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特表2023-548957新型PiggyBacトランスポゾンシステム及びその適用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】新型PiggyBacトランスポゾンシステム及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/90 20060101AFI20231114BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231114BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20231114BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231114BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231114BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231114BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C12N15/90 Z
C12N15/63 Z ZNA
C12N5/10
A61K31/713
A61K35/12
A61K35/17
A61K48/00
A61K31/7088
A61P43/00 111
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546379
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 CN2021123191
(87)【国際公開番号】W WO2022078310
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】202011085981.6
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523136226
【氏名又は名称】上海君賽生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JUNCELL THERAPEUTICS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 華 君
(72)【発明者】
【氏名】許 馥 慧
(72)【発明者】
【氏名】黄 晨
(72)【発明者】
【氏名】馬 星 明
(72)【発明者】
【氏名】劉 天 怡
(72)【発明者】
【氏名】郭 曉 春
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA03
4B065CA24
4B065CA46
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZC41
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA12
4C087CA20
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZC41
(57)【要約】
本発明は、トランスポゾン3’末端反復配列と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターというエレメントを含む核酸コンストラクトを提供する。本発明は、前記核酸コンストラクトを含む宿主細胞又は医薬組成物及びその適用をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスポゾン3’末端反復配列と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列というエレメントを含むか又はこれらのエレメントからなる核酸コンストラクトであって、
好ましくは、前記核酸コンストラクトは、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、ポリクローナル挿入部位と、エンハンサーと、5’UTRと、第2のpolyA配列と、注目外来遺伝子とから選ばれる1種又は複数種のエレメントをさらに含み、
好ましくは、前記トランスポザーゼのコード配列、該トランスポザーゼの発現を制御する前記プロモーター、前記5’UTR、前記第2のpolyA配列のうちの何れか1種又は複数種が、前記トランスポゾン3’末端反復配列と前記トランスポゾン5’末端反復配列との間の領域外に位置する、核酸コンストラクト。
【請求項2】
トランスポゾン3’末端反復配列と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、を含む請求項1に記載の核酸コンストラクトであって、
好ましくは、前記核酸コンストラクトは、ポリクローナル挿入部位と、エンハンサーと、5’UTRと、第2のpolyA配列と、注目外来遺伝子とから選ばれる1種又は複数種をさらに含む、核酸コンストラクト。
【請求項3】
請求項2に記載の核酸コンストラクトであって、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、5’UTRと、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、5’UTRと、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含むか、又は、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含むか、又は、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含むことを特徴とする、核酸コンストラクト。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の核酸コンストラクトであって、前記核酸コンストラクトは、
前記トランスポザーゼの発現カセットの方向と、外来遺伝子の発現カセットの方向が同じ又は反対であること、
前記トランスポザーゼの発現カセットの方向と、トランスポゾン3’末端反復配列とトランスポゾン5’末端反復配列との間の配列の方向が同じ又は反対であること、
前記トランスポゾン5’末端反復配列と前記トランスポゾン3’末端反復配列が位置を交換できること、
前記トランスポゾン3’末端反復配列がPiggyBacトランスポゾン3’末端反復配列であること、
前記トランスポゾン5’末端反復配列がPiggyBacトランスポゾン5’末端反復配列であること、
前記エンハンサーがCMVエンハンサー配列、SV40エンハンサー、ヒトεグロブリン5’HS2エンハンサー、ニワトリβグロブリン遺伝子5’HS4エンハンサーから選ばれること、
前記トランスポザーゼがPiggyBacトランスポザーゼであること、
前記5’UTRがC3遺伝子、ORM1遺伝子、HPX遺伝子、FGA遺伝子、AGXT遺伝子、ASL遺伝子、APOA2遺伝子、ALB遺伝子の5’UTRから選ばれること、
前記プロモーターがCMVプロモーター、miniCMVプロモーター、CMV53プロモーター、miniSV40プロモーター、miniTKプロモーター、MLPプロモーター、pJB42CAT5プロモーター、YB_TATAプロモーター、EF1αプロモーター、SV40プロモーター、UbiquitinBプロモーター、CAGプロモーター、HSP70プロモーター、PGK-1プロモーター、β-actinプロモーター、TKプロモーター、GRP78プロモーターから選ばれること、
前記トランスポザーゼのコード配列がシングルコピー又はマルチコピーの核局在シグナルのコード配列を含み、或いはそれと操作可能に連結される特徴から選ばれる1つ又は複数を有す、ことを特徴とする、核酸コンストラクト。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載の核酸コンストラクトであって、前記核酸コンストラクトは、
前記トランスポゾン3’末端反復配列のヌクレオチド配列がSEQ ID NO:1に示されること、
前記トランスポゾン5’末端反復配列のヌクレオチド配列がSEQ ID NO:6に示されること、
前記ポリクローナル挿入部位の配列がSEQ ID NO:2に示されること、
前記第1のpolyA配列がSEQ ID NO:3、13又は16に示されること、
前記第2のpolyA配列がSEQ ID NO:3、13又は16に示されること、
前記エンハンサー配列がSEQ ID NO:4、26~28の何れか1つに示されること、
前記インスレーター配列がSEQ ID NO:5又は15に示されること、
前記PiggyBacトランスポザーゼのアミノ酸配列がSEQ ID NO:36に示され、好ましくは、前記PiggyBacトランスポザーゼのコード配列がSEQ ID NO:7に示されること、
前記5’UTR配列がSEQ ID NO:8、17~24の何れか1つに示されること、
前記プロモーターの配列がSEQ ID NO:9、SEQ ID NO:37~42の何れか1項に示されること、
前記核局在シグナルがc-myc核局在シグナルであり、好ましくは、前記核局在シグナルがSEQ ID NO:35に示される配列を有する特徴から選ばれる1つ又は複数を有することを特徴とする、核酸コンストラクト。
【請求項6】
請求項1~3の何れか1項に記載の核酸コンストラクトであって、
前記核酸コンストラクトがSEQ ID NO:10又は14に示される配列を含み、又は
前記核酸コンストラクトが組換えベクターであり、好ましくは、前記核酸コンストラクトが組換えクローニングベクター又は組換え発現ベクターであることを特徴とする、核酸コンストラクト。
【請求項7】
宿主細胞であって、
(1)請求項1~6の何れか1項に記載の核酸コンストラクト、及び/又は
(2)請求項1~6の何れか1項に記載の核酸コンストラクトのトランスポゾン3’末端反復配列とトランスポゾン5’末端反復配列との間の配列、を含み、
好ましくは、前記宿主細胞が哺乳類動物細胞であり、
より好ましくは、前記宿主細胞がT細胞、Jurkat細胞、K562細胞、胚性幹細胞、腫瘍細胞、HEK293細胞、CHO細胞から選ばれる、宿主細胞。
【請求項8】
請求項1~6の何れか1項に記載の核酸コンストラクト又は請求項8に記載の宿主細胞と薬学的に許容される添加物とを含む、医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~6の何れか1項に記載の核酸コンストラクト又は請求項7に記載の宿主細胞の、薬物、試薬又はツールの製造における適用、或いは薬物、試薬又はツールとしての適用であって、前記薬物、試薬又はツールが外来遺伝子の発現カセットを標的細胞のゲノムに統合するために利用され、或いは遺伝子治療、細胞治療、幹細胞誘導又は分化に利用され、
好ましくは、前記標的細胞が哺乳類動物細胞であり、
より好ましくは、前記標的細胞が免疫細胞、Jurkat細胞、K562細胞、胚性幹細胞、腫瘍細胞、HEK293細胞、CHO細胞から選ばれ、
さらに好ましくは、前記免疫細胞がT細胞、B細胞、CIK細胞、LAK細胞、NK細胞、細胞傷害性T細胞(CTL)、樹状細胞(DC)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、マクロファージ、NKT細胞、γδT細胞の何れか1種又は複数種から選ばれる、適用。
【請求項10】
外来遺伝子又はその発現カセットを細胞のゲノムに統合する方法であって、外来遺伝子と任意のそのプロモーターを含む請求項1~6の何れか1項に記載の核酸コンストラクトを前記細胞に導入すること、及び任意のトランスポザーゼにより外来遺伝子又はその発現カセットを細胞のゲノムに統合する条件で前記細胞をインキュベートすること、を含み、前記外来遺伝子と任意のそのプロモーターが前記核酸コンストラクトのポリクローナル挿入部位に位置し、
好ましくは、前記トランスポザーゼがPiggyBacトランスポザーゼである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトランスポゾンベクター分野に関し、具体的に新型PiggyBacトランスポゾンシステム及びその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
外来遺伝子を標的細胞の中に導入し安定的に発現させて、遺伝子組換えによる標的細胞の改変を図ることは、免疫細胞治療を含む数多くの細胞治療技術を実現するための必須条件である。一過性発現と比較すれば、安定発現の外来遺伝子は標的細胞のゲノムに組み込まれ可能であるため、細胞の複数回継代又は培養条件の変化にも関わらず、長時間で安定的に発現することができる。よく使われる遺伝子組換えシステムは、ウィルスに基づくベクター、真核発現プラスミドベクター、トランスポゾンベクターを含む。非ウィルスベクターに基づく方法によるヒト初代T細胞の遺伝子改変や修飾が非常に困難であることは証明されている。そのため、世界におけるラボの大半は依然として、例えば、レンチウィルスベクターシステムなどのレトロウィルスベクターを含むウィルスベクターシステムにより、細胞の遺伝子修飾を行っている。ウィルスベクターシステムは幅広く利用されているが、複雑なウィルス製造工程、比較的に高いセキュリティリスク、高い製造コストなどの厳しい課題が存在している。
【0003】
近年、トランスポゾンベクターシステムは免疫細胞の修飾に利用されるようになり、さらに腫瘍の免疫治療に利用される。最初に哺乳類動物に利用されるトランスポゾンは魚類由来の「眠り姫」(Sleeping Beauty)トランスポゾンであるが、過剰な抑制効果や持つ断片がやや小さい(5kb程度)などの欠陥が存在するため、哺乳類動物細胞の遺伝子組換え操作における利用が厳しく制限されている。PiggyBacトランスポゾンはチョウ目由来のトランスポゾンシステムであり、大きい断片を持つことが可能であるため、様々な真核宿主細胞と統合することができる。PiggyBac(PB)トランスポゾンシステムは、主に「カット-ペースト」(cut-paste)の仕組みにより転移が発生するが、転移発生後に元の部位でフットプリント(footprint)が残らないため、改変後にゲノム研究、遺伝子治療、細胞治療、幹細胞誘導、誘導後分化などの分野に利用されるようになっている。
【0004】
WO2019046815A1では、PiggyBacトランスポザーゼを含むベクターと5’ITR及び3’ITRを含むヘルパーベクターとを備える、従来のPiggyBacトランスポゾンに基づく二元システムが開示されている。該PiggyBacトランスポゾンシステムを電気穿孔法と組合せることで、外来遺伝子をT細胞、NK細胞、HSPC細胞に導入することができる。しかしながら、二元システムは、PiggyBacトランスポザーゼベクターとヘルパーベクターを細胞に同時にトランスフェクションしなければ、転移が発生せず、トランスフェクションに対する要求が高いため、実現が困難である。また、PiggyBacトランスポゾンシステムの仕組みであるPiggyBacトランスポザーゼについて、「カット-ペースト」(cut-paste)の仕組みにより転移断片をゲノムに挿入するプロセスが可逆であるため、PiggyBacトランスポザーゼが発現し続ける限り、ゲノムに統合された転移断片が再びカットされて、ゲノムが不安定になり、実質的に転移効率が低下された。一般のPiggyBac二元トランスポゾンシステムのT細胞における転移効率は、通常、10%程度に留まり、効率が低い。さらに、WO2019046815A1では、プラスミドDNAについて、T細胞に対する傷害性が大きく、そのT細胞に対する傷害性と電気穿孔に利用されるDNAの量が関連することも記載されている。二元システムにより、電気穿孔に必要なプラスミドDNAの使用量が増加され、細胞、特にT細胞に対する傷害性が大きくなり、プラスミドDNAをトランスフェクションするT細胞の生存率が低下されたことは、疑いようがない。
【0005】
CN105154473Bでは、一元PiggyBacトランスポゾンベクターであって、従来の二元PiggyBacトランスポゾンシステムにおけるPiggyBacトランスポザーゼベクターとヘルパーベクターとを1つのベクターに合併し、同じ発現ベクターにおいてPiggyBacの発現カセットと外来遺伝子の発現カセットが同じ両方向polyA配列を共用し、統合されたPiggyBacトランスポザーゼの発現カセットにおけるpolyAがカットされて自己不活性化(self-inactivating)される仕組みを構築することで、構成性PiggyBacトランスポザーゼの持続的発現が効果的に低減され、PiggyBacトランスポザーゼの転移効率が向上されると共に、二元システムを一元シングルベクターに簡略化することで、DNAの総量が大幅に削減され、外来DNAのT細胞に対する傷害性が低減された、ベクターが開示されている。しかしながら、PiggyBacトランスポザーゼの発現カセットと外来遺伝子の発現カセットが同じ両方向polyA配列を共用することにより、両方向における相応な発現カセットの間に互いに影響が与えられると共に、特定種類の細胞において該一元トランスポゾンベクターにより仲介される統合効率の更なる向上が期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、現在、外来遺伝子を高効率的に統合すると共に、統合機能を早急に止める高効率一元トランスポゾンシステムは未だにない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、PiggyBacトランスポゾンに基づく統合システムであって、宿主細胞内で高効率的に統合すると共に、高効率的且つ安定的に発現するように、外来遺伝子を仲介する統合システムを構築した。
【0008】
本発明の一態様は、トランスポゾン3’末端反復配列と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列というエレメントを含むか、又はこれらのエレメントからなる核酸コンストラクトに関する。1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、ポリクローナル挿入部位と、エンハンサーと、5’UTRと、第2のpolyA配列と、注目外来遺伝子とから選ばれる1種又は複数種のエレメントをさらに含む。
【0009】
本発明は、トランスポゾン3’末端反復配列と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターというエレメントを含む核酸コンストラクトをさらに提供する。
【0010】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、ポリクローナル挿入部位と、エンハンサーと、5’UTRと、第2のpolyA配列と、注目外来遺伝子とから選ばれる1種又は複数種のエレメントをさらに含む。
【0011】
1つ又は複数の実施形態において、前記トランスポザーゼのコード配列、該トランスポザーゼの発現を制御する前記プロモーター、前記5’UTR、前記第2のpolyA配列のうちの何れか1種又は複数種が、前記トランスポゾン3’末端反復配列と前記トランスポゾン5’末端反復配列との間の領域外に位置する。
【0012】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含む。
【0013】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、をこの順で含む。
【0014】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含む。
【0015】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、をこの順で含む。
【0016】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含む。
【0017】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、5’UTRと、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、をこの順で含む。
【0018】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含む。
【0019】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、5’UTRと、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、をこの順で含む。
【0020】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含む。
【0021】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含む。
【0022】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含む。
【0023】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含む。
【0024】
1つ又は複数の実施形態において、前記ポリクローナル挿入部位は、前記外来遺伝子のコード配列と任意の外来遺伝子の発現を制御するプロモーターを操作可能に挿入するために利用される。
【0025】
1つ又は複数の実施形態において、第1のpolyA配列と第2のpolyA配列のテーリングシグナル機能の方向が同じ又は反対である。
【0026】
1つ又は複数の実施形態において、前記トランスポザーゼの発現カセットの方向と、外来遺伝子の発現カセットの方向が同じ又は反対である。
【0027】
1つ又は複数の実施形態において、前記トランスポザーゼの発現カセットの方向と、トランスポゾン3’末端反復配列とトランスポゾン5’末端反復配列との間の配列の方向が同じ又は反対である。
【0028】
1つ又は複数の実施形態において、上記各エレメントはそれぞれ独立的にシングルコピー又はマルチコピーである。
【0029】
1つ又は複数の実施形態において、上記各エレメントは直接連結され、或いはリンカー又は酵素切断部位により連結される。
【0030】
本発明の何れか1項に係る核酸コンストラクトによれば、前記トランスポゾン5’末端反復配列と前記トランスポゾン3’末端反復配列が位置を交換できる。
【0031】
1つ又は複数の実施形態において、前記トランスポゾン3’末端反復配列がPiggyBacトランスポゾン3’末端反復配列である。好ましい実施形態において、前記トランスポゾン3’末端反復配列のヌクレオチド配列がSEQ ID NO:1に示される。
【0032】
1つ又は複数の実施形態において、前記ポリクローナル挿入部位の配列がSEQ ID NO:2に示される。
【0033】
1つ又は複数の実施形態において、前記第1のpolyA配列がSEQ ID NO:3、13又は16に示される。
【0034】
1つ又は複数の実施形態において、前記第2のpolyA配列がSEQ ID NO:3、13又は16に示される。
【0035】
1つ又は複数の実施形態において、エンハンサーがCMVエンハンサー配列、SV40エンハンサー、ヒトεグロブリン5’HS2エンハンサー、ニワトリβグロブリン遺伝子5’HS4エンハンサーから選ばれる。好ましくは、エンハンサー配列がSEQ ID NO:4、26~28の何れか1つに示される。
【0036】
1つ又は複数の実施形態において、転写終結機能を有するインスレーター配列がSEQ ID NO:5又は15に示される。
【0037】
1つ又は複数の実施形態において、前記トランスポゾン5’末端反復配列がPiggyBacトランスポゾン5’末端反復配列である。好ましい実施形態において、前記トランスポゾン5’末端反復配列のヌクレオチド配列がSEQ ID NO:6に示される。
【0038】
1つ又は複数の実施形態において、前記トランスポザーゼがPiggyBacトランスポザーゼである。1つ又は複数の実施形態において、前記PiggyBacトランスポザーゼのアミノ酸配列がSEQ ID NO:36に示され、好ましくは、前記PiggyBacトランスポザーゼのコード配列がSEQ ID NO:7に示される。
【0039】
1つ又は複数の実施形態において、5’UTR配列がC3遺伝子、ORM1遺伝子、HPX遺伝子、FGA遺伝子、AGXT遺伝子、ASL遺伝子、APOA2遺伝子、ALB遺伝子の5’UTRから選ばれる。好ましくは、5’UTR配列がSEQ ID NO:8、17~24の何れか1つに示される。
【0040】
1つ又は複数の実施形態において、前記プロモーターがCMVプロモーター、miniCMVプロモーター、CMV53プロモーター、miniSV40プロモーター、miniTKプロモーター、MLPプロモーター、pJB42CAT5プロモーター、YB_TATAプロモーター、EF1αプロモーター、SV40プロモーター、UbiquitinBプロモーター、CAGプロモーター、HSP70プロモーター、PGK-1プロモーター、β-actinプロモーター、TKプロモーター、GRP78プロモーターから選ばれる。好ましくは、前記プロモーターがminiCMVプロモーター、CMV53プロモーター、miniSV40プロモーター、miniTKプロモーター、MLPプロモーター、pJB42CAT5プロモーター、YB_TATAから選ばれる。1つ又は複数の実施形態において、前記プロモーターの配列がSEQ ID NO:9、37~42の何れか1つに示される。好ましくは、前記プロモーターはminiCMVプロモーターであり、その配列がSEQ ID NO:9に示される。
【0041】
1つ又は複数の実施形態において、前記トランスポザーゼのコード配列がシングルコピー又はマルチコピーの核局在シグナルのコード配列を含み、或いはそれと操作可能に連結される。1つ又は複数の実施形態において、核局在シグナルはc-myc核局在シグナルであり、SEQ ID NO:35に示される配列を有することが好ましい。
【0042】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトがSEQ ID NO:10又は14に示される配列を含む。
【0043】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトが組換えベクターである。
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトが組換えクローニングベクター又は組換え発現ベクターである。
【0044】
本発明は、(1)本明細書の何れか1つの実施形態に記載の核酸コンストラクト、及び/又は(2)本明細書の何れか1つの実施形態に記載の核酸コンストラクトのトランスポゾン3’末端反復配列とトランスポゾン5’末端反復配列との間の配列、を含む宿主細胞をさらに提供する。
【0045】
1つ又は複数の実施形態において、前記宿主細胞が哺乳類動物細胞である。
1つ又は複数の実施形態において、前記宿主細胞が免疫細胞、Jurkat細胞、K562細胞、胚性幹細胞、腫瘍細胞、HEK293細胞、CHO細胞から選ばれる。
【0046】
1つ又は複数の実施形態において、前記免疫細胞がT細胞、B細胞、CIK細胞、LAK細胞、NK細胞、細胞傷害性T細胞(CTL)、樹状細胞(DC)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、マクロファージ、NKT細胞、γδT細胞の何れか1種又は複数種
から選ばれる。
【0047】
本発明は、本明細書の何れか1つの実施形態に係る核酸コンストラクト又は宿主細胞と薬学的に許容される添加物とを含む、医薬組成物をさらに提供する。
【0048】
本発明は、本明細書の何れか1つの実施形態に係る核酸コンストラクト又は宿主細胞の、薬物、試薬又はツールの製造における適用、或いは薬物、試薬又はツールとしての適用であって、前記薬物、試薬又はツールが外来遺伝子の発現カセットを標的細胞のゲノムに統合するために利用され、或いは遺伝子治療、細胞治療、幹細胞誘導又は分化に利用される、適用をさらに提供する。
【0049】
1つ又は複数の実施形態において、前記標的細胞が哺乳類動物細胞である。
1つ又は複数の実施形態において、前記標的細胞がT細胞、Jurkat細胞、K562細胞、胚性幹細胞、腫瘍細胞、HEK293細胞、CHO細胞から選ばれる。
【0050】
本発明は、外来遺伝子又はその発現カセットを細胞のゲノムに統合する方法であって、外来遺伝子と任意のそのプロモーターを含む本明細書の何れか1つの実施形態に係る核酸コンストラクトを前記細胞に導入すること、及び任意のトランスポザーゼにより外来遺伝子又はその発現カセットを細胞のゲノムに統合する条件で前記細胞をインキュベートすること、を含む方法をさらに提供する。
【0051】
1つ又は複数の実施形態において、前記トランスポザーゼがPiggyBacトランスポザーゼである。
【0052】
1つ又は複数の実施形態において、前記導入がウィルスにより仲介される変換、マイクロインジェクション、粒子衝突、遺伝子銃変換、電気穿孔などを含む。本発明の一実施態様において、前記導入が電気穿孔である。
【0053】
1つ又は複数の実施形態において、前記細胞は少なくとも3代インキュベートする。
本発明は、本明細書に係る方法で得られた、ゲノムに外来遺伝子又はその発現カセットが統合された細胞をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1A】本明細書に係る核酸コンストラクトの模式図である。
図1B】本明細書に係る核酸コンストラクトの模式図である。
図2】pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPをそれぞれ電気穿孔したJurkat細胞の蛍光写真である。
図3】pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPをそれぞれ電気穿孔したJurkat細胞のフローサイトメトリー結果である。
図4】pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFP、pKC20-EGFPをそれぞれ電気穿孔したJurkat細胞の生細胞数である。
図5】pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPをそれぞれ電気穿孔したJurkat細胞におけるPBトランスポザーゼの発現レベルである。
図6】pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFP、pKC20-EGFPをそれぞれ電気穿孔したK562細胞の蛍光写真である。
図7】pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFP、pKC20-EGFPをそれぞれ電気穿孔したK562細胞の生細胞数である。
図8】pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPをそれぞれ電気穿孔したK562細胞のフローサイトメトリー結果である。
図9】pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPをそれぞれ電気穿孔したK562細胞の蛍光陽性率である。
図10】pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFP、pKC20-EGFをそれぞれ電気穿孔した初代T細胞の蛍光写真である。
図11】pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPをそれぞれ電気穿孔したT細胞のフローサイトメトリー結果である。
図12】ダブルプラスミドPBトランスポゾンシステムをJurkat細胞に電気穿孔した陽性率結果である。
図13】ダブルプラスミドPBトランスポゾンシステムを初代T細胞に電気穿孔した陽性率結果である。
図14】低減したプラスミド使用量でpKB20-EGFPを電気穿孔したJurkat細胞の陽性率である。
図15】細胞内ベクター残留コピー数の経時変化である。
図16】pKB2003-EGFPを電気穿孔したJurkat細胞の陽性率である。
図17】pKB205-EGFPを電気穿孔した初代T細胞の陽性率である。
図18】K562サンプル1におけるpKB20ベクターにより仲介されるゲノム統合部位の模式図である。
図19】K562サンプル2におけるpKB20ベクターにより仲介されるゲノム統合部位の模式図である。
図20】Jurkatサンプル1におけるpKB20ベクターにより仲介されるゲノム統合部位の模式図である。
図21】Jurkatサンプル2におけるpKB20ベクターにより仲介されるゲノム統合部位の模式図である。
図22】pKB20-HER2CARを電気穿孔した初代T細胞の陽性率フローサイトメトリー結果である。
図23】HER2CAR-T細胞の標的細胞SKOV-3に対するインビトロRTCA殺傷結果である。
図24】pKB20-NY-ESO-1 TCRを電気穿孔した初代T細胞の陽性率フローサイトメトリー結果である。
図25】NY-ESO-1 TCR-Tの標的細胞A375に対するインビトロRTCA殺傷結果である。
図26】pNB328-EGFPを電気穿孔したK562細胞の陽性率フローサイトメトリー結果である。
図27】pNB328-EGFPを電気穿孔した初代T細胞の陽性率フローサイトメトリー結果である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の範囲において、本発明の上記各技術特徴と下記(例えば実施例)で具体的に記述した各技術特徴を互いに組合せることで、好ましい実施形態を構成することができると理解すべきである。
【0056】
文脈から別途で明確に説明しない限り、本明細書と付属される特許請求範囲で使用する単数形式「1つ」、「1種」、「前記」は複数の意味を含む。同様に、「1つ」(又は「1種」)、「1つ又は複数」、「少なくとも1つ」という用語は本明細書で互いに交換して使用できる。「含む」という用語及びその変化形式は制限の意味がなく、これらの用語が本明細書と請求項に使用されている。そのため、用語「含む」、「包含」、「含有」は互いに交換して使用できる。
【0057】
核酸コンストラクトと細胞
「核酸コンストラクト」という用語は本明細書で一本鎖又は二本鎖核酸分子と定義され、好ましくは人工的な核酸分子である。任意に、前記核酸コンストラクトは操作可能に連結される1つ又は複数の調節配列をさらに含み、前記調節配列はその適合性条件でコード配列が適切な宿主細胞において発現するように調節できる。発現はタンパク質又はポリペプチドの生成に関わる任意の工程を含み、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、分泌を含むが、これらに限定されないと理解すべきである。本明細書に係るトランスポゾンシステムは一元核酸コンストラクトが好ましく、即ち、1つの核酸コンストラクトで高効率的な転移が実現できる。
【0058】
本発明において、特別な説明がない限り、トランスポザーゼの発現カセットの方向を逆方向とする。上記「下記エレメントをこの順で含む」における「この順」という方向及び/又は順番とは上流から下流までの順である。本発明において、特別な説明がない限り、上記「正方向」の方向に沿うこととは上流から下流までであり、上記「逆方向」の方向に沿うこととは下流から上流までである。
【0059】
本発明において、「発現カセット」という用語は1つの遺伝子を発現するために必要な完全なエレメントであり、プロモーター、遺伝子のコード配列、PolyAテーリングシグナル配列を含む。
【0060】
「操作可能に挿入/連結」という用語は、本明細書で、調節配列がタンパク質又はポリペプチドの発現を調節するように、調節配列がDNA配列のコード配列に対する適切な部位に位置するという配座と定義される。本発明の核酸コンストラクトにおいて、DNA組換え技術によりポリクローナル部位に1つ又は複数の相同又は相異の外来遺伝子及び任意の外来遺伝子の発現を制御するプロモーターが操作可能に挿入され、或いはそのポリクローナル部位が1つ又は複数の相同又は相異の外来遺伝子のコード配列及び任意の外来遺伝子の発現を制御するプロモーターに取り替えられる。前記「操作可能に連結」はDNA組換えの手段により実現でき、具体的に前記核酸コンストラクトが組換え核酸コンストラクトである。
【0061】
本明細書に係る「外来遺伝子」は任意由来の核酸分子であってもよく、宿主細胞のゲノムに転移してから発現し、又は機能を果たす。外来遺伝子の非限定的な例として、フルオレセインレポーター遺伝子(例えば、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質など)、ルシフェラーゼ遺伝子(例えば、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼなど)、天然機能タンパク質遺伝子、RNAi遺伝子、人工キメラ遺伝子(例えば、キメラ抗原受容体遺伝子、Fc融合タンパク質遺伝子、完全長抗体遺伝子)を含む。
【0062】
「コード配列」という用語は、本明細書で、核酸配列におけるそのタンパク質産物のアミノ酸配列を直接的に決定する部分と定義される。コード配列の境界は通常、mRNA 5’末端のオープンリーディングフレーム上流と隣接するリボソーム結合部位(原核細胞の場合)及びmRNA 3’末端のオープンリーディングフレーム下流と隣接する転写終結配列によって決定される。コード配列はDNA、cDNA、組換え核酸配列を含んでも良いが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書で「調節配列」という用語は、本発明のペプチドの発現に必要又は有利な全ての成分を含むと定義される。各調節配列はタンパク質又はポリペプチドをコードする核酸配列にとって天然又は外来のものであってもよい。これらの調節配列は、リーダー配列、polyA配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナル配列、転写ターミネーターを含むが、これらに限定されない。最低限でも、調節配列はプロモーター及び転写と翻訳の終結シグナルを含む。特定の制限部位を導入して調節配列とタンパク質又はポリペプチドをコードする核酸配列のコード領域を連結するために、リンカー付きの調節配列を提供してもよい。
【0064】
調節配列は、適切なプロモーター配列であってもよく、即ち、核酸配列を発現する宿主細胞に認識される核酸配列である。プロモーター配列は、タンパク質又はポリペプチドの発現を仲介する転写調節配列を含む。プロモーター配列は通常、タンパク質を発現しようとするコード配列と操作可能に連結する。プロモーターは、変異、トランケート、およびハイブリッドプロモーターを含む、選択された宿主細胞において転写活性を示す任意のヌクレオチド配列であってもよく、宿主細胞と相同または異種である細胞外または細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られてもよい。
【0065】
調節配列は、適切な転写終結配列であってもよく、即ち、宿主細胞に認識されて転写を終結する配列である。終結配列はタンパク質又はポリペプチドをコードする核酸配列の3’末端に操作可能に連結される。選択される宿主細胞において機能を果たす任意のターミネーターが本発明に利用できる。
【0066】
調節配列は、適切なリーダー配列であってもよく、即ち、宿主細胞の翻訳にとって非常に重要なmRNA非翻訳領域である。リーダー配列はポリペプチドをコードする核酸配列の5’末端に操作可能に連結される。選択される宿主細胞において機能を果たす任意のターミネーターが本発明に利用できる。
【0067】
調節配列はシグナルペプチドのコード領域であってもよく、該領域はタンパク質又はポリペプチドのアミノ末端に連結されるアミノ酸配列をコードし、コードされるポリペプチドが細胞分泌経路に進入するように誘導する。核酸配列のコード領域の5’末端は、翻訳リーディングフレームが一致してポリペプチドを分泌するコード領域の断片と自然に連結するシグナルペプチドのコード領域、を天然に含んでも良い。或いは、コード領域の5’末端は、コード配列にとって外来のシグナルペプチドのコード領域を含んでも良い。コード配列が通常の状態においてシグナルペプチドのコード領域を含まない場合、外来のシグナルペプチドのコード領域を付加する必要がある。或いは、外来のシグナルペプチドのコード領域で天然のシグナルペプチドのコード領域を容易に取り替えて、ポリペプチドの分泌を促進してもよい。しかし、発現したポリペプチドが使用される宿主細胞の分泌経路に進入するように誘導できる任意のシグナルペプチドのコード領域は本発明に適用できる。
【0068】
本発明の核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターというエレメント、を含む。前記核酸コンストラクトは、ポリクローナル挿入部位と、エンハンサーと、5’UTRと、第2のpolyA配列とから選ばれる1種又は複数種をさらに含む。特に好ましい一実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、5’UTRと、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、をこの順で含み、図1Aに示される。特に好ましい別の実施形態において、前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含み、図1Bに示される。本明細書の核酸コンストラクトにおける各エレメントはそれぞれ独立的にシングルコピー又はマルチコピーである。
【0069】
本明細書において、トランスポゾン5’末端反復配列と前記トランスポゾン3’末端反復配列が位置を交換できる。好ましくは、前記トランスポゾン5’末端反復配列がPiggyBacトランスポゾン5’末端反復配列であり、前記トランスポゾン3’末端反復配列がPiggyBacトランスポゾン3’末端反復配列である。
【0070】
本明細書において、好ましくは、トランスポザーゼはPiggyBacトランスポザーゼであり、そのコード配列がシングルコピー又はマルチコピーの核局在シグナルのコード配列を含み、或いはそれと操作可能に連結されることで、転移効率を向上させる。例示的なPiggyBacトランスポザーゼのコード配列がSEQ ID NO:7に示される。例示的な核局在シグナルのコード配列がSEQ ID NO:35に示される。
【0071】
本発明の核酸コンストラクトは、トランスポザーゼと外来遺伝子に対して、polyA配列を使用しても良い。この設計は、ある程度で核酸コンストラクトの全長を短縮させて、転移のためにより長い外来遺伝子を組込むことに繋がる。或いは、本発明の核酸コンストラクトは、トランスポザーゼと外来遺伝子に対して、別々のpolyA配列を使用してもよく、両者のテーリングシグナル機能の方向が同じ又は反対であってもよい。この設計は、同じ両方向polyA配列を共用することにより、両方向における相応な発現カセットの間に互いに影響が与えられること、を免れた。本明細書に係るpolyA配列は両方向の転写終結機能を有してもよいが、有さなくても良い。好ましくは、polyA配列は独立的にSEQ ID NO:3、13又は16から選ばれる。
【0072】
本発明の核酸コンストラクトは、トランスポザーゼと外来遺伝子に対して、転写終結のためにインスレーター配列を使用又はさらに使用しても良い。そのため、任意のpolyA配列における任意の端末はインスレーター配列を含んでも良い。好ましくは、本発明のインスレーター配列がトランスポゾン5’末端反復配列とトランスポゾン3’末端反復配列との間にある。本明細書に係るインスレーター配列は転写終結機能を有し、該配列が本分野における既知の任意の転写終結機能を有する配列であってもよい。好ましくは、転写終結機能を有するインスレーター配列がSEQ ID NO:5又は15に示される。
【0073】
そのため、トランスポザーゼはpolyA配列、インスレーター配列、又はpolyA配列及びインスレーター配列を使用して転写終結を実現してもよく、外来遺伝子はpolyA配列、インスレーター配列、又はpolyA配列及びインスレーター配列を使用して転写終結を実現しても良い。好ましくは、任意の前記インスレーター配列が前記トランスポゾン5’末端反復配列とトランスポゾン3’末端反復配列との間にある。
【0074】
本発明の核酸コンストラクトにおいて、適切なトランスポザーゼのプロモーター配列は、それと操作可能に連結されるトランスポザーゼの高レベル発現を駆動できるプロモーター配列であり、シミアンウィルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウィルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウィルスプロモーター、EBウィルス最初期プロモーター、ラウスサルコーマウィルスプロモーター、ヒト遺伝子プロモーターを含むが、これらに限定されなく、例えば、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、プロトヘムプロモーター、クレアチンキナーゼプロモーターを含むが、これらに限らない。1つ又は複数の実施形態において、トランスポザーゼのプロモーターがCMVプロモーター、miniCMVプロモーター、CMV53プロモーター、miniSV40プロモーター、miniTKプロモーター、MLPプロモーター、pJB42CAT5プロモーター、YB_TATAプロモーター、EF1αプロモーター、SV40プロモーター、UbiquitinBプロモーター、CAGプロモーター、HSP70プロモーター、PGK-1プロモーター、β-actinプロモーター、TKプロモーター、GRP78プロモーターから選ばれる。好ましくは、前記プロモーターがminiCMVプロモーター、CMV53プロモーター、miniSV40プロモーター、miniTKプロモーター、MLPプロモーター、pJB42CAT5プロモーター、YB_TATAプロモーターから選ばれる。より好ましくは、前記プロモーターがminiCMVプロモーターである。miniCMVがCMVプロモーターよりかなり短いので、ベクターの長さがより短くなり、より大きい外来遺伝子の統合に繋がる。1つ又は複数の実施形態において、miniCMVとトランスポザーゼとの間に5’UTR配列を付加して転写と翻訳を増強させる。5’UTR配列がSEQ ID NO:8、17~24の何れか1つに示される。
【0075】
本発明の核酸コンストラクトはエンハンサーを含んでもよく、該エンハンサーが本明細書に係る核酸コンストラクトにおけるエンハンサーを除く任意のエレメントの任意の末端にある。好ましくは、エンハンサーがトランスポゾン3’末端反復配列とトランスポゾン5’末端反復配列との間にある。より好ましくは、エンハンサーが第1のpolyA配列の下流にある。エンハンサー配列がSEQ ID NO:4、25~28の何れか1つに示される。本明細書において、核酸コンストラクトは前記5’UTR配列とエンハンサー配列を含まなくてもよく、又は両者の1つを含んでもよく、又は両者を含んでもよく、得られた核酸コンストラクトは外来遺伝子を細胞のゲノムに高効率的に統合できる。
【0076】
宿主細胞の成長状況に応じてポリペプチドの発現を調節できる調節配列を付加することも必要とされる。調節システムの例として、化学的又は物理的刺激物(調節化合物がある場合を含む)に対して反応でき、遺伝子の発現を開放又は閉鎖するシステムが挙げられる。調節配列のその他の例として、遺伝子を増幅させる調節配列が挙げられる。これらの例において、タンパク質又はポリペプチドをコードする核酸配列と調節配列を操作可能に連結する。
【0077】
1つのpolyAシグナル配列を含む具体的な実施形態において、本発明の核酸コンストラクトは、PiggyBacトランスポゾン3’末端反復配列(3’ITR)(SEQ ID NO:1)と、ポリクローナル部位(SEQ ID NO:2)と、polyAシグナル配列(SEQ ID NO:3、13又は16)と、任意のエンハンサーモチーフ配列(SEQ ID NO:4、25~28の何れか1つ)と、インスレーター配列(SEQ ID NO:5又は15)と、PiggyBacトランスポゾン5’末端反復配列(5’ITR)(SEQ ID NO:6)の逆向き相補配列と、PiggyBacトランスポザーゼのコード配列(SEQ ID NO:7)の逆向き相補配列と、任意の5’UTR配列(SEQ ID NO:8、17~24の何れか1つ)の逆向き相補配列と、miniCMVプロモーター配列(SEQ ID NO:9)の逆向き相補配列と、をこの順で含む。1つ又は複数の実施形態において、本発明の核酸コンストラクトはSEQ ID NO:10に示される配列を有する。
【0078】
2つのpolyAシグナル配列を含む具体的な実施形態において、本発明の核酸コンストラクトは、PiggyBacトランスポゾン3’末端反復配列(3’ITR)(SEQ ID NO:1)と、ポリクローナル部位(SEQ ID NO:2)と、第1のpolyAシグナル配列(SEQ ID NO:3、13又は16)と、任意のエンハンサーモチーフ配列(SEQ ID NO:4、25~28の何れか1つ)と、インスレーター配列(SEQ ID NO:5又は15)と、PiggyBacトランスポゾン5’末端反復配列(5’ITR)(SEQ ID NO:6)と、miniCMVプロモーター配列(SEQ ID NO:9)と、任意の5’UTR配列(SEQ ID NO:8、17~24の何れか1つ)と、PiggyBacトランスポザーゼのコード配列(SEQ ID NO:7)と、第2のpolyAシグナル配列(SEQ ID NO:3、13又は16)と、をこの順で含む。1つ又は複数の実施形態において、本発明の核酸コンストラクトは、SEQ ID NO:14に示される配列を有する。
【0079】
特定の実施形態において、前記核酸コンストラクトは組換えベクターである。組換えベクターは組換えクローニングベクターであってもよく、組換え発現ベクターであってもよい。本発明の核酸コンストラクトの各エレメントは、例えば、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウィルス、コスミドなどの様々なベクターに組込まれてもよい。通常、適切なベクターは、少なくとも1種の有機体において機能を果たす複製起点と、プロモーター配列と、便利な制限酵素部位と、1つ又は複数の選択可能な標識と、を含む。
【0080】
持ち込まれる遺伝子の発現を評価するために、細胞群から細胞を識別及び選択するように、細胞に組込まれるベクターは選択可能な標識遺伝子又はレポーター遺伝子の何れか1つ又は両者を含んでも良い。選択可能な標識は、単独のDNAに持ち込まれると共に、コトランスフェクション工程に利用できる。選択可能な標識とレポーター遺伝子の両者の側鎖は、宿主細胞において発現できるように、適切な調節配列を有しても良い。有用で選択可能な標識はFlag、HA又はV5を含む。レポーター遺伝子は、潜在的トランスフェクションの細胞の識別に利用されると共に、調節配列の機能性の評価に利用される。DNAが受容体細胞に組込まれた後、レポーター遺伝子の発現は適切な時間で測定する。適切なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリフォスファターゼ又は緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子を含んでも良い。
【0081】
組換えクローニングベクターは、本発明の核酸コンストラクトの各エレメントと任意の外来遺伝子を含むコード配列を提供するために利用される。組換えクローニングベクターは、本発明の核酸コンストラクトの各エレメントとpUC18、pUC19、pMD18-T、pMD19-T、pGM-Tベクター、pUC57、pMAX又はpDC315シリーズベクターが組換えにより得られた組換えベクターであってもよい。
【0082】
組換え発現ベクターは、適切な宿主細胞において本発明の核酸コンストラクトの各エレメントにより外来遺伝子の発現カセットをゲノムに統合して発現するために利用される。当該ベクターは真核細胞の複製と統合に適する。代表的なクローニングベクターは、所望の核酸配列の発現を調節するために利用される転写と翻訳ターミネーター、開始配列とプロモーターを含む。組換え発現ベクターは、本発明の核酸コンストラクトの各エレメントとpCDNA3シリーズベクター、pCDNA4シリーズベクター、pCDNA5シリーズベクター、pCDNA6シリーズベクター、pRLシリーズベクター、pUC57ベクター、pMAXベクター又はpDC315シリーズベクターが組換えにより得られた組換えベクターである。
【0083】
組換えベクター(組換えクローニングベクター又は組換え発現ベクター)は組換えウィルスベクターであってもよく、組換えアデノウィルスベクター、組換えアデノ随伴ウィルスベクター、組換えレトロウィルスベクター、組換え単純ヘルペスウィルスベクター、又は組換えワクシニアウィルスベクターを含むが、これらに限定されない。ウィルスベクター技術は、本分野において周知であると共に、例えば、Sambrookなど(2001,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)及びその他のウィルス学と分子生物学マニュアルに記載されている。
【0084】
本明細書に係る核酸コンストラクトは通常、PCR増幅法により取得しても良い。具体的には、本明細書に開示されるヌクレオチド配列、特にオープンリーディングフレーム配列によりプライマーを設計すると共に、市販されるcDNAライブラリー又は当業者によく知られている通常の方法で製作されたcDNAライブラリーをテンプレートとして増幅して関連配列を取得することができる。長い配列の場合、通常、PCR増幅を2回又は複数回実施してから、それぞれ増幅された断片を正確な順番で繋げる必要がある。或いは、本明細書に係る核酸コンストラクトを直接的に合成しても良い。
【0085】
本発明は、本明細書の何れか1つの実施形態に係る核酸コンストラクトを含む宿主細胞をさらに提供する。宿主細胞は、哺乳類動物細胞を含むほかに、例えば、大腸菌細胞などの、哺乳類動物細胞の生産プロセスで使用される様々な細胞も含み、本明細書に係る核酸コンストラクト又はベクターを提供するために利用される。特定の実施形態において、本明細書は、本明細書に係る核酸コンストラクト又はベクターを含む哺乳類動物細胞を提供し、T細胞、B細胞、CIK細胞、LAK細胞、NK細胞、細胞傷害性T細胞(CTL)、樹状細胞(DC)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、マクロファージ、NKT細胞、γδT細胞、Jurkat細胞、K562細胞、胚性幹細胞、腫瘍細胞、HEK293細胞、CHO細胞を含むが、これらに限定されない。
【0086】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、本明細書に係る核酸コンストラクト又は細胞と薬学的に許容される添加物を含む。本発明において、「薬学的に許容される添加物」は、本発明の核酸コンストラクト又は細胞を動物又は人間に取り込むために利用される、薬学的又は食品上許容されるベクター、溶剤、懸濁剤又は賦形剤である。本明細書において、薬学的に許容される添加物は採用される用量と濃度で前記組成物の受験者に対して無毒である。本分野における周知の治療において生物に送達するためによく利用される様々なタイプのベクター又は賦形剤を含んでも良い。例示的な添加物は液体又は固体であってもよく、pH調整剤、界面活性剤、炭水化物、アジュバント、酸化防止剤、キレート剤、イオン強度増強剤、防腐剤、キャリア、流動促進剤、甘味剤、染料/着色剤、着香剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶剤又は乳化剤を含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、薬学的に許容される添加物は、1種又は複数種の非活性成分を含んでもよく、安定剤、防腐剤、添加剤、アジュバント、スプレー、圧縮空気又はその他の適切な気体、或いはその他の薬効化合物と併用する適切な非活性成分を含むが、これらに限定されない。具体的には、適切な添加物は本分野においてトランスポゾンシステム又はそれを含む細胞の投与によく利用される添加物であってもよい。添加物の例として、様々なラクトース、マンニトール、コーン油などの油類、PiggyBacS、塩水、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリプロピレングリコール、ジメチルスルホキシドなどの緩衝剤、ジメチルアセトアミドなどのアミド、アルブミンなどのタンパク質、Tween80などの洗剤、グルコースなどの単糖とオリゴ多糖、ラクトース、シクロデキストリン、でん粉を含む。
【0087】
その他の医薬組成物は当業者にとって明らかであり、持続的に又は制御的に放出される送達調製物に本明細書に係る核酸コンストラクト又は細胞が含まれる調製物を含む。幾つかのその他の持続的又は制御可能な送達方式を提供するための技術(例えば、リポソームベクター、生分解性微粒子又は多孔質ビーズ及びデポ注射)も当業者によく知られている。
【0088】
インビボで投与する医薬組成物は、通常、無菌製剤の形態で提供する。無菌ろ過膜によりろ過することで殺菌を実現する。組成物を凍結乾燥する場合、凍結乾燥及び再構成の前に又はその後にこの方法により殺菌する。非経口投与に利用される組成物は凍結乾燥の形態又は溶液で保存できる。非経口組成物は、通常、無菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針によって穿通可能な栓を有する静脈内溶液バッグ、またはバイアルに入れられる。
【0089】
通常、組成物に本明細書に係る試薬が治療有効量で含まれる。治療有効量とは、被験者における疾患又は病状の治療、予防、軽減及び/又は緩和が実現できる用量である。これらの効果は相応な機能を有する外来遺伝子を挿入することで実現でき、前記相応な機能の外来遺伝子は、例えば、治療機能又は誘導機能などの具体的な適用に対応する機能を有する。患者の年齢、性別、罹患病状及びその重症度、患者のその他の体調などの要素によって治療有効量が決定される。治療有効量は、1回分用量として投与してもよく、或いは効果的な治療方案に応じて複数回分用量として投与してもよい。本明細書において、通常、被験者又は患者が哺乳動物であり、特に、ヒトである。例示的に、前記組成物は、本明細書に係る核酸コンストラクト又は細胞を、例えば0.001~50%、好ましくは0.01~30%、より好ましくは0.05~10%の重量比でを含む。
【0090】
本明細書に係る組成物は、前記外来遺伝子により実現される機能と類似又は相応な機能を有するその他の試薬と併用してもよい。例えば、前記外来遺伝子により治療される疾患又は病状を治療する試薬と併用する。当業者はその他の試薬の投与量を決定してもよい。
【0091】
本発明に係る医薬組成物の剤形は多様であり、活性成分が哺乳類動物生体に有効的に到達できる剤形であればよく、単位投与剤形に調整されてもよい。剤形は、例えば、ゲル剤、スプレー剤、錠剤、カプセル、粉末、粒子、シロップ、溶液、懸濁液、注射剤、散剤、丸薬、時限放出剤、輸液剤、懸濁剤などから選ばれても良い。当業者は本明細書に係る核酸コンストラクト又は細胞により予防及び治療される疾患の種類によって、容易に適用できる剤形を選択しても良い。容易に製造及び保存できる観点から、好ましい組成物は固体組成物であり、特に錠剤及び固体充填又は液体充填のカプセルである。本明細書に係る核酸コンストラクト又は細胞或いはその組成物は注射又は点滴注射に適する消毒器具に保存しても良い。本明細書に係る核酸コンストラクト又は細胞或いはその組成物は適切な容器に保存して、さらに試薬キット又は薬物ボックスに置いてもよい。
【0092】
方法と適用
本発明者は研究において、本明細書の核酸コンストラクトにより制御可能な方式で外来遺伝子のゲノム統合を高効率的に実現できること、を発現した。外来遺伝子をゲノムに統合した場合、PiggyBacトランスポザーゼの転写発現を効果的に終結させることができると共に、外来遺伝子の発現カセットのインスレーター機能を果たし、統合された外来遺伝子の発現カセットの統合部位付近の遺伝子発現に対する影響を軽減することができる。そのため、本発明は、外来遺伝子又はその発現カセットを細胞のゲノムに統合する方法であって、外来遺伝子と任意のそのプロモーターを含む本明細書の何れか1つの実施形態に係る核酸コンストラクトを前記細胞に導入すること、及び任意のPiggyBacトランスポザーゼにより外来遺伝子又はその発現カセットを細胞のゲノムに統合する条件で前記細胞をインキュベートすること、を含む方法に関わる。本発明は、上記方法で得られた、ゲノムに外来遺伝子又はその発現カセットが統合された細胞をさらに提供する。
【0093】
核酸コンストラクトを細胞に組込む方法は本分野において既知である。ベクターは、本分野における任意の方法で、例えば、哺乳類動物、細菌、酵母又は昆虫細胞などの宿主細胞に容易に組込むことができる。例えば、ベクターは物理、化学又は生物学の手段で宿主細胞に導入することができる。例示的な物理又は化学の方法は、リン酸カルシウム沈殿、脂質媒介性トランスフェクション法、マイクロインジェクション、粒子衝突、微注射、遺伝子銃変換、電気穿孔、コロイド分散システム、大分子複合体、ナノカプセル、微小球、ビーズ、脂質に基づくシステム(オイルインウォーター乳剤、ミセル、混合ミセル、リポソームを含む)を含む。核酸コンストラクトを宿主細胞に組込む生物学方法は、ウィルスにより仲介される変換を含み、特にレトロウィルスベクターである。その他のウィルスベクターは、レンチウィルス、ポックスウィルス、単純ヘルペスウィルスI、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルスなどに由来しても良い。本分野においてよく知られている技術により選択される核酸配列をベクターに挿入すると共に、レトロウィルス粒子にパッケージングしてもよい。該組換えウィルスはその後、単離されて、インビボ又はインビトロの対象細胞に伝達される。ウィルスのパッケージングに利用される試薬は本分野において周知されており、例えば、pRsv-REV、pMDlg-pRRE、pMD2G、目的干渉プラスミドなどを含む、通常のレンチウィルスベクターシステムである。
【0094】
本発明は、本明細書の何れか1つの実施形態に記載の核酸コンストラクト又は宿主細胞の、薬物、試薬又はツールの製造における適用、或いは薬物、試薬又はツールとしての適用であって、前記薬物、試薬又はツールが外来遺伝子の発現カセットを標的細胞のゲノムに統合するために利用され、或いは遺伝子治療、細胞治療、幹細胞誘導又は分化に利用される、適用をさらに提供する。1つ又は複数の実施形態において、前記標的細胞は哺乳類動物細胞であり、T細胞、B細胞、CIK細胞、LAK細胞、NK細胞、細胞傷害性T細胞(CTL)、樹状細胞(DC)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、マクロファージ、NKT細胞、γδT細胞、Jurkat細胞、K562細胞、胚性幹細胞、腫瘍細胞、HEK293細胞、CHO細胞を含むが、これらに限定されない。
【0095】
<具体的な実施形態>
<実施形態1>
トランスポゾン3’末端反復配列と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列というエレメントを含むか、又はこれらのエレメントからなる核酸コンストラクトであって、
好ましくは、前記核酸コンストラクトは、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、ポリクローナル挿入部位と、エンハンサーと、5’UTRと、第2のpolyA配列と、注目外来遺伝子とから選ばれる1種又は複数種をさらに含み、
好ましくは、前記トランスポザーゼのコード配列、該トランスポザーゼの発現を制御する前記プロモーター、前記5’UTR、前記第2のpolyA配列のうちの何れか1種又は複数種が、前記トランスポゾン3’末端反復配列と前記トランスポゾン5’末端反復配列との間の領域外に位置する、核酸コンストラクト。
【0096】
<実施形態2>
トランスポゾン3’末端反復配列と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターというエレメントを含む実施形態1に記載の核酸コンストラクトであって、
好ましくは、前記核酸コンストラクトは、ポリクローナル挿入部位と、エンハンサーと、5’UTRと、第2のpolyA配列と、注目外来遺伝子とから選ばれる1種又は複数種をさらに含む、核酸コンストラクト。
【0097】
<実施形態3>
実施形態2に記載の核酸コンストラクトであって、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、5’UTRと、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼのコード配列と、5’UTRと、該トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含むか、又は、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含み、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、転写終結機能を有するインスレーター配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、エンハンサーと、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含むか、又は、
前記核酸コンストラクトは、トランスポゾン3’末端反復配列と、エンハンサーと、転写終結機能を有するインスレーター配列と、ポリクローナル挿入部位と、第1のpolyA配列と、トランスポゾン5’末端反復配列と、トランスポザーゼの発現を制御するプロモーターと、5’UTRと、トランスポザーゼのコード配列と、第2のpolyA配列と、をこの順で含むことを特徴とする、核酸コンストラクト。
【0098】
<実施形態4>
実施形態1~3の何れか1項に記載の核酸コンストラクトであって、前記核酸コンストラクトは、
前記トランスポザーゼの発現カセットの方向と、外来遺伝子の発現カセットの方向が同じ又は反対であること、
前記トランスポザーゼの発現カセットの方向と、トランスポゾン3’末端反復配列とトランスポゾン5’末端反復配列との間の配列の方向が同じ又は反対であること、
前記トランスポゾン5’末端反復配列と前記トランスポゾン3’末端反復配列が位置を交換できること、
前記トランスポゾン3’末端反復配列がPiggyBacトランスポゾン3’末端反復配列であること、
前記トランスポゾン5’末端反復配列がPiggyBacトランスポゾン5’末端反復配列であること、
前記エンハンサーがCMVエンハンサー配列、SV40エンハンサー、ヒトεグロブリン5’HS2エンハンサー、ニワトリβグロブリン遺伝子5’HS4エンハンサーから選ばれること、
前記トランスポザーゼがPiggyBacトランスポザーゼであること、
前記5’UTRがC3遺伝子、ORM1遺伝子、HPX遺伝子、FGA遺伝子、AGXT遺伝子、ASL遺伝子、APOA2遺伝子、ALB遺伝子の5’UTRから選ばれること、
前記プロモーターがCMVプロモーター、miniCMVプロモーター、CMV53プロモーター、miniSV40プロモーター、miniTKプロモーター、MLPプロモーター、pJB42CAT5プロモーター、YB_TATAプロモーター、EF1αプロモーター、SV40プロモーター、UbiquitinBプロモーター、CAGプロモーター、HSP70プロモーター、PGK-1プロモーター、β-actinプロモーター、TKプロモーター、GRP78プロモーターから選ばれること、
前記トランスポザーゼのコード配列がシングルコピー又はマルチコピーの核局在シグナルのコード配列を含み、或いはそれと操作可能に連結されるという特徴から選ばれる1つ又は複数を有することを特徴とする、核酸コンストラクト。
【0099】
<実施形態5>
実施形態1~3の何れか1項に記載の核酸コンストラクトであって、前記核酸コンストラクトは、
前記トランスポゾン3’末端反復配列のヌクレオチド配列がSEQ ID NO:1に示されること、
前記トランスポゾン5’末端反復配列のヌクレオチド配列がSEQ ID NO:6に示されること、
前記ポリクローナル挿入部位の配列がSEQ ID NO:2に示されること、
前記第1のpolyA配列がSEQ ID NO:3、13又は16に示されること、
前記第2のpolyA配列がSEQ ID NO:3、13又は16に示されること、
前記エンハンサー配列がSEQ ID NO:4、26~28の何れか1つに示されること、
前記インスレーター配列がSEQ ID NO:5又は15に示されること、
前記PiggyBacトランスポザーゼのアミノ酸配列がSEQ ID NO:36に示され、好ましくは、前記PiggyBacトランスポザーゼのコード配列がSEQ ID NO:7に示されること、
前記5’UTR配列がSEQ ID NO:8、17~24の何れか1つに示されること、
前記プロモーターの配列がSEQ ID NO:9、SEQ ID NO:37~42の何れか1項に示されること、
前記核局在シグナルがc-myc核局在シグナルであり、好ましくは、前記核局在シグナルがSEQ ID NO:35に示される配列を有するという特徴から選ばれる1つ又は複数を有することを特徴とする、核酸コンストラクト。
【0100】
<実施形態6>
実施形態1~3の何れか1項に記載の核酸コンストラクトであって、
前記核酸コンストラクトがSEQ ID NO:10又は14に示される配列を含み、又は
前記核酸コンストラクトが組換えベクターであり、好ましくは、前記核酸コンストラクトが組換えクローニングベクター又は組換え発現ベクターであることを特徴とする、核酸コンストラクト。
【0101】
<実施形態7>
宿主細胞であって、
(1)実施形態1~6の何れか1項に記載の核酸コンストラクト、及び/又は
(2)実施形態1~6の何れか1項に記載の核酸コンストラクトのトランスポゾン3’末端反復配列とトランスポゾン5’末端反復配列との間の配列、を含み、
好ましくは、前記宿主細胞が哺乳類動物細胞であり、
より好ましくは、前記宿主細胞がT細胞、Jurkat細胞、K562細胞、胚性幹細胞、腫瘍細胞、HEK293細胞、CHO細胞から選ばれる、宿主細胞。
【0102】
<実施形態8>
実施形態1~6の何れか1項に記載の核酸コンストラクト又は実施形態8に記載の宿主細胞と薬学的に許容される添加物とを含む、医薬組成物。
【0103】
<実施形態9>
実施形態1~6の何れか1項に記載の核酸コンストラクト又は実施形態7に記載の宿主細胞の、薬物、試薬又はツールの製造における適用、或いは薬物、試薬又はツールとしての適用であって、前記薬物、試薬又はツールが外来遺伝子の発現カセットを標的細胞のゲノムに統合するために利用され、或いは遺伝子治療、細胞治療、幹細胞誘導又は分化に利用され、
好ましくは、前記標的細胞が哺乳類動物細胞であり、
より好ましくは、前記標的細胞が免疫細胞、Jurkat細胞、K562細胞、胚性幹細胞、腫瘍細胞、HEK293細胞、CHO細胞から選ばれ、
さらに好ましくは、前記免疫細胞がT細胞、B細胞、CIK細胞、LAK細胞、NK細胞、細胞傷害性T細胞(CTL)、樹状細胞(DC)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、マクロファージ、NKT細胞、γδT細胞の何れか1種又は複数種から選ばれる、適用。
【0104】
<実施形態10>
外来遺伝子又はその発現カセットを細胞のゲノムに統合する方法であって、外来遺伝子と任意のそのプロモーターを含む実施形態1~6の何れか1項に記載の核酸コンストラクトを前記細胞に導入すること、及び任意のトランスポザーゼにより外来遺伝子又はその発現カセットを細胞のゲノムに統合する条件で前記細胞をインキュベートすること、を含み、前記外来遺伝子と任意のそのプロモーターが前記核酸コンストラクトのポリクローナル挿入部位にあり、
好ましくは、前記トランスポザーゼがPiggyBacトランスポザーゼである、方法。
【0105】
本発明の優位性:
1)本発明のトランスポゾンベクターシステムは、PiggyBacの発現及びそれにより仲介される外来遺伝子の統合を多段階で調節する多段階調節エレメントを有する。本明細書で使用される、PiggyBacトランスポザーゼの発現を駆動するプロモーターは、発現強度を低減させると共に、DNA長さを短縮させた。さらに、エンハンサーエレメントを組込み、完全なプラスミドの状態で、トランスポザーゼの発現を瞬時に増強させて、PiggyBacトランスポザーゼのカットと統合機能を果たした。外来遺伝子の発現カセットが完全なプラスミドからカットされて、エンハンサーのプロモーターに対する増強効果が失われ、PiggyBacトランスポザーゼの高効率的な開放又は閉鎖が実現されることで、トランスポザーゼレベルの短時間発現がピークに達してから低下し、外来遺伝子の統合を仲介すると共に、細胞傷害性が大幅に低減された。
【0106】
2)プロモーター下流に5’UTR配列が付加され、エンハンサーエレメントとの組合せでトランスポザーゼの発現強度が瞬時に向上されることにより、PiggyBacトランスポザーゼの発現強度が十分高くなり、全体の統合効率が向上された。下記の実施例に示される通り、本発明のトランスポゾンベクターシステムの統合効率が顕著的に向上された。
【0107】
3)PiggyBacの発現カセットは転写終結効果を有するインスレーター配列を採用することで、外来遺伝子の統合発生前に転写を効果的に終結させて、トランスポザーゼ遺伝子を発現させた。外来遺伝子をゲノムに統合した場合、転写終結効果を有するインスレーター配列の欠失によって、PiggyBacトランスポザーゼの転写発現が効果的に終結された。さらに、転写終結効果を有するインスレーター配列と外来遺伝子の発現カセットをゲノムに統合した場合、インスレーターは外来遺伝子の発現によるゲノムにおける隣接領域への影響を遮断して、統合された外来遺伝子の発現カセットによる統合部位付近の遺伝子発現への影響が低減された。
【0108】
4)本発明のトランスポゾンベクターシステムのゲノムにおける挿入部位が少なく、遺伝子内の挿入部位が少ないため、ゲノムの安定性に対する影響が小さい。
【0109】
5)mRNAレベルが遺伝子発現プロフィルに対する影響は小さい。
次に、実施例を参照しながら本発明に係る実施形態について詳しく記述した。当業者は、下記の実施例が本発明の説明に利用されるものであり、本発明の範囲を限定するものではないと理解すべきである。実施例に具体的な技術又は条件を明記していない場合、本分野の文献に記載される技術又は条件(例えば、Joseph.Sambrookら著、黄培堂ら訳、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第3版、科学出版社を参照)或いは製品取扱説明書に従う。メーカを明記していない試薬又は計器は、いずれも市販で得られる通常製品である。下記実施例に使用される細胞系はいずれもATCCより購入したものである。
【実施例
【0110】
<実施例1>ベクターの構築
pKB20:PiggyBacトランスポゾン3’末端反復配列(3’ITR)(SEQ ID NO:1)、ポリクローナル部位(SEQ ID NO:2)、bGH polyAシグナル配列(SEQ ID NO:3)、エンハンサーモチーフ配列(SEQ ID NO:4)、転写終結機能を有するインスレーター配列(C2転写アレスト部位、SEQ ID NO:5)、PiggyBacトランスポゾン5’末端反復配列(5’ITR)(SEQ ID NO:6)の逆向き相補配列、PiggyBacトランスポザーゼのコード配列(SEQ ID NO:7)の逆向き相補配列、5’UTR配列(SEQ ID NO:8)の逆向き相補配列、miniCMVプロモーター配列(SEQ ID NO:9)の逆向き相補配列をこの順で長い配列(SEQ ID NO:10)となるように繋げ、上海捷瑞生物科技有限公司に合成を依頼し、その両端にAgeIとAscI酵素切断部位をそれぞれ付加し、pUC57(上海捷瑞生物より購入)に組込んで、pKB20と名付ける。プラスミド模式図は図1Aに示される。
【0111】
pKB20-EGFP:pKB20のポリクローナル部位のXbaIとEcoRI部位との間にNFATモチーフ付きのEF1Aプロモーター配列(SEQ ID NO:11)を挿入し、EcoRIとSalI部位との間にEGFPコード配列(SEQ ID NO:12)を挿入して、pKB20-EGFPと名付ける。NFATモチーフ付きのEF1Aプロモーター配列とEGFPコード配列は上海杰瑞生物科技有限公司に合成を依頼する。
【0112】
pKB205:PiggyBacトランスポゾン3’末端反復配列(3’ITR)(SEQ ID NO:1)、ポリクローナル部位MCS(SEQ ID NO:2)、bGH polyAシグナル配列(SEQ ID NO:3)、エンハンサーモチーフ配列(SEQ ID NO:4)、転写終結機能を有するインスレーター配列(C2転写アレスト部位、SEQ ID NO:5)、PiggyBacトランスポゾン5’末端反復配列(5’ITR)(SEQ ID NO:6)、miniCMVプロモーター配列(SEQ ID NO:9)、5’UTR配列(SEQ ID NO:8)、PiggyBacトランスポザーゼのコード配列(SEQ ID NO:7)、SV40 polyAシグナル配列(SEQ ID NO:13)をこの順で長い配列(SEQ ID NO:14)となるように繋げ、上海捷瑞生物科技有限公司に合成を依頼し、その両端にAgeIとAscI酵素切断部位をそれぞれ付加し、pUC57(上海捷瑞生物より購入)に組込んで、pKB205と名付ける。プラスミド模式図は図1Bに示される。
【0113】
pKB205-EGFP:pKB205のポリクローナル部位のXbaIとEcoRI部位との間にNFATモチーフ付きのEF1Aプロモーター配列(SEQ ID NO:11)を挿入し、EcoRIとSalI部位との間にEGFPコード配列(SEQ ID NO:12)を挿入して、pKB205-EGFPと名付ける。NFATモチーフ付きのEF1Aプロモーター配列とEGFPコード配列は上海杰瑞生物科技有限公司に合成を依頼する。
【0114】
同じ方法で下記プラスミドをそれぞれ取得する。
pKB201-EGFP:pKB20-EGFP配列からエンハンサーモチーフ配列を削除して取得する。
【0115】
pKB202-EGFP:pKB20-EGFP配列から5’UTR配列を削除して取得する。
【0116】
pKB2003-EGFP:pKB20-EGFP配列からエンハンサーモチーフ配列と5’UTR配列を削除して取得する。
【0117】
pKC20-EGFP:pKB20-EGFP配列からminiCMVプロモーター配列、5’UTR配列、核局在シグナルを含むPiggyBacトランスポザーゼのコード配列を削除して取得する。
【0118】
pK201-PB:pKB20配列から5’UTR、5’ITR、エンハンサーモチーフ、bGH polyAシグナル配列、ポリクローナル部位、3’ITRを削除し、miniCMV、核局在シグナルを含むPiggyBacトランスポザーゼのコード配列、転写終結機能を有するインスレーター配列だけを残して取得する。
【0119】
pKB20I1-EGFP:pKB20-EGFPにおける転写終結機能を有するインスレーター配列をヒトα2 globin遺伝子の転写アレスト部位(SEQ ID NO:15)に取り替えて取得する。
【0120】
pKB20A1-EGFP:pKB20-EGFPにおけるbGH polyAをSEQ ID NO:16に取り替えて取得する。
【0121】
pKB20A2-EGFP:pKB20-EGFPにおけるbGH polyAをSV40 polyAシグナル配列(SEQ ID NO:13)に取り替えて取得する。
【0122】
pKB20U1-EGFP:pKB20-EGFPにおける5’UTR配列をC3遺伝子の5’UTR(SEQ ID NO:17)に取り替えて取得する。
【0123】
pKB20U2-EGFP:pKB20-EGFPにおける5’UTR配列をORM1遺伝子の5’UTR(SEQ ID NO:18)に取り替えて取得する。
【0124】
pKB20U3-EGFP:pKB20-EGFPにおける5’UTR配列をHPX遺伝子の5’UTR(SEQ ID NO:19)に取り替えて取得する。
【0125】
pKB20U4-EGFP:pKB20-EGFPにおける5’UTR配列をFGA遺伝子の5’UTR(SEQ ID NO:20)に取り替えて取得する。
【0126】
pKB20U5-EGFP:pKB20-EGFPにおける5’UTR配列をAGXT遺伝子の5’UTR(SEQ ID NO:21)に取り替えて取得する。
【0127】
pKB20U6-EGFP:pKB20-EGFPにおける5’UTR配列をASL遺伝子の5’UTR(SEQ ID NO:22)に取り替えて取得する。
【0128】
pKB20U7-EGFP:pKB20-EGFPにおける5’UTR配列をAPOA2遺伝子の5’UTR(SEQ ID NO:23)に取り替えて取得する。
【0129】
pKB20U8-EGFP:pKB20-EGFPにおける5’UTR配列をALB遺伝子の5’UTR(SEQ ID NO:24)に取り替えて取得する。
【0130】
pKB20E1-EGFP:pKB20-EGFPにおけるエンハンサーモチーフ配列をCMVエンハンサー配列(SEQ ID NO:25)に取り替えて取得する。
【0131】
pKB20E2-EGFP:pKB20-EGFPにおけるエンハンサーモチーフ配列をSV40エンハンサー配列(SEQ ID NO:26)に取り替えて取得する。
【0132】
pKB20E3-EGFP:pKB20-EGFPにおけるエンハンサーモチーフ配列をヒトε-globin 5’HS2エンハンサー配列(SEQ ID NO:27)に取り替えて取得する。
【0133】
pKB20E4-EGFP:pKB20-EGFPにおけるエンハンサーモチーフ配列をニワトリβ-globin遺伝子5’HS4エンハンサー配列(SEQ ID NO:28)に取り替えて取得する。
【0134】
pKB20P1-EGFP:pKB20-EGFPにおけるminiCMV配列をCMV53プロモーター(SEQ ID NO:37)に取り替えて取得する。
【0135】
pKB20P2-EGFP:pKB20-EGFPにおけるminiCMV配列をminiSV40プロモーター(SEQ ID NO:38)に取り替えて取得する。
【0136】
pKB20P3-EGFP:pKB20-EGFPにおけるminiCMV配列をminiTKプロモーター(SEQ ID NO:39)に取り替えて取得する。
【0137】
pKB20P4-EGFP:pKB20-EGFPにおけるminiCMV配列をMLPプロモーター(SEQ ID NO:40)に取り替えて取得する。
【0138】
pKB20P5-EGFP:pKB20-EGFPにおけるminiCMV配列をpJB42CAT5プロモーター(SEQ ID NO:41)に取り替えて取得する。
【0139】
pKB20P6-EGFP:pKB20-EGFPにおけるminiCMV配列をYB_TATA(SEQ ID NO:42)に取り替えて取得する。
【0140】
<実施例2>EGFP発現カセットを含むpKBベクターのJurkat細胞における統合
急激に成長する少ない継代数のJurkat細胞を5×10個用意し、Lonza2b-Nucleofector装置により、pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFP、pKC20-EGFPをそれぞれ質量5μgで細胞核にトランスフェクションして(装置取扱説明書を参照)、37℃、5%COインキュベータで培養した。細胞が一杯になるまで成長した後、1:10の比率で継代培養した。電気穿孔後の7日目、10日目、14日目で蛍光顕微鏡により写真を撮って観察した。電気穿孔後の7日目、10日目、14日目(3回継代後)でフローサイトメータによりEGFP陽性細胞の比率変化を検出し、プラスミドをトランスフェクションしていないJurkat細胞をフローサイトメトリーの対照とした。電気穿孔の全プロセスで蛍光顕微鏡により細胞蛍光強度を観察した。電気穿孔後の5日目、7日目、10日目、14日目で生細胞をそれぞれ計数し、pKBベクターの電気穿孔によるJurkat細胞の増殖への影響を観察した。
【0141】
1:10の比率で希釈させて継代し、統合していないプラスミドは細胞の分裂に伴って素早く消えた。3代(約13日)後、緑色蛍光陽性の細胞は、緑色蛍光の発現カセットが安定的に統合されたと考えられる。フローサイトメトリーにより緑色蛍光陽性細胞の比率を検出することで、統合の効率が決定される。
【0142】
結果は図2~4に示される。図2は電気穿孔後10日目まで、pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPを電気穿孔したJurkat細胞に高い蛍光輝度の細胞が大量に見えていることを示している。PiggyBacトランスポザーゼの発現カセットが欠失したpKC20-EGFPを電気穿孔したJurkat細胞は、蛍光が殆ど見えない。PiggyBacトランスポザーゼの発現カセットを付帯するベクターはJurkat細胞においてEGFPをゲノムに統合したことを示している。一方、PiggyBacトランスポザーゼの発現カセットを含まないベクターは外来遺伝子EGFPを効果的に仲介して統合することができない。
【0143】
図3は電気穿孔後7日目のpKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPをそれぞれ電気穿孔したJurkat細胞のフローサイトメトリー結果を示す。結果によれば、pKB20-EGFPを電気穿孔したJurkat細胞は7日目と10日目に陽性細胞比率が67%以上であり、細胞を3代培養した後の14日目に陽性率が65%の高レベルを維持している。pKB201-EGFPとpKB202-EGFPを電気穿孔した細胞の陽性率は7日目に48%程度であり、3代培養した後の14日目にそれぞれ27%と26%を上回った。
【0144】
図4は、PBトランスポザーゼの発現カセットを含むプラスミドpKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPを電気穿孔したJurkat細胞が、PBトランスポザーゼの発現カセットを含まないpKC20-EGFPを電気穿孔したJurkat細胞と比較すれば、電気穿孔後5、7、10、14日目の生細胞数について明らかな差異がないことを示す。PBトランスポザーゼの発現カセットを含むものの導入がJurkat細胞の増殖に対して影響を与えないことを示している。
【0145】
上記の結果によれば、pKB20-EGFPはJurkat細胞に電気穿孔した後に非常に高い統合率と外来遺伝子陽性発現率を有し、pKB201-EGFPとpKB202-EGFPはJurkat細胞に電気穿孔した後に比較的に高い統合率と外来遺伝子陽性発現率を有するが、pKB20-EGFPを電気穿孔した後のレベルより低い。また、pKBシリーズベクターの統合は細胞の増殖に対して殆ど影響を与えない。
【0146】
<実施例3>pKBベクターをJurkat細胞に電気穿孔した後のPBトランスポザーゼ発現の時間曲線
急激に成長する少ない継代数のJurkat細胞を5×10個取り、Lonza2b-Nucleofector装置により、pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPをそれぞれ質量5μgで細胞核にトランスフェクションして(装置取扱説明書を参照)、37℃、5%COで培養した。電気穿孔後6、12、24、48、96時間及び15日間に細胞を収集してRNAを抽出し、β-actinを内部リファレンスとしてRT-PCRによりPBトランスポザーゼの発現レベルを定量で検出し、結果は図5に示される。
【0147】
図5は、pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPを電気穿孔したJurkat細胞におけるPBトランスポザーゼの発現レベルがいずれも6hにピークに達した後、明らかに低下し始めたことを示している。pKB20-EGFP、pKB201-EGFPを電気穿孔した細胞はpKB202-EGFPを電気穿孔した細胞より、6hピーク時のPBトランスポザーゼの発現レベルが明らかに高い。そのうち、pKB20-EGFP、pKB201-EGFPを電気穿孔した細胞は24h時点にPBトランスポザーゼの発現レベルが急激に低下した。全ての細胞は96時間にPBトランスポザーゼの発現レベルが低く低下し、15日目に検出できなくなった。
【0148】
<実施例4>EGFP発現カセットを含むpKBベクターのK562細胞における統合
急激に成長する少ない継代数のK562細胞を5×10個用意し、Lonza2b-Nucleofector装置により、pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFP、pKC20-EGFPをそれぞれ質量5μgで細胞核にトランスフェクションして(装置取扱説明書を参照)、37℃、5%COインキュベータで培養した。細胞が一杯になるまで成長した後、1:10の比率で継代培養した。電気穿孔後の1日目、7日目、10日目で蛍光顕微鏡により写真を撮って観察した。電気穿孔後の10日目、14日目(3回継代後)でフローサイトメータによりEGFP陽性細胞の比率変化を検出し、プラスミドをトランスフェクションしていないK562細胞をフローサイトメトリーの対照とした。電気穿孔の全プロセスで蛍光顕微鏡により細胞蛍光強度を観察した。電気穿孔後の5日目、7日目、10日目、14日目で生細胞をそれぞれ計数し、pKBベクターの電気穿孔によるK562細胞の増殖への影響を観察した。
【0149】
1:10の比率で希釈させて継代し、統合していないプラスミドは細胞の分裂に伴って素早く消えた。3代(約13日)後、緑色蛍光陽性の細胞は、緑色蛍光の発現カセットが安定的に統合されたと考えられる。フローサイトメトリーにより緑色蛍光陽性細胞の比率を検出することで、統合の効率が決定される。
【0150】
結果は図6~9に示される。図6は電気穿孔後10日目まで、pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPを電気穿孔したK562細胞に高い蛍光輝度の細胞が大量に見えていることを示している。PiggyBacトランスポザーゼの発現カセットが欠失したpKC20-EGFPを電気穿孔したK562細胞は、高い蛍光輝度の細胞が殆ど見えない。PiggyBacトランスポザーゼの発現カセットを付帯するベクターはK562細胞においてEGFPをゲノムに統合したことを示している。一方、PiggyBacトランスポザーゼの発現カセットを含まないベクターは外来遺伝子EGFPを効果的に仲介して統合することができない。
【0151】
図7は、PBトランスポザーゼの発現カセットを含むプラスミドpKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPを電気穿孔した細胞が、PBトランスポザーゼの発現カセットを含まないpKC20-EGFPを電気穿孔した細胞と比較すれば、電気穿孔後5、7、10、14日目の生細胞数について明らかな差異がないことを示す。PBトランスポザーゼの発現カセットを含むものの導入がK562細胞の増殖に対して影響を与えないことを示している。
【0152】
図8は電気穿孔後10日目、14日目のpKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPをそれぞれ電気穿孔した細胞のフローサイトメトリー結果を示す。結果によれば、pKB20-EGFP、pKB201-EGFPを電気穿孔した細胞は10日目の細胞蛍光陽性率がそれぞれ75%と73%上回り、電気穿孔後14日目(3代以上培養)の蛍光陽性率が70%以上を維持しており、非常に高い統合効率を示している。pKB202-EGFPを電気穿孔した細胞は電気穿孔後10日目の蛍光陽性率が70%弱であり、さらに電気穿孔後14日目(3代以上培養)の蛍光陽性率も70%弱のレベルを維持している。
【0153】
図9は、pKB20-EGFP、pKB201-EGFPベクターを電気穿孔したK562細胞は電気穿孔後の10~14日目に蛍光陽性率が変化小さく、70%以上であり、75%弱であり、pKB202-EGFPベクターを電気穿孔したK562細胞は電気穿孔後の10~14日目に蛍光陽性率があまり低下しておらず、70%よりやや低いことを示している。
【0154】
上記の結果によれば、pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPをK562細胞に電気穿孔した後、非常に高い統合率と外来遺伝子の陽性発現率を有することを示してる。
【0155】
<実施例5>EGFP発現カセットを含むpKBベクターの初代T細胞における統合
単離されたばかりの末梢血単核球(PBMC)を1組あたり5×10個で4組用意し、Lonza Nucleofector-2bエレクトロポレーターにより、pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFP、pKC20-EGFPをそれぞれ質量5μgで細胞核に電気穿孔してから(装置取扱説明書を参照)、細胞をAIM-V培地に入れて37℃、5%COインキュベータで培養した。6時間後に30ng/mLの抗CD3抗体と3000IU/mLのIL-2(NOvoproteinより購入)を含む6ウェルプレートに移動して、37℃、5%COインキュベータで培養した。細胞が一杯になるまで成長した後、1:10の比率で希釈させて継代した。電気穿孔後の1、7、10日目にpKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFP、pKC20-EGFPを電気穿孔した細胞をそれぞれ蛍光顕微鏡により観察して、写真を撮り、電気穿孔後7、10、14日目にpKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPを電気穿孔した細胞をフローサイトメトリーにより検出し、結果は図10及び11に示される。
【0156】
図10は電気穿孔後10日目まで、pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPを電気穿孔したT細胞に高い蛍光輝度の細胞が大量に見えていることを示している。PiggyBacトランスポザーゼの発現カセットが欠失したpKC20-EGFPを電気穿孔したT細胞は、高い蛍光輝度の細胞が殆ど見えない。PiggyBacトランスポザーゼの発現カセットを付帯するベクターはT細胞においてEGFPをゲノムに統合したことを示している。一方、PiggyBacトランスポザーゼの発現カセットを含まないベクターは外来遺伝子EGFPを効果的に仲介して統合することができない。
【0157】
図11は電気穿孔後7~14日目のpKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPをそれぞれ電気穿孔したT細胞のフローサイトメトリー結果を示す。結果によれば、pKB20-EGFPを電気穿孔したT細胞は、7日目の細胞陽性率が74%弱に達し、電気穿孔後14日目(3代培養)に72%弱を維持している。pKB201-EGFP、pKB202-EGFPを電気穿孔したT細胞は、電気穿孔後7日目の陽性率が70%弱に達し、電気穿孔後14日目(3代培養)の陽性率が66%と62%以上をそれぞれ維持している。
【0158】
上記の結果によれば、pKB20-EGFP、pKB201-EGFP、pKB202-EGFPを初代T細胞に電気穿孔した後、非常に高い統合率と外来遺伝子の陽性発現率を有することを示している。
【0159】
<実施例6>ダブルプラスミドPBトランスポゾンシステムをJurkat細胞に電気穿孔した統合効率の検出
急激に成長する少ない継代数のJurkat細胞を1×10個用意し、それぞれA組とB組とし、細胞が1組あたりで5×10個とする。4μgのpK201-PB+3μgのpKC20-EGFPの混合液と3μgのpK201-PB+4μgのpKC20-EGFPの混合液をそれぞれ用意し、Lonza2b-Nucleofector装置により、A組とB組細胞の細胞核にそれぞれ電気穿孔して(装置取扱説明書を参照)、37℃、5%COインキュベータで培養した。細胞が一杯になるまで成長した後、1:10の比率で継代培養した。電気穿孔後の7日目、10日目、14日目で蛍光顕微鏡により写真を撮って観察した。電気穿孔後7日目、10日目、14日目(3代培養後)でフローサイトメータによりEGFP陽性細胞の比率変化を検出し、プラスミドをトランスフェクションしていないJurkat細胞をフローサイトメトリーの対照とした。
【0160】
結果は図12に示される。結果によれば、4μgのpK201-PB+3μgのpKC20-EGFPを電気穿孔したJurkat細胞は、電気穿孔後7日目に細胞陽性率が43%を上回り、電気穿孔後14日目(3代培養後)に細胞陽性率が13.31%に低下した。同様に、3μgのpK201-PB+4μgのpKC20-EGFPを電気穿孔したJurkat細胞は、電気穿孔後7日目に細胞陽性率が52%を上回り、電気穿孔後14日目(3代培養後)に細胞陽性率が10.57%に低下した。
【0161】
上記の結果によれば、PBトランスポザーゼと外来遺伝子をそれぞれ発現したダブルベクタートランスポゾンシステムはJurkat細胞における統合効率が前述したシングルベクターpKBシステムの統合効率より遥かに低い。
【0162】
<実施例7>ダブルプラスミドPBトランスポゾンシステムを初代T細胞に電気穿孔した統合効率の検出
単離されたばかりの末梢血単核球(PBMC)を5×10個用意し、4μgのpK201-PB+3μgのpKC20-EGFPの混合液を用意し、Lonza Nucleofector-2bエレクトロポレーターにより、細胞核に電気穿孔してから(装置取扱説明書を参照)、細胞をAIM-V培地に入れて37℃、5%COインキュベータで培養した。6時間後に30ng/mLの抗CD3抗体と3000IU/mLのIL-2(NOvoproteinより購入)を含む6ウェルプレートに移動して、37℃、5%COインキュベータで培養した。細胞が一杯になるまで成長した後、1:10の比率で希釈させて継代した。電気穿孔後の7日目と14日目にフローサイトメトリーにより細胞を検出した。
【0163】
結果は図13に示される。結果によれば、4μgのpK201-PB+3μgのpKC20-EGFPを電気穿孔した初代細胞は、電気穿孔後7日目に細胞陽性率が16.20%であり、電気穿孔後14日目(3代培養後)に細胞陽性率が15.34%に低下した。
【0164】
上記の結果によれば、PBトランスポザーゼと外来遺伝子をそれぞれ発現したダブルベクタートランスポゾンシステムは初代T細胞における統合効率が前述したシングルベクターpKBシステムの統合効率より明らかに低い。
【0165】
<実施例8>プラスミド使用量が低減したpKBベクターをJurkat細胞に電気穿孔した統合効率の検出
急激に成長する少ない継代数のJurkat細胞を5×10個用意し、3μgのpKB20-EGFPプラスミドを用意し、Lonza2b-Nucleofector装置により、細胞核に電気穿孔し(装置取扱説明書を参照)、37℃、5%COインキュベータで培養した。細胞が一杯になるまで成長した後、1:10の比率で継代培養した。電気穿孔後7日目、10日目、14日目(3代培養後)にフローサイトメータによりEGFP陽性細胞の比率変化を検出し、プラスミドをトランスフェクションしていないJurkat細胞をフローサイトメトリーの対照とした。
【0166】
結果は図14に示される。結果によれば、3μgのpKB20-EGFPプラスミドを電気穿孔したJurkat細胞は電気穿孔後7日目に細胞陽性率が66%を上回り、電気穿孔後14日目(3代培養後)に細胞陽性率が63%弱を維持しており、実施例2における6μgのpKB20-EGFPプラスミドをJurkat細胞に電気穿孔した場合の14日目の細胞陽性率に近い。
【0167】
上記の結果によれば、実施例2を基に、電気穿孔に利用されるpKB20-EGFPプラスミド使用量を半減した後、pKBベクターシステムの細胞における統合効率が殆ど変化しないため、本発明のpKBベクターシステムは、DNA量を減少した場合に同じ統合効率が実現でき、電気穿孔のDNA使用量を減少して、さらにDNAによるT細胞への傷害性の低減及び電気穿孔後の細胞における残留プラスミドDNAの低減に繋がる。
【0168】
<実施例9>細胞内pKBベクターの残留プラスミドのコピー数の検出
実施例2及び4の方法でJurkat細胞とK562に5μgのpKB20-EGFPをそれぞれ電気穿孔して、電気穿孔後10、14、20日目に細胞をそれぞれ収穫した。装置取扱説明書を参照しながら、実施例8の方法でJurkat細胞に3μgのpKB20-EGFPを電気穿孔して、電気穿孔後10、12、14日目に細胞をそれぞれ収穫した。実施例5の方法で新鮮なPBMCに5μgのpKB20-EGFPを電気穿孔して、電気穿孔後の10、12、14日目に細胞をそれぞれ収穫した。全ての操作は3回繰り返した。PBトランスポザーゼの発現カセットを含む上記収穫された全ての細胞について、異なる時点における残留プラスミド量をTaqmanプローブ蛍光定量PCR法で検出した。
【0169】
1)PBトランスポザーゼの発現カセットを含むpKB20-EGFPプラスミドを標準品とし、内部リファレンス遺伝子Actinを含むプラスミドを内部リファレンス標準品とし、10倍勾配で希釈された標準品をそれぞれ製造した。
【0170】
2)pKB20-EGFPを電気穿孔した指定日数の細胞の総DNAを抽出して、PBトランスポザーゼ遺伝子とActin遺伝子を検出するためのサンプルとした。
【0171】
3)PCR反応系を配置して、対象サンプルに対してPBトランスポザーゼ遺伝子と内部リファレンスActin遺伝子をそれぞれ増幅させた。PB遺伝子の勾配希釈標準品とActin遺伝子の勾配希釈標準品を増幅させて、PB遺伝子とActin遺伝子の標準曲線をそれぞれ作成した。PB遺伝子とActin遺伝子を増幅させるプライマー、プローブ配列、反応系はそれぞれ下記に示される。
【0172】
PB遺伝子増幅:
PB-F:5’ggacgagatctacgccttct(SEQ ID NO:29)
PB-R:5’ctcatcacgctcacgtacac(SEQ ID NO:30)
PB-プローブ:5’tgcgcacggcggtcatcacc(SEQ ID NO:31)
Actin遺伝子増幅:
Actin-F:5’gggacctgactgactacctc(SEQ ID NO:32)
Actin-R:5’aatgtcacgcacgatttccc(SEQ ID NO:33)
Actin-プローブ:5’caccgagcgcggctacagct(SEQ ID NO:34)
【0173】
【表1】
【0174】
4)リアルタイム蛍光定量PCRで対象サンプルと標準品に対して増幅反応を行い、反応系が表1に示されており、反応プロセスが(1)50℃、2min;(2)95℃、10min;(3)95℃、15s、60℃、1minであり、計40サイクル繰り返した。標準曲線を作成して、標準曲線によりプラスミド残留量を算出した。コピー数の計算式はPBコピー数/Actinコピー数×2である。
【0175】
結果は図15に示される。電気穿孔のプラスミド使用量が5μgである通常使用量の場合、細胞内の残留プラスミドのコピー数が時間の経過と共に急激に低下している。細胞を電気穿孔後14日目(3代後)まで培養した場合、Jurkat細胞1個あたりの残留プラスミドコピー数が10より小さく、K562細胞1個当たりと初代T細胞1個当たりの残留プラスミドコピー数が5より小さい。電気穿孔後20日目まで培養した場合、Jurkat細胞1個あたりとK562細胞1個あたりの残留プラスミドコピー数が1より小さい。電気穿孔プラスミド使用量を3μgに減少した場合、電気穿孔後Jurkat細胞内の残留プラスミドの含有量は、5μgのプラスミドを電気穿孔した場合と比較すれば、さらに明らかに低下し、10日目に細胞1個あたりのプラスミドコピー数が10より小さく、14日目にコピー数が1より小さい。
【0176】
上記の結果によれば、本発明のベクターはそのゲノム統合機能を十分に果たすと共に、宿主細胞における残留レベルが非常に低い。また、実施例8の結果を参照した結果、本発明のpKBシリーズベクターは電気穿孔後の高い統合効率を保証する前提で、プラスミドDNAの使用量を減少して、電気穿孔後のプラスミドDNAの細胞内における残留をさらに減少した。
【0177】
<実施例10>pKB2003-EGFPベクターを電気穿孔した後の細胞における統合
上記実施例2及び4に記載される方法で、pKB2003-EGFPプラスミドをJurkat細胞とK562細胞にそれぞれ電気穿孔して、電気穿孔後の7、10、14日目にフローサイトメトリーにより細胞陽性率を検出した。結果は図16に示される。pKB2003-EGFPを電気穿孔したJurkat細胞は7日目と10日目に陽性細胞比率がそれぞれ49%と48%以上に達し、細胞を3代培養した後の14日目に陽性率が48%弱の高レベルを維持している。pKB2003-EGFPを電気穿孔したK562細胞は7日目と10日目に陽性細胞比率が70%弱に達し、細胞を3代培養した後の14日目に陽性率が66%を上回る高レベルを維持している。
【0178】
上記の結果によれば、pKB2003ベクターは、細胞において高効率的に統合すると共に、外来遺伝子を発現することができる。
【0179】
<実施例11>調節エレメント配列により取り替えられたpKBシリーズベクターを電気穿孔した後の細胞における統合
実施例2、実施例4、実施例5に記載される方法で電気穿孔しているプラスミドの使用量をそれぞれ3μgに低下させ、Jurkat細胞、K562細胞、健康なヒト血液に由来するPBMCにpKB20I1-EGFP、pKB20A1-EGFP、pKB20A2-EGFP、pKB20U1-EGFP、pKB20U2-EGFP、pKB20U3-EGFP、pKB20U4-EGFP、pKB20U5-EGFP、pKB20U6-EGFP、pKB20U7-EGFP、pKB20U8-EGFP、pKB20E1-EGFP、pKB20E2-EGFP、pKB20E3-EGFP、pKB20E4-EGFP、pKB20P1-EGFP、pKB20P2-EGFP、pKB20P3-EGFP、pKB20P4-EGFP、pKB20P5-EGFP、pKB20P6-EGFPプラスミドをそれぞれ電気穿孔して、電気穿孔後14日目にフローサイトメトリーにより細胞陽性率を検出し、結果は表2に示される。
【0180】
【表2】
【0181】
表2の結果によれば、上記調節エレメント配列により取り替えられたpKBシリーズプラスミドベクターは、異なる細胞のゲノムに高効率的に統合することができ、pKB20-EGFPの上記各細胞における統合率と同じレベルである。
【0182】
<実施例12>pKB205-EGFPベクターを初代T細胞に電気穿孔した後の統合効率の検出
実施例5に記載される方法で電気穿孔しているプラスミドの使用量を3μgに低下させ、健康なヒト血液に由来するPBMCにpKB205-EGFPを電気穿孔して、電気穿孔後7日目と14日目にフローサイトメトリーにより細胞陽性率を検出した。
【0183】
結果は図17に示される。pKB205-EGFPを電気穿孔したT細胞は、7日目の細胞陽性率が42%を上回り、電気穿孔後の14日目(3代培養)に36%以上を維持している。上記によれば、pKB205-EGFPベクターを初代T細胞に電気穿孔した後、比較的に高い統合率と外来遺伝子の陽性発現率を有することを示している。
【0184】
<実施例13>pKBベクターのJurkat細胞とK562細胞における統合部位の分析
Jurkat細胞とK562細胞をそれぞれ2組用意し、実施例2及び4に記載される方法で2種の細胞にpKB20-EGFPプラスミドをそれぞれ電気穿孔し、電気穿孔後に14日培養し、細胞を収集し、ゲノムDNAを抽出して、晶能生物技術(上海)有限公司に全ゲノムシークエンシングを依頼し、EGFPのゲノムにおける挿入部位の分布状況を分析した。結果は図18~21と表3に示される。図18、19、20、21は、K562サンプル1、K562サンプル2、Jurkatサンプル1、Jurkatサンプル2のそれぞれにおけるpKB20ベクターにより仲介されるゲノム統合部位の模式図である。
【0185】
【表3】
【0186】
図18~21と表3の結果によれば、本発明のpKB20ベクターにより仲介される外来遺伝子の細胞のゲノムへの統合は、主に遺伝子間領域とイントロン領域に発生し、エキソン領域と遺伝子発現の調節に関する領域(例えば3’UTR)に統合部位が少ない。これにより、pKB20ベクターにより仲介される外来遺伝子の細胞のゲノムにおける統合は細胞自身の遺伝子発現への影響が非常に小さい。
【0187】
<実施例14>pKBベクターのJurkat細胞とK562細胞における統合のmRNA発現プロフィルの分析
上記実施例2及び4に記載される方法でJurkat細胞とK562細胞にpKB20-EGFPプラスミドをそれぞれ電気穿孔し、プラスミド使用量が4μgである。電気穿孔後14日目に細胞を収穫して、mRNAシークエンシングと発現プロフィル分析を実施すると共に、プラスミドを電気穿孔していないJurkat細胞とK562細胞のmRNA発現プロフィルと比較した。K562とJurkatはそれぞれサンプルを2組提供して分析した。
【0188】
シークエンシングと分析の結果によれば、それぞれのプラスミドを電気穿孔していない対照細胞と比較すれば、pKB20-EGFPを電気穿孔したpKB20統合部位の隣接遺伝子のmRNA発現変化が小さく、関連遺伝子の差次的発現状況は表4~7に示される。これにより、本発明のpKBベクターのゲノムにおける統合は細胞のゲノムの安定性と遺伝子発現プロフィルへの影響が比較的に小さい。
【0189】
【表4】
【0190】
【表5】
【0191】
【表6】
【0192】
【表7】
【0193】
<実施例15>pKB20-HER2CARベクター及びHER2CAR-T細胞の製造
pKB20のポリクローナル部位のXbaIとEcoRI部位との間にNFATモチーフを付帯するEF1Aプロモーター配列(SEQ ID NO:11)を挿入し、EcoRIとSalI部位との間にHER2CARのコード配列(SEQ ID NO:43)を挿入し、pKB20-HER2CARと名付ける。NFATモチーフを付帯するEF1Aプロモーター配列とHER2CARのコード配列は上海杰瑞生物科技有限公司に合成を依頼する。
【0194】
下記工程で末梢血から単離されたPBMCにpKB20-HER2CARベクターを電気穿孔し、HER2をターゲティングするCAR-T細胞を製造した。使用されるPBMCはAllCells社より購入し、健康な成人の末梢血に由来する。
【0195】
1)懸濁細胞を50ml遠心分離チューブに収集して、1200rmpで3min遠心分離する。
【0196】
2)上澄みを捨て、生理食塩水を入れて再懸濁させ、1200rmpで3min遠心分離し、生理食塩水を捨てる。この工程を繰り返して細胞を計数する。
【0197】
3)1.5ml遠心分離チューブを2つ取り、それぞれ5×10個細胞を入れて、1200rmpで3min遠心分離する。
【0198】
4)上澄みを捨て、電気穿孔試薬キット(Lonza社より購入)を取り、18μLのsolutionI試薬と82μLのsolution II試薬を入れ、第1チューブに5μgのpKB20ブランクプラスミドを入れて対照とし、第2チューブに5μgのpKB20-HER2CARプラスミドを入れる。
【0199】
5)遠心分離チューブにプラスミドが混合された細胞懸濁液を電気穿孔カップに移動し、エレクトロポレーターに入れ、プログラムT020を選択して、エレクトロポレーションを行う。
【0200】
6)試薬キットのマイクロピペットで電気穿孔された細胞懸濁液を、AIM-V培養液を入れた12ウェルプレート(2%FBSを含むAIM-V培養液)に移動し、均一に混合して、37℃、5%COインキュベータで培養する。さらに、5μg/mLのHER2細胞外領域抗原(
【0201】
【表8】
【0202】
10004-H08H)と5μg/mLのCD28抗体(ThermoFisher 14-0281-82)を含む混合液で6ウェルプレートの2つのウエルをコーティングし、各ウェルに1mLずつ入れ、6ウェルプレートを37℃でインキュベートする。
【0203】
7)6時間後、電気穿孔されて37℃で、5%COインキュベータで培養した細胞を、HER2細胞外領域抗原とCD28抗体でコーティングした6ウェルプレートに移動して、3mlとなるように最終濃度100IU/mLIL-2の追加培養液を入れ、4~5日培養した後、T細胞の成長状況を観察する。活性化した細胞を、2%FBSを含むAIM-V培養液に移動し、必要量となるように引き続き培養して、HER2CAR-T細胞を獲得する。pKB20ブランクに移動した細胞は対照とするMock-T細胞である。
【0204】
<実施例16>HER2CAR-T細胞におけるCAR発現陽性細胞の検出
1)実施例15で製造されたHER2CAR-T細胞を1×10個収集して、1000rpmで3min遠心分離する。
【0205】
2)上澄みを捨て、生理食塩水をそれぞれ入れ、細胞を再懸濁させて、1000rpmで3min遠心分離する。
【0206】
3)上澄みを捨て、100μL生理食塩水をそれぞれ入れ、細胞を再懸濁させ、各チューブに1μLのビオチン標識を実施したHER2抗原(
【0207】
【表9】
【0208】
より購入、製品番号:HER-HM402)をそれぞれ入れて、4℃で30分間インキュベートする。
【0209】
4)適量の生理食塩水をそれぞれ入れ、1000rpmで3min遠心分離し、2回洗浄して、上澄みを捨てる。
【0210】
5)100μL生理食塩水をそれぞれ入れ、細胞を再懸濁させ、1μLのPE標識を実施したストレプトアビジン(ThermoFisherより購入、製品番号:S20982)を入れ、均一に混合して、4℃で30minインキュベートする。
【0211】
6)適量の生理食塩水をそれぞれ入れ、1000rpmで3min遠心分離し、2回洗浄して、上澄みを捨てる。
【0212】
7)400μL生理食塩水で再懸濁させて、フローサイトメータにより検出する。
結果は図22に示される。PE陽性を示した細胞が93.41%に達したため、pKB20-HER2CARプラスミドをPBMCに電気穿孔することで製造されたHER2CAR-T細胞に、CAR発現陽性の細胞の比率が90%以上である。
【0213】
<実施例17>HER2-CAR-Tの細胞殺傷機能テスト
ACEA社のリアルタイム非標識細胞機能アナライザー(RTCA)で実施例15により取得したHER2CAR-T細胞のインビトロ殺傷活性を検出した。具体的な工程は下記の通りである。
【0214】
(1)ゼロ設定:各ウェルに50μLのDMEM培養液を入れ、装置に入れ、工程1を選択して、ゼロ設定する。
【0215】
(2)標的細胞プレーティング:ヒト卵巣がん細胞SKOV-3(ATCCより購入、HER2発現陽性)を、1ウェルあたり10個細胞/50μLで検出電極を含むプレートにプレーティングし、細胞が安定的になるまで数分間静置してから、装置に入れ、工程2を開始して、細胞を培養する。
【0216】
(3)エフェクター細胞の添加:標的細胞を18h培養した後、対照細胞Mock-Tとエフェクター細胞HER2CAR-Tを1ウエルあたり50μLでそれぞれ添加する。HER2CAR-Tは、1:1、2:1、4:1といった3つのET比をそれぞれ設定し、Mock-Tは4:1のET比を設定する。ET比の設定は生細胞の総数で算出する。共培養を開始し、60h超えた後、細胞の増殖曲線を観察する。
【0217】
結果は図23に示される。対照Mock-T細胞組の殺傷曲線とSKOV-3腫瘍細胞曲線は傾向が似ているため、Mock-T細胞のSKOV-3細胞に対する殺傷効果が小さい。HER2CAR-Tは1:1、2:1、4:1といった3つのET比でSKOV-3細胞に対する殺傷効果が明らかであり、さらに殺傷効果がET比の向上に伴って明らかに向上する。
【0218】
<実施例18>pKB20-NY-ESO-1-TCRベクター及びNY-ESO-1 TCR-T細胞の製造
pKB20-NY-ESO-1-TCRベクターの構築:
コードを合成してNY-ESO-1抗原ペプチドSLLMWITQC(HLA-*02:01)のTCRのα鎖とβ鎖の遺伝子DNA配列を認識し、両者はP2Aペプチド断片をコードするDNA配列により連結し、連結された配列がSEQ ID NO:44に示される。さらに、SEQ ID NO:44の3’末端に、P2Aペプチド断片をコードするDNAによりEGFPをコードするDNA配列を連結して、EGFPリーディングフレームを共有連結するNY-ESO-1-TCR遺伝子を取得し、得られた配列がSEQ ID NO:45に示される。pKB20のポリクローナル部位のXbaIとEcoRI部位との間にNFATモチーフを付帯するEF1Aプロモーター配列(SEQ ID NO:11)を挿入し、EcoRIとSalI部位との間にEGFPリーディングフレームを共有連結するNY-ESO-1-TCR遺伝子のコード配列(SEQ ID NO:45)を挿入し、pKB20-NY-ESO-1-TCRと名付ける。NFATモチーフを付帯するEF1Aプロモーター配列とEGFPリーディングフレームを共有連結するNY-ESO-1-TCR遺伝子のコード配列は上海杰瑞生物科技有限公司に合成を依頼する。
【0219】
NY-ESO-1 TCR-T細胞の製造:
5μg/mlの抗CD3抗体(ThermoFisher 14-0037-82)と5μg/mlの抗CD28抗体(ThermoFisher 14-0281-82)を含むコーティング液により6ウェルプレートを室温で2~4時間コーティングし、コーティング液を吸い取ってから、生理食塩水でウェルプレートを1~3回洗浄し、2%FBSを含むAIM-V培地を入れて使用に備える。ヒト末梢血PBMC(HLA-*02:01、ALLCELLSより購入)を37℃水浴で蘇生させ、PBMCを2~4h接着培養した。そのうち、接着していない懸濁細胞はナイーブT細胞である。懸濁細胞を15ml遠心分離チューブに収集して、1200rmpで3min遠心分離し、上澄みを捨て、生理食塩水を入れて、1200rmpで3min遠心分離し、生理食塩水を捨て、この工程を繰り返す。さらに、洗浄されたナイーブT細胞を、用意された培地を入れた抗体コーティングウェルに移動し、37℃、5%COで3~4日培養してから、その後の実験に利用される。
【0220】
NY-ESO-1 TCR-Tを発現する細胞を電気穿孔して製造する。工程は下記の通りである。
【0221】
1)AIM-V培地を1ウェルあたり2mLで12ウェルプレートの2ウェルに事前に入れてから、インキュベータに入れて、37℃、5%COで1時間予熱する。
【0222】
2)下記表8の1ウェルあたり単回使用量の電気穿孔液の配合比で2ウェル調製する。
【0223】
【表10】
【0224】
3)得られた活性化T細胞を取り、2つのEPチューブに入れ、各EPチューブに細胞をそれぞれ5×10個入れて、1200rpmで5min遠心分離し、上澄みを捨ててから、500μL生理食塩水で細胞を再懸濁させ、遠心分離工程を繰り返し、細胞を洗浄して沈殿させた。
【0225】
4)2)で調製された2ウェルの電気穿孔液系にプラスミドpKB20-NY-ESO-1-TCRとpKB20-EGFPベクターをそれぞれ4μgずつ入れた後、室温で30min以内静置した。
【0226】
5)4)で調製された、プラスミドを含む電気穿孔液で再懸濁させた2チューブの活性化T細胞から、細胞再懸濁液を1チューブあたり100μLでゆっくりと吸い取り、LONZA 100μL電気穿孔カップに移動し、電気穿孔カップをLONZA Nucleofector(商標) 2b電気穿孔槽に入れて、電気穿孔プログラムを立ち上げた。電気穿孔プログラムはT-020を選択する。
【0227】
6)電気穿孔を完了してから、電気穿孔カップをゆっくりと取り出し、細胞懸濁液を吸い取り、EPチューブに移動した。予熱されたAIM-V培地を1チューブあたり200μL入れてから、1)における12ウェルプレートの予熱されたAIM-V培地を含むウェルに移動し、37℃、5%COで培養した。1h培養してから、最終濃度が5μMとなるように化合物G150(MedChemExpressより購入)を入れた。その後、13日間培養し続け、その間に細胞増殖状況に応じて継代し、13日間後、各電気穿孔サンプルの細胞数と細胞生存率について検出し、NY-ESO-1 TCR-T細胞とMock-T細胞をそれぞれ製造した。
【0228】
<実施例19>NY-ESO-1 TCR-T細胞NY-ESO-1 TCR発現陽性細胞の検出
1)実施例18で製造されたNY-ESO-1 TCR-T細胞を1×10個収集して、1000rpmで3min遠心分離する。
【0229】
2)上澄みを捨て、生理食塩水をそれぞれ入れ、細胞を再懸濁させて、1000rpmで3min遠心分離する。
【0230】
3)フローサイトメータにより検出する。
結果は図24に示される。EGFP発現陽性の細胞比率が37.57%である。NY-ESO-1 TCRのα鎖とβ鎖の遺伝子DNA配列及びEGFPのコードDNA配列の三者の間はP2Aペプチド断片のコード配列により連結され、EGFP発現陽性の細胞はNY-ESO-1 TCR遺伝子の発現を間接的に反映できる。NY-ESO-1 TCR発現陽性の細胞比率が37%程度であると推測する。
【0231】
<実施例20>NY-ESO-1 TCR-Tの細胞殺傷機能テスト
ACEA社のリアルタイム非標識細胞機能アナライザー(RTCA)で実施例18により取得したNY-ESO-1 TCR-T細胞のインビトロ殺傷活性を検出した。具体的な工程は下記の通りである。
【0232】
(1)ゼロ設定:各ウエルに50μLのDMEM培養液を入れ、装置に入れ、工程1を選択して、ゼロ設定する。
【0233】
(2)標的細胞プレーティング:ヒト悪性黒色腫細胞系A375(ATCCより購入、NY-ESO-1発現陽性)を、1ウェルあたり10個細胞/50μLで検出電極を含むプレートにプレーティングし、細胞が安定的になるまで数分間静置してから、装置に入れ、工程2を開始して、細胞を培養する。
【0234】
(3)エフェクター細胞の添加:標的細胞を18h培養した後、細胞指数を観察した。細胞指数が1である場合、対照細胞Mock-Tとエフェクター細胞NY-ESO-1 TCR-Tを1ウェルあたり50μLでそれぞれ添加する。NY-ESO-1 TCR-Tは、0.25:1、0.5:1といった2つのET比を設定し、Mock-Tは0.5:1のET比を設定する。ET比の設定はNY-ESO-1 TCR発現陽性の細胞数で算出する。工程3共培養を開始し、70h超えた後、細胞の増殖曲線を観察する。
【0235】
結果は図25に示される。対照Mock-T細胞組の殺傷曲線とA375腫瘍細胞曲線はほぼ重なるため、Mock-T細胞のA375細胞に対する殺傷効果が殆どない。NY-ESO-1 TCR-Tは0.25:1と0.5:1の2つのET比でA375細胞に対する殺傷効果が明らかであり、さらに殺傷効果がET比の向上に伴って明らかに向上する。
【0236】
<比較例1>EGFP発現カセットを含むpNBベクターのK562細胞における統合
中国特許CN105154473B明細書第15ページの実施例1と明細書第16ページの実施例2に記載される方法で、pNBベクターとpNB328-EGFPをそれぞれ構築した。本願の実施例4に記載される方法で、pNB328-EGFPを使用して電気穿孔法によりEGFPを安定的に統合発現するK562を製造し、電気穿孔後14日目(3代培養)にフローサイトメトリーによりEGFP発現陽性の細胞を検出した。
【0237】
結果は図26に示される。電気穿孔後14日目にEGFP発現陽性のK562細胞比率が45.54%である。
【0238】
<比較例2>EGFP発現カセットを含むpNBベクターの初代T細胞における統合
本願の実施例5に記載される方法で、pNB328-EGFPを使用して電気穿孔法によりEGFPを安定的に統合発現する初代T細胞を製造し、電気穿孔後14日目(細胞を3代培養)にフローサイトメトリーによりEGFP発現陽性の細胞を検出した。電気穿孔に利用されるPBMCと実施例5に利用されるPBMCは同じロットのPBMCである。電気穿孔後14日目(3代培養)にフローサイトメトリーによりEGFP発現陽性の細胞を検出した。
【0239】
結果は図27に示される。電気穿孔後14日目にEGFP発現陽性のT細胞比率が34.60%である。
【0240】
本発明の具体的な実施形態について詳しく記述したにも関わらず、当業者は、開示された全ての教示に基づき、その詳細内容について様々な修正と置換を実施してもよく、これらの変更が本発明の保護範囲にあると理解すべきである。本発明の全範囲は、添付される請求項及びその任意の同等物より提示された。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【配列表】
2023548957000001.app
【国際調査報告】