(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】コバルトを少なくとも40重量%含有するフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒、それを使用するフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)方法、及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/89 20060101AFI20231018BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231018BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20231018BHJP
C10G 2/00 20060101ALI20231018BHJP
C07C 1/04 20060101ALI20231018BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20231018BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
B01J23/89 M
B01J37/08
B01J37/02 101C
B01J37/02 101D
C10G2/00
C07C1/04
C07C9/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522382
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2021077171
(87)【国際公開番号】W WO2022078782
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521538103
【氏名又は名称】ベロシス テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VELOCYS TECHNOLOGIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】レオナルドゥッツィ ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ ディアーミッド
(72)【発明者】
【氏名】プリッチャード ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ロボタ ハインツ ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA14
4G169BA02B
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BB04A
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4G169BC33A
4G169BC64A
4G169BC64B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC69A
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4G169CC23
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4G169DA08
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4G169EA06
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4G169EB18Y
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4H006AA02
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4H006BA85
4H006BD81
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4H129AA01
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4H129KD26X
4H129KD26Y
4H129NA21
4H129NA37
(57)【要約】
本発明は、コバルトを約40重量%超含み、かつ充填見掛けかさ密度が約1.30g/mL超であるフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルトを約40重量%超含み、かつ充填見掛けかさ密度が約1.30g/mL超である、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒。
【請求項2】
触媒のコバルトの充填見掛けかさ密度が約0.60g/mL超、又は約0.65g/mL超、又は約0.70g/mL超、約0.75g/mL超、又は約0.80g/mL超である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
触媒がコバルトを約45重量%超、又は約50重量%超含む、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
触媒の充填見掛けかさ密度が約1.35g/mL超、又は約1.40g/mL超、又は約1.45g/mL超、又は約1.50g/mL超、又は約1.55g/mL超、又は約1.60g/mL超である、請求項1~3のいずれかに記載の触媒。
【請求項5】
触媒の平均コバルト粒子径が、約5nm~約20nmである、請求項1~4のいずれかに記載の触媒。
【請求項6】
触媒が貴金属を約3重量%未満、又は約1重量%未満、又は約0.5重量%未満含む、請求項1~5のいずれかに記載の触媒。
【請求項7】
貴金属がレニウム及び/又は白金を含む、請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
触媒が触媒担体を含む、請求項1~7のいずれかに記載の触媒。
【請求項9】
触媒担体がシリカを含む、請求項8に記載の触媒。
【請求項10】
触媒担体が酸化物、任意にチタニア酸化物を含む、請求項8又は9に記載の触媒。
【請求項11】
触媒担体が酸化物を最大約30重量%含む、請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
触媒担体は、アルミナが非存在である、請求項8~11のいずれかに記載の触媒。
【請求項13】
触媒が、約10モル%の不活性トレーサーガスのフィード流、約354.6kPa(3.5atm)の絶対圧力で約10のH
2/CO比、及びCO変換率が約18.0%と約22%との間になるような流速で、約180℃での少なくとも約48時間の稼働の後、コバルト1グラムあたり毎時約55ミリモル、又は約60ミリモル、又は約65ミリモル、又は約70ミリモル、又は約75ミリモル、又は約80ミリモル、又は約85ミリモル、又は約90ミリモルCO超のCO水素化の速度を発現する、請求項1~12のいずれかに記載の触媒。
【請求項14】
CO及びH
2を含むガス混合物を、請求項1~13のいずれかに記載の触媒上を通過させるステップを含む、反応器内でフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応を実施する方法。
【請求項15】
C
5+液体の生産性が、1時間あたり触媒1mLあたり約50ミリモルCOの体積CO消費速度で、1時間あたり触媒1gあたり少なくとも液体約0.5gである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
C
5+液体の生産性が、1時間あたり触媒1mLあたり約100ミリモルCOの体積CO消費速度で、1時間あたり触媒1gあたり少なくとも液体約1.0gである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
分離ステップ前の反応の生成物が、メタンを約15%以下、又は約10%以下、又は約5%以下含む、請求項14~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
反応器がマイクロチャネル反応器である、請求項14~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
新鮮な触媒を使用する反応温度が約210℃未満、又は約205℃未満である、請求項14~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
ワックス生成物のアルファが約0.94超、又は約0.95超である、請求項14~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
触媒の失活速度が0.6%/日未満、又は0.4%/日未満である、請求項14~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
CO及びH
2を含む反応物ストリームと
請求項1~13のいずれかに記載の触媒を含む反応器とを含む、
フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応システム。
【請求項23】
a)含コバルト化合物を含む溶液又は懸濁液に担体の細孔容積の100%超を含浸させるステップ、及び
b)溶液又は懸濁液の還流温度よりも低い温度の熱の下で乾燥させるステップ
を含む、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒の作製方法。
【請求項24】
c)含浸された担体を焼結させるステップ、をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップa)が、担体の細孔容積の105%超、又は110%超、又は115%超、又は120%超、又は125%超、又は130%超、又は135%超を含浸させるステップを含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
ステップa)、b)、及び、存在する場合にc)が、1回又は2回以上繰り返される、請求項23~25のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含コバルトフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒に関し、特に、マイクロチャネル反応器内での使用のための含コバルトFischer-Tropsch触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応は、一酸化炭素及び水素から燃料を生成するために広く使用されており、下記の反応式により表すことができる。
(2n+1)H2+nCO→CnH2n+2+nH2O
【0003】
この反応は高度に発熱性であり、高温(通常、少なくとも180℃、例えば、200℃以上)及び高圧(例えば、少なくとも1000kPa)の条件下で、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒、通常、コバルトベースの触媒により触媒される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生成物混合物が得られ、nは通常、1~約90の範囲を包含する。軽ガス(例えば、メタン)選択率を最小限にする、すなわち、生成物混合物中のメタン(n=1)の比率を最小化し、かつ、C5以上(n≧5)のパラフィンに対する選択率を、通常、約80%以上又は約85%以上の水準に最大化することが望ましい。好ましくは、生成物混合物の少なくとも約40%w/wはn≧20である。これは、より軽い生成物からより重い生成物に選択率を移行することは、経済的価値を高めるからである。稼働温度を含む、この選択率に影響を与えるいくつかの因子が存在し、稼働温度の低下は軽炭化水素の選択率の低下をもたらす。選択率を比較するために使用されるパラメーターはAnderson-Schulz-Floryのアルファ値である。アルファの値が高い程、軽炭化水素の選択率が低くなる。アルファの高い値において、アルファの小さな変化は生成物の収率に多大な経済的効果を有する。これは表1に図示されている。例として、そしてVervloetら(Catal. Sci. Technol., 2012, 2, 1221-1233)のモデルを指標として使用することで、210℃から200℃への稼働温度のシフトは、アルファを0.03上昇させることができる。従って、好ましくは生産性を犠牲にすることなく、低温で反応を実施することが望ましい。
【0005】
【0006】
水素及び一酸化炭素原料は、一般的に、合成ガスである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
文脈上、特に指示がない限り、用語「合成ガス」を含有するいかなる句は、水素及び一酸化炭素を主に含むガスを意味すると解釈される。二酸化炭素、窒素、アルゴン、水、メタン、タール、酸性ガス、高分子量炭化水素、オイル、揮発性金属、チャー(char)、リン、ハロゲン化物及び灰等の他の成分も、任意に存在していてもよい。
【0008】
合成ガスを説明するための上記用語の使用は、限定的なものとして捉えられるべきではない。当業者は、用語のそれぞれが主として水素及び一酸化炭素を含むガスを意味すると解釈されることを理解するはずである。
【0009】
合成ガスは、例えば、少なくとも約600℃以上、又は少なくとも約700℃以上、又は少なくとも約800℃以上の高温で炭素質材料を気化させることにより、任意に製造されるものであってもよい。上記炭素質材料は、合成ガスを製造するために気化可能ないかなる炭素含有材料を任意に含んでいてもよい。上記炭素質材料は、バイオマス(例えば、植物性又は動物性素材、及び生分解性廃棄物等)、食物資源(例えば、トウモロコシ及び大豆のようなもの等)、及び/又は石炭(例えば、低グレード石炭、高グレード石炭、及び清浄石炭等)、油(例えば、原油、重油、タールサンドオイル、及びシェールオイル等)、固形廃棄物(例えば、都市の固形廃棄物、危険廃棄物)、廃棄物由来燃料(RDF)、タイヤ、石油コークス、くず、ごみ、バイオガス、下水汚泥、動物性の廃棄物、農業廃棄物(例えば、トウモロコシの葉や茎、スイッチグラス、刈り取った草)、建築解体材、プラスチック材料(例えば、プラスチック廃棄物)、綿繰り機械廃棄物、及びそれらの2又は3以上の混合物等の非植物資源を任意に含んでいてもよい。
【0010】
あるいは、合成ガスは、任意に、天然ガス又は埋立地ガスの改質、又は嫌気性消化法(anaerobic digestion processes)により製造されるガスの改質等による他の手法により製造されるものであってもよい。さらに、合成ガスは、任意に、水素源(例えばいわゆる「電気から燃料へ」プロセス)のような電気分解を使用したCO2改質により製造されるものであってもよい。
【0011】
上述のとおりに製造された合成ガスは、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒を供給する準備において、任意に、蒸気改質(例えば、メタンをSMR触媒の存在中で蒸気と反応させる蒸気メタン改質(SMR,steam methane reforming)反応)、部分酸化、自己熱改質、二酸化炭素改質、水性ガスシフト反応、又はそれらの2又は3以上の組み合わせにより、H2のCOに対するモル比を調節するために処理してもよい(新鮮な合成ガスとも呼ばれる)。
【0012】
用語「水性ガスシフト反応」又は「WGS」は、一酸化炭素及び水を水素及び二酸化炭素に変換することを含む熱化学的方法として解釈される。WGS反応後に得られる合成ガスは、シフトされた(すなわち調節された)合成ガスと解釈され得る。
【0013】
新鮮な合成ガスにおけるH2のCOに対するモル比は、約1.6:1~約2.2:1、又は約1.8:1~約2.1:1、又は約1.95:1~約2.05:1の範囲内であることが好ましい。
【0014】
上記新鮮な合成ガスは、任意に、それ自体もH2及びCOを含有する再生されたテールガス(例えば再生されたフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)テールガス)と組み合わせることで反応物混合物を形成してもよい。上記テールガスは、任意に、H2のCOに対するモル比が約0.5:1~約2:1、又は約0.6:1~約1.8:1、又は約0.7:1~約1.2:1の範囲内であるH2及びCOを含んでいてもよい。
【0015】
前述の反応物混合物は、任意に、約1.4:1~約2.1:1、又は約1.7:1~約2.0:1、又は約1.7:1~約1.9:1の範囲内のモル比でH2及びCOを含んでいてもよい。
【0016】
再生されたテールガスが使用される場合、新鮮な合成ガスの、反応物混合物を形成するために使用される再生されたテールガスに対する体積比は、任意に、約1:1~約20:1、又は約1:1~約10:1、又は約1:1~約6:1、又は約1:1~約4:1、又は約3:2~約7:3、又は約2:1の範囲内であってもよい。
【0017】
高度に発熱性であるフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応の帰結は、工業スケールプロセスが有効に稼働するように反応熱を除去する必要性である。この問題への一つのアプローチは、熱が除去される速度が、熱が生み出される速度で適切なペースを維持することができるように容量生産性を制限することである。これは、当該技術において、一般的に使用されているスラリー気泡塔反応器及び従来の固定床反応器の背後にある原理である。あるいは、マイクロチャネル反応器内等、反応熱をより効率的に除去できる反応器設計を使用することで、プロセス目標値の数度以内で局所的な反応温度を依然維持させながら、容量生産性を何倍にも上昇させることができる。これは、より小さな反応器が十分に高い生産速度で経済的目標を達成することを可能とする。
【0018】
低い生産性反応器に対し、高い容量生産性の一つの側面は、与えられた触媒体積が経由するより高い一時的な夾雑物負荷である。例として、容量生産性が通常の固定床反応器よりも10倍高い場合、夾雑物関連失活の速度も概して10倍高くなる。これは、合成ガスフィード中の超微量の触媒毒の許容可能な濃度への極めて厳しい耐性を要する。
【0019】
この問題を軽減するための一つの可能性のある方法は、触媒投入物(catalystcharge)の単位体積あたりの反応サイト数を増加させることである。従って、同じ容量生産性でかつ同じ時間平均夾雑物濃度では、被毒を通じて投入物が稼働するのに非経済的となる前に、より長い時間を要する。そのようなアプローチは、スラリー気泡塔又は従来の固定床である、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)合成において採用される二つの通常の反応システムのいずれかにおいては限定された値を有する。スラリー気泡塔では、容量生産性はスラリー中の許容可能な固形分により拘束されている。結果的に、スラリー気泡塔反応器は、通常フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)マイクロチャネル反応器において採用されている生産性よりもはるかに下回るそれらの容量生産性の観点で本質的に拘束されている。従来の固定床反応器内では、より短く経済的価値の低い炭化水素への変換選択率に基づく過剰な物質移動効果を防ぐために高度に設計された触媒形状を採用することは、反応サイト密度の増加により、温度制御及びプロセス安定性がさらにいっそう問題となり得る。従って、本発明は、マイクロチャネル反応器内で特に有利である。
【0020】
上記の観点において、触媒投入物の単位体積あたりの反応サイト数を増加させることが望ましい。これを達成し得る手段としては二通りある。
a)コバルト結晶子サイズを低減させる。これは金属表面積の増加、そして結果的に活性の上昇をもたらし得る。しかし、これは低メタン選択率及び触媒の失活の上昇を妥協することになる。
b)コバルト負荷(loading)パーセントを上昇させる。これはコバルト金属表面積及び密度を増加させ得るが、触媒作製手順の冗長性をもたらす。
【0021】
従来技術の触媒は、上記a)又はb)のいずれか一方で改良されたものである。
【0022】
仏国特許公開第2992236号明細書は、TiO2で少なくとも部分的に被覆されたSiCベースの触媒担体を記載している。5%~40質量%のコバルトは次に上記担体上に堆積され、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応で使用される。表2は、コバルトが10質量%である3つの触媒を記載しており、そして上記表のデータから、これらの触媒のコバルトの充填見掛けかさ密度(PABD;a packed apparent bulk density)が0.078~0.084g/mLであることが推測できる。
【0023】
Caoらは(Catalysis Today, 2009, 140, 149-156)、直径が150及び45μmであるアルミナベースの含コバルト触媒のマイクロチャネル反応器内での使用を記載している。しかし、上記触媒のコバルト負荷はわずか30重量%であった。
【0024】
参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2016/011299号パンフレットは、Co3O4及び第二の酸化物を含む組成物であって、組成物中のCo3O4の平均粒子径は少なくとも8.8nmであり、上記組成物の間隙率は少なくとも0.35である組成物を記載している。上記組成物は、任意に、30~60重量%のコバルトを含んでいてもよい。しかし、上記コバルトの充填見掛けかさ密度は、0.4~0.49g/mLのおおよその範囲内で比較的低く維持される。
【0025】
従って、当該技術において、a)及びb)の両方を同時に改良し、これにより触媒のコバルト負荷及び充填見掛けかさ密度の両方を上昇させる触媒の必要性が存在する。高い活性及び改良された夾雑物安定性を有し、一方で、生成物選択率を維持し、そして好ましくは簡易な合成で得られる触媒が望まれている。
【0026】
本発明の第一の態様によれば、コバルトを約40重量%超含み、かつ充填見掛けかさ密度が約1.30g/mL超であるフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒が提供される。
【0027】
上記触媒のコバルトの充填見掛けかさ密度は、任意に、約0.60g/mL超であってもよい。従って、本発明の別の態様によれば、コバルトを約40重量%超含み、かつコバルトの充填見掛けかさ密度が約0.60g/mL超であるフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒が提供される。
【0028】
発明者らは、触媒中のコバルトの重量%と、触媒の充填見掛けかさ密度の両方を増加させることができ、このようにしてより大きなコバルトの充填見掛けかさ密度をもたらしている。本発明の触媒は、従来技術の触媒(国際公開第2016/011299号パンフレットに開示されているそれらのように)と比較して、およそ2倍のコバルトの充填見掛けかさ密度を達成できる。発明者らは、コバルトの充填見掛けかさ密度のこの増加は、触媒寿命の間、特に硫黄及び窒素被毒に対する向上した毒安定性、及びより高い安定性を導くことを見出している。
【0029】
上記触媒は、任意に、コバルトを約45重量%超、又は約50重量%超含んでいてもよい。
【0030】
上記触媒は、任意に、コバルトを約60重量%以下、又は約55重量%以下含んでいてもよい。
【0031】
上記触媒は、任意に、コバルトを約40%~約60重量%、又はコバルトを約45%~約60重量%、又はコバルトを約50%~約60重量%含んでいてもよい。上記触媒は、任意に、コバルトを約40%~約55重量%、又はコバルトを約45%~約55重量%、又はコバルトを約50%~約55重量%含んでいてもよい。
【0032】
上記触媒の充填見掛けかさ密度は、任意に、約1.35g/mL超、又は約1.40g/mL超、又は約1.45g/mL超、又は約1.50g/mL超、又は約1.55g/mL超、又は約1.60g/mL超であってもよい。
【0033】
上記触媒の充填見掛けかさ密度は、任意に、約1.70g/mL以下、又は約1.65g/mL以下であってもよい。
【0034】
上記触媒の充填見掛けかさ密度は、任意に、約1.30g/mL~約1.70g/mL、又は約1.35g/mL~約1.70g/mL、又は約1.40g/mL~約1.70g/mL、又は約1.45g/mL~約1.70g/mL、又は約1.50g/mL~約1.70g/mL、又は約1.50g/mL~約1.65g/mLであってもよい。
【0035】
上記触媒のコバルトの充填見掛けかさ密度は、任意に、約0.65g/mL超、又は約0.70g/mL超、又は約0.75g/mL超、又は約0.80g/mL超であってもよい。
【0036】
上記触媒のコバルトの充填見掛けかさ密度は、任意に、約0.90g/mL以下であってもよい。
【0037】
上記触媒のコバルトの充填見掛けかさ密度は、任意に、約0.60g/mL~約0.90g/mL、又は約0.65g/mL~約0.90g/mL、又は約0.70g/mL~約0.90g/mL、又は約0.75g/mL~約0.90g/mL、又は約0.80g/mL~約0.90g/mLであってもよい。
【0038】
上記触媒のコバルト粒子径及び/又は平均コバルト粒子径は、任意に、約5nm~約20nm、又は約5nm~約15nm、又は約6nm~約12nm、又は約8nm~約10nmであってもよい。上記触媒のコバルト粒子径、及び/又は平均コバルト粒子径は、任意に、約20nm未満、又は約19nm未満、又は約18nm未満、又は約17nm未満、又は約16nm未満、又は約15nm未満、又は約14nm未満、又は約13nm未満、又は約12nm未満、又は約11nm未満であってもよい。発明者らは、コバルト粒子が適度な径であることを確実にすることで、コバルト高負荷触媒の利用及び効率を最大化することが可能であることを見出した。これまでは、コバルト負荷を増加させることは、コバルト粒子径の増加をもたらし(den Breejen et al., J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 20, 7197-7203に示されるように)、その結果、触媒効率の低下をもたらすと考えられていた。
【0039】
上記触媒は、任意に、少なくとも一つの貴金属を含んでいてもよい。上記貴金属は、任意に、例えばPd、Pt、Rh、Ru、Re、Ir、Au、Ag及びOsの1又は2以上であってもよい。好ましくは、上記貴金属はルテニウム、レニウム及び/又は白金の1又は2以上である。より好ましくは、上記貴金属はレニウム及び/又は白金の1又は2以上である。上記触媒は、任意に、貴金属を(触媒の合計重量に対して)約3重量%未満、又は約1重量%未満、又は約0.5重量%未満含んでいてもよい。上記触媒は、任意に、貴金属を(触媒の合計重量に対して)約0.01%~約3重量%、又は約0.05%~約1重量%、又は約0.1%~約0.5重量%含んでいてもよい。
【0040】
上記触媒は、促進剤(promoters)又は変性剤(modifiers)として1又は2以上の他の金属ベースの成分を任意に含んでいてもよい。これらの金属ベースの成分は、任意に、さらに炭化物、酸化物又は元素金属として触媒中に存在していてもよい。上記1又は2以上の他の金属ベースの成分に適切な金属は、任意に、例えばZr、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Tc、Cd、Hf、Ta、W、Re、Hg、Tl及び4fブロックのランタノイドの1又は2以上であってもよい。適切な4fブロックのランタノイドは、任意に、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及び/又はLuであってもよい。上記1又は2以上の他の金属ベースの成分の金属は、任意に、例えばZn、Cu、Mn、Mo及びWの1又は2以上であってもよい。1又は2以上の他の金属ベースの成分の金属は、任意に、例えばRe及びPtの1又は2以上であってもよい。上記触媒は、他の金属の合計において、任意に、約0.01~約10%(触媒の合計重量のパーセンテージで全ての他の金属の合計重量に基づく)、又は他の金属の合計において、任意に、約0.1~約5%、又は他の金属の合計において、任意に、約3%含んでいてもよい。
【0041】
上記触媒は、任意に、触媒担体を含んでいてもよい。上記担体は、任意に、耐火性金属酸化物、炭化物、窒化物、又はそれらの2又は3以上の混合物を含んでいてもよい。上記担体は、任意に、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、又はそれらの2又は3以上の混合物を含んでいてもよい。あるいは、又はさらには、上記担体は、任意に、アルミナが非存在であってもよい。上記担体の表面は、任意に、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、クロミア、アルミナ、又はそれらの2又は3以上の混合物を用いた処理により変性させてもよい。担体に使用される材料及び担体を変性させるために使用される材料は、任意に異なっていてもよい。
【0042】
好ましくは、上記担体はシリカを含む。シリカの表面は、任意に、チタニア等の耐火性固体酸化物で処理されるものであってもよい。担体を変性させるために使用される材料は、任意に、担持された触媒の安定性(例えば、失活を低下させることにより)を向上させるために使用されるものであってもよい。上記変性した担体は、任意に、シリカ及びチタニアを含んでいてもよい。担体を変性させるために使用される材料は、任意に、担持された触媒の安定性(例えば失活を低下させることにより)を向上させるために使用されるものであってもよい。
【0043】
上記触媒担体は、任意に、担体の表面を変性させるために使用される酸化物(例えば、シリカ、チタニア、マグネシア、クロミア、アルミナ、又はそれらの2又は3以上の混合物)を約30重量%まで、又は約1%~約30重量%、又は約2%~約20重量%、又は約3%~約15重量%、又は約4%~約10重量%、又は約5%~約8重量%含むものであってもよい。
【0044】
上記触媒担体は、任意に、構造化された形状、ペレット、又は粉末の形態であってもよい。上記触媒担体は、任意に、粒状固体の形状であってもよい。
【0045】
上記触媒は、任意に、少なくとも炭化物又は酸化物のいくつかを元素金属に変換するための、例えば、水素及び/又は炭化水素ガス(例えば、メタン)中、又は、窒素及び/若しくはメタン等の別のガスで希釈された水素又は炭化水素ガス中で触媒前駆体を加熱することにより、任意に、活性化され、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒を製造する触媒前駆体に由来するものであってもよい。上記活性触媒において、コバルトは、任意に、少なくとも部分的にその炭化物又は酸化物の形態であってもよい。
【0046】
上記触媒は、任意に、反応器内部に嵌合するいかなる大きさ及び幾何学的構成を有していてもよい。上記触媒は、任意に、メジアン粒子径が約1~約1000μm、又は約10~約750μm、又は約25~約500μmである粒状固体(例えば、ペレット、粉末、及び繊維等)の形態であってもよい。上記メジアン粒子径は、任意に、50~約500μm又は約100~約500μm、又は約125~約400μm、又は約170~約300μmの範囲内であってもよい。上記触媒は、任意に、粒状固体の固定床の形態であってもよい。
【0047】
上記触媒は、任意に、約10モル%の不活性トレーサーガスのフィード流、約354.6kPa(3.5atm)の絶対圧力で約10のH2/CO比、及びCO変換率が約18%と約22%との間になるような流速で、約180℃での少なくとも約48時間の稼働の後、コバルト1グラムあたり毎時約55ミリモルCO超のCO水素化の速度を発現するものであってもよい。
【0048】
上記触媒は、任意に、約10モル%の不活性トレーサーガスのフィード流、約354.6kPa(3.5atm)の絶対圧力で約10のH2/CO比、及びCO変換率が約18%と約22%との間になるような流速で、約180℃での少なくとも約48時間の稼働の後、コバルト1グラムあたり毎時約60ミリモルCO超、又はコバルト1グラムあたり毎時約65ミリモルCO超、又はコバルト1グラムあたり毎時約70ミリモルCO超、又はコバルト1グラムあたり毎時約75ミリモルCO超、又はコバルト1グラムあたり毎時約80ミリモルCO超、又はコバルト1グラムあたり毎時約85ミリモルCO超、又はコバルト1グラムあたり毎時約90ミリモルCO超のCO水素化の速度を発現するものであってもよい。
【0049】
上記触媒は、任意に、約10モル%の不活性トレーサーガスのフィード流、約354.6kPa(3.5atm)の絶対圧力で約10のH2/CO比、及びCO変換率が約18%と約22%との間になるような流速で、約180℃での少なくとも約48時間の稼働の後、コバルト1モルあたり毎秒約1.20ミリモルCO超、又はコバルト1モルあたり毎秒約1.25ミリモルCO超、又はコバルト1モルあたり毎秒約1.30ミリモルCO超、又はコバルト1モルあたり毎秒約1.35ミリモルCO超、又はコバルト1モルあたり毎秒約1.40ミリモルCO超、又はコバルト1モルあたり毎秒約1.45ミリモルCO超、又はコバルト1モルあたり毎秒約1.50ミリモルCO超のCO水素化の速度を発現するものであってもよい。
【0050】
本発明の別の態様によれば、CO及びH2を含むガス混合物を、本発明の第一の態様による触媒上を通過させるステップを含む、反応器内でフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応を実施する方法が提供されている。
【0051】
上記反応器は、任意に、例えば固定床反応器、連続撹拌槽反応器、スラリー気泡塔反応器、循環流動床反応器、又はマイクロチャネル反応器であってもよい。好ましくは、上記反応器はマイクロチャネル反応器である。マイクロチャネル反応器は、本出願人の名称で、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2016/201218号パンフレット、及び同様にLeViness et al. “Velocys Fischer-Tropsch Synthesis Technology - New Advances on State-of-the-Art”, Top Catal., 2014, 57, 518-525において開示されている。
【0052】
発明者らは、本発明の触媒は、特にマイクロチャネル反応器内において効果的であることを見出した。マイクロチャネル反応器の能力は、高い容量生産性を維持しながらも、軽炭化水素選択率が低減された生成物組成を得るために、それらの高い反応サイトの密度を十分に活かす(capitalize)ことを可能とする、ほぼ等温条件を維持することである。
【0053】
さらにマイクロチャネル反応器は、固定床反応器等の従来の反応器と比較してフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応を増大させるために設計されている。コバルトの重量%が増加し、充填見掛けかさ密度が増加した本発明による触媒は、従来技術の触媒よりもこの増大した反応に有利に適している。
【0054】
「マイクロチャネル」は、少なくとも一つの内法寸法(壁から壁、触媒は計測しない)が10mm以下、好ましくは2mm以下、及び1μm超(好ましくは10μm超)、そしていくつかの実施形態において50~500μmであるチャネルであり、マイクロチャネルは、長さが少なくとも10mm、好ましくは少なくとも200mmで、これらの寸法以内にとどまることが好ましい。いくつかの実施形態において、長さが50~1000mmの範囲内、そしていくつかの実施形態において100~600mmの範囲内である。マイクロチャネルは、さらに少なくとも一つの出口と区別されている少なくとも一つの入口の存在により定義される。マイクロチャネルは単にゼオライト又はメソポーラス材料内を通るチャネルではない。マイクロチャネルの長さは、マイクロチャネル内を通る流れ方向に対応している。マイクロチャネルの高さ及び幅はチャネル内を通る流れ方向に実質的に垂直である。マイクロチャネルが二つの主要面を有する積層デバイスの場合において(例えば、積層かつ接合されたシートにより形成された表面)、高さは主要面から主要面までの距離であり、幅は高さに対して垂直である。マイクロチャネルは、任意に、直線又は実質的に直線、すなわちマイクロチャネル(「遮るもののない」は粒子導入前を意味する)内を通して遮るもののない直線状の線を描くことができるものであってもよい。通常、デバイスは、共通のヘッダー及び共通のフッターを共有する複数のマイクロチャネルを含む。いくつかのデバイスが単一のヘッダー及び単一のフッターを有する場合であっても、マイクロチャネルデバイスは複数のヘッダー及び複数のフッターを有していてもよい。
【0055】
マイクロチャネル反応器は、少なくとも一つの寸法(壁から壁、触媒は計測しない)が10mm以下、好ましくは2mm以下(いくつかの実施形態において約1mm以下)及び100nm超(好ましくは1μm超)、そしていくつかの実施形態において50~500μmである少なくとも一つの反応チャネルの存在により特徴付けられる。触媒を含有するチャネルは反応チャネルである。より一般的に、反応チャネルは、その内部で反応が起きるチャネルである。マイクロチャネル装置は、触媒含有反応チャネルを必要としないことを除き、同様に特徴付けられる。高さ及び幅の両方は、反応器内を通る反応物の流れ方向に実質的に垂直である。上記マイクロチャネルの側部は、反応チャネルの壁により定義される。これらの壁は、セラミック、鋼等の鉄ベースの合金、又はモネル等のNi、Co若しくはFeベースの超合金等の硬質材料で作製されていることが好ましい。反応チャネルの壁用の材料の選択は、反応器で意図される反応に依存してもよい。上記反応チャンバーの壁は、任意に、耐久性を有し、かつ良好な熱伝導性を有するステンレス鋼又はインコネル(商標)を含むものであってもよい。通常、反応チャネルの壁は、マイクロチャネル装置用の主要な構造的な支持を提供する材料で形成されている。上記マイクロチャネル装置は公知の方法により作製することができ、任意に、挟み込みプレート(「シム(shims)」としても知られる)を積層させることにより製造してもよく、反応チャネル用に設計されたシムは、熱交換用に設計されたシムで挟み込まれたものであることが好ましい。いくつかのマイクロチャネル装置は、デバイス内で積層された少なくとも10層(又は少なくとも100層)を含み、これらの層のそれぞれは少なくとも10チャネル(又は少なくとも100チャネル)を含有する。上記デバイスは、任意に、より少ないチャネルを有する他の層を含有してもよい。
【0056】
熱交換流体は、プロセスチャネル(好ましくは反応マイクロチャネル)に近接した熱伝達チャネル(好ましくはマイクロチャネル)内を通じて流れてもよく、また、ガス又は液体であってもよく、そして、任意に、蒸気、液体金属、又はいかなる他の公知の熱交換流体を含んでいてもよく、上記システムは、熱交換器内で相転移させるために最適化されていてもよい。複数の熱交換層は、任意に、複数の反応マイクロチャネルで挟み込まれたものであってもよい。例えば、少なくとも10の反応マイクロチャネルで挟み込まれた少なくとも10の熱交換器、そして好ましくは少なくとも10層の反応マイクロチャネルで挟み込まれた10層の熱交換チャネルアレイ(好ましくはマイクロチャネルアレイ)がある。これらの層のそれぞれは、単純な、直線チャネルを含有してもよく、又は、層内のチャネルはより複雑な幾何学を有するものであってもよい。
【0057】
フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応はよく知られており、反応条件は、当業者に知られているいかなる条件であってもよく、例えば国際公開第2008/104793号パンフレットで論じられている条件であってもよい。例えば、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応は、任意に、約150~約300℃、又は約200~約260℃の温度で、約100~約10000kPa、又は約1500~約2500kPaの圧力で、約1.1又は約1.2~約2.2、又は約1.5~約2.0、又は約1.8のH2のCOに対するモル比で、及び約200~約5000hr-1、又は約1000~約2000hr-1のガス毎時空間速度で実施してもよい。マイクロチャネル反応器内では、上記ガス毎時空間速度は、任意に、約5000~約30000hr-1であってもよい。
【0058】
反応物の触媒との接触時間は、任意に最大約3600ミリ秒、又は最大約2000ミリ秒に及ぶものであってもよく、又は約10~約2600ミリ秒、又は約10ミリ秒~約2000ミリ秒、又は約20ミリ秒~約500ミリ秒、又は約200~約450ミリ秒、又は約240~約350ミリ秒の範囲内であってもよい。
【0059】
マイクロチャネル反応器内のガス混合物の流れの空間速度(又はガス毎時空間速度(GHSV,gas hourly space velocity))は、任意に、少なくとも約1000hr-1(プロセスマイクロチャネル内部の容積のフィード/時間/リットルの規定リットル数)、又は少なくとも約1800hr-1、又は約1000~約1000000hr-1、又は約5000~約20000hr-1であってもよい。
【0060】
上記プロセスマイクロチャネル内部の圧力は、任意に、最大約10200kPa、又は約100~約10200kPa、又は約100~約7600kPa、又は約200~約4100kPa、又は約200~約1100kPa、又は約1000~約5100kPa、又は約2000~約3100kPaの範囲内であってもよい。
【0061】
フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応の間、上記触媒は夾雑物により徐々に劣化する。そのような夾雑物は再生可能又は非再生可能な失活のいずれかを起こし得る。この触媒の劣化は、その効力を低減し、そして、活性損失を相殺し、かつ許容可能な一酸化炭素変換率を維持するために、温度を徐々に昇温させることを要する。これはSteynberg et al., “Fischer-Tropsch catalyst deactivation in commercial microchannel reactor operation”, Catalysis Today, 2018, 299, 10-13に記載されている。
【0062】
上記稼働温度は、生成物の組成が経済的に好ましくなくなるまで上昇し続ける。この点において、上記触媒活性は、再生可能なメカニズムに起因する、活性損失を逆転させる再生を通じて、部分的に回復し得る。非再生可能な失活経路は逆転しないため、連続的な再生の後の開始温度は、上記サイクルの温度操作ウィンドウが実用的でなくなるまで短くなり、触媒交換が必要とされるまで、前のサイクルのそれぞれよりも上昇する。
【0063】
上記温度上限は、比較的固定された値である。しかし、本発明の触媒を使用することにより、開始温度を実質的に低下させることができ、再生可能な失活メカニズムからの回復間のサイクルを長くし、及び非再生可能な失活メカニズムから生じる触媒交換間の全体的なサイクルを長くすることを可能とする。非限定的な例として、10℃低い初期稼働温度は、全体の稼働期間を300日以上に拡大することができる。
【0064】
従って、新鮮な触媒を使用する反応温度は、任意に、約210℃未満、好ましくは約205℃未満であってもよい。「新鮮な触媒」は、触媒がフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応で過去に使用されていないことを意味することが好ましい。新鮮な触媒を使用する反応温度は、「開始温度」とも表記されることがある。従って、上記開始温度は、任意に、約210℃未満、好ましくは約205℃未満であってもよい。
【0065】
新鮮な合成ガスからのCOの変換率は、任意に、約70%以上、又は約75%以上、又は約80%以上、又は約90%以上、又は約91%以上、又は約92%以上、又は約88%~約95%、又は約90%~約94%、又は約91%~約93%であってもよい。もしテールガス再生が使用される場合、反応物混合物(すなわち、新鮮な合成ガスと再生されたテールガス)におけるCOのためのCOのワンパス変換率は、任意に、約50%~約90%、又は約60%~約85%の範囲内であってもよい。
【0066】
上記方法のC5+液体の生産性は、任意に、1時間あたり触媒1mLあたり約50ミリモルCOの体積CO消費速度で、1時間あたり触媒1gあたり少なくとも液体約0.5gであってもよい。上記方法のC5+液体の生産性は、任意に、1時間あたり触媒1mLあたり約100ミリモルCOの体積CO消費速度で、1時間あたり触媒1gあたり少なくとも液体約1.0gであってもよい。
【0067】
分離ステップ前の反応の生成物は、任意に、メタンを約15%以下含んでいてもよい。上記生成物は、任意に、メタンを約10%以下、又は約5%以下含んでいてもよい。上記生成物は、任意に、メタンを約0.01~約10%、又は約0.1%~約5%の量で含んでいてもよい。
【0068】
上記ワックス生成物のアルファは、任意に、約0.94超、好ましくは約0.95超であってもよい。上記ワックス生成物は、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応のC25-C90ワックス炭素数生成物であることが好ましい。アルファが可能な限り大きいことが経済的価値である。発明者らは、本発明の触媒で使用できる反応温度が低いほど、良好な選択率、生成物分布、従ってアルファの大きな値を有利に供することを見出した。
【0069】
触媒の失活速度は、任意に、約300時間超、又は約3000時間超、又は約12000時間超、又は約15000時間超のフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応において、全て触媒復活又は再生が必要とされる前に使用され得るような速度であってもよい。
【0070】
上記触媒の失活速度は、任意に、1日あたり約1.6%未満、又は1日あたり約1.4%未満、又は1日あたり約1.2%未満、又は1日あたり約1.0%未満、又は1日あたり約0.8%未満、又は1日あたり約0.6%未満、又は1日あたり約0.4%未満であってもよい。
【0071】
本発明の別の態様によれば、CO及びH2を含む反応物ストリームと本発明の第一の態様による触媒を含む反応器とを含む、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応システムが提供される。
【0072】
本発明の別の態様によれば、
a)含コバルト化合物を含む溶液又は懸濁液に担体の細孔容積の100%超を含浸させるステップ、及び
b)溶液又は懸濁液の還流温度よりも低い温度の熱の下で乾燥させるステップ
を含む、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒の作製方法が提供される。
【0073】
従来技術の含コバルトフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒は、通常、ステップb)を要しない、初期湿潤含浸法を使用して作製される。しかし、初期湿潤含浸法を使用してコバルトを約40重量%超含む触媒を得るためには、8又は9回を超える含浸ステップが必要とされる。この回数は工業スケールではさらに大きくなり得るが、初期湿潤含浸法を使用して作製された高負荷触媒は、これが触媒調製に作製間接費を追加することになるため、スケールアップは実現可能性が低いことを意味する。
【0074】
図1は、一定のコバルト負荷に到達するために必要とされる合成ステップ数に基づく含浸度を上昇させる効果を示している。例として、50重量%を超えるコバルト負荷を目標とする場合、細孔容積の90%を含浸させる(初期湿潤含浸法の代表である)際に15の合成ステップが必要となる。経路の数を低減させる(及び生産コストを制限する)ため、1経路あたりの溶液量を増加させなければならない。
【0075】
発明者らは、驚くべきことに、初期湿潤含浸法の使用と比較して、過剰湿潤含浸(すなわち担体の細孔容積の100%超)の使用は、より少ない合成ステップ及びより低い生産コストで高負荷コバルト触媒の合成を可能にすることを見出した。さらに、上記過剰湿潤含浸法は、コバルトが50重量%超である触媒を達成するために必要とされる含浸の数を著しく低減することも見出した。さらに、これらの触媒は、驚くべきことに、高いコバルト負荷及び湿潤初期含浸条件にも関わらず、極めて高い効率を保持する。
【0076】
ステップa)は、任意に、担体の細孔容積の105%超、又は110%超、又は115%超、又は120%超、又は125%超、又は130%超、又は135%超を、含コバルト化合物を含む溶液又は懸濁液に含浸させるステップを含んでいてもよい。
【0077】
適切な含コバルト化合物は、コバルトベンゾイルアセトネート、炭酸コバルト、シアン化コバルト、水酸化コバルト、シュウ酸コバルト、コバルト酸化物、硝酸コバルト、酢酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、及びクエン酸コバルトを含む。これらのコバルト化合物は、個々に、又は組み合わせて使用してもよい。これらのコバルト化合物は、任意に、水和物形態又は無水形態であってもよい。コバルト化合物が炭酸コバルト又は水酸化コバルト等の水に可溶でないいくつかの場合において、化合物が水溶液又は懸濁液中に完全に溶解することを可能とするために、任意に、少量の硝酸又はカルボン酸を加えてもよい。好ましくは、上記含コバルト化合物は硝酸コバルト六水和物である。
【0078】
好ましくは、含コバルト化合物、例えば硝酸コバルトは、焼結中にクエン酸等の錯化剤と反応する。上記クエン酸は、任意に、焼結反応における錯化剤として及び/又は燃料(すなわち硝酸コバルト用の還元剤)として作用するものであってもよい。
【0079】
上記方法における使用のための適切な錯化剤は、極性の有機化合物である。好ましい錯化剤は尿素、並びに酢酸、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、プロピオン酸、コハク酸、乳酸及びシュウ酸等のカルボン酸である。錯化剤の混合物も、任意に、使用してもよい。好ましくは、上記錯化剤はクエン酸である。
【0080】
ステップb)は、溶液又は懸濁液の還流温度よりも低い温度で実施される。還流が起きないことが必須であり、そうでなければ、これは乾燥している材料を洗い流す凝縮水の原因となり、含浸したコバルト塩の均一性を低減させる可能性がある。上記温度は、任意に、約80℃~約100℃、又は約90℃~約95℃の範囲内であってもよい。ステップb)の所要時間は、所望の温度にある場合、任意に、約1分~約60分、又は約5分~約50分、又は約10分~約40分、又は約15分~30分であってもよい。
【0081】
発明者らはさらに、乾燥ステップが均一であり、乾燥した触媒が乾燥していない触媒から含浸液を引き寄せ得る温度勾配がないことを確実にすることが重要であることを見出した。
【0082】
ステップb)は、任意に、触媒が自由に流れるようになるまで実施してもよい。容易な移送のため、焼結前に触媒が自由に流れるようになることが有益である。
【0083】
溶液又は懸濁液を含浸させた担体は、好ましくは、約200℃~約350℃、より好ましくは約200℃~約250℃の範囲内の温度で、任意に焼結させてもよい。言い換えると、上記方法はさらに、任意に、含浸された担体を焼結させるステップc)を含んでいてもよい。焼結は、任意に、ボックスオーブン、炉又はロータリー焼結器内で実施してもよい。一つの非限定的な例において、焼結は、最終温度である250℃まで2℃/分のランプ速度で上昇する温度で加熱することにより実施される。上記温度は250℃で約3時間ホールドされる。もう一つの非限定的な例において、焼結は、200℃の温度まで2℃/分のランプ速度で上昇する温度で加熱し、上記温度を250℃の温度まで1℃/分のランプ速度で再度上昇させた後にその温度でさらに3時間ホールドさせる前に、200℃で約3時間ホールドさせることにより実施される。高い温度での焼結は触媒安定性を低減させる影響を及ぼし得るため、上記最終温度は約400℃を超えないことが好ましい。
【0084】
ステップa)、b)、及び、存在する場合にc)は、任意に、1回又は2回以上繰り返してもよい。ステップa)、b)、及び、存在する場合にc)は、任意に、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10回繰り返してもよい。各繰り返しについて、上記堆積ステップで使用された溶液又は懸濁液は、任意に、同じ又は異なっていてもよい。各繰り返しにおける溶液又は懸濁液が同じである場合、ステップの繰り返しにより、担体上の触媒金属量を所望の濃度まで段階的に引き上げることを可能とする。各繰り返しにおける溶液又は懸濁液が異なる場合、ステップの繰り返により、スキームが実行される一連のステップにおいて異なる触媒金属量を所望の濃度まで引き上げることを可能とする。
【0085】
本発明の別の態様によれば、
a)含コバルト化合物を含む溶液又は懸濁液に担体の細孔容積の100%超を含浸させるステップ、及び
b)還流温度よりも低い温度の熱の下で乾燥させるステップ
を含む本発明の第一の態様によるフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒の作製方法が提供されている。
【0086】
本発明の別の態様によれば、
a)含コバルト化合物を含む溶液又は懸濁液に担体の細孔容積の100%超を含浸させるステップ、及び
b)還流温度よりも低い温度の熱の下で乾燥させるステップ
を含む方法により作製されるフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒が提供されている。
【0087】
誤解を避けるために、触媒に関連する全ての特徴は、適切である場合に、任意に、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応を実施する方法に対し、反応システムに対し、及びフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒の作製方法対して適用でき、また、その逆も同様である。
【0088】
本発明の好ましい実施形態は、例として、添付の図面の
図1-3のみを参照して下記に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】
図1は、一定のコバルト負荷に到達するために必要とされる合成ステップ数に基づく含浸度を上昇させる効果を図示している。
【
図2】
図2は、再生可能毒NH
3と同じ負荷に曝露された際に二つの触媒が活性を失うのに要する時間を図示している。
【
図3】
図3は、3つの異なる触媒について、H
2S流と対比したCO変換率を図示している。
【0090】
触媒合成
表3における比較触媒1の合成は下記にまとめられている。本発明の範囲内を満たす表3及び表4における触媒1~触媒11は、Co、Ti及びReの量を変動させながらも、PD12058及びLC150の両方(それらはシリカの異なるバッチである)の上に、同様の手法で作製された。
【0091】
材料
表2は、触媒の合成において使用された材料をまとめている。
【0092】
【0093】
変性した担体の調製
16gのPD12058を量り取り、100℃のファンオーブン内に2時間置いて乾燥させた。11.66gの熱いシリカをアルミナボウルにすぐに量り入れて覆いをかぶせ、室温に冷却させた。2.5gのクエン酸を量り取り、完全に溶解するまで50℃までの熱の下で1.2mLの脱イオン水と混合させた。その後、11.54gのTALHを秤量し、冷却されたクエン酸溶液に加え、均一になるまで混合した。上記混合物をメスシリンダーに注ぎ入れ、ビーカーで1mLの脱イオン水を用いてすすぎ、25.2mLに体積調節した。上記溶液を4回に分けて冷却シリカに加え、それぞれの添加後、混合物が均一になり、液体が吸収されるまで撹拌した。最終添加後、上記含浸されたシリカを秤量されたるつぼに移し、材料が深さ10mmを超えないようにるつぼ表面を覆うように均一に伸ばした。上記るつぼをマッフル炉に移し、下記プログラムを使用して乾燥/焼結させた:100℃まで2℃/分、そして5時間ホールドさせた後、250℃まで2℃/分、そして5時間ホールドさせた。一旦材料を焼結させ、50℃未満に冷却させた後、サンプル重量を取得し、予想された材料重量と比較して、担体の純度を算出した。
【0094】
触媒合成
前のステップからの9.1gの変性させた担体材料を量り取り、アルミナボウルに入れた。12.47gの硝酸コバルト六水和物を秤量し、3.1mLの脱イオン水を加え、混合物をホットプレート上で50℃に加熱し、完全に溶解するまで撹拌させた。0.2698gの過レニウム酸を量り取り、撹拌しながら硝酸コバルト溶液に加えた。上記溶液を計量メスシリンダーに注ぎ入れ、脱イオン水で11.5mLに体積調節した。一旦室温に冷却後、上記溶液を4回に分けて変性させた担体に加え、それぞれの添加後、混合物が均一になり、液体が吸収されるまで撹拌した。
【0095】
最終添加後、上記含浸された担体を秤量されたるつぼに移し、材料が深さ10mmを超えないようにるつぼ表面を覆うように均一に伸ばした。その後上記るつぼをマッフル炉に移し、下記プログラムを使用して乾燥/焼結させた:100℃まで2℃/分、そして5時間ホールドさせた後、200℃まで2℃/分、そして3時間ホールドさせた後、250℃まで1℃/分、そして3時間ホールドさせた。一旦焼結させ、冷却させた後、含浸前に硝酸コバルト溶液に1.79gのクエン酸を添加することで上述のコバルト含浸を繰り返した。この追加ステップの焼結プログラムは、100℃まで2℃/分、そして5時間ホールドさせた後、250℃まで2℃/分、そして3時間ホールドさせるものであった。
【0096】
合成の最終ステップは、促進剤としての白金の添加であった。0.4518gのテトラミン水酸化白金を量り取り、メスシリンダーにすすぎ入れ、溶液を10.7mLまで水で注ぎ足した。その後、上記溶液を最後のステップからの、乾燥し、かつ焼結された材料に4回に分けて加え、それぞれの添加後、混合物が均一になり、液体が吸収されるまで撹拌した。
【0097】
最終添加後、上記含浸された担体を秤量されたるつぼに移し、材料が深さ10mmを超えないようにるつぼ表面を覆うように均一に伸ばした。その後、上記るつぼをマッフル炉に移し、下記プログラムを使用して乾燥/焼結させた。100℃まで2℃/分、そして5時間ホールドさせた後、250℃まで2℃/分、そして3時間ホールドさせた。一旦最終触媒を冷却した後、秤量し、ラベルされたボトルに移した。
【0098】
過剰湿潤含浸
過剰湿潤含浸触媒の乾燥について、ロータリーエバポレーターをロータリー乾燥単位に適合させた。これは、含浸触媒を加熱下で乾燥させ、工業用パドル乾燥の動作を大まかに模倣したロータリーパドルフラスコ内に混ぜ入れることを可能とした。還流を防ぐために、いかなる蒸発水分と共に、開放された容器内及び真空管の外へ空気流を作り出す容器の内部のネックの付け根(base)で真空管をホールドさせた。水により可能となるよりも大きな温度範囲を可能とするため、加熱浴中で、加熱媒体として鉱物油を使用した。
【0099】
例として、過剰液体含浸により担体を含浸させた後に、模擬パドル乾燥装置内で乾燥させて、パドルフラスコ内部で含浸した材料が自由に流れるようになるまで溶液の体積を減少させることにより、本発明による触媒(10%TiO2/AGC上の42.0%Co、0.2%Re、0.03%Pt)を調製した。パドルにより適切な混合を可能とするのに十分な材料を与えるために75mLの担体で試験を実施した。乾燥について、油浴を60℃に予熱した。それぞれのステップについて、移送中の損失を最小限にするために、乾燥フラスコ内で触媒担体を含浸させた。その後上記フラスコをセットアップに取り付け、20rpmで回転させ、空気流を開始させ、油浴をおよそ1℃/分で90~95℃に加熱し、含浸触媒が自由に流れるようになるまで、通常、その温度で15~30分間要するが、ホールドさせた。その後、上述の加熱手順を使用し、マッフル炉内で乾燥した含浸触媒を焼結させた。
【0100】
充填見掛けかさ密度の測定
充填見掛けかさ密度(PABD)を、5mL容積のメスシリンダー内で計測した。但し、結果に何ら大きな差を生じさせずに(すなわち、1%差以下)いかなる適正な容積(例えば5mL、25mL、100mL、又は250mL)を有するメスシリンダーを使用することができる。上記シリンダーを触媒で充填させ、ハンドタップして固体を定着させ、そして量が5mLに丁度近づくまでさらなる材料を加え、タップする等した。その後、メスシリンダーをQuantachrome Autotap DAT-4装置上に装填し、1500回タップさせた。定着した触媒の体積が測定された後、触媒質量が測定される。上記充填見掛けかさ密度は、触媒のグラム重量を1500回タップ後のmL体積で割ることにより算出される。上記コバルトの充填見掛けかさ密度は、触媒の充填見掛けかさ密度を触媒中のコバルトの重量%で乗じることで算出される。
【0101】
上述の方法は、一般的にASTMD7481-09の手順(すなわち、2009年に承認され、又は再承認されたD7481):メスシリンダーを使用した粉末のゆるみかさ密度及びタップかさ密度を測定する標準方法に従っている。
【0102】
好ましくは、計測された触媒質量は乾燥質量である。タッピング方法は時間を要するため、上記触媒は、相対湿度、事前曝露、及び曝露時間に応じた様々な度合いで大気から水分を集める。「乾燥していない」質量が測定される場合、コバルトの充填見掛けかさ密度は過大に推定され得る。これは、蓄積された水分は、集めた水の量により触媒の与えられた体積の質量を増加させるためであり、相対的な水分含有量によるコバルトの充填見掛けかさ密度の水増しをもたらす。従って、正確かつ一貫性のある結果を確実とするため、「乾燥した」ベースで測定を行うことが好ましい。上記乾燥質量は、任意に、吸収された水分を除去する加熱段階を含む、湿度平衡を使用して計測してもよい。
【0103】
マイクロチャネル反応器内部において、上記コバルトの充填見掛けかさ密度は、任意に、適切な方法(本出願人の名称で、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013/013077号パンフレットに開示されているそれら等)を使用して反応器のマイクロチャネル内部の投入物を高密度化させるステップ、投入された触媒の合計質量を測定するステップ、及びこれから投入された反応器で充填されたコバルトの見掛けかさ密度を導き出すステップにより測定することができる。
【0104】
触媒及び固定床反応器試験結果
表3は、本発明に従って合成された9つの触媒、並びに当該技術において公知の比較触媒を示している。充填見掛けかさ密度が少なくとも1.32g/mLであると共に、本発明の触媒中のコバルトの重量パーセントは43%~53%で様々であった。
【0105】
固定床反応器試験について、0.1285mL体積の触媒サンプルを2.184mLのSiC(1:18体積比)で希釈し、反応器内に導入した。H2を大気圧かつ15000hr-1のGHSVで、400℃で2時間流すことにより上記触媒を活性化させた。活性化後、上記反応器を165℃に冷却させ、上記ガス流をこの温度で2時間ホールドさせる前に合成ガス(H2:CO2:1、5%N2希釈剤)に切り替えた。その後、上記圧力を2000kPa(20bar)に上昇させ、反応器温度を目標試験温度の205℃に昇温(ramp)させた。上記試験を140時間行った。24時間及び140時間で記録された変換率及び選択率と共に、0時間~24時間及び116時間~140時間の時間における失活を計測した。
【0106】
表3における固定床反応器試験結果から分かり得るように、本発明による触媒の全てが比較例よりも著しく高いCO変換率を発現した。最も高いCO変換率は、コバルトを53重量%含有し、充填見掛けかさ密度が1.63g/mLであり、コバルトの充填見掛けかさ密度が0.86g/mLである触媒#9で観測された。さらに本発明による触媒の全てが比較例よりも低い失活速度を発現したため、再生が必要とされる前に、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応において、より長い期間使用することができる。
【0107】
表4は、本発明に従って合成された二つの触媒、並びにいくつかの比較触媒を示している。C2-C14はActOCat 1200を表し、これは当該技術において公知の触媒である。参照触媒(#C2)のコバルトのPABDは0.426g/mlであり、比較触媒#C3-C14のコバルトのPABDは0.596g/mlであり、本発明による触媒(#10~11)のコバルトのPABDは0.784g/mlである。
【0108】
表4の最終列はコバルト時間収率(CTY)であり、それは単位時間あたり、サンプル中のコバルト1モルあたり変換されたCOのモル数であり、そして触媒の効率の代表である。
【0109】
表4のC2をC3-C14と比較すると、予想どおり、触媒PABDを増加させることでコバルトのPABDを増加させることは、1時間あたり、触媒1mLあたり変換されたCOのモル数(29ミリモルCOml-1h-1から37~44ミリモルCOml-1h-1)を増加させることが分かり得る。しかし、触媒の効率(上記CTY)は増加せず、ほぼ同じ値を保持する(1.00~1.2ミリモルCOモルCo-1s-1に対し、1.1ミリモルCOモルCo-1s-1)。
【0110】
しかし、表4の#10~11をC2-C14と比較すると、触媒PABDを増加させることでコバルトのPABDを増加させることは、1時間あたり、触媒1mLあたり変換されたCOのモル数及び触媒の効率の両方を増加させることが分かる。上記効率(CTY)は、比較触媒の1.00~1.2ミリモルCOモルCo-1s-1から、本発明による触媒のおよそ1.5ミリモルCOモルCo-1s-1まで増加する。従って、本発明の触媒は、変換されたCOのモル数が増加するように触媒中のコバルトのPABDを増加させるだけでなく、従来技術の触媒よりも大幅に効率的な手法でそれを実現する。
【0111】
これは、本発明によるフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒の作製方法を用いることを通して達成される。触媒#12-13はAGCシリカ及び過剰液体含浸法を使用して作製され、ここで、担体は、担体の細孔容積の130%を含浸させたものである。従って、本発明によるフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒の作製方法は、従来技術の触媒よりも効率的な触媒をもたらす。
【0112】
【0113】
【0114】
耐毒性
反応性窒素化合物による被毒は、それらが「致命的」ではなく、むしろ、非ゼロ触媒活性で最終的に飽和する触媒の失活を起こさせることから珍しい。正確な飽和活性は触媒及び使用される反応器タイプの両方に依存するが、通常、新鮮な触媒活性の30%~50%の領域内である。
【0115】
図2は、触媒#9の耐毒性を、コバルトを43重量%有する当該技術において公知の触媒である比較例ActOCat 1200と比較している。コバルトを53重量%有する触媒#9は、比較例と比較した反応器内のコバルトのPABDが概ね184%である。
【0116】
図中で分かるように、ActOCat 1200触媒は約250時間の曝露後に飽和した失活を経由する。これに対して、触媒#9は、同じNH3フィード濃度で、約640時間の曝露、又は約2.5倍の長さまでは、飽和した失活に到達しない。これは、従来技術のそれらと比較して、本発明の触媒の大いに改良された耐毒性を説明している。
【0117】
図3は、本発明の触媒の硫黄被毒に対する改良された耐性を実証している。触媒に対して曝露させた硫黄の平均量はおよそ2.9x10
-3モルS/モルCo(2年寿命で予想される曝露量である5ppbvとほぼ同じである)である。
【0118】
図で分かるように、同じH2S流において、本発明の高含量コバルト触媒のCO変換率が低落する速度は、比較のActOCat 1200触媒と比較して著しく低い。本発明の触媒は、反応器内の触媒の充填体積あたりの高いコバルト表面積のため、比較触媒よりもH2Sを良好に収容し得る。
【0119】
稼働温度
表3の触媒#9をフィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応において使用し、ActOCat 1200と比較した。触媒#9はコバルトを53重量%含有し、一方でActOCat 1200はコバルトを43重量%含有するため、コバルトのPABDが低くなる。
【0120】
上記反応条件は次の通りであった。フィードH2:CO=1.77、不活性32%、接触時間290ミリ秒、入口圧力2.461MPa(357psig)。C15及びC16は両方ともActOCat 1200を使用したが、若干異なる平均反応器温度を用いた。
【0121】
【0122】
表5から分かるように、上記比較データは、触媒#9が、同じ稼働条件下での同一のパフォーマンス(すなわち同一の活性)でおよそ8~10℃低い反応器温度を使用することを示唆している。
【0123】
さらに、触媒#9で使用された低い稼働温度は、C25-C90ワックス炭素数範囲で分析されたとおり、およそ0.07~0.10のアルファ数の改良を提供する。上記に記載したとおり、これは上記反応の生成物の経済的価値を有利に上昇させる。
【0124】
従来技術の触媒と比較した、触媒#9により使用された低い稼働温度のさらなる帰結は、再生が必要とされる前の時間が長くなることであるため、反応方法の経済的価値が向上している。
【国際調査報告】