(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】アルミニウムイオンビームを生成するための窒化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのエッチング
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20231107BHJP
H01J 27/20 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H01J37/317 Z
H01J27/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523262
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 US2021049406
(87)【国際公開番号】W WO2022093404
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】コルヴィン,ニール
(72)【発明者】
【氏名】バッサム,ニール
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,シャオ
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101BB01
5C101BB02
5C101BB03
5C101DD09
5C101DD16
5C101DD18
5C101DD20
5C101DD23
5C101DD33
5C101FF02
5C101FF49
(57)【要約】
イオン注入システム、イオン源、および方法が提供される。イオン源はアルミニウム系イオンソース材料をイオン化し、イオンビームと非導電性材料を含む副生成物とを形成するように構成される。エッチャントガス混合物は、所定の濃度のフッ素と希ガスとを含み、イオン源と流体連通する。所定の濃度のフッ素は、最大濃度約20%のフッ素といった所定の健康安全レベルと関連付けられている。エッチャントガス混合物は、約5%未満のアルゴン濃度を含有する共ガスを有することができる。アルミニウム系イオンソース材料は、イオン源内におけるリペラシャフト、シールド、または他の部材などのセラミック部材であってよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム系イオンソース材料と、
前記アルミニウム系イオンソース材料をイオン化してイオンビームを形成するように構成されたイオン源であって、前記アルミニウム系イオンソース材料のイオン化によって非導電性材料を含む副生成物をさらに形成するイオン源と、
前記イオン源と流体連通し、所定の濃度のフッ素と希ガスとを含むエッチャントガス混合物と、
前記イオンビームを選択的に輸送するように構成されたビームラインアセンブリと、
ワークピースへのイオン注入のために前記イオンビームを受け入れるように構成されたエンドステーションと、
を含むイオン注入システム。
【請求項2】
前記希ガスは、ヘリウムおよびアルゴンのうちの1つ以上を含む、
請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項3】
前記所定の濃度のフッ素は、所定の健康安全レベルに関連付けられている、
請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項4】
前記所定の健康安全レベルでは、フッ素の最大濃度が20%である、
請求項3に記載のイオン注入システム。
【請求項5】
前記エッチャントガス混合物が、約20%未満のフッ素と、ヘリウムとの非反応混合物を含む加圧ガス源を含む、
請求項3に記載のイオン注入システム。
【請求項6】
前記加圧ガス源は、共ガスをさらに含む、
請求項5に記載のイオン注入システム。
【請求項7】
前記共ガスは、約5%未満の濃度のアルゴンを含む、
請求項6に記載のイオン注入システム。
【請求項8】
前記エッチャントガス混合物は、共ガスをさらに含む、
請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項9】
前記共ガスは、約5%未満の濃度のアルゴンを含む、
請求項8に記載のイオン注入システム。
【請求項10】
前記アルミニウム系イオンソース材料は、セラミック部材を含み、前記セラミック部材は、前記イオン源内における、リペラシャフト、シールド、または部材のうちの1つ以上を含む、
請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項11】
前記エッチャントガス混合物は、加圧ボトルの内部で予め混合された形態であり、フッ素と、アルゴンガスおよびヘリウムガスのうちの1つ以上との混合物を含む、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項12】
前記加圧ボトルは、約20%のフッ素を含む、
請求項11に記載のイオン注入システム。
【請求項13】
前記加圧ボトルは、約5%未満のアルゴンを含む、
請求項11に記載のイオン注入システム。
【請求項14】
アルミニウム系ソース材料と、
前記アルミニウム系ソース材料をイオン化してイオンビームを形成するように構成されたイオン源であって、前記アルミニウム系ソース材料のイオン化によって、非導電性材料を含む副生成物をさらに形成するイオン源と、
フッ素が希ガスと混合されたエッチャントガス混合物を含むエッチャントガス供給源であって、前記エッチャントガス供給源は、前記エッチャントガス混合物を前記イオン源に導入するように構成され、前記フッ素は健康安全濃度で前記希ガスと混合されている、エッチャントガス供給源と、
前記イオンビームを選択的に輸送するように構成されたビームラインアセンブリと、
ワークピースへのイオン注入のために前記イオンビームを受け入れるように構成されたエンドステーションと、
を含む、イオン注入システム。
【請求項15】
前記エッチャントガス混合物が、共ガスをさらに含む、
請求項14に記載のイオン注入システム。
【請求項16】
前記共ガスがアルゴンを含む、
請求項15に記載のイオン注入システム。
【請求項17】
前記アルゴンが約5%未満の濃度である、
請求項16に記載のイオン注入システム。
【請求項18】
前記エッチャントガス供給源が、加圧ガス源を含む、
請求項14に記載のイオン注入システム。
【請求項19】
前記加圧ガス源が、前記エッチャントガス混合物を収容する加圧ボトルを含む、
請求項18に記載のイオン注入システム。
【請求項20】
前記エッチャントガス混合物が、容器の内部で予め混合された形態で提供される、
請求項15に記載のイオン注入システム。
【請求項21】
前記容器が、フッ素と、アルゴンガスおよびヘリウムガスのうちの1つまたは複数との混合物を収容する加圧ボトルである、
請求項20に記載のイオン注入システム。
【請求項22】
前記容器は、約20%のフッ素を含む、
請求項20に記載のイオン注入システム。
【請求項23】
前記容器は、約5%未満のアルゴンを含む、
請求項22に記載のイオン注入システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は2020年10月30日に出願された米国仮出願第63/107,769号の利益を主張し、その全ての内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は概して、イオン注入システムに関し、より具体的には、アルミニウムイオンを含むイオンビームを生成するように構成されたイオン注入システムに関する。
【0003】
〔背景技術〕
金属イオンを用いたイオン注入の需要が高まっている。例えば、アルミニウム注入は、市場における小規模ではあるが急速な成長をみせているセグメントである電力デバイスの市場にとって重要である。アルミニウムを含む多くの金属にとって、供給材料をイオン源に供給することに課題がある。イオン源のアークチャンバの外部にある小型オーブンである気化器を利用するシステムが以前に提供されており、それによって金属塩が加熱されて、イオン源に蒸気を供給するのに十分な蒸気圧を生成する。しかしながら、オーブンはアークチャンバから離れており、所望の温度まで加熱し、蒸気流を確立し、プラズマを開始し、イオンビームを開始するなどのために時間を要する。さらに、1つの金属種からいくつかの他の種への変更が望まれる場合、そのような種の変更のためにオーブンが適切に冷却されるまで待つために時間がかかる。
【0004】
別の従来技術として、アークチャンバの内部にアルミニウムまたは別の金属などの金属含有材料を配置することがある。アルミニウムの場合、金属含有材料は酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、または窒化アルミニウムを含むことができ、これらは全て、プラズマチャンバの約800℃の温度に耐えることができる。そのようなシステムでは、イオンがプラズマ中の材料から直接スパッタリングされる。別の技術としては、フッ素などのエッチャントを含有するプラズマを使用して、金属の化学エッチングを達成させることがある。これらの様々な技術を用いて許容可能なビーム電流を得ることができるが、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、および窒化アルミニウムの化合物(これらは全て良好な電気絶縁体である)は比較的短時間(例えば、5~10時間)でイオン源に隣接する電極上に堆積される傾向がある。そのようなものとして、高電圧不安定性、および注入されるイオンの投与量の関連する変動のような、様々な有害な効果が見られる。
【0005】
〔発明の概要〕
したがって、本開示は、アルミニウムイオンを含むイオンビームを生成するためのシステムおよび装置を提供する。したがって、以下は本発明のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された概要を提示する。この要約は、本発明の広い概観ではない。これは、本発明の重要な要素を識別しかつ正確に概説するものでもない。この目的は、後に記載する詳細な説明の序文として、本発明のいくつかの概念を単純化した形で示すことにある。
【0006】
本開示の一態様によれば、イオン注入システムが提供され、イオン源はアルミニウム系イオンソース材料をイオン化し、そこからイオンビームを形成するように構成される。一例ではアルミニウム系イオンソース材料がセラミック部材を含み、セラミック部材はリペラシャフト、シールド、またはイオン源内の部材のうちの1つ以上を含む。
【0007】
アルミニウム系イオンソース材料のイオン化は例えば、非導電性材料を含む副生成物をさらに形成する。エッチャントガス混合物はさらに、イオン源と流体連通しており、エッチャントガス混合物は、所定の濃度のフッ素と希ガスとを含む。ビームラインアセンブリはイオンをワークピースに注入するために、イオンビームをエンドステーションに選択的に輸送するようにさらに構成される。例えば、真空システムは、イオン源を実質的に排気するように構成することができる。
【0008】
一例によれば、希ガスはヘリウムおよびアルゴンのうちの1つまたは複数を含み、所定の濃度のフッ素は、所定の健康安全レベルと関連付けられている。一例では、所定の健康安全レベルでは、フッ素の最大濃度は20%である。別の実施形態では、エッチャントガス混合物が20%未満のフッ素とヘリウムとの非反応混合物を含む加圧ガス源を含む。加圧ガス源は、共ガスをさらに含むことができる。共ガスは例えば、5%未満の濃度のアルゴンを含むことができる。別の実施形態では、エッチャントガス混合物は共ガスを含むことができる。
【0009】
エッチャントガス混合物は例えば、加圧ボトル内で予め混合された形態であり、フッ素と、アルゴンガスおよびヘリウムガスのうちの1つ以上との混合物を含む。一例では、容器は約20%以下のフッ素を含む。別の実施形態では、前記加圧ボトルは、約5%未満のアルゴンをさらに含む。
【0010】
本開示の別の実施形態によれば、イオン注入システムが提供され、イオン源はアルミニウム系ソース材料をイオン化し、そこからイオンビームを形成するように構成される。アルミニウム系ソース材料のイオン化は、非導電性材料を含む副生成物をさらに形成する。希ガスとフッ素が混合されたエッチャントガス混合物を含むエッチャントガス供給源がさらに提供される。前記エッチャントガス供給源は、前記エッチャントガス混合物を前記イオン源に導入するように構成され、前記フッ素は健康安全濃度で希ガスと混合されている。ビームラインアセンブリはイオンビームをワークピースへのイオン注入のためにイオンビームを受け入れるように構成されたエンドステーションに、イオンビームを選択的に輸送する。
【0011】
一例では、エッチャントガス混合物が共ガスをさらに含む。共ガスは例えば、5%未満の濃度のアルゴンガスなどのアルゴンを含む。エッチャントガス供給源は例えば、加圧ガス源を含むことができる。加圧ガス源は例えば、エッチャントガス混合物を含む加圧ボトルを含むことができる。エッチャントガス混合物は例えば、フッ素とアルゴンおよびヘリウムガスのうちの1つ以上との混合物を含有する加圧ボトルなどの容器内において予め混合された形態で提供される。容器は例えば、約20%以下のフッ素を含む。
【0012】
本開示のさらに別の実施形態によれば、ワークピースにアルミニウムイオンを注入するための方法が提供される。この方法では、例えば、イオン源内にアルミニウム系ソース材料を提供することと、イオン源にエッチャントガス混合物を提供することとを含む。エッチャントガス混合物は、所定濃度のフッ素と希ガスとを含む。フッ素の所定濃度は例えば、約20%未満である。一例では、アルミニウム系ソース材料がセラミック部材を含む。希ガスは例えば、アルゴンおよびヘリウムのうちの1つ以上を含むことができる。アルミニウム系ソース材料はイオン源内でイオン化され、フッ素はアルミニウム系ソース材料をエッチングして、アルミニウムイオンを生成する。さらに、アルミニウムイオンは、イオン化されたアルミニウム系ソース材料からワークピースに注入される。
【0013】
別の実施形態では、エッチャントガス混合物をイオン源に提供することには、イオン源にアルゴンなどの共ガスを提供することをさらに含む。別の実施形態では、フッ素とアルゴンおよびヘリウムガスのうちの1つまたは複数との混合物を含有する加圧ボトルなどの容器内で、エッチャントガスを予備混合することをさらに含む。ここで、容器は、例えば、約20%のフッ素を含む。別の実施形態では、容器は約5%未満のアルゴンを含む。
【0014】
前述の目的および関連する目的を達成するために、本開示は、以下に十分に説明され、特許請求の範囲において特に指摘される特徴を含む。以下の記載及び添付の図面は、本発明の例示的な実施形態を詳細に示している。しかし、これらの実施形態は、本発明の原理を用いる種々の方法の一部を示しているにすぎない。本発明の他の目的、利点及び新規な特徴は、図面を参照して、本発明の詳細な記載から明らかになるのであろう。
【0015】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本開示のいくつかの態様による、アルミニウム系イオンソース材料を利用する例示的真空システムのブロック図である。
【0016】
図2は、アルミニウムベースのイオンソース材料を使用してワークピースにイオンを注入するための例示的な方法を示す。
【0017】
〔詳細な説明〕
本開示は、概して、イオン注入システムおよびそれに関連するイオンソース材料を対象とする。より詳細には、本開示が1000℃までの範囲の様々な温度でシリコン、炭化ケイ素、または他の半導体基板を電気的にドープするための原子イオンを生成するためのアルミニウムをベースとした固体ソース材料を使用する、前記イオン注入システムのための構成要素に関する。さらに、本開示はフッ素とヘリウムなどの希ガスまたは不活性ガスとの所定の混合物を含む予め混合されたエッチャントガスを使用するとき、引出し電極およびソースチャンバ構成要素上への様々な堆積物を最小限に抑える。本開示は、ソース動作負荷を低減し、エッチング速度を増加させ、アルミニウム含有材料のスパッタ速度を最小限にして、全体的な耐用年限を延ばし、アルミニウムイオンビーム電流をさらに増加させる。
【0018】
したがって、本発明は、図面を参照して説明され、全体を通して、同様の参照番号が同様の要素を指すために使用され得る。これらの態様の説明は単なる例示であり、限定的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の説明では、説明目的のために、本発明の完全な理解を提供すべく、様々な特定の詳細が記載されている。当業者であれば、本発明は、これらの特定物でなくても実施できることが明らかであろう。さらに、本発明の範囲は、添付の図面を参照して以下に説明される実施形態または実施形態によって限定されることを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることを意図する。
【0019】
また、図面は、本開示の実施形態のいくつかの態様の例示を与えるために提供され、したがって、概略的なものに過ぎないと見なされるべきであることに留意されたい。特に、図面に示される要素は必ずしも互いに一定の縮尺ではなく、図面における様々な成分配置はそれぞれの実施形態の明確な理解を提供するために選択され、本発明の実施形態による実装形態における様々な構成要素の実際の相対位置の表現であると必ずしも解釈されるべきではない。さらに、本明細書に記載の様々な実施形態および実施形態の特徴は特に断りのない限り、互いに組み合わせることができる。
【0020】
また、以下の説明では図面に示され、または本明細書で説明される、機能ブロック、装置、構成要素、回路要素、または他の物理的もしくは機能的ユニット間の任意の直接的な接続または結合は間接的な接続または結合によっても実装され得ることを理解されたい。さらに、図面に示される機能ブロックまたはユニットは一実施形態では別個の特徴または回路として実装されてもよく、また、または代替として、別の実施形態では共通の特徴または回路において完全にまたは部分的に実装されてもよいことを諒解されたい。たとえば、いくつかの機能ブロックは、信号プロセッサなどの共通プロセッサ上で実行されるソフトウェアとして実装され得る。さらに、以下の明細書において有線ベースであるとして説明される任意の接続は特に断りが無い限り、無線通信として実装されてもよいことが理解されるべきである。
【0021】
イオン注入は、半導体およびウェハ材料の少なくとも一方に対するドーパントの選択的な注入のために、半導体デバイス製造に用いられる物理的プロセスである。したがって、注入の工程は、ドーパントと半導体材料との間の化学的相互作用に依存しない。イオン注入のために、イオン注入装置のイオン源からのドーパント原子および分子の少なくとも一方はイオン化され、加速され、イオンビームに形成され、分析され、ウェハを横切って掃引されるか、またはウェハはイオンビームを通って移動される。ドーパントイオンはウェハに物理的に衝突し、表面に入り、そのエネルギーに関連する深さで表面の下に静止する。
【0022】
イオン注入装置内のイオン源は典型的にはアークチャンバ内でソース材料をイオン化することによってイオンビームを生成し、ソース材料の構成要素は、所望のドーパント元素である。次いで、所望のドーパント元素が、イオンビームの形態でイオン化されたソース材料から抽出される。
【0023】
従来、アルミニウムイオンが所望のドーパント元素である場合、イオン注入のためのアルミニウムイオンの原料として、窒化アルミニウム(AlN)やアルミナ(Al2O3)などの材料が用いられてきた。窒化アルミニウムまたはアルミナは、プラズマが(イオン源内で)形成されるアークチャンバ内に典型的に配置される固体の絶縁材料である。
【0024】
ガス(例えばフッ素)を導入してアルミニウム含有材料を化学的にエッチングし、それによって、ソース材料をイオン化し、アルミニウムを抽出し、ビームラインに沿って、注入のためにエンドステーションに配置されたワークピース(例えば、炭化ケイ素)に移す。アルミニウム含有材料は例えば、アルミニウムイオンのソース材料として、アークチャンバ内において何かしらの形態で存在するフッ素系エッチャントガス(例えば、BF3、PF3、NF3、SiF4、SF6など)と共に一般的に使用される。しかしながら、これらの材料はアークチャンバから意図されたアルミニウムイオンと共に放出される絶縁材料(例えば、AlN、Al2O3、AlF3など)を生成するという残念な副作用を有する。
【0025】
その後、絶縁材料は引出し電極などのイオン源の様々な構成要素をコーティングし、引出し電極は、その後、電荷を構築し始め、引出し電極の静電特性を不利に変更する。電荷の構築の結果、他の構成要素および/またはグランドへの構築電荷アークとして、引出し電極のアーク放電または「グリッチング(glitching)」と一般に呼ばれる挙動が生じる。
【0026】
極端な場合には、引出し電極のための電源の挙動が変化し、歪む可能性がある。これは、典型的には予測不可能なビーム挙動をもたらし、低減されたビーム電流、およびイオン源に関連する様々な構成要素を洗浄するための頻繁な予防保守につながる。加えて、これらの材料からのフレークおよび他の残基がアークチャンバ内に形成されることがあり、したがって、その動作特性が変わって、追加の頻繁な洗浄につながる。
【0027】
また、例えば、BF3を用いると、ガスデリバリーシステム内のエアリークにより、アルミニウム(AMU27)と質量が一致するBO(AMU27)が生成し、所望のアルミニウムイオンとともにBOを注入されることが懸念される。エッチャントとしてBF3を使用する場合、例えば、引出し電極オプティクスがホウ素で被覆され、それが続いて剥離し、電極とアークチャンバアークスリットとの間にアークを引き起こし、したがって、製造に用いるツールを不安定にすることが観察されている。NF3の使用は例えば、窒素分子+(AMU28)の質量がアルミニウム+(AMU27)の質量に近く、質量分解システムを通過し、エネルギー汚染の注入をもたらすこともあるため、課題となり得る。原子状窒素と二重に荷電したアルミニウム(それぞれ14および13.5の質量/電荷比を有するAl++)の密接な質量/電荷比についても同様の懸念が存在する。加えて、そのような分子の使用は、特に多価イオンに対して、所望のアルミニウムビーム電流を達成する能力を低下させることが観察されている。
【0028】
したがって、本開示はアルミニウムイオンを注入するときに所望のビーム電流を提供しながら、イオン源チャンバに関連する引出し電極および他の構成要素上の堆積物を最小限に抑えようとするものである。本開示は有利には形成に関連するグリッチチングまたはアーク放電を低減し、効率の増加に伴って、全体的なイオン源および電極の耐用年限をさらに増加させる。
【0029】
本開示の例示的な一態様によれば、アルミニウム系スパッタリングおよびエッチング標的は、エッチャントソースガスと併せて提供される。エッチャントソースガスは他の従来のフッ素含有分子および混合物と比較した場合、ヘリウムの小さなイオン化断面に起因して、より低いアークチャンバ圧および二次衝突(例えば、荷電交換)のさらなる低減を提供しながら、従来の系よりも低い総ガス流を可能にするために、所定の割合のフッ素(F2)を有するヘリウム(He)を含む容器(例えば、ガスボトル)内に予め混合した形態で有利に提供される。
【0030】
本発明者らは、必要とされるアルミニウムビーム電流について、フッ素供与体原子(例えば、ホウ素、リン、ケイ素)がイオン化および抽出されないので、総抽出電流を>20%減少させることができることを観察した。24.57のヘリウムの第1イオン化エネルギーは、任意の要素の中で最も高く、全抽出電流に対するその負担は無視できる。抽出された電流のこの減少はまた、アークチャンバ光学プレートと引出し電極との間の圧力を減少させ、2つの表面間のアーク放電を減少させる。これは、経時的に、引出し電極が前述のように、絶縁材料で被覆されるので、ビーム安定性の改善に有益である。本開示は、いくつかの例では動作条件または所望の注入に基づいて、所定のパーセンテージのフッ素と予め混合されたヘリウム以外の希ガスまたは不活性ガスの混合物が好ましい場合があることを理解する。例えば、アルゴン(Ar)は、容器内でフッ素およびヘリウムと予め混合され、アルミニウム系セラミックのスパッタリングが望まれる場合にアークチャンバに提供され得る。例えば、フッ素系プラズマ中でAlNまたはAl2O3をエッチングする場合、アルミニウム系セラミックスの表面にAlF3の安定且つ不揮発性のメモリ膜が形成され、表面を不動態化することができる。そのような例では、Ar+イオンが表面をスパッタリングし、フッ化物を除去するか、またはフッ化物を含まないように表面を維持することができ、その結果、以下のようなさらなる反応が起こり得る:
AlN + F2 → AlF3 + N2 (1)
または
Al2O3 + F2 → AlF3 + O2 (2)。
【0031】
本開示は、アルゴン+フッ素の予混合ボトル中のアルゴンの濃度が例えば、電荷交換によるアルミニウムビーム電流の減少を引き起こす場合、ボトルは3つ以上のガスで充填され得、ここで、主要または最高レベルのガスは例えば、ヘリウムであり、残りの残部は所定のパーセンテージのフッ素、アルゴン、または他の希ガス、不活性ガス、または他の非反応性ガスであることをさらに企図する。
【0032】
本開示のより良い理解を得るために、本開示の一態様によれば、
図1は、例示的な真空システム100を示す。本実施形態の真空システム100はイオン注入システム101を備えるが、プラズマ処理システムまたは他の半導体処理システムなどの様々な他のタイプの真空システムも企図される。イオン注入システム101は例えば、端末102と、ビームラインアセンブリ104と、エンドステーション106とを備える。
【0033】
概して言えば、端末102内のイオン源108は、電源110に結合されて、ドーパントガスをイオン源から複数のイオンにイオン化して、イオンビーム112を形成する。引出し電極に近接した個々の電極は、ソースに近接した又は引出し電極に戻る中和電子の逆流を阻止するようにバイアスされてもよい。本発明のイオンソース材料113はイオン源108に提供され、イオンソース材料は固体酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、または他のアルミニウム含有材料などのアルミニウム系ソース材料を含む。
【0034】
本実施形態では、イオンビーム112は、ビームステアリング装置114を通って、開口116からエンドステーション106に向かって導かれる。エンドステーション106において、イオンビーム112はチャック120(例えば、静電チャックまたはESC)に選択的にクランプまたは取り付けられるワークピース118(例えば、シリコンウェハ、ディスプレイパネルなどの半導体)に衝突する。ワークピース118の格子に埋め込まれると、注入されたイオンは、ワークピースの物理的特性および化学的特性の少なくとも一方を変更させる。このため、イオン注入は、半導体デバイスの製造や金属仕上げ、材料科学研究における様々な用途に用いられている。
【0035】
本開示のイオンビーム112は、ペンシルまたはスポットビーム、リボンビーム、走査ビーム、またはイオンがエンドステーション106に向けられる任意の他の形態など、任意の形態をとることができ、すべてのそのような形態は、本開示の範囲内に入るものとして企図される。
【0036】
例示的な一態様によれば、エンドステーション106は、真空チャンバ124などの処理チャンバ122を備え、処理環境126が処理チャンバに関連付けられる。処理環境126は、概して、処理チャンバ122内に存在し、一例では、処理チャンバに結合され、処理チャンバを実質的に排気するように構成された真空源128(例えば、真空ポンプ)によって生成される真空を含む。さらに、制御装置130は、真空システム100の全体的な制御のために設けられる。
【0037】
本開示は、炭化ケイ素系デバイスを搭載したワークピース118が、特に電気自動車などの高電圧および高温デバイスに使用される用途において、ケイ素系デバイスよりも良好な熱的および電気的特性を有することが見出されたことを理解する。しかしながら、炭化ケイ素へのイオン注入は、シリコンワークピースに使用されるものとは異なるクラスの注入ドーパントを利用する。炭化ケイ素注入では、アルミニウム、窒素およびリン注入がしばしば実施される。窒素およびリンの注入は例えば、窒素をガスとして導入することができるので、比較的単純であり、比較的容易な調整、クリーンアップなどを提供する。しかしながら、アルミニウムは、現在知られているアルミニウムの良好な気体溶相が存在しないので、より困難である。
【0038】
本開示は、イオンソース材料113を、例えば、アルミニウム系イオンソース材料132として企図する。さらに、エッチャントガス混合物134が提供され、それによって、エッチャントガス混合物の導入は有利にはより大きい分子量材料に関連するより高い圧力に関連する最小限の有害な問題を伴う高いイオンビーム電流を提供し、さらに、上述の絶縁材料や導電材料の形成に起因する負の効果を増幅する。本発明の或る特定の実施形態では、エッチャントガス混合物134と共に原子状アルミニウムイオンを生成するために、酸化アルミニウム(Al2O3)または窒化アルミニウム(AlN)を含むアルミニウム系イオンソース材料132を企図し、エッチャントガス混合物は、希ガスまたは不活性ガスと、所定の割合で混合されたフッ素との非反応混合物を含む。したがって、イオンソース円弧スリットと引出し電極との間の高電圧ギャップにおける上述の増加した圧力に少なくとも部分的に起因して、絶縁材料、フレークなどの影響はそれほど有害ではなく、したがって、イオン源および電極の耐用年限を延ばし、より安定したイオンビーム動作をもたらし、実質的により高いビーム電流を可能にする。
【0039】
例えば、アルミニウム系イオンソース材料132はセラミック部材136(例えば、イオン源108内のリペラシャフト、シールド、または他の部材)に組み込まれ、当該セラミックは、エッチャントガス混合物134からのフッ素ガスを使用してスパッタリングまたはエッチングされる。アルミニウム系イオンソース材料132は例えば、高温プロセス(例えば、1000℃以上)を受け、これにより、セラミックは、溶融することなくそのような温度に耐えることができる。
【0040】
したがって、本開示は、室温~約1000℃以上の温度で炭化ケイ素、ケイ素、または他の基板を電気的にドープするために、アルミニウムイオンなどの単一原子イオンを生成する。そのような単一原子イオンの生成は、有利には現在の技術よりも改善されたソース寿命、より高いビーム電流、およびより良好な動作特性をもたらす。
【0041】
本開示の代替態様によれば、アルミニウム系イオンソース材料はイオン注入システム101の固体ソース気化器140(例えば、Axcelis Technologies of Beverley、MAによって製造された適当なイオン注入器)を介してイオン源108に提供され得る。イオン源108に関連する固体ソース気化器140は例えば、アルミニウムベースのイオン原料物質を装填し、蒸気を形成するまで気化器内で加熱することができ、蒸気はイオン化チャンバに移動し、そこでアルミニウムがイオン化され、ビームラインを通って抽出される。
【0042】
本開示は所定の健康安全レベル(例えば、10~20%濃度)よりも高い濃度のフッ素ガスの供給が、フッ素ガスを含有するボトルの輸送および保管に関する安全問題であり得ることをさらに理解する。20%を超える濃度のフッ素ガスの供給は、漏れが発生した場合、危険性が高いため、製造施設では許可されないことが多い。
【0043】
したがって、本開示は所定の健康安全レベル(例えば、約20%)までのフッ素を含むエッチャントガス混合物134を提供し、エッチャントガス混合物の残りは、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などの不活性ガス、希ガス、または他の非反応性ガスを含む。本開示は、ヘリウムがビーム電流に悪影響を与えず、したがって、ヘリウムがエッチャントガス混合物134のためにフッ素と予め混合されることを理解する。エッチャントガス混合物134は例えば、ボトル内に予め混合された(例えば、20%F、80%He)状態で、イオン注入システム101の位置に輸送することができ、それによって、ヘリウムおよびフッ素は一緒に結合されず、または化学的に組み合わされず、むしろ、単純に混合され、それによって、ヘリウムは希釈剤として作用する。別の実施形態では、アルゴンはまた、アルミニウム系セラミックをスパッタリングすることが望まれるときに、エッチャントガス混合物134中にヘリウムおよびフッ素との共ガス138として含まれ得る。例えば、少量のアルゴンは有利にはセラミック部材136上に形成された任意の絶縁コーティングをスパッタリングし、破壊することができる。この共ガス138は例えば、エッチャントガス混合物134中の他のガスと共に提供され得るか、または別の供給源とは別個に提供され得る。例えば、エッチャントガス混合物は、0.5~5%の濃度のアルゴン、20%の濃度のフッ素、および残りのヘリウムを含むものであり得る。
【0044】
図2は、ワークピースにイオンを注入するための例示的な方法200を示す。例示的な方法は一連の工程または事象として本明細書に図示および説明されているが、いくつかのステップは本発明に従って、本明細書に図示および説明されているものとは別に、異なる順序でおよび/または他のステップと同時に起こり得るので、本発明はそのような工程または事象の図示されている順序によって限定されないことが理解されるべきである。さらに、全く説明していないステップも、本発明に従う方法に包含し得るように要求することが可能である。さらに、これらの方法は、ここで図示しかつ記載されたシステムに関連して、また、説明しない他のシステムとも関連して包含させることができる。
【0045】
例示的な一態様によれば、
図2の工程202において、アルミニウムソース材料が提供される。アルミニウム系イオンソース材料は例えば、イオン源内の構成要素として固体状のセラミック部材であってもよい。工程204において、例えば、エッチャントガス混合物がイオン源に供給される。エッチャントガス混合物は例えば、ヘリウムなどの希ガスと混合された所定濃度のフッ素を含む。工程206において、アルミニウム系イオンソース材料はイオン源内でイオン化され、フッ素はイオン源内のアルミニウム系イオンソース材料をエッチングして、アルミニウムイオンを生成する。任意の工程208において、アルゴンなどの共ガスが、セラミック部材をスパッタリングするためにイオン源に導入される。
【0046】
本発明は特定の実施形態に関して示され、説明されたが、上述の実施形態は本発明のいくつかの実施形態の実装のための例としてのみ機能し、本発明の適用はこれらの実施形態に限定されないことに留意されたい。特に、上記の構成要素(アセンブリ、装置、回路など)によって実行される様々な機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用される用語(「手段」への言及を含む)は別段の指示がない限り、本発明の本明細書に例示される例示的な実施形態において機能を実行する開示される構造と構造的に等価ではないが、説明される構成要素の指定された機能を実行する任意の構成要素(すなわち、機能的に等価である)に対応することが意図される。更に、本発明の特定の特徴が幾つかの実施形態のただ一つに対して開示されてきたが、そのような特徴はいずれかの或る又は特定の用途にとって望ましくかつ有利な他の実施形態における一つ以上の特徴と組み合わされ得るものである。したがって、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本開示のいくつかの態様による、アルミニウム系イオンソース材料を利用する例示的真空システムのブロック図である。
【
図2】アルミニウムベースのイオンソース材料を使用してワークピースにイオンを注入するための例示的な方法を示す。
【国際調査報告】