(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】蛍光融合に基づく異種ペプチド製造
(51)【国際特許分類】
C12P 21/02 20060101AFI20231024BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20231024BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20231024BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20231024BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20231024BHJP
C07K 4/04 20060101ALN20231024BHJP
C07K 4/12 20060101ALN20231024BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231024BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
C12P21/02 C ZNA
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/21
C07K4/04
C07K4/12
C12N15/12
C12N15/31
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528999
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 IB2021060587
(87)【国際公開番号】W WO2022101885
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523179005
【氏名又は名称】ステレンボッシュ ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン スターデン、アントン デュ プリーズ
(72)【発明者】
【氏名】スミス、カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス、ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ディックス、レオン ミルナー セオドア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーミューレン、ロス レイン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA20
4B065AA26X
4B065AA26Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA60
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA41
4H045CA11
4H045CA50
4H045EA60
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、宿主細胞中で目的の異種ポリペプチドを製造する方法に関し、ここで、該方法は、目的の異種ポリペプチドおよび蛍光融合パートナーを含む融合タンパク質を、プロモーターに作動可能に連結された溶解タンパク質をコードする核酸を含むように改変された宿主細胞中で発現させることを含み、ここで、溶解タンパク質の翻訳は、RNAサーモメータの制御下にある。また、融合タンパク質を発現させ、プロモーターに作動可能に連結された溶解タンパク質をコードする核酸を含む大腸菌細胞も提供され、ここで、溶解タンパク質の翻訳は、RNAサーモメータによって調節されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞中で1つ以上の目的の異種ポリペプチドを製造する方法であって、該方法は:
(i)目的の異種ポリペプチドおよび蛍光融合パートナーを含む融合タンパク質をコードする発現ベクターを提供すること;
(ii)宿主細胞を工程(i)の発現ベクターで形質転換することであって、ここで、宿主細胞および/または発現ベクターは、プロモーター、溶解タンパク質、およびRNAサーモメータをコードする核酸を含むように改変されており、さらにここで、溶解タンパク質をコードする核酸の発現は、プロモーターによって調節されており、溶解タンパク質の翻訳は、RNAサーモメータによって調節されている、形質転換すること;
(iii)宿主細胞中で融合タンパク質を発現させること;
(iv)溶解タンパク質の発現を誘導するために、宿主細胞の温度を変更することであって、ここで、溶解タンパク質の発現は、宿主細胞の溶解をもたらす、変更すること;並びに
(v)宿主細胞から融合タンパク質を回収すること
を含む、方法。
【請求項2】
融合タンパク質が1つ以上の精製タグを含み、方法が回収された融合タンパク質を精製する工程をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
精製タグがヒスチジン(His)タグおよび/またはグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグである、請求項2の方法。
【請求項4】
融合タンパク質がプロテアーゼ切断部位を含み、方法が回収後に蛍光融合パートナーを目的の異種ポリペプチドから切断する工程をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
プロテアーゼ切断部位が、配列TGGGAACTGCAG(配列番号2)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列WELQ(配列番号1)を有するWELQut部位、配列CTAGTACCACGC(配列番号4)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列LVPR(配列番号3)を有するトロンビンまたはトリプシン切断部位、配列GCGAGCCCGCGC(配列番号6)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列ASPR(配列番号5)を有するnisPまたはトリプシン切断部位、配列GAAAACTTGTATTTTCAAGGC(配列番号8)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列ENLYFQG(配列番号7)を有するTEV切断部位、配列ATTGAAGGTCGT(配列番号10)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列IEGR(配列番号9)を有する第Xa因子切断部位、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項4の方法。
【請求項6】
融合タンパク質が分泌シグナルペプチドを含む、請求項1から5のいずれか一項の方法。
【請求項7】
蛍光融合パートナーが、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、および赤色蛍光タンパク質からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項の方法。
【請求項8】
緑色蛍光タンパク質が、配列番号11のアミノ酸配列を有するかまたは配列番号12のヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、請求項7の方法。
【請求項9】
赤色蛍光タンパク質が、配列番号13のアミノ酸配列を有するかまたは配列番号14のヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるmCherryである、請求項7の方法。
【請求項10】
目的の異種ポリペプチドが、ナイシン、エピランシン15XおよびPep5を含むランチペプチド;プランタリシン423およびムンドティシンST4SAを含むバクテリオシン;リステリオリシンO;ActA;並びにオートファジーペプチドXからなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項の方法。
【請求項11】
溶解タンパク質が、配列番号15若しくは配列番号17のアミノ酸配列を有するかまたは配列番号16若しくは配列番号18のヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる溶解タンパク質を含む、エンドリシンまたは細菌性ムレインヒドロラーゼである、請求項1から10のいずれか一項の方法。
【請求項12】
RNAサーモメータが配列番号19~27または配列番号105~111のいずれか1つの核酸配列を有し、プロモーターが、定常期プロモーターであり、配列番号74~76のいずれか1つの核酸配列、並びに配列番号77~100のいずれか1つに示される配列を有する組合せを含む、定常期プロモーターおよびRNAサーモメータの組合せを含む、請求項1から11のいずれか一項の方法。
【請求項13】
溶解タンパク質の発現が、引き続く細胞の凍結融解および溶解緩衝液中での再懸濁の際に宿主細胞の溶解をもたらす、請求項1から12のいずれか一項の方法。
【請求項14】
宿主細胞が大腸菌細胞である、請求項1から13のいずれか一項の方法。
【請求項15】
大腸菌細胞であって、該細胞は:
(i)目的の異種ポリペプチドおよび蛍光融合パートナーを含む融合タンパク質をコードする少なくとも1つの発現ベクター;並びに
(ii)溶解タンパク質およびRNAサーモメータに作動可能に連結されたプロモーターをコードする核酸
を含み、ここで、RNAサーモメータは、溶解タンパク質の翻訳を調節することができる、細胞。
【請求項16】
融合タンパク質が精製タグを含む、請求項15の細胞。
【請求項17】
精製タグがヒスチジン(His)タグまたはグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグである、請求項16の細胞。
【請求項18】
融合タンパク質がプロテアーゼ切断部位を含む、請求項15から17のいずれか一項の細胞。
【請求項19】
プロテアーゼ切断部位が、配列TGGGAACTGCAG(配列番号2)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列WELQ(配列番号1)を有するWELQut部位、配列CTAGTACCACGC(配列番号4)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列LVPR(配列番号3)を有するトロンビンまたはトリプシン切断部位、配列GCGAGCCCGCGC(配列番号6)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列ASPR(配列番号5)を有するnisPまたはトリプシン切断部位、配列GAAAACTTGTATTTTCAAGGC(配列番号8)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列ENLYFQG(配列番号7)を有するTEV切断部位、配列ATTGAAGGTCGT(配列番号10)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列IEGR(配列番号9)を有する第Xa因子切断部位、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項18の細胞。
【請求項20】
融合タンパク質が分泌シグナルペプチドを含む、請求項15から19のいずれか一項の細胞。
【請求項21】
蛍光融合パートナーが、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、および赤色蛍光タンパク質からなる群から選択される、請求項15から20のいずれか一項の細胞。
【請求項22】
緑色蛍光タンパク質が、配列番号11のアミノ酸配列を有するかまたは配列番号12のヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、請求項21の細胞。
【請求項23】
赤色蛍光タンパク質が、配列番号13のアミノ酸配列を有するかまたは配列番号14のヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるmCherryである、請求項21の細胞。
【請求項24】
目的の異種ポリペプチドが、ナイシン、エピランシン15XおよびPep5を含むランチペプチド;プランタリシン423およびムンドティシンST4SAを含むバクテリオシン;リステリオリシンO;ActA;並びにオートファジーペプチドXからなる群から選択される、請求項15から23のいずれか一項の細胞。
【請求項25】
溶解タンパク質が、配列番号15若しくは配列番号17のアミノ酸配列を有するかまたは配列番号16若しくは配列番号18のヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる溶解タンパク質を含む、エンドリシンまたは細菌性ムレインヒドロラーゼである、請求項15から24のいずれか一項の細胞。
【請求項26】
RNAサーモメータが配列番号19~27または配列番号105~111のいずれか1つの核酸配列を有し、プロモーターが、定常期プロモーターであり、配列番号74~76のいずれか1つの核酸配列、並びに配列番号77~100のいずれか1つに示される配列を有する組合せを含む、定常期プロモーターおよびRNAサーモメータの組合せを含む、請求項15から25のいずれか一項の細胞。
【請求項27】
溶解タンパク質の発現が、引き続く細胞の凍結融解および溶解緩衝液中での再懸濁の際に宿主細胞の溶解をもたらす、請求項15から26のいずれか一項の細胞。
【請求項28】
目的の異種ポリペプチドおよび蛍光融合パートナーを含む融合タンパク質を発現させるための少なくとも1つの発現ベクター;並びに
大腸菌細胞
を含み、ここで、細胞および/または発現ベクターは、溶解タンパク質およびRNAサーモメータに作動可能に連結されたプロモーターをコードする核酸を含み、ここで、RNAサーモメータは、溶解タンパク質の翻訳を調節することができる、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、宿主細胞中で目的の異種ポリペプチドを製造する方法に関し、ここで、該方法は、目的の異種ポリペプチドおよび蛍光融合パートナーを含む融合タンパク質を、RNAサーモメータ(RNA thermometer)の制御下の、溶解タンパク質をコードする核酸を含むように改変された宿主細胞中で発現させることを含む。本発明はさらに、融合タンパク質を発現させ、RNAサーモメータの制御下の溶解タンパク質をコードする核酸を含む大腸菌細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドは、生理学的システムにおいて遍在しており、ここで、それらは、生命にとって基本的な機能を果たしている。ヒトの生理機能においてだけでも、ペプチドは、ホルモン、神経伝達物質、増殖因子、イオンチャネルリガンドまたは抗菌剤として機能し、これが、それらを魅力的な治療資源とする。
【0003】
新しい医薬品および工業用酵素についてのニーズは高まっており、これが、次世代シークエンシングの結果として、薬学的または工業的特性について試験したいペプチドまたはタンパク質を観察する研究者の市場を作り出している。さらに、価値ある組換えタンパク質の現在の製造は、収量および生産性の両方を向上させ得る技術に常に利点を見出すであろう。従って、タンパク質合成および異種タンパク質発現のような技術が、応用されるようになってきている。
【0004】
目的のペプチドおよび低分子タンパク質はしばしば、化学的に合成され、これは、異種発現と比較してはるかに優れた収量をもたらす。異種発現は、異種宿主を利用する確立された技術であり、高収量製造により適しているが、依然としてタンパク質フォールディングまたは翻訳後修飾を導くとらえどころのない物理法則によって支配されている。異種発現は従って、遺伝子設計図から物理的構造を提供することにより、化学合成と連携して機能するはずであり、このことは、この分野における多くの人にとって明白である。しかしながら、生理活性タンパク質は、そもそもそれらを良好な医薬品および酵素候補品とするそれらの固有の物理的特性のため、発現させることが困難である。従って、これらのタンパク質の発現は、特別な専門知識および技術を必要とし、多くの場合、複数回の反復の化学合成または古典的な精製についての優先をもたらす。どちらのアプローチも、医薬品の特性評価について必要とされる時間およびリソースにおける増加をもたらし得る。本発明は、標的の多様性および収量の両方において異種発現の限界を押し上げるための堅固なかつ迅速なプラットフォームを提供することを目的とする。具体的には、本願の発明者らは、広範囲の組換えタンパク質を製造する方法を開発した。該方法は、それが製造するさまざまな組換えタンパク質の製造を増加させるために、それを多用途でかつ費用対効果の高いものとする、互いにリンクした3つの主要な技術に依存する。本発明の方法は、毒性を抑え、溶解度を高め、翻訳後修飾を促進することを通して大腸菌の能力を広げる、安定化したペプチド発現を可能にすることを目的とする蛍光タンパク質融合パートナーを使用する。融合パートナーの自己蛍光が、前例のないリアルタイムのインビボおよび堅固なインビトロフィードバックを提供することによって収量を押し上げる迅速な最適化を可能とする。さらに、自己消化の転写後温度調節が、製造コスト、時間および労力を削減させ、該方法を、従来の方法よりも高速かつ費用対効果の高いものとする。本発明の方法を使用して、本発明者らは、それらが、1)以前は無駄であると考えられていた場所で発現される組換えタンパク質の範囲および収量を増加させること;2)蛍光融合タンパク質のインビボ検出により発現の最適化を簡単にすること;3)製造中の任意の時点で蛍光タンパク質を素早く視覚化することができる能力を通して、トラブルシューティングに対して費やす時間を短縮させること、並びに4)高価な誘導物質を必要としない自己消化技術の導入を通して、タンパク質製造コストを削減し、収量を増加させること、ができることを示した。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、宿主細胞中で目的の異種ポリペプチドおよび蛍光融合パートナーを含む融合タンパク質を発現させることを含む、宿主細胞、特に大腸菌細胞中で目的の異種ポリペプチドを製造する方法に関する。特に、宿主細胞は、RNAサーモメータ(RNA thermometer)の制御下にある溶解タンパク質をコードする核酸を含むように改変される。本発明はまた、本発明の融合タンパク質を発現させ、RNAサーモメータの制御下にある溶解タンパク質をコードする核酸を含む、改変大腸菌細胞に関する。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、宿主細胞中で1つ以上の、目的の異種ポリペプチドを製造する方法が提供され、該方法は:
(i)目的の異種ポリペプチドおよび蛍光融合パートナーを含む融合タンパク質をコードする発現ベクターを提供すること;
(ii)宿主細胞を工程(i)の発現ベクターで形質転換することであって、ここで、宿主細胞および/または発現ベクターは、溶解タンパク質に作動可能に連結されたプロモーター(構成的例えば定常期プロモーター、または誘導性例えばT7であり得る)、およびRNAサーモメータをコードする核酸を含むように改変されており、さらにここで、溶解タンパク質をコードする核酸の発現は、プロモーターによって調節されており、溶解タンパク質の翻訳は、RNAサーモメータによって調節されている、形質転換すること;
(iii)宿主細胞中で融合タンパク質を発現させること;
(iv)溶解タンパク質の発現を誘導するために、宿主細胞の温度を変更することであって、ここで、溶解タンパク質の発現は、宿主細胞の溶解をもたらす、変更すること;並びに
(v)宿主細胞から融合タンパク質を回収すること
を含むかまたはからなる。
【0007】
好ましくは、RNAサーモメータをコードする核酸は、プロモーターに転写的に融合されており、溶解タンパク質をコードする核酸に転写的にまたは翻訳的に融合されている。より好ましくは、RNAサーモメータをコードする核酸は、溶解タンパク質をコードする核酸の上流にある。さらに、プロモーター、溶解タンパク質およびRNAサーモメータをコードする核酸は、RNAが天然に認識し制御するヌクレオチド配列などの、RNAサーモメータによって認識されるヌクレオチド配列を含み得る。
【0008】
該方法の第1の実施態様においては、融合タンパク質は、精製タグを含み得、該方法はさらに、回収した融合タンパク質を精製する工程を含み得る。任意の既知の精製タグを使用し得ることが、当業者によって理解されるであろう。好ましくは、精製タグは、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)精製における使用のためのヒスチジン(His)タグまたはプルダウンアッセイにおける使用のためのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグであり得る。あるいは、融合タンパク質は、IMAC精製における使用のためのヒスチジン(His)タグおよびプルダウンアッセイにおける使用のためのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグなどの、2つ以上の精製タグを含み得る。
【0009】
本発明の方法の第2の実施態様によれば、融合タンパク質は、プロテアーゼ切断部位を含み得、該方法はさらに、回収後に蛍光融合パートナーを目的の異種ポリペプチドから切断する工程を含み得る。プロテアーゼによる切断については、任意の既知のプロテアーゼ切断部位を企図し得ることが、当業者によって理解されるであろう。特に、プロテアーゼ切断部位は、配列TGGGAACTGCAG(配列番号2)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列WELQ(配列番号1)を有するWELQut部位、配列CTAGTACCACGC(配列番号4)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列LVPR(配列番号3)を有するトロンビンまたはトリプシン切断部位、配列GCGAGCCCGCGC(配列番号6)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列ASPR(配列番号5)を有するnisPまたはトリプシン切断部位、配列GAAAACTTGTATTTTCAAGGC(配列番号8)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列ENLYFQG(配列番号7)を有するTEV切断部位、配列ATTGAAGGTCGT(配列番号10)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列IEGR(配列番号9)を有する第Xa因子切断部位、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択し得る。
【0010】
本発明の方法の第3の実施態様においては、融合タンパク質は、分泌ペプチドを含み得る。使用し得るシグナルペプチドは、Sec(一般分泌)、SRP(シグナル認識粒子)またはTAT(ツインアルギニン転座)経路を介して分泌を指示するものを含み得るが、これらに限定されない。Sec依存性分泌については、LamB、MalE、OmpA、OmpF、OmpTまたはPhoAからの配列を、使用し得る。SRP依存性分泌については、DsbA、SfmC、TolBまたはTorTからの配列を、使用し得る。TAT依存性分泌については、シグナルペプチドは、可変であり得、P-R-R-x-H-Hモチーフ(ここで、P、R、xおよびHは、それぞれ、極性残基、アルギニン、任意の残基および疎水性残基を示す)を含有し得る。シグナルペプチドは、大腸菌、またはPelB(Erwinia carotovora)およびSpA(Staphylococcus、ブドウ球菌)などの他の種からの異種配列と相同であり得る。
【0011】
本発明の方法の第4の実施態様によれば、蛍光融合パートナーは、好ましくは単量体であり、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、および赤色蛍光タンパク質からなる群から選択し得る。多数の蛍光融合タンパク質が知られており、当技術分野において知られている任意の蛍光融合タンパク質を使用し得ることが、当業者によって理解されるであろう。例えば、蛍光融合パートナーは、配列番号11のアミノ酸配列を有するかまたは配列番号12のヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、緑色蛍光タンパク質であり得る。あるいは、蛍光融合パートナーは、配列番号13のアミノ酸配列を有するかまたは配列番号14のヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるmCherryなどの、赤色蛍光タンパク質であり得る。本発明の方法が任意の時点で蛍光融合パートナーを検出する工程を含み得ることが、当業者によって理解されるであろう。
【0012】
本発明の方法のさらなる実施態様においては、目的の異種ポリペプチドは、任意の、目的の異種ポリペプチド、特に、ナイシン(Nisin)、エピランシン15XおよびPep5を含むランチペプチド(lanthipeptide);プランタリシン423およびムンドティシン(mundticin)ST4SAを含むバクテリオシン;リステリオリシンO;ActA;並びにオートファジーペプチドXからなる群から選択される、目的の異種ポリペプチドであり得る。
【0013】
本発明の方法の別の実施態様においては、溶解タンパク質は、当技術分野において知られている任意の溶解タンパク質であり得、例えば溶解タンパク質は、エンドリシンまたは細菌性ムレインヒドロラーゼであり得る。1つの非限定的な例においては、溶解タンパク質は、ファージDNAに由来し、配列番号15若しくは17のアミノ酸配列を有するかまたは配列番号16若しくは18のヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる。
【0014】
本発明の方法のなおさらなる実施態様においては、RNAサーモメータは、配列番号19~27または配列番号105~111のいずれか1つの核酸配列を有するRNAサーモメータを含み得るが、これらに限定されない。RNAサーモメータは、ラムダファージおよび細菌において見出されるものなど、天然に存在し得、または新規配列として合成し得る。さらに、構成的プロモーター(例えば定常期プロモーター)または誘導性プロモーター(例えばT7)の使用は、RNAサーモメータをコードする核酸および溶解遺伝子の転写を制御するために使用し得る。定常期プロモーターの使用は、RNAサーモメータおよび溶解遺伝子からなるmRNAの遅延した転写をもたらし得る。これが、mRNAの安定性を増大させ、溶解遺伝子の遅延した発現を通して細胞上の代謝負荷を低下させる。適切な定常期プロモーターは、配列番号74~76のいずれか1つの核酸配列を有するプロモーターを含み得る。さらに、プロモーターおよびRNAサーモメータの適切な組合せは、配列番号77~100のいずれか1つに示す配列を有する組合せを含み得る。
【0015】
本発明の方法のさらなる実施態様によれば、宿主細胞は、大腸菌細胞であり得る。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、(i)目的の異種ポリペプチドおよび蛍光融合パートナーを含む融合タンパク質をコードする少なくとも1つの発現ベクター(配列番号101または配列番号102に示す配列を有するベクターを含む);並びに(ii)溶解タンパク質およびRNAサーモメータに作動可能に連結されたプロモーターをコードする核酸を含み、ここで、RNAサーモメータは、溶解タンパク質の翻訳を調節することができる、大腸菌細胞が提供される。一つの実施態様においては、(ii)における核酸は、(i)の発現ベクター上に提供し得る。代替の実施態様においては、(ii)の核酸は、(i)の発現ベクターと適合し、同時に形質転換される、異なる発現ベクター上に提供し得る。
【0017】
本発明の細胞の第1の実施態様においては、融合タンパク質は、融合タンパク質を精製することにおける使用のための精製タグを含み得る。任意の既知の精製タグを使用し得ることが、当業者によって理解されるであろう。好ましくは、精製タグは、IMAC精製における使用のためのヒスチジン(His)タグまたはプルダウンアッセイにおける使用のためのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグであり得る。あるいは、融合タンパク質は、IMAC精製における使用のためのヒスチジン(His)タグおよびプルダウンアッセイにおける使用のためのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグなどの、2つ以上の精製タグを含み得る。
【0018】
本発明の細胞の第2の実施態様によれば、融合タンパク質は、蛍光融合パートナーを目的の異種ポリペプチドから切断することにおける使用のためのプロテアーゼ切断部位を含み得る。任意の既知のプロテアーゼ切断部位をプロテアーゼによる切断のために使用し得ることが、当業者によって理解されるであろう。特に、プロテアーゼ切断部位は、配列TGGGAACTGCAG(配列番号2)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列WELQ(配列番号1)を有するWELQut部位、配列CTAGTACCACGC(配列番号4)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列LVPR(配列番号3)を有するトロンビンまたはトリプシン切断部位、配列GCGAGCCCGCGC(配列番号6)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列ASPR(配列番号5)を有するnisPまたはトリプシン切断部位、配列GAAAACTTGTATTTTCAAGGC(配列番号8)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列ENLYFQG(配列番号7)を有するTEV切断部位、配列ATTGAAGGTCGT(配列番号10)を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列IEGR(配列番号9)を有する第Xa因子切断部位、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択し得る。
【0019】
本発明の細胞の第3の実施態様においては、融合タンパク質は、分泌ペプチドを含み得る。
【0020】
本発明の細胞の第4の実施態様によれば、蛍光融合パートナーは、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、および赤色蛍光タンパク質からなる群から選択し得る。多数の蛍光融合タンパク質が知られており、当技術分野において知られている任意の蛍光融合タンパク質を使用し得ることが、当業者によって理解されるであろう。例えば、蛍光融合パートナーは、配列番号11のアミノ酸配列を有するかまたは配列番号12のヌクレオチド配列によってコードされる、緑色蛍光タンパク質であり得る。あるいは、蛍光融合パートナーは、配列番号13のアミノ酸配列を有するかまたは配列番号14のヌクレオチド配列によってコードされるmCherryなどの、赤色蛍光タンパク質であり得る。
【0021】
本発明の細胞のさらなる実施態様においては、目的の異種ポリペプチドは、任意の、目的の異種ポリペプチド、例えば、Nisin、エピランシン15XおよびPep5を含むランチペプチド;プランタリシン423およびムンドティシンST4SAを含むバクテリオシン;リステリオリシンO;ActA;並びにオートファジーペプチドXからなる群から選択される、目的の異種ポリペプチドであり得る。
【0022】
本発明の細胞のさらなる実施態様によれば、溶解タンパク質は、当技術分野において知られている任意の溶解タンパク質であり得、例えば溶解タンパク質は、エンドリシンまたは細菌性ムレインヒドロラーゼであり得る。1つの非限定的な例においては、溶解タンパク質は、ファージDNAに由来し、配列番号15若しくは17のアミノ酸配列を有するかまたは配列番号16若しくは18のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0023】
本発明の細胞のなおさらなる実施態様においては、RNAサーモメータは、配列番号19~27または配列番号105~111のいずれか1つの核酸配列を有するRNAサーモメータを含み得るが、これらに限定されない。RNAサーモメータは、ラムダファージおよび細菌において見出されるものなど、天然に存在し得、または新規配列として合成し得る。RNAサーモメータおよび溶解タンパク質の発現を制御するプロモーターは、構成的プロモーター(例えば配列番号74~76のいずれか1つに示す配列を有する定常期プロモーター)または誘導性プロモーター(例えばT7)であり得る。さらに、プロモーターおよびRNAサーモメータの適切な組合せは、配列番号77~100のいずれか1つに示す配列を有する組合せを含み得る。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、(i)目的の異種ポリペプチドおよび蛍光融合パートナーを含む融合タンパク質を発現させるための少なくとも1つの発現ベクター;並びに(ii)大腸菌細胞を含むかまたはからなり、ここで、細胞および/または発現ベクターは、溶解タンパク質、およびRNAサーモメータに作動可能に連結されたプロモーター(構成的プロモーター例えば定常期プロモーター、または誘導性プロモーター例えばT7を含む)をコードする核酸を含み、ここで、RNAサーモメータは、溶解タンパク質の翻訳を調節することができる、キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の非限定的な実施態様を次に、例としてのみ、以下の図を参照して説明する。
【
図1】異種タンパク質製造の方法の概略図。A)ベクター構築;B)形質転換;C)発現;D)細胞溶解;E)精製およびF)視覚化。蛍光融合パートナーおよび目的のペプチド(PoI)をコードする核酸分子を、ベクター中にクローニングする。ベクターは、大腸菌細胞中で発現させる。具体的には、蛍光融合パートナーの発現を、その蛍光をモニタリングすることによって検出し、これが、目的のタンパク質の発現のしるしを提供する。蛍光融合パートナーの検出によって示されるように、いったん目的のペプチドが蓄積すると、溶解タンパク質の温度依存性発現を、温度を上げることによって開始させる。溶解タンパク質の存在は、凍結融解サイクルの際に細胞膜崩壊および細胞溶解を引き起こし、これが、目的のペプチドおよび蛍光融合パートナーの放出をもたらす。目的のペプチドおよび蛍光融合パートナーは、任意に精製し得る。目的のペプチドの収量は、精製産物の視覚化を含めて、全ての段階で蛍光融合パートナーを検出することによってモニタリングし得る。
【
図2】MCS-1における前駆体ナイシン(nisin)およびMCS-2におけるnisBに融合したGFPを有するpRSF Duet-1のプラスミドマップ。関連する制限部位およびWELQutプロテアーゼ部位を示す。
【
図3】関連する制限部位およびプロテアーゼ切断部位を含む、GFP-pNisinの配列(配列番号29および配列番号31)。対応するアミノ酸配列を示す(配列番号28および配列番号30)。hNisP(AVPR)およびトロンビン(ASPR)についての切断部位のアミノ酸およびヌクレオチドの変化を示す。GFPおよびプレニシンのアミノ酸配列は、プレニシンリーダー配列に下線を引いて示す。
【
図4】トリプシンで切断したGFP-pNisinおよびHispNisinについての最適化および活性の結果(A)GFP-pNisinについての温度、誘導時間、およびIPTG濃度の最適化。(B)さまざまな温度で発現させた、IMAC精製および脱塩したHispNisin(蛍光融合なし)の可溶性/不溶性大腸菌画分の活性。抗菌活性は、ラティラクトバチルス・サケイ(Lb.sakei)に対して試験した。
【
図5】トロンビン切断した(A)GFP-pPep5並びに(B)IMAC精製および脱塩したHis-pPep5の可溶性/不溶性大腸菌画分のカルノーサスブドウ球菌(S.carnosus)に対する抗菌活性。
【
図6】トロンビンおよびhNisPを使用したGFP-pLanthipeptideの切断最適化。それぞれ、(A)4時間および(B)20時間切断後のGFP-pPep5、並びに(C)4時間および(D)20時間切断後のGFPpNisin。GFP-pPep5活性は、S.カルノーサスに対して試験し、GFP-pNisin活性は、Lb.サケイに対して試験した。hNisPは、0.01、5、10、50および70ng/μLの濃度で添加した。トロンビンは、0.75、4.5、3および6Uで添加した。
【
図7】トロンビンおよびhNisPを用いたGFP-pNisinの切断を表す、SDS-PAGE染色ゲルおよびGFP蛍光画像。(A)hNisPおよび(B)トロンビンの濃度系列を用いたGFP-pNisinの切断について、上の画像は、染色ゲルを表し、下の画像は、固定および染色前のSDS-PAGEゲルにおけるGFP蛍光を表す。(C)hNisPおよび(D)トロンビンの最適濃度でのGFP-pNisinの切断については、左側の画像は、染色ゲルを表し、右側のそれらは、固定および染色前のSDS-PAGEゲルにおけるGFPの蛍光(上)を、ゲル上にロードした非切断および切断サンプルの活性(下)とともに表す。活性は、Lb.サケイに対して試験した。L=はしご;UC=非切断サンプル;C=切断サンプル;1=非切断GFP-pNisin;2=切断GFP;および3=nisin。
【
図8】GFP-MunXのT7制御異種発現についてのpRSF-GFP-MunXのプラスミドマップ。WELQutプロテアーゼを使用したムンドティシンST4SAの遊離。
【
図9】WELQutプロテアーゼ切断配列を示す(灰色の矢印)、GFP-MunXについてのアミノ酸配列(配列番号32)。対応するヌクレオチド配列も示す(配列番号33)。
【
図10】GFP-PlaXのT7制御異種発現についてのpRSF-GFP-PlaXのプラスミドマップ。WELQutプロテアーゼを使用したプランタリシン423の遊離。
【
図11】WELQutプロテアーゼ切断配列を示す(灰色の矢印)、GFP-PlaXについてのアミノ酸配列(配列番号34)。対応するヌクレオチド配列も示す(配列番号35)。
【
図12】18℃、26℃、および37℃での、GFP-MunExを発現する大腸菌pRSF-GFP-MunExの蛍光強度。(A)0、24、および48時間後のインビボ蛍光測定値。(B)48時間発現のタンパク質抽出およびNi-NTA精製後に計算した、GFP-MunExの総相対量。蛍光強度は、相対蛍光単位(RFU)で測定した。棒上の異なる文字は、ボンフェローニ事後検定による、互いに有意に異なる平均値を示す(P<0.05)。
【
図13-1】26℃での経時的なGFP-MunX発現についてのIPTG濃度の最適化、蛍光強度を、相対蛍光単位(RFU)で測定した。(A)25分ごとに取得したインビボRFU測定値は、n=3(技術的トリプリケートで測定した生物学的トリプリケート)であった。そして、各点は、誤差バーによって示すSEMを有する平均を表す。
【
図13-2】26℃での経時的なGFP-MunX発現についてのIPTG濃度の最適化、蛍光強度を、相対蛍光単位(RFU)で測定した。(B)示された範囲のIPTG濃度にわたる19時間インキュベーション後のGFP-MunX発現についての平均RFU出力の比較。矢印は、0.1および0.2mMが全ての他の試験よりも有意に高いRFU出力を産生することを確認する、Tukeyの多重比較試験の結果を示す(P<0.05)。
【
図14】さまざまなWELQut:サンプル比でのプランタリシン423およびムンドティシンST4SAの抗菌活性。それぞれ、Ni-NTA精製GFP-PlaXおよびGFP-MunXタンパク質から切断した、プランタリシン423(A)およびムンドティシンST4SA(B)の抗菌活性。切断は、リステリア・モノサイトゲネス(L.monocytogenes)に対するスポットプレート技術を使用して評価した。WELQut:サンプルの切断比(mL:mL)は、パネルの上部上に示す。切断は、28℃で16時間実施した。切断後、100mLのGFP-PlaX(A)および10mLのGFP-MunX(B)を、各切断反応からスポットした。非切断GFP-PlaX(A)およびGFP-MunX(B)は、抗リステリア活性を示さなかった。
【
図15】WELQut切断GFP-PlaX(a、b)およびGFP-MunX(c、d)のSDS-PAGE分析。(a、c)は、蛍光撮影した非染色SDS-PAGEゲルを表す。(b、d)は、(a、c)の染色ゲルを表す。レーン:1-ラダー、2-非切断サンプル、3から6 WELQut切断サンプル、サンプル比を示す。バンドI-非切断GFP-PlantEx、II-推定上のWELQutおよびGFP複合体、III-WELQut、IV-非切断GFP-MunX、V-推定上のWELQutおよびGFP複合体、VI-WELQut。
【
図16】SDS-PAGEによって分離した、遊離したムンドティシンST4SAおよびプランタリシン423の切断後の抗リステリア活性を観察した。(a)抗リステリア活性を示すバンドのサイズを示す、二重SDS-PAGE分離の重ね合わせ。(b)I-GFP-PlaX、II-GFP-MunX、III-ムンドティシンST4SAおよびIV-プランタリシン423に相関する位置でのWELQut切断後の活性を示す、抗リステリアSDS-PAGEオーバーレイ。(c)(a)における蛍光バンドの位置。
【
図17】GFP-MunXから遊離したムンドティシンST4SAのHPLC精製および正確な質量決定。(A)抗リステリア活性が分画13および14において確認されたWELQut切断GFP-MunX混合物のHPLC分画。(B)+5電荷([M+5H]C5 予想m/z 858.0232)を有するムンドティシンST4SAの観察されたm/z同位体エンベロープを示す生の質量スペクトルのセグメント。(B)におけるモノアイソトピックピークは、矢印で示しており、4258.1355Daの正確な質量測定値に対応し、これは、1つのジスルフィド結合を有するムンドティシンST4SAの正確な質量(4285.0796Da)と一致する。
【
図18】上のパネル-赤血球溶解アッセイにおいて使用した精製GFP-LLOおよびLLOのSDS-PAGE。左:染色ゲル。右:GFP-LLOおよびGFPの蛍光画像、L:ラダー(NEBラダー#P7712)、1:未切断(uncut)GFP-LLO、2:切断し、IMAS精製および脱塩したLLO。A:GFP-LLO、B:LLO。下のパネル-さまざまなpHでのGFP-LLO曝露後の赤血球の溶血。相対ヘモグロビン吸光度を、540nmで収集し、陽性対照のパーセンテージとして表した値、平均±SEM(n=3)、t検定を介した分析は、未処理に対して*=p<0.001、***=p<0.0001の結果となった。
【
図19】GFP-ActA-GST精製のSDS-PAGE。左:染色ゲル、右:GFP-ActA-GSTおよびGFPの蛍光画像。L:ラダー(PageRuler #26632)、1:IMACフロースルー、2:GFP-ActA-GSTを含有するIMAC溶出、3:GST精製前のIMAC溶出の希釈、4:GSTカラムについてのフロースルー、5:GFP-ActA-GSTを含有するGSTカラムからの溶出、6:GSTカラムから溶出したGFP-ActA-GSTのWELQutプロテアーゼ切断、7:WELQut消化後のActA-GSTを含有するIMACカラムからのフロースルー、8:IMACフロースルーから得られた脱塩し濃縮したActA-GST。A:GFP-ActA-GST、B:ActA-GST、C:GFP。分解産物を、ボックス(囲み枠)で示す。
【
図20】18℃の発現温度(初期)からの取出し直後に取得した、細胞培養物の光学密度。引き続く読取値を、26℃または37℃のいずれかでの3時間、6時間および9時間インキュベーション後に取得した。光学密度読取値を、マイクロプレートリーダーを使用して595nmで取得した。CONTROLGFP=GFPを発現するpRSFGFPを保有する細胞。GFPRTGPR=RNAサーモメータによって調節されるGFPおよびGpRを発現するpTAPGFP-GPRを保有する細胞。GFPGPR=GFPおよびGpRを発現するpRSFGFP-GpRを保有する細胞。
【
図21】凍結融解サイクルおよび溶解緩衝液中での再懸濁後の細胞の溶解。発現後26℃または37℃で9時間インキュベートした細胞を、凍結し、融解させて、SBまたは1%SDSを補ったSB中に再懸濁し、37℃でインキュベートした。光学密度読取値を、マイクロプレートリーダーを使用して595nmで取得した。CONTROLGFP=pRSFGFPを保有する細胞。GFPRTGPR=pTAPGFP-GPRを保有する細胞およびGFPGPR=pRSFGFP-GpRを保有する細胞。
【
図22】小規模のHisタグ精製のSDS PAGE分析。A)染色SDS PAGEゲル(矢印は、GFPに対応するバンドを示す)。B)(A)からのSDS PAGEにおけるGFPの蛍光。1=ラダー;2=CONTROLGFP 26℃;3=CONTROLGFP 37℃;4=GFPRTGPR 26℃;5=GFPRTGPR 37℃;6=GFPGPR 26℃および7=GFPGPR 37℃。C)異なるサンプル間のGFPバンド強度倍数変化の比較。バンド強度は、ImageJソフトウェアを使用して決定した。FluorSeeプロトタイプを使用し、蛍光用のAmberフィルターを有する白色光または青色光と使用して取得した画像。
【
図23】GFPTATBおよびTATBmCherryを表す、SDS-PAGE染色ゲルおよびGFP蛍光画像。左は、Coomassie染色ゲル;右の画像は、青色光の下で取得した。
【
図24】26℃(実線)および37℃(破線)で増殖させたさまざまな大腸菌コンストラクトの光学密度読取値。影付きの灰色のブロックは、26℃から37℃でさらなる5時間の増殖の間増殖させたサンプルの動きを示す。
【
図25】26℃(実線)および37℃(破線)で増殖させたさまざまな大腸菌コンストラクトの光学密度読取値の対数グラフ。影付きの灰色のブロックは、26℃から37℃でさらなる5時間の増殖の間増殖させたサンプルの動きを示す。
【
図26】1回の凍結融解サイクル後の、さまざまな温度で増殖させたさまざまな大腸菌コンストラクト(溶解後)の光学密度読取値。26℃(実線)および37℃(破線)。影付きの灰色のブロックは、26℃から37℃でさらなる5時間の増殖の間増殖させたサンプルの動きを示す。
【
図27】1回の凍結融解サイクル後の、さまざまな温度で増殖させたさまざまな大腸菌コンストラクト(溶解後)の対数光学密度読取値。26℃(実線)および37℃(破線)。影付きの灰色のブロックは、26℃から37℃でさらなる5時間の増殖の間増殖させたサンプルの動きを示す。
【
図28】1回の凍結融解サイクル後の、さまざまな温度で増殖させたサンプルG5の溶解率。破線の四角は、26℃から37℃でさらなる5時間の増殖の間増殖させたサンプルの移動を示す。
【
図29】1回の凍結融解サイクル後の、さまざまな温度で増殖させたサンプルG8の溶解率。破線の四角は、26℃から37℃でさらなる5時間の増殖の間増殖させたサンプルの動きを示す。
【
図30】1回の凍結融解サイクル後の、さまざまな温度で増殖させたサンプルG15の溶解率。破線の四角は、26℃から37℃でさらなる5時間の増殖の間増殖させたサンプルの動きを示す。
【
図31】1回の凍結融解サイクル後の、さまざまな温度で増殖させたサンプルG17の溶解率。破線の四角は、26℃から37℃でさらなる5時間の増殖の間増殖させたサンプルの動きを示す。
【
図32】1回の凍結融解サイクル後の、さまざまな温度で増殖させたサンプルG18の溶解率。破線の四角は、26℃から37℃でさらなる5時間の増殖の間増殖させたサンプルの動きを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明を次に、本発明の全てではないがいくつかの実施態様を示す、添付の図面を参照して、以下により十分に説明する。
【0027】
説明する本発明は、開示する特定の実施態様に限定されるべきではなく、修正および他の実施態様が本発明の範囲内に含まれることを意図する。特定の用語を本明細書において使うが、それらは、一般的かつ説明的な意味においてのみ使用し、限定の目的のために使用するのではない。
【0028】
この明細書の全体にわたっておよび後続する特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確にそうでないように示さない限り、複数形を含む。
【0029】
本明細書において使用する用語および表現は、説明の目的のためであり、限定するものとしてみなされるべきではない。本明細書において使用する用語「含む(comprising)」、「含有する」、「有する」および「含む(including)」並びにそれらの変形の使用は、その後に列挙する項目およびそれらの等価物並びに追加の項目を包含することを意味する。
【0030】
本発明は、宿主細胞中で目的の異種ポリペプチドおよび蛍光融合パートナーを含む融合タンパク質を発現させることを含む、宿主細胞中で目的の異種ポリペプチドを製造する方法に関する。宿主細胞は、溶解タンパク質をコードする核酸を含むように改変されている。溶解タンパク質によって課せられる代謝負荷を低下させるために、このタンパク質は、RNAサーモメータの制御下にある。本発明はまた、融合タンパク質を発現し、RNAサーモメータの制御下の溶解タンパク質をコードする核酸を含む、大腸菌細胞に関する。
【0031】
本発明者らは、融合パートナーとしてのGFPの使用が発現の最適化においていくつかの利点を提供することを示した。これは、(i)より効果的な翻訳後修飾(PTM)をもたらす、前駆体ペプチドのサイトゾル中の修飾酵素との増加した接触時間;(ii)最適化時間を実質的に低下させ得る、インビボでの蛍光読取値を使用して発現を評価する可能性;および(iii)GFP融合体の蛍光特性をSDS-PAGE分析と組み合わせることによって、タンパク質分解的切断をより正確にモニタリングすることを含む。発現宿主としての大腸菌の使用は、増加した組換えタンパク質収量、安価な培地上での迅速な増殖、並びに広範囲に特徴付けられた発現株およびクローニングツールの入手可能性などの、さらなる利点を提供する。さらに、ペプチドを融合パートナーとともに発現させることは、代謝フラックスの一部分をペプチド合成から外れるように向け直すが、有毒ペプチドの製造の場合においては、融合は、大腸菌に対する毒性を抑えることによって、全体の収量を増加させる。さらに、RNAサーモメータの使用はまた、追加の組換えタンパク質を溶解タンパク質の温度依存性発現を制御するために必要としないという点で、細胞を溶解するために必要とされる追加の溶解遺伝子を含むことの代謝負荷も低下させる。本発明の方法のさらなる利点は、維持された蛍光が、発現、抽出、精製、および分析プロセス全体にわたって標的タンパク質の明瞭な視覚化を提供することで、迅速な最適化およびトラブルシューティングを可能にすることである。蛍光強度は、それがGFP融合タンパク質の量に相関するため、最適化を導くための代理として機能する。
【0032】
本発明の方法を、以下に簡単に提供する。
【0033】
融合タンパク質ベクター設計:蛍光融合タンパク質をコードする融合コンストラクトは、標準的なクローニング技術を使用して、蛍光融合パートナー、例えばmCherryまたは緑色(Green)蛍光タンパク質(GFP)を目的のタンパク質またはペプチド(PoI)に融合することによって得られる。目的のペプチドは、蛍光融合パートナーのNまたはC末端に融合し得る。特定のプロテアーゼ切断部位を、蛍光融合パートナーと目的のペプチドとの間に含み得る。任意のプロテアーゼを、使用し得る(例えばWELQut、トロンビン、TEV、NisP)。蛍光融合タンパク質はさらに、精製を促進するために、融合タンパク質のNおよび/またはC末端に位置するタグを含み得る。タグはまた、蛍光融合タンパク質内に存在し得る。使用し得るタグは、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を使用する精製を促進するヒスチジンタグまたはプルダウンアッセイにおける使用のためのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグを含むが、これらに限定されない。プロテアーゼ部位をまた、タグを除去するために含み得る。さらに、蛍光融合タンパク質は、細胞外培地からの精製のための、融合タンパク質の分泌を促進するための、特定の分泌配列を含み得る。融合コンストラクトは、ベクター中にクローニングする。ベクターは、イソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を使用する誘導性発現において使用するT7プロモーター(例えばpRSF/pACYC/pXHベクター)を含み得るか;または特定の培地を使用して自己誘導性であり得る。ベクターはさらに、修飾酵素などの追加のタンパク質を含み得るか、または標的ペプチドの翻訳後修飾のための追加のタンパク質を保有する適合するベクターと、同時に形質転換し得る。
【0034】
クローニングおよび発現:融合タンパク質ベクターは、異種発現宿主、すなわち大腸菌BL21中に形質転換させる。大腸菌BL21からの発現は、特定の細菌光学密度でのIPTGを用いる誘導を通して達成される。IPTGに加えて、特定の自己誘導培地を使用することができ、これが、組換えタンパク質を製造するコストを低下させ、収量を増加させ得る。インキュベーション期間全体にわたって、融合タンパク質の発現は、分光光度計または融合タンパク質パートナーの蛍光を測定することができる特注の検出システムを使用して、インビボでモニタリングすることができる。
【0035】
細胞溶解:大腸菌BL21異種宿主は、そのゲノム中に溶解タンパク質を含むように改変するか、発現ベクター上に含める。エンドリシンまたは細菌性ムレインヒドロラーゼなどの溶解タンパク質は、細胞内で発現した融合タンパク質を取得するための溶解プロセスを簡単にし、安価にするために含める。RNAサーモメータは、大腸菌における溶解タンパク質の、転写後の温度依存性発現を導くために使用する。RNAサーモメータによって形成される二次構造は、リボソーム結合部位をブロックすることによりリボソーム結合を妨害し、これが順番に、mRNAのタンパク質への翻訳を妨げる。自己消化タンパク質の発現は、RNA転写物の温度誘導巻き戻しおよび引き続く翻訳に依存するため、どちらも、高価な誘導物質を必要としない。使用するRNAサーモメータに依存して、それは、厳密にオンまたはオフのいずれかであり得るか、またはそれによってそれらが低温でのタンパク質の翻訳を低下させる調光器として作用し得る。RNAサーモメータは、さまざまな温度の範囲に応答するように設計することができ、必要に応じて応答するようにカスタマイズ可能である。さらに、構成的プロモーター(例えば定常期プロモーター)または誘導性プロモーター(例えばT7)の使用は、RNAサーモメータをコードする核酸および溶解遺伝子の転写を制御するために使用し得る。定常期プロモーターの使用は、RNAサーモメータおよび溶解遺伝子からなるmRNAの遅延した転写をもたらし得る。これは、mRNAの安定性を増大させ、溶解遺伝子の遅延した発現を通して細胞上の代謝負荷を低下させるであろう。蛍光融合パートナーを検出することによってモニタリングしながら、いったん標的タンパク質の発現が起こると、細胞を、溶解タンパク質の翻訳を誘導するために変更した温度でインキュベートする。あるいは、細胞を、遠心分離によって回収し、溶解促進緩衝液中に再懸濁し、高温でインキュベートして、溶解タンパク質の翻訳を誘導し得る。この溶解発現期間の後、細胞を、遠心分離によって回収し、細胞壁をさらに分解するために凍結し得る(<-20℃)。細胞を次いで融解し、1%SDSまたは0.1%Triton X100などの界面活性剤または細胞透過性化学薬品を含有する緩衝液を、必要に応じて添加する。さらに、他の機械的ストレスまたは界面活性剤もまた使用して、細胞溶解を促進し得る。RNAサーモメータに導かれる自己溶解は、細胞を凍結することによって誘導される細胞損傷の際に、溶解タンパク質の、細胞のペプチドグリカン層との接触を通した、細胞の溶解をもたらす。細胞破片は、遠心分離を使用して融合タンパク質から分離し得、融合タンパク質は、その後精製し得る。
【0036】
精製:精製は、アフィニティークロマトグラフィーを使用して達成し得る。使用する精製方法は、使用するタグに依存する。Hisタグ融合タンパク質については、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを、使用し得る。最も一般的には、Hisタグ付きタンパク質を結合するニッケル樹脂を、使用する。この精製においては、タンパク質は、ニッケル樹脂に結合させ、pHを下げることまたはイミダゾールの濃度を増大させることのいずれかによって溶出させる。代替の実施態様においては、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグを、融合タンパク質において使用し得、この場合においては、GSTについて高い親和性を有するグルタチオン樹脂を使用し得る。GST融合タンパク質は、還元型グルタチオンの濃度を増大させることを使用して、樹脂から取り出す。あるいは、2つの異なるタグを、融合タンパク質において使用し得、それは、二重精製プロセスにおいて、まず1つの方法を使用し、その後別の方法を使用して精製することができる。重要なことに、融合タンパク質は、蛍光融合パートナーの蛍光特性を利用することにより、精製プロセス全体にわたってモニタリングし得る。ほとんどの場合において、融合タンパク質は、直接視覚化することができる(例えばGFPの場合においては緑色蛍光を観察することによって)。融合タンパク質は、上で概説したプロセスの1つ、または融合タンパク質を視覚化する能力によって支援される、当業者に知られている任意の精製を使用して、手動で精製し得る。あるいは、融合タンパク質は、自動システムを使用して精製し得る。そのような自動システムの例は、254nmの波長でタンパク質を検出すること、並びに蛍光融合パートナータンパク質を検出することの両方が可能なシステムを含むが、これに限定されない。該システムはさらに、流速を制御するための可変速度が可能な蠕動ポンプ、並びにタンパク質(254nmの波長で)およびその励起時の蛍光融合パートナーを測定することができる検出システムを含み得る。使用する蛍光融合パートナーに依存して、蛍光融合パートナーの励起は、特定の励起波長および発光フィルターを使用して達成し得る。
【0037】
精製したタンパク質は次いで、塩を除去するために透析し、適切な緩衝液中に置き得る。陽イオン交換、陰イオン交換または疎水性相互作用などの精製方法を使用して、組換えタンパク質をさらに精製し得る。
【0038】
分析および視覚化:蛍光融合パートナーの特性のため、それは、本明細書においてより詳細に説明するSDS PAGE法を使用して容易に検出することができる。この方法の一つの実施態様においては、融合タンパク質の蛍光融合パートナー部分を、適切なLED波長およびフィルターを有するLEDトランスイルミネーターを使用して、直接視覚化し得る。
【0039】
本明細書において使用する用語「タンパク質」、「ペプチド」または「ポリペプチド」は、互換的に使用され、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)に関係なく、天然または非天然のアミノ酸またはアミノ酸類似体を含む、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖を指す。アミノ酸はすなわち、ペプチド結合によって一緒に連結した、任意の長さのポリマー形態である。
【0040】
本明細書において使用する用語「目的の異種ペプチド」または「目的のペプチド」または「目的のタンパク質」は、宿主細胞タイプにおいて天然に存在しない任意のポリペプチドを指す。目的の異種ポリペプチドは、本発明の方法を使用した、細菌細胞、例えば大腸菌細胞中での発現について意図している。本発明の方法は、ウイルスタンパク質、細菌毒素、および哺乳類タンパク質の製造を企図する。目的の異種ポリペプチドの非限定的な例は:本発明の方法に従って製造することができる薬理学的ポリペプチド(例えば、医療用途用、細胞および組織培養用)または工業用ポリペプチド(例えば酵素、増殖因子)を含み得る。目的の異種ポリペプチドは、ワクチンとしてまたはワクチンにおいて、並びに他の試薬または診断において、有用であり得る。特に、目的の異種ポリペプチドは、SARS-CoVのウイルスコートおよびスパイクタンパク質、HIVタンパク質を含む、ウイルス由来のポリペプチドであり得る。あるいは、目的の異種ポリペプチドは、リステリオリシンOを含む、細菌毒素タンパク質;インスリンまたはオートファジー誘導タンパク質などの、哺乳類タンパク質 IgGなどの、抗体;インターロイキン10などの、サイトカイン;タバコエッチウイルス由来のTEVプロテアーゼ、ラクトコッカス・ラクティス由来のNisPプロテアーゼ、黄色ブドウ球菌由来のセリンプロテアーゼを含む、プロテアーゼ;抗結核および抗リステリアペプチドなどの、抗菌ペプチド;ラッカーゼなどの工業用酵素;リガーゼ、ポリメラーゼ、制限酵素を含む、分子酵素;タンパク質精製において使用される、エンドリシンなどの、溶解酵素であり得る。
【0041】
本明細書において使用する用語「蛍光融合パートナー」は、目的の異種ポリペプチドのN末端、目的の異種ポリペプチドのC末端、または目的の異種ポリペプチドのN末端およびC末端のそれぞれに融合した、蛍光ペプチドを指す。いくつかの実施態様においては、本発明の「蛍光融合パートナー」は、限定なしに、配列番号11または配列番号13のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドを含み得る。
【0042】
本明細書において使用する用語「融合タンパク質」は、少なくとも蛍光融合パートナーおよび目的の異種ポリペプチドを含むポリペプチドを指す。本発明の融合タンパク質はさらに、精製タグ、プロテアーゼ切断部位、または分泌配列を含む、追加のアミノ酸配列を含み得る。本発明の別の実施態様は、限定なしに、前述の融合タンパク質をコードする核酸分子を含む。
【0043】
本発明の融合タンパク質は、目的の異種ポリペプチドからの蛍光融合パートナーのまたは精製タグの分離を可能にするプロテアーゼ切断部位を含み得る。プロテアーゼ切断部位は、部位特異的プロテアーゼについての認識配列であり得る。多くの市販のプロテアーゼを含む、多くの部位特異的ペプチダーゼが、当技術分野において知られている。これらは、WELQut、トロンビン、トリプシン、nisP、第Xa因子、PreScissionプロテアーゼ、エンテロキナーゼ、V8プロテアーゼ(Glu-C)およびTEVを含むが、これらに限定されない。
【0044】
本発明の一つの実施態様においては、融合タンパク質は、「精製タグ」を含み得る。精製タグは、本明細書においては、金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによる組換えタンパク質の精製を可能にするヒスチジン残基の直鎖配列を指す、「ポリHisタグ」または「Hisタグ」であり得る。あるいは、ポリHisタグを使用して、抗ポリHisタグ抗体を使用して組換えポリペプチドを検出し得る。ポリHisタグは、6、7、8、9または10個の連続したヒスチジン残基を含み得る。精製タグは、「GSTタグ」であり得る。さらに、融合タンパク質は、融合タンパク質の二重精製のために、例えば、HisタグおよびGSTタグであるが、これらに限定されない、2つ以上のタグを含み得る。
【0045】
本明細書において使用する用語「形質転換された宿主細胞」は、異種ポリペプチド、例えば溶解タンパク質を発現するために安定に形質転換された、または宿主細胞中で異種ポリペプチドを一過性に発現する少なくとも1つの発現ベクターが浸潤した、のいずれかの宿主細胞を指す。
【0046】
本明細書において使用する用語「溶解タンパク質」は、細胞膜の崩壊を引き起こし、細胞を溶解させるタンパク質を指す。多くの溶解タンパク質が、当技術分野において知られている。これらは、例えば、バクテリオファージまたはプロファージによって発現される、エンドリシンおよび細菌性ムレインヒドロラーゼを含む。例は、リゾチーム、配列番号16のヌクレオチド配列によってコードされる配列番号15のアミノ酸配列を有するGpR、および配列番号18のヌクレオチド配列によってコードされる配列番号17のアミノ酸配列を有するGpEを含むが、これらに限定されない。溶解(lysin)タンパク質は、ホーリングエンドリシン(holing-endolysin)システムに基づいており、このシステムは、孔形成タンパク質および細胞壁分解酵素で構成されている。細胞壁分解タンパク質は、発現し、細胞質中でその活性形態であり、孔形成ホーリングによって孔が形成され、エンドリシンが、細胞壁を分解し始めることができるペリプラズム空間に入ることができるようになって初めて、細胞壁を分解し始め得る。このシステムは、それが細胞壁に遭遇し得るまで細胞質中で不活性のままであるであろうエンドリシンの発現を可能にするため、本発明における応用にとって理想的である。
【0047】
溶解タンパク質の発現は、温度に依存し得、例えば、溶解タンパク質の発現は、RNAサーモメータによって調製し得る。本明細書において使用する用語「RNAサーモメータ(RNA thermometer)」は、温度における変化に応答して溶解タンパク質の発現を調節する温度感受性の非コードRNA分子を指す。RNAサーモメータに依存して、それは、選択した温度で厳密にオンまたはオフであり得るか、またはそれによってそれがより低い温度でタンパク質の翻訳を低下させる調光器として作用し得る。RNAサーモメータは、さまざまな温度の範囲に応答するように設計することができ、必要に応じて応答するようにカスタマイズ可能である。構成的プロモーター(例えば定常期プロモーター)または誘導性プロモーター(例えばT7)の使用は、RNAサーモメータをコードする核酸および溶解遺伝子の転写を制御するために使用し得る。定常期プロモーターの使用は、RNAサーモメータおよび溶解遺伝子からなるmRNAの遅延した転写をもたらし得る。これは、mRNAの安定性を増大させ、溶解遺伝子の遅延した発現を通して細胞上の代謝負荷を低下させるであろう。定常期プロモーターは、後期指数増殖期および定常期を含む細菌増殖の後期段階中により活性であるプロモーターである。
【0048】
用語「核酸」、「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」は、本明細書においては互換的に使用され、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含む、リボヌクレオチド(RNA)およびデオキシリボヌクレオチド(DNA)の両方を包含する。核酸は、二本鎖または一本鎖であり得る。核酸が一本鎖である場合、核酸は、センス鎖またはアンチセンス鎖であり得る。核酸分子は、天然に存在する若しくは非天然に存在するヌクレオチド、またはヌクレオチド類似体若しくは誘導体を含む、2つ以上共有結合したヌクレオチドの任意の鎖であり得る。用語「DNA」は、2つ以上共有結合した、天然に存在するまたは修飾されたデオキシリボヌクレオチドの配列を指す。
【0049】
用語「単離された」は、本明細書において使用され、自然環境から取り出されたことを意味する。
【0050】
用語「精製された」は、汚染または汚染物質が実質的にない形態での分子または化合物の単離に関する。汚染物質は通常、自然環境中の分子または化合物に関連しており、精製されたはすなわち、元の組成物の他の成分から分離された結果としての純度における増加を有することを意味する。用語「精製核酸」は、それが通常その天然の状態において関連している、ポリペプチド、脂質および炭水化物を含むがこれらに限定されない他の化合物から分離された核酸配列を説明する。
【0051】
用語「相補的」は、ワトソン・クリック塩基対を形成して、2つの核酸分子間に二本鎖の領域を産生することができる、2つの核酸分子を指す。核酸分子中の各ヌクレオチドが、二本鎖を形成するために反対の相補鎖中のヌクレオチドと、一致したワトソン・クリック塩基対を形成する必要がないことが、当業者によって理解されるであろう。1つの核酸分子はすなわち、それが高ストリンジェンシーの条件下で第2の核酸分子とハイブリダイズする場合、該第2の核酸分子に対して「相補的」である。本発明による核酸分子は、両方の相補的な分子を含む。
【0052】
本明細書において使用する「実質的に同一」の配列は、1つ以上の保存的置換によって、または1つ以上の発現した融合タンパク質の若しくは核酸分子によってコードされるポリペプチドの抗原性を破壊しない若しくは実質的に低下させない配列の位置に位置する1つ以上の非保存的置換、欠失、若しくは挿入によってのみ参照配列と異なるアミノ酸またはヌクレオチド配列である。配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知識の範囲内にあるさまざまな方法で達成することができる。これらは、例えば、ALIGN、Megalign(DNASTAR)、CLUSTALWまたはBLASTソフトウェアなどのコンピューターソフトウェアを使用することを含む。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメーターを容易に決定することができる。本発明の一つの実施態様においては、本明細書において記載する配列と少なくとも約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または100%の配列同一性を有するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列が、提供される。
【0053】
あるいは、またはさらに、2つの核酸配列は、それらが高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする場合、「実質的に同一」であり得る。ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定可能であり、一般に、プローブの長さ、洗浄温度、および塩濃度に依存する、経験的計算である。一般に、より長いプローブは、適切なアニーリングのためにより高い温度を必要とし、一方で、より短いプローブは、より低い温度を必要とする。ハイブリダイゼーションは一般に、相補鎖がそれらの融解温度より低い環境中に存在するとき、変性したDNAの再アニーリングする能力に依存する。そのような「ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件の典型的な例は、穏やかに振とうしながら65℃で18時間行うハイブリダイゼーション、Wash Buffer A(0.5%SDS;2XSSC)中65℃で12分間の第1の洗浄、およびWash Buffer B(0.1%SDS;0.5%SSC)中65℃で10分間の第2の洗浄であろう。
【0054】
ポリペプチド、ペプチドおよびペプチド類似体は、組換えDNA技術を使用して、それらの対応する核酸分子から調製することができる。
【0055】
本明細書において使用する用語「遺伝子」は、機能的産物、例えばRNA、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸を指す。遺伝子は、機能的産物をコードする配列の上流または下流に調節配列を含み得る。
【0056】
本明細書において使用する用語「コード配列」は、特定のアミノ酸配列をコードする核酸配列を指す。他方、「調節配列」は、コード配列の上流、下流または内のいずれかに位置するヌクレオチド配列を指す。一般に、調節配列は、転写、RNAプロセシング若しくは安定性、または関連するコード配列の翻訳に影響を及ぼす。調節配列は、エフェクター結合部位、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化認識配列、プロモーター、RNAプロセシング部位、ステムループ構造、翻訳リーダー配列等を含むが、これらに限定されない。
【0057】
いくつかの実施態様においては、本発明の方法において使用する核酸分子は、他の配列に作動可能に連結し得る。「作動可能に連結」によって、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子および調節配列が、適切な分子が調節配列に結合したときにタンパク質の発現を可能にするように接続されていることを意味する。そのような作動可能に連結した配列は、発現のために宿主細胞中に形質転換またはトランスフェクトすることができる、ベクターまたは発現コンストラクト中に含有し得る。任意のベクター(単数)またはベクター(複数)を、本発明の融合タンパク質を発現させる目的のために使用することができることが、理解されるであろう。
【0058】
用語「プロモーター」は、核酸コード配列または機能的RNAの発現を制御することができるDNA配列を指す。プロモーターは、全体に天然遺伝子に基づき得るか、またはそれは、天然に見出だされる異なるプロモーターからの異なる要素で構成し得る。異なるプロモーターは、異なる細胞型において、または発生の異なる段階で、または異なる環境若しくは生理学的条件に応答して、遺伝子の発現を指示することができる。「構成的プロモーター」は、ほとんどの宿主細胞型において、ほとんどの場合にまたは特定の増殖期に目的の遺伝子の発現を指示するプロモーターである。
【0059】
用語「組換え」は、何かが組み換えられたことを意味する。核酸コンストラクトに関連して使用するとき、該用語は、分子生物学的技術によって一緒に結合されるかまたは産生される核酸配列を含む分子を指す。用語「組換え」は、タンパク質またはポリペプチドに関連して使用するとき、分子生物学的技術によって作り出された組換え核酸コンストラクトから発現されるタンパク質またはポリペプチド分子を指す。組換え核酸コンストラクトは、それが天然ではライゲーションされない、またはそれが天然では異なる位置でライゲーションされる、核酸配列にライゲーションしている、またはライゲーションされるように操作されているヌクレオチド配列を含み得る。従って、組換え核酸コンストラクトは、核酸分子が、遺伝子工学を使用して、すなわち人間の介入によって操作されたことを示す。組換え核酸コンストラクトは、形質転換によって宿主細胞中に導入し得る。そのような組換え核酸コンストラクトは、同じ宿主細胞種由来または異なる宿主細胞種由来の配列を含み得る。
【0060】
用語「ベクター」は、ポリヌクレオチドまたは遺伝子配列を細胞中に導入することができる手段を指す。プラスミド、ウイルス、バクテリオファージおよびコスミドを含む、当技術分野において知られているさまざまなタイプのベクターがある。一般に、ポリヌクレオチドまたは遺伝子配列は、カセットによってベクター中に導入する。用語「カセット」は、ベクターから発現されるポリヌクレオチドまたは遺伝子配列、例えば、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドまたは遺伝子配列を指す。カセットは一般に、ベクター中に挿入された、いくつかの実施態様においては、蛍光融合タンパク質を発現させるための制御配列を提供する、遺伝子配列を含む。他の実施態様においては、ベクターは、アシルトランスフェラーゼポリペプチドの発現のための調節配列を提供する。さらなる実施態様においては、ベクターは、いくつかの調節配列を提供し、ヌクレオチドまたは遺伝子配列は、他の調節配列を提供する。「調節配列」は、プロモーター、転写終結配列、エンハンサー、スプライスアクセプター、ドナー配列、イントロン、リボソーム結合配列、ポリ(A)付加配列、および/または複製の起点を含むが、これらに限定されない。
【0061】
いくつかの実施態様においては、本発明による融合タンパク質または組成物は、使用のための説明書と一緒に、キットで提供し得る。
【0062】
以下の実施例は、例示として提供され、限定として提供されるものではない(全ての緩衝液組成を、表7に列挙する)。
【実施例】
【0063】
実施例1
大腸菌におけるGFP融合クラスIランチペプチド(Lanthipeptide)の異種発現
pRSFGFP-NisBバックボーンおよびpACYC-NisCの構築
この実施例において使用した全てのPCRプライマーを、以下の表1に提供する。表2は、この実施例において使用したまたは生成したそれぞれのプラスミドの説明を提供する。プラスミドpRSFGFPを構築するために、mgfp5遺伝子を、GFP、Ery(プライマー=配列番号41および42)を含有するプラスミドであるpTRKH3-ermGFP(Michela Lizierより、Addgene plasmid #27169)からPCRによって増幅した。PCR産物およびpRSF Duet-1を、BamHI/PstIで消化し、T4リガーゼを使用してライゲーションした。これが、C末端WELQ部位を有するHisタグ融合GFPをもたらした。nisBおよびnisC遺伝子は、L.ラクティスgDNAを鋳型として使用するPCRによって増幅した(プライマー=配列番号45~48)。
【0064】
nisCおよびnisBについてのPCR産物を、BglII/XhoI断片としてそれぞれ、pACYC Duet-1およびpRSFGFP中にクローニングした。コンストラクトを、ケミカルコンピテントな大腸菌BL21(DE3)中に形質転換し、それぞれ、pRSFおよびpACYCコンストラクトについての選択的抗生物質としてカナマイシン(50μg/mL)またはクロラムフェニコール(25μg/mL)を補ったLuria-Bertani(LB)寒天上にプレーティングした。単一コロニーを、選択し使用して、それぞれの抗生物質を補ったLBブロスに接種し、30℃で一晩インキュベートした。プラスミドDNAを、単離し、配列決定反応(Central analytical facility, CAF, Stellenbosch University)、クローニングおよび形質転換のために使用した。
【0065】
ランチペプチド発現株の構築
nisA遺伝子を、L.ラクティスゲノムDNAを鋳型として使用するPCRによって増幅した。Pep5およびエピランシン15Xを、それらのそれぞれのプライマーを使用して増幅した(表1)。Pep5およびエピランシン15Xを増幅するために使用したフォワードプライマーは、ナイシンリーダーの3’領域と相同な5’オーバーハングを組み込んだ。ナイシンリーダーを、以下の表1中のプライマー9(配列番号49)および14(配列番号54)を用い、トロンビンプロテアーゼ部位(S-3V)についてコードするヌクレオチド配列を組み込むリバースプライマーを用いて、L.ラクティスDNAを鋳型として使用するPCRによって増幅した。
【0066】
融合PCRについては、ナイシンリーダーPCR産物およびそれぞれのPep5/エピランシン15X PCR産物(それぞれプライマー10~11(配列番号50~51)および12~13(配列番号52~53)を使用を、混合し、Pep5についてはプライマー9および11(配列番号49および配列番号51)、またはエピランシン15Xについてはプライマー9および13(配列番号49および配列番号53)を使用して、増幅した。最終の融合PCRは、コアランチペプチドのナイシンリーダーへの融合をもたらした。最終の融合前駆体ランチペプチド(pLanthipeptides)およびpRSF Duet-1を、PstI/HindIIIで消化し、T4リガーゼを使用してライゲーションした。pRSF中のpLanthipeptideを、PstI/NotIで消化し、pRSFGFP-NisBにおける対応する部位中にライゲーションした。
【0067】
前駆体Pep5(pPep5)および前駆体エピランシン15X(pEpilancin15X)におけるプロテアーゼ部位のトロンビン(AVPR)からhNisP部位(ASPR)への変更もまた、融合PCRで行った。鋳型DNAは、トロンビンプロテアーゼ部位を有するそれぞれのpRSFGFP-pLanthipeptides-NisBコンストラクトからであった。ナイシンリーダーは、プライマー9(配列番号49)および16(配列番号56)を使用して増幅し、リバースプライマーは、GTA(バリン)からTCA(セリン)へのヌクレオチドサブステーションをもたらす。それぞれのコアペプチドを、フォワードプライマー15(配列番号55)およびそれらのそれぞれのリバースプライマー(Pep5については配列番号51およびエピランシン15Xについては配列番号53)を使用して増幅した。リーダーおよびコアペプチドについてのPCR産物を混合し、融合PCRを、ナイシンリーダーについてはフォワードプライマー(配列番号50)およびそれぞれのペプチドについてはリバースプライマーを使用して実施した。最終の産物を、上記のように消化しライゲーションして、pRSF-GFPpNisin-NisBを得た(
図2および3)。
【0068】
プレナイシンコンストラクトにおけるNisP部位のトロンビン部位への置換を、上記のように融合PCRを使用して達成した。使用したプライマーの組合せは、pRSFGFPpNisin-NisB pDNAを鋳型として使用して、プライマー9(配列番号49およびプライマー18(配列番号58);プライマー17(配列番号57)およびプライマー4(配列番号44);並びにプライマー9(配列番号49)およびプライマー4(配列番号44)を含んだ。
【0069】
結果として得られたコンストラクトを、ケミカルコンピテントな(chemical competent)大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、カナマイシン(50μg/mL)を補ったLB寒天上にプレーティングした。単一コロニーを、選択し使用して、カナマイシン(50μg/mL)を補ったLBブロスに接種し、30℃で一晩インキュベートした。プラスミドDNAを、単離し、引き続く配列決定反応(CAF, Stellenbosch)およびクローニング/形質転換のために使用した。それぞれのコンストラクトを引き続き、pACYCNisCと、ケミカルコンピテントな大腸菌BL21(DE3)細胞に同時に形質転換し、カナマイシン(50μg/mL)およびクロラムフェニコール(25μg/mL)を補ったLB寒天上にプレーティングし、30℃で一晩インキュベートした。単一コロニーを、単離し、引き続く発現実験において使用した。
【0070】
上で詳述したように、本発明の発明者らはすなわち、多くの前駆体ペプチドについての「プラグアンドプレイ」システムとして使用することができるであろうバックボーンプラスミドを作り出した(
図2および3)。
【0071】
非GFPタグ付きHis-pLanthipeptideの構築を、実施した。簡単に言うと、前述のように、nisA遺伝子を、L.ラクティスgDNAから増幅し、nisBおよびnisCを、増幅し、クローンニングした。His-prePep5および-preEpilancin15Xの生成については、それぞれのpLanthipeptideを、フォワードプライマー3(配列番号43)並びにPep5(配列番号51)およびエピランシン15X(配列番号53)についてのそれぞれのリバースプライマーを使用して、pRSFGFP-pPep5Th-NisB/pEpilancin15XTh-NisBから増幅した。それぞれのPCR産物およびpRSF Duet-1を、BamHI/HindIIIで消化し、T4リガーゼを使用してライゲーションし、N末端Hisタグ付きプレランチペプチドを生成した。pRSF中のHis-pLanthipeptideを、BamHI/NotIで消化し、pRSF-NisB中の対応する部位中にライゲーションした。形質転換および細胞培養は、上記のように実施した。
【0072】
【0073】
【0074】
GFP-pNisin発現の最適化
全ての場合において、pRSFGFP-pNisin大腸菌BL21(DE3)の一晩培養物を使用して、カナマイシン(50μg/mL)およびクロラムフェニコール(25μg/mL)を補った200mLのterifficブロスを含有するフラスコに接種した(1.0%v/v)。培養物を、0.6のOD600nmに達するまで37℃でインキュベートし、誘導し、さらにインキュベートした。温度については、培養物を、1mM IPTGで誘導し、さらに4つの異なる温度(18℃、26℃、30℃または37℃)で48時間インキュベートした。IPTG濃度を、4つの異なる濃度(0.1mM、0.25mM、0.5mMおよび1mM)で評価し、誘導培養物を、26℃で24時間インキュベートした。誘導(1mM IPTG)後のインキュベーションを、26℃で3つの異なる時間(12時間、24時間および48時間)で評価した。細胞を、溶解し、精製し、活性について試験した。
【0075】
非GFP融合His-pLanthipeptideの発現および精製
pRSF-His-pLanthipeptides-NisBおよびpACYC-NisCで同時に形質転換した大腸菌BL21(DE3)を、カナマイシン(50μg/mL)およびクロラムフェニコール(25μg/mL)を補ったLBブロス中で通気下、30℃で一晩インキュベートした。一晩培養物を使用して、抗生物質を補った100mLのterifficブロス(TB)に接種した(1.0%v/v)。これらの培養物を、0.6のOD600に達するまで、通気下、37℃でインキュベートした。培養物を、1mM IPTGで誘導し、それらのそれぞれの誘導温度に移し、18時間発現させた。His-pNisin培養物を、18℃、26℃および37℃(一晩)で発現させ、His-pPep5/pEpilancin 15X培養物を、18℃(一晩)で発現させた。発現後、細胞を、遠心分離(6164×g、20分、4℃)によって回収した。
【0076】
可溶性画分については、細胞ペレットを、リゾチーム(1mg/mL)、プロテアーゼ阻害剤、DNAse(1U/mL)およびRNAse(6U/mL)を補った10mL SB中に再懸濁した。細胞を、氷上で30分間インキュベートし、引き続き氷上で超音波処理(3分間70%出力、50%パルスで3回)により崩壊させた。溶解サンプルを、15870×g、4℃で60分間遠心分離した。結果として得られた上清を、可溶性画分の精製のために使用し、ペレットを、10mLの開始緩衝液尿素(Start Buffer Urea)(SBU:50mM Tris、500mM NaCl、8M尿素、pH8.0)中に再懸濁した。再懸濁したペレットを、室温で30分間溶解させ、その後超音波処理し、15870×g、4℃で60分間で遠心分離した。タンパク質の精製は、製造業者の説明書に従って、プレパックされたHis Trap HPカラムを使用するAKTA Purifier精製システムを使用して達成した。結果として得られた溶出液(eluent)を、プレパックしたSephadex G25カラムを使用してPBS緩衝液に対して脱塩した。脱塩したサンプルを、引き続く活性試験およびSDSPAGEゲル分離において使用した。
【0077】
初期抗菌活性
初期抗菌効果試験については、GFP融合および非GFP融合pLanthipeptideの両方を、ロードし(GFP-pNisinおよびGFP-pPep5)、トリプシン(GFP-pNisinについて5μg/mL)またはトロンビン(GFP-pPep5について3U/100μL)を用いてウェル中で直接切断した。抗菌活性は、ナイシンについてはラクトバチルス・サケイに対して、GFP-pPep5についてはS.カルノーサスに対して評価した。プレートを、目に見える透き通ったゾーンが観察されるまで、30℃で一晩インキュベートした。ラクトバチルス・サケイは、MRSブロスまたは寒天中で培養し、S.カルノーサスは、ミューラーヒントンブロスまたは寒天中で培養した。
【0078】
活性データから、第一に、GFP-pNisinが大腸菌中で首尾よく発現した(すなわち、修飾された)ことが、第二に、発現を、ある範囲の温度、誘導時間およびIPTG濃度で実施したときに活性が検出されたため、発現が堅固であることが確立された。最も高い活性(トリプシンでの切断後)は、発現を18℃で実施したとき、可溶性および不溶性画分から精製したHisタグ付き前駆体ナイシン(HispNisin)について観察された。発現を26℃および37℃で実施したとき、それぞれ、活性における減少および実質的な損失が、観察された(
図4)。しかしながら、SDS-PAGEを使用した可溶性および不溶性画分の電気泳動分離は、より高いレベルのHis-pNisinがより高い温度で得られることを示した。増加した発現率および毒性の可能性のため、Hisタグ付き前駆体ペプチドは、封入体に隔離し、これが、それぞれの修飾酵素との接触時間を減少させる。GFP-pNisinの場合においては、最高の活性(コアペプチドの遊離後)は、26℃で観察された(
図4)-これは、より高い温度であっても、サイトゾル中のそれぞれの修飾酵素との接触時間が増大した結果として、より効果的な脱水および環化反応をもたらした可能性がある。予備的な収量結果は、本発明を使用して、約1.99mg/Lの抗菌活性ナイシン(ナイシンプロテアーゼでの切断、NisP、およびHPLC精製後)が48時間の誘導後に取得し得るであろうことを示す。ESI-MSによれば、約0.67~1.08mg/Lの得られた抗菌活性産物は、完全に修飾されたナイシンに相当した。
【0079】
活性は、トロンビンでの切断後、GFP-pPep5について検出されたが、切断がない場合は活性は何ら検出されなかった(
図5)。完全に修飾されたPep5はまた、切断および精製後にも(ESI-MSを使用して)検出することができた。
【0080】
プロテアーゼ消化
ペプチドのプロテアーゼ消化を使用して、それらのそれぞれのGFPリーダーペプチド融合体からのコアペプチドの跡のない除去を達成することができるかどうかを確立した。これは、ランチペプチドの産生について異種発現を利用するとき、または融合タグを使用するときに考慮すべき重要な一面である。いくつかの市販のプロテアーゼは、跡のない切断が可能であるが、高価であり、PTMの近くでは効果的に切断しない可能性がある。本発明者らはすなわち、GFP融合前駆体ランチペプチド(GFP-pLanthipeptide)を切断するNisPの能力を評価した。
【0081】
GFP-pLanthipeptideを、トロンビンまたはhNisPを用いて、37℃で4時間および20時間切断した。異種発現したhNisPを、0.01ng/μL、5ng/μL、10ng/μL、50ng/μLおよび70ng/μLの濃度に添加した。トロンビンは、0.75U、4.5U、3Uおよび6Uで添加した。切断反応は、100μLの反応物中で実施し、GFP-pLanthipeptideのタンパク質濃度を、0.9mg/mLに調整したGFP-pPep5Thを除き、1mg/mLの最終濃度に調整した。切断反応は、プロテアーゼ阻害剤の添加によって停止した。抗菌活性を、GFP-pNisin(30μL)およびGFP-pPep5(80μL)について、それぞれ、Lb.サケイおよびS.カルノーサスに対して評価した。プレートを、目に見える透明なゾーンが観察されるまで30℃で一晩インキュベートした。サンプルを、SDS-PAGEを使用して分離した。
【0082】
トロンビンおよびhNisPの両方での切断は、切断の4時間および20時間後に活性ランチペプチドの遊離をもたらした(
図6)。興味深いことに、トロンビンおよびhNisPの両方での濃度および切断時間を増加させることは、最もおそらくは、ランチオニン/メチルランチオニン架橋によって保護されていないコアペプチド内の非特異的hNisP切断部位のため、Pep5の抗菌活性上に悪影響を有した。
【0083】
SDS-PAGE
電気泳動分離後のGFP蛍光を視覚化するために、サンプルを、サンプル緩衝液中で煮沸せず、37℃で30分間インキュベートした。引き続き7μLのサンプルを、20%トリシンSDS-PAGEゲルのウェル中にロードした。熱の発生を抑え、より小さなペプチドの分離を助けるために、SDS-PAGEゲルを、8℃で実行した。SDS-PAGEゲルにおけるGFP蛍光の視覚化のために、UV光(312nm)に曝露したサンプルの直接写真画像を、デジタルカメラまたはMiniBIS Pro DNR Bio-imagingシステム(DNR Bio-imaging systems、イスラエル)を使用して撮影した。UVイメージング後、ゲルを、dH2Oで洗浄し、5%(v/v)グルタルアルデヒド中で1時間固定した。固定後、ゲルを、dH2Oで洗浄し、タンパク質バンドを視覚化することができるまでBlue silver Coomassie染色を使用して染色した。
【0084】
伝統的には、切断効率は、SDS-PAGEを使用して評価されるであろう。しかしながら、従来の染色法は、切断効率のはっきりしたイメージを常に提供するとは限らない。本発明の発明者らは、GFPfusionを使用して可能となる代替評価方法を提示する。GFP-pNisinの蛍光特性を利用することにより、切断効率を、UVイメージングおよび従来のCoomassie染色の両方を使用することによって、切断されたおよび非切断のGFP-pNisinの移動を追跡することにより、より明確に視覚化することができた(
図7)。この組み合わせた方法を使用して、本発明者らは、UVおよび染色画像を重ね合わせることによって、非切断のおよび切断されたGFP-pNisinをバックグラウンドタンパク質から明確に区別することができた。非切断サンプルにおいては、2つの蛍光バンドが検出されたが、これは、抗菌活性が非切断サンプルにおいては存在しないため、部分的に切断されたGFPpNisinを示さない(
図7CおよびD)。満足のいく切断が、試験したトロンビンおよびhNisP濃度で、GFP-pNisinについて観察された(
図7AおよびB)。
【0085】
上記の実施例1において説明した方法を使用して、本発明者らは、抗菌活性のある翻訳後修飾されたランチペプチドを発現させた。本発明者らはまた、修飾酵素活性を妨げない蛍光融合体を有する蛍光融合PoIとともに追加の修飾酵素を発現する可能性を例示した。さらに、本発明者らは、少なくとも2つの異なるプロテアーゼを使用して、それらの蛍光融合パートナーから活性ランチペプチドを遊離させるための、プロテアーゼの首尾よくいった使用を例示する。
【0086】
実施例2
大腸菌におけるGFP融合サブクラスIIaバクテリオシンの異種発現
プランタリシン423およびムンドティシンST4SA GFPバクテリオシン発現ベクターの構築
この実施例において使用した全てのPCRプライマーを、以下の表3に提供する。表4は、この実施例において使用したまたは生成したそれぞれのプラスミドの説明を提供する。実施例1において説明したのと同じpRSFGFPバックボーンプラスミドを、ここで使用した。
【0087】
L.プランタルム423およびE.ムンドティ(mundtii)ST4SAからのゲノムDNAを鋳型として使用して、それぞれGFP-PlaX_Pst_Fwd/GFP-PlaX_Hind_Rev(配列番号59および配列番号60)およびGFP-MunX_Pst_Fwd/GFP-MunX_Hind_Rev(配列番号61および配列番号62)プライマーセットを使用して、成熟プランタリシン423およびムンドティシンST4SAバクテリオシン遺伝子を増幅した。これらのプライマーセットは、成熟プランタリシン423(plaA)またはムンドティシンST4SA(munST4SA)遺伝子をpRSFDuet-1においてGFP融合体としてクローニングするために、5’PstIおよび3’HindIII制限部位を追加した。増幅したバクテリオシン遺伝子を、GeneJet PCR精製キット(Thermo Scientific)を使用して精製し、PstIおよびHindIIIで消化した。消化混合物は、製造業者の説明書に従ってGeneJet PCR精製キットを使用して再度精製し、引き続くクローニング実験において使用した。
【0088】
pJET-GFPプラスミドを、BamHI/PstIで消化し;pRSFDuet-1ベクターを、BamHI/HindIIIで消化した。直鎖pRSFDuet-1ベクターおよび消化されたGFP断片を、アガロースゲル電気泳動を使用して精製し、ゲル切除し、回収した。たった1回のライゲーション反応において、BamHI/PstI GFP断片およびPstI/HindIIIバクテリオシン断片を、直鎖pRSFDuet-1ベクター(BamHI/HindIII)中にライゲーションした。断片は、1:3:3のVector:Insert_GFP:Insert_Bacteriocinモル比(molar end ratio)を使用してライゲーションした。結果として得られたコンストラクト、pRSF-GFP-PlaX(
図10および11)、およびpRSF-GFP-MunX(
図8および9)を使用して、ケミカルコンピテントな大腸菌BL21(DE3)細胞を形質転換した。pRSF-GFP-PlaXおよびpRSF-GFP-MunXプラスミドは、表現型的に緑色蛍光のカナマイシン(50μg/mL)耐性の、大腸菌BL21(DE3)のコロニーから抽出した。成熟プランタリシン423およびムンドティシンST4SA遺伝子は、MCS1_Revプライマー(配列番号63)を使用してpRSF-GFP-PlaXおよびpRSF-GFP-MunXプラスミドにおいて配列決定し、正しいことを確認した。
【0089】
【0090】
【0091】
大腸菌BL21(DE3)におけるGFP-バクテリオシン融合タンパク質の過剰発現
50mg/mLカナマイシンを含有する30mL LBブロスのスターター培養物に、pRSF-GFP-PlaXまたはpRSF-GFP-MunXコンストラクトを含有するそれぞれの大腸菌BL21(DE3)形質転換体を接種した。スターター培養物を、一定の撹拌をしながら37℃で12時間インキュベートした。スターター培養物を、それぞれ、GFP-PlaXおよびGFP-MunXの発現のための接種材料として使用した(1%v/v)。0.6~0.65のOD600nmで、それぞれのGFP融合タンパク質の発現を、0.1mM IPTGを使用して誘導した。
【0092】
新たに生成したGFP融合タンパク質、GFP-PlaXおよびGFP-MunXは、GFPの自己蛍光特性を保持しながら大腸菌中で首尾よく発現した。
【0093】
GFP-MunXおよびGFP-PlaXタンパク質のNi-NTA精製
誘導された細胞を、8000g、4℃での20分間の遠心分離により回収した。上清を廃棄し、細胞ペレットを、1mg/mLリゾチームを補った15mL/g湿重量SB緩衝液中に再懸濁し、8℃で45分間撹拌しながらインキュベートした。インキュベーション後、溶解した細胞を、Omni Ruptor400(Ultrasonic Homogenizer、Omni International)を使用して超音波処理(50%振幅、2秒パルス、2秒休止、6分)に供した。RNaseIおよびDNaseIを、それぞれ10および5mg/mLの最終濃度まで添加し、溶解物を、室温で15分間インキュベートした。細胞溶解物を次いで、20,000g、4℃で90分間遠心分離し;無細胞上清を、収集した。イミダゾールを、無細胞上清に10mMの最終濃度まで添加した。
【0094】
Hisタグ付きGFP-バクテリオシン融合タンパク質、GFP-PlaXおよびGFP-MunXを、バッチ精製についてのQiagen expressionistハンドブックの説明書に従って、Ni-NTAスーパーフロー樹脂を使用して、IMACで精製した。AEKTA精製システムを、サンプルをSB500からWELQutカット緩衝液に交換するために、カラム(16×65mm、GE Healthcare)中に詰めたSephadex G25樹脂と組み合わせて使用した。タンパク質の首尾よい精製の後、GFPの蛍光特性を使用して、蛍光出力の観点から増加した収量産生のための最適な発現条件を評価した。これは、それぞれ、異なる温度、発現時間およびIPTG濃度を含む。
【0095】
GFP-MunX発現についてのインキュベーション温度最適化
切断したGFP-MunXがより高い比活性を有するため、GFP-MunX発酵のみを、温度最適化した。GFPMunX発現温度の最適化は、pRSF-GFP-MunXプラスミドを保有する大腸菌BL21(DE3)の3つの生物学的反復を用いて18℃、26℃、および37℃で実施した。大腸菌pRSF-GFP-MunXの3つの生物学的反復を使用して、50mg/mLカナマイシンを含有するterrificブロスの3つの400mLフラスコに接種した。培養物を、0.1mM IPTGを使用して誘導し、0.6~0.65のOD600nmまで37℃で増殖させた。各400mL培養物を、3つの100mL培養物に分割し、それらを、それぞれ、18℃、26℃、および37℃で48時間インキュベートした。
【0096】
インビボでのGFP-MunX発現を測定するために、各フラスコからの1mLのサンプルを、誘導の時に3回収集し;サンプルを、24時間および48時間時点で再び収集し、-80℃で凍結した。収集後、サンプルを、融解し、遠心分離し、リン酸カリウム緩衝液(pH7.4)で2回洗浄した。GFP-MunXのインビボでの発現は、Tecan Spark M10(商標)(Tecan Group Ltd.、オーストリア)を使用して、488nm(励起)および509nm(発光)で相対蛍光単位(RFU)で蛍光分析的に測定した。
【0097】
48時間後、各サンプルについての総GFP-MunX RFU産生を、80mLの培養物から誘導細胞を回収すること(8000×g、4℃での20分間の遠心分離)によって計算した。各細胞ペレットの質量を次いで測定し、15mL/g湿重量SB緩衝液中に再懸濁した。各サンプル中のGFP-MunXを、前述のようにIMACを使用して抽出し、精製した。簡単に言うと、各無細胞溶解物からの5mLを、5ml Ni-NTA Superflowカートリッジを使用して、精製した。各Ni-NTA精製GFP-MunXサンプルのRFUを、Tecan M10(商標)Spark(Tecan Group Ltd.、オーストリア)を使用して測定した。RFUs/gを次いで、測定したRFUを、精製のために溶解した細胞の等価湿重量(g)(すなわち、5mL中の溶解細胞のグラム)で割ることによって、各サンプルについて計算した。各サンプルについて産生した総RFUを、RFU/gに、各サンプルにおいて回収した細胞の総湿重量を掛けることによって計算した。
【0098】
有意により高い蛍光強度が、それぞれ、発現の24時間後および48時間後に、37℃と比較して18℃および26℃でインビボで測定された(
図12)。しかしながら、これらのインビボ測定値は、総湿細胞重量を考慮しておらず、各温度での総標的タンパク質発現を正確には表していない。相対蛍光単位(RFU)の観点からの総標的タンパク質発現の測定については、以下の式(1)を使用した。
【0099】
【0100】
GFP-MunXについての総RFU産生を
図12Bに表し、ここでは、有意により高いRFUが、18℃で生じた。この蛍光強度は、SDS-PAGE分析を使用した切断後の抗菌活性の存在と相関していた。
【0101】
誘導についてのIPTG濃度の最適化
蛍光強度を使用して、Tecan Spark M10TM(Tecan Group Ltd.、オーストリア)の動力学的インキュベーションプログラムおよび96ウェルマイクロタイタープレートにおける湿度カセットを使用して、GFP-MunX発現についてのIPTG誘導濃度を最適化した。pRSF-GFPMunXプラスミドを保有する大腸菌BL21(DE3)の3つの生物学的反復を、50mg/mLカナマイシンを補った200mLフィルター滅菌terrificブロスを含有する3つの1L三角フラスコ中に接種し、37℃でインキュベートした。いったん0.55のOD600nmに達したら、各培養物を、氷浴中で冷やした。培養アリコートを次いで、96ウェルマイクロタイタープレート中で3回、0.01、0.05、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1、および2mM IPTG(最終濃度)とともにインキュベートした。マイクロタイタープレートを、Tecan Spark M10(商標)による湿度チャンバー内で26℃で20時間インキュベートした。20分ごとに、マイクロタイタープレートを、30秒間振盪し、10秒間静置させ、RFUを次いで、488nmでの励起後に、509nm(発光)で測定した。
【0102】
誘導したサンプルの蛍光測定出力は、時間とともに増加し、誘導について使用したIPTG濃度によって有意に影響された(
図13A)。0.1および0.2mMのIPTG濃度は、他のIPTG濃度と比較して、26℃での18時間インキュベート後に、有意により高い蛍光を誘導した(
図13B)。
【0103】
濃度推定
1ミリリットルのNi-NTA精製し、緩衝液交換したGFP-PlaXおよびGFP-MunX溶出液を、凍結乾燥し、3回分析的に秤量して、総タンパク質質量を推定した。精製したGFP-PlaXおよびGFP-MunXサンプルを、トリシンSDS-PAGEを使用して電気泳動的に分離して、サンプルの純度を推定した(Schaegger and von Jagow、1987)。Coomassie染色中の飽和を避けるために、GFP-PlaXおよびGFP-MunXの10倍希釈物を使用して、タンパク質純度を推定した。Gel analyzer 2010aを使用して、それぞれのレーンにおける各染色バンドのピクセル密度を決定し、使用して、サンプル純度を推定した(Lazer and GelAnalyzer、2010)。
【0104】
GFP-PlaXおよびGFP-MunXのスケールアップ産生
大規模発現のGFP融合系の収量に対する影響を決定するために、本発明者らは、Minifors 5L発酵槽を使用して、それぞれ最適化された条件下で実験を実施した。プランタリシン423およびムンドティシンST4SA GFP融合タンパク質のスケールアップした異種発現は、5L発酵槽(Minifors、Infors AG;3Lの最大推奨容量)を使用して実施した。0.005%の消泡剤204(Sigma-Aldrich)を含有するterrificブロス(2.7L)を、調製し、オートクレーブ処理した。いったん冷却したら、300mLの滅菌10×TB緩衝液およびカナマイシン(50μg/mLの最終濃度)を、無菌的に添加した。ブロスを、37℃に加熱し、滅菌圧縮空気を1L/分で通気し、300RPMで撹拌した。pHおよび溶存酸素レベルは、制御しなかった。
【0105】
大腸菌BL21(DE3)pRSF-GFP-PlaXおよびpRSF-GFP-MunXのスターター培養物を、それぞれの発現について1%v/vの接種材料として使用した。0.6~0.65のOD600nmで、それぞれのGFP融合タンパク質の発現を、0.1mM IPTG(Thermo-Fisher Scientific)を使用して誘導した。それぞれの発酵物を次いで、18℃に冷却し、48時間インキュベートした。
【0106】
GFP-PlaXおよびGFP-MunXタンパク質の抽出、Ni-NTA精製および緩衝液交換後、39mLのGFP-PlaXおよび42mLのGFP-MunX溶出液を、得た。1mLのGFP-PlaXおよびGFP-MunXの凍結乾燥後、それぞれ、12.96mgおよび17.96mgの残留質量を、測定した。SDS-PAGE分析から、GFP-PlaXおよびGFP-MunXの純度は、約72および61%であり、それぞれ、9.33および10.95mg/mLのおおよその濃度を産生する。これらの純度では、GFP-PlaXおよびGFP-MunXのおおよその収量は、それぞれ121.29mg/Lの培養物および153.30mg/Lの培養物であった。
【0107】
抗菌活性アッセイ
それぞれのバクテリオシンをGFPに融合して、蛍光複合体を産生する一方で、抗菌活性が遊離したバクテリオシンに起因することを決定することが重要であった。プランタリシン423およびムンドティシンST4SAの抗菌活性を、7.5mg/mLクロラムフェニコールを含有するブレインハートインフュージョン培地(BHI)上で増殖させたリステリア・モノサイトゲネスEDG-eに対して評価した。スポットプレート法を、リステリア・モノサイトゲネスEDG-eを播種した固体培地(1%w/v寒天)上で実施した。SDS-PAGE分離を、リステリア・モノサイトゲネスEDG-eを播種した寒天二重層中でポリアクリルアミドゲルをキャストすることによって活性についてアッセイした。キャストすることの前に、ポリアクリルアミドゲルを、25%イソプロパノール、10%酢酸固定溶液中で20分間固定し、次いで滅菌超純水で3×15分すすいだ。
【0108】
切断パラメーターは、製造業者が供給したものを修正した方法を使用して最適化した。WELQutのサンプルへの比を、GFP-PlaXおよびGFP-MunXの50μLサンプルについて、それぞれ、1:100、1:50、1:25、1:5(v/v)に設定し、WELQutカット緩衝液中で250μLの最終体積まで希釈した。466.5μgのGFP-PlaXに対するWELQのおおよその対応単位は、それぞれ2.5U、5U、10Uおよび50Uであった。547.5μgのGFP-MunXに対するWELQのおおよその対応単位は、それぞれ2.5U、5U、10Uおよび50Uであった。切断反応を28℃でインキュベートし、サンプルを、それぞれ、2時間、4時間、8時間、および16時間の時点で50μLの収集した。切断は、リステリア・モノサイトゲネスEGD-eを播種したBHI固体培地(1%w/v寒天)を使用するスポットプレート法によって評価した。
【0109】
16時間後にGFP-PlaXおよびGFP-MunX切断について最大の抗リステリア活性を産生した切断比は、それぞれ、1:10および1:25(mL:mL)のWELQutのサンプルへの比で確認された(
図14)。
【0110】
GFPを融合パートナーとして使用することの重要な利点は、電気泳動分離後の蛍光バンドの移動パターンを視覚化することによりプロテアーゼ切断を評価する能力である。異種的に産生したバクテリオシン融合体の活性の観点から最適な切断条件を決定することは、多くの変数に依存している。そういうものとして、本発明者らは、SDS-PAGE電気泳動後のGFPの維持された蛍光特性を利用することによって、最適な切断についての結果を確認した。蛍光バンドは、GFP-PlaX、GFP-MunX、およびGFPについて、それぞれ、切断前および切断後に観察された。これらのバンドを次いで、同じSDS-PAGEゲル上の染色バンドと相関させた(
図15)。
【0111】
非切断のGFP-PlaXおよびGFP-MunXの蛍光バンドの強度は、WELQut:サンプル比が増加するにつれて減少する(
図15)。完全な切断が、GFP-PlaXについて観察され、観察された最も高いスポット活性に相当する。GFP-MunXについては、非切断GFP-MunXの位置にわずかな蛍光バンドが観察され、完全な切断は、達成されなかった。
【0112】
セミネイティブ条件下でのSDS-PAGEを使用して、分離したゲル上の蛍光GFP融合タンパク質の位置を、写真撮影し、染色および抗リステリアゲルのオーバーレイ上に重ね合わせることができた(
図16)。抗リステリア活性は、WELQutで切断したGFP-PlaXおよびGFPMunXサンプルについての透明なゾーンとして観察された。
図16中の抗リステリアゾーンIIIおよびIVは、それぞれ、ムンドティシンST4SA(4285Da)およびプランタリシン423(3928Da)の位置に対応し、それらのそれぞれのGFP融合パートナーからのコアペプチドの遊離を示す。しかしながら、抗リステリア活性の2つの追加ゾーン(
図16中のIおよびII)が観察され、これらは、蛍光GFP-MunX(31874Da)およびGFP-PlaX(31520Da)のおおよそのサイズおよび位置に対応する。
【0113】
HPLCおよびLC-ESI-MS
ムンドティシンST4SAおよびプランタリシン423を、最適な切断条件下で、それぞれ、1ミリリットルのHisタグ精製GFP-MunXおよびGFP-PlaXから切断した。切断反応物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して精製し、単一ピークを、抗リステリア活性についてスポット試験した。
【0114】
HPLC精製ムンドティシンST4SAに対して実施したエレクトロスプレーイオン化MSは、成熟ムンドティシンST4SAに対応する質量を有するペプチドの存在を確認した(
図17)。4285.1355Daの正確な質量を、[M+5H]
+5種の同位体エンベロープからムンドティシンST4SAについて決定したが、生のスペクトル内のこの荷電種の存在量は、低かった(
図17)。しかしながら、正確な質量測定値は、4285.0796Daの理論上のモノアイソトピック質量(1つのジスルフィド架橋の形成に相当)とほぼ一致している。
【0115】
ムンドティシンST4SA活性が単一のピークから観察されたが、一方で、プランタリシン423は、低レベルの活性で複数の活性ピークを産生した。ムンドティシンST4SA画分を凍結乾燥し、残留質量を秤量した。GFP-MunXの最適な切断は、0.88mgの活性ムンドティシンST4SAを産出し、これは、12.4mg/LムンドティシンST4SAに相当するおおよそ37.3mgを3L発酵から得ることができたことを示す。
【0116】
上記の実施例2において説明した方法を使用して、本発明者らは、抗菌活性のあるバクテリオシンを発現させた。本発明者らはまた、より大規模な発酵反応器を使用することによってシステムをスケールアップする可能性を例示した。本発明者らはまた、インビトロおよびインビボでの融合タンパク質の蛍光特性を利用することにより、発現を正確にかつ素早く評価することができた。
【0117】
実施例3
大腸菌におけるGFP融合細菌毒素リステリオリシン(LLO)およびActAの製造
本発明の発明者らは、細菌毒素リステリオリシンO(
図18)およびActA(
図19)の首尾よくいった発現を示した。
【0118】
プラスミド設計
リステリア・モノサイトゲネス エフェクターLLOおよびActAを、翻訳的に緑色蛍光タンパク質(GFP)に融合させ、大腸菌中で発現させた。N末端6×ポリヒスチジンタグ(Hisタグ)およびC末端WELQutプロテアーゼ部位を含むmgfp5を含有するバックボーンプラスミドの生成は、実施例1および2において説明したとおりに行った。LLO遺伝子を、N末端シグナルペプチド(配列番号66~67)を除外するように設計したフォワードプライマーと、表5に列挙したプライマーを使用してL.モノサイトゲネスEDG-eゲノムDNAから増幅させた。消化(PstI/NotI)し、精製したLLOを、T4リガーゼを使用してPstI/NotI断片上のpRSF-GFP中にクローニングし、これが、LLOの、配列番号37のアミノ酸配列および配列番号38のヌクレオチド配列を有するHisタグ付きGFPへの翻訳的融合をもたらした。結果として得られたpRSFGFP-LLOコンストラクトを、ケミカルコンピテントな大腸菌BL21(DE3)細胞中に形質転換した。
【0119】
【0120】
いくつかのプラスミドコンストラクトが、ActAの発現および精製中に観察される分解産物のため、ActAの発現について生成した。最終コンストラクトは、ActAの、配列番号39のアミノ酸配列および配列番号40のヌクレオチド配列を有するそのN末端上のHisタグ付きGFPおよびC末端上のGSTタグへの翻訳的融合をもたらした。ActAは、NおよびC末端シグナルペプチド並びに膜貫通ドメインを、それぞれ除外するように設計したプライマー(配列番号68~69)を用いてL.モノサイトゲネスEDG-e gDNAから増幅させた。GSTタグは、表5(配列番号64~65)に列挙したプライマーを使用してpET41a(+)から増幅させた。精製したActA PCR産物を、PstI/NotIで消化し、前もってPstI/NotIで消化したpRSFGFP中にライゲーションした。ライゲーション産物を、形質転換し、精製した。結果として得られたpRSFGFP-ActAコンストラクトを、NotI/XhoIで消化し、GSTタグ(NotI/XhoIで消化)とのライゲーション反応において使用した。ライゲーション反応からの産物を使用して、ケミカルコンピテントな大腸菌BL21(DE3)細胞を形質転換し、前述のようにpDNAを単離した。発現中のActAの安定性は、低温適応シャペロニンCpn10およびCpn60を保有する大腸菌株ArcticExpressを使用して増加させた。ArcticExpressの形質転換および培養は、cpn10およびcpn60を保有するプラスミドを維持するためにゲンタマイシン(20μg/mL)を含めたことを除き、大腸菌BL21(DE3)について説明したように実施した。
【0121】
タンパク質の合成および精製
リステリオリシン-O:GFP-LLOを発現する大腸菌を、実施例1および2において説明したのと同様の方法で実施した。Hisタグ精製からの溶出液を、10kDaスピンカラムを使用してPBS(pH7.4)に対して脱塩した。脱塩タンパク質の収量決定のためのタンパク質濃度は、BCA タンパク質アッセイを使用して決定した。
【0122】
最適な切断条件を使用して、LLOをさらに精製して、GFPおよびWELQut(これらもまたHisタグ付き)を除去した(
図18)。イミダゾールを、10mMで添加し、平衡化したHis Trap HP Ni-NTAカラムに適用した。フロースルーを含有するLLOを収集し、精製したLLOを、10kDaタンパク質濃縮器を使用してPBS(pH7.4)で脱塩した。
【0123】
アクチン集合体誘導タンパク質:GFP-ActA-GSTの精製を、追加のGSTタグ精製工程を除いて、GFP-LLOのそれと同様の方法で行った(
図19)。GFP-ActA-GSTを発現する大腸菌ArcticExpress細胞を、50μg/mLカナマイシンおよび20μg/mLゲンタマイシンを含有するLBブロス中に接種し、撹拌下30℃で一晩インキュベートした。これを、50μg/mLカナマイシンおよび20μg/mLゲンタマイシンを含有する500mLのTB(2%v/v)中に接種した。フラスコを、0.5のOD
600nmに達するまで、振盪しながら30℃でインキュベートした。細胞を、0.5mM IPTGで誘導し、26℃で18時間撹拌しながら発現させた。細胞を、6164×g、10℃で20分間の遠心分離を介して収集し、前述のように溶解させた。全ての引き続く精製工程は、GFP-ActA-GSTの分解を低下させるために、氷上で行った。IMACを介したタンパク質単離の前に、His Trap HP Ni-NTA Hisタグカラムを、プロテアーゼ阻害剤を補った20mMイミダゾール(SB20)を含有するSBで平衡化し、その後上清を適用した。カラムを、2回、まずプロテアーゼ阻害剤を含有するSB20で、その後20mMイミダゾールを含有するPBS(PBS20)で洗浄し、GFP-ActA-GSTを125mMイミダゾールを含有するPBSで溶出させた。溶出液を、PBS(pH7.4)中で1:1に希釈し、5mMの最終濃度でジチオスレイトール(DTT)を補った。希釈した溶出液を、グルタチオンアガロース(2mL)を詰めたカラムに適用し、1時間循環させて、GSTタグ付きタンパク質を適切に結合させた。カラムをPBS(pH7.4)で洗浄し、結合したGFP-ActA-GSTを、10mMの還元型グルタチオンを含有するPBS(pH8)で溶出させた。
【0124】
GFPからのActA-GSTの遊離は、WELQut切断で達成した(
図19)。GSTタグ精製溶出液を、1ミリリットルの溶出液あたり10U WELQutプロテアーゼで切断し、8℃で16時間インキュベートした。切断後、イミダゾールを10mMで添加し、10mMイミダゾールで予め平衡化したHis Trap HP Ni-NTAカラムに適用した。遊離したActA-GSTフロースルーを、収集し、10kDaタンパク質濃縮器を使用して4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(20mM HEPES、50mM KCl;pH7.5)中で脱塩し、タンパク質収量を、決定した。サンプルを、実施例1および2において説明したように、SDS-PAGEによる分析のために、精製および切断反応全体にわたって収集した。
【0125】
上記の実施例3において説明した方法を使用して、本発明者らは、リステリオリシンO(LLO)を、従来技術において報告されたものより15倍(51mg/L対3.4~8mg/L)多い収量で発現させた。最適化されていない条件(1Lの培地)を使用して、本発明者らは、純粋なLLOを製造することができた。さらに、その蛍光パートナーに融合したLLOがいまだ活性を有することが示された。該方法の多用途性、およびそれを他のペプチドについての最適化についていかに素早く使用することができるかをさらに実証するために、本発明の発明者らは、本明細書において説明する方法を使用して、分解しやすい別の細菌毒素ActAを製造した(
図19)。具体的には、本発明の発明者らは、目的のタンパク質が分解されていることを蛍光融合パートナーの蛍光をモニタリングすることによって素早く評価することができ、この観察に基づいて、純粋な生成物を得るために二重精製セットアップを履行することによって分解を防ぐことができた。
【0126】
実施例4
大腸菌における溶解タンパク質の発現
本発明者らは、ラムダファージから2つの高活性溶解タンパク質、すなわちGpR(配列番号15)およびGpE(配列番号17)を同定した。概念の実証のために、GpRを使用して、大腸菌の溶解を誘導するGpRの能力を決定した。gpR遺伝子(エンドリシンR-NP_040645.1)を、GpR-FおよびGpR-Rプライマー(配列番号70および71)を使用してラムダファージからPCR増幅させた。gpE遺伝子(リゾチームムレインヒドロラーゼ-YP_002854084.1)を、GpE-FおよびGpE-Rプライマー(配列番号72および73)を使用してT4ファージからPCR増幅させた。増幅産物を、制限酵素BglIIおよびKpnIを使用してpRSFGFPの第2のマルチクローニングサイト中にクローニングして、pRSFGFPGpRを得、BglIIおよびXhoIを使用してpRSFGFPGpEを得た。
【0127】
【0128】
実施例5
RNAサーモメータを使用した溶解タンパク質発現の制御についての概念の実証
大腸菌細胞におけるGpRの代謝負荷を低下させるためのRNAサーモメータの使用についての概念の実証を例示するために、本発明者らは、組換えHisタグ付きGFPの製造についてRNAサーモメータU7Tap(配列番号19)を利用した。pRSF-Duet1を、pTAP(RNAサーモメータバックボーンベクター)の生成のためのバックボーンプラスミドとして使用した。選択したRNAサーモメータは、より低い温度では遺伝子発現のダウンレギュレーションをもたらし、より高い温度では増加した翻訳をもたらす。GpRを、BglII-XhoIを使用してpRSFGFPGpRから消化し、自己溶解素をP7プロモーターおよび含まれるRNAサーモメータの制御下に置く、新たに生成したpTAP(配列番号36)プラスミド中にBglII-XhoI部位上でクローニングした。ライゲーションおよび形質転換後、細胞を、カナマイシン(50μg/mL)を補ったBHI寒天上にプレーティングした。陽性クローンを、同定し、さらなる検証のために使用した。
【0129】
概念の実証のために、pRSFGFP(CONTROLGFP);pRSFGFPGpR(GFPGPR)およびpTAPGFPGpR(GFPRTGPR)を保有する細胞、全てのこれらのコンストラクトは、GFPGPRおよびGFPRTGPRについて示した溶解タンパク質に加えて、組換えHisタグ付きGFPを発現するであろう。カナマイシン(50μg/mL)を補ったBHIブロス中に接種し、通気下で26℃で18時間インキュベートした。この培養物を次いで使用して、カナマイシンを補った200mLのterifficブロスに接種し、通気下、26℃でインキュベートした。OD600nmの読取値が0.1~0.2に達したとき、細胞を、18℃に移動し、0.55~0.6のODに達するまでインキュベートした。細胞を引き続き、0.125mM IPTGで誘導し、18℃で12時間インキュベートした。インキュベーション後、異なるベクターを保有するそれぞれの培養物を、それぞれ2つのフラスコ中に分割し、これらを、それぞれ、26℃および37℃でインキュベートした。サンプルを、3時間、6時間、9時間の時点で収集し、さらなる使用まで8℃で置いた。各時点で、細胞を1/10に希釈し、OD読取値を595nmで取得して、細胞密度を決定した。9時間の時点で、サンプルを遠心分離し、ペレットを-20℃で少なくとも1時間凍結させた。サンプル(それぞれ400μL)を室温で融解させ、その後、SB緩衝液(表7)および1%SDSを補ったSBを、元の体積の半分(200μL)に添加し、時折混合しながら37℃で1~2時間独自にインキュベートした。インキュベーション後、OD読取値を595nmで取得して、細胞溶解の程度を決定した。9時間インキュベートしたサンプルから得ることができたHisタグ付きGFPの量を、固定化金属イオンクロマトグラフィーを使用して評価した。2mLの各それぞれのサンプル(異なる温度およびコンストラクトサンプル)を遠心分離し、ペレットを-20℃で少なくとも1時間凍結させた。サンプルを室温で融解させ、1mLの緩衝液を添加した(CONTROLGFPについては溶解緩衝液並びにGFPGPRおよびGFPRTGPRについては1%SDSを補ったSB緩衝液)。全ての場合において、緩衝液にDNAse、RNAseを補い、時折混合しながら37℃で1~2時間インキュベートした。CONTROLGFPコンストラクトを含有するサンプルを、上述のように1%SDSを補ったSB緩衝液を使用して溶解したGFPGPRおよびGFPRTGPRを用いて、実施例1において説明した標準的な手順に従って溶解させた。溶解後、サンプルを12000rpmで遠心分離して、細胞破片および非溶解細胞をペレット化した。サンプルの上清を除去し、イミダゾールを5mMおよび600μLの最終濃度まで添加し、引き続きHisPur(ThermoScientific)スピンカラムに添加して、Hisタグ付きGFPを結合させた。スピンカラムを、5mMイミダゾールを補ったSB緩衝液で3回洗浄した。最後に、GFPを、500mMイミダゾールを補った600μL SB緩衝液で溶出させた。これらのサンプルを引き続き、SDS-PAGE分析のために使用した。
【0130】
RNAサーモメータ(GFPRTGPR)の包含は、CONTROLGFPまたはGFPGPRコンストラクトのいずれかを保有する細胞と比較して、一貫してより高い光学密度読取値をもたらした(
図20)。さらに、GFPGPRコンストラクトにおけるRNAサーモメータの欠如は、一貫して、高い代謝負荷および潜在的な毒性を示す、より低い光学密度読取値をもたらした(
図20)。
【0131】
顕著な溶解が、細胞を26℃で増殖させたかまたは37℃で増殖させたかに関係なく、RNAサーモメータのないコンストラクトについて観察された(
図21)。しかしながら、GFPRTGPRコンストラクトにおけるRNAサーモメータの包含は、SB緩衝液中に再懸濁させたとき、37℃と比較して26℃で約2倍少ない溶解をもたらし、これは、細胞を26℃で増殖させたときのGpR発現の首尾よくいった制限(throttling)を示す(
図21)。GFPGPRまたはGFPRTGPRコンストラクトを有する細胞のいずれかへの1%SDSの添加は、細胞の完全な溶解をもたらした(
図21)。これは、選択したRNAサーモメータが、26℃で発現を制限すること(throttling)ができたが、この温度ではGpRの翻訳を完全には阻害しないことを示す。これはまた、選択した自己溶解タンパク質の潜在力も示す。ただCONTROLGFPコンストラクトを保有する細胞もまた、凍結融解およびSDSの添加によって影響を受けたが、GFPGPRまたはGFPRTGPRのいずれかを保有する細胞と同じ程度ではなかった。
【0132】
標準的な溶解プロトコルを使用した細胞の溶解は、不完全な溶解をもたらした。GFPGPRおよびGFPRTGPRサンプルは両方とも、1%SDSの添加で完全な溶解を示し、細胞の不完全な溶解は何ら観察されなかった。RNAサーモメータの欠如は、GFPの実質的に低下した量をもたらし、これは、GFPのより低い発現を示した(
図22)。しかしながら、RNAサーモメータの添加は、CONTROLGFPおよびGFPGPRコンストラクトの両方と比較して、より多くの組換えGFPをもたらした。SDS-PAGEを使用した分析は、温度およびRNAサーモメータの添加が、得ることができるGFPの量に影響を有することを示した(
図22)。全ての場合において、37℃での細胞のインキュベーションは、低下したGFPをもたらしたが、この温度でのGFPの安定性に起因し得る。RNAサーモメータの包含は、CONTROLGFPと比較して4倍までのおよび2.8倍より多いGFPをもたらした(細胞を、それぞれ、26℃または37℃で増殖させたとき)。GFPGPRサンプルと比較して、RNAサーモメータの包含は、GFPの量における30倍および11倍の増加をもたらした(細胞を、それぞれ、26℃または37℃で増殖させたとき)。
【0133】
実施例5において、本発明者らは、RNAサーモメータの包含が、i)対照(CONTROLGFP)およびRNAサーモメータを欠くGFPGPRコンストラクトから得ることができるものと比較して、Hisタグ精製後の組換えGFPの増加した収量、およびii)より高い温度での細胞の増加した溶解をもたらすことを例示した。RNAサーモメータの包含はまた、RNAサーモメータを欠くGFPGPRコンストラクトと比較したとき、組換えHisタグ付きGFPの適切な発現並びに細胞の適切な増殖について不可欠であることも示された。異なる温度感受性を有するRNAサーモメータを含めて、標準的な誘導または自己誘導制御に加えて、溶解タンパク質発現のストリンジェンシー、並びに制御された発現を必要とするであろう他の組換えタンパク質を変更することができる。
【0134】
実施例6
大腸菌におけるGFP融合およびmCherry融合オートファジーペプチドTATBeclinの製造
上記の実施例1~5において記載した方法を使用して、本発明者らは、GFPおよびmCherryの両方に融合したオートファジーペプチドTATBeclinを製造した(
図23)。このペプチドは、蛍光融合パートナーに付着している間でさえ生物活性があった、そして、これは、視覚化および追跡能力の観点から機能性を添加する。
【0135】
ここでの目標は、それがGFPまたはmCherryのいずれかに融合することができるようにTAT-Beclinコンストラクトを再構築することであった。GFPの場合においては、TATBeclin(32.96kDa)を、GFPとTATBeclinとの間のプロテアーゼ部位(WELQut)を用いてGFPのC末端に融合させる。mCherryについては、TATBeclinを、N末端Hisタグ付けし、mCherryにそのC末端で(34.37kDa)融合させる。
【0136】
TATBeclinは、中央に相同性を有する2つの長いプライマー(配列番号74および75)を使用することによって合成した。このコンストラクトを使用して、GFP-TATBeclin(GFPTATB)(配列番号76および77)を生成した。
【0137】
これら2つのプライマーを、新鮮な10mM Tris(pH8.0)中で100uMストックに作り上げた。Klenow(NEB)を使用して、ヌクレオチド中で構築し、TatBecFおよびTatBecR(配列番号74および75)を融合させた。緩衝液M(10×、Roche)、プライマーストック(それぞれ1uL;それぞれ2.2ugに等しい)およびKlenow(3uL)を使用して50uLの反応混合物を、作り上げ、37Cで1時間インキュベートした。この後、反応物を、PCR精製キットを使用して、精製し、濃縮した。精製した産物およびpRSFGFPを、PstIおよびHindIII(NEB)を用いて37℃で一晩消化した。消化産物を、精製し、T4リガーゼ(NEB)を使用して一緒にライゲーションした。結果として得られたライゲーション混合物を使用して、大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、これを引き続き、50μg/mLカナマイシンを補ったLB寒天上にプレーティングし、目に見えるコロニーが形成されるまで37℃でインキュベートした。コロニーを使用して、LBブロスに接種し、通気下、37℃で18時間インキュベートした。プラスミド抽出を、一晩培養物に対して実施した。
【0138】
TATBeclinのmCherryへの融合については、追加のプライマーを、必要とした(TATBmCherry;配列番号78および79)。フォワードプライマーは、BamHI部位(WELQutプロテアーゼを有する)を有し、リバースプライマーは、NotI部位を有する(表1)。TATBeclinを、これらのプライマーを使用して、pRSF-GFPTATB(配列番号80および81)コンストラクトから増幅させた。結果として得られたPCR産物を、精製し、BamHIおよびNotIで消化した。同様に、C末端融合のためのmCherryを含有するプラスミドを、同じ制限酵素で消化した。消化したTAT-Beclinおよびプラスミドを、前述のように、精製し、ライゲーションし、形質転換した。
【0139】
TATBeclin融合体を、実施例1~2において説明したように、発現させ、精製した。溶出液を、それぞれ20kDa透析カセット(20kDaカットオフ)または10kDaタンパク質濃縮器(10kDaカットオフ)を使用して、GFPTATBeclinおよびTATmCherryについて250mMまたは150mMNaClを有するPBS緩衝液に対して脱塩した。
【0140】
両方の融合体は、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を使用して、首尾よく発現させ、精製した。IMAC精製し、脱塩したサンプルの予備的な総タンパク質収量は、GFPTATBについて113.8mg/L、およびTATBmCherryについて41.7mg/Lであった。SDS PAGEによって決定したサンプルの相対純度は、GFPTATBについて70~82%、TATBmCherryについて48~50%の範囲であった(
図23)。これらの収量および純度は、プロセスの最適化並びに特殊な菌株および技術の使用によってさらに増加させることができる。
【0141】
【0142】
実施例7
追加のRNAサーモメータの設計および定常期プロモーターの使用
概念の実証をさらに改善するために、さまざまなRNAサーモメータ(RNAT)を、定常期プロモーターと組み合わせて使用することができる。RNATの例は、配列番号19~27および配列番号105~111を含み、プロモーターは、配列番号74~76を含んだ。これを例示するために、配列番号81(G5)、配列番号84(G8)、配列番号91(G15)、配列番号93(G17)および配列番号94(G18)のRNAT/プロモーターの組合せを、予備的な例示のために使用した。異なるプロモーター/RNATの組合せを、制限酵素KasIおよびBamHIを使用して、ベクターpHXk(配列番号101)中にクローニングした。ベクターpHXkは、カナマイシン耐性遺伝子、LacIq(lacリプレッサー)遺伝子、pUC19複製起点並びにそれら自身のT7プロモーターおよびLacOオペレーター、その後の、それぞれ、転写停止配列L3S2P56およびBBa0015を有する2つのマルチクローニングサイト(MCS)を含むように設計した(MCS1についての制限酵素部位-PacI、NdeI、BamHi、XhoI、PstI、NotI MfeI;MCS2-NcoI、BglII、SalI、SacI、HindIII、EcoRI)。第2のベクターを、カナマイシンの代わりにクロラムフェニコール耐性マーカーを有する同じバックボーンプラスミドを使用して、設計した(配列番号102)。それらのそれぞれのプロモーター/オペレーターと開始コドンとの間の配列における変更、およびマルチクローニングサイトにおける違い(MCS1は、BBa0015転写ターミネーターを有し、MCS2は、T7ターミネーターを有する)を有する、追加の2つのベクターを、上記と同じ基本ベクター配列を使用して、設計した(配列番号103~104)。引き続き、溶解タンパク質GPRを、BamHIおよびXhoIを使用して、これらの新しいベクター中にクローニングした。これらの新しいベクターを次いで、大腸菌BL21を形質転換するために使用し、予備的な評価のために使用した。
【0143】
さまざまな大腸菌BL21コンストラクトを使用した実験を、発現条件をシミュレートするために実施した。培養物を、5mLのLuria Bertani(LB)ブロス(50μg/mLのカナマイシンを補った)に接種し、26℃で一晩増殖させた。一晩培養物を引き続き使用して、1%v/vで150mLのLBブロスに接種し、培養物が0.6~0.8の間のOD600に達するまで26℃でインキュベートした。引き続き、各培養物の50mLを、フラスコ中に分割し、26℃または37℃のいずれかで増殖させた。読取値を、2時間ごとに12時間取得した。15時間(総インキュベーション時間)後、細胞を、さらなる11時間(合計26時間)インキュベートした。26時間後、26℃で増殖させた全ての残りのサンプルを、移動させ、37℃でさらなる5時間インキュベートした。
【0144】
全ての光学密度読取値を、キュベットおよびSmartSPec Plus(Biorad)を使用して取得した。必要に応じて、サンプルを、OD600値を1.0未満に保つためにTris緩衝液(pH7.4)中で希釈した。
【0145】
選択した時点で、1mLの培養物を、採取し、8000rpmで(2分間)遠心分離し、ペレットを-20℃で少なくとも2時間凍結させた。凍結後、細胞ペレットを、室温で融解し、1mL溶解緩衝液(25U/mL ThermoScientific Universal Nucleaseを補ったTris緩衝液(pH7.4))中に再懸濁した。室温で5分間のインキュベート後、光学密度読取値を、上記のように取得した(上記のように必要に応じて希釈を行った)。
【0146】
溶解%を計算するために、各再懸濁した凍結融解ペレットから得られた光学密度読取値(ODFreeze)を、凍結前の元の培養物の光学密度読取値(ODOriginal)で割った(式1)。
【0147】
式1:溶解%=(1-ODFreeze/ODOriginal)×100
【0148】
26℃で増殖させた大腸菌B21プロモーター/RNATコンストラクトは、3時間で0.6~0.8のOD600に達し、37℃でのコンストラクトの引き続く増殖は、26℃で15時間まで増殖させたものと比較して増加した光学密度値をもたらした(
図24および25)。26℃および37℃で増殖させた細胞の26時間時の光学密度値は、同様のOD600値を有していた。26℃で増殖させ、さらなる5時間37℃に移した細胞は、OD600値におけるわずかな増加を示し、サンプルG5が最大の変化を示した。全体として、全てのコンストラクトが、平均7.25(+/-0.22)の高いOD600に達し、15時間後に初期定常期が達成された(
図24および25)。
【0149】
サンプル(1mL)を、7、9、11、13、15、26および+5(31)時間のスピンダウンで収集し、-20℃で凍結させた。これらのサンプルを次いで、溶解緩衝液中に再懸濁して、各培養物の元のOD600値の関数として溶解率を決定した(式1)。溶解は、26℃で増殖させたサンプルについては一貫してより弱く、初期の時点でより多くの溶解が観察された(
図26~32)。これは、最もおそらくは、基礎のGPR発現、および凍結融解サイクル後の膜損傷に対する若い細胞の増加した感受性のためである。サンプルG5、G8およびG18は、15時間まで>90%の溶解を示す、37℃で増殖させた細胞との溶解における明らかな違いを示した(
図26~27、28、29、32)。26時間の増殖後、溶解は、26℃および37℃で増殖させたサンプルについて減少し、最もおそらくは、凍結融解からの損傷に対してより耐性であるより古い細胞のより厚い細胞壁のためである。26℃および37℃で増殖させたサンプルの溶解の間の最大の違いはしかしながら、この遅い時点で観察され、37℃で増殖させたサンプルは26℃で増殖させたもの(14~74%)と比較してより多くの溶解(70~85%)を有した(
図26~32)。このより遅い時点で、サンプルG5、G8およびG18は、26℃または37℃で増殖させたサンプル間で溶解における最大の違いを有した(
図26~27、28、29、32)。事前に26℃でインキュベートして増殖させた細胞を37℃に移した後(さらなる5時間)、37℃で増殖させたものと一致する溶解における増加が観察されたが-これは、GPR溶解遺伝子の増加した発現/翻訳を示し、RNATの機能と一致する。
【0150】
これらの結果から、定常期プロモーターを有するRNATの使用は、細胞を低温(26℃)または高温(37℃)のいずれかで増殖させたときに異なる溶解効率をもたらす。さらに、これらの予備的な結果は、後期定常期での細胞の低温から高温へのシフトが増加した溶解効率もたらし得ることを示す。該結果はまた、異なるRNATが、より低い温度での溶解の発現/翻訳を制限する(throttle)それらの能力の観点で異なる効率を有することを例示する。これは、特定のニーズ/用途に依存したRNATの選択を可能にする。
【0151】
纏めると、これらの結果はさらに、組換え大腸菌細胞の溶解についてのRNAT/定常期プロモーターの組合せの用途を例示する。
【0152】
【配列表】
【国際調査報告】