に使用され得るが、これらに限定されない。本出願で開示される液体カプセル、電池単体などを使用して該電力使用装置の電源システムを構成し、このように、電池セル使用中の物質不足および安全性の低下などの問題を緩和し、電池性能の安定性を向上させ、使用寿命を延長することができる。
【0052】
本出願の実施例は、電池を電源として使用する電力使用装置を提供し、電力使用装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコン、電動玩具、電動工具、バッテリーカー、電気自動車、船舶、宇宙船などであり得るが、これらに限定されない。その中で、電動玩具は、据置型または移動型の電動玩具、例えば、ゲーム機、電動カー玩具、電動ボート玩具、電動航空機玩具などが含まれ、宇宙船には、航空機、ロケット、スペースシャトル、宇宙飛行船などが含まれる。
【0053】
以下の実施例では、説明を容易にするために、本出願の一実施例の電力使用装置が車両1000である場合を例にして説明する。
【0054】
図1を参照すると、図1は本出願の実施例によって提供される車両1000の構造概略図である。車両1000は、燃料自動車、ガス自動車または新エネルギー自動車であり得、新エネルギー自動車は、純電気自動車、ハイブリッド自動車またはエクステンデッドレンジ自動車などであり得る。車両1000の内部に、電池100が設けられ、電池100は車両1000の底部または頭部または尾部に設けられてもよい。電池100は、車両1000に電力を供給し、例えば、電池100は車両1000の操作電源として用いられてもよい。車両1000は、コントローラー200およびモータ300をさらに含み得、コントローラー200は電池100を制御してモータ300に電力を供給し、例えば、車両1000の起動、ナビゲーションおよび走行時の動作に電力を供給する。
【0055】
本出願のいくつかの実施例では、電池100は車両1000の操作電源としてだけでなく、車両1000の駆動電源として、燃料またはガスを完全または一部に代替して車両1000に駆動動力を提供する。
【0056】
図2を参照すると、図2は本出願の実施例によって提供される電池100の分解図である。電池100は、ケース10および電池単体20を含み、電池単体20はケース10内に収容される。その中で、ケース10は電池単体20に収容空間を提供し、ケース10は様々な構造を採用している。いくつかの実施例では、ケース10は上部ケース11および下部ケース12を含み得、上部ケース11と下部ケース12が互いに係合され、上部ケース11および下部ケース12によって電池単体20を収容するための収容空間が限定される。下部ケース12は、一端が開口した中空構造であり得、上部ケース11は板状構造であり得、上部ケース11が下部ケース12の開口側に係合されて、上部ケース11と下部ケース12によって収容空間が限定され、上部ケース11および下部ケース12はそれぞれ一つの側が開口した中空構造であり得、上部ケース11の開口側が下部ケース12の開口側に係合される。もちろん、上部ケース11および下部ケース12によって形成されたケース10は、円筒体、直方体などの様々な形状であり得る。
【0057】
本出願の実施例で言及された電池100とは、1つまたは複数の電池単体を含んでより高い電圧および容量を提供する単一の物理的モジュールであり得る。例えば、本出願で言及された電池100は、電池モジュールまたは電池パックなどを含み得る。電池単体20は複数あり、複数の電池単体20が直列や並列または混合接続され得、混合接続とは、複数の電池単体20が直列および並列に接続されることを意味する。複数の電池単体20は、直列や並列または混合接続され、複数の電池単体20で構成された全体をケース10内に収容し、もちろん、複数の電池単体20がまず直列または並列または混合接続されて電池モジュールのような電池100を構成してから、複数の電池モジュールが直列または並列または混合接続されて1つの全体を形成し、ケース10内に収容してもよい。電池100は、他の構造をさらに含み得、例えば、該電池100は、複数の電池単体20を電気的に接続するためのバス部材をさらに含んでもよい。
【0058】
その中で、各電池単体20は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン一次電池、リチウム硫黄電池、ナトリウム‐リチウムイオン電池またはマグネシウムイオン電池であり得るが、これらに限定されない。電池単体20は、円筒体、タブレット形、直方体または他の形状などであり得る。
【0059】
本出願の実施例によって提供される電池単体をさらに説明するために、図3の電池単体20が提供され、前記電池単体20は、ケーシング210、電極220および電池セル240を含み、前記電池セル240は前記ケーシング210内に電極220に接続されて、外部に電気エネルギーを出力するために使用される。
【0060】
前記ケーシング210は、電池単体の内部環境を形成するための部材であり、その中で、形成された内部環境は電池セル、電解液および他の部件を収容するために用いられる。ケーシング210は外部引出し電極220を有し、前記電極は、正電極および負電極を含み、前記正電極および負電極はアダプタ端子を介して電池セルの正極ラグおよび負極ラグに接続される。前記ケーシングは、様々な形状および様々なサイズであり、例えば直方体形、円筒体形、六角円柱形などであり得る。具体的には、ケーシングの形状は、電池セル部材の具体的な形状およびサイズに応じて決定され得る。ケーシングの材質は、銅、鉄、アルミニウム、ステンレススチール、アルミニウム合金、プラスチックなどの様々な材質であり得るが、本出願の実施例では特に限定されない。
【0061】
同時に、電池単体の使用中、電池セルの使用に従い、電池セルの内部にガスが発生し、ケーシング内部のガスの圧力が徐々に増加し、電池単体の安全性を確保するために、ケーシング上の電極間の位置に防爆弁230を設けて、電池単体の内部のガス圧力が一定強度に達すると、防爆弁を介して圧力を放出して、電池単体の爆発などの安全性の問題を回避する。
【0062】
電池セル240は、電池単体20で電気化学反応が行われる部材である。ケーシング内に1つまたは複数の電池セルが含まれる。電池セルは主に正極シートおよび負極シートを巻き付け、または積層して形成され、通常、正極シートと負極シートとの間にダイヤフラムが設けられる。正極シートおよび負極シートの活性物質を持つ部分が電池セル部材の主要部分を構成し、正極シートおよび負極シートの活性物質を持たない部分がそれぞれラグを構成する。正極ラグおよび負極ラグは、ともに主要部分の一端に配置されることも、またはそれぞれ主要部分の両端に配置されることも可能である。電池の充放電過程中、正極活性物質および負極活性物質が電解液と反応し、ラグが電極端子に接続されて電流回路を形成する。前記正極ラグはアダプタ端子を介して前記ケーシング上の正極に接続され、前記負極ラグはアダプタ端子を介して前記ケーシング上の負極に接続される。
【0063】
従来技術における上記問題を解決するために、本出願の実施例によって提供される電池単体は、図3に示すように、本出願の実施例によって提供される電池単体は、ケーシング210および電池セル240を含み、前記電池セル240は前記ケーシング210内に収容され、前記ケーシング210の内壁の前記電池セル240に対向する位置に膜構造が設けられ、前記膜構造は前記ケーシング210の内壁とともにカプセル状構造を形成し、前記カプセル状構造の内部に収容空洞が形成される。
【0064】
前記電池単体の内部では、前記電池セル240とケーシング210間の空間に、前記ケーシング210の内壁に膜構造301が設けられて、カプセル状構造30を構成し、具体的に、図4に示すように、前記カプセル状構造30は膜構造301およびケーシング210の内壁によって形成され、収容空洞300が形成され、つまり、前記膜構造を液体カプセル壁として、液体カプセル壁をケーシングの内壁に設けることで、カプセル状構造を形成し、前記カプセル状構造の内部に収容空洞内が設けられ、前記収容空洞内に充填物が貯蔵され得る。
【0065】
前記膜構造は通常、可撓性材料で形成され、形成された収容空洞に液体、不活性ガスまたは他の物質が貯蔵され、また、カプセル状構造は必ずしもカプセル状ではなく、その適用環境の要件に応じて、正方形、円形、楕円形または不規則な形状などの任意の形状であり得ることを理解されたい。その中で、前記可撓性材料は、シェルパンチング加工を施したアルミニウム材の表面に、不活性物質、例えばPP/PE/PET/PVCなどの高分子ポリマーを吹き付けたものを採用することが可能である。一定の柔軟性および硬度を有する他の材料を使用することも可能である。
【0066】
成形時、まず可撓性材料を強力な接着剤またはレーザー溶接などによって、ケーシングの内壁に貼り付け、次に前記可撓性材料で形成された収容空洞内に電池単体に必要な物質を充填し、その後接着剤またはレーザー溶接によって前記収容空洞を閉じ、ケーシングの内壁に付着したカプセル状構造を形成し、前記カプセル状構造およびケーシングを一体にする。
【0067】
本出願の実施例は、ケーシングの内壁にカプセル状構造を設けて、カプセル状構造とケーシングを一体にすることにより、カプセル状構造の占用空間を大幅に減少し、電池セルとケーシング間の任意の小さな隙間を十分に利用することができ、電池単体の群体マージンを向上させることができる。同時に、カプセル状構造とケーシングが一体に配置されるため、電池単体を成形する時、予めカプセル状構造をケーシングに設けて、電池単体の成形操作難易度を低減し、カプセル状構造のサイド設置ステップを回避し、簡単に取り付けることができる。同時に、既存の補充液機構は通常補充液体カプセルを使用し、補充液体カプセルを電池単体内に配置し、電池単体の内部圧力の増加に従い、補充液体カプセルが破裂した後、その内部に貯蔵された充填物質が放出されるが、既存の方法では、カプセルが破裂した後、カプセル外壁を構成する物質が電池セルの電解液に溶解せず、電池セルに影響を与える。しかしながら、本出願の実施例では、カプセル状構造とケーシングを一体にすることで、カプセル状構造が破裂した後、その膜構造が電池単体内部に落下せずに依然としてケーシングに固定され、何らかの残留物がないため、電池セルに影響を与えない。
【0068】
本出願の実施例では、前記カプセル状構造は、前記ケーシングの内壁の前記電池セル側壁に対向する位置に配置される。電池セルが垂直に配置されるとき、電池セルの側壁とケーシングの内壁間に通常隙間があり、隙間の存在によって電池セルが揺動し、ひいては電池セルにリチウム析出現象が発生し、本出願の実施例では、図3に示すように、前記ケーシングの内壁の電池セル側壁に対向する位置に、カプセル状構造が設けられ、電池セルの側壁は、電池セルの幅方向の側壁や、電池セルの厚さ方向の側壁や、電池セルの高さ方向の側壁を含む。図3では、前記ケーシング210の内壁にカプセル状構造が設けられ、前記カプセル状構造の一つの側がケーシングの内壁に成形されてもよく、単腕型液体カプセルであってもよく、図3に示すように、前記ケーシングの内壁に第1単腕型液体カプセル310、第2単腕型液体カプセル320、第3単腕型液体カプセル330および第4単腕型液体カプセル340が設けられる。第1単腕型液体カプセル310は電池セルの幅方向のケーシングの内壁に設けられ、第2単腕型液体カプセル320は電池セルの高さ方向と幅方向のケーシングの内壁のコーナーに設けられ、膜構造とケーシングの両側の内壁がカプセル状構造を形成し、第3単腕型液体カプセル330はケーシング底部の内壁に設けられ、電池セルの底部に対応する。このことから分かるように、本出願の実施例は、膜構造をケーシングの一つの側の内壁に設けて、内壁および膜構造によってカプセル状構造を形成することによって、電池単体の内部空間を節約し、電池セルとケーシング間の側面、上面、下面およびコーナーなどの液体カプセルの設置に不便な位置に、カプセル状構造を設置する可能であり、電池単体の内部に液体カプセルを設置する効率を大幅に向上させることができる。
【0069】
本出願の実施例では、前記ケーシングの上方に防爆弁が設けられ、前記カプセル状構造は前記ケーシングの内壁の前記防爆弁に対向する位置に配置される。図3に示すように、電池単体のケーシングに、電極220間にそれぞれ防爆弁230が設けられ、防爆弁230は、電池単体の過度な内部ガス圧力を防止するために設けられた圧力逃がし穴であり、電池単体の内部のガス圧力がある閾値よりも大きいと、その内部ガスが防爆弁を介して放出され、電池単体の内部ガス圧力を低減する。図3に示すように、第4単腕型液体カプセル340はケーシング上部の防爆弁に対応する位置に配置される。本出願の実施例は、ケーシングの内壁の防爆弁に対向する位置にカプセル状構造を、前記防爆弁に対向して設けることにより、カプセル状構造内に貯蔵された充填物をより良好に放出することができる。
【0070】
本出願の実施例では、前記膜構造は前記ケーシングの隣接する両側の内壁または隣接する三つの側の内壁とともにカプセル状構造を形成する。電池単体の内部空間、特に電池セルとケーシング間の空間が限られたため、電池単体内部の空間を十分に利用するために、本出願の実施例では、ケーシングのコーナーに、カプセル状構造を設けることによって、充填物収容構造を設置する。図3に示すように、第2単腕型液体カプセル320は、ケーシング上方のコーナーに配置され、前記コーナーは、ケーシングの隣接する両側の内壁のコーナーおよびケーシングの隣接する三つの側の内壁のコーナーを含む。ケーシングの隣接する両側の内壁コーナーにカプセル状構造を設けるとき、膜構造をそれぞれ隣接する両側の内壁にそれぞれ貼り付けて収容空洞を形成する必要がある。ケーシングの隣接する三つの側の内壁コーナーにカプセル状構造を設けるとき、前記膜構造をそれぞれ隣接する三つの側の内壁にそれぞれ貼り付けて収容空洞を形成する必要がある。このようにすれば、ケーシングと電池セル間の小さな空間を十分に利用し、それらの小さな空間を最大限に利用して電池セルに必要な物質を補充する。
【0071】
本出願の実施例では、電池セルに必要な物質をより便利に補充するために、前記カプセル状構造の表面に弱構造が設けられる。具体的なカプセル状構造は図5に示すように、単体液体カプセル40であり、前記単体液体カプセル40は、液体カプセル壁401、弱構造402およびケーシング210の内部が取り囲まれて収容空洞400を形成する。前記弱構造402のパッケージの強度は、前記可撓性材料のある部分をレーザーエッチング、アルミニウム材の酸エッチングまたはアルミニウム材のナイフスクラッチなどの手段で厚さを薄くして弱領域を形成し、弱領域が液体カプセルの外壁全体面積の約10~50%を占め、厚さが通常10~300μmであり、該弱領域は他の薄くなっていない領域よりも耐圧が小さい。各異なる弱領域間に、パッケージの強度の要件に応じて、異なる厚さを有し得る。弱領域の耐圧閾値が厚さに比例する(例えば弱領域の厚さが100μmである時、内圧閾値が0.25MPaであり、厚さが200μmである時、内圧閾値が0.4MPaである)。本出願の実施例では、前記単体液体カプセル40に弱構造を設けることで、前記単体液体カプセル40の内部に貯蔵された充填物を迅速に放出して、電池セルに必要な物質を適時に補充することができる。
【0072】
またさらに、本出願の発明者らは、研究の結果、電池セルの使用時間が異なると、不足の電解液の量も異なり、例えば、使用開始直後、電解液の補充量が小さく、使用時間が長くなると、不足の電解液の量が徐々に増加し、異なる段階で電池セルに異なる量の電解液を補充する必要がある。同時に、電池セルの内部の電解液不足によって、電池セルが異なる段階で異なるリスクが発生し、単に電解液を補充するだけでは電池セルの長期間使用中の問題を解決することができない。
【0073】
電池単体に必要な物質をより精密に補充するために、本出願のいくつかの実施例では、前記ケーシング210の内壁に複数のカプセル状構造が形成され、各前記カプセル状構造の弱構造は異なるパッケージの強度を有する。
【0074】
図6に示すように、前記電池単体では、ケーシングの内壁上の複数の位置に、複数の単体液体カプセルが設けられ、前記単体液体カプセルは異なるパッケージの強度の弱構造を有し、それぞれ第1単体液体カプセル410、第2単体液体カプセル420、第3単体液体カプセル430、第4単体液体カプセル440および第5単体液体カプセル450を形成し、上記複数の単体液体カプセルは前記ケーシング内に収容され、前記電池セルの側壁に対応して配置される。第1液体カプセル壁411、第1弱構造412およびケーシング210は一緒に、幅方向または厚さ方向の一つの側の内壁に第1単体液体カプセル410を形成する。同様に、第2液体カプセル壁421、第2弱構造422およびケーシング210は一緒に、幅方向または厚さ方向の一つの側の内壁に第2単体液体カプセル420を形成し、前記第1弱構造および第2弱構造は異なるパッケージの強度を有する。同様に、ケーシング210の底部内壁は膜構造とともに第3単体液体カプセル430を形成し、前記第3単体液体カプセル430は電池セルの底部に配置され、ケーシングの上方の防爆弁に対向する一つの側の内壁が膜構造とともに第4単体液体カプセル440を形成し、ケーシングのコーナーに、同様に第5単体液体カプセル450が設けられる。上記のすべての単体液体カプセル構造には、それぞれ弱構造が設けられ、各前記弱構造は異なるパッケージの強度を有する。各カプセル状構造に対応する弱構造は異なるパッケージの強度を有するため、各カプセル状構造に対応する弱構造が電池単体の内部圧力の作用下で、パッケージの強度が最も弱い弱構造に対応する収容空洞内の充填物が最初に放出され、パッケージの強度が強い弱構造に対する収容空洞内の充填物が電池単体の内部圧力の増加に従って段階的に放出される。
【0075】
本出願の実施例では、ケーシングに複数のカプセル状構造を設けて、各カプセル状構造上の弱構造は異なるパッケージの強度を有するため、異なる外部圧力に応じて、前記異なるカプセル状構造内に貯蔵された異なる充填物質を段階的に放出し、電池単体の内部圧力に応じて、電池セルに異なる段階で異なる量の補充液を提供し、または異なる段階で電池セルに必要な異なる物質を補充し、電池セルに必要な物質の補充をより意図化することができる。
【0076】
いくつかの実施例では、より良い浸透効果を得るために、前記カプセル状構造の弱構造を電池セルの側壁に対応して設けて、つまり、弱構造を電池セルの外壁に貼り付ける。カプセル状構造の内部の収容空洞に貯蔵された充填物は弱構造から放出されるため、前記弱構造を電池セル側壁に対応して設けることで、充填物を最初に電池セル側壁に接触させ、より良い浸透効果を達成する。電池セルの高さ方向の一端に設置された液体カプセルについて、その弱構造が下向きに電池セルのラグ部分に貼り付けられ、弱構造が破裂したとき、放出された充填物がより容易に電池セル内部に浸透することができる。
【0077】
いくつかの実施例では、前記カプセル状構造内に複数の独立した収容空洞が設けられ、各収容空洞に対応する膜構造にそれぞれ弱構造が設けられ、各前記収容空洞の弱構造は異なるパッケージの強度を有する。
【0078】
前記カプセル状構造内に複数の独立した収容空洞が設けられ、図7aまたは図9aのように設置可能であり、同じ膜材料または異なる膜材料を前記ケーシングの内壁に貼り付けて、カプセル状構造の内部空間を複数の独立した密閉空間に分割し、前記密閉空間が独立した収容空洞を形成し、前記収容空洞に液体または不活性ガスが貯蔵され、独立した収容空洞にすることで異なる液体または不活性ガスを分離して、異なる物質を目標的に放出する目的を達成する。
【0079】
各前記収容空洞はいずれも可撓性材料で囲まれ、各収容空洞に対応する可撓性材料の外壁にそれぞれ弱構造が設けられ、つまり、カプセル状構造内に形成された各収容空洞は1つの弱構造に別々に対応する。このように、各収容空洞内に貯蔵された液体または不活性ガスが、各弱構造を介して放出され、他の収容空洞内に貯蔵された充填物に影響を与えない。
【0080】
各収容空洞内に貯蔵された充填物を段階的に放出する目的を達成するために、本出願では、各収容空洞に対応する弱構造は異なるパッケージの強度を有することにより、各収容空洞に対応する弱構造は電池単体の内部圧力の作用下で、パッケージの強度が最も弱い弱構造に対応する収容空洞内の充填物が最初に放出され、パッケージの強度が強い弱構造に対応する収容空洞内の充填物が電池単体の内部圧力の増加に従って段階的に放出される。前記弱構造のパッケージの強度は、前記可撓性材料のある部分をレーザーエッチング、アルミニウム材の酸エッチングまたはアルミニウム材のナイフスクラッチなどの手段で厚さを薄くして弱領域を形成し、弱領域がカプセル状構造の外壁全体面積の約10~50%を占め、厚さが通常10~300μmであり、該弱領域が他の薄くなっていない領域よりも耐圧が小さい。各異なる弱領域間に、パッケージの強度の要件に応じて、異なる厚さを有する。弱領域の耐圧閾値が厚さに比例する(例えば弱領域の厚さが100μmである時、内圧閾値が0.25MPaであり、厚さが200μmである時、内圧閾値が0.4MPaである)、各カプセル状構造は、弱領域の厚さ勾配によって放出順序が調整される。前記弱領域の設置により、前記カプセル状構造の外壁のある部分領域にスクラッチを設けて弱領域を形成し、前記スクラッチの深さが前記弱領域のパッケージの強度を表し、深さが深いほど、パッケージの強度が小さくなり、深さが浅いほど、パッケージの強度が大きくなる。
【0081】
本出願の実施例では、カプセル状構造の内部に複数の独立した収容空洞を設けることで、各前記収容空洞に対応の弱構造が設けられ、各前記弱構造は異なるパッケージの強度を有し、単一のカプセル状構造により様々な異なる充填物質を貯蔵する機能を達成する可能であり、また、異なる外部圧力に応じて、前記カプセル状構造内の各収容空洞内に貯蔵された異なる充填物質を段階的に放出し、電池単体の内部圧力に応じて、電池セルに異なる段階で異なる量の補充液を提供し、または異なる段階で電池セルに必要な異なる物質を補充することができ、電池セルに必要な物質の補充をより意図化することができる。
【0082】
前記カプセル状構造をより詳細に説明するために、図7aは子母型液体カプセル構造を提供し、前記子母型液体カプセルの内部に1つまたは複数の子液体カプセルが設けられ、前記液体カプセルと前記子液体カプセルが互いに嵌合され、ケーシングの内壁とともに独立した収容空洞を形成し、各前記収容空洞に対応する弱構造のパッケージの強度は外側から内側に向かって徐々に増加する。図7bは前記子母型液体カプセル構造内に異なる充填物が充填された後の効果図を示す。
【0083】
図7aおよび7bに示すように、前記子母型液体カプセル50は、第1収容空洞510、第2収容空洞520および第3収容空洞530を含み、第1収容空洞510は第1液体カプセル壁511、第1弱構造512およびケーシング210の内壁によって囲まれる。前記第1収容空洞510の内部に、子液体カプセルが設けられ、前記子液体カプセルは第2収容空洞520を含み、前記第2収容空洞520は第2液体カプセル壁521、第2弱構造522およびケーシング210の内壁によって囲まれる。前記第2収容空洞520の内部に、1つの子液体カプセルがさらに設けられ、前記子液体カプセルは第3収容空洞530を含み、前記第3収容空洞530は第3液体カプセル壁531、第3弱構造532およびケーシング210の内壁によって囲まれる。図7aから分かるように、最外側の液体カプセルは子母型液体カプセル構造の母液体カプセルを形成し、その内部に2つの子液体カプセルが形成され、つまり、前記液体カプセルと前記子液体カプセルが互いに嵌合されて独立した収容空洞を形成し、液体カプセル内に液体カプセルがさらに嵌合され、層状に嵌合される。
【0084】
前記子母型液体カプセルの成形時、まず膜構造をケーシングの内壁に貼り付けて、最も内側の子液体カプセルを得、前記第3収容空洞530内部に第3充填物533を注入した後、レーザー溶接または他の手段で封止する同時に、前記第3液体カプセル壁531に第3弱構造532が形成される。その後、該子液体カプセルの外部に可撓性材料が被覆され、該可撓性材料が上記子液体カプセルとケーシングの内壁との接続部の内壁に貼り付けられて、該子液体カプセルの母液体カプセルを形成し、子液体カプセルと母液体カプセルとの間に第2収容空洞520が形成され、前記第2収容空洞520の内部に第2充填物523が注入された後、レーザー溶接または他の手段で封止する同時に、第2液体カプセル壁521に第2弱構造522が形成される。最後に、第2の子液体カプセルの外側に再度可撓性材料を被覆して、第2子液体カプセルの母液体カプセルを形成し、子液体カプセルと母液体カプセルとの間に第1収容空洞510が形成され、前記第1収容空洞510の内部に第1充填物513を注入した後、レーザー溶接または他の手段で封止する同時に、第1液体カプセル壁511に第1弱構造512が形成される。前記子母型液体カプセルで形成された子液体カプセルはいずれもケーシングの内壁に貼り付けられて、カプセル状構造を形成することにより、子母型液体カプセル構造の占用空間を大幅に減少する。なお、図7aでは子母型液体カプセルの内部に3つの独立した収容空洞が設けられる構造のみを示すが、必要に応じてより少ない数またはより多い数の子液体カプセルを設けることが可能であり、ここでは繰り返さない。
【0085】
前記子母型液体カプセル構造において、前記弱構造は前記子母型液体カプセル構造の外側から内側に向かって、前記各弱構造のパッケージの強度が順次に大きくなる。前記第1弱構造512が最外側の液体カプセルの表面に位置し、そのパッケージの強度が最も小さく、電池単体の内部圧力が受けると、最初に破裂し、前記第2弱構造522のパッケージの強度が第1弱構造のパッケージの強度よりもわずかに大きく、第3弱構造532のパッケージの強度が最も大きい。電池単体の内部圧力の作用下で、前記子母型液体カプセルの弱構造が外側から内側に向かって順次破裂し、第1充填物513、第2充填物523および第3充填物533を順次放出する。
【0086】
上記の実施例から分かるように、前記子母型液体カプセル構造は層状に嵌合され、膜構造がケーシングの内壁とともに複数の独立した収容空洞を形成し、各前記収容空洞に対応の弱構造が設けられ、各前記弱構造は異なるパッケージの強度を有し、単一の液体カプセルにより様々な異なる充填物質を貯蔵する機能を達成し、異なる外部圧力に応じて、前記液体カプセル内の各収容空洞内に貯蔵された異なる充填物質を段階的に放出し、電池セルに必要な物質の補充をより意図化することができる。
【0087】
図8は、上記の子母型液体カプセル構造の電池単体内部での設置構造図を示し、前記電池単体20は、1つまたは複数の子母型液体カプセル50を含む。図8では、前記各子母型液体カプセルは、膜構造とケーシングの内壁によって形成され、前記電池セル240の側壁に対応して設置され、前記電池セルの側壁は、電池セルの高さ方向上の側壁、幅方向上の側壁および電池セルの厚さ方向上の側壁などを含む。図8に示すように、第1子母型液体カプセル501および第2子母型液体カプセル502は電池セルの高さ方向上の側壁とケーシングとの間に設置され、子母型液体カプセルの液体カプセル壁は接着剤またはレーザー溶接などによってケーシングの内壁に設置される。第3子母型液体カプセル503は電池セルの高さ方向上の側壁に対応して電池単体ケーシングの底部に設置され、第4子母型液体カプセル504は、電池セルの高さ方向上の他端の側壁に対応して電池セルの頂端に設置される。ケーシングのコーナーで、子母型液体カプセルを設けてもよく、便宜上、第5単体液体カプセル505を設けてもよい。子母型液体カプセルが電池セルの高さ方向上の頂端に設置される時、重力の作用下で、放出された物質がより良く電池セルのコイルコア内部に浸透して、より良好な補充液効果を達成することができる。
【0088】
本出願の別の実施例では、双子型液体カプセル60をさらに提供し、図9aに示すように、前記双子型液体カプセル内にダイヤフラムが設けられ、前記ダイヤフラム、液体カプセル外壁およびケーシングの内壁によって前記液体カプセル内部を複数の独立した収容空洞に分割し、前記液体カプセルの表面の各前記収容空洞に対応する位置にそれぞれ弱構造が設けられ、前記各弱構造は異なるパッケージの強度を有する。図9bは、前記双子型液体カプセル内に異なる充填物が充填された後の概略図を示す。
【0089】
図9aに示すように、前記双子型液体カプセル60内に第1収容空洞610、第2収容空洞620および第3収容空洞630が設置され、第1収容空洞610と第2収容空洞620は第1ダイヤフラム614を介して分離され、第2収容空洞620と第3収容空洞630は第2ダイヤフラム624を介して分離され、それぞれ互いに分離される。第1収容空洞610は第1液体カプセル壁611、第1弱構造612、第1ダイヤフラム614およびケーシングの内壁214によって囲まれ、前記第1液体カプセル壁611および第1弱構造は前記双子型液体カプセル60の外側に設置され、外部に露出し、前記第1ダイヤフラム614は前記双子型液体カプセル60の内部に位置し、第1収容空洞610と第2収容空洞620を仕切り、互いに分離される。前記第1ダイヤフラム614は、第1液体カプセル壁と同じ材料で形成されてもよく、異なる材料で形成されてもよい。前記第1弱構造612は第1収容空洞610に対応する液体カプセル壁に設置され、第1弱構造612が破裂した時、前記第1収容空洞610内の充填物が放出される。
【0090】
第2収容空洞620は第2液体カプセル壁621、第2弱構造622、第1ダイヤフラム614、第2ダイヤフラム624およびケーシングの内壁214によって囲まれ、その中で、前記第2液体カプセル壁621および第2弱構造622が前記双子型液体カプセル60の外部に位置し、第1収容空洞に対応する液体カプセル外壁と一体になり、前記第2ダイヤフラム624は前記双子型液体カプセル60の内部に位置し、第1ダイヤフラム614とともに前記双子型液体カプセル60内部の空間を独立した第2収容空洞620に分割する。前記第2ダイヤフラム624は、第2液体カプセル壁と同じ材料で形成されてもよく、異なる材料で形成されてもよい。前記第2弱構造622は第2収容空洞620に対応する液体カプセル壁に設置され、第2弱構造622が破裂した時、前記第2収容空洞620内の充填物が放出される。
【0091】
第3収容空洞630は第3液体カプセル壁631、第3弱構造632、第2ダイヤフラム624およびケーシング210の内壁によって囲まれ、その中で、前記第3液体カプセル壁631、第3弱構造632が前記双子型液体カプセルの外部に位置し、第2収容空洞620に対応する液体カプセル外壁に接続され、前記第2ダイヤフラム624は前記双子型液体カプセル60の内部に設置され、前記双子型液体カプセル60の内部空間を第2収容空洞620および第3収容空洞630に分割する。前記第3弱構造632は第3収容空洞630に対応する液体カプセル壁に設置され、第3弱構造632が破裂した時、前記第3収容空洞630内の充填物が放出される。
【0092】
図9aに記載の双子型液体カプセル内に、第1ダイヤフラム614および第2ダイヤフラム624が設置され、前記双子型液体カプセル60の内部空間を3つの独立した収容空洞に分割し、3つの独立した収容空洞がそれぞれ単独の弱構造に対応する。その中で、前記各収容空洞に対応する弱構造は異なるパッケージの強度を有し、例えば、図9aでは、第1弱構造612のパッケージの強度が第2弱構造622のパッケージの強度よりも大きく、第2弱構造622のパッケージの強度が第3弱構造632のパッケージの強度より大きい。このように、各収容空洞に対応する弱構造が電池単体の内部ガスの作用下で、パッケージの強度が最も弱い弱構造に対応する収容空洞内の充填物が最初に放出され、パッケージの強度が強い弱構造に対応する収容空洞内の充填物が電池単体の内部圧力の増加に従って徐々に放出される。つまり、第3収容空洞630内に充填された充填物が最初に放出され、次に第2収容空洞620内の充填物が放出され、第1収容空洞610内の充填物が最後に放出される。その中で、前記弱構造のパッケージの強度は、前記可撓性材料のある部分をレーザーエッチング、アルミニウム材の酸エッチングまたはアルミニウム材のナイフスクラッチなどで厚さを薄くして弱領域を形成し、弱領域が液体カプセルの外壁全体面積の約10~50%を占め、厚さが通常10~300μmであり、該弱領域が他の薄くなっていない領域よりも耐圧が小さい。各異なる弱領域間に、パッケージの強度の要件に応じて、異なる厚さを有し得る。弱領域の耐圧閾値が厚さに比例する(例えば弱領域の厚さが100μmである時、内圧閾値が0.25MPaであり、厚さが200μmである時、内圧閾値が0.4MPaである)、各カプセルは弱領域の厚さ勾配に応じて放出順序が調整される。前記弱領域は様々な方法で設置され得、前記液体カプセルの外壁のある部分にスクラッチを設けて弱領域を形成してもよく、前記スクラッチの深さが前記弱領域のパッケージの強度を表し、深さが深いほど、パッケージの強度が小さくなり、深さが浅いほど、パッケージの強度が大きくなる。
【0093】
前記双子型液体カプセル60の成形時、まず液体カプセル壁膜構造を溶接または接着剤によってケーシングの内壁に貼り付けて、次に液体カプセル壁の内部に溶接または接着剤などによって第1ダイヤフラム614および第2ダイヤフラム624を設けて、第1ダイヤフラム614、第2ダイヤフラム624、液体カプセル外壁およびケーシングの内壁によって収容空洞が形成され、充填物を各収容空洞に注入した後、レーザー溶接または他の手段で封止して、双子型液体カプセル構造を形成する。
【0094】
図9bは、前記双子型液体カプセル60内の各独立した収容空洞が充填物で充填された後の概略図を示し、第1収容空洞610内に第1充填物613が充填され、第2収容空洞620内に第2充填物623が充填され、第3収容空洞630内に第3充填物633が充填され、前記第1充填物は同じであってもよく、異なってもよい。同じ物質が充填される場合、電池単体の内部の異なる圧力下で、同じ物質を順次に放出することができる。異なる物質が貯蔵される場合、電池単体の内部の異なる圧力下で、異なる物質を順次に放出し、電池セルに様々な必要な物質を補充することができる。
【0095】
もちろん、前記双子型液体カプセルの使用自由度を高めるために、前記各弱構造間のパッケージの強度は必要に応じて自由に設置され、例えば、前記双子型液体カプセル内部が多くの独立した収容空洞、例えば、5~9個に分割された場合、2つまたは3つのある収容空洞に対応する弱構造を同じパッケージの強度に設置することで、ある物質の1回放出量を増やすことができる。各弱構造のパッケージの強度の差を小さくすることで、異なる収容空洞の充填物質放出間隔を短くし、電池セルに必要な物質を高密度に勾配で補充することができる。さらに、各前記収容空洞の容量が同一でも異なっていてもよく、電池セルの使用特性に応じて、各収容空洞の容量を自由に設置し、電池セルの消費量が大きい物質を大容量の収容空洞内に貯蔵し、消費量が小さい物質を小容量の収容空洞内に貯蔵する。もちろん、他の設置方法であってもよく、本出願の実施例は特に限定されなく、収容空洞の容量および弱構造のパッケージの強度を自由に調整することにより、電池単体に必要な物質をより良く補充することができる。
【0096】
上記実施例から分かるように、前記双子型液体カプセル構造はケーシングの内壁に結合されて、カプセル状構造をケーシングの内壁に設置し、空間を大幅に節約する一方、ダイヤフラムを介して液体カプセルの内部空間を複数の独立した収容空洞に分割し、各前記収容空洞に対応の弱構造が設けられ、各前記弱構造は異なるパッケージの強度を有し、単一の液体カプセルにより様々な異なる充填物質を貯蔵する機能を達成し、異なる外部圧力に応じて、前記液体カプセル内の各収容空洞内に貯蔵された異なる充填物質を段階的に放出し、電池セルに必要な物質の補充をより意図化することができる。
【0097】
図10は、ケーシングの内壁に双子型液体カプセル構造が設置された構造概略図を示す。第1双子型液体カプセル601および第2双子型液体カプセル602は電池セルの高さ方向の側壁とケーシングとの間に設置され、双子型液体カプセルの液体カプセル壁は接着剤またはレーザー溶接などによってケーシングに設置され、ケーシングと一体になって、側壁とケーシングとの間のすべての隙間内に双子型液体カプセルを設けてもよく、すべての空間を充填する。第3双子型液体カプセル603は電池セルの高さ方向の側壁に対応して電池単体ケーシングの底部に設置され、第4双子型液体カプセル604は電池セルの高さ方向の頂端の側壁に対応して設置される。前記ケーシングのコーナーで、双子型液体カプセルを設置してもよく、便宜上、第5単体液体カプセル605を設置してもよい。双子型液体カプセルが電池セルの高さ方向上の頂端に設置される時、重力の作用下で、放出された物質が電池セルのコイルコア内部により良く浸透し、より良好な補充液効果を達成する。
【0098】
本出願の実施例では、さらに、図11に示すように、前記子母型液体カプセル50、双子型液体カプセル60、単体液体カプセル40およびカプセル状構造30を混合して電池単体内に設置してもよく、それぞれケーシングの内壁と一体になっている。図11に示すように、電池セルの高さ方向上の一つの側の側壁とケーシング210との間に単体液体カプセル40および子母型液体カプセル50が設置され、電池セルの高さ方向の他側の側壁とケーシング201との間にカプセル状構造30および双子型液体カプセル60が設置される。単体液体カプセル40およびカプセル状構造30は単一の収容空洞を有するカプセル状構造であり、1つの収容空洞を有するため、同じ大きさの場合、貯蔵された単一の物質の量が双子型液体カプセル60および子母型液体カプセル50よりも多いため、カプセル状構造30、単体液体カプセル40および双子型液体カプセル60および子母型液体カプセル50が混合して設置され、ある物質を大量に補充する要件を満たすことができる。例えば、電池セルの使用に従って、電解液は消費量が最も大きい物質であるため、単体液体カプセル40内に電解液を貯蔵し、双子型液体カプセル60および子母型液体カプセル50内に他の物質を貯蔵することが可能である。ケーシングのコーナーで、ケーシングの隣接する両側または三つの側の内壁とともにカプセル状構造を形成してもよい。このような組み合わせにより、電池セルの物質補充方法がより多様になる。
【0099】
電池単体のケーシングの内壁に複数の収容空洞を有するカプセル状構造が設けられ、単一のカプセル状構造により様々な異なる充填物質を貯蔵する機能を達成し、異なる外部圧力に応じて、前記液体カプセル内の各収容空洞内に貯蔵された異なる充填物質を段階的に放出し、電池セルに必要な物質の補充をより意図化することができる。さらに、電池単体の内部に双子型液体カプセルおよび子母型液体カプセルを混合して設置することにより、電池セルに物質を細かく補充することが可能である。
【0100】
いくつかの実施例では、図8図10および図11に示すように、より良好な浸透効果を達成し、本出願の実施例では、前記液体カプセルの弱構造が電池セルの側壁に対応して設置される。つまり、弱構造を電池セルの外壁に貼り付ける。単体液体カプセルでも、子母型液体カプセルでも双子型液体カプセル構造でも、その内部の収容空洞に貯蔵された充填物がいずれも弱構造から放出され、前記弱構造が電池セル側壁に対応して設置されることにより、充填物が最初に電池セルの側壁に接触して、より良好な浸透効果を果たす。電池セルの高さ方向の一端に設置された液体カプセルについて、その弱構造が下向きに電池セルのラグ部分に貼り付けられ、弱構造が破裂した時、重力の作用下で、放出された充填物がより容易に電池セルの内部に浸透する。
【0101】
いくつかの実施例では、前記カプセル状構造の弱構造は異なるパッケージ厚さを有する。各収容空洞内に貯蔵された充填物を段階的に放出する目的を達成するために、本出願では、各収容空洞に対応する弱構造は異なるパッケージの強度を有し、このように、各収容空洞に対応する弱構造は電池単体内部のガス圧力の作用下で、パッケージの強度が最も弱い弱構造に対応する収容空洞内の充填物が最初に放出され、パッケージの強度が強いのが電池単体内部のガス圧力の増加に従って段階的に放出される。前記弱構造のパッケージの強度は、前記可撓性材料のある部分をレーザーエッチング、アルミニウム材の酸エッチングまたはアルミニウム材のナイフスクラッチなどで厚さを薄くして弱領域を形成し、弱領域が液体カプセルの外壁全体面積の約10~50%を占め、厚さが通常10~300μmであり、該弱領域が他の薄くなっていない領域よりも耐圧が小さい。各異なる弱領域間に、パッケージの強度の要件に応じて、異なる厚さを有し得る。弱領域の耐圧閾値が厚さに比例するため(例えば弱領域の厚さが100μmである時、内圧閾値が0.25MPaであり、厚さが200μmである時、内圧閾値が0.4MPaである)、各カプセルは弱領域の厚さ勾配に応じて放出順序が調整される。
【0102】
本出願のいくつかの実施例では、前記弱構造は異なる深さのスクラッチを有する。前記弱領域は様々な方式で設置され得、図12に示すように、前記カプセル状構造の外壁のある部分にスクラッチを設置して弱領域を形成し、前記スクラッチの深さが前記弱領域のパッケージの強度を表し、深さが深いほど、パッケージの強度が小さくなり、深さが浅いほど、パッケージの強度が大きくなる。
【0103】
いくつかの実施例では、前記弱構造のパッケージの強度が勾配で変化する。電池単体の内部圧力に適合して、前記カプセル状構造の内部の各収容空洞内に充填された充填物を徐々に一括して放出するために、本出願では、電池セルの内部圧力の特性および電池セルに応じて各圧力の段階で必要な物質を放出するために、各収容空洞に対応する弱構造のパッケージの強度が勾配変化で設定して、セルに必要な物質を徐々に放出する。
【0104】
いくつかの実施例では、各前記収容空洞内に異なる物質が貯蔵される。上記実施例で説明されるように、各前記収容空洞内に電池セルの各異なる段階に応じて必要な物質をそれぞれ貯蔵し、例えば、リチウム補給剤/難燃剤/電解液およびその成分/ガス吸収剤、金属捕捉剤などを貯蔵し、貯蔵物質を放出することで、電池セルの寿命向上および電池セルの安全性向上などの目的を実現することができる。
【0105】
もちろん、前記カプセル状構造に対応する収容空洞内に、同じ物質、例えば電解液が貯蔵され得、電池のライフサイクルの初期と中期に十分な電解液がある。電池の経年劣化状態に従い、電解液が消費され続けると、副反応生成物が蓄積され、内部気圧が上昇し続ける。弱領域の薄い部分から厚い部分への順序で、対応領域内の電解液が内圧の増加(つまり経年劣化レベルの上昇)に伴い順次破裂し、各領域から順次電解液が放出され、電解液還流不足によるリチウム析出に起因して電池セルダイビングの問題を解決することができる。
【0106】
本出願のいくつかの実施例では、各前記収容空洞内に、前記弱構造のパッケージの強度の強弱から順次に難燃剤、ガス吸収剤、リチウム補給剤および電解液がそれぞれ貯蔵される。電池セルの使用過程中、通常、電解液不足やリチウムイオン不足の問題が発生し、後期には内部のガス量増加および火炎リスク増加などの問題が発生する可能性が高い。本出願の実施例では、上記のいくつかのリスクを目標的に解消する。それぞれ電池セルに電解液、リチウム補給剤、ガス吸収剤および難燃剤を補充する。
【0107】
ライフサイクルの中期および後期に電解液が枯渇した場合、電解液を適時に補充し、電極シートの浸透性を高め、還流不足による中心リチウム析出を回避し、生産ラインのオフラインテスト用途EOL(End of Line Test)における容量保持率、長寿命、電力性能、急速充電能力などを向上するために、電解液およびリチウムイオンを大量に補充する必要がある。同時に、電池セルの使用に従い、その内部のガス量が大幅に増加し、このとき、カプセルからのガス硬化剤/吸収剤(例えばCaO)の放出により、電池セル内部のガス(例えばCO)を硬化/吸収し、EOLガス発生および内圧の低減効果を達成し、開弁リスクを低減することができる。電池セルの使用後期には、ライフサイクルの後期電池セルの欠点によるリチウム析出に起因するダイヤフラム突刺/テスト乱用による熱暴走の時、瞬間圧力が増加し、パッケージの強度が最も大きい弱構造のパッケージの強度閾値に達すると、難燃剤を放出し、急速冷却および熱暴走程度を制御して、安全性能を向上させる必要がある。
【0108】
本出願で提出されたいくつかの実施例では、以下の電池も提供され、前記電池は上記実施例で述べた任意の電池単体を含む。前記電池単体のケーシングの内壁にカプセル状構造が設けられ、カプセル状構造の内部に収容空洞が設置され、前記収容空洞内に充填物が貯蔵される。カプセル状構造およびケーシングを一体に設置することにより、電池単体の内部空間を大幅に節約し、電池セルに補充を物質する効率を向上させる。さらに、各カプセル状構造は1つまたは複数種類の電池セルに必要な物質を貯蔵して、電池セルが使用中および異なる経年劣化状態下で、電池セルの内部圧力に応じて同じまたは異なる物質を段階的に放出し、電池セルに異なる段階で異なる量の補充液を提供し、または異なる段階で電池セルに必要な異なる物質を補充して、電池セル物質の補充をより意図化することができる。
【0109】
本出願で提出されたいくつかの実施例では、電力使用装置も提供され、前記電力使用装置は上記実施例で述べた電池を含み、前記電池は前記電力使用装置に電気エネルギーを提供する。前記電力使用装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコン、電動玩具、電動工具、バッテリーカー、電気自動車、船舶、宇宙船などであり得るが、これらに限定されない。その中で、電動玩具は、固定式または移動式電動玩具、例えば、ゲーム機、電気自動車玩具、電動船舶玩具および電動航空機玩具などを含み、宇宙船は航空機、ロケット、スペースシャトルおよび宇宙飛行船などを含む。
【0110】
最後に、以上の実施例は本出願の技術的解決策を説明することのみを目的としており、それらを制限するものではなく、前記の実施例を参照して本出願を詳細に説明したが、当業者は、前記の各実施例に記載の技術的解決策を修正し、または一部の技術特徴を同等置換することができ、それらの修正や置換は、関連する技術的解決策の本質を本出願の各実施例の技術的解決策の精神および範囲から逸脱させるものではない。
【符号の説明】
【0111】
1000 車両
100 電池
10 ケース
11 上部ケース
12 下部ケース
200 コントローラー
300 モータ
20 電池単体
210 ケーシング
220 電極
230 防爆弁
240 電池セル
30 カプセル状構造
300 収容空洞
301 膜構造
310 第1単腕型液体カプセル
320 第2単腕型液体カプセル
330 第3単腕型液体カプセル
340 第4単腕型液体カプセル
40 単体液体カプセル
400 収容空洞
401 液体カプセル壁
402 弱構造
410 第1単体液体カプセル
411 第1液体カプセル壁
412 第1弱構造
413 スクラッチ
420 第2単体液体カプセル
421 第2液体カプセル壁
422 第2弱構造
430 第3単体液体カプセル
440 第4単体液体カプセル
450 第5単体液体カプセル
50 子母型液体カプセル
501 第1子母型液体カプセル
502 第2子母型液体カプセル
503 第3子母型液体カプセル
504 第4子母型液体カプセル
505 第5単体液体カプセル
510 第1収容空洞
511 第1液体カプセル壁
512 第1弱構造
513 第1充填物
520 第2収容空洞
521 第2液体カプセル壁
522 第2弱構造
523 第2充填物
530 第3収容空洞
531 第3液体カプセル壁
532 第3弱構造
533 第3充填物
60 双子型液体カプセル
601 第1双子型液体カプセル
602 第2双子型液体カプセル
603 第3双子型液体カプセル
604 第4双子型液体カプセル
605 第5単体液体カプセル
610 第1収容空洞
611 第1液体カプセル壁
612 第1弱構造
613 第1充填物
614 第1ダイヤフラム
620 第2収容空洞
621 第2液体カプセル壁
622 第2弱構造
623 第2充填物
624 第2ダイヤフラム
630 第3収容空洞
631 第3液体カプセル壁
632 第3弱構造
633 第3充填物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12
【国際調査報告】