(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】マイクロRNA-29の化合物、組成物、および治療法における使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20231101BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231101BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20231101BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20231101BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61P43/00 105
A61P19/04
A61K31/7105
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549131
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2021079580
(87)【国際公開番号】W WO2022084561
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523150565
【氏名又は名称】コーズウェイ セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ギルクライスト,デレク スチュワート
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ニール リンジィ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC09
4C076CC26
4C076FF12
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZB21
(57)【要約】
本発明は、新規マイクロRNA-29(miR-29)化合物、それを含む組成物、および治療法におけるそれらの使用に関する。特に、腱障害を含む腱損傷、ならびにペイロニー病およびデュピュイトラン病を含む組織線維症などの、局所的コラーゲン調節不全を伴う疾患の治療において特に有効かつ安全であるmiR-29化合物および組成物が、本明細書で提供される。また、miR-29化合物の有利な投与量および治療レジメンも提供される。
【選択図】
図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)核酸塩基配列5’-UAGCACCAUCUGAAAUCGGUUA-3’(配列番号1)、または配列5’-AGCACCA-3’(配列番号8)の外側の3つ以下の位置において配列番号1と異なる核酸塩基配列を含むガイド鎖であって、少なくとも50%のヌクレオシドが、2’-フルオロリボースを含みかつ3’末端での1つまたは2つのヌクレオシドがそれぞれ、2’-O-メチルリボースを含む、ガイド鎖と;
(b)核酸塩基配列5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCAG-3’(配列番号2)もしくは5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCA-3’(配列番号3)を含む、または3つ以下の位置において配列番号2と異なる核酸塩基配列を含む、パッセンジャー鎖であって、少なくとも10の連続したヌクレオシドが交互に、2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび修飾されないリボース部分を有するヌクレオシドである、パッセンジャー鎖、
を含む、miR-29化合物またはその塩。
【請求項2】
前記ガイド鎖の前記3’末端における1つまたは2つのヌクレオシドがそれぞれ、2’-O-メチルリボースを含みかつ:(i)2’-修飾リボースを含む前記ガイド鎖の残りのヌクレオシドがそれぞれ、2’-フルオロリボースヌクレオシドである、または(ii)前記ガイド鎖の残りのヌクレオシドがそれぞれ、2’-フルオロリボースヌクレオシドまたは未修飾リボース部分である、請求項1に記載のmiR-29化合物またはその塩。
【請求項3】
(i)前記ガイド鎖の各ヌクレオシドが、2’-修飾リボースを含む、(ii)前記ガイド鎖の各ヌクレオシドが、2’-O-メチルリボースまたは2’-フルオロリボースを含む、または(iii)前記ガイド鎖の前記3’末端における1つもしくは2つのヌクレオシドがそれぞれ、2’-O-メチルリボースを含みかつ前記ガイド鎖の残りのヌクレオシドが、それぞれ2’-フルオロリボースヌクレオシドである、請求項1に記載のmiR-29化合物またはその塩。
【請求項4】
前記ガイド鎖および/または前記パッセンジャー鎖のヌクレオシド間連結のすべてが、ホスホジエステルヌクレオシド間連結である、先行請求項のいずれか一項に記載のmiR-29化合物または塩。
【請求項5】
前記ガイド鎖の前記核酸塩基配列が、配列番号1で定義されるとおりであり、かつ/または前記パッセンジャー鎖の前記核酸塩基配列が、配列番号2もしくは配列番号3で定義されるとおりである、先行請求項のいずれか一項に記載のmiR-29化合物または塩。
【請求項6】
前記ガイド鎖が、5’-fUfAfGfCfAfCfCfAfUfCfUfGfAfAfAfUfCfGfGfUmUmA-3’であり、かつ/または前記パッセンジャーが、5’-mArCmUrGmArUmUrUmCrUmUrUmUrGmGrUmGrUmUrCdA-3’である、先行請求項のいずれか一項に記載のmiR-29化合物または塩。
【請求項7】
前記パッセンジャー鎖の前記3’末端に共有結合により付着したコレステロール部分をさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載のmiR-29化合物または塩。
【請求項8】
先行請求項のいずれか一項に記載のmiR-29化合物またはその塩、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項9】
治療法における使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載のmiR-29化合物もしくは塩、または請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
腱損傷または組織線維症の治療における使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載のmiR-29化合物もしくは塩、または請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
腱損傷、ペイロニー病、またはデュピュイトラン病の治療における使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載のmiR-29化合物もしくは塩、または請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
対象における腱損傷の治療における使用のためのmiR-29化合物またはその塩であって、前記治療が、前記対象の損傷された腱中への、前記miR-29化合物の少なくとも47μgの用量、または同等用量のその塩の注射による単回投与を含む、miR-29化合物またはその塩。
【請求項13】
対象におけるペイロニー病の治療における使用のためのmiR-29化合物またはその塩であって、前記治療が、前記対象の白膜の患部中への、前記miR-29化合物の少なくとも47μgの用量、または同等用量のその塩の注射による単回投与を含む、miR-29化合物またはその塩。
【請求項14】
対象におけるデュピュイトラン病の治療における使用のためのmiR-29化合物またはその塩であって、前記治療が、前記対象の手掌筋膜の患部中への、前記miR-29化合物の少なくとも47μgの用量、または同等用量のその塩の注射による単回投与を含む、miR-29化合物またはその塩。
【請求項15】
前記miR-29化合物の用量が、少なくとも95μg、少なくとも190μg、少なくとも475μg、少なくとも1420μg、少なくとも1900μg、少なくとも4270μg、または同等用量のその塩である、請求項12~14のいずれか一項に記載の使用のためのmiR-29化合物またはその塩。
【請求項16】
前記miR-29化合物の用量が、4740μg以下、または同等用量のその塩である、請求項12~15のいずれか一項に記載の使用のためのmiR-29化合物またはその塩。
【請求項17】
前記miR-29化合物またはその塩が、滅菌水溶液の約1mlの容量で投与される、請求項12~17のいずれか一項に記載の使用のためのmiR-29化合物またはその塩。
【請求項18】
前記腱損傷が、腱障害である、請求項12に記載の使用のためのmiR-29化合物またはその塩。
【請求項19】
前記化合物またはその塩が、請求項1~7のいずれか一項に記載のとおりである、請求項12~18のいずれか一項に記載の使用のためのmiR-29化合物またはその塩。
【請求項20】
前記miR-29化合物またはその塩のガイド鎖が、5’-fUfAfGfCfAfCfCfAfUfCfUfGfAfAfAfUfCfGfGfUmUmA-3’であり、前記miR-29化合物またはその塩のパッセンジャー鎖が、5’-mArCmUrGmArUmUrUmCrUmUrUmUrGmGrUmGrUmUrCdA-3’でありかつ前記パッセンジャー鎖の3’末端に共有結合により付着されるコレステロール部分を含み、かつ前記コレステロール部分の重量を含む前記miR-29化合物の用量が、50μg~5000μg、例えば200μg、500μg、1500μgまたは4500μg、または同等用量のその塩である、請求項12~19のいずれか一項に記載の使用のためのmiR-29化合物またはその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規マイクロRNA-29(miR-29)化合物、それを含む組成物、および治療法におけるそれらの使用に関する。特に、腱障害を含む腱損傷、ならびにペイロニー病およびデュピュイトラン病を含む組織線維症などの、局所的コラーゲン調節不全を伴う疾患の治療において特に有効かつ安全であるmiR-29化合物および組成物が本明細書で提供される。また、miR-29化合物の有利な投与量および治療レジメンも提供される。
【発明の概要】
【0002】
マイクロRNA(miR)は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と連携して働いて相補的標的配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳を減少させるまたは防止する、小さい非コーディングRNAである。
【0003】
miR-29ファミリーのメンバーは、細胞外マトリックス、例えばコラーゲン、の転写後調節因子としての関与が示されている。コラーゲン合成の調節不全、特に1つ以上の種類のコラーゲンの過剰産生は、腱障害などの腱損傷、ペイロニー病およびデュピュイトラン病などの組織線維症などの、特定の疾患で見られる病理の一因である。
【0004】
発明者らによって以前に発表された研究(参考文献1、2、3)は、miR-29が腱損傷におけるコラーゲン産生における主要な疾患経路を調節していることを確立した。例えば、健康な腱細胞では、miR-29(例えば、miR-29a、本明細書ではmiR29aとも呼ばれる)は、コラーゲン3(col3)の過剰産生を抑制し、一方で腱疾患では、miR-29レベルの低下およびcol3の過剰産生があり、これは、さらなる損傷を受けやすい機械的に劣化された腱組織をもたらす。これらの研究において、本発明者らは、miR-29a化合物による腱細胞のin vitroトランスフェクションがcol3発現を顕著に減少させた一方で、col1、すなわち腱における望ましい生体力学的に優れた形態のコラーゲン、のレベルはほとんど影響を受けないままであることを示した。本発明者らはまた、腱細胞中のcol1転写産物の大部分は、別のポリアデニル化部位の利用によりmiR-29に対する結合部位を欠いた一方で、腱細胞中のcol3転写産物の大部分は、miR-29結合部位を保持したことも示した。したがって、腱細胞中のCol1転写産物は、miR-29媒介下方制御に対して非感受性にされたが、miR-29は、それらの細胞中でcol3を特異的に抑制できた。これは、腱損傷のin vivoモデルで確認され、マウス(参考文献1、2)またはウマ(参考文献3)の損傷した腱へのmiR-29a化合物の送達は、col1レベルを維持しながら、col3合成の減少をもたらしたことを示した。これまでの研究は、線維芽細胞において、miR-29がcol3のみでなくcol1などの他のタイプのコラーゲンの発現も阻害することを示していた(例えば、参考文献4)。
【0005】
本発明は、治療法において特に有効でかつ安全な改善されたmiR-29化合物を提供する。これらの化合物は、miR-29(例えば、miR-29a)の活性の増加を必要とするあらゆる状態の治療において有用である。これは、局所的コラーゲン調節不全を伴いかつコラーゲン3などの1つ以上のタイプのコラーゲンの発現の減少または阻害を必要とする状態を含み、これらに限定されないが、腱障害(例えば、テニス肘としても知られる外側上顆炎)を含む腱損傷、ならびにペイロニー病およびデュピュイトラン病などの組織線維症を含む。本明細書に記載の化合物は、天然のmiR-29の活性を模倣し、一方で特定の化学修飾が、免疫原性の問題を引き起こすことなく、活性、安定性、および細胞取り込みの増加などの薬理学的特性の改善をもたらす。本明細書に記載の化合物および組成物のさらなる利点は、それらが単純な水性担体中で安定であり、かつ再構成または希釈を必要とすることなく、罹患部位に直接投与できることである。
【0006】
腱障害を含む腱損傷、ならびにペイロニー病およびデュピュイトラン病などの組織線維症などの疾患の治療におけるmiR-29化合物の特に有利な投与量および治療レジメンもまた、本明細書で提供される。本発明者らは、損傷された腱へのmiR-29化合物の局所(腱内)注射による投与が、例えば腱障害のマウスモデルにおいて、腱の治癒および腱線維の質を改善することを示した。驚くべきことに、治療的有効性は、1回の投与(すなわち、1回の用量)のみで達成できる。治療法(例えば、ヒトの治療法)に好適な投与量が、提供される。デュピュイトラン病およびペイロニー病などの組織線維症におけるmiR-29化合物の治療的有効性を裏付けるデータもまた、入手可能である。miR-29化合物は、単純な水性担体中で病変の部位にて局所的に(病巣内に)投与され得る。本明細書で提供されるデータは、局所病変内投与後の全身曝露または他の組織への分布が無視できるほどであり、それにより特に安全な治療法を提供することを示す。さらに、1回の投与が治療的に有効であり得るため、医療専門家への1回のみの訪問が必要とされ、それにより簡素でコスト効率が高く、迅速かつ有効な治療を可能にする。
【0007】
発明の開示
一態様では、本発明は、miR-29化合物、それを含む組成物、および治療法におけるそれらの使用を提供する。したがって、本発明は、ガイド(アンチセンス)鎖およびパッセンジャー(センス)鎖を含むmiR-29化合物またはその塩を提供し、これらは、ネイティブmiR-29aの生物学的活性、例えばコラーゲン3発現の下方制御を模倣する。したがって、本発明の化合物は、コラーゲン3の発現を減少させるまたは阻害することができる。miR-29ファミリー(miR-29a、miR-29b-1、miR-29b-2およびmiR-29c)の様々なメンバー間の生物学的活性は重複するため、本明細書で提供されるmiR-29化合物は、他のmiR-29ファミリーメンバーの生物学的活性を模倣することも可能である。したがって、miR-29化合物は、miR-29模倣体、またはmiR-29模倣化合物とも呼ばれる。
【0008】
miR-29化合物のガイド鎖およびパッセンジャー鎖は、オリゴヌクレオチドである。すなわち、それらはヌクレオシド間連結によって連結されたヌクレオシドを含む。ガイド鎖およびパッセンジャー鎖は、典型的には、少なくとも1つの鎖中に多数のミスマッチおよびオーバーハングを含む二重鎖を形成する。本明細書に記載されるmiR-29化合物は、典型的には化学修飾されており、これは、少なくとも1つの糖、ヌクレオシド間連結または核酸塩基が、天然に存在するmiR-29中のものとは異なる化学構造を有することを意味する。化学修飾(複数可)は、例えばその活性および/または安定性を増強することにより、miR-29化合物の薬理学的特性を改善するように選択できる。例示的な修飾糖は、2’-フルオロリボース、2’-O-メチルリボース、または2’-デオキシリボースである。例示的な修飾ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。例示的な修飾核酸塩基は、5-メチルシトシンである。miR-29化合物は、典型的にはパッセンジャー鎖の3’末端において、コレステロール部分などの親油性部分にコンジュゲート(すなわち、共有結合により連結)されてもよい。親油性部分へのそのようなコンジュゲーションは、例えばその細胞取り込みを改善することによって、in vivo使用のためのmiR-29化合物の特性を改善し得る。
【0009】
したがって、一実施形態では、本発明は、
(a)配列5’-AGCACCA-3’(配列番号8、シード配列である)の外側の5つ以下(または4つ以下、3つ、2つ、もしくは1つ)の位置で、および任意により、シード配列内の3つ以下(または2つ以下、または1つ)の位置において、5’-UAGCACCAUCUGAAAUCGGUUA-3’(配列番号1)とは異なる核酸塩基配列を含むガイド鎖であって、少なくとも1つのヌクレオシドは、2’-フルオロリボースを含み、任意により少なくとも1つのヌクレオシドは、2’-O-メチルリボースを含む、ガイド鎖と;
(b)5つ以下(または4つ以下、3つ、2つ、または1、例えば3つ以下)の位置において、5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCAG-3’(配列番号2)とは異なる核酸塩基配列を含むパッセンジャー鎖であって、少なくとも1つのヌクレオシドは、2’-O-メチルリボースを含み、少なくとも1つのヌクレオシドは、未修飾リボースを含む、パッセンジャー鎖、
を含む、miR-29化合物またはその塩を提供する。
【0010】
ある核酸塩基配列は、対応する位置に異なる核酸塩基、追加の核酸塩基、または欠落した核酸塩基が存在する場合、別の核酸塩基配列と「異なる」。ある数以下の位置で別の核酸塩基配列と異なる核酸塩基配列は、ゼロの位置で異なる核酸塩基配列も包含し、すなわち、核酸塩基配列は、同一であってよい。
【0011】
したがってガイド鎖の核酸塩基配列は、5つ以下の位置において、例えば、4つ以下の位置、3つ以下の位置、2つ以下の位置において、または1つ以下の位置において、好ましくは3つ以下の位置において、ネイティブmiR-29a(AGCACCA,配列番号8)のシード配列の外側のネイティブmiR-29a(配列番号1)の核酸塩基配列とは異なり得る。 一実施形態では、シード配列の外側のガイド鎖の核酸塩基配列は、配列番号1内の対応する位置と同一である。追加的にまたは代替的に、miR-29化合物のガイド鎖のシード配列は、3つ以下の位置、例えば2つ以下の位置、または1つ以下の位置において、ネイティブmiR-29aのシード配列(AGCACCA、配列番号8)と異なり得る。好ましい実施形態では、シード配列は、配列番号8と同一である。
【0012】
パッセンジャー鎖の核酸塩基配列は、5つ以下の位置、例えば4つ以下の位置において、5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCAG-3’(配列番号2)とは異なり得る。好ましい実施形態では、パッセンジャー鎖の核酸塩基配列は、3つ以下の位置において、配列番号2とは異なる。他の実施形態では、パッセンジャー鎖の核酸塩基配列は、2つ以下の位置において、配列番号2とは異なる。特定の実施形態では、パッセンジャー鎖の核酸塩基配列は、1つ以下の位置において、配列番号2とは異なる。これは、パッセンジャー鎖の核酸塩基配列が、配列番号2の配列、または配列番号2に対して1つの異なる、追加の、または欠落した核酸塩基を有する配列を有することを意味する。配列番号3は、配列番号2に対して欠落した核酸塩基を1つ有する。
【0013】
配列番号2および配列番号3は、1つの位置でのみ異なるため、上記のように、パッセンジャー鎖が5つ以下の位置などで配列番号3と異なる実施形態も、本明細書で提供される。
【0014】
ある実施形態では、パッセンジャー鎖は、上記配列番号2の下線で示す配列5’-UUU-3’および/または5’-UUCA-3(これは、配列番号2の10位~12位および18位~21位に対応する)の外側の、5つ以下(例えば、4つ、3つ、2つまたは1つ以下、例えば3つ以下)の位置において、5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCAG-3’(配列番号2)とは異なる核酸塩基配列を含む。ある実施形態では、パッセンジャー鎖の核酸塩基配列は、配列5’-UUU-3’および5’-UUCA-3’の外側のみ配列番号2と異なる。例えば、パッセンジャー鎖の核酸塩基配列は、配列5’-UUU-3’および5’-UUCA-3’の外側の2つ以下の位置において配列番号2と異なってもよい。特定の実施形態では、パッセンジャー鎖の核酸塩基配列は、配列5’-UUU-3’および5’-UUCA-3’の外側の1つまたは2つ以下の位置、例えば、1つ以下の位置において配列番号2とは異なり得る。特定の実施形態では、そのようなパッセンジャー鎖は、本明細書に記載のフッ素化ガイド鎖(例えば、1つ以上の2’-フルオロリボヌクレオシドを含み、例えば、少なくとも50%のヌクレオシドが、2’-フルオロリボヌクレオシドであり、または、好ましくは3’末端に位置する、1つまたは2つの2’-O-メチルリボースヌクレオシドを除くすべてのヌクレオシドは、2’-フルオロリボヌクレオシドである)と組み合わされる。
【0015】
一実施形態では、ガイド鎖は、配列番号1の核酸塩基配列の少なくとも7個の連続した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する。例えば、ガイド鎖は、配列番号1の核酸塩基配列の少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または少なくとも21個の連続する核酸塩基を含む核酸塩基配列を有してもよい。一実施形態では、ガイド鎖は、配列番号1の核酸塩基配列の少なくとも18個の連続した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する。
【0016】
同じまたは他の実施形態において、パッセンジャー鎖は、配列番号2の核酸塩基配列の少なくとも7つの連続する核酸塩基を含む核酸塩基配列を有してもよい。例えば、パッセンジャー鎖は、配列番号2の核酸塩基配列の少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または少なくとも21個の連続する核酸塩基を含む核酸塩基配列を有してもよい。一実施形態では、パッセンジャー鎖は、配列番号2の核酸塩基配列の少なくとも18個の連続した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する。
【0017】
一実施形態では、ガイド鎖は、配列番号1の全長にわたって少なくとも85%同一である核酸塩基配列を含む。例えば、ガイド鎖は、配列番号1の全長にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、少なくとも99%、または100%同一である核酸塩基配列を含み得る。ある実施形態では、ガイド鎖は、前文で定義された核酸塩基配列を有し、それは、配列番号1の2~8位に対応する位置に配列5’-AGCACCA-3’(配列番号8)を含む。 それらの実施形態では、ガイド鎖の核酸塩基配列は、配列番号1の2位~8位の外側のみ配列番号1と異なり得る。差異は、上記のとおり、同一性パーセンテージまたは同一の/異なる核酸塩基の数によって定義され得る。
【0018】
同じまたは他の実施形態において、パッセンジャー鎖は、配列番号2または3の全長にわたって少なくとも85%同一である核酸塩基配列を含み得る。例えば、パッセンジャー鎖は、配列番号2または3の全長にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、少なくとも99%、または100%同一である核酸塩基配列を含み得る。ある実施形態では、パッセンジャー鎖は、前文で定義された核酸塩基配列を有し、それは、配列番号2の10位~12位および18位~21位に対応する位置に、配列5’-UUU3’および/または5’-UUCA-3’を含む。それらの実施形態では、パッセンジャー鎖の核酸塩基配列は、配列番号2の10位~12位および/または18位~21位の外側のみ配列番号2と異なり得る。特定の実施形態では、パッセンジャー鎖の核酸塩基配列は、配列番号2の10位~12位および18位~21位の外側のみ配列番号2と異なり得る。差異は、上記のとおり、同一性パーセンテージまたは同一の/異なる核酸塩基の数によって定義され得る。特定の実施形態では、そのようなパッセンジャー鎖は、本明細書に記載のフッ素化ガイド鎖(例えば、1つ以上の2’-フルオロリボヌクレオシドを含み、例えば、少なくとも50%のヌクレオシドが、2’-フルオロリボヌクレオシドであり、またはここで、好ましくは3’末端に位置する、1つまたは2つの2’-O-メチルリボースヌクレオシドを除くすべてのヌクレオシドは、2’-フルオロリボヌクレオシドである)と組み合わされる。
【0019】
さらなる実施形態では、ガイド鎖および/またはパッセンジャー鎖は、上記の核酸塩基配列から成り得る。特定の実施形態では、ガイド鎖は、核酸塩基配列5’-UAGCACCAUCUGAAAUCGGUUA-3’(配列番号1)を含むか、またはそれからなり、かつ/またはパッセンジャー鎖は、核酸塩基配列5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCAG-3’(または、配列番号2)または5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCA-3’(配列番号3)を含むか、またはそれからなる。特定の実施形態では、ガイド鎖は、核酸塩基配列5’-UAGCACCAUCUGAAAUCGGUUA-3’(配列番号1)を含むか、またはそれからなり、かつ/またはパッセンジャー鎖は、核酸塩基配列5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCA-3’(配列番号3)を含むか、またはそれからなる。特定の実施形態では、ガイド鎖は、核酸塩基配列5’-UAGCACCAUCUGAAAUCGGUUA-3’(配列番号1)を含み、かつパッセンジャー鎖は、核酸塩基配列5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCA-3’(配列番号3)を含む。特定の実施形態では、ガイド鎖は、核酸塩基配列5’-UAGCACCAUCUGAAAUCGGUUA-3’(配列番号1)からなり、かつパッセンジャー鎖は、核酸塩基配列5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCA-3’(配列番号3)からなる。これらの実施形態のいずれにおいても、「からなる」という用語は、ガイド鎖またはパッセンジャー鎖に付着される他の(非ヌクレオシド)部分が存在することを排除するものではなく、例えば、パッセンジャー鎖は、例えばリンカーを介して、典型的にはパッセンジャー鎖の3’末端において、親油性部分、例えば、コレステロール部分に連結され得る。
【0020】
ある実施形態では、パッセンジャー鎖の3’末端における核酸塩基は、AまたはGである。ある実施形態では、パッセンジャー鎖の3’末端における核酸塩基は、Aである。
【0021】
本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、ガイド鎖の少なくともまたは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または21個のヌクレオシドは、2’-フルオロリボースを含み得る。例えば、ガイド鎖の少なくともまたは約11、12、13、14、15、16、17、18または19個のヌクレオシドは、2’-フルオロリボースヌクレオシドである。ある実施形態では、ガイド鎖の20個以下または21個以下のヌクレオシドが、2’-フルオロリボースヌクレオシドである。
【0022】
本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、ガイド鎖の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、または少なくとも95%のヌクレオシドは、2’-フルオロリボースを含む。いくつかの実施形態では、ガイド鎖の少なくとも1つのヌクレオシドは、2’-フルオロリボース以外の糖(修飾された糖であってもよい)を含む。特定の実施形態では、ガイド鎖の少なくとも50%(または少なくとも60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%または少なくとも95%)のヌクレオシドは、2’-フルオロリボースを含み、ガイド鎖の少なくとも1つのヌクレオシドは、2’-O-メチルリボースを含む。別の実施形態では、ガイド鎖の少なくとも50%(または少なくとも60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%または少なくとも95%)のヌクレオシドは、2’-フルオロリボースを含み、ガイド鎖の少なくとも2つのヌクレオシドは、2’-O-メチルリボースを含む。例えば、ガイド鎖の1つまたは2つのヌクレオシドは、2’-O-メチルリボースを含み得る。2’-O-メチルリボースを含むガイド鎖のヌクレオシドは、ガイド鎖の3’末端に位置し得る。
【0023】
一実施形態では、ガイド鎖の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%のヌクレオシドは、2’-フルオロリボースヌクレオシドであり、および/またはガイド鎖の91%以下、もしくは95%以下のヌクレオシドは、2’フルオロリボースヌクレオシドである。例えば、ガイド鎖の少なくとも50%かつ91%以下のヌクレオシドは、2’-フルオロリボースヌクレオシドである。
【0024】
一実施形態では、2’-O-メチルリボースおよび未修飾リボースを含むパッセンジャー鎖のヌクレオシドが、交互に配置される。例えば、パッセンジャー鎖中の少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または少なくとも20個の連続するヌクレオシドは、交互に2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび未修飾リボース部分を有するヌクレオシドであり得る。したがって、交互に2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび未修飾リボース部分を有するヌクレオシドである、パッセンジャー鎖中の少なくとも10個の連続ヌクレオシドが、存在し得る。交互に2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび未修飾リボース部分を有するヌクレオシドである、パッセンジャー鎖中の少なくとも12個の連続ヌクレオシドが、存在し得る。交互に2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび未修飾リボース部分を有するヌクレオシドである、パッセンジャー鎖中の少なくとも14個の連続ヌクレオシドが、存在し得る。交互に2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび未修飾リボース部分を有するヌクレオシドである、パッセンジャー鎖中の少なくとも16個の連続ヌクレオシドが、存在し得る。好ましい実施形態では、交互に2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび未修飾リボース部分を有するヌクレオシドである、パッセンジャー鎖中の少なくとも18個の連続ヌクレオシドが、存在し得る。パッセンジャー鎖の1つ以上のヌクレオシドは、デオキシリボースを含み得る。このようなヌクレオシドは、パッセンジャー鎖の3’末端に位置し得る。
【0025】
一実施形態では、パッセンジャー鎖の少なくとも5、6、7、8または9個のヌクレオシドが、2’-O-メチルリボースヌクレオシドであり、かつ/またはパッセンジャー鎖の10個以下のヌクレオシドが、2’-O-メチルリボースヌクレオシドである。
【0026】
一実施形態では、パッセンジャー鎖の少なくとも10%、20%、30%、40%または45%のヌクレオシドが、2’-O-メチルリボースヌクレオチドであり、かつ/またはパッセンジャー鎖の50%以下のオリゴヌクレオチドが、2’-O-メチルリボースヌクレオチドである。
【0027】
したがって、本発明は、本明細書の実施形態のいずれかに記載されるガイド鎖、および本明細書の実施形態のいずれかに記載されるパッセンジャー鎖を含むmiR-29化合物またはその塩を提供する。
【0028】
したがって、一実施形態では、本発明は、
(a)核酸塩基配列5’-UAGCACCAUCUGAAAUCGGUUA-3’(配列番号1)または配列5’-AGCACCA-3’(配列番号8)の外側の5つ以下の位置において、および任意によりその配列内の3つ以下の位置において、配列番号1と異なる核酸塩基配列を含むガイド鎖であって、ここで少なくとも50%のヌクレオシドが、2’-フルオロリボースを含み、1つまたは2つのヌクレオシドが、好ましくは3’末端で、それぞれ2’-O-メチルリボースを含む、ガイド鎖と;
(b)核酸塩基配列5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCAG-3’(配列番号2)もしくは5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCA-3’(配列番号3)を含む、または3つ以下の位置において配列番号2と異なる核酸塩基配列を含むパッセンジャー鎖であって、ここで少なくとも10個の連続したヌクレオシドが、交互に2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび未修飾リボース部分を有するヌクレオシドである、パッセンジャー鎖、
を含む、miR-29化合物またはその塩を提供する。
【0029】
特定の実施形態では、本発明は、
(a)核酸塩基配列5’-UAGCACCAUCUGAAAUCGGUUA-3’または配列5’-AGCACCA-3’(配列番号8)の外側の3つ以下の位置において配列番号1とは異なる核酸塩基配列を含むガイド鎖であって、ここで少なくとも50%のヌクレオシドが、2’フルオロリボースを含み、3’末端の1つまたは2つのヌクレオシドがそれぞれ、2’-O-メチルリボースを含む、ガイド鎖と;
(b)核酸塩基配列5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCAG-3’(配列番号2)もしくは5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCA-3’(配列番号3)を含む、または3つ以下の位置において配列番号2と異なる核酸塩基配列を含むパッセンジャー鎖であって、ここで少なくとも10個の連続したヌクレオシドが、交互に2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび未修飾リボース部分を有するヌクレオシドである、パッセンジャー鎖、
を含む、miR-29化合物またはその塩を提供する。
【0030】
この実施形態による例示的な化合物は、Teno15、Teno18、Teno19、Teno20、Teno29、Teno32、Teno33およびTeno34であり、これらは以下の実施例において記載される。
【0031】
上記のとおり、パッセンジャー鎖中の少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または少なくとも20個の連続するヌクレオシドは、交互に2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび未修飾リボース部分を有するヌクレオシドであり得る。例えば、パッセンジャー鎖中の少なくとも12個の連続ヌクレオシドが、交互に2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび未修飾リボース部分を有するヌクレオシドである。例えば、パッセンジャー鎖中の少なくとも14個の連続ヌクレオシドが、交互に2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび未修飾リボース部分を有するヌクレオシドある。例えば、パッセンジャー鎖中の少なくとも16個の連続ヌクレオシドが、交互に2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび未修飾リボース部分を有するヌクレオシドである。ある実施形態では、例えば、パッセンジャー鎖中の少なくとも18個の連続ヌクレオシドが、交互に2’-O-メチルリボースヌクレオシドおよび未修飾リボース部分を有するヌクレオシドである。
【0032】
好ましくは、それぞれ2’-Oメチルリボースを含むパッセンジャー鎖中の少なくとも1つまたは2つのヌクレオシドは、パッセンジャー鎖の3’末端に位置する。しかし、これは必須ではない。
【0033】
ある実施形態では、ガイド鎖の3’末端における1つまたは2つのヌクレオシドが、それぞれ2’-O-メチルリボースを含み得、かつ:(i)2’-修飾リボースを含むガイド鎖の残りのヌクレオシドがそれぞれ、2’-フルオロリボースヌクレオシドである、または(ii)ガイド鎖の残りのヌクレオシドがそれぞれ、2’-フルオロリボースヌクレオシドまたは未修飾リボース部分である。
【0034】
ある実施形態では、(i)ガイド鎖の各ヌクレオシドが、2’-修飾リボースを含む、(ii)ガイド鎖の各ヌクレオシドが、2’-O-メチルリボースまたは2’-フルオロリボースを含む、または(iii)ガイド鎖の3’末端における1つもしくは2つのヌクレオシドが、それぞれ2’-O-メチルリボースを含み、かつガイド鎖の残りのヌクレオシドが、それぞれ2’-フルオロリボースヌクレオシドである。
【0035】
ある実施形態では、ガイド鎖および/またはパッセンジャーのヌクレオシド間連結はいずれも化学修飾されていない。したがって、ある実施形態では、ガイド鎖および/またはパッセンジャー鎖のヌクレオシド間連結のすべては、ホスホジエステルヌクレオシド間連結である。
【0036】
ある実施形態では、ガイド鎖および/またはパッセンジャーの核酸塩基はいずれも化学修飾されていない。例えば、ある実施形態では、ガイド鎖および/またはパッセンジャー鎖の核酸塩基はいずれも5-メチルシトシンを含まない。
【0037】
ある実施形態では、ガイド鎖の核酸塩基配列は、配列番号1で定義されるとおりであり、かつ/またはパッセンジャー鎖の核酸塩基配列は、配列番号2もしくは配列番号3で定義されるとおりである。
【0038】
ある実施形態では、ガイド鎖の核酸塩基配列は、配列番号1で定義されるとおりであり、かつ/またはパッセンジャー鎖の核酸塩基配列は、配列番号3で定義されるとおりである。
【0039】
ある実施形態では、ガイド鎖は、5’-fUfAfGfCfAfCfCfAfUfCfUfGfAfAfAfUfCfGfGfUmUmA-3’であり;パッセンジャーは、5’-mArCmUrGmArUmUrUmCrUmUrUmUrGmGrUmGrUmUrCdA-3’であり;ここでヌクレオシドに先行する「f」=2’-デオキシ-フルオロリボヌクレオシド(-F)であり;ヌクレオシドに先行する「m」=2’-O-メチルリボヌクレオシド(-O-Me)であり;ヌクレオシドに先行する「r」=未修飾リボース部分(OH)を有するヌクレオシドであり;ヌクレオシドに先行する「d」=2’-デオキシリボヌクレオシド(-H)である。この実施形態による例示的な化合物は、以下の実施例で説明される、Teno18である。
【0040】
ある実施形態では、ガイド鎖は、5’-fUfAfGfCfAfCfCfAfUfCfUfGfAfAfAfUfCfGfGfUmUmA-3’であり;パッセンジャーは、5’-mAmCrUmGrAmUrUmUrCmUrUmUrUmGrGmUrGmUrUmCmAmG-3’であり;ここでヌクレオシドに先行する「f」=2’-デオキシ-フルオロリボヌクレオシド(-F)であり;ヌクレオシドに先行する「m」=2’-O-メチルリボヌクレオシド(-O-Me)であり;ヌクレオシドに先行する「r」=未修飾リボース部分(OH)を有するヌクレオシドである。この実施形態による例示的な化合物は、以下の実施例で説明される、Teno20である。
【0041】
ある実施形態では、ガイド鎖は、5’-fUrArGfCrAfCfCrAfUfCfUrGrArArAfUfCrGrGfUfUmA-3であり;パッセンジャーは、5’-mArCmUrGmArUmUrUmCrUmUrUmUrGmGrUmGrUmUrCmAdG-3’であり;ここでヌクレオシドに先行する「f」=2’-デオキシ-フルオロリボヌクレオシド(-F)であり;ヌクレオシドに先行する「m」=2’-O-メチルリボヌクレオシド(-O-Me)であり;ヌクレオシドに先行する「r」=未修飾リボース部分(OH)を有するヌクレオシドであり;ヌクレオシドに先行する「d」=2’-デオキシリボヌクレオシド(-H)である。この実施形態による例示的な化合物は、以下の実施例で説明される、Teno33である。
【0042】
本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、miR-29化合物またはその塩は、パッセンジャー鎖の3’末端に共有結合により付着されたコレステロール部分をさらに含み得る。コレステロール部分は、トリエチレングリコールコレステロール部分であってよい。例示的なコレステロール部分は、3’ホスホプロピル-2-オール,2,2’-[エタン-1,2-ジイルビス(オキシ)]ジ(エタン-1-オール),10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]である。
【0043】
例示的実施形態では、ガイド鎖は、5’-fUfAfGfCfAfCfCfAfUfCfUfGfAfAfAfUfCfGfGfUmUmA-3’であり;パッセンジャーは、5’-mArCmUrGmArUmUrUmCrUmUrUmUrGmGrUmGrUmUrCdAchol-3であり;ヌクレオシドに先行する「f」=2’-デオキシ-フルオロリボヌクレオシド(-F)であり;ヌクレオシドに先行する「m」=2’-O-メチルリボヌクレオシド(-O-Me)であり;ヌクレオシドに先行する「r」=未修飾リボース部分(OH)を有するヌクレオシドであり;ヌクレオシドに先行する「d」=2’-デオキシリボヌクレオシド(-H)であり;cholは、コレステロール部分を示す。この実施形態による例示的な化合物は、コレステロールコンジュゲートTeno18(CWT-001)であり、これは、以下の実施例で説明される。
【0044】
これらの実施形態のいずれかにおいて、ガイド鎖の5’末端のヌクレオシドの糖の5’位にリン酸基(「5’Phos」)があってもよい。
【0045】
したがって一実施形態では、ガイド鎖は、5’-PhosfUfAfGfCfAfCfCfAfUfCfUfGfAfAfAfUfCfGfGfUmUmA-3’であり;パッセンジャー鎖は、5’-mArCmUrGmArUmUrUmCrUmUrUmUrGmGrUmGrUmUrCdA-3であり;ここでガイド鎖およびパッセンジャー鎖のすべてのヌクレオシド間連結は、ホスホジエステルヌクレオシド間連結である。この実施形態による例示的な化合物は、以下の実施例で説明される、Teno18である。
【0046】
別の実施形態では、ガイド鎖は、5’-PhosfUfAfGfCfAfCfCfAfUfCfUfGfAfAfAfUfCfGfGfUmUmA-3’であり;パッセンジャーは、5’-mArCmUrGmArUmUrUmCrUmUrUmUrGmGrUmGrUmUrCdAchol-3であり;ここでcholは、コレステロール部分、例えばトリエチレングリコールコレステロール部分であり、ガイド鎖およびパッセンジャー鎖のすべてのヌクレオシド間連結は、ホスホジエステルヌクレオシド間連結である。この実施形態による例示的な化合物は、コレステロールコンジュゲートTeno18(CWT-001)であり、これは、以下の実施例で説明する。
【0047】
本発明はまた、本明細書に記載のmiR-29化合物またはその塩を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は典型的には、薬学的に許容される担体または希釈剤を含む。ある実施形態では、薬学的に許容される担体または希釈剤は、滅菌溶液である。薬学的に許容される担体または希釈剤は、非経口的に許容される水溶液である。例えば、薬学的に許容される担体または希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)であってもよい。薬学的に許容される担体または希釈剤は、EDTAなどの追加の物質を、例えば0.001%~0.005%、例えば0.003%(100μM)の最終濃度で含んでもよい。ある実施形態では、医薬組成物は、非液体担体を含まず、例えば、miR-29化合物またはその塩は、移植可能な足場などの固体担体に含まれない、または固体担体中に、固体担体に対して、もしくは固体担体と共に投与されない。
【0048】
本発明はさらに、本明細書に記載のmiR-29化合物またはその塩を含む容器を提供する。miR-29化合物またはその塩は典型的には、治療的有効量で提供される。治療的有効量は、対象に投与されるとコラーゲン3を減少させるかまたは阻害し、典型的には疾患症状の改善、例えば、疼痛または活動不能の軽減、機能性の改善、および/または疾患の進行の遅延をもたらす、miR-29化合物またはその塩の量である。容器は典型的には、容器に貼付されたラベルを含む。容器は、本明細書に記載の医薬組成物を含むガラスバイアル(例えば、使い捨てガラスバイアル)であってもよい。容器は、シリンジまたは注射器であってもよい。
【0049】
本発明はまた、治療法における使用のための、本明細書に記載のmiR-29化合物もしくはその塩、または医薬組成物を提供する。
【0050】
したがって、医薬品の製造のための、本明細書に記載のmiR-29化合物もしくはその塩の使用、または医薬組成物の使用もまた、本明細書で提供される。
【0051】
また、それを必要とする対象に、本明細書に記載のmiR-29化合物もしくはその塩、または医薬組成物の治療的有効量を投与することを含む、疾患または状態を治療する方法も提供される。
【0052】
「治療法」、「医薬品」、「治療する」、および「治療」などの用語は、治癒的方法および予防的方法を含む。
【0053】
したがって、好ましい実施形態では、例えば、miR-29化合物またはその塩の注射による病変内投与(例えば、単回の病変内投与)を含む、治療法における使用のためのmiR-29化合物またはその塩が、本明細書で提供され、ここでmiR-29化合物またはその塩は、ガイド鎖5’-fUfAfGfCfAfCfCfAfUfCfUfGfAfAfAfUfCfGfGfUmUmA-3’およびパッセンジャー鎖5’-mArCmUrGmArUmUrUmCrUmUrUmUrGmGrUmGrUmUrCdA-3’を含み、任意により親油性(例えば、コレステロール)部分は、パッセンジャー鎖の3’末端に共有結合により付着される。
【0054】
ある実施形態において、治療は、コラーゲン調節不全、特にコラーゲンの過剰産生、例えばコラーゲン3の過剰産生に対するものである。「過剰産生」という用語は、対応する健康な組織と比較して、増加されたコラーゲン産生を指す。過剰産生は典型的には、局所的である。例えば、腱障害などの腱損傷は、コラーゲン3の局所的過剰産生が関与する。ペイロニー病およびデュピュイトラン病などの線維性状態もまた、コラーゲン3の局所的過剰産生が関与する。したがって、一実施形態では、本明細書に記載のmiR-29化合物もしくはその塩、または医薬組成物は、腱障害などの腱損傷、またはペイロニー病もしくはデュピュイトラン病などの組織線維症を治療することにおける使用のためである。一実施形態では、本明細書に記載のmiR-29化合物もしくはその塩、または医薬組成物は、腱損傷を治療することにおける使用のためである。腱損傷は、腱障害であり得る。腱損傷は、慢性腱障害であり得る。腱損傷は、外側上顆炎であり得る。
【0055】
対象は典型的には、ヒトである。しかし、別の好ましい対象はウマ、特にスポーツ用に飼育されたウマである。
【0056】
別の態様では、本発明は、miR-29化合物、その塩、およびそれらを含む医薬組成物の投与量および治療レジメンを提供する。本明細書で提供される投与量および治療レジメンは、一連のmiR-29化合物に好適である。すなわち、本明細書の投与量および治療レジメンの本開示の適用可能性は、本明細書に提供される新規miR-29化合物を含むが、これらに限定されない。それにも関わらず、本発明者らはこの投与量および治療レジメンがこれらの化合物に特に好適であることを見出したため、この投与量および治療レジメンは好ましくは、新規miR-29化合物を含む。
【0057】
本明細書に開示の投与量および治療レジメンでの使用のためのmiR-29化合物は、上述のように、化学修飾され得る。これは、少なくとも1つの糖、ヌクレオシド間連結、または核酸塩基が、また上述のとおり、天然に存在するmiR-29のものとは異なる化学構造を有することを意味する。ある実施形態では、miR-29化合物またはその塩は、修飾糖を含むが、修飾ヌクレオシド間連結または修飾核酸塩基を含まない(miR-29化合物またはその塩は、修飾ヌクレオシド間連結を含まず、かつそれは、修飾核酸塩基を含まない)。例えば、ガイド鎖および/またはパッセンジャー鎖のヌクレオシド間連結のすべては、ホスホジエステルヌクレオシド間連結であり得る。miR-29化合物は、典型的にはパッセンジャー鎖の3’末端で、コレステロール部分などの親油性部分にコンジュゲートされてよい(すなわち、共有結合により連結される)。miR-29化合物またはその塩は、本明細書に記載の特定の化合物または塩の任意の1つであり得るか、またはそれは、異なるmiR-29化合物もしくはその塩であり得る。
【0058】
したがって、この態様の一実施形態では、本発明は、ある用量のmiR-29化合物またはその塩の注射による単回病変内投与を含む治療法における使用のためのmiR-29化合物またはその塩を提供する。医薬品を製造するための対応する使用および対応する治療方法もまた、上記および下記のとおり、提供される。
【0059】
ある実施形態では、治療は、miR-29化合物またはその塩の注射による2回以下、または3回以下の病変内投与を含む。他の実施形態では、治療は、miR-29化合物またはその塩の注射による単回の病変内投与を含む。
【0060】
治療は、腱損傷(例えば、腱障害)に対するものであり得、投与は、腱の損傷領域(腱内(intra-tendon)または腱内(intratendinous))に行われる。
【0061】
治療は、ペイロニー病に対するものであり得、投与は、対象の白膜の患部領域内に行われる。
【0062】
治療は、デュピュイトラン病に対するものであり得、投与は、対象の手掌筋膜の患部領域内に行われる。
【0063】
これらの実施形態のいずれかにおいて、miR-29化合物の単回用量は、miR-29化合物の10μg~5000μg、または同等用量のその塩であり得る。以下にさらに詳細に説明するが、特に明記のない限り、用量は、遊離酸としてのガイド鎖およびパッセンジャー鎖のオリゴヌクレオチド部分(すなわち、コレステロール部分などの任意のコンジュゲート基を除く)の重量を指す。
【0064】
したがって、単回用量は、miR-29化合物の10μg~4500μg、10μg~4000μg、10μg~3500μg、10μg~3000μg、もしくは10μg~2500μg、または同等用量のその塩であり得る。
【0065】
単回用量は、miR-29化合物の47μg~4740μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の47μg~4270μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の47μg~1900μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の47μg~1420μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の47μg~475μg、または同等用量のその塩であり得る。
【0066】
単回用量は、miR-29化合物の95μg~4740μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の95μg~4270μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の95μg~1900μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の95μg~1420μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の95μg~475μg、または同等用量のその塩であり得る。
【0067】
単回用量は、miR-29化合物の190μg~4740μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の190μg~4270μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の190μg~1900μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の190μg~1420μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の190μg~475μg、または同等用量のその塩であり得る。
【0068】
単回用量は、miR-29化合物の475μg~4740μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の475μg~4270μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の475μg~1900μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の475μg~1420μg、または同等用量のその塩であり得る。
【0069】
単回用量は、miR-29化合物の1420μg~4740μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の1420μg~4270μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の1420μg~1900μg、または同等用量のその塩であり得る。
【0070】
ある実施形態では、単回用量は、miR-29化合物の190μg~1420μg、または同等用量のその塩である。単回用量は、miR-29化合物の約190μg、475μg、1420μgもしくは4270μg、または同等用量のその塩であり得る。例えば、単回用量は、miR-29化合物の約190μg、475μgもしくは1420μg、または同等用量のその塩であり得る。これは、単回用量が約miR-29化合物の190μg、または同等用量のその塩であり得ることを意味する。単回用量は、miR-29化合物の約475μg、または同等用量のその塩であり得る。単回用量は、miR-29化合物の約1420μg、または同等用量のその塩であり得る。
【0071】
好ましい実施形態では、単回用量は、miR-29化合物の約190μg~約475μg、または同等用量のその塩である。例えば、単回用量は、miR-29化合物の約190μg、または同等用量のその塩であり得る。また、単回用量は、miR-29化合物の約475μg、または同等用量のその塩であり得る。好ましい実施形態では、単回用量は、miR-29化合物の約190μg、または同等用量のその塩である。
【0072】
一実施形態ではしたがって、本発明は、対象における腱損傷の治療における使用のためのmiR-29化合物またはその塩を提供し、治療は、対象の損傷した腱中への、miR-29化合物の少なくとも47μgの用量、または同等用量のその塩の注射による単回投与を含む。
【0073】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるペイロニー病の治療における使用のためのmiR-29化合物またはその塩を提供し、治療は、対象の白膜の患部中への、miR-29化合物の少なくとも47μgの用量、または同等用量のその塩の注射による単回投与を含む。
【0074】
さらなる実施形態では、本発明は、対象におけるデュピュイトラン病の治療における使用のためのmiR-29化合物またはその塩を提供し、治療は、対象の手掌筋膜の患部中への、miR-29化合物の少なくとも47μgの用量、または同等用量のその塩の注射による単回投与を含む。
【0075】
ある実施形態では、miR-29化合物の単回用量は、少なくとも95μg、少なくとも190μg、少なくとも475μg、少なくとも1420μg、少なくとも1900μg、少なくとも4270μg、または同等用量のその塩である。
【0076】
例えば、miR-29化合物の単回用量は、miR-29化合物の少なくとも95μg(または少なくとも190μg、少なくとも475μg、少なくとも1420μg、少なくとも1900μg、少なくとも4270μg)かつ4740μg以下または同等用量のその塩であり得る。したがって、単回投与量は、上記のような特定の範囲内にあり得る。
【0077】
より一般的には、miR-29化合物の単回用量は、miR-29化合物の少なくとも約10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、47μg、50μg、55μg、60μg、75μg、80μg、95μg、100μg、110μg、120μg、130μg、140μg、150μg、160μg、170μg、180μg、190μg、200μg、220μg、240μg、260μg、280μg、300μg、320μg、340μg、350μg、360μg、380μg、400μg、420μg、440μg、460μg、470μg、475μg、480μg、500μg、550μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、950μg、1000μg、1100μg、1200μg、1300μg、1400μg、1420μg、1500μg、1600μg、1700μg、1800μg、1900μgまたは2000μg、または同等用量のその塩であり得る。ある実施形態では、4000μg~4500μg、例えば4270μgなどの、より高い用量が使用され得る。
【0078】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、ある実施形態では、miR-29化合物の単回用量は、miR-29化合物の190μg以下、200μg、220μg、240μg、260μg、280μg、300μg、320μg、340μg、350μg、360μg、380μg、400μg、420μg、440μg、460μg、470μg、475μg、480μg、500μg、550μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、950μg、1000μg、1100μg、1200μg、1300μg、1400μg、1420μg、1500μg、1600μg、1700μg、1800μg、1900μg、2000μg、2200μg、2400μg、2600μg、2800μg、3000μg、3200μg、3400μg、3600μg、3800μg、4000μg、4200μg、4270μg、4400μg、4600μg、4740μg、4800μgまたは5000μg、または同等用量のその塩である。特定の実施形態では、miR-29化合物の単回用量は、190μg以下、または同等用量のその塩である。特定の実施形態では、miR-29化合物の単回用量は、475μg以下、または同等用量のその塩である。特定の実施形態では、miR-29化合物の単回用量は、1420μg以下、または同等用量のその塩である。特定の実施形態では、miR-29化合物の単回用量は、1900μg以下、または同等用量のその塩である。特定の実施形態では、miR-29化合物の単回用量は、4270μg以下、または同等用量のその塩である。
【0079】
腱損傷が治療される場合、腱損傷は、腱障害であり得る。腱損傷は、慢性腱障害であり得る。腱損傷は、外側上顆炎、内側上顆炎、腱板腱障害、総伸筋起始筋腱障害、総屈筋起始筋腱障害、臀部腱障害(大転子痛症候群、GTPS)、膝蓋腱障害、ジャンパー膝、足底筋膜炎、アキレス腱障害、腓骨筋腱障害、棘上筋症候群、またはそれらの組み合わせであり得る。一実施形態では、腱損傷は、上肢腱障害(外側上顆炎、ゴルフ肘、腱板腱障害、およびデケルヴァン病など)である。特定の実施形態では、腱損傷は、外側上顆炎である。
【0080】
対象は典型的には、ヒトである。しかし、別の好ましい対象は、ウマ、特にスポーツ用に飼育されたウマである。
【0081】
ある実施形態では、miR-29化合物またはその塩は、0.5ml~5ml、例えば、0.5ml~1.5ml、例えば、0.8ml~1.2ml、例えば、0.9ml~1.1mlの容量で投与される。例えば、容量は、約0.5ml、0.75ml、1ml、1.25ml、1.5ml、1.75ml、2ml、2.5ml、3ml、3.5ml、4ml、4.5mlまたは約5mlであり得る。特定の実施形態では、容量は、約1mlである。例えば、一実施形態では、miR-29化合物またはその塩は、約1mlの滅菌水溶液の容量で投与される。
【0082】
miR-29化合物またはその塩は、上記の投与量のいずれかに対応する濃度で投与され得る。例えば、投与量が190μgのmiR-29化合物である場合、化合物は、190μg/mlの濃度で投与され得る。
【0083】
ある実施形態では、miR-29化合物またはその塩は、本明細書に提供される特定のmiR-29化合物またはその塩のいずれか1つである。
【0084】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、ある用量のmiR-29化合物またはその塩の注射による単回病変内投与を含む治療法における使用のためのmiR-29化合物またはその塩を提供し、ここでガイド鎖は、5’ -fUfAfGfCfAfCfCfAfUfCfUfGfAfAfAfUfCfGfGfUmUmA-3’であり、パッセンジャー鎖は、5’-mArCmUrGmArUmUrUmCrUmUrUmUrGmGrUmGrUmUrCdA-3’であり、パッセンジャー鎖(5’-mArCmUrGmArUmUrUmCrUmUrUmUrGmGrUmGrUmUrCdAchol-3’)の3’末端に共有結合により付着されるコレステロール部分を含み、miR-29化合物の用量(コレステロール部分の重量を含む)は、50μg~5000μg、例えば、200μg~4500μg、例えば、200μg~1500μg、200μg~500μg、500μg~1500μg、または1500μg~4500μg(例えば、約100μg、200μg、250μg、300μg、500μg、1000μg、1500μgまたは約4500μg)、または同等用量のその塩であり;ここでヌクレオシドに先行する「f」=2’-デオキシ-フルオロリボヌクレオシド(-F)であり;ヌクレオシドに先行する「m」=2’-O-メチルリボヌクレオシド(-O-Me)であり;ヌクレオシドに先行する「r」=未修飾リボース部分(-OH)を有するヌクレオシドであり;ヌクレオシドに先行する「d」=2’-デオキシリボヌクレオシド(-H)である。好ましい実施形態において、miR-29化合物の用量(コレステロール部分の重量を含む)は、約200μg~約500μg、または同等用量のその塩である。例えば、miR-29化合物の用量(コレステロール部分の重量を含む)は、約200μg、または同等用量のその塩であり得る。また、miR-29化合物の用量(コレステロール部分の重量を含む)は、約500μg、または同等用量のその塩であり得る。特定の実施形態では、miR-29化合物の用量(コレステロール部分の重量を含む)は、約200μg、または同等用量のその塩である。
【0085】
そのため、一実施形態では、miR-29化合物またはその塩のガイド鎖は、5’-fUfAfGfCfAfCfCfAfUfCfUfGfAfAfAfUfCfGfGfUmUmA-3’であり、miR-29化合物またはその塩のパッセンジャー鎖は、5’-mArCmUrGmArUmUrUmCrUmUrUmUrGmGrUmGrUmUrCdA-3’であり、パッセンジャー鎖の3’末端に共有結合により付着されるコレステロール部分を含み、コレステロール部分の重量を含むmiR-29化合物の用量は、50μg~5000μg、例えば200μg、500μg、1500μgまたは4500μg、または同等用量のその塩である。これは、コレステロール部分の重量を含むmiR-29化合物の用量が、約200μg、または同等用量のその塩であり得ることを意味する。また、コレステロール部分の重量を含むmiR-29化合物の用量は、約500μg、または同等用量のその塩であり得る。また、コレステロール部分の重量を含むmiR-29化合物の用量は、約1500μg、または同等用量のその塩であり得る。また、コレステロール部分の重量を含むmiR-29化合物の用量は、約4500μg、または同等用量のその塩であり得る。好ましい実施形態において、miR-29化合物の用量(コレステロール部分の重量を含む)は、約200μg~約500μg、または同等用量のその塩である。例えば、miR-29化合物の用量(コレステロール部分の重量を含む)は、約200μg、または同等用量のその塩であり得る。また、miR-29化合物の用量(コレステロール部分の重量を含む)は、約500μg、または同等用量のその塩であり得る。特定の実施形態では、miR-29化合物の用量(コレステロール部分の重量を含む)は、約200μg、または同等用量のその塩である。この治療法は、ペイロニー病またはデュピュイトラン病などの、組織線維症に対するものであり得る。この治療法は、腱損傷に対するものであり得る。腱損傷は、腱障害であり得る。腱損傷は、慢性腱障害であり得る。腱損傷は、外側上顆炎であり得る。miR-29化合物は、塩として、例えばナトリウム塩として投与され得る。担体は、非経口的に許容される滅菌水溶液、例えばPBSであってよい。
【0086】
別の態様では、本発明は、本発明によるmiR-29化合物を作製するためのプロセスを提供する。本発明はまた、本発明によるmiR-29化合物を提供することとその化合物を薬学的に許容される担体または希釈剤と混合することを含む、医薬組成物を作製するためのプロセスを提供する。
【0087】
マイクロRNA-29化合物
本明細書で使用される「マイクロRNA-29」化合物は、天然の内因性miR-29の生物学的機能を有するオリゴヌクレオチドを指し、これは、miR-29a、miR-29b(miR-29b-1およびmiR-29b-2を含む)およびmiR-29cを含む。その機能は、miR-29に対する1つ以上の結合部位(例えば、miR-29aに対する1つ以上の結合部位)を含む任意の標的mRNAの3’非翻訳領域(3’UTR)への相補的結合(ハイブリダイズ)によるmRNAの標的化を含み、それによりその分解および/または翻訳抑制を引き起こす。miR-29に対する結合部位を保持する標的mRNAは典型的には、コラーゲン、例えばコラーゲン3(col3a1)などの、特定の細胞外マトリックスタンパク質をコードする。本明細書に記載されるmiR-29化合物は、天然miR-29の生物学的機能を模倣するが、例えば、その活性、安定性、および/または細胞取り込みを増強するように、しかし免疫原性を引き起こさずに、天然miR-29(例えば、天然miR-29a)に対して修飾されてよい。修飾は、核酸塩基配列の修飾、および/または1つ以上の糖部分、ヌクレオシド間連結、および/または核酸塩基における化学修飾を含み得る。修飾はまた、例えば親油性部分へのコンジュゲーションも含む。一実施形態では、化合物は、ヒト成熟miR-29aの生物学的機能を有する、すなわち、それは、ヒト成熟miR-29aの模倣体である。
【0088】
本明細書に記載のmiR-29化合物は、miR-29に対する1つ以上の結合部位、例えば、miR-29aに対する1つ以上の結合部位を保有するmRNAによってコードされるタンパク質の発現を減少させるまたは阻害することができる。例えば、本明細書に記載のmiR-29化合物は、コラーゲンの発現、例えばコラーゲン3(col3a1)の発現を減少させるまたは阻害することができる。miR-29化合物は、ネイティブmiR-29aよりも大きな程度にコラーゲンの発現を減少させ得る。例えば、miR-29化合物は、ネイティブmiR-29aと比較して、コラーゲンの発現を少なくとも10%、少なくとも20%、または少なくとも30%、またはそれより多く減少させ得る。コラーゲン(col3a1)発現の減少を評価するための好適なアッセイは、以下の実施例1に記載のルシフェラーゼアッセイまたはqPCRアッセイなど、当業者に知られている。タンパク質レベルは、当技術分野で周知の方法(例えば、ウエスタンブロット)によって評価され得る。
【0089】
本明細書に記載されるmiR-29化合物は、細胞取り込みが可能であり、例えば、それらは、トランスフェクション剤またはリポソームなどの他のトランスフェクションビヒクルを使用することなく、標的細胞(腱細胞または線維芽細胞など)によりin vivoで取り込まれ得る。miR-29化合物とコレステロール部分などの親油性部分とのコンジュゲーションは、細胞取り込みを増強する。細胞取り込みの能力は、当業者に知られている方法、例えば、in vitroコラーゲン3ルシフェラーゼレポーターアッセイにおいてmiR-29活性を測定することにより評価できる。
【0090】
本明細書に記載のmiR-29化合物は、安定である。安定なmiR-29化合物は、37℃で3ヶ月間保存後にin vitroコラーゲン3ルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて活性を実質的に保持する。
【0091】
本明細書に記載のmiR-29化合物はまた、未修飾(天然)miR-29と比較して、それらが2’糖修飾の結果としてより長いin vivo半減期を有するという意味でも安定である。
【0092】
二本鎖RNAは、哺乳動物において自然免疫応答を刺激できる。例えば、miR-29aは、免疫細胞中のToll様受容体(TLR)ファミリーの受容体に結合し炎症反応を引き起こし得ることが記載されている(参考文献5)。免疫刺激は、miRNA治療法のin vivo適用を大幅に制限し得る。したがって、miRNA活性を効果的に媒介できるが免疫活性化を回避または最小限に抑えることができる化合物が望ましい。本明細書で提供されるmiR-29化合物は、対象、例えばヒト対象に投与された場合、非免疫原性である。非免疫原性を評価するための好適なアッセイは、以下の実施例1に記載されるヒトマクロファージを使用するTNF-αアッセイなど、当業者に知られている。好ましい化合物は、化合物による処置の24時間後に培養初代ヒトマクロファージの上清中で測定した場合、TNF-αの発現を誘導しないか、またはそれらは10pg/ml以下のTNF-αの発現を誘導する。
【0093】
本明細書に記載の化合物は望ましくない免疫応答を誘導しないため、化合物は、リポソーム中へのカプセル化または同様の手段により免疫系による認識から保護される必要はない。したがって、本明細書に記載の化合物は、単純な水性担体、例えばPBS中で投与される場合であっても、in vivoで有効である。これは、治療法の調製および投与を大幅に簡素化し、安全性への懸念を生じ得る、対象中へのさらなる外来成分の導入を回避する。したがって、本明細書に記載の化合物は、天然のmiR-29(例えば、miR-29a)の機能を効果的に模倣するがより高い活性および安定性を有し、かつ非免疫原性である利点を有する。実施例はまた、化合物が抗炎症性であり得ることを示す。
【0094】
したがって、実施例に記載される例示的なmiR-29化合物は、改善された安定性、活性および細胞取り込みを有するmiR-29の化学的に合成された模倣体であり、一方で非免疫原性である。化合物の核酸塩基配列は、miR-29aのものに最も近いが、上記のとおり機能的模倣は、他のmiR-29ファミリーメンバーにも及び得る。miR-29化合物は、水性担体中で安定であり、37℃で3ヶ月間保存後であっても活性を維持する。安定性および活性を高めるために、特定のmiR-29化合物は、ガイド鎖に2’-フルオロ基および2’-O-メチル基、パッセンジャー鎖に2’-O-メチル基を導入することにより、化学修飾されている。パッセンジャー鎖は、細胞取り込みを高めるために3’コレステロール基をさらに含み得る。
【0095】
コラーゲン調節不全部位、例えば損傷した腱または線維性組織への本化合物の投与は、miR-29a機能を回復させる。本明細書に記載のmiR-29化合物は、明確に定義された作用様態を有する。化合物は、腱障害などの腱損傷およびコラーゲン(特にコラーゲン3)の産生の減少または阻害を必要とする他の疾患、例えば組織線維症を含む、様々な病原性状態に関連するコラーゲン産生における重要な経路を直接標的とする。さらに、本明細書に記載のmiR-29化合物による治療は、侵襲的処置を必要とせず、かつ最初の診断の時点で送達され得、それにより非常に早期において回復を開始させる。
【0096】
実施例に記載のとおり、in vitroおよびin vivoアッセイは、本明細書に記載のmiR-29化合物が、例えば腱細胞および線維芽細胞において、コラーゲン3の発現を有意に減少させ得ることを実証した。実施例はまた、miR-29化合物の単回腱内注射が、マウス腱損傷モデルにおいて、コラーゲン3の発現を顕著に減少させ、かつ腱構造を改善したことを示す。
【0097】
安全性の観点から、ラットおよびイヌにおける試験は、臨床観察、体重、血液学、凝固または臨床化学パラメーター、急性期および14日間の追跡調査後の肉眼的剖検所見を含む様々な特徴を監視した。これらの試験はまた、安全性薬理効果を示すように設計され、ラットにおけるIrwin行動プロファイルまたは遠隔計測されたイヌにおける何らかの心血管の効果にも変化は見られなかった。ラットにおける呼吸パラメーターは、影響を受けないままであった。実施例はまた、局所的(病巣内)投与後に、他の組織における無視できる程度の分布が観察され、かつ何らかの全身性miR29aは急速に分解されることを示す。単離されたヒトマクロファージおよびマウス腱損傷モデルにおけるin vitroおよびin vivoデータの両方は、本明細書に記載のmiR-29化合物が非免疫原性であるというエビデンスを提供した。さらに、本明細書に記載のmiR-29化合物による治療は、いかなるオフターゲット効果も示さなかった。
【0098】
本発明者らは、二本鎖miR-29化合物(ガイド鎖およびパッセンジャー鎖を含む)が一本鎖miR-29化合物(ガイド鎖のみを含む;例えば、実施例1のTeno36)よりも活性であることを見出した。したがって、本明細書に記載のmiR-29化合物は、典型的には二本鎖である。2つの鎖は、それらが二重鎖を形成するように互いに実質的に相補的である。
【0099】
長さ
ガイド鎖は、長さが20~24の連結ヌクレオシドであり得る。例えば、ガイド鎖は、長さが20、21、22、23または24の連結ヌクレオシドであり得る。一実施形態では、ガイド鎖は、長さが20~23の連結ヌクレオシドである。一実施形態では、ガイド鎖は、長さが20~22の連結ヌクレオシドである。一実施形態では、ガイド鎖は、長さが21~23の連結ヌクレオシドである。一実施形態では、ガイド鎖は、長さが21または22の連結ヌクレオシドである。一実施形態では、ガイド鎖は、長さが22または23の連結ヌクレオシドである。好ましい実施形態では、ガイド鎖は、長さが22の連結ヌクレオシドである。
【0100】
パッセンジャー鎖は、長さが19~23、または20~24の連結ヌクレオシドであり得る。例えば、パッセンジャー鎖は、長さが19、20、21、22、23または24の連結ヌクレオシドであり得る。一実施形態では、パッセンジャー鎖は、長さが19~22の連結ヌクレオシドである。一実施形態では、パッセンジャー鎖は、長さが19~21の連結ヌクレオシドである。一実施形態では、パッセンジャー鎖は、長さが20または21の連結ヌクレオシドである。一実施形態では、パッセンジャー鎖は、長さが21または22の連結ヌクレオシドである。好ましい実施形態では、パッセンジャー鎖は、長さが21の連結ヌクレオシドである。
【0101】
オーバーハング
miR-29化合物のガイド鎖およびパッセンジャー鎖は、ガイド鎖およびパッセンジャー鎖のそれぞれのオリゴヌクレオチド間の配列相補性の部分により二重鎖を形成する。ガイド鎖およびパッセンジャー鎖は、ガイド鎖がパッセンジャー鎖に対して、例えば2つのヌクレオシドの3’オーバーハングを有し、パッセンジャー鎖が、ガイド鎖に対して、例えば1つのヌクレオシドの3’オーバーハングを有するように二重鎖を形成し得る。ガイド鎖およびパッセンジャー鎖は、ガイド鎖が、パッセンジャー鎖に対して、例えば2つのヌクレオシドの3’オーバーハングを有するように二重鎖を形成し得る。
【0102】
ミスマッチ
アラインさせたとき、すなわち二重鎖のとき、ガイド鎖およびパッセンジャー鎖の対応する核酸塩基間にミスマッチが存在し得る。ミスマッチは、対応する核酸塩基が相補的でない場合に存在する。相補的核酸塩基は、UとA、およびCとGである。例えば、3~8のミスマッチ、例えば3、4、5、6、7または8のミスマッチが存在し得る。一実施形態では、3~6のミスマッチが存在する。一実施形態では、5または6のミスマッチが存在する。一実施形態では、6のミスマッチが存在する。例えば、ミスマッチは、3位、10位~12位、18位および20位(パッセンジャー鎖に対する番号付け)にあり得る。本発明者らは驚くべきことに、ガイド鎖とパッセンジャー鎖の間にミスマッチを含むmiR-29化合物は、ミスマッチがより少ないか全くないmiR-29化合物と比較して、より高い活性(例えば、コラーゲン3ルシフェラーゼアッセイで測定した場合)を有することを見出した。
【0103】
コンジュゲート体
本明細書に記載されるmiR-29化合物は、化合物のオリゴヌクレオチド(複数可)に共有結合により付着される1つ以上のコンジュゲート基を含み得る。例示的なコンジュゲート基は、コレステロール部分であるが、オリゴヌクレオチドの薬理学的特性(例えば、細胞取り込み)を改善する他のコンジュゲート部分が、当技術分野で知られており、コレステロール部分の代わりに使用されてよい。したがって、コンジュゲート基は典型的には、親油性部分である。
【0104】
一実施形態では、miR-29化合物は、miR-29化合物の1つ以上のオリゴヌクレオチド鎖に共有結合により付着されるコレステロール部分を含む。一実施形態では、コレステロール部分は、パッセンジャー鎖に共有結合により付着される。一実施形態では、コレステロール部分は、パッセンジャー鎖に共有結合により付着され、ガイド鎖は、コンジュゲートされない。一実施形態では、コレステロール部分は、パッセンジャー鎖の3’末端に共有結合により付着される。これらの実施形態のいずれにおいても、コレステロール部分は、リンカー、例えばトリエチレングリコールを介して付着され得る。したがって、一実施形態では、コレステロール部分は、トリエチレングリコールコレステロール部分である。例示的なコレステロール部分は、3’ホスホプロピル-2-オール,2,2’-[エタン-1,2-ジイルビス(オキシ)]ジ(エタン-1-オール),10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]である。
【0105】
塩
本明細書に記載のmiR-29化合物は、塩として提供できる。したがって、用語「化合物」は、その化合物の塩を含む。塩は、薬学的に許容される塩である、すなわち、塩は、化合物の生物学的活性を保持し、それに毒物学的影響を与えない。薬学的に許容される塩の例としては、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。一実施形態では、miR-29化合物は、ナトリウム塩である。
【0106】
CWT-001
実施例に記載される特定のmiR-29化合物は、CWT-001である。CWT-001は、少なくともmiR-29aの二本鎖化学修飾模倣体であり、1:1の比率でガイド(アンチセンス)鎖およびパッセンジャー(センス)鎖を含む。ガイド鎖およびパッセンジャー鎖の核酸塩基配列および化学修飾は、「Teno18」(T18)のものに対応する。
【0107】
CWT-001ガイド鎖
CWT-001は、コラーゲン3を含む、天然に存在するmiR-29aと少なくとも同じ標的遺伝子の発現を阻害する。糖残基は、2’フルオロ基および2’-O-メチル基の導入により化学修飾され、これらは、化合物の安定性および活性を高める。CWT-001のガイド鎖は、ヒト成熟miR-29a(「hsa-miR-29a-3p」)の天然に存在するガイド鎖と同じ核酸塩基配列を有し、それは:
5’ -UAGCACCAUCUGAAAUCGGUUA-3’(配列番号1)
である。
【0108】
各ヌクレオシドは、2’-置換ヌクレオシドであり、これは、ヌクレオシドがHまたはOH以外の少なくとも1つの2’置換基を含む糖部分を含むことを意味する。CWT-001のガイド鎖は、次式を有する:
5’-fUfAfGfCfAfCfCfAfUfCfUfGfAfAfAfUfCfGfGfUmUmA-3’
式中、「f」は、リボース環の2’位にフッ素を含むヌクレオシドを表し、「m」は、リボース環の2’位にO-メチル基を含むヌクレオシドを表す。
【0109】
ヌクレオシド間連結は、全体的にホスホジエステルヌクレオシド間連結である。
【0110】
CWT-001ガイド鎖の化学名は、任意により塩、例えばナトリウム塩として、次のとおりである;
RNA(5’ホスホ(2’デオキシ-2’フルオロ)U-(2’デオキシ-2’フルオロ)A-(2’デオキシ-2’フルオロ)G-(2’デオキシ-2’フルオロ)C-(2’デオキシ-2’フルオロ)A-(2’デオキシ-2’フルオロ)C-(2’デオキシ-2’フルオロ)C-(2’デオキシ-2’フルオロ)A-(2’デオキシ-2’フルオロ)U-(2’デオキシ-2’フルオロ)C-(2’デオキシ-2’フルオロ)U-(2’デオキシ-2’フルオロ)U-(2’デオキシ-2’フルオロ)G-(2’デオキシ-2’フルオロ)A-(2’デオキシ-2’フルオロ)A-(2’デオキシ-2’フルオロ)A-(2’デオキシ-2’フルオロ)U-(2’デオキシ-2’フルオロ)C-(2’デオキシ-2’フルオロ)G-(2’デオキシ-2’フルオロ)G-(2’デオキシ-2’フルオロ)U-(2’デオキシ-2’Oメチル)U-(2’Oメチル)A)。
【0111】
遊離酸としてのCWT-001ガイド鎖の構造式を以下に示す:
【化1】
【0112】
イオン化形態(すなわち、塩のアニオン)のCWT-001ガイド鎖の構造式を以下に示す:
【化2】
【0113】
ナトリウム塩としてのCWT-001ガイド鎖の構造式を以下および
図1Aに示す:
【化3】
【0114】
CWT-001パッセンジャー鎖
CWT-001のパッセンジャー鎖は、3’末端のGがCWT-001中に存在しないことを除いて、ヒト成熟miR-29aの天然に存在するパッセンジャー鎖(「hsa-miR-29a-5p」)と同じ核酸塩基配列を有する。したがって、CWT-001パッセンジャー鎖の核酸塩基配列は、次のとおりである:
5’-ACUGAUUUCUUUUGGUGUUCA-3’(配列番号3)。
【0115】
パッセンジャー鎖は、修飾糖部分(2’-O-メチル)を含むヌクレオシド、未修飾糖部分を含むヌクレオシド、およびデオキシリボース糖部分を含むヌクレオシドを含む。CWT-001のパッセンジャー鎖は、次式を有する;
5’-mArCmUrGmArUmUrUmCrUmUrUmUrGmGrUmGrUmUrCdA-3’
式中、「m」は、リボース環の2’位にO-メチル基を含むヌクレオシドを意味し、「r」は、リボヌクレオシド、すなわちリボース環の2’位にOH基を含むヌクレオシドを意味し、「d」は、デオキシリボースヌクレオシドを意味する。
【0116】
ヌクレオシド間連結は、全体的にホスホジエステルヌクレオシド間連結である。
【0117】
CWT-001のパッセンジャー鎖は、パッセンジャー鎖の3’末端に共有結合により付着されるコレステロール部分、例えばトリエチレングリコールコレステロール部分を含む。コレステロール部分は、miR-29a化合物の薬理学的特性を改善し、例えば、コレステロール部分は、オリゴヌクレオチドの細胞取り込みを増加させる。
【0118】
CWT-001パッセンジャー鎖のナトリウム塩としての化学名は次のとおりである:
RNA((2’OMメチル)A-C-((2’OMメチル)U-G-(2’OMメチル)A-U-(2’OMメチル)U-U-(2’OMメチル)C-U-(2’OMメチル)U-U-(2’OMメチル)U-G-(2’OMメチル)G-U-(2’OMメチル)G-U-(2’OMメチル)U-C-(2’デオキシ)A-3’ホスホプロピル-2-オール,2,2’-[エタン-1,2-ジイルビス(オキシ)]ジ(エタン-1-オール)、10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル](任意により塩、例えばナトリウム塩として)。
【0119】
したがって、パッセンジャー鎖の3’末端に共有結合により付着されるコレステロール部分(例えば、トリエチレングリコールコレステロール部分)を含むパッセンジャー鎖は、次式によって表すこともできる:
5’-mArCmUrGmArUmUrUmCrUmUrUmUrGmGrUmGrUmUrCdAchol-3
【0120】
遊離酸としてのCWT-001パッセンジャー鎖の構造式を以下に示す:
【化4】
【0121】
イオン化形態(すなわち、塩のアニオン)のCWT-001パッセンジャー鎖の構造式を以下に示す:
【化5】
【0122】
ナトリウム塩としてのCWT-001パッセンジャー鎖の構造式を以下および
図1Bに示す:
【化6】
【0123】
CWT-001の詳細について、次表Aに記載する。
【表1】
【0124】
マイクロRNA-29化合物および組成物の治療の方法および治療的使用
本明細書に記載の化合物および組成物は、1つ以上のタイプのコラーゲン線維の局所的過剰産生を特徴とする、コラーゲンの局所的調節不全を伴う疾患の治療において特に好適である。例えば、本明細書に記載のmiR-29化合物は、例えばルシフェラーゼアッセイにおいて評価されるとおり、コラーゲン3の発現を減少させるかまたは阻害する。したがって、本明細書に記載のmiR-29化合物は、1つ以上のタイプのコラーゲン線維、例えばコラーゲン3(col3a1)の発現の減少または阻害を必要とする疾患の治療において有用であり得る。
【0125】
3つの例示的な疾患、腱損傷(特に腱障害)、ペイロニー病およびデュピュイトラン病を、以下で説明する。ペイロニー病およびデュピュイトラン病は、組織線維症の例である。
【0126】
腱損傷
腱は、筋肉を骨に取り付ける結合組織である。腱組織は、様々な種類の細胞、特に腱細胞を含む細胞外マトリックス内に埋め込まれた約30%のコラーゲンと2%(湿重量)のエラスチンで構成される。主なコラーゲンは、タイプ1コラーゲンであり、これは、大きい直径(40~60nm)を有し、互いに連結して緊密な線維束を形成する。タイプ3コラーゲンも存在し、これは、直径が小さく(10~20nm)、より緩やかな網状束を形成する。健康な腱は、整然と配置されたコラーゲン1(col1)線維束を主に含み(約95%)、生体力学的に劣る少量のコラーゲン3(col3)線維(約5%)が点在する。健康な腱細胞では、miR-29(例えば、miR-29a)は、それぞれCol3a1、VEGFA、AKT3、およびTGFB2を標的とすることにより、コラーゲン3の過剰産生、血管新生、腱細胞の過剰増殖および癒着形成を直接抑制する。miR-29aの配列およびこれらの標的mRNA中におけるその結合部位は、哺乳動物種において保存される。
【0127】
腱の生体力学的特性、特にその引張強度は、断面積(すなわち、厚さ)、コラーゲン含有量、および異なるタイプのコラーゲン間の比率に関連する。
【0128】
上述のとおり、健康な腱は、整然と配置されたコラーゲン1(col1)線維束を主に含み(約95%)、生体力学的に劣る少量のコラーゲン3(col3)線維(約5%)が点在する。急性損傷後に、腱障害中に、および腱損傷の治癒中に、コラーゲン合成において、タイプ1コラーゲンからタイプ3コラーゲンへのシフトが生じる。タイプ3コラーゲン合成が継続的に増加することにより、コラーゲン比の長期的不均衡が生じる。これは、腱の生体力学的特性に対し重大かつ有害な影響を有する。特に、それは、腱の引張強度を低下させ、その最終的な破断強度を低下させ、そのため後の断裂を起こりやすくする。
【0129】
腱損傷は、外部外傷、機械的ストレス(過剰使用など)、変性、炎症、およびこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、多数の要因によって引き起こされ得るか、またはそれらに関連し得る。腱障害は、腱の過剰使用および損傷に関連する疾患の医学名である。
【0130】
過剰使用腱障害は、腱の複雑な多面的病状であり、活動関連疼痛、機能低下、および場合によっては腱の局所的な腫脹が徐々に発症した後に、臨床的に診断される。過剰使用、繰り返しの緊張または外傷は、腱中のコラーゲン線維の破壊を生じる。この損傷に応答して、腱細胞は、修復応答を開始し、それらは、腱の機能を迅速に回復するための「パッチ」として作用する高レベルのコラーゲン3を最初に産生する。時間の経過とともに、コラーゲン3は、徐々にコラーゲン1に置き換わる。しかし、コラーゲン3は生体力学的にコラーゲン1よりも劣るため、腱はさらに損傷を受ける傾向があり、より多いコラーゲン3の産生を引き起こす。腱障害では、さらなる損傷および治癒の減少の悪循環が、コラーゲン3の増加(約30%)、細胞密度、血管新生、炎症および癒着形成を特徴とする病変をもたらす。
【0131】
ステロイド注射などの腱障害に対する従来の治療法は、一般に疼痛および炎症に対抗するために経験的に採用されるが、それらは腱の組織構造を変化させない。しかし、これらの治療は、完全に満足できるものではなく、症状の再発は、一般的である。
【0132】
以下の実施例はとりわけ、本明細書で提供されるmiR-29化合物が、腱障害のマウスモデルを含む、in vivoでコラーゲン3の発現を減少させるまたは阻害させることにおいて安全でかつ有効であることを示す。例えば、マウスモデルを使用して、
図4は、本発明による例示的なmiR-29化合物(CWT-001)による治療が、腱疾患において、コラーゲン3発現の抑制を介して腱線維のアライメントおよびコラーゲンの産生を顕著に改善したことを示す。さらに、本発明者らは、ウマのコラゲナーゼ誘導腱障害(SDFT)モデルが、腱損傷後のmiR-29a発現の減少およびそれに伴うcol3:col1比の増加を伴い、ヒト腱障害を反映することを以前に示した。miR-29化合物の単回の病変内注射は、コラーゲン3の発現および病変サイズを減少させ、腱構造を改善した(参考文献3を参照)。まとめて、これらのデータは、本明細書で提供されるmiR-29化合物を含む、miR-29化合物を使用する安全でかつ有効なヒト治療法の理論的根拠を提供する。本明細書に記載の実験(実施例を参照)を考慮して、μgおよび低mgの範囲の用量は、動物種において十分に許容されると予想され、容易にかつ安全に注射できる容量(例えば、約1ml)で投与され得る。外側上顆炎のヒト対象における第1相無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、1ml容量中で投与された200μg、500μg、および1500μgのCWT-001の用量が安全でかつ有効であると見出された(実施例7参照)。
【0133】
したがって、本発明のmiR-29化合物および組成物は、過剰使用による腱障害などの腱障害の治療に使用できる。対象は、ヒト対象であってもよい。対象者は、亜急性腱障害を有し得る。本発明の化合物および組成物による治療は、慢性腱障害への進行を軽減し得る。対象は、慢性腱障害を有し得る。対象は、活動による腱障害を有し得る。対象は、腱の部分的断裂を有し得る。治療は、腱の完全断裂への進行を軽減し得る。
【0134】
本発明の方法は、任意の損傷を受けた腱に適用され得る。ヒトにおいて腱障害を受ける主な腱は、アキレス腱、棘上筋腱、総屈筋腱、総伸筋腱、膝蓋腱、および臀部腱である。ウマ対象において腱障害を受ける主な腱は、表在屈筋腱である。特定の実施形態では、これらの腱の1つ以上が、治療の標的である。
【0135】
したがって、腱損傷は、外側上顆炎、内側上顆炎、腱板腱障害、総伸筋起始筋腱障害、総屈筋起始筋腱障害、臀部腱障害(大転子痛症候群、GTPS)、膝蓋腱障害、ジャンパー膝、足底筋膜炎、アキレス腱障害、腓骨筋腱障害、棘上筋症候群、またはそれらの組み合わせであり得る。一実施形態では、腱損傷は、上肢腱障害(外側上顆炎、ゴルフ肘、腱板腱障害、およびデケルヴァン病を含む)である。特定の実施形態では、腱損傷は、外側上顆炎である。
【0136】
miR-29化合物による治療は、例えば腱、白膜または足底筋膜において、罹患組織の再生または修復を促進する。
【0137】
miR-29化合物による治療は、治療の部位で、コラーゲン、例えばコラーゲン3の発現を減少させる。
【0138】
本発明の方法は、腱損傷のいずれの段階においても、または損傷した腱の治癒過程のいずれの段階においても適用され得る。一実施形態では、本発明のmiR-29化合物および組成物は、最初の診断時点で対象に投与される。
【0139】
対象、例えばヒト対象は、以前の治療に応答しなかった、または不十分な応答を有したか、または以前の治療に耐えられなかった可能性がある。これは、対象の症状が治療にもかかわらず持続したことを意味する。腱障害の以前の治療は、理学療法、副子固定、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による治療、罹患腱へのコルチコステロイドの局所注射の1つ以上を含んでもよい。対象は、保存的治療が奏効しなかった可能性がある、すなわち、治療にもかかわらず症状が3ヶ月以上持続した。
【0140】
腱損傷(例えば、肘腱障害などの腱障害)におけるmiR-29治療の有効性は、以下の1つ以上に基づいて評価できる(実施例7も参照):
-例えば、miR-29化合物またはその塩の投与後14日、28日および/または90日に、例えば視覚的評価スケール(VAS)を使用して測定される、疼痛の軽減;
-例えば、miR-29化合物またはその塩の投与後14日、28日および/または90日において、例えば、Disabilities of the Arm,Shoulder,and Hand(Quick DASH)スコアおよび/またはAmerican Shoulder and Elbow Surgeons Elbow(ASES-Eを使用して測定される、活動不能および症状の改善;
-例えば、miR-29化合物またはその塩の投与後14日、28日および/または90日において、例えばPatient Rated Tennis Elbow Evaluation(PRTEE)によって測定される、疼痛および活動不能の改善;ならびに
-例えば、miR-29化合物またはその塩の投与後14日、28日および/または90日において、超音波判定によって測定される、治療された腱(複数可)の改善。
【0141】
デュピュイトラン病
デュピュイトラン病(DD)は、「筋膜」または「手掌筋膜」としても知られる、手掌および指の皮膚下にある組織の線維層に影響を与える。DDの対象では、筋膜は、肥厚し、時間の経過とともに硬化する。これは、指が内側に、手掌に向かって引っ張られることを引き起こし、デュピュイトラン拘縮として知られる状態をもたらす。DDの対象は、特定の日常活動を行うことができない場合がある。非外科的治療(例えば、ステロイドまたはコラゲナーゼ注射)および外科的治療の選択肢が、疾患の進行を緩徐にするかつ患部指の動きを改善するのを助けるために利用可能であるが、これらは、重大な副作用または合併症を有し得る。
【0142】
分子レベルでは、DDは、線維芽細胞の異常な増殖プロセス、およびコラーゲン3を含む、のコラーゲンの過剰産生により特徴づけられる(参考文献6)。本明細書に記載のmiR-29化合物は、筋膜における局所的なコラーゲン(例えば、コラーゲン3)の発現を特に有効かつ安全に阻害する、したがってこの疾患の特徴である線維性組織の形成に対抗する、それらの能力に基づき、デュピュイトラン病の治療において有効であると考えられる。
【0143】
デュピュイトラン病におけるmiR-29治療の有効性は、活動不能および症状の改善に基づいて評価され得、例えば、Disabilities of the Arm,Shoulder,and Hand(Quick DASH)スコア、症状および/または疼痛の軽減(VASスコア)、およびデュピュイトラン結節および索形成の減少の臨床判定(例えば、Tubianaグレーディングシステムの改善による)を使用して測定される。例えば、参考文献7を参照のこと。
【0144】
ペイロニー病
ペイロニー病(PD)は、陰茎の白膜(TA)内の瘢痕またはプラークの形成を特徴とする進行性線維性疾患である。この状態は、陰茎の疼痛および陰茎の変形の進行により、身体的レベルおよび精神的レベルの両方で非常に衰弱させる。
【0145】
コラーゲン3および細胞外マトリックスの他の成分の過剰な局所的蓄積は、本疾患の特徴である。線維性組織は、正常なコラーゲン3/1比が、コラーゲン3の含有量の増加にシフトすることに関連する。例えば、PD動物は、コラーゲン3タンパク質の顕著な上方制御を伴う白膜および白膜下領域の線維症を発症したことが示されている。さらに、コラーゲン3/1比は、対照群と比較してPD群で高かった(P<0.05)(参考文献8)。本明細書に記載のmiR-29化合物は、TAにおける局所的なコラーゲン3の発現を特に有効かつ安全に阻害する、したがってこの疾患の特徴である線維性組織の形成に対抗するそれらの能力に基づき、ペイロニー病の治療において有効であると考えられる。
【0146】
デュピュイトラン病およびペイロニー病の併発は、一般的であり(例えば、参考文献9)、両方の疾患は、コラーゲン3の過剰産生に関連する(参考文献10)。データは、それらが共通の病態生理学を共有し、同じ治療レジメンに適応できることを示唆する。これは、ペイロニー病およびデュピュイトラン病の治療における本明細書に提供されるものを含む、miR-29模倣体の治療的有効性をさらに裏付ける。
【0147】
ペイロニー病におけるmiR-29治療の有効性は、活動不能、症状の改善および/または疼痛の軽減、陰茎湾曲の改善または進行の欠如、ならびに二重超音波検査での改善に基づき評価され得る。
【0148】
治療の対象
対象は典型的には、ヒトである。しかし、本発明の方法は、他の霊長類(特にゴリラ、チンパンジー、およびオランウータンなどの大型類人猿のみでなく、旧世界ザルおよび新世界ザルなど)ならびにげっ歯類(マウスおよびラットを含む)を含む、任意の他の哺乳動物、ならびに他の一般的な実験動物、家畜および農業用動物(限定されないが、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギを含む)にも拡張できる。別の好ましい対象は、ウマ、特にウマのスポーツ用に飼育されたウマである。
【0149】
医薬組成物および投与
本明細書に記載のmiR-29化合物またはその塩は、医薬組成物中で製剤化できる。これらの組成物は、miR-29化合物またはその塩に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤または当業者に周知の他の物質を含んでよい。このような物質は、非毒性であり、miR-29化合物の有効性を妨げない。
【0150】
したがって、一実施形態では、医薬組成物は、miR-29化合物またはその塩、および滅菌液体担体、例えば注射用溶液などの、薬学的に許容される担体または希釈剤を含む。薬学的に許容される担体または希釈剤は、生理食塩水を含んでよい。薬学的に許容される担体または希釈剤は、滅菌水溶液、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)であってもよい。薬学的に許容される担体または希釈剤は、滅菌水溶液、例えば等張生理食塩水(例えば0.9%w/v NaCl)などの塩化ナトリウム溶液であってもよい。一実施形態では、医薬組成物は、miR-29化合物またはその塩を含み、PBSおよび等張生理食塩水(例えば、0.9%w/vNaCl)などの塩化ナトリウム溶液をさらに含む。
【0151】
治療される状態の局所的性質を考慮して、例えば局所注射による、局所投与が、特に好適である。したがって、本発明の化合物および組成物は、典型的には、罹患部位で局所的に(病変内に)投与される。例えば、注射は、患部腱内に送達され得る。患部腱内への注射は、腱内投与としても知られている。
【0152】
罹患部位での注射の場合、miR-29化合物は、非経口的に許容される水溶液をさらに含む医薬組成物中に含まれ得る。溶液は、滅菌である。この溶液は、発熱物質を含まず、好適なpH、等張性、および安定性を有する。当業者は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、塩化ナトリウム溶液、リンゲル液、乳酸リンゲル液などの等張ビヒクルを使用して、好適な溶液を調製できる。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤、および/または他の添加剤が含まれてもよい。例えば、EDTAは、例えば0.001%~0.005%、例えば0.003%(100μM)の最終濃度で添加され得る。本発明の化合物の特定の製剤は、注射可能な溶液、例えば、本発明のmiR-29化合物または塩およびPBSを含み、任意によりEDTAをさらに含む溶液である。
【0153】
腱への注射は典型的には、例えば、「pep法(peppering technique)」を用いて、超音波によって誘導される(参考文献11)。「pep法」は、ニードルを皮膚から出すことなく、ニードルを抜き、向きを変え、再挿入することにより、少量の注射を複数回行う注射方法である。損傷した/慢性の腱の状況では、これは、治癒応答を刺激するために有利であり得る。したがって一実施形態では、単回用量のmiR-29化合物が、損傷した腱内の異なる部位において複数のニードル注射の形態で腱内に投与される。
【0154】
日常的な技術およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,22nd Edition,2012に見られる。
【0155】
投与量および治療レジメン
当業者は、投与量が様々な方法で示され得ることを知っている。特に明記のない限り、本明細書に示すmiR-29化合物の用量は、遊離酸としての、ガイド鎖およびパッセンジャー鎖のオリゴヌクレオチド部分(すなわち、コレステロール部分などの任意のコンジュゲート基を除く)の重量を指す。参照化合物は、遊離酸としての、かつトリエチレングリコールコレステロール部分を除く、CWT-001である。異なる分子量を有し得るmiR-29化合物の、塩の、および/またはコンジュゲート形態の同等用量は、当業者によって計算され得る。同等用量は、モル量(例えば、nモル)またはモル濃度(例えば、nM)でも示されてもよい。当業者は、これらの異なる単位間で変換する方法を知っている。
【0156】
以下に記載する実施例および図において、示される投与量は、化合物のコレステロールコンジュゲート形態の遊離酸を指す。したがって、実施例および図が200μgまたは200μg/mlに言及する場合、これは、約190μgまたは190μg/mlのコレステロール部分を除く遊離酸としての化合物に相当する;実施例が500μgまたは500μg/mlに言及する場合、これは、約475μgまたは475μg/mlのコレステロール部分を除く遊離酸としての化合物に相当する;実施例が1500μgまたは1500μg/mlに言及する場合、これは、約1420μgまたは1420μg/mlのコレステロール部分を除く遊離酸としての化合物に相当する;実施例が2000μgまたは2000μg/mlに言及する場合、これは、約1900μgまたは1900μg/mlのコレステロール部分などを除く遊離酸としての化合物に相当する、などである。コレステロール部分が除外される場合、これはまた、コレステロール部分と化合物のオリゴヌクレオチド部分の間のあらゆるリンカー(例えば、トリエチレングリコール)も除外する。
【0157】
投与は典型的には「治療的有効量」または「予防的有効量」(場合によっては、治療法は予防を含み得るが)であり、これは、対象に利益を示すのに十分である。例えば、治療的有効量は、対象に投与されたときに疾患症状の改善、例えば、疼痛または活動不能の軽減、機能性の改善、および/または疾患の進行を防止するかまたは遅延をもたらす、miR-29化合物またはその塩の量である。
【0158】
miR-29化合物は、損傷組織中に直接、すなわち病変内に投与できる。投与は典型的には、例えばニードルを使用した注射による。
【0159】
一実施形態では、治療的効果は、本明細書に記載の用量の単回の投与のみで達成され得る。「単回の」投与は、化合物の1用量のみが、治療的効果を達成するために必要とされることを意味する。したがって、対象は、典型的には、初回投与の投与部位での疾患症状の改善を経験するために、二回目目の投与に戻る必要はない。
【0160】
全般
本発明の実施は、別段に明記されない限り、当技術分野の範囲内である、化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬理学の従来の方法を使用する。
【0161】
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」も包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなってよく、または追加的な何か、例えばX+Yを含んでもよい。
【0162】
数値xに関する「約」という用語は、任意であり、例えば、x+/-10%を意味する。
【0163】
用語「実質的に」は、「完全に」を排除しない。必要ならば、用語「実質的に」は、本発明の定義から省略されてよい。
【0164】
2つのオリゴヌクレオチド配列間の配列同一性パーセンテージへの言及は、アラインされたとき、核酸塩基のパーセンテージが、それらの配列の全長にわたり、2つの配列を比較して同じであることを意味する。
【0165】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を説明するために提供される。実施例は、例示的なものであり、決して本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【
図1】(A)ナトリウム塩としての、CWT-001ガイド(アンチセンス)鎖の構造。(B)ナトリウム塩としての、CWT-001パッセンジャー(アンチセンス)鎖の構造。
【
図2】示されるようにヒトコラーゲン3 miR29結合部位およびmiR29a化合物を含むルシフェラーゼプラスミドおよび対照で共トランスフェクトしたHEK293細胞中のルシフェラーゼ活性(n=4)。ルシフェラーゼ活性は、miR29a活性に反比例する。
【
図3】(A)選択されたmiR29化合物を、初代ヒトマクロファージにおける炎症誘発性サイトカインTNF-αの産生を誘導するそれらの能力を評価することにより、潜在的免疫原性について試験した。未処置細胞(「未処置」)を、陰性対照として使用した。2.5μg/mlのイミキモド(「IMQ2.5」)で処置した細胞を、陽性対照として使用した。(B)選択したmiR29化合物を、ヒト腱細胞におけるcol3a1の発現をノックダウンするそれらの能力について試験した。スクランブルmiR29a(「scr」)および未処置細胞(「untr」)を、陰性対照として使用した。(C)ヒトコラーゲン3miR29結合部位を含むルシフェラーゼプラスミドと示されるように選択されたmiR-29化合物を共トランスフェクトしたHEK293細胞のルシフェラーゼ活性。スクランブルmiR29a(「scr」)を、陰性対照として使用した。有意性を、一元配置分散分析検定を使用して評価した。***P≦0.001、Teno20と比較、n=3。(D)示されたコレステロールコンジュゲートmiR-29化合物による腱細胞処置後の定量的PCRにより測定されたCol3a1転写レベル。値を、GAPDHに対して正規化し、未処置サンプルと比較した相対的発現として示す。スチューデントのt検定、*P≦0.05 5日目にTeno33と比較したTeno18、n=3。(E)選択されたmiR-29化合物を、マウス腱損傷モデルで試験した。化合物を、損傷した膝蓋腱中に直接注射し、マウスを、1日、3日、または7日間回復させた。Col3a1転写産物の絶対数を、q-PCRにより測定した。有意性を、一元配置分散分析検定を使用して評価した。*P≦0.05、**P≦0.01、各時点においてTeno20と比較したTeno18、n=4。
【
図4】直後にCWT-001により処置した腱損傷の誘導後のマウス腱の組織学的分析および分子分析。(A)CWT-001またはPBSの注射後1、3、および7日目のマウス膝蓋腱におけるcol3a1 mRNAの絶対コピー数(n=3)。(B)CWT-001(右)またはPBS対照(左)による7日間の治療後の損傷腱の代表的なH&E染色切片。
【
図5】ELISAにより測定した、CWT-001、スクランブル陰性対照、またはポリIC陽性対照による処置の24時間後の培養初代ヒトマクロファージの上清中の炎症誘発性サイトカイン腫瘍壊死因子アルファ(TNF-a)のレベル。
【
図6】qPCRによって測定しかつ未処置対照(左のバー)に対する倍率変化として表す、CWT-001(中央のバー)またはポリIC陽性対照(右のバー)による処置24時間後の培養初代ヒトマクロファージにおけるインターフェロン誘導性遺伝子OAS2(A)、INFa(B)、IFTM1(C)、MX1(D)、IRF9(E)およびOAS1(F)の発現レベル。「TFなし」=トランスフェクション試薬なし(細胞取り込みは、コレステロール部分によって増強された)。
【
図7】qPCRによって測定しかつ18Sの106コピーあたりのインターフェロン応答遺伝子の絶対コピー数として表す、CWT-001またはPBS陰性対照の腱内注射後0、1、3、7日後のマウス腱でのインターフェロン誘導性遺伝子MX1(A)、OAS2(B)、IFITM1(C)およびIRF9(D)の発現レベル。
【
図8】qPCRによって測定し、対照中のCel39スパイクに対して正規化し、未処置サンプルと比較した相対的発現として示す、0、2、20、および100μg/mlのCWT-001と37℃で0、6、12、および24時間インキュベートした新鮮ヒト血清中のmiR29aのレベル(n=3)。
【
図9】qPCRによって測定し、対照中のCel39スパイクに対して正規化し、未処置サンプルに対する倍率変化として表す、0、2、20、および100μg/mlのCWT-001と37℃で0分、15分、30分、45分、1時間、6時間、12時間および24時間インキュベートした新鮮ヒト血清中のmiR29aのレベル(n=3)。
【
図10】qPCRによって測定した、CWT-001の静脈注射の0、1、4、および7日後に採取したマウスの腎臓(A)、脾臓(B)、肝臓(C)、血清(D)、肺(E)、筋肉(F)、および心臓(G)中のmiR29aレベル。臓器miR29a発現レベルを、GAPDHに対して正規化し、未処置対照と比較して相対的倍率変化として示し、血清miR29a発現レベルを、対照のCel39スパイクに対して正規化し、PBS対照に対する倍率変化として示した(n=4)。
【
図11】qPCRで測定し、対照におけるCel39スパイクに対して正規化し、PBS処置対照に対する倍率変化として表した、膝蓋腱中へのCWT-001の注射後の0分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、24時間、72時間にマウスから採取した血液中のmiR29aの血清レベル(n=4)。
【
図12】qPCRによって測定した、4、20、40、および50mg/mlのCWT-001、またはPBS対照の静脈内注射の7日後に採取したマウス血清(A)、肺(B)、腱注射近位の皮膚(C)、腎臓(D)、脾臓(E)、筋肉(F)、肝臓(G)、心臓(H)、および骨髄(I)中のmiR29aのレベル。臓器miR29a発現レベルを、GAPDHに対して正規化し、未処置対照と比較して相対的倍率変化として示し、血清miR29a発現レベルを、対照のCel39スパイクに対して正規化し、PBS対照に対する倍率変化として示した(n=4)。
【
図13】外側上顆炎を有するヒト対象におけるCWT-001注射の単回漸増用量の安全性、忍容性および薬物動態を評価する第1相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験の試験デザイン。
【
図14】CWT-001の総伸筋腱への投与中のプローブの配置を示す超音波画像(AおよびB)。橈骨頭(r)、橈骨上腕関節(j)、外側上顆、および総伸筋腱を、可視化する。プローブを、総伸筋腱の長手方向軸に平行な肘の側面に沿って配置する。
【
図15】qPCRによって測定した、健康なヒト筋膜組織およびデュピュイトランのヒト筋膜組織におけるmiR29aのレベルの比較(n=4の健康、n=3のデュピュイトラン)。
【
図16】qPCRにより測定した、5μMのmiR29a模倣体、miR29b模倣体、miR29c模倣体、CWT-001、miR29a antagomir、またはスクランブルmiR29a対照によるトランスフェクション後のヒトデュピュイトラン線維芽細胞中のコラーゲン1(A)およびコラーゲン3(B)のレベル。miR29a発現レベルを、GAPDHに対して正規化し、スクランブル対照(n=3)と比較した相対的倍率変化として示した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005対スクランブル対照。(スチューデントのt検定)。
【
図17】第I相ランダム化二重盲検試験では、外側上顆炎を有するヒト対象は、腱内注射により投与された単回の200μg(n=6)(A)、500μg(n=6)(B)、もしくは1500μg(n=6)(C)の用量のCWT-001または一致するプラセボ(n=2)(3:1)を受けた。対象は、治療後最初の14日間、1日1回100mm視覚的評価スケール(VAS)を使用して疼痛を評価し、直前の24時間の疼痛を評価した。14日目以降、対象は、注射後90日目まで毎週疼痛日誌をつけた。水平「MCID」線は、外側上顆炎の治療におけるVASについて確立された最小臨床重要度差(MCID)を示す。任意の用量のCWT-001を投与されたすべての対象(n=18)のVASスコアの平均変化を、プラセボ(D)を投与されたすべての対象(n=6)のVASスコアの平均変化と比較し、かつ別の研究(E)において、CWT-001の任意の用量を受けたすべての対象のVASスコアの平均変化率を、コルチコステロイド(n=50)、多血小板血漿(PRP)(n=50)、またはキシロカイン(n=50)により治療された対象のVASスコアの平均変化率と比較した。
【
図18】第I相ランダム化二重盲検試験では、外側上顆炎を有するヒト対象は、腱内注射により投与された単回の200μg(n=6)(A)、500μg(n=6)(B)、もしくは1500μg(n=6)(C)の用量のCWT-001または一致するプラセボ(n=2)(3:1)を受けた。対象は、QuickDASHインデックスを使用して自分の身体機能および症状を報告し、QuickDASHスコアの変化を、投与前1日目から14日目、28日目、および90日目にプロットした。任意の用量のCWT-001を投与されたすべての対象(n=18)のQuickDASHスコアの平均変化を、プラセボを投与されたすべての対象(n=6)のQuickDASHスコアの平均変化と比較した(D)。水平「MCID」線は、上肢筋骨格系障害患者におけるQuickDASHに対して確立されたMCIDを示す。
【
図19】第I相ランダム化二重盲検試験では、外側上顆炎を有するヒト対象は、腱内注射により投与された単回の200μg(n=6)(A)、500μg(n=6)(B)、もしくは1500μg(n=6)(C)の用量のCWT-001または一致するプラセボ(n=2)(3:1)を受けた。PRTEE(patient rated tennis elbow evaluation)を使用して、試験対象における知覚された疼痛および活動不能を測定し、PRTEEスコアの変化を、投与前1日目から14日目、28日目、および90日目にプロットした。任意の用量のCWT-001を投与されたすべての対象(n=18)のPRTEEスコアの平均変化を、プラセボを投与されたすべての対象(n=6)のPRTEEスコアの平均変化と比較した(D)。
【
図20】第I相ランダム化二重盲検試験では、外側上顆炎を有するヒト対象は、腱内注射により投与された単回の200μg(n=6)、500μg(n=6)、もしくは1500μg(n=6)の用量のCWT-001または一致するプラセボ(n=2)(3:1)を受けた。超音波組織特性評価(UTC)を使用して、腱構造を可視化し、かつ腱の完全性に関連する4つの異なるエコータイプへのグレースケールの腱基質の変化を定量化した。タイプIおよびIIは、組織化された基質を表す;タイプIIIおよびIVは、無秩序な基質を表す(A)。肘外側の代表的な超音波画像を、注射前(B)、28日目(C)、および90日目(D)にプラセボを投与された対象、ならびに注射前(E)、20日目(F)、および90日目(G)に200μgのCWT-001を投与された対象について提供する。UTCタイプI、II、IIIおよびIVの腱組織のパーセンテージ(率)と、修復腱(UTCタイプIおよびII)対変性腱(UTCタイプIIIおよびIV)の合計パーセンテージ(率)を、200μg(H、I)、500μg(J、K)、または1500μg(L、M)の用量のCWT-001または一致するプラセボを投与された対象について定量化した。任意の用量のCWT-001を投与されたすべての対象(n=18)の修復腱および変性腱の平均率を、プラセボを投与されたすべての対象(n=6)の修復腱および変性腱の平均率と比較した(N)。*P<0.05、**P<0.01。
【0167】
実施例
実施例1:miR-29化合物の評価および一次薬理試験(
図1~3)
様々な組み合わせで様々な化学修飾(2’-フルオロリボース、2’-O-メチルリボース、デオキシリボース、および/またはホスホロチオエート)を含むmiR-29模倣化合物のライブラリを、作製した。1つ(Teno36)を除くすべての化合物は、ガイド鎖およびパッセンジャー鎖を含む二本鎖化合物である。各化合物のガイド鎖は、天然ヒト成熟miR-29aのガイド鎖(hsa-miR-29a-3p;配列番号1)と同一である核酸塩基配列を有する。パッセンジャー鎖は、天然ヒト成熟miR29aのパッセンジャー鎖(hsa-miR-29a-5p;配列番号2)と同一であるか、またはそれは、3’Gヌクレオチド(配列番号3)を欠き得るか、かつ/またはそれは、天然のmiR29aパッセンジャー鎖(配列番号4~6)の配列と比較して、1つ以上のヌクレオチド置換を有し得る、核酸塩基配列を有する。表1bを参照のこと。 配列番号2の逆配列(配列番号7)を表す陰性対照パッセンジャー鎖も、試験した。 任意の糖およびヌクレオシド間連結(主鎖)修飾を伴う核酸塩基配列を、表1aに示す。各化合物について、1行目は、ガイド鎖を示し、2行目は、パッセンジャー鎖を示す。すべての配列は、5’から3’の方向に示される。配列番号は、核酸塩基配列を示す(すなわち、化学修飾を除く)。Teno46は化学修飾を含まず、そのためネイティブ成熟miR-29aに相当する。Teno39は、以前に説明された(参考文献2)。ナトリウム塩としての例示的な化合物であるTeno18の構造は、パッセンジャー鎖が3’末端でコレステロール部分にコンジュゲートされており、
図1A(ガイド鎖)および1B(パッセンジャー鎖)に示される。
【表2】
【0168】
したがって、以下のパッセンジャー鎖核酸塩基配列を試験した(表1bを参照)。配列番号2は、ネイティブヒトmiR-29aパッセンジャー鎖配列を表す。配列番号3は、下線で示されるように、1つの位置において配列番号2と異なる。配列番号4は、5つの位置において配列番号2と異なる。配列番号5は、6つの位置において配列番号2と異なる。配列番号6は、7つの位置において配列番号2と異なる。配列番号7は、配列番号2の逆配列であり、陰性対照を表す。
【表3】
【0169】
以下の表1cは、各化合物における2’糖修飾、核酸塩基配列(配列番号として)、およびヌクレオシド間連結の組み合わせを示す。Teno1~Teno49は、5種類のガイド鎖(以下G1~G5と示す)の1つと、11種類のパッセンジャー鎖(以下P1~P11と示す)の1つを含む。Teno36は、パッセンジャー鎖を含まないため例外である。すべての配列は、5’から3’の方向に示される。
【0170】
Teno1を例として挙げると、表1cは、それが配列番号1の核酸塩基配列を有する「G1」ガイド鎖を含むことを示し、ここで3’末端の3つのヌクレオシドは、2’-O-メチルリボヌクレオシドであり、残りのヌクレオシドは、未修飾リボヌクレオシドであり、すべてのヌクレオシド間連結は、ホスホジエステルである。パッセンジャー鎖は、「P1」であり、配列番号2の核酸塩基配列を有し、ここですべてのヌクレオシドは、交互に2’-O-メチルおよび未修飾リボヌクレオシドであり、すべてのヌクレオシド間連結は、ホスホジエステルである。Teno2は、Teno1と同じガイド鎖(「G1」)を含むが、異なるパッセンジャー鎖(「P2」)を含む、などである。
【表4】
【0171】
表1dは、パッセンジャー鎖に従って化合物をグループ化している。
【表5】
【0172】
化合物を、In vitroコラーゲン3ルシフェラーゼレポーターアッセイを使用して、ネイティブヒト成熟miR29aと相対的な活性について試験した。このアッセイの基礎は、コラーゲン3由来のmiR29a結合部位を含むルシフェラーゼレポーター遺伝子である。このアッセイでは、ルシフェラーゼ活性は、miR29a活性に反比例する。これは、高いmiR29a活性がコラーゲン3発現をより強力に抑制することを意味し、それは、より低いルシフェラーゼシグナルをもたらす。ルシフェラーゼアッセイを、トランスフェクション剤によるmiR-29化合物のトランスフェクション後に、HEK293細胞で実施した。miR-29化合物のルシフェラーゼ活性を、市販のヒトネイティブmiR29a陽性対照(「mir29a+ve」)およびスクランブルmiR29a陰性対照(「スクランブル」)で処置した細胞と比較する(n=4)。結果を
図2に示す。
【0173】
図2での「Chol.conj.」への言及は、パッセンジャー鎖の3’末端のコレステロール部分にコンジュゲートされ、かつトランスフェクション剤を使用せずにHEK293細胞に添加された、市販のmiR29a陽性対照を指す。
図2は、コレステロールコンジュゲート化合物が細胞に侵入しコラーゲン3の発現を抑制できることを示す。非コンジュゲートmiR29a陽性対照と比較して、コレステロールコンジュゲート化合物による高いルシフェラーゼシグナルは、非コンジュゲートmiR29a陽性対照のトランスフェクションに使用されたトランスフェクション剤の効果を反映していると考えられ、一方でトランスフェクション剤は、コレステロールコンジュゲート化合物をトランスフェクトした場合には存在しなかった。
【0174】
様々な化合物(Teno2、Teno5、Teno6、Teno7、Teno11、Teno12、Teno13、Teno15、Teno18、Teno19、Teno20、Teno25、Teno26、Teno27、Teno32、Teno33およびTeno34)を、初代ヒトマクロファージにおいて炎症誘発性サイトカインTNFαの産生を誘導するそれらの能力を試験することにより、潜在的免疫原性について試験した。自然免疫系の重要な構成要素としてds-RNA分子に対して感受性がある培養初代ヒトマクロファージを、0.35μg/mlのmiR-29化合物により24時間処置し(n=4)、炎症誘発性サイトカイン腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)のレベルをELISAによって測定した。TLR7/8アゴニストであるイミキモド(IMQ)を、陽性対照(2.5μg/ml)として使用した。結果を
図3Aに示す。10pg/mlを超えるTNF-αの発現を誘導する化合物は、先に進めなかった。しかし、Teno12は、それがホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含むガイド鎖を含む、試験対象(Teno11、Teno12、およびTeno13)の中で最も低い免疫原性を有するmiR-29化合物であっため、先に進めた。
【0175】
したがって、様々な化合物(Teno2、Teno9、Teno12、Teno15、Teno18、Teno19、Teno20、Teno33およびTeno38)を、ヒト腱細胞におけるcol3a1の発現を阻害する能力について試験した。結果を
図3Bに示す。これは、3つのmiR-29化合物:Teno18、Teno20、およびTeno33の選択をもたらした。
【表6】
【0176】
Teno18、Teno20、およびTeno33の安定性を、37℃で3ヶ月間保管後に、in vitroコラーゲン3ルシフェラーゼレポーターアッセイで活性を測定することによって確認した。すべての化合物は安定であった。Teno18およびTeno33は、保管後に最も高い活性を示し、その後Teno20が続いた(
図3C)。
【0177】
上記のデータに基づき、Teno18およびTeno33を、ヒト腱細胞およびマウス腱損傷モデルでのin vivo活性試験に進めた。in vivoでの細胞取り込みを高めるために、コレステロール部分を、各化合物のパッセンジャー鎖の3’末端にコンジュゲートした(例えば、Teno18については
図1Bを参照)。Teno18およびTeno33の両方は、ヒト腱細胞(
図3D)およびマウス腱損傷モデル(
図3E)においてcol3a1発現を効果的にノックダウンした。Teno18による処置は、ヒト腱細胞では5日目の時点で(
図3D)、かつマウス腱損傷モデルでは1日目および3日目の時点で(
図3E)、最も効果的にcol3a1発現をノックダウンした。
【0178】
したがって、Teno18を、以下の実施例に記載する、さらなるin vivo試験の臨床候補として選択した。
【0179】
原薬(コレステロールコンジュゲートTeno18、CWT-001と呼ばれる)を、日常的な方法(固相合成)を使用して合成し、凍結乾燥粉末として提供する。薬物製品は、透明ガラスバイアル中で、典型的にはpH7.3で、5mg/mLのCWT-001を含む滅菌溶液として提供でき、これは、投与前に注射用生理食塩水で希釈される。あるいは、CWT-001は、投与用の最終濃度で(例えば、約200μg/ml、500 μg/ml、1500μg/ml、2000μg/ml、4500μg/ml、または5000μg/ml、例えば、約200μg/ml、500 μg/ml、1500μg/ml、または4500μg/ml)滅菌溶液として提供され得る。原薬の安定性を最適化するために、EDTAを、例えば最終濃度0.001%~0.005%、例えば約0.003%(100μM)で添加できる。
【0180】
薬物製品バイアルは、-20℃で保管および輸送でき、単回使用を意図される。凍結したバイアルは、白く曇って見える。室温への解凍時に、医薬品有効成分(API)が可溶化し、無色透明の溶液になる。
【0181】
CWT-001原薬(ナトリウム塩として)の構造を
図1に示す。
図1Aは、ガイド鎖を示し、
図1Bは、3’末端でコレステロール部分にコンジュゲートされたパッセンジャー鎖を示す。
【0182】
実施例2:In Vivo一次薬理学試験(
図4)
げっ歯動物は、腱障害を起こしやすい腱(アキレス腱、膝蓋腱、棘上筋腱)を含む、ヒトと同様の四肢の解剖学的構造を有するため(参考文献12)、検証されたマウス腱損傷モデルを、CWT-001による治療がコラーゲン3の発現を有意に減少させかつ腱の治癒を改善するか否かを試験するために選択した。これらの実験では、腱損傷を、直径0.75mmの生検ニードルを使用して誘導し、その直後に損傷部位に0.35μg/mlCWT-001を注射した。マウスを1、3、または7日間回復させ、腱を、組織学的および分子分析のために取り出した。
【0183】
CWT-001による治療は、腱疾患におけるコラーゲン3発現の抑制を介して、腱線維のアライメントおよびコラーゲン産生を大幅に改善した(
図4Aおよび
図4B)。
【0184】
実施例3:二次薬理学(
図5~7)
実施例3a-CWT-001の潜在的オフターゲット効果のバイオインフォマティクス分析
マイクロRNAは、その性質上、ほとんどの場合6~8ヌクレオチドのシード配列の塩基対形成を介して、多数の標的mRNA種と相互作用する。CWT-001のガイド鎖の配列は、天然miR29aの配列と同一であり、CWT-001がRISC依存機構を介して天然分子と同じmRNAを標的にすることを意味する。潜在的ハイブリダイゼーション依存のオフターゲット効果の可能性に対処するために、ガイド鎖およびパッセンジャー鎖の両方のバイオインフォマティクス分析を、Oligonucleotide Safety Working Group guidanceにより推奨されるとおり実施した(参考文献13を参照)。この分析は、以下に詳述する52の遺伝子のリストを生成し、それらはCWT-001のガイド鎖およびパッセンジャー鎖と理論的にハイブリダイズし得る。これらの遺伝子の13個中の変異は、以下で詳述するように、既知のヒト疾患と関連していた。
【0185】
A1)前駆体マイクロRNA配列におけるCWT-001ガイド鎖の潜在的ハイブリダイゼーション依存傾向のin silico評価
Q-PCR分析を、CWT-001による処置後の初代ヒト腱細胞におけるmiRNAの発現レベルについて実施した。潜在的クロスハイブリダイゼーション標的を、hsa-miR29a、hsa-miR29c、hsa-mir-1302-4、hsa-mir-3657、hsa-mir-3657およびhsa-mir-4647として同定した。センス(+)方向の最上位ヒットは、標的マイクロRNAmiR29aおよびmiR29cである(miR29bは、この分析に使用したバイオインフォマティクスパラメーターを考慮して、同定されなかった)。潜在的クロスハイブリダイゼーションの標的は、相補的(-)方向である。最上位の相補的マイクロRNA配列は、あまり特徴が明らかになっていないマイクロRNA hsa-mir-3657およびhsa-mir-4647である。これらのマイクロRNAの両方は、機能を有しないin silicoアーティファクトを示し得る。さらに、これらの配列の両方は、完全に中断された同一性の限定領域(10bp)を共有し、in vivoでの生理的濃度においてmiR29a模倣体による立体阻害により強く調節されるのに十分な親和性を有する可能性は低い。
【0186】
A2)NCBIの参照配列(RefSeq)RNA配列におけるCWT-001ガイド鎖の潜在的ハイブリダイゼーション依存傾向のin silico評価
Q-PCR分析を、CWT-001による処置後の初代ヒト腱細胞における潜在的オフターゲット遺伝子の発現レベルについて実施した。潜在的クロスハイブリダイゼーション標的を、LAMA2、PDE7B、LRRC73、NETO1、FHL5、LINC00309、DOCK8、FILIP1、CUL9、CNOT8、LOC100132077、SCP2およびPROX2として同定した。簡潔に言えば、クロスハイブリダイゼーションに好適な相補的配向で、配列に対して13~14bpの連続相補性を有する複数の固有の遺伝子を同定した。クロスハイブリダイゼーションの可能性を制限する、14bpを超える連続相補性を有するRNAは存在しなかった。3つの遺伝子(LAMA2、DOCK8、およびSCP2)中の変異は、既知のヒトの疾患に関連している。
【0187】
B1)前駆体マイクロRNA配列におけるCWT-001パッセンジャー鎖の潜在的ハイブリダイゼーション依存傾向のin silico評価
qPCR分析を、CWT-001による処置後の初代ヒト腱細胞におけるmiRNAの発現レベルについて実施した。潜在的クロスハイブリダイゼーションタ標的を、hsa-miR29a、hsa-mir-5186、hsa-mir-548at、hsa-mir-1283-2、hsa-mir-454、hsa-mir-4782、hsa-mir-515-1、hsamir515-2、hsa-mir-5691として同定した。最上位の相補的マイクロRNA配列は、hsa-mir-548at、hsa-mir-1283-2、およびhsa-mir-515ファミリーである。すべてのこれらの配列は、完全に中断された同一性の限定領域(11bpまたはそれ以下)を共有し、in vivoでの生理的濃度においてCWT-001による立体阻害により強く調節されるのに十分な親和性を有する可能性は低い。
【0188】
B2)NCBIの参照配列(RefSeq)RNA配列におけるCWT-001パッセンジャー鎖の潜在的ハイブリダイゼーション依存傾向のin silico評価
qPCR分析を、CWT-001による処置後の初代ヒト腱細胞における潜在的オフターゲット遺伝子の発現レベルについて実施した。潜在的クロスハイブリダイゼーション標的を、PDCD10、ITGB6、LPGAT1、BPTF、CTTNBP2、EIF4A3、KIAA1210、SLC7A11-AS1、THSD4、TNFAIP3、ANKLE2、ARL4A、ATG14、BCL11A、CCDC83、CDH4、CLVS1、DKFZp434L192、ETV7、FBXO45、KCNJ1、LINC01973、MCF2L2、METTL5、NBN、POC1B、RAVER2、RPA2、ZNF441、ZNF667およびOPCMLとして同定した。9つの遺伝子(ANKLE2、BCL11A、BPTF、EIFA3、ITGB6、KCNJ1、NBN、PDCD10、POC1B、&TNFAIP3)中の変異は、既知のヒトの疾患に関連している。
【0189】
C)ヒト腱細胞における試験
予測された潜在的相互作用のいずれかが生じたかを確認するために、24時間100μg/ml CWT-001で処置したヒト腱細胞中における潜在的オフターゲットmRNAの発現レベルのqPCRによる測定を、実施した。52の潜在的オフターゲット遺伝子のうち、12のみが腱細胞中で発現され、このうちヒト疾患に関連することが知られている遺伝子の4つのみ(ANKLE2、SCP2、BPTF、EIFA3)が、腱細胞中で発現された。重要なことに、CWT-001による処置は、CWT-001の潜在的オフターゲットとして強調される遺伝子のいずれの発現にも変化を与えなかった。
【0190】
データは、CWT-001による処置が、初代ヒト腱細胞においてオフターゲット効果を生じないことを示す。
【0191】
実施例3b-初代ヒトマクロファージにおけるCWT-001の免疫原性評価
二本鎖RNA(ds-RNA)は、免疫応答を誘発し得る(参考文献14)。CWT-001が免疫反応を誘発し得るかを試験するために、自然免疫系の重要な構成要素としてds-RNA分子に対して感受性である培養初代ヒトマクロファージを、0.35μg/mlのCWT-001で24時間処置し(n=4)、炎症誘発性サイトカイン腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)のレベルをELISAにより測定した。結果は、CWT-001処置細胞中においてTNFαの誘導がないことを示した(
図5)。
【0192】
インターフェロン誘導性遺伝子パネル(OAS2、INFα、IFTM1、MX1、IRF9、およびOAS1)のqPCR分析を、追加で実施した。サンプルを、18S rRNAレベルに対して正規化し、未処置対照と比較した倍率変化として表した(n=3)。qPCR分析は、CWT-001処置マクロファージの発現における変化を示さなかった(
図6)。
【0193】
まとめると、これらのデータは、CWT-001がヒトマクロファージにおいて免疫原性を誘導しないことを示す。
【0194】
実施例3c-マウスにおけるCWT-001の免疫原性評価
CWT-001の免疫原性を、膝蓋腱中へのCWT-001注射後のマウスにおいて試験した。動物に、50μlの0.35μg/mlのCWT-001またはPBSを腱内注射した(n=3)。既知のインターフェロン応答遺伝子MX1、OAS2、IFITM1、およびIRF9の発現を、1日目、3日目、7日目にqPCRにより測定し、PBS対照と比較した。結果として得られたデータは、インターフェロン応答性遺伝子の発現の増加を示さず、CWT-001が非免疫原性であることを示唆する(
図7)。実際に、データは、PBS対照と比較してCWT-001により処置したマウスにおけるインターフェロン応答性遺伝子のより低い発現レベルにより反映されるように、CWT-001が抗炎症活性を有することを示唆する。
【0195】
これらのデータは、CWT-001はマウス腱損傷モデルにおいて免疫原性を誘導せず、かつ抗炎症活性を有すると考えられることを示す。
【0196】
実施例4:薬物動態/トキシコキネティクス(
図8~12)
実施例4a-前臨床モデルにおけるCWT-001の検出
ラットおよびイヌRNAにおけるCWT-001を検出するための2段階逆転写定量的PCR(RT-QPCR)法を、検証した。アッセイは、マトリックスRNAの不在下で、10
8~10
3コピーで直線的であった。3名の分析者による、マトリックスごとに7回のアッセイ内およびアッセイ間の正確性および精度評価試験は、確立された範囲での本方法の堅牢性を実証した。
【0197】
各マトリックスのRNAQCプールサンプルを、内因性ベースラインレベルを評価するための内因性対照として調製した。サンプル分析中に、RNA QCプールサンプルを、QCサンプルのデータ正規化のために、および予想されるCt値および決定されるコピー数を決定するために使用する。RNA QCプールのサンプルを、次の値以内に設定する:
-Ct24.771~26.697および/または6.67E+03~3.31E+04コピー/反応ラット血漿
-Ct25.195~27.496および/または1.38E+03~2.79E+04コピー/反応イヌ血漿
-ラット腱について、Ct23.284~24.352および/または5.45E+04~8.81E+04コピー/反応
-イヌ腱について、Ct23.135~24.339および/または5.49E+04~9.88E+04コピー/反応
【0198】
-80℃を維持するように設定された冷凍庫に保管されたラットおよびイヌのスパイク腱サンプル中のCWT-001の安定性を、評価し、それは、最長1ヶ月間の安定性を示した。
【0199】
これらの試験で使用された方法は、ラットおよびイヌのRNA中のCWT-001の抽出および測定に適合していると考えられた。
【0200】
実施例4b-ヒト血清におけるCWT-001の検出可能性および安定性
CWT-001が体循環に入った場合、ヒト血清中の内因性miR29aのバックグラウンドレベルに対するCWT-001の検出可能期間を、測定した。CWT-001を、成人ヒトでの静脈内(IV)送達直後に予測されるものと同等の濃度に希釈した(成人の平均血液量5リットルに基づき、血清1ml中1:5,000)。0、2、20、100g/mlのCWT-001のサンプルを、0時間、6時間、12時間および24時間、37℃で新鮮ヒト血清とインキュベートした。MiR29aレベルを、qPCRによって測定し、対照におけるCel39スパイクに対して正規化し、未処置サンプル(n=3)と比較した相対的発現として示した(
図8)。CWT-001に起因するmiR29aの増加は、CWT-001の添加後1分未満で精製されたサンプルでのみ観察され、miR29aレベルは、6時間後に未処置レベル近くに戻った。このデータは、CWT-001が、in vitroにおいてヒト血清中で検出不可能なレベルに急速に分解されることを示している。
【0201】
ヒト血清サンプル中におけるCWT-001の動態をさらに定義するために、追加の試験を、より早い時点(0分、15分、30分、および45分;1時間、6時間、12時間、および24時間)に焦点を当てて実施した。MiR29aレベルを、qPCRによって測定し、値を、対照におけるCel39スパイクに対して正規化し、未処置サンプル(n=3)と比較した相対的倍率変化として示した(
図9)。データは、CWT-001レベルが、血清への添加直後に測定された場合、バックグラウンドの平均レベルの275倍に増加し、15分後にはバックグラウンドの61倍に低下することを示した。1時間までに、レベルは、バックグラウンドの11倍に低下し、その後12時間でバックグラウンドレベルに低下した。
【0202】
実施例4c-IV投与後のCWT-001の薬物動態および分布
静脈内注射後のCWT-001のin vivo分布を調査するために、マウスに50mg/ml CWT-001 50μlを注射し、血清、心臓、肝臓、腎臓、脾臓および筋肉を、0日、1日、4日、7日後に採取した。CWT-001レベルを、miR29a qPCRアッセイを使用して測定し、値を、GAPDHに対して正規化し、未処置対照と比較した相対倍率変化として示した。血清サンプルを、対照においてスパイクされたCel39に対して正規化し、未処置対照に対する倍率変化として示した(n=4)(
図10)。このデータは、生理食塩水対照と比較して、血清または臓器中のmiR29aレベルの増加をほとんどまたはまったく示さなかった。肺中のmiR29aレベルのわずかな増加が、1日目に観察され、それは4日目までにベースラインに戻った。
【0203】
これらのデータは、CWT-001が、典型的な臨床用量レベルの25倍(すなわち、1mlの2mg/mlのCWT-001のヒト臨床用量のマウス相当量である、l50μlの2mg/mの25倍)で投与された場合でも、静脈内投与後に組織中で無視できる分布を有することを示している。
【0204】
実施例4d-腱内注射後の循環中のCWT-001の全身曝露
CWT-001の全身曝露の測定を、マウスの膝蓋腱内に2mg/mlのCWT-001またはPBS対照の25μlを注射したマウスで実施し(各群n=4)、血液を、0、15、30分、1、2、4、6、24、72時間目に採取した。CWT-001レベルを、miR29a qPCRアッセイを使用して測定し、値を、対照においてCel39スパイクに対し正規化し、PBS対照に対する倍率変化として表した(n=4)。
【0205】
腱内投与後に、注射2時間後および4時間後で血中のmiR29aレベルの増加が、見られた。miR29aレベルは、6時間でバックグラウンドレベルに戻った(
図11)。このデータは、CWT-001が腱内注射後に循環に入る一方で、それは、おそらく血清ヌクレアーゼによる分解および腎臓からの排泄により、急速に除去されることを示唆している。全身で観察される内因性miR29aの絶対レベルは、非常に低い(例えば、細胞中に存在する濃度と比較して)。したがって、CWT-001注射後2時間および4時間で観察された5~14倍の全身miR29レベルの相対的増加(
図11)は、依然として非常に低い絶対全身miR29aレベルに変換される。さらに、上記のとおり、血清CWT-001の大部分は、急速に除去される。CWT-001の1%未満が最終的に、血清を介して細胞により取り込まれる。全体として、これは、非常に低い絶対レベルの投与されたCWT-001のみが、全身曝露により非標的細胞に侵入することを意味する。観察されたCWT-001の全身的な増加はしたがって、その中へCWT-001が投与される組織(例えば、腱)内の標的細胞以外の細胞において、何らかの薬力学的作用を及ぼしそうにない。
【0206】
このデータは、CWT-001が腱内注射後の制限された全身分布を有することを示している。
【0207】
実施例4e-腱内投与後のCWT-001の分布
腱内注射後のCWT-001組織分布を理解するために、マウスの膝蓋腱に4、20、40、および50mg/mlのCWT-001またはPBS対照の50μlを注射した。臓器および末梢血を、7日後に採取した。CWT-001レベルを、miR29a qPCRアッセイを使用して測定し、値を、GAPDHに対して正規化し、未処置対照と比較した相対倍率変化として示した。血清サンプルを、対照においてスパイクされたCel39に対して正規化し、プラセボ(n=4)に対する倍率変化として示した。得られたデータ(
図12)は、プラセボと比較して、いかなる濃度においてもいずれの臓器においてもmiR29aレベルの有意な増加を示さなかった。脾臓中2つの最高用量において有意性の傾向が認められ、これらは、典型的な同等のヒトのいずれの臨床用量よりも高かった。
【0208】
これらのデータは、CWT-001が、最も高い典型的なヒト臨床同等用量の最大25倍である最高用量であっても、無視できる組織中分布を有することを示している。
【0209】
実施例4f-単回用量毒性試験における腱内投与後のラットにおけるトキシコキネティクス
トキシコキネティクス評価を、14日間の回復期間を伴うラットにおける腱内注射によるCWT-001の単回投与毒性試験のデザインに組み込んだ(実施例5c)。
【0210】
ラットを、生理食塩水対照、10mg/mlまたは50mg/mlのCWT-001の30μL注射(すなわち、総用量0、0.3または1.5mg)で処置した。血液サンプルを、投与後0.5、1、2、4、8および24時間において、各群、各性別3匹の動物の頚静脈から採取し、血漿を、調製した。血漿サンプルを、検証済み分析手段(RT-QPCR)を使用して、CWT-001の濃度について分析した。
【0211】
トキシコキネティクスパラメーターを、この試験で腱内投与経路と一致する非コンパートメントアプローチを使用して推定した。トキシコキネティクスパラメーターの概要を、以下の表2に示す。
【表7】
血漿CWT-001濃度対時間プロファイルは、急速な吸収相を示した(T
maxは、すべてのプロファイルで0.5時間であった)。血漿CWT-001濃度は、投与後4時間まで多段階的に減少し、その後、雌では、濃度は、8時間までわずかに増加した(定量可能な最終濃度、0.3mg)か、またはサンプリング期間(24時間)の終了時(1.5mg)まで比較的一定の状態のままであった。雄では、両方の用量の濃度は、4時間後、サンプリング期間の終了(24時間)まで一定の状態のままであった。0.3mgから1.5mgへの用量の増加に伴い、CWT-001への全身曝露量は概して、雌では用量比例より少なく増加し、雄では用量比例よりも大きく増加した。CWT-001への全身曝露は、0.3mgおよび1.5mgの用量レベルの両方で雌よりも雄において高かった。
【0212】
実施例4g-単回用量毒性試験における腱内投与後のイヌにおけるトキシコキネティクス
トキシコキネティクス評価を、14日間の回復期間を伴うイヌにおける腱内注射によるCWT-001の単回投与毒性試験のデザインに組み込んだ(実施例5d)。
【0213】
イヌを、生理食塩水対照、10mg/mlまたは50mg/mlのCWT-001の250μL注射(すなわち、総用量0、2.5または12.5mg)で処置した。血液サンプルを、投与後0.5、1、2、4、6および48時間において、各群、各性別3匹の動物の頚静脈から採取し、血漿を、調製した。血漿サンプルを、検証済み分析手段(RT-QPCR)を使用して、CWT-001の濃度について分析した。
【0214】
トキシコキネティクスパラメーターを、この試験で腱内投与経路と一致する非コンパートメントアプローチを使用して推定した。トキシコキネティクスパラメーターの概要を以下に示す。
【表8】
【0215】
血漿CWT-001濃度対時間プロファイルは、急速な吸収相を示した(0.5時間または1時間のTmaxの中央値)。これに続いて、濃度が二相的に減少し、最初に、投与後1時間または2時間まで急速に、次に定量可能な最終濃度まで緩やかな速度で減少した(投与後4~6時間で濃度のわずかな上昇を示した、12.5mgを投与された雌を除く)。用量を2.5mgから12.5mgに増加させると、CWT-001への全身曝露は、雌では、概して用量比例より多く増加し、雄では、用量比例より少なく増加した。CWT-001への全身曝露は、2.5mgの用量レベルでは、雌より雄の方が多かったが、12.5mgでは性別間で同等であった。
【0216】
実施例5:毒物学
実施例5a-ラットにおける単回腱内注射によるCWT-001の忍容性試験
本試験の目的は、最大実行可能用量(MFD)を確立および確認することを目的として、腱内注射によりラットに投与した場合のCWT-001の潜在的毒性を決定することであった。試験デザインを以下の表4に示す。
【表9】
【0217】
各動物は、0.5mLインスリンシリンジを使用して、右アキレス腱にCWT-001の単回腱内投与(30μL)を受けた。動物を、イソフルランを使用して麻酔し、腱を、後肢に小さい外科的切開を用いて露出させて、CWT-001の配置を可能にした。用量を投与後、動物を、縫合して閉じた。
【0218】
最高用量レベル(1.5mg)は、試験品の溶解度および腱に合理的に注射され得る容量によって制限される、この経路によって投与され得る実行可能な最大用量を表す。以下のパラメーターおよびエンドポイントを、本試験で評価した:臨床観察、体重、および肉眼的剖検所見。CWT-001に関連すると考えられる臨床徴候、体重の変化、肉眼的剖検所見はなかった。
【0219】
結論として、単回腱内投与によるCWT-001の投与は、HanWistarラットにおいて1.5mgまで良好な忍容性を示し、臨床観察、体重の変化、または肉眼的剖検所見は観察されなかった。
【0220】
実施例5b-イヌにおける単回腱内注射によるCWT-001の忍容性試験
本試験の目的は、イヌに単回腱内注射した場合のCWT-001の潜在的毒性を決定し、その後の14日間の毒性試験のための用量レベルの選択を裏付けるデータを提供することであった。試験デザインを以下の表5に示す。
【表10】
【0221】
各動物は、シリンジを使用して、右アキレス腱内にCWT-001の単回腱内投与(250μL)を受けた。動物を、イソフルランを使用して麻酔し、腱を、後肢に小さい外科的切開を用いて腱を露出させて、CWT-001の配置を可能にした。用量を投与後、動物を、縫合して閉じた。
【0222】
使用した用量レベル(12.5mg)は、試験品の溶解度および腱に合理的に注射され得る容量によって制限される、この経路によって投与され得る実行可能な最大用量を表す。次のパラメーターおよびエンドポイントを、この試験で評価した:臨床観察、体重、摂食量、臨床病理パラメーター(血液学、凝固および臨床化学)、肉眼的剖検所見および臓器重量。
【0223】
CWT-001の臨床観察はなく、体重、摂食量、血液学、凝固、臨床化学パラメーターの変化もなかった。さらに、CWT-001に関連すると考えられる肉眼的剖検所見または臓器重量の変化はなかった。結論として、ビーグル犬における単回腱内投与によるCWT-001の投与は、12.5mgで良好な忍容性を示し、臨床観察は認められず、体重、摂食量または臨床病理学的パラメーターの変化はなく、肉眼的病理学または臓器重量所見の変化もなかった。
【0224】
実施例5c-14日間の回復期間を伴うラットにおける腱内注射によるCWT-001の単回投与毒性試験
本試験の目的は、ラットに単回腱内注射した場合のCWT-001の潜在的毒性を決定すること、かつ注射後の14日間の回復期間にわたる任意の所見の潜在的可逆性を評価することであった。さらに、CWT-001のトキシコキネティクス特性を、決定した。試験デザインを以下の表6に示す。
【表11】
次のパラメーターおよびエンドポイントを、本試験で評価した:臨床観察、体重、摂食量、眼科、行動観察(Irwinスコア)、呼吸測定、臨床病理学パラメーター(血液学、凝固、臨床化学、および尿検査)、生物分析およびトキシコキネティクスパラメーター、肉眼的剖検所見、臓器重量、および病理組織学的検査。
【0225】
最高用量レベル(1.5mg)は、試験品の溶解度およびラットの腱内に合理的に注射され得る容量によって制限される、この経路によって投与され得る実行可能な最大用量を表す(実施例5a参照)。すべての製剤分析結果は、理論濃度の10%(個々の値は15%以内)である許容基準以内であることがわかった。
【0226】
本試験の過程において予期せぬ死亡はなかった。CWT-001に関連すると考えられた臨床徴候、体重および摂食量、検眼鏡所見、行動観察の変化、呼吸パラメーターの変化、臓器重量の変化、肉眼的所見および組織病理学的所見はなかった。0.3mgまたは1.5mgでは、雄および雌の両方で、3日目に赤血球量(赤血球、ヘマトクリット、およびヘモグロビン)におけるわずかであるが用量依存的な減少、および網赤血球における増加があった。すべての変化は、15日目までに回復を示した。
【0227】
結論として、単回腱内投与によるCWT-001の投与は、1.5mgまでHan Wistarラットにおいて良好に許容され、3日目の赤血球量の一時的なわずかな低下および網状赤血球の増加と関連し、これは、15日目までに回復を示した。CWT-001に関連する他の生存中のまたはいかなる病理組織学的な所見はなかった。
【0228】
実現可能な最大用量で投与したこの研究の結果に基づいて、1.5mgのCWT-001は、ラットにおいて無毒性量(NOAEL)であると考えられた。
【0229】
実施例5d-14日間の回復期間を伴うイヌにおける腱内注射によるCWT-001の単回投与毒性試験
【0230】
本試験の目的は、イヌに単回腱内注射した場合のCWT-001の潜在的毒性を決定すること、かつあらゆる所見の潜在的可逆性を評価することであった。さらに、CWT-001のトキシコキネティクス特性を、決定した。
【0231】
各動物は、CWT-001の単回投与を受け、主要試験動物は、3日目に安楽死させ、回復動物は、15日目に安楽死させた。試験デザインを以下の表7に示す。
【表12】
次のパラメーターおよびエンドポイントを、本試験で評価した:臨床観察、体重、摂食量、眼科、心血管データ、臨床病理学パラメーター(血液学、凝固、臨床化学、および尿検査)、生物分析(血漿および腱)およびトキシコキネティクスパラメーター、肉眼的剖検所見、臓器重量、および病理組織学的検査。
【0232】
最高用量レベル(12.5mg)は、試験品の溶解度およびイヌの腱に合理的に注射され得る容量によって制限される、この経路によって投与され得る実行可能な最大用量を表す(実施例5b参照)。すべての製剤分析結果は、理論濃度の10%(個々の値は15%以内)である許容基準以内であることがわかった。
【0233】
本試験の過程において予期せぬ死亡はなかった。CWT-001に関連すると考えられた臨床徴候、体重または摂食量の変化、検眼鏡所見、心電図所見、臨床病理学所見(血液学、凝固、臨床化学および尿検査)、臓器重量の変化、または肉眼的もしくは組織病理学的な所見はなかった。
【0234】
結論として、単回腱内投与によるCWT-001の投与は、12.5mgまでビーグル犬において良好に許容され、投与処置に関連する所見のみと関連した。CWT-001に関連する生存中のまたは病理組織学的な所見はなかった。実現可能な最大用量で投与したこの研究の結果に基づいて、12.5mgのCWT-001は、イヌにおいて無毒性量(NOAEL)であると考えられた。
【0235】
実施例6:安全性薬理学
安全性薬理学エンドポイントを、中枢神経系、呼吸器および心臓血管への効果を評価するために、ラットおよびイヌの単回投与毒性試験(それぞれ実施例5cおよび5d)のデザインに組み込んだ。
【0236】
実施例6a-ラットにおける中枢神経系(改定Irwin観察)
各群からの最初の6匹の雄の主要試験動物を、投与後2時間、24時間および48時間で観察した。次のパラメーターを、観察に含めた:
-発声、常同行動、攻撃性、異常な歩行、straub挙尾、振戦、けいれん、痙攣、体位、鎮静、カタレプシー、眼瞼下垂、眼球突出、唾液分泌、流涙、立毛、異常呼吸、排便、排尿および死の発生。
-自発的活動、接触応答、身体の緊張および瞳孔サイズの増加または減少。
匂いを嗅ぐ、グルーミング、スクラッチング、および立ち上がる行為の増加。
-低減された耳介反射、異常な牽引反応、および異常な握力。観察された何らかの追加の症状を、記録した。
-症状を示す動物の頻度および症状の重症度を、記録した。
-瞳孔サイズ:サイズをミリメートル単位で推定するためのガイダンスチャートを使用して測定した(投与前の瞳孔サイズデータを、投与日に記録した)。
-体温:肛門括約筋から約2cm挿入されたプローブを使用して測定した。投与前の体温も記録した。測定値のばらつきを低減するために、温度順応治験を、投与前の測定値を記録する前に温度プローブを挿入することにより実施したが、体温データは、この治験中に収集されなかった。
【0237】
CWT-001の投与に関連すると考えられた所見は、改定Irwin観察の間には認められなかった。いくつかの時点においていくらかの動物で握力の低下が時折観察されたが、これらの所見は対照群でも単一の時点で観察されたため、それらはCWT-001の投与とは無関係であると考えられる。CWT-001の投与と関連した瞳孔サイズまたは体温における変化は、なかった。
【0238】
実施例6b-ラットにおける呼吸測定
試験当日、動物をホームケージから取り出し、全身プレチスモグラフチャンバーに約45分間入れ、この期間の最後の15分間を対照期間として分類した。動物を次いで、対照または試験品の投与のためにチャンバーから取り出した。測定を次いで、投与後2~4時間、24時間および51時間後に行い、動物を、いずれの測定前にも少なくとも30分間順応させるためにチャンバー中に置いた。一回換気量に対するチャンバーの温度および湿度の効果を、プレチスモグラフチャンバー内で補正した。換気パラメーターを、呼吸信号から決定した。サンプリング周波数を、500Hzに固定した。
【0239】
CWT-001の投与に関連すると考えられた呼吸パラメーターの変化は、なかった。呼吸パラメーターにおける偶発的な統計的に有意な変動が、試験中に散発的に存在したが、これらは特定の時点における対照群の変動によるか、または最小限のおよび/もしくは一時的な変化であると考えられ、したがってCWT-001の投与とは無関係であると考えられた。
【0240】
実施例6c-イヌにおける心臓血管の評価
心血管評価を、治療前(1日目の前)に少なくとも26時間、投与期間2日目に少なくとも20時間(投与後24時間~44時間にデータを取得)、および回復期間14日目に行った。各動物のECGおよび血圧を、PA-C10-TOX-LA送信機(Data Sciences International(DSI(商標)(St Pauls,MN,USA)と組み合わせたJacketed External Telemetry(JET(商標))システムによって記録した。最初の記録セッションの前に、すべての動物を、JETジャケットに順応させ、本処置に確実に耐えられるかを個別に観察した。データ取得日に、動物を、ホーム囲いから取り出し、ECGリード線の配置およびジャケット(および必要に応じて首輪)の取り付けのために処置室に連れて行った。電極の配置に必要な領域を、剃毛し、適切に準備した。動脈血圧、心拍数、および第II誘導ECG変数を、1分間のロギング速度を使用して連続的に取得した。治療前および回復については、ECGおよび血圧の記録を、少なくとも26時間実施した。2日目には、ECGおよびBPの記録を、少なくとも20時間実施した(投与後24~44時間にデータを取得)(T=0は、試験品の投与終了に相当する)。動物は、投与処置が行われた場合を除き、拘束されなかった。試験投与段階開始前に、少なくとも26時間にわたる治療前の遠隔測定データ取得を、すべての動物から記録した。これらの前処置信号のセクションを、必要に応じて、ECG形態異常、信号の質、心拍数、動脈血圧、ECG値(QTca計算[心拍数に対して補正されたQT]を含む)の正常性について検討した。
【0241】
次のパラメーターを、報告した:
・血圧波形から得られる収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、および平均動脈血圧(MAP)、および心拍数(HR)。
・ECGパラメーター(個々の動物について補正されたRR、PR、QRS、QT、QTca間隔、QA間隔[血圧およびECG波形から導出])を、分析した。観察された何らかの第II誘導ECG異常または不整脈を、印刷し検討した。
【0242】
本試験の全過程において、CWT-001の投与に関連すると考えられた心血管パラメーターまたは波形形態の変化は、なかった。個々の動物において時折のまたは一時的な所見があったが、それらは対照動物でも観察されたか、または正常な動物間の変動によるものと考えられたため、試験品に関連するとは考えられなかった。
【0243】
実施例6d-生殖および発生毒性
ラットおよびイヌにおける単回投与毒性試験は、何らかの処置に関連した臓器重量ならびに精巣および卵巣を含む生殖器官の組織病理学的変化を明らかにしなかった。
【0244】
実施例6e-局所耐性
局所耐性は、ラットおよびイヌの両方における単回投与毒性試験において評価されており、注射部位での何らかの予期せぬ効果を明らかにしなかった。
【0245】
実施例7:外側上顆炎を有するヒト対象への投与(
図13および
図14)
上記の実施例からの結果は、本明細書で提供されるmiR-29化合物が、腱障害のマウスモデルを含む、in vivoでのコラーゲン3発現を減少させるまたは阻害することにおいて安全で有効であることを示す。さらに、本発明者らは、ウマコラゲナーゼ誘導腱障害(SDFT)モデルが、腱損傷後のmiR-29a発現の減少およびそれに伴うcol3:col1比の増加を伴う、ヒト腱障害を反映することを以前に示した。miRー29化合物の単回病変内注射(100nM、総量1.5ml中約2μg/ml、すなわち総用量3μg)は、コラーゲン3の発現および病変サイズを減少させ、かつ腱構造を改善した(参考文献3を参照)。まとめると、これらのデータは、本明細書で提供されるmiR-29化合物を含む、miR-29化合物を使用する安全でかつ有効なヒト治療法の理論的根拠を提供する。
【0246】
外側上顆炎を有する対象におけるCWT-001注射の単回漸増用量の安全性、忍容性および薬物動態を評価する第1相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験を、行った(試験デザインについては、
図13を参照)。
【0247】
外側上顆炎の治癒的処置の現在の第2選択(理学療法後の)標準は、長期的有益性に疑問が残るものの、依然として腱痛の領域へのコルチコステロイドの局所注射である。肘の総伸筋起始部の腱損傷領域へのCWT-001の局所注射はしたがって、現在の標準的治癒を維持するが、改善された安全性および有効性を示す。超音波検査は多くの場合、腱の状態を評価するためのみでなく、注射療法をガイドするための選択肢である画像モダリティとして使用されるため、腱損傷領域への超音波ガイド下注射が、使用される(参考文献15)。
【0248】
本試験の主な目的は、外側上顆炎を有するヒト対象におけるCWT-001の単回漸増用量の安全性および忍容性を決定することである。
【0249】
本試験の第2の目的は、外側上顆炎を有するヒト対象におけるCWT-001投与の単回投与薬物動態(PK)を決定すること、および外側上顆炎を有するヒト対象におけるCWT-001投与の有効性を評価することである。
【0250】
本試験の主要評価項目は、注射後14日目の有害事象(AE)の発生率、臨床検査の異常、バイタルサイン(血圧、体温、呼吸数、脈拍数)の変化、12誘導心電図(ECG)パラメーター、身体検査、および皮膚スコアの評価によって測定される、CWT-001とプラセボの安全性データの比較である。
【0251】
本試験の副次評価項目は、次のとおりである:
-最大血漿濃度(Cmax)、Cmaxまでの時間(tmax)、血漿対濃度-時間曲線下面積(AUC)によって示される、データの血漿PK濃度。
-投与前1日目~14日目、28日目および90日目に視覚的評価スケール(VAS)を使用して測定される、肘痛に対するCWT-001の単回投与の有効性。
-投与前1日目~14日目、28日目および90日目にDASH(Disabilities of the Arm,Shoulder,and Hand)スコアを使用して測定される、活動不能および症状に対するCWT-001の単回投与の有効性。
-投与前1日目~14日目、28日目および90日目にのPRTEE(Patient Rated Tennis Elbow Evaluation)によって測定される、疼痛および活動不能に対するCWT-001の単回投与の有効性。
-投与前1日目~28日目および90日目にベースライン超音波評価からの変化によって測定される、肘外側腱に対するCWT-001の単回投与の有効性。
【0252】
用量の根拠
上に記載の実験を考慮して、μgおよび低mgの範囲のmiR-29用量は、動物種において有効であり、かつ良好に許容されると予想され、かつ容易にかつ安全に注射できる容量(例えば、約1ml)で投与され得る。これらの用量レベルはまた、例えば、使用される動物モデルにおける腱の治癒を改善することにおいて、コラーゲンを標的とする作用機序を裏付ける。腱内投与を介した単回用量拡張毒性試験を、CWT-001を用いてラット(最大1.5mg、実施例5aを参照)およびイヌ(最大12.5mg、実施例5bを参照)において実施し、各試験の無毒性量は、実行可能な最大用量であった。CWT-001の単回腱内投与の前臨床評価は、例えばヒトの臨床用量2mgと比較して、ラットおよびイヌにおけるそれぞれの用量の41倍および25倍であったレベルで有害な所見を生じなかった。
【0253】
対象を、コホート(コホートあたり対象8人)に分け、腱内注射により投与されるCWT-001(PBSおよびEDTA中のCWT-001の5mg/mL溶液を、生理食塩水、すなわち、0.9%w/vNaClを使用して様々な最終濃度に希釈した)または対応するプラセボ(生理食塩水、すなわち0.9%w/vNaCl)(3:1)の単回の1ml用量を受けるために無作為化した。CWT-001の開始用量は、200μg/mLである。用量を、500μg/mL、次に1500μg/mLに漸増させた。VAS疼痛評価の改善が見られない場合には、(最大で)4500μg/mLの追加用量を投与する予定であったが、これは必要なかった。
【0254】
各コホートでは、1名以下の対象が各用量レベルにおいて初めて活性CWT-001の用量を受けるように、最初の投与日に2名以下の対象(1名が活性物質、1名がプラセボ)に、投与した。以前に投与されたセンチネル対象の安全性および忍容性の評価後に、投与を、各コホート中で同じ用量レベルにて残りの対象(対象6名、実薬5名、プラセボ1名)において継続した。
【0255】
用量を、より低い用量からすべての安全性、忍容性、血漿PK、および有効性データ(入手可能な場合)の満足のいく検討後に、漸増方式で投与した。用量を、安全性、忍容性、血漿PK、および有効性データ(入手可能な場合)の進行中の評価に基づいて決定した。すべての用量を、患部領域内に超音波ガイド下で1ml注射として与えた。
【0256】
超音波検査を、LOGIQ E9超音波システムで5~7.5MHzのリニアアレイトランスデューサを使用して適用した。プローブを、総伸筋腱の長手方向軸に平行な肘の側面に沿って配置した。橈骨頭、橈骨上腕関節、外側上顆、総伸筋腱を、可視化した。皮膚を滅菌し、USGプローブを滅菌カバーに入れた。正確な部位(低強度領域)でのニードルの先端の可視化後に、1mLのCWT-001またはプラセボを、注射した(
図14を参照)。
【0257】
CWT-001を、「pep法」を使用して腱に投与した(参考文献11)。「pep法」は、注射方法であり、これにより針が腱領域に挿入された後、複数回の少量の注射を、ニードルを皮膚から出すことなく、ニードルを抜き、向きを変え、再挿入することにより行う。損傷した/慢性の腱の状況では、これは、治癒応答を刺激するために好ましいであろう。
【0258】
試験集団は、24名の対象を含んだ。各対象は、本試験の選択基準をすべて満たし、除外基準をいずれも満たさなかった。
【0259】
対象は、本試験に含まれた以下の基準を満たす:
1.対象は、あらゆる人種的起源の、男性または女性である。
2.対象は、18歳~70歳であり、骨格が未成熟であるエビデンスはない。
3.対象は、18~35kg/m2の肥満指数(BMI)を有する。
4.対象者は、体重50kg以上である。
5.対象は、外側上顆炎の臨床診断を有する。
6.外側上顆炎および以下の除外基準に挙げられるいずれの症状を除き、対象はさもなければ、病歴、身体検査、併用薬、バイタルサイン、12誘導心電図、および臨床検査室の評価に基づき、責任医師により決定されるように、健康である。臨床検査値は、治験責任医師の裁量により1度再検査され得る。
7.対象の症状は、抵抗のある回外または手首の背屈(外側上顆の圧痛および椅子の後を持ち上げた徴候によって確認される)により再現できる。
8.対象の症状は、以下の1つまたは組み合わせを含む保存的治療にもかかわらず、少なくとも6週間~6ヶ月間持続している:
a.理学療法
b.副子固定
c.NSAID
9.対象は、自立しており、歩行可能であり、注射後のすべての評価および来院を遵守できる。
10.男性対象は、パートナーが妊娠の可能性のある女性の場合、治験中および治験薬の最終投与後3ヶ月間はコンドームを使用しなければならない。さらに、妊娠の可能性のある彼らの女性パートナーは、投与の1ヶ月前から投与後3ヶ月まで、有効性の高い避妊のための追加の方法(一貫して正しく使用された場合、失敗率が年間1%未満に達し得る避妊法が、非常に有効な避妊法とみなされる)を使用する必要がある。
11.妊娠の可能性のある女性対象は、治験中および投与後3ヶ月間、男性パートナーによるコンドームの使用と組み合わせて、投与1ヶ月前から非常に有効な避妊方法を使用することに同意する必要がある。対象は、スクリーニング時および1日目に妊娠検査が陰性でなければならない。
12.書面によるインフォームドコンセントの提供。これは、同意書に列挙される要件および制限の遵守を含む。
【0260】
以下のいずれかに該当する対象を、本試験への参加から除外した:
1.対象は、登録6ヶ月前以内に、患部肘にコルチコステロイド注射療法を受けたことがある。
2.対象は、IMP投与前の少なくとも1週間から鎮痛剤(アヘン剤またはNSAID)の使用を中止することを望まない、または中止できない。
3.対象は、以前に患部肘にPRP注射を受けたことがある。
4.対象は、骨格に影響を与えることが知られている医薬品(例えば、糖質コルチコイドの使用量が5mg/日を超える、フルオロキノロン系抗生物質)を使用している、または最近使用したことがある。
5.対象は、外側上顆炎の治療のために、患部肘に外科的介入を受けたことがある。
6.対象は、以下のいずれかの陽性の病歴を有する:
a.内側上顆炎
b.橈骨管症候群
c.手根管症候群
d.登録前の過去2年以内の患部肘での化膿性関節炎または痛風関節炎
e.登録前6ヶ月以内の頸椎根症
f.過去6週間以内の患部肘への外傷
g.機能測定(例えば、握力テスト)を行う能力を制限する、神経筋または一次性/二次性筋肉欠損
h.軸性脊椎関節炎、乾癬性関節炎、および関節リウマチを含むがこれらに限定されない、偶然のリウマチ性炎症性疾患
i.患部肘の変形性関節症
j.応答の評価を損なうのに十分であると判断された線維筋痛症
7.対象は現在、注射部位に急性感染症を有する。
8.局所再発または転移の所見の有無に関係なくベースライン前の過去5年以内に治療されたまたは未治療である、リンパ増殖性疾患または既知の悪性腫瘍の病歴、または任意の臓器系の悪性腫瘍の病歴(過去5年間に再発の所見なく治療を受けている皮膚の基底細胞癌、扁平上皮癌、または光線角化症、子宮頸部上皮内癌、または切除された非浸潤性悪性結腸ポリープを除く)。
9.対象は、コンプライアンスを維持できない、またはその可能性が低いと治験責任医師が判断する程度に、身体的または精神的に損なわれている(例えば、現在精神障害、老人性認知症、アルツハイマー病などの治療を受けている)。
10.対象は、注射処置の30日以内、または試験のフォローアップ段階中に試験治療法または治験使用のために承認された治療法を受けたことがある。
【0261】
対象は、各来院前の48時間およびCRUにいる間は、激しい運動を控えなければならない。対象はまた、治験薬(IMP)の注射後少なくとも24時間はいかなる自動車の運転も許可されない。
【0262】
対象は、次の制限を遵守することを求められた。
【0263】
・対象は、臨床研究施設(CRU)から退院するまで各来院前48時間からアルコールを控えなければならない。
・対象は、投与前の90日間、試験の終了まで試験期間にわたり、タバコおよびニコチン含有製品(電子タバコを含む)を控えなければならない。
・対象者は、薬物乱用スクリーニングでの陽性結果を避けるため、スクリーニングおよび毎回の来院の48時間前にケシの実の摂取を控えなければならない。
【0264】
対象は、投与前の8時間、一晩絶食した。さらに、対象は、臨床検査室の評価が行われるあらゆる来院の少なくとも4時間前に絶食するように推奨される。
【0265】
スクリーニング時の超音波評価は、4週間のスクリーニング期間中の任意の時点で実施され、かつ反対側の肘のスキャンを含む。投与の少なくとも1週間前に、対象は、疼痛管理のために使用しているアヘン剤またはNSAID薬のあらゆる使用を中止するよう求められた。-7日目~-1日目に、対象は、疼痛を管理するためにパラセタモール(4g/日以下)を摂取するかアイスパックを使用することを許可された。
【0266】
対象は、適格性を確認し安全性および有効性のベースライン評価を受けるために、-2/-1日目、および1日目の投与前にCRUに入院した。適格性の確認後、対象は、ランダム化され、CWT-001またはプラセボを投与された。注射後に、対象は、30分間休息した。対象は、投与後の安全性およびPKの評価を受け、同日にCRUから退院した。対象は、PKサンプリング評価のため2日目に、および安全性およびPKの評価のため7日目にCRUに戻った。対象は、安全性および有効性の評価のため14日目、28日目、および90日目にCRUに戻った(さらなる詳細を以下に記載する)。対象は、28日目および90日目に超音波評価を受けた。各対象の試験期間は、約16週間である。
【0267】
患者の健康に関連する生活の質の様々な側面に対する腱障害の影響を、上肢腱障害における患者報告アウトカムツールとして承認され、検証された、以下の手段により評価した(参考文献16):注射後28日目および90日目における腱障害性疼痛強度(VAS)、QuickDASHスコア、ASES-Eスコア、PRTEEスコアの対象の評価、および腱の超音波評価。
【0268】
中止基準は、以下を含む:
・1名の対象における「重篤な」副作用、すなわち、少なくともおそらくIMP投与に関連すると考えられる重篤な有害事象(SAE、下で定義される)。
・「重度の」非重篤な有害反応、すなわち、同じ系統器官クラス(SOC)内か否かに関係なく、同じコホート中の2名の対象において、少なくともおそらくIMP投与に関連すると考えられる重度の非重篤AE。
・観察されたAEの性質、頻度、強度および/または臨床安全性モニタリングに基づき許容できない忍容性プロファイルがある場合。
【0269】
AEは、医薬品との潜在的関係に関係なく、臨床試験中にスクリーニングから出現するかまたは悪化する、試験対象者における望ましくないあらゆる医療上の出来事である。AEは、したがって、臨床的に重要な異常な検査所見、症状、または疾患を含む、あらゆる好ましくないまたは意図しない兆候であり得る。
【0270】
SAEは、あらゆる用量での、次のような好ましくない医療上の出来事である:
・結果的に死に至る、
・生命を脅かす。
-注記:「重篤な」の定義における「生命を脅かす」という用語は、その事象の発生時に対象が死亡のリスクにさらされた、事象を指す。それは、それがより深刻であったなら、仮に死に至っていたかもしれないという仮定的な事象を指すものではない。
・入院または既存の入院の延長を必要とする、
-注記:一般に、入院は、対象が、医師の診察室または外来診療の場で適切でなかったであろう観察および/または治療のために、病院または救急病棟に拘留された(通常は少なくとも一晩の滞在を伴う)ことがあることを意味する。入院中に発生する合併症は、AEである。合併症が入院を長引かせる場合、または任意の他の重篤な基準を満たす場合、その事象は、重篤である。「入院」が生じたか、または必要であるか疑義がある場合、AEは、重篤であるとみなすべきである。
・永続的または重大な活動不能または無能力をもたらす。
-注記:「活動不能」という用語は、ヒトが日常の生活機能を遂行する能力が著しく損なわれていることを意味する。この定義は、単純な頭痛、悪心、嘔吐、下痢、インフルエンザなど比較的軽い医学的重要性の経験、および日常生活機能を妨げるまたは妨害する可能性はあるが実質的な混乱には至らない偶発的な外傷(足首の捻挫など)を含むと意図されない。
・先天異常または先天性欠損症である。
・重要な医療上の事象である。
-注記:直ちに生命を脅かすものではない、または死亡もしくは入院をもたらさないが、対象を危険にさらす可能性がある、または上の定義に列挙される他の転帰の1つを防ぐために医学的または外科的介入を必要とする可能性がある重要な医療事象などの、他の状況において報告が適切であるかを判断する際には、医学的または科学的判断が下されるべきである。これらもまた、重篤であると考えるべきである。このような事象の例は、浸潤性がんまたは悪性がん、入院とならないアレルギー性気管支けいれん、血液障害またはけいれんに対する救急室または自宅での集中治療、薬物依存症または薬物乱用の発症である。
-注記:用語「重篤」と「重症」は、同義ではない。用語「重症」は多くの場合、特定の事象(軽度、中等度、または重度の心筋梗塞など)の強度(重症度)を説明するために使用される;しかし、事象自体は、比較的深刻でない医学的重要性のものであり得る(重症の頭痛など)。これは、上記の対象/事象の転帰または行動基準に基づきかつ通常は、対象の生命または機能を脅かす事象に関連する、「重篤」と同じではない。重度のAEは、必ずしも重篤であるとみなされる必要はない。例えば、数時間持続する悪心は、重度の悪心とみなされ得るが、SAEではない。一方、軽度の活動不能のみ生じる脳卒中は、軽度とみなされ得るが、上記の基準に基づいてSAEとして定義される。重篤度(重度ではなく)は、規制上の報告義務を定義するためのガイドとして機能する
【0271】
試験中にいずれかの中止基準を満たした対象はいなかった。
【0272】
薬物動態評価
CWT-001の薬物動態を、miR29aの連続血漿濃度を測定することによって評価した。
【0273】
ベースラインPK血液サンプルを、投与前30分以内に収集する。miR29aの血漿濃度を測定するための血液サンプルを、以下の表9に記載の時点で採取した。血漿濃度-時間データを、ノンコンパートメント法によって分析する。公称時間を、中間決定に使用したが、実際のサンプリング時間を、最終計算のために使用した。おおよそのサンプリング量を表8に示す。
【表13】
【0274】
追加のサンプルを、安全上の理由で必要ならば、採取した。最大で2つの追加の薬物動態サンプルを、薬物動態プロファイルを定義するために、必要に応じて採取してもよい。
【0275】
薬物動態学的血漿サンプルを収集し、miR29aを、ThermoFisherで開発された検証済み定量的リアルタイムPCR法を使用して定量した。
【表14】
【0276】
有効性評価-視覚的アナログスケール
対象は、治療後最初の14日間、1日1回日誌で自分の疼痛を評価し、過去24時間の疼痛をスコア付けした。14日目以降、対象は、注射後90日目まで毎週疼痛日誌をつけた。対象の疼痛評価は、質問「最近の24時間の間の腱障害による最大の痛みを、横線上において縦線(|)を用いて示してください」の後で「痛みなし」~「耐えられない程痛む」の範囲の100mm視覚的アナログスケール(VAS)を使用して実施した。VASは、値の連続にわたると考えられかつ直接容易に測定できない特性または姿勢の測定を試みる、検証済みの測定手段である。これはしばしば、様々な症状の強度または頻度を測定するために、疫学研究または臨床研究で使用される(参考文献17)。
【0277】
その結果を、
図17に示す。VASスコアの低減は、200μg(
図17A)、500μg(
図17B)、または1500μg(
図17C)のCWT-001投与を受けた対象、およびプラセボ生理食塩水注射を受けた対象のすべての群で観察された。これらのVASスコアの低減は概して、肘痛の治療におけるVASの最小臨床重要度差(MCID)である-11(参考文献18)を上回った。任意の用量のCWT-001を受けたすべての対象のVASスコアの平均変化を、決定し、プラセボと比較した(
図17D)。CWT-001による治療は、28日目にプラセボで観察された変化を上回るVASスコアの変化をもたらした。観察されたVASスコアにおける平均変化は、90日目でCWT-001処置対象について-33±7であり、これは3MCIDの変化に相当する。
【0278】
整形外科におけるランダム化比較試験(RCT)は、プラセボ/対照群として生理食塩水(NS)注射の使用を評価し、この物質の非生理学的効果を予期する。しかし、本分野における現在の最良のエビデンスによって示唆されるとおり(参考文献18、19、20、21)、NSが本分野において適切なプラセボとして作用し得るかについて疑問が生じる。例えば、変形性関節症に罹患している患者の膝関節中への生理食塩水の関節内注射に関する最近の試験(参考文献22)は、疼痛緩和および浸透圧関連変化などの、生理食塩水の見事で可能性のある有益な効果を示唆した。分子的および生理学的観点から、TNF-aおよびIL-1bによる誘導後の炎症誘発性サイトカイン(RANTES、MCP-1、IP-10、G-CSF)の減少における高張食塩水投与の寄与、ならびにナトリウムイオンおよび浸透圧がどのように変形性関節症の病理に寄与し得るかはしたがって、それが強力な抗炎症メディエーターであることを示唆している。生理食塩水の腱内注射が対照として使用される腱障害の臨床試験では、VASスコアにおける70%低減のプラセボ効果が知られている(参考文献18)。
【0279】
特に外側上顆炎試験におけるプラセボとしてのNSの最近の系統的な再調査(参考文献23)は、調査した1件を除くすべてのRCTにおいて、生理食塩水と非生理食塩水(多血小板血漿(PRP)、自家調整血漿(ACP)、コルチコステロイドおよびボツリヌス毒素)注射の間で患者報告アウトカム尺度(Patient Reported Outcome Measures、PROMS)に統計的有意差がないことを見出し、NSは、試験される注射療法と同様の治療効果を発揮する。この研究に基づき、NS注射の原理、生理学的特性、効果、および根底にあるメカニズムを解明するための確実なエビデンスがないため、擬似シリンジ/ニードルなどの代替制御方法を、より良い試験対照アームとして実施し得ることが本分野で提唱された(Boesen et al.,2017;参照文献に記載のものなど)。
【0280】
腱障害試験におけるプラセボとしての腱内生理食塩水注射の使用に関連する既知の問題を考慮して、任意の用量のCWT-001を投与されたすべての対象についてのVASスコアにおける平均変化率を、別の試験において外側上顆炎に対する代替治療を受けた対象についてのVASスコアにおける平均変化率とさらに比較した(
図17E;参考文献25)。本試験は、コルチコステロイド、多血小板血漿(PRP)、およびキシロカインはすべて、外側上顆炎の治療において安全かつ有効であることを見出した。本試験におけるCWT-001による治療で観察されたVASにおける変化率は、すべての時点において既知の治療のそれぞれで観察されたVASにおける変化率を上回った。
【0281】
有効性評価-ASES-Eスコア
ASESスコアは、肩および肘の機能の評価のために、Society of the American Shoulder and Elbow Surgeonsによって開発された(参考文献26)。ASES-Eスコアは、自己管理され、症状および機能の領域で17の質問を有する。疼痛の重症度を、0(まったく痛みがない)~10(あり得る限りのひどい痛み)の範囲の10cm視覚的アナログスケールでグレード分けした。想起期間は、対象がこの時点でどのように感じているかを指す。この検証済みツールを、それが対象の報告したアウトカムと肘の可動範囲および強度の変化に関する医師の評価を組み合わせるので、選択した(参考文献27)。
【0282】
有効性評価-迅速な上肢障害(DASH)(quick disability of the arm,should,and hand)スコア
Quick DASHは、American Academy of Orthopaedic SurgeonsがInstitute for Work &Health(Toronto,Ontario,Canada)と共に開発した対象報告アウトカムツールであるDASHの短縮された形態である。Quick DASHインデックスは、自己管理され、11項目を使用して、上肢の筋骨格系障害のいずれかまたは複数を有する対象における身体機能および症状を測定する。この検証済みの結果尺度(参照文献21)は、CWT-001注射後の対象の機能における変化の中心的な情報を提供する。
【0283】
QuickDASHの各項目は、5つの応答の選択肢を有する:1=困難なし;2=やや困難;3=中程度困難;4=かなり困難;5=できない。
【0284】
結果を
図18に示す。QuickDASHスコアにおける低下は、CWT-001の200μg(
図18A)、500μg(
図18B)、または1500μg(
図18C)用量を受けた対象において観察された。90日時点で、QuickDASHスコアにおける低下は、各投与量コホートについて、プラセボ生理食塩水注射を受けた対象よりもCWT-001を受けた対象について大きかった。任意の用量のCWT-001を受けたすべての対象についてQuickDASHスコアの平均変化を、決定し、プラセボと比較した(
図18D)。CWT-001による治療は、すべての時点においてプラセボで観察された変化を上回った、QuickDASHスコアの変化をもたらした。任意の用量のCWT-001を受けた対象のQuickDASHスコアの平均変化もまた、上肢筋骨格系障害患者におけるDASHの確立されたMCIDである-20ポイント(参考文献28)を上回った。CWT-001用量を受けた対象の投与前スコアと比較した90日目のQuickDASHスコアの平均の改善は、-53±5ポイントであった。
【0285】
有効性評価-patient rated tennis elbow evaluation(PRTEE)
以前はPatient- Rated Forearm Evaluation Questionnaireと呼ばれていたPRTEEは、テニス肘を有するヒトにおいて知覚された疼痛および活動不能を測定するための15項目の自己報告質問票である。これは、3つの下位スケール:疼痛、通常の活動、および特定の活動、を有する。疼痛サブスケールは、様々な活動中の疼痛強度に関する5つの項目を有する。特定の活動のサブスケールは、コーヒーカップを持ち上げるのような、特定の活動を実施する際に経験される困難を反映する6つの項目を有する。「通常の活動」サブスケールにおける4つの項目は、仕事中およびレクリエーション中に行われるものを含む、通常の日常の役割を行う際に経験される困難を把握する。PRTEEは、疾患固有の自己報告尺度の優れた例である。これは、一般的な関節固有または領域固有の測定値よりもテニス肘に固有の疼痛および機能の側面を把握するのに非常に役立つ。この検証済みの結果尺度(参照文献27)は、CWT-001注射後の対象の機能における変化の中心的な情報を提供する。
【0286】
結果を
図19に示す。PRTEEスコアにおける低下は、CWT-001の200μg(
図19A)、500μg(
図19B)、または1500μg(
図19C)用量を受けた対象において観察された。CWT-001の200μg用量を投与された対象について観察されたPRTEEスコアにおける低下は、すべての時点において、プラセボを投与された対象についてのPRTEEスコアにおける低下を上回った。
【0287】
CWT-001の任意の用量を受けたすべての対象についてPRTEEスコアにおける平均変化を、決定し、プラセボと比較した(
図19D)。90日目でのPRTEEスコアの平均改善は、CWT-001のいずれかの用量を受けた対象についてのベースライン投与前スコアの71±6%であった。これは、PRTEEについて「はるかによい」または「完全に回復した」と定義される臨床的意義のMCIDを上回り、それは、ベースラインスコアの37%の改善である(参考文献29)。
【0288】
有効性評価-超音波評価
肘のレベルでの外側腱複合体は、それが皮下組織および筋膜の直下に位置しているため、超音波検査に容易にアクセス可能である。通常、複合体は、対応するアタッチメント間で整列される高エコーの線形構造として可視化される。肘外側腱障害の特徴的な超音波所見は、腱内の局所的な低エコー領域を含み、これは正常な内部コラーゲン線維アライメントパターンの喪失に関連している。重要なことに、試験は、超音波検査の特徴が疾患の過程と一致することを示し、かつ治療的処置後のVASスコアおよびDASHスコアを使用して症状の改善を有する解決法を示す(参考文献30)。前臨床モデルに基づき、超音波評価を、注射後28日目および90日目に実施した。重要なことに、これは、治療後に正常な腱構造に戻す、CWT-001の作用(コラーゲン構造の改善)のメカニズムに関するデータを与え、これは、対象の回復および治療の耐久性にとって有益である。
【0289】
超音波組織特性評価(UTC;ultrasound tissue characterisation)と呼ばれる画像診断モダリティを、腱の構造を可視化するため、および腱基質の完全性を定量化するために使用できる(参考文献31)。二次元超音波およびカラードップラーとは異なり、UTCは、腱の完全性に関連する4つの異なるエコータイプへとグレースケールの腱基質の変化を客観的に定量化する。タイプI(緑)およびタイプII(青)は、組織化された基質を表す;タイプIII(赤)およびタイプIV(黒)は、組織化されていない基質を表す(
図20A)。従来の超音波と比較した、このツールの利点は、それが腱の三次元超音波画像を取得し、標準化パラメーター(トランスデューサの傾斜角、深さ、およびゲイン設定)を使用することである。両側スキャン(肘の両側)を、UTCスキャンの実施経験を有する1名の検査者により実施した。画像を、腱の長軸に沿って5cmの距離を自動的に移動し0.2mm間隔で定期的な画像を記録する追跡デバイス(UTC Tracker,UTC Imaging,Stein,The Netherlands)中に配置した7~10MHzの線形超音波トランスデューサ(SmartProbe 12L5-V,Terason 2000+;Teratech;Burlington,MD,USA)を用いて取得した。トランスデューサの傾斜、角度、ゲイン、焦点、および深度を、追跡デバイスによって標準化する。矢状面、冠状面、および横断面からの画像を編集して、腱の三次元ビューを作成した。超音波組織特性評価を、治療前(4週間以内)と、28日目および90日目に行った。
【0290】
肘外側の代表的な超音波画像を、注射前(
図20B)、28日目(
図20C)および90日目(
図20D)にプラセボを投与された対象、ならびに注射前(
図20E)、20日目(
図20F)、および90日目(
図20G)に200μgのCWT-001を投与された対象について提供する。
【0291】
UTCタイプI、II、IIIおよびIVの腱組織のパーセンテージ(率)、および修復腱(UTCタイプIおよびII)対変性腱(UTCタイプIIIおよびIV)の合計パーセンテージ(率)を、対象について定量化した。各投与量コホートについて、修復腱組織、特に無傷のUTCタイプIの腱のパーセンテージは、CWT-001を投与された対象では0日目~28日目、90日目に増加し、CWT-001を投与された対象では、プラセボを投与された対象よりもはるかに高かった。試験期間中およびプラセボ群と比較して、変性腱、特に最も重度に損傷したUTCタイプIVの腱において対応する減少があった(200μgCWT-001については
図20H、I、μgCWT-001については
図20J、K、および1500μgCWT-001については
図20L、Mを参照)。
【0292】
CWT-001の任意の用量を受けたすべての対象の修復腱の平均パーセンテージは、0日目から28日目(P<0.05)および90日目(P<0.01)で有意に増加し、プラセボを投与された対象では、有意な変化は観察されなかった。CWT-001を投与された対象はまた、28日目(P<0.05)および90日目(P<0.01)の時点で、プラセボを投与された対象よりも修復腱の有意に高いレベルを有し、28日目(P<0.05)および90日目(P<0.01)で変性腱の有意に低いレベルを有した。
【0293】
したがって、UTCデータは、CWT-001の単回の200μg、500μg、または1500μg用量による治療後に、外側上顆炎を有するヒト対象の腱構造における定量可能な改善を示す。
【0294】
実施例8-デュピュイトラン病(
図15および
図16)
健康な筋膜組織およびデュピュイトラン筋膜組織中のmiR29aの発現のqPCR分析を、実施した(健康な群では、4つのサンプル、デュピュイトラン群では、3つのサンプル)。結果は、miR29aのレベルが、手根管開放手術を受けた健康な対照と比較して、デュピュイトラン組織からのサンプルにおいて有意に減少されたことを示した(
図15)。これらの実験は、デュピュイトラン病で観察される線維性成長がmiR29aの発現の減少と関連していることを示した。この観察は、miR-29補充療法が、デュピュイトラン病で見られるコラーゲンの過剰産生を予防または減少し得ることを示した。
【0295】
miR-29補充療法がデュピュイトラン病の治療において有用であり得るかをさらに調べるために、培養デュピュイトラン線維芽細胞を、5μMのmiR-29a模倣体、miR-29b模倣体、miR-29c模倣体、CWT-001、miR-29a antagomir、またはスクランブルmiR-29a対照により処置した。処置後のコラーゲン1およびコラーゲン3の発現レベルを、qPCRによって分析した。
【0296】
結果は、コラーゲン1(
図16A)およびコラーゲン3(
図16B)の両方の発現が、スクランブルmiR-29対照による処置に対して、miR-29a模倣体、miR-29b模倣体、miR-29c模倣体またはCWT-001による処置後に、有意に減少されたことを示した。これらのデータは、CWT-001などのmiR-29模倣化合物による治療が、デュピュイトラン病の治療に有効であり得ることを示している。
【0297】
実施例9-ペイロニー病
CWT-001を、陰茎の白膜中への単回の病変内(陰茎内)注射としてペイロニー病を有する対象に投与する。対象は、30°以下の陰茎の曲率および/または2cm未満の範囲で触知可能なプラークを有する、初期段階(急性または活動期)のペイロニー病(Kelami分類に基づく、参考文献32)の男性である。対象を、注射後1年間追跡調査する。有効性評価は、陰茎の曲率、陰茎二重ドップラー超音波検査、疼痛VAS、IEFF質問票、およびPDQ質問票を含む。
【0298】
本発明は、例としてのみ説明されており、本発明の範囲および趣旨内に留めて、変更を加え得ることが理解されるであろう。
【0299】
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【手続補正書】
【提出日】2023-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】