(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】生体分子プローブを使用した組織のマルチプレックス質量分析イメージングのための新規な光切断可能な質量タグ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20231108BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20231108BHJP
【FI】
G01N33/53 Y
G01N27/62 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526248
(86)(22)【出願日】2021-08-11
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 US2021045520
(87)【国際公開番号】W WO2022093357
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512087331
【氏名又は名称】アンバージェン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リム, マール ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヤグニック, ガーゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ロスチャイルド, ケネス ジェイ.
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA04
2G041FA11
2G041FA12
2G041JA04
2G041JA06
2G041JA09
(57)【要約】
例えば研究用途及び病理学者による臨床用途(例えば、切除された腫瘍又は腫瘍生検のバイオマーカー分析)のための、組織又は細胞における生体分子(例えば、タンパク質及びmiRNA)の標的化検出及びマッピングのための免疫組織化学(INC)及びインサイツハイブリダイゼーション(ISH)法であって、本方法は組織又は細胞内の生体分子を検出及びマッピングするためのモードとして質量分析イメージング(MSI)を含む。本方法は抗体及び核酸などのプローブに結合され、マルチプレックス免疫組織化学及びインサイツハイブリダイゼーションを達成するために使用され、MSIを検出/読み出しの様式として用いる光切断可能な質量タグ試薬を利用する。本方法はマルチオミックMSI手順も包含し、光切断可能な質量タグプローブのMSIは、生体試料(例えば、組織)由来の内因性生体分子の直接的非標識MSIなどのMSIの他のモードと組み合わされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一スライド上の組織サンプル中の5つまたはそれを超える異なるタイプのバイオマーカーを同時検出するためのマルチプレックス方法であって、
a)単一スライド上に組織サンプルを提供することと、
b)前記組織サンプルへの抗体の結合をもたらすために前記組織サンプルを5つまたはそれを超える異なる抗体と接触させることであって、前記抗体の各々が異なるバイオマーカーと反応性であり、前記抗体の各々が固有の質量タグにコンジュゲートされていることと、
c)質量分析イメージングを使用して、前記質量タグまたはその断片を分子イオンとして検出することと、を含む、方法。
【請求項2】
工程a)の後であるが工程b)の前に、前記組織サンプルに対して直接的質量分析イメージングを実施することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記5つまたはそれを超える抗体が混合物中にあり、工程b)の前記組織サンプルを前記混合物と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記質量タグが非希土類金属質量タグである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記質量タグが複数のアミノ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記単一スライドにマウントする前に、前記組織サンプルを新鮮凍結し、薄片化した、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スライドが金を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記スライドが金層を有するガラススライドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記単一スライドにマウントする前に、前記組織サンプルをホルマリン固定し、パラフィン包埋し、薄片化した、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組織サンプルが、前記サンプルを抗体と接触させる前記工程の前に処理に供され、前記処理が脱パラフィンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記脱パラフィンがキシレンを用いて行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組織サンプルがさらに処理に供され、前記処理が再水和を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記再水和が一連のエタノール/水混合物および水性生理食塩水緩衝液を用いて行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組織サンプルがさらに処理に供され、前記処理が抗原賦活化を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記抗原賦活化が、クエン酸緩衝液(pH6)中での加熱によって行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗原賦活化がギ酸を使用して行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
質量タグにコンジュゲートされた前記抗体が以下の一般構造を有し、Xがスペーサーである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
工程c)の前にマトリックス化合物が前記質量タグに付与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記マトリックス化合物が、アルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)および3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸)からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マトリックス化合物が昇華によって付与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記組織サンプルが、前記サンプルをマトリックス化合物と接触させる工程の後に処理に供され、前記処理がマトリックス再結晶化を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記質量タグが光切断可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
工程c)の前に前記質量タグの少なくとも一部を光切断するように前記質量タグに光を照射することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組織が腫瘍由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記腫瘍が乳房腫瘍である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記5つまたはそれを超える抗体の少なくとも1つが、前記質量タグに加えて蛍光部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記異なる抗体の数が8つまたはそれを超える、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記異なる抗体のサブセットが、i)エストロゲン受容体(ER)、ii)プロゲステロン受容体(PR)、iii)ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)およびiv)Ki67と反応する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記異なる抗体のサブセットが、T細胞バイオマーカーである、i)CD3(T細胞)、ii)CD4(Tヘルパー)、iii)CD8(細胞傷害性T細胞)およびiv)CD45RO(メモリーT細胞)と反応する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記異なる抗体の1つがB細胞バイオマーカーCD20と反応する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記異なる抗体の1つがマクロファージバイオマーカーCD68と反応する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記異なる抗体の1つが免疫チェックポイント分子と反応する、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記免疫チェックポイント分子が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27およびTIM3からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
【0002】
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2020年10月29日に出願された「Novel Photocleavable Mass-Tags for Multiplexed Mass Spectrometric Imaging of Tissues using Antibody and Nucleic Acid Probes」と題する米国仮出願第63/106,990号に基づく優先権を主張する。
【0003】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載
【0004】
本発明は、国立癌研究所によって授与された助成金番号CA236097の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0005】
発明の分野
【0006】
本発明の分野は、例えば研究用途および病理学者による臨床用途(例えば、切除された腫瘍または腫瘍生検のバイオマーカー分析)のための、組織または細胞における生体分子(例えば、タンパク質およびmiRNA)の標的化検出およびマッピングのための免疫組織化学(IHC)およびインサイツ(in situ)ハイブリダイゼーション(ISH)に関する。特に、例えば、組織または細胞内の生体分子を検出およびマッピングするためのモードとしての質量分析イメージング(MSI)の使用である。より具体的には、本発明の分野は、抗体および核酸などのプローブに結合され、マルチプレックス免疫組織化学およびインサイツハイブリダイゼーションを達成するために使用され、MSIを検出/読み出しの様式として用いる光切断可能な質量タグ試薬に関する。抗体および核酸以外のプローブタイプも本発明の分野に含まれ、炭水化物結合タンパク質(例えば、レクチン)、受容体およびリガンドが含まれるが、これらに限定されない。最後に、本発明の分野はまた、マルチオミックMSI手順も包含し、光切断可能な質量タグプローブのMSIは、生体試料(例えば、組織)由来の内因性生体分子の直接的非標識MSIなどのMSIの他のモードと組み合わされ、それによって当該生体分子は無傷であり得るか、または消化され得る(例えば、化学的に消化されるか、または酵素によって)。
【背景技術】
【0007】
発明の背景
【0008】
免疫組織化学(IHC)およびインサイツハイブリダイゼーション(ISH)は、組織、細胞および細胞内レベルで生体分子の構造的構成を決定するために広く使用されている[KatikireddyおよびO’Sullivan(2011)Methods Mol Biol 784:155-67、HowatおよびWarford(2014)Methods 70:1-2、Stack,Wangら(2014)Methods 70:46-58]。例えば、IHCは、神経変性障害における細胞外アミロイド斑および細胞内タウベースの神経原線維変化を研究するための好ましい方法である[Deng、Bigioら(2011)Methods Mol Biol 793:259-72、DuggerおよびDickson(2017)Cold Spring Harb Perspect Biol 9]。腫瘍学では、IHCおよびISHを使用して、予後値である腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の評価[Halse、Colebatchら(2018)Sci Rep 8:11158]を含む、様々な癌の診断、サブタイプへの分類および最適な処置を決定することができる[Renwick,Cekanら(2013)J Clin Invest 123:2694-702、Zaha(2014)World J Clin Oncol 5:382-92]。IHCおよびISH分析は、一般に、例えば腫瘍の生検または外科的切除によって収集された組織サンプルに対して行われる。典型的には、組織サンプルを新鮮凍結(FF)またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)し、次いで薄片化(例えば、10μm)し、ガラス顕微鏡スライドにマウントする。抗体または核酸プローブにコンジュゲートさせたフルオロフォアまたは発色剤は、顕微鏡法を用いて標的化生体分子(例えば、タンパク質抗原またはmiRNAなどの遺伝物質)の空間分布を可視化する最も一般的な方法である[KatikireddyおよびO’Sullivan(2011)Methods Mol Biol 784:155-67]。
【0009】
多くの場合、多数のバイオマーカーの局在化および潜在的な共局在を同時に決定することが重要である。これは、例えば、高度に不均一な組織における細胞調節および調節不全に関与する数百の可能なタンパク質および/またはmiRNAの位置をマッピングするために重要である[Renwick,Cekanら(2014)Methods Mol Biol 1211:171-87;Blom、Paavolainenら(2017)Sci Rep 7:15580]。しかしながら、蛍光顕微鏡法は、分子フルオロフォアが比較的広い励起バンドおよび発光バンドを示し、スペクトル重複をもたらすので、ほんの少数のバイオマーカーの同時検出に限定される[Stack,Wangら(2014)Methods 70:46-58]。標準的な蛍光顕微鏡法のマルチプレックス化限界は一般に3~5であるが、ハイパースペクトル/マルチスペクトル法は8に制限される[Tsurui,Nishimuraら(2000)J Histochem Cytochem 48:653-62、Stack,Wangら(2014)Methods 70:46-58、Parra,Uraokaら(2017)Sci Rep 7:13380、Gorris,Halilovicら(2018)J Immunol 200:347-354]。さらに、これらのマルチプレックス方法は、反復染色とそれに続く光退色またはプローブ除去/変性などのサイクル戦略(例えば、パーキンエルマーのOPALマルチスペクトルプラットフォーム)を必要とすることが多い[Wahlby,Erlandssonら(2002)Cytometry 47:32-41、Schubert,Bonnekohら(2006)Nat Biotechnol 24:1270-8、Gerdes,Sevinskyら(2013)Proc Natl Acad Sci U S A 110:11982-7;Blom、Paavolainenら(2017)Sci Rep 7:15580]。そのような方法は複雑で面倒で不完全なサイクリングであり、結果を混乱させる可能性がある[Giesen,Wangら(2014)Nat Methods 11:417-22、Blom,Paavolainenら(2017)Sci Rep 7:15580]。
【0010】
対照的に、質量分析イメージング(MSI)は、上述の光学的方法の制限なしに高レベルのマルチプレックス化を容易にする(典型的には1Da未満の質量分解能によってのみ制限される)。簡潔には(詳細については
図1を参照されたい)、これらの方法は、質量分析計で組織検体を走査し、各「ピクセル」で完全な質量スペクトルを生成し、それによってスペクトル内の任意の所与の質量種の同時イメージングを可能にする[Arentz,Mittalら(2017)Adv Cancer Res 134:27-66]。Caprioliのグループは、最初にマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)に基づくこの技術を導入し[Caprioli,Farmerら(1997)Anal Chem 69:4751-60]、この技術はその後、複雑な組織におけるタンパク質、核酸、脂質、代謝産物を含む生体分子、さらには小さな薬物化合物の直接的非標識イメージングに広く採用されている[Buchberger,DeLaneyら(2018)Anal Chem 90:240-265]。この技術はまた、ESLベースのDESI-MSイメージングなどの他の質量分析(MS)手法にも拡張されている[Takats,Wisemanら(2004)Science 306:471-3]。MALDIおよびDESI MSI手法は現在、光学的方法(例えば、より新しいBruker rapifleX MALDI-MS機器を用いた10μmのレーザー焦点)の空間分解能と一致していないが、透過幾何学(2μm)[Zavalin,Toddら(2012)J Mass Spectrom 47:i]またはレーザー集光対物レンズ(1.4μm)を備えた大気圧MALDI-MSI[Kompauer,Heilesら(2017)Nat Methods 14:90-96]などの革新的な設計を使用して、改善された分解能を得ることが可能である。
【0011】
しかしながら、タンパク質などの無傷の高分子のMSIは、典型的には、不十分な質量分解能および低い感度のために不可能である[Buchberger,DeLaneyら(2018)Anal Chem 90:240-265]。特定の生体分子の同定には、タンデムMS/MSフラグメンテーション、超高質量分解能機器および/またはボトムアッププロテオミクスアプローチ(例えば、組織のインサイツタンパク質分解)が必要である。この制限を克服するために、標識された抗体および核酸プローブを使用する従来のIHCおよびISHと同様のマルチプレックスワークフローを可能にする、いくつかの標的化されたMSIアプローチが導入されている。TAMSIM(標的化マルチプレックス質量分析イメージング)は、マトリックスなしのレーザー脱離イオン化(LDI)法であり、MSIの間に切断されイオン化される小さな有機光切断可能質量タグに結合体化された抗体を使用する[Thiery,Shchepinovら(2007)Rapid Commun Mass Spectrom 21:823-9]。しかしながら、質量タグは容易に合成されず、3プレックスイメージングのみが示されている[Thiery,Anselmiら(2008)Proteomics 8:3725-34]。さらに、当業者は、質量分析計のレーザーエネルギーの吸収および分析物への移動を促進する過剰の外因的に添加されたマトリックス化合物との分析物共結晶化が、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析と呼ばれる効率的な分析物の気化/イオン化および検出に必要であり[Yao,Scottら(1998)J Am Soc Mass Spectrom 9:805-13、Duenas、Carlucciら(2016)J Am Soc Mass Spectrom 27:1575-8]、したがってTAMSIM法は感度を欠くことを認識するであろう。
【0012】
対照的に、ペプチド質量タグは、標準的な固相合成を使用して容易に生成され、質量は、配列を変更することによって容易に調整され、ペプチドは、一般に高効率でイオン化される。Lemaireらは最初に、Tag-Massと呼ばれる組織の標的化イメージングのための光切断可能なペプチドベースのMSI法を導入した[Lemaire,Stauberら(2007)J Proteome Res 6:2057-67]。しかしながら、プローブ(例えば、抗体)の質量タグ付けは、中間化学リンカーを含む複雑な多工程プロセスである。さらに、ペプチドに使用される光切断可能な核は、最適以下の感度を提供する。これらの欠点は、これまでのところTag-Massの一般的な利用を制限しており、その結果、現在までに達成されているのは2プレックスMSIのみである[Lemaire,Stauberら(2007)J Proteome Res 6:2057-67、Franck,Arafahら(2009)Mol Cell Proteomics 8:2023-33、El Ayed,Bonnelら(2010)Med Sci Monit 16:BR 233-45]。
【0013】
イメージング質量分析は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)と組み合わせた、希土類金属でタグ化された抗体を使用する[Giesen,Wangら(2014)Nat Methods 11:417-22]。このアプローチは、少なくとも32プレックスの組織染色でこれまでの最高のマルチプレックス化レベルを達成している。しかしながら、この方法は、特殊なMS機器を必要とし、検出および分析のために分子を元素に還元(原子化)する破壊的アプローチであり、したがって、生体分子の非標的化直接的MSI分析(本発明の実験例4のように質量タグ付きプローブを使用した標的化MSIと併せて)の実行に適合しない。ICP-MSの総説の例については、Wilschefskiらを参照されたい[WilschefskiおよびBaxter(2019)Clin Biochem Rev 40:115-133]。
イメージング質量サイトメトリーアプローチのさらなる欠点には、プローブ標識プロセスも非常に複雑であり、ポリマーに金属イオンを前負荷し、抗体を部分的に還元し、2つを一緒にカップリングし、ポリマーおよび抗体を複数回精製することを含むことが含まれる[Fluidigm、クイックレファレンス:「Maxpar X8 Antibody Labeling」、2020年9月アクセス、www.fluidigm.com/binaries/content/documents/fluidigm/resources/maxpar-x8-antibody-Iabeling-quick-reference-fldm-00015-rev01/maxpar-x8-antibody-labeling-quick-reference-fldm-00015-rev01/fhiidigm%3Afile]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】KatikireddyおよびO’Sullivan(2011)Methods Mol Biol 784:155-67
【非特許文献2】HowatおよびWarford(2014)Methods 70:1-2
【非特許文献3】Stack,Wangら(2014)Methods 70:46-58
【非特許文献4】Deng、Bigioら(2011)Methods Mol Biol 793:259-72
【非特許文献5】DuggerおよびDickson(2017)Cold Spring Harb Perspect Biol 9
【非特許文献6】Halse、Colebatchら(2018)Sci Rep 8:11158
【非特許文献7】Renwick,Cekanら(2013)J Clin Invest 123:2694-702
【非特許文献8】Zaha(2014)World J Clin Oncol 5:382-92
【非特許文献9】Renwick,Cekanら(2014)Methods Mol Biol 1211:171-87
【非特許文献10】Blom、Paavolainenら(2017)Sci Rep 7:15580
【非特許文献11】Tsurui,Nishimuraら(2000)J Histochem Cytochem 48:653-62
【非特許文献12】Parra,Uraokaら(2017)Sci Rep 7:13380
【非特許文献13】Gorris,Halilovicら(2018)J Immunol 200:347-354
【非特許文献14】Wahlby,Erlandssonら(2002)Cytometry 47:32-41
【非特許文献15】Schubert,Bonnekohら(2006)Nat Biotechnol 24:1270-8
【非特許文献16】Gerdes,Sevinskyら(2013)Proc Natl Acad Sci U S A 110:11982-7
【非特許文献17】Giesen,Wangら(2014)Nat Methods 11:417-22
【非特許文献18】Arentz,Mittalら(2017)Adv Cancer Res 134:27-66
【非特許文献19】Caprioli,Farmerら(1997)Anal Chem 69:4751-60
【非特許文献20】Buchberger,DeLaneyら(2018)Anal Chem 90:240-265
【非特許文献21】Takats,Wisemanら(2004)Science 306:471-3
【非特許文献22】Zavalin,Toddら(2012)J Mass Spectrom 47:i
【非特許文献23】Kompauer,Heilesら(2017)Nat Methods 14:90-96
【非特許文献24】Thiery,Shchepinovら(2007)Rapid Commun Mass Spectrom 21:823-9
【非特許文献25】Thiery,Anselmiら(2008)Proteomics 8:3725-34
【非特許文献26】Yao,Scottら(1998)J Am Soc Mass Spectrom 9:805-13
【非特許文献27】Duenas、Carlucciら(2016)J Am Soc Mass Spectrom 27:1575-8
【非特許文献28】Lemaire,Stauberら(2007)J Proteome Res 6:2057-67
【非特許文献29】Franck,Arafahら(2009)Mol Cell Proteomics 8:2023-33
【非特許文献30】El Ayed,Bonnelら(2010)Med Sci Monit 16:BR 233-45
【非特許文献31】WilschefskiおよびBaxter(2019)Clin Biochem Rev 40:115-133
【非特許文献32】Fluidigm、クイックレファレンス:「Maxpar X8 Antibody Labeling」、2020年9月アクセス、www.fluidigm.com/binaries/content/documents/fluidigm/resources/maxpar-x8-antibody-Iabeling-quick-reference-fldm-00015-rev01/maxpar-x8-antibody-labeling-quick-reference-fldm-00015-rev01/fhiidigm%3Afile
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
【0016】
本発明は、例えば研究用途および病理学者による臨床用途(例えば、切除された腫瘍または腫瘍生検のバイオマーカー分析)のための、組織または細胞における生体分子(例えば、タンパク質およびmiRNA)の標的化検出およびマッピングのための免疫組織化学(IHC)およびインサイツハイブリダイゼーション(ISH)に関する。特に、例えば、組織または細胞内の生体分子を検出およびマッピングするためのモードとしての質量分析イメージング(MSI)の使用である。より具体的には、本発明の分野は、抗体および核酸などのプローブに結合され、マルチプレックス免疫組織化学およびインサイツハイブリダイゼーションを達成するために使用され、MSIを検出/読み出しの様式として用いる光切断可能な質量タグ試薬に関する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、単一スライド上の組織サンプル中の5つまたはそれを超える異なるタイプのバイオマーカーを同時検出するためのマルチプレックス方法を提供し、当該方法は、a)単一スライド上に組織サンプルを提供することと、b)組織サンプルへの抗体の結合をもたらすために当該組織サンプルを5つまたはそれを超える異なる抗体と接触させることであって、当該抗体の各々が異なるバイオマーカーと反応性であり、当該抗体の各々が固有の質量タグにコンジュゲートされていることと、c)質量分析イメージングを使用して、当該質量タグまたはその断片を分子イオンとして検出することと、を含む。一実施形態では、当該方法は、工程a)の後であるが工程b)の前に、当該組織サンプルに対して直接的質量分析イメージングを実施すること(すなわち、組織の画像化が単一の標本で達成される)をさらに含む。一実施形態では、当該5つまたはそれを超える抗体は混合物中にあり、工程b)で当該組織サンプルを当該混合物と接触させる。一実施形態では、当該質量タグは非希土類金属質量タグである。一実施形態では、当該質量タグは複数のアミノ酸を含む。一実施形態では、当該単一スライドにマウントする前に、当該組織サンプルを新鮮凍結し、薄片化した。一実施形態では、当該スライドは金を含む。一実施形態では、当該スライドは金層を有するガラススライドである。一実施形態では、当該単一スライドにマウントする前に、当該組織サンプルをホルマリン固定し、パラフィン包埋し、薄片化した。一実施形態では、当該組織サンプルは、当該サンプルを抗体と接触させる工程の前に処理に供され、当該処理は脱パラフィンを含む。一実施形態では、当該脱パラフィンはキシレンを用いて行われる。一実施形態では、組織サンプルはさらに処理に供され、当該処理は再水和を含む。一実施形態では、当該再水和は一連のエタノール/水混合物および水性生理食塩水緩衝液を用いて行われる。一実施形態では、組織サンプルはさらに処理に供され、当該処理は抗原賦活化を含む。一実施形態では、当該抗原賦活化は、クエン酸緩衝液(pH6)中での加熱によって行われる。一実施形態では、当該抗原賦活化はギ酸を使用して行われる。一実施形態では、質量タグにコンジュゲートされた当該抗体は以下の一般構造:
【化1】
を有し、Xはスペーサーである。
一実施形態では、工程c)の前にマトリックス化合物が当該質量タグに付与される。一実施形態では、当該マトリックス化合物は、アルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)および3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸)からなる群から選択される。一実施形態では、当該マトリックス化合物は昇華によって付与される。一実施形態では、組織サンプルは、サンプルをマトリックス化合物と接触させる工程の後に処理に供され、当該処理はマトリックス再結晶化を含む。一実施形態では、当該質量タグは光切断可能である。一実施形態では、本方法は、工程c)の前に当該質量タグの少なくとも一部を光切断するように当該質量タグに光を照射することをさらに含む。一実施形態では、当該組織は腫瘍由来である。一実施形態では、当該腫瘍は乳房腫瘍(breast tumor)である。一実施形態では、当該5つまたはそれを超える抗体の少なくとも1つは、当該質量タグに加えて蛍光部分を含む。一実施形態では、当該異なる抗体の数は8つまたはそれを超える。一実施形態では、当該異なる抗体のサブセットは、i)エストロゲン受容体(ER)、ii)プロゲステロン受容体(PR)、iii)ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)およびiv)Ki67と反応する。一実施形態では、当該異なる抗体のサブセットは、T細胞バイオマーカーである、i)CD3(T細胞)、ii)CD4(Tヘルパー)、iii)CD8(細胞傷害性T細胞)およびiv)CD45RO(メモリーT細胞(eells))と反応する。一実施形態では、当該異なる抗体の1つはB細胞バイオマーカーCD20と反応する。一実施形態では、当該異なる抗体の1つはマクロファージバイオマーカーCD68と反応する。一実施形態では、当該異なる抗体の1つは免疫チェックポイント分子と反応する。一実施形態では、当該免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27およびTIM3からなる群から選択される。
【0018】
一実施形態では、本発明は、単一スライド上の組織サンプル中のヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)タンパク質とエストロゲン受容体(ER)タンパク質とを同時検出するためのマルチプレックス方法を提供し、当該方法は、a)単一スライド上に組織サンプルを提供することと、b)組織サンプルをHER2タンパク質特異的抗体と接触させることであって、当該抗体が第1の非希土類金属質量タグにコンジュゲートされ、当該質量タグが複数のアミノ酸を含むことと、c)サンプルをER特異的抗体と接触させることであって、当該抗体が第2の非希土類金属質量にタグコンジュゲートされ、当該質量タグが第2の複数のアミノ酸を含み、当該第2の複数のアミノ酸が当該第1の複数のアミノ酸とは異なる質量を有することと、d)質量分析イメージングを使用して、当該質量タグまたはその断片を分子イオンとして検出することと、を含む。一実施形態では、工程b)およびc)は同時に行われる。一実施形態では、工程a)の後であるが工程b)の前に、当該組織サンプルに対して直接的質量分析イメージングを実施することをさらに含む。一実施形態では、当該単一スライドにマウントする前に、当該組織サンプルを新鮮凍結し、薄片化した。一実施形態では、当該スライドは金を含む。一実施形態では、当該スライドは金層を有するガラススライドである。一実施形態では、当該単一スライドにマウントする前に、当該組織サンプルをホルマリン固定し、パラフィン包埋し、薄片化した。一実施形態では、当該組織サンプルは、当該サンプルを抗体と接触させる工程の前に処理に供され、当該処理は脱パラフィンを含む。一実施形態では、当該脱パラフィンはキシレンを用いて行われる。一実施形態では、組織サンプルはさらに処理に供され、当該処理は再水和を含む。一実施形態では、当該再水和は一連のエタノール/水混合物および水性生理食塩水緩衝液を用いて行われる。一実施形態では、組織サンプルはさらに処理に供され、当該処理は抗原賦活化を含む。一実施形態では、当該抗原賦活化は、クエン酸緩衝液(pH6)中での加熱によって行われる。一実施形態では、当該抗原賦活化はギ酸を使用して行われる。一実施形態では、質量タグにコンジュゲートされた当該抗体は以下の一般構造:
【化2】
を有し、Xはスペーサーである。
一実施形態では、工程d)の前にマトリックス化合物が当該質量タグに付与される。一実施形態では、当該マトリックス化合物は、アルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)および3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸)からなる群から選択される。一実施形態では、当該マトリックス化合物は昇華によって付与される。一実施形態では、組織サンプルは、サンプルをマトリックス化合物と接触させる工程の後に処理に供され、当該処理はマトリックス再結晶化を含む。一実施形態では、当該質量タグは光切断可能である。一実施形態では、本方法は、工程d)の前に当該質量タグの少なくとも一部を光切断するように当該質量タグに光を照射することをさらに含む。一実施形態では、当該組織は腫瘍由来である。一実施形態では、当該腫瘍は乳房腫瘍である。一実施形態では、工程d)の前に、当該組織を追加の異なる抗体と接触させることをさらに含み、当該追加の異なる抗体の各々は、非希土類金属質量タグにコンジュゲートされ、当該質量タグは複数のアミノ酸を含む。一実施形態では、当該異なる抗体の数は8つまたはそれを超える。一実施形態では、当該異なる抗体の1つはプロゲステロン受容体(PR)と反応する。一実施形態では、当該異なる抗体のサブセットは、T細胞バイオマーカーである、i)CD3(T細胞)、ii)CD4(Tヘルパー)、iii)CD8(細胞傷害性T細胞)およびiv)CD45RO(メモリーT細胞)と反応する。一実施形態では、当該異なる抗体の1つはB細胞バイオマーカーCD20と反応する。一実施形態では、当該異なる抗体の1つはマクロファージバイオマーカーCD68と反応する。一実施形態では、当該異なる抗体の1つは免疫チェックポイント分子と反応する。一実施形態では、当該免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27およびTIM3からなる群から選択される。
【0019】
一実施形態では、本発明は、単一スライド上の腫瘍中の異なるタイプの腫瘍浸潤免疫細胞を同時検出するためのマルチプレックス方法を提供し、当該方法は、a)単一スライド上に腫瘍組織サンプルを提供することと、b)組織サンプルへの抗体の結合をもたらすために当該組織サンプルを第1のタイプの腫瘍浸潤免疫細胞に特異的な第1の抗体と接触させることであって、当該抗体が第1の非希土類金属質量タグにコンジュゲートされ、当該質量タグが複数のアミノ酸を含むことと、c)組織サンプルへの抗体の結合をもたらすために組織サンプルを第2のタイプの腫瘍浸潤免疫細胞に特異的な第2の抗体と接触させることであって、当該抗体が第2の非希土類金属質量タグにコンジュゲートされ、当該質量タグが複数のアミノ酸を含むことと、d)質量分析イメージングを使用して、当該質量タグまたはその断片を分子イオンとして検出することと、を含む。一実施形態では、工程b)およびc)は同時に行われる。一実施形態では、工程a)の後であるが工程b)の前に、当該組織サンプルに対して直接的質量分析イメージングを実施することをさらに含む。一実施形態では、当該単一スライドにマウントする前に、当該組織サンプルを新鮮凍結し、薄片化した。一実施形態では、当該スライドは金を含む。一実施形態では、当該スライドは金層を有するガラススライドである。一実施形態では、当該単一スライドにマウントする前に、当該組織サンプルをホルマリン固定し、パラフィン包埋し、薄片化した。一実施形態では、当該組織サンプルは、当該サンプルを抗体と接触させる工程の前に処理に供され、当該処理は脱パラフィンを含む。一実施形態では、当該脱パラフィンはキシレンを用いて行われる。一実施形態では、組織サンプルはさらに処理に供され、当該処理は再水和を含む。一実施形態では、当該再水和は一連のエタノール/水混合物および水性生理食塩水緩衝液を用いて行われる。一実施形態では、組織サンプルはさらに処理に供され、当該処理は抗原賦活化を含む。一実施形態では、当該抗原賦活化は、クエン酸緩衝液(pH6)中での加熱によって行われる。一実施形態では、当該抗原賦活化はギ酸を使用して行われる。一実施形態では、質量タグにコンジュゲートされた当該抗体は以下の一般構造:
【化3】
を有し、Xはスペーサーである。
一実施形態では、工程d)の前にマトリックス化合物が当該質量タグに付与される。一実施形態では、当該マトリックス化合物は、アルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)および3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸)からなる群から選択される。一実施形態では、当該マトリックス化合物は昇華によって付与される。一実施形態では、組織サンプルは、サンプルをマトリックス化合物と接触させる工程の後に処理に供され、当該処理はマトリックス再結晶化を含む。一実施形態では、当該質量タグは光切断可能である。一実施形態では、本方法は、工程d)の前に当該質量タグの少なくとも一部を光切断するように当該質量タグに光を照射することをさらに含む。一実施形態では、当該腫瘍は肺腫瘍である。一実施形態では、当該腫瘍は乳房腫瘍である。一実施形態では、第1の抗体はCD3に特異的であり、当該第2の抗体はCD8に特異的である。一実施形態では、工程d)の前に、当該組織を追加の異なる抗体と接触させることをさらに含み、当該追加の異なる抗体の各々は、非希土類金属質量タグにコンジュゲートされ、当該質量タグは複数のアミノ酸を含む。一実施形態では、当該追加の異なる抗体の1つはCD4と反応する。一実施形態では、当該追加の異なる抗体の1つはマクロファージバイオマーカーCD68と反応する。一実施形態では、当該追加の異なる抗体の1つは免疫チェックポイント分子と反応する。一実施形態では、当該免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27およびTIM3からなる群から選択される。一実施形態では、本発明は、i)光切断可能なリンカーを介した質量タグ、およびii)フルオロフォアにコンジュゲートした抗体を含む組成物を提供する。一実施形態では、当該抗体は、i)エストロゲン受容体(ER)、ii)プロゲステロン受容体(PR)、iii)ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、およびiv)Ki67からなる群から選択されるバイオマーカーと反応する。一実施形態では、当該抗体は、i)CD3(T細胞)、ii)CD4(Tヘルパー)、iii)CD8(細胞傷害性T細胞)、およびiv)CD45RO(メモリーT細胞)からなる群から選択されるT細胞バイオマーカーと反応する。一実施形態では、当該抗体は免疫チェックポイント分子と反応する。一実施形態では、当該免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27およびTIM3からなる群から選択される。
【0020】
一実施形態では、本発明は、単一スライド上の腫瘍組織上の免疫チェックポイント分子を検出するマルチプレックス方法を提供し、当該方法は、a)単一スライド上に腫瘍組織サンプルを提供することと、b)当該組織サンプルを複数の異なる抗体を含む混合物と接触させることであって、各異なる抗体が異なる免疫チェックポイント分子と反応性であり、当該抗体の各々が非希土類金属質量タグにコンジュゲートされ、当該質量タグが複数のアミノ酸を含むことと、c)質量分析イメージングを使用して、当該質量タグまたはその断片を分子イオンとして検出することと、を含む。一実施形態では、当該複数の異なる抗体の1つは、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27、およびTIM3からなる群から選択される免疫チェックポイント分子と反応する。一実施形態では、当該腫瘍組織は、ヒト患者からの生検を含む。一実施形態では、当該生検腫瘍組織はPD-L1に対する抗体と反応する。一実施形態では、PD-L1に特異的な免疫チェックポイント阻害剤で当該ヒト患者を処置することをさらに含む。一実施形態では、PD-L1に特異的な当該チェックポイント阻害剤が、アテゾリズマブ、アベルマブおよびデュルバルマブからなる群から選択される。
【0021】
一実施形態では、本発明は、組織サンプル中の3つまたはそれを超える(およびより好ましくは5つまたはそれを超える)異なるバイオマーカーを同時検出するためのマルチプレックス方法を提供し、当該方法は、a)組織サンプルを提供することと、b)当該組織サンプルを3つまたはそれを超える(およびより好ましくは5つまたはそれを超える)異なるプローブと接触させて、プローブされた組織サンプルを作製することであって、当該プローブの各々が固有の質量タグにコンジュゲートされており、少なくとも3つまたはそれを超える(およびより好ましくは5つまたはそれを超える)当該プローブが当該組織サンプル中の異なるバイオマーカーにそれぞれ結合することと、c)当該プローブされた組織サンプルの質量分析イメージング(例えば、組織イメージングは、単一の標本で達成される)を使用して、少なくとも3つまたはそれを超える(および好ましくは5つまたはそれを超える)当該結合したプローブから当該固有の質量タグまたはその断片を検出することであって、当該質量タグは分子イオンとして検出されることと、を含む。一実施形態では、当該組織サンプルは、薄い組織切片である。一実施形態では、工程b)の前に当該組織サンプルを凍結し、薄片化した。一実施形態では、工程b)の前に当該組織サンプルをホルマリン固定し、薄片化した。一実施形態では、工程b)の前に当該組織サンプルをホルマリン固定し、パラフィン包埋し、薄片化した。一実施形態では、工程b)の前に当該組織サンプルをスライドにマウントする。一実施形態では、当該スライドは金を含む。一実施形態では、当該スライドは金層を有するガラススライドである。一実施形態では、工程c)の前に当該組織サンプルをスライドにマウントする。一実施形態では、当該スライドは金を含む。一実施形態では、当該スライドは金層を有するガラススライドである。一実施形態では、当該組織サンプルは腫瘍由来である。一実施形態では、当該腫瘍は乳房腫瘍である。一実施形態では、当該5つまたはそれを超えるプローブは混合物中にあり、工程b)で当該組織サンプルを当該混合物と接触させて、当該プローブされた組織サンプルを作製する。一実施形態では、質量タグにコンジュゲートされた当該プローブは以下の一般構造:
【化4】
を有し、Xはスペーサーである。
一実施形態では、当該5つまたはそれを超えるプローブの少なくとも1つは、当該質量タグに加えて蛍光部分を含む。一実施形態では、当該プローブは、タンパク質および核酸からなる群から選択される。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは抗体である。一実施形態では、当該抗体は、組換え抗体、ナノボディ、一本鎖フラグメント可変(scFv)抗体、単一ドメイン抗体、およびVHH単一ドメイン抗体からなる群から選択される。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、アフィボディ、受容体およびリガンドからなる群から選択される。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、アプタマーである。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、RNA標的に結合する。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、miRNA標的に結合する。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、DNA標的に結合する。一実施形態では、当該質量タグは非希土類金属質量タグである。一実施形態では、当該質量タグは複数のアミノ酸を含む。一実施形態では、当該質量タグは光切断可能である。一実施形態では、本方法は、工程c)の前に当該質量タグの少なくとも一部を光切断するように当該質量タグに光を照射することをさらに含む。一実施形態では、工程a)の後であるが工程b)の前に、当該組織サンプルに対して質量分析イメージングを実施することをさらに含む。一実施形態では、工程c)の前にマトリックス化合物が当該プローブされた組織サンプルに付与される。一実施形態では、当該マトリックス化合物は、アルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)および3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸)からなる群から選択される。一実施形態では、当該マトリックス化合物は昇華によって付与される。一実施形態では、当該プローブされた組織サンプルは、当該プローブされた組織サンプルに当該マトリックス化合物を付与する工程の後に処理に供され、当該処理はマトリックス再結晶化を含む。一実施形態では、当該組織サンプルは、当該パラフィン包埋後および工程b)の前に処理に供され、当該処理は脱パラフィンを含む。一実施形態では、当該脱パラフィンはキシレンを用いて行われる。一実施形態では、当該組織サンプルはさらに処理に供され、当該処理は再水和を含む。一実施形態では、当該再水和は一連のエタノール/水混合物および水性生理食塩水緩衝液を用いて行われる。一実施形態では、当該組織サンプルはさらに処理に供され、当該処理は抗原賦活化を含む。一実施形態では、当該抗原賦活化は、クエン酸緩衝液(pH6)中での加熱によって行われる。一実施形態では、当該抗原賦活化はギ酸を使用して行われる。一実施形態では、当該異なるプローブの数は10またはそれを超える。一実施形態では、当該異なるプローブのサブセットは、i)エストロゲン受容体(ER)、ii)プロゲステロン受容体(PR)、iii)ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)およびiv)Ki67に結合することができる。一実施形態では、当該異なるプローブのサブセットは、T細胞バイオマーカーである、i)CD3(T細胞)、ii)CD4(Tヘルパー)、iii)CD8(細胞傷害性T細胞)およびiv)CD45RO(メモリーT細胞)に結合することができる。一実施形態では、当該異なるプローブの1つは、B細胞バイオマーカーCD20に結合することができる。一実施形態では、当該異なるプローブの1つは、マクロファージバイオマーカーCD68に結合することができる。一実施形態では、当該異なるプローブの1つは、免疫チェックポイント分子に結合することができる。一実施形態では、当該免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27およびTIM3からなる群から選択される。
【0022】
一実施形態では、本発明は、単一スライド上の組織サンプル中の異なるホルモン受容体を同時検出するためのマルチプレックス方法を提供し、当該方法は、a)単一スライド上にマウントした組織サンプルを提供することと、b)当該組織サンプルを、第1のホルモン受容体に結合することができる第1のプローブと接触させることであって、当該プローブが第1の非希土類金属質量タグにコンジュゲートされ、当該質量タグが複数のアミノ酸を含むことと、c)当該組織サンプルを、第2のホルモン受容体に結合することができる第2のプローブと接触させることであって、当該プローブが第2の非希土類金属質量タグにコンジュゲートされ、当該質量タグが第2の複数のアミノ酸を含み、当該第2のホルモン受容体が当該第1のホルモン受容体と異なり、当該第2の複数のアミノ酸が当該第1の複数のアミノ酸とは異なる質量を有し、工程b)およびc)が一緒になって、プローブされた組織サンプルを作製することと、d)質量分析イメージングを使用して、少なくとも1つの当該質量タグまたはその断片を分子イオンとして検出することと、を含む。一実施形態では、当該組織サンプルは、薄い組織切片である。一実施形態では、当該スライドにマウントする前に当該組織サンプルを凍結し、薄片化した。一実施形態では、当該スライドにマウントする前に当該組織サンプルをホルマリン固定し、薄片化した。一実施形態では、当該スライドにマウントする前に当該組織サンプルをホルマリン固定し、パラフィン包埋し、薄片化した。一実施形態では、当該スライドは金を含む。一実施形態では、当該スライドは金層を有するガラススライドである。一実施形態では、当該組織サンプルは腫瘍由来である。一実施形態では、当該腫瘍は乳房腫瘍である。一実施形態では、非希土類金属質量タグにコンジュゲートされた当該プローブは以下の一般構造:
【化5】
を有し、Xはスペーサーである。
一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、当該非希土類金属質量タグに加えて蛍光部分を含む。一実施形態では、当該プローブは、タンパク質および核酸からなる群から選択される。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは抗体である。一実施形態では、当該抗体は、組換え抗体、ナノボディ、一本鎖フラグメント可変(scFv)抗体、単一ドメイン抗体、およびVHH単一ドメイン抗体からなる群から選択される。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、アフィボディ、受容体およびリガンドからなる群から選択される。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、アプタマーである。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、RNA標的に結合することができる。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、miRNA標的に結合することができる。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、DNA標的に結合することができる。一実施形態では、当該非希土類金属質量タグは、光切断可能である。一実施形態では、本方法は、工程d)の前に当該非希土類金属質量タグの少なくとも一部を光切断するように当該非希土類金属質量タグに光を照射することをさらに含む。一実施形態では、工程b)およびc)は同時に行われ、当該プローブされた組織サンプルを作製する。一実施形態では、工程a)の後であるが工程b)の前に、当該組織サンプルに対して質量分析イメージングを実施することをさらに含む。一実施形態では、工程d)の前にマトリックス化合物が当該プローブされた組織サンプルに付与される。一実施形態では、当該マトリックス化合物は、アルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)および3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸)からなる群から選択される。一実施形態では、当該マトリックス化合物は昇華によって付与される。一実施形態では、当該プローブされた組織サンプルは、当該プローブされた組織サンプルに当該マトリックス化合物を付与する工程の後に処理に供され、当該処理はマトリックス再結晶化を含む。一実施形態では、当該組織サンプルは、当該パラフィン包埋後および工程b)の前に処理に供され、当該処理は脱パラフィンを含む。一実施形態では、当該脱パラフィンはキシレンを用いて行われる。一実施形態では、組織サンプルはさらに処理に供され、当該処理は再水和を含む。一実施形態では、当該再水和は一連のエタノール/水混合物および水性生理食塩水緩衝液を用いて行われる。一実施形態では、組織サンプルはさらに処理に供され、当該処理は抗原賦活化を含む。一実施形態では、当該抗原賦活化は、クエン酸緩衝液(pH6)中での加熱によって行われる。一実施形態では、当該抗原賦活化はギ酸を使用して行われる。一実施形態では、当該第1のプローブはエストロゲン受容体(ER)に結合することができ、当該第2のプローブはプロゲステロン受容体(PR)に結合することができる。一実施形態では、工程d)の前に、当該組織サンプルを追加の異なるプローブと接触させることをさらに含み、当該追加の異なるプローブの各々は、異なる非希土類金属質量タグにコンジュゲートされ、当該質量タグは複数のアミノ酸を含み、各質量タグの質量は異なる。一実施形態では、当該プローブの数は10またはそれを超える。一実施形態では、当該追加の異なるプローブのサブセットは、i)ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)およびii)Ki67に結合することができる。一実施形態では、当該追加の異なるプローブのサブセットは、T細胞バイオマーカーである、i)CD3(T細胞)、ii)CD4(Tヘルパー)、iii)CD8(細胞傷害性T細胞)およびiv)CD45RO(メモリーT細胞)のに結合することができる。一実施形態では、当該追加の異なるプローブの1つは、B細胞バイオマーカーCD20に結合することができる。一実施形態では、当該追加の異なるプローブの1つは、マクロファージバイオマーカーCD68に結合することができる。一実施形態では、当該追加の異なるプローブの1つは、免疫チェックポイント分子に結合することができる。一実施形態では、当該免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27およびTIM3からなる群から選択される。
【0023】
一実施形態では、本発明は、単一スライド上の腫瘍組織中の異なるタイプの腫瘍浸潤免疫細胞を同時検出するためのマルチプレックス方法を提供し、当該方法は、a)単一スライド上にマウントした腫瘍組織サンプルを提供することと、b)当該腫瘍組織サンプルを、第1の腫瘍浸潤免疫細胞型に結合することができる第1のプローブと接触させることであって、当該プローブが第1の非希土類金属質量タグにコンジュゲートされ、当該質量タグが複数のアミノ酸を含むことと、c)当該腫瘍組織サンプルを、第2の腫瘍浸潤免疫細胞型に結合することができる第2のプローブと接触させることであって、当該プローブが第2の非希土類金属質量タグにコンジュゲートされ、当該質量タグが第2の複数のアミノ酸を含み、当該第2の腫瘍浸潤免疫細胞が当該第1の腫瘍浸潤免疫細胞とは異なる型であり、当該第2の複数のアミノ酸が当該第1の複数のアミノ酸とは異なる質量を有し、工程b)およびc)が一緒になって、プローブされた腫瘍組織サンプルを作製することと、d)質量分析イメージングを使用して、当該質量タグまたはその断片の少なくとも1つを分子イオンとして検出することと、を含む。一実施形態では、当該腫瘍組織サンプルは、薄い組織切片である。一実施形態では、当該スライドにマウントする前に当該腫瘍組織サンプルを凍結し、薄片化した。一実施形態では、当該スライドにマウントする前に当該腫瘍組織サンプルをホルマリン固定し、薄片化した。一実施形態では、当該スライドにマウントする前に当該腫瘍組織サンプルをホルマリン固定し、パラフィン包埋し、薄片化した。一実施形態では、当該スライドは金を含む。一実施形態では、当該スライドは金層を有するガラススライドである。一実施形態では、当該腫瘍組織サンプルは乳房腫瘍由来である。一実施形態では、非希土類金属質量タグにコンジュゲートされた当該プローブは以下の一般構造:
【化6】
を有し、Xはスペーサーである。
一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、当該非希土類金属質量タグに加えて蛍光部分を含む。一実施形態では、当該プローブは、タンパク質および核酸からなる群から選択される。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは抗体である。一実施形態では、当該抗体は、組換え抗体、ナノボディ、一本鎖フラグメント可変(scFv)抗体、単一ドメイン抗体、およびVHH単一ドメイン抗体からなる群から選択される。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、アフィボディ、受容体およびリガンドからなる群から選択される。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、アプタマーである。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、RNA標的に結合することができる。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、miRNA標的に結合することができる。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは、DNA標的に結合することができる。一実施形態では、当該非希土類金属質量タグは、光切断可能である。一実施形態では、本方法は、工程d)の前に当該非希土類金属質量タグの少なくとも一部を光切断するように当該非希土類金属質量タグに光を照射することをさらに含む。一実施形態では、工程b)およびc)は同時に行われ、当該プローブされた腫瘍組織サンプルを作製する。一実施形態では、工程a)の後であるが工程b)の前に、当該腫瘍組織サンプルに対して質量分析イメージングを実施することをさらに含む。一実施形態では、工程d)の前にマトリックス化合物が当該プローブされた腫瘍組織サンプルに付与される。一実施形態では、当該マトリックス化合物は、アルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)および3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸)からなる群から選択される。一実施形態では、当該マトリックス化合物は昇華によって付与される。一実施形態では、当該プローブされた腫瘍組織サンプルは、当該プローブされた腫瘍組織サンプルに当該マトリックス化合物を付与する工程の後に処理に供され、当該処理はマトリックス再結晶化を含む。一実施形態では、当該腫瘍組織サンプルは、当該パラフィン包埋後および工程b)の前に処理に供され、当該処理は脱パラフィンを含む。一実施形態では、当該脱パラフィンはキシレンを用いて行われる。一実施形態では、腫瘍組織サンプルはさらに処理に供され、当該処理は再水和を含む。一実施形態では、当該再水和は一連のエタノール/水混合物および水性生理食塩水緩衝液を用いて行われる。一実施形態では、腫瘍組織サンプルはさらに処理に供され、当該処理は抗原賦活化を含む。一実施形態では、当該抗原賦活化は、クエン酸緩衝液(pH6)中での加熱によって行われる。一実施形態では、当該抗原賦活化はギ酸を使用して行われる。一実施形態では、当該第1のプローブはCD4に結合することができ、当該第2のプローブはCD8に結合することができる。一実施形態では、工程d)の前に、当該腫瘍組織サンプルを追加の異なるプローブと接触させることをさらに含み、当該追加の異なるプローブの各々は、異なる非希土類金属質量タグにコンジュゲートされ、当該質量タグは複数のアミノ酸を含み、各質量タグの質量は異なる。一実施形態では、当該プローブの数は10またはそれを超える。一実施形態では、当該追加の異なるプローブの1つは、T細胞バイオマーカーCD3に結合することができる。一実施形態では、当該追加の異なるプローブの1つは、マクロファージバイオマーカーCD68に結合することができる。一実施形態では、当該追加の異なるプローブの1つは、免疫チェックポイント分子に結合することができる。一実施形態では、当該免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27およびTIM3からなる群から選択される。
【0024】
一実施形態では、本発明は、i)光切断可能なリンカーを介した質量タグ、およびii)フルオロフォアにコンジュゲートしたプローブを含む組成物を提供する。一実施形態では、当該プローブは、i)エストロゲン受容体(ER)、ii)プロゲステロン受容体(PR)、iii)ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、およびiv)Ki67からなる群から選択されるバイオマーカーに結合することができる。一実施形態では、当該プローブは、i)CD3(T細胞)、ii)CD4(Tヘルパー)、iii)CD8(細胞傷害性T細胞)、およびiv)CD45RO(メモリーT細胞)からなる群から選択されるT細胞バイオマーカーに結合することができる。一実施形態では、当該プローブは、免疫チェックポイント分子に結合することができる。一実施形態では、当該免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27およびTIM3からなる群から選択される。
【0025】
一実施形態では、本発明は、単一スライド上の腫瘍組織上の異なる免疫チェックポイント分子を検出するマルチプレックス方法を提供し、当該方法は、a)単一スライド上に腫瘍組織サンプルを提供することと、b)当該腫瘍組織サンプルを複数の異なるプローブを含む混合物と接触させることであって、各異なるプローブが異なる免疫チェックポイント分子に結合することができ、当該プローブの各々が非希土類金属質量タグにコンジュゲートされ、当該質量タグが複数のアミノ酸を含むことと、c)質量分析イメージングを使用して、当該質量タグまたはその断片の少なくとも1つを分子イオンとして検出することと、を含む。一実施形態では、当該複数の異なるプローブの1つは、PD-1、PD-L1、PDL2、CTLA-4、OX40、CD27、およびTIM3からなる群から選択される免疫チェックポイント分子に結合することができる。一実施形態では、当該腫瘍組織サンプルは、ヒト患者からの生検を含む。一実施形態では、当該腫瘍組織生検は、PD-L1の質量タグ付きプローブに結合する。一実施形態では、PD-L1に特異的な免疫チェックポイント阻害剤で当該ヒト患者を処置することをさらに含む。一実施形態では、PD-L1に特異的な当該チェックポイント阻害剤が、アテゾリズマブ、アベルマブおよびデュルバルマブ(durvalurnab)からなる群から選択される。一実施形態では、当該プローブの少なくとも1つは抗体である。一実施形態では、当該抗体は、組換え抗体、ナノボディ、一本鎖フラグメント可変(scFv)抗体、単一ドメイン抗体、およびVHH単一ドメイン抗体からなる群から選択される。
【0026】
一実施形態では、本発明は、組織サンプル中の3つまたはそれを超える(およびより好ましくは5つまたはそれを超える)異なるタイプの炭水化物を同時検出するためのマルチプレックス方法を提供し、当該方法は、a)組織サンプルを提供することと、b)組織サンプルへの炭水化物結合タンパク質の結合をもたらすために当該組織サンプルを3つまたはそれを超える(およびより好ましくは5つまたはそれを超える)異なる当該炭水化物結合タンパク質と接触させて、プローブされた組織サンプルを作製することであって、当該炭水化物結合タンパク質の各々が異なる炭水化物と反応性であり、当該炭水化物結合タンパク質の各々が固有の質量タグコンジュゲートされることと、c)当該プローブされた組織サンプルの質量分析イメージングを使用して、当該質量タグまたはその断片を分子イオンとして検出することと、を含む。一実施形態では、当該組織サンプルは、薄い組織切片である。一実施形態では、工程b)の前に当該組織サンプルを凍結し、薄片化した。一実施形態では、工程b)の前に当該組織サンプルをホルマリン固定し、薄片化した。一実施形態では、工程b)の前に当該組織サンプルをホルマリン固定し、パラフィン包埋し、薄片化した。一実施形態では、工程b)の前に当該組織サンプルをスライドにマウントする。一実施形態では、当該スライドは金を含む。一実施形態では、当該スライドは金層を有するガラススライドである。一実施形態では、工程c)の前に当該組織サンプルをスライドにマウントする。一実施形態では、当該スライドは金を含む。一実施形態では、当該スライドは金層を有するガラススライドである。一実施形態では、当該組織サンプルは腫瘍由来である。一実施形態では、当該腫瘍は乳房腫瘍である。一実施形態では、質量タグにコンジュゲートされた当該炭水化物結合タンパク質は、以下の一般構造:
【化7】
を有し、Xはスペーサーであり、CBPは炭水化物結合タンパク質である。
一実施形態では、当該3つまたはそれを超える(およびより好ましくは5つまたはそれを超える)炭水化物結合タンパク質は混合物中にあり、工程b)で当該組織サンプルを当該混合物と接触させて、当該プローブされた組織サンプルを作製する。一実施形態では、当該混合物は、1つまたはそれを超えるプローブをさらに含み、当該プローブの各々は、当該組織内の異なる標的と反応性であり、当該プローブの各々は、固有の質量タグにコンジュゲートされている。一実施形態では、当該5つまたはそれを超える炭水化物結合タンパク質の少なくとも1つは、当該質量タグに加えて蛍光部分を含む。一実施形態では、当該5つまたはそれを超える炭水化物結合タンパク質の少なくとも1つはレクチンである。一実施形態では、当該質量タグは非希土類金属質量タグである。一実施形態では、当該質量タグは複数のアミノ酸を含む。一実施形態では、当該質量タグは光切断可能である。一実施形態では、本方法は、工程c)の前に当該質量タグの少なくとも一部を光切断するように当該質量タグに光を照射することをさらに含む。
【0027】
一実施形態では、本発明は、同じ組織サンプル中の異なる生体分子またはその断片を検出するためのマルチオミック方法であって、当該方法は、a)組織サンプルを提供することと、b)当該組織サンプルの少なくとも一部に消化剤を適用することと、c)当該組織サンプルに対して質量分析イメージングを実施することと、d)当該組織サンプルへのプローブの結合をもたらすために当該組織サンプルを3つまたはそれを超える(およびより好ましくは5つまたはそれを超える)異なるプローブと接触させて、プローブされた組織サンプルを作製することであって、当該プローブの各々が当該組織サンプル内の異なる標的と反応性であり、当該プローブの各々が固有の質量タグにコンジュゲートされていることと、e)当該プローブされた組織サンプルの質量分析イメージングを使用して、当該質量タグまたはその断片を分子イオンとして検出することと、を含む。一実施形態では、当該消化剤は酵素である。一実施形態では、当該酵素は、ヌクレアーゼ、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼおよびグリコシダーゼからなる群から選択される。一実施形態では、当該消化剤は化学物質である。一実施形態では、当該化学物質は、臭化シアン(CNBr)およびヒドロキシルアミンからなる群から選択される。一実施形態では、異なる消化剤の混合物は、工程b)で代わりに適用される。一実施形態では、工程b)およびc)は、代わりに、工程e)の後にそれぞれ実行される。一実施形態では、当該組織サンプルは、当該消化剤を当該組織サンプルに付与する当該工程の前に、工程e)の後に処理にさらに供され、当該処理は、当該結合したプローブを当該組織サンプルから分離することを含む。一実施形態では、当該結合したプローブの当該分離は、当該組織サンプルを変性処理に供することを含む。一実施形態では、当該変性処理は、カオトロピック剤、pH≦5の溶液、pH≧10の溶液、還元剤、酸化剤、熱、有機溶媒、および界面活性剤からなる群から選択される。一実施形態では、当該組織サンプルは、薄い組織切片である。一実施形態では、工程b)の前に当該組織サンプルを凍結し、薄片化した。一実施形態では、工程b)の前に当該組織サンプルをホルマリン固定し、薄片化した。一実施形態では、工程b)の前に当該組織サンプルをホルマリン固定し、パラフィン包埋し、薄片化した。一実施形態では、工程b)の前に当該組織サンプルをスライドにマウントする。一実施形態では、当該スライドは金を含む。一実施形態では、当該スライドは金層を有するガラススライドである。一実施形態では、当該組織サンプルは腫瘍由来である。一実施形態では、当該腫瘍は乳房腫瘍である。一実施形態では、質量タグにコンジュゲートされた当該プローブは以下の一般構造:
【化8】
を有し、Xはスペーサーである。
一実施形態では、当該3つまたはそれを超える(およびより好ましくは5つまたはそれを超える)プローブは混合物中にあり、工程d)で当該組織サンプルを当該混合物と接触させて、当該プローブされた組織サンプルを作製する。一実施形態では、当該5つまたはそれを超えるプローブの少なくとも1つは、当該質量タグに加えて蛍光部分を含む。一実施形態では、当該プローブは、タンパク質および核酸からなる群から選択される。一実施形態では、当該タンパク質プローブの少なくとも1つは、抗体、組換え抗体、アフィボディ、ナノボディ、一本鎖フラグメント可変(scFv)抗体、単一ドメイン抗体、VHH単一ドメイン抗体、受容体、リガンド、および炭水化物結合タンパク質からなる群から選択される。一実施形態では、当該核酸プローブの少なくとも1つは、アプタマーである。一実施形態では、当該核酸プローブの少なくとも1つは、RNA標的に結合する。一実施形態では、当該核酸プローブの少なくとも1つは、miRNA標的に結合する。一実施形態では、当該核酸プローブの少なくとも1つは、DNA標的に結合する。一実施形態では、当該質量タグは非希土類金属質量タグである。一実施形態では、当該質量タグは複数のアミノ酸を含む。一実施形態では、当該質量タグは光切断可能である。一実施形態では、本方法は、工程e)の前に当該質量タグの少なくとも一部を光切断するように当該質量タグに光を照射することをさらに含む。
【0028】
一実施形態では、本発明は、以下の一般化学構造:
【化9】
を含む組成物を提供し、
式中、Aは、少なくとも1つのアミンを含む第1のリンカーユニット(第1のスペーサーユニットとも呼ばれる)であり、Xは、当該アミンの窒素原子に共有結合した保護基であり、Bは、第2のリンカーユニット(第2のスペーサーユニットとも呼ばれる)である。一実施形態では、当該保護アミンは、Fmoc保護アミンである。一実施形態では、組成物は以下の化学構造:
【化10】
を有する。
一実施形態では、当該第1および/または第2のリンカー(あるいは第1および/または第2のスペーサーユニット)は、ポリエチレングリコールを含む。一実施形態では、当該第1および/または第2のリンカー(あるいは第1および/または第2のスペーサーユニット)は、2,2’-(エチレンジオキシ)-ビス-(エチルアミン)化学リンカーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図面の簡単な説明
【0030】
特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラーの面を伴うこの特許または特許出願公開の写しは、請求および必要な料金の支払いに応じて特許庁によって提供される。
【0031】
【
図1】組織サンプル中の分析物のマルチプレックス直接的非標識マッピングのための質量分析イメージング(MSI)のボトムアップ適用。[Arentz,Mittalら(2017)Adv Cancer Res 134:27-66]より適応。この既存のアプローチは、マルチプレックス化されているが本質的に標的化されておらず、それは、光切断可能な質量タグ付きプローブ(PC-MT-プローブ)などの標識プローブを使用せず、したがって、検出された分析物の複雑な同定方法を必要とし、場合によっては画像の空間分解能も低下させるためである(例えば、タンパク質の検出および同定にはインサイツ組織タンパク質分解が必要であるため)。
【0032】
【
図2A】
図2A-2C。好ましい光切断可能な質量タグ(PC-MT)および光切断可能な質量タグ付きプローブ(PC-MT-プローブ)の基本設計および使用。(
図2A)好ましいペプチドベースのPC-MT。曲線はペプチドベースの質量ユニットであり、楕円形は光切断可能なリンカー(PC-リンカー)であり、「NHS」はプローブ反応性部分であり、この例では第一級アミン反応性NHSエステル脱離基として示されている。ペプチドベースのPC-MTは、プローブ反応性部分が第一級アミン反応性である場合、PC-MTの自己反応/重合を防ぐためにN末端がブロック/保護されている(例えば、アセチル化-図示せず)ことに留意されたい(そして、リシンアミノ酸上のs-アミンなどの内部第一級アミンは回避されるか、または保護/ブロックされる)。質量ユニットの質量コードは、異なるアミノ酸(または天然および非天然アミノ酸を含む、その同位体、類似体、誘導体もしくは修飾)を使用して達成される。質量分析イメージング(MSI)の結果を従来の蛍光イメージングと直接比較することを可能にすることによって方法の開発を支援することができるフルオロフォア(「F」を有するスターバースト)がPC-MTに必要に応じて含まれることに留意されたい。(
図2B)PC-MTを、例えば抗体またはアミン修飾核酸などのプローブに結合させて、PC-MT-プローブを作製する。これは、典型的には、その後のPC-MT-プローブの精製の有無にかかわらず、PC-MTのプローブ反応性部分(例えば、この場合は失われるNHS-エステル脱離基)とプローブとの間の1工程化学反応で達成される。(
図2C)次いで、PC-MTプローブを使用して、従来の免疫組織化学(IHC)またはインサイツハイブリダイゼーション(ISH)に類似した手順で組織を「染色」し(すなわち、PC-MTプローブは組織中の標的に結合している)、続いてMSIを行う。質量レポーターを遊離させる光切断は、MSIの前の外因性(exogeneous)UV処理によって達成することができ、または装置のレーザービームを使用してマトリックス支援レーザー脱離イオン化MSI(MALDI-MSI)と並行して達成することができる。いくつかの実施形態における質量レポーターは、結合した光切断PC-リンカーの部分を含むことができることに留意されたい。
【
図2B】
図2A-2C。好ましい光切断可能な質量タグ(PC-MT)および光切断可能な質量タグ付きプローブ(PC-MT-プローブ)の基本設計および使用。(
図2A)好ましいペプチドベースのPC-MT。曲線はペプチドベースの質量ユニットであり、楕円形は光切断可能なリンカー(PC-リンカー)であり、「NHS」はプローブ反応性部分であり、この例では第一級アミン反応性NHSエステル脱離基として示されている。ペプチドベースのPC-MTは、プローブ反応性部分が第一級アミン反応性である場合、PC-MTの自己反応/重合を防ぐためにN末端がブロック/保護されている(例えば、アセチル化-図示せず)ことに留意されたい(そして、リシンアミノ酸上のs-アミンなどの内部第一級アミンは回避されるか、または保護/ブロックされる)。質量ユニットの質量コードは、異なるアミノ酸(または天然および非天然アミノ酸を含む、その同位体、類似体、誘導体もしくは修飾)を使用して達成される。質量分析イメージング(MSI)の結果を従来の蛍光イメージングと直接比較することを可能にすることによって方法の開発を支援することができるフルオロフォア(「F」を有するスターバースト)がPC-MTに必要に応じて含まれることに留意されたい。(
図2B)PC-MTを、例えば抗体またはアミン修飾核酸などのプローブに結合させて、PC-MT-プローブを作製する。これは、典型的には、その後のPC-MT-プローブの精製の有無にかかわらず、PC-MTのプローブ反応性部分(例えば、この場合は失われるNHS-エステル脱離基)とプローブとの間の1工程化学反応で達成される。(
図2C)次いで、PC-MTプローブを使用して、従来の免疫組織化学(IHC)またはインサイツハイブリダイゼーション(ISH)に類似した手順で組織を「染色」し(すなわち、PC-MTプローブは組織中の標的に結合している)、続いてMSIを行う。質量レポーターを遊離させる光切断は、MSIの前の外因性(exogeneous)UV処理によって達成することができ、または装置のレーザービームを使用してマトリックス支援レーザー脱離イオン化MSI(MALDI-MSI)と並行して達成することができる。いくつかの実施形態における質量レポーターは、結合した光切断PC-リンカーの部分を含むことができることに留意されたい。
【
図2C】
図2A-2C。好ましい光切断可能な質量タグ(PC-MT)および光切断可能な質量タグ付きプローブ(PC-MT-プローブ)の基本設計および使用。(
図2A)好ましいペプチドベースのPC-MT。曲線はペプチドベースの質量ユニットであり、楕円形は光切断可能なリンカー(PC-リンカー)であり、「NHS」はプローブ反応性部分であり、この例では第一級アミン反応性NHSエステル脱離基として示されている。ペプチドベースのPC-MTは、プローブ反応性部分が第一級アミン反応性である場合、PC-MTの自己反応/重合を防ぐためにN末端がブロック/保護されている(例えば、アセチル化-図示せず)ことに留意されたい(そして、リシンアミノ酸上のs-アミンなどの内部第一級アミンは回避されるか、または保護/ブロックされる)。質量ユニットの質量コードは、異なるアミノ酸(または天然および非天然アミノ酸を含む、その同位体、類似体、誘導体もしくは修飾)を使用して達成される。質量分析イメージング(MSI)の結果を従来の蛍光イメージングと直接比較することを可能にすることによって方法の開発を支援することができるフルオロフォア(「F」を有するスターバースト)がPC-MTに必要に応じて含まれることに留意されたい。(
図2B)PC-MTを、例えば抗体またはアミン修飾核酸などのプローブに結合させて、PC-MT-プローブを作製する。これは、典型的には、その後のPC-MT-プローブの精製の有無にかかわらず、PC-MTのプローブ反応性部分(例えば、この場合は失われるNHS-エステル脱離基)とプローブとの間の1工程化学反応で達成される。(
図2C)次いで、PC-MTプローブを使用して、従来の免疫組織化学(IHC)またはインサイツハイブリダイゼーション(ISH)に類似した手順で組織を「染色」し(すなわち、PC-MTプローブは組織中の標的に結合している)、続いてMSIを行う。質量レポーターを遊離させる光切断は、MSIの前の外因性(exogeneous)UV処理によって達成することができ、または装置のレーザービームを使用してマトリックス支援レーザー脱離イオン化MSI(MALDI-MSI)と並行して達成することができる。いくつかの実施形態における質量レポーターは、結合した光切断PC-リンカーの部分を含むことができることに留意されたい。
【0033】
【
図3】好ましい光切断可能なリンカー(PC-リンカー)、光切断可能な質量タグ(PC-MT)および光切断可能な質量タグ付きプローブ(PC-MT-プローブ)の詳細な化学構造および使用。Fmoc-PC-リンカーは、従来のFmocベースの固相ペプチド合成(SPPS)中に、他のアミノ酸(または天然および非天然アミノ酸を含む、その同位体、類似体、誘導体もしくは修飾)と共にペプチドベースのPC-MTに組み込まれる(工程1)。Fmoc-PC-リンカーは、種々の化学組成物であり得る任意のリンカーユニットを含む。示されている例示的なPC-MTは、N末端を左に、C末端を右に向けている。「APRLRFYSL」は、質量ユニットのアミノ酸配列の一例である。PC-MTは、例としてPC-リンカー+GSGGKアミノ酸配列の一部として示される任意のスペーサーユニットを含む。PC-MTはまた、任意の質量ユニットリンカーを含む。スペーサーユニットおよび質量ユニットリンカーは、種々の化学組成物であり得る。PC-リンカーの光切断可能な核(PC-核)は、高速かつ効率的な1-(2-ニトロフェニル)エチルベースの部分である。プローブ反応性部分(例えば、NHS-エステル脱離基として示される)は、例えば、示されるように含まれるリジンアミノ酸のs-アミン上で生成することができる(または例えば、C末端のカルボン酸基上で生成することができる-図示せず)。「Ac」は、示されるPC-MTの自己反応/重合を防止するために使用されるa-アミンのN末端アセチル化である。(工程2)PC-MTを抗体(図示)またはアミン修飾核酸(図示せず)などのプローブと反応させてPC-MT-プローブを形成する。図示の例では、PC-MTのNHS-エステル脱離基(プローブ反応性部分)は、抗体上の第一級アミンと反応する(NHS-エステルが失われ、アミド結合が形成される)。PC-MT-プローブのコア構造は、質量ユニットをプローブに連結するPC-MTの部分として定義される。これは、典型的には、すべてのPC-MT種の共通構造に対応するすべてのPC-MT-プローブ種の共通構造である。(工程3)最後に、PC-MT-プローブを組織中の標的に結合させ、続いて光切断(質量レポーターを遊離させるため)および質量分析イメージング(MSI)を行う(MSIは示さず)。PC-リンカー(質量ユニットリンカー)の小さな残留部分は、この例では光切断された質量レポーターの一部として残り、この例では第一級アミン基を生成し、これはポジティブモードMSIにおけるイオン化を支援し得ることに留意されたい。
【0034】
【
図4】本発明の実施例PC-リンカーおよびLemaireらの研究で使用されたPC-リンカーの構造の比較。Lemaireらの研究については、[Lemaire,Stauberら(2007)J Proteome Res 6:2057-67]および米国特許第8,221,972号を参照されたい。PC-リンカーは、例示的なペプチド配列に組み込まれているものとして示されている。
【0035】
【
図5A】
図5A-5B。PC-MTシグナル増幅の例示的な方法。(
図5A)例えばNHS-エステルベースのプローブ反応性部分を有する複数のPC-MTは、アミン末端金ナノ粒子(「NP」、図示)またはデンドリマー(図示せず)の表面にコンジュゲートさせることができる。次いで、デンドリマーまたはNPをプローブにコンジュゲートさせることができる(「抗体プローブ」が示されている)。(
図5B)核酸プローブについては、好ましくは「標的結合」配列(すなわち、標的ハイブリダイゼーション配列)の一部ではない第一級アミン修飾核酸配列を使用して、各プローブ分子当たり多くのPC-MTの結合を促進することができる(例えば、ここでもプローブ反応性部分が第一級アミン反応性である場合)。
【
図5B】
図5A-5B。PC-MTシグナル増幅の例示的な方法。(
図5A)例えばNHS-エステルベースのプローブ反応性部分を有する複数のPC-MTは、アミン末端金ナノ粒子(「NP」、図示)またはデンドリマー(図示せず)の表面にコンジュゲートさせることができる。次いで、デンドリマーまたはNPをプローブにコンジュゲートさせることができる(「抗体プローブ」が示されている)。(
図5B)核酸プローブについては、好ましくは「標的結合」配列(すなわち、標的ハイブリダイゼーション配列)の一部ではない第一級アミン修飾核酸配列を使用して、各プローブ分子当たり多くのPC-MTの結合を促進することができる(例えば、ここでもプローブ反応性部分が第一級アミン反応性である場合)。
【0036】
【
図6】モデルシステムとしてビーズアレイを使用する15プレックスPC-MT-AbベースのMSI。15種類の異なるバージョンの抗ストレプトアビジンPC-MT-Abを、15種類の新規アミン反応性NHS活性化PC-MT試薬を用いた直接的1工程標識によって作製した。PC-MT-Abを別々に使用して、20μmポリマーストレプトアビジンビーズをプローブした。次いで、ビーズをプールし、顕微鏡スライドのフットプリントにアレイを形成するために使用し、次いで、これをMALDI-MSIに供した。挿入図は、ビーズアレイの代表的な領域の色分けされた15プレックスMALDI-MSの「質量画像」である。色分けされオーバーレイされたスペクトルは、15種類の異なるPC-MT-Abプローブされたビーズバージョンのそれぞれについての質量画像内の代表的な単一ビーズからのものである(黒色矢印は異なるPC-MT質量レポーターピークを示す)。ペプチドPC-MTの1Da分離された天然同位体はMALDI-MSによって容易に分解されるが、コンパクトなX軸スケーリングのために提供されるスペクトルでは見えないことに留意されたい。
【0037】
【
図7A】
図7A-7E。マウス脳FFPE組織切片に対するPC-MT-Abを使用した5プレックスMIHC。FFPE組織切片を5つの異なるタンパク質標的に対してPC-MT-Abで同時に染色し、次いでMALDI-MSIに供した。MSIについては、マトリックス適用は昇華とそれに続く再結晶(ポジティブイオン反射モードでのMSI)によるものであった。標準的な免疫蛍光染色も、隣接する組織切片に対して行った。(
図7A)シナプシン(青色)、MAP-2(オレンジ色)、NeuN(緑色)、ミエリン(赤色)およびGlut-1(シアン色)の色分けされた5プレックスオーバーレイMALDI-MSIの「質量画像」。異なる色は、モノアイソトピックPC-MT質量レポーター質量スペクトルピークの異なるm/z値に関係する。他の構造の中でも、海馬(
*)および小脳(I)が観察される。(
図7B)シナプシン(青色)、NeuN(緑色)およびミエリン(赤色)についての小脳のカラー化された免疫蛍光オーバーレイ。免疫蛍光を、隣接する組織切片およびオーバーレイされた画像に対して「シングルプレックス」モードで行った。(
図7C)あまり顕著でないGlut-1バイオマーカーのスタンドアロンMALDI-MS質量画像(サブ領域)が示されており(この場合はマゼンタ色)、これは主に脳の毛細血管(断面)を検出する。(
図7D)Glut-1の対応する免疫蛍光(この場合は緑色)。(
図7E)5プレックス質量画像(パネルa内の色分けされた矢印で示されたピクセルから)から選択されたピクセルについて、色分けされたオーバーレイMALDI-MSスペクトルが示されている。スペクトル中の黒色矢印は、PC-MT質量レポーターのm/zピークを示す。ペプチドPC-MTの1Da分離された天然同位体はMALDI-MSによって容易に分解されるが、コンパクトなX軸スケーリングのために提供されるスペクトルでは見えないことに留意されたい。
【
図7B】
図7A-7E。マウス脳FFPE組織切片に対するPC-MT-Abを使用した5プレックスMIHC。FFPE組織切片を5つの異なるタンパク質標的に対してPC-MT-Abで同時に染色し、次いでMALDI-MSIに供した。MSIについては、マトリックス適用は昇華とそれに続く再結晶(ポジティブイオン反射モードでのMSI)によるものであった。標準的な免疫蛍光染色も、隣接する組織切片に対して行った。(
図7A)シナプシン(青色)、MAP-2(オレンジ色)、NeuN(緑色)、ミエリン(赤色)およびGlut-1(シアン色)の色分けされた5プレックスオーバーレイMALDI-MSIの「質量画像」。異なる色は、モノアイソトピックPC-MT質量レポーター質量スペクトルピークの異なるm/z値に関係する。他の構造の中でも、海馬(
*)および小脳(I)が観察される。(
図7B)シナプシン(青色)、NeuN(緑色)およびミエリン(赤色)についての小脳のカラー化された免疫蛍光オーバーレイ。免疫蛍光を、隣接する組織切片およびオーバーレイされた画像に対して「シングルプレックス」モードで行った。(
図7C)あまり顕著でないGlut-1バイオマーカーのスタンドアロンMALDI-MS質量画像(サブ領域)が示されており(この場合はマゼンタ色)、これは主に脳の毛細血管(断面)を検出する。(
図7D)Glut-1の対応する免疫蛍光(この場合は緑色)。(
図7E)5プレックス質量画像(パネルa内の色分けされた矢印で示されたピクセルから)から選択されたピクセルについて、色分けされたオーバーレイMALDI-MSスペクトルが示されている。スペクトル中の黒色矢印は、PC-MT質量レポーターのm/zピークを示す。ペプチドPC-MTの1Da分離された天然同位体はMALDI-MSによって容易に分解されるが、コンパクトなX軸スケーリングのために提供されるスペクトルでは見えないことに留意されたい。
【
図7C】
図7A-7E。マウス脳FFPE組織切片に対するPC-MT-Abを使用した5プレックスMIHC。FFPE組織切片を5つの異なるタンパク質標的に対してPC-MT-Abで同時に染色し、次いでMALDI-MSIに供した。MSIについては、マトリックス適用は昇華とそれに続く再結晶(ポジティブイオン反射モードでのMSI)によるものであった。標準的な免疫蛍光染色も、隣接する組織切片に対して行った。(
図7A)シナプシン(青色)、MAP-2(オレンジ色)、NeuN(緑色)、ミエリン(赤色)およびGlut-1(シアン色)の色分けされた5プレックスオーバーレイMALDI-MSIの「質量画像」。異なる色は、モノアイソトピックPC-MT質量レポーター質量スペクトルピークの異なるm/z値に関係する。他の構造の中でも、海馬(
*)および小脳(I)が観察される。(
図7B)シナプシン(青色)、NeuN(緑色)およびミエリン(赤色)についての小脳のカラー化された免疫蛍光オーバーレイ。免疫蛍光を、隣接する組織切片およびオーバーレイされた画像に対して「シングルプレックス」モードで行った。(
図7C)あまり顕著でないGlut-1バイオマーカーのスタンドアロンMALDI-MS質量画像(サブ領域)が示されており(この場合はマゼンタ色)、これは主に脳の毛細血管(断面)を検出する。(
図7D)Glut-1の対応する免疫蛍光(この場合は緑色)。(
図7E)5プレックス質量画像(パネルa内の色分けされた矢印で示されたピクセルから)から選択されたピクセルについて、色分けされたオーバーレイMALDI-MSスペクトルが示されている。スペクトル中の黒色矢印は、PC-MT質量レポーターのm/zピークを示す。ペプチドPC-MTの1Da分離された天然同位体はMALDI-MSによって容易に分解されるが、コンパクトなX軸スケーリングのために提供されるスペクトルでは見えないことに留意されたい。
【
図7D】
図7A-7E。マウス脳FFPE組織切片に対するPC-MT-Abを使用した5プレックスMIHC。FFPE組織切片を5つの異なるタンパク質標的に対してPC-MT-Abで同時に染色し、次いでMALDI-MSIに供した。MSIについては、マトリックス適用は昇華とそれに続く再結晶(ポジティブイオン反射モードでのMSI)によるものであった。標準的な免疫蛍光染色も、隣接する組織切片に対して行った。(
図7A)シナプシン(青色)、MAP-2(オレンジ色)、NeuN(緑色)、ミエリン(赤色)およびGlut-1(シアン色)の色分けされた5プレックスオーバーレイMALDI-MSIの「質量画像」。異なる色は、モノアイソトピックPC-MT質量レポーター質量スペクトルピークの異なるm/z値に関係する。他の構造の中でも、海馬(
*)および小脳(I)が観察される。(
図7B)シナプシン(青色)、NeuN(緑色)およびミエリン(赤色)についての小脳のカラー化された免疫蛍光オーバーレイ。免疫蛍光を、隣接する組織切片およびオーバーレイされた画像に対して「シングルプレックス」モードで行った。(
図7C)あまり顕著でないGlut-1バイオマーカーのスタンドアロンMALDI-MS質量画像(サブ領域)が示されており(この場合はマゼンタ色)、これは主に脳の毛細血管(断面)を検出する。(
図7D)Glut-1の対応する免疫蛍光(この場合は緑色)。(
図7E)5プレックス質量画像(パネルa内の色分けされた矢印で示されたピクセルから)から選択されたピクセルについて、色分けされたオーバーレイMALDI-MSスペクトルが示されている。スペクトル中の黒色矢印は、PC-MT質量レポーターのm/zピークを示す。ペプチドPC-MTの1Da分離された天然同位体はMALDI-MSによって容易に分解されるが、コンパクトなX軸スケーリングのために提供されるスペクトルでは見えないことに留意されたい。
【
図7E】
図7A-7E。マウス脳FFPE組織切片に対するPC-MT-Abを使用した5プレックスMIHC。FFPE組織切片を5つの異なるタンパク質標的に対してPC-MT-Abで同時に染色し、次いでMALDI-MSIに供した。MSIについては、マトリックス適用は昇華とそれに続く再結晶(ポジティブイオン反射モードでのMSI)によるものであった。標準的な免疫蛍光染色も、隣接する組織切片に対して行った。(
図7A)シナプシン(青色)、MAP-2(オレンジ色)、NeuN(緑色)、ミエリン(赤色)およびGlut-1(シアン色)の色分けされた5プレックスオーバーレイMALDI-MSIの「質量画像」。異なる色は、モノアイソトピックPC-MT質量レポーター質量スペクトルピークの異なるm/z値に関係する。他の構造の中でも、海馬(
*)および小脳(I)が観察される。(
図7B)シナプシン(青色)、NeuN(緑色)およびミエリン(赤色)についての小脳のカラー化された免疫蛍光オーバーレイ。免疫蛍光を、隣接する組織切片およびオーバーレイされた画像に対して「シングルプレックス」モードで行った。(
図7C)あまり顕著でないGlut-1バイオマーカーのスタンドアロンMALDI-MS質量画像(サブ領域)が示されており(この場合はマゼンタ色)、これは主に脳の毛細血管(断面)を検出する。(
図7D)Glut-1の対応する免疫蛍光(この場合は緑色)。(
図7E)5プレックス質量画像(パネルa内の色分けされた矢印で示されたピクセルから)から選択されたピクセルについて、色分けされたオーバーレイMALDI-MSスペクトルが示されている。スペクトル中の黒色矢印は、PC-MT質量レポーターのm/zピークを示す。ペプチドPC-MTの1Da分離された天然同位体はMALDI-MSによって容易に分解されるが、コンパクトなX軸スケーリングのために提供されるスペクトルでは見えないことに留意されたい。
【0038】
【
図8】オリゴヌクレオチドプローブに直接コンジュゲートされたPC-MTを使用したMISH。U6 snRNAプローブ(陽性対照)および植物特異的miR-159プローブ(陰性対照)を使用して、マウス脳の矢状方向の組織切片に対するインサイツハイブリダイゼーションを行った。従来の「FISH」を「MISH」と比較するために、蛍光画像(赤色)ならびにモノアイソトピックPC-MT質量レポーター質量スペクトルピーク(緑色)のm/z値に対応する質量画像を示す。黄色矢印は、U6で検出された小脳および海馬の特徴を強調している。
【0039】
【
図9A】
図9A-9D。同じ組織切片上の非標的化小分子MALDI-MSIおよび標的PC-MT-Abベースの高分子MALDI-MSI。(
図9A)未固定の新鮮凍結マウス脳の矢状方向の組織切片に対する直接的な非標的化MALDI-MSIを最初に行った。3つの周知の脂質種(スルファチド、m/z 888.7;ホスファチジルイノシトール、m/z 885.4;およびホスファチジルエタノールアミン、m/z 790.5)をカラー化されたMALDI-MS画像に示す(それぞれ赤色、緑色および青色)。(
図9B~
図9C)次いで、同じ組織切片を2回目のMALDI-MSIのために処理した。そうするために、マトリックスを洗い流し、組織を固定し、PC-MT-Abを使用した高分子抗原の標的化マルチプレックスMALDI-MSIを行った。実証目的のために、1回目および2回目のMALDI-MSIから選択された生体分子の画像をオーバーレイした。(
図9B)1回目のMALDI-MSI(直接的小分子検出)からのスルファチド(赤色)に、第2回目のMALDI-MSI(マルチプレックスMIHC)からのNeuN(緑色)の画像をオーバーレイする。(
図9C)1回目のMALDI-MSI(直接的小分子検出)からのスルファチド(赤色)に、第2回目のMALDI-MSI(マルチプレックスMIHC)からのミエリン塩基性タンパク質(緑色)の画像をオーバーレイする。(
図9D)1回目のMALDI-MSI(直接的小分子検出)からの例示的なオーバーレイスペクトルが示されており、
図9Aの画像と一致するように色分けされている(3つの脂質塊が示されている)。
図9Aの色分けされた矢印は、MALDI-MSスペクトルが導出された領域を示す。
【
図9B】
図9A-9D。同じ組織切片上の非標的化小分子MALDI-MSIおよび標的PC-MT-Abベースの高分子MALDI-MSI。(
図9A)未固定の新鮮凍結マウス脳の矢状方向の組織切片に対する直接的な非標的化MALDI-MSIを最初に行った。3つの周知の脂質種(スルファチド、m/z 888.7;ホスファチジルイノシトール、m/z 885.4;およびホスファチジルエタノールアミン、m/z 790.5)をカラー化されたMALDI-MS画像に示す(それぞれ赤色、緑色および青色)。(
図9B~
図9C)次いで、同じ組織切片を2回目のMALDI-MSIのために処理した。そうするために、マトリックスを洗い流し、組織を固定し、PC-MT-Abを使用した高分子抗原の標的化マルチプレックスMALDI-MSIを行った。実証目的のために、1回目および2回目のMALDI-MSIから選択された生体分子の画像をオーバーレイした。(
図9B)1回目のMALDI-MSI(直接的小分子検出)からのスルファチド(赤色)に、第2回目のMALDI-MSI(マルチプレックスMIHC)からのNeuN(緑色)の画像をオーバーレイする。(
図9C)1回目のMALDI-MSI(直接的小分子検出)からのスルファチド(赤色)に、第2回目のMALDI-MSI(マルチプレックスMIHC)からのミエリン塩基性タンパク質(緑色)の画像をオーバーレイする。(
図9D)1回目のMALDI-MSI(直接的小分子検出)からの例示的なオーバーレイスペクトルが示されており、
図9Aの画像と一致するように色分けされている(3つの脂質塊が示されている)。
図9Aの色分けされた矢印は、MALDI-MSスペクトルが導出された領域を示す。
【
図9C】
図9A-9D。同じ組織切片上の非標的化小分子MALDI-MSIおよび標的PC-MT-Abベースの高分子MALDI-MSI。(
図9A)未固定の新鮮凍結マウス脳の矢状方向の組織切片に対する直接的な非標的化MALDI-MSIを最初に行った。3つの周知の脂質種(スルファチド、m/z 888.7;ホスファチジルイノシトール、m/z 885.4;およびホスファチジルエタノールアミン、m/z 790.5)をカラー化されたMALDI-MS画像に示す(それぞれ赤色、緑色および青色)。(
図9B~
図9C)次いで、同じ組織切片を2回目のMALDI-MSIのために処理した。そうするために、マトリックスを洗い流し、組織を固定し、PC-MT-Abを使用した高分子抗原の標的化マルチプレックスMALDI-MSIを行った。実証目的のために、1回目および2回目のMALDI-MSIから選択された生体分子の画像をオーバーレイした。(
図9B)1回目のMALDI-MSI(直接的小分子検出)からのスルファチド(赤色)に、第2回目のMALDI-MSI(マルチプレックスMIHC)からのNeuN(緑色)の画像をオーバーレイする。(
図9C)1回目のMALDI-MSI(直接的小分子検出)からのスルファチド(赤色)に、第2回目のMALDI-MSI(マルチプレックスMIHC)からのミエリン塩基性タンパク質(緑色)の画像をオーバーレイする。(
図9D)1回目のMALDI-MSI(直接的小分子検出)からの例示的なオーバーレイスペクトルが示されており、
図9Aの画像と一致するように色分けされている(3つの脂質塊が示されている)。
図9Aの色分けされた矢印は、MALDI-MSスペクトルが導出された領域を示す。
【
図9D】
図9A-9D。同じ組織切片上の非標的化小分子MALDI-MSIおよび標的PC-MT-Abベースの高分子MALDI-MSI。(
図9A)未固定の新鮮凍結マウス脳の矢状方向の組織切片に対する直接的な非標的化MALDI-MSIを最初に行った。3つの周知の脂質種(スルファチド、m/z 888.7;ホスファチジルイノシトール、m/z 885.4;およびホスファチジルエタノールアミン、m/z 790.5)をカラー化されたMALDI-MS画像に示す(それぞれ赤色、緑色および青色)。(
図9B~
図9C)次いで、同じ組織切片を2回目のMALDI-MSIのために処理した。そうするために、マトリックスを洗い流し、組織を固定し、PC-MT-Abを使用した高分子抗原の標的化マルチプレックスMALDI-MSIを行った。実証目的のために、1回目および2回目のMALDI-MSIから選択された生体分子の画像をオーバーレイした。(
図9B)1回目のMALDI-MSI(直接的小分子検出)からのスルファチド(赤色)に、第2回目のMALDI-MSI(マルチプレックスMIHC)からのNeuN(緑色)の画像をオーバーレイする。(
図9C)1回目のMALDI-MSI(直接的小分子検出)からのスルファチド(赤色)に、第2回目のMALDI-MSI(マルチプレックスMIHC)からのミエリン塩基性タンパク質(緑色)の画像をオーバーレイする。(
図9D)1回目のMALDI-MSI(直接的小分子検出)からの例示的なオーバーレイスペクトルが示されており、
図9Aの画像と一致するように色分けされている(3つの脂質塊が示されている)。
図9Aの色分けされた矢印は、MALDI-MSスペクトルが導出された領域を示す。
【0040】
【
図10A】
図10A-10B。PC-核への質量ユニット好ましい結合部位。(
図10A)最終的にPC-核のフェニル環への質量ユニットの結合の2つの構成が示されている(この場合には光切断後に示される-光切断前の構成1の例については
図3の工程2を参照のこと)。この実施例では、光切断可能なペプチドを使用し、示されるように最終的に表面に結合した(最終的に組織の表面に結合したPC-MTプローブに類似)。好ましい構成1では、PC-核の光切断されたフェニル環(
*で示される)は、質量分析(MS)によって測定される光切断された質量レポーターに結合したままではないが、構成2では結合している。(
図10B)2つの構成についての表面からの光切断後の質量レポーターの得られたオーバーレイ質量スペクトル。質量レポーターの予想されるモノアイソトピックピークを、両方の構成についてそれぞれのm/z値で標識する。
【
図10B】
図10A-10B。PC-核への質量ユニット好ましい結合部位。(
図10A)最終的にPC-核のフェニル環への質量ユニットの結合の2つの構成が示されている(この場合には光切断後に示される-光切断前の構成1の例については
図3の工程2を参照のこと)。この実施例では、光切断可能なペプチドを使用し、示されるように最終的に表面に結合した(最終的に組織の表面に結合したPC-MTプローブに類似)。好ましい構成1では、PC-核の光切断されたフェニル環(
*で示される)は、質量分析(MS)によって測定される光切断された質量レポーターに結合したままではないが、構成2では結合している。(
図10B)2つの構成についての表面からの光切断後の質量レポーターの得られたオーバーレイ質量スペクトル。質量レポーターの予想されるモノアイソトピックピークを、両方の構成についてそれぞれのm/z値で標識する。
【0041】
【
図11A】
図11A-11L。異なるPCリンカーの比較および予備光切断対MALDI-MSレーザービームを用いたインライン光切断の比較。(
図11A)ビーズアレイの例示的MALDI-MSI質量画像であり、ビーズは両方とも質量ユニット1からなるPC-MT(赤色)およびPC-MT-L(緑色)で二重標識されていた(しかし、質量レポーターは、PC-MTのみが質量レポーターに結合した光切断されたPC-リンカーの小さな残存部分を残すため、43m/zの差によって区別可能である)。(
図11B~
図11I)4つの異なるビーズ種を作製し、それぞれ同じ質量ユニット(表1の質量ユニット1~4)を有するPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。これらのビーズ種のそれぞれから4つの別個のビーズアレイを形成し(ビーズ種ごとに1つのビーズアレイ)、各ビーズアレイを光切断のために5分間、事前UV照射に供した。別の4つのビーズアレイを形成し、25分間、事前UV照射に供した。次いで、合計8つの別個のビーズアレイをMALDI-MSIに供した。代表的なスペクトルは、各々のビーズアレイのビーズから単一のピクセルで示されている(8つのスペクトルの各々は、同じ質量ユニットからなるPC-MTおよびPC-MT-Lの両方からの質量レポーターに対応するピークを含む)。(
図11J)抗ミエリン抗体プローブを、両方とも質量ユニット1から構成されるPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。プローブを使用してマウス脳組織切片を免疫染色し、続いてMALDI-MSIに供した。組織の色分けされた質量画像が示されている。PC-MTは赤色、PC-MT-Lは緑色に色分けされている。0分間、5分間および25分間の事前UV条件を試験し、事前UVをマトリックス適用の直前およびMALDI-MSI分析の前に実施した。0分の事前UVの場合、光切断は、装置のレーザービームによりMALDI-MSI分析中にのみ起こり得る。代表的なピクセルからのスペクトルを
図11Kおよび
図11Lに示す。
【
図11B】
図11A-11L。異なるPCリンカーの比較および予備光切断対MALDI-MSレーザービームを用いたインライン光切断の比較。(
図11A)ビーズアレイの例示的MALDI-MSI質量画像であり、ビーズは両方とも質量ユニット1からなるPC-MT(赤色)およびPC-MT-L(緑色)で二重標識されていた(しかし、質量レポーターは、PC-MTのみが質量レポーターに結合した光切断されたPC-リンカーの小さな残存部分を残すため、43m/zの差によって区別可能である)。(
図11B~
図11I)4つの異なるビーズ種を作製し、それぞれ同じ質量ユニット(表1の質量ユニット1~4)を有するPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。これらのビーズ種のそれぞれから4つの別個のビーズアレイを形成し(ビーズ種ごとに1つのビーズアレイ)、各ビーズアレイを光切断のために5分間、事前UV照射に供した。別の4つのビーズアレイを形成し、25分間、事前UV照射に供した。次いで、合計8つの別個のビーズアレイをMALDI-MSIに供した。代表的なスペクトルは、各々のビーズアレイのビーズから単一のピクセルで示されている(8つのスペクトルの各々は、同じ質量ユニットからなるPC-MTおよびPC-MT-Lの両方からの質量レポーターに対応するピークを含む)。(
図11J)抗ミエリン抗体プローブを、両方とも質量ユニット1から構成されるPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。プローブを使用してマウス脳組織切片を免疫染色し、続いてMALDI-MSIに供した。組織の色分けされた質量画像が示されている。PC-MTは赤色、PC-MT-Lは緑色に色分けされている。0分間、5分間および25分間の事前UV条件を試験し、事前UVをマトリックス適用の直前およびMALDI-MSI分析の前に実施した。0分の事前UVの場合、光切断は、装置のレーザービームによりMALDI-MSI分析中にのみ起こり得る。代表的なピクセルからのスペクトルを
図11Kおよび
図11Lに示す。
【
図11C】
図11A-11L。異なるPCリンカーの比較および予備光切断対MALDI-MSレーザービームを用いたインライン光切断の比較。(
図11A)ビーズアレイの例示的MALDI-MSI質量画像であり、ビーズは両方とも質量ユニット1からなるPC-MT(赤色)およびPC-MT-L(緑色)で二重標識されていた(しかし、質量レポーターは、PC-MTのみが質量レポーターに結合した光切断されたPC-リンカーの小さな残存部分を残すため、43m/zの差によって区別可能である)。(
図11B~
図11I)4つの異なるビーズ種を作製し、それぞれ同じ質量ユニット(表1の質量ユニット1~4)を有するPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。これらのビーズ種のそれぞれから4つの別個のビーズアレイを形成し(ビーズ種ごとに1つのビーズアレイ)、各ビーズアレイを光切断のために5分間、事前UV照射に供した。別の4つのビーズアレイを形成し、25分間、事前UV照射に供した。次いで、合計8つの別個のビーズアレイをMALDI-MSIに供した。代表的なスペクトルは、各々のビーズアレイのビーズから単一のピクセルで示されている(8つのスペクトルの各々は、同じ質量ユニットからなるPC-MTおよびPC-MT-Lの両方からの質量レポーターに対応するピークを含む)。(
図11J)抗ミエリン抗体プローブを、両方とも質量ユニット1から構成されるPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。プローブを使用してマウス脳組織切片を免疫染色し、続いてMALDI-MSIに供した。組織の色分けされた質量画像が示されている。PC-MTは赤色、PC-MT-Lは緑色に色分けされている。0分間、5分間および25分間の事前UV条件を試験し、事前UVをマトリックス適用の直前およびMALDI-MSI分析の前に実施した。0分の事前UVの場合、光切断は、装置のレーザービームによりMALDI-MSI分析中にのみ起こり得る。代表的なピクセルからのスペクトルを
図11Kおよび
図11Lに示す。
【
図11D】
図11A-11L。異なるPCリンカーの比較および予備光切断対MALDI-MSレーザービームを用いたインライン光切断の比較。(
図11A)ビーズアレイの例示的MALDI-MSI質量画像であり、ビーズは両方とも質量ユニット1からなるPC-MT(赤色)およびPC-MT-L(緑色)で二重標識されていた(しかし、質量レポーターは、PC-MTのみが質量レポーターに結合した光切断されたPC-リンカーの小さな残存部分を残すため、43m/zの差によって区別可能である)。(
図11B~
図11I)4つの異なるビーズ種を作製し、それぞれ同じ質量ユニット(表1の質量ユニット1~4)を有するPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。これらのビーズ種のそれぞれから4つの別個のビーズアレイを形成し(ビーズ種ごとに1つのビーズアレイ)、各ビーズアレイを光切断のために5分間、事前UV照射に供した。別の4つのビーズアレイを形成し、25分間、事前UV照射に供した。次いで、合計8つの別個のビーズアレイをMALDI-MSIに供した。代表的なスペクトルは、各々のビーズアレイのビーズから単一のピクセルで示されている(8つのスペクトルの各々は、同じ質量ユニットからなるPC-MTおよびPC-MT-Lの両方からの質量レポーターに対応するピークを含む)。(
図11J)抗ミエリン抗体プローブを、両方とも質量ユニット1から構成されるPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。プローブを使用してマウス脳組織切片を免疫染色し、続いてMALDI-MSIに供した。組織の色分けされた質量画像が示されている。PC-MTは赤色、PC-MT-Lは緑色に色分けされている。0分間、5分間および25分間の事前UV条件を試験し、事前UVをマトリックス適用の直前およびMALDI-MSI分析の前に実施した。0分の事前UVの場合、光切断は、装置のレーザービームによりMALDI-MSI分析中にのみ起こり得る。代表的なピクセルからのスペクトルを
図11Kおよび
図11Lに示す。
【
図11E】
図11A-11L。異なるPCリンカーの比較および予備光切断対MALDI-MSレーザービームを用いたインライン光切断の比較。(
図11A)ビーズアレイの例示的MALDI-MSI質量画像であり、ビーズは両方とも質量ユニット1からなるPC-MT(赤色)およびPC-MT-L(緑色)で二重標識されていた(しかし、質量レポーターは、PC-MTのみが質量レポーターに結合した光切断されたPC-リンカーの小さな残存部分を残すため、43m/zの差によって区別可能である)。(
図11B~
図11I)4つの異なるビーズ種を作製し、それぞれ同じ質量ユニット(表1の質量ユニット1~4)を有するPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。これらのビーズ種のそれぞれから4つの別個のビーズアレイを形成し(ビーズ種ごとに1つのビーズアレイ)、各ビーズアレイを光切断のために5分間、事前UV照射に供した。別の4つのビーズアレイを形成し、25分間、事前UV照射に供した。次いで、合計8つの別個のビーズアレイをMALDI-MSIに供した。代表的なスペクトルは、各々のビーズアレイのビーズから単一のピクセルで示されている(8つのスペクトルの各々は、同じ質量ユニットからなるPC-MTおよびPC-MT-Lの両方からの質量レポーターに対応するピークを含む)。(
図11J)抗ミエリン抗体プローブを、両方とも質量ユニット1から構成されるPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。プローブを使用してマウス脳組織切片を免疫染色し、続いてMALDI-MSIに供した。組織の色分けされた質量画像が示されている。PC-MTは赤色、PC-MT-Lは緑色に色分けされている。0分間、5分間および25分間の事前UV条件を試験し、事前UVをマトリックス適用の直前およびMALDI-MSI分析の前に実施した。0分の事前UVの場合、光切断は、装置のレーザービームによりMALDI-MSI分析中にのみ起こり得る。代表的なピクセルからのスペクトルを
図11Kおよび
図11Lに示す。
【
図11F】
図11A-11L。異なるPCリンカーの比較および予備光切断対MALDI-MSレーザービームを用いたインライン光切断の比較。(
図11A)ビーズアレイの例示的MALDI-MSI質量画像であり、ビーズは両方とも質量ユニット1からなるPC-MT(赤色)およびPC-MT-L(緑色)で二重標識されていた(しかし、質量レポーターは、PC-MTのみが質量レポーターに結合した光切断されたPC-リンカーの小さな残存部分を残すため、43m/zの差によって区別可能である)。(
図11B~
図11I)4つの異なるビーズ種を作製し、それぞれ同じ質量ユニット(表1の質量ユニット1~4)を有するPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。これらのビーズ種のそれぞれから4つの別個のビーズアレイを形成し(ビーズ種ごとに1つのビーズアレイ)、各ビーズアレイを光切断のために5分間、事前UV照射に供した。別の4つのビーズアレイを形成し、25分間、事前UV照射に供した。次いで、合計8つの別個のビーズアレイをMALDI-MSIに供した。代表的なスペクトルは、各々のビーズアレイのビーズから単一のピクセルで示されている(8つのスペクトルの各々は、同じ質量ユニットからなるPC-MTおよびPC-MT-Lの両方からの質量レポーターに対応するピークを含む)。(
図11J)抗ミエリン抗体プローブを、両方とも質量ユニット1から構成されるPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。プローブを使用してマウス脳組織切片を免疫染色し、続いてMALDI-MSIに供した。組織の色分けされた質量画像が示されている。PC-MTは赤色、PC-MT-Lは緑色に色分けされている。0分間、5分間および25分間の事前UV条件を試験し、事前UVをマトリックス適用の直前およびMALDI-MSI分析の前に実施した。0分の事前UVの場合、光切断は、装置のレーザービームによりMALDI-MSI分析中にのみ起こり得る。代表的なピクセルからのスペクトルを
図11Kおよび
図11Lに示す。
【
図11G】
図11A-11L。異なるPCリンカーの比較および予備光切断対MALDI-MSレーザービームを用いたインライン光切断の比較。(
図11A)ビーズアレイの例示的MALDI-MSI質量画像であり、ビーズは両方とも質量ユニット1からなるPC-MT(赤色)およびPC-MT-L(緑色)で二重標識されていた(しかし、質量レポーターは、PC-MTのみが質量レポーターに結合した光切断されたPC-リンカーの小さな残存部分を残すため、43m/zの差によって区別可能である)。(
図11B~
図11I)4つの異なるビーズ種を作製し、それぞれ同じ質量ユニット(表1の質量ユニット1~4)を有するPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。これらのビーズ種のそれぞれから4つの別個のビーズアレイを形成し(ビーズ種ごとに1つのビーズアレイ)、各ビーズアレイを光切断のために5分間、事前UV照射に供した。別の4つのビーズアレイを形成し、25分間、事前UV照射に供した。次いで、合計8つの別個のビーズアレイをMALDI-MSIに供した。代表的なスペクトルは、各々のビーズアレイのビーズから単一のピクセルで示されている(8つのスペクトルの各々は、同じ質量ユニットからなるPC-MTおよびPC-MT-Lの両方からの質量レポーターに対応するピークを含む)。(
図11J)抗ミエリン抗体プローブを、両方とも質量ユニット1から構成されるPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。プローブを使用してマウス脳組織切片を免疫染色し、続いてMALDI-MSIに供した。組織の色分けされた質量画像が示されている。PC-MTは赤色、PC-MT-Lは緑色に色分けされている。0分間、5分間および25分間の事前UV条件を試験し、事前UVをマトリックス適用の直前およびMALDI-MSI分析の前に実施した。0分の事前UVの場合、光切断は、装置のレーザービームによりMALDI-MSI分析中にのみ起こり得る。代表的なピクセルからのスペクトルを
図11Kおよび
図11Lに示す。
【
図11H】
図11A-11L。異なるPCリンカーの比較および予備光切断対MALDI-MSレーザービームを用いたインライン光切断の比較。(
図11A)ビーズアレイの例示的MALDI-MSI質量画像であり、ビーズは両方とも質量ユニット1からなるPC-MT(赤色)およびPC-MT-L(緑色)で二重標識されていた(しかし、質量レポーターは、PC-MTのみが質量レポーターに結合した光切断されたPC-リンカーの小さな残存部分を残すため、43m/zの差によって区別可能である)。(
図11B~
図11I)4つの異なるビーズ種を作製し、それぞれ同じ質量ユニット(表1の質量ユニット1~4)を有するPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。これらのビーズ種のそれぞれから4つの別個のビーズアレイを形成し(ビーズ種ごとに1つのビーズアレイ)、各ビーズアレイを光切断のために5分間、事前UV照射に供した。別の4つのビーズアレイを形成し、25分間、事前UV照射に供した。次いで、合計8つの別個のビーズアレイをMALDI-MSIに供した。代表的なスペクトルは、各々のビーズアレイのビーズから単一のピクセルで示されている(8つのスペクトルの各々は、同じ質量ユニットからなるPC-MTおよびPC-MT-Lの両方からの質量レポーターに対応するピークを含む)。(
図11J)抗ミエリン抗体プローブを、両方とも質量ユニット1から構成されるPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。プローブを使用してマウス脳組織切片を免疫染色し、続いてMALDI-MSIに供した。組織の色分けされた質量画像が示されている。PC-MTは赤色、PC-MT-Lは緑色に色分けされている。0分間、5分間および25分間の事前UV条件を試験し、事前UVをマトリックス適用の直前およびMALDI-MSI分析の前に実施した。0分の事前UVの場合、光切断は、装置のレーザービームによりMALDI-MSI分析中にのみ起こり得る。代表的なピクセルからのスペクトルを
図11Kおよび
図11Lに示す。
【
図11I】
図11A-11L。異なるPCリンカーの比較および予備光切断対MALDI-MSレーザービームを用いたインライン光切断の比較。(
図11A)ビーズアレイの例示的MALDI-MSI質量画像であり、ビーズは両方とも質量ユニット1からなるPC-MT(赤色)およびPC-MT-L(緑色)で二重標識されていた(しかし、質量レポーターは、PC-MTのみが質量レポーターに結合した光切断されたPC-リンカーの小さな残存部分を残すため、43m/zの差によって区別可能である)。(
図11B~
図11I)4つの異なるビーズ種を作製し、それぞれ同じ質量ユニット(表1の質量ユニット1~4)を有するPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。これらのビーズ種のそれぞれから4つの別個のビーズアレイを形成し(ビーズ種ごとに1つのビーズアレイ)、各ビーズアレイを光切断のために5分間、事前UV照射に供した。別の4つのビーズアレイを形成し、25分間、事前UV照射に供した。次いで、合計8つの別個のビーズアレイをMALDI-MSIに供した。代表的なスペクトルは、各々のビーズアレイのビーズから単一のピクセルで示されている(8つのスペクトルの各々は、同じ質量ユニットからなるPC-MTおよびPC-MT-Lの両方からの質量レポーターに対応するピークを含む)。(
図11J)抗ミエリン抗体プローブを、両方とも質量ユニット1から構成されるPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。プローブを使用してマウス脳組織切片を免疫染色し、続いてMALDI-MSIに供した。組織の色分けされた質量画像が示されている。PC-MTは赤色、PC-MT-Lは緑色に色分けされている。0分間、5分間および25分間の事前UV条件を試験し、事前UVをマトリックス適用の直前およびMALDI-MSI分析の前に実施した。0分の事前UVの場合、光切断は、装置のレーザービームによりMALDI-MSI分析中にのみ起こり得る。代表的なピクセルからのスペクトルを
図11Kおよび
図11Lに示す。
【
図11J】
図11A-11L。異なるPCリンカーの比較および予備光切断対MALDI-MSレーザービームを用いたインライン光切断の比較。(
図11A)ビーズアレイの例示的MALDI-MSI質量画像であり、ビーズは両方とも質量ユニット1からなるPC-MT(赤色)およびPC-MT-L(緑色)で二重標識されていた(しかし、質量レポーターは、PC-MTのみが質量レポーターに結合した光切断されたPC-リンカーの小さな残存部分を残すため、43m/zの差によって区別可能である)。(
図11B~
図11I)4つの異なるビーズ種を作製し、それぞれ同じ質量ユニット(表1の質量ユニット1~4)を有するPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。これらのビーズ種のそれぞれから4つの別個のビーズアレイを形成し(ビーズ種ごとに1つのビーズアレイ)、各ビーズアレイを光切断のために5分間、事前UV照射に供した。別の4つのビーズアレイを形成し、25分間、事前UV照射に供した。次いで、合計8つの別個のビーズアレイをMALDI-MSIに供した。代表的なスペクトルは、各々のビーズアレイのビーズから単一のピクセルで示されている(8つのスペクトルの各々は、同じ質量ユニットからなるPC-MTおよびPC-MT-Lの両方からの質量レポーターに対応するピークを含む)。(
図11J)抗ミエリン抗体プローブを、両方とも質量ユニット1から構成されるPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。プローブを使用してマウス脳組織切片を免疫染色し、続いてMALDI-MSIに供した。組織の色分けされた質量画像が示されている。PC-MTは赤色、PC-MT-Lは緑色に色分けされている。0分間、5分間および25分間の事前UV条件を試験し、事前UVをマトリックス適用の直前およびMALDI-MSI分析の前に実施した。0分の事前UVの場合、光切断は、装置のレーザービームによりMALDI-MSI分析中にのみ起こり得る。代表的なピクセルからのスペクトルを
図11Kおよび
図11Lに示す。
【
図11K】
図11A-11L。異なるPCリンカーの比較および予備光切断対MALDI-MSレーザービームを用いたインライン光切断の比較。(
図11A)ビーズアレイの例示的MALDI-MSI質量画像であり、ビーズは両方とも質量ユニット1からなるPC-MT(赤色)およびPC-MT-L(緑色)で二重標識されていた(しかし、質量レポーターは、PC-MTのみが質量レポーターに結合した光切断されたPC-リンカーの小さな残存部分を残すため、43m/zの差によって区別可能である)。(
図11B~
図11I)4つの異なるビーズ種を作製し、それぞれ同じ質量ユニット(表1の質量ユニット1~4)を有するPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。これらのビーズ種のそれぞれから4つの別個のビーズアレイを形成し(ビーズ種ごとに1つのビーズアレイ)、各ビーズアレイを光切断のために5分間、事前UV照射に供した。別の4つのビーズアレイを形成し、25分間、事前UV照射に供した。次いで、合計8つの別個のビーズアレイをMALDI-MSIに供した。代表的なスペクトルは、各々のビーズアレイのビーズから単一のピクセルで示されている(8つのスペクトルの各々は、同じ質量ユニットからなるPC-MTおよびPC-MT-Lの両方からの質量レポーターに対応するピークを含む)。(
図11J)抗ミエリン抗体プローブを、両方とも質量ユニット1から構成されるPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。プローブを使用してマウス脳組織切片を免疫染色し、続いてMALDI-MSIに供した。組織の色分けされた質量画像が示されている。PC-MTは赤色、PC-MT-Lは緑色に色分けされている。0分間、5分間および25分間の事前UV条件を試験し、事前UVをマトリックス適用の直前およびMALDI-MSI分析の前に実施した。0分の事前UVの場合、光切断は、装置のレーザービームによりMALDI-MSI分析中にのみ起こり得る。代表的なピクセルからのスペクトルを
図11Kおよび
図11Lに示す。
【
図11L】
図11A-11L。異なるPCリンカーの比較および予備光切断対MALDI-MSレーザービームを用いたインライン光切断の比較。(
図11A)ビーズアレイの例示的MALDI-MSI質量画像であり、ビーズは両方とも質量ユニット1からなるPC-MT(赤色)およびPC-MT-L(緑色)で二重標識されていた(しかし、質量レポーターは、PC-MTのみが質量レポーターに結合した光切断されたPC-リンカーの小さな残存部分を残すため、43m/zの差によって区別可能である)。(
図11B~
図11I)4つの異なるビーズ種を作製し、それぞれ同じ質量ユニット(表1の質量ユニット1~4)を有するPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。これらのビーズ種のそれぞれから4つの別個のビーズアレイを形成し(ビーズ種ごとに1つのビーズアレイ)、各ビーズアレイを光切断のために5分間、事前UV照射に供した。別の4つのビーズアレイを形成し、25分間、事前UV照射に供した。次いで、合計8つの別個のビーズアレイをMALDI-MSIに供した。代表的なスペクトルは、各々のビーズアレイのビーズから単一のピクセルで示されている(8つのスペクトルの各々は、同じ質量ユニットからなるPC-MTおよびPC-MT-Lの両方からの質量レポーターに対応するピークを含む)。(
図11J)抗ミエリン抗体プローブを、両方とも質量ユニット1から構成されるPC-MTおよびPC-MT-Lで二重標識した。プローブを使用してマウス脳組織切片を免疫染色し、続いてMALDI-MSIに供した。組織の色分けされた質量画像が示されている。PC-MTは赤色、PC-MT-Lは緑色に色分けされている。0分間、5分間および25分間の事前UV条件を試験し、事前UVをマトリックス適用の直前およびMALDI-MSI分析の前に実施した。0分の事前UVの場合、光切断は、装置のレーザービームによりMALDI-MSI分析中にのみ起こり得る。代表的なピクセルからのスペクトルを
図11Kおよび
図11Lに示す。
【0042】
【
図12】質量分析に基づく免疫組織化学のための蛍光PC-MT。「蛍光」パネルは、それぞれ蛍光抗NeuN Fluor-PC-MT1、非蛍光抗NeuN PC-MT7および陰性対照蛍光抗Cas9 Fluor-PC-MT1でプローブした3つの矢状方向のマウス脳組織切片の蛍光画像(黄色)を示す。「MALDI-MSI」パネルは、同じプローブされた組織切片のMALDI-MS画像を示す(Fluor-PC-MT1からの質量レポーターについては赤色、PC-MT7からの質量レポーターについては緑色)。青色矢印は海馬を示し、白色矢印は小脳を示す。挿入スペクトルは、海馬内の代表的な単一ピクセルからのものであり、対応する質量レポーターピークは、検出された場合、黒色矢印で示される。
【0043】
【
図13A】
図13A-13E。組換え抗体対従来の抗体。37μmストレプトアビジンPMMAビーズをPC-MTに直接コンジュゲートし(ビーズID-タグ)、次いでビオチン化プロテインGを負荷し、引き続いて特異的PC-MT-Abに結合させた(各PC-MT-Ab種を特異的ビーズ種に別々に負荷した)。(
図13A)ビーズプール1のMALDI-MSI質量画像。様々なPC-MTの質量スペクトルピーク強度は、画像の上に示されるようにカラー化される。ビーズID-タグ9、10および15を有するビーズに、それぞれ組換え抗MBP1、抗MBP1および組換え抗AB2(数字は、特定のPC-MTにおける表1からの質量ユニットを示すことに留意)を負荷した。(
図13B)(
図13A)において丸で囲んだ3つのビーズ内の3つの単一ピクセルから得た3つのオーバーレイスペクトル。スペクトルは、(
図13A)で観察されたビーズの色に従って色分けされている。(
図13C)ビーズプール2のMALDI-MSI質量画像。様々なPC-MTの質量スペクトルピーク強度は、画像の上に示されるようにカラー化される。ビーズID-タグ9、10および15を有するビーズに、それぞれ組換え抗NeuN7、抗NeuN7および組換え抗AB2(数字は、特定のPC-MTにおける表1からの質量ユニットを示すことに留意)を負荷した。(
図13D)(
図13C)において丸で囲んだ3つのビーズ内の3つの単一ピクセルから得た3つのオーバーレイスペクトル。スペクトルは、(
図13C)で観察されたビーズの色に従って色分けされている。(
図13E)別個に、マウス脳の矢状方向の組織切片を抗NeuN7および組換え抗NeuN7で染色し、MALDI-MSIに供した。抗体由来のPC-MT7は、画像中で緑色にカラー化されている。白色矢印は小脳を示し、青色矢印は海馬を示し、黄色矢印は斑点のある核染色パターンを示す。両方の画像の海馬の最も強いピクセルから選択された、提供されたスペクトルでは、赤色のトレースは「組換え」の組換え抗NeuN7抗体プローブからのPC-MT7を示し、青色のトレースは「通常」非組換え抗NeuN7抗体プローブからのPC-MT7を示す。
【
図13B】
図13A-13E。組換え抗体対従来の抗体。37μmストレプトアビジンPMMAビーズをPC-MTに直接コンジュゲートし(ビーズID-タグ)、次いでビオチン化プロテインGを負荷し、引き続いて特異的PC-MT-Abに結合させた(各PC-MT-Ab種を特異的ビーズ種に別々に負荷した)。(
図13A)ビーズプール1のMALDI-MSI質量画像。様々なPC-MTの質量スペクトルピーク強度は、画像の上に示されるようにカラー化される。ビーズID-タグ9、10および15を有するビーズに、それぞれ組換え抗MBP1、抗MBP1および組換え抗AB2(数字は、特定のPC-MTにおける表1からの質量ユニットを示すことに留意)を負荷した。(
図13B)(
図13A)において丸で囲んだ3つのビーズ内の3つの単一ピクセルから得た3つのオーバーレイスペクトル。スペクトルは、(
図13A)で観察されたビーズの色に従って色分けされている。(
図13C)ビーズプール2のMALDI-MSI質量画像。様々なPC-MTの質量スペクトルピーク強度は、画像の上に示されるようにカラー化される。ビーズID-タグ9、10および15を有するビーズに、それぞれ組換え抗NeuN7、抗NeuN7および組換え抗AB2(数字は、特定のPC-MTにおける表1からの質量ユニットを示すことに留意)を負荷した。(
図13D)(
図13C)において丸で囲んだ3つのビーズ内の3つの単一ピクセルから得た3つのオーバーレイスペクトル。スペクトルは、(
図13C)で観察されたビーズの色に従って色分けされている。(
図13E)別個に、マウス脳の矢状方向の組織切片を抗NeuN7および組換え抗NeuN7で染色し、MALDI-MSIに供した。抗体由来のPC-MT7は、画像中で緑色にカラー化されている。白色矢印は小脳を示し、青色矢印は海馬を示し、黄色矢印は斑点のある核染色パターンを示す。両方の画像の海馬の最も強いピクセルから選択された、提供されたスペクトルでは、赤色のトレースは「組換え」の組換え抗NeuN7抗体プローブからのPC-MT7を示し、青色のトレースは「通常」非組換え抗NeuN7抗体プローブからのPC-MT7を示す。
【
図13C】
図13A-13E。組換え抗体対従来の抗体。37μmストレプトアビジンPMMAビーズをPC-MTに直接コンジュゲートし(ビーズID-タグ)、次いでビオチン化プロテインGを負荷し、引き続いて特異的PC-MT-Abに結合させた(各PC-MT-Ab種を特異的ビーズ種に別々に負荷した)。(
図13A)ビーズプール1のMALDI-MSI質量画像。様々なPC-MTの質量スペクトルピーク強度は、画像の上に示されるようにカラー化される。ビーズID-タグ9、10および15を有するビーズに、それぞれ組換え抗MBP1、抗MBP1および組換え抗AB2(数字は、特定のPC-MTにおける表1からの質量ユニットを示すことに留意)を負荷した。(
図13B)(
図13A)において丸で囲んだ3つのビーズ内の3つの単一ピクセルから得た3つのオーバーレイスペクトル。スペクトルは、(
図13A)で観察されたビーズの色に従って色分けされている。(
図13C)ビーズプール2のMALDI-MSI質量画像。様々なPC-MTの質量スペクトルピーク強度は、画像の上に示されるようにカラー化される。ビーズID-タグ9、10および15を有するビーズに、それぞれ組換え抗NeuN7、抗NeuN7および組換え抗AB2(数字は、特定のPC-MTにおける表1からの質量ユニットを示すことに留意)を負荷した。(
図13D)(
図13C)において丸で囲んだ3つのビーズ内の3つの単一ピクセルから得た3つのオーバーレイスペクトル。スペクトルは、(
図13C)で観察されたビーズの色に従って色分けされている。(
図13E)別個に、マウス脳の矢状方向の組織切片を抗NeuN7および組換え抗NeuN7で染色し、MALDI-MSIに供した。抗体由来のPC-MT7は、画像中で緑色にカラー化されている。白色矢印は小脳を示し、青色矢印は海馬を示し、黄色矢印は斑点のある核染色パターンを示す。両方の画像の海馬の最も強いピクセルから選択された、提供されたスペクトルでは、赤色のトレースは「組換え」の組換え抗NeuN7抗体プローブからのPC-MT7を示し、青色のトレースは「通常」非組換え抗NeuN7抗体プローブからのPC-MT7を示す。
【
図13D】
図13A-13E。組換え抗体対従来の抗体。37μmストレプトアビジンPMMAビーズをPC-MTに直接コンジュゲートし(ビーズID-タグ)、次いでビオチン化プロテインGを負荷し、引き続いて特異的PC-MT-Abに結合させた(各PC-MT-Ab種を特異的ビーズ種に別々に負荷した)。(
図13A)ビーズプール1のMALDI-MSI質量画像。様々なPC-MTの質量スペクトルピーク強度は、画像の上に示されるようにカラー化される。ビーズID-タグ9、10および15を有するビーズに、それぞれ組換え抗MBP1、抗MBP1および組換え抗AB2(数字は、特定のPC-MTにおける表1からの質量ユニットを示すことに留意)を負荷した。(
図13B)(
図13A)において丸で囲んだ3つのビーズ内の3つの単一ピクセルから得た3つのオーバーレイスペクトル。スペクトルは、(
図13A)で観察されたビーズの色に従って色分けされている。(
図13C)ビーズプール2のMALDI-MSI質量画像。様々なPC-MTの質量スペクトルピーク強度は、画像の上に示されるようにカラー化される。ビーズID-タグ9、10および15を有するビーズに、それぞれ組換え抗NeuN7、抗NeuN7および組換え抗AB2(数字は、特定のPC-MTにおける表1からの質量ユニットを示すことに留意)を負荷した。(
図13D)(
図13C)において丸で囲んだ3つのビーズ内の3つの単一ピクセルから得た3つのオーバーレイスペクトル。スペクトルは、(
図13C)で観察されたビーズの色に従って色分けされている。(
図13E)別個に、マウス脳の矢状方向の組織切片を抗NeuN7および組換え抗NeuN7で染色し、MALDI-MSIに供した。抗体由来のPC-MT7は、画像中で緑色にカラー化されている。白色矢印は小脳を示し、青色矢印は海馬を示し、黄色矢印は斑点のある核染色パターンを示す。両方の画像の海馬の最も強いピクセルから選択された、提供されたスペクトルでは、赤色のトレースは「組換え」の組換え抗NeuN7抗体プローブからのPC-MT7を示し、青色のトレースは「通常」非組換え抗NeuN7抗体プローブからのPC-MT7を示す。
【
図13E】
図13A-13E。組換え抗体対従来の抗体。37μmストレプトアビジンPMMAビーズをPC-MTに直接コンジュゲートし(ビーズID-タグ)、次いでビオチン化プロテインGを負荷し、引き続いて特異的PC-MT-Abに結合させた(各PC-MT-Ab種を特異的ビーズ種に別々に負荷した)。(
図13A)ビーズプール1のMALDI-MSI質量画像。様々なPC-MTの質量スペクトルピーク強度は、画像の上に示されるようにカラー化される。ビーズID-タグ9、10および15を有するビーズに、それぞれ組換え抗MBP1、抗MBP1および組換え抗AB2(数字は、特定のPC-MTにおける表1からの質量ユニットを示すことに留意)を負荷した。(
図13B)(
図13A)において丸で囲んだ3つのビーズ内の3つの単一ピクセルから得た3つのオーバーレイスペクトル。スペクトルは、(
図13A)で観察されたビーズの色に従って色分けされている。(
図13C)ビーズプール2のMALDI-MSI質量画像。様々なPC-MTの質量スペクトルピーク強度は、画像の上に示されるようにカラー化される。ビーズID-タグ9、10および15を有するビーズに、それぞれ組換え抗NeuN7、抗NeuN7および組換え抗AB2(数字は、特定のPC-MTにおける表1からの質量ユニットを示すことに留意)を負荷した。(
図13D)(
図13C)において丸で囲んだ3つのビーズ内の3つの単一ピクセルから得た3つのオーバーレイスペクトル。スペクトルは、(
図13C)で観察されたビーズの色に従って色分けされている。(
図13E)別個に、マウス脳の矢状方向の組織切片を抗NeuN7および組換え抗NeuN7で染色し、MALDI-MSIに供した。抗体由来のPC-MT7は、画像中で緑色にカラー化されている。白色矢印は小脳を示し、青色矢印は海馬を示し、黄色矢印は斑点のある核染色パターンを示す。両方の画像の海馬の最も強いピクセルから選択された、提供されたスペクトルでは、赤色のトレースは「組換え」の組換え抗NeuN7抗体プローブからのPC-MT7を示し、青色のトレースは「通常」非組換え抗NeuN7抗体プローブからのPC-MT7を示す。
【0044】
【
図14A】
図14A-14D。ヒト扁桃FFPE組織切片中の12個のバイオマーカーに対するマルチプレックス質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)。12個の異なるバイオマーカーを使用したことを除いて、
図7と同様にMIHCを実施した(各抗体のPC-MT割り当てについては表1を参照)。さらに、汎サイトケラチン抗体(CK)をPC-MTおよびフルオロフォアの両方で標識した。(
図14A)GenePix 4200A蛍光マイクロアレイスキャナを使用して5ミクロン解像度で撮影した扁桃組織切片全体のCK免疫蛍光画像。(
図14B)CK抗体由来のPC-MTについてのモノアイソトピックm/z値の強度マップを示す同じ組織切片のMALDI-MS画像(すべてのMALDI-MS画像が10ミクロンの空間分解能である)。(
図14C)示差的構造パターンを示す、組織切片全体から選択されたバイオマーカーのマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ。色分けは、画像の下のキーに示されている。(
図14D)組織切片の代表的な小領域についてのグラデーションカラーとして示される12個すべてのバイオマーカーの個々のMALDI-MS画像(標識によって示されるバイオマーカー同一性)。PC-MTを有するアイソタイプ対照IgG(CD3と同じPC-MT)で染色された隣接組織切片である「ブランク」も示されている。グラデーションカラースケールは下部に示されている。比較のために、すべてのバイオマーカーの表示スケールは、25の完全強度閾値(任意のピーク強度単位)および2.5の最小表示強度に設定されるが、例外的に強いシグナルを生成し、したがってそれぞれ50および5に設定されたCK、CD20およびKi67を除く。
【
図14B】
図14A-14D。ヒト扁桃FFPE組織切片中の12個のバイオマーカーに対するマルチプレックス質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)。12個の異なるバイオマーカーを使用したことを除いて、
図7と同様にMIHCを実施した(各抗体のPC-MT割り当てについては表1を参照)。さらに、汎サイトケラチン抗体(CK)をPC-MTおよびフルオロフォアの両方で標識した。(
図14A)GenePix 4200A蛍光マイクロアレイスキャナを使用して5ミクロン解像度で撮影した扁桃組織切片全体のCK免疫蛍光画像。(
図14B)CK抗体由来のPC-MTについてのモノアイソトピックm/z値の強度マップを示す同じ組織切片のMALDI-MS画像(すべてのMALDI-MS画像が10ミクロンの空間分解能である)。(
図14C)示差的構造パターンを示す、組織切片全体から選択されたバイオマーカーのマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ。色分けは、画像の下のキーに示されている。(
図14D)組織切片の代表的な小領域についてのグラデーションカラーとして示される12個すべてのバイオマーカーの個々のMALDI-MS画像(標識によって示されるバイオマーカー同一性)。PC-MTを有するアイソタイプ対照IgG(CD3と同じPC-MT)で染色された隣接組織切片である「ブランク」も示されている。グラデーションカラースケールは下部に示されている。比較のために、すべてのバイオマーカーの表示スケールは、25の完全強度閾値(任意のピーク強度単位)および2.5の最小表示強度に設定されるが、例外的に強いシグナルを生成し、したがってそれぞれ50および5に設定されたCK、CD20およびKi67を除く。
【
図14C】
図14A-14D。ヒト扁桃FFPE組織切片中の12個のバイオマーカーに対するマルチプレックス質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)。12個の異なるバイオマーカーを使用したことを除いて、
図7と同様にMIHCを実施した(各抗体のPC-MT割り当てについては表1を参照)。さらに、汎サイトケラチン抗体(CK)をPC-MTおよびフルオロフォアの両方で標識した。(
図14A)GenePix 4200A蛍光マイクロアレイスキャナを使用して5ミクロン解像度で撮影した扁桃組織切片全体のCK免疫蛍光画像。(
図14B)CK抗体由来のPC-MTについてのモノアイソトピックm/z値の強度マップを示す同じ組織切片のMALDI-MS画像(すべてのMALDI-MS画像が10ミクロンの空間分解能である)。(
図14C)示差的構造パターンを示す、組織切片全体から選択されたバイオマーカーのマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ。色分けは、画像の下のキーに示されている。(
図14D)組織切片の代表的な小領域についてのグラデーションカラーとして示される12個すべてのバイオマーカーの個々のMALDI-MS画像(標識によって示されるバイオマーカー同一性)。PC-MTを有するアイソタイプ対照IgG(CD3と同じPC-MT)で染色された隣接組織切片である「ブランク」も示されている。グラデーションカラースケールは下部に示されている。比較のために、すべてのバイオマーカーの表示スケールは、25の完全強度閾値(任意のピーク強度単位)および2.5の最小表示強度に設定されるが、例外的に強いシグナルを生成し、したがってそれぞれ50および5に設定されたCK、CD20およびKi67を除く。
【
図14D】
図14A-14D。ヒト扁桃FFPE組織切片中の12個のバイオマーカーに対するマルチプレックス質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)。12個の異なるバイオマーカーを使用したことを除いて、
図7と同様にMIHCを実施した(各抗体のPC-MT割り当てについては表1を参照)。さらに、汎サイトケラチン抗体(CK)をPC-MTおよびフルオロフォアの両方で標識した。(
図14A)GenePix 4200A蛍光マイクロアレイスキャナを使用して5ミクロン解像度で撮影した扁桃組織切片全体のCK免疫蛍光画像。(
図14B)CK抗体由来のPC-MTについてのモノアイソトピックm/z値の強度マップを示す同じ組織切片のMALDI-MS画像(すべてのMALDI-MS画像が10ミクロンの空間分解能である)。(
図14C)示差的構造パターンを示す、組織切片全体から選択されたバイオマーカーのマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ。色分けは、画像の下のキーに示されている。(
図14D)組織切片の代表的な小領域についてのグラデーションカラーとして示される12個すべてのバイオマーカーの個々のMALDI-MS画像(標識によって示されるバイオマーカー同一性)。PC-MTを有するアイソタイプ対照IgG(CD3と同じPC-MT)で染色された隣接組織切片である「ブランク」も示されている。グラデーションカラースケールは下部に示されている。比較のために、すべてのバイオマーカーの表示スケールは、25の完全強度閾値(任意のピーク強度単位)および2.5の最小表示強度に設定されるが、例外的に強いシグナルを生成し、したがってそれぞれ50および5に設定されたCK、CD20およびKi67を除く。
【0045】
【
図15A】
図15A-15D。ヒト乳癌FFPE組織切片中の12個のバイオマーカーに対するマルチプレックス質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)。MIHCを
図14のように行った(各抗体についてのPC-MT割り当てについては表1を参照)。(
図15A)示差的構造パターンを示す選択された抗体由来のPC-MTについてのモノアイソトピックm/z値の強度マップを示す乳癌組織切片のマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ(すべてのMALDI-MS画像は10ミクロンの空間分解能である)。画像上のキーには色分けが示されている。生体試料のベンダー(OriGene)によって提供された病理報告によるこの生体試料の臨床的注釈は以下の通りであった:乳房の腺癌(乳管)、pTlcpN3apMXのTNM病期分類、最小病期分類IIIC、75%腫瘍、および従来のIHCによるPR-/ER-/HER2+。(
図15B)組織切片全体についてのグラデーションカラーとして示される12個すべてのバイオマーカーの個々のMALDI-MS画像(標識によって示されるバイオマーカー同一性)。PC-MTを有するアイソタイプ対照IgG(CD3と同じPC-MT)で染色された隣接組織切片である「ブランク」も示されている。グラデーションカラースケールも示されている。比較のために、すべてのバイオマーカーの表示スケールは、20の完全強度閾値(任意のピーク強度単位)および2の最小表示強度に設定されるが、例外的に強いシグナルを生成し、したがってそれぞれ50および5に設定されたCK、CD3、CD4、CD68およびKi67を除く。(
図15C)同じ乳癌組織切片のマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ、この場合は簡単にするために、CK、HER2およびER(画像上の色分け)のみを示し、これら3つの重要なバイオマーカーの相対分布の視覚的識別を可能にする。(
図15D)異なる乳癌組織切片上の選択されたバイオマーカーのマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ(上部パネル、下画像の色分け)および個々のMALDI-MS画像(勾配スケール、底部パネル)。この場合、生体試料のベンダー(OriGene)によって提供された病理報告によるこの生体試料の臨床的注釈は以下の通りであった:乳房の腺癌、乳管、小葉、転移性、T2N2aMXのTNM病期分類、最小病期分類IIIA、95%腫瘍、および従来のIHCによるPR+/ER+/HER2-(すなわち、PR/ER/HER2プロファイルは、以前の組織の逆数である)。比較のために、グラデーションカラー画像の表示スケールは、20の完全強度閾値(任意のピーク強度単位)および2の最小表示強度に設定されるが、例外的に強いシグナルを生成し、したがってそれぞれ100および10に設定されたCKを除く。
【
図15B】
図15A-15D。ヒト乳癌FFPE組織切片中の12個のバイオマーカーに対するマルチプレックス質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)。MIHCを
図14のように行った(各抗体についてのPC-MT割り当てについては表1を参照)。(
図15A)示差的構造パターンを示す選択された抗体由来のPC-MTについてのモノアイソトピックm/z値の強度マップを示す乳癌組織切片のマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ(すべてのMALDI-MS画像は10ミクロンの空間分解能である)。画像上のキーには色分けが示されている。生体試料のベンダー(OriGene)によって提供された病理報告によるこの生体試料の臨床的注釈は以下の通りであった:乳房の腺癌(乳管)、pTlcpN3apMXのTNM病期分類、最小病期分類IIIC、75%腫瘍、および従来のIHCによるPR-/ER-/HER2+。(
図15B)組織切片全体についてのグラデーションカラーとして示される12個すべてのバイオマーカーの個々のMALDI-MS画像(標識によって示されるバイオマーカー同一性)。PC-MTを有するアイソタイプ対照IgG(CD3と同じPC-MT)で染色された隣接組織切片である「ブランク」も示されている。グラデーションカラースケールも示されている。比較のために、すべてのバイオマーカーの表示スケールは、20の完全強度閾値(任意のピーク強度単位)および2の最小表示強度に設定されるが、例外的に強いシグナルを生成し、したがってそれぞれ50および5に設定されたCK、CD3、CD4、CD68およびKi67を除く。(
図15C)同じ乳癌組織切片のマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ、この場合は簡単にするために、CK、HER2およびER(画像上の色分け)のみを示し、これら3つの重要なバイオマーカーの相対分布の視覚的識別を可能にする。(
図15D)異なる乳癌組織切片上の選択されたバイオマーカーのマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ(上部パネル、下画像の色分け)および個々のMALDI-MS画像(勾配スケール、底部パネル)。この場合、生体試料のベンダー(OriGene)によって提供された病理報告によるこの生体試料の臨床的注釈は以下の通りであった:乳房の腺癌、乳管、小葉、転移性、T2N2aMXのTNM病期分類、最小病期分類IIIA、95%腫瘍、および従来のIHCによるPR+/ER+/HER2-(すなわち、PR/ER/HER2プロファイルは、以前の組織の逆数である)。比較のために、グラデーションカラー画像の表示スケールは、20の完全強度閾値(任意のピーク強度単位)および2の最小表示強度に設定されるが、例外的に強いシグナルを生成し、したがってそれぞれ100および10に設定されたCKを除く。
【
図15C】
図15A-15D。ヒト乳癌FFPE組織切片中の12個のバイオマーカーに対するマルチプレックス質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)。MIHCを
図14のように行った(各抗体についてのPC-MT割り当てについては表1を参照)。(
図15A)示差的構造パターンを示す選択された抗体由来のPC-MTについてのモノアイソトピックm/z値の強度マップを示す乳癌組織切片のマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ(すべてのMALDI-MS画像は10ミクロンの空間分解能である)。画像上のキーには色分けが示されている。生体試料のベンダー(OriGene)によって提供された病理報告によるこの生体試料の臨床的注釈は以下の通りであった:乳房の腺癌(乳管)、pTlcpN3apMXのTNM病期分類、最小病期分類IIIC、75%腫瘍、および従来のIHCによるPR-/ER-/HER2+。(
図15B)組織切片全体についてのグラデーションカラーとして示される12個すべてのバイオマーカーの個々のMALDI-MS画像(標識によって示されるバイオマーカー同一性)。PC-MTを有するアイソタイプ対照IgG(CD3と同じPC-MT)で染色された隣接組織切片である「ブランク」も示されている。グラデーションカラースケールも示されている。比較のために、すべてのバイオマーカーの表示スケールは、20の完全強度閾値(任意のピーク強度単位)および2の最小表示強度に設定されるが、例外的に強いシグナルを生成し、したがってそれぞれ50および5に設定されたCK、CD3、CD4、CD68およびKi67を除く。(
図15C)同じ乳癌組織切片のマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ、この場合は簡単にするために、CK、HER2およびER(画像上の色分け)のみを示し、これら3つの重要なバイオマーカーの相対分布の視覚的識別を可能にする。(
図15D)異なる乳癌組織切片上の選択されたバイオマーカーのマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ(上部パネル、下画像の色分け)および個々のMALDI-MS画像(勾配スケール、底部パネル)。この場合、生体試料のベンダー(OriGene)によって提供された病理報告によるこの生体試料の臨床的注釈は以下の通りであった:乳房の腺癌、乳管、小葉、転移性、T2N2aMXのTNM病期分類、最小病期分類IIIA、95%腫瘍、および従来のIHCによるPR+/ER+/HER2-(すなわち、PR/ER/HER2プロファイルは、以前の組織の逆数である)。比較のために、グラデーションカラー画像の表示スケールは、20の完全強度閾値(任意のピーク強度単位)および2の最小表示強度に設定されるが、例外的に強いシグナルを生成し、したがってそれぞれ100および10に設定されたCKを除く。
【
図15D】
図15A-15D。ヒト乳癌FFPE組織切片中の12個のバイオマーカーに対するマルチプレックス質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)。MIHCを
図14のように行った(各抗体についてのPC-MT割り当てについては表1を参照)。(
図15A)示差的構造パターンを示す選択された抗体由来のPC-MTについてのモノアイソトピックm/z値の強度マップを示す乳癌組織切片のマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ(すべてのMALDI-MS画像は10ミクロンの空間分解能である)。画像上のキーには色分けが示されている。生体試料のベンダー(OriGene)によって提供された病理報告によるこの生体試料の臨床的注釈は以下の通りであった:乳房の腺癌(乳管)、pTlcpN3apMXのTNM病期分類、最小病期分類IIIC、75%腫瘍、および従来のIHCによるPR-/ER-/HER2+。(
図15B)組織切片全体についてのグラデーションカラーとして示される12個すべてのバイオマーカーの個々のMALDI-MS画像(標識によって示されるバイオマーカー同一性)。PC-MTを有するアイソタイプ対照IgG(CD3と同じPC-MT)で染色された隣接組織切片である「ブランク」も示されている。グラデーションカラースケールも示されている。比較のために、すべてのバイオマーカーの表示スケールは、20の完全強度閾値(任意のピーク強度単位)および2の最小表示強度に設定されるが、例外的に強いシグナルを生成し、したがってそれぞれ50および5に設定されたCK、CD3、CD4、CD68およびKi67を除く。(
図15C)同じ乳癌組織切片のマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ、この場合は簡単にするために、CK、HER2およびER(画像上の色分け)のみを示し、これら3つの重要なバイオマーカーの相対分布の視覚的識別を可能にする。(
図15D)異なる乳癌組織切片上の選択されたバイオマーカーのマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイ(上部パネル、下画像の色分け)および個々のMALDI-MS画像(勾配スケール、底部パネル)。この場合、生体試料のベンダー(OriGene)によって提供された病理報告によるこの生体試料の臨床的注釈は以下の通りであった:乳房の腺癌、乳管、小葉、転移性、T2N2aMXのTNM病期分類、最小病期分類IIIA、95%腫瘍、および従来のIHCによるPR+/ER+/HER2-(すなわち、PR/ER/HER2プロファイルは、以前の組織の逆数である)。比較のために、グラデーションカラー画像の表示スケールは、20の完全強度閾値(任意のピーク強度単位)および2の最小表示強度に設定されるが、例外的に強いシグナルを生成し、したがってそれぞれ100および10に設定されたCKを除く。
【0046】
【
図16】本発明のプロトコル(MIHCおよびMISH)の共通要素と、従来のIHC(例えば、[KatikireddyおよびO’Sullivan(2011)Methods Mol Biol 784:155-67])および従来のISH(例えば、[Renwick,Cekanら(2014)Methods Mol Biol 1211:171-87])、ならびに従来の直接的なMSI(例えば、[Caprioli,Farmerら(1997)Anal Chem 69:4751-60])およびビーズアレイのMSI(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,523,680号)との比較。例えば、FFまたはFFPE組織が使用されるかどうか、それがIHC/MIHCまたはISH/MISHベースのプロトコルであるかどうか、および/または従来のIHCまたはISHにどのようなタイプの光学的検出方法(例えば、直接標識された一次抗体または二次検出方法、および比色対蛍光読み出し)が使用されるかに応じて、多くのプロトコルのバリエーションが可能であり、したがって、
図16は、プロトコルの共通の必須要素のみを示すことに留意されたい。
【0047】
【
図17】本発明の質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)手順を受けた酸化インジウムスズ(ITO)被覆ガラススライド上のマウス脳組織切片に対する損傷の例。上の2つの画像はITO被覆ガラススライド上にあり、下の画像は金被覆ガラススライド上にある。組織切片の損失または損傷は可変であり得る。組織切片に対する損傷の主な部位は、黒色矢印で示されている。
【0048】
【
図18】マトリックス再結晶ありおよびなしのDHBマトリックス昇華を使用したマウス脳FFPE組織切片上の抗NeuN抗体検出についてのMIHC結果の比較。
【0049】
【
図19A】
図19A-19C。PC-MT標識レクチンプローブで染色した矢状方向のマウス脳FFPE組織切片のMALDI-MSI。(
図19Aおよび
図19B)3つのレクチン、PHA-E4(赤色)、PNA(緑色)およびWGA(青色)に対応するPC-MTのカラー化された質量画像。(
図19B)(この場合はWGAの)レクチン結合の特異性を示すための競合的阻害(ブロッキング)。PC-MTレクチンプローブの混合物を、WGAに特異的に結合する可溶性糖N,N’,N”-トリアセチルキトトリオース(TCT)とプレインキュベートした(可溶性糖は、組織染色/プロービング工程中に存在したままであった)。対照として、TCTブロッキングを省略した。(
図19C)パネルb内の各質量画像の全体からの全体平均スペクトルを取得した。3つのレクチンのモノアイソトピックPC-MTピークを標識する(WGA、PNAおよびPHA-E4)。オレンジ色のトレースは、TCTブロッキングで処理された組織であり、紫色のトレースは、TCTブロッキングなしで処理された組織である。WGA PC-MTのピーク強度の70%の低下がTCTブロッキングで観察されるが、他の2つのレクチンは変化していない。
【
図19B】
図19A-19C。PC-MT標識レクチンプローブで染色した矢状方向のマウス脳FFPE組織切片のMALDI-MSI。(
図19Aおよび
図19B)3つのレクチン、PHA-E4(赤色)、PNA(緑色)およびWGA(青色)に対応するPC-MTのカラー化された質量画像。(
図19B)(この場合はWGAの)レクチン結合の特異性を示すための競合的阻害(ブロッキング)。PC-MTレクチンプローブの混合物を、WGAに特異的に結合する可溶性糖N,N’,N”-トリアセチルキトトリオース(TCT)とプレインキュベートした(可溶性糖は、組織染色/プロービング工程中に存在したままであった)。対照として、TCTブロッキングを省略した。(
図19C)パネルb内の各質量画像の全体からの全体平均スペクトルを取得した。3つのレクチンのモノアイソトピックPC-MTピークを標識する(WGA、PNAおよびPHA-E4)。オレンジ色のトレースは、TCTブロッキングで処理された組織であり、紫色のトレースは、TCTブロッキングなしで処理された組織である。WGA PC-MTのピーク強度の70%の低下がTCTブロッキングで観察されるが、他の2つのレクチンは変化していない。
【
図19C】
図19A-19C。PC-MT標識レクチンプローブで染色した矢状方向のマウス脳FFPE組織切片のMALDI-MSI。(
図19Aおよび
図19B)3つのレクチン、PHA-E4(赤色)、PNA(緑色)およびWGA(青色)に対応するPC-MTのカラー化された質量画像。(
図19B)(この場合はWGAの)レクチン結合の特異性を示すための競合的阻害(ブロッキング)。PC-MTレクチンプローブの混合物を、WGAに特異的に結合する可溶性糖N,N’,N”-トリアセチルキトトリオース(TCT)とプレインキュベートした(可溶性糖は、組織染色/プロービング工程中に存在したままであった)。対照として、TCTブロッキングを省略した。(
図19C)パネルb内の各質量画像の全体からの全体平均スペクトルを取得した。3つのレクチンのモノアイソトピックPC-MTピークを標識する(WGA、PNAおよびPHA-E4)。オレンジ色のトレースは、TCTブロッキングで処理された組織であり、紫色のトレースは、TCTブロッキングなしで処理された組織である。WGA PC-MTのピーク強度の70%の低下がTCTブロッキングで観察されるが、他の2つのレクチンは変化していない。
【0050】
【
図20A】
図20A-20C。直接的非標識MALDI-MSIに続く同じ組織切片に対するMIHC。FFの矢状方向のマウス脳組織切片を使用した。直接検出された脂質および様々な抗体に由来するPC-MTの質量画像を示す。(
図20A)MSI-1。内因性脂質の最初の直接的非標識MALDI-MSI(例示的な脂質が表示されている画像のキーを参照)。(
図20B)MSI-2。選択された抗体PC-MTを示す後続のMIHC(抗体PC-MTが表示されている画像のキーを参照)。(
図20C)合成。MSI-1およびMSI-2から選択された分析物の画像の合成(分析物の画像のキーを参照)。脂質スルファチド(ST)とミエリンとの予想される共局在であるが、STとNeuNとの間ではないことは、実施例4で説明される。
【
図20B】
図20A-20C。直接的非標識MALDI-MSIに続く同じ組織切片に対するMIHC。FFの矢状方向のマウス脳組織切片を使用した。直接検出された脂質および様々な抗体に由来するPC-MTの質量画像を示す。(
図20A)MSI-1。内因性脂質の最初の直接的非標識MALDI-MSI(例示的な脂質が表示されている画像のキーを参照)。(
図20B)MSI-2。選択された抗体PC-MTを示す後続のMIHC(抗体PC-MTが表示されている画像のキーを参照)。(
図20C)合成。MSI-1およびMSI-2から選択された分析物の画像の合成(分析物の画像のキーを参照)。脂質スルファチド(ST)とミエリンとの予想される共局在であるが、STとNeuNとの間ではないことは、実施例4で説明される。
【
図20C】
図20A-20C。直接的非標識MALDI-MSIに続く同じ組織切片に対するMIHC。FFの矢状方向のマウス脳組織切片を使用した。直接検出された脂質および様々な抗体に由来するPC-MTの質量画像を示す。(
図20A)MSI-1。内因性脂質の最初の直接的非標識MALDI-MSI(例示的な脂質が表示されている画像のキーを参照)。(
図20B)MSI-2。選択された抗体PC-MTを示す後続のMIHC(抗体PC-MTが表示されている画像のキーを参照)。(
図20C)合成。MSI-1およびMSI-2から選択された分析物の画像の合成(分析物の画像のキーを参照)。脂質スルファチド(ST)とミエリンとの予想される共局在であるが、STとNeuNとの間ではないことは、実施例4で説明される。
【0051】
【
図21A】
図21A-21B。非イメージング質量分析用途におけるPC-MTプローブ。PC-MT-AbをプロテインGアガロースビーズに結合させ、ビーズを洗浄し、ビーズに結合したPC-MT-AbからPC-MTを光放出させ、非イメージング標準MALDI-MS(
図21A)によって分析した上清を、プロテインGビーズに添加された6つの異なる濃度のPC-MT-Abに対応する6つのサンプルからのMALDI-MSスペクトルの積層3D投影(ビーズに添加されたPC-MT-Abの濃度範囲を黒色矢印で示す)。対照ペプチドは、データ正規化の目的のために固定濃度でサンプルに含めた。(
図21B)光放出されたPC-MTと対照ペプチドモノアイソトピックピーク強度の比を取り、プロテインGビーズに添加したPC-MT-Ab濃度の関数としてプロットした。
【
図21B】
図21A-21B。非イメージング質量分析用途におけるPC-MTプローブ。PC-MT-AbをプロテインGアガロースビーズに結合させ、ビーズを洗浄し、ビーズに結合したPC-MT-AbからPC-MTを光放出させ、非イメージング標準MALDI-MS(
図21A)によって分析した上清を、プロテインGビーズに添加された6つの異なる濃度のPC-MT-Abに対応する6つのサンプルからのMALDI-MSスペクトルの積層3D投影(ビーズに添加されたPC-MT-Abの濃度範囲を黒色矢印で示す)。対照ペプチドは、データ正規化の目的のために固定濃度でサンプルに含めた。(
図21B)光放出されたPC-MTと対照ペプチドモノアイソトピックピーク強度の比を取り、プロテインGビーズに添加したPC-MT-Ab濃度の関数としてプロットした。
【0052】
【
図22】
図22は、未消化組織と消化組織での作業の並行を示す例示的な概略図を示す。FFPE=ホルマリン固定およびパラフィン包埋(FFPE)。
【発明を実施するための形態】
【0053】
表1。PC-MTの質量ユニット配列および質量レポーターの質量(例示的なPC-MT構造については
図3を参照)。
【0054】
表1.1。アミノ酸同位体。
【0055】
発明の説明
【0056】
本発明は、例えば研究用途および病理学者による臨床用途(例えば、切除された腫瘍または腫瘍生検のバイオマーカー分析)のための、組織または細胞における生体分子(例えば、タンパク質およびmiRNA)の標的化検出およびマッピングのための免疫組織化学(IHC)およびインサイツハイブリダイゼーション(ISH)に関する。特に、例えば、組織または細胞内の生体分子を検出およびマッピングするためのモードとしての質量分析イメージング(MSI)の使用である。より具体的には、本発明の分野は、抗体および核酸などのプローブに結合され、マルチプレックス免疫組織化学およびインサイツハイブリダイゼーションを達成するために使用され、MSIを検出/読み出しの様式として用いる光切断可能な質量タグ試薬に関する。
【0057】
蛍光IHCなどの現在の組織イメージング方法は、複雑な生体系およびヒト疾患を解明するために必要なマルチプレックス性および/またはマルチオミックのレベルを欠いている。質量分析イメージング(MSI)は、一般に、小分子およびペプチドの非標的化分析に限定され、タンパク質などの特定のインタクト分子、グリカンなどの翻訳後修飾、ならびにDNAおよびRNAなどの核酸を標的とする能力を欠く。本発明者らは、組織中の標的化高分子の高度にマルチプレックス化されたMSIのための抗体、レクチンおよび核酸を含むプローブの容易な標識のために新規な光切断可能なペプチド質量タグ(PC-MT)を利用する方法を開発した。非標的化MSIと組み合わせると、単一の検体で高度なマルチプレックス性とマルチオミック組織イメージングの両方が達成される。複合マルチモーダル蛍光およびMS IHCイメージングはまた、二重標識抗体プローブを使用することによって単一組織検体上で達成される。必要とされているのは、これらの前述の制限を克服する新規な光切断可能な質量タグ(PC-MT)およびMALDI-MSI手順である。
【0058】
ここで、本発明者らは、これらの前述の制限を克服する新規な光切断可能な質量タグ(PC-MT)およびMALDI-MSI手順を報告する。PC-MTは、質量ユニットと、固相合成によってペプチドに組み込まれた高効率光切断可能リンカー(PC-リンカー)と、スペーサーと、C末端付近のNHS-エステルプローブ反応性部分とを含む修飾ポリペプチドである。PC-MT抗体プローブを1工程反応で作製する。新規PC-リンカーに使用される高速かつ効率的な光核[Olejnik,Sonarら(1995)Proceedings of the National Academy of Science(USA)92:7590-7594]は、実際には堅牢な感度を提供し、ここに示されるように、マウス脳(実験例2)、ヒト扁桃および乳癌(実験例9)を含む様々な組織における広範囲のバイオマーカーの高プレックスMSIを可能にする。さらに、PC-MTとフルオロフォアの両方を組み合わせた新規二重標識抗体は、MSIと従来の免疫蛍光との直接相関を可能にした(実験例9)。最後に、このアプローチの汎用性は、同じ組織切片に対して、標準的なIHCでは不可能な(脂質の)非標識非標的化小分子MSIと、高分子バイオマーカーのマルチプレックスPC-MTに基づく標的化MSIとの両方を実行する能力によって示される(実験例4)。
【0059】
本発明は、抗体および核酸などのプローブを使用して、組織および細胞などの生物学的検体中の標的化生体分子の高度にマルチプレックス化されたMSIを可能にするために、以前の標的化質量分析イメージング(MSI)方法の前述の制限を克服する新規な光切断可能リンカー(PC-リンカー)、光切断可能質量タグ(PC-MT)および光切断可能質量タグ付きプローブ(PC-MT-プローブ)の組成物ならびに製造方法および使用を伴う。
【0060】
ペプチドベースのPC-MTならびに得られたPC-MT-プローブの基本設計およびそれらの使用を
図2に示す。
【0061】
図2aに示すように、ペプチドベースのPC-MTは、i)例えばアミン反応性NHSエステル脱離基(N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル)が示されている、プローブ反応性部分、ii)固相ペプチド合成(SPPS)中にペプチド鎖に導入される内部PC-リンカー(
図2aの楕円)、iii)SPPS化学を使用して組み込むことができるアミノ酸もしくは同位体またはその類似体/誘導体を含む選択的に検出可能な質量ユニット(
図2aの曲線)、およびiv)任意のフルオロフォア(
図2aにおいて「F」を有するスターバースト)を含む。
【0062】
PC-MTのプローブ反応性部分とプローブとの化学反応によって、PC-MTをプローブに共有結合させて、PC-MT-プローブを作製する(
図2b)。プローブは、例えば、抗体などのタンパク質またはアミン修飾オリゴヌクレオチドもしくはアプタマーなどの核酸であり得る。
【0063】
細胞/組織をPC-MT-プローブで「染色」し(すなわち、PC-MTプローブは、細胞/組織中のそれらの標的に結合している)、光切断すると、MSIによる検出のために質量レポーター領域が遊離する(光放出される)(
図2c、質量レポーターは、質量ユニットを含み、いくつかの実施形態では、光切断されたPC-リンカーの一部も含むことに留意されたい)。光切断は、MALDI-MSレーザービームおよび/または任意の光、例えば200nm~400nmの範囲の波長を有するUVまたは近UV光によって達成され得ることに留意されたい。
【0064】
PC-MT、得られたPC-MT-プローブおよびそれらの使用における改善は、以下のi)光切断可能ビオチン(PC-ビオチン)および光切断可能ホスホラミダイト(PC-ホスホラミダイト)などの他の化合物に組み込まれた場合、様々な他の用途で以前に実証された高速かつ効率的な光切断可能核(PC核、
図3の工程1参照)[Olejnik,Sonarら(1995)Proceedings of the National Academy of Science(USA)92:7590-7594、Olejnik(1996)Nucleic Acids Research 24:361-366、Olejnik,Krzymancka-Olejnikら(1998)Nucleic Acids Res 26:3572-6、Martinez,Patkaniowskaら(2002)Cell 110:563-74、Pandori,Hobsonら(2002)Chem Biol 9:567-73、Mitra,Shendureら(2003)Anal Biochem,320:55~65、LimおよびRothschild(2008)Anal Biochem 383:103-115、Lim,Liuら(2014)Rapid communications in mass spectrometry:RCM 28:49-62、Zhou,Liuら(2016)Sci Rep 6:26125][参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,643,722号、同第5,986,076号、同第6,218,530号、同第8,906,700号、および同第10,060,912号も参照されたい]、ii)当該PC-核を含み、標準的なFmocベースのSPPS化学を使用してペプチド鎖に組み込むことができる新規Fmoc保護光切断可能リンカー(Fmoc-PC-リンカー、
図3参照)(
図3参照)iii)PC-MTのプローブ反応性部分を使用した容易な1工程プローブ標識化(例えば、NHS-エステルプローブ反応性部分、
図3の工程1-2参照)、iv)MSIに加えて従来の蛍光イメージングを可能にすることによって方法の開発を支援するためのPC-MT上の組み込まれた任意の蛍光標識(
図2a参照)、v)非標的化非標識小分子MSIを実行し、同じ組織切片上の高分子のPC-MTベースの標的化MSIをマルチプレックス化する能力(実験例4参照)に要約される。
【0065】
本発明は、組織のみに限定されるものではない。例えば、消化した組織を使用することができる。さらに、本発明に記載の組成物および方法は、表面上で増殖または堆積した細胞、または表面上で増殖または堆積したバイオフィルムに適用することができる。例えば、臨床微生物学における微生物の迅速な同定のためのMSIの使用が急速に成長している[(2019)Nat Commun 10:4029、OvianoおよびBou(2019)Clin Microbiol Rev 32]。細菌細胞を基材上で増殖させるかまたは堆積させ、次いでMALDI-MSIを行う。さらなる例では、癌生検に由来し、表面に堆積した細胞を、本発明に記載の組成物および方法を使用して分析することができる。追加の例は、複雑な不均一パターンを形成するように表面上で増殖した単一種または複数種の両方の細菌である。追加の例は、バイオフィルムのMALDI-MSIである。噴霧器を使用して寒天上で増殖させたBacillus subtilisのバイオフィルムにこの方法を適用して、MALDI-MSIに適合する2,5-ジヒドロキシベンゾイン酸溶液などの特定のマトリックス化合物を堆積させることにおいて、最近の進歩がなされている[Li,Comiら(2016)J Mass Spectrom 51:1030-1035]。本方法は、表面に堆積した複雑な多細胞全生物にも適用することができる。例えば、C.elegansは、軟らかい土壌環境に生息する、長さ約1mmの自由生活の透明な線虫である。MSIはC.elegansに以前に適用されており、本発明に記載の組成物および方法を適用することの実現可能性を実証している[Menger,Clendinenら(2015)Current Metabolomics 3:130-137]。本発明に記載される組成物および方法はまた、有機および非有機ナノ構造の両方を含む表面上で増殖または堆積される細胞内または分子集合体に適用することができる。単一細胞および細胞内構造のMSIプロファイリングの例は、Lanniらによる最近の総説[Lanni,Rubakhinら(2012)J Proteomics 75:5036-5051]に記載されている。近年、本発明に記載される組成物および方法と適合する透過モード幾何学[Niehaus,Soltwischら(2019)Nat Methods 16:925-931]などの特殊な技術を使用することによって、MALDI-MSIを用いて細胞内分解能が得られている。
【0066】
別の実施形態では、PC-MTおよびPC-MTプローブは、マイクロアレイおよびビーズアレイにおけるコード化および/または検出のために使用されてもよい(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,523,680号、同第9,513,285号、および同第10,060,912号)。
【0067】
発明の詳細な説明
【0068】
光切断可能な質量タグ(PC-MT)
【0069】
好ましいFmoc保護された光切断可能なリンカー(Fmoc-PC-リンカー)の化学構造は
図3に示されており、PC-MTの合成における重要な構成要素である。化合物は、間にFmoc保護第一級アミン末端、遊離カルボキシル末端および1-(2-ニトロフェニル)エチルベースの光切断可能な核(PC-核)を最小限に含む。必要に応じて、Fmoc-PC-リンカーはまた、1-(2-ニトロフェニル)エチルベースの光切断可能な核をfmoc保護された第一級アミンおよびカルボキシル部分に連結する、
図3に示されるリンカーユニットを含む。全体として、Fmoc-PC-リンカーの最小構成により、PC-リンカーのペプチドへの組み込みが可能になり、光切断可能な質量タグ(PC-MT)が作製される(
図3の工程1)。PC-リンカーは、標準的なFmocベースの固相ペプチド合成(SPPS)、現在は化学ペプチド合成の好ましいモード[Behrendt,Whiteら(2016)J Pept Sci 22:4-27]を使用して、アミノ酸と同じ様式で組み込まれる。しかしながら、Boc保護基および関連するペプチド合成化学などの他の保護基および他のペプチド合成方法が可能であることを理解されたい[StawikowskiおよびFields(2012)Curr Protoc Protein Sci Chapter 18:Unit 18 1]。
【0070】
図3に示すように、得られたPC-MTは、以下の特徴から構成されるが、これらに限定されない。
【0071】
i)1-(2-ニトロフェニル)エチルベースのPC-核が
図3の工程1に開示されている。光切断部位は、
図3の工程1の黒色矢印および
図3の工程3に示す光切断反応で示される。本発明のPC-リンカーに使用されるこのPC-核は、高速かつ効率的な光切断を提供し、PC-核のニトロフェニル環上に追加のメトキシ部分を含有するLemaireらの前述の研究で使用されたPC-リンカーと比較して、質量分析において優れた感度を提供することが本明細書(実験例6)に示されていることに留意されたい(PC-リンカー構造の比較については
図4を参照)。Lemaireらの以前の研究については、[Lemaire,Stauberら(2007)J Proteome Res 6:2057-67]および米国特許第8,221,972号を参照されたい。
【0072】
ii)第一級アミン反応性N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS-エステル)脱離基などのプローブ反応性部分。例えば、NHS-エステルは、変換[Morpurgo,Bayerら(1999)J Biochem Biophys Methods 38:17~28]のための例えばN,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)またはDSS(スべリン酸ジスクシンイミジル)を使用して、リジン(K)側鎖のs-アミン上に作製することができる(
図3の工程1、NHS-エステルを参照)。プローブ反応性部分はまた、例えば、ペプチドベースのPC-MTのC末端のカルボン酸官能基の化学変換/修飾によって作製されてもよい(
図3には示されていない)。プローブ反応性部分は、抗体または核酸などの標的化プローブへのPC-MTの容易な結合を可能にする。例えば、アミン反応性N-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステル、スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミジル(スルホ-NHS)エステル、スクシンイミジルエステル(SE)、スルホ-スクシンイミジルエステル(SSE)、アルデヒドまたはテトラフルオロフェニル(TFP)エステル、スルフヒドリル反応性マレイミドまたはヨードアセトアミドまたはポリ反応性エポキシ部分を含むがこれらに限定されない様々なプローブ反応性部分を使用できることを理解されたい。銅を含むまたは銅を含まないクリックケミストリーで使用されるようなアジドおよびアルキンも可能である[McKayおよびFinn(2014)Chem Biol 21:1075-101]。
【0073】
iii)例えば、
図3の工程1におけるPC-リンカー+GSGGKアミノ酸配列の一部として示される、PC-核酸をプローブ反応性部分に連結する任意のスペーサーユニット。プローブ反応性部分は、スペーサーユニットなしで同じ位置で1-(2-ニトロフェニル)エチルベースのPC-核に結合することができるので、このスペーサーユニットは必要ではないことが理解されるべきである。このスペーサーユニットは、親水性/水溶性を促進するための様々な化学構造、例えばポリエチレングリコール(PEG)スペーサーであり得ることも理解されるべきである。
【0074】
iv)一例として
図3にAPRLRFYSLアミノ酸(ペプチド)配列として示されている、選択的に検出可能な質量ユニット。使用される任意のアミノ酸は、例えば、天然および非天然アミノ酸、ならびに修飾アミノ酸、同位体アミノ酸、アミノ酸類似体/誘導体およびそれらの任意の組み合わせであり得ることが理解されるべきである。ペプチドベースの質量ユニットは、合成の容易さ、質量分析における堅牢な性能、およびタンデムMSベースの断片化分析(例えば、MS/MS)の確立された方法を使用した質量分析同定におけるさらなる特異性を得る能力のために好ましい具体例であるが、選択的に検出可能な質量ユニットはペプチドである必要はなく、例えば、質量分析によって検出され得る任意の化学的実体であってもよい。ポリマー質量ユニットは、一般的な合成の容易さ、および単純にモノマーサブユニットの数およびタイプを変更することによって質量を容易に調節する能力のために好ましい。ペプチドは、(例えば、核酸に加えて)バイオポリマーの形態であると考えられるが、ペプチド以外のポリマー、例えば、MALDI-MSによって容易に合成および検出されるポリエチレングリコールを使用してもよい[Enjalbal,Ribiereら(2005)J Am Soc Mass Spectrom 16:670-8]。
【0075】
v)PC-核を質量ユニットに連結する、
図3の工程1に示す任意の質量ユニットリンカー。質量ユニットは、質量ユニットリンカーなしで同じ位置で1-(2-ニトロフェニル)エチルベースのPC-核に結合することができるので、この質量ユニットリンカーは必要ではないことを理解されたい。この質量ユニットリンカーは、親水性/水溶性を促進するための様々な化学構造、例えばポリエチレングリコール(PEG)リンカーであり得ることも理解されるべきである。
【0076】
vi)PC-MTの自己反応または重合を回避するために、プローブ反応性部分が第一級アミン反応性である場合、ペプチドベースのPC-MTのN末端のa-アミン上にブロッキング基、例えばアセチル化(
図3の「Ac」)を使用してもよい。遊離第一級アミン(例えば、s-アミンを有するリジン)を有する内部アミノ酸は、これらの場合に回避されてもよく、またはブロック/保護されてもよい。プローブ反応性部分がスルフヒドリルなどの異なる官能基と反応する場合、ペプチド上に存在する任意のそのような官能基(例えば、システインから)も、PC-MTの自己反応または重合を防ぐためにブロック/保護されてもよい。
【0077】
vii)フルオロフォアまたは他の検出可能な標識(例えば、発色団またはビオチンなどの親和性リガンド)は、選択的に検出可能な質量ユニット(
図3に示されていないフルオロフォア、一実施形態については
図2aを参照)に加えて、PC-MTに必要に応じて含まれている。これは、例えば、同じ細胞/組織サンプルに対するMSIに加えて従来の蛍光イメージングを可能にすることによって、方法の開発を支援することができる。フルオロフォアは、様々な市販のアミン反応性色素(例えば、Cy5-NHSまたはSulfo-Cy5-NHS)を使用して、例えば、含まれるリジンの8-アミン上のPC-MTに結合され得る。この結合は、SPPS中またはSPPS後に達成され得る。フルオロフォアの結合は、他の化学物質、例えば、クリックケミストリーでも可能である[McKayおよびFinn(2014)Chem Biol 21:1075-101]。好ましい実施形態では、フルオロフォアはスペーサーユニットに結合している。他の実施形態では、フルオロフォアは、質量ユニットまたは質量ユニットリンカーに結合していてもよい。しかしながら、フルオロフォアは、プローブ反応性部分とプローブとの反応、光切断反応または質量ユニットのMSI検出を妨害せず、かつプローブ標識のために選択された溶媒環境におけるPC-MT標識試薬の溶解性を損なわない限り、PC-MT構造の任意の部分に結合していてもよい。このアプローチは、質量レポーターおよびフルオロフォアが同じPC-MT標識試薬の一部であり、それによって、例えば(質量分析手段に加えて)蛍光手段によるPC-MTプローブ標識の成功の評価を可能にするという利点を有する。あるいは、蛍光標識(または発色団などの他の検出可能な標識またはビオチンなどの親和性リガンド)を欠くPC-MTをプローブに結合させてもよく、さらに、蛍光標識(または発色団などの他の検出可能な標識またはビオチンなどの親和性リガンド)を、PC-MTとは異なる部位で同じプローブに結合させてもよい。これは、例えば、NHS-エステルプローブ反応性部分を有するPC-MTおよび前述のNHS活性化フルオロフォアの両方でプローブ(例えば、抗体)を標識することによって容易に達成することができる。PC-MTおよびフルオロフォアによるプローブの標識は、同時にまたは順番に(PC-MTの後に最初にフルオロフォアが続くか、またはフルオロフォアの後にPC-MTが続くかのいずれか)行うことができる。プローブ標識に第一級アミン反応性NHS基を使用するこの実施形態では、例えば、抗体プローブ中に多数の第一級アミンが存在するので、PC-MTおよびフルオロフォアの両方による標識が容易に可能である。全体として、このアプローチは、典型的には水性条件下で行われるプローブ標識中のPC-MT標識反応またはPC-MT溶解度に対するフルオロフォアの有害な影響を回避することができるので、蛍光PC-MTを超える利点を有してもよく、質量分析による読み出しにおけるフルオロフォアの有害な影響(例えば、フルオロフォアが質量レポーターに結合している場合、潜在的に低いイオン化効率など)も回避することができる。さらに、この代替アプローチにより、蛍光およびPC-MT標識比を独立して調整することが可能になる。
【0078】
最後に、
図3に示される任意の化学的リンカー、すなわちリンカーユニット、質量ユニットリンカーおよびスペーサーユニットは、本発明の範囲を限定することを意味しないことが理解されるべきである。これらは、PC-核と、例えばプローブ反応性部分および質量ユニットなどの重要な部分との間の架橋として働く。これらの化学的リンカーは、様々な化学組成のものであってもよい。例えば、化学的リンカーは、単に炭化水素鎖であってもよく、あるいは、例えば、水性環境でのより良好な溶解性のために、2,2’-(エチレンジオキシ)-ビス-(エチルアミン)化学的リンカーを使用してもよい[Pandori,Hobsonら(2002)Chem Biol 9:567-73]。ポリエチレングリコール(PEG)は別の例であり、当業者であれば、比較的安定で水溶性で生体適合性である優れた化学リンカーとして認識する。
【0079】
PC-MT-プローブ
【0080】
図3の工程2に示すように、PC-MTをプローブ反応性部分を介してプローブに結合させる。示される例では、PC-MTのNHS-エステル脱離基は、抗体上の第一級アミンとの反応後に失われ、PC-MTと抗体との間にアミド結合を形成する。抗体が示されているが、プローブは、例えば抗体、組換え抗体、アフィボディ、ナノボディ、一本鎖断片可変(scFv)抗体、単一ドメイン抗体、VHH単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ単一ドメインVHH抗体)、受容体、炭水化物結合タンパク質(例えば、レクチン[TsanevaおよびVan Damme(2020)Glycoconj J 37:533-551])もしくはリガンド、またはそれらの断片を含むがこれらに限定されないタンパク質などの任意の種類のものであってもよい。プローブはまた、例えばオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブまたはDNA/RNAアプタマーにおけるような、DNA、RNAまたはロック核酸(LNA)などの核酸[Nielsen,Singhら(1999)J Biomol Struct Dyn 17:175-91]であってもよい。プローブはまた、例えば、脂質、炭水化物、ステロイドまたは薬物などの他の有機分子または生体分子であってもよい。PC-MTによるプローブの標識は、ランダムな部位(例えば、プローブ反応性部分としてNHS-エステルを含むPC-MTで生じる可能性があるように、タンパク質の任意の第一級アミン部位で非特異的に)であってもよく、または標識は部位特異的(例えば、いくつかの抗体の重鎖上の特定の部位に存在する炭水化物領域)であってもよい。場合によっては、第一級アミン修飾核酸プローブ(例えば、プローブ反応性部分がNHS-エステルである場合)などの修飾プローブを使用してPC-MT標識を容易にすることが必要な場合がある。
【0081】
プローブは、組織、すなわちプローブが結合する部分(分子構造)を有する様々な標的を有し得る。以下の例は、プローブ標的のタイプを限定することを意図するものではなく、異なるプローブは、異なる生体分子またはバイオマーカー(例えば、異なるタンパク質)を標的とし得るか、または同じ生体分子またはバイオマーカー(例えば、同じタンパク質内の異なる結合部位)内の異なる結合部位を標的とし得る。プローブ標的としては、タンパク質、タンパク質の翻訳後修飾、糖タンパク質、核酸、脂質およびその誘導体、薬物、代謝産物、炭水化物、グリカン、プロテオグリカン、ガングリオシドならびに有機化合物を含む生体分子またはその複合体もしくは部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
PC-MT-プローブにおいて、コア構造は、質量ユニットをプローブに連結する構造として定義される(例えば、
図3の工程2の「コア構造」を参照)。コア構造は、限定されるものではないが、PC-核、任意のスペーサーユニット、および任意の質量ユニットリンカーから構成され、典型的には、すべてのPC-MT-プローブ種において共通の構造である。好ましい実施形態では、コア構造は非中立構造(例えば、イオン性基、例えばスルホネート、ホスフェート、アミンまたはカルボン酸を含有する)である。これにより、PC-MT標識試薬の水溶性が向上するため、典型的には水性環境下で行われるプローブ標識反応が向上する。これはまた、PC-MT-プローブの水溶性を改善することができる。一実施形態では、スルホン化フルオロフォアがコア構造(例えば、実験例7で使用されるようなSulfo-Cy5)上に含まれる。フルオロフォアは典型的には多環式化合物であり、そのようなスルホネート部分なしでは水溶性ではないので、フルオロフォアのスルホン化バージョンが使用される。別の実施形態では、PC-MT標識試薬および/またはPC-MT-プローブの水溶性を改善するために、PC-MTのスペーサーユニットのアミノ酸部分にアスパラギン酸および/またはグルタミン酸が含まれる。
【0083】
好ましい実施形態では、複数のPC-MT分子を各プローブ分子に結合させて、質量分析工程における感度の向上を促進する。担体をプローブに添加して、PC-MT標識の数をさらに増加させ、それによってさらなるシグナル増幅を促進することができ、一実施形態では、ポリアミン修飾デンドリマーまたはナノ粒子(NP)をPC-MTで標識し、次いでプローブ(例えば、抗体)に結合させて、PC-MT標識の数を増加させる(
図5a)。金NPは、13nmもの小ささであり、例えば標的生体分子の免疫標識のために電子顕微鏡で日常的に使用されている[Ackerson,Powellら(2010)Methods Enzymol 481:195-230]ので、特に魅力的である。一例では、ポリアミン末端金NPまたは分岐デンドリマーは市販されており(例えば、DendritechおよびNanovex Biotechnologies製)、PC-MTに(アミン反応性NHS-エステルプローブ反応性部分を介して)コンジュゲートさせることができる。利用可能なNHS活性化試薬(例えば、Thermo Scientific製[マサチューセッツ州ウォルサム]のNHS-DIBO-アルキン)を使用して、ポリアミンデンドリマーまたはNPにアルキン基を導入することもできる。同様に、抗体またはアミン修飾核酸プローブは、市販のNHS活性化試薬(例えば、Thermo Scientific製[マサチューセッツ州ウォルサム]のNHS-PEG4-アジド)も使用してアジド基で修飾することができる。最後に、十分に確立された、高度に選択的で、穏やかで、生物直交性のクリックケミストリー[Kolb,Finnら(2001)Angew Chem Int Ed Engl 40:2004-2021]を使用して、PC-MT/アルキン修飾デンドリマーまたはNPをアジド修飾プローブ(アジドおよびアルキンは、複雑な混合物であっても、生理学的水性条件下で自発的かつ選択的に共有結合を形成すし、場合によっては、使用されるアルキンのタイプに応じて、銅触媒が必要である)と連結することができる。
【0084】
別の実施形態では、複数の第一級アミン修飾を核酸プローブに導入して、PC-MT標識部位の数を増加させる。いくつかの場合、核酸プローブの標的結合(ハイブリダイゼーション)配列の一部ではない核酸「尾部」を使用することが望ましい場合があり、これらの「尾部」は、多数のPC-MT標識部位を提供するために複数のアミン修飾を有する(
図5b)。この構成により、核酸プローブの標的結合領域に対するPC-MTからの潜在的な干渉が低減される。アミン修飾は、例えば修飾ヌクレオチドを使用して核酸プローブに導入することができる。例えば、5’-ジメトキシトリチル-5-[N-(トリフルオロアセチルアミノヘキシル)-3-アクリルイミド]-ウリジン、アミノ修飾剤C6-Uホスホラミダイトとして一般的に知られており、ホスホラミダイトベースの化学的DNA合成中に導入される2’-O-トリイソプロピルシリルオキシメチル-3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホラミダイト。修飾ヌクレオチドはまた、例えば、一般にアミノアリル-dUTPと呼ばれる5-[3-アミノアリル]-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸を使用して核酸プローブに酵素的に(例えば、DNAポリメラーゼによって)導入することができる。PC-MT標識の部位として使用するためのアミン以外の修飾も同様に核酸プローブに導入することができる。
【0085】
好ましい実施形態では、PC-MTは、PC-MTとプローブとの間の1工程化学反応(例えば、プローブ反応性部分としてNHS-エステルを含むPC-MTを、抗体またはアミン修飾核酸などのプローブと混合することによって)でプローブに結合される。本発明におけるPC-MTによるプローブの標識化は、Lemaireらの以前の研究[Lemaire,Stauberら(2007)J Proteome Res 6:2057-67][米国特許第8,221,972号も参照]における複雑な多工程プロセスとは重要なことに異なっており、ここで、プローブ(例えば、抗体)は、最初に、MBSのNHS-エステル部分との反応によって光切断可能でないヘテロ二官能性架橋剤MBS(3-マレイミドベンゾイック酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)にコンジュゲートされなければならず、次いで、抗体は、脱塩カラムクロマトグラフィーによって精製され(未反応のMBSリンカーを除去するため)、結合したMBSリンカーによって抗体上に生成されたスルフヒドリル反応性マレイミド部分は、その後、内部光切断可能な部位およびシステインアミノ酸を含有するペプチドと反応する(それによって、光切断可能なペプチド上のシステインは、抗体結合MBSリンカー上のマレイミドとの反応するための遊離スルフヒドリル部分を提供する)。同様に、前述のイメージング質量サイトメトリーアプローチ[Giesen,Wangら(2014)Nat Methods 11:417-22]もまた、高度に複雑な多工程プローブ(すなわち、抗体)標識手順を使用し、これは、ポリマーに金属イオンを予め負荷し、抗体を部分的に還元し、2つを一緒にカップリングし、ポリマーおよび抗体を複数回精製することを含む[Fluidigm、クイックリファレンス:「Maxpar X8 Antibody Labeling」、2020年9月アクセス、www.fluidigm.com/binaries/content/documents/fluidigm/resources/maxpar-x8-antibody-Iabeling-quick-reference-fldm-00015-rev01/maxpar-x8-antibody-labeling-quick-reference-fl dm-00015-rev01/fluidigm%3Afile]。
【0086】
本発明の一実施形態では、簡単にするために(未反応PC-MTを除去しないように)PC-MT標識反応後のプローブのさらなる精製を回避することができる可能性があり、他の実施形態では、例えば、サイズ排除(ゲル濾過)クロマトグラフィーまたは限外濾過(例えば、適切な分子量カットオフを有するAmicon Ultra-0.5遠心フィルターユニットを使用して、標識プローブを保持すること)による未反応PC-MTの除去が、下流バイオマーカー検出のバックグラウンドを回避するために望ましい場合がある。
【0087】
PC-MTプローブおよび質量分析イメージング(MSI)により組織を処理する
【0088】
プロセスの最後の工程は、細胞または組織を処理(「染色」)するためのPC-MT-プローブの利用(すなわち、PC-MTプローブは、細胞/組織中の標的に結合している)、続いて光切断された質量レポーターを画像化するためのMSIの利用である(
図2cおよび
図3の工程3を参照)。本発明において質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)および質量分析に基づくインサイツハイブリダイゼーション(MISH)と称される2つの例示的な実施形態は、抗体および核酸プローブがそれぞれ使用される場合、従来の免疫組織化学(IHC)およびインサイツハイブリダイゼーション(ISH)に類似する。本質的に、MIHCおよびMISHは、フルオロフォアまたは発色剤で標識されたプローブの代わりにPC-MT標識プローブを使用する点、および光学イメージング(例えば、顕微鏡検査)の代わりにMSIを使用する点で異なる。実験例において後に詳細に例示されるMIHCおよびMISHプロセスは、典型的には、以下の段落に記載される基本的な工程(標準的なIHCおよびISHの場合のように、当業者によって認識されるように、多くのプロトコルの変形が可能である)を含む。本発明のプロトコル(MIHCおよびMISH)の本質的な共通要素と、従来のIHC(例えば、[KatikireddyおよびO’Sullivan(2011)Methods Mol Biol 784:155-67])および従来のISH(例えば、[Renwick,Cekanら(2014)Methods Mol Biol 1211:171-87])、ならびに従来の直接的なMSI(例えば、[Caprioli,Farmerら(1997)Anal Chem 69:4751-60])およびビーズアレイのMSI(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,523,680号)との比較については、
図16も参照されたい。例えば、FFまたはFFPE組織が使用されるかどうか、それがIHC/MIHCまたはISH/MISHベースのプロトコルであるかどうか、および/または従来のIHCまたはISHにどのようなタイプの光学的検出方法(例えば、直接標識された一次抗体または二次検出方法、および比色対蛍光読み出し)が使用されるかに応じて、多くのプロトコルのバリエーションが可能であり、したがって、
図16は、プロトコルの共通の必須要素のみを示すことに留意されたい。
MIHCの基本的な工程は、i)薄いFFPEまたは新鮮凍結組織切片(例えば、FFPEまたは新鮮凍結組織ブロックからミクロトームまたはクライオスタットにより厚さ5~10μm)を導電性スライド(例えば、金属被覆ガラススライド)にマウントすること、なお、導電性表面としての酸化インジウムスズ(ITO)で被覆されたガラススライドは、MSIでほぼ普遍的に使用されているが(例えば、[Yalcinおよびde la monte(2015)J Histochem Cytochem 63:762-71、Angel,Baldwinら(2017)Biochim Biophys Acta Proteins Proteom 1865:927-935]を参照)、本発明では、以下に記載されるMIHCおよびMISHの広範な処理工程を考慮すると、金で被覆されたガラススライドは、MSIに必要な導電性表面(例えば、ウィスコンシン州マディソンのPlatypus Technologies LLC製の10nmの金層および2nmのチタン接着下層、またはカナダオンタリオ州のSubstrata Thin Film Solutions/Angstrom Engineering Inc.製の50nmの金層および5nmのクロム接着下層を有するガラススライド)を依然として提供しながら、処理中にスライドから組織が浮き上がることおよび/または組織の損傷を回避するのに有益であることが見出され、組織をマウントした後、ii)FFPEの場合は脱パラフィン(例えば、キシレンを用いて)すること、iii)典型的には一連のエタノール/水混合物および水性生理食塩水緩衝液を用いて再水和(脱パラフィンが行われた場合)すること、iv)新鮮凍結組織の場合、ホルマリンまたはパラホルムアルデヒド中で固定すること、v)抗原賦活化し、ホルマリン/パラホルムアルデヒド固定の有害作用の一部を逆転させること(例えば、pH6のクエン酸緩衝液中での加熱、またはギ酸の使用)、vi)ブロッキング緩衝液(典型的には、Tween(登録商標)-20などの非イオン性界面活性剤ならびにウシ血清アルブミン[BSA]および動物血清などのタンパク質遮断薬を含む生理食塩水緩衝液)で処理し、バックグラウンドを減少させること、vii)マルチプレックス化のために異なるPC-MT抗体(PC-MT-Ab)の混合物で同時に染色すること(典型的にはブロッキング緩衝液で希釈)、viii)Tween(登録商標)-20などの非イオン性界面活性剤を含む生理食塩水緩衝液中で洗浄して、あらゆる未結合PC-MT-Abを除去し、続いて重炭酸アンモニウムなどの揮発性水性緩衝液中で洗浄して、質量分析のいくつかの形態を妨害し得る不揮発性塩を除去すること、およびix)MSIの前に組織スライドを乾燥させることである。免疫組織化学的スタイルの質量分析イメージング(MSI)プロトコル(
図16のフローチャート)を用いると、金スライド(例えば、金層を有するスライド)にマウントした組織がより良好な結果を有することが発見された。より具体的には、金スライドにマウントすることは、必要なスライド処理工程(MSI用の導電性スライド)中の組織損傷または損失を回避するのに役立った。組織MSIにおける金スライドの以前の使用は、本発明のすべての処理工程を欠いており(
図16のフローチャートを参照)、したがって組織の損失/損傷に問題がない直接的なMSI用であった。本発明は、組織接着を改善するために金スライドを使用する(より一般的には、ITO導電性スライドが直接的なMSIに使用されるが、本発明者らのプロトコルでは不十分な結果を示し、実施例10を参照されたい)。組織の損傷および損失は、スライドの液相処理工程のいずれにおいても起こり得る。
【0089】
MISHの工程は、i)組織をマウントすること、ii)脱パラフィンすること、iii)再水和すること、およびiv)ホルマリン/パラホルムアルデヒド固定を、MIHCについて記載されるように行うこと、これは典型的には、v)プロテイナーゼKによる部分タンパク質消化が続き、vi)EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)により核酸を固定すること、vii)組織をアセチル化し、遊離アミンをキャッピングし、バックグラウンド(プローブの非特異的結合によって引き起こされる)を減少させること、viii)典型的には少なくとも無関係の核酸(例えば、酵母tRNAおよび/またはサケ精子DNA)を含有するブロッキング緩衝液を用いて処理し、バックグラウンドを減少させること、ix)マルチプレックス化のために異なるPC-MT核酸(PC-MT-NA)の混合物と同時に染色(ハイブリダイゼーション)すること(典型的にはブロッキング緩衝液または同様のもので希釈される)、x)生理食塩水緩衝液中で洗浄して、あらゆる未結合PC-MT-NAを除去し、続いて重炭酸アンモニウムなどの揮発性水性緩衝液中で洗浄して、質量分析のいくつかの形態を妨害し得る不揮発性塩を除去すること、およびxi)MSIの前に組織スライドを乾燥させることである。
【0090】
しかしながら、先に論じられたように、本発明のプローブは、抗体(MIHCに使用される)および核酸(MISHに使用される)に限定される必要はなく、例えば、レクチン、受容体またはリガンドであってもよい。したがって、本発明は、MIHCおよびMISH方法論に限定されず、組織が、例えばPC-MTがコンジュゲートしたレクチン、受容体もしくはリガンド、または任意のプローブタイプもしくはそれらの組み合わせで処理(「染色」)される他の実施形態も含まれる。
【0091】
質量分析イメージング(MSI)(ならびにMIHCおよびMISHを含む実施形態)。上に概説した手順に従って、MSIが実行され、一実施形態ではMALDI-MSIを使用する。
【0092】
MALDI-MSIの場合、マトリックス化合物は、典型的には薄く均一な層で組織に適用される。マトリックス化合物の例としては、アルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、1,5-ジアミノナフタレン(DAN)または3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸)が挙げられる。好ましい実施形態では、マトリックス昇華とそれに続く再結晶[Hankin,Barkleyら(2007)J Am Soc Mass Spectrom 18:1646-52、Duenas,Carlucciら(2016)J Am Soc Mass Spectrom 27:1575-8]を使用して、優れた空間分解能(すなわち、マトリックス適用中の分析物の非局在化を制限する昇華によって提供される)および高感度(すなわち、質量レポーターがマトリックスと十分に共結晶化することを可能にするが、十分な分析物の非局在化を伴わない再結晶化によって提供される)の両方を達成する。市販の噴霧器(例えば、HTX TM噴霧器、ノースカロライナ州チャペルヒルのHTX Technologies,LLC)を使用するなどして、マトリックス適用の他の方法を使用してもよい。
【0093】
MSI工程には、MALDI-MSIだけでなく、様々な質量分析技術および機器を使用することができる。他のMSI法としては、脱離エレクトロスプレーイオン化質量分析イメージング(DESI-MSI)[Takats,Wisemanら(2004)Science 306:471-3]、レーザーアブレーションエレクトロスプレーイオン化質量分析イメージング(LAESI-MSI)[Kulkarni,Wilschutら(2018)Planta 248:1515-1523]、および大気圧(AP)マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)質量分析イメージング(AP-MALDI-MSI)[Kompauer,Heilesら(2017)Nat Methods 14:90-96]が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、DESI-MSIは、代謝産物および脂質などの小分子に元々最も適していたが、それ以来、タンパク質/ペプチド検出にも適合されている[Takats,Wisemanら(2004)Science 306:471-3、Takats,Wisemanら(2008)CSH Protoc 2008:pdb prot4994、Hsu,Chouら(2015)Anal Chem 87:11171-5、Towers,Karancsiら(2018)J Am Soc Mass Spectrom 29:2456-2466、HaleおよびCooper(2021)Anal Chem 93:4619-4627]。その基本的な形態では、DESI-MSIは、エレクトロスプレーされ帯電した溶媒液滴を表面(例えば、組織)に向けて、表面から分析物を抽出(脱離)およびイオン化し、次いでこれを質量分析計の質量分析計の入口(例えば、トランスファーキャピラリー)に取り込むことによって機能する[Takats,Wisemanら(2004)Science 306:471-3]。しかしながら、脱離事象およびイオン化事象の分離を可能にするナノDESI-MSIなどのDESI-MSIの変形も存在する[Roach,Laskinら(2010)Analyst 135:2233-6]。DESI-MSIは、真空下ではなく周囲条件下で容易に行うことができ、したがって必要なサンプル調製は最小限であり、自動化に適している。さらに、ESI(エレクトロスプレーイオン化)ベースの方法として、DESI-MSIはMALDI-MSIのようにマトリックス適用を必要としない。MALDI-MSIマトリックス適用は、再現性の問題につながる可能性がある追加の困難で面倒な工程であるだけでなく、分析物の非局在化のリスクもある。
【0094】
MSI技術および機器のタイプにかかわらず、PC-MTは光切断され、MSI分析のためにPC-MT-プローブから質量レポーターを遊離させる(
図2cおよび
図3の工程3を参照)。
図3の工程3に例示されるように、質量レポーターは、質量ユニット、場合によっては光切断されたPC-リンカーの一部から構成されることに留意されたい(
図3に示されていない他の場合では、質量レポーターは、光切断されたPC-リンカーの一部を含まなくてもよく、したがって、質量レポーターおよび質量ユニットは等価である)。PC-MTは、入射UVのマトリックス吸収を回避するために、MSIの前に、好ましくはMALDI-MSIの場合にはマトリックス適用の前にもUV処理によって予備光切断され得る。光切断はまた、好ましくは、拡散による光切断された質量レポーターの非局在化を防止するために、乾燥スライド上で行われる。予備光切断は、例えば、モデルXX-15自己フィルタリング365nmピークランプ(カリフォルニア州アップランドのUVP/Analytik Jena US LLC)を使用することによって達成することができるが、他の多くの光源も可能である。好ましい実施形態では、予備光切断は、比較的低い強度のUV光(例えば、3~10mW/cm
2)を用いて短時間(例えば、5分)で達成される。あるいは、PC-MTは、機器のレーザービームによって(またはLAESI-MSIなどの任意の他のレーザーベース質量分析計のレーザービームによって)MALDI-MSI分析とインラインで光切断されてもよい。MALDI-MSIの場合、質量レポーターはマトリックス適用前に光切断されないので、この代替アプローチはMSIの空間分解能を改善すると予想することができる(マトリックス適用は、そうでなければ予備光切断された質量レポーターの拡散を引き起こす可能性がある)。しかしながら、本明細書における結果は、インライン光切断のこのアプローチが、MALDI-MSIの場合には不十分な感度を提供することを示している(実験例6)。マトリックス適用前およびMALDI-MSI前の予備光切断の優位性は、以下の、i)予備光切断は、マトリックス化合物の遮光効果を回避し(実際には、MALDI-MSIの間に衝突するUVレーザー光を吸収し、質量レポーターが分析のために気化およびイオン化されるように熱に変換することはマトリックスの機能である)、ii)予備光切断された質量レポーターを有することは、遊離された質量レポーターがその後に適用されるマトリックスと共結晶化することを可能にし(当業者は、マトリックスとの分析物の共結晶化がMALDI-MSにおける分析物の効率的な脱着/イオン化のために重要であることを認識するであろう)、逆に、機器のレーザービームによるMALDI-MSI分析とインラインの光切断は、マトリックス適用/結晶化後に必然的に起こり、マトリックスおよび質量レポーターの効率的な共結晶化を可能にしない可能性が高い(マトリックス適用/結晶化の時点で、質量レポーターは依然としてプローブに付着しており、プローブは依然として組織に付着している可能性があるからである)ことにより説明され得る。しかしながら、他のレーザーベースのMSI方法および機器、例えばマトリックス化合物を必要としないものは、レーザー波長が光切断波長と十分に一致すると仮定して、効率的なインライン光切断および十分な感度を提供することが期待され得る。
【0095】
好ましいPC-リンカー(
図3)では、光切断は、質量レポーターに結合したPC-リンカーの小さな残留部分を残し、それにより、光切断時に質量レポーター上に遊離第一級アミンを生成し(
図3の工程3参照)、これは、ポジティブモードMALDI-MSIにおける質量レポーターイオン化を補助し得るので、この設計は感度を増加させ得ることに留意されたい。
【0096】
また、
図3は、光切断部位(稲妻で示される光切断部位について
図3の工程3を参照)を介してPC-核のフェニル環に(光切断前に)連結されたPC-MTの質量レポーター、および光切断部位とは異なる位置でPC-核のフェニル環に最終的に連結されたプローブを示すことにも留意されたい。重要なことに、PC-リンカーの光切断された1-(2-ニトロフェニル)-エチル部分は、
図3の工程3に示されるように光切断時に質量レポーターに結合したままではない(代わりにプローブに結合したままである)ので、これは本発明の好ましい実施形態である。逆に、Olejnikら[Olejnik,Ludemannら(1999)Nucleic Acids Res 27:4626-31]およびLevyおよびCaprioli(米国特許第7,569,392号)によって教示されているように、この向きを完全に逆転させることが可能である。しかしながら、この構成では、PC-リンカーの光切断された1-(2-ニトロフェニル)-エチル部分は質量レポーターに結合したままであり(
図3には示されていない)、その結果、光切断された1-(2-ニトロフェニル)-エチル部分の様々な副反応副生成物に結合した質量レポーターに関連する複数のピークを含む非常に複雑な質量スペクトルが観察される(実験例5参照)。これはMSIの感度を低下させ(多数の質量スペクトルピーク、すなわち当該副生成物の中の単一の質量レポーターに対するシグナルを分割することによって)、異なる質量レポーターの識別を混乱させる(例えば、ピークオーバーラップによって)。
【0097】
なお、フルオロフォアがPC-MT上で必要に応じて使用される場合、質量レポーター領域上に配置されないことが好ましい。これにより、質量レポーターの質量分析検出に対するフルオロフォアからの潜在的な干渉が回避される(例えば、フルオロフォアは、光切断光によって構造的に変化し、それによって分析を混乱させる可能性がある)。しかしながら、場合によっては、蛍光によってPC-MTの光切断効率を定量するなどのために、フルオロフォアを質量レポーター上に配置することが有用であり得る。
【0098】
最後に、全体として、先の段落で論じたように、本発明は、プローブのタイプおよびMSIに使用される質量分析のタイプに限定されない。したがって、より一般的には、本発明のPC-MT-プローブベースのMSI技術は、PC-MT-MSIと呼ばれる(そのうちの前述の質量分析ベースの免疫組織化学[MIHC]および質量分析ベースのインサイツハイブリダイゼーション[MISH]の方法は、いくつかの多くの可能な方法論的サブタイプである)。
【0099】
PC-MT-プローブを使用したマルチオミック組織イメージング
【0100】
本発明の重要な利点は、組織検体のマルチオミックイメージングを実行する能力であり、「オミックス」は、細胞分子の大きなファミリーのいくつかの特徴の測定であり、そのような分子には、遺伝子(ゲノミクス)、タンパク質(プロテオミクス)、低分子代謝産物(メタボロミクス)、グリカン(グリコミクス)またはRNA(トランスクリプトミクス)が含まれるが、これらに限定されない[(2012)Evolution of Translational Omics:Lessons Learned and the Path Forward]。組織イメージングの場合、この測定された「特徴」は、例えば、これらの細胞分子の空間マッピング、形態学的分析、および共局在分析であってもよく、定量化(例えば、バイオマーカーレベルを定量すること、またはバイオマーカー陽性細胞の数をスコア化すること)も含み得る。したがって、マルチオミックスは、異なるオミック群(例えば、プロテオミクスおよびグリコミクスの組み合わせ)の測定および分析を組み合わせたものである。組織イメージングの文脈における本発明では、マルチオミクスは、例えば、a)異なるPC-MT-プローブタイプまたはクラス(例えば、抗体およびレクチン)および/またはb)異なるMSI「モード」(例えば、内因性組織生体分子の非標的化直接的なMSIならびに特異的PC-MT-プローブによって標的化される生体分子のMSI)を使用することによって達成することができる。好ましい実施形態では、異なるオミック測定が同じ組織切片に対して行われる。しかしながら、これらの測定は、同じ組織検体/ブロックからスライスした別々の、好ましくは連続した/隣接した組織切片に対して行うことも可能である。さらに、異なるオミック測定は、組織切片/標本に対して同時に(例えば、抗体およびレクチンなどの異なるPC-MT-プローブクラスの混合物で組織を処理することによって、)または連続して(1つのオミック測定とそれに続く別のオミック測定)実施することができる。例えば、蛍光イメージングでは、これは、レクチンおよび抗体を使用した様々な方法論的並べ替えによって行われている[Zupancic,Kreftら(2020)Eur J Histochem 64]。異なるオミック測定が組織検体に対して順番に実行される場合、本発明は、これらの測定が実行される順序に限定されるようには意図されておらず、これは、多くの並べ替えが、以下の段落で明らかになるような有用な結果をもたらし得るからである。
【0101】
最後に、組織の同時処理のために、レクチンプローブなどの糖質結合プローブを抗体プローブと組み合わせる場合、レクチンプローブと抗体プローブとの交差反応が組織イメージング結果を混乱させる可能性がある(例えば、組織の真の内因性バイオマーカーパターンを表さないアーチファクトを生成する)ことを避けるために、グリコシル化を欠く抗体プローブを使用することが重要であり得ることに留意すべきである。これは、例えば、グリコシル化Fcドメインを欠く抗体、例えば限定されないが、Fabフラグメント抗体、F(ab’)2フラグメント抗体、ナノボディ、シングレカインフラグメント可変(scFv)抗体およびVHH単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科の単一ドメインVHH抗体)を使用して行うことができる。抗体グリコシル化が欠如している限り、Fcドメインを含有する全抗体プローブは、限定されないが、組換え抗体(例えば、原核生物発現系において産生される場合)または化学的もしくは酵素的に脱グリコシル化された抗体(例えば、酵素PNGase Fの使用)の使用を含めて、レクチンなどの炭水化物結合プローブと依然として同時に使用することができる。より広義には、異なるプローブクラスが同時組織処理のために組み合わされる場合、組織イメージングにおけるアーチファクトを回避するためにプローブの相互反応を回避するための措置を講じることが重要である。
【0102】
本発明におけるマルチオミクスは、分子分析に「ソフト」イオン化を用いるMSI法の使用によって促進されるが、これは、これらの方法が一般に分子断片化を引き起こさないか、または限定的に引き起こし、より具体的には検出のために分子を原子化しないからである(例えば、インタクトなペプチドまたはポリマーベースの質量タグ、ならびに脂質、薬物、または代謝産物などの組織中のインタクトな内因性生体分子の検出を可能にする)。ソフトイオン化法には、レーザー脱離イオン化(LDI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、ケイ素脱離/イオン化(DIOS)、高速原子/イオン衝撃(FAB)、ならびにDESIおよびLAESIなどの前述のESIの派生を含むエレクトロスプレーイオン化(ESI)[Siuzdak(2004)JALA 9:50-63]が含まれるが、これらに限定されない。前述のリストは、本発明を特定のタイプの「ソフト」イオン化質量分析に限定することを意図していない。本発明の目的のために、「ソフト」イオン化に基づく方法は、分子イオン、すなわち、化学結合によって一緒に保持された2個またはそれを超える原子からなる帯電した分子をイオン化して検出する方法として定義される。
【0103】
二重連続MSI:単純なマルチオミックの実施形態では、最初に内因性の小さな生体分子(例えば、メタボロミクス)の非標識直接的MSIを行い、続いてPC-MT-MSIを使用して、好ましくは同じ組織切片で標的化生体分子(例えば、プロテオミクスなどのタンパク質標的)のMSIを行うことが有用である。標的化PC-MT-MSIは、例えば、それ自体が十分にイオン化されない、十分に検出されない、ソフトイオン化であっても望ましくない様式で断片化する可能性がある、および/または質量分析計で十分に分解されない高分子標的など、直接的なMSIに一般にアクセスできない生体分子を検出するために必要である。少なくともいくつかの既知のバイオマーカーを標的化することが望ましいかまたは必要である場合、マルチオミックワークフローにPC-MT-MSIを含めることも重要である。全体として、マルチオミック組織イメージングのこの実施形態は、例えば、薬物化合物(直接的非標識MSIによる小分子検出)および薬物標的(薬物標的は典型的にはタンパク質であるので、PC-MT-MSIによる高分子検出)を共局在化するために重要であり得る。好ましい実施形態では、非標識直接的MALDI-MSIが最初に行われ、新鮮凍結(FF)組織切片を使用し、これにより、組織はまだ組織固定を受けていない(ホルマリン固定パラフィン包埋[FFPE]の使用は可能であるが、内因性分子の直接的非標識MSIにとってより理想的である[Wisztorski,Franckら(2010)Methods Mol Biol 656:303-22])。好ましい実施形態では、次いで、組織切片を洗浄し、以前に行われていない場合は固定し、次いで、同じ組織切片に対して、別のサイクルのMSIを含むMIHCおよび/またはMISHなどのPC-MT-MSI法を用いる。
【0104】
いくつかの実施形態では、最初に組織切片に対して非標識直接的MSIが行われ、例えば小さな生体分子を直接検出し、続いて同じ組織切片に対して標的化MIHCおよび/またはMISHを実施して高分子標的および/または核酸標的を検出することが有用である。これは、例えば、薬物化合物(直接的非標識MSIによる小分子検出)および薬物標的(標的化されたPCMT-プローブベースのMSIによる高分子検出)を共局在化するために重要であり得る。好ましい実施形態では、非標識直接的MALDI-MSIが最初に行われ、新鮮凍結組織切片を使用し、これにより、組織はまだ組織固定を受けていない(FFPEは可能であるが、内因性分子の直接的非標識MSIにとってより理想的である[Wisztorski,Franckら(2010)Methods Mol Biol 656:303-22])。好ましい実施形態では、次いで、残存するマトリックス化合物を除去するために組織切片を洗浄し(例えば有機溶媒中で)、次いで、MIHCおよび/またはMISH、続いて、MALDI-MSIの別のサイクルを上記のように同じ組織切片に対して行う。より詳細については、実験例4を参照されたい。
【0105】
本発明は、分子分析のために「ソフト」イオン化を用いる質量分析法の使用によって促進されるが、これは、これらの方法が一般に分子断片化を引き起こさないか、または限定的に引き起こし、より具体的には検出のために分子を原子化しないからである(例えば、ペプチドまたはポリマーベースの質量タグならびに組織内の内因性生体分子の検出を可能にする)ことに留意されたい。そのような方法には、レーザー脱離イオン化(LDI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、ケイ素脱離/イオン化(DIOS)、高速原子/イオン衝撃(FAB)、およびエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析[Siuzdak(2004)JALA 9:50-63]が含まれるが、これらに限定されない。前述のリストは、本発明を特定のタイプの「ソフト」イオン化質量分析に限定することを意図していない。本発明の目的のために、「ソフト」イオン化に基づく方法は、分子イオン、すなわち、化学結合によって一緒に保持された2個またはそれを超える原子からなる帯電した分子を検出することができる方法として定義される。
【0106】
別の好ましいマルチオミックの実施形態では、標的PC-MT-MSI法は、非標的化「ボトムアップ」オミクス法と組み合わされる。
【0107】
ボトムアップオミクスは、生体分子が最初に質量分析によりアクセスしやすいより小さな断片に分解(消化)されるという事実を指す。続いて、生体分子全体の同一性および構造を質量分析から推定することができる。他のボトムアップシナリオでは、様々な質量種のフィンガープリント(高精度で測定される)のみが、例えば疾患状態または病期と相関し得るので、生体分子の同一性を知る必要はない。ボトムアップ組織MSIの文脈では、組織は、質量分析によりアクセスしやすい生体分子断片を遊離させるために消化剤で処理される。例えば、
図22を参照されたい。典型的には、消化剤は、分析物の非局在化を伴わない消化、いわゆるインサイツ消化を促進するために、薄膜中の組織に噴霧される。しかしながら、十分な消化と最小限の非局在化との間のバランスを達成することは困難であり、おそらく完全なバランスは存在しない。これらの消化剤は、ヌクレアーゼ(例えば、制限酵素)、プロテアーゼ(例えば、キモトリプシン、トリプシン、LysCまたはAspN)、キナーゼ(例えば、PKC)、ホスファターゼ(例えば、アルカリホスファターゼ)、またはグリコシダーゼ(例えば、ペプチドN-グリコシダーゼF[PNGase F])などの酵素であってもよく、または臭化シアン(CNBr)もしくはヒドロキシルアミンなどの化学薬剤であってもよい[Gundry,Whiteら(2009)Curr Protoc Mol Biol Chapter 10:Unit 10 25、Barrett,Witherら(2017)J Proteome Res 16:4177-4184]。インサイツ組織消化とそれに続くMSIは以前に報告されている。例えば、Drakeら[Drake,Powersら(2018)Curr Protoc Protein Sci 94:e68]は、グリコシダーゼPNGase FをFFおよびFFPE組織に噴霧して、組織中のタンパク質からN結合グリカンを酵素的に切断し、続いて遊離グリカンのMALDI-MSIを行った。消化剤としてプロテアーゼを使用するこの場合の他の例としては、特定のタンパク質タイプまたはトリプシンを消化して一般的なタンパク質消化を達成するためのコラゲナーゼの使用が挙げられる[Angel,Schwambornら(2019)Proteomics Clin Appl 13:e 1700152、Lazova,Smootら(2020)J Cutan Pathol 47:226-240]。
【0108】
マルチオミック組織イメージングアプローチのためにボトムアップMSIがPC-MT-MSIと組み合わされる場合、本発明は特定の操作順序に限定されることを意図しない。例えば、PC-MT-MSIは、ボトムアップMSIの前または後に実行されてもよい(両方の選択肢は2回のMSIを必要とする)。逆に、組織をPC-MT-プローブで染色し、次いで、インサイツ消化を実施し、続いてMSIを1回だけ行うことができる。PC-MT-MSIが最初に実行される場合、プローブが後続のボトムアップMSIと干渉する可能性がある場合、PC-MT-プローブを後で除去することが望ましい場合がある。そうするために、まず変性処理によってプローブを組織から分離し、次いでプローブを洗い流すことができる。そのような変性処理には、カオトロピック剤、pH≦5の溶液、pH≧10の溶液、還元剤、酸化剤、熱、有機溶媒、および/または界面活性剤(例えば、SDSなどのイオン性界面活性剤、Triton(登録商標)X-100などの非イオン性界面活性剤、またはCHAPSなどの双性イオン性界面活性剤)が含まれ得るが、これらに限定されない。例えば、
図22を参照されたい。
【0109】
上記は広範囲のマルチオミック方法論的並べ替えを包含するが、インサイツプロテアーゼまたはグリコシダーゼ消化を使用する2つの具体例が実験例15に提供されていることに留意されたい。
【0110】
【0111】
網掛けされた(太字の)行は、可変MALDI-MSイオン化効率を最小にするために使用される質量ユニット1または質量ユニット1の変形である。括弧内の文字は、表1.1に示す安定同位体アミノ酸を表す。
【0112】
*質量ユニットはa-アミン上でN末端アセチル化されており、質量レポーター質量は、このアセチル化+質量ユニットおよび光切断されたPC-リンカーの小部分を含む(
図3の工程3参照)。
【0113】
【0114】
実験
【0115】
実験例の材料。
【0116】
水(LCMSグレード)およびキシレン(半導体グレード)は、Acros Organics(ペンシルバニア州ピッツバーグ)から入手した。メタノール(LCMSグレード)は、J.T.Baker(ペンシルベニア州ラドナーのAvantor)から入手した。エタノール(分子生物学用生体試薬)、アセトン(HPLCグレード)、N,Nジメチルホルムアミド(無水、≧99.8%)、1,5-ジアミノナフタレン(DAN、97%)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB、98.0%)、イソプロピルアルコール(分子生物学用生体試薬)、塩化ナトリウム(BioXtra、≧99.5%)、重炭酸ナトリウム(99.7%~100.3%、試験された分子生物学)、重炭酸アンモニウム(BioUltra、≧99.5%)、ウシ血清アルブミン(熱ショック画分、プロテアーゼフリー、脂肪酸フリー、本質的にグロブリンフリー、pH7、≧98%)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(BioPerformance Certified、pH7.4、P5368)、グリシン(分子生物学用ウルトラ、≧99%、Fluka Biochemika)、パラホルムアルデヒド(粉末、95%)、クエン酸緩衝液(pH6.0、10×、Antigen Retriever)、5-(エチルチオ)-1H-テトラゾール(5-ETT、95%)、1-メチルイミダゾール(ReagentPlus、99%)、ホルムアミド(分子生物学用バイオ試薬、≧99.5%)、パン酵母からのRNA、tRNA、デンハルト溶液(50×5mL)、Atto-647N-NHSエステルおよびオクチルB-D-グルコピラノシド(OBG)(50%[w/v]ストック溶液)は、Sigma Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から入手し、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)、DyLight 650 NHSエステル、抗ストレプトアビジン抗体クローンS3E11、ヒドロキシルアミン、20kDa膜を有するSlide-A-Lyzer(商標)0.1mL MINI Dialysis Devicesおよびビオチン化プロテインGは、Thermo Fisher Scientific(マサチューセッツ州ウォルサム)から入手した。CHAPS(粉末、≧98%、MP Biomedicals)、Invitrogen UltraPure Salmon Sperm DNA SolutionおよびElectron Microscopy Sciences Secure-Seal Hybridization Chambers(1ウェル、22mm×53mm×0.6mm深さ)は、Fisher Scientific(ニューハンプシャー州ハンプトン)から入手した。トリスHClおよびトリス塩基(分子生物学グレード)、5N塩化ナトリウム(分子生物学グレード)、0.5M EDTA(pH8、分子生物学グレード)、Tween(登録商標)-20(分子生物学グレード)、SSC緩衝液20×(分子生物学グレード)およびヌクレアーゼフリー水はPromega(ウィスコンシン州マディソン)から入手した。抗原賦活化Reagent-Basic(CTS013)はR&D Systems/BioTechne(ミネソタ州ミネアポリス)から入手した。金被覆顕微鏡スライド(Au-500A)は、Angstrom Engineering Inc.(カナダオンタリオ州キッチナー)から入手した。マウスC57脳の矢状方向のFFPE切片(5μm厚)およびマウスC57脳の矢状方向の新鮮凍結(FF)切片(2%w/vのCMCに埋め込まれ、10pm厚)を、Zyagen(カリフォルニア州サンディエゴ)から入手した。FFPEヒト扁桃組織ブロックは、amsbio LLC(マサチューセッツ州ケンブリッジ)から入手し、FFPEヒト乳癌組織ブロックは、OriGene(メリーランド州ロックビル)から入手した。FFPE組織ブロックを、薄切片化(厚さ5μm)およびスライド上にマウントするためにZyagen(カリフォルニア州サンディエゴ)に送った。マウス脳切片のマルチプレックスイメージングのための抗体を以下のように様々な供給業者から入手し、抗ミエリン塩基性タンパク質抗体(MAB42282)はR&D Systems/BioTechne(ミネソタ州ミネアポリス)から、抗NeuN抗体(MAB377)および抗シナプシン2抗体(MABN1573)はMillipore Sigma(マサチューセッツ州バーリントン)から、抗GLUT1抗体(PA146152)はFisher Scientific(ニューハンプシャー州ハンプトン)から入手し、抗MAP2抗体(ab11268)、組換え抗NeuN抗体(ab209898)および組換え抗Cas9(ab218654、BSAおよびアジドフリー)、組換え抗汎サイトケラチン抗体[C-11]-BSAおよびアジドフリー(ab264485)、組換え抗CD3レプシロン抗体[CAL57]-BSAおよびアジドフリー(ab251607)、組換え抗CD4抗体[EPR6855]-BSAおよびアジドフリー(ab181724)、組換え抗CD8アルファ抗体[CAL66]-BSAおよびアジドフリー(ab251596)、組換え抗CD20抗体[EP459Y]-BSAおよびアジドフリー(ab214282)、抗CD45RO抗体[UCH-L1](ab23)、組換え抗エストロゲン受容体アルファ抗体[SP1]-BSAおよびアジドフリー(ab187260)、組換え抗プロゲステロン受容体抗体[YR85]-BSAおよびアジドフリー(ab206926)、組換え抗ErbB2抗体[CAL27]-BSAおよびアジドフリー(ab251602)、組換え抗ヒストンH2A.X抗体[EPR22820-23]-ChIPグレード-BSAおよびアジドフリー(ab256544)、組換え抗CD68抗体[EPR20545]-BSAおよびアジドフリー(ab227458)、ならびに組換え抗Ki67抗体[EPR3610]-BSAおよびアジドフリー(ab209897)は、Abeam(マサチューセッツ州ケンブリッジ)から入手した。マウスIgG全分子(015-000-003)、正常マウス血清(015-222-001)、ウサギIgG全分子(011-000-003)および正常ウサギ血清(011-000-001)は、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.(ペンシルバニア州ウエストグローブ)から入手した。特定のビーズアレイ実験のために、組換え抗βアミロイド1-42抗体(ab224275)および組換え抗ミエリン塩基性タンパク質抗体(ab230378)は、BSAおよびアジドフリーであり、Abeam(マサチューセッツ州ケンブリッジ)から入手した。U6-アミンカスタムLNAオリゴヌクレオチド(339406 YC00191704)、センスmiR-159-アミンカスタムLNAオリゴヌクレオチド(339406 YC00191705)およびFFPE用のmiRCURY LNA miRNA ISH緩衝液セットは、Qiagen(メリーランド州ジャーマンタウン)から入手した。ストレプトアビジンで被覆された20μmおよび37μmのPMMAビーズ(ミクロスフェア)は、Poly An GmbH(ドイツ、ベルリン)から入手した。0.5mL Ultrafree-MC Centrifugal 0.45μmフィルターデバイスはMillipore Sigma(マサチューセッツ州バーリントン)から入手した。NAP-5 Sephadex G-25カラムおよびPD SpinTrap G-25カラムはGE Healthcare Life Sciences(ペンシルバニア州ピッツバーグ)から入手し、以下、4-[4-[1-(9-Fmoc-アミノ)エチル]-2-メトキシ-5-ニトロフェノキシ]ブタン酸と呼ばれる4-[4-[1-(9-フルオレニルメチルオキシカルボニルアミノ)エチル]-2-メトキシ-5-ニトロフェノキシ]ブタン酸は、Santa Cruz Biotechnology(テキサス州ダラス)から入手した。FlexWell(商標)16チャンバ自己接着性ガスケット(204916)は、Grace Bio-Labs(オレゴン州ベンド)から入手した。
【0117】
実施例1。モデルシステムとしてビーズアレイを使用する15プレックスPC-MT-AbベースのMSI。
【0118】
PC-MT。
【0119】
ペプチドベースのPC-MTは、標準的なFmocアミノ酸固相ペプチド合成(SPPS)を使用して生成した[Behrendt,Whiteら(2016)J Pept Sci 22:4-27]。Fmoc保護された光切断可能なアミノ酸リンカー(
図3のFmoc-PC-リンカーを参照)を、他のアミノ酸と同じ様式でペプチド鎖に導入し、標準的な手順を使用してペプチドのN末端a-アミンを無水酢酸でアセチル化した。NHS-エステルプローブ反応性部分は、スペーサーユニットに含まれるリジン(K)のs-アミン上に作成された。(
図3の工程1、NHS-エステルを参照)リジン(K)のs-アミンのNHS-エステルへの変換は、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)を用いて達成した。DSSまたはDSC(ジスクシンイミジルカーボネート)などの二官能性スクシンイミジルエステルの使用は、第一級アミンのNHSエステルへの変換について以前に報告されている[Morpurgo,Bayerら(1999)J Biochem Biophys Methods 38:17-28]。合成後、Onyx Monolithic C18カラムおよびアセトニトリル溶媒系中、H
2O中0.05%TFA/アセトニトリル中0.05%TFAを使用して、PC-MTをHPLC精製した。例示的なPC-MTの化学構造が
図3に示されている。15個の異なるPC-MTが作製され、質量ユニットのアミノ酸配列が
図3に示されたものとのみ異なる。15個の異なる質量ユニット配列を表1(ID1、2~3および5~16)ならびに質量レポーターのモノアイソトピック質量に列挙し、これは
図3(工程プ3)に示すように、N末端アセチル化、ペプチド質量ユニットおよび光切断されたPC-リンカーの小部分を含む。
【0120】
場合によっては、追加のリジンをPC-MTのスペーサーユニットに含め、市販のアミン反応性試薬(例えば、メリーランド州ハントバレーのLumiprobe製のSulfo-Cy5-NHS)を使用してフルオロフォアで修飾した。この場合、スペーサーユニットのアミノ酸配列は、非蛍光PC-MTのGSGG[K-NHS]ではなく、GS[K-Sulfo-Cy5]GG[K-NHS]であった。
【0121】
PC-MT抗体(PC-MT-Ab)の調製
【0122】
100pLの抗体溶液(PBS中1μg/μL)に1/9容量のIM重炭酸ナトリウムを補充し、続いて、抗体に対して10倍モル過剰になるように無水DMF中の1mMストックから十分なPC-MTを添加した。光から保護し、穏やかに混合しながら反応を1時間行った。次いで、1/9体積のIMグリシンによって反応をクエンチし、続いて光から保護して15分間混合した。最後に、1/199体積の10%(w/v)BSA担体ストック水溶液を添加し、最終的に0.05%BSA(w/v)とした。未反応PC-MTを除去するために、得られたPC-MT抗体(PC-MT-Ab)を、予備平衡化緩衝液としてTBS(50mMトリス、pH7.5、200mM NaCl)を使用して製造者の指示に従ってPD SpinTrap G-25カラムで処理した。得られたPC-MT-Abにさらに1/9体積の10×TBSを添加した。場合によっては、PC-MT-Abを、20kDa膜を有するSlide-A-Lyzer(商標)0.1mL MINI Dialysis Devicesを使用してTBSに対して広範囲に透析することによって精製した。
【0123】
ビーズ-アレイ
【0124】
ストレプトアビジンで被覆された20ミクロンのPMMAビーズは、特に明記しない限り、0.5mL Ultrafree-MC Centrifugal 0.45μmフィルターデバイス中で処理した(洗浄は、フィルターデバイス中でビーズ懸濁液の3秒間のボルテックス混合によって行い、溶液からビーズを分離するための濾過は、標準的な微量遠心機で15,000rpmで5秒間行った)。各PC-MT-Abバージョンについて、特に明記しない限り、10,000個のビーズを使用し、別々に処理した。最初に400μLのビーズブロック緩衝液(TBS-T中1%BSA[w/v]、TBS-Tは、0.05%[v/v]のTween(登録商標)-20が補充されたTBSであることに留意されたい)で4回、ビーズを洗浄した。次いで、ビーズを15種類の異なるバージョンの抗ストレプトアビジンPC-MT-Abで別々にプローブし、各PC-MT-Abバージョンは異なるPC-MT種(すなわち、異なる質量ユニット-ID1、2~3および5~16を有する質量ユニットについては表1を参照)を保有していた。PC-MT-Abをビーズブロック緩衝液で1μg/mLに希釈し、穏やかに混合しながら100μLを使用して1時間プロービングを行った。次いで、400μLのTBS-Tで4回、ビーズを洗浄した後、15種類の異なるビーズバージョンをすべてプールした。次いで、400μLの質量分析グレードの水(MS-Water)でさらに4回、プールしたビーズを洗浄した。標準的な顕微鏡スライドのフットプリントを有する酸化インジウムスズ(ITO)被覆マイクロウェル基材上のビーズアレイ形成を、以前に報告されたように行った[Lim,Liuら(2014)Rapid communications in mass spectrometry:RCM 28:49-62、Zhou,Liuら(2016)Sci Rep 6:26125]。
【0125】
光切断
【0126】
基材を最終的に真空乾燥チャンバ内で45分間乾燥させ、モデルXX-15ランプ(カリフォルニア州アップランドのUVP/Analytik Jena US LLC)を使用して、5cmの距離で365nmの光で約3mW/cm2照明した。あるいは、基材を、LED Cube 100 IC(マサチューセッツ州マルボロのHonle UV Technology)を使用して365nmの光で約30mW/cm2照明した。特に明記しない限り、5分間の光処理を使用した。
【0127】
マトリックス適用
【0128】
次に、DHBまたはDANマトリックスを昇華によって乾燥した基材に適用し、続いて公開された報告に従って再結晶した[Hankin,Barkleyら(2007)J Am Soc Mass Spectrom 18:1646-52、Duenas,Carlucciら(2016)J Am Soc Mass Spectrom 27:1575-8]。
【0129】
MALDI-MSイメージング(MALDI-MSI)
【0130】
MALDI-MSイメージング(MALDI-MSI)は、以下のパラメータである、リフレクタモード、それぞれ10μmまたは20μmの連続ラスタ走査を伴うレーザースポットサイズ10μmまたは20μm、300~500レーザーショット/ピクセル、および場合によっては総イオンカウント(TIC)に正規化を使用してrapifleX MALDLTOF-MS装置(マサチューセッツ州ビレリカのBruker Daltonics)で達成された。画像およびスペクトル分析は、fleximaging and flexAnalysisソフトウェア(マサチューセッツ州ビレリカのBruker Daltonics)を使用して行った。
【0131】
結果
【0132】
図6の結果(挿入画像)は、ビーズアレイのMALDI-MS「質量画像」を示す。挿入画像における異なる色は、特定のPC-MT質量レポーター(ID1、2~3および5~16を有する質量レポーターの予想質量については表1を参照)についてのモノアイソトピック質量スペクトルピークの異なるm/z値に対応する。アレイ中の別個の20μmビーズに結合したPC-MT-Abプローブに由来する15種類の異なる質量分解能の質量レポーター種が観察される。アレイ内の代表的な単一ビーズからの色分けされたオーバーレイMALDI-MSIスペクトル(
図6、黒色矢印)は、ビーズ間の「クロストーク」を示さない。
【0133】
実施例2。マウス脳の矢状方向のFFPE組織切片に対するPC-MT-Abを使用した5プレックスMIHC。
【0134】
PC-MT-Abによる免疫染色
【0135】
PC-MTおよびPC-MT-Abを実施例1のように調製し、MIHCにおいて以下のように使用し、脱パラフィンおよび水和のために、FFPE組織切片を以下のように(各処理工程を別々の染色ジャーで)処理した。キシレンで各5分間を3回、キシレン:エタノール(1:1)で3分間を1回、次いで、100%エタノールで各2分間を2回、95%エタノールで各3分間を2回、70%エタノールで3分間を1回、50%エタノールで3分間を1回、およびTBSで10分間を1回、水和させる。
【0136】
抗原賦活化は、200mLの1×クエン酸緩衝液(pH6.0、材料を参照)中、ビーカー中で95℃の水浴中で1時間予熱し、同じビーカー中で室温で30分間冷却して達成した。次いで、スライドを染色ジャー内で50mLの組織ブロッキング緩衝液(TBS-T中2%[v/v]正常血清[ウサギおよびマウス]および5%(w/v)BSA、TBS-Tは0.05%[v/v]のTween(登録商標)-20が補充されたTBSであることに留意されたい)で1時間ブロッキングした。PC-MT-Ab染色のために、スライドを、組織ブロッキング緩衝液で希釈した2.5μg/mLの各抗体を含有する200pL/切片の溶液で4℃で一晩処理した(インキュベーションは、光から保護され、加湿チャンバ内で蒸発を回避し、各組織切片を疎水性バリアペンで囲んで流体を保持して行った)。
【0137】
次に、スライドを以下のようにそれぞれTBSで5分間を3回洗浄した後、それぞれ50mM重炭酸アンモニウムで2分間を3回洗浄した(すべての溶液はLCMSグレードの水中にあり、すべての洗浄は過剰の溶液を使用して行い、スライドをペトリ皿に水平に置き、穏やかに振盪したことに留意)。
【0138】
最後に、実施例1と同様に、光切断、マトリックス適用およびMALDI-MSIを行った。
【0139】
場合によっては、PC-MT-Abによる染色の代わりに免疫蛍光法を行ったことに留意されたい。これらの場合、PC-MTで標識された抗体の代わりに、15倍モル過剰のDyLight 650 NHSエステル試薬(DMF中5mMストックから添加)で標識された抗体を使用した(そうでなければ、実施例1においてPC-MT-Abについて先に記載された同じ標識手順を使用した)。さらに、光切断、マトリックス適用およびMALDI-MSIは行わず、代わりに、乾燥スライドのイメージングをGenePix 4200A蛍光スキャナー(カリフォルニア州サンノゼのMolecular Devices)で5μmの解像度で行った。他のすべての手順は、この実施例においてMIHCについて記載されたものと同じであった。
【0140】
結果
【0141】
5プレックスMIHCを、マウス脳のFFPE矢状方向切片に対して行った。この目的のために、異なるPC-MTを1工程で抗体に直接コンジュゲートした。5つの抗体は、ミエリン塩基性タンパク質(周知の軸索鞘マーカー、例えば[van Tilborg,van Kammenら(2017)Sci Rep 7:16492])、NeuN(ニューロン核マーカー、例えば[Gusel’nikovaおよびKorzhevskiy(2015)Acta Naturae 7:42-7])、シナプシン(シナプスタンパク質、例えば[Mason(1986)Neuroscience 19:1319-33])、Glut-1(脳組織の毛細血管に豊富[Tang,Gaoら(2017)Nat Commun 8:14152])およびMAP-2(神経組織に存在する微小管関連タンパク質、例えば[Wiche,Brionesら(1983)EMBO J 2:1915-20])を標的とした。MALDI-MSIは、10μmの空間分解能で社内のBruker rapifleX MSI機器で達成された。
図7aは、全脳切片の5色MALDI-MS「質量画像」を示す。異なる色は、特定のPC-MTのモノアイソトピック質量スペクトルピークの異なるm/z値に対応する。ミエリン(赤色)、NeuN(緑色)およびシナプシン(青色)が最も優勢であり、最も明確な構造パターンを生じる。例えば、NeuNは、海馬の明確な「旋回」パターン(
*で示される)を生成する。さらに、ミエリン、NeuNおよびシナプシンは、小脳の3つの異なる層(Iで示される)を強調している。合成カラー画像に隠されたあまり明確でないバイオマーカーは、単色画像として最もよく見ることができる。例えば、
図7cは、Glut-1バイオマーカーの単色スタンドアロンMALDI-MS画像を示す(主に脳の毛細血管の断面を示す)。MAP-2は、脳切片のかなり均一な染色をもたらす(スタンドアロン画像として示されていない)。さらに、同じPC-MTを有する種一致非免疫アイソタイプコントロール免疫グロブリンは、MALDI-MSシグナルを示さない(図示せず)。MALDI-MS画像の選択されたピクセル(これらのピクセルは
図7aにおいて矢印で示されている)について、色分けされたオーバーレイ質量スペクトルが示されている(
図7e)。最後に、MIHCの結果は、従来の免疫蛍光と明らかに一致する。例えば、フルオロフォアのみで直接標識されたミエリン、NeuNおよびシナプシン抗体を使用すると、小脳(
図7b)においてMIHCと同じパターンが生成される。Glut-1のMALDI-MSパターンもまた、免疫蛍光によって一致する(
図7d)。
【0142】
実施例3。FFPE組織切片に対するPC-MT-NA miRNAハイブリダイゼーションプローブを用いたMISH
【0143】
PC-MT核酸(PC-MT-NA)の調製
【0144】
アミン修飾ロック核酸(LNA)プローブ(材料を参照)を以下のようにPC-MTで標識した。100μLのLNAプローブ溶液(200mM塩化ナトリウムおよび200mM重炭酸ナトリウム中10μM)に、LNAプローブに対して200倍モル過剰になるように、無水DMF中の10mMストックから十分なPC-MTを添加した(10mMストック2μLを30分ごとに添加して合計5回添加した)。光から保護し、穏やかに混合しながら反応を合計2.5時間行った。未反応PC-MTを除去するために、得られたPC-MT-NAを、予備平衡化緩衝液としてTE-150mM NaCl(10mMトリス、pH8.0、1mM EDTAおよび150mM NaCl)を使用して、製造者の指示に従ってNAP-5 Sephadex G-25カラムで処理した。
【0145】
PC-MT-NAによるインサイツハイブリダイゼーション
【0146】
脱パラフィンおよび水和のために、FFPE組織切片を実施例2と同様に処理した。以下の手順をRenwickら[Renwick,Cekanら(2013)J Clin Invest 123:2694-702]から適合させた。プロテイナーゼK消化、EDC固定およびアセチル化によるインサイツハイブリダイゼーションのために組織切片を調製した。プロテイナーゼK消化のために、FFPE用のmiRCURY LNA miRNA ISH緩衝液セット(材料を参照)からの1.5μLのプロテイナーゼKストック溶液をプロテイナーゼK緩衝液(5mM Tris-HCl、pH7.4、1mM EDTA、1mM NaCl)で2.0mLに希釈し、300μLを各組織切片と共に37℃で10分間インキュベートした。プロテイナーゼK消化後、組織切片をそれぞれPBS中の0.2%(w/v)グリシンで10分間を2回洗浄した。EDC固定のために、組織切片を0.1M 1-メチルイミダゾール溶液中でそれぞれ2回、3分間前処理し、次いで200μLのEDC固定溶液で1時間処理した(1.0mLの0.1M 5-ETTおよび0.1M 1-メチルイミダゾールを10mgのEDC HClバイアルに添加することによって新たに調製し、10M NaOHでpHを8.0に調整する)。EDC固定後、組織切片をPBS中0.2%(w/v)グリシンで10分間洗浄した。アセチル化のために、149μLのトリエタノールアミン、2μLのHCl(37%)および5μLの無水酢酸を846μLのヌクレアーゼフリー水に添加することによってアセチル化溶液を新たに調製し、200μLを各組織切片と10分間インキュベートした。アセチル化後、組織切片を過剰のPBS中で3分間洗浄した。次に、切片を、加湿チャンバ中、25℃で1時間、50%ホルムアミド、1.0M NaCl、75mM Tris-HCl(pH8.5)、1×デンハルト溶液、250μg/mLパン酵母tRNA、500μg/mLサケ精子DNA、5mM CHAPSおよび0.1%Tween(登録商標)-20で構成される150μLのハイブリダイゼーション緩衝液中で予備ハイブリダイゼーションした。予備ハイブリダイゼーション後、自己接着性ハイブリダイゼーションチャンバをスライド上に置いた(22mm×53mm×0.6mm/チャンバ)。ハイブリダイゼーションのために、PC-MT U6および159 LNAプローブをハイブリダイゼーション緩衝液中で200nMに希釈し、組織切片を加湿チャンバ(光から保護)中55℃で一晩インキュベートした。次いで、組織切片を5×SSC緩衝液中で5分間を1回、それぞれ1×SSC緩衝液中で5分間を2回および0.2×SSC緩衝液中で5分間を1回、55℃で洗浄し、0.2×SSC緩衝液中で5分間を1回、室温で洗浄した。
【0147】
次に、スライドを以下のようにそれぞれTBSで5分間を3回洗浄した後、それぞれ50mM重炭酸アンモニウムで2分間を3回洗浄した(すべての溶液はLCMSグレードの水中にあり、すべての洗浄は過剰の溶液を使用して行い、スライドをペトリ皿に水平に置き、穏やかに振盪したことに留意)。
【0148】
最後に、実施例1と同様に、光切断、マトリックス適用およびMALDI-MSIを行った。
【0149】
場合によっては、PC-MT-NAによる染色の代わりにFISHを行ったことに留意されたい。これらの場合、PC-MTで標識された核酸の代わりに、Atto-647N-NHSエステル試薬で標識された核酸を使用した(そうでなければ、PC-MT-NAについて本実施例で前述したのと同じ標識手順を使用した)。さらに、光切断、マトリックス適用およびMALDI-MSIは行わず、代わりに、乾燥スライドのイメージングをGenePix 4200A蛍光スキャナー(カリフォルニア州サンノゼのMolecular Devices)で5μmの解像度で行った。他のすべての手順は、この実施例においてMISHについて記載されたものと同じであった。
【0150】
結果
【0151】
MISHを実証するために、アミン反応性NHS活性化PC-MT標識試薬を5’アミン末端LNAハイブリダイゼーションプローブに直接コンジュゲートした(LNA=より良好な親和性のためのロック核酸[VesterおよびWengel(2004)Biochemistry 43:13233-41、Sempere,Christensenら(2007)Cancer Res 67:11612-20、RobertsonおよびThach(2009)Anal Biochem 390:109-14、Nielsen(2012)Methods Mol Biol 822:67-84、Renwick,Cekanら(2013)J Clin Invest 123:2694-702、Kasai,Kakiharaら(2016)Front Mol Neurosci 9:126、Lei,van Milら(2018)Biotechnol Rep(Amst)18:e00255])。次いで、プローブを使用してマウス脳の矢状方向の組織切片を染色し、MALDI-MSIを行った。プローブは、miRNA FISHにおいて陽性対照として一般的に使用されるsnRNAであるU6、および陰性対照植物特異的配列であるmiR-159であった[Lei,van Milら(2018)Biotechnol Rep(Amst)18:e00255]。
図8の結果は、U6プローブを用いたMISHが、従来のFISH法と同様の組織染色パターンを生成する一方で、陰性対照miR-159プローブは、感知できるほどの染色パターンを生成しないことを示している。
【0152】
実施例4。マルチオミックMSI:同じFF組織切片上の脂質の非標的化非標識MSIおよび標的化MIHC
【0153】
FF組織切片上の非標的化非標識直接的MSI
【0154】
未処理の新鮮凍結(FF)組織切片を最初に、MALDI-MSIによって非標的化様式で直接分析した(組織切片を解凍し、実施例2[この場合はDANマトリックス]のようにマトリックス適用のみを行った後)。
【0155】
同じFF組織切片上のMIHC
【0156】
次に、FF組織切片では脱パラフィン処理は必要ではなかったが、次のようにしてパラホルムアルデヒド(PFA)固定を行った(各処理工程は別々の染色ジャーで)。冷アセトンで3分間、予備洗浄を2回行い(溶媒固定を提供しながら、以前のMALDI-MSIから残りのマトリックス化合物を除去するのに役立つことに留意)、10分間風乾し、PBS、pH7.4中1%PFAを使用して10分間固定し(この溶液は、1.0gのPFAを、1.0mLの1M NaOHを含む60mLのPBSに約60℃の加熱ブロックで絶えず撹拌しながら溶解し、続いて1M HCl[約1mL]でpHを7.4に調整し、PBSで最終容量を100mLに調整することによって新たに調製したことに留意)、PBSで10分間、1回洗浄する。PC-MT-AbベースのMIHCの残りの工程は、抗原賦活化工程から最後まで実施例2と同様に行った。
【0157】
結果
【0158】
同じ組織切片上で非標的化非標識小分子およびPC-MT-Ab標的化巨大分子の両方を検出できることは非常に有利であろう。例えば、これにより、小分子薬物とその受容体などの薬物標的、ならびに薬物に対する細胞応答に関与する関連生体分子の共局在が可能になる。この能力の基本的な実現可能性を実証するために、本発明者らはまず、新鮮凍結マウス脳の矢状方向の組織切片に対して直接的MALDI-MSI分析を行った(組織固定または事前洗浄なしで小分子検出を容易にするために、FFPEの代わりに新鮮凍結が最適である)。DANマトリックスを有する負イオンモードMALDI-MSIを使用した。次に、組織を冷アセトンで洗浄/固定してMALDI-MSマトリックス化合物を除去し、次いでパラホルムアルデヒドでさらに固定した。次いで、2回のMALDI-MSI(いわゆる二重MSI)を構成するMIHCを実施した。1回目の直接的MALDI-MSIの結果を
図9aに示し、画像は、Scripps Center for Metabolomics[Smith,OMailleら(2005)Ther Drug Monit 27:747-51]のMETLINデータベースから同定された3つの周知の脂質のm/z値について色分けされており、マウス脳組織切片からの脂質の以前のMALDI-MSI分析と一致している[Wang,Wangら(2018)Anal Chim Acta 1000:155-162](スルファチド[N24:1]、赤色、実測値m/z888.7;ホスファチジルエタノールアミン[40:6]、青色、実測値m/z790.5;およびホスファチジルイノシトール[38:4]、緑色、実測値m/z885.4)。これらの3つの脂質は、脳の異なる構造において明らかに濃縮されており、特に、スルファチド(赤色)は、他の2つの脂質とは異なるパターンを示す。しかしながら、真核細胞膜の主要な構造脂質の2つとして予想されるように、ホスファチジルエタノールアミン(青色)およびホスファチジルイノシトール(緑色)の有意な共局在も存在する[vanMeer,Voelkerら(2008)Nat Rev Mol Cell Biol 9:112-24](共局在した青色および緑色は、
図9aではシアン色として現れる)。実証目的のために、
図9bおよび
図9cは、1回目の直接的MALDI-MSIで検出されたスルファチド脂質と、2回目のMALDI-MSIでMIHCによって検出された選択された高分子バイオマーカーの2色オーバーレイを示す。
図9bは、PC-MT-Abを用いて実施例2で先に実証されたように検出された、ニューロン核バイオマーカーNeuN(緑色)がオーバーレイされたスルファチド(赤色)を示す。これらの2つの生体分子は一般に共局在しない。逆に、
図9cは、マルチプレックスMIHC分析においてPC-MT-Abを用いて再び検出された、ミエリン塩基性タンパク質(緑色)がオーバーレイされた同じ脂質スルファチド(赤色)を示す。この場合、スルファチドとミエリンの強い共局在が存在する(緑色と赤色の共局在から生じる黄色によって証明される)。スルファチドおよびミエリンの共局在は、スルファチドが主にニューロン軸索のミエリン鞘(シュワン細胞/乏突起膠細胞)に見られることを示す以前の文献と一致する[Eckhardt(2008)Mol Neurobiol 37:93-103、Hirahara,Wakabayashiら(2017)J Neurochem 140:435-450]。逆に、ここで観察されたように、スルファチドはニューロン核バイオマーカーNeuNと共局在するとは予想されないであろう(実施例2で先に示したように、ミエリンおよびNeuNも一般に共局在しないことに留意されたい)。最後に、1回目の直接的MALDI-MSIからの例示的なスペクトルを
図9dに示す。これらのスペクトルは、マウスの脳の延髄/神経層で観察される3つの異なる色の「層」から選択された選択画像ピクセルからのものである(これらの層については、
図9aの色付き矢印を参照されたい)。将来、MS/MSまたはより高分解能のFTICR質量分析計を利用することにより、より正確な小分子同定が提供される。
【0159】
実施例5。PC-核への質量ユニット好ましい結合部位。
【0160】
本発明では、質量ユニットのPC-核(PC-核については
図3を参照)のフェニル環への好ましい結合様式は、最終的に光切断部位を介する(
図10aの構成1を参照、
図3も参照)。この構成では、PC-核の光切断されたフェニル環は、質量分析(MS)によって検出される光切断された質量レポーターに結合したままではない。代わりに、Olejnikら[Olejnik,Ludemannら(1999)Nucleic Acids Res 27:4626-31]ならびにLevyおよびCaprioli(米国特許第7,569,392号)によって教示されるように、光切断部位以外の部位を介して最終的に質量ユニットをPC-核のフェニル環に結合させることが可能であるが、これは、PC-核の光切断されたフェニル環が、MSによって検出された光切断された質量レポーターに結合したままであるため、好ましくない(
図10a、構成2参照)。
【0161】
好ましい構成1の利点を実証するために、同じ質量ユニットのペプチド配列を有する光切断可能なペプチドを、
図10aに示される2つの構成に従って表面に結合させた。(光切断可能なペプチドの構造および配列についても
図10aを参照)。次いで、質量レポーターを表面から光切断し、質量分析によって測定した。好ましい構成1は、質量レポーターの予想質量(
図10bの薄い灰色のトレース、1,194.7m/z、構成1)でのクリーンなモノアイソトピックピーク、および1m/zだけ離れた質量レポーターの天然同位体に対応する付随するピーククラスタのみ(X軸スケーリングのために
図10bには存在するが認識できない)を提供する。構成2では、光切断された質量レポーターは、予想されるモノアイソトピック質量レポーターピーク(
図10bの黒色トレース、1,399.9m/z、構成2)を提供するが、質量レポーターに結合したままであるPC-核の光切断されたフェニル環の副反応副生成物に起因すると思われる非常に複雑な質量スペクトルも生成する(
図10b「構成2におけるPC-核の副産物」参照)。これらの副生成物は、部分的には、関与する酸素ラジカル化学に起因する酸素付加物および損失を含み得る。最終的に、これは(質量レポーターシグナルを多数の質量スペクトルピークに分割することによって)感度を低下させ、マルチプレックス分析において(ピーク重複により)質量レポーター同定を混乱させる。
【0162】
実施例6。異なるPCリンカーの比較および予備光切断対MALDI-MSレーザービームを用いたインライン光切断の比較。
【0163】
PC-MT
【0164】
実施例1と同様にして、
図3に示す構成を有するPC-MTを作製した(表1に列挙された質量ユニット1および2~4からなる、この実施例における4つのPC-MT)。
【0165】
さらに、いわゆるPC-MTs-Lを、
図3に示されるPC-リンカーの代わりにLemaireらのPC-リンカー[Lemaire,Stauberら(2007)J Proteome Res 6:2057-67][米国特許第8,221,972号]を使用することによってのみ異なる、同じ様式で製造した。これを達成するために、4-[4-[1-(9-Fmoc-アミノ)エチル]-2-メトキシ-5-ニトロフェノキシ]ブタン酸(材料を参照)を使用して、ペプチド合成中にPC-リンカーをPC-MTs-Lに導入した(プレーンのペプチドに組み込まれたこのPC-リンカーについては
図4「LemaireのPC-リンカー」を参照-
図4では、プレーンのペプチドがPC-リンカー自体を示すように示されているが、プレーンのペプチドはPC-MTおよびPC-MTs-Lの他の特徴を欠いていることに留意されたい)。重要なことに、PC-MTs-LのPC-リンカーは、Lemaireらによって使用されたものであったが、
図3に示すPC-MT特徴と同じPC-MTs-Lの他の特徴は、Lemaireらによって教示されていない。これらの特徴(
図3)には、プローブ反応性部分(この場合はNHS-エステル)、ペプチドベースのPC-MTのN末端ブロッキング(この場合はN末端アセチル化)、質量ユニット(表1)およびスペーサーユニットのペプチド配列、ならびに光切断部位を介したPC-核のフェニル環への質量ユニットの特異的結合が含まれるが、これらに限定されない。
【0166】
ビーズ-アレイ
【0167】
PC-MT-LをPC-MTと共に等モル濃度で使用して、ストレプトアビジンで被覆された37ミクロンのPMMAビーズを同時に二重標識した。これを達成するために、4つの別々の反応において、同じ質量ユニットからなるPC-MT-LおよびPC-MTでそれぞれ同時に二重標識することによって4つのビーズ種を作製した。これは、PC-MTが光切断された質量レポーターに結合したPC-リンカーの小さな残存部分を残し(
図3の工程3参照)、一方、PC-MT-Lはそうではないために可能である(したがって、たとえ各ビーズ種の質量ユニットが同じであっても、光切断された質量レポーターの質量は、質量分析計において区別可能である)。
【0168】
ビーズの質量タグ標識を以下のように行った。ストレプトアビジンで被覆された37ミクロンのPMMAビーズは、特に明記しない限り、0.5mL Ultrafree-MC Centrifugal 0.45μmフィルターデバイス中で処理した(洗浄は、フィルターデバイス中でビーズ懸濁液の3秒間のボルテックス混合によって行い、溶液からビーズを分離するための濾過は、標準的な微量遠心機で15,000rpmで5秒間行った)。4つのビーズ種(特に断らない限り別々に処理)のそれぞれについて、100,000個のビーズを使用した。400μLのコンジュゲーション緩衝液(200mM NaClを含む200mM重炭酸ナトリウム)で4回、ビーズを洗浄した。次いで、各ビーズペレットを100μLのコンジュゲーション緩衝液に再懸濁した後、PC-MT-LおよびPC-MTのそれぞれを500μM含有する2pL(DMF中)を添加した。反応物を30分間混合し、次いでビーズを400pLのグリシン-ヒドロキシルアミンクエンチ(10倍濃縮TBS中1Mグリシンおよび100mMヒドロキシルアミン、新たに調製)でそれぞれ15分間を3回洗浄した。次いで、ビーズをそれぞれ400μLのOBG生理食塩水(25mM重炭酸アンモニウム、0.05%(w/v)オクチル-B-D-グルコピラノシドおよび50mM NaCl)で15分間を4回洗浄し、同じ緩衝液中250ビーズ/pLに再懸濁した。
【0169】
最後に、ビーズアレイを以下のように形成した。400pLの質量分析グレードの精製水で4回、ビーズを洗浄し、質量分析グレードの精製水で再懸濁した(20,000ビーズ/100pL)。次いで、金で被覆された顕微鏡スライド(材料を参照)に取り付けられたFlexWell(商標)16チャンバ自己接着性ガスケット(材料を参照)を使用して、ビーズを化学煙霧フード内で400ビーズ/mm2の密度で一晩乾燥させた。乾燥後、スライドを過剰な質量分析グレードの精製水を含むトレイで穏やかに洗浄し(ビーズはスライドに付着したままである)、次いでスライドを真空乾燥チャンバ内で45分間再び乾燥させた。
【0170】
ビーズアレイの光切断、マトリックス適用およびMALDI-MSI
【0171】
実施例1と同様に実施した(上記のように直接質量タグ付けされたビーズは、実施例1で行われたようにPC-MT-Abでプローブされなかったことに留意されたい)。場合によっては、UV照射を25分に増加させた。
【0172】
C-MT-Ab
【0173】
表1に記載の質量ユニット1からなる等モル濃度のPC-MT-LおよびPC-MTで抗ミエリン抗体を同時に二重標識したこと以外は実施例1と同様にして調製した(すなわち、PC-MT-LおよびPC-MT標識試薬の両方を等モル濃度[それぞれDMF中1mM]で予備混合し、次いで混合物を二重標識のための同じ抗体に添加した[標識のための抗体と比較してそれぞれ10倍モル過剰])。
【0174】
PC-MT-Ab、光切断、マトリックス適用およびMALDI-MSIによる組織免疫染色
【0175】
実施例2と同様に実施した。場合によっては、UV照射を25分に増加させた。他の場合では、UV照射は行わず、機器のレーザービームを使用して、MALDI-MSI中にインライン光切断のみを可能にした。
【0176】
結果
【0177】
最初に、ビーズアレイを使用して、表1に列挙した質量ユニット1および2~4について、PC-MTをPC-MT-Lと比較した。
図11aは、1,206.7m/z(質量ユニット1を有するPC-MT)および1,163.7m/z(質量ユニット1を有するPC-MT-L)における質量レポーターの質量スペクトルピーク強度のピクセルマップを表す、質量ユニット1についてのビーズアレイの例示的な質量画像を示す。画像において、PC-MTは赤色に色分けされ、PC-MT-Lは緑色に色分けされている。ピークが同様の強度である場合、2色オーバーレイは黄色を生成すると予想されるが、PC-MTははるかに強いシグナルを生成するので、ビーズは赤橙色に見える。アレイ内のビーズからの単一ピクセルからの代表的な質量スペクトルを、5分および25分の事前UV照射(すなわち、マトリックス適用前およびMALDI-MSI前のUV光切断)での4つすべての質量ユニットについて
図11b~
図11iに示す。4つのビーズ種のそれぞれが二重標識されているので、各スペクトルは、所与の質量ユニットについてPC-MTおよびPC-MT-Lの両方のピークを含むことに留意されたい(PC-MTは、PC-MT-Lからの等価な質量ユニットと比較して+43のm/zを生じるが、これは、PC-MTは質量レポーターに結合した光切断されたPC-リンカーのわずかな残存部分を残すが、PC-MT-Lは残さないためである)。次いで、質量スペクトルピーク強度のPC-MT対PC-MT-L比を、各質量ユニットおよび各事前UV時点について計算し、各並べ替えについて5ピクセル(5スペクトル)から平均した。これらの比は、それぞれ質量ユニット1および2~4について、5分間の事前UVで5:1、8:1、10:1および6:1であり、したがってPC-MTはPC-MT-Lと比較して5~10倍高いシグナルを示した。相対的なPC-MT-Lシグナルは、25分間のUVで穏やかに改善し、2:1、3:1、7:1および5:1の比をもたらしたが、改善は事前UV時間の増加(事前UV時間の5倍の増加)とは決して比例せず、PC-MTは常にPC-MT-Lよりも優れたままであったので、リターンは減少した。
【0178】
第2に、MIHC(質量分析ベースの免疫組織化学)を使用して、ミエリンに対する二重標識抗体プローブを使用してマウス脳組織切片を染色するために、質量ユニット1のPC-MTおよびPC-MT-Lを比較した。この場合、組織の5分間および25分間の事前UV処理(マトリックス適用の直前およびMALDI-MSIの前)に加えて、0分間の事前UVも試験し、この場合、光切断は、機器のレーザービームを使用したMALDI-MSI分析と一致しているにすぎない。ビーズアレイと同様に、組織のミエリンイメージングのための2色質量画像が
図11jに示されており、ここでも、PC-MT(赤色)はPC-MT-L(緑色)よりもはるかに高いシグナルを提供し、それによって画像において優勢である。代表的なピクセルからのスペクトルを
図11kおよび
図11lに示し、この結果を確認する。この場合、ピーク強度のPC-MT対PC-MT-L比は、5分間および25分間の事前UVでいずれも6:1であった。最後に、0分間の事前UVは、検出可能なPC-MTまたはPC-MT-Lシグナルを実質的に示さない(
図11j参照)。事前UVの効果を定量化するために、各組織切片について、対象の領域全体(
図11jの点線の輪郭を参照)の各々から平均スペクトルを生成した。これらの平均スペクトルから、PC-MTのモノアイソトピックピーク強度は、0分間、5分間および25分間の事前UVでそれぞれ2.5、15.8および23.3であった。重要なことに、これは、装置のレーザービームを使用するMALDI-MSI分析にと一致した光切断(0分間の事前UV)が、光切断のための事前UV処理よりもはるかに感度が低い(この例では約6~9倍)ことを実証している。
【0179】
実施例7。質量分析に基づく免疫組織化学のための蛍光PC-MT。
【0180】
質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)
【0181】
以下の、組換え抗NeuN抗体(材料を参照)を、
図3のように構成された(表1の質量ユニット1を有する)が、スペーサーユニットに付加されたリジンアミノ酸のs-アミンに結合したSulfo-Cy5蛍光標識をさらに含むPC-MTにコンジュゲートしたしたことを除いて、実施例2と同様にマウス脳の矢状方向の組織切片に対するMIHCを実施した。したがって、Fluor-PC-MT1と呼ばれる質量ユニット1を有するこの蛍光PC-MTの完全な配列は、以下の通りであった(N末端からC末端)。Acetyl-APRLRFYSL-[PC-Linker]-GS[K-Sulfo-Cy5]GG-[K-NHS]-COOH。抗NeuN Fluor-PC-MT1と呼ばれる得られた抗体プローブをMIHCに使用した。
【0182】
陰性対照として、組換え抗Cas9抗体(材料を参照)をFluor-PC-MT1にもコンジュゲートした(Cas9は哺乳動物に存在しない細菌特異的タンパク質であることに留意されたい)。抗Cas9 Fluor-PC-MT1と呼ばれる得られた抗体プローブをMIHCに使用した。
【0183】
最後に、陽性対照として、組換え抗NeuN抗体を、PC-MT7と呼ばれる、表1の質量ユニット7を除いて、
図3のように構成された非蛍光PC-MTにのみ結合させた。抗NeuN PC-MT7と呼ばれる得られた抗体プローブをMIHCに使用した。
【0184】
Fluor-PC-MT1はフルオロフォアを含むので、MALDI-MSIに加えて、(金で被覆されたスライド上の)同じ組織の蛍光イメージングを行うことができた(光切断のための事前UV処理の直前、マトリックス適用前およびMALDI-MSI分析前に行われた蛍光イメージング)。実施例2と同様に蛍光イメージングを行った。
【0185】
結果
【0186】
マウス脳組織の蛍光画像を
図12に黄色で示す(「蛍光」参照)。組織を抗NeuN Fluor-PC-MT1でプローブすると、強い特異的な蛍光シグナルが観察される。比較すると、陰性対照抗Cas9 Fluor-PC-MT1でプローブした組織は、弱いバックグラウンドのみを示す(Cas9は哺乳動物に存在しない細菌タンパク質である)。非蛍光抗NeuN PC-MT7でプローブした組織は、組織の自己蛍光に対応する非常に弱いバックグラウンド蛍光しか示さない。
【0187】
マウス脳組織のMALDI-MS画像を、
図12において赤色(Fluor-PC-MT1からの質量レポーター)および緑色(PC-MT7からの質量レポーター)として表示する(「MALDI-MSI」参照)。抗NeuN Fluor-PC-MT1でプローブした組織は、弱いバックグラウンドしかもたらさない陰性対照抗Cas9 Fluor-PC-MT1でプローブした組織と比較して、強く特異的なMALDI-MSIシグナルを示す(
図12の「MALDI-MSI」パネルの赤色を参照)。
【0188】
抗NeuN Fluor-PC-MT1の「染色」パターンは、
図12の蛍光およびMALDI-MS画像において類似している。具体的には、実施例2と同様に、抗NeuNは、海馬(
図12の青色矢印)および小脳(
図12の白色矢印)などの異なる特徴を検出する。しかしながら、MALDI-MSIでは、非蛍光抗NeuN PC-MT7プローブは、抗NeuN Fluor-PC-MT1プローブよりも明確なパターン(
図12の「MALDI-MSI」パネルの緑色)を生成する。海馬(
図12の青色矢印)内の代表的な単一ピクセルからのFluor-PC-MT1およびPC-MT7の質量レポーターピーク(スペクトルの黒色矢印)を示す
図12の挿入図のスペクトルに基づいて、抗NeuN PC-MT7プローブの優位性は、より高いピーク強度(スペクトルの同じy軸スケーリング)に起因するようには見えない。優れた結果は、抗NeuN Fluor-PC-MT1プローブと比較して、抗NeuN PC-MT7プローブの非特異的結合が少ない(したがって、拡散バックグラウンドが少ない)ことによって説明され得る。これは、非特異的結合を低減するために異なるフルオロフォアを使用することによって解決され得る。さらに、にスペーサーユニットの長さを長くして、フルオロフォアがプローブ反応性部分(この実施例ではPC-MT上のNHS-エステル)からより離れるようにすると、プローブ標識効率を改善することができる。
【0189】
最後に、陰性対照抗Cas9 Fluor-PC-MT1プローブについて示されるスペクトルは、識別可能な質量レポーターピークを示さないことに留意されたい。
【0190】
実施例8。組換え抗体対従来の抗体。
【0191】
PC-MT-Ab
【0192】
以下のPC-MT-Abを実施例1のように調製した(抗体は特に明記しない限り非組換えである-抗体の材料を参照)(以下の数字は、特定のPC-MTで使用される表1の質量ユニットを示すことに留意されたい)。組換え抗アミロイドβ(組換え抗AB2と呼ばれる)、組換え抗ミエリン塩基性タンパク質(組換え抗MBP1と呼ばれる)、抗ミエリン塩基性タンパク質(抗MBP1と呼ばれる)、組換え抗NeuN(組換え抗NeuN7と呼ばれる)、および抗NeuN(抗NeuN7と呼ばれる)。
【0193】
ビーズ-アレイ
【0194】
以下を除いて実施例6と同様に実施した。ストレプトアビジンで被覆された37μmのPMMAビーズをPC-MTへのコンジュゲーションに使用した(これらのPC-MTはビーズID-タグと呼ばれる)。次いで、ビーズを使用して、以下のように前述のPC-MT-Abを捕捉した。ビーズを実施例6のようにフィルターデバイスで処理した。特に明記しない限り、各PC-MTビーズ種を別々に処理した。ビーズを400μLのOBG生理食塩水で4回洗浄した(製剤については実施例6を参照)。OBG生理食塩水中100μg/mLビオチン化プロテインG 200μLを各ビーズペレットに添加し、30分間混合した。ビーズを400μLのOBG生理食塩水で8回洗浄した。OBG生理食塩水中1μg/mL PC-MT-Ab溶液200μLをビーズペレットに添加し、30分間混合した。ビーズを400μLOBG生理食塩水で2回および400μLのOBG緩衝液(OBG生理食塩水と同じであるがNaClを含まない)で2回洗浄した。この段階で、異なるビーズ種をプールした。次に、実施例6と同様に、ビーズアレイ形成、光切断、マトリックス適用、MALDI-MSIを行った。
【0195】
上記の手順の結果として、2つのビーズプールを作成し、MALDI-MSIによってビーズアレイで別々に分析した。プール中の各ビーズ種は、固有の直接結合したビーズID-タグならびに結合したPC-MT-Abを有する。以下のすべての数字は、特定のPC-MTで使用される表1に列挙された質量ユニットを指す。
【0196】
ビーズプール1:
【0197】
ビーズID-タグ9/組換え抗MBP1
【0198】
ビーズID-タグ10/抗MBP1
【0199】
ビーズID-タグ15/組換え抗AB2
【0200】
ビーズプール2:
【0201】
ビーズID-タグ9/組換え抗NeuN7
【0202】
ビーズID-タグ10/抗NeuN7
【0203】
ビーズID-タグ15/組換え抗AB2
【0204】
質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)
【0205】
マウス脳の矢状方向の組織切片に対するMIHCを、以下の前述のPC-MT-Ab:組換え抗NeuN7および抗NeuN7を使用して実施例2と同様に行った。
【0206】
結果
【0207】
図13aは、ビーズプール1のビーズアレイのMALDI-MS質量画像を示す。ビーズは、それぞれ組換え抗MBP1、抗MBP1および組換え抗AB2が負荷されたビーズに対応するビーズID-タグ9、10および15の質量スペクトルピーク強度について、青色、緑色および黄色として画像内で色分けされる。PC-MT-Ab由来のPC-MTはすべて赤色に色分けされている。したがって、青色のビーズビーズID-タグ9と結合された赤色の組換え抗MBP1との共局在(オーバーレイ)は、質量画像においてピンク色として現れる。逆に、緑色のビーズID-タグ10が検出されている間、対応する赤色の抗MBP1についてのシグナルはほとんどまたは全く観察されず、したがって、これらのビーズは主に緑色として現れる。最後に、黄色のビーズID-タグ15と結合した赤色の組換え抗AB2との共局在(オーバーレイ)は、質量画像においてオレンジ色として現れる。結論として、両方の組換え抗体は、それらのそれぞれのビーズ上で強いPC-MT-Abシグナル(ピンクおよびオレンジ色のビーズとして観察される)を示すが、非組換え抗ミエリン塩基性タンパク質PC-MT-Ab(抗MBP1)はほとんど検出されない。これは、
図13bに示すオーバーレイスペクトルによって確認される。3つのスペクトルは、
図13aに丸で囲んだ3つのビーズの中心から選択された3つの単一ピクセルに対応し、
図13aで観察されたビーズの色に応じて色分けされている。
図13bにおけるピンク色のトレースは、ビーズID-タグ9および結合した組換え抗MBP1について対応する抗体PC-MT1についての強いピークを示す。逆に、
図13bにおける緑色のトレースは、ビーズID-タグ10については強いピークを示すが、結合した抗MBP1について対応する抗体PC-MT1については弱いピーク(黒色矢印)のみを示す。組換え抗MBP1の抗体PC-MT1ピークは、(非組換え)抗MBP1の10倍強いことに留意されたい。最後に、
図13bにおけるオレンジ色のトレースは、ビーズID-タグ15および結合した組換え抗AB2について対応する抗体PC-MT2についての強いピークを示す。
【0208】
ビーズプール2も同様の結果を示す。
図13cは、ビーズプール2のビーズアレイのMALDI-MS質量画像を示す。ビーズは、それぞれ組換え抗NeuN7、抗NeuN7および組換え抗AB2が負荷されたビーズに対応するビーズID-タグ9、10および15の質量スペクトルピーク強度について、青色、緑色および黄色として画像内で色分けされる。PC-MT-Ab由来のPC-MTはすべて赤色に色分けされている。したがって、青色のビーズビーズID-タグ9と結合された赤色の組換え抗NeuN7との共局在(オーバーレイ)は、質量画像においてピンク色として現れる。逆に、緑色のビーズID-タグ10が検出されている間、対応する赤色の抗NeuN7についてのシグナルはほとんどまたは全く観察されず、したがって、これらのビーズは主に緑色として現れる。最後に、黄色のビーズID-タグ15と結合した赤色の組換え抗AB2との共局在(オーバーレイ)は、質量画像においてオレンジ色として現れる。結論として、両方の組換え抗体は、それらのそれぞれのビーズ上で強いPC-MT-Abシグナル(ピンクおよびオレンジ色のビーズとして観察される)を示すが、非組換え抗NeuN7 PC-MT-Ab(抗NeuN7)はほとんど検出されない。これは、
図13dに示すオーバーレイスペクトルによって確認される。3つのスペクトルは、
図13cに丸で囲んだ3つのビーズの中心から選択された3つの単一ピクセルに対応し、
図13cで観察されたビーズの色に応じて色分けされている。
図13dにおけるピンク色のトレースは、ビーズID-タグ9および結合した組換え抗NeuN7について対応する抗体PC-MT7についての強いピークを示す。逆に、
図13dにおける緑色のトレースは、ビーズID-タグ10については強いピークを示すが、結合した抗NeuN7について対応する抗体PC-MT7については非常に弱いピーク(黒色矢印)のみを示す。組換え抗NeuN7の抗体PC-MT7ピークは、(非組換え)抗NeuN7の60倍強いことに留意されたい。最後に、
図13dにおけるオレンジ色のトレースは、ビーズID-タグ15および結合した組換え抗AB2について対応する抗体PC-MT2についての強いピークを示す。
【0209】
ビーズアレイにおける組換えPC-MT-Abの優れた性能は、マウス脳の矢状方向の組織切片に対する質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)において再現される。
図13eは、抗NeuN7および組換え抗NeuN7で染色した組織のMALDI-MSI質量画像を示す。NeuN免疫染色は、実施例2で観察されたのと同様に、このバイオマーカーの典型的なパターンを示す。注目すべきことに、海馬(青色矢印)および小脳(白色矢印)は強く染色され、核染色に特徴的な斑点模様(NeuNはニューロン核バイオマーカーである)が観察される(黄色矢印)。しかしながら、組換えの組換え抗NeuN7は、
図13eの質量画像から明らかなように、非組換えの抗NeuN7よりも実質的に高い感度を示す。これは、
図13eに示すスペクトルによって確認される。各画像の海馬内の最も強いピクセルからスペクトルを取得すると、「組換え」抗体からのピーク(赤色のトレース)は、「通常の」非組換え抗体からのピーク(青色のトレース)よりも約7倍強い。
【0210】
全体として、組換え抗体の優れた性能は、混入タンパク質、アジドおよびアミン含有緩衝液を含まない、これらの抗体の一般的により高い純度に由来し、PC-MT標識効率を高めると考えられる。
【0211】
実施例9。FFPE扁桃および乳癌組織に対する12プレックスMIHCの実証
【0212】
方法
【0213】
以下を除いて実施例2と同様に実施した。FFPEヒト扁桃および乳癌組織を使用した。抗原賦活化工程を以下のように行った。基本的な抗原賦活化は、60mLの1×抗原賦活化Reagent-Basic(材料を参照)中で95℃で30分間行い、続いて同じCoplin染色ジャー中で室温で30分間冷却することにより達成した。さらに、この場合、12種類の異なるPC-MT抗体を使用し(PC-MT抗体の割り当てについては表1を参照のこと)、組織プローブには0.5μg/mLの抗体を使用した。最後に、PC-MTおよび蛍光の両方による汎サイトケラチン抗体(CK)の二重標識のために、PC-MT標識試薬を添加し、1時間反応させた後、DyLight 650 NHSエステル試薬を添加し(DMF中の5mMストックから15倍モル過剰量を添加し)、さらに1時間反応させた後、実施例1に詳述した残りの抗体標識手順を進めたことを除いて、実施例1と同様にPC-MT抗体標識を行った。
【0214】
結果
【0215】
本発明者らは、乳癌腫瘍微小環境を評価するのに適した12プレックスのバイオマーカーパネル、具体的には、乳癌関連バイオマーカー[Mueller,Haymondら(2018)Expert Rev Proteomics 15:131-152]エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)およびKi67(増殖バイオマーカー);T細胞サブセットバイオマーカーCD3(T細胞)、CD4(Tヘルパー)、CD8(細胞傷害性T細胞)およびCD45RO(メモリーT細胞)、B細胞バイオマーカーCD20およびCD68、マクロファージおよび他の単核食細胞のバイオマーカーを含む腫瘍浸潤リンパ球(TIL)および他の免疫関連細胞のバイオマーカー[Blom,Paavolainenら(2017)Sci Rep 7:15580、Chistiakov,Killingsworthら(2017)Lab Invest 97:4-13、Haise,Colebatchら(2018)Sci Rep 8:11158、PohおよびErnst(2018)Front Oncol 8:49];最後に、一般的な上皮細胞バイオマーカーとしての汎サイトケラチン(CK)抗体[Karantza(2011)Oncogene 30:127-38]および核バイオマーカーとしてのヒストンH2A.X抗体[Rogakou,Pilchら(1998)J Biol Chem 273:5858-68]を構築した。重要なことに、これらの研究の目的は、特定の細胞または癌タイプの検出のための所与のバイオマーカーを検証することでも、特定の疾患状態の同定におけるバイオマーカーの有効性を決定することでもなかったことを明確にすべきである。目的は、本明細書に提示された新しいMIHC法の機能性および有用性を実証することであった。
【0216】
各抗体を固有のPC-MTで直接標識した(各抗体および質量レポーター質量のPC-MT割り当てについては表1を参照)。特に、異なるPC-MTアミノ酸配列で生じるであろう可変MALDI-MSイオン化効率からのバイアスを排除するために、8つのPC-MTは、質量ユニット1(すべての質量ユニットについて表1を参照)または様々な安定同位体(質量ユニットIso-1.1~Iso-1.5、Iso-1.7およびIso-1.8)からなる同じ配列のいずれかから構成され、残りの4つのPC-MTも質量ユニット1のコア配列から構成されていたが、末端に1~3個のグリシンおよび/またはセリンアミノ酸が伸長しており(質量ユニット1.2から1.5)、これはMALDI-MSイオン化効率を有意に変化させるとは予想されない。
【0217】
さらに、MIHC手順を強化するために、CK抗体をPC-MTおよびフルオロフォアで二重標識した。従来の免疫蛍光と、同じ組織切片上のPC-MTベースのMSIとを組み合わせる能力は、免疫蛍光マルチプレックス化が5プレックス未満に制限された場合でも、極めて有用であろう。第1に、そのような組み合わせは、方法の開発および抗体プローブ検証に役立つであろう。さらに、MALDI-MSIの空間分解能は光学イメージングの空間分解能とまだ一致していないので、高マルチプレックス化MALDI-MS画像内の観察された構造のデコンボリューションを支援するために、高解像度非マルチプレックス位置合わせ蛍光画像さえも使用することができる。これは、隣接組織を染色することによって(1つは蛍光用、もう1つはMALDI-MSI用)、または同じ組織切片に対する連続的な手順によって達成することができるが、両方の方法は、多くの追加工程を導入し、またMALDI-MS画像および蛍光画像の位置合わせを不正確にする可能性がある変数を導入するため、面倒である。この制限を克服するために、本発明者らは、最初にPC-MT、2番目に蛍光試薬を用いてCK抗体を2つの異なるアミン反応性NHSエステル活性化試薬で順次標識した。PC-MT標識試薬をモル基準で抗体に対して10倍過剰で使用し、蛍光試薬を15倍過剰で使用した(抗体は、NHS-エステル活性化試薬による標識のために80個までの利用可能なリジンアミノ酸を含有することに留意されたい[Mueller,Wrasidloら(1988)Hybridoma 7:453-6])。パネルの一部としてこの二重標識抗体を使用して、組織切片をマルチプレックス抗体混合物で1回染色し、続いて蛍光イメージング、PC-MT光切断、MALDI-MSマトリックス適用およびMALDI-MSIを同じ組織切片で行う。
【0218】
最初に、本発明者らはヒト扁桃組織を使用して、12プレックスパネルの抗体の大部分を検証した。扁桃は、B細胞[Kalina,Fiserら(2019)Front Immunol 10:2434]およびT細胞[Sada-Ovalle,Talayeroら(2012)Clin Exp Immunol 168:200-6、Geissler,Markwartら(2017)PLoS One 12:e0183214]を含む免疫細胞CDマーカー[Kap,van Meursら(2009)J Histochem Cytochem 57:1159-67、Kalina,Fiserら(2019)Front Immunol 10:2434]の陽性対照として頻繁に使用されており、Ki67が強陽性であることも知られている[Hsu,Yangら(2013)Histopathology 63:810-6]。
図14aは、組織切片全体のCK免疫蛍光画像(GenePix 4200Aマイクロアレイスキャナを用いた5μm画像解像度)を示す。CK抗体は、予想通り、扁桃腺を覆い、その多くの陥入および陰窩を裏打ちする扁平上皮層を選択的に染色する。
図14bは、同一のパターンを生成する、同じ組織切片上のCK PC-MTの対応するMALDI-MS画像を示す(CaprioliおよびSpenglerグループは、約1~2μmの分解能を達成することができる技術を開発しているが、この研究に使用されるBruker rapifleX機器の限界である10μmの分解能がここで使用される[Zavalin,Toddら(2012)J Mass Spectrom 47:i、Kompauer,Heilesら(2017)Nat Methods 14:90-96])。
【0219】
図14cは、選択されたバイオマーカーからのPC-MTに対応するマルチカラーMALDI-MS画像を示す(人間の目が多数のオーバーレイされた色を区別することは現実的ではないため、ここでは一例として示差的パターンを生成する選択されたバイオマーカーを示し、代わりに、12個すべてのバイオマーカーについて別々に
図14dを参照)。注目すべきことに、リンパ濾胞内の胚中心(例えば、白色矢印)は、Ki67(増殖マーカー、
図14cの青色)およびCD20(B細胞マーカー、
図14cのシアン色、胚中心におけるこのバイオマーカーのより良好な視覚化については、
図14dのCD20も参照)に対して強く陽性である。胚中心が増殖性B細胞を含有することが知られている部位であるため、これは予想されることである[MacLennan(1994)Annu Rev Immunol 12:117-39]。胚中心の強いKi67染色もまた、標準的なH4Cを使用して以前に報告された結果と一致する[Hsu,Yangら(2013)Histopathology 63:810-6]。対照的に、T細胞(例えば、CD3およびCD45RO、
図14cにおいてそれぞれ赤色および橙色)は、やはり以前の報告と一致して、濾胞外領域において優勢である[Nave,Gebertら(2001)Anat Embryol(Berl)204:367-73、Sada-Ovalle,Talayeroら(2012)Clin Exp Immunol 168:200-6]。興味深いことに、CD8+細胞傷害性T細胞は組織中に広く分布していなかったが、扁桃陰窩内の別個の領域、上皮周囲および上皮内領域に高濃度で見出された(
図14cの緑色)。扁桃陰窩は、微生物および病原体を保有または捕捉することが知られているので、これはもっともなことである[Jensen,Fago-Olsenら(2013)PLoS One 8:e56418、Rieth,Gillら(2018)JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 144:231-237]。
図14dは、グラデーションカラースケールを使用して、組織切片の代表的な小領域上の12個すべての抗体を別々に示す。「ブランク」は、別個であるが隣接する組織切片を染色するために使用されたPC-MT標識アイソタイプ対照IgG(CD3抗体と同じPC-MT)に対応し、検出可能なシグナルを提供しない。逆に、すべてのCD抗体は様々な程度で陽性であり、予想通りCK、Ki67およびヒストン抗体も同様であり、多くは異なるパターンを示す。HER2およびPRは陰性である。ERはわずかに陽性を示すが、これは、標準的なIHCを使用した以前の報告では予想外ではなく[Shirasaki,Watanabeら(2003)International Congress Series 1257:115-118]、ERは評価した扁桃組織の4つすべてで検出されたが、PRは見られなかった(
図14に示されている扁桃腺が女性起源のものであったことも注目に値する)。
【0220】
次に、本発明者らは、有用性を実証し、扁桃組織で一般に陰性であったPR、ERおよびHER2抗体をさらに検証するために、乳癌FFPE組織切片に12プレックス抗体パネルを適用した(上で論じたような明るいER染色を除く)。
図15a~
図5cに示す組織について、生体試料のベンダー(OriGene)によって提供された病理報告による臨床的注釈は以下の通りであった:乳房の腺癌(乳管)、pTlcpN3apMXのTNM病期分類、最小病期分類IIIC、75%腫瘍、および従来のIHCによるPR-/ZER-/HER2+。
図15aは、差次的パターンを表示する選択されたバイオマーカーのマルチカラーMALDI-MS画像オーバーレイを再び示す。腫瘍は、CK(赤色、上皮マーカー)およびHER2(薄緑色)の両方について陽性に染色される領域によって同定され、2つの色の共局在はしばしば黄橙色に見える。CD20B細胞の別個のパッチ(濃い緑色)が腫瘍外領域および腫瘍周囲領域において観察される。CD8+細胞傷害性T細胞(シアン色)は、この場合も扁桃と同様に組織全体に広く分布していないが、明るい染色が、腫瘍内に浸潤したものを含めて、別個の領域において認められる(例えば、シアン色矢印)。CD8+T細胞の有病率および腫瘍へのそれらの浸潤は、乳癌のいくつかの形態の陽性予後指標として報告されている[Vihervuori,Autereら(2019)J Cancer Res Clin Oncol 145:3105-3114、Gao,Wangら(2020)BMC Cancer 20:179、JinおよびHu(2020)Cancers(Basel)12]。また、腫瘍外および腫瘍周囲領域に非常に豊富なCD68染色(紫色)が存在し、マクロファージ(および他の単核食細胞)を示している[Chistiakov,Killingsworthら(2017)Lab Invest 97:4-13]。豊富なCD68染色は、マクロファージがしばしば腫瘍塊の最大50%を構成し得るという報告と一致している[PohおよびErnst(2018)Front Oncol 8:49]。腫瘍関連マクロファージ(TAM)の存在は、様々な固形腫瘍の陽性または陰性の予後を示すことができるが、通常、免疫抑制ならびに血管新生および炎症の促進などの腫瘍促進活性のために陰性である(Pohら[PohおよびErnst(2018)Front Oncol 8:49]およびGoswamiら[Goswami,Ghoshら(2017)Cell Immunol 316:1-10]に概説されている)。
【0221】
図15bは、やはり、12個すべての抗体のMALDI-MS画像を別々に示しており、同様にまた、(この場合、隣接する乳癌組織切片に対して)先に記載されたように行われた「ブランク」を示している。HER2は先に述べたように陽性であるが、PRは陰性であり、両方とも生体試料の病理報告と一致する。しかしながら、ERは陽性染色を示し、これは腫瘍外領域にあるが、腫瘍自体はER+ではなく、この場合も病理報告と一致する。これを説明するために、簡単にするためには、
図15cは、原色で示される3つのバイオマーカー(CK、HER2、およびER)のみのマルチカラーオーバーレイを示す。腫瘍は、共局在化したCK(この場合は青色に着色)およびHER2(緑色)染色によって示されるが、ER染色(赤色)は、ほぼ排他的に組織切片の腫瘍外領域に限定される。
【0222】
最後に、PR、ERおよびHER2抗体をさらに検証するために、第2の乳癌組織検体を分析した。この場合、生体試料のベンダー(OriGene)によって提供された病理報告による臨床的注釈は以下の通りであった:乳房の腺癌、乳管、小葉、転移性、T2N2aMXのTNM病期分類、最小病期分類IIIA、95%腫瘍、および従来のIHCによるPR+/ER+/HER2-(すなわち、PR/ER/HER2プロファイルは、以前の組織の逆数である)。
図15dの上部パネルのMALDI-MS画像は、この場合のPR、ERおよびCKの単純な視覚化のために原色を使用した3色画像オーバーレイを再び示している。PR(緑色)およびER(赤色)は両方とも強く陽性であり、CK上皮バイオマーカー(青色)との共局在は、多くの領域で白色を生じる(3色すべてが同様の強度である場合に生じる)。
図15d(下のパネル)はまた、CK、PR、ERおよびHER2を別々に示し、ここでもそれぞれがグラデーションカラーであり、病理報告と完全に一致するPR+/ER+/HER2-を示す。
【0223】
実施例10。質量分析イメージングにおける改善された組織接着性のための金被覆顕微鏡スライド
【0224】
背景
【0225】
導電性スライドは、ほとんどの形態のMALDI-MSIを含むほとんどの形態のMSIに必要とされる。インジウムスズ酸化物(ITO)被覆ガラススライドが一般的に使用され、金被覆スライドも導電特性のために使用され、場合によっては、例えば金は化学修飾に適している[Chaurand,Cornettら(2011)Mol Cell Proteomics 10:O110 004259、YangおよびCaprioli(2014)J Mass Spectrom 49:417-22]。しかし、これらは直接的なMSI用途に使用され、それによって組織がマウントされ、場合によってはマトリックス化合物が適用され(MALDI-MS用)、MSIが実行される。したがって、スライドの液相処理はほとんどまたは全くない。対照的に、本発明の方法(質量分析に基づく免疫組織化学および質量分析に基づくインサイツハイブリダイゼーション、MIHCおよびMISH)は、従来のIHCまたはISHに類似しているが、蛍光発生プローブまたは発色プローブの代わりにPC-MTプローブを用い、光学顕微鏡法の代わりにMSI(および関連する手順)を用いる(IHC/ISH、直接的なMSIおよびMIHC/MISHプロトコルの比較については
図16を参照)。したがって、MIHCおよびMISHは、スライドが(IHCおよびISHとは異なり)導電性であること、および直接的MSIに必要とされるよりも強い組織接着を提供することの両方を必要とする。本発明者らは、これが金表面で最もよく達成されることを見出し、本発明者らの知る限りでは、金表面は、PC-MTプローブおよびMSIを使用するIHCスタイルおよびISHスタイルの手順での使用について以前に報告されていない。
【0226】
方法
【0227】
組織を異なる導電性被覆を有するガラススライド(標準的な顕微鏡スライド寸法)にマウントしたことを除いて、実施例2と同様に実施した。これらは以下の酸化インジウムスズ(ITO)スライド(マサチューセッツ州ビレリカのBruker Daltonics)、公開されているプロトコルに従ってシラン化試薬として(3-アミノプロピル)トリエトキシシランを使用してシラン化されたITOスライド[Qin,Houら(2007)Colloids Surf B Biointerfaces 60:243-9]、製造業者の指示に従ってポリ-L-リジン溶液で被覆されたITOスライド(0.01%、滅菌濾過、分子生物学用バイオ試薬、細胞培養に好適、Millipore-Sigma、ミズーリ州セントルイス)、製造業者の指示に従ってクロムアルミニウム接着剤で被覆されたITOスライド(カリフォルニア州ローディのAmerican MasterTech Scientific Inc.)、製造業者の指示に従ってBIOBOND組織切片接着剤で被覆されたITOスライド(カリフォルニア州レディングのTed Pella,Inc.)、市販の銀被覆スライド(ウィスコンシン州マディソンのPlatypus Technologies LLC)および2種類の金被覆スライド(ウィスコンシン州マディソンのPlatypus Technologies LLCからの10nmの金層および2nmのチタン接着下層、またはカナダオンタリオ州のSubstrata Thin Film Solutions/Angstrom Engineering Inc.からの50nmの金層および5nmのクロム接着下層を有するガラススライド)の通りであった。組織の損傷または喪失を、抗原賦活化工程の最後まで視覚的に評価した。
【0228】
結果
【0229】
組織損傷がほとんどまたは全く観察されなかった両方のタイプの金被覆スライドを除いて、重度の組織損傷または組織損失がすべての場合に様々な程度で観察された。損傷は、液相処理工程のいずれかで起こり得るが、熱媒介抗原賦活化工程で起こるかまたは開始する可能性がより高かった。
図17は、処理後のITOスライド上の損傷マウス脳組織切片の可視光画像、ならびに金スライド上の無傷の組織切片の一例を示す図である。
【0230】
実施例11。質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)におけるマトリックス昇華およびその後のマトリックス再結晶化の要件
【0231】
背景
【0232】
当業者は、質量分析計のレーザーエネルギーの吸収および分析物への移動を容易にするため、過剰の外因的に添加されたマトリックス化合物との分析物の共結晶化が、ほとんどの形態のレーザーベース質量分析(MALDI質量分析)における効率的な分析物の気化/イオン化および検出に一般に必要であることを認識するであろう[Yao,Scottら(1998)J Am Soc Mass Spectrom 9:805-13、Duenas,Carlucciら(2016)J Am Soc Mass Spectrom 27:1575-8]。これは、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-MS)と呼ばれる。TAMSIM[Thiery,Shchepinovら(2007)Rapid Commun Mass Spectrom 21:823-9]およびDIOS[Trauger,Goら(2004)Anal Chem 76:4484-9]などのマトリックスなしのLDI方法が存在するが、それらの使用は一般に特定の用途(例えば、DIOSを用いた薬物検出であるが、レーザーに基づかない方法がこのために一般的に好ましい)に限定される。さらに、これらのマトリックスなしの方法は感度を欠く。MALDI質量分析イメージング(MALDI-MSI)におけるマトリックス適用の多くの方法が存在し、いくつかの例としてエアブラシ、自動市販噴霧器および昇華が挙げられる[Gemperline,Rawsonら(2014)Anal Chem 86:10030-5]。目的は、分析物の拡散/非局在化を最小限に抑えながら感度を最大化することである。本発明は、マトリックス適用のいずれか1つの方法、またはマトリックスの必要性を全く制限することを意図していないが、好ましい実施形態は、マトリックス昇華とそれに続く再結晶を使用する[Hankin,Barkleyら(2007)J Am Soc Mass Spectrom 18:1646-52、Duenas,Carlucciら(2016)J Am Soc Mass Spectrom 27:1575-8]。これにより、優れた空間分解能(すなわち、液相の欠如に起因してマトリックス適用中の分析物の非局在化を制限する昇華によって提供される)と高感度(すなわち、分析物[PC-MTの質量レポーター]がマトリックスと十分に共結晶化することを可能にするが、有意な分析物の非局在化を伴わない蒸気ベースの再結晶によって提供される)の両方が得られる。
【0233】
方法
【0234】
PC-MT抗NeuN抗体のみ(プロービング濃度1μg/mL)を用いた以外は実施例2と同様に行い、再結晶の有無を比較した。
【0235】
結果
【0236】
マウス脳組織切片に対するMALDI-MSIを使用したPC-MT標識抗NeuN抗体によるMIHCを、再結晶ありおよびなしのマトリックス(DHB)昇華を使用して
図18に示す(カラー化MALDI-MS画像を示す)(方法については実施例1~2を参照)。
図18は、再結晶を適用した場合のマウス脳組織切片(実施例2参照)において強いシグナルおよび典型的な抗NeuNパターンが観察されることを示す。再結晶なしでは、シグナルは画像内で視覚的に検出されない。昇華後のマトリックス再結晶化の効果を定量化するために、各組織切片について、対象の領域全体(
図18の点線の輪郭を参照)の各々から平均スペクトルを生成した。これらの平均スペクトルから、PC-MTのモノアイソトピックピーク強度は、再結晶ありおよび再結晶なしでそれぞれ55.4および2.5であった。重要なことに、これは、MIHCのMALDI-MSI工程のために、昇華後のマトリックス再結晶化が堅牢なPC-MTシグナルに必要であることを実証している。
【0237】
実施例12。抗癌免疫チェックポイント阻害剤薬物に関連するバイオマーカーのマルチプレックスイメージングのための質量分析に基づく免疫組織化学(MIHC)
【0238】
背景
【0239】
免疫チェックポイント経路の正常な生物学的機能は、例えばT細胞応答の抑制による末梢免疫寛容の維持である。この証拠では、免疫チェックポイント経路の重要なタンパク質(CTLA-4またはPD-1)が欠損したマウスは、自己免疫型障害を発症する[HaanenおよびRobert(2015)Prog Tumor Res 42:55-66]。現在、T細胞の活性化が、活性化されたT細胞上のPD-1およびCTLA-4などの免疫チェックポイントの発現を誘導し、それが次に、負のフィードバックの形態としてT細胞シグナル伝達および活性化を抑制することがよく知られている[SharmaおよびAlison(2015)Science 348:56-61、Darvin,Toorら(2018)Exp Mol Med 50:1-11、Wei,Duffyら(2018)Cancer Discov 8:1069-1086]。しかしながら、この免疫抑制はまた、有益な抗腫瘍免疫応答をブロックすることができ、場合によっては、腫瘍自体が免疫チェックポイントをその利点まで乗っ取ることができる。例えば、腫瘍細胞は、活性化T細胞上のPD-1に結合して抗腫瘍免疫応答を抑制するPD-L1リガンドを発現することができる[SharmaおよびAlison(2015)Science 348:56-61、Darvin,Toorら(2018)Exp Mol Med 50:1-11、Wei,Duffyら(2018)Cancer Discov 8:1069-1086]。現在、いくつかの抗体治療薬、例えば、PD-1に結合し、PD-L1/2とのその相互作用を防止し、それによって免疫抑制を防止するペムブロリズマブ(ニュージャージー州ケニルワース、MerckのKeytruda(登録商標)として販売)が存在する(同様に、例えばPD-L1に対する治療用抗体もこの相互作用をブロックする)[Kwok,Yauら(2016)Hum Vaccin Immunother 12:2777-2789、Wei,Duffyら(2018)Cancer Discov 8:1069-1086]。現在FDAが承認している免疫チェックポイント阻害剤薬物としては、CTLA-4に特異的なイピリムマブ、PD-1に特異的なニボルマブ、ペムブロリズマブ、およびセミプリマブ、ならびにPD-L1に特異的な、アテゾリズマブ、アベルマブおよびデュルバルマブが挙げられる[Vaddepally,Kharelら(2020)Cancers(Basel)12]。これらの薬物は、画期的な地位を獲得し[Darvin,Toorら(2018)Exp Mol Med 50:1-11]、様々な癌に対して有効であるが[SharmaおよびAlison(2015)Science 348:56-61、Gorris,Halilovicら(2018)J Immunol 200:347-354]、持続的応答は患者の20~40%においてのみ達成される[Gorris,Halilovicら(2018)J Immunol 200:347-354]。したがって、どの患者が応答するか、および利用可能な治療の範囲のどれに応答するかを理解し、予測することに問題が残る。したがって、腫瘍自体および腫瘍微小環境内の浸潤免疫細胞の両方において、様々な既知の免疫チェックポイントおよび関連分子の発現を理解することが重要である[Gorris,Halilovicら(2018)J Immunol 200:347-354]。PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27、およびTIM3を含む多数の既知の免疫チェックポイント分子を考慮すると、本発明のMIHC技術などによる高マルチプレックス化IHCのための方法は、重要な臨床ツールとなる。
【0240】
方法
【0241】
乳癌バイオマーカーおよび浸潤免疫細胞のバイオマーカーについて実施例9に詳述されている12プレックス抗体パネルをさらに拡大して、免疫チェックポイントおよびチェックポイント阻害剤薬物に関連する以下のバイオマーカーPD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27、CD28およびTIM3に対するPC-MT抗体を含めることを除いて、実施例2および9と同様にMIHCを実施する。パネル中の他の抗体と重複しないように、これらの新規抗体を、実施例1、2および9からの方法を使用して、合計20プレックス抗体パネルについて、質量ユニット7~14を含有するPC-MT(表1参照)で標識する。
【0242】
PC-MT標識用の抗体は、ABCAM(マサチューセッツ州ケンブリッジ)から市販されており、以下の組換え抗PDl抗体[CAL20]-BSAおよびアジドフリー(ab251613)、組換え抗PD-L1抗体[73-10]-BSAおよびアジドフリー(ab226766)、組換え抗PD-L2抗体[EPR1163(2)]-BSAおよびアジドフリー(ab215254)、組換え抗CTLA4抗体[CAL49]-BSAおよびアジドフリー(ab251599)、ヒトOX40抗体ペア-BSAおよびアジドフリー(TNFRSF4)(ab244076)(両方の抗体を試験し、最良を選択する)、組換え抗CD27抗体[EPR8569]-BSAおよびアジドフリー(ab256583)、組換え抗CD28抗体[EPR22076]-BSAおよびアジドフリー(ab243557)、組換え抗TIM3抗体[EPR22241]-BSAおよびアジドフリー(ab242080)の通りである。
【0243】
上述の20プレックス抗体パネル全体を使用することを除いて、実施例9に記載されているように、例としてFFPE乳癌組織に対してMIHCを実施する。しかしながら、本発明は、FFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋)またはFF(新鮮凍結)として調製された組織を含むがこれらに限定されない任意の腫瘍タイプに適用可能である。
【0244】
結果
【0245】
このアプローチは、癌バイオマーカー、浸潤免疫細胞のバイオマーカーおよび免疫チェックポイントのバイオマーカーの同時マルチプレックスイメージング(実施例9に類似するが、上述の追加されたバイオマーカーを有する)を可能にして、癌の診断、予後、および免疫チェックポイント阻害剤などの治療の誘導に関する重要な情報を病理学者に提供することが予想される。
【0246】
実施例13。グリカンの標的化マルチプレックス質量分析イメージングのためのPC-MTレクチン。
【0247】
背景
【0248】
この実施例は、組織MSIのためのPC-MT標識レクチンプローブの使用を記載する。レクチンは、通常は植物に由来する炭水化物結合タンパク質の一種である(前述)。PC-MT標識レクチンプローブは、組織中のN-およびO-グリカンのMSIに使用することができるが、O-グリカンには特に重要であり、それによって、N-グリカンとは異なり、インサイツ組織消化とそれに続く直接的非標識MSIに適したグリコシダーゼは存在しない。むしろ、O-グリカンは、コアGal-β(1→3)-GalNAc炭水化物のみが残るまで連続的に化学的に分解されなければならず、その時点でO-グリコシダーゼがコア除去のために使用され得るが、これらの手順は、インサイツ消化および組織の直接的非標識MSIに適していない[Poiroux,Barreら(2017)Int J Mol Sci 18、WilkinsonおよびSaidova(2020)J Proteome Res 19:3890-3905]。PC-MT標識レクチンプローブはこの問題を回避し、したがって組織中のN-グリカンおよびO-グリカンの両方の標的化高マルチプレックス化MSIを促進する。重要なことに、レクチンは、N-グリカンおよびO-グリカンに結合するために存在する[TsanevaおよびVan Damme(2020)Glycoconj J 37:533-551]だけでなく、例えば、ピーナッツ(Arachis hypogaea)凝集素レクチン(PNA)は、O-グリカンのGal-β(1→3)-GalNAcコアに対して選択的であり[ChackoおよびAppukuttan(2001)Int J Biol Macromol 28:365-71、Cummings,Darvillら(2015)Essentials of Glycobiology:611-625]、O-グリカンをN-グリカンと区別するために使用することができる。Artocarpus integrifola由来のジャカリンレクチンおよびAgaricus bisporusレクチンもO-グリカンT/Tn抗原に特異的である[Poiroux,Barreら(2017)Int J Mol Sci 18]。O-グリカンは、O-グリカンの変化が癌に繰り返し関連しているので、特に重要である[ChackoおよびAppukuttan(2001)Int J Biol Macromol 28:365-71、Poiroux,Barreら(2017)Int J Mol Sci 18]。発明の詳細な説明で論じたように、レクチンおよび抗体などの様々なタイプのプローブを組み合わせてもよく、すべての種類のPC-MTプローブを他の「オミック」MSIアプローチ(例えば、直接的非標識メタボロミクスMSI)と組み合わせてもよいことに留意されたい。
【0249】
方法
【0250】
レクチンを実施例1の抗体と同様にPC-MTで標識し、以下の変更を加えた。プローブに対して10倍モル比のPC-MT標識試薬を維持し、したがって、レクチンは抗体とは分子量が異なるため、PC-MT標識試薬の量を適宜調整した。PD SpinTrap G-25 Columnを使用する代わりに、この場合の未反応PC-MT標識試薬の除去は、Ultracel再生セルロース膜からなるAmicon Ultra-0.5遠心フィルターユニット(Millipore-Sigma)を製造者の指示に従って使用して、450μLのTBSで6サイクル洗浄することによって達成された。フィルターユニットの公称分子量限界(NMWL)は、小麦胚芽凝集素(WGA、Millipore-Sigma製)およびphaseolus vulgaris 凝集素(PHA-E4、amsbio製)レクチンについては10kDaであり、ピーナッツ凝集素(PNA、Millipore-Sigma製)およびdolichos biflorus凝集素(DBA、Millipore-Sigma製)レクチンについては50kDaであった。各レクチンを以下の、WGA、PNA、PHA-E4、およびDBAレクチンについて、それぞれPC-MT質量ユニットID1、Iso-1.2、Iso-1.3、および1.2(詳細については表1を参照)のように固有のPC-MTで標識した。
【0251】
その後のマウス脳の矢状方向のFFPE切片の組織処理は、この場合には必要でなかったので、抗原賦活化工程を省略したことを除いて、実施例2と同様に行った。したがって、行われた処理工程は、脱パラフィン、水和、ブロッキング、プロービング/染色(この場合、PC-MTレクチンを用いる)、洗浄、乾燥、光切断、DHBマトリックス昇華/再結晶およびMALDI-MSI(免疫蛍光は行わなかった)であった。例えば、PC-MTレクチンプローブをPC-MT抗体プローブと組み合わせる場合には、抗原賦活化を依然として使用することができることに留意されたい。組織切片のマルチプレックスプローブ/染色のために、4つすべての前述のPC-MT標識レクチンを一緒に混合し、濃度は1~20μg/mLの範囲であった。場合によっては、PC-MTレクチンプローブ/染色混合物に、可溶性糖N,N’,N”-トリアセチルキトトリオース(TCT、WGAレクチンに結合する)を1mM濃度で補充し、組織プローブ/染色の前に30分間プレインキュベートした(可溶性糖は組織プローブ/染色中に存在したままであった)。これは、競合的阻害によるPC-MTレクチン(WGA)染色の特異性を確認するためであった。
【0252】
結果
【0253】
図19aは、3つのレクチン、PHA-E4、PNAおよびWGAに対応するPC-MTレポーターのモノアイソトピック質量スペクトルピークのカラー化質量画像である。結果は、マウス脳組織切片を蛍光標識レクチンで染色したKitadaらによる以前の文献報告と一致する[Kitada,Kurodaら(2011)Anat Rec(Hoboken)294:305-21]。注目すべきことに、Kitadaらにおいて、PC-MTレクチンおよびMSIを用いてここで観察されたように、PHA-E4レクチン染色は、いくらかのWGA染色と共に脈絡叢で優勢であった(脈絡叢を
図19aに示し、
図19bも参照)。一方、Kitadaらにおいて、PNAレクチンは、脳の白質、すなわち有髄軸索を優先的に染色した。したがって、ここでのPC-MT PNAレクチン染色(
図19aの緑色)は、予想されるように、以前に観察されたPC-MTミエリン抗体染色と一致する(以前のPC-MTミエリン抗体染色については、実施例2、
図7a、赤色を参照)。
【0254】
最後に、組織へのPC-MTレクチン結合の特異性を実証するために、PC-MTレクチンプローブ/染色混合物を1mMの可溶性糖N,N’,N”-トリアセチルキトトリオース(TCT)とプレインキュベートし、この糖は、WGA結合の競合的阻害(ブロッキング)のための組織プローブ/染色工程中に存在したままであった(TCTはWGAに特異的に結合するため[Damm,Mikkatら(2004)Pancreas 28:31-7])。
図19bのPC-MT質量画像で観察されるように、TCTブロッキングを使用しなかった場合、優勢なWGA染色が観察された(
図19bの青色)。TCTブロッキングを使用した場合、WGA染色は選択的に阻害されたが、他のレクチン、PHA-E4(赤色)およびPNA(緑色)による染色は依然として観察された。この結果を定量化するために、TCTブロッキングの有無にかかわらず、各組織切片の全体からの全体平均スペクトルを得た(
図19c)。TCTブロッキングを使用した場合(オレンジ色のトレース)、WGA PC-MTシグナル強度は、TCTブロッキングなし(紫色のトレース)と比較して70%低下したが、他の2つのレクチン、PNAおよびPHA-E4のピーク強度は、TCTブロッキングの有無で実質的に同一であり、それにより特異性が実証された。
【0255】
実施例14。改善されたマルチオミックMSI:同じFF組織切片上の脂質の非標的化非標識MSIおよび標的化MIHC
【0256】
方法
【0257】
この実施例は、マウス脳の矢状方向のFF組織切片を使用して、PC-MT標識抗体(PC-MT-Ab)を用いたその後のMIHC工程の前に、(この場合は内因性脂質の)最初の直接的非標識MALDI-MSIの後の、より良好な組織固定および未固定の小さな内因性有機化合物のより良好な除去のためのいくつかの増強を除いて、実施例4と同じように実施した。したがって、内因性脂質の最初の直接的非標識MALDI-MSIの後、組織切片に対して以下を実施した(各処理工程を別々の染色ジャーで)。-80℃のアセトンで3分間、予備洗浄を2回行い(溶媒固定を提供しながら、以前のMALDI-MSIから残りのマトリックス化合物を除去するのに役立つことに留意)、10分間真空し、PBS、pH7.4中1%PFAを使用して30分間固定し(この溶液は、1.0gのPFAを、1.0mLの1M NaOHを含む60mLのPBSに約60℃の加熱ブロックで絶えず撹拌しながら溶解し、続いて1M HCl[約1mL]でpHを7.4に調整し、PBSで最終容量を100mLに調整することによって新たに調製したことに留意)、PBSで10分間、1回洗浄し、それぞれ室温のアセトンで3分間、2回洗浄し、さらなる固定のためにカルノワ溶液6:3:1 EtOH/クロロホルム/酢酸)で3分間、1回洗浄し、未固定の内因性有機化合物をさらに除去する。その後のPC-MT-AbベースのMIHCの残りの工程は、抗原賦活化工程から最後まで実施例2と同様に行った。
【0258】
結果
【0259】
質量画像を
図20に示す。
図20aは、内因性脂質の最初の直接的非標識MALDI-MSIであり(例示的な脂質が表示されている
図20aを参照)、
図20bは、その後のMIHCであり、選択された抗体PC-MT(抗体PC-MTが表示されている
図20bを参照)を示し、
図20cは、最初の直接的非標識MALDI-MSIおよびその後のMIHC(
図20cを参照)からの選択された分析物間の画像合成である。脂質スルファチド(ST)とミエリンとの予想される共局在であるが、STとNeuNとの間ではないことは、実施例4で説明される。
【0260】
実施例15。マルチオミック組織イメージング:ボトムアッププロテオームMSIと組み合わされたMIHC。
【0261】
「PC-MT-プローブを使用したマルチオミック組織イメージング」という見出しのセクションの下の発明の詳細な説明には、PC-MTプローブ技術を組み込んだマルチオミックイメージングアプローチの広範囲の順列が記載されている。以下の実施例は、そのようなアプローチのいくつかの順列を示すが、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0262】
方法
【0263】
乳癌FFPE組織切片を実施例9と同様に使用する。
【0264】
一実施形態では、グリコシダーゼPNGase Fを用いたインサイツ組織グリカン消化、続いて遊離グリカンの直接的非標識MALDI-MSIを、Drakeら[Drake,Powersら(2018)Curr Protoc Protein Sci 94:e68]に従って行う。次に、MALDI-MSIの後、MALDI-MSマトリックスをそれぞれ室温のアセトン(染色瓶中)で3分間、2回洗浄することによって除去し、次いで組織を真空下で10分間完全に乾燥させる。次に、実施例9と同様に12プレックスMIHCを実施して、乳癌ならびに腫瘍浸潤リンパ球/免疫細胞の高分子タンパク質バイオマーカーを検出する(ただし、実施例9の脱パラフィン工程は、Drakeらの工程に従って既に行われているため、省略される)。
【0265】
別の実施形態では、(標的化)MIHCを最初に実施し、続いて組織切片のインサイツプロテアーゼ消化を実施し、(内因性組織タンパク質由来の)遊離したタンパク質分解断片の直接的非標的化非標識MALDI-MSIを実施する。例えば、
図22を参照されたい。この場合、最後の工程としてMALDI-MSIを含む実施例9のようにMIHCが再び実行される。次いで、MALDI-MSマトリックスをそれぞれ室温のアセトン(染色瓶中)で3分間、2回洗浄することによって除去し、次いで組織を真空下で10分間完全に乾燥させる。その後のインサイツロテアーゼ(トリプシン)消化および遊離タンパク質分解断片の直接的非標識MALDI-MSIは、脱パラフィン工程および抗原賦活化工程がMIHCプロセスごとに既に行われているので省略されることを除いて、Lazovaら[Lazova,Smootら(2020)J Cutan Pathol 47:226-240]に従って行われる。最後に、別の実施形態では、(内因性組織タンパク質由来のタンパク質分解断片のみが検出されるように)その後の直接的非標識MALDI-MSIのためのインサイツタンパク質分解消化の前に、最初のMIHCプロセスから抗体(およびタンパク質性ブロッキング剤)を除去することが望ましい場合がある。この場合、MIHCプロセスの最後の工程からのMALDI-MSマトリックスは、再度、それぞれ室温のアセトンで3分間、2回洗浄することによって除去される(ジャーを染色する際のすべての工程)が、しかしながら、次いで、組織は、1mMのジチオトレイトール(DTT)を含有する50mMトリス、pH7.4中の1%(w/v)SDS界面活性剤の溶液において65℃で5分間の変性処理に供される。この変性処理は、抗体プローブ(およびタンパク質性ブロッキング剤)を組織から分離するのに役立つ。これに続いて、プレーンな50mMトリス、pH7.4で3分間ずつ2回洗浄し、次いで、室温のアセトンで3分間ずつ2回洗浄する(これは、組織からのSDS界面活性剤の完全な除去をさらに助ける)。次いで、組織を真空下で10分間完全に乾燥させる。その後のインサイツロテアーゼ(トリプシン)消化およびタンパク質分解断片の直接的非標識MALDI-MSIは、再度、Lazovaら[Lazova,Smootら(2020)J Cutan Pathol 47:226-240]に従って行われる(しかし、再度、Lazovaらの脱パラフィン工程および抗原賦活化工程は、MIHCプロセスごとに既に行われているので省略される)。
【0266】
結果
【0267】
MIHCの結果をボトムアップMSIアプローチと組み合わせることにより、いずれかのアプローチ単独と比較して、組織からのはるかに大きな空間情報コンテンツが得られる。これは、例えば、Lazovaらの機械学習統計的アプローチによって決定されるような、より良好なバイオマーカー「シグネチャ」をもたらすと予想され、例えば、腫瘍組織上の癌において、診断、ステージ分類、予後判定、サブタイプ決め、および患者の予後改善のための最適な処置経路の予測に使用することができる。
【0268】
実施例16。非イメージング質量分析用途におけるPC-MTプローブ。
【0269】
背景
【0270】
PC-MT-プローブはまた、質量分析イメージング用途に限定されず、非イメージング質量分析(MS)用途と併せて使用することができる。例えば、一群のPC-MT-プローブは、不均一なサンプルの成分の存在を同定するために、組織または組織の切除された部分、腫瘍、腫瘍に由来する(または任意の組織に由来する)細胞、液体生検、細胞培養物、血液および他の体液、細菌細胞および培養感染病原体を含むがこれらに限定されない不均一な生物学的サンプルに付与することができる。例えば、生物学的サンプル中に存在する病原体は、病原体または複数の病原体に特徴的な抗原を標的とする1またはそれを超えるPC-MT抗体(PC-MT-Ab)プローブを使用して同定することができる。読み出しは、質量分析(例えば、LC-MS)の前に液体クロマトグラフィーの有無にかかわらず、MALDI-MSまたはESI-MSを含むがこれらに限定されない非イメージング質量分析法を使用した光切断(光放出)PC-MTの検出によるものであり、これは、質量分析の前に分析物をさらに精製(例えば、脱塩)する必要がある場合があるとして当業者によって認識される。一実施形態では、COVID-19のパンデミックを引き起こす原因となるSARS-CoV-2ウイルスの特定の変異体に特異的な抗原/エピトープを、スパイクタンパク質抗原および/またはそのエピトープなどのこれらの抗原/エピトープを標的とするPC-MT-Abプローブを使用して同定することができる。第2の実施形態では、腫瘍生検に存在する腫瘍浸潤リンパ球上に存在する特異的抗原/エピトープを、特異的PC-MT-Abプローブで標的化し、非イメージング質量分析を使用して検出して、腫瘍内の様々な免疫細胞型の存在を決定することができ、これは例えば、予後および治療上有用な情報を提供することができる。この非イメージングアプローチのために空間情報が失われるが、ELISAおよびフローサイトメトリーを含む免疫診断の当業者には、生物学的サンプルへの抗体(または他のプローブタイプ)の特定の組み合わせの正の結合を使用して、感染性疾患の場合に細菌細胞またはウイルスなどのサンプルの特定の成分の存在を同定することができることが周知である。サンプル中の特定のバイオマーカーの存在を検出するこの標的化アプローチは、サンプルの成分(例えば、生物学的混合物の成分)を同定するために、小分子、脂質、代謝産物およびタンパク質の特定の組み合わせの非標的化検出などの他の質量分析方法と組み合わせることができる。以下に示す実験例では、表面へのPC-MT-プローブ(PC-MT-Ab)の結合、続いて、PC-MTの光放出および光放出されたPC-MTの非イメージング質量分析が実証される。この場合、PC-MT-Abが結合した表面はビーズであったが、最終的には、任意の種類のPC-MT-プローブを上記に例示したような任意のサンプルに結合させることができる。
【0271】
方法
【0272】
PC-MT(表1の質量ユニットIso-1.1)およびPC-MT-Abを実施例1と同様に調製した。なお、この場合、モデルPC-MT-Abとして、精製ウサギIgGを用いた(「実験例の材料」のセクション参照)。
【0273】
得られたPC-MT-AbをプロテインGアガロースビーズ(マサチューセッツ州ウォルサムのThermo Fisher Scientific)に結合させ、次いでビーズを洗浄して未結合PC-MT-Abを除去し、次いでビーズ結合したPC-MT-AbからPC-MTを光放出させ、上清中に存在する光放出されたPC-MTに対して非イメージングMALDI-MS分析を行った。完全な手順は以下の通りであった。特に明記しない限り、プロテインGアガロースビーズを0.5mL Ultrafree-MC Centrifugal 0.45μmフィルターデバイス(「実験例の材料」セクションを参照)中で処理した(洗浄は、洗浄溶液中でビーズを短時間ボルテックス混合し、続いて標準的な微量遠心機で15,000rpmで短時間回転させ、次いで、洗浄されたビーズがフィルターデバイスの上部チャンバ内に保持されている間、濾液をフィルターデバイスの底部チャンバで廃棄することによって行ったことに留意されたい)。1μLのビーズペレット体積を各サンプルに使用した(各サンプルは別々のフィルターデバイスで並行して処理された)。各サンプルのビーズを最初に400μLのOBG-生理食塩水で4回、簡単に予備洗浄した(製剤については実施例6を参照)。次いで、洗浄した各ビーズペレットを100μLのPC-MT-Ab溶液に再懸濁した(OBG-生理食塩水でPC-MT-Ab濃度0.625、1.25、2.5、5、7.5および10μg/mLで調製)。ビーズを30分間穏やかに混合して(光から保護して)、ビーズ上のプロテインGにPT-MT-Abを結合させた。次いで、ビーズを400μLのOBG-生理食塩水で4回、簡単に洗浄し、続いて400μLの質量分析グレードの水(waster)(MS-水)で4回、簡単に洗浄して、未結合PC-MT-Abを除去した。
【0274】
次いでビーズを再懸濁し、100μLのMS-水中の透明な薄壁ポリプロピレンPCR型微小遠心管に移した。次いで、ビーズを標準的な微小遠心機で15,000rpmで短時間スピンダウンした後、約80μLの上清を廃棄し、約20μLのMS-水をチューブおよびビーズペレットに残した。ビーズを短時間の混合によってチューブに再懸濁し、25%出力(360nmで30mW/cm2)でHonle LED Cube 100IC(マサチューセッツ州マルボロのHonle UV Technology)を使用してチューブの側壁を通して5分間UV光に曝露した(チューブをその側面に配置した)。ビーズをチューブに入れたまま、次に20μLの以下の溶液を各サンプルに添加した。10mg/mLのアルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA、ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich)、80%のアセトニトリル、0.2%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)および25フェムトモル/μLの配列APRLRFYSLを有する未修飾対照ペプチド(ニュージャージー州ピスカタウェイのGenScript、Piscatawayによってカスタム合成)。次いで、ビーズを15分間混合して、光放出されたPC-MTの完全抽出を可能にした。ビーズを標準的な微小遠心機で15,000rpmで短時間スピンダウンし、次いで、2μLの各サンプル上清(ビーズを含まない)を、rapifleX MALDI-TOF-MS装置(マサチューセッツ州ビレリカのBruker Daltonics)での標準的な非イメージングMALDI-MS分析のために標準的スチールMALDI-MS標的上にスポットした。
【0275】
結果
【0276】
図21aは、プロテインGビーズに添加された6つの異なる濃度のPC-MT-Abに対応する6つのサンプルからの光放出されたPC-MTの非イメージングMALDI-MS分析からのスペクトルを示す。光放出されたPC-MT(レポーター)および対照ペプチドモノアイソトピックピークは、予想通り、それぞれm/z1,210.6および1,122.6で観察される。結果を定量化するために、対照ペプチド(固定濃度であった)に対する光放出されたPC-MTのモノアイソトピックピーク強度の比を計算し、
図21bにグラフ化した。PC-MT-Ab濃度の関数としての線形応答が観察される(R
2=0.9779)。
【0277】
上記の明細書で言及されたすべての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載された方法およびシステムの様々な修正および変形は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明を特定の実施形態に関連して説明してきたが、特許請求される本発明はそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、本発明を実施するための記載された態様の様々な修正は、当業者およびそれに関連する分野で明らかであり、以下の特許請求の範囲内であることが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一スライド上の組織サンプル中の
複数の異なるタイプのバイオマーカーを同時検出するためのマルチプレックス方法であって、
a)単一スライド上に組織サンプルを提供することと、
b)前記組織サンプルへの抗体の結合をもたらすために前記組織サンプルを
複数の異なる抗体と接触させることであって、前記抗体の各々が異なるバイオマーカーと反応性であり、前記抗体の各々が
光切断可能な固有の質量タグにコンジュゲートされていることと、
c)工程d)の前に前記質量タグの少なくとも一部を光切断するように前記光切断可能な質量タグに光を照射することと、
d)質量分析イメージングを使用して、前記質量タグまたはその断片を分子イオンとして検出することと、を含む、方法。
【請求項2】
工程a)の後であるが工程b)の前に、前記組織サンプルに対して直接的質量分析イメージングを実施することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記
複数の異なる抗体が混合物中にあり、工程b)の前記組織サンプルを前記混合物と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記質量タグが非希土類金属質量タグである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記質量タグが複数のアミノ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記単一スライドにマウントする前に、前記組織サンプルを新鮮凍結し、薄片化した、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スライドが金を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記スライドが金層を有するガラススライドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記単一スライドにマウントする前に、前記組織サンプルをホルマリン固定し、パラフィン包埋し、薄片化した、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組織サンプルが、前記サンプルを抗体と接触させる前記工程の前に処理に供され、前記処理が脱パラフィンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記脱パラフィンがキシレンを用いて行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組織サンプルがさらに処理に供され、前記処理が再水和を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記再水和が一連のエタノール/水混合物および水性生理食塩水緩衝液を用いて行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組織サンプルがさらに処理に供され、前記処理が抗原賦活化を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記抗原賦活化が、クエン酸緩衝液(pH6)中での加熱によって行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗原賦活化がギ酸を使用して行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
光切断可能な質量タグにコンジュゲートされている前記抗体が以下の一般構造
:
【化11】
を有
する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
工程
d)の前にマトリックス化合物が前記質量タグに付与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記マトリックス化合物が、アルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)および3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸)からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マトリックス化合物が昇華によって付与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記組織サンプルが、前記サンプルをマトリックス化合物と接触させる工程の後に処理に供され、前記処理がマトリックス再結晶化を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記
抗体にコンジュゲートされている光切断可能な質量タグが
、質量ユニットにコンジュゲートされているコア構造を含み、前記抗体が、以下の一般構造:
質量ユニット-コア構造-抗体
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記コア構造は、構造:
【化12】
を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組織が腫瘍由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記腫瘍が乳房腫瘍である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記
複数の異なる抗体の少なくとも1つが、前記質量タグに加えて蛍光部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記異なる抗体の数が8つまたはそれを超える、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記異なる抗体のサブセットが、i)エストロゲン受容体(ER)、ii)プロゲステロン受容体(PR)、iii)ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)およびiv)Ki67と反応する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記異なる抗体のサブセットが、T細胞バイオマーカーである、i)CD3(T細胞)、ii)CD4(Tヘルパー)、iii)CD8(細胞傷害性T細胞)およびiv)CD45RO(メモリーT細胞)と反応する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記異なる抗体の1つがB細胞バイオマーカーCD20と反応する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記異なる抗体の1つがマクロファージバイオマーカーCD68と反応する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記
複数の異なる抗体の1つが免疫チェックポイント分子と反応する、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記免疫チェックポイント分子が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27およびTIM3からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0277
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0277】
上記の明細書で言及されたすべての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載された方法およびシステムの様々な修正および変形は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明を特定の実施形態に関連して説明してきたが、特許請求される本発明はそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、本発明を実施するための記載された態様の様々な修正は、当業者およびそれに関連する分野で明らかであり、以下の特許請求の範囲内であることが意図される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
単一スライド上の組織サンプル中の5つまたはそれを超える異なるタイプのバイオマーカーを同時検出するためのマルチプレックス方法であって、
a)単一スライド上に組織サンプルを提供することと、
b)前記組織サンプルへの抗体の結合をもたらすために前記組織サンプルを5つまたはそれを超える異なる抗体と接触させることであって、前記抗体の各々が異なるバイオマーカーと反応性であり、前記抗体の各々が固有の質量タグにコンジュゲートされていることと、
c)質量分析イメージングを使用して、前記質量タグまたはその断片を分子イオンとして検出することと、を含む、方法。
(項目2)
工程a)の後であるが工程b)の前に、前記組織サンプルに対して直接的質量分析イメージングを実施することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記5つまたはそれを超える抗体が混合物中にあり、工程b)の前記組織サンプルを前記混合物と接触させる、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記質量タグが非希土類金属質量タグである、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記質量タグが複数のアミノ酸を含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記単一スライドにマウントする前に、前記組織サンプルを新鮮凍結し、薄片化した、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記スライドが金を含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記スライドが金層を有するガラススライドである、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記単一スライドにマウントする前に、前記組織サンプルをホルマリン固定し、パラフィン包埋し、薄片化した、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記組織サンプルが、前記サンプルを抗体と接触させる前記工程の前に処理に供され、前記処理が脱パラフィンを含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記脱パラフィンがキシレンを用いて行われる、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記組織サンプルがさらに処理に供され、前記処理が再水和を含む、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記再水和が一連のエタノール/水混合物および水性生理食塩水緩衝液を用いて行われる、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記組織サンプルがさらに処理に供され、前記処理が抗原賦活化を含む、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記抗原賦活化が、クエン酸緩衝液(pH6)中での加熱によって行われる、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記抗原賦活化がギ酸を使用して行われる、項目14に記載の方法。
(項目17)
質量タグにコンジュゲートされている前記抗体が以下の一般構造を有し、Xがスペーサーである、項目1に記載の方法。
(項目18)
工程c)の前にマトリックス化合物が前記質量タグに付与される、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記マトリックス化合物が、アルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)および3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸)からなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記マトリックス化合物が昇華によって付与される、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記組織サンプルが、前記サンプルをマトリックス化合物と接触させる工程の後に処理に供され、前記処理がマトリックス再結晶化を含む、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記質量タグが光切断可能である、項目1に記載の方法。
(項目23)
工程c)の前に前記質量タグの少なくとも一部を光切断するように前記質量タグに光を照射することをさらに含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記組織が腫瘍由来である、項目1に記載の方法。
(項目25)
前記腫瘍が乳房腫瘍である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記5つまたはそれを超える抗体の少なくとも1つが、前記質量タグに加えて蛍光部分を含む、項目1に記載の方法。
(項目27)
前記異なる抗体の数が8つまたはそれを超える、項目1に記載の方法。
(項目28)
前記異なる抗体のサブセットが、i)エストロゲン受容体(ER)、ii)プロゲステロン受容体(PR)、iii)ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)およびiv)Ki67と反応する、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記異なる抗体のサブセットが、T細胞バイオマーカーである、i)CD3(T細胞)、ii)CD4(Tヘルパー)、iii)CD8(細胞傷害性T細胞)およびiv)CD45RO(メモリーT細胞)と反応する、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記異なる抗体の1つがB細胞バイオマーカーCD20と反応する、項目27に記載の方法。
(項目31)
前記異なる抗体の1つがマクロファージバイオマーカーCD68と反応する、項目27に記載の方法。
(項目32)
前記異なる抗体の1つが免疫チェックポイント分子と反応する、項目27に記載の方法。
(項目33)
前記免疫チェックポイント分子が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX40、CD27およびTIM3からなる群から選択される、項目32に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0110
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0110】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0120
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0120】
場合によっては、追加のリジンをPC-MTのスペーサーユニットに含め、市販のアミン反応性試薬(例えば、メリーランド州ハントバレーのLumiprobe製のSulfo-Cy5-NHS)を使用してフルオロフォアで修飾した。この場合、スペーサーユニットのアミノ酸配列は、非蛍光PC-MTのGSGG[K-NHS](配列番号31)ではなく、GS[K-Sulfo-Cy5]GG[K-NHS](配列番号30)であった。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0181
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0181】
以下の、組換え抗NeuN抗体(材料を参照)を、
図3のように構成された(表1の質量ユニット1を有する)が、スペーサーユニットに付加されたリジンアミノ酸のs-アミンに結合したSulfo-Cy5蛍光標識をさらに含むPC-MTにコンジュゲートしたしたことを除いて、実施例2と同様にマウス脳の矢状方向の組織切片に対するMIHCを実施した。したがって、Fluor-PC-MT1と呼ばれる質量ユニット1を有するこの蛍光PC-MTの完全な配列は、以下の通りであった(N末端からC末端)。Acetyl-APRLRFYSL-[PC-Linker]-GS[K-Sulfo-Cy5]GG-[K-NHS]-COOH
(配列番号32)。抗NeuN Fluor-PC-MT1と呼ばれる得られた抗体プローブをMIHCに使用した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0274
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0274】
次いでビーズを再懸濁し、100μLのMS-水中の透明な薄壁ポリプロピレンPCR型微小遠心管に移した。次いで、ビーズを標準的な微小遠心機で15,000rpmで短時間スピンダウンした後、約80μLの上清を廃棄し、約20μLのMS-水をチューブおよびビーズペレットに残した。ビーズを短時間の混合によってチューブに再懸濁し、25%出力(360nmで30mW/cm2)でHonle LED Cube 100IC(マサチューセッツ州マルボロのHonle UV Technology)を使用してチューブの側壁を通して5分間UV光に曝露した(チューブをその側面に配置した)。ビーズをチューブに入れたまま、次に20μLの以下の溶液を各サンプルに添加した。10mg/mLのアルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA、ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich)、80%のアセトニトリル、0.2%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)および25フェムトモル/μLの配列APRLRFYSL(配列番号33)を有する未修飾対照ペプチド(ニュージャージー州ピスカタウェイのGenScript、Piscatawayによってカスタム合成)。次いで、ビーズを15分間混合して、光放出されたPC-MTの完全抽出を可能にした。ビーズを標準的な微小遠心機で15,000rpmで短時間スピンダウンし、次いで、2μLの各サンプル上清(ビーズを含まない)を、rapifleX MALDI-TOF-MS装置(マサチューセッツ州ビレリカのBruker Daltonics)での標準的な非イメージングMALDI-MS分析のために標準的スチールMALDI-MS標的上にスポットした。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】