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特表2023-548217ラクタム修飾アデノ随伴ウイルスベクター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ラクタム修飾アデノ随伴ウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20231108BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231108BHJP
   C07H 15/08 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N7/00 ZNA
A61K48/00
C07H15/08 CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527273
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2021080832
(87)【国際公開番号】W WO2022096681
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/081396
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】63/187,648
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21305633.6
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.プルロニック
3.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522181566
【氏名又は名称】コエヴェ セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ルフェーブル,ガエル
(72)【発明者】
【氏名】ブロエカート,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】フェリー,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】グロソップ,メラニー
(72)【発明者】
【氏名】ギブソン,カール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C057
4C084
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065BA30
4B065CA44
4C057AA17
4C057AA18
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD01
4C057JJ08
4C084AA13
4C084MA65
4C084NA13
(57)【要約】
本発明は、AAVベクターのカプシドのアミノ酸残基の少なくとも1つのアミノ基への、ラクタム部分(例えばβ-ラクタム)を含む少なくとも1つの化合物の共有結合カップリングにより修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。AAVベクターは、特に遺伝子治療のために、細胞への形質導入において有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、
は、AAVのベクターのカプシドのアミノ酸残基のアミノ基の窒素原子であり;
【化2】
は、前記AAVベクターのカプシドへの付着点を表し;
Zは、細胞タイプ特異的なリガンド、標識剤、立体遮蔽剤、薬物部分若しくはそれらの組み合わせを含む機能的部分であり;
Lは、好ましくは最大1000個の炭素原子を含み、好ましくは任意選択的にヘテロ原子及び/若しくは環状部分を含む化学鎖の形態であるリンカーであり;
、R1’、R及びR2’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン若しくは任意選択的に置換されるC1-6アルキルであるか;又は
及びR1’若しくはR及びR2’は、それらの介在する原子とともに、一体になって任意選択的に置換されるスピロ縮合環を形成してもよく;又は
及びRは、それらの介在する原子とともに、窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~2個のヘテロ原子を有する任意選択的に置換される3~7員の飽和、部分的不飽和、若しくはアリール、若しくはヘテロアリール環を形成してもよく;好ましくはR、R1’、R及びR2’は水素である)を含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
【請求項2】
少なくとも1個のNが、前記AAVベクターのカプシドのリジン残基のアミノ基の窒素原子である、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項3】
Zが、糖、ホルモン、ペプチド、タンパク質又はその機能的活性断片、膜受容体又はその機能的活性断片、抗体又はその機能的活性断片、Spiegelmer、核酸又はペプチドアプタマー、ビタミン及び薬物からなる群から選択される細胞タイプ特異的なリガンドを含むか又はそれからなる、請求項1又は請求項2に記載のAAVベクター。
【請求項4】
Zが、単糖、オリゴ糖、多糖及びそれらの誘導体からなる群から選択される糖である、請求項1~3の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項5】
Zが、マンノース、ガラクトース、フコース、デソサミン、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、S6-ガラクトース、S6-N-アセチルガラクトサミン、グルクロン酸、P6-ガラクトース及びP1-ガラクトースからなる群から選択される、請求項1~4の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項6】
Zが、ポリエチレングリコール、pHPMA及び多糖からなる群から選択される立体遮蔽剤を含むか又はそれからなる、請求項1又は請求項2に記載のAAVベクター。
【請求項7】
Lが、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状C~C40炭化水素鎖、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、pHPMA、PLGA、アルキレンジアミンのポリマー及びそれらの組み合わせを含む任意選択的に置換される基を含む、請求項1~6の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項8】
Lが、2~40個のエチレングリコール単量体を含むポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項1~7の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項9】
Lが、1個以上のアリール又はヘテロアリール基をさらに含む、請求項8に記載のAAVベクター。
【請求項10】
Lが、フェニルをさらに含む、請求項8に記載のAAVベクター。
【請求項11】
Lが、1,2,3-トリアゾリルをさらに含む、請求項8又は請求項10に記載のAAVベクター。
【請求項12】
式(IIa)
【化3】
に記載の部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、
は、任意選択的に置換されるアリール又はヘテロアリール基であり;
は、任意選択的に置換されるヘテロアリール基であり;
は、好ましくは最大1000個の炭素原子を含み、好ましくは任意選択的にヘテロ原子及び/又は環状部分を含む化学鎖の形態であるリンカーである)を含む、請求項1~6の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項13】
が、任意選択的に置換されるフェニルである、請求項12に記載のAAVベクター。
【請求項14】
が、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む任意選択的に置換される5員ヘテロアリールアリール基である、請求項12又は請求項13に記載のAAVベクター。
【請求項15】
がトリアゾリルである、請求項12~14の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項16】
式(IIc):
【化4】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、
、R3’、R及びR4’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、-OR、-NR、-CN、-SR、又はC1-6アルキル、若しくは、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~3個のヘテロ原子を有する3~7員の飽和、部分的不飽和、アリール若しくはヘテロアリール環から選択される任意選択的に置換される基であり;好ましくはR、R3’、R及びRは、水素であるか;又は
及びR若しくはR3’及びR4’は、それらの介在する原子とともに、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~2個のヘテロ原子を有する任意選択的に置換される3~7員の飽和、部分的不飽和、若しくはアリール、若しくはヘテロアリール環を形成してもよく;
各Rは、水素又はC1-6アルキルから独立して選択され;

【化5】
は、独立して単結合又は二重結合である)を含む、請求項1~6の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項17】
が、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状C~C40炭化水素鎖、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、pHPMA、PLGA、アルキルジアミンのポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される任意選択的に置換される基であり;好ましくはLがポリエチレングリコールである、請求項12~16の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項18】
が、2~40個のエチレングリコール単量体を含むポリエチレングリコール(PEG)である、請求項12~17の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項19】
が、PEG3、PEG4又はPEG5である、請求項12~18の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項20】
式(IIe)
【化6】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、
nは、1~20の範囲の整数であり;好ましくはnは、3~5の範囲であり;より好ましくはnは3である)を含む、請求項1~6の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項21】
【化7】
又はその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項22】
AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、シュードタイプ、キメラ及びそれらの変異体からなる群から選択され;好ましくは、AAV2、AAV5、AAV8及びAAV9からなる群から選択される、請求項1~21の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項23】
少なくとも1つの導入遺伝子を含み、前記導入遺伝子が任意選択的にプロモーターの制御下にある、請求項1~22の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項24】
GBA遺伝子の、好ましくはヒトGBA遺伝子のcDNAを含む少なくとも1つの導入遺伝子を含み、前記導入遺伝子が任意選択的にプロモーターの制御下にある、請求項1~23の何れか1項に記載のAAVベクター。
【請求項25】
請求項1~24の何れか1項に記載のAAVベクターと、少なくとも1つの薬学的に許容可能なビヒクルと、を含む医薬組成物。
【請求項26】
好ましくは遺伝子治療における、診断剤及び/又は薬物としての使用のための、請求項1~24の何れか1項に記載のAAVベクター又は請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
式(I)
【化8】
の化合物又はその塩とともにAAVを、請求項1~24の何れか1項に記載のAAVベクターを得るために適切な条件下でインキュベートする段階を含む、請求項1~24の何れか1項に記載のAAVベクターの製造の方法。
【請求項28】
式(Ia)
【化9】
の化合物又はその塩(式中、
Zは、細胞タイプ特異的なリガンド、標識剤、立体遮蔽剤、薬物部分若しくはそれらの組み合わせを含む機能的部分であり;
は、任意選択的に置換されるアリール若しくはヘテロアリール基であり;
は、任意選択的に置換されるヘテロアリール基であり;
は、好ましくは最大1000個の炭素原子を含み、好ましくは任意選択的にヘテロ原子及び/若しくは環状部分を含む化学鎖の形態であるリンカーであり;
、R1’、R及びR2’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、若しくは任意選択的に置換されるC1-6アルキルであるか;又は
及びR1’若しくはR及びR2’は、それらの介在する原子とともに、一体になって任意選択的に置換されるスピロ縮合環を形成してもよく;又は
及びRは、それらの介在する原子とともに、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~2個のヘテロ原子を有する任意選択的に置換される3~7員の飽和、部分的不飽和、若しくはアリール、若しくはヘテロアリール環を形成してもよく;
好ましくは、R、R1’、R及びR2’は、水素である)。
【請求項29】
が任意選択的に置換されるフェニルである、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
が、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む任意選択的に置換される5員ヘテロアリールアリール基である、請求項28又は請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
式(Ic)
【化10】
の請求項28に記載の化合物又はその塩(式中、
、R3’、R及びR4’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、-OR、-NR、-CN、-SR、又はC1-6アルキル、若しくは、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~3個のヘテロ原子を有する3~7員の飽和、部分的不飽和、アリール、又はヘテロアリール環から選択される任意選択的に置換される基であり;好ましくはR、R3’、R及びR4’は水素であり;

【化11】
は、独立して単結合又は二重結合である)。
【請求項32】
が、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状C~C40炭化水素鎖、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、pHPMA、PLGA、アルキルジアミンのポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される任意選択的に置換される基であり;好ましくはLがポリエチレングリコールである、請求項28~31の何れか1項に記載の化合物。
【請求項33】
が、2~40個のエチレングリコール単量体を含むポリエチレングリコール(PEG)である、請求項28~32の何れか1項に記載の化合物。
【請求項34】
が、PEG3、PEG4又はPEG5である、請求項28~33の何れか1項に記載の化合物。
【請求項35】
式(IIe)
【化12】
又はその塩(式中、
nは、1~20の範囲の整数であり;好ましくはnは、3~5の範囲であり;より好ましくはnは3である)である、請求項28に記載の化合物。
【請求項36】
Zが、糖、ホルモン、ペプチド、タンパク質又はその機能的活性断片、膜受容体又はその機能的活性断片、アプタマー、抗体又はその機能的活性断片、ScFv、Spiegelmer、ペプチドアプタマー、ビタミン及び薬物からなる群から選択される細胞タイプ特異的なリガンドを含むか又はそれからなる、請求項28~35の何れか1項に記載の化合物。
【請求項37】
Zが、単糖、オリゴ糖、多糖及びその誘導体からなる群から選択される糖である、請求項28~36の何れか1項に記載の化合物。
【請求項38】
Zが、マンノース、ガラクトース、フコース、デソサミン、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、S6-ガラクトース、S6-N-アセチルガラクトサミン、グルクロン酸、P6-ガラクトース及びP1-ガラクトースからなる群から選択される、請求項28~37の何れか1項に記載の化合物。
【請求項39】
改変されたAAVベクターを製造するための、請求項28~38の何れか1項に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AAVベクターのカプシドのアミノ酸残基の少なくとも1つのアミノ基への、ラクタム(例えばβ-ラクタム)を含む少なくとも1つの化合物の共有結合カップリングにより修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。いくつかの実施形態では、提供されるAAVベクターは、特に遺伝子治療のために、細胞への形質導入において有用である。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療は、患者の細胞への核酸の送達により治療効果を生じる細胞の遺伝子改変に基づく。実際に、時に、遺伝子全体又は遺伝子の一部は、出生時から欠損しているか若しくは失われているか、又は遺伝子が生きているうちに変化し得るか若しくは突然変異し得る。これらの変異の何れも、タンパク質が合成される方法を妨害することがあり、これは健康問題又は疾患に寄与し得る。遺伝子治療によって、医学的問題を引き起こす欠損遺伝子又は遺伝子配列を、医学的問題を引き起こさない健康なものに置き換えることができ;身体が立ち向かう能力を助けるか若しくは疾患を処置するために遺伝子(又は配列)を付加することもでき;又は問題を引き起こしている遺伝子(若しくは配列)をノックダウン若しくはノックアウトすることができる。それによって、遺伝子治療を使用して、遺伝性又は後天性疾患を処置することができる。
【0003】
細胞への新規遺伝子(又は配列)の送達は、関心対象の配列(例えば遺伝子)を送達するために遺伝子操作されたベクターを使用することなどの様々な方法により行われ得る。ウイルスベクター、特にアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを、その目的のために使用することができる。AAVベクターは、関心対象の導入遺伝子を様々な組織に送達するための、信頼でき、効率的で、多用途で安全なツールであることが証明されている。特に野生型AAVは何れのヒト疾患とも関連しないことから、AAVベクターは、指向性が比較的広く、形質導入効率が高く、エピソーム発現が持続的であり、安全性プロファイルが高いという長所を示す。
【0004】
AAVベクターを用いた遺伝子治療の臨床治験が、いくつかのタイプの疾患に対して行われたか又は現在行われている。それにもかかわらず、ある特定の治験は、免疫原性、非選択的分布及び治療指数の低下を含む、これらのAAVベクターのいくつかの制限を示した。
【0005】
特に、最近、ある特定のAAV血清型、特に血清型2のAAVに対して液性免疫が既に存在し得ることが明らかになった。従って、既存の抗AAV中和抗体は、標的とされる組織における形質導入を妨害し、その結果、特に全身投与時の有効性の欠如をもたらし得る。さらに、処置を完了するためにAAVベクターを再投与することが必要である場合、初回投与後の中和抗体の出現によりそれが妨害され得る。結果的に、免疫検出を回避することが可能なAAVベクターが非常に望ましい。
【0006】
AAVベクターの別の制限は、その広い指向性に関係する。実際に、AAVベクターの広い分布は、標的組織以外の組織での導入遺伝子発現をもたらし、従って特異性が欠如する。これは、治療指数の低下をもたらし得る。実際に、所定の組織では治療有効性を達成するために高用量のベクターが必要であり得る。このような高用量によって、ベクターの産生に関する問題のみならず、免疫反応のリスク上昇による問題も提起される。それ故に、細胞特異的形質導入を確実にすることが可能なAAVベクターが非常に望ましい。
【0007】
特にベクターのカプシドタンパク質を改変することによって、免疫系を回避し、細胞形質導入及び細胞特異性を増強するために、AAVベクターを改善するための様々な戦略が模索されている。カプシドタンパク質のこのような改変は、AAVベクターのカプシドの表面に露出したアミノ酸残基に突然変異を導入することによって達成され得る。或いは又はさらに、カプシド上で特異的リガンドを付加するために又はある特定の露出したアミノ酸を隠すために、ウイルスカプシドの化学的修飾が提案されている。このような化学的修飾は、例えば反応性官能基を含む非天然アミノ酸残基をカプシドタンパク質に導入し、次に前記反応性官能基と直交性反応によってリガンドを選択的にカップリングすることによって得られ得る。別の戦略は、カプシドタンパク質を事前に変異させることなく、ウイルスカプシド上で直接的な化学的修飾を行うことである。例えば、国際公開第2017/212019号パンフレットは、ある特定のイソチオシアネート基を保有するリガンドを、AAVのカプシドタンパク質のアミノ酸残基に存在するアミノ基に共有結合カップリングすることにより得られる表面修飾AAVベクターを提供し、これは特定の細胞への遺伝子移入の改善をもたらす。AAVカプシドのチロシン残基の修飾は、国際公開第2021/005210号パンフレットで報告されており、これは、AAVベクターの免疫原性を改変するためにAAVカプシドのチロシン残基を化学的に修飾する方法を提供する。
【0008】
しかし、特に遺伝子治療に対して、効率的な遺伝子形質導を達成するためにAAVベクターの特性を改変するための新しい方法が依然として求められている。
【発明の概要】
【0009】
とりわけ、本発明は、ラクタム(例えばβ-ラクタム)を含む化合物と、AAVベクターのカプシド内に存在するアミノ基(例えばリジン側鎖のアミノ基)との反応から生じる部分を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。
【0010】
いくつかの態様では、本発明は、提供されるAAVを製造するための技術及び/又はその製造方法に関する。
【0011】
いくつかの態様では、本発明は、式(II):
【化1】
に記載の部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、N
【化2】
、Z、L、R、R1’、R及びR2’は、以下及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義及び記載されるとおりである)を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。
【0012】
いくつかの態様では、少なくとも1つのNは、AAVベクターのカプシドのリジン残基のアミノ基の窒素原子である。
【0013】
いくつかの態様では、Zは、糖、ホルモン、ペプチド、タンパク質又はその機能的活性断片、膜受容体又はその機能的活性断片、抗体又はその機能的活性断片、Spiegelmer、核酸又はペプチドアプタマー、ビタミン及び薬物からなる群から選択される細胞タイプ特異的リガンドを含むか又はそれからなる。
【0014】
いくつかの態様では、Zは、単糖、オリゴ糖、多糖及びそれらの誘導体からなる群から選択される糖である。
【0015】
いくつかの態様では、Zは、マンノース、ガラクトース、フコース、デソサミン、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、S6-ガラクトース、S6-N-アセチルガラクトサミン、グルクロン酸、P6-ガラクトース及びP1-ガラクトースからなる群から選択される。
【0016】
いくつかの態様では、Zは、ポリエチレングリコール、pHPMA及び多糖からなる群から選択される立体遮蔽剤を含むか又はそれからなる。
【0017】
いくつかの態様では、Lは、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状C~C40炭化水素鎖、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、pHPMA、PLGA、アルキレンジアミンのポリマー及びそれらの組み合わせを含む任意選択的に置換される基を含む。
【0018】
いくつかの態様では、Lは、2~40個のエチレングリコール単量体を含むポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0019】
いくつかの態様では、Lは、1個以上のアリール又はヘテロアリール基をさらに含む。
【0020】
いくつかの態様では、Lは、フェニルをさらに含む。
【0021】
いくつかの態様では、Lは、1,2,3-トリアゾリルをさらに含む。
【0022】
いくつかの態様では、AAVベクターは、式(IIa)
【化3】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、N
【化4】
、Z、L、L、L、R、R1’、R及びR2’は、以下及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義及び記載されるとおりである)を含む。
【0023】
いくつかの態様では、Lは、任意選択的に置換されるフェニルである。
【0024】
いくつかの態様では、Lは、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む任意選択的に置換される5員ヘテロアリールアリール基である。
【0025】
いくつかの態様では、Lは、トリアゾリルである。
【0026】
いくつかの態様では、AAVは、式(IIc):
【化5】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、N
【化6】
、Z、L、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R及びR4’は以下及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義及び記載されるとおりである)を含む。
【0027】
いくつかの態様では、Lは、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状C~C40炭化水素鎖、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、pHPMA、PLGA、アルキルジアミンのポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される任意選択的に置換される基であり;好ましくは、Lは、ポリエチレングリコールである。
【0028】
いくつかの態様では、Lは、2~40個のエチレングリコール単量体を含むポリエチレングリコール(PEG)である。
【0029】
いくつかの態様では、Lは、PEG3、PEG4又はPEG5である。
【0030】
いくつかの態様では、AAVベクターは、式(IIe)
【化7】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、N
【化8】
、n、Z、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R及びR4’は、以下及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義及び記載されるとおりである)を含む。
【0031】
いくつかの態様では、AAVベクターは、本明細書中の以後の表1の部分から選択される部分を含む。
【0032】
いくつかの態様では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、シュードタイプ、キメラ及びそれらの変異体からなる群から選択され;好ましくはAAVベクターは、AAV2、AAV5、AAV8及びAAV9からなる群から選択される。
【0033】
いくつかの態様では、AAVベクターは、少なくとも1つの導入遺伝子を含み、導入遺伝子は任意選択的にプロモーターの制御下にある。
【0034】
いくつかの態様では、AAVベクターは、GBA遺伝子、好ましくはヒトGBA遺伝子のcDNAを含む少なくとも1つの導入遺伝子を含み、導入遺伝子は、任意選択的にプロモーターの制御下にある。
【0035】
いくつかの態様では、本発明は、本発明によるAAVベクターと、少なくとも1つの薬学的に許容可能なビヒクルと、を含む医薬組成物も提供する。
【0036】
いくつかの態様では、本発明は、好ましくは遺伝子治療における、診断剤及び/又は医薬としての使用のための、本発明によるAAVベクター又は本発明による医薬組成物にも関する。
【0037】
いくつかの態様では、本発明は、本発明によるAAVベクターを得るために適切な条件下で、AAVを式(I)
【化9】
の化合物又はその塩とともにインキュベートする段階を含む、本発明によるAAVベクターを製造する方法も提供する。
【0038】
いくつかの態様では、本発明は、式(Ia):
【化10】
の化合物又はその塩(式中、Z、L、L、L、R、R1’、R及びR2’は、以下及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義及び記載されるとおりである)をさらに提供する。
【0039】
いくつかの態様では、Lは、任意選択的に置換されるフェニルである。
【0040】
いくつかの態様では、Lは、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む任意選択的に置換される5員ヘテロアリールアリール基である。
【0041】
いくつかの態様では、本化合物は、式(Ic)
【化11】
の化合物又はその塩(式中、Z、L、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R及びR4’は、以下及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義及び記載されるとおりである)である。
【0042】
いくつかの態様では、Lは、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状C-C40炭化水素鎖、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、pHPMA、PLGA、アルキルジアミンのポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される任意選択的に置換される基であり;好ましくはLはポリエチレングリコールである。
【0043】
いくつかの態様では、Lは、2~40個のエチレングリコール単量体を含むポリエチレングリコール(PEG)である。
【0044】
いくつかの態様では、いくつかの態様では(In some aspects, In some aspects)、Lは、PEG3、PEG4又はPEG5である。
【0045】
いくつかの態様では、本化合物は、式(IIe)
【化12】
の化合物又はその塩(式中、n、Z、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R及びR4’は、以下及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義及び記載されるとおりである)である。
【0046】
いくつかの態様では、Zは、糖、ホルモン、ペプチド、タンパク質又はその機能的活性断片、膜受容体又はその機能的活性断片、アプタマー、抗体又はその機能的活性断片、ScFv、Spiegelmer、ペプチドアプタマー、ビタミン及び薬物からなる群から選択される細胞タイプ特異的リガンドを含むか又はそれからなる。
【0047】
いくつかの態様では、Zは、単糖、オリゴ糖、多糖及びその誘導体からなる群から選択される糖である。
【0048】
いくつかの態様では、Zは、マンノース、ガラクトース、フコース、デソサミン、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、S6-ガラクトース、S6-N-アセチルガラクトサミン、グルクロン酸、P6-ガラクトース及びP1-ガラクトースからなる群から選択される。
【0049】
いくつかの態様では、本発明は、改変されたAAVベクターを製造するための本発明による化合物の使用も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0050】
ある特定の実施形態の詳細な説明
アミノ基(例えばリジン又はアルギニン側鎖の)を通じてコンジュゲートする様々なカップリング化学が記載されている。しかし、このようなカップリング化学の全てが、特定の条件下で及び/又は特定の基質と適合する及び/又は有効であるわけではない。
【0051】
本開示は、アデノ随伴ウイルス(AAV)のアミノ酸にコンジュゲートするカップリングに関する。本開示は、必ずしも全てのカップリング化学がこのようなコンジュゲートに対して有効というわけではないことを認識する。例えば、ある特定のカップリング化学は、AAVの1つ以上の構造又は機能特性を破壊し得る(例えばAAVの完全性を保存しない)条件を必要とするか、又は典型的にそのような条件下で行われる。或いは又はさらに、様々なカップリング化学は、適切な条件が、AAVとのカップリングではなく、別のリガンド分子との自己カップリング(分子間及び/又は分子内カップリング)に好都合であり得るために、ある特定の生化学的リガンド、例えば糖及び/又は(ポリ)ペプチドなどと適合性ではない条件を必要とするか又は典型的にそのような条件下で行われる。例えば、ある特定の状況では、ある特定のイソチオシアネート基を含むカップリング化学はしばしば反応性が高過ぎ、従って有意な自己カップリング反応を起こし易いことが観察されている。
【0052】
いくつかのカップリング戦略は、2段階カップリング反応を含む。特定の理論に縛られることを望むものではないが、本開示は、AAVへのカップリングのための様々なこのような2段階カップリング反応を伴う問題の原因を同定する。例えば、本開示は、第1のカップリング反応のみが起こり、第2の反応が起こらないある特定の条件では、例えばカプシド表面を修飾する非天然化学構造によりAAVが免疫原性となり得ることを認識する。
【0053】
1段階カップリング化学は、例えば、ある特定の環境において適合性であることが示されているある特定のイソチオシアネート基を使用する国際公開第2017/212019号パンフレットに記載されている。しかし、特定の理論に縛られることを望むものではないが、本開示は、AAVへのカップリングのための、このようなイソチオシアネート基の使用を伴う潜在的な問題の原因を同定する。例えば、本開示は、このような反応が、免疫原性ハプテンを形成し得る脂溶性リンカーをもたらすことを観察する(スキーム1参照)。
【化13】
【0054】
スキーム1
スキーム1で示されるように、AAVへのカップリングの際のある特定のイソチオシアネート基の使用(例えば国際公開第2017/212019号パンフレットで開示されるもの)は、logP値が1.78である結合をもたらし、これは、カップリング後にAAVに対する免疫原性を引き起こす可能性がより高い。より低いlogP値での結合を想定してもよく、従って免疫原性を引き起こすリスクはより低くなるが(例えばスキーム1参照)、しかし、AAVへのカップリングとのそれらの適合性は不明である。
【0055】
従って、本開示は、i)多様なAAV血清型の完全性と適合し、これを維持する、ii)1段階である、iii)リガンドの自己カップリングを最小化する、及び/又はiv)免疫原性リンカーを生じない、適切なカップリング化学を提供するための特定の依然として残るニーズを認識する。いくつかの実施形態では、提供される技術は、脂溶性リンカーを生じないカップリング化学を提供する。
【0056】
いくつかの態様では、本発明は、ラクタム(例えばβ-ラクタム)を含む化合物とAAVベクターのカプシド内に存在するアミノ基(例えばリジン側鎖のアミノ基)との反応から生じる部分を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、例えばこのような反応の結果としての改変AAVに関する。
【0057】
例えば、いくつかの実施形態では、本発明は、式(II):
【化14】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、
【化15】
、N、Z、L、R、R1’、R及びR2’は、本明細書中でクラス及びサブクラス内で定義され、記載されるとおりである)を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。
【0058】
いくつかの態様では、本発明は、AAVベクターを改変する、特にAAVのカプシドの少なくとも1つのアミノ酸残基の修飾によって改変する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、カプシドのアミノ酸残基のアミノ基、好ましくは表面に露出するアミノ酸残基のアミノ基を修飾する方法を提供する。本明細書中に記載のように、AAVベクターの改変は、反応性部分としてラクタム基(例えばβ-ラクタム)を含むリンカーを共有結合カップリングすることによって達成に成功した。
【0059】
概念の証明として、AAVベクターのカプシドのアミノ酸残基のアミノ基を修飾するための官能基として糖部分を保有するラクタム(例えばβ-ラクタム)を含むいくつかのリンカーを調製した。AAV2、AAV5、AAV8及びAAV9を含むいくつかのAAV血清型のカプシドタンパク質を、AAV粒子の完全性を維持しながら効率的に改変することができることが証明された。これらの改変AAVは、例えばU87-MG神経膠芽腫細胞株において、なおも感染性であることがさらに示された。非改変AAVとの比較において脳全体を考慮して、組織分布及び導入遺伝子発現レベルの両方に関して、これらの改変AAVがより良好な形質導入特性を示すことがさらに示された。
【0060】
ラクタム修飾AAVベクター
いくつかの態様では、本発明は、ラクタム(例えばβ-ラクタム)を含む化合物と、AAVベクターのカプシド内に存在するアミノ基(例えばリジン側鎖のアミノ基)との反応から得られる部分を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明は、カプシドのアミノ酸残基の少なくとも1つの修飾されたアミノ基を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。より具体的には、いくつかの実施形態では、本発明は、関心対象の機能的部分を有利に含むリンカーのラクタム(例えばβ-ラクタム)基の共有結合カップリングにより修飾されたカプシドのアミノ酸残基の少なくとも1つのアミノ基を有するAAVベクターに関する。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明は、ラクタム部分を含む化合物とAAVベクターのカプシド内に存在するアミノ基との反応から得られる部分を含む、改変AAVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、β-ラクタム部分を含む化合物とAAVベクターのカプシド内に存在するアミノ基の反応から得られる部分を含む、改変AAVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、β-ラクタム部分を含む化合物とAAVベクターのカプシドのアミノ酸残基のアミノ基の反応から得られる部分を含む、改変AAVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、β-ラクタム部分を含む化合物とAAVベクターのカプシド内に存在するリジン側鎖のアミノ基との反応から得られる部分を含む、改変AAVベクターを提供する。
【0063】
AAVベクター
本発明において適切なAAVベクターは、何れかの天然又は組み換えAAV血清型を含み得るか又は何れかの天然又は組み換えAAV血清型に由来し得る。
【0064】
「血清型」は、別のウイルスと比較した場合の、あるウイルスに対する抗体との間の交差反応性の欠如に基づいて伝統的に定義されている。このような交差反応性の相違は通常、カプシドタンパク質配列/抗原性決定基の相違による(例えば、AAV血清型のVP1、VP2及び/又はVP3配列の相違による)ものである。本明細書中で使用される場合、AAVは、様々な天然及び合成の血清型を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、天然の血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11及びAAV12;又はシュードタイプ、キメラ及びそれらの変異体から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV系統分枝群A、B、C、D、E又はFである(例えば、Gao et al.,Clade of Adeno-Associated Viruses Are Widely Disseminated in Human Tissues.J.Virology.2004)。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV系統分枝群EのAAVベクターである。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV系統分枝群DのAAVベクターである。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV系統分枝群FのAAVベクターである。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV系統分枝群AのAAVベクターである。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV系統分枝群CのAAVベクターである。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV系統分枝群BのAAVベクターである。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、古典的な系統分枝群に属さないAAVである。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「シュードタイプ」という用語は、AAVベクター又は「シュードタイプAAVベクター」に言及する場合、別のAAV血清型のカプシドにパッケージングされた1つのAAV血清型のAAVゲノムの部分、特に末端逆位配列(ITR)を含むAAVベクターを指す。これらのシュードタイプは、スラッシュ又はハイフンを使用して示され、「AAV2/5」又は「AAV2-5」は、血清型5カプシドにパッケージングされた、血清型2ゲノムを含むAAVベクターを示す。
【0068】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、トランスカプシド化される(transcapsidated)。いくつかの実施形態では、トランスカプシド化(transcapsidation)アプローチは、モザイク組み換えAAVカプシドを作製するためのAAV血清型ヘルパープラスミドの組み合わせのトランスフェクションを含む(例えば、Rabinowitz et al.(2004),J.Virol.78:4421-4432を参照)。いくつかの実施形態では、倍数体(2つより多くの親AAVヘルパーを利用する場合)又は半数体(2つのみを使用する場合)アプローチが利用される。いくつかの実施形態では、例えば、AAVカプシドは、1つの血清型のVP1/VP2及び一意的血清型から供与されるVP3又はそれらの組み合わせから作製され得る。いくつかの実施形態では、半数体AAVは、親AAVの構造の長所を一意的に組み合わせる可能性を有する。いくつかの実施形態では、半数体AAVは、1)形質導入における相乗効果、2)予想外の新しい指向性及び3)Nabから逃避する能力を実証した(例えば、Chai et. al.(2019),Viruses 11:1138を参照)。
【0069】
例えば、いくつかの実施形態では、シュードタイプAAVベクターとしては、AAV2/1、AAV2/2、AAV2/3、AAV2/4、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/7、AAV2/8及びAAV2/9が挙げられるがこれらに限定されない。
【0070】
本明細書中で使用される場合、「キメラ」という用語は、AAVベクター又は「キメラAAVベクター」に言及する場合、少なくとも2つの異なるAAV血清型からのVP1、VP2及びVP3タンパク質を含有するカプシドを含むか;又は或いは、VP1、VP2及びVP3タンパク質を含み、そのうち少なくとも1つが別のAAV血清型からの少なくとも一部を含む、AAVベクターを指す。
【0071】
キメラAAVベクターの例としては、AAV-DJ、AAV2G9、AAV2i8、AAV2i8G9、AAV8G9及びAAV9i1が挙げられるがこれらに限定されない。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV106.1/hu.37、AAV114.3/hu.40、AAV127.2/hu.41、AAV127.5/hu.42、AAV128.1/hu.43、AAV128.3/hu.44、AAV130.4/hu.48、AAV145.1/hu.53、AAV145.5/hu.54、AAV145.6/hu.55、AAV16.12/hu.11、AAV16.3、AAV16.8/hu.10、AAV161.10/hu.60、AAV161.6/hu.61、AAV1-7/rh.48、AAV1-8/rh.49、AAV2i8、AAV2i8G9、AAV2-15/rh.62、AAV223.1、AAV223.2、AAV223.4、AAV223.5、AAV223.6、AAV223.7、AAV2-3/rh.61、AAV24.1、AAV2-4/rh.50、AAV2-5/rh.51、AAV2.5T、AAV27.3、AAV29.3/bb.1、AAV29.5/bb.2、AAV2G9、AAV3B、AAV3.1/hu.6、AAV3.1/hu.9、AAV3-11/rh.53、AAV3-3、AAV33.12/hu.17、AAV33.4/hu.15、AAV33.8/hu.16、AAV3-9/rh.52、AAV3a、AAV3b、AAV4-19/rh.55、AAV42.12、AAV42-10、AAV42-11、AAV42-12、AAV42-13、AAV42-15、AAV42-1b、AAV42-2、AAV42-3a、AAV42-3b、AAV42-4、AAV42-5a、AAV42-5b、AAV42-6b、AAV42-8、AAV42-aa、AAV43-1、AAV43-12、AAV43-20、AAV43-21、AAV43-23、AAV43-25、AAV43-5、AAV4-4、AAV44.1、AAV44.2、AAV44.5、AAV46.2/hu.28、AAV46.6/hu.29、AAV4-8/rh.64、AAV4-9/rh.54、AAV52.1/hu.20、AAV52/hu.19、AAV5-22/rh.58、AAV5-3/rh.57、AAV54.1/hu.21、AAV54.2/hu.22、AAV54.4R/hu.27、AAV54.5/hu.23、AAV54.7/hu.24、AAV58.2/hu.25、AAV6.1、AAV6.1.2、AAV6.2、AAV7m8、AAV7.2、AAV7.3/hu.7、AAV-8b、AAV8G9、AAV-8h、AAV9i1、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84、AAV9.9、AAVcy.2、AAVcy.3、AAVcy.4、AAVcy.5、AAVcy.5R1、AAVcy.5R2、AAVcy.5R3、AAVcy.5R4、AAVcy.6、AAVhu.1、AAVhu.2、AAVhu.3、AAVhu.4、AAVhu.5、AAVhu.6、AAVhu.7、AAVhu.8、AAVhu.9、AAVhu.10、AAVhu.11、AAVhu.12、AAVhu.13、AAVhu.14/9、AAVhu.15、AAVhu.16、AAVhu.17、AAVhu.18、AAVhu.19、AAVhu.20、AAVhu.21、AAVhu.22、AAVhu.23.2、AAVhu.24、AAVhu.25、AAVhu.27、AAVhu.28、AAVhu.29、AAVhu.29R、AAVhu.31、AAVhu.32、AAVhu.34、AAVhu.35、AAVhu.37、AAVhu.39、AAVhu.40、AAVhu.41、AAVhu.42、AAVhu.43、AAVhu.44、AAVhu.44R1、AAVhu.44R2、AAVhu.44R3、AAVhu.45、AAVhu.46、AAVhu.47、AAVhu.48、AAVhu.48R1、AAVhu.48R2、AAVhu.48R3、AAVhu.49、AAVhu.51、AAVhu.52、AAVhu.53、AAVhu.54、AAVhu.55、AAVhu.56、AAVhu.57、AAVhu.58、AAVhu.60、AAVhu.61、AAVhu.63、AAVhu.64、AAVhu.66、AAVhu.67、AAVpi.1、AAVpi.2、AAVpi.3、AAVrh.2、AAVrh.2R、AAVrh.8、AAVrh.8R、AAVrh8R R533A突然変異体、AAVrh8R A586R突然変異体、AAVrh.10、AAVrh.12、AAVrh.13、AAVrh.13R、AAVrh.14、AAVrh.17、AAVrh.18、AAVrh.19、AAVrh.20、AAVrh.21、AAVrh.22、AAVrh.23、AAVrh.24、AAVrh.25、AAVrh.31、AAVrh.32、AAVrh.33、AAVrh.34、AAVrh.35、AAVrh.36、AAVrh.37、AAVrh.37R2、AAVrh.38、AAVrh.39、AAVrh.40、AAVrh.43、AAVrh.44、AAVrh.45、AAVrh.46、AAVrh.47、AAVrh.48、AAVrh.48.1、AAVrh.48.1.2、AAVrh.48.2、AAVrh.49、AAVrh.50、AAVrh.51、AAVrh.52、AAVrh.53、AAVrh.54、AAVrh.55、AAVrh.56、AAVrh.57、AAVrh.58、AAVrh.59、AAVrh.60、AAVrh.61、AAVrh.62、AAVrh.64、AAVrh.64R1、AAVrh.64R2、AAVrh.65、AAVrh.67、AAVrh.68、AAVrh.69、AAVrh.70、AAVrh.72、AAVrh.73、AAVrh.74、AAV-PHP.B、AAV-PHP.A、AAV-G2B-26、AAV-G2B-13、AAV-TH1.1-32、AAV-TH1.1-35、AAV-PHP.B2、AAV-PHP.B3、AAV-PHP.N/PHP.B-DGT、AAV-PHP.B-EST、AAV-PHP.B-GGT、AAV-PHP.B-ATP、AAV-PHP.B-ATT-T、AAV-PHP.B-DGT-T、AAV-PHP.B-GGT-T、AAV-PHP.B-SGS、AAV-PHP.B-AQP、AAV-PHP.B-QQP、AAV-PHP.B-SNP(3)、AAV-PHP.B-SNP、AAV-PHP.B-QGT、AAV-PHP.B-NQT、AAV-PHP.B-EGS、AAV-PHP.B-SGN、AAV-PHP.B-EGT、AAV-PHP.B-DST、AAV-PHP.B-DST、AAV-PHP.B-STP、AAV-PHP.B-PQP、AAV-PHP.B-SQP、AAV-PHP.B-QLP、AAV-PHP.B-TMP、AAV-PHP.B-TTP、AAV-PHP.S/G2A12、AAV-G2A15/G2A3、AAV-G2B4、AAV-G2B5、PHP.S、AAAV、AAV A3.3、AAV A3.4、AAV A3.5、AAV A3.7、AAV CBr-7.3、AAV CBr-7.1、AAV CBr-7.10、AAV CBr-7.2、AAV CBr-7.4、AAV CBr-7.5、AAV CBr-7.7、AAV CBr-7.8、AAV CBr-B7.3、AAV CBr-B7.4、AAV CBr-E1、AAV CBr-E2、AAV CBr-E3、AAV CBr-E4、AAV CBr-E5、AAV CBr-e5、AAV CBr-E6、AAV CBr-E7、AAV CBr-E8、AAV CHt-1、AAV CHt-2、AAV CHt-3、AAV CHt-6.1、AAV CHt-6.10、AAV CHt-6.5、AAV CHt-6.6、AAV CHt-6.7、AAV CHt-6.8、AAV CHt-P1、AAV CHt-P2、AAV CHt-P5、AAV CHt-P6、AAV CHt-P8、AAV CHt-P9、AAV CKd-N4、AAV CKd-1、AAV CKd-10、AAV CKd-2、AAV CKd-3、AAV CKd-4、AAV CKd-6、AAV CKd-7、AAV CKd-8、AAV CKd-B1、AAV CKd-B2、AAV CKd-B3、AAV CKd-B4、AAV CKd-B5、AAV CKd-B6、AAV CKd-B7、AAV CKd-B8、AAV CKd-H1、AAV CKd-H2、AAV CKd-H3、AAV CKd-H4、AAV CKd-H5、AAV CKd-H6、AAV CKd-N3、AAV CKd-N9、AAV CLg-F1、AAV CLg-F2、AAV CLg-F3、AAV CLg-F4、AAV CLg-F5、AAV CLg-F6、AAV CLg-F7、AAV CLg-F8、AAV CLv-M9、AAV CLv-R6、AAV CLv-1、AAV CLv1-1、AAV CLv1-10、AAV CLv1-2、AAV CLv-12、AAV CLv1-3、AAV CLv-13、AAV CLv1-4、AAV CLv1-7、AAV CLv1-8、AAV CLv1-9、AAV CLv-2、AAV CLv-3、AAV CLv-4、AAV CLv-6、AAV CLv-8、AAV CLv-D1、AAV CLv-D2、AAV CLv-D3、AAV CLv-D4、AAV CLv-D5、AAV CLv-D6、AAV CLv-D7、AAV CLv-D8、AAV CLv-E1、AAV CLv-K1、AAV CLv-K3、AAV CLv-K6、AAV CLv-L4、AAV CLv-L5、AAV CLv-L6、AAV CLv-M1、AAV CLv-M11、AAV CLv-M2、AAV CLv-M5、AAV CLv-M6、AAV CLv-M7、AAV CLv-M8、AAV CLv-R1、AAV CLv-R2、AAV CLv-R3、AAV CLv-R4、AAV CLv-R5、AAV CLv-R7、AAV CLv-R8、AAV CLv-R9、AAV CSp-8.10、AAV CSp-1、AAV CSp-10、AAV CSp-11、AAV CSp-2、AAV CSp-3、AAV CSp-4、AAV CSp-6、AAV CSp-7、AAV CSp-8、AAV CSp-8.2、AAV CSp-8.4、AAV CSp-8.5、AAV CSp-8.6、AAV CSp-8.7、AAV CSp-8.8、AAV CSp-8.9、AAV CSp-9、AAV-LK08、AAV-LK15、AAVシャッフル100-1、AAVシャッフル100-2、AAVシャッフル100-3、AAVシャッフル100-7、AAVシャッフル10-2、AAVシャッフル10-6、AAVシャッフル10-8、AAV SM 100-10、AAV SM 100-3、AAV SM 10-1、AAV SM 10-2、AAV SM 10-8、AAV.VR-355、AAV-b、AAVC1、AAVC2、AAVC5、AAVCh.5、AAVCh.5R1、AAV-DJ、AAV-DJ8、AAVF1/HSC1、AAVF11/HSC11、AAVF12/HSC12、AAVF13/HSC13、AAVF14/HSC14、AAVF15/HSC15、AAVF16/HSC16、AAVF17/HSC17、AAVF2/HSC2、AAVF3、AAVF3/HSC3、AAVF4/HSC4、AAVF5、AAVF5/HSC5、AAVF6/HSC6、AAVF7/HSC7、AAVF8/HSC8、AAVF9/HSC9、AAV-h、AAVH-1/hu.1、AAVH2、AAVH-5/hu.3、AAVH6、AAVhE1.1、AAVhEr1.14、AAVhEr1.16、AAVhEr1.18、AAVhER1.23、AAVhEr1.35、AAVh
Er1.36、AAVhEr1.5、AAVhEr1.7、AAVhEr1.8、AAVhEr2.16、AAVhEr2.29、AAVhEr2.30、AAVhEr2.31、AAVhEr2.36、AAVhEr2.4、AAVhEr3.1、AAVLG-10/rh.40、AAVLG-4/rh.38、AAVLG-9/hu.39、AAVLG-9/hu.39、AAV-LK01、AAV-LK02、AAV-LK03、AAV-LK03、AAV-LK04、AAV-LK05、AAV-LK06、AAV-LK07、AAV-LK09、AAV-LK10、AAV-LK11、AAV-LK12、AAV-LK13、AAV-LK14、AAV-LK16、AAV-LK17、AAV-LK18、AAV-LK19、AAVN721-8/rh.43、AAV-PAEC、AAV-PAEC 12、AAV-PAEC11、AAV-PAEC2、AAV-PAEC4、AAV-PAEC6、AAV-PAEC7、AAV-PAEC8、Anc80、Anc80L65、Anc81、Anc82、Anc83、Anc84、Anc94、Anc110、Anc113、Anc126、Anc127、BAAV,BNP61 AAV、BNP62 AAV、BNP63 AAV、ウシAAV、ヤギAAV、日本人AAV10血清型、UPENN AAV10、VOY101及びVOY201を含むか又はそれらからなる群から選択される。
【0073】
いくつかの実施形態では、「AAVベクター変異体」は、例えば、カプシドタンパク質VP1、VP2及びVP3のうち1つ以上における1つ又はいくつかのアミノ酸残基の置換、欠失又は付加によって遺伝子改変されたベクターを含む。このような変異体の例としては、それらのVP1、VP2及び/又はVP3カプシドタンパク質の何れか1つ又はいくつかにおける少なくとも1つのYからF、KからR、TからA、SからA及び/又はTからVの突然変異を含むAAVベクターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0074】
このような変異体のさらなる例としては、Y731F突然変異(又は他のAAV血清型における対応する部位)を有するAAV1;Y272F、Y444F、T491V、Y500F、S662V及び/又はY730F突然変異(又は他のAAV血清型における対応する部位)のうち1つ以上を有するAAV2、例えばY444F突然変異を有するAAV2、Y444F+Y500F+Y730F突然変異を有するAAV2、Y272F+Y444F+Y500F+Y730F突然変異を有するAAV2、Y444F+Y500F+Y730F+T491V突然変異を有するAAV2及びY272F+Y444F+Y500F+Y730F+T491V突然変異を有するAAV2など;Y705F、Y731F及び/又はT492V突然変異(又は他のAAV血清型における対応する部位)のうち1つ以上を有するAAV3;Y263F及び/又はY719F突然変異(又は他のAAV血清型における対応する部位)のうち1つ以上を有するAAV5;Y445F、T492V、S663V、Y705F及び/又はY731F突然変異(又は他のAAV血清型における対応する部位)のうち1つ以上を有するAAV6、例えばY445F突然変異を有するAAV6、Y705F+Y731F突然変異を有するAAV6、T492V突然変異を有するAAV6、Y705F+Y731F+T492V突然変異を有するAAV6、S663V突然変異を有するAAV6及びS663V+T492V突然変異を有するAAV6;及びY447F、T494V及び/又はY733F突然変異(又は他のAAV血清型における対応する部位)のうち1つ以上を有するAAV8が挙げられるがこれらに限定されない。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV2、AAV5、AAV8及びAAV9からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV2である。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV5である。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV8である。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV9である。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV2/2である。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV2/5である。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV2/8である。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV2/9である。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、血清型2、5、8及び9からなる群から選択されるAAV血清型のカプシドを有する。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV血清型2のカプシドを有する。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV血清型5のカプシドを有する。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV血清型8のカプシドを有する。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、AAV血清型9のカプシドを有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、多岐にわたる細胞、組織及び臓器を標的とし得る。いくつかの実施形態では、AAVベクターにより標的とされる細胞の例には、肝細胞;網膜の細胞;即ち光受容体、網膜色素上皮(RPE)、ミュラー細胞;筋細胞、即ち筋芽細胞、サテライト細胞;中枢神経系(CNS)の細胞、即ちニューロン、グリア細胞;心臓の細胞;末梢神経系(PNS)の細胞;骨芽細胞;腫瘍細胞;血液細胞、例えばリンパ球、単球、好塩基球、好酸球、好中球、肥満細胞;造血幹細胞を含む造血細胞;内耳の細胞(例えば内有毛細胞及び/又は外有毛細胞、ヘンゼン細胞、ダイテルス細胞、柱細胞、内指節細胞、境界細胞など);人工多能性幹細胞(iPS)などが包含されるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、AAVにより標的とされ得る組織及び/又は臓器の例としては、眼、網膜、肝臓、骨格筋、心筋、平滑筋、耳、脳、脊椎、骨、結合組織、心臓、腎臓、肺、リンパ節、乳腺、ミエリン、前立腺、精巣、胸腺、甲状腺、気管などが挙げられる。いくつかの実施形態では、好ましい細胞タイプは、肝細胞、網膜細胞、筋細胞、CNSの細胞、PNSの細胞及び造血系の細胞である。いくつかの実施形態では、好ましい組織及び/又は臓器は、肝臓、筋肉、心臓、眼及び脳である。
【0078】
AAVの指向性は、それらの血清型に応じて変動し得る。いくつかの実施形態では、例えばAAV2を使用して、中枢神経系(CNS)、腎臓及び光受容体細胞に形質導入することができ、一方で、いくつかの実施形態では、例えばAAV8は、CNS、心臓、肝臓、光受容体細胞、網膜色素上皮(RPE)及び骨格筋に形質導入するために有効である。
【0079】
いくつかの実施形態では、AAVは、関心対象の細胞株における、例えば実施例の節に記載のような、HEK293細胞における一過性のトランスフェクションなどの当技術分野で公知の何れかの方法によって作製され得る。
【0080】
組み換えAAVベクター
いくつかの実施形態では、本発明により改変されるAAVベクターは、組み換えAAV(rAAV)ベクターであり得る。一般に、野生型(WT)AAVは、2つの末端逆位配列(ITR)が隣接する2つの大きなオープンリーディングフレーム(ORF)を有する1本鎖直鎖状DNAゲノム約5kb長を有する。5’及び3’ORFは、複製及びカプシドタンパク質をそれぞれコードする。一般に、ITRは、145個のヌクレオチドを含有し、AAVゲノム複製開始点及びパッケージングシグナルとして働く。組み換えAAVにおいて、ウイルスORFは、外因性遺伝子発現カセットにより置き換えられ、一方で複製及びカプシドタンパク質は、トランスで提供される。いくつかの実施形態では、本発明による改変AAVベクターは、2本鎖の自己相補的DNAゲノム(scAAV)を含み得る(例えば、Buie et al.,Self-complementary AAV Virus(scAAV)Safe and Long-term Gene Transfer in the Trabecular Meshwork of Living Rats and Monkeys.Invest Opthalmol Vis Sci.2010を参照)。
【0081】
従って、「組み換えAAVベクター」又は「rAAV」は、本明細書中で、外因性核酸配列(例えばペイロード、例えば導入遺伝子)がウイルスゲノムに導入されているAAVを指す。前記外因性核酸配列は、何れのタイプの配列であってもよく、AAVベクターの意図される使用に関して選択される。例えば、前記核酸は、何れのRNA又はDNA配列を含んでもよく、及び/又は何れのRNA又はDNA配列を鋳型としてもよい。いくつかの実施形態では、核酸は、好ましくはDNA配列を含み得る。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、インビボ又はインビトロでの適用のために遺伝子ベクターとして使用され得る。
【0082】
例示のために、本発明により改変される代表的なrAAVベクターは、ウイルスORFを置き換え、2つのITRの間に配置される外因性遺伝子発現カセットを含み得る。いくつかの実施形態では、外因性遺伝子発現カセットは、プロモーター配列、関心対象の遺伝子をコードする配列及び転写終結配列を含み得る。いくつかの実施形態では、プロモーター及び関心対象の遺伝子は、標的の組織及び/又は臓器及び既知の適応に応じて、例えば疾患状態の処置及び/又は予防のために選択される。
【0083】
さらなる又は代替的な例として、いくつかの実施形態では、本発明で使用されるrAAVベクターは、細胞における相同組み換えのためのDNA鋳型を含み得る。いくつかの実施形態では、rAAVは、インビボ、インビトロ及び/又はエクスビボで標的化される細胞における相同組み換えを促進するために遺伝子編集ツールと組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、遺伝子編集ツールは、何れかのタイプであり得、CRISPR及びその関連する系(Casタンパク質、ガイドRNA)、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ並びに前記タンパク質をコードするRNA及び/又はDNAを包含するがこれらに限定されない。
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明により改変されるAAVベクターは、AAVベクターの意図される使用に関して選択される少なくとも1つの導入遺伝子を含む。
【0085】
「導入遺伝子」という用語は、本明細書中で使用される場合、細胞に導入され、RNAに転写され、任意選択的に適切な条件下で翻訳され及び/又は発現されることが可能であるポリヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、それが導入された細胞に所望の特性を付与するか、又はそうでなければ所望の治療転帰又は予防転帰をもたらす。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、適切な手段の存在下で、例えば、CRISPRに基づく方法、TALENに基づく方法、ZFNに基づく方法などを使用した修正的遺伝子編集などを介して、宿主細胞のゲノムに全体的又は部分的に組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、miRNA、siRNA、shRNA、piRNAなど、RNA干渉(即ち遺伝子サイレンシング)を媒介する分子に転写され得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの導入遺伝子は、タンパク質又はその断片をコードするcDNAを含む。
【0087】
本明細書中で使用される場合、「cDNA」という用語は、相補的DNAを指し、通常は逆転写酵素により触媒される反応において1本鎖RNA(例えば、メッセンジャーRNA[mRNA]又はマイクロRNA[miRNA])鋳型から合成されるDNA分子に対応する。特に、cDNAがmRNAの逆転写から得られる場合、これは、タンパク質からのコード遺伝子全体を含まず、前記タンパク質のコード配列のみ(即ちイントロンがないエクソン)を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、cDNAの断片は、タンパク質のN末端部分又はC末端部分をコードする前記cDNAの一部を含み得る。いくつかの実施形態では、例えば、このような断片は、単一のAAVベクターでは容易に保持することができず、従って1つより多いのベクター、例えば二重AAVベクターの使用を必要とする大きいcDNAの場合に有用であり得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、cDNAの断片は、タンパク質の機能的及び/又は構造部分をコードする前記cDNAの一部を含み得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、cDNAの断片は、RNA分子の機能的及び/又は構造部分をコードする配列を含み得る。いくつかの実施形態では、このようなRNA分子は、リボソームRNA、転移RNA、核内低分子RNA、核小体低分子RNA、マイクロRNA、長い非コードRNA、低分子干渉RNA、ガイドRNA及び/又は何らかの機能的RNA種であり得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、cDNAは、ABCA4、ADAM9、AGBL5、AHR、AIPL1、APOE、ARHGEF18、ARL2BP、ARL3、ARL6、BBS2、BEST1、C2ORF71、C8orf37、CACNA1F、CAPN5、CDHR1、CEP290、CEP78、CERKL、CFH、CHM、CLCC1、CLRN1、CNGA1、CNGB1、COL2A1、CRB1、CRB2、CRX、CTNNB1、CX3CR1、DHDDS、DHX38、EFEMP1、ELOVL4、EYS、FAM161A、FBN2、FSCN2、FZD4、GDF6、GUCA1A、GUCA1B、GUCY2D、HGSNAT、HK1、HMCN1、HRG4、HTRA1、IDH3A、IDH3B、IFT140、IFT172、IFT43、IMPDH1、IMPG2、KCNJ13、KIAA1549、KIF3B、KIZ、KLHL7、LCA5、LRAT、LRP5、MAK、MERTK、MYO7A、NDP、NEK2、NMNAT1、NR2E3、NRL、PDE6A、PDE6B、PDE6G、PITPNM3、POMGT1、PRCD、PROM1、PRPF3、PRPF4、PRPF6、PRPF8、PRPF31、PRPH2、RAXL1、RBP3、RBP4、RD3、RDH12、RDH5、REEP6、RGR、RHO、RIMS1、RLBP1、RP1、RP1L1、RP2、RP4、RP7、RP9、RP10、RP11、RP12、RP13、RP14、RP17、RP18、RP19、RP20、RP25、RP26、RP27、RP28、RP30、RP31、RP32、RP33、RP35、RP36、RP37、RP38、RP39、RP40、RP41、RP42、RP43、RP44、RP45、RP46、RP47、RP48、RP49、RP50、RP51、RP53、RP54、RP55、RP56、RP57、RP58、RP59、RP60、RP61、RP62、RP64、RP65、RP66、RP67、RP68、RP69、RP70、RP71、RP72、RP73、RP74、RP75、RP76、RP77、RP78、RP79、RP80、RP81、RP82、RP83、RP84、RP85、RP86、RP87、RP88、RP89、RP90、RPE65、RPE87、RPGR、RPGRIP1、SAG、SEMA4A、SLC7A14、SNRNP200、SPATA7、TOPORS、TSPAN12、TTC8、TULP1、USH2A、VCAN、ZNF408及びZNF513を含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子由来である。
【0092】
いくつかの実施形態では、cDNAは、Crumbs Cell Polarity Complex Component 2(CRB2)遺伝子由来である。いくつかの実施形態では、cDNAは、ホスホジエステラーゼ6B(PDE6B)遺伝子由来である。いくつかの実施形態では、cDNAは、レチンアルデヒド結合タンパク質1(RLBP1)遺伝子由来である。いくつかの実施形態では、cDNAは、レチノイドイソメロヒドロラーゼ(RPE65)遺伝子由来である。いくつかの実施形態では、cDNAは、RPGR相互作用タンパク質1(RPGRIP1)遺伝子由来である。いくつかの実施形態では、cDNAは、ATP結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABCA4)遺伝子由来である。いくつかの実施形態では、cDNAは、ATP結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABCA4)遺伝子由来のN又はC末端コード領域である。
【0093】
いくつかの実施形態では、cDNAは、3Rタウ、4Rタウ、AARS、ABCD1、ACOX1、ADGRV1、ADRA2B、AGA、AGER、ALDH7A1、ALG13、ALS2、ANG、ANXA11、APP、ARHGEF9、ARSA、ARSB、ARV1、ASAH1、ASPA、ATN1、ATP10A、ATP13A2、ATXN1、ATXN2、ATXN3、BAX、BCL-2、BDNF、BICD2、C9orf72、CACNA1A、CACNA1H、CACNB4、CASR、CCNF、CDKL5、CERS1、CFAP410、CHCHD10、CHD2、CHMP2B、CHRNA2、CHRNA4、CHRNA7、CHRNB2、CLCN2a、CLN1、CLN2、CLN3、CLN5、CLN6、CLN8、CNTN2、CPA6、CSTB、CTNS、CTSA、CTSD、DAO、DCTN1、DEPDC5、DMD、DNAJB2、DNM1、DOCK7、DRD2、DYNC1H1、EEF1A2、EFHC1、EGLN1、EPHA4、EPM2A、ERBB4、FGF12、FIG4、FRRS1L、FTL、FUCA1、FUS、FXN、GAA、GABRA1、GABRB1、GABRB3、GABRD、GABRG2、GAL、GALC、GALNS、GBA、GFAP、GLA、GLB1、GLE1、GLT8D1、GNAO1、GNS、GOSR2、GPR98、GRIA1、GRIA2、GRIK1、GRIN1、GRIN2A、GRIN2B、GRIN2D、GSTM1、GUF1、GUSB、HCN1、HGSNAT、HNRNPA1、HTT、HYAL1、IDS、IDUA、IGHMBP2、IL-1、IT15、ITPA、JPH3、KCNA2、KCNB1、KCNC1、KCNMA1、KCNQ2、KCNQ3、KCNT1、KCTD7、LAL、LAMP2、LGI1、LMNB2、LRRK2、MAN2B1、MAN2B2、MAN2C1、MANBA、MATR3、MBD5、MFSD8、NAGA、NAGLU、NECAP1、NEFH、NEK1、NEU1、NHLRC1、NPC1、NPC2、NR4A2、NTRK2、OCA2、OPTN、PARK2、PARK7、PCDH19、PEX1、PEX2、PEX3、PEX5、PEX6、PEX10、PEX11B、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、PEX26、PFN1、PINK1、PLCB1、PNPO、PON1、PON2、PON3、PPARGC1A、PRDM8、PRICKLE1、PRKN、PRNP、PRPH、PRRT2、PSAP、S106β、SCARB2、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN8A、SCN9A、SCN9Ab、SETX、SGSH、SIGMAR1、SIK1、SKP1、SLC1A1、SLC1A2、SLC2A1、SLC6A1、SLC9A6、SLC12A5、SLC13A5、SLC25A12、SLC25A22、SLCA17A5、SMN1、SMPD1、SNCA、SNRPN、SOD1、SPG11、SPTAN1、SQSTM1、ST3GAL3、ST3GAL5、STX1B、STXBP1、SYP、SYT1、SZT2、TAF15、TARDBP、TBC1D24、TBCE、TBK1、TBP、TITF-1、TREM2、UBA5、UBE1、UBE3A、UBQLN2、UCH-L1、UNC13A、VAPB、VCP、VPS35、WWOX及びXBP1を含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子由来である。
【0094】
いくつかの特定の実施形態では、cDNAは、GBA遺伝子由来、好ましくはヒトGBA遺伝子由来である。
【0095】
ヒトGBA遺伝子のcDNAの例示的な核酸配列は、配列番号1、又は配列番号1と少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%以上の配列同一性を有する核酸配列を含むか又はそれからなる。
【0096】
一実施形態では、ヒトGBA遺伝子のcDNAの核酸配列は、配列番号2、又は配列番号2と少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなるアミノ酸配列をコードする。
【0097】
配列番号1
atggagttttcaagtccttccagagaggaatgtcccaagcctttgagtagggtaagcatcatggctggcagcctcacaggattgcttctacttcaggcagtgtcgtgggcatcaggtgcccgcccctgcatccctaaaagcttcggctacagctcggtggtgtgtgtctgcaatgccacatactgtgactcctttgaccccccgacctttcctgcccttggtaccttcagccgctatgagagtacacgcagtgggcgacggatggagctgagtatggggcccatccaggctaatcacacgggcacaggcctgctactgaccctgcagccagaacagaagttccagaaagtgaagggatttggaggggccatgacagatgctgctgctctcaacatccttgccctgtcaccccctgcccaaaatttgctacttaaatcgtacttctctgaagaaggaatcggatataacatcatccgggtacccatggccagctgtgacttctccatccgcacctacacctatgcagacacccctgatgatttccagttgcacaacttcagcctcccagaggaagataccaagctcaagatacccctgattcaccgagccctgcagttggcccagcgtcccgtttcactccttgccagcccctggacatcacccacttggctcaagaccaatggagcggtgaatgggaaggggtcactcaagggacagcccggagacatctaccaccagacctgggccagatactttgtgaagttcctggatgcctatgctgagcacaagttacagttctgggcagtgacagctgaaaatgagccttctgctgggctgttgagtggataccccttccagtgcctgggcttcacccctgaacatcagcgagacttcattgcccgtgacctaggtcctaccctcgccaacagtactcaccacaatgtccgcctactcatgctggatgaccaacgcttgctgctgccccactgggcaaaggtggtactgacagacccagaagcagctaaatatgttcatggcattgctgtacattggtacctggactttctggctccagccaaagccaccctaggggagacacaccgcctgttccccaacaccatgctctttgcctcagaggcctgtgtgggctccaagttctgggagcagagtgtgcggctaggctcctgggatcgagggatgcagtacagccacagcatcatcacgaacctcctgtaccatgtggtcggctggaccgactggaaccttgccctgaaccccgaaggaggacccaattgggtgcgtaactttgtcgacagtcccatcattgtagacatcaccaaggacacgttttacaaacagcccatgttctaccaccttggccacttcagcaagttcattcctgagggctcccagagagtggggctggttgccagtcagaagaacgacctggacgcagtggcactgatgcatcccgatggctctgctgttgtggtcgtgctaaaccgctcctctaaggatgtgcctcttaccatcaaggatcctgctgtgggcttcctggagacaatctcacctggctactccattcacacctacctgtggcgtcgccagtga
【0098】
配列番号2
MEFSSPSREECPKPLSRVSIMAGSLTGLLLLQAVSWASGARPCIPKSFGYSSVVCVCNATYCDSFDPPTFPALGTFSRYESTRSGRRMELSMGPIQANHTGTGLLLTLQPEQKFQKVKGFGGAMTDAAALNILALSPPAQNLLLKSYFSEEGIGYNIIRVPMASCDFSIRTYTYADTPDDFQLHNFSLPEEDTKLKIPLIHRALQLAQRPVSLLASPWTSPTWLKTNGAVNGKGSLKGQPGDIYHQTWARYFVKFLDAYAEHKLQFWAVTAENEPSAGLLSGYPFQCLGFTPEHQRDFIARDLGPTLANSTHHNVRLLMLDDQRLLLPHWAKVVLTDPEAAKYVHGIAVHWYLDFLAPAKATLGETHRLFPNTMLFASEACVGSKFWEQSVRLGSWDRGMQYSHSIITNLLYHVVGWTDWNLALNPEGGPNWVRNFVDSPIIVDITKDTFYKQPMFYHLGHFSKFIPEGSQRVGLVASQKNDLDAVALMHPDGSAVVVVLNRSSKDVPLTIKDPAVGFLETISPGYSIHTYLWRRQ
【0099】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの導入遺伝子は、導入遺伝子標的特異性及び/又は発現を増強する少なくとも1つのエレメントの制御下にある。いくつかの実施形態では、導入遺伝子標的特異性及び/又は発現を増強するエレメントの例としては、プロモーター、転写後調節エレメント(PRE)、ポリアデニル化(ポリA)シグナル配列、翻訳調節エレメント、内因性RNAプロセシング経路による制御のための標的、上流エンハンサー(USE)、CMVエンハンサー及びイントロンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0100】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの導入遺伝子は、少なくとも1つのプロモーターの制御下にある。
【0101】
当業者は、標的細胞における導入遺伝子の発現が、種特異的、誘導性、組織特異的、一過性に特異的、細胞特異的及び/又は細胞周期特異的であるプロモーターが挙げられるがこれらに限定されない特異的なプロモーターを必要とし得ることを認識し得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、標的とされる細胞に対する指向性を有するプロモーター、即ち細胞特異的プロモーターである。
【0103】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、標的とされる組織においてある期間にわたり導入遺伝子の発現を駆動する。プロモーターにより駆動される発現は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、8日、9日、10日、11日、12日、13日、2週間、15日、16日、17日、18日、19日、20日、3週間、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、1年、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、10年間又は10年超の期間であり得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、導入遺伝子の持続的発現のための弱いプロモーターである。
【0105】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、天然に存在してもよく又は天然に存在しなくてもよい。いくつかの実施形態では、プロモーターの例としては、ウイルスプロモーター、植物プロモーター及び動物プロモーター(例えば哺乳動物プロモーター)が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、プロモーターは、ヒトプロモーターであり得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、参照物と比較して切断されていてもよい。いくつかの実施形態では、プロモーターは、参照物と比較して変異していてもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、複数の組織において発現を駆動するものであり得る。いくつかの実施形態では、複数の組織において発現を駆動又は促進するこのようなプロモーターとしては、ヒト伸長因子1a-サブユニット(EF1a)、サイトメガロウイルス(CMV)前初期エンハンサー及び/又はプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)及びその誘導体CAG、β-グルクロニダーゼ(GUSB)及びユビキチンC(UBC)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0108】
いくつかの実施形態では、組織又は細胞特異的発現エレメントを使用して、導入遺伝子の発現をある特定の細胞タイプに制限することができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、組織及び/又は細胞特異的なプロモーターは、ニューロン特異的プロモーターであり得る。ニューロンに対する組織又は細胞特異的発現エレメントの適切な例としては、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、血小板由来増殖因子(PDGF)プロモーター、血小板由来増殖因子B鎖(PDGF-β)プロモーター、シナプシン(Syn)プロモーター、メチル-CpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモーター、Ca2+/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CaMKII)プロモーター、代謝調節型グルタミン酸受容体2(mGluR2)プロモーター、神経フィラメント軽鎖(NFL)プロモーター、神経フィラメント重鎖(NFH)プロモーター、β-グロビンミニ遺伝子ηβ2プロモーター、プレプロエンケファリン(PPE)プロモーター、エンケファリン(Enk)プロモーター及び興奮性アミノ酸輸送体2(EAAT2)プロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0110】
いくつかの実施形態では、組織及び/又は細胞特異的プロモーターは、アストロサイト特異的プロモーターであり得る。アストロサイトに対する組織又は細胞特異的発現エレメントの適切な例としては、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)プロモーター及びEAAT2プロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施形態では、組織及び/又は細胞特異的なプロモーターは、オリゴデンドロサイト特異的プロモーターであり得る。オリゴデンドロサイトに対する組織又は細胞特異的発現エレメントの適切な例としては、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)プロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0112】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、ユビキタスプロモーターである。いくつかの実施形態では、このようなユビキタスプロモーターとしては、CMV、CBA(その誘導体CAG、CBhなどを含む)、EF-1a、PGK、UBC、GUSB(hGBp)及びUCOEが挙げられ得るがこれらに限定されない。
【0113】
いくつかの実施形態では、プロモーターは組織又は細胞特異的ではない。
【0114】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、操作されたプロモーターである。
【0115】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、天然に発現されるタンパク質由来のプロモーターである。
【0116】
いくつかの好ましい実施形態では、プロモーターは、CAGプロモーターである(例えば、CMV前初期エンハンサー及びニワトリβアクチンプロモーターを含む)。
【0117】
AAVベクターにおけるカップリングの部位
本発明のいくつかの実施形態では、提供されるAAVベクターは、AAVカプシドの少なくとも1つのアミノ酸への(例えばAAVベクターの少なくとも1つのカプシドタンパク質への)少なくとも1つのラクタム(例えばβ-ラクタム)リンカーの共有結合カップリングによって修飾されたAAVベクターである。典型的なAAVカプシドは、VP1、VP2及びVP3と呼ばれる3つのカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのラクタム(例えばβ-ラクタム)リンカーは、AAVベクターの少なくとも1つのVP1タンパク質に共有結合する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのラクタム(例えばβ-ラクタム)リンカーは、AAVベクターの少なくとも1つのVP2タンパク質に共有結合する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのラクタム(例えばβ-ラクタム)リンカーは、AAVベクターの少なくとも1つのVP3タンパク質に共有結合する。
【0118】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAVベクターの少なくとも1つのカプシドタンパク質の少なくとも1つの表面露出アミノ酸残基への少なくとも1つのラクタム(例えばβ-ラクタム)リンカーの共有結合カップリングにより修飾される。
【0119】
本明細書中で使用される場合、「表面に露出する」という用語は、AAVベクターの外部表面で少なくとも一部露出する側鎖を伴うアミノ酸残基を指す。
【0120】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのラクタム(例えばβ-ラクタム)リンカーは、AAVベクターのカプシドの表面露出アミノ酸残基の少なくとも1つのアミノ基に共有結合する。「アミノ基」は、本明細書中で、一級アミン基(-NH)又は二級アミン基(-NH-)又はその塩を指し;好ましくは、アミノ基は一級アミノ基である。いくつかの実施形態では、アミノ基は、リジン及びアルギニンから選択されるアミノ酸残基由来である。いくつかの好ましい実施形態では、アミノ基は、リジン残基由来、好ましくはAAVベクターのカプシドの表面露出リジン残基由来である。
【0121】
本明細書中で使用される場合、「カプシドのアミノ酸残基の少なくとも1つのアミノ基」は、アミノ酸残基の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100個以上のアミノ基を包含する。
【0122】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、そのカプシドに複数の(例えばいくつかの)修飾されたアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、同じカプシドタンパク質の複数の(例えばいくつかの)アミノ酸残基が修飾される。いくつかの実施形態では、異なるカプシドタンパク質に存在する複数の(例えばいくつかの)アミノ酸残基が修飾される。
【0123】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(II):
【化16】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、
は、AAVベクターのカプシドのアミノ酸残基のアミノ基の窒素原子であり;
【化17】
は、AAVベクターのカプシドに対する付着点を表し;
Zは、いくつかの実施形態ではAAVベクターの特定の機能的改変を付与又は達成するその能力を特徴とし得るか及び/又はその能力に基づいて選択され得る機能的部分であり;
Lはリンカーであり;並びに
、R1’、R及びR2’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン若しくは任意選択的に置換されるC1-6アルキルであるか;又は
及びR1’若しくはR及びR2’は、それらの介在する原子とともに、一体となって任意選択的に置換されるスピロ縮合環を形成してもよく;又は
及びRは、それらの介在する原子とともに、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~2個のヘテロ原子を有する任意選択的に置換される3~7員の飽和、部分的不飽和、若しくはアリール、若しくはヘテロアリール環を形成してもよく;
好ましくはR、R1’、R及びR2’は水素である)を含むAAVベクターに関する。
【0124】
一般的な説明及び定義
「アリール基」は、本明細書中で、一般的には5~12個の原子を含有する;好ましくは6~10個を含有する、単環(即ちフェニル)又はともに縮合される(例えばナフチル)か若しくは共有結合される複数の芳香環を有する、多価不飽和、芳香族ヒドロカルビル基を指し、ここで少なくとも1つの環が芳香環である。アリール基の非限定例はフェニルである。
【0125】
「ヘテロアリール基」は、本明細書中で、一般的には各環に5~6個の原子を含有する、ともに縮合されるか又は共有結合される1~2個の環を含有する5~12個の炭素原子の芳香環又は環系を指し;環のうち少なくとも1個が芳香環であり、これらの環のうち1個以上における1個以上の炭素原子が酸素、窒素又は硫黄原子により置換され、ここで、窒素及び硫黄ヘテロ原子が任意選択的に酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子が任意選択的に四級化されてもよい。このような環は、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクリル環に縮合され得る。このようなヘテロアリール基の非限定例としては、トリアゾリル、ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサジニル、ジオキシニル、チアジニル、トリアジニル、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾリル、チエノ[3,2-b]フラニル、チエノ[3,2-b]チオフェニル、チエノ[2,3-d][1,3]チアゾリル、チエノ[2,3-d]イミダゾリル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジニル、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、1,3-ベンゾオキサゾリル、1,2-ベンゾイソオキサゾリル、2,1-ベンゾイソオキサゾリル、1,3-ベンゾチアゾリル、1,2-ベンゾイソチアゾリル、2,1-ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3-ベンゾオキサジアゾリル、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル、1,2,3-ベンゾチアジアゾリル、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル、チエノピリジニル、プリニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、6-オキソ-ピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソピリジン-1(2H)-イル、6-オキソ-ピリダジン(pyrudazin)-1(6H)-イル、2-オキソピリジン-1(2H)-イル、1,3-ベンゾジオキソリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニルが挙げられる。本明細書中で使用される好ましいヘテロアリール基はトリアゾリルである。
【0126】
「ヘテロ原子」という用語は、酸素、硫黄、窒素、リン、セレン又はケイ素のうち1つ以上を意味する(窒素、硫黄、リン、セレン又はケイ素の何れかの酸化形態;何れかの塩基性窒素の四級化形態又は;複素環の置換可能な窒素、例えばN(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルの場合)、NH(ピロリジニル中の場合)又はNR(N-置換ピロリジニルの場合)を含む)。
【0127】
「不飽和」という用語は、本明細書中で使用される場合、ある部分が不飽和の1以上の単位を有することを意味する。
【0128】
「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br又はIを意味する。
【0129】
本明細書中に記載のように、化合物は、「任意選択的に置換される」部分を含有してもよい。一般に、「置換される」という用語は、「任意選択的に」という用語が前にあっても又はなくても、化合物の指定される部分の1個以上の水素が適切な置換基で置換されることを意味する。「置換される」は、構造から明らかであるか又は暗示される1個以上の水素に当てはまる(例えば、
【化18】
は、少なくとも
【化19】
を指し;
【化20】
は、少なくとも
【化21】
を指す)。別段の指示がない限り、「任意選択的に置換される」基は、基の各置換可能な位置で適切な置換基を有し得、何れかのある一定の構造における複数の位置が指定される基から選択される複数の置換基で置換され得る場合、置換基は、全ての位置で同じであってもよいし又は異なっていてもよい。この開示により想起される置換基の組み合わせは、好ましくは安定な又は化学的に実現可能な化合物の形成を生じさせるものである。「安定な」という用語は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で開示される目的の1つ以上のために、それらの産生、検出及び、特定の実施形態では、それらの回収、精製及び使用を可能にするための条件に供されるときに、実質的に改変されない化合物を指す。
【0130】
「任意選択的に置換される」基の置換可能な炭素原子上の適切な1価置換基は独立に、ハロゲン;-(CH0-4;-(CH0-4OR;-O(CH0-4、-O-(CH0-4C(O)OR;-(CH0-4CH(OR;-(CH0-4SR;Rで置換され得る-(CH0-4Ph;Rで置換され得る-(CH0-4O(CH0-1Ph;Rで置換され得る-CH=CHPh;Rで置換され得る-(CH0-4O(CH0-1-ピリジル;-NO;-CN;-N;-(CH0-4N(R;-(CH0-4N(R)C(O)R;-N(R)C(S)R;-(CH0-4N(R)C(O)NR ;-N(R)C(S)NR ;-(CH0-4N(R)C(O)OR;-N(R)N(R)C(O)R;-N(R)N(R)C(O)NR ;-N(R)N(R)C(O)OR;-(CH0-4C(O)R;-C(S)R;-(CH0-4C(O)OR;-(CH0-4C(O)SR;-(CH0-4C(O)OSiR ;-(CH0-4OC(O)R;-OC(O)(CH0-4SR、SC(S)SR;-(CH0-4SC(O)R;-(CH0-4C(O)NR ;-C(S)NR ;-C(S)SR;-SC(S)SR、-(CH0-4OC(O)NR ;-C(O)N(OR)R;-C(O)C(O)R;-C(O)CHC(O)R;-C(NOR)R;-(CH0-4SSR;-(CH0-4S(O);-(CH0-4S(O)OR;-(CH0-4OS(O);-S(O)NR ;-(CH0-4S(O)R;-N(R)S(O)NR ;-N(R)S(O);-N(OR)R;-C(NH)NR ;-P(O);-P(O)R ;-OP(O)R ;-OP(O)(OR;SiR ;-(C1-4直鎖又は分枝状アルキレン)O-N(R;又は-(C1-4直鎖又は分枝状アルキレン)C(O)O-N(Rであり、ここで各Rは、以下で定義されるように置換され得、独立に水素、C1-6脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、-CH-(5-~6員ヘテロアリール環)又は、窒素、酸素若しくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員飽和、部分的不飽和若しくはアリール環であるか、又は、上記の定義にもかかわらず、Rの2個の独立した出現が、それらの介在原子と一緒になって、以下で定義されるように置換され得る、窒素、酸素又は硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する3~12員の飽和、部分的不飽和又はアリール単環又は二環式環を形成する。
【0131】
上(又はそれらの介在原子と一緒にRの2つの独立な出現をとることによって形成される環上)の適切な1価置換基は独立に、ハロゲン、-(CH0-2、-(ハロR)、-(CH0-2OH、-(CH0-2OR、-(CH0-2CH(OR;-O(ハロR)、-CN、-N、-(CH0-2C(O)R、-(CH0-2C(O)OH、-(CH0-2C(O)OR、-(CH0-2SR、-(CH0-2SH、-(CH0-2NH、-(CH0-2NHR、-(CH0-2NR 、-NO、-SiR 、-OSiR 、-C(O)SR、-(C1-4直鎖又は分枝状アルキレン)C(O)OR又は-SSR(式中、各Rは、未置換であるか又は前に「ハロ」が付く場合は1個以上のハロゲンでのみ置換され、C1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph又は、窒素、酸素若しくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分的不飽和若しくはアリール環から独立に選択される)である。Rの飽和炭素原子上の適切な2価置換基は、=O及び=Sを含む。
【0132】
「任意選択的に置換される」基の飽和炭素原子上の適切な2価置換基は、次のものを含む:=O、=S、=NNR 、=NNHC(O)R、=NNHC(O)OR、=NNHS(O)、=NR、=NOR、-O(C(R ))2-3O-又は-S(C(R ))2-3S-(式中、Rの各独立した出現は、水素、以下で定義されるように置換され得るC1-6脂肪族又は、窒素、酸素若しくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する未置換5~6員飽和、部分的不飽和若しくはアリール環から選択される)。式IIの化合物及びその亜属の群の「任意選択的に置換される」基の隣接している置換可能な炭素に結合される適切な2価置換基は、-O(CR 2-3O-(式中、Rの各独立した出現は、水素、以下で定義されるように置換され得るC1-6脂肪族、又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する未置換5~6員飽和、部分的不飽和若しくはアリール環から選択される)を含む。
【0133】
の脂肪族基上の適切な置換基は、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR 又は-NOを含み、式中、各Rは、未置換であるか又は「ハロ」が前につく場合は1個以上のハロゲンでのみ置換され、独立にC1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph又は、窒素、酸素若しくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分的不飽和若しくはアリール環である。
【0134】
「任意選択的に置換される」基の置換可能な窒素上の適切な置換基は、-R、-NR 、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)C(O)R、-C(O)CHC(O)R、-S(O)、-S(O)NR 、-C(S)NR 、-C(NH)NR 又は-N(R)S(O)を含み;式中、各Rは独立に、水素、以下で定義されるように置換され得るC1-6脂肪族、未置換-OPh又は、窒素、酸素若しくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する未置換5~6員飽和、部分的不飽和若しくはアリール環であるか、又は、上記の定義にもかかわらず、Rの2つの独立した出現が、それらの介在原子と一緒になって、窒素、酸素若しくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する未置換3~12員飽和、部分的不飽和若しくはアリール単環若しくは二環式環を形成する。
【0135】
の脂肪族基上の適切な置換基は独立に、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR 又は-NOであり、式中、各Rは、未置換又は、「ハロ」が前につく場合は1個以上のハロゲンでのみ置換され、独立にC1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph又は、窒素、酸素若しくは硫黄から独立に独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分的不飽和若しくはアリール環である。
【0136】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、不適切な毒性、刺激、アレルギー反応などなく、ヒト及び下等動物の組織と接触させて使用するのに適切で、妥当なベネフィット/リスク比で釣り合っている塩を指す。薬学的に許容可能な塩は当技術分野で周知である。例えば、S.M.Berge et al.は、参照により本明細書中に組み込まれるJ.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19において詳細に薬学的に許容可能な塩を記載する。薬学的に許容可能な塩としては、適切な無機及び有機酸及び塩基由来の塩が挙げられる。薬学的に許容可能な無毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸などの無機酸によって、又は酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸若しくはマロン酸などの有機酸によって、又はイオン交換などの当技術分野で使用される他の方法を使用することにより、形成されるアミノ基の塩である。さらなる又は代替的な薬学的に許容可能な塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコへプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシル-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。
【0137】
適切な塩基由来の塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びN(C1-4アルキル)塩が挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に許容可能な塩としては、適切である場合、無毒性アンモニウム、四級アンモニウム、及びハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩及びアリールスルホン酸塩などの対イオンを使用して形成されるアミン陽イオンが挙げられる。
【0138】
別段の断りがない限り、本明細書中で示される構造は、構造の全ての異性体(例えばエナンチオマー、ジアステレオマー及び幾何異性体(又は配座異性体))の形態;例えば、各不斉中心に対するR及びS立体配置、Z及びE二重結合異性体、並びにZ及びE配座異性体を含むことも意味する。従って、本化合物の単一の立体化学異性体並びにエナンチオマー、ジアステレオマー及び幾何異性体(又は配座異性体)混合物は本開示の範囲内にある。別段の断りがない限り、全ての互変異性形態が本開示の範囲内にある。さらに、別段の断りがない限り、本開示は、1つ以上の同位体濃縮原子の存在のみが異なる化合物も含む。例えば、重水素若しくはトリチウムによる水素の置換又は13C-又は14C濃縮炭素による炭素の置換を含む本構造を有する化合物は、本開示の範囲内である。このような化合物は、例えば分析ツールとして、生物学的アッセイにおけるプローブとして、又は本開示による治療剤として有用である。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、1つ以上の重水素原子を含む。
【0139】
本開示により想定される置換基及び可変要素の組み合わせは、安定な化合物の形成をもたらす組み合わせのみである。「安定な」という用語は、本明細書中で使用される場合、製造を可能にするために十分な安定性を保持する、及び本明細書中で詳述される目的に対して有用であるために十分な時間にわたり化合物の完全性を維持する化合物を指す(例えば対象への治療的又は予防的投与)。
【0140】
機能的部分Z
機能的部分Zは、何れのタイプの部分であってもよく、典型的にはAAVベクターのカプシドを化学的に修飾する際に求められる生物学的効果に応じて選択される。
【0141】
いくつかの実施形態では、Zは、細胞タイプ特異的なリガンド、標識剤、立体遮蔽剤、薬物部分、又はそれらの組み合わせを含むか又はそれらからなる機能的部分である。いくつかの実施形態では、機能的部分Zは、磁性(ナノ)粒子及び量子ドットを含む(ナノ)粒子でもあり得る。例えば、いくつかの実施形態では、Zは、鉄、染料、ケイ素、金又は炭素(ナノ)粒子であり得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、Zは、標識剤、例えば蛍光色素、例えばフルオレセイン、ローダミン、ボロン-ジピロメテン(Bodipy(登録商標))色素及びAlexa fluor(登録商標)又は放射性核種などを含むか又はそれらからなる機能的部分である。
【0143】
いくつかの実施形態では、Zは、立体遮蔽剤、例えばカプシドのある特定のエピトープを隠すことが可能であり、それにより中和抗体の結合を回避する薬剤を含むか又はそれからなる機能的部分である。例えば、いくつかの実施形態では、Zは、ポリエチレングリコール(PEG)、pHPMA又は多糖であり得る。いくつかの実施形態では、Zは、1~40個のエチレングリコール単量体、例えば1~10個のエチレングリコール単量体、例えば-(OCHCH)-(本明細書中で、「PEG1」と呼ぶ)、-(OCHCH-(本明細書中で「PEG2」と呼ぶ)、-(OCHCH-(本明細書中で「PEG3」と呼ぶ)、-(OCHCH-(本明細書中で、「PEG4」と呼ぶ)又は-(OCHCH-(本明細書中で「PEG5」と呼ぶ)を含むポリエチレングリコール(PEG)である。
【0144】
いくつかの実施形態では、Zは、細胞タイプ特異的リガンド、即ち特定の型の細胞の標的化を可能にするリガンドを含むか又はそれからなる機能的部分である。いくつかの実施形態では、このようなリガンドは、AAVベクターの指向性、即ち所定の細胞株、組織及び/又は臓器に選択的に感染及び/又は形質導入する能力、の改変を可能にし得る。例えば、いくつかの実施形態では、Zは、標的化される細胞の膜の生物学的部分(例えば膜受容体)に特異的に結合するリガンドであり得る。いくつかの実施形態では、このようなリガンドは、例えば糖、ステロイドホルモンを含むホルモン、ペプチド、例えばRGDペプチドなど、Angiopep-2又は筋肉を標的とするペプチド、タンパク質又は機能的に活性のあるそれらの断片、膜受容体又はその機能的に活性な断片、CB1及びCB2リガンド、重鎖抗体を含む抗体、又はFab、Fab’及びVHH、ScFvなどのその機能的に活性な断片、ダイアボディ、Spiegelmer、核酸アプタマー及びペプチドアプタマーを含むアプタマー、標的化された生物学的部分に結合することが知られる低分子化学分子など、例えばビタミン及び薬物及び/又は何らかの適切なそれらの組み合わせなどであり得る。
【0145】
「機能的に活性な断片」は、その全長の対応物の機能的活性を保持する、例えばタンパク質、膜受容体又は抗体の断片を意味する。
【0146】
いくつかの実施形態では、Zは、糖由来の細胞タイプ特異的リガンドを含むか又はそれからなる。糖に対する詳細は本明細書中で以後提供する。
【0147】
いくつかの実施形態では、Zは、トランスフェリン、上皮成長因子(EGF)及び塩基性線維芽細胞増殖因子FGFなどのタンパク質由来の細胞タイプ特異的リガンドを含むか又はそれからなる。
【0148】
いくつかの実施形態では、Zは、葉酸などのビタミン由来の細胞タイプ特異的リガンドを含むか又はそれからなる。
【0149】
いくつかの実施形態では、Zは、筋肉を標的とするペプチド(MTP)由来の細胞タイプ特異的リガンドを含むか又はそれからなる。ある特定の実施形態では、Zは、癌細胞を標的とするペプチドであり、環状RGDを含む、RGDなどのペプチドを含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、Zは、ナプロキセン、イブプロフェン、コレステロール、プロゲステロン又はエストラジオールなどの低分子又はホルモン由来の細胞タイプ特異的リガンドを含むか又はそれからなる。
【0151】
いくつかの実施形態では、Zは、抗体又はその抗原結合部分を含む。いくつかのこのような実施形態では、抗体は、例えば、単鎖抗体又は可変ドメイン、例えばラクダ抗体、重鎖抗体、ナノボディ、サメ抗体などであり得るか又はそれらを含み得る。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合部分は、Fab、Fab’、VHH、ScFv、ダイアボディなどであり得るか又はそれらを含み得る。いくつかの特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合部分は、特定の細胞特異的タンパク質、膜タンパク質及び/又は膜タンパク質受容体に対して特異的親和性を有することを特徴とし得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、Zは、糖、ホルモン、ペプチド、タンパク質又はその断片、膜受容体又はその断片、抗体又はその断片、Spiegelmer、核酸又はペプチドアプタマー、ビタミン及び薬物からなる群から選択される細胞タイプ特異的リガンドを含むか又はそれからなる。特定の実施形態では、Zは、単糖、オリゴ糖及び多糖からなる群から選択される糖であり;好ましくはZは、マンノース、グルコース、ガラクトース、フコース、デソサミン、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、S6-ガラクトース、S6-N-アセチルガラクトサミン、グルクロン酸、P6-ガラクトース及びP1-ガラクトースからなる群から選択される。特定の実施形態では、Zは、単糖、オリゴ糖及び多糖からなる群から選択される糖であり;好ましくはZは、マンノース、ガラクトース、フコース、デソサミン、N-アセチルグルコサミン及びN-アセチルガラクトサミンからなる群から選択される。
【0153】
いくつかの実施形態では、Zは、糖を含むか又はそれからなる。
【0154】
いくつかの実施形態では、糖の適切な例としては、単糖、オリゴ糖、多糖及びそれらの誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0155】
本明細書中で使用される場合、「誘導体」という用語は、単糖、オリゴ糖又は多糖に言及する場合、1個以上の非ヒドロキシル基を含有する糖を包含することを意味する。このような非ヒドロキシル基の例としては、水素、アルキル、アミノ基(例えばNH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノなど)、N-アセチルアミノ基及び/又はチオール基が挙げられるがこれらに限定されない。
【0156】
いくつかの実施形態では、非ヒドロキシル基は、リン酸基、ホスホン酸基、硫酸基、スルホン酸基、カルボキシル基などの負に荷電している基である。
【0157】
「単糖(simple sugar)」とも呼ばれる「単糖」は、糖の最も単純な形態及び炭水化物の最も基本的な単位である。単糖は、それらが含有する炭素原子の数により分類することができ、例えば、3(トリオース)、4(テトロース)、5(ペントース)、6(ヘキソース)、7(ヘプトース)などである。
【0158】
単糖の例としては、グリコールアルデヒド、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、エリスロース、トレオース、エリスルロース、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、リブロース、キシルロース、アロース、アルトロース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、マンノース、タロース、フルクトース、プシコース、ソルボース、タガトース、マンノヘプツロース及びセドヘプツロースが挙げられるがこれらに限定されない。
【0159】
デオキシ単糖は、本発明に包含される単糖の一般的な誘導体、即ちヒドロキシル基が水素原子で置き換えられた単糖である。
【0160】
デオキシ単糖の例としては、デオキシリボース、フコース、フクロース、ラムノース、キノボース、ニューモース(pneumose)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0161】
2-アミノ-2-デオキシ単糖もまた、本発明に包含される単糖の一般的な誘導体、即ちヒドロキシル基がアミノ基で置換された単糖である。
【0162】
2-アミノ-2-デオキシ単糖の例としては、N-アセチルグルコサミン及びN-アセチルガラクトサミンを含むがこれらに限定されない、グルコサミン、ガラクトサミン及びダウノサミン、並びにそれらのアセチル化形態が挙げられるがこれらに限定されない。
【0163】
いくつかの実施形態では、単糖は、リン酸基、硫酸基又はカルボキシル基などの負に荷電した基を含有する。
【0164】
リン酸基を含有する単糖の例としては、ガラクトース-1-リン酸(P1-ガラクトース)及びガラクトース-6-リン酸(P6-ガラクトース)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0165】
硫酸基を含有する単糖の例としては、ガラクトース-6-硫酸(S6-ガラクトース)、N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸(S6-N-アセチルガラクトサミン)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0166】
カルボキシル基を含有する単糖の例としては、グルクロン酸が挙げられるがこれらに限定されない。
【0167】
本明細書中で言及される単糖及びその誘導体は、非環式(鎖式)形態及び環状形態も包含することが理解されるべきである。
【0168】
本明細書中で言及される単糖及びその誘導体は、D-立体異性体及びL-立体異性体、並びにD-及びL-立体異性体の混合物(例えばラセミ混合物)も包含することも理解されるべきである。
【0169】
本明細書中で言及される単糖類及びその誘導体が、α-アノマー及びβ-アノマー、並びにα-及びβ-アノマーのラセミ混合物も包含することも理解されるべきである。
【0170】
「オリゴ糖」は、少数の(一般的には2~10個)の単糖を含む糖ポリマーである。
【0171】
いくつかの実施形態では、本発明によるオリゴ糖は、その誘導体を含め、例えば本明細書中の上記で開示される単糖から選択される、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の単糖を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、このようなオリゴ糖は、ホモオリゴ糖(即ち、その誘導体を含む、同じ単糖の単位から構成される)又はヘテロオリゴ糖(即ち、その誘導体を含む、少なくとも2つの異なる単糖類の単位から構成される)であり得る。
【0173】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖の例としては、二糖、三糖、四糖、五糖、六糖、七糖、八糖、九糖及び十糖が挙げられるがこれらに限定されない。
【0174】
いくつかの実施形態では、二糖の具体例としては、セロビオース、キトビオース、ゲンチオビオース、ゲンチオビウロース(gentiobiulose)、イソマルトース、コジビオース、ラクトース、ラクツロース、ラミナリビオース、マルトース、マルツロース、マンノビオース、メリビオース、メリビウロース、ニゲロース、パラチノース、ルチノース、ルチヌロース(rutinulose)、ソホロース、スクロース、トレハロース、ツラノース及びキシロビオースが挙げられるがこれらに限定されない。
【0175】
いくつかの実施形態では、三糖の具体例としては、ケストース、マルトトリオース、マルトトリウロース、メレジトース、ニゲロトリオース及びラフィノースが挙げられるがこれらに限定されない。
【0176】
いくつかの実施形態では、四糖の具体例としては、リクノース、マルトテトラオース、ニゲロテトラオース、ニストース、セサモース及びスタキオースが挙げられるがこれらに限定されない。
【0177】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖の具体例としては、アカルボース、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖及びマルトデキストリンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0178】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖は、それによって、オリゴ糖中の一部又は全ての単糖がO-グリコシド結合を通じて互いに連結されないが、分枝状リンカー構造により連結される多分岐状構造であってもよい。多分岐状の糖の例は、三分岐状N-アセチルガラクトサミンであり、これは、アシアロ糖タンパク質受容体ASGPRに対するリガンドである(例えば、Zhou et al.,Development of Triantennary N-Acetylgalactosamine Conjugates as Degraders for Extracellular Proteins;ACS Cent.Sci.2021を参照)。
【0179】
「多糖」は、多数(一般的には10個より多くの)の単糖を含む糖ポリマーである。これらは直鎖状から高度分枝状の範囲の構造である。
【0180】
いくつかの実施形態では、多糖は、例えば、その誘導体を含む、本明細書中の上記で開示される単糖から選択される、10個より多くの単糖(例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個又はそれより多いなど)を含む。オリゴ糖に関する上記と同様に、多糖は、ホモ多糖又はヘテロ多糖であり得る。
【0181】
いくつかの実施形態では、多糖の例としては、ベータ-グルカン、レンチナン、シゾフィラン、ザイモサン、セルロース、ヘミセルロース、キチン、キトサン、デキストリン、デキストラン、フルクタン、イヌリン、ガラクタン、グルカン、グリコーゲン、レバンβ2→6、リグニン、マナン、ペクチン、デンプン、アミロペクチン、アミロース及びキサンタンガムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0182】
いくつかの実施形態では、本発明による糖又はその誘導体は、単糖、好ましくはヘキソースである。いくつかの実施形態では、本発明による優先的な糖又はその誘導体は、マンノース、グルコース、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、S6-ガラクトース、S6-N-アセチルガラクトサミン、グルクロン酸、P6-ガラクトース又はP1-ガラクトースである。いくつかの実施形態では、本発明による優先的な糖又はその誘導体は、マンノース、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン又はN-アセチルガラクトサミンである。
【0183】
いくつかの実施形態では、糖又はその誘導体はマンノースである。いくつかの実施形態では、糖又はその誘導体はガラクトースである。いくつかの実施形態では、糖又はその誘導体は、N-アセチルグルコサミンである。いくつかの実施形態では、糖又はその誘導体は、N-アセチルガラクトサミンである。
【0184】
いくつかの実施形態では、本発明による糖又はその誘導体は、デオキシ単糖である。いくつかの好ましい実施形態では、デオキシ単糖は好ましくはフコースである。
【0185】
いくつかの実施形態では、糖又はその誘導体は、ジアルキルアミノ基である非ヒドロキシル基を含有する糖である。いくつかの好ましい実施形態では、ジアルキルアミノ基である非ヒドロキシル基を含有する糖はデソサミンである。
【0186】
いくつかの実施形態では、糖又はその誘導体は、硫酸基である非ヒドロキシル基を含有する糖である。いくつかの好ましい実施形態では、硫酸基である非ヒドロキシル基を含有する糖は、S6-ガラクトース又はS6-N-アセチルガラクトサミンである。
【0187】
いくつかの実施形態では、糖又はその誘導体は、リン酸基である非ヒドロキシル基を含有する糖である。いくつかの好ましい実施形態では、リン酸基である非ヒドロキシル基を含有する糖類は、P6-ガラクトース又はP1-ガラクトースである。
【0188】
いくつかの実施形態では、糖又はその誘導体は、カルボキシル基である非ヒドロキシル基を含有する糖である。いくつかの好ましい実施形態では、カルボキシル基である非ヒドロキシル基を含有する糖はグルクロン酸である。
【0189】
いくつかの実施形態では、Zは、マンノース、グルコース、ガラクトース、フコース、デソサミン、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、S6-ガラクトース、S6-N-アセチルガラクトサミン、グルクロン酸、P6-ガラクトース及びP1-ガラクトースを含むか又はそれらからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Zは、マンノース、ガラクトース、フコース、デソサミン、N-アセチルグルコサミン及びN-アセチルガラクトサミンを含むか又はそれらからなる群から選択される。
【0190】
リンカーL
いくつかの実施形態では、リンカーLは、AAVベクターのカプシドのアミノ酸残基のアミノ基によりラクタム(例えばβ-ラクタム)基の開環から生じるカルボニル部分に機能的部分Zを連結するために存在する。
【0191】
いくつかの実施形態では、Lは、ヘテロ原子並びにアリール及び/又はヘテロアリール基などの環状部分を含み得る何れかの化学鎖であり得る。
【0192】
いくつかの実施形態では、Lは、最大1000個の炭素原子及びさらに多数を含み得る。Lの長さ及び化学的性質は、AAVベクターにカップリングされることが意図される機能的部分Z及び求める生物学的効果に応じて最適化され得る。
【0193】
いくつかの実施形態では、Lは、2~1000個の炭素原子、好ましくは2~500個の炭素原子、2~300個の炭素原子、例えば2~100個の炭素原子、2~40個の炭素原子、4~30個の炭素原子又は4~20個の炭素原子を含む化学鎖基である。
【0194】
いくつかの実施形態では、Lは、機能的部分Zをカルボニル部分に連結し、好ましくは最大1000個の炭素原子を含み、好ましくは任意選択的にヘテロ原子(例えば、O、NH、S、Se又はP)並びに/又はアリール及び/若しくはヘテロアリール基などの環状部分を含む化学鎖の形態である。
【0195】
いくつかの実施形態では、Lは、アルキル(例えば、C1-20、C1-12、C1-6アルキル)、エーテル、ポリエーテル、ポリエステル、アルキルアミド又はそれらの組み合わせから選択され得る。本明細書中で使用される場合、「組み合わせ」は、Lが、-O-、-S-、-NHC(O)-、-OC(O)-、-C(O)-O-C(O)-、-NH-、-NH-CO-NH-、-O-CO-、-NH-(CS)-NH-、-NH-CS-ホスホジエステル又はホスホロチオエート基などの何らかの適切な基により連結されるいくつかの炭化水素鎖、オリゴマー鎖又はポリマー鎖(例えば2、3、4、5又は6個)を含み得ることを意味する。-(CH-(式中、「n」は約2~約20又はそれより多い)を含むがこれらに限定されない様々なアルキルの使用が企図される。いくつかの実施形態では、Lは、C2-20直鎖又は分枝状アルキル鎖を含む。いくつかの実施形態では、Lは、ポリエーテル(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレングリコール)である。様々なエーテル及びポリエーテルの使用は、-(OCHCH-(式中、「n」は約1~約20又はそれより多くの整数である)を含むがこれらに限定されない様々なエーテル及びポリエーテルの使用が企図される。いくつかの実施形態では、Lは、式-(OCHCH-のポリエチレングリコール(「PEG」)(式中、「n」は、1~10の整数、1~6の整数及び3~6の整数及び3~5の整数又は1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10から選択される整数である)である。いくつかの実施形態では、Lは、例えば式-(OCH(CH)CH-(式中、「n」は、1~10の整数、1~6の整数及び3~6の整数及び3~5整数又は1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10から選択される整数である)のポリプロピレングリコールである。いくつかの実施形態では、Lはアルキルアミドである。-(CH-C(O)NH-(CH-及び-(OCHCH-C(O)NH-(OCHCH-(式中、「m」及び「p」は、同じであってもよいし又は異なっていてもよく、「m」及び「p」は、約1~約20又はそれより多い)を含むがこれらに限定されない様々なアルキルアミドの使用が企図される。いくつかの実施形態では、Lは、式-(CH-C(O)NH-(CH-又は-(OCHCH-C(O)NH-(OCHCH-のアルキルアミドである(式中、「m」及び「p」は、それぞれ独立して、1~10の整数、1~6の整数及び3~6の整数及び3~5の整数から選択されるか、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10から独立して選択される整数である)。-R-C(O)NH-R-(式中、「R」及び「R」は、それぞれ独立して、アルキル(例えば、C1-20、C1-12、C1-6アルキル)、エーテル又はポリエーテル(例えば約200~2,000g/molの分子量を有するPEG)から選択される)を含むがこれらに限定されないアルキル又はエーテル結合の連結単位を有する様々なアミドの使用が企図される。
【0196】
いくつかの実施形態では、Lは、アルキレンジアミン、例えば、-NH-(CH-NH-(式中、「r」は、2~20、例えば2~10の整数又は2、3、4若しくは5から選択される整数である)も含み得る。いくつかの実施形態では、Lは、アルキレンジアミンのポリマー(ポリアミンとしても知られる)、例えば式-NH-[(CH-NH]-の化合物(式中、「r」は、上記及び本明細書中で定義されるとおりであり、tは、少なくとも2、例えば少なくとも3、4、5、10又はそれより多くの整数である)である。関心対象のアルキルジアミンのポリマーは、例えば、スペルミジン及びスペルミンである。
【0197】
いくつかの実施形態では、Lは、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(pHPMA)、(例えば、pHPMAの分子量は、約200~約5000g/molである)などのポリアミドも含み得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、Lは、ポリカプロラクトン(例えば分子量が約200~約5000g/molのポリカプロラクトン)又はポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)(例えば分子量が約200~約5000g/molであるPLGA)などのポリエステルも含み得る。
【0199】
いくつかの実施形態では、Lは、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状C~C40炭化水素鎖、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、pHPMA、PLGA、アルキレンジアミンのポリマー及びそれらの組み合わせを含むか又はそれらからなる任意選択的に置換される基から選択され得る。
【0200】
いくつかの実施形態では、Lは、2~40個のエチレングリコール単量体、例えば2~10個を含むポリエチレングリコール(PEG)、例えば-(OCHCH-(本明細書中で「PEG2」と呼ぶ)、-(OCHCH-(本明細書中で、「PEG3」と呼ぶ)、-(OCHCH-(本明細書中で「PEG3」と呼ぶ)、-(OCHCH-(本明細書中で「PEG4」と呼ぶ)又は-(OCHCH-(本明細書中で「PEG5」と呼ぶ)などである。
【0201】
いくつかの実施形態では、Lは、アリール基及び/又はヘテロアリール基などの1個以上の芳香族基を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、Lは、任意選択的に置換されるフェニル部分を含む。例えば、いくつかの実施形態では、Lは、トリアゾリル部分、好ましくは1,2,3-トリアゾリル部分を含む。いくつかの実施形態では、Lは、フェニル及び1,2,3-トリアゾリル部分の両方を含む。
【0202】
いくつかの実施形態では、Lは、アルキル、エーテル、ポリエーテル、アルキルアミド、アリール基、ヘテロアリール基又はそれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態では、Lは、ポリエーテル、アリール基、ヘテロアリール基又はそれらの組み合わせを含む。
【0203】
特定の実施形態では、Lは、アリール基及び/又はヘテロアリール基などの1個以上の芳香族基を含むPEGである。特定の実施形態では、Lは、アリール基及びヘテロアリール基、好ましくはフェニル基及びトリアゾリル基を含むPEGである。
【0204】
、R1’、R及びR2’
いくつかの実施形態では、R、R1’、R及びR2’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン又は任意選択的に置換されるC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、R、R1’、R及びR2’のそれぞれが水素である。
【0205】
いくつかの実施形態では、Rはハロゲンである。いくつかの実施形態では、Rは、フッ素である。いくつかの実施形態では、Rは、任意選択的に置換されるC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、R1’はハロゲンである。いくつかの実施形態では、R1’はフッ素である。いくつかの実施形態では、R1’は、任意選択的に置換されるC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、Rはハロゲンである。いくつかの実施形態では、Rはフッ素である。いくつかの実施形態では、Rは、任意選択的に置換されるC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、R2’はハロゲンである。いくつかの実施形態では、R2’はフッ素である。いくつかの実施形態では、R2’は、任意選択的に置換されるC1-6アルキルである。
【0206】
いくつかの実施形態では、R及びR1’又はR及びR2’は、それらの介在する原子とともに、一体となって任意選択的に置換されるスピロ縮合環を形成する。いくつかの実施形態では、R及びR1’又はR及びR2’は、それらの介在する原子とともに、一体となって、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、任意選択的に置換される6~11員スピロ縮合環を形成する。
【0207】
いくつかの実施形態では、R及びRは、それらの介在する原子とともに、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0~2個のヘテロ原子を有する、任意選択的に置換される3~7員の飽和、部分的不飽和又はアリール環を形成する。
【0208】
AAVベクターの式
いくつかの実施形態では、本発明は、式(II):
【化22】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、

【化23】
、R、R1’、R、R2’ L及びZは、上記及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義され、記載されるとおりである)を含むAAVベクターを指す。
【0209】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(IIa):
【化24】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、

【化25】
、R、R1’、R、R2’及びZは、上記及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義され、記載されるとおりであり;
は、任意選択的に置換されるアリール又はヘテロアリール基であり;
は、任意選択的に置換されるヘテロアリール基であり;
は、好ましくは最大1000個の炭素原子を含む、及び好ましくは任意選択的にヘテロ原子及び/又は環状部分を含む化学鎖の形態である、リンカーである)を含むAAVベクターに関する。
【0210】
いくつかの実施形態では、Lは、任意選択的に置換されるアリール基である。いくつかの実施形態では、Lは、任意選択的に置換されるフェニルである。いくつかの実施形態では、Lはフェニルである。いくつかの実施形態では、Lは、任意選択的に置換されるヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、Lは、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む、任意選択的に置換される6員ヘテロアリール基である。いくつかの実施形態では、Lは、任意選択的に置換されるピラジニル、ピリジニル、ピリミジニル又はトリアジニルである。いくつかの実施形態では、Lは、ピラジニル、ピリジニル、ピリミジニル又はトリアジニルである。
【0211】
いくつかの実施形態では、Lは、任意選択的に置換されるヘテロアリール基である。いくつかの実施形態では、Lは、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む任意選択的に置換される5員ヘテロアリール基である。いくつかの実施形態では、Lは、任意選択的に置換されるピラゾリル、イミダゾリル又はトリアゾリルである。いくつかの実施形態では、Lは、任意選択的に置換されるトリアゾリルである。いくつかの実施形態では、Lは、ピラゾリル、イミダゾリル又はトリアゾリルである。いくつかの実施形態では、Lはトリアゾリルである。
【0212】
いくつかの実施形態では、Lは、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状C-C40炭化水素鎖、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、pHPMA、PLGA、アルキルジアミンのポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される任意選択的に置換される基であり;好ましくはLは、ポリエチレングリコールである。
【0213】
いくつかの実施形態では、Lは、アルキル(例えばC1-20、C1-12、C1-6アルキル)、エーテル、ポリエーテル、ポリエステル、アルキルアミド又はそれらの組み合わせから選択され得る。本明細書中で使用される場合、「組み合わせ」は、Lが、いくつかの炭化水素鎖、何れかの適切な基、例えば-O-、-S-、-NHC(O)-、-OC(O)-、-C(O)-O-C(O)-、-NH-、-NH-CO-NH-、-O-CO-、-NH-(CS)-NH-、-NH-CS-ホスホジエステル又はホスホロチオエート基などにより連結されるオリゴマー鎖又はポリマー鎖(例えば2、3、4、5又は6個)を含み得ることを意味する。-(CH-(式中、「n」は、約2~約20又はそれより多い)を含むがこれらに限定されない様々なアルキルの使用が企図される。いくつかの実施形態では、Lは、C2-20直鎖又は分枝状アルキル鎖を含む。いくつかの実施形態では、Lは、ポリエーテル(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレングリコール)である。-(OCHCH-(式中、「n」は約1~約20又はそれより多い)を含むがこれらに限定されない様々なエーテル及びポリエーテルの使用が企図される。いくつかの実施形態では、Lは、式-(OCHCH-(式中、「n」は、1~10の整数、1~6の整数及び3~6の整数及び3~5の整数から選択されるか又は1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10から選択される整数である)のポリエチレングリコール(「PEG」)である。いくつかの実施形態では、Lは、例えば式-(OCH(CH)CH-(式中、「n」は、1~10の整数、1~6の整数及び3~6の整数及び3~5の整数であるか又は1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10から選択される整数である)のポリプロピレングリコールである。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では(In some embodiments,In some embodiments)、Lはアルキルアミドである。-(CH-C(O)NH-(CH-及び-(OCHCH-C(O)NH-(OCHCH-(式中、「m」及び「p」は、同じであってもよいし又は異なっていてもよく、「m」及び「p」は、約1~約20又はそれより多い)を含むがこれらに限定されない様々なアルキルアミドの使用が企図される。いくつかの実施形態では、Lは、式-(CH-C(O)NH-(CH-又は-(OCHCH-C(O)NH-(OCHCH-(式中、「m」及び「p」は、それぞれ独立して、1~10の整数、1~6の整数及び3~6の整数及び3~5の整数から選択されるか又は1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10から独立して選択される整数である)のアルキルアミドである。-R-C(O)NH-R-(式中、「R」及び「R」は、それぞれ独立してアルキル(例えば、C1-20、C1-12、C1-6アルキル)、エーテル又はポリエーテルから選択される)を含むがこれらに限定されないアルキル又はエーテル結合の連結単位を有する様々なアミドの使用が企図される。
【0214】
いくつかの実施形態では、Lは、アルキレンジアミン、例えば-NH-(CH-NH-(式中、「r」は、2~20、例えば2~10の整数又は2、3、4若しくは5から選択される整数である)も含み得る。いくつかの実施形態では、Lは、アルキレンジアミンのポリマー(ポリアミンとしても知られる)、例えば式-NH-[(CH-NH]-の化合物(式中、「r」は上記及び本明細書中で定義されるとおりであり、tは、少なくとも2、例えば少なくとも3、4、5、10又はそれより多くの整数である)である。関心対象のアルキルジアミンのポリマーは、例えば、スペルミジン及びスペルミンである。
【0215】
いくつかの実施形態では、Lは、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(pHPMA)、(例えば分子量が約200~約5000g/molであるpHPMA)などのポリアミドも含み得る。
【0216】
いくつかの実施形態では、Lは、ポリカプロラクトン(例えば分子量が約200~約5000g/molであるポリカプロラクトン)又はポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)(例えば分子量が約200~約5000g/molであるPLGA)などのポリエステルも含み得る。
【0217】
いくつかの実施形態では、Lは、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状C-C40炭化水素鎖、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、pHPMA、PLGA、アルキレンジアミンのポリマー及びそれらの組み合わせを含むか又はそれらからなる任意選択的に置換される基から選択され得る。
【0218】
いくつかの実施形態では、Lは、例えば-(OCHCH-(本明細書中で「PEG2」と呼ぶ)、-(OCHCH-(本明細書中で「PEG3」と呼ぶ)、-(OCHCH-(本明細書中で「PEG3」と呼ぶ)、-(OCHCH-(本明細書中で「PEG4」と呼ぶ)又は-(OCHCH-(本明細書中で「PEG5」と呼ぶ)などの、2~40個、例えば2~10個のエチレングリコール単量体を含むポリエチレングリコール(PEG)である。
【0219】
いくつかの実施形態では、Lは、アリール基及び/又はヘテロアリール基などの1個以上の芳香族基を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、Lは、任意選択的に置換されるフェニル部分を含む。例えば、いくつかの実施形態では、Lは、トリアゾリル部分、好ましくは1,2,3-トリアゾリル部分を含む。いくつかの実施形態では、Lは、フェニル及び1,2,3-トリアゾリル部分の両方を含む。
【0220】
いくつかの実施形態では、Lは、アルキル、エーテル、ポリエーテル、アルキルアミド、アリール基、ヘテロアリール基又はそれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態では、Lは、ポリエーテル、アリール基、ヘテロアリール基又はそれらの組み合わせを含む。
【0221】
特定の実施形態では、Lは、アリール基及び/又はヘテロアリール基などの1個以上の芳香族基を含むPEGである。特定の実施形態では、Lは、アリール基及びヘテロアリール基、好ましくはフェニル基及びトリアゾリル基を含むPEGである。
【0222】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(IIb):
【化26】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、
【化27】
、N、R、R1’、R、R2’、L、L及びZは、上記及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義され、記載されているとおりであり;
、R3’、R及びR4’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、-OR、-NR、-CN、-SR、若しくはC1-6アルキル、若しくは、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~3個のヘテロ原子を有する3~7員の飽和、部分的不飽和、アリール若しくはヘテロアリール環から選択される任意選択的に置換される基であるか;又は
及びR若しくはR3’及びR4’は、それらの介在する原子とともに、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0~2個のヘテロ原子を有する任意選択的に置換される3~7員の飽和、部分的不飽和、若しくはアリール、若しくはヘテロアリール環を形成してもよく;
好ましくはR、R3’、R及びR4’は水素原子であり;
各Rは、水素又はC1-6アルキルから独立して選択される)を含むAAVベクターに関する。
【0223】
いくつかの実施形態では、Rは水素である。いくつかの実施形態では、Rはハロゲンである。いくつかの実施形態では、Rはフッ素である。いくつかの実施形態では、Rは、C1-6アルキルから選択される、任意選択的に置換される基である。いくつかの実施形態では、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルである。いくつかの実施形態では、Rは、任意選択的に置換されるフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0~3個のヘテロ原子を含む任意選択的に置換される飽和又は部分的不飽和環である。いくつかの実施形態では、Rは、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子(heteoratoms)を有する任意選択的に置換される5~6員ヘテロアリール環である。
【0224】
いくつかの実施形態では、R3’は水素である。いくつかの実施形態では、R3’はハロゲンである。いくつかの実施形態では、R3’はフッ素である。いくつかの実施形態では、R3’は、C1-6アルキルから選択される任意選択的に置換される基である。いくつかの実施形態では、R3’は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルである。いくつかの実施形態では、R3’は、任意選択的に置換されるフェニルである。いくつかの実施形態では、R3’は、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0~3個のヘテロ原子を含む任意選択的に置換される飽和又は部分的不飽和環である。いくつかの実施形態では、R3’は、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子(heteoratoms)を有する任意選択的に置換される5~6員ヘテロアリール環である。
【0225】
いくつかの実施形態では、Rは水素である。いくつかの実施形態では、Rはハロゲンである。いくつかの実施形態では、Rはフッ素である。いくつかの実施形態では、Rは、C1-6アルキルから選択される、任意選択的に置換される基である。いくつかの実施形態では、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルである。いくつかの実施形態では、Rは、任意選択的に置換されるフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0~3個のヘテロ原子を含む任意選択的に置換される飽和又は部分的不飽和環である。いくつかの実施形態では、Rは、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子(heteoratoms)を有する任意選択的に置換される5~6員ヘテロアリール環である。
【0226】
いくつかの実施形態では、R4’は水素である。いくつかの実施形態では、R4’はハロゲンである。いくつかの実施形態では、R4’はフッ素である。いくつかの実施形態では、R4’は、C1-6アルキルから選択される任意選択的に置換される基である。いくつかの実施形態では、R4’は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルである。いくつかの実施形態では、R4’は、任意選択的に置換されるフェニルである。いくつかの実施形態では、R4’は、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0~3個のヘテロ原子を含む任意選択的に置換される飽和又は部分的不飽和環である。いくつかの実施形態では、R4’は、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子(heteoratoms)を有する任意選択的に置換される5~6員ヘテロアリール環である。
【0227】
いくつかの実施形態では、R及びR又はR3’及びR4’は、それらの介在する原子とともに、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0~2個のヘテロ原子を有する任意選択的に置換される3~7員の飽和、部分的不飽和又はアリール又はヘテロアリール環を形成してもよい。
【0228】
いくつかの実施形態では、R、R3’、R及びR4’のそれぞれは水素である。
【0229】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(IIc):
【化28】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、
【化29】
、N、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、L及びZは、上記及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義され、記載されているとおりであり;

【化30】
は、独立して単結合又は二重結合である)を含むAAVベクターを指す。
【0230】
いくつかの実施形態では、各
【化31】
は、独立して単結合又は二重結合であり、得られる環がトリアゾリルとなる。
【0231】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(IId):
【化32】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、
【化33】
、N、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、L及びZは、上記及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義され、記載されているとおりである)を含むAAVベクターに関する。
【0232】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(IIe):
【化34】
による部分又はその薬学的に許容可能な塩(式中、
【化35】
、N、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’及びZは、上記及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義され、記載されているとおりであり、
nは、1~20の範囲の整数であり;好ましくはnは3~5の範囲;より好ましくはnは3である)を含むAAVベクターに関する。
【0233】
L(又はL)が、機能的部分Zに直接連結されるPEG基を含む例、Zの側面に存在するPEG基の末端酸素原子はZの一部であり得ると認識される。これは、例えばZが、アノマー炭素がPEGリンカーを保有する糖である例に当てはまる。この例は、本明細書中で後に詳述され、以下で挙げられるように実装されるリンカー(1)~(4)によって例示される。
【0234】
例示的な実施形態では、本発明のAAVベクターは、次のもの:
【表1】
【0235】
例示的な実施形態では、本発明のAAVベクターは、次のもの:
【表2】
【0236】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、(1)-AAV2、(2)-AAV2、(3)-AAV2、(4)-AAV2、(7)-AAV2、(8)-AAV2、(9)-AAV2、(1)-AAV5、(1)-AAV8、(3)-AAV8及び(1)-AAV9から選択される。いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、(1)-AAV2、(2)-AAV2、(3)-AAV2、(4)-AAV2、(1)-AAV5、(1)-AAV8、(3)-AAV8及び(1)-AAV9から選択される。本明細書中で使用される命名法、例えば「(1)-AAV2」は、部分(1)で修飾され、その結果(1)-AAV2を生じる血清型AAV2のAAVベクターを指す。他のAAV血清型及び修飾する基に対して同じ命名法が使用される。
【0237】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、GBA遺伝子、好ましくはヒトGBA遺伝子のcDNAを含む少なくとも1つの導入遺伝子を含む(1)-AAV2であり、任意選択的に導入遺伝子は、少なくとも1つの調節エレメント、好ましくは上で定義されるようなプロモーター、より好ましくはCAGプロモーターの制御下にある。
【0238】
ヒトGBA遺伝子のcDNAの代表的な核酸配列は、配列番号1、又は配列番号1と少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%以上の配列同一性を有する核酸配列を含むか又はそれからなる。
【0239】
一実施形態では、ヒトGBA遺伝子のcDNAの核酸配列は、配列番号2、又は配列番号2と少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなるアミノ酸配列をコードする。
【0240】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、(1)-AAVをもたらす、部分(1)を含むAAVベクターではない。
【0241】
ラクタム修飾AAVベクターを調製するための方法
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明によるAAVベクターを製造する方法にさらに関する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、ラクタム(例えばβ-ラクタム)を開環して共有結合を形成するようにラクタム(例えばβ-ラクタム)基をAAVベクターのカプシドのアミノ酸残基の少なくとも1つのアミノ基と反応させるのに適切な条件下で、AAVベクターを、ラクタム(例えばβ-ラクタム)基を含む化合物とインキュベートすることを含む。
【0242】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターを製造する方法は、AAVを、式(I)
【化36】
の化合物又はその塩
(式中、R、R1’、R、R2’、L及びZは、本明細書中で定義され、本明細書中のクラス及びサブクラスで記載されるとおりである)と;
式(II):
【化37】
の少なくとも1つの部分(式中、
【化38】
、N、R、R1’、R、R2’、L及びZは、上記で定義される通りであり、本明細書中のクラス及びサブクラスで記載されるとおりである)を得るために適切な条件下で、インキュベートする段階を含む。
【0243】
いくつかの実施形態では、式(II)の少なくとも1つの部分を得るために適切な条件は、AAVベクターのカプシドのアミノ酸残基のアミンとβ-ラクタムを反応させるために適切な条件を含む。
【0244】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、前記AAVの構造完全性を損なうことなくAAVベクターのカプシドのアミノ酸残基のアミノ基と前記ラクタム(例えばβ-ラクタム)基との間の共有結合の形成を促進するために適切な条件でラクタム(例えばβ-ラクタム)基を含む化合物(例えば式(I)の化合物)とインキュベートされる。
【0245】
いくつかの実施形態では、インキュベーションは、pHの範囲が5.5~10、好ましくは7~10、例えば9~10、例えば9.3などである水性緩衝液中で行われ得る。いくつかの好ましい実施形態では、pHは9.3である。
【0246】
いくつかの実施形態では、インキュベーション緩衝液は、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、Hepes緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液例えばPBS又はダルベッコリン酸緩衝食塩水(dPBS)から選択され得る。いくつかの好ましい実施形態では、緩衝液はトリス緩衝液である。
【0247】
いくつかの実施形態では、インキュベーションは、数分間~数時間、例えば5分~6時間、例えば3~5時間続き得る。いくつかの好ましい実施形態では、インキュベーションは約4時間である。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、カップリングの十分な収率が達成された時に終了する。
【0248】
いくつかの実施形態では、インキュベーションの温度は一般的に4℃~50℃である。いくつかの好ましい実施形態では、インキュベーションは、室温で、即ち18℃~30℃の温度、例えば20℃前後で行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーション溶液を撹拌してもよい。
【0249】
いくつかの実施形態では、ラクタム(例えばβ-ラクタム)基を含む化合物のAAVベクターに対するモル比は、1.10~1.10、例えば1.10~5.10であり得る。いくつかの好ましい実施形態では、ラクタム(例えばβ-ラクタム)は、3.10当量モル過剰量で存在する。
【0250】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、上記のインキュベーション段階の前又は後に1つ又はいくつかのさらなる段階を含み得る。
【0251】
例えば、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、改変しようとするAAVベクターを提供するか又は生成する予備的な段階を含み得る。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、ラクタム(例えばβ-ラクタム)基を含む化合物(例えば式(I)の化合物)を提供又は調製する予備的な段階も含み得る。
【0252】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、インキュベーション段階後に、以下のような1つ又はいくつかのさらなる段階も含み得る:
-例えば透析又はタンジェンシャルフローろ過によって、インキュベーション段階の終了時にラクタム(例えばβ-ラクタム)基を含む未反応化合物(例えば式(I)の化合物)を除去する段階及び/又は
-化学的に修飾されたAAV粒子を収集する段階、及び/又は
-AAVベクターを精製する段階、及び/又は
-AAVベクターを回収する段階、及び/又は
-AAVベクターを調合する及び/又はパッケージングする段階。
【0253】
ラクタム基を含む化合物
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のAAVベクターを得るために使用されるラクタム(例えばβ-ラクタム)基を含む化合物にさらに関する。
【0254】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(I):
【化39】
の化合物又はその塩(式中、
Z、L、R、R1’、R及びR2’は、上記及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義され、記載されるとおりである)を提供する。
【0255】
いくつかの実施形態では、提供される化合物は、式(Ia):
【化40】
の化合物又はその塩(式中、
Z、L、L、L、R、R1’、R及びR2’は、上記及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義され、記載されるとおりである)である。
【0256】
いくつかの実施形態では、提供される化合物は、式(Ib):
【化41】
の化合物又はその塩(式中、
、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、L、L及びZは、上記及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義され、記載されるとおりである)である。
【0257】
いくつかの実施形態では、提供される化合物は、式(Ic):
【化42】
の化合物又はその塩(式中、
、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、L、Z及び
【化43】
は、上記及び本明細書中のクラス及びサブクラスで定義され、記載されるとおりである)である。
【0258】
いくつかの実施形態では、提供される化合物は、式(Id):
【化44】
の化合物又はその塩
(式中、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、L及びZは、上記及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義され、記載されるとおりである)である。
【0259】
いくつかの実施形態では、提供される化合物は、式(Ie):
【化45】
の化合物又はその塩(式中、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’及びZは、上記及び本明細書中のクラス及びサブクラスにおいて定義され、記載されるとおりであり;
nは、1~20の範囲の整数であり;好ましくはnは3~5の範囲であり;より好ましくはnは3である)である。
【0260】
いくつかの実施形態では、化合物は、表2の化合物又はその塩から選択される。
【表3】
【0261】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)又は(Ie)の化合物又はその塩を提供し、ただし、本化合物は化合物(1)ではない。
【0262】
式(I)の化合物が当業者に公知の方法によって製造され得ることが認識される。
【0263】
トリアゾールを含む式(I)の化合物の場合、クリック化学の段階を使用して、本化合物を提供することができる。例として、実施例の節に記載のラクタムリンカー(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)及び(9)の合成を指すことができる。
【0264】
提供されるAAVベクターの使用
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、研究ツールとして使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、例えばDNA又はRNAなどの治療用核酸の送達のためのベクターとして遺伝子治療における医薬として使用され得る。いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、例えばイメージング剤として診断手段において使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、治療及び診断ツールの両方の組み合わせとして、例えば治療用途として使用することができる。
【0265】
AAVベクターの生物学的機能性及び/又は特性の改変
いくつかの実施形態では、AAVベクターのカプシドの化学修飾は、その生物学的機能性及び/又は特性のうちの1つ又はいくつかを改変し得る。いくつかの実施形態では、生物学的機能性及び/又は特性は、本発明においてAAVベクターを改変するために導入される機能的部分Zの性質に依存し得る。いくつかの実施形態では、改変AAVベクターの1つ以上の生物学的特性は、以下のように、非改変AAVベクターと比較して変更することができる:
-特定の臓器、組織及び/又は細胞タイプに対するAAVベクターの選択性の改変(例えば選択性の増加又はある組織/臓器/細胞から別の組織/臓器/細胞への選択性のシフト);及び/又は
-AAVベクターの免疫学的反応性の改変、例えばAAVベクターの免疫原性の低下及び/又は中和抗体に対する親和性の低下及び/又はインビボで投与される場合に前記AAVベクターが変更された液性応答の変化を誘発し、例えばAAVに対する中和抗体を生成しない;及び/又は
-AAVベクターの感染効率の上昇;及び/又は
-特定の細胞、組織及び/又は臓器に対するAAVベクターの形質導入効率の上昇;及び/又は
-培養中の細胞に形質導入する場合の細胞毒性の低下;及び/又は
-癌細胞の誘導された細胞標的化死;及び/又は
-インビボ投与時又はインビトロでの細胞改変時のAAVベクターの可視化/モニタリングを可能にすること;及び/又は
-セラグノスティックな適用;例えば治療剤及び診断剤を組み合わせること、を可能にすること。
【0266】
いくつかの実施形態では、医薬として、例えば遺伝子治療のための遺伝子ベクターとしてAAVベクターが使用される場合、このような改変された特性の結果、AAVベクターの治療指数が改善され得る。いくつかの実施形態では、AAVベクターの治療指数の改善は、求められる治療効果を達成するために対象に投与されるAAVの相対用量を低下させることによって起こり得、このような投与量の減少は、AAV治療レジメンの相対的毒性を減少させ得る。
【0267】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、肝臓、心臓、脳、関節、網膜及び/又は骨格筋から選択される臓器又は細胞に対する優先的な指向性を示す。いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、肝細胞、心筋細胞、筋細胞、ニューロン、運動ニューロン、網膜色素細胞、光受容体、軟骨細胞、造血幹細胞(HSC)及び/又は人工多能性幹細胞(iPS)から選択されるがこれらに限定されない培養された細胞に対する優先的な指向性を示す。
【0268】
細胞を形質導入するための使用及び方法
いくつかの実施形態では、本発明は、対象の細胞への形質導入に使用するための、本発明によるAAVベクターに関する。
【0269】
「細胞に形質導入する」とは、本明細書中で細胞への核酸の送達を指す。形質導入された関心対象の核酸は、あらゆるタイプであり得、求められる効果に応じて選択される。いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターを細胞に形質導入するために使用する場合、これは導入遺伝子を含む。
【0270】
いくつかの実施形態では、例えば、AAVベクターは、外因性遺伝子発現カセットを含み得る。いくつかの実施形態では、前記カセットは、プロモーター、関心対象の遺伝子及びターミネーターを含み得る。いくつかの実施形態では、さらなる又は代替的な例として、本発明のAAVベクターは、細胞における相同組み換えのためのDNA鋳型を含み得る。いくつかの実施形態では、このようなAAVベクターは、標的化される細胞における相同組み換えを促進するための遺伝子編集ツールと組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、遺伝子編集ツールは、何れのタイプであってもよく、CRISPR及びその関連する系(Casタンパク質、例えばCas9タンパク質又はその融合タンパク質、crRNA及びtracrRNAを含むがこれらに限定されず、後者の2つは個別であるか又は単一のgRNAにともに連結されている)、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ並びに前記遺伝子編集タンパク質をコードするRNA及びDNA及びそれらの関連する系を包含するがこれらに限定されない。
【0271】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象の細胞に形質導入するための本発明によるAAVベクターの使用にも関する。
【0272】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明によるAAVベクターを前記対象に投与することを含む、対象の細胞に形質導入するための方法にも関する。
【0273】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞に導入遺伝子を送達する方法であって、細胞を、本発明によるAAVベクター、即ちβ-ラクタム部分を含む化合物とアミノ基の反応から得られる部分を介してAAVベクターのカプシドのアミノ基に共有結合された機能的部分と、接触させた細胞において発現される導入遺伝子とを含むAAVベクターと接触させることを含む方法にも関する。
【0274】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象に導入遺伝子を含む本発明によるAAVベクターを投与することを含む、対象の細胞に導入遺伝子を送達するための方法にも関する。
【0275】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞を本発明によるAAVベクターと接触させることを含む、細胞に形質導入するためのインビトロ又はエクスビボの方法にさらに関する。いくつかの実施形態では、細胞は対象(例えば患者)由来であり得る。いくつかの実施形態では、形質導入後、細胞は、それを必要とする対象(例えば患者及び/又は別の対象)に移植され得る。
【0276】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、インビボ、エクスビボ又はインビトロで細胞に投与することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、マウス、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ラットなど)由来であり得る。いくつかの実施形態では、細胞はヒト由来であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、肝細胞、心筋細胞、筋細胞、ニューロン、運動ニューロン、網膜色素細胞、光受容体、軟骨細胞、造血幹細胞(HSC)又は人工多能性幹細胞(iPS)であり得るがこれらに限定されない。
【0277】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、次の細胞の何れか又はいくつかに特異的に形質導入する:ニューロン(例えば、錐体ニューロン、プルキンエニューロン、紡錘ニューロン、中型有棘ニューロン及び/又は介在ニューロン[例えば、ゴルジ細胞、ルガロ細胞、バスケット細胞、星細胞、カンデラブルム細胞、単極刷毛細胞、顆粒細胞、レンショウ細胞、1a抑制性ニューロン、1b抑制性ニューロン、パルブアルブミン発現介在ニューロン、CCK発現介在ニューロン、VIP発現介在ニューロン、SOM発現介在ニューロン、コリン作動性介在ニューロン、チロシンヒドロキシラーゼ発現介在ニューロン、カルレチニン発現介在ニューロン又は一酸化窒素シンターゼ発現介在ニューロン]など)、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリア細胞、上衣細胞、放射状グリア細胞及び/又は下垂体細胞。
【0278】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、次の細胞の何れか又はいくつかに特異的に形質導入する:ニューロン(例えば、錐体ニューロン、プルキンエニューロン、紡錘ニューロン、中型有棘ニューロン及び/又は介在ニューロン[例えばゴルジ細胞、ルガロ細胞、バスケット細胞、星細胞、カンデラブルム細胞、単極刷毛細胞、顆粒細胞、レンショウ細胞、1a抑制性ニューロン、1b抑制性ニューロン、パルブアルブミン発現介在ニューロン、CCK発現介在ニューロン、VIP発現介在ニューロン、SOM発現介在ニューロン、コリン作動性介在ニューロン、チロシンヒドロキシラーゼ発現介在ニューロン、カルレチニン発現介在ニューロン又は一酸化窒素シンターゼ発現介在ニューロン]など)。
【0279】
いくつかの実施形態では、本発明によるAVベクターは、以下の細胞の1つ以上(又は全て)に特異的に形質導入しない:オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリア細胞、上衣細胞、放射状グリア細胞及び/又は下垂体細胞。
【0280】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、処置及び/又は予防的介入のために多岐にわたる細胞、組織及び/又は臓器を標的とし得る。例えば、いくつかの実施形態では、AAVベクター標的は、肝細胞;網膜の細胞;即ち光受容体、網膜色素上皮(RPE)、ミュラー細胞;内耳の細胞(例えば内有毛細胞及び/又は外有毛細胞、ヘンゼン細胞、ダイテルス細胞、柱細胞、内指節細胞、境界細胞など);筋肉細胞、即ち筋芽細胞、サテライト細胞;中枢神経系(CNS)の細胞、即ちニューロン、グリア細胞;心臓の細胞;末梢神経系(PNS)の細胞;骨芽細胞;腫瘍細胞;血液細胞、例えばリンパ球、単球、好塩基球、好酸球、好中球、肥満細胞など;造血幹細胞を含む造血系の細胞;人工多能性幹細胞(iPS)などを包含するがこれらに限定されない。AAVにより標的とされ得る組織及び臓器の例としては、眼、網膜、耳、肝臓、骨格筋、心筋、平滑筋、脳、脊椎、骨、結合組織、心臓、腎臓、肺、リンパ節、乳腺、ミエリン、前立腺、精巣、胸腺、甲状腺、気管などが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、好ましい細胞タイプは、肝細胞、網膜細胞、筋肉細胞、CNSの細胞、PNSの細胞及び/又は造血系細胞である。いくつかの実施形態では、好ましい組織及び/又は臓器は、肝臓、筋肉、心臓、眼及び/又は脳である。
【0281】
いくつかの実施形態では、網膜細胞を含む1つ以上の細胞タイプを標的とする場合、本明細書中に記載のAAVは、CNSの細胞を標的とすると考えられる。いくつかの実施形態では、網膜細胞を標的とすることは、CNS標的化を表すとみなされない。
【0282】
遺伝子治療での使用
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のAAVベクターは、例えば対象に関心対象の治療用核酸を送達するために、遺伝子治療において特に有用であり得る。
【0283】
従って、いくつかの実施形態では、本発明は、遺伝子治療での使用のための本発明によるAAVベクターにも関する。
【0284】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明によるAAVベクターを前記対象に投与することを含む、遺伝子治療を必要とする対象における遺伝子治療の方法にも関する。
【0285】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVは、対象への何れかの適切な経路により送達され得る。いくつかの実施形態では、適切な投与経路は、吸入、局所、組織内(例えば筋肉内、心臓内、肝内、腎臓内)、結膜(例えば網膜内、網膜下)、粘膜(例えば口腔、鼻腔)、関節内、硝子体内、頭蓋内、血管内(例えば静脈内)、脳室内、大槽内、腹腔内及びリンパ内経路を包含するがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、投与経路は、標的とされる組織及び/又は臓器に応じて、即ち形質導入が求められる組織及び/又は臓器に応じて選択される。
【0286】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、脊髄内及び/又は脳内投与によって投与されるものである。
【0287】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、脊髄内投与されるものである。いくつかの実施形態では、脊髄内投与は、くも膜下腔内及び硬膜外投与を含むか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、脊髄内投与は、くも膜下腔内投与を含むか又はそれからなる。
【0288】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、脳内に投与されるものである。
【0289】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、脳内に投与されるものであり、脳内投与は、線条体(例えば、被殻、尾状核、側坐核、嗅結節、淡蒼球外節及び/又は淡蒼球内節など)、視床、視床下部、視床上部、腹側視床、実質、大脳、髄質、深部小脳核(例えば、黒質、歯状核、栓状核、球状核及び/又は室頂核)、脳脊髄液(CSF)、髄膜、硬膜、くも膜、軟膜、くも膜下槽(例えば、大槽、橋槽、脚間槽、交差槽、大脳外側窩の槽、上槽及び/又は終板槽など)、くも膜下腔、皮質、中隔、脳橋及び/又は小脳を含むか又はそれらからなる群から選択される部位での投与である。
【0290】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、線条体内(即ち線条体において、例えば被殻、尾状核、側坐核、嗅結節、淡蒼球外節及び/又は淡蒼球内節においてなど)、視床内(即ち視床において)、大槽内(即ち、くも膜下槽において、例えば大槽、橋槽、脚間槽、交差槽、大脳外側窩の槽、上槽及び/又は終板槽においてなど;好ましくは大槽において)に投与されるものである。
【0291】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、実質内に投与されるものである。
【0292】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、線条体内に、視床内に、大槽内に又はくも膜下腔内に投与されるものである。
【0293】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、線条体内に又は視床内に投与されるものである。
【0294】
いくつかの実施形態では、本発明によるAAVベクターは、例えばその全体において参照により本明細書中に組み込まれる国際公開第2021/089856号パンフレットに記載のように脳室内に投与されない。
【0295】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターの投与によって処置される状態は、何れのタイプの状態であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、処置される状態は、伝染性疾患及び遺伝性並びに後天性の遺伝的障害から選択され得る。いくつかの実施形態では、関心対象の遺伝的障害は、遺伝的筋肉障害、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィー、白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症(SMA)、血友病、鎌形赤血球症及び遺伝性網膜ジストロフィーを包含するがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、癌、関節炎、関節症、先天性及び後天性心臓疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病及び感染性疾患(例えばC型肝炎など)などであるがこれらに限定されない障害の処置のためにも使用され得る。
【0296】
いくつかの好ましい実施形態では、本明細書中に記載のAAVベクターは、眼疾患を予防する及び/又は処置するために特に有用であり得る。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、眼疾患の予防及び/又は処置での使用のための本発明によるAAVベクターにも関する。いくつかの実施形態では、本発明は、眼疾患の予防及び/又は処置のための医薬を製造するための本発明によるAAVベクターの使用にさらに関する。いくつかの実施形態では、本発明は、それを必要とする対象において眼疾患を予防及び/又は処置する方法であって、本発明によるAAVベクターを前記対象に投与することを含む方法にも関する。
【0297】
いくつかの好ましい実施形態では、本明細書中に記載のAAVベクターは、CNS疾患を予防及び/又は処置するためにも特に有用であり得る。「中枢神経系」又は「CNS」は、脳及び脊髄の両方を指し、脳及び脊髄を除く「末梢神経系」又は「PNS」と対比をなす。いくつかの実施形態では、眼及び特に網膜は、CNSの一部とはみなされない。いくつかの実施形態では、眼及び特に網膜は、PNSの一部とみなされ得る。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、CNS疾患の予防又は処置での使用のための本発明による改変AAVベクターにも関する。いくつかの実施形態では、本発明は、CNS疾患の予防又は処置用の薬剤の製造のための、本発明による改変AAVベクターの使用にさらに関する。いくつかの実施形態では、本発明は、それを必要とする対象においてCNS疾患を予防及び/又は処置する方法であって、本発明による改変AAVベクターを前記対象に投与することを含む方法にも関する。
【0298】
いくつかの実施形態では、脳組織は、線条体、視床、黒質、頭頂葉皮質、海馬及び/又は淡蒼球であり得るか又はそれらを含み得る。いくつかの実施形態では、CNS部位は、線条体中であり得る。いくつかの実施形態では、CNS部位は、視床中であり得る。いくつかの実施形態では、CNS部位は、大槽中であり得る。
【0299】
本明細書中で使用される場合、「防止する」、「防止すること」及び「防止」という用語は、その目的が、対象が所定の疾患を所定の期間にわたって発症する確率を低下させることである、予防的及び防止的手段を指す。このような低下は、例えば対象において疾患の少なくとも1つの症状の発生を遅延させることにおいて反映され得る。
【0300】
本明細書中で使用される場合、「処置する」又は「処置」又は「軽減」という用語は、その目的が、所定の疾患を緩徐化する(和らげる)ことである、予防的及び防止的手段を除く治療的処置を指す。処置を必要とする者は、既に疾患を有する者並びに疾患を有すると疑われる者を含む。対象は、本発明によるAAVベクターの治療的な量を投与された後、前記対象が以下のうちの1つ以上の観察可能及び/又は測定可能な軽減又はその非存在を示す場合、所定の疾患に対する処置に成功している:疾患に関連する症状の1つ以上;罹患率及び死亡率の低下;並びに/又はクオリティーオブライフ問題の改善。成功した処置及び標的化された疾患の改善を評価するための上記パラメーターは、医師が精通している通常の手順によって容易に測定可能である。
【0301】
本明細書中で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。いくつかの実施形態では、対象は、医療を受けるために待機しているか又は受けている、又は医学的手順の目的であった/目的である/目的であろう、又は疾患の進行についてモニターされている、「患者」、即ち温血動物、より好ましくはヒトであり得る。「哺乳動物」は、本明細書で、ヒト、非ヒト霊長類、家畜及び畜産動物及び動物園、競技用又は愛玩動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む何れかの哺乳動物を指す。好ましくは、哺乳動物は、霊長類、より好ましくはヒトである。
【0302】
組成物
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明によるAAVベクターを含む組成物にさらに関する。いくつかの実施形態では、本発明による組成物中のAAVベクターは、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。
【0303】
いくつかの実施形態では、本組成物は、本発明によるAAVベクターと、少なくとも1つの薬学的に許容可能なビヒクルと、を含む医薬組成物である。
【0304】
「薬学的に許容可能な」という用語は、ビヒクル、賦形剤、担体及び/又は保存剤を指す場合、対象、好ましくはヒトに投与されるときに、アレルギー性又は同様の望ましくない反応を生じない分子部分及び組成物を定義することを意味する。ヒトへの投与の場合、医薬組成物は、例えばFDA Office又はEMAなどの規制官庁により必要とされる無菌、発熱性及び全般的安全性及び純度の基準に合致すべきである。
【0305】
いくつかの実施形態では、これらの組成物中で使用され得る薬学的に許容可能なビヒクル、賦形剤、担体及び保存剤としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなど)、緩衝物質(例えばリン酸塩、クエン酸塩又は他の有機酸など)、アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、リジンなど)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸など)、キレート剤(例えばEDTAなど)、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩又は電解質(例えば、プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウムなど)、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーなど)、セルロース系の物質(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリアクリレート、ワックス、非イオン性界面活性剤(例えばTween、プルロニック、ポリエチレングリコールなど)、羊毛脂及び適切なそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0306】
いくつかの実施形態では、本発明による医薬組成物は、対象に注射することが意図される製剤に関して薬学的に許容可能であるビヒクルを含む。いくつかの実施形態では、これらは、特に、等張で無菌の塩類溶液(リン酸一ナトリウム又はリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウム又はマグネシウムなど又はこのような塩の混合物)、又は場合に応じて滅菌水又は生理食塩水を添加することによって注射可能な溶液を構成することができる、乾燥、特に凍結乾燥組成物であり得る。
【0307】
いくつかの実施形態では、本発明による医薬組成物は、例えば天然及び/又は合成ポリマー、例えばポロキサマー、キトサン、シクロデキストリン、デンドリマー、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)ポリマーなど、哺乳動物細胞への本明細書中に記載のAAVベクターの進入を促進する1つ以上の薬剤を含む。
【0308】
いくつかの実施形態では、本発明による少なくとも1つの導入遺伝子を含むAAVベクターは、医薬の一部として含まれる。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、本発明による少なくとも1つの導入遺伝子を含むAAVベクターを含む医薬に関する。
【0309】
導入遺伝子/疾患の組み合わせ
上記のように、本発明によるAAVベクターは、AAVベクターの意図される使用に関して選択される少なくとも1つの導入遺伝子を含み得る。眼疾患又はCNS疾患の処置に有用であり得る導入遺伝子の例を、本明細書中で以後提供する。いくつかの実施形態では、眼は、「CNS」部位であるとみなされない。いくつかの実施形態では、眼は、「PNS」部位であるとみなされ得る。
【0310】
いくつかの実施形態では、眼疾患は遺伝性網膜疾患を含む。いくつかの実施形態では、遺伝性網膜疾患としては、レーバー先天性黒内障、網膜色素変性症、白点状網膜炎、全脈絡膜萎縮、シュタルガルト病、黄色斑眼底、白点状眼底、網膜ジストロフィー、脈絡膜ジストロフィー、錐体ジストロフィー、錐体杆体ジストロフィー、杆体錐体ジストロフィー、黄斑ジストロフィー、黄斑変性、基底膜ドルーゼン(basal laminar drusen)、夜盲症、オーランド島眼病(Aland Island eye disease)、バルデ・ビードル症候群、ニューファンドランド杆体錐体ジストロフィー、オグシ病(Ogushi disease)、硝子体網膜症、硝子体網膜脈絡膜症、ベストロフィン症、ワーグナー症候群、ノリエ病及び小眼球症が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、眼疾患は、伝染性疾患、例えば感染性疾患(例えば、ウイルス、細菌、真菌など)を含む。いくつかの実施形態では、眼疾患は損傷を含む。いくつかの実施形態では、眼疾患は、自己免疫疾患を含む。いくつかの実施形態では、眼疾患は癌を含む。
【0311】
いくつかの実施形態では、遺伝性網膜疾患と関与する遺伝子としては、ABCA4、ADAM9、AGBL5、AHR、AIPL1、APOE、ARHGEF18、ARL2BP、ARL3、ARL6、BBS2、BEST1、C2ORF71、C8orf37、CACNA1F、CAPN5、CDHR1、CEP290、CEP78、CERKL、CFH、CHM、CLCC1、CLRN1、CNGA1、CNGB1、COL2A1、CRB1、CRB2、CRX、CTNNB1、CX3CR1、DHDDS、DHX38、EFEMP1、ELOVL4、EYS、FAM161A、FBN2、FSCN2、FZD4、GDF6、GUCA1A、GUCA1B、GUCY2D、HGSNAT、HK1、HMCN1、HRG4、HTRA1、IDH3A、IDH3B、IFT140、IFT172、IFT43、IMPDH1、IMPG2、KCNJ13、KIAA1549、KIF3B、KIZ、KLHL7、LCA5、LRAT、LRP5、MAK、MERTK、MYO7A、NDP、NEK2、NMNAT1、NR2E3、NRL、PDE6A、PDE6B、PDE6G、PITPNM3、POMGT1、PRCD、PROM1、PRPF3、PRPF4、PRPF6、PRPF8、PRPF31、PRPH2、RAXL1、RBP3、RBP4、RD3、RDH12、RDH5、REEP6、RGR、RHO、RIMS1、RLBP1、RP1、RP1L1、RP2、RP4、RP7、RP9、RP10、RP11、RP12、RP13、RP14、RP17、RP18、RP19、RP20、RP25、RP26、RP27、RP28、RP30、RP31、RP32、RP33、RP35、RP36、RP37、RP38、RP39、RP40、RP41、RP42、RP43、RP44、RP45、RP46、RP47、RP48、RP49、RP50、RP51、RP53、RP54、RP55、RP56、RP57、RP58、RP59、RP60、RP61、RP62、RP64、RP65、RP66、RP67、RP68、RP69、RP70、RP71、RP72、RP73、RP74、RP75、RP76、RP77、RP78、RP79、RP80、RP81、RP82、RP83、RP84、RP85、RP86、RP87、RP88、RP89、RP90、RPE65、RPE87、RPGR、RPGRIP1、SAG、SEMA4A、SLC7A14、SNRNP200、SPATA7、TOPORS、TSPAN12、TTC8、TULP1、USH2A、VCAN、ZNF408及びZNF513が挙げられるがこれらに限定されない。
【0312】
いくつかの実施形態では、CNS疾患は、CNS感染性疾患、CNS変性疾患、CNS自己免疫疾患、CNS腫瘍疾患、脳血管疾患、CNS損傷又はCNS構造異常である。
【0313】
いくつかの実施形態では、CNS疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、フリードライヒ運動失調症、カナバン病、筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルファマンノース症、アスパルチルグルコサミン尿症、バッテン病、ベータマンノース症、シスチン症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー、ムコ多糖症(ハーラー症候群、ハーラー-シャイエ症候群、シャイエ症候群、ハンター症候群、サンフィリポ症候群A、B、C又はD、モルキオ症候群B、マロトー・ラミー症候群、スライ症候群又はナトウィクズ症候群(Natowicz syndrome)の何れかなど)、脊髄小脳失調、副腎白質ジストロフィー、アンジェルマン症候群又はてんかんが挙げられるがこれらに限定されない。
【0314】
いくつかの実施形態では、CNS疾患は、酸性リパーゼ疾患、酸性マルターゼ欠損症、酸蓄積病、後天性てんかん性失語、急性播種性脳脊髄炎、注意欠陥多動性障害障害(ADHD)、アディー瞳孔(Adie’s pupil)、アディー症候群、副腎白質ジストロフィー、失認、アイカルディ症候群、アイカルディ・グティエール症候群障害、アレキサンダー病、アルパース病、交代性片麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、無脳症、動脈瘤、アンジェルマン症候群、血管腫症、無酸素症、抗リン脂質抗体症候群、失語症、失行症、くも膜炎、アーノルド-キアリ奇形、芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ欠損症(AADC欠損症)、アスパルチルグルコサミン尿症、アスペルガー症候群、運動失調症、毛細血管拡張性運動失調症(ルイ-バー症候群)、運動失調及び小脳又は脊髄小脳変性症、注意欠陥多動性障害、自閉症、自律神経機能異常、バース症候群、バッテン病、ベッカー型ミオトニー、ベーチェット病、ベル麻痺、ベルンハルト-ロート症候群、ビンスワンゲル病、ブロッホ-サルズバーガー症候群、ブラッドベリー-エグルストン症候群、ブラウン-セカール症候群、球脊髄性筋萎縮症、CADASIL、カナバン病、灼熱痛、海綿腫(cavernomas)、海綿状血管腫、中心性頸髄症候群、脊髄中心症候群、橋中心髄鞘崩壊症、セラミダーゼ欠損症、小脳変性症、小脳低形成、脳性脚気、脳性巨人症、脳性麻痺、脳-眼-顔-骨格症候群(COFS)、コレステロールエステル貯蔵病、舞踏病、舞踏病有棘赤血球症、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、慢性起立不耐症、慢性疼痛、コケイン症候群II型、コフィン-ローリー症候群、コルポセファリー、先天性筋無力症、大脳皮質基底核変性症、頭蓋動脈炎、クリー脳炎、クロイツフェルト-ヤコブ病、クッシング症候群、シスチン症、巨細胞封入体症、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、ダンディー-ウォーカー症候群、ダノン病、ドーソン病、ドモルシア症候群、ドゥジュリーヌ-クルンプケ麻痺、認知症、歯状核小脳性運動失調症(dentate cerebellar ataxia)、歯状核赤核萎縮症、皮膚筋炎、発達性統合運動障害、デビック症候群、びまん性硬化症、自律神経異常症、書字障害、難読症、嚥下困難、統合運動障害、ミオクローヌス性小脳性共同運動障害、進行性小脳性共同運動障害、てんかん(例えば、アーミッシュ乳児てんかん症候群[AIES]、良性家族性乳幼児痙攣[BFIS]、良性家族性新生児痙攣[BFNS]、小児欠神てんかん[CAE]、小児期発症てんかん性脳症[COEE]、ドラベ症候群[DS]、早期乳児てんかん性脳症[EIEE]、成人型家族性ミオクローヌスてんかん[FAME]、家族性熱性痙攣[FFS]、多様な焦点を示す家族性焦点性てんかん[FFEVF]、家族性小児ミオクローヌスてんかん[FIME]、家族性側頭葉てんかん[FTLE]、精神遅滞を伴うか又は伴わない焦点性てんかん及び言語障害[FESD]、全般性てんかん及び発作性ジスキネジア[GEPD]、熱性けいれんプラスを伴う全般性てんかん[GEFS+]、特発性全般性てんかん[IGE]、若年性欠神てんかん[JAE]、若年性ミオクローヌスてんかん[JME]、ミオクロニー脱力発作てんかん[MAE]、夜間前頭葉てんかん[NFLE]、進行性ミオクローヌスてんかん[PME]、ピリドキサミン5’-ホスフェートオキシダーゼ欠乏[PNPOD]、ピリドキシン依存性てんかん[EPD]及び乳児重症ミオクロニーてんかん[SMEI])、ファブリー病、ファール症候群、家族性自律神経障害、家族性血管腫、家族性特発性基底核石灰化症、家族性周期性四肢麻痺、家族性痙性麻痺、ファーバー病、線維筋性形成異常、フィッシャー症候群、筋緊張低下児症候群、フリードライヒ運動失調症、前頭側頭型認知症、フコシド症、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス、ゲルストマン症候群、ゲルストマン1-ストロイスラー-シャインカー病、巨大軸索ニューロパチー、巨細胞性動脈炎、巨細胞性封入体病、グロボイド細胞性白質ジストロフィー、舌咽神経痛、糖原病、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス(テイ-サックス病)、ギラン-バレー症候群、ハレルフォルデン-スパッツ病、持続性片側頭痛、交代性片麻痺(hemiplegia alterans)、遺伝性痙性対麻痺、遺伝性多発神経炎性失調症、ホルムズ-アーディー症候群、全前脳症、ヒューズ症候群、ハンチントン病、水頭性無脳症、水脊髄症、コルチゾン過剰症、免疫介在性脳脊髄炎、封入体筋炎、色素失調症、乳児筋緊張低下、乳児神経軸索性ジストロフィー、後頭孔脳脱出症、アイザクス症候群、ジュベール症候群、カーンズ-セイヤ症候群、ケネディー病、キンズボーン症候群、クライネ-レビン症候群、クリッペル-フェイル症候群、クリッペル-トレノーネイ症候群(KTS)、クリューバー-ビューシー症候群、コルサコフ健忘症候群、クラッベ病、クーゲルバーグ-ヴェランダー病、ランバート-イートン筋無力症候群、ランドウ-クレフナー症候群、外側大腿皮神経絞扼、外側髄症候群、リー病、レノックス-ガストー症候群、レッシュ-ナイハン症候群、レバイン-クリッチュリー症候群、レビー小体認知症、類脂質タンパク症、脳回欠損、閉じ込め症候群、ルー-ゲーリッグ病、狼瘡、ライム病、マシャド-ジョゼフ病、大脳症、アルファマンノース症、ベータマンノース症、メルカーソン-ローゼンタール症候群、メンケス病、異常感覚性大腿痛、異染性白質ジストロフィー、小頭症、ミラー-フィッシャー症候群、メビウス症候群、ムコ多糖症I-H型(ハーラー症候群)、ムコ多糖症I-H/S型(ハーラー-シャイエ症候群)、ムコ多糖症IS型(シャイエ症候群)、ムコ多糖症II型(ハンター症候群)、ムコ多糖症III-A型(サンフィリポ症候群A)、ムコ多糖症III-B型(サンフィリポ症候群B)、ムコ多糖症III-C型(サンフィリポ症候群C)、ムコ多糖症III-D型(サンフィリポ症候群D)、ムコ多糖症IV-B型(モルキオ症候群B)、ムコ多糖症VI型(マロトー・ラミー症候群)、ムコ多糖症VII型(スライ症候群)、ムコ多糖症IX型(ナトウィクズ症候群(Natowicz syndrome))、多発性硬化症、筋ジストロフィー、重症筋無力症、ミエリン破壊性びまん性硬化症(myelinoclastic diffuse sclerosis)、ナルコレプシー、神経有棘赤血球症、神経線維腫症、神経弛緩薬悪性症候群、神経サルコイドーシス、ニーマン-ピック病、大田原症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、眼球クローヌスミオクローヌス、オサリバン-マクレオド症候群(O’Sullivan-McLeod syndrome)、パントテン酸キナーゼ関連神経変性、腫瘍随伴症候群、感覚異常、パーキンソン病、発作性舞踏病アテトーゼ、発作性片側頭痛、パリー-ロンベルグ症候群、ペリツェウス-メルツバッハー病、ペナーショッカーII症候群、脳室周囲白質軟化症、フィタン酸蓄積疾患、ピック病、梨状筋症候群、多発性筋炎、ポンペ病、ポリオ後症候群、後部皮質萎縮症、原発性歯状核萎縮症(primary dentatum atrophy)、原発性側索硬化症、原発性進行性失語症、プリオン病、進行性顔面片側萎縮症、進行性歩行運動失調症、進行性多巣性白質脳症、進行性硬化性ポリオジストロフィー、進行性核上まひ、顔貌失認、ラムゼイハント症候群I、ラムゼイハント症候群II、ラスムッセン脳炎、レフサム病、レット症候群、ライエ症候群、ライリー-デイ症候群、サンドホフ病、シルダー病、ザイテルベルガー病、シャイ-ドレーガー症候群、シェーグレン症候群、痙攣、二分脊椎、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調、脊髄小脳萎縮症、脊髄小脳変性症、スティール-リチャードソン-オルスゼフスキー症候群、線条体黒質変性症、スタージ-ウェーバー症候群、遅発性ジスキネジア、タウオパチー、テイ-サックス病、胸郭出口症候群、甲状腺中毒性ミオパチー、三叉神経痛、トッド麻痺、三叉神経痛、熱帯性痙性対麻痺、トロイアー症候群、血管認知症、フォン-エコーノモ病、フォンヒッペル-リンダウ病(VHL)、フォンレックリングハウゼン病、ワレンベルグ症候群、ウェルドニッヒ・ホフマン病、ウェルニッケ-コルサコフ症候群、ウエスト症候群、ウィップル病、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウォールマン病、X連鎖球脊髄性筋萎縮症、ツェルウェガー症候群、多発性硬化性萎縮症(multiple sclerosis atrophy)、レビー小体認知症(LBD)及びアンジェルマン症候群を含むか又はそれらからなる群から選択される。
【0315】
いくつかの特定の実施形態では、CNS疾患は、パーキンソン病又はゴーシェ病である。いくつかの特定の実施形態では、CNS疾患は、パーキンソン病である。いくつかの特定の実施形態では、CNS疾患は、ゴーシェ病である。
【0316】
いくつかの実施形態では、CNS疾患に関与する遺伝子としては、3Rタウ、4Rタウ、AARS、ABCD1、ACOX1、ADGRV1、ADRA2B、AGA、AGER、ALDH7A1、ALG13、ALS2、ANG、ANXA11、APP、ARHGEF9、ARSA、ARSB、ARV1、ASAH1、ASPA、ATN1、ATP10A、ATP13A2、ATXN1、ATXN2、ATXN3、BAX、BCL-2、BDNF、BICD2、C9orf72、CACNA1A、CACNA1H、CACNB4、CASR、CCNF、CDKL5、CERS1、CFAP410、CHCHD10、CHD2、CHMP2B、CHRNA2、CHRNA4、CHRNA7、CHRNB2、CLCN2a、CLN1、CLN2、CLN3、CLN5、CLN6、CLN8、CNTN2、CPA6、CSTB、CTNS、CTSA、CTSD、DAO、DCTN1、DEPDC5、DMD、DNAJB2、DNM1、DOCK7、DRD2、DYNC1H1、EEF1A2、EFHC1、EGLN1、EPHA4、EPM2A、ERBB4、FGF12、FIG4、FRRS1L、FTL、FUCA1、FUS、FXN、GAA、GABRA1、GABRB1、GABRB3、GABRD、GABRG2、GAL、GALC、GALNS、GBA、GFAP、GLA、GLB1、GLE1、GLT8D1、GNAO1、GNS、GOSR2、GPR98、GRIA1、GRIA2、GRIK1、GRIN1、GRIN2A、GRIN2B、GRIN2D、GSTM1、GUF1、GUSB、HCN1、HGSNAT、HNRNPA1、HTT、HYAL1、IDS、IDUA、IGHMBP2、IL-1、IT15、ITPA、JPH3、KCNA2、KCNB1、KCNC1、KCNMA1、KCNQ2、KCNQ3、KCNT1、KCTD7、LAL、LAMP2、LGI1、LMNB2、LRRK2、MAN2B1、MAN2B2、MAN2C1、MANBA、MATR3、MBD5、MFSD8、NAGA、NAGLU、NECAP1、NEFH、NEK1、NEU1、NHLRC1、NPC1、NPC2、NR4A2、NTRK2、OCA2、OPTN、PARK2、PARK7、PCDH19、PEX1、PEX2、PEX3、PEX5、PEX6、PEX10、PEX11B、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、PEX26、PFN1、PINK1、PLCB1、PNPO、PON1、PON2、PON3、PPARGC1A、PRDM8、PRICKLE1、PRKN、PRNP、PRPH、PRRT2、PSAP、S106β、SCARB2、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN8A、SCN9A、SCN9Ab、SETX、SGSH、SIGMAR1、SIK1、SKP1、SLC1A1、SLC1A2、SLC2A1、SLC6A1、SLC9A6、SLC12A5、SLC13A5、SLC25A12、SLC25A22、SLCA17A5、SMN1、SMPD1、SNCA、SNRPN、SOD1、SPG11、SPTAN1、SQSTM1、ST3GAL3、ST3GAL5、STX1B、STXBP1、SYP、SYT1、SZT2、TAF15、TARDBP、TBC1D24、TBCE、TBK1、TBP、TITF-1、TREM2、UBA5、UBE1、UBE3A、UBQLN2、UCH-L1、UNC13A、VAPB、VCP、VPS35、WWOX及びXBP1が挙げられるがこれらに限定されない。
【0317】
いくつかの特定の実施形態では、CNS疾患に関与する遺伝子は、GBA遺伝子、好ましくはヒトGBA遺伝子である。
【0318】
ヒトGBA遺伝子のcDNAの代表的な核酸配列は、配列番号1、又は配列番号と1少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%以上の配列同一性を有する核酸配列を含むか又はそれからなる。
【0319】
一実施形態では、ヒトGBA遺伝子のcDNAの核酸配列は、配列番号2、又は配列番号2と少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなるアミノ酸配列をコードする。
【0320】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、線条体、視床、黒質、頭頂葉皮質、海馬及び/又は淡蒼球を含む、脳のある特定の領域に効果的に形質導入可能である。従って、いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、線条体、視床、黒質、頭頂葉皮質、海馬及び淡蒼球を標的とすることに関して、並びに/又は線条体、視床、黒質、頭頂葉皮質、海馬及び淡蒼球に影響を及ぼす疾患の処置に関して非常に重要である。
【0321】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、線条体、黒質、視床、黒質、淡蒼球、頭頂葉皮質及び/又は海馬の疾患を処置することに特に適しており、このような疾患としては、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化性萎縮症(multiple sclerosis atrophy)、レビー小体認知症(LBD)、進行性核上まひ及びアンジェルマン症候群が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、CNS疾患は、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化性萎縮症(multiple sclerosis atrophy)、レビー小体認知症(LBD)、進行性核上まひ、前頭側頭型認知症及びアンジェルマン症候群からなる群から選択される。
【0322】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、ニューロンに効果的に形質導入することが可能である。従って、いくつかの実施形態では、CNS疾患は、神経学的疾患又はニューロンに影響を及ぼす疾患である。
【0323】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、運動機能の制御に関与するニューロンに効果的に形質導入することが可能である。従って、いくつかの実施形態では、CNS疾患は、運動機能に影響を及ぼす疾患である。運動機能に影響を及ぼす疾患の非限定例としては、パーキンソン病及びハンチントン病が挙げられるがこれらに限定されない。
【0324】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はアルツハイマー病であり、本発明のAAVベクターは、3Rタウ、4Rタウ、AGER、APP、BAX、BCL-2、CHRNA7、DRD2、GFAP、GRIA1、GRIA2、GRIK1、GRIN1、IL-1、SLC1A1、SYP及びSYT1を含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0325】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はパーキンソン病であり、本発明のAAVベクターは、ATP13A2、BDNF、EGLN1、GBA、GSTM1、LRRK2、NR4A2、NTRK2、PARK2、PARK7、PINK1、PRKN、S106β、SKP1、SNCA、VPS35及びUCH-L1を含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0326】
いくつかの特定の実施形態では、CNS疾患は、パーキンソン病であり、本発明のAAVベクターは、GBA遺伝子からの、好ましくはヒトGBA遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0327】
ヒトGBA遺伝子のcDNAの代表的な核酸配列は、配列番号1、又は配列番号1と少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%以上の配列同一性を有する核酸配列を含むか又はそれからなる
【0328】
一実施形態では、ヒトGBA遺伝子のcDNAの核酸配列は、配列番号2、又は配列番号2と少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなるアミノ酸配列をコードする。
【0329】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はハンチントン病であり、本発明のAAVベクターは、ATN1、ATXN1、ATXN2、ATXN3、FTL、HTT、IT15、JPH3、PRNP、SLC2A3、TBP、TITF-1及びXBP1を含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0330】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はフリードライヒ運動失調症であり、本発明のAAVベクターは、FXN遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0331】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はカナバン病であり、本発明のAAVベクターは、ASPA遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0332】
いくつかの実施形態では、CNS疾患は筋ジストロフィーであり、本発明のAAVベクターは、DMD遺伝子を含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0333】
いくつかの実施形態では、CNS疾患は脊髄性筋萎縮症であり、本発明のAAVベクターは、BICD2、CHCHD10、DNAJB2、DYNC1H1、IGHMBP2、SIGMAR1、SMN1、TBCE、VAPB及びUBE1を含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0334】
いくつかの実施形態では、CNS疾患は筋萎縮性側索硬化症(ALS)であり、本発明のAAVベクターは、ALS2、ANG、ANXA11、ATXN2、C9orf72、CHMP2B、CFAP410、CHCHD10、CCNF、DAO、DCTN1、EPHA4、ERBB4、FIG4、FUS、GLE1、GLT8D1、HNRNPA1、MATR3、NEFH、NEK1、OPTN、PFN1、PON1、PON2、PON3、PPARGC1A、PRPH、SETX、SIGMAR1、SMN1、SOD1、SPG11、SQSTM1、TAF15、TARDBP、TBK1、TREM2、UBQLN2、UNC13A、VAPB及びVCPを含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0335】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はアルファマンノース症であり、本発明のAAVベクターは、MAN2B1、MAN2B2及びMAN2C1を含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0336】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はアスパルチルグルコサミン尿症であり、本発明のAAVベクターは、AGA遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0337】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はバッテン病であり、本発明のAAVベクターは、CLN1、CLN2、CLN3、CLN5、CLN6、CLN8、CTSD及びMFSD8を含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0338】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はベータマンノース症であり、本発明のAAVベクターは、MANBA遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0339】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はシスチン症であり、本発明のAAVベクターは、CTNS遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0340】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はダノン病であり、本発明のAAVベクターは、LAMP2遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0341】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はファブリー病であり、本発明のAAVベクターは、GLA遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0342】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はファーバー病であり、本発明のAAVベクターは、ASAH1遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0343】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はフコシドーシスであり、本発明のAAVベクターは、FUCA1遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0344】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はガラクトシアリドーシスであり、本発明のAAVベクターは、CTSA遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0345】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はゴーシェ病であり、本発明のAAVベクターは、GBA遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0346】
いくつかの特定の実施形態では、CNS疾患はゴーシェ病であり、本発明のAAVベクターは、GBA遺伝子から、好ましくはヒトGBA遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0347】
ヒトGBA遺伝子のcDNAの代表的な核酸配列は、配列番号1、又は配列番号1と少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%以上の配列同一性を有する核酸配列を含むか又はそれからなる。
【0348】
一実施形態では、ヒトGBA遺伝子のcDNAの核酸配列は、配列番号2、又は配列番号2と少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなるアミノ酸配列をコードする。
【0349】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はクラッベ病であり、本発明のAAVベクターは、GALC及びPSAPを含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0350】
いくつかの実施形態では、CNS疾患は異染性白質ジストロフィーであり、本発明のAAVベクターは、ARSA遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0351】
いくつかの実施形態では、CNS疾患は、ムコ多糖症(ハーラー症候群、ハーラーーシャイエ症候群、シャイエ症候群、ハンター症候群、サンフィリポ症候群A、B、C又はD、モルキオ症候群B、マロトー・ラミー症候群、スライ症候群又はナトウィクズ症候群(Natowicz syndrome)の何れかなど)であり、本発明のAAVベクターは、ARSB、GAA、GALNS、GLB1、GNS、GUSB、HGSNAT、HYAL1、IDS、IDUA、LAL、NAGA、NAGLU、NEU1、NPC1、NPC2、SGSH、SLCA17A5及びSMPD1を含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0352】
いくつかの実施形態では、CNS疾患は脊髄小脳失調であり、本発明のAAVベクターは、ATXN1、ATXN2及びATXN3を含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0353】
いくつかの実施形態では、CNS疾患は副腎白質ジストロフィーであり、本発明のAAVベクターは、ABCD1、ACOX1、PEX1、PEX2、PEX3、PEX5、PEX6、PEX10、PEX11B、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19及びPEX26を含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0354】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はアンジェルマン症候群であり、本発明のAAVベクターは、ATP10A、MBD5、OCA2、SLC9A6、SNRPN及びUBE3Aを含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0355】
いくつかの実施形態では、CNS疾患はてんかんであり、本発明のAAVベクターは、AARS、ADGRV1、ADRA2B、ALDH7A1、ALG13、ARHGEF9、ARV1、CACNA1A、CACNA1H、CACNB4、CASR、CDKL5、CERS1、CHD2、CHRNA2、CHRNA4、CHRNB2、CLCN2a、CNTN2、CPA6、CSTB、DEPDC5、DNM1、DOCK7、EEF1A2、EFHC1、EPM2A、FGF12、FRRS1L、GABRA1、GABRB1、GABRB3、GABRD、GABRG2、GAL、GNAO1、GOSR2、GPR98、GRIN2A、GRIN2B、GRIN2D、GUF1、HCN1、ITPA、KCNA2、KCNB1、KCNC1、KCNMA1、KCNQ2、KCNQ3、KCNT1、KCTD7、LGI1、LMNB2、NECAP1、NHLRC1、PCDH19、PLCB1、PNPO、PRDM8、PRICKLE1、PRRT2、SCARB2、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN8A、SCN9A、SCN9Ab、SIK1、SLC12A5、SLC13A5、SLC1A2、SLC25A12、SLC25A22、SLC2A1、SLC6A1、SPTAN1、ST3GAL3、ST3GAL5、STX1B、STXBP1、SZT2、TBC1D24、UBA5及びWWOXを含むか又はそれらからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を有する。
【0356】
当業者は、遺伝子が複数の転写及び/又は翻訳アイソフォームを有し得ること、並びに本明細書中に記載の遺伝子のcDNAを含む導入遺伝子が、標的遺伝子の転写変異体及び/又はスプライシング変異体の潜在的使用を包含することを認識する。
【0357】
治療計画
いくつかの実施形態では、本発明による改変AAVベクターは、治療的有効量でそれを必要とする対象に投与されるものである。
【0358】
いくつかの実施形態では、本発明による改変AAVベクターは、約10ウイルスゲノム(vg)~約1015vg、例えば約10vg~約1014vg、約10vg~約1013vg、約10vg~約1012vg、約10vg~約1011vg、約10vg~約1010vg、約10vg~約10vg、約10vg~約1015vg、約10vg~約1014vg、約10vg~約1013vg、約10vg~約1012vg、約10vg~約1011vg、約10vg~約1010vg、約1010vg~約1015vg、約1010vg~約1014vg、約1010vg~約1013vg、約1010vg~約1012vg、約1010vg~約1011vg、約1011vg~約1015vg、約1011vg~約1014vg、約1011vg~約1013vg、約1011vg~約1012vg、約1012vg~約1015vg、約1012vg~約1014vg、約1012vg~約1013vg又は約1013vg~約1015vgなどの範囲の用量で投与されるものである。
【0359】
「ベクターゲノム」という用語は、「vg」と略され、ベクター、例えばウイルスベクターのポリヌクレオチド配列のセットを含む1つ以上のポリヌクレオチドを指す。ベクターゲノムは、ウイルス粒子中に封入され得る。特定のウイルスベクターに応じて、ベクターゲノムは、1本鎖DNA、2本鎖DNA又は1本鎖RNA又は2本鎖RNAを含み得る。ベクターゲノムは、特定のウイルスベクター及び/又は組み換え技術を通じて特定のウイルスベクターに挿入される何れかの異種配列(例えば導入遺伝子)と関連する内在性配列を含み得る。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの核酸力価は、vg/mLに関して測定され得る。この力価を測定するために適切な方法は、当技術分野で公知であり、例えば定量的PCRを含む。
【0360】
本明細書中で使用される場合、「約」という用語は、数値の前に設定される場合、前記数値が近似であり、小さな変動が、開示される実施形態の実践に有意な影響を与えないことを意味する。このような小さな変動は、例えば±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±6%、±7%、±8%、±9%、±10%又はそれより大きい。
【0361】
いくつかの実施形態では、本発明による改変AAVベクターは、約1×10vg±0.5×10、約2×10vg±0.5×10、約2.75×10vg±0.5×10、約3×10vg±0.5×10、約4×10vg±0.5×10、約5×10vg±0.5×10、約6×10vg±0.5×10、約7×10vg±0.5×10、約8×10vg±0.5×10、約9×10vg±0.5×10、約1×10vg±0.5×10、約2×10vg±0.5×10、約3×10vg±0.5×10、約4×10vg±0.5×10、約5×10vg±0.5×10、約6×10vg±0.5×10、約7×10vg±0.5×10、約8×10vg±0.5×10、約9×10vg±0.5×10、約1×1010vg±0.5×1010、約2×1010vg±0.5×1010、約3×1010vg±0.5×1010、約4×1010vg±0.5×1010、約5×1010vg±0.5×1010、約6×1010vg±0.5×1010、約7×1010vg±0.5×1010、約8×1010vg±0.5×1010、約9×1010vg±0.5×1010、約1×1011vg±0.5×1011、約2×1011vg±0.5×1011、約3×1011vg±0.5×1011、約4×1011vg±0.5×1011、約5×1011vg±0.5×1011、約6×1011vg±0.5×1011、約7×1011vg±0.5×1011、約8×1011vg±0.5×1011、約9×1011vg±0.5×1011、約1×1012vg±0.5×1012、約2×1012vg±0.5×1012、約3×1012vg±0.5×1012、約4×1012vg±0.5×1012、約5×1012vg±0.5×1012、約6×1012vg±0.5×1012、約7×1012vg±0.5×1012、約8×1012vg±0.5×1012、約9×1012vg±0.5×1012、約1×1013vg±0.5×1013、約2×1013vg±0.5×1013、約3×1013vg±0.5×1013、約4×1013vg±0.5×1013、約5×1013vg±0.5×1013、約6×1013vg±0.5×1013、約7×1013vg±0.5×1013、約8×1013vg±0.5×1013、約9×1013vg±0.5×1013、約1×1014vg±0.5×1014、約2×1014vg±0.5×1014、約3×1014vg±0.5×1014、約4×1014vg±0.5×1014、約5×1014vg±0.5×1014、約6×1014vg±0.5×1014、約7×1014vg±0.5×1014、約8×1014vg±0.5×1014、約9×1014vg±0.5×1014、約1×1015vg±0.5×1015、約2×1015vg±0.5×1015、約3×1015vg±0.5×1015、約4×1015vg±0.5×1015、約5×1015vg±0.5×1015、約6×1015vg±0.5×1015、約7×1015vg±0.5×1015、約8×1015vg±0.5×1015又は約9×1015vg±0.5×1015の用量で投与されるものである。
【0362】
いくつかの実施形態では、本発明による改変AAVベクターは、約1×10vg/kg±0.5×10、約2×10vg/kg±0.5×10、約3×10vg/kg±0.5×10、約4×10vg/kg±0.5×10、約5×10vg/kg±0.5×10、約6×10vg/kg±0.5×10、約7×10vg/kg±0.5×10、約8×10vg/kg±0.5×10、約9×10vg/kg±0.5×10、約1×10vg/kg±0.5×10、約2×10vg/kg±0.5×10、約3×10vg/kg±0.5×10、約4×10vg/kg±0.5×10、約5×10vg/kg±0.5×10、約6×10vg/kg±0.5×10、約7×10vg/kg±0.5×10、約8×10vg/kg±0.5×10、約9×10vg/kg±0.5×10、約1×10vg/kg±0.5×10、約2×10vg/kg±0.5×10、約3×10vg/kg±0.5×10、約4×10vg/kg±0.5×10、約5×10vg/kg±0.5×10、約6×10vg/kg±0.5×10、約7×10vg/kg±0.5×10、約8×10vg/kg±0.5×10、約9×10vg/kg±0.5×10、約1×10vg/kg±0.5×10、約2×10vg/kg±0.5×10、約3×10vg/kg±0.5×10、約4×10vg/kg±0.5×10、約5×10vg/kg±0.5×10、約6×10vg/kg±0.5×10、約7×10vg/kg±0.5×10、約8×10vg/kg±0.5×10、約9×10vg/kg±0.5×10、約1×1010vg/kg±0.5×1010、約2×1010vg/kg±0.5×1010、約3×1010vg/kg±0.5×1010、約4×1010vg/kg±0.5×1010、約5×1010vg/kg±0.5×1010、約6×1010vg/kg±0.5×1010、約7×1010vg/kg±0.5×1010、約8×1010vg/kg±0.5×1010、約9×1010vg/kg±0.5×1010、約1×1011vg/kg±0.5×1011、約2×1011vg/kg±0.5×1011、約3×1011vg/kg±0.5×1011、約4×1011vg/kg±0.5×1011、約5×1011vg/kg±0.5×1011、約6×1011vg/kg±0.5×1011、約7×1011vg/kg±0.5×1011、約8×1011vg/kg±0.5×1011、約9×1011vg/kg±0.5×1011、約1×1012vg/kg±0.5×1012、約2×1012vg/kg±0.5×1012、約3×1012vg/kg±0.5×1012、約4×1012vg/kg±0.5×1012、約5×1012vg/kg±0.5×1012、約6×1012vg/kg±0.5×1012、約7×1012vg/kg±0.5×1012、約8×1012vg/kg±0.5×1012、約9×1012vg/kg±0.5×1012、約1×1013vg/kg±0.5×1013、約2×1013vg/kg±0.5×1013、約3×1013vg/kg±0.5×1013、約4×1013vg/kg±0.5×1013、約5×1013vg/kg±0.5×1013、約6×1013vg/kg±0.5×1013、約7×1013vg/kg±0.5×1013、約8×1013vg/kg±0.5×1013、約9×1013vg/kg±0.5×1013又は約1×1014vg/kg±0.5×1014の用量で投与されるものである。
【0363】
いくつかの実施形態では、所望の効果又は治療効果を達成するために必要とされる改変AAVベクターの用量は、具体的な投与経路、治療効果達成するために必要とされる、遺伝子、RNA又はタンパク質発現のレベル、処置される特定の疾患、並びに遺伝子、RNA、及び/又はタンパク質産物の安定性を含むがこれらに限定されないいくつかの要因に基づき変動する。当業者は、上述の要因並びに当技術分野で周知の他の要因に基づいて、特定の対象及び/又は特定の疾患を処置するための投薬を調整し、及び/又は用量範囲を決定し得る。
【0364】
いくつかの実施形態では、対象に投与される改変AAVベクターの体積は、とりわけ、対象のサイズ、治療効果を得るために必要とされるAAVベクターの用量、AAVベクターの濃度及び提案される投与経路にも依存する。
【0365】
いくつかの実施形態では、対象に送達されるAAVベクターの投与速度は、とりわけ、対象の体格、治療効果を得るために必要とされるAAVベクターの用量、AAVベクターの濃度、AAVベクター溶液の体積及び提案される投与経路にも依存する。例えば、いくつかの実施形態では、脳内投与のために、約0.1μL/分~約1μL/分又は約1μL/分~約5μL/分又は約5μL/分~約10μL/分の範囲の投与速度を使用することができる。
【0366】
いくつかの実施形態では、対象に投与されるAAVベクターの投与速度は、約0.1μL/分±0.05μL/分、約0.2μL/分±0.05μL/分、約0.3μL/分±0.05μL/分、約0.4μL/分±0.05μL/分、約0.5μL/分±0.05μL/分、約0.6μL/分±0.05μL/分、約0.7μL/分±0.05μL/分、約0.8μL/分±0.05μL/分、約0.9μL/分±0.05μL/分、1μL/分±0.5μL/分、約2μL/分±0.5μL/分、約3μL/分±0.5μL/分、約4μL/分±0.5μL/分、約5μL/分±0.5μL/分、約6μL/分±0.5μL/分、約7μL/分±0.5μL/分、約8μL/分±0.5μL/分、約9μL/分±0.5μL/分又は約10μL/分±0.5μL/分である。
【0367】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの総用量又は総体積は、連続的に(即ち、改変AAVベクターの総用量又は総体積が単回ショット又は点滴で注入される);又は断続的に投与され得る(即ち、AAVベクターの総用量又は総体積の一部が、各ショット間の間欠的な時間で、好ましくは、各ショット又は点滴の間、15秒、30秒、45秒、1分、2分、3分、4分又は5分の時間などの短い間欠的時間で注入される)。
【0368】
キット
本発明は、
-対象の細胞に形質導入する;及び/又は
-対象に導入遺伝子を送達する;及び/又は
-対象において疾患を予防及び/又は処置する
ためのキット及びキットオブパーツにも関する。
【0369】
いくつかの実施形態では、本キット又はキットオブパーツは、1つ以上のAAVベクター及び/又は本発明による組成物を含む。
【0370】
いくつかの実施形態では、本キット又はキットオブパーツは、1つ以上のAAVベクター及び/又は本発明による組成物の送達のための装置をさらに含む。
【0371】
いくつかの実施形態では、本キットは、1つ以上のAAVベクター及び/又は本発明による組成物の送達のための説明書をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書中に記載の組成物及び/又は方法を使用して、標的とされる疾患を予防及び/又は処置するための説明書を含む。
【0372】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のキットは、緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ及び/又は本明細書中に記載の何れかの方法を行うための説明がある添付文書を含め、市販及び使用者の観点から所望される他の材料をさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0373】
図1図1は、本発明によるラクタム(例えばβ-ラクタム)を含む化合物とAAV表面に露出している一級アミンとの間のカップリングを例示する略図である。
図2A図2A、3A、4A、5、6A、7、8、9A、10A、11、12及び13は、銀染色を用いたSDS-PAGEゲルであり、AAVカプシドの完全性を示す。TBS緩衝液(pH9.3)中のラクタムリンカー(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(7)、(8)又は(9)(3E6eq)の溶液に1012vgのAAV2-eGFP、AAV5-eGFP、AAV8-eGFP又はAAV9-eGFPを添加し、20℃で4時間インキュベートした。SDS-PAGE及び銀染色によって1010vgの各カップリングを分析した。VP1、VP2及びVP3は、AAVカプシドを構成する3つのタンパク質である。カプシドタンパク質分子量を、タンパク質ラダーに従い画像の右に示す。図2A:リンカー(1)とともにインキュベートしたAAV2。
図2B図2B、3B、4B、6B、9B及び10Bは、ウエスタンブロット分析である。TBS緩衝液(pH9.3)中のラクタムリンカー(1)、(2)又は(3)(3E6eq)の溶液に1012vgのAAV2-eGFP、AAV5-eGFP、AAV8-eGFP又はAAV9-eGFPを添加し、20℃で4時間インキュベートした。コンカナバリン-HRP(ConA)又はビオチン化レクチンRCA1及びUEA1を使用して、ウエスタンブロットによって1010vgの各カップリングを分析し、それらのリンカーにカップリングされるVPタンパク質を検出した。図2B:リンカー(1)とともにインキュベートしたAAV2、ConA染色。
図3A】リンカー(2)とともにインキュベートしたAAV2。
図3B】リンカー(2)とともにインキュベートしたAAV2、RCA1染色。
図4A】リンカー(3)とともにインキュベートしたAAV2。
図4B】リンカー(3)とともにインキュベートしたAAV2、UEA1染色。
図5】リンカー(4)とともにインキュベートしたAAV2。
図6A】リンカー(1)とともにインキュベートしたAAV8。
図6B】リンカー(1)とともにインキュベートしたAAV8、ConA染色。
図7】リンカー(3)とともにインキュベートしたAAV8。
図8】リンカー(5)とともにインキュベートしたAAV2。
図9A】リンカー(1)とともにインキュベートしたAAV5。
図9B】リンカー(1)とともにインキュベートしたAAV5、ConA染色。
図10A】リンカー(1)とともにインキュベートしたAAV9。
図10B】リンカー(1)とともにインキュベートしたAAV9、ConA染色。
図11】リンカー(7)とともにインキュベートしたAAV2。
図12】リンカー(8)とともにインキュベートしたAAV2。
図13】リンカー(9)とともにインキュベートしたAAV2。
図14図14は、5.5E8vgのAAV2、(1)-AAV2又は(7)-AAV2ベクターの何れかの単回、一側性線条体内注射の48日後に、GFPに対して陽性であるマウス右脳半球における線条体及び黒質体積の定量分析を示すグラフである。バーは、群平均を表し;丸、三角及び四角のドットは、個々の動物の値を表す。図14A:GFPを発現する線条体のパーセント体積。図14B:GFPを発現する黒質のパーセント体積。
図15図15は、右線条体でのAAV2又は(1)-AAV2の単回注入から48日後の、線条体、視床及び黒質レベルでのマウス脳スライスのGFP染色を示す2枚の免疫組織化学写真である。
図15A】線条体レベルでのマウス脳スライスの免疫組織化学写真。
図15B】視床レベルでのマウス脳スライスの免疫組織化学写真。
図15C】黒質レベルでのマウス脳スライスの免疫組織化学写真。
図16図16は、AAV2.GBA1、(1)-AAV2.GBA1又はMan-NCS-AAV2.GBA1の何れかをHEK293細胞に形質導入後のグルコセレブロシダーゼ(GCアーゼ)酵素活性の蛍光定量的決定を示すグラフである。
【0374】
実施例
本発明を、次の実施例によりさらに例示する。
【0375】
次の略語を使用する:
ACN:アセトニトリル;
AgOTf:トリフルオロメタンスルホン酸銀(I);
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン;
DCM:ジクロロメタン;
DIAD:アゾジカルボン酸ジイソプロピル;
DMF:ジメチルホルムアミド;
DPBS:ダルベッコリン酸緩衝食塩水;
EtOAc:酢酸エチル;
EtOH:エタノール;
MeOH:メタノール;
n-BuLi:n-ブチルリチウム;
TBS:トリス緩衝食塩水;
THF:テトラヒドロフラン;
TMSOTf:トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル。
【0376】
I.式(I)の化合物の合成
I.1.材料及び分析方法
材料
溶媒、試薬及び出発物質を購入し、別段の指示がない限り、販売元から受け取った状態のままで使用した。
【0377】
以下に記載の中間体及び化合物は、ChemBioDraw(登録商標)Ultra version 12.0(Perkin Elmer)を使用して命名した。
【0378】
分析方法
HPLC
装置:DAD検出器を備えたHPLC-Shimadzu Nexera-i LC-2040C 3D;
カラム:Gemini-NX 3μC18(4.6×50mm)、110Å、カラム番号OOB-4453-EO;
HPLC-1条件:
波長:200.0nm±4.0nm;283.0nm±4.0nm;流速:0.5ml/分;カラム温度:30℃;注入体積:1.0μL;
溶出:移動相A、水及び移動相B、アセトニトリルでの勾配。
【表4】
試料調製:ACN中で試料を溶解し、最終濃度0.5mg/mlを得る。
HPLC-2条件:
波長:200.0nm±4.0nm;283.0nm±4.0nm;流速:0.5ml/分;カラム温度:45℃;注入体積:1.5μL;
溶出:移動相A、0.1%ギ酸を含む水及び移動相B、0.1%ギ酸を含むアセトニトリルによる勾配
【表5】
試料調製:ACN中で試料を溶解し、最終濃度0.5mg/mlを得る。
HPLC-3条件:
波長:205.0nm±4.0nm;283.0nm±4.0nm;流速:0.5mL/分;カラム温度:30℃;注入体積:1.0μL;
溶出:移動相A、水及び移動相B、アセトニトリルによる勾配
【表6】
試料調製:HO/ACN(1:1)中で試料を溶解し、最終濃度0.25mg/mlを得る。
【0379】
LC/MS
装置:Shimadzu LCMS-2020シングル四重極型液体クロマトグラフ質量分析計;
カラム:Acquity UPLC 1.8μm C18(2.1×50mm)、100Å、カラム番号186003532;
UHPLC条件:波長:220.0nm±4.0nm;254.0nm±4.0nm;流速:0.5ml/分;カラム温度:25℃;オートサンプラー温度:20℃;注入体積:1μL;
溶出:移動相A、0.1%ギ酸を含む水及び移動相B、0.1%ギ酸を含むアセトニトリルを伴う勾配。
【表7】
MS条件:質量範囲:100~1500m/z;イオン化:交互;スキャン速度:15000u/sec。
試料調製:ACN中で試料を溶解させて、最終濃度0.25mg/mlを得る。
【0380】
フラッシュクロマトグラフィー
条件-1:
装置:Pure C-850 FlashPrep、BUCHI;
カラム:PF-15-C18-F0080、Puriflash、15μm;
条件:波長:200nm;254nm及びELSD検出器;流速:30ml/分;
溶出:移動相A、水及び移動相B、アセトニトリルによる勾配。
【表8】
試料調製:粗製物質をHO/ACN中で溶解した。
条件-2:
装置:Puriflash XS 420、Interchim;
カラム:PF-RP-HP-F0040、Puriflash、15μm;
条件:波長:220nm;254nm;流速:30ml/分;
溶出:移動相A、水及び移動相B、アセトニトリルによる勾配。
【表9】
試料調製:粗製物質をHO/ACN(1:1)中で溶解した。
【0381】
I.2.構築ブロックの合成
構築ブロック1(BB1):2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エタン-1-オール
【化46】
無水DMF(30mL)中の2-[2-(2-クロロエトキシ)エトキシ]エタノール(1当量、5.0g)及びアジ化ナトリウム(1当量、1.9g)の混合物を90℃で一晩撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、THF(10mL)で希釈し、15分間撹拌した。得られた懸濁液をろ過し、ケークをTHFで洗浄し、ろ液を減圧下で濃縮し、黄色油状物質(5.1g、収率98%)として生成物を与えた。LC/MS(6分):RT=1.79min、実測[M+H]176.00;H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ3.73-3.60(m,8H),3.57(dd,J=5.5,3.7Hz,2H),3.36(t,J=5.0Hz,2H),2.78(s,1H)。
【0382】
構築ブロック3(BB3):1-(4-エチニルベンゾイル)アゼチジン-2-オン
【化47】
4-エチニル安息香酸(1当量、1.0g)及びSOCl(3当量、12.2g/7.4mL)の混合物を還流下で一晩維持し、次に真空下で濃縮して、橙色の固体を得た。2-アゼチジノン(1当量、0.43g)をTHF(20mL)中で溶解し、溶液を-78℃まで冷却し、ヘキサン中のnBuLiの2M溶液(1当量、3.04mL)を滴下して添加した。得られた懸濁液を-78℃で15分間撹拌し、次にTHF(5mL)中の4-エチニルベンゾイルクロリドの溶液を滴下して処理した。反応混合物を室温で一晩撹拌させ、水性NHCl溶液でクエンチした。生成物をDCM(2×50mL)で抽出し、有機層を合わせ、MgSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で蒸発乾固させた。溶出液としてヘキサン/EtOAc(100:0->80:20->50:50)を使用して粗製物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色固体として生成物0.45g(収率:37%)を与えた。LC/MS(6min):RT=2.76分、実測[M+H]199.70;H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ7.85(d,2H),7.60(d,2H),4.46(s,1H),3.66(t,J=5.5Hz,2H),3.11(t,J=5.5Hz,2H)。
【0383】
I.3.式(I)の化合物の調製
化合物(1):1-(4-(1-(2-(2-(2-(((3S,4S,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ベンゾイル)アゼチジン-2-オン
【化48】
段階1:[3,4,5,6-テトラキス(アセチルオキシ)オキサン-2-イル]メチルアセテート(1当量、5.0g)をアルゴン雰囲気下にて無水DCM(50mL)中で溶解し、モルホリン(4当量、1.6g)を添加し、溶液を室温で一晩撹拌した。次に反応混合物を2M HCl(2×50mL)、水(50mL)で2回洗浄し、MgSOで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。得られた黄色油状物質アルゴン雰囲気下で無水DCM(50mL)中で溶解し、溶液を0℃まで冷却し、トリクロロアセトニトリル(10当量、16.7g/11.6mL)で処理した。0℃で1時間撹拌した後、DBU(0.2当量、0.35g/0.35/mL)を添加し、反応混合物を0℃で1時間撹拌し、次に室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、溶出液としてヘキサン/EtOAc(1:1)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって褐色の油状の残渣を精製し、帯黄色の油状物質として生成物(4.3g、収率68.8%)を与えた。H NMR(300MHz,DMSO-d)δ10.15(s,1H),6.22(s,1H),5.33-5.16(m,3H),4.26-3.96(m,3H),2.15(s,3H),2.12-1.86(m,9H)。
【0384】
段階2:アルゴン雰囲気下での無水DCM(40mL)中の[3,4,5-トリス(アセチルオキシ)-6-[(2,2,2-トリクロロエタンイミドイル)オキシ]オキサン-2-イル]メチルアセテート(1当量、4.34g)及び分子ふるい4Å(反応混合物を無水に保つため)の懸濁液に室温でBB1(1.5当量、0.53g)を添加した。混合物を-25℃まで冷却し、TMSOTf(1.1当量、2.15h/1.75mL)を添加した。反応混合物を-25℃で1時間撹拌し、次いで室温で一晩撹拌させた。飽和NaHCO溶液(60mL)でクエンチし、DCM(100mL)を添加し、相を分離し、有機相を水(100mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させた。得られた懸濁液をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮し、溶出液としてヘキサン/EtOAc(1:1)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって残渣を精製し、無色油状物質として1.8gの生成物(収率59%)を与えた。H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 5.82-5.64(m,3H)、5.28(d,J=1.8Hz,1H),4.78-4.64(m,1H),4.55-4.42(m,2H),4.25-4.16(m,1H),4.08(dd,J=5.1,2.2Hz,9H),3.85-3.75(m,2H),2.48(ddd,J=34.4,15.5,1.6Hz,12H)。
【0385】
段階3:[3,4,5-トリス(アセチルオキシ)-6-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}オキサン-2-イル]メチルアセテート(1当量、0.3g)をMeOH(5mL)中の7N NH中で溶解し、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去して乾固させ、粗製生成物をさらに精製せずに次の段階に対して使用した(200mg、収率定量)。
【0386】
段階4:THF/MeOH(3mL/1mL)中の2-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3,4,5-トリオール(1当量、0.2g)の溶液にBB3(1.1当量、0.130g)、酢酸銅(I)(0.25当量、0.018g)及びL-アスコルビン酸(1.1当量、0.126g)を添加した。反応混合物を60℃で1時間撹拌した。次に、溶媒を減圧下で除去し、逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーによって残渣を精製し(カラム FP-ID-C18、HO:ACN、HO100%から開始してACN100%まで)、白色の固形泡状物質として94.2mg(収率:27.8%)の生成物(1)を与えた。LC/MS(6分):RT=2.11分、実測[M+H]537.15;LC/MS(12分):RT=4.59分、実測[M+H]537.3;HPLC-1純度:99.14%(200nm),99.25%(283nm);H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ 8.70(s,1H),8.05-7.91(m,4H),4.74(dd,J=8.9,4.5Hz,2H),4.60(dd,J=6.6,3.4Hz,4H),4.45(t,J=6.0Hz,1H),3.88(t,J=5.1Hz,2H),3.73-3.38(m,15H),3.12(t,J=5.4Hz,2H).
【0387】
化合物(2):1-(4-(1-(2-(2-(2-(((3R,4S,5R,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ベンゾイル)アゼチジン-2-オン
【化49】
段階1:アルゴン雰囲気下の無水DCM(100mL)中の[3,4,5-トリス(アセチルオキシ)-6-ブロモオキサン-2-イル]メチルアセテート(1当量、5.0g)及び分子ふるい4Å(反応混合物を無水に保つため)の懸濁液に室温でBB1(1.5当量、3.1g)及びAgOTf(1.4当量、1.75g)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。得られた懸濁液をCeliteのパッドに通してろ過し、ろ液を減圧下で濃縮し、溶出液としてヘキサン/EtOAc(1:1)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって残渣を精製し、黄色油状物質として2.5gの生成物(収率40%)を与えた。H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ5.25(dd,J=3.5,1.1Hz,1H),5.14(dd,J=10.4,3.5Hz,1H),4.93(dd,J=10.4,7.9Hz,1H),4.72(d,J=8.0Hz,1H),4.22-4.13(m,1H),4.04(dd,J=6.3,1.6Hz,2H),3.86-3.74(m,1H),3.67-3.47(m,9H),3.39(dd,J=5.6、4.2Hz,2H),2.11(s,3H),2.00(d,J=3.9Hz,6H),1.91(s,3H).
【0388】
段階2:[3,4,5-トリス(アセチルオキシ)-6-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}オキサン-2-イル]メチルアセテート(1当量、2.0g)をMeOH中の7N NH(15mL)中で溶解し、室温で72時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去して乾固させ、粗製生成物をさらに精製せずに次の段階のために使用した(1.33g、定量的収率)。
【0389】
段階3:THF/MeOH(3mL/1mL)中の2-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3,4,5-トリオール(1当量、0.344g)の溶液にBB3(1.1当量、0.217g)、酢酸銅(I)(0.05当量、0.006g)及びL-アスコルビン酸(1.1当量、0.192g)を添加した。反応混合物を60℃で1時間撹拌した。次に、溶媒を減圧下で除去し、残渣を逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し(カラム FP-ID-C18、HO:ACN、HO 100%から開始してACN100%まで)、白色固体泡状物質として29mg(Y:5.5%)の生成物を与えた。LC/MS(6分):RT=2.06分、実測[M+H]+537.25;LC/MS(12分):RT=3.123分、実測[M+H]537.3;HPLC-1 純度:98.51%(200nm)、98.80%(283nm);H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ 8.71(s,1H),8.01-7.93(m,4H)、4.85(d,J=4.2Hz,1H),4.72(d,J=4.7Hz,1H),4.58(dt,J=11.1,5.4Hz,3H),4.37(d,J=4.5Hz,1H),4.07(d,J=6.7Hz,1H),3.88(t,J=5.1Hz,2H),3.68(t,J=5.4Hz,2H),3.61(t,J=3.5Hz,1H),3.50(pd,J=7.8、6.5,4.2Hz,9H),3.27(d,J=4.7Hz,2H),3.12(t,J=5.4Hz,2H).
【0390】
化合物(3):1-(4-(1-(2-(2-(2-(((3S,4R,5S,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ベンゾイル)アゼチジン-2-オン
【化50】
段階1:無水酢酸ナトリウム(1当量、2.5g)及び無水酢酸(60mL)の懸濁液を5分間還流させ、次にL-(-)-フコース(1当量、5.0g)を添加し、反応混合物を一晩還流させた。熱溶液を氷水上に注ぎ、混合物をDCM(200mL)で抽出した。有機相を水(300mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮し、褐色油状物質として生成物を与えた(8.5g、収率83.7%)。H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 5.62(d,J=8.3Hz,1H),5.27(dd,J=2.8,1.4Hz,1H),5.23-5.19(m,1H),5.01(dd,J=10.4,3.4Hz,1H),3.90(dd,J=6.4,1.2Hz,1H),2.15-1.91(m,20H),1.16(d,J=6.4Hz,3H).
【0391】
段階2:アルゴン雰囲気下で2,3,5-トリス(アセチルオキシ)-6-メチルオキサン-4-イルアセテート(1当量、8.5g)を無水DCM(90mL)中で溶解し、モルホリン(4当量、8.9g)を添加し、溶液を室温で一晩撹拌した。次に、反応混合物を2M HCl(2×90mL)、水(100mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。得られた黄色油状物質をアルゴン雰囲気下にて無水DCM(60mL)中で溶解し、溶液を0℃まで冷却し、トリクロロアセトニトリル(10当量、24.4g/16.9mL)で処理した。0℃で1時間撹拌した後、DBU(0.2当量、0.51g/0.51mL)を添加し、反応混合物を0℃で1時間撹拌し、次に室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、溶出液としてヘキサン/EtOAc(1:1)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって褐色の油状の残渣を精製し、帯黄色の油状物質として生成物を与えた(5.42g、収率65.2%)。
【0392】
段階3:アルゴン雰囲気下の無水DCM(60mL)中の3,5-ビス(アセチルオキシ)-2-メチル-6-[(2,2,2-トリクロロエタンイミドイル)オキシ]オキサン-4-イルアセテート(1当量、5.42g)及び分子ふるい4Å(反応混合物を無水に保つため)の懸濁液に室温でBB1(1.5当量、3.28g)を添加した。混合物を-25℃まで冷却し、TMSOTf(1.1当量、3.05g/2.48mL)を添加した。反応混合物を-25℃で1時間撹拌し、次に室温で一晩撹拌させた。飽和NaHCO溶液(80mL)でクエンチし、次にDCM(100mL)を添加し、相を分離し、有機相を水(100mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶液をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮し、溶出液としてヘキサン/EtOAc(1:1)を使用して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって残渣を精製し、無色油状物質として0.87gの生成物(収率15.0%)を与えた。H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 5.27-5.15(m,2H),5.09-4.98(m,1H),4.53(d,J=7.9Hz,1H),4.03-3.94(m,1H),3.82-3.74(m,1H),3.74-3.62(m,9H),3.41(t,J=5.0Hz,2H),2.18(s,3H),2.06(s,3H),1.99(s,3H),1.23(d,J=6.4Hz,3H).
【0393】
段階4:3,5-ビス(アセチルオキシ)-2-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}-6-メチルオキサン-4-イルアセテート(1当量、0.87g)をMeOH中の7N NH(12mL)中で溶解させ、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去して乾固させ、粗製生成物をさらに精製せずに次の段階に対して使用した(700mg、収率定量)。
【0394】
段階5:THF/MeOH(3mL/1mL)中の2-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}-6-メチルオキサン-3,4,5-トリオール(1当量、0.200g)の溶液にBB3(1.1当量、0.136g)、酢酸銅(I)(0.05当量、0.004g)及びL-アスコルビン酸(1.1当量、0.121g)を添加した。反応混合物を60℃で1時間撹拌した。次に、溶媒を減圧下で除去し、残渣を逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し(カラム FP-ID-C18、HO:ACN、HO100%から開始してACN100%まで)、白色固体泡状物質として51mg(Y:15.7%)の生成物を与えた。LC/MS(6分):RT=2.16分、実測[M+H]521.25;LC/MS(12分):RT 3.271分、実測[M+H]521.4;HPLC-1純度:99.08%(200nm)、99.01%(283nm);H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ 8.71(s,1H),8.01-7.92(m,4H),4.63-4.56(m,3H),4.52-4.48(m,1H),4.42-4.38(m,1H),3.88(t,J=5.1Hz,2H),3.77(q,J=6.5Hz,1H),3.68(t,J=5.4Hz,2H),3.64-3.38(m,12H),3.13(t,J=5.4Hz,2H),1.04(d,J=6.5Hz,3H)。
【0395】
化合物(4):1-(4-(1-(2-(2-(2-(((3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ベンゾイル)アゼチジン-2-オン
【化51】
段階1:EtOH(2500mL)-6N HCl(16vol、740mL)中のエリスロマイシン(1当量、46g)の溶液を4時間還流させた。反応混合物を室温まで冷却し、濃い色の不溶物質から液体をデカントした。溶液をクロロホルム(6×2000mL)で洗浄した。水性エタノール層を減圧下で濃縮して、エチルアルコールを除去した。1-ブタノール(1000mL)を添加し、次いで水(500mL)を添加した。相を分離し、水層を1-ブタノール(4×1000mL)で洗浄し、合わせた有機層を水(1000mL)で洗浄した。全ての水性の層を合わせ、減圧下で濃縮して乾固させた。油状の残渣をEtOH(10mL)中で溶解させ、ジエチルエーテルを添加して(200mL)沈殿物を形成させた。固体をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させて、白色固体としてデソサミン塩酸塩(6.6g、Y=60%)を得た。LC/MS(6分):UV吸収は検出されず(発色団の欠如)、ポジティブイオン化時に質量が検出された、RT=0.45分、実測[M+H]175.75(遊離塩基);H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ 9.73(d,J=41.8Hz,1H),7.01(s,0.5H),6.70(d,J=4.5Hz,0.5H),6.01(s,0.5H),5.62(s,0.5H),5.00(d,J=3.4Hz,0.5H),4.38(dd,J=7.3,3.0Hz,0.5H),4.04(ddd,J=11.4,6.2,2.2Hz,0.5H),3.60(qd,J=6.0,1.9Hz,1H),3.23(d,J=10.2Hz,0.5H),2.77-2.64(m,6H),2.05-1.93(m,1H),1.40(qd,J=11.9,8.0Hz,1H),1.15(dd,J=17.0、6.2Hz,3H).
【0396】
段階2:-30℃のトルエン(20vol.、150mL)中のBuP(1当量、8.2mL)の溶液にアルゴン雰囲気下でDIAD(1当量、6.7g)を滴下して添加した。得られた溶液を20分間撹拌し、デソサミン塩酸塩(1当量、7.0g)を添加した。混合物を-30℃で45分間撹拌し、次に2-メルカプトピリジン(1当量、3.7g)を添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。Celiteのパッドに通して反応物をろ過し、パッドをDCMで洗浄し、ろ液を減圧下で濃縮して乾固させた。残渣をトルエン(100mL)で処理し、混合物を室温で20分間撹拌し、固体をろ別し、トルエン(3×100mL)で洗浄し、乾燥させて、橙色固体として生成物(4.29g、収率=48%)を与えた。LC/MS(6分):RT=1.48分、実測[M+H]269.65;H NMR(300MHz,メタノール-d4)δ 8.61(d,J=4.9Hz,2H),7.20(t,J=4.9Hz,1H),5.61(d,J=9.8Hz,1H),3.87-3.75(m,1H),3.66(t,J=9.8Hz,1H),3.15(d,J=13.3Hz,1H),2.61(s,6H),2.00(d,J=10.5Hz,1H),1.51(q,J=12.4Hz,2H),1.25(d,J=6.2Hz,3H).
【0397】
段階3:無水酢酸(12vol.、32mL)中の無水酢酸ナトリウム(1当量、0.82g)の懸濁液を5分間還流した。この懸濁液に4-(ジメチルアミノ)-6-メチル-2-(ピリミジン-2-イルスルファニル)オキサン-3-オール(1当量、2.69g)を添加し、反応物を1時間、還流下で維持した。熱溶液を氷水(100mL)上に注ぎ、固体NaHCOで塩基性化し、生成物をDCM(3×100mL)で抽出した。有機層を合わせ、MgSOで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して乾固させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM:MeOH、0~10%MeOH)によって残渣を精製して、黄色固体として生成物を得た(1.21g、収率=39%)。LC/MS(6分):RT=1.84分、実測[M+H]312.00;H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ 8.66(dd,J=8.1,4.9Hz,2H),7.27(dt,J=6.3,4.9Hz,1H),6.55(d,J=5.1Hz,0.35H),5.62(d,J=10.1Hz,0.65H),5.06(dd,J=11.2,5.2Hz,0.35H),4.83(t,J=10.1Hz,0.65H),4.00(d,J=4.0Hz,0.35H),3.77-3.65(m,0.65H),3.01-2.84(m,1H),2.20(d,J=5.5Hz,6H),1.92(d,J=10.8Hz,3H),1.82(dd,J=13.5,4.1Hz,1H),1.36(q,J=12.3Hz,1H),1.13(dd,J=6.1、4.7Hz,3H).
【0398】
段階4:無水DCM中のトリフルオロメタンスルホン酸銀(3当量、2.60g)及び分子ふるい(4Å、0.16g)の懸濁液を暗所(アルミ箔で包む)で0℃に冷却した。無水DCM中の4-(ジメチルアミノ)-6-メチル-2-(ピリミジン-2-イルスルファニル)オキサン-3-イルアセテート(1当量、1.05g)及びBB1(2当量、1.18g)の溶液を次に添加した(総DCM:40vol.、42mL)。反応混合物を0℃で2時間撹拌し、次に室温で一晩撹拌させた。pH8まで飽和NaHCO溶液(50mL)でクエンチし、混合物をCeliteのパッドに通してろ過し、相を分離した。水層をDCM(3×50mL)で抽出した。有機層を合わせ、MgSOで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して乾固させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM:MeOH、0~5%MeOH)によって残渣を精製し、黄色固体として生成物を得た(498mg、収率=33%)。LC/MS(6分):UV吸収は検出されず(発色団の欠如)、ポジティブイオン化において質量が検出された、RT=1.74分、実測[M+H]333.10;H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ4.24(d,J=7.2Hz,1H),3.90-3.79(m,1H),3.69-3.50(m,10H),3.40(dd,J=5.6,4.1Hz,2H),3.16(d,J=5.2Hz,2H),2.58(s,6H),1.86(d,J=13.0Hz,1H),1.36(q,J=11.8Hz,1H),1.19(d,J=6.1Hz,3H).
【0399】
段階5:THF/DMF(6mL/1mL)中の2-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}-4-(ジメチルアミノ)-6-メチルオキサン-3-オール(1当量、0.170g)の溶液にBB3(1.1当量、0.112g)、L-アスコルビン酸(1.1当量、0.109g)及び酢酸銅(I)(0.25当量、0.016g)を添加した。反応混合物を60℃で1時間撹拌した。次に、溶媒を減圧下で蒸発させ、逆相カラムクロマトグラフィー(カラムFP-ID-C18、HO:ACN、HO100%から開始してACN100%まで)によって残渣を精製し、白色固体泡状物質として生成物(53mg、収率=19.5%)を得た。LC/MS(6分):RT=1.89及び2.08分(2つのピーク)、実測[M+H]+532.40;LC/MS(12分):RT=3.15分、実測[M+H]+532.4;HPLC-2純度:89.52%(200nm),93.02%(283nm);H NMR(300MHz,アセトニトリル-d3)δ 8.31(s,1H),7.99(s,4H),4.63-4.58(m,2H),4.23(d,J=7.1Hz,1H),3.93(t,J=5.0Hz,2H),3.89-3.83(m,1H),3.71(t,J=5.5Hz,2H),3.58(ddt,J=11.8,6.1,2.9Hz,8H),3.41-3.34(m,1H),3.32-3.23(m,1H),3.09(t,J=5.5Hz,2H),2.77(s,6H),1.46(q,J=12.0Hz,2H),1.23(d,J=6.2Hz,3H)。
【0400】
化合物(5):
【化52】
段階1:THF/DMF(4.4mL/0.6mL)中のBB1(1当量、0.125g)の溶液にBB3(1.1当量、0.156g)、L-アスコルビン酸(1.1当量、0.152g)及び酢酸銅(I)(0.25当量、0.022g)を添加した。反応混合物を60℃で2時間撹拌した。次に、溶媒を減圧下で蒸発させ、逆相カラムクロマトグラフィー(カラムPF-RP-HP-F0040、H2O:ACN、ACN5%から開始して100%まで)によって残渣を精製して、白色固体泡状物質として生成物を得た(141mg、Y:53%)。LC/MS(6分):RT=2.25、実測[M+H]+374.75;LC/MS(12分):RT=3.33分、実測[M+H]375.2;HPLC-3純度:97.93%(205nm)、98.91%(283nm);H NMR(300MHz,アセトニトリル-d3)δ 8.31(s,1H),7.99(s,4H),4.59(dd,J=5.6,4.6Hz,2H),3.92(dd,J=5.6,4.6Hz,2H),3.71(t,J=5.5Hz,2H),3.64-3.53(m,6H),3.50-3.44(m,2H),3.09(t,J=5.5Hz,2H),2.63(s,1H).
【0401】
化合物(6):N-[4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)-2-{2-[2-(2-{4-[4-(2-オキソアゼチジン-1-カルボニル)フェニル]-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル}エトキシ)エトキシ]エトキシ}オキサン-3-イル]アセトアミド
【化53】
段階1:β-D-グルコサミンペンタアセテート(10g、1.0当量)をDCE(75vol、750mL)中で室温にて溶解した。TMSOTf(4.6mL、1.0当量)を添加し、混合物を50℃で30分間撹拌し、冷却し、トリエチルアミン(2.7当量、9.7mL)で処理した。得られた溶液を室温で15分間撹拌し、次いでシリカゲルショートカラムを通じてろ過し、酢酸エチルで洗浄した。溶出液としてDCM/MeOH(100:0->90:10)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗製物質を精製して、無色油状物質として5gの生成物を与えた(収率:59%)。H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 5.94(d,J=7.4Hz,1H),5.22(t,J=2.5Hz,1H),4.89(ddd,J=9.2,2.1,1.3Hz,1H),4.20-4.08(m,3H),3.57(dt,J=8.9,4.3Hz,1H),2.08(s,3H),2.07-2.02(m,9H).
【0402】
段階2:アルゴン雰囲気下の無水DCM中の[6,7-ビス(アセチルオキシ)-2-メチル-3aH,5H,6H,7H,7aH-ピラノ[3,2-d][1,3]オキサゾール-5-イル]メチルアセテート(4.0g、1.0当量)及び分子ふるい4Å(反応混合物を無水に保つため)の懸濁液に室温でBB1(6.4g、1.5当量)を添加した。反応混合物を30分間撹拌し、次いでHSO(4滴、1.0当量)を滴下して添加し、溶液を室温で一晩撹拌した。飽和NaHCO溶液で反応をクエンチし、DCM(50mL)を添加し、相を分離し、有機相を水(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶液をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮し、溶出液としてHex/EtOAc(1:1)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって残渣を精製して、黄色固体として3gの生成物を与えた(収率:62%)。LC/MS(6分)RT=2.55分、実測[M+H]505.15;H NMR(300MHz,DMSO-d)δ 7.91(d,J=9.1Hz,1H),5.08(dd,J=10.5,9.4Hz,1H),4.82(t,J=9.7Hz,1H),4.65(d,J=8.5Hz,1H),4.18(dd,J=12.3,4.8Hz,1H),4.09-3.98(m,1H),3.88-3.62(m,3H),3.53(dt,J=4.3,2.2Hz,8H),3.39(dd,J=5.6,4.2Hz,2H),2.02(s,3H),1.97(s,3H),1.91(s,3H),1.76(s,3H)。
【0403】
段階3:[3,4-ビス(アセチルオキシ)-6-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}-5-アセトアミドオキサン-2-イル]メチルアセテート(2.5g、1.0当量)をMeOH中の7N NH(33mL、15vol.)中で溶解させ、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去して乾固させ、粗製生成物をさらに精製せずに次の段階に対して使用した(1.6g、収率:95%)。H NMR(300MHz,DMSO-d)δ7.65(d,J=8.8Hz,1H),4.31(d,J=8.3Hz,1H),3.85-3.75(m,1H),3.67(d,J=11.6Hz,1H),3.59(dd,J=5.7,4.3Hz,2H),3.56-3.45(m,8H),3.44-3.35(m,4H),3.09-3.03(m,2H),1.75(s,3H)。
【0404】
段階4:MeOH(2mL)/THF(6mL)中のN-(2-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}-4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-イル)アセトアミド(0.592g、1.0当量)の溶液にBB3(0.343g、1.0当量)、L-アスコルビン酸(0.333g、1.1g)及び酢酸銅(I)(0.024g、0.25g)を添加した。反応混合物を60℃で3時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で蒸発させ、逆相カラムクロマトグラフィー(カラムPF-15-C18-F0080、H2O:ACN、HO100%から開始してACN100%まで)によって残渣を精製して、白色固体泡状物質として450mgの生成物を得た(収率:44%)。LC/MS(6分)RT=2.04分、実測[M+H]+578.30;RT=2.04分、実測[M+H]+578.30;HPLC-1 純度:98.76%(200nm)、98.71%(284nm).RT=6.37分、実測[M+H]+578.2;H NMR(300MHz,DMSO-d)δ8.69(s,1H),7.97(d,J=2.7Hz,4H),7.65(d,J=8.9Hz,1H),4.98(d,J=4.7Hz,1H),4.90(d,J=5.2Hz,1H),4.60(t,J=5.1Hz,2H),4.53(s,1H),4.30(d,J=8.3Hz,1H),3.88(t,J=5.2Hz,2H),3.77(dt,J=9.6,3.6Hz,1H),3.67(q,J=5.5Hz,3H),3.56-3.40(m,9H),3.27(ddd,J=10.1,8.1,5.3Hz,1H),3.12(t,J=5.4Hz,2H),3.06(q,J=4.8,3.5Hz,2H),1.77(s,3H).
【0405】
化合物(7):ナトリウム(3,4,5-トリヒドロキシ-6-{2-[2-(2-{4-[4-(2-オキソアゼチジン-1-カルボニル)フェニル]-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル}エトキシ)エトキシ]エトキシ}オキサン-2-イル)メチルサルフェート
【化54】
段階1及び2:化合物(2)に対して記載のとおり。
【0406】
段階3:THF/MeOH(3mL/1mL)中の2-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3,4,5-トリオール(1当量、0.309g)の溶液にBB3(1.1当量、0.182g)、酢酸銅(I)(0.05当量、0.006g)及びL-アスコルビン酸(1.1当量、0.161g)を添加した。反応混合物を60℃で1時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、残渣を逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し(カラムFP-ID-C18、HO:ACN、HO100%から開始してACN100%まで)、白色固体泡状物質として生成物283mg(Y:57.5%)を与えた。LC/MS(6分)RT=1.99分、実測[M+H]+537.35。
【0407】
段階4:無水DMF中の1-[4-(1-{2-[2-(2-{[3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)-エトキシ]エチル}-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ベンゾイル]アゼチジン-2-オン(1当量、0.283g)の溶液にSO3Py(0.097g)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。次に、溶媒を減圧下で除去し、prep-HPLC(Gemini-NX 5μm C18、H2O:ACN:TFA、H2O 85%から開始してACN95%まで)によって残渣を精製した。適切な分画を合わせ、TEAにより中和し、減圧下で蒸発させ、水中で溶解させ、Dowex 50WX4 Na+形態を通過させて、白色固体泡状物質として50mg(Y:14%)の生成物を与えた;LC/MS(6分)RT=1.94分、実測[M-Na]-615.30;LC/MS(12分)RT=2.803min、実測[M-Na]-615.3;HPLC 純度:93.54%(200nm),94.56%(283nm);1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ 8.72(s,1H),8.04-7.90(m,4H),4.83(d,J=4.3Hz,1H),4.69(d,J=5.0Hz,1H),4.60(t,J=5.2Hz,2H),4.52(d,J=4.8Hz,1H),4.08(d,J=7.1Hz,1H),3.89(t,J=5.2Hz,2H),3.85-3.73(m,3H),3.68(t,J=5.4Hz,2H),3.62-3.46(m,9H),3.25(d,J=4.1Hz,2H),3.12(t,J=5.4Hz,2H)。
【0408】
化合物(8):[(5-アセトアミド-3,4-ジヒドロキシ-6-{2-[2-(2-{4-[4-(2-オキソアゼチジン-1-カルボニル)フェニル]-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル}エトキシ)エトキシ]エトキシ}オキサン-2-イル)メトキシ]スルホン酸
【化55】
段階1:[3,4,6-トリス(アセチルオキシ)-5-アセトアミドオキサン-2-イル]メチルアセテート(1当量、10g)を室温にてDCE(75vol.、750mL)中で溶解させた。次に、TMSOTf(1当量、4.6mL)を添加し、混合物を50℃で30分間撹拌し、冷却し、トリエチルアミン(2.7当量、9.7mL)で処理した。得られた溶液を室温で15分間撹拌し、次にシリカゲルの短いプラグを通じてろ過し、酢酸エチルで洗浄した。溶出液としてDCM/MeOH(100:0->90:10)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗製物質を精製して、無色油状物質として2.6gの生成物を与えた(収率31%)。1H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 5.99(d,J=6.8Hz,1H),5.46(t,J=2.9Hz,1H),4.90(dd,J=7.5,3.3Hz,1H),4.28-4.15(m,2H),4.10(dd,J=10.7,5.6Hz,1H),4.03-3.96(m,1H),2.12(s,3H)、2.06(dd,J=5.5、1.1Hz,9H)。
【0409】
段階2:アルゴン雰囲気下の無水DCM中の[6,7-ビス(アセチルオキシ)-2-メチル-3aH,5H,6H,7H,7aH-ピラノ[3,2-d][1,3]オキサゾール-5-イル]メチルアセテート(1当量、2.6g)及び分子ふるい4Å(反応混合物を無水に保つため)の懸濁液に室温でBB1(1.5当量、2.1g)を添加した。反応混合物を30分間撹拌し、次にH2SO4を滴下して添加し、溶液を室温で一晩撹拌した。飽和NaHCO3溶液でクエンチし、DCM(50mL)を添加し、相を分離し、有機相を水(50mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶液をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮し、溶出液としてDCM/MeOH(100:0->95:5)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって残渣を精製して、黄色固体として2.2gの生成物を与えた(収率55%)。LC/MS(6分)質量はポジティブイオン化で検出された、RT=2.5分、実測[M+H]+505.25;1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ7.79(d,J=9.2Hz,1H),5.21(d,J=3.4Hz,1H),4.97(dd,J=11.2,3.5Hz,1H),4.55(d,J=8.5Hz,1H),4.03(s,3H),3.94-3.74(m,2H),3.63-3.50(m,8H),3.40(dd,J=5.6,4.2Hz,2H),2.10(s,3H),2.00(s,3H),1.89(s,3H),1.77(s,3H).
【0410】
段階3:[3,4-ビス(アセチルオキシ)-6-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}-5-アセトアミドオキサン-2-イル]メチルアセテート(1当量、2.2g)をMeOH中の7N NH3(15vol.、33mL)中で溶解させ、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去して乾固させ、1.62gの粗製生成物をさらに精製せずに次の段階に対して使用した(収率:98%)。LC/MS 6分)質量はポジティブイオン化で検出された、RT=1.54分、実測[M+H]+378.70、[M-H]-376.50。1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ7.60(d,J=8.9Hz,1H),4.60-4.53(m,2H),4.48(d,J=4.3Hz,1H),4.28(d,J=8.4Hz,1H),3.83-3.67(m,2H),3.65-3.55(m,4H),3.51-3.36(m,6H),3.31(d,J=10.0Hz,3H),1.80(s,3H)。
【0411】
段階4:THF(35vol.、0.5mL)/DMF(5vol.、1.5mL)中のN-(2-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}-4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-イル)アセトアミド(1当量、0.300g)の溶液にBB3(1当量、0.174g)、L-アスコルビン酸(1.1当量、0.169g)及び酢酸銅(I)(0.25当量、0.024g)を添加した。反応混合物を60℃で2時間撹拌した。次に、溶媒を減圧下で蒸発させ、逆相カラムクロマトグラフィー(カラムFP-ID-C18、H2O:ACN、HO100%から開始してACN100%まで)によって残渣を精製して、白色固体泡状物質として342mgの生成物を得た(収率:74%)。LC/MS(6分)RT=2.0分、実測[M+H]+578.35.1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ8.71(s,1H),8.03-7.88(m,4H),7.61(d,J=9.0Hz,1H),4.60(dd,J=5.9,3.8Hz,4H),4.51(d,J=4.3Hz,1H),4.25(d,J=8.4Hz,1H),3.88(t,J=5.2Hz,2H),3.80-3.61(m,5H),3.57-3.37(m,10H),3.28(t,J=6.2Hz,1H),3.12(t,J=5.4Hz,2H),1.76(s,3H).
【0412】
段階5:無水DMF中のN-[4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)-2-{2-[2-(2-{4-[4-(2-オキソアゼチジン-1-カルボニル)フェニル]-1H-1,2,3-トリアゾール-1yl}エトキシ)エトキシ]エトキシ}オキサン-3-イル]アセトアミド(1当量、0.340g)の溶液に室温でSO3Py(1.15Eq、0,108g)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、溶媒を減圧下で除去し、prep-HPLC(PF-RP-AQ-F0120、H2O:ACN、H2O 95%から開始してACN100%まで)によって残渣を精製した。適切な分画を合わせ、減圧下で蒸発させ、水中で溶解させ、Dowex 50WX4 Na+型に通過させて、白色固体泡状物質として生成物23mgを与えた(収率6%)。LC/MS(6分)RT=1.88、実測[M+H]+657.50、[M-H]-655.45.LC/MS(12分)RT=2.85分、実測[M-H]-656.5.HPLC純度-1:96.91%(200nm),97.46%(283nm)。1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ8.72(d,J=1.4Hz,1H),8.06-7.87(m,4H),7.59(d,J=9.0Hz,1H),4.69-4.46(m,4H),4.25(d,J=8.5Hz,1H),3.94-3.65(m,8H),3.64-3.40(m,10H),3.12(t,J=5.6Hz,2H),1.76(d,J=1.3Hz,3H).
【0413】
化合物(9):ナトリウム3,4,5-トリヒドロキシ-6-{2-[2-(2-{4-[4-(2-オキソアゼチジン-1-カルボニル)フェニル]-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル}エトキシ)エトキシ]エトキシ}オキサン-2-カルボキシレート
【化56】
段階1:アルゴン雰囲気下の無水DCM中のメチル3,4,5-トリス(アセチルオキシ)-6-ブロモオキサン-2-カルボキシレート(1当量、4.0g)及び分子ふるい4Å(反応混合物を無水に保つため)の懸濁液にBB1(1.5当量、2.65g)及びAgOTf(1.4Eq、3.62g)を室温で添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。得られた懸濁液をCeliteのパッドに通してろ過し、ろ液を減圧下で濃縮し、溶出液としてヘキサン/EtOAc(1/1)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって残渣を精製して、黄色油状物質として2.0gの生成物を与えた(収率40.4%)。1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ 5.34(t,J=9.6Hz,1H),5.01-4.86(m,2H),4.79(dd,J=9.6,8.0Hz,1H),4.44(d,J=9.9Hz,1H),3.86-3.74(m,1H),3.64-3.48(m,12H),3.39(dd,J=5.6,4.2Hz,2H),2.00-1.95(m,9H).
【0414】
段階2:MeOH(15ml)中の3,4,5-トリス(アセチルオキシ)-6-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}オキサン-2-イル]メチルアセテート(1当量、1.0g)の溶液に約2M NaOH溶液(10mL)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去して乾固させ、残渣をH2O中で溶解させ、1N HCl溶液でpH=4まで酸性化した。水を減圧下で除去し、粗製生成物をさらに精製せずに次の段階に対して使用した(アジドにおいて計算:700mg、収率定量)。
【0415】
段階3:THF(9mL)/MeOH(3mL)中の6-{2-[2-(2-アジドエトキシ)エトキシ]エトキシ}-3,4,5トリヒドロキシオキサン-2-カルボン酸(1当量、0.921g)の溶液にBB3、酢酸銅(I)(0.8当量、0.262g)及びL-アスコルビン酸(1.7当量、0.804g)を添加した。反応混合物を60℃で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、prep-HPLC(Gemini-NX 5μm C18、H2O:ACN:TFA、ACN15%から開始してACN95%まで)によって残渣を精製した。適切な分画を合わせ、TEAで中和し、減圧下で蒸発させ、水中で溶解させ、Dowex 50WX4 Na+型に通過させて、白色固体泡状物質として45mgの生成物を与えた(収率3.1%)。LC/MS(6分)RT=1.78分、実測[M+H]+551.30(遊離酸)。LC/MS(12分)RT=3.123分、実測[M+H]+551.4(遊離酸)。HPLC純度:96.51%(200nm)、97.32%(283nm)。1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ 8.73(s,1H),8.04-7.88(m,4H),4.98-4.87(m,2H),4.61(t,J=5.2Hz,2H),4.14(d,J=7.7Hz,1H),3.85(dt,J=25.8,5.2Hz,4H),3.68(t,J=5.5Hz,2H),3.54(dt,J=9.1,5.3Hz,9H),3.13(t,J=5.7Hz,3H),2.95(s,1H)。
【0416】
II.AAVの合成
図1で図式的に表されるように、本発明のラクタムリンカーを少なくとも1つのAAVの表面に露出した一級アミンにカップリングすることによってAAVを作製した。
【0417】
II.1.AAVの産生及び精製
産生及び精製
AAVを作製し、当技術分野で周知の技術に従い精製した。
【0418】
品質管理
滴定(RocheからのLightCycler 480を使用したqPCR、Bio-RadからのQX200を使用したddPCR及びELISA)によって、AAV2、AAV5、AAV8及びAAV9バッチの品質を評価した。
【0419】
銀染色を用いて10%SDS PAGEゲル上で純度チェックを行った:1:1:10の妥当な化学量論でのVP1、VP2及びVP3タンパク質のみが検出可能であり、AAV調製物の純度が95%より高いことが示される。
【0420】
ゲルレッドで染色した0.8%アガロースゲル上でパッケージングされたベクターゲノムの完全性も評価した:単一のシャープなバンド約3.2kbのみが見られ、これは、パッケージングされたベクターゲノムのサイズに対応し、ゆえにAAV粒子でのその完全性を実証している。
【0421】
Endosafe(登録商標)-nexgen-PTS(商標)分光計(Charles River Laboratories)を使用して、最終産物中の内毒素レベルを決定した。検出閾値0.5EU/mLで全ての試料が試験に合格した。
【0422】
最終的に、MOI 1000、10000及び100000でAAVベクター(AAV2-eGFP;AAV5-eGFP;AAV8-eGFP;AAV9-eGFP)を形質導入したU87-MG細胞において機能試験を行った。総gDNAを各ウェルから単離し、ベクターコピー(vg)/細胞の直接的な目安としてのCp値を、eGFP-特異的なPCRプライマーを使用してqPCRによって決定した。
【0423】
II.2.AAVへのβ-ラクタムを含む化合物のカップリング
材料
化合物(1)~(5)、(7)~(9)は、実施例I.3で上記で詳述されるように得た。
【0424】
実施例II.1で詳述されるように得られた次のAAVを使用した:
-AAV2-eGFP:pH7.4のDPBS+Ca2+、Mg2+、0.001%Pluronic F68中1.0×1013vg/mL;
-AAV5-eGFP:pH7.4のDPBS+Ca2+、Mg2+、0.001%Pluronic F68中1.0×1013vg/mL;
-AAV8-eGFP:pH7.4のDPBS+Ca2+、Mg2+、0.001%Pluronic F68中1.0×1013vg/mL;
-AAV9-eGFP:pH7.4のDPBS+Ca2+、Mg2+中の1.0×1013vg/mL。
【表10】
【0425】
方法
1mLの総反応体積で3.0E6倍モル過剰のリンカーを用いて、AAVカプシド上のラクタムリンカーのカップリングを行った。AAVの最終濃度は1.0E12vg/mLであった。
【0426】
1.5mL反応チューブに測り取る前にラクタム化合物を室温にして、適切な体積のpH9.3の緩衝液TBS中で溶解した。
【0427】
カップリング反応を設定する前に20℃で1時間、AAVを凍結融解した。
【0428】
2.0mLポリプロピレン反応チューブ中でカップリング反応を設定した。20℃にて4時間、水平状態のオービタルシェーカー上で反応チューブを穏やかに振盪させた。
【0429】
調合/ろ過:遊離リンカーの除去。各カップリング混合物に対して、1つのPD MidiTrap G-25カラムが必要である。4mlの調合緩衝液(DPBS、Ca2+、Mg2+、0.001%F68)を用いて5回、カラムを平衡化する。カップリング反応混合物をカラムに載せ、試料をベッドに入るようにする。rAAVの溶出は1.5mlの調合緩衝液で行う。1.5ml PPチューブ中で滴下して0.3mlで5分画を回収する。分画2~5をプールし、プールした各分画に関するqPCR力価を決定する。次に、Acrodisc PP、PES、0.2μM 1cmを使用して、プールした分画をろ過滅菌する。50μLのアリコートで、ろ過した分画を-80℃で凍結した。
【0430】
II.3.AAVの特徴評価
II.3.ベクターゲノム(Genones)(vg)の滴定
全てのカップリング反応に対して、調合/ろ過段階後に採取された試料に対してLightCycler 480(Roche)を使用して、定量的リアルタイムPCT(qPCR)タイターを決定した、表8参照。表8の最後のカラムにおける%投入量の値が高いことは、カップリング中に損失が殆どない状態が維持されたことを示す。
【表11】
【0431】
II.3.b.SDS-PAGE及びレクチンWBによるカップリングの分析
目的
SDS-PAGEゲルの銀染色によって、得られたAAVベクターの純度及び完全性を評価した。個々のカップリングされた糖に選択的に結合する様々なレクチン染色を使用するウエスタンブロット分析によって、AAV上の糖部分のカップリングの有効性をさらに試験した。
【0432】
方法
SDS-PAGE(10%PAAゲル)及びその後の銀染色により、カップリング後の1.0×1010vgのrAAVに対応するVPタンパク質を、陰性対照としての元のAAVのVPタンパク質と比較した。ゲル上でMW32kDaまで移動した。
【0433】
レクチン染色を使用するウエスタンブロッティング(WB)及びその後のVPタンパク質にカップリングされたリンカーの検出のためにさらなる同一のゲルを使用した:コンカナバリン-HRP(ConA)又はビオチン化レクチンRCA1及びUEA1。
【0434】
凍結試料において銀染色及びWBによるカップリングの分析を行った。
【0435】
カップリングが成功すれば、VPタンパク質のより高い分子量へのシフト及び特異的なレクチン染色(適用可能な場合)が起こるはずである。
【0436】
結果
結果を図2~13に示し、下の表9に要約する。
【表12】
【0437】
結論
全ての改変AAVに対して、移動度シフト及び/又は特異的なレクチン染色を観察し、AAV上のラクタム化合物が有効にカップリングされたことを証明した。
【0438】
II.3.c.感染性アッセイ(U87-MG神経膠芽腫細胞)
SDS-PAGEがVPタンパク質の予想された移動度シフトを示す場合、AAVの感染性を観察することができるか否かを試験した。この目的のために、U87-MG細胞にMOI10.000及び100.000で形質導入した。蛍光顕微鏡による形質導入(eGFP陽性)細胞集団及び非形質導入細胞集団のモニタリングを介して、形質導入後72時間で、形質導入細胞を分析した。
【0439】
形質導入細胞から代表的な明るい視野及び蛍光画像を撮影し、全てのAAVによりU87-MG細胞に対して効率的に形質導入されたことを示した(データは示さない)。
【0440】
III.AAVのインビボ評価
III.1 マウス脳における3つのAAVベクターの形質導入特性の評価
試験の目的は、単回片側線条体内注入後のマウス脳においてGFP(AAV2、(1)-AAV2及び(7)-AAV2)を発現する3つの組み換えAAV2ベクターの形質導入特性を調べることである。
【0441】
材料
動物
Janvier Labsから購入した8匹の成体雄性C57BL/6マウス(マス・マスカルス(Mus musculus))。
【0442】
試験項目
「AAV2」は、非改変カプシドを含み、CAG-eGFP発現カセットを保持する組み換えAAV2ベクターである。
【0443】
「(1)-AAV2」は、表面結合マンノースリンカーを持つ改変されたカプシドを含み、CAG-eGFP発現カセットを保持する組み換えAAV2ベクターである。
【0444】
「(7)-AAV2」は、表面結合6-O-硫酸化ガラクトースリンカーを持つ改変されたカプシドを含み、CAG-eGFP発現カセットを保持する組み換えAAV2ベクターである。
【0445】
方法
試験品
上の節IIに記載のように(1)-AAV2及び(7)-AAV2を作製した。簡潔に述べると、20℃でpH9.3のトリス緩衝液中でのAAV2ベクターとのリンカーの4時間の同時インキュベート及びAAVカプシドに結合しなかった遊離分子を除去するための緩衝食塩滅菌溶液(BSSS)+0.001%Pluronic(登録商標)F68に対する混合物の透析後、マンノース及び6-O-硫酸化ガラクトースリンカーをAAV2カプシドの表面に露出するリジン残基の一級アミンに共有結合させた。
【0446】
試験計画
8匹のマウスに定位脳手術を行い、以下表10に従い、右線条体へ試験品をランダムに注入した。
【表13】
【0447】
手術の手順
手術の前後に鎮痛剤としてブプレノルフィン(0.1mg/kg;10mL/kg、s.c.)を与えた。酸素の連続流(1.5L/分)及び3%イソフルランが供給された麻酔チャンバーに動物を個々に入れ、意識が消失したら、イヤーバーの位置に頭部を固定して定位固定フレームで安定化させた(Kopf)。頭蓋の皮膚を切開して、表11に記載の座標でガラスピペットを使用して試験品のうち1つを片側注入できるようにした。マウス脳のアトラスについては、Paxinos & Franklin,2019.The mouse brain in stereotaxic coordinates(5th ed.).San Diego,CA:Elsevier Science Publishing Co Inc.を参照されたい。
【表14】
【0448】
動物を48時間回復させた後、安楽死を行った。
【0449】
エクスビボ分析
安楽死及び組織処理
インビボ相の終了時に、動物を安楽死させ、組織を収集した。European Veterinary Medical Associationの指針に従い、安楽死を行った。
【0450】
終了時に、各動物の脳を速やかに取り出し、パラホルムアルデヒド(PFA;4%)中で固定した。3日後、20%スクロース溶液(0.1M PBS中)中で4℃にて一晩、組織を凍結保護し、次に、クライオスタットを使用して50μmの厚さの冠状切片に薄切するために凍結した。自由に浮遊する切片をPBSアジド中に置き、4℃で保管した。
【0451】
GFP免疫組織化学
GFP免疫組織化学に基づき、関心対象の領域における形質導入された脳の体積のパーセンテージの定義を行った。4枚の切片ごとに1枚を免疫組織化学のために使用した。
【0452】
冷蔵庫から組織切片を取り出し、室温に順応させた。PBSでの完全なリンス後、それぞれペルオキシダーゼブロッキング溶液(Dako、S2023)中で10分間インキュベートし、続いてPBS、2%BSA、0.3%Triton X-100及び0.01%チメロサール中で30分間インキュベートすることによって、内因性ペルオキシダーゼ活性及び抗原性部位をブロッキング処理した。
【0453】
次に、切片を最初に0.2%BSA、0.3%Triton X-100及び0.01%チメロサールを含有するPBS中で1:1000希釈したポリクローナル抗GFP抗体(Ab3080、Merck)に曝露し、次に、同じ緩衝液中で希釈したEnvision+抗ウサギHRPタグ付加二次抗体(Dako、K4011)に曝露した。PBSで十分にすすいだ後、およそ30秒間、DAB+基質(Dako)とHRPを反応させた。PBSでの数回の洗浄によって、発色反応を停止させた。
【0454】
次に、切片をスライド上に載せ、Nissl染色で対比染色した。5層焦点が自動的に取得され、次いで平板化される拡張モードで、×20の倍率でPannoramicScan II(3DHISTECH、Hungary)を使用して、スライドをデジタル化した。
【0455】
それぞれ10及び6枚の切片上で、MERCATORソフトウェア(Mercator,Explora Nova,La Rochelle,France)を使用して、線条体及び黒質に対応する右半球の領域をデジタル的に描出した。
【0456】
これらの2つの脳構造の総体積及びGFP陽性体積を、式
V=ΣStd
(式中、「ΣS」は、表面積の合計であり;「t」は、平均の切片の厚さであり;「d」は、測定された2つの連続物分析切片の間のスライス数である)を使用して、閾値検出方法に基づいて決定した。
【0457】
次に、関心対象の各領域における形質導入された脳の体積のパーセンテージを計算した。
【0458】
結果
G1及びG2群の免疫組織化学染色した脳スライスを図14で示す。陽性GFP染色がある右線条体及び右黒質体積のパーセンテージを以下表12で及び図14A及び14Bで各ベクターに対して提供する。
【表15】
【0459】
結論
試験の目的は、右半球での単回側方線条体内注入後にマウス脳においてGFPを発現する3つの組み換えAAV2ベクター(AAV2、(1)-AAV2及び(7)-AAV2)の形質導入特性を調べることであった。
【0460】
3つ全てのAAVベクターがGFPの発現を駆動し、特定の脳構造におけるGFP染色の程度(体積)を、各ベクターが脳細胞に形質導入する能力の指標として使用した。
【0461】
(1)-AAV2及び(7)-AAV2ベクターは何れも、実質(線条体)に送達した場合、右半球の線条体及び黒質において、AAV2ベクターよりも優れており、AAV2が同じ領域のわずか39%を形質導入したのに対し、それぞれ右線条体の70%及び56%、及び右黒質の52%及び48%をカバーした。(1)-AAV2は、線条体及び黒質構造の両方(線条体:(1)-AAV2の場合70%対(7)-AAV2の場合56%対AAV2の場合39%;黒質:(1)-AAV2の場合52%対(7)-AAV2の場合48%対AAV2の場合39%)の最大のカバレッジを達成した。
【0462】
線条体及び黒質領域での測定に加えて、脳全体を考えると、(1)-AAV2ベクターは、分布及び導入遺伝子発現レベルの両方に関して最良の形質導入特性を示した。右線条体における単回投与後、AAV2ベクターにより形質導入されなかったか又はあまり形質導入されなかった右半球及び左半球両方の多くの脳構造は、(1)-AAV2により駆動されるGFP発現に対して陽性シグナルを示した。特に、皮質及び海馬の大部分が強く染色された(図15)。
【0463】
IV.試験候補体:AAV2-GBA1のインビトロ評価
この試験の目的は、GBA1遺伝子を発現する組み換えAAV2ベクター(AAV2.GBA1、(1)-AAV2.GBA1又はMan-NCS-AAV2.GBA1)を形質導入したHEK293細胞において、グルコセレブロシダーゼ(GCアーゼ)活性を決定することであった。
【0464】
GBA1は、GCアーゼ、グルコシルセラミドをグルコース及びセラミドに変換するリソソーム酵素をコードする。GBA1遺伝子における突然変異は、パーキンソン病及びゴーシェ病に対する最も一般的な遺伝学的リスク因子である。
【0465】
材料
試験品
「AAV2.GBA1」(図16で「AAV2」とも呼ばれる)は、非改変カプシドを含み、CAG-GBA発現カセットを保持する組み換えAAV2ベクターである。
【0466】
「(1)-AAV2.GBA1」(図16で「(1)-AAV2」とも呼ばれる)は、表面結合マンノースベータ-ラクタムリンカーを伴う(より具体的には表1又は2に記載のような化合物(1)を伴う)改変されたカプシドを含み、CAG-GBA発現カセットを保持する組み換えAAV2ベクターである。
【0467】
「Man-NCS-AAV2.GBA1」(図16で「Man-NCS-AAV2」とも呼ばれる)は、マンノースイソチオシアネートリンカーを伴う改変されたカプシドを含み、CAG-GBA発現カセットを保持する組み換えAAV2ベクターである。
【0468】
方法
試験品
節「II.AAVの合成」で上記のように又は国際公開第2017/212019号パンフレットに記載のように、AAV2.GBA1、(1)-AAV2.GBA1及びMan-NCS-AAV2.GBA1を作製した。
【0469】
簡潔に述べると、リンカーとAAV2.GBA1ベクターとをpH9.3のトリス緩衝液中、20℃で4時間同時インキュベートした後、ベータ-ラクタム又はイソチオシアネートリンカーの何れかを有するマンノースをAAV2.GBA1カプシドの表面に露出したリジン残基の一級アミンに共有結合させた。カップリングされたベクター(1)-AAV2.GBA1及びMan-NCS-AAV2.GBA1を、、緩衝食塩滅菌溶液(BSSS)+0.001%Pluronic(登録商標)F68中で調合し、PD MidiTrap G-25脱塩カラムを使用して、AAVカプシドに結合しなかった遊離分子を除去した。D-PBS+Ca2++Mg2++0.001%Pluronic(登録商標)F68中でAAV2.GBA1を調合した。
【0470】
GCアーゼ活性アッセイ
HEK293細胞を播種した。2日目に、10(1ウェル/条件)のMOIで、GBA1遺伝子を保持するベクター(AAV2.GBA1、(1)-AAV2.GBA1又はMan-NCS-AAV2.GBA1)を細胞に形質導入した。形質導入から96時間後に、各ウェルに関して上清を回収し(1mL)、乾燥細胞ペレットを調製した。GCアーゼ活性アッセイを行うまで両方を-80℃で保管した。
【0471】
NaCl 0.9%中で乾燥細胞ペレットをホモジナイズし、超音波処理した。次に、細胞ペレット及び上清中でPierce BCAタンパク質アッセイを使用して、タンパク質濃度を決定した。4-メチルウンベリフェリル(4-MU)を標準物質とし、停止液(グリシン緩衝液、pH10.5)中である範囲の希釈液を調製した。37℃で30分間、タウロコール酸ナトリウム水和物を添加したリン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中の4-メチルウンベリフェリルβ-D-グルコピラノシド基質を使用して、試料中でGCアーゼ活性を測定した。停止液を添加することによって反応を停止させ、蛍光光度計(Mithras LB940BERTHOLD Technologies)を用いて基質蛍光を測定した(励起波長=355nm;発光波長=460nm)。全ての試料及び標準物質を三連で行った。
【0472】
結果
各ウェルに関して、上清(分泌型GCアーゼ)中及び細胞ペレット(非分泌型GCアーゼ)中のGCアーゼ活性を測定した。上清及びペレットの両方における活性の合計である総GCアーゼ活性/条件も報告する。総GCアーゼ活性は、それぞれ(1)-AAV2.GBA1、AAV2.GBA1及びMan-NCS-AAV2.GBA1ベクターに関して、624.3nmol/h/ウェル対384.6nmol/h/ウェル対276.1nmol/h/ウェルであった。上清中では、それぞれ3種類のベクターに関する酵素活性は、517.4nmol/h/ウェル対315.5nmol/h/ウェル対218.1nmol/h/ウェルであり;ペレット中では、酵素活性は、106.9nmol/h/ウェル対69.1nmol/h/ウェル対58.0nmol/h/ウェルであった。
【0473】
結論
(1)-AAV2.GBA1は、AAV2.GBA1及びMan-NCS-AAV2.GBA1ベクターよりも優れており、上清及びペレットの両方においてより高いGCアーゼが測定された。
【0474】
これらの結果は有望であり、ラクタム連結部分を含むAAVベクターの予想外の優位性を実証する。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-09-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023548217000001.app
【国際調査報告】