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特表2023-544375オイルシードミールを含むポリマー複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】オイルシードミールを含むポリマー複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231016BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20231016BHJP
   C08L 1/12 20060101ALI20231016BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20231016BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20231016BHJP
   B65D 65/46 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L101/16
C08L1/12
C08L5/00
C08L67/00
B65D65/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520200
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 NL2021050591
(87)【国際公開番号】W WO2022071799
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】2026593
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523117247
【氏名又は名称】コーダ インテレクチュアル プロパティ ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】CODA INTELLECTUAL PROPERTY B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】リンチ, ダニエル エリック
【テーマコード(参考)】
3E086
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD05
3E086AD06
3E086AD23
3E086AD30
3E086BA15
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3E086BA25
3E086BA29
3E086BA35
3E086BB23
3E086BB41
3E086BB63
3E086BB85
3E086CA01
4J002AA012
4J002AB005
4J002AB015
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4J002BB072
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4J200DA23
4J200DA24
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4J200EA07
4J200EA09
4J200EA10
4J200EA11
4J200EA21
(57)【要約】
ポリマー複合材料であって、a.全重量の5~94.5重量%の量のポリマーと;b.全重量の少なくとも5重量%の量の粉砕したオイルシードミールと;c.成分b)の5~50w/w%の量の可塑剤と;d.任意のフィラーと、e.任意の添加剤と、を含み、c)が、70~210°の範囲の溶融温度を有する固体可塑剤である、ポリマー複合材料に関する。本発明はまた、その調製のためのプロセス、中間体及びポリマー複合材料を含む固体の物品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー複合材料であって、
a.全重量の5~94.5重量%の量のポリマーと;
b.全重量の少なくとも5重量%の量の粉砕したオイルシードミールと;
c.成分b)の5~50w/w%の量の可塑剤と;
d.任意のフィラーと;
e.任意の添加剤と、を含み、
c)が、70~210℃の範囲の溶融温度を有する固体可塑剤である、
ポリマー複合材料。
【請求項2】
成分a)が、生分解性ポリマー、好ましくはポリグリコライド(PGA)、ポリラクチド又はポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコライド)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、例えばポリ(ブチレンスクシナート-コ-アジパート)(PBSA)といったポリ(ブチレンスクシナート)(PBS)及びそのコポリマー、ポリ(ブチレンアジパート-コ-テレフタラート)(PBAT)、β-1,4結合を有するN-アセチル-グルコサミンとN-グルコサミンとの線状コポリマー、酢酸セルロース(CA)、ポリ(ヒドロキシブチラート)(PHB)若しくは他のポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリ(ヒドロキシブチラート-コ-ヒドロ吉草酸)(PHBV)又はそれらの好適な混合物、又はそれらの誘導体若しくはそれらのポリマーブレンドを含む、請求項1に記載のポリマー複合材料。
【請求項3】
成分a)が、全重量の30~70重量%の量で、好ましくは全重量の30~50重量%の量で存在する、請求項1又は2に記載のポリマー複合材料。
【請求項4】
成分b)が、粉砕したボリジミール、若しくは粉砕したローズヒップミール、若しくは粉砕したアヒフラワーミール、若しくは粉砕したツキミソウのミール、若しくは粉砕したブラックカラントのミール、又はそれらの混合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
【請求項5】
粉砕したオイルシードミールと、成分b)の最大100w/w%の粉砕した搾油かす/ケーキ、粉砕した搾りかす、粉砕した蒸留かす、粉砕した醸造かす(若しくは醸造麦芽のかす/おり)、粉砕したビスケット穀物ミール若しくはその個々の成分、コーヒーの出し殻、粉砕した全種子、粉砕した全根、粉砕した全豆、粉砕した茎及び/若しくは葉、粉砕した穀物の全粒粉、豆類の粉、又はそれらの混合物との混合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
【請求項6】
成分b)又は請求項5に記載の混合物が、全重量の20~70重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
【請求項7】
成分c)として、ポリオール、ポリ官能性アルコール、例えばモノグリセリドエステル、ジグリセリドエステル及びトリグリセリドエステルといったカルボン酸とエステルなどの両性可塑剤、単糖、二糖及びオリゴ糖、又はその混合物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
【請求項8】
成分c)が、成分b)の22~40w/w%の量で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
【請求項9】
成分d)として、天然繊維、好ましくはセルロース繊維若しくはリグノセルロース繊維、並びに/又は炭酸塩(炭酸水素塩を含む)、リン酸塩、フェロシアン化物、シリカ、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩(粘土鉱物、雲母及びタルクの全ての形態を含む)、二酸化チタンから好ましくは選択される無機フィラー、並びに/又は炭素系フィラー、又はそれらの組合せを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
【請求項10】
成分d)が、全重量の1~40重量%の量で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
【請求項11】
添加剤として、相溶化剤、香料、熱安定化剤及びUV安定化剤、並びに/若しくは着色剤、又はそれらの混合物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー複合材料を調製するためのプロセスであって、ポリマー複合材料が、高温混合技術によって作製され、好ましくはカレンダー加工、押出成形、射出成形及び圧縮成形により所望の製品へと成形し、冷却して最大の強度及び一体性特性を発揮することができる溶融プラスチック状態(融解状態)を生み出す成分が、熱及びせん断力の下で組み合わせられる、プロセス。
【請求項13】
130~215℃の範囲の温度で実施される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
2つの工程、すなわち最初に中間体を形成する第1の工程と、中間体と残りの成分とを組み合わせる第2の工程と、によって実施される、請求項12又は13に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー複合材料を含む、固体の物品。
【請求項16】
混合されたペレット、押し出しされた製造工程中の製品、射出成形された物品、ブロー成形された物品、ロータ成形されたプラスチック物品、2液性成形物品、積層体、3D印刷フィラメント、フェルト、織布、編布、刺繍布、不織布、ジオテキスタイル、繊維又は固形シートの形態である、請求項15に記載の固体の物品。
【請求項17】
コーヒーカプセル、カトラリー、ストロー、マドラー、食品トレイ、又はカップ、キャップ、容器及び/若しくは蓋などの1回限り使用するための包装品、又は他の任意の単回使用品の形態である、請求項15又は16に記載の固体の物品。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー複合材料の調製に使用するための、請求項14に記載のプロセスによって調製される中間体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルシードミールを含むポリマー複合材料に関する。より詳細には、本発明は、量が増加したオイルシードミールを含むポリマー複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
オイルシードは、食用油の抽出のために主に育てられる種子であるが、これらは、香料及びパーソナルケアなどの用途のために油を抽出する目的で育てられる種子もまた含み得る。全オイルシードは、高濃度のエネルギーと、適度な濃度のタンパク質及び繊維とを含有する。主なオイルシードとしては、ダイズ、セイヨウアブラナ種子(菜種)、ヒマワリ及びパーム油が挙げられる。
【0003】
オイルシードからの油の抽出に利用されるプロセス(オイルシードの脱脂)は、本質的には溶媒抽出、ホットプレス(又は搾油抽出)及びコールドプレスといった3つのカテゴリに分類される。溶媒抽出は、オイルシードを機械的に搾った後にヘキサンを使用して一般に(産業的に)行われ、油分の97~99%が除去され、油分は1.5%未満であると通常予想されている。プレス抽出は、60℃/140°F未満で行われるコールドプレスで、オイルシードから油を物理的に圧搾することで機械的に行われる。ホットプレス/搾油抽出は、プレスの前にオイルシードの加熱前処理を含む。予想されるプレスによる油の抽出量は、通常95%未満である。
【0004】
油の抽出後のオイルシードの残留物は、一般にはミール、搾油かす又はケーキ(プレスケーキ)と呼ばれる。より正確には、溶媒抽出されたオイルシードによってミールが生じ、ホットプレス抽出により搾油かすのミールが生じ、コールドプレス抽出により搾油かすのケーキが生じる。本特許の目的のため、ミールは、3w/w%未満、好ましくは1.5w/w以下の油を含有する、溶媒抽出プロセスにより得られた物質として定義される。例えば、溶媒抽出したセイヨウアブラナ種子ミールは、2~3%を超える油を含有することはないと考えられる(https://www.feedipedia.org/node/52)。
【0005】
オイルシードミールは、家畜飼料においてはタンパク質の主要な供給源であり、タンパク質の量は20%を超える。市販のミールの例としては、例えば、ダイズミール又はソイミール、パームミール又はパーム核ミール、ココナツミール又はコプラミール、ヒマワリミール、ピーナッツミール又はクルミミール、綿実ミール、セイヨウアブラナ種子ミール又はセイヨウアブラナミール又は菜種ミール、トウゴマミール、亜麻仁ミール(linseed meal、flaxseed meal)又は亜麻のミール、ベニバナミール、ツバキミール、ゾウゲシュロナの実のミール又はシュロナミール、グレープシードミール、ジャトロファの果のミール、マスタードシードミール、トウモロコシの胚のミール、サラソウジュ(Shorea Robusta)シードミール、ゴマシードミール、ヘンプシードミール、タバコシードミール、メロン種子のミール、ニガーシードミール、ライスブランシード、コムギふすまミール、ボリジミール、ブラックカラントミール、ツキミソウのミール、ローズヒップミール、ブグロソイデス・アルベンシス(アヒフラワー)ミール、ホホバミール及びアーモンドミールが挙げられるがこれらに限定されない。
【0006】
いくつかのオイルシードミールは、それらの抽出油と同様に、抗酸化特性及びフリーラジカル除去特性があることが証明されている。
【0007】
オイルシードから抽出された油は、ポリ乳酸及びポリ(ブチレンスクシナート)などの生分解性ポリマーを含むポリマーにおいては機能性添加物(主に可塑剤)として使用されてきたことが一般には知られている。これは特に、亜麻仁油及び他のエポキシ化油の場合である。
【0008】
それぞれのミールから化学的手段によって種々の可塑剤を活用して分離された特定のタンパク質単離物は、ポリマーフィルムにおいては、主要成分としての使用、かつ他の一般的なポリマーとの複合材料としての使用について報告されている。これは、ダイズ、セイヨウアブラナ種子(菜種)及び綿実のタンパク質単離物に明確に当てはまる。
【0009】
ただし、粉砕したオイルシードミール(3%未満の油分)を含有するポリマー複合材料の事例はあまり広く報告されていない。
【0010】
O.Mysiukiewicz and M.Barczewski 「Utilization of linseed cake as a postagricultural functional filler for poly(lactic acid)green composites」 Journal of Applied Polymer Science 2018,DOI:10.1002/APP.47152によれば、脱脂した亜麻仁ケーキ(アセトン変性)は、5~30w/w%の充填量でポリ乳酸に導入されるが、脱脂された亜麻仁ケーキの残りの油分は17.4%と測定されており、かつこれはミールとして見なされるべきではない。
【0011】
M.Barczewski,O.Mysiukiewicz,J.Szulc and A.Klozinski 「Poly(lactic acid)green composites filled with linseed cake as an agricultural waste filler.Influence of oil content within the filler on the rheological behaviour」 Journal of Applied Polymer Science 2019,DOI:10.1002/APP.47651によれば、同じアセトン脱脂した亜麻仁ケーキは、最大40w/w%充填量でポリ乳酸にさらに導入される。
【0012】
この論文から2つの引用文を読む(引用符内のテキストは説明のために加えられる):
「両方(亜麻仁ケーキ(LC)及びアセトン変性亜麻仁ケーキ(LCA))のフィラータイプを20重量%含む材料の場合、測定中の流れのスループットは極めて高くなる。これは、毛細管レオロジー測定及びトルクレオロジー測定の場合にも観察される壁面滑り効果と比較すると適正である。トルクレオメトリーの結果を考慮した上で20~40重量%のフィラーを含有する複合材料について観察された高MFI(メルトフローインデックス)値は、10重量%よりも高くフィラーを導入することで溶融加工及び製造安定性が強く制限される可能性がある。」
【0013】
「不運にも、20重量%を超えるLC及びLCA(亜麻仁ケーキ及びアセトン変性亜麻仁ケーキ)を含有する複合材料の場合、両方の種類のLCフィラー(純粋なものと脱脂したもの)の油の量が高いことで動的ニーダチャンバでの可塑化中に強い制限が生じる。」
【0014】
4.6%の油分をもたらす石油エーテル脱脂された亜麻仁の搾油かすと、0.9%の油分をもたらす第2の脱脂プロセスはどちらもOlga Mysiukiewicz,Mateusz Barczewski,Katarzyna Skorczewska,Joanna Szulc and Arkadiusz Klozinski 「Accelerated Weathering of Polylactide-Based Composites Filled with Linseed Cake:The Influence of Time and Oil Content within the Filler」,Polymers 2019,11,1495に報告されている。これらの材料の別のものはミールであると考えられ得る。どちらも、他の添加剤を使用することなく、10w/w%の充填量でポリ乳酸に導入された。亜麻仁の油分が0.9%である試料はより強いが、より高い量を導入した同一試料とは対照的にこれはより脆いことが見出された。
【0015】
同じ材料は、O.Mysiukiewicz,K.Salasinska,M.Barczewski and J.Szulc 「The influence of oil content within lignocellulosic filler on thermal degradation kinetics and flammability of polylactide composites modified with linseed cake」,Polymer Composites 2020,https://doi.org/10.1002/pc.25727にも報告されている。
【0016】
M.Delgado,M.Felix and C.Bengoechea 「Development of bioplastic materials:From rapeseed oil industry by products to added-value biodegradable biocomposite materials」 Industrial Crops&Products 2018,125,401-407により、可塑剤としてセイヨウアブラナ種子ミール(油分が全くないもの)とグリセロールを60:40で予め混合したものを、120℃以下の温度で5~20w/w%のポリカプロラクトン(PCL)ポリマーとともに1mm厚さのプラークへと射出成形した。
【0017】
尿素水溶液を使用して可塑化したコーングルテンミール、菜種ミール、綿実ミール、ヒマワリミール及び亜麻仁ミール(油分が全くないもの)は、射出成形物品の製造において熱硬化性ポリマーとしてこれらを使用する目的で米国特許第10,513,063号に論じられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第10,513,063号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】O.Mysiukiewicz and M.Barczewski 「Utilization of linseed cake as a postagricultural functional filler for poly(lactic acid)green composites」 Journal of Applied Polymer Science 2018,DOI:10.1002/APP.47152
【非特許文献2】M.Barczewski,O.Mysiukiewicz,J.Szulc and A.Klozinski 「Poly(lactic acid)green composites filled with linseed cake as an agricultural waste filler.Influence of oil content within the filler on the rheological behaviour」 Journal of Applied Polymer Science 2019,DOI:10.1002/APP.47651
【非特許文献3】Olga Mysiukiewicz,Mateusz Barczewski,Katarzyna Skorczewska,Joanna Szulc and Arkadiusz Klozinski 「Accelerated Weathering of Polylactide-Based Composites Filled with Linseed Cake:The Influence of Time and Oil Content within the Filler」,Polymers 2019,11,1495
【非特許文献4】O.Mysiukiewicz,K.Salasinska,M.Barczewski and J.Szulc 「The influence of oil content within lignocellulosic filler on thermal degradation kinetics and flammability of polylactide composites modified with linseed cake」,Polymer Composites 2020,https://doi.org/10.1002/pc.25727
【非特許文献5】M.Delgado,M.Felix and C.Bengoechea 「Development of bioplastic materials:From rapeseed oil industry by products to added-value biodegradable biocomposite materials」 Industrial Crops&Products 2018,125,401-407
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、強度又は可撓性を失うことなく、例えば粉砕したボリジミール、粉砕したローズヒップミール及び/又は粉砕したアヒフラワーなどの粉砕したオイルシードミールの含有量を大量のものにすることが可能である解決策を見出すことである。さらに、本発明の目的は、例えばコーヒーカプセル、カトラリー、ストロー、マドラー、食品トレイ、カップ、キャップ、容器及び/若しくは蓋といった1回限り使用するための包装品又は他の任意の単回使用品など、250マイクロメートルを超える壁厚を有する使い捨て可能物品を形成するのに十分な強度を有する使い捨て可能物品に成形可能であるポリマー複合材料を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1で請求されているようなポリマー複合材料であって、
a.全重量の5~94.5重量%のポリマーと;
b.全重量の少なくとも5重量%の粉砕したオイルシードミールと;
c.成分b)の5~50w/w%の量の可塑剤と;
d.任意のフィラーと;
e.任意の添加剤と、を含み、
c)は、70~210℃の範囲の溶融温度を有する固体可塑剤である、ポリマー複合が提供される。
【0022】
ポリマー複合材料を調製するためのプロセス、ポリマー複合材料を調製するための中間体及びポリマー複合材料を含む物品もまた提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
必要に応じて適切なフィラーとともに、粉砕したオイルシードミールに基づく固体可塑剤を少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも15重量%を添加することで、粉砕したオイルシードミールは、粉砕したオイルシードミールとポリマーに基づき例えば20w/w%よりも高い、又はさらには40w/w%よりも高い充填量であってもポリマーとプラスチック複合材料を形成することができる。この複合材料は、250マイクロメートル(10ミリ)よりも大きな壁厚を有する使い捨て可能物品を形成するのに十分な強度を有する使い捨て可能物品を形成することができることが見出された。
【0024】
本発明で使用するため、上に定義した種類のオイルシードミールのいずれかが成分b)として使用され得る。本発明は、詳細には、ヒマワリ、ボリジ、綿実、アヒフラワー、ベニバナ、ローズヒップ、菜種、ブラックカラント、パーム核、セイヨウアブラナ種子、亜麻仁及びツキミソウのうちの1つ以上に基づく粉砕したオイルシードミールに焦点を当てている。混合前に、オイルシードミールは、ふるいにかけられる/微細な粉末に粉砕されるが、これは1mmよりも小さい、好ましくは500マイクロメートルよりも小さい粒径を有する。これは、均一で小さな粒径を得るために複数の段階で行われることが好ましい。例えば、粉砕したボリジミール粉末を使用してもよい。同様の判断は、ローズヒップ、アヒフラワー、セイヨウアブラナ種子、亜麻仁、ツキミソウ及びブラックカラント又はそれらの組合せに対して適用される。
【0025】
粉砕は、例えば均一で小さな粒径をより容易に取得し、かつ/又は水といった導入される液体の量を減少するため、乾燥材料で実施されることが好ましい。このため、一実施形態では、粉砕前に材料が乾燥されてもよい。したがって、本明細書では材料は粉砕されているとのみ称され得るが、本発明は、代替的には又は追加的には材料が乾燥粉砕された実施形態を指しており、したがって、必要に応じて「粉砕した」といった用語は、本明細書全体を通して適切な箇所で「乾燥粉砕した」といった用語で置き換えられ得る。換言すると、「粉砕した」は、特段明記しない限り、「粉砕した、及び/又は乾燥粉砕した」といった意味で解釈される必要がある。
【0026】
粉砕したオイルシードミールは、低い充填量で使用されてもよく、全重量の5重量%で出発して、好ましくは、例えば全重量の20~90重量%など、全重量の20重量%を超える充填量で、より好ましくは全重量の20~80重量%の充填量で、さらにより好ましくは全重量の20~70重量%の充填量で使用され、又は例えば全重量の40~90重量%など、全重量の40重量%を超える充填量で、より好ましくは全重量の40~80重量%で、さらにより好ましくは全重量の40~70重量%で使用されてもよい。粉砕したオイルシードミールは、成分b)の例えば最大100重量%、好ましくは成分b)の最大50重量%で、粉砕した搾油かす/ケーキ、粉砕した搾りかす、粉砕した蒸留かす、粉砕した醸造かす(若しくは醸造麦芽のかす/おり)、粉砕したビスケットミール(若しくはビスケット穀物ミール)、粉砕した全種子、粉砕した全根、粉砕した全豆、粉砕した茎及び/若しくは葉、穀物の全粒粉、コーヒーの出し殻、並びに豆類の粉、又はそれらの組合せと混合されてもよい。例えば、粉砕したボリジミールと粉砕したビスケットミール又はビンロウ葉鞘粉末のいずれかといった2つの材料の混合物が使用されてもよい。粉砕したオイルシードミールと他のオイルシードの搾油かす、ケーキなどを混合する場合、固体可塑剤の量は、オイルシード混合物を組み合わせた(合計)重量で計算される。
【0027】
オイルシードの油のうちのいくつかはポリマー用の可塑剤として知られており、搾油かすを含むミールの混合物(油分が高い)によって、油の取扱い及び複合材料混合物への油の導入を制御することが可能となる。
【0028】
好適な搾油かすとしては、ヒマワリ種子、セイヨウアブラナ種子、亜麻仁、ピーナッツ、パーム果実、ゴマ種子、ヒマシ種子及びテンサイのパルプが挙げられ得るが、これらに限定されない。好適なミールとしては、ヒマワリ、ボリジ、綿実、ブグロソイデス・アルベンシス(アヒフラワー)、ベニバナ、ローズヒップ、菜種、ブラックカラント、パーム核、セイヨウアブラナ及びツキミソウのミールが挙げられ得るが、これらに限定されない。ビスケットミール又はビスケット穀物ミールは、調理及び加工されたビスケット、ケーキ及び穀物食品が砕かれた廃棄物の混合物又はそれらの個々の成分のいずれかを含んでもよい。穀物は、トウモロコシ、コムギ、イネ、オオムギ、エンバクやキビ、及びライコムギなどの交配種などの主食用穀物並びにカナリアシードなどの動物用飼料が挙げられる。豆類としては、鞘内に様々なサイズ、形状及び色の1~12個の粒又は種子が実り、食物及び飼料の両方で使用される、並びに例えばフィールドピー、ソラマメ及びルピナスなどの乾燥種子用に専ら収穫される一年生マメ科植物が挙げられる。搾りかすの好適な例としては、ジュース又は油用に圧搾した後のブドウの搾りかす、オリーブの搾りかす、リンゴの搾りかす又は他の果物若しくは野菜の固形残部が挙げられ得る。
【0029】
ポリマー複合材料は、成分a)として任意のポリマーから作製され得るが、熱可塑性ポリマーが使用されることが好ましい。好適なポリマーとしては、例えばバイオベースのポリマー及び生分解性ポリマーといった合成ポリマー及び天然ポリマーが挙げられる。好適な熱可塑性材料としては、ポリアミド(ナイロンなど)、アクリルポリマー、ポリスチレン、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(low-density polyethylene、LDPE)及び高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)を含む)、アクリルニトリルブタジエンスチレン(acrylonitrile butadiene styrene、ABS)、ポリグリコール酸、ポリカルボナート、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(polyether ether ketone、PEEK)、ポリエーテルイミド、酸化ポリフェニレン、ポリフェニレンスルファイド、ポリ塩化ビニル及びポリテトラフルオロエチレン又はそれらのいずれかの好適な混合物が挙げられる。
【0030】
エラストマー又はエラストマーと熱可塑性ポリマーとの組合せもまた使用されてもよい。好適なエラストマーとしては、例えば天然ゴム又は合成ゴム、クロロプレン、ネオプレン、イソプレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレンブタジエン、ニトリルゴム、ラテックス、フルオロエラストマー、シリコーンゴム、エピクロリドリン、ポリエーテルブロックアミド、エチレン酢酸ビニル(ethylene vinyl acetate、EVA)及びエチレンビニルアルコール(ethylene vinyl alcohol、EVOH)が挙げられる。エラストマーは、例えばスチレン系ブロックコポリマー(TPE-s)、熱可塑性オレフィン(TPE-o)、エラストマーアロイ(TPE-v又はTPV)、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane、TPU)、熱可塑性コポリエステル(TPE-E)及び熱可塑性ポリアミドから選択され得る熱可塑性エラストマーを含んでもよい。
【0031】
熱硬化性ポリマー又は熱硬化性ポリマーと熱可塑性ポリマーの組合せもまた使用されてもよい。好適な熱硬化性ポリマーとしては、例えばエポキシ樹脂、メラミンホルムアルデヒド、ポリエステル樹脂及び尿素ホルムアルデヒドが挙げられる。
【0032】
好適なアクリルポリマー(熱可塑性樹脂、熱硬化性エラストマー又は熱可塑性エラストマー)としては、例えばポリアクリル酸樹脂、ポリメチルメタクリラート、ポリメチルアクリラート、ポリエチルアクリラート、ポリエチルエタクリラート及びポリブチルメタクリラートが挙げられる。
【0033】
好適なポリエステルとしては、ポリグリコライド(polyglycolide、PGA)、ポリラクチド又はポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコライド)(poly(lactide-co-glycolide)、PLGA)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)、例えばポリ(ブチレンスクシナート-コ-アジパート)(poly(butylene succinate-co-adipate、PBSA)といったポリ(ブチレンスクシナート)(poly(butylene succinate)、PBS)及びそのコポリマー、ポリ(ブチレンアジパート-コ-テレフタラート)(poly(butylene adipate-co-terephtalate)、PBAT)、β-1,4結合を有するN-アセチル-グルコサミンとN-グルコサミンとの線状コポリマー、酢酸セルロース(cellulose acetate、CA)、ポリ(ヒドロキシブチラート)(poly(hydroxybutyrate)、PHB)又は他のポリヒドロキシアルカノアート(polyhydroxyalkanoate、PHA)、ポリ(ヒドロキシブチラート-コ-ヒドロ吉草酸)(poly(hydroxybutyrate-co-hydroxyvalerate)、PHBV)又はそれらの混合物が挙げられる。最も好ましくは、PLA又はPBSのいずれかが成分a)として使用される。最も好ましくは、生分解性を改善するため、ポリマー複合材料は、混合物全体の30~50w/w%の量でPLA又はPBSのいずれかを含む。
【0034】
可塑剤は、添加剤としてポリマー産業で幅広く使用される、重要な種類の低分子量不揮発性化合物である。熱可塑性樹脂用の可塑剤は、一般には、300~600の平均分子量と、直鎖又は環状炭素鎖(14~40個の炭素)を有する高沸点の液体である。ただし、生体材料用可塑剤の目的は、生体材料がポリマーと混合されて1個のプラスチック塊となるように、炭水化物/タンパク質鎖の凝集を防止することである。本発明の目的のために、可塑剤は成分b)と適合性があり、成分b)とは異なっていなければならない。
【0035】
グリセロール、ポリエチレングリコール及びソルビトールは、タンパク質系(タンパク質単離物による)バイオプラスチック研究では最も一般に使用されているが、本発明は、55~210℃の範囲、好ましくは70~210℃の範囲、より好ましくは80~210℃の範囲、最も好ましくは90~210℃の範囲の溶融温度を有する固体可塑剤の排他的使用を必要とする。可塑剤は、ポリオール、ポリ官能性アルコール、例えばモノグリセリドエステル、ジグリセリドエステル及びトリグリセリドエステルといったカルボン酸とエステルなどの両性可塑剤、単糖、二糖及びオリゴ糖並びにそれらの組合せから選択されてもよい。ポリオールは特に効果的であることが見出されている。好適な可塑剤としては、ソルビトール、マルチトール、スクラロース、トレイトール、エリスリトール、プシコール、アロース、タロース、リビトール、タガトース、アラビノース、ガラクチトール、ラクチトール、アラビトール、グリセルアルデヒド、イジトール、ソルボース、リボース、ガラクトース、ボレミトール、マンニトール、フシトール、キシロース、キシリトール、トレハロース、セロビオース、ラフィノース、グルコース、マンノース、フルクトース、イソマルト、ポリデキストロース及びスクロース、並びに/又はそれらの組合せが挙げられる。例えば、融点が144~145℃のキシロース、及び/又は融点が94~96℃のソルビトール、及び/又は融点が92~96℃のキシリトールが使用されてもよい。キシロースよりもソルビトールを使用する利点は、得られたポリマー複合材料の引張強さが高いことである。ソルビトール及びキシロースよりもキシリトールを使用する利点は、得られたポリマー複合材料の引張強さが高いことである。さらには、キシリトールはソルビトールよりも水中での可溶性が低く、ポリマー複合材料が使用中に水に供される固体物品に使用される場合(例えば、コーヒーマシン内などの熱湯)、キシリトールが水に溶解する可能性は低いことを意味している。
【0036】
加えて、混合物が55~210℃の範囲、好ましくは70~210℃の範囲、より好ましくは80~210℃、最も好ましくは90~210℃の範囲の溶融温度を有する場合には、固体可塑剤と液体可塑剤との混合物が使用されてもよい。液体可塑剤の量は少ないことが好ましく、例えば成分c)の最大10重量%が好ましい。
【0037】
可塑剤は、成分b)の15~50w/w%の量で使用されてもよく、好ましくは成分b)の22~40w/w%で使用されてもよい。
【0038】
さらに、ポリマー複合材料の任意の成分としては、無機フィラー及び/又は天然繊維及び/又は炭素系フィラーなどのフィラーが挙げられる。
好適な無機フィラーとしては、炭酸塩(炭酸水素塩を含む)、リン酸塩、フェロシアン化物、シリカ、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩(粘土鉱物、雲母及びタルクの全ての形態を含む)、二酸化チタン又はそれらの組合せが挙げられる。例えば、霞石閃長岩が使用されてもよく、又はシリカに不飽和であり強アルカリの火成岩及び任意の種類のベントナイトに由来するフィラーが使用されてもよい。
【0039】
天然繊維としては、胚、葉、種子、木部又は茎由来の植物繊維又は植物性繊維などのセルロース繊維又はリグノセルロース系繊維が挙げられる。例えば、木部セルロース繊維を使用してもよい。
炭素系フィラーとしては、カーボンナノチューブ(carbon nanotube、CNT)、グラフェン、フラーレン、グラファイト及びアモルファスカーボンが挙げられる。
【0040】
フィラーは、混合物全体の0~96w/w%の量で、好ましくは混合物全体の1~40w/w%の量で使用されてもよい。
【0041】
任意の追加成分としては、相溶化剤、香料、熱安定化剤及びUV安定化剤、着色剤などが挙げられる。好適な相溶化剤としては、任意のアクリルグラフト化熱可塑性樹脂(例えば、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリ乳酸)、界面活性高分子量過酸化物、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、クエン酸の任意のエステル、芳香族カルボジイミド(例えば、LanxessによるBioAdimide)、ワックス系乳化添加剤(例えば、BYK AdditivesによるAquacer)、オルガノシランカップリング剤及びイソシアナート(又はジイソシアナート)カップリング剤(例えば、メチレンジイソシアナート)が挙げられる。
【0042】
追加成分は、混合物全体の0~30重量%の量で、好ましくは混合物全体の0~15重量%の量で使用されてもよい。
【0043】
ポリマー複合材料は、いわゆる「高温混合」技術によって作製されるが、この技術では、成分を熱及びせん断力の下で組み合わせ、所望の製品へと成形し、冷却して最大の強度及び一体性特性を発揮することができる溶融プラスチック状態(融解状態)を生み出す。高温混合としては、カレンダー加工、押出、射出及び圧縮成形が挙げられる。これは、選択したポリマーに特有の温度、圧力及び加工条件で実施される。例えば、PLAを使用する場合、温度は好ましくは130~215℃の範囲であり、より好ましくは130~210℃の範囲であり、さらにより好ましくは130~185℃の範囲であり、最も好ましくは130~165℃である。
【0044】
ポリマー複合材料はまた、多段階プロセスで作製されてもよく、最初に粉砕したオイルシードミールが固体可塑剤に混合されてペレット化され、続いてこのペレット又は細砕したペレットは、ポリマーと組み合わせられる。追加成分は、多段階プロセスの工程のいずれかで添加されてもよい。本発明はしたがって、可塑剤と、必要な場合にはポリマー複合材料を製造するためにポリマーと組み合わせるための中間製品として他の成分とともに混合され、かつペレット化される粉砕したオイルシードミールのペレット又は粉砕したペレットもまた提供する。
【0045】
プロセスの結果は、固体の物品(又は層、又はその一部分)の形態であり得る。これは、例えば混合されたペレット、押し出しされた製造工程中の製品、射出成形された物品、ブロー成形された物品、ロータ成形されたプラスチック物品、2液性成形物品、積層体、3D印刷フィラメント、フェルト、織布、編布、刺繍布、不織布、ジオテキスタイル、繊維又は固形シートを含んでもよい。
【0046】
固体の物品は、コーヒーカプセル、カトラリー、ストロー、マドラー、食品トレイ、又はカップ、キャップ、容器及び/若しくは蓋などの1回限り使用するための包装品、又は他の任意の単回使用品の形態であってもよい。
【0047】
固体の物品は、室温よりも高い、好ましくは30℃よりも高い温度、より好ましくは50℃よりも高い温度、さらにより好ましくは60℃よりも高い温度、最も好ましくは80℃よりも高い温度の水環境で使用及び/又は洗浄されるのに適していることが好ましい。固体の物品は例えば、80~100℃(例えば、87~92℃)の温度で水を使用するコーヒーマシンで使用されてもよい。
【0048】
固体の物品は、例えばコーヒーマシンで使用される際には、例えば2バールよりも高い圧力下で、好ましくは4バールよりも高い圧力下で、より好ましくは6バールよりも高い圧力下で、最も好ましくは8バールよりも高い圧力下で使用されるのに適していることが好ましい。
【0049】
固体の物品は、250マイクロメートルよりも大きい、好ましくは350マイクロメートルよりも大きい、より好ましくは500マイクロメートルよりも大きい、最も好ましくは600マイクロメートルよりも大きい最小厚さを有することが好ましい。
【0050】
本発明は、以下の実施例によって説明される。
(実施例1)
【0051】
PLA(Natureworks LLC製のIngeo(登録商標)3251D)275グラム、実験室の穀物粉砕機で粉砕した(1mmのふるいでふるいにかけたもの)ボリジミール(New Holland Extraction Ltd;油分 0.9w/w%)225グラム、及びキシリトール(1mmのふるいでふるいにかけたもの)67.5グラムを密封プラスチック製袋の中で混合し、均一な混合物とした(混合物1)。
(実施例2)
【0052】
3251D PLA 275グラム、実験室の穀物粉砕機で粉砕した(1mmのふるいでふるいにかけたもの)ローズヒップミール(New Holland Extraction Ltd;油分 0.5w/w%未満)225グラム、及びキシリトール(1mmのふるいでふるいにかけたもの)67.5グラムを密封プラスチック製袋の中で混合し、均一な混合物とした(混合物2)。
(実施例3)
【0053】
3251D PLA 275グラム、実験室の穀物粉砕機で粉砕した(1mmのふるいでふるいにかけたもの)アヒフラワーミール(New Holland Extraction Ltd;油分 0.7w/w%)225グラム、及びキシリトール(1mmのふるいでふるいにかけたもの)67.5グラムを密封プラスチック製袋の中で混合し、均一な混合物とした(混合物3)。
(実施例4)
【0054】
3251D PLA 275グラム、実験室の穀物粉砕機で粉砕した(1mmのふるいでふるいにかけたもの)ツキミソウのミール(New Holland Extraction Ltd;油分 0.9w/w%)225グラム、及びキシリトール(1mmのふるいでふるいにかけたもの)67.5グラムを密封プラスチック製袋の中で混合し、均一な混合物とした(混合物4)。
(実施例5)
【0055】
3251D PLA 275グラム、実験室の穀物粉砕機で粉砕した(1mmのふるいでふるいにかけたもの)ブラックカラントミール(New Holland Extraction Ltd;油分 3w/w%未満)225グラム、及びキシリトール(1mmのふるいでふるいにかけたもの)67.5グラムを密封プラスチック製袋の中で混合し、均一な混合物とした(混合物5)。
(実施例6)
【0056】
3251D PLA 275グラム、実験室の穀物粉砕機で粉砕した(1mmのふるいでふるいにかけたもの)セイヨウアブラナのミール(Cargill plc;油分 2~4w/w%)225グラム、及びキシリトール(1mmのふるいでふるいにかけたもの)67.5グラムを密封プラスチック製袋の中で混合し、均一な混合物とした(混合物6)。
(実施例7)
【0057】
Ingeo 3251D PLA150グラム、実験室の穀物粉砕機で粉砕した(1mmふるいでふるいにかけたもの)ツキミソウのミール192グラム、キシリトール(1mmふるいでふるいにかけたもの)58グラム、及び同じ製粉機で粉砕したHiFill(商標)N800(Sibelco UK Ltd製の無機フィラーとしての霞石閃長岩粉末)100グラムを密封プラスチック製袋の中で混合し、均一な混合物とした(混合物7)。
(実施例8)
【0058】
3251D PLA 275グラム、実験室の穀物粉砕機で粉砕した(1mmのふるいでふるいにかけたもの)ホットプレスしたセイヨウアブラナ種子搾油かす(Yelo Enterprises Ltd;油分 8~10w/w%)225グラム、及びキシリトール(1mmのふるいでふるいにかけたもの)67.5グラムを密封プラスチック製袋の中で混合し、均一な混合物とした(混合物8)。
(実施例9)
【0059】
3251D PLA 275グラム、実験室の穀物粉砕機で粉砕した(1mmのふるいでふるいにかけたもの)コールドプレスした亜麻仁搾油かす(Compton Grove Farm UKからのPureflax Linseed Original)225グラム、及びキシリトール(1mmのふるいでふるいにかけたもの)67.5グラムを密封プラスチック製袋の中で混合し、均一な混合物とした(混合物9)。
(実施例10)
【0060】
3251D PLA 275グラム、実験室の穀物粉砕機で粉砕した(1mmのふるいでふるいにかけたもの)テンサイのパルプ(British Sugar plc)225グラム、及びキシリトール(1mmのふるいでふるいにかけたもの)67.5グラムを密封プラスチック製袋の中で混合し、均一な混合物とした(混合物10)。
(実施例11)
【0061】
Ingeo 3251D PLA150グラム、実験室の穀物粉砕機で粉砕した(1mmふるいでふるいにかけたもの)ホットプレスしたセイヨウアブラナ種子搾油かす192グラム、キシリトール(1mmふるいでふるいにかけたもの)58グラム、及びPremium Quest(商標)ベントナイト(無機フィラーとしてのAmcol Minerals Europe Ltdからのカルシウムベントナイト粉末)100グラムを密封プラスチック製袋の中で混合し、均一な混合物とした(混合物11)。
(実施例12~18)
【0062】
混合物1~7(実施例1~7による)を、32mm径のスクリュー及び20:1のL/D比を備え、130~185℃の範囲の温度で動作するNegri Bossi v55射出成形機のホッパーに個別に注いだ。溶融した各可塑化混合物を、シングルドロップホットランナーシステムを備えた1個取りツールで、Nespresso(登録商標)スタイルのコーヒーマシンでの使用に好適なカプセルに射出成形した。
(実施例19~22)
【0063】
混合物8~11(実施例8~11による)を、32mm径のスクリュー及び20:1のL/D比を備え、165~185℃の範囲の温度で動作するNegri Bossi v55射出成形機のホッパーに個別に注いだ。溶融した各可塑化混合物を、シングルドロップホットランナーシステムを備えた2個取りツールで、飲料の撹拌に好適な飲料用マドラーに射出成形した。
(実施例23)
【0064】
ツキミソウのミール20kgを、1mmのふるいを備えたAMA S.p.A.製のMagico EMC70電動ミルに通し、凝集した塊を破壊した。続いて、得られたツキミソウの粉末を、タンブラー式ミキサで30重量%のキシリトール(2mmのふるいでふるいにかけたもの)と混合し、重量約26kgの混合粉末を作製した。続いて、この混合物とIngeo 3251D PLAとを、ツキミソウのミール/キシリトール:PLA=64:36の比率で、ZS-B 25二段式スクリューサイドフィーダを備えたWerner and Pfleiderer製のZSK 25二段式スクリュー混合機で混合した。使用したスクリューのプロファイルを、材料成分のそれぞれの注入時点とともに表1に示す。バレルについて設定した温度は、170℃、190℃、170℃、170℃、170℃、170℃、170℃、170℃であった。混合されたフィラメントを水浴で冷却し、エアナイフ下で乾燥させ、Intelligent Pelletizing Solutions GmbH&Co KG製のSG-E 60を使用してペレット化した。ペレットを、80℃でDryplus 250 from Vismec s.r.製のDryplus内で一晩乾燥させた。
【0065】
(表1)
表1 材料含有時点のスクリュープロファイル
搬送 16/16 (PLA)
36/36(x2)
36/18
36/36
36/18
混合 45/5/36
45/5/18
45/5/18(x2)
搬送 36/36(x5) (ツキミソウのミール)
混合 45/5/36(x3)
搬送 36/36
混合 45/5/24(x3)
搬送 16/16
36/36(x2)
混合 45/5/12(x2)
90/5/24
搬送 36/36
混合 45/5/12(x2)
45/5/12
搬送 36/36(x5)
24/24(x4)
(実施例24)
【0066】
ツキミソウのミール20kgを、1mmのふるいを備えたAMA S.p.A.製のMagico EMC70電動ミルに通し、凝集した塊を破壊した。続いて、得られたツキミソウの粉末を、タンブラー式ミキサで30重量%のソルビトール(2mmのふるいでふるいにかけたもの)と混合し、重量約26kgの混合粉末を作製した。続いて、この混合物とIngeo 3251D PLAとを、ツキミソウのミール/ソルビトール:PLA=64:36の比率で、ZS-B 25二段式スクリューサイドフィーダを備えたWerner and Pfleiderer製のZSK 25二段式スクリュー混合機で混合した。使用したスクリューのプロファイルを表1に示すが、材料成分のそれぞれの注入時点は実施例23のとおりであった。他の全ての詳細部分は、実施例23のとおりであった。
(実施例25~26)
【0067】
実施例23及び24による混合ペレットを、Ingeo 3251D PLA60%及び木部セルロース繊維(Sappi Maastricht BVにより供給)40%を含有する等量の混合ペレットと別個に混合し、130~185℃の範囲の温度で動作する32mm径のスクリュー及び20:1のL/D比を備えたNegri Bossi v55射出成形機のホッパーに供給した。溶融した各可塑化混合物を、シングルドロップホットランナーシステムを備えた1個取りツールで、Nespressoスタイルのコーヒーマシンでの使用に好適なカプセルに射出成形した。
(実施例27)
【0068】
実施例12~18及び25~27による代表的なコーヒーカプセルを、水準容量まで挽いたコーヒー粒子を充填し、糊付けを必要としないアルミニウム製コーヒーカプセル蓋で密封した。続いて、充填されたポッドを標準的なNespressoコーヒーマシンで試験し、一定量の濾過されたコーヒーを製造した。試験した全てのカプセルは、市販のNespressoカプセルから抽出されたものとおおよそ同じ量のコーヒーを製造した。
(実施例28)
【0069】
ツキミソウのミール10kgを、1mmのふるいを備えたAMA S.p.A.製のMagico EMC70電動ミルに通し、凝集した塊を破壊した。続いて、得られたツキミソウの粉末を、タンブラー式ミキサで30重量%のキシリトール(2mmのふるいでふるいにかけたもの)と混合し、重量約13kgの混合粉末を作製した。続いて、この混合物とBioPBS FZ71PM(PTT MCC Biochem Company Ltd)とを、ツキミソウのミール/キシリトール:PBS=30:70の比率で、ZS-B 25二段式スクリューサイドフィーダを備えたWerner and Pfleiderer製のZSK 25二段式スクリュー混合機で混合した。使用したスクリューのプロファイルを表1に示すが、全てのバレル温度を10℃高く設定したことを除いては、材料成分のそれぞれの注入時点は実施例23のとおりであった。他の全ての詳細部分は、実施例23のとおりであった。
(実施例29)
【0070】
混合物28による混合ペレットを、25mm径のスクリューを備え、180~200℃の範囲の温度で動作するKrauss Maffei 120-180 PX射出成形機のホッパーに別個に供給した。溶融した可塑化混合物を、サーマルゲートホットランナーシステムを備えた2個取りツールで、フリップトップ型キャップに射出成形した。
(実施例30)
【0071】
実施例15による15個の代表的なコーヒーカプセル(重量:2.50±0.01g)を、20cm径の時計皿をかぶせた5Lのパイレックス(登録商標)製ビーカー内にて、土を湿らせるのに十分な蒸留水(貯留水を一切残さないと定義される)を含有する市販の表土(4mmのふるいに通した)2kgへと混合した。ビーカーを、58℃に設定したUnitemp温度制御オーブン内部に配置した(ISO20200-2015で詳述されている好熱性のインキュベーション期間のとおりである)。実験を、21日間~最大で合計90日間の独立した期間、放置した。
【0072】
各21日間の実験期間終了時にガラス製ビーカーを抽出して室温に冷却させると、土を別個に注意深く砕き、いくつかの無傷のカプセルを抜き出した。カプセルと破損したカプセルの大きな断片の両方を抜き出した後、土を4mmのふるいで再びふるいにかけ、いくつかの残りの断片を抜き出した。全てのカプセルを乾燥させ、続いて歯ブラシで慎重にブラッシングして付着した汚れの一部を除去し、その後写真撮影した。90日間の試験期間が終了するまで、さらに21日間の試験期間にわたり再度土に染みこませるために戻した。90日間の試験期間の終了時には、全てのカプセルは、4mmのふるいを通らない30重量%未満の断片に崩壊した。
【0073】
概要
実施例1~6及び8~10は、高い充填量のオイルシードミール粉末を含むポリマー複合材料を説明している。実施例7、11、25及び26では、フィラー材料が使用されている。
全ての調製物によって、実施例12~18及び25~26ではコーヒーカプセル、実施例19~22では飲料用マドラー、及び実施例29ではフリップトップ型キャップといった使い捨て可能物品の調製が可能となる。コーヒーカプセルは、実施例27に示されるように、Nespresso(登録商標)コーヒーマシンで使用するのに十分な強度であった。さらに、ツキミソウのミールから作製されたコーヒーカプセルは、実施例30に示されるように、生分解性が高いことが判明した。
【0074】
本発明は、以下の条項によって要約され得る:
1.ポリマー複合材料であって、
a.全重量の5~94.5重量%の量のポリマーと;
b.全重量の少なくとも5重量%の量の粉砕したオイルシードミールと;
c.成分b)の5~50w/w%の量の可塑剤と;
d.任意のフィラーと;
e.任意の添加剤と、を含み、
c)は、55~210℃の範囲の溶融温度を有する固体可塑剤である、
ポリマー複合材料。
2.成分a)は、生分解性ポリマー、好ましくはPLA、又はその誘導体若しくはそのポリマーブレンドを含む、条項1に記載のポリマー複合材料。
3.成分a)は、全重量の30~70重量%の量で、好ましくは全重量の30~50重量%の量で存在する、条項2に記載のポリマー複合材料。
4.成分b)は、粉砕したボリジミール、若しくは粉砕したローズヒップミール、若しくは粉砕したアヒフラワーミール、若しくは粉砕したツキミソウのミール、若しくは粉砕したブラックカラントのミール、又はそれらの混合物を含む、条項1~3のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
5.粉砕したオイルシードミールと、成分b)の最大50w/w%の粉砕した搾油かす/ケーキ、粉砕した搾りかす、粉砕した蒸留かす、粉砕した醸造かす(若しくは醸造麦芽のかす/おり)、粉砕したビスケットミール若しくはその個々の成分、粉砕した全種子、粉砕した全根、粉砕した全豆、粉砕した茎及び/若しくは葉、粉砕した穀物の全粒粉、豆類の粉、又はそれらの混合物との混合物を含む、条項1~4のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
6.成分b)又は請求項5に記載の混合物は、全重量の30~70重量%の量で存在する、条項1~5のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
7.成分c)として、ポリオール、ポリ官能性アルコール、例えばモノグリセリドエステル、ジグリセリドエステル及びトリグリセリドエステルといったカルボン酸とエステルなどの両性可塑剤、単糖、二糖及びオリゴ糖、又はその混合物を含む、条項1~6のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
8.成分c)は、成分b)の22~40w/w%の量で存在する、条項1~7のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
9.成分d)として、天然繊維、好ましくはセルロース繊維若しくはリグノセルロース繊維、並びに/又は炭酸塩(炭酸水素塩を含む)、リン酸塩、フェロシアン化物、シリカ、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩(粘土鉱物及びタルクの全ての形態を含む)、二酸化チタンから好ましくは選択される無機フィラー、並びに/又は炭素系フィラー、又はそれらの組合せを含む、条項1~8のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
10.成分d)は、全重量の1~40重量%の量で存在する、条項1~9のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
11.添加剤として、相溶化剤、香料、熱安定化剤及びUV安定化剤、並びに/若しくは着色剤、又はそれらの混合物を含む、条項1~10のいずれか一項に記載のポリマー複合材料。
12.条項1~11のいずれか一項に記載のポリマー複合材料を調製するためのプロセスであって、ポリマー複合材料は、高温混合技術によって作製され、好ましくはカレンダー加工、押出成形、射出成形及び圧縮成形により所望の製品へと成形し、冷却して最大の強度及び一体性特性を発揮することができる溶融プラスチック状態(融解状態)を生み出す成分は、熱及びせん断力の下で組み合わせられる、プロセス。
13.130~210℃の範囲の温度で実施される、条項12に記載のプロセス。
14.2つの工程であって、第1の工程では最初に中間体を形成し、第2の工程では中間体と残りの成分とを組み合わせる、2つの工程で実施される、条項12又は13に記載のプロセス。
15.条項1~11のいずれか一項に記載のポリマー複合材料を含む、固体の物品。
16.混合されたペレット、押し出しされた製造工程中の製品、射出成形された物品、ブロー成形された物品、フィルム若しくはロータ成形されたプラスチック物品、2液性成形物品、積層体、3D印刷フィラメント、フェルト、織布、編布、刺繍布、不織布、ジオテキスタイル、繊維又は固形シートの形態である、条項15に記載の固体の物品。
17.コーヒーポッド、カトラリー、食品トレイ又は1回限り使用するための包装品の形態である、条項15又は16に記載の固体の物品。
18.条項1~11のいずれか一項に記載のポリマー複合材料の調製に使用するための、条項14に記載のプロセスによって調製されるような中間体。

【国際調査報告】