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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ペーシング制御装置及び医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/365 20060101AFI20231108BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20231108BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61N1/365
A61B5/33 110
A61B5/33 120
A61B5/0245 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527392
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 CN2021128710
(87)【国際公開番号】W WO2022095927
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】202011222921.4
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523163196
【氏名又は名称】合源医療器械(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】UNITED INNOMED (SHANGHAI) LIMITED
【住所又は居所原語表記】Floor 2, East Area Building #1, No. 299 Kangwei Road, Pudong New Area Shanghai 201315, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 励
【テーマコード(参考)】
4C017
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AB04
4C017BC11
4C017DD07
4C017DD14
4C017FF05
4C053JJ04
4C053JJ23
4C053KK02
4C127DD03
4C127DD04
4C127KK03
4C127KK05
(57)【要約】
本発明は、ペーシング制御方法、ペーシング制御装置及び医療機器を開示し、前記ペーシング制御方法は、患者の実際の心拍数を取得し、実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たす場合に、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングすることを含み、前記プリセット低心拍数条件は、患者が生命を脅かす状態にあることを示すために使用される。本発明は、重度の徐脈や心停止まで生命を脅かす状態にある患者をペーシングサポートを必要とする対象としており、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、特に、偶発性徐脈、非重症性徐脈、又は一過性心停止の場合にペーシングを起動せず、ユーザの受容度及び/又は体験を向上させることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の実際の心拍数を取得するステップと、
前記実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断し、この条件を満たす場合、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップとを含み、ここで、前記プリセット低心拍数条件は、患者が生命を脅かす状態にあることを示すために使用されることを特徴とする、ペーシング制御方法。
【請求項2】
前記実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断し、この条件を満たす場合、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップは、
前記実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、下回る場合、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングすることを含むことを特徴とする、請求項1に記載のペーシング制御方法。
【請求項3】
前記実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断し、この条件を満たす場合、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップは、
前記実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、下回る場合、患者の心臓が前記実際の心拍数にある第1低心拍数持続時間を取得し、前記第1低心拍数持続時間がプリセット低心拍数持続時間に達すると、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングすることを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のペーシング制御方法。
【請求項4】
前記プリセットペーシング頻度、前記プリセット低心拍数及び前記プリセット低心拍数持続時間は、患者の状態に従って再設定することができるパラメータであることを特徴とする、請求項1~3の少なくとも一項に記載のペーシング制御方法。
【請求項5】
前記プリセット低心拍数は、0bpmより大きく、40bpm以下であることを特徴とする、請求項2又は3に記載のペーシング制御方法。
【請求項6】
前記プリセット低心拍数持続時間は、1s~60sであることを特徴とする、請求項3に記載のペーシング制御方法。
【請求項7】
前記プリセットペーシング頻度は、40bpm~80bpmであることを特徴とする、請求項1~3の少なくとも一項に記載のペーシング制御方法。
【請求項8】
前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップの実行中に、
第1ペーシング期間内に患者の自己心拍数を取得するステップと、
設定期間に対応する患者の総心拍数を取得するステップと、を有し、
ここで、前記総心拍数は、前記自己心拍数及びペーシング心拍数を含み、
前記設定期間は、前記第1ペーシング期間を含み、前記設定期間に対応する持続時間は、前記第1ペーシング期間に対応する持続時間以上であり、
前記自己心拍数と前記総心拍数との比率を算出するステップと、
前記比率が第1設定閾値以上であるか否かを判断し、前記第1設定閾値以上である場合、ペーシングの停止を制御し、前記第1設定閾値未満の場合、前記比率が第2設定閾値以下であるか否かを判断し、前記第2設定閾値以下の場合、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップを引き続き実行し、前記第2設定閾値を上回り、前記第1設定閾値未満の場合、前記プリセットペーシング頻度を第1ペーシング頻度に低減し、前記第1ペーシング頻度が最低ペーシング頻度未満であるか否かを判断し、未満ではない場合、前記第1ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、未満である場合、前記最低ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップと、
を有し、
前記ステップを同時に実行することを特徴とする、請求項1~7の少なくとも一項に記載のペーシング制御方法。
【請求項9】
患者の実際の心拍数を取得するための心拍数取得モジュールと、
前記実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断し、この条件を満たす場合、ペーシングモジュールを呼び出して、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするための第1判断モジュールとを含み、ここで、前記プリセット低心拍数条件は、患者が生命を脅かす状態にあることを示すために使用されることを特徴とする、ペーシング制御装置。
【請求項10】
前記第1判断モジュールは、前記実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、そうである場合、前記ペーシングモジュールを呼び出して、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングすることを特徴とする、請求項9に記載のペーシング制御装置。
【請求項11】
前記第1判断モジュールは、前記実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、そうである場合、持続時間取得モジュールを呼び出して、患者の心臓が前記実際の心拍数にある第1低心拍数持続時間を取得し、
前記第1判断モジュールはまた、前記第1低心拍数持続時間がプリセット低心拍数持続時間に達した場合に、前記ペーシングモジュールを呼び出して、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするために使用されることを特徴とする、請求項9又は10に記載のペーシング制御装置。
【請求項12】
前記プリセットペーシング頻度、前記プリセット低心拍数及び前記プリセット低心拍数持続時間は、患者の状態に従って再設定することができるパラメータであることを特徴とする、請求項9~11の少なくとも一項に記載のペーシング制御装置。
【請求項13】
前記プリセット低心拍数は、0bpmより大きく、40bpm以下であることを特徴とする、請求項10又は11に記載のペーシング制御装置。
【請求項14】
前記プリセット低心拍数持続時間は、1s~60sであることを特徴とする、請求項11に記載のペーシング制御装置。
【請求項15】
前記プリセットペーシング頻度は、40bpm~80bpmであることを特徴とする、請求項9~11の少なくとも一項に記載のペーシング制御装置。
【請求項16】
第1ペーシング期間内に患者の自己心拍数を取得するための自己心拍数取得モジュールと、
設定期間に対応する患者の総心拍数を取得するための総心拍数取得モジュールと、
を含み、
ここで、前記設定期間は、前記第1ペーシング期間を含み、前記設定期間に対応する持続時間は、前記第1ペーシング期間に対応する持続時間以上であり、
前記自己心拍数と前記総心拍数との比率を算出するための比率算出モジュールと、
前記比率が第1設定閾値以上であるか否かを判断し、前記第1設定閾値以上である場合、ペーシングの停止を制御し、前記第1設定閾値未満の場合、前記比率が第2設定閾値以下であるか否かを判断し、前記第2設定閾値以下の場合、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップを引き続き実行し、前記第2設定閾値を上回り、前記第1設定閾値未満の場合、前記プリセットペーシング頻度を第1ペーシング頻度に低減し、前記第1ペーシング頻度が最低ペーシング頻度未満であるか否かを判断し、未満ではない場合、前記第1ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、未満である場合、前記最低ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするための第2判断モジュールと、
を含む
ことを特徴とする、請求項9~15の少なくとも一項に記載のペーシング制御装置。
【請求項17】
請求項9~16のいずれか一項に記載のペーシング制御装置を含むことを特徴とする、医療機器。
【請求項18】
前記医療機器は、装着型除細動器(WCD)、体外式除細動器、完全皮下植込み型除細動器(SICD)、又は機械的循環補助装置(MCS)を含むことを特徴とする、請求項17に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は出願日が2020年11月5日である中国特許出願2020112229214の優先権を主張する。本出願は上記の中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本発明は、医療装置の技術分野に関し、特に、ペーシング制御方法、ペーシング制御装置及び医療機器に関する。
【背景技術】
【0003】
患者の心拍数をリアルタイムで監視し、心拍数が設定されたペーシング条件に達した場合にタイムリーに心臓をペーシングして、心臓の拍動が遅くなったり、あるいは止まったり(停止)するのを防ぐことは、心臓医療機器の最も基本的な目的である。
【0004】
既存のペーシング制御方法は、プリセット下限心拍数に基づいており、すなわち、患者の心拍数がプリセット下限心拍数に低下することが監視されるとすぐに、プリセット下限心拍数と同じペーシング頻度で患者に対してペーシングを行い、患者の心拍数が設定値を下回ることを防ぎ、患者の心拍数がプリセット下限心拍数を下回らないようにする。例えば、下限心拍数が45bpmに設定されている場合、患者の心拍数(1心拍又はR-R間隔)が45bpm未満であることが監視されると、患者のR-R間隔が45bpmに対応するR-R間隔を下回らないように、45bpmのペーシング頻度で患者に対してペーシングを行う。
【0005】
このようなペーシング制御方法は、一般的な心内膜/心外膜ペーシングに適用される。しかし、例えば、経皮ペーシング(電気刺激)の場合、患者に痛みを与え、あるいは耐えられない痛みを与えやすいことがあるが、既存のペーシング制御方法では、上記のように患者の心拍数がプリセット下限心拍数に低下するとすぐにペーシングを開始するため、ペーシング操作が頻繁になり、その結果、ペーシング操作によって患者が痛みを感じることが多くなり、ユーザ体験が悪く、患者の医療装置/機器の使用又はコンプライアンスを低下させる。
【発明の概要】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的問題は、先行技術におけるペーシング制御方法では、ペーシングが頻繁に行われるため、患者が痛みを感じることが多くなり、ユーザ体験が悪くなるという欠点を克服し、ペーシング制御方法、ペーシング制御装置及び医療機器を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、下記の技術的解決手段を通じて上記の技術的問題を解決する。
【0008】
本発明は、ペーシング制御方法を提供し、前記ペーシング制御方法は、
患者の実際の心拍数を取得するステップと、
前記実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断し、この条件を満たす場合、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップとを含み、ここで、前記プリセット低心拍数条件は、患者が生命を脅かす状態にあることを示すために使用される。
【0009】
従来の心臓ペーシング療法の意味での徐脈患者を対象とするのではなく、基礎心疾患や急性心疾患による重度の徐脈や心停止までの患者を対象としており、ペーシングを行わなければ死亡する可能性が非常に高い(患者が緊急に救助を必要としている)場合に、上記の生命を脅かす状態にある患者をペーシングサポートを必要とする対象としており、すなわち、本発明におけるペーシング操作は、「最終手段」/「救命措置」として実施される。
【0010】
具体的には、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、ユーザの受容度及び/又は体験を向上させることができる。
【0011】
好ましくは、前記実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断し、この条件を満たす場合、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップは、
前記実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、下回る場合には、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングすることを含む。
【0012】
患者の心拍数をリアルタイムで監視し、設定されたプリセット低心拍数を下回る(既存のペーシング制御方法におけるプリセット低心拍数よりもはるかに低い)場合に、患者が緊急に救助を必要としていることを特定し、すなわち、患者の心拍数が非常が低い場合にのみペーシングを発動し、患者の生命を維持するために適時かつ効果的なペーシングを実現することができる。
【0013】
好ましくは、前記実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断し、この条件を満たす場合、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップは、
前記実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、下回る場合には、患者の心臓がプリセット低心拍数より連続して低い前記実際の心拍数にある時間(すなわち、第1低心拍数持続時間)を取得し、前記第1低心拍数持続時間がプリセット持続時間に達すると、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングすることを含む。
【0014】
患者のリアルタイムの心拍数をリアルタイムで監視し、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回り、かつ第1低心拍数持続時間がプリセット低心拍数持続時間に達した場合にのみペーシングを発動することにより、患者の心拍数が偶然にプリセット低心拍数を下回り、不必要なペーシング操作を引き起こすことがなく、より優れたペーシング監視機能を実現し、患者の安全を確保しながら、ユーザ体験をさらに向上させる。
【0015】
好ましくは、前記プリセットペーシング頻度、前記プリセット低心拍数及び前記プリセット低心拍数持続時間は、患者の状態に従って医療従事者が再設定することができるパラメータである。
【0016】
患者によって身体状態が異なり、ペーシングの受容度も異なることを考慮し、各患者が標的ペーシング療法を受けられるようにするために、各患者の病歴、現在の状態、薬物の使用、ペーシングの必要性などの複数のパラメータを予め総合的に考慮して、各患者に適したプリセット低心拍数、プリセット低心拍数持続時間及びプリセットペーシング頻度を最終的に決定し、患者の安全を確保しながら、患者の体験を最大限に保証する。
【0017】
好ましくは、前記プリセット低心拍数は、0bpmより大きく、40bpm以下である。プリセット低心拍数は、既存のペーシング制御方法におけるプリセット下限心拍数よりはるかに低い。
【0018】
好ましくは、前記プリセット低心拍数持続時間は、1s~60sを含む。
【0019】
好ましくは、前記プリセットペーシング頻度は、40bpm~80bpmを含む。
【0020】
好ましくは、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップの実行中に、
第1ペーシング期間内に患者の自己心拍数を取得するステップと、
設定期間に対応する患者の総心拍数を取得するステップと、
ここで、前記総心拍数は、前記自己心拍数及びペーシング心拍数を含み、
前記設定期間は、前記第1ペーシング期間を含み、前記設定期間に対応する持続時間は、前記第1ペーシング期間に対応する持続時間以上であり、
前記自己心拍数と前記総心拍数との比率を算出するステップと、
前記比率が第1設定閾値以上であるか否かを判断し、前記第1設定閾値以上である場合、ペーシングの停止を制御し、前記第1設定閾値未満の場合、前記比率が第2設定閾値以下であるか否かを判断し、前記第2設定閾値以下の場合、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップを引き続き実行し、前記第2設定閾値を上回り、前記第1設定閾値未満の場合、前記プリセットペーシング頻度を第1ペーシング頻度に低減し、前記第1ペーシング頻度が最低ペーシング頻度未満であるか否かを判断し、未満ではない場合、前記第1ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、未満である場合、前記最低ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップとを同時に実行し、例えば、プリセットペーシング頻度を10bpm低減して、低減したペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、低減したペーシング頻度が最低ペーシング頻度未満の場合、最低ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、ここで、最低ペーシング頻度は、40bpm~60bpmであり、一般的に50bpmである。
【0021】
ここで、第1設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が高く、第2設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が低い。
【0022】
適時かつ効果的なペーシング制御を行うために、プリセットペーシング頻度でペーシングを行った後に患者の心拍数を再評価し、実際の心拍数がプリセットペーシング頻度(一般的な心拍数と見なすことができる)を上回り、例えば50bpm又は60bpm、設定時間を持続する場合、現在のペーシング頻度で効果的にペーシングが行われていることを示し、患者自身の心拍数を回復させ、生命の危機から患者を解放し、この時点で、患者へのペーシング操作を停止し、患者に与える痛みを最小限に抑えるために、適時にペーシングを停止する。
【0023】
実際の心拍数がまだ第1プリセットペーシング頻度、すなわち一般的な心拍数(50bpm~60bpm、医師が調整可能)未満、又は僅かな心拍数のみが第1プリセットペーシング頻度を上回る場合、患者の心拍数が現在のペーシング頻度では増加/回復しないか、又は適切な血液循環をサポートするほど十分に増加/回復していないことを示し、この時点で、患者にペーシングを継続して、患者の安全をさらに保証する。
【0024】
本発明はまた、ペーシング制御装置を提供し、前記ペーシング制御装置は、
患者の実際の心拍数を取得するための心拍数取得モジュールと、
前記実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断し、この条件を満たす場合、ペーシングモジュールを呼び出して、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするための第1判断モジュールとを含み、ここで、前記プリセット低心拍数条件は、患者が生命を脅かす状態にあることを示すために使用される。
【0025】
好ましくは、前記第1判断モジュールは、前記実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、そうである場合、前記ペーシングモジュールを呼び出して、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングする。
【0026】
好ましくは、前記第1判断モジュールは、前記実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、そうである場合、持続時間取得モジュールを呼び出して、患者の心臓が前記実際の心拍数にある第1低心拍数持続時間を取得し、
前記第1判断モジュールはまた、前記第1低心拍数持続時間がプリセット低心拍数持続時間に達した場合に、前記ペーシングモジュールを呼び出して、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするために使用される。
【0027】
好ましくは、前記プリセットペーシング頻度、前記プリセット低心拍数及び前記プリセット低心拍数持続時間は、患者の状態に従って再設定することができるパラメータである。
【0028】
好ましくは、前記プリセット低心拍数は、0bpmより大きく、40bpm以下である。
【0029】
好ましくは、前記プリセット低心拍数持続時間は、1s~60sである。
【0030】
好ましくは、前記プリセットペーシング頻度は、40bpm~80bpmである。
【0031】
好ましくは、ペーシング制御装置はまた、
第1ペーシング期間内に患者の自己心拍数を取得するための自己心拍数取得モジュールと、
設定期間に対応する患者の総心拍数を取得するための総心拍数取得モジュールと、
ここで、前記設定期間は、前記第1ペーシング期間を含み、前記設定期間に対応する持続時間は、前記第1ペーシング期間に対応する持続時間以上であり、
前記自己心拍数と前記総心拍数との比率を算出するための比率算出モジュールと、
前記比率が第1設定閾値以上であるか否かを判断し、前記第1設定閾値以上である場合、ペーシングの停止を制御し、前記第1設定閾値未満の場合、前記比率が第2設定閾値以下であるか否かを判断し、前記第2設定閾値以下の場合、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップを引き続き実行し、前記第2設定閾値を上回り、前記第1設定閾値未満の場合、前記プリセットペーシング頻度を第1ペーシング頻度に低減し、前記第1ペーシング頻度が最低ペーシング頻度未満であるか否かを判断し、未満ではない場合、前記第1ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、未満である場合、前記最低ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするための第2判断モジュールとを含み、例えば、プリセットペーシング頻度を10bpm低減して、低減したペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、低減したペーシング頻度が最低ペーシング頻度未満の場合、最低ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、ここで、最低ペーシング頻度は、40bpm~60bpmであり、一般的に50bpmである。
【0032】
ここで、第1設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が高く、第2設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が低い。
【0033】
本発明はまた、医療機器を提供し、前記医療機器は、上記のペーシング制御装置を含む。
【0034】
好ましくは、前記医療機器は、装着型除細動器(WCD)、体外式除細動器(AEDなど)、完全皮下植込み型除細動器(SICD)、又は機械的循環補助装置(MCS)を含む。
【0035】
本技術分野の常識に違反しない限り、前記各好ましい条件は、任意に組み合わせて、本発明の各好ましい実施例を得ることができる。
【0036】
本発明の正の進歩的な効果は、以下の通りである。
本発明では、従来の意味での徐脈患者を対象としているのではなく、基礎心疾患や急性心疾患による重度の徐脈や心停止まで生命を脅かす状態にある患者をペーシングサポートを必要とする対象としており、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、患者自身の心拍数が一定レベルまで回復した時点でペーシングを終了させ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施例1のペーシング制御方法の第1フローチャートである。
図2】本発明の実施例1のペーシング制御方法の第2フローチャートである。
図3】本発明の実施例1のペーシング制御方法の第3フローチャートである。
図4】本発明の実施例2のペーシング制御方法のフローチャートである。
図5】本発明の実施例3のペーシング制御システムの第1構造模式図である。
図6】本発明の実施例3のペーシング制御システムの第2構造模式図である。
図7】本発明の実施例4のペーシング制御システムの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、実施例の形態によってさらに本発明を説明するが、これによって本発明を実施例の範囲内に限定するわけではない。
【0039】
<実施例1>
図1に示すように、本実施例のペーシング制御方法は、以下のステップを含む。
【0040】
S101では、患者の実際の心拍数を取得し、
S102では、実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断し、この条件を満たす場合、S103を実行し、
S103では、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、ここで、プリセット低心拍数条件は、患者が生命を脅かす状態にあることを示すために使用される。
【0041】
従来の意味での徐脈患者を対象とするのではなく、基礎心疾患や急性心疾患による重度の徐脈や心停止までの患者を対象としており、ペーシングを行わなければ死亡する可能性が非常に高い(患者が緊急に救助を必要としている)場合に、上記の生命を脅かす状態にある患者をペーシングサポートを必要とする対象としており、すなわち、本発明におけるペーシング操作は、「最終手段」/「救命措置」として実施される。
【0042】
具体的には、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。
【0043】
具体的には、図2に示すように、ステップS102は、以下のステップを含む。
【0044】
S1021では、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、下回る場合には、S103を実行する。
【0045】
患者の心拍数をリアルタイムで監視し、設定されたプリセット低心拍数を下回る(既存のペーシング制御方法におけるプリセット低心拍数よりもはるかに低い)場合に、患者が緊急に救助を必要としていることを特定し、すなわち、患者の心拍数が非常が低い場合にのみペーシングを発動し、患者の生命を維持するために適時かつ効果的なペーシングを実現することができる。また、図3に示すように、ステップS102は、以下のステップを含む。
【0046】
S1022では、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、下回る場合には、患者の心臓が実際の心拍数にある第1低心拍数持続時間を取得し、第1低心拍数持続時間がプリセット持続時間に達するか否かを判断し、達する場合には、ステップS103を実行する。
【0047】
患者のリアルタイムの心拍数をリアルタイムで監視し、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回り、かつ第1低心拍数持続時間がプリセット低心拍数持続時間に達した場合にのみペーシングを発動することにより、患者の心拍数が偶然にプリセット低心拍数を下回り、不必要なペーシング操作を引き起こすことがなく、より優れたペーシング監視機能を実現し、患者の安全を確保しながら、ユーザ体験をさらに向上させる。
【0048】
実施形態において、プリセット低心拍数は、0bpmより大きく、40bpm以下であり、好ましくは、プリセット低心拍数は、10bpm~30bpmであり、さらに、プリセット低心拍数を20bpmに設定することができる。本実施例のペーシング制御方法は、患者が心停止状態、すなわち、リアルタイムの心拍数が0bpmの場合にも依然として適用可能であり、心拍がない極限状態でタイムリーなペーシングを実現し、適時に患者の命を救うことに注意する必要がある。
【0049】
プリセット低心拍数持続時間は、1s~5min(すなわち、1秒~5分)であり、プリセット低心拍数持続時間は、異なる患者の身体状態又は他の実際の状況に従って調整し、決定することができ、実際のペーシングプロセス中に本発明の技術的解決手段におけるプリセット低心拍数持続時間を合理的に適用できる限り、本発明の保護範囲に属する。
【0050】
また、プリセット低心拍数持続時間は、1s~60sであり、好ましくは、プリセット低心拍数持続時間は、1s~20sであり、さらに、プリセット低心拍数持続時間を10sに設定することができる。
【0051】
プリセットペーシング頻度は、35bpm~90bpmであり、プリセットペーシング頻度は、異なる患者の身体状態又は他の実際の状況に従って調整し、決定することができ、実際のペーシングプロセス中に本発明の技術的解決手段におけるプリセットペーシング頻度を合理的に適用できる限り、本発明の保護範囲に属する。
【0052】
また、プリセットペーシング頻度は、40bpm~80bpmであり、好ましくは、プリセットペーシング頻度は、50bpm~65bpmである。さらに、プリセットペーシング頻度を60bpmに設定することができる。
【0053】
本実施例におけるプリセットペーシング頻度、プリセット低心拍数及びプリセット低心拍数持続時間は、異なる患者の具体的な状態に従って再設定することができるパラメータである。患者によって身体状態が異なることを考慮し、各患者が標的ペーシング療法を受けられるようにするために、各患者の病歴、現在の状態、薬物の使用、ペーシングの必要性などの複数のパラメータを予め総合的に考慮して、各患者に適したプリセット低心拍数、プリセット低心拍数持続時間及びプリセットペーシング頻度を最終的に決定し、患者の安全を確保しながら、患者の体験を最大限に保証する。
【0054】
本実施例のすべてのパラメータ値は、実際の状況に従って再設定できることに注意する必要がある。
【0055】
本実施例では、重度の徐脈や心停止まで生命を脅かす状態にある患者に対して、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、患者自身の心拍数が一定レベルまで回復した時点でペーシングを終了させ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、特に、偶発性徐脈、非重症性徐脈、又は一過性心停止の場合にペーシングを起動せず、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。
【0056】
<実施例2>
図4に示すように、本実施例のペーシング制御方法は、実施例1をさらに改良したものであり、具体的には、
ステップS103の後、以下のステップも含む。
【0057】
S104では、第1ペーシング期間内に患者の自己心拍数を取得し、
このとき取得された心拍数は、対応する患者自身の心拍数、すなわち非ペーシング心拍数である。
【0058】
S105では、設定期間に対応する患者の総心拍数を取得し、
ここで、前記設定期間は、第1ペーシング期間を含み、設定期間に対応する持続時間は、第1ペーシング期間に対応する持続時間以上であり、もちろん、時間だけでなく、時間の代わりに総心拍数を限定することもできる(すなわち、総心拍数が自己心拍数以上である)。
【0059】
第1ペーシング期間に対応する持続時間と、設定期間に対応する持続時間の両方を実際のニーズに応じて設定し、調整することができる。
【0060】
自己心拍数、ペーシング心拍数及び総心拍数を取得するプロセスは、当該技術分野でよく知られているため、ここでは繰り返さない。
【0061】
S106では、自己心拍数と総心拍数との比率を算出し、
S107では、比率が第1設定閾値以上であるか否かを判断し、そうである場合、ステップS109を実行し、そうでない場合、ステップS108を実行し、
S108では、比率が第2設定閾値以下であるか否かを判断し、そうである場合、ステップS103を引き続き実行し、そうでない場合、プリセットペーシング頻度を第1ペーシング頻度に低減し、第1ペーシング頻度が最低ペーシング頻度を下回るか否かを判断し、例えば、プリセットペーシング頻度を10bpm低減して、低減したペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、そうでない場合、第1ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、そうである場合、最低ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングする。ここで、最低ペーシング頻度は、40bpm~60bpmであり、一般的に50bpmである。
【0062】
ここで、最低ペーシング頻度は、プリセットペーシング閾値であり、もちろん、実際のニーズに応じて再確定し、調整することもできる。
【0063】
第1設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が高く、第2設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が低い。
【0064】
ここで、ペーシングプロセス中にペーシングが停止されるまでステップS104~S108を継続的に実行し、可能な限り適時かつ効果的にペーシング制御を行う。
【0065】
S109では、ペーシングの停止を制御し、上記のペーシングプロセス中に、ペーシングを手動でリアルタイムで終了するか又は調整することができる。
【0066】
具体的には、プログラム制御によってペーシング操作を制御し、設定時間、例えば1分間を持続することができ(具体的には、実際のニーズに応じて数秒から数分を設定し、調整することができ、また、実際の使用要件に応じて、プログラムコントローラ、操作ボタン又は他の実施手段によって、そのペーシング操作を手動で終了させることができる)、この期間中の患者の自己心拍数及び総心拍数を合計した後、ペーシング段階中の患者の総心拍数における自己心拍数の割合を計算し、その割合が特定の設定値(50~100%、好ましくは、例えば90%、プログラム制御可能)を上回る場合、ペーシングが有効であり、自己心拍数がプリセットペーシング頻度を上回る状態に回復したことを示し、ペーシングを停止できると判断し、その割合が特定の設定値(0~30%、好ましくは、例えば10%、プログラム制御可能)を下回る場合、患者の自己心拍数がまだ回復しておらず、ペーシングサポートがまだ必要であることを示し、プリセットペーシング頻度でペーシングを継続する。そうでない場合は、ペーシングのためにペーシング頻度を10bpm低減し、ペーシング頻度が最初に設定された最低ペーシング頻度(40bpm~60bpm、好ましくは、例えば50bpm)に達するまで、上記のプロセスを継続する。
【0067】
適時かつ効果的なペーシング制御を行うために、プリセットペーシング頻度でペーシングを行ったときに患者自身の心拍数を収集し、一定時間後に患者自身の心拍数を再評価し、実際の心拍数がプリセットペーシング頻度(一般的な心拍数と見なすことができる)を上回り、例えば50bpm又は60bpm、設定時間を持続する場合、現在のペーシング頻度で効果的にペーシングが行われていることを示し、患者自身の心拍数を回復させ、生命の危機から患者を解放し、この時点で、患者へのペーシング操作を停止し、患者に与える痛みを最小限に抑えるために、適時にペーシングを停止する。
【0068】
実際の心拍数が第1プリセットペーシング頻度、すなわち一般的な心拍数(50bpm~60bpm、医師が調整可能)未満、又は僅かな心拍数のみが第1プリセットペーシング頻度を上回る場合、患者の心拍数が現在のペーシング頻度では増加/回復しないか、又は適切な血液循環をサポートするほど十分に増加/回復していないことを示し、この時点で、患者にペーシングを継続して、患者の安全をさらに保証する。
【0069】
もちろん、異なる患者に合わせ、異なる患者のニーズを満たし、ユーザ体験をさらに向上させるために、臨床状況に対する医師の判断に従って、上記の値を予め設定するか又は調整することができる。
【0070】
本実施例のすべてのパラメータ値は、実際の状況に従って再設定できることに注意する必要がある。
【0071】
本実施例では、重度の徐脈や心停止まで生命を脅かす状態にある患者に対して、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、患者自身の心拍数が一定レベルまで回復した時点でペーシングを終了させ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、特に、偶発性徐脈、非重症性徐脈、又は一過性心停止の場合にペーシングを起動せず、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。また、ペーシング操作の実施後、患者に対するペーシング操作の効果を適時に監視し、ペーシング頻度を適応的に調整して、患者の安全を確保するために適時かつ効果的な心室捕捉を保証する。
【0072】
<実施例3>
図5に示すように、本実施例のペーシング制御装置は、心拍数取得モジュール1、判断モジュール2及びペーシングモジュール3を含む。
【0073】
心拍数取得モジュール1は、患者の実際の心拍数を取得するために使用され、
判断モジュール2は、実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断するために使用され、そうである場合、ペーシングモジュール3を呼び出して、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、ここで、プリセット低心拍数条件は、患者が生命を脅かす状態にあることを示すために使用される。
【0074】
従来の意味での徐脈患者を対象とするのではなく、重度の徐脈や心停止までの患者に対して、ペーシングを行わなければ死亡する可能性が非常に高い(患者が緊急に救助を必要としている)場合に、上記の生命を脅かす状態にある患者をペーシングサポートを必要とする対象としており、すなわち、本発明におけるペーシング操作は、「最終手段」/「救命措置」として実施される。
【0075】
具体的には、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、特に、偶発性徐脈、非重症性徐脈、又は一過性心停止の場合にペーシングを起動せず、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。
【0076】
具体的には、判断モジュール2は、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断するために使用され、そうである場合、ペーシングモジュール3を呼び出して、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングする。
【0077】
患者の心拍数をリアルタイムで監視し、設定されたプリセット低心拍数を下回る(既存のペーシング制御方法におけるプリセット低心拍数よりもはるかに低い)場合に、患者が緊急に救助を必要としていることを特定し、すなわち、患者の心拍数が非常が低い場合にのみペーシングを発動し、患者の生命を維持するために適時かつ効果的なペーシングを実現することができる。また、図6に示すように、本実施例のペーシング制御装置はさらに、持続時間取得モジュール4を含む。
【0078】
判断モジュール2は、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断するために使用され、そうである場合、持続時間取得モジュール4を呼び出して、患者の心臓が実際の心拍数にある第1低心拍数持続時間を取得し、
判断モジュール2はまた、第1低心拍数持続時間がプリセット低心拍数持続時間に達した場合に、ペーシングモジュール3を呼び出して、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするために使用される。
【0079】
患者のリアルタイムの心拍数をリアルタイムで監視し、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回り、かつ第1低心拍数持続時間がプリセット低心拍数持続時間以上である場合にのみペーシングを発動することにより、患者の心拍数が偶然にプリセット低心拍数を下回り、不必要なペーシング操作を引き起こすことがなく、より優れたペーシング監視機能を実現し、患者の安全を確保しながら、ユーザ体験をさらに向上させる。
【0080】
実施形態において、プリセット低心拍数は、0bpmより大きく、40bpm以下であり、プリセット低心拍数は、既存のペーシング制御方法におけるプリセット下限心拍数よりはるかに低く、プリセット低心拍数は、ペーシング後に患者が心室を確実に捕捉できるように設定される。好ましくは、プリセット低心拍数は、10bpm~30bpmであり、さらに、プリセット低心拍数を20bpmに設定することができる。
【0081】
プリセット低心拍数持続時間は、1s~5min(すなわち、1秒~5分)であり、プリセット低心拍数持続時間は、異なる患者の身体状態又は他の実際の状況に従って調整し、決定することができ、実際のペーシングプロセス中に本発明の技術的解決手段におけるプリセット低心拍数持続時間を合理的に適用できる限り、本発明の保護範囲に属する。本実施例のペーシング制御方法は、患者が心停止状態、すなわち、リアルタイムの心拍数が0bpmの場合にも依然として適用可能であり、心拍がない極限状態でタイムリーなペーシングを実現し、適時に患者の命を救うことに注意する必要がある。
【0082】
プリセット低心拍数持続時間は、1s~60sであり、好ましくは、プリセット低心拍数持続時間は、1s~20sであり、さらに、プリセット低心拍数持続時間を10sに設定することができる。
【0083】
プリセットペーシング頻度は、35bpm~90bpmであり、プリセットペーシング頻度は、異なる患者の身体状態又は他の実際の状況に従って調整し、決定することができ、実際のペーシングプロセス中に本発明の技術的解決手段におけるプリセットペーシング頻度を合理的に適用できる限り、本発明の保護範囲に属する。
【0084】
また、プリセットペーシング頻度は、40bpm~80bpmであり、好ましくは、プリセットペーシング頻度は、50bpm~65bpmである。さらに、プリセットペーシング頻度を60bpmに設定することができる。
【0085】
本実施例におけるプリセットペーシング頻度、プリセット低心拍数及びプリセット低心拍数持続時間は、異なる患者の具体的な状態に従って再設定することができるパラメータである。患者によって身体状態が異なることを考慮し、各患者が標的ペーシング療法を受けられるようにするために、各患者の病歴、現在の状態、薬物の使用、ペーシングの必要性などの複数のパラメータを予め総合的に考慮して、各患者に適したプリセット低心拍数、プリセット低心拍数持続時間及びプリセットペーシング頻度を最終的に決定し、患者の安全を確保しながら、患者の体験を最大限に保証する。
【0086】
本実施例のすべてのパラメータ値は、実際の状況に従って再設定できることに注意する必要がある。
【0087】
本実施例では、重度の徐脈や心停止まで生命を脅かす状態にある患者に対して、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、患者自身の心拍数が一定レベルまで回復した時点でペーシングを終了させ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、特に、偶発性徐脈、非重症性徐脈、又は一過性心停止の場合にペーシングを起動せず、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。
【0088】
<実施例4>
本実施例のペーシング制御システムは、実施例3をさらに改良したものであり、具体的には、
図7に示すように、本実施例のペーシング制御システムは、自己心拍数取得モジュール5、総心拍数取得モジュール6、比率算出モジュール7及び第2判断モジュール8を含む。
【0089】
自己心拍数取得モジュール5は、第1ペーシング期間内に患者の自己心拍数を取得するために使用され、
総心拍数取得モジュール6は、設定期間に対応する患者の総心拍数を取得するために使用され、
ここで、総心拍数は、自己心拍数及びペーシング心拍数を含み、
設定期間は、第1ペーシング期間を含み、設定期間に対応する持続時間は、第1ペーシング期間に対応する持続時間以上であり、
比率算出モジュール7は、自己心拍数と総心拍数との比率を算出するために使用され、
第2判断モジュール8は、比率が第1設定閾値以上であるか否かを判断するために使用され、第1設定閾値以上である場合、ペーシングモジュール3を呼び出して、ペーシングの停止を制御し、第1設定閾値未満の場合、比率が第2設定閾値以下であるか否かを判断し、第2設定閾値以下の場合、ペーシングモジュール3を呼び出して、患者の心臓のペーシングを継続し、第2設定閾値を上回り、第1設定閾値以下の場合、ペーシングモジュール3を呼び出して、プリセットペーシング頻度を第1ペーシング頻度に低減し、第1ペーシング頻度が最低ペーシング頻度未満であるか否かを判断し、例えば、プリセットペーシング頻度を10bpm低減して、低減したペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、そうでない場合、第1ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、そうである場合、最低ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングする。ここで、最低ペーシング頻度は、40bpm~60bpmであり、一般的に50bpmである。
【0090】
ここで、最低ペーシング頻度は、プリセットペーシング閾値であり、もちろん、実際のニーズに応じて再確定し、調整することもできる。
【0091】
第1設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が高く、第2設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が低い。
【0092】
具体的には、プログラム制御によってペーシング操作を制御し、設定時間、例えば1分間を持続することができ(具体的には、実際のニーズに応じて設定時間(数秒から数分)を設定し、調整することができ、また、実際の使用要件に応じて、プログラムコントローラ、操作ボタン又は他の実施手段によって、そのペーシング操作を手動で終了させることができる)、この期間中の患者の自己心拍数及び総心拍数を合計した後、ペーシング段階中の患者の総心拍数における自己心拍数の割合を計算し、その割合が特定の設定値(50~100%、好ましくは、例えば90%、プログラム制御可能)を上回る場合、ペーシングが有効であり、自己心拍数がプリセットペーシング頻度を上回る状態に回復したことを示し、ペーシングを停止できると判断し、その割合が設定値(0~30%、好ましくは、例えば10%、プログラム制御可能)を下回る場合、患者の自己心拍数がまだ回復しておらず、ペーシングサポートがまだ必要であることを示し、プリセットペーシング頻度でペーシングを継続する。そうでない場合は、ペーシングのためにペーシング頻度を10bpm低減し、ペーシング頻度が最初に設定された最低ペーシング頻度(40bpm~60bpm、好ましくは、例えば50bpm)に達するまで、上記のプロセスを継続する。
【0093】
適時かつ効果的なペーシング制御を行うために、プリセットペーシング頻度でペーシングを行ったときに患者自身の心拍数を収集し、一定時間後に患者自身の心拍数を再評価し、実際の心拍数がプリセットペーシング頻度(一般的な心拍数と見なすことができる)を上回り、例えば50bpm又は60bpm、設定時間を持続する場合、現在のペーシング頻度で効果的にペーシングが行われていることを示し、患者自身の心拍数を回復させ、生命の危機から患者を解放し、この時点で、患者へのペーシング操作を停止し、患者に与える痛みを最小限に抑えるために、適時にペーシングを停止する。
【0094】
実際の心拍数が第1プリセットペーシング頻度、すなわち一般的な心拍数(50bpm~60bpm、医師が調整可能)未満、又は僅かな心拍数のみが第1プリセットペーシング頻度を上回る場合、患者の心拍数が現在のペーシング頻度では増加/回復しないか、又は適切な血液循環をサポートするほど十分に増加/回復していないことを示し、この時点で、患者にペーシングを継続して、患者の安全をさらに保証する。
【0095】
もちろん、異なる患者に合わせ、異なる患者のニーズを満たし、ユーザ体験をさらに向上させるために、臨床状況に対する医師の判断に従って、上記の値を予め設定するか又は調整することができる。
【0096】
本実施例のすべてのパラメータ値は、実際の状況に従って再設定できることに注意する必要がある。
【0097】
本実施例では、重度の徐脈や心停止まで生命を脅かす状態にある患者に対して、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、患者自身の心拍数が一定レベルまで回復した時点でペーシングを終了させ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。また、ペーシング操作の実施後、患者に対するペーシング操作の効果を適時に監視し、ペーシング頻度を適応的に調整して、患者の安全を確保するために適時かつ効果的な心室捕捉を保証する。
【0098】
<実施例5>
本実施例の医療機器は、実施例3又は4のペーシング制御装置を含む。
ここで、前記医療機器は、装着型除細動器(WCD)、体外式除細動器(AEDなど)、完全皮下植込み型除細動器(SICD)、機械的循環補助装置(MCS)、又は他の生命維持装置/機器を含むが、これらに限定されない。
【0099】
上記のペーシング制御プロセスに必要なハードウェア構成要素及び回路構造は、すべて、装着型除細動器(WCD)、体外式除細動器、完全皮下植込み型除細動器(SICD)又は機械的循環補助装置(MCS)の既存の構造であり、すなわち、各構成要素がどうのように連携し、回路構造がどうのように対応機能を実現しているかは当該技術分野でよく知られているため、ここでは繰り返さない。
【0100】
本実施例の医療機器は、上記のペーシング制御装置を用いて、主に重度の徐脈や心停止まで生命を脅かす状態にある患者を対象としており、患者の心拍数が一定期間、予め設定した非常に低いプリセット低心拍数を下回り続けた場合、患者にペーシングの必要性があり、患者にペーシングを行う必要があると判断し、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、特に、偶発性徐脈、非重症性徐脈、又は一過性心停止の場合にペーシングを起動せず、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。
【0101】
以上、本発明の具体的な実施形態を記述したが、当業者にとって、これらは例示の説明だけで、本発明の原理と実質に反しないという前提下、これらの実施形態に対して様々な変更や修正をすることができる。そのため、本発明の保護範囲は添付の請求の範囲によって限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の実際の心拍数を取得するための心拍数取得モジュールと、
前記実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断し、この条件を満たす場合、ペーシングモジュールを呼び出して、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするための第1判断モジュールとを含み、ここで、前記プリセット低心拍数条件は、患者が生命を脅かす状態にあることを示すために使用されることを特徴とする、ペーシング制御装置。
【請求項2】
前記第1判断モジュールは、前記実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、そうである場合、持続時間取得モジュールを呼び出して、患者の心臓が前記実際の心拍数にある第1低心拍数持続時間を取得し、
前記第1判断モジュールはまた、前記第1低心拍数持続時間がプリセット低心拍数持続時間に達した場合に、前記ペーシングモジュールを呼び出して、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするために使用されることを特徴とする、請求項に記載のペーシング制御装置。
【請求項3】
前記プリセットペーシング頻度、前記プリセット低心拍数及び前記プリセット低心拍数持続時間は、患者の状態に従って再設定することができるパラメータであることを特徴とする、請求項に記載のペーシング制御装置。
【請求項4】
前記プリセット低心拍数は、0bpmより大きく、40bpm以下であることを特徴とする、請求項に記載のペーシング制御装置。
【請求項5】
前記プリセット低心拍数は、10bpm以上であり、30bpm以下であることを特徴とする、請求項4に記載のペーシング制御装置。
【請求項6】
前記プリセット低心拍数持続時間は、10s~5minであることを特徴とする、請求項2に記載のペーシング制御装置。
【請求項7】
前記プリセット低心拍数持続時間は、10s~60sであることを特徴とする、請求項に記載のペーシング制御装置。
【請求項8】
前記プリセットペーシング頻度は、40bpm~80bpmであることを特徴とする、請求項1~7いずれか一項に記載のペーシング制御装置。
【請求項9】
第1ペーシング期間内に患者の自己心拍数を取得するための自己心拍数取得モジュールと、
設定期間に対応する患者の総心拍数を取得するための総心拍数取得モジュールと、
を含み、
ここで、前記設定期間は、前記第1ペーシング期間を含み、前記設定期間に対応する持続時間は、前記第1ペーシング期間に対応する持続時間以上であり、
前記自己心拍数と前記総心拍数との比率を算出するための比率算出モジュールと、
前記比率が第1設定閾値以上であるか否かを判断し、前記第1設定閾値以上である場合、ペーシングの停止を制御し、前記第1設定閾値未満の場合、前記比率が第2設定閾値以下であるか否かを判断し、前記第2設定閾値以下の場合、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップを引き続き実行し、前記第2設定閾値を上回り、前記第1設定閾値未満の場合、前記プリセットペーシング頻度を第1ペーシング頻度に低減し、前記第1ペーシング頻度が最低ペーシング頻度未満であるか否かを判断し、未満ではない場合、前記第1ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、未満である場合、前記最低ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするための第2判断モジュールと、
を含む
ことを特徴とする、請求項1~7いずれか一項に記載のペーシング制御装置。
【請求項10】
前記第1設定閾値は、50~100%であり、前記第2設定閾値は、0~30%であり、前記最低ペーシング頻度は、40bpm~60bpmであることを特徴とする、請求項9に記載のペーシング制御装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のペーシング制御装置を含むことを特徴とする、医療機器。
【請求項12】
前記医療機器は、装着型除細動器(WCD)、体外式除細動器、完全皮下植込み型除細動器(SICD)、又は機械的循環補助装置(MCS)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の医療機器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置の技術分野に関し、特に、ーシング制御装置及び医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の心拍数をリアルタイムで監視し、心拍数が設定されたペーシング条件に達した場合にタイムリーに心臓をペーシングして、心臓の拍動が遅くなったり、あるいは止まったり(停止)するのを防ぐことは、心臓医療機器の最も基本的な目的である。
【0003】
既存のペーシング制御方法は、プリセット下限心拍数に基づいており、すなわち、患者の心拍数がプリセット下限心拍数に低下することが監視されるとすぐに、プリセット下限心拍数と同じペーシング頻度で患者に対してペーシングを行い、患者の心拍数が設定値を下回ることを防ぎ、患者の心拍数がプリセット下限心拍数を下回らないようにする。例えば、下限心拍数が45bpmに設定されている場合、患者の心拍数(1心拍又はR-R間隔)が45bpm未満であることが監視されると、患者のR-R間隔が45bpmに対応するR-R間隔を下回らないように、45bpmのペーシング頻度で患者に対してペーシングを行う。
【0004】
このようなペーシング制御方法は、一般的な心内膜/心外膜ペーシングに適用される。しかし、例えば、経皮ペーシング(電気刺激)の場合、患者に痛みを与え、あるいは耐えられない痛みを与えやすいことがあるが、既存のペーシング制御方法では、上記のように患者の心拍数がプリセット下限心拍数に低下するとすぐにペーシングを開始するため、ペーシング操作が頻繁になり、その結果、ペーシング操作によって患者が痛みを感じることが多くなり、ユーザ体験が悪く、患者の医療装置/機器の使用又はコンプライアンスを低下させる。
【発明の概要】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的問題は、先行技術におけるペーシング制御方法では、ペーシングが頻繁に行われるため、患者が痛みを感じることが多くなり、ユーザ体験が悪くなるという欠点を克服し、ーシング制御装置及び医療機器を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、下記の技術的解決手段を通じて上記の技術的問題を解決する。
【0007】
本発明、ペーシング制御装置を提供し、前記ペーシング制御装置は、
患者の実際の心拍数を取得するための心拍数取得モジュールと、
前記実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断し、この条件を満たす場合、ペーシングモジュールを呼び出して、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするための第1判断モジュールとを含み、ここで、前記プリセット低心拍数条件は、患者が生命を脅かす状態にあることを示すために使用される。
【0008】
従来の心臓ペーシング療法の意味での徐脈患者を対象とするのではなく、基礎心疾患や急性心疾患による重度の徐脈や心停止までの患者を対象としており、ペーシングを行わなければ死亡する可能性が非常に高い(患者が緊急に救助を必要としている)場合に、上記の生命を脅かす状態にある患者をペーシングサポートを必要とする対象としており、すなわち、本発明におけるペーシング操作は、「最終手段」/「救命措置」として実施される。
【0009】
具体的には、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、ユーザの受容度及び/又は体験を向上させることができる。
【0010】
好ましくは、前記第1判断モジュールは、前記実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、そうである場合、前記ペーシングモジュールを呼び出して、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングする。
【0011】
患者の心拍数をリアルタイムで監視し、設定されたプリセット低心拍数を下回る(既存のペーシング制御方法におけるプリセット低心拍数よりもはるかに低い)場合に、患者が緊急に救助を必要としていることを特定し、すなわち、患者の心拍数が非常が低い場合にのみペーシングを発動し、患者の生命を維持するために適時かつ効果的なペーシングを実現することができる。
【0012】
好ましくは、前記第1判断モジュールは、前記実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、そうである場合、持続時間取得モジュールを呼び出して、患者の心臓がプリセット低心拍数より連続して低い前記実際の心拍数にある時間(すなわち、第1低心拍数持続時間)を取得し、
前記第1判断モジュールはまた、前記第1低心拍数持続時間がプリセット低心拍数持続時間に達した場合に、前記ペーシングモジュールを呼び出して、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするために使用される。
【0013】
患者のリアルタイムの心拍数をリアルタイムで監視し、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回り、かつ第1低心拍数持続時間がプリセット低心拍数持続時間に達した場合にのみペーシングを発動することにより、患者の心拍数が偶然にプリセット低心拍数を下回り、不必要なペーシング操作を引き起こすことがなく、より優れたペーシング監視機能を実現し、患者の安全を確保しながら、ユーザ体験をさらに向上させる。
【0014】
好ましくは、前記プリセットペーシング頻度、前記プリセット低心拍数及び前記プリセット低心拍数持続時間は、患者の状態に従って再設定することができるパラメータである。
【0015】
患者によって身体状態が異なり、ペーシングの受容度も異なることを考慮し、各患者が標的ペーシング療法を受けられるようにするために、各患者の病歴、現在の状態、薬物の使用、ペーシングの必要性などの複数のパラメータを予め総合的に考慮して、各患者に適したプリセット低心拍数、プリセット低心拍数持続時間及びプリセットペーシング頻度を最終的に決定し、患者の安全を確保しながら、患者の体験を最大限に保証する。
【0016】
好ましくは、前記プリセット低心拍数は、0bpmより大きく、40bpm以下である。前記プリセット低心拍数は、既存のペーシング制御方法におけるプリセット下限心拍数よりはるかに低い。
【0017】
好ましくは、前記プリセット低心拍数持続時間は、1s~60sである。
【0018】
好ましくは、前記プリセットペーシング頻度は、40bpm~80bpmである。
【0019】
好ましくは、ペーシング制御装置はまた、
第1ペーシング期間内に患者の自己心拍数を取得するための自己心拍数取得モジュールと、
設定期間に対応する患者の総心拍数を取得するための総心拍数取得モジュールと、
ここで、前記設定期間は、前記第1ペーシング期間を含み、前記設定期間に対応する持続時間は、前記第1ペーシング期間に対応する持続時間以上であり、
前記自己心拍数と前記総心拍数との比率を算出するための比率算出モジュールと、
前記比率が第1設定閾値以上であるか否かを判断し、前記第1設定閾値以上である場合、ペーシングの停止を制御し、前記第1設定閾値未満の場合、前記比率が第2設定閾値以下であるか否かを判断し、前記第2設定閾値以下の場合、前記プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするステップを引き続き実行し、前記第2設定閾値を上回り、前記第1設定閾値未満の場合、前記プリセットペーシング頻度を第1ペーシング頻度に低減し、前記第1ペーシング頻度が最低ペーシング頻度未満であるか否かを判断し、未満ではない場合、前記第1ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、未満である場合、前記最低ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするための第2判断モジュールとを含み、例えば、プリセットペーシング頻度を10bpm低減して、低減したペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、低減したペーシング頻度が最低ペーシング頻度未満の場合、最低ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、ここで、最低ペーシング頻度は、40bpm~60bpmであり、一般的に50bpmである。
【0020】
ここで、第1設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が高く、第2設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が低い。
【0021】
適時かつ効果的なペーシング制御を行うために、プリセットペーシング頻度でペーシングを行った後に患者の心拍数を再評価し、実際の心拍数がプリセットペーシング頻度(一般的な心拍数と見なすことができる)を上回り、例えば50bpm又は60bpm、設定時間を持続する場合、現在のペーシング頻度で効果的にペーシングが行われていることを示し、患者自身の心拍数を回復させ、生命の危機から患者を解放し、この時点で、患者へのペーシング操作を停止し、患者に与える痛みを最小限に抑えるために、適時にペーシングを停止する。
【0022】
実際の心拍数がまだ第1プリセットペーシング頻度、すなわち一般的な心拍数(50bpm~60bpm、医師が調整可能)未満、又は僅かな心拍数のみが第1プリセットペーシング頻度を上回る場合、患者の心拍数が現在のペーシング頻度では増加/回復しないか、又は適切な血液循環をサポートするほど十分に増加/回復していないことを示し、この時点で、患者にペーシングを継続して、患者の安全をさらに保証する。
【0023】
本発明はまた、医療機器を提供し、前記医療機器は、上記のペーシング制御装置を含む。
【0024】
好ましくは、前記医療機器は、装着型除細動器(WCD)、体外式除細動器(AEDなど)、完全皮下植込み型除細動器(SICD)、又は機械的循環補助装置(MCS)を含む。
【0025】
本技術分野の常識に違反しない限り、前記各好ましい条件は、任意に組み合わせて、本発明の各好ましい実施例を得ることができる。
【0026】
本発明の正の進歩的な効果は、以下の通りである。
本発明では、従来の意味での徐脈患者を対象としているのではなく、基礎心疾患や急性心疾患による重度の徐脈や心停止まで生命を脅かす状態にある患者をペーシングサポートを必要とする対象としており、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、患者自身の心拍数が一定レベルまで回復した時点でペーシングを終了させ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例1のペーシング制御方法の第1フローチャートである。
図2】本発明の実施例1のペーシング制御方法の第2フローチャートである。
図3】本発明の実施例1のペーシング制御方法の第3フローチャートである。
図4】本発明の実施例2のペーシング制御方法のフローチャートである。
図5】本発明の実施例3のペーシング制御装置の第1構造模式図である。
図6】本発明の実施例3のペーシング制御装置の第2構造模式図である。
図7】本発明の実施例4のペーシング制御装置の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施例の形態によってさらに本発明を説明するが、これによって本発明を実施例の範囲内に限定するわけではない。
【0029】
<実施例1>
図1に示すように、本実施例のペーシング制御方法は、以下のステップを含む。
【0030】
S101では、患者の実際の心拍数を取得し、
S102では、実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断し、この条件を満たす場合、S103を実行し、
S103では、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、ここで、プリセット低心拍数条件は、患者が生命を脅かす状態にあることを示すために使用される。
【0031】
従来の意味での徐脈患者を対象とするのではなく、基礎心疾患や急性心疾患による重度の徐脈や心停止までの患者を対象としており、ペーシングを行わなければ死亡する可能性が非常に高い(患者が緊急に救助を必要としている)場合に、上記の生命を脅かす状態にある患者をペーシングサポートを必要とする対象としており、すなわち、本発明におけるペーシング操作は、「最終手段」/「救命措置」として実施される。
【0032】
具体的には、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。
【0033】
具体的には、図2に示すように、ステップS102は、以下のステップを含む。
【0034】
S1021では、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、下回る場合には、S103を実行する。
【0035】
患者の心拍数をリアルタイムで監視し、設定されたプリセット低心拍数を下回る(既存のペーシング制御方法におけるプリセット低心拍数よりもはるかに低い)場合に、患者が緊急に救助を必要としていることを特定し、すなわち、患者の心拍数が非常が低い場合にのみペーシングを発動し、患者の生命を維持するために適時かつ効果的なペーシングを実現することができる。また、図3に示すように、ステップS102は、以下のステップを含む。
【0036】
S1022では、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断し、下回る場合には、患者の心臓が実際の心拍数にある第1低心拍数持続時間を取得し、第1低心拍数持続時間がプリセット持続時間に達するか否かを判断し、達する場合には、ステップS103を実行する。
【0037】
患者のリアルタイムの心拍数をリアルタイムで監視し、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回り、かつ第1低心拍数持続時間がプリセット低心拍数持続時間に達した場合にのみペーシングを発動することにより、患者の心拍数が偶然にプリセット低心拍数を下回り、不必要なペーシング操作を引き起こすことがなく、より優れたペーシング監視機能を実現し、患者の安全を確保しながら、ユーザ体験をさらに向上させる。
【0038】
実施形態において、プリセット低心拍数は、0bpmより大きく、40bpm以下であり、好ましくは、プリセット低心拍数は、10bpm~30bpmであり、さらに、プリセット低心拍数を20bpmに設定することができる。本実施例のペーシング制御方法は、患者が心停止状態、すなわち、リアルタイムの心拍数が0bpmの場合にも依然として適用可能であり、心拍がない極限状態でタイムリーなペーシングを実現し、適時に患者の命を救うことに注意する必要がある。
【0039】
プリセット低心拍数持続時間は、1s~5min(すなわち、1秒~5分)であり、プリセット低心拍数持続時間は、異なる患者の身体状態又は他の実際の状況に従って調整し、決定することができ、実際のペーシングプロセス中に本発明の技術的解決手段におけるプリセット低心拍数持続時間を合理的に適用できる限り、本発明の保護範囲に属する。
【0040】
また、プリセット低心拍数持続時間は、1s~60sであり、好ましくは、プリセット低心拍数持続時間は、1s~20sであり、さらに、プリセット低心拍数持続時間を10sに設定することができる。
【0041】
プリセットペーシング頻度は、35bpm~90bpmであり、プリセットペーシング頻度は、異なる患者の身体状態又は他の実際の状況に従って調整し、決定することができ、実際のペーシングプロセス中に本発明の技術的解決手段におけるプリセットペーシング頻度を合理的に適用できる限り、本発明の保護範囲に属する。
【0042】
また、プリセットペーシング頻度は、40bpm~80bpmであり、好ましくは、プリセットペーシング頻度は、50bpm~65bpmである。さらに、プリセットペーシング頻度を60bpmに設定することができる。
【0043】
本実施例におけるプリセットペーシング頻度、プリセット低心拍数及びプリセット低心拍数持続時間は、異なる患者の具体的な状態に従って再設定することができるパラメータである。患者によって身体状態が異なることを考慮し、各患者が標的ペーシング療法を受けられるようにするために、各患者の病歴、現在の状態、薬物の使用、ペーシングの必要性などの複数のパラメータを予め総合的に考慮して、各患者に適したプリセット低心拍数、プリセット低心拍数持続時間及びプリセットペーシング頻度を最終的に決定し、患者の安全を確保しながら、患者の体験を最大限に保証する。
【0044】
本実施例のすべてのパラメータ値は、実際の状況に従って再設定できることに注意する必要がある。
【0045】
本実施例では、重度の徐脈や心停止まで生命を脅かす状態にある患者に対して、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、患者自身の心拍数が一定レベルまで回復した時点でペーシングを終了させ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、特に、偶発性徐脈、非重症性徐脈、又は一過性心停止の場合にペーシングを起動せず、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。
【0046】
<実施例2>
図4に示すように、本実施例のペーシング制御方法は、実施例1をさらに改良したものであり、具体的には、
ステップS103の後、以下のステップも含む。
【0047】
S104では、第1ペーシング期間内に患者の自己心拍数を取得し、
このとき取得された心拍数は、対応する患者自身の心拍数、すなわち非ペーシング心拍数である。
【0048】
S105では、設定期間に対応する患者の総心拍数を取得し、
ここで、前記設定期間は、第1ペーシング期間を含み、設定期間に対応する持続時間は、第1ペーシング期間に対応する持続時間以上であり、もちろん、時間だけでなく、時間の代わりに総心拍数を限定することもできる(すなわち、総心拍数が自己心拍数以上である)。
【0049】
第1ペーシング期間に対応する持続時間と、設定期間に対応する持続時間の両方を実際のニーズに応じて設定し、調整することができる。
【0050】
自己心拍数、ペーシング心拍数及び総心拍数を取得するプロセスは、当該技術分野でよく知られているため、ここでは繰り返さない。
【0051】
S106では、自己心拍数と総心拍数との比率を算出し、
S107では、比率が第1設定閾値以上であるか否かを判断し、そうである場合、ステップS109を実行し、そうでない場合、ステップS108を実行し、
S108では、比率が第2設定閾値以下であるか否かを判断し、そうである場合、ステップS103を引き続き実行し、そうでない場合、プリセットペーシング頻度を第1ペーシング頻度に低減し、第1ペーシング頻度が最低ペーシング頻度を下回るか否かを判断し、例えば、プリセットペーシング頻度を10bpm低減して、低減したペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、そうでない場合、第1ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、そうである場合、最低ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングする。ここで、最低ペーシング頻度は、40bpm~60bpmであり、一般的に50bpmである。
【0052】
ここで、最低ペーシング頻度は、プリセットペーシング閾値であり、もちろん、実際のニーズに応じて再確定し、調整することもできる。
【0053】
第1設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が高く、第2設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が低い。
【0054】
ここで、ペーシングプロセス中にペーシングが停止されるまでステップS104~S108を継続的に実行し、可能な限り適時かつ効果的にペーシング制御を行う。
【0055】
S109では、ペーシングの停止を制御し、上記のペーシングプロセス中に、ペーシングを手動でリアルタイムで終了するか又は調整することができる。
【0056】
具体的には、プログラム制御によってペーシング操作を制御し、設定時間、例えば1分間を持続することができ(具体的には、実際のニーズに応じて数秒から数分を設定し、調整することができ、また、実際の使用要件に応じて、プログラムコントローラ、操作ボタン又は他の実施手段によって、そのペーシング操作を手動で終了させることができる)、この期間中の患者の自己心拍数及び総心拍数を合計した後、ペーシング段階中の患者の総心拍数における自己心拍数の割合を計算し、その割合が特定の設定値(50~100%、好ましくは、例えば90%、プログラム制御可能)を上回る場合、ペーシングが有効であり、自己心拍数がプリセットペーシング頻度を上回る状態に回復したことを示し、ペーシングを停止できると判断し、その割合が特定の設定値(0~30%、好ましくは、例えば10%、プログラム制御可能)を下回る場合、患者の自己心拍数がまだ回復しておらず、ペーシングサポートがまだ必要であることを示し、プリセットペーシング頻度でペーシングを継続する。そうでない場合は、ペーシングのためにペーシング頻度を10bpm低減し、ペーシング頻度が最初に設定された最低ペーシング頻度(40bpm~60bpm、好ましくは、例えば50bpm)に達するまで、上記のプロセスを継続する。
【0057】
適時かつ効果的なペーシング制御を行うために、プリセットペーシング頻度でペーシングを行ったときに患者自身の心拍数を収集し、一定時間後に患者自身の心拍数を再評価し、実際の心拍数がプリセットペーシング頻度(一般的な心拍数と見なすことができる)を上回り、例えば50bpm又は60bpm、設定時間を持続する場合、現在のペーシング頻度で効果的にペーシングが行われていることを示し、患者自身の心拍数を回復させ、生命の危機から患者を解放し、この時点で、患者へのペーシング操作を停止し、患者に与える痛みを最小限に抑えるために、適時にペーシングを停止する。
【0058】
実際の心拍数が第1プリセットペーシング頻度、すなわち一般的な心拍数(50bpm~60bpm、医師が調整可能)未満、又は僅かな心拍数のみが第1プリセットペーシング頻度を上回る場合、患者の心拍数が現在のペーシング頻度では増加/回復しないか、又は適切な血液循環をサポートするほど十分に増加/回復していないことを示し、この時点で、患者にペーシングを継続して、患者の安全をさらに保証する。
【0059】
もちろん、異なる患者に合わせ、異なる患者のニーズを満たし、ユーザ体験をさらに向上させるために、臨床状況に対する医師の判断に従って、上記の値を予め設定するか又は調整することができる。
【0060】
本実施例のすべてのパラメータ値は、実際の状況に従って再設定できることに注意する必要がある。
【0061】
本実施例では、重度の徐脈や心停止まで生命を脅かす状態にある患者に対して、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、患者自身の心拍数が一定レベルまで回復した時点でペーシングを終了させ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、特に、偶発性徐脈、非重症性徐脈、又は一過性心停止の場合にペーシングを起動せず、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。また、ペーシング操作の実施後、患者に対するペーシング操作の効果を適時に監視し、ペーシング頻度を適応的に調整して、患者の安全を確保するために適時かつ効果的な心室捕捉を保証する。
【0062】
<実施例3>
図5に示すように、本実施例のペーシング制御装置は、心拍数取得モジュール1、判断モジュール2及びペーシングモジュール3を含む。
【0063】
心拍数取得モジュール1は、患者の実際の心拍数を取得するために使用され、
判断モジュール2は、実際の心拍数がプリセット低心拍数条件を満たすか否かを判断するために使用され、そうである場合、ペーシングモジュール3を呼び出して、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、ここで、プリセット低心拍数条件は、患者が生命を脅かす状態にあることを示すために使用される。
【0064】
従来の意味での徐脈患者を対象とするのではなく、重度の徐脈や心停止までの患者に対して、ペーシングを行わなければ死亡する可能性が非常に高い(患者が緊急に救助を必要としている)場合に、上記の生命を脅かす状態にある患者をペーシングサポートを必要とする対象としており、すなわち、本発明におけるペーシング操作は、「最終手段」/「救命措置」として実施される。
【0065】
具体的には、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、特に、偶発性徐脈、非重症性徐脈、又は一過性心停止の場合にペーシングを起動せず、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。
【0066】
具体的には、判断モジュール2は、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断するために使用され、そうである場合、ペーシングモジュール3を呼び出して、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングする。
【0067】
患者の心拍数をリアルタイムで監視し、設定されたプリセット低心拍数を下回る(既存のペーシング制御方法におけるプリセット低心拍数よりもはるかに低い)場合に、患者が緊急に救助を必要としていることを特定し、すなわち、患者の心拍数が非常が低い場合にのみペーシングを発動し、患者の生命を維持するために適時かつ効果的なペーシングを実現することができる。また、図6に示すように、本実施例のペーシング制御装置はさらに、持続時間取得モジュール4を含む。
【0068】
判断モジュール2は、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回るか否かを判断するために使用され、そうである場合、持続時間取得モジュール4を呼び出して、患者の心臓が実際の心拍数にある第1低心拍数持続時間を取得し、
判断モジュール2はまた、第1低心拍数持続時間がプリセット低心拍数持続時間に達した場合に、ペーシングモジュール3を呼び出して、プリセットペーシング頻度で患者の心臓をペーシングするために使用される。
【0069】
患者のリアルタイムの心拍数をリアルタイムで監視し、実際の心拍数がプリセット低心拍数を下回り、かつ第1低心拍数持続時間がプリセット低心拍数持続時間以上である場合にのみペーシングを発動することにより、患者の心拍数が偶然にプリセット低心拍数を下回り、不必要なペーシング操作を引き起こすことがなく、より優れたペーシング監視機能を実現し、患者の安全を確保しながら、ユーザ体験をさらに向上させる。
【0070】
実施形態において、プリセット低心拍数は、0bpmより大きく、40bpm以下であり、プリセット低心拍数は、既存のペーシング制御方法におけるプリセット下限心拍数よりはるかに低く、プリセット低心拍数は、ペーシング後に患者が心室を確実に捕捉できるように設定される。好ましくは、プリセット低心拍数は、10bpm~30bpmであり、さらに、プリセット低心拍数を20bpmに設定することができる。
【0071】
プリセット低心拍数持続時間は、1s~5min(すなわち、1秒~5分)であり、プリセット低心拍数持続時間は、異なる患者の身体状態又は他の実際の状況に従って調整し、決定することができ、実際のペーシングプロセス中に本発明の技術的解決手段におけるプリセット低心拍数持続時間を合理的に適用できる限り、本発明の保護範囲に属する。本実施例のペーシング制御方法は、患者が心停止状態、すなわち、リアルタイムの心拍数が0bpmの場合にも依然として適用可能であり、心拍がない極限状態でタイムリーなペーシングを実現し、適時に患者の命を救うことに注意する必要がある。
【0072】
プリセット低心拍数持続時間は、1s~60sであり、好ましくは、プリセット低心拍数持続時間は、1s~20sであり、さらに、プリセット低心拍数持続時間を10sに設定することができる。
【0073】
プリセットペーシング頻度は、35bpm~90bpmであり、プリセットペーシング頻度は、異なる患者の身体状態又は他の実際の状況に従って調整し、決定することができ、実際のペーシングプロセス中に本発明の技術的解決手段におけるプリセットペーシング頻度を合理的に適用できる限り、本発明の保護範囲に属する。
【0074】
また、プリセットペーシング頻度は、40bpm~80bpmであり、好ましくは、プリセットペーシング頻度は、50bpm~65bpmである。さらに、プリセットペーシング頻度を60bpmに設定することができる。
【0075】
本実施例におけるプリセットペーシング頻度、プリセット低心拍数及びプリセット低心拍数持続時間は、異なる患者の具体的な状態に従って再設定することができるパラメータである。患者によって身体状態が異なることを考慮し、各患者が標的ペーシング療法を受けられるようにするために、各患者の病歴、現在の状態、薬物の使用、ペーシングの必要性などの複数のパラメータを予め総合的に考慮して、各患者に適したプリセット低心拍数、プリセット低心拍数持続時間及びプリセットペーシング頻度を最終的に決定し、患者の安全を確保しながら、患者の体験を最大限に保証する。
【0076】
本実施例のすべてのパラメータ値は、実際の状況に従って再設定できることに注意する必要がある。
【0077】
本実施例では、重度の徐脈や心停止まで生命を脅かす状態にある患者に対して、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、患者自身の心拍数が一定レベルまで回復した時点でペーシングを終了させ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、特に、偶発性徐脈、非重症性徐脈、又は一過性心停止の場合にペーシングを起動せず、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。
【0078】
<実施例4>
本実施例のペーシング制御装置は、実施例3をさらに改良したものであり、具体的には、
図7に示すように、本実施例のペーシング制御装置は、自己心拍数取得モジュール5、総心拍数取得モジュール6、比率算出モジュール7及び第2判断モジュール8を含む。
【0079】
自己心拍数取得モジュール5は、第1ペーシング期間内に患者の自己心拍数を取得するために使用され、
総心拍数取得モジュール6は、設定期間に対応する患者の総心拍数を取得するために使用され、
ここで、総心拍数は、自己心拍数及びペーシング心拍数を含み、
設定期間は、第1ペーシング期間を含み、設定期間に対応する持続時間は、第1ペーシング期間に対応する持続時間以上であり、
比率算出モジュール7は、自己心拍数と総心拍数との比率を算出するために使用され、
第2判断モジュール8は、比率が第1設定閾値以上であるか否かを判断するために使用され、第1設定閾値以上である場合、ペーシングモジュール3を呼び出して、ペーシングの停止を制御し、第1設定閾値未満の場合、比率が第2設定閾値以下であるか否かを判断し、第2設定閾値以下の場合、ペーシングモジュール3を呼び出して、患者の心臓のペーシングを継続し、第2設定閾値を上回り、第1設定閾値以下の場合、ペーシングモジュール3を呼び出して、プリセットペーシング頻度を第1ペーシング頻度に低減し、第1ペーシング頻度が最低ペーシング頻度未満であるか否かを判断し、例えば、プリセットペーシング頻度を10bpm低減して、低減したペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、そうでない場合、第1ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングし、そうである場合、最低ペーシング頻度で患者の心臓をペーシングする。ここで、最低ペーシング頻度は、40bpm~60bpmであり、一般的に50bpmである。
【0080】
ここで、最低ペーシング頻度は、プリセットペーシング閾値であり、もちろん、実際のニーズに応じて再確定し、調整することもできる。
【0081】
第1設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が高く、第2設定閾値に対応する自己心拍数と総心拍数との比率が低い。
【0082】
具体的には、プログラム制御によってペーシング操作を制御し、設定時間、例えば1分間を持続することができ(具体的には、実際のニーズに応じて設定時間(数秒から数分)を設定し、調整することができ、また、実際の使用要件に応じて、プログラムコントローラ、操作ボタン又は他の実施手段によって、そのペーシング操作を手動で終了させることができる)、この期間中の患者の自己心拍数及び総心拍数を合計した後、ペーシング段階中の患者の総心拍数における自己心拍数の割合を計算し、その割合が特定の設定値(50~100%、好ましくは、例えば90%、プログラム制御可能)を上回る場合、ペーシングが有効であり、自己心拍数がプリセットペーシング頻度を上回る状態に回復したことを示し、ペーシングを停止できると判断し、その割合が設定値(0~30%、好ましくは、例えば10%、プログラム制御可能)を下回る場合、患者の自己心拍数がまだ回復しておらず、ペーシングサポートがまだ必要であることを示し、プリセットペーシング頻度でペーシングを継続する。そうでない場合は、ペーシングのためにペーシング頻度を10bpm低減し、ペーシング頻度が最初に設定された最低ペーシング頻度(40bpm~60bpm、好ましくは、例えば50bpm)に達するまで、上記のプロセスを継続する。
【0083】
適時かつ効果的なペーシング制御を行うために、プリセットペーシング頻度でペーシングを行ったときに患者自身の心拍数を収集し、一定時間後に患者自身の心拍数を再評価し、実際の心拍数がプリセットペーシング頻度(一般的な心拍数と見なすことができる)を上回り、例えば50bpm又は60bpm、設定時間を持続する場合、現在のペーシング頻度で効果的にペーシングが行われていることを示し、患者自身の心拍数を回復させ、生命の危機から患者を解放し、この時点で、患者へのペーシング操作を停止し、患者に与える痛みを最小限に抑えるために、適時にペーシングを停止する。
【0084】
実際の心拍数が第1プリセットペーシング頻度、すなわち一般的な心拍数(50bpm~60bpm、医師が調整可能)未満、又は僅かな心拍数のみが第1プリセットペーシング頻度を上回る場合、患者の心拍数が現在のペーシング頻度では増加/回復しないか、又は適切な血液循環をサポートするほど十分に増加/回復していないことを示し、この時点で、患者にペーシングを継続して、患者の安全をさらに保証する。
【0085】
もちろん、異なる患者に合わせ、異なる患者のニーズを満たし、ユーザ体験をさらに向上させるために、臨床状況に対する医師の判断に従って、上記の値を予め設定するか又は調整することができる。
【0086】
本実施例のすべてのパラメータ値は、実際の状況に従って再設定できることに注意する必要がある。
【0087】
本実施例では、重度の徐脈や心停止まで生命を脅かす状態にある患者に対して、ペーシング操作の発動条件を予め設定することにより、ペーシングが必要な場合にのみ、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、患者自身の心拍数が一定レベルまで回復した時点でペーシングを終了させ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。また、ペーシング操作の実施後、患者に対するペーシング操作の効果を適時に監視し、ペーシング頻度を適応的に調整して、患者の安全を確保するために適時かつ効果的な心室捕捉を保証する。
【0088】
<実施例5>
本実施例の医療機器は、実施例3又は4のペーシング制御装置を含む。
ここで、前記医療機器は、装着型除細動器(WCD)、体外式除細動器(AEDなど)、完全皮下植込み型除細動器(SICD)、機械的循環補助装置(MCS)、又は他の生命維持装置/機器を含むが、これらに限定されない。
【0089】
上記のペーシング制御プロセスに必要なハードウェア構成要素及び回路構造は、すべて、装着型除細動器(WCD)、体外式除細動器、完全皮下植込み型除細動器(SICD)又は機械的循環補助装置(MCS)の既存の構造であり、すなわち、各構成要素がどうのように連携し、回路構造がどうのように対応機能を実現しているかは当該技術分野でよく知られているため、ここでは繰り返さない。
【0090】
本実施例の医療機器は、上記のペーシング制御装置を用いて、主に重度の徐脈や心停止まで生命を脅かす状態にある患者を対象としており、患者の心拍数が一定期間、予め設定した非常に低いプリセット低心拍数を下回り続けた場合、患者にペーシングの必要性があり、患者にペーシングを行う必要があると判断し、高いペーシング頻度でペーシングを行い、患者の生命を支えるための適時かつ効果的なペーシングを実現することができ、一方、患者の日常的な使用において、不必要なペーシングと、ペーシング刺激による痛みを大幅に回避することができ、特に、偶発性徐脈、非重症性徐脈、又は一過性心停止の場合にペーシングを起動せず、ユーザの医療機器に対する受容度、コンプライアンス及び体験を向上させることができる。
【0091】
以上、本発明の具体的な実施形態を記述したが、当業者にとって、これらは例示の説明だけで、本発明の原理と実質に反しないという前提下、これらの実施形態に対して様々な変更や修正をすることができる。そのため、本発明の保護範囲は添付の請求の範囲によって限定される。
【国際調査報告】