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特表2023-550394実時間対応水素充填プロセスを実行する方法及びその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】実時間対応水素充填プロセスを実行する方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/02 20060101AFI20231124BHJP
   F17C 5/06 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
F17C13/02 301A
F17C5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530030
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 KR2021016535
(87)【国際公開番号】W WO2022108256
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0153674
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0175539
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0033128
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0152613
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
2.ブルートゥース
3.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】520481194
【氏名又は名称】ミレ イーエイチエス-コード リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェ チュン グン
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
3E172BD03
3E172EA02
3E172EA12
3E172EA22
3E172EB02
(57)【要約】
水素充填機における実時間対応水素充填プロセスを実行する方法は、実際ケース(Real case)に適用される充填ラインの圧力損失係数値を算出する段階と、前記算出された圧力損失係数値、基準ケースに対して予め設定された基準圧力損失係数値、及び前記基準ケースに対して予め設定された基準充填ラインの内径値に基づいて、前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値を算出する段階と、前記算出された充填ラインの内径値を前記実際ケースに前記実時間水素充填のための所定の熱力学モデルに適用して前記水素充填プロセスを実行する段階とを含むことができる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素充填機における実時間対応水素充填プロセスを実行する方法であって、
実際ケース(Real case)に適用される充填ラインの圧力損失係数値を算出する段階と、
前記算出された圧力損失係数値、基準ケースに対して予め設定された基準圧力損失係数値、及び前記基準ケースに対して予め設定された基準充填ラインの内径値に基づいて、前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値を算出する段階と、
前記算出された充填ラインの内径値を前記実際ケースに前記実時間水素充填のための所定の熱力学モデルに適用して前記水素充填プロセスを実行する段階と、を含む、実時間対応水素充填プロセス遂行方法。
【請求項2】
圧縮水素貯蔵システム内部の実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力及び実時間水素タンク充填率についての情報を含む第1情報を獲得する段階と、
前記獲得された実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力及び実時間水素タンク充填率のうちの少なくとも一つでも予め設定された値以上であるかを決定する段階と、を含む、請求項1に記載の実時間対応水素充填プロセス遂行方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つでも予め設定された値以上ではないか、かつ水素充填開始の後に所定の時間が経過したかをチェックする段階と、
前記所定の時間が経過すると、前記獲得された実時間水素タンク圧力が予め設定された圧力より低いかを決定する段階と、を含む、請求項2に記載の実時間対応水素充填プロセス遂行方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つが予め設定された値以上であると、前記実時間対応水素充填のプロセスを終了させる段階をさらに含む、請求項2に記載の実時間対応水素充填プロセス遂行方法。
【請求項5】
前記獲得された実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力及び実時間水素タンク充填率のうちの少なくとも一つを所定の周期でアップデートする、請求項2に記載の実時間対応水素充填プロセス遂行方法。
【請求項6】
前記水素タンクに供給される水素に対する水素供給圧力及び水素供給温度についての第2情報を獲得する段階を含み、
前記水素充填を制御する段階は、前記第1情報及び前記第2情報を前記所定の熱力学モデルにさらに適用して水素充填を制御する段階をさらに含む、請求項2に記載の実時間対応水素充填プロセス遂行方法。
【請求項7】
前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値(dFL)は次の式1によって算出する、
【数25】
ここで、dFL、refは前記予め設定された基準充填ラインの内径値、KFLは前記算出された圧力損失係数値、KFL、refは前記予め設定された基準圧力損失係数値である、請求項1に記載の実時間対応水素充填プロセス遂行方法。
【請求項8】
前記基準ケースは、水素充填終了時点で前記水素タンク内の最高温度である85℃になるケースに相当する、請求項1に記載の実時間対応水素充填プロセス遂行方法。
【請求項9】
実時間対応水素充填プロセスを実行する水素充填機であって、
メモリと、
実際ケースに適用される充填ラインの圧力損失係数値を算出するように構成された充填機制御部と、を含み、
前記充填機制御部は、
前記算出された圧力損失係数値、前記メモリに保存された基準ケースに対して予め設定された基準圧力損失係数値、及び前記基準ケースに対して予め設定された基準充填ラインの内径値に基づいて、前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値を算出し、
前記算出された充填ラインの内径値を前記実際ケースに前記実時間水素充填のための所定の熱力学的モデルに適用して水素充填プロセスを実行する、水素充填機。
【請求項10】
前記充填機制御部は、
圧縮水素貯蔵システム内部の実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力、及び実時間水素タンク充填率についての情報を含む第1情報を獲得し、
前記獲得された実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力、及び実時間水素タンク充填率のうちの少なくとも一つでも予め設定された値以上であるかを決定するように構成される、請求項9に記載の水素充填機。
【請求項11】
前記獲得された実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力、及び実時間水素タンク充填率のうちの少なくとも一つは所定の周期でアップデートされる、請求項10に記載の水素充填機。
【請求項12】
前記充填機制御部は、
前記水素タンクに供給される水素に対する水素供給圧力及び水素供給温度についての第2情報を獲得し、前記第1情報及び前記第2情報を前記所定の熱力学モデルにさらに適用して前記水素充填プロセスを実行するように構成される、請求項10に記載の水素充填機。
【請求項13】
前記充填機制御部は、前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値(dFL)を次の式1によって算出する、
【数26】
ここで、dFL、refは前記予め設定された基準充填ラインの内径値、KFLは前記算出された圧力損失係数値、KFL、refは前記予め設定された基準圧力損失係数値である、請求項9に記載の水素充填機。
【請求項14】
前記基準ケースは、水素充填終了時点で前記水素タンク内の最高温度である85℃になるケースに相当する、請求項9に記載の水素充填機 。
【請求項15】
圧縮貯蔵水素システムが実時間対応水素充填プロセスを実行する方法であって、
実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力、及び実時間水素タンク充填率についての情報を含む第1情報を伝送する段階と、
前記第1情報及び実際ケース(Real case)に適用されるために算出された充填ラインの内径値を適用することによって、実時間水素充填のための所定の熱力学モデルによって算出された圧力上昇率によって供給される水素を充填する段階と、を含み、
前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値は、前記算出された圧力損失係数値、基準ケースに対して予め設定された基準圧力損失係数値、及び前記基準ケースに対して予め設定された基準充填ラインの内径値に基づいて算出する、実時間対応水素充填プロセス遂行方法。
【請求項16】
前記基準ケースは、水素充填終了時点で前記水素タンク内の最高温度である85℃になるケースに相当する、請求項15に記載の実時間対応水素充填プロセス遂行方法。
【請求項17】
前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値(dFL)は次の式1に基づいて算出される、
【数27】
ここで、dFL、refは前記予め設定された基準充填ラインの内径値、KFLは前記算出された圧力損失係数値、KFL、refは前記予め設定された基準圧力損失係数値である、請求項15に記載の実時間対応水素充填プロセス遂行方法。
【請求項18】
実時間対応水素充填プロセスを実行する圧縮貯蔵水素システムであって、
実時間水素タンク温度及び実時間水素タンク圧力についての情報を含む第1情報を伝送するように構成された送信部と、
前記第1情報及び実際ケース(Real case)に適用されるために算出された充填ラインの内径値を適用することによって、実時間水素充填のための所定の熱力学モデルによって算出された圧力上昇率によって供給される水素を充填するように構成された水素タンクと、を含み、
前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値は、前記算出された圧力損失係数値、基準ケースに対して予め設定された基準圧力損失係数値、及び前記基準ケースに対して予め設定された基準充填ラインの内径値に基づいて算出される、圧縮貯蔵水素システム。
【請求項19】
前記基準ケースは、水素充填終了時点で前記水素タンク内の最高温度である85℃になるケースに相当する、請求項18に記載の圧縮貯蔵水素システム。
【請求項20】
前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値(dFL)は次の式1によって算出される、
【数28】
ここで、dFL、refは前記予め設定された基準充填ラインの内径値、KFLは前記算出された圧力損失係数値、KFL、refは前記予め設定された基準圧力損失係数値である、請求項18に記載の圧縮貯蔵水素システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素充填に関するものであり、より詳しくは、実時間対応水素充填プロセスを実行する方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素車両は動力の燃料として水素を使用する車両であり、電動機の駆動のために内燃機関の水素を焼くかまたは燃料電池内で水素を酸素と反応させることで、水素の化学エネルギーを力学的エネルギーに変換する。運送燃料供給のために水素を使用することになるが、水素燃料は高圧で早く充填される特性のため、注油と比較したとき、危険性を有しており、圧縮及びジュールトムソン効果(Joule-Thomson effect)による熱発生によって完全充填が容易でない。よって、各国で水素充填プロトコル(Fueling Protocol)を開発した。そのうち、充填の際、媒介変数に基づいて圧力上昇率及び目標圧力に対するルックアップテーブルを用いたプロトコル(Hydrogen Fueling Protocol)に対する研究が多数存在している。
2010年に制定されたSAE(Society of Automotive Engineers)J2601の水素充填プロトコル(Hydrogen Fueling Protocol、HFP)では、熱力学的モデル(thermodynamic model)によるシミュレーションによって予め作成された幾多のテーブルと計算式のパラメーター及び係数(coefficients)を用いて充填を実行するようにする方式を採用している。そして、このHFPはホットケース(hot case)とコールドケース(cold case)という2個のワーストケース(worst case)を仮定し、すべての充填対象車両(vehicle)がこの2個のワーストケース(worst case)の範囲内に存在するという仮定の下で設計された。これにより、このHFPには多くの仮定とカテゴリー(category)が設定されており、適用範囲及び適用方法に多くの制限条件が規定されている。既存のHFPがこのように複雑になったことは、通信が不可であるか不正確であるという前提条件の下で設計されたからである。
しかし、最近、水素燃料電池自動車の普及が拡がり、地球温暖化問題の解決のための大型モビリティー(バス、トラック、船舶など)の商用化が急進展している。特に、大型モビリティーの場合には、その規模及び用途が大いに異なるため、その圧縮水素貯蔵システム(CHSS)容量、充填速度、名目作動圧力(nominal working pressure)、適用制限条件などを既存のHFPで収容することが構造的に不可能な状況である。よって、新しいHFPの導入が必要である。特に、適用範囲に汎用性が確保され、適用方法で高容量(High Capacity)、高速(High Velocity)、高効率(High Efficiency)を収容することができる新しいHFPの導入が切実な時点である。既存のHFP(existing HFP)の適用範囲及び適用方法の制限性の問題と抵効率の問題を画期的に改善する新しいHFPが必要になった。
しかし、いまだに既存のHFPの問題点を解決するための新しいHFPが提案されたとこがなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明で達成しようとする技術的課題は、水素充填機における実時間対応水素充填プロセスを実行する方法を提供することにある。
本発明で達成しようとする他の技術的課題は、実時間対応水素充填プロセスを実行する水素充填機を提供することにある。
本発明で達成しようとするさらに他の技術的課題は、圧縮貯蔵水素システムが実時間対応水素充填プロセスを実行する方法を提供することにある。
本発明で達成しようとするさらに他の技術的課題は、実時間対応水素充填プロセスを実行する圧縮貯蔵水素システムを提供することにある。
本発明で達成しようとする技術的課題は前記技術的課題に限定されず、言及しなかった他の技術的課題は以下の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかに理解可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の技術的課題を達成するための水素充填機における実時間対応水素充填プロセスを実行する方法は、実際ケース(Real case)に適用される充填ラインの圧力損失係数値を算出する段階と、前記算出された圧力損失係数値、基準ケースに対して予め設定された基準圧力損失係数値、及び前記基準ケースに対して予め設定された基準充填ラインの内径値に基づいて、前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値を算出する段階と、前記算出された充填ラインの内径値を前記実際ケースに前記実時間水素充填のための所定の熱力学モデルに適用して前記水素充填プロセスを実行する段階とを含むことができる。
前記方法は、圧縮水素貯蔵システム内部の実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力及び実時間水素タンク充填率についての情報を含む第1情報を獲得する段階と、前記獲得された実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力及び実時間水素タンク充填率のうちの少なくとも一つでも予め設定された値以上であるかを決定する段階とを含むことができる。
【0005】
前記方法は、前記少なくとも一つでも予め設定された値以上ではないか、かつ水素充填開始の後に所定の時間が経過したかをチェックする段階と、前記所定の時間が経過すると、前記獲得された実時間水素タンク圧力が予め設定された圧力より低いかを決定する段階とを含むことができる。
前記方法は、前記少なくとも一つが予め設定された値以上であると、前記実時間対応水素充填のプロセスを終了させる段階をさらに含むことができる。
前記獲得された実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力及び実時間水素タンク充填率のうちの少なくとも一つを所定の周期でアップデートすることができる。
前記方法は、前記水素タンクに供給される水素に対する水素供給圧力及び水素供給温度についての第2情報を獲得する段階を含み、前記水素充填を制御する段階は、前記第1情報及び前記第2情報を前記所定の熱力学モデルにさらに適用して水素充填を制御する段階をさらに含むことができる。
【0006】
前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値(dFL)は次の式1によって算出することでき、
【数1】
ここで、dFL、refは前記予め設定された基準充填ラインの内径値、KFLは前記算出された圧力損失係数値、KFL、refは前記予め設定された基準圧力損失係数値である。
前記基準ケースは、水素充填終了時点で前記水素タンク内の最高温度である85℃になるケースに相当することができる。
前記の他の技術的課題を達成するための、実時間対応水素充填プロセスを実行する水素充填機は、メモリと、実際ケースに適用される充填ラインの圧力損失係数値を算出するように構成された充填機制御部とを含み、前記充填機制御部は、前記算出された圧力損失係数値、前記メモリに保存された基準ケースに対して予め設定された基準圧力損失係数値、及び前記基準ケースに対して予め設定された基準充填ラインの内径値に基づいて、前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値を算出し、前記算出された充填ラインの内径値を前記実際ケースに前記実時間水素充填のための所定の熱力学的モデルに適用して水素充填を制御することができる。
前記充填機制御部は、圧縮水素貯蔵システム内部の実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力、及び実時間水素タンク充填率についての情報を含む第1情報を獲得し、前記獲得された実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力、及び実時間水素タンク充填率のうちの少なくとも一つでも予め設定された値以上であるかを決定するように構成されることができる。前記獲得された実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力、及び実時間水素タンク充填率のうちの少なくとも一つは所定の周期でアップデートされることができる。前記充填機制御部は、前記水素タンクに供給される水素に対する水素供給圧力及び水素供給温度についての第2情報を獲得し、前記第1情報及び前記第2情報を前記所定の熱力学モデルにさらに適用して前記水素充填プロセスを実行するように構成(configured)されることができる。
【0007】
前記充填機制御部は、前記充填機制御部は、前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値(dFL)を次の式1によって算出することができ、
【数2】
ここで、dFL、refは前記予め設定された基準充填ラインの内径値、KFLは前記算出された圧力損失係数値、KFL、refは前記予め設定された基準圧力損失係数値である。前記基準ケースは、水素充填終了時点で前記水素タンク内の最高温度である85℃になるケースに相当することができる。
前記のさらに他の技術的課題を達成するための、圧縮貯蔵水素システムが実時間対応水素充填プロセスを実行する方法は、実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力、及び実時間水素タンク充填率についての情報を含む第1情報を伝送する段階と、前記第1情報及び実際ケース(Real case)に適用されるために算出された充填ラインの内径値を適用することによって、実時間水素充填のための所定の熱力学モデルによって算出された圧力上昇率によって供給される水素を充填する段階とを含み、前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値は、前記算出された圧力損失係数値、基準ケースに対して予め設定された基準圧力損失係数値、及び前記基準ケースに対して予め設定された基準充填ラインの内径値に基づいて算出することができる。前記基準ケースは、水素充填終了時点で前記水素タンク内の最高温度である85℃になるケースに相当する。
前記のさらに他の技術的課題を達成するための、実時間対応水素充填プロセスを実行する圧縮貯蔵水素システムは、実時間水素タンク温度及び実時間水素タンク圧力についての情報を含む第1情報を伝送するように構成された送信部と、前記第1情報及び実際ケースに適用されるために算出された充填ラインの内径値を適用することによって、実時間水素充填のための所定の熱力学モデルによって算出された圧力上昇率によって供給される水素を充填するように構成された水素タンクとを含み、前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値は、前記算出された圧力損失係数値、基準ケースに対して予め設定された基準圧力損失係数値、及び前記基準ケースに対して予め設定された基準充填ラインの内径値に基づいて算出される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施例によって、水素を充填するうちCHSSが無線通信を介して水素充填機に送る水素タンクの構造的情報及び熱力学的情報を反映して水素をより安全でありながらも早く充填することができる。実時間で測定された水素タンク内の水素の圧力及び温度を水素充填機に伝送し、水素充填機は最適の圧力上昇率を計算し、計算された最適の圧力上昇率で充填を実行することで、水素タンク内の水素の圧力、温度及び充填流量が設定の臨界値を外れない範囲内で充填時間を最小化することができる。
また、既存のSAE J2601で規定する水素充填は、水素タンク110内の温度を予冷(precooling)した状態(例えば、零下17.5℃以下)でのみ可能であった。そうではなければ、水素タンク温度が急激に上がって早く85℃に至るからであった。しかし、本発明による水素充填方法によると、水素タンク110の温度を30℃程度に維持しても水素充填が可能である。
また、本発明による水素充填方法は、水素タンク圧力を大気圧程度に維持しても水素充填が可能になった。
また、本発明による水素充填方法は、水素タンクの容量(capacity)制限なしに適用可能であり、水素供給も変更しやすく、流量(flow rate)制限もないなど、多様で手広く適用することができる。
また、本発明による水素充填方法は、実時間通信に基づいて水素タンク温度、圧力などを考慮してprrを算出して水素充填することで、より効率的に水素を充填するので、精密な制御が可能になる利点がある。
また、ホットケース(Hot Case)の基準を用いて充填システムの熱力学的特性を比例的に複製することができるようになって水素充填プロトコルの効率性がかなり高くなった。
本発明で得られる効果は以上で言及した効果に限定されず、言及しなかった他の効果は以下の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかに理解可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例による実時間通信基盤水素充填システムを説明するための図である。
図2図1のシステムに含まれた内部構成を説明するためのブロック構成図である。
図3】本発明の一実施例による実時間通信基盤水素充填方法を説明するための例示的なフローチャートである。
図4】本発明の一実施例による実時間通信基盤水素充填プロトコルで適用するシンプル熱力学的モデル(Simple thermodynamic mode、STM)での仮定及び定義を説明するための例示図である。
図5】ホットケース(Hot Case)を実際ケース(Real case)のSTMで連結させる媒介変数を説明するための例示図である。
図6】本発明の一実施例による実時間通信基盤水素充填プロトコルで適用する熱力学的モデルの動作過程を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施例によって実時間(real time)で圧力上昇率(PRR)を計算して適用する過程を説明するための例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、添付図面を参照して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は様々な相異なる形態に具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。そして、図面では、本発明を明確に説明するために、説明に関係ない部分は省略し、明細書全般にわたって類似の部分に対しては類似の図面符号を付けた。
明細書全般で、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味し、一つまたはそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組合せなどの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解しなければならない。
実時間で水素充填を実行するための制御方法が研究及び開発されており、水素充填機から圧縮水素貯蔵容器に水素を充填するとき、目標温度及び感知温度の間の差を実時間で測定し、感知温度が目標温度に到逹することができるように水素充填の流れを制御し、圧縮水素貯蔵容器内の変形程度を実時間で測定し、変形程度に基づいて予め設定された規定以上の変形が感知される場合、水素充填を中断する制御方法がある。
ただ、上述した構成を用いると言っても、実際に実時間通信が仮定された状況で開発された制御プロトコルではないので、また実時間水素制御が不可な状況である原点に回帰することになる。また、プロトコルが複雑になった理由も充填所と水素自動車との間に通信ができない場合と通信を信頼することができない場合とを仮定しているからであるので、常に通信が可能であり、通信の信頼性が保障できる標準化したプロトコルの研究及び開発が要求される。仮に、通信の信頼性が保障されれば、水素の危害要素である温度及び圧力を実時間で監視及び予測しながら実時間で圧力上昇速度及び目標圧力を計算することができ、プロトコルを簡単に作ることができる。よって、頑健な通信プロトコル及び実時間モニタリングのための制御方法の研究が要求される。
【0011】
本発明では、既存のHFPが有する適用範囲及び適用方法の制限性問題及び低効率性の問題を画期的に改善した新しいHPFを提案しようとする。既存のHFPの問題点が非通信(non-communication)の前提の下で始まった点に鑑みて、新しいHFPは通信専用を目標とした。そして、新しいHFPを開発するために、2個の熱力学(的)モデルを作った。一つは充填プロセス(fueling process)の制御エンジンの役割を果たす所定の熱力学モデル(一例として、Simple thermodynamic model、STMという)であり、他の一つは新しいHFPのテストベッド(testbed)の役割を果たす、いわゆるRigorous thermodynamic model(RTM)である。本発明で提案しようとする新しいHFPを実時間対応水素充填プロトコル(Real time Responding-Hydrogen Fueling Protocol、RTR-HFP)と定義する。
以下、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例による実時間通信基盤水素充填システムを説明するための図であり、図2図1のシステムに含まれた内部構成を説明するためのブロック構成図である。
図1を参照すると、実時間通信基盤水素充填システムは、少なくとも一つの圧縮水素貯蔵システム(Compressed Hydrogen Storage System、CHSS)100、水素移動装置200、及び水素充填機(Hydrogen Dispenser)300を含むことができる。ただ、このような図1の燃料電池用CHSSの実時間通信基盤水素充填システムは、本発明の一実施例に過ぎないので、図1に本発明が限定されて解釈されるものではない。CHSS100は水素車両などに備えられることができる。
【0012】
ここで、図1の各構成要素は一般的にネットワークを介して連結される。例えば、図1に示すように、少なくとも一つのCHSS100はネットワークを介して水素移動装置200と連結されることができる。そして、水素移動装置200は、ネットワークを介して少なくとも一つのCHSS100及び水素充填機300と連結されることができる。また、水素充填機300は、ネットワークを介して水素移動装置200と連結されることができる。
ここで、ネットワークは、複数の端末及びサーバーのようなそれぞれのノードの相互間に情報交換が可能な連結構造を意味するものであり、このようなネットワークの一例には、ローカルエリアネットワーク(LAN:Local Area Network)、広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)、インターネット(WWW:World Wide Web)、有無線データ通信網、電話網、有無線テレビ通信網などを含む。無線データ通信網の例には、3G、4G、5G、3GPP(3rd Generation Partnership Project)、5GPP(5th Generation Partnership Project)、LTE(Long Term Evolution)、WIMAX(World Interoperability for Microwave Access)、ワイファイ(Wi-Fi)、インターネット(Internet)、LAN(Local Area Network)、Wireless LAN(Wireless Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、PAN(Personal Area Network)、RF(Radio Frequency)、ブルートゥース(Bluetooth)ネットワーク、NFC(Near-Field Communication)ネットワーク、衛星放送ネットワーク、アナログ放送ネットワーク、DMB(Digital Multimedia Broadcasting)ネットワークなどが含まれるが、これに限定されない。
以下で、少なくとも一つのという用語は単数及び複数を含む用語と定義され、少なくとも一つのという用語が存在しないとしても、各構成要素が単数または複数で存在することができ、単数または複数を意味することができるというのは明らかであると言える。また、各構成要素が単数または複数で備えられるというのは実施例によって変更可能であると言える。
【0013】
以下、図1の各構成を図2とともに説明する。
圧縮水素貯蔵システム(CHSS)100は、水素タンク110及び水素タンクバルブ130を含むことができる。図1及び図2では2個の水素タンクを例示したが、一つ以上の水素タンクを備えることができる。CHSS100は水素車両(または運送手段)に設置できるものであり、燃料である水素を受けて貯蔵するように構成される。そして、水素タンクバルブ130は圧力センサー及び温度センサーを含んでいるので、水素タンク110内の水素の圧力及び温度を測定し、水素移動装置200の貯蔵制御部240に測定値を渡す役割を果たすことができる。
水素移動装置200は、水素供給部330から噴射される水素を水素タンクバルブ130に伝達するレセプタクル210、水素供給ホース230及び水素充填機300内の充填機制御部310の間の無線通信のために備えられる無線通信部、及び感知データを無線通信のためのデータに変換して出力する貯蔵制御部240を含むことができる。水素移動装置200は、レセプタクル210と水素供給部330との間に連結され、水素タンク110に水素タンクバルブ130を介して水素を供給する充填ノズル220をさらに含むことができる。ここで、無線通信部は、車両に水素が注入されるレセプタクル210の一側に設けられた貯蔵制御部240の他側に設けられる送信機(一例として、IR送信機)250、及び一側がIR送信機250と連結され、他側が充填機制御部310と連結される受信機(一例として、IR受信機)260を含むことができる。
水素充填機300は、水素タンク110内の圧力及び温度を含めた感知データを受信する充填機制御部310、及び感知データに基づいて水素タンク110内に水素を供給する水素供給部330を含むことができる。充填機制御部310は、無線通信部及び水素供給部330からデータを受信して水素供給部330内の実時間圧力上昇率を算出し、算出された圧力上昇率を水素供給部330に返還することができる。
【0014】
図1及び図2を参照すると、CHSS100は水素充填機300から、実時間対応水素充填制御によって水素を受けていることが分かる。実時間対応水素充填制御のために、CHSS100の送信部(図示せず)は、水素移動装置200及び/または水素充填機300に無線通信などによって情報を伝送するために備えられる。CHSS100の送信部送信部(図示せず)は、水素移動装置200及び/または水素充填機300に無線通信などによって情報を伝送するために備えられる。CHSS100の送信部は、初期に水素タンク110の温度、水素タンク110の圧力及び充填率(SOC)についての情報を無線通信などによって水素移動装置200に伝送することができる。水素タンク110は、水素タンク圧力が前記予め設定した圧力より小さいと、前記水素充填機における所定の熱力学モデルを用いることなしに、予め設定された固定圧力上昇率に基づいて決定された第1固定圧力上昇率で前記水素充填機から供給された水素を貯蔵する。これと違い、水素タンク110は、水素タンク圧力が前記予め設定した圧力より小さくないと、前記水素充填機で初期圧力上昇率として設定された第2圧力上昇率が増加、減少または維持された状態によって、前記水素充填機から供給された水素を貯蔵することができる。
水素タンクバルブ130は、水素タンク110の温度及び前記水素タンク110の圧力を測定するように構成できる。また、CHSS100の送信部は、水素タンク110の個数及び水素タンク110の体積についての情報を無線通信などによって水素移動装置200に伝送して、水素充填機300に伝達することができる。
【0015】
以下、上述した図1及び図2の実時間通信基盤水素安全充填システムの構成による動作過程を図3図7に基づいて詳細に説明する。ただ、実施例は本発明の多様な実施例のうちの一つであるだけで、これに限定されないというのは明らかであると言える。
図3は本発明の一実施例による実時間通信基盤水素充填方法を説明するための例示的なフローチャートである。
図3を参照すると、本発明の一実施例による実時間対応水素安全充填システムは、水素を充填するうちに、CHSS100が無線通信を介して水素充填機300に伝送する水素タンクの構造的情報及び熱力学的情報を反映することで、水素をより安全でありながらも早く充填することができるようにする。このために、CHSS100で水素タンク110内の水素の圧力及び温度を実時間で測定し、水素充填機300に無線通信を介して実時間で伝送し、水素充填機300はCHSS100から実時間で測定した水素タンク圧力及び温度を受信して最適の圧力上昇率を計算し、計算された最適の圧力上昇率で水素充填を実行することができるようにする。よって、水素タンク110内の水素の圧力、温度及び充填流量が設定の臨界値を外れない範囲内で、充填時間が最小化することができるようにする。
【0016】
以下、図3及び図4で言及する略字は下記の表1にまとめ、以下では重複して説明しない。
【表1】
【0017】
【0018】
【0019】
ホットケース(Hot Case)及び実際ケースについての具体的事項は図5を参照して詳細に説明する。手短に説明すると、ホットケース(Hot Case)とは、充填終了時点でCHSSタンク内のガス温度が最高になる充填条件(SAE J2601で規定しているホットケース(Hot Case)と同一)を言う。すなわち、SAE J2601で規定しているように、CHSSタンクの温度が85℃になるようにする充填ラインの内径値(dFL)を基準充填ラインの内径(dFL、ref)と定義する。ホットケース条件(Hot Case condition)(△Pが35MPa)で計算した充填ラインの圧力損失係数をKFL、refと定義し、基準圧力損失係数という。ここで、DFLE=DFL、DFLE、ref=DFL、ref、Kline=KFLと見なすことができる。
充填機制御部310は、CHSS100内の水素タンク110及び水素充填機300の水素供給部330から初期状態値を獲得(または収集)することができる。ここで、初期状態値は、水素タンク110の構造的変数値、水素移動装置200の構造的変数値、水素充填機300が供給するガスの初期熱力学的変数値、水素タンク110内の水素の熱力学的変数値を含むことができる。
そして、水素タンク110の構造的変数値は、水素タンク110の個数(Ntank)及び水素タンク110の体積(Vtank)を含むことができる。ここで、一つのCHSS100に装着された水素タンク110の構造的変数値はすべて同一であると仮定する。すなわち、CHSS100に含まれたすべての水素タンク110の個数及び体積は標準化して規格が同一であると仮定する。充填機制御部310は、水素タンク110の個数(Ntank)及び水素タンク110の体積(Vtank)値についての情報をIR受信機260を介して受信することで獲得することができる(S3050)。水素タンクの個数及び体積についての情報はCHSS100の固有値であるので、充填開始の前に1回受信すれば十分であり得る(S3050)。
【0020】
水素移動装置200の構造的変数値は、水素供給部330で測定される水素移動装置200の圧力損失係数(Kline)を含むことができる。この値も水素移動装置200、すなわち充填ラインまたは水素充填ラインと呼ばれる水素移動装置200の固有値であるので、充填を開始する前に一度だけ受信すれば良い。ただ、圧力損失係数(Kline)が水素移動装置200の固有値であるが、CHSS100の種類によって変わることができるので、水素移動装置200全体の圧力損失係数(Kline)もCHSS100の種類によって変わることができる。この値は、新しいCHSS100に充填し始める前、水素移動装置200に対する漏洩点検を行うときに求めた圧力損失値(△Pline)及び水素移動装置200内の水素密度値(ρline)を以下の数式1に代入して求めることができる。
実際の充填ラインは内径(inner-diameter)の小さいチューブ(tube)と多数の構成要素(components)とから構成されているので、圧縮水素充填の際にかなり大きな圧力損失(pressure drop)が発生する。この圧力損失の計算式の一例として次の数式1のように示すことができる。
【数3】
【0021】
【0022】
【数4】
しかし、S3040のように質量流量限界値を算出することなしに、SAE J2601で基準質量流量限界値として予め設定された60g/s、120g/s、240g/sなどを使用することもできる。
水素充填機300が供給するガス(水素ガス)の初期熱力学的変数値は、水素充填機300が供給する水素の圧力(Pba)、温度(Tba)及び水素充填機300の周辺で測定した大気温度(Tamb)を含むことができる。水素充填機300が供給する水素の圧力(Pba)、温度(Tba)及び水素充填機300の周辺で測定した大気温度(Tamb)は動的(dynamic)パラメーターであるので、充填機制御部310は、水素供給部330から水素充填機300が供給する水素の圧力(Pba)、温度(Tba)及び水素充填機300の周辺で測定した大気温度(Tamb)についての情報を実時間で受信することができる(S3100)。すなわち、水素供給部330から水素充填機300が供給する水素の圧力(Pba)、温度(Tba)及び水素充填機300の周辺で測定した大気温度(Tamb)は所定の周期でアップデートすることができる。
水素タンク110内の水素の熱力学的変数値は、CHSS100での温度センサー(図示せず)及び圧力センサー(図示せず)から収集される水素タンク110の圧力(Ptank)、温度(Ttank)、及び水素充填率(SOC)を含むことができる(S3150)。水素タンク110の圧力(Ptank)、温度(Ttank)、水素充填率(SOC)は動的(dynamic)パラメーターであるので、充填機制御部310はIR受信機260から水素タンク110の圧力(Ptank)、温度(Ttank)、及び水素充填率(SOC)を実時間で受信することができる。ここで、実時間で受信するというのは所定の周期(例えば、2秒)で受信することを含むことができる。充填機制御部310は、受信された水素タンク110の圧力(Ptank)、温度(Ttank)に基づいて水素充填率(SOC)を算出することができる。すなわち、水素タンク110の圧力(Ptank)、温度(Ttank)は所定の周期でアップデートすることができ、その結果、水素充填率(SOC)も所定の周期でアップデートすることができる。
【0023】
充填機制御部310は、水素タンク110の圧力(Ptank)、温度(Ttank)及び水素充填率(SOC)のうちの少なくとも一つが(または一つ以上が)それぞれの予め設定された値以上であるかを決定することができる(S3200)。
ここで、水素タンク110の圧力(Ptank)、温度(Ttank)及び水素充填率(SOC)のうちの少なくとも一つが予め設定された値以上の場合には、充填を終了する。これと違い、水素タンク110の圧力(Ptank)、温度(Ttank)及び水素充填率(SOC)がすべて予め設定された値未満の場合には、充填機制御部310は所要時間(N2-N1)をチェックする。このために、まず充填機制御部310は現在時刻(N2)をチェックする(S3210)。充填機制御部310は、現在時刻(N2)から充填初期時刻(N1)までの所要時間を計算し、計算された所要時間が予め設定した値(または時間)より大きいかを決定する(S3220)。仮に、計算された所要時間が予め設定した値(または時間)より大きいと、十分な時間がかかったものではないので、充填機制御部310は再びS3100段階に復帰してプロセスを実行する。
S3100段階に復帰すると、充填機制御部310は、実時間で、水素供給部330から水素充填機300が供給する水素の圧力(Pba)、温度(Tba)及び水素充填機300の周辺で測定した大気温度(Tamb)のうちの一つ以上についての情報を受信して以後のプロセスを実行することができる。
【0024】
上述したように、CHSS100の水素タンクバルブ130は、実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力及び実時間水素タンク充填率についての情報を水素移動装置200に伝送または伝達する。水素充填機300は、実時間水素タンク温度、実時間水素タンク圧力及び実時間水素タンク充填率についての情報と前記実際ケース(Real case)に適用されるために算出された充填ラインの内径値とが適用される、実時間水素充填のための所定の熱力学モデルから圧力上昇率を算出し、水素タンク110は算出された圧力上昇率によって水素充填機300から供給される水素を充填及び貯蔵することができる。ここで、前記実際ケースに適用される前記充填ラインの内径値は、前記算出された圧力損失係数値、基準ケースに対して予め設定された基準圧力損失係数値、及び前記基準ケースに対して予め設定された基準充填ラインの内径値に基づいて算出されたものである。
一方、計算された所要時間(N2-N1)が予め設定した値(または時間)より大きいと、充填機制御部310は、水素タンク110の圧力(Ptank)が予め設定した圧力(例えば、5.1MPa、2MPaなど)より小さいかを判断する(S3230)。ここで、予め設定された圧力とは、本発明による熱力学的モデルの駆動安全性に関連した圧力である。具体的には、予め設定された圧力とは、CHSS100の水素タンク110のその値があまりにも高ければ熱力学的モデル駆動の安全性が喪失される特性と、その値があまりにも低ければ充填速度が低くなる特性とを全部考慮し、反復的シミュレーションによって選定した値(絶対圧力(Absolute Pressure)の場合は2MPaまたは5MPaと、ゲージ圧力(gauge pressure)の場合には2.1MPaまたは5.1MPa)と定義することができる。ここで、絶対圧力とは完全真空を基準に測定した圧力であり、ゲージ圧力(または計器圧力)とは大気圧を基準に測定した圧力を意味する。水素タンク110の圧力(Ptank)が予め設定した圧力(例えば、絶対圧力の場合は2MPaまたは5MPa、ゲージ圧力の場合には2.1MPaまたは5.1MPa)より小さいかに基づいて、充填機制御部310が水素充填のために所定の熱力学的モデルに適用するか否かを決定する(S3230)。すなわち、充填機制御部310は、実時間対応水素充填のための所定の熱力学モデル(例えば、STM)を用いるか否かを、獲得した水素タンク圧力が前記予め設定した圧力より小さいかによって決定する(S3230)。
【0025】
水素タンク110内の圧力が予め設定された圧力より低い場合には、固定圧力上昇率(prrfixed)を用いて新しい圧力上昇率を算出して適用することができる。水素タンク110内の圧力が予め設定された圧力より低い状態の場合には、水素充填の進行に伴って水素タンク110内のガス圧力が急激に上昇する特性がある。水素タンク110内の温度が急激に上昇して温度制御が難しいだけでなく、新しい最適圧力上昇率(prrnew)を探索するのに時間があまりにも多くかかるかまたは探索に失敗する可能性があるから、実時間通信基盤水素充填プロトコルの作動性が急激に落ちる問題が発生する。多くの研究を繰り返えして実時間通信基盤水素充填プロトコルでシンプル熱力学的モデルによってprrを算出するかあるいは固定prrとして選択して適用するかに対する基準になる予め設定された圧力としては5.1MPa、2MPaなどがあり、2MPaがより好ましい。ここで、予め設定された圧力の例示として、5.1MPa、2MPaを挙げた。
水素タンク110内のガス圧力(Ptank)が予め設定された圧力より低い場合、固定圧力上昇率(prrfixed)を適用することはこのような問題を解決するためのものである。ここで、予め設定された圧力(例えば、水素タンクの初期下限圧力)は5.1MPa(絶対圧力)とすることができる。ここで、水素タンク110内の圧力(Ptank)が予め設定された圧力(例えば、5.1MPa)より低い場合であって水素タンク110の数が1より大きい場合には、固定圧力上昇率(prrfixed)を水素タンク110の個数(Ntank)で割った値を適用することができる(S3240)。これは水素タンク110が水素充填ラインに並列に連結されることを考慮したものである。ここで、固定圧力上昇率(prrfixed)としては、一例としてSAE J2601のルックアップテーブル基盤充填プロトコルの非通信充填用平均圧力上昇率(APRR)またはこれと同等以上の方法で導出した圧力上昇率を使用することができる。充填機制御部310は、水素タンク圧力が予め設定した圧力より小さければ、所定の熱力学モデル(例えば、STM)を用いることなしに、予め設定された固定圧力上昇率(prefixed)に基づいて新しい圧力上昇率を決定し、この決定された新しい圧力上昇率を水素充填に適用することができる。そして、充填機制御部310は決定された新しい圧力上昇率についての情報を水素供給部330に伝達し(S3760)、水素供給部330は決定された新しい圧力上昇率によって水素を供給することができる。
【0026】
上述したように、充填機制御部310は、S3240段階で算出された新しい圧力上昇率を水素供給部330に伝達し、水素充填機300でこの新しい圧力上昇率で水素充填を実行するように制御する。この場合は、シンプル熱力学的モデルを適用しない。よって、上述したように、前記予め設定した圧力より水素タンク110の圧力が小さい場合には水素タンク110の温度が急激に上昇するから精密な制御が難しくなるなどの問題があるので、固定圧力上昇率を適用して安全で精密に制御しながら水素充填時間も縮めることができる。水素供給部330は、伝達された圧力上昇率によって充填ラインを介して水素を供給することができる。
充填機制御部310は、新しい圧力上昇率(prrnew)を算出した後、充填初期時刻N1値を0でない現在時刻に設定した後(S3780)、S3100段階に復帰してプロセスを実行する。そして、充填機制御部310は、算出された新しい圧力上昇率(prrnew)についての情報を水素供給部330に伝達することができる(S3760)。
水素タンク110内の圧力(Ptank)が予め設定された圧力より小さくない場合には、S3010段階で設定したprrk=1を所定のprr値の一例としてprrnew(=20MPa/min)に設定することができる(S3250)。すなわち、充填機制御部310は、水素タンク110の圧力(Ptank)が予め設定した圧力より小さくないと、初期圧力上昇率として設定された圧力上昇率(図3では、prrnew=20MPa/min)をSTMに適用した後、水素充填に適用することができる。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
S3100段階に復帰すると、充填機制御部310は、実時間で水素供給部330から水素充填機300が供給する水素の圧力(Pba)、温度(Tba)及び水素充填機300の周辺で測定した大気温度(Tamb)についての情報を受信し、以後のプロセスを実行することができる。
前記差値のうちのいずれか一つが予め保存されたそれぞれの設定値以下になるときの圧力上昇率を最適圧力上昇率と設定することができる。ここで、予め保存されたそれぞれの設定値は収容可能な程度の小さな値であり、研究結果に基づいて設定することができる。
【0031】
【0032】
本発明の一実施例による水素充填複製で使用する熱力学的モデルは、水素移動装置200での熱伝逹を反映していない。よって、水素タンク110内の水素の温度計算結果に誤差が発生する。ただ、水素充填中に現在状態の水素タンク110内の圧力及び温度に基づいて水素充填複製を実行するので、複製の時間が十分に短いと誤差は減少することができる。よって、水素充填が終了するまで、その直前まで充填残余時間の間に水素充填複製を繰り返すことができる。
図3で上述した段階(S3010~S3780)の間の順序は例示であるだけで、これに限定されない。すなわち、上述した段階(S3010~S3780)の間の順序は互いに変わることができ、このうちの一部の段階は同時に実行するかまたは削除することもできる。
【0033】
まず、シンプル熱力学的モデルの基本構造及び定義、仮定について手短に説明する。
図4は本発明の一実施例による実時間通信基盤水素充填プロトコルで適用するシンプル熱力学的モデル(Simple thermodynamic mode、STM)における仮定及び定義を説明するための例示図である。
実時間通信基盤水素充填プロトコル(Real time Responding-Hydrogen Fueling Protocol、RTP-HFP)におけるシンプル熱力学的モデルでは、2個の仮定及び3個の定義を使用する。2個の仮定を導入した理由は、水素充填機で充填対象CHSSの形状(geometry)を把握することが不可能であるという問題点を克服し、モデルを単純化することで、計算の速度を高めるためである。
仮定1:充填ラインは直線形(straight)であり、内径値が一様な単一のチューブ(tube)である。dFLは内径値である。このチューブ(tube)の圧力損失係数(KFL)計算式はその内径(inner diameter)のみを関数とする(KFL=f(dFL))。すなわち、dFLを除き、すべての圧力損失因子(factors)を無視する。これは、SAE J2610(2020)でホットケース(Hot Case)充填ラインの圧力損失を35MPaと見なして圧力損失係数(KFL)を計算するようにしたことと類似した概念であると言える。KFL=f(dFL)である。
仮定2:充填ラインの壁とその内部を流れるガスとの間には熱交換が起こらない。
そして、基準状態(Reference state)(STMがSAE J2610(2020)で使用された熱力学的モデルと同等な充填工程複製機能を有するようにするために、ホットケース(Hot Case)の変数をSTMに適用してフィッティング(Fitting)した状態)のSTMを実際状態(Real state)(フィッティング(Fitting)されたSTMのホットケース(Hot Case)の変数に実際ケース(Real case)の変数を代入して実際ケース(Real case)を複製することができるようにした状態)のSTMに変換するのに使用するために3個の定義を導入した。
【0034】
定義1:ホットケース(Hot Case)とは、充填終了時点でCHSSタンク内のガスの温度が最高になる充填条件(SAE J2601で規定しているホットケース(Hot Case)と同一)を言う。
定義2:仮定1による充填ラインの内径をdFLとし、SAE J2601のTB-HFPに適用するAPRRをSTMに適用するとき、CHSSタンクの温度が85℃になるようにする充填ラインの内径値dFLを基準充填ラインの内径値(dFL、ref)と定義する。
定義3:仮定1による充填ラインの圧力損失係数をKFLとし、ホットケース条件(Hot Case condition)(△Pが35MPa)で計算した充填ラインの圧力損失係数をKFL、refと定義し、基準圧力損失係数という。
仮定1及び定義1によるdFLは充填システムの熱力学的特性を比例的に複製することができるようにするために導入した仮想の充填ラインの内径である。図4に関連した数式3で示すように、RTR-HFPでdFLは基準状態(Reference state)のSTMを実際状態(Real state)のSTMに変換する媒介変数の役割を果たす。
しかし、RTR-HFPでは、ホットケース(Hot Case)条件でdFL、ref及びKFL、refを設定し、実際状態(Real case)条件で圧力上昇率(prr)を計算する。RTR-HFPでは実時間充填工程パラメーター(特に、Ttk、水素タンク温度)を制御に活用するので、これが可能である。RTR-HFPのこのような構造は充填プロトコルの効率性を高めることができる基盤になる。
RTR-HFPでは、dFL、ref設定のためにTB-HFPで使用するルックアップテーブルを用いる。TB-HFPに適用されるSAE J2601のルックアップテーブルは、タンク容量別(2、4、7、10kg)、供給ガス温度別(T20、T30、T40)及び外気温度別(-40~+50℃)に備えられている。このTB-HFPのルックアップテーブルを用いた理由は次の通りである。
【0035】
1.SAE J2601開発に使用された公信力高いrigorous thermodynamic modelを間接的に活用することができる。
2.タンク容量別、供給ガス温度別及び外気温度別に完全なテーブルが提供されているので、充填工程の全体領域をカバーすることができるdFL、refの導出が可能である。
3.RTR-HFP及びSAE J2601のテーブル基盤(table-based)の HFP(TB-HFP)とMC formula-based HFP(MC-HFP)との間に互換性確保が容易である。
FL、refは、TB-HFPのルックアップテーブル種類のように、タンク容量別及び外気温度別に設定する。供給ガス温度によってもdFL、refが変わるが、その差が大きくなく、保守的な結果に帰結して安全には問題がないので、設定対象から除くことができる。dFL、refを求める方式はTB-HFPでAPRRを求める方式と類似している。SAE J2601では充填プロトコルの開発に適用された熱力学的モデルで反復的な充填工程複製を実施して、充填終了時点での水素タンク温度及びSOCがそれぞれ85℃及び95%になるようにAPRRを設定する。TB-HFPルックアップテーブルのデータ(外気温度及びAPRRなど)を用いてRTR-HFP用STMで反復的な充填工程複製を実施して、充填終了時点での水素タンク温度及びSOCがそれぞれ85℃及び95%になるようにAPRRを設定する。STMに特定の充填条件でのAPRR及び任意のdFL値を入力した後、充填工程複製によって導出した水素タンク温度が85℃より高いと、より大きいdFL値を入力して再び複製し、85℃より小さいと、より小さいdFL値を入力して再び複製する方式でdFL値を設定したものである。このような方式で設定したdFL値の例を次の表2に示した。表2は水素タンク容量によるdFL、ref値を例示している。
【表2】
【0036】
図5はホットケース(Hot Case)を実際ケース(Real case)のSTMに連結させる媒介変数を説明するための例示図である。
ホットケース(Hot Case)を実際ケース(Real case)に連結するための式として、本発明では次の数式3を提案する。次の数式3によって実際ケース(Real case)に連結し、シンプル熱力学的モデルを適用すると、計算時間をかなり減らすことができる効果ある。表3の式及び初期圧力パルスステップで測定された△P値に基づいて数式3のような媒介変数式によって実際ケース(Real case)に適用されることができる。
【表3】
【0037】
【数5】
前記数式3から、指数値として表示された0.25または他の値を排除するものではない。数式3で、RTR-HFPのdFLは基準状態(Reference state)のSTMを実際状態(Real state)のSTMに変換する媒介変数の役割を果たす。
STM(Simple thermodynamic model)は、先に記述した仮定及び定義を適用して水素充填工程を複製することができるように設計されたRTR-HFPのエンジンである。RTR-HFPでは、このモデルを用いて実時間で充填工程に適用する圧力上昇率(PRR)を算出する。
STMの基本機能は、水素タンク110に流入する圧縮水素の質量流量(mass flow rate)とCHSS100内の圧縮水素の圧力及び温度値を計算することである。この機能を果たすために必要なものは、充填ラインの圧力損失計算式、充填ラインの質量流量(masss flow rate)計算式、CHSS100に入るガスのエンタルピー計算式、CHSS100内のガスの温度及び圧力計算式である。
前記数式3に基づいてホットケース(Hot Case)を実際ケース(Real case)に連結することができる。測定された△Pに基づいて実際ケース(Real case)での圧力損失係数KFLを算出し、算出されたKFLを前記3によって実際ケース(Real case)でのdFLを算出することができる。
【0038】
図5の右側に示した実際ケース(Real case)の値を入力値として所定の熱力学的モデル(例えば、シンプル熱力学的モデル)に適用して出力値を算出する。ここで、算出される値には、実際水素タンク温度、及び実際SOC値がある。
図5に示すように、STMがホットケース(Hot Case)のパラメーターを入力すると、水素タンク110の温度(Ttk)=85℃及びSOC95%が算出され、実際ケース(Real case)のパラメーターを入力すると、実際ケース(Real case)の水素タンク110の温度(Ttk)及びSOC95%が算出される。ここで、問題は、dFLが仮想のパラメーターであるから、実際工程で測定が不可能であることである。それで、実測可能なパラメーターから仮想のパラメーター値であるdFL値を計算するように多数の仮定及び定義を設定したことがある。
前記仮定2に加えて、充填ラインでの摩擦による圧力損失を無視すると、充填ラインからタンクに入るエネルギー総量Etiは次の数式4によって計算することができる。
【数6】
このEti式によると、Etiは充填ラインの入口に入る水素ガスの温度及び圧力を関数とするhbaとガス流速を関数とするvba /2とによって求めることができる。これに前記仮定1を適用する場合、充填ラインの入口に入るガスの温度及び圧力が一定であると、充填ラインの圧力損失値の変化は充填ラインの入口に入る水素ガスの流速の変化として現れることになる。また、vba及びKFLをその定義によって数式5のように表現することができ、最終的にdFLの関係式を誘導することができる。
【数7】
【0039】
この数式にdFL、ref、KFL、refを適用して実際ケース(Real case)のdFLを計算することができる前記数式3を誘導することができる。
結果的に、基準状態STMのKFL、refをMaim充填開始前段階(initial pressure pulse段階)で水素充填機300が測定したKFLに変更し、dFL、refを前記数式3によって計算したdFLに変更することで、基準状態STMが実際状態STMに変更されることにより、実際ケース(Real case)を複製することができる。
本発明では、STMの構造を単純化するために2個の仮定を使用した。これらの仮定の妥当性を確認するためには、それがRTR-HFPの性能にどの影響を及ぼすかを確認する必要がある。STMの一番重要な目標は水素タンク110の温度を計算することである。数式6は時間tでの水素タンク110の水素ガスの温度を計算するための式である。
【数8】
【0040】
仮定の妥当性を確認するために、水素タンク110の温度計算式である数式6の関数関係を調べる。次の数式7は水素タンク110の温度計算式の関数関係を表示したものである。
【数9】
【0041】
【0042】
【数10】
【0043】
前記数式1、前記数式7及び前記数式8を分析して見れば、水素タンク110の温度を計算する計算式の関数関係が次の数式9のようになることが分かる。
【数11】
前記数式9をまたSAE J2601に適用した場合と基準状態(Reference state)STM(仮定2適用)に適用した場合とに分けて表現すると、それぞれ次の式のように示すことができる。すなわち、数式10は前記数式9をまたSAE J2601に適用した場合、水素タンク110の温度の関数関係式を示したものであり、数式11は基準状態STM(仮定2適用)に適用した場合、水素タンク110の温度の関数関係式を示したものである。
【数12】
【数13】
【0044】
前記数式10と数式11とを比較することにより、次の数式12のような関係が成り立つことが分かる。
【数14】
TB-HFPでは、dFL,hot=5(mm)でホットケース(Hot Case)条件の変数を入力して複製結果が85℃及びSOC95%になるようにAPRRを設定した。一方、STMでは、ホットケース(Hot Case)条件の変数及びAPRRを入力して複製結果が85℃及びSOC95%になるようにdFL、hotを設定した。STMを搭載したRTR-HFPでは、実際測定したΔPrealを用いて比例式である前記数式3を計算/適用することで、STMが実際ケース(Real case)を複製することができる状態になる。これにReal変数を入力して複製を実行すると、実際ケース(Real case)に関する水素タンク110の温度及びSOCを算出することができる。しかし、前記数式12で確認できるように、TB-HFPで使われるルックアップテーブルを用いてSTMのdFL、refを設定したので、dFL、ref値にはdFL、hot値だけでなく、QFL、hot値も一緒に含まれている。結果的に、このような方式によって設定されたdFL、ref値をSTMに適用してRTR-HFPを駆動する場合に予想される誤差は次のように要約することができる。
STMによる複製によって算出した水素タンク110の温度値(Ttk)が実際より高くなるはずであるので、導出されたprr値は適正水準より小さく設定されて充填にかかる時間を遅延させる結果が引き起こされる可能性があるが、次の段階のprrの導出の際には複製によって算出された水素タンク110の温度値(Ttk)を使用せずに測定された実際水素タンク110の温度値(Ttk)値を使用して複製を実行するので、その影響を減少させることができる。結果的に、本発明で導入した2個の仮定によってRTR-HFPの充填工程制御の安全にはより効果的である。
前記数式3のように算出されたdFL(またはdFLE)をシンプル熱力学モデル(STM)の入力値として使用してRTR-HFPの水素充填制御に適用することができる。
【0045】
【0046】
S4100段階
シンプル熱力学的モデルをフィッティング(Fitting)する段階を説明する。シンプル熱力学的モデルの目標は、水素タンク内のガスの温度、圧力及び質量流量が予め設定された臨界値を超えない範囲内で最大の圧力上昇率(prr)を実時間で早く探索し出すことである。したがって、シンプル熱力学的モデルでは水素充填機で確認することができない構造的変数値や熱力学的変数値は反映対象から除かれなければならなく、計算に時間が長くかかる工程は単純化しなければならない。それにもかかわらず、シンプル熱力学的モデルは実際水素充填工程の特性をよく複製することができなければならない。
このような要求条件を満たすために、フィッティング(Fitting)が必要である。ここでは、このフィッティング(Fitting)要素として水素充填ラインの内径を使用する。そして、フィッティング(Fitting)された水素充填ラインの内径には充填ラインの圧力損失に影響を及ぼすすべての影響要素が含まれているという意味で等価内径(Equivalent inner-diameter)という用語を使用する。特定の条件に相当するCHSS、水素充填機、データ通信移動装置の構造的変数値及び熱力学的変数値を入力して充填を複製する場合、実際充填結果と同等な複製結果値が出るように充填ライン等価内径(DFLE)を調整する方法でフィッティング(Fitting)を実行する(DFLE=DFL)。
ここで、特定の条件としては、SAE J2601(2020)で提示するホットケース(Hot Case)になることができる。この場合、フィッティング(Fitting)は水素タンク容量(例えば、2kg、4kg、7kg、10kg)別及び大気温度別に実行することができる。このようにフィッティング(Fitting)された結果値を基準等価内径(DFLE、ref)という。基準等価内径(DFLE、ref)は次の数式13に基づいて算出することができる(S4100)。
【数15】
ここで、Kline、rate=Kline/Kline、refである。
【0047】
【0048】
【数16】
【0049】
【0050】
【数17】
【0051】
【0052】
【数18】
【0053】
【0054】
【0055】
【数19】
【0056】
【0057】
【数20】
【0058】
【0059】
【0060】
【数21】
【0061】
【0062】
【数22】
数式20は時間tで水素タンク110の圧縮係数に相当する。
【数23】
ここで、Rは普遍気体定数であり、表1に値が定義されている。数式21は時間tで水素タンク110の圧力値に相当する。
【数24】
【0063】
【0064】
上述した段階(S4100~S4600)の順序は例示であるだけで、これに限定されない。すなわち、上述した段階(S4100~S4600)の順序は互いに変動することができ、このうちの一部段階は同時に実行されるかまたは削除されることもできる。
図7は本発明の一実施例によって実時間(real time)で圧力上昇率(PRR)を計算して適用する過程を説明するための例示図である。
図7を参照すると、水素充填機300で充填を開始する(S7100)。水素充填機300は、充填ラインの初期圧力パルス段階(pulse step)で圧力損失係数(KFL)を測定または算出する。一例として、圧力損失係数値は、水素充填が開始すると、水素ガスを少し流入させた後、測定して算出する値である。温度及び圧力を用いて水素密度を算出し、水素が流入する流速を測定するなど、前記数式1などによって水素充填機300は圧力損失係数(KFL)を算出することができる。
水素充填機300は、前記数式3を用いて算出された圧力損失係数(KFL)から実際ケース(Real case)に適用されるdFL値を誘導する。充填機制御部310は、水素供給部330から充填ラインの初期圧力パルス段階(pulse step)で計算されたKFL、dFL値を受信することができる(S7200)。充填機制御部310は、受信された圧力損失係数値(KFL)及び充填ラインの内径値(dFL)を実際ケースで実時間水素充填に適用する。算出された充填ラインの内径値(dFL)が実際ケースで水素供給ホース230の内径として複製(replication or copy)されることができる。
【0065】
充填機制御部310は、水素供給部330から水素充填機300が供給する水素の圧力(Pba)、温度(Tba)についての情報を受信して初期情報を獲得し、CHSS100での温度センサー及び圧力センサーから収集される水素タンク110の圧力(Ptk)、温度(Ttk)についての情報を受信して初期情報を獲得することができる(S7300)。S7300では実時間データ(real time data)用いる。
充填機制御部310は、水素タンク110の圧力(Ptk)が予め設定した値(例えば、2MPa)より小さいかを判断する(S7400)。充填機制御部310は、水素タンク110の圧力(Ptk)が予め設定した値(例えば、2MPa)より小さいかによって所定の熱力学的モデル(例えば、シンプル熱力学的モデル)を適用するかを決定することができる。仮に、水素タンク110の圧力(Ptk)が予め設定した圧力値(水素タンク110のその値があまりにも高ければ熱力学的モデル駆動の安全性が喪失される特性及びその値があまりにも低ければ充填速度が低くなる特性の両者を考慮して反復的シミュレーションによって選定した値)(例えば、絶対圧力として2MPa)より小さい場合には、シンプル熱力学的モデルを適用してPRRを算出することがむしろ時間が多くかかるので、この時にはシンプル熱力学モデルを適用せず、固定APRR(Fixed APRR)を選択する(S7600)。充填機制御部310は、充填機300が固定APRRによって充填を実行するように制御することができる(S7700)。これと違い、水素タンク110の圧力(Ptk)が予め設定した値(例えば、絶対圧力として2MPa)より小さくない場合には、シンプル熱力学的モデルを適用して実時間でPRRを算出する(S7500)。充填機制御部310は、充填機300が算出されたPRRによって充填を実行するように制御することができる(S7700)。
その後、充填機制御部310は、充填率が100より大きいかを判断する(S7800)。充填率(SOC)が100より大きいと、充填を終了する(S7900)。これと違い、充填率が100以下であると、またS7300段階に復帰して以後のプロセスを繰り返し実行する。
その後、充填機制御部310は、充填率が100より大きいかを判断する(S7800)。充填率(SOC)が100より大きいと、充填を終了する(S7900)。これと違い、充填率が100以下であると、またS7300段階に復帰して以後のプロセスを繰り返し実行する。
【0066】
上述したように、実時間対応水素充填プロトコルで、水素タンク110の圧力(Ptk)が予め設定した値(例えば、2MPa)より小さいかによって、前もって定義された固定APRR値を選択するかそれとも所定の熱力学的モデルに適用してPRRを算出または誘導するかを決定することができる。すなわち、実時間対応水素充填プロトコルの安全性(Stability)を確保するために、水素タンク110の圧力(Ptk)が予め設定した値(例えば、2MPa)より小さい場合には、実時間で計算されたprrを適用せず、前もって定義された(計算された)固定APRR(またはPRR)値を選択して充填を行う。
図3のS3230でも、充填機制御部310は水素タンク110の圧力(Ptk)が予め設定した値(例えば、5.1MPa)より小さいかを判断し、固定prrを水素タンクの個数で割った値をprrnewと決定する。このprrnew図6での選択される固定APRR値であり得る。
実時間で計算されたprrが不連続的に増減するかまたはひどい変動(Fluctuation)が発生する問題を解決するために、prr増減率を制限する技法も適用する。そして、制御エラーによる過充填を防止するために、残余充填時間によって計算されるprr上限を適用する技法も適用することができる。その結果、図5に示すようにCHSSタンクの初期圧力が0MPaの場合(既存のHFPの場合には、初期圧力が0.5MPa以上の場合にのみ充填可能)、及び図6に示すように供給ガス温度が30℃であり、外気温度が30℃の場合にも予冷(pre-cooling)なしに円滑に充填制御されることが現れた。
安全制御を目的とする水素充填プロトコルの場合には、CHSS100が高温、高圧及び過大質量流速によって損傷されないようにするロジッグ自体の安全性能を保障しなければならないだけでなく、制御システムの完全性(Integrity)も保障されなければならない。これに加えて、RTR-HFPは実時間で収集される熱力学的変数を充填工程安全制御に使用するので、その変数を測定するセンサーのエラーに対する頑健性(Robustness)も確実に保障されなければならない。
【0067】
以上で説明した本発明の一実施例による実時間通信基盤水素充填方法は、既存のSAE J2601で規定する水素充填方法と比較して次のような点で効果の差が大きい。
まず、既存のSAE J2601で規定する水素充填は水素タンク110内の温度を予冷(precooling)した状態(例えば、零下17.5℃以下)でのみ可能であった。そうではなければ、水素タンク温度が急激に上がって早く85℃に至るからであった。しかし、本発明による水素充填方法によると、水素タンク110の温度を30℃程度に維持しても水素充填が可能である。
また、本発明による水素充填方法は、水素タンク圧力を大気圧程度に維持しても水素充填が可能であって。また、本発明による水素充填方法は、温度エラーが-5℃、圧力間エラーも+1.5MPaであっても水素充填が可能である。
また、本発明による水素充填方法は、水素タンクの容量制限なしに適用可能であり、圧力範囲も変更しやすく、流量(flow rate)制限もないなど、多様で手広く適用することができる。
また、本発明による水素充填方法は、実時間通信に基づいて水素タンク温度、圧力などを考慮してprrを算出して水素充填することで、より効率的に水素充填して精密な制御が可能になる利点がある。
【0068】
以上で説明した本発明の一実施例による実時間対応水素充填プロトコルによる水素充填プロセスを実行する充填機制御部310は、コンピュータによって実行されるアプリケーションやプログラムモジュールのような、コンピュータによって実行可能な命令語を含む記録媒体の形態にも具現可能である。コンピュータ可読の媒体はコンピュータによってアクセスできる任意の可用媒体であり、揮発性及び非揮発性媒体、分離型及び非分離型媒体の全部を含む。また、コンピュータ可読の媒体はコンピュータ保存媒体の全部を含むことができる。コンピュータ保存媒体は、コンピュータ可読の命令語、データ構造、プログラムモジュールまたはその他のデータのような情報の保存のための任意の方法または技術によって具現された揮発性及び非揮発性、分離型及び非分離型媒体の全部を含む。
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須な特徴を変更しなくても他の具体的な形態に容易に変形可能であるというのが理解可能であろう。したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解しなければならない。例えば、単一型として説明されているそれぞれの構成要素は分散して実施されることもでき、同様に分散しているものと説明されている構成要素も結合した形態として実施されることができる。
【0069】
本発明の範囲は前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって決定され、特許請求の範囲の意味及び範囲、かつその均等概念から導出されるすべての変更または変形の形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明による実時間対応水素充填プロセスを実行する方法及びその装置は水素充填産業分野に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】