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特表2023-544605金属有機構造体およびH2を生成するための金属有機構造体の使用。
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  • 特表-金属有機構造体およびH2を生成するための金属有機構造体の使用。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(54)【発明の名称】金属有機構造体およびH2を生成するための金属有機構造体の使用。
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20231017BHJP
   B01J 31/38 20060101ALI20231017BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20231017BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20231017BHJP
   C07F 1/08 20060101ALI20231017BHJP
   C07F 7/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J31/38 M
C01B3/04 A
C07F19/00
C07F1/08 Z
C07F7/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520427
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2021077404
(87)【国際公開番号】W WO2022073979
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】20382882.7
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.PYREX
(71)【出願人】
【識別番号】511000083
【氏名又は名称】コンセホ スペリオール デ インベスティガシオネス シエンティフィカス(セエセイセ)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS(CSIC)
【住所又は居所原語表記】C/Serrano,117,E-28006 Madrid,Spain
(71)【出願人】
【識別番号】522191314
【氏名又は名称】ウニヴェルシダッド ポリテクニカ デ バレンシア
(71)【出願人】
【識別番号】522154375
【氏名又は名称】パリ サイエンス エ レトレ
(71)【出願人】
【識別番号】515185843
【氏名又は名称】エコール・シュペリュール・ドゥ・フィシック・エ・ドゥ・シミー・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ヴィル・ドゥ・パリ
(71)【出願人】
【識別番号】505351201
【氏名又は名称】セントレ ナシオナル デ ラ ルシェルシェ シエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】512073725
【氏名又は名称】エコール ノルマル シュペリウール
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ナバロン オルトラ,セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】バレス ガルシア,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】カブレロ アントニーノ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ゴメス,エルメネヒルド
(72)【発明者】
【氏名】セール,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ムーチャハム,ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,リン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H048
4H049
4H050
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA04
4G169AA11
4G169BA28A
4G169BA28B
4G169BA48A
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB09A
4G169BC12A
4G169BC18A
4G169BC21A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC35A
4G169BC36A
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC52A
4G169BC52B
4G169BC58A
4G169BC59A
4G169BC60A
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BD09A
4G169BE01A
4G169BE06A
4G169BE07A
4G169BE08A
4G169BE14A
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE22A
4G169BE33A
4G169BE34A
4G169BE38A
4G169BE41A
4G169BE41B
4G169BE45A
4G169CB81
4G169CC33
4G169DA03
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EB19
4G169EC25
4G169EC28
4G169FA01
4G169FA03
4G169FC08
4G169HA01
4G169HB10
4G169HE09
4H048AA01
4H048AB40
4H049VN06
4H049VP06
4H050AA01
4H050AB40
(57)【要約】
本発明は、その構造中に配位子としてピラゾールを有し、三金属中心を含む金属有機構造体(MOFs)に関する。特に、本発明は、式(I)のユニットを含むMOFsに関する。本発明は、前記材料を用いた、液体の水または水蒸気から開始される、Hを生成するための光触媒法にもまた関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その構造中に式(I)のユニットを含むことを特徴とする金属有機構造体の使用であって:
【化1】

、MおよびMは、CoおよびCuを含む一覧から選択される金属カチオンであり、M、MおよびMは、互いに等しく;
Xは、H、CH、OCH、SO 、F、Cl、Br、I、NH、CFを含む一覧から選択される置換基であり;
YはCOOであり;
Zは、H、CH、OCH、SO 、F、Cl、Br、I、NH、CFを含む一覧から選択される置換基であり、
、L、LおよびLは、O2-、OH、HOおよびハロゲン化物を含む一覧から独立して選択される基であり、
、n、nおよびnは、0または1から独立して選択される数である、
水から開始される素の光触媒生産のための触媒としての金属有機構造体の使用。
【請求項2】
XはHであり、ZはH以外である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
XおよびZがHである、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
、L、LおよびLが、ClおよびOHから独立して選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
、MおよびMがCuカチオンであり;
XおよびZがHであり、
Yが-COHであり、かつ
、L、LおよびLがCl、OHであるか、または存在しない、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記構造における式(I)のユニットの割合が、
配位子の合計に対して、モルで15%~100%の間である、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記材料の前記単位格子が、以下の式を含み:
[MIV (μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)(式(I))・(溶媒)
IVは、ZrまたはHf oまたはそれらの組み合わせから選択される四価の金属であり;
「p」は、1~1000の間の整数であり;
前記溶媒は、HO、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドまたはホルムアミドを含む一覧から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記材料の前記単位格子が、以下の式を含む、請求項1に記載の使用:
[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-O)(μ-Py-4-CO(OH)(HO)
[Hf(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-O)(μ-Py-4-CO(OH)(HO)
または
[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-Py-4-CO
【請求項9】
前記材料が、前記H光触媒生成反応に有利に働く助触媒として作用する、前記細孔内に収容された1つ以上の種を含み、
前記助触媒は、以下を含む一覧から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用:
・前記金属白金、金、イリジウム、銀、ロジウムおよびニッケル、パラジウムおよびそれらの組み合わせのナノ粒子、
・コバルト、銅、ルテニウム、モリブデン、ストロンチウム、ジルコニウムおよびそれらの組み合わせから選択される金属酸化物のナノ粒子。
・モリブデン、カドミウム、亜鉛、鉛、インジウム、銅、タングステンおよびこれらの組合せと組み合わされた、硫化物、セレン化物またはテルル化物に基づく、金属カルコゲニドのナノ粒子。
前記金属が、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、白金およびイリジウムであり、かつ、前記有機配位子が、アミン型、イミン型または複素環型の窒素原子、およびそれらの組み合わせを含む金属錯体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の金属-有機構造体を、液体または蒸気状態の水と、太陽光または人工光の存在下で接触させることを含む、水から開始される、水素を製造するための光触媒方法。
【請求項11】
前記金属-有機構造体が、1ミクロン~20ミクロンの間の厚さの薄膜の形態で堆積され、かつ、
0.5cm~12cmの間の厚さの水の床が、4℃~40℃の間の温度および0.1ml/時~2ml/時の間の速度で前記膜の上を流れるように構成され、
前記膜が、太陽光または人工光に曝露される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属-有機構造体が、数ミクロンの厚さの薄膜の形態で堆積され、かつ、
100℃~150℃の間の温度での水蒸気の流れが、0.1ml/時~2ml/時の間の速度で前記膜の上を流れるように構成され、
前記膜が、太陽光または人工光に曝露される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
下記式を含むことを特徴とし:
[MIV (μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)(式(I))・(溶媒)
IVは、ZrまたはHfまたはそれらの組み合わせから選択される四価の金属であり;
「p」は、1~1000の間の整数であり、かつ、「m」は、0~50の間の整数であり;
前記溶媒は、HO、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドまたはホルムアミドを含む一覧から選択され;
式(I)は、
前記材料が、式:[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)][Cu(μ-O)(μ-PyC)(HO)を含まないことを条件として、請求項1~9のいずれか1項に記載の式(I)の前記ユニットを指す、金属-有機構造体。
【請求項14】
[Hf(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-O)(μ-Py-4-CO(OH)(HO)
または
[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-Py-4-COから選択される、請求項13に記載の金属-有機構造体。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ピラゾールに連結した三金属中心によって形成される配位子(または金属の節点(node)間の連結体(connector))をその構造中に含む金属-有機構造体、ならびに太陽光への曝露の下で、Hを生成するためのその使用について記載する。
【0002】
〔最新の技術水準〕
金属-有機構造体(MOFs)は、結晶性かつ多孔性材料であり、その構造は、剛性有機配位子との配位結合およびクーロン相互作用によって連結される、1つ以上の金属原子を含む節点によって形成される。M(OH) 12-のユニット(unit)によって構成される、これらのMOFsの金属節点は当技術分野で既知であり、Mは、例えば、Zr+4、Ce4+およびHf4+などの四陽性(tetrapositive)金属カチオンであり、かつ、有機配位子は、トリメシン酸および1,3,5(4-カルボキシフェニル)ベンゼン(Liu,Q. et al., Mesoporous Cages in Chemically Robust MOF Created by Large Number of Vertices with Reduced Connectivity. Journal of American Chemical Society 2019、141、488-496)などのトリカルボン酸芳香族化合物である。これらの構成要素は、当該文書に付随する図1に示されるようなX線回折を有する固体に対応する多孔質構造を定義する。これらのMOFs材料はその表面積および組成に由来する様々な特性を有し、その中でも、その高いガス吸着能力および触媒活性がある。
【0003】
本発明により直接的に関連して、化学反応を促進することができる、UV-可視または近赤外領域に対応する波長の光子を、いくつかのMOF材料に照射したときに、いくつかのMOF材料は光触媒活性を示すことが、当技術分野において知られている。光触媒としてMOFsを使用する特定の場合は、照射源が地球の表面に到達する自然太陽光である場合に関する。地球の表面上の太陽放射のスペクトルは、太陽エネルギーの約48%に寄与する400nm~800nmの間の可視領域における光子および近赤外領域における残りの低エネルギー光子に加え、全エネルギーの約4%に対応する380nm超のUV領域における波長を有する光子分布に対応する。
【0004】
MOF型金属-有機材料について記載されている光触媒反応のうち、本発明に特に関連するものは、液相または蒸気相のいずれかにおいて、水と接触させたこれらの材料に照射することによるHの生成である。ほとんどない前例の特殊なケースは、蒸留水、淡水、または海水を使用したHの光触媒生成であり、水の組成に応じた量のHおよびOが同時に生成される。このタイプのプロセスは、光触媒水分解(splitting)として最新技術水準において知られており、かつ、記載された証拠は、水が電子供与体および受容体化合物として同時にふるまうことを示す。光触媒水分解において起こる反応は、当該プロセスのエンタルピー変化もまた含む以下の式において示される。
【0005】
【数1】
【0006】
非化石燃料を基盤とした再生可能エネルギーに照らして、上記の反応は、エネルギーの一次源としての太陽光を化学エネルギーに変換する、具体的には、燃料電池または燃焼系におけるエネルギーベクトルとして使用することができるHに変換する方法として役立ち得る。さらに、Hは、水素化または還元反応における化学試薬として機能し得る。
【0007】
それにもかかわらず、HOから開始されるHの光触媒生成の潜在能力にもかかわらず、最新技術水準の状態では、あらゆる工業的プロセスで使用されるには非常に不十分かつ依然として不充分な効率を有するMOF物質が記載されている(A. Dhakshinamoorthy, Z. Li, H. Garcia., Catalysis and photocatalysis by metal organic frameworks, Chem. Soc. Rev. 2018, 47, 8134-8172)。さらに、記載されたMOF型光触媒は、Hの生成におけるその光触媒性能を高めるために貴金属および特に白金を必要とする。白金は、高価な金属であるため、MOF材料中にそれを含めることにより、前記材料を著しくより高価にし、プロセスの経済的魅力を低減させる。さらに、今日までに記載したMOF材料の光触媒活性は、照射がもっぱら可視光で行われ紫外光で行われない場合には、その効率の50%未満にかなり低下するため、これらの材料の太陽輻射は非常に非効率的である。
【0008】
最新の技術水準を考慮すると、その組成物において貴金属の存在が必要でなく、かつ、その光触媒応答は主に、電磁気スペクトルの可視領域または近赤外領域における照射に由来する、Hの効率的な生成のための光触媒としてのMOF材料の開発は、重要であると考えられている。
【0009】
〔発明の説明〕
本発明者らは、その構造内に、ピラゾールに連結された三金属中心によって形成されたユニット(下記の式(I)で表される)を含むMOF材料が、太陽光の照射によって、水をHおよびOへと分解させるための光触媒活性を有することを実証した。
【0010】
ピラゾールに連結された三金属中心によって形成された前記ユニットは、前記材料の構造の金属節点間の配位子または連結体として作用し、それぞれのユニットは、配位結合および/またはクーロン相互作用によって前記構造の3つの金属節点に配位する。
【0011】
このように、本発明の第1の態様は、その構造中に式(I)のユニットを含むことを特徴とする、水から開始される水素の光触媒生産のための触媒としての、金属-有機構造体の使用に関する:
【0012】
【化1】
【0013】
、MおよびMは、CoおよびCuを含む一覧(list)から選択される金属カチオンであり、かつM、MおよびMは、互いに等しく;
Xは、H、CH、OCH、SO 、F、Cl、Br、I、NH、およびCFを含む一覧から選択される置換基であり;
YはCOOであり;
Zは、H、CH、OCH、SO 、F、Cl、Br、I、NH、およびCFを含む一覧から選択される置換基であり、
、L、LおよびLは、O2-、OH、HOおよびハロゲン化物を含む一覧から独立して選択される基(group)であり、
、n、nおよびnは、0または1から独立して選択される数であり、
式(I)は、必要とされるL、L、LおよびL基を含み(0から、すなわちn、n、nおよびnがすべて0である場合であってもよく、4まで、すなわちn、n、nおよびnがすべて1である場合であってもよい)、前記金属カチオンの電荷を補填する。
【0014】
前記用語「ハロゲン化物」は、F、Cl、BrまたはIに関する。
【0015】
特定の実施形態において、XおよびZはHである。
【0016】
特定の実施形態において、L、L、LおよびLは、ClおよびOHから独立して選択される。
【0017】
好ましい実施形態において、M、MおよびMはCuカチオンであり;XおよびZはHであり、Yは-COHであり、かつL、LおよびLはClであり、かつLOHまたはO2-であるか、または存在しない。
【0018】
特定の実施形態では、当該材料は、30重量%までのL、L基およびL基を含み、L、L基およびL基は酢酸塩(acetate)、安息香酸塩(benzoate)、ピリジンカルボン酸塩(pyridinecarboxylate)またはこれらの組合せから選択される。
【0019】
本発明で使用される材料は、図1に示されるようなX線回折図を有する。
【0020】
式(I)のこれらのユニットは、MOFにおいて、最新の技術水準の区分で議論される、トリメシン酸と同様のタイプのトリカルボン酸有機配位子として作用し、金属節点に配位する。当該配位子を配位させることが可能な金属節点の中には、(Zr(OH)12+、(Hf(OH)12+があり、最新の技術水準における他の公知の節点もまた可能である。好ましくは、当該節点は(Zr(OH)12+のユニットである。
【0021】
さらに、これらの節点では、1つ以上の金属カチオンを他の金属で置き換えることが可能である。したがって、例えば、節点(Zr(OH)12+のZr4+カチオンの1つ以上が、Ce4+またはTi4+またはそれらの組み合わせで置き換えられた、6つのカチオンの組み合わせを有することができる。同様に、他の金属節点は、2つ以上の異なる金属を含むことができる。
【0022】
本発明の使用は、式(I)のユニット(配位子)を、同様の分子寸法を有する別のトリカルボン酸配位子と組み合わせて含有するMOF材料にもまた関連する。式(I)のユニット(配位子)の割合は、配位子の合計に対してモルで15%~100%の間で変化し得、配位子の合計に対してモルで10%~25%の間であることがより好ましい。式(I)のユニットに加えて、存在し得る可能な配位子の非限定的な例として、トリス(4-カルボキシフェニル)メタン、トリス(4-カルボキシフェニル)アミンおよび1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼンなどのポリカルボキシ芳香族酸がある。
【0023】
好ましい実施形態において、本発明において使用される材料の単位格子は、下記式を含むことを特徴とする:
[MIV (μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)(式(I))・(溶媒)
IVは、ZrまたはHfまたはそれらの組み合わせから選択される四価の金属であり;
「p」は、1~1000の間の整数であり、かつ、「m」は、0~50の間の整数であり;
前記溶媒は、HO、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドまたはホルムアミドを含む一覧から選択され;
(式(I))は、上記で定義した式(I)のユニットを指す。
【0024】
好ましい実施形態では、材料の単位格子は、式:
[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-O)(μ-Py-4-CO(OH)(HO)
を含む。
【0025】
この場合では、式(I)のユニットは:
[Cu(μ-O)(μ-Py-4-CO(OH)(HO)]であり、COは置換基「X」であり;かつ「Z」はHであり;LはOHであり、LはHOであり、Lは存在せず、かつLはO2-である。
【0026】
好ましい実施形態では、材料の単位格子は、式:
[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-OH)(μ-Py-4-CO(OH)(HO)]
を含み、別の好ましい実施形態では、材料の単位格子は、式:
[Hf(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-O)(μ-Py-4-CO(OH)(HO)
を含む。
【0027】
この場合では、式(I)のユニットは、
[Cu(μ-O)(μ-Py-4-CO(OH)(HO)]であり、COは置換基「X」であり;かつ「Z」はHであり;LはOHであり、LはHOであり、Lは存在せず、かつLはO2-である。
【0028】
別の好ましい実施形態では、材料の単位格子は、式:
[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-Py-4-CO
を含み、この場合では、式(I)のユニットは、
[Cu(μ-Py-4-CO
であり、COは置換基「X」であり;かつ「Z」はHであり;L、L、LおよびLは存在しない。
【0029】
別の好ましい実施形態において、本発明において使用される材料は、
前記H光触媒生成反応に有利に働く助触媒として作用する、前記細孔内に収容された1つ以上の種を含む。前記助触媒は、以下であり得る:
・前記金属白金、金、イリジウム、銀、ロジウムおよびニッケル、パラジウムおよびそれらの組み合わせのナノ粒子、
・コバルト、銅、ルテニウム、モリブデン、ストロンチウム、ジルコニウムおよびそれらの組み合わせから選択される金属酸化物のナノ粒子。
・モリブデン、カドミウム、亜鉛、鉛、インジウム、銅、タングステンおよびこれらの組合せと組み合わされた、硫化物、セレン化物またはテルル化物に基づく、金属カルコゲニドのナノ粒子。
・前記金属が、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、白金およびイリジウムであり、かつ、前記有機配位子が、アミン型、イミン型または複素環型の窒素原子、およびそれらの組み合わせを含む金属錯体。
【0030】
本発明による用語「ナノ粒子」は、10nm~100nmの間の寸法を有する粒子に関する。
【0031】
好ましい実施形態では、本発明で使用される材料が、その細孔内に収容された助触媒として、1重量%の白金および1重量%の酸化ルテニウムを含む(前記細孔は0.5nm~5nmの間のサイズを有する)。
【0032】
式(I)のユニットをその組成物中に含むこれらのMOF材料は、マイクロメートルの大きさまたはそれより小さいナノメートル規模の大きさの粒子によって構成され得る。それらはまた、八面体として、および立方体または不規則な形態として定義された、幾何学的形状を有することができ、これらの材料は、横方向寸法と厚さとの間に高いアスペクト比もまた有することができる。
【0033】
最新の技術水準から推論することができない予想外の方法では、式(I)のユニットを含むこれらの材料は、水分解において、他のMOFについて最新技術水準で知られている活性より1桁の大きさ超える高い光触媒活性を示す。緑色植物に存在する天然の光合成系におけるOの発生の中心と同様に、本明細書に記載される材料の予想外の光触媒活性は、式(I)の中心における3つの金属イオンの協同作用に由来し得る。このように、連続して、光子エネルギーは、同じO原子に配位した三つの金属イオンの酸化状態の連続的な変化を促進し得、プロトン化と脱プロトン化過程によってOの発生を促進する。
【0034】
本発明はさらに、金属-有機構造体を、本発明の第1の態様において述べたように、光、好ましくは太陽光の存在下で、液体または蒸気状態の水と、接触させることを含む、水から開始される、水素を製造するための光触媒方法に関する。
【0035】
本発明の第1の態様において示される材料の全ての好ましい実施形態は、光触媒方法に関する本発明の当該態様にもまた適用可能である。
【0036】
式(I)のユニットを含むMOF材料に対する照射によるHの光触媒生成は、適切な量の材料を水性媒体中に懸濁させ、当該懸濁液を太陽光線の直接作用に曝露することによって行うことができる。水性媒体は、10×10-6-1・m-1以下のイオン伝導率を有する蒸留水、または河川および井戸からの別のタイプの天然水、または海水および汽水でもよい。反応は、形成された気体の収集および好都合な分離または処理を可能にする密閉容器中で実施されなければならない。反応は、25℃より高いかまたは低い室温で実施することができる。あるいは、放射は、MOFを基板とする光触媒膜を水蒸気に曝露することによって行うことができる。当該反応は、鏡、レンズ、または他の光学装置を使用して、自然光または集光太陽光で同様に実施することができる。放射は、紫外領域、可視領域、または近赤外領域のいずれか、ならびにそれらの組み合わせにおいて、様々な波長を有する人工光によってもまた実施することができる。照射源は、白熱灯または放電灯、ならびに発光ダイオードであり得る。放射はさらに、例えば、レーザ源に由来するものなどの単色であってもよい。
【0037】
照射は、光触媒を液相または気相中の水と接触させることによって行うことができる。式(I)を含むMOFは、液体および蒸気の両方の流体中の懸濁液中に分散させることができ、または膜もしくはコーティングの形態で固定化することができる。反応は、150℃までの材料の熱安定性範囲内で、25℃以上または25℃以下の温度で行うことができる。
【0038】
照射は、大気圧および、0.01MPa~5MPaの間の大気圧より低いまたはより高い圧力の両方で実施することができる。放射は、両方の場合において、バッチ法によって行うことができ、一定量の水が導入され、変換が起こるまでの間放置され、連続的に、液相または気相の水が光触媒と接して流れる。
【0039】
本方法の好ましい実施形態では、本発明の前記材料が、1ミクロン~20ミクロンの間の厚さの薄膜の形態で堆積され、かつ、0.5cm~12cmの間の厚さの水の床(bed)が、4℃~40℃の間の温度および0.1ml/時~2ml/時の間の速度で前記膜の上を流れるように構成され、前記膜が、太陽光または人工光に曝露される。
【0040】
別の好ましい実施形態では、本発明の材料が、数ミクロンの厚さの薄膜の形態で堆積され、かつ、100℃~150℃の間の温度での水蒸気の流れが、0.1ml/時~2ml/時の間の速度で前記膜の上を流れるように構成され、前記膜が、太陽光または人工光に曝露される。
【0041】
本発明の最後の態様は、本発明に記載されるように、式(I)のユニットをその構造中に含むことを特徴とする金属-有機材料に関するものであり、式:
[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-O)(μ-PyC)(HO)
を含まないことを条件とし、「PyC」は、Py-4-COを指す。
【0042】
本発明の第1の態様において示される材料の全ての好ましい実施形態は、材料自体に関連する本発明のこの最後の態様にもまた適用可能である。
【0043】
〔材料特性〕:
本発明の材料は、その構造中に式(I)のユニットを含み、細孔内に収容された助触媒をさらに含有することができる、いわゆる金属-有機構造体の種類の結晶性および多孔性固体である。したがって、これらの材料は、化学分析技術、X線回折、ガス吸着、分光測定の組み合わせによって特徴付けられる。
【0044】
これらの材料の化学分析は、水性媒体中の濃縮HFなどのような適切な媒体中に完全に溶解させた後に行うことができる。材料を溶解させた後、得られた液体を、誘導結合プラズマ(ICP)による分析に供し、原子発光分光法(AES)によって、またはマススペクトロメトリーによって、信号を測定し、キャリブレーションパターンに対する前記信号を定量化する。
【0045】
前記材料の結晶化度およびその構造は、X線回折パターンによって決定され、前記回折ピークは、決定された角度値、および結晶構造に基づいた強度で記録される。図1は、本発明に対応する材料のX線回折パターンを示す。
【0046】
表面積は、77Kの温度での窒素吸着によって決定することができ、様々な相対圧力で吸着したこの気体の体積量を決定する。吸着に加えて、脱着測定もまた実施することができる。ミクロ細孔体積および細孔寸法は、実験の吸着値を理論モデル(BJH-Barrett-Jolenda-Halenda)に適合させることによって確立させることができる。本発明の材料における、表面積の典型的な数値は、500m/g-1~2000m/g-1の間である。
【0047】
X線光電子分光法は、前記材料中に存在する式(I)のユニットの検出および定量化を可能にし、これにより、信号の補正によって、それぞれの原子の相対的な比率を確立することが可能となる。
【0048】
細孔内に収容された助触媒を含む、本発明の材料は、透過顕微鏡技術によって分析することができる。透過顕微鏡技術では、ナノ粒子の存在を観察することができ、かつ、これらのナノ粒子の寸法の分散を決定することができる。共触媒は、1を超えるカチオンを含有する金属節点と共に、水素および酸素発生の光触媒プロセスの効率を増加させることに寄与する。
【0049】
紫外-可視吸収分光法は、材料によって吸収される光子の波長を確立することを可能にする。これらのスペクトルは、拡散反射モードによって記録することができる。拡散反射モードでは、固形材料を試料ホルダに充填し、試料ホルダが焦点において積分球を完成させるように配置される。この球の内部は吸収される放射によって照らされ、吸収された強度は、硫酸バリウムパターンとの比較によって決定される。光応答および光電流測定は、外部回路に接続され、共通の電解液中に浸漬されたアノードとカソードとの間で電流を生成することに繋がる放射の波長の確立を可能にする。これらの光電流測定は、式(I)のユニットを含む材料の薄層を透明導電性電極上に堆積させることによって実施される。この電極は、電流測定値を決定し、最終的に電極にバイアス電圧を印加することを可能にするポテンショスタットに、電気的に接続される。作用電極もまた、ポテンショスタットに接続され、ポテンショスタットは、白金プレートと、その電位値が知られている参照電極とであってもよい。
【0050】
pH値および温度に対する材料の安定性は、その固体試料を、25℃~100℃の間の加熱に供することができる既知のpHで水溶液中に分散させることによって確立することができ、溶液中の金属含有量は、時間に対する元素分析によって測定される。本発明の材料は、4~8のpH範囲において安定であり、および80℃までの温度で、24時間を超える時間、安定である。
【0051】
材料の熱安定性は、熱天秤上での熱重量測定によって確立することができる。これらの測定において、重量損失は、系の温度に従って確立され、これらの重量損失は、材料の分解に起因する。本発明の材料は、150℃まで安定であり得ることが観察される。
【0052】
〔図面の簡単な説明〕
図1. Philips X'Pert装置によって記録された本発明の対象材料に対応するX線粉末回折図。
【0053】
〔実施例〕
本発明と、完全な水分解を促進することができる金属-有機構造の結晶構造体中に式(I)のユニットを含む材料と、を概説したが、本発明に従ってHの生成をどのように行うことができるかを示すいくつかの実施例を以下に記載する。
【0054】
<実施例1.式[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-O)(μ-PyC)(HO)(「PyC」は、Py-4-COを意味する)を有するMOFを使用した、pH7の水相中の懸濁液における、太陽光の照射による光触媒水分解>
材料は、最新技術水準(Liu, Q. et al. Journal of the American Chemical Society 2019, 141, 488-496)からわずかに修正された手順に従って予め製造し、かつそのX線パターンは図1に示されるものに対応し、かつその式は、化学分析と一致する。簡潔に述べると、Cu(NO・3HO(0.2mmol;48.3mg)、H-ピラゾール-4-カルボン酸(0.2mmol;23.5mg)およびZrOCl・8HO(0.12mmol;38.7mg)を含む3つの溶解物1mlを、20mlのガラスバイアルにおいて、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)と連続的に混合し、これに対して、450μlの酢酸を加える。バイアルを密封し、予熱したオーブンに100℃で12時間置く。その後、前記バイアルを室温まで冷却し、上澄み液を分離する。得られた固体を、DMF(3×5ml)、および次いでアセトニトリル(3×5ml)で洗浄する。固体材料は、その使用のためにアセトニトリル中に貯蔵される。50mgのこの材料を、50mlの蒸留水中で磁気撹拌することによって分散させ、密閉することができる70mlのPyrexガラス反応器の内部に置く。照射開始前に、系中に存在するOの量を減少させるために、反応開始前の少なくとも1時間、反応器を通してバブリングされた1ml/分のアルゴン流によって、反応器の溶液および自由体積をパージした。前記系は、地球の表面の太陽光照射をまねた、AM 1.5フィルタを備えたXeランプからなるソーラーシミュレータのビームに曝露されることにより、照射される。放射出力は100mW・cmであり、反応器の曝露された面は13cmであった。ソーラーシミュレータのビームの出口と光反応器との間の距離は、約10cmであった。放射中の系の温度は25℃~35℃の間で変化した。模擬太陽光への曝露を24時間行い、HおよびOの存在を検出および定量化することができるガスクロマトグラフによって反応器の自由体積の組成を分析する。24時間後、これらの条件下でのHおよびOの値は、それぞれ6mmolおよび2.5mmolであった。材料[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-O)(μ-PyC)(HO)はこれらの反応条件下で安定であり、Hの存在が体積中で検出されなくなるまで、最初の使用後に系をアルゴンでパージし、次いで、このプロセスをさらに24時間繰り返すと、上に列挙したものと同じ値のHおよびOの生産が観察される。
【0055】
<実施例2.光触媒として、白金ナノ粒子を含む[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-O)(μ-PyC)(HO)を用いた、pH7の水相中の懸濁液における、太陽光の照射による光触媒水分解>
白金を含む材料[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-O)(μ-PyC)(HO)の光触媒反応の前に、実施例1からのユニットCu(Py-4-COH)OHを含むMOFから開始される材料を製造した。Ptは、塩化白金酸を使用する光堆積法によって堆積される。したがって、50mgのMOFを、3:1の体積比の水-メタノール中にで分散させ、ここで、3mgの塩化白金酸を予め水中に溶解させ、かつ石英管中に導入する。次に、実施例1に示すように、光触媒試験を実施する。24時間後、これらの条件下でのHおよびOの値は、それぞれ10mmol×g-1および4.5mmol×g-1であった。白金ナノ粒子を有する材料[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-O)(μ-PyC)(HO)は、これらの反応条件下で安定であり、最初の使用後、Hの存在が光反応器の体積中で検出されなくなるまで系をアルゴンでパージし、かつ、次いで、当該プロセスをさらに24時間繰り返すと、上に列挙したものと同じ値のHおよびOの生産が観察される。
【0056】
<実施例3.白金および酸化ルテニウムを含む[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-O)(μ-PyC)(HO)を用いた、pH7の水相中の懸濁液における、太陽光の照射による光触媒水分解>
水から開始されるHおよびO生成の前に、今度は白金および酸化ルテニウムのナノ粒子を助触媒として含む、ユニットCu(Py-COOHを含むMOF材料を製造する。Pt-RuOの製造は、実施例1で使用したMOF50mgを水メタノール中に3:1の体積比率で分散させた水溶液中に、水に溶解させた塩化白金酸および過ルテニウム酸カリウムから開始される両方の金属を同時に堆積させることによって実施される。アルゴンで系をパージした後、この混合物に、可視-紫外光を発するランプを用いて4時間照射する。次に、実施例1に示すように、光触媒試験を実施する。24時間後、これらの条件下でのHおよびOの値は、それぞれ12mmol×g-1および5.5mmol×g-1であった。白金およびルテニウムナノ粒子を用いた材料[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)]-[Cu(μ-O)(μ-PyC)(HO)は、これらの反応条件下で安定であり、最初の使用後、Hの存在が反応器中で検出されなくなるまで系をアルゴンでパージし、その後、前記プロセスをさらに24時間繰り返すと、上に列挙したものと同じ値のHおよびOの生産が観察される。
【0057】
<実施例4.[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)(Co(Py-CO]を用いた、pH7の水相中の懸濁液における、太陽光の照射による光触媒水分解>
MOF構造の組成物における柔軟性は、トリスピラゾリルユニットのCuをCoで置き換える可能性によって示される。この材料の製造は、Cu化合物の製造のための最新の技術水準に従って実施されるが、トリス(2-カルボキシ)ピラゾリル銅を、トリス(2-カルボキシ)ピラゾリルコバルトで置換し、そして最新の技術水準(Liu, Q. et al. Journal of the American Chemical Society 2019, 141, 488-496)において示される工程が後に続く。このように、手順は実施例1において示されるとおりであるが、銅材料を他の同様の材料で置換し、ここで、銅をコバルトで置換した。示された条件下での光触媒水分解法は、それぞれ3mmol×g-1および1.2mmol×g-1のHおよびOの値を生じる。
【0058】
<実施例5.各々が直列に接続された約20cmの6つのモジュールを含む1m板上に堆積された[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)(Cu(Py-CO]を用いた、連続光触媒水分解>
材料[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)(Cu(Py-CO]は、実施例4で使用した材料に対応する。最初に、各モジュール中にMOFを堆積させるために、乳鉢中で、MOF100mgを、エタノールにおける市販の5% Nafion溶液5mlに、手動で分散させることにより、Nafionおよびエタノールを含むペーストを、製造する。このペーストは、続いて、テフロン支持体上に堆積され、それを、カミソリ刃として知られる方法に従って、非常に薄い厚さを提供する刃で広げる。その後、当該プレートを100℃で24時間乾燥させる。Hの生成は、pH7の水相において、自然の太陽光を照射することにより実施され、周囲条件下で測定したバレンシアの晴天日では、400mlのHを生成する。
【0059】
<実施例6.実施例5に記載されるようなプレート上に堆積された[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)(Cu(Py-CO]を用いた、気相中における光触媒水分解>
の生成は、キャリアガスとして0.5ml×分-1のN流を用いて、60℃の温度の水蒸気と自然の太陽光とを照射することにより実施し、周囲条件下で測定した600mlのHを得た。
【0060】
<実施例7.[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)(Cu(Py-CO]を用いた、高温での、pH7の水相中の懸濁液における、太陽光の照射による光触媒水分解>
予め合成した材料であって、そのX線パターンが図1に示した材料に相当する材料50mgを、磁気撹拌手段により、50mlの蒸留水中に分散させ、密閉可能な70mlのガラス反応器内に入れる。照射開始前に、系中に存在するOの量を減少させるために、反応の開始前に少なくとも1時間、反応器を通して、バブリングされた1ml/分のアルゴン流の手段によって、溶液および反応器の自由体積をパージした。この系は、地球の表面の太陽光照射をまねた、AM1.5フィルタを備えたXeランプからなるソーラーシミュレータのビームへの曝露によって照射される。放射出力は100mW・cmであり、反応器の曝露された面は13cmであった。ソーラーシミュレータのビームの出口と光反応器との間の距離は、約10cmであった。放射中の系の温度は、20℃~100℃の間で変化した。模擬太陽光への曝露を24時間行い、HおよびOの存在を検出および定量化することができるガスクロマトグラフによって反応器の自由体積の組成を分析する。24時間後、これらの条件下でのHおよびOの値は、100℃において、それぞれ2mmolのHおよび0.9mmolとOであった。材料[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)(Cu(Py-CO]はこれらの反応条件下で安定であり、最初の使用後反応器の体積中にHの存在が検出されなくなるまで系をアルゴンでパージする際および、次いで、当該プロセスをさらに24時間繰り返す際、同じ値のHおよびOの生産が、上に記載したものと同様に観察される。
【0061】
<実施例8.[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)(Cu(Py-CO]を用いた、pH7の水相中の懸濁液における、太陽光の照射による、塩水の光触媒水分解>
次に、光触媒試験を、実施例1に示すように、塩水を用いて行う。24時間後、これらの条件下でのHおよびOの値は、それぞれ、4mmol×g-1および2.5mmol×g-1であった。材料[Zr(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)(Cu(Py-CO]はこれらの反応条件下で安定であり、系を、最初の使用後、光反応器の体積中にHの存在が検出されなくなるまでアルゴンでパージする際、および、その後、当該プロセスをさらに24時間繰り返す際、同じ値のHおよびOの生産が、上に記載したものと同様に観察される。
【0062】
<実施例9.式[Hf(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)(Cu(Py-CO]を有するMOFを用いた、pH7の水相中の懸濁液における、太陽光の照射による光触媒水分解>
光触媒水分解のための本明細書に記載のMOF材料の組成物における柔軟性を再度明らかにするために、最新の技術水準(Liu, Q. et al. Journal of the American Chemical Society 2019, 141, 488-496)に記載されている合成方法に従って、節点の位置のZrIVをHfIVで置き換えることができる。材料[Hf(μ-O)(μ-OH)(OH)(HO)(Cu(Py-CO]は、実施例1に記載された材料と同一の、太陽光の照射によるHの生成における効率を示す。さらに、以下のプロセスは、実施例2、3、および4に示すプロセスに匹敵し、PtまたはPt-RuOを材料の細孔に組み入れることができ、また、組成物においてCuをCoで置換することもまたでき、図1に示すX線回折図に対応する同一の構造を維持する。
【0063】
<実施例10.[Zr(μ-O)(μ-OH)(Cu(OH)(Py-CO](HO)の効率を、最新の技術水準で既知の関連材料Zr(μ-O)(μ-OH)(BDC-NH(BDC-NH:2-アミノ-1,4-ベンゼンジカルボキシレート)と比較した比較研究>
本発明は驚くべきことに、Hの生成における、式Iを含む有機構造体の高い光触媒活性を記載する。[Zr(μ-O)(μ-OH)(Cu(OH)(Py-CO](HO)の光触媒活性とZr(μ-O)(μ-OH)(BDC-NH(A. Dhakshinamoorthy, Z. Li, H. Garcia., Catalysis and photocatalysis by metal organic frameworks, Chem. Soc. Rev. 2018, 47, 8134-8172)の光触媒活性との比較は進歩性を示す。したがって、実施例1に対応する材料は、実施例1に記載の照射条件下で、24時間後のHおよびOの生産がそれぞれ6mmolおよび2.5mmolである。比較して、最新の技術水準に記載されているように製造された同様の材料Zr(μ-O)(μ-OH)(BDC-NHは、同じ条件下で、それぞれ0.125mmolおよび0.031mmolのHおよびOを生成する。材料Zr(μ-O)(μ-OH)(BDC-NHは、2-アミノテレフタル酸(1.0mmol)をZrCl(0.233g、1mmol)と、3mlのジメチルホルムアミドを含むテフロン被覆オートクレーブ中で混合することによって製造する。オートクレーブを100℃の温度で24時間加熱する。系を室温まで冷却し、得られた沈殿物を回収し、ジメチルホルムアミドで洗浄し、溶媒としてメタノールを使用するソックスレー連続抽出装置に導入する。最後に、固体を100℃のオーブン中で24時間乾燥する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】Philips X'Pert装置によって記録された本発明の対象材料に対応するX線粉末回折図。
図1
【国際調査報告】