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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】NK細胞の大量増殖培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20231114BHJP
【FI】
C12N5/0783
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551941
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 KR2021005785
(87)【国際公開番号】W WO2022102887
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0150118
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523173210
【氏名又は名称】ハンビオ シーオー.,エルティーディー.
(71)【出願人】
【識別番号】522486634
【氏名又は名称】カン、ダ ウィット
【氏名又は名称原語表記】KANG,Da Witt
【住所又は居所原語表記】#101-910,25,Irwon-ro 14-gil,Gangnam-gu,Seoul 06356,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン ダウィット
(72)【発明者】
【氏名】カン ヒョンチョル
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BD39
4B065BD50
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、NK細胞の培養方法に関し、より詳細には、1)血液から末梢血単核球(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)の免疫細胞のペレット(pellet)を分離するステップと、2)前記PBMCを抗CD16抗体によりコーティングされた培養器を用いてRPMI培養培地において培養するステップと、3)前記PBMCを継代培養するステップと、4)前記PBMCにIL-2、IL-15及びIL-2+IL-15からなるサイトカイン群から選ばれたサイトカインを処理することにより、NK細胞を活性化させるステップと、を含むNK細胞の培養方法に関する。本発明は、様々なサイトカインのうち、IL-2、IL-15を用いてNK細胞に処理したとき、効果的に細胞を活性化できる最適な組み合わせとしてのIL-2+IL-15を処理したときにNK細胞を大量で培養可能であり、これを用いる場合、がん細胞の細胞死滅または殺傷能が促されることができて、がんの予防または治療に効く免疫細胞治療剤として用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)フィコール(ficoll)と遠心分離を用いて、血液から免疫細胞を含有している末梢血単核球(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)のペレット(pellet)を分離するステップと、
2)前記分離された末梢血単核球(PBMC)を、抗CD16抗体によりコーティングされた培養器を用いて、RPMI培養培地、血漿、IL-2、IL-15、抗CD56、抗NKp46及び抗NKp30を含有している培地において培養するステップと、
3)前記培養された末梢血単核球(PBMC)をRPMI培地、アルブミン、IL-2、IL-15、抗CD56、抗NKp46、抗NKp30において継代培養するステップと、
4)前記継代培養された末梢血単核球(PBMC)をRPMI及びアルブミン、抗NKp30、抗NKp46、抗CD56抗体の添加を基本とした培地組成物に添加し、IL-2、IL-15及びIL-2+IL-15からなるサイトカイン群から選ばれたサイトカインを処理することにより、NK細胞を活性化させるステップと、
を含む、NK細胞の培養方法。
【請求項2】
前記4)ステップのサイトカインとしては、IL-2+IL-15を処理することを特徴とする、請求項1に記載のNK細胞の培養方法。
【請求項3】
前記サイトカインは、IL-2 20ng/mlとIL-15 50ng/mlを処理することを特徴とする、請求項2に記載のNK細胞の培養方法。
【請求項4】
前記1)ステップの免疫細胞の分離に際して、免疫細胞のペレット(pellet)にRBC(赤血球)分解用緩衝液(lysis buffer)を処理することにより、赤血球を除去することを特徴とする、請求項1に記載のNK細胞の培養方法。
【請求項5】
前記2)ステップの培養は、細胞数が3×10以下である場合に抗CD16によりコーティングされたT25フラスコにおいて、細胞数が3×10以上である場合に抗CD16によりコーティングされたT75フラスコにおいて、RPMI 8ml、血漿2ml、IL-2 20ng/ml、IL-15 50ng/ml、抗CD56 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗NKp30 5ng/mlを入れ、PBMCペレットをRPMI 10mlに浮遊させてさらに入れた後、37℃、5% CO培養器において3~4日間培養することを特徴とする、請求項1に記載のNK細胞の培養方法。
【請求項6】
前記3)ステップの継代培養は、2)ステップの細胞培養懸濁液20ml、RPMI 72ml、アルブミン8ml、IL-2 20ng/ml、IL-15 50ng/ml、抗NKp30 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗CD56 5ng/mlを入れ、37℃、5% CO培養器において3~5日間1次継代培養を行い、1次継代培養懸濁液50ml、RPMI 180ml、アルブミン20ml、IL-2 20ng/ml、IL-15 50ng/mlを入れ、37℃、5% CO培養器において5~7日間2次継代培養を行うことを特徴とする、請求項1に記載のNK細胞の培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法に適用されるナチュラルキラー細胞(Natural Killer cell;NK細胞)の大量増殖培養方法に関し、より詳細には、ヒトの抹消血液に由来したリンパ球を培養して悪性腫瘍の治療効果が抜群であるNK細胞を効率よく増幅及び活性化させるとともに、NK細胞が占める割合を著しく増加させることのできるNK細胞の大量増殖培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫療法は、ナチュラルキラー細胞(Natural Killer cell;NK細胞)、樹状細胞(DC)、B細胞、T細胞などがんの治療に最も重要な免疫細胞を患者の血液から抽出した後、色々な種類の刺激剤を用いてがんに強く働く免疫細胞として育てた後、再び患者に注入する方法であって、患者自分の血液を使用するので、従来の化学療法などに比べて副作用も少なく、投与法もまた簡便であることから、最近、それに関する研究が盛んに行われている。
【0003】
免疫療法において活性化させる免疫細胞の中でも、特に、NK細胞は、リンパ球の一種である特徴的な形態である大顆粒状リンパ球(LGL;Large granular lymphocytes)であって、感染されたウィルス、腫瘍細胞を殺す能力が抜群であり、ほとんどの正常細胞は殺さないという特性を有しているが、その抗腫瘍作用は、壊死(ネクローシス)やプログラム細胞死(アポトーシス)、またはこれらの2種類の作用機序が同時に生じて行われる。NK細胞は、IL-2、IL-12、インターフェロン(Interferon)などのサイトカイン(cytokine)に反応し、これにより、力価(cytotoxicity)、分泌性(secretory)、増殖性(proliferative)の機能が上昇する。NK細胞の表現型(phenotype)は、ヒトにおいてCD16(FcγRIII)、CD56であり、CD16とCD56は、細胞の表面にT細胞受容体複合体(TRC:T-cell receptor complex)がないため、NK細胞に対するマーカー(marker)として活用される。
【0004】
このようなNK細胞は、初期の生体防御機構と人体の腫瘍免疫において重要な役割を果たすことが知られている。
【0005】
すなわち、NK細胞は、主要組織適合遺伝子複合体(Major Histocompatibility Complex:MHC)の発現に伴う免疫の獲得過程なしにも特定の自己細胞、同種細胞、さらには異種がん細胞もまた殺傷することができ、特に、クラス1MHC(Class1 MHC)を少なく発現させるか、あるいは、全く発現させない標的細胞をさらに上手く殺すこともできる。したがって、NK細胞は、MHCが発現しないほとんどのがん細胞を効果的に殺すことができ、その他にも、いくつかのウィルスに感染された細胞と腸チフス菌(salmonella typhi)などのような細菌を殺すことができる。
【0006】
このようなNK細胞は、先天免疫(自然免疫、innateimmunity)を担う重要な細胞であって、T細胞とは異なり、肝(liver)、骨髄(bone marrow)において成熟される。特に、ウィルス(virus)に感染された細胞や腫瘍細胞(tumor cells)など非正常細胞を自ら識別して死滅させる機能を有する。さる10余年の間に患者の免疫システムを用いた腫瘍免疫治療が絶えず発展されてきており、これを用いた「細胞治療剤(cell therapy product)」もまた商業化されている。細胞治療剤は、自己(autologous)、同種(allogeneic)、もしくは異種(xenogeneic)の細胞を体外(in vitro)において増殖させ、かつ選別する方法を用いて、細胞の生物学的特性を変化させる一連の行為を通じて治療、診断、予防の目的で使用する医薬品であると定義される(韓国の食品医薬安全庁告示第2003-26号第2条)。
【0007】
がんのような難治性疾患の治療のための細胞治療剤であって、免疫拒否反応を解消することができ、患者に合わせてカスタマイズされた細胞治療を提供することのできる、NK細胞を大量で増殖させる方法及び活性が強化されたNK細胞を培養する方法が求められる。
【0008】
しかしながら、このように、がん細胞の殺傷に卓越した作用をするNK細胞は、正常人の場合であっても、抹消血リンパ球の5~15%のみを占めており、特に、がん患者の場合には、その割合が1%未満に低下するため、免疫療法を通じた別途の増幅過程なしには、がん細胞を効果的に攻撃するのに限界がある。
【0009】
NK細胞の分化と増殖、生存は、機能的な側面からみて、サイトカインに多大な影響を受け、従来の色々な研究によれば、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18などのサイトカインが細胞の毒性及び活性化を増加させると言われている。現在、免疫細胞、特に、NK細胞を活性化させ、かつ増殖させるに当たって、IL-2などのサイトカインとCD3などの抗体が用いられる。現行の技術は、免疫細胞の増殖において非常に重要な役割を果たすのがCD3抗体であるが、問題は、この抗体を用いて免疫細胞を活性化させることが非常に煩雑であるということである。
【0010】
特に、最初からCD3抗体の強い刺激が加えられると、未成熟前駆細胞はT細胞として成熟されることになるため、一般的に行われている現行の方法としては、最初にCD3抗体を僅かに刺激する方法を用いるが、個人差など周辺環境の多くの要件に左右されて活性化済みの大量で増殖したNK細胞を得る上で難点がある。
【0011】
したがって、現行の方法において、必ずフラスコにCD3抗体を固定した後、一定の時間の間に反応させることを余儀なくされるという煩雑さを除去しながらも、NK細胞を安定的に増幅させて大量で増殖させることのできる新規な培養培地組成物及び培養方法に関する開発や取り組みへのニーズが取り上げられているのが現状である。
【0012】
このため、本発明者らは、サイトカインを用いたNK細胞の大量増殖培養方法について悩んでいた中、ヒトの抹消血液に由来した免疫細胞であるリンパ球を分離、培養し、抗CD3抗体ではなく、抗CD16抗体によりコーティングされた培養器において様々なサイトカイン、特に、IL-2とIL-15を一緒に処理したとき、NK細胞が大量増殖し、かつ、活性化されるという知見を得ることにより、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、サイトカインを用いたNK細胞の大量増殖培養方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明は、1)フィコール(ficoll)と遠心分離を用いて、血液から免疫細胞を含有している末梢血単核球(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)のペレット(pellet)を分離するステップと、2)前記分離されたPBMCを、抗CD16抗体によりコーティングされた培養器を用いて、RPMI培養培地、血漿、IL-2、IL-15、抗CD56、抗NKp46及び抗NKp30を含有している培地において培養するステップと、3)前記培養されたPBMCをRPMI培地、アルブミン、IL-2、IL-15、抗CD56、抗NKp46、抗NKp30において継代培養するステップと、4)前記継代培養されたPBMCをRPMI及びアルブミン、抗NKp30、抗NKp46、抗CD56抗体の添加を基本とした培地組成物に添加し、IL-2、IL-15及びIL-2+IL-15からなるサイトカイン群から選ばれたサイトカインを処理することにより、NK細胞を活性化させるステップと、を含む、NK細胞の培養方法を提供する。
【0015】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0016】
NK細胞は、リンパ球の一種である大顆粒状リンパ球(Large granular lymphocytes:LGL)であって、感染されたウィルス及び腫瘍細胞を殺す能力が抜群であり、ほとんどの正常細胞は殺さないという特性を有する。したがって、NK細胞は、活性細胞毒性Tリンパ球が大量で生成される前に、ウィルス感染もしくは腫瘍形成の初期段階において重要な役割を果たす。例えば、NK細胞が標的細胞と接触する場合、いくつかの分子は、標的細胞の膜に穴を形成して細胞を溶解させ、他の分子は、標的細胞に入っていって核DNAの分節を増加させて、壊死(necrosis)、細胞死滅(Apotosis)またはプログラム細胞死(PCD:Programmed Cell Death)を引き起こす。
【0017】
そのため、NK細胞は、特定のウィルスに感染された細胞とがん細胞を先刺激なしに溶解させることができる。TCRの発現を通じて抗原-特異的に認識する細胞毒性Tリンパ球とは異なり、NK細胞は、抗原-特異的収容体が欠如している。
【0018】
NK細胞は、正常細胞のMHC類型Iと結合するキラー細胞免疫グロブリン様受容体(killer cell immunoglobulin-like receptor:KIR)を発現させる。キラー細胞免疫グロブリン様受容体は、MHC類型Iと結合すれば、特定の転写因子の抑制を誘導する細胞内信号が生成される。この結果、NK細胞の活性化、標的細胞の分解及び破壊が抑制される。ウィルス感染細胞またはがん細胞は、それらの表面にMHC類型I分子が大幅に減少されている。したがって、このような細胞がNK細胞に出会うと、効果的にキラー細胞免疫グロブリン様受容体と結合することができないため、NK細胞-媒介の細胞の毒性に露出されて溶解される。
【0019】
前記NK細胞は、例えば、哺乳動物、ヒト、猿、豚、馬、牛、羊、犬、猫、マウスまたは兎などに由来したものであってもよい。前記NK細胞は、正常人またはがん患者から得たものであってもよい。前記NK細胞は、血液、抹消血単核球(Peripheral blood mononuclear cell:PBMC)から分離されたものであってもよい。血液を分離する方法、これからPBMCを分離する方法、これからNK細胞を分離する方法は、公知の方法により行われるものであってもよい。
【0020】
本発明のNK細胞の培養方法において、前記4)ステップのサイトカインとしては、IL-2+IL-15を処理することが好ましく、このとき、IL-2 20ng/mlとIL-15 50ng/mlを処理することがさらに好ましい。
【0021】
また、本発明のNK細胞の培養方法において、前記1)ステップの免疫細胞の分離に際して、免疫細胞のペレット(pellet)にRBC(赤血球)分解用緩衝液(lysis buffer)を処理することにより、赤血球を除去することが好ましく、前記2)ステップの培養は、細胞数が3×10以下である場合に抗CD16抗体によりコーティングされたT25フラスコにおいて、細胞数が3×10以上である場合に抗CD16抗体によりコーティングされたT75フラスコにおいて、RPMI 8ml、血漿2ml、IL-2 20ng/ml、IL-15 50ng/ml、抗CD56 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗NKp30 5ng/mlを入れ、PBMCペレットをRPMI 10mlに浮遊させてさらに入れた後、37℃、5% CO培養器において3~4日間培養することが好ましい。
【0022】
また、本発明のNK細胞の培養方法において、前記3)ステップの継代培養は、2)ステップの細胞培養懸濁液20ml、RPMI 72ml、アルブミン8ml、IL-2 20ng/ml、IL-15 50ng/ml、抗NKp30 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗CD56 5ng/mlを入れ、37℃、5% CO培養器において3~5日間1次継代培養を行い、1次継代培養懸濁液50ml、RPMI 180ml、アルブミン20ml、IL-2 20ng/ml、IL-15 50ng/ml、抗NKp30 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗CD56 5ng/mlを入れ、37℃、5% CO培養器において5~7日間2次継代培養を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように、本発明は、様々なサイトカインのうち、IL-2、IL-15を用いてNK細胞に処理したとき、効果的に細胞を活性化できる最適な組み合わせとしてのIL-2+IL-15を処理したときに、NK細胞を大量培養することが可能であり、特に、IL-2 20ng/mlとIL-15 50ng/mlを処理したときに最も効果的である。これを用いる場合、がん細胞の細胞死滅または殺傷能が促されることができて、がんの予防または治療に効く免疫細胞治療剤として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1に従い分離された免疫細胞PBMCの3種類の試料別のCD3、CD56抗体に応じた分布度(NK細胞、NKT細胞、T細胞の分布)に沿ったフローサイトメトリーの結果を示すものである。図1のグラフのX軸は、CD3(Tリンパ球標識子)を標識するものであり、Y軸は、CD56(NKリンパ球標識子)を標識するものである。
図2】NK細胞へのIL-2及びIL-15サイトカインの処理濃度に応じたIFN-γの分泌量を測定したグラフである。
図3】前記図2によるIL-2及びIL-15サイトカインの最適な濃度を設定し、前記設定した濃度を処理した後のIFN-γの分泌量に応じた活性度を測定したグラフである。
図4】条件別の抗体及びIL-2及びIL-15サイトカイン処理に伴う免疫細胞分布を測定したグラフである。
図5】条件別の抗体及びIL-2及びIL-15サイトカイン処理に伴う免疫細胞の総細胞数と細胞の生存率を示すグラフである。
図6】設定された条件でNK細胞を14日間培養した後に測定した細胞数を示すグラフである。
図7】設定された条件でのNK細胞の大量培養の組成に応じた蛍光活性化細胞ソーティング(FACS:fluorescence-activated cell sorting)解析試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明をより詳しく説明するためのものであって、本発明の要旨により本発明の範囲がこれらの実施例により何ら制限されないということは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0026】
<実施例1>血液からの免疫細胞の分離
【0027】
血液から免疫細胞を分離するために、まず、フィコール(ficoll)(GEヘルスケア社製)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS:Phosphate-buffered saline)(WELGENE社製)、ろ過チューブ(filter tube)(Greiner bio-one)(2本)、50mlチューブ(VWR社製)(4本)、EDTAチューブ(BDバイオサイエンス社製)、血球計算器(hematocytometer)(MARIENFELD(マリエンフェルド)社製)を準備した。
【0028】
滅菌されたエチレンジアミン四酢酸(EDTA:ethylenediaminetetraacetic acid)チューブに採取された50~100mlの血液を製造室に運び、前記血液を50mlチューブに分けて入れた。ろ過チューブ2本にフィコール(ficoll)15mlずつを入れ、2000rpmにて1分間遠心分離して準備された前記フィコールが含有されているろ過チューブに前記血液を分けて入れた。これを2500rpmにて25分間遠心分離した。ここで、末梢血単核球(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)層のみを分離して新たな50mlチューブに集め、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて体積を50mlに合わせた後、2000rpmにて10分間遠心分離した。もし、ペレット(pellet)にRBC(赤血球)が多い場合、RBC分解用緩衝液(lysis buffer)を用いた。
【0029】
遠心分離後に前記上澄み液を除去した後、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI: Roswell Park Memorial Institute)培養培地(Hyclone(登録商標))10mlにてペレットを解離させた後、懸濁液を適量採取して細胞数の計数に用い、残りは、RPMI培養培地にて体積を50mlに合わせた後、2000rpmにて10分間遠心分離した。
【0030】
このとき、RBC分解用緩衝液の使用は、次の通りである。
【0031】
1×10~2×10の細胞当たりにRBC分解用緩衝液1mlを入れた。1分間タッピング(tapping)した。ここにRPMI培養培地15~20mlを入れた後、1500rpm(250~500×G)にて7分間遠心分離した。もし、RBCの除去がさらに必要である場合、上記の過程を2~3回繰り返し行った。
【0032】
<実施例2>試料抹消血単核球(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)免疫細胞の分布
【0033】
前記実施例1に記載されたように、抹消血液40~60ccをフィコールが入れられているろ過チューブ2本に分けて分注した後、2500rpmにて25分間遠心分離した。層分離された抹消血液から抹消血単核球(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)層のみを分離して新たな50mlチューブに集め、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて洗浄した後、上澄み液を捨て、得られた細胞に蛍光物質を含む抗体(CD56-PE、CD3-BV421)を反応させた後、フローサイトメトリー(Flow cytometry)を用いて解析した。抗体に応じた免疫細胞の分布結果を下記の表1と図1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
上記の表1と図1に記載されたように、全体的に血液から分離された抹消血単核球(PBMC)免疫細胞は、NK細胞5~6%、NKT細胞2~7%、T細胞60~80%の分布を示しているということを確認することができた。
【0036】
<実施例3>IL-2及びIL-15サイトカインの濃度の設定のためのNK活性度の測定試験(IFN-γの測定)
【0037】
予備実験にてIL-2及びIL-15サイトカインの効果と濃度を設定するために、前記実施例1による抹消血液から得られた単核球に、抗CD16抗体によりコーティングされたフラスコにRPMI 18ml、血漿2ml、抗CD56 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗NKp30 5ng/mlを入れた培地において、IL-2及びIL-15サイトカインのそれぞれの濃度を処理して7日間培養した後、細胞をすべて回収した。収集された細胞を2000rpmにて5分間遠心分離して上澄み液1mlを新たなチューブに移し替えた後、細胞の活性度を測定した。細胞の活性度の測定は、IFN-γ ELISAキットを用いてIFN-γの分泌量にて確認することにより行った。
【0038】
NK細胞にIL-2及びIL-15の処理濃度に応じたIFN-γの分泌量を図2に、前記図2によるIL-2及びIL-15の最適な濃度を設定し、前記設定した濃度を処理した後のIFN-γの分泌量に応じた活性度を図3に記載した。
【0039】
具体的に、図2から明らかなように、IL-2の場合には、濃度を5、10、15、20、40(ng/ml)にして処理したとき、次第にIFN-γの分泌量が増えていて、20ng/mlにおいて最高の濃度を示し、40ng/mlにおいてはそれ以上増加しなかった。一方、IL-15の場合には、10、30、50、100(ng/ml)の濃度を比較したとき、IFN-γの分泌量は、50ng/mlにおいて最高の濃度を示し、100ng/mlにおいてそれ以上増加しなかった。2種類の実験の結果、IL-2は20ng/ml、IL-15は50ng/mlにおいて細胞の活性度が最も効果的になる濃度であるということを確認した。
【0040】
図3から、IL-2及びIL-15をそれぞれ処理した細胞のIFN-γの分泌量よりも、IL-2+IL-15を一緒に処理して培養された細胞のIFN-γの分泌量の方が確然として増えて細胞の活性度が増加したことを確認した。
【0041】
<実施例4>IL-2及びIL-15処理による免疫細胞の分布及び細胞の生存率、並びに細胞数の測定
【0042】
NK細胞の大量培養をするための予備実験にて、抗体及びIL-2及びIL-15のそれぞれの条件でNK細胞の割合及び細胞の生存率または細胞数の効果を得るために、前記実施例1による抹消血液から得られた単核球に、抗CD16抗体によりコーティングされたフラスコにRPMI 18ml、血漿2mlを入れた状態で、それぞれの条件を処理して7日間培養した後、細胞をすべて回収してNK細胞の表面抗原を分析した。抗CD16抗体によりコーティングされたフラスコにRPMI 18ml、血漿2mlを基本として入れた状態で、抗体(抗CD56 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗NKp30 5ng/ml)のみを添加した群、抗CD16抗体によりコーティングされたフラスコにRPMI 18ml、血漿2mlを基本として入れた状態で、IL-2(20ng/ml)+IL-15(50ng/ml)サイトカインのみを添加した群、抗CD16抗体によりコーティングされたフラスコにRPMI 18ml、血漿2mlを基本として入れた状態で、抗体(抗CD56 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗NKp30 5ng/ml)+IL-2(20ng/ml)のみを添加した群、抗CD16抗体によりコーティングされたフラスコにRPMI 18ml、血漿2mlを基本として入れた状態で、抗体(抗CD56 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗NKp30 5ng/ml)+IL-15(50ng/ml)のみを添加した群、抗CD16抗体によりコーティングされたフラスコにRPMI 18ml、血漿2mlを基本として入れた状態で、抗体(抗CD56 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗NKp30 5ng/ml)+IL-2(20ng/ml)+IL-15(50ng/ml)を添加した群に分けてそれぞれ処理して7日間培養し、2000rpmにて10分間遠心分離して上澄み液を除去し、得られた細胞に蛍光物質を含む抗体(CD56-PE、CD3-BV421)を反応させた後、フローサイトメトリー(Flow cytometry)を用いて解析した。細胞数の測定は、遠心分離して得られた細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に浮遊させた後、10μlを取ってトリパンブルー10μlと混ぜた後、血球計算器(hemocytometer)を用いて行った。抗体に応じた免疫細胞の分布結果を下記の表2と図4に示し、総細胞数と細胞の生存率は図5に記載した。
【0043】
【表2】
【0044】
上記の表2と図4に記載されたように、抗体のみを処理した試料よりも、IL-2+IL-15サイトカインを処理した混合物の方においてNK細胞の割合がさらに増加したものの、抗体+IL-2+IL-15を組み合わせた混合物を処理したとき、NK及びNKT細胞を増加させる上で有効であるということを確認した。なお、図5でのように、抗体+IL-2+IL-15の混合物が他の比較群よりも2~4倍ほど高い増殖効果を示しており、生存率もまた高く保持されるということを確認した。
【0045】
<実施例5>設定された濃度でのNK免疫細胞の大量培養方法
【0046】
<5-1>抗CD16コーティング
【0047】
T75フラスコにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)10mlと抗CD16 5ng/mlを混合し、常温で6時間放置した後、冷蔵において一晩中(24時間)保管することにより、抗CD16をコーティングした。前記コーティングされたフラスコは、一週間以内に使用しなければならず、使用する前にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて一回洗浄した後に使用した。コーティングされているため、底面が乾かないようにしなければならず、フラスコの底面に直接的にピペッティングしないように注意を払った。
【0048】
<5-2>免疫細胞の培養
【0049】
まず、前記実施例5-1において準備した、抗CD16によりコーティングされたT75フラスコの他に、RPMI培地、血漿、IL-2、IL-15、抗CD56、抗NKp46、抗NKp30を準備した。
【0050】
細胞懸濁液の細胞数が3×10以下である場合に抗CD16抗体によりコーティングされたT25フラスコにおいて、3×10以上である場合には抗CD16抗体によりコーティングされたT75フラスコにおいて細胞を培養した。具体的に、コーティングされたT75フラスコにRPMI 8ml、血漿2ml、IL-2 20ng/ml、IL-15 50ng/ml、抗CD56 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗NKp30 5ng/mlを入れ、実施例1の方法と同様にして得られた細胞を、上澄み液を除去し、RPMI 10mlにてピペッティングした後、前記フラスコに入れた。37℃、5% CO培養器において細胞の状態に合うように3~4日間培養した。
【0051】
<5-3>継代培養
【0052】
継代培養のために、T175またはT225フラスコ、RPMI培地、アルブミン、IL-2、IL-15、抗CD56、抗NKp46、抗NKp30を準備した。
【0053】
<5-3-1>1次継代培養(T75フラスコからT175フラスコへの植え継ぎ(継代培養))
【0054】
前記実施例5-2のT75フラスコにおいて培養された免疫細胞をT175フラスコにおいて継代培養した。具体的に、T75フラスコをスクレーパー(scraper)にて掻いて底面に付いている細胞を剥がし、ピペッティングして固まった細胞を解離させた。このようにして準備した細胞懸濁液20mlを、新たなT175フラスコに入れ、RPMI 72ml、アルブミン8ml、IL-2 20ng/ml、IL-15 50ng/ml、抗NKp30 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗CD56 5ng/mlを入れ、培養培地と混ぜた後、37℃、5% CO培養器において細胞の状態に合うように3~5日間培養した。
【0055】
<5-3-2>2次継代培養(T175フラスコからT225フラスコ2個への植え継ぎ(継代培養))
【0056】
T175フラスコからT225フラスコ2個への植え継ぎ(継代培養)を行った。具体的に、T175フラスコをスクレーパーにて掻いて底面に付いている細胞を剥がし、ピペッティングして固まった細胞を解離させた。このようにして準備した細胞懸濁液100mlをそれぞれ50mlずつ、新たなT225フラスコ2個に入れ、それぞれRPMI 180ml、アルブミン20ml、IL-2 20ng/ml、IL-15 50ng/mlを入れ、前記培養培地と混ぜた後、37℃、5% CO培養器において細胞の状態に合うように5~7日間培養した。このとき、細胞の状態に合うように培地を追加してT225フラスコ1個当たりに最終的に400mlを超えないように注意を払った。
【0057】
<実施例6>設定された濃度でNK細胞を14日間培養した後の細胞数の測定試験
【0058】
大量増殖のために設定された組成が、14日間の培養にも拘わらず、NK細胞の大量増殖及び分布の増加が可能であるか否かを調べてみた。具体的に、実施例1の方法により分離されたリンパ球細胞5×10cellをそれぞれ試料の培養培地に添加し、設定された組成であるRPMI+アルブミン+抗体(抗CD56 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗NKp30 5ng/ml)+IL-2(20ng/ml)+IL-15(50ng/ml)をさらに処理して14日間培養した。また、対照群としては、RPMI+アルブミン+IL-2(20ng/ml)+IL-15(50ng/ml)サイトカインのみを処理した群、RPMI+アルブミン+抗体(抗CD56 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗NKp30 5ng/ml)のみを添加した群に分けた。なお、細胞数に応じて継代培養して培養培地を添加して14日間培養した。細胞数の測定のために日付け毎に培養した細胞を回収した後、浮遊させた細胞から10μlを取ってトリパンブルー10μlと混ぜた後、血球計算器にて測定した。その結果を図6に記載した。図6に記載されたように、造成された培養培地において14日間培養したときに、2×10cell以上の細胞増殖結果を示した。
【0059】
<実施例7>設定された濃度でのNK細胞の大量培養の組成に応じたFACS解析試験
【0060】
前記実施例5-3-2に従い培養されたリンパ球免疫細胞分布(蛍光活性化細胞ソーティング(FACS))実験は、RPMI+アルブミン+抗体(抗CD56 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗NKp30 5ng/ml)+IL-2(20ng/ml)+IL-15(50ng/ml)を処理して14日間培養し、対照群として行った実験は、RPMI+アルブミン+IL-2(20ng/ml)+IL-15(50ng/ml)サイトカインのみを処理した群、RPMI+アルブミン+抗体(抗CD56 5ng/ml、抗NKp46 5ng/ml、抗NKp30 5ng/ml)のみを処理した群をそれぞれ細胞数に応じて継代培養により14日間培養して比較した。2000rpmにて10分間遠心分離して上澄み液を除去し、得られた細胞に蛍光物質を含む抗体(CD56-PE、CD3-BV421)を反応させた後、フローサイトメトリー(Flow cytometry)を用いて分析した。その結果を下記の表3及び図7に記載した。
【0061】
【表3】
【0062】
上記の表3及び図7に記載されたように、大量増殖のために設定された組成が、14日間の大量培養後にもNK及びNKT細胞が85%、T細胞が8.5%という組成となって、NK細胞の割合が他の対照群に比べて確然として増えるという結果を確認することができた。
【0063】
以上、本発明について、好適な実施形態を挙げて詳しく説明したが、本発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内において当分野において通常の知識を有する者により色々な変形が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】